JPWO2010050586A1 - 組み換え蛋白質の発現を増強する方法 - Google Patents

組み換え蛋白質の発現を増強する方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2010050586A1
JPWO2010050586A1 JP2010535850A JP2010535850A JPWO2010050586A1 JP WO2010050586 A1 JPWO2010050586 A1 JP WO2010050586A1 JP 2010535850 A JP2010535850 A JP 2010535850A JP 2010535850 A JP2010535850 A JP 2010535850A JP WO2010050586 A1 JPWO2010050586 A1 JP WO2010050586A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ctb
vector
protein
gene
virus
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2010535850A
Other languages
English (en)
Inventor
井上 誠
誠 井上
晃一 佐伯
晃一 佐伯
軍 游
軍 游
寿晃 田畑
寿晃 田畑
岩崎 仁
仁 岩崎
亜峰 朱
亜峰 朱
長谷川 護
護 長谷川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dnavec Corp
Original Assignee
Dnavec Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Dnavec Corp filed Critical Dnavec Corp
Publication of JPWO2010050586A1 publication Critical patent/JPWO2010050586A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/67General methods for enhancing the expression
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • A61P25/28Drugs for disorders of the nervous system for treating neurodegenerative disorders of the central nervous system, e.g. nootropic agents, cognition enhancers, drugs for treating Alzheimer's disease or other forms of dementia
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • C12N15/86Viral vectors
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • A61K2039/51Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising whole cells, viruses or DNA/RNA
    • A61K2039/53DNA (RNA) vaccination
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide
    • C07K2319/55Fusion polypeptide containing a fusion with a toxin, e.g. diphteria toxin
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2760/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssRNA viruses negative-sense
    • C12N2760/00011Details
    • C12N2760/18011Paramyxoviridae
    • C12N2760/18811Sendai virus
    • C12N2760/18841Use of virus, viral particle or viral elements as a vector
    • C12N2760/18843Use of virus, viral particle or viral elements as a vector viral genome or elements thereof as genetic vector

Abstract

【課題】本発明は、RNAウイルスベクターにおける蛋白質の発現を増強する方法を提供し、発現が増強されたRNAウイルスベクターを提供する。【解決手段】AB5B蛋白質を蛋白質と融合させてRNAウイルスベクターから発現させることで、該蛋白質の発現量を有意に上昇させることに成功した。本発明のRNAウイルスベクターを遺伝子導入用ベクターとして利用することで、効果的な遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製等を実施することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、RNAウイルスベクターにおける組み換え蛋白質の発現を増強する方法、該方法を利用して医薬品等に有用な組み換え蛋白質を調製する方法、およびそれら組み換え蛋白質を発現するRNAウイルスベクター等に関する。
現在、数多くの組み換え蛋白質およびペプチドが、医薬組成物として利用されているが、今後もその種類・量は増加し、生物医薬品は医薬品としてのさらに大きな位置を占めるようになると考えられている。医薬組成物の候補としての、生理活性蛋白質あるいはペプチドに関して、数多くの物が提唱されている。これらの例においても、組み換え蛋白質およびペプチドの発現量を増強し、調製が容易になれば、その利用・適用範囲を大きく広げることができる。
遺伝子治療等に応用されている遺伝子導入用RNAウイルスベクターにおいても同様である。遺伝子導入用RNAウイルスベクターを利用した、遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製等への応用の場合に、搭載遺伝子の発現量はベクターの機能そのものに直結するため、その発現量を増強することが可能になれば、ベクターの有効性を向上し、その利用・適用範囲を大きく広げることができる。
バクテリアが産生するAB5毒素(AB5トキシン)は、毒素産生型細菌が産生して菌体外に分泌するタンパク質性の外毒素であるが、毒素としての活性を持つAサブユニット(Activeサブユニット)1個と、細胞との結合活性を持つBサブユニット(Bindingサブユニット)5個から構成されている。コレラ毒素(コレラトキシン)もそのようなAB5トキシンの1つであり、毒性の無いコレラトキシンBサブユニット(CTB)は、分子アジュバントとして、インフルエンザウイルスワクチン(Isaka M. et al., Microbiol Immunol. 2008;52(2):55-63.)、百日咳ワクチン(Isaka M. et al., Vaccine. 2003;21(11-12):1165-73.)、呼吸器合胞体ウイルス(RS ウイルス)ワクチン(Singh S.R. et al., Viral Immunol. 2007;20(2):261-75., Oien N.L. et al., Vaccine. 1994 Jun;12(8):731-5.)、癌ワクチン(Wakabayashi A. et al., J Immunol. 2008;180(6):4000-10.)、アルツハイマー病ワクチン(Maier M. et al., Vaccine. 2005;23(44):5149-59)等、感染症および慢性疾患への応用が報告されている。但し、RNAウイルスベクターを用いてリコンビナント蛋白質を発現させた例はなく、またリコンビナント蛋白質の発現が亢進したという報告例も無い。
Isaka M. et al., Microbiol Immunol. 2008;52(2):55-63 Isaka M. et al., Vaccine. 2003;21(11-12):1165-73 Singh S.R. et al., Viral Immunol. 2007;20(2):261-75 Oien N.L. et al., Vaccine. 1994 Jun;12(8):731-5 Wakabayashi A. et al., J Immunol. 2008;180(6):4000-10 Maier M. et al., Vaccine. 2005;23(44):5149-59
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、医薬組成物として有用な、リコンビナント蛋白質およびペプチドのRNAウイルスベクターにおける発現を増強し、リコンビナント蛋白質・ペプチドの調製を容易にするための方法を提供すること、およびRNAウイルスに由来する遺伝子導入ベクターにこの技術を導入することで、遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製等への応用において、治療用遺伝子の発現量の高い、より有効な遺伝子導入ベクターを提供することである。
本発明者らは、RNAウイルスから蛋白質やペプチドを発現させる場合、発現させる蛋白質やペプチドの性質に因っては、発現量が少なく、調製が難しい例が少なからず存在することを見出した。特に短いペプチドや、溶解度の低い蛋白質などをRNAウイルスベクターから発現させた場合、発現効率は極めて低いことを見出した。
ところでABトキシンBサブユニット(AB5B)は十数KDの蛋白質であり、その三次元構造解析により5量体を構成することが明らかとなっている(McCann J.A. et al., Biochemistry. 1997;36(30):9169-78., Pickens J.C. et al., Chem Biol. 2004;11(9):1205-1215)。AB5Bに1つであるコレラトキシンB(CTB)はこれまでアジュバントとして用いられたことはあったが、CTBを用いることによる蛋白質の発現量の変化については知られていなかった。本発明者らは、リコンビナント蛋白質をCTBとの融合蛋白質として発現させる過程で、センダイウイルスベクターを用いてこの融合蛋白質を発現させた場合に、リコンビナント蛋白質をそのまま発現させるよりも有意に発現量が上昇することを見出した。
この現象をより詳しく解析するため、種々のリコンビナント蛋白質を例として選択し、AB5Bと融合することによる発現量の変化(増減)を調べた。さらに、AB5B以外のキャリアー蛋白(融合蛋白)との差異を調べるために、Pseudomonas exotoxin Aのreceptor-binding domain (Ia) (PEDI)およびインターロイキン4(IL-4)を選択し、AB5B融合との比較を行なった。
結果は明白であり、corticotropin releasing factor(CRF:コルチコトロピン放出因子)、endothelin-1(ET-1:エンドセリン1)、Neuropeptide Y(NPY:神経ペプチドY)、Glucagon-Like Peptide-2(GLP-2:グルカゴン様ペプチド2)、amyloidβ-42(Aβ42:アミロイドβ)などの検討した120アミノ酸以下の全てのペプチドにおいて、AB5B と融合することによる発現量の顕著な増加が見られ(数十倍以上)、AB5Bとの融合が、RNAウイルスベクターの発現量を顕著に向上させることが明らかとなった。また、PEDI およびIL-4など、AB5B以外のキャリアー蛋白との比較を行なった場合、AB5Bで有意に高い発現増強効果が見られた。IL-4のような球形の蛋白質よりも有効に機能することは特筆すべきことである。
RNAウイルスベクターは、比較的鎖長の短い蛋白質の発現効率がとりわけ低く、これらの蛋白質を十分な量発現させることは難しかった。しかし本発明に基づいてAB5Bとの融合蛋白質としてこれらの蛋白質を発現させることにより、鎖長の短い蛋白質においても、顕著に発現量を上昇させることができる。
発現量の増強は、リコンビナント蛋白質そのものを調製することに有効である。これらリコンビナント蛋白・ペプチドの発現において、発現した融合蛋白をそのまま利用する用途も考えられるが、AB5Bを除去することが望ましい場合もあり、その場合には、目的のリコンビナント蛋白・ペプチドとの間に、エンテロキナーゼ認識配列(DDDDK↓)、Factor Xa認識配列(IEGR↓)、トロンビン認識配列(LVPR↓GS)、HRV 3Cプロテアーゼ認識配列(LEVLFQ↓GP)などのプロテアーゼの切断配列を導入することで、切断・遊離させることができる。また、コレラトキシン(CTB)はNiカラムへの弱い親和性を有しているので、Niカラムを利用したaffinity精製も可能である(M.T. Dertzbaugh and L.M. Cox, Protein Engineering, 11: 577-581, 1998; US Pat. No. 6008329)。
また、AB5Bの融合は、遺伝子導入RNAウイルスベクターを利用した、遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製など、in vivo, ex vivoおよびin vitroでのリコンビナント蛋白質の発現増強に有効に機能する。発現増強はベクターの機能そのものに直結し、ベクターの有効性を高めることが可能である。
すなわち本発明は、組み換え蛋白質をAB5B蛋白質との融合させることで、RNAウイルスベクターにおける組み換え蛋白質の発現を増強する方法、該方法を利用して医薬品等に有用な組み換え蛋白質を調製する方法、およびAB5B蛋白質との融合蛋白質をコードするRNAウイルスベクター等に関し、より具体的には
〔1〕組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターであって、該蛋白質が、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてコードされていることを特徴とするベクター、
〔2〕AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、〔1〕に記載のベクター、
〔3〕該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、〔1〕または〔2〕に記載のベクター、
〔4〕該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、〔3〕に記載のベクター、
〔5〕該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のベクター、
〔6〕該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のベクター、
〔7〕RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載のベクター、
〔8〕〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物、
〔9〕〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のベクターが導入された細胞、
〔10〕〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のベクターを発現させる工程を含む、組み換え蛋白質の製造方法、
〔11〕組み換え蛋白質の発現量が上昇したRNAウイルスベクターの製造方法であって、該蛋白質をAB5トキシンBサブユニットと融合させた融合蛋白質をコードするRNAウイルスベクターを製造する工程を含む方法、
〔12〕AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、〔11〕に記載の方法、
〔13〕該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、〔11〕または〔12〕に記載の方法、
〔14〕該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、〔13〕に記載の方法、
〔15〕該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、〔11〕から〔14〕のいずれかに記載の方法、
〔16〕該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、〔11〕から〔15〕のいずれかに記載の方法、
〔17〕RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、〔11〕から〔16〕のいずれかに記載の方法、
〔18〕RNAウイルスベクターからの組み換え蛋白質の発現量を上昇させる方法であって、該組み換え蛋白質をAB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてRNAウイルスベクターから発現させる工程を含む方法、
〔19〕AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、〔18〕に記載の方法、
〔20〕該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、〔18〕または〔19〕に記載の方法、
〔21〕該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、〔20〕に記載の方法、
〔22〕該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、〔18〕から〔21〕のいずれかに記載の方法、
〔23〕該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、〔18〕から〔22〕のいずれかに記載の方法、
〔24〕RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、〔18〕から〔23〕のいずれかに記載の方法、
〔25〕〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のベクターからなるウイルス様粒子、等に関する。
なお上記の各項において、同一の項を引用する各項に記載の発明の2つまたはそれ以上を任意に組み合わせた発明は、それらに引用される上位の項に記載の発明において、既に意図されている。また、本明細書に記載した任意の発明要素、技術的要素、およびそれらの任意の組み合わせは、本明細書において意図されている。また、それらの発明において、本明細書に記載の任意の要素またはその任意の組み合わせを除外した発明も、本明細書に意図されている。また本明細書は、明細書中に例えば好ましいとしてある特定の態様を記載した場合、それを開示するのみならず、その態様を含むより上位の本明細書に開示された発明から、その態様を除外した発明も開示するものである。
本発明により、RNAウイルスベクターからの組み換え蛋白質の発現量を上昇させることが可能となった。リコンビナント蛋白質の中で、短いペプチド性の蛋白質、溶解度の低い蛋白質など、RNAウイルスベクターにおいて、特に発現量が低下してしまうぺプチドについて本発明を適用することにより、RNAウイルスベクターからのこれらの蛋白質の発現量を効果的に増大させることが可能となる。また本発明のRNAウイルスベクターを遺伝子導入用ベクターとして利用することで、効果的な遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製等を実施することができる。
SeV cDNA(pSeV18+CTB-mCRF/ΔF, pSeV18+CTB-mET1/ΔF, pSeV18+CTB-mPYY/ΔF, pSeV18+CTB-mGLP2/ΔF, pSeV18+mCRF/ΔF, pSeV18+mET1/ΔF, pSeV18+mPYY/ΔF, pSeV18+mGLP2/ΔF)の構造を示す図である。pCIのNotI 部位に入っているCTB-mCRF, CTB-mET1, CTB-mPYY, CTB-mGLP2, mCRF, mET1, mPYY, mGLP2各遺伝子を切り出し、pSeV18+NotI/ΔFのNotI 部位に挿入した。 Aβ42 NotIフラグメント構造図。 Aβ42 NotIフラグメント構築図。 CTB-Aβ42 NotIフラグメント構造図。 CTB-mCRFとmCRFのBHK21細胞における細胞破砕液と培養上清中の発現量を示す図である。 CTB-mET1とmET1のBHK21細胞における細胞破砕液と培養上清中の発現量を示す図である。 CTB-mPYYとmPYYのBHK21細胞における細胞破砕液と培養上清中の発現量を示す図である。 CTB-mGLP-2とmGLP-2のBHK21細胞における細胞破砕液と培養上清中の発現量を示す図である。 Aβ42、IL-4-Aβ42、PEDI-Aβ42、CTB-Aβ42のBHK21細胞における細胞破砕液と培養上清中の発現量を示す図である。 CTB-Aβ15 NotIフラグメント構築図。 CTB-Aβ15x2,CTB-Aβ15x4,CTB-Aβ15x8 NotIフラグメント構築図。 CTB-Aβ42、CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを感染させたBHK細胞の細胞破砕液および培養上清中のWestern blotによるAβ抗原量を示す図である。 CTB-Aβ42、CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを感染させたBHK細胞の細胞破砕液および培養上清中のGM1に対する結合活性を示す図である。 CTB-Aβ42、CTB-Aβ15x8、GFP遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与したC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内、皮内、鼻腔内投与したC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを鼻腔内投与したC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ42遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与し、大腸菌より精製したCTB-Aβ42タンパクでブーストを行ったC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与し、同SeVベクターでブーストを行ったC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ42もしくはCTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与し、同SeVベクターでブーストを行ったC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。パネルBではパネルAのCTB-Aβ42遺伝子搭載SeVベクターの結果のみが示されている。 CTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを鼻腔内投与し、同SeVベクターでブーストを行ったC57BL/6NマウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ15x8、CTB-Aβ42、GFP遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与し、CTB-Aβ42タンパクでブーストを行ったTg2576マウスのAβ抗体価を示す図である。 CTB-Aβ15x8、CTB-Aβ42、GFP遺伝子を搭載したSeVベクターを筋肉内投与し、CTB-Aβ42タンパクでブーストを行ったTg2576マウスの脳内Aβ量を示す図である。 脳病理組織標本上の6E10免疫染色陽性部位の分布を示す例。対照のSeV18+GFP/ΔF群(A)では嗅球、海馬、大脳新皮質に6E10染色陽性のAβ沈着(茶色)が散在性に数多く認められるのに対し、SeV18+CTB-Aβ15x8/ΔF投与群の例(B)では明らかにAβ沈着が少ないことがわかる。 6E10免疫染色標本の画像解析グラフ。対照のSeV18+GFP/ΔF群(左欄)に比べてSeV18+CTB-Aβ15x8/ΔF投与群(右欄)では脳の各部位において明らかに面積率の減少傾向が認められ、とくに海馬においてその差が大きいことがわかる。
本発明は、組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターであって、該蛋白質がAB5トキシンBサブユニット(AB5B)蛋白質との融合蛋白質としてコードされていることを特徴とするベクター、該ベクターの製造方法、該ベクターを含む組成物、および該ベクターにより組み換え蛋白質の発現量を上昇させる方法等に関する。本発明者らは、AB5Bをコードする核酸を、RNAウイルスベクターと組み合わせて用いることにより、目的の蛋白質の発現を有意に上昇させることができることを見出した。すなわち目的とする蛋白質をAB5Bとの融合蛋白質として、RNAウイルスベクターから発現させることにより、該蛋白質の発現を顕著に上昇させることができる。
本発明においてRNAウイルスとは、RNAゲノムを有するウイルスであって、ライフサイクルにおいてDNAのフェーズを持たないウイルスを言う。本発明においてRNAウイルスは、逆転写酵素を持たない(すなわちレトロウイルスは含まれない)。すなわちウイルス増殖において、ウイルスゲノムはDNAを介さずに、RNA依存性RNAポリメラーゼにより複製される。RNAウイルスには、一本鎖RNAウイルス(プラス鎖RNAウイルスおよびマイナス鎖RNAウイルスを含む)、および二本鎖RNAウイルスが含まれる。またエンベロープを有するウイルス(エンベロープウイルス;enveloped viruses)およびエンベロープを有さないウイルス(非エンベロープウイルス;non-enveloped viruses)を含むが、好ましくはエンベロープウイルスに由来するベクターが用いられる。本発明においてRNAウイルスには、具体的には以下の科に属するウイルスが含まれる。
ラッサウィルスなどのアレナウイルス科(Arenaviridae)
インフルエンザウイルスなどのオルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae;Infuluenza virus A, B, C, および Thogoto-like viruses 等を含む)
SARSウイルスなどのコロナウイルス科(Coronaviridae)
風疹ウイルスなどのトガウイルス科(Togaviridae)
ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、センダイウイルス、RSウイルスなどのパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)
ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなどのピコルナウイルス科(Picornaviridae)
マールブルグウイルス、エボラウイルスなどのフィロウイルス科(Filoviridae)
黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルスなどのフラビウイルス科(Flaviviridae)
ブンヤウイルス科(Bunyaviridae;Bunyavirus, Hantavirus, Nairovirus, および Phlebovirus属等を含む)
狂犬病ウイルスなどのラブドウイルス科(Rhabdoviridae)
レオウイルス科(Reoviridae)
本発明においてウイルスベクターとは、当該ウイルスに由来するゲノム核酸を有し、該核酸に導入遺伝子を組み込むことにより、該ゲノム核酸から該遺伝子を発現させるためのベクター(運び屋)である。また本発明においてウイルスベクターには、感染ウイルス粒子の他、ウイルスコア、ウイルスゲノムとウイルス蛋白質との複合体、非感染性粒子(非感染性ウイルス様粒子または非感染性ウイルス粒子)などからなる複合体であって、細胞に導入することにより搭載する遺伝子を発現する能力を持つ複合体が含まれる。例えばRNAウイルスにおいて、ウイルスゲノムとそれに結合するウイルス蛋白質からなるリボヌクレオ蛋白質(ウイルスのコア部分)は、細胞に導入することにより細胞内で導入遺伝子を発現することができる(WO00/70055)。このようなリボヌクレオ蛋白質(RNP)も本発明においてウイルスベクターに含まれる。細胞への導入は、適宜トランスフェクション試薬等を用いて行うことができる。
ウイルスゲノムRNAを含むRNPや非感染性ウイルス粒子(ウイルス様粒子 (VLP))をトランスフェクションにより細胞に導入する方法を具体的に挙げれば、リン酸カルシウム (Chen, C. & Okayama, H. (1988) BioTechniques 6:632-638; Chen, C. and Okayama, H., 1987, Mol. Cell. Biol. 7: 2745)、DEAE-デキストラン (Rosenthal, N. (1987) Methods Enzymol. 152:704-709)、種々のリポソームベースのトランスフェクション試薬 (Sambrook, J. et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY))、エレクトロポレーション (Ausubel, F. et al. (1994) In Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons, NY), Vol. 1, Ch. 5 および 9) など、当業者に知られる様々な方法が例示できる。エンドソームでの分解を抑制するため、トランスフェクションにおいてクロロキンを加えることもできる(Calos, M. P., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3015)。トランスフェクション試薬を幾つか例示すれば、DOTMA(Roche)、Superfect Transfection Ragent(QIAGEN, Cat No. 301305)、DOTAP、DOPE、DOSPER(Roche #1811169)、TransIT-LT1 (Mirus, Product No. MIR 2300)、CalPhosTM Mammalian Transfection Kit (Clontech #K2051-1)、CLONfectinTM (Clontech #8020-1) などが挙げられる。エンベロープウイルスはウイルス粒子形成の際に宿主細胞由来の蛋白質を取り込むことが知られており、このような蛋白質は、細胞に導入した際に抗原性や細胞傷害性の原因となることが考えられる(J. Biol. Chem. (1997) 272, 16578-16584)。従って、エンベロープが除去されたRNPを用いることには利点がある(WO00/70055)。
本発明において好適なRNAウイルスベクターの1つとしては、例えばマイナス鎖RNAウイルスベクターが挙げられる。マイナス鎖RNAウイルスベクターとは、マイナス鎖(ウイルス蛋白質をアンチセンスにコードしている鎖)のRNAをゲノムとして含むウイルスに由来するウイルスベクターである。マイナス鎖RNAはネガティブ鎖RNAとも呼ばれる。本発明においては、特に一本鎖マイナス鎖RNAウイルス(非分節型(non-segmented)マイナス鎖RNAウイルスとも言う)が例示できる。「一本鎖ネガティブ鎖RNAウイルス」とは、一本鎖ネガティブ鎖[すなわちマイナス鎖]RNAをゲノムに有するウイルスを言う。このようなウイルスとしては、パラミクソウイルス(Paramyxoviridae; Paramyxovirus, Morbillivirus, Rubulavirus, および Pneumovirus属等を含む)、ラブドウイルス(Rhabdoviridae; Vesiculovirus, Lyssavirus, および Ephemerovirus属等を含む)、フィロウイルス(Filoviridae)などの科に属するウイルスが含まれ、分類学上モノネガウイルス目(Mononegavirales)に属している。(ウイルス 第57巻 第1号、pp29-36、2007; Annu. Rev. Genet. 32, 123-162, 1998; Fields virology fourth edition, Philadelphia, Lippincott-Raven, 1305-1340,2001; Microbiol. Immunol. 43, 613-624, 1999; Field Virology, Third edition pp. 1205-1241, 1996)。
本発明においてマイナス鎖RNAウイルスベクターとしては、特にパラミクソウイルスベクターが挙げられる。パラミクソウイルスベクターは、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)ウイルスに由来するウイルスベクターである。例えばパラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)ウイルスのセンダイウイルス(Sendai virus)を挙げることができる。他の例としては、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、おたふくかぜウイルス(Mumps virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(rinderpest virus)、ジステンパーウイルス(distemper virus)、サルパラインフルエンザウイルス(SV5)、ヒトパラインフルエンザウイルス1,2,3型、オルトミクソウイルス科 (Orthomyxoviridae)のインフルエンザウイルス(Influenza virus)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)の水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)、狂犬病ウイルス(Rabies virus)等が挙げられる。
本発明において用い得るウイルスをさらに例示すれば、例えば Sendai virus (SeV)、human parainfluenza virus-1 (HPIV-1)、human parainfluenza virus-3 (HPIV-3)、phocine distemper virus (PDV)、canine distemper virus (CDV)、dolphin molbillivirus (DMV)、peste-des-petits-ruminants virus (PDPR)、measles virus (MV)、rinderpest virus (RPV)、Hendra virus (Hendra)、Nipah virus (Nipah)、human parainfluenza virus-2 (HPIV-2)、simian parainfluenza virus 5 (SV5)、human parainfluenza virus-4a (HPIV-4a)、human parainfluenza virus-4b (HPIV-4b)、mumps virus (Mumps)、およびNewcastle disease virus (NDV) などが含まれる。より好ましくは、Sendai virus (SeV)、human parainfluenza virus-1 (HPIV-1)、human parainfluenza virus-3 (HPIV-3)、phocine distemper virus (PDV)、canine distemper virus (CDV)、dolphin molbillivirus (DMV)、peste-des-petits-ruminants virus (PDPR)、measles virus (MV)、rinderpest virus (RPV)、Hendra virus (Hendra)、および Nipah virus (Nipah) からなる群より選択されるウイルスが挙げられる。
本発明において用いられるベクターは、例えば、パラミクソウイルス亜科(レスピロウイルス属、ルブラウイルス属、およびモルビリウイルス属を含む)に属するウイルスまたはその誘導体であり、例えばレスピロウイルス属(genus Respirovirus)(パラミクソウイルス属(Paramyxovirus)とも言う)に属するウイルスまたはその誘導体である。誘導体には、ウイルスによる遺伝子導入能を損なわないように、ウイルス遺伝子が改変されたウイルス、および化学修飾されたウイルス等が含まれる。本発明を適用可能なレスピロウイルス属ウイルスとしては、例えばヒトパラインフルエンザウイルス1型(HPIV-1)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型(HPIV-3)、ウシパラインフルエンザウイルス3型(BPIV-3)、センダイウイルス(Sendai virus; マウスパラインフルエンザウイルス1型とも呼ばれる)、およびサルパラインフルエンザウイルス10型(SPIV-10)などが含まれる。
RNAウイルスベクターは、天然株、野生株、変異株、ラボ継代株、および人為的に構築された株などに由来してもよい。また伝播能を有していても、いなくてもよい。ここで伝播能とは、ウイルスベクターが宿主細胞に感染した場合、該細胞においてウイルスが複製され、感染性ウイルス粒子を産生する能力を言う。ウイルスベクターは、天然から単離されたウイルスと同様の構造を持つウイルスベクターであっても、遺伝子組み換えにより人為的に改変したウイルスベクターであってもよい。例えば、野生型ウイルスが持ついずれかの遺伝子に変異や欠損があるものであってよい。また、DI粒子(J.Virol. 68: 8413-8417, 1994)などの不完全ウイルスを用いることも可能である。例えば、ウイルスのエンベロープ蛋白質または外殻蛋白質をコードする少なくとも1つの遺伝子に変異または欠損を有するウイルスを好適に用いることができる。このようなウイルスベクターは、例えば感染細胞においてはゲノムを複製することはできるが、感染性ウイルス粒子を形成できない。このような複製能欠損型のウイルスベクターは、周囲に感染を拡大する懸念がないので安全性が高い。例えば、F、H、HN、G、M、または M1などのエンベロープ蛋白質またはスパイク蛋白質をコードする少なくとも1つの遺伝子、2つ以上、3つ以上、あるいは4つ以上の任意の組み合わせを欠失するマイナス鎖RNAウイルスベクターを用いることができる (WO00/70055 および WO00/70070; Li, H.-O. et al., J. Virol. 74(14) 6564-6569 (2000))。ゲノム複製に必要な蛋白質(例えば N、P、およびL蛋白質)をゲノムRNAにコードしていれば、感染細胞においてゲノムを増幅することができる。欠損型ウイルスを製造するには、例えばウイルスゲノムから遺伝子を欠損させ、欠損させた遺伝子産物またはそれを相補できる蛋白質をウイルス産生細胞において外来的に供給する(WO00/70055 および WO00/70070; Li, H.-O. et al., J. Virol. 74(14) 6564-6569 (2000))。また、欠損するウイルス蛋白質を完全に相補することなく、非感染性のウイルス粒子(VLP)としてウイルスベクターを回収する方法も知られている(WO00/70070)。また、ウイルスベクターをRNP(例えば N、L、P蛋白質、およびゲノムRNAからなるRNP)として回収する場合は、エンベロープ蛋白質を相補することなくベクターを製造することができる。
またエンベロープウイルスに由来するウイルスベクターを作製する場合は、当該ウイルスが本来持つエンベロープ蛋白質とは異なる蛋白質をエンベロープに含むウイルスベクターを作製することができる。例えば、ウイルス製造の際に、所望の外来性エンベロープ蛋白質をウイルス産生細胞で発現させることにより、これを含むウイルスを製造することができる。このような蛋白質に特に制限はなく、哺乳動物細胞への感染能を付与する所望の接着因子、リガンド、受容体等の蛋白質が用いられる。具体的には、例えば水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus; VSV)のG蛋白質(VSV-G)を挙げることができる。VSV-G蛋白質は、任意のVSV株に由来するものであってよく、例えば Indiana血清型株(J. Virology 39: 519-528 (1981))由来のVSV-G蛋白を用いることができるが、これに限定されない。
本発明のRNAウイルスベクターは、組み換え蛋白質を、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてコードしている。AB5トキシンとは、1つのAサブユニットと5つのBサブユニットからなるトキシンで、多くの病原性バクテリアにおいて共通している(Merritt E, and Hol W (1995) "AB5 toxins", Curr Opin Struct Biol 5 (2): 165-71; Lencer W, and Saslowsky D (2005) "Raft trafficking of AB5 subunit bacterial toxins", Biochim Biophys Acta 1746 (3): 314-21)。AB5トキシンを例示すれば、例えば Campylobacter jejuni のエンテロトキシン (enterotoxin)、コレラトキシン (Vibrio cholerae)、易熱性エンテロトキシン (heat-labile enterotoxins) (例えば LT および LT-II) (Escherichia coli)、百日咳毒素 (pertussis toxin) (Bordetella pertussis)、志賀毒素 (shiga toxin) (Shigella dysenteriae)、およびその他の腸管出血性細菌が生産する志賀様毒素またはベロ毒素 (shiga-like toxin または verotoxin) が例示できる。一般にこれらのトキシンの毒性はAサブユニットが担っており、Bサブユニットはペンタマーを形成し、細胞への接着に関与していると考えられている。
本発明において特に好ましいAB5トキシンとしてはコレラトキシンおよび大腸菌易熱性エンテロトキシンが挙げられ、両者は構造的にも機能的にも極めて類似している(Hovey BT et al., J Mol Biol., 1999, 285(3):1169-78; Ricci S. et al., Infect Immun. 2000, 68(2): 760-766; Tinker J.K. et al., Infect Immun. 2005, 73(6): 3627-3635)。コレラトキシンおよび大腸菌易熱性エンテロトキシンの具体的なBサブユニットとしては、accession number ZP_01954889.1, ZP_01976878.1, NP_231099.1, P13811.1, ABV01319.1, P32890、並びに配列番号:68、あるいはそれらの成熟型蛋白質(N末の21アミノ酸を除いたもの;例えば22〜124アミノ酸)を含む蛋白質などが挙げられる。これらをコードする塩基配列としては、NZ_AAWE01000267.1、NC_002505.1、M17874.1、EU113246.1、および M17873.1、あるいはそれらの成熟型蛋白質をコードする配列(例えば 5' の63塩基を除いたもの)を含む配列などが挙げられる。本発明において好適なAB5トキシンBサブユニットとしては、これらのアミノ酸配列または塩基配列がコードするアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらのアミノ酸配列に対して高い類似性を有するものが挙げられる。
なお、AB5トキシンBサブユニットは、天然の配列だけでなく変異を有していてもよい。天然型のBサブユニットを用いた場合と比較して、融合蛋白質の発現を有意に低下させない限り、例えば1または少数(例えば数個、3個以内、5個以内、10個以内、15個以内、20個以内)のアミノ酸が付加、欠失、置換、および/または挿入されたアミノ酸配列を有するBサブユニットを使用することができる。またN末端および/またはC末端の1〜数残基(例えば2、3、4、5、6、10、15または20残基)のアミノ酸が欠失または付加されたポリペプチド、及び1〜数残基(例えば2、3、4、5、6、10、15または20残基)のアミノ酸が置換されたポリペプチドなども使用できる。使用し得るバリアントとしては、例えば天然の蛋白質の断片、アナログ、派生体、及び他のポリペプチドとの融合蛋白質(例えば異種シグナルペプチドまたは抗体断片を付加したもの等)が含まれる。具体的には、野生型のアミノ酸配列の1または複数のアミノ酸を置換、欠失、及び/または付加した配列を含み、融合した組み換え蛋白質の発現を、野生型Bサブユニットと同等に上昇させる活性を有するポリペプチドは、本発明においてAB5トキシンBサブユニットとして用いることができる。AB5トキシンBサブユニットの改変体は、好ましくはペンタマーを形成する活性を保持する。野生型蛋白質の断片を用いる場合は、通常、野生型ポリペプチド(分泌蛋白質の場合は成熟型の形態)の70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の連続領域を含む。
アミノ酸配列のバリアントは、例えば天然のポリペプチドをコードするDNAに変異を導入することにより調製することができる(Walker and Gaastra, eds. Techniques in Molecular Biology (MacMillan Publishing Company, New York, 1983); Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488-492, 1985 ; Kunkel et al., Methods Enzymol. 154:367-382, 1987; Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y.), 1989; U.S. Pat. No. 4,873,192)。生物学的活性に影響を与えないようにアミノ酸を置換するためのガイダンスとしては、例えばDayhoffら(Dayhoff et al., in Atlas of Protein Sequence and Structure (Natl. Biomed. Res. Found., Washington, D.C.), 1978)が挙げられる。AB5Bとしては、例えば、大腸菌エンテロトキシンLTのR192G変異体(Lemere et al., Neurobiol. Aging 2002, 23: 991-1000; Seabrook et al., Neurobiol. Aging, 2004, 25: 1141-1151; Seabrook et al., Vaccine, 2004, 22: 4075-7083)が含まれる。
改変されるアミノ酸数に特に制限はないが、例えば天然の成熟型ポリペプチドの全アミノ酸の30%以内、好ましくは25%以内、より好ましくは20%以内、より好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、5%以内、3%以内または1%以内であり、例えば15アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは8アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、より好ましくは3アミノ酸以内である。アミノ酸を置換する場合は、側鎖の性質が似たアミノ酸に置換することにより蛋白質の活性を維持することが期待できる。このような置換は、本発明において保存的置換という。保存的置換は、例えば塩基性アミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性アミノ酸 (例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性アミノ酸 (例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性アミノ酸 (例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐アミノ酸 (例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族アミノ酸 (例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)などの各グループ内のアミノ酸間の置換などが挙げられる。また、例えば、BLOSUM62置換マトリックス(S. Henikoff and J.G. Henikoff, Proc. Acad. Natl. Sci. USA 89: 10915-10919, 1992)において、正の値の関係(例えば+1以上、+2以上、+3以上または+4以上)にあるアミノ酸間の置換が挙げられる。
改変された蛋白質は、野生型蛋白質のアミノ酸配列と高いホモロジーを示す。高いホモロジーとは、例えば70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、95%以上、または96%以上の同一性を有するアミノ酸配列である。アミノ酸配列の同一性は、例えばBLASTPプログラム(Altschul, S. F. et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410, 1990)を用いて決定することができる。例えばNCBI(National Center for Biothchnology Information)のBLASTのウェブページにおいて、デフォルトのパラメータを用いて検索を行うことができる(Altschul S.F. et al., Nature Genet. 3:266-272, 1993; Madden, T.L. et al., Meth. Enzymol. 266:131-141, 1996; Altschul S.F. et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997; Zhang J. & Madden T.L., Genome Res. 7:649-656, 1997)。例えば2つの配列の比較を行うblast2sequencesプログラム(Tatiana A et al., FEMS Microbiol Lett. 174:247-250, 1999)により、2配列のアライメントを作成し、配列の同一性を決定することができる。ギャップはミスマッチと同様に扱い、例えば天然型蛋白質(分泌後の成熟型の形態)のアミノ酸配列全体に対する同一性の値を計算する。具体的には、野生型蛋白質 (分泌蛋白質の場合は成熟型) の全アミノ酸数における一致するアミノ酸数の割合を計算する。
またAB5トキシンBサブユニットは、野生型蛋白質をコードする遺伝子のコード領域の一部または全部とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸がコードする蛋白質であって、野生型蛋白質と同等の活性(RNAウイルスにおいて発現を上昇させる活性)を有する蛋白質が挙げられる。該蛋白質は、好ましくはペンタマーを形成する。ハイブリダイゼーションにおいては、例えば野生型蛋白質遺伝子のコード領域の配列またはその相補配列を含む核酸、またはハイブリダイズの対象とする核酸のどちらかからプローブを調製し、それが他方の核酸にハイブリダイズするかを検出することにより同定することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、例えば 5xSSC、7%(W/V) SDS、100 μg/ml 変性サケ精子DNA、5xデンハルト液(1xデンハルト溶液は0.2%ポリビニールピロリドン、0.2%牛血清アルブミン、及び0.2%フィコールを含む)を含む溶液中、50℃、好ましくは60℃、より好ましくは65℃でハイブリダイゼーションを行い、その後ハイブリダイゼーションと同じ温度で2xSSC中、好ましくは1xSSC中、より好ましくは0.5xSSC中、より好ましくは0.1xSSC中で、振蘯しながら2時間洗浄する条件である。
AB5トキシンBサブユニットがもともと有しているシグナルペプチド(典型的には最初の21アミノ酸)は、そのままにして組み換え蛋白質と融合させてもよく、あるいは除去するか、例えば真核細胞由来の蛋白質のシグナルペプチドをN末端に付加したり、またはもともとあるシグナルペプチドから置き換えてもよい(実施例参照)。具体的にはimmunoglobulin kappa light chain、interleukin (IL)-2、tissue plasminogen activator (tPA) などの所望の分泌蛋白質のシグナル配列を用いることができるが、これらに限定されない。
また融合蛋白質は、タグやリンカー、スペーサーをさらに含むことができる。例えば目的の組み換え蛋白質とAB5トキシンBサブユニットは、直接結合していてもよく、リンカー(またはスペーサー)を介して結合していてもよい。リンカー・スペーサーの配列は特に限定はないが、例えば1〜15アミノ酸、好ましくは1〜8アミノ酸、例えば2〜6アミノ酸、例えば約4アミノ酸の配列であってよく、具体的には、KK(リジンーリジン)、GP(グリシンープロリン)、GPGP(グリシン−プロリン−グリシン−プロリン)、GGS(グリシン−グリシン−セリン)、GGGS、GGGGS、これらの繰り返し、あるいはこれらの任意の組み合わせ等が挙げられるが、それらに限定されない。目的の組み換え蛋白質とAB5Bは、通常はAB5Bが組み換え蛋白質のN末端側、すなわち目的の組み換え蛋白質がAB5BのC末端側に位置するように融合される。
AB5トキシンBサブユニットと融合させる組み換え蛋白質は特に制限はないが、特にこれまでRNAウイルスベクターからでは十分な量を発現させることが困難であった蛋白質について、その発現量を顕著に上昇させることができる。これらには、例えば短いペプチド鎖からなる蛋白質が挙げられる。短いポリペプチドとしては、例えば300アミノ酸以下、好ましくは250、220、210、200、180、160、140、120、100、90、80、75、70、65、62、60、55、50、45、40、35、30、25、20、あるいはそれらのいずれか以下のアミノ酸からなるペプチドが挙げられる(AB5トキシンBサブユニット部分は除いて数える)。発現させる組み換え蛋白質は、例えば7アミノ酸以上、好ましくは8、10、または15アミノ酸以上(例えば20以上、25以上、30以上、40以上、41以上)である。
すなわち本発明は、組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターであって、該蛋白質がAB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてコードされており、該組み換え蛋白質が例えば120アミノ酸以下、または50アミノ酸以下のペプチドであるベクターを提供する。ここで「組み換え蛋白質」とは、AB5トキシンBサブユニットとの融合に付された蛋白質を言う。すなわち組み換え蛋白質の長さには、AB5トキシンBサブユニットは含まない。例えば組み換え蛋白質の長さは、融合蛋白質からAB5トキシンBサブユニットを除いた部分の長さである。
また、水溶解性の低い蛋白質・ペプチドなども、組み換え蛋白質として好適である。特に短いペプチド鎖からなる蛋白質であって、溶解度の低い蛋白質のRNAウイルスベクターからの発現を、本発明に従って効率的に上昇させることが可能である。水溶解性の低い蛋白質とは、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に1mgの蛋白質を溶かすのに必要な水あるいは生理食塩水の量が1ml以上であることを言い、好ましくは、30分以内に1mgの蛋白質を溶かすのに必要な水あるいは生理食塩水の量が10ml以上、さらに好ましくは100ml以上であることを言う。
本発明においてAB5Bとの融合の対象となる蛋白質としては、特に神経ペプチドおよび内分泌性ペプチドが挙げられる。
AB5Bとの融合蛋白質として組み換え蛋白質を発現する本発明のRNAウイルスベクターは、例えば同じ組み換え蛋白質をAB5Bと融合させずに単体として同じRNAウイルスベクターから発現させた場合に比べ、蛋白質発現レベルは、例えば1.5倍以上、好ましくは2倍以上、2.5倍以上、3倍以上、3.5倍以上、4倍以上、4.5倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上、または10倍以上に上昇する特性を有する。宿主細胞は適宜選択してよいが、例えばBHK21細胞(ATCC CCL-10)を用いればよい。
本発明によれば、RNAウイルスベクターにおいて高発現が困難であった蛋白質を高レベルで発現させることが可能となる。対象となる蛋白質としては、RNAウイルスベクターにおいて高発現が難しい所望の蛋白質が挙げられるが、そのような蛋白質としては、例えばその蛋白質をコードする核酸を組み込んだ発現プラスミドベクターを用いて該蛋白質を発現させた場合の蛋白質の発現量に対する、RNAウイルスベクターにおいて同じ核酸配列から蛋白質を発現させた場合の蛋白質の発現量の比(すなわちRNAウイルスベクターによる発現量/プラスミドベクターによる発現量)が、例えばマウスIL-4をコードする核酸配列(配列番号81、82)を用いて測定した比に比べて、その相対比が0.8以下、好ましくは0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下、または0.2以下の蛋白質が挙げられる。発現プラスミドベクターとしては、例えばpcDNATM 3.1(Invitrogen)などのCMVプロモーターを持つ発現プラスミドベクターを用い、適当な条件下でトランスフェクションを行う(例えば24穴プレートを用い、1μgのプラスミドをLipofectamineTM 2000(Invitrogen)を用いてトランスフェクションする)。一方RNAウイルスベクターは、同じ宿主細胞を用いて例えばMOI 3で導入する。遺伝子導入の72時間後に細胞を回収し、分泌蛋白質であれば培養上清中の蛋白質濃度、あるいは回収した細胞の全蛋白質量に対する発現した組み換え蛋白質の量を算出する。これをマウスIL-4と目的の蛋白質について測定し、両者の値を比較することができる。
また本発明のベクターは、AB5トキシンBサブユニットの融合蛋白質をコードする遺伝子を挿入した以外の位置に他の外来遺伝子を保持していてもよい。このような外来遺伝子としては制限はない。例えばベクターの感染をモニターするためのマーカー遺伝子であってもよく、あるいは免疫系を調節するサイトカイン、ホルモン、受容体、抗体、それらの断片、またはその他の遺伝子であってもよい。
組み換えRNAウイルスベクターの再構成は公知の方法を利用して行えばよい。具体的には、(a)ウイルスゲノムRNAを含むRNPを構成するウイルス蛋白質の存在下、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスのゲノムRNAまたはその相補鎖をコードするRNAを細胞に導入するか、あるいは細胞において転写させる工程、(b)生成したウイルスまたは該ゲノムRNAを含むRNPを回収する工程、により製造することができる。上記のRNPを構成するウイルス蛋白質(viral proteins)とは、典型的には、ウイルスゲノムRNAと共にRNPを形成し、ヌクレオカプシドを構成する蛋白質を言う。これらはゲノムの複製および遺伝子発現に必要な蛋白質群であり、マイナス鎖RNAウイルスにおいては、典型的には、N(ヌクレオキャプシド (またはヌクレオプロテイン (NP) とも言う))、P(ホスホ)、およびL(ラージ)蛋白質である。ウイルス種によっては、表記は異なることもあるが、対応する蛋白質群は当業者には知られている (Anjeanette Robert et al., Virology 247:1-6 (1998))。
ウイルスベクターの産生には所望の哺乳動物細胞および鳥類細胞などを用いることができるが、具体的には、例えば、サル腎由来のLLC-MK2細胞(ATCC CCL-7)、CV-1細胞 (例えばATCC CCL-70)、ハムスター腎由来のBHK細胞 (例えばATCC CCL-10) などの培養細胞、ヒト由来細胞等が挙げられる。また、大量にウイルスベクターを得るために、上記の宿主から得られたウイルスベクターを発育鶏卵に感染させ、ベクターを増幅することができる。鶏卵を使ったウイルスベクターの製造方法は既に開発されている(中西ら編,(1993),「神経科学研究の先端技術プロトコールIII, 分子神経細胞生理学」, 厚生社, 大阪, pp.153-172)。具体的には、例えば、受精卵を培養器に入れ9〜12日間 37〜38℃で培養し、胚を成長させる。ウイルスベクターを尿膜腔へ接種し、数日間(例えば3日間)卵を培養してウイルスベクターを増殖させ、ウイルスを含んだ尿液を回収する。尿液からのウイルスベクターの分離・精製は常法に従って行うことができる(田代眞人,「ウイルス実験プロトコール」, 永井、石浜監修, メジカルビュー社, pp.68-73,(1995))。
粒子形成に必要なウイルス蛋白質は、転写させたウイルスゲノムRNAから発現されてもよいし、ゲノムRNA以外からトランスに供給されてもよい。例えばマイナス鎖RNAウイルスベクターの再構成においては、N、P、およびL蛋白質を、それらを発現する発現プラスミド等を細胞に導入するなどして供給することができる。転写されたゲノムRNAは、これらのウイルス蛋白質の存在下で複製され、感染性ウイルス粒子が形成される。ウイルス蛋白質やRNAゲノムを細胞内で発現させるためには、適当なプロモーターの下流に該蛋白質またはゲノムをコードするDNAが連結されたベクターを、宿主細胞に導入する。プロモーターとしては、例えばCMVプロモーター(Foecking, M.K, and Hofstetter H. Gene 1986; 45: 101-105)、レトロウイルスLTR(Shinnik, T. M., Lerner, R. A. & Sutcliffe (1981) Nature, 293, 543-548)、EF1-αプロモーター、CAGプロモーター (Niwa, H. et al. (1991) Gene. 108: 193-199、特開平3-168087) などが用いられる。
エンベロープ蛋白質などの遺伝子を欠損する欠損型ウイルスを製造する場合は、欠損する蛋白質および/またはその機能を相補できる他のウイルス蛋白質などをウイルス産生細胞において発現させ、産生されるウイルスの感染性を相補することができる。(WO00/70055、WO00/70070、および WO03/025570; Li, H.-O. et al., J. Virol. 74(14) 6564-6569 (2000))。例えば、ウイルスベクターのゲノムとは由来が異なるマイナス鎖RNAウイルスのエンベロープ蛋白質でシュードタイプ化することもできる。このようなエンベロープ蛋白質としては、例えば水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus; VSV)のG蛋白質(VSV-G)(J. Virology 39: 519-528 (1981))を用いることができる(Hirata, T. et al., 2002, J. Virol. Methods, 104:125-133; Inoue, M. et al., 2003, J. Virol. 77:6419-6429; Inoue M. et al., J Gene Med. 2004;6:1069-1081)。ゲノムから欠損させる遺伝子としては、例えばF、HN、H、Gなどのスパイク蛋白質遺伝子、Mなどのエンベロープ裏打ち蛋白質遺伝子、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。スパイク蛋白質遺伝子の欠失は、例えばマイナス鎖RNAウイルスベクターを非伝播性にするために有効であり、また、M蛋白質などのエンベロープの裏打ち蛋白質遺伝子の欠失は、感染細胞からの粒子形成を不能にするために有効である。例えば、F遺伝子欠失型マイナス鎖RNAウイルスベクター(Li, H.-O. et al., J.Virol. 74, 6564-6569 (2000))、M遺伝子欠失型マイナス鎖RNAウイルスベクター(Inoue, M. et al., J.Virol. 77, 6419-6429 (2003))などは好適に用いられる。また、F、HN (またはH)、およびMの少なくとも2つの遺伝子の任意の組み合わせを欠損するベクターは、より安全性が保障される。例えば、MおよびF遺伝子両欠失型ベクターは、高レベルの感染性および遺伝子発現能を保ったまま、非伝播性でかつ粒子形成を欠くベクターとなる。
例えばF遺伝子欠失型の組み換えウイルスの製造を具体的に例示すれば、F遺伝子が欠損したマイナス鎖RNAウイルスゲノムまたはその相補鎖を発現するプラスミドを、F蛋白質を発現する発現ベクター、ならびにN、P、およびL蛋白質の発現ベクターと共に宿主細胞にトランスフェクションする。または、F遺伝子が染色体に組み込まれた宿主細胞を用いれば、より効率的にウイルスを製造することができる(WO00/70070)。この場合は、F遺伝子を誘導発現できるように、Cre/loxPやFLP/FRTなどの配列特異的組み換え酵素とその標的配列を用いて、発現を誘導できるようにしておくことが好ましい(WO00/70055 および WO00/70070;Hasan, M. K. et al., 1997, J. General Virology 78: 2813-2820参照)。具体的には、例えばCre/loxP誘導型発現プラスミドpCALNdlw(Arai, T. et al., J. Virology 72, 1998, p1115-1121)等の組み換え酵素標的配列を持つベクターにエンベロープ蛋白質遺伝子を組み込む。発現の誘導は、例えばアデノウイルスAxCANCreをMOI 3〜5 で感染させて行う(Saito et al., Nucl. Acids Res. 23: 3816-3821 (1995); Arai, T.et al., J. Virol 72,1115-1121 (1998))。
また本発明のベクターは、例えばウイルス蛋白質による免疫原性を低下させるために、またはRNAの転写効率または複製効率を高めるために、ベクターに含まれる任意のウイルス遺伝子が野生型遺伝子から改変されていてよい。具体的には、例えばマイナス鎖RNAウイルスベクターにおいては、複製因子であるN、P、およびL遺伝子の中の少なくとも一つを改変し、転写または複製の機能を高めることが考えられる。また、エンベロープ蛋白質の1つであるHN蛋白質は、赤血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin)活性とノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性との両者の活性を有するが、例えば前者の活性を弱めることができれば、血液中でのウイルスの安定性を向上させることが可能であろうし、例えば後者の活性を改変することにより、感染能を調節することも可能である。また、F蛋白質を改変することにより膜融合能を調節することもできる。また、例えば、細胞表面の抗原分子となりうるF蛋白質またはHN蛋白質の抗原提示エピトープ等を解析し、これを利用してこれらの蛋白質に関する抗原提示能を弱めたウイルスベクターを作製することもできる。さらに、二次放出粒子(またはVLP:virus like particle)放出抑制を目的として、ウイルス遺伝子に温度感受性変異を導入することができる(WO2003/025570)。
ウイルス蛋白質の変異としては、具体的には、SeV P蛋白質の86番目のGlu(E86)の変異、SeV P蛋白質の511番目のLeu(L511)の他のアミノ酸への置換、または他のマイナス鎖RNAウイルスP蛋白質の相同部位の置換が挙げられる。具体的には、86番目のアミノ酸のLysへの置換、511番目のアミノ酸のPheへの置換などが例示できる。またL蛋白質においては、SeV L蛋白質の1197番目のAsn(N1197)および/または1795番目のLys(K1795)の他のアミノ酸への置換、または他のマイナス鎖RNAウイルスL蛋白質の相同部位の置換が挙げられ、具体的には、1197番目のアミノ酸のSerへの置換、1795番目のアミノ酸のGluへの置換などが例示できる。P遺伝子およびL遺伝子の変異は、持続感染性、2次粒子放出の抑制、または細胞傷害性の抑制の効果を顕著に高めることができる。また、例えば、M遺伝子については、G69E,T116A,A183Sを、HN遺伝子については、A262T,G264,K461Gの変異導入を行うことができるが、導入可能な変異はこれらに限定されない(WO2003/025570)。
例えばマイナス鎖RNAウイルスの製造であれば、以下の公知の方法を利用して実施することができる(WO97/16539; WO97/16538; WO00/70055; WO00/70070; WO01/18223; WO03/025570; WO2005/071092; WO2006/137517; WO2007/083644; WO2008/007581; Hasan, M. K. et al., J. Gen. Virol. 78: 2813-2820, 1997、Kato, A. et al., 1997, EMBO J. 16: 578-587 及び Yu, D. et al., 1997, Genes Cells 2: 457-466; Durbin, A. P. et al., 1997, Virology 235: 323-332; Whelan, S. P. et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 8388-8392; Schnell. M. J. et al., 1994, EMBO J. 13: 4195-4203; Radecke, F. et al., 1995, EMBO J. 14: 5773-5784; Lawson, N. D. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 4477-4481; Garcin, D. et al., 1995, EMBO J. 14: 6087-6094; Kato, A. et al., 1996, Genes Cells 1: 569-579; Baron, M. D. and Barrett, T., 1997, J. Virol. 71: 1265-1271; Bridgen, A. and Elliott, R. M., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 15400-15404; Tokusumi, T. et al. Virus Res. 2002: 86; 33-38、Li, H.-O. et al., J. Virol. 2000: 74; 6564-6569)。これらの方法により、パラインフルエンザ、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、リンダーペストウイルス、センダイウイルスなどを含むマイナス鎖RNAウイルスをDNAから再構成させることができる。
プラス (+) 鎖RNAウイルスの製造方法としては、以下の例が挙げられる。
1)コロナウイルス
Enjuanes L, Sola I, Alonso S, Escors D, Zuniga S.
Coronavirus reverse genetics and development of vectors for gene expression.
Curr Top Microbiol Immunol. 2005;287:161-97. Review.
2)トガウイルス
Yamanaka R, Zullo SA, Ramsey J, Onodera M, Tanaka R, Blaese M, Xanthopoulos KG.
Induction of therapeutic antitumor antiangiogenesis by intratumoral injection of genetically engineered endostatin-producing Semliki Forest virus.
Cancer Gene Ther. 2001 Oct;8(10):796-802.
Datwyler DA, Eppenberger HM, Koller D, Bailey JE, Magyar JP.
Efficient gene delivery into adult cardiomyocytes by recombinant Sindbis virus.
J Mol Med. 1999 Dec;77(12):859-64.
3)ピコルナウイルス
Lee SG, Kim DY, Hyun BH, Bae YS.
Novel design architecture for genetic stability of recombinant poliovirus: the manipulation of G/C contents and their distribution patterns increases the genetic stability of inserts in a poliovirus-based RPS-Vax vector system.
J Virol. 2002 Feb;76(4):1649-62.
Mueller S, Wimmer E.
Expression of foreign proteins by poliovirus polyprotein fusion: analysis of genetic stability reveals rapid deletions and formation of cardioviruslike open reading frames.
J Virol. 1998 Jan;72(1):20-31.
4)フラビウイルス
Yun SI, Kim SY, Rice CM, Lee YM.
Development and application of a reverse genetics system for Japanese encephalitis virus.
J Virol. 2003 Jun;77(11):6450-65.
Arroyo J, Guirakhoo F, Fenner S, Zhang ZX, Monath TP, Chambers TJ.
Molecular basis for attenuation of neurovirulence of a yellow fever Virus/Japanese encephalitis virus chimera vaccine (ChimeriVax-JE).
J Virol. 2001 Jan;75(2):934-42.
5)レオウイルス
Roner MR, Joklik WK.
Reovirus reverse genetics: Incorporation of the CAT gene into the reovirus genome.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2001 Jul 3;98(14):8036-41. Epub 2001 Jun 26.
その他のRNAウイルスの増殖方法および組み換えウイルスの製造方法については、ウイルス学実験学 各論、改訂二版(国立予防衛生研究所学友会編、丸善、1982)を参照のこと。
また本発明は、組み換え蛋白質の製造方法であって、該蛋白質が、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてコードされているRNAウイルスベクターから、該蛋白質を発現させ、発現した蛋白質を回収することを含む方法に関する。具体的には、該ベクターを細胞に導入し、該細胞において該ベクターから該融合蛋白質を発現させる。発現した融合蛋白質を回収することにより、組み換え蛋白質を融合蛋白質として得ることができる。必要に応じて、融合蛋白質から組み換え蛋白質部分だけを切り離して回収することもできる。このためには、既に述べた通り、目的の組み換え蛋白質とAB5Bとの間に、エンテロキナーゼ認識配列(DDDDK↓)、Factor Xa認識配列(IEGR↓)、トロンビン認識配列(LVPR↓GS)、HRV 3Cプロテアーゼ認識配列(LEVLFQ↓GP)などの配列特異的プロテアーゼの切断配列を導入することで、AB5B部分を切り離すことができる。細胞としは、ベクターを導入できる限り制限はないが、LLC-MK2細胞(ATCC CCL-7)、CV-1細胞 (例えばATCC CCL-70)、BHK細胞 (例えばATCC CCL-10) などの哺乳動物培養細胞(マウス、ラット、サル、ヒト由来細胞)等が挙げられる。また、大量にウイルスベクターを得るために、鶏卵を用いて蛋白質を発現させてもよい(中西ら編,(1993),「神経科学研究の先端技術プロトコールIII, 分子神経細胞生理学」, 厚生社, 大阪, pp.153-172)。
また本発明は、本発明のベクターまたは該ベクターが導入された細胞を含む組成物に関する。本発明の組成物は、組み換え蛋白質を効率的に発現するので、蛋白質の高発現が求められる所望の目的のために有用である。すなわち本発明の組成物は、蛋白質の発現を上昇させるための組成物、および上昇した蛋白質発現を得ることに用いるための組成物となる。本発明の組成物の製造においては、ベクターまたは細胞は、必要に応じて薬理学的に許容される所望の担体または媒体と組み合わせることができる。「薬学的に許容される担体または媒体」とは、ベクターまたは細胞を懸濁できる所望の溶液が挙げられ、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム溶液、リンゲル溶液、培養液等が例示できる。ベクターを鶏卵で増殖させた場合等においては尿液を含んでよい。またベクターを含む組成物は、脱イオン水、5%デキストロース水溶液等の担体または媒体を含んでいてもよい。さらに、その他にも、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、殺生物剤等が含有されていてもよい。また保存剤またはその他の添加剤を添加することができる。本発明の組成物は、所望の試薬として、または医薬組成物として使用できる。
また本発明の組成物は、バイオポリマーなどの有機物、ハイドロキシアパタイトなどの無機物、具体的にはコラーゲンマトリックス、ポリ乳酸ポリマーまたはコポリマー、ポリエチレングリコールポリマーまたはコポリマーおよびその化学的誘導体などを担体として組み合わせることもできる。
また本発明は、蛋白質の発現を増強するための、AB5トキシンBサブユニットをコードする核酸の使用を提供する。また本発明は、AB5トキシンBサブユニットまたは該サブユニットをコードする核酸を含む、蛋白質の発現を増強するための試薬を提供する。また本発明は、AB5トキシンBサブユニットまたは該サブユニットをコードする核酸を含む発現増強剤を提供する。AB5トキシンBサブユニットをコードする核酸を、目的とする蛋白質をコードする核酸と、インフレームで結合して両者の融合蛋白質をコードする核酸を得て、これを例えばRNAウイルスベクターで発現させることにより、該蛋白質を単体で発現させるよりも有意に発現量を上昇させることが可能である。
また本発明は、組み換え蛋白質の発現量を上昇させる方法であって、該組み換え蛋白質をAB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として発現させる工程を含む方法を提供する。AB5トキシンBサブユニットは、例えばコレラトキシンB(CTB)である。また上述の通り組み換え蛋白質は、例えば120アミノ酸以下、または50アミノ酸以下のペプチドであり、また組み換え蛋白質は神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドであってもよい。ここで組み換え蛋白質とは、AB5トキシンBサブユニットとの融合に付された蛋白質を言う。あるいは組み換え蛋白質は、例えば低溶解性蛋白質である。組み換え蛋白質は例えばRNAウイルスベクター、好ましくは例えばマイナス鎖RNAウイルスベクターから発現させる。
また本発明は、AB5トキシンBサブユニットまたはそれをコードする核酸の、蛋白質の発現を上昇させるための使用を提供する。また本発明は、蛋白質の発現上昇に用いるための、AB5トキシンBサブユニットまたはそれをコードする核酸に関する。また本発明は、該サブユニットまたはそれをコードする核酸を含む、蛋白質の発現上昇に用いるための組成物にも関する。発現が上昇したことは、例えばCTBと融合していない組み換え蛋白質を同じベクターで発現させ、発現量を比較する工程により確認することができる。
また本発明は、組み換え蛋白質の発現量が上昇したRNAウイルスベクターまたは該ベクターが導入された細胞、またはそれらのいずれかを含む組成物の製造における、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスのゲノムRNAまたはその相補鎖(アンチゲノムRNA)、あるいはそれらの少なくともいずれかをコードするDNAの使用に関する。また本発明は、組み換え蛋白質の発現量を上昇させるための、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として該組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスのゲノムRNAまたはその相補鎖(アンチゲノムRNA)をコードするDNAの使用に関する。
また本発明は、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターを含む、該組み換え蛋白質の増強した発現を得るための組成物に関する。また本発明は、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターの、該組み換え蛋白質の発現を上昇させるための使用に関する。また本発明は、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターを含む、該組み換え蛋白質の発現の上昇に用いるための薬剤(発現上昇剤)を提供する。また本発明は、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質として組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターの、組み換え蛋白質の発現を上昇させた薬剤、試薬および/または医薬の製造における使用を提供する。
本発明のベクターを含む組成物または該ベクターが導入された細胞を含む組成物は、in vitroで使用できる他、in vivo投与、および細胞を介したex vivo投与において使用することができる。細胞を介してRNAウイルスベクターを投与する場合は、適当な培養細胞または接種対象動物から採取した細胞などにベクターを導入する。RNAウイルスを体外(例えば試験管またはシャーレ内)で細胞に感染させる場合は、例えば培養液、生理食塩水、血液、血漿、血清、体液など所望の生理的水溶液中でin vitro(またはex vivo)で行う。この時、MOI(多重感染度; 細胞1つあたりの感染ウイルス数)は1〜1000の間にすることが好ましく、より好ましくは2〜500、さらに好ましくは3〜300、さらに好ましくは5〜100である。
本発明の組成物の投与量は、疾患、患者の体重、年齢、性別、症状、投与目的、投与組成物の形態、投与方法、導入遺伝子等により異なるが、当業者であれば適宜決定することが可能である。投与経路は適宜選択することができ、また、接種量は、接種対象動物、接種部位、接種回数などに応じて適宜調整してよい。本発明のベクターを含む組成物の投与対象は、好ましくは哺乳動物(ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む)である。具体的には、ヒト、サル等の非ヒト霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコなどその他の全ての哺乳動物が含まれる。
本発明のベクターはウイルス様粒子(VLP)としても好ましく用いられ、通常知られるウイルス粒子のように用いることもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。なお、本明細書中に引用された文献は、すべて本明細書の一部として組み込まれる。
[実施例1] mCRF遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
Igκ分泌シグナルを付加したヒトAβ42遺伝子(配列番号1)をtemplateにし、マウスCRFペプチド遺伝子(accession number NM_205769)にIgκ分泌シグナルを付加したmCRFフラグメント(配列番号3)をPCRにより合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号4〜8である。次にCTB-Aβ42 NotIフラグメント(実施例10、配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、EcoRV-EISフラグメント(配列番号9)を合成した。用いたプライマーの配列は配列番号10および11である。次にmCRFフラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-EISフラグメントをEcoRVとNotIで消化し、pCIベクター(Promega)にサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したmCRF遺伝子NotIフラグメント(配列番号12)を構築した(pCI-mCRF)。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にmCRF遺伝子NotIフラグメント(配列番号12)を挿入し、mCRF遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+mCRF/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例2] mCRFとCTBの融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
CTB-Aβ42 NotIフラグメント(実施例10、配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、CTB-mCRFフラグメント(配列番号16)を合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号3、4、5、17、18である。次にCTB-mCRFフラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、上記で作製したpCI-mCRFをXhoIとEcoRVで消化し、センダイウイルスの転写シグナル付加したCTB-mCRF遺伝子NotIフラグメント(配列番号19)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-mCRF遺伝子NotIフラグメント(配列番号19)を挿入し、CTB-mCRF遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+CTB-mCRF/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例3] mET-1遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
Igκ分泌シグナルを付加したヒトAβ42遺伝子(配列番号1)をtemplateにし、マウスET1ペプチド遺伝子(accession number NP_034234)にIgκ分泌シグナルを付加したmET1フラグメント(配列番号21)をPCRにより合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号7、22、23、24である。次にCTB-Aβ42 NotIフラグメント(配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、EcoRV-PstI-EISフラグメント(配列番号25)を合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号11、および26である。次にmET1フラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-PstI-EISフラグメントをEcoRVとNotIで消化し、pCIベクターにサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したmET1遺伝子NotIフラグメント(配列番号27)を構築した(pCI-mET1)。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にmET1遺伝子NotIフラグメント(配列番号27)を挿入し、mET1遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+mET1/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例4] mET-1とCTBの融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
CTB-Aβ42 NotIフラグメント(配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、CTB-mET1フラグメント(配列番号29)を合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号17、22、23、30である。次にCTB-mET1フラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、上記で作製したpCI-mET1をXhoIとEcoRVで消化し、センダイウイルスの転写シグナル付加したCTB-mET1遺伝子NotIフラグメント(配列番号31)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-mET1遺伝子NotIフラグメント(配列番号31)を挿入し、CTB-mET1遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+ CTB-mET1/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例5] mPYY遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
Igκ分泌シグナルを付加したAβ42遺伝子(配列番号1)をtemplateにし、マウスPYYペプチド遺伝子(accession number NM_145435.1)にIgκ分泌シグナルを付加したmPYYフラグメント(配列番号33)をPCRにより合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号7、34、35、36、37である。次にmPYYフラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-EISフラグメント(配列番号9)をEcoRVとNotIで消化し、pCIベクターにサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したmPYY遺伝子NotIフラグメント(配列番号38)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位に上記で作製したmPYY遺伝子NotIフラグメント(配列番号38)を挿入し、mPYY遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+mPYY/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例6] mPYYとCTBの融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
CTB-Aβ42 NotIフラグメント(配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、CTB-mPYYフラグメント(配列番号40)を合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号17、34、35、36、41である。次にCTB-mPYYフラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-EISフラグメント(配列番号9)をEcoRVとNotIで消化し、pCIベクターにサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したCTB-mPYY遺伝子NotIフラグメント(配列番号42)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-mPYY遺伝子NotIフラグメント(配列番号42)を挿入し、CTB-mPYY遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+CTB-mPYY/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例7] mGLP-2遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
Igκ分泌シグナルを付加したAβ42遺伝子(配列番号1)をtemplateにし、マウスGLP-2ペプチド遺伝子(accession number NM_175681.2)にIgκ分泌シグナルを付加したmGLP-2フラグメント(配列番号44)をPCRにより合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号7、45、46、47、48である。次にmGLP-2フラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-PstI-EISフラグメント(配列番号25)をEcoRVとNotIで消化し、pCIベクターにサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したmGLP-2遺伝子NotIフラグメント(配列番号49)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にmGLP-2遺伝子NotIフラグメント(配列番号49)を挿入し、mGLP-2遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+mGLP-2/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例8] GLP-2とCTBの融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
CTB-Aβ42 NotIフラグメント(配列番号14)をtemplateにして、PCRを行い、CTB-mGLP-2フラグメント(配列番号51)を合成した。用いたプライマーの配列は、配列番号17、45、46、47、52である。次にCTB-mGLP-2フラグメントをXhoIとEcoRVで消化し、EcoRV-PstI-EISフラグメント(配列番号25)をEcoRVとNotIで消化し、pCIベクターにサブクローニングし、センダイウイルスの転写シグナル付加したCTB-mGLP-2遺伝子NotIフラグメント(配列番号53)を構築した。
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-mGLP-2遺伝子NotIフラグメント(配列番号53)を挿入し、CTB-mGLP-2遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+CTB-mGLP-2/ΔF)を構築した(図1)。
[実施例9] Aβ42遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
(1) Aβ42遺伝子のNot Iフラグメントの構築
Aβ42遺伝子はヒトアミロイドβペプチド配列(1-42)(配列番号55)を元に、全長を複数のプライマーでカバーしてPCRで結合した。Aβ42の塩基配列はヒトcodon usageを考慮して最適化し、N端側にはIgκの分泌シグナルを結合させ、C端側にはセンダイウイルスの転写シグナルを付加した構造をしている。(図2, 配列番号56)
構築方法は図3に示した。まずIgκシグナルとAβ42領域の全長をカバーする6種類の長いプライマーF1 (配列番号58), F2 (配列番号59), R1 (配列番号60), R2 (配列番号61), R3 (配列番号62), R4 (配列番号63) を同時に混ぜて、テンプレート入れずにPCRを行い、次にそのPCR産物をテンプレートとして制限酵素EcoRIの認識配列を導入した2つのプライマーF1-1 (配列番号64) とR4-1 (配列番号65) で更にPCRを行った。そして得られたPCR産物を制限酵素EcoRIで切断し、pCI発現プラスミド(Promega社)のEcoRIサイトへサブクローニングし、塩基配列の確認を行い正しい配列のクローンを選択した。
選択したプラスミドをテンプレートにし、NotI認識配列を付加したプライマーNotI-Aβ-F(配列番号66)とセンダイウイルス転写シグナルとNotI認識配列を付加したプライマーNotI-polyA-R(配列番号67)とでPCRを行ない、得られたPCR産物を制限酵素NotIで消化し、目的のAβ42 NotIフラグメント(図2, 配列番号56)を構築した。
(2)Aβ42遺伝子搭載センダイウイルスcDNAの構築
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にAβ42 NotIフラグメントを挿入し、Aβ42遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+Aβ42/ΔF)を構築した。
[実施例10] Aβ42とCTBの融合遺伝子(CTB-Aβ42)を搭載したSeVベクターの構築
(1)CTB-Aβ42遺伝子のNotIフラグメントの構築
CTB-Aβ42のNotIフラグメントは、ヒトアミロイドβ配列(1-42)の配列のN末端側に分泌シグナルを含むコレラトキシンBサブユニット配列(配列番号68)をGPGPアミノ酸リンカーでつなぎ、C末端側にセンダイウイルスの転写シグナルを付加した構造をしている(図4, 配列番号69)。更に発現効率を増すためにCTBとAβの塩基配列はヒトのcodon usageに従ってアミノ酸配列を変えずに塩基配列を変更した。
この遺伝子の構築には、全長をカバーする長い複数のプライマーを用いてPCRにより全長を合成した。具体的には、CTB-Aβ領域の全長をカバーする長いプライマーを8種類 [CTB-AβF-1 (配列番号71), F-2 (配列番号72), F-3 (配列番号73), F-4 (配列番号74), R-1 (配列番号75), R-2 (配列番号76), R-3 (配列番号77), R-4 (配列番号78)] 合成し、それら8種類を混ぜてPCRを行うことによりN端からAβ42までに対応するフラグメントを得た。センダイウイルス転写シグナルを含むC端側のフラグメントは、pCIプラスミド (Promega社) をテンプレートにして2種のプライマー CTB-Aβ F1-2 (配列番号79) CTB-Aβ R5-2 (配列番号80) でPCRを行いCTB-Aβ全長のPCRフラグメントを得た。そのPCRフラグメントはTAクローニングによりpGEM-T Easyプラスミド (Promega社) にサブクローニングして、塩基配列を確認し、プラスミドを増幅した。そのプラスミドを制限酵素NotIで消化することにより、目的のCTB-Aβ42 NotIフラグメント (配列番号69) を構築した。
(2)CTB-Aβ42遺伝子搭載センダイウイルスcDNAの構築
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-Aβ42 NotIフラグメントを挿入し、CTB-Aβ42遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+CTB-Aβ42/ΔF)を構築した。
[実施例11] Aβ42とIL-4の融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
(1)Aβ42とIL-4の融合遺伝子のNotIフラグメントの構築
Aβ42遺伝子とマウスIL-4の融合は一部をオーバーラップさせてPCRで結合させる方法で行った。
Aβ42遺伝子はAβ42 EcoRIフラグメント(実施例9:図3)が入ったプラスミドを利用し、マウスIL-4遺伝子(配列番号81)は、マウス(BALB/cA)の脾臓からmRNAを抽出し、IL-4特異的プライマーを用いて逆転写し、PCRで増幅し、クローニングプラスミドにサブクローニングすることによりcDNAの形で取得した。このマウスIL-4 cDNAが組み込まれたプラスミドを構築に用いた。
具体的には、マウスIL-4プラスミドをテンプレートして、2つのプライマー NotI-IL4-F(配列番号83)とプライマー IL4-R(配列番号84)でPCRを行い、一方でAβ42プラスミドをテンプレートとし、プライマーAβ42-F(配列番号85)とプライマー NotI-Aβ42-R(配列番号86)でPCRを行い、IL-4とAβ42のPCRフラグメントを得た。プライマーIL4-RとAβ42-Fは一部がオーバーラップするようデザインされているため、IL-4とAβ42のPCRフラグメントを混ぜてテンプレートとし、プライマー NotI-IL4-Fとプライマー NotI-Aβ42-RでPCRすることで、2つの遺伝子を一つの融合遺伝子として結合させた。このPCRフラグメントをクローニングプラスミドにサブクローニングし、塩基配列を確認後、制限酵素NotIで切断することにより、目的のAβ42とIL-4の融合遺伝子NotIフラグメント(配列番号87)を構築した。
(2)Aβ42遺伝子搭載センダイウイルスcDNAの構築
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位に上記で作製したmIL4-Aβ42 NotIフラグメントを挿入し、Aβ42遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+mIL4-Aβ42/ΔF)を構築した。
[実施例12] センダイウィルスベクターの再構成と増幅
ウィルスの再構成および増幅はLiらの報告(Li, H.-O. et al., J. Virology 74. 6564-6569 (2000), WO00/70070)およびその改良法(WO2005/071092)に従って行った。使用したベクターはF遺伝子欠失型であるので、Cre/loxP発現誘導システムによりF蛋白質を発現するF蛋白のヘルパー細胞を利用した。当該システムはCre DNA リコンビナーゼにより遺伝子産物を誘導発現するように設計されたプラスミドpCALNdLw(Arai, T. et al., J. Virol. 72: 1115-1121 (1988))を利用したものであり、同プラスミドのトランスフォーマントにCre DNAリコンビナーゼを発現する組み換えアデノウィルス(AxCANCre)をSaitoらの方法(Saito, I. et al., Nucl. Acid. Res. 23, 3816-3821 (1995), Arai, T. et al., J. Virol. 72, 1115-1121 (1998))で感染させて挿入遺伝子を発現させる。
これらの方法によって、CTB-mCRF, CTB-mET1, CTB-mPYY, CTB-mGLP2, mCRF, mET1, mPYY, mGLP2, Aβ42, CTB-Aβ42, mIL4-Aβ42の各遺伝子を搭載したF遺伝子欠失型SeVベクター(それぞれSeV18+CTB-mCRF/ΔF, SeV18+CTB-mET1/ΔF, SeV18+CTB-mPYY/ΔF, SeV18+CTB-mGLP2/ΔF, SeV18+mCRF/ΔF, SeV18+mET1/ΔF, SeV18+mPYY/ΔF, SeV18+mGLP2/ΔF, SeV18+Aβ42/ΔF, SeV18+CTB-Aβ42/ΔF, SeV18+mIL4-Aβ42/ΔF)を調製した。
[実施例13] Aβ42とPEDIの融合遺伝子を搭載したSeVベクターの構築
(1)Aβ42-PEDI融合遺伝子搭載SeVベクターcDNAの構築
プライマー PEDI-1F (配列番号89)、PEDI-2R (配列番号90)、PEDI-3F (配列番号91)、PEDI-4R (配列番号92)、PEDI-5F (配列番号93)、PEDI-6R (配列番号94)、PEDI-7F (配列番号95)、PEDI-8R (配列番号96)、PEDI-9F (配列番号97)とPEDI-10R (配列番号98) 計10種を用いたPCRでPEDI遺伝子を増幅した。PEDI遺伝子とAβ42を融合してSeVベクターへ搭載するため、Aβ42搭載SeVベクターをTemplateとして、プライマー SeVF6 (配列番号99)とS-PEDI-C (配列番号100)を用いたPCRで得られたFragment 1、同Templateでプライマー PEDI-Ab-N (配列番号101)と SEVR280 (配列番号102)を用いたPCRで得られたFragment 3、PEDI遺伝子をTemplateとして、プライマー PEDI-N (配列番号103)と PEDI-C (配列番号104)を用いたPCRで得られたFragment 2をTemplateとして、オーバーラップPCRでPEDI-Aβ42 NotIフラグメント(配列番号105)が得られ、pSeV18+/ΔFのNotIサイトへ挿入し、PEDI-Aβ42融合遺伝子搭載F欠失型SeVベクターのcDNAが得られた。
(2) PEDI-Aβ42搭載F欠失型SeVベクターの再構築
PEDI-Aβ42遺伝子を搭載するSeVベクター(SeV18+PEDI-Aβ42/ΔF)の再構成は、実施例12と同様に、Liらの方法(Li, H.-O. et al., J. Virology 74. 6564-6569 (2000), WO00/70070)およびその改良法(WO2005/071092)に従って行った。
[実施例14] mCRF発現におけるCTB融合の効果:mCRF単独発現SeVベクターとCTB-mCRF融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
(1) BHK21細胞にSeV18+mCRF/ΔF、SeV18+CTB-mCRF/ΔFを感染させ、mCRF およびCTB-mCRFペプチド発現量の評価を行った。BHK21細胞をコラーゲンコートされた6穴プレートに1x106個になるよう播き、MOI 10 になるように無血清培地(VPSFM)で希釈された各SeVベクターを感染させた。1時間後に10% FBS含有GMEMを加え、24時間後に無血清培地(VPSFM)に置換し、48時間後に培養上清と細胞を回収し、細胞破砕液を調製した。コントロールとして非感染細胞を用いた。
(2)ELISAによる測定
CRFの測定は矢内原研究所のCRF ELISAキット用いた。発現量の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
結果を図5に示す。mCRFはほとんど発現していないのに対し、CTB-mCRFは顕著に発現が増大していることが判明した。
[実施例15] mET-1発現におけるCTB融合の効果:mET-1単独発現SeVベクターとCTB-mET1融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
(1) BHK21細胞にSeV18+mET-1/ΔF、SeV18+CTB-mET-1/ΔFを感染させ、mET-1およびCTB-mET1ペプチド発現量の評価を行った。BHK21細胞をコラーゲンコートされた6穴プレートに1x106個になるよう播き、MOI 10 になるように無血清培地(VPSFM)で希釈された各SeVベクターを感染させた。1時間後に10% FBS含有GMEMを加え、24時間後に無血清培地(VPSFM)に置換し、48時間後に培養上清と細胞を回収し、細胞破砕液を調製した。コントロールとして非感染細胞を用いた。
(2)ELISAによる測定
ET1の測定は直接サンプルを96穴プレートに固相化し、1% BSA/TBS-T bufferでブロックした後、抗マウスET1抗体とペルオキシダーゼ標識抗ウサギIgG抗体で検出した。発現量の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
結果を図6に示す。mET1はほとんど発現していないのに対し、CTB-mET1は顕著に発現が増大していた。
[実施例16] mPYY発現におけるCTB融合の効果:mPYY単独発現SeVベクターとCTB-mPYY融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
(1) BHK21細胞にSeV18+mPYY/ΔF、SeV18+CTB-mPYY/ΔFを感染させ、mPYY およびCTB-mPYYペプチド発現量の評価を行った。BHK21細胞をコラーゲンコートされた6穴プレートに1x106個になるよう播き、MOI 10 になるように無血清培地(VPSFM)で希釈された各SeVベクターを感染させた。1時間後に10% FBS含有GMEMを加え、24時間後に無血清培地(VPSFM)に置換し、48時間後に培養上清と細胞を回収し、細胞破砕液を調製した。コントロールとして非感染細胞を用いた。
(2)ELISAによる測定
mPYYの測定は矢内原研究所のラットPYY ELISAキット用いた。発現量の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
結果を図7に示す。mPYYはほとんど発現していないのに対し、CTB-mPYYは顕著に発現が増大していた。
[実施例17] mGLP-2発現におけるCTB融合の効果:mGLP-2単独発現SeVベクターとCTB-mGLP-2融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
(1) BHK21細胞にSeV18+ mGLP-2/ΔF、SeV18+CTB-mGLP-2/ΔFを感染させ、mGLP-2 およびCTB-mGLP-2ペプチド発現量の評価を行った。BHK21細胞をコラーゲンコートされた6穴プレートに1x106個になるよう播き、MOI 10 になるように無血清培地(VPSFM)で希釈された各SeVベクターを感染させた。1時間後に10% FBS含有GMEMを加え、24時間後に無血清培地(VPSFM)に置換し、48時間後に培養上清と細胞を回収し、細胞破砕液を調製した。コントロールとして非感染細胞を用いた。
(2)ELISAによる測定
mGLP-2の測定は矢内原研究所のGLP-2 ELISAキット用いた。発現量の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
結果を図8に示す。mGLP-2はほとんど発現していないのに対し、CTB-mGLP-2は顕著に発現が増大していた。
[実施例18] Aβ42発現におけるCTB融合, PEDI融合, IL-4融合の効果の比較: CTB-Aβ42融合蛋白発現SeVベクター、PEDI-Aβ42融合蛋白発現SeVベクターおよびIL-4-Aβ42融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
(1) BHK21細胞にSeV18+Aβ42/ΔF、SeV18+IL-4-Aβ42/ΔF、SeV18+PEDI-Aβ42/ΔF、SeV18+CTB-Aβ42/ΔFを感染させ、Aβ42抗原量の評価を行った。BHK21細胞をコラーゲンコートされた6穴プレートに1x106個/wellになるよう播き、MOI 10になるように無血清培地(VPSFM)で希釈された各SeVベクターを感染させた。1時間後に10% FBS含有GMEMを加え、24時間後に無血清培地(VPSFM)に置換し、48時間後に培養上清と細胞を回収し、細胞破砕液を調製した。
(2)ELISAによる測定
Aβ42の測定は和光純薬工業のヒトAβ42 ELISAキット用いた。発現量の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
結果を図9に示す。Aβ42はほとんど発現していないのに対し、IL-4-Aβ42、PEDI-Aβ42、CTB-Aβ42は発現が増大している。細胞内における発現量はそれぞれkkAβ42の1395倍、171.5倍、12608倍であった。
[実施例19] Aβ42発現におけるCTB融合の効果:Aβ42単独発現SeVベクターとCTB-Aβ42融合蛋白発現SeVベクターによる発現能比較
コンフルエントになった前日播種したBHK-21細胞(3x105 cells/well播種, 12-well plate)へAβ42単独搭載SeVベクターとCTB-Aβ42搭載SeVベクターをMOI 10 で感染させ、1 ml/well VP-SFM培地で37℃, 5% CO2培養し、4日目の培養上清と細胞lysateを回収した。培養上清アセトン沈殿で10倍濃縮し、1x SDS Loading Bufferでサンプルを調製した。細胞Lysateは150μl/wellの1x SDS Loading Bufferを用いて調製した。調製した培養上清と細胞Lysateを98℃, 10min処理した後、Aβ42ペプチドを1-0.5-0.25-0.125ng/laneでコントールとしてSDS-PAGE(15% Wakoゲル使用)/Western blotting(6E10抗体使用)を行い、蛋白定量をした。Aβ42単独搭載SeVベクターによるAβの発現量は、細胞Lysateでは4.4ng/well、上清では7.2x10-3 ng/wellしかなかった。一方、Aβ42-CTB融合遺伝子搭載SeVベクターによるAβ発現量は、細胞Lysateでは2500ng/well、上清では200ng/wellであり、Lysateでは568倍、上清では27778倍と大幅改善されたことがわかった。
[実施例21] Aβ15とCTBの融合遺伝子(CTB-Aβ15)、およびAβ15のタンデムタイプとCTBの融合遺伝子(CTB-Aβ15x2, CTB-Aβ15x4, あるいはCTB-Aβ15x8)を搭載したSeVベクターの構築
(1)CTB-Aβ15遺伝子のNot1フラグメントの構築
CTB-Aβ15遺伝子のNotIフラグメントは、CTB-Aβ42遺伝子をもとに構築した。(図10)
CTB-Aβ42遺伝子NotIフラグメントが入ったプラスミドをテンプレートとし、EcoRV制限酵素サイトを付加した2種類のプライマーAβ15-EcoR-R (配列番号107) およびAβ15-EcoR-F (配列番号108) でinverse PCRを行い、得られたPCR産物を制限酵素EcoRVで切断した。そしてセルフライゲーションすることにより、CTB-Aβ15フラグメントが入ったプラスミドを得た。そのプラスミドを制限酵素NotIで切断することにより、目的のCTB-Aβ15遺伝子のNotIフラグメント (配列番号109) を得た。
(2)CTB-Aβ15タンデムタイプ(CTB-Aβ15x2, CTB-Aβ15x4, あるいはCTB-Aβ15x8)遺伝子のNotIフラグメントの構築
CTB-Aβ15タンデム遺伝子のNotIフラグメントは、2つの遺伝子を利用して構築した。(図11)
方法はCTB-Aβ42の入ったプラスミドのAβ42部分を除いて制限酵素サイトを導入し、
その部分にPCRで制限酵素サイトを付加したAβ15タンデムのフラグメントを組み込んだ。
具体的にはCTB-Aβ42のNotIフラグメント(実施例10:配列番号69)が入ったプラスミドをテンプレートとし、制限酵素SmaIサイトを付加した2種のプライマーCTB-SmaI-R(配列番号111)およびCTB-SmaI-F(配列番号112)でinverse PCRを行い、得られたPCR産物をSmaIで切断し、セルフライゲーションすることにより、Aβ42を除去したプラスミドを得た。そしてそのプラスミドのSmaIサイトにAβ15タンデムフラグメントを組み込んだ。
Aβ15タンデムフラグメントの作成方法は、Aβ15の8タンデムNotIフラグメント(配列番号113)が入ったプラスミドを基に作成した。そのプラスミドをテンプレートとし、制限酵素サイトを付加した2種のプライマーAβ15-SmaI-F(配列番号115)およびAβ15-EcoRV-R (配列番号116) でPCRを行うと、Aβ15のリピート数が異なるPCR産物が得られる。それらをTAクローニングして塩基配列確認後に、2種の制限酵素SmaI, EcoRIで切り出すと平滑末端のAβ15タンデムフラグメントが得られる。そのフラグメントをAβ42を除去したプラスミドのSmaIサイトへ組み込んでプラスミドを増幅し、制限酵素NotIで切り出すことにより、目的のCTB-Aβ15x2 NotIフラグメント(配列番号117), CTB-Aβ15x4 NotIフラグメント(配列番号119)およびCTB-Aβ15x8 NotIフラグメント(配列番号121)を得た。
(3)CTB-Aβ15, CTB-Aβ15x2, CTB-Aβ15x4,CTB-Aβ15x8遺伝子搭載センダイウイルスcDNAの構築
F遺伝子欠失型SeVベクター(WO00/70070)のcDNA(pSeV18+NotI/ΔF)をNotIで消化し、そのNotI部位にCTB-Aβ15, CTB-Aβ15x2, CTB-Aβ15x4, CTB-Aβ15x8フラグメントを挿入し、CTB-Aβ15, CTB-Aβ15x2, CTB-Aβ15x4, CTB-Aβ15x8遺伝子搭載F遺伝子欠失型SeV cDNA(pSeV18+CTB-Aβ15/ΔF, pSeV18+CTB-Aβ15x2/ΔF, pSeV18+CTB-Aβ15x4/ΔF, pSeV18+CTB-Aβ15x8/ΔF)を構築した。
[実施例22] Aβペプチド発現能の比較
(1)Western blotting
構築したベクターの感染と発現をウエスタンブロット法により評価した。
SeVベクターを感染させた細胞の破砕液および培養上清は等量のSDS-PAGE用サンプルbufferと混和し、98℃で5分間熱変成した。15%のアクリルアミドゲルでSDS-PAGEを行い、セミドライブロッティング法によりPVDF膜へ転写を行った。5%ミルク/TBS-Tでブロッキングを行い、抗Aβ抗体(6E10)と反応させた後、2次抗体としてHRP標識された抗マウスIgGと反応させ、化学発光基質SuperSignal West Femtoを用いてCCDカメラにより検出を行った。
その結果、CTB-Aβ42、CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8のBHK細胞内における発現と培地中への分泌が確認された。CTB-Aβ15x8の発現量はCTB-Aβ42の発現量より多く、CTB-Aβ15x8の培地中へ分泌も、CTB-Aβ42の培地中へ分泌に対して非常に多いことが示された(図12)。
(2)GM1-ELISA
ガングリオシドGM1を固相化したプレートを用いてCTBのGM1に対する結合を評価した。
ガングリオシドGM1 (5μg/mL)を96ウェルプレート (Nunc,MaxiSorp plate)の各ウェルに固相化させ、20% BlockingOne(ナカライテスク)でブロッキングした後、SeVベクターを感染させた細胞の培養上清(20倍〜2百万倍希釈)を加え、HRP標識された6E10抗体と反応させ、TMB発色基質を用いて検出した。結合量の評価はプレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。
その結果、培地中に分泌されたCTB-Aβ42、CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8はGM1に結合し、CTB-Aβ15x8はCTB-Aβ42の10倍、CTB-Aβ15はCTB-Aβ15x8の100倍結合しており、Aβ15の繰り返しが増えるほどGM1に対する結合能が低下していることが示された(図13)。
[実施例23] 構築した各種SeVベクターによる、正常マウスでの抗Aβ抗体惹起能の評価
(1)正常マウス(筋肉内投与CTB-Aβ42とCTB-Aβ15x8の比較)
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ42遺伝子、CTB-Aβ15x8遺伝子、GFP遺伝子を搭載したSeVベクターを各5x107 CIU/headのタイターで筋肉内投与(右後肢)し、抗体価の評価を行った。上記処置14日後、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。Aβ1-42ペプチド(5μg/mL)を96ウェルプレート (Nunc,MaxiSorp plate)の各ウェルに固相化させ、20% BlockingOne(ナカライテスク)でブロッキングした後、マウス血漿を加え(300〜30万倍希釈)、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を反応させ、TMB発色基質を用いて検出した。Aβ抗体価の評価は、プレートリーダーでの吸光度測定(O.D.450)により行った。標準抗体として抗Aβ抗体(6E10)を用いた。
その結果、CTB-Aβ42遺伝子投与群(n=6)およびCTB-Aβ15x8遺伝子投与群(n=6)においてAβ抗体価が上昇し、ControlであるGFP遺伝子投与群(n=6)ではAβ抗体価の上昇が見られなかった(図14)。CTB-Aβ15x8遺伝子投与群の抗体価はCTB-Aβ42遺伝子投与群の12.23倍であった。
(2)正常マウス(筋肉内、皮内、点鼻投与)
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを5x106 CIU/headと5x107 CIU/headのタイターで鼻腔内、皮内、筋肉内(右後肢)に投与し、Control群としてGFP遺伝子を搭載したSeVベクターを5x107 CIU/headのタイターで筋肉内投与(右後肢)し、抗体価の評価を行った。上記処置14日後、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。
その結果、Control群を除く全ての投与群においてAβ抗体価が上昇した。皮内投与群では他の投与群に比べて抗体価が低く、鼻腔内投与群では同タイターの筋肉内投与群に比べ高い抗体価が得られた(図15)。
(3)正常マウス(点鼻投与)
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ15、CTB-Aβ15x2、CTB-Aβ15x4、CTB-Aβ15x8、Control群としてGFP遺伝子を搭載したSeVベクターを5x107 CIU/headのタイターで鼻腔内に投与し、抗体価の評価を行った。
その結果、いずれも投与群においても、Control群に比べて有意に抗体価が上昇した。CTB-Aβ15x8投与群に比べ、CTB-Aβ15、CTB-Aβ15x4投与群において特に高いAβ抗体価が得られた(図16)。
[実施例24] 構築した各種SeVベクターによる、正常マウスでの抗Aβ抗体惹起におけるブースト効果の評価
(1) 正常マウス(筋注):精製CTB-Aβ42蛋白によるブースト
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ42遺伝子を搭載したSeVベクターを各5x107 CIU/headのタイターで筋肉内投与(右後肢)し、14、28日後に大腸菌で生産したCTB-Aβ42タンパクをそれぞれ20μg/PBS/head、100μg/PBS/head、100μg/IFA(不完全フロイントアジュバント)/headで筋肉内投与(右後肢)し、抗体価の評価を行った。上記処置14日ごとに、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。
その結果、CTB-Aβ42遺伝子で免役し、CTB-Aβ42タンパクを追加免役した群では顕著な抗Aβ抗体上昇が得られた(図17)。2回ブースト後のAβ抗体価は20μgブースト群で32μg/ml、100μgブースト群で107μg/ml、100μg+IFAブースト群で25.9μg/mlであった。
(2) 正常マウス(筋注):SeVベクターによるブースト−1
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ42遺伝子およびCTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを5x107 CIU/headのタイターで筋肉内投与(右後肢)し、56日後に同SeVベクターを同タイターで筋肉内投与(右後肢)し、抗体価の評価を行った。
上記処置14、28日後、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。
その結果、CTB-Aβ15x8遺伝子ブースト群において顕著なAβ抗体価の上昇が得られた(図18)。一方、CTB-Aβ42遺伝子ブースト群では、上記のCTB-Aβ15x8遺伝子ブースト群と比べると、Aβ抗体価の上昇は弱かった。
(3)正常マウス(筋注):SeVベクターによるブースト−2
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ15x8遺伝子またはCTB-Aβ42遺伝子を搭載したSeVベクターを5x106 CIU/head および5x107 CIU/headのタイターで筋肉内投与(右後肢)し、56日後に同SeVベクターを同タイターで筋肉内投与(右後肢)し、抗体価の評価を行った。
上記処置14、28日後、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。
その結果、両ベクターともブーストの明確な効果が得られたが、CTB-Aβ15x8遺伝子ブースト群において得に顕著なAβ抗体価の上昇が得られた(図19)。
(4) 正常マウス(点鼻投与):SeVベクターによるブースト
C57BL/6Nマウス にCTB-Aβ15x8遺伝子を搭載したSeVベクターを5x106 CIU/head および 5x107 CIU/headのタイターで鼻腔内投与し、56日後に同SeVベクターを同タイターで鼻腔内投与し、抗体価の評価を行った。
上記処置14、28日後、マウスから血液を採取し、血漿中の抗Aβ抗体量を測定した。
その結果、CTB-Aβ15x8遺伝子ブースト群において3/3の割合で顕著なAβ抗体価の上昇が得られた(図20)。
[実施例25] 構築した各種SeVベクターによる、APPモデルマウスでの有効性評価:筋注
(1) 抗Aβ抗体価
アルツハイマー病のモデルマウスであるAPPトランスジェニックマウス(Tg2576)(13ヶ月齢)にSeV18+CTB-Aβ18x5/ΔF(CTB-Aβ15x8とも記す)、又はSeV18+CTB-Aβ42/ΔF(CTB-Aβ42とも記す)、対照群としてGFP遺伝子を搭載したSeVベクター(SeV18+GFP/ΔF;以下、「GFP」とも記す)を5x107 CIU/headで筋肉内投与(右後肢)した。14、28日後、CTB-Aβ42遺伝子投与群の半分に大腸菌で生産したCTB-Aβ42タンパクを筋肉内投与(右後肢)した。SeVベクター投与から14、28、42、56日後に血漿中のAβ抗体価を測定した。
その結果、CTB-Aβ15x8遺伝子投与群において顕著なAβ抗体価の上昇が観察された。CTB-Aβ42遺伝子投与群においてはAβ抗体価がほとんど上昇しない個体が半分存在し、Aβ抗体価の上昇もCTB-Aβ15x8遺伝子投与群に対して低かった。CTB-Aβ42タンパクブースト群においてはブーストによるAβ抗体価の上昇は見られなかった(図21)。
(2) 脳内Aβ量:ELISA
上記APPマウスより、SeVベクター投与開始56日後に脳組織を採材し、脳組織左半球中のAβ量をELISAにより測定した。脳組織をTBS中で超音波ホモジナイズし、35,000gで1時間遠心後、上清をAβ可溶性画分として採取、沈殿を10%ギ酸中で超音波ホモジナイズし、1M Trisを用いて中和、Aβ不溶性画分として採取した。和光純薬工業のAβ42 ELISAキットおよびAβ40 ELISAキットを用いて脳内Aβの量を測定した。その結果、不溶性画分中のAβ量はCTB-Aβ15x8遺伝子投与群においてGFP遺伝子投与群に比べ80%程度に低下していた。CTB-Aβ42遺伝子投与群ではAβ量の低下は見られなかった。CTB-Aβ42タンパクブースト群においては若干のAβ量低下が見られた。可溶性画分中のAβ量はCTB-Aβ15x8遺伝子投与群においてGFP遺伝子投与群に比べ50%程度に低下していた。CTB-Aβ42遺伝子投与群ではAβ量の低下は見られなかった。CTB-Aβ42タンパクブースト群におけるAβ量は60〜70%に低下していた(図22)。
(3)SeV18+CTB-Aβ15x8/ΔFによる老人斑消失効果
センダイウイルスベクターを筋注投与したマウスから、投与後8週間(15ヶ月齢)の時点で各群を解剖し、右脳半球を病理組織検査用に10%中性緩衝ホルマリン液に浸漬固定し、パラフィン包埋後、脳正中裂より約2mmの部位の脳組織縦断切片を得た。上記切片組織中のAβ蛋白や老人斑を検出するために、70%ギ酸で処理し、5% H2O2で内因性ペルオキシダーゼ活性を失活させた。抗Aβ抗体(6E10抗体、1000倍希釈)と反応させた後、ペルオキシダーゼ標識二次抗体を加え、DAB発色を行った。また、顕微鏡に連結させた3CCDカメラ用いて撮影し、各例20-30枚の画像ファイルを合成し(図23)、嗅球、大脳新皮質および海馬の各領域におけるAβ蓄積部分の占める面積を画像解析ソフトNIH imageを用いて全例同一条件にて測定した。そして、各測定部位に占めるAβ蓄積部分の面積率を計算した。また、そのときの計測に使用された老人斑の個数も比較した。その結果、図24に示すように、とくに海馬における老人斑面積率が減少傾向を示した。
(4)SeV18+CTB-Aβ15x8/ΔF投与の安全性の検討
治療群およびコントロール群から、上記(3)と同様にして投与後8週間経過時(15ヶ月齢)のパラフィン切片のHE染色標本および抗Iba-1抗体(ミクログリア)染色標本を用いて中枢神経系における炎症性細胞浸潤およびミクログリア活性化の有無を確認した。その結果、コントロール群、治療群ともに、脳のいずれの部位においても、炎症細胞浸潤は全く観察されず、本発明のベクターが中枢神経系の炎症を起こさないことが実証された。
また、ミクログリアの活性化は両群の動物の老人斑周囲に観察されたが、ベクター投与群の動物では老人斑が減少する傾向にあったことと平行して、ミクログリアの占める面積率も減少する傾向にあった。
本発明により、RNAウイルスベクターからの組み換え蛋白質の発現量を上昇させることが可能となった。本発明のRNAウイルスベクターを遺伝子導入用ベクターとして利用することで、効果的な遺伝子治療・遺伝子ワクチン・モノクローナル抗体作製等を実施することができる。

Claims (25)

  1. 組み換え蛋白質をコードするRNAウイルスベクターであって、該蛋白質が、AB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてコードされていることを特徴とするベクター。
  2. AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、請求項1に記載のベクター。
  3. 該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、請求項1または2に記載のベクター。
  4. 該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、請求項3に記載のベクター。
  5. 該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、請求項1から4のいずれかに記載のベクター。
  6. 該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、請求項1から5のいずれかに記載のベクター。
  7. RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、請求項1から6のいずれかに記載のベクター。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載のベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載のベクターが導入された細胞。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載のベクターを発現させる工程を含む、組み換え蛋白質の製造方法。
  11. 組み換え蛋白質の発現量が上昇したRNAウイルスベクターの製造方法であって、該蛋白質をAB5トキシンBサブユニットと融合させた融合蛋白質をコードするRNAウイルスベクターを製造する工程を含む方法。
  12. AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、請求項11に記載の方法。
  13. 該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、請求項11または12に記載の方法。
  14. 該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、請求項13に記載の方法。
  15. 該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、請求項11から14のいずれかに記載の方法。
  16. 該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、請求項11から15のいずれかに記載の方法。
  17. RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、請求項11から16のいずれかに記載の方法。
  18. RNAウイルスベクターからの組み換え蛋白質の発現量を上昇させる方法であって、該組み換え蛋白質をAB5トキシンBサブユニットとの融合蛋白質としてRNAウイルスベクターから発現させる工程を含む方法。
  19. AB5トキシンBサブユニットがコレラトキシンB(CTB)である、請求項18に記載の方法。
  20. 該組み換え蛋白質が120アミノ酸以下のペプチドである、請求項18または19に記載の方法。
  21. 該組み換え蛋白質が50アミノ酸以下のペプチドである、請求項20に記載の方法。
  22. 該組み換え蛋白質が神経ペプチドまたは内分泌性ペプチドである、請求項18から21のいずれかに記載の方法。
  23. 該組み換え蛋白質が低溶解性蛋白質である、請求項18から22のいずれかに記載の方法。
  24. RNAウイルスベクターがマイナス鎖RNAウイルスベクターである、請求項18から23のいずれかに記載の方法。
  25. 請求項1から7のいずれかに記載のベクターからなるウイルス様粒子。
JP2010535850A 2008-10-31 2009-10-30 組み換え蛋白質の発現を増強する方法 Pending JPWO2010050586A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008282151 2008-10-31
JP2008282151 2008-10-31
PCT/JP2009/068682 WO2010050586A1 (ja) 2008-10-31 2009-10-30 組み換え蛋白質の発現を増強する方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2010050586A1 true JPWO2010050586A1 (ja) 2012-03-29

Family

ID=42128945

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010535850A Pending JPWO2010050586A1 (ja) 2008-10-31 2009-10-30 組み換え蛋白質の発現を増強する方法

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20120088819A1 (ja)
EP (1) EP2363472B1 (ja)
JP (1) JPWO2010050586A1 (ja)
CN (1) CN102272302B (ja)
WO (1) WO2010050586A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103071160A (zh) * 2011-10-24 2013-05-01 四川百利药业有限责任公司 一种老年痴呆症基因疫苗
MX354516B (es) 2011-10-27 2018-03-08 Wellstat Ophthalmics Corp Vectores que codifican el factor de viabilidad de conos derivado de bastones.
JP6873530B2 (ja) * 2013-03-15 2021-05-19 イン3バイオ・リミテッドIn3Bio Ltd. 自己組織化合成タンパク質(Self−Assembling Synthetic Proteins)
AU2017344059B2 (en) 2016-10-11 2021-12-23 Pharma Cinq, Llc Fusion protein between short form rod-derived cone viability factor and a hydrophilic peptide

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008536476A (ja) * 2005-04-20 2008-09-11 ディナベック株式会社 アルツハイマー病の治療のための安全性に優れた鼻腔内投与可能遺伝子ワクチン

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4873192A (en) 1987-02-17 1989-10-10 The United States Of America As Represented By The Department Of Health And Human Services Process for site specific mutagenesis without phenotypic selection
JP2824434B2 (ja) 1989-11-28 1998-11-11 財団法人化学及血清療法研究所 新規発現ベクター
DK0864645T3 (da) 1995-10-31 2005-10-24 Dnavec Research Inc Negativstrenget RNA-virusvektor med autonom replikeringsaktivitet
KR100525687B1 (ko) 1995-11-01 2005-11-25 가부시끼가이샤 디나벡 겡뀨쇼 재조합체 센다이바이러스
US6008329A (en) 1998-03-06 1999-12-28 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Army Method for purifying cholera toxin
DE60039292D1 (de) 1999-05-18 2008-08-07 Dnavec Research Inc Ribonukleoproteinkomplex aus paramyxovirus
AU4614600A (en) 1999-05-18 2000-12-05 Dnavec Research Inc. Paramyxoviridae virus vector defective in envelope gene
WO2001018223A1 (fr) 1999-09-06 2001-03-15 Dnavec Research Inc. Paramoxyvirus possedant une sequence d'initiation de transcription modifiee
JPWO2001072340A1 (ja) * 2000-03-30 2004-01-08 株式会社ディナベック研究所 センダイウイルスベクターを用いたaidsウイルスワクチン
CN1455816A (zh) * 2000-06-23 2003-11-12 美国氰胺公司 从cDNA中挽救犬热病病毒
EP1437593A1 (en) 2001-09-18 2004-07-14 Dnavec Research Inc. Method of examining (-)-strand rna virus vector having lowered ability to form grains and method of constructing the same
JP4999330B2 (ja) 2004-01-22 2012-08-15 株式会社ディナベック研究所 サイトメガロウイルスエンハンサーおよびニワトリβ−アクチンプロモーターを含むハイブリッドプロモーターを利用したマイナス鎖RNAウイルスベクターの製造方法
EP1685848A1 (en) * 2005-01-26 2006-08-02 Plant Research International B.V. Oral vaccines for fish
WO2006137517A1 (ja) 2005-06-24 2006-12-28 Dnavec Corporation 幼少個体への遺伝子導入用ベクター
KR20080094910A (ko) 2006-01-17 2008-10-27 디나벡크 가부시키가이샤 신규 단백질 발현계
CN101517079A (zh) 2006-07-13 2009-08-26 生物载体株式会社 非复制型副粘病毒科病毒载体

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008536476A (ja) * 2005-04-20 2008-09-11 ディナベック株式会社 アルツハイマー病の治療のための安全性に優れた鼻腔内投与可能遺伝子ワクチン

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6014016810; Arch. Virol., 2000, Vol.145, p.2557-2573 *
JPN6014016813; J. Biotechnol., 2005, Vol.119, p.93-105 *
JPN6014016815; Biotechnol. Appl. Biochem., 2006, Vol.43, p.165-170 *
JPN6014016818; Colloids Surf. B: Biointerfaces, 2007, Vol.55, p.159-163 *

Also Published As

Publication number Publication date
CN102272302B (zh) 2015-04-15
WO2010050586A1 (ja) 2010-05-06
CN102272302A (zh) 2011-12-07
EP2363472A1 (en) 2011-09-07
US20120088819A1 (en) 2012-04-12
EP2363472B1 (en) 2014-12-10
EP2363472A4 (en) 2012-08-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2010050585A1 (ja) アルツハイマー病治療用ベクター
US20090246170A1 (en) Therapeutic Agent For Alzheimer's Disease
EP1891215B1 (en) Highly safe intranasally administrable gene vaccines for treating alzheimer's disease
US7521043B2 (en) Gene therapy for tumors using minus-strand RNA viral vectors encoding immunostimulatory cytokines
JP6769880B2 (ja) 改良されたマイナス鎖rnaウイルスベクター
JP6927883B2 (ja) 改良されたパラミクソウイルスベクター
WO2003102183A9 (fr) Vecteurs de paramyxovirus codant pour un anticorps et son utilisation
WO2010050586A1 (ja) 組み換え蛋白質の発現を増強する方法
KR20090114431A (ko) 약독화 마이너스 가닥 rna 바이러스
JP4903159B2 (ja) アルツハイマー病の治療のための安全性に優れた鼻腔内投与可能遺伝子ワクチン
EP1916298B1 (en) Methods for producing monoclonal antibodies
EP1642966B1 (en) Minus strand rna viral vectors carrying a gene with altered hypermutable regions
JP2005034105A (ja) 原形質膜粒子の放出を促進する方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121009

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20121009

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140423

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140821