JP5126368B2 - 質量分析方法 - Google Patents

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Description

本発明は質量分析方法に関し、更に詳しくは、閉じた軌道に沿ってイオンを繰り返し飛行させる多重周回軌道を有する質量分析装置を利用してMS/MS分析を行う質量分析方法に関する。
質量分析装置の1つとして、イオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)が従来知られている。IT−TOFMSでは、イオン源で生成されたイオンをイオントラップに一旦蓄積し、特定の質量(厳密には質量電荷比m/z)を有するイオンのみをイオントラップ内に残すようにイオン選別を実行した後、イオントラップ内に衝突誘起解離ガスを導入して保持されているイオンをプリカーサイオンとして開裂させ、その開裂により生じた各種プロダクトイオンをイオントラップから一斉に出射させてTOFMSに導入し質量分析を行うことができる。即ち、MS/MS分析を実行することにより、試料由来のプリカーサイオンが開裂して生じた各種のプロダクトイオンの質量スペクトルを取得することができる。
イオントラップとしては3次元四重極型イオントラップ、リニア型イオントラップなどが知られているが、一般に、こうしたイオントラップにおけるイオンの質量選択性(質量分解能)は必ずしも高くない。そのため、目的とするプリカーサイオンに対しごく近い質量を有するイオンが存在する場合、これを十分に排除した状態で目的とするプリカーサイオンの開裂を行うことは困難であった。
近年、タンパク質などの高分子を高い確度で同定することの重要性が増しているのに対し、上記のようなイオントラップとTOFMSとの組合せによるMS/MS分析では目的成分についての高精度な構造情報を得ることが難しい。そこで、最近では、特にプリカーサイオンの質量選択性を上げるために、直線型TOF、反射型TOF、螺旋軌道型TOFなど様々なTOFを2段に組み合わせた、MALDI−TOF/TOF型質量分析装置が知られている(特許文献1など参照)。しかしながら、こうした従来のTOF/TOF型質量分析装置では、イオン源からの1回のイオン出射に対して、その中の1種類のイオンしかMS/MS分析を行うことができない。そのため、試料に含まれる複数の成分の構造情報を取得したい場合には、複数回のイオン化とMS/MS分析とを繰り返し行う必要があり、分析のスループットを上げるのが困難である。
特開2007−333528号公報 特許第4033133号公報
ところで、本願出願人は特許文献2に記載の、多重周回軌道を利用した新規の質量分析装置を提案している。この質量分析装置では、上記イオントラップの代わりに多重周回軌道を有するMT(Multi-turn)TOFを用い、イオン源から発した各種イオンを多重周回軌道に沿って繰り返し飛行させることで各種イオンを質量に応じて分離し、その飛行途中で目的イオン以外のイオンを周回軌道から離脱させて排除する。そうして周回軌道上に残った目的イオンを最終的に周回軌道から離脱させた後に開裂させ、その開裂によって生成されたプロダクトイオンを質量分析することでMS/MS分析が可能である。
この質量分析装置では、周回軌道上を飛行しているイオンの中で不要な任意のイオンを該周回軌道から排除することができ、最終的に1種類だけでなく複数種のイオンを周回軌道上に残すことができる。1種類のイオンのみを周回軌道上に残した後に該イオンを周回軌道から離脱させて該イオンの開裂及びプロダクトイオンの質量分析を行う場合には、イオンを周回軌道から離脱させるのは容易である。何故なら、1種類のイオンしか周回軌道に残っていなければ、質量の相違に起因する複数種のイオンの混在のおそれはなく、異なる種類のイオンが同時に周回軌道から離脱することはないからである。これに対し、複数種類のイオンを周回軌道に残してそれらイオンをそれぞれMS/MS分析に供したい場合には、周回軌道上で複数種類のイオンが混在してしまうおそれがあるため、開裂及び質量分析に供するために周回軌道からイオンを離脱させる際に上記のような混在を避ける工夫が必要となる。
本発明はかかる課題に鑑みて成されたものであり、その主な目的は、高い質量分解能でもって複数種の目的イオンを選別して保持した後に、それら目的イオンをそれぞれ開裂させることで生じたプロダクトイオンを質量分析することにより、効率良く複数の成分のMS/MS分析を行うことができる質量分析方法を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、イオン源と、該イオン源から出発した各種イオンを1乃至複数回繰り返し飛行させるための周回軌道と、該周回軌道に沿って飛行しているイオンに対し特定の時間範囲内に通過しようとするイオンのみにその軌道に沿った通過を許可することでイオンを選別するイオン選別手段と、前記周回軌道から離脱されたイオンを開裂させる開裂手段と、その開裂により生成されたプロダクトイオンを質量分析する質量分析手段と、を具備する多重周回飛行時間型質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
a)観測対象のイオンの質量を複数設定する設定ステップと、
b)前記設定ステップにより設定された複数の質量に応じて前記特定の時間範囲をそれぞれ求め、その時間範囲内に通過しようとするイオンのみに通過を許可するように前記イオン選別手段を動作させることにより、設定された複数の質量を持つイオンを周回軌道上で選別するイオン選別ステップと、
c)設定された複数の質量のイオンが前記周回軌道から離脱する際に異なる種類のイオンが混在せず、且つ離脱後の開裂・質量分析の過程でプロダクトイオンの混在が起こらない時間間隔を空けた離脱タイミングを求める離脱タイミング決定ステップと、
d)決定された前記離脱タイミングに従って、前記周回軌道上に残った前記複数の質量を持つイオンをそれぞれ周回軌道から順次離脱させ、離脱したイオンを前記開裂手段により開裂させて生成されたプロダクトイオンを前記質量分析手段により分析する分析ステップと、
を有することを特徴としている。
ここで「周回軌道」とは、例えば全く同一な円状、楕円状、8字状等の閉じた軌道のみならず、往復運動を行うための直線状や曲線状の軌道などのほか、ほぼ同一であるが徐々に軌道がずれていく、例えば螺旋運動を行うための軌道なども含むものとする。
またイオン源は、試料中の各種成分をイオン化するイオン生成手段であってもよいが、別の箇所で生成されたイオンを一時的に保持し、加速エネルギーを付与してイオンを一斉に出射させる手段であってもよい。
イオン選別手段はイオン源から到来するイオンを上記周回軌道に乗せたり、逆に周回軌道に沿って飛行しているイオンを該軌道から離脱させて開裂手段に向けて飛行させるための電場を形成する電極等と兼ねることができるが、これとは別に独立に設けてもよい。また、イオン選別手段はイオンを周回軌道に沿って飛行させるための電場を形成する電極等と兼ねることもできる。即ち、周回軌道上を周回しているイオンに対して影響を及ぼす電場を形成できさえすればよい。
開裂手段は、イオンの開裂を促進させるものであれば特にその方法は問わないが、例えば、イオンを衝突誘起解離ガスと衝突させるもの、イオンにレーザ光などの励起線を照射するもの、などが考えられる。
また質量分析手段は、質量分離器とイオン検出器とを含み、質量分離器における質量分離の方法は特に問わない。
本発明に係る質量分析方法に用いられる多重周回飛行時間型質量分析装置では、周回軌道に沿った周回数を増やすほどイオンの飛行距離は長くなる。したがって、質量差が僅かであるイオン同士であっても周回数を増やすことにより、周回軌道上での空間的な間隔を十分に開かせることができる。この周回軌道上の適宜の位置において、イオン選別手段が、特定の時間範囲内に通過しようとするイオンの通過を許可し、その時間範囲外に通過しようとするイオンを発散させることにより、目的とするイオンのみを高い質量分解能で選別して周回軌道上に残すことができる。
そこで本発明に係る質量分析方法では、観測対象のイオンの質量が複数設定されると、それら質量に応じた上記特定の時間範囲がそれぞれ計算される。特定の質量のイオンを周回軌道上で選別するために適切な時間範囲は、周回軌道の周回長、イオン源からの出射時に与えられる加速エネルギー、イオン選別手段の位置などの値から求めることができる。また、予備測定などにより、イオン源から発するイオンの種類が或る程度既知であれば、その情報を利用して上記時間範囲をより適切に決めることができる。こうして求められた時間範囲に基づくイオン選別が実行された後には、周回軌道上には選別されたイオンのみが残る。即ち、質量に応じて選別されたイオンが蓄積された状態となる。
一方、離脱タイミング決定ステップでは、設定された複数の質量のイオンが周回軌道から離脱する際に、異なる種類のイオンが混在せず、且つ離脱後の開裂・質量分析の過程でプロダクトイオンの混在が起こらない時間間隔を空けた離脱タイミングが求められる。後者の条件は特に、上記質量分析手段が飛行時間型質量分析器を用いたものである場合に重要である。このように適切な離脱タイミングを観測対象のイオン毎、つまり質量毎に求め、これに従って周回軌道から離脱させて開裂手段に導くことにより、それら複数種のイオンに対するMS/MS分析を順番に行うことができる。
本発明に係る質量分析方法において、観測対象である複数のイオンの質量を設定する方法として幾つかの態様が考えられる。一つの態様は、目的試料に含まれるイオンの種類(質量)を予備測定によって大まかに把握し、予め定めた基準に従って自動的に観測対象のイオンを抽出する方法である。
即ち、本発明の一態様として、目的試料に対する1回目の測定において前記イオン源から出発した各種イオンを前記周回軌道に沿って周回させずに又は少なくとも周回軌道上でイオンの追い越しが生じない周回数で周回軌道に沿って周回させたあとに開裂させることなく前記質量分析手段により質量分析して飛行時間スペクトル又は質量スペクトルを作成し、
前記設定ステップでは、前記飛行時間スペクトル又は質量スペクトルに現れているピークに対し所定の条件に適合するものを選択することにより観測対象の質量を複数設定し、
前記目的試料に対する2回目以降の測定において前記イオン選別ステップ、前記離脱タイミング決定ステップ及び前記分析ステップの処理を実行するようにすることができる。
また、既知の特定の分子の構造を調べたいような場合に、前記設定ステップでは、イオンの価数が相違する実質的に同一の分子由来のイオンの複数の質量を設定するようにしてもよい。
また、観測対象のイオンが決まっている、又は試料に含まれる分子が推測可能である場合、前記設定ステップでは、例えば分析者等により予め作成されたイオンのリストに基づいて複数の質量を設定するようにしてもよい。
なお、設定される複数のイオンの質量の組合せなどによっては、各イオンの適切な離脱タイミングを、決められた時間条件の範囲内で設定することができない場合がある。そこで、本発明に係る質量分析方法では、所定の時間条件の制約の下で、前記設定ステップで設定された全ての質量を有するイオンに対する質量分析を1回の測定で行えない場合に、設定された全ての質量を複数に区分して複数の測定を実行することが好ましい。設定された全ての質量を複数に区分する際には、イオン選別手段を利用することができる。
本発明に係る質量分析方法によれば、周回軌道を多数回繰り返し飛行させることで達成される高い質量分解能でのイオン選別を適切に利用して、観測対象のイオンを複数選択し、各イオンに対するMS/MS分析を実行することができる。したがって、複数の目的イオンに対する高い質量分解能のMS/MSスペクトルを効率よく得ることができるので、目的試料に含まれる各種成分の分子や原子の構造解析を効率良く且つ正確に行うことができる。
本発明に係る質量分析方法を実施するための質量分析装置の一実施例の概略構成図。 本発明に係る質量分析方法の一実施例を示すフローチャート。 本発明に係る質量分析方法の一実施例を説明するための概略図。
符号の説明
1…イオン源
2…偏向電極
3…イオン選別用飛行空間
E1〜E6…扇形電場
31〜36…トロイダル扇形電極
4…開裂領域
5…レーザ光源
6…質量分析用飛行空間
7…反射器
8…イオン検出器
10…データ処理部
11…制御部
12…入力部
13…表示部
14…周回飛行用電圧発生部
15…偏向電圧発生部
16…反射器電圧発生部
P…周回軌道
まず本発明に係る質量分析方法に用いられる質量分析装置の一実施例について、図1を参照して説明する。図1は本実施例の質量分析装置の全体構成図である。
図1において、図示しない真空室の内部には、イオン源1、周回軌道Pが形成されるイオン選別用飛行空間3、反射器7が備えられた質量分析用飛行空間6、及びイオン検出器8などが配設されている。
イオン源1は目的試料に含まれる成分分子をイオン化するものであって、イオン化法は特に限定されない。例えば、この質量分析装置がガスクロマトグラフ(GC)用の検出器として利用される場合、電子イオン化法(EI)や化学イオン化法(CI)などが用いられる。また、この質量分析装置が液体クロマトグラフ(LC)用の検出器として利用される場合、大気圧化学イオン化法(APCI)やエレクトロスプレイイオン化法(ESI)などが用いられる。さらにまた、分析対象分子がタンパク質などの高分子化合物である場合には、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:マトリクス支援レーザ脱離イオン化法)などのレーザイオン化法が有用である。
イオン選別用飛行空間3内には、イオンを略円形状の周回軌道Pに沿って飛行させるために複数(この例では6個)のトロイダル扇形電極31〜36が配置されている。この同一形状の6個のトロイダル扇形電極31〜36はそれぞれ、同心二重円筒体を回転角度60°で切断した形状となっており、それらトロイダル扇形電極31〜36を軸Oを中心にして等回転角度離間して配置している。トロイダル扇形電極31〜36に所定の電圧が印加されることによってその内部にはそれぞれ扇形電場E1〜E6が形成され、この扇形電場E1〜E6内で略六角筒形状の飛行空間が形成され、その飛行空間内を通過するイオンの中心軌道が図1中にPで示すようになる。
周回軌道Pに沿って隣接するトロイダル扇形電極31と36との間には、イオン源1で生成されたイオンを周回軌道Pに乗せるため、周回軌道Pに沿って飛行しているイオンを周回軌道Pから離脱させて質量分析用飛行空間6へと送るため、及び、周回軌道Pに沿って飛行しているイオンを周回軌道Pから離脱させて廃棄するために、偏向電極2が設けられている。即ち、この質量分析装置ではイオン選別手段は偏向電極2が兼ねている。
周回軌道Pを離れたイオンが質量分析用飛行空間6に入る手前には開裂領域(独立した開裂室でもよい)4が設けられ、この開裂領域4にはイオンの開裂を促進させるためにレーザ光源5からレーザ光が照射されている。なお、レーザ照射の代わりに、衝突誘起解離(CID)ガスとの衝突によりイオンの開裂を促進するコリジョンセルなどを設けてもよい。
質量分析用飛行空間6は、イオンの飛行方向に沿って多数の電極板が並べられた反射器7を備える、いわゆるリフレクトロン型TOFである。質量分析用飛行空間6に入射したイオン(開裂領域4において開裂により生成されたプロダクトイオン)は、反射器7により形成される電場によって、それぞれが有する運動エネルギーに応じた位置で折り返されてイオン検出器8に到達する。イオン検出器8はこうして質量に応じて時間的にずれて到達したイオンを検出し、その入射したイオンの数(量)に応じた電流信号を発生する。イオン検出器8による検出信号はデータ処理部10に入力され、飛行時間スペクトルや質量スペクトル(又はMS/MSスペクトル)が作成され、さらに後述するような各種処理が実行される。
トロイダル扇形電極31〜36、偏向電極2、及び反射器7にはそれぞれ周回飛行用電圧発生部14、偏向電圧発生部15及び反射器電圧発生部16から適宜の電圧が印加され、これら電圧発生部14、15、16はそれぞれ制御部11により制御される。制御部11には、ユーザが操作する入力部12と表示部13とが接続されている。
なお、図1の構成では周回軌道Pを略円形状としているが、周回軌道Pの形状はこれに限るものではなく、長円形状、8の字状の周回軌道など、任意の形状とすることができる。また、完全に同一軌道上を周回するものでなくとも、螺旋状の旋回軌道や往復軌道でもよい。
次に、上記質量分析装置を用いた本発明に係る質量分析方法の一例を、図2、図3により説明する。図2は本発明に係る質量分析方法の一実施例を示すフローチャート、図3はこの質量分析方法を説明するための概略図である。ここで説明する質量分析方法は、目的試料に含まれる複数の成分分子の構造解析のために該成分分子由来のイオンのMS/MS分析を実行するものである。
まず最初に制御部11は、イオンを周回軌道Pに乗せず且つ開裂領域4での開裂操作も行わずに、イオン源1で生成された各種イオンを直接、質量分析用飛行空間6に導入して質量に応じて分離した後に検出する非周回測定モードを実行するように各部を制御する(ステップS1)。このとき、イオン源1からほぼ同時に出発した各種イオンは質量(厳密には質量電荷比m/z)が小さいほど大きな速度を有するから、先行してイオン検出器8に到達して検出される。
なお、ステップS1の分析は、イオン源1で生成される各種イオンの質量範囲が既知である場合で、周回軌道Pに沿って1乃至複数回イオンを周回させても追い越しが起こらないことが確実である場合には、その周回数だけイオンを周回させてから質量分析用飛行空間6に導入するようにしてもよい。
データ処理部10は上述したようにイオン検出器8で得られる検出信号に基づいて飛行時間スペクトルを作成し、さらに飛行時間を質量に換算することで質量スペクトルを作成する(ステップS2)。いまここでは、図3(a)に示すような質量スペクトルが得られたものとする。後述するように周回軌道Pに沿った多数回周回された場合に比べれば飛行距離は短いから、質量分解能は相対的に低く、近い質量を持つ異なるイオンは十分には分離されない。
次にデータ処理部1は、上記の質量スペクトルに対し、予め設定されたピーク抽出条件に照らしてピークを抽出し、抽出したピークに対応する質量範囲を決定する(ステップS3)。ピーク抽出条件は、分析に先立って、ユーザが入力部12において指定しておくものとする。具体的には、例えば次のような条件設定が可能であり、分析目的や既知の情報などに基づいて着目する成分の分析が可能であるようにユーザが適宜に設定すればよい。
(1)各ピークの中心(又は重心位置)の質量又はセントロイド処理後の質量のうち指定されたもの又は指定された質量範囲に入るピークを抽出。
(2)ピーク強度が指定された閾値を超えたピークを抽出。
(3)ピーク強度の大きい順に指定された個数だけピークを抽出。
(4)質量が小さい順又は大きい順に指定された個数だけピークを抽出。
(5)ピーク幅が指定された幅より大きいピークを抽出。
ここでは一例として上記(2)の抽出条件が設定されている場合を考える。図3(a)中に示したようにピーク強度の閾値が設定されているとすると、[N](但しN=1、2、3)で示した3本のピークが抽出される。このようにピークが抽出されたならば、各ピークに対応する質量範囲(低質量側境界と高質量側境界)を決定する。ここでは、図3(b)に示すように[N]に対応した3つの異なる質量範囲、つまり観測対象のイオンの質量が決まる。
続いてデータ処理部10は、上記質量範囲に含まれるイオンのみを周回軌道Pに残し、この範囲外の質量を持つイオンが周回軌道Pから排除されるようにイオン選別条件を決める(ステップS4)。不要なイオンの排除は、イオン源1から発したイオンを周回軌道Pに乗せるように偏向させずにそのまま直進させるべく偏向電極2へ印加する電圧を切り替えるタイミングを制御する、また一旦、周回軌道Pに乗ったイオンの中で不要なイオンが偏向電極2を通過するタイミングでそのイオンを周回軌道P外へ排出するように偏向電極2へ印加する電圧を切り替えるタイミングを制御する、のいずれかによって行うことができる。
一般的に、図3(b)に示すように選別すべきイオンの質量範囲が或る程度広く且つ隣接する質量範囲が離れている場合には、イオン源1を発したイオンが偏向電極2に到達するまでに不要なイオンと観測したいイオンとを分離できるから、イオンを周回軌道Pに乗せる段階で不要なイオンを排除することができる。これに対し、後述するように例えば観測したいイオンの質量をユーザがリストで指定する場合には、イオンを周回軌道Pに乗せる段階では不要なイオンと観測したいイオンとを十分に分離できていない場合があるから、イオンを一旦、周回軌道Pに乗せ、周回軌道P上を或る程度飛行させて質量に応じてイオンを十分に分離してから不要イオンの排除を行うとよい。周回軌道Pに沿った周回数が増えるほど質量分解能が上がるから、最終的には目的イオンとの質量が0.01だけ異なるような不要なイオンをも篩い落とし、目的イオンのみを周回軌道P上に残すことが可能である。即ち、質量分離の観点から周回軌道Pに乗せる段階で排除可能なイオンは排除すればよいし、その段階で排除不可能なイオンは周回軌道Pに乗せた後に適宜の時点で排除すればよい。したがって、選別する質量範囲や質量に応じて、イオン選別条件、具体的には偏向電極2へ印加する電圧のシーケンスを決めることができる。
次にデータ処理部10は、上記質量範囲毎(又は特定の質量毎)にMS/MS分析のためにイオンを周回軌道Pから離脱させる条件(離脱タイミング)を決定する(ステップS5)。イオンが周回軌道Pに乗って飛行し始めると、質量の小さなイオンと質量の大きなイオンとの位置の差は次第に開くから、或る程度以上の周回数を超えると質量の小さなイオンが質量の大きなイオンに追いつき、追い越す場合がある。そのような状況の下では、偏向電極2を通過しようとするイオンが或る一種ではなく、質量が相対的に小さなイオンと質量が相対的に大きく周回遅れを生じたイオンとが混在しているおそれがある。そうしたイオンが混在した状態でイオンを周回軌道Pから離脱させると、適切なMS/MS分析ができない。そこで、上述のように決められた観測対象の質量(質量範囲)に応じて、周回軌道Pに沿って飛行しているイオンの混在が生じない離脱のタイミングを、各質量(質量範囲)毎に決める。
但し、或る一種のイオンを周回軌道Pから離脱させてMS/MS分析に供してから時間を置かずに別のイオンを周回軌道Pから離脱させてMS/MS分析に供しようとすると、後者のイオンをプリカーサイオンとして開裂により生じた質量が小さなイオンが、前者のイオンをプリカーサイオンとして開裂により生じた質量が相対的に大きなイオンに、質量分析用飛行空間6内で追いつくおそれがある。つまり、別のプリカーサイオン由来のプロダクトイオンが混在するおそれがある。そこで、これを避けるために、周回軌道Pからの間欠的なイオンの出射の際には、適度な時間間隔を置く必要があり、これも離脱タイミングの決定に考慮される。
上記のようにイオン選別条件とイオン離脱条件とが決まったならば、制御部11は上記非周回測定モードの実行時と同一の目的試料に対し周回測定モードによる分析を実行するように各部を制御する(ステップS6)。即ち、イオン源1において目的試料をイオン化して飛行を開始させ、偏向電極2を介してイオンを周回軌道Pに乗せて周回飛行を開始させる。この際にイオン選別条件に基づいて不要なイオンを周回軌道Pから排除し、最終的に観測対象の質量範囲(又は質量)のイオンのみを周回軌道P上に残す(ステップS7)。
それから、残されたイオンを周回軌道Pに沿って飛行させつつ、イオン離脱条件に基づく離脱タイミングでもって偏向電極2によりイオンを周回軌道Pから離脱させて開裂領域4に向かわせる。そして、開裂領域4で開裂により生成されたプロダクトイオンを質量分析用飛行空間6に導入して質量に応じて分離し、イオン検出器8により検出する(ステップS8)。全ての観測対象イオンについてのMS/M分析が終了するまでは、ステップS9からS8に戻り、順次異なる質量のイオンを周回軌道Pから離脱させてMS/MS分析を実行する。データ処理部10は得られた検出信号に基づいて、周回軌道Pから出射されたイオン毎に、つまり観測対象イオン毎に、MS/MSスペクトルを作成する(ステップS10)。
以上のようにして、この質量分析方法によれば、周回軌道Pをイオン選別及びイオン蓄積のために利用し、高い質量分解能でもって異なる質量を持つ複数種のイオンを選別及び蓄積しておき、その複数種のイオンを一種ずつMS/MS分析することができる。
上記実施例では、非周回測定モードで得られた質量スペクトルに基づいて、MS/MS分析を行う観測対象のイオンを自動的に抽出していたが、観測対象イオンの設定方法はこれに限らない。例えば、目的試料に含まれる成分分子が既知であったり高い確率で推定できる場合には、ユーザ(オペレータ)が観測対象イオンを特定し、観測対象イオンの質量のリストを入力部12から入力し、このリストに従ってステップS4以降の処理が実行されるようにすればよい。
また、原理的には周回軌道Pに沿ってイオンを周回させる際の周回数に上限はないものの、現実にはイオン透過率は100%にはならず、周回を続けるイオンは徐々にではあるが減少していくために感度が落ちる。そのため、一回の測定(イオン源1からの一回のイオンパケットの出射)毎に測定の上限時間を設けることが望ましい。その結果、例えば設定された全ての観測対象のイオンに対するイオン離脱条件を、測定の上限時間内に決められない場合が起こり得る。そこで、このような場合には、測定の上限時間の制約の下で、与えられた観測対象イオンの質量範囲(又は質量)を複数に分け、複数回の測定で全ての観測対象のイオンに対するMS/MS分析を実施できるようにすればよい。
また、上記実施例は本発明の単に一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。

Claims (5)

  1. イオン源と、該イオン源から出発した各種イオンを1乃至複数回繰り返し飛行させるための周回軌道と、該周回軌道に沿って飛行しているイオンに対し特定の時間範囲内に通過しようとするイオンのみにその軌道に沿った通過を許可することでイオンを選別するイオン選別手段と、前記周回軌道から離脱されたイオンを開裂させる開裂手段と、その開裂により生成されたプロダクトイオンを質量分析する質量分析手段と、を具備する多重周回飛行時間型質量分析装置を用いた質量分析方法であって、
    a)観測対象のイオンの質量を複数設定する設定ステップと、
    b)前記設定ステップにより設定された複数の質量に応じて前記特定の時間範囲をそれぞれ求め、その時間範囲内に通過しようとするイオンのみに通過を許可するように前記イオン選別手段を動作させることにより、設定された複数の質量を持つイオンを周回軌道上で選別するイオン選別ステップと、
    c)設定された複数の質量のイオンが前記周回軌道から離脱する際に異なる種類のイオンが混在せず、且つ離脱後の開裂・質量分析の過程でプロダクトイオンの混在が起こらない時間間隔を空けた離脱タイミングを求める離脱タイミング決定ステップと、
    d)決定された前記離脱タイミングに従って、前記周回軌道上に残った前記複数の質量を持つイオンをそれぞれ周回軌道から順次離脱させ、離脱したイオンを前記開裂手段により開裂させて生成されたプロダクトイオンを前記質量分析手段により分析する分析ステップと、
    を有することを特徴とする質量分析方法。
  2. 請求項1に記載の質量分析方法であって、
    目的試料に対する1回目の測定において前記イオン源から出発した各種イオンを前記周回軌道に沿って周回させずに又は少なくとも周回軌道上でイオンの追い越しが生じない周回数で周回軌道に沿って周回させたあとに開裂させることなく前記質量分析手段により質量分析して飛行時間スペクトル又は質量スペクトルを作成し、
    前記設定ステップでは、前記飛行時間スペクトル又は質量スペクトルに現れているピークに対し所定の条件に適合するものを選択することにより観測対象の質量を複数設定し、
    前記目的試料に対する2回目以降の測定において前記イオン選別ステップ、前記離脱タイミング決定ステップ及び前記分析ステップの処理を実行することを特徴とする質量分析方法。
  3. 請求項1に記載の質量分析方法であって、
    前記設定ステップでは、イオンの価数が相違する実質的に同一の分子由来のイオンの複数の質量を設定することを特徴とする質量分析方法。
  4. 請求項1に記載の質量分析方法であって、
    前記設定ステップでは、予め作成されたイオンのリストに基づいて複数の質量を設定することを特徴とする質量分析方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の質量分析方法であって、
    所定の時間条件の制約の下で、前記設定ステップで設定された全ての質量を有するイオンに対する質量分析を1回の測定で行えない場合に、設定された全ての質量を複数に区分して複数の測定を実行することを特徴とする質量分析方法。
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