JPWO2009031510A1 - 改質窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法 - Google Patents

改質窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】極めて優れた光線透過特性を有し、特に、発光効率の高い光源の透光性カバーとして好適に使用することができる改質窒化アルミニウム焼結体を、簡易に且つ高い歩留まりで製造する方法を提供する。【解決手段】アルミニウムを除く不純物金属濃度150ppm以下、酸素濃度0.5重量%以下、及び、相対密度95%以上の窒化アルミニウム焼結体を出発原料として使用し、前記窒化アルミニウム焼結体を、1400〜2000℃の温度領域で酸化性雰囲気下での熱処理を行なうことにより、酸素濃度を0.03乃至0.3重量%高めることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、発光効率の高い光源の透光性カバーなどに好適に使用することができる透光性が向上した改質窒化アルミニウム焼結体の製造方法及び該方法により得られた改質窒化アルミニウムに関するものである。
従来、透光性材料としては、透明樹脂、ガラス、石英、透光性アルミナなど可視光に透明な材料が、使用環境、コスト等の制約によって適宜のものが選択して用いられている。例えば、低エネルギー強度の光源用のカバー(窓材)や比較的紫外光が含まれない波長の光を透過させるための透光性材料としては、透明樹脂或いはガラスが用いられる。また、比較的紫外光を含むような光の光源或いはエネルギー強度が大きく高温となる光源に用いる透光性カバーとしては、石英、アルミナを用いた材料が使用される。さらに、ハロゲンガス等腐食性ガスを使用する光源に適用される透光性カバーとしては、腐食耐性の高いアルミナ材が使用されている。
しかしながら、光源の高輝度化に伴う熱の発生の増加により、透光性材料として使用する材料が制限されることもあった。例えば、アルミナ材料はハロゲンガス耐性があるものの、放熱に関しては熱伝導率が30W/mKと小さいため、光源からの放熱が不十分であり、光源となる部材の寿命を縮めることが懸念される。
このような観点から、耐熱性や熱導電性が良好であり、ハロゲンガスに対する耐食性にも優れている窒化アルミニウム焼結体が透光性材料として注目されているが、この焼結体は、他の投光性材料に比して光透過率が低く、このため、透光性が向上した改質窒化アルミニウム焼結体が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、微細な粒径を有し且つ金属不純物含量の少ない窒化アルミニウム粉末を原料として使用し、1700〜2100℃の不活性雰囲気で焼成することにより、窒化アルミニウム焼結体を製造する方法が提案されている。この方法で得られる窒化アルミニウム焼結体は、0.2μm〜30μmの波長範囲で60〜75%の光透過率を示す。
また、特許文献2には、酸素濃度が400ppm以下、金属不純物濃度が150ppm以下、且つ炭素濃度が200ppm以下に抑制されているとともに、2μm〜20μmの平均結晶粒径を有していることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体が開示されている。この焼結体では、厚み0.3mmにおける260〜300nmの波長領域における分光スペクトル曲線の傾きが1.0(%/nm)以上、400〜800nmの波長領域における全光線透過率が86%以上であり、分光スペクトルにおける全光線透過率が60%に到達するときの波長が400nm以下である。
特開平2−26871号公報 特開2005−119953号公報
窒化アルミニウム焼結体の透光性を向上させるための手段の一つは、粒界中の不純物を低減させるというものである。即ち、窒化アルミニウムは、本来、バンドギャップが約6.2eVと大きく、完全な結晶であれば可視光の吸収はなく、従って、粒界の不純物による光の吸収や散乱を抑制することにより、窒化アルミニウムが本質的に有する高い光透過性を確保することができるというものである。特許文献1では、このような観点からのアプローチにより、窒化アルミニウムの透光性を高めている。
しかるに、窒化アルミニウム焼結体においては、最大の不純物として酸素を含んでおり、酸素の一部が窒化アルミニウムの結晶粒子中に固溶しており、この固溶酸素によって結晶粒子中に欠陥が生じており、この欠陥が可視光を吸収し、透光性を低下させている要因であると考えられている。例えば、特許文献1では、金属不純物含量が大きく低減された原料粉末を用いて焼結を行っているものの、この原料粉末の酸素濃度はさほど低減されておらず、このため、得られた焼結体中の窒化アルミニウム結晶粒子中には固溶酸素による欠陥が多く存在している。従って、特許文献1の窒化アルミニウム焼結体は、長波長領域の光に対しては高い透過率を示すものの、可視光領域(300〜800nm)での光透過率は低い。
特許文献2は、上記のような観点から、焼結体中の金属不純物含量と共に酸素濃度も大きく低減させており、従って、この窒化アルミニウム焼結体は、結晶粒界の不純物及び結晶内の欠陥による可視光の吸収が抑制されており、この結果、可視光に対して高い光透過性を示す。
このように、従来公知の窒化アルミニウム焼結体の光線透過特性の改善は、主として、金属不純物濃度と共に酸素濃度を低減させ、純度を高めることによるものである。特に特許文献2においては窒化アルミニウム焼結体の最大の不純物である酸素を400ppm以下にまで低減させて光透過率を向上させている。
しかしながら、よく知られているように、窒化アルミニウム焼結体において、酸素は最大の不可避的不純物である。そのため、特に工業的生産において、高い歩留まりで窒化アルミニウム焼結体中の酸素濃度を、例えば400ppm以下の範囲に制御することは極めて困難であり、安定して高い透過率を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることは至難の業である。
従って、本発明の目的は、窒化アルミニウム焼結体における酸素濃度を著しく低濃度に制御することなく、その透光性が向上した改質窒化アルミニウム焼結体を製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、酸素濃度がそれほど低減されていないにもかかわらず、可視光に対して高い光透過性を示す改質窒化アルミニウム焼結体を提供することにある。ここで、本発明における酸素濃度とは、得られた改質窒化アルミニウム焼結体の表面を研磨した後焼結対を粉砕し、高温熱分解法により求めた、焼結体全体に含まれる酸素のことを言う。
本発明者らは、前記目的を達成すべく研究を重ねた結果、窒化アルミニウム焼結体中の酸素濃度を、低濃度に抑制せず、熱処理により特定範囲の高温域で酸素を固溶させ、従来公知の技術とは逆に、むしろ酸素濃度を高めることにより、光線透過特性、特に可視光領域での全光線透過率を著しく向上させ得るという新規知見を得、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
還元雰囲気下での焼成により得られたアルミニウムを除く不純物金属濃度150ppm以下、酸素濃度0.5重量%以下、及び、相対密度95%以上の窒化アルミニウム焼結体を出発原料として使用し、
前記窒化アルミニウム焼結体を、600℃以上で且つ1400℃未満の温度で酸素と接触しないようにして、1400〜2000℃の温度領域で酸化性雰囲気下での熱処理を行なうこと、
を特徴とする改質窒化アルミニウム焼結体の製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、
(1)前記窒化アルミニウム焼結体を非酸化性雰囲気下に保持し、前記非酸化性雰囲気を昇温させて前記窒化アルミニウム焼結体を加熱し、前記非酸化性雰囲気の温度が1400〜2000℃の温度領域に達したときに、該非酸化性雰囲気を酸化性雰囲気に切り替えて、酸化性雰囲気下での前記熱処理を行うこと、
(2)前記窒化アルミニウム焼結体と共に、前記熱処理温度で酸素放出性を有する酸素供給源を前記非酸化性雰囲気中に保持しながら該非酸化性雰囲気を昇温せしめることにより、非酸化性雰囲気を酸化性雰囲気に切り替えること、
(3)前記酸素供給源が、イットリウムアルミネート、酸化マグネシウム、アルミナよりなる群より選ばれた少なくとも一種の無機酸化物であること、
(4)前記原料として使用する窒化アルミニウム焼結体が、金属不純物濃度50ppm以下、酸素濃度1重量%以下の窒化アルミニウム粉末と、焼結助剤とを含む成形体を、還元雰囲気下、1600〜2000℃の温度で3時間以上焼成することによって得られたものであること、
(5)前記焼結助剤が、1600℃で10−4Pa以上の蒸気圧を持つ易揮発性成分を10重量%以上の割合で含有するものであり、前記窒化アルミニウム粉末100重量部当り、0.1〜7重量部の量で使用されていること、
(6)前記酸化性雰囲気下での熱処理により、酸素濃度を0.03重量乃至0.3重量%高めること、
が好適である。
本発明によれば、また、金属不純物濃度が150ppm以下であり、酸素濃度が0.08重量%以上の範囲にあり、95%以上の相対密度を有していると共に、厚みが0.6mmの平板の形態で測定して、300〜800nmの波長領域での全光線透過率が67%以上であることを特徴とする改質窒化アルミニウム焼結体が提供される。
本発明の改質窒化アルミニウム焼結体においては、
(1)0.3mmの厚みの平板の形態で測定して、波長600nmの光についての直進光透過率が10%以上であること、
(2)35μm以上の平均結晶粒径を有していること、
が好適である。
本発明方法によれば、上記のような酸化性雰囲気下において特定温度領域(1600〜2000℃)で熱処理することにより、透光性が向上した改質窒化アルミニウム(AlN)焼結体を得ることができる。例えば、後述する実施例に示されているように、厚みが6mmの平板形状のAlN焼結体では、300〜800nmの波長領域での全光線透過率は67%以上となり、同じ厚みの円筒形状のAlN焼結体では、その径によっても異なるが、一般には、その全光線透過率は95%以上に達する。円筒形状のAlN焼結体で全光線透過率が飛躍的に向上しているのは、反射した光が再び焼結体中に入射する光増幅効果があるためである。
即ち、本発明においては、上記の熱処理によってAlN焼結体中のAlN結晶粒子内に酸素が固溶し、この結果として、透光性が高められるのであり、AlN焼結体中の酸素濃度を低減させることにより透光性を向上させている従来公知の方法とは、全く逆の手段を採用しているのである。このような熱処理によってAlN焼結体の透光性が向上する理由は解明されていないが、おそらく、前述した特定範囲の温度領域で結晶粒子に酸素を固溶させた場合には、新たに固溶した酸素によって新たな欠陥が生成し、新たな欠陥によって酸素に由来する欠陥の形態が全体的に変化し、可視光を吸収する欠陥から可視光を吸収しない欠陥に変異することによるためではないかと、本発明者等は推測している。
上記の説明から理解されるように、本発明では、酸素濃度を低減させず、酸素を固溶させることにより透光性を向上させるため、酸素濃度の高いAlN焼結体を用いることができるのであり、これは、本発明の最大の利点である。即ち、酸素は、AlN焼結体の製造過程において最も混入し易い不可避的不純物であり、その酸素濃度を低く制御することは極めて難しく、酸素濃度が低いAlN焼結体ほど、その歩留まりが低く、従って、その製造コストは極めて高くなってしまう。しかるに、本発明では、処理に用いるAlN焼結体の許容酸素濃度の上限は0.5重量%(5000ppm)であり、従来公知の技術では、本発明と同程度に透光性を向上させるためには、本発明に比して、著しく低酸素濃度のAlN粉末を使用しなければならない。
このようなに、本発明では、酸素濃度の高いAlN焼結体を用いて透光性を向上させ得るため、工業的に極めて有用である。
また、本発明においては、酸化性雰囲気下での熱処理を長時間(例えば100時間以上)行い、焼結体中の酸素濃度を増大(好適には0.03重量%以上)させることにより、AlN焼結体の全光線透過率を高いレベルに維持したまま、その直進光透過率を著しく向上させることができる。直進光透過率とは、焼結体内を屈折せずに直進して透過する光の割合を示すものであり、上記のような長時間での熱処理により、AlN結晶粒径が成長し、この結果、直進透光性が飛躍的に増大することとなる。例えば、厚みが0.3mmの板状AlN焼結体では、波長600nmの光についての直進光透過率は、上記のような長時間の熱処理により、10%以上に増大する。
また、上述した製造方法によって得られる本発明の改質窒化アルミニウム焼結体は、金属不純物濃度が150ppm以下に抑制されており、また、その酸素濃度が、例えば0.08重量%以上の高濃度に調整されていた場合にも高い光透過性を示し、厚みが0.6mmの平板の形態で測定して、300〜800nmの波長領域での全光線透過率が67%以上である。従来公知の窒化アルミニウム焼結体において、本発明と同等の光透過性を示すものは、特許文献2でも示されているように、その酸素濃度が著しく低減されており、本発明の改質窒化アルミニウム焼結体とは根本的に異なっている。
円筒形状の焼結体について、全光線光透過率を測定するための装置の概略図である。
符号の説明
1:積分球
2:サンプル
3:キャップ
4:サンプル支持部
5:光ファイバー
6:光源
7:検出器
8:表示部
9:緩衝板
10:光透過率測定装置
<原料窒化アルミニウム焼結体>
本発明の製造方法において、後述する酸化性雰囲気下での熱処理のために、原料として用いる窒化アルミニウム焼結体は、不純物金属濃度が150ppm以下、特に、100ppm以下であることが、可視光における高い透光性を実現するために重要である。即ち、このような不純物金属濃度の低い窒化アルミニウムを用いることにより、得られる改質AlN焼結体中の不純物金属濃度も同等レベルとなり、結晶粒界での不純物による光の吸収や散乱を抑制し、光透過性を向上させることが可能となる。
尚、上記不純物金属濃度は、アルミニウムを除く金属元素の金属換算での濃度を意味する。具体的には、このAlN焼結体の製造に使用される窒化アルミニウム粉末に由来する不純物金属や、焼結のために使用される焼結助剤や他の添加剤(例えば、後記の助剤揮散促進物質)などに由来する金属などの濃度である。Alを除いているのは、AlNを形成しているAlを、例えば焼結体表面に存在し得るAlのAlと区別しての定量が困難であるためである。但し、不純物としてのAlは、酸素と結合した化合物の形態で存在するため、以下の酸素濃度により調整されている。
また、原料として用いる窒化アルミニウム焼結体は、酸素濃度が0.5重量%以下、好ましくは、0.2重量%以下であることが、可視光での高い透光性を実現するために重要である。即ち、この酸素濃度が高いと、AlN結晶粒子内に固溶した酸素に由来する欠陥が多く存在し、このような欠陥による可視光の吸収が顕著となり、この結果、可視光での高い透光性を得ることが困難となってしまうからである。また、酸素濃度が多いと、Al不純物も多くなり、このようなAl不純物による散乱等によっても透光性の低下を生じてしまうからである。
しかるに、本発明では、後述する酸化性雰囲気下での熱処理により固溶酸素量を増大するため、酸素濃度を著しく低減させる必要は無く、製造に際して負荷がかからず、著しい歩留まりの低下や製造コストの増大をもたらさない程度の量で酸素を含有していて良く、このような観点から、例えば500ppm(0.05重量%)以上、特に800ppm以上の酸素濃度を有していることが好適である。
また、このAlN焼結体は、相対密度が95%以上であることが重要である。相対密度が低い場合、焼結体中のボイドが多くなり、これが光線の散乱源となり、透過率が低下してしまうからである。
<原料窒化アルミニウム焼結体の製造>
上記のように不純金属濃度及び酸素濃度が調整され且つ相対密度が95%以上に緻密化されたAlN焼結体は、窒化アルミニウム粉末を用いて、公知の方法によって還元性雰囲気下で焼成を行うことにより製造される。
例えば、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤とを含む成形体を作製し、この成形体を還元雰囲気下、1600〜2000℃の温度で3時間以上焼成することにより、原料として用いるAlN焼結体を得ることができる。
−窒化アルミニウム粉末−
上記で用いる窒化アルミニウム粉末としては、金属不純物濃度が50ppm以下、酸素濃度1重量%以下で、98重量%以上の高純度のものが使用されるが、炭素濃度も0.1重量%以下に調整されていることが好適である。また、この粉末の平均粒径は特に制限されないが、一般的には、レーザ回折散乱法で測定した体積換算での平均粒径(D50)が0.5〜20μm程度のものが使用される。
−焼結助剤−
また、焼結助剤は、焼結を促進させ、相対密度の高い緻密な焼結体を得るために使用されるものであり、上記窒化アルミニウム粉末100重量部当り、0.1〜7重量部、特に0.5〜5重量部の量で使用される。焼結助剤としては、特に制限されないが、特に、前述した高純度で不純金属濃度の低いAlN焼結体を得るためには、1600℃で10−4Pa以上の蒸気圧を持つ易揮発性の焼結助剤を用いることが好ましい。即ち、このような易揮発性の焼結助剤は、焼結を促進するばかりか、焼結体中に残存し難いという性質を有しており、特に不純金属濃度の低い焼結体を得る上で好適である。
このような揮発性焼結助剤の具体例としては、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類系化合物や、炭酸イットリウム、硝酸イットリウム、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ホルミウム、酸化イッテルビウム、酸化ガドリニウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ジスプロシウムなどの希土類系化合物等を例示することができ、これらの揮発性焼結助剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記のような揮発性焼結助剤は、他の焼結助剤と併用してもよいが、その場合には、不純金属濃度が前述した範囲とならないように考慮すべきであり、例えば、焼結助剤全体の10重量%以上、特に30重量%以上が揮発性焼結助剤であることが好ましい。
焼結助剤の粒径は、特に制限されないが、一般に小さい程、活性が高く、揮散し易くなるため、5μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。
−成形体の作製−
上述した窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末とを含む成形体は、両粉末の混合粉末を用いて、公知の手段によって成形することにより得られる。
窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末との混合は、例えば、ボールミル等の混合機によって、乾式または湿式により混合する方法が好適で採用できる。湿式で混合する場合においては、水、アルコール類、炭化水素類等の分散媒を使用するが、分散性の点でアルコール類、炭化水素類を用いることが好ましい。
また、上記の混合粉末を含む成形体は、窒化アルミニウム焼結体を量産するために、ある程度の強度を有していることが必要である。かかる強度を保つ目的で、有機バインダーを使用し、上記混合粉末に有機バインダーを添加して成形用組成物を調製し、この組成物を用いて所定の形状に成形を行った後に、脱脂することが好適である。
上記のような有機バインダーは、窒化アルミニウム粉末100重量部当り、0.1〜30重量部、特に1〜15重量部の量で使用される。
有機バインダーの代表的なものとしては、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂、ポリメタクリルブチル等のアクリル樹脂等を挙げることができるが、勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知の他の有機バインダーも使用することができる。
また、成形用組成物中には、必要に応じて、グリセリン化合物類などの分散剤及びフタル酸エステル類などの可塑剤も添加してよい。
尚、成形体は、用途に応じた適宜の形状を有するものであってよく、形状に応じて適宜の手段により成形される。例えば、シート状の成形体を得る場合は、ドクターブレード法による方法が一般的である。
有機バインダーを含む成形体は、還元雰囲気下での焼成に先立って、空気中、窒素中、水素中等の任意の雰囲気で加熱し、脱脂される。脱脂における温度は、有機バインダーの種類によっても異なるが、300〜900℃が好ましく、300〜700℃が特に好ましい。脱脂後の成形体中に残存する炭素量は、一般に300〜5000ppm程度である。
また、有機バインダーを使用せずに成形体を作製する場合には、前述した窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末との混合粉末を圧縮成形することにより成形体を作製することが好適である。このような圧縮成形は、例えば、一軸成形機にて、上記混合粉末の仮成形体を製造した後、CIP(冷間アイソスタテックプレス)成形機にて1〜4t/cmで加圧成形することにより行われる。
−還元雰囲気下での焼成−
上記のように脱脂され或いは圧縮成形された成形体は、還元雰囲気下で焼成され、かかる焼成により、焼結と同時に効率的に焼結助剤が除去され、緻密化され且つ高純度のAlN焼結体が得られる。
還元性雰囲気下での焼成は、例えば、成形体とカーボン源とを所定の容器内に共存させ、容器内を所定の温度に昇温させて成形体を加熱することにより容易に行うことができる。る方法が挙げられる。特に、焼結体の緻密化と助剤の揮散促進を勘案すると、上記容器としては、密閉容器を用いることが好ましい。
また、カーボン源として、固体状のカーボン、例えば、粉末状、繊維状、フェルト状、シート状、板状等、種々の形状を有する固体状カーボンを使用することができる。
また、容器内において、成形体とカーボン源とは、互いに非接触に保持されていることが、得られる焼結体の密度、表面粗さの制御の容易さの点で好ましい。また、成形体とカーボン源とを非接触に保持するためには、両者の間に、窒化ホウ素又は窒化アルミニウム焼結体よりなる板等を配置することが好適であり、特に密閉容器内において、カーボン源を収容している空間と、成形体を収容している空間とが、雰囲気の流通を許容する程度に区画されていることが、密度が高く、かつ助剤残存量が少ない窒化アルミニウム焼結体を得るために好ましい。
還元雰囲気下における焼成は、温度1500〜2000℃で、3時間以上、好ましくは、10〜50時間行われ、これにより、前述した相対密度、不純金属濃度及び酸素濃度を有する窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。
<酸化性雰囲気下での熱処理>
本発明の製造方法においては、上記のようにして得られるAlN焼結体を酸化性雰囲気下において、1400乃至2000℃、好ましくは1600〜1800℃の温度領域で熱処理が行われ、これにより、酸素がAlN結晶粒子中に固溶し、特に可視光に対する透過性が向上した改質窒化アルミニウム焼結体が得られる。
上記のような酸化性雰囲気下での熱処理は、前述したAlN焼結体の製造に連続して行うことができるが、還元性雰囲気下で行われた焼成に引き続いての酸化性雰囲気の熱処理は困難であるため、通常は、得られたAlN焼結体を容器から取り出し、他の容器に移し変えてから、酸化性雰囲気による熱処理を行うことが好ましい。この場合において、AlN焼結体が、600℃以上、1400℃未満の温度領域で酸素と接触すると、焼結体表面にAlが酸化されてアルミナ膜が生成してしまい、酸化性雰囲気下での熱処理に際して、酸素が焼結体の内部に拡散しにくくなってしまい、透光性の高い改質AlN焼結体を得ることが困難となってしまう。従って、上記温度範囲での酸素との接触防止するために、還元性雰囲気下に保持されているAlN焼結体を、そのまま、室温まで冷却した後、容器から取り出し、非酸化性雰囲気中に保持して熱処理の温度領域まで昇温することが必要である。
ここで、非酸化性雰囲気は、酸素分圧が10−4Pa以下であることが好ましく、かかる雰囲気は、熱処理に供するAlN焼結体を、所定の容器内に移し替え、該容器内を、窒素、アルゴン等の不活性ガスによって置換することによって形成することができる。
熱処理に供するAlN焼結体を収容する容器としては、窒化アルミニウム焼結体、窒化ホウ素焼結体等の焼結体や、モリブデン[Mo]等の耐熱性を有する非炭素材料の成形体よりなるものを使用することが好ましい。その中でも、耐久性の点から窒化アルミニウム焼結体、窒化ホウ素焼結体等の焼結体よりなる容器が好適である。
尚、上記容器は、その全てを上記材料で構成する必要はなく、たとえば、カーボン質の容器内表面を、上記のような非カーボン質であって且つガスを透過しない材料で被覆したものも使用される。
また、酸化性雰囲気下での熱処理は、一般に、上記のAlN焼結体が収容された容器を、カーボン炉内に設置しての加熱により行われる。従って、この容器は、酸化性雰囲気下での熱処理中に、カーボンを含む還元性ガスが流入しないように、密閉性が高いことが望ましい。
例えば、容器の壁を構成する材質のガス透過率は0.06×10−6mol/m・s・Pa以下であることが望ましい。また、蓋を使用する容器の場合、密閉性を保つため、蓋と本体とは、平均表面粗さ(Rz、JIS B 0601-1994)が3μm以下の平滑な面同士で密接していることが望ましい。即ち、従来の窒化アルミニウムの焼結等において、蓋付きの密閉容器を使用される場合があるが、この場合の蓋と容器とが接触している面の平均表面粗さは5μmを超えており、本発明の処理を行うには適当でない。
また、蓋と容器本体との封止は、本体あるいは容器のいずれかの封止面の全周に連続した溝を設け、他方の封止面には該溝と嵌合し得る連続した凸部を設け、これらを嵌合することによって、密閉性を保持することもできる。
本発明において、上記AlN焼結体が収容されている空間の雰囲気温度は、その容器内の空間温度を直接測定することによって把握できるが、後述する実施例に示す程度の大きさの容器であれば、カーボン炉の加熱温度とほぼ同等となるため、加熱源であるカーボン炉の炉壁温度をもって前記雰囲気温度として制御することができる。
本発明においては、上記のように容器内に収容されているAlN焼結体の非酸化性雰囲気の温度を昇温せしめ、この雰囲気温度が前述した前記熱処理温度領域に到達したときに、非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切替えて熱処理が行われる。この場合の昇温速度は、特に制限されないが、5℃/分〜20℃/分が一般的である。
雰囲気温度が熱処理温度領域に到達したときの非酸化性雰囲気から酸化性雰囲気への切り替えは、AlN焼結体を収容している容器内に酸素ガス等の酸化性ガスを導入し、非酸化性雰囲気を酸化性ガスで置換することによって行うことができるが、このような手段では、カーボン炉内の容器内に酸化性ガスを導入するためのパイプや非酸化性ガスを排出するためのパイプなどが必要となり、容器の構造が複雑なものとなってしまう。このため、上記の熱処理温度領域で酸素を放出する酸素供給源を、前述したカーボン源と同様の方法で、AlN焼結体と共に、容器内に共存させることが好ましい。
このような酸素供給源は、1400℃未満の温度領域では、酸素を放出せず、例えば容器内の酸素分圧を10−4Pa未満に保持し、熱処理温度領域(1400〜2000℃、特に1600〜1800℃)で酸素を放出して酸素分圧を高める化合物であり、具体的には、イットリウムアルミネート、酸化マグネシウム、アルミナよりなる群より選ばれた少なくとも一種の無機酸化物が好適に使用される。このような酸素供給源は、前述したカーボン供給源と同様、任意の形態を有するものであってよく、一般に、熱処理中、容器内の酸素分圧を10−4Pa以上に保持し得るような量で、容器内に配置される。
本発明において、上記のようにして形成される酸化性雰囲気中において、AlN焼結体を、1400〜2000℃、特に1600〜1800℃の熱処理温度領域に保持することにより、酸素がAlN焼結体中に拡散し、AlN結晶粒子中に固溶することにより、高い透光性を有する改質AlN焼結体が得られる。即ち、このような熱処理による酸素の固溶により、おそらく、結晶粒子中の欠陥の形態が可視光を吸収する形態から可視光を吸収しない形態に変異し、この結果、特に可視光に対する透光性が高められるものと思われる。
本発明において、上記のような熱処理により、AlN焼結体中の酸素濃度は増大するが、特に酸素濃度が0.03重量%以上増大するような時間、熱処理を行うべきである。即ち、熱処理に伴って酸素濃度は増大していくが、酸素濃度の増加に伴って新たに結晶粒子中に固溶する酸素量が増大し、この結果、上述した欠陥の変異が多くなり、透光性の向上が発現する。従って、熱処理時間が短く、酸素濃度の増大が十分出ない場合には、固溶する酸素量が少なく、このため、欠陥の変異も十分に生ぜず、透光性の向上が不十分となってしまう。また、上記のような範囲での酸素濃度の増大をもたらすための熱処理時間は、酸化性雰囲気中の酸素分圧や熱処理温度によって異なり、正確には、予め実験を行って定めておくことが必要であるが、一般的には、1時間以上、特に3時間以上熱処理を行えば、酸素濃度が十分に増大し、固溶酸素量が増える結果、特に可視光に対しての透過性が確実に向上する。
上記の説明から理解されるように、本発明においては、前記熱処理によって特に可視光に対する透過率が向上する。可視光の透過率は、後述する実施例に示されているように、300〜800nmの波長領域での全光線透過率によって示されることとなる。ところで、本発明においては、酸素濃度が0.3重量%増加した後も熱処理を続行し、AlN結晶粒子を成長させることにより、全光線透過率を低下させることなく、直進光に対する透過率を向上させることができる。即ち、結晶粒子の粒径が増大することにより、光線が焼結体を通過する際の粒界における屈折回数が減少し、直進して透過する光の割合が増大するからである。例えば、AlN結晶粒子の平均粒径を35μm以上に成長させることにより、直進透過率を著しく向上させることができる。因みに、AlN結晶粒子の平均粒径を35μm以上に成長させるために必要な熱処理時間は、熱処理条件や熱処理に供するAlN焼結体におけるAlN結晶粒子の大きさなどによっても異なるが、一般的には、100時間以上であり、300時間程度で結晶粒の成長が頭打ちとなる。
上記のような熱処理後は、加熱を停止し、室温まで冷却した後、透光性が向上した改質AlN焼結体が容器から取り出される。この場合の降温速度も特に制限されないが、通常は、放冷により降温が行われる。
尚、降温時においても、1400℃未満、600℃以上の温度領域で改質されたAlN焼結体と酸素との接触を防止することが必要である。Alの生成により、散乱等が生じ、透光性が低下するおそれがあるためである。この場合において、前述した酸素放出性化合物を用いて酸化性雰囲気を形成している場合には、温度低下により、雰囲気中の酸素分圧が低下するため、Alが生成せず、特に問題はないが、酸化性ガスの導入により酸化性雰囲気を形成していた場合には、降温に際して、雰囲気を不活性ガス等の非酸化性ガスに置換しておくことが必要である。
<改質窒化アルミニウム焼結体>
かくして得られる改質アルミニウム焼結体は、95%以上の相対密度を有しており、金属不純物濃度が150ppm以下に抑制されていると共に、前述した熱処理によって酸素濃度が増大しているため、少なくとも0.3重量%以上の酸素濃度を有しており、可視光に対する透過性が向上している。例えば、厚みが0.6mmの平板の形態で測定して、300〜800nmの波長領域での全光線透過率が67%以上である。また、同じで厚みの円筒形状で測定した場合には、その径によっても異なるが、300〜800nmの波長領域での全光線透過率は、一般に、95%以上に達する。
特に、上記の改質アルミニウム焼結体の中でも、酸素濃度が0.08重量%以上であるものは、原料のAlN焼結体として酸素濃度の高いものを使用することができるため、大幅なコストダウンを図ることができるなど、その工業的価値は高く、しかも、このような高濃度の酸素含量を有していながら、上記のように優れた透光性を示すものは、従来には全く知られておらず、極めて有用である。
また、特に長時間の熱処理により、AlN結晶粒子の平均径が35μm以上となっている焼結体では、上記のような高い全光線透過率を有していると同時に高い直進光透過率を示し、例えば、平板形状厚み0.3mmでの直線透過率が10%以上である。
尚、このような改質窒化アルミニウム焼結体は、一般に、100〜220W/m・kの熱伝導率を有している。
本発明の改質窒化アルミニウム焼結体は、用途に応じて種々の形状を有するものであってよく、円筒形状(チューブ状)、平板形状(板状)、曲面状、球状、楕円球状、カップ状、お碗状等の任意の形状で使用に供することができる。
特に、本発明の窒化アルミニウム焼結体は、その優れた透光性を活かして、発光管、ランプ等の光源用カバー等の用途に使用する場合においては、かかるランプのおける構造に応じて、適宜の形状を決定すればよい。
以下、本発明の方法を具体的に説明するための実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例における各種の物性の測定は次の方法により行った。
(1)不純物金属濃度
アルミニウムを除く不純物金属元素濃度は、窒化アルミニウム焼結体を粉砕し粉末状にした後、酸で溶融後、島津製作所製「ICP−1000」を使用して溶液のICP発光分析により定量した。
炭素濃度は、窒化アルミニウム焼結体を粉末状にした後、堀場製作所製「EMIA−110」を使用して、粉末を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO、COガス量から定量した。
また、窒化アルミニウム粉末の不純物については、上記粉砕後の操作を適用して、その定量を行った。
(2)酸素濃度
酸素濃度は、窒化アルミニウム焼結体の表面を研磨し、粉砕し粉末状にした後、堀場製作所製「EMGA−2800」を使用して、グラファイトるつぼ中での高温熱分解法により発生したCOガス量から求めた。
(3)全光線透過率(平板形状)
平板形状の窒化アルミニウム焼結体の光透過率は、窒化アルミニウム焼結体を直径30mm、厚み0.6mmの形状に加工し、スガ試験機株式会社製「HZ−1」を用いて、300〜800nmの波長領域の可視光で測定した。
(4)全光線透過率(円筒形状)
図1に示すように、チューブ形状の窒化アルミニウムについて、光透過率測定装置10を用い、波長300nm〜800nmの可視光で全光線透過率を測定した。
即ち、光ファイバー5により光源6から発せられた可視光を、キャップ3をしたサンプルチューブ内部に導入し、サンプルチューブ外壁より漏れ出した光量から光透過率を算出した。なお、光透過率測定装置10は、図1に示すように、積分球1、サンプル支持部4、検出器7、表示部8および緩衝板9を備えている。
(5)熱伝導率
理学電気株式会社製、熱定数測定装置PS−7を使用して、レーザーフラッシュ法により測定した。厚み補正は検量線により行った。
(6)相対密度
窒化アルミニウム焼結体の密度は、高精度比重計D−H(商品名:東洋精機社製)を使用して、アルキメデス法により求めた。また、求められた密度の値を、窒化アルミニウムの理論密度3.260g/cmで除することにより相対密度を求めた。
(7)直進光透過率
窒化アルミニウム焼結体の光透過率は、窒化アルミニウム焼結体を直径30mm、厚み0.3mmの形状に加工し、UV−VISを用いて、600nmの波長の光で測定した。
(8)SEM観察
まず、得られた焼結体サンプルを、焼結体表面に対してほぼ垂直となる方向に破断した。破断面をサンプルの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)S−2600N(商品名:日立製作所社製)を使用して観察した。倍率は、窒化アルミニウムの結晶粒子100個〜300個が一観察画面に含まれる大きさとなるように設定し、2次電子像を撮影した。
上記の焼結体微構造のSEM写真から、コード法により平均結晶粒径を求めた。
<実施例1>
下記の窒化アルミニウム粉末を用意した。
窒化アルミニウム粉末:
平均粒径;1.3μm
BET比表面積;3.39m/g
酸素濃度;0.8重量%
金属元素濃度(Alを除く);35ppm
内容積が0.3Lのナイロン製ポットに、鉄芯をナイロンで被覆した、直径10mmのナイロンボールを入れ、次いで、上記の窒化アルミニウム粉末100重量部、焼結助剤粉末(3CaO・Al)5重量部を入れ、さらに、溶媒(エタノール)40重量部を加えて湿式混合した。
得られた混合物を120℃で乾燥し、粉砕した。粉砕物をステンレス製ふるい(目開き200mm)で分級し、成形用の混合粉末を得た。
上記の成形用混合粉末10gを、一軸成形機にて直径40mm、厚み6mmの成形体に仮成形した後、CIP成形機にて3t/cmの荷重をかけて本成形を行った。
上記操作にて得られた成形体を、カーボンの板の入った窒化アルミニウム製容器内にカーボンと成形体との間に窒化ホウ素よりなる板を設置して両者が非接触になるように設置した。
上記の窒化アルミニウム製容器に収納した成形体を、還元雰囲気下、1880℃で30時間焼成し、熱処理に用いる原料窒化アルミニウム焼結体を得た。
得られた焼結体の金属不純物濃度、酸素濃度、相対密度、平均結晶粒径、及び板状での全光線透過率を、その製造条件と共に、表1に示す。
表1において、C3Aは、3CaO・Alを示す。
次いで、酸素放出物質として、下記のアルミナを用意した。
アルミナ:
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−1Pa以上
上記で得られたAlN焼結体を、表2に示すガス透過性を有するAlN製蓋付き容器(64mm幅×64mm長さ×20mm高さ)内に、上記のアルミナ(酸素放出物質)1gと共にセットした。また、蓋と容器との密接面の表面粗さを表2に示した。
上記の容器をカーボン炉に置き、カーボン炉内を窒素置換することにより、該容器内を同時に窒素置換し、その後、雰囲気温度(カーボン炉の炉壁温度にて管理)を10℃/分の速度で昇温した。
雰囲気温度が1880℃に達した時点で昇温を止め、かかる温度で熱処理を30時間行った。
上記方法によって得られた改質窒化アルミニウム焼結体の各種特性を表2に示した。また、表2には、製造条件(熱処理条件)も併せて示した。
尚、この例での全光線透過率は、板状で測定した。以下の実施例2〜12及び比較例1〜5も同様である。
さらに、この改質AlN焼結体の直進光透過率を測定したところ、3.9%であった。
<実施例2>
焼結助剤の添加量を1重量部としたこと以外は、実施例1と同様の操作により原料のAlN窒化アルミニウム焼結体を得、さらに実施例1と同様の条件での熱処理により、改質AlN焼結体を得た。原料のAlN窒化アルミニウム焼結体の物性及び得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例3>
原料のAlN窒化アルミニウム焼結体の熱処理時間を5時間とした以外は実施例1と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例4>
酸素放出物質として、次の特性を有するYAG(3Y・5Al)を用意した。
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−1Pa以上
原料のAlN窒化アルミニウム焼結体の熱処理温度を1690℃、及び熱処理時間を100時間とし、酸素放出物質をアルミナからYAGに変更した以外は、実施例1と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例5>
酸素放出物質として、次の特性を有するYA(2Y・Al)を用意した。
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−3Pa以上
酸素放出物質としてYAを用いた以外は、実施例4と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例6>
酸素放出物質として、次の特性を有するYA(Y・Al)を用意した。
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−3Pa以上
酸素放出物質としてYAを用いた以外は、実施例4と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例7>
酸素放出物質として、次の特性を有する酸化イットリウムを用意した。
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−3Pa以上
酸素放出物質として酸化イットリウムを用いた以外は、実施例4と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例8>
酸素放出物質として、次の特性を有する酸化マグネシウムを用意した。
1400℃未満での酸素分圧;10−4Pa未満
1400℃〜2000℃での酸素分圧;1×10−1Pa以上
酸素放出物質として酸化マグネシウムを用いた以外は、実施例4と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例9>
酸素放出物質として、実施例1と同様にアルミナを用いた以外は、実施例4と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例10>
原料のAlN窒化アルミニウム焼結体の熱処理温度を1480℃、熱処理時間を5時間とし、酸素放出物質として酸化マグネシウムを用いた以外は、実施例1と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例11>
内容積が50Lのナイロン製ポットに、鉄芯をナイロンで被覆したナイロンボール(直径10mm)を入れ、次いで、窒化アルミニウム粉末(実施例1で用いたもの)100重量部、焼結助剤粉末(3CaO・Al)5重量部を入れ、さらに、有機バインダー(アクリル)4重量部、有機溶媒(トルエン)120重量部を加えて湿式混合した。上記混合物をスプレードライし、顆粒(成形用組成物)を得た。
上記課粒10gを一軸成形機にて直径40mm、厚み6mmの成形体に仮成形した後、CIP成形機にて3t/cmの荷重をかけて本成形を行った。
得られた成形体を、大気中、脱脂温度530℃で、4時間の脱脂を行い、残存炭素量500ppmの脱脂成形体を得た。
上記で得られた脱脂成形体を用いて実施例1と同様の操作により原料AlN焼結体を得、さらに実施例1同様に熱処理を行って改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<実施例12>
原料AlN焼結体の熱処理を270時間行った以外は実施例1と同様の操作により改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
尚、この改質AlN焼結体について、直進光透過率を測定したところ、13.5%と、実施例1に比して、著しく向上していた。
表1,2の結果から、上記の実施例1〜12では、板状での全光線透過率が1.7%〜4.5%向上していることが判る。
<比較例1>
焼結助剤を全く使用せずに、1880℃の温度で8時間熱処理を行い、原料AlN焼結体を得た。このAlN焼結体の酸素濃度は0.59重量%、金属不純物濃度は265ppmであり、全光線透過率(板状)は26.3%であった。
上記のAlN焼結体を原料として用いて実施例1と同様にして熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<比較例2>
原料AlN焼結体の熱処理温度を1200℃、熱処理時間を5時間とした以外は実施例1と同様にして熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<比較例3>
容器内に酸素放出物質を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<比較例4>
原料AlN焼結体と酸素放出物質との区画に用いた治具を0.08×10−6mol/m・s・Paのガス透過性を有するものに変更した以外は実施例1と同様にして熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
<比較例5>
原料AlN焼結体を収容する容器の封止面の表面粗さを5μmとした以外は実施例1と同様にして熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。原料AlN焼結体の物性と得られた改質AlN焼結体の物性を製造条件と併せてそれぞれ表1、表2に示した。
尚、上記各実施例及び各比較例で得られた窒化アルミニウムの焼結体の相対密度と金属不純物量は、各々の一次窒化アルミニウム焼結体と同じ値を示した。
Figure 2009031510
Figure 2009031510
<実施例13>
実施例11と全く同様にして、窒化アルミニウム粉末、焼結助剤粉末(3CaO・Al)、有機バインダー及び有機溶媒を湿式混合し、スプレードライにより、成形用の粒状組成物を調製した。
この粒状組成物を射出成形し、厚みが0.6mmの円筒状成形体(直径10mm)を作製した。
この成形体を大気中、脱脂温度530℃で、4時間の脱脂を行い、残存炭素量530ppmの脱脂体成形体を得た。
上記操作にて得られた脱脂体を、実施例1と同様の操作で焼成して原料AlN焼結体を得た。
この焼結体では、酸素濃度が0.10重量%、金属濃度(Alを除く)が100ppm未満、相対密度が99%であり、円筒状での全光線透過率は41.8%であった。
次いで、上記のAlN焼結体を実施例1と全く同じ条件で熱処理を行い、改質AlN焼結体を得た。
この改質AlN焼結体では、酸素濃度が0.40重量%、金属濃度(Alを除く)が100ppm未満、相対密度が99%であり、円筒状での全光線透過率は97.8%と飛躍的に向上していた。
<実施例14>
原料AlN焼結体の熱処理時間を10時間とした以外は、実施例13と同様にして改質AlN焼結体を得た。
この改質AlN焼結体では、酸素濃度が0.20重量%、金属濃度(Alを除く)が100ppm未満、相対密度が99%であり、円筒状での全光線透過率は96.0%と、やはり飛躍的に向上していた。

Claims (10)

  1. 還元雰囲気下での焼成により得られたアルミニウムを除く不純物金属濃度150ppm以下、酸素濃度0.5重量%以下、及び、相対密度95%以上の窒化アルミニウム焼結体を出発原料として使用し、
    前記窒化アルミニウム焼結体を、600℃以上で且つ1400℃未満の温度で酸素と接触しないようにして、1400〜2000℃の温度領域で酸化性雰囲気下での熱処理を行なうこと、
    を特徴とする改質窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  2. 前記窒化アルミニウム焼結体を非酸化性雰囲気下に保持し、
    前記非酸化性雰囲気を昇温させて前記窒化アルミニウムを加熱し、
    前記非酸化性雰囲気の温度が1400〜2000℃の温度領域に達したときに、該非酸化性雰囲気を酸化性雰囲気に切り替えて、酸化性雰囲気下での前記熱処理を行う請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記窒化アルミニウム焼結体と共に、前記熱処理温度で酸素放出性を有する酸素供給源を前記非酸化性雰囲気中に保持しながら該非酸化性雰囲気の温度を昇温せしめることにより、非酸化性雰囲気を酸化性雰囲気に切り替える請求項2記載の製造方法。
  4. 前記酸素供給源が、イットリウムアルミネート、酸化マグネシウム、アルミナよりなる群より選ばれた少なくとも一種の無機酸化物である請求項3記載の製造方法。
  5. 前記原料として使用する窒化アルミニウム焼結体が、金属不純物濃度50ppm以下、酸素濃度1重量%以下の窒化アルミニウム粉末と、焼結助剤とを含む成形体を、還元雰囲気下、1600〜2000℃の温度で3時間以上焼成することによって得られたものである請求項1に記載の製造方法。
  6. 前記焼結助剤が、1600℃で10−4Pa以上の蒸気圧を持つ易揮発性成分を10重量%以上の割合で含有するものであり、前記窒化アルミニウム粉末100重量部当り、0.1〜7重量部の量で使用されている請求項5記載の製造方法。
  7. 前記酸化性雰囲気下での熱処理により、酸素濃度を0.03重量%乃至0.03重量%高める請求項1に記載の製造方法。
  8. 金属不純物濃度が150ppm以下であり、酸素濃度が0.08重量%以上の範囲にあり、95%以上の相対密度を有していると共に、厚みが0.6mmの平板の形態で測定して、300〜800nmの波長領域での全光線透過率が67%以上であることを特徴とする改質窒化アルミニウム焼結体。
  9. 0.3mmの厚みの平板の形態で測定して、波長600nmの光についての直進光透過率が10%以上である請求項8に記載の改質窒化アルミニウム焼結体。
  10. 35μm以上の平均結晶粒径を有している請求項9に記載の改質窒化アルミニウム焼結体。
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