JPWO2010052752A1 - 多重周回飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

多重周回飛行時間型質量分析装置 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2010052752A1
JPWO2010052752A1 JP2010536592A JP2010536592A JPWO2010052752A1 JP WO2010052752 A1 JPWO2010052752 A1 JP WO2010052752A1 JP 2010536592 A JP2010536592 A JP 2010536592A JP 2010536592 A JP2010536592 A JP 2010536592A JP WO2010052752 A1 JPWO2010052752 A1 JP WO2010052752A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
ions
analysis condition
analysis
flight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2010536592A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5327228B2 (ja
Inventor
真一 山口
真一 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Publication of JPWO2010052752A1 publication Critical patent/JPWO2010052752A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5327228B2 publication Critical patent/JP5327228B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/26Mass spectrometers or separator tubes
    • H01J49/34Dynamic spectrometers
    • H01J49/40Time-of-flight spectrometers
    • H01J49/408Time-of-flight spectrometers with multiple changes of direction, e.g. by using electric or magnetic sectors, closed-loop time-of-flight

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

分析実行に先立ってユーザは操作部9から観察対象のイオンの質量と目的に応じた質量分解能などを入力設定する。制御部7の分析条件演算部71は、観察対象イオンに対する質量分析が設定された質量分解能を満たすような周回数を求め、この周回数から周回軌道P上のイオンを離脱させるタイミングを計算して分析条件とする。このタイミングで別の観測対象イオンが出射してしまう場合には、周回数を変更した上で離脱タイミングを再計算する。また、必要に応じて質量を分割した複数の測定を行うようにし、各測定の分析条件を求める。そうして、観測対象のイオン毎に所望の質量分解能を達成できるような分析条件を見い出したならば、制御部7は分析条件記憶部72に格納された上記分析条件に従って各部を制御することにより、観測対象イオンの質量分析を実行する。これにより、面倒な周回数などの算出をユーザが行う必要がなく、利便性、操作性の向上が図れる。

Description

本発明は、試料由来のイオンを閉じた周回軌道に沿って繰り返し飛行させることでイオンを質量(厳密には質量電荷比m/z値)に応じて分離して検出する多重周回飛行時間型の質量分析装置に関する。
一般に、飛行時間型質量分析装置(Time of Flight Mass Spectrometer、以下「TOFMS」と略す)では、一定のエネルギーを与えることで加速したイオンはそれぞれ質量に応じた飛行速度を持つ、という原理に基づき、そうしたイオンが一定距離を飛行するのに要する飛行時間を計測し、その飛行時間を質量に換算することにより質量分析を行う。したがって、質量分解能を向上させるためには飛行距離を長くすればよいが、直線的な飛行距離を延ばすには装置を大型化する必要がある。そこで、飛行距離の延伸と装置の小形化とを両立させるため、略円形状、略楕円形状、略8の字形状など様々な態様の閉軌道に沿ってイオンを繰り返し飛行させるようにした、多重周回飛行時間型質量分析装置(Multi Turn TOF−MS、以下「MT−TOFMS」と略す)が開発されている(例えば特許文献1、2など参照)。
また、同様の目的で、上記のような周回軌道ではなく反射電場によりイオンを複数回反射させる往復軌道とすることで飛行距離を延ばすようにした、多重反射飛行時間型質量分析計も開発されている。多重周回飛行時間型と多重反射飛行時間型とではイオン光学系が相違するものの、質量分解能を向上させるための基本的な原理は同じである。そこで、本明細書では、「多重周回飛行時間型」は「多重反射飛行時間型」を包含するものとする。
一般的なTOFMSでは基本的な飛行距離などが決まっており、これに依存する質量精度や質量分解能も一意に定められていて、これを変更することはできない。これに対し、MT−TOFMSでは質量精度や質量分解能は周回数に依存する。逆に言えば、或る質量を有する又は質量範囲に含まれるイオンに対して適切な周回数を設定しないと、ユーザが所望する質量分解能や質量精度を得ることができない。また、MT−TOFMS特有の問題として、質量が相違するイオンの追いつき、追い越しという問題がある。即ち、同一軌道を周回する間に、速度の大きな低質量のイオンが速度の小さな高質量のイオンに追いつき、追い越してしまうという現象が発生する。そのため、例えば或るイオンが規定の周回数だけ周回したと推定されるタイミングで該イオンを周回軌道から離脱させて検出しようとしても、同じタイミングで周回遅れや周回進みの別のイオンも周回軌道から離脱するおそれがある。そのため、このような不所望のイオンの混在を回避するように適切な周回数を設定する必要がある。
特開2006−228435号公報 特開2008−27683号公報
上記事情から、MT−TOFMSにおいて良好な分析を行うには、分析対象の質量や質量範囲に対応した適正な周回数を設定する必要があるものの、ユーザ自身がそうした設定を行うのは実際には困難である。しかしながら、従来のMT−TOFMSは、そうしたユーザの利便性について考慮されているとは言えなかった。本発明はこうした課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、ユーザの簡単な操作により要求に応じた性能の分析データの取得が可能な多重周回飛行時間型質量分析装置を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明は、試料をイオン化するイオン源と、試料由来のイオンを繰り返し飛行させる周回軌道を形成するイオン光学系と、周回軌道に沿って飛行したイオンを検出する検出器と、を具備する多重周回飛行時間型質量分析装置であって、
a)目的とする質量又は質量範囲に関する質量情報と、測定性能の要求に関する性能情報とをユーザが設定するための情報入力手段と、
b)設定された前記質量情報及び性能情報に基づいて、目的とする質量を持つ又は質量範囲に包含されるイオンに対し少なくとも前記測定性能を満たす分析条件を算出する分析条件算出手段と、
c)前記分析条件算出手段により算出された分析条件に従ってイオンを周回軌道に沿って飛行させた後に検出器に導入されるように各部を制御する制御手段と、
を備えることを特徴としている。
「質量情報」は質量(厳密には質量電荷比m/z)や質量範囲の数値でもよいし、或いは、物質名、分子式などの質量を導出可能な情報であってもよい。
「分析条件」とは、例えば、周回軌道上のイオンの周回数又は周回軌道からのイオンの離脱のタイミングのいずれかとすることができる。周回軌道からのイオンの離脱のタイミングとは、例えば、イオンがイオン源等のイオン飛行出発点より出発した時点から、周回軌道に沿って飛行したあとにその周回軌道を離れる時点までの経過時間である。
本発明に係る多重周回飛行時間型質量分析装置において、質量情報として与えられる目的とする質量が1つである場合には、分析条件算出手段は、該質量を持つイオンが与えられた測定性能を満たす分析条件を算出すればよいが、質量情報として質量範囲が与えられたり複数の質量が与えられたりした場合には、周回遅れや周回進みのイオンが同時に周回軌道から離脱しないようなタイミングを考慮する必要がある。そこで、分析条件算出手段は、まず与えられた測定性能を満たす分析条件を算出してから、その分析条件の下で異種のイオンの混在が生じないか否かを判定し、混在が生じる場合に分析条件を徐々に変更して異種のイオンの混在が生じない分析条件を見い出すようにするとよい。
また、分析条件算出手段が所定の制約条件の下、例えば規定の測定時間範囲内という制約条件の下で、1回の測定で適切な分析条件を見い出すことができない場合に、複数の質量又は質量範囲を複数に区分して複数回の測定を実行するとの条件で分析条件を見い出すようにしてもよい。即ち、同一試料に対するイオン化→周回軌道を利用したイオンの質量分離→イオン検出、という一連の測定を、それぞれ異なる質量や質量範囲に対して複数回実行するようにしてもよい。
本発明に係る多重周回飛行時間型質量分析装置によれば、ユーザは分析目的の成分の質量や目的に応じた所望の分解能や精度などを入力しさえすればよく、それに応じた適切な分析条件の設定や分析自体は自動的に実行される。したがって、ユーザは面倒な作業や操作を行うことなく所望の性能を満足するデータを簡便に得ることができる。また、分解能や精度が低くてもよい場合には必然的にイオンの周回数が少なくなるため、測定に要する時間が短くなり、分析作業の効率化、スループットの向上にも寄与する。
本発明の一実施例による多重周回飛行時間型質量分析装置の概略構成図。 本実施例の多重周回飛行時間型質量分析装置における分析手順を示すフローチャート。
符号の説明
1…イオン源
2…ゲート電極
3…飛行空間
31〜36…扇形電極
4…検出器
5…周回飛行用電圧発生部
6…ゲート電圧発生部
7…制御部
71…分析条件演算部
72…分析条件記憶部
8…データ処理部
9…操作部
10…表示部
P…周回軌道
E1〜E6…扇形電場
以下、本発明の一実施例によるMT−TOFMSについて図面を参照しながら説明する。
図1は本実施例によるMT−TOFMSの概略構成図である。図1において、図示しない真空室の内部には、イオン源1、ゲート電極2、複数の扇形電極31〜36が配設された飛行空間3、イオン検出器4、などが配設されている。
イオン源1は分析対象のイオンの飛行開始点となるものであり、例えば分析対象である試料分子をイオン化するイオン化部であってイオン化法は特に限定されない。例えば本質量分析装置がガスクロマトグラフ用の検出器として利用される構成においては、イオン源1は電子衝撃イオン化法や化学イオン化法によって気体分子をイオン化するものである。また、本質量分析装置が液体クロマトグラフ用の検出器として利用される構成においては、イオン源1は大気圧化学イオン化法やエレクトロスプレイイオン化法によって液体分子をイオン化するものである。さらにまた、分析対象分子がタンパク質などの高分子化合物である場合にはMALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:マトリクス支援レーザ脱離イオン化法)を利用するとよい。イオン源1は必ずしもイオンの発生源であるとは限らず、例えば他の部分で生成されたイオンを一旦保持した後に、エネルギーを付与して出射するイオントラップなどとしてもよい。
飛行空間3内には、イオンを略円形状の周回軌道Pに沿って飛行させるために複数(この例では6個)の扇形電極31、32、33、34、35、36が配置されている。この同一形状の6個の扇形電極31〜36はそれぞれ、同心二重円筒体を回転角度60°で切断した形状となっており、それら扇形電極31〜36を軸Oを中心にして等回転角度離間して配置している。扇形電極31〜36に所定の電圧が印加されることによってその内部にはそれぞれ扇形電場E1〜E6が形成され、この扇形電場E1〜E6内で略六角筒形状の飛行空間が形成され、その飛行空間内を通過するイオンの中心軌道は図1中にPで示すようになる。隣接する扇形電極31、36の間に設けられたゲート電極2は、イオン源1で生成されたイオンを周回軌道Pに乗せるため、及び、周回軌道Pに沿って飛行しているイオンを周回軌道Pから離脱させてイオン検出器4へと送るための機能を有する。
扇形電極31〜36、及びゲート電極2にはそれぞれ周回飛行用電圧発生部5及びゲート電圧発生部6から電圧が印加され、これら電圧発生部5、6は制御部7により制御される。制御部7には、分析に関わる各種の入力設定や指示を行うためにユーザにより操作される操作部9と、分析結果などを表示するための表示部10とが接続されている。イオン検出器4による検出信号はデータ処理部8に入力され、ここで、イオンがイオン源1を出発してからイオン検出器4に到達するまでの飛行時間が計測され、この飛行時間に基づいてイオンの質量が計算される。なお、制御部7やデータ処理部8はパーソナルコンピュータを中心に具現化することができる。
図1の構成では周回軌道Pを略円形状としているが、周回軌道の形状はこれに限るものではなく、長円形状、8の字状など、任意の形状とすることができる。また、直線状又は曲線状の軌道を往復するものであってもよい。
本実施例のMT−TOFMSでは、分析パラメータとして少なくとも、質量(m/z値)又は質量範囲、質量分解能、質量精度、を操作部9から入力設定可能となっている。また、制御部7は、操作部9から設定された上記分析パラメータに従って実際に分析を実行する際の分析条件を算出する分析条件演算部71と、算出された分析条件を記憶する分析条件記憶部72とを機能ブロックとして含む。
本実施例のMT−TOFMSにおける基本的な質量分析動作は次の通りである。即ち、イオン源1では被測定試料中の成分がイオン化され、生成されたイオンは運動エネルギーを付与されてほぼ一斉にイオン源1を出発する。飛行空間3に入ったイオンはゲート電極2に到達し、ゲート電圧発生部6からゲート電極2に印加される電圧によって生成される偏向電場の作用により、周回軌道Pに乗せられる。イオン源1から発したイオンがゲート電極2に到達するまでにも、各種イオンは質量に応じた時間差を持つから、観察対象のイオンと質量が大きく相違する不要イオンを周回軌道Pに乗せないようにゲート電極2への印加電圧を制御することで、一部の不要イオンを排除することが可能である。
周回軌道Pに乗ったイオンは、周回飛行用電圧発生部5から扇形電極31〜36に印加される電圧により生成される扇形電場E1〜E6の作用により飛行を続ける。周回を重ねるほど飛行距離は長くなるから、質量が近いイオンも次第に周回軌道P上で離れていく。そして、イオン源1からイオンが出発した時点から所定時間が経過した時点で、イオンが周回軌道Pから離脱してイオン検出器4に向かうようにゲート電極2に印加する電圧を切り替える。すると、それ以降、周回軌道P上を周回しているイオンはゲート電極2に到達した順に周回軌道Pを離れ、イオン検出器4に到達する。イオン検出器4ではイオンが入射するとその数に応じた電流が流れ、これがイオン強度信号としてデータ処理部8へと入力される。イオンが周回軌道Pに沿って飛行する途中で、ゲート電極2に印加する電圧を一時的に切り替えることで、不要イオンを周回軌道Pから排除することもできる。
上述のようにイオンが周回軌道Pに沿って飛行する際に質量がきわめて近いイオン同士(例えば同位体イオンなど)も間隔が開き、時間的にずれてイオン検出器4に到達する。したがって、データ処理部8で時間経過に伴ってイオン強度信号を記録すれば、高質量分解能の飛行時間スペクトルを得ることができる。この飛行時間スペクトルに出現する各イオンに対応したピークの周回数が分かれば飛行距離が求まるから、飛行時間を質量に換算して質量スペクトルを求めることができる。
次に、本実施例のMT−TOFMSにおける特徴的な分析動作の一例を、図2のフローチャートに従って説明する。
まずユーザ(分析者)は、興味のある(観測したい)1又は複数の質量(m/z値)若しくは質量範囲を質量情報として操作部9から入力設定する(ステップS1)。この質量情報は必ずしも数値そのものでなくても、数値を導出できる情報であればよく、興味のある成分の分子式や物質名などであってもよい。なお、ここで入力設定される数値は厳密なものである必要はないことは当然である。またユーザは、分析の目的などに応じて、質量分解能や質量精度といった測定性能の数値を性能情報として操作部9から入力設定する(ステップS2)。例えば質量分解能については、0.2、0.1、0.05、0.02、0.01、…など予め用意された数値からユーザが選択可能としておけばよく、質量精度も同様である。なお、デフォルト値でよい場合には、ステップS2の入力設定を省くことができる。
上記のような質量情報や測定情報を含む分析パラメータが入力設定された上でユーザが分析実行を指示すると(ステップS3)、制御部7はまず、設定された質量情報及び測定情報に基づいて分析の遂行に必要な分析条件を算出する。具体的には、分析条件演算部71は、質量情報として設定された質量毎に、測定情報として設定された質量分解能や質量精度を満足するために必要なイオンの周回数を求め、その周回数を達成できるような周回離脱時間Tgを計算する(ステップS4)。この周回離脱時間Tgとは、イオンがイオン源1を出発した時点から、周回軌道Pに乗ったイオンが周回軌道Pを離脱してイオン検出器4に向かうような電圧をゲート電極2に印加するまでの経過時間である。
具体的には次のような計算により、観察対象の質量に対する周回離脱時間Tgを求めることができる。
一般的にTOFMSでは、飛行経路長をL、イオンの飛行速度をvとすると、飛行時間Tは、
T=L/v …(1)
である。質量Mのイオンが持つ運動エネルギーをUとすると、
U=(1/2)・M・v2 …(2)
であるから、
v=(2・U/M)1/2 …(3)
である。したがって(1)式は、
T=L/{M/(2・U)}1/2 …(4)
となる。一方、飛行時間スペクトル上の時刻Tの位置に観測されるピークのピーク幅がΔTであるとすると、そのピークの質量分解能Rは、
R=T/(2・ΔT) …(5)
である。
上述のようにMT−TOFMSでは飛行経路長Lは周回数に依存する。いま、周回数がNであり、周回軌道Pの周回長(1周の距離)をCとすると、
L=N・C …(6)
である。但し、ここでは説明を簡単にするために、周回軌道P以外の軌道、つまりはイオン源1からゲート電極2までの入射軌道やゲート電極2からイオン検出器4までの出射軌道の長さは無視している。(4),(5),(6)式より、
R=N・C・{M/(2・U)}1/2/(2・ΔT) …(7)
である。質量精度はTOFMSでは一般に質量分解能Rに比例する(数値としては質量分解能が大きくなるほど質量精度は小さくなる)。したがって、質量精度Aは、
A=a・(R)-1 …(8)
とすることができる。そこで、測定性能として質量分解能R0、質量精度A0の両方が設定された場合、(7)式の質量分解能RがR0になるような周回数N0、(8)式の質量精度AがA0になるような周回数N0’を求め、いずれか大きいほうの周回数を選べばよい。
実際にイオンを規定の周回数だけ周回させたあとに検出するための制御に必要であるのは、上記の周回離脱時間Tgと周回導入時間Tg’(イオンがイオン源1を出発した時点から、周回軌道Pに乗せるような電圧をゲート電極2に印加するまでの経過時間)である。これらのタイミングは観測対象イオンの質量によって相違する。入射軌道の飛行経路長、出射軌道の飛行経路長をそれぞれL1、L2とすると(但しL1、L2<<C)、周回導入時間Tg’は、
Tg’=L1/v=L1・{M/(2・U)}1/2 …(9)
であり、周回離脱時間Tgは、
Tg=Tg’+T=(L1+N・C)/v=(L1+N・C)・{M/(2・U)}1/2 …(10)
となる。つまり、観測対象の質量Mと質量分解能R0又は質量精度A0の少なくとも一方が与えられれば周回数が求まり、その周回数を利用して周回離脱時間Tg及び周回導入時間Tg’が求まることになる。但し、入力設定により与えられる質量はそれほど厳密なものではないから、計算により求まる周回離脱時間Tg及び周回導入時間Tg’も或る程度の許容範囲を与える必要がある。
観測対象の質量(イオン)が1つのみである場合には、上記のように求まる周回離脱時間Tg及び周回導入時間Tg’に従ってゲート電極2への印加電圧の切替えタイミングを制御することで、目的イオンを周回軌道Pに乗せるとともに所定の周回数だけ周回飛行した該イオンを選択的にイオン検出器4に導くことができる。しかしながら、観測対象の質量が複数であったり観測対象の質量が質量範囲として設定されたりしている場合には、異なる種類のイオンの混在を考慮する必要がある。これは、質量の相違するイオンが周回軌道Pに沿って飛行する際に、低質量で速度の大きなイオンが高質量で速度の小さなイオンに追いつき、追い越してしまうことにより、或る周回離脱時間Tgでゲート電極2への印加電圧を切り替えたときに、所望の周回数だけ周回した或る目的イオンと、所望の周回数周回したのではない他の目的イオンとが、周回軌道Pを離れてほぼ同時にイオン検出器4に入射してしまうおそれがあるからである。
そこで分析条件演算部71は、観測対象の質量毎に求められた周回離脱時間Tg毎に、その離脱タイミングで所望の周回数ではない他のイオンが離脱してしまわないかどうかを判定する(ステップS5)。そして、他のイオンが離脱する場合には、ステップS4で算出された周回数を例えば1だけ増やすように変更し、周回離脱時間Tgを再計算する(ステップS6)。周回数を増やせば質量分解能や質量精度は下がらないので、これら測定性能を満たすことができる。そのあと、例えば予め設定された最大測定時間などの制約条件を満たしているか否かを判定し(ステップS7)、満たしていればステップS5に戻って周回離脱時間Tgが適切か否かを再判定する。ステップS7の判定により、周回数が初めに計算により求まった所望の周回数よりも格段に多くなることを避けることができる。
ステップS7で制約条件を満たしていないと判定された場合には、適切な分析条件の設定が不可能であると判断する。これは、例えば設定された質量の数が多過ぎる、質量範囲が広すぎる、などの要因が考えられ、設定された質量を設定された測定性能を満たすような質量分析を1回の測定では行えないことを意味する。そこで、与えられた複数の質量を適宜に複数に分割し、また質量範囲を複数の狭い質量範囲に分割し、複数の測定を実行するとの条件の下で上述した分析条件を決定する(ステップS9)。
一方、ステップS5で、1乃至複数の観測対象質量毎の周回離脱時間Tgが適切であると判定された場合には、そのときの周回離脱時間Tgを分析条件として定め、分析条件記憶部72に格納する(ステップS8)。
そうして分析条件が決まった後に制御部7は、上述したようにイオン源1から被測定試料由来のイオンを出射させ、ゲート電圧発生部6からゲート電極2への印加電圧の切替えを上記分析条件に従って実行することにより、観察対象イオンの質量分析を遂行する(ステップS10)。そして、データ処理部8は飛行時間スペクトルを取得し、飛行時間を質量に換算することで、観測対象イオンのピークが現れている質量スペクトルを作成する(ステップS11、S12)。質量や質量範囲を分割した複数回の測定が設定されている場合には、1回の測定終了毎に引き続いて2回目以降の測定を順次実行することにより、それぞれ飛行時間スペクトルを取得し、質量スペクトルを作成する。この場合、各測定毎に別々の質量スペクトルを作成してもよいが、これを1つの質量スペクトルに統合してもよい。
以上のように本実施例のMT−TOFMSでは、ユーザは観測したい質量や目的に応じた質量分解能などの情報を入力設定するだけでよいため、質量分析のための操作や作業が簡単であり、そのための特別な経験や知識も不要である。
なお、上記実施例は本発明の一例であり、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば上記実施例では、複数の質量が質量情報として設定された場合に、それら全ての質量に対する質量分解能や質量精度が同一であることを前提としていたが、各質量毎に異なる質量分解能や質量精度を設定できるようにしてもよい。

Claims (4)

  1. 試料をイオン化するイオン源と、試料由来のイオンを繰り返し飛行させる周回軌道を形成するイオン光学系と、周回軌道に沿って飛行したイオンを検出する検出器と、を具備する多重周回飛行時間型質量分析装置であって、
    a)目的とする質量又は質量範囲に関する質量情報と、測定性能の要求に関する性能情報とをユーザが設定するための情報入力手段と、
    b)設定された前記質量情報及び性能情報に基づいて、目的とする質量を持つ又は質量範囲に包含されるイオンに対し前記測定性能を満たす分析条件を算出する分析条件算出手段と、
    c)前記分析条件算出手段により算出された分析条件に従ってイオンを周回軌道に沿って飛行させた後に検出器に導入されるように各部を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする多重周回飛行時間型質量分析装置。
  2. 請求項1に記載の多重周回飛行時間型質量分析装置であって、
    前記分析条件は、周回軌道上のイオンの周回数又は周回軌道からのイオンの離脱のタイミングのいずれかであることを特徴とする多重周回飛行時間型質量分析装置。
  3. 請求項1又は2に記載の多重周回飛行時間型質量分析装置であって、
    前記質量情報として量範囲又は複数の質量が与えられた場合に、前記分析条件算出手段は、与えられた測定性能を満たす分析条件を算出してから、その分析条件の下で異種のイオンの混在が生じないか否かを判定し、混在が生じる場合に分析条件を徐々に変更して異種のイオンの混在が生じない分析条件を見い出すことを特徴とする多重周回飛行時間型質量分析装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多重周回飛行時間型質量分析装置であって、
    前記質量情報として量範囲又は複数の質量が与えられ、前記分析条件算出手段が所定の制約条件の下で1回の測定で適切な分析条件を見い出すことができない場合に、複数の質量又は質量範囲を複数に区分して複数回の測定を実行するとの条件で分析条件を見い出すようにすることを特徴とする多重周回飛行時間型質量分析装置。
JP2010536592A 2008-11-05 2008-11-05 多重周回飛行時間型質量分析装置 Expired - Fee Related JP5327228B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2008/003200 WO2010052752A1 (ja) 2008-11-05 2008-11-05 多重周回飛行時間型質量分析装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2010052752A1 true JPWO2010052752A1 (ja) 2012-03-29
JP5327228B2 JP5327228B2 (ja) 2013-10-30

Family

ID=42152569

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010536592A Expired - Fee Related JP5327228B2 (ja) 2008-11-05 2008-11-05 多重周回飛行時間型質量分析装置

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5327228B2 (ja)
WO (1) WO2010052752A1 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4182853B2 (ja) * 2003-10-08 2008-11-19 株式会社島津製作所 質量分析方法及び質量分析装置
JP4480515B2 (ja) * 2004-08-23 2010-06-16 日本電子株式会社 質量分析方法
GB0622689D0 (en) * 2006-11-14 2006-12-27 Thermo Electron Bremen Gmbh Method of operating a multi-reflection ion trap

Also Published As

Publication number Publication date
JP5327228B2 (ja) 2013-10-30
WO2010052752A1 (ja) 2010-05-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4033133B2 (ja) 質量分析装置
JP4182843B2 (ja) 飛行時間型質量分析装置
JP2003123685A (ja) 質量分析装置およびこれを用いる計測システム
JP4182853B2 (ja) 質量分析方法及び質量分析装置
JP2011119279A (ja) 質量分析装置およびこれを用いる計測システム
JP2006278145A (ja) 飛行時間型質量分析装置
JP5024387B2 (ja) 質量分析方法及び質量分析システム
WO2010038260A1 (ja) 多重周回飛行時間型質量分析装置
JP2016536761A (ja) 標的化した質量分析
JP6627979B2 (ja) 質量分析装置
JP4506481B2 (ja) 飛行時間型質量分析装置
JP5136650B2 (ja) 質量分析装置
JP5126368B2 (ja) 質量分析方法
US8093555B2 (en) Mass spectrometer
JP2008108739A (ja) 質量分析装置およびこれを用いる計測システム
JP6022383B2 (ja) 質量分析システム、及び方法
JP6160472B2 (ja) 飛行時間型質量分析装置
JP5327228B2 (ja) 多重周回飛行時間型質量分析装置
JP2005322429A (ja) 質量分析装置
JP5972662B2 (ja) タンデム飛行時間型質量分析計
JP4273917B2 (ja) 質量分析装置
JPH08287866A (ja) 質量分析方法およびその装置
JP2005116246A (ja) 質量分析装置
Nagao et al. Development of a miniaturized multi-turn time-of-flight mass spectrometer with a pulsed fast atom bombardment ion source
JP7225743B2 (ja) スペクトル演算処理装置、スペクトル演算処理方法、スペクトル演算処理プログラム、イオントラップ質量分析システムおよびイオントラップ質量分析方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130115

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130218

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130319

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130520

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130625

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130708

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5327228

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees