本発明は、光学的情報記録媒体の検査方法、検査装置、光学的情報記録媒体および情報記録方法に関する。特に高速で記録または再生を行う光学的情報記録媒体の検査方法および検査装置に関し、そのような光学的情報記録媒体の残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査方法に関する。
光学的情報記録媒体は記録層を備え、情報がピットやマークとして記録層に記録される。情報を再生する場合、ピットやマークに光を照射し、光の強度変化を検出することによって情報を再生する。このような光学的情報記録媒体は、一般的にディスク形状をしており、光ディスクと称される。以下、本願明細書でも一般的慣習に従って光学的情報記録媒体を単に光ディスクと呼ぶ。
高密度・大容量の光ディスクとして、ブルーレイ・ディスク(BD)やデジタル・バーサタイト・ディスク(DVD)などが実用化されており、コンピュータ用のデータやソフトウエア、オーディオビジュアルデータなどを記録するために使用されている。
こうした高密度・大容量の光ディスクのなかでも、特にDVD−R/BD−Rなどのライトワンスと呼ばれる追記型光ディスクの需要が高まっている。追記型光ディスクは、例えば、特許文献1に開示されるTe−O−M(但し、Mは金属元素、半金属元素及び半導体元素から選ばれる少なくとも一つの元素である。)系材料を含む記録層を備える。Te−O−M系材料は、Te、O及びMを含有する複合材料であり、膜形成直後には、TeO2のマトリクス中にTe、Te−M及びMの微粒子がランダムに分散している。この材料によって形成された記録層に所定の強度以上のレーザ光を照射すると、記録層のレーザ光が照射された部分が溶融し、冷却される際、粒径の大きいTe或いはTe−Mの結晶が析出する。これにより、記録層に記録マークを形成する。結晶が析出した部分は他の部分と光学的性質が異なるため、レーザ光を記録マークに照射すると、反射光の強度に差異が生じ、反射光の強度差を信号として検出することができる。このようにして、1回のみ書き込み可能な、いわゆる追記型の記録が可能となる。
光ディスクの回転速度の制御方法にはCLV(Constant Linear Velocity)方式とCAV(Constant Angular Velocity)方式とがある。CLV方式は、半径位置に反比例した回転速度で光ディスクを回転制御し、レーザ光のスポットがトラックを走査する線速度を一定にしながら、一定の記録チャネルクロックで情報の記録を行う。CAV方式は、光ディスクに記録する際の回転速度を一定にしたまま、光ディスクの記録における基準信号であるチャネルクロックを、トラックを走査する半径位置に比例させる。この場合、光ディスクの内周側において、チャネルクロックが低く、記録線速度は遅くなる。また、光ディスクの外周側において、チャネルクロックが高く、記録線速度は速くなる。ただし、記録マークの記録線密度は一定である。
光ディスクに情報を記録し、また、記録された情報を再生する場合、所定の集光状態で集光されたレーザ光を光ディスクに照射する必要がある。この際、光ディスク装置において、レーザ光を所定の集光状態に保つ制御をフォーカスサーボ制御といい、記録層に形成されたマークの列であるトラックを追随するように、ディスクの半径方向におけるレーザ光の位置を保つ制御をトラッキングサーボ制御という。また、フォーカスサーボ制御において、レーザ光の所定の集光状態からのずれ量を示す信号をフォーカスエラー信号と呼ぶ。同様に、トラッキングサーボ制御において、レーザ光のトラックからのずれ量を示す信号をトラッキングエラー信号と呼ぶ。なお、トラッキングエラーおよびフォーカスエラーは半径方向トラッキングエラー(radial tracking error)および軸方向トラッキングエラー(axial tracking error)とも呼ばれる。
例えば、特許文献2および特許文献3は、追記型光ディスクのフォーカスサーボおよびトラッキングサーボに関する技術を開示している。これらの文献に開示されている方法では、フォーカスエラー信号等に基づき記録速度を制御することによって信頼性の高い記録処理を行う光ディスク装置及びこの方法と、トラッキングエラー信号に基づいてディスクの偏重心に起因して発生する振動の値を検出する方法とを開示している。
近年、大容量の光ディスクに対応したコンピュータ周辺機器および光ディスク録画機において、高速転送レートでの記録が強く要望されている。具体的には、BDの6倍速(6x)に相当する速さで情報を記録または再生する技術を実現することが求められている。このためには、光ディスクの回転速度(あるいは線速度)を上げ、レーザ光を高速で走査させる必要がある。ここで、「〜倍速」とは、記録または再生の標準の速さの何倍の速さであるかを意味する。記録または再生の速さは具体的には線速度または転送レートで示される。本願明細書では、主として線速度を用いて記録または再生の速さを説明する。
また、ディスク回転速度を上げると、光ディスクの面ぶれ、偏芯、ディフェクト、厚み分布ばらつき等、光ディスクの形状の不完全さによって、情報を記録するトラックの位置や記録層の位置(高さ)が高速で変位することになる。このため、より高速でフォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御を行なう必要がある。しかし、サーボ制御の応答には一定の限界があり、サーボ制御の応答特性を超えた周波数でトラックの位置や記録層の位置が変位すれば、光ディスク装置は、フォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御を完全には行なうことができなくなる。その結果、トラッキングエラー信号の残留誤差(残留トラッキング誤差)が大きくなり、トラッキングサーボの安定性が悪化したり、フォーカスエラー信号の残留誤差(残留フォーカス誤差)が大きくなり、記録信号のエンベロープに残留誤差に応じた記録欠け(欠落)が生じてSER(Symbol Error Rate)を悪化させるという課題が顕著に生じる。
ここで、残留トラッキング誤差とは、光ディスク装置が、トラッキングサーボ制御を適切に行なった状態において、なお、レーザ光がトラックからずれることによって、トラッキングエラー信号がゼロとはならず、制御しきれなかったことによって生じる信号成分をいう。同様に、残留フォーカス誤差とは、光ディスク装置が、フォーカスサーボ制御を適切に行なった状態において、なお、レーザ光が所定の集光状態からずれることによって、フォーカスエラー信号がゼロとはならず、制御しきれなかったことによって生じる信号成分をいう。これらの信号の残留誤差は、信号の振幅の大きさによって評価され、その値は、光ディスク装置におけるレーザ光のスポットのトラック中心からのずれ量および記録層からのずれ量として距離(長さ)で表される。例えば、トラッキングエラー信号の残留誤差がxxnmであり、フォーカスエラー信号の残留誤差がxxnmであると表現される。なお、残留誤差は残差とも呼ばれる。また、本願明細書において、単に、残留誤差と呼ぶときは、残留トラッキング誤差および残留フォーカス誤差の両方を意味する。
そこで、光ディスクの作製時に原盤となるスタンパや、光ディスクの成形、カバー層を形成する樹脂の粘度およびスピンコート時の厚みをよりいっそう高い精度で制御することが必要となるとともに、作製した光ディスクが所定の形状精度あるいは機械的特性を満たすかどうかを精度よくかつ効率的に検査する検査方法や検査装置を開発することが重要になる。
特開2004-362748号公報
特開2004−5817号公報
特許第3819138号公報
しかしながら、検査装置のスピンドルモータがBDの6倍速で高速回転しながら検査を行う場合、振動やアクチュエータの共振等、検査装置自身がもつ機械的な要素で残留フォーカス誤差や残留トラッキング誤差が大きく観測されてしまい、本来計測すべき光ディスクの機械特性に起因する残留誤差を精度よく測定(あるいは検査)することができないという課題があった。また、振動やアクチュエータ共振を抑えた価格が高い高性能の検査装置を新たに導入する場合、新規の設備投資が必要となり、メディアのコストアップにつながる。
また、例えば、BDの6倍速(6x)に相当するような線速度での記録を光ディスクの全周に渡ってCLV方式で行う場合、スピンドルモータの回転速度が内周で10000rpmを超える。この回転速度は、光ディスクの基板材料であるプラスチックの破断限界を考慮して安全性の観点から定められた実用上の限界回転速度である。このため、10000rpmを超える速度で光ディスクの検査をおこなうことは好ましくない。
また、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号の残留誤差を小さくするために、検査装置のサーボフィルタ特性を変更し、より高い精度でサーボ制御を行なうことが考えられる。しかし、4倍速(4x)の線速度でBDに記録を行う光ディスク装置では、すでに6KHzから8KHz程度の高いゲイン交点を持つサーボフィルタを使って、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボ制御を行っている。このため、BDの6倍速(6x)の線速度に対応するため、検査装置のサーボ特性のゲイン交点をこれ以上の高くすると、アクチュエータの発振や位相余裕の低下を引き起こすこととなり、サーボの安定性を確保できない可能性がある。
本発明は、このような従来技術の課題を解決し、高い線速度で記録または再生を行なう光学的情報記録媒体の機械特性を精度よく検査する検査方法および検査装置ならびにそのような光学的情報記録媒体に良好な信号を記録するための記録方法および光学的情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の光学的情報記録媒体を検査する検査方法は、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、レーザ光の照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と前記第1の線速度Lv1よりも大きい第2の線速度Lv2とに回転速度を切替え、前記光学的情報記録媒体からの反射光からフォーカスエラー信号および/またはトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号および/または前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記光学的情報記録媒体を照射するレーザ光のフォーカス制御および/またはトラッキング制御を行い、前記フォーカスエラー信号および/または前記トラッキングエラー信号の制御ループから分岐した出力を、所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタおよび/またはトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって得られるフォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差を、あらかじめ決められた所定の基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記光学的情報記録媒体の所定の半径位置Rまでの内周側の領域は、前記第1の線速度Lv1で前記光学的情報記録媒体を回転させることにより前記比較を行い、前記光学的情報記録媒体の前記所定の半径位置Rから外周側の領域は、前記第2の線速度Lv2で前記光学的情報記録媒体を回転させることにより前記比較を行う。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度と前記第2の線速度の比率Lv2/Lv1が1.5あるいは2である。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度Lv1が9.834m/secまたは4.917m/secの正の実数倍であり、および/または、前記第2の線速度Lv2が14.751m/secまたは4.917m/secの正の実数倍である。
ある好ましい実施形態において、前記所定の半径位置Rは、Lv2/Lv1=1.5の場合、33mm≦R≦36mmの範囲にあり、Lv2/Lv1=2.0の場合、44mm≦R≦48mmの範囲にある。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度と前記第2の線速度は、前期光学的情報記録媒体の所定の領域に予め記録されている読み出しおよび/または書き込み時の線速度のうち、最大の線速度のそれぞれ1/2以下である。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点とは等しく、前記第1の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記トラッキング制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記トラッキング制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点とは等しい。
ある好ましい実施形態において、前記フォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタは、カットオフ周波数LPF_FcLのローパスフィルタLPFと、低域側カットオフ周波数がBPF_FcLであり、高域側カットオフ周波数がBPF_FcHであるバンドパスフィルタBPFとを含み、前記フォーカスエラー信号の制御ループから分岐した出力が、前記ローパスフィルタLPFおよび前記バンドパスフィルタBPFに入力され、前記第1および第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較する場合において、前記LPF_FcL、前記BPF_FcLおよび前記BPF_FcHを、前記第1の線速度と前記第2の線速度との線速度の比率に応じて切替える。
ある好ましい実施形態において、前記トラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタは、カットオフ周波数LPF_TcLのローパスフィルタLPFと、低域側カットオフ周波数がBPF_TcLであり、高域側カットオフ周波数がBPF_TcHであるバンドパスフィルタBPFとを含み、前記トラッキングエラー信号の制御ループから分岐した出力が、前記ローパスフィルタLPFおよび前記バンドパスフィルタBPFに入力され、前記LPF_TcLおよび前記BPF_TcLは、前記第1および第2の線速度にかかわらず一定であり、前記BPF_FcHを、前記第1の線速度と前記第2の線速度との線速度の比率に応じて切替える。
ある好ましい実施形態において、前記フォーカスエラー信号の前記LPF通過後の出力F_LPFと、前記フォーカスエラー信号の前記BPF通過後の出力F_BPFと、前記トラッキングエラー信号の前記LPF通過後の出力T_LPFと、前記トラッキングエラー信号の前記BPF通過後の出力T_BPFとを、それぞれあらかじめ決められた所定の基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記半径位置毎に前記出力F_LPF、F_BPF、T_LPFおよびT_BPFを前記所定の基準値と比較する際、前記4つの出力を前記第1の線速度および前記第2の線速度にそれぞれに応じた基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記第2の線速度における前記F_LPFの基準値は、前記第1の線速度における前記F_LPF基準値の基準値以上である。
ある好ましい実施形態において、前記レーザ光の強度は、前記線速度にかかわらず同じである。
本発明の光学的に情報が再生および/または記録される光学的情報記録媒体は、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、k倍(kは正の実数) の速度が速度情報として前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されており、前記光学的情報記録媒体に対して所定の検査を行う場合に、前記光学的情報記録媒体の第1の半径位置の範囲においては、第1の測定速度を用いて前記検査が行われ、前記第1の半径位置の範囲よりも外周側にある第2の半径位置の範囲においては、第2の測定速度を用いて前記検査が行われる。
ある好ましい実施形態において、前記第2の測定速度は、前記基準速度のk倍よりも低い速度であり、前記第1の測定速度は、前記第2の測定速度よりも低い速度である。
ある好ましい実施形態において、前記kは6以上の正の実数である。
本発明の光学的に情報が再生および/または記録される光学的情報記録媒体は、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、m倍(mは正の実数)の速度が速度情報として前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されている第1の光学的情報記録媒体である場合に、前記第1の光学的情報記録媒体は、所定の測定速度を用いて前記検査が行われ、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、n倍(nはmより大きい正の実数)の速度が前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されている第2の光学的情報記録媒体である場合に、前記第2の光学的情報記録媒体は、前記第2の光学的情報記録媒体の半径位置に応じて異なる測定速度を用いて前記検査が行われる。
ある好ましい実施形態において、前記第2の光学的情報記録媒体に対する測定速度の一方は、前記第1の光学的情報記録媒体に対する測定速度よりも大きく、前記第2の光学的情報記録媒体に対する測定速度のもう一方は、前記第1の光学的情報記録媒体に対する測定速度以上である。
ある好ましい実施形態において、mは4以上の正の実数であり、および/または、nは6以上の正の実数である。
本発明の再生方法は、上記いずれかに規定される光学的情報記録媒体を再生する方法であって、前記光学的情報記録媒体に光を照射するステップと、前記光学的情報記録媒体の所定の領域から速度情報を再生するステップとを有する。
本発明によれば、光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と前記第1の線速度Lv1よりも大きい第2の線速度Lv2とに回転速度を切替え、フォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差を測定する。回転速度を切替えることによって、光学的情報記録媒体の内周側において、線速度を遅くし、光学的情報記録媒体の回転速度を低くすることできるため、高倍速の光学的情報記録媒体でも、検査装置の振動やアクチュエータの共振等、検査装置自身がもつ機械的な要素によって、フォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差に悪影響を与えることが抑制され、計測すべき光学的情報記録媒体の機械特性に起因する残留誤差を精度よく測定することができる。
したがって、光学的情報記録媒体の記録や再生の際、面ぶれ、偏芯、ディフェクト、厚み分布ばらつき等の影響により、トラッキングエラー信号の残留誤差成分が大きくなり、トラッキング引き込み失敗、アクチュエータの発振等のサーボの安定性の悪化を生じさせたり、フォーカスエラー信号の残留誤差成分が大きくなり、記録信号のエンベロープに残留誤差に応じた欠落が生じて、再生信号のSERを顕著に悪化することがなく、再生信号の品質(SER)とトラッキングサーボの安定性に優れたさせることのない高品質な光学的情報記録媒体を選別し得る検査方法が提供される。特に、BD6倍速(チャネルクロック396MHz)以上の線速度で記録可能な追記型あるいは書き換え型光ディスクの検査方法に好適に用いられる。
また、本発明によれば、光学的情報記録媒体の所定領域に記録可能最大線速度および半径位置情報の少なくとも一方を追記することによって、光学的情報記録媒体の生産時に残留誤差特性の検査装置の共用化が図れ、設備投資を最小限に抑えて、かつ光学的情報記録媒体の生産歩留まりを高めることができ、光学的情報記録媒体の生産コストの低減を図ることができる。
本発明による光学的情報記録媒体の実施形態の構成を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体を6倍速のCLVに記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体をその半径位置によって、4倍速および6倍速のCLVによって記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明に実施形態であって、光学的情報記録媒体をその半径位置によって、4倍速、6倍速および8倍速のCLVによって記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体の検査装置の全体の構成を示すブロック図である。
図5の検査装置のサーボゲイン特性を示す模式図である。
図5の検査装置の残留トラッキング誤差測定部のブロック図である。
図5の検査装置の残留フォーカス誤差測定部のブロック図である。
図6の残留トラッキング誤差測定部および図7の残留フォーカス誤差測定部で用いる測定フィルタの特性を示す図である。
4倍速でディスクを回転させた時の残留フォーカス誤差の測定結果を表す図である。
2倍速でディスクを回転させた時の残留フォーカス誤差の測定結果を表す図である。
残留フォーカス誤差の大きい状態で、記録した信号のRF信号と残留フォーカス誤差との関係を示す図である。
外乱周波数ごとの残留トラッキング誤差とトラッキング引き込み失敗率との関係を示す図である。
残留フォーカス誤差とデフォーカスマージンとの関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、半径位置によって4倍速のCAVおよび6倍速のCLVで記録および再生する場合の半径位置と回転速度の関係を表す図である。
符号の説明
101 光ディスク
102 スピンドルモータ
103 光ピックアップ
108 トラッキングサーボアンプ
109 フォーカスサーボアンプ
110 トラッキングアクチュエータドライバ
111 フォーカスアクチュエータドライバ
112 残留トラッキング誤差測定部
113 残留フォーカス誤差測定部
114 メモリ
115 判定部
116 レーザ駆動部
117 回転速度設定部
以下、光学的情報記録媒体の一例として、光ディスクの1種であるBD−R(追記型ブルーレイディスク)を挙げて本発明の実施形態を説明する。しかし、光学的情報記録媒体はこれに限定されず、複数回情報の書き換えが可能なBD−RE(書換え型ブルーレイディスク)やBD−ROM(再生専用ブルーレイディスク)であってよい。また、他の規格の光ディスクであってもよい。
ブルーレイディスクの主な光学定数と物理フォーマットについては、「ブルーレイディスク読本」(オーム社出版)やブルーレイアソシエーションのホームページ(http://www.blu-raydisc.com/)に掲載されているホワイトペーパに開示されている。BD−Rでは、波長405nm(誤差範囲の許容値を±5nmとすれば、400〜410nm)のレーザ光およびNA=0.85(誤差範囲の許容値を±0.01とすれば、0.84〜0.86)の対物レンズを用いる。BD−Rのトラックピッチは0.32μmであり、記録層が1層または2層設けられている。記録層またの記録面がレーザ入射側から片面1層あるいは片面2層構成であり、BD−Rの保護層の表面から記録面まで距離は75μm〜100μmである。記録面は追記型である。記録信号の変調方式は17PP変調を利用し、記録されるマークの最短マーク長(2Tマーク)は0.149μm(チャネルビット長:Tが74.50nm)である。記録容量は片面単層25GB(より詳細には、25.025GB)、または、片面2層50GB(より詳細には、50.050GB)である。チャネルクロック周波数はBD標準転送レート(1X)において66MHz(66.000Mbit/s)であり、BD4xの転送レートでは264MHz(264.000Mbit/s)、BD6xの転送レートでは396MHz(396.000Mbit/s)、BD8Xの転送レートでは528MHz(528.000Mbit/s)である。標準線速度(基準線速度、1X)は4.917m/secである。2倍(2x)、4倍(4x)、6倍(6x)および8倍(8x)の線速度は、それぞれ、9.834m/sec、19.668m/sec、29.502m/secおよび39.336m/secである。標準線速度よりも高い線速度は一般的には、標準線速度の正の整数倍であるが、整数に限られず、正の実数倍であってもよい。また、0.5倍(0.5x)など、標準線速度よりも遅い線速度も定義し得る。
図1は、BD−Rのトラックレイアウトを模式的に示している。図10に示すようにBD−Rの内周側からリードインゾーン1004、データ領域1001、リードアウトゾーン1005がこの順で配置されている。リードインゾーン1004内には、OPC(Optimum Power Control)領域1002およびPIC(Permanent Information & Control Data)領域1003が配置されている。OPC領域1002は、データ領域1001にデータを記録する前に、ディスク毎に最適な記録パワーや記録パルス列の条件を試し記録により最適化するために用いられる。また、個々の光ディスク装置の性能のばらつきや、急激な温度変動などの環境変化が生じた際に、記録パワーや記録パルス列の変動分などを調整するために、試し記録を行う領域でもある。PIC領域1003には、溝を高速に変調することで、ディスク構造や推奨記録パワーを求めるのに必要なパラメータや記録パルス列の推奨値、記録線速度、再生条件などが記録されており、再生専用領域である。PIC領域1003の内周側には図示しないが、BCA(Burst Cutting Area)とよばれるバーコード状の信号でメディア識別用の固有の番号が記録されており、著作権保護などの情報として用いられる。
データ領域1001は、実際に光ディスクにユーザが指定するデータを記録する領域でユーザ領域ともよばれる。
リードアウトゾーン1005には、OPC領域およびPIC領域は設けられておらず、INFO領域とよばれる記録データの管理情報に関するデータが記録されている領域が設けられている。図示しないが、INFO領域は内周のリードインゾーン1004内にも設けられ、信頼性を高めるために外周と共通の情報が記録されている。これら各領域のディスク中心からの距離(半径)は、リードインゾーンが22.2mm〜24.0mmであり、データ領域が24.0mm〜58.0mmであり、リードアウトゾーンは58.0mm〜58.5mmである。
次に、BD−Rへの情報記録方法について説明する。BD−RにCLV方式によって、4倍速(4x)の線速度で情報を記録あるいは再生する場合、4倍速の線速度を達成するためには、最内周のデータ領域ではディスクの回転速度を約8000rpmに保つ必要があり、最外周のデータ領域では回転速度を約3200rpmに保つ必要がある。さらに高線速度で記録または再生を行う場合には、ディスクの回転速度もいっそう高くなる。
図2は6倍速(6x)の線速度で情報をBD−Rに記録または再生する場合における記録位置と回転速度との関係を表している。記録位置は半径rで示している。データ領域1001の最内周部であるr=24mmの位置では約12000rpm、データ領域1001の最外周部であるr=58mmの位置では約4800rpmの回転速度でBD−Rを回転させる必要がある。図2から分かるように、半径rが約28mmより内周側で記録再生を行なう場合、スピンドルモータの回転速度が10000rpmを越える。
前述したように光ディスクの回転速度が10000rpmを超えることは、プラスチックの破断限界の観点から好ましくない、このため、10000rpmを超える速度で光ディスクの検査をおこなうことは好ましくない。また、このような高速では、検査装置のサーボ特性が不安定となる可能性があり、正確に光ディスクを検査できない可能性がある。そこで本発明では、最大回転速度に制限を設けて光ディスクの検査を行なう。
具体的には、設定した最大回転速度を超えないように、ディスクの内周側での線速度を外周側に比べて遅くする。図3は、半径位置rが約36mmより内周側では4倍速(4x)の線速度で、それより外周側では6倍速(6x)の線速度でCLVにより記録または再生を行う場合における半径位置と光ディスクの回転速度との関係を示している。この場合、データ領域1001の最内周部(r=24mm)における4倍速(4x)の線速度での最大回転速度は約8000rpmである。光ディスクの全領域における最大回転速度をこの値に決定した場合、6倍速(6x)の線速度では、半径位置rが約36mmのとき、回転速度が約8000rpmとなる。したがって、半径位置rが36mmよりも内周側では4倍速の線速度で記録または再生を行い、半径位置rが36mmまたはこれよりも外周側では6倍速の線速度で記録または再生を行うことによって、光ディスクの回転速度を約8000rpm以下にすることができる。
このように4倍速(4x)と6倍速(6x)との線速度率(1.5倍)に応じて、最内周の半径位置24mmの1.5倍となる半径位置36mmにおいて、2つの線速度を切り替えることによって、4倍速(4x)および6倍速(6x)のいずれの線速度で回転させる場合でも最大回転速度を等しくすることが可能である。回転速度の上限を決め、半径位置に応じて線速度を変えて記録または再生を行なうことによって、線速度が異なっても、最大回転速度が同じであれば、光ディスクの偏芯や面ぶれ成分に追従するためのトラッキング制御やフォーカス制御のサーボ特性のうち、後述するサーボフィルタ(レファレンスサーボ)の低周波数側のゲイン特性をそれぞれの線速度の最大回転速度に応じて変更する必要が無く、光ディスク装置のサーボフィルタ特性の設計を4倍速(4x)と6倍速(6x)とで共通化することができる。
また、後述する光ディスクの残留誤差検査装置のサーボフィルタ特性を1つに共通化することが可能となり、線速度に応じてサーボフィルタの切替えあるいは変更のためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、サーボフィルタ特性(レファレンスサーボ)の設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い再生するという切替え手順がなくなる。このため、検査時間を短縮できるという効果がある。
また、異なる線速度における残留誤差測定の際に、測定回転速度と後述する残留誤差を測定するフィルタのカットオフ周波数を単に切り替えるだけで、内周から外周まで連続的に残留誤差の検査が可能となり、検査時間を大幅に短縮することができる。これによってタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高めることが可能である。また、4倍速(4x)のBD−Rディスクの検査装置と同じレファレンスサーボ条件で残留誤差測定および検査をも可能である。4倍速(4x)のBD−Rディスクの残留誤差検査装置をそのまま、6倍速(6x)のBD−Rディスクの検査装置としても流用することが可能となり、それぞれのラインを共通化することによって、新規の検査装置の導入が不要となり設備投資費を大幅に削減することができる。その結果メディアを量産する上で大幅なコストダウンにつながるという大きな効果がある。
ここでは切替え半径位置rを36mmにしたが、これは線速度比が1.5倍の時の一例にすぎない。リードインゾーンの最内周部の22.2mmを基準とし、その回転速度の上限を最大回転速度(約8000rpm)とした場合、33.3mmを4倍速(4x)と6倍速(6x)との切替え半径位置としてもよい。また、2層ディスクのlayer1のOPC領域の最内周部ある22.7mmを基準としてもよい。すなわち切替え半径位置としては約33mm〜36mmの間の半径位置に設けるのが適切である。
また、例えば4倍速(4x)および8倍速(8x)の線速度を用いる場合、線速度比Lv2/Lv1は2.0である。6倍速(6x)の場合と同様に低速度、つまり4倍速の線速度で記録または再生を行なう場合の半径位置22.2mm〜24mmにおける回転速度を上限回転速度とすると、切替え半径位置は約44mm〜48mmに設けるのが適切である。
また、1つの光ディスクに対して、3つ以上の線速度で記録または再生をおこなってもよい。この場合、線速度の切り替え半径位置の数は用いる線速度の数より1つ少ない数となる。例えば、4倍速(4x)、6倍速(6x)および8倍速(8x)の線速度で記録または再生を行なうためには、線速度の切替え半径位置を2箇所設ける。図4は、4倍速(4x)、6倍速(6x)および8倍速(8x)でCLVによって記録または再生を行う場合における半径位置と回転速度との関係を示している。各線速度の上限回転速度は、4倍速(4x)の最内周部の基準となる半径位置における回転速度によって決定される。4倍速(4x)を基準とした場合の6倍速(6x)および8倍速(8x)の線速度比は、1.5および2.0となる。したがって、4倍速(4x)の最内周部の基準となる第1の半径位置を22.2mm〜24mmに設定した場合、第2及び第3の切り替え半径位置は、それぞれ約33mm〜36mmおよび約44mm〜48mmに設けることができる。この場合、第1の半径位置よりも内周側では、4倍速(4x)の線速度で記録または再生を行い、第1の半径位置と第2の半径位置の間は6倍速(6x)の線速度で記録または再生を行い、第2の半径位置よりも外側では8倍速(8x)の線速度で記録または再生を行う。このとき最大回転速度はいずれの線速度であっても、4倍速(4x)の最内周部の基準となる第1の半径位置における回転速度である約8000rpmとなる。
この場合、前述の4倍速(4x)および8倍速(8x)の線速度を用いる場合に比べて、第1と第2の切替え半径位置の間を4倍速(4x)ではなく6倍速(6x)で記録または再生を行うことができる。このため、光ディスク全体での記録または再生速度を高め、書き込み時間または読み出し時間を短縮することが可能となる。
次に、本発明による光学的情報記録媒体の検査装置の実施形態を説明する。本実施形態の光学的情報記録媒体の検査装置は、検査すべき光ディスクを前述したような異なる線速度で回転させ、基準となるサーボ特性で、光ピックアップから出射するレーザ光のフォーカス制御およびトラッキング制御を行ないながら、得られるトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号の残留トラッキング誤差および残留フォーカス誤差を測定する。そして、得られた値を基準値と比較することによって光ディスクの合否を判定する。
図5は、本実施形態の光学的情報記録媒体の検査装置の全体構成を示すブロック図である。図5に示す検査装置は、BD−Rの光ディスク101の検査を行なう。光ディスク101の構造は、図1を参照して説明したとおりである。
図5に示す検査装置は、スピンドルモータ102、光ピックアップ103、レーザ駆動部116、回転速度設定部117およびRFアンプ104、105、106を備える。
光ディスク101はスピンドルモータ102により回転駆動される。スピンドルモータ102の回転速度制御は回転速度設定部117によりを制御される。レーザ駆動部116は光ピックアップ103内の半導体レーザ103aを駆動し、再生パワーでレーザ光が光ディスク101に照射される。光ディスク101から反射された反射光は、検出レンズ103cを透過し、光検出器103cで受光され、電気信号に変換される。電気信号はRFアンプ104、105、106へと出力される。
検査装置はさらに再生信号処理部107、トラッキングサーボアンプ108およびフォーカスサーボアンプ109を備える。RFアンプ104は、光ピックアップ103の出力を増幅し、RF信号を再生信号処理部107へ出力する。RFアンプ105は、光ピックアップ103の出力からトラッキングエラー信号(TE)を生成し、トラッキングサーボアンプ108へ出力する。RFアンプ106は、光ピックアップ103の出力からフォーカスエラー信号(FE)を生成し、フォーカスサーボアンプ109へ出力する。
検査装置はさらにトラッキングアクチュエータドライバ110およびフォーカスアクチュエータドライバ111を備える。トラッキングサーボアンプ108は、トラッキングエラー信号から制御信号を生成し、トラッキングアクチュエータドライバ110へ出力する。同様に、フォーカスサーボアンプ109は、フォーカスエラー信号から制御信号を生成し、フォーカスアクチュエータドライバ111へ出力する。トラッキングアクチュエータドライバ110およびフォーカスアクチュエータドライバ111は、それぞれ、制御信号に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号が、光ピックアップ103内のトラッキングおよびフォーカス方向の駆動コイルを駆動する。これにより、光ピックアップ103、RFアンプ105、トラッキングサーボアンプ108、トラッキングアクチュエータドライバ110からなり、トラッキングエラー信号を用いたトラッキングサーボ制御のループが構成される。同様に、光ピックアップ103、RFアンプ106、フォーカスサーボアンプ109、フォーカスアクチュエータドライバ111からなり、フォーカスエラー信号を用いたフォーカスサーボ制御のループが構成される。
図6は、トラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御におけるサーボフィルタのゲイン特性を示す模式図である。サーボフィルタのゲイン特性はレファレンスサーボ特性とも呼ばれる。トラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御はそれぞれ所定の基準となるサーボ特性を有している。図6に示すように、サーボ特性は、低周波側では、所定のゲインレベルを有し、周波数が高くなるにつれ、ゲインが小さくなる。ゲインが0デシベルとなる周波数f0をゲイン交点(crossover frequency)と呼ぶ。サーボ特性は主としてこのゲイン交点によって特徴付けられる。トラッキングサーボ制御のサーボ特性およびフォーカスサーボ制御のサーボ特性は互いに異なるが、光ディスクの検査中、前述したように線速度を変化させても同じサーボ特性を用いてトラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御を行なう。
検査装置はさらに残留トラッキング誤差測定部112、残留フォーカス誤差測定部113、メモリ114および判定部115を備える。RFアンプ105から出力されたトラッキングエラー信号の一部は、前述のトラッキングエラー信号の制御ループから分岐され、残留トラッキング誤差測定部112に入力される。残留トラッキング誤差測定部112は、以下において詳細に説明するように、トラッキングサーボ制御を行ないながら得られるトラッキング信号から残留トラッキング誤差を抽出し、メモリ114へ出力する。同様に、RFアンプ106から出力されたフォーカスエラー信号の一部は、前述のフォーカスエラー信号の制御ループから分岐され、残留フォーカ誤差測定部113に入力される。残留フォーカス誤差測定部113は、フォーカスサーボ制御を行ないながら得られるフォーカスエラー信号から残留フォーカス誤差を抽出し、メモリ114へ出力する。これらの残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差の測定は、光ディスクの各半径位置で測定される。
判定部115は、メモリに記録された残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差と、予め設定されている残留トラッキング誤差の基準値および残留フォーカス誤差の基準値とそれぞれ比較し、合格、不合格の判定を行う。例えば、各半径位置における残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差がいずれも基準値以下である場合に、検査された光ディスクを合格であると判定する。
図7および図8は、それぞれ残留トラッキング誤差測定部112および残留フォーカス誤差測定部113の構成を示している。残留トラッキング誤差測定部112は、バッファ201、LPF(ローパスフィルタ)202、BPF(バンドバスフィルタ)203、残留誤差測定部204およびrmsノイズ測定部205を含む。LPF202およびBPF203は、残留誤差を測定するために用いられる測定フィルタである。
バッファ201に入力されたトラッキングエラー信号(TE)は、2つに分けられ、LPF202およびBPF203にそれぞれ入力される。残留誤差測定部204はLPF202を通過したトラッキングエラー信号の残留トラッキング誤差を測定する。rmsノイズ測定部205は、BPF203を通過したトラッキングエラー信号のrmsノイズを測定する。
図9は、LPF202およびBPF203の周波数特性を模式的に示している。残留トラッキング誤差測定部112のLPF202は、カットオフ周波数LPF_TcLを有しており、残留トラッキング誤差測定部112のBPF203は、低域側のカットオフ周波数BPF_TcLおよび高域側のカットオフ周波数BPF_TcHを有している。LPF202のカットオフ周波数LPF_TcLは、BPF203の低域側のカットオフ周波数BPF_TcLと等しい。これらのカットオフ周波数は、残留誤差の測定条件に応じて変化させることができる。LPF202は−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタ、BPF203も低域側+60dB/dec、高域側−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタである。
残留誤差測定部204は、光ディスク101の検査中、LPF202を通過したトラッキングエラー信号に含まれる残留トラッキング誤差をリアルタイムで検出する。rmsノイズ測定部205は、BPF203を通過したトラッキングエラー信号に含まれるrmsノイズを、光ディスクの1周分に相当する期間に得られたトラッキングエラー信号の実行ノイズ成分を検出する。
残留フォーカス誤差測定部113も残留トラッキング誤差測定部112と同様に構成されている。具体的には、図8に示すように残留フォーカス誤差測定部113は、バッファ301、LPF302、BPF303、残留誤差測定部304およびrmsノイズ測定部305を含む。LPF302およびBPF303は、残留誤差を測定するために用いられる測定フィルタである。
バッファ301に入力されたフォーカスエラー信号(FE)は、2つに分けられ、LPF302およびBPF303にそれぞれ入力される。残留誤差測定部304はLPF302を通過したフォーカスエラー信号の残留フォーカス誤差を測定する。rmsノイズ測定部305は、BPF303を通過したフォーカスエラー信号のrmsノイズを測定する。
LPF302およびBPF303もLPF202およびBPF203と同様の周波数特性を備える。図9に示すように、残留フォーカス誤差測定部113のLPF302は、カットオフ周波数LPF_FcLを有しており、残留フォーカス誤差測定部113のBPF303は、低域側のカットオフ周波数BPF_FcLおよび高域側のカットオフ周波数BPF_FcHを有している。LPF302のカットオフ周波数LPF_FcLは、BPF303の低域側のカットオフ周波数BPF_FcLと等しい。これらのカットオフ周波数は、残留誤差の測定条件に応じて変化させることができる。LPF302は−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタ、BPF303も低域側+60dB/dec、高域側−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタである。
なお、便宜上、残留トラッキング誤差測定部112のLPF202およびBPF203の周波数特性と残留フォーカス誤差測定部113LPF302およびBPF303の周波数特性を説明するため、同じ図9を参照したが、LPF202およびLPF302のカットオフ周波数LPF_TcLおよびLPF_FcLは、互いに異なっていてもよい。同様に、BPF203およびBPF303の低域側のカットオフ周波数BPF_TcLおよびBPF_FcLは互いに異なっていてもよく、高域側のカットオフ周波数BPF_TcHおよびBPF_FcHも互いに異なっていてもよい。
残留誤差測定部304は、光ディスク101の検査中、LPF302を通過したフォーカスエラー信号に含まれる残留トラッキング誤差をリアルタイムで検出する。rmsノイズ測定部305は、BPF303を通過したトラッキングエラー信号に含まれるrmsノイズを、光ディスクの1周分に相当する期間に得られたフォーカスエラー信号の実行ノイズ成分を検出する。
次に測定フィルタであるLPF202、BPF203、LPF302およびBPF303のカットオフ周波数とそれぞれの残留誤差測定の条件および手順を説明する。
表1は、4倍速(4x)用のBD−Rディスクと6倍速(6x)用のBD−Rディスクの残留フォーカス誤差の測定条件とその基準値の一例を示している。表2は、4倍速(4x)用のBD−Rディスクと6倍速(6x)用のBD−Rディスクの残留トラッキング誤差の測定条件とその基準値の一例を示している。以下、4倍速、6倍速等の線速度を単に4x、6x等と呼ぶ場合がある。
なお、以下では、理解し易いように、残留フォーカス誤差の測定条件、基準値および残留フォーカス誤差の検査方法と、残留トラッキング誤差の測定条件、基準値および残留トラッキング誤差の検査方法とを分けて説明する。しかし、これら2つの誤差の測定は同時に行ってもよいし、いずれか一方の測定を先に行い、他方の測定を後に行ってもよい。また、本実施形態の検査方法は、残留フォーカス誤差の測定または残留トラッキング誤差の測定の一方を行ってもよいし、残留フォーカス誤差の測定および残留トラッキング誤差の測定の両方を行ってもよい。
まず、残留フォーカス誤差の測定条件と基準値および残留フォーカス誤差の検査方法について説明する。
表1において、記録可能最大速度とは、光ディスクに情報を記録する際の最大速度を表す。4xディスクは、基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録をすることが可能であり、4倍(4x)の線速度が記録可能最大速度である。6xディスクは、前述したように、内周側では基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録が可能であり、外周側では、6倍(6x)の線速度で記録が可能である。この場合、6倍(6x)の線速度が記録可能最大速度である。このため、4xディスクではディスクの内周から外周にわたって全周で同一の測定条件を用いるが、6xディスクの場合、半径位置r=36mmを境に2つの条件で測定することになる。
内周側の線速度が第1の線速度Lv1であり、外周側の線速度が第2の線速度Lv2である。第1の線速度Lv1および第2の線速度Lv2は、いずれも基準となる線速度4.917m/secの正の実数倍であり、第2の線速度Lv2は第1の線速度Lv1よりも大きい。
光ディスクの記録および/または再生(読み出しおよび/または書き込み)可能な線速度は光ディスクの所定領域、具体的に、図1に示すPIC領域1003内のディスク管理領域にあらかじめ記録されている。
残留フォーカス誤差の測定は、記録可能最大速度の1/2の線速度で行う。この際、実際にユーザがBD−Rディスクを用いて情報の記録または再生を行った場合に生じる残留フォーカス誤差を推定するため、検査の際に用いるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数は、線速度に比例して実際の記録または再生の時の1/2に設定する。
図10Aおよび図10Bは、同じ光ディスクの同じトラックを4倍速(4xおよび2倍速(2x)で記録または再生させた場合における残留フォーカス誤差をそれぞれ示している。
ここで測定に用いたサーボフィルタのゲイン交点は、それぞれ6.4kHzと3.2kHzである。また、残留誤差測定時のLPFのカットオフ周波数はそれぞれ3.2kHzと1.6kHzである。2つの信号を比較することにより明らかなように、カットオフ周波数を線速度の比に比例して、1/2にすることにより、同じ大きさの振幅の残留誤差値を得ることができる。
以上のことから、実際の記録時の記録最大速度(つまり、ユーザーデータを記録するときの線速度)の1/2の線速度でサーボ特性を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点と、測定フィルタのカットオフ周波数をそれぞれ線速度比に比例させて1/2にすることにより、異なる2つの線速度で測定しても、同じ振幅の残留誤差値を得ることができる。
回転速度が5000rpmを超える速い回転速度でディスクを回転させる場合、スピンドルモータの機械的な振動や、ピックアップのアクチュエータの共振等の影響が顕著な問題となる。高速回転時には、スピンドルモータやアクチュエータなどの検査装置に起因する機械的な残留誤差成分の影響が無視できなくなり、光ディスク自体がもっている本来測定したいディスクの残留誤差成分を正確に測定することが困難となる。したがって、実際の記録または再生時の線速度の1/2となるように回転速度を低下させ、かつサーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタのカットオフ周波数もそれぞれ線速度の比に比例して1/2に低下させた状態で、残留フォーカス誤差の測定することにより、検査装置自体に起因する振動や共振などの機械的に生じる残留誤差成分を抑えることができ、光ディスク自体のもつ残留誤差成分を精度よく測定することが可能となる。
表1に示すように、6xディスクにおいて、半径位置が36mm未満の半径においては、記録可能最大速度が4xであることから、4xディスクと同じ測定条件で測定する。つまり、6xディスクであっても半径位置36mmより内周側では、従来の4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件で残留フォーカス誤差の測定を行う。
一方、半径位置が36mm以上の外周においては、記録可能な最大速度が6xである。また、4xと6xの線速度の比率は1.5倍である。このため、サーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタ(LPF、BPF)のカットオフ周波数とを4xディスク用の測定に用いられる値の1.5倍にして、6xディスクの検査を行うことが考えられる。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を1.5倍の4.8kHzにした場合、この条件は、ユーザが実際に使う光ディスク装置では、9.6kHzのゲイン交点でフォーカスサーボ制御しながら6xの線速度で、記録または再生を行なう場合に相当する。
一般的なハーフハイトサイズの光ディスク装置のように小型の光ディスク装置では、アクチュエータの発振がおこらず安定的にサーボ制御を行うためには、位相余裕がある程度確保できるよう、ゲイン交点を6〜8kHzにする必要がある。このことは、1/2の回転速度において、3.2kHzのゲイン交点で測定することが、光ディスク装置が安定に動作するゲイン交点のほぼ限界でと言える。したがって、本検査方法では、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点は4x用ディスクの検査装置におけるゲイン交点と同じ値、つまり、3.2kHzに設定する。
測定フィルタのLPFとBPFのカットオフ周波数は、4xディスクと6xディスクの最大速度比1.5に比例して変更する。この理由を説明する。残留フォーカス誤差について考慮しなければならない観点は、RF信号のSER(Symbol Error Rate)の悪化である。つまり、記録後のRF信号のエンベロープの欠落を防ぐために残留フォーカス誤差に基準を設ける。残留フォーカス誤差が大きく生じた状態で、書き込み時にディスクが許容しているデフォーカスマージンを超えた場合、デフォーカスによって光ディスクの記録膜層上でのレーザ光のスポットの絞りがゆるくなる。このため、集光されるレーザ光のエネルギー密度が不足し、実質的に記録パワーが不足した状態でマークが書き込まれることとなる。その結果、光ディスクの記録層に形成されるマークに、残留誤差に応じて半径方向の幅に大小が生じる。
図11に残留フォーカス誤差の大きい状態で光ディスクに情報の記録を行い、記録された情報を再生した場合における再生波形(RF信号)とフォーカスエラー信号とを示す。このフォーカスエラー信号は測定用フィルタを通過させているため、振幅の大きさが残留フォーカス誤差を表わしている。図11に示すように、残留フォーカス誤差の大きい部分でRF信号のマーク側のエンベロープ(下側のエンベロープ)の欠落が生じていることがわかる。このような残留フォーカス誤差を生じさせている原因は、光ディスク面内の厚さばらつきである。残留フォーカス誤差は光ディスクを回転させ、反射光から生成される信号に基づいている。このため、記録層を覆うカバー層の厚みの空間分布が、レーザ光が走査する線速度に応じた時間軸分布に変換されて観測されることになる。その結果、カバー層の厚さのバラつきに起因する残留フォーカス誤差の周波数は、回転している線速度に比例する。例えば、レーザ光が走査する円周上におけるカバー層の厚さのばらつきによって、2xの線速度で観測される残留フォーカス誤差の周波数は、3xの線速度では、線速度比1.5に比例した1.5倍の周波数になる。ここでサーボフィルタと測定フィルタの周波数を線速度比に比例して変化させた場合、図10Aおよび図10Bを参照して説明したように、同じ振幅の残留フォーカス誤差が観測される。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を3.2kHzのまま固定した状態で、回転速度を上げているため、3xの回転速度では、ゲイン交点近傍の4kHzから5kHzあたりの残留フォーカス誤差成分は、ゲイン交点外になるため、フォーカスサーボ制御によって抑圧することができず、より大きな残留誤差として観測される。このことは、この帯域の残留フォーカス誤差成分を抑圧できなれば、RF信号のエンベロープ欠落が生じ、再生信号のSERを悪化させ読み取り誤りを生じることを意味する。
したがって、残留フォーカス誤差の測定フィルタのカットオフ周波数を回転速度に応じて1.5倍に変更した状態で残留フォーカス誤差を測定すれば、4x用ディスクで生じていたRF信号のエンベロープの欠落に寄与している残留フォーカス誤差成分をもれなく検出することができる。
BPFの残留フォーカス誤差成分は記録再生信号の品質を確保する目的とは異なり、アクチュエータに流れる無駄電流を抑制するために検査している。したがって、この残留フォーカス誤差成分はrmsノイズ成分と呼ばれる。このrmsノイズを測定するバンドパスフィルタの低域側および高域側のカットオフ周波数も線速度比に比例して1.5倍にして光ディスクの検査を行なう。これにより、4xディスクで問題となる周波数帯域のrmsノイズ成分をもれなく検出することができる。
したがって、6xディスクを検査するにあたって、サーボフィルタのゲイン交点は、実ドライブで実現できるゲイン交点に相当する3.2kHzの状態のまま、測定フィルタのカットオフ周波数を1.5倍に変更した測定条件で光ディスクの検査を行うことによって、残留フォーカス誤差の大きいディスクを正しく選別することができる。
また、4xディスクと6xディスクあるいは、6xディスクの切替え半径より内周側と外周側でサーボフィルタの特性、特にゲイン交点を変えないで検査することができるため、検査装置のサーボフィルタを1つに共通化することが可能となり、光ディスクの生産性の観点からも有利である。つまり、4xディスクの検査装置をそのまま6xディスクの検査装置として流用することが可能となる。
また、線速度に応じてサーボフィルタの切替えのためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、レファレンスサーボの設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い、光ディスクの検査を行うという切替え手順が不要となり、異なる線速度の間の残留誤差測定を、線速度のみを変えることによって、連続的に行なうことが可能となり、検査時間を短縮することができる。これによってタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高めることが可能となる。また、BD−Rの4xディスクの検査装置と同じレファレンスサーボ条件で測定することが可能であるため、BD−Rの4xディスクに用いていた検査装置をそのまま、BDーR6xの検査装置として流用することが可能となる。したがって、これら2種類の光ディスクの検査ラインを共通化することができ、新規の検査装置の導入が不要となり、設備投資費を削減することができる。その結果、光ディスク生産時の製造コストを下げることができるという大きな効果がある。
前述のような測定条件が予め設定された検査装置を用いることにより、光ディスクの内周から外周まで全周にわたって、残留フォーカス誤差を測定し、LPFとBPFそれぞれの残留誤差値に対して基準値以下である場合、検査合格とし、基準値を超える場合、検査不合格とする。
次に、残留フォーカス誤差の基準値について説明する。前述したように、線速度が変化しても線速度比に比例して測定フィルタのカットオフ周波数を変更しているため、6xディスクの半径位置が36mm未満の半径および36mm以上の外周での残留フォーカス誤差値の許容できる振幅はほぼ等しい。このため、残留フォーカス誤差の基準値(BPF、LPF)は、4xディスクの検査の基準値と同じでよい。ただし、基準値は光ディスクに記録を行うレーザ光のパワーマージンを考慮することが好ましい。図12は、2種類の光ディスクの残留フォーカス誤差とそのときのデフォーカスマージンとの関係を表示している。デフォーカスマージンはSER≦4.2E−3となるフォーカスの範囲をいう。ここではパワーマージンの異なるディスクAおよびディスクBを用いた。ディスクAのパワーマージンは23%であり、ディスクBのパワーマージンは18%である。ディスクAとBとでは5%のパワーマージンの差がある。
ここでパワーマージンとは、最適パワーに対して、パワーダウンまたはパワーアップさせて記録した際に、リミットイコライザジッタが所定の範囲内となるパワー範囲のことを言う。具体的には、10%のパワーダウンがある場合に、例えば、単層ディスクではジッタが8.5%以下であり、2層ディスクでは、L0層(奥の層/光入射面から遠い側の層)で8.5%以下であり、L1層(手前の層/光入射面に近い側の層)で10.5%以下(さらにはL1層にて最短のマーク又はスペースを除いたマーク(例えば1−7変調方式においてはマーク長が2T〜8Tに制限されるので最短マークは2T)でのジッタが8.5%以下)となるパワー範囲を言う。また、10%のパワーアップの場合に、例えば、単層ディスクではジッタが10.5%以下、二層ディスクでは、L0層で10.5%以下、L1層で12.5%以下、(さらにはL1層にて最短のマーク又はスペースを除いたマークでのジッタが10.5%以下)となるパワー範囲のことを言う。
図12に示すように、同じ大きさの残留フォーカス誤差がある場合でも、ディスクAのデフォーカスマージンは、いずれの残留フォーカス誤差においてもディスクBよりも30nm〜40nm程度大きい。つまり、ディスクBに比べて、ディスクAのパワーマージンのほうが広い。このことから、残留フォーカス誤差による記録パワーの低下に対する影響度合いはディスクBよりもディスクAのほうが小さい。図12の結果から、パワーマージンに5%の差がある場合、少なくとも約30nm〜40nmのデフォーカスマージンに対する許容差があるとも言える。
したがって、パワーマージンに応じて残留フォーカス誤差の基準値を例えば80nmから110nm〜120nmへ緩めても、両者のディスクでのシステムマージンは同等となる。例えば、残留フォーカス残差の基準値を80nmとしておき、例えば、±10%のパワーマージンがある場合にはその基準値を110nmとする、など基準値を緩めるようにしてもよい。
つまり、前述のようにパワーマージンが比較的広いディスクに対して、残留フォーカス誤差の許容値をデフォーカスマージン分緩めたとしても、システム全体で許容されるマージンを減少させることはない。したがって、パワーマージンの優れたディスクにおいては、残留フォーカス誤差に対する許容値を考慮して基準値を緩めることで、過剰に厳しい残留誤差基準値によってメディアの生産性を落とすことなく、メディアの歩留まり向上を実現できる。また、記録膜や反射膜を最適化したり、ライトストラテジを工夫するなどしてパワーマージンが広い光ディスクを設計することによっても、高速化で問題となる残留誤差に対する許容度を緩めることになり、光ディスクの生産性を向上させることができるという効果がある。
具体的には、所定のパワーマージンがある6xディスクを検査する場合には、3xの線速度を用いる36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の基準値を、2xの線速度を用いる36mm未満の半径での残留フォーカス誤差の検査の基準値以上とする(基準値を緩める)。これにより、36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の際、過剰に厳しい残留誤差基準値によって、ディスクの歩留まりが低下するのを防止し、かつ、所定の信号記録品質が保障された光ディスクを製造することができる。より具体的には、6xディスクのパワーマージンが±10%である場合には、表1に示すように、3xの線速度を用いる36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の基準値を80nmとし、2xの線速度を用いる36mm未満の半径での残留フォーカス誤差の検査の基準値を110nmとしてもよい。
次に残留トラッキング誤差の測定条件と基準値および残留トラッキング誤差の検査方法について説明する。
表1と同様、表2において、記録可能最大速度とは、光ディスクに情報を記録する際の最大速度を表す。4xディスクは、基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録をすることが可能である。6xディスクは、前述したように、内周側では基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録が可能であり、外周側では、6倍(6x)の線速度で記録が可能である。このため、4xディスクではディスクの内周から外周にわたって全周で同一の測定条件を用いるが、6xディスクの場合、半径位置r=36mmを境に2つの条件で測定することになる。また、内周側の線速度が第1の線速度Lv1であり、外周側の線速度が第2の線速度Lv2である。第1の線速度Lv1および第2の線速度Lv2は、いずれも基準となる線速度4.917m/secの整数倍であり、第2の線速度Lv2は第1の線速度Lv1よりも大きい。
残留トラッキング誤差の測定は、記録可能最大速度の1/2の線速度で行う。この際、実際にユーザがBD−Rディスクを用いて情報の記録または再生を行った場合に生じる残留トラッキング誤差を推定するため、検査の際に用いるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数は、線速度に比例して実際の記録または再生の時の1/2に設定する。
これについては、既に述べた残留フォーカス誤差測定方法におけるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数の決め方と同じ考え方が適用できる。したがって、実際の記録時の記録最大速度(即ち、ユーザーデータを記録するときの線速度)の1/2の線速度でサーボ特性を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点と、測定フィルタのカットオフ周波数をそれぞれ線速度比に比例させて1/2にすることにより、異なる2つの線速度で測定しても、同じ振幅の残留誤差値を測定することができる。
回転速度が5000rpmを超える速い回転速度でディスクを回転させる場合、スピンドルモータの機械的な振動や、ピックアップのアクチュエータの共振等の影響が顕著な問題となる。高速回転時には、スピンドルモータやアクチュエータなどの検査装置に起因する機械的な残留誤差成分の影響が無視できなくなり、光ディスク自体がもっている本来測定したいディスクの残留誤差成分を正確に測定することが困難となる。したがって、実際の記録または再生時の線速度の1/2となるように回転速度を低下させ、かつサーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタのカットオフ周波数もそれぞれ線速度の比に比例して1/2に低下させた状態で、残留フォーカス誤差の測定することにより、検査装置自体に起因する振動や共振などの機械的に生じる残留誤差成分を抑えることができ、光ディスク自体のもつ残留誤差成分を精度よく測定することが可能となる。
表2に示すように、6xのディスクにおいて、半径位置が36mm未満の半径においては、記録可能最大速度が4xであることから、4xディスクと同じ測定条件で測定する。つまり、即ち6x用ディスクの半径位置36mmより内周側では、従来の4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件で残留トラッキング誤差の測定を行う。
一方、半径位置が36mm以上の外周においては、記録可能な最大速度が6xである。また、4xと6xの線速度の比率は1.5倍である。このため、サーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタ(LPF、BPF)のカットオフ周波数とを4xディスク用の測定に用いられる値の1.5倍にして、6xディスクの検査を行うことが考えられる。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を1.5倍の5.4kHzにした場合、この条件は、ユーザが実際に使う光ディスク装置では、10.8kHzのゲイン交点でフォーカスサーボ制御しながら6xの線速度で、記録または再生を行なう場合に相当する。
一般的なハーフハイトサイズの光ディスク装置のように小型の光ディスク装置では、アクチュエータの発振がおこらず安定的にサーボ制御を行うためには、位相余裕がある程度確保できるよう、ゲイン交点を6〜8kHzにする必要がある。このことは、1/2の回転速度において、3.6kHzのゲイン交点で測定することが、光ディスク装置が安定に動作するゲイン交点のほぼ限界でと言える。したがって、本検査方法では、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点は4x用ディスクの検査装置におけるゲイン交点と同じ値、つまり、3.6kHzに設定する。
残留トラッキング誤差を生じさせている原因は、光ディスクの半径方向の厚みばらつきや、溝の不均一性、スタンパの欠陥や成形での引っかき、カバー層を形成する際のスピンコートのムラ等であり、残留トラッキング誤差は光ディスクを回転させ、反射光から生成される信号に基づいている。このため、トラック方向の不均一なトラックの分布(空間分布)が、回転の線速度に応じた時間軸分布に変換されて観測されることになる。その結果、残留トラッキング誤差の周波数は、回転している線速度に比例する。例えば径方向へのトラックの形状ばらつきによって2xの線速度で観測される残留トラッキング誤差の周波数は、3xの線速度では、線速度の比率1.5に比例した、1.5倍の周波数になる。ここでサーボフィルタと測定フィルタの周波数を線速度比に比例して変化させた場合、同じ振幅の残留トラッキング誤差が観測される。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を3.6kHzのまま固定にした状態で、回転速度を上げているため、3xの線速度で光ディスクを回転させると、ゲイン交点よりも高い周波数である4kHzから5kHzあたりの残留トラッキング誤差成分は、ゲイン交点よりも高いため、トラッキングサーボ制御によって抑圧することができず、より大きな残留トラッキング誤差として観測される。つまり、この帯域の残留トラッキング誤差成分を抑圧できなれば、トラッキングエラー信号に大きなスパイク上の山があらわれ、トラッキング制御の安定性を低下させる可能性がある。
前述したように、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、測定フィルタ(LPFとBPF)のカットオフ周波数は、4xディスクと6xディスクの最大速度比1.5に比例して、4xディスクの検査におけるカットオフ周波数の1.5倍に変更する。これは記録時に残留フォーカス誤差によって生じるRF信号のエンベロープの欠落によるSERの悪化を防ぐためであった。
しかし、BDでは記録信号のオフトラックマージンが十分広いため、大きな残留トラッキング誤差によってRFエンベロープの欠落が生じ、SERが劣化することはない。むしろ残留トラッキング誤差の測定条件で考慮すべき観点は、トラッキングサーボの安定性である。このため、トラッキングサーボの安定性を乱す帯域の残留トラッキング誤差成分を検査すれば、残留トラッキング誤差の検査は十分である。
ここでサーボフィルタの3.6kHzのゲイン交点より高い周波数の残留トラッキング誤差や外乱成分は、そもそもトラッキングサーボの制御帯域外にあるため、安定したトラッキングサーボ制御を実現する上で、問題とならない。したがって、トラッキングエラー信号のLPFのカットオフ周波数は、サーボフィルタのゲイン交点近傍より低い周波数帯域の残留トラッキング誤差や外乱が検出できるように設定すれば十分である。
一方、ゲイン交点以下の周波数帯域における光ディスクに起因する残留トラッキング誤差成分を抑圧できなれば、記録あるいは再生中、トラッキングサーボが突然、外乱によってはずれたり、記録中、トラックすべりを起こして、近隣のトラックへ誤って記録し、既に書き込まれているデータを誤消去してしまうこととなる。また、測定フィルタの帯域を高くすることによって、不要な残留トラッキング誤差成分まで検出することにより、不必要に高い機械精度を備えた光ディスクを製作することになると、光ディスクの製造歩留まりを極端に低下させることにもなる。したがって、製造コストの上昇を防ぐためにも、適切なLPFのカットオフ周波数を定めて検査することが重要となる。
こうした理由から、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合、残留トラッキング誤差の測定フィルタのうち、LPFのカットオフ周波数は、ゲイン交点と同じ3.6kHに設定すること、つまり、LPFのカットオフ周波数については、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合でも4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件を用いることが好ましい。これにより、サーボの安定性を確保するために必要な残留トラッキング誤差成分をもれなく検出し、かつサーボの安定性を落とすことなくメディアの歩留まり低下を防ぐことが可能となる。
BPFの残留トラッキング誤差成分は、サーボの安定性を確保する目的とは違って、アクチュエータに流れる無駄電流を抑制するために基準を設けている。したがって、この残留フォーカス誤差成分は、rmsノイズと呼ばれる。このrmsノイズを測定するBPFの高域側のカットオフ周波数も線速度比に比例して1.5倍にして光ディスクの検査を行なう。これにより、4xディスクで問題となる周波数帯域のrmsノイズ成分をもれなく検出することができる。
図13は、異なる外乱周波数における、残留トラッキング誤差とトラッキング引き込み失敗率との関係を示している。図13に示す結果は、以下のようにして得られた。
まず、各々の外乱周波数において、挿引した電圧をいくつか変えながら、トラッキングオン状態で観測される残留トラッキング誤差量を測定した。次に、残留トラッキング誤差量を測定した外乱周波数および挿引電圧のそれぞれにおいて、トラッキングオフ状態からトラッキングオン状態へトラッキング引き込み動作を複数回行った。引き込み動作により、トラッキングはずれや引き込み失敗が生じた回数と、トラッキングが正常にかかり、安定に動作した回数とを数えた。引き込み動作回数に対する引き込みに失敗した割合を求め、表にまとめた。ディスクの回転速度は3Xであり、サーボフィルタのゲイン交点は3.6kHzで測定した。
図13において、折れ線1101、1102、1103および1104は、それぞれ、外乱周波数が1.2kHz、1.8kHz、3.6kHzおよび5.4kHzの場合の結果を示している。引き込み失敗率は、折れ線1101、1102で示されるように、外乱周波数がサーボフィルタのゲイン交点よりも低く、残留トラッキング誤差が25nmを超える場合に急激に上昇する。しかし、折れ線1103、1104で示されるように、外乱周波数がサーボフィルタのゲイン交点以上である場合、残留トラッキング誤差が25nmを超えてもトラッキング引き込み失敗率は悪くならいという結果が得られた。これらの結果から、サーボフィルタのゲイン交点より高い周波数の残留トラッキング誤差成分はトラッキングサーボの安定性に悪影響をおよぼさないことが分る。また、ゲイン交点以下の周波数の残留トラッキング誤差成分であっても、25nm以下の値であれば、サーボの引き込み時の安定性を阻害することにならないことが確認された。
したがって、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合、残留トラッキング誤差の測定フィルタのうち、LPFのカットオフ周波数は、ゲイン交点と同じ3.6kHzまたはそれ以上に設定すること、つまり、LPFのカットオフ周波数については、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合でも4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件か、それ以上の周波数に設定することが好ましい。
なお、残留トラッキング誤差の検査について説明したように、6xディスクの半径位置が36mm未満の半径および36mm以上の外周での残留トラッキング誤差値の許容できる振幅はほぼ等しい。このため、残留トラッキング誤差の基準値(BPF、LPF)は、4xディスクの検査の基準値と同じでよい。
以上説明したように、6xディスクにおける残留トラッキング誤差を検査する場合には、サーボフィルタのゲイン交点は、実ドライブで実現できるゲイン交点に相当する3.6kHzの状態のまま、測定フィルタのカットオフ周波数を、サーボの安定性と光ディスクの製造歩留まりを考慮して、ゲイン交点と等しくする。その他の測定条件は、表2に従うことによって、残留トラッキング誤差の大きいディスクを正しく選別することができる。このような光ディスクを除外することにより、トラッキングサーボが突然、外乱によってはずれたり、記録動作中に大きな残留トラッキング誤差によってトラックすべりを起こして、近隣のトラックへ誤って記録し、既に書き込まれているデータを誤消去してしまうようなことを防止することが可能となる。
また、4xディスクと6xディスクとで、あるいは、6xディスクの切り変え半径より内周側と外周側とで、サーボフィルタの特性、特にゲイン交点を変えないで検査することができるため、検査装置のサーボフィルタを1つに共通化することが可能となり、光ディスクの生産性の観点からも有利である。つまり、4xディスクの検査装置をそのまま6xディスクの検査装置として流用することが可能となる。また、それぞれの検査ラインを共通化することができ、新規の検査装置の導入が不要となり、設備投資費を削減することができる。その結果、光ディスク生産時の製造コストをさげることができるという大きな効果がある。
また、線速度に応じてサーボフィルタの切替えのためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、レファレンスサーボの設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い、光ディスクの検査を行なうという切替え手順が不要となり、異なる線速度の間の残留誤差測定を線速度のみを変えることによって連続的に実施することが可能となり、検査時間を短縮することができる。これによって検査時間を短縮でき、生産のタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高め、コストダウンを実現することが可能となる。
前述のような測定条件が予め設定された検査装置を用いることにより、光ディスクの内周から外周まで全周にわたって、残留トラッキング誤差を測定し、LPFとBPFそれぞれの残留誤差値に対して基準値以下である場合、検査合格とし、基準値を超える場合、検査不合格とする。
本実施形態の光ディスクの検査方法は、前述した検査の手順を検査装置に指令するプログラムによって好適に実行される。このようなプログラムは、検査装置に内蔵される専用のLSIによって実行されてもよいし、外部のPCによって実行されてもよい。さらに、専用のハードウェアによって実行されてもよい。
また、残留誤差測定のLPFとBPFのカットオフ周波数の切替えは、光ディスクの制御ループとは独立に行なわれるため、LPF、BPFの切替えをフォーカス制御、トラッキング制御を行っている最中に切替えても、サーボ動作に影響をおよぼさないことはいうまでもない。従って、フィルタの切替え作業によって検査にかかる時間が延びるということはない。
次に、前述の検査の結果、残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差のいずれかが基準値を超える光ディスクの取り扱いを説明する。
本実施形態の光ディスクの検査方法を用いて6xディスクの検査を行なった結果、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差のいずれか少なくとも一方が基準値を超える残留誤差があった場合を考える。
図5に示すように、114メモリ内を検索し、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報を検索する。
最も内周で基準値をこえている半径位置情報をRxとする。Rxが切替え半径位置の内側にある場合には、その光ディスクは不合格であると判定する。
一方、Rxが切替え半径位置の外側にある場合、その光ディスクを再度Rxの位置から外周側において、4xディスクの検査条件を用いて検査を行なう。4xディスクの検査条件で合格する場合、この光ディスクは、全体として、4xディスクの残留誤差の条件を満足している。このため、この光ディスクは6xディスクでなく4xディスクとして使用することができる。以下このような光ディスクを4xディスクとして使用方法を説明する。
まず第1に、この光ディスクは6xディスクとして製作されているため、ディスク管理領域内のPIC領域には、1x、2x、4x、6xで記録することが可能な条件、具体的には、最大線速度や全ての線速度でのパワーやライトストラテジ情報が予め記録されている。この場合、光ディスク装置は、通常であれば6xディスクであると認識し、最大6xで記録を行う。PIC領域は、再生専用領域であるため、情報の追記できない。
このため、6xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度の上限を規制するあるいは指定する情報を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果、記録可能な最大線速度情報(Sx)を追記する。この場合、光ディスク装置は、ディスク管理領域に予め記録されている最高線速情報よりも追記領域に記録された最大線速度情報を優先して使用するように取り決める。
光ディスク装置は、まず、追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認する。Sxが記録されている場合は、そのSxの値にしたがい、Sxを最大線速度として光ディスクに記録を行う。
Sxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記される。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいはOPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、最大線速度情報(Sx)を追記する。前述したように、最大線速度情報を追記するための領域は、物理フォーマット規格によって確保された専用の領域であることが望ましい。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、記録速度の上限を検査の結果決めることが可能となり、光ディスクの生産の歩留まりが大幅に改善され、生産性向上とコストダウンを図ることが可能となる。
次に、前述の方法により、6xディスクとして製作されたディスクを4xディスクとして使用することが可能であることが検査により分った場合、前述の検査で得られた半径位置情報RxをSxと同様、光ディスクの管理領域に追記する方法について説明する。
前述したようにディスク管理領域のPIC領域は、再生専用であり、追記ができない。このため、6xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度で記録できる半径位置の上限を規制するあるいは指定する情報を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報を(Rx)を追記する。半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報(PAA, Physical ADPI Address)を追記してもよい。これにより切り替え半径位置からRxまでの間の半径位置については最大線速度(6x)で記録し、残留誤差が大きくなるRxより外側の半径位置については、最大線速度を4xに低下させることができ、光ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できる。
光ディスク装置は、まず、追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認する。Sxが記録されている場合は、切り替え半径位置(36mm)から外周側において、その最大線速度情報に従って前述の最大線速度以下で光ディスクに記録を行う。しかし、Rxが同時に記録されている場合は、切り替え半径位置(36mm)からRxの半径位置の間の領域では、最大線速度6xで記録し、Rxより外側の半径値では4xで記録を行う。
Rxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記する。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいは、OPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、半径位置情報(Rx)を追記する。Rxの替わりに、あるいは、前記半径位置に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。前述したように、径位置情報追記するための領域は、物理フォーマット規格によって確保された専用の領域であることが望ましい。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、半径位置の上限を検査の結果によって決めることが可能となり、ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できるというユーザーメリットが生じる。
光ディスクには、最大線速度情報(Sx)および半径位置情報(Rx)の両方を追記してもよいし、いずれか一方のみを追記してもよい。SxとRxを組み合わせて使用する場合、以下の表3に示すようになる。
表3に示すように、Sx=6x、Rx=57mmであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから57mmは6x記録、57mmから58mmは4x記録とする。Sx=6x、Rx記録なしであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから58mmまでは6x記録とする。Sx=4x、Rx=57mmであれば、24mmから57mmまでは4x記録、57mmから58mmは2x記録とする。Sx=4x、Rx記録なしであれば、24mmから58mmまでは4x記録とする。Sxの記録なし、Rx=57mmであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから57mmまでは6x記録、57mmから58mmは4x記録とする。Sxの記録なし、Rxの記録なしであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから58mmまでは6x記録とする。
このように、Sxの記録がない場合には、PIC情報に記録されている最大記録速度が優先される。また、Rxの記録がない場合には、切替え半径位置より外側において6xの線速度で記録を行うか、光ディスク全体において4x以下で記録する。
SxおよびRxを追記することで、前述したとおり、光ディスクの製造歩留まりが改善され、生産性向上とコストダウンをはかることが可能となる。また、光ディスクの機械特性の品質に応じて、半径位置の上限を検査の結果決めることが可能となり、ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できる。
なお、上記形態では、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報(Rx)を追記し、その半径位置より外周側では、4xディスクの検査条件で合格することを確認することによって、その半径位置より外周側では4xディスクとして使用していた。しかし、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も外周側の半径位置情報(Ry)とし、その半径位置情報(Ry)の位置より外周側において、6xディスクの検査条件で残差の検査に合格する領域がある場合には、半径位置情報(Ry)の位置より外周側の領域を6xディスクとして使用することができる。
この場合、例えば、半径位置情報(Ry)および/または半径位置情報(Ry)に対応する物理アドレスをその光ディスクに固有の情報Ryとして、前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録してもよい。この場合、光ディスク装置がこの情報を参照することによって、Ryの位置よりも外周側の領域では6xの線速度で記録または再生を行うことができる。つまり、ディスクの最内周側から切り替え半径位置(36mm)までの領域では、4xの線速度で記録または再生を行ない、切り替え半径位置(36mm)からRxの位置までの領域では、6xの線速度で記録または再生を行なう。また、Rxの位置からRyの位置までの領域では、4xの線速度で記録または再生を行ない、Ryの位置より外周側の領域では、再び6xの線速度で記録または再生を行なう。これにより、6xの線速度で記録または再生できる領域が増えるため、記録または再生に要する時間を短縮することができる。
また、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている半径位置が多くない場合には、基準値を超えているすべて半径位置情報(Rz)および/または半径位置情報(Rz)に対応する物理アドレスをその光ディスクに固有の情報Rzとして、前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録してもよい。この場合、光ディスク装置がこの情報を参照することによって、切り替え半径位置(36mm)より外周側の領域において、Rzの位置以外は6xの線速度で記録または再生し、Rzの位置では4xの線速度で記録または再生を行うことができる。これにより、いっそう6xの線速度で記録または再生できる領域が増えるため、記録または再生に要する時間を短縮することができる。
また、6xディスクとして検査に合格した場合でもRxおよびSxを追記してもよい。あるいは、6xディスクとして検査に合格した場合でも、あえてSx=4xとして追記を行い、4xディスクとして生産することもできる。この場合、6xおよび4xの2つの種類の光ディスクを切替えて生産する必要がなくなる。したがって、6xディスクおよび4xディスクを、需要と供給のバランスに応じて、生産設備をいれかえずに生産できる。また、4xディスクと6xディスクとで共通スタンパを使用できるので、複数のスタンパを作成する必要がなくなる。以上のことから大幅に設備費を削減し、コストダウンを実現することができる。
また、6xディスクにおいて、切り替え半径位置(36mm)にかかわらず、6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査結果に基づいて、その光ディスクに固有の切り替え半径位置を決定し、その半径位置情報(Rw)をディスクに記録してもよい。具体的には、6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を、切り替え半径位置にかかわらずディスクの全領域に対して行い、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も外周側の半径位置情報(Rw)を決定し、Rwを前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録する。光ディスク装置がこの情報を参照することによって、切り替え半径位置(36mm)にかかわらず、Rwの位置およびこれよりも外周側では6xの線速度で記録または再生を行い、Rwの位置より内周側では、4xの線速度で記録または再生を行なう。これにより、ディスクの機械的特性に応じてもっとも短時間で記録または再生を行なうことができる。ただし、この場合、半径位置情報(Rw)の位置における6xの線速度を実現する回転速度が、例えば、10000rpmを超えないように半径位置情報(Rw)を決定することが好ましい。
次に、4xディスクであっても、6xディスクの残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を満足するディスクの取り扱いを説明する。
4xディスクに対して、4xディスクおよび6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を行い、6xディスクとしての機械精度があると4xディスクにおいて確認された場合、4xディスクを6xディスクとして使用可能な機械的精度が備わっており、性能上、6xディスクとしての使用が可能である。しかし、4xディスクのディスク管理領域内のPIC領域には、1x、2x、4xで記録することが可能な条件、具体的には、最大線速度や全ての線速度でのパワーやライトストラテジ情報が予め記録されている。この場合、光ディスク装置は、通常であれば4xディスクであると認識し、最大4xで記録を行う。
PIC領域は、再生専用領域であり、情報の追記できないため、前述したように、4xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度情報(Sx)を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果に基づき、最大線速度(6x)を記録する。
光ディスク装置は、4xディスクの追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認し、もしSxが記録されている場合は、その最大線速度情報、つまり6xという情報にしたがって、最大Sxで光ディスクに記録を行う。
Sxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記される。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいはOPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、最大線速度情報(Sx)を追記する。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、記録速度の上限を検査の結果決めることが可能となり、光ディスクの製造歩留まりが大幅に改善され、生産性向上とコストダウンをはかることが可能となる。このように、4xディスクのうち、残留誤差の検査結果が良好なものを、6xディスクとして、つまり、オーバードライブ記録が可能となる。したがって、通常の4xディスクで残留誤差検査の結果を管理情報に追記していない光ディスクよりも光ディスクドライブで書き込む際、信頼性高く、高速でオーバードライブ記録を行うことが可能となる。
以上のように、RxやSxを追記することによって、生産性の観点では、4xディスクと6xディスクを1つのラインで検査することができるという利点が得られ、特性のよいものを6xディスクとして選別することができる。また、6xディスクだけを生産し、残留誤差検査の結果の歩留まりが低い場合、大量のディスクを廃棄してしまわねばならないというリスクを低減することができ、ディスクの生産性を向上させコストダウンをはかることが可能となる。また、1つのスタンパによって成形可能なディスクの枚数は、生産枚数が増えるとともに機械特性が悪化し、歩留まりの低下を招くことがある。このような場合、残留誤差基準の比較的緩い4xディスクとしては十分使用可能となるので、スタンパが新しい初期の状態では、6xディスクを生産する。残留誤差基準が6xディスクの基準を満たさないが、4xディスクの基準を満足する程度にスタンパが劣化した場合でも、4xディスクを生産し続けられる。このため、製造歩留まりを低下させずに1枚のスタンパで生産できる枚数を増やすことができ、スタンパ寿命を延ばし、コストダウンを実現することが可能となる。
なお、前述したように、残留誤差検査の結果に応じて、Sx、Rxを追記し、記録した情報に基づいて、4xディスクあるいは6xディスクとして使用する場合、残留誤差以外の機械特性項目や記録再生特性等の必要な特性を満たしているかどうかについて、それぞれ定められた条件で別途検査しておくことがこのましい。
また、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査をする際、光ディスクに照射されているレーザ光の再生パワーは線速度の切替え前後にかかわらず一定の再生パワーで検査を行う。そのように線速度の切替え前後で同じ再生パワーで検査することによって、再生パワーが変化することによって生じる検査装置の回路オフセット調整を不要にし、検査時間を短縮することが可能となる。
また、異なる2つの線速度で光ディスクを回転させ、照射するレーザ光の再生パワーを各線速度で同じにしているとき、再生光による光ディスクに対するダメージは2つの線速度のうち、遅い線速度で回転している条件である。したがって、遅い線速度で光ディスクを回転させている状態で、再生耐久性の検査をそのまま行ってもよい。同じ再生パワーで検査することによって、再生耐久性を複数の線速度で実施しなくてすむ。このため、光ディスクの生産性の向上を図ることができる。
本発明の検査方法は、BD−RのうちHTL(High To Low)およびLTH(Low To High)のいずれのタイプにも可能である。また、本発明の検査方法は単層ディスクおよび2層ディスクのいずれのタイプの光ディスクにも適用される。
また、本発明による検査方法はBD−Rを例にとって説明したが、書き換え型のBD−REおよび読み取り専用型のBD-ROMに適応することも可能である。
また、本発明による光ディスクの検査方法は6xディスクの検査を例に説明したが、8xディスクあるいはそれ以上の速度で書き込みを行う光ディスクの残留誤差検査にも適用できることはいうまでもない。
8xディスクの場合、図4に示すように、2箇所の切替え半径位置を設定し、36mmより内周は4x記録、36mm〜48mmは6x記録、48mm以降は8x記録のように半径位置に応じて4x、6x、8xの線速度でCLVによって記録することができる。図4は、8xディスクにおいて、半径位置によって4xのCLV、6xCLV、8XCLVで記録および再生する場合の半径位置と回転速度の関係を表している。各線速度の上限回転速度は、4xの最内周部の基準となる半径位置における回転速度によって決定される。第1の切替え半径位置は約33mmから36mmであり、第2の切替え半径位置は約44mmから48mmの範囲内である。第1の切替え半径位置より内側は4xの線速度で記録を行い、第1と第2の切替え半径位置の間は6xの線速度で記録を行い、第2の半径位置より外周側は8xの線速度で記録を行う。この場合、4xと8xとの1つの切替え半径位置を有する場合に、比べて、第1と第2の切替え半径位置の間を4xの線速度ではなく6xの線速度で記録を行うことができる。したがって、全体の転送レートを高め、書き込み時間を短縮することが可能となる。8xディスクについても前述と同様の方法によって残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査をすることが可能である。
また、6xディスクの検査において、図14のように線速度を4xと6xとで切り替える際、第1の切替え半径位置より内周側では、最内周部で4xに相当する回転速度(例えばr=24mmであれば約8000rpm)で、回転速度一定制御(CAV)方式により記録し、切替え半径位置が約33mm〜36mmの間で6xの線速度によるCLVに切り替える方法も考えられる。この場合が最も記録レートが速くなり短時間に1枚のディスクに情報を記録できるという効果がある。
CAV方式で記録する部分で残留誤差検査をする場合は、CAVの回転速度の1/2の回転速度で残留誤差検査を行い、半径位置とともに徐々に線速度が上がっていくため、切替え半径位置までの間に測定フィルタ(残留フォーカス誤差検査の場合は測定フィルタのLPFおよびBPFであり、残留トラッキング誤差検査の場合は測定フィルタのBPF)のカットオフ周波数を半径位置に比例して変えながら残留誤差測定を行い、切替え半径位置以降は前述の検査方法を用いて検査することも可能である。
また、上記実施形態では、切替え半径位置を決定するために、切り替え半径位置より内周側での記録または再生の線速度における最大回転速度を与える半径位置を特定したが、前述したように6xディスクにおける切り替え半径位置は、約33mm〜36mmの間にある。このため、最大回転速度を与える半径位置を特定せずに、この範囲内において、切り替え半径位置を決定してもよい。また、最大回転速度を与える半径位置を特定して切り替え半径位置を決めたかどうかにかかわらず、最大回転速度を与える半径位置において、残留誤差の測定を行わなくてもよい。切り替え半径位置より内周側での記録または再生の線速度における最大回転速度を与える半径位置はユーザーデータ領域ではない場合もあるからである。したがって、6xディスクにおいて、切り替え半径位置よりも内周側において6xディスクの残留誤差を4xディスクと同様の条件で測定し、切り替え半径位置およびその外周側において、前述した条件で残留誤差の測定を行ってもよい。
また、上記実施形態では、6xディスク(少なくともディスクのいずれかの半径位置において6倍速の線速度による再生及び/又は記録を行うことのできるディスク)の測定速度を切り替える基準となる切替え半径位置を36mmに設定し、36mm未満の半径位置(at radii up to 36 mm/smaller than 36 mm in the radius position)においては、4xディスクと同様、2倍速の線速度で測定し、36mm以上の半径位置(at radii 36 mm and higher/greater than or equal to 36mm in the radius position)においては、3倍速の線速度で残留誤差の測定を行っている。しかし、切り替え半径位置は線速度を切り替える境界であるため、2xの線速度または3xの線速度のいずれで残留誤差を測定してもよい。つまり、36mm以下の半径位置(at radii 36 mm and lower/smaller than or equal to 36mm in the radius position)においては、4倍速対応ディスクと同様、2倍速の線速度で測定し、36mmより大きい半径位置(/greater than 36mm in the radius position)においては、3倍速の線速度で測定してもよい。
このように、第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)の回転速度の切替えを、各々の回転速度の最大回転速度が同じになる半径位置で行う光ディスクと、前記光ディスクの記録速度の1/2の回転速度で残留誤差を検査し、かつ、2つの回転速度のサーボフィルタ特性(ゲイン交点)が等しい測定条件でフォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号から残留誤差(残留誤差)を測定し、基準値を満足しているか否かを判断する光ディスクの残留誤差検査方法によって、特にBD6倍速以上の高速で記録可能な追記型(あるいは書き換え型ディスクも含む)光ディスクと、その光ディスクに信号を記録する際に、良好な記録信号品質およびサーボ安定性が得られるように前記光ディスクを精度よく検査する検査方法と、検査装置およびそのような光ディスクに良好な信号を記録するための記録方法を提供することを目的とする。
なお、光学的情報記録媒体からの再生信号の品質を計測する指標の一つとしては、ピットまたは記録マークとスペースとの比(非対称性)を検出するアシンメトリが挙げられる。上述したジッタに加えて、あるいは、ジッタに替えて、このアシメンメトリを検査してもよい。この場合、例えば、最短マーク(1−7変調の場合は2T)の振幅中心と、最長マーク(1−7変調の場合は8T)の振幅中心を算出し、これらに基づいてアシンメトリが所定の範囲内におさまるようにすることによって信号品質を保証することができる。
具体的には、最長マークの振幅中心と最短マークの振幅中心との差分と、最長マークの全振幅との「比率」が所定の範囲内に収まるようにする。より詳細には、最長マークが8Tの場合に、最長マークの最大振幅をI(8H),最長マークの最小振幅をI(8L),最長マークの全振幅をI(8pp)とし、最短マークが2Tの場合に、最短マークの最大振幅をI(2H),最短マークの最小振幅をI(2L)とすると、最長マークの振幅中心は「(I(8H)−I(8L))/2」となり、最短マークの振幅中心は「(I(2H)−I(2L))/2」となり、最長マークの全振幅I(8pp)は、「I(8H)−I(8L)」となる。したがって、上記「比率」は、「((I(8H)−I(8L))/2−(I(2H)−I(2L))/2)/I(8pp)」となる。この値が、所定の範囲内であれば(例えば、「−0.10以上」及び/又は「+0.15以下」を満たせば)再生信号の品質が適切であると判断してもよい。
また、光学的情報記録媒体は、以下のような突起部を有するものでもよい。例えばブルーレイディスクの場合、保護層の厚みは、単層ディスクでは100μm,2層ディスクでは75μmである。このように薄い保護層への傷つき防止のため、保持領域(Clamp Area)の外側または内側に突起部を設けてもよい。特に保持領域の内側に設けた場合、保護層の傷つき防止に加え、ディスクの中心穴に近い部分に突起部があるため、突起部の重量バランスによる回転スピンドル(モータ)への負荷を軽減することや、光ヘッドとの衝突を避ける(光ヘッドは保持領域の外側にある情報記録領域にアクセスするため保持領域の内側に突起部を設けることで突起部と光ヘッドとの衝突を回避する)ことができる。
保持領域を内側に設ける場合、例えば外径120mmのディスクにおける保持領域の具体的な位置は次のようにしてもよい。仮に中心穴の直径が15mm、保持領域が直径23mmから33mmの範囲内とした時、中心穴と保持領域の間、つまり直径15mmから23mmの範囲内に突起部を設けることになる。その際、中心穴からある程度の距離を設けてもよく(例えば中心穴の縁端から0.1mm以上(又は/及び0.125mm以下)離してもよい)、また、保持領域からある程度の距離を設けてもよい(例えば保持領域の内端から0.1mm以上(又は/及び0.2mm以下)離してもよい)。また、中心穴の縁端と保持領域の内端の両方からある程度の距離を隔てて設けてもよい(具体的な位置として、例えば、直径17.5mmから21.0mmの範囲内に突起部を設けてもよい)。また、突起部の高さは、保護層の傷つきにくさや持ち上げ易さのバランスを考慮して決めればよいが、高くすぎても別の問題が発生するかも知れないので、例えば、保持領域から0.12mm以下の高さとしてもよい。
また、光学的情報記録媒体が多層である場合の構成を簡単に述べる。例えば、レーザ光を保護層の側から入射して情報が再生及び/又は記録される片面ディスクとすると、記録層を二層以上にする場合、基板と保護層の間には複数の記録層が設けられることになる。この場合における多層構造を次のようにしてもよい。つまり、光入射面から所定の距離を隔てた最も奥側の位置に基準層(L0)を設け、基準層から光入射面側に層を増やすように積層(L1、L2、・・・、Ln)し、また光入射面から基準層までの距離を単層ディスクにおける光入射面から記録層までの距離と同じ(例えば0.1mm程度)にする等である。このように層の数に関わらず最奥層までの距離を一定にすることで、基準層へのアクセスに関する互換性を保つことができ、また層数の増加に伴うチルト影響の増加を抑える(最奥層が最もチルトの影響を受けるが層数の増加に伴い最奥層までの距離が増加することがなくなるため)ことが可能となる。
また、光学的情報記録媒体が多層である場合における再生方向またはスポットの進行方向に関しては、例えば、全ての層において同じ、つまり全層にて内周方向から外周方向、又は全層にて外周方向から内周方向、というパラレル・パスであっても、オポジット・パス(基準層(L0)を内周側から外周側の方向とした場合、L1では外周側から内周側の方向、L2では内周側から外周側の方向、・・・つまり、Lm(mは0及び偶数)では内周側から外周側の方向、Lm+1では外周側から内周側の方向(又は、Lm(mは0及び偶数)では外周側から内周側の方向、Lm+1では内周側から外周側の方向)というように層が切り替わる毎に再生方向が逆になる)であってもよい。
また、本発明でジッタを測定するときに記録に用いる変調方式について簡単に述べる。データ(オリジナルのソースデータまたは変調前のバイナリデータ)を記録媒体に記録する場合、所定のサイズに分割され、さらに所定のサイズに分割されたデータは所定の長さのフレームに分割され、フレーム毎に所定のシンクコード/同期符号系列が挿入される(フレームシンク領域)。フレームに分割されたデータは、記録媒体の記録再生信号特性に合致した所定の変調則に従って変調されたデータ符号系列として記録される(フレームデータ領域)。
ここで変調則としては、マーク長が制限されるRLL(RunLengthLimited)符号化方式などでもよく、RLL(d,k)と表記した場合、1と1との間に出現する0が最小d個,最大k個であることを意味する(dおよびkは、d<kを満たす自然数である)。例えばd=1、k=7の場合、Tを変調の基準周期とすると、最短が2T、最長が8Tの記録マーク及びスペースとなる。またRLL(1,7)変調に更に次の[1][2]の特徴を加味した1−7PP変調としてもよい。1−7PPの“PP”とは、Parity preserve/Prohibit Repeated Minimum Transition Lengthの略で、[1]最初のPであるParity preserveは、変調前のソースデータビットの“1”の個数の奇偶(すなわちParity)と、それに対応する変調後ビットパターンの“1”の個数の奇偶が一致していることを意味する。[2]後ろの方のPであるProhibit Repeated Minimum Transition Lengthは、変調後の記録波形の上での最短マーク及びスペースの繰り返し回数を制限(具体的には、2Tの繰り返し回数を最大6回までに制限)する仕組みを意味する。
また、本発明でジッタを測定するときに記録に用いるフレームシンクパターンについて説明する。フレーム間に挿入されるシンクコード/同期符号系列には前述の所定の変調則は適用されないので、その変調則によって拘束される符号長以外のパターンを含ませることが可能となる。このシンクコード/同期符号系列は、記録されたデータを再生するときの再生処理タイミングを決定するもののため、次のようなパターンが含まれてもよい。
データ符号系列との識別を容易にするという観点からは、データ符号系列には出現しないパターンを含ませてもよい。例えば、データ符号系列に含まれる最長マーク/スペースよりも長いマーク又はスペースやそのマークとスペースの繰り返しである。変調方式が1−7変調の場合、マークやスペースの長さは2T〜8Tに制限されるので、8Tよりも長い9T以上のマーク又はスペース(9TM and/or 9TS)や9Tマーク/スペースの繰り返し(9T/9T)等である。
同期引き込み等の処理を容易にするという観点からは、ゼロクロス点を多く発生させるパターンを含ませてもよい。例えば、データ符号系列に含まれるマーク/スペースの内、比較的短いマーク又はスペースやそのマークとスペースの繰り返しである。変調方式が1−7変調方式の場合、最短である2Tのマーク又はスペース(2TM and/or 2TS)や2Tマーク/スペースの繰り返し(2T/2T)や、次最短である3Tのマーク又はスペース(3TM and/or 3TS)や3Tマーク/スペースの繰り返し(3T/3T)等である。
前述の同期符号系列とデータ符号系列を含む領域を仮にフレーム領域と呼び、そのフレーム領域を複数(例えば31個)含む単位を仮にセクタと呼ぶことにすると、あるセクタにおいて、そのセクタの任意のフレーム領域に含まれる同期符号系列と、その任意のフレーム領域以外のフレーム領域に含まれる同期符号系列との符号間距離を2以上にしてもよい。ここで符号間距離とは、2つの符号系列を比較した場合、符号系列中の異なるビットの個数を意味する。この様に符号間距離を2以上にすることで、再生時のノイズの影響などにより一方の読み出し系列が1ビットシフト誤りを起こしても、もう一方と誤識別することがない。また、特に、そのセクタの先頭に位置するフレーム領域に含まれる同期符号系列と、先頭以外に位置するフレーム領域に含まれる同期符号系列との符号間距離を2以上にしてもよく、この様にすることで、先頭箇所か否か/セクタの区切り箇所か否かの識別を容易にすることができる。
なお符号間距離は、NRZ記録のときは符号系列をNRZ表記した場合、NRZI記録の時は符号系列をNRZI表記した場合、における符号間距離の意味を含んでいる。そのため、もしRLL変調を採用した記録の場合、このRLLとはNRZIの記録波形の上で高レベル又は低レベルの信号が続く個数を制限することを意味するものであるため、NRZI表記における符号間距離が2以上ということを意味する。
また、光学的情報記録媒体には、溝を形成することによって、溝部、および、溝と溝との間の溝間部が形成される。このため、溝および溝間部のいずれにデータを記録するかによって記録方式が異なる。具体的には、溝部への記録、溝間部への記録、溝部および溝間部の両方への記録など、様々な方式がある。ここで、溝部および溝間部のうち、光入射面から見て凸部となる側に記録する方式をOn−Groove方式といい、光入射面から凹部となる側に記録する方式をIn−Groove方式という。本発明において、記録方式として、On−Groove方式とするか、In−Groove方式とするか、両方式のどちらか一方を許可する方式とするかは特に問わない。
なお、両方式のどちらか一方を許可する方式の場合、その媒体が、どちらの記録方式であるかを容易に識別できるように、On−Groove方式であるかIn−Groove方式であるかを示した記録方式識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についての記録方式識別情報を記録してもよい。その場合、各層についての記録方式識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関する記録方式識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関する記録方式識別情報を記録してもよい。
また記録方式識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なお再生専用領域でデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)やウォブル(ウォブルに重畳して記録)等があり、いずれかの領域又はいずれか複数の領域又は全ての領域に記録してもよい。
またウォブルの開始方向に関して、On−Groove方式とIn−Groove方式とで互いに逆となるようにしてもよい。つまり、もしOn−Groove方式にてウォブルの開始方向がディスクの内周側から開始する場合には、In−Groove方式ではウォブルの開始方向をディスクの外周側から開始するようにし(、又は、もしOn−Groove方式にてウォブルの開始方向がディスクの外周側から開始する場合には、In−Groove方式ではウォブルの開始方向をディスクの内周側から開始するようにし)てもよい。このように、On−Groove方式とIn−Groove方式とでウォブルの開始方向互いに逆となるようにすることで、どちらの方式にしてもトラッキングの極性を同一にすることができる。なぜなら、On−Groove方式では、光入射面から凸部となる側に記録を行うのに対して、In−Groove方式では、光入射面から凹部となる側に記録を行うため、仮に両者で溝の深さが同じである場合、トラッキング極性は逆の関係となる。そこで、両者でウォブルの開始方向も互いに逆とすることにより、トラッキング極性を同じにすることができる。
上記のIn/On−Groove方式は、媒体に溝を形成する記録型の媒体に関してであるが、再生専用型の媒体に関しても同様の考え方を適用できる。つまり再生専用型の媒体の場合、情報はエンボス/凹凸ピットという形で記録されるが、このピットの形成方式としても、光入射面から見て凸部のピットが形成されるものをOn−Pit方式といい、光入射面から見て凹部のピットが形成されるものをIn−Pit方式といい、本発明において、ピットの形成方式として、On−Pit方式とするか、In−Pit方式とするか、両方式のどちらか一方を許可する方式とするかは特に問わない。
また、両方式のどちらか一方を許可する方式の場合、その媒体が、どちらの方式であるかを容易に識別できるように、On−Pit方式であるかIn−Pit方式であるかを示したピット形成方式識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についてのピット形成方式識別情報を記録してもよい。その場合、各層についてのピット形成方式識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関するピット形成方式識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関するピット形成方式識別情報を記録してもよい。
またピット形成方式識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なおデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)等があり、いずれかの領域又は両方の領域に記録してもよい。
また、光学的情報記録媒体の記録膜の特性に関して、記録部分と未記録部分との反射率の関係により、以下の2つの特性のものがある。つまり、未記録部分が記録済部分よりも高反射率(High−to−Low)であるHtoL特性と、未記録部分が記録済部分よりも低反射率(Low−to−High)であるLtoH特性である。本発明において、媒体の記録膜特性として、HtoLであるか、LtoHであるか、どちらか一方を許可するものであるかは特に問わない。
また、どちらか一方を許可するものの場合、どちらの記録膜特性であるかを容易に識別できるように、HtoLであるかLtoHであるかを示した記録膜特性識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についての記録膜特性識別情報を記録してもよい。その場合、各層についての記録膜特性識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関する記録膜特性識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関する記録膜特性識別情報を記録してもよい。
また、記録膜特性識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なお再生専用領域でデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)やウォブル(ウォブルに重畳して記録)等があり、いずれかの領域又はいずれか複数の領域又は全ての領域に記録してもよい。
以上、実施形態を具体的に参照しながら本発明を詳細に説明したが、本発明は、以下のように規定することもできる。つまり、本発明の光学的情報記録媒体の検査方法は、光学的情報記録媒体のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の残留誤差を検査する検査方法であって、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、レーザ光の照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)とに回転速度を切替え、前記光学的情報記録媒体にフォーカス制御とトラッキング制御を行い、前記光学的情報記録媒体からの反射光からフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号の出力それぞれを、所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタとトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタとを通過させて得られるフォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)とトラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)を、あらかじめ決められた所定の基準値と比較し、基準値を満足しているか否かを判断する。
ある局面では、前記光学的情報記録媒体の第1の半径位置R1から第2の半径位置R2(R1<R2)までの領域は、前記第1の線速度Lv1で回転させることにより前記検査を行い、前記光学的情報記録媒体の前記第2の半径位置R2から外周側の領域は、前記第2の線速度Lv2で回転させることにより前記検査を行う。
また、ある局面では、前記第1の線速度と前記第2の線速度の比率がLv2/Lv1=1.5あるいはLv2/Lv1=2である。
また、ある局面では、前記第1の線速度がLv1=9.834m/secである。
また、ある局面では、前記第2の半径位置R2はLv2/Lv1=1.5場合 33mm≦R2≦36mmの範囲にあり、Lv2/Lv1=2.0の場合、44mm≦R2≦48mmの範囲にある。
また、ある局面では、前記2つの半径位置R1およびR2と、前記2つの線速度Lv1およびLv2は、R2/R1=Lv2/Lv1の関係を満たすことを特徴とする。
また、ある局面では、前記第1の線速度で検査するときの最大回転速度と、前記第2の線速度で検査するときの最大回転速度が、約同じ最大回転速度である。
また、ある局面では、前記第1の線速度と前記第2の線速度は、光学的情報記録媒体のディスク管理領域(PIC領域)に予め記録されている書き込み時の線速度の1/2以下の線速度で検査を行う。
また、ある局面では、前記第1の線速度で回転時の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で回転時の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点とを同じゲイン交点のサーボ特性で検査し、前記第1の線速度で回転時の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で回転時の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点とを同じゲイン交点のサーボ特性で検査する。
また、ある局面では、前記フォーカスエラー信号用の周波数帯域制限フィルタ内の、カットオフ周波数FcLのローパスフィルタ(LPF)と、低域側カットオフ周波数がFcLと高域側カットオフ周波数がFcHのバンドパスフィルタ(BPF)の2つの異なるフィルタのそれぞれにフォーカスエラー信号が入力され、前記FcLとFcHの周波数を第1の線速度と第2の線速度の線速度の比率に応じてスケーラブルに切替える。
また、ある局面では、前記トラッキングエラー信号用の周波数帯域制限フィルタ内の、カットオフ周波数TcLのローパスフィルタ(LPF)と、低域側カットオフ周波数がTcLと高域側カットオフ周波数がTcHのバンドパスフィルタ(BPF)の2つの異なるフィルタのそれぞれにトラッキングエラー信号が入力され、前記TcLが第1の線速度と第2の線速度の比率によらず一定であって、前記TcHを前記第1の線速度と前記第2の線速度の線速度の比率に応じてスケーラブルに切替える。
また、ある局面では、前記フォーカスエラー信号の前記LPF通過後の出力(F_LPF)と、前記フォーカスエラー信号の前記BPF通過後の出力(F_BPF)の2つ周波数帯域の出力と、前記トラッキングエラー信号の前記LPF通過後の出力(T_LPF)と、前記トラッキングエラー信号の前記BPF通過後の出力(T_BPF)の2つ周波数帯域の出力とを、あらかじめ決められたそれぞれの所定の基準値と比較し、基準値を満足しているか否かを判断する。
また、ある局面では、半径位置毎に前記F_LPF、F_BPF、T_LPF、T_BPFの4つの出力を前記所定の基準値と比較する際、前記4つの出力を第1の線速度と第2の線速度それぞれに応じた基準値と比較する。
また、ある局面では、前記第2の線速度における前記F_LPFの基準値は、前記第1の線速度における前記F_LPF基準値の基準値に比べて、同等かそれ以上の値である。
また、ある局面では、前記残留フォーカス誤差と前記残留トラッキング誤差を検査するときに、前記光学的情報記録媒体に照射するレーザ光の再生パワーは線速度にかかわらず同じ再生パワーで検査を行う。
また、本発明の検査装置は、光学的情報記録媒体のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の残留誤差を検査する検査装置であって、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光学的情報記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記光学的情報記録媒体に照射されているレーザ光の半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)し、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)とを設定する回転速度設定部と、フォーカス制御とトラッキング制御を行い、前記光学的情報記録媒体の反射光からフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号の出力から、フォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)を測定するフォーカス信号残留誤差測定部と、前記トラッキングエラー信号の出力からトラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)を測定するトラッキング信号残留誤差測定部と、前記フォーカス信号残留誤差測定部と前記トラッキング信号残留誤差測定部において測定した各半径位置に応じた残留誤差測定結果を保持するメモリと、前記残留誤差測定結果とあらかじめ決められた所定の残留フォーカス誤差の基準値および残留トラッキング誤差の基準値とを比較し、前記それぞれの基準値を満足しているか否かを判断する判定部とを備える。
ある局面では、前記フォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)は、前記フォーカスエラー信号の出力を、前記フォーカス信号残留誤差測定部内の所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって生成し、前記トラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)は、前記トラッキングエラー信号の出力を、前記トラッキング信号残留誤差測定部内の、所定のトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって生成する。
また、ある局面では、光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)で光学的情報記録媒体を回転させ、第1の半径位置R1から第2の半径位置R2(R1<R2)までの領域は、第3の線速度Lv3で回転させてデータを記録し、第2の半径位置R2から外周側の領域は、第4の線速度Lv4(Lv3<Lv4)で回転させてデータを記録し、前記R1における前記第3の線速度の最大回転速度と前記R2における前記第4の線速度の最大回転速度が約同じであるように切替え半径位置R2が定められている。
また、ある局面では、前記第3の線速度がLv3=19.7m/secであって、前記第4の線速度Lv4が=29.5m/secあるいは39.4m/secであって、前記第2の半径位置R2はLv4/Lv3=1.5場合、33mm≦R2≦36mmの範囲にあり、Lv4/Lv3=2.0の場合、44mm≦R2≦48mmの範囲にある。
また、本発明の光学的情報記録媒体の情報記録方法は、上記検査装置によって残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差の検査結果を、前記メモリからから検索し、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差が予め決められたそれぞれの基準値を超えている場合、1つあるいは複数の基準値を超えている半径位置情報のうち最も内周の半径位置情報(Rx)を検索し、前記光学的情報記録媒体のBCAあるいは/及び追記可能なリードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の所定のエリアに前記半径位置情報(Rx)を追記する。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。
また、本発明の光学的情報記録媒体の情報記録方法は、上記検査装置によって残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差の検査結果を、前記メモリからから検索し、残留フォーカス誤差あるいは残留トラッキング誤差が各線速度の基準値を満足しているか判定し、前記判定結果に基づいて、前記光学的情報記録媒体のBCAあるいは/及び追記可能なリードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の所定のエリアに最大記録可能線速度(Sx)を追記する。
ある局面では、前記リードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内のPACあるいはDMAあるいはOPCテストゾーンあるいはDriveエリアあるいはDCZ(Drive Calibration Zone)のいずれかまたは複数に、前記最高記録線速度(Sx)あるいは/及び前記半径位置情報(Rx)を追記する。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。
また、ある局面では、予め記録されている再生専用の管理領域(PIC領域)に記載されている最大線速度情報が19.7m/sec以下である。
また、本発明の光学的情報記録媒体は、上記光学的情報記録媒体への記録方法を用いて記録が行われる。
ある局面では、前記光学的情報記録媒体は、6倍速以上で書き込み可能なブルーレイディスク(BD−RあるいはBD−RE)である。
また、ある局面では、前記光学的情報記録媒体は、BCAあるいは、リードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の書き換え可能な領域あるいは追記可能な領域に前記最高記録線速度情報(Sx)あるいは/かつ前記半径位置情報(Rx)を追記するエリアが設けられている。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。また、前記光学的情報記録媒体記録媒体が、前記半径位置情報/物理アドレス情報と異なる位置、例えば前記半径位置/物理アドレスよりも外側の位置あるいは領域で前記基準値を満たす場合、前記光学的情報記録媒体記録媒体に固有な情報として、その異なる位置あるいは領域を記録してもよい。
本発明は、高密度で高速記録または再生が可能な光学的情報記録媒体の検査方法、検査装置、光学的情報記録媒体および情報記録方法に好適用いられる。このような高密度で高速記録または再生が可能な光学的情報記録媒体およびこれに対応した記録再生装置はデジタル家電機器、情報処理装置に好適に用いられる。
本発明は、光学的情報記録媒体の検査方法、検査装置、光学的情報記録媒体および情報記録方法に関する。特に高速で記録または再生を行う光学的情報記録媒体の検査方法および検査装置に関し、そのような光学的情報記録媒体の残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査方法に関する。
光学的情報記録媒体は記録層を備え、情報がピットやマークとして記録層に記録される。情報を再生する場合、ピットやマークに光を照射し、光の強度変化を検出することによって情報を再生する。このような光学的情報記録媒体は、一般的にディスク形状をしており、光ディスクと称される。以下、本願明細書でも一般的慣習に従って光学的情報記録媒体を単に光ディスクと呼ぶ。
高密度・大容量の光ディスクとして、ブルーレイ・ディスク(BD)やデジタル・バーサタイト・ディスク(DVD)などが実用化されており、コンピュータ用のデータやソフトウエア、オーディオビジュアルデータなどを記録するために使用されている。
こうした高密度・大容量の光ディスクのなかでも、特にDVD−R/BD−Rなどのライトワンスと呼ばれる追記型光ディスクの需要が高まっている。追記型光ディスクは、例えば、特許文献1に開示されるTe−O−M(但し、Mは金属元素、半金属元素及び半導体元素から選ばれる少なくとも一つの元素である。)系材料を含む記録層を備える。Te−O−M系材料は、Te、O及びMを含有する複合材料であり、膜形成直後には、TeO2のマトリクス中にTe、Te−M及びMの微粒子がランダムに分散している。この材料によって形成された記録層に所定の強度以上のレーザ光を照射すると、記録層のレーザ光が照射された部分が溶融し、冷却される際、粒径の大きいTe或いはTe−Mの結晶が析出する。これにより、記録層に記録マークを形成する。結晶が析出した部分は他の部分と光学的性質が異なるため、レーザ光を記録マークに照射すると、反射光の強度に差異が生じ、反射光の強度差を信号として検出することができる。このようにして、1回のみ書き込み可能な、いわゆる追記型の記録が可能となる。
光ディスクの回転速度の制御方法にはCLV(Constant Linear Velocity)方式とCAV(Constant Angular Velocity)方式とがある。CLV方式は、半径位置に反比例した回転速度で光ディスクを回転制御し、レーザ光のスポットがトラックを走査する線速度を一定にしながら、一定の記録チャネルクロックで情報の記録を行う。CAV方式は、光ディスクに記録する際の回転速度を一定にしたまま、光ディスクの記録における基準信号であるチャネルクロックを、トラックを走査する半径位置に比例させる。この場合、光ディスクの内周側において、チャネルクロックが低く、記録線速度は遅くなる。また、光ディスクの外周側において、チャネルクロックが高く、記録線速度は速くなる。ただし、記録マークの記録線密度は一定である。
光ディスクに情報を記録し、また、記録された情報を再生する場合、所定の集光状態で集光されたレーザ光を光ディスクに照射する必要がある。この際、光ディスク装置において、レーザ光を所定の集光状態に保つ制御をフォーカスサーボ制御といい、記録層に形成されたマークの列であるトラックを追随するように、ディスクの半径方向におけるレーザ光の位置を保つ制御をトラッキングサーボ制御という。また、フォーカスサーボ制御において、レーザ光の所定の集光状態からのずれ量を示す信号をフォーカスエラー信号と呼ぶ。同様に、トラッキングサーボ制御において、レーザ光のトラックからのずれ量を示す信号をトラッキングエラー信号と呼ぶ。なお、トラッキングエラーおよびフォーカスエラーは半径方向トラッキングエラー(radial tracking error)および軸方向トラッキングエラー(axial tracking error)とも呼ばれる。
例えば、特許文献2および特許文献3は、追記型光ディスクのフォーカスサーボおよびトラッキングサーボに関する技術を開示している。これらの文献に開示されている方法では、フォーカスエラー信号等に基づき記録速度を制御することによって信頼性の高い記録処理を行う光ディスク装置及びこの方法と、トラッキングエラー信号に基づいてディスクの偏重心に起因して発生する振動の値を検出する方法とを開示している。
近年、大容量の光ディスクに対応したコンピュータ周辺機器および光ディスク録画機において、高速転送レートでの記録が強く要望されている。具体的には、BDの6倍速(6x)に相当する速さで情報を記録または再生する技術を実現することが求められている。このためには、光ディスクの回転速度(あるいは線速度)を上げ、レーザ光を高速で走査させる必要がある。ここで、「〜倍速」とは、記録または再生の標準の速さの何倍の速さであるかを意味する。記録または再生の速さは具体的には線速度または転送レートで示される。本願明細書では、主として線速度を用いて記録または再生の速さを説明する。
また、ディスク回転速度を上げると、光ディスクの面ぶれ、偏芯、ディフェクト、厚み分布ばらつき等、光ディスクの形状の不完全さによって、情報を記録するトラックの位置や記録層の位置(高さ)が高速で変位することになる。このため、より高速でフォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御を行なう必要がある。しかし、サーボ制御の応答には一定の限界があり、サーボ制御の応答特性を超えた周波数でトラックの位置や記録層の位置が変位すれば、光ディスク装置は、フォーカスサーボ制御やトラッキングサーボ制御を完全には行なうことができなくなる。その結果、トラッキングエラー信号の残留誤差(残留トラッキング誤差)が大きくなり、トラッキングサーボの安定性が悪化したり、フォーカスエラー信号の残留誤差(残留フォーカス誤差)が大きくなり、記録信号のエンベロープに残留誤差に応じた記録欠け(欠落)が生じてSER(Symbol Error Rate)を悪化させるという課題が顕著に生じる。
ここで、残留トラッキング誤差とは、光ディスク装置が、トラッキングサーボ制御を適切に行なった状態において、なお、レーザ光がトラックからずれることによって、トラッキングエラー信号がゼロとはならず、制御しきれなかったことによって生じる信号成分をいう。同様に、残留フォーカス誤差とは、光ディスク装置が、フォーカスサーボ制御を適切に行なった状態において、なお、レーザ光が所定の集光状態からずれることによって、フォーカスエラー信号がゼロとはならず、制御しきれなかったことによって生じる信号成分をいう。これらの信号の残留誤差は、信号の振幅の大きさによって評価され、その値は、光ディスク装置におけるレーザ光のスポットのトラック中心からのずれ量および記録層からのずれ量として距離(長さ)で表される。例えば、トラッキングエラー信号の残留誤差がxxnmであり、フォーカスエラー信号の残留誤差がxxnmであると表現される。なお、残留誤差は残差とも呼ばれる。また、本願明細書において、単に、残留誤差と呼ぶときは、残留トラッキング誤差および残留フォーカス誤差の両方を意味する。
そこで、光ディスクの作製時に原盤となるスタンパや、光ディスクの成形、カバー層を形成する樹脂の粘度およびスピンコート時の厚みをよりいっそう高い精度で制御することが必要となるとともに、作製した光ディスクが所定の形状精度あるいは機械的特性を満たすかどうかを精度よくかつ効率的に検査する検査方法や検査装置を開発することが重要になる。
特開2004-362748号公報
特開2004−5817号公報
特許第3819138号公報
しかしながら、検査装置のスピンドルモータがBDの6倍速で高速回転しながら検査を行う場合、振動やアクチュエータの共振等、検査装置自身がもつ機械的な要素で残留フォーカス誤差や残留トラッキング誤差が大きく観測されてしまい、本来計測すべき光ディスクの機械特性に起因する残留誤差を精度よく測定(あるいは検査)することができないという課題があった。また、振動やアクチュエータ共振を抑えた価格が高い高性能の検査装置を新たに導入する場合、新規の設備投資が必要となり、メディアのコストアップにつながる。
また、例えば、BDの6倍速(6x)に相当するような線速度での記録を光ディスクの全周に渡ってCLV方式で行う場合、スピンドルモータの回転速度が内周で10000rpmを超える。この回転速度は、光ディスクの基板材料であるプラスチックの破断限界を考慮して安全性の観点から定められた実用上の限界回転速度である。このため、10000rpmを超える速度で光ディスクの検査をおこなうことは好ましくない。
また、トラッキングエラー信号やフォーカスエラー信号の残留誤差を小さくするために、検査装置のサーボフィルタ特性を変更し、より高い精度でサーボ制御を行なうことが考えられる。しかし、4倍速(4x)の線速度でBDに記録を行う光ディスク装置では、すでに6KHzから8KHz程度の高いゲイン交点を持つサーボフィルタを使って、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボ制御を行っている。このため、BDの6倍速(6x)の線速度に対応するため、検査装置のサーボ特性のゲイン交点をこれ以上高くすると、アクチュエータの発振や位相余裕の低下を引き起こすこととなり、サーボの安定性を確保できない可能性がある。
本発明は、このような従来技術の課題を解決し、高い線速度で記録または再生を行なう光学的情報記録媒体の機械特性を精度よく検査する検査方法および検査装置ならびにそのような光学的情報記録媒体に良好な信号を記録するための記録方法および光学的情報記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の光学的情報記録媒体を検査する検査方法は、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、レーザ光の照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と前記第1の線速度Lv1よりも大きい第2の線速度Lv2とに回転速度を切替え、前記光学的情報記録媒体からの反射光からフォーカスエラー信号および/またはトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号および/または前記トラッキングエラー信号に基づいて、前記光学的情報記録媒体を照射するレーザ光のフォーカス制御および/またはトラッキング制御を行い、前記フォーカスエラー信号および/または前記トラッキングエラー信号の制御ループから分岐した出力を、所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタおよび/またはトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって得られるフォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差を、あらかじめ決められた所定の基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記光学的情報記録媒体の所定の半径位置Rまでの内周側の領域は、前記第1の線速度Lv1で前記光学的情報記録媒体を回転させることにより前記比較を行い、前記光学的情報記録媒体の前記所定の半径位置Rから外周側の領域は、前記第2の線速度Lv2で前記光学的情報記録媒体を回転させることにより前記比較を行う。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度と前記第2の線速度の比率Lv2/Lv1が1.5あるいは2である。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度Lv1が9.834m/secまたは4.917m/secの正の実数倍であり、および/または、前記第2の線速度Lv2が14.751m/secまたは4.917m/secの正の実数倍である。
ある好ましい実施形態において、前記所定の半径位置Rは、Lv2/Lv1=1.5の場合、33mm≦R≦36mmの範囲にあり、Lv2/Lv1=2.0の場合、44mm≦R≦48mmの範囲にある。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度と前記第2の線速度は、前期光学的情報記録媒体の所定の領域に予め記録されている読み出しおよび/または書き込み時の線速度のうち、最大の線速度のそれぞれ1/2以下である。
ある好ましい実施形態において、前記第1の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点とは等しく、前記第1の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記トラッキング制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記トラッキング制御を行って前記所定の基準値との比較を行なう場合の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点とは等しい。
ある好ましい実施形態において、前記フォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタは、カットオフ周波数LPF_FcLのローパスフィルタLPFと、低域側カットオフ周波数がBPF_FcLであり、高域側カットオフ周波数がBPF_FcHであるバンドパスフィルタBPFとを含み、前記フォーカスエラー信号の制御ループから分岐した出力が、前記ローパスフィルタLPFおよび前記バンドパスフィルタBPFに入力され、前記第1および第2の線速度で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記フォーカス制御を行って前記所定の基準値との比較する場合において、前記LPF_FcL、前記BPF_FcLおよび前記BPF_FcHを、前記第1の線速度と前記第2の線速度との線速度の比率に応じて切替える。
ある好ましい実施形態において、前記トラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタは、カットオフ周波数LPF_TcLのローパスフィルタLPFと、低域側カットオフ周波数がBPF_TcLであり、高域側カットオフ周波数がBPF_TcHであるバンドパスフィルタBPFとを含み、前記トラッキングエラー信号の制御ループから分岐した出力が、前記ローパスフィルタLPFおよび前記バンドパスフィルタBPFに入力され、前記LPF_TcLおよび前記BPF_TcLは、前記第1および第2の線速度にかかわらず一定であり、前記BPF_FcHを、前記第1の線速度と前記第2の線速度との線速度の比率に応じて切替える。
ある好ましい実施形態において、前記フォーカスエラー信号の前記LPF通過後の出力F_LPFと、前記フォーカスエラー信号の前記BPF通過後の出力F_BPFと、前記トラッキングエラー信号の前記LPF通過後の出力T_LPFと、前記トラッキングエラー信号の前記BPF通過後の出力T_BPFとを、それぞれあらかじめ決められた所定の基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記半径位置毎に前記出力F_LPF、F_BPF、T_LPFおよびT_BPFを前記所定の基準値と比較する際、前記4つの出力を前記第1の線速度および前記第2の線速度にそれぞれに応じた基準値と比較する。
ある好ましい実施形態において、前記第2の線速度における前記F_LPFの基準値は、前記第1の線速度における前記F_LPF基準値の基準値以上である。
ある好ましい実施形態において、前記レーザ光の強度は、前記線速度にかかわらず同じである。
本発明の光学的に情報が再生および/または記録される光学的情報記録媒体は、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、k倍(kは正の実数) の速度が速度情報として前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されており、前記光学的情報記録媒体に対して所定の検査を行う場合に、前記光学的情報記録媒体の第1の半径位置の範囲においては、第1の測定速度を用いて前記検査が行われ、前記第1の半径位置の範囲よりも外周側にある第2の半径位置の範囲においては、第2の測定速度を用いて前記検査が行われる。
ある好ましい実施形態において、前記第2の測定速度は、前記基準速度のk倍よりも低い速度であり、前記第1の測定速度は、前記第2の測定速度よりも低い速度である。
ある好ましい実施形態において、前記kは6以上の正の実数である。
本発明の光学的に情報が再生および/または記録される光学的情報記録媒体は、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、m倍(mは正の実数)の速度が速度情報として前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されている第1の光学的情報記録媒体である場合に、前記第1の光学的情報記録媒体は、所定の測定速度を用いて前記検査が行われ、前記光学的情報記録媒体に対する再生および/または記録の基準速度に対して、n倍(nはmより大きい正の実数)の速度が前記光学的情報記録媒体の所定の領域に記録されている第2の光学的情報記録媒体である場合に、前記第2の光学的情報記録媒体は、前記第2の光学的情報記録媒体の半径位置に応じて異なる測定速度を用いて前記検査が行われる。
ある好ましい実施形態において、前記第2の光学的情報記録媒体に対する測定速度の一方は、前記第1の光学的情報記録媒体に対する測定速度よりも大きく、前記第2の光学的情報記録媒体に対する測定速度のもう一方は、前記第1の光学的情報記録媒体に対する測定速度以上である。
ある好ましい実施形態において、mは4以上の正の実数であり、および/または、nは6以上の正の実数である。
本発明の再生方法は、上記いずれかに規定される光学的情報記録媒体を再生する方法であって、前記光学的情報記録媒体に光を照射するステップと、前記光学的情報記録媒体の所定の領域から速度情報を再生するステップとを有する。
本発明によれば、光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と前記第1の線速度Lv1よりも大きい第2の線速度Lv2とに回転速度を切替え、フォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差を測定する。回転速度を切替えることによって、光学的情報記録媒体の内周側において、線速度を遅くし、光学的情報記録媒体の回転速度を低くすることできるため、高倍速の光学的情報記録媒体でも、検査装置の振動やアクチュエータの共振等、検査装置自身がもつ機械的な要素によって、フォーカスエラー信号の残留誤差および/またはトラッキングエラー信号の残留誤差に悪影響を与えることが抑制され、計測すべき光学的情報記録媒体の機械特性に起因する残留誤差を精度よく測定することができる。
したがって、光学的情報記録媒体の記録や再生の際、面ぶれ、偏芯、ディフェクト、厚み分布ばらつき等の影響により、トラッキングエラー信号の残留誤差成分が大きくなり、トラッキング引き込み失敗、アクチュエータの発振等のサーボの安定性の悪化を生じさせたり、フォーカスエラー信号の残留誤差成分が大きくなり、記録信号のエンベロープに残留誤差に応じた欠落が生じて、再生信号のSERを顕著に悪化することがなく、再生信号の品質(SER)とトラッキングサーボの安定性に優れたさせることのない高品質な光学的情報記録媒体を選別し得る検査方法が提供される。特に、BD6倍速(チャネルクロック396MHz)以上の線速度で記録可能な追記型あるいは書き換え型光ディスクの検査方法に好適に用いられる。
また、本発明によれば、光学的情報記録媒体の所定領域に記録可能最大線速度および半径位置情報の少なくとも一方を追記することによって、光学的情報記録媒体の生産時に残留誤差特性の検査装置の共用化が図れ、設備投資を最小限に抑えて、かつ光学的情報記録媒体の生産歩留まりを高めることができ、光学的情報記録媒体の生産コストの低減を図ることができる。
本発明による光学的情報記録媒体の実施形態の構成を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体を6倍速のCLVに記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体をその半径位置によって、4倍速および6倍速のCLVによって記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明に実施形態であって、光学的情報記録媒体をその半径位置によって、4倍速、6倍速および8倍速のCLVによって記録または再生した場合の半径位置と回転速度との関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、光学的情報記録媒体の検査装置の全体の構成を示すブロック図である。
図5の検査装置のサーボゲイン特性を示す模式図である。
図5の検査装置の残留トラッキング誤差測定部のブロック図である。
図5の検査装置の残留フォーカス誤差測定部のブロック図である。
図6の残留トラッキング誤差測定部および図7の残留フォーカス誤差測定部で用いる測定フィルタの特性を示す図である。
4倍速でディスクを回転させた時の残留フォーカス誤差の測定結果を表す図である。
2倍速でディスクを回転させた時の残留フォーカス誤差の測定結果を表す図である。
残留フォーカス誤差の大きい状態で、記録した信号のRF信号と残留フォーカス誤差との関係を示す図である。
外乱周波数ごとの残留トラッキング誤差とトラッキング引き込み失敗率との関係を示す図である。
残留フォーカス誤差とデフォーカスマージンとの関係を示す図である。
本発明による実施形態であって、半径位置によって4倍速のCAVおよび6倍速のCLVで記録および再生する場合の半径位置と回転速度の関係を表す図である。
以下、光学的情報記録媒体の一例として、光ディスクの1種であるBD−R(追記型ブルーレイディスク)を挙げて本発明の実施形態を説明する。しかし、光学的情報記録媒体はこれに限定されず、複数回情報の書き換えが可能なBD−RE(書換え型ブルーレイディスク)やBD−ROM(再生専用ブルーレイディスク)であってよい。また、他の規格の光ディスクであってもよい。
ブルーレイディスクの主な光学定数と物理フォーマットについては、「ブルーレイディスク読本」(オーム社出版)やブルーレイアソシエーションのホームページ(http://www.blu-raydisc.com/)に掲載されているホワイトペーパに開示されている。BD−Rでは、波長405nm(誤差範囲の許容値を±5nmとすれば、400〜410nm)のレーザ光およびNA=0.85(誤差範囲の許容値を±0.01とすれば、0.84〜0.86)の対物レンズを用いる。BD−Rのトラックピッチは0.32μmであり、記録層が1層または2層設けられている。記録層またの記録面がレーザ入射側から片面1層あるいは片面2層構成であり、BD−Rの保護層の表面から記録面まで距離は75μm〜100μmである。記録面は追記型である。記録信号の変調方式は17PP変調を利用し、記録されるマークの最短マーク長(2Tマーク)は0.149μm(チャネルビット長:Tが74.50nm)である。記録容量は片面単層25GB(より詳細には、25.025GB)、または、片面2層50GB(より詳細には、50.050GB)である。チャネルクロック周波数はBD標準転送レート(1X)において66MHz(66.000Mbit/s)であり、BD4xの転送レートでは264MHz(264.000Mbit/s)、BD6xの転送レートでは396MHz(396.000Mbit/s)、BD8Xの転送レートでは528MHz(528.000Mbit/s)である。標準線速度(基準線速度、1X)は4.917m/secである。2倍(2x)、4倍(4x)、6倍(6x)および8倍(8x)の線速度は、それぞれ、9.834m/sec、19.668m/sec、29.502m/secおよび39.336m/secである。標準線速度よりも高い線速度は一般的には、標準線速度の正の整数倍であるが、整数に限られず、正の実数倍であってもよい。また、0.5倍(0.5x)など、標準線速度よりも遅い線速度も定義し得る。
図1は、BD−Rのトラックレイアウトを模式的に示している。図10に示すようにBD−Rの内周側からリードインゾーン1004、データ領域1001、リードアウトゾーン1005がこの順で配置されている。リードインゾーン1004内には、OPC(Optimum Power Control)領域1002およびPIC(Permanent Information & Control Data)領域1003が配置されている。OPC領域1002は、データ領域1001にデータを記録する前に、ディスク毎に最適な記録パワーや記録パルス列の条件を試し記録により最適化するために用いられる。また、個々の光ディスク装置の性能のばらつきや、急激な温度変動などの環境変化が生じた際に、記録パワーや記録パルス列の変動分などを調整するために、試し記録を行う領域でもある。PIC領域1003には、溝を高速に変調することで、ディスク構造や推奨記録パワーを求めるのに必要なパラメータや記録パルス列の推奨値、記録線速度、再生条件などが記録されており、再生専用領域である。PIC領域1003の内周側には図示しないが、BCA(Burst Cutting Area)とよばれるバーコード状の信号でメディア識別用の固有の番号が記録されており、著作権保護などの情報として用いられる。
データ領域1001は、実際に光ディスクにユーザが指定するデータを記録する領域でユーザ領域ともよばれる。
リードアウトゾーン1005には、OPC領域およびPIC領域は設けられておらず、INFO領域とよばれる記録データの管理情報に関するデータが記録されている領域が設けられている。図示しないが、INFO領域は内周のリードインゾーン1004内にも設けられ、信頼性を高めるために外周と共通の情報が記録されている。これら各領域のディスク中心からの距離(半径)は、リードインゾーンが22.2mm〜24.0mmであり、データ領域が24.0mm〜58.0mmであり、リードアウトゾーンは58.0mm〜58.5mmである。
次に、BD−Rへの情報記録方法について説明する。BD−RにCLV方式によって、4倍速(4x)の線速度で情報を記録あるいは再生する場合、4倍速の線速度を達成するためには、最内周のデータ領域ではディスクの回転速度を約8000rpmに保つ必要があり、最外周のデータ領域では回転速度を約3200rpmに保つ必要がある。さらに高線速度で記録または再生を行う場合には、ディスクの回転速度もいっそう高くなる。
図2は6倍速(6x)の線速度で情報をBD−Rに記録または再生する場合における記録位置と回転速度との関係を表している。記録位置は半径rで示している。データ領域1001の最内周部であるr=24mmの位置では約12000rpm、データ領域1001の最外周部であるr=58mmの位置では約4800rpmの回転速度でBD−Rを回転させる必要がある。図2から分かるように、半径rが約28mmより内周側で記録再生を行なう場合、スピンドルモータの回転速度が10000rpmを越える。
前述したように光ディスクの回転速度が10000rpmを超えることは、プラスチックの破断限界の観点から好ましくない、このため、10000rpmを超える速度で光ディスクの検査をおこなうことは好ましくない。また、このような高速では、検査装置のサーボ特性が不安定となる可能性があり、正確に光ディスクを検査できない可能性がある。そこで本発明では、最大回転速度に制限を設けて光ディスクの検査を行なう。
具体的には、設定した最大回転速度を超えないように、ディスクの内周側での線速度を外周側に比べて遅くする。図3は、半径位置rが約36mmより内周側では4倍速(4x)の線速度で、それより外周側では6倍速(6x)の線速度でCLVにより記録または再生を行う場合における半径位置と光ディスクの回転速度との関係を示している。この場合、データ領域1001の最内周部(r=24mm)における4倍速(4x)の線速度での最大回転速度は約8000rpmである。光ディスクの全領域における最大回転速度をこの値に決定した場合、6倍速(6x)の線速度では、半径位置rが約36mmのとき、回転速度が約8000rpmとなる。したがって、半径位置rが36mmよりも内周側では4倍速の線速度で記録または再生を行い、半径位置rが36mmまたはこれよりも外周側では6倍速の線速度で記録または再生を行うことによって、光ディスクの回転速度を約8000rpm以下にすることができる。
このように4倍速(4x)と6倍速(6x)との線速度率(1.5倍)に応じて、最内周の半径位置24mmの1.5倍となる半径位置36mmにおいて、2つの線速度を切り替えることによって、4倍速(4x)および6倍速(6x)のいずれの線速度で回転させる場合でも最大回転速度を等しくすることが可能である。回転速度の上限を決め、半径位置に応じて線速度を変えて記録または再生を行なうことによって、線速度が異なっても、最大回転速度が同じであれば、光ディスクの偏芯や面ぶれ成分に追従するためのトラッキング制御やフォーカス制御のサーボ特性のうち、後述するサーボフィルタ(レファレンスサーボ)の低周波数側のゲイン特性をそれぞれの線速度の最大回転速度に応じて変更する必要が無く、光ディスク装置のサーボフィルタ特性の設計を4倍速(4x)と6倍速(6x)とで共通化することができる。
また、後述する光ディスクの残留誤差検査装置のサーボフィルタ特性を1つに共通化することが可能となり、線速度に応じてサーボフィルタの切替えあるいは変更のためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、サーボフィルタ特性(レファレンスサーボ)の設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い再生するという切替え手順がなくなる。このため、検査時間を短縮できるという効果がある。
また、異なる線速度における残留誤差測定の際に、測定回転速度と後述する残留誤差を測定するフィルタのカットオフ周波数を単に切り替えるだけで、内周から外周まで連続的に残留誤差の検査が可能となり、検査時間を大幅に短縮することができる。これによってタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高めることが可能である。また、4倍速(4x)のBD−Rディスクの検査装置と同じレファレンスサーボ条件で残留誤差測定および検査をも可能である。4倍速(4x)のBD−Rディスクの残留誤差検査装置をそのまま、6倍速(6x)のBD−Rディスクの検査装置としても流用することが可能となり、それぞれのラインを共通化することによって、新規の検査装置の導入が不要となり設備投資費を大幅に削減することができる。その結果メディアを量産する上で大幅なコストダウンにつながるという大きな効果がある。
ここでは切替え半径位置rを36mmにしたが、これは線速度比が1.5倍の時の一例にすぎない。リードインゾーンの最内周部の22.2mmを基準とし、その回転速度の上限を最大回転速度(約8000rpm)とした場合、33.3mmを4倍速(4x)と6倍速(6x)との切替え半径位置としてもよい。また、2層ディスクのlayer1のOPC領域の最内周部ある22.7mmを基準としてもよい。すなわち切替え半径位置としては約33mm〜36mmの間の半径位置に設けるのが適切である。
また、例えば4倍速(4x)および8倍速(8x)の線速度を用いる場合、線速度比Lv2/Lv1は2.0である。6倍速(6x)の場合と同様に低速度、つまり4倍速の線速度で記録または再生を行なう場合の半径位置22.2mm〜24mmにおける回転速度を上限回転速度とすると、切替え半径位置は約44mm〜48mmに設けるのが適切である。
また、1つの光ディスクに対して、3つ以上の線速度で記録または再生をおこなってもよい。この場合、線速度の切り替え半径位置の数は用いる線速度の数より1つ少ない数となる。例えば、4倍速(4x)、6倍速(6x)および8倍速(8x)の線速度で記録または再生を行なうためには、線速度の切替え半径位置を2箇所設ける。図4は、4倍速(4x)、6倍速(6x)および8倍速(8x)でCLVによって記録または再生を行う場合における半径位置と回転速度との関係を示している。各線速度の上限回転速度は、4倍速(4x)の最内周部の基準となる半径位置における回転速度によって決定される。4倍速(4x)を基準とした場合の6倍速(6x)および8倍速(8x)の線速度比は、1.5および2.0となる。したがって、4倍速(4x)の最内周部の基準となる第1の半径位置を22.2mm〜24mmに設定した場合、第2及び第3の切り替え半径位置は、それぞれ約33mm〜36mmおよび約44mm〜48mmに設けることができる。この場合、第1の半径位置よりも内周側では、4倍速(4x)の線速度で記録または再生を行い、第1の半径位置と第2の半径位置の間は6倍速(6x)の線速度で記録または再生を行い、第2の半径位置よりも外側では8倍速(8x)の線速度で記録または再生を行う。このとき最大回転速度はいずれの線速度であっても、4倍速(4x)の最内周部の基準となる第1の半径位置における回転速度である約8000rpmとなる。
この場合、前述の4倍速(4x)および8倍速(8x)の線速度を用いる場合に比べて、第1と第2の切替え半径位置の間を4倍速(4x)ではなく6倍速(6x)で記録または再生を行うことができる。このため、光ディスク全体での記録または再生速度を高め、書き込み時間または読み出し時間を短縮することが可能となる。
次に、本発明による光学的情報記録媒体の検査装置の実施形態を説明する。本実施形態の光学的情報記録媒体の検査装置は、検査すべき光ディスクを前述したような異なる線速度で回転させ、基準となるサーボ特性で、光ピックアップから出射するレーザ光のフォーカス制御およびトラッキング制御を行ないながら、得られるトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号の残留トラッキング誤差および残留フォーカス誤差を測定する。そして、得られた値を基準値と比較することによって光ディスクの合否を判定する。
図5は、本実施形態の光学的情報記録媒体の検査装置の全体構成を示すブロック図である。図5に示す検査装置は、BD−Rの光ディスク101の検査を行なう。光ディスク101の構造は、図1を参照して説明したとおりである。
図5に示す検査装置は、スピンドルモータ102、光ピックアップ103、レーザ駆動部116、回転速度設定部117およびRFアンプ104、105、106を備える。
光ディスク101はスピンドルモータ102により回転駆動される。スピンドルモータ102の回転速度制御は回転速度設定部117によりを制御される。レーザ駆動部116は光ピックアップ103内の半導体レーザ103aを駆動し、再生パワーでレーザ光が光ディスク101に照射される。光ディスク101から反射された反射光は、検出レンズ103cを透過し、光検出器103cで受光され、電気信号に変換される。電気信号はRFアンプ104、105、106へと出力される。
検査装置はさらに再生信号処理部107、トラッキングサーボアンプ108およびフォーカスサーボアンプ109を備える。RFアンプ104は、光ピックアップ103の出力を増幅し、RF信号を再生信号処理部107へ出力する。RFアンプ105は、光ピックアップ103の出力からトラッキングエラー信号(TE)を生成し、トラッキングサーボアンプ108へ出力する。RFアンプ106は、光ピックアップ103の出力からフォーカスエラー信号(FE)を生成し、フォーカスサーボアンプ109へ出力する。
検査装置はさらにトラッキングアクチュエータドライバ110およびフォーカスアクチュエータドライバ111を備える。トラッキングサーボアンプ108は、トラッキングエラー信号から制御信号を生成し、トラッキングアクチュエータドライバ110へ出力する。同様に、フォーカスサーボアンプ109は、フォーカスエラー信号から制御信号を生成し、フォーカスアクチュエータドライバ111へ出力する。トラッキングアクチュエータドライバ110およびフォーカスアクチュエータドライバ111は、それぞれ、制御信号に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号が、光ピックアップ103内のトラッキングおよびフォーカス方向の駆動コイルを駆動する。これにより、光ピックアップ103、RFアンプ105、トラッキングサーボアンプ108、トラッキングアクチュエータドライバ110からなり、トラッキングエラー信号を用いたトラッキングサーボ制御のループが構成される。同様に、光ピックアップ103、RFアンプ106、フォーカスサーボアンプ109、フォーカスアクチュエータドライバ111からなり、フォーカスエラー信号を用いたフォーカスサーボ制御のループが構成される。
図6は、トラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御におけるサーボフィルタのゲイン特性を示す模式図である。サーボフィルタのゲイン特性はレファレンスサーボ特性とも呼ばれる。トラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御はそれぞれ所定の基準となるサーボ特性を有している。図6に示すように、サーボ特性は、低周波側では、所定のゲインレベルを有し、周波数が高くなるにつれ、ゲインが小さくなる。ゲインが0デシベルとなる周波数f0をゲイン交点(crossover frequency)と呼ぶ。サーボ特性は主としてこのゲイン交点によって特徴付けられる。トラッキングサーボ制御のサーボ特性およびフォーカスサーボ制御のサーボ特性は互いに異なるが、光ディスクの検査中、前述したように線速度を変化させても同じサーボ特性を用いてトラッキングサーボ制御およびフォーカスサーボ制御を行なう。
検査装置はさらに残留トラッキング誤差測定部112、残留フォーカス誤差測定部113、メモリ114および判定部115を備える。RFアンプ105から出力されたトラッキングエラー信号の一部は、前述のトラッキングエラー信号の制御ループから分岐され、残留トラッキング誤差測定部112に入力される。残留トラッキング誤差測定部112は、以下において詳細に説明するように、トラッキングサーボ制御を行ないながら得られるトラッキング信号から残留トラッキング誤差を抽出し、メモリ114へ出力する。同様に、RFアンプ106から出力されたフォーカスエラー信号の一部は、前述のフォーカスエラー信号の制御ループから分岐され、残留フォーカ誤差測定部113に入力される。残留フォーカス誤差測定部113は、フォーカスサーボ制御を行ないながら得られるフォーカスエラー信号から残留フォーカス誤差を抽出し、メモリ114へ出力する。これらの残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差の測定は、光ディスクの各半径位置で測定される。
判定部115は、メモリに記録された残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差と、予め設定されている残留トラッキング誤差の基準値および残留フォーカス誤差の基準値とそれぞれ比較し、合格、不合格の判定を行う。例えば、各半径位置における残留トラッキング誤差及び残留フォーカス誤差がいずれも基準値以下である場合に、検査された光ディスクを合格であると判定する。
図7および図8は、それぞれ残留トラッキング誤差測定部112および残留フォーカス誤差測定部113の構成を示している。残留トラッキング誤差測定部112は、バッファ201、LPF(ローパスフィルタ)202、BPF(バンドバスフィルタ)203、残留誤差測定部204およびrmsノイズ測定部205を含む。LPF202およびBPF203は、残留誤差を測定するために用いられる測定フィルタである。
バッファ201に入力されたトラッキングエラー信号(TE)は、2つに分けられ、LPF202およびBPF203にそれぞれ入力される。残留誤差測定部204はLPF202を通過したトラッキングエラー信号の残留トラッキング誤差を測定する。rmsノイズ測定部205は、BPF203を通過したトラッキングエラー信号のrmsノイズを測定する。
図9は、LPF202およびBPF203の周波数特性を模式的に示している。残留トラッキング誤差測定部112のLPF202は、カットオフ周波数LPF_TcLを有しており、残留トラッキング誤差測定部112のBPF203は、低域側のカットオフ周波数BPF_TcLおよび高域側のカットオフ周波数BPF_TcHを有している。LPF202のカットオフ周波数LPF_TcLは、BPF203の低域側のカットオフ周波数BPF_TcLと等しい。これらのカットオフ周波数は、残留誤差の測定条件に応じて変化させることができる。LPF202は−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタ、BPF203も低域側+60dB/dec、高域側−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタである。
残留誤差測定部204は、光ディスク101の検査中、LPF202を通過したトラッキングエラー信号に含まれる残留トラッキング誤差をリアルタイムで検出する。rmsノイズ測定部205は、BPF203を通過したトラッキングエラー信号に含まれるrmsノイズを、光ディスクの1周分に相当する期間に得られたトラッキングエラー信号の実行ノイズ成分を検出する。
残留フォーカス誤差測定部113も残留トラッキング誤差測定部112と同様に構成されている。具体的には、図8に示すように残留フォーカス誤差測定部113は、バッファ301、LPF302、BPF303、残留誤差測定部304およびrmsノイズ測定部305を含む。LPF302およびBPF303は、残留誤差を測定するために用いられる測定フィルタである。
バッファ301に入力されたフォーカスエラー信号(FE)は、2つに分けられ、LPF302およびBPF303にそれぞれ入力される。残留誤差測定部304はLPF302を通過したフォーカスエラー信号の残留フォーカス誤差を測定する。rmsノイズ測定部305は、BPF303を通過したフォーカスエラー信号のrmsノイズを測定する。
LPF302およびBPF303もLPF202およびBPF203と同様の周波数特性を備える。図9に示すように、残留フォーカス誤差測定部113のLPF302は、カットオフ周波数LPF_FcLを有しており、残留フォーカス誤差測定部113のBPF303は、低域側のカットオフ周波数BPF_FcLおよび高域側のカットオフ周波数BPF_FcHを有している。LPF302のカットオフ周波数LPF_FcLは、BPF303の低域側のカットオフ周波数BPF_FcLと等しい。これらのカットオフ周波数は、残留誤差の測定条件に応じて変化させることができる。LPF302は−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタ、BPF303も低域側+60dB/dec、高域側−60dB/decの傾斜をもつバターワースフィルタである。
なお、便宜上、残留トラッキング誤差測定部112のLPF202およびBPF203の周波数特性と残留フォーカス誤差測定部113LPF302およびBPF303の周波数特性を説明するため、同じ図9を参照したが、LPF202およびLPF302のカットオフ周波数LPF_TcLおよびLPF_FcLは、互いに異なっていてもよい。同様に、BPF203およびBPF303の低域側のカットオフ周波数BPF_TcLおよびBPF_FcLは互いに異なっていてもよく、高域側のカットオフ周波数BPF_TcHおよびBPF_FcHも互いに異なっていてもよい。
残留誤差測定部304は、光ディスク101の検査中、LPF302を通過したフォーカスエラー信号に含まれる残留トラッキング誤差をリアルタイムで検出する。rmsノイズ測定部305は、BPF303を通過したトラッキングエラー信号に含まれるrmsノイズを、光ディスクの1周分に相当する期間に得られたフォーカスエラー信号の実行ノイズ成分を検出する。
次に測定フィルタであるLPF202、BPF203、LPF302およびBPF303のカットオフ周波数とそれぞれの残留誤差測定の条件および手順を説明する。
表1は、4倍速(4x)用のBD−Rディスクと6倍速(6x)用のBD−Rディスクの残留フォーカス誤差の測定条件とその基準値の一例を示している。表2は、4倍速(4x)用のBD−Rディスクと6倍速(6x)用のBD−Rディスクの残留トラッキング誤差の測定条件とその基準値の一例を示している。以下、4倍速、6倍速等の線速度を単に4x、6x等と呼ぶ場合がある。
なお、以下では、理解し易いように、残留フォーカス誤差の測定条件、基準値および残留フォーカス誤差の検査方法と、残留トラッキング誤差の測定条件、基準値および残留トラッキング誤差の検査方法とを分けて説明する。しかし、これら2つの誤差の測定は同時に行ってもよいし、いずれか一方の測定を先に行い、他方の測定を後に行ってもよい。また、本実施形態の検査方法は、残留フォーカス誤差の測定または残留トラッキング誤差の測定の一方を行ってもよいし、残留フォーカス誤差の測定および残留トラッキング誤差の測定の両方を行ってもよい。
まず、残留フォーカス誤差の測定条件と基準値および残留フォーカス誤差の検査方法について説明する。
表1において、記録可能最大速度とは、光ディスクに情報を記録する際の最大速度を表す。4xディスクは、基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録をすることが可能であり、4倍(4x)の線速度が記録可能最大速度である。6xディスクは、前述したように、内周側では基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録が可能であり、外周側では、6倍(6x)の線速度で記録が可能である。この場合、6倍(6x)の線速度が記録可能最大速度である。このため、4xディスクではディスクの内周から外周にわたって全周で同一の測定条件を用いるが、6xディスクの場合、半径位置r=36mmを境に2つの条件で測定することになる。
内周側の線速度が第1の線速度Lv1であり、外周側の線速度が第2の線速度Lv2である。第1の線速度Lv1および第2の線速度Lv2は、いずれも基準となる線速度4.917m/secの正の実数倍であり、第2の線速度Lv2は第1の線速度Lv1よりも大きい。
光ディスクの記録および/または再生(読み出しおよび/または書き込み)可能な線速度は光ディスクの所定領域、具体的に、図1に示すPIC領域1003内のディスク管理領域にあらかじめ記録されている。
残留フォーカス誤差の測定は、記録可能最大速度の1/2の線速度で行う。この際、実際にユーザがBD−Rディスクを用いて情報の記録または再生を行った場合に生じる残留フォーカス誤差を推定するため、検査の際に用いるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数は、線速度に比例して実際の記録または再生の時の1/2に設定する。
図10Aおよび図10Bは、同じ光ディスクの同じトラックを4倍速(4xおよび2倍速(2x)で記録または再生させた場合における残留フォーカス誤差をそれぞれ示している。
ここで測定に用いたサーボフィルタのゲイン交点は、それぞれ6.4kHzと3.2kHzである。また、残留誤差測定時のLPFのカットオフ周波数はそれぞれ3.2kHzと1.6kHzである。2つの信号を比較することにより明らかなように、カットオフ周波数を線速度の比に比例して、1/2にすることにより、同じ大きさの振幅の残留誤差値を得ることができる。
以上のことから、実際の記録時の記録最大速度(つまり、ユーザーデータを記録するときの線速度)の1/2の線速度でサーボ特性を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点と、測定フィルタのカットオフ周波数をそれぞれ線速度比に比例させて1/2にすることにより、異なる2つの線速度で測定しても、同じ振幅の残留誤差値を得ることができる。
回転速度が5000rpmを超える速い回転速度でディスクを回転させる場合、スピンドルモータの機械的な振動や、ピックアップのアクチュエータの共振等の影響が顕著な問題となる。高速回転時には、スピンドルモータやアクチュエータなどの検査装置に起因する機械的な残留誤差成分の影響が無視できなくなり、光ディスク自体がもっている本来測定したいディスクの残留誤差成分を正確に測定することが困難となる。したがって、実際の記録または再生時の線速度の1/2となるように回転速度を低下させ、かつサーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタのカットオフ周波数もそれぞれ線速度の比に比例して1/2に低下させた状態で、残留フォーカス誤差の測定することにより、検査装置自体に起因する振動や共振などの機械的に生じる残留誤差成分を抑えることができ、光ディスク自体のもつ残留誤差成分を精度よく測定することが可能となる。
表1に示すように、6xディスクにおいて、半径位置が36mm未満の半径においては、記録可能最大速度が4xであることから、4xディスクと同じ測定条件で測定する。つまり、6xディスクであっても半径位置36mmより内周側では、従来の4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件で残留フォーカス誤差の測定を行う。
一方、半径位置が36mm以上の外周においては、記録可能な最大速度が6xである。また、4xと6xの線速度の比率は1.5倍である。このため、サーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタ(LPF、BPF)のカットオフ周波数とを4xディスク用の測定に用いられる値の1.5倍にして、6xディスクの検査を行うことが考えられる。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を1.5倍の4.8kHzにした場合、この条件は、ユーザが実際に使う光ディスク装置では、9.6kHzのゲイン交点でフォーカスサーボ制御しながら6xの線速度で、記録または再生を行なう場合に相当する。
一般的なハーフハイトサイズの光ディスク装置のように小型の光ディスク装置では、アクチュエータの発振がおこらず安定的にサーボ制御を行うためには、位相余裕がある程度確保できるよう、ゲイン交点を6〜8kHzにする必要がある。このことは、1/2の回転速度において、3.2kHzのゲイン交点で測定することが、光ディスク装置が安定に動作するゲイン交点のほぼ限界でと言える。したがって、本検査方法では、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点は4x用ディスクの検査装置におけるゲイン交点と同じ値、つまり、3.2kHzに設定する。
測定フィルタのLPFとBPFのカットオフ周波数は、4xディスクと6xディスクの最大速度比1.5に比例して変更する。この理由を説明する。残留フォーカス誤差について考慮しなければならない観点は、RF信号のSER(Symbol Error Rate)の悪化である。つまり、記録後のRF信号のエンベロープの欠落を防ぐために残留フォーカス誤差に基準を設ける。残留フォーカス誤差が大きく生じた状態で、書き込み時にディスクが許容しているデフォーカスマージンを超えた場合、デフォーカスによって光ディスクの記録膜層上でのレーザ光のスポットの絞りがゆるくなる。このため、集光されるレーザ光のエネルギー密度が不足し、実質的に記録パワーが不足した状態でマークが書き込まれることとなる。その結果、光ディスクの記録層に形成されるマークに、残留誤差に応じて半径方向の幅に大小が生じる。
図11に残留フォーカス誤差の大きい状態で光ディスクに情報の記録を行い、記録された情報を再生した場合における再生波形(RF信号)とフォーカスエラー信号とを示す。このフォーカスエラー信号は測定用フィルタを通過させているため、振幅の大きさが残留フォーカス誤差を表わしている。図11に示すように、残留フォーカス誤差の大きい部分でRF信号のマーク側のエンベロープ(下側のエンベロープ)の欠落が生じていることがわかる。このような残留フォーカス誤差を生じさせている原因は、光ディスク面内の厚さばらつきである。残留フォーカス誤差は光ディスクを回転させ、反射光から生成される信号に基づいている。このため、記録層を覆うカバー層の厚みの空間分布が、レーザ光が走査する線速度に応じた時間軸分布に変換されて観測されることになる。その結果、カバー層の厚さのバラつきに起因する残留フォーカス誤差の周波数は、回転している線速度に比例する。例えば、レーザ光が走査する円周上におけるカバー層の厚さのばらつきによって、2xの線速度で観測される残留フォーカス誤差の周波数は、3xの線速度では、線速度比1.5に比例した1.5倍の周波数になる。ここでサーボフィルタと測定フィルタの周波数を線速度比に比例して変化させた場合、図10Aおよび図10Bを参照して説明したように、同じ振幅の残留フォーカス誤差が観測される。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を3.2kHzのまま固定した状態で、回転速度を上げているため、3xの回転速度では、ゲイン交点近傍の4kHzから5kHzあたりの残留フォーカス誤差成分は、ゲイン交点外になるため、フォーカスサーボ制御によって抑圧することができず、より大きな残留誤差として観測される。このことは、この帯域の残留フォーカス誤差成分を抑圧できなれば、RF信号のエンベロープ欠落が生じ、再生信号のSERを悪化させ読み取り誤りを生じることを意味する。
したがって、残留フォーカス誤差の測定フィルタのカットオフ周波数を回転速度に応じて1.5倍に変更した状態で残留フォーカス誤差を測定すれば、4x用ディスクで生じていたRF信号のエンベロープの欠落に寄与している残留フォーカス誤差成分をもれなく検出することができる。
BPFの残留フォーカス誤差成分は記録再生信号の品質を確保する目的とは異なり、アクチュエータに流れる無駄電流を抑制するために検査している。したがって、この残留フォーカス誤差成分はrmsノイズ成分と呼ばれる。このrmsノイズを測定するバンドパスフィルタの低域側および高域側のカットオフ周波数も線速度比に比例して1.5倍にして光ディスクの検査を行なう。これにより、4xディスクで問題となる周波数帯域のrmsノイズ成分をもれなく検出することができる。
したがって、6xディスクを検査するにあたって、サーボフィルタのゲイン交点は、実ドライブで実現できるゲイン交点に相当する3.2kHzの状態のまま、測定フィルタのカットオフ周波数を1.5倍に変更した測定条件で光ディスクの検査を行うことによって、残留フォーカス誤差の大きいディスクを正しく選別することができる。
また、4xディスクと6xディスクあるいは、6xディスクの切替え半径より内周側と外周側でサーボフィルタの特性、特にゲイン交点を変えないで検査することができるため、検査装置のサーボフィルタを1つに共通化することが可能となり、光ディスクの生産性の観点からも有利である。つまり、4xディスクの検査装置をそのまま6xディスクの検査装置として流用することが可能となる。
また、線速度に応じてサーボフィルタの切替えのためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、レファレンスサーボの設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い、光ディスクの検査を行うという切替え手順が不要となり、異なる線速度の間の残留誤差測定を、線速度のみを変えることによって、連続的に行なうことが可能となり、検査時間を短縮することができる。これによってタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高めることが可能となる。また、BD−Rの4xディスクの検査装置と同じレファレンスサーボ条件で測定することが可能であるため、BD−Rの4xディスクに用いていた検査装置をそのまま、BDーR6xの検査装置として流用することが可能となる。したがって、これら2種類の光ディスクの検査ラインを共通化することができ、新規の検査装置の導入が不要となり、設備投資費を削減することができる。その結果、光ディスク生産時の製造コストを下げることができるという大きな効果がある。
前述のような測定条件が予め設定された検査装置を用いることにより、光ディスクの内周から外周まで全周にわたって、残留フォーカス誤差を測定し、LPFとBPFそれぞれの残留誤差値に対して基準値以下である場合、検査合格とし、基準値を超える場合、検査不合格とする。
次に、残留フォーカス誤差の基準値について説明する。前述したように、線速度が変化しても線速度比に比例して測定フィルタのカットオフ周波数を変更しているため、6xディスクの半径位置が36mm未満の半径および36mm以上の外周での残留フォーカス誤差値の許容できる振幅はほぼ等しい。このため、残留フォーカス誤差の基準値(BPF、LPF)は、4xディスクの検査の基準値と同じでよい。ただし、基準値は光ディスクに記録を行うレーザ光のパワーマージンを考慮することが好ましい。図12は、2種類の光ディスクの残留フォーカス誤差とそのときのデフォーカスマージンとの関係を表示している。デフォーカスマージンはSER≦4.2E−3となるフォーカスの範囲をいう。ここではパワーマージンの異なるディスクAおよびディスクBを用いた。ディスクAのパワーマージンは23%であり、ディスクBのパワーマージンは18%である。ディスクAとBとでは5%のパワーマージンの差がある。
ここでパワーマージンとは、最適パワーに対して、パワーダウンまたはパワーアップさせて記録した際に、リミットイコライザジッタが所定の範囲内となるパワー範囲のことを言う。具体的には、10%のパワーダウンがある場合に、例えば、単層ディスクではジッタが8.5%以下であり、2層ディスクでは、L0層(奥の層/光入射面から遠い側の層)で8.5%以下であり、L1層(手前の層/光入射面に近い側の層)で10.5%以下(さらにはL1層にて最短のマーク又はスペースを除いたマーク(例えば1−7変調方式においてはマーク長が2T〜8Tに制限されるので最短マークは2T)でのジッタが8.5%以下)となるパワー範囲を言う。また、10%のパワーアップの場合に、例えば、単層ディスクではジッタが10.5%以下、二層ディスクでは、L0層で10.5%以下、L1層で12.5%以下、(さらにはL1層にて最短のマーク又はスペースを除いたマークでのジッタが10.5%以下)となるパワー範囲のことを言う。
図12に示すように、同じ大きさの残留フォーカス誤差がある場合でも、ディスクAのデフォーカスマージンは、いずれの残留フォーカス誤差においてもディスクBよりも30nm〜40nm程度大きい。つまり、ディスクBに比べて、ディスクAのパワーマージンのほうが広い。このことから、残留フォーカス誤差による記録パワーの低下に対する影響度合いはディスクBよりもディスクAのほうが小さい。図12の結果から、パワーマージンに5%の差がある場合、少なくとも約30nm〜40nmのデフォーカスマージンに対する許容差があるとも言える。
したがって、パワーマージンに応じて残留フォーカス誤差の基準値を例えば80nmから110nm〜120nmへ緩めても、両者のディスクでのシステムマージンは同等となる。例えば、残留フォーカス残差の基準値を80nmとしておき、例えば、±10%のパワーマージンがある場合にはその基準値を110nmとする、など基準値を緩めるようにしてもよい。
つまり、前述のようにパワーマージンが比較的広いディスクに対して、残留フォーカス誤差の許容値をデフォーカスマージン分緩めたとしても、システム全体で許容されるマージンを減少させることはない。したがって、パワーマージンの優れたディスクにおいては、残留フォーカス誤差に対する許容値を考慮して基準値を緩めることで、過剰に厳しい残留誤差基準値によってメディアの生産性を落とすことなく、メディアの歩留まり向上を実現できる。また、記録膜や反射膜を最適化したり、ライトストラテジを工夫するなどしてパワーマージンが広い光ディスクを設計することによっても、高速化で問題となる残留誤差に対する許容度を緩めることになり、光ディスクの生産性を向上させることができるという効果がある。
具体的には、所定のパワーマージンがある6xディスクを検査する場合には、3xの線速度を用いる36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の基準値を、2xの線速度を用いる36mm未満の半径での残留フォーカス誤差の検査の基準値以上とする(基準値を緩める)。これにより、36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の際、過剰に厳しい残留誤差基準値によって、ディスクの歩留まりが低下するのを防止し、かつ、所定の信号記録品質が保障された光ディスクを製造することができる。より具体的には、6xディスクのパワーマージンが±10%である場合には、表1に示すように、3xの線速度を用いる36mm以上の外周での残留フォーカス誤差の検査の基準値を80nmとし、2xの線速度を用いる36mm未満の半径での残留フォーカス誤差の検査の基準値を110nmとしてもよい。
次に残留トラッキング誤差の測定条件と基準値および残留トラッキング誤差の検査方法について説明する。
表1と同様、表2において、記録可能最大速度とは、光ディスクに情報を記録する際の最大速度を表す。4xディスクは、基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録をすることが可能である。6xディスクは、前述したように、内周側では基準となる線速度(1x)の4倍(4x)の線速度で記録が可能であり、外周側では、6倍(6x)の線速度で記録が可能である。このため、4xディスクではディスクの内周から外周にわたって全周で同一の測定条件を用いるが、6xディスクの場合、半径位置r=36mmを境に2つの条件で測定することになる。また、内周側の線速度が第1の線速度Lv1であり、外周側の線速度が第2の線速度Lv2である。第1の線速度Lv1および第2の線速度Lv2は、いずれも基準となる線速度4.917m/secの整数倍であり、第2の線速度Lv2は第1の線速度Lv1よりも大きい。
残留トラッキング誤差の測定は、記録可能最大速度の1/2の線速度で行う。この際、実際にユーザがBD−Rディスクを用いて情報の記録または再生を行った場合に生じる残留トラッキング誤差を推定するため、検査の際に用いるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数は、線速度に比例して実際の記録または再生の時の1/2に設定する。
これについては、既に述べた残留フォーカス誤差測定方法におけるサーボフィルタのゲイン交点や測定フィルタ(LPB、BPF)のカットオフ周波数の決め方と同じ考え方が適用できる。したがって、実際の記録時の記録最大速度(即ち、ユーザーデータを記録するときの線速度)の1/2の線速度でサーボ特性を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点と、測定フィルタのカットオフ周波数をそれぞれ線速度比に比例させて1/2にすることにより、異なる2つの線速度で測定しても、同じ振幅の残留誤差値を測定することができる。
回転速度が5000rpmを超える速い回転速度でディスクを回転させる場合、スピンドルモータの機械的な振動や、ピックアップのアクチュエータの共振等の影響が顕著な問題となる。高速回転時には、スピンドルモータやアクチュエータなどの検査装置に起因する機械的な残留誤差成分の影響が無視できなくなり、光ディスク自体がもっている本来測定したいディスクの残留誤差成分を正確に測定することが困難となる。したがって、実際の記録または再生時の線速度の1/2となるように回転速度を低下させ、かつサーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタのカットオフ周波数もそれぞれ線速度の比に比例して1/2に低下させた状態で、残留フォーカス誤差の測定することにより、検査装置自体に起因する振動や共振などの機械的に生じる残留誤差成分を抑えることができ、光ディスク自体のもつ残留誤差成分を精度よく測定することが可能となる。
表2に示すように、6xのディスクにおいて、半径位置が36mm未満の半径においては、記録可能最大速度が4xであることから、4xディスクと同じ測定条件で測定する。つまり、即ち6x用ディスクの半径位置36mmより内周側では、従来の4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件で残留トラッキング誤差の測定を行う。
一方、半径位置が36mm以上の外周においては、記録可能な最大速度が6xである。また、4xと6xの線速度の比率は1.5倍である。このため、サーボフィルタのゲイン交点と測定フィルタ(LPF、BPF)のカットオフ周波数とを4xディスク用の測定に用いられる値の1.5倍にして、6xディスクの検査を行うことが考えられる。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を1.5倍の5.4kHzにした場合、この条件は、ユーザが実際に使う光ディスク装置では、10.8kHzのゲイン交点でフォーカスサーボ制御しながら6xの線速度で、記録または再生を行なう場合に相当する。
一般的なハーフハイトサイズの光ディスク装置のように小型の光ディスク装置では、アクチュエータの発振がおこらず安定的にサーボ制御を行うためには、位相余裕がある程度確保できるよう、ゲイン交点を6〜8kHzにする必要がある。このことは、1/2の回転速度において、3.6kHzのゲイン交点で測定することが、光ディスク装置が安定に動作するゲイン交点のほぼ限界でと言える。したがって、本検査方法では、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、サーボフィルタのゲイン交点は4x用ディスクの検査装置におけるゲイン交点と同じ値、つまり、3.6kHzに設定する。
残留トラッキング誤差を生じさせている原因は、光ディスクの半径方向の厚みばらつきや、溝の不均一性、スタンパの欠陥や成形での引っかき、カバー層を形成する際のスピンコートのムラ等であり、残留トラッキング誤差は光ディスクを回転させ、反射光から生成される信号に基づいている。このため、トラック方向の不均一なトラックの分布(空間分布)が、回転の線速度に応じた時間軸分布に変換されて観測されることになる。その結果、残留トラッキング誤差の周波数は、回転している線速度に比例する。例えば径方向へのトラックの形状ばらつきによって2xの線速度で観測される残留トラッキング誤差の周波数は、3xの線速度では、線速度の比率1.5に比例した、1.5倍の周波数になる。ここでサーボフィルタと測定フィルタの周波数を線速度比に比例して変化させた場合、同じ振幅の残留トラッキング誤差が観測される。しかし、サーボフィルタのゲイン交点を3.6kHzのまま固定にした状態で、回転速度を上げているため、3xの線速度で光ディスクを回転させると、ゲイン交点よりも高い周波数である4kHzから5kHzあたりの残留トラッキング誤差成分は、ゲイン交点よりも高いため、トラッキングサーボ制御によって抑圧することができず、より大きな残留トラッキング誤差として観測される。つまり、この帯域の残留トラッキング誤差成分を抑圧できなれば、トラッキングエラー信号に大きなスパイク上の山があらわれ、トラッキング制御の安定性を低下させる可能性がある。
前述したように、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留フォーカス誤差を測定する場合、測定フィルタ(LPFとBPF)のカットオフ周波数は、4xディスクと6xディスクの最大速度比1.5に比例して、4xディスクの検査におけるカットオフ周波数の1.5倍に変更する。これは記録時に残留フォーカス誤差によって生じるRF信号のエンベロープの欠落によるSERの悪化を防ぐためであった。
しかし、BDでは記録信号のオフトラックマージンが十分広いため、大きな残留トラッキング誤差によってRFエンベロープの欠落が生じ、SERが劣化することはない。むしろ残留トラッキング誤差の測定条件で考慮すべき観点は、トラッキングサーボの安定性である。このため、トラッキングサーボの安定性を乱す帯域の残留トラッキング誤差成分を検査すれば、残留トラッキング誤差の検査は十分である。
ここでサーボフィルタの3.6kHzのゲイン交点より高い周波数の残留トラッキング誤差や外乱成分は、そもそもトラッキングサーボの制御帯域外にあるため、安定したトラッキングサーボ制御を実現する上で、問題とならない。したがって、トラッキングエラー信号のLPFのカットオフ周波数は、サーボフィルタのゲイン交点近傍より低い周波数帯域の残留トラッキング誤差や外乱が検出できるように設定すれば十分である。
一方、ゲイン交点以下の周波数帯域における光ディスクに起因する残留トラッキング誤差成分を抑圧できなれば、記録あるいは再生中、トラッキングサーボが突然、外乱によってはずれたり、記録中、トラックすべりを起こして、近隣のトラックへ誤って記録し、既に書き込まれているデータを誤消去してしまうこととなる。また、測定フィルタの帯域を高くすることによって、不要な残留トラッキング誤差成分まで検出することにより、不必要に高い機械精度を備えた光ディスクを製作することになると、光ディスクの製造歩留まりを極端に低下させることにもなる。したがって、製造コストの上昇を防ぐためにも、適切なLPFのカットオフ周波数を定めて検査することが重要となる。
こうした理由から、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合、残留トラッキング誤差の測定フィルタのうち、LPFのカットオフ周波数は、ゲイン交点と同じ3.6kHに設定すること、つまり、LPFのカットオフ周波数については、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合でも4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件を用いることが好ましい。これにより、サーボの安定性を確保するために必要な残留トラッキング誤差成分をもれなく検出し、かつサーボの安定性を落とすことなくメディアの歩留まり低下を防ぐことが可能となる。
BPFの残留トラッキング誤差成分は、サーボの安定性を確保する目的とは違って、アクチュエータに流れる無駄電流を抑制するために基準を設けている。したがって、この残留フォーカス誤差成分は、rmsノイズと呼ばれる。このrmsノイズを測定するBPFの高域側のカットオフ周波数も線速度比に比例して1.5倍にして光ディスクの検査を行なう。これにより、4xディスクで問題となる周波数帯域のrmsノイズ成分をもれなく検出することができる。
図13は、異なる外乱周波数における、残留トラッキング誤差とトラッキング引き込み失敗率との関係を示している。図13に示す結果は、以下のようにして得られた。
まず、各々の外乱周波数において、挿引した電圧をいくつか変えながら、トラッキングオン状態で観測される残留トラッキング誤差量を測定した。次に、残留トラッキング誤差量を測定した外乱周波数および挿引電圧のそれぞれにおいて、トラッキングオフ状態からトラッキングオン状態へトラッキング引き込み動作を複数回行った。引き込み動作により、トラッキングはずれや引き込み失敗が生じた回数と、トラッキングが正常にかかり、安定に動作した回数とを数えた。引き込み動作回数に対する引き込みに失敗した割合を求め、表にまとめた。ディスクの回転速度は3Xであり、サーボフィルタのゲイン交点は3.6kHzで測定した。
図13において、折れ線1101、1102、1103および1104は、それぞれ、外乱周波数が1.2kHz、1.8kHz、3.6kHzおよび5.4kHzの場合の結果を示している。引き込み失敗率は、折れ線1101、1102で示されるように、外乱周波数がサーボフィルタのゲイン交点よりも低く、残留トラッキング誤差が25nmを超える場合に急激に上昇する。しかし、折れ線1103、1104で示されるように、外乱周波数がサーボフィルタのゲイン交点以上である場合、残留トラッキング誤差が25nmを超えてもトラッキング引き込み失敗率は悪くならいという結果が得られた。これらの結果から、サーボフィルタのゲイン交点より高い周波数の残留トラッキング誤差成分はトラッキングサーボの安定性に悪影響をおよぼさないことが分る。また、ゲイン交点以下の周波数の残留トラッキング誤差成分であっても、25nm以下の値であれば、サーボの引き込み時の安定性を阻害することにならないことが確認された。
したがって、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合、残留トラッキング誤差の測定フィルタのうち、LPFのカットオフ周波数は、ゲイン交点と同じ3.6kHzまたはそれ以上に設定すること、つまり、LPFのカットオフ周波数については、6xディスクの半径位置が36mm以上の外周における残留トラッキング誤差を測定する場合でも4xディスク用の検査装置の測定条件と同じ条件か、それ以上の周波数に設定することが好ましい。
なお、残留トラッキング誤差の検査について説明したように、6xディスクの半径位置が36mm未満の半径および36mm以上の外周での残留トラッキング誤差値の許容できる振幅はほぼ等しい。このため、残留トラッキング誤差の基準値(BPF、LPF)は、4xディスクの検査の基準値と同じでよい。
以上説明したように、6xディスクにおける残留トラッキング誤差を検査する場合には、サーボフィルタのゲイン交点は、実ドライブで実現できるゲイン交点に相当する3.6kHzの状態のまま、測定フィルタのカットオフ周波数を、サーボの安定性と光ディスクの製造歩留まりを考慮して、ゲイン交点と等しくする。その他の測定条件は、表2に従うことによって、残留トラッキング誤差の大きいディスクを正しく選別することができる。このような光ディスクを除外することにより、トラッキングサーボが突然、外乱によってはずれたり、記録動作中に大きな残留トラッキング誤差によってトラックすべりを起こして、近隣のトラックへ誤って記録し、既に書き込まれているデータを誤消去してしまうようなことを防止することが可能となる。
また、4xディスクと6xディスクとで、あるいは、6xディスクの切り変え半径より内周側と外周側とで、サーボフィルタの特性、特にゲイン交点を変えないで検査することができるため、検査装置のサーボフィルタを1つに共通化することが可能となり、光ディスクの生産性の観点からも有利である。つまり、4xディスクの検査装置をそのまま6xディスクの検査装置として流用することが可能となる。また、それぞれの検査ラインを共通化することができ、新規の検査装置の導入が不要となり、設備投資費を削減することができる。その結果、光ディスク生産時の製造コストをさげることができるという大きな効果がある。
また、線速度に応じてサーボフィルタの切替えのためにトラッキング、フォーカス動作を一時停止し、レファレンスサーボの設定を変更し、再びフォーカス、トラッキング動作を行い、光ディスクの検査を行なうという切替え手順が不要となり、異なる線速度の間の残留誤差測定を線速度のみを変えることによって連続的に実施することが可能となり、検査時間を短縮することができる。これによって検査時間を短縮でき、生産のタクトタイムを短縮し、光ディスクの生産性を高め、コストダウンを実現することが可能となる。
前述のような測定条件が予め設定された検査装置を用いることにより、光ディスクの内周から外周まで全周にわたって、残留トラッキング誤差を測定し、LPFとBPFそれぞれの残留誤差値に対して基準値以下である場合、検査合格とし、基準値を超える場合、検査不合格とする。
本実施形態の光ディスクの検査方法は、前述した検査の手順を検査装置に指令するプログラムによって好適に実行される。このようなプログラムは、検査装置に内蔵される専用のLSIによって実行されてもよいし、外部のPCによって実行されてもよい。さらに、専用のハードウェアによって実行されてもよい。
また、残留誤差測定のLPFとBPFのカットオフ周波数の切替えは、光ディスクの制御ループとは独立に行なわれるため、LPF、BPFの切替えをフォーカス制御、トラッキング制御を行っている最中に切替えても、サーボ動作に影響をおよぼさないことはいうまでもない。従って、フィルタの切替え作業によって検査にかかる時間が延びるということはない。
次に、前述の検査の結果、残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差のいずれかが基準値を超える光ディスクの取り扱いを説明する。
本実施形態の光ディスクの検査方法を用いて6xディスクの検査を行なった結果、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差のいずれか少なくとも一方が基準値を超える残留誤差があった場合を考える。
図5に示すように、114メモリ内を検索し、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報を検索する。
最も内周で基準値をこえている半径位置情報をRxとする。Rxが切替え半径位置の内側にある場合には、その光ディスクは不合格であると判定する。
一方、Rxが切替え半径位置の外側にある場合、その光ディスクを再度Rxの位置から外周側において、4xディスクの検査条件を用いて検査を行なう。4xディスクの検査条件で合格する場合、この光ディスクは、全体として、4xディスクの残留誤差の条件を満足している。このため、この光ディスクは6xディスクでなく4xディスクとして使用することができる。以下このような光ディスクを4xディスクとして使用方法を説明する。
まず第1に、この光ディスクは6xディスクとして製作されているため、ディスク管理領域内のPIC領域には、1x、2x、4x、6xで記録することが可能な条件、具体的には、最大線速度や全ての線速度でのパワーやライトストラテジ情報が予め記録されている。この場合、光ディスク装置は、通常であれば6xディスクであると認識し、最大6xで記録を行う。PIC領域は、再生専用領域であるため、情報の追記できない。
このため、6xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度の上限を規制するあるいは指定する情報を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果、記録可能な最大線速度情報(Sx)を追記する。この場合、光ディスク装置は、ディスク管理領域に予め記録されている最高線速情報よりも追記領域に記録された最大線速度情報を優先して使用するように取り決める。
光ディスク装置は、まず、追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認する。Sxが記録されている場合は、そのSxの値にしたがい、Sxを最大線速度として光ディスクに記録を行う。
Sxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記される。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいはOPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、最大線速度情報(Sx)を追記する。前述したように、最大線速度情報を追記するための領域は、物理フォーマット規格によって確保された専用の領域であることが望ましい。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、記録速度の上限を検査の結果決めることが可能となり、光ディスクの生産の歩留まりが大幅に改善され、生産性向上とコストダウンを図ることが可能となる。
次に、前述の方法により、6xディスクとして製作されたディスクを4xディスクとして使用することが可能であることが検査により分った場合、前述の検査で得られた半径位置情報RxをSxと同様、光ディスクの管理領域に追記する方法について説明する。
前述したようにディスク管理領域のPIC領域は、再生専用であり、追記ができない。このため、6xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度で記録できる半径位置の上限を規制するあるいは指定する情報を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報を(Rx)を追記する。半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報(PAA, Physical ADPI Address)を追記してもよい。これにより切り替え半径位置からRxまでの間の半径位置については最大線速度(6x)で記録し、残留誤差が大きくなるRxより外側の半径位置については、最大線速度を4xに低下させることができ、光ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できる。
光ディスク装置は、まず、追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認する。Sxが記録されている場合は、切り替え半径位置(36mm)から外周側において、その最大線速度情報に従って前述の最大線速度以下で光ディスクに記録を行う。しかし、Rxが同時に記録されている場合は、切り替え半径位置(36mm)からRxの半径位置の間の領域では、最大線速度6xで記録し、Rxより外側の半径値では4xで記録を行う。
Rxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記する。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいは、OPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、半径位置情報(Rx)を追記する。Rxの替わりに、あるいは、前記半径位置に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。前述したように、径位置情報追記するための領域は、物理フォーマット規格によって確保された専用の領域であることが望ましい。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、半径位置の上限を検査の結果によって決めることが可能となり、ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できるというユーザーメリットが生じる。
光ディスクには、最大線速度情報(Sx)および半径位置情報(Rx)の両方を追記してもよいし、いずれか一方のみを追記してもよい。SxとRxを組み合わせて使用する場合、以下の表3に示すようになる。
表3に示すように、Sx=6x、Rx=57mmであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから57mmは6x記録、57mmから58mmは4x記録とする。Sx=6x、Rx記録なしであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから58mmまでは6x記録とする。Sx=4x、Rx=57mmであれば、24mmから57mmまでは4x記録、57mmから58mmは2x記録とする。Sx=4x、Rx記録なしであれば、24mmから58mmまでは4x記録とする。Sxの記録なし、Rx=57mmであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから57mmまでは6x記録、57mmから58mmは4x記録とする。Sxの記録なし、Rxの記録なしであれば、24mmから36mmまでは4x記録、36mmから58mmまでは6x記録とする。
このように、Sxの記録がない場合には、PIC情報に記録されている最大記録速度が優先される。また、Rxの記録がない場合には、切替え半径位置より外側において6xの線速度で記録を行うか、光ディスク全体において4x以下で記録する。
SxおよびRxを追記することで、前述したとおり、光ディスクの製造歩留まりが改善され、生産性向上とコストダウンをはかることが可能となる。また、光ディスクの機械特性の品質に応じて、半径位置の上限を検査の結果決めることが可能となり、ディスクの機械精度に応じてできるだけ速く記録ができ、記録時間を短縮できる。
なお、上記形態では、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も内周側の半径位置情報(Rx)を追記し、その半径位置より外周側では、4xディスクの検査条件で合格することを確認することによって、その半径位置より外周側では4xディスクとして使用していた。しかし、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も外周側の半径位置情報(Ry)とし、その半径位置情報(Ry)の位置より外周側において、6xディスクの検査条件で残差の検査に合格する領域がある場合には、半径位置情報(Ry)の位置より外周側の領域を6xディスクとして使用することができる。
この場合、例えば、半径位置情報(Ry)および/または半径位置情報(Ry)に対応する物理アドレスをその光ディスクに固有の情報Ryとして、前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録してもよい。この場合、光ディスク装置がこの情報を参照することによって、Ryの位置よりも外周側の領域では6xの線速度で記録または再生を行うことができる。つまり、ディスクの最内周側から切り替え半径位置(36mm)までの領域では、4xの線速度で記録または再生を行ない、切り替え半径位置(36mm)からRxの位置までの領域では、6xの線速度で記録または再生を行なう。また、Rxの位置からRyの位置までの領域では、4xの線速度で記録または再生を行ない、Ryの位置より外周側の領域では、再び6xの線速度で記録または再生を行なう。これにより、6xの線速度で記録または再生できる領域が増えるため、記録または再生に要する時間を短縮することができる。
また、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている半径位置が多くない場合には、基準値を超えているすべて半径位置情報(Rz)および/または半径位置情報(Rz)に対応する物理アドレスをその光ディスクに固有の情報Rzとして、前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録してもよい。この場合、光ディスク装置がこの情報を参照することによって、切り替え半径位置(36mm)より外周側の領域において、Rzの位置以外は6xの線速度で記録または再生し、Rzの位置では4xの線速度で記録または再生を行うことができる。これにより、いっそう6xの線速度で記録または再生できる領域が増えるため、記録または再生に要する時間を短縮することができる。
また、6xディスクとして検査に合格した場合でもRxおよびSxを追記してもよい。あるいは、6xディスクとして検査に合格した場合でも、あえてSx=4xとして追記を行い、4xディスクとして生産することもできる。この場合、6xおよび4xの2つの種類の光ディスクを切替えて生産する必要がなくなる。したがって、6xディスクおよび4xディスクを、需要と供給のバランスに応じて、生産設備をいれかえずに生産できる。また、4xディスクと6xディスクとで共通スタンパを使用できるので、複数のスタンパを作成する必要がなくなる。以上のことから大幅に設備費を削減し、コストダウンを実現することができる。
また、6xディスクにおいて、切り替え半径位置(36mm)にかかわらず、6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査結果に基づいて、その光ディスクに固有の切り替え半径位置を決定し、その半径位置情報(Rw)をディスクに記録してもよい。具体的には、6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を、切り替え半径位置にかかわらずディスクの全領域に対して行い、残留フォーカス誤差または残留トラッキング誤差が基準値を超えている1つあるいは複数の半径位置情報の中から最も外周側の半径位置情報(Rw)を決定し、Rwを前述したディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるいはリードアウトゾーン内の記録可能な領域に記録する。光ディスク装置がこの情報を参照することによって、切り替え半径位置(36mm)にかかわらず、Rwの位置およびこれよりも外周側では6xの線速度で記録または再生を行い、Rwの位置より内周側では、4xの線速度で記録または再生を行なう。これにより、ディスクの機械的特性に応じてもっとも短時間で記録または再生を行なうことができる。ただし、この場合、半径位置情報(Rw)の位置における6xの線速度を実現する回転速度が、例えば、10000rpmを超えないように半径位置情報(Rw)を決定することが好ましい。
次に、4xディスクであっても、6xディスクの残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を満足するディスクの取り扱いを説明する。
4xディスクに対して、4xディスクおよび6xディスクが満たすべき残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査を行い、6xディスクとしての機械精度があると4xディスクにおいて確認された場合、4xディスクを6xディスクとして使用可能な機械的精度が備わっており、性能上、6xディスクとしての使用が可能である。しかし、4xディスクのディスク管理領域内のPIC領域には、1x、2x、4xで記録することが可能な条件、具体的には、最大線速度や全ての線速度でのパワーやライトストラテジ情報が予め記録されている。この場合、光ディスク装置は、通常であれば4xディスクであると認識し、最大4xで記録を行う。
PIC領域は、再生専用領域であり、情報の追記できないため、前述したように、4xディスクに、物理フォーマットによって、検査後に最大線速度情報(Sx)を書き込むための追記領域を設ける。この追記領域に、検査の結果に基づき、最大線速度(6x)を記録する。
光ディスク装置は、4xディスクの追記された最大線速度情報(Sx)の有無を確認し、もしSxが記録されている場合は、その最大線速度情報、つまり6xという情報にしたがって、最大Sxで光ディスクに記録を行う。
Sxは、光ディスク内のディスク管理領域であるBCAやリードインゾーンあるはリードアウトゾーン内の追記可能な領域に追記される。例えば、リードインゾーンまたはリードアウトゾーン内のPACまたはDMA、あるいはOPCテストゾーンまたはDriveエリア、DCZ(Drive Calibration Zone)のいずれか1つまたは複数に、最大線速度情報(Sx)を追記する。これにより、光ディスクの機械特性の品質に応じて、記録速度の上限を検査の結果決めることが可能となり、光ディスクの製造歩留まりが大幅に改善され、生産性向上とコストダウンをはかることが可能となる。このように、4xディスクのうち、残留誤差の検査結果が良好なものを、6xディスクとして、つまり、オーバードライブ記録が可能となる。したがって、通常の4xディスクで残留誤差検査の結果を管理情報に追記していない光ディスクよりも光ディスクドライブで書き込む際、信頼性高く、高速でオーバードライブ記録を行うことが可能となる。
以上のように、RxやSxを追記することによって、生産性の観点では、4xディスクと6xディスクを1つのラインで検査することができるという利点が得られ、特性のよいものを6xディスクとして選別することができる。また、6xディスクだけを生産し、残留誤差検査の結果の歩留まりが低い場合、大量のディスクを廃棄してしまわねばならないというリスクを低減することができ、ディスクの生産性を向上させコストダウンをはかることが可能となる。また、1つのスタンパによって成形可能なディスクの枚数は、生産枚数が増えるとともに機械特性が悪化し、歩留まりの低下を招くことがある。このような場合、残留誤差基準の比較的緩い4xディスクとしては十分使用可能となるので、スタンパが新しい初期の状態では、6xディスクを生産する。残留誤差基準が6xディスクの基準を満たさないが、4xディスクの基準を満足する程度にスタンパが劣化した場合でも、4xディスクを生産し続けられる。このため、製造歩留まりを低下させずに1枚のスタンパで生産できる枚数を増やすことができ、スタンパ寿命を延ばし、コストダウンを実現することが可能となる。
なお、前述したように、残留誤差検査の結果に応じて、Sx、Rxを追記し、記録した情報に基づいて、4xディスクあるいは6xディスクとして使用する場合、残留誤差以外の機械特性項目や記録再生特性等の必要な特性を満たしているかどうかについて、それぞれ定められた条件で別途検査しておくことが好ましい。
また、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査をする際、光ディスクに照射されているレーザ光の再生パワーは線速度の切替え前後にかかわらず一定の再生パワーで検査を行う。そのように線速度の切替え前後で同じ再生パワーで検査することによって、再生パワーが変化することによって生じる検査装置の回路オフセット調整を不要にし、検査時間を短縮することが可能となる。
また、異なる2つの線速度で光ディスクを回転させ、照射するレーザ光の再生パワーを各線速度で同じにしているとき、再生光による光ディスクに対するダメージは2つの線速度のうち、遅い線速度で回転している条件である。したがって、遅い線速度で光ディスクを回転させている状態で、再生耐久性の検査をそのまま行ってもよい。同じ再生パワーで検査することによって、再生耐久性を複数の線速度で実施しなくてすむ。このため、光ディスクの生産性の向上を図ることができる。
本発明の検査方法は、BD−RのうちHTL(High To Low)およびLTH(Low To High)のいずれのタイプにも可能である。また、本発明の検査方法は単層ディスクおよび2層ディスクのいずれのタイプの光ディスクにも適用される。
また、本発明による検査方法はBD−Rを例にとって説明したが、書き換え型のBD−REおよび読み取り専用型のBD-ROMに適応することも可能である。
また、本発明による光ディスクの検査方法は6xディスクの検査を例に説明したが、8xディスクあるいはそれ以上の速度で書き込みを行う光ディスクの残留誤差検査にも適用できることはいうまでもない。
8xディスクの場合、図4に示すように、2箇所の切替え半径位置を設定し、36mmより内周は4x記録、36mm〜48mmは6x記録、48mm以降は8x記録のように半径位置に応じて4x、6x、8xの線速度でCLVによって記録することができる。図4は、8xディスクにおいて、半径位置によって4xのCLV、6xCLV、8XCLVで記録および再生する場合の半径位置と回転速度の関係を表している。各線速度の上限回転速度は、4xの最内周部の基準となる半径位置における回転速度によって決定される。第1の切替え半径位置は約33mmから36mmであり、第2の切替え半径位置は約44mmから48mmの範囲内である。第1の切替え半径位置より内側は4xの線速度で記録を行い、第1と第2の切替え半径位置の間は6xの線速度で記録を行い、第2の半径位置より外周側は8xの線速度で記録を行う。この場合、4xと8xとの1つの切替え半径位置を有する場合に、比べて、第1と第2の切替え半径位置の間を4xの線速度ではなく6xの線速度で記録を行うことができる。したがって、全体の転送レートを高め、書き込み時間を短縮することが可能となる。8xディスクについても前述と同様の方法によって残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差の検査をすることが可能である。
また、6xディスクの検査において、図14のように線速度を4xと6xとで切り替える際、第1の切替え半径位置より内周側では、最内周部で4xに相当する回転速度(例えばr=24mmであれば約8000rpm)で、回転速度一定制御(CAV)方式により記録し、切替え半径位置が約33mm〜36mmの間で6xの線速度によるCLVに切り替える方法も考えられる。この場合が最も記録レートが速くなり短時間に1枚のディスクに情報を記録できるという効果がある。
CAV方式で記録する部分で残留誤差検査をする場合は、CAVの回転速度の1/2の回転速度で残留誤差検査を行い、半径位置とともに徐々に線速度が上がっていくため、切替え半径位置までの間に測定フィルタ(残留フォーカス誤差検査の場合は測定フィルタのLPFおよびBPFであり、残留トラッキング誤差検査の場合は測定フィルタのBPF)のカットオフ周波数を半径位置に比例して変えながら残留誤差測定を行い、切替え半径位置以降は前述の検査方法を用いて検査することも可能である。
また、上記実施形態では、切替え半径位置を決定するために、切り替え半径位置より内周側での記録または再生の線速度における最大回転速度を与える半径位置を特定したが、前述したように6xディスクにおける切り替え半径位置は、約33mm〜36mmの間にある。このため、最大回転速度を与える半径位置を特定せずに、この範囲内において、切り替え半径位置を決定してもよい。また、最大回転速度を与える半径位置を特定して切り替え半径位置を決めたかどうかにかかわらず、最大回転速度を与える半径位置において、残留誤差の測定を行わなくてもよい。切り替え半径位置より内周側での記録または再生の線速度における最大回転速度を与える半径位置はユーザーデータ領域ではない場合もあるからである。したがって、6xディスクにおいて、切り替え半径位置よりも内周側において6xディスクの残留誤差を4xディスクと同様の条件で測定し、切り替え半径位置およびその外周側において、前述した条件で残留誤差の測定を行ってもよい。
また、上記実施形態では、6xディスク(少なくともディスクのいずれかの半径位置において6倍速の線速度による再生及び/又は記録を行うことのできるディスク)の測定速度を切り替える基準となる切替え半径位置を36mmに設定し、36mm未満の半径位置(at radii up to 36 mm/smaller than 36 mm in the radius position)においては、4xディスクと同様、2倍速の線速度で測定し、36mm以上の半径位置(at radii 36 mm and higher/greater than or equal to 36mm in the radius position)においては、3倍速の線速度で残留誤差の測定を行っている。しかし、切り替え半径位置は線速度を切り替える境界であるため、2xの線速度または3xの線速度のいずれで残留誤差を測定してもよい。つまり、36mm以下の半径位置(at radii 36 mm and lower/smaller than or equal to 36mm in the radius position)においては、4倍速対応ディスクと同様、2倍速の線速度で測定し、36mmより大きい半径位置(/greater than 36mm in the radius position)においては、3倍速の線速度で測定してもよい。
このように、第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)の回転速度の切替えを、各々の回転速度の最大回転速度が同じになる半径位置で行う光ディスクと、前記光ディスクの記録速度の1/2の回転速度で残留誤差を検査し、かつ、2つの回転速度のサーボフィルタ特性(ゲイン交点)が等しい測定条件でフォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号から残留誤差(残留誤差)を測定し、基準値を満足しているか否かを判断する光ディスクの残留誤差検査方法によって、特にBD6倍速以上の高速で記録可能な追記型(あるいは書き換え型ディスクも含む)光ディスクと、その光ディスクに信号を記録する際に、良好な記録信号品質およびサーボ安定性が得られるように前記光ディスクを精度よく検査する検査方法と、検査装置およびそのような光ディスクに良好な信号を記録するための記録方法を提供することを目的とする。
なお、光学的情報記録媒体からの再生信号の品質を計測する指標の一つとしては、ピットまたは記録マークとスペースとの比(非対称性)を検出するアシンメトリが挙げられる。上述したジッタに加えて、あるいは、ジッタに替えて、このアシメンメトリを検査してもよい。この場合、例えば、最短マーク(1−7変調の場合は2T)の振幅中心と、最長マーク(1−7変調の場合は8T)の振幅中心を算出し、これらに基づいてアシンメトリが所定の範囲内におさまるようにすることによって信号品質を保証することができる。
具体的には、最長マークの振幅中心と最短マークの振幅中心との差分と、最長マークの全振幅との「比率」が所定の範囲内に収まるようにする。より詳細には、最長マークが8Tの場合に、最長マークの最大振幅をI(8H),最長マークの最小振幅をI(8L),最長マークの全振幅をI(8pp)とし、最短マークが2Tの場合に、最短マークの最大振幅をI(2H),最短マークの最小振幅をI(2L)とすると、最長マークの振幅中心は「(I(8H)−I(8L))/2」となり、最短マークの振幅中心は「(I(2H)−I(2L))/2」となり、最長マークの全振幅I(8pp)は、「I(8H)−I(8L)」となる。したがって、上記「比率」は、「((I(8H)−I(8L))/2−(I(2H)−I(2L))/2)/I(8pp)」となる。この値が、所定の範囲内であれば(例えば、「−0.10以上」及び/又は「+0.15以下」を満たせば)再生信号の品質が適切であると判断してもよい。
また、光学的情報記録媒体は、以下のような突起部を有するものでもよい。例えばブルーレイディスクの場合、保護層の厚みは、単層ディスクでは100μm,2層ディスクでは75μmである。このように薄い保護層への傷つき防止のため、保持領域(Clamp Area)の外側または内側に突起部を設けてもよい。特に保持領域の内側に設けた場合、保護層の傷つき防止に加え、ディスクの中心穴に近い部分に突起部があるため、突起部の重量バランスによる回転スピンドル(モータ)への負荷を軽減することや、光ヘッドとの衝突を避ける(光ヘッドは保持領域の外側にある情報記録領域にアクセスするため保持領域の内側に突起部を設けることで突起部と光ヘッドとの衝突を回避する)ことができる。
保持領域を内側に設ける場合、例えば外径120mmのディスクにおける保持領域の具体的な位置は次のようにしてもよい。仮に中心穴の直径が15mm、保持領域が直径23mmから33mmの範囲内とした時、中心穴と保持領域の間、つまり直径15mmから23mmの範囲内に突起部を設けることになる。その際、中心穴からある程度の距離を設けてもよく(例えば中心穴の縁端から0.1mm以上(又は/及び0.125mm以下)離してもよい)、また、保持領域からある程度の距離を設けてもよい(例えば保持領域の内端から0.1mm以上(又は/及び0.2mm以下)離してもよい)。また、中心穴の縁端と保持領域の内端の両方からある程度の距離を隔てて設けてもよい(具体的な位置として、例えば、直径17.5mmから21.0mmの範囲内に突起部を設けてもよい)。また、突起部の高さは、保護層の傷つきにくさや持ち上げ易さのバランスを考慮して決めればよいが、高くすぎても別の問題が発生するかも知れないので、例えば、保持領域から0.12mm以下の高さとしてもよい。
また、光学的情報記録媒体が多層である場合の構成を簡単に述べる。例えば、レーザ光を保護層の側から入射して情報が再生及び/又は記録される片面ディスクとすると、記録層を二層以上にする場合、基板と保護層の間には複数の記録層が設けられることになる。この場合における多層構造を次のようにしてもよい。つまり、光入射面から所定の距離を隔てた最も奥側の位置に基準層(L0)を設け、基準層から光入射面側に層を増やすように積層(L1、L2、・・・、Ln)し、また光入射面から基準層までの距離を単層ディスクにおける光入射面から記録層までの距離と同じ(例えば0.1mm程度)にする等である。このように層の数に関わらず最奥層までの距離を一定にすることで、基準層へのアクセスに関する互換性を保つことができ、また層数の増加に伴うチルト影響の増加を抑える(最奥層が最もチルトの影響を受けるが層数の増加に伴い最奥層までの距離が増加することがなくなるため)ことが可能となる。
また、光学的情報記録媒体が多層である場合における再生方向またはスポットの進行方向に関しては、例えば、全ての層において同じ、つまり全層にて内周方向から外周方向、又は全層にて外周方向から内周方向、というパラレル・パスであっても、オポジット・パス(基準層(L0)を内周側から外周側の方向とした場合、L1では外周側から内周側の方向、L2では内周側から外周側の方向、・・・つまり、Lm(mは0及び偶数)では内周側から外周側の方向、Lm+1では外周側から内周側の方向(又は、Lm(mは0及び偶数)では外周側から内周側の方向、Lm+1では内周側から外周側の方向)というように層が切り替わる毎に再生方向が逆になる)であってもよい。
また、本発明でジッタを測定するときに記録に用いる変調方式について簡単に述べる。データ(オリジナルのソースデータまたは変調前のバイナリデータ)を記録媒体に記録する場合、所定のサイズに分割され、さらに所定のサイズに分割されたデータは所定の長さのフレームに分割され、フレーム毎に所定のシンクコード/同期符号系列が挿入される(フレームシンク領域)。フレームに分割されたデータは、記録媒体の記録再生信号特性に合致した所定の変調則に従って変調されたデータ符号系列として記録される(フレームデータ領域)。
ここで変調則としては、マーク長が制限されるRLL(RunLengthLimited)符号化方式などでもよく、RLL(d,k)と表記した場合、1と1との間に出現する0が最小d個,最大k個であることを意味する(dおよびkは、d<kを満たす自然数である)。例えばd=1、k=7の場合、Tを変調の基準周期とすると、最短が2T、最長が8Tの記録マーク及びスペースとなる。またRLL(1,7)変調に更に次の[1][2]の特徴を加味した1−7PP変調としてもよい。1−7PPの“PP”とは、Parity preserve/Prohibit Repeated Minimum Transition Lengthの略で、[1]最初のPであるParity preserveは、変調前のソースデータビットの“1”の個数の奇偶(すなわちParity)と、それに対応する変調後ビットパターンの“1”の個数の奇偶が一致していることを意味する。[2]後ろの方のPであるProhibit Repeated Minimum Transition Lengthは、変調後の記録波形の上での最短マーク及びスペースの繰り返し回数を制限(具体的には、2Tの繰り返し回数を最大6回までに制限)する仕組みを意味する。
また、本発明でジッタを測定するときに記録に用いるフレームシンクパターンについて説明する。フレーム間に挿入されるシンクコード/同期符号系列には前述の所定の変調則は適用されないので、その変調則によって拘束される符号長以外のパターンを含ませることが可能となる。このシンクコード/同期符号系列は、記録されたデータを再生するときの再生処理タイミングを決定するもののため、次のようなパターンが含まれてもよい。
データ符号系列との識別を容易にするという観点からは、データ符号系列には出現しないパターンを含ませてもよい。例えば、データ符号系列に含まれる最長マーク/スペースよりも長いマーク又はスペースやそのマークとスペースの繰り返しである。変調方式が1−7変調の場合、マークやスペースの長さは2T〜8Tに制限されるので、8Tよりも長い9T以上のマーク又はスペース(9TM and/or 9TS)や9Tマーク/スペースの繰り返し(9T/9T)等である。
同期引き込み等の処理を容易にするという観点からは、ゼロクロス点を多く発生させるパターンを含ませてもよい。例えば、データ符号系列に含まれるマーク/スペースの内、比較的短いマーク又はスペースやそのマークとスペースの繰り返しである。変調方式が1−7変調方式の場合、最短である2Tのマーク又はスペース(2TM and/or 2TS)や2Tマーク/スペースの繰り返し(2T/2T)や、次最短である3Tのマーク又はスペース(3TM and/or 3TS)や3Tマーク/スペースの繰り返し(3T/3T)等である。
前述の同期符号系列とデータ符号系列を含む領域を仮にフレーム領域と呼び、そのフレーム領域を複数(例えば31個)含む単位を仮にセクタと呼ぶことにすると、あるセクタにおいて、そのセクタの任意のフレーム領域に含まれる同期符号系列と、その任意のフレーム領域以外のフレーム領域に含まれる同期符号系列との符号間距離を2以上にしてもよい。ここで符号間距離とは、2つの符号系列を比較した場合、符号系列中の異なるビットの個数を意味する。この様に符号間距離を2以上にすることで、再生時のノイズの影響などにより一方の読み出し系列が1ビットシフト誤りを起こしても、もう一方と誤識別することがない。また、特に、そのセクタの先頭に位置するフレーム領域に含まれる同期符号系列と、先頭以外に位置するフレーム領域に含まれる同期符号系列との符号間距離を2以上にしてもよく、この様にすることで、先頭箇所か否か/セクタの区切り箇所か否かの識別を容易にすることができる。
なお符号間距離は、NRZ記録のときは符号系列をNRZ表記した場合、NRZI記録の時は符号系列をNRZI表記した場合、における符号間距離の意味を含んでいる。そのため、もしRLL変調を採用した記録の場合、このRLLとはNRZIの記録波形の上で高レベル又は低レベルの信号が続く個数を制限することを意味するものであるため、NRZI表記における符号間距離が2以上ということを意味する。
また、光学的情報記録媒体には、溝を形成することによって、溝部、および、溝と溝との間の溝間部が形成される。このため、溝および溝間部のいずれにデータを記録するかによって記録方式が異なる。具体的には、溝部への記録、溝間部への記録、溝部および溝間部の両方への記録など、様々な方式がある。ここで、溝部および溝間部のうち、光入射面から見て凸部となる側に記録する方式をOn−Groove方式といい、光入射面から凹部となる側に記録する方式をIn−Groove方式という。本発明において、記録方式として、On−Groove方式とするか、In−Groove方式とするか、両方式のどちらか一方を許可する方式とするかは特に問わない。
なお、両方式のどちらか一方を許可する方式の場合、その媒体が、どちらの記録方式であるかを容易に識別できるように、On−Groove方式であるかIn−Groove方式であるかを示した記録方式識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についての記録方式識別情報を記録してもよい。その場合、各層についての記録方式識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関する記録方式識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関する記録方式識別情報を記録してもよい。
また記録方式識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なお再生専用領域でデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)やウォブル(ウォブルに重畳して記録)等があり、いずれかの領域又はいずれか複数の領域又は全ての領域に記録してもよい。
またウォブルの開始方向に関して、On−Groove方式とIn−Groove方式とで互いに逆となるようにしてもよい。つまり、もしOn−Groove方式にてウォブルの開始方向がディスクの内周側から開始する場合には、In−Groove方式ではウォブルの開始方向をディスクの外周側から開始するようにし(、又は、もしOn−Groove方式にてウォブルの開始方向がディスクの外周側から開始する場合には、In−Groove方式ではウォブルの開始方向をディスクの内周側から開始するようにし)てもよい。このように、On−Groove方式とIn−Groove方式とでウォブルの開始方向互いに逆となるようにすることで、どちらの方式にしてもトラッキングの極性を同一にすることができる。なぜなら、On−Groove方式では、光入射面から凸部となる側に記録を行うのに対して、In−Groove方式では、光入射面から凹部となる側に記録を行うため、仮に両者で溝の深さが同じである場合、トラッキング極性は逆の関係となる。そこで、両者でウォブルの開始方向も互いに逆とすることにより、トラッキング極性を同じにすることができる。
上記のIn/On−Groove方式は、媒体に溝を形成する記録型の媒体に関してであるが、再生専用型の媒体に関しても同様の考え方を適用できる。つまり再生専用型の媒体の場合、情報はエンボス/凹凸ピットという形で記録されるが、このピットの形成方式としても、光入射面から見て凸部のピットが形成されるものをOn−Pit方式といい、光入射面から見て凹部のピットが形成されるものをIn−Pit方式といい、本発明において、ピットの形成方式として、On−Pit方式とするか、In−Pit方式とするか、両方式のどちらか一方を許可する方式とするかは特に問わない。
また、両方式のどちらか一方を許可する方式の場合、その媒体が、どちらの方式であるかを容易に識別できるように、On−Pit方式であるかIn−Pit方式であるかを示したピット形成方式識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についてのピット形成方式識別情報を記録してもよい。その場合、各層についてのピット形成方式識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関するピット形成方式識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関するピット形成方式識別情報を記録してもよい。
またピット形成方式識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なおデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)等があり、いずれかの領域又は両方の領域に記録してもよい。
また、光学的情報記録媒体の記録膜の特性に関して、記録部分と未記録部分との反射率の関係により、以下の2つの特性のものがある。つまり、未記録部分が記録済部分よりも高反射率(High−to−Low)であるHtoL特性と、未記録部分が記録済部分よりも低反射率(Low−to−High)であるLtoH特性である。本発明において、媒体の記録膜特性として、HtoLであるか、LtoHであるか、どちらか一方を許可するものであるかは特に問わない。
また、どちらか一方を許可するものの場合、どちらの記録膜特性であるかを容易に識別できるように、HtoLであるかLtoHであるかを示した記録膜特性識別情報を媒体に記録してもよい。多層媒体については、各層についての記録膜特性識別情報を記録してもよい。その場合、各層についての記録膜特性識別情報を基準層(光入射面から見てもっとも遠い側の層(L0)又は最も近い層や、起動時に最も最初にアクセスされるように決められている層など)にまとめて記録してもよいし、各層にその層のみに関する記録膜特性識別情報を記録してもよいし、各層に全ての層に関する記録膜特性識別情報を記録してもよい。
また、記録膜特性識別情報を記録する領域としては、BCA(BurstCuttingArea)やディスク情報領域(データ記録領域よりも内周側又は/及び外周側にあり、主に制御情報を格納する領域、なお再生専用領域でデータ記録領域よりもトラックピッチが広くなっていることがある)やウォブル(ウォブルに重畳して記録)等があり、いずれかの領域又はいずれか複数の領域又は全ての領域に記録してもよい。
以上、実施形態を具体的に参照しながら本発明を詳細に説明したが、本発明は、以下のように規定することもできる。つまり、本発明の光学的情報記録媒体の検査方法は、光学的情報記録媒体のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の残留誤差を検査する検査方法であって、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、レーザ光の照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)で前記光学的情報記録媒体を回転させ、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)とに回転速度を切替え、前記光学的情報記録媒体にフォーカス制御とトラッキング制御を行い、前記光学的情報記録媒体からの反射光からフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号と前記トラッキングエラー信号の出力それぞれを、所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタとトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタとを通過させて得られるフォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)とトラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)を、あらかじめ決められた所定の基準値と比較し、基準値を満足しているか否かを判断する。
ある局面では、前記光学的情報記録媒体の第1の半径位置R1から第2の半径位置R2(R1<R2)までの領域は、前記第1の線速度Lv1で回転させることにより前記検査を行い、前記光学的情報記録媒体の前記第2の半径位置R2から外周側の領域は、前記第2の線速度Lv2で回転させることにより前記検査を行う。
また、ある局面では、前記第1の線速度と前記第2の線速度の比率がLv2/Lv1=1.5あるいはLv2/Lv1=2である。
また、ある局面では、前記第1の線速度がLv1=9.834m/secである。
また、ある局面では、前記第2の半径位置R2はLv2/Lv1=1.5場合 33mm≦R2≦36mmの範囲にあり、Lv2/Lv1=2.0の場合、44mm≦R2≦48mmの範囲にある。
また、ある局面では、前記2つの半径位置R1およびR2と、前記2つの線速度Lv1およびLv2は、R2/R1=Lv2/Lv1の関係を満たすことを特徴とする。
また、ある局面では、前記第1の線速度で検査するときの最大回転速度と、前記第2の線速度で検査するときの最大回転速度が、約同じ最大回転速度である。
また、ある局面では、前記第1の線速度と前記第2の線速度は、光学的情報記録媒体のディスク管理領域(PIC領域)に予め記録されている書き込み時の線速度の1/2以下の線速度で検査を行う。
また、ある局面では、前記第1の線速度で回転時の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で回転時の前記フォーカス制御のサーボ特性のゲイン交点とを同じゲイン交点のサーボ特性で検査し、前記第1の線速度で回転時の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点と、前記第2の線速度で回転時の前記トラッキング制御のサーボ特性のゲイン交点とを同じゲイン交点のサーボ特性で検査する。
また、ある局面では、前記フォーカスエラー信号用の周波数帯域制限フィルタ内の、カットオフ周波数FcLのローパスフィルタ(LPF)と、低域側カットオフ周波数がFcLと高域側カットオフ周波数がFcHのバンドパスフィルタ(BPF)の2つの異なるフィルタのそれぞれにフォーカスエラー信号が入力され、前記FcLとFcHの周波数を第1の線速度と第2の線速度の線速度の比率に応じてスケーラブルに切替える。
また、ある局面では、前記トラッキングエラー信号用の周波数帯域制限フィルタ内の、カットオフ周波数TcLのローパスフィルタ(LPF)と、低域側カットオフ周波数がTcLと高域側カットオフ周波数がTcHのバンドパスフィルタ(BPF)の2つの異なるフィルタのそれぞれにトラッキングエラー信号が入力され、前記TcLが第1の線速度と第2の線速度の比率によらず一定であって、前記TcHを前記第1の線速度と前記第2の線速度の線速度の比率に応じてスケーラブルに切替える。
また、ある局面では、前記フォーカスエラー信号の前記LPF通過後の出力(F_LPF)と、前記フォーカスエラー信号の前記BPF通過後の出力(F_BPF)の2つ周波数帯域の出力と、前記トラッキングエラー信号の前記LPF通過後の出力(T_LPF)と、前記トラッキングエラー信号の前記BPF通過後の出力(T_BPF)の2つ周波数帯域の出力とを、あらかじめ決められたそれぞれの所定の基準値と比較し、基準値を満足しているか否かを判断する。
また、ある局面では、半径位置毎に前記F_LPF、F_BPF、T_LPF、T_BPFの4つの出力を前記所定の基準値と比較する際、前記4つの出力を第1の線速度と第2の線速度それぞれに応じた基準値と比較する。
また、ある局面では、前記第2の線速度における前記F_LPFの基準値は、前記第1の線速度における前記F_LPF基準値の基準値に比べて、同等かそれ以上の値である。
また、ある局面では、前記残留フォーカス誤差と前記残留トラッキング誤差を検査するときに、前記光学的情報記録媒体に照射するレーザ光の再生パワーは線速度にかかわらず同じ再生パワーで検査を行う。
また、本発明の検査装置は、光学的情報記録媒体のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の残留誤差を検査する検査装置であって、前記光学的情報記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップと、前記光学的情報記録媒体を回転させるスピンドルモータと、前記光学的情報記録媒体に照射されているレーザ光の半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)し、前記光学的情報記録媒体の半径位置に応じて少なくとも2つの線速度である第1の線速度Lv1と第2の線速度Lv2(Lv1<Lv2)とを設定する回転速度設定部と、フォーカス制御とトラッキング制御を行い、前記光学的情報記録媒体の反射光からフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号の出力から、フォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)を測定するフォーカス信号残留誤差測定部と、前記トラッキングエラー信号の出力からトラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)を測定するトラッキング信号残留誤差測定部と、前記フォーカス信号残留誤差測定部と前記トラッキング信号残留誤差測定部において測定した各半径位置に応じた残留誤差測定結果を保持するメモリと、前記残留誤差測定結果とあらかじめ決められた所定の残留フォーカス誤差の基準値および残留トラッキング誤差の基準値とを比較し、前記それぞれの基準値を満足しているか否かを判断する判定部とを備える。
ある局面では、前記フォーカスエラー信号の残留誤差(残留誤差)は、前記フォーカスエラー信号の出力を、前記フォーカス信号残留誤差測定部内の所定のフォーカスエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって生成し、前記トラッキングエラー信号の残留誤差(残留誤差)は、前記トラッキングエラー信号の出力を、前記トラッキング信号残留誤差測定部内の、所定のトラッキングエラー信号用周波数帯域制限フィルタを通過させることによって生成する。
また、ある局面では、光学的情報記録媒体にレーザ光を照射し、照射されている半径位置に応じて、線速度一定制御(CLV)で光学的情報記録媒体を回転させ、第1の半径位置R1から第2の半径位置R2(R1<R2)までの領域は、第3の線速度Lv3で回転させてデータを記録し、第2の半径位置R2から外周側の領域は、第4の線速度Lv4(Lv3<Lv4)で回転させてデータを記録し、前記R1における前記第3の線速度の最大回転速度と前記R2における前記第4の線速度の最大回転速度が約同じであるように切替え半径位置R2が定められている。
また、ある局面では、前記第3の線速度がLv3=19.7m/secであって、前記第4の線速度Lv4が=29.5m/secあるいは39.4m/secであって、前記第2の半径位置R2はLv4/Lv3=1.5場合、33mm≦R2≦36mmの範囲にあり、Lv4/Lv3=2.0の場合、44mm≦R2≦48mmの範囲にある。
また、本発明の光学的情報記録媒体の情報記録方法は、上記検査装置によって残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差の検査結果を、前記メモリからから検索し、残留フォーカス誤差および残留トラッキング誤差が予め決められたそれぞれの基準値を超えている場合、1つあるいは複数の基準値を超えている半径位置情報のうち最も内周の半径位置情報(Rx)を検索し、前記光学的情報記録媒体のBCAあるいは/及び追記可能なリードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の所定のエリアに前記半径位置情報(Rx)を追記する。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。
また、本発明の光学的情報記録媒体の情報記録方法は、上記検査装置によって残留フォーカス誤差と残留トラッキング誤差の検査結果を、前記メモリからから検索し、残留フォーカス誤差あるいは残留トラッキング誤差が各線速度の基準値を満足しているか判定し、前記判定結果に基づいて、前記光学的情報記録媒体のBCAあるいは/及び追記可能なリードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の所定のエリアに最大記録可能線速度(Sx)を追記する。
ある局面では、前記リードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内のPACあるいはDMAあるいはOPCテストゾーンあるいはDriveエリアあるいはDCZ(Drive Calibration Zone)のいずれかまたは複数に、前記最高記録線速度(Sx)あるいは/及び前記半径位置情報(Rx)を追記する。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。
また、ある局面では、予め記録されている再生専用の管理領域(PIC領域)に記載されている最大線速度情報が19.7m/sec以下である。
また、本発明の光学的情報記録媒体は、上記光学的情報記録媒体への記録方法を用いて記録が行われる。
ある局面では、前記光学的情報記録媒体は、6倍速以上で書き込み可能なブルーレイディスク(BD−RあるいはBD−RE)である。
また、ある局面では、前記光学的情報記録媒体は、BCAあるいは、リードインゾーンあるいは/およびリードアウトゾーン内の書き換え可能な領域あるいは追記可能な領域に前記最高記録線速度情報(Sx)あるいは/かつ前記半径位置情報(Rx)を追記するエリアが設けられている。前記半径位置情報の替わりに、あるいは、前記半径位置情報に加えて、物理アドレス情報を追記してもよい。また、前記光学的情報記録媒体記録媒体が、前記半径位置情報/物理アドレス情報と異なる位置、例えば前記半径位置/物理アドレスよりも外側の位置あるいは領域で前記基準値を満たす場合、前記光学的情報記録媒体記録媒体に固有な情報として、その異なる位置あるいは領域を記録してもよい。
本発明は、高密度で高速記録または再生が可能な光学的情報記録媒体の検査方法、検査装置、光学的情報記録媒体および情報記録方法に好適用いられる。このような高密度で高速記録または再生が可能な光学的情報記録媒体およびこれに対応した記録再生装置はデジタル家電機器、情報処理装置に好適に用いられる。
101 光ディスク
102 スピンドルモータ
103 光ピックアップ
108 トラッキングサーボアンプ
109 フォーカスサーボアンプ
110 トラッキングアクチュエータドライバ
111 フォーカスアクチュエータドライバ
112 残留トラッキング誤差測定部
113 残留フォーカス誤差測定部
114 メモリ
115 判定部
116 レーザ駆動部
117 回転速度設定部