JPWO2009113512A1 - Socs3発現促進剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにsocs3の発現を促進する方法 - Google Patents

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Abstract

SOCS3発現促進剤は、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。

Description

本発明は、SOCS3発現促進剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにSOCS3の発現を促進する方法に関する。
また、本発明は、プロイオトロフィン発現抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにプロイオトロフィンの発現を抑制する方法に関する。
近年、食生活および生活習慣の急激な変化によって、炎症性疾患を患う患者が増加している。炎症性疾患の一例として、自己免疫性疾患が挙げられる。自己免疫疾患とは、本来は細菌・ウイルスや腫瘍などの自己と異なる異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を来す疾患の総称であり、この原因として、T細胞、B細胞およびマクロファージなど免疫担当細胞の異常が原因とされている。
また、多くの自己免疫疾患の症状は慢性的に経過し、難治性であるため、日本では公費負担の対象として定められた特定疾患に含まれている疾患も多い。治療法は疾患により異なるが、免疫異常が疾患の原因となっていることから、多くの疾患でステロイドと免疫抑制剤が第一選択の薬剤として用いられる。しかしながら、これらの薬剤には少なからず副作用があることが知られており、副作用の少ない免疫異常改善薬が求められている。
WO2002−074318には、高分子のヒアルロン酸が、炎症を促進するインターロイキン12の発現を抑制することが記載されている。インターロイキン12は自己免疫疾患において、炎症を促進するサイトカインのひとつである。しかしながら、自己免疫疾患は多様な部位に多様な症状を発症するため、単一のサイトカインのみを制御しても免疫疾患を総合的に改善することは難しい。
また、炎症性疾患の他の一例として、関節炎が挙げられる。関節炎のなかでも、自己免疫性関節炎は自己免疫疾患のひとつであり、この自己免疫性関節炎に対して、サイトカインを介するシグナル伝達を調節するSuppressor of cytokine signaling 3(SOCS3)が、自己免疫性関節炎でみられる骨の破壊を大幅に減少することが報告されている(Takanori Shouda, Takafumi Yoshida, Toshikatsu Hanada, Toru Wakioka, Masanobu Oishi, Kanta Miyoshi, Setsuro Komiya, Ken-ichiro Kosai, Yasushi Hanakawa, Koji Hashimoto, Kensei Nagata, and Akihiko Yoshimura, “Induction of the cytokine signal regulator SOCS3/CIS3 as a therapeutic strategy for treating inflammatory arthritis”, J.Clin.Invest., Vol. 108, No.12, 1781-1788, December 2001)。すなわち、SOCS3の発現が促進されると、サイトカインシグナル伝達の阻害が起こり、自己免疫性関節炎を総合的に改善する可能性が示唆されている。さらに、SOCS3は、ヒト大腸炎や関節炎などの慢性炎症性疾患において強く発現するといわれている(高木宏美、真田貴人、蓑田泰昌、吉村昭彦、「SOCSによるサイトカインとToll-like receptorシグナルの制御」、日本臨牀、第62巻12号(2004−12)、2189−2196)。
加えて、SOCS3は、先天性免疫細胞内のToll様受容体(Toll-like receptor)を間接的に制御することが報告されている(Andrea Baetz, Markus Frey, Klaus Heeg, and Alexander H. Dalpke, “Suppressor of Cytokine Signaling (SOCS) Proteins Indirectly Regulate Toll-like Receptor Signaling in Innate Immune Cells”, J. Biol. Chem., Vol. 279, Issue 52, 54708-54715, December 24, 2004.)。
したがって、SOCS3の発現を促進することができれば、炎症性疾患の治療や予防に役立つと考えられるが、炎症性疾患におけるSOCS3の発現調節に関する検討はこれまでほとんどなされていない。
そこで、本発明は、炎症性疾患に対して総合的な改善を行うことができるSOCS3発現促進剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにSOCS3の発現を促進する方法を提供する。
また、本発明は、炎症性疾患に対して総合的な改善を行うことができるプロイオトロフィン発現抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにプロイオトロフィンの発現を抑制する方法を提供する。
本発明者らは、SOCS3の発現に関して鋭意研究を重ねた結果、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を摂取することにより、意外にも、SOCS3の発現が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一態様に係るSOCS3発現促進剤は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。
本発明の一態様に係る医薬品は上記SOCS3発現促進剤を有効成分として含有する。この場合、前記ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径が50〜500μmであることができる。また、この場合、上記医薬品は経口的に摂取可能である。さらに、この場合、上記医薬品は膝関節の治療または膝関節痛の緩和に用いることができる。
本発明の一態様に係る食品は、上記SOCS3発現促進剤を含有する。
本発明の一態様に係るヒトまたはヒト以外の動物においてSOCS3の発現を促進する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
本発明の一態様に係るプロイオトロフィン発現抑制剤は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。
本発明の一態様に係る医薬品は、上記プロイオトロフィン発現抑制剤を有効成分として含有する。この場合、前記ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径が50〜500μmであることができる。また、この場合、上記医薬品は経口的に摂取可能である。さらに、この場合、上記医薬品は膝関節の治療または膝関節痛の緩和に用いることができる。
本発明の一態様に係る食品は、上記プロイオトロフィン発現抑制剤を含有する。
本発明の一態様に係るヒトまたはヒト以外の動物においてプロイオトロフィンの発現を抑制する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
本発明の一態様に係るヒトまたはヒト以外の動物において膝関節を治療する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
本発明の一態様に係るヒトまたはヒト以外の動物において膝関節痛を緩和する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
上記SOCS3発現促進剤および上記SOCS3の発現を促進する方法によれば、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を経口摂取することによってSOCS3の発現を促進し、炎症性疾患の症状を総合的に改善することが可能となる。また、上記プロイオトロフィンの発現抑制剤および上記プロイオトロフィンの発現を抑制する方法によれば、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を経口摂取することによってプロイオトロフィンの発現を抑制し、炎症性疾患の症状を総合的に改善することが可能となる。
したがって、副作用がない、またはきわめて小さい炎症性疾患改善用医薬品および食品を提供できるとともに、ヒアルロン酸および/またはその塩の更なる利用拡大が期待できる。
図1は、実施例1において、RT−PCRによるSOCS3遺伝子発現を調べた電気泳動の写真である。左より、蒸留水摂取群、試作品A摂取群、試作品B摂取群の結果を示す。 図2は、実施例1において、ヒアルロン酸またはその塩を経口摂取したマウスの小腸上皮表面の写真である。 図3は、実施例1において、ヒアルロン酸またはその塩を経口摂取したマウスの大腸上皮表面の写真である。 図4は、実施例1において、ヒアルロン酸またはその塩を経口摂取したマウスの大腸上皮表面(二重染色処理後)の写真である。 図5は、実施例1において、蒸留水またはヒアルロン酸試作品を飲水投与したマウスの頸部リンパ節の写真である。 図6は、実施例2において、RT−PCRによるSOCS3遺伝子発現を調べた電気泳動の写真である。左より、ヒアルロン酸の添加なし、試作品A添加、試作品B添加の結果を示す。 図7は、実施例10において、軟X線撮影像スコアにより、試験例4および試験例5のヒアルロン酸を経口摂食させたSTRマウスの膝関節裂隙が、対照(蒸留水)に対し有意に狭小化が抑制されている結果を示したものであり、コンドロイチン硫酸の比較試験例2は対照との差は認められない。 図8は、実施例10における軟X線撮影像を示す。白い矢印が関節裂隙の部位を指す。図8において、対照群(A)の裂隙が狭小しているのに比し、ヒアルロン酸を経口摂食させた試験例4(B)および試験例5(C)の裂隙は狭小化が抑制されていることを示したものであり、比較試験例2(D)は対照との差を認めない。 図9は、実施例10の膝関節軟骨におけるIndia Ink methodによる評価方法を説明したものである。これは軟骨表面の粗造化を評価する方法であることを示す。 図10は、実施例10の膝関節軟骨におけるIndia Ink methodによる評価による、軟骨の粗造化指数により、ヒアルロン酸を経口摂食させた試験例4および試験例5の軟骨粗造化は、対照に対し有意に抑制されている結果を示したものである。比較試験例2はやや抑制されてはいるものの有意な差を認めない。 図11は、実施例10においてIndia Ink methodにより染色された膝関節軟骨表面の写真を示す。図11において、対照群(A)の軟骨表面はIndia Inkが染色されているのに比し、ヒアルロン酸を経口摂食させた試験例4(B)および試験例5(C)の染色面積は小さく、軟骨の粗造化が抑制されている結果を示したものであり、比較試験例2(D)は対照同様に染色を認める。白い矢印は靭帯を示し、この部位のカウントは除いた。 図12は、実施例10の膝関節滑膜評価スコアより、ヒアルロン酸を経口摂食させた試験例4および試験例5における滑膜活性化および細胞増殖は、対照に対し抑制されている結果を示したものである。比較試験例2の滑膜評価スコアは対照と差を認めない。
以下、本発明の一実施形態に係るSOCS3発現促進剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにSOCS3の発現を促進する方法、さらには、プロイオトロフィン発現抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにプロイオトロフィンの発現を抑制する方法について詳細に説明する。
なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
1.SOCS3発現促進剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにSOCS3の発現を促進する方法
1.1.SOCS3発現促進剤
本発明の一実施形態に係るSOCS3発現促進剤は、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする。
ここで、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの二糖からなる繰り返し構成単位を1以上有する多糖類をいう。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、食品または薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
また、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤で使用するヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量は50万以上であり、好ましくは60万以上、より好ましくは50万〜160万、さらに好ましくは60万〜160万である。ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量が50万未満であると、炎症性疾患の症状を改善しにくく、免疫系の機能を低下させる場合がある。また、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均分子量が160万を超える場合、溶解し難く、その効果を十分に発揮できない場合や、食品等に配合し難い場合がある。
本発明で規定される平均分子量の測定方法について説明する。
即ち、約0.05gの精製ヒアルロン酸を精密に量り、0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液に溶かし、正確に100mLとした溶液およびこの溶液8mL、12mL並びに16mLを正確に量り、それぞれに0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液を加えて正確に20mLとした溶液を試料溶液とする。この試料溶液および0.2mol/L濃度の塩化ナトリウム溶液につき、日本薬局方(第十四改正)一般試験法の粘度測定法(第1法 毛細管粘度測定法)により30.0±0.1℃で比粘度を測定し(式(1))、各濃度における還元粘度を算出する(式(2))。還元粘度を縦軸に、本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL)を横軸にとってグラフを描き、各点を結ぶ直線と縦軸との交点から極限粘度を求める。ここで求められた極限粘度をLaurentの式(式(3))に代入し、平均分子量を算出する(T.C. Laurent, M. Ryan, A. Pietruszkiewicz,:B.B.A., 42, 476-485(1960))。
(式1)
比粘度 = {(試料溶液の所要流下秒数)/(0.2mol/L塩化ナトリウム溶液の所要流下秒数)}−1
(式2)
還元粘度 = 比粘度/(本品の換算した乾燥物に対する濃度(g/100mL))
(式3)
極限粘度 = 3.6×10−40.78
M:平均分子量
本実施形態に係るSOCS3発現促進剤に含まれるヒアルロン酸としては、基本的にはβ−D−グルクロン酸の1位とβ−D−N−アセチル−グルコサミンの3位とが結合した2糖単位を少なくとも1個含む2糖以上のものでかつβ−D−グルクロン酸とβ−D−N−アセチル−グルコサミンとから基本的に構成されるものであり、2糖単位が複数個結合したもの、またはそれらの要素が結合した糖であってもよく、またこれらの誘導体、例えば、アシル基等の加水分解性保護基を有したもの等も使用し得る。該糖は不飽和糖であってもよく、不飽和糖としては、非還元末端糖、通常、グルクロン酸の4,5位炭素間が不飽和のもの等が挙げられる。
ヒアルロン酸および/またはその塩は、動物等の天然物(例えば鶏冠、さい帯、皮膚、関節液などの生体組織など)から抽出されたものでもよく、または、微生物もしくは動物細胞を培養して得られたもの(例えばストレプトコッカス属の細菌等を用いた発酵法)、化学的もしくは酵素的に合成されたものなどいずれも使用することができる。
本実施形態に係るSOCS3発現促進剤で使用するヒアルロン酸は、市販品を使用することができるが、例えば、以下の製造法1および2に従って製造することもできる。
1.1.1.製造法1(鶏冠からの抽出)
まず、鶏冠に加熱処理を施す。これは、鶏冠に含まれる蛋白質を熱変性させたり、酵素失活させたりするためである。加熱処理は如何なる方法をとってもよいが、熱水中に鶏冠を浸漬する方法をとると効率よく行うことができる。加熱温度や時間は、鶏冠中の蛋白質が変性したり、酵素が失活したりする範囲内であれば、特に制限がなく、熱水による加熱法を採用する場合は、60〜100℃の熱水中に原料を20〜90分間浸漬するとよい。
なお、凍結した鶏冠を用いる場合には、鶏冠をそのまま加熱してもよいが、凍結鶏冠を流水中等に入れ緩慢解凍した後、加熱処理を施したほうが一定品位のものが得られやすく、好ましい。
次に、加熱処理した鶏冠をペースト化する。このペースト化によりヒアルロン酸の収率が向上する。ペースト化に先立ち、加熱処理後の鶏冠を細断機により薄く切断したり、または肉挽き用チョッパー等で細断したりしておくと、ペースト化がしやすくなる。ペースト化の一例を示すと、鶏冠に対して約1〜5倍量の清水を加え、ホモゲナイザーにて10〜60分間ホモゲナイズを行うことで、鶏冠は破砕・微粒子化され、ペーストに仕上げることができる。なお、ペースト化には、ホモゲナイザーの他に、高速撹拌機や擂潰機を用いてもよい。
次に、ペースト化した鶏冠に、塩酸、硫酸等の酸剤、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤を添加し酸処理またはアルカリ処理してヒアルロン酸を低分子化し、処理後のヒアルロン酸の平均分子量が50万以上となるように調整する。調製方法としては、酸剤あるいはアルカリ剤の濃度、添加量および処理時間等を適宜組み合わせて、処理後のヒアルロン酸が所望の分子量となるようにすればよいが、アルカリ処理による方法がヒアルロン酸の分子量をコントロールし易く好ましい。アルカリ処理による一例を示すと、ペースト化した鶏冠に、鶏冠に対し10〜30%濃度のアルカリ水溶液を約1〜5%添加し、25〜70℃で約15〜90分間処理を行った後、塩酸等で中和し、分子量を調整する。
次に、分子量を調整した原料に蛋白分解酵素を添加して、プロテアーゼ処理する。使用する蛋白分解酵素は、市販しているものであれば種類を問わず使用することができ、例えば、ペプシン、トリプシン、パパイン、プロメリン等が挙げられる。蛋白分解酵素の添加量は、鶏冠に対して0.01〜1%が適当である。また、プロテアーゼ処理の温度と時間は、35〜65℃で1〜10時間の範囲が適当である。
最後に、得られたプロテアーゼ処理物からヒアルロン酸を分取して、粗製のヒアルロン酸を得た後、このヒアルロン酸を精製することにより純度90%以上、平均分子量50万以上のヒアルロン酸が得られる。
ここで、ヒアルロン酸の分取・精製は、常法に従って行うことができる。例えば、まず、プロテアーゼ処理した原料を濾過して固形物を除去して、粗製のヒアルロン酸を含有した濾液を得る。なお、濾過に先立ち、脱臭・脱色や一部の蛋白分解物を除去する目的で、プロテアーゼ処理物に活性炭を添加し処理してもよい。そして得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例1のヒアルロン酸を得ることができる。
1.1.2.製造法2(微生物発酵法)
ヒアルロン酸算出ストレプトコッカス属の微生物(Streptococcus Zoopidemicus)の培養液に活性炭を添加して脱臭・脱色処理を行った後、濾過処理する。得られた濾液に食塩を溶解させた後、エタノールを添加してヒアルロン酸を沈殿させ、沈殿物を分取する。その後、この沈殿物にエタノール濃度約80〜95容量%の含水エタノールを添加し、ホモゲナイザーで洗浄し、沈殿物を分取する。この含水エタノールによる洗浄を2〜10回程度繰り返し、分取した沈殿物を乾燥することで、製造例2のヒアルロン酸(平均分子量50万以上)を得ることができる。
なお、本発明において使用するヒアルロン酸の純度は、医薬品または食品で使用できるレベルであればよく、好ましくは90%以上であればよく、より好ましくは95%以上であればよい。この純度は乾物換算で100%よりヒアルロン酸以外の不純物を除いた値として定義される。ここで、不純物としては、蛋白分解物、脂肪分(粗脂肪)、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。具体的に鶏冠を原料とするヒアルロン酸の純度は、以下式(4)で求めることができる。
(式4)
ヒアルロン酸の純度(%)=100−蛋白分解物(%)−粗脂肪(%)−コンドロイチン硫酸(%)
式4中、蛋白分解物(%)はLowry法により求めた値であり、粗脂肪(%)は新・食品分析法(光琳(株)発行)「第1章一般成分および関連成分、1−4脂質、1−4−2エーテル抽出法」により求めた値であり、また、コンドロイチン硫酸(%)は、以下に説明する方法により得た値である。
まず、ヒアルロン酸を乾燥し、その50mgを精密に量り、精製水を加えて溶かし、正確に100mLとして試験溶液とし、その試験溶液4mLを試験管にとり、0.5mol/L濃度の硫酸1mLを加えて混和し、水浴中で10分間加熱し、その後冷却して得られた溶液に0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置し、層長10mm、波長660nmにおける吸光度を測定する。
次に、得られた吸光度データをコンドロイチン硫酸の検量線に適用して精製ヒアルロン酸中のコンドロイチン硫酸量(%)を求める。ここで、その検量線は、クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩(SG(Special Grade)、生化学工業株式会社製)を乾燥(減圧、五酸化リン、60℃、5時間)させたものを精密に量り、精製水を加えて溶かし、1mL中に10μg、20μg、30μg、40μgのコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩を含む溶液をそれぞれ調製し、それぞれの溶液4mlについて、0.5mol/L濃度の硫酸1mLを加えて混和した後、0.04mol/L濃度の臭化セチルトリメチルアンモニウムを0.2mL加えて混和し、室温で1時間放置した後、同様に吸光度を測定し、その吸光度を縦軸に、対応するコンドロイチン硫酸Aナトリウム塩溶液(μg/mL)を横軸にプロットすることによって作成したものである。
なお、ヒトまたはヒト以外の動物の細胞または組織におけるSOCS3の発現促進は、例えば、ノーザンブロッティング、DNAアレイ、DNAチップ等によるSOCS3遺伝子の検出または定量、ならびに、ウエスタンブロッティング、ELISA、アフィニティクロマトグラフィー等によるSOCS3の検出または定量等の公知の生化学的分析方法により確認することができる。
本発明の一実施形態に係るSOCS3発現促進剤は、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を通常0.1質量%以上含有するものであり、好ましくは0.5〜100質量%含有する。
また、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径は50〜500μmであることが好ましく、80〜500μmであることがより好ましく、200〜500μmであることがさらに好ましい。
平均分子量50万以上(好ましくは60万以上、より好ましくは60万〜160万)のヒアルロン酸および/またはその塩(以下、この段落において「ヒアルロン酸」と表記する。)の平均粒子径が50〜500μmであることにより、経口摂取された粉末状のヒアルロン酸および/またはその塩が胃液に適度な速度にて溶解するため、ヒアルロン酸が胃液中で加水分解されるのを抑えて、所定の分子量を維持した状態でヒアルロン酸を腸管から吸収させ、患部に到達させることができる。ここで、ヒアルロン酸の平均粒子径が50μm未満であると、ヒアルロン酸が胃液に速やかに溶解し、胃液中で加水分解が進行する結果、分子量が低下する場合がある。低分子量化されたヒアルロン酸(例えば分子量50万以下)は上述したように、炎症性疾患の症状を改善しにくく、免疫系の機能を低下させる場合がある。一方、ヒアルロン酸の平均粒子径が500μmを超えると、摂取した際にヒアルロン酸が体内で完全には溶解せず、摂取量に対して吸収量が少なくなることがある。その結果、炎症性疾患の症状を改善するための十分な効果を得られない場合がある。
本発明において、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径は、レーザ回折散乱法により測定されたものである。また、ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径の調整は、例えば粉砕や篩い分け等の通常用いられる方法によって行うことができる。
1.2.医薬品
本発明の一実施形態に係る医薬品は、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を有効成分として含有する。より具体的には、本実施形態に係る医薬品は、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を5〜100質量%含有することができる。
本実施形態に係る医薬品は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることによって、ヒトまたはヒト以外の動物においてSOCS3の発現を促進することができる。これにより、炎症性疾患(例えば、リウマチ関節炎(RA);喘息;鼻炎等のアレルギー性疾患;血管疾患;血栓症または有害な血小板凝集;血栓溶解後の再閉塞;再潅流傷害;乾癬、湿疹、接触皮膚炎およびアトピー性皮膚炎等の皮膚炎症性疾患;糖尿病(例えば、インスリン依存型糖尿病、自己免疫型糖尿病);多発性硬化症;全身性ループスエリテマトーデス(SLE);潰瘍性大腸炎、クローン病(局所性腸炎)および嚢炎(例えば、直腸結腸切除および回腸肛門吻合後に生じる腸疾患)等の炎症性腸疾患;小児脂肪便症、非熱帯性スプルー、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、リンパ球性または膠原性大腸炎、および好酸球性胃腸炎等の胃腸管への白血球浸潤が関与する疾患;皮膚、尿路、気道および関節滑膜等の他の上皮皮膜組織への白血球浸潤に関連した疾患;膵炎;乳腺炎(乳腺);肝炎;胆嚢炎;胆管炎または胆管周囲炎(胆管および肝臓の周囲組織);気管支炎;副鼻腔炎;過敏性肺炎等の間質性線維症を生じる肺の炎症性疾患;膠原病;サルコイドーシス;骨粗鬆症;骨関節症;アテローム性動脈硬化症;新生物の転移または癌性増殖を含む新生物疾患;外傷(外傷治癒強化);網膜剥離、アレルギー性結膜炎;自己免疫性、ブドウ膜炎等のある種の眼病;シェーグレン症候群;臓器移植後の拒絶反応(慢性および急性);宿主対移植片または移植片対宿主疾患;内膜肥厚;動脈硬化症(移植後の移植片動脈硬化症を含む);経皮的経管冠動脈血管形成術(PTCA)あるいは経皮的経管動脈再疎通術等の手術後の再梗塞または再狭窄;腎炎;腫瘍血管新生;悪性腫瘍;多発性骨髄腫;骨髄腫誘発骨吸収;敗血症;脳卒中、外傷性脳損傷および脊髄損傷等の中枢神経傷害;およびメニエール病からなる群から選ばれる病態)に罹患した患者(ヒトまたはヒト以外の動物)の症状を改善することができる。なかでも、リウマチ関節炎(RA)、膠原病等の自己免疫性疾患や、膝変形性関節炎などの関節炎の症状を有意に改善することができ、また、膝関節痛を緩和することができる。なお、ヒト以外の動物としては、例えばヒト以外の哺乳類が挙げられる。
平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることにより、例えば局所投与する場合に生じる可能性がある投与部位の疼痛、腫脹、水腫、発赤、熱感、重苦しさ、しびれ感の発生を防止しつつ、炎症性疾患を総合的に改善することができる。
1.3.食品
また、本発明の一実施形態に係る食品は、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を含有する。より具体的には、本実施形態に係る食品は、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を0.1〜100質量%含有することができる。
本実施形態に係る食品(食料品および飲料)は、上記患者が長期にわたって無理なく摂取することによって、治療の一環として、または治療の補助として、炎症性疾患の症状の緩和および改善を図ることができる。
ヒアルロン酸および/またはその塩を経口摂取することによってSOCS3の発現が促進される作用機序については必ずしも明らかではないが、ヒアルロン酸またはその塩を経口摂取したマウスの腸管上皮表面にヒアルロン酸が観察され(図2および図3参照)、腸管上皮表面の受容体であるTLR−4の局在とヒアルロン酸の局在が一致していることから(図4参照)、腸管上皮表面の受容体を通じて、ヒアルロン酸および/またはその塩がSOCS3の発現を促進することによるものであると推察される。
本実施形態に係る医薬品は、SOCS3発現促進剤である、ヒアルロン酸および/またはその塩以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の原料を含むことができる。そのような原料の例としては水、賦形剤、抗酸化剤、防腐剤、湿潤剤、粘稠剤、緩衝剤、吸着剤、溶剤、乳化剤、安定化剤、界面活性剤、滑沢剤、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、アルコール類等が挙げられる。
本実施形態に係る医薬品の剤形は特に限定されないが、該医薬品を経口摂取する場合、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。
本実施形態に係る食品は、SOCS3発現剤である、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。上記食品の態様は特に限定されないが、例えば、ガム、キャンディー、グミキャンディー、トローチ様食品、ゼリー飲料、米飯加工食品、製パン類、レトルト缶詰、冷凍食品、惣菜、乾燥食品、マヨネーズ等調味料、飲料、菓子、デザート類、サプリメント類等の一般食品全般、生理機能を表現することを許可された特定保健用食品全般が挙げられ、このうち、利便性に優れている点で、サプリメント類が好ましい。
また、サプリメント類の形態としては、例えば、錠剤状、散剤状、細粒状、顆粒状、カプセル状(ハードカプセル、ソフトカプセル)等の固形状、液状、懸濁液状、ゼリー状、シロップ状等の流動状が挙げられる。
上記食品を経口摂取することによって、SOCS3の発現を促進する効果を発揮し、炎症性疾患の症状を総合的に緩和させる。また、上記食品を、炎症性疾患の食事に添加または混合することによって、摂取することもできる。
上記の通り任意の食料品および飲料に、本実施形態に係る食品を含有させることができるが、炎症性疾患の症状の緩和を図るためには、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を継続的に摂取するのが望ましいため、日常的に摂取する食品および飲料に本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を含有させるのが望ましい。
ヒアルロン酸および/またはその塩は生体物質であるため、多量に摂取しても副作用がない、またはきわめて低いと考えられるが、医薬品として摂取するヒアルロン酸および/またはその塩の量は、一日当たり10mg〜1000mg、好ましくは100〜500mgを目安とすることができる。投与回数は、症状に応じて一日当たり一回もしくは複数回を選択できる。また、食品として摂取する本発明のヒアルロン酸および/またはその塩の量は、一日当たり1〜1000mg、好ましくは15〜300mgを目安とすることができる。また、本発明のヒアルロン酸および/またはその塩を含有する飲料の場合は、本実施形態に係るSOCS3発現促進剤を飲料中に0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%含有させることができる。
2.プロイオトロフィン発現抑制剤、これを含有する医薬品および食品、ならびにプレイオトロフィンの発現を抑制する方法
本発明の一実施形態に係るプロイオトロフィン発現抑制剤は、上記ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する。すなわち、本実施形態に係るプロイオトロフィン発現抑制剤に含まれるヒアルロン酸および/またはその塩としては、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩であって、上記SOCS3発現促進剤の欄で例示されたヒアルロン酸および/またはその塩と同様のものを使用することができる。
自己免疫性脳脊髄炎の発症により、プレイオトロフィンの発現が促進されることが報告されている(Liu X, Mashour GA, Webster HF, Kurtz A, “Basic FGF and FGF receptor1 are expressed in microglia during experimenral autoimmune encephalomyelitis:temporally distinct expression of midkine and pleiotrophin”, Glia., 24, 390-397, 1998.)。また、リウマチのような炎症性疾患においても、プレイオトロフィンの発現が促進されることも報告されている(Pufe T, Bartscher M, Petersen W, Tillmann B, Mentlein R, “Expression of pleiotrophin, an embryonic growth and differentiation factor, in rheumatoid arthritis”, Arthritis Rheum., 48, 660-667, 2003.)。
本発明の一実施形態に係るプロイオトロフィン発現抑制剤は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有することにより、例えば経口摂取によりプロイオトロフィン発現を抑制することができる。
プロイオトロフィンの発現抑制は例えば、後述する実施例で示されるように、DNAアレイによるプロイオトロフィン遺伝子の発現の度合いによって評価することができる。
また、本発明の一実施形態に係るプロイオトロフィン発現抑制剤を含有する医薬品および食品およびその添加量(配合量)としては、上記SOCS3発現促進剤を含有する医薬品および食品として例示したものが挙げられる。
さらに、本発明の一実施形態に係るプレイオトロフィンの発現を抑制する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む。
3.膝関節痛緩和剤
上述したように、本発明の一実施形態に係る医薬品または食品は、膝関節痛の緩和に用いられるものであってもよい。ここで、ヒアルロン酸および/またはその塩としては、上述したものを使用することができる。
3.1.背景技術
加齢や肥満が要因で、膝関節痛を訴える人が増加している。膝関節痛の原因は様々であるが、中でも膝の関節のクッションとなっている軟骨が磨り減り、膝に炎症が起き、進行すると関節が変形する変形性膝関節疾患が深刻となっている。
変形性膝関節疾患は、初期は立ち上がったときなど膝を使う動作の初めに痛みが生じ、これが進行すると、平地を歩くときや夜間就寝中に痛みが現れ、生活や日常の活動に大きな制約をうけることとなる。
変形性膝関節疾患の治療には、炎症の痛みを抑えるため消炎鎮痛剤を摂取したり、関節内にヒアルロン酸ナトリウムを注入したりする方法がとられる。また、筋力強化や温熱療法等の理学療法的処置がとられる。しかし、このような保存的治療では緩解が見込めない場合は、骨切術や人工関節置換手術等外科的処置がとられる。いずれも患者にとって、精神的、身体的負担は大きい。
そこで、医薬品や食品の経口摂取により、変形性膝関節疾患の疼痛が緩解もしくは軽減できることが期待されている。米国特許第6607745号明細書にはヒアルロン酸またはその塩、またはその分解物を、0.1〜400μg/kg体重経口接触することにより、変形性膝関節疾患に伴う関節痛やその他の苦痛を緩和する方法が記載されている。しかし、有効なヒアルロン酸またはその塩の分子量や、該ヒアルロン酸またはその塩を摂取したときの治療成績については明示されていない。
3.2.膝関節痛の緩和
本願発明者は、特定の分子量帯のヒアルロン酸またはその塩を所定量、膝関節痛を訴える被験者に経口摂取させることにより、医学的指標をもって自覚症状の変化を観察したところ、痛みやこわばりが4週間で有意に低下した。さらには、日常生活の状態やふだんの活動、健康状態においても改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一実施形態に係る膝関節痛緩和剤は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とする。ここで、膝関節痛は変形性膝関節疾患によるものであってもよい。また、本発明の一実施形態に係る膝関節痛を緩和する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸またはその塩(例えば1日60〜300mg)を経口摂取することを含む。
本実施形態に係る膝関節痛緩和剤によれば、特定の分子量帯のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とし、これを医薬品または食品として含有せしめ、これを所定量経口摂取することにより、膝関節痛を緩和でき、日常生活や活動を改善できる。
本実施形態に係る膝関節痛緩和剤の使用形態には、特に制限はなく、粉末状、顆粒状、高濃度液状、低濃度液状等の使用形態とすることができる。ヒアルロン酸またはその塩の分子量の安定性を鑑み、液状より乾燥形態が好ましい。また、本実施形態に係る膝関節痛緩和剤のヒアルロン酸またはその塩の配合量は、使用形態ならびに医薬品または食品への添加量に応じて適宜決定することができる。
なお、本実施形態に係る膝関節痛緩和剤には、必要に応じて、増量剤、結合剤、滑沢剤、保存剤、酸化防止剤、香料、甘味料、酸味料、賦形剤等を配合することができる。また、ビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンE等のビタミン類、核酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン等の栄養成分、鉄、亜鉛等のミネラル成分等の各種栄養成分を配合することもできる。
本発明の一実施形態に係る膝関節痛緩和剤を含有する医薬品または食品は、上述したSOCS3発現促進剤を含有する医薬品または食品と同様の組成を有することができる。
4.膝関節の治療
上述したように、本発明の一実施形態に係る医薬品または食品は、膝関節の治療に用いられるものであってもよい。ここで、ヒアルロン酸および/またはその塩としては、上述したものを使用することができる。
4.1.背景技術
ヒアルロン酸またはその塩が膝関節治療薬として用いられることは、例えば、再公表特許WO00/53194号公報、特開2002−348243号公報、特開2004−181121号公報、再公表特許WO2005/040224号公報、特開平11−60609号公報、特開2003−160464号公報、および特開平10−43286号公報に開示されている。しかし、これらはヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする関節製剤を膝関節に注入する、いわゆる膝関節治療用注入剤や人工軟骨に関する技術である。
そこで、医薬品や食品の経口摂取により、変形性膝関節疾患の疼痛が緩解もしくは軽減できることが期待されている。米国特許第6607745号明細書、特開2004−166616号公報、特表2003−530072号公報、および特開2007−314531号公報には健康食品やサプリメントとして、膝関節痛に効果のあるとされる成分や食材との組み合わせとしてヒアルロン酸を食品の材料の一部として用いることが開示されている。
しかし、米国特許第6607745号明細書には摂取による膝関節痛の軽減という、官能的な効果が記載されているのみである。特開2004−166616号公報には、投与前後の血中コンドロイチン硫酸濃度とNTx(1型コラーゲン架橋N−テロペプチド)が記載されているものの、あくまで生化学的な1パラメーターの変化であって、膝関節症の有効性が示唆されるものではない。特表2003−530072号公報にはヒアルロン酸は膝関節痛に効果があると考えられると記載されているのみで、臨床効果については開示されていない。特開2007−314531号公報には細胞レベルでのインビトロでの試験より軟骨細胞への影響が記載されているのみである。
4.2.膝関節の治療
本願発明者は、ヒアルロン酸またはその塩を、変形性膝関節疾患を自然発症する病態マウスであるSTR/OrtCrljマウス(以下STRマウス)に経口摂取させることにより、主に後肢膝関節の病理解剖的な観察を行ったところ、軟X線撮影像による関節裂隙の減少抑制、軟骨粗造化の抑制、膝関節滑膜の変性抑制が認められ、膝関節疾患、特には変形性膝関節疾患による軟骨病変が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の一実施形態に係る経口用膝関節治療剤は、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とする。また、本発明の一実施形態に係る経口用変形性膝関節疾患治療剤は、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とする。さらに、本発明の一実施形態に係る経口用膝関節軟骨治療剤は、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とする。加えて、本発明の一実施形態に係る経口用膝関節滑膜治療剤は、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とする。また、本発明の一実施形態に係る膝関節痛を緩和する方法は、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸またはその塩(例えば1日60〜300mg)を経口摂取することを含む。
本実施形態に係る膝関節治療剤によれば、ヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分とし、これを医薬品もしくは食品として含有せしめ、これを所定量経口摂取することにより、膝関節疾患を治療でき、疼痛の緩和、歩行や移動の支障除去により、日常生活や活動を改善できる。
本発明の一実施形態に係る膝関節治療剤を含有する医薬品または食品は、上述したSOCS3発現促進剤を含有する医薬品または食品と同様の組成を有することができる。
5.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、粉末の平均粒子径は、該粉末をエタノールに分散し、SALD−2000A(株式会社島津製作所製)を使用して測定された値である。
5.1.実施例1
実施例1では、MRLマウスに本発明のヒアルロン酸を飲水投与し、本発明のヒアルロン酸および/またはその塩を含有するSOCS3発現促進剤による、SOCS3の遺伝子発現について調査した。MRLマウスは、リウマチなどの自己免疫疾患を自然発症する病態モデルマウスであり、自己免疫疾患により、種々の症状が生じることが知られている。
14週令(体重約27〜37g)のMRL lpr/lpr系(SPF)の雌マウス12匹(日本チャールズリバー株式会社)を実験に用いた。22±3℃、相対湿度50±20%に設定した飼育室にてマウスを飼育し、ラット・マウス用固形型飼料CE−2(日本クレア株式会社)を飼料として与えた。下記の表1の通りに、上述の製造法で調製されたヒアルロン酸(以下「ヒアルロン酸試作品」ともいう)を蒸留水で希釈したものを試験物質として、自由摂取させて与えた。試験物質の詳細は、以下の通りである。
1群:蒸留水(大塚蒸留水、株式会社大塚製薬工場製)
2群:低分子ヒアルロン酸(上記製造法1に準じて平均分子量が2000となるよう調製したもの(平均分子量が400〜2万の範囲にあるもの、平均粒子径:67μm)、試作品A)
3群:ヒアルロン酸(上記製造法2に準じて平均分子量が90万となるよう調製したもの(平均分子量が60万〜160万の範囲にあるもの、平均粒子径:75μm)、試作品B)
これらの試験物質は、室温にてクリーンベンチを用いて無菌的に調製した。調製には注射用蒸留水を用いて所定濃度に調製し、使用時まで冷蔵保存した。
ヒアルロン酸試作品の投与量として、飲水投与で効果が期待される200mg/kg/日を設定した。マウスの1日当たりの飲水量は、予備検討の結果6mL/匹であり、MRLマウスの体重が約33gであることから、試作品Aおよび試作品Bの濃度を1.1mg/mLに設定した。
また、MRLマウスではリンパ節腫大などの病態が自然発症することが知られている。本実施例では病態の初期段階である14週令から投与を開始した。投与期間は、飲水投与での薬効を評価するのに適切と考えられる28日間試験を続けた。
28日間の摂取試験の後、マウスを安楽死せしめ、小腸、大腸および頸部リンパ節を摘出した。これらのサンプルを使用して、(1)DNAアレイによるSOCS3遺伝子発現の確認、(2)RT−PCRによるSOCS3遺伝子発現の確認、(3)腸内のヒアルロン酸の局在、(4)頸部リンパ節の重量について調査した。
(1)DNAアレイによるSOCS3遺伝子発現の確認
摘出した大腸から、パイエル氏板を含む部位(サンプル)を約1cm採取し、GeneChipMouse Genome 430 2.0 Array(AFFYMETRIX社製)を使用したDNAアレイに供して、SOCS3遺伝子の発現を調べた。
DNAアレイに供するターゲットの調製、ハイブリダイゼーション、およびDNAアレイの解析は、GeneChip Eukaryotic Target Preparation & Hybridization Manual(AFFYMETRIX社)にしたがって行った。より具体的には、サンプル中のRNAに対するcDNAを合成し、GeneChip Sample Cleanup Module Kit(AFFYMETRIX社製)を用いて二本鎖cDNAを精製し、Ge neChip Expression 3’-Amplefication Reagents for IVT Labeling Kit(AFFYMETRIX社製)を用いて二本鎖cDNAをビオチン標識化してビオチン標識化cRNAを合成し、GeneChip Expression Sample Cleanup Module Kit(AFFYMETRIX社製)を用いてビオチン標識化cRNAを精製し、断片化した。次に、この試料にGeneChip Eukaryotic Hybridization Control Kit(AF FYMETRIX社)を用いてハイブリダイゼーションコントロールを添加し、GeneChip Hybridization Oven 640(AFFYMETRIX社)を用いて45℃にて16時間60rpmでハイブリダイゼーションを行った。次いで、GeneChip Fluidic Station 450(AFFYMETRIX社)を用いて洗浄およびストレプトアビジン−フィコエリスリン(分子プローブ)染色を行った。さらに、レーザスキャナ(GeneChip Scanner 3000 7G(AFFYMETRIX社))を用いて得られたDNAアレイを走査し、得られた画像を専用のソフトウエア(GeneChip Operating Software ver. 1.4(AFFYMETRIX社)))を用いて解析した。その結果、試作品B摂取群ではSOCS3遺伝子増強が認められた。
DNAアレイに固定されたプローブの遺伝子配列を、配列番号1から11に示す。なお、これらのプローブ情報は、下記のウェブサイトより確認可能である。
https://www.affymetrix.com/site/login/login.affx
(5´) TCACTTTTATAAAAATCCACCTCCA (3´) (配列番号1)
(5´) GAGGCTGTCTGAAGATGCTTGAAAA (3´) (配列番号2)
(5´) GAAGATGCTTGAAAAACTCAACCAA (3´) (配列番号3)
(5´) GATGCTTGAAAAACTCAACCAAATC (3´) (配列番号4)
(5´) TTGAAAAACTCAACCAAATCCCAGT (3´) (配列番号5)
(5´) TCAACCAAATCCCAGTTCAACTCAG (3´) (配列番号6)
(5´) CAACCAAATCCCAGTTCAACTCAGA (3´) (配列番号7)
(5´) ACCAAATCCCAGTTCAACTCAGACT (3´) (配列番号8)
(5´) CAAATCCCAGTTCAACTCAGACTTT (3´) (配列番号9)
(5´) TCAACTCAGACTTTGCACATATATT (3´) (配列番号10)
(5´) ACTCAGACTTTGCACATATATTTAT (3´) (配列番号11)
SOCS3遺伝子の発現を調べた結果について、表2にまとめた。なお、表2において、各群の発現相対比は、蒸留水摂取群の蛍光強度に対する各群の蛍光強度であり、DNAアレイによる蛍光強度(平均値)は、配列番号1〜11の各プローブに対する蛍光強度の平均値である。
表2に示すように、蒸留水を飲水したマウスに比べて、試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)を投与した群は、SOCS3の遺伝子発現が約2倍となっていた。一方、試作品A(平均分子量2000のヒアルロン酸)を投与した群は、SOCS3の遺伝子発現が抑制されていた。したがって、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸試作品の経口摂取により、SOCS3の発現が促進されていることが示唆された。
(2)RT−PCRによるSOCS3遺伝子発現の確認
摘出した大腸から、パイエル氏板を含む部位(サンプル)を採取し、mRNAを抽出し、OneStep RT-PCR Kit(QIAGEN社)を使用したRT−PCRに供して、SOCS3遺伝子の発現を調べた。まず、逆転写によってサンプル中のmRNAに対するcDNAを合成し、これをPCR反応により、増幅を行った。具体的には、まず50℃、30分間でmRNAの逆転写を行い、次に95℃、15分間でPCR初期活性化を行った。次いで、92℃、30秒間でDNAを変性させた後、60℃、30秒間でアニーリングを行い、72℃、30秒間でエクステンションした。上記の変性、アニーリング、エクステンションを30サイクル実施し、最後のエクステンションの条件は72℃、10分間とし、DNAの増幅を行った。この試料を、1.5%アガロース/TAEバッファーを使用した電気泳動に供し、エチジウムブロマイドで染色した。なお、プライマーとして、配列番号12および13に示される遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドを使用した。
(5´) TAGACTTCACGGCTGCCAAC (3´) (配列番号12)
(5´) TCGCTTTTGGAGCTGAAGGT (3´) (配列番号13)
SOCS3遺伝子の発現を調べた結果について、表3にまとめた。また、電気泳動の結果について図1に示す。表3において、Relative Optical Intensityは、配列番号12および13の各プローブに対するRelative Optical Intensityの平均値である。
表3および図1に示すように、蒸留水を飲水したマウスに比べて、試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)を投与した群は、SOCS3の遺伝子発現が約1.3倍となっていた。一方、試作品A(平均分子量2000のヒアルロン酸)を投与した群は、蒸留水投与群と比較して、SOCS3の遺伝子発現は同等であった。したがって、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸試作品の経口摂取により、SOCS3の発現が促進されていることが示唆された。
(3)腸内のヒアルロン酸の局在
摘出した大腸および小腸を使用して、ヒアルロン酸の局在について調べた。
(3−1).大腸および小腸上皮のヒアルロン酸の染色
MRLマウスの大腸標本を6μm厚さに切り出し、30分間風乾した。このサンプルを10%中性緩衝ホルマリン溶液に30分間浸漬して取り出し、PBSにて5分間洗浄した。この洗浄工程を3回繰り返した後、100mM酢酸バッファー(pH6.0)に37℃で15分間浸漬し、前処理を行った。前処理後のサンプルを、200TRU/mLのヒアルロニダーゼ(放線菌由来、天野エンザイム)を含有する100mM酢酸緩衝液(pH6.0)に60℃で120分間浸漬し、ヒアルロン酸を断片化した。これをPBSにて5分間洗浄し、この洗浄工程を3回繰り返した。これを、Streptavidin-biotin Blocking Kit(VECTOR社)にて処理し、内在性ビオチンのブロッキングを行った。具体的には、室温下、ストレプトアビジン液に15分間浸漬後、PBSにて5分間、3回洗浄し、さらにこれをビオチン液に15分間浸漬した後、PBSにて5分間、3回洗浄した。この内在性ビオチンのブロッキング処理の後、1%BSA/PBSに60分間浸漬した。これを、HABP-Biotin(生化学工業(株))の1μg/mL溶液(1%BSA/PBS)中に4℃で一晩浸漬し、PBSにて5分間、3回洗浄した。
この試料を、Streptavidin HRPに室温で60分接触せしめ、PBSで5分間、3回洗浄した後、さらにDABと接触せしめた。これを、蒸留水で洗浄した後、発色の確認を行った。
(3−2).大腸上皮のヒアルロン酸および受容体(TLR−4)の二重染色
(ヒアルロン酸の染色方法)
大腸上皮のサンプルを使用して、(3)−1記載の方法にて、HABP-Biotin処理までを行った。これを、遮光下、AlexaFluor488(Moleculer Probe社)の1600倍希釈液(1%BSA/PBS)に室温で60分間浸漬した。
(TLR−4の染色方法)
以下の手順は、全て遮光下で行った。まず、ヒアルロン酸染色後の標本をPBSにて5分間、3回洗浄した後、10%Donkey serum/PBSに60分間浸漬し、ブロッキングを行った。これを4μg/mLの抗TLR−4抗体(10%Donkey serum/PBS)に4℃で一晩浸漬した後、PBSにて5分間、3回洗浄した。これをAlexaFluor594(MoleculerProbe社)の400倍希釈液(10%Donkey serum/PBS)に浸漬し、室温下で60分間浸漬した。これをPBSにて5分間、3回洗浄した。
(撮影方法)
Leica DMI4000Bを使用して、488nm(HA)および594nm(TLR−4)で標本の撮影を行い、HAおよびTLR−4の局在を確認した。
図2および図3に示すように、試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)を投与した群の小腸および大腸の上皮表面にはヒアルロン酸が存在することがわかる(図2および図3において、矢印はヒアルロン酸を示す)。また、腸管上皮表面のヒアルロン酸およびTLR−4の二重染色の結果、ヒアルロン酸の局在が、TLR−4の局在と同様であることがわかった(図4参照)。この現象から、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸試作品の経口摂取により、腸管上皮表面に存在するヒアルロン酸受容体にヒアルロン酸が結合することにより、SOCS3の発現が促進され、プレイオトロフィンの発現が抑制されると推察される。
(4)頸部リンパ節の重量測定
摘出した頸部リンパ節の重量測定および写真撮影を行った。頸部リンパ節の重量測定結果を表4に、頸部リンパ節の写真を図1に、小腸上皮表面の写真を図2に、大腸上皮表面の写真を図5に示す。
表4に示すように、蒸留水を飲水したマウス群の頸部リンパ節の重量に比べて、試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)を投与した群の頸部リンパ節の重量は、約6割となり、有意(p=0.05、Ficher多重比較検定)に小さかった。一方、試作品A(平均分子量2000のヒアルロン酸)を投与した群の頸部リンパ節の重量は、蒸留水を飲水したマウス群の頸部リンパ節の重量に比べて、大きく減少しなかった。図1からも明らかな通り、試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)を投与した群の頸部リンパ節の腫脹が抑制されていることがわかる。この現象から、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸試作品の経口摂取によりSOCS3の発現が促進され、それにより、炎症性疾患(自己免疫疾患)の症状が軽減したものと推察される。
5.2.実施例2
実施例2では、ヒト大腸上皮由来の細胞株であるHT29細胞を使用し、本発明のヒアルロン酸および/またはその塩を含有するSOCS3発現促進剤による、SOCS3の遺伝子発現について調査した。
HT29細胞の培養を以下の条件で行った。
実施例1にて使用した、試作品Aおよび試作品Bを使用し、培地中のヒアルロン酸濃度が100ng/mLとなるように添加した。24時間培養後、実施例1の手順と同様に、RT−PCRに供した。なお、プライマーとして、配列番号14および15に示される遺伝子配列を有するオリゴヌクレオチドを使用し、増幅サイクルを38サイクルとした。
(5´) GCCACCTACTGAACCCTCCT (3´) (配列番号14)
(5´) ACGGTCTTCCGACAGAGATG (3´) (配列番号15)
結果を図6に示す。
図6の結果より、平均分子量90万のヒアルロン酸存在下にてHT29細胞を培養することによって、SOCS3の発現が促進されていることがわかる。一方、平均分子量2000のヒアルロン酸存在下では、対照と比較してSOCS3の発現が促進されてはいないことがわかる。以上より、平均分子量50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩の存在下では、大腸上皮細胞において、SOCS3の発現が促進されることが示唆された。
5.3.実施例3
実施例1の試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)をそのままSOCS3発現促進剤として使用して、内容物が下記の配合であるソフトカプセルを製した。
<配合割合>
SOCS3発現促進剤(実施例1の試作品B) 20%
オリーブ油 50%
ミツロウ 10%
中鎖脂肪酸トリグリセリド 10%
乳化剤 10%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%
5.4.実施例4
実施例1の試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)をそのままSOCS3発現促進剤として使用して、下記の配合の散剤(顆粒剤)を製した。
<配合割合>
SOCS3発現促進剤(実施例1の試作品B) 10%
乳糖 60%
トウモロコシデンプン 25%
ヒプロメロース 5%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%
5.5.実施例5
実施例1の試作品B(平均分子量90万のヒアルロン酸)をそのままSOCS3発現促進剤として使用して、下記の配合の錠剤を製した。
<配合割合>
SOCS3発現促進剤(実施例1の試作品B) 25%
乳糖 24%
結晶セルロース 20%
トウモロコシデンプン 15%
デキストリン 10%
乳化剤 5%
二酸化ケイ素 1%
――――――――――――――――――――――――――――――
100%
5.6.実施例6
実施例1で評価したサンプルと同じサンプルについて、実施例1のDNAアレイによるSOCS3遺伝子発現の確認と同様の方法にて、プレイオトロフィン遺伝子発現の確認を行った。
DNAアレイに固定されたプローブの遺伝子配列を、配列番号16から26に示す。なお、これらのプローブ情報は、下記のウェブサイトより確認可能である。
https://www.affymetrix.com/site/login/login.affx
(5´) AATGTATACCATAGTACCAGTAGGG (3´) (配列番号16)
(5´) AGGAAGTTGAACTCTGTAGTACATA (3´) (配列番号17)
(5´) GATTGAGGTAAGTTTTTTGGTGTTG (3´) (配列番号18)
(5´) GTGATATTTCACATTTAAATCTTTT (3´) (配列番号19)
(5´) ATGTTTTCTCTTGTGCATCAATTTA (3´) (配列番号20)
(5´) GTGCATCAATTTAAATGTTACAACC (3´) (配列番号21)
(5´) AACCATGTAAACTACTTCTCTTGTT (3´) (配列番号22)
(5´) AAACTACTTCTCTTGTTAGATAGAT (3´) (配列番号23)
(5´) GATAGATTTTCACCTAGACTTTTTT (3´) (配列番号24)
(5´) AGAGGCAGAGCAACGATGTAGTGAA (3´) (配列番号25)
(5´) AACATGAAATCCTTTCACTTTGGCA (3´) (配列番号26)
表5において、DNAアレイによる蛍光強度(平均値)とは、配列番号5〜16の各プローブに対する蛍光強度の平均値である。
表5によれば、試作品Bの摂取によって、プレイオトロフィンの発現が抑制されていることがわかる。
5.7.実施例7
SOCS3の発現促進によって、サイトカインシグナル伝達の阻害が起こり、炎症性サイトカインの発現が抑制されることが予想される。そこで、本発明に係るヒアルロン酸(実施例1で使用した試作品B)を摂取したマウスの大腸を使用してサイトカインアレイを行うことにより、表6に示す炎症性サイトカインの発現について調査した。
RayBio Mouse Cytokine Antibody Array 3(RayBiotech, Inc.)を使用して、実施例1でマウスから採取した血清を10μL使用し、表6に示す炎症性サイトカインの発現について調べた。より具体的には、まず、マウス由来の各種サイトカインに対する抗体が結合したガラススライドの担体に血清を接触させた。これにより、血清中の各種サイトカインと該抗体との抗原抗体反応が生じる。そこへ、ビオチン標識したマウス由来の各種抗サイトカイン抗体(二次抗体)を接触させた後、さらにストレプトアビジン−蛍光色素を添加し該二次抗体に結合させて、蛍光強度を測定することにより、各種サイトカインの発現を確認した。蛍光強度は、ポジティブコントロールを対照とした発現比率として算出した。その結果を表6に示す。
上記実施例1および実施例2によれば、試作品Bの摂取によりSOCS3の発現が促進され、炎症性疾患を軽減できることが理解できる。また、本実施例によれば、本発明に係るヒアルロン酸(試作品B)の摂取により、抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現が促進されたことが分かる(表6参照)。これらの結果から、試作品Bの摂取によりSOCS3の発現が促進もしくはプレイオトロフィンの発現が抑制される結果、抗炎症性サイトカイン(IL-10)の発現が促進されて、炎症性疾患を軽減することができたことが推察される。
一方、表6によれば、本発明に係るヒアルロン酸(試作品B)の摂取により、炎症性サイトカイン(MCP-5、MIP-2、P-Selectin、RANTES、SCF、VEGF)の発現は低下した。この結果から、本発明に係るヒアルロン酸(試作品B)の摂取によって炎症が抑えられたため、炎症性サイトカインの発現が抑制されたことが理解できる。
5.8.実施例8
低pHである胃液にヒアルロン酸が溶解すると、加水分解によりヒアルロン酸の低分子化が進行し、経口摂取時の分子量と比較してヒアルロン酸の分子量が低下する場合があるため、炎症性疾患(例えば膝関節炎)の改善効果が低下する可能性がある。このため、ヒアルロン酸の水への溶解性が低いほど膝関節炎の治療効果に優れていることが推察される。
そこで、本実施例では、ヒアルロン酸の平均粒子径の違いによる溶解性の違いを評価した。
5.8.1.評価方法
平均粒子径が異なる、平均分子量80万のヒアルロン酸を使用して、人工胃液中での溶解速度を評価した。具体的には、平均分子量80万のヒアルロン酸を篩い分けして表7に記載の各平均粒子径を有するヒアルロン酸を調製した。
平均分子量80万のヒアルロン酸を使用して、篩い分けは、篩1(65メッシュ(目開き208μm))、篩2(150メッシュ(目開き104μm))、篩3(250メッシュ(目開き61μm))の篩を用いた。
篩1を通過したが篩2を通過しなかった粒子を試験例1の粒子とし、篩2を通過したが篩3を通過しなかった粒子を試験例2の粒子とし、篩1を通過しなかった粒子を試験例3の粒子とし、篩3を通過した粒子を比較試験例1の粒子とした。
また、平均分子量8千のヒアルロン酸についても同様に篩い分けを行い、表8に記載の各平均粒子径を有するヒアルロン酸を調製した(参考例1〜4の粒子の調製方法はそれぞれ、試験例1〜3および比較試験例1の調製方法に準じた。)。
各ヒアルロン酸0.3gを人工胃液(pH1.2のNaCl0.2%水溶液)100mLに加え、同時に攪拌を行い、目視で完全溶解するまでの時間(溶解時間)を測定した。試験例1〜3、比較試験例1および参考例1〜4のヒアルロン酸の溶解時間を表7、表8に示す。
5.8.2.評価結果
以上の結果から、比較試験例1(平均粒子径50μm未満)のヒアルロン酸に対して、試験例1〜3のヒアルロン酸(平均粒子径50〜500μm)の胃液中への溶解性が低いことがわかる。さらに、試験例1および3のヒアルロン酸(平均粒子径80〜500μm)の溶解性がより低く、試験例3のヒアルロン酸(平均粒子径200〜500μm)の溶解性がさらに低い。このことから、平均粒子径50〜500μmである試験例1〜3のヒアルロン酸は、平均粒子径50μm未満である比較試験例1のヒアルロン酸と比べて胃液中での加水分解を受けにくく、低分子化されにくいことがわかる。
一方、ヒアルロン酸の平均分子量が8千である参考例1〜4においては、平均粒子径と溶解速度の相関性が大きくないことがわかる。このことから、平均分子量が50万以上のヒアルロン酸では、胃液への溶解性が平均粒子径に依存するのに対して、平均分子量が50万未満のヒアルロン酸は、胃液への溶解性が平均粒子径に依存しないといえる。なお、分子量50万未満のヒアルロン酸が、分子量50万以上のヒアルロン酸と比べて、炎症性疾患の治療効果が低いことは、上述の実施例1に示されている。
以上により、平均粒子径200〜500μmである平均分子量50万以上のヒアルロン酸は胃液による加水分解を受けにくく、低分子化されにくいため、分子量を維持した状態で腸管から吸収されて患部に到達するため、炎症性疾患の治療効果が優れていると推察される。
5.9.実施例9
実施例9では、以下、詳細に示す通り、平均分子量100万(平均分子量が60万〜120万の範囲にあるもの)でかつ平均粒子径が205μmのヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日240mgを経口投与し、摂取前、摂取4週間後、8週間後の経過をJKOM膝関節痛アンケートおよび変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)に従い調査した。
5.9.1.被験品および摂取量
上記製造法2に準じ平均分子量100万のヒアルロン酸を得、これを整粒して平均粒子径を205μmとした後、これを1粒当り48mgとなるようソフトカプセルを調製した。このソフトカプセル5粒(ヒアルロン酸として240mg)を毎日の摂取量とした。
5.9.2.被験者および被験者数
同意取得時の年齢が50歳以上、70歳以下の日本人男性および女性で、膝関節痛を安静時および運動時に自覚している者15名を被験者とした。ただし、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアが低い者であり、Kellgren-Lawrenceによる変形性膝関節症の病気分類(変形性膝関節症のX線による評価方法の一つであり、関節部位の症状の進行度によって0〜4のgradeに分類される)でのgradeがどちらか一方の脚でgrade1〜3の者を選択した。
5.9.3.評価方法および評価結果
以下の方法に従い、摂取前、摂取4週間後、8週間後に評価を行った。
5.9.3.1.JKOM膝関節痛アンケート調査
JKOM膝関節痛アンケート調査の判定基準1:膝の痛みの程度(VAS:ビジュアルアナログスケール)および判定基準2〜5の合計値の変化により評価を行った。
<判定基準1:膝の痛みの程度>
「痛みなし」を1、「これまでに経験した最も激しい痛み」を40としたときに、痛みの程度を40段階のスコアで集計する。
<判定基準2〜5の合計値>
表9により、2〜5の4項目25個の質問の合計点(100点満点)を算出する。
5.9.3.2.JKOM膝関節痛アンケート調査結果
表10の通り、判定基準1(膝の痛みの程度)および判定基準2〜5の合計値のいずれも、摂取8週間後は、危険率1%未満で有意に低下した。
5.9.3.3.変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査
表11に示す、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)による4項目のスコアの合計値の変化により、評価を行った。
5.9.3.4.変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査結果
表12の通り、変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるスコアの合計値は、摂取8週間後、危険率1%未満で有意に低下した。
このように、平均分子量100万でかつ平均粒子径が205μmのヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日240mgを経口投与した結果、8週間後のJKOM膝関節痛評価および変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアの合計値はいずれも危険率1%未満で有意に改善した。
よって、平均分子量50万以上でかつ平均粒子径が50〜500μmのヒアルロン酸を有効成分とするサプリメントを経口摂取することにより、膝関節痛が緩和できることが確認できた。
さらに、製造法2に準じ製した、平均分子量120万(平均分子量が80万〜160万の範囲にあるもの)でかつ平均粒子径が80μmのヒアルロン酸を、膝関節痛の自覚症状のある別の男女15名に、ソフトカプセルの形態で1日120mgを経口投与した結果、8週間後のJKOM膝関節痛評価のスコア合計値は危険率1%未満で有意に改善した。
本試験においては変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)によるアンケート調査は実施しなかったが、前試験同様に平均分子量120万でかつ平均粒子径が80μmのヒアルロン酸においても、膝関節痛緩和剤効果があることが確認できた。
以上により、実施例8の膝関節痛緩和剤は、平均分子量50万以上(具体的には平均分子量60万〜160万)でかつ平均粒子径が50〜500μmのヒアルロン酸またはその塩を主成分として含有し、膝関節痛を主訴する患者に1日120〜240mgを8週間経口摂取させることにより、膝関節痛が緩和し、その結果、JKOM膝関節痛評価および変形性膝関節疾患治療成績判定基準(JOA)スコアの合計値がいずれも危険率1%未満で有意に改善した。よって、この膝関節痛緩和剤およびこれを含有する医薬品ならびに食品は膝関節痛の緩和に有効である。
5.10.実施例10
実施例10では、以下、詳細に示す通り、2種類のヒアルロン酸をそれぞれ、飲用水に溶解し、STRマウスに飲水投与を行った。対照として無添加の飲用水を、およびコンドロイチン硫酸を同様に飲用水に溶解したものを陽性対照として用いた。17週後、安楽死させたマウスの両後肢を剖検用試料とした。剖検項目として、(1)膝関節の軟X線撮影像による裂隙の狭小化評価、(2)膝関節軟骨表面の粗造化評価、(3)膝関節滑膜の変性評価を実施した。
5.10.1.被験品および摂取量
試験例4として、製造法1に準じ、鶏冠からの抽出法により、平均分子量90万のヒアルロン酸(平均分子量が60万〜160万の範囲にあるもの、平均粒子径:159μm)を得た。
試験例5として、製造法2に準じ、微生物発酵法により、平均分子量70万のヒアルロン酸(平均分子量が50万〜120万の範囲にあるもの、平均粒子径:211μm)を得た。
これを飲用水に1.1mg/mLとなるよう調製し、1日1匹当り7.5mL摂取させることで、摂取量は200mg/kg体重/日とした。
比較試験例2として、コンドロイチン硫酸(平均分子量約3万)を用いた。これを飲用水に12.5mg/mLとなるよう調製し、1日1匹当り7.5mL摂取させることで、摂取量は1000mg/kg体重/日(体重約40g/匹)とした。
飲用水としては、大塚蒸留水を用い、クリーンベンチ内で無菌的に調製し、調製後は冷蔵で保存した。対照群にはこの蒸留水を用いた。
5.10.2.被験動物および試験条件
STR/OrtCrljマウス(雄、投与開始時22週齢、日本チャールズリバー社生産)を15日間予備飼育し、一般観察した結果異常のない健康マウスを試験に供した。
飼育は、個別換気ケージIVCを用い、7匹/ケージにて、室温19〜25℃、相対湿度30〜70%の環境下で行った。
飼料はラット・マウス用固形飼料Quick Fat(日本クレア社製)を自由摂食させ、飲用水は被験品を飲水させて飼育した。
5.10.3.摂取時期および摂取期間
STRマウスが22週齢から39週齢の17週の間、摂取実験を実施した。
5.10.4.評価方法および評価結果
摂取17週後剖検により以下の評価を行った。剖検は、エーテル麻酔下マウスを開腹し、採決後放血安楽死せしめ、両後肢を摘出した。これを骨に亀裂が生じないよう大腿骨頭を含めて採取し、10%中性緩衝ホルマリン液で固定して、軟X線撮影像評価用試料および病理組織学的検査試料とした。
5.10.4.1.膝関節の軟X線撮影像による裂隙の狭小化評価
軟X線撮影は、管球からの距離:50cm、電圧:26〜28kvp、電流:3〜4mA、照射時間:45秒の条件で行った。軟X線撮影像より、両後肢について、膝関節の軟X線撮影像スコア評価を実施した。
評価は関節裂隙が一部または全部が消失しているか否かを評価する、関節裂隙の狭小化のスコア評価について実施した。その際、健常マウスの正常な関節撮影像と比較して、変化のない場合を0、微小変化がある場合を0.5、軽度変化がある場合を1、中程度変化がある場合を2、重度変化がある場合を3とした。
評価はブラインド下で行った。評価結果を図7に示す。
軟X線撮影像スコアについて、試験例4および試験例5が対照群に比べ有意に低い値であるに対し、比較試験例2は対照群と差が認められなかった。有意差検定はKolmogorov−Smirnov(KS)検定により、1%未満の危険率で有意差の有無を判定した。
各群の39週齢STRマウスの軟X線撮影像を図8に示す。
図8において、対照群(A)に比べ、試験例4(B)および試験例5(C)は関節裂隙が広く、関節裂隙小化が抑制されていることが分かる。これとは逆に、比較試験例2(D)は差が認められない。
5.10.4.2.膝関節軟骨表面の粗造化評価
India Ink Methodにより、膝関節軟骨表面の粗造化評価を行った。
ホルマリン液固定した後肢の検査用試料の、大腿骨軟骨表面にIndia Inkを塗布後、生理食塩水液中で洗浄し、写真撮影した。軟骨粗造化部位にはIndia Inkが残存する。これを図9のように写真上にて、軟骨面積(ピクセル数)をNIHイメージにて測定した。次にWeigelのポイントカウンティング法にてIndia Inkが染色されているところにある格子の交点の数(靭帯は除く)をカウントした。
その数を軟骨面積で除した値を、軟骨粗造化指数とした。
評価結果を図9に記す。
軟骨粗造化指数について試験例4および試験例5が対照群に比べ有意に低い値であるに対し、比較試験例2は対照群と比べ、やや低値を示したものの有意な差は認められなかった。有意差検定は、得られたデータより平均値、標準誤差を算出し、ノンパラメトリックあるいはパラメトリックTukey多重比較検定を実施し、1%未満の危険率で有意差の有無を判定した。
各群の39週齢STRマウスの大腿骨軟骨表面にIndia Ink処理した写真を図10に示す。
図10において、対照群(A)に比べ、試験例4(B)および試験例5(C)は染色面積が小さく、膝関節軟骨表面の粗造化が抑制されていることが分かる。これとは逆に、比較試験例2(D)はやや染色面積が小さいものの、その差は少ないものであった。
5.10.4.3.膝関節滑膜の変性評価
10%中性緩衝ホルマリン液固定した後肢を、10%EDTAを用いた脱灰後、パラフィン包埋し、薄切した。その後、ヘトキシリンエオジン染色標本を作製し、膝蓋骨両側の滑膜の病理組織学的検査を実施した。評価は、正常を0、滑膜細胞活性化を1、滑膜細胞活性化および軽度増殖を2、滑膜細胞活性化および重度増殖を3とし、滑膜評価スコアを算出した。
評価結果を図11に示す。
滑膜評価指数について試験例4および試験例5が対照群に比べ低い値であるに対し、比較試験例2は差がなかった。有意差検定は、得られたデータより平均値、標準誤差を算出し、ノンパラメトリックあるいはパラメトリックTukey多重比較検定を実施し、危険率5%未満にて有意差判定を行ったが、いずれの群間にも有意差は認められなかった。
滑膜評価スコアの統計学的差は認められなかったものの、滑膜の病理組織学的検査によると、対照群および比較試験例2が滑膜細胞の軽度増殖が顕著に認められたのに対し、試験例4および試験例5は、滑膜細胞の活性化は認められるものの、細胞の増殖は明らかに抑制されていた。
このように、鶏冠より抽出したヒアルロン酸(平均分子量が60万〜160万の範囲にあるもの)および微生物発酵法により得られたヒアルロン酸(平均分子量50万〜120万の範囲にあるもの)であって、平均粒子径が50〜500μmの範囲にあるものを、変形性膝関節疾患自然発症モデルであるSTRマウスに17週に渡り経口摂食させることにより、両後肢の膝関節軟X線撮影像および病理組織学的検査結果より、膝関節裂隙の狭小化抑制、膝関節軟骨表面の粗造化抑制、膝関節滑膜の変性抑制が認められた。
試験例4および試験例5によれば、本発明の一実施形態に係る膝関節治療剤はヒアルロン酸またはその塩を有効成分として含有することにより、変形性膝関節疾患モデル動物において膝関節軟X線撮影像スコア、膝軟骨粗造化指数をいずれも危険率1%未満で有意に改善した。また、膝蓋骨両側の滑膜スコアにおいて有意差はないものの改善を認めた。よって、本発明の一実施形態に係る膝関節治療剤は、変形性膝関節疾患の治療、膝関節軟骨の治療、および膝関節滑膜の治療において有効である。また、これらの治療剤を含有する医薬品および食品は膝関節の病理組織学的改善効果において有効であり、整形外科領域の疾患の治療、予防、緩和に対し有効である。

Claims (16)

  1. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する、SOCS3発現促進剤。
  2. 前記ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径が50〜500μmである、請求項1に記載のSOCS3発現促進剤。
  3. 請求項1または2に記載のSOCS3発現促進剤を有効成分として含有する医薬品。
  4. 経口的に摂取される、請求項3記載の医薬品。
  5. 請求項1または2に記載のSOCS3発現促進剤を含有する食品。
  6. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒトまたはヒト以外の動物においてSOCS3の発現を促進する方法。
  7. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩を有効成分として含有する、プロイオトロフィン発現抑制剤。
  8. 前記ヒアルロン酸および/またはその塩の平均粒子径が50〜500μmである、請求項7に記載のプロイオトロフィン発現抑制剤。
  9. 請求項7または8に記載のプロイオトロフィン発現抑制剤を有効成分として含有する医薬品。
  10. 経口的に摂取される、請求項9記載の医薬品。
  11. 請求項7または8に記載のプロイオトロフィン発現抑制剤を含有する食品。
  12. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒトまたはヒト以外の動物においてプロイオトロフィンの発現を抑制する方法。
  13. 膝関節の治療または膝関節痛の緩和に用いられる、請求項3、4、9または10に記載の医薬品。
  14. 膝関節の治療または膝関節痛の緩和に用いられる、請求項5または11に記載の食品。
  15. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒトまたはヒト以外の動物において膝関節を治療する方法。
  16. 平均分子量が50万以上のヒアルロン酸および/またはその塩をヒトまたはヒト以外の動物に経口的に摂取させることを含む、ヒトまたはヒト以外の動物において膝関節痛を緩和する方法。
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