本発明は、圧電型音響変換器に関し、より特定的には、省スペース化及び高音質化を両立した圧電型音響変換器に関する。
近年、携帯電話を始めとしたモバイル機器の薄型化及び小型化の傾向が加速しており、また、AV機器等に搭載される各部品の薄型化及び小型化のニーズも高まっている。
携帯電話等における、着信音や音楽信号を再生するスピーカの駆動方式として、従来は、動電型が用いられてきた。しかし、動電型を用いた場合、その構造上スピーカの薄型化は本質的に困難であり、薄型化を実施した場合には低域音圧が低下し、また、磁気回路を用いるために磁気漏洩対策が必要となる等の課題があった。
これに対して、電化製品や情報機器の音声再生に広く用いられてきた圧電型スピーカは、薄型化に適した駆動方式として注目されており、携帯電話や小型情報端末への搭載例も増加傾向にある。
従来、圧電型スピーカは、圧電材を電気音響変換素子に用いた音響変換器として知られており、小型機器の音響出力手段として使用されている(例えば、特許文献1参照)。
圧電型スピーカは、圧電素子を金属板等に接着した構成である。このことから、圧電型スピーカは、磁石及びボイスコイルを必要とする動電型スピーカと比較して薄型化が容易であり、また、磁気漏洩対策を必要としないというメリットを持つ。
ここで、圧電型スピーカを音声再生に用いる際には、以下の性質に留意が必要である。
第一に、動電型スピーカでは振動板速度が電圧に比例するのに対して、圧電型スピーカでは振動板変位が電圧に概ね比例する。このため、圧電型スピーカにおいて、定電圧駆動時の音圧特性は、周波数の増加に伴って音圧レベルも増加する特性(右上がり特性)となる。この音圧特性は、一般にスピーカに求められる平坦な周波数特性とは、異なるものである。
第二に、動電型スピーカでは電気インピーダンスは周波数によらずほぼ一定値と見なせるのに対して、圧電型スピーカでは、圧電素子部分がコンデンサとして動作するため電気インピーダンスは周波数に反比例して低下する。このことから、圧電型スピーカでは、高周波帯域において過電流によるショートの危険が生じる。
上記した性質に対応するため、圧電型スピーカの設計の際には、通常、圧電素子に電気抵抗を直列接続してRC回路を形成することによって、高周波数帯域では電気抵抗部分に電流が流れるようにする。このことによって、コンデンサでもある圧電スピーカへの高周波数帯域の入力を抑え、所望の音圧特性や電気特性を得ることができる。
図25は、バイモルフ型圧電スピーカにおいて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合の高周波数帯域の音圧抑制効果を示す測定データ図である。なお、バイモルフ型圧電スピーカの片面あたりの静電容量は210nFであり、圧電素子に直列接続される電気抵抗は220Ωである。図25から解るように、圧電素子単体の場合(電気抵抗なしの場合)に比べて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合(電気抵抗ありの場合)の方が、高周波数帯域において電気インピーダンスが上昇し、音圧特性が平坦化される。
また、圧電型スピーカは、温度変化の激しい使用条件において、圧電材の焦電効果により静電容量が低下して性能劣化を起こす。これを避けるために、圧電型スピーカに電気抵抗を並列接続する従来技術がある(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−230193号公報
特開2001−275190号公報
しかしながら、上記した従来技術のように、新たに電気抵抗を接続すると、通常、部品点数の増加を招き製造コストの増大につながる。また、圧電型スピーカのメリットの一つである省スペース性が損なわれる。以下、具体的に説明する。
図26は、特許文献1に記載された従来の圧電型スピーカ1000を示す図である。図26に示すように、従来の圧電型スピーカ1000は、フレーム1010の外部に、RC回路を形成するための基板1020を備えている。この方法によれば、圧電型スピーカの薄型化のメリットは損なわれない。しかしながら、この方法では、圧電型スピーカのフレーム1010の外部に、基板1020を形成するためのスペースを必要とする。
また、一般に、小型のスピーカでは、高音質で低音の再生を行うことは困難である。また、一般に、圧電型スピーカは、駆動原理上、振動板の振動モードに起因して周波数特性においてピーク/ディップが生じ易い。この様に、圧電型スピーカにおいて高音質化を実現するためには、問題がある。
それ故に、本発明の目的は、部品点数を増やすことなく省スペース化と高音質化とを両立した圧電型スピーカを提供することである。
本発明は、印加される電圧に応じて変形する圧電材を用いて音響を再生する圧電型音響変換器に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明の圧電型音響変換器は、2つの表面電極によって挟まれた圧電材から成る圧電素子と、少なくとも一方の主面にプリント配線が施され、少なくとも一方の主面に圧電素子が接着される振動板とを備え、振動板は、フレーム部と、圧電素子が接着されて振動する振動部と、フレーム部と振動部とを接続して振動部を支持する、少なくとも1つの支持部とを含み、フレーム部と少なくとも1つの支持部のうち少なくとも何れかに、プリント配線と一体的に形成され、圧電素子と共同して直列RC回路を構成する、少なくとも1つの電気抵抗を有する。
また、好ましくは、圧電素子は、2つの表面電極の少なくとも一方が分割されることで、並列接続された複数のコンデンサとして機能し、少なくとも1つの電気抵抗は、複数のコンデンサの少なくとも1つと共同して少なくとも1つの直列RC回路を構成する。
また、好ましくは、圧電素子は、2つの表面電極が分割されることで、並列接続された複数のコンデンサとして機能し、圧電素子が接着された振動部固有の振動モードの少なくとも1つは、複数のコンデンサの少なくとも1つに逆極性の電圧が供給されることで打ち消される。
また、好ましくは、少なくとも1つの直列RC回路は、電気的イコライザを構成する。
また、好ましくは、少なくとも1つの直列RC回路は、振動部の各領域において再生される音響の周波数帯域を互いに異ならせる特性に設定される。
また、圧電材を挟む2つの表面電極は、電極の無い部分を有してもよい。
また、好ましくは、フレーム部と振動部との隙間を塞ぐ柔軟性の高い充填材を、更に備える。
また、好ましくは、少なくとも1つの電気抵抗は、合金、樹脂、及び金属と樹脂との複合材料のいずれかで形成される。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、放熱性の高い材料で覆われてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、断熱性の高い材料上に形成されてもよい。
また、好ましくは、圧電材は、単結晶圧電体、セラミック圧電体、高分子圧電体のいずれかで成る。
また、プリント配線には、直列RC回路の特性を調節する薄膜コンデンサが、更に、一体的に形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線よりも電気抵抗値が高い材料で形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の形状によって形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の一部を細線形状にして形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の層厚を薄くして形成されてもよい。
上述した本発明によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。更に、本発明によれば、振動部を支持部で支持することによって、振動部が低周波数で振動し易くする。このことによって、低音の再生を高音質で行うことが可能となる。この結果として、本発明によれば、部品点数を増やすことなく省スペース化と高音質化とを両立した圧電型スピーカを提供することが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の一例の上面図及び断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の等価回路を示す図である。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の一例の上面図及び断面図である。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の等価回路を示す図である。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300の等価回路を示す図である。
図9は、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の一例の上面図及び断面図である。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図11は、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の等価回路を示す図である。
図12は、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の抵抗部の拡大図である。
図13は、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400において、無電極部分を設けた図である。
図14は、本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図15は、本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500の等価回路を示す図である。
図16は、本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500において、分割する電極の形状を説明する図である。
図17は、本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図18は、本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600の等価回路を示す図である。
図19は、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の一例の上面図及び断面図である。
図20は、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700を構成する各電極層について説明するための斜視図である。
図21は、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の等価回路を示す図である。
図22は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の一例である。
図23は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の他の例である。
図24は、本発明の圧電型スピーカを適用した薄型テレビの外観図の一例である。
図25は、バイモルフ型圧電スピーカにおいて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合の高周波数帯域の音圧抑制効果を示す測定データ図である。
図26は、従来の圧電型スピーカ1000を示す図である。
符号の説明
36、43、51 筐体
37、44、52 ディスプレイ
38、45、53、100、200、300、400、500、600、700、1000 圧電型スピーカ
39、46 音孔
101、201、301、401、501、601、701 振動板
101−1、201−1、301−1、401−1、501−1、601−1、701−1、1020 基板
102、103、202、203、302、303、402、403、502、503、602、603、702、703 圧電素子
102−1、103−1、202−1、203−1、302−1、402−1、502−1、602−1、702−1 圧電材
109、209、709 充填材
104、204、304、404、504、604、704 フレーム部
105−1、105−2、205−1〜205−4、305−1〜305−4、705−1、705−2 支持部
106、206、406、706 振動部
107、108、207、208、307、407、408、507、508、607、707、708、707−1、707−2、708−1、708−2 抵抗部(抵抗)
110 交流電源
111、112、211、212、311〜313、411、511〜513、611〜613、711〜713 コンデンサ
440 放熱材
430 断熱材
550 配線電極
1010 フレーム
a、b、c、d、e、f 電極層
a−1〜a−3、b−1〜b−4、c−1〜c−4、d−1、e−1、e−2、f−1 電極
本発明の各実施形態に係る圧電型スピーカについて具体的に説明する前に、各実施形態において説明する以下の構成要素の特徴について、一括して説明する。
圧電材は、印加される電圧に応じて変形する圧電性材料であって、例えば、単結晶圧電体、セラミック圧電体、高分子圧電体である。電極層は、金属等の導電性材料から成り、例えば、銅、アルミ、チタン、及び銀等のいずれかを含む薄膜材料や、それらの合金薄膜材料から成る。基板は、汎用プラスチック素材(ポリカーボネート、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート等)、ゴム系高分子素材(SBR、NBR及びアクリロニトリル等)、及び液晶ポリマー等の絶縁性を有する材料である。
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る圧電型スピーカについて具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の一例の上面図及び断面図である。図1において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図であり、(C)はA−A’断面の図である。図1(A)〜(C)に示すように、圧電型スピーカ100は、振動板101と、圧電素子102と、圧電素子103と、充填材109とを備える。なお、図1(B)では、説明の便宜のために、振動板101と、圧電素子102及び圧電素子103とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板101と、圧電素子102及び圧電素子103とは、それぞれ接着されている。
圧電素子102は、圧電材102−1と、圧電材102−1の上面に形成された電極層aと、圧電材102−1の下面に形成された電極層bとを含む(図1(B)を参照)。同様に、圧電素子103は、圧電材103−1と、圧電材103−1の上面に形成された電極層eと、圧電材103−1の下面に形成された電極層fとを含む。圧電素子102は、電極層aと電極層bとの間に電界を生じさせることによって、圧電材102−1を変形させて振動を生じる。同様に、圧電素子103は、電極層eと電極層fとの間に電界を生じさせることによって、圧電材103−1を変形させて振動を生じる。
振動板101は、基板101−1と、基板101−1の上面に形成された電極層cと、基板101−1の下面に形成された電極層dとを含む(図1(B)を参照)。機能的に分類すると、振動板101は、フレーム部104と、支持部105−1と、支持部105−2と、振動部106とを含む(図1(A)及び(B)を参照)。フレーム部104は、圧電型スピーカ100を実装する際に、相手装置に固定される部分である。フレーム部104は、例えば、振動板101の外周部分に帯状に位置する。振動部106は、その上面に圧電素子102が接着され、また、その下面に圧電素子103が接着されることによって振動して、音を発生する。このことから、基板101−1を上面から視た場合において、振動部106の形状及び大きさは、圧電素子102及び圧電素子103と同じであることが好ましい。支持部105−1及び支持部105−2は、フレーム部104と振動部106とをつなぎ合わせることによって、振動部106を支持する。また、支持部105−1及び支持部105−2は、その上面及び下面に形成された電極層によって、フレーム部104と振動部106とを電気的に接続する。なお、電極層の配線設計上必要ない場合には、支持部105−1及び支持部105−2には、電極層が形成されない。振動板101において、フレーム部104、支持部105−1、支持部105−2及び振動部106は、電極層を形成された基板材料を打ち抜き加工することによって、形成される。
充填材109は、フレーム部104、支持部105−1、支持部105−2及び振動部106の隙間に充填される。また、充填材109は、フレーム部104、支持部105−1及び支持部105−2の表面にも形成される(図1(A)〜(C)を参照)。充填材109は、ラミネート材料に高熱伝導性材料を添加した材料、又はラミネート材料と高熱伝導性材料とを積層した材料に代表される柔軟性が高く熱伝導性が高い材料から成る。充填材109を用いて振動板101の隙間を埋めることによって、振動板101の背面で発生した音(逆位相音)が振動板101の隙間から振動板101の前面に伝播して低周波数領域の音圧が低下することを防止できる。なお、ラミネート材料とは、具体的には、汎用プラスチック素材(ポリエチレンテレフタレート等)、ゴム系高分子素材(SBR、NBR及びアクリロニトリル等)等である。また、高熱伝導性材料とは、金属(銅、アルミニウム等)、シリカ等である。ここで、充填材109は、電気的絶縁特性を有する必要がある。従って、充填材109がラミネート材料と金属とを積層した材料から成る場合には、例えば、金属の層は、充填材109の内部に形成される。また、充填材109がラミネート材料に金属を添加した材料から成る場合には、例えば、以下の方法をとることが好ましい。第1の方法としては、添加する金属の粒子表面を予め絶縁材料(シリカ、フッ素樹脂等)によってコーティングする方法である。第2の方法としては、ラミネート材料として、添加する金属の粒子表面に対して液化状態時の濡れ性が高い材料を用いる方法である。第1及び第2の方法によれば、添加される金属の粒子相互が隔絶され、また、添加される金属の粒子が充填材109の表面に露出することを防止できる。第3の方法としては、振動板101の電極層と充填材109との間に、絶縁材料から成る薄膜層を設ける方法である。第3の方法によれば、添加される金属が充填材109の表面に露出することを防止できる。以上の方法によって、充填材109は、金属を含む場合であっても、電気的絶縁特性を有することができる。なお、後に説明する第2の実施形態以後の実施形態においても、充填材は同様の特性を有する。
なお、図1に示すように、各電極層における、プラス側電極部分(以下、+電極部という)、マイナス側電極部分(以下、−電極部という)、及び電気抵抗部分(以下、抵抗部という)は、それぞれ、異なる模様で図示している。
図2は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100を構成する各電極層について説明するための斜視図である。なお、図2においても、各電極層における、+電極部、−電極部及び抵抗部は、図1と同様の模様で図示している。また、図2では、説明の便宜のために、圧電材102−1、圧電材103−1及び基板101−1は省略している。以下、図1及び図2を用いて、圧電型スピーカ100を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ100の各電極層の電極の配置について、図2及び図1(B)を用いて説明する。電極層aの全面には、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2とが形成される。電極b−2は、電極層bのY軸方向の端部に沿って細い帯状に形成される。電極b−1は、電極b−2と隙間を保ち、電極層bの残りの面に形成される。電極b−1と電極b−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板101の支持部105−1と、フレーム部104の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部104の一部には、抵抗部107が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板101の支持部105−2と、フレーム部104の一部とに一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに電気的に絶縁されている。
電極層dには、電極層cに形成された電極(電極c−1及び電極c−2)を、Z軸を回転軸として裏返した形状で、電極d−1及び電極d−2が形成される。従って、電極d−1は、Z軸を回転軸として電極c−2を裏返した形状であり、電極d−2は、Z軸を回転軸として電極c−1を裏返した形状である。また、電極d−1と電極d−2とは、互いに電気的に絶縁されている。同様に、電極層eには、電極層bに形成された電極(電極b−1及び電極b−2)を、Z軸を回転軸として裏返した形状で、電極e−1及び電極e−2が形成される。従って、電極e−1は、Z軸を回転軸として電極b−2を裏返した形状であり、電極e−2は、Z軸を回転軸として電極b−1を裏返した形状である。また、電極e−1と電極e−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層fの全面には、電極f−1が形成される。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極c−1の振動部106上面に形成される部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続され、また、電極c−2の振動部106上面に形成される部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極層eと電極層dとは接着されているので、電極d−1の振動部106下面に形成される部分と電極e−1とは接着されて電気的に接続され、また、電極d−2の振動部106下面に形成される部分と電極e−2とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極f−1と電極e−1とは、電気的に接続される。また、電極c−1におけるフレーム部104上面の点P2と、電極d−1におけるフレーム部104下面の点P2とは、電気的に接続される。同様に、電極c−2におけるフレーム部104上面の点P1と、電極d−2におけるフレーム部104下面の点P1とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。例えば、図1(B)においては、圧電材102−1及び圧電材103−1の側面に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図3は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の等価回路を示す図である。以下では、図2及び図3を用いて、圧電型スピーカ100の等価回路について説明する。図3に示すように、圧電型スピーカ100の等価回路は、抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路とを備える。抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路の一端A3と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路の一端B3とは、P2で接続される。抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路の他端A1と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路の他端B1とは、P1で接続される。なお、P1及びP2は、それぞれ、交流電源110に接続される。
以下では、図3の等価回路を、図2の各電極に対応付けて説明する。まず、図3のP2は、図2の電極c−1及び電極d−1の点P2と対応する。なお、図2の点P2は2つ存在するが、この2つの点P2は互いに接続されているので、図3の回路上では1つのP2とみなしている。図3のA3は、図2の電極c−1の点A3と対応する。図3の抵抗107は、図2の抵抗部107と対応する。図3のA2は、図2の電極c−1の点A2と対応する。図3のコンデンサ111は、図2の電極b−1、電極c−1の一部、及び電極a−1と対応する。より具体的には、図3のコンデンサ111のA2側の電極は、図2の電極b−1、及び電極c−1における電極b−1と重なる部分に対応する。また、図3のコンデンサ111のA1側の電極は、図2の電極a−1に対応する。図3のA1は、図2の電極c−2の点A1と対応する。図3のP1は、図2の電極c−2及び電極d−2の点P1と対応する。なお、図2の点P1は2つ存在するが、この2つの点P2は互いに接続されているので、図3の回路上では1つのP1とみなしている。
図3のB1は、図2の電極d−1の点B1と対応する。図3の抵抗108は、図2の抵抗部108と対応する。図3のB2は、図2の電極d−2の点B2と対応する。図3のコンデンサ112は、図2の電極e−2、電極d−2の一部、及び電極f−1と対応する。より具体的には、図3のコンデンサ112のB2側の電極は、図2の電極e−2、及び電極d−2における電極e−2と重なる部分に対応する。また、図3のコンデンサ112のB3側の電極は、図2の電極f−1に対応する。図3のB3は、図2の電極d−1の点B3と対応する。
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。更に、圧電型スピーカ100によれば、振動部を支持部で支持することによって、振動部が低周波数で振動し易くする。このことによって、低音の再生を高音質で行うことが可能となる。
また、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、電極を印刷するために用いる印刷パターンを、スピーカの表面の印刷と裏面の印刷とで共用できる。具体的には、既に説明したように、電極層dの電極の形状は、電極層cの電極の形状を裏返した形状であるので(図2を参照)、電極層dの電極と電極層cの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。同様に、電極層bの電極と電極層eの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。また、同様に、電極層aの電極と電極層fの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。この結果として、製造コストの削減が可能となる。
また、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、充填材109は、フレーム部104及び支持部105の表面にも形成される(図1(A)〜(C)を参照)。ここで、既に説明したように、充填材109は熱伝導性が高い材料から成るので、フレーム部104表面に形成された抵抗部107及び108から発生する熱は、効果的に放熱される。この結果として、本発明の圧電型スピーカ100によれば、圧電材102−1及び103−1の焦電効果により静電容量が低下して性能劣化が生じることを回避できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する特徴については原則として説明を省略する。
図4は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の一例の上面図及び断面図である。図1において、(A)は上面図であり、(B)はO1−O1’断面の図であり、(C)はO2−O2’断面の図であり、(D)はO3−O3’断面の図である。図4(A)〜(D)に示すように、圧電型スピーカ200は、振動板201と、圧電素子202と、圧電素子203と、充填材209とを備える。ここで、図4(A)〜(D)において、説明の便宜のために、振動板201の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子203は図示していない。また、以下では、振動板201の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図4(B)〜(D)では、説明の便宜のために、振動板201と、圧電素子202とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板201と、圧電素子202とは接着されている。
圧電素子202は、圧電材202−1と、圧電材202−1の上面に形成された電極層aと、圧電材202−1の下面に形成された電極層bとを含む(図4(B)〜(D)を参照)。
振動板201は、基板201−1と、基板201−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板201は、フレーム部204と、支持部205−1〜205−4と、振動部206とを含む(図4(B)〜(D)を参照)。
充填材209は、フレーム部204、支持部205−1〜205−4及び振動部206の隙間に充填される。また、充填材209は、フレーム部204及び支持部205−1〜205−4の表面にも形成される(図4(A)〜(D)を参照)。
図5は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図5において、圧電材202−1、基板201−1は省略し、また、振動板201の下面側の構成も省略する。以下、図5を用いて、圧電型スピーカ200を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ200の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1及び電極a−2が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3と電極b−4とが形成される。電極b−1〜b−4は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板201の支持部205−1及び205−3と、フレーム部204の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部204の一部には、抵抗部208が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−4と重なる部分と、振動板201の支持部205−2及び205−4と、フレーム部204の一部とに一体的に形成される。また、電極c−2において、フレーム部204の一部には、抵抗部207が形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、図5を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−4に対応する電極c−4の部分と電極b−4とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−3とは、電気的に接続される。同様に、電極a−2と電極b−4とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。図4(D)においては、圧電材202−1の側面の一部に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図6は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の等価回路を示す図である。以下では、図5及び図6を用いて、圧電型スピーカ200の等価回路について説明する。なお、図6では、振動板201の下面側に対応する等価回路は省略している。図6に示すように、圧電型スピーカ200の等価回路は、抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路と、コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路と、コンデンサ211とを備える。コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路のコンデンサ213側の端部と、コンデンサ211の一端とは、A4で接続される。また、コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路の抵抗208側の端部と、コンデンサ211の他端とは、A1を介してP1で接続される。抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路のコンデンサ212側の端部は、A1に接続される。また、抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路の抵抗207側の端部は、P2を介してA4に接続される。なお、P1及びP2は、それぞれ、交流電源110に接続される。
以下では、図6の等価回路を、図5の各電極に対応付けて説明する。まず、図6のP2は、図5の電極c−2の点P2と対応する。図6のA4は、図5の電極c−2の点A4と対応する。図6のコンデンサ211は、図5における、電極a−2の一部と、電極b−1の一部と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ211のA4側の電極は、図5の電極a−2における電極b−1と重なる部分に対応する。また、図6のコンデンサ211のP1側の電極は、図5において、電極b−1における電極a−2と重なる部分と、電極c−1における電極a−2と重なる部分とに対応する。
図6のコンデンサ213は、図5における、電極a−2の一部と、電極b−2と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ213のA4側の電極は、図5の電極a−2における電極b−2と重なる部分に対応する。また、図6のコンデンサ213のA2側の電極は、図5において、電極b−2と、電極c−1における電極b−2と重なる部分とに対応する。図6のA2は、図5の電極c−1の点A2と対応する。図6の抵抗208は、図5の抵抗部208と対応する。図6のP1は、図5の電極c−2の点P1と対応する。
図6のA1は、図5の電極c−2の点A1と対応する。図6のコンデンサ212は、図5における、電極a−1と、電極b−1の一部と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ212のA1側の電極は、図5において、電極c−1における電極a−1と重なる部分と、電極b−1における電極a−1と重なる部分とに対応する。また、図6のコンデンサ212のA3側の電極は、図5の電極a−1と対応する。図6のA3は、図5の電極c−2の点A3と対応する。図6の抵抗207は、図5の抵抗部207と対応する。
以上に説明したように、本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ200によれば、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の効果に加えて、圧電素子の一部の領域(抵抗が直列接続された領域)に限って音圧特性を平坦化できる。例えば、圧電素子の中心領域の分割電極に対しては抵抗を接続せず、圧電素子の周辺領域の分割電極に対しては抵抗を接続することによって、低周波数帯域の音については圧電素子全面が駆動し、一方、高周波数帯域の音については圧電素子の中心部分のみが駆動するようにできる。つまり、圧電型スピーカ200によれば、2ウェイスピーカを、一枚の圧電素子によって実現することができる。
また、以上では、分割した電極に抵抗を接続するか否かによって、音圧特性を調節した。しかし、分割した電極に接続する抵抗の値を調節することによって、更に、適切に音圧特性を調節してもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印可することを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第3の実施形態では、圧電型スピーカ300の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図7は、第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図7において、圧電素子302を構成する圧電材302−1は省略し、振動板301を構成する基板301−1は省略し、また、振動板201の下面側の構成も省略している。以下、図7を用いて、圧電型スピーカ300を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ300の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1と電極a−2と電極a−3とが形成される。電極a−1〜a−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板301の支持部305−2と、振動板301のフレーム部304の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部304の一部には、抵抗部307が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、振動板301の支持部305−1及び305−4と、フレーム部304の一部とに一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−1に対応する電極c−2の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極a−3と電極b−2とは、電気的に接続される。また、電極a−2と電極c−2とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図8は、第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300の等価回路を示す図である。以下では、図7及び図8を用いて、圧電型スピーカ300の等価回路について説明する。なお、図8では、振動板301の下面側に対応する等価回路は省略している。図8に示すように、圧電型スピーカ300の等価回路は、コンデンサ311とコンデンサ312とコンデンサ313とを並列接続した回路に、抵抗307を直列接続した回路である。
以下では、図8の等価回路を、図7の各電極に対応付けて説明する。まず、図8のP2は、図7の電極c−1の点P2と対応する。図8の抵抗307は、図7の抵抗部307と対応する。図8のB2は、図7の電極c−1の点B2と対応する。図8のコンデンサ311は、図7における、電極c−1の一部と、電極b−2と、電極a−2に対応する。より具体的には、図8のコンデンサ311のB2側の電極は、図7における、電極c−1における電極b−2と重なる部分と、電極b−2とに対応する。また、図8のコンデンサ311のB1側の電極は、図7の電極a−2と対応する。図8のB1は、図7の電極a−2の点B1と対応する。図8のP1は、図7の電極c−2の点P1と対応する。
図8のA1は、図7の電極a−1の点A1と対応する。図8のコンデンサ312は、図7における、電極c−2の一部と、電極b−1と、電極a−1とに対応する。より具体的には、図8のコンデンサ312のA1側の電極は、図7の電極a−1に対応する。また、図8のコンデンサ312のP1側の電極は、図7の電極b−1と、電極c−2における電極b−1と重なる部分とに対応する。
図8のA2は、図7の電極a−3の点A2と対応する。図8のコンデンサ313は、図7における、電極c−2の一部と、電極b−3と、電極a−3とに対応する。より具体的には、図8のコンデンサ313のA2側の電極は、図7の電極a−3に対応する。また、図8のコンデンサ313のP1側の電極は、図7における、電極b−3と、電極c−2における電極b−3と重なる部分とに対応する。
以上に説明したように、本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印可することを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ300によれば、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の効果に加えて、振動板に生じる不要な振動モードを効果的に打ち消すことができる。
なお、第1〜第3の実施形態では、説明の便宜のために、振動部を支持する支持部の数を特定して説明した。しかしながら、支持部の数は、説明に用いた数には限られない。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と比べて、主に、振動板が支持部を有さず、また、充填材を有さない点で異なる。以下では、この異なる点を中心として説明を行う。
図9は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の一例の上面図及び断面図である。図9において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図である。図9(A)及び(B)に示すように、圧電型スピーカ400は、振動板401と、圧電素子402と、圧電素子403とを備える。ここで、図4(A)及び(B)において、説明の便宜のために、振動板401の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子403は図示していない。また、以下では、振動板401の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図9(B)では、説明の便宜のために、振動板401と、圧電素子402とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板401と、圧電素子402とは接着されている。
圧電素子402は、圧電材402−1と、圧電材402−1の上面に形成された電極層aと、圧電材402−1の下面に形成された電極層bとを含む(図9(B)を参照)。
振動板401は、基板401−1と、基板401−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板401は、フレーム部404と、振動部406とを含む(図9(B)を参照)。
図10は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図10において、圧電材402−1、基板401−1は省略し、また、振動板401の下面側の構成も省略している。以下、図10を用いて、圧電型スピーカ400を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ400の各電極層の電極の配置について、図10を用いて説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2とが形成される。電極b−1とb−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、フレーム部404の一方とに一体的に形成される。ここで、電極c−1において、フレーム部404の一方には、抵抗部407が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、フレーム部204の他方とに一体的に形成される。ここで、電極c−2において、フレーム部404の他方には、抵抗部408が形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。また、図9において、抵抗部407及び408は、一例として、細線形状の電気抵抗である。
次に、図10を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−2に対応する電極c−2の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。電極a−1と電極b−2とを接続する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。図9(B)においては、圧電材402−1の側面に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図11は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の等価回路を示す図である。以下では、図10及び図11を用いて、圧電型スピーカ400の等価回路について説明する。なお、図11では、振動板401の下面側に対応する等価回路は省略している。図11に示すように、圧電型スピーカ400の等価回路は、コンデンサ411の一端に抵抗407を直列接続し、コンデンサ411の他端に抵抗408を直列接続した回路である。
以下では、図11の等価回路を、図10の各電極に対応付けて説明する。まず、図11のP2は、図10の電極c−1における抵抗部407の点P2と対応する。図11の抵抗407は、図10の電極c−1における抵抗部407と対応する。図11のA2は、図10の電極c−1の点A2と対応する。図11のコンデンサ411は、図10における、電極a−1の一部と、電極b−1と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図11のコンデンサ411のA2側の電極は、図10において、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。また、図11のコンデンサ411のA1側の電極は、図10において、電極a−1における電極b−1と重なる部分と対応する。図11のA1は、図10の電極c−2の点A1と対応する。図11の抵抗408は、図10の電極c−2における抵抗部408と対応する。図11のP1は、図10の電極c−2における抵抗部408の点P1と対応する。
以上に説明したように、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。
また、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400によれば、第1の実施形態において説明した理由によって、電極を印刷するために用いる印刷パターンを、スピーカの表面の印刷と裏面の印刷とで共用できる。この結果として、製造コストの削減が可能となる。
なお、図12に示すように、抵抗部408(407)と基板401−1との間に、断熱材430を設け、また、抵抗部408(407)の上面に放熱材440を設けてもよい。このことによって、抵抗部408(407)の発熱に起因する振動板401の変形及び振動特性の変化を効果的に抑制できる。なお、他の実施形態においても、同様に、断熱材又は放熱材を設けることによって、同様の効果を得ることができる。
また、図13に示すように、電極の内部領域に、電極が無い部分(無電極部分)を設けてもよい。このことによって、電極面積を低減して、消費電力を抑制できる。また、無電極部分に挟まれた圧電材は自由振動するので、無電極部分によって音質を調節できる。また、無電極部分に絶縁材料を配置することによって付加質量を振動板に与えて、振動板の共振特性を調節できる。また、無電極部分に振動減衰特性の高い材料を配置することによっても、振動板の共振特性を調節できる。なお、他の実施形態においても、同様に、無電極部分を設ける等することによって、同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第5の実施形態では、圧電型スピーカ500の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図14は、第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図14において、圧電素子502を構成する圧電材502−1は省略し、振動板501を構成する基板501−1は省略し、また、振動板501の下面側の構成も省略する。以下、図14を用いて、圧電型スピーカ500を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ500の各電極層の電極の配置について、図14を用いて説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2と電極c−3とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板501のフレーム部504の一方とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部504の一方の部分には、抵抗部507が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分に形成される。電極c−3は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、振動板501のフレーム部504の他方とに一体的に形成される。また、電極c−3において、フレーム部504の他方の部分には、抵抗部508が形成される。また、電極c−1の抵抗部507と電極c−2と電極c−3の抵抗部508とは、配線電極550によって、基板501−1表面で接続される。
次に、図14を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。また、電極c−2と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−3に対応する電極c−3の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
図15は、第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500の等価回路を示す図である。以下では、図14及び図15を用いて、圧電型スピーカ500の等価回路について説明する。なお、図15では、振動板501の下面側に対応する等価回路は省略している。図15に示すように、圧電型スピーカ500の等価回路は、コンデンサ511と抵抗507とを直列接続したRC回路と、コンデンサ512と、コンデンサ513と抵抗508とを直列接続したRC回路とを、並列接続した回路である。
以下では、図15の等価回路を、図14の各電極に対応付けて説明する。まず、図15のP1は、図14の配線電極550の点P1と対応する。図15の抵抗507は、図14の抵抗部507と対応する。図15のA1は、図14の電極c−1における抵抗部507の点A1と対応する。図15のコンデンサ511は、図14における、電極c−1の一部と、電極b−1と、電極a−1の一部とに対応する。より具体的には、図15のコンデンサ511のA1側の電極は、図14における、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。また、図15のコンデンサ511のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−1と重なる部分と対応する。
図15のA2は、図14の配線電極550の点A2と対応する。図15のコンデンサ512は、図14における、電極c−2と、電極b−2と、電極a−1の一部に対応する。より具体的には、図15のコンデンサ512のA2側の電極は、図14における、電極c−2と、電極b−1とに対応する。また、図15のコンデンサ512のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−2と重なる部分と対応する。
図15のA3は、図14の配線電極550の点A3と対応する。図15の抵抗508は、図14の抵抗部508と対応する。図15のA4は、図14の電極c−3における抵抗部508の点A4と対応する。図15のコンデンサ513は、図14における、電極c−3の一部と、電極b−3と、電極a−1の一部とに対応する。より具体的には、図15のコンデンサ513のA4側の電極は、図14における、電極c−3における電極b−3と重なる部分と、電極b−3とに対応する。また、図15のコンデンサ513のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−3と重なる部分と対応する。
以上に説明したように、本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ500によれば、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の効果に加えて、圧電素子の一部の領域(抵抗が直列接続された領域)に限って音圧特性を平坦化することができる。例えば、圧電素子の中心領域の分割電極に対しては抵抗を接続せず、圧電素子の周辺領域の分割電極に対しては抵抗を接続することによって、低周波数帯域の音については圧電素子全面が駆動し、一方、高周波数帯域の音については圧電素子の中心部分のみが駆動するようにできる。つまり、圧電型スピーカ500によれば、2ウェイスピーカを、一枚の圧電素子によって実現できる。
なお、圧電素子において分割する電極は任意形状にできるので、例えば、図16(A)に示した形状で電極を分割してもよいし、例えば、図16(B)に示した形状で電極を分割してもよい。このように、分割する電極の形状を適切に設定することによって、振動板の振動特性を調節できる。また、第2、第3、及び第6の実施形態においても、同様に、分割する電極の形状を適切に設定することによって、振動板の振動特性を調節できる。
また、以上では、分割した電極に抵抗を接続するか否かによって、振動特性を調節した。しかし、分割した電極に接続する抵抗の値を調節することによって、更に、適切に振動特性を調節してもよい。
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印可することを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第6の実施形態では、圧電型スピーカ600の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図17は、第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図17において、圧電素子602を構成する圧電材602−1は省略し、振動板601を構成する基板601−1は省略し、また、振動板601の下面側の構成も省略している。以下、図17を用いて、圧電型スピーカ600を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ600の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1と電極a−2と電極a−3とが形成される。電極a−1〜a−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板601のフレーム部604とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部604には、抵抗部607が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分とに、配線電極部分を介して一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−1に対応する電極c−2の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極a−3と電極b−2とは、電気的に接続される。また、電極a−2と電極c−2とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図18は、第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600の等価回路を示す図である。以下では、図17及び図18を用いて、圧電型スピーカ600の等価回路について説明する。なお、図18では、振動板601の下面側に対応する等価回路は省略している。図18に示すように、圧電型スピーカ600の等価回路は、コンデンサ611とコンデンサ612とコンデンサ613とを並列接続した回路に、抵抗607を直列に接続した回路である。
以下では、図18の等価回路を、図17の各電極に対応付けて説明する。まず、図18のP2は、図17の電極c−1における抵抗部607の点P2と対応する。図18の抵抗607は、図17の抵抗部607と対応する。図18のB2は、図17の電極c−1の点B2と対応する。図18のコンデンサ611は、図17における、電極c−1の一部と、電極b−2とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ611のB2側の電極は、図17における、電極c−1における電極b−2と重なる部分と、電極b−2とに対応する。また、図18のコンデンサ611のB1側の電極は、図17の電極a−2と対応する。図18のB1は、図17の電極a−2の点B1と対応する。図18のP1は、図17の電極c−2における配線電極部分の点P1と対応する。
図18のA1は、図17の電極a−1の点A1と対応する。図18のコンデンサ612は、図17における、電極c−2の一部と、電極b−1と、電極a−1とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ612のA1側の電極は、図17の電極a−1に対応する。また、図18のコンデンサ612のP1側の電極は、図17の電極b−1と、電極c−2における電極b−1と重なる部分とに対応する。
図18のA2は、図17の電極a−3の点A2と対応する。図18のコンデンサ613は、図17における、電極c−2の一部と、電極b−3と、電極a−3とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ613のA2側の電極は、図17の電極a−3に対応する。また、図18のコンデンサ613のP1側の電極は、図17の電極b−3と、電極c−2における電極b−3と重なる部分とに対応する。
以上に説明したように、本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印可することを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ600によれば、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の効果に加えて、振動板に生じる不要な振動モードを効果的に打ち消すことができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と比べて、圧電素子の電極を分割した点、及び、異なる接続形式で抵抗を接続した点で異なる。以下、この異なる点を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する点については原則として説明を省略する。
図19は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の一例の上面図及び断面図である。図19において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図である。図19に示すように、圧電型スピーカ700は、振動板701と、圧電素子702と、圧電素子703と、充填材709とを備える。ここで、図19において、説明の便宜のために、振動板701の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子703は図示していない。また、以下では、振動板701の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図19では、説明の便宜のために、振動板701と、圧電素子702とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板701と、圧電素子702とは接着されている。
圧電素子702は、圧電材702−1と、圧電材702−1の上面に形成された電極層aと、圧電材702−1の下面に形成された電極層bとを含む(図19(B)を参照)。
振動板701は、基板701−1と、基板701−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板701は、フレーム部704と、支持部705−1及び705−2と、振動部706とを含む(図19(B))。
充填材709は、フレーム部704、支持部705−1及び705−2及び振動部706の隙間に充填される。また、充填材709は、フレーム部704及び支持部705−1及び705−2の表面にも形成される。
図20は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図20において、圧電材702−1、基板701−1は省略し、また、振動板701の下面側の構成も省略している。以下、図20を用いて、圧電型スピーカ700を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ700の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3と電極b−4とが形成される。電極層bにおいて、電極b−1と電極b−2との間には抵抗部707−1が形成され、電極b−2と電極b−3との間には抵抗部708−1が形成される。電極b−4は、配線電極なので、電極b−1、電極b−2、電極b−3、抵抗部707−1及び抵抗部708−1とは、電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2と電極c−3と電極c−4とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板701の支持部705−1と、フレーム部704の一部とに一体的に形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分に形成される。電極c−3は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分に形成される。電極c−4は、X軸方向から視て電極b−4と重なる部分と、振動板701の支持部705−2と、フレーム部704の一部とに一体的に形成される。抵抗部707−2は、X軸方向から視て抵抗部707−1と重なる部分に形成される。抵抗部708−2は、X軸方向から視て抵抗部708−1と重なる部分に形成される。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。電極c−2と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。電極c−3と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。電極b−4に対応する電極c−4の部分と電極b−4とは接着されて電気的に接続される。また、抵抗部707−1と抵抗部707−2とは、接着されて電気的に接続される。同様に、抵抗部708−1と抵抗部708−2とは、接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−4とは、電気的に接続される。なお、この接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図21は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の等価回路を示す図である。以下では、図20及び図21を用いて、圧電型スピーカ700の等価回路について説明する。なお、図21では、振動板701の下面側に対応する等価回路は省略している。図21に示すように、圧電型スピーカ700の等価回路は、コンデンサ711とコンデンサ712とコンデンサ713とを並列接続し、コンデンサ711とコンデンサ712との接続端の一方に抵抗707を挿入し、また、コンデンサ712とコンデンサ713との接続端の一方に抵抗708を挿入した回路である。なお、この等価回路は、交流電源110に接続される。
以下では、図21の等価回路を、図20の各電極に対応付けて説明する。まず、図21のP1は、図20の電極c−1の点P1と対応する。図21のコンデンサ711は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−1と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ711のP1側の電極は、図20における、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。図21のコンデンサ711のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−1と重なる部分に対応する。図21の抵抗707は、図20の抵抗部707−1と抵抗部707−2とに対応する。図21のコンデンサ712は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−2と、電極c−2とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ712のP1側の電極は、図20の電極c−2と電極b−2とに対応する。図21のコンデンサ712のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−2と重なる部分に対応する。図21の抵抗708は、図20の抵抗部708−1と抵抗部708−2とに対応する。図21のコンデンサ713は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−3と、電極c−3とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ713のP1側の電極は、図20の電極c−3と電極b−3とに対応する。図21のコンデンサ713のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−3と重なる部分に対応する。
以上に説明したように、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、図21を用いて説明した多段フィルタを構成する。このため、圧電型スピーカ700によれば、電極層の中心側に配置される電極ほど、高周波数帯域の音圧を抑制できる。この結果として、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、再生する周波数領域に応じて圧電素子の駆動領域の異なる圧電型スピーカを実現できる。
なお、第7の実施形態において、電極及び抵抗部は、同心円状に分割された電極層の領域に形成されるものとした。しかし、電極及び抵抗部の形状は、これには限られず、例えば、変形した環状であってもよい。また、電極及び抵抗部は、環状の部分の一部が分断された形状であってもよい。
また、第7の実施形態では、最外郭の電極が外部端子に接続される場合を、一例に挙げた。しかし、内郭の電極が外部端子に接続されてもよい。具体的には、外郭の電極形状を環状の一部が分断された形状として、当該分断部分に、外部端子に接続される内郭の電極を延長した配線部分を通して外部端子に接続してもよい。この場合、外郭の電極ほど、高周波数帯域の音圧を抑制できることとなる。
また、以上の実施形態では、説明の便宜のために、各電極を+電極部と−電極部とに区別して説明した(図1等を参照)。しかしながら、既に説明したように、本発明の圧電型スピーカは、交流電源を用いて駆動するので、この区別は形式的なものであって、+と−とが反対であってもよい。
また、以上の実施形態において、抵抗部は、電極部よりも電気抵抗値が高い材料で形成されてもよいし、電極部と同一材料で形成されてもよい。また、抵抗部の層厚は、電極部の層厚よりも薄く形成してもよい。また、抵抗部は、細線形状の抵抗によって形成されてもよい。
また、基板と電極層とは、接着剤によって接着されてもよい。同様に、圧電材と電極層とは、接着剤によって接着されてもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子が振動板の両面にそれぞれ装着されている場合について、説明した。しかし、圧電素子は振動板の片面のみに装着されてもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子は両面に電極層を持つこととした。しかし、圧電素子の電極層のうち振動板側の電極層は、振動板表面の電極層と共用してもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子を構成する電極と抵抗部とを用いてRC回路を構成する例を示した。ここで、抵抗部の抵抗値を調節することによって、RC回路の電気的特性を設定して、イコライザ特性を実現できる。更に、振動板の電極層に薄膜コンデンサを一体的に形成することによって、RC回路の特性を調節してもよい。また、更に、振動板の電極層にコイルを一体的に形成することによって、LRC回路を構成してもよい。この様に、振動板の電極層に、電気回路素子を更に形成することによって、所望のイコライザ特性を、スピーカ単体で、容易に実現できる。
また、第1〜第3の実施形態では、抵抗部がフレーム部に形成される場合を例に挙げて説明した。しかし、第1〜第3の実施形態において、抵抗部は、支持部に形成されてもよいし、支持部とフレーム部の両方に形成されてもよい。
また、以上の実施形態において、振動板の表面(主面)に形成される電極(抵抗部も含む)は、プリント配線によって形成されるのが好ましい。プリント配線の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷する方法、振動板に固着して形成された電極層をエッチングする方法、金属板をエッチングした後に振動板に貼り付ける方法がある。また、圧電素子を構成する電極を、表面電極と呼んでもよい。
また、以上の実施形態において、抵抗部は、例えば、合金、樹脂、及び金属と樹脂との複合材料のいずれの材料で形成されてもよい。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、以上に説明した本発明の圧電型スピーカの適用例について、説明する。
[第1の適用例]
図22は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の一例である。図22において、携帯電話端末の筐体36、ディスプレイ37、本発明の圧電型スピーカ38、音孔39が示されている。なお、図22には、本発明の圧電型スピーカ38の拡大図(略図)を示している。
図22に示すように、本発明の圧電型スピーカ38は、ディスプレイ37の背面に設置される。圧電型スピーカ38から発生した音は、音孔39を通じて外部空間に放射される。ここで、第1〜第7の実施形態で説明したように、本発明の圧電型スピーカ38は、部品点数を増やすことなく省スペース化及び高音質化を実現できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた携帯電話端末の設計が容易になる。
[第2の適用例]
図23は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の他の例である。図23において、携帯電話端末の筐体43、サブディスプレイ44、本発明の圧電型スピーカ45、音孔46が示されている。
図23に示すように、本発明の圧電型スピーカ45と、サブディスプレイ44とは、共通の基板に形成できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた携帯電話端末の設計が容易になり、更に、製造コストの抑制も可能となる。
[第3の適用例]
図24は、本発明の圧電型スピーカを適用した薄型テレビの外観図の一例である。図24において、筐体51、ディスプレイ52、本発明の圧電型スピーカ53が示されている。図24に示すように、薄型テレビの筐体51は、一般に、左右方向の両端で中央部よりも厚みが徐々に薄くなる形状を有しており、スピーカの搭載領域は大変小さい。ここで、第1〜第7の実施形態で説明したように、本発明の圧電型スピーカ53は、部品点数を増やすことなく省スペース化及び高音質化を実現できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた薄型テレビの設計が容易になる。
なお、以上の実施形態では、本発明を圧電型変換器の1つである圧電型スピーカに適用した例を説明した。しかし、本発明は、他の圧電型変換器に適用してもよく、例えば、加振器、センサ、マイクに適用してもよい。
本発明は、圧電型音響変換器等に利用可能であり、特に、省スペース化及び高音質化を両立したい場合等に有用である。
本発明は、圧電型音響変換器に関し、より特定的には、省スペース化及び高音質化を両立した圧電型音響変換器に関する。
近年、携帯電話を始めとしたモバイル機器の薄型化及び小型化の傾向が加速しており、また、AV機器等に搭載される各部品の薄型化及び小型化のニーズも高まっている。
携帯電話等における、着信音や音楽信号を再生するスピーカの駆動方式として、従来は、動電型が用いられてきた。しかし、動電型を用いた場合、その構造上スピーカの薄型化は本質的に困難であり、薄型化を実施した場合には低域音圧が低下し、また、磁気回路を用いるために磁気漏洩対策が必要となる等の課題があった。
これに対して、電化製品や情報機器の音声再生に広く用いられてきた圧電型スピーカは、薄型化に適した駆動方式として注目されており、携帯電話や小型情報端末への搭載例も増加傾向にある。
従来、圧電型スピーカは、圧電材を電気音響変換素子に用いた音響変換器として知られており、小型機器の音響出力手段として使用されている(例えば、特許文献1参照)。
圧電型スピーカは、圧電素子を金属板等に接着した構成である。このことから、圧電型スピーカは、磁石及びボイスコイルを必要とする動電型スピーカと比較して薄型化が容易であり、また、磁気漏洩対策を必要としないというメリットを持つ。
ここで、圧電型スピーカを音声再生に用いる際には、以下の性質に留意が必要である。
第一に、動電型スピーカでは振動板速度が電圧に比例するのに対して、圧電型スピーカでは振動板変位が電圧に概ね比例する。このため、圧電型スピーカにおいて、定電圧駆動時の音圧特性は、周波数の増加に伴って音圧レベルも増加する特性(右上がり特性)となる。この音圧特性は、一般にスピーカに求められる平坦な周波数特性とは、異なるものである。
第二に、動電型スピーカでは電気インピーダンスは周波数によらずほぼ一定値と見なせるのに対して、圧電型スピーカでは、圧電素子部分がコンデンサとして動作するため電気インピーダンスは周波数に反比例して低下する。このことから、圧電型スピーカでは、高周波帯域において過電流によるショートの危険が生じる。
上記した性質に対応するため、圧電型スピーカの設計の際には、通常、圧電素子に電気抵抗を直列接続してRC回路を形成することによって、高周波数帯域では電気抵抗部分に電流が流れるようにする。このことによって、コンデンサでもある圧電スピーカへの高周波数帯域の入力を抑え、所望の音圧特性や電気特性を得ることができる。
図25は、バイモルフ型圧電スピーカにおいて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合の高周波数帯域の音圧抑制効果を示す測定データ図である。なお、バイモルフ型圧電スピーカの片面あたりの静電容量は210nFであり、圧電素子に直列接続される電気抵抗は220Ωである。図25から解るように、圧電素子単体の場合(電気抵抗なしの場合)に比べて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合(電気抵抗ありの場合)の方が、高周波数帯域において電気インピーダンスが上昇し、音圧特性が平坦化される。
また、圧電型スピーカは、温度変化の激しい使用条件において、圧電材の焦電効果により静電容量が低下して性能劣化を起こす。これを避けるために、圧電型スピーカに電気抵抗を並列接続する従来技術がある(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−230193号公報
特開2001−275190号公報
しかしながら、上記した従来技術のように、新たに電気抵抗を接続すると、通常、部品点数の増加を招き製造コストの増大につながる。また、圧電型スピーカのメリットの一つである省スペース性が損なわれる。以下、具体的に説明する。
図26は、特許文献1に記載された従来の圧電型スピーカ1000を示す図である。図26に示すように、従来の圧電型スピーカ1000は、フレーム1010の外部に、RC回路を形成するための基板1020を備えている。この方法によれば、圧電型スピーカの薄型化のメリットは損なわれない。しかしながら、この方法では、圧電型スピーカのフレーム1010の外部に、基板1020を形成するためのスペースを必要とする。
また、一般に、小型のスピーカでは、高音質で低音の再生を行うことは困難である。また、一般に、圧電型スピーカは、駆動原理上、振動板の振動モードに起因して周波数特性においてピーク/ディップが生じ易い。この様に、圧電型スピーカにおいて高音質化を実現するためには、問題がある。
それ故に、本発明の目的は、部品点数を増やすことなく省スペース化と高音質化とを両立した圧電型スピーカを提供することである。
本発明は、印加される電圧に応じて変形する圧電材を用いて音響を再生する圧電型音響変換器に向けられている。そして、上記目的を達成させるために、本発明の圧電型音響変換器は、2つの表面電極によって挟まれた圧電材から成る圧電素子と、少なくとも一方の主面にプリント配線が施され、少なくとも一方の主面に圧電素子が接着される振動板とを備え、振動板は、フレーム部と、圧電素子が接着されて振動する振動部と、フレーム部と振動部とを接続して振動部を支持する、少なくとも1つの支持部とを含み、フレーム部と少なくとも1つの支持部のうち少なくとも何れかに、プリント配線と一体的に形成され、圧電素子と共同して直列RC回路を構成する、少なくとも1つの電気抵抗を有する。
また、好ましくは、圧電素子は、2つの表面電極の少なくとも一方が分割されることで、並列接続された複数のコンデンサとして機能し、少なくとも1つの電気抵抗は、複数のコンデンサの少なくとも1つと共同して少なくとも1つの直列RC回路を構成する。
また、好ましくは、圧電素子は、2つの表面電極が分割されることで、並列接続された複数のコンデンサとして機能し、圧電素子が接着された振動部固有の振動モードの少なくとも1つは、複数のコンデンサの少なくとも1つに逆極性の電圧が供給されることで打ち消される。
また、好ましくは、少なくとも1つの直列RC回路は、電気的イコライザを構成する。
また、好ましくは、少なくとも1つの直列RC回路は、振動部の各領域において再生される音響の周波数帯域を互いに異ならせる特性に設定される。
また、圧電材を挟む2つの表面電極は、電極の無い部分を有してもよい。
また、好ましくは、フレーム部と振動部との隙間を塞ぐ柔軟性の高い充填材を、更に備える。
また、好ましくは、少なくとも1つの電気抵抗は、合金、樹脂、及び金属と樹脂との複合材料のいずれかで形成される。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、放熱性の高い材料で覆われてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、断熱性の高い材料上に形成されてもよい。
また、好ましくは、圧電材は、単結晶圧電体、セラミック圧電体、高分子圧電体のいずれかで成る。
また、プリント配線には、直列RC回路の特性を調節する薄膜コンデンサが、更に、一体的に形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線よりも電気抵抗値が高い材料で形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の形状によって形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の一部を細線形状にして形成されてもよい。
また、少なくとも1つの電気抵抗は、プリント配線の層厚を薄くして形成されてもよい。
上述した本発明によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。更に、本発明によれば、振動部を支持部で支持することによって、振動部が低周波数で振動し易くする。このことによって、低音の再生を高音質で行うことが可能となる。この結果として、本発明によれば、部品点数を増やすことなく省スペース化と高音質化とを両立した圧電型スピーカを提供することが可能となる。
本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の一例の上面図及び断面図
本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の等価回路を示す図
本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の一例の上面図及び断面図
本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の等価回路を示す図
本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300の等価回路を示す図
本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の一例の上面図及び断面図
本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の等価回路を示す図
本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の抵抗部の拡大図
本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400において、無電極部分を設けた図
本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500の等価回路を示す図
本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500において、分割する電極の形状を説明する図
本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600の等価回路を示す図
本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の一例の上面図及び断面図
本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700を構成する各電極層について説明するための斜視図
本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の等価回路を示す図
本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の一例
本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の他の例
本発明の圧電型スピーカを適用した薄型テレビの外観図の一例
バイモルフ型圧電スピーカにおいて、圧電素子に電気抵抗を直列接続した場合の高周波数帯域の音圧抑制効果を示す測定データ図
従来の圧電型スピーカ1000を示す図
本発明の各実施形態に係る圧電型スピーカについて具体的に説明する前に、各実施形態において説明する以下の構成要素の特徴について、一括して説明する。
圧電材は、印加される電圧に応じて変形する圧電性材料であって、例えば、単結晶圧電体、セラミック圧電体、高分子圧電体である。電極層は、金属等の導電性材料から成り、例えば、銅、アルミ、チタン、及び銀等のいずれかを含む薄膜材料や、それらの合金薄膜材料から成る。基板は、汎用プラスチック素材(ポリカーボネート、ポリアリレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート等)、ゴム系高分子素材(SBR、NBR及びアクリロニトリル等)、及び液晶ポリマー等の絶縁性を有する材料である。
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る圧電型スピーカについて具体的に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の一例の上面図及び断面図である。図1において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図であり、(C)はA−A’断面の図である。図1(A)〜(C)に示すように、圧電型スピーカ100は、振動板101と、圧電素子102と、圧電素子103と、充填材109とを備える。なお、図1(B)では、説明の便宜のために、振動板101と、圧電素子102及び圧電素子103とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板101と、圧電素子102及び圧電素子103とは、それぞれ接着されている。
圧電素子102は、圧電材102−1と、圧電材102−1の上面に形成された電極層aと、圧電材102−1の下面に形成された電極層bとを含む(図1(B)を参照)。同様に、圧電素子103は、圧電材103−1と、圧電材103−1の上面に形成された電極層eと、圧電材103−1の下面に形成された電極層fとを含む。圧電素子102は、電極層aと電極層bとの間に電界を生じさせることによって、圧電材102−1を変形させて振動を生じる。同様に、圧電素子103は、電極層eと電極層fとの間に電界を生じさせることによって、圧電材103−1を変形させて振動を生じる。
振動板101は、基板101−1と、基板101−1の上面に形成された電極層cと、基板101−1の下面に形成された電極層dとを含む(図1(B)を参照)。機能的に分類すると、振動板101は、フレーム部104と、支持部105−1と、支持部105−2と、振動部106とを含む(図1(A)及び(B)を参照)。フレーム部104は、圧電型スピーカ100を実装する際に、相手装置に固定される部分である。フレーム部104は、例えば、振動板101の外周部分に帯状に位置する。振動部106は、その上面に圧電素子102が接着され、また、その下面に圧電素子103が接着されることによって振動して、音を発生する。このことから、基板101−1を上面から視た場合において、振動部106の形状及び大きさは、圧電素子102及び圧電素子103と同じであることが好ましい。支持部105−1及び支持部105−2は、フレーム部104と振動部106とをつなぎ合わせることによって、振動部106を支持する。また、支持部105−1及び支持部105−2は、その上面及び下面に形成された電極層によって、フレーム部104と振動部106とを電気的に接続する。なお、電極層の配線設計上必要ない場合には、支持部105−1及び支持部105−2には、電極層が形成されない。振動板101において、フレーム部104、支持部105−1、支持部105−2及び振動部106は、電極層を形成された基板材料を打ち抜き加工することによって、形成される。
充填材109は、フレーム部104、支持部105−1、支持部105−2及び振動部106の隙間に充填される。また、充填材109は、フレーム部104、支持部105−1及び支持部105−2の表面にも形成される(図1(A)〜(C)を参照)。充填材109は、ラミネート材料に高熱伝導性材料を添加した材料、又はラミネート材料と高熱伝導性材料とを積層した材料に代表される柔軟性が高く熱伝導性が高い材料から成る。充填材109を用いて振動板101の隙間を埋めることによって、振動板101の背面で発生した音(逆位相音)が振動板101の隙間から振動板101の前面に伝播して低周波数領域の音圧が低下することを防止できる。なお、ラミネート材料とは、具体的には、汎用プラスチック素材(ポリエチレンテレフタレート等)、ゴム系高分子素材(SBR、NBR及びアクリロニトリル等)等である。また、高熱伝導性材料とは、金属(銅、アルミニウム等)、シリカ等である。ここで、充填材109は、電気的絶縁特性を有する必要がある。従って、充填材109がラミネート材料と金属とを積層した材料から成る場合には、例えば、金属の層は、充填材109の内部に形成される。また、充填材109がラミネート材料に金属を添加した材料から成る場合には、例えば、以下の方法をとることが好ましい。第1の方法としては、添加する金属の粒子表面を予め絶縁材料(シリカ、フッ素樹脂等)によってコーティングする方法である。第2の方法としては、ラミネート材料として、添加する金属の粒子表面に対して液化状態時の濡れ性が高い材料を用いる方法である。第1及び第2の方法によれば、添加される金属の粒子相互が隔絶され、また、添加される金属の粒子が充填材109の表面に露出することを防止できる。第3の方法としては、振動板101の電極層と充填材109との間に、絶縁材料から成る薄膜層を設ける方法である。第3の方法によれば、添加される金属が充填材109の表面に露出することを防止できる。以上の方法によって、充填材109は、金属を含む場合であっても、電気的絶縁特性を有することができる。なお、後に説明する第2の実施形態以後の実施形態においても、充填材は同様の特性を有する。
なお、図1に示すように、各電極層における、プラス側電極部分(以下、+電極部という)、マイナス側電極部分(以下、−電極部という)、及び電気抵抗部分(以下、抵抗部という)は、それぞれ、異なる模様で図示している。
図2は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100を構成する各電極層について説明するための斜視図である。なお、図2においても、各電極層における、+電極部、−電極部及び抵抗部は、図1と同様の模様で図示している。また、図2では、説明の便宜のために、圧電材102−1、圧電材103−1及び基板101−1は省略している。以下、図1及び図2を用いて、圧電型スピーカ100を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ100の各電極層の電極の配置について、図2及び図1(B)を用いて説明する。電極層aの全面には、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2とが形成される。電極b−2は、電極層bのY軸方向の端部に沿って細い帯状に形成される。電極b−1は、電極b−2と隙間を保ち、電極層bの残りの面に形成される。電極b−1と電極b−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板101の支持部105−1と、フレーム部104の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部104の一部には、抵抗部107が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板101の支持部105−2と、フレーム部104の一部とに一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに電気的に絶縁されている。
電極層dには、電極層cに形成された電極(電極c−1及び電極c−2)を、Z軸を回転軸として裏返した形状で、電極d−1及び電極d−2が形成される。従って、電極d−1は、Z軸を回転軸として電極c−2を裏返した形状であり、電極d−2は、Z軸を回転軸として電極c−1を裏返した形状である。また、電極d−1と電極d−2とは、互いに電気的に絶縁されている。同様に、電極層eには、電極層bに形成された電極(電極b−1及び電極b−2)を、Z軸を回転軸として裏返した形状で、電極e−1及び電極e−2が形成される。従って、電極e−1は、Z軸を回転軸として電極b−2を裏返した形状であり、電極e−2は、Z軸を回転軸として電極b−1を裏返した形状である。また、電極e−1と電極e−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層fの全面には、電極f−1が形成される。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極c−1の振動部106上面に形成される部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続され、また、電極c−2の振動部106上面に形成される部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極層eと電極層dとは接着されているので、電極d−1の振動部106下面に形成される部分と電極e−1とは接着されて電気的に接続され、また、電極d−2の振動部106下面に形成される部分と電極e−2とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極f−1と電極e−1とは、電気的に接続される。また、電極c−1におけるフレーム部104上面の点P2と、電極d−1におけるフレーム部104下面の点P2とは、電気的に接続される。同様に、電極c−2におけるフレーム部104上面の点P1と、電極d−2におけるフレーム部104下面の点P1とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。例えば、図1(B)においては、圧電材102−1及び圧電材103−1の側面に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図3は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の等価回路を示す図である。以下では、図2及び図3を用いて、圧電型スピーカ100の等価回路について説明する。図3に示すように、圧電型スピーカ100の等価回路は、抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路とを備える。抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路の一端A3と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路の一端B3とは、P2で接続される。抵抗107とコンデンサ111とを直列接続したRC回路の他端A1と、コンデンサ112と抵抗108とを直列接続したRC回路の他端B1とは、P1で接続される。なお、P1及びP2は、それぞれ、交流電源110に接続される。
以下では、図3の等価回路を、図2の各電極に対応付けて説明する。まず、図3のP2は、図2の電極c−1及び電極d−1の点P2と対応する。なお、図2の点P2は2つ存在するが、この2つの点P2は互いに接続されているので、図3の回路上では1つのP2とみなしている。図3のA3は、図2の電極c−1の点A3と対応する。図3の抵抗107は、図2の抵抗部107と対応する。図3のA2は、図2の電極c−1の点A2と対応する。図3のコンデンサ111は、図2の電極b−1、電極c−1の一部、及び電極a−1と対応する。より具体的には、図3のコンデンサ111のA2側の電極は、図2の電極b−1、及び電極c−1における電極b−1と重なる部分に対応する。また、図3のコンデンサ111のA1側の電極は、図2の電極a−1に対応する。図3のA1は、図2の電極c−2の点A1と対応する。図3のP1は、図2の電極c−2及び電極d−2の点P1と対応する。なお、図2の点P1は2つ存在するが、この2つの点P1は互いに接続されているので、図3の回路上では1つのP1とみなしている。
図3のB1は、図2の電極d−1の点B1と対応する。図3の抵抗108は、図2の抵抗部108と対応する。図3のB2は、図2の電極d−2の点B2と対応する。図3のコンデンサ112は、図2の電極e−2、電極d−2の一部、及び電極f−1と対応する。より具体的には、図3のコンデンサ112のB2側の電極は、図2の電極e−2、及び電極d−2における電極e−2と重なる部分に対応する。また、図3のコンデンサ112のB3側の電極は、図2の電極f−1に対応する。図3のB3は、図2の電極d−1の点B3と対応する。
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。更に、圧電型スピーカ100によれば、振動部を支持部で支持することによって、振動部が低周波数で振動し易くする。このことによって、低音の再生を高音質で行うことが可能となる。
また、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、電極を印刷するために用いる印刷パターンを、スピーカの表面の印刷と裏面の印刷とで共用できる。具体的には、既に説明したように、電極層dの電極の形状は、電極層cの電極の形状を裏返した形状であるので(図2を参照)、電極層dの電極と電極層cの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。同様に、電極層bの電極と電極層eの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。また、同様に、電極層aの電極と電極層fの電極とは、同一の印刷パターンを用いて形成できる。この結果として、製造コストの削減が可能となる。
また、本発明の第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100によれば、充填材109は、フレーム部104及び支持部105の表面にも形成される(図1(A)〜(C)を参照)。ここで、既に説明したように、充填材109は熱伝導性が高い材料から成るので、フレーム部104表面に形成された抵抗部107及び108から発生する熱は、効果的に放熱される。この結果として、本発明の圧電型スピーカ100によれば、圧電材102−1及び103−1の焦電効果により静電容量が低下して性能劣化が生じることを回避できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する特徴については原則として説明を省略する。
図4は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の一例の上面図及び断面図である。図4において、(A)は上面図であり、(B)はO1−O1’断面の図であり、(C)はO2−O2’断面の図であり、(D)はO3−O3’断面の図である。図4(A)〜(D)に示すように、圧電型スピーカ200は、振動板201と、圧電素子202と、圧電素子203と、充填材209とを備える。ここで、図4(A)〜(D)において、説明の便宜のために、振動板201の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子203は図示していない。また、以下では、振動板201の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図4(B)〜(D)では、説明の便宜のために、振動板201と、圧電素子202とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板201と、圧電素子202とは接着されている。
圧電素子202は、圧電材202−1と、圧電材202−1の上面に形成された電極層aと、圧電材202−1の下面に形成された電極層bとを含む(図4(B)〜(D)を参照)。
振動板201は、基板201−1と、基板201−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板201は、フレーム部204と、支持部205−1〜205−4と、振動部206とを含む(図4(B)〜(D)を参照)。
充填材209は、フレーム部204、支持部205−1〜205−4及び振動部206の隙間に充填される。また、充填材209は、フレーム部204及び支持部205−1〜205−4の表面にも形成される(図4(A)〜(D)を参照)。
図5は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図5において、圧電材202−1、基板201−1は省略し、また、振動板201の下面側の構成も省略する。以下、図5を用いて、圧電型スピーカ200を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ200の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1及び電極a−2が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3と電極b−4とが形成される。電極b−1〜b−4は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板201の支持部205−1及び205−3と、フレーム部204の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部204の一部には、抵抗部208が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−4と重なる部分と、振動板201の支持部205−2及び205−4と、フレーム部204の一部とに一体的に形成される。また、電極c−2において、フレーム部204の一部には、抵抗部207が形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、図5を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−4に対応する電極c−4の部分と電極b−4とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−3とは、電気的に接続される。同様に、電極a−2と電極b−4とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。図4(D)においては、圧電材202−1の側面の一部に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図6は、第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200の等価回路を示す図である。以下では、図5及び図6を用いて、圧電型スピーカ200の等価回路について説明する。なお、図6では、振動板201の下面側に対応する等価回路は省略している。図6に示すように、圧電型スピーカ200の等価回路は、抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路と、コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路と、コンデンサ211とを備える。コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路のコンデンサ213側の端部と、コンデンサ211の一端とは、A4で接続される。また、コンデンサ213と抵抗208とを直列接続したRC回路の抵抗208側の端部と、コンデンサ211の他端とは、A1を介してP1で接続される。抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路のコンデンサ212側の端部は、A1に接続される。また、抵抗207とコンデンサ212とを直列接続したRC回路の抵抗207側の端部は、P2を介してA4に接続される。なお、P1及びP2は、それぞれ、交流電源110に接続される。
以下では、図6の等価回路を、図5の各電極に対応付けて説明する。まず、図6のP2は、図5の電極c−2の点P2と対応する。図6のA4は、図5の電極c−2の点A4と対応する。図6のコンデンサ211は、図5における、電極a−2の一部と、電極b−1の一部と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ211のA4側の電極は、図5の電極a−2における電極b−1と重なる部分に対応する。また、図6のコンデンサ211のP1側の電極は、図5において、電極b−1における電極a−2と重なる部分と、電極c−1における電極a−2と重なる部分とに対応する。
図6のコンデンサ213は、図5における、電極a−2の一部と、電極b−2と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ213のA4側の電極は、図5の電極a−2における電極b−2と重なる部分に対応する。また、図6のコンデンサ213のA2側の電極は、図5において、電極b−2と、電極c−1における電極b−2と重なる部分とに対応する。図6のA2は、図5の電極c−1の点A2と対応する。図6の抵抗208は、図5の抵抗部208と対応する。図6のP1は、図5の電極c−2の点P1と対応する。
図6のA1は、図5の電極c−2の点A1と対応する。図6のコンデンサ212は、図5における、電極a−1と、電極b−1の一部と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図6のコンデンサ212のA1側の電極は、図5において、電極c−1における電極a−1と重なる部分と、電極b−1における電極a−1と重なる部分とに対応する。また、図6のコンデンサ212のA3側の電極は、図5の電極a−1と対応する。図6のA3は、図5の電極c−2の点A3と対応する。図6の抵抗207は、図5の抵抗部207と対応する。
以上に説明したように、本発明の第2の実施形態に係る圧電型スピーカ200は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ200によれば、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の効果に加えて、圧電素子の一部の領域(抵抗が直列接続された領域)に限って音圧特性を平坦化できる。例えば、圧電素子の中心領域の分割電極に対しては抵抗を接続せず、圧電素子の周辺領域の分割電極に対しては抵抗を接続することによって、低周波数帯域の音については圧電素子全面が駆動し、一方、高周波数帯域の音については圧電素子の中心部分のみが駆動するようにできる。つまり、圧電型スピーカ200によれば、2ウェイスピーカを、一枚の圧電素子によって実現することができる。
また、以上では、分割した電極に抵抗を接続するか否かによって、音圧特性を調節した。しかし、分割した電極に接続する抵抗の値を調節することによって、更に、適切に音圧特性を調節してもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印加することを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第3の実施形態では、圧電型スピーカ300の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図7は、第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図7において、圧電素子302を構成する圧電材302−1は省略し、振動板301を構成する基板301−1は省略し、また、振動板301の下面側の構成も省略している。以下、図7を用いて、圧電型スピーカ300を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ300の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1と電極a−2と電極a−3とが形成される。電極a−1〜a−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板301の支持部305−2と、振動板301のフレーム部304の一部とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部304の一部には、抵抗部307が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、振動板301の支持部305−1及び305−4と、フレーム部304の一部とに一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−1に対応する電極c−2の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極a−3と電極b−2とは、電気的に接続される。また、電極a−2と電極c−2とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図8は、第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300の等価回路を示す図である。以下では、図7及び図8を用いて、圧電型スピーカ300の等価回路について説明する。なお、図8では、振動板301の下面側に対応する等価回路は省略している。図8に示すように、圧電型スピーカ300の等価回路は、コンデンサ311とコンデンサ312とコンデンサ313とを並列接続した回路に、抵抗307を直列接続した回路である。
以下では、図8の等価回路を、図7の各電極に対応付けて説明する。まず、図8のP2は、図7の電極c−1の点P2と対応する。図8の抵抗307は、図7の抵抗部307と対応する。図8のB2は、図7の電極c−1の点B2と対応する。図8のコンデンサ311は、図7における、電極c−1の一部と、電極b−2と、電極a−2に対応する。より具体的には、図8のコンデンサ311のB2側の電極は、図7における、電極c−1における電極b−2と重なる部分と、電極b−2とに対応する。また、図8のコンデンサ311のB1側の電極は、図7の電極a−2と対応する。図8のB1は、図7の電極a−2の点B1と対応する。図8のP1は、図7の電極c−2の点P1と対応する。
図8のA1は、図7の電極a−1の点A1と対応する。図8のコンデンサ312は、図7における、電極c−2の一部と、電極b−1と、電極a−1とに対応する。より具体的には、図8のコンデンサ312のA1側の電極は、図7の電極a−1に対応する。また、図8のコンデンサ312のP1側の電極は、図7の電極b−1と、電極c−2における電極b−1と重なる部分とに対応する。
図8のA2は、図7の電極a−3の点A2と対応する。図8のコンデンサ313は、図7における、電極c−2の一部と、電極b−3と、電極a−3とに対応する。より具体的には、図8のコンデンサ313のA2側の電極は、図7の電極a−3に対応する。また、図8のコンデンサ313のP1側の電極は、図7における、電極b−3と、電極c−2における電極b−3と重なる部分とに対応する。
以上に説明したように、本発明の第3の実施形態に係る圧電型スピーカ300は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印加することを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ300によれば、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100の効果に加えて、振動板に生じる不要な振動モードを効果的に打ち消すことができる。
なお、第1〜第3の実施形態では、説明の便宜のために、振動部を支持する支持部の数を特定して説明した。しかしながら、支持部の数は、説明に用いた数には限られない。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と比べて、主に、振動板が支持部を有さず、また、充填材を有さない点で異なる。以下では、この異なる点を中心として説明を行う。
図9は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の一例の上面図及び断面図である。図9において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図である。図9(A)及び(B)に示すように、圧電型スピーカ400は、振動板401と、圧電素子402と、圧電素子403とを備える。ここで、図4(A)及び(B)において、説明の便宜のために、振動板401の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子403は図示していない。また、以下では、振動板401の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図9(B)では、説明の便宜のために、振動板401と、圧電素子402とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板401と、圧電素子402とは接着されている。
圧電素子402は、圧電材402−1と、圧電材402−1の上面に形成された電極層aと、圧電材402−1の下面に形成された電極層bとを含む(図9(B)を参照)。
振動板401は、基板401−1と、基板401−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板401は、フレーム部404と、振動部406とを含む(図9(B)を参照)。
図10は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図10において、圧電材402−1、基板401−1は省略し、また、振動板401の下面側の構成も省略している。以下、図10を用いて、圧電型スピーカ400を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ400の各電極層の電極の配置について、図10を用いて説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2とが形成される。電極b−1とb−2とは、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、フレーム部404の一方とに一体的に形成される。ここで、電極c−1において、フレーム部404の一方には、抵抗部407が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、フレーム部404の他方とに一体的に形成される。ここで、電極c−2において、フレーム部404の他方には、抵抗部408が形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。また、図9において、抵抗部407及び408は、一例として、細線形状の電気抵抗である。
次に、図10を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−2に対応する電極c−2の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。電極a−1と電極b−2とを接続する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。図9(B)においては、圧電材402−1の側面に配線を形成する外部配線加工を施して、接続を実現している。
図11は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の等価回路を示す図である。以下では、図10及び図11を用いて、圧電型スピーカ400の等価回路について説明する。なお、図11では、振動板401の下面側に対応する等価回路は省略している。図11に示すように、圧電型スピーカ400の等価回路は、コンデンサ411の一端に抵抗407を直列接続し、コンデンサ411の他端に抵抗408を直列接続した回路である。
以下では、図11の等価回路を、図10の各電極に対応付けて説明する。まず、図11のP2は、図10の電極c−1における抵抗部407の点P2と対応する。図11の抵抗407は、図10の電極c−1における抵抗部407と対応する。図11のA2は、図10の電極c−1の点A2と対応する。図11のコンデンサ411は、図10における、電極a−1の一部と、電極b−1と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図11のコンデンサ411のA2側の電極は、図10において、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。また、図11のコンデンサ411のA1側の電極は、図10において、電極a−1における電極b−1と重なる部分と対応する。図11のA1は、図10の電極c−2の点A1と対応する。図11の抵抗408は、図10の電極c−2における抵抗部408と対応する。図11のP1は、図10の電極c−2における抵抗部408の点P1と対応する。
以上に説明したように、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400によれば、コンデンサの特性を有する圧電素子に直列接続される抵抗は、振動板表面に形成される電極の一部分に印刷技術等を用いて一体的に形成される。このことによって、部品点数を増やすことなく音圧特性を平坦化でき、併せて、省スペース化を実現できる。
また、本発明の第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400によれば、第1の実施形態において説明した理由によって、電極を印刷するために用いる印刷パターンを、スピーカの表面の印刷と裏面の印刷とで共用できる。この結果として、製造コストの削減が可能となる。
なお、図12に示すように、抵抗部408(407)と基板401−1との間に、断熱材430を設け、また、抵抗部408(407)の上面に放熱材440を設けてもよい。このことによって、抵抗部408(407)の発熱に起因する振動板401の変形及び振動特性の変化を効果的に抑制できる。なお、他の実施形態においても、同様に、断熱材又は放熱材を設けることによって、同様の効果を得ることができる。
また、図13に示すように、電極の内部領域に、電極が無い部分(無電極部分)を設けてもよい。このことによって、電極面積を低減して、消費電力を抑制できる。また、無電極部分に挟まれた圧電材は自由振動するので、無電極部分によって音質を調節できる。また、無電極部分に絶縁材料を配置することによって付加質量を振動板に与えて、振動板の共振特性を調節できる。また、無電極部分に振動減衰特性の高い材料を配置することによっても、振動板の共振特性を調節できる。なお、他の実施形態においても、同様に、無電極部分を設ける等することによって、同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第5の実施形態では、圧電型スピーカ500の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図14は、第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図14において、圧電素子502を構成する圧電材502−1は省略し、振動板501を構成する基板501−1は省略し、また、振動板501の下面側の構成も省略する。以下、図14を用いて、圧電型スピーカ500を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ500の各電極層の電極の配置について、図14を用いて説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2と電極c−3とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板501のフレーム部504の一方とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部504の一方の部分には、抵抗部507が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分に形成される。電極c−3は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分と、振動板501のフレーム部504の他方とに一体的に形成される。また、電極c−3において、フレーム部504の他方の部分には、抵抗部508が形成される。また、電極c−1の抵抗部507と電極c−2と電極c−3の抵抗部508とは、配線電極550によって、基板501−1表面で接続される。
次に、図14を用いて、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。また、電極c−2と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−3に対応する電極c−3の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
図15は、第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500の等価回路を示す図である。以下では、図14及び図15を用いて、圧電型スピーカ500の等価回路について説明する。なお、図15では、振動板501の下面側に対応する等価回路は省略している。図15に示すように、圧電型スピーカ500の等価回路は、コンデンサ511と抵抗507とを直列接続したRC回路と、コンデンサ512と、コンデンサ513と抵抗508とを直列接続したRC回路とを、並列接続した回路である。
以下では、図15の等価回路を、図14の各電極に対応付けて説明する。まず、図15のP1は、図14の配線電極550の点P1と対応する。図15の抵抗507は、図14の抵抗部507と対応する。図15のA1は、図14の電極c−1における抵抗部507の点A1と対応する。図15のコンデンサ511は、図14における、電極c−1の一部と、電極b−1と、電極a−1の一部とに対応する。より具体的には、図15のコンデンサ511のA1側の電極は、図14における、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。また、図15のコンデンサ511のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−1と重なる部分と対応する。
図15のA2は、図14の配線電極550の点A2と対応する。図15のコンデンサ512は、図14における、電極c−2と、電極b−2と、電極a−1の一部に対応する。より具体的には、図15のコンデンサ512のA2側の電極は、図14における、電極c−2と、電極b−1とに対応する。また、図15のコンデンサ512のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−2と重なる部分と対応する。
図15のA3は、図14の配線電極550の点A3と対応する。図15の抵抗508は、図14の抵抗部508と対応する。図15のA4は、図14の電極c−3における抵抗部508の点A4と対応する。図15のコンデンサ513は、図14における、電極c−3の一部と、電極b−3と、電極a−1の一部とに対応する。より具体的には、図15のコンデンサ513のA4側の電極は、図14における、電極c−3における電極b−3と重なる部分と、電極b−3とに対応する。また、図15のコンデンサ513のP2側の電極は、図14の電極a−1における電極b−3と重なる部分と対応する。
以上に説明したように、本発明の第5の実施形態に係る圧電型スピーカ500は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、抵抗を直列接続する電極と抵抗を接続しない電極とを設けたことを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ500によれば、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の効果に加えて、圧電素子の一部の領域(抵抗が直列接続された領域)に限って音圧特性を平坦化することができる。例えば、圧電素子の中心領域の分割電極に対しては抵抗を接続せず、圧電素子の周辺領域の分割電極に対しては抵抗を接続することによって、低周波数帯域の音については圧電素子全面が駆動し、一方、高周波数帯域の音については圧電素子の中心部分のみが駆動するようにできる。つまり、圧電型スピーカ500によれば、2ウェイスピーカを、一枚の圧電素子によって実現できる。
なお、圧電素子において分割する電極は任意形状にできるので、例えば、図16(A)に示した形状で電極を分割してもよいし、例えば、図16(B)に示した形状で電極を分割してもよい。このように、分割する電極の形状を適切に設定することによって、振動板の振動特性を調節できる。また、第2、第3、及び第6の実施形態においても、同様に、分割する電極の形状を適切に設定することによって、振動板の振動特性を調節できる。
また、以上では、分割した電極に抵抗を接続するか否かによって、振動特性を調節した。しかし、分割した電極に接続する抵抗の値を調節することによって、更に、適切に振動特性を調節してもよい。
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印加することを特徴とする。以下、この特徴を中心に説明を行い、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400と共通する特徴については原則として説明を省略する。なお、第6の実施形態では、圧電型スピーカ600の上面図及び断面図を用いた説明は、省略する。また、以下では、振動板の下面側の構成についての説明は、省略する。
図17は、第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図17において、圧電素子602を構成する圧電材602−1は省略し、振動板601を構成する基板601−1は省略し、また、振動板601の下面側の構成も省略している。以下、図17を用いて、圧電型スピーカ600を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ600の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1と電極a−2と電極a−3とが形成される。電極a−1〜a−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3とが形成される。電極b−1〜b−3は、互いに電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分と、振動板601のフレーム部604とに一体的に形成される。また、電極c−1において、フレーム部604には、抵抗部607が形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分とに、配線電極部分を介して一体的に形成される。なお、電極c−1と電極c−2とは、互いに接触する部分は無く、互いに電気的に絶縁されている。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−2に対応する電極c−1の部分と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。また、電極b−1に対応する電極c−2の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。同様に、電極b−3に対応する電極c−2の部分と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−2とは、電気的に接続される。同様に、電極a−3と電極b−2とは、電気的に接続される。また、電極a−2と電極c−2とは、電気的に接続される。なお、これらの接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図18は、第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600の等価回路を示す図である。以下では、図17及び図18を用いて、圧電型スピーカ600の等価回路について説明する。なお、図18では、振動板601の下面側に対応する等価回路は省略している。図18に示すように、圧電型スピーカ600の等価回路は、コンデンサ611とコンデンサ612とコンデンサ613とを並列接続した回路に、抵抗607を直列に接続した回路である。
以下では、図18の等価回路を、図17の各電極に対応付けて説明する。まず、図18のP2は、図17の電極c−1における抵抗部607の点P2と対応する。図18の抵抗607は、図17の抵抗部607と対応する。図18のB2は、図17の電極c−1の点B2と対応する。図18のコンデンサ611は、図17における、電極c−1の一部と、電極b−2とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ611のB2側の電極は、図17における、電極c−1における電極b−2と重なる部分と、電極b−2とに対応する。また、図18のコンデンサ611のB1側の電極は、図17の電極a−2と対応する。図18のB1は、図17の電極a−2の点B1と対応する。図18のP1は、図17の電極c−2における配線電極部分の点P1と対応する。
図18のA1は、図17の電極a−1の点A1と対応する。図18のコンデンサ612は、図17における、電極c−2の一部と、電極b−1と、電極a−1とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ612のA1側の電極は、図17の電極a−1に対応する。また、図18のコンデンサ612のP1側の電極は、図17の電極b−1と、電極c−2における電極b−1と重なる部分とに対応する。
図18のA2は、図17の電極a−3の点A2と対応する。図18のコンデンサ613は、図17における、電極c−2の一部と、電極b−3と、電極a−3とに対応する。より具体的には、図18のコンデンサ613のA2側の電極は、図17の電極a−3に対応する。また、図18のコンデンサ613のP1側の電極は、図17の電極b−3と、電極c−2における電極b−3と重なる部分とに対応する。
以上に説明したように、本発明の第6の実施形態に係る圧電型スピーカ600は、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の特徴に加えて、圧電素子の電極を複数に分割して、一部の電極に逆電圧を印加することを特徴とする。このことによって、圧電型スピーカ600によれば、第4の実施形態に係る圧電型スピーカ400の効果に加えて、振動板に生じる不要な振動モードを効果的に打ち消すことができる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と比べて、圧電素子の電極を分割した点、及び、異なる接続形式で抵抗を接続した点で異なる。以下、この異なる点を中心に説明を行い、第1の実施形態に係る圧電型スピーカ100と共通する点については原則として説明を省略する。
図19は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の一例の上面図及び断面図である。図19において、(A)は上面図であり、(B)はO−O’断面の図である。図19に示すように、圧電型スピーカ700は、振動板701と、圧電素子702と、圧電素子703と、充填材709とを備える。ここで、図19において、説明の便宜のために、振動板701の下面側の構成は省略している。このため、圧電素子703は図示していない。また、以下では、振動板701の下面側の構成についての説明は、省略する。また、図19では、説明の便宜のために、振動板701と、圧電素子702とが分離した状態を示しているが、実際には、振動板701と、圧電素子702とは接着されている。
圧電素子702は、圧電材702−1と、圧電材702−1の上面に形成された電極層aと、圧電材702−1の下面に形成された電極層bとを含む(図19(B)を参照)。
振動板701は、基板701−1と、基板701−1の上面に形成された電極層cとを含む。機能的に分類すると、振動板701は、フレーム部704と、支持部705−1及び705−2と、振動部706とを含む(図19(B))。
充填材709は、フレーム部704、支持部705−1及び705−2及び振動部706の隙間に充填される。また、充填材709は、フレーム部704及び支持部705−1及び705−2の表面にも形成される。
図20は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700を構成する各電極層について説明するための斜視図である。ここで、図20において、圧電材702−1、基板701−1は省略し、また、振動板701の下面側の構成も省略している。以下、図20を用いて、圧電型スピーカ700を構成する各電極層の電極の配置及び接続関係について説明する。
まず、圧電型スピーカ700の各電極層の電極の配置について、説明する。電極層aには、電極a−1が形成される。電極層bには、電極b−1と電極b−2と電極b−3と電極b−4とが形成される。電極層bにおいて、電極b−1と電極b−2との間には抵抗部707−1が形成され、電極b−2と電極b−3との間には抵抗部708−1が形成される。電極b−4は、配線電極なので、電極b−1、電極b−2、電極b−3、抵抗部707−1及び抵抗部708−1とは、電気的に絶縁されている。電極層cには、電極c−1と電極c−2と電極c−3と電極c−4とが形成される。電極c−1は、X軸方向から視て電極b−1と重なる部分と、振動板701の支持部705−1と、フレーム部704の一部とに一体的に形成される。電極c−2は、X軸方向から視て電極b−2と重なる部分に形成される。電極c−3は、X軸方向から視て電極b−3と重なる部分に形成される。電極c−4は、X軸方向から視て電極b−4と重なる部分と、振動板701の支持部705−2と、フレーム部704の一部とに一体的に形成される。抵抗部707−2は、X軸方向から視て抵抗部707−1と重なる部分に形成される。抵抗部708−2は、X軸方向から視て抵抗部708−1と重なる部分に形成される。
次に、各電極の接続関係について説明する。電極層bと電極層cとは接着されているので、電極b−1に対応する電極c−1の部分と電極b−1とは接着されて電気的に接続される。電極c−2と電極b−2とは接着されて電気的に接続される。電極c−3と電極b−3とは接着されて電気的に接続される。電極b−4に対応する電極c−4の部分と電極b−4とは接着されて電気的に接続される。また、抵抗部707−1と抵抗部707−2とは、接着されて電気的に接続される。同様に、抵抗部708−1と抵抗部708−2とは、接着されて電気的に接続される。
電極a−1と電極b−4とは、電気的に接続される。なお、この接続を実現する手段としては、例えば、スルーホール加工、外部配線加工がある。
図21は、第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700の等価回路を示す図である。以下では、図20及び図21を用いて、圧電型スピーカ700の等価回路について説明する。なお、図21では、振動板701の下面側に対応する等価回路は省略している。図21に示すように、圧電型スピーカ700の等価回路は、コンデンサ711とコンデンサ712とコンデンサ713とを並列接続し、コンデンサ711とコンデンサ712との接続端の一方に抵抗707を挿入し、また、コンデンサ712とコンデンサ713との接続端の一方に抵抗708を挿入した回路である。なお、この等価回路は、交流電源110に接続される。
以下では、図21の等価回路を、図20の各電極に対応付けて説明する。まず、図21のP1は、図20の電極c−1の点P1と対応する。図21のコンデンサ711は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−1と、電極c−1の一部とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ711のP1側の電極は、図20における、電極c−1における電極b−1と重なる部分と、電極b−1とに対応する。図21のコンデンサ711のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−1と重なる部分に対応する。図21の抵抗707は、図20の抵抗部707−1と抵抗部707−2とに対応する。図21のコンデンサ712は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−2と、電極c−2とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ712のP1側の電極は、図20の電極c−2と電極b−2とに対応する。図21のコンデンサ712のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−2と重なる部分に対応する。図21の抵抗708は、図20の抵抗部708−1と抵抗部708−2とに対応する。図21のコンデンサ713は、図20における、電極a−1の一部と、電極b−3と、電極c−3とに対応する。より具体的には、図21のコンデンサ713のP1側の電極は、図20の電極c−3と電極b−3とに対応する。図21のコンデンサ713のP2側の電極は、図20の電極a−1における電極b−3と重なる部分に対応する。
以上に説明したように、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、図21を用いて説明した多段フィルタを構成する。このため、圧電型スピーカ700によれば、電極層の中心側に配置される電極ほど、高周波数帯域の音圧を抑制できる。この結果として、本発明の第7の実施形態に係る圧電型スピーカ700は、再生する周波数領域に応じて圧電素子の駆動領域の異なる圧電型スピーカを実現できる。
なお、第7の実施形態において、電極及び抵抗部は、同心円状に分割された電極層の領域に形成されるものとした。しかし、電極及び抵抗部の形状は、これには限られず、例えば、変形した環状であってもよい。また、電極及び抵抗部は、環状の部分の一部が分断された形状であってもよい。
また、第7の実施形態では、最外郭の電極が外部端子に接続される場合を、一例に挙げた。しかし、内郭の電極が外部端子に接続されてもよい。具体的には、外郭の電極形状を環状の一部が分断された形状として、当該分断部分に、外部端子に接続される内郭の電極を延長した配線部分を通して外部端子に接続してもよい。この場合、外郭の電極ほど、高周波数帯域の音圧を抑制できることとなる。
また、以上の実施形態では、説明の便宜のために、各電極を+電極部と−電極部とに区別して説明した(図1等を参照)。しかしながら、既に説明したように、本発明の圧電型スピーカは、交流電源を用いて駆動するので、この区別は形式的なものであって、+と−とが反対であってもよい。
また、以上の実施形態において、抵抗部は、電極部よりも電気抵抗値が高い材料で形成されてもよいし、電極部と同一材料で形成されてもよい。また、抵抗部の層厚は、電極部の層厚よりも薄く形成してもよい。また、抵抗部は、細線形状の抵抗によって形成されてもよい。
また、基板と電極層とは、接着剤によって接着されてもよい。同様に、圧電材と電極層とは、接着剤によって接着されてもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子が振動板の両面にそれぞれ装着されている場合について、説明した。しかし、圧電素子は振動板の片面のみに装着されてもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子は両面に電極層を持つこととした。しかし、圧電素子の電極層のうち振動板側の電極層は、振動板表面の電極層と共用してもよい。
また、以上の実施形態では、圧電素子を構成する電極と抵抗部とを用いてRC回路を構成する例を示した。ここで、抵抗部の抵抗値を調節することによって、RC回路の電気的特性を設定して、イコライザ特性を実現できる。更に、振動板の電極層に薄膜コンデンサを一体的に形成することによって、RC回路の特性を調節してもよい。また、更に、振動板の電極層にコイルを一体的に形成することによって、LRC回路を構成してもよい。この様に、振動板の電極層に、電気回路素子を更に形成することによって、所望のイコライザ特性を、スピーカ単体で、容易に実現できる。
また、第1〜第3の実施形態では、抵抗部がフレーム部に形成される場合を例に挙げて説明した。しかし、第1〜第3の実施形態において、抵抗部は、支持部に形成されてもよいし、支持部とフレーム部の両方に形成されてもよい。
また、以上の実施形態において、振動板の表面(主面)に形成される電極(抵抗部も含む)は、プリント配線によって形成されるのが好ましい。プリント配線の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷する方法、振動板に固着して形成された電極層をエッチングする方法、金属板をエッチングした後に振動板に貼り付ける方法がある。また、圧電素子を構成する電極を、表面電極と呼んでもよい。
また、以上の実施形態において、抵抗部は、例えば、合金、樹脂、及び金属と樹脂との複合材料のいずれの材料で形成されてもよい。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、以上に説明した本発明の圧電型スピーカの適用例について、説明する。
[第1の適用例]
図22は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の一例である。図22において、携帯電話端末の筐体36、ディスプレイ37、本発明の圧電型スピーカ38、音孔39が示されている。なお、図22には、本発明の圧電型スピーカ38の拡大図(略図)を示している。
図22に示すように、本発明の圧電型スピーカ38は、ディスプレイ37の背面に設置される。圧電型スピーカ38から発生した音は、音孔39を通じて外部空間に放射される。ここで、第1〜第7の実施形態で説明したように、本発明の圧電型スピーカ38は、部品点数を増やすことなく省スペース化及び高音質化を実現できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた携帯電話端末の設計が容易になる。
[第2の適用例]
図23は、本発明の圧電型スピーカを適用した携帯電話端末の外観図の他の例である。図23において、携帯電話端末の筐体43、サブディスプレイ44、本発明の圧電型スピーカ45、音孔46が示されている。
図23に示すように、本発明の圧電型スピーカ45と、サブディスプレイ44とは、共通の基板に形成できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた携帯電話端末の設計が容易になり、更に、製造コストの抑制も可能となる。
[第3の適用例]
図24は、本発明の圧電型スピーカを適用した薄型テレビの外観図の一例である。図24において、筐体51、ディスプレイ52、本発明の圧電型スピーカ53が示されている。図24に示すように、薄型テレビの筐体51は、一般に、左右方向の両端で中央部よりも厚みが徐々に薄くなる形状を有しており、スピーカの搭載領域は大変小さい。ここで、第1〜第7の実施形態で説明したように、本発明の圧電型スピーカ53は、部品点数を増やすことなく省スペース化及び高音質化を実現できる。このことから、本発明によれば、薄型化と高音質とを両立させた薄型テレビの設計が容易になる。
なお、以上の実施形態では、本発明を圧電型変換器の1つである圧電型スピーカに適用した例を説明した。しかし、本発明は、他の圧電型変換器に適用してもよく、例えば、加振器、センサ、マイクに適用してもよい。
本発明は、圧電型音響変換器等に利用可能であり、特に、省スペース化及び高音質化を両立したい場合等に有用である。
36、43、51 筐体
37、44、52 ディスプレイ
38、45、53、100、200、300、400、500、600、700、1000 圧電型スピーカ
39、46 音孔
101、201、301、401、501、601、701 振動板
101−1、201−1、301−1、401−1、501−1、601−1、701−1、1020 基板
102、103、202、203、302、303、402、403、502、503、602、603、702、703 圧電素子
102−1、103−1、202−1、203−1、302−1、402−1、502−1、602−1、702−1 圧電材
109、209、709 充填材
104、204、304、404、504、604、704 フレーム部
105−1、105−2、205−1〜205−4、305−1〜305−4、705−1、705−2 支持部
106、206、406、706 振動部
107、108、207、208、307、407、408、507、508、607、707、708、707−1、707−2、708−1、708−2 抵抗部(抵抗)
110 交流電源
111、112、211、212、311〜313、411、511〜513、611〜613、711〜713 コンデンサ
440 放熱材
430 断熱材
550 配線電極
1010 フレーム
a、b、c、d、e、f 電極層
a−1〜a−3、b−1〜b−4、c−1〜c−4、d−1、e−1、e−2、f−1 電極