JP5328871B2 - 窒化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
このような状況下において、本発明者らは、窒化アルミニウム焼結体を構成する窒化アルミニウム結晶の性質と、焼結体の光学特性との関連を調査、検討した結果、窒化アルミニウム結晶中の欠陥(たとえば空孔型欠陥)が、焼結体の光学特性に影響を与える可能性があるとの知見を得た。すなわち、結晶中の欠陥が増大するにつれ、焼結体の光透過性が損なわれる傾向があることを見出した。このことは、結晶の欠陥を減少させることで、焼結体の光学特性が改善されうることを示唆している。そして、本発明者らは、アルミニウム空孔型欠陥を減少させる手段を案出し、本発明を完成するに至った。
なお、アルミニウム結晶粒の欠陥は、陽電子消滅法により評価される。
(1)窒化アルミニウム粉末100重量部とアルカリ土類系酸化物の焼結助剤2重量部〜20重量部とを含む混合物を成形し、得られた成形体を、還元雰囲気下、1500〜2000℃で、少なくとも3時間、200時間以内焼成した後、1000℃以上の温度において安定に存在し尚且つアルミニウム系ガスを放出する、高温分解性アルミニウム化合物の共存下、1600〜2000℃で1〜200時間アニールすることを特徴とする、陽電子消滅法における欠陥分析において、窒化アルミニウム結晶中で、180ps(ピコ秒)内に消滅する陽電子の割合が90%以上である窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(2)窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率が200W/mK以上である(1)に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
窒化アルミニウム焼結体は、一般に窒化アルミニウム結晶粒と、焼結助剤を主成分とした粒界相とからなる。ただし、粒界相は必ずしも必須ではなく、粒界相がなく窒化アルミニウム結晶粒のみからなる焼結体も本発明に含まれる。
本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、陽電子消滅法における欠陥分析において、窒化アルミニウム結晶中で、180ps(ピコ秒)内に消滅する陽電子の割合が90%以上であり、空孔型欠陥が実質的に存在しない、完全結晶から構成されていることが理解される。
次に本発明に係る窒化アルミニウム焼結体の製造方法について説明するが、本発明の窒化アルミニウム焼結体は、上記物性を有する限り、その製造方法は特に限定はされない。
原料焼結体は、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤との混合物を所定形状に成形し、成形体を還元雰囲気下で焼成することにより製造される。
脱脂は、空気中、窒素中、水素中等の任意の雰囲気で加熱することにより行うことができるが、残留炭素量の調整がし易い、窒素中で脱脂を行うことが好ましい。また、脱脂温度は、有機バインダーの種類によっても異なるが、一般には、300℃〜900℃、特に300℃〜700℃が好適である。尚、圧縮成形法のように、有機バインダーを用いずに成形を行った場合には、上記の脱脂工程は不要である。
上記還元性雰囲気を実現する方法としては、焼成用の容器内に、成形体とともにカーボン発生源を共存させる方法、焼成用の容器としてカーボン製のものを用いる方法等が挙げられるが、その中でも、得られる焼結体の熱伝導率や色ムラ等を勘案すると、成形体とカーボン発生源とを焼成用の容器内に共存させる方法が好適であり、特に、高い熱伝導率を得るためには、焼成用の容器を密閉容器とし、この密閉容器内に成形体とカーボン発生源とを収容する方法が最も好適である。
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における各種の物性の測定は次の方法により行った。
陽電子発生源として22Naを使用した。22Naのβ+崩壊により、陽電子とともに1275keVのγ線(γ0)を放出する。γ0をシンチレーターで検出することにより、陽電子の発生時刻を確認した。発生した最大540keVの陽電子を窒化アルミニウムに照射した。窒化アルミニウム中において陽電子は熱エネルギー程度に減速した後、電子と対消滅し、2本の511keVの消滅γ線(γ1)を放出する。窒化アルミニウムから放出したγ1をシンチレーターで検出し陽電子の消滅時刻とする。この時間差を時間測定回路で測定することにより、陽電子寿命スペクトルを得る。
理学電気(株)製の熱定数測定装置PS−7を使用して、レーザーフラッシュ法により測定した。厚み補正は検量線により行った。
窒化アルミニウム焼結体の光透過率は、窒化アルミニウム焼結体を直径30mm、厚み0.3mmの形状に加工し、スガ試験機株式会社製「HZ−1」を用いて測定した。
窒化アルミニウム焼結体の240−800nmの波長領域における分光スペクトルは、窒化アルミニウム焼結体を、直径30mm、厚み0.3mm、平均表面粗さRa(JIS B 0601)を0.05μm以下の形状に加工し、島津製作所製「UV−2100」を用いて測定した。この分光スペクトル曲線から、260〜300nmの波長領域の傾き(立上り特性)と、光線透過率が60%に到達するときの波長を求めた。
内容積が2.4Lのナイロン製ポットに、鉄心をナイロンで被覆した、直径15mmのナイロンボール(表面硬度100kgf/mm2以下、密度3.5g/cm3)を入れ、次いで、平均粒径が1.3μm、比表面積が3.39m2/g、酸素濃度0.8wt%、金属元素濃度35ppmの窒化アルミニウム粉末100重量部に対して、焼結助剤粉末として平均粒径が1.8μm、比表面積が3.75m2/gのカルシウムアルミネート化合物(Ca3Al2O6)を2部、次いで、エタノールを溶媒として40重量部加えて湿式混合した。この時、前記ナイロンボールはポットの内容積の40%(見かけの体積)充填した。混合はポットの回転数70rpmで3時間行った。更に、得られたスラリーを乾燥して窒化アルミニウム粉末を得た。
焼結助剤の量を3部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を5部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を7部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を10部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を5部とし、アニール処理における高温分解性アルミニウム化合物の種類を硫化アルミニウムとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を5部とし、アニール処理における高温分解性アルミニウム化合物の種類をフッ化アルミニウムとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を5部とし、アニール処理における高温分解性アルミニウム化合物の種類をAlNとしたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、アニール処理で使用した高温分解性窒化アルミニウムは、SH30(トクヤマ製窒化アルミニウム焼結体)である。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を0.5部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を1部としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤の量を5部とし、アニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤をY2O3とし、その添加量を5部とした、さらに、焼成温度を1780℃、保持時間を5時間とし、中性雰囲気にて焼成した、加えてアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
焼結助剤を添加しないこと、焼成温度を1880℃、保持時間を5時間とし、中性雰囲気にて焼成した、加えてアニール処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。窒化アルミニウム焼結体の製造条件及び得られた窒化アルミニウム焼結体の特性を表1に示した。
Claims (2)
- 窒化アルミニウム粉末100重量部とアルカリ土類系酸化物の焼結助剤2重量部〜20重量部とを含む混合物を成形し、得られた成形体を、還元雰囲気下、1500〜2000℃で、少なくとも3時間、200時間以内焼成した後、1000℃以上の温度において安定に存在し尚且つアルミニウム系ガスを放出する、高温分解性アルミニウム化合物の共存下、1600〜2000℃で1〜200時間アニールすることを特徴とする、陽電子消滅法における欠陥分析において、窒化アルミニウム結晶中で、180ps(ピコ秒)内に消滅する陽電子の割合が90%以上である窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率が200W/mK以上である請求項1に記載の窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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