JPWO2010029925A1 - 新規なプロスタグランジンi2誘導体 - Google Patents

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Abstract

公知のPGI2類とは異なる、新規なプロスタグランジンI2誘導体、またはその薬学的に許容できる塩を提供することである。より詳しくは、7,7−ジフルオロPGI2誘導体(式1)の提供であり、特に、R1、R2は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜3の直鎖アルキル基、R3は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基である。(化1)

Description

本発明は、プロスタグランジンの1位のカルボキシ基がテトラゾール基に置き換わり、かつ、7位に2個のフッ素原子が結合した7,7−ジフルオロプロスタグランジンI誘導体、及び該プロスタグランジンI誘導体を有効成分とする医薬、特に炎症性腸疾患の予防または治療のための医薬、に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところ、日本特許出願番号2008-232133及び2009-168193からの優先権を請求する。
消化管の炎症は、口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門で認められ、急性的な炎症と慢性的な炎症がある。粘膜上皮が物理的または化学的な刺激や細菌やウイルスの感染を受けると炎症が生じ、その程度によりびらんや潰瘍病変を生じる。ストレスによる過度の胃酸分泌は、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を生じる。また、アルコールの過剰摂取は、粘膜血流のうっ滞や胃運動の低下による胃酸の逆流を招き、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や食道炎を生じる。整形外科患者や関節リウマチ患者などでは、非ステロイド性抗炎症剤の長期服薬により、薬剤性の胃潰瘍や十二指腸潰瘍が生じる。また、癌患者では放射線治療に付随して発症する放射性腸炎や抗癌剤治療に付随して発症する薬剤性腸炎が生じる。さらに、結核やアメーバ赤痢などの感染患者では、腸結核やアメーバ性大腸炎などの感染性胃腸炎が生じる。これら以外にも、血流障害に基づく虚血により生じる虚血性腸炎などもある。消化管の炎症性疾患の患者に免疫異常があると、原因を取り除いても、臓器の修復を妨げられ、病態を慢性化させる。これらの消化管の炎症性疾患のうち、炎症が腸管で生じるものは広義の炎症性腸疾患と言われる。
一方、原因が明らかでない炎症性腸疾患もある。潰瘍性大腸炎とクローン病の二つが良く知られ、狭義の炎症性腸疾患である。さらに、類似した疾患である腸管ベーチェット病や単純性潰瘍もある。寛解と再燃を繰り返す難治性の慢性消化管疾患であり、病因の主体は、腸管上皮の防御力の低下、腸管組織に進入する腸内細菌に対する腸管免疫反応の異常によると考えられている。
潰瘍性大腸炎は、直腸から連続して大腸粘膜にびらん、潰瘍を形成する慢性の大腸疾患であり、その症状は、腹痛、下痢、粘血便、発熱等である。一方、クローン病は、口腔から大腸、肛門までのすべての消化管に病変が起こりうる。本症の特徴は、消化管の非連続性の縦走(縦長)潰瘍と敷石像であり、その症状は、腹痛、下痢、発熱や栄養の吸収障害による低栄養や貧血等である。
消化管の炎症性疾患における炎症の予防及び/または治療は、原因が分かる場合、原因の除去や抑制を行う。例えば、胃炎、胃・十二指腸潰瘍などの炎症に対しては、胃酸分泌やその作用を抑制する目的で制酸剤、抗コリン剤、抗ヒスタミンH2受容体拮抗剤、プロトンポンプ阻害剤などが使われる。また、非ステロイド性抗炎症剤が原因の炎症には、その薬剤により産生が阻害されるプロスタグランジンEを補う目的でプロスタグランジンE誘導体などが使われる。
一方、狭義の炎症性腸疾患の予防または治療は、薬物療法、栄養(食事)療法、手術療法がある。薬物療法としては5-アミノサリチル酸製剤(ペンタサ、サラゾピリン)、ステロイド(プレドニゾロン)、免疫抑制剤(アザチオプリン、メルカプトプリン、タクロリムス)、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)などが使われる。
プロスタグランジン(以下、プロスタグランジンをPGと記す)の1位のカルボキシ基の代わりにテトラゾール基を有するPG誘導体については、下記の特許文献1、特許文献2及び非特許文献1に報告されている。
さらに、7,7−ジフルオロPGI類やその製造方法についての報告がある(特許文献3、特許文献4)。また、7,7−ジフルオロPGI類は、循環器系疾患の予防剤あるいは治療剤として有用であると記載されている。
DE2405255号明細書 国際公開03/103664号パンフレット 特開平7−330752号公報 特開2004−256547号公報
J.Med.Chem.1979,22,1340.
本発明の課題は、上記記載の公知のPGI類とは異なる、新規なプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、フッ素原子の有する特異な性質を付与した新規なPG類を合成し、その物性や生理活性を明らかにすべく検討を行った。その結果、プロスタン酸骨格の1位のカルボキシ基がテトラゾール基に置き換わり、2個のフッ素原子が結合した、新規な7,7−ジフルオロPGI誘導体が、非常に優れた物性及び薬理作用を有すること、さらに、医薬として極めて優れた化合物であることを見いだし、本発明を完成した。
なお、本発明者らの知るところでは、PGの1位のカルボキシ基の代わりにテトラゾール基を有するPGI類については、報告されていない。さらに、1位がテトラゾール基で、7位に2個のフッ素原子を有するPGI類については、その合成例、物性、生理活性等について、全く報告されていない。
すなわち本発明は、下記式(1)で表される7,7−ジフルオロPGI誘導体、その薬学的に許容できる塩、及び、それらを有効成分とする医薬を提供する。
Figure 2010029925
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
1、R2:それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖アルキル基。
3:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基。
本発明が提供する新規7,7−ジフルオロPGI誘導体は、非経口投与または経口投与によって長時間血中濃度を維持し薬理作用を発揮し、炎症性腸疾患における消化管の炎症及び下痢・血便の発症を予防及び治療、胃炎、胃潰瘍や小腸潰瘍などにおける潰瘍を予防及び治療する医薬を提供することができる。
マウスDSS大腸炎モデルにおける排便障害に対する効果 マウスDSS大腸炎モデルにおける大腸短縮に対する効果 ラットDSS大腸炎モデルにおける排便障害に対する効果 ラットDSS大腸炎モデルにおける大腸短縮に対する効果 ラットDSS大腸炎モデルにおける大腸組織傷害に対する効果 マウスDSS大腸炎の寛解/再燃モデルにおける排便障害に対する効果 マウスTリンパ球移入腸炎モデルにおける軟便スコアに対する効果 マウスTリンパ球移入腸炎モデルにおける便潜血スコアに対する効果 マウスTリンパ球移入腸炎モデルにおける体重減少スコアに対する効果 マウスTリンパ球移入腸炎モデルにおけるDAIスコアに対する効果 ラットエタノール誘発胃粘膜傷害モデルにおける胃潰瘍に対する効果 ラットインドメタシン誘発小腸傷害モデルにおける小腸潰瘍に対する効果
(本発明の化合物の定義)
本明細書における化合物の命名において、PG骨格の位置を示すために用いる数字は、プロスタン酸骨格の数字に対応する数字を用いる。本明細書において、アルキル基の水素原子が置換された基を、置換アルキル基とも記す。他の基においても同様である。
また、アルキル基等の有機基が「低級」とはその炭素数が6以下であることをいう。なお、「低級」有機基の炭素数は4以下が好ましい。
「アルキル基」は、直鎖であっても分岐であってもよい。アルキル基は特に記載しないかぎり炭素数が1〜6である低級アルキル基が好ましく、炭素数1〜4の低級アルキル基が特に好ましい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基等が挙げられる。
「アルコキシ基」は、炭素数が1〜6である低級アルコキシ基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基は直鎖であっても分岐であってもよい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、またはブトキシ基等が挙げられる。
「アルコキシアルキル基」は、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいう。アルコキシアルキル基のアルコキシ基は炭素数1〜4の低級アルコキシ基が好ましく、アルコキシアルキル基のアルキル基は炭素数1〜4の低級アルキル基が好ましい。アルコキシアルキル基は低級アルコキシアルキル基であること(すなわち、アルコキシアルキル基全体の炭素数は6以下であること)が好ましく、炭素数4以下の低級アルコキシアルキル基であることがより好ましい。アルコキシアルキル基の例としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。
「アリール基」とは、置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基をいう。置換基を有しないアリール基としてはフェニル基が好ましい。
「置換アリール基」(置換基を有するアリール基をいう)としては、アリール基中の水素原子の1個以上が、低級アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化(低級アルキル)基、または低級アルコキシ基等で置換された基が好ましい。置換アリール基としては置換フェニル基が好ましく、特にモノハロフェニル基(たとえばクロロフェニル基、フルオロフェニル基、ブロモフェニル基等)、(ハロゲン化低級アルキル)置換フェニル基(たとえばトリフルオロメチルフェニル基等)、または(低級アルコキシ)フェニル基(たとえばメトキシフェニル基、エトキシフェニル基等が挙げられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子をいう。
「ハロゲン化アルキル基」とは、アルキル基中の水素原子の1個以上がハロゲン原子で置換された基をいい、炭素数が1〜6である低級ハロゲン化アルキル基が好ましい。ハロゲン化アルキル基の例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、クロロメチル基、またはブロモメチル基等が挙げられる。
本発明の式(1)で表される7,7−ジフルオロPGI誘導体(以下、本発明のPGI誘導体(1)ともいう)としては、生理活性や物性の観点より以下の化合物が好ましい。
すなわち、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜3の直鎖アルキル基であり、それぞれ独立に水素原子またはメチル基が好ましい。特にR1、R2の一方が水素原子で他方がメチル基であることが好ましい。
3は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基であり、さらに水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシメチル基などの低級アルコキシアルキル基、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子、または低級フルオロアルキル基などの低級ハロゲン化アルキル基が好ましい。特に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、塩素原子または炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基が好ましい。なお、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基とエチル基が好ましく、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基が好ましい。
なお、R3としては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が最も好ましい。
加えて、R3はプロスタグランジン骨格の主鎖がベンゼン環に置換している位置に対して、オルト(o)、メタ(m)、あるいはパラ(p)のいずれの位置に置換していてもよい。R3は特にメタ(m)位に置換していることが好ましい。
(本発明の好ましい化合物の態様)
加えて、本発明の化合物における好ましいR1,R2及びR3の組み合わせは、以下の通りである。
1は水素原子であり、R2は水素原子であり、R3は水素原子である。
1は水素原子であり、R2は水素原子であり、R3はメチル基である。
1は水素原子であり、R2は水素原子であり、R3は塩素原子である。
1は水素原子であり、R2は水素原子であり、R3はトリフルオロメチル基である。
1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3は水素原子である。
1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3はメチル基である。
1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3は塩素原子である。
1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3はトリフルオロメチル基である。
1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3は水素原子である。
1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3はメチル基である。
1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3は塩素原子である。
1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3はトリフルオロメチル基である。
1はメチル基であり、R2はメチル基であり、R3は水素原子である。
1はメチル基であり、R2はメチル基であり、R3はメチル基である。
1はメチル基であり、R2はメチル基であり、R3は塩素原子である。
1はメチル基であり、R2はメチル基であり、R3はトリフルオロメチル基である。
さらに、上記の中でも好ましい組み合わせは、以下の通りである。
1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3はメチル基である。
1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3はメチル基である。
(本発明のPGI誘導体の製造方法)
本発明のPGI誘導体(1)は、たとえば本発明者らの発明に係わる特開平07−324081号公報や特開平08−217772号公報に記載の方法を基にして製造できる。たとえば、コーリーラクトンを出発原料として、ω鎖をまず導入したのち、フッ素化により、ω鎖付ジフルオロコーリーラクトンに変換する。次いで、末端にテトラゾール基を有する有機金属反応剤の付加反応と脱水反応、あるいは、末端にテトラゾール基を有するホスホニウム塩を用いるウィティッヒ反応、などによりα鎖ユニットを導入し、所望により水酸基の脱保護を行うことにより、合成することができる。
または、コーリーラクトンを出発原料として、フッ素化によりジフルオロコーリーラクトンとしたのち、まず末端にテトラゾール基を有する有機金属反応剤の付加反応と脱水反応、あるいは、末端にテトラゾール基を有するホスホニウム塩を用いるウィティッヒ反応などによりα鎖ユニットを導入し、次にω鎖を導入して所望により水酸基の脱保護を行うことにより合成することができる。
または、特開平07−324081号公報に記載のカルボン酸誘導体からカルボキシ基をシアノ基に変換したのちテトラゾール誘導体に変換することによっても合成することができる。
これらの製造法の中で代表的な方法を以下の化学式を用いて具体的に説明する。
Figure 2010029925
たとえば、コーリーラクトン(7)を出発原料としてω鎖をまず導入したのち、得られたω鎖付コーリーラクトン類(6)にフッ素化反応を行ってカルボニル基のα位にフッ素原子2個を有するω鎖付ジフルオロコーリーラクトン類(3)を製造し、次いで、このジフルオロラクトン類(3)にホスホラン類(4)を反応させてα鎖ユニットを導入することにより、水酸基が保護されたPGI誘導体(2)が得られる。そして、水酸基の保護基を脱保護して本発明のPGI誘導体(1)が得られる。
なお、ホスホラン類(4)はホスホニウム塩類(5)より得られる。
1〜R3が特定の置換基である場合を除き、上記ラクトン類(6)は公知の化合物である。R1〜R3が特定の置換基である新規な上記ラクトン類(6)は、公知のラクトン類(6)と同様の方法で製造できる。たとえば、3−アリール−2−オキソアルキルホスホン酸ジエステルを、ホルミル基を有するコーリーラクトンと反応させて新規なラクトン類(6)を製造できる。ここでアルキルホスホン酸のアルキル鎖は炭素数3以上である。
4、R5及びR7はそれぞれ独立に水酸基の保護基である。R4、R5、及びR7は同一の保護基であってもよい。保護基としては、たとえば「新実験化学講座14、有機化合物の合成と反応(V)」(丸善)、「プロテクティブ/グループス/イン/オーガニック/シンセシス」(T.W.Greene著、J.Wiley&Sons)などに記載の水酸基の保護基を用いることができる。具体的には、トリオルガノシリル基、アルコキシアルキル基、環状エーテル構造を有する1価基等が挙げられる。トリオルガノシリル基としては、アルキル基、アリール基、アルアルキル基、またはアルコキシ基がケイ素原子に3個結合した基が好ましく、特に低級アルキル基またはアリール基がケイ素原子に3個結合した基が好ましい。保護基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、またはトリイソプロピルシリル基等が好ましい。特にテトラヒドロピラニル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブチルジフェニルシリル基などが好ましい。
水酸基の保護基は、容易に脱保護できる。保護された水酸基の脱保護の方法は、常法が採用できる。たとえば、「新実験化学講座14有機化合物の合成と反応(I)、(II)、(V)」(丸善)、「プロテクティブ/グループス/イン/オーガニック/シンセシス」(T.W.Greene著、J.Wiley&Sons)等に記載の方法が採用できる。
ラクトン類(6)にフッ素化反応を行ってジフルオロラクトン類(3)とするには、種々の公知のフッ素化法が適用できる。たとえば、種々の求電子的フッ素化剤を用い不活性溶媒中で反応させる方法が採用される。本発明者らの発明に係わる特開平07−324081号公報や特開平09−110729号公報に記載の方法によってもフッ素化できる。
ラクトン類(6)のフッ素化反応では、求電子的フッ素化剤を使用するのが好ましい。求電子的フッ素化剤としては、公知または周知の求電子的フッ素化剤を使用できる。たとえば、北爪智也、石原孝、田口武夫著「フッ素の化学」(講談社サイエンティフィック)等に記載される求電子的フッ素化剤が挙げられる。具体的には、N−フルオロスルホンアミド類、N−スルホンイミド類、アセチルハイポフルオライト、フッ素ガスなどが挙げられる。
求電子的フッ素化剤は、不活性溶媒の存在下で用いるのが好ましい。不活性溶媒としては、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、極性溶媒またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
フッ素化反応で得られたジフルオロラクトン類(3)は、次にホスホラン類(4)と反応させて水酸基が保護されたPGI誘導体(2)とする。ホスホラン類(4)は、対応するホスホニウム塩類(5)より、不活性溶媒中、塩基の存在下に製造され、生成したホスホラン類(4)は、単離せずにそのままジフルオロラクトン類(3)とのウィッティヒ反応に用いるのが好ましい。ホスホラン類(4)及びホスホニウム塩類(5)の製造方法は、DE2242239号明細書、DE2405255号明細書等に記載の方法等を採用できる。ホスホラン類(4)やホスホニウム塩類(5)におけるR6としては、フェニル基、トリル基などのアリール基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。不活性溶媒としては、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、極性溶媒、水系溶媒、アルコール系溶媒、またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
以上の方法で得た水酸基が保護されたPGI誘導体(2)の水酸基の保護基を脱保護することにより、PGI誘導体(1)を得る。
なお、本発明のPGI誘導体(1)はその構造中に不斉炭素を有するため、各種の立体異性体、光学異性体が存在するが、本発明においては、これらすべての立体異性体、光学異性体、及びそれらの混合物を包含する。
本発明のPGI誘導体(1)の具体例としては、下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2010029925
(本発明のPGI誘導体の例)
また、式(8)においてR1、R2、及びR3が下記表1に示す構造である化合物が挙げられる。
Figure 2010029925
(本発明のPGI誘導体の特性)
本発明のPGI誘導体(1)は、生体内において代謝を受けにくく安定性を向上した誘導体である。PG骨格のカルボキシ基がテトラゾール基に変換されているため、PGなどの脂肪酸の一般的な代謝経路として知られているβ酸化による代謝を受けにくい。このため、PG骨格にカルボキシ基を有する化合物に比べて、血中半減期が長く、有効血中濃度を長く維持することができる。また、このように代謝的な安定性が向上していることにより、薬物のバイオアベイラビリティーを改善することができる。
(本発明のPGI誘導体またはその薬学的に許容できる塩を有効成分とする医薬)
本発明の医薬は、PGI誘導体(1)及び/又は薬学的に許容されるPGI誘導体(1)の塩を含み、さらに薬剤として許容される担体、及び場合によっては他の治療成分も含めてもよい。
加えて、本発明の医薬は、PGI誘導体(1)及び/又は薬学的に許容されるPGI誘導体(1)の塩、またはそれらの水和物を含み、さらに薬剤として許容される担体、及び場合によっては他の治療成分も含めてもよい。
本発明の予防・治療剤を患者に投与する場合、1日の投与量は患者の年齢、体重、病態及び重症度などにより異なるが、通常は0.0001〜10mgを、好ましくは0.01〜1mgを1乃至数回に分けて投与することが望ましい。例えば、経口投与では、0.001〜3mgが好ましく、特に0.01〜0.5mgが好ましい。静脈内投与では、0.0001〜1mgが好ましく、特に0.001〜0.1mgが好ましい。疾患や病態によって適宜増減することができ、また注射剤の場合は点滴持続投与を行うことが望ましい場合もある。
医薬として使用する場合、経口的投与、非経口的投与(例えば血管(静脈、動脈)内投与、皮下投与、直腸内投与等)によって生体内に投与することができる。投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、シロップ剤等の経口投与形態、溶液、乳剤、懸濁剤等の液状の注射剤、点滴剤、坐薬、点鼻剤、貼付剤、吸入剤等の非経口投与形態が例示される。特に経口的に投与されることが望ましい。
前記投与形態の製剤は、本発明のPGI誘導体(1)またはその薬学的に許容できる塩に、通常の担体、賦形剤、結合剤、安定化剤等の製剤上必要な添加剤を配合し、常法によって製剤化することにより製造できる。例えば製剤が粉末、顆粒、錠剤等の場合、固形製剤を製造するのに好適な任意の製薬担体、例えば賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、結合剤等を用いて製造することができる。
これらの賦形剤は例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム;グラニュール化剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ、またはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアラビアゴム、及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであってもよい。これらの錠剤は、コーティングされていなくてもよく、またはこれらは、胃腸管における崩壊及び吸収を遅らせ、これによってより長時間にわたって持続作用を与えるために、公知技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延材料、例えばグリセリルモノステアレート、またはグリセリルジステアレートが用いられてもよい。
また、本発明のPGI誘導体(1)が、不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されているハードゼラチンカプセルであってもよい。あるいは、水混和性溶媒、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びエタノール、または油媒質、例えばピーナッツオイル、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合されているソフトゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
また、製剤がシロップや液剤の場合、例えば安定化剤、懸濁化剤、矯味剤、芳香剤等を適宜に選択して製造することができる。注射剤を製造するには、有効成分を塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸ナトリウム、酢酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤とともに注射用蒸留水に溶解し、無菌的に調製する。プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油、エタノール、ポリソルベート80などの不活性な非水性の希釈剤を用いて調製してもよい。さらにマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて、真空凍結乾燥し、用時溶解用注射剤としてもよい。また、安定化及び病巣到達性を改善するため公知の方法により、リポソーム製剤、脂肪乳剤を調製して注射剤として用いることもできる。
また、カカオ脂、脂肪酸のトリ、ジ、モノグリセリド、ポリエチレングリコールなどの坐剤用基剤を用いて直腸内投与製剤を調製してもよい。さらにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、グリセロゼラチン等の水溶性基剤、白色ワセリン、ハードファット、パラフィン、流動パラフィン、プラスチベース、ラノリン、精製ラノリン等の油性基剤等を用いて適当な粘度に調製し直腸内注入軟膏を調製することもできる。
本発明のPGI誘導体(1)またはその薬学的に許容できる塩は局所的に皮膚または粘膜に、すなわち経皮または経粘膜投与することができる。この目的のための通常の剤型として、ゲル、ハイドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、ドレシング剤、泡製剤、フィルム剤、スキンパッチ、オブラート、インプラント、スポンジ、繊維、バンデージ、及びマイクロエマルジョンなどが挙げられる。通常の担体としては、アルコール、水、鉱物油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールなどが挙げられる。
前述の投与形態のいずれかにおいて使用するため、その溶解度、溶解速度、バイオアベイラビリティー及び安定性を改善するために、本発明のPGI誘導体(1)は、シクロデキストリン及びその適切な誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマーなどの可溶性高分子単位と混合することができる。たとえば、薬物−シクロデキストリン複合体などは、一般的に大半の剤型及び投与経路に有用であることが確認されている。包接及び非包接複合体のいずれも使用することができる。薬物との直接の複合体化の別法として、シクロデキストリンを補助的添加剤、すなわち担体、賦形剤または可溶化剤として用いることもできる。これらの目的のために、α−、β−及びγ−シクロデキストリンなどが一般的に使用される。
(本発明のPGI誘導体の薬学的に許容できる塩)
本発明のPGI誘導体(1)の薬学的に許容できる塩は、該誘導体のテトラゾール基部分と塩基性物質の塩であり、テトラゾール基の水素原子が陽イオンに置換された化合物である。
この陽イオンとしては、たとえばNa、K、などのアルカリ金属カチオン、1/2Ca2+、1/2Mg2+、1/2Zn2+、1/3Al3+などのアルカリ金属以外の金属カチオン、NH 、及びトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、トロメタミン、リジン、アルギニンなどの有機アミンやアミノ酸のアンモニウムカチオンなどがある。好ましい陽イオンはナトリウムイオンとカリウムイオンである。
より詳しくは、許容できる塩とは、無機塩基及び有機塩基を含む薬剤として許容される無毒の塩基から調製した塩をさす。薬学的に許容される無毒無機塩基由来の塩としては、前記ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などの他、リチウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩などの塩も挙げられる。これらのうち、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及びアンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩が特に好ましい。薬学的に許容される無毒有機塩基由来の塩には、第1級、第2級、及び第3級アミン、自然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。前記した有機アミンやアミノ酸の具体例以外としては、例えば、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、エチレンジアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、モルホリン、N−エチル−モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ベタイン、カフェイン、コリン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラブアミン、メチルグルカミン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミンなどが挙げられる。
(本発明のPGI誘導体またはその薬学的に許容できる塩を有効成分とする医薬用途)
本発明のPGI誘導体(1)またはその薬学的に許容できる塩を有効成分とする医薬は、消化管疾患の薬剤として優れた効果を示す。
本発明の消化管疾患とは、物理的刺激、胃液などの化学的刺激、非ステロイド性抗炎症剤やステロイドなどの薬物性刺激、原因が不明な免疫疾患や自己免疫疾患、精神疾患などが原因で消化管の上皮、粘膜、下部組織が炎症や潰瘍、粘膜上皮の異常増殖、機能障害を有する疾患であり、消化管の炎症性疾患及び潰瘍性疾患を含む。
該炎症性疾患は、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎、線維化あるいは潰瘍を伴う非特異性の肉芽腫性炎症性疾患であるクローン病、腸管ベーチェット病または単純性潰瘍を含む。また、本発明の該潰瘍性疾患は、口腔炎、口腔アフタ、食道炎、食道潰瘍、胃炎、胃潰瘍、小腸潰瘍を含む。
さらに、胃炎、胃潰瘍は、薬剤性の胃炎、胃潰瘍、アルコールに起因する胃炎、胃潰瘍を含み、該薬剤性の胃炎、胃潰瘍は非ステロイド性抗炎症剤に起因する胃炎・胃潰瘍を含む。
また、小腸潰瘍は、薬剤性の小腸潰瘍、アルコールに起因する小腸潰瘍を含み、該薬剤性の小腸潰瘍は非ステロイド性抗炎症剤に起因する小腸潰瘍を含む。
特に、本発明の医薬は、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎・胃潰瘍、小腸潰瘍の予防または治療のための医薬として有用である。
以下に具体例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。
(2R)-2-(m-トリル)プロピオン酸メチルエステルの合成
(2R)-2-(m-トリル)プロピオン酸12.45gにメタノール14.83g、濃硫酸6.46gを加え,還流下で6時間撹拌した。続いて、10%炭酸ナトリウム水溶液で中和し、ヘキサンで抽出した。さらに、硫酸マグネシウムで乾燥後,減圧濃縮して標題化合物12.79gを得た。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.49(d,J=7.0Hz,3H),2.33(s,3H),3.64(s,3H),3.69(dd,J=14.4,7.3Hz,1H),7.06-7.22(m,4H).
(3R)-2-オキソ-3-(m-トリル)ブチルホスホン酸ジメチルの合成
メチルホスホン酸ジメチルエステル1.97gにテトラヒドロフラン(THF)25mLを加え、−78℃に冷却後にn−ブチルリチウム(1.5Mヘキサン溶液)10mLを加え、1時間攪拌した。次に、実施例1で合成したメチルエステル{(2R)-2-(m-トリル)プロピオン酸メチルエステル}1.34gのTHF(3.8mL)溶液を−78℃で加え、2時間攪拌した。25mL飽和重曹水で反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。さらに、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 5:1〜1:5)で精製して、標題化合物1.63gを合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.39(d,J=6.7Hz,3H),2.34(s,3H),2.84(ddd,J=22.3,14.1,0.6Hz,1H),3.18(dd,J=22.3,14.1Hz,1H),3.76(dd,J=19.3,11.1Hz,6H),4.0(dd,J=13.8,7.0Hz,1H),7.01-7.24(m, 4H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,4R)-3-オキソ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ベンゾイルオキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
水素化ナトリウム(55%)8.75gを1,2-ジメトキシエタン(DME)300mLに分散させ氷冷し、そこに実施例2で合成したホスホナート{(3R)-2-オキソ-3-(m-トリル)ブチルホスホン酸ジメチル}54.7gのDME(50mL)溶液を加え、1時間攪拌した。上記の溶液に(1S,5R,6R,7R)-6-ホルミル-7-ベンゾイルオキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン50.0gのDME(400mL)溶液を加え、1時間攪拌した後、350mLの10%食塩水で反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。さらに、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。濃縮した粗生成物をt−ブチルメチルエーテルから再結晶して、標題化合物64.7gを合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.39(d,J=7.0Hz,3H),2.20-2.28(m,1H),2.30(s,3H),2.34-2.41(m,1H),2.49-2.57(m,1H),2.76-2.85(m,3H),3.80(q,J=7.0Hz,1H), 5.03(t,J=5.3Hz,1H),5.23(q,J=5.3Hz,1H),6.19(d,J=15.5Hz,1H),6.69(dd,J=15.6,7.6Hz,1H),6.94-7.19(m,4H),7.42-7.95(m, 5H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ベンゾイルオキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
実施例3で合成したエノン{(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,4R)-3-オキソ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ベンゾイルオキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン}147.0gのTHF(1480mL)溶液を−40℃まで冷却し、(−)−B−クロロジイソピノカンフェイルボラン(1.7Mヘキサン溶液)721mLを加えた後、氷冷下で20時間攪拌した。アセトン183mLを加え3時間攪拌した後に、重曹水を加え、t−ブチルメチルエーテルで抽出した。そして、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、粗製の標題化合物649.9gを得た。
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ヒドロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
実施例4で合成した粗製アルコール{(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ベンゾイルオキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン}649.9gをメタノール740mLに溶解し、炭酸カリウム116.3gを加え、室温で17時間撹拌した。酢酸でpHを7にした後にメタノールを留去し、水を加え、酢酸エチルで抽出した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=4/1〜0/1)で精製し、標題化合物22.3gを得た。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.33(d,J=7.0Hz,3H),1.70(s,1H(OH)),1.86(ddd,J=11.3,7.8,3.2Hz,1H),2.07(d,J=4.4Hz,1H(OH)),2.13-2.23(m,2H),2.34(s,3H),2.35-2.44(m,3H),2.47(d,J=3.8Hz,1H),2.56(dd,J=18.2,9.7Hz,1H),2.80(q,J=7.0Hz,1H),3.79-3.85(m,1H),4.12-4.16(m,1H),4.81(dt,J=7.0,3.2Hz,1H),5.27(ddd,J=15.7,8.5,0.6Hz,1H),5.50(dd,J=15.2,6.8Hz,1H),6.94-7.20(m,4H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
実施例5で合成したジオール{(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ヒドロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン}988mgのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(10mL)溶液に室温でt−ブチルジメチルシリルクロリド1.17g、イミダゾール1.08gを加え、2時間半撹拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、ヘキサン/酢酸エチル=2/1混合物で抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 20:1〜10:1)で精製して、標題化合物1.56gを合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ-0.09(d,J=6.4Hz,6H),0.02(d,J=2.4Hz,6H),0.86(s,9H),0.89(s,9H),1.27(d,J=7.0Hz,3H),1.86-1.92(m,1H),1.96-2.02(m,1H),2.32(s,3H),2.31-2.47(m,3H),2.62-2.73(m,2H),3.82(q,J=4.7Hz,1H),4.05(t,J=6.4Hz,1H),4.86(dt,J=8.0,2.4Hz,1H),5.16(dd,J=15.5,7.4Hz,1H),5.30(dd,J=15.7,6.3Hz,1H),6.90-7.16(m,4H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
臭化マンガン1.48g、N−フルオロベンゼンスルホンイミド2.48gをテトラヒドロフラン(THF)19mLを加え30分攪拌したのち、−78℃に冷却した。実施例6で合成したラクトン{(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン}0.5gのTHF(5mL)溶液を加え、その後カリウムビス(トリメチルシリル)アミドのトルエン溶液(0.5M、13mL)を加えて3時間半かけて0℃まで昇温させた。反応液を飽和重曹水に注ぎ、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合物で抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 20:1)で精製して、標題化合物0.32gを合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ-0.08-0.03(m,12H),0.82(s,9H),0.89(s,9H),1.28(d,J=7.0Hz,3H),1.70-1.77(m,1H),1.96-2.04(m,1H),2.31(s,3H),2.60-2.91(m,3H),3.82-3.87(m,1H),3.99-4.23(m,1H),5.00(t,J=6.4Hz,1H),5.06(dd,J=15.7,7.8Hz,1H),5.33(ddd,J=15.9,6.7,1.2Hz,1H),6.88-7.16(m,4H).
19F-NMR(CDCl3):-113.1(d,J=279.3Hz),-91.0(dd,J=279.3,25.9Hz)。
4-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]-1-(テトラゾール-5-イル)ブタンの合成
4-(テトラゾール-5-イル)ブチルトリフェニルホスホニウム ブロミド14.0gのトルエン(390mL)懸濁液に、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドのトルエン溶液(0.5M、120mL)を加え、60℃で1時間撹拌した。実施例7で合成したジフルオロラクトン{(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オン}4.32gのトルエン(130mL)溶液を−10℃で加え、室温まで昇温させながら18時間撹拌した。重曹水を加えて反応を停止し、ヘキサン/酢酸エチル=1/1混合物で抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1〜0/1)で精製し、標題化合物4.1gを得た。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ-0.14-0.01(m,12H),0.82(s,9H),0.89(s,9H),1.23-1.27(m,3H),1.82-2.09(m,5H),2.21-2.28(m,1H),2.31(s,3H),2.45-2.53(m,1H),2.64-2.73(m,2H),2.93-2.97(m,2H),3.90(dd,J=11.7,5.3Hz,1H),4.08-4.09(m,1H),4.84-4.87(m,2H),5.27(dd,J=15.5,7.8Hz,1H),5.44(dd,J=15.6,6.2Hz,1H),6.92-7.16(m,4H).
19F-NMR(CDCl3): -112.3(d,J=253.4Hz),-81.4(dd,J=253.4,18.7Hz)。
4-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4R)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ヒドロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]-1-(テトラゾール-5-イル)ブタンの合成
実施例8で合成した化合物4.1gにTHF81mL、水81mL、酢酸244mLを加え、35℃で46時間攪拌した。水500mLを加えクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/5〜0/1)で精製し、ジエチルエーテルで再結晶を行い、標題化合物1.1gを得た。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CD3OD):δ 1.30(d,J=7.0Hz,3H),1.69(dddd,J=14.6,7.6,3.0,2.6Hz,1H),1.82-1.95(m,2H),2.10-2.16(m,2H),2.29(s,3H),2.31-2.41(m,2H),2.48-2.56(m,1H),2.72(q,J=7.0Hz,1H),2.93(t,J=7.6Hz,2H),3.78(q,J=7.6Hz,1H),4.04-4.10(m,1H),4.69(dt,J=6.48,2.96Hz,1H),4.79(dt,J=7.6,5.0Hz,1H),5.36-5.46(m,2H),6.95-7.13(m,4H).
19F-NMR(CD3OD):-116.6(d,J=250.5Hz),-84.8(ddd,J=251.9,17.3,14.4Hz)。
2-オキソ-3-(m-トリル)ブチルホスホン酸ジメチルの合成
ラセミ体の2-(m-トリル)プロピオン酸を用いて実施例1〜2の方法と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.39(d,J=7.2Hz,3H),2.34(s,3H),2.83(dd,J=22.4,14.4Hz,1H),3.18(dd,J=22.4,14.0Hz,1H),3.76(dd,J=19.6,11.2Hz,6H),3.99(dd,J=14.0,6.8Hz,1H),7.01-7.27(m,4H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
ラセミ体の2-オキソ-3-(m-トリル)ブチルホスホン酸ジメチルを用い実施例3〜6の方法と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ -0.20-0.10(m,12H),0.80-0.90(m,18H),1.18-1.28(m,3H),1.85-2.20(m,2H),2.31(s,3H),2.30-2.80(m,5H),3.80-4.15(m,2H),4.81-4.95(m,1H),5.12-5.42(m,2H),6.88-7.20(m,4H).
(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンの合成
実施例11で合成した(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンを用いて実施例7の方法と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ -0.20-0.05(m,12H),0.80-0.90(m,18H),1.19-1.29(m,3H),1.70-2.10(m,2H),2.31(s,3H),2.60-3.05(m,3H),3.84-4.12(m,2H),4.95-5.50(m,3H),6.85-7.20(m,4H).
19F-NMR(CDCl3):-113.6--112.8(m),-91.7--90.6(m)。
4-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS))-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]-1-(テトラゾール-5-イル)ブタンの合成
実施例12で合成した(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンを用いて実施例8の方法と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ -0.15-0.05(m,12H),0.80-0.89(m,18H),1.20-1.28(m,3H),1.80-3.05(m,14H),3.90-4.15(m,2H),4.85-4.95(m,2H),5.23-5.58(m,2H),6.90-7.20(m,4H).
19F-NMR(CDCl3):-113.0--111.3(m),-82.0--80.7(m)。
4-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ヒドロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]-1-(テトラゾール-5-イル)ブタンの合成
実施例13で合成した4-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)]-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]-1-(テトラゾール-5-イル)ブタンを用いて実施例9の方法と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):δ 1.15-1.35(m,3H),1.80-3.00(m,11H),2.29(s,3H),4.05-4.20(m,2H),4.75-4.85(m,2H),5.35-5.70(m,2H),6.95-7.25(m,4H).
19F-NMR(CDCl3):-114.5--112.7(m),-83.5--81.8(m)。
5-[(Z)-(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-ヒドロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-ヒドロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-イリデン]ペンタン酸(カルボン酸体)の合成
実施例12で合成した(1S,5R,6R,7R)-6-[(1E,3R,4RS)-3-t-ブチルジメチルシロキシ-4-(m-トリル)-1-ペンテニル]-7-t-ブチルジメチルシロキシ-2-オキサ-4,4-ジフルオロ-ビシクロ[3.3.0]オクタン-3-オンと(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミドから、実施例8〜9と同様にして表題の化合物を合成した。なお、構造特性は以下の通りである。
1H-NMR(CD3OD):δ 1.17-1.30(m,3H),1.63-2.79(m,11H),2.29(s,3H),3.75-4.12(m,2H),4.66-4.85(m,2H),5.40-5.58(m,2H),6.95-7.15(m,4H).
19F-NMR(CD3OD):-118.3--117.7(d,J=250.4Hz),-86.1-85.3(m)。
本発明の化合物のインビトロ代謝的安定性
表1記載の本発明の化合物Fと化合物Jの混合物(52:41で含有、実施例14で合成)、化合物Fと化合物Jの1位のテトラゾール基がカルボン酸に置換された化合物の混合物(カルボン酸体と呼ぶ、54:34で含有、実施例15で合成)を試験した。
まず、ラット肝臓より下記文献Aに準じてミトコンドリア画分を調製した。下記文献B,Cに記載のYAMAGUCHIらの方法を参考にNADPH非依存型β酸化の反応を検討した。反応は、37℃で30分間とし、適当な内部標準物質を加えたメタノール溶液で停止させた。各化合物は、高分解能液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS/MS)を用いて内部標準法で定量した。化合物F、J及びそれぞれのカルボン酸体のラットミトコンドリア画分における代謝反応後の化合物残存率を下記表2に3回実施の平均±標準偏差で示した。
Figure 2010029925
上記表2で明らかなように本発明で代表される化合物Fや化合物Jは、ミトコンドリア画分でのβ酸化を受けないことが示された。
文献
A)社団法人日本生化学会編集、生化学実験講座12 エネルギー代謝と生体酸化(上)、東京化学同人、P217−218、第1版第2刷1979年7月11日発行.
B)Drug Metabolism And Disposition 23(11): 1195−1201, 1995.
C)Xenobiotica 26(6): 613−626, 1996.
ラット静脈内投与後の血中薬物動態
本発明の化合物のインビボでの代謝的安定性を確認する為に、ラットに静脈内投与し血中薬物動態を評価した。6週齡の雄性ラット(体重160〜180g)を1週間馴化し、健康と判断された動物を使用した。表1記載の本発明の化合物Fと化合物Jの混合物(52:41で含有)、化合物Fと化合物Jのカルボン酸体(54:34で含有)、化合物F(実施例9で合成)を少量のエタノールで溶解し、さらに生理食塩液を添加し、被験化合物溶液を調製した。その被験化合物溶液を軽いエーテル麻酔を施した非絶食ラットに大腿静脈から1mL/kgで瞬時静脈内投与した。投与後5、15、30、45、60、90及び120分に尾静脈より静脈血を採取した。ヘパリンを混合し、遠心分離(3000rpm, 4℃, 15分)で血漿を得た。血漿中化合物濃度は、LC−MS/MSを用いた内標準法により測定した。本分析法の定量範囲は0.1〜100ng/mLであった。得られた化合物濃度を薬物動態解析ソフトウエアWinNonlin(ver.3.3)で個体ごとに非モデル解析し、各群3匹の平均±標準偏差を得た。消失相におけるみかけの半減期(t1/2)を、下記表3に示す。
Figure 2010029925
上記表3から明らかなように、本発明の化合物Fや化合物Jのt1/2は、約1〜2時間であり、カルボン酸体の10分未満に比べて大きく延長し、優れた代謝安定性を示した。
マウスデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎モデルに対する予防効果
化合物Fの潰瘍性大腸炎に対する予防効果をデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎モデルで検討した。本モデルは、大腸に限局した炎症をもたらし、下痢や血便を誘発させ、臨床的な潰瘍性大腸炎と酷似した病態である(参照:文献D、E)。
BALB/c系マウス、雌性、6週齢(日本エスエルシー)を購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。正常群を除いて、2.2w/v%に調製したデキストラン硫酸ナトリウム(DSSと略す。MP Biochemicals, M.W. 36,000 - 50,000, Lot No. 3439J)溶液を9日間自由飲水させることにより大腸炎を誘発した。化合物Fを、0.1、0.3及び1mg/kgの用量で、DSS飲水開始日(0日目)から剖検日(9日目)の前日まで連日1日1回、経口投与した。対照群には、溶媒(1vol%エタノール液)を10mL/kgを同様に経口投与した。
マウスの便は、糞の水分量とその形状が相関することが予備的検討で分かった。そこで、下痢の度合いを示すために、便を6段階、すなわち、正常(0点)、球状の糞が5割以上(1点)、バナナ状の糞が5割未満(2点)、バナナ状の糞が5割以上(3点)、泥状便(4点)、水様便(5点)で評点した(軟便スコア)。便潜血スコアは、便潜血スライド5シオノギII(塩野義製薬)を用いて、その程度を5段階、すなわち、陰性(スライドの色が黄色から全く変化しない、0点)、弱陽性(わずかに青緑色、1点)、陽性(青緑色、2点)、中等度陽性(はっきりした青緑色、3点)、強陽性(発色試薬で瞬時に濃青色、4点)で評点した。軟便スコアと潜血スコアの合計値を排便障害スコアとした。各群8〜10匹の動物を使用し、結果は平均±標準偏差で表現した。
その結果、体重はいずれの群も差はなく終始、緩やかに増加した。対照群はDSS飲水開始4日目以降、明らかな軟便及び潜血便を示した。剖検日(9日目)の大腸の長さは、正常群に比して明らかな短縮を示した。化合物Fは、排便障害スコアの上昇に対して用量依存的な抑制効果を示し、0.1mg/kgで抑制傾向にあり、0.3及び1mg/kgで有意であった(図1)。また、大腸短縮に対しても同様に用量依存的な抑制効果を認めた(図2)。このように、化合物Fは、明確に潰瘍性大腸炎の発症を予防した。
文献
D)Lab. Invest. 69(2): 238-249, 1993
E)Inflamm Res. 45(4): 181-191, 1996
ラットデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎に対する予防効果
化合物Fの大腸炎に対する予防効果をラットでも検討を行った。SD系ラット、雄性、7週齢、体重210g〜240g前後(チャールス リバー)を購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。正常群を除いて、5.5w/v%に調製したDSS(MP Biochemicals, M.W. 36,000 - 50,000, Lot No. 4556J)溶液を8日間自由飲水させることにより大腸炎を誘発した。化合物Fは、0.3 mg/kg、1mg/kg、3mg/kgの用量で、DSS飲水開始前日から剖検日前日(DSS飲水7日目)まで連日1日1回、経口投与した。対照群には溶媒(1vol%エタノール溶液)を5mL/kgで経口投与した。
DSS飲水開始8日目に1.25w/v%のエバンスブルー溶液を0.2mL/100gで尾静脈より投与し、30分後にエ−テル麻酔下で開腹して放血致死させた。その後、盲腸直下から肛門までの大腸を摘出して、ノギスでその長さを測定した。大腸は、内容物を除去後、肛門から7cmの組織を生理食塩液で3回洗浄した後、真空ポンプを用いて一晩乾燥させた。翌日、乾燥重量を測定した後、ホルムアミドを2mL添加して、50℃で一晩かけて色素抽出し、その程度を620nmで測定した。エバンスブルー標準液で検量線を作成し、1g中の大腸組織におけるエバンスブルーの量(mg)として算出し、その程度を大腸組織傷害として評価した。
下痢の度合いを示すために、便の形状を6段階、すなわち、正常(0点)、棒状が5割未満(1点)、棒状が5割以上(2点)、棒状と一部泥状 (3点)、泥状(4点)、水様(5点)と評点した(軟便スコア)。潜血スコアは、実施例18に記載の方法で評価した。軟便スコアと潜血スコアの合計値を排便障害スコアとした。各群7〜10匹の動物を使用し、結果は平均±標準偏差で表現した。
その結果、対照群の体重は、終始、緩やかに増加したが、正常群に比して有意に低値を推移した。排便障害スコアは、DSS飲水開始1日目から有意に増加した。また、剖検日(8日目)では、大腸は明らかな組織傷害を認め、有意な短縮も認められた。これに対して、化合物Fは、1mg/kg及び3mg/kg投与でこれらいずれに対しても有意抑制傾向または有意な抑制効果を示した(図3、4、5)。すなわち、化合物Fは、大腸の潰瘍発生を予防し、臓器機能を正常化することで、下痢や血便の症状を抑制することがわかった。
マウスデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎の寛解/再燃モデルにおける治療効果
次に慢性モデルで、化合物Fの大腸炎に対する治療効果を検討した。BALB/c系マウス、雌性、6週齢、体重20g前後(日本エスエルシー)を購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。マウスを大腸炎誘発群と正常群に群分けした後、大腸炎誘発群に2.6w/v%のDSS(MP Biochemicals, M.W. 36,000 - 50,000, Lot No. 4556J)溶液を自由飲水させて大腸炎を誘発した。実施例18で定義した大腸炎誘発群の排便障害スコアが約4.5に達した8日目に、マウスは対照群、化合物Fの1mg/kg投与群、サラゾスルファピリジン(SIGMA、Lot No.085K1930、以下SASPと略す)100mg/kg投与群に分け、DSS溶液を蒸留水に交換してその後9日間飲水させた(これを寛解期とした)。群分け後は、3〜4日毎に一度排便スコアを評価し、対照群のスコアが約1になった時点で再びDSS溶液を飲水させ病態を再発させた(これを再燃期とした)。この寛解と再燃を1サイクルとし、これを5サイクル繰り返した。ただし、5サイクル目は寛解期のみ実施した。
化合物Fの1mg/kg及びSASPの100mg/kgは初回寛解期(2.6w/v%DSSの飲水開始8日目)から5回目の寛解期(2.6w/v%DSSの飲水開始57日目)までの50日間、連日1日1回、経口投与した。対照群には溶媒(1vol%エタノール液)を10mL/kgで経口投与した。寛解率は各寛解期最終日の軟便スコア及び潜血スコアがともに0に至った個体を寛解とし、各群における寛解個体数の割合を寛解率(%)として算出した。各群8〜10匹を使用し、結果は平均値で表現した。
その結果、対照群の排便障害スコアは、再燃期に上昇、寛解期に低下したが、正常群に比して終始ほぼ有意に高かった(図6)。寛解率は、寛解期5回の平均が35.5%であった(表4)。化合物Fは、寛解期の排便スコアを早期に低下させ、また再燃期ではスコア上昇を抑制した。また、寛解率はいずれの寛解期でも60%以上を示し、平均66.0%と対照群に比して明らかに高かった。一方、SASPは、寛解期及び再燃期のいずれにおいても排便スコアに対する明らかな効果を示さなかった。また、寛解率は、1、3及び4サイクル目で対照群より僅かに高値を示したが、2及び5サイクル目では逆に低く、平均値は対照群と同等であった。
以上のように、化合物Fは、予防効果のみならず、治療効果があり、寛解維持効果を示した。さらに、その効果は、臨床的に使用されているSASPに比べてはるかに優れていると考えられる。
Figure 2010029925
マウスCD4CD25T細胞移入腸炎に対する予防効果
炎症性腸疾患のもう一つの病態であるクローン病に対する効果を検討した。Tリンパ球移入モデルは、クローン病モデルとしてよく知られ、慢性的な胃炎や腸炎を発症する(参照:文献F、G、H)。また、Tリンパ球の活性化が知られ類似した腸潰瘍を生じる腸管ベーチェット病・単純性潰瘍の病態モデルともみなすことができる(参照:文献I、J)。
BALB/cA Jcl系マウス、雌性、6週齢、体重19〜23g(日本クレア)及びC.B−17/Icr-scid系マウス、雌性、6週齢(日本クレア)を購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。
BALB/cA Jcl系マウスをエーテル麻酔下で開腹後、腹部大動静脈から放血致死させ、脾臓を摘出した。脾臓から脾細胞を調製し、CD4+T cell Isolation Kit (No.130-090-860、ミルキーバイオテク株式会社)及びCD25-Biotin antibodies(No.130-092-569、ミルキーバイオテク株式会社)を用いて、CD4CD25T細胞を調製した。細胞の分離は、The autoMACS Separator(ミルキーバイオテク株式会社)を用いて行った。分離したCD4CD25T細胞は、生理リン酸緩衝液に懸濁し、C.B−17/Icr-scidマウスに1匹あたり2.5×10細胞を腹腔内投与し、大腸炎を誘発した。
化合物Fあるいはプレドニゾロンは、それぞれ1mg/kgで、CD4CD25T細胞の移入5時間前に初回投与し、以後20日間、連日1日1回、経口投与した。対照群には溶媒(1vol%エタノール液)を10mL/kgで経口投与した。病態評価項目は、軟便スコア(0〜5点)、便潜血スコア(0〜4点)及び体重減少スコア(0〜5点)を評点し、その総計をDisease Activity Indexスコア(以下、DAIスコアと略す:最高スコア14)とした。軟便スコアは、便の硬さを正常(0点)、わずかに柔らかい(1点)、やや柔らかい(2点)、柔らかい(3点)、かなり柔らかい(4点)及び下痢(5点)と評点した。便潜血スコアは、実施例18と同様に評価した。体重減少スコアは、体重の変化を体重の増加 (0点)、3%未満の減少(1点)、3%以上6%未満の減少(2点)、6%以上9%未満の減少(3点)、9%以上12%未満の減少(4点)、12%以上の減少(5点)と評点した。各群8〜10匹を使用し、結果は平均値で表現した。
その結果、対照群の軟便スコア及び便潜血スコアはT細胞移入12日後から明らかな増加を認め、また体重減少スコアは19日目で明らかな増加を示し、21日後にはいずれもほぼ最大となった。化合物Fは、図7に示すように軟便スコア及び図8に示すように便潜血スコアの増加をほぼ半分まで抑制し、図9に示すように体重減少スコアの増加を、ほぼ完全に抑制した。一方、プレドニゾロンは、図8に示すように便潜血スコアの増加に対して化合物F投与とほぼ同程度の抑制を示したが、図7に示すように軟便スコアに対して21日目では明確な効果を示さなかった。また、図9に示すように体重減少スコアは、終始、対照群より高値に推移し、プレドニゾロンは、明らかに悪化させた。図10に示すように、DAIスコアは、化合物Fが、プレドニゾロンに比べ、総合的に優れていることを示した。
このように化合物Fは、潰瘍性大腸炎のみならず、クローン病、腸管ベーチェット病・単純性潰瘍の病態を既存の治療薬に比べて優れて抑制する。
文献
F)Immunol Rev., 182:190-200, 2001.
G)Int. Immunopharmacol., 6(8):1341-1354, 2006.
H)J. Immunol. 160(3):1212-1218, 1998.
I)Clin. Exp. Immunol 139(2): 371- 378, 2005.
J)Histopathology 45(4):377-383, 2004.
ラットエタノール誘発胃粘膜傷害モデルに対する効果
化合物Fの胃粘膜傷害に対する抑制効果をラットエタノール誘発胃粘膜傷害モデルで検討した。本モデルは、うっ血性粘膜傷害を伴うヒトの急性胃炎の動物モデルとして繁用されている(文献K)。
SD系ラット、雄性、7週齢(チャールス・リバー)を、オリエンタルバイオサービスを通じて購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。ラットは、体重を指標に群分けし、試験前日から金網を敷いたクリーンケージに移して19時間絶食(絶食16時間後から3時間は絶水)させた後、全ての群にエタノール(特級、ナカライテスク、Lot No.V8A5862)1.5mLを経口投与して胃粘膜傷害を誘発した。化合物Fは、0.01、0.1及び1mg/kgの用量で、胃粘膜傷害誘発30分前にそれぞれ5mL/kgの容量で経口投与した。対照群には、溶媒(1vol%エタノール液)を5mL/kgで同様に経口投与した。各群8匹の動物を使用した。
ラットは、エタノール投与1時間後にエーテル麻酔下で腹部大動静脈より放血致死させ、胃を摘出した。摘出した胃は、直ちに2vol%中性ホルマリン溶液6mLを充填し15分間固定した。その胃を噴門部から幽門部まで大弯中央部に沿って切開し、塩化ビニル板に伸展させた。実体顕微鏡下にて各潰瘍の長さと幅を測定し、面積を算出して、これらの合計を総潰瘍面積とした。
その結果、対照群の総潰瘍面積の平均は103mmであった。化合物Fは、0.01mg/kgから用量依存的に総潰瘍面積を有意に縮小し、1mg/kg投与ではほぼ完全に縮小した(図11)。このように化合物Fは胃粘膜傷害を抑制した。
文献
K)Dig Dis Sci. 31(2 Suppl),81S-85S.1986
ラットインドメタシン誘発小腸傷害モデルに対する効果
化合物Fの小腸傷害に対する抑制効果をラットインドメタシン誘発小腸傷害モデルで検討した。非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の投与はヒトにおいて小腸に出血性の傷害を惹起することが知られている。本モデルは、ラットに非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)であるインドメタシンを投与することにより誘発される小腸粘膜傷害を特徴とし、ヒトNSAIDs起因性小腸傷害あるいはクローン病に類似の病態を示す(文献L、M)。
SD系ラット、雄性、7週齢(チャールス・リバー)を購入し、1週間馴化飼育した後、試験に使用した。ラットは、体重を指標に群分けし、全ての群にインドメタシン(SIGMA、Lot No.19F0018)を15mg/5mL/kgで皮下投与し、小腸傷害を誘発した。化合物Fは、0.01、0.1及び1mg/kgの用量で、インドメタシン皮下投与の30分前と6時間後にそれぞれ5mL/kgの容量で経口投与した。対照群には、溶媒(1vol%エタノール液)を5mL/kgで同様に経口投与した。各群8匹の動物を使用した。
ラットは、インドメタシン投与23.5時間後にエーテル麻酔下に2mLの10mg/mLエバンスブルー溶液を静脈内投与した。その30分後にエーテル麻酔下で腹部大動静脈より放血致死させ、小腸を摘出した。摘出した小腸は、2vol%中性ホルマリン溶液を適当量(約35mL)充填し、約15分間固定した。その後、腸管膜付着部位に沿って全小腸を切開し、塩化ビニル板に伸展させて実体顕微鏡下にて各潰瘍の長さと幅を測定し、面積を算出して、これらの合計を総潰瘍面積とした。
その結果、対照群では、小腸の総潰瘍面積は約730mmであった。これに対して、化合物F投与群は0.1mg/kg投与から用量依存的に有意に潰瘍面積を縮小し、1mg/kg投与では完全であった(図12)。このように化合物Fは、小腸傷害を強く抑制した。
文献
L)Aliment Pharmacol Ther. 7(1)、29−39、1993
M)Acta Gastroenterol Belg.57(5-6)、306−309、1994
以上により、化合物Fは、アルコール等による消化管粘膜への直接傷害やNSAIDs等による粘膜再生障害に対し優れた抑制作用を示した。すなわち、化合物Fは消化管粘膜の傷害に対する防御効果と組織修復効果が期待される。
上記実施例に示したとおりに、化合物Fに認められるように本発明の化合物は、免疫が関与する消化管炎症、薬剤性消化管粘膜傷害、薬剤性粘膜再生障害に基づく消化管傷害や治癒の遅延に対して有効である。具体的には、潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患、アルコール性胃炎・胃潰瘍や小腸潰瘍などにおいて有用であるが、例示疾患に限定されるものではない。
本発明のPGI誘導体は、医薬の有効成分として有用である。本発明のPGI誘導体を有効成分とする医薬は、消化管の炎症性疾患及び潰瘍性疾患の予防及び治療のための医薬として、特に、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃炎・胃潰瘍または小腸潰瘍の予防または治療のための医薬として有用である。
なお、2008年9月10日に出願された日本特許出願2008−232133号及び2009年7月16日に出願された日本特許出願2009−168193号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (23)

  1. 下式(1)で表されるプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
    Figure 2010029925

    ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
    1、R2:それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖アルキル基。
    3:水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはハロゲン化アルキル基。
  2. 1がメチル基である請求項1に記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  3. 3がメチル基である請求項1または2に記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  4. 2が水素原子である請求項1〜3のいずれかに記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  5. 1がメチル基であり、R2が水素原子である請求項1〜4のいずれかに記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  6. 3がm−メチル基である請求項1〜5のいずれかに記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  7. 1はメチル基であり、R2は水素原子であり、R3はメチル基である請求項1に記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  8. 1は水素原子であり、R2はメチル基であり、R3はメチル基である請求項1に記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩を有効成分とする医薬。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のプロスタグランジンI誘導体、またはその薬学的に許容できる塩を有効成分とする消化管疾患の予防または治療のための医薬。
  11. 消化管疾患が、消化管の炎症性疾患である請求項10に記載の医薬。
  12. 消化管の炎症性疾患が、炎症性腸疾患である請求項11に記載の医薬。
  13. 炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である請求項12に記載の医薬。
  14. 炎症性腸疾患が、腸管ベーチェット病または単純性潰瘍である請求項12に記載の医薬。
  15. 消化管疾患が、消化管の潰瘍性疾患である請求項10に記載の医薬。
  16. 消化管の潰瘍性疾患が、胃炎・胃潰瘍である請求項15に記載の医薬。
  17. 胃炎・胃潰瘍が、薬剤性の胃炎・胃潰瘍である請求項16に記載の医薬。
  18. 薬剤性の胃炎・胃潰瘍が、非ステロイド性抗炎症剤に起因する胃炎・胃潰瘍である請求項17に記載の医薬。
  19. 胃炎・胃潰瘍が、アルコールに起因する胃炎・胃潰瘍である請求項16に記載の医薬。
  20. 消化管の潰瘍性疾患が、小腸潰瘍である請求項15に記載の医薬。
  21. 小腸潰瘍が、薬剤性小腸潰瘍である請求項20に記載の医薬。
  22. 薬剤性小腸潰瘍が、非ステロイド性抗炎症剤に起因する小腸潰瘍である請求項21に記載の医薬。
  23. 小腸潰瘍が、アルコールに起因する小腸潰瘍である請求項20に記載の医薬。
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