上述した、特許文献1又は特許文献2に開示されている従来のリングの先端部同士を係合させる綴じ具(以下、従来の係合機能付き綴じ具ともいう。)は、いずれも、リングの先端部同士を開く前に、リングの先端部同士の係合状態を人為的に解除する必要がある。従って、従来の係合機能付き綴じ具では、以下のような問題点が指摘されている。
従来の係合機能付き綴じ具は、一般に広く普及しているリングの先端部同士を係合しない綴じ具(以下、従来の係合機能なし綴じ具ともいう。)の開閉操作と比較すると、開閉操作に要する工程が多くなる。
また、従来の係合機能付き綴じ具は、従来の係合機能なし綴じ具とは異なる開閉操作を
利用者に強いる。一方、従来の係合機能なし綴じ具と従来の係合機能付き綴じ具は、一般的な利用者にとって、外観の見分けがつきにくい。そこで、一般的な利用者は、従来の係合機能付き綴じ具を従来の係合機能なし綴じ具と同様の開閉操作によって開閉させようとしてしまうことが多い。
しかし、従来の係合機能付き綴じ具は同様の操作では開閉しないため、利用者は、従来の係合機能付き綴じ具の開閉を行うことができない。そして、利用者は、この時点で、これら二つの綴じ具(従来の係合機能付き綴じ具と従来の係合機能なし綴じ具)の開閉操作が異なることを認識する。
従って、利用者は、従来の係合機能付き綴じ具の開閉操作を改めて理解しなければならず、作業に要する時間がより長くなってしまう。場合によっては利用者にストレスを感じさせてしまう場合もある。
特に、従来の係合機能付き綴じ具のうち、特許文献2に開示されているようなレバー操作によってリングの開閉が行われる綴じ具は、同じくレバー操作によってリングの開閉を行う従来の係合機能なし綴じ具との見分けがつきにくい。従って、利用者は、レバー操作によってリングの開閉操作を行おうとするため、係合機能付き綴じ具に対して想定外の負荷がかかる虞がある。例えば、特許文献2に開示されているような綴じ具では、レバーの付け根などに大きな負荷がかかることが考えられる。また、更に大きな力を加えると、レバーが折れることも懸念される。なお、このような問題を想定し、各部材の強度を向上させてもよい。しかし、各部材の強度を向上させるとなると、綴じ具の重量が重くなる、綴じ具に用いる原材料の使用量が増加する、といったことが懸念される。
また、上記特許文献2に開示されている技術では、ユーザが手で直接係合状態を解除した後、レバーを用いてリングを開閉しなければならない。すなわち、レバー操作によってリングの開閉が可能でありながら、ユーザが手にとって係合状態を解除しなければレバー操作ができないという問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、紙葉類を綴じるための開閉可能なリングの先端部同士を綴じた状態で係合する係合部を有する綴じ具において、係合機能がない従来の綴じ具と略同様の開閉操作によってリングの開閉を行うことができる綴じ具に関する技術を提供することを課題とする。
本発明に係る第一の綴じ具は、紙葉類を綴じ込む、ファイル本体の表紙に接続された綴じ具であって、ファイル本体の表紙に接続されたベース部と、それぞれベース部に接続された第一リング部及び第二リング部を備えたリング部と、第一リング部の先端部に設けられた係合部と、第二リング部の先端部に設けられ、係合部と係合する被係合部と、ベース部に対して回動可能に接続されたレバー部と、ベース部に対するレバー部の位置に応じ、ベース部に対する第一リング部及び第二リング部の相対位置を変更するカム部と、を備え、カム部は、ベース部に対するレバー部の位置が、係合部と被係合部とが係合した閉リング姿勢に対応した位置から、両者が被係合でリング部への紙葉類の抜き差しが自在な開リング姿勢に対応した位置まで連続的に移動された際、まず、係合部と被係合部とが係合した状態から、両者の係合が解除される方向へ第一リング部及び第二リング部を相対移動させて両者の係合を解除し、その後、この相対移動方向とは異なる方向に第一リング部及び第二リング部を相対移動させて係合部と被係合部とを相対的に離間させる。
上記構成によれば、利用者は、レバーを移動させるだけで、当該レバーのベースに対する位置に応じてカムが第一リング部と第二リング部をまず係合解除方向に相対移動させ、
次いで当該方向とは異なる方向で両者の先端部同士を引き離す方向へ相対移動させることができる。
なお、リング部を開リング姿勢から閉リング姿勢にする場合には、利用者はレバーを上記とは反対方向に移動させることで、カムが当該レバーのベースに対する位置(方向)に応じて、まず第一リング部と第二リング部を近づける方向に相対的に移動させ、次いで当該方向とは異なる方向であって第一リング部の先端部と第二リング部が近づく方向に両者を相対的に移動させて当接させ、両者の先端部に設けられた係合部と被係合部が係合させることができる。これにより、第一リング部と第二リング部が互いに離れようとしても係合部と被係合部が当該方向への移動を規制し、レバー操作によるカムによる当該方向とは異なる方向(係合解除方向)への両リングの移動がなければ互いに離れる方向に移動することができない。
言い換えると、原則的には第一リング部及び第二リング部の先端部の接線方向(ベース部に投影した際の延在方向、適宜「開放方向」と表記する。)と略同方向において両リングの先端部(係合部及び被係合部)が互いに離れる方向に相対移動することで閉リング姿勢から開リング姿勢となるが、係合部及び被係合部は、閉リング姿勢から両リングが開放方向へ移動することを規制する係合機構である。従って、カム部は、閉リング姿勢から開リング姿勢とする際、まず、第一リング部及び第二リング部を、開放方向とは異なる方向であって、係合部と被係合部との係合を解除する方向(係合解除方向)に相対移動させて係合部と被係合部の係合状態を解除する。その後、第一リング部及び第二リング部を開放方向において係合部と被係合部が互いに離れる方向に相対的に移動させる。すなわち、係合部及び被係合部による係合機構は、第一リング部及び第二リング部が開放方向に相対的に移動することを規制する引っかかりであり、カム部はレバー部の動きに応じてその引っかかりを解除してから両リング部を引き離す(開リング姿勢からは、両リング部を近づけた後に両先端部を引っかけて閉リング姿勢とする。)。
なお、第一リング部及び第二リング部は上記の通り相対的に移動すればよい。従って、第一リング部は閉リング姿勢から開リング姿勢に至るまで位置が移動せず、第二リング部のみがベース部に対して相対的に移動することで、両リングを相対的に係合解除方向にずれた状態とし、次いで開放方向にずれた状態としてもよい。この他にも種々態様を採用し得るが、例えば以下の態様を採用することもできる。
すなわち、リング部は、第一リング部及び第二リング部がそれぞれ複数のリングを備え、第一リング部の各リングが互いに異なる第二リング部のリングと係合するように構成され、第一リング部は、被係合部に対して係合部が離間する方向へ相対移動する際の回動中心となる、各リングのベース側端部側をつなぐ第一回動軸部と、第一回動軸部に接続され、前記カム部によって押圧される第一押圧部と、を有し、第二リング部は、係合部に対して被係合部が離間する方向へ相対移動する際の回動中心となる、各リングのベース側端部側をつなぐ第二回動軸部と、第一回動軸部に接続され、カム部によって押圧される第二押圧部と、を有し、ベース部は、第一回動軸部を回動可能に保持する第一回動軸部保持部と、第二回動軸部を回動可能に保持する第二回動軸部保持部と、第一回動軸部における第一回動軸部保持部に保持されていない箇所との間に設けられ、当該箇所をベース部から離間する方向へ付勢する第一付勢手段と、第二回動軸部における第二回動軸部保持部に保持されていない箇所との間に設けられ、当該箇所をベース部から離間する方向へ付勢する第二付勢手段と、を有す。係合部及び被係合部は、ベース部の略鉛直方向に沿って一方が他方に対して相対移動することで閉リング姿勢における係合状態が解除される係合機構である。
そして、カム部は、閉リング姿勢から係合部及び被係合部の係合が解除される段階において、レバー部のベース部に対する位置に応じて、
(1)第一押圧部のベースとの位置を閉リング姿勢における位置と略同じ位置に規制し、第二押圧部が閉リング姿勢における位置よりもベースから離間するように規制するか、
(2)第一押圧部のベースとの位置を閉リング姿勢における位置よりもベース部に近づくように規制し、第二押圧部が閉リング姿勢における位置よりもベースから離間するように規制するか、
(3)第一押圧部が閉リング姿勢における位置よりもベース部に近づくように規制し、第二押圧部のベースとの位置を閉リング姿勢における位置と略同じ位置に規制することで、係合部及び被係合部が当接しない状態とし、次いで係合部及び被係合部の係合が解除された状態から開リング姿勢に至る段階において、各押圧部がそれぞれベースから離間するように規制する。
このように構成することで、利用者はレバー部をベースに対して回動させるだけで、第一リング部及び第二リング部(係合状態の係合部及び被係合部)をまず係合解除方向に相対移動させることができ、係合部及び被係合部の係合が解除された後に両者を開放方向へ相対移動させることができる。
第一リング部及び第二リング部はそれぞれ付勢手段によって常時開放方向に相対移動するように付勢されていて、その移動力がカム部によって規制されているため、閉リング姿勢から開リング姿勢となる際、利用者は第一リング部及び/又は第二リング部を持って両者を動かす必要がない。
また、開リング姿勢から閉リング姿勢にする際も、第一リング部及び第二リング部の位置は上記の通りに規制(規定)される。すなわち、レバー部のベース部に対する位置(回動方向)に応じて、第一リング部と第二リング部の相対位置が決定され、閉リング姿勢から係合解除方向に相対移動した後、開放方向に相対移動して開リング姿勢に至る。
特に、カム部を上記(2)のように構成すると、閉リング姿勢から係合部及び被係合部を係合解除方向に移動させる際、閉リング姿勢における両者の位置から係合が解除される位置までのそれぞれの移動距離は上記(1)、(3)における移動する側のリング部と比べて短くてすむ。
なお、第一付勢手段及び第二付勢手段を別体としてもよいが同一体としてもよい。付勢手段は第一回動軸部、第二回動軸部の少なくとも一箇所と当接すればよい。カム部は、第一押圧部用と第二押圧部用で別体にしてもよく、別体のものを接着等して形成された形状の一体型のものにすることもできる。このように、上記構成は適宜変形することができる。例えば以下のような構成も採用し得る。
本発明に係る第二の綴じ具は、紙葉類を綴じ込む、ファイル本体の表紙に接続される綴じ具であって、前記ファイル本体の表紙に接続されるベース部と、前記ベース部に接続されるリング部であって、第一リング部と第二リング部とを有し、該第一リング部と該第二リング部との先端部同士が接触することで前記紙葉類を綴じ込む閉リング姿勢を形成し、前記先端部同士が離間することで前記紙葉類の綴じ入れを可能とする開リング姿勢を形成するリング部と、前記第一リング部と前記第二リング部の夫々の先端部に設けられ、該先端部同士を係合する係合部と、前記ベース部に回動可能に接続され、前記リング部を、前記開リング姿勢と前記閉リング姿勢に切り替えるレバー部と、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動されると、前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を、前記係合部による係合状態を解除する方向へ移動させ、該リング部が開リング姿勢を形成するように、前記一方の先端部と他方の先端部のうち少なくとも一方の先端部を前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部とが離間する方向へ移動させるカム部と、を備える。
この綴じ具によれば、係合部を備えることで、リング部材の先端部同士の接触状態の解除を規制することができる。すなわち、外部からの衝撃や綴じられている紙葉類の自重などによってリング部の閉リング姿勢が解除され、紙葉類が脱落することを防止することができる。また、本綴じ具によれば、カム部を備えることで、レバー部の操作のみで、係合部による係合状態の解除と、閉リング姿勢から開リング姿勢への切り替えを行うことができる。また、本綴じ具によれば、カム部を備えることで、係合機能がない従来のレバー式の綴じ具と略同様のレバー操作によって、リング部の開閉を行うことができる。
なお、本綴じ具において、前記カム部は、前記リング部が開リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動されると、リング部が閉リング姿勢を形成するように前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を接近させた後、開リング姿勢を形成する際に移動させた一方の先端部を、前記係合状態を解除する方向と相反する方向へ変化させることで閉リング姿勢を形成させるようにしてもよい。カム部を上記のように構成することで、レバー部を操作することで、係合状態の解除及び閉リング姿勢から開リング姿勢への切り替えに加えて、開リング姿勢から閉リング姿勢への切り替え及び係合部による係合とをレバー操作のみで行うことができる。その結果、綴じ具の利便性をより高めることが可能となる。
リング部は、第一リング部と第二リング部とによって構成され、先端部同士が接触することで閉リング姿勢が形成され、先端部同士が離間することで開リング姿勢が形成される。リング部は、例えば、略半円状の二つのリング部材(第一リング部、第二リング部)を一対として構成することができる。この場合、リング部は、閉リング姿勢において略円形となる。なお、リング部の形状は、特に限定されるわけではなく、閉リング姿勢においてD字状のようなものであってもよい。
リング部は、ベース部の長手方向に所定の間隔をあけて複数配置することができる。リング部の数やリング部同士の間隔は、綴じ込む紙葉類のサイズやパンチ孔の規格に基づいて適宜設定することができる。なお、リングを三つ以上備える綴じ具も広く利用されている。しかしながら、従来の係合機能を有する綴じ具に関する技術(例えば、特開2003−211887号公報(特許文献1)、国際公開第2005/035265号パンフレット(特許文献2))は、いずれも二つのリングを備える綴じ具を想定しているにすぎなかった。従って、上記従来の係合機能を有する綴じ具に関する技術に基づいて、リングを三つ以上備える係合機能を備える綴じ具に想到することは困難である。また、仮に適用したとしても、リングの開閉は、極めて難しくなることが想定される。なぜなら、特許文献1や特許文献2に開示された技術では、リングの開閉が、片手で操作するにしろ、両手で操作するにしろ、いずれにしてもリングを直接把持することで行われる。従って、リングを開閉するに際しては、リングが三つ以上の場合であっても、全てのリングを把持する必要があるが、三つ以上の全てのリングを把持して開閉操作を行うことは極めて困難だからである。これに対し、本発明に係る綴じ具では、カム部によって、レバー部に対する操作(レバー部の動き)がリング部の開閉動作に変換される。従って、リング部の数やリング部同士の間隔に左右されることなく、レバー部を操作することでリング部の開閉を行うことができる。つまり、本発明に係る綴じ具は、リング部同士の間隔が広い綴じ具や、リング部が三つ以上設けられる綴じ具として非常に好適に用いることができる。
更に、例えば、特許文献1や特許文献2などに開示されている綴じ具は、リングが二つであり、この二つのリングは、利用者が片手で両リングの係合状態を解除できる距離に設けられている。従って、上記二つのリング同士の間隔が利用者の片手で操作可能な範囲を超えてしまうと、利用者が片手で操作することができなくなる。片手で操作できない場合、利用者は、当然両手で操作することになるが、両手で操作した場合には、片手で操作する場合に比べて大きな力が綴じ具(リング)に対して与えられることが懸念される。その結果、綴じ具を構成する各部材の強度の向上が必要となる。本綴じ具は、このような問題を解消し、係合状態を解除するために与えられる利用者の力を係合状態の解除のみに用いられるようにカム等の設計を工夫するといった必要がなく、この工夫によって機構が複雑化してしまうといった問題も防止される。
上記綴じ具では、上記リング部が、第一リング部と第二リング部の夫々の先端部に、先端部同士を係合する係合部を有している。これにより、夫々の先端部同士が係合され、該先端部同士の接触状態の解除を規制することができる。係合部は、リング部の先端部が、該先端部の軸方向へ移動することを規制するように構成することができる。ここでいう、軸方向とは、リング部が閉リング姿勢を形成する際のリング部の先端部の軸方向である。係合部は、例えば、第一リング部の先端部の一部と第二リング部の先端部の一部とを重なるようにし、重なった部分の内側面に互いに係合可能な凹凸部を設けることで形成することができる。
なお、凹凸部は、前記軸方向、換言すると両リング部の先端部同士が相対的に離れる方向への移動を規制することができればよい。そこで、凹凸部は、前記軸方向と略直交する方向に設けられた溝とこの溝に係合する突出部によって構成してもよい。このように、重なった部分の内側面に凹凸部を設けることで、凹凸部が互いに引っ掛かり、前記軸方向への移動を規制することが可能となる。その結果、先端部同士の接触状態が、外部からの衝撃等によって解除されることを規制することができる。
大量の紙葉類を綴じることができるように、リング部を大口径に設計した場合、綴じられている紙葉類の重みによって、両リング部には開閉方向に特に大きな力が働く。そしてこの大きな力は、両リング部を離間させ、紙葉類の脱落の原因や、リング部の開閉機構に負荷をかけ、当該機構の故障の原因となったりする。これに対し、本綴じ具によれば、凹凸部を備えているため、このような問題を回避することができる。
ベース部は、綴じ具の土台として機能する。ベース部は、ファイル本体の表紙の内側面と接続することで、綴じ具をファイルとして使用することが可能となる。なお、ベース部と表紙との接続方法は、特に限定されない。ベース部と表紙とを取り外し可能な構成とすることで、綴じ具とファイル本体との分別廃棄や一方の部品が破損した場合の部品交換等を容易に行うことができる。なお、本綴じ具において、表紙とは、背表紙、表表紙、裏表紙を含むものとする。
レバー部は、上記リング部を開リング姿勢と閉リング姿勢とに切り替える。本綴じ具によれば、このレバー部を操作するだけで、係合部による係合状態の解除と、閉リング姿勢から開リング姿勢への切り替えを行うことができる。なお、前記レバー部は、前記ベース部の短手方向の略中央に回動可能に接続されるレバー基端部と、操作用の自由端部とを有し、前記リング部を閉リング姿勢から開リング姿勢へ切り替える際、前記リング部の先端部同士の間に形成される開放部分を通過するようにしてもよい。
カム部は、レバー部の操作によって前記リング部の状態を変化させる。具体的には、カム部は、リング部が閉リング姿勢にある状態でレバー部が回動されると、第一リング部の先端部と第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を係合部による係合状態を解除する方向へ移動させた後、リング部が開リング姿勢を形成するように第一リング部の先端部と第二リング部の先端部とを離間させる。これにより、係合部による規制の解除と、閉リング姿勢から開リング姿勢への切り替えが可能となる。つまり、レバー操作のみで係合状態の解除とリング部の状態を変化させることができる。
また、このレバー操作は、係合機能がない従来のレバー式の綴じ具と略同様のレバー操作である。従って、初めて本綴じ具を使用する使用者も、容易にリング部の開閉を行うことができる。また、使用方法が分からず、無理に開閉するといったこともないので、想定外の負荷がかかることによる部材の損傷が起こることが防止される。
すなわち、閉リング姿勢においてレバー部の操作を行うことで、カム部がまず、リング部の先端同士の係合状態を解除するために、第一リング部の先端部と第二リング部の先端部とが離間する方向とは異なる方向(係合解除方向)へ第一リング部と第二リング部の少なくとも一方を移動させる(第一段階)。そして、係合状態の解除後のレバー部の操作により、カム部が、第一リング部と第二リング部とを離間する方向(開放方向)へ移動させる(第二段階)。
また、上述した通り、カム部は、第一リング部と第二リング部の少なくとも一方を動かす機構である。従って、例えば上記第一段階では一方のリング部を動かし、上記第二段階では他方のリング部を動かすといった構成や、上記第一段階では両方のリング部を動かし、上記第二段階では一方のリング部のみを動かすといった構成、上記第一段階・第二段階の双方において、両リング部を動かすといった構成など、種々の構成を採用することができる。なお、いずれの構成を採用する場合であっても、本綴じ具のカム部は、両リングの相対的位置関係を上記のように移動させることができる。
具体的には、本綴じ具において、前記カム部は、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動されると、前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部のうちの一方の先端部を前記係合部による係合状態を解除する方向へ移動させるとともに他方の先端部のみを前記離間させる方向へ移動させるようにしてもよい。また、本綴じ具において、前記カム部は、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動されると、前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部のうちの一方の先端部を前記係合部による係合状態を解除する方向へ移動させた後、前記離間させる方向へ移動させ、前記一方の先端部を前記係合状態を解除する方向へ移動させると共に他方の先端部を前記離間させる方向へ移動させるようにしてもよい。
なお、前記係合部による係合状態を解除する方向とは、前記リング部が閉リング姿勢を形成する際のリング部の先端部における軸方向と略直交する方向としてもよい。上述したように、係合部は、リング部の先端部が、リング部が閉リング姿勢を形成する際のリング部の先端部における軸方向へ移動することを規制する構成とすることができる。そこで、本綴じ具では、上記軸方向と略直交する方向へいずれか一方の先端部を移動させることで、係合部による規制を解除することとした。例えば、係合部は、第一リング部の先端部の一部と第二リング部の先端部の一部とを重なるようにし、重なった部分の内側面に凹凸部を設けることで形成することができる。この場合、上記軸方向と直交する方向、換言すると内側面に設けられた凹凸部の突出方向へいずれか一方の先端部を移動させることで、係合部による係合状態を解除することができる。
ここで、本綴じ具において、前記カム部は、前記レバー部の基端部と接続され、前記リング部の一部を押圧して該リング部を開閉させるカム部を有する構成とすることができる。この場合、前記第一リング部は、該第一リング部が開閉する際の回動中心となる第一回動軸部であって、前記ベース部の長手方向に沿う第一回動軸部と、該第一回動軸部に接続され、前記カム部によって押圧される第一押圧部と、を有する構成とすることができる。また、前記第二リング部は、該第二リング部が開閉する際の回動中心となる第二回動軸部であって、前記第一回動軸部と略平行な第二回動軸部と、該第二回動軸部と接続され、前記カム部によって押圧される第二押圧部と、を有する構成とすることができる。この場合、前記カム部は、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動されると、前記開リング姿勢を形成する方向に前記第一回動軸部を中心として回動する前記第一リング部の先端部と、前記開リング姿勢を形成する方向に前記第二回動軸部を中心として回動する前記第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を、前記開リング姿勢を形成する方向と相反する方向へ移動させる。その後、前記カム部は、前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部の夫々を前記リング部が開リング姿勢を形成するように前記第一リング部の先端部と前記第二リング部の先端部とを離間させるようにしてもよい。なお、相反する方向とは、前記係合部の係合を解除する方向である。
カム部は、レバー部の基端部に接続されると共にリング部の一部と接触するように配置することができる。これにより、レバー部が回動した際の力をリング部へ伝達し、リング部の開閉を実現することができる。カム部は、第一押圧部と第二押圧部とを押圧することからベース部の短手方向の略中心に設けることが好ましい。従って、第一押圧部と第二押圧部も、ベース部の略中心に配置することが好ましい。第一押圧部と第二押圧部は、夫々第一回動軸部と第二回動軸部とをクランク上に折り曲げることで形成することができる。第一回動軸部と第二回動軸部は、ベース部の短手方向における中心から同じ間隔をあけて配置することが好ましい。これにより、第一リング部の先端部と第二リング部の先端部との間に形成される開放部分をベース部の短手方向における中心の上方に形成することができる。なお、第一回動軸部と第二回動軸部は、ベース部にこれらを回動可能に支持するリング支持部を設け、該リング支持部によって支持すればよい。リング姿勢を形成する方向と相反する方向とは、換言すると係合部による係合状態を解除する方向である。本構成では、カム部が、回動軸周りに回動する一方のリングをリング姿勢を形成する際に回動する方向とは逆向きに回動させ、係合状態を解除する。
カム部は、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動された際、前記第一押圧部と前記第二押圧部に対して異なる押圧力を与えることで、前記第一リング部の先端部と、前記第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を、前記開リング姿勢を形成する方向と相反する、前記係合部の係合状態を解除する方向へ移動させるようにしてもよい。異なる押圧力は、例えば、カム部において、第一押圧部を押圧する部分の形状と第二押圧部を押圧する部分の形状との間に変化をもたせることで実現することができる。これにより、カム部から伝達された押圧力の差により、リング部の先端部の動きにずれが生じ、係合部による係合状態を解除することができる。
具体的には、前記カム部は、前記第一押圧部を押圧する第一カム部と、前記第二押圧部を押圧する第二カム部とを有する構成とすることができる。この場合、前記第二カム部は、前記第二押圧部を押圧する部分の外郭が前記第一カム部の第一押圧部を押圧する部分の外郭よりも外側に突出する構成とすることができる。カム部は、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動された際、前記第二押圧部に対して前記第一押圧部よりも大きい押圧力を与え、前記第二リング部の先端部を、前記開リング姿勢を形成する方向と相反する方向へ移動させる。
なお、上記発明では、カム部の形状を工夫することで、異なる押圧力を与えるようにしたが、押圧部の形状を工夫することでも同様の効果を得ることができる。そこで、例えば、前記第二押圧部は、前記カム部と接触する部分の外郭が前記第一押圧部におけるカム部と接触する部分の外郭よりもカム部側に突出するように形成してもよい。また、前記カム部は、前記第一押圧部と、該カム部と接触する部分が該第一押圧部におけるカム部と接触する部分の外郭よりもカム部側に突出する第二押圧部と、を押圧するようにしてもよい。このような構成によれば、前記リング部が閉リング姿勢にある状態で前記レバー部が回動された際、前記第二押圧部に対して前記第一押圧部よりも大きい押圧力を与え、前記第二リング部の先端部を、前記開リング姿勢を形成する方向と相反する、前記係合部の係合状態を解除する方向へ移動させることができる。
また、本綴じ具は、前記リング部が開リング姿勢を形成するように、該リング部の一部を付勢する付勢部を更に備える構成としてもよい。リング部の一部には、例えば上述した第一押圧部や第二押圧部が例示される。第一押圧部及び第二押圧部の下側から板バネ等によって付勢することで、リング部が開リング姿勢を形成するように付勢することができる。この場合、カム部によって第一押圧部及び第二押圧部を下方向に押圧することで、閉リング状態を維持することができる。そして、例えばレバー部を回動させることでカム部を回動させ押圧力を弱める若しくは解除することで、リング部を開リング状態へ変化させることが可能となる。なお、付勢部を設けた場合においても、リング部が閉リング姿勢にある状態でレバー部が回動された際、第一押圧部と第二押圧部に対して異なる押圧力を与えることで、第一リング部の先端部と、第二リング部の先端部とのうち少なくとも一方の先端部を、開リング姿勢を形成する方向と相反する方向へ移動させることができる。
以上説明した本発明に係る綴じ具によれば、紙葉類を綴じるための開閉可能なリングとこのリングを開閉するためのレバーとを備える綴じ具において、リングの開閉と、リングの先端部同士の係合及びその解除とをレバー操作によって行うことができる綴じ具に関する技術を提供することが可能となる。
次に、本発明に係る綴じ具の実施形態について図面に基づいて説明する。
(構成)
図1は、綴じ具1の斜視図を示す。図2は、綴じ具1の分解斜視図を示す。図3は、綴じ具1の平面図を示す。図4は、綴じ具1の裏面図を示す。綴じ具1は、ファイル本体9の背表紙の内側に接続されるベースプレート2と、ベースプレート2の長手方向に所定の間隔をあけて設けられている三つのリング3a、3b、3cと、リング3a、3b、3cの開閉を操作するレバー4と、レバー4の回動と連動してリング3a、3b、3cを開閉するカム5とによって構成されている。なお、本実施形態の綴じ具1は、紙葉類を綴じ込む閉リング姿勢(図6A参照)と、紙葉類を加除するためにリング3a、3b、3cの途中が開放された開リング姿勢(図8A参照)に変化する。以下、各構成の詳細について説明する。
ベースプレート2は、ベース本体21と、三つのリング3a、3b、3cを回動可能に支持する複数のリング支持部(回動軸部保持部)22と、カム5を回動可能に支持するカム支持部7とによって構成されている。また、本実施形態のベースプレート2は、金属板によって形成され、ベース本体21とリング支持部22とカム支持部7が、打ち抜き加工によって一体的に形成されている。
ベース本体21は、長方形の金属板によって形成されている。ベース本体21の寸法は、綴じ込む紙葉類の種類、パンチ穴の規格等に応じて適宜設計すればよい。なお、本実施形態のベース本体21は、リング同士の間隔が比較的広い3穴式に対応できるように設計されている。
リング支持部22は、リング3a、3b、3cの回動軸部35a、36a等を回動可能に支持する(適宜、第一リングを支持するものを第一回動軸部保持部、第二リングを支持するものを第二回動軸部保持部と表記する。)。本実施形態のリング支持部22は、ベース本体21の短手方向における両端部付近の夫々に四箇所、合計八箇所設けられている。これらのリング支持部22は、それぞれ同形状であり、リング支持部22を設ける位置のベース本体21の一辺を残して矩形に切り欠き、残された辺を基線として略直角に立ち上げ、内部に回動軸部35a、36a等が通るように湾曲させることで形成されている。これにより、本実施形態のリング支持部22は、ベース本体21と一体的に形成されている。
カム支持部7は、レバー4の基端部が接続されたカム5を回動可能に支持する。本実施形態のカム支持部7は、リング3aとリング3bとの間の連結部37a、38a(連結部の詳細については後述する。)を押圧すべく、ベース本体21の短手方向の中心であってリング3aとリング3bとの間に設けられている。本実施形態では、このカム支持部7が設けられる位置のベース本体21の一辺を残して台形状に切り欠き、残された辺(台形の下底に相等する。)を基線として略直角に立ち上げることで形成されている。なお、基線(台形の下底)は、ベース本体21の短手方向の中心線と一致している。また、立ち上げられた板状のカム支持部7の上部には、カム5を回動可能に固定ピン72を挿入する貫通孔23が設けられている。このように本実施形態のカム支持部7は、リング支持部22と同じくベース本体21と一体的に形成されている。また、切り欠かれた切欠部71は、連結部38aが押圧されて沈んだ際に、連結部38aの退避領域として機能する。
次にリング3a、3b、3cについて説明する。なお、リング3a、3b、3cの構成は、基本的にいずれも同じであるので、リング3aを例に説明する。リング3aは、金属製の略半円状の第一リング31aと第二リング32aとによって構成されている。本実施形態のリング3aは、凡そ左右対称に形成されており、閉リング姿勢において第一リング31aの先端部と第二リング32aの先端部がベースプレート2の短手方向の略中央に位置するように設計されている。なお、リング3aの内側に形成される径を大きくすることでより多くの紙葉類を閉じることが可能となる。なお、リング3aの形状は、特に限定されるわけではなく、閉リング姿勢においてD字状であってもよい。
第一リング31aの先端部に係合部33aが設けられ、第二リング32aの先端部に被係合部34aが設けられている(図3参照)。同図に示すように、係合部33aと被係合部34aは、閉リング姿勢において夫々が重なるように上下方向に内側の一部が切り欠かれている。先端部の軸方向、すなわち紙面上方方向への移動を規制するように、係合部33a、34aの内側面には、夫々突起と溝が形成されている。具体的には、係合部33aの突起と対向する位置の被係合部34aには溝が設けられ、係合部33aの溝と対向する位置の被係合部34aには突起が設けられている。これにより、夫々の突起と溝が引っ掛かり、軸方向への移動が規制される。その結果、紙葉類の綴じる量が多くなってしまった場合や、外部から何らかの衝撃を受けた場合であっても、紙葉類が脱落することを抑制することができる。
第一リング31a及び第二リング32aの基端部には、各リングが開閉する際に中心軸となる回動軸部35a、36aが接続されている。回動軸部35aと回動軸部36aは、互いに平行である。回動軸部35aは、第一リング31aの基端部が略直角に折り曲げられることで形成されている。また、リング3b、3cにも、夫々回動軸部35b、36b等が接続されている。すなわち、リング3bの第一リング31bの基端には回動軸部35bが接続され、また、リング3cの第一リング31cの基端には回動軸部35cが接続されている。
なお、回動軸部35b、35cは、回動軸部35aと同一軸上に位置している。一方、回動軸部36aは、第二リング32aの基端部が略直角に折り曲げられることで形成されている。リング3bの第二リング32bの基端部には回動軸部36bが接続され、また、リング3cの第二リング32cの基端部には回動軸部36cが接続されている。そして、回動軸部36b、36cは、回動軸部36aと同一軸上に位置している。これらの回動軸部35a等は、リング支持部22によって回動可能に支持されており、リング3a、3b、3cの開閉が可能となっている。
回動軸部35aと回動軸部35bは、クランク状の連結部37aによって接続され、回動軸部35bと回動軸部35cは、同じくクランク状の連結部37bによって接続されている。これにより、リング3a、3b、3cの開閉時において、第一リング31a、31b、31cが一体的に開閉可能となっている。また、回動軸部36aと回動軸部36bは、クランク状の連結部38aによって接続され、回動軸部36bと回動軸部36は、同じくクランク状の連結部38bによって接続されている。これにより、リング3a、3b、3cの開閉時において、第二リング32a、32b、32cが一体的に開閉可能となっている。
連結部37a、38aは、上記のように回動軸部同士を接続する他、カム5と板バネ6と接触している。連結部37a、38aは第一押圧部、第二押圧部に相当し、板バネ6は付勢手段に相当する。連結部37a、38aは、その中央部分が、ベースプレート2の中心に配置されているカム5と接触できるように、ベースプレート2の中心に向けてクランク状に折り曲げられることで形成されている。連結部37a、38aは、夫々の中央部分がベースプレート2の中心部分で平行に隣接し、カム5と接触可能となっている。なお、本実施形態では、連結部37b、38bも、上記連結部37a、38aと同形状により構成されている。これにより、例えば、リング3bとリング3cとの間にカムとレバーを設けることも可能となる。但し、本実施形態のように一つのレバー4によって開閉操作を行う構成の場合には、連結部37b、38bは、単に直線状としてもよい。
板バネ6は、リング3a、3b、3cが開リング姿勢を形成するように、連結部37a、37bを上方向に付勢する。本実施形態の板バネ6は、金属板によって形成され、基端部61から先端部62に向かってその幅が徐々に狭くなるように設計されている。板バネ6は、ベースプレート2のベース本体21に設けられた細長状の貫通孔23に挿入されている。より具体的には、板バネ6は、ベース本体21の裏面から挿入され、基端部61がベース本体21の裏面側で固定され、かつ、先端部62が連結部37a、38aと接触するようにベース本体21の中心に向けて湾曲している。これにより、板バネ6には、復元力が作用し、連結部37a、38aを上方向に付勢することが可能となっている。
カム5は、連結部37a、38aと接触し、レバー4の操作によってリング3a、3b、3cを閉リング姿勢から開リング姿勢へ、若しくは開リング姿勢から閉リング姿勢へと変化させる。本実施形態のカム5は、合成樹脂によって形成され、連結部37aを押圧する第一カム51と、連結部38aを押圧する第二カム52とによって構成されている。第一カム51と第二カム52は、外郭の形状が異なっている。その結果、レバー4を回動させることで第一カム51と第二カム52が同時に回動した際、連結部37aと連結部38aに対して異なる押圧力を与え、リング3a、3b、3cの先端部同士の動きにずれが生じ、係合部33a、34aの係合状態を解除することが可能となる。換言すると、カム5により、閉リング姿勢から開リング姿勢へ状態を変化させる際、第一リング31a、31b、31cは、第二リング32a、32b、32cから離れていくように制御され、第二リング32a、32b、32cは、閉リング姿勢における位置よりもベースプレート2側へ一旦押し下げられた後、第一リング31a、31b、31cから離れていくように制御される。
ここで、図5は、第一カムと第二カムの側面図を示す。第一カム51は、閉リング姿勢において連結部37aと接触する第一接触部511と、開リング姿勢において連結部37aと接触する第二接触部512と、閉リング姿勢から開リング姿勢への変化時若しくは開リング姿勢から閉リング姿勢への変化時において連結部37aと接触する第三接触部513とを有している。
第一接触部511は、閉リング姿勢において連結部37aが板バネ6の付勢力によって浮き上がり、リング3a、3b、3cが開かないように規制する。つまり、第一接触部511は、リング3a、3b、3cを閉リング姿勢の位置に規制する。第一接触部511は、固定ピン72の軸側に窪んだ領域を有しており、この窪んだ領域に連結部37aの突部が収まるように構成されている。これにより、第一カム5が閉リング姿勢状態から自動的に回動することを規制することができる。
第三接触部513は、その外郭が第一接触部511の外郭よりも小さく設計されている。従って、第三接触部513が連結部37aを押圧する力は、第一接触部511が連結部37aを押圧する力よりも弱くなる。その結果、板バネ6の付勢力により、連結部37aが上方向に押し上げられ、これに伴い第一リング31a、31b、31cの先端部が上方に浮き上がる。また、第三接触部513は、第一接触部511と第二接触部512との間に設けられた外側に膨らんだ湾曲部によって構成されている。これにより、閉リング姿勢から開リング姿勢への移行若しくは開リング姿勢から閉リング姿勢への移行を円滑に行うことができる。
第二接触部512は、固定ピン72の軸芯から第二接触部512までの距離が固定ピン72から第一接触部511までの距離よりも短く形成されている。これにより、閉リング姿勢が解除され、リング3a、3b、3cの先端部同士の間に開放部分を形成する、開リング姿勢をとる。
第一カム51は、以上の構成を備えることで、閉リング姿勢から開リング姿勢へリング3a、3b、3cを変化させる際、第一リング31a、31b、31cの先端の位置を、閉リング姿勢における第二リング32a、32b、32cと係合する位置から順次離れるように移動させる。また、第一カム51の形状を上記のような形状(図5参照)に設計しているので、ベースプレート2を基準として閉リング姿勢の位置から一旦浮き上がる方向へ移動させつつ開リング姿勢の位置へ移動させる。なお、このように第一リング31a、31b、31cの先端が一旦上側へ移動するのは、板バネ6による上方向への力が連結部37aに働くからである。
第二カム52も第一カム51と同じく、閉リング姿勢において連結部38aと接触する第一接触部521と、閉リング姿勢において連結部38aと接触する第二接触部522と、閉リング姿勢から開リング姿勢への変化時若しくは開リング姿勢から閉リング姿勢への変化時において連結部38aと接触する第三接触部523とを有している。また、第一接触部521にも連結部38aの突部38a1が収まる領域が設けられている。
このように、第一カム51と第二カム52は、同等の機能を有しているが、第二カム52における固定ピン72の軸から第三接触部523までの距離X2が第一カム51における固定ピン72の軸から第三接触部513までの距離X1よりも長くなるように設計されている。すなわち、第二カム52における第三接触部523の外郭が第一カム51における第三接触部523の外郭よりも外側に突出するように形成されている。これにより、閉リング姿勢から開リング姿勢へ変化させる際に、カム5が回動すると、第二カム52は、第一カム51よりも大きな下向きの押圧力を連結部38aに対して加えることになり、連結部38aが連結部37aよりも相対的に下方向に沈むことになる。
その結果、リング3a、3b、3cの先端部においても第一リング31aと第二リング32aとで異なる動きを生ずる。すなわち、連結部38aが下方向に沈むことに連動して第二リング32aの先端部も下方向に沈み、連結部37aが上方向に浮き上がることに連動して第一リング31aの先端部が上方向に浮き上がる。その結果、第一リング31aの先端部と第二リング32aの先端部との間にずれが生じ、係合部33aと被係合部34aとの係合状態が解除される。
なお、本実施形態では、第一カム51、第二カム52を上記のように設計しているため、第一リング31a、31b、31cが上方向に浮き上がり、第二リング32a、32b、32cが下方向へ沈む。従って、リング3a、3b、3cの先端同士の係合状態を極めて確実に解除させることができる。また、いずれか一方のリングの先端のみを上下移動させる場合と比べて、各リングの上下移動量が少なくすることができる。
レバー4は、リング3a、3b、3cを開リング姿勢と閉リング姿勢に切り替える。レバー4は、金属部材によって構成され、カム支持部7に固定ピン72によって回動可能に接続される基端部41と、操作用の自由端部42とを有している。レバー4の基端部0は、カム5と固定されており、レバー4の回動に連動してカム5が回動する。
(使用方法)
次に、上述した実施形態の綴じ具1の使用方法について、各構成の動作を交えて図面に基づいて説明する。
実施形態の綴じ具1は、ファイル本体9の表紙内側面に固定した状態で使用することができる(図1参照)。綴じ具1は、リング3a、3b、3cの第一リングと第二リングの先端部同士が接触する閉リング姿勢(図6A、図6B、図6C参照)とリング3a、3b、3cの先端部同士が離間する開リング姿勢(図8A、図8B、図8C参照)を取ることができる。紙葉類を綴じ込んだ状態で棚等において保管する場合は、閉リング姿勢で使用され、書類等を綴じ込む際や綴じ込まれた書類等を抜き差しする際には、開リング姿勢で使用される。
本実施形態の綴じ具1は、この閉リング姿勢から開リング姿勢への動作、若しくは開リング姿勢から閉リング姿勢への動作をレバー4の操作によって行うことができる。また、本実施形態の綴じ具1は、リング3a、3b、3cの第一リングの先端部に係合部31a、31b、31c、第二リングの先端部に32a、32b、32cが設けられおり、先端部同士の接続状態が解除されることを規制することができるが、係合部による係合状態の解除もレバー4を操作することで行うことができる。
図6Aは、綴じ具1の閉リング姿勢の正面図を示す。図6Bは、綴じ具1の閉リング姿勢の第二カム側側面図を示す。図6Cは、綴じ具1の閉リング姿勢の第一カム側側面図を示す。
閉リング姿勢では、リングレバー4の自由端部42がベースプレート2と平行になっている。また、板バネ6は、リング3a、3b、3cが開リング姿勢を形成するように、連結部37a、38aを上向きに押し上げる。これに対し、カム5(第一カム51及び第二カム52)が下向きに連結部37a、38bを押圧し(移動を規制し)、閉リング姿勢が保持されている。より具体的には、第一カム51の第一接触部511が連結部37aを下向きに押圧する。また、第二カム52の第一接触部521が連結部38aを下向きに押圧する。
なお、第一カム51の第一接触部511及び第二カム52の第一接触部521に設けられた窪んだ領域に、連結部37a、38aの夫々に設けられている突部37a1、38a1が収まっている。また、リング3a、3b、3cの夫々に設けられた係合部33a、34a等が係合することで先端部同士が離間することが規制されている。
紙葉類を綴じこむ場合や既に綴じ込まれている紙葉類を取り出す場合には、レバー4を操作することで、リング3a、3b、3cを開リング姿勢に変化させる。レバー4を把持し、レバー4の自由端部42を上方に持ち上げる。その結果、レバー4の回動に連動してカム5が回動し、第一リング31a、31b、31cの先端が第二リング32a、32b、32cよりも上方向(ベース本体9から離れる方向)へ移動し、第二リング32a、32b、32cの先端が第一リング31a、31b、31cよりも下方向へ移動し(それぞれ係合解除方向へ移動し)、係合部33aと被係合部34a等の係合状態が解除される。この様子を、図7A〜図7Cを参照しながらより詳細に説明する。
図7Aは、係合部33a、34a等による係合状態が解除された状態を示す正面図を示す。図7Bは、係合部33a、34a等による係合状態が解除された状態を示す第二カム側側面図を示す。図7Cは、係合部33a、34a等による係合状態が解除された状態を示す第一カム側側面図を示す。
レバー4の自由端部42が上方に持ち上げられると、これに連動してカム5が回動する。第一カム51と第二カム52は同時に回動するが、上記の通り、第二カム52における第三接触部523の外郭は、第一カム51における第三接触部513の外郭よりも大きく形成されている。従って、第一カム51と第二カム52は同時に回動されるが、第二カム52の第三接触部523の方が第一カム51の第三接触部513よりも下方(ベース本体9側)に位置することになる。その結果、第二カム52が接触する連結部38aには、カム2の第三接触部523によって、第一カム51が接触する連結部37aよりも強い下向きの押圧力が加えられ、連結部38aが連結部37aよりも沈むことになる。すなわち、連結部38aが、連結部38aの直下のベース本体21に形成されている切欠部23に退避することになる。このように連結部38aが下方に沈むと回動軸部36aを介して接続されている第一リング32aの先端部も下方に沈む。
一方、第二カム52の第三接触部523は、第一カム51の第三接触部513よりも上方に位置することになる。また、連結部37aには、板バネ6による上方向への付勢力が作用している。従って、第一カム51が接触する連結部37aは、板バネ6の付勢力によって、上方向に押し上げられる。その結果、係合部33aと被係合部34aが上下方向にずれ、係合部33a、34aの係合状態が解除される。
係合状態が解除された後、更にレバー4を上方に持ち上げていくと、カム5による連結部37a、38aに対する下向きの押圧力が弱まる。その結果、板バネ6の付勢力によってリング3a、3b、3cの第一リングと第二リングの先端部間に開放部分が形成される。すなわち、開リング姿勢が形成される。この様子を、図8を参照しながらより詳細に説明する。
図8Aは、綴じ具1の開リング姿勢の正面図を示す。図8Bは、綴じ具1の開リング姿勢の第二カム側側面図を示す。図8Cは、綴じ具1の開リング姿勢の第一カム側側面図を示す。係合状態が解除された後、更にレバー4を上方に持ち上げていくと、リング3aの先端部同士の間に形成される開放部分をレバー4が通過し、開リング姿勢を形成する。開リング姿勢では、レバー4が、ベースプレート2と略直交している。また、上記の通り、レバー4の回動に連動してカム5も回動する。その結果、カム5において、第一カム51の第二接触部512が連結部37aを押圧し、第二カム52の第二接触部522が連結部38aを押圧する。
なお、第二接触部512、522は、第一接触部511、521よりも外郭が小さく形成されており、連結部37a、38aへ与える押圧力が弱く、また、係合部33a、34
a等の係合状態が解除されているので、板バネ6の付勢力によって連結部37a、38aが上向きに押し上げられる。その結果、リング3a、3b、3cが、回動軸部35a、36a等を回動軸として回動し、リング3a、3b、3cの先端部同士の間に開放部分が形成される。つまり、開リング姿勢が形成される。
開リング姿勢から閉リング姿勢にする場合は、開リング姿勢におけるレバー4を上記とは反対方向に回動させれば、カム5は上記とは反対の順序で第一リング並びに第二リングに作用するため、第一リング及び第二リングが開放方向とは反対方向に移動して図7A〜図7Cに示した状態となった後、それぞれ係合解除方向とは反対方向に移動して図6A〜図6Cに示した状態(閉リング姿勢)となる。
(効果)
以上説明した綴じ具1によれば、係合部33a、34a等を備えることで、リング3a、3b、3cの先端部同士の接触状態が、外部からの衝撃や紙葉類の自重によって解除され、紙葉類が脱落することを防止することができる。また、綴じ具1によれば、カム5を備えることで、レバー4を操作するだけで、係合部33a、34a等による係合状態の解除と、閉リング姿勢から開リング姿勢への変更、又は開リング姿勢から閉リング姿勢への変更を行うことができる。また、綴じ具1によれば、カム5を備えることで、係合機能がない従来のレバー式の綴じ具と略同様のレバー操作によって、リングの開閉を行うことができる。
(変形例1)
図9は、変形例1の綴じ具1における第二カムの周辺拡大図を示す。なお、点線は、上述した実施形態の第二カム52の外郭を示す。上述した実施形態では、カム5において、第二カム52の第三接触部523の外郭を第一カム51の第三接触部513の外郭よりも大きくすることで、係合部33a、34a等の解除を実現した。これに対し、変形例の綴じ具1においては、第三接触部523の外郭が、第一カム51と第二カム52とが同様に構成され、第二カム52の第一接触部521の窪んだ領域が深く形成され、かつ、第二カム5と接触する連結部38aに設けられている突部38a1が第一カム51と接触する連結部37aに設けられている突部よりも高く形成されている。変形例の綴じ具1では、閉リング姿勢から開リング姿勢へ変化する際、第二カム52の第三接触部523が第一カム51の第三接触部513よりも高い突部38a1を乗り越えなければならない。その結果、第二カム52の第三接触部523の連結部38aに対する押圧力が、第一カム51の第三接触部513の連結部37aに対する押圧力を上回る。従って、連結部38aが、下方に沈み、係合部33a、34aの係合状態を解除することが可能となる。
(変形例2)
閉リング姿勢から開リング姿勢へのリング3a、3b、3cの移動において、第一リング31a、31b、31cの先端が第二リング32a、32b、32cから遠ざかる方向(開く方向)に移動し、第二リング32a、32b、32cの先端が第一リング31a、31b、31cの先端から押し下げられる(ベースプレート2に近づく)方向へ一旦移動した後、第一リング31a、31b、31cの先端から遠ざかる方向(開く方向)に移動するようにしてもよい。すなわち、第一リング31a、31b、31cの先端を上方向に移動させるように構成しなくとも、上記同等の作用を奏する。この場合、第一カム51は、第一リング31a、31b、31cの先端が上方向に移動するように設計する。一方、第二カム52は、第二リング32a、32b、32cの先端が開く方向へ移動するように設計すればよい。
ここで、図10は、変形例2の綴じ具における第一カム及び第二カムの側面図を示す。変形例2の綴じ具では、第一カム51aの第三接触部513aについて、固定ピン72の軸芯から第三接触部513aまでの距離X1が固定ピン72の軸芯から第一接触部511aまでの距離X3とほぼ同じ長さに設計されている。これにより、カム5を回動させた際、第一接触部511aと第三接触部513aは、ほぼ同じ力で接触部37aを押圧する。すなわち、上述した実施形態のように、板バネ6の付勢力によって接触部37aが上方向に浮き上がることが規制される。なお、第二カム52は、上述した実施形態と同様に設計すればよい。図10における円(点線)は、固定ピン72を中心とする仮想円であり、X1とX3の長さを等しいことを示している。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る綴じ具はこれらに限らず、可能な限りこれらの組合せを含むことができる。例えば、上述した実施形態では、リング3a、3b、3cの先端部を上下方向に移動させることで、係合状態が解除された。しかし、例えば、カム5の形状やカム5とリング3a、3b、3cとの連結部の機構を適宜設計し、リング3a、3b、3cの先端の係合解除方向が上記実施例とは異なる方向(例えば、ベースプレートの長手方向)に移動した後、開リング姿勢を形成する方向へ両リングが移動するようにしてもよい。例えば、板バネ6とは異なるバネをベース部本体9に設けて第二リングをベース部本体9の長手方向に付勢し、第二回転軸部保持部が第二回転軸部(第二リング)の上記方向の移動を許容するように第二回転軸部を保持し、カム5が上記方向の移動も規制するようにする構成・形状にするなどして、係合解除方向を上記とは異なる方向にすることができる。
また、上述した実施形態では、第一リング31a、31b、31cと第二リング32a、32b、32cの双方のリングが移動したが、一方のリングのみが移動するように構成してもよい。すなわち、一方のリング(例えば、第一リング31a、31b、31c)はベースプレート2に固定し、他方のリング(例えば、第二リング32a、32b、32c)のみ、閉リング姿勢から係合解除方向に移動した後、開リング姿勢方向へ移動するように構成することもできる。
更に、閉リング状態から開リング状態へリングが移動する際、一方のリング(例えば、第一リング31a、31b、31c)の先端部は常時開リング方向へのみ移動するように構成し、他方のリング(例えば、第二リング32a、32b、32c)の先端部は係合解除方向へのみ移動するように構成してもよい。また、一方のリングの先端部が係合解除方向へ移動した後、他方のリングが開リング状態へ移動するように例えばカム5の形状を工夫してもよい。また、例えば、カム5を、リングが閉リング姿勢にある状態でレバー4が回動されると、一方のリングの先端部と他方のリングの先端部のうちの一方の先端部を係合状態の解除方向へ移動させた後、離間させる方向へ移動させ、一方の先端部を係合状態の解除方向へ移動させると共に他方の先端部を離間させる方向へ移動させてもよい。この場合にも、上述した実施形態の綴じ具と同等の作用及び効果を奏することができる。
(別例)
連結部37a、38aが押圧されてベース本体21側に沈む構成の場合、換言すると連結部37a、38aがベース本体21側に移動する構成の場合、ベース本体21は、連結部37a、38aの移動方向に対応する位置を、他の領域よりも凹ませるか、又は、切り欠いてもよい。凹ませた領域、又は切り欠かれた領域は、連結部37a、38aの退避領域として機能し、その結果、連結部37a、38aの移動可能領域をより大きくすることができる。
また、連結部37aと連結部38aの間隔、換言すると連結部37aと連結部38aが最も近づいた際の間隔を広げることで、カム5回りの設計の自由度を向上することができる。また、連結部37aと連結部38aの間隔を広げることで、リング3a、3b、3cの先端部同士が離間する開リング姿勢におけるリング3a、3b、3cの先端部同士の間隔を広げることができ、その結果、紙葉類の綴じ込みや取り出しが更に容易になる。なお、連結部37aと連結部38aの間隔を広げる構成とする場合、第一カム51と第二カム52の夫々が連結部37a、38aを押圧できるように幅広に設計する必要がある。