JPWO2010044380A1 - 塔状構造物、及び塔状構造物の構築方法 - Google Patents

塔状構造物、及び塔状構造物の構築方法 Download PDF

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Abstract

曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物、及びこの塔状構造物の構築方法を提供することを課題とする。基盤上に立てられた鉄筋コンクリート製の塔状構造体の上下方向にプレストレスを導入し、塔状構造体の引張応力発生部にコンクリートのひび割れが生じるのを防ぐ。また、この塔状構造体の周方向にプレストレスを導入してコンファインド効果を発揮させることにより、塔状構造体の圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能を向上させることができる。そして、これらのプレストレス導入効果により、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物を構築することができる。

Description

本発明は、コンクリートによって形成される塔状構造物、及びこの塔状構造物の構築方法に関する。
風力発電用タワーや送電線塔などの塔状構造物は、鋼製であることが多い。しかし、鋼製の塔状構造物は、鉄筋コンクリート製の塔状構造物と比べて一般的に耐久性に劣る。例えば、錆の発生や疲労による耐力の低下が問題となる。
図28に示すように、特許文献1の柱状構造物300は、周方向と鉛直方向とにコンクリートパネル302を配置し、これらのコンクリートパネル302を連結することによって構築されている。
特許文献1の柱状構造物300のような鉄筋コンクリート製の塔状構造物では、地震や風等によって大きな曲げモーメントが作用した場合に、この曲げモーメントに起因して引張応力が発生する部分(以下、「引張応力発生部」とする)にコンクリートのひび割れが生じることが危惧される。
このコンクリートのひび割れを抑制する対策としては、塔状構造物を形成するコンクリートに鉛直方向のプレストレスを導入する方法が一般に効果的とされている。
例えば、図29に示すように、特許文献2のコンクリート製風車支持タワー304は、複数個のコンクリート製筒型セグメント306を上下に積み重ねて構築されている。そして、各コンクリート製筒型セグメント306には、ポストテンション方式によるプレストレスが鉛直方向に導入されている。
これによって、地震や風等により作用する大きな曲げモーメントによって引張応力発生部に生じるコンクリートのひび割れを防ぐことが可能となり、コンクリート製風車支持タワー304の剛性及び耐久性を向上させることができる。
しかし、このコンクリート製風車支持タワー304では、曲げモーメントに起因して圧縮応力が発生する部分(以下、「圧縮応力発生部」とする)に、曲げモーメントに起因して発生する圧縮応力と、鉛直方向に導入されたプレストレスとが合わさった大きな圧縮力が作用する。さらに、コンクリート製風車支持タワー304の下部では、圧縮応力発生部にコンクリート製風車支持タワー304の上部の重量も作用することになる。
よって、コンクリート製風車支持タワー304を形成するコンクリートが十分な圧縮強度を有していない場合には、圧縮応力発生部に発生する圧縮応力度が許容圧縮応力度を超過して、曲げ圧縮破壊に至る可能性がある。
一般に、塔状構造物に作用する曲げモーメントの大きさは、塔状構造物の高さが高いほど大きくなるので、このような曲げ破壊の現象は、高い塔状構造物の場合に特に懸念される。
なお、コンクリート製風車支持タワー304が、鉄筋コンクリート製以外のコンクリート製である場合においても上記同様の問題が生ずる。
特開2008−101363号公報 特開2000−283019号公報
本発明は係る事実を考慮し、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物、及びこの塔状構造物の構築方法を提供することを課題とする。
本発明の第1態様の塔状構造物は、基盤上に立てられたコンクリート製の塔状構造体と、前記塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入するプレストレス導入手段と、を有する。
本発明の第1態様の塔状構造物では、コンクリート製の塔状構造体が基盤上に立てられている。そして、プレストレス導入手段により、この塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入する。
よって、プレストレス導入手段により塔状構造体の上下方向にプレストレスを導入するので、地震や風等によって塔状構造体に作用する曲げモーメントに起因して発生する曲げ引張応力を低減することができる。これにより、塔状構造体の引張応力発生部にコンクリートのひび割れが生じるのを防ぐことが可能となり、塔状構造体の耐久性を向上させることができる。
また、プレストレス導入手段により塔状構造体の周方向にプレストレスを導入するので、塔状構造体を周方向に拘束することによるコンファインド効果が発揮され、塔状構造体の圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能を向上させることができる。
そして、これらのプレストレス導入手段の効果により、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物を構築することができる。
本発明の第2態様の塔状構造物は、前記塔状構造体が鉄筋コンクリート製である。
本発明の第2態様の塔状構造物では、塔状構造体が鉄筋コンクリート製なので、搭状構造体に作用する引張力を鉄筋が負担することによりコンクリートに発生するひび割れを低減することができる。
本発明の第3態様の塔状構造物は、前記塔状構造体が繊維補強コンクリート製である。
本発明の第3態様の塔状構造物では、塔状構造体に設けられる鉄筋を減らす又は無くすことができる。塔状構造体を無筋にすれば、鉄筋に発生する錆によって生じるコンクリートの耐久性低下を防ぐことができる。
本発明の第4態様の塔状構造物は、前記プレストレス導入手段は緊張力が加えられる緊張材を有し、該緊張材同士が接触しないように配置されている。
本発明の第4態様の塔状構造物では、プレストレス導入手段は、緊張力が加えられる緊張材を有している。そして、緊張材同士は、接触しないように配置されている。
よって、緊張材同士は接触しないので、緊張材に確実に緊張力を加えることができる。
本発明の第5態様の塔状構造物は、前記緊張材は、前記塔状構造体の上下方向に配置される上下方向緊張材と、前記塔状構造体の周方向に配置される周方向緊張材と、からなり、前記上下方向緊張材と前記周方向緊張材とは、前記塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に配置されている。
本発明の第5態様の塔状構造物では、塔状構造体の上下方向に配置される上下方向緊張材と、塔状構造体の周方向に配置される周方向緊張材とによって、緊張材が構成されている。
そして、塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に、上下方向緊張材と周方向緊張材とが配置されている。
よって、上下方向緊張材と周方向緊張材とを接触させずに、塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる。
また、塔状構造体の上下方向と周方向とに導入するプレストレスを個々に調整できる。すなわち、塔状構造体の上下方向と周方向とに最適な大きさのプレストレスを導入することができる。
本発明の第6態様の塔状構造物は、前記緊張材は、前記塔状構造体の軸を中心にして螺旋状に配置される螺旋方向緊張材からなる。
本発明の第6態様の塔状構造物では、塔状構造体の軸を中心にして螺旋状に配置される螺旋方向緊張材によって、緊張材が構成されている。
よって、塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の1つの層で螺旋方向緊張材同士を接触させずに、塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる。
また、塔状構造体の上下方向と周方向とに同時にプレストレスを導入できる。すなわち、プレストレスを導入する回数を減らすことができるので、プレストレス導入作業の煩雑さを低減できる。
また、塔状構造体の軸線に対する螺旋方向緊張材の傾き角度を調整することによって、塔状構造体の上下方向と周方向とに導入するプレストレスの大きさを調整することができる。
本発明の第7態様の塔状構造物は、前記螺旋方向緊張材は、前記塔状構造体の外壁面上に配置されている。
本発明の第7態様の塔状構造物では、塔状構造体の外壁面上に螺旋方向緊張材が配置されているので、螺旋方向緊張材を含めた塔状構造体の水平断面形状が上下方向に対して一様にならない。また、この水平断面形状は非対称の形状になる。これらにより、塔状構造体の風下側に発生するカルマン渦に起因して生じる渦励振を低減することができる。
本発明の第8態様の塔状構造物は、前記螺旋方向緊張材は、前記塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に対をなして配置され、互いに反対方向に旋回している。
本発明の第8態様の塔状構造物では、塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に対をなして螺旋方向緊張材が配置される。そして、対をなす螺旋方向緊張材同士は、互いに反対方向に旋回している。
よって、対となる螺旋方向緊張材は、同心円層又は同心多角形層の異なる層に配置されるので、螺旋方向緊張材同士を接触させずに、塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる。
また、対をなす螺旋方向緊張材同士は互いに反対方向に旋回しているので、プレストレスの導入により塔状構造体に生じる捩れを、防止することができる。
本発明の第9態様の塔状構造物は、前記塔状構造体は、複数のプレキャストコンクリートユニットを積み上げて形成されている。
本発明の第9態様の塔状構造物では、複数のプレキャストコンクリートユニットを積み上げることにより、塔状構造体が形成されている。
よって、プレキャストコンクリートユニットの組立て(積み上げ)によって塔状構造体を形成することができるので、施工性を向上させることができる。
また、プレキャストコンクリートユニットを工場で製作することによって、プレキャストコンクリートユニットの品質を向上させることができる。
また、塔状構造体に導入される上下方向のプレストレスを利用して、プレキャストコンクリートユニット同士を圧着接合することができる。
本発明の第10態様の塔状構造物は、前記プレキャストコンクリートユニットは、該プレキャストコンクリートユニットを周方向に分割した複数のプレキャストコンクリート部材によって形成されている。
本発明の第10態様の塔状構造物では、プレキャストコンクリートユニットを周方向に分割した複数のプレキャストコンクリート部材によって、プレキャストコンクリートユニットが形成されている。
よって、プレキャストコンクリート部材の組立て(配置)によってプレキャストコンクリートユニットを形成することができるので、施工性を向上させることができる。
また、プレキャストコンクリート部材を工場で製作することによって、プレキャストコンクリート部材の品質を向上させることができる。
また、塔状構造体に導入される周方向のプレストレスを利用して、プレキャストコンクリート部材同士を圧着接合することができる。
本発明の第11態様の塔状構造物は、同一形状に形成され複数配置された前記プレキャストコンクリート部材の間に調整部材が配置されている。
本発明の第11態様の塔状構造物では、複数のプレキャストコンクリート部材が同一形状に形成されている。そして、配置されたこれら複数のプレキャストコンクリート部材の間に調整部材が配置されている。
よって、複数配置されるプレキャストコンクリート部材を同一形状にすることによりプレキャストコンクリート部材の大量生産が可能となるので、低コスト化を図ることができる。
本発明の第12態様の塔状構造物は、同一形状に形成され複数配置された前記プレキャストコンクリート部材の間に現場打ちコンクリートが打設されている。
本発明の第12態様の塔状構造物では、複数のプレキャストコンクリート部材が同一形状に形成されている。そして、配置されたこれら複数のプレキャストコンクリート部材の間に現場打ちコンクリートが打設されている。
よって、複数配置されるプレキャストコンクリート部材を同一形状にすることによりプレキャストコンクリート部材の大量生産が可能となるので、低コスト化を図ることができる。
また、プレキャストコンクリート部材の製作寸法や配置位置の誤差を、現場打ちコンクリートによって吸収することができるので、プレキャストコンクリート部材の製作や配置に高い精度を必要としない。
本発明の第13態様の塔状構造物は、前記塔状構造体は、風力発電用タワーである。
本発明の第13態様の塔状構造物では、塔状構造体を風力発電用タワーとしている。
風力発電施設は、多くの発電量を得るために、沿岸部、洋上、山岳部等の風の強い地域に設置されることが多い。よって、一般に、風力発電施設のナセル(ブレード)を最上部に設ける風力発電用タワーには大きな風荷重が作用する。
また、風力発電施設の設置基数の増加に伴って、風力発電における風況に適した場所や、風力発電施設の建設に適した場所が減少してきており、少ない基数の風力発電施設によって多くの発電量を確保することが望まれている。
よって、風力発電施設のブレード径は大きくなり、また、多くの風を受けさせるためにブレードは高い位置に設けられることになるので、風力発電用タワーの高さは高くなる傾向にある。
これに伴って、風力発電用タワーに作用する曲げモーメントも大きくなるが、塔状構造体には曲げ破壊が起きにくいので、塔状構造体を風力発電用タワーとして用いることができる。
本発明の第14態様の塔状構造物の構築方法は、第7態様〜第12態様の何れか1つに記載の塔状構造物を構築する塔状構造物の構築方法において、前記プレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入し、該積み上げた複数のプレキャストコンクリートユニットを一体にして第1構造体を形成する第1構造体形成工程と、前記第1構造体の上に、次の前記プレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入し、該積み上げた複数のプレキャストコンクリートユニットを一体にして第2構造体を形成する第2構造体形成工程と、前記第1構造体と前記第2構造体とをプレストレスにより接合する接合工程と、を有する。
本発明の第14態様の塔状構造物の構築方法では、第1構造体形成工程と、第2構造体形成工程と、接合工程とを有している。
第1構造体形成工程では、プレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入し、積み上げた複数のプレキャストコンクリートユニットを一体にして第1構造体を形成する。
第2構造体形成工程では、第1構造体の上に次のプレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入する。
接合工程では、第1構造体と第2構造体とをプレストレスにより接合する。
よって、プレキャストコンクリートユニットの組み立て(積み上げ)作業によって合理的に塔状構造物を構築することができるので、施工コストを低く抑えることができ、工期を短くすることができる。
本発明は上記構成としたので、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物、及びこの塔状構造物の構築方法を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物を示す立面図である。 図1のA−A矢視図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットを示す斜視図である。 図2のB−B矢視図である。 図2のC−C矢視図である。 図1のA−A矢視図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの変形例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの変形例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す正面図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、PC鋼棒同士が接続される前の状態を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、PC鋼棒同士が接続されて、上下に配置されたプレキャストコンクリート部材同士が接合された状態を示す図である。 図11のD−D矢視図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、PC鋼棒同士が接続される前の状態を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、PC鋼棒同士が接続されて、上下に配置されたプレキャストコンクリート部材同士が接合された状態を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る同心円層を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物を示す立面図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットを示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係る挿入孔を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る塔状構造物の構築方法を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図である。 図20AのE−E矢視図である。 図20AのF−F矢視図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、プレキャストコンクリートユニット同士が接合される前の状態を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレキャストコンクリートユニットの接合方法の変形例を示す説明図であり、プレキャストコンクリートユニット同士が接合された状態を示す図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造体の変形例を示す立面図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造体の変形例を示す立面図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造体の変形例を示す立面図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造体の変形例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造物の変形例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造物の変形例を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る塔状構造物の変形例を示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係る緊張材の交差例を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る緊張材の交差例を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る緊張材の交差の変形例を示す説明図である。 図27AのG−G矢視図である。 図27AのH−H矢視図である。 従来の柱状構造物を示す説明図である。 従来のコンクリート製風車支持タワーを示す説明図である。
図面を参照しながら、本発明の塔状構造物、及び塔状構造物の構築方法を説明する。
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1の立面図に示すように、塔状構造物10では、風力発電用タワーとしての鉄筋コンクリート製の塔状構造体12が、基盤としての地盤14に基礎杭24を介して支持された基礎部26上に立てられている。塔状構造体12の頂上部には、ブレード16及びナセル18が設けられている。
塔状構造体12の上下方向及び周方向には、プレストレス導入手段(不図示)によってプレストレスが導入されている。
プレストレス導入手段は、後に説明する緊張材としての上下方向緊張材(PC鋼より線54、58)及び周方向緊張材(PC鋼より線44)を有している。これらの上下方向緊張材(PC鋼より線54、58)及び周方向緊張材(PC鋼より線44)に、緊張力が加えられることにより、塔状構造体12の上下方向及び周方向にプレストレスが導入される。
塔状構造体12は、複数のプレキャストコンクリートユニット20、22を交互に積み上げることにより形成されている。
図1のA−A矢視図である図2の平面図に示すように、プレキャストコンクリートユニット20、22は、一定の壁厚を有し平断面が正八角形状の筒体であり、プレキャストコンクリートユニット20、22を周方向に分割した複数の鉄筋コンクリート製のプレキャストコンクリート部材28によって形成されている。図2では、プレキャストコンクリートユニット22を周方向に4つに分割したプレキャストコンクリート部材28が示されている。
各プレキャストコンクリート部材28には、プレキャストコンクリートユニット20、22の周方向に貫通孔30、32を形成するシース管34、36が埋設されている。
貫通孔30は、1つのシース管34によって形成され、貫通孔32は、プレキャストコンクリート部材28を図2のように正八角形状に配置したときに繋がる2つのシース管36によって形成される。
貫通孔30、32の端部には、支圧板38及び定着具40が設けられるスペースとなる切欠き部42が形成されている。また、貫通孔30、32は、図3の斜視図に示すように、上下に複数形成されている。
プレキャストコンクリートユニット20、22を製作する場合には、まず、図2に示すように、プレキャストコンクリート部材28を正八角形状に配置する。
次に、貫通孔30、32に、周方向緊張材としてのPC鋼より線44を挿入する。すなわち、プレキャストコンクリートユニット20、22(塔状構造体12)の周方向に周方向緊張材44を配置する。
次に、PC鋼より線44の両端を緊張ジャッキ(不図示)により引っ張ってPC鋼より線44に緊張力を加え、PC鋼より線44に緊張力が加えられたこの状態を保持するように、支圧板38を介して設けられた定着具40によってPC鋼より線44の両端部をプレキャストコンクリート部材28に定着する。これにより、塔状構造体12の周方向に配置される周方向緊張材としてのPC鋼より線44によって、塔状構造体12の周方向にプレストレスが導入される。
そして、プレキャストコンクリート部材28にPC鋼より線44を定着した後に、シース管34、36内にグラウトWを充填し硬化させる。
このようにして、PC鋼より線44により塔状構造体12の周方向にプレストレスを導入し、さらに、貫通孔36に挿入されたPC鋼より線44により、プレキャストコンクリート部材28同士が圧着接合されて、一体化したプレキャストコンクリートユニット20、22を形成する。
また、このように、塔状構造体12の周方向へのプレストレスの導入方法には、コンクリートが固まった後にプレストレスを導入するポストテンション方式が用いられている。
図2のB−B矢視図である図4A、及び図2のC−C矢視図である図4Bに示すように、積み上げられた各プレキャストコンクリートユニット20、22の上端部には凸部46が形成され、下端部にはこの凸部46が挿入される凹部48が形成されている。
これにより、積み上げられたプレキャストコンクリートユニット20、22を一体化する前のプレキャストコンクリートユニット20、22を積み上げただけの状態においても、プレキャストコンクリートユニット20、22が脱落することを防ぐことができる。なお、凸部46をプレキャストコンクリートユニット20、22の下端部に形成し、凹部48をプレキャストコンクリートユニット20、22の上端部に形成してもよい。また、凸部及び凹部は連続して形成する必要はなく、コッター形状のものをプレキャストコンクリートユニット20、22の上端部又は下端部に配置してもよい。また、プレキャストコンクリートユニット20、22の上端部及び下端部に凹部を形成し、これらの凹部にグラウト材を充填してコッターを形成してもよい。また、プレキャストコンクリートユニット20とプレキャストコンクリートユニット22との接合面のせん断力伝達が可能であれば、このような凸部や凹部を形成しなくてもよい。
なお、説明の都合上、図4A、図4Bでは、プレキャストコンクリートユニット20をプレキャストコンクリートユニット20A〜20Dとし、プレキャストコンクリートユニット22をプレキャストコンクリートユニット22A〜22Dとしている。さらに、積み上げられているプレキャストコンクリートユニット20、22を下から上へ順に、プレキャストコンクリートユニット20A、22A、20B、22B、20C、22C、20D、22Dとしている。また、塔状構造体12の周方向にプレストレスを導入するPC鋼より線44やシース管34、36等は省略している。
図4A、図4Bに示すように、プレキャストコンクリートユニット20、22の内壁面には、支圧板50を略水平に支持するブラケット52が固定されている。
図4Aでは、ブラケット52は、プレキャストコンクリートユニット20A、22B、20C、22Dに設けられている。
ブラケット52に支持された支圧板50間には上下方向緊張材としてのPC鋼より線54が配置されており、このPC鋼より線54には緊張ジャッキ(不図示)により緊張力が加えられている。そして、PC鋼より線54に緊張力が加えられたこの状態を保持するように、定着具56によってPC鋼より線54の両端部がプレキャストコンクリートユニット20、22に定着されている。
これにより、プレキャストコンクリートユニット20A、22A、20B、22Bは一体化され(第1構造体60)、プレキャストコンクリートユニット20C、22C、20D、22Dは一体化されている(第2構造体62)。
図4Bでは、ブラケット52は、プレキャストコンクリートユニット22A、20B、22C、20Dに設けられ、緊張力が加えられた上下方向緊張材としてのPC鋼より線58により、プレキャストコンクリートユニット20B、22B、20C、22Cは一体化されている(第3構造体64)。
ここで、第1構造体60と第2構造体62とは、PC鋼より線54の隣に配置されたPC鋼より線58によって導入されるプレストレスにより、圧着接合される。これにより、塔状構造体12の上下方向に配置される上下方向緊張材としてのPC鋼より線54、58によって、塔状構造体12の上下方向にプレストレスが導入される。
なお、図2に示されたPC鋼より線54は、図4Aの配置になっており、図2に示されたPC鋼より線58は、図4Bの配置になっている。
このように、塔状構造体12の上下方向へのプレストレスの導入方法には、コンクリートが固まった後にプレストレスを導入するポストテンション方式が用いられている。
図1、2に示すように、プレキャストコンクリートユニット22の外壁面上には、台形平断面を有する角柱状の突起部66がコンクリートによって形成されている。これは、突起部66を含めた塔状構造体12の水平断面形状が、塔状構造体12の上下方向に対して一様にならなくするためのものであり、これによって、塔状構造体12の風下側に発生するカルマン渦に起因して生じる渦励振を低減することができる。
図2で示したプレキャストコンクリートユニット22、及びPC鋼より線44、54、58のみを描いた図5の平面図に示すように、上下方向緊張材としてのPC鋼より線54、58は、同心多角形層68Aに配置され、周方向緊張材としてのPC鋼より線44は、同心多角形層68Bに配置されている。
ここで、同心多角形層68Aとは、塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)の内壁面の内側に形成される一定の厚さtを有する領域を意味し、同心多角形層68Cとは、塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)の外壁面の外側に形成される一定の厚さtを有する領域を意味し、同心多角形層68Bとは、塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)の内壁面と外壁面との間に形成される領域を意味する。t1、は、緊張材(PC鋼材)の配置が可能な領域を説明するものであり、適宜設定することができる。
このように、同心多角形層68A、68B、68Cは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層なので、上下方向緊張材(PC鋼より線54、58)と周方向緊張材(PC鋼より線44)とは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層の異なる層に配置されていることになる。
次に、塔状構造物10の構築方法について説明する。
まず、図6Aの斜視図に示すように、基礎杭24上に鉄筋コンクリート製の基礎部26を形成する。基礎部26は、塔状構造体12を確実に支持できる構造であれば他の構造であってもよい。例えば、基礎部26をプレストレストコンクリートによって形成してもよいし、鋼製にしてもよい。
次に、図6Bの斜視図に示すように、現場の仮組みヤード等において、クレーン等を用いてプレキャストコンクリート部材28を正八角形状に配置する。
次に、図6Cの斜視図に示すように、図2で示したプレキャストコンクリートユニット22とほぼ同じ(プレキャストコンクリートユニット22に突起部66が形成されていない)構成のプレキャストコンクリートユニット20を製作する。すなわち、貫通孔30、32に、PC鋼より線44を挿入する。そして、PC鋼より線44に緊張力を加えてプレキャストコンクリートユニット20(塔状構造体12)の周方向にプレストレスを導入し、さらに、貫通孔36に挿入されたPC鋼より線44によって、プレキャストコンクリート部材28同士を圧着接合して一体化したプレキャストコンクリートユニット20を形成する。
次に、図7Dの斜視図に示すように、基礎部26上に図6Cで製作されたプレキャストコンクリートユニット20を載置する。そして、基礎部26にプレキャストコンクリートユニット20を接合する。この接合方法は、塔状構造体12に大きな曲げモーメントが作用した場合においても十分に耐えることができる方法であればよい。例えば、図4A、図4Bで示したのと同様の方法を用いて、上下方向緊張材によって基礎部26にプレキャストコンクリートユニット20を圧着接合してもよい。
次に、図7Eの斜視図に示すように、基礎部26上に4つのプレキャストコンクリートユニット20A、22A、20B、22Bを積み上げた状態で、図4Aで示したように、PC鋼より線54によって塔状構造体12の上下方向にプレストレスを導入し、これら4つのプレキャストコンクリートユニット20A、22A、20B、22Bを一体にして第1構造体60を形成する(第1構造体形成工程)。
次に、図7Fの斜視図に示すように、第1構造体60上に次の4つのプレキャストコンクリートユニット20C、22C、20D、22Dを積み上げる。そして、この状態で、図4Aで示したように、PC鋼より線54によって塔状構造体12の上下方向にプレストレスを導入し、4つのプレキャストコンクリートユニット20C、22C、20D、22Dを一体にして第2構造体62を形成する(第2構造体形成工程)。
次に、図4Bで示したように、PC鋼より線58によって塔状構造体12の上下方向にプレストレス導入し、第1構造体60と第2構造体62とを圧着接合する(接合工程)。
あとは、必要な高さになるまで図7E、図7Fの作業を繰り返し行って、塔状構造物10を構築する。
このように、図6A〜図6C、及び図7D〜図7Fで示した塔状構造物10の構築方法では、プレキャストコンクリートユニット20、22の組み立て(積み上げ)作業によって合理的に塔状構造物10を構築することができるので、施工コストを低く抑えることができ、工期を短くすることができる。
次に、本発明の第1の実施形態の作用及び効果について説明する。
第1の実施形態では、図4A、図4Bで示したように、PC鋼より線54、58(プレストレス導入手段)により塔状構造体12の上下方向にプレストレスを導入するので、地震や風等によって塔状構造体12に作用する曲げモーメントに起因して発生する曲げ引張応力を低減することができる。これにより、塔状構造体12の引張応力発生部にコンクリートのひび割れが生じるのを防ぐことが可能となり、塔状構造体12の耐久性を向上させることができる。
また、図2で示したように、PC鋼より線44(プレストレス導入手段)により塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)の周方向にプレストレスを導入するので、塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)を周方向に拘束することによるコンファインド効果が発揮され、塔状構造体12の圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能を向上させることができる。
そして、これらのプレストレス導入手段の効果により、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物10を構築することができる。
また、上下方向緊張材としてのPC鋼より線54、58と周方向緊張材としてのPC鋼より線44とは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層の異なる層に配置されている(PC鋼より線54、58は、同心多角形層68Aに配置され、PC鋼より線44は、同心多角形層68Bに配置されている)ので、PC鋼より線54、58とPC鋼より線44とを接触させずに、塔状構造体12の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる(図5を参照のこと)。これによって、PC鋼より線44、54、58に確実に緊張力を加えることができる。
また、塔状構造体12の上下方向と周方向とに導入するプレストレスを個々に調整できる。すなわち、塔状構造体12の上下方向と周方向とに最適な大きさのプレストレスを導入することができる。
また、図1、及び図7D〜図7Fで示したように、プレキャストコンクリートユニット20、22の組立て(積み上げ)によって塔状構造体12を形成することができるので、施工性を向上させることができる。
また、プレキャストコンクリートユニット20、22を工場で製作することによって、プレキャストコンクリートユニット20、22の品質を向上させることができる。
また、塔状構造体12に導入される上下方向のプレストレスを利用して、プレキャストコンクリートユニット20、22同士を圧着接合することができる。
また、図2、及び図6B、図6Cで示したように、プレキャストコンクリート部材28の組立て(配置)によってプレキャストコンクリートユニット20、22を形成することができるので、施工性を向上させることができる。
また、プレキャストコンクリート部材28を工場で製作することによって、プレキャストコンクリート部材28の品質を向上させることができる。
また、塔状構造体12(プレキャストコンクリートユニット20、22)に導入される周方向のプレストレスを利用して、プレキャストコンクリート部材28同士を圧着接合することができる。
なお、第1の実施形態では、塔状構造体12の上下方向及び周方向へのプレストレスの導入方法に、ポストテンション方式を用いた例を示したが、塔状構造体12の上下方向及び周方向へのプレストレスの導入方法に、コンクリートが固まる前にプレストレスを導入するプレテンション方式を用いてもよい。
また、図8の平面図に示すように、工場や現場ヤード等で製作する際にプレテンション方式により周方向にプレストレスが導入されているプレキャストコンクリート部材28同士を、PC鋼より線44によって圧着接合するようにしてもよい。図8には、埋設された周方向緊張材としてのPC鋼より線72によってプレテンション方式のプレストレスが周方向に導入されたプレキャストコンクリート部材28の例が示されている。
また、図9の平面図に示すように、工場や現場ヤード等で製作する際にプレテンション方式により上下方向にプレストレスが導入されているプレキャストコンクリート部材28同士を、PC鋼より線によって圧着接合するようにしてもよい。
図9には、埋設された上下方向緊張材としてのPC鋼より線74によってプレキャストコンクリート部材28の上下方向にプレテンション方式のプレストレスを導入し、上下に配置されたプレキャストコンクリート部材28同士を上下方向緊張材としてのPC鋼より線76によって圧着接合した例が示されている。
図9では、同心多角形層68AにPC鋼より線76が配置され、同心多角形層68BにPC鋼より線44が配置され、同心多角形層68CにPC鋼より線74が配置されていることになる。すなわち、図9の実施形態においても、上下方向緊張材としてのPC鋼より線74、76と周方向緊張材としてPC鋼より線44とは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層の異なる層に配置されているので、PC鋼より線74、76とPC鋼より線44とを接触させずに、塔状構造体12の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる。
また、塔状構造体10の内壁面の正面図である図10に示すように、ポストテンション方式により上下方向にプレストレスが導入され上下に配置されたプレキャストコンクリート部材28同士を、PC鋼より線によって圧着接合するようにしてもよい。
図10には、上下方向緊張材としてのPC鋼より線78によってプレキャストコンクリート部材28の上下方向にポストテンション方式のプレストレスを導入し、上下に配置されたこのプレキャストコンクリート部材28同士を上下方向緊張材としてのPC鋼より線80によって圧着接合した例が示されている。この場合、PC鋼より線78によるプレストレスの導入は、プレキャストコンクリート部材28の工場製作時に行ってもよいし、PC鋼より線80によるプレキャストコンクリート部材28同士の圧着接合作業の直前に行ってもよい。
また、塔状構造体10の内壁面の正面図である図11A、図11B、及び図11BのD−D矢視図である図12に示すように、プレキャストコンクリート部材28に設けられた上下方向緊張材としてのPC鋼棒82同士を機械式継ぎ手84等によって接続し、これらのPC鋼棒82により塔状構造体12の上下方向にプレストレスを導入するようにしてもよい。
図11Aには、PC鋼棒82同士が接続される前の状態が示され、図11Bには、PC鋼棒82同士が接続されて、上下に配置されたプレキャストコンクリート部材28(プレキャストコンクリートユニット20、22)同士が接合された状態が示されている。
この場合、PC鋼棒82同士を接続した直後にはPC鋼棒82に緊張力を加えずに、まず、全てのプレキャストコンクリートユニット20、22を積み上げて、これらに設けられたPC鋼棒82の全ての接続を完了させる。
そして、接続されたPC鋼棒82の両端を緊張ジャッキ(不図示)により引っ張ってPC鋼棒82に緊張力を加え、PC鋼棒82に緊張力が加えられたこの状態を保持するように、定着具によってPC鋼棒82の両端を塔状構造体12に定着する。
さらに、塔状構造体12にPC鋼棒82を定着した後に、シース管86内にグラウトを充填し硬化させる。
なお、図12に示すように、同心多角形層68AにPC鋼棒82が配置されているので、上下方向緊張材としてのPC鋼棒82と周方向緊張材とは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層の異なる層に配置されていることになり、PC鋼棒82と周方向緊張材とを接触させずに、塔状構造体12の上下方向及び周方向にプレストレスを導入することができる。
また、塔状構造体10の内壁面の正面図である図13A、図13Bの正面図に示すように、PC鋼棒82を接続する毎にこのPC鋼棒82に緊張力を加えて各プレキャストコンクリート部材28にプレストレスを導入し、支圧板88及びナット90によってPC鋼棒82の端部を各プレキャストコンクリート部材28に定着するようにしてもよい。
図13Aには、PC鋼棒82同士が接続される前の状態が示され、図13Bには、PC鋼棒82同士が接続されて、上下に配置されたプレキャストコンクリート部材28(プレキャストコンクリートユニット20、22)同士が接合された状態が示されている。
この場合、各プレキャストコンクリート部材28にPC鋼棒82の端部を定着する毎に、シース管86内にグラウトWを充填し硬化させる。
また、これまでに説明した、塔状構造体12へのさまざまなプレストレス導入方法を組み合わせて用いてもよい。
また、第1の実施形態では、塔状構造体12を正八角形状の水平断面を有する角筒状の構造体としたが、塔状構造体12は、他の形状の構造体であってもよい。例えば、正方形や三角形等の多角形の水平断面を有する角筒状の構造体としてもよいし、円筒状、角柱状、円柱状、角錐状、又は円錐状の構造体としてもよい。
また、第1の実施形態では、上下方向緊張材を同心多角形層68Aに配置し、周方向緊張材を同心多角形層68Bに配置した例を示したが、上下方向緊張材と周方向緊張材とは、塔状構造体12の軸70を中心とした同心多角形層の異なる層に配置されていればよい。
例えば、図14に示すように、塔状構造体を円筒状の構造体92とした場合には、構造体92の軸94を中心とした同心円層96A〜96Cの異なる層に上下方向緊張材と周方向緊張材とが配置されていればよい。
ここで、同心円層96Aとは、構造体92の内壁面の内側に形成される一定の厚さtを有する領域を意味し、同心円層96Cとは、構造体92の外壁面の外側に形成される一定の厚さtを有する領域を意味し、同心円層96Bとは、構造体92の内壁面と外壁面の間に形成される領域を意味する。t3、は、緊張材(PC鋼材)の配置が可能な領域を説明するものであり、適宜設定することができる。
また、第1の実施形態では、現場の仮組みヤード等で製作されたプレキャストコンクリートユニット20、22を積み上げることによって、塔状構造体12を形成する例を示したが、他の組み立て方法で行ってもよい。例えば、プレキャストコンクリート部材28を1つずつ接合することによって塔状構造体12を形成してもよい。
また、第1の実施形態では、プレキャストコンクリート部材28同士やプレキャストコンクリートユニット20、22同士をプレストレスにより圧着接合した例を示したが、他の方法で接合してもよい。例えば、プレキャストコンクリート部材28に設けられた鉄筋をプレキャストコンクリート部材28の端部から突出させておいて、この突出した鉄筋同士を機械式継ぎ手等で接続し、プレキャストコンクリート部材28の接合面同士の間に形成される隙間にグラウトを充填するようにしてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した緊張材を螺旋方向緊張材としたものである。したがって、第2の実施形態の説明において第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に適宜省略して説明する。
図15の立面図に示すように、塔状構造物98では、風力発電用タワーとしての鉄筋コンクリート製の塔状構造体100が、基盤としての地盤14に基礎杭24を介して支持された基礎部130上に立てられている。塔状構造体100の頂上部には、ブレード16及びナセル18が設けられている。
塔状構造体100には、プレストレス導入手段(不図示)によって、塔状構造体100の螺旋方向にプレストレスが導入されている。
プレストレス導入手段は、後に説明する緊張材としての螺旋方向緊張材(PC鋼より線132、134)を有している。この螺旋方向緊張材(PC鋼より線132、134)に緊張力が加えられることにより、塔状構造体100の上下方向及び周方向にプレストレスが導入される。すなわち、PC鋼より線132、134に加えられた斜め方向の緊張力の鉛直成分が、塔状構造体100の上下方向に導入されるプレストレスとなり、PC鋼より線132、134に加えられた斜め方向の緊張力の水平成分が、塔状構造体100の周方向に導入されるプレストレスとなる。
塔状構造体100は、複数のプレキャストコンクリートユニット104を積み上げることにより形成されている。
図16の斜視図に示すように、プレキャストコンクリートユニット104は、一定の壁厚を有する円筒状の構造体であり、鉄筋コンクリートによって形成されている。
各プレキャストコンクリートユニット104の壁内部には、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状にシース管108が配置され、このシース管108により貫通孔110が形成されている。
各プレキャストコンクリートユニット104の外壁面上には、台形横断面を有する角柱状の突起部112がコンクリートによって形成されている。この突起部112は、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に設けられている。
突起部112の内部には、突起部112の軸方向に沿ってシース管114が配置されており、このシース管114により貫通孔116が形成されている。
すなわち、貫通孔110、116は、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に形成されている。そして、各プレキャストコンクリートユニット104を所定の平面配置で積み上げたときに、これらの貫通孔110、116はそれぞれ1つに繋がり、図17に示すように、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に連通する1つの挿入孔118、120となる(貫通孔110により挿入孔118が形成され、貫通孔116により挿入孔120が形成されている)。
また、貫通孔110、116は、挿入孔118と挿入孔120とが、互いに反対方向に旋回するように形成されている(挿入孔118は矢印122の方向に旋回し、挿入孔120は矢印124の方向に旋回している)。なお、図17では、挿入孔118と挿入孔120との相対関係をわかり易くするために、説明の都合上、挿入孔118と挿入孔120の直径を大きく異ならせて描いている。
また、図16に示すように、積み上げられる各プレキャストコンクリートユニット104の上端部には凸部126が形成され、下端部にはこの凸部126が挿入される凹部128が形成されている。これにより、積み上げられたプレキャストコンクリートユニット104を一体化する前の複数のプレキャストコンクリートユニット104を積み上げただけの状態においても、プレキャストコンクリートユニット104が脱落することを防ぐことができる。
次に、塔状構造物98の構築方法について説明する。
まず、図18Aの斜視図に示すように、基礎杭24上に鉄筋コンクリート製の基礎部130を形成する。基礎部130は、塔状構造体100を確実に支持できる構造であれば他の構造であってもよい。例えば、基礎部130をプレストレストコンクリートによって形成してもよいし、鋼製にしてもよい。
次に、図18Bの斜視図に示すように、基礎部130上に図16で示したプレキャストコンクリートユニット104を載置する。このとき、プレキャストコンクリートユニット104の平面配置を調整して、プレキャストコンクリートユニット104の下端部に形成された凹部128に、基礎部130の上端部に形成された凸部126が挿入されるようにする。
そして、基礎部130にプレキャストコンクリートユニット104を接合する。この接合方法は、塔状構造体100に大きな曲げモーメントが発生した場合においても十分に耐えることができる方法であればよい。例えば、図4A、図4Bで示したのと同様の方法を用いて、上下方向緊張材によって基礎部130にプレキャストコンクリートユニット104を圧着接合してもよい。
次に、図18Cの斜視図に示すように、基礎部130上に載置したプレキャストコンクリートユニット104の上に、プレキャストコンクリートユニット104を積み上げていく。
次に、図19Dの斜視図に示すように、必要な高さになるまでプレキャストコンクリートユニット104の積み上げを行って、塔状構造体100を形成する。
そして、全てのプレキャストコンクリートユニット104の積み上げが完了したときに、各プレキャストコンクリートユニット104に形成された貫通孔110、116が連通し、図17で示したように、挿入孔118、120がそれぞれ形成される。
次に、挿入孔118、120に、螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132、134を挿入する。このとき、PC鋼より線132、134は、挿入孔118、120と同様に、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に配置される。
また、PC鋼より線132、134は、互いに反対方向に旋回するように配置される(図17において、PC鋼より線132は、矢印122の方向に旋回し、PC鋼より線134は、矢印124の方向に旋回する)。
すなわち、第2の実施形態では、塔状構造体100の上下方向及び周方向にプレストレスを導入する緊張材が、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に配置される螺旋方向緊張材(PC鋼より線132、134)によって構成されている。
次に、図19Eの斜視図に示すように、PC鋼より線132、134の両端を緊張ジャッキ136により引っ張ってPC鋼より線132、134に緊張力を加え、PC鋼より線132、134に緊張力が加えられたこの状態を保持するように、定着具(不図示)によってPC鋼より線132、134の両端を塔状構造体100に定着する。
このようにして、螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132、134により塔状構造体100の螺旋方向(上下方向及び周方向)にプレストレスを導入し、さらに、このプレストレスによってプレキャストコンクリートユニット104同士を圧着接合し、積み上げられた全てのプレキャストコンクリートユニット104を一体化して塔状構造物98を構築する。
次に、塔状構造体100にPC鋼より線132、134の両端を定着した後に、シース管108、114内にグラウトを充填し硬化させる。
このようにして、図18A〜図18C、及び図19D、図19Eで示した塔状構造物98の構築方法では、プレキャストコンクリートユニット104の組み立て(積み上げ)作業によって合理的に塔状構造物98を構築することができるので、施工コストを低く抑えることができ、工期を短くすることができる。
また、このように、塔状構造体100の螺旋方向(上下方向及び周方向)へのプレストレスの導入方法には、コンクリートが固まった後にプレストレスを導入するポストテンション方式が用いられている。
次に、本発明の第2の実施形態の作用及び効果について説明する。
第2の実施形態では、PC鋼より線132、134(プレストレス導入手段)により塔状構造体100の上下方向にプレストレスを導入するので、地震や風等によって塔状構造体100に作用する曲げモーメントに起因して発生する曲げ引張応力を低減することができる。これにより、塔状構造体100の引張応力発生部にコンクリートのひび割れが生じるのを防ぐことが可能となり、塔状構造体100の耐久性を向上させることができる。
また、PC鋼より線132、134(プレストレス導入手段)により塔状構造体100の周方向にプレストレスを導入するので、塔状構造体100を周方向に拘束することによるコンファインド効果が発揮され、塔状構造体100の圧縮耐力、曲げ耐力、変形性能を向上させることができる。
そして、これらのプレストレスの導入効果により、曲げ破壊が起きにくいコンクリート製の塔状構造物を構築することができる。
また、塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に配置される螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132、134によって緊張材が構成されているので、塔状構造体100の軸106を中心とした同心円層の1つの層で螺旋方向緊張材同士を接触させずに、塔状構造体100の上下方向及び周方向にプレストレスを確実に導入することができる。
ここで、同心円層とは、図14で説明した同心円層96A〜96Cを意味し、第2の実施形態では、図16に示すように、同心円層96BにPC鋼より線132が配置され、同心円層96CにPC鋼より線134が配置されている。
また、螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132、134によって、塔状構造体100の上下方向と周方向とに同時にプレストレスを導入できる。すなわち、プレストレスを導入する回数を減らすことができるので、プレストレス導入作業の煩雑さを低減できる。
また、塔状構造体100の軸線106に対する螺旋方向緊張材(PC鋼より線132、134)の傾き角度を調整することによって、塔状構造体100の上下方向と周方向とに導入するプレストレスの大きさを調整することができる。
また、対となる螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132とPC鋼より線134とは、同心円層の異なる層に配置されるので、PC鋼より線132とPC鋼より線134とを接触させずに、塔状構造体100の上下方向及び周方向にプレストレスを確実に導入することができる。
また、対をなすPC鋼より線132とPC鋼より線134とは互いに反対方向に旋回しているので、プレストレスの導入により塔状構造体100に生じる捩れを防止することができる。
また、塔状構造体100の外壁面上に螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線134及び突起部112が設けられているので、PC鋼より線134及び突起部112を含めた塔状構造体100の水平断面形状が上下方向に対して一様にならない。また、この水平断面形状は非対称の形状になる。これらにより、塔状構造体100の風下側に発生するカルマン渦に起因して生じる渦励振を低減することができる。
また、図15、及び図18B、図18Cで示したように、プレキャストコンクリートユニット104の組立て(積み上げ)によって塔状構造体100を形成することができるので、施工性を向上させることができる。
また、プレキャストコンクリートユニット104を工場で製作することによって、プレキャストコンクリートユニット104の品質を向上させることができる。
また、塔状構造体100に導入される上下方向のプレストレスを利用して、複数のプレキャストコンクリートユニット104同士を圧着接合することができる。
また、プレキャストコンクリートユニット104を複数のプレキャストコンクリート部材(不図示)によって構成し、このプレキャストコンクリート部材同士を圧着接合するようにしてもよい。
なお、第2の実施形態では、塔状構造体100の上下方向及び周方向へのプレストレスの導入方法に、ポストテンション方式を用いた例を示したが、塔状構造体100の上下方向及び周方向へのプレストレスの導入方法に、コンクリートが固まる前にプレストレスを導入するプレテンション方式を用いてもよい。
また、図20A〜図20Cの斜視図に示すように、工場や現場ヤード等で製作する際にプレテンション方式により螺旋方向に個々にプレストレスが導入されているプレキャストコンクリートユニット104同士を、PC鋼より線138によって圧着接合するようにしてもよい。
図20Bは、図20Aの斜視図のE−E矢視図であり、図20Cは、図20AのF−F矢視図である。埋設された螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線140によってプレテンション方式のプレストレスが螺旋方向に個々に導入されたプレキャストコンクリートユニット104の例が示されている。プレキャストコンクリートユニット104の外壁面に形成されたコンクリート製の突起部146内に設けられたPC鋼より線138の両端部は、定着具144によって支圧板142を介してプレキャストコンクリートユニット104に定着されている。
また、ポストテンション方式により螺旋方向にプレストレスが導入されているプレキャストコンクリート部材28同士を、PC鋼より線によって圧着接合するようにしてもよい。この場合、ポストテンション方式によるプレストレスの導入は、工場製作時に行ってもよいし、PC鋼より線によるプレキャストコンクリート部材28同士の圧着接合作業の直前に行ってもよい。
また、これまでに説明した、塔状構造体100へのさまざまなプレストレス導入方法を組み合わせて用いてもよい。
また、第2の実施形態では、塔状構造体100を一定の壁厚を有する円筒状の構造体としたが、塔状構造体100は、他の形状の構造体であってもよい。例えば、正方形や三角形等の多角形の水平断面を有する角筒状の構造体としてもよいし、角筒状、角柱状、円柱状、角錐状、又は円錐状の構造体としてもよい。
また、第2の実施形態では、螺旋方向緊張材を同心円層96B、96Cに配置した例を示したが、複数配置される螺旋方向緊張材は、塔状構造体100の軸106を中心とした同心円層の異なる層に配置されていればよい。
また、螺旋方向緊張材同士が接触しないように配置できれば、同心円層の同じ層に複数の螺旋方向緊張材を配置してもよい。
緊張材同士の接触をさける工夫としては、例えば、図25に示すように、複数の螺旋方向緊張材の交点にあたる部分に、X形状の連結部材182を設け、連結部材182の端部に形成された雌ネジに、螺旋方向緊張材180の端部に形成された雄ネジをねじ込むようにしてもよい。
また、図26に示すように、立体交差状に螺旋方向緊張材190、192を配置し、螺旋方向緊張材190、192が設けられている突起部186、184が重なり合う交差部188の厚みを厚くしてもよい。
また、例えば、異なる同心円層にそれぞれ多数の螺旋緊張材を配置して、螺旋緊張材が正面視にてメッシュ状に配置されるようにしてもよい。
また、図27A、図27AのG−G矢視図である図27B、図27AのH−H矢視図である図27Cに示すように、正面視にて交差するように異なる深さの溝200、202を形成し、それぞれの溝200、202に螺旋方向緊張材204、206を配置してもよい。
例えば、螺旋方向緊張材204、206の横断面の直径をdとしたときに、溝200の深さを0.5×dとし、溝202の深さを1.5×dとすれば、螺旋方向緊張材204と螺旋方向緊張材206との干渉を回避させることができる。
また、第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット104を積み上げることによって、塔状構造体100を形成する例を示したが、他の組み立て方法で行ってもよい。例えば、プレキャストコンクリートユニット104を複数のプレキャストコンクリート部材によって形成されるようにし、このプレキャストコンクリート部材を1つずつ接合することによって塔状構造体100を形成してもよい。
また、第2の実施形態では、必要な高さになるまでプレキャストコンクリートユニット104の積み上げを行った後に、螺旋方向緊張材としてのPC鋼より線132、134により塔状構造体100に螺旋方向のプレストレスを導入した例を示したが、螺旋方向のプレストレスを導入するタイミングは適宜決めればよい。例えば、プレキャストコンクリートユニット104を1つ積み上げる毎に螺旋方向のプレストレスを導入してもよいし、レキャストコンクリートユニット104を4つ積み上げる毎に螺旋方向のプレストレスを導入してもよい。
また、第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット104同士をプレストレスにより圧着接合した例を示したが、他の方法で接合してもよい。例えば、図21A、図21Bに示すように、プレキャストコンクリートユニット104に設けられた鉄筋148同士を機械式継ぎ手150等で接続し、プレキャストコンクリートユニット104の接合面同士の間に形成される隙間にグラウトWを充填するようにしてもよい。
図21Aは、プレキャストコンクリートユニット104同士が接合される前の状態であり、図21Bは、プレキャストコンクリートユニット104同士が接合された(鉄筋148同士が接続された)状態である。
図21では、シース管152によって形成された収容孔154に、プレキャストコンクリートユニット104の接合面から突出しないように機械式継ぎ手150を収容しておく。
そして、プレキャストコンクリートユニット104同士を接合するときに、収容孔154から機械式継ぎ手150を引き出し、シース管158により形成された挿入孔160に挿入して、機械式継ぎ手150を介して鉄筋148同士を接続する。
このようにすれば、水平方向又は横方向にプレキャストコンクリートユニット104を移動させてプレキャストコンクリートユニット104を配置することができる。なお、ボルト156は、載置されるプレキャストコンクリートユニット104のレベル調整のために設けられている。
また、第2の実施形態では、螺旋方向緊張材(PC鋼より線132、134)が塔状構造体100の軸106を中心にして螺旋状に配置されているが、この螺旋状とは、一般的に円柱面上を回転しながら軸方向に一定の速度で進んでいく時にできる渦巻状の空間曲線を意味している。但し、螺旋方向緊張材は1回以上回転しなくてもよい。すなわち、軸方向に延設され且つ周方向に傾斜して形成されているものであればよい。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明した。
なお、第1及び第2の実施形態では、緊張材をPC鋼より線やPC鋼棒とした例を示したが、緊張力を確実に加えられる線材又は軸材であればよい。PC鋼より線、PC鋼線、PC鋼棒等のPC鋼材を用いるのが好ましい。
また、第1の実施形態では、塔状構造体12を構成するブロックを、この塔状構造体12を上下に複数分割したプレキャストコンクリートユニット20、22、及びこのプレキャストコンクリートユニット20、22を周方向に複数分割したプレキャストコンクリート部材28とした例を示し、第2の実施形態では、塔状構造体100を構成するブロックを、この塔状構造体100を上下に複数分割したプレキャストコンクリートユニット104とした例を示したが、塔状構造体を構成するブロックは、塔状構造体をどのように分割されたものであってもよい。
例えば、図22Aの立面図に示すように、塔状構造体162を構成するブロックを、塔状構造体162を周方向のみに分割したブロック162Aとしてもよい。
また、図22Bの立面図に示すように、塔状構造体164を構成するブロックを、上方は塔状構造体164を上下に分割したブロック164Aとし、下方は塔状構造体164を上下及び周方向に分割したブロック164Bとしてもよい。
また、図22Cの立面図に示すように、塔状構造体166を構成するブロックを、下方は塔状構造体166を上下に分割したブロック166Bとし、上方は塔状構造体162を上下及び周方向に分割したブロック166Aとしてもよい。
また、例えば、図23に示すような塔状構造体168のように、同一形状に形成されたプレキャストコンクリート部材としての複数の標準部材170と、配置された複数の標準部材170の間に配置される調整部材172とによって、塔状構造体を形成してもよい。
このようにすれば、同一形状の標準部材170の大量生産が可能となるので、低コスト化を図ることができる。
また、調整部材172を配置しないで、配置された複数の標準部材170の間に現場打ちコンクリートを打設してもよい。
このようにすれば、標準部材170の製作寸法や配置位置の誤差を、現場打ちコンクリートによって吸収することができるので、標準部材170の製作や配置に、高い精度を必要としない。
また、第1及び第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット20、22、104やプレキャストコンクリート部材28によって塔状構造体12、100を形成した例を示したが、現場打ちコンクリートによって塔状構造体12、100を形成してもよいし、プレキャストコンクリートブロックと現場打ちコンクリートを併用して塔状構造体12、100を形成してもよい。
また、プレキャストコンクリートユニット20、22、104やプレキャストコンクリート部材28は、工場で製作してもよいし、現場ヤードで製作してもよい。
また、第1の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット22の外壁面上に突起部66を設けた例を示し、第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット104の外壁面上に突起部112を設けた例を示したが、上下方向に対して塔状構造体の水平断面形状が一様になっていなければよい。例えば、図24A〜図24Cの斜視図に示すような、塔状構造物174、176、178のようにしてもよい。
また、塔状構造体の風下側に発生するカルマン渦に起因して生じる渦励振が問題とならない場合には、これらの突起部は設けなくてもよい。
また、第1の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット20、22やプレキャストコンクリート部材28をプレストレスにより圧着接合した例を示し、第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット104をプレストレスにより圧着接合した例を示したが、プレキャストコンクリートユニット20、22、104やプレキャストコンクリート部材28の接合面にコッターを設けて接合強度を向上させてもよい。
プレキャストコンクリートユニット20、22、104や、プレキャストコンクリート部材28の接合に圧着接合を用いれば、現場施工によって接合部に施すグラウト作業を低減する又は無くすことができる。
また、第1及び第2の実施形態で示した緊張材により導入するプレストレス量は、塔状構造体に発生する応力状態を考慮して調整すればよい。緊張材により導入するプレストレス量は、緊張ジャッキにより緊張材に加える緊張力の大きさ、緊張材の断面積の大きさ、緊張材の配置数等を変えることによって調整することができる。
例えば、主に風荷重が作用する塔状構造体の上部では、渦励振低減手段としての突起部66を設け、プレキャストコンクリートユニットやプレキャストコンクリート部材の圧着接合が可能な程度のプレストレスを導入し、そして、曲げモーメントの大きくなる塔状構造体の下部では、上下方向及び横方向にプレストレスを導入する緊張材を多く配置するようにしてもよい。
また、第1の実施形態で示したプレキャストコンクリートユニット20、22や、第2の実施形態で示したプレキャストコンクリートユニット104には、説明の都合上、鉄筋が省略されているが、各プレキャストコンクリートユニットの必要とする強度に応じて適宜設ければよい。
また、第1及び第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット20、22、104を鉄筋コンクリートで形成した例を示したが、鉄筋コンクリート以外のコンクリートによって形成してもよい。例えば、スチールファイバや炭素繊維等を有する繊維補強コンクリートによってプレキャストコンクリートユニット20、22、104(搭状構造体)を形成してもよい。これによって、プレキャストコンクリートユニット20、22、104(搭状構造体)に設けられる鉄筋を減らす又は無くすことができる。プレキャストコンクリートユニット20、22、104を無筋にすれば、鉄筋に発生する錆によって生じるコンクリートの耐久性低下を防ぐことができる。
また、塔状構造体が高層になる場合、一般に、塔状構造体に作用する曲げモーメントは大きくなるので、設計応力度も大きな値としなければならない。
これに対する対策としては、塔状構造体の水平断面を大きくすることにより塔状構造体に発生する応力を小さくし、これによって設計応力度を小さくすることが考えられる。
しかし、太い形状にして水平断面を大きくした塔状構造体を複数のプレキャストコンクリートブロック(第1及び第2の実施形態では、プレキャストコンクリートユニット又はプレキャストコンクリート部材)の接合によって形成する場合、接合作業の回数を減らして施工を容易にする為に分割数(プレキャストコンクリートブロックの個数)を少なくしようとすると、当然に個々のプレキャストコンクリートブロックの大きさも大きくなってしまう。
よって、工場等で製作したプレキャストコンクリートブロックを現場へ輸送するのが困難になる。特に、山岳地に塔状構造体を構築する場合、プレキャストコンクリートブロックの輸送は大きな課題となる。
さらに、塔状構造体の施工において、大きなプレキャストコンクリートブロックの揚重作業は面倒であり、また、大型クレーン等の大きな揚重設備を必要とするので施工コストが高くなってしまう。
高層の塔状構造体の設計応力度が大きな値となることに対する他の対策としては、許容応力度の高い高強度コンクリート材料を用いて塔状構造体を形成することが考えられる。
しかし、高強度コンクリート材料は、材料コストが高く、普通コンクリートに比べてワーカビリティも低いので施工性が悪くなってしまう。
これらの問題に対して、第1及び第2の実施形態では、塔状構造体の周方向にプレストレスを導入することにより発揮されるコンファインド効果によって塔状構造体の許容圧縮応力度を大きくすることができるので、同じコンクリート材料が用いられた(同じ圧縮強度を有する)鉄筋コンクリート製の塔状構造体に比べて断面係数(断面)を小さくすることができる。
すなわち、塔状構造体を細い形状にすることが可能となるので、分割数(プレキャストコンクリートブロックの個数)を減らしてもプレキャストコンクリートブロックを小さくすることができる。
これにより、プレキャストコンクリートブロックの輸送や揚重作業が容易になり、小さな揚重設備においても施工が可能となる。
また、塔状構造体の周方向にプレストレスを導入することにより発揮されるコンファインド効果によって塔状構造体の許容圧縮応力度を大きくすることができるので、必要とする許容圧縮応力度よりも小さい許容圧縮応力度特性を有するコンクリート材料を用いることができる。すなわち、高強度コンクリートを用いて塔状構造体を形成しなくてもよい。
よって、流動性の高く、高強度コンクリートと比べて安価なコンクリートを用いることが可能となるので、ワーカビリティ向上や低コスト化を図ることができる。
また、第1及び第2の実施形態では、塔状構造体を風力発電用タワーとして用いた例を示したが、煙突、送電線塔、飛行場の管制塔、テレビ塔、塔状の建物等に用いてもよい。
風力発電施設は、多くの発電量を得るために、沿岸部、洋上、山岳部等の風の強い地域に設置されることが多い。よって、一般に、風力発電施設のナセル(ブレード)を最上部に設ける風力発電用タワーには大きな風荷重が作用する。
また、風力発電施設の設置基数の増加に伴って、風力発電における風況に適した場所や、風力発電施設の建設に適した場所が減少してきており、少ない基数の風力発電施設によって多くの発電量を確保することが望まれている。
よって、風力発電施設のブレード径は大きくなり、また、多くの風を受けさせるためにブレードは高い位置に設けられることになるので、風力発電用タワーの高さは高くなる傾向にある。
これに伴って、風力発電用タワーに発生する曲げモーメントも大きくなるが、本発明の塔状構造体には曲げ破壊が起きにくいので、塔状構造体を風力発電用タワーとして有効に用いることができる。
また、第1及び第2の実施形態では、基盤を地盤14とした例を示したが、これに限らず、例えば基盤を構造物、建物の置上部、杭を介して海底に支持されて洋上に配置される構造体、洋上に浮いて配置される構造体としてもよい。
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、第1及び第2の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
符号10、98、174、176、178は、塔状構造物である。
符号12、100、162、164、166、168は、塔状構造体である。
符号14は、 地盤(基盤)である。
符号20、22、104は、プレキャストコンクリートユニットである。
符号28は、プレキャストコンクリート部材である。
符号44、72は、 PC鋼より線(周方向緊張材、緊張材)である。
符号54、58、74、76、78、80、82は、 PC鋼より線(上下方向緊張材、緊張材)である。
符号60は、第1構造体である。
符号62は、第2構造体である。
符号68A、68B、68Cは、同心多角形層である。
符号70、94、106は、軸である。
符号92は、構造体(塔状構造体)である。
符号96A、96B、96Cは、同心円層である。
符号132、134、138、140は、PC鋼より線(螺旋方向緊張材、緊張材)である。
符号170は、標準部材(プレキャストコンクリート部材)である。
符号172は、調整部材である。
符号180、190、192、204、206は、螺旋方向緊張材(緊張材)である。









Claims (14)

  1. 基盤上に立てられたコンクリート製の塔状構造体と、
    前記塔状構造体の上下方向及び周方向にプレストレスを導入するプレストレス導入手段と、
    を有する塔状構造物。
  2. 前記塔状構造体は、鉄筋コンクリート製である請求項1に記載の塔状構造物。
  3. 前記塔状構造体は、繊維補強コンクリート製である請求項1に記載の塔状構造物。
  4. 前記プレストレス導入手段は緊張力が加えられる緊張材を有し、該緊張材同士が接触しないように配置されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の塔状構造物。
  5. 前記緊張材は、
    前記塔状構造体の上下方向に配置される上下方向緊張材と、
    前記塔状構造体の周方向に配置される周方向緊張材と、
    からなり、
    前記上下方向緊張材と前記周方向緊張材とは、前記塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に配置されている請求項4に記載の塔状構造物。
  6. 前記緊張材は、前記塔状構造体の軸を中心にして螺旋状に配置される螺旋方向緊張材からなる請求項4に記載の塔状構造物。
  7. 前記螺旋方向緊張材は、前記塔状構造体の外壁面上に配置されている請求項6に記載の塔状構造物。
  8. 前記螺旋方向緊張材は、前記塔状構造体の軸を中心とした同心円層又は同心多角形層の異なる層に対をなして配置され、互いに反対方向に旋回している請求項6又は請求項7に記載の塔状構造物。
  9. 前記塔状構造体は、複数のプレキャストコンクリートユニットを積み上げて形成されている請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の塔状構造物。
  10. 前記プレキャストコンクリートユニットは、該プレキャストコンクリートユニットを周方向に分割した複数のプレキャストコンクリート部材によって形成されている請求項9に記載の塔状構造物。
  11. 同一形状に形成され複数配置された前記プレキャストコンクリート部材の間に調整部材が配置されている請求項10に記載の塔状構造物。
  12. 同一形状に形成され複数配置された前記プレキャストコンクリート部材の間に現場打ちコンクリートが打設されている請求項10に記載の塔状構造物。
  13. 前記塔状構造体は、風力発電用タワーである請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の塔状構造物。
  14. 請求項9〜請求項12の何れか1項に記載の塔状構造物を構築する塔状構造物の構築方法において、
    前記プレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入し、該積み上げた複数のプレキャストコンクリートユニットを一体にして第1構造体を形成する第1構造体形成工程と、
    前記第1構造体の上に、次の前記プレキャストコンクリートユニットを複数積み上げた状態でプレストレスを導入し、該積み上げた複数のプレキャストコンクリートユニットを一体にして第2構造体を形成する第2構造体形成工程と、
    前記第1構造体と前記第2構造体とをプレストレスにより接合する接合工程と、
    を有する塔状構造物の構築方法。
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