JPWO2009125479A1 - 磁極位置検出装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

2つの磁気センサを任意の間隔で配置しても磁極位置を正しく取得できる磁極位置検出装置を得ることを目的として、モータの磁極配列方向に沿って所定の間隔Lを置いて配置される2つの磁気センサの各センサ出力a,bと、2つのセンサ出力a,b間の位相差φとを入力として、sinφ>δである場合は、a・sinφをb−a・cosφで割り算してtanθを求め、磁極位置θ=tan−1{a・sinφ/(b−a・cosφ)}を出力する。また、sinφ≦δである場合は、a=sinθ、b=cos(θ+φ)であるから、磁極位置θ={sin−1(a)+cos−1(b)−φ}/2を出力する。φ=2π×L/(磁極ピッチまたは極数)であるから、φを2つのセンサ出力a,bに対する補正係数として用いることで、間隔Lが理論値と異なる場合でも磁極位置誤差をキャンセルすることができる。つまり、2つの磁気センサを任意の間隔で配置できる。

Description

この発明は、モータの可動部が位置する磁極位置を検出する磁極位置検出装置及び方法に関するものである。
モータの磁極構造は、リニアモータでは、或る長さ(磁極ピッチ)の磁石を互いの極性を異ならせて直線状に複数配列した構造であり、回転モータ(ブラシレスモータなど)では、所定の極数を構成するように互いに異なる極性の磁極を環状に所定数配列した構造である。
リニアモータや回転モータ(ブラシレスモータなど)では、可動部が位置する磁極位置での磁気を検出するために、磁極が発生する磁束の距離に応じた変化量を検出する2以上の磁気センサがモータの磁極配列方向に沿って或る間隔を置いて配置される。
磁極位置検出装置は、上記した2以上の磁気センサのうち、2つの磁気センサのセンサ出力間の位相差に基づき、可動部が位置する磁極位置を演算検出する装置である。
リニアモータでは、磁石配列方向に移動する際に、磁極ピッチ内のいずれの位置(磁極位置)に位置しているかの位置情報を得るために、磁極位置検出装置を搭載している。つまり、リニアモータに用いる磁極位置検出装置は、2つの磁気センサを装置内に備えている。一方、回転モータでは、2以上の磁気センサは当該モータの構成部分の一部となり、磁極位置検出装置は当該モータの外部に設けられる構成となる。
ところで、2つの磁気センサの配置間隔に関して、従来では、センサ出力間の位相差が90度となるように、2つの磁気センサを配置している(例えば、特許文献1,2等)。
そうすると、リニアモータの例で言えば、2つの磁気センサの配置間隔Lと、磁極ピッチPITとの間に、
L=PIT/4 …(1)
の関係が成り立つ。なお、配置間隔Lは、回転モータでは、電気角で表され、
L=180°/極数
である。
各磁気センサの出力波形は、正弦波状をしているので、この式(1)の制約条件を満たすように2つの磁気センサを配置した場合、進み位相側のセンサ出力をaとし、遅れ位相側のセンサ出力をbとすれば、センサ出力aは正弦波と見なすことができ、センサ出力bは余弦波と見なすことができる。磁極位置は、センサ出力a,bの正接値を演算することで求めることができる。
すなわち、磁極位置をθとすれば、tanθ=a/bであるので、磁極位置θは、
θ=tan−1(a/b) …(2)
と求めることができる。
この場合の処理ブロックは、つまり、従来の磁極位置検出装置は、a/bを求める割算器と、割算器が求めた正接値tanθから逆正接値を求めるtan−1の角度演算器とで構成される。
特開昭60−180468号公報(第3図) 特開2001−78392公報(図1)
しかし、従来の磁極位置検出装置での2つの磁気センサの配置間隔は、任意に定めることができず、式(1)の制約条件から理解できるように、リニアモータでは磁極ピッチによって決められるという制約があり、回転モータでは極数によって決められるという制約がある。
それ故、磁気センサの取り付け位置に誤差がある場合には、面倒な補正処理が必要になっている。そして、リニアモータに搭載する磁極位置検出装置では、当該装置の大きさが磁極ピッチによって決まるので、小型化が困難である。また、磁極位置検出装置を磁極ピッチの異なるリニアモータ間で共用化することができない。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、2つの磁気センサを任意の間隔で配置しても磁極位置を正しく取得できる磁極位置検出装置及び方法を得ることを目的とする。
上述した目的を達成するために、この発明にかかる磁極位置検出装置は、モータの磁極配列方向に沿って所定の間隔を置いて配置される2以上の磁気センサのうち、2つの磁気センサのセンサ出力間の位相差に基づき、可動部が位置する磁極位置を演算検出する磁極位置検出装置であって、前記2つのセンサ出力のうちの進相側センサ出力をa、遅相側センサ出力をbとし、前記位相差をφとするとき、前記位相差の正弦値が判定閾値よりも大きい場合の磁極位置θを、θ==tan−1{(a・sinφ/(b−a・cosφ)}の演算を行って検出する第1の演算系と、前記位相差の正弦値が判定閾値よりも小さい場合の磁極位置θを、θ={sin−1(a)+sin−1(b)−φ}/2の演算を行って検出する第2の演算系とを備えていることを特徴とする。
この発明によれば、2つの磁気センサを任意の間隔で配置しても磁極位置を正しく取得できる磁極位置検出装置が得られるという効果を奏する。
図1は、この発明の一実施の形態による磁極位置検出装置の構成を示すブロック図である。 図2は、リニアモータに搭載する磁極位置検出装置のこの発明による磁極位置検出の原理を説明する図である。 図3は、図2に示す磁極位置検出装置が備える2つの磁気センサの出力波形を示す波形図である。 図4は、図2に示した構成において、配置間隔を5mm、磁極ピッチを30mmとした場合の磁極位置検出動作を説明する図である。 図5は、図4に示した条件の下でのシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。 図6は、図2に示した構成において、配置間隔を5mm、磁極ピッチを20mmとした場合の磁極位置検出動作を説明する図である。 図7は、図6に示した条件の下でのシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。 図8は、図2に示した構成において、配置間隔が理論値からずれている場合に補正係数を算出して求めた磁極位置のシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。 図9は、3つの磁気センサを用いて磁極位置検出を行う方法を説明する図である。
符号の説明
1 磁極位置検出装置
2 リニアモータ
3 ガイド
4 磁石
11,12,13 磁気センサ
20,21,31 乗算器
22,23,32 選択回路
24,29 減算器
25 割算器
26,27,28 角度演算器
30 加算器
a,b センサ出力
φ 位相差(補正係数)
以下に図面を参照して、この発明にかかる磁極位置検出装置及び方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施の形態による磁極位置検出装置の構成を示すブロック図である。なお、この実施の形態では、リニアモータに搭載して用いるものとして説明するが、回転モータでも利用できるものである。
図1に示すように、この実施の形態による磁極位置検出装置は、2つの磁気センサのセンサ出力a,bと、センサ出力a,b間の位相差φとを入力とし、それらに基づき磁極位置θを演算出力する装置である。
図1に示す磁極位置検出装置は、乗算器20,21、選択回路22,23、減算器24、割算器25、角度演算器26,27,28、減算器29、加算器30、乗算器31、及び選択回路32を備えている。また、図示してないが、位相差φを下記の式(3)によって求める位相差演算部を備えている。
この磁極位置検出装置は、次のような原理に基づき構成したものである。図2と図3を参照して説明する。なお、図2は、リニアモータに搭載する磁極位置検出装置のこの発明による磁極位置検出の原理を説明する図である。図3は、図2に示す磁極位置検出装置が備える2つの磁気センサの出力波形を示す波形図である。
図2おいて、磁極位置検出装置1を搭載するリニアモータ2は、ガイド3に案内されて或る長さ(磁極ピッチ)を有する磁石4の配列方向に動くことができる。磁極位置検出装置1には、2つの磁気センサ11,12が磁石4の配列方向において間隔Lで配置されている。したがって、磁極位置検出装置1が或る位置に位置するときの磁気センサ11,12の出力値は、N極からの距離が異なるため違った値になる。
磁極位置検出装置1がガイド3に沿って移動する場合、磁気センサ11,12の出力(センサ出力)a,bは、図3に示すように、磁極位置検出装置1の移動位置に応じて一定の位相差φ[rad]を持つ正弦波状になる。センサ出力a,bの位相差φは、磁極PITと磁気センサ11,12の配置間隔Lとで決まり、
φ=2π×L/PIT[rad] …(3)
と表せる。
ここで、センサ出力aは、進相側に配置される磁気センサ11の出力で、センサ出力bは、遅相側に配置される磁気センサ12の出力であるとすれば、磁気センサ11の出力aに比べて磁気センサ12の出力bは、φ=2π×L/PIT[rad]だけ位相が遅れることになる。このときの磁極位置をθとして、正接値tanθ=a/bを求めると、
a/b=sinθ/sin(θ+φ)=a/(a・cosφ+cosθsinφ)
となる。したがって、磁極位置θの余弦値cosθは、
cosθ=(b−a・cosφ)/sinφ …(4)
と計算できる。
従来の磁極位置検出手法では、磁気センサ11,12の出力a,bは、90度の位相差を有しているので、φ=90°となり、式(4)に適用すると、cosθ=bとなる。このように、式(4)は、従来手法の拡張になっている。
磁極位置θを従来手法と同じように正接値tanθから算出すると、
tanθ=sinθ/cosθ=a/cosθ=a・sinφ/(b−a・cosφ)となるので、磁極位置θは、
θ=tan−1{(a・sinφ/(b−a・cosφ)} …(5)
と算出することができる。
式(5)は、磁極ピッチと、磁気センサ11,12の配置間隔とから得られる位相差φをセンサ出力a,bに対する補正係数として用い、センサ出力a,bから磁極位置の正接値tanθを求めれば、磁極位置θが得られることを示している。
但し、式(5)において、sinφ=0となる条件では、tanθ=0となるため、式(4)からcosθを求めることができない。実際に、sinφ≪1のときは、磁気センサ11,12の配置間隔Lが磁極ピッチPITに比べて極めて小さく、磁気センサ11,12のセンサ出力a,bの値がほぼ一致するため、式(5)からtanθを求めて磁極位置θを求めるのは困難になる。また、磁気センサ11,12の配置間隔Lが磁極ピッチPITの整数倍の場合にも、同じようにsinφ=0となり、式(5)からtanθを求めて磁極位置θを求めるのは困難になる。
そこで、このような場合は、センサ出力a,bから直接値sinθを求めて磁極位置θを算出することにする。すなわち、a=sinθ、b=sin(θ+φ)の関係から、
θ=sin−1(a)
θ=sin−1(b)−φ
となるので、この2式を、磁極位置θを2つのセンサ出力a,bを利用して算出できるように、
θ={sin−1(a)+sin−1(b)−φ}/2 …(6)
と変形する。このようにすれば、sinφが小さい場合には、センサ出力a,bから直接sinθを計算することによって磁極位置θを算出することができる。
なお、回転モータの場合は、磁極ピッチPITを極数とし、配置間隔Lと位相差φと磁極位置θをそれぞれ電気角で考えることにより、上記と同様の手順で磁極位置を算出することができる。
図1は、以上の内容を処理ブロックの形に整理して示したものである。図1において、値δは、sinφ=(2π×L/PIT)の大きさに応じて、式(5)によってtanθを算出して磁極位置θを算出するか、式(6)によってsinθから磁極位置θを算出するか、を決定する判定閾値である。この判定閾値δは、0<δ≪1の範囲内に定められる設計値である。
乗算器20は、センサ出力aにsinφを乗算した「a・sinφ」を選択回路22の一方の入力端15aに出力する。乗算器21は、センサ出力aにcosφを乗算した「a・cosφ」を選択回路23の一方の入力端16aに出力する。選択回路22の他方の入力端15bには、センサ出力aが直接入力される。選択回路23の他方の入力端16bには、値0が入力される。
選択回路22の出力は、割算器25の一方の入力端と角度演算器27とに入力される。選択回路23の出力は、減算器24の一方の入力端に入力される。減算器24は、他方の入力であるセンサ出力bから選択回路23の出力を引き算した値を割算器25の他方の入力端と角度演算器28とに出力する。
角度演算器26は、割算器25の出力「tanθ」に「tan−1」の角度演算を施して逆正接値(磁極位置)θを求め、選択回路32の一方の入力端17aに出力する。
角度演算器28は、減算器24の出力に「sin−1」の角度演算を施し、求めた逆正弦値を減算器29の一方の入力端に出力する。減算器29は、角度演算器28の出力から他方の入力である位相差φを引き算した値を加算器30の一方の入力端に出力する。
角度演算器27は、選択回路22の出力に「sin−1」の角度演算を施し、求めた逆正弦値を加算器30の他方の入力端に出力する。乗算器31は、加算器30が出力する「(減算器29の出力」+(角度演算器27の出力)」に1/2を乗算した値を選択回路32の他方の入力端17bに出力する。
以上の構成において、選択回路22,23,32は、それぞれ、sinφ>δである場合は、一方の入力端15a,16a,17aを選択し、sinφ≦δである場合は、他方の入力端15b,16b,17bを選択する。
そうすると、sinφ>δである場合は、選択回路22の出力はa・sinφであり、選択回路23の出力はa・cosφである。減算器24の出力は、b−a・cosφである。割算器25の出力は、a・sinφ/(b−a・cosφ)=tanθとなる。したがって、角度演算器26の出力には、式(5)の演算による磁極位置θが得られる。
一方、sinφ≦δである場合は、選択回路22の出力はセンサ出力aであり、選択回路23の出力は値0である。減算器24の出力は、センサ出力bである。角度演算器27の出力は、θ=sin−1(a)である。角度演算器28の出力は、θ=sin−1(b)である。減算器29の出力は、θ=sin−1(b)−φである。加算器30の出力は、2θ={sin−1(a)+sin−1(b)−φ}である。したがって、乗算器31の出力には、式(6)の演算による磁極位置θが得られる。
図1に示す構成によって、任意の配置間隔Lにおいて磁極位置θを算出できるようになることが解る。そして、磁気センサ11,12の取り付けにおいて、配置間隔Lが理論値からずれた場合でも、位相差φを補正係数として用いることで、特別な補正処理をせずに取り付けに起因する配置間隔Lの誤差を補正することができる。
すなわち、磁気センサ11,12の取り付けにおいて、配置間隔Lが理論値からずれた場合は、実際の配置間隔Lを実測したり、磁極位置誤差波形の観測から取り付け位置の誤差を算出して実際の配置間隔Lを推定したりして、配置間隔Lの実際値を求め、それを式(3)に適用して求めた位相差φを補正係数として図1におけるφに適用すればよい。つまり、配置間隔Lに誤差があっても、補正係数φを上記のように適切に求めて図1の構成に適用すれば、自動的に正しい磁極位置が得られる。以下に、実施例として各種の具体的な態様を示す。
(実施例1)
図4は、図2に示した構成において、配置間隔を5mm、磁極ピッチを30mmとした場合の磁極位置検出動作を説明する図である。図5は、図4に示した条件の下でのシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。
配置間隔Lが5mm、磁極ピッチPITが30mmの場合の補正係数φは、式(3)から、φ=2π×5/30=π/3[rad]となる。この補正係数φ=π/3を図1に示す構成に適用して磁極位置θを算出する。
図5では、横軸が実磁極位置[mm]であり、縦軸が磁極位置誤差[mm]である。図5において、符号35は、図1に示す構成を用いる本手法によって磁極位置検出を行った場合の特性を示し、符号36は、式(2)の条件による従来手法によって磁極位置検出を行った場合の特性を示す。
図5に示すように、補正係数φをπ/3に設定したときには、本手法によれば、磁極位置誤差はゼロとなり、磁極位置を正しく検出できることが解る。これに対して、従来手法では、磁極位置に誤差を生じており、正しい磁極位置を得られないことが解る。これは、従来手法では、磁極ピッチと配置間隔との関係が式(2)の制約条件を満足していないためである。
この場合、従来手法で正しく磁極位置を検出できるようにするには、配置間隔Lを磁極ピッチPITの1/4である7.5mmにする必要がある。つまり、本手法を用いることにより、配置間隔が7.5mmよりも短い5mmでも磁極位置検出が可能になるので、磁極位置検出装置1の小型化を図ることができる。
(実施例2)
図6は、図2に示した構成において、配置間隔を5mm、磁極ピッチを20mmとした場合の磁極位置検出動作を説明する図である。つまり、図6は、磁極ピッチのみを実施例1と異ならせた場合を示す。図7は、図6に示した条件の下でのシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。
配置間隔Lが5mm、磁極ピッチPITが20mmの場合の補正係数φは、式(3)から、φ=2π×5/20=π/2[rad]となる。この補正係数φ=π/2を図1に示す構成に適用して磁極位置θを算出する。
図7では、横軸が実磁極位置[mm]であり、縦軸が磁極位置誤差[mm]である。図7において、符号37は、図1に示す構成を用いる本手法によって磁極位置検出を行った場合と、式(2)の条件による従来手法によって磁極位置検出を行った場合との特性を示す。
図7に示すように、本手法によれば、補正係数φをπ/2に設定したときも磁極位置誤差はゼロとなり、磁極位置が正しく検出できることが解る。これに対して、従来手法でも正しく磁極位置検出ができ、磁極位置誤差はゼロとなっている。これは、図6に示す条件は、配置間隔が磁極ピッチの1/4となっていて、従来手法で用いる式(2)の制約条件を満たすからである。
このように、本手法では、図4と図6に示すように、磁極ピッチが異なっても補正係数φを適切に設定すれば、磁極位置誤差をゼロにすることができる。これに対して、従来手法では、図4の条件では、式(2)の制約条件を満たさないので、正しく磁極位置を算出できず、磁極位置誤差が生ずる。
したがって、本手法では、磁極ピッチの異なるリニアモータの間でも、補正係数φを適切に設定することにより、共通の磁極位置検出装置を使用して磁極位置を検出することができるようになる。
(実施例3)
図8は、図2に示した構成において、配置間隔が理論値からずれている場合に補正係数を算出して求めた磁極位置のシミュレーション結果を従来手法と比較して示す図である。図8では、配置間隔Lの理論値は、図6に示す5mmであるが、実際の配置間隔が4.9mmであった場合に、本手法によって補正を行った場合の特性38と、式(2)の条件による従来手法によって磁気センサ11,12のセンサ出力a,bから磁極位置検出を行った場合の特性39とが示されている。なお、図8では、横軸が実磁極位置[mm]で、縦軸が磁極位置誤差[mm]である。
図6に示す条件の場合、理論的には、従来手法でも、式(2)の制約条件を満たしているので、図7に示したように、正しく磁極位置検出を行うことができる。今の例は、実際の取り付けに誤差がある場合であるので、実際は式(2)の制約条件を満たしていない場合に相当する。
したがって、従来手法である式(2)によって磁極位置を算出した場合、センサ出力bが実際には理論値よりも位相が進んでいるにもかかわらず、センサ出力bはcosθとして扱うために、特性39に示すように、最大5.0−4.9=0.1mm程度の誤差が発生する。
これに対して、本手法では、取り付け後の磁気センサの配置間隔を実測したり、磁極位置誤差波形の振幅値から取り付け後の磁気センサの配置間隔を推定したりして、実際の配置間隔を取得し、それを式(3)に適用して補正係数φを算出し、図1の構成に適用すると、取り付けに起因する誤差を補正できる。今の例では、補正係数φに、φ=2π×4.9/20=1.53938を与えることにより、取り付け誤差が補正されるので、特性38に示すように、磁極位置誤差がゼロとなる。
このように、磁気センサの配置間隔が理論値からずれている場合は、本手法により補正係数φを適切に設定することにより、誤差がキャンセルされるのが分かる。
(実施例4)
図9は、3つの磁気センサを用いて磁極位置検出を行う方法を説明する図である。本手法を用いた場合、磁気センサの位置に関する制約が無いため、3以上の磁気センサを用いて磁極位置検出を行うことができる。
例えば、図9に示すように、第3の磁気センサ13を追加し、磁気センサ11,12を間隔L1=2.5mmの位置に配置し、磁気センサ12,13を間隔L1=2.5mmの位置に配置する。磁極位置の検出は、3つの磁気センサの組み合わせで行う。
すなわち、磁気センサ11と磁気センサ12とを用いて磁極位置θ12を計算し、磁気センサ11と磁気センサ13とを用いて磁極位置θ13を計算し、磁気センサ12と磁気センサ13とを用いて磁極位置θ23計算し、磁極位置θを、
θ=(θ12+θ13+θ23)/3
と算出する。
このように、例えば、3つの磁気センサを組み合わせて用いることができるので、ノイズなどによる影響を緩和し、検出精度を上げることができる。また、3つの磁気センサのうち1つが故障した場合でも残りの2つによって磁極位置検出が行えるので、磁極検出装置の信頼性を上げることができる。
以上説明したように、この実施の形態によれば、2つの磁気センサの配置間隔と磁極ピッチ(回転モータでは極数)との関係を規定する式(3)によって算出した位相差φを補正係数として、2つのセンサ出力の各値を補正するようにしたので、磁極ピッチ(回転モータでは極数)と磁気センサの配置間隔との間に制約のない磁極位置検出装置を実現することができる。
また、磁極位置検出装置は、2つのセンサ出力と、補正係数である位相差φとを入力として磁極位置θを演算検出する構成として、位相差φの正弦値が1≫δ>0の範囲内に定めた判定閾値δよりも大きい場合は、式(5)によって磁極位置θを演算検出し、位相差φの正弦sinφが判定閾値δよりも小さい場合は、式(6)によって磁極位置θを演算検出するように、位相差φの正弦値の大きさに応じて適切に切り換える構成としたので、2つの磁気センサの任意の配置間隔において磁極位置を検出することができる。
したがって、2つの磁気センサの取り付けに誤差があり実際の配置間隔が理論値からずれている場合でも、計測した実際の配置間隔を、或いは、磁極位置誤差波形の振幅値から取り付け誤差を見出して推定した実際の配置間隔を式(3)に適用して算出した補正係数φを用いることで、取り付け誤差を取り除くことができる。従来のような面倒な補正処理はしないで済むようになる。
また、従来のような磁極ピッチ(回転モータでは極数)による制約がなくなり、2つの磁気センサは、任意の間隔で自由に配置できる。したがって、リニアモータに搭載する用途の磁極位置検出装置では、装置の小型化が可能となり、また、磁極ピッチが異なるリニアモータ間での共用化が可能になる。
加えて、磁気センサの配置の自由度が上がることから、リニアモータに搭載する用途の磁極位置検出装置では、3以上の磁気センサを搭載することが容易となり、磁気センサに冗長性を持たせることができる。これによって、検出精度を向上させたり、信頼性を向上させたりすることができるようになる。
以上のように、この発明にかかる磁極位置検出装置は、2つの磁気センサを任意の間隔で配置しても磁極位置を正しく取得できる磁極位置検出装置として有用であり、特に、リニアモータに搭載する用途に適している。

Claims (6)

  1. モータの磁極配列方向に沿って所定の間隔を置いて配置される2以上の磁気センサのうち、2つの磁気センサのセンサ出力間の位相差に基づき、可動部が位置する磁極位置を演算検出する磁極位置検出装置であって、前記2つのセンサ出力のうちの進相側センサ出力をa、遅相側センサ出力をbとし、前記位相差をφとするとき、
    前記位相差の正弦値が判定閾値よりも大きい場合の磁極位置θを、
    θ=tan−1{(a・sinφ/(b−a・cosφ)}
    の演算を行って検出する第1の演算系と、
    前記位相差の正弦値が判定閾値よりも小さい場合の磁極位置θを、
    θ={sin−1(a)+sin−1(b)−φ}/2
    の演算を行って検出する第2の演算系と、
    を備えていることを特徴とする磁極位置検出装置。
  2. 前記第1の演算系は、
    前記2つのセンサ出力のうちの進相側センサ出力に前記位相差の正弦値を乗算する第1の乗算器と、前記進相側センサ出力に前記位相差の余弦値を乗算する第2の乗算器と、前記2つのセンサ出力のうちの遅相側センサ出力から前記第2の乗算器の出力値を減算する第1の減算器と、前記第1の乗算器の出力値を前記減算器の出力値で割り算する割算器と、前記割算器が出力する正接値の逆正接値を求め、それを前記磁極位置として出力する第1の角度演算器と、を備え、
    前記第2の演算系は、
    前記進相側センサ出力の逆正弦値を求める第2の角度演算器と、前記遅相側センサ出力の逆正弦値を求める第3の角度演算器と、第3の角度演算器の出力値から前記位相差を減算する第2の減算器と、前記第2の角度演算器の出力値と前記第2の減算器の出力値とを加算する加算器と、前記加算器の出力値に1/2を乗算した値を前記磁極位置として出力する第3の乗算器と、を備えている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁極位置検出装置。
  3. 前記位相差を(2π×前記2つの磁気センサの配置間隔)/(磁極ピッチまたは極数)の演算を行って求める位相差演算部を備え、前記配置間隔は、前記演算検出した磁極位置に誤差がある場合に、実際に測定した配置間隔、或いは、磁極位置誤差波形の振幅値から推定した配置間隔が適用される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の磁極位置検出装置。
  4. 前記2つの磁気センサに1以上の磁気センサを加えて、それら複数の磁気センサの組み合わせによって前記磁極位置を検出する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁極位置検出装置。
  5. モータの磁極配列方向に沿って所定の間隔を置いて配置される2以上の磁気センサのうちの2つの磁気センサのセンサ出力間の位相差を(2π×前記2つの磁気センサの配置間隔)/(磁極ピッチまたは極数)の演算を行って求める第1の工程と、
    前記位相差の正弦値と判定閾値との大小関係を判定する第2の工程と、
    前記第2の工程での判定結果、前記位相差の正弦値が判定閾値よりも大きい場合に、前記2つの磁気センサのセンサ出力のうちの進相側センサ出力に前記位相差の正弦値を乗算した値を分子とし、前記進相側センサ出力に前記位相差の余弦値を乗算した値を前記2つの磁気センサのセンサ出力のうちの遅相側センサ出力から減算した値を分母とする正接値の逆正接値を第1の磁極位置として演算検出する第3の工程と、
    前記第2の工程での判定結果、前記位相差の正弦値が判定閾値よりも小さい場合に、前記進相側センサ出力の逆正弦値と前記遅相側センサ出力の逆正弦値との和から前記位相差を減算した値の半分の値を第2の磁極位置として演算検出する第4の工程と、
    を含むことを特徴とする磁極位置検出方法。
  6. 前記演算検出した磁極位置に誤差がある場合に、前記2つの磁気センサの配置間隔を実際に測定する、或いは、磁極位置誤差波形の振幅値から推定する工程と、
    前記実際に測定した配置間隔を、或いは、前記推定した配置間隔を、前記第1の工程に適用する工程と、
    を含むことを特徴とする請求項5に記載の磁極位置検出方法。
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