本発明は、光学的にまたは電気的に情報を記録、消去、書き換え、および/または再生することが可能な情報記録媒体とその製造方法、およびその製造に用いるターゲットに関するものである。
ハイビジョン画像の録画媒体として、青紫色レーザを用いて記録再生する、高密度で大容量なBlu−ray Disc(以下、BD)規格が2002年に策定された。BDには、25GB容量の単層メディア(片面に情報層が1つ)と、50GB容量の2層メディア(片面に情報層が2つ)がある。特に、2層メディアにおいては、レーザ入射側に位置する半透明な情報層をLayer1(以下、L1)、レーザ入射側から遠い方の情報層をLayer0(以下、L0)と呼ぶ。
本発明者は、書換え形のBD(以下、BD−RE)メディアを開発し、2004年には1倍速対応の25GBおよび50GB容量のメディアを実用化した。1倍速は、データ転送レート36Mbpsに相当する。さらに、2006年には2倍速対応の25GBおよび50GB容量のメディアを実用化した。これらのメディアのデータや画像の情報は、記録層が相変化することによって、記録(アモルファス状態)したり、消去(結晶状態)したり、書き換えたりすることができる。記録層の材料やその組成は、結晶化速度が倍速に対して最適となるように決められる。
本発明者は、1倍速対応のメディアにはGe−Sb−Te系記録材料(例えば、特許第2584741号公報参照)を用い、2倍速対応メディアには結晶化速度がより大きいGe−Bi−Te系記録材料(例えば、特許第2574325号公報および国際公開第2006/011285号参照)を採用した。詳しくは、Ge−Sb−Te系記録材料は、GeTeとSb2Te3が化合した化合物系で、約44%のGeと約6%のSbを含む組成を採用した。また、Ge−Bi−Te系記録材料は、GeTeとBi2Te3が化合した化合物系で、約45%のGeと約4%のBiを含む組成を採用した。
今後、BDメディアがさらに高倍速化・大容量化に対応できれば、パソコン用途、レコーダ用途およびゲーム機用途としての使用価値が高まる。たとえば、データや画像ファイルの処理速度の向上、高画質化、高音質化、レコーダの機能追加等が図れる。また、録画の長時間化やハードディスクの代替も可能となる。このように、今後ますます高速大容量なメディアの必要性が高まると予想されることから、発明者は次なる開発目標を4倍速(144Mbps)以上ならびに100GB以上と設定した。
4倍速に対応するためには、2倍速対応の記録材料よりも結晶化速度の大きな材料が必要となる。たとえば、Ge−Bi−Te系記録材料では、Bi2Te3の濃度を増やすと結晶化速度が大きくなる。特に、50GB容量の2層メディアにおいては、L0の記録層の厚みが約10nmであるのに対し、L1の記録層の厚みは6nmと薄いため、L0とL1で同じ組成の記録材料を用いると、L1の方が結晶化能は低下してしまう。よって、L1用の記録材料はBi2Te3の濃度をより多くしておくことが必要である。
一方、100GBの大容量化を実現するためには、一例として記録密度を2倍に増やすか、情報層の数を4層に増やす方法がある。密度を増やすためには、記録マークを小さくしなければならないので、レーザ照射時間も短くなる。よって、短い時間で結晶化するためには、結晶化速度も大きくなければならない。また、情報層の数を増やす場合、2層メディアのL1よりも高い透過率を持つ情報層を追加しなければならないので、記録層の膜厚は、例えば3nmのような極薄い膜厚に設計されることとなる。このように、大容量化においても結晶化速度を大きくしなければならないので、例えばGe−Bi−Te系記録材料においては、Bi2Te3の濃度を2層メディアのL1用よりも増やして組成を調整しなければならない。
本発明者は、まず4倍速に対応した2層メディアを実現するために、Ge−Bi−Te系記録材料のBi2Te3の濃度の最適値を調べたが、L0およびL1共に見出せなかった。初期特性(記録特性、消去特性)と信頼性(記録マーク保存性)を評価したが、L0においては、消去特性が良好な組成では記録マーク保存性が劣悪で、実用レベルに達しなかった。L1においては、消去特性が良好な組成では信号振幅が小さく、記録特性が不十分であった。その上、L0同様記録マーク保存性が劣悪であったため、最適な組成が見出せなかった。
これらの結果は、Ge−Bi−Te系記録材料ではBi2Te3の濃度を増やすと、結晶化速度が大きくなるが、同時に光学変化が小さくなると共に、結晶化温度が低下してしまうことによる。結晶化速度は消去特性として評価され、結晶化速度が大きいと消去率は高くなる。光学変化は相変化による屈折率変化であり、信号振幅として評価され、光学変化が大きいほど信号振幅は大きくなる。結晶化温度は、記録マークの保存性、すなわちアモルファスの安定性に影響を与える。結晶化温度の低下は、記録マークの保存性を損ねることにつながる。実用化した2倍速対応メディアでは、結晶化速度、光学変化および結晶化温度を両立できる組成が存在し、初期特性と信頼性を満足することができた。しかしながら、4倍速に対応させるためには、Bi2Te3の濃度をもっと増やさなければならず、光学変化の大きさと結晶化温度とが実用レベルに達しなかった。
大容量化に対応した4層メディア(100GB、片面に情報層が4つ)の実験においても同様に、4つの情報層のいずれにおいても、結晶化速度、光学変化および結晶化温度を両立できる組成が存在せず、消去特性が良好な組成では記録マーク保存性が劣悪で、半透明な情報層では信号振幅をも不足した。
本発明の目的は、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度とを併せ持つ相変化記録材料を提供すると共に、その相変化記録材料によって形成された記録層を有し、4倍速以上の高データ転送レートおよび100GB以上の大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足できる情報記録媒体を提供することである。また、本発明は、その情報記録媒体を製造するための製造方法と、その製造で用いるターゲットを提供することも目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の情報記録媒体は、光の照射または電気的エネルギーの印加によって情報を記録し得る情報記録媒体であって、相変化を生じ得る記録層を少なくとも備え、前記記録層が、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む。
本発明の情報記録媒体によれば、例えば、BD−REメディアの場合、4倍速(144Mbps)以上の高データ転送レートにおいても、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足することができる。また、3つまたは4つの情報層を有する100GB以上の大容量記録媒体においても、各情報層の記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足することができる。このように、本発明によれば、高速で大容量な優れた情報記録媒体を実現することができる。
また、本発明の情報記録媒体の製造方法は、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を成膜する工程を少なくとも含む情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層を成膜する工程は、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、前記Sbを含むターゲットをスパッタリングすることを含んでいる。
本発明の情報記録媒体の製造方法によれば、4倍速(144Mbps)以上の高データ転送レートを有する情報記録媒体を製造することができる。また、3つまたは4つの情報層を有する100GB以上の大容量な情報記録媒体を製造することができる。
また、本発明は、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を成膜するためのターゲットであって、少なくともアンチモン(Sb)と、炭素(C)とを含むターゲットも提供する。
本発明のターゲットをスパッタリングすることにより、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度を併せ持つ相変化記録層を実現することができる。
図1は、本発明の情報記録媒体の一例を示す部分断面図である。
図2は、本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
図3は、本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
図4は、本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
図5は、本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
図6は、本発明の情報記録媒体および電気的情報記録再生装置の構成の一部を模式的に示す図である。
図7は、本発明の電気的情報記録媒体の構成の一部を模式的に示す図である。
図8は、本発明の電気的情報記録媒体とその記録再生システムの構成の一部を模式的に示す図である。
図9は、本発明の情報記録媒体の製造方法で使用するスパッタリング装置の一例を示す模式図である。
図10は、本発明の情報記録媒体の製造方法で使用するスパッタリング装置の別の例を示す模式図である。
本発明の情報記録媒体に含まれる記録層は、上述したとおり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含んでいる。本発明において、前記記録層に含まれる軽元素Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。
本発明において、前記記録層は、式(1):Sb100-x-yCxLy(但し、添え字100−x−y、xおよびyは、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比を示す。)で表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。前記記録層の膜厚は、例えば15nm以下であってよく、さらに7nm以下であってもよい。なお、本明細書において、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比とは、「Sb」原子、「C」原子および「L」原子の合計数を基準(100%)とした場合の、Sb、C、Lの各原子%のことである。
また、本発明の情報記録媒体は、N個の情報層を含んでいてもよい。なお、ここで、Nは2以上の整数である。この場合、前記情報層のうち少なくとも一つの情報層が、前記記録層を含んでいる。さらに、Nは3または4であってよい。
本発明の情報記録媒体の製造方法は、上述したとおり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を成膜する工程を少なくとも含んでおり、前記記録層を成膜する工程が、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、前記ターゲットをスパッタリングすることを含む。本発明の製造方法において、前記Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。
また、本発明の情報記録媒体の製造方法において、前記記録層を成膜する工程が、Cを含むターゲットをさらに用い、前記Cを含むターゲットをスパッタリングすることをさらに含んでいてもよい。また、前記記録層を成膜する工程が、前記Lを含むターゲットをさらに用い、前記Lを含むターゲットをスパッタリングすることをさらに含んでいてもよい。前記記録層を成膜する工程において、スパッタリングする際に、希ガス、または、N2ガスおよびO2ガスから選ばれる少なくとも一種のガスと希ガスとの混合ガスを用いてもよい。
また、前記記録層を成膜する工程で成膜された記録層が、例えば、式(1):Sb100-x-yCxLy(但し、添え字100−x−y、xおよびyは、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比を示す。以下、同様の表記を同様の意味で用いる。)で表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。
本発明のターゲットは、上述したとおり、少なくともアンチモン(Sb)と、炭素(C)とを含んでいる。本発明のターゲットは、原子量が33未満である軽元素(L)をさらに含んでもよい。この場合、前記Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよく、B、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってもよい。
本発明のターゲットを用いて成膜された記録層が、例えば、式(1):Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態では、同一の部分については同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その情報記録媒体100の一部断面を示す。情報記録媒体100は、基板101上に成膜された情報層110および透明層102が順に配置されている。さらに、情報層110は、基板101の一方の表面に成膜された反射層112、誘電体層113、界面層114、記録層115、界面層116および誘電体層117がこの順に配置されて形成されている。
情報記録媒体100は、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光10で情報を記録再生する、25GB以上の容量を有するBlu−ray Discとして使用できる。この構成の情報記録媒体100には、透明層102側からレーザ光10が入射し、それにより情報の記録および再生が実施される。以下、基板101から順に説明する。
基板101は、主に支持体としての機能を有し、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。材料としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂、またはガラスを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、厚さ約1.1mm、直径約120mmの基板101が好ましく用いられる。
基板101の情報層110を形成する側の表面には、レーザ光10を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板101に形成した場合、本明細書においては、レーザ光10に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光10から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。たとえば、Blu−ray Discとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、10nm以上30nm以下であることが好ましい。また、Blu−ray Discでは、グルーブ面のみに記録を行うが、グルーブ−グルーブ間の距離(グルーブ面中心からグルーブ面中心まで)は、約0.32μmである。
透明層102について説明する。情報記録媒体の記録密度を大きくする方法として、短波長のレーザ光を使用して、レーザビームを絞り込めるように対物レンズの開口数NAを上げる方法がある。この場合、焦点位置が浅くなるため、レーザ光10が入射する側に位置する透明層102は、基板101と比べてより薄く設計される。この構成によれば、より高密度の記録が可能な大容量情報記録媒体100を得ることができる。
透明層102は、基板101同様、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。透明層102の表面から情報層110の記録層115までの距離、すなわち透明層102の厚さは、80μm以上120μm以下が好ましく、90μm以上110μm以下がより好ましい。透明層102は、例えば、円盤状のシートと接着層からなっていてもよいし、紫外線硬化性樹脂よりなっていてもよい。必要に応じて、レーザ光10を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。また、誘電体層117の表面に保護層を設けた上に設けてもよい。いずれの構成でもよいが、総厚み(例えば、シート厚+接着層厚+保護層厚、または紫外線硬化性樹脂のみの厚み)が80μm以上120μm以下であることが好ましい。シートは、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMAのような樹脂で形成することが好ましく、特にポリカーボネートで形成することが好ましい。また、透明層102は、レーザ光10入射側に位置するため、光学的には短波長域における複屈折が小さいことが好ましい。
反射層112は、光学的には記録層115に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層115で生じた熱を速やかに拡散させて記録層115を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層112は、誘電体層113から誘電体層117までを含む多層膜を使用環境から保護する機能をも有する。反射層112の材料としては、記録層115で生じた熱を速やかに拡散させるよう、熱伝導率が大きいことが好ましい。また、記録層115に吸収される光量を増大させるよう、使用するレーザ光の波長における光吸収が小さいことが好ましい。
例えば、Al、Au、AgおよびCuより選ばれる金属またはこれらの合金を用いることができる。その耐湿性を向上させたり、熱伝導率または光学特性(例えば、光反射率、光吸収率または光透過率)を調整したりするために、上記金属または合金に、他の元素を添加した材料を使用してよい。その添加材料としては、Mg、Ca、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Zn、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Te、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれることが好ましい。この際、添加濃度は3原子%以下が好ましい。特に、Agは波長405nm付近の光吸収が小さいため、情報記録媒体100の構成にはAgを97原子%以上含む反射層112が好ましく用いられる。
また、反射層112を2以上の層で形成してもよい。その場合、基板101側を誘電体材料よりなる層としてもよい。反射層112の厚さは、使用する媒体の線速度や記録層115の組成に合わせて調整し、40nm以上300nm以下であることが好ましい。40nmより薄いと急冷条件が不足し、記録層の熱が拡散しにくくなり、記録層が非晶質化しにくくなる。300nmより厚いと急冷条件が過剰になり、記録層の熱が拡散しすぎて、記録感度が悪化する(すなわち、より大きなレーザパワーが必要になる)。
誘電体層113および誘電体層117は、光学距離を調節して記録層115の光吸収効率を高め、結晶相の反射率と非晶質相の反射率との差を大きくして信号振幅を大きくする機能と、記録層115を水分等から保護する機能を兼ね備える。特性としては、使用するレーザ波長に対して透明性が高く、耐湿性に加えて耐熱性にも優れていることが好ましい。
誘電体層113および117の材料としては、酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物、炭化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。
酸化物としては、例えばAl2O3、CaO、CeO2、Cr2O3、Dy2O3、Ga2O3、Gd2O3、HfO2、Ho2O3、In2O3、La2O3、MgO、Nb2O5、Nd2O3、Sc2O3、SiO2、Sm2O3、SnO2、Ta2O5、TiO2、Y2O3、Yb2O3、ZnO、ZrO2、ZrSiO4等を用いてもよい。硫化物としては例えばZnS等を、セレン化物としては例えばZnSe等を用いてもよい。窒化物としては、例えばAlN、BN、CrN、Ge3N4、HfN、NbN、Si3N4、TaN、TiN、VN、ZrN等を用いてもよい。炭化物としては、例えばAl4C3、B4C、CaC2、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、ZrC等を用いてもよい。弗化物としては、例えばCaF2、CeF3、DyF3、ErF3、GdF3、HoF3、LaF3、MgF2、NdF3、YF3、YbF3等を用いてもよい。
特に、誘電体層113は、反射層112にAgを含む材料を用いた場合には、AgがSと反応しやすいため、硫化物以外を用いることが好ましい。
混合物としては、例えばZnS−SiO2、ZnS−LaF3、ZnS−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2、ZrO2−LaF3、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−Ga2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−Ga2O3−LaF3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−In2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−In2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−In2O3、ZrO2−SiC、ZrO2−SiO2−SiC、HfO2−SiO2、HfO2−LaF3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、HfO2−Cr2O3−LaF3、HfO2−SiO2−LaF3、HfO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、HfO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−Ga2O3−LaF3、HfO2−SiO2−Ga2O3−LaF3、HfO2−In2O3、HfO2−SiO2−In2O3、HfO2−In2O3−LaF3、HfO2−SiO2−In2O3−LaF3、HfO2−SiO2−Cr2O3−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3−In2O3、HfO2−SiC、HfO2−SiO2−SiC、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、SnO2−SiC、SnO2−Si3N4、SnO2−Ga2O3−SiC、SnO2−Ga2O3−Si3N4、SnO2−Nb2O5、SnO2−Ta2O5、CeO2−Al2O3、CeO2−Al2O3−SiO2、Nb2O5−TiO2、Nb2O5−SiO2−TiO2等を用いてもよい。
これらの材料の中で、ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料は、405nm付近の波長に対して透明性が高く、耐熱性にも優れている。ZrO2を含む材料には、ZrO2の代わりにCaO、MgO、Y2O3のいずれかをZrO2に添加した部分安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニアを少なくとも一部に用いてもよい。
ZnS−SiO2は非晶質で、熱伝導性が低く、高透明性および高屈折率を有し、また、膜形成時の成膜速度が大きく、機械特性および耐湿性にも優れた材料である。誘電体層117として(ZnS)80(SiO2)20(添え字はmol%を示す。)を用いてよい。
あるいは、誘電体層113もしくは誘電体層117を、上記酸化物等や混合物を積層して2以上の層で形成してもよい。
誘電体層113および誘電体層117は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層115の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層115の光吸収率Aa(%)、記録層115が結晶相であるときの情報記録媒体100の光反射率Rc(%)と記録層115が非晶質相であるときの情報記録媒体100の光反射率Ra(%)、記録層115が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体100の光の位相差Δφを調整する機能を有する。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差|Rc−Ra|または反射率比Rc/Raが大きいことが望ましい。また、記録層115がレーザ光10を吸収するように、AcおよびAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように誘電体層113および誘電体層117の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法(例えば久保田広著「波動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照)に基づく計算によって正確に決定することができる。誘電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光10の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体100の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、情報記録媒体100のようにBlu−ray Discで使用する場合、18%≦Rc且つRa≦4%を満足するように誘電体層113および誘電体層117の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定することができる。例えば、屈折率が2から3である誘電体材料を誘電体層113および誘電体層117に用いる場合、誘電体層113の厚さは50nm以下が好ましく、3nm以上30nm以下がより好ましい。また、誘電体層117の厚さは20nm以上100nm以下が好ましく、30nm以上80nm以下がより好ましい。
界面層114および界面層116について説明する。界面層114は、誘電体層113と記録層115との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。同様に、界面層116は、誘電体層117と記録層115との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。ここで物質移動とは、繰り返し記録により層間で原子が一方にまたは相互に移動する現象をいう。例えば誘電体層113または誘電体層117に(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を使用した場合、レーザ光10を記録層115に照射して繰り返し書き換えている間に、ZnSのSが記録層115に拡散していく。また、界面層114および界面層116は、誘電体層113と記録層115、および誘電体層117と記録層115の密着性が悪い場合の、接着機能をも有する。
界面層114および界面層116には、硫化物を含む材料は使用しないことが好ましい。界面層114および界面層116の材料としては、記録層115との密着性に優れ、記録層115にレーザ光10を照射した際に、溶けたり分解したりしない、耐熱性の強い材料が好ましい。その材料としては、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。
酸化物としては、例えばAl2O3、CaO、CeO2、Cr2O3、Dy2O3、Ga2O3、Gd2O3、HfO2、Ho2O3、In2O3、La2O3、MgO、Nb2O5、Nd2O3、Sc2O3、SiO2、Sm2O3、SnO2、Ta2O5、TiO2、Y2O3、Yb2O3、ZnO、ZrO2、ZrSiO4等を用いてもよい。窒化物としては、例えばAlN、BN、CrN、Ge3N4、HfN、NbN、Si3N4、TaN、TiN、VN、ZrN等を用いてもよい。炭化物としては、例えばC、Al4C3、B4C、CaC2、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、ZrC等を用いてもよい。硼化物としては、例えばB、CaB6、HfB2、ZrB2、TiB2、TaB2、MoB、NbB2、WB、VB2、LaB6等を用いてもよい。弗化物としては、例えばCaF2、CeF3、DyF3、ErF3、GdF3、HoF3、LaF3、MgF2、NdF3、YF3、YbF3等を用いてもよい。
混合物としては、例えばZrO2−Cr2O3、ZrSiO4−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−Ga2O3、ZrSiO4−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−In2O3、ZrSiO4−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−SiC、ZrSiO4−SiC、ZrO2−SiO2−SiC、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、HfO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−In2O3、HfO2−SiO2−In2O3、HfO2−SiC、HfO2−SiO2−SiC、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、SnO2−SiC、SnO2−Si3N4、SnO2−Ga2O3−SiC、SnO2−Ga2O3−Si3N4、SnO2−Nb2O5、SnO2−Ta2O5、Cr2O3−ZnO、Cr2O3−Al2O3、Cr2O3−CeO2、Cr2O3−Dy2O3、Cr2O3−Ga2O3、Cr2O3−In2O3、Cr2O3−MgO、Cr2O3−Nb2O5、Cr2O3−SiO2、Cr2O3−SnO2、Cr2O3−TiO2、Cr2O3−Ta2O5、Cr2O3−Y2O3、Cr2O3−LaF3、Cr2O3−B、Cr2O3−TiB2、ZnO−SiO2、ZnO−ZrO2、ZnO−HfO2、ZnO−Al2O3等を用いてもよい。
これらの材料の中で、ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料は、405nm付近の波長に対して透明性が高く、耐熱性にも優れているので界面層114および界面層116に好ましく用いられる。ZrO2を含む材料には、ZrO2の代わりにCaO、MgO、Y2O3のいずれかをZrO2に添加した部分安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニアを少なくとも一部に用いてもよい。ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料の中でも、ZrO2とSiO2とCr2O3とを含む材料(例えば、ZrO2とSiO2とCr2O3からなる材料)が、透明性と耐熱性に加えて、記録層115との密着性により優れているので、より好ましい。
界面層114および界面層116の膜厚は、0.3nm以上10nm以下であることが好ましく、0.5nm以上7nm以下であることがより好ましい。界面層114および116が厚いと、基板101の表面に形成された反射層112から誘電体層117までの積層体の光反射率および光吸収率が変化して、記録消去性能に影響を与える場合がある。また、0.3nm未満であると、物質移動を防止する機能が低下する場合がある。
なお、誘電体層113が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層115との密着性にも優れている場合には、界面層114は必要に応じて設ける。同様に、誘電体層117が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層115との密着性にも優れている場合には、界面層116は必要に応じて設ける。
本発明の記録層115は、相変化を生じ得る記録層であり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む。この材料構成により、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度とを併せ持つ、相変化記録材料を実現することができる。
Sbは非常に結晶化しやすい材料であり、結晶化温度が約90℃くらいである。スパッタリングにより形成したSb膜は非晶質状態であるが、室温で放置しておくと徐々に結晶化が進む。したがって、Sbだけでは非晶質状態の安定性に欠ける。すなわち、優れた記録マークの保存性を確保することが困難である。
Cは、このようなSbの課題を解決する機能を有し、Sbに添加することにより、大きな結晶化速度を維持して、結晶化温度を200℃以上に上昇させることができる。また、記録層115の非晶質状態と結晶状態の間の光学的な変化を大きくする機能をも有する。
さらに、原子量が33未満である軽元素(L)を添加することにより、結晶化温度を低下させずに、結晶化速度を調整することができる。Lは、B、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であることがより好ましい。軽元素の中でもこれらの元素を含む材料は、製造面、コスト面、環境面で優れた材料である。
例えば、4倍速以上の、高倍速な記録条件で使用する材料に要求される特性は、高速記録できるよう大きな結晶化速度を有すること、且つ、記録マークが安定に保存されるよう結晶化温度が高いこと、である。
Sbに原子量が33以上の元素、例えば遷移金属(第2遷移元素、第3遷移元素)や貴金属を添加すると、確かに結晶化温度を上げることができる。しかしながら、結晶化温度が低下するという副作用が伴うため、20原子%も添加すると、4倍速以上では使用が困難となる。それに対して、SbにCを添加する場合、Cは結晶化速度を低下させることなく、結晶化温度を上げることができる。それゆえ、Cの場合は50原子%近くまで添加しても、4倍速以上で使用できる。SbとCに遷移金属や貴金属を添加する場合も、同様に結晶化速度が低下するため、4倍速以上で使用するには、それらの添加濃度は多くても10原子%程度である。
これに対し、SbとCに、原子量が33未満の軽元素(L)が添加された材料を含む本発明の記録層115は、CとLの濃度を調整することにより、高い結晶化温度と大きな結晶化速度とを両立できる。4倍速以上で使用する場合も、CとLとを合わせて50原子%まで添加することが可能である。このように、Sbと、Cと、Lとを含む記録材料は、高倍速で使用する場合でも、添加できるCとLの組成範囲が十分に広いという利点がある。したがって、本発明によれば、CとLの添加濃度を適宜調整することによって、記録層の結晶化速度、結晶化温度および光学変化量の微調整が可能となるため、設計の自由度が高いという効果も得られる。
光学的変化を、記録層が非晶質状態であるときの記録層の複素屈折率(na−ika、naは屈折率、kaは消衰係数)と記録層が結晶状態であるときの記録層の複素屈折率(nc−ikc、ncは屈折率、kcは消衰係数)との差の大きさDn+k(|nc−na|+|kc−ka|)で定義すると、Dn+kが大きいほど光学変化が大きい。例えば、Sb80C15B5のDn+kは1.9であり、Sb80C15N5のDn+kも1.9である。これに対し、Sb85Ge15のDn+kは1.6であった。特に、SbにCとLを添加することでkaが小さくなり、|kc−ka|を大きくすることができるようになる。
また、本発明の記録層115は、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものであってもよい。CとLを合わせた組成比は、50原子%以下が好ましい。50原子%を超えると、記録層115の結晶化速度が低下し、例えば4倍速に相当する転送レートでの結晶化が不十分となり、記録消去特性が悪化する場合がある。また、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保するために、本実施の形態では、CとLを合わせた組成比は30原子%以上が好ましい。CとLの組成は、転送レートに対して最適となるように選んでよいが、大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、x≧yが好ましい。ここで、SbとCとLを含む記録層の組成は、例えばX線マイクロアナライザー(XMA)で分析することができる。これは、電子線を試料に照射した際に発生する特性X線の波長や強度を測定することによって、試料に含まれる元素の種類と組成を調べることができる分析方法である。
スパッタリングで形成された記録層115には、スパッタ雰囲気中に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分(O−H)、有機物(C)、空気(N、O)、スパッタ室に配置された冶具の成分(金属)およびターゲットに含まれる不純物(金属、半金属、半導体、誘電体)等が不可避に含まれ、XMA等の分析で検出されることがある。これら不可避の成分は記録層に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよく、不可避に含まれる成分を除いて、Sb、CおよびLが、Sb100-x-yCxLyの関係にあり、且つx+y≦50を満たせばよい。すなわち、本明細書において、「記録層115が、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものである」とは、記録層115中に上記のような不可避成分が存在する場合も含まれる。これは、以降の実施の形態で説明する記録層215、225、315、325、335、415、425、435、445および603にも同様に適用される。
具体的な組成は、Sb−C−B、Sb−C−B−N、Sb−C−B−O、Sb−C−B−Mg、Sb−C−B−Mg−N、Sb−C−B−Mg−O、Sb−C−B−Mg−N−O、Sb−C−B−Al、Sb−C−B−Al−N、Sb−C−B−Al−O、Sb−C−B−Al−N−O、Sb−C−B−S、Sb−C−B−S−N、Sb−C−B−S−O、Sb−C−B−S−N−O、Sb−C−N、Sb−C−N−O、Sb−C−N−Mg、Sb−C−N−Mg−O、Sb−C−N−Al、Sb−C−N−Al−O、Sb−C−N−S、Sb−C−N−S−O、Sb−C−O、Sb−C−O−Mg、Sb−C−O−Al、Sb−C−O−S、Sb−C−Mg、Sb−C−Mg−Al、Sb−C−Mg−Al−N、Sb−C−Mg−Al−O、Sb−C−Mg−Al−N−O、Sb−C−Mg−S、Sb−C−Mg−S−N、Sb−C−Mg−S−O、Sb−C−Mg−S−N−O、Sb−C−Al、Sb−C−Al−S、Sb−C−Al−S−N、Sb−C−Al−S−O、Sb−C−Al−S−N−O、Sb−C−S等が挙げられる。
本発明の記録層115の膜厚は、15nm以下であることが好ましい。15nm以下であれば、情報記録媒体100の構成において、25GB以上の容量且つ4倍速以上の転送レートで、良好な記録消去特性が得られる。15nmを超えると、熱容量が大きくなり記録に要するレーザパワーが大きくなる。また、記録層115で生じた熱が反射層112の方向へ拡散しにくくなり、高密度記録に必要な小さい記録マークの形成が困難となる。さらには、8nm以上14nm以下がより好ましい。この膜厚範囲においては、4倍速以上の高転送レートに加えて2倍速以下の低転送レートでも、良好な記録消去特性が得られるので、回転数一定のConstant Angular Velocity(CAV)として使用することもできる。
続いて、実施の形態1の情報記録媒体100を製造する方法を説明する。情報記録媒体100は、案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板101をスパッタリング装置に配置し、基板101の案内溝が形成された表面に、反射層112を成膜する工程、誘電体層113を成膜する工程、界面層114を成膜する工程、記録層115を成膜する工程、界面層116を成膜する工程、誘電体層117を成膜する工程、を順次実施し、さらに、誘電体層117の表面に透明層102を形成する工程を実施することにより、製造される。
ここで、情報記録媒体の製造を行うスパッタリング(成膜)装置の一例を説明する。図9に、二極グロー放電型スパッタリング装置20の一例を示す。スパッタ室21内は、排気口22に真空ポンプ23が接続され、高真空に保たれる。スパッタガス導入口24からは、一定流量のスパッタガス(例えばArガス等)が導入される。基板25は基板ホルダー(陽極)26に取り付けられ、ターゲット(陰極)27はターゲット電極28に固定されており、電源29に接続されている。両極間に高電圧を加えることにより、グロー放電が発生し、例えばAr正イオンを加速してターゲット27に衝突させ、スパッタリングさせる。スパッタされた粒子は基板25上に堆積し薄膜が形成される。スパッタ中、ターゲット27を冷却するため、電極28には例えば水を循環させる(図中、30は循環水を示す)。陰極へ印加する電源の種類によって直流型と高周波型に分けられる。スパッタリング装置20は、スパッタ室21を複数個つないでもよいし、スパッタ室21に複数個のターゲット27を配置してもよく、そのような構造とすることにより、複数の成膜工程を実施して多層膜を積層することができる。以下の実施の形態のスパッタリングでも、同様の装置を用いることができ、基板25として、本実施の形態および後述する実施の形態2〜6で説明する基板101、201、301、401、501、601(図1〜図6参照)を用いることができる。
また、スパッタリング装置の別の例を説明する。図10に、直流(DC)マグネトロンスパッタ装置30の一例を示す。なお、図10中、図9と同一の符号が付されている部材は、図9を参照しながら説明した部材と同じであるため、その説明を省略する場合がある。スパッタ室21内には、排気口22に真空ポンプ23が接続され、高真空に保たれる。スパッタガス導入口24には、ガスボンベ(例えばArガス)が接続され、ここから一定流量のスパッタガス(例えばArガス)が導入される。マグネトロンスパッタにおいては、ターゲット27の裏面に配置された永久磁石31によってターゲット27表面に磁界が発生し、電界と直交する部分に最もプラズマが集中するので、より多くの粒子がスパッタされる。陰極に印加する電源の種類によって、直流型と高周波(RF)型に分けられる。RFマグネトロンスパッタ装置の場合は、直流電源29の代わりに、インピーダンス整合回路と高周波電源とが接続されている。なお、図10においては、図9に示されている循環水30が省略されている。
以下の説明を含む本明細書において、各層に関して、「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときの露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
最初に、基板101の案内溝が形成された面に、反射層112を成膜する工程を実施する。反射層112は、反射層112を構成する金属または合金を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
反射層112を成膜するターゲットとしては、Al、Au、AgおよびCuのうち少なくとも1つを含む材料、または、それらの合金を用いてもよい。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される反射層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の反射層112を得ることができる。ターゲットは、粉末を溶かして合金化して固めたものや粉末を高温高圧下で固めたもの等、製法に依らず用いることができる。例えば、反射層112としてAg−Cu系合金を形成する際には、Ag−Cu系合金ターゲットを用いてよい。
次に、反射層112の表面に、誘電体層113を成膜する工程を実施する。誘電体層113もまた、誘電体層113を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
誘電体層113を成膜するターゲットとしては、酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物、炭化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができ、誘電体層113の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の誘電体層113を得ることができる。また、酸化物を含む誘電体層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるか、あるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより誘電体層113を形成してもよい。
あるいは、誘電体層113は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、誘電体層113は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
次に、誘電体層113の表面に、界面層114を成膜する工程を実施する。界面層114もまた、界面層114を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
界面層114を成膜するターゲットとしては、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。界面層114の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される界面層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の界面層114を得ることができる。また、酸化物を含む界面層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるかあるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより界面層を形成してもよい。
あるいは、界面層114は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、界面層114は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
次に、界面層114の表面に、本発明の記録層115を成膜する工程を実施する。記録層115は、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、Sbを含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜できる。以下、各々の材料の記録層115についてその成膜方法について説明する。
軽元素LとしてB、Mg、Alのうち少なくとも一つが含まれる場合、すなわちSbとCとL(B、Mgおよび/またはAl)を含む記録層115を成膜する場合、Sb−C−L(SbとCとLを含む)ターゲットをスパッタ室に備えて、スパッタリングすることによって成膜することができる。あるいは、組成比の異なるSb−C−Lターゲットを2以上スパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sbターゲット、CターゲットおよびLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−Cターゲット、SbターゲットおよびLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−CターゲットとLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−LターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、SbターゲットとC−Lターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。いずれも希ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。さらに、記録層115にNおよび/またOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してもよい。
軽元素LとしてSが含まれる場合、すなわちSbとCとSを含む記録層115を成膜する場合、Sb−C−Sを含むターゲットをスパッタ室に備えて、スパッタリングすることによって成膜することができる。あるいは、組成比の異なるSb−C−Sターゲットを2以上備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−SターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、SbターゲットとC−Sターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。いずれも希ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。さらに、記録層115にNおよび/またOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してもよい。
軽元素LとしてNおよび/またOが含まれる場合、すなわちSbとCとLを含む記録層115を成膜する場合、Sb−Cを含むターゲットをスパッタ室に備えて、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングすることにより記録層115を成膜することができる。あるいは、SbターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室にスパッタ室に備えて、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、同時に反応性スパッタリングすることにより記録層115を形成することもできる。あるいは、Nおよび/またOと、SbおよびCを含むターゲットを、希ガス雰囲気中、または少量の酸素ガスおよび/または少量の窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングしてもよい。
いずれの方法においても、式(1):Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなる記録層115を形成することができる。例えば、Sb−C−Lを含むターゲットを用いる場合、スパッタリング装置によってはターゲットの組成と形成される記録層の組成が一致しない場合もあるが、Sb−C−Lを含むターゲットの組成を調整することによって、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。あるいは、複数のターゲットを備えて同時スパッタリングする場合には、個々の電源の出力を調整して組成を制御することにより、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。あるいは、反応性スパッタリングの場合には、ターゲットの組成調整もしくは電源の出力調整に加えて、酸素ガスや窒素ガスの流量や圧力、希ガスとの流量比や圧力比を調整することにより、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。
本発明の記録層を成膜するために用いられるターゲットについて説明する。本ターゲットは、少なくともアンチモン(Sb)と、炭素(C)とを含む。さらに原子量が33未満である軽元素(L)を含んでもよく、この場合はLがB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。あるいは、LがB、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。本ターゲットをスパッタリングすることによって、SbとCとLとを含む記録層を形成することができる。
融点の高いCのスパッタ率は、Sbのスパッタ率に比べて低いので、記録層に含まれるCの組成比よりもターゲットに含ませるCの組成比を、5%〜20%多くすることが好ましい。使用するスパッタリング装置やスパッタリング条件によってその増量は異なるが、例えば、Sb50C50記録層を成膜するためのターゲットの組成比は、例えばSb47.5C52.5〜Sb40C60の範囲であってよい。記録層の組成比をX線マイクロアナライザーで分析して、記録層の組成比が目標の組成比となるように、Sb−C−Lターゲットの好ましい組成比を決めることができる。
本実施の形態の記録層115が、LとしてB、Mg、AlおよびSのうち少なくとも一つと、SbとCとを含む場合、記録層115を成膜する際に、Sb−C−Lターゲットをスパッタリングしてよい。さらに、記録層115にNおよび/またはOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してよい。
Nおよび/またはOと、SbとCとを含む記録層115を成膜する場合、Sb−Cターゲットを、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してよい。あるいは、Nおよび/またはOと、Sbと、Cとを含むターゲットを、希ガス雰囲気中、または少量の酸素ガスおよび/または少量の窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングしてよい。
次に、本発明のターゲットの製造方法の一例を説明する。例えば、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、アルミニウム(Al)とを含むターゲットの製造方法について説明する。所定の粒径を有する高純度なSbの粉末、Cの粉末およびAlの粉末を準備し、これらを所定の混合比になるように秤量して混合し、ホットプレス装置に入れる。ホットプレス装置を必要に応じて真空にし、所定の高い圧力と高い温度の条件下で、所定時間保持して、混合粉末を焼結させる。混合を十分に行うことにより、ターゲットの面内・厚み方向の組成が均一になる。また、圧力、温度および時間の条件を最適化することにより、充填性が向上し、高密度なターゲットを製造することが可能になる。このようにして、SbとCとAlとを所定の組成比で含むターゲットが完成する。焼結後、必要に応じてIn等の半田を用いて、例えば表面が平滑な銅板に接着してもよい。こうすることにより、スパッタリング装置に取り付けてスパッタリングすることができる。本ターゲットは、密度(粉末の充填率を示し、全く隙間無く粉末が充填されている状態を100%と定義する)が高いことが好ましい。好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上である。
ここで、粉末については、Sbの粉末、Cの粉末およびAlの粉末のような単体元素に限らず、化合物の粉末を含んでもよい。例えば、所定の粒径を有する高純度なSbの粉末、Cの粉末およびSb−Alの粉末を混合してもよいし、Sbの粉末とAl−Cの粉末とを混合してもよい。あるいは、Sb−Cの粉末とAlの粉末とを混合してもよい。いずれの粉末の組み合わせでも、上記の方法でターゲットを製造することができる。
次に、記録層115の表面に、界面層116を成膜する工程を実施する。界面層116は界面層114と同様の製造方法で実施してよい。
次に、界面層116の表面に、誘電体層117を成膜する工程を実施する。誘電体層117は誘電体層113と同様の製造方法で実施してよい。
次に、透明層102を形成する工程を説明する。誘電体層117を成膜した後、反射層112から誘電体層117まで順次積層した基板101をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層117の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布して、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、目標の厚みの透明層102を形成することができる。あるいは、誘電体層117の表面に、紫外線硬化性樹脂をスピンコート法により塗布し、塗布した紫外線硬化性樹脂に、円盤状のシートを密着させて、紫外線をシート側から照射して樹脂を硬化させ、透明層102を形成することもできる。あるいは、接着層を有する円盤状のシートを密着させて、透明層102を形成することもできる。
透明層102は物性の異なる複数層からなってもよく、誘電体層117の表面に他の透明層を設けた後に、透明層102を形成してもよい。あるいは、誘電体層117の表面に透明層102を形成した後、透明層102の表面にさらにもう一層の透明層を形成してもよい。これら複数の透明層は、各々粘度や硬度、屈折率、透明性が異なっていてもよい。このようにして、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層115を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。半導体レーザのパワー、情報記録媒体の回転速度、半導体レーザの径方向への送り速度およびレーザの焦点位置等を最適化することにより、良好な初期化工程を実施できる。初期化工程は透明層形成工程の前に実施してもよい。このように、反射層112を成膜する工程から透明層102を形成する工程まで順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体100を製造することができる。
なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相成長(CVD)法、または分子線エピタキシ(MBE)法等を用いることも可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、情報記録媒体の一例を説明する。図2に、その情報記録媒体200の一部断面を示す。情報記録媒体200は、基板201上に成膜された第1の情報層210、中間層203、第2の情報層220および透明層202が順に配置されている。第1の情報層210は、基板201の一方の表面に成膜された反射層212、誘電体層213、界面層214、記録層215、界面層216および誘電体層217がこの順に配置されてなる。第2の情報層220は、中間層203の一方の表面に成膜された誘電体層221、反射層222、誘電体層223、界面層224、記録層225、界面層226および誘電体層227がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層202の側から入射される。第1の情報層210には、第2の情報層220を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体200においては、2つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の2倍程度の50GBの容量を有する、情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体200においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、2つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1の情報層210の反射率と第2の情報層220の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として実効反射率がRc5%、Ra約1%となるように設計した構成を説明する。実効反射率とは、2つの情報層を積層した状態で測った、各情報層の反射率と定義する。第2の情報層220の透過率が約50%となるように設計する場合、第1の情報層210は単独でRcが約20%、Raが約4%、第2の情報層220は単独でRcが約5%、Raが約1%となるように設計される。
以下、第1の情報層210の構成から順に説明する。基板201および第1の情報層210の反射層212から誘電体層217は、実施の形態1の基板101および情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
中間層203は、レーザ光10の、第2の情報層220における焦点位置と第1の情報層210における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層220の案内溝が形成されてよい。中間層203は、紫外線硬化性樹脂で形成することができる。中間層203は、レーザ光10が効率よく第1の情報層210に到達するよう、記録再生する波長λの光に対して透明であることが望ましい。中間層203の厚さは、(1)対物レンズの開口数とレーザ光波長により決定される焦点深度以上、(2)記録層215および記録層225間の距離が、対物レンズの集光可能な範囲内、(3)透明層202の厚さと合わせて、使用する対物レンズが許容できる基板厚公差内、にすることが好ましい。したがって、中間層203の厚さは10μm以上40μm以下であることが好ましい。中間層203は、必要に応じて樹脂層を複数層、積層して構成してよい。たとえば、誘電体層217を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてもよい。
次に、第2の情報層220の構成について説明する。第2の情報層220は、レーザ光10が第1の情報層210に到達し得るように、高透過率となるように設計される。具体的には、記録層225が結晶相であるときの第2の情報層220の光透過率をTc(%)、記録層225が非晶質相であるときの第2の情報層220の光透過率をTa(%)としたとき、40%≦(Ta+Tc)/2、となることが好ましい。
誘電体層221は、第2の情報層220の光透過率を高める機能を有する。材料は、透明で、波長405nmのレーザ光10に対して、屈折率が2.4以上あることが好ましい。誘電体層221の屈折率が小さいほど、第2の情報層220の反射率比Rc/Raは大きくなり、光透過率は小さくなる。4以上の反射率比と50%以上の光透過率が得られる屈折率が2.4以上である。よって、屈折率が2.4未満であると、第2の情報層220の光透過率が低下して、第1の情報層210に十分なレーザ光10を到達させることが困難となる。
材料としては、例えばZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2およびWO3のうちの少なくとも一つ含む材料を用いてよい。中でもTiO2は、屈折率が2.7と高く、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。あるいは、ZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2およびWO3のうちの少なくとも一つを50mol%以上含む材料を使用してもよい。例えば、(ZrO2)80(Cr2O3)20、(Bi2O3)60(SiO2)40、(Bi2O3)60(TeO2)40、(CeO2)50(SnO2)50、(TiO2)50(HfO2)50、(WO3)75(Y2O3)25、(Nb2O5)50(MnO)50、(Al2O3)50(TiO2)50等を用いてよい。あるいは、ZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2、WO3のうちの少なくとも2つを混合した材料を使用してもよい。例えば、Bi2Ti4O11((TiO2)80(Bi2O3)20)、Bi4Ti3O12((TiO2)60(Bi2O3)40)、Bi12TiO20、(WO3)50(Bi2O3)50、(TiO2)50(Nb2O5)50、(CeO2)50(TiO2)50、(ZrO2)50(TiO2)50、(WO3)67(ZrO2)33等を用いてよい。なお、上記材料における添え字は、mol%を示す。
光学的計算によれば、誘電体層221の膜厚がλ/8n(nm)(λはレーザ光10の波長、nは誘電体層221の屈折率)とその近傍において、第2の情報層220の透過率が最大値となる。反射率コントラスト(Rc−Ra)/(Rc+Ra)は、誘電体層221の膜厚が(λ/16n)以上(λ/4n)以下の間で最大値をとる。よって、両者が両立するように誘電体層221の膜厚を選ぶことができ、9nm以上42nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上30nm以下である。なお、誘電体層221は2以上の層からなってもよい。
反射層222は、記録層225の熱を速やかに拡散させる機能を有する。また、上記のように、第2の情報層220は高い光透過率を要するため、反射層222での光吸収は小さいことが望ましい。よって、反射層212と比較して、反射層222の材料および厚さは、より限定される。厚さはより薄く設計することが好ましく、光学的には消衰係数が小さく、熱的には熱伝導率が大きい材料が好ましい。
具体的には、反射層222は、好ましくは、AgまたはAg合金で、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Ga、Ag−Ga−Cu、Ag−Cu、Ag−In−Cu等の合金材料を用いてよい。あるいは、AgもしくはAg−Cuに希土類金属を添加した材料を用いてもよい。中でもAg−Pd−Cu、Ag−Ga−Cu、Ag−Cu、Ag−In−Cuは、光吸収が小さく、熱伝導率が大きく、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。膜厚は記録層の厚みとの調整になるが、7nm以上20nm以下が好ましい。7nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層225にマークが形成されにくくなる。また、20nmよりも厚いと、第2の情報層220の光透過率が40%に満たなくなる。
誘電体層223および誘電体層227は、光路長ndを調節して、第2の情報層220のRc、Ra、TcおよびTaを調節する機能を有する。例えば、40%≦(Ta+Tc)/2、5%≦Rc、Ra≦1%を満足するように、誘電体層223および誘電体層227の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定することができる。屈折率が2〜3である誘電体材料を誘電体層223および誘電体層227とする場合、誘電体層227の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層223の厚さは、好ましくは3nm以上40nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm以下である。材料は、実施の形態1における誘電体層113および117と同様でよいが、反射層222がAgまたはAg合金が好ましいため、誘電体層223は硫化物またはZnを含まないことが好ましい。一方、誘電体層227については、透明性の高いZnS−SiO2が好ましく用いられる。
界面層224および界面層226は、実施の形態1における界面層114および界面層116と同様の機能を有し、材料も好ましい膜厚も同様である。なお、誘電体層223が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層225との密着性にも優れている場合には、界面層224は必要に応じて設ける。界面層226についても同様であるが、誘電体層227にZnS−SiO2を用いる場合は、界面層226を設けることがより好ましい。
本発明の記録層225は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、既に述べたように、第2の情報層220は高い光透過率を要するため、記録層225の膜厚は記録層215の膜厚よりも平均的には薄くなり、4nm以上10nm以下が好ましい。10nmを超えると第2の情報層220の光透過率が低下し、4nm未満であると記録層225の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層225はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、40原子%以下が好ましい。40原子%以下であれば、例えば4倍速に相当する転送レートに対応できる結晶化速度が確保でき、良好な記録消去特性が得られる。また、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保するために、記録層225では、CとLを合わせた組成比は20原子%以上が好ましい。CとLの組成は、転送レートに対して最適となるように選んでよい。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層225においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層215が本発明の記録層である場合には、記録層225には従来の書換え形記録層を用いてもよい。逆に、記録層225が本発明の記録層である場合には、記録層215には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、GeTe−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、GeTe−SnTe−Sb2Te3、GeTe−SnTe−Bi2Te3、GeTe−Bi2Te3−In2Te3、GeTe−SnTe−Bi2Te3−In2Te3、GeTe−SbTe、GeTe−SnTe−SbTe、GeTe−SnTe−SbTe−BiTe、GeTe−SnTe、GeTe−SnTe−BiTe、GeTe−BiTe等の化合物組成を含む材料、あるいはSbを50%以上含むGe−Sb、Ga−Sb、In−Sb、Sb−Te、Sb−Te−Ge等を含む材料を用いてよい。
あるいは、記録層215が本発明の記録層である場合には、第2の情報層220は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。逆に、記録層225が本発明の記録層である場合には、第1の情報層210は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層には、記録層としてTe−O、Sb−O、Ge−O、Sn−O、In−O、Zn−O、Mo−OおよびW−O等のうち少なくとも一つを含む酸化物、2以上の層を積層して記録時に合金化もしくは反応させる材料、もしくは有機色素系記録材料等を用いてよい。再生専用形情報層には、あらかじめ形成された記録ピット上に、反射層として金属元素、金属合金、誘電体、誘電体化合物、半導体元素、半金属元素のうち少なくとも一つを含む材料等を形成してよい。たとえば、AgまたはAg合金を含む反射層を形成してよい。
透明層202は、基板101同様、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。
透明層202は、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。透明層202の表面から第1の情報層210の記録層215までの距離は、80μm以上120μm以下が好ましく、90μm以上110μm以下がより好ましい。例えば、中間層203が25μmで、透明層202が75μmであってよい。中間層203が20μmで、透明層202が70μmであってよい。中間層203が30μmで、透明層202が80μmであってよい。透明層202の膜厚は40μm以上110μm以下が好ましく、50μm以上100μm以下がより好ましい。
続いて、実施の形態2の情報記録媒体200を製造する方法を説明する。情報記録媒体200は、支持体となる基板201上に第1の情報層210、中間層203、第2の情報層220、透明層202を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板201をスパッタリング装置に配置し、基板201の案内溝が形成された表面に、反射層212を成膜する工程から誘電体層217を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層210が基板201上に形成される。
第1の情報層210を形成した基板201を、スパッタリング装置から取り出し、中間層203を形成する。中間層203は次の手順で形成される。まず、誘電体層217の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコートにより塗布する。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させる。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離する。それにより、前記凹凸に相補的な形状の案内溝が紫外線硬化性樹脂に形成されて、形成すべき案内溝を有する中間層203が形成される。基板201に形成された案内溝と中間層203に形成された案内溝の形状は、同様であってもよいし、異なっていてもよい。別法において、中間層203は、誘電体層217を保護する層を紫外線硬化性樹脂で形成し、その上に案内溝を有する層を形成することにより、形成してよい。その場合、得られる中間層は2層構造である。あるいは、中間層は、3以上の層を積層して構成してよい。また、スピンコート工法のほかに、印刷工法、インクジェット工法およびキャスティング工法により中間層203を形成してもよい。
中間層203まで形成した基板201を再びスパッタリング装置に配置して、中間層203の案内溝を有する面に、誘電体層221を成膜する。誘電体層221もまた、誘電体層221を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
誘電体層221を成膜するターゲットとしては、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、Ti−OおよびW−Oのうちの少なくとも一つを含む材料を用いてよい。あるいは、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、Ti−OおよびW−Oのうちの少なくとも一つを50mol%以上含む材料を使用してもよい。誘電体層221の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の誘電体層221を得ることができる。また酸化物は、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるかあるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中や、酸素ガスと窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより誘電体層221を形成してもよい。
あるいは、誘電体層221は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、誘電体層221は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
続いて、誘電体層221の表面に、反射層222を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。留意すべき点は、既に述べたように、反射層222の好ましい膜厚が5nm以上15nm以下と薄いため、反射層222を成膜する工程では、電源の出力は反射層112を成膜する場合よりも小さくしてもよい点である。また、本発明の記録層225についても、好ましい膜厚が4nm以上10nm以下と薄いため、記録層225を成膜する工程では、電源の出力は記録層115を成膜する場合よりも小さくしてもよい。このようにして、第2情報層220が中間層203上に形成される。
第2の情報層220まで形成した基板201をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層227の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層202を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層210および第2の情報層220の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層203を形成する前もしくは後に、第1の情報層210について実施し、透明層202を形成する前もしくは後に、第2の情報層220について実施してよい。あるいは、透明層202を形成する前もしくは後に、第1の情報層210および第2の情報層220について初期化工程を実施してもよい。このようにして、実施の形態2の情報記録媒体200を製造することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、情報記録媒体の一例を説明する。図3に、その情報記録媒体300の一部断面を示す。情報記録媒体300は、基板301上に成膜された第1の情報層310、中間層303、第2の情報層320、中間層304、第3の情報層330および透明層302が順に配置されている。第1の情報層310は、基板301の一方の表面に成膜された反射層312、誘電体層313、界面層314、記録層315、界面層316および誘電体層317がこの順に配置されてなる。第2の情報層320は、中間層303の一方の表面に成膜された誘電体層321、反射層322、誘電体層323、界面層324、記録層325、界面層326および誘電体層327がこの順に配置されてなる。第3の情報層330は、中間層304の一方の表面に成膜された誘電体層331、反射層332、誘電体層333、界面層334、記録層335、界面層336および誘電体層337がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層302の側から入射される。第1の情報層310には、第3の情報層330および第2の情報層320を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体300においては、3つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の3倍程度の、75GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、3つの情報層で100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体300においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、3つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1、第2および第3の情報層の反射率と、第2および第3の情報層の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として実効反射率がRc約2.5%、Ra約0.5%となるように設計した構成を説明する。第3の情報層330の透過率((Tc+Ta)/2)が約65%、第2の情報層320の透過率が約55%となるように設計する場合、第1の情報層310は単独でRcが約20%、Raが約4%、第2の情報層320は単独でRcが約6%、Raが約1.2%、第3の情報層330は単独でRcが約2.5%、Raが約0.5%となるように設計される。
次に、基板301、中間層303、中間層304および透明層302の機能、材料および厚みについて説明する。基板301は、実施の形態1の基板101と同様の機能を有し、同様の形状および材料を用いることができる。中間層303は、レーザ光10の、第2の情報層320における焦点位置と第1の情報層310における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層320の案内溝が形成されてよい。同様に、中間層304は、レーザ光10の、第3の情報層330における焦点位置と第2の情報層320における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第3の情報層330の案内溝が形成されてよい。中間層303および304は、いずれも紫外線硬化性樹脂で形成することができる。透明層302についても、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。
透明層302の表面から第1の情報層310の記録層315までの距離が、実施の形態2同様、80μm以上120μm以下となることが好ましい。さらに、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330からの信号の再生と、これら情報層への信号の記録・消去・書換えとが、互いに他の情報層からの影響を受けずに良好に行えるよう、中間層303と中間層304の膜厚は異なることが好ましい。各中間層の膜厚は、3μm以上30μm以下の範囲で選ばれることが好ましく、10μm以上30μm以下の範囲で選ばれることがより好ましい。例えば、透明層302の表面から記録層315までの距離が100μmとなるように、中間層303、中間層304、透明層302の膜厚を設定してよい。一例として、中間層303を23μm、中間層304を14μm、透明層302を63μmのように設定できる。あるいは、順に、16μm、24μm、60μmのように設定することもできる。透明層302の膜厚は20μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上80μm以下がより好ましい。本実施の形態においても、中間層は情報層を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてよい。
以下、第1の情報層310の構成から順に説明する。第1の情報層310の反射層312から誘電体層317は、実施の形態1の情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第2の情報層320の構成について説明する。第2の情報層320は、レーザ光10が第1の情報層310に到達し得るように、高透過率となるように設計される。誘電体層321は、実施の形態2における誘電体層221と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第2の情報層320において、4以上の反射率比と55%以上の光透過率が得られるよう、誘電体層321の膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層322は、実施の形態2における反射層222と同様の機能を有する。好ましい材料も同様である。膜厚は5nm以上18nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層325にマークが形成されにくくなる。また、18nmよりも厚いと、第2の情報層320の光透過率が50%に満たなくなる。誘電体層323および誘電体層327は、実施の形態2における誘電体層223および誘電体層227と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。屈折率が2〜3である誘電体材料を誘電体層323および誘電体層327とする場合、誘電体層327の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層323の厚さは、好ましくは2nm以上40nm以下であり、より好ましくは3nm以上30nm以下である。界面層324および界面層326は、実施の形態1における界面層114および116と同様の機能を有し、材料も好ましい膜厚も同様である。また、界面層324および界面層326は、実施の形態1同様必要に応じて設けてよい。
本発明の記録層325は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第2の情報層320は55%以上の光透過率を要するため、記録層325の膜厚は3nm以上9nm以下が好ましい。9nmを超えると第2の情報層320の光透過率が低下し、3nm未満であると記録層325の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層325はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、15原子%以上35原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層325においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
続いて、第3の情報層330の構成について説明する。第3の情報層330は、レーザ光10が第1の情報層310並びに第2の情報層320に到達し得るように、第2の情報層320よりも高透過率となるように設計される。誘電体層331は、誘電体層321と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第3の情報層330において、4以上の反射率比と65%以上の光透過率が得られるよう、膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層332は、反射層322と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。膜厚は5nm以上20nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層335にマークが形成されにくくなる。また、20nmよりも厚いと、第3の情報層330の光透過率が60%に満たなくなる。誘電体層333および337は、誘電体層323および327と同様の機能を有し、好ましい材料と膜厚も同様である。界面層334および界面層336は、実施の形態1の界面層114および116と同様である。
本発明の記録層335は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第3の情報層330は65%以上の光透過率を要するため、記録層335の膜厚は2nm以上7nm以下が好ましい。7nmを超えると第3の情報層330の光透過率が低下し、2nm未満であると記録層335の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層335では、より大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、10原子%以上30原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層335においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、実施の形態2同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層315が本発明の記録層である場合には、記録層325および記録層335には従来の書換え形記録層を用いてもよい。記録層325と記録層335が本発明の記録層である場合には、記録層315には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
あるいは、記録層315が本発明の記録層である場合には、情報層320と330は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。記録層335と記録層325が本発明の記録層である場合には、情報層310は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層と再生専用形情報層に用いることができる記録層の材料は、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
続いて、実施の形態3の情報記録媒体300を製造する方法を説明する。情報記録媒体300は、支持体となる基板301上に第1情報層310、中間層303、第2情報層320、中間層304、第3情報層330、透明層302を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板301をスパッタリング装置に配置し、基板301の案内溝が形成された表面に、反射層312を成膜する工程から誘電体層317を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層310が基板301上に形成される。第1の情報層310を形成した基板301を、スパッタリング装置から取り出し、中間層303を形成する。中間層303を形成する工程は、実施の形態2の中間層203を形成する工程と同様にして実施される。中間層303まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層303の案内溝を有する面に、誘電体層321を成膜する工程から誘電体層327を成膜する工程までを、実施の形態2の誘電体層221を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第2情報層320が中間層303上に形成される。第2の情報層320まで形成した基板301を、スパッタリング装置から取り出し、中間層303と同様にして、中間層304を形成する。
中間層304まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層304の案内溝を有する面に、誘電体層331を成膜する工程から誘電体層337を成膜する工程までを、上述の誘電体層321を成膜する工程から誘電体層327を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第3情報層330が中間層304上に形成される。
第3の情報層330まで形成した基板301をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層337の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層302を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層303を形成する前もしくは後に、第1の情報層310について実施し、中間層304を形成する前もしくは後に、第2の情報層320について実施し、透明層302を形成する前もしくは後に、第3の情報層330について実施してよい。あるいは、透明層302を形成する前もしくは後に、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330について初期化工程を実施してもよい。本発明の効果は、初期化工程の実施順によらない。このようにして、実施の形態3の情報記録媒体300を製造することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、情報記録媒体の一例を説明する。図4に、その情報記録媒体400の一部断面を示す。情報記録媒体400は、基板401上に成膜された第1の情報層410、中間層403、第2の情報層420、中間層404、第3の情報層430、中間層405、第4の情報層440および透明層402が順に配置されている。
第1の情報層410は、基板401の一方の表面に成膜された反射層412、誘電体層413、界面層414、記録層415、界面層416および誘電体層417がこの順に配置されてなる。第2の情報層420は、中間層403の一方の表面に成膜された誘電体層421、反射層422、誘電体層423、界面層424、記録層425、界面層426および誘電体層427がこの順に配置されてなる。第3の情報層430は、中間層404の一方の表面に成膜された誘電体層431、反射層432、誘電体層433、界面層434、記録層435、界面層436および誘電体層437がこの順に配置されてなる。第4の情報層440は、中間層405の一方の表面に成膜された誘電体層441、反射層442、誘電体層443、界面層444、記録層445、界面層446および誘電体層447がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層402の側から入射される。第1の情報層410には、第4の情報層440、第3の情報層430および第2の情報層420を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体400においては、4つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の4倍程度の、100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、4つの情報層で133GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体400においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、4つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1、第2、第3および第4の情報層の反射率と、第2、第3および第4の情報層の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として、実効反射率がRc約1.3%、Ra約0.3%となるように設計した構成を説明する。第4の情報層440の透過率が約68%、第3の情報層430の透過率が約65%および第2の情報層420の透過率が約55%となるように設計する場合、第1の情報層410は単独でRcが約22%、Raが約4%、第2の情報層420は単独でRcが約6%、Raが約1.3%、第3の情報層430は単独でRcが約3%、Raが約0.6%および第4の情報層440は単独でRcが約1.3%、Raが約0.3%となるように設計される。
次に、基板401、中間層403、中間層404、中間層405および透明層402の機能、材料および厚みについて説明する。基板401は、実施の形態1の基板101と同様の機能を有し、同様の形状および材料を用いることができる。中間層403は、レーザ光10の、第2の情報層420における焦点位置と第1の情報層410における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層420の案内溝が形成されてよい。同様に、中間層404は、レーザ光10の、第3の情報層430における焦点位置と第2の情報層420における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第3の情報層430の案内溝が形成されてよい。中間層405は、レーザ光10の、第4の情報層440における焦点位置と第3の情報層430における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第4の情報層440の案内溝が形成されてよい。中間層403、404および405は、いずれも紫外線硬化性樹脂で形成することができる。透明層402についても、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。
透明層402の表面から第1の情報層410の記録層415までの距離が、実施の形態2同様、80μm以上120μm以下となることが好ましい。さらに、第1の情報層、第2の情報層、第3の情報層および第4の情報層からの信号の再生と、これら情報層への信号の記録・消去・書換えとが、互いに他の情報層からの影響を受けずに良好に行えるよう、中間層403、中間層404および中間層405の膜厚は異なっていることが好ましい。各中間層の膜厚は、3μm以上30μm以下の範囲から選ばれることが好ましく、6μm以上28μm以下の範囲から選ばれることがより好ましい。例えば、透明層402の表面から記録層415までの距離が100μmとなるように、中間層403、中間層404、中間層405、透明層402の膜厚を設定してよい。一例として、中間層403を22μm、中間層404を18μm、中間層405を10μm、透明層402を50μmのように設定することができる。あるいは、中間層403を18μm、中間層404を25μm、中間層405を14μm、透明層402を43μmと設定することもできる。透明層302の膜厚は10μm以上90μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。本実施の形態においても、中間層は情報層を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてよい。
以下、第1の情報層410の構成から順に説明する。第1の情報層410の反射層412から誘電体層417は、実施の形態1の情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第2の情報層420の構成について説明する。第2の情報層420は、レーザ光10が第1の情報層410に到達し得るように、高透過率となるように設計される。誘電体層421から誘電体層427は、実施の形態3における第2情報層320の誘電体層321から誘電体層327の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第3の情報層430の構成について説明する。第3の情報層430は、レーザ光10が第1の情報層410並びに第2の情報層420に到達し得るように、第2の情報層420よりも高透過率となるように設計される。誘電体層431から誘電体層437は、実施の形態3における第3の情報層330の誘電体層331から誘電体層337の説明と同様である。誘電体層433および437は、屈折率が2から3である誘電体材料を用いてもよく、誘電体層437の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層433の厚さは、好ましくは2nm以上40nm以下であり、より好ましくは3nm以上30nm以下である。他の詳細な説明は省略する。
続いて、第4の情報層440の構成について説明する。第4の情報層440は、レーザ光10が第1の情報層410、第2の情報層420並びに第3の情報層430に到達し得るように、第3の情報層430よりも高透過率となるように設計される。
誘電体層441は、誘電体層431と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第4の情報層440において、4以上の反射率比と68%以上の光透過率が得られるよう、膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層442は、反射層432と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。膜厚は、記録層が薄いので厚めに設定することもでき、反射率比と透過率が良好となるように決める。5nm以上25nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層445にマークが形成されにくくなる。また、25nmよりも厚いと、記録層が薄くても第4の情報層440の光透過率が65%に満たなくなる。誘電体層443および誘電体層447は、誘電体層433および誘電体層437と同様の機能を有し、好ましい材料と膜厚も同様である。界面層444および界面層446は、実施の形態1の界面層114および界面層116と同様である。
本発明の記録層445は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第4の情報層440は68%以上の光透過率を要するため、記録層445の膜厚は1nm以上7nm以下が好ましい。7nmを超えると第4の情報層440の光透過率が低下し、1nm未満であると記録層445の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層445はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、2原子%以上25原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層445においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、実施の形態3同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層415が本発明の記録層である場合には、記録層425、記録層435および記録層445には従来の書換え形記録層を用いてもよい。記録層425、記録層435と記録層445が本発明の記録層である場合には、記録層415には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
あるいは、記録層415が本発明の記録層である場合には、第2の情報層420、第3の情報層430と第4の情報層440は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。記録層435と記録層425が本発明の記録層である場合には、第1の情報層410および第4の情報層440は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層と再生専用形情報層に用いることができる記録層の材料は、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
続いて、実施の形態4の情報記録媒体400を製造する方法を説明する。情報記録媒体400は、支持体となる基板401上に第1情報層410、中間層403、第2情報層420、中間層404、第3情報層430、中間層405、第4情報層440、透明層402を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板401をスパッタリング装置に配置し、基板401の案内溝が形成された表面に、反射層412を成膜する工程から誘電体層417を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層410が基板401上に形成される。第1の情報層410を形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層403を形成する。中間層403を形成する工程は、実施の形態2の中間層203を形成する工程と同様にして実施される。
中間層403まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層403の案内溝を有する面に、誘電体層421を成膜する工程から誘電体層427を成膜する工程までを、実施の形態2の誘電体層221を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第2の情報層420が中間層403上に形成される。第2の情報層420まで形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層403と同様にして、中間層404を形成する。
中間層404まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層404の案内溝を有する面に、誘電体層431を成膜する工程から誘電体層437を成膜する工程までを、上述の誘電体層421を成膜する工程から誘電体層427を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第3の情報層430が中間層404上に形成される。第3の情報層430まで形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層404と同様にして、中間層405を形成する。
中間層405まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層405の案内溝を有する面に、誘電体層441を成膜する工程から誘電体層447を成膜する工程までを、上述の誘電体層431を成膜する工程から誘電体層437を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第4の情報層440が中間層405上に形成される。
第4の情報層440まで形成した基板401をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層447の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層402を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層403を形成する前もしくは後に、第1の情報層410について実施し、中間層404を形成する前もしくは後に、第2の情報層420について実施し、中間層405を形成する前もしくは後に、第3の情報層430について実施し、透明層402を形成する前もしくは後に、第4の情報層440について実施してよい。
あるいは、透明層402を形成する前もしくは後に、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440について初期化工程を実施してもよい。本発明の効果は、初期化工程の実施順によらない。このようにして、実施の形態4の情報記録媒体400を製造することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5として、情報記録媒体の一例を説明する。図5に、その情報記録媒体500の一部断面を示す。情報記録媒体500は、基板501上に第1の情報層510、第2の情報層520、第3の情報層530、・・・および第Nの情報層5N0が、各々中間層を介して形成され、さらに透明層502が形成されている。
この形態においても、レーザ光10は、透明層502の側から入射される。第1の情報層510には、第Nの情報層5N0、・・・、第3の情報層530および第2の情報層520を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体500においては、N個の記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、N=5であれば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の5倍程度の125GB以上の容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、5つの情報層で165GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体500においても、CAV仕様で使用してもよい。
実施の形態4同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、第Nの情報層5N0が、本発明の記録層を含む場合には、第1から第(N−1)の情報層は、従来の書換え形記録層を含んでもよいし、再生専用形記録層もしくは追記形記録層を含んでもよい。あるいは、第1の情報層510が、本発明の記録層を含む場合には、第2〜第Nの情報層は、従来の書換え形記録層を含んでもよいし、再生専用形記録層もしくは追記形記録層を含んでもよい。各情報層の詳細な構成については、既に述べた実施の形態と同様であるので、説明を省略する。また、情報記録媒体500は、上記実施の形態の記載同様、基板501の溝が形成された面に、情報層と中間層を積み上げていくことにより製造できる。成膜工程、中間層形成工程、透明層形成工程、および初期化工程は既に述べた実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態6の電気的情報記録媒体600の一構成例を図6に示す。電気的情報記録媒体600は、電気的エネルギー(特に電流)の印加によって情報の記録再生が可能な情報記録媒体である。
電気的情報記録媒体600は、基板601の表面に、下部電極602、記録層603および上部電極604がこの順に形成されている。下部電極602および上部電極604は、記録層603に電流を印加するために形成する。基板601として、具体的には、Si基板等の半導体基板、またはポリカーボネート基板、SiO2基板およびAl2O3基板等の絶縁性基板を使用できる。下部電極602および上部電極604は、導電材料、例えば、Cu、Au、Ag、Pt、Al、Ti、WおよびCrならびにこれらの混合物のような金属を用いることができる。
本発明の記録層に用いられる記録材料は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によっても、結晶相と非晶質相との間で可逆的相変化を生じ得る。したがって、本実施の形態の記録層603は、本発明における記録材料、すなわちアンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む材料によって形成されている。なお、記録層603に含まれる各元素は、実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、本実施の形態の記録層603は、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものであることが好ましい。
下部電極602および上部電極604はスパッタリング法により形成することができる。Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(酸素ガスまたは窒素ガスから選ばれる少なくとも1種のガス)との混合ガス雰囲気中で、材料となる金属ターゲットまたは合金ターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。なお、成膜方法としてはこれに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相成長(CVD)法、または分子線エピタキシ(MBE)法等を用いることも可能である。記録層603を成膜する工程は、実施の形態1の記録層115を成膜する工程と同様にして実施される。
電気的情報記録媒体600に、印加部609を介して電気的情報記録再生装置610を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置610により記録層603に電流パルスを印加するために、パルス電源605が、スイッチ608を介して下部電極602と上部電極604とに接続される。また、記録層603の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極602と上部電極604の間にスイッチ607を介して抵抗測定器606が接続される。
非晶質相(高抵抗状態)にある記録層603を、結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ608を閉じて(スイッチ607は開く)電極間に電流パルスを印加し、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、且つ融点より低い温度にて、結晶化時間の間保持されるようにする。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置610のパルス電源605は、記録・消去パルスを出力できる電源である。
この電気的情報記録媒体600をマトリクス的に多数配置することによって、図7に示すような大容量の電気的情報記録媒体700を構成することができる。各メモリセル703には、微小領域に電気的情報記録媒体600と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル703への情報の記録再生は、アドレス指定回路715(図8に示す)により、ワード線701およびビット線702をそれぞれ一つ指定することによって行う。
図8は電気的情報記録媒体700を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置712は、電気的情報記録媒体700と、アドレス指定回路715によって構成される。また、記憶装置712を、少なくともパルス電源713と抵抗測定器714から構成される外部回路711に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体700への情報の記録再生を行うことができる。
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の材料と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、組成比がSb60C30L10(添え字は各元素の原子%を示す。以下同様。)で、LがB、N、O、Mg、AlおよびSである、6種類の材料を用いた。媒体番号は順に実施例が100−1〜6である。比較のために、Sb60Ge30Mg10、Sb60Ge30Al10、Ge45Bi4Te51、Ge35Bi12Te53(GeTeとBi2Te3の化合物)、Sb60C30Ti10およびSb60C30Cu10の記録材料からなる記録層を有する情報記録媒体100も製造して性能を調べた。これらの比較例は、順に1−1〜6とした。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体100の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例100−1〜6および比較例1−1〜6は、記録層115を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板101として、案内溝(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板101の案内溝形成側表面に、反射層112としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層113としてCeO2を10nm、界面層114として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50(添え字はmol%を示す。以下同様。)を3nm、記録層115としてSb60C30L10を10nm、界面層116として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層117として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで情報層110が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層112は、Ag−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層113は、CeO2ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。界面層114は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。
次に記録層115のスパッタリング条件について、媒体番号毎に説明する。直流電源を用いて、圧力0.13Paの雰囲気中でターゲットをスパッタリングする条件は、材料によらず同様である。
実施例100−1は、Sb55C33B12ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30B10記録層を形成した。
実施例100−2は、Sb64C36ターゲットを、ArガスとN2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、100Wの出力で反応性スパッタリングして、Sb60C30N10記録層を形成した。
実施例100−3は、Sb64C36ターゲットを、ArガスとO2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、100Wの出力で反応性スパッタリングして、Sb60C30O10記録層を形成した。
実施例100−4は、Sb58C33Mg9ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Mg10記録層を形成した。
実施例100−5は、Sb57C33Al10ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Al10記録層を形成した。
実施例100−6は、Sb58C33S9ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30S10記録層を形成した。
比較例1−1は、Sb−Ge−Mgターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60Ge30Mg10記録層を形成した。
比較例1−2は、Sb−Ge−Alターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60Ge30Al10記録層を形成した。
比較例1−3は、Ge−Bi−Te合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Ge45Bi4Te51記録層を形成した。
比較例1−4は、Ge−Bi−Te合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Ge35Bi12Te53記録層を形成した。
比較例1−5は、Sb−C−Ti合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Ti10記録層を形成した。
比較例1−6は、Sb−C−Cu合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Cu10記録層を形成した。
界面層116は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層117は、(ZnS)80(SiO2)20ターゲットを、圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして形成した。
以上のようにして基板101の上に反射層112、誘電体層113、界面層114、記録層115、界面層116および誘電体層117を順次成膜した基板101をスパッタリング装置から取り出した。それから、誘電体層117の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で100μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層102を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、情報記録媒体100の記録層115を、半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、実施例100−1〜6の情報記録媒体100および比較例1−1〜4の作製が完了した。これらの情報記録媒体は、鏡面部反射率がRc約21%、Ra約4%であった。
次に、情報記録媒体100の記録再生評価方法について説明する。情報記録媒体100に情報を記録するために、情報記録媒体100を回転させるスピンドルモータと、レーザ光10を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光10を情報記録媒体100の記録層115上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の記録再生装置を用いた。情報記録媒体100の評価においては、波長405nmの半導体レーザと開口数0.85の対物レンズを使用し、25GB容量相当の記録を行った。用いた記録再生装置のレーザ光10のレーザパワー上限は、媒体の盤面で20mWである。
記録は、2倍速(9.84m/秒、72Mbps)と4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、半径50mmの位置で実施した。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.35mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも0.35mWよりも大きいパワーで実施してもよい。
記録再生評価は、信号振幅対ノイズ比(CNR)と消去率の測定で実施した。はじめに、CNRの測定方法について説明する。レーザ光10を、高パワーレベルの記録パワー(mW)と低パワーレベルの消去パワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体100に向けて照射して、2T(マーク長0.149μm)の単一信号と9T(マーク長0.671μm)の単一信号を交互に計11回、グルーブ面に記録する。記録するパルスの波形は、マルチパルスである。11回目の2T信号が記録された状態で、スペクトラムアナライザーで振幅(C)(dBm)とノイズ(N)(dBm)を測定し、その差からCNR(dB)を測定する。
次に、消去率の測定方法について説明する。上記の11回目の2T信号の振幅を測定し、12回目に9T信号を記録して、2T信号がどれだけ減衰したかスペクトラムアナライザーで測定する。この減衰量を消去率(dB)と定義する。
まず、記録パワー(Pw)および消去パワー(Pe)を以下の手順で設定した。消去パワーを一定の適切な値に固定し、2T振幅の記録パワー依存性を測定した。これにより、所定のPw1を設定した。記録パワーをPw1に固定し、CNRと消去率の消去パワー依存性を測定した。これにより、所定の低パワー側Pe0と高パワー側Pe1の平均値をPeとした。消去パワーをPeに固定し、再び2T振幅の記録パワー依存性を測定した。これにより、所定のPwを設定した。この手順で、2倍速および4倍速のPwとPeをそれぞれ決めた。情報記録媒体100−1〜6および比較例1−1〜6について、PwとPeにおけるCNRと消去率を2倍速と4倍速の条件で測定した((1)2TCNR、(2)2T消去率)。
次に信頼性評価方法について説明する。信頼性評価は、記録した信号が高温高湿条件下に置かれても保存されるかどうか、また、高温高湿条件下に置かれた後も書換が可能かどうかを調べるために実施する。評価には、上記と同様の記録再生装置を用いた。予め、情報記録媒体100−1〜6と比較例1−1〜6に、上記のPwおよびPeのパワーで2T信号と9T信号を交互に計11回、同一トラックのグルーブ面に記録する。これを、2倍速と4倍速の条件で、複数トラックで実施し、2TCNRを測定しておく。温度80℃、相対湿度20%の恒温槽にこれらの媒体を100時間放置した後、取り出した。取り出した後、記録しておいた2T信号を1倍速で再生してCNRを測定した(記録保存性)。また、記録しておいた2T信号に、PwとPeで9T信号を1回オーバライトして消去率を測定した(書換え保存性)。(この際、2倍速で記録された信号には2倍速で、4倍速で記録された信号には4倍速で1回オーバライトをした)。恒温槽に放置する前のCNR(B)と放置した後のCNR(A)との差、CNR(A)−CNR(B)、から記録保存性を評価する((3)CNR変化)。放置後のCNRが低下していると信頼性は芳しくない。記録保存性は低倍速で劣化しやすい。また、恒温槽に放置する前の消去率(B)と放置した後の消去率(A)との差、消去率(A)−消去率(B)、から書換え保存性を評価する((4)消去率変化)。放置後の消去率が低下していると信頼性は芳しくない。書換え保存性は高倍速で劣化しやすい。
2倍速、4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表1)に示す。表中、(1)2TCNRは、45dB以上を○、40dB以上45dB未満を△、40dB未満を×、(2)2T消去率は、30dB以上であれば○、20dB以上30dB未満であれば△、20dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す。×評価は、その線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能であることを示す。○は△よりも好ましい。
また、総合評価は、全ての評価項目で○であれば◎、△が一つであれば○、△が2以上であれば△、一つでも×の項目があれば×である。◎が最も好ましく、○がより好ましく、△が好ましい。×は使用困難である。
(表1)に示す様に、実施例の媒体100−1〜6は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、2倍速から4倍速で使用できる。特に、100−1、2、4、5、6は全ての項目で○の結果が得られた。媒体100−1〜6は、いずれも2倍速のPwが7mW以下、Peが4mW以下、4倍速のPwが9mW以下、Peが5mW以下であった。本発明の記録層115を用いることにより、低倍速における記録保存性と高倍速における書換保存性を両立させることができた。これは、本発明の記録層が、4倍速に対応できる高速結晶化能と、200℃以上の高い結晶化温度と、大きな光学変化を併せ持つことによる。
これに対し比較例は、媒体1−1と1−2は結晶化速度が不足して、消去率の4倍速および消去率変化が×評価となった。消去率が不足すると、11回の繰り返し記録中に消し残りが蓄積されて、CNRの4倍速も△評価となった。媒体1−3も結晶化速度が不足して、消去率の4倍速と消去率変化の4倍速が×評価となった。媒体1−4は光学変化が小さく且つ結晶化温度が低下したため、CNRの2倍速およびCNR変化で×評価となった。CNR変化が大きく、消去率変化は測定できなかった。媒体1−5、1−6は、2倍速では消去率変化の評価が△であったが、使用可能レベルであった。しかしながら、4倍速では結晶化速度が不十分で、CNRおよび消去率が共に△、消去率変化が×となり、総合評価は×となった。このように、比較例では、低倍速における記録保存性と高倍速における書換保存性を両立させることができなかった。
(実施例2)
実施例2では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、Sb100-x-yCxAlyを用いた。組成比の異なる記録層115を有する情報記録媒体100を6種類作製し、媒体番号100−11〜16とした。100−11〜15はx+yが50である。100−16は、x+yが52である。
情報記録媒体100の製造方法とスパッタリング条件は、記録層115を除いて実施例1と同様である。本実施例の記録層115の製造方法を説明する。いずれも、Sb−C−AlターゲットをArガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングする。用いたターゲットの組成比は異なる。媒体100−11は、Sb45C50Al5ターゲットをスパッタリングして、Sb50C45Al5記録層を形成した。媒体100−12は、Sb46C44Al10ターゲットをスパッタリングして、Sb50C40Al10記録層を形成した。媒体100−13は、Sb47C33Al20ターゲットをスパッタリングして、Sb50C30Al20記録層を形成した。媒体100−14は、Sb47C28Al25ターゲットをスパッタリングして、Sb50C25Al25記録層を形成した。媒体100−15は、Sb48C22Al30ターゲットをスパッタリングして、Sb50C20Al30記録層を形成した。媒体100−16は、Sb45C29Al26ターゲットをスパッタリングして、Sb48C26Al26記録層を形成した。
記録再生特性並びに信頼性は、各々実施例1に記載の記録再生評価方法と信頼性評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNR、2T消去率、CNR変化および消去率変化を測定した。その結果を(表2)に示す。表中の○、△、×の判定は実施例1の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×も実施例1の判定と同様である。
(表2)に示す様に、媒体100−11〜16は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである100−11〜14は、すべての項目で○の評価が得られた。y>xである100−15は、消去率変化が△評価であった。x+y>50である100−16は、やや消去率の低下が見られ、消去率変化と共に△評価が2つあった。よって、記録再生特性と信頼性を両立できるのは、x+y≦50が好ましく、且つx≧yであることがより好ましい。
(実施例3)
実施例3では、図2の情報記録媒体200を製造し、記録層225の組成比と記録再生特性の関係を調べた。記録層225には、Sb100-x-yCxAlyを用いた。組成比の異なる記録層225を有する情報記録媒体200を5種類作製し、媒体番号200−1〜5とした。200−1〜5はx+yが40である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体200の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例200−1〜5は、記録層225を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板201として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板201の案内溝形成側表面に、反射層212としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層213としてCeO2を10nm、界面層214として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層215としてSb50C30Al20を10nm、界面層216として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層217として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで、第1の情報層210が形成された。
次に、誘電体層217の表面に、案内溝を有する中間層203を25μmの厚さで形成した。中間層203の案内溝形成側表面に、誘電体層221としてTiO2を18nm、反射層222としてAg−Cu系合金を13nm、誘電体層223として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を12nm、界面層224は設けずに、記録層225を6nm、界面層226として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層227として(ZnS)80(SiO2)20を35nm、順に積層した。これで、第2の情報層220が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層212から界面層214を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層215は、Sb47C33Al20ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb50C30Al20記録層を形成した。界面層216と誘電体層217を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして基板201の上に第1の情報層210を成膜した基板201を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層203を、次の手順で形成した。まず、誘電体層217の表面に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートにより塗布した。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間0.32μm)を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させた。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離した。それにより、基板201と同様の形状の案内溝が中間層203の表面に形成された。
中間層203まで形成した基板201を再びスパッタリング装置に配置して、中間層203の表面に第2の情報層220を形成した。まず、中間層203上に、誘電体層221を形成する。誘電体層221は、TiO2ターゲットを圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、パルス発生式直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。続いて、反射層222は、Ag−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層223は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。
記録層225は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Alターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体200−1はSb56C40Al4ターゲットをスパッタリングして、Sb60C36Al4記録層を形成した。媒体200−2はSb57C35Al8ターゲットをスパッタリングして、Sb60C32Al8記録層を形成した。媒体200−3はSb58C26Al16ターゲットをスパッタリングして、Sb60C24Al16記録層を形成した。媒体200−4はSb58C22Al20ターゲットをスパッタリングして、Sb60C20Al20記録層を形成した。媒体200−5はSb58C18Al24ターゲットをスパッタリングして、Sb60C16Al24記録層を形成した。界面層226と誘電体層227を、実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして中間層203の上に第2の情報層220を成膜した基板201を、スパッタリング装置から取り出した。それから、誘電体層227の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で75μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層202を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに、記録層215を初期化し、その後記録層225を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面にわたって結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号200−1〜5の情報記録媒体200の作製が完了した。
作製した媒体番号200−1〜5は、第1の情報層210および第2の情報層220ともに、鏡面部実効反射率がRc約5%、Ra約1%であった。第1の情報層210の反射率は、第2の情報層220を通ったレーザ光10で測定した。また、第2の情報層220の光透過率はTc約55%、Ta約50%であった。透過率の測定には基板201に第2の情報層220と透明層202を形成した媒体を用い、半面初期化して分光光度計で測定した。
次に、記録再生評価方法について、実施例1および2と異なる点を説明する。第1の情報層210と第2の情報層220の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.70mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも0.70mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号200−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表3)に示す。表中、(1)2TCNRは、42dB以上を○、37dB以上42dB未満を△、37dB未満を×、(2)2T消去率は、27dB以上であれば○、22dB以上27dB未満であれば△、22dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す(レーザ光に近い情報層ほど、媒体の反り許容幅が大きいので、第2の情報層220の信号品質の目標値は、第1の情報層210のそれよりもゆるめてよいため、判定基準は変えている)。×評価は、その線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能であることを示す。○は△よりも好ましい。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表3)に示す様に、媒体200−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである200−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが16mW以下、Peが10mW以下であった。本実施例の記録層225は、実施例1および2の記録層115よりも膜厚が6nmと薄いため、Sbを60原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層によって、良好な結果が得られた。
(実施例4)
実施例4では、図3の情報記録媒体300を製造し、記録層335の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層335には、Sb100-x-yCxMgyを用いた。組成比の異なる記録層335を有する情報記録媒体300を5種類作製し、媒体番号300−1〜5とした。300−1〜5はx+yが30である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体300の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例300−1〜5は、記録層335を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板301として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板301の案内溝形成側表面に、反射層312としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層313としてCeO2を10nm、界面層314として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層315としてSb50C30Al20を10nm、界面層316として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層317として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで、第1の情報層310が形成された。
次に、誘電体層317の表面に、案内溝を有する中間層303を23μmの厚さで形成した。中間層303の案内溝形成側表面に、誘電体層321としてNb2O5を12nm、反射層322としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層323として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層324は設けずに、記録層325としてSb60C24Al16を5.5nm、界面層326として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層327として(ZnS)80(SiO2)20を44nm、順に積層した。これで、第2の情報層320が形成された。
次に、誘電体層327の表面に、案内溝を有する中間層304を14μmの厚さで形成した。中間層304の案内溝形成側表面に、誘電体層331としてTiO2を19nm、反射層332としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層333として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を11nm、界面層334は設けずに、記録層335を4.5nm、界面層336として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層337として(ZnS)80(SiO2)20を32nm、順に積層した。これで、第3の情報層330が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層312から界面層314を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層315を実施例3の記録層215と同様の条件で形成した。界面層316と誘電体層317を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板301の上に第1の情報層310を成膜した基板301を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層303を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層303まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層303の表面に第2の情報層320を形成した。まず、誘電体層321を、Nb2O5ターゲットを圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして、中間層303上に形成した。続いて、反射層322を実施例3の反射層222と同様の条件で形成した。誘電体層323を実施例3の誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層325は、直流電源を用いて圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb58C26Al16ターゲットをスパッタリングして、Sb60C24Al16記録層を形成した。界面層326と誘電体層327を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板301の上に第2の情報層320まで成膜した基板301をスパッタリング装置から取り出す。次に、中間層304を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層304まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層304の表面に第3の情報層330を形成した。まず、中間層304上に、誘電体層331を実施例3の誘電体層221と同様の条件で形成した。反射層332と誘電体層333を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。
記録層335は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Mgターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体300−1はSb67C30Mg3ターゲットをスパッタリングして、Sb70C27Mg3記録層を形成した。媒体300−2はSb69C26Mg5ターゲットをスパッタリングして、Sb70C24Mg6記録層を形成した。媒体300−3はSb69C20Mg11ターゲットをスパッタリングして、Sb70C18Mg12記録層を形成した。媒体300−4はSb69C17Mg14ターゲットをスパッタリングして、Sb70C15Mg15記録層を形成した。媒体300−5はSb71C13Mg16ターゲットをスパッタリングして、Sb70C12Mg18記録層を形成した。界面層336と誘電体層337を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして中間層304の上に第3の情報層330を成膜した基板301をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層337の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で63μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層302を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに、記録層315を初期化し、次に記録層325を初期化し、最後に記録層335を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号300−1〜5の情報記録媒体300の作製が完了した。
作製した媒体番号300−1〜5は、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330ともに、鏡面部実効反射率がRc約2.5%、Ra約0.5%であった。第1の情報層310の反射率は、第2の情報層320と第3の情報層330を通ったレーザ光10で測定した。同様に、第2の情報層320の反射率は、第3の情報層330を通ったレーザ光10で測定した。第2の情報層320の光透過率はTc約58%、Ta約54%であった。第3の情報層330の光透過率はTc約67%、Ta約63%であった。透過率の測定は実施例3と同様にして行った。
次に、記録再生評価方法について、実施例1〜3と異なる点を説明する。第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で1.00mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも1.00mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号300−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表4)に示す。表中、(1)2TCNRは、40dB以上を○、35dB以上40dB未満を△、35dB未満を×、(2)2T消去率は、25dB以上であれば○、20dB以上25dB未満であれば△、20dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す(第3の情報層330の信号品質の目標値は、第2の情報層320のそれよりもゆるめてよいため、判定基準は変えている)。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表4)に示す様に、媒体300−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである300−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが18mW以下、Peが11mW以下であった。本実施例の記録層335は、実施例3の記録層225よりも膜厚が4.5nmと薄いため、Sbを70原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層を用いて良好な結果が得られた。
(実施例5)
実施例5では、図4の情報記録媒体400を製造し、記録層445の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層445には、Sb100-x-yCxByを用いた。組成比の異なる記録層445を有する情報記録媒体400を5種類作製し、媒体番号400−1〜5とした。400−1〜5はx+yが20である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体400の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例400−1〜5は、記録層445を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板401として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板401の案内溝形成側表面に、反射層412としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層413としてCeO2を10nm、界面層414として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層415としてSb50C30Al20を10nm、界面層416として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層417として(ZnS)80(SiO2)20を48nm、順に積層した。これで、第1の情報層410が形成された。
次に、誘電体層417の表面に、案内溝を有する中間層403を18μmの厚さで形成した。中間層403の案内溝形成側表面に、誘電体層421としてNb2O5を12nm、反射層422としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層423として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層424は設けずに、記録層425としてSb60C24Al16を5.5nm、界面層426として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層427として(ZnS)80(SiO2)20を44nm、順に積層した。これで、第2の情報層420が形成された。
次に、誘電体層427の表面に、案内溝を有する中間層404を25μmの厚さで形成した。中間層404の案内溝形成側表面に、誘電体層431としてNb2O5を21nm、反射層432としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層433として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層434は設けずに、記録層435としてSb70C18Mg12を4.5nm、界面層436として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層437として(ZnS)80(SiO2)20を35nm、順に積層した。これで、第3の情報層430が形成された。
次に、誘電体層437の表面に、案内溝を有する中間層405を14μmの厚さで形成した。中間層405の案内溝形成側表面に、誘電体層441としてTiO2を14nm、反射層442としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層443として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、界面層444は設けずに、記録層445を4nm、界面層446として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層447として(ZnS)80(SiO2)20を33nm、順に積層した。これで、第4の情報層440が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層412から界面層414を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層415を実施例3の記録層215と同様の条件で形成した。界面層416と誘電体層417を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第1の情報層410を成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層403を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層403まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層403の表面に第2の情報層420を形成した。まず、中間層403上に、誘電体層421を実施例4の誘電体層321と同様の条件で形成した。続いて、反射層422と誘電体層423を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層425を実施例4の記録層325と同様の条件で形成した。界面層426と誘電体層427を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第2の情報層420まで成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層404を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層404まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層404の表面に第3の情報層430を形成した。まず、中間層404上に、誘電体層431を実施例4の誘電体層321と同様の条件で形成した。次に、反射層432と誘電体層433を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層435は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb69C20Mg11ターゲットを、50Wの出力でスパッタリングしてSb70C18Mg12記録層を形成した。界面層436と誘電体層437を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第3の情報層430まで成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層405を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層405まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層405の表面に第4の情報層440を形成した。まず、中間層405上に、誘電体層441を実施例3の誘電体層221と同様の条件で形成した。次に、反射層442と誘電体層443を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。
記録層445は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Bターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体400−1はSb78C20B2ターゲットをスパッタリングして、Sb80C18B2記録層を形成した。媒体400−2はSb77C18B5ターゲットをスパッタリングして、Sb80C16B4記録層を形成した。媒体400−3はSb77C13B10ターゲットをスパッタリングして、Sb80C12B8記録層を形成した。媒体400−4はSb77C11B12ターゲットをスパッタリングして、Sb80C10B10記録層を形成した。媒体400−5はSb77C9B14ターゲットをスパッタリングして、Sb80C8B12記録層を形成した。界面層446と誘電体層447を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして中間層405の上に第4の情報層440を成膜した基板401をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層447の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で43μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層402を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに記録層415を初期化し、次に記録層425を初期化し、次に記録層435を初期化し、最後に記録層445を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面にわたって結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号400−1〜5の情報記録媒体400の作製が完了した。
作製した媒体番号400−1〜5は、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440ともに、鏡面部実効反射率がRc約1.3%、Ra約0.3%であった。第1の情報層410の反射率は、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440を通ったレーザ光10で測定した。同様に、第2の情報層420の反射率は、第3の情報層430および第4の情報層440を通ったレーザ光10で測定した。第2の情報層420の光透過率はTc約57%、Ta約53%であった。第3の情報層430の光透過率はTc約67%、Ta約63%であった。第4の情報層440の光透過率はTc約71%、Ta約66%であった。透過率の測定は実施例3と同様にして行った。
次に、記録再生評価方法について、実施例1から4と異なる点を説明する。第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で1.40mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも1.40mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号400−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表5)に示す。表中、(1)2TCNRは、38dB以上を○、33dB以上38dB未満を△、33dB未満を×、(2)2T消去率は、23dB以上であれば○、18dB以上23dB未満であれば△、18dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す。第4の情報層440の信号品質の目標値は、第3の情報層430のそれよりもゆるめてよいため、判定基準を変えている。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表5)に示す様に、媒体400−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである400−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが20mW以下、Peが12mW以下であった。本実施例の記録層445は、実施例4の記録層335よりも膜厚が4nmと薄いため、Sbを80原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層を用いて良好な結果が得られた。
(実施例6)
実施例6では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の膜厚と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、Sb50C30Al20を用いた。膜厚の異なる記録層115を有する情報記録媒体100を5種類作製し、媒体番号100−21〜25とした。
実施内容は実施例1とほぼ同様であり、異なる内容について具体的に説明する。情報層110は、媒体番号100−21〜25において、各々記録層115の膜厚が異なるため、Rcが約21%、Raが約4%となるよう、誘電体層117の膜厚を媒体ごとに設計した。媒体100−21は、記録層115が7nmで誘電体層117が77nm、媒体100−22は、記録層115が9nmで誘電体層117が74nm、媒体100−23は、記録層115が11nmで誘電体層117が49nm、媒体100−24は、記録層115が13nmで誘電体層117が51nm、媒体100−25は、記録層115が15nmで誘電体層117が52nmである。
記録再生特性並びに信頼性は、各々実施例1に記載の記録再生評価方法と信頼性評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNR、2T消去率、CNR変化および消去率変化を測定した。その結果を(表6)に示す。表中の○、△、×の判定は実施例1の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表6)に示す様に、媒体100−21〜25は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、7nm以上13nm以下の膜厚範囲では、すべての項目で○の評価が得られたのでより好ましい。膜厚が厚くなると、記録層115で生じた熱が反射層112の方向へ拡散しにくくなり、小さい記録マークの形成が困難となるので、15nm以下が好ましい。
(実施例7)
実施例7では、図4の情報記録媒体400を製造し、記録層445の組成比と膜厚を変えて、記録再生特性との関係を調べた。記録層445には、Sb100-x-yCxByを用いた。組成比と膜厚の異なる記録層445を有する情報記録媒体400を5種類作製し、媒体番号400−11〜15とした。
実施内容は実施例5とほぼ同様であり、異なる内容について具体的に説明する。第1の情報層410から第3の情報層430は、実施例5と同様の実施内容である。第4の情報層440は、媒体番号400−11〜15において、各々記録層445の組成比と膜厚が異なるため、Rcが約1.3%、Raが約0.3%となるよう、誘電体層441、反射層442および誘電体層447の膜厚も媒体ごとに設計した。媒体400−11は、誘電体層441を14nm、反射層442を10nm、記録層445としてSb84C9.6B6.4を3.5nmおよび誘電体層447を34nmに設計した。媒体400−12は、誘電体層441を14nm、反射層442を12nm、記録層445としてSb88C7.2B4.8を3nmおよび誘電体層447を30nmに設計した。媒体400−13は、誘電体層441を13nm、反射層442を14nm、記録層445としてSb92C4.8B3.2を2.5nm、誘電体層447を24nmに設計した。媒体400−14は、誘電体層441を14nm、反射層442を15nm、記録層445としてSb96C2.4B1.6を2nm、誘電体層447を19nmに設計した。媒体400−15は、誘電体層441を14nm、反射層442を15nm、記録層445としてSb98C1.2B0.8を1.5nm、誘電体層447を18nmに設計した。記録層445は、結晶化速度を落とさないように、薄い膜厚ほど大きな結晶化速度を持つ組成比を採用した。
記録再生特性は、実施例1に記載の記録再生評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNRおよび2T消去率を測定した。その結果を(表7)に示す。実施例5で用いた媒体番号400−3の結果もあわせて示す。表中の○、△、×の判定は実施例5の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表7)に示す様に、媒体400−11〜15は、両項目で○または△の評価が得られたので、記録層445が僅か1.5nmでも4倍速で使用できる。特に、3nm以上であれば、すべての項目で○の評価が得られた。記録層が薄くなると、記録層の光吸収率Ac、Aaが低下するため、媒体400−14と15では20mWのレーザパワーでCNRが飽和していなかったため△評価になった。より高いレーザパワーを照射すれば、より高いCNRが得られると期待できる。
(実施例8)
実施例8では、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を、複数のターゲットを用いて成膜する実験を実施した。試料番号800−1は、Sb60C30N10を目標の組成比とした記録層を、SbターゲットとCターゲットを同時に窒素で反応性スパッタリングして、Si基板上に成膜する。試料番号800−2は、Sb60C30Al10を目標の組成比とした記録層を、SbターゲットとCターゲットとAlターゲットを同時にスパッタリングして、Si基板上に成膜する。成膜した記録層の組成比を、X線マイクロアナライザーの手法を用いて分析し、目標の組成比が得られているか調べた。
以下に実施内容を具体的に説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。複数のターゲットを同時にスパッタリングして目標の組成比の記録層を目標の膜厚で形成するためには、成膜速度比が組成比となるようにスパッタリング出力を決め、膜厚はスパッタリング時間で制御する。その手順を説明する。まず、各ターゲットを所定の各スパッタリング出力p1で独立に一定時間スパッタリングして、各成膜速度r1(単位はnm/分)を予め測定しておく。次に、成膜速度比が組成比となるように、各成膜速度r1から各スパッタリング出力p2を改めて決める。次に、各出力p2で改めて各成膜速度r2を測定し、必要に応じて各出力p2を正確に決め直す。次に、複数のターゲットを各出力p2で同時にスパッタリングして、成膜速度r3を測定する。最後に、目標の膜厚になるように、r3からスパッタリング時間t1(単位は分)を計算する。
成膜には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用いたが、スパッタ室21には一つの基板ホルダー26と、複数のターゲット電極28と電源29が備えられている。まず、12mm×18mm角で厚み1mmのSi基板をポリカーボネート基板に固定して、スパッタリング装置内に取り付けた。試料800−1は、SbターゲットをDC電源に取り付けてp2=100W、CターゲットをRF電源に取り付けてp2=500Wで、ArガスとN2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、同時に反応性スパッタリングを実施した。Cのr2はSbのr2の約10分の1しかなかったので、p2を500Wに設定した。t1=20分スパッタリングして、Si基板上に1μm厚のSb−C−N記録層を形成した。試料800−2は、SbターゲットをDC電源に取り付けてp2=100W、CターゲットをRF電源に取り付けてp2=500W、AlターゲットをDC電源に取り付けてp2=25Wで、Arガス雰囲気中で、同時にスパッタリングを実施した。Alのr2はSbのr2の約70%であったので、Alのp2を25Wに設定した。t1=20分スパッタリングして、Si基板上に1μm厚のSb−C−Al記録層を形成した。Si基板上に形成したSb−C−N記録層とSb−C−Al記録層の組成比をX線マイクロアナライザーで分析した結果を表8に示す。
(表8)に示すように、試料800−1および800−2共に、分析で得られた組成比は目標組成比と非常に近い値であり、±0.5原子%以内の差であった。この結果は、複数のターゲットを用いても、Sbと、Cと、Lとを含む記録層が形成できたことを示すものである。
追加の実験として、実施例1の媒体100−2および100−5と同じ構成で、記録層115の製造方法が本実施例の方法である媒体100−2−2および100−5−2を製造して、実施例1と同様の記録再生特性並びに信頼性の評価を行った。その結果、実施例1と同様、すべての項目で○の良好な結果が得られた。
(実施例9)
実施例9では、電気的エネルギーを印加するメモリの実験を行った。図6に、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体とそれに記録するシステムを示す。本実施例は、図6に示す情報記録媒体600の記録層603に本発明の記録層を用いた。
本実施例の情報記録媒体600は次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理したSi基板601を準備した。この基板601の上に、Auの下部電極602を6μm×6μmの領域に厚さ100nmで形成した。下部電極602の上にSb60C24S16記録層603を5μm×5μmの領域に厚さ50nmとなるように形成し、Auの上部電極604を5μm×5μmの領域に厚さ100nmで形成した。
下部電極602、記録層603、および上部電極604は、いずれも直径100mmで厚さ6mmのターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いてスパッタリングした。基板601を成膜装置に取り付け、基板601上に下部電極602をAuターゲットをパワー200Wでスパッタリングして形成した。続いて、下部電極602上に記録層603をSb59C26S15ターゲットをパワー100Wでスパッタリングして形成した。続いて、記録層603上に上部電極604を、Auターゲットをパワー200Wでスパッタリングして形成した。
続いて、下部電極602および上部電極604に、Auリード線をボンディングし、印加部609を介して電気的情報記録再生装置610を情報記録媒体600に接続した。この電気的情報記録再生装置610により、下部電極602と上部電極604の間には、パルス電源605がスイッチ608を介して接続される。さらに、記録層603の相変化による抵抗値の変化が、下部電極602と上部電極604の間にスイッチ607を介して接続された抵抗測定器606によって検出される。
記録層603が非晶質相のとき、下部電極602と上部電極604の間に、5mA、50nsの電流パルスを印加したところ、記録層603が非晶質相から結晶相に転移した。また、記録層603が結晶相のとき、下部電極602と上部電極604の間に、10mA、10nsの電流パルスを印加したところ、記録層603が結晶相から非晶質相に転移した。すなわち、可逆的相変化が確認された。
以上の結果から、記録層603としてSb60C24S16材料を用いて、電気的エネルギーを付与することによって、相変化を生じさせることができた。なお、記録層603としてSb60C24B16、Sb60C24N16、Sb60C24O16、Sb60C24Mg16、Sb60C24Al16を用いても、電流パルスの印加により非晶質相から結晶相、結晶相から非晶質相の高速転移を生じた。よって、情報記録媒体600が、情報を高速記録消去する機能を有することが確認できた。以上のようにして製造した情報記録媒体600に電気的エネルギーを印加することによって記録層603にて可逆的相変化が起こることを、図6に示すシステムにより確認した。このことを利用して、情報記録媒体600を複数個つないでメモリ容量を増やすこと、アクセス機能およびスイッチング機能を向上させることが可能となる。
(実施例10)
実施例10では、実施例5で作製した媒体番号400−3に、2倍速と4倍速の記録を行い、2倍速から4倍速の線速度範囲で使用可能であるかどうか調べた。本実施例では、レーザ光10のレーザパワー上限が、媒体の盤面で40mWである記録再生装置を用いた。それにより、4倍速記録においても、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の各々に、十分なレーザ光10を入射させることができた。
記録再生評価方法を簡単に説明する。記録は、実施例1と同様に、2倍速(9.84m/秒、72Mbps)と4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、半径50mmの位置で実施した。記録した信号の再生評価は、線速度1倍速で1.40mWのレーザ光10を照射して実施した。信頼性評価方法は、実施例1と同様である。
(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表9)に示す。○、△、×は、第1の情報層410は実施例1と同様、第2の情報層420は実施例3と同様、第3の情報層430は実施例4と同様、第4の情報層440は実施例5と同様である。総合評価の◎、○、△、×は、実施例1の判定と同様である。
(表9)に示す様に、媒体400−3の第1の情報層410から第4の情報層440まで、全ての項目で○の評価が得られたので、2倍速から4倍速で使用できることが確かめられた。2倍速および4倍速において設定したPwとPeは、次のとおりである。
第1の情報層410において、2倍速のPwは26mW、Peは11mWであり、4倍速のPwは33mW、Peは15mWであった。第2の情報層420において、2倍速のPwは25mW、Peは11mWであり、4倍速のPwは32mW、Peは14mWであった。第3の情報層430において、2倍速のPwは20mW、Peは8mWであり、4倍速のPwは25mW、Peは11mWであった。第4の情報層440において、2倍速のPwは16mW、Peは7mWであり、4倍速のPwは20mW、Peは9mWであった。
以上、種々の実施例を通じて本発明の情報記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記録する情報記録媒体および電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれにも、本発明の記録層を用いることができる。実施例においては、情報記録媒体としてBlu−ray Discについて説明したが、本発明はHD DVDにも適用することが可能である。この記録層を含む本発明の情報記録媒体によれば、これまで実現されなかった4倍速以上の高データ転送レートおよび100GB以上の大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性、記録マーク保存性を同時に満足する情報記録媒体が得られる。なお、この記録層を含む本発明の情報記録媒体は、近接場光や開口数>1の光学系を利用して記録再生してもよい。そうすれば、Blu−ray Discよりも大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足する情報記録媒体が得られる。
本発明の情報記録媒体は、優れた記録層を有し大容量な光学的情報記録媒体として、書換形Blu−ray Disc、書換形多層Blu−ray Disc、書換形HD DVD、書換形多層HD DVD、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、等に有用である。さらに、電気的情報記録媒体として、電気的な高速スイッチング素子としても有用である。
本発明は、光学的にまたは電気的に情報を記録、消去、書き換え、および/または再生することが可能な情報記録媒体とその製造方法、およびその製造に用いるターゲットに関するものである。
ハイビジョン画像の録画媒体として、青紫色レーザを用いて記録再生する、高密度で大容量なBlu−ray Disc(以下、BD)規格が2002年に策定された。BDには、25GB容量の単層メディア(片面に情報層が1つ)と、50GB容量の2層メディア(片面に情報層が2つ)がある。特に、2層メディアにおいては、レーザ入射側に位置する半透明な情報層をLayer1(以下、L1)、レーザ入射側から遠い方の情報層をLayer0(以下、L0)と呼ぶ。
本発明者は、書換え形のBD(以下、BD−RE)メディアを開発し、2004年には1倍速対応の25GBおよび50GB容量のメディアを実用化した。1倍速は、データ転送レート36Mbpsに相当する。さらに、2006年には2倍速対応の25GBおよび50GB容量のメディアを実用化した。これらのメディアのデータや画像の情報は、記録層が相変化することによって、記録(アモルファス状態)したり、消去(結晶状態)したり、書き換えたりすることができる。記録層の材料やその組成は、結晶化速度が倍速に対して最適となるように決められる。
本発明者は、1倍速対応のメディアにはGe−Sb−Te系記録材料(例えば、特許第2584741号公報参照)を用い、2倍速対応メディアには結晶化速度がより大きいGe−Bi−Te系記録材料(例えば、特許第2574325号公報および国際公開第2006/011285号参照)を採用した。詳しくは、Ge−Sb−Te系記録材料は、GeTeとSb2Te3が化合した化合物系で、約44%のGeと約6%のSbを含む組成を採用した。また、Ge−Bi−Te系記録材料は、GeTeとBi2Te3が化合した化合物系で、約45%のGeと約4%のBiを含む組成を採用した。
今後、BDメディアがさらに高倍速化・大容量化に対応できれば、パソコン用途、レコーダ用途およびゲーム機用途としての使用価値が高まる。たとえば、データや画像ファイルの処理速度の向上、高画質化、高音質化、レコーダの機能追加等が図れる。また、録画の長時間化やハードディスクの代替も可能となる。このように、今後ますます高速大容量なメディアの必要性が高まると予想されることから、発明者は次なる開発目標を4倍速(144Mbps)以上ならびに100GB以上と設定した。
4倍速に対応するためには、2倍速対応の記録材料よりも結晶化速度の大きな材料が必要となる。たとえば、Ge−Bi−Te系記録材料では、Bi2Te3の濃度を増やすと結晶化速度が大きくなる。特に、50GB容量の2層メディアにおいては、L0の記録層の厚みが約10nmであるのに対し、L1の記録層の厚みは6nmと薄いため、L0とL1で同じ組成の記録材料を用いると、L1の方が結晶化能は低下してしまう。よって、L1用の記録材料はBi2Te3の濃度をより多くしておくことが必要である。
一方、100GBの大容量化を実現するためには、一例として記録密度を2倍に増やすか、情報層の数を4層に増やす方法がある。密度を増やすためには、記録マークを小さくしなければならないので、レーザ照射時間も短くなる。よって、短い時間で結晶化するためには、結晶化速度も大きくなければならない。また、情報層の数を増やす場合、2層メディアのL1よりも高い透過率を持つ情報層を追加しなければならないので、記録層の膜厚は、例えば3nmのような極薄い膜厚に設計されることとなる。このように、大容量化においても結晶化速度を大きくしなければならないので、例えばGe−Bi−Te系記録材料においては、Bi2Te3の濃度を2層メディアのL1用よりも増やして組成を調整しなければならない。
特許第2584741号公報
特許第2574325号公報
国際公開第2006/011285号パンフレット
本発明者は、まず4倍速に対応した2層メディアを実現するために、Ge−Bi−Te系記録材料のBi2Te3の濃度の最適値を調べたが、L0およびL1共に見出せなかった。初期特性(記録特性、消去特性)と信頼性(記録マーク保存性)を評価したが、L0においては、消去特性が良好な組成では記録マーク保存性が劣悪で、実用レベルに達しなかった。L1においては、消去特性が良好な組成では信号振幅が小さく、記録特性が不十分であった。その上、L0同様記録マーク保存性が劣悪であったため、最適な組成が見出せなかった。
これらの結果は、Ge−Bi−Te系記録材料ではBi2Te3の濃度を増やすと、結晶化速度が大きくなるが、同時に光学変化が小さくなると共に、結晶化温度が低下してしまうことによる。結晶化速度は消去特性として評価され、結晶化速度が大きいと消去率は高くなる。光学変化は相変化による屈折率変化であり、信号振幅として評価され、光学変化が大きいほど信号振幅は大きくなる。結晶化温度は、記録マークの保存性、すなわちアモルファスの安定性に影響を与える。結晶化温度の低下は、記録マークの保存性を損ねることにつながる。実用化した2倍速対応メディアでは、結晶化速度、光学変化および結晶化温度を両立できる組成が存在し、初期特性と信頼性を満足することができた。しかしながら、4倍速に対応させるためには、Bi2Te3の濃度をもっと増やさなければならず、光学変化の大きさと結晶化温度とが実用レベルに達しなかった。
大容量化に対応した4層メディア(100GB、片面に情報層が4つ)の実験においても同様に、4つの情報層のいずれにおいても、結晶化速度、光学変化および結晶化温度を両立できる組成が存在せず、消去特性が良好な組成では記録マーク保存性が劣悪で、半透明な情報層では信号振幅をも不足した。
本発明の目的は、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度とを併せ持つ相変化記録材料を提供すると共に、その相変化記録材料によって形成された記録層を有し、4倍速以上の高データ転送レートおよび100GB以上の大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足できる情報記録媒体を提供することである。また、本発明は、その情報記録媒体を製造するための製造方法と、その製造で用いるターゲットを提供することも目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の情報記録媒体は、光の照射または電気的エネルギーの印加によって情報を記録し得る情報記録媒体であって、相変化を生じ得る記録層を少なくとも備え、前記記録層が、アンチモン(Sb)、炭素(C)および原子量が33未満である軽元素(L)よりなる。
また、本発明の情報記録媒体の製造方法は、アンチモン(Sb)、炭素(C)および原子量が33未満である軽元素(L)よりなる記録層を成膜する工程を少なくとも含む情報記録媒体の製造方法であって、前記記録層を成膜する工程は、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、前記Sbを含むターゲットをスパッタリングすることを含んでいる。
また、本発明は、アンチモン(Sb)、炭素(C)および原子量が33未満である軽元素(L)よりなる記録層を成膜するためのターゲットであって、アンチモン(Sb)および炭素(C)よりなるターゲットを提供する。
また、本発明は、アンチモン(Sb)、炭素(C)および原子量が33未満である軽元素(L)よりなり、式(1):
Sb100-x-yCxLy (1)
(但し、添え字100−x−y、xおよびyは、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比を示す。)
で表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなる記録層を成膜するためのターゲットであって、前記ターゲットがアンチモン(Sb)、炭素(C)および前記軽元素(L)よりなるターゲットも提供する。
本発明の情報記録媒体によれば、例えば、BD−REメディアの場合、4倍速(144Mbps)以上の高データ転送レートにおいても、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足することができる。また、3つまたは4つの情報層を有する100GB以上の大容量記録媒体においても、各情報層の記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足することができる。このように、本発明によれば、高速で大容量な優れた情報記録媒体を実現することができる。
本発明の情報記録媒体の製造方法によれば、4倍速(144Mbps)以上の高データ転送レートを有する情報記録媒体を製造することができる。また、3つまたは4つの情報層を有する100GB以上の大容量な情報記録媒体を製造することができる。
本発明のターゲットをスパッタリングすることにより、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度を併せ持つ相変化記録層を実現することができる。
本発明の情報記録媒体の一例を示す部分断面図である。
本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
本発明の情報記録媒体のさらに別の例を示す部分断面図である。
本発明の情報記録媒体および電気的情報記録再生装置の構成の一部を模式的に示す図である。
本発明の電気的情報記録媒体の構成の一部を模式的に示す図である。
本発明の電気的情報記録媒体とその記録再生システムの構成の一部を模式的に示す図である。
本発明の情報記録媒体の製造方法で使用するスパッタリング装置の一例を示す模式図である。
本発明の情報記録媒体の製造方法で使用するスパッタリング装置の別の例を示す模式図である。
本発明の情報記録媒体に含まれる記録層は、上述したとおり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含んでいる。本発明において、前記記録層に含まれる軽元素Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。
本発明において、前記記録層は、式(1):Sb100-x-yCxLy(但し、添え字100−x−y、xおよびyは、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比を示す。)で表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。前記記録層の膜厚は、例えば15nm以下であってよく、さらに7nm以下であってもよい。なお、本明細書において、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比とは、「Sb」原子、「C」原子および「L」原子の合計数を基準(100%)とした場合の、Sb、C、Lの各原子%のことである。
また、本発明の情報記録媒体は、N個の情報層を含んでいてもよい。なお、ここで、Nは2以上の整数である。この場合、前記情報層のうち少なくとも一つの情報層が、前記記録層を含んでいる。さらに、Nは3または4であってよい。
本発明の情報記録媒体の製造方法は、上述したとおり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を成膜する工程を少なくとも含んでおり、前記記録層を成膜する工程が、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、前記ターゲットをスパッタリングすることを含む。本発明の製造方法において、前記Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。
また、本発明の情報記録媒体の製造方法において、前記記録層を成膜する工程が、Cを含むターゲットをさらに用い、前記Cを含むターゲットをスパッタリングすることをさらに含んでいてもよい。また、前記記録層を成膜する工程が、前記Lを含むターゲットをさらに用い、前記Lを含むターゲットをスパッタリングすることをさらに含んでいてもよい。前記記録層を成膜する工程において、スパッタリングする際に、希ガス、または、N2ガスおよびO2ガスから選ばれる少なくとも一種のガスと希ガスとの混合ガスを用いてもよい。
また、前記記録層を成膜する工程で成膜された記録層が、例えば、式(1):Sb100-x-yCxLy(但し、添え字100−x−y、xおよびyは、原子%で表されるSb、CおよびLの組成比を示す。以下、同様の表記を同様の意味で用いる。)で表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。
本発明のターゲットは、上述したとおり、少なくともアンチモン(Sb)と、炭素(C)とを含んでいる。本発明のターゲットは、原子量が33未満である軽元素(L)をさらに含んでもよい。この場合、前記Lは、例えばB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよく、B、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってもよい。
本発明のターゲットを用いて成膜された記録層が、例えば、式(1):Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものでもよい。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は一例であり、本発明は以下の実施の形態に限定されない。また、以下の実施の形態では、同一の部分については同一の符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、情報記録媒体の一例を説明する。図1に、その情報記録媒体100の一部断面を示す。情報記録媒体100には、基板101上に成膜された情報層110および透明層102が順に配置されている。さらに、情報層110は、基板101の一方の表面に成膜された反射層112、誘電体層113、界面層114、記録層115、界面層116および誘電体層117がこの順に配置されて形成されている。
情報記録媒体100は、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光10で情報を記録再生する、25GB以上の容量を有するBlu−ray Discとして使用できる。この構成の情報記録媒体100には、透明層102側からレーザ光10が入射し、それにより情報の記録および再生が実施される。以下、基板101から順に説明する。
基板101は、主に支持体としての機能を有し、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。材料としては、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィンもしくはポリメチルメタクリレート(PMMA)のような樹脂、またはガラスを挙げることができる。成形性、価格、および機械強度を考慮すると、ポリカーボネートが好ましく使用される。図示した形態において、厚さ約1.1mm、直径約120mmの基板101が好ましく用いられる。
基板101の情報層110を形成する側の表面には、レーザ光10を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。案内溝を基板101に形成した場合、本明細書においては、レーザ光10に近い側にある面を便宜的に「グルーブ面」と呼び、レーザ光10から遠い側にある面を便宜的に「ランド面」と呼ぶ。たとえば、Blu−ray Discとして使用する場合、グルーブ面とランド面の段差は、10nm以上30nm以下であることが好ましい。また、Blu−ray Discでは、グルーブ面のみに記録を行うが、グルーブ−グルーブ間の距離(グルーブ面中心からグルーブ面中心まで)は、約0.32μmである。
透明層102について説明する。情報記録媒体の記録密度を大きくする方法として、短波長のレーザ光を使用して、レーザビームを絞り込めるように対物レンズの開口数NAを上げる方法がある。この場合、焦点位置が浅くなるため、レーザ光10が入射する側に位置する透明層102は、基板101と比べてより薄く設計される。この構成によれば、より高密度の記録が可能な大容量情報記録媒体100を得ることができる。
透明層102は、基板101同様、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。透明層102の表面から情報層110の記録層115までの距離、すなわち透明層102の厚さは、80μm以上120μm以下が好ましく、90μm以上110μm以下がより好ましい。透明層102は、例えば、円盤状のシートと接着層からなっていてもよいし、紫外線硬化性樹脂よりなっていてもよい。必要に応じて、レーザ光10を導くための凹凸の案内溝が形成されていてもよい。また、誘電体層117の表面に保護層を設けた上に設けてもよい。いずれの構成でもよいが、総厚み(例えば、シート厚+接着層厚+保護層厚、または紫外線硬化性樹脂のみの厚み)が80μm以上120μm以下であることが好ましい。シートは、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、またはPMMAのような樹脂で形成することが好ましく、特にポリカーボネートで形成することが好ましい。また、透明層102は、レーザ光10入射側に位置するため、光学的には短波長域における複屈折が小さいことが好ましい。
反射層112は、光学的には記録層115に吸収される光量を増大させ、熱的には記録層115で生じた熱を速やかに拡散させて記録層115を急冷し、非晶質化し易くする機能を有する。さらに、反射層112は、誘電体層113から誘電体層117までを含む多層膜を使用環境から保護する機能をも有する。反射層112の材料としては、記録層115で生じた熱を速やかに拡散させるよう、熱伝導率が大きいことが好ましい。また、記録層115に吸収される光量を増大させるよう、使用するレーザ光の波長における光吸収が小さいことが好ましい。
例えば、Al、Au、AgおよびCuより選ばれる金属またはこれらの合金を用いることができる。その耐湿性を向上させたり、熱伝導率または光学特性(例えば、光反射率、光吸収率または光透過率)を調整したりするために、上記金属または合金に、他の元素を添加した材料を使用してよい。その添加材料としては、Mg、Ca、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Pd、Pt、Zn、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb、Bi、Te、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれることが好ましい。この際、添加濃度は3原子%以下が好ましい。特に、Agは波長405nm付近の光吸収が小さいため、情報記録媒体100の構成にはAgを97原子%以上含む反射層112が好ましく用いられる。
また、反射層112を2以上の層で形成してもよい。その場合、基板101側を誘電体材料よりなる層としてもよい。反射層112の厚さは、使用する媒体の線速度や記録層115の組成に合わせて調整し、40nm以上300nm以下であることが好ましい。40nmより薄いと急冷条件が不足し、記録層の熱が拡散しにくくなり、記録層が非晶質化しにくくなる。300nmより厚いと急冷条件が過剰になり、記録層の熱が拡散しすぎて、記録感度が悪化する(すなわち、より大きなレーザパワーが必要になる)。
誘電体層113および誘電体層117は、光学距離を調節して記録層115の光吸収効率を高め、結晶相の反射率と非晶質相の反射率との差を大きくして信号振幅を大きくする機能と、記録層115を水分等から保護する機能を兼ね備える。特性としては、使用するレーザ波長に対して透明性が高く、耐湿性に加えて耐熱性にも優れていることが好ましい。
誘電体層113および117の材料としては、酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物、炭化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。
酸化物としては、例えばAl2O3、CaO、CeO2、Cr2O3、Dy2O3、Ga2O3、Gd2O3、HfO2、Ho2O3、In2O3、La2O3、MgO、Nb2O5、Nd2O3、Sc2O3、SiO2、Sm2O3、SnO2、Ta2O5、TiO2、Y2O3、Yb2O3、ZnO、ZrO2、ZrSiO4等を用いてもよい。硫化物としては例えばZnS等を、セレン化物としては例えばZnSe等を用いてもよい。窒化物としては、例えばAlN、BN、CrN、Ge3N4、HfN、NbN、Si3N4、TaN、TiN、VN、ZrN等を用いてもよい。炭化物としては、例えばAl4C3、B4C、CaC2、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、ZrC等を用いてもよい。弗化物としては、例えばCaF2、CeF3、DyF3、ErF3、GdF3、HoF3、LaF3、MgF2、NdF3、YF3、YbF3等を用いてもよい。
特に、誘電体層113は、反射層112にAgを含む材料を用いた場合には、AgがSと反応しやすいため、硫化物以外を用いることが好ましい。
混合物としては、例えばZnS−SiO2、ZnS−LaF3、ZnS−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2、ZrO2−LaF3、ZrO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−Ga2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−Ga2O3−LaF3、ZrO2−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−In2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−In2O3−LaF3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−In2O3、ZrO2−SiC、ZrO2−SiO2−SiC、HfO2−SiO2、HfO2−LaF3、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、HfO2−Cr2O3−LaF3、HfO2−SiO2−LaF3、HfO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、HfO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−Ga2O3−LaF3、HfO2−SiO2−Ga2O3−LaF3、HfO2−In2O3、HfO2−SiO2−In2O3、HfO2−In2O3−LaF3、HfO2−SiO2−In2O3−LaF3、HfO2−SiO2−Cr2O3−Ga2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3−In2O3、HfO2−SiC、HfO2−SiO2−SiC、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、SnO2−SiC、SnO2−Si3N4、SnO2−Ga2O3−SiC、SnO2−Ga2O3−Si3N4、SnO2−Nb2O5、SnO2−Ta2O5、CeO2−Al2O3、CeO2−Al2O3−SiO2、Nb2O5−TiO2、Nb2O5−SiO2−TiO2等を用いてもよい。
これらの材料の中で、ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料は、405nm付近の波長に対して透明性が高く、耐熱性にも優れている。ZrO2を含む材料には、ZrO2の代わりにCaO、MgO、Y2O3のいずれかをZrO2に添加した部分安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニアを少なくとも一部に用いてもよい。
ZnS−SiO2は非晶質で、熱伝導性が低く、高透明性および高屈折率を有し、また、膜形成時の成膜速度が大きく、機械特性および耐湿性にも優れた材料である。誘電体層117として(ZnS)80(SiO2)20(添え字はmol%を示す。)を用いてよい。
あるいは、誘電体層113もしくは誘電体層117を、上記酸化物等や混合物を積層して2以上の層で形成してもよい。
誘電体層113および誘電体層117は、各々の光路長(即ち、誘電体層の屈折率nと誘電体層の膜厚dとの積nd)を変えることにより、結晶相の記録層115の光吸収率Ac(%)と非晶質相の記録層115の光吸収率Aa(%)、記録層115が結晶相であるときの情報記録媒体100の光反射率Rc(%)と記録層115が非晶質相であるときの情報記録媒体100の光反射率Ra(%)、記録層115が結晶相である部分と非晶質相である部分の情報記録媒体100の光の位相差Δφを調整する機能を有する。記録マークの再生信号振幅を大きくして、信号品質を上げるためには、反射率差|Rc−Ra|または反射率比Rc/Raが大きいことが望ましい。また、記録層115がレーザ光10を吸収するように、AcおよびAaも大きいことが望ましい。これらの条件を同時に満足するように誘電体層113および誘電体層117の光路長を決定する。それらの条件を満足する光路長は、例えばマトリクス法(例えば久保田広著「波動光学」岩波新書、1971年、第3章を参照)に基づく計算によって正確に決定することができる。誘電体層の屈折率をn、膜厚をd(nm)、レーザ光10の波長をλ(nm)とした場合、光路長ndは、nd=aλで表される。ここで、aは正の数とする。情報記録媒体100の記録マークの再生信号振幅を大きくして信号品質を向上させるには、例えば、情報記録媒体100のようにBlu−ray Discで使用する場合、18%≦Rc且つRa≦4%を満足するように誘電体層113および誘電体層117の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定することができる。例えば、屈折率が2から3である誘電体材料を誘電体層113および誘電体層117に用いる場合、誘電体層113の厚さは50nm以下が好ましく、3nm以上30nm以下がより好ましい。また、誘電体層117の厚さは20nm以上100nm以下が好ましく、30nm以上80nm以下がより好ましい。
界面層114および界面層116について説明する。界面層114は、誘電体層113と記録層115との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。同様に、界面層116は、誘電体層117と記録層115との間で、繰り返し記録により生じる物質移動を防止するために設けられる。ここで物質移動とは、繰り返し記録により層間で原子が一方にまたは相互に移動する現象をいう。例えば誘電体層113または誘電体層117に(ZnS)80(SiO2)20(mol%)を使用した場合、レーザ光10を記録層115に照射して繰り返し書き換えている間に、ZnSのSが記録層115に拡散していく。また、界面層114および界面層116は、誘電体層113と記録層115、および誘電体層117と記録層115の密着性が悪い場合の、接着機能をも有する。
界面層114および界面層116には、硫化物を含む材料は使用しないことが好ましい。界面層114および界面層116の材料としては、記録層115との密着性に優れ、記録層115にレーザ光10を照射した際に、溶けたり分解したりしない、耐熱性の強い材料が好ましい。その材料としては、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。
酸化物としては、例えばAl2O3、CaO、CeO2、Cr2O3、Dy2O3、Ga2O3、Gd2O3、HfO2、Ho2O3、In2O3、La2O3、MgO、Nb2O5、Nd2O3、Sc2O3、SiO2、Sm2O3、SnO2、Ta2O5、TiO2、Y2O3、Yb2O3、ZnO、ZrO2、ZrSiO4等を用いてもよい。窒化物としては、例えばAlN、BN、CrN、Ge3N4、HfN、NbN、Si3N4、TaN、TiN、VN、ZrN等を用いてもよい。炭化物としては、例えばC、Al4C3、B4C、CaC2、Cr3C2、HfC、Mo2C、NbC、SiC、TaC、TiC、VC、W2C、WC、ZrC等を用いてもよい。硼化物としては、例えばB、CaB6、HfB2、ZrB2、TiB2、TaB2、MoB、NbB2、WB、VB2、LaB6等を用いてもよい。弗化物としては、例えばCaF2、CeF3、DyF3、ErF3、GdF3、HoF3、LaF3、MgF2、NdF3、YF3、YbF3等を用いてもよい。
混合物としては、例えばZrO2−Cr2O3、ZrSiO4−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3、ZrO2−SiO2−Cr2O3−LaF3、ZrO2−Ga2O3、ZrSiO4−Ga2O3、ZrO2−SiO2−Ga2O3、ZrO2−In2O3、ZrSiO4−In2O3、ZrO2−SiO2−In2O3、ZrO2−SiC、ZrSiO4−SiC、ZrO2−SiO2−SiC、HfO2−Cr2O3、HfO2−SiO2−Cr2O3、HfO2−Ga2O3、HfO2−SiO2−Ga2O3、HfO2−In2O3、HfO2−SiO2−In2O3、HfO2−SiC、HfO2−SiO2−SiC、SnO2−Ga2O3、SnO2−In2O3、SnO2−SiC、SnO2−Si3N4、SnO2−Ga2O3−SiC、SnO2−Ga2O3−Si3N4、SnO2−Nb2O5、SnO2−Ta2O5、Cr2O3−ZnO、Cr2O3−Al2O3、Cr2O3−CeO2、Cr2O3−Dy2O3、Cr2O3−Ga2O3、Cr2O3−In2O3、Cr2O3−MgO、Cr2O3−Nb2O5、Cr2O3−SiO2、Cr2O3−SnO2、Cr2O3−TiO2、Cr2O3−Ta2O5、Cr2O3−Y2O3、Cr2O3−LaF3、Cr2O3−B、Cr2O3−TiB2、ZnO−SiO2、ZnO−ZrO2、ZnO−HfO2、ZnO−Al2O3等を用いてもよい。
これらの材料の中で、ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料は、405nm付近の波長に対して透明性が高く、耐熱性にも優れているので界面層114および界面層116に好ましく用いられる。ZrO2を含む材料には、ZrO2の代わりにCaO、MgO、Y2O3のいずれかをZrO2に添加した部分安定化ジルコニアまたは安定化ジルコニアを少なくとも一部に用いてもよい。ZrO2を含む複合材料もしくは混合材料の中でも、ZrO2とSiO2とCr2O3とを含む材料(例えば、ZrO2とSiO2とCr2O3からなる材料)が、透明性と耐熱性に加えて、記録層115との密着性により優れているので、より好ましい。
界面層114および界面層116の膜厚は、0.3nm以上10nm以下であることが好ましく、0.5nm以上7nm以下であることがより好ましい。界面層114および116が厚いと、基板101の表面に形成された反射層112から誘電体層117までの積層体の光反射率および光吸収率が変化して、記録消去性能に影響を与える場合がある。また、0.3nm未満であると、物質移動を防止する機能が低下する場合がある。
なお、誘電体層113が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層115との密着性にも優れている場合には、界面層114は必要に応じて設ける。同様に、誘電体層117が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層115との密着性にも優れている場合には、界面層116は必要に応じて設ける。
本発明の記録層115は、相変化を生じ得る記録層であり、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む。この材料構成により、大きな結晶化速度と大きな光学変化と高い結晶化温度とを併せ持つ、相変化記録材料を実現することができる。
Sbは非常に結晶化しやすい材料であり、結晶化温度が約90℃くらいである。スパッタリングにより形成したSb膜は非晶質状態であるが、室温で放置しておくと徐々に結晶化が進む。したがって、Sbだけでは非晶質状態の安定性に欠ける。すなわち、優れた記録マークの保存性を確保することが困難である。
Cは、このようなSbの課題を解決する機能を有し、Sbに添加することにより、大きな結晶化速度を維持して、結晶化温度を200℃以上に上昇させることができる。また、記録層115の非晶質状態と結晶状態の間の光学的な変化を大きくする機能をも有する。
さらに、原子量が33未満である軽元素(L)を添加することにより、結晶化温度を低下させずに、結晶化速度を調整することができる。Lは、B、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であることがより好ましい。軽元素の中でもこれらの元素を含む材料は、製造面、コスト面、環境面で優れた材料である。
例えば、4倍速以上の、高倍速な記録条件で使用する材料に要求される特性は、高速記録できるよう大きな結晶化速度を有すること、且つ、記録マークが安定に保存されるよう結晶化温度が高いこと、である。
Sbに原子量が33以上の元素、例えば遷移金属(第2遷移元素、第3遷移元素)や貴金属を添加すると、確かに結晶化温度を上げることができる。しかしながら、結晶化温度が低下するという副作用が伴うため、20原子%も添加すると、4倍速以上では使用が困難となる。それに対して、SbにCを添加する場合、Cは結晶化速度を低下させることなく、結晶化温度を上げることができる。それゆえ、Cの場合は50原子%近くまで添加しても、4倍速以上で使用できる。SbとCに遷移金属や貴金属を添加する場合も、同様に結晶化速度が低下するため、4倍速以上で使用するには、それらの添加濃度は多くても10原子%程度である。
これに対し、SbとCに、原子量が33未満の軽元素(L)が添加された材料を含む本発明の記録層115は、CとLの濃度を調整することにより、高い結晶化温度と大きな結晶化速度とを両立できる。4倍速以上で使用する場合も、CとLとを合わせて50原子%まで添加することが可能である。このように、Sbと、Cと、Lとを含む記録材料は、高倍速で使用する場合でも、添加できるCとLの組成範囲が十分に広いという利点がある。したがって、本発明によれば、CとLの添加濃度を適宜調整することによって、記録層の結晶化速度、結晶化温度および光学変化量の微調整が可能となるため、設計の自由度が高いという効果も得られる。
光学的変化を、記録層が非晶質状態であるときの記録層の複素屈折率(na−ika、naは屈折率、kaは消衰係数)と記録層が結晶状態であるときの記録層の複素屈折率(nc−ikc、ncは屈折率、kcは消衰係数)との差の大きさDn+k(|nc−na|+|kc−ka|)で定義すると、Dn+kが大きいほど光学変化が大きい。例えば、Sb80C15B5のDn+kは1.9であり、Sb80C15N5のDn+kも1.9である。これに対し、Sb85Ge15のDn+kは1.6であった。特に、SbにCとLを添加することでkaが小さくなり、|kc−ka|を大きくすることができるようになる。
また、本発明の記録層115は、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものであってもよい。CとLを合わせた組成比は、50原子%以下が好ましい。50原子%を超えると、記録層115の結晶化速度が低下し、例えば4倍速に相当する転送レートでの結晶化が不十分となり、記録消去特性が悪化する場合がある。また、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保するために、本実施の形態では、CとLを合わせた組成比は30原子%以上が好ましい。CとLの組成は、転送レートに対して最適となるように選んでよいが、大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、x≧yが好ましい。ここで、SbとCとLを含む記録層の組成は、例えばX線マイクロアナライザー(XMA)で分析することができる。これは、電子線を試料に照射した際に発生する特性X線の波長や強度を測定することによって、試料に含まれる元素の種類と組成を調べることができる分析方法である。
スパッタリングで形成された記録層115には、スパッタ雰囲気中に存在する希ガス(Ar、Kr、Xe)、水分(O−H)、有機物(C)、空気(N、O)、スパッタ室に配置された冶具の成分(金属)およびターゲットに含まれる不純物(金属、半金属、半導体、誘電体)等が不可避に含まれ、XMA等の分析で検出されることがある。これら不可避の成分は記録層に含まれる全原子を100原子%とした場合、10原子%を上限として含まれていてもよく、不可避に含まれる成分を除いて、Sb、CおよびLが、Sb100-x-yCxLyの関係にあり、且つx+y≦50を満たせばよい。すなわち、本明細書において、「記録層115が、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものである」とは、記録層115中に上記のような不可避成分が存在する場合も含まれる。これは、以降の実施の形態で説明する記録層215、225、315、325、335、415、425、435、445および603にも同様に適用される。
具体的な組成は、Sb−C−B、Sb−C−B−N、Sb−C−B−O、Sb−C−B−Mg、Sb−C−B−Mg−N、Sb−C−B−Mg−O、Sb−C−B−Mg−N−O、Sb−C−B−Al、Sb−C−B−Al−N、Sb−C−B−Al−O、Sb−C−B−Al−N−O、Sb−C−B−S、Sb−C−B−S−N、Sb−C−B−S−O、Sb−C−B−S−N−O、Sb−C−N、Sb−C−N−O、Sb−C−N−Mg、Sb−C−N−Mg−O、Sb−C−N−Al、Sb−C−N−Al−O、Sb−C−N−S、Sb−C−N−S−O、Sb−C−O、Sb−C−O−Mg、Sb−C−O−Al、Sb−C−O−S、Sb−C−Mg、Sb−C−Mg−Al、Sb−C−Mg−Al−N、Sb−C−Mg−Al−O、Sb−C−Mg−Al−N−O、Sb−C−Mg−S、Sb−C−Mg−S−N、Sb−C−Mg−S−O、Sb−C−Mg−S−N−O、Sb−C−Al、Sb−C−Al−S、Sb−C−Al−S−N、Sb−C−Al−S−O、Sb−C−Al−S−N−O、Sb−C−S等が挙げられる。
本発明の記録層115の膜厚は、15nm以下であることが好ましい。15nm以下であれば、情報記録媒体100の構成において、25GB以上の容量且つ4倍速以上の転送レートで、良好な記録消去特性が得られる。15nmを超えると、熱容量が大きくなり記録に要するレーザパワーが大きくなる。また、記録層115で生じた熱が反射層112の方向へ拡散しにくくなり、高密度記録に必要な小さい記録マークの形成が困難となる。さらには、8nm以上14nm以下がより好ましい。この膜厚範囲においては、4倍速以上の高転送レートに加えて2倍速以下の低転送レートでも、良好な記録消去特性が得られるので、回転数一定のConstant Angular Velocity(CAV)として使用することもできる。
続いて、実施の形態1の情報記録媒体100を製造する方法を説明する。情報記録媒体100は、案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板101をスパッタリング装置に配置し、基板101の案内溝が形成された表面に、反射層112を成膜する工程、誘電体層113を成膜する工程、界面層114を成膜する工程、記録層115を成膜する工程、界面層116を成膜する工程、誘電体層117を成膜する工程、を順次実施し、さらに、誘電体層117の表面に透明層102を形成する工程を実施することにより、製造される。
ここで、情報記録媒体の製造を行うスパッタリング(成膜)装置の一例を説明する。図9に、二極グロー放電型スパッタリング装置20の一例を示す。スパッタ室21内は、排気口22に真空ポンプ23が接続され、高真空に保たれる。スパッタガス導入口24からは、一定流量のスパッタガス(例えばArガス等)が導入される。基板25は基板ホルダー(陽極)26に取り付けられ、ターゲット(陰極)27はターゲット電極28に固定されており、電源29に接続されている。両極間に高電圧を加えることにより、グロー放電が発生し、例えばAr正イオンを加速してターゲット27に衝突させ、スパッタリングさせる。スパッタされた粒子は基板25上に堆積し薄膜が形成される。スパッタ中、ターゲット27を冷却するため、電極28には例えば水を循環させる(図中、30は循環水を示す)。陰極へ印加する電源の種類によって直流型と高周波型に分けられる。スパッタリング装置20は、スパッタ室21を複数個つないでもよいし、スパッタ室21に複数個のターゲット27を配置してもよく、そのような構造とすることにより、複数の成膜工程を実施して多層膜を積層することができる。以下の実施の形態のスパッタリングでも、同様の装置を用いることができ、基板25として、本実施の形態および後述する実施の形態2〜6で説明する基板101、201、301、401、501、601(図1〜図6参照)を用いることができる。
また、スパッタリング装置の別の例を説明する。図10に、直流(DC)マグネトロンスパッタ装置20の一例を示す。なお、図10中、図9と同一の符号が付されている部材は、図9を参照しながら説明した部材と同じであるため、その説明を省略する場合がある。スパッタ室21内には、排気口22に真空ポンプ23が接続され、高真空に保たれる。スパッタガス導入口24には、ガスボンベ(例えばArガス)が接続され、ここから一定流量のスパッタガス(例えばArガス)が導入される。マグネトロンスパッタにおいては、ターゲット27の裏面に配置された永久磁石31によってターゲット27表面に磁界が発生し、電界と直交する部分に最もプラズマが集中するので、より多くの粒子がスパッタされる。陰極に印加する電源の種類によって、直流型と高周波(RF)型に分けられる。RFマグネトロンスパッタ装置の場合は、直流電源29の代わりに、インピーダンス整合回路と高周波電源とが接続されている。なお、図10においては、図9に示されている循環水30が省略されている。
以下の説明を含む本明細書において、各層に関して、「表面」というときは、特に断りのない限り、各層が形成されたときの露出している表面(厚さ方向に垂直な表面)を指すものとする。
最初に、基板101の案内溝が形成された面に、反射層112を成膜する工程を実施する。反射層112は、反射層112を構成する金属または合金を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、直流電源または高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
反射層112を成膜するターゲットとしては、Al、Au、AgおよびCuのうち少なくとも1つを含む材料、または、それらの合金を用いてもよい。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される反射層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の反射層112を得ることができる。ターゲットは、粉末を溶かして合金化して固めたものや粉末を高温高圧下で固めたもの等、製法に依らず用いることができる。例えば、反射層112としてAg−Cu系合金を形成する際には、Ag−Cu系合金ターゲットを用いてよい。
次に、反射層112の表面に、誘電体層113を成膜する工程を実施する。誘電体層113もまた、誘電体層113を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
誘電体層113を成膜するターゲットとしては、酸化物、硫化物、セレン化物、窒化物、炭化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができ、誘電体層113の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の誘電体層113を得ることができる。また、酸化物を含む誘電体層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるか、あるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより誘電体層113を形成してもよい。
あるいは、誘電体層113は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、誘電体層113は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
次に、誘電体層113の表面に、界面層114を成膜する工程を実施する。界面層114もまた、界面層114を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
界面層114を成膜するターゲットとしては、酸化物、窒化物、炭化物、硼化物および弗化物、およびこれらの混合物を用いることができる。界面層114の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される界面層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の界面層114を得ることができる。また、酸化物を含む界面層を形成する際には、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるかあるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスおよび/または窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより界面層を形成してもよい。
あるいは、界面層114は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、界面層114は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
次に、界面層114の表面に、本発明の記録層115を成膜する工程を実施する。記録層115は、Sbを含むターゲットを少なくとも用いて、Sbを含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜できる。以下、各々の材料の記録層115についてその成膜方法について説明する。
軽元素LとしてB、Mg、Alのうち少なくとも一つが含まれる場合、すなわちSbとCとL(B、Mgおよび/またはAl)を含む記録層115を成膜する場合、Sb−C−L(SbとCとLを含む)ターゲットをスパッタ室に備えて、スパッタリングすることによって成膜することができる。あるいは、組成比の異なるSb−C−Lターゲットを2以上スパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sbターゲット、CターゲットおよびLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−Cターゲット、SbターゲットおよびLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−CターゲットとLターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−LターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、SbターゲットとC−Lターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。いずれも希ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。さらに、記録層115にNおよび/またOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してもよい。
軽元素LとしてSが含まれる場合、すなわちSbとCとSを含む記録層115を成膜する場合、Sb−C−Sを含むターゲットをスパッタ室に備えて、スパッタリングすることによって成膜することができる。あるいは、組成比の異なるSb−C−Sターゲットを2以上備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、Sb−SターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。あるいは、SbターゲットとC−Sターゲットそれぞれをスパッタ室に備えて、同時にスパッタリングすることによっても形成することができる。いずれも希ガス雰囲気中で実施してよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。さらに、記録層115にNおよび/またOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してもよい。
軽元素LとしてNおよび/またOが含まれる場合、すなわちSbとCとLを含む記録層115を成膜する場合、Sb−Cを含むターゲットをスパッタ室に備えて、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングすることにより記録層115を成膜することができる。あるいは、SbターゲットとCターゲットそれぞれをスパッタ室にスパッタ室に備えて、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、同時に反応性スパッタリングすることにより記録層115を形成することもできる。あるいは、Nおよび/またOと、SbおよびCを含むターゲットを、希ガス雰囲気中、または少量の酸素ガスおよび/または少量の窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングしてもよい。
いずれの方法においても、式(1):Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなる記録層115を形成することができる。例えば、Sb−C−Lを含むターゲットを用いる場合、スパッタリング装置によってはターゲットの組成と形成される記録層の組成が一致しない場合もあるが、Sb−C−Lを含むターゲットの組成を調整することによって、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。あるいは、複数のターゲットを備えて同時スパッタリングする場合には、個々の電源の出力を調整して組成を制御することにより、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。あるいは、反応性スパッタリングの場合には、ターゲットの組成調整もしくは電源の出力調整に加えて、酸素ガスや窒素ガスの流量や圧力、希ガスとの流量比や圧力比を調整することにより、式(1)の組成の記録層115を得ることができる。
本発明の記録層を成膜するために用いられる本発明のターゲットについて説明する。本ターゲットは、少なくともアンチモン(Sb)と、炭素(C)とを含む。さらに原子量が33未満である軽元素(L)を含んでもよく、この場合はLがB、N、O、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。あるいは、LがB、Mg、AlおよびSから選ばれる少なくとも一つの元素であってよい。本ターゲットをスパッタリングすることによって、SbとCとLとを含む記録層を形成することができる。
融点の高いCのスパッタ率は、Sbのスパッタ率に比べて低いので、記録層に含まれるCの組成比よりもターゲットに含ませるCの組成比を、5%〜20%多くすることが好ましい。使用するスパッタリング装置やスパッタリング条件によってその増量は異なるが、例えば、Sb50C50記録層を成膜するためのターゲットの組成比は、例えばSb47.5C52.5〜Sb40C60の範囲であってよい。記録層の組成比をX線マイクロアナライザーで分析して、記録層の組成比が目標の組成比となるように、Sb−C−Lターゲットの好ましい組成比を決めることができる。
本実施の形態の記録層115が、LとしてB、Mg、AlおよびSのうち少なくとも一つと、SbとCとを含む場合、記録層115を成膜する際に、Sb−C−Lターゲットをスパッタリングしてよい。さらに、記録層115にNおよび/またはOを含ませる場合、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してよい。
Nおよび/またはOと、SbとCとを含む記録層115を成膜する場合、Sb−Cターゲットを、酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で、反応性スパッタリングにより記録層115を成膜してよい。あるいは、Nおよび/またはOと、Sbと、Cとを含むターゲットを、希ガス雰囲気中、または少量の酸素ガスおよび/または少量の窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中でスパッタリングしてよい。
次に、本発明のターゲットの製造方法の一例を説明する。例えば、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、アルミニウム(Al)とを含むターゲットの製造方法について説明する。所定の粒径を有する高純度なSbの粉末、Cの粉末およびAlの粉末を準備し、これらを所定の混合比になるように秤量して混合し、ホットプレス装置に入れる。ホットプレス装置を必要に応じて真空にし、所定の高い圧力と高い温度の条件下で、所定時間保持して、混合粉末を焼結させる。混合を十分に行うことにより、ターゲットの面内・厚み方向の組成が均一になる。また、圧力、温度および時間の条件を最適化することにより、充填性が向上し、高密度なターゲットを製造することが可能になる。このようにして、SbとCとAlとを所定の組成比で含むターゲットが完成する。焼結後、必要に応じてIn等の半田を用いて、例えば表面が平滑な銅板に接着してもよい。こうすることにより、スパッタリング装置に取り付けてスパッタリングすることができる。本ターゲットは、密度(粉末の充填率を示し、全く隙間無く粉末が充填されている状態を100%と定義する)が高いことが好ましい。好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上である。
ここで、粉末については、Sbの粉末、Cの粉末およびAlの粉末のような単体元素に限らず、化合物の粉末を含んでもよい。例えば、所定の粒径を有する高純度なSbの粉末、Cの粉末およびSb−Alの粉末を混合してもよいし、Sbの粉末とAl−Cの粉末とを混合してもよい。あるいは、Sb−Cの粉末とAlの粉末とを混合してもよい。いずれの粉末の組み合わせでも、上記の方法でターゲットを製造することができる。
次に、記録層115の表面に、界面層116を成膜する工程を実施する。界面層116は界面層114と同様の製造方法で実施してよい。
次に、界面層116の表面に、誘電体層117を成膜する工程を実施する。誘電体層117は誘電体層113と同様の製造方法で実施してよい。
次に、透明層102を形成する工程を説明する。誘電体層117を成膜した後、反射層112から誘電体層117まで順次積層した基板101をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層117の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコート法により塗布して、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、目標の厚みの透明層102を形成することができる。あるいは、誘電体層117の表面に、紫外線硬化性樹脂をスピンコート法により塗布し、塗布した紫外線硬化性樹脂に、円盤状のシートを密着させて、紫外線をシート側から照射して樹脂を硬化させ、透明層102を形成することもできる。あるいは、接着層を有する円盤状のシートを密着させて、透明層102を形成することもできる。
透明層102は物性の異なる複数層からなってもよく、誘電体層117の表面に他の透明層を設けた後に、透明層102を形成してもよい。あるいは、誘電体層117の表面に透明層102を形成した後、透明層102の表面にさらにもう一層の透明層を形成してもよい。これら複数の透明層は、各々粘度や硬度、屈折率、透明性が異なっていてもよい。このようにして、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて初期化工程を実施する。初期化工程は、非晶質状態である記録層115を、例えば半導体レーザを照射して、結晶化温度以上に昇温して結晶化させる工程である。半導体レーザのパワー、情報記録媒体の回転速度、半導体レーザの径方向への送り速度およびレーザの焦点位置等を最適化することにより、良好な初期化工程を実施できる。初期化工程は透明層形成工程の前に実施してもよい。このように、反射層112を成膜する工程から透明層102を形成する工程まで順次実施することにより、実施の形態1の情報記録媒体100を製造することができる。
なお、本実施の形態においては、各層の成膜方法としてスパッタリング法を用いたが、これに限定されず真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相成長(CVD)法、または分子線エピタキシ(MBE)法等を用いることも可能である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2として、情報記録媒体の一例を説明する。図2に、その情報記録媒体200の一部断面を示す。情報記録媒体200には、基板201上に成膜された第1の情報層210、中間層203、第2の情報層220および透明層202が順に配置されている。第1の情報層210は、基板201の一方の表面に成膜された反射層212、誘電体層213、界面層214、記録層215、界面層216および誘電体層217がこの順に配置されてなる。第2の情報層220は、中間層203の一方の表面に成膜された誘電体層221、反射層222、誘電体層223、界面層224、記録層225、界面層226および誘電体層227がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層202の側から入射される。第1の情報層210には、第2の情報層220を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体200においては、2つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の2倍程度の50GBの容量を有する、情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体200においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、2つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1の情報層210の反射率と第2の情報層220の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として実効反射率がRc5%、Ra約1%となるように設計した構成を説明する。実効反射率とは、2つの情報層を積層した状態で測った、各情報層の反射率と定義する。第2の情報層220の透過率が約50%となるように設計する場合、第1の情報層210は単独でRcが約20%、Raが約4%、第2の情報層220は単独でRcが約5%、Raが約1%となるように設計される。
以下、第1の情報層210の構成から順に説明する。基板201および第1の情報層210の反射層212から誘電体層217は、実施の形態1の基板101および情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
中間層203は、レーザ光10の、第2の情報層220における焦点位置と第1の情報層210における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層220の案内溝が形成されてよい。中間層203は、紫外線硬化性樹脂で形成することができる。中間層203は、レーザ光10が効率よく第1の情報層210に到達するよう、記録再生する波長λの光に対して透明であることが望ましい。中間層203の厚さは、(1)対物レンズの開口数とレーザ光波長により決定される焦点深度以上、(2)記録層215および記録層225間の距離が、対物レンズの集光可能な範囲内、(3)透明層202の厚さと合わせて、使用する対物レンズが許容できる基板厚公差内、にすることが好ましい。したがって、中間層203の厚さは10μm以上40μm以下であることが好ましい。中間層203は、必要に応じて樹脂層を複数層、積層して構成してよい。たとえば、誘電体層217を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてもよい。
次に、第2の情報層220の構成について説明する。第2の情報層220は、レーザ光10が第1の情報層210に到達し得るように、高透過率となるように設計される。具体的には、記録層225が結晶相であるときの第2の情報層220の光透過率をTc(%)、記録層225が非晶質相であるときの第2の情報層220の光透過率をTa(%)としたとき、40%≦(Ta+Tc)/2、となることが好ましい。
誘電体層221は、第2の情報層220の光透過率を高める機能を有する。材料は、透明で、波長405nmのレーザ光10に対して、屈折率が2.4以上あることが好ましい。誘電体層221の屈折率が小さいほど、第2の情報層220の反射率比Rc/Raは大きくなり、光透過率は小さくなる。4以上の反射率比と50%以上の光透過率が得られる屈折率が2.4以上である。よって、屈折率が2.4未満であると、第2の情報層220の光透過率が低下して、第1の情報層210に十分なレーザ光10を到達させることが困難となる。
材料としては、例えばZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2およびWO3のうちの少なくとも一つ含む材料を用いてよい。中でもTiO2は、屈折率が2.7と高く、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。あるいは、ZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2およびWO3のうちの少なくとも一つを50mol%以上含む材料を使用してもよい。例えば、(ZrO2)80(Cr2O3)20、(Bi2O3)60(SiO2)40、(Bi2O3)60(TeO2)40、(CeO2)50(SnO2)50、(TiO2)50(HfO2)50、(WO3)75(Y2O3)25、(Nb2O5)50(MnO)50、(Al2O3)50(TiO2)50等を用いてよい。あるいは、ZrO2、Nb2O5、Bi2O3、CeO2、TiO2、WO3のうちの少なくとも2つを混合した材料を使用してもよい。例えば、Bi2Ti4O11((TiO2)80(Bi2O3)20)、Bi4Ti3O12((TiO2)60(Bi2O3)40)、Bi12TiO20、(WO3)50(Bi2O3)50、(TiO2)50(Nb2O5)50、(CeO2)50(TiO2)50、(ZrO2)50(TiO2)50、(WO3)67(ZrO2)33等を用いてよい。なお、上記材料における添え字は、mol%を示す。
光学的計算によれば、誘電体層221の膜厚がλ/8n(nm)(λはレーザ光10の波長、nは誘電体層221の屈折率)とその近傍において、第2の情報層220の透過率が最大値となる。反射率コントラスト(Rc−Ra)/(Rc+Ra)は、誘電体層221の膜厚が(λ/16n)以上(λ/4n)以下の間で最大値をとる。よって、両者が両立するように誘電体層221の膜厚を選ぶことができ、9nm以上42nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上30nm以下である。なお、誘電体層221は2以上の層からなってもよい。
反射層222は、記録層225の熱を速やかに拡散させる機能を有する。また、上記のように、第2の情報層220は高い光透過率を要するため、反射層222での光吸収は小さいことが望ましい。よって、反射層212と比較して、反射層222の材料および厚さは、より限定される。厚さはより薄く設計することが好ましく、光学的には消衰係数が小さく、熱的には熱伝導率が大きい材料が好ましい。
具体的には、反射層222は、好ましくは、AgまたはAg合金で、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Ga、Ag−Ga−Cu、Ag−Cu、Ag−In−Cu等の合金材料を用いてよい。あるいは、AgもしくはAg−Cuに希土類金属を添加した材料を用いてもよい。中でもAg−Pd−Cu、Ag−Ga−Cu、Ag−Cu、Ag−In−Cuは、光吸収が小さく、熱伝導率が大きく、耐湿性にも優れていることから好ましく用いられる。膜厚は記録層の厚みとの調整になるが、7nm以上20nm以下が好ましい。7nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層225にマークが形成されにくくなる。また、20nmよりも厚いと、第2の情報層220の光透過率が40%に満たなくなる。
誘電体層223および誘電体層227は、光路長ndを調節して、第2の情報層220のRc、Ra、TcおよびTaを調節する機能を有する。例えば、40%≦(Ta+Tc)/2、5%≦Rc、Ra≦1%を満足するように、誘電体層223および誘電体層227の光路長ndをマトリクス法に基づく計算により厳密に決定することができる。屈折率が2〜3である誘電体材料を誘電体層223および誘電体層227とする場合、誘電体層227の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層223の厚さは、好ましくは3nm以上40nm以下であり、より好ましくは5nm以上30nm以下である。材料は、実施の形態1における誘電体層113および117と同様でよいが、反射層222がAgまたはAg合金が好ましいため、誘電体層223は硫化物またはZnを含まないことが好ましい。一方、誘電体層227については、透明性の高いZnS−SiO2が好ましく用いられる。
界面層224および界面層226は、実施の形態1における界面層114および界面層116と同様の機能を有し、材料も好ましい膜厚も同様である。なお、誘電体層223が硫化物またはZnを含まない材料で、且つ記録層225との密着性にも優れている場合には、界面層224は必要に応じて設ける。界面層226についても同様であるが、誘電体層227にZnS−SiO2を用いる場合は、界面層226を設けることがより好ましい。
本発明の記録層225は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、既に述べたように、第2の情報層220は高い光透過率を要するため、記録層225の膜厚は記録層215の膜厚よりも平均的には薄くなり、4nm以上10nm以下が好ましい。10nmを超えると第2の情報層220の光透過率が低下し、4nm未満であると記録層225の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層225はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、40原子%以下が好ましい。40原子%以下であれば、例えば4倍速に相当する転送レートに対応できる結晶化速度が確保でき、良好な記録消去特性が得られる。また、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保するために、記録層225では、CとLを合わせた組成比は20原子%以上が好ましい。CとLの組成比は、転送レートに対して最適となるように選んでよい。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層225においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層215が本発明の記録層である場合には、記録層225には従来の書換え形記録層を用いてもよい。逆に、記録層225が本発明の記録層である場合には、記録層215には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、GeTe−Sb2Te3、GeTe−Bi2Te3、GeTe−SnTe−Sb2Te3、GeTe−SnTe−Bi2Te3、GeTe−Bi2Te3−In2Te3、GeTe−SnTe−Bi2Te3−In2Te3、GeTe−SbTe、GeTe−SnTe−SbTe、GeTe−SnTe−SbTe−BiTe、GeTe−SnTe、GeTe−SnTe−BiTe、GeTe−BiTe等の化合物組成を含む材料、あるいはSbを50%以上含むGe−Sb、Ga−Sb、In−Sb、Sb−Te、Sb−Te−Ge等を含む材料を用いてよい。
あるいは、記録層215が本発明の記録層である場合には、第2の情報層220は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。逆に、記録層225が本発明の記録層である場合には、第1の情報層210は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層には、記録層としてTe−O、Sb−O、Ge−O、Sn−O、In−O、Zn−O、Mo−OおよびW−O等のうち少なくとも一つを含む酸化物、2以上の層を積層して記録時に合金化もしくは反応させる材料、もしくは有機色素系記録材料等を用いてよい。再生専用形情報層には、あらかじめ形成された記録ピット上に、反射層として金属元素、金属合金、誘電体、誘電体化合物、半導体元素、半金属元素のうち少なくとも一つを含む材料等を形成してよい。たとえば、AgまたはAg合金を含む反射層を形成してよい。
透明層202は、基板101同様、円盤状で、透明且つ表面の平滑なものを使用する。
透明層202は、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。透明層202の表面から第1の情報層210の記録層215までの距離は、80μm以上120μm以下が好ましく、90μm以上110μm以下がより好ましい。例えば、中間層203が25μmで、透明層202が75μmであってよい。中間層203が20μmで、透明層202が70μmであってよい。中間層203が30μmで、透明層202が80μmであってよい。透明層202の膜厚は40μm以上110μm以下が好ましく、50μm以上100μm以下がより好ましい。
続いて、実施の形態2の情報記録媒体200を製造する方法を説明する。情報記録媒体200は、支持体となる基板201上に第1の情報層210、中間層203、第2の情報層220、透明層202を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板201をスパッタリング装置に配置し、基板201の案内溝が形成された表面に、反射層212を成膜する工程から誘電体層217を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層210が基板201上に形成される。
第1の情報層210を形成した基板201を、スパッタリング装置から取り出し、中間層203を形成する。中間層203は次の手順で形成される。まず、誘電体層217の表面に、紫外線硬化性樹脂を例えばスピンコートにより塗布する。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させる。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離する。それにより、前記凹凸に相補的な形状の案内溝が紫外線硬化性樹脂に形成されて、形成すべき案内溝を有する中間層203が形成される。基板201に形成された案内溝と中間層203に形成された案内溝の形状は、同様であってもよいし、異なっていてもよい。別法において、中間層203は、誘電体層217を保護する層を紫外線硬化性樹脂で形成し、その上に案内溝を有する層を形成することにより、形成してよい。その場合、得られる中間層は2層構造である。あるいは、中間層は、3以上の層を積層して構成してよい。また、スピンコート工法のほかに、印刷工法、インクジェット工法およびキャスティング工法により中間層203を形成してもよい。
中間層203まで形成した基板201を再びスパッタリング装置に配置して、中間層203の案内溝を有する面に、誘電体層221を成膜する。誘電体層221もまた、誘電体層221を構成する元素、混合物または化合物を含むターゲットをスパッタリングすることにより成膜される。スパッタリングは、高周波電源を用いて、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。可能であれば直流電源やパルス発生式直流電源を用いてもよい。希ガスは、Arガス、Krガス、Xeガスのいずれでもよい。
誘電体層221を成膜するターゲットとしては、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、Ti−OおよびW−Oのうちの少なくとも一つを含む材料を用いてよい。あるいは、Zr−O、Nb−O、Bi−O、Ce−O、Ti−OおよびW−Oのうちの少なくとも一つを50mol%以上含む材料を使用してもよい。誘電体層221の材料を形成できるようにターゲットの材料・組成を決める。スパッタリング装置によっては、ターゲットの組成と形成される誘電体層の組成が一致しない場合もあるので、その場合はターゲットの組成を調整して、目標の組成の誘電体層221を得ることができる。また酸化物は、スパッタリング中に酸素が欠損する場合があるので、酸素欠損を抑えたターゲットを用いるかあるいは、10%以下の少量の酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中でスパッタリングしてよい。また、金属、半金属および半導体材料のターゲットを用いて、10%以上の多めの酸素ガスを希ガスに混合した雰囲気中や、酸素ガスと窒素ガスを希ガスに混合した雰囲気中で、反応性スパッタリングにより誘電体層221を形成してもよい。
あるいは、誘電体層221は、単体の化合物の各々のターゲットを複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって、形成することもできる。また、誘電体層221は、2以上の化合物を組み合わせた2元系ターゲットや3元系ターゲット等を、複数の電源を用いて同時にスパッタリングすることによって形成することもできる。これらのターゲットを使用する場合でも、スパッタリングは、希ガス雰囲気中、または酸素ガスおよび/または窒素ガスと希ガスとの混合ガス雰囲気中で実施してよい。
続いて、誘電体層221の表面に、反射層222を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。留意すべき点は、既に述べたように、反射層222の好ましい膜厚が5nm以上15nm以下と薄いため、反射層222を成膜する工程では、電源の出力は反射層112を成膜する場合よりも小さくしてもよい点である。また、本発明の記録層225についても、好ましい膜厚が4nm以上10nm以下と薄いため、記録層225を成膜する工程では、電源の出力は記録層115を成膜する場合よりも小さくしてもよい。このようにして、第2情報層220が中間層203上に形成される。
第2の情報層220まで形成した基板201をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層227の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層202を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層210および第2の情報層220の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層203を形成する前もしくは後に、第1の情報層210について実施し、透明層202を形成する前もしくは後に、第2の情報層220について実施してよい。あるいは、透明層202を形成する前もしくは後に、第1の情報層210および第2の情報層220について初期化工程を実施してもよい。このようにして、実施の形態2の情報記録媒体200を製造することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3として、情報記録媒体の一例を説明する。図3に、その情報記録媒体300の一部断面を示す。情報記録媒体300には、基板301上に成膜された第1の情報層310、中間層303、第2の情報層320、中間層304、第3の情報層330および透明層302が順に配置されている。第1の情報層310は、基板301の一方の表面に成膜された反射層312、誘電体層313、界面層314、記録層315、界面層316および誘電体層317がこの順に配置されてなる。第2の情報層320は、中間層303の一方の表面に成膜された誘電体層321、反射層322、誘電体層323、界面層324、記録層325、界面層326および誘電体層327がこの順に配置されてなる。第3の情報層330は、中間層304の一方の表面に成膜された誘電体層331、反射層332、誘電体層333、界面層334、記録層335、界面層336および誘電体層337がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層302の側から入射される。第1の情報層310には、第3の情報層330および第2の情報層320を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体300においては、3つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の3倍程度の、75GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、3つの情報層で100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体300においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、3つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1、第2および第3の情報層の反射率と、第2および第3の情報層の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として実効反射率がRc約2.5%、Ra約0.5%となるように設計した構成を説明する。第3の情報層330の透過率((Tc+Ta)/2)が約65%、第2の情報層320の透過率が約55%となるように設計する場合、第1の情報層310は単独でRcが約20%、Raが約4%、第2の情報層320は単独でRcが約6%、Raが約1.2%、第3の情報層330は単独でRcが約2.5%、Raが約0.5%となるように設計される。
次に、基板301、中間層303、中間層304および透明層302の機能、材料および厚みについて説明する。基板301は、実施の形態1の基板101と同様の機能を有し、同様の形状および材料を用いることができる。中間層303は、レーザ光10の、第2の情報層320における焦点位置と第1の情報層310における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層320の案内溝が形成されてよい。同様に、中間層304は、レーザ光10の、第3の情報層330における焦点位置と第2の情報層320における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第3の情報層330の案内溝が形成されてよい。中間層303および304は、いずれも紫外線硬化性樹脂で形成することができる。透明層302についても、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。
透明層302の表面から第1の情報層310の記録層315までの距離が、実施の形態2同様、80μm以上120μm以下となることが好ましい。さらに、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330からの信号の再生と、これら情報層への信号の記録・消去・書換えとが、互いに他の情報層からの影響を受けずに良好に行えるよう、中間層303と中間層304の膜厚は異なることが好ましい。各中間層の膜厚は、3μm以上30μm以下の範囲で選ばれることが好ましく、10μm以上30μm以下の範囲で選ばれることがより好ましい。例えば、透明層302の表面から記録層315までの距離が100μmとなるように、中間層303、中間層304、透明層302の膜厚を設定してよい。一例として、中間層303を23μm、中間層304を14μm、透明層302を63μmのように設定できる。あるいは、順に、16μm、24μm、60μmのように設定することもできる。透明層302の膜厚は20μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上80μm以下がより好ましい。本実施の形態においても、中間層は情報層を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてよい。
以下、第1の情報層310の構成から順に説明する。第1の情報層310の反射層312から誘電体層317は、実施の形態1の情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第2の情報層320の構成について説明する。第2の情報層320は、レーザ光10が第1の情報層310に到達し得るように、高透過率となるように設計される。誘電体層321は、実施の形態2における誘電体層221と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第2の情報層320において、4以上の反射率比と55%以上の光透過率が得られるよう、誘電体層321の膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層322は、実施の形態2における反射層222と同様の機能を有する。好ましい材料も同様である。膜厚は5nm以上18nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層325にマークが形成されにくくなる。また、18nmよりも厚いと、第2の情報層320の光透過率が50%に満たなくなる。誘電体層323および誘電体層327は、実施の形態2における誘電体層223および誘電体層227と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。屈折率が2〜3である誘電体材料を誘電体層323および誘電体層327とする場合、誘電体層327の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層323の厚さは、好ましくは2nm以上40nm以下であり、より好ましくは3nm以上30nm以下である。界面層324および界面層326は、実施の形態1における界面層114および116と同様の機能を有し、材料も好ましい膜厚も同様である。また、界面層324および界面層326は、実施の形態1同様必要に応じて設けてよい。
本発明の記録層325は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第2の情報層320は55%以上の光透過率を要するため、記録層325の膜厚は3nm以上9nm以下が好ましい。9nmを超えると第2の情報層320の光透過率が低下し、3nm未満であると記録層325の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層325はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、15原子%以上35原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層325においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
続いて、第3の情報層330の構成について説明する。第3の情報層330は、レーザ光10が第1の情報層310並びに第2の情報層320に到達し得るように、第2の情報層320よりも高透過率となるように設計される。誘電体層331は、誘電体層321と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第3の情報層330において、4以上の反射率比と65%以上の光透過率が得られるよう、膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層332は、反射層322と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。膜厚は5nm以上20nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層335にマークが形成されにくくなる。また、20nmよりも厚いと、第3の情報層330の光透過率が60%に満たなくなる。誘電体層333および337は、誘電体層323および327と同様の機能を有し、好ましい材料と膜厚も同様である。界面層334および界面層336は、実施の形態1の界面層114および116と同様である。
本発明の記録層335は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第3の情報層330は65%以上の光透過率を要するため、記録層335の膜厚は2nm以上7nm以下が好ましい。7nmを超えると第3の情報層330の光透過率が低下し、2nm未満であると記録層335の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層335では、より大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、10原子%以上30原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層335においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、実施の形態2同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層315が本発明の記録層である場合には、記録層325および記録層335には従来の書換え形記録層を用いてもよい。記録層325と記録層335が本発明の記録層である場合には、記録層315には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
あるいは、記録層315が本発明の記録層である場合には、情報層320と330は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。記録層335と記録層325が本発明の記録層である場合には、情報層310は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層と再生専用形情報層に用いることができる記録層の材料は、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
続いて、実施の形態3の情報記録媒体300を製造する方法を説明する。情報記録媒体300は、支持体となる基板301上に第1情報層310、中間層303、第2情報層320、中間層304、第3情報層330、透明層302を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板301をスパッタリング装置に配置し、基板301の案内溝が形成された表面に、反射層312を成膜する工程から誘電体層317を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層310が基板301上に形成される。第1の情報層310を形成した基板301を、スパッタリング装置から取り出し、中間層303を形成する。中間層303を形成する工程は、実施の形態2の中間層203を形成する工程と同様にして実施される。中間層303まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層303の案内溝を有する面に、誘電体層321を成膜する工程から誘電体層327を成膜する工程までを、実施の形態2の誘電体層221を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第2情報層320が中間層303上に形成される。第2の情報層320まで形成した基板301を、スパッタリング装置から取り出し、中間層303と同様にして、中間層304を形成する。
中間層304まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層304の案内溝を有する面に、誘電体層331を成膜する工程から誘電体層337を成膜する工程までを、上述の誘電体層321を成膜する工程から誘電体層327を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第3情報層330が中間層304上に形成される。
第3の情報層330まで形成した基板301をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層337の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層302を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層303を形成する前もしくは後に、第1の情報層310について実施し、中間層304を形成する前もしくは後に、第2の情報層320について実施し、透明層302を形成する前もしくは後に、第3の情報層330について実施してよい。あるいは、透明層302を形成する前もしくは後に、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330について初期化工程を実施してもよい。本発明の効果は、初期化工程の実施順によらない。このようにして、実施の形態3の情報記録媒体300を製造することができる。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4として、情報記録媒体の一例を説明する。図4に、その情報記録媒体400の一部断面を示す。情報記録媒体400には、基板401上に成膜された第1の情報層410、中間層403、第2の情報層420、中間層404、第3の情報層430、中間層405、第4の情報層440および透明層402が順に配置されている。
第1の情報層410は、基板401の一方の表面に成膜された反射層412、誘電体層413、界面層414、記録層415、界面層416および誘電体層417がこの順に配置されてなる。第2の情報層420は、中間層403の一方の表面に成膜された誘電体層421、反射層422、誘電体層423、界面層424、記録層425、界面層426および誘電体層427がこの順に配置されてなる。第3の情報層430は、中間層404の一方の表面に成膜された誘電体層431、反射層432、誘電体層433、界面層434、記録層435、界面層436および誘電体層437がこの順に配置されてなる。第4の情報層440は、中間層405の一方の表面に成膜された誘電体層441、反射層442、誘電体層443、界面層444、記録層445、界面層446および誘電体層447がこの順に配置されてなる。
この形態においても、レーザ光10は、透明層402の側から入射される。第1の情報層410には、第4の情報層440、第3の情報層430および第2の情報層420を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体400においては、4つの記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の4倍程度の、100GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、4つの情報層で133GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体400においても、CAV仕様で使用してもよい。
光学的には、4つの情報層の実効反射率はおおよそ同等であることが好ましく、それは第1、第2、第3および第4の情報層の反射率と、第2、第3および第4の情報層の透過率を各々調整することにより達成される。本実施の形態では、一例として、実効反射率がRc約1.3%、Ra約0.3%となるように設計した構成を説明する。第4の情報層440の透過率が約68%、第3の情報層430の透過率が約65%および第2の情報層420の透過率が約55%となるように設計する場合、第1の情報層410は単独でRcが約22%、Raが約4%、第2の情報層420は単独でRcが約6%、Raが約1.3%、第3の情報層430は単独でRcが約3%、Raが約0.6%および第4の情報層440は単独でRcが約1.3%、Raが約0.3%となるように設計される。
次に、基板401、中間層403、中間層404、中間層405および透明層402の機能、材料および厚みについて説明する。基板401は、実施の形態1の基板101と同様の機能を有し、同様の形状および材料を用いることができる。中間層403は、レーザ光10の、第2の情報層420における焦点位置と第1の情報層410における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第2の情報層420の案内溝が形成されてよい。同様に、中間層404は、レーザ光10の、第3の情報層430における焦点位置と第2の情報層420における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第3の情報層430の案内溝が形成されてよい。中間層405は、レーザ光10の、第4の情報層440における焦点位置と第3の情報層430における焦点位置とを分離する機能を有し、必要に応じて、第4の情報層440の案内溝が形成されてよい。中間層403、404および405は、いずれも紫外線硬化性樹脂で形成することができる。透明層402についても、実施の形態1の透明層102と同様の機能を有し、同様の材料を用いることができる。
透明層402の表面から第1の情報層410の記録層415までの距離が、実施の形態2同様、80μm以上120μm以下となることが好ましい。さらに、第1の情報層、第2の情報層、第3の情報層および第4の情報層からの信号の再生と、これら情報層への信号の記録・消去・書換えとが、互いに他の情報層からの影響を受けずに良好に行えるよう、中間層403、中間層404および中間層405の膜厚は異なっていることが好ましい。各中間層の膜厚は、3μm以上30μm以下の範囲から選ばれることが好ましく、6μm以上28μm以下の範囲から選ばれることがより好ましい。例えば、透明層402の表面から記録層415までの距離が100μmとなるように、中間層403、中間層404、中間層405、透明層402の膜厚を設定してよい。一例として、中間層403を22μm、中間層404を18μm、中間層405を10μm、透明層402を50μmのように設定することができる。あるいは、中間層403を18μm、中間層404を25μm、中間層405を14μm、透明層402を43μmと設定することもできる。透明層302の膜厚は10μm以上90μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましい。本実施の形態においても、中間層は情報層を保護する層と案内溝を有する層との2層以上の構成にしてよい。
以下、第1の情報層410の構成から順に説明する。第1の情報層410の反射層412から誘電体層417は、実施の形態1の情報層110の反射層112から誘電体層117の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第2の情報層420の構成について説明する。第2の情報層420は、レーザ光10が第1の情報層410に到達し得るように、高透過率となるように設計される。誘電体層421から誘電体層427は、実施の形態3における第2情報層320の誘電体層321から誘電体層327の説明と同様であるので、詳細な説明は省略する。
続いて、第3の情報層430の構成について説明する。第3の情報層430は、レーザ光10が第1の情報層410並びに第2の情報層420に到達し得るように、第2の情報層420よりも高透過率となるように設計される。誘電体層431から誘電体層437は、実施の形態3における第3の情報層330の誘電体層331から誘電体層337の説明と同様である。誘電体層433および437は、屈折率が2から3である誘電体材料を用いてもよく、誘電体層437の厚さは好ましくは10nm以上80nm以下であり、より好ましくは20nm以上60nm以下である。また、誘電体層433の厚さは、好ましくは2nm以上40nm以下であり、より好ましくは3nm以上30nm以下である。他の詳細な説明は省略する。
続いて、第4の情報層440の構成について説明する。第4の情報層440は、レーザ光10が第1の情報層410、第2の情報層420並びに第3の情報層430に到達し得るように、第3の情報層430よりも高透過率となるように設計される。
誘電体層441は、誘電体層431と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。第4の情報層440において、4以上の反射率比と68%以上の光透過率が得られるよう、膜厚は2nm以上30nm以下であることが好ましい。反射層442は、反射層432と同様の機能を有し、好ましい材料も同様である。膜厚は、記録層が薄いので厚めに設定することもでき、反射率比と透過率が良好となるように決める。5nm以上25nm以下が好ましい。5nmよりも薄いと、熱を拡散させる機能が低下して記録層445にマークが形成されにくくなる。また、25nmよりも厚いと、記録層が薄くても第4の情報層440の光透過率が65%に満たなくなる。誘電体層443および誘電体層447は、誘電体層433および誘電体層437と同様の機能を有し、好ましい材料と膜厚も同様である。界面層444および界面層446は、実施の形態1の界面層114および界面層116と同様である。
本発明の記録層445は、相変化を生じ、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含み、各元素は実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、第4の情報層440は68%以上の光透過率を要するため、記録層445の膜厚は1nm以上7nm以下が好ましい。7nmを超えると第4の情報層440の光透過率が低下し、1nm未満であると記録層445の光学的変化が小さくなる。記録層は、膜厚が薄くなると結晶化速度が低下するため、記録層445はより大きな結晶化速度を有する組成比が適している。
具体的には、Sb100-x-yCxLyの、CとLを合わせた組成比は、2原子%以上25原子%以下が好ましい。この範囲であれば、例えば4倍速に相当する転送レートで良好な記録消去特性が得られ、低転送レートでの非晶質状態の安定性を確保できる。大きな光学的変化と大きな結晶化速度を維持するために、記録層445においてもx≧yが好ましい。具体的な組成は、Sb−C−B等、記録層115と同様である。
なお、実施の形態3同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、記録層415が本発明の記録層である場合には、記録層425、記録層435および記録層445には従来の書換え形記録層を用いてもよい。記録層425、記録層435と記録層445が本発明の記録層である場合には、記録層415には従来の書換え形記録層を用いてもよい。従来の書換え形記録層としては、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
あるいは、記録層415が本発明の記録層である場合には、第2の情報層420、第3の情報層430と第4の情報層440は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。記録層435と記録層425が本発明の記録層である場合には、第1の情報層410および第4の情報層440は再生専用形情報層もしくは追記形情報層であってよい。追記形情報層と再生専用形情報層に用いることができる記録層の材料は、実施の形態2に記載の材料を用いてよい。
続いて、実施の形態4の情報記録媒体400を製造する方法を説明する。情報記録媒体400は、支持体となる基板401上に第1情報層410、中間層403、第2情報層420、中間層404、第3情報層430、中間層405、第4情報層440、透明層402を順に形成していく。
案内溝(グルーブ面とランド面)が形成された基板401をスパッタリング装置に配置し、基板401の案内溝が形成された表面に、反射層412を成膜する工程から誘電体層417を成膜する工程までを、実施の形態1の反射層112を成膜する工程から誘電体層117を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第1情報層410が基板401上に形成される。第1の情報層410を形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層403を形成する。中間層403を形成する工程は、実施の形態2の中間層203を形成する工程と同様にして実施される。
中間層403まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層403の案内溝を有する面に、誘電体層421を成膜する工程から誘電体層427を成膜する工程までを、実施の形態2の誘電体層221を成膜する工程から誘電体層227を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第2の情報層420が中間層403上に形成される。第2の情報層420まで形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層403と同様にして、中間層404を形成する。
中間層404まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層404の案内溝を有する面に、誘電体層431を成膜する工程から誘電体層437を成膜する工程までを、上述の誘電体層421を成膜する工程から誘電体層427を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第3の情報層430が中間層404上に形成される。第3の情報層430まで形成した基板401を、スパッタリング装置から取り出し、中間層404と同様にして、中間層405を形成する。
中間層405まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層405の案内溝を有する面に、誘電体層441を成膜する工程から誘電体層447を成膜する工程までを、上述の誘電体層431を成膜する工程から誘電体層437を成膜する工程までと同様にして実施する。このようにして、第4の情報層440が中間層405上に形成される。
第4の情報層440まで形成した基板401をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層447の表面に、実施の形態1の透明層102を形成する工程と同様にして、透明層402を形成し、透明層形成工程を終了させる。
透明層形成工程が終了した後は、必要に応じて、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の初期化工程を実施する。初期化工程は、中間層403を形成する前もしくは後に、第1の情報層410について実施し、中間層404を形成する前もしくは後に、第2の情報層420について実施し、中間層405を形成する前もしくは後に、第3の情報層430について実施し、透明層402を形成する前もしくは後に、第4の情報層440について実施してよい。
あるいは、透明層402を形成する前もしくは後に、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440について初期化工程を実施してもよい。本発明の効果は、初期化工程の実施順によらない。このようにして、実施の形態4の情報記録媒体400を製造することができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5として、情報記録媒体の一例を説明する。図5に、その情報記録媒体500の一部断面を示す。情報記録媒体500には、基板501上に第1の情報層510、第2の情報層520、第3の情報層530、・・・および第Nの情報層5N0が、各々中間層を介して形成され、さらに透明層502が形成されている。
この形態においても、レーザ光10は、透明層502の側から入射される。第1の情報層510には、第Nの情報層5N0、・・・、第3の情報層530および第2の情報層520を通過したレーザ光10で記録再生する。情報記録媒体500においては、N個の記録層にそれぞれ情報を記録できる。例えば、N=5であれば、波長405nm付近の青紫色域のレーザ光を記録再生に使用して、上記実施の形態1の5倍程度の125GB以上の容量を有する情報記録媒体を得ることができる。あるいは、記録密度を高めて1情報層あたりの容量を約33GBにして、5つの情報層で165GBの容量を有する情報記録媒体を得ることができる。情報記録媒体500においても、CAV仕様で使用してもよい。
実施の形態4同様、本発明の記録層は、少なくとも一つの情報層に含まれていればよい。例えば、第Nの情報層5N0が、本発明の記録層を含む場合には、第1から第(N−1)の情報層は、従来の書換え形記録層を含んでもよいし、再生専用形記録層もしくは追記形記録層を含んでもよい。あるいは、第1の情報層510が、本発明の記録層を含む場合には、第2〜第Nの情報層は、従来の書換え形記録層を含んでもよいし、再生専用形記録層もしくは追記形記録層を含んでもよい。各情報層の詳細な構成については、既に述べた実施の形態と同様であるので、説明を省略する。また、情報記録媒体500は、上記実施の形態の記載同様、基板501の溝が形成された面に、情報層と中間層を積み上げていくことにより製造できる。成膜工程、中間層形成工程、透明層形成工程、および初期化工程は既に述べた実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6として、本発明の情報記録媒体の別の例を説明する。実施の形態6の電気的情報記録媒体600の一構成例を図6に示す。電気的情報記録媒体600は、電気的エネルギー(特に電流)の印加によって情報の記録再生が可能な情報記録媒体である。
電気的情報記録媒体600には、基板601の表面に、下部電極602、記録層603および上部電極604がこの順に形成されている。下部電極602および上部電極604は、記録層603に電流を印加するために形成する。基板601として、具体的には、Si基板等の半導体基板、またはポリカーボネート基板、SiO2基板およびAl2O3基板等の絶縁性基板を使用できる。下部電極602および上部電極604は、導電材料、例えば、Cu、Au、Ag、Pt、Al、Ti、WおよびCrならびにこれらの混合物のような金属を用いることができる。
本発明の記録層に用いられる記録材料は、電気的エネルギーを印加することによって生じるジュール熱によっても、結晶相と非晶質相との間で可逆的相変化を生じ得る。したがって、本実施の形態の記録層603は、本発明における記録材料、すなわちアンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む材料によって形成されている。なお、記録層603に含まれる各元素は、実施の形態1の記録層115と同様の機能を有する。また、本実施の形態の記録層603は、Sb100-x-yCxLyで表され、且つxおよびyがx+y≦50を満たす材料からなるものであることが好ましい。
下部電極602および上部電極604はスパッタリング法により形成することができる。Arガス雰囲気中、またはArガスと反応ガス(酸素ガスまたは窒素ガスから選ばれる少なくとも1種のガス)との混合ガス雰囲気中で、材料となる金属ターゲットまたは合金ターゲットをスパッタリングすることによって形成できる。なお、成膜方法としてはこれに限定されず、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学的気相成長(CVD)法、または分子線エピタキシ(MBE)法等を用いることも可能である。記録層603を成膜する工程は、実施の形態1の記録層115を成膜する工程と同様にして実施される。
電気的情報記録媒体600に、印加部609を介して電気的情報記録再生装置610を電気的に接続する。この電気的情報記録再生装置610により記録層603に電流パルスを印加するために、パルス電源605が、スイッチ608を介して下部電極602と上部電極604とに接続される。また、記録層603の相変化による抵抗値の変化を検出するために、下部電極602と上部電極604の間にスイッチ607を介して抵抗測定器606が接続される。
非晶質相(高抵抗状態)にある記録層603を、結晶相(低抵抗状態)に変化させるためには、スイッチ608を閉じて(スイッチ607は開く)電極間に電流パルスを印加し、電流パルスが印加される部分の温度が、材料の結晶化温度より高く、且つ融点より低い温度にて、結晶化時間の間保持されるようにする。結晶相から再度非晶質相に戻す場合には、結晶化時よりも相対的に高い電流パルスをより短い時間で印加し、記録層を融点より高い温度にして溶融した後、急激に冷却する。なお、電気的情報記録再生装置610のパルス電源605は、記録・消去パルスを出力できる電源である。
この電気的情報記録媒体600をマトリクス的に多数配置することによって、図7に示すような大容量の電気的情報記録媒体700を構成することができる。各メモリセル703には、微小領域に電気的情報記録媒体600と同様の構成が形成されている。各々のメモリセル703への情報の記録再生は、アドレス指定回路715(図8に示す)により、ワード線701およびビット線702をそれぞれ一つ指定することによって行う。
図8は電気的情報記録媒体700を用いた、情報記録システムの一構成例を示したものである。記憶装置712は、電気的情報記録媒体700と、アドレス指定回路715によって構成される。また、記憶装置712を、少なくともパルス電源713と抵抗測定器714から構成される外部回路711に電気的に接続することにより、電気的情報記録媒体700への情報の記録再生を行うことができる。
次に、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の材料と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、組成比がSb60C30L10(添え字は各元素の原子%を示す。以下同様。)で、LがB、N、O、Mg、AlおよびSである、6種類の材料を用いた。媒体番号は順に実施例が100−1〜6である。比較のために、Sb60Ge30Mg10、Sb60Ge30Al10、Ge45Bi4Te51、Ge35Bi12Te53(GeTeとBi2Te3の化合物)、Sb60C30Ti10およびSb60C30Cu10の記録材料からなる記録層を有する情報記録媒体100も製造して性能を調べた。これらの比較例は、順に1−1〜6とした。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体100の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例100−1〜6および比較例1−1〜6は、記録層115を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板101として、案内溝(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間0.32μm)が形成されたポリカーボネート基板(直径120mm、厚さ1.1mm)を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板101の案内溝形成側表面に、反射層112としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層113としてCeO2を10nm、界面層114として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50(添え字はmol%を示す。以下同様。)を3nm、記録層115としてSb60C30L10を10nm、界面層116として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層117として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで情報層110が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層112は、Ag−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層113は、CeO2ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。界面層114は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。
次に記録層115のスパッタリング条件について、媒体番号毎に説明する。直流電源を用いて、圧力0.13Paの雰囲気中でターゲットをスパッタリングする条件は、材料によらず同様である。
実施例100−1は、Sb55C33B12ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30B10記録層を形成した。
実施例100−2は、Sb64C36ターゲットを、ArガスとN2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、100Wの出力で反応性スパッタリングして、Sb60C30N10記録層を形成した。
実施例100−3は、Sb64C36ターゲットを、ArガスとO2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、100Wの出力で反応性スパッタリングして、Sb60C30O10記録層を形成した。
実施例100−4は、Sb58C33Mg9ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Mg10記録層を形成した。
実施例100−5は、Sb57C33Al10ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Al10記録層を形成した。
実施例100−6は、Sb58C33S9ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30S10記録層を形成した。
比較例1−1は、Sb−Ge−Mgターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60Ge30Mg10記録層を形成した。
比較例1−2は、Sb−Ge−Alターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60Ge30Al10記録層を形成した。
比較例1−3は、Ge−Bi−Te合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Ge45Bi4Te51記録層を形成した。
比較例1−4は、Ge−Bi−Te合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Ge35Bi12Te53記録層を形成した。
比較例1−5は、Sb−C−Ti合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Ti10記録層を形成した。
比較例1−6は、Sb−C−Cu合金ターゲットを、Arガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb60C30Cu10記録層を形成した。
界面層116は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層117は、(ZnS)80(SiO2)20ターゲットを、圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、高周波電源を用いて400Wの出力でスパッタリングして形成した。
以上のようにして基板101の上に反射層112、誘電体層113、界面層114、記録層115、界面層116および誘電体層117を順次成膜した基板101をスパッタリング装置から取り出した。それから、誘電体層117の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で100μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層102を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、情報記録媒体100の記録層115を、半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、実施例100−1〜6の情報記録媒体100および比較例1−1〜4の作製が完了した。これらの情報記録媒体は、鏡面部反射率がRc約21%、Ra約4%であった。
次に、情報記録媒体100の記録再生評価方法について説明する。情報記録媒体100に情報を記録するために、情報記録媒体100を回転させるスピンドルモータと、レーザ光10を発する半導体レーザを備えた光学ヘッドと、レーザ光10を情報記録媒体100の記録層115上に集光させる対物レンズとを具備した一般的な構成の記録再生装置を用いた。情報記録媒体100の評価においては、波長405nmの半導体レーザと開口数0.85の対物レンズを使用し、25GB容量相当の記録を行った。用いた記録再生装置のレーザ光10のレーザパワー上限は、媒体の盤面で20mWである。
記録は、2倍速(9.84m/秒、72Mbps)と4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、半径50mmの位置で実施した。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.35mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも0.35mWよりも大きいパワーで実施してもよい。
記録再生評価は、信号振幅対ノイズ比(CNR)と消去率の測定で実施した。はじめに、CNRの測定方法について説明する。レーザ光10を、高パワーレベルの記録パワー(mW)と低パワーレベルの消去パワー(mW)との間でパワー変調しながら情報記録媒体100に向けて照射して、2T(マーク長0.149μm)の単一信号と9T(マーク長0.671μm)の単一信号を交互に計11回、グルーブ面に記録する。記録するパルスの波形は、マルチパルスである。11回目の2T信号が記録された状態で、スペクトラムアナライザーで振幅(C)(dBm)とノイズ(N)(dBm)を測定し、その差からCNR(dB)を測定する。
次に、消去率の測定方法について説明する。上記の11回目の2T信号の振幅を測定し、12回目に9T信号を記録して、2T信号がどれだけ減衰したかスペクトラムアナライザーで測定する。この減衰量を消去率(dB)と定義する。
まず、記録パワー(Pw)および消去パワー(Pe)を以下の手順で設定した。消去パワーを一定の適切な値に固定し、2T振幅の記録パワー依存性を測定した。これにより、所定のPw1を設定した。記録パワーをPw1に固定し、CNRと消去率の消去パワー依存性を測定した。これにより、所定の低パワー側Pe0と高パワー側Pe1の平均値をPeとした。消去パワーをPeに固定し、再び2T振幅の記録パワー依存性を測定した。これにより、所定のPwを設定した。この手順で、2倍速および4倍速のPwとPeをそれぞれ決めた。情報記録媒体100−1〜6および比較例1−1〜6について、PwとPeにおけるCNRと消去率を2倍速と4倍速の条件で測定した((1)2TCNR、(2)2T消去率)。
次に信頼性評価方法について説明する。信頼性評価は、記録した信号が高温高湿条件下に置かれても保存されるかどうか、また、高温高湿条件下に置かれた後も書換が可能かどうかを調べるために実施する。評価には、上記と同様の記録再生装置を用いた。予め、情報記録媒体100−1〜6と比較例1−1〜6に、上記のPwおよびPeのパワーで2T信号と9T信号を交互に計11回、同一トラックのグルーブ面に記録する。これを、2倍速と4倍速の条件で、複数トラックで実施し、2TCNRを測定しておく。温度80℃、相対湿度20%の恒温槽にこれらの媒体を100時間放置した後、取り出した。取り出した後、記録しておいた2T信号を1倍速で再生してCNRを測定した(記録保存性)。また、記録しておいた2T信号に、PwとPeで9T信号を1回オーバライトして消去率を測定した(書換え保存性)。この際、2倍速で記録された信号には2倍速で、4倍速で記録された信号には4倍速で1回オーバライトをした。恒温槽に放置する前のCNR(B)と放置した後のCNR(A)との差、CNR(A)−CNR(B)、から記録保存性を評価する((3)CNR変化)。放置後のCNRが低下していると信頼性は芳しくない。記録保存性は低倍速で劣化しやすい。また、恒温槽に放置する前の消去率(B)と放置した後の消去率(A)との差、消去率(A)−消去率(B)、から書換え保存性を評価する((4)消去率変化)。放置後の消去率が低下していると信頼性は芳しくない。書換え保存性は高倍速で劣化しやすい。
2倍速、4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表1)に示す。表中、(1)2TCNRは、45dB以上を○、40dB以上45dB未満を△、40dB未満を×、(2)2T消去率は、30dB以上であれば○、20dB以上30dB未満であれば△、20dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す。×評価は、その線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能であることを示す。○は△よりも好ましい。
また、総合評価は、全ての評価項目で○であれば◎、△が一つであれば○、△が2以上であれば△、一つでも×の項目があれば×である。◎が最も好ましく、○がより好ましく、△が好ましい。×は使用困難である。
(表1)に示す様に、実施例の媒体100−1〜6は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、2倍速から4倍速で使用できる。特に、100−1、2、4、5、6は全ての項目で○の結果が得られた。媒体100−1〜6は、いずれも2倍速のPwが7mW以下、Peが4mW以下、4倍速のPwが9mW以下、Peが5mW以下であった。本発明の記録層115を用いることにより、低倍速における記録保存性と高倍速における書換保存性を両立させることができた。これは、本発明の記録層が、4倍速に対応できる高速結晶化能と、200℃以上の高い結晶化温度と、大きな光学変化を併せ持つことによる。
これに対し比較例は、媒体1−1と1−2は結晶化速度が不足して、消去率の4倍速および消去率変化が×評価となった。消去率が不足すると、11回の繰り返し記録中に消し残りが蓄積されて、CNRの4倍速も△評価となった。媒体1−3も結晶化速度が不足して、消去率の4倍速と消去率変化の4倍速が×評価となった。媒体1−4は光学変化が小さく且つ結晶化温度が低下したため、CNRの2倍速およびCNR変化で×評価となった。CNR変化が大きく、消去率変化は測定できなかった。媒体1−5、1−6は、2倍速では消去率変化の評価が△であったが、使用可能レベルであった。しかしながら、4倍速では結晶化速度が不十分で、CNRおよび消去率が共に△、消去率変化が×となり、総合評価は×となった。このように、比較例では、低倍速における記録保存性と高倍速における書換保存性を両立させることができなかった。
(実施例2)
実施例2では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、Sb100-x-yCxAlyを用いた。組成比の異なる記録層115を有する情報記録媒体100を6種類作製し、媒体番号100−11〜16とした。100−11〜15はx+yが50である。100−16は、x+yが52である。
情報記録媒体100の製造方法とスパッタリング条件は、記録層115を除いて実施例1と同様である。本実施例の記録層115の製造方法を説明する。いずれも、Sb−C−AlターゲットをArガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングする。用いたターゲットの組成比は異なる。媒体100−11は、Sb45C50Al5ターゲットをスパッタリングして、Sb50C45Al5記録層を形成した。媒体100−12は、Sb46C44Al10ターゲットをスパッタリングして、Sb50C40Al10記録層を形成した。媒体100−13は、Sb47C33Al20ターゲットをスパッタリングして、Sb50C30Al20記録層を形成した。媒体100−14は、Sb47C28Al25ターゲットをスパッタリングして、Sb50C25Al25記録層を形成した。媒体100−15は、Sb48C22Al30ターゲットをスパッタリングして、Sb50C20Al30記録層を形成した。媒体100−16は、Sb45C29Al26ターゲットをスパッタリングして、Sb48C26Al26記録層を形成した。
記録再生特性並びに信頼性は、各々実施例1に記載の記録再生評価方法と信頼性評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNR、2T消去率、CNR変化および消去率変化を測定した。その結果を(表2)に示す。表中の○、△、×の判定は実施例1の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×も実施例1の判定と同様である。
(表2)に示す様に、媒体100−11〜16は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである100−11〜14は、すべての項目で○の評価が得られた。y>xである100−15は、消去率変化が△評価であった。x+y>50である100−16は、やや消去率の低下が見られ、消去率変化と共に△評価が2つあった。よって、記録再生特性と信頼性を両立できるのは、x+y≦50が好ましく、且つx≧yであることがより好ましい。
(実施例3)
実施例3では、図2の情報記録媒体200を製造し、記録層225の組成比と記録再生特性の関係を調べた。記録層225には、Sb100-x-yCxAlyを用いた。組成比の異なる記録層225を有する情報記録媒体200を5種類作製し、媒体番号200−1〜5とした。200−1〜5はx+yが40である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体200の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例200−1〜5は、記録層225を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板201として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板201の案内溝形成側表面に、反射層212としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層213としてCeO2を10nm、界面層214として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層215としてSb50C30Al20を10nm、界面層216として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層217として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで、第1の情報層210が形成された。
次に、誘電体層217の表面に、案内溝を有する中間層203を25μmの厚さで形成した。中間層203の案内溝形成側表面に、誘電体層221としてTiO2を18nm、反射層222としてAg−Cu系合金を13nm、誘電体層223として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を12nm、界面層224は設けずに、記録層225を6nm、界面層226として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層227として(ZnS)80(SiO2)20を35nm、順に積層した。これで、第2の情報層220が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層212から界面層214を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層215は、Sb47C33Al20ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、100Wの出力でスパッタリングして、Sb50C30Al20記録層を形成した。界面層216と誘電体層217を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして基板201の上に第1の情報層210を成膜した基板201を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層203を、次の手順で形成した。まず、誘電体層217の表面に、紫外線硬化性樹脂をスピンコートにより塗布した。次に、中間層に形成すべき案内溝と相補的である凹凸(深さ20nm、グルーブ−グルーブ間0.32μm)を有するポリカーボネート基板の凹凸形成面を、紫外線硬化性樹脂に密着させた。その状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、凹凸を有するポリカーボネート基板を剥離した。それにより、基板201と同様の形状の案内溝が中間層203の表面に形成された。
中間層203まで形成した基板201を再びスパッタリング装置に配置して、中間層203の表面に第2の情報層220を形成した。まず、中間層203上に、誘電体層221を形成する。誘電体層221は、TiO2ターゲットを圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、パルス発生式直流電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。続いて、反射層222は、Ag−Cu系合金ターゲットを、圧力0.4PaのArガス雰囲気中で、直流電源を用いて100Wの出力でスパッタリングして形成した。誘電体層223は、(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50ターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして形成した。
記録層225は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Alターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体200−1はSb56C40Al4ターゲットをスパッタリングして、Sb60C36Al4記録層を形成した。媒体200−2はSb57C35Al8ターゲットをスパッタリングして、Sb60C32Al8記録層を形成した。媒体200−3はSb58C26Al16ターゲットをスパッタリングして、Sb60C24Al16記録層を形成した。媒体200−4はSb58C22Al20ターゲットをスパッタリングして、Sb60C20Al20記録層を形成した。媒体200−5はSb58C18Al24ターゲットをスパッタリングして、Sb60C16Al24記録層を形成した。界面層226と誘電体層227を、実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして中間層203の上に第2の情報層220を成膜した基板201を、スパッタリング装置から取り出した。それから、誘電体層227の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で75μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層202を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに、記録層215を初期化し、その後記録層225を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面にわたって結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号200−1〜5の情報記録媒体200の作製が完了した。
作製した媒体番号200−1〜5は、第1の情報層210および第2の情報層220ともに、鏡面部実効反射率がRc約5%、Ra約1%であった。第1の情報層210の反射率は、第2の情報層220を通ったレーザ光10で測定した。また、第2の情報層220の光透過率はTc約55%、Ta約50%であった。透過率の測定には基板201に第2の情報層220と透明層202を形成した媒体を用い、半面初期化して分光光度計で測定した。
次に、記録再生評価方法について、実施例1および2と異なる点を説明する。第1の情報層210と第2の情報層220の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で0.70mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも0.70mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号200−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表3)に示す。表中、(1)2TCNRは、42dB以上を○、37dB以上42dB未満を△、37dB未満を×、(2)2T消去率は、27dB以上であれば○、22dB以上27dB未満であれば△、22dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す(レーザ光に近い情報層ほど、媒体の反り許容幅が大きいので、第2の情報層220の信号品質の目標値は、第1の情報層210のそれよりもゆるめてよいため、判定基準は変えている)。×評価は、その線速度での使用が困難であることを示し、○と△評価は使用可能であることを示す。○は△よりも好ましい。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表3)に示す様に、媒体200−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである200−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが16mW以下、Peが10mW以下であった。本実施例の記録層225は、実施例1および2の記録層115よりも膜厚が6nmと薄いため、Sbを60原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層によって、良好な結果が得られた。
(実施例4)
実施例4では、図3の情報記録媒体300を製造し、記録層335の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層335には、Sb100-x-yCxMgyを用いた。組成比の異なる記録層335を有する情報記録媒体300を5種類作製し、媒体番号300−1〜5とした。300−1〜5はx+yが30である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体300の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例300−1〜5は、記録層335を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板301として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板301の案内溝形成側表面に、反射層312としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層313としてCeO2を10nm、界面層314として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層315としてSb50C30Al20を10nm、界面層316として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層317として(ZnS)80(SiO2)20を45nm、順に積層した。これで、第1の情報層310が形成された。
次に、誘電体層317の表面に、案内溝を有する中間層303を23μmの厚さで形成した。中間層303の案内溝形成側表面に、誘電体層321としてNb2O5を12nm、反射層322としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層323として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層324は設けずに、記録層325としてSb60C24Al16を5.5nm、界面層326として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層327として(ZnS)80(SiO2)20を44nm、順に積層した。これで、第2の情報層320が形成された。
次に、誘電体層327の表面に、案内溝を有する中間層304を14μmの厚さで形成した。中間層304の案内溝形成側表面に、誘電体層331としてTiO2を19nm、反射層332としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層333として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を11nm、界面層334は設けずに、記録層335を4.5nm、界面層336として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層337として(ZnS)80(SiO2)20を32nm、順に積層した。これで、第3の情報層330が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層312から界面層314を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層315を実施例3の記録層215と同様の条件で形成した。界面層316と誘電体層317を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板301の上に第1の情報層310を成膜した基板301を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層303を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層303まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層303の表面に第2の情報層320を形成した。まず、誘電体層321を、Nb2O5ターゲットを圧力0.13PaのArガスとO2ガスの体積比が97:3である混合ガス雰囲気中で、高周波電源を用いて200Wの出力でスパッタリングして、中間層303上に形成した。続いて、反射層322を実施例3の反射層222と同様の条件で形成した。誘電体層323を実施例3の誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層325は、直流電源を用いて圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb58C26Al16ターゲットをスパッタリングして、Sb60C24Al16記録層を形成した。界面層326と誘電体層327を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板301の上に第2の情報層320まで成膜した基板301をスパッタリング装置から取り出す。次に、中間層304を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層304まで形成した基板301を再びスパッタリング装置に配置して、中間層304の表面に第3の情報層330を形成した。まず、中間層304上に、誘電体層331を実施例3の誘電体層221と同様の条件で形成した。反射層332と誘電体層333を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。
記録層335は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Mgターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体300−1はSb67C30Mg3ターゲットをスパッタリングして、Sb70C27Mg3記録層を形成した。媒体300−2はSb69C26Mg5ターゲットをスパッタリングして、Sb70C24Mg6記録層を形成した。媒体300−3はSb69C20Mg11ターゲットをスパッタリングして、Sb70C18Mg12記録層を形成した。媒体300−4はSb69C17Mg14ターゲットをスパッタリングして、Sb70C15Mg15記録層を形成した。媒体300−5はSb71C13Mg16ターゲットをスパッタリングして、Sb70C12Mg18記録層を形成した。界面層336と誘電体層337を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。
以上のようにして中間層304の上に第3の情報層330を成膜した基板301をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層337の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で63μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層302を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに、記録層315を初期化し、次に記録層325を初期化し、最後に記録層335を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面に亘って結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号300−1〜5の情報記録媒体300の作製が完了した。
作製した媒体番号300−1〜5は、第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330ともに、鏡面部実効反射率がRc約2.5%、Ra約0.5%であった。第1の情報層310の反射率は、第2の情報層320と第3の情報層330を通ったレーザ光10で測定した。同様に、第2の情報層320の反射率は、第3の情報層330を通ったレーザ光10で測定した。第2の情報層320の光透過率はTc約58%、Ta約54%であった。第3の情報層330の光透過率はTc約67%、Ta約63%であった。透過率の測定は実施例3と同様にして行った。
次に、記録再生評価方法について、実施例1〜3と異なる点を説明する。第1の情報層310、第2の情報層320および第3の情報層330の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で1.00mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも1.00mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号300−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表4)に示す。表中、(1)2TCNRは、40dB以上を○、35dB以上40dB未満を△、35dB未満を×、(2)2T消去率は、25dB以上であれば○、20dB以上25dB未満であれば△、20dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す(第3の情報層330の信号品質の目標値は、第2の情報層320のそれよりもゆるめてよいため、判定基準は変えている)。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表4)に示す様に、媒体300−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである300−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが18mW以下、Peが11mW以下であった。本実施例の記録層335は、実施例3の記録層225よりも膜厚が4.5nmと薄いため、Sbを70原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層を用いて良好な結果が得られた。
(実施例5)
実施例5では、図4の情報記録媒体400を製造し、記録層445の組成比と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層445には、Sb100-x-yCxByを用いた。組成比の異なる記録層445を有する情報記録媒体400を5種類作製し、媒体番号400−1〜5とした。400−1〜5はx+yが20である。
以下に実施内容を具体的に説明する。はじめに、情報記録媒体400の製造方法について説明する。製造には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用い、実施例400−1〜5は、記録層445を除いて、各層同じ材料、同じ膜厚、同じスパッタリング条件である。
各層の材料と膜厚を説明する。基板401として、実施例1の基板101と同様の基板を準備し、スパッタリング装置内に取り付けた。基板401の案内溝形成側表面に、反射層412としてAg−Cu系合金を100nm、誘電体層413としてCeO2を10nm、界面層414として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を3nm、記録層415としてSb50C30Al20を10nm、界面層416として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層417として(ZnS)80(SiO2)20を48nm、順に積層した。これで、第1の情報層410が形成された。
次に、誘電体層417の表面に、案内溝を有する中間層403を18μmの厚さで形成した。中間層403の案内溝形成側表面に、誘電体層421としてNb2O5を12nm、反射層422としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層423として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層424は設けずに、記録層425としてSb60C24Al16を5.5nm、界面層426として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層427として(ZnS)80(SiO2)20を44nm、順に積層した。これで、第2の情報層420が形成された。
次に、誘電体層427の表面に、案内溝を有する中間層404を25μmの厚さで形成した。中間層404の案内溝形成側表面に、誘電体層431としてNb2O5を21nm、反射層432としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層433として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を10nm、界面層434は設けずに、記録層435としてSb70C18Mg12を4.5nm、界面層436として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層437として(ZnS)80(SiO2)20を35nm、順に積層した。これで、第3の情報層430が形成された。
次に、誘電体層437の表面に、案内溝を有する中間層405を14μmの厚さで形成した。中間層405の案内溝形成側表面に、誘電体層441としてTiO2を14nm、反射層442としてAg−Cu系合金を10nm、誘電体層443として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、界面層444は設けずに、記録層445を4nm、界面層446として(ZrO2)25(SiO2)25(Cr2O3)50を5nm、誘電体層447として(ZnS)80(SiO2)20を33nm、順に積層した。これで、第4の情報層440が形成された。
各層のスパッタリング条件を説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。反射層412から界面層414を実施例1の反射層112から界面層114と同様の条件で形成した。記録層415を実施例3の記録層215と同様の条件で形成した。界面層416と誘電体層417を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第1の情報層410を成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層403を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層403まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層403の表面に第2の情報層420を形成した。まず、中間層403上に、誘電体層421を実施例4の誘電体層321と同様の条件で形成した。続いて、反射層422と誘電体層423を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層425を実施例4の記録層325と同様の条件で形成した。界面層426と誘電体層427を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第2の情報層420まで成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層404を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層404まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層404の表面に第3の情報層430を形成した。まず、中間層404上に、誘電体層431を実施例4の誘電体層321と同様の条件で形成した。次に、反射層432と誘電体層433を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。記録層435は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb69C20Mg11ターゲットを、50Wの出力でスパッタリングしてSb70C18Mg12記録層を形成した。界面層436と誘電体層437を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして基板401の上に第3の情報層430まで成膜した基板401を、スパッタリング装置から取り出した。次に、中間層405を実施例3の中間層203と同様の条件で形成した。
中間層405まで形成した基板401を再びスパッタリング装置に配置して、中間層405の表面に第4の情報層440を形成した。まず、中間層405上に、誘電体層441を実施例3の誘電体層221と同様の条件で形成した。次に、反射層442と誘電体層443を実施例3の反射層222と誘電体層223と同様の条件で形成した。
記録層445は、直流電源を用いて、圧力0.13PaのArガス雰囲気中で、Sb−C−Bターゲットを、50Wの出力でスパッタリングした。この方法で、媒体400−1はSb78C20B2ターゲットをスパッタリングして、Sb80C18B2記録層を形成した。媒体400−2はSb77C18B5ターゲットをスパッタリングして、Sb80C16B4記録層を形成した。媒体400−3はSb77C13B10ターゲットをスパッタリングして、Sb80C12B8記録層を形成した。媒体400−4はSb77C11B12ターゲットをスパッタリングして、Sb80C10B10記録層を形成した。媒体400−5はSb77C9B14ターゲットをスパッタリングして、Sb80C8B12記録層を形成した。界面層446と誘電体層447を実施例1の界面層116と誘電体層117と同様の条件で形成した。以上のようにして中間層405の上に第4の情報層440を成膜した基板401をスパッタリング装置から取り出す。それから、誘電体層447の表面に紫外線硬化性樹脂をスピンコート法で43μmの厚みで塗布し、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、透明層402を形成した。
透明層形成工程終了後、初期化工程を実施した。初期化工程においては、波長810nmの半導体レーザを使って、はじめに記録層415を初期化し、次に記録層425を初期化し、次に記録層435を初期化し、最後に記録層445を初期化した。いずれも半径22〜60mmの範囲の環状領域内でほぼ全面にわたって結晶化させた。これにより初期化工程が終了し、媒体番号400−1〜5の情報記録媒体400の作製が完了した。
作製した媒体番号400−1〜5は、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440ともに、鏡面部実効反射率がRc約1.3%、Ra約0.3%であった。第1の情報層410の反射率は、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440を通ったレーザ光10で測定した。同様に、第2の情報層420の反射率は、第3の情報層430および第4の情報層440を通ったレーザ光10で測定した。第2の情報層420の光透過率はTc約57%、Ta約53%であった。第3の情報層430の光透過率はTc約67%、Ta約63%であった。第4の情報層440の光透過率はTc約71%、Ta約66%であった。透過率の測定は実施例3と同様にして行った。
次に、記録再生評価方法について、実施例1から4と異なる点を説明する。第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の各々に、4倍速記録を行った。記録した信号の再生評価は、1倍速で1.40mWのレーザ光を照射して実施した。なお、再生評価条件は、1倍速より大きな線速度で実施してもよく、再生パワーも1.40mWよりも大きいパワーで実施してもよい。信頼性評価方法については実施例1と同様である。媒体番号400−1〜5の4倍速における(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表5)に示す。表中、(1)2TCNRは、38dB以上を○、33dB以上38dB未満を△、33dB未満を×、(2)2T消去率は、23dB以上であれば○、18dB以上23dB未満であれば△、18dB未満であれば×、(3)CNR変化は、1dB未満を○、1dB以上3dB未満を△、3dB以上を×、(4)消去率変化は、3dB未満を○、3dB以上5dB未満を△、5dB以上を×、で示す。第4の情報層440の信号品質の目標値は、第3の情報層430のそれよりもゆるめてよいため、判定基準を変えている。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表5)に示す様に、媒体400−1〜5は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、x≧yである400−1〜4は、すべての項目で○の評価が得られた。記録再生特性と信頼性を両立できたので、x≧yであることがより好ましい。いずれの媒体もPwが20mW以下、Peが12mW以下であった。本実施例の記録層445は、実施例4の記録層335よりも膜厚が4nmと薄いため、Sbを80原子%含む、より結晶化速度が大きい記録層を用いて良好な結果が得られた。
(実施例6)
実施例6では、図1の情報記録媒体100を製造し、記録層115の膜厚と記録再生特性並びに信頼性との関係を調べた。記録層115には、Sb50C30Al20を用いた。膜厚の異なる記録層115を有する情報記録媒体100を5種類作製し、媒体番号100−21〜25とした。
実施内容は実施例1とほぼ同様であり、異なる内容について具体的に説明する。情報層110は、媒体番号100−21〜25において、各々記録層115の膜厚が異なるため、Rcが約21%、Raが約4%となるよう、誘電体層117の膜厚を媒体ごとに設計した。媒体100−21は、記録層115が7nmで誘電体層117が77nm、媒体100−22は、記録層115が9nmで誘電体層117が74nm、媒体100−23は、記録層115が11nmで誘電体層117が49nm、媒体100−24は、記録層115が13nmで誘電体層117が51nm、媒体100−25は、記録層115が15nmで誘電体層117が52nmである。
記録再生特性並びに信頼性は、各々実施例1に記載の記録再生評価方法と信頼性評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNR、2T消去率、CNR変化および消去率変化を測定した。その結果を(表6)に示す。表中の○、△、×の判定は実施例1の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表6)に示す様に、媒体100−21〜25は、すべての項目で○または△の評価が得られたので、4倍速で使用できる。特に、7nm以上13nm以下の膜厚範囲では、すべての項目で○の評価が得られたのでより好ましい。膜厚が厚くなると、記録層115で生じた熱が反射層112の方向へ拡散しにくくなり、小さい記録マークの形成が困難となるので、15nm以下が好ましい。
(実施例7)
実施例7では、図4の情報記録媒体400を製造し、記録層445の組成比と膜厚を変えて、記録再生特性との関係を調べた。記録層445には、Sb100-x-yCxByを用いた。組成比と膜厚の異なる記録層445を有する情報記録媒体400を5種類作製し、媒体番号400−11〜15とした。
実施内容は実施例5とほぼ同様であり、異なる内容について具体的に説明する。第1の情報層410から第3の情報層430は、実施例5と同様の実施内容である。第4の情報層440は、媒体番号400−11〜15において、各々記録層445の組成比と膜厚が異なるため、Rcが約1.3%、Raが約0.3%となるよう、誘電体層441、反射層442および誘電体層447の膜厚も媒体ごとに設計した。媒体400−11は、誘電体層441を14nm、反射層442を10nm、記録層445としてSb84C9.6B6.4を3.5nmおよび誘電体層447を34nmに設計した。媒体400−12は、誘電体層441を14nm、反射層442を12nm、記録層445としてSb88C7.2B4.8を3nmおよび誘電体層447を30nmに設計した。媒体400−13は、誘電体層441を13nm、反射層442を14nm、記録層445としてSb92C4.8B3.2を2.5nm、誘電体層447を24nmに設計した。媒体400−14は、誘電体層441を14nm、反射層442を15nm、記録層445としてSb96C2.4B1.6を2nm、誘電体層447を19nmに設計した。媒体400−15は、誘電体層441を14nm、反射層442を15nm、記録層445としてSb98C1.2B0.8を1.5nm、誘電体層447を18nmに設計した。記録層445は、結晶化速度を落とさないように、薄い膜厚ほど大きな結晶化速度を持つ組成比を採用した。
記録再生特性は、実施例1に記載の記録再生評価方法に準じて測定した。本実施例では、4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、2TCNRおよび2T消去率を測定した。その結果を(表7)に示す。実施例5で用いた媒体番号400−3の結果もあわせて示す。表中の○、△、×の判定は実施例5の判定と同様である。総合評価の◎、○、△、×は実施例1の判定と同様である。
(表7)に示す様に、媒体400−11〜15は、両項目で○または△の評価が得られたので、記録層445が僅か1.5nmでも4倍速で使用できる。特に、3nm以上であれば、すべての項目で○の評価が得られた。記録層が薄くなると、記録層の光吸収率Ac、Aaが低下するため、媒体400−14と15では20mWのレーザパワーでCNRが飽和していなかったため△評価になった。より高いレーザパワーを照射すれば、より高いCNRが得られると期待できる。
(実施例8)
実施例8では、アンチモン(Sb)と、炭素(C)と、原子量が33未満である軽元素(L)とを含む記録層を、複数のターゲットを用いて成膜する実験を実施した。試料番号800−1は、Sb60C30N10を目標の組成比とした記録層を、SbターゲットとCターゲットを同時に窒素で反応性スパッタリングして、Si基板上に成膜する。試料番号800−2は、Sb60C30Al10を目標の組成比とした記録層を、SbターゲットとCターゲットとAlターゲットを同時にスパッタリングして、Si基板上に成膜する。成膜した記録層の組成比を、X線マイクロアナライザーの手法を用いて分析し、目標の組成比が得られているか調べた。
以下に実施内容を具体的に説明する。用いたターゲットの形状はすべて、丸形で直径100mmで厚さ6mmである。複数のターゲットを同時にスパッタリングして目標の組成比の記録層を目標の膜厚で形成するためには、成膜速度比が組成比となるようにスパッタリング出力を決め、膜厚はスパッタリング時間で制御する。その手順を説明する。まず、各ターゲットを所定の各スパッタリング出力p1で独立に一定時間スパッタリングして、各成膜速度r1(単位はnm/分)を予め測定しておく。次に、成膜速度比が組成比となるように、各成膜速度r1から各スパッタリング出力p2を改めて決める。次に、各出力p2で改めて各成膜速度r2を測定し、必要に応じて各出力p2を正確に決め直す。次に、複数のターゲットを各出力p2で同時にスパッタリングして、成膜速度r3を測定する。最後に、目標の膜厚になるように、r3からスパッタリング時間t1(単位は分)を計算する。
成膜には図9に示すスパッタリング(成膜)装置を用いたが、スパッタ室21には一つの基板ホルダー26と、複数のターゲット電極28と電源29が備えられている。まず、12mm×18mm角で厚み1mmのSi基板をポリカーボネート基板に固定して、スパッタリング装置内に取り付けた。試料800−1は、SbターゲットをDC電源に取り付けてp2=100W、CターゲットをRF電源に取り付けてp2=500Wで、ArガスとN2ガスの体積比が90:10である混合ガス雰囲気中で、同時に反応性スパッタリングを実施した。Cのr2はSbのr2の約10分の1しかなかったので、p2を500Wに設定した。t1=20分スパッタリングして、Si基板上に1μm厚のSb−C−N記録層を形成した。試料800−2は、SbターゲットをDC電源に取り付けてp2=100W、CターゲットをRF電源に取り付けてp2=500W、AlターゲットをDC電源に取り付けてp2=25Wで、Arガス雰囲気中で、同時にスパッタリングを実施した。Alのr2はSbのr2の約70%であったので、Alのp2を25Wに設定した。t1=20分スパッタリングして、Si基板上に1μm厚のSb−C−Al記録層を形成した。Si基板上に形成したSb−C−N記録層とSb−C−Al記録層の組成比をX線マイクロアナライザーで分析した結果を表8に示す。
(表8)に示すように、試料800−1および800−2共に、分析で得られた組成比は目標組成比と非常に近い値であり、±0.5原子%以内の差であった。この結果は、複数のターゲットを用いても、Sbと、Cと、Lとを含む記録層が形成できたことを示すものである。
追加の実験として、実施例1の媒体100−2および100−5と同じ構成で、記録層115の製造方法が本実施例の方法である媒体100−2−2および100−5−2を製造して、実施例1と同様の記録再生特性並びに信頼性の評価を行った。その結果、実施例1と同様、すべての項目で○の良好な結果が得られた。
(実施例9)
実施例9では、電気的エネルギーを印加するメモリの実験を行った。図6に、電気的手段によって情報を記録する情報記録媒体とそれに記録するシステムを示す。本実施例は、図6に示す情報記録媒体600の記録層603に本発明の記録層を用いた。
本実施例の情報記録媒体600は次のようにして作製した。まず、表面を窒化処理したSi基板601を準備した。この基板601の上に、Auの下部電極602を6μm×6μmの領域に厚さ100nmで形成した。下部電極602の上にSb60C24S16記録層603を5μm×5μmの領域に厚さ50nmとなるように形成し、Auの上部電極604を5μm×5μmの領域に厚さ100nmで形成した。
下部電極602、記録層603、および上部電極604は、いずれも直径100mmで厚さ6mmのターゲットを、圧力0.13PaのArガス雰囲気で、直流電源を用いてスパッタリングした。基板601を成膜装置に取り付け、基板601上に下部電極602をAuターゲットをパワー200Wでスパッタリングして形成した。続いて、下部電極602上に記録層603をSb59C26S15ターゲットをパワー100Wでスパッタリングして形成した。続いて、記録層603上に上部電極604を、Auターゲットをパワー200Wでスパッタリングして形成した。
続いて、下部電極602および上部電極604に、Auリード線をボンディングし、印加部609を介して電気的情報記録再生装置610を情報記録媒体600に接続した。この電気的情報記録再生装置610により、下部電極602と上部電極604の間には、パルス電源605がスイッチ608を介して接続される。さらに、記録層603の相変化による抵抗値の変化が、下部電極602と上部電極604の間にスイッチ607を介して接続された抵抗測定器606によって検出される。
記録層603が非晶質相のとき、下部電極602と上部電極604の間に、5mA、50nsの電流パルスを印加したところ、記録層603が非晶質相から結晶相に転移した。また、記録層603が結晶相のとき、下部電極602と上部電極604の間に、10mA、10nsの電流パルスを印加したところ、記録層603が結晶相から非晶質相に転移した。すなわち、可逆的相変化が確認された。
以上の結果から、記録層603としてSb60C24S16材料を用いて、電気的エネルギーを付与することによって、相変化を生じさせることができた。なお、記録層603としてSb60C24B16、Sb60C24N16、Sb60C24O16、Sb60C24Mg16、Sb60C24Al16を用いても、電流パルスの印加により非晶質相から結晶相、結晶相から非晶質相の高速転移を生じた。よって、情報記録媒体600が、情報を高速記録消去する機能を有することが確認できた。以上のようにして製造した情報記録媒体600に電気的エネルギーを印加することによって記録層603にて可逆的相変化が起こることを、図6に示すシステムにより確認した。このことを利用して、情報記録媒体600を複数個つないでメモリ容量を増やすこと、アクセス機能およびスイッチング機能を向上させることが可能となる。
(実施例10)
実施例10では、実施例5で作製した媒体番号400−3に、2倍速と4倍速の記録を行い、2倍速から4倍速の線速度範囲で使用可能であるかどうか調べた。本実施例では、レーザ光10のレーザパワー上限が、媒体の盤面で40mWである記録再生装置を用いた。それにより、4倍速記録においても、第1の情報層410、第2の情報層420、第3の情報層430および第4の情報層440の各々に、十分なレーザ光10を入射させることができた。
記録再生評価方法を簡単に説明する。記録は、実施例1と同様に、2倍速(9.84m/秒、72Mbps)と4倍速(19.68m/秒、144Mbps)の条件で、半径50mmの位置で実施した。記録した信号の再生評価は、線速度1倍速で1.40mWのレーザ光10を照射して実施した。信頼性評価方法は、実施例1と同様である。
(1)2TCNR、(2)2T消去率、(3)CNR変化、(4)消去率変化、の評価結果を(表9)に示す。○、△、×は、第1の情報層410は実施例1と同様、第2の情報層420は実施例3と同様、第3の情報層430は実施例4と同様、第4の情報層440は実施例5と同様である。総合評価の◎、○、△、×は、実施例1の判定と同様である。
(表9)に示す様に、媒体400−3の第1の情報層410から第4の情報層440まで、全ての項目で○の評価が得られたので、2倍速から4倍速で使用できることが確かめられた。2倍速および4倍速において設定したPwとPeは、次のとおりである。
第1の情報層410において、2倍速のPwは26mW、Peは11mWであり、4倍速のPwは33mW、Peは15mWであった。第2の情報層420において、2倍速のPwは25mW、Peは11mWであり、4倍速のPwは32mW、Peは14mWであった。第3の情報層430において、2倍速のPwは20mW、Peは8mWであり、4倍速のPwは25mW、Peは11mWであった。第4の情報層440において、2倍速のPwは16mW、Peは7mWであり、4倍速のPwは20mW、Peは9mWであった。
以上、種々の実施例を通じて本発明の情報記録媒体について説明してきたように、光学的手段で記録する情報記録媒体および電気的手段で記録する情報記録媒体のいずれにも、本発明の記録層を用いることができる。実施例においては、情報記録媒体としてBlu−ray Discについて説明したが、本発明はHD DVDにも適用することが可能である。この記録層を含む本発明の情報記録媒体によれば、これまで実現されなかった4倍速以上の高データ転送レートおよび100GB以上の大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性、記録マーク保存性を同時に満足する情報記録媒体が得られる。なお、この記録層を含む本発明の情報記録媒体は、近接場光や開口数>1の光学系を利用して記録再生してもよい。そうすれば、Blu−ray Discよりも大容量な記録条件でも、記録特性、消去特性および記録マーク保存性を同時に満足する情報記録媒体が得られる。
本発明の情報記録媒体は、優れた記録層を有し大容量な光学的情報記録媒体として、書換形Blu−ray Disc、書換形多層Blu−ray Disc、書換形HD DVD、書換形多層HD DVD、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、等に有用である。さらに、電気的情報記録媒体として、電気的な高速スイッチング素子としても有用である。