JPWO2009014140A1 - 新規な脂肪酸組成を有する脂肪酸組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、従来とは異なる脂肪酸組成である脂肪酸組成物の提供である。上記課題は、本発明の配列番号1の塩基配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸、あるいはこれらと同等の機能を有する変異体を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)〜v)i) オレイン酸含有量ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びにiii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率iv) パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率v) n−6系脂肪酸含有量のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする、前記脂肪酸組成物により解決される。

Description

本明細書は、2007年7月23日に出願された日本国特許出願第2007−190680号に基づく優先権を主張する。
本発明は、本発明の配列番号1の塩基配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸、あるいはこれらと同等の機能を有する変異体を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)〜v)
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v) n−6系脂肪酸含有量
のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする、前記脂肪酸組成物に関する。
脂肪酸は、リン脂質やトリアシルグリセロール等脂質を構成する重要な成分である。このうち、不飽和結合を2箇所以上含有する高度不飽和脂肪酸(PUFA)である、アラキドン酸やジホモγ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等は様々な生理活性が報告されている(非特許文献1)。この高度不飽和脂肪酸は様々な分野での利用が期待されており、当該脂肪酸を効率よく取得するために、種々の微生物を培養して高度不飽和脂肪酸を獲得する方法が開発されてきた。また、植物で高度不飽和脂肪酸を生産させる試みもなされている。こうした場合、高度不飽和脂肪酸は、例えばトリアシルグリセロール等の貯蔵脂質の構成成分として、微生物の菌体内若しくは植物種子中に蓄積されることが知られている。
このトリアシルグリセロールは、生体内で、グリセロール−3−リン酸を出発物質として、リゾホスファチジン酸から、ホスファチジン酸、ジアシルグリセロールを経て生成される。
上記のように、リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid:以下、本明細書において「LPA」又は「1−アシルグリセロール−3−リン酸」と記載する場合もある。)がアシル化されてホスファチジン酸(phosphatidic acid:以下、本明細書において「PA」又は「1,2−ジアシル−sn−グリセロール−3−リン酸」と記載する場合もある)を生成する反応には、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(以下、「LPAAT」と記載する場合もある)が介在することが知られている。
このLPAATは、1−アシルグリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(E.C. 2.3.1.51)としても知られ、その遺伝子はこれまでにいくつかの生物で報告されている。Escherichia coli由来のLPAAT遺伝子としてplsC遺伝子がクローン化されており(非特許文献2)、真菌では、Saccharomyces cerevisiae由来のSLC1遺伝子がクローン化されている(非特許文献3)。また、動物や植物からもクローン化されている(特許文献1)。
脂質生産菌であるMortierella alpina(以下、「M. alpina」と記載する場合もある)のLPAAT遺伝子としては、2種類のホモログが報告されている。(特許文献2及び特許文献3)。
このうち、特許文献2にはM. alpina由来の、CDSの塩基数が1254個である配列番号16で示された塩基配列からなる遺伝子であるLPAATホモログ(LPAAT1)をクローニングしたことが記載されている。また、本文献には、このLPAAT1を酵母でΔ6不飽和化酵素およびΔ6鎖長延長酵素と共発現させて、特定の脂肪酸を添加した培地で培養したところ、添加した脂肪酸よりも鎖長が長い脂肪酸や不飽和度の高い脂肪酸がLPAAT1を発現していない株と比較して多く産生されたことが報告されている(特許文献2)。
国際特許出願パンフレットWO2004/076617号 米国特許出願公開第2006/174376号 米国特許出願公開第2006/0094090号 Lipids, 39, 1147 (2004) Mol. Gen. Genet. , 232, 295-303, 1992 J.B.C., 268, 22156-22163, 1993 Biochemical Society Transactions, 28, 707-709, 2000 J. Bacteriology, 180, 1425-1430, 1998 J. Bacteriology, 173, 2026-2034 1991
しかしながら、これまでに報告されているLPAAT遺伝子は、宿主細胞に導入して発現させても、その基質特異性により、宿主が産生する脂肪酸組成物は限られていた。そこで、これまでとは異なる組成の脂肪酸組成物を産生しうる、遺伝子を同定することが求められている。
本発明の目的は、油脂や食品等を製造するために有用な脂肪酸組成を有する脂肪酸組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。まず、脂質生産菌Mortierella alpina由来のLPAAT1-longという遺伝子を単離し、酵母等の高増殖能を有する宿主細胞に導入して脂肪酸組成物を産生させて、公知のLPAATとは異なる脂肪酸組成物を生成させることに成功して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)〜v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする、前記脂肪酸組成物。
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv) パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v) n−6系脂肪酸含有量
また、本願発明の脂肪酸組成物は、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸:
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなる塩基配列;
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードする塩基配列;
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列;
を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であってもよい。
(2) 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、(1)に記載の脂肪酸組成物。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(3) 前記核酸が、以下の(a)または(b)に記載の塩基配列を含む、(1)に記載の脂肪酸組成物。
(a)配列番号1で示される塩基配列;
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
(4) n−6系脂肪酸がリノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)及びアラキドン酸からなる群から選ばれる少なくとも1の脂肪酸である、(1)記載の脂肪酸組成物。
(5) 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる培養物から、以下のi)〜v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする脂肪酸組成物を採取することを特徴とする、前記脂肪酸組成物の製造方法。
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v)n−6系脂肪酸含有量
(6) n−6系脂肪酸がリノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれる少なくとも1の脂肪酸である、(5)記載の製造方法。
(7) 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、(5)又は(6)に記載の製造方法。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(8) (1)〜(4)のいずれか1項記載の脂肪酸組成物を製造するための以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸の使用。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(9) 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、(8)に記載の使用。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
(c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(10) (1)〜(4)のいずれか1項記載の脂肪酸組成物を含む、食品。
本発明のLPAAT1-longは、公知のLPAAT1とは基質特異性が異なり、公知のLPAAT1が発現した宿主が産生する脂肪酸組成物とは組成が異なる脂肪酸組成物を宿主中に産生させることができる。それにより、所望の特性や効果を有する脂質を提供できるため、食品、化粧料、医薬品、石鹸等に適用できるものとして有用である。
本発明のLPAAT1-longが発現した宿主細胞内のアラキドン酸含有率は、本発明のLPAAT1-longが発現していない宿主細胞内のアラキドン酸含有率よりも高く、当該細胞の培養物から得られる脂肪酸組成物は、栄養学的にもより高い効果が期待できるため、好ましい。
また、本発明のLPAATは脂肪酸や貯蔵脂質の生産能の向上を図ることができるため、微生物や植物中での高度不飽和脂肪酸の生産性を向上させるものとして、好ましい。
図1は、本発明のLPAAT1-long及びLPAAT1-short並びにLPAAT1のCDSの塩基配列を比較した図である。 図2は、本発明のLPAAT1-long及びLPAAT1-short並びにLPAAT1のCDSのアミノ酸配列を比較した図である。
本発明は、新規な脂肪酸組成物、当該脂肪酸組成物の製造方法、当該脂肪酸組成物を含む食品に関する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、上記の新規な脂肪酸組成物を産生することを特徴とする、Mortierella属由来のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)遺伝子を利用するもので、具体的には発明者らが単離した配列番号1に示すLPAAT1-longという核酸等を利用するものである。なお、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素とは、リゾホスファチジン酸をアシル化してホスファチジン酸を生成する反応を触媒する酵素である。なお、本明細書において「LPAAT1-long」「LPAAT1-short」という場合は、菌株を示す場合、遺伝子を示す場合、タンパク質を示す場合に加えて、上記LPAAT1-long遺伝子やLPAAT1-short遺伝子を発現ベクターに挿入して適当な宿主に形質転換した形質転換体を培養して得られた菌体を示す場合がある。
リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ
本発明のLPAAT1-longに関連する配列としては、LPAAT1-longのORFの領域を示す配列である配列番号1、LPAAT1-longのアミノ酸配列である配列番号2、LPAAT1-longのcDNAの塩基配列である配列番号3、そのCDSの領域を示す配列である配列番号4があげられる。このうち、配列番号1は配列番号3の第115〜1557番目の塩基配列に相当する。
なお、本発明の発明者らは、LPAAT1-longの他に、LPAAT1-longの遺伝子の塩基配列の全長のうち86.8%及びアミノ酸配列の全長のうち86.7%に相当するLPAAT1遺伝子(以下、LPAAT1-shortという場合もある)も単離した。LPAAT1-shortに関連する配列としては、LPAAT1-shortのORFの領域を示す配列である配列番号8、LPAAT1-shortのアミノ酸配列である配列番号10、LPAAT1-shortのcDNAの塩基配列である配列番号9があげられる。配列番号9のうち、第36〜1286番目の塩基配列が配列番号8に示すORFに相当する。LPAAT1-longとLPAAT1-shortの関係は以下の表1のとおりである。
Figure 2009014140
すなわち、本発明のLPAAT1-longのORFの塩基配列中5’末端が欠失した塩基配列がLPAAT1-shortに相当する。詳細には、本発明のLPAAT1-longのORFの塩基配列(配列番号1)1443塩基のうち、全体の86.8%にあたる第193〜第1443塩基目までの領域の塩基がLPAAT1-shortのORFの塩基配列(配列番号8)に相当する。つまり、LPAAT1-longはLPAAT1-shortよりも5’領域が192塩基長い配列である。また、アミノ酸配列については、本発明のLPAAT1-longのアミノ酸配列(配列番号2)481残基のうち、全体の86.7%にあたる、第65〜481番目までの領域の残基がLPAAT1-shortのアミノ酸配列(配列番号8)に相当する。つまり、LPAAT1-longはLPAAT1-shortよりもN末端が64アミノ酸残基(配列番号中のアミノ酸残基1〜64)長い配列である。
なお、M. alpina由来のLPAATとして上記特許文献2で開示されている公知のLPAAT(以下、LPAAT1とする)がある。このLPAAT1のORFの塩基数は1251塩基であり、LPAAT1-shortのORFの塩基数と一致し、ORF間の塩基配列の同一性も89%と高く、LPAAT1-shortはLPAAT1と同種のアリルであると考えられた。このLPAAT1-long、LPAAT1-short及びLPAAT1の塩基配列のアラインメントを図1に、アミノ酸配列のアラインメントを図2にそれぞれ示す(図1及び図2)。
したがって、発明者らは、本発明のLPAAT1-long の活性を検討するにあたり、比較例としてLPAAT1-shortを公知のLPAAT1のモデルとして用いた。具体的には、LPAAT1-long及びLPAAT1-shortを酵母で発現させて、その脂肪酸組成物の脂肪酸組成を比較した。その結果、以下で詳細に説明するように、本発明のLPAAT1-long遺伝子が発現した宿主が産生する脂肪酸組成物の脂肪酸の組成は、LPAAT1-shortが発現した宿主が産生する脂肪酸組成物の脂肪酸の組成と全く異なっていた。つまり、本発明のLPAAT1-longは公知のLPAAT1が産生する脂肪酸組成物の脂肪酸の組成とは全く異なる脂肪酸組成物を産生できることが示された。
具体的には、本発明の脂肪酸組成物の特徴の一つとしては、アラキドン酸含有率が高いことがあげられる。アラキドン酸は、化学式C2032で示される、分子量304.47の物質で、4つの二重結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸(〔20:4(n−6)〕)で、(n−6)系に分類される。アラキドン酸は、動物の細胞膜中の重要なリン脂質(特にホスファチジルエタノールアミン・ホスファチジルコリン・ホスファチジルイノシトール)として存在し、脳に多く含まれる。またアラキドン酸は、アラキドン酸カスケードにより生成するプロスタグランジン・トロンボキサン・ロイコトリエンなど一連のエイコサノイドの出発物質であり、細胞間のシグナル伝達におけるセカンドメッセンジャーとしても重要である。一方、アラキドン酸は、動物ではリノール酸を原料として体内で合成される。しかし、動物の種あるいは年齢等によっては、この機能が十分でないため必要な量を生産することかできないか、あるいは全く生産する機能がないため、食物からアラキドン酸を摂取しなければならず、アラキドン酸は必須脂肪酸であるといえる。
本発明の脂肪酸組成物中のアラキドン酸含有率は、例えば、以下のように測定することができる。すなわち、本発明のLPAAT1-longのプラスミドを、例えば、実施例8及び9に記載の方法によりpDuraSCやpDura5MCS等のベクターに挿入し、M. alpina株で形質転換して得られた形質転換体を発現させて、実施例10に記載した培養方法等に従って得られた培養菌体を用いて菌体内の脂肪酸組成やアラキドン酸の含有量等を測定する方法である。アラキドン酸の含有量等の分析方法としては、例えば、得られた培養菌体の脂肪酸を塩酸メタノール法により脂肪酸メチルエステルに誘導したあと、ヘキサンで抽出して、ヘキサンを留去してから、ガスクロマトグラフィーで行う方法があげられる。これによれば、本発明のLPAAT1-longをM. alpinaで形質転換させた場合は、菌体内の脂肪酸中のアラキドン酸含有率が高いことが示されている。このように、アラキドン酸含有率が高い本発明の脂肪酸組成物は、アラキドン酸を効率よく摂取できるため、好ましい。
このように、本発明のLPAAT1-longは公知のLPAAT1とは全く異なる活性を有している。このような新規な活性が得られる根拠の一つとして、本発明のLPAAT1-longと公知のLPAAT1との遺伝子/タンパク質構造の相違もあげられる。従って、本発明のLPAAT1-longと極めて近い塩基配列/アミノ酸配列を有し、かつ同様の機能を有する変異体は本発明の範囲に含まれる。例えば、以下のものが含まれる。
i)本発明の特定のLPAAT1-longの塩基配列/アミノ酸配列から90%程度(塩基数にして144個程度、アミノ酸残基数にして48個程度;これらの塩基/残基が欠失、置換若しくは付加された変異体も含む)の同一性の範囲内の塩基配列/アミノ酸配列であるもの;及び、
ii)本発明のLPAAT1-longの塩基配列/アミノ酸配列に対してハイストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列/アミノ酸配列であるもの。
詳細は、以下の「本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸」の項目に記載のとおりである。
本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)をコードする核酸
本発明は、配列番号1(LPAAT1-long)等の塩基配列を含む核酸を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる新規な脂肪酸組成を有する脂肪酸組成物、その製造方法等に関する。そこで、まず、上記脂肪酸組成物を製造するために用いる核酸について説明する。
上記のとおり、本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)には、LPAAT1-longが含まれる。本発明のLPAAT1-longに関連する配列は「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目でも説明したとおり、LPAAT1-longのORFの領域を示す配列である配列番号1、LPAAT1-longのアミノ酸配列である配列番号2、LPAAT1-longのcDNAの塩基配列である配列番号3、そのCDSの領域を示す配列である配列番号4があげられる。
本発明の核酸とは、一本鎖及び二本鎖のDNAのほか、そのRNA相補体も含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。DNAには、例えば、ゲノムDNAや、前記ゲノムDNAに対応するcDNA、化学的に合成されたDNA、PCRにより増幅されたDNA、及びそれらの組み合わせや、DNAとRNAのハイブリッドがあげられるがこれらに限定されない。
本発明の核酸の好ましい態様としては、(a)配列番号1で示される塩基配列、(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列等があげられる。
上記塩基配列を得るためには、LPAAT活性を有する生物のESTやゲノムDNAの塩基配列データから、既知のLPAAT活性を有するタンパク質と同一性の高いタンパク質をコードする塩基配列を探索することもできる。LPAAT活性を有する生物としては、脂質生産菌が好ましく、脂質生産菌としてはM. alpinaがあげられるが、これに限定されない。
EST解析を行う場合には、まず、cDNAライブラリーを作製する。cDNAライブラリーの作製方法については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))を参照することができる。また、市販のcDNAライブラリー作製キットを用いてもよい。本発明に適するcDNAライブラリーの作製方法としては、例えば以下のような方法があげられる。すなわち、脂質生産菌であるM. alpinaの適当な株を適当な培地に植菌し、適当な期間前培養する。この前培養に適する培養条件としては、例えば、培地組成としては、1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0があげられ、培養期間は3日間、培養温度は28℃である条件があげられる。その後、前培養物を適当な条件にて本培養に供する。本培養に適する培地組成としては、例えば、1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1%NaSO、0.05%CaCl・2HO、0.05%MgCl・6HO、pH6.0があげられる。本培養に適する培養条件としては、例えば、300rpm、1vvm、26℃で8日間通気攪拌培養する条件があげられる。培養期間中に適当量のグルコースを添加してもよい。本培養中に適時培養物を採取し、そこから菌体を回収して、全RNAを調製する。全RNAの調製には、塩酸グアニジン/CsCl法等の公知の方法を用いることができる。得られた全RNAから市販のキットを用いてpoly(A)RNAを精製することができる。さらに、市販のキットを用いてcDNAライブラリーを作製することができる。その後、作製したcDNAライブラリーの任意のクローンの塩基配列を、ベクター上にインサート部分の塩基配列を決定できるように設計されたプライマーを用いて決定し、ESTを得ることができる。例えば、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE)でcDNAライブラリーを作製した場合は、ディレクショナルクローニングを行うことができる。
本発明はまた、上記配列番号1で示される塩基配列(「本発明の塩基配列」と記載する場合もある)、並びに、配列番号2で示されるアミノ酸配列(「本発明のアミノ酸配列」と記載する場合もある)からなるタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸と同等の機能を有する核酸を含む。「同等の機能を有する」とは、本発明の塩基配列がコードするタンパク質及び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質が、LPAAT活性を有することを意味する。また、このLPAAT活性に加えて、本発明の塩基配列がコードするタンパク質、又は、本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下の、
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v) n−6系脂肪酸含有量
のうちの少なくとも一つ以上が、上記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い値である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質(以下、「本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性を有するタンパク質」という場合もある)である場合も含まれる。
具体的には、上記本発明の塩基配列等を発現ベクターpYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)に挿入したものを、酵母Saccharomyces cerevisiae EH13-15株(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, 1989)を宿主として形質転換させ、得られた形質転換体を培養して回収した菌体を、以下の実施例6に記載の方法で脂肪酸解析をした場合の上記本発明のLPAATの脂肪酸組成が、具体的に、以下の
i) オレイン酸含有量が47%以上;
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率が6.7以上、並びに/又は
iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率が10以上
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率が1.1以上
という数値である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸である。さらに好ましくは、本発明の塩基配列等は、LPAAT活性及び上記本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸である。
本発明のLPAAT1-longとLPAAT1-shortについて、実施例6に記載の方法で脂肪酸解析をした場合の結果は、以下の表3に記載したとおり、本発明のLPAAT1-longのオレイン酸含有量は54%程度で、42%程度であったLPAAT1-shortよりも高かった。また、本発明のパルミチン酸含有量は7.6%程度でコントロールと同等であり、13.5%程度であったLPAAT1-shortよりも低かった。さらに、本発明のLPAAT1-longのパルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率は、LPAAT1-shortよりも1.8倍〜2.5倍高かった。そして、本発明のLPAAT1-longのステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率は、LPAAT1-shortよりも1.5倍〜1.8倍程度高いという結果が得られた。
さらに、上記においては、本発明の塩基配列がコードするタンパク質、又は、本発明のアミノ酸配列からなるタンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、n−6系脂肪酸含有量が、上記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い値である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質(以下、上記同様「本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性を有するタンパク質」という場合もある)である場合も含まれる。n−6系脂肪酸としてはリノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、アラキドン酸、7,10,13,16-ドコサテトラエン酸及び4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸があげられるがこれらに限定されない。例えば、M. alpinaの場合には、好ましくは、リノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸及びアラキドン酸があげられる。
具体的には、上記本発明の塩基配列等を発現ベクターpYE22m等に挿入したものを、アラキドン酸を生産できるように育種したSaccharomyces cerevisiaeやMortierella属等のアラキドン酸を生産できる酵母や糸状菌等の真菌を宿主として形質転換させ、得られた形質転換体を培養して回収した菌体を、以下の実施例7〜10に記載の方法で脂肪酸解析をした場合の上記本発明のLPAAT1-longのn−6系脂肪酸が以下の表5に記載したように高含有量であるような、タンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸である。
本発明のLPAAT1-longとLPAAT1-shortを、アラキドン酸を生産できるよう育種した酵母で発現させた場合について、実施例7に記載の方法で脂肪酸解析をした結果は、以下の表4に記載したとおりである。すなわち、本発明のLPAAT1-longのリノール酸含有量はコントロールやLPAAT1-shortよりも高い。また、本発明のLPAAT1-longのγ−リノレン酸含有量もコントロールやLPAAT1-shortよりも高い。さらに、本発明のLPAAT1-longのDGLA含有量はコントロールよりも高く、LPAAT1-shortと同程度である。そして、本発明のLPAAT1-longのアラキドン酸含有量は、コントロールやLPAAT1-shortよりも高い。
また、本発明のLPAAT1-longとLPAAT1-shortをM. alpinaで発現させた場合について、実施例8〜10に記載の方法で脂肪酸解析をした結果は、以下の表5に記載したとおりである。すなわち、本発明のLPAAT1-longのアラキドン酸、DGLAの含有量はコントロールやLPAAT1-shortよりも高い。
従って、本発明のLPAAT1-longは、以下に説明するように、他のLPAATが発現した宿主が産生する脂肪酸組成物とは全く異なる組成の脂肪酸組成物を宿主中に産生させることができるという、従来技術からは予期できない全く新しい機能を有する。
このような本発明の核酸と同等の機能を有する核酸としては、以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸(以下、「(同等の機能を有する)本発明の変異体」という場合もある)があげられる。なお、以下にあげる塩基配列の記載において、「本発明の上記活性」とは、上記の「LPAAT活性及び/又は上記本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性」を意味する。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
具体的には、「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目で説明したとおり、
(i) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜48個、1〜32個、1〜24個、1〜20個、1〜16個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、さらに好ましくは1〜4個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜48個、1〜32個、1〜24個、1〜20個、1〜16個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、さらに好ましくは1〜4個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミノ酸配列、
(iii) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜48個、1〜32個、1〜24個、1〜20個、1〜16個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、さらに好ましくは1〜4個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
上記のうち、置換は、好ましくは保存的置換である。保存的置換とは、特定のアミノ酸残基を類似の物理化学的特徴を有する残基で置き換えることであるが、もとの配列の構造に関する特徴を実質的に変化させなければいかなる置換であってもよく、例えば、置換アミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを破壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種類の二次構造を破壊したりしなければいかなる置換であってもよい。
保存的置換は、一般的には、生物学的合成や化学的ペプチド合成で導入されるが、好ましくは、化学的ペプチド合成による。この場合、置換基には、非天然アミノ酸残基が含まれていてもよく、ペプチド模倣体や、アミノ酸配列のうち、置換されていない領域が逆転している逆転型又は同領域が反転している反転型も含まれる。
以下に、アミノ酸残基を置換可能な残基ごとに分類して例示するが、置換可能なアミノ酸残基は以下に記載されているものに限定されるものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン及びシクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸及び2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン及びグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸及び2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン及び4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン及びホモセリン
G群:フェニルアラニン及びチロシン
非保存的置換の場合は、上記種類のうち、ある1つのメンバーと他の種類のメンバーとを交換することができるが、この場合は、本発明のタンパク質の生物学的機能を保持するために、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロパシーアミノ酸指数)を考慮することが好ましい(Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。
また、非保存的置換の場合は、親水性に基づいてアミノ酸の置換を行うことができる。
本明細書及び図面において、塩基やアミノ酸及びその略語は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature に従うか、又は、例えば、Immunology--A Synthesis(第2版, E.S. Golub及びD.R. Gren監修, Sinauer Associates,マサチューセッツ州サンダーランド(1991))等に記載されているような、当業界で慣用されている略語に基づく。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示す。
D−アミノ酸等の上記のアミノ酸の立体異性体、α,α−二置換アミノ酸等の非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸及びその他の非慣用的なアミノ酸もまた、本発明のタンパク質を構成する要素となりうる。
なお、本明細書で用いるタンパク質の表記法は、標準的用法及び当業界で慣用されている標記法に基づき、左方向はアミノ末端方向であり、そして右方向はカルボキシ末端方向である。
同様に、一般的には、特に言及しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左方向を5’方向とする。
当業者であれば、当業界で公知の技術を用いて、本明細書に記載したタンパク質の適当な変異体を設計し、作製することができる。例えば、本発明のタンパク質の生物学的活性にさほど重要でないと考えられる領域をターゲティングすることにより、本発明のタンパク質の生物学的活性を損なうことなくその構造を変化させることができるタンパク質分子中の適切な領域を同定することができる。また、類似のタンパク質間で保存されている分子の残基及び領域を同定することもできる。さらに、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要と考えられる領域中に、生物学的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポリペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的アミノ酸置換を導入することもできる。特に、本発明では、本発明のLPAATのアミノ酸配列中の第208〜213残基に、保存モチーフである「HXXXXD(HXD)」が存在する。本モチーフは、グリセロリン脂質アシル基転移酵素(Glycerolipid acyltransferase)に必須のモチーフであり(J. Bacteriology, 180, 1425-1430, 1998)、本発明のLPAATにとっても重要なモチーフである。従って、本発明の変異体は上記保存モチーフが保存され、かつ、本発明の上記活性が損なわれない限りいかなる変異体であってもよい。なお、上記保存モチーフ中で、Xはいかなるアミノ酸残基であってもよいことを示している。
当業者であれば、本発明のタンパク質の生物学的活性又は構造に重要であり、同タンパク質のペプチドと類似するペプチドの残基を同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基を比較して、本発明のタンパク質と類似するタンパク質のどの残基が、生物学的活性又は構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造−機能研究を行うことができる。さらに、このように予測したアミノ酸残基の化学的に類似のアミノ酸置換を選択することにより、本発明のタンパク質の生物学的活性が保持されている変異体を選択することもできる。また、当業者であれば、本タンパク質の変異体の三次元構造及びアミノ酸配列を解析することもできる。さらに、得られた解析結果から、タンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸残基のアラインメントを予測することもできる。タンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関与する可能性があるが、当業者であれば、上記したような解析結果に基づいて、このようなタンパク質表面上にあると予測されるアミノ酸残基を変化させないような変異体を作製することができる。さらに、当業者であれば、本発明のタンパク質を構成する各々のアミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基のみを置換するような変異体を作製することもできる。このような変異体を公知のアッセイ方法によりスクリーニングし、個々の変異体の情報を収集することができる。それにより、ある特定のアミノ酸残基が置換された変異体の生物学的活性が、本発明のタンパク質の生物学的活性に比して低下する場合、そのような生物学的活性を呈さない場合、又は、本タンパク質の生物学的活性を阻害するような不適切な活性を生じるような場合を比較することにより、本発明のタンパク質を構成する個々のアミノ酸残基の有用性を評価することができる。また、当業者であれば、このような日常的な実験から収集した情報に基づいて、単独で、又は他の突然変異と組み合わせて、本発明のタンパク質の変異体としては望ましくないアミノ酸置換を容易に解析することができる。
上記したように、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997)、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988) Method. Enzymol. 85: 2763-6)等に記載の部位特異的変異誘発法等の方法に従って調製することができる。このようなアミノ酸の欠失、置換若しくは付加等の変異がなされた変異体の作製は、例えば、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuikChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTMSite-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
なお、タンパク質のアミノ酸配列に、その活性を保持しつつ1又は複数個のアミノ酸の欠失、置換、若しくは付加を導入する方法としては、上記の部位特異的変異誘発の他にも、遺伝子を変異源で処理する方法、及び遺伝子を選択的に開裂して選択されたヌクレオチドを除去、置換若しくは付加した後に連結する方法があげられる。
本発明は、さらに好ましくは、配列番号2において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質である。
本発明のタンパク質におけるアミノ酸の変異又は修飾の数、あるいは変異又は修飾の部位は、LPAAT活性、又は本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性が保持される限り制限はない。
本発明のLPAAT活性、又は本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性は、公知の方法を用いて測定することが可能である。例えば、以下の文献:J.B.C., 265, 17215-17221, 1990を参照することができる。
例えば、本発明の「LPAAT活性」は以下の通り測定してもよい。本発明のLPAATを発現させた酵母から、J. Bacteriology, 173, 2026-2034(1991)に記載の方法等によりミクロソーム画分を調製する。そして、反応液である、0.44mM LPA、0.36mMアシル−CoA、0.5mM DTT、1mg/ml BSA、2mM MgCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)に上記ミクロソーム画分を添加し、28℃で適当な時間反応させ、クロロホルム:メタノールを添加して反応を停止させた後、脂質の抽出を行い、得られた脂質を薄層クロマトグラフィー等により分画し、生成したPA量を定量することができる。
また、本発明の「LPAATの脂肪酸組成を形成できる活性」は、例えば以下のように測定してもよい。本発明の脂肪酸組成物の製造方法により得られた凍結乾燥した菌体に、適当な比率で調整したクロロホルム:メタノールを添加して攪拌した後、適当な時間、加熱処理をする。さらに遠心分離により菌体を分離して、溶媒を回収することを数回繰り返す。その後、適当な方法を用いて脂質を乾固させてから、クロロホルム等の溶媒を添加して脂質を溶解する。この試料を適当量分取して、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後に、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去してから、ガスクロマトグラフィーで分析を行う。
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目で説明したとおり、配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。配列番号1及び本発明の上記活性については上記のとおりである。
上記塩基配列は、当業者に公知の方法で適当な断片を用いてプローブを作製し、このプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリー及びゲノムライブラリー等から得ることができる。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001);特にSection 6-7) 、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3-6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);ハイブリダイゼーション条件については特にSection2.10) 等を参照することができる。
ハイブリダイゼーション条件の強さは、主としてハイブリダイゼーション条件、より好ましくは、ハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件によって決定される。ハイストリンジェントな条件(高度にストリンジェントな条件)としては、例えば、ハイブリダイゼーション条件として、0.1×SSC〜2×SSC、55℃〜65℃の条件、より好ましくは、0.1×SSC〜1×SSC、60℃〜65℃の条件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件があげられる。ハイブリダイゼーション溶液中に、例えば、約50%のホルムアミドを含む場合には、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採用する。洗浄条件として、0.2×SSC〜2×SSC、50℃〜68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60〜65℃があげられる。ハイブリダイゼーション及び洗浄時には、一般に、0.05%〜0.2%、好ましくは約0.1%SDSを加えてもよい。
本発明に含まれる塩基配列としては、好ましくは、配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、LPAAT活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
また、プローブに放射性物質を使用しない市販のハイブリダイゼーションキットを使用することもできる。具体的には、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)、ECL direct labeling & detection system(Amersham社製)を使用したハイブリダイゼーション等があげられる。
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目で説明したとおり、配列番号1に示される核酸配列に対して少なくとも90%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
本発明は、配列番号1に示される核酸配列に対して少なくとも90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%(例えば、95%、より一層好ましくは96%、さらには97%、98%又は99%)以上の同一性を有する塩基配列を含む核酸であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査や数学的計算により決定することができるが、コンピュータープログラムを使用して2つの核酸の配列情報を比較することにより決定するのが好ましい。配列比較コンピュータープログラムとしては、例えば、米国国立医学ライブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプログラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-10):バージョン2.2.7又はWU-BLAST2.0アルゴリズム等があげられる。WU-BLAST2.0についての標準的なデフォルトパラメーターの設定は、以下のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに記載されているものを用いることができる。
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目で説明したとおり、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
本発明は、具体的には、配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%以上、好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%(例えば、95%、より一層好ましくは96%、さらには97%、98%又は99%)以上の同一性を有するアミノ酸配列等をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好ましくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。さらに好ましくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列である。
2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは、視覚的検査及び数学的計算によって決定することができる。また、コンピュータープログラムを用いて同一性パーセントを決定することもできる。そのようなコンピュータープログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschulら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClustalW等があげられる。特に、BLASTプログラムによる同一性検索の各種条件(パラメーター)は、Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997)に記載されたもので、米国バイオテクノロジー情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ)のウェブサイトから公的に入手することができる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Bethesda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報処理ソフトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DINASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプログラムを用いて決定することもできる。
複数のアミノ酸配列を並列させる特定のアラインメントスキームは、配列のうち、特定の短い領域のマッチングをも示すことができるため、用いた配列の全長配列間に有意な関係がない場合であっても、そのような領域において、特定の配列同一性が非常に高い領域を検出することもできる。さらに、BLASTアルゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマトリックスを用いることができるが、選択パラメーターとしては、以下のものを用いることができる:(A)低い組成複雑性を有するクエリー配列のセグメント(Wootton及びFederhenのSEGプログラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定される;Wootton及びFederhen, 1996「配列データベースにおける組成編重領域の解析(Analysis of compositionally biased regions in sequence databases)」Methods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は、短周期性の内部リピートからなるセグメント(Claverie及びStates(Computers and Chemistry, 1993)のXNUプログラムにより決定される)をマスクするためのフィルターを含むこと、及び(B)データベース配列に対する適合を報告するための統計学的有意性の閾値、又はE−スコア(Karlin及びAltschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって、単に偶然により見出される適合の期待確率;ある適合に起因する統計学的有意差がE−スコア閾値より大きい場合、この適合は報告されない。
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
本発明の核酸に含まれる塩基配列は、「リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素(LPAAT)1のホモログ」の項目で説明したとおり、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む。
配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及びハイブリダイズの条件は上記のとおりである。本発明の核酸に含まれる塩基配列としては、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列があげられる。
また、本発明の核酸には、配列番号1からなる塩基配列において1若しくは複数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸も含まれる。具体的には、
(i) 配列番号1に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1〜144個、1〜96個、1〜72個、1〜48個、1〜30個、1〜24個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、さらに好ましくは1〜5個))の塩基が欠失した塩基配列、
(ii) 配列番号1に示す塩基配列のうち1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜144個、1〜96個、1〜72個、1〜48個、1〜30個、1〜24個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、さらに好ましくは1〜5個))の塩基が他の塩基で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号1に示す塩基配列において1個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1〜144個、1〜96個、1〜72個、1〜48個、1〜30個、1〜24個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、さらに好ましくは1〜5個))の他の塩基が付加された塩基配列、又は
(iv) 上記(i)〜(iii)を組み合わせた塩基配列であって、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質をコードしている塩基配列を含む核酸を用いることもできる。
また、本発明は、さらに好ましくは、配列番号1において1〜数十個、より好ましくは1〜10個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質である。
本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素タンパク質
本発明のLPAAT1-longは、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質及び前記タンパク質と同等の機能を有するタンパク質を含み、天然由来のものであっても、人工的に作製したものであってもよい。配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質については、上記のとおりである。「同等の機能を有するタンパク質」とは、上記『本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸』の項で説明したとおり、「本発明の上記活性」を有するタンパク質を意味する。
本発明において、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質としては、以下の(a)ないし(e)のいずれかに記載のタンパク質で本発明の上記活性を有するタンパク質があげられる。すなわち、
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質;
(b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列によってコードされるタンパク質;
(c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列によってコードされるタンパク質;
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質;及び
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列によってコードされるタンパク質
である。
上記のうち、配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列、又は、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列については、上記、『本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸』の項で説明したとおりである。また、上記「本発明の上記活性を有するタンパク質」は、配列番号1の塩基配列を含む核酸によってコードされるタンパク質の変異体、又は、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1個又は複数個のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加等の多くの種類の修飾により変異したタンパク質、あるいはアミノ酸側鎖等が修飾されている修飾タンパク質、他のタンパク質との融合タンパク質であって、かつ、LPAAT活性を有するタンパク質であるか、及び/又は、本発明のLPAATの脂肪酸組成を形成できる活性を有するタンパク質も含まれる。なお、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有するタンパク質としては、より好ましくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質である。
また、本発明のLPAAT1-longは、人工的に作製したものであってもよく、その場合は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
LPAATの核酸のクローニング
本発明のLPAAT1-longの特定の配列を有する核酸及びその変異体は、例えば、適切なプローブを用いてcDNAライブラリーからスクリーニングすることにより、クローニングすることができる。また、適切なプライマーを用いてPCR反応により増幅し、適切なベクターに連結することによりクローニングすることができる。さらに、別のベクターにサブクローニングすることもできる。以下に、LPAAT1-longの核酸を用いた場合を例示して説明する。
例えば、pBlue-Script TMSK(+) (Stratagene)、pGEM-T (Promega)、pAmp(TM: Gibco-BRL)、p-Direct (Clontech)、pCR2.1-TOPO(Invitrogene)等の市販のプラスミドベクターを用いることができる。また、PCR反応で増幅する場合、プライマーは、上記の配列番号1に示される塩基配列のいずれの部分も用いることができるが、例えば、配列番号1に対しては、
上流側プライマーとして、プライマー955-1:GGACGTGTCAAGGAAAAGGA (配列番号6)、
下流側プライマーとして、プライマー955-2:TCCTTCAGATGAGCCTCCTG (配列番号7)
等を用いることができる。そして、M. alpina 菌体から調製したcDNAに、上記プライマー及び耐熱性DNAポリメラーゼ等を作用させてPCR反応を行う。上記方法は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))等に従い、当業者であれば容易に行うことができるが、本発明のPCR反応の条件としては、例えば、以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃
サイクル数:10回以上
得られたPCR産物の精製には公知の方法を用いることができる。例えば、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick PCR purification Kits(QIAGEN)、ExoSAP-IT(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のキットを用いる方法、DEAE-セルロース濾紙を用いる方法、透析チューブを用いる方法等がある。アガロースゲルを用いる場合には、アガロースゲル電気泳動を行い、塩基配列断片をアガロースゲルより切り出して、GENECLEAN(フナコシ)、QIAquick Gel extraction Kits(QIAGEN)、フリーズ&スクイーズ法等により精製することができる。
クローニングした核酸の塩基配列は、塩基配列シーケンサーを用いて決定することができる。
LPAAT発現用ベクター構築及び形質転換体の作製
本発明のLPAAT1-longをコードする核酸及びその変異体を含有する組換えベクター及び上記組換えベクターによって形質転換された形質転換体は以下のようにして得ることができる。なお、以下、LPAAT1-longの核酸を用いた場合を例示して説明する。すなわち、本発明のLPAAT1-longをコードする核酸を有するプラスミドを制限酵素を用いて消化する。用いる制限酵素としては、例えば、EcoRI、KpnI、BamHI及びSalI等があげられるが、これらに限定されない。なお、末端をT4ポリメラーゼ処理することにより平滑化してもよい。消化後の塩基配列断片をアガロースゲル電気泳動により精製する。この塩基配列断片を、発現用ベクターに公知の方法を用いて組み込むことにより、LPAAT1-long発現用ベクターを得ることができる。この発現ベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、目的とするタンパク質の発現に供する。
このとき、発現ベクター及び宿主は、目的とするタンパク質を発現できるものであれば特に限定されず、例えば、宿主として、真菌や細菌、植物、動物若しくはそれらの細胞等があげられる。真菌として、脂質生産菌であるM. alpina等の糸状菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母等があげられる。また細菌として、大腸菌(Escherichia coli)やバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等があげられる。さらに植物としては、ナタネ、ダイズ、ワタ、ベニバナ、アマ等の油糧植物があげられる。
脂質生産菌としては、例えば、MYCOTAXON,Vol.XLIV,NO.2,pp.257-265(1992)に記載されている菌株を使用することができ、具体的には、モルティエレラ(Mortierella)属に属する微生物、例えば、モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elongata)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortierella exigua)IFO8571、モルティエレラ・ヒグロフィラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、ATCC32221、ATCC42430、CBS 219.35、CBS224.37、CBS250.53、CBS343.66、CBS527.72、CBS528.72、CBS529.72、CBS608.70、CBS754.68等のモルティエレラ亜属(subgenus Mortierella)に属する微生物、又はモルティエレラ・イザベリナ(Mortierella isabellina)CBS194.28、IFO6336、IFO7824、IFO7873、IFO7874、IFO8286、IFO8308、IFO7884、モルティエレラ・ナナ(Mortierella nana)IFO8190、モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramanniana)IFO5426、IFO8186、CBS112.08、CBS212.72、IFO7825、IFO8184、IFO8185、IFO8287、モルティエレラ・ヴィナセア(Mortierella vinacea)CBS236.82等のマイクロムコール亜属(subgenus Micromucor)に属する微生物等があげられる。とりわけ、モルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)が好ましい。
真菌類を宿主として用いる場合は、本発明の核酸が宿主中で自立複製可能であるか、若しくは当該菌の染色体上に挿入され得る構造であることが好ましい。それと同時に、プロモーター、ターミネーターを含む構成であることが好ましい。宿主としてM. alpinaを使用する場合、発現ベクターとして、例えば、pD4、pDuraSC、pDura5等があげられる。プロモーターとしては、宿主中で発現できるものであればいかなるプロモーターを用いてもよく、例えば、histonH4.1遺伝子プロモーター、GAPDH(グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーター、TEF(Translation elongation factor)遺伝子プロモーターといったM. alpinaに由来するプロモーターが用いられる。
M. alpina等の糸状菌への組換えベクターの導入方法としては、例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、パーティクルデリバリー法、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。栄養要求性のホスト株を用いる場合は、その栄養素を欠いた選択培地上で生育する株を選択することで、形質転換株を取得することができる。また、形質転換に薬剤耐性マーカー遺伝子を用いる場合には、その薬剤を含む選択培地にて培養を行い、薬剤耐性を示す細胞コロニーを得ることができる。
酵母を宿主として用いる場合は、発現ベクターとして、例えば、pYE22m等があげられる。また、pYES(Invitrogen)、pESC(STRATAGENE)等の市販の酵母発現用ベクターを、用いてもよい。また本発明に適する宿主としては、Saccharomyces cerevisiae EH13-15株(trp1, MATα)等があげられるがこれらに限定されない。プロモーターとしては、例えば、GAPDHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター等の酵母等に由来するプロモーターが用いられる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、デキストラン仲介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフェクション、プロトプラスト融合、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数又は複数)の被包、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェクション等があげられる。
大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合は、発現ベクターとしては、例えばファルマシア社のpGEX、pUC18等があげられる。プロモーターとしては、例えば、trpプロモーター、lac プロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモーターが用いられる。細菌への組み換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法や塩化カルシウム法を用いることができる。
本発明の脂肪酸組成物
本発明は、上記LPAAT1-long等を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物を提供する。具体的には、本発明の脂肪酸組成物は、本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸(即ち、配列番号1の塩基配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸、あるいは、これらと同等の機能を有する変異体)を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)〜v)
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii)ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v) n−6系脂肪酸含有量
のうちの少なくとも一つ以上が、本発明の組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物のより高いことを特徴とする。ここで、「本発明の組換えベクターで形質転換されていない宿主」とは、例えば、本明細書中の「本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸」の項目で記載した核酸が組み込まれていないベクター(空ベクター)で形質転換された宿主である。
本発明に含まれる脂肪酸は、遊離脂肪酸でもよいし、トリグリセリド、リン脂質等でもよい。
また、本発明の脂肪酸組成物に含まれる脂肪酸としては、長鎖炭水化物の鎖状あるいは分岐状のモノカルボン酸をいい、例えば、ミリスチン酸(テトラデカン酸)(14:0)、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)(14:1)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)(16:0)、パルミトレイン酸(9−ヘキサデセン酸)(16:1)、ステアリン酸(オクタデカン酸)(18:0)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)(18:1(9))、バクセン酸(11−オクタデセン酸)(18:1(11))、リノール酸(cis, cis−9,12 オクタデカジエン酸)(18:2(9,12))、α−リノレン酸(9,12,15−オクタデカントリエン酸)(18:3(9,12,15))、γ−リノレン酸(6,9,12−オクタデカントリエン酸)(18:3(6,9,12))、ステアリドン酸(6,9,12,15-オクタデカンテトラエン酸)(18:4(6,9,12,15))、アラキジン酸(イコサン酸)(20:0)、(8,11−イコサジエン酸)(20:2(8,11))、ミード酸(5,8,11−イコサトリエン酸)(20:3(5,8,11))、ジホモγ-リノレン酸(8,11,14-イコサトリエン酸)(20:3(8,11,14))、アラキドン酸(5,8,11,14−イコサテトラエン酸)(20:4(5,8,11,14))、エイコサテトラエン酸(5,11,14,17-イコサテトラエン酸)(20:4(5,11,14,17)、エイコサペンタエン酸(5,8,11,14,17-イコサペンタエン酸)(20:5(5,8,11,14,17))、ベヘン酸(ドコサン酸)(22:0)、(7,10,13,16-ドコサテトラエン酸)(22:4(7,10,13,16))、(4,7, 13,16,19-ドコサペンタエン酸)(22:5(4,7, 13,16,19))、(4,7,10,13,16-ドコサペンタエン酸)(22:5(4,7,10,13,16))、(4,7,10, 13,16,19-ドコサヘキサエン酸)(22:6(4,7,10, 13,16,19))、リノグリセリン酸(テトラドコサン酸)(24:0)、ネルボン酸(cis−15−テトラドコサン酸)(24:1)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)(26:0)、等があげられるが、これらに限定されない。なお、上記物質名はIUPAC生化学命名法で定義された慣用名であり、組織名及び、炭素数と二重結合の位置を示す数値を、カッコ内に記載した。
このような本発明の脂肪酸組成物が得られたこと、つまり、本発明のLPAAT1-longが発現したことの確認は、公知の一般的な方法を用いて行うことができる。例えば、酵母でLPAAT1-longを発現させた場合は、脂肪酸組成の変化として確認することができる。すなわち、上記本発明の脂肪酸組成物の製造方法により得られた凍結乾燥した菌体に、適当な比率で調整したクロロホルム:メタノールを添加して攪拌した後、適当な時間、加熱処理をする。さらに遠心分離により菌体を分離して、溶媒を回収することを数回繰り返す。その後、適当な方法を用いて脂質を乾固させてから、クロロホルム等の溶媒を添加して脂質を溶解する。この試料を適当量分取して、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後に、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去してから、ガスクロマトグラフィーで分析を行う。
その結果、上記の脂肪酸組成を有する脂肪酸組成物が得られた場合は、本発明の脂肪酸組成物が得られたと判断することができる。なお、本発明のLPAAT1-longは、上記のように、公知のLPAAT1の脂肪酸組成物とは脂肪酸組成が異なる。すなわち、本発明のLPAAT1-longと公知のLPAAT1のモデルとして用いたLPAAT1-shortについて脂肪酸解析をすると、本発明のLPAAT1-longのオレイン酸含量は54%程度で、42%程度であったLPAAT1-shortよりも高く、本発明のLPAAT1-longのパルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率は、LPAAT1-shortよりも1.8倍〜2.5倍高く、本発明のLPAAT1-longのパルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率は、LPAAT1-shortよりも1.8倍〜2.3倍程度高い。また、同様に、n−6系脂肪酸については、LPAAT1-longはLPAAT1-shortよりも高含有量であり、具体的には、LPAAT1-longはLPAAT1-shortよりもリノール酸含有量、γ−リノレン酸含有量及びアラキドン酸含有量が高い。
このことから、本発明のLPAAT1-longは公知のLPAATと基質特異性が異なることが示される。
なお、本発明は、上記『本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸』の項目に記載した、本発明の配列番号1の塩基配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸、あるいはこれらと同等の機能を有する変異体を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養することにより、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より、長鎖である脂肪酸の含有比率やn−6系脂肪酸含有量が高い脂肪酸組成物をも提供する。長鎖とは、脂肪酸を構成する炭素数の長さが長いこという。例えば、炭素数16のパルミチン酸やパルミトレイン酸よりも炭素数18のステアリン酸やオレイン酸の方が長鎖である。n−6系脂肪酸については、上記『本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸』で説明したとおりである。本発明の脂肪酸組成物は、LPAAT1-longをコードする核酸を含有する組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物に比して、オレイン酸含有量や、パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率が高く、長鎖である脂肪酸の含有比率が高い脂肪酸組成物又はn−6系脂肪酸含有量が高い脂肪酸組成物であるといえる。そのうえ、さらに、本発明の脂肪酸組成物を製造する方法において選択する宿主によっては、より長鎖である脂肪酸の含有比率が高い脂肪酸組成物やn−6系脂肪酸含有量が高い脂肪酸組成物を製造することもできる。このような宿主としては、真菌や植物、動物もしくはそれらの細胞等があげられる。真菌として、脂質生産菌であるM. alpina等の糸状菌、Saccharomyces cerevisiae等の酵母等があげられる。さらに植物としては、ナタネ、ダイズ、ワタ、ベニバナ、アマ等の油糧植物があげられる。この場合に、本発明の核酸が含まれる組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物中の脂肪酸より含有率の高い長鎖の脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、DGLA、α−リノレン酸、ステアリドン酸、ジホモγ−リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸があげられるがこれらに限定されない。n−6系脂肪酸としては、リノール酸、γ−リノレン酸、DGLA及びアラキドン酸があげられるがこれらに限定されない。このようなより長鎖である脂肪酸の含有比率が高い脂肪酸組成物は、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品等に好都合に用いることができるため、好ましい。
本発明の脂肪酸組成物の製造方法
本発明はまた、上記脂肪酸組成物を製造する方法を提供する。本発明の製造方法は、上記LPAAT1-longを利用することを特徴とする。具体的には、本発明の配列番号1の塩基配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列のタンパク質をコードする塩基配列を含む核酸、あるいはこれらと同等の機能を有する変異体を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる培養物から、以下のi)〜v)
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
iii)ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
v) n−6系脂肪酸含有量
のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする脂肪酸組成物を採取することを特徴とする、当該脂肪酸組成物の製造方法に関する。
LPAAT1-longを発現させた生物の培養に用いる培地は、適当なpH及び浸透圧を有し、各宿主の増殖に必要な栄養素、微量成分、血清や抗生物質等の生物材料を含んでいる培養液(培地)であれば、いかなる培養液も用いうる。例えば、酵母を形質転換してLPAAT1-longを発現させた場合は、SC-Trp培地、YPD培地、YPD5培地等を用いることができるが、これらに限定されない。具体的な培地の組成としてSC-Trp培地を例示する:1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20gアミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)。
培養条件は、宿主の増殖に適し、かつ生成した酵素が安定に保たれるのに適当な条件であればいかなる条件でもよいが、具体的には、嫌気度、培養時間、温度、湿度、静置培養又は振盪培養等の個々の条件を調節することができる。培養方法は、同一条件での培養(1段階培養)でもよく、2以上の異なる培養条件を用いる、いわゆる2段階培養若しくは3段階培養でもよいが、大量培養をする場合には、培養効率がよい2段階培養等が好ましい。
以下に、本発明の脂肪酸組成物の具体的な製造方法として、宿主として酵母を用いて2段階培養を行った場合を例示して説明する。すなわち、前培養として、上記で得られたコロニーを、例えば上記のSC-Trp培地等に植菌して、30℃で2日間振盪培養を行う。その後、本培養として、YPD5(2%酵母エキス、1%ポリペプトン、5%グルコース)培地10mlに前培養液を500μl添加し、30℃で2日間振盪培養を行う方法である。
本発明の核酸の使用
本発明はさらに、上記LPAAT1-longの本発明の脂肪酸組成物に製造のための使用を提供する。
具体的には、本発明の脂肪酸組成物を製造するための、本発明のLPAATをコードする核酸の使用を提供する。
上記核酸を用いると、本発明の脂肪酸組成物を製造することのみならず、以下の「本発明の脂肪酸組成物を含む食品」の項で説明するような、所定の目的を達成する、当該脂肪酸組成物を含む食品等を製造することができるため、好ましい。
本発明の脂肪酸組成物を含む食品等
本発明はさらにまた、上記脂肪酸組成物を含む食品を提供する。本発明の脂肪酸組成物は、常法に従って、例えば、油脂を含む食品、工業原料(化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、石鹸等の原料)の製造等の用途に使用することができる。化粧料(組成物)又は医薬(組成物)の剤型としては、溶液状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等任意の剤型をあげることができるが、これらに限定されない。また、食品の形態としては、カプセル等の医薬製剤の形態、又はタンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発明の脂肪酸組成物が配合された自然流動食、半消化態栄養食、及び成分栄養食、ドリンク剤、経腸栄養剤等の加工形態があげられる。
さらに、本発明の食品の例としては、栄養補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用食品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人用食品等があげられるが、これらに限定されない。本明細書においては、食品とは、固体、流動体、及び液体、並びにそれらの混合物であって、摂食可能なものの総称をいう。
栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強化されている食品をいう。健康食品とは、健康的な又は健康によいとされる食品をいい、栄養補助食品、自然食品、ダイエット食品等が含まれる。機能性食品とは、体の調節機能を果たす栄養成分を補給するための食品をいい、特定保健用途食品と同義である。幼児用食品とは、約6歳までの子供に与えるための食品をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比較して消化及び吸収が容易であるように処理された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1歳までの子供に与えるための調製乳をいう。未熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月になるまで与えるための調製乳をいう。
これらの食品としては、肉、魚、ナッツ等の天然食品(油脂で処理したもの);中華料理、ラーメン、スープ等の調理時に油脂を加える食品;天ぷら、フライ、油揚げ、チャーハン、ドーナッツ、かりん糖等の熱媒体として油脂を用いた食品;バター、マーガリン、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、即席ラーメン、キャラメル、ビスケット、クッキー、ケーキ、アイスクリーム等の油脂食品又は加工時に油脂を加えた加工食品;おかき、ハードビスケット、あんパン等の加工仕上げ時に油脂を噴霧又は塗布した食品等があげられる。しかしながら、本発明の食品は、油脂を含む食品に限定されず、例えば、パン、麺類、ごはん、菓子類(キャンデー、チューインガム、グミ、錠菓、和菓子)、豆腐及びその加工品等の農産食品;清酒、薬用酒、みりん、食酢、醤油、みそ等の発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ等の畜産食品;かまぼこ、揚げ天、はんぺん等の水産食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶等があげられる。
本発明に関する核酸又はタンパク質を用いた菌株の評価・選択方法
本発明はまた、本発明に関する核酸又はタンパク質を用いて脂質生産菌の評価や選択を行う方法を提供する。具体的には以下のとおりである。
(1)評価方法
本発明の一態様として、本発明のLPAAT1-longをコードする核酸又はLPAAT1-longタンパク質を用いて、脂質生産菌の評価を行う方法があげられる。本発明の上記評価方法としては、まず、本発明の塩基配列に基づいて設計したプライマー又はプローブを用いて、被検菌株である脂質産生菌株の本発明の上記活性について評価する方法があげられる。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、国際特許出願パンフレットWO01/040514号、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
まず、被検菌株のゲノムを調製する。調製方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、いかなる公知の方法をも用いることができる(例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p130 (1990)参照)。
本発明の塩基配列、好ましくは、配列番号1に基づいてプライマー又はプローブを設計する。上記プライマー又はプローブは本発明の塩基配列のいずれの部分をも用いることができ、またその設計は公知の手法を用いて行うことができる。プライマーとして用いるポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10塩基以上であり、15〜25塩基であることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300〜2000塩基が適当である。
上記で作製したプライマー又はプローブを用いて、上記被検菌株のゲノム中に本発明の塩基配列と特異的な配列が存在するか否かを調べる。本発明の塩基配列と特異的な配列の検出は、公知の手法を用いて行うことができる。例えば、本発明の塩基配列に特異的配列の一部または全部を含むポリヌクレオチドまたは上記塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを一つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流あるいは下流の配列の一部または全部を含むポリヌクレオチド、又は上記塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて、例えば、PCR法等によって被検菌株の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定することができる。
本発明の方法に適するPCR法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、以下の条件があげられる。
変性温度:90〜95℃
アニーリング温度:40〜60℃
伸長温度:60〜75℃、
サイクル数:10回以上
などの条件である。得られた反応生成物をアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等により分離して、増幅産物の分子量を測定することができる。これにより、増幅産物の分子量が本発明の塩基配列と特異的な領域に相当する核酸分子を含む大きさか否かを確認することにより、被検菌株の本発明の上記活性を予測又は評価することができる。また、上記増幅産物の塩基配列を上記方法等で解析することによって、さらに本発明の上記活性をより正確に予測又は評価することができる。なお、本発明の上記活性の評価方法は、上記のとおりである。
また、本発明の上記評価方法としては、被検菌株を培養し、配列番号1等の本発明の塩基配列がコードするLPAAT1-longの発現量を測定することによって、被検菌株の本発明の上記活性を評価することもできる。なお、LPAAT1-longの発現量は、被検菌株を適当な条件で培養し、LPAAT1-longのmRNA又はタンパク質を定量することにより測定できる。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。mRNAの定量は、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによって、タンパク質の定量は、例えば、ウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。また、上記活性の評価方法として、本発明のLPAAT1-longが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法をあげることもできる。脂肪酸組成物の組成の測定方法は上記のとおりである。
(2)選択方法
本発明の他の態様として、本発明のLPAAT1-longをコードする核酸又はLPAAT1-longタンパク質を用いて、脂質生産菌の選択を行う方法があげられる。本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養し、配列番号1等の本発明の塩基配列がコードするLPAAT1-longの発現量を測定して、目的とする発現量の菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。また、基準となる菌株を設定し、この基準菌株と被検菌株を各々培養し、各菌株の前記発現量を測定し、基準菌株と被検菌株の発現量を比較して、所望の菌株を選択することもできる。具体的には、例えば、基準菌株および被検菌株を適当な条件で培養し、各菌株の発現量を測定し、基準菌株よりも被検菌株の方が高発現、又は低発現である被検菌株を選択することにより、所望の活性を有する菌株を選択することができる。所望の活性には、上記のように、LPAAT1-longの発現量及びLPAAT1-longが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法があげられる。
また、本発明の上記選択方法としては、被検菌株を培養して、本発明の上記活性が高いか若しくは低い菌株を選択することにより、所望の活性を有する被検菌株を選択することもできる。所望の活性には、上記のように、LPAAT1-longの発現量及びLPAAT1-longが産生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法があげられる。
被検菌株または基準菌株としては、例えば、上記の本発明のベクターを導入した菌株、上記本発明の核酸の発現が抑制された菌株、突然変異処理が施された菌株、自然変異した菌株などを用いることができるがこれらに限定されない。なお、本発明のLPAAT1-long活性及びLPAAT1-longの脂肪酸組成物を形成できる活性は、例えば本明細書中の「本発明のリゾホスファチジン酸アシル基転移酵素をコードする核酸」、「本発明の脂肪酸組成物」の項目で記載した方法によって測定することが可能である。突然変異処理としては、例えば、紫外線照射や放射線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタンスルホネート)、N−メチル−N−ニトロソグアニジンなどの薬剤処理による化学的方法などがあげられる(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法、p.67-75、学会出版センターなど参照)が、これらに限定されない。
なお、本発明の基準菌株、被検菌株として用いる菌株としては、上記の脂質生産菌又は酵母等があげられるが、これらに限定されない。具体的には、基準菌株、被検菌株は、異なる属や種に属するいかなる菌株を組み合わせて用いてもよく、被検菌株は1又はそれ以上の菌株を同時に用いてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
(1)EST解析
M. alpina 1S-4株を100mlの培地(1.8%グルコース、1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前培養した。10l培養槽(Able Co.,東京)に5lの培地(1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KHPO、0.1%NaSO、0.05%CaCl・2HO、0.05%MgCl・6HO、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rpm、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した。培養1、2、及び3日目に各々2%、2%、及び1.5%相当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6、及び8日目の各ステージに菌体を回収し、塩酸グアジニン/CsCl法でtotal RNAを調製した。Oligotex-dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ)を用いて、total RNAからpoly(A)RNAの精製を行った。各ステージのcDNAライブラリーを、ZAP-cDNA GigapackIII Gold Cloning Kit(STRATAGENE)を用いて作製し、cDNAの5’側からのワンパスシーケンス解析(8000クローン×5ステージ)を行った。得られた配列をクラスタリングした。その結果、約5000の配列を得た。
(2)LPAAT遺伝子ホモログの探索
EST解析で得られた塩基配列をGENEBANKに登録されているアミノ酸配列に対して相同性検索プログラムであるBLASTXで検索し、LPAAT遺伝子のホモログを抽出し、LPAATのホモログの配列(配列番号5)を見出した。配列番号5はNeurospora crassa由来の1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ様の推定タンパク質(GB accession No.EAA28956)と最も同一性が高かった。
特許文献2の明細書中に記載されているM. alpinaのLPAATホモログ(LPAAT1)の配列と上記で得られた配列を比較すると、配列番号5はLPAAT1の同種のアリルの部分配列であった。
上記の配列について、由来するライブラリーとそのESTは表2のとおりである。なお、表2には何日目の培養で得られたcDNAライブラリー由来のクローンであるかを示している。
Figure 2009014140
(1)LPAATホモログのクローニング
配列番号5には、LPAATホモログをコードすると考えられるCDSが存在しなかったため、これらの遺伝子の全長をコードするcDNAをクローン化するために各々の配列に基づき、以下のとおりプライマーを作製した。
配列番号5に基づき設計したプライマー:
プライマー955-1:GGACGTGTCAAGGAAAAGGA (配列番号6)
プライマー955-2:TCCTTCAGATGAGCCTCCTG (配列番号7)
これらのプライマーを用いて、配列番号5を構成するESTを含むcDNAライブラリーを鋳型として、ExTaq(タカラバイオ)を用いてPCR反応を行った。得られたDNA断片をTOPO-TA cloning Kit(INVITROGEN CORPORATION)を用いてTA−クローニングを行いてインサート部分の塩基配列を決定した。
その結果、配列番号5の第20番目から518番目を含むDNA断片がクローン化されたことを確認して、このプラスミドをpCR-955-Pとした。次に、このプラスミドを鋳型として、上記プライマーを用いてPCR反応を行った。反応には、ExTaq(タカラバイオ)を用いたが、添付のdNTPミックスの代わりにPCRラベリングミックス(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて、増幅されるDNAをジゴキシゲニン(DIG)ラベルし、cDNAライブラリーをスクリーニングに用いるプローブを作製した。このプローブを用いて、EST解析で上記配列を構成するESTを得たcDNAライブラリーをスクリーニングした。
ハイブリダイゼーションの条件は、次のとおりである。
バッファー:5×SSC、1%SDS、50mM Tris−HCl(pH7.5)、50%ホルムアミド;
温度:42℃(一晩);
洗浄条件:0.2×SSC、0.1%SDS溶液中(65℃)で、20分間×3回;
検出は、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイアグノス社)を用いて行った。スクリーニングによって得られたファージクローンから、in vivo エキシジョンにより、プラスミドを切り出してプラスミドDNAを得た。
配列番号5を含むcDNAをスクリーニングして得られた、インサートが最も長いクローンのインサートの塩基配列を配列番号3に示す。配列番号3には、第116番目から第1557番目までの1443bpからなるコード領域が含まれており、LPAATホモログの全長をコードしている配列が得られたと考えられた。この遺伝子によってコードされるタンパク質の推定アミノ酸配列を配列番号2に示した。
配列番号5を含むcDNAをスクリーニングして、上記配列番号3より短いインサートであるクローンも得られた。得られたクローンのインサートの塩基配列を配列番号9に示す。配列番号9には、第36番目から第1286番目までの1251bpからなるORFが含まれており、この配列は、上記配列番号1で示される塩基配列のうち、5’末端の第193〜1443塩基までと同一であることがわかった。つまり、配列番号9で示される塩基配列は配列番号1で示される塩基配列よりも5’領域が192塩基短い塩基配列であった。この遺伝子によってコードされるタンパク質の推定アミノ酸配列を配列番号10に示した。
配列番号3を含むプラスミドをpB-LPAAT1-longとし、配列番号配列番号9を含むプラスミドをpB-LPAAT1-shortとした。また、配列番号3にかかる遺伝子をLPAAT1-long遺伝子とし、配列番号9にかかる遺伝子をLPAAT1-short遺伝子とした。
(2)配列解析
上記のようにして得られたM. alpina由来のLPAATホモログのcDNA配列をGENEBANKに登録されているアミノ酸配列に対してBLASTXを用いて相同性解析を行った。その結果、各配列に対して最もE-valueの低かった、すなわち同一性の高かったアミノ酸配列は以下のとおりであった。各配列のORFと、もっとも同一性の高かった配列に係る塩基配列の同一性、及びアミノ酸配列の同一性をclustalWにて求め、以下に合わせて記載した。
配列番号3は、Aspergillus nidulans由来の1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ様の推定タンパク質(GB accession No.EAA60126)の相当する部分のみを比較した場合、塩基配列で51%、アミノ酸配列で32.1%であった。
配列番号9は、Aspergillus nidulans由来の1−アシル−sn−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ様の推定タンパク質(GB accession No.EAA60126)の相当する部分のみを比較した場合、塩基配列で51%、アミノ酸配列で32.1%であった。
また、配列番号3と配列番号9について、各々M. alpina由来の既知のLPAATホモログであるLPAAT1遺伝子(特許文献2)及びそれらのコードする推定アミノ酸配列で比較した。上記文献に開示されている配列とM. alpina 1S-4株から取得した配列を各々の相当する領域で比較すると、LPAAT1-long及びLPAAT1-shortともに、塩基配列で89%、アミノ酸配列で91%の同一性であることが確認された。
酵母発現ベクターの構築
LPAAT1-long、LPAAT1-shortを酵母で発現させるために、以下のとおり酵母発現用ベクターを構築した。
プラスミドpB-LPAAT1-longを制限酵素EcoRIとKpnIで消化して得られた約1.7kbのDNA断片を酵母用発現ベクターpYE22m (Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)のEcoRI-KpnIサイトに挿入し、プラスミドpYE-MALPAA1-longを構築した。
LPAAT1-shortを酵母で発現させるために、以下のとおり、酵母発現ベクターを構築した。すなわち、プラスミドpB-LPAAT1-shortを鋳型として、以下のプライマーLPAAT1-6F(配列番号11)とLPAAT1-R1(配列番号12)を用いてExTaq(タカラバイオ)により、PCR反応を行った。
LPAAT1-6F: TCTGAGATGGATGAATCCACCACCACCAC (配列番号11)
LPAAT1-R1: GTCGACTCAACCAGACGATACTTGCTGCAGAG (配列番号12)
得られたDNA断片について、TOPO-TA cloning Kit(INVITROGEN)を用いて、TA−クローニングを行い、インサート部分の塩基配列を確認し、正しい塩基配列を持つプラスミドをpCR-LPAAT1-shortとした。このプラスミドを制限酵素EcoRIとSalIで消化して得られた約1.3kbのDNA断片を、酵母発現用ベクターpYE22mのEcoRI-SalI部位に挿入し、プラスミドpYE-MALPAAT1-shortを構築した。
酵母の形質転換
プラスミドpYE22m、pYE-MALPAA1-long又はpYE-MALPAAT1-shortを用いて酢酸リチウム法により、酵母Saccharomyces cerevisiae EH13-15株(trp1, MATα)(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30, 515-520, 1989)に形質転換した。形質転換株は、SC-Trp(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20gアミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。
酵母の培養
各々のベクターでの形質転換株のうち任意の2株ずつ(c-1株、c-2株、LPAAT1-long-1株、LPAAT1-long-2株、LPAAT1-short-1株、LPAAT1-short-2株)を選択して、以下の条件で培養した。
すなわち、前培養として、SC-Trp培地10mlに酵母をプレートから1白金耳植菌し、30℃で2日間振とう培養を行った。本培養は、YPD5(酵母エキス2%、ポリペプトン1%、グルコース5%)培地10mlに前培養液を500μl添加し、30℃で2日間振とう培養を行った。
酵母の脂肪酸分析
酵母の培養液を遠心分離することにより、菌体を回収した。10mlの滅菌水で洗浄し、遠心分離により再び菌体を回収し、凍結乾燥した。凍結乾燥菌体にクロロホルム:メタノール(2:1)を4ml添加し、激しく攪拌した後、70℃で1時間処理した。遠心分離により菌体を分離し、溶媒を回収した。残った菌体に再度クロロホルム:メタノール(2:1)を4ml添加し、同様に溶媒を回収した。スピードバックで脂質を乾固したのち、2mlのクロロホルムを添加して脂質を溶解した。この試料のうち、200μlを分取して、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出して、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。
その結果を表3に示す。
Figure 2009014140
M. alpina由来の2つのLPAATホモログを導入した酵母と、コントロールの酵母の脂肪酸組成を比較した。LPAAT1-shortを導入した酵母の脂肪酸組成は、パルミチン酸の割合がコントロール株に比して上昇する一方、パルミトレイン酸含量の割合は減少した。よって、パルミチン酸含有量に対するパルミトレイン酸含有量の比率はコントロール株に比して低くなった。ステアリン酸及びオレイン酸の含量はコントロール株と同程度であった。
これに対し、LPAAT1-longを導入した酵母ではオレイン酸の割合がコントロール株に比べて1割以上上昇しており、一方、パルミトレイン酸、ステアリン酸の割合が減少していた。よって、パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに、ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率がコントロール株より高かった。また、パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率もコントロール株より高かった。
以上の結果から、M. alpina由来の2つのLPAATホモログは、その基質のアシル基の特異性が異なるためにこれらの遺伝子を導入した酵母では各々のホモログで脂肪酸組成が全く異なることが示された。また、上記ホモログを適時使い分けることにより、目的とする脂肪酸組成の生物を育種することができることが示された。
(1)アラキドン酸生産酵母の育種
アラキドン酸生産酵母(Saccharomyces cerevisiae)を育種するために、以下のプラスミドを構築した。
まず、M. alpina 1S-4株から調製したcDNAを鋳型として、Δ12-fとΔ12-r、Δ6-fとΔ6-r、GLELO-fとGLELO-r又はΔ5-fとΔ5-rといった、プライマーの組み合わせでExTaqを用いてPCRを行い、M. alpina 1S-4株のΔ12脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、Δ6脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、GLELO脂肪酸鎖長延長酵素遺伝子及びΔ5脂肪酸不飽和化遺伝子を増幅した。
Δ12-f:TCTAGAatggcacctcccaacactattg(配列番号13)
Δ12-r:AAGCTTTTACTTCTTGAAAAAGACCACGTC(配列番号14)
Δ6-f:TCTAGAatggctgctgctcccagtgtgag(配列番号15)
Δ6-r:AAGCTTTTACTGTGCCTTGCCCATCTTGG(配列番号16)
GLELO-f:TCTAGAatggagtcgattgcgcaattcc(配列番号17)
GLELO-r:GAGCTCTTACTGCAACTTCCTTGCCTTCTC(配列番号18)
Δ5-f:TCTAGAatgggtgcggacacaggaaaaacc(配列番号19)
Δ5-r:AAGCTTTTACTCTTCCTTGGGACGAAGACC(配列番号20)
これらをTOPO-TA-cloning Kitによりクローン化した。塩基配列を確認し、配列番号21〜24の塩基配列を含むクローンをそれぞれプラスミドpCR-MAΔ12DS(配列番号21の塩基配列を含む)、pCR-MAΔ6DS(配列番号22の塩基配列を含む)、pCR-MAGLELO(配列番号23の塩基配列を含む)、pCR-MAΔ5DS(配列番号24の塩基配列を含む)とした。
次に、プラスミドpCR-MAΔ12DSを制限酵素HindIIIで消化したあと末端を平滑化したものを制限酵素XbaIで消化して得られた約1.2kbpのDNA断片と、ベクターpESC-URA(STRATAGENE)を制限酵素SacIで消化した後、末端を平滑化したものを、制限酵素SpeIで消化した約6.6kbpのDNA断片を連結し、プラスミドpESC-U-Δ12を得た。プラスミドpCR-MAΔ6DSを制限酵素XbaIで消化した後、末端を平滑化したものを、制限酵素HindIIIで消化して得られた約1.6kbpのDNA断片と、プラスミドpESC-U-Δ12を制限酵素SalIで消化した後末端を平滑化したものを制限酵素HindIIIで消化した約8kbpのDNA断片と連結し、プラスミドpESC-U-Δ12:Δ6を得た。これを制限酵素PvuIIで部分消化して得られた約4.2kbの断片をpUC-URA3のSmaIサイトに挿入し、プラスミドpUC-URA-Δ12:Δ6を得た。
また、プラスミドpCR-MAGLELOを制限酵素XbaIとSacIで消化して得られた約0.95kbpのDNA断片と、ベクターpESC-LEU(STRATAGENE)を制限酵素XbaIとSacIで消化して得られた約7.7kbpのDNA断片と連結し、プラスミドpESC-L-GLELOを得た。プラスミドpCR-MAΔ5DSを制限酵素XbaIで消化した後、末端を平滑化したものを制限酵素HindIIIで消化して得られた約1.3kbpのDNA断片プラスミドpESC-L-GLELOを制限酵素ApaIで消化した後、末端を平滑化したものを制限酵素HindIIIで消化して得られた約8.7kbpのDNA断片を連結して、プラスミドpESC-L-GLELO:Δ5を得た。これを制限酵素PvuIIで消化して得られた約3.2kb断片をpUC-LEU2のSmaIサイトに挿入し、プラスミドpUC-LEU-GLELO:Δ5を得た。
S. cerevisiae YPH499株(STRATAGENE)をプラスミドpUC-URA-Δ12:Δ6とプラスミドpUC-LEU-GLELO:Δ5でco-transformationした。形質転換株は、SC-Leu、Ura(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20g、アミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、トリプトファン1.2gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。こうして得られた株のうち、任意の一株をARA3-1株とした。
(2)アラキドン酸生産酵母の形質転換株の取得と解析
ARA3-1株をプラスミドpYE22m、pYE-MALPAAT1-long、pYE-MALPAAT1-shortでそれぞれ形質転換した。形質転換株は、SC-Trp、Leu、Ura(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20g、アミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6gを混合したもの)1.3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとして選抜した。各プラスミドを導入した株から、それぞれ任意の4株を選択した。
これらの株を上記SC-Trp、Leu、Ura液体培地10mlで30℃、1日間培養し、そのうち1mlをSG-Trp、Leu、Ura(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、ガラクトース20g、アミノ酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6gを混合したもの)1.3g)液体培地10mlで15℃、7日間培養し、菌体の脂肪酸分析を行った。菌体の脂肪酸組成を表4に示した。
Figure 2009014140
このように、アラキドン酸を生産できるよう育種した酵母でLPAAT1-longを高発現させると、ベクターのみを導入したコントロール株に比べ、総脂肪酸にしめるn−6系PUFAの比率が高くなった。また、LPAAT1-shortを高発現させた場合に比べてもリノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸の比率が高くなった。
M. alpina発現用ベクターの構築
M. alpina発現用ベクターとして、GAPDHプロモーターから目的遺伝子を発現させるpDuraSCを用いた。
LPAAT1-longとLPAAT1-shortをM. alpinaで発現させるために、以下のとおりベクターを構築した。すなわち、プラスミドpB-LPAAT1-longを制限酵素EcoRIとSalIで消化して得られたDNA断片のうち約1.5kbのものを切り出し、ベクターpDuraSCのマルチクローニングサイトのEcoRIサイト、XhoIサイトに挿入し、プラスミドpDuraSC-LPAAT1-longとした。また、プラスミドpCR-LPAAT1-shortをEcoRIとSalIで消化して得られたDNA断片のうち約1.3kbを切り出し、ベクターpDuraSCのマルチクローニングサイトのEcoRIサイト、XhoIサイトに挿入してpDura5SC-LPAAT1-shortとした。
M. alpina形質転換株の取得
これらのプラスミドで、M. alpinaより特許文献(WO2005/019437「脂質生産菌の育種方法」)方法にしたがって誘導したウラシル要求性株Δura−3を宿主としてパーティクルデリバリー法で形質転換を行った。形質転換株の選択には、SC寒天培地(Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco)0.5%、硫酸アンモニウム0.17%、グルコース2%、アデニン0.002%、チロシン0.003%、メチオニン0.0001%、アルギニン0.0002%、ヒスチジン0.0002%、リジン0.0004%、トリプトファン0.0004%、スレオニン0.0005%、イソロイシン0.0006%、ロイシン0.0006%、フェニルアラニン0.0006%、寒天2%)を用いた。
形質転換M. alpinaの評価
得られた形質転換株を、GY培地(グルコース2%、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で3日間もしくは4日間振とう培養を行った。菌体を濾過により回収し、RNeasy plant kit(QIAGEN)を用いてRNAを抽出した。スーパースクリプトファーストストランドシステム for RT−PCR(インビトロジェン)によりcDNAを合成した。導入したコンストラクトからの各遺伝子の発現と、トータルの各遺伝子の発現を確認するため、以下のプライマーの組み合わせでRT−PCRを行った。
導入コンストラクトからの発現確認に用いたプライマー
MaGAPDHpfw:CACACCACACATTCAACATC(配列番号25)
LPAAT1-r:GCCTTCGTCCTTGGTACACCTTGAC(配列番号26)
トータルのLPAAT1の発現確認に用いたプライマー
LPAAT1-2F:TCGGCTCGGTCCCAAGATGAAC(配列番号27)
プライマーLPAAT1-2R:GCGTCTGTCATGTGCCCAGTCA(配列番号28)
上記RT−PCRの結果より、各遺伝子の導入コンストラクトからの発現およびトータルの発現の高かったものとして、プラスミドpDuraSC-LPAAT1-long導入株からGp-LPAAT1-long-5株を、プラスミドpDura5C-LPAAT1-short導入株からGp-LPAAT1-short-6株をそれぞれ選抜した。
これらの株を、GY培地4mlに植菌し、28℃、125rpmで振とう培養した。培養6日目に菌体の全量を濾過により回収し、凍結乾燥した。乾燥菌体の一部(約10〜20mg程度)をとり、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出して、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。菌体の脂肪酸組成を表5に示した。
Figure 2009014140
このように、M. alpinaでLPAAT1-longまたはLPAAT1-shortを高発現させた形質転換株では、野生株である1S-4株に比べてDGLAおよびアラキドン酸の比率が高まった。また、LPAAT1-longを高発現させた株とLPAAT1-shortを高発現させた株を比較すると、前者のほうがより、この傾向が強かった。
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
配列番号19:プライマー
配列番号20:プライマー
配列番号25:プライマー
配列番号26:プライマー
配列番号27:プライマー
配列番号28:プライマー

Claims (10)

  1. 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)〜v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする、前記脂肪酸組成物。
    i) オレイン酸含有量
    ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
    iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
    iv) パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
    v) n−6系脂肪酸含有量
  2. 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項1に記載の脂肪酸組成物。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  3. 前記核酸が、以下の(a)または(b)に記載の塩基配列を含む、請求項1記載の脂肪酸組成物。
    (a)配列番号1で示される塩基配列;
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
  4. n−6系脂肪酸がリノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)及びアラキドン酸からなる群から選ばれる少なくとも1の脂肪酸である、請求項1記載の脂肪酸組成物。
  5. 以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    を含有する組換えベクターによって形質転換された宿主を培養して得られる培養物から、以下のi)〜v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物より高いことを特徴とする脂肪酸組成物を採取することを特徴とする、前記脂肪酸組成物の製造方法。
    i) オレイン酸含有量
    ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率、並びに
    iii) ステアリン酸含有量に対する、オレイン酸の含有量の比率
    iv)パルミチン酸含有量及びパルミトレイン酸の合計含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
    v)n−6系脂肪酸含有量
  6. n−6系脂肪酸がリノール酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸及びアラキドン酸からなる群から選ばれる少なくとも1の脂肪酸である、請求項5記載の製造方法。
  7. 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項5又は6記載の製造方法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  8. 請求項1〜4のいずれか1項記載の脂肪酸組成物を製造するための以下の(a)〜(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸の使用。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号1からなる塩基配列と同一性が90%以上の塩基配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  9. 前記核酸が、以下の(a)〜(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項8記載の使用。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (b)配列番号1からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と1×SSC、60℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列;
    (c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、リゾホスファチジン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
  10. 請求項1〜4のいずれか1項記載の脂肪酸組成物を含む、食品。
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