JPWO2008123019A1 - 遺伝子変化の検出方法および検出装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、微量な生体試料に対して効率良く遺伝子変化を検出する自動化に適した技術を提供することを目的とする。本発明の遺伝子変化の検出方法は、生体試料から核酸を抽出する工程と、前記1)工程で得られた核酸溶液を、0.5〜5μlの容量で、温度調整可能な容器台上に設置された、同一反応容器上の異なる位置に分注する工程と、温度調整可能な装置の温度を調整することにより、反応容器上の核酸溶液を乾燥させる工程と、反応容器上の乾燥させた核酸上に、0.5〜5μlの容量で核酸増幅用の試薬を分注する工程と、前記工程で分注した核酸増幅用の試薬上に、3〜10μlの容量で核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液を分注する工程と、温度調整可能な装置の温度を調整することにより、核酸増幅反応を行なう工程との後、核酸増幅反応後の産物を検出し、遺伝子変化解析を行なうことを特徴とする。

Description

本発明は、遺伝子変化を検出する方法及び装置に関する。
遺伝子操作法の進歩はめざましく、遺伝子を利用した疾病の診断法へも広がりつつある。例えば、機能性タンパクの構造的な欠損や機能異常が原因とされる遺伝病の診断、癌化に伴う正常細胞から癌細胞への遺伝子変異を検出する癌の診断、ウイルスなどの遺伝子検出や同定を利用する感染症の診断、組織の細胞中mRNAの検出から遺伝子の転写レベルの定量など、広範にわたり、一部はすでに臨床に供されているものもある。
疾患、特に癌においては、ゲノム領域における広域または狭域での配列の増幅・欠失が起こることが知られている。これらの配列の変化を指標に、疾患の検出を高感度に行なう取り組みがされている。
特開平9−201199号公報では、遺伝子多型を用いるヘテロ接合体の欠失を、蛍光ラベル化したオリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRを行なった後、PCR産物の3'末端側を平滑化処理し、蛍光自動DNAシーケンサーを使い、single−strand conformation polymorphism法(SSCP法)で検出する方法を開発している。また、この方法を応用した例として特開平11−341999号公報では、尿中に含まれる細胞から抽出したDNAを用いて、9番染色体におけるいくつかの遺伝子多型が存在する部位をSSCP法で検出することにより尿中に存在する9番染色体の所定の領域を欠失した細胞が含まれるかどうかを高感度に検出し、膀胱癌を効率よくスクリーニングする方法が開示されている。これらの方法では、PCRにより予め疾患と関連することが報告されている配列のみ増幅するため、必要なゲノムDNAが比較的少なくてもよく、作業も従来法である染色体標本に生体からのサンプル核酸をハイブリダイズさせるCGH法と比較して比較的煩雑でないため、癌の検出法として臨床応用が期待されている。しかし、本方法には、生体試料から核酸を抽出する工程、抽出された溶液の核酸濃度を測定し濃縮および希釈により濃度を調整する工程、一定の核酸量の溶液とPCR反応液を反応容器に分注する工程、反応容器をサーマルサイクラー上でPCR反応させる工程、PCR反応後の溶液を別の反応容器に分注しシーケンサー反応用の溶液と混和する工程、反応容器をシーケンサーにセットしシーケンス反応を行なう工程がある。これらの工程は、生体試料からの核酸抽出は磁気ビーズへの核酸吸着やシリカメンブレンによる核酸の補足を利用したほぼ自動化された装置が報告されているものの、それ以降の工程においては、複雑な工程を有すため手作業が主となり、自動化は難しい。
それを解決するため、特開平6−327476号公報では、生体試料からの核酸抽出・濃度調整・増幅・シーケンサーによる検出をすべて自動化した装置を報告している。しかし、反応容器に従来法のチューブを用い、複雑な工程をそのまま自動化装置としたため、反応容器の蓋を開閉する機構も設置しなければならず、装置構成が複雑で大掛かりなものとなっており、臨床検査の現場にそのまま導入するには、装置価格、検査コスト、スペースの問題において困難である。
一方、近年、血漿中に遊離する癌由来のDNAの変異を検出することにより、癌の早期発見を行なう取り組みがされている。(NEDO 平成15年 血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究など)。これらの研究では、血漿中に遊離する癌由来のDNAを抽出し、濃度を測定したのち、PCRし、SSCP法などで各種遺伝子の変異を検出している。血漿遊離DNAは癌で増大する(25ng/ml・plasma)ことが報告されているものの、健常人や早期癌では非常に微量しか存在しないことを確認している(表1)。そのため、従来法では濃度の定量が難しく、また反応に用いる場合には濃縮のプロセスが必須であり、かつ臨床検査においては、採取できる血液量が限られている(〜5ml程度)ため、微量な核酸を無駄なく増幅・測定できるプロセスが必須である。
Figure 2008123019
特開平9−201199号公報 特開平11−341999号公報 特開平6−327476号公報 「血中遊離DNAによる癌の高感度遺伝子診断システムに関する基盤研究」、新エネルギー・産業技術総合開発機構 技術評価委員会、平成15年2月
これら従来公知の技術では、核酸抽出・濃度調整・増幅・シーケンサーによる検出等の複雑な工程が必要であるものの、作業が複雑で煩雑であり、作業者によるデータの誤差や、自動化が困難である。また、生体試料からの核酸抽出・濃度調整・増幅・シーケンサーによる検出をすべて自動化しようという取り組みも報告されているが、複雑な反応をそのまま自動化装置としたため、装置構成が複雑で大掛かりなものとなっている。
さらに、血漿中に遊離する癌由来のDNAの変異の検出による、高感度な癌の早期発見を臨床検査可能なシステムにしようとすると、核酸量が微量であるため濃度測定が困難であること、自動化可能な簡便な濃縮のプロセスが必要であること、微量しか得られない核酸を無駄なく増幅・測定できるプロセスが必須であることがあげられる。
本発明は、上述した実状を鑑みて案出されたものであり、その目的は、微量な生体試料に対して効率良く遺伝子変化を検出する自動化に適した技術を提供することである。
本発明は、ひとつには、遺伝子変化を検出する方法であって、1)生体試料から核酸を抽出する工程と、2)前記1)工程で得られた核酸溶液を、0.5〜5μlの容量で、温度調整可能な容器設置台上に設置された、同一反応容器上の異なる位置に分注する工程と、3)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、反応容器上の核酸溶液を乾燥させる工程と、4)反応容器上の乾燥させた核酸上に、0.5〜5μlの容量で核酸増幅用の試薬を分注する工程と、5)前記4)工程で分注した核酸増幅用の試薬上に、3〜10μlの容量で核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液を分注する工程と、6)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、核酸増幅反応を行なう工程とを有し、前記1)〜6)工程の後、核酸増幅反応後の産物を検出し、遺伝子変化解析を行なう。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
7)前記6)工程で増幅反応が終了した、核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液に覆われた溶液中にシーケンサー解析用の反応溶液を3〜10μlの容量で分注する工程と、
8)前記7)工程で分注したシーケンサー解析用溶液と核酸増幅反応終了溶液の混合溶液を、増幅用溶液の蒸発を防ぐため溶液に覆われた溶液中から吸引し、別の容器に分注する工程と、
9)前記8)工程で反応溶液が分注された容器をキャピラリーシーケンサーにセットして遺伝子増幅産物の特徴の解析を行なう工程と、
10)遺伝子増幅産物の特徴を解析可能な解析用ソフトにより得られたデータを解析し、遺伝子変化判定を行なう工程とを更に含むことができる。
また本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
6a)前記6)工程の直後に、核酸の2本鎖を検出可能な試薬を0.5〜5μlの容量で反応容器へ分注し、当該試薬の特徴を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程を更に含むか、又は
6b)前記6)工程の直後に、核酸増幅産物の標識を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程を含むことができる。
また本発明の遺伝子変化の検出方法においては、前記2)工程〜前記3)工程を複数回繰り返すことができ、更には
前記6a)工程または前記6b)工程で得られたデータをもとに、核酸増幅産物の検出及び遺伝子変化解析を当該6a)工程又は当該6b)工程に続けて行うか否かを判断し、続けて行わない場合は前記2)工程〜前記3)工程の繰り返し数を調整して当該工程をその回数だけ行ってから、前記4)工程〜前記6)工程を行なうこともできる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、前記生体試料を血漿とし、前記核酸がDNAとすることができる。また前記検出対象をヘテロ接合体の欠失とすることができる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
前記反応容器への溶液類の分注を分注装置により行い、
前記2)工程の前に、測定装置を使って前記反応容器の溶液捕捉面と、当該分注装置の溶液吐出口との間の距離を測定し、当該距離を調整する工程を含めることができる。この場合、前記分注装置の溶液吐出口が、使い捨てチップを備えているものとすることができる。また、反応容器への溶液類の分注後、前記分注装置の吐出口部分の液残りを確認する工程を含むことができる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
前記4)工程の前に核酸溶液が乾燥したことを確認する工程を含めることができる。この場合、
核酸溶液が乾燥したことを確認する前記工程を、反応容器上に残存している可能性のある溶液の面積測定により行うことができる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
前記3)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させる、及び/又は
前記6)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させることができる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、
前記反応容器を、複数の試料保持区画を有し、各試料保持区画が親水加工され、その周囲が疎水加工された基板とすることができる。この場合、
前記基板への溶液類の分注後、当該基板上の液滴の形状を確認する工程を含めることができる。
本発明は、ひとつには、遺伝子変化の検出装置であり、溶液類の分注装置、及び温度調整可能な容器設置台を備え;反応容器の溶液捕捉面と、当該分注装置の溶液吐出口との距離を測定する装置、当該溶液吐出口を検出する装置、当該溶液吐出口部分の液残りを確認する装置、反応容器上の溶液が乾燥したことを確認する装置、排気装置および/またはトラップ装置、反応容器上の液滴形状を確認する装置の少なくともひとつを更に備えている。また本発明の遺伝子変化の検出装置においては、試薬及び/又は標識を検出する装置を更に備えていてもよい。
本発明によれば、微量な生体試料に対して効率良く遺伝子変化を検出する自動化に適した技術が提供される。
本発明の実施形態による遺伝子変化の検出装置を示している。 スライドグラス上の親水性スポット行列を示している。 本発明の実施形態による遺伝子変化の検出方法のフローチャートである。
符号の説明
10...検出装置、12...分注システム、14...反応容器、16...ラック、18...容器、20...ラック、22...ラック、24...試薬用チューブラック、26...検査対象用チューブラック、28...廃棄部、30...廃棄部、32...ガイド、34...ガイド、36...ガイド、38...分注装置、40...撮像装置、42...高さ測定装置、44...小型カメラモジュール、46...搬送装置、48...搬送装置、50...容器設置台、52...容器ラック、56...準備部、58...吸気口、60...排気経路、62...排気・トラップ装置、64...解析用溶液集積部、66...ストッカ、70...イメージャー部、72...開口部、74...光源、76...ファイバー、78...CCDカメラ、80...制御部、82...ディスプレイ。
本発明の遺伝子変化の検出方法は、生体試料における遺伝子変化を検出する方法であって、1)生体試料から核酸を抽出する工程と、2)前記1)工程で得られた核酸溶液を、0.5〜5μlの容量で、温度調整可能な容器設置台上に設置された、同一反応容器上の異なる位置に分注する工程と、3)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、反応容器上の核酸溶液を乾燥させる工程と、4)反応容器上の乾燥させた核酸上に、0.5〜5μlの容量で核酸増幅用の試薬を分注する工程と、5)前記4)工程で分注した核酸増幅用の試薬上に、3〜10μlの容量で核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液を分注する工程と、6)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、核酸増幅反応を行なう工程とを有し、前記1)〜6)工程の後、核酸増幅反応後の産物を検出し、遺伝子変化解析を行なう遺伝子変化の検出方法である。
本発明の遺伝子変化の検出方法は、より具体的には図3のフローチャートに示す工程を含んでいて、例えば採取した血液から核酸を抽出し、核酸溶液の分注・乾燥工程を経て、核酸増幅反応後、検出を行なう。検出は、フラグメント解析、発光測定、ダイレクトシーケンスなどで行なう。
本発明によれば、生体試料から抽出された核酸を、微量(0.5〜5μl)で反応容器上に分注し、温度を変化させることにより乾燥させたのち、微量の試薬(0.5〜5μl)を分注し核酸の増幅反応を行なうことにより、生体試料からわずかしか採取できない核酸を、乾燥濃縮により高濃度にし、核酸増幅酵素(例えばTaq−polymerase)と核酸の接触効率を上げることにより微量核酸であっても、従来法の容量の多いPCRと比較し効率よく核酸増幅が可能となる。
また本方法では核酸溶液を乾燥濃縮し、わずかな容量の試薬(0.5〜5μl)で反応を行なっているので、反応産物の全量を次の検出工程にそのまま使用することが可能である。このため、得られる生体試料が微量である場合にも、増幅後の反応液を再び濃縮する工程を必要とすることなく、全量を検出工程に使用可能である。そのため微量サンプルであっても高感度にスループットよく検出可能である。
更に、0.5〜5μlの容量は、インクジェットヘッドのように特殊ではない既存の分注ユニットが使える限界であり、装置コストを抑えられる。また、試薬コストも通常の核酸増幅より1/10以下に抑えることができる。
また、本方法では容器内の核酸溶液を温度調整可能な容器設置台上で乾燥させ、続いてそのまま増幅試薬を分注して反応を行なう。さらに、核酸試料は乾燥状態となるため、例えば、温度調整可能な容器設置台の他にサーマルサイクラーが検出装置に設置されていた場合、そのサーマルサイクラーへの移動の際、試薬の飛び跳ねや試薬分注までの時間や温度を気にする必要がない。そして、多数の試料の検出を連続的に行なう場合でも、乾燥工程、増幅工程など各工程はバッチ処理となるが、次の工程であるサーマルサイクラーでバッチ処理しているとき、そのバッチの反応が終了するまで、温度調整可能な容器台上に、核酸溶液の分注された反応容器を載せておいてよい。また、乾燥工程の後、そのまま反応容器を取り去り、室温で保存しておいてよい。
核酸は乾燥状態であるので、サーマルサイクラーで反応容器の温度調整を行なう間、そのままの状態にしておくことができ、温度調整後、増幅試薬を微量分注できるため、例えば、4℃からの反応や95℃のホットスタートを容易に行なうことができる。また、核酸増幅時の溶液の蒸発を防ぐ試薬を、核酸増幅用の試薬の3〜10倍量分注して核酸増幅反応を行なうことにより、反応容器の蓋を排除することが可能となり、一連の作業のすべてを蓋の開け閉めなく行なうことが可能となる。このため、蓋を開け閉めするための大掛かりな装置構成を排除し、簡素な装置構成で一連の作業が実現可能となる。
本発明における解析対象となる生体試料とは、組織、血液、血清、血漿、体液、尿、糞便、細胞などから抽出したDNAおよびRNAを意味する。特に、疾患特徴を反映するもの、例えば癌であれば、腫瘍細胞や腫瘍由来のDNAやRNAを含む可能性がある血漿・血清、尿、糞便、腫瘍部位の細胞、体液などがこれにあたる。本発明は、得られる核酸溶液の濃度が希薄でかつ得られる全量が少ない試料に対して特に効果を発揮するため、採取できる量の限定された(例えば5ml程度の)血漿・血清に対して実施することがより好ましい。
本発明における核酸とは、ゲノム上の領域であるDNAまたは、転写された領域RNAであれば何でもよいが、従来法において濃度測定が困難な希薄なDNA/RNAや断片化の進んだDNAがより好ましく本方法で効果を発揮する。
生体試料からの核酸の抽出法としては、シリカメンブレンを利用したカラムや磁気ビーズなどを利用した従来法を用いることができるが、自動化された装置を用いることにより、本方法との組み合わせにより抽出、濃縮・増幅・検出までの一連の操作を自動化することが可能となるため、抽出工程は自動化された装置を用いることが好ましい。本方法では、核酸溶液を乾燥させる工程を含むため、乾燥時に溶液中に含まれる核酸以外の成分の析出がないよう核酸の溶解液としては純水が好ましい。
本方法に用いる反応容器としては、蓋の開け閉めがいらず、複数のサンプル溶液を微量で同時に捕捉できるものであればなんでもよい。具体的にはマルチウェルプレート、スライドグラスがこれにあたるが、0.5〜5μlの容量で溶液が表面張力で球面を描くように溶液を捕捉できる容器がより好ましい。増幅反応時に溶液中の核酸、プライマー、酵素がより効率よく対流し、溶液が平面状になるものと比較し、効率よく増幅反応が行なわれるからである。具体的には、表面に微量の溶液を捕獲できるように加工された、好ましくは複数の試料保持区画を有する基板、例えば、親水的に加工された部位の周りに疎水的に加工された部位が、複数個等間隔に配置されたスライドグラスがより好ましい。反応容器がこのような基板の場合、基板への溶液類の分注後、当該基板上の液滴の形状を確認する工程を含めることで、溶液類の吐出を確認することができる。また、反応容器を複数の試料保持区画を有する基板とすることにより、溶液をアレイ状に配置できるため、容器のスペースを省くことができ、さらに温度調整可能な容器設置台の形状が平板状でよいためその構造を簡便にすることができる。
反応容器へは分注装置を用いて溶液類を分注することができるが、溶液量が少ない場合(例えば本方法では0.5〜5μlである)、吐出しただけでは分注装置側に溶液の液滴が残ることがある。これを避けるため、反応容器の近傍まで分注装置の吐出口を移動させて溶液を吐出し、反応容器にその溶液を接触させて溶液を反応容器の溶液捕捉面へと完全に移すことが望ましい。しかし、吐出口と反応容器の溶液捕捉面との間の距離は、使用する反応容器のロット間の形状の差異や、分注装置の吐出口の位置制御における精度によっても変動するため、当該距離を測定する装置を設け、分注を行なう前にその距離を測定し、これを調整することが望ましい。具体的には前記2)工程の前に、測定装置を使って前記反応容器の溶液捕捉面と、当該分注装置の溶液吐出口との間の距離を測定し、当該距離を調整する工程を含め、この測定距離を基に、当該吐出口の移動を制御することができる。当該距離が必要以上に大きい場合には、溶液の飛散が生じやすくなるが、当該距離を測定して調整することで、このような問題を防ぐことが可能になる。溶液類の吐出口が使い捨てチップを備えているものの場合、チップの交換の度に当該距離の測定と調整を行うことが望ましい。当該距離は分注装置に専用の接触子を設けて、これを反応容器の溶液捕捉面に接触させて測定することもできるし、測距用の一般的なモジュール(例えば、シャープ社製測距センサGP2Y0D810Z0Fなど)を分注装置に取り付けて測ってもよい。
また、分注装置の溶液吐出口が使い捨てチップを備えているものの場合、反応容器に対するチップの先端位置も、チップの装着状態や、チップのロット、ゆがみなどで変動する。このため、反応容器への溶液の分注をさらに安定させて行なうためには、チップの先端位置を検出して、反応容器の溶液捕捉面との距離をより正確に求めるとよい。さらに、分注装置の吐出口に液滴の残りが無いかを確認する工程を入れるとよい。具体的には、反応容器への溶液類の分注後、前記分注装置の吐出口部分の液残りを確認する工程を含めることができる。これにより、もし吐出のミスがあったとしてもそれを検出でき、吐出のやり直しや、次の吐出への影響を防ぐことができる。液残りがあり、分注が不正確だった場合には、その容器でそれ以上の工程は進めないこととし、別の容器で工程を進めることができる。また、1回の吸引で同じ溶液を何箇所かに分注する場合、液残りがあると前述のように該当の容器の分注が不正確になるとともに、次の容器での分注も液残りが混ざることとなり不正確となる。液残りを確認することにより、このような不具合も防ぐことができるようになる。
反応容器が試料保持区画を有する基板の場合には、分注後に反応容器上の液滴形状を観察することにより、吐出ミスがあっても、吐出をやり直したり、別の基板や別の保持区画を使用したりするなどの対処を行なうことができ、検査工程の信頼性を上げることができる。
反応容器が基板の場合には、基板上には試料保持区画が形成されているが、分注する溶液の特性や温湿度により、隣接する保持区画間同士、それぞれの区画に捕捉されている溶液が一体化してしまう可能性がある。このため、基板上の保持区画の液滴形状を確認して、各保持区画内へ分注した溶液類が、他の保持区画ないの溶液類と一体化していないかを調べる。これにより、保持区画内への分注が失敗している場合には、分注のやり直しを行うことができる。
反応容器を設置する温度調整可能な容器設置台は、温度調整部が当該反応容器と接触し、短時間で効率よく反応容器の温度を調整できるものであれば何でもよい。例えば、検出装置に組み込むことができる一般的なサーマルサイクラーが利用できる。
核酸増幅用の試薬の分注の前に、より具体的には、前記4)工程の前に核酸溶液が乾燥したことを確認する工程を含めることができる。反応容器上の溶液の乾燥の確認は、反応容器上に残存している可能性のある溶液の面積測定により行うことができる。具体的には面積測定は、反応容器表面の撮像画像を使って調べることができる。可視光、赤外線、反射光、偏光、明視野、暗視野などの画像を用いることができる。また、別の手段としては、蒸発物による湿度変化を測定することで、反応容器上の溶液の乾燥を確認してもよい。
核酸増幅用の試薬を分注する工程の前に溶液の乾燥を確認することにより、増幅用試薬に、溶液の溶媒が混ざることを防ぐことができる。これにより、増幅用試薬の濃度を保つことができ、各容器での濃度のばらつきを防ぐことができるようになる。そして、容器による増幅条件の不均衡を無くすことができる。
好ましくは、撮像画像から一般的な画像処理により溶液の面積を測定して、溶液の存在を確認することがよい。なお、反応容器の撮像画像から反応容器上の分注位置を一般的な画像処理により算出し、分注の際に、この画像処理結果を分注装置の位置制御へ利用することもできる。
複数のサーマルサイクラーを装置に配する場合には、反応容器一つ一つに対し、別々の温度制御プログラムを実行できるようにしておくことが好ましい。そうすることにより、反応容器毎に分注作業を行ないつつ、乾燥や増幅の工程を個別に行なうことが可能となり、スループットのよい検査ができるからである。
核酸増幅用試薬とは、例えば、PCR用の緩衝液および標的遺伝子を増幅させるためのprimerセットおよびTaq−polymeraseおよびdNTPを含む溶液がこれにあたる。ここで、後述するインターカレータを用いる場合にはprimerが蛍光標識されていなくてもよい。蛍光標識されたprimerを用いる場合にはインターカレータを用いなくてもキャピラリーシーケンサーで検出が可能となる。
核酸増幅用溶液(生体試料から抽出された核酸と、核酸増幅用試薬との混合物)の蒸発を防ぐための溶液とは、核酸増幅用溶液と混和せず、適切に溶液を覆い、加熱による溶液の温度上昇によっても溶液が蒸発するのを防ぐものであれば何でもよいが、例えばミネラルオイルがこれにあたる。
例えばミネラルオイルによって加熱による溶液の蒸発を防ぐことができる。しかしスループットが良いため検査数が多くなることに起因して、ごく微量の蒸発でも繰り返し検査を行うと、装置内に溶液やミネラルオイルが付着するようになる。特に、装置や容器設置部分にカバーをかけた場合、ミネラルオイルの付着以外にも、装置内やカバー内に水や試薬の蒸気が残り、そのままでは結露してしまう。このような装置内への付着や結露が生じないようにするため、反応容器を設置する温度調整可能な容器設置台の近傍に排気口を設け、排気装置をこれに接続することにより、装置外へ蒸気を排出する。具体的には、前記3)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させることができる。
本発明において、本装置が設置されている室内に蒸気を排出しないようにするためには、さらにトラップ装置を設けて稼動させる。より具体的には、前記6)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させることができる。または、反応容器を設置する温度調整可能な容器設置台の近傍へのトラップ装置の設置だけでも蒸気の拡散を抑えることができる。
本発明においては温度調整可能な装置の温度を調整することにより、反応容器上において核酸増幅反応を行う。ここで、核酸増幅反応の好ましい例として、PCRを挙げることができる。
本発明においては、核酸増幅反応後に、核酸増幅反応の産物の検出を行なう。産物の検出は、遺伝子増幅産物のフラグメント解析及び塩基配列決定に用いられる一般的な装置を用いて行うことができる。例えば、キャピラリーシーケンサー 3130 Genetic Analyzer(ABI社)である。より具体的には、7)前記6)工程で増幅反応が終了した、核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液に覆われた溶液中にシーケンサー解析用の反応溶液を3〜10μlの容量で分注する工程と、8)前記7)工程で分注したシーケンサー解析用溶液と核酸増幅反応終了溶液の混合溶液を、増幅用溶液の蒸発を防ぐため溶液に覆われた溶液中から吸引し、別の容器に分注する工程と、9)前記8)工程で反応溶液が分注された容器をキャピラリーシーケンサーにセットして遺伝子増幅産物の特徴の解析を行なう。
増幅反応が終了した後、核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための試薬に覆われた溶液に、シーケンサー解析用の反応溶液を増幅反応溶液の3〜10倍量分注してから、ピペットチップ等で前記混合液のみを吸引し、シーケンサー解析用容器に分注する。シーケンサー解析用の反応溶液を分注してから混合液を吸引するので、微量な容量の増幅反応液を取り残すことがなくなり、さらに、混合液のみの吸引であるので、遠心分離等による核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための試薬の分離作業をなくし、連続性のある工程で且つ簡便な装置で作業を行なうことが可能である。
そして、キャピラリーシーケンサーを用いた解析を行なうことにより、数塩基の微小な遺伝子変異を正確に検出することが可能である。塩基配列決定法をもちいれば、疾患、特に癌で起こる点突然変異や数塩基の配列変化の検出を高感度に検出でき、また、増幅産物の断片長を解析するフラグメント解析法を用いれば、疾患、特に癌でおこるヘテロ接合体の欠失(LOH)をマイクロサテライトマーカーなどを指標に解析することが可能であるし、また、父方、母方由来の染色体のマイクロサテライトマーカーのタイプを指標としたDNA鑑定や、性染色体上のマーカーを指標とした性別鑑定等を行なうことが可能である。
本発明においては、当該産物の検出の後に、遺伝子変化解析を行う。より具体的には、10)遺伝子増幅産物の特徴を解析可能な解析用ソフトにより、得られたデータを解析して、遺伝子変化判定を行なう工程を実施する。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、6a)前記6)工程の直後に、核酸の2本鎖を検出可能な試薬を0.5〜5μlの容量で反応容器へ分注し、当該試薬の特徴を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程、又は6b)前記6)工程の直後に、核酸増幅産物の標識を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程、を更に含むことができる。
核酸増幅反応後の溶液に、核酸の2本鎖を検出可能な試薬を分注し、反応容器のまま、分注した試薬の特徴を検出することにより、別容器に分注することなく、同一の反応容器で、増幅から検出までを行なう。これにより、連続性のある工程を行なうことができる。ここで核酸の2本鎖を検出可能な試薬とは、例えば、インターカレータがこれにあたる。具体的には、SYBER Green(invitrogen社)、picogreen(invitrogen社)、エチジウムブロマイドなど蛍光を発するものがこれにあたる。これらの試薬を使用する場合、蛍光イメージャーを装置に組み込むことにより検出が可能となり、キャピラリーシーケンサーのような大掛かりな検出装置は必要なく、乾燥・濃縮、増幅、検出まで簡便な装置で行なうことが可能となる。また、PCR反応の前に標的配列に対して、TaqMan-probeのような蛍光標識されたFRET(fluorescence resonance energy transfer)用のプローブを入れることもできる。このプローブは、PCR反応が進むにしたがってQuencherがはずれて蛍光を発するようになり、PCR産物量を蛍光量から推定することができる。
また、蛍光イメージャーで増幅核酸量を測定後、そのままシーケンサーにかけることもできる。この場合、通常蛍光シーケンサーに必要な蛍光標識されたprimerでの増幅工程を必要とせず、2本鎖の増幅産物だけにとりこまれたインターカレータを、蛍光で検出可能であるため、primer毎の標識を必要とせず、低コストの試薬での検出方法を提供することができる。さらに、エチジウムブロマイドであれば紫外光で励起して可視光で検出可能であり、高価な蛍光検出装置がいらず、簡易な電気泳動装置でフラグメント解析が可能となる。このように、低コストな検査方法と検出装置を提供できるようになる。
核酸増幅反応中に、核酸増幅産物に標識がされるようにしておくこともできる。例えば、前後のプライマーにそれぞれ異なる標識をつけておき、一方と特異的に結合する物質でB/F分離を行い、もう一方と特異的に結合する物質に検出可能な標識、または基質が検出可能な酵素をつけておくことにより、非特異的な増幅産物のシグナルを排除する特異的な検出系が可能となり、また検出に酵素増感法を利用することにより、微量な増幅産物であっても高感度に検出することが可能となる。また、本工程により、AU3000i(Oympus社)のような酵素抗体反応を利用した免疫分析装置への搭載も可能となり、臨床現場に遺伝子検査を導入するのが容易になる。
本発明においては前記2)工程〜前記3)工程を複数回繰り返すことで、分注と乾燥工程を複数回行うことにより、希薄な核酸溶液を濃縮することができる。
核酸溶液を温度調整可能な容器設置台で微量分注し、乾燥させる工程を繰り返すことにより、生体試料から得た希薄な核酸溶液をさらに濃縮し、高濃度の状態で次の反応を行なうことができる。濃縮工程に、限外ろ過やエタノール沈殿などの別の反応容器や装置を必要とする工程が必要なく、簡素な装置で容易に濃縮が可能である。従来、溶解させる溶液量を調整することにより行なっていた核酸濃度の調整が、分注と乾燥工程の繰り返し数を変えることにより容易に可能となる。
本方法では核酸増幅反応後にインターカレータで染色するか、TaqMan-probeから発せられた蛍光を、蛍光イメージャーでデータ取得後、予め設定した値以下のサンプルについては、次の工程で解析に耐えうるデータが得られないものとして、分注と乾燥工程の繰り返し数を増やし、再度すべての工程をやり直すことができる。すなわち、前記6a)工程または前記6b)工程で得られたデータをもとに、核酸増幅産物の検出及び遺伝子変化解析を当該6a)工程又は当該6b)工程に続けて行うか否かを判断し、続けて行わない場合は前記2)工程〜前記3)工程の繰り返し数を調整して当該工程をその回数だけ行ってから、前記4)工程〜前記6)工程を行なうことができる。
蛍光イメージャーで検出または酵素増感法等で検出した増幅核酸量の定量結果から、1試料ごとや1容器ごと、または1分注位置ごとに、次の工程である遺伝子変化解析やキャピラリーシーケンサー解析用の反応に進むか否か、または、検出した増幅核酸量の定量結果で疾患判定を行なうか否かを判定することができる。検出された増幅核酸量が、予め測定しておいたシーケンサーの検出感度や、疾患の判定ロジックに十分達している場合は、そのまま次の工程に移ることが可能であるが、反対に、増幅核酸量がシーケンサーの検出感度や、核酸量定量系の信頼性のある検出感度に達していない場合は、その定量結果をもとに、核酸溶液の分注・乾燥工程の繰り返し数を決定し、サンプルの濃度を増減させて最適範囲にし、その後の工程をやりなおすことができる。この工程により、生体試料から得た核酸溶液の別装置による濃度測定や、検出装置への濃度測定だけの追加機能設置を省くことが可能となる。そして、一連の工程や装置を簡素化することが可能となる。
また、試薬コストの高いシーケンサー解析用の反応において、解析不可能なサンプルの無駄な反応を排除することにより、検査全体のコストを低下させることが可能となる。また、シーケンス後のソフトでの解析結果を待たず、または、核酸定量結果を疾患判定ロジックに当てはめる前に、工程のやり直しが自動的にかつ検出可能に調整してできるため、スループットのよい効率的な検査となる。初期に使用する核酸量を最低限のものとして、できない場合に増加させていく工程とすることができるため貴重なサンプルを無駄にすることがなくなる。
これら一連の工程を自動化することにより、簡素でかつ低コストでスループットのよい臨床検査が可能となる。
本発明の遺伝子変化の検出方法においては、例えば検出対象の遺伝子変化をヘテロ接合体の欠失(LOH)とすることができる。これにより、癌化と密接に関連して起こる染色体上の大規模な変化を指標とし、癌の検出の特異性を上げることが可能となる。また、解析するマーカー数を増やし組み合わせることにより検出感度・特異度を向上させることが可能である。また生体試料を血漿とし、核酸をDNAとすることができる。本方法での検査対象を血漿DNAとすることにより、血漿中に遊離する癌由来のDNAの変異の検出による、高感度な癌の早期発見が可能となる。従来、低侵襲な癌の検出法として血清中の腫瘍マーカーを検査するが、腫瘍マーカーは一般に癌が進行してから検出されるようになるものが多く、早期の癌を検出することはできなかった。一方、遺伝子の変化はその累積が癌の原因とされており、遺伝子の変化を検出することにより従来検出が難しい早期の癌も検出できる可能性がある。採取が容易で侵襲性の低い血液を検体とした検査とすることにより、患者負担を減らし、検査機会を増やすことができるため、微量な血漿をサンプルとした自動化された遺伝子検査は、健康診断での癌の早期発見を実現させることが期待できる。また、母体血漿の胎児由来DNAを調べることにより、妊娠初期に胎児の性別および染色体異常および遺伝病の検出を行なうことが可能であることが報告されている(上原記念生命科学財団研究報告書、17:447〜449(2003))。妊娠7週以降の母体血漿中に、胎児由来浮遊DNAが循環していることが知られている。従来、胎児性別や染色体異常の検査は妊娠14週以降の羊水検査によって行われ、流産等のリスクを伴った。母体血漿を用いた自動化された遺伝子検査であれば、手作業による遺伝子検査を行なうことに対する特別な技術は必要なく、一般的な病院の臨床検査室や検査センターでの検査が可能であり、母体及び胎児に侵襲度がなく、かつ極早期に胎児の情報が得られるため、妊娠の継続や胎児の治療等の対応をさらに早期に行なうことが可能となる。また、血液を検体とすることにより、サンプルからのDNA/RNA抽出は比較的容易であり、自動化可能な工程、簡便な自動化装置を用いることができるようになる。本方法は、微量なサンプルを無駄なく全量使用可能な方法であるため、特に全量が微量であるため、臨床検査に用いることが難しかった血漿DNAがその対象として適当である。
本発明の遺伝子変化の検出装置は、溶液類の分注装置;及び温度調整可能な容器設置台;を備え、反応容器の溶液捕捉面と当該分注装置の溶液吐出口との距離を測定する装置、当該溶液吐出口を検出する装置、当該吐出口部分の液残りを確認する装置、反応容器上の溶液が乾燥したことを確認する装置、及び排気装置および/またはトラップ装置、反応容器上の液滴形状を確認する装置、の少なくともひとつを更に備えたことを特徴とする。また本発明の遺伝子変化の検出装置においては、試薬及び/又は標識を検出する装置を更に備えることができる。本発明においては、遺伝子変化の解析工程を簡略化しスループットのよい自動化可能な装置となっている。また、反応容量を小さくし、工程の途中で適宜、確認工程を入れることにより、微量な生体試料で効率よく、且つ精度のよい検査を可能とし、遺伝子配列の変化の検出を臨床検査へ適応させることを可能とする系を提供している。
次に図1を用いて本発明の実施形態の検出装置10の具体的構成について説明する。
検出装置10は、市販の分注システム12(例えば、HAMILTON社 Microlab STAR)を基に構成されている。
検出装置10は、検査を行なうための消耗品を用意しておく部分として、容器14を蓄えておくラック16と、シーケンサー用の容器18(マルチウェルプレート)を蓄えておくラック20、分注チップを蓄えておくラック22、試薬を設置する試薬用チューブラック24、検査対象の溶液の入ったチューブを設置する検査対象用チューブラック26とを備えている。試薬用チューブラック24と検査対象用チューブラック26は好ましくは保冷機能を有しているとよい。また、使い終わった容器の廃棄部28や分注チップの廃棄部30も備えている。
検出装置10には平行に延びる一対のガイド32が設けられており、ガイド32には別のガイド34、36が設けられており、ガイド34、36はガイド32に沿って移動可能である。ガイド34には、複数の分注装置38と容器の撮像装置40とが取り付けられている。分注装置38と撮像装置40は共にガイド34に沿って移動可能である。分注装置38には、容器面の高さを測定する高さ測定装置42と、分注チップの先端位置測定と先端位置の液残りを確認するための小型カメラモジュール44とが設けられている。ガイド36には、容器14の搬送装置46と容器18の搬送装置48とが取り付けられている。搬送装置46と搬送装置48は共にガイド36に沿って移動可能である。
検出装置10は、検査のための濃縮・反応部として、温度調整可能な容器設置台50を備えている。容器設置台50上には容器ラック52が置かれ、その容器ラック52上に容器14が設置される。また検出装置10は、濃縮・反応時に容器14にかぶせるふた54を準備しておく準備部56を有している。さらに検出装置10は、加熱時の蒸発物を吸気するための吸気口58と、吸気口58に接続された排気経路60と、排気経路60に接続された排気・トラップ装置62とを備えている。排気・トラップ装置62は、排気経路60を通して吸気口58から蒸発物を吸気して室内に排気する排気装置と、排気物を室内に出さないために蒸発物を捕獲するトラップ装置とを含んでいる。排気・トラップ装置62はまた制御のためにケーブル61を介して検出装置本体と電気的に接続されている。
検出装置10には、反応が終わった溶液(解析溶液)をシーケンサーで解析する場合に、シーケンサーにセットする容器18(マルチウェルプレート)を設置する解析用溶液集積部64が設けられている。さらに検出装置10には、多数の試料を検査する場合に、解析溶液を分注した容器18を蓄えておくストッカ66が設けられている。
検出装置10は、DNAの2本鎖を検出可能な試薬を用いて検出するために、蛍光イメージャーを備えている。蛍光イメージャーは、励起光を発する光源74と、ファイバー76を介して光源74と接続されたイメージャー部70とで構成される。イメージャー部70は、暗箱に覆われた図示しない光学系と走査ステージと、暗箱に取り付けられたCCDカメラ78とを有している。暗箱には、容器14を出し入れするための開閉可能な開口部72が設けられている。光源74から発せられる励起光はファイバー76によってイメージャー部70に導かれる。蛍光イメージャはコンピュータと接続し、温度調整可能な容器設置台50の温度制御と連動させて、一定時間毎に蛍光イメージを撮影することもできる。
検出装置10は、制御部80(キーボード、マウスを含む)と、ディスプレイ82とを含んでいる。制御部80は、検出装置全体を制御するほか、CCDカメラ78と光源74にも接続されており、測定データの解析機能も備えている。
遺伝子変化の検出装置を用いた血漿DNAのLOH解析
[方法]
患者Xから採取した血漿DNAおよびリンパ球DNAを用いてマイクロサテライトを指標としたLOHの検出を前述した実施形態による遺伝子変化の検出装置(図1)を用いて行なった。
患者Aから血液10mlを採取後、遠心分離し血漿成分と血球成分に分離し、血漿成分約4mlと血球成分約6mlからそれぞれQIAGEN社 QIAmp DNA抽出キットによりDNAを抽出した。得られたDNA量をpicogreenで染色した後、プレートリーダーで定量した。血漿DNAは4ng、リンパ球DNAは40μgであった。抽出容量は共に200μlであった。血漿DNAはそのまま、リンパ球DNAは10万分の1に希釈し、遺伝子変化の検出装置10の検査対象用チューブラックA、Bにセットした。それぞれのDNA濃度は20pg/μlであった。
試薬用チューブラックには、PCR反応溶液a〜l:ターゲットとなるマイクロサテライトごとにprimer−setが異なる溶液(10X Extaq buffer、dNTP、forward primer、reverse primer、Ex−taq polymerase、dH2O)、ミネラルオイル、シーケンサー用溶液(buffer、size standard、ホルムアミド)をそれぞれ分注したチューブをセットした。試薬用チューブラック、検査対象用チューブラックともに図示していない保冷装置により4℃に保てるようになっている。Primerは蛍光シーケンサーで解析可能なように、蛍光標識をしておいた。
検出のための反応容器としては、スライドグラス上に、親水性処理がされた4列×12スポットが施され、その周りに疎水性処理がされたin situ PCR用のスライドグラス(例えば、松浪硝子工業製 高撥水性印刷スライドグラス カスタムパターン)を用いた。これをサーマルサイクラー(温度調整可能な容器設置台50)上にセットした。温度は90℃にセットした。高さ測定装置42により容器14のスポット部を測定し、容器面の高さ情報を得た。また、分注装置38に使い捨てのチップを装着し、分注装置38に取り付けられた小型カメラモジュール44によりチップの先端位置の画像を取得し、その画像から先端位置の情報を得た。この2種類の情報から容器に対する分注装置38の位置を制御できるようにした。
装置付属の分注装置38により、検査対象用チューブラック26の血漿DNAを15μl吸引し、1μlずつ、サーマルサイクラー上のスライドグラス(容器14)の親水性スポット列1(図2)に縦方向に分注していった。この際、分注のたびに小型カメラモジュール44によりチップの先端部の画像を取得し、液滴の残りが無いか確認した。液滴の残りがあった場合には、新しいチップに交換して、再度先端位置の情報を取得し、分注装置38の位置を制御できるようにしてから分注を継続した。スポット列1の行1から行12までの一連の分注を、約30秒の間隔を空け、10回繰り返した。次に、リンパ球DNAを、列2(図2)に同様の工程で分注した。この乾燥工程の際には、排気・トラップ装置62を稼動させて、DNA溶液の蒸気が装置内や室内に拡散しないようにした。
そして、容器の撮像装置40で容器上の画像を取得し、溶液の残りが無いか確認して、各スポットのDNA溶液が乾燥していることを確認した。これらの工程により、1スポットあたり200pgのDNAを分注した。
次に、サーマルサイクラーの温度を4℃にセットし、試薬用チューブラック24から分注装置38でPCR反応溶液aを3μl吸引し、1μlずつスライドグラスの列1、列2の行1の親水性スポット上に分注した。続けて試薬用チューブラック24からPCR反応溶液bも同様に行2に分注した。PCR反応溶液c〜lについても同様に続く行に分注を行なった。その後、試薬用チューブラック24から分注装置38によりミネラルオイル150μlを吸引し、先程分注したPCR反応溶液上に5μlずつ分注した。PCR反応溶液はミネラルオイルに覆われた。これらの工程中、分注装置38に使い捨てのチップを装着するたびに、分注装置38に取り付けられた小型カメラモジュール44によりチップの先端位置の画像を取得し、その画像から先端位置の情報を得て、容器に対する分注装置38の位置を制御できるようにした。また、分注のたびに小型カメラモジュール44によりチップの先端部の画像を取得し、液滴の残りが無いか確認した。液滴の残りがあった場合には、新しいチップに交換して、再度先端位置の情報を取得し、分注装置38の位置を制御できるようにしてから分注を継続した。
分注終了後、容器の撮像装置40で容器上の画像を取得し、各スポットの溶液がスポットの領域からはみ出して隣接したスポットとつながっていないか確認した。分注のたびに溶液がスポット領域に正しく分注されたか確認することが望ましいが、工程を簡略化するために、一連の分注が終わった後に、液滴の形状確認を行なって、隣接したスポットとつながっていないか確認してもよい。
そして、サーマルサイクラーをスタートさせPCR反応を行なった(95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒:30サイクル)。規定のサイクル終了後、サーマルサイクラーを4℃にした。
なお分注終了後、サーマルサイクラーを稼動させる前に、容器14の搬送装置46を用いて容器14のふた54を準備部56から搬送し、容器14にかぶせた。吸気口58もふた54に覆われるようになっており、PCR反応中は排気・トラップ装置62を稼動させて、ふた54に覆われた内部のPCR反応液やミネラルオイルの極微量に発生する蒸気を、装置内や室内に拡散しないようにした。PCR反応後は、排気・トラップ装置62の稼動を停止し、ふた54は容器14の搬送装置46を用いて準備部56へと戻した。
次に、試薬用チューブラック24から分注装置38によりシーケンサー用溶液を5μl吸引したままチップの先端をPCR反応が終了したスライドグラス上のミネラルオイルを通過させPCR反応溶液中に5μl排出したのち、そのまま5.5μlのPCR反応溶液とシーケンサー用溶液の混合液を吸引し、解析用溶液集積部64のマルチウェルプレート(容器18)に分注した。分注装置38のチップを交換し、同様の操作をすべてのスポットにおいて行い、マルチウェルプレートの別々のウェルに分注した。
マルチウェルプレートにシールをし、キャピラリーシーケンサー 3130 Genetic Analyzer(ABI社)にセットしてフラグメント解析を行なった。
(結果)
すべてのマイクロサテライトが解析可能であった。DNA溶液をチューブラックにセットしてから、シーケンサー反応を始めるまでの時間は、2時間30分で自動的に全工程の処理が可能であった。価格は1サンプルあたり143円であり、うちPCR部分は8円であった。分注作業を手作業で行なった場合はかかる時間は倍となったがコストは同様であった。
[比較例]
手作業により従来法での血漿DNAでのLOH解析 前記工程と同様の患者Xの血漿DNAとリンパ球DNAを用いてLOH解析を行なった。リンパ球DNAは同様に希釈を行なった。それぞれのDNA溶液を10μlずつPCR用のプレートに12ウェルに分注し、サーバント社のスピードバック真空乾燥装置(SPD111V)により60℃で乾燥させた。乾燥時間は30分であった。
乾燥後、血漿DNA、リンパ球DNAそれぞれにPCR反応溶液a〜lを20μlずつ分注したのち、プレートミキサーにより撹拌し、シール後、PCR装置によりPCR反応を行なった(95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒:30サイクル)。
マルチウェルプレートにシーケンサー用溶液を5μlづつ分注して準備しておき、その中に、先ほどのPCR反応を終了した溶液をプレートミキサーで撹拌後、シールをはがして1μlずつ分注した。シーケンサー用溶液とPCR反応液の混合液の入ったプレートにシールをし、キャピラリーシーケンサー 3130 Genetic Analyzer(ABI社)にセットしてフラグメント解析を行なった。
(結果)
半数のマイクロサテライトマーカーが検出限界以下で解析できなかった。DNA溶液をプレートに分注し始めるところから、シーケンサー反応を始めるまでの時間は3時間であり、すべての工程が手作業であった。1サンプルあたりの価格は295円で、うちPCR部分は160円であった。
解析できなかったマイクロサテライトマーカーについて解析するため、PCR終了後のそれぞれの溶液について全量を、QIAGEN社 QIAquickカラムによりprimer除去作業後、スピードバックにより乾燥濃縮させたのち1μlの純水で溶解し、シーケンサー用溶液5μlを分注後、再度シーケンスを行なった。ほとんどのマーカーは解析可能となったものの、1マーカーは解析できなかった。Primer除去と乾燥・濃縮に掛かった時間は1時間半であった。
(考察)
全量が微量で希薄なDNA溶液を高温のヒートブロック上で数回に分けて分注することにより迅速な濃縮が可能となった。全量を低容量でPCR反応を行い、そのままその全量を次のシーケンサー解析に用いることが可能であったため、従来法よりも遺伝子変異の解析が可能な率が向上した。また、複数マーカーをもちいた複雑な分注作業であっても自動化によりスループットよく正確に行なうことができ、解析までの時間が短縮された。解析にかかるコストも全工程で従来の1/2、PCR部分においては1/20となった。本実施例の方法により、微量で希薄なDNAを迅速で自動的かつ、高感度に解析可能となった。
蛍光イメージャーを用いたPCR産物量の測定と濃縮工程のやりなおしおよび蛍光プライマーなしのシーケンスによる検出
[方法]
実施例1と同様に患者Yと患者Zの血漿DNAとリンパ球DNAを抽出した。濃度測定は行なわず、リンパ球DNAは10万分の1に希釈した。実施例1と同様に、遺伝子変化の検出装置10(図1)の検査対象用チューブラック26にDNA溶液をセットし、分注装置38によりサーマルサイクラー(温度調整可能な容器設置台50)においた反応容器上に1μlずつ分注を行なった。(列1:患者Y血漿DNA、列2:患者Yリンパ球DNA、列3:患者Z血漿DNA、列4:患者Zリンパ球DNA)。その他の試薬も同様にセットした。Primerには蛍光標識のないものを使用した。さらに、試薬用チューブラック24にはpicogreen溶液(invitrogen社)を入れたチューブもセットした。
反応容器を90℃で乾燥後、4℃に温度を低下させ、実施例1と同様にそれぞれのPCR溶液を分注し、PCR反応を行なった。PCR反応終了後、試薬用チューブラック24のpicogreen溶液を分注装置38で2μl吸引し、チップを反応容器上のミネラルオイルを通過させ、PCR反応溶液中に1μl分注した。チップを交換しながら、すべてのスポットについて同様に分注を行なった。
続いて、反応容器を容器の搬送装置46によってイメージャー部70の開閉可能な開口部72から、イメージャー部70内の走査ステージへ設置する。開口部72を閉じた後、480nmで励起して、520nmの蛍光をCCDカメラ78で取得し、各スポットの蛍光輝度を測定した。
列3:患者Zの血漿DNAにおいては、すべてのスポットで蛍光輝度が予め定めておいた値よりも弱かった。その他の列はすべて予め定めておいた値よりも大きな蛍光輝度が得られた。
列1、2、4については、そのまま、実施例1と同様にシーケンサー解析用溶液を分注後、マルチウェルプレートに分注し、蛍光シーケンサーでフラグメント解析を行なった。
列3については、新たな反応容器に、実施例1と同様に患者Zの血漿DNAを1μl分注して約30秒経過後、再度分注する工程を10回繰り返した。そして、PCR反応溶液を分注し、PCRを行なった後、再度picogreen溶液を分注して、蛍光輝度を測定した。今回は予め定めておいた値よりも大きな蛍光輝度が得られた。そのため、続けてシーケンサー解析用溶液を分注した後、マルチウェルプレートに分注し、蛍光シーケンサーでフラグメント解析を行なった。
(結果)
すべてのスポットがフラグメント解析可能であった。フラグメント解析を行なう前に、工程のやり直しを行なったため、解析終了までの時間の短縮と、フラグメント解析コストの低減がされた。蛍光primerを使用せずにシーケンスが可能となったため、primerの製造コストを低減することができた。
自動免疫分析装置を利用してPCR産物を定量するLOH解析
[方法]
患者Wの血漿DNAを実施例1と同様に取得した。濃度測定を行なわずに、5倍希釈で4点の濃度系列を作成した。これを遺伝子変化の検出装置10(図1)の検査対象用チューブラック26にセットした。primerにはforword primerにFITC標識、reverse primerにbiotin標識したものを使用した。DNA溶液をサーマルサイクラー(温度調整可能な容器設置台50)においた反応容器の列1から4に分注装置38により分注した。DNA溶液が乾燥したことを確認した後、実施例1と同様にPCR反応溶液を分注し、ミネラルオイルを分注してPCRを行なった。PCR終了後、分注装置38で水を5μl吸引しミネラルオイルを通過させてPCR反応後の溶液に分注した後、5.5μlを吸引し、解析用溶液集積部64のマルチウェルプレート(容器18)に分注した。分注装置38のチップを交換しながら、同様の操作をすべてのスポットについて行なった。マルチウェルプレートにさらに水を200μlずつ分注した。次に、プレートを自動免疫分析装置(AU3000i:Olympus社)にセットした。自動免疫分析装置では、プレートから100μlを吸引してチューブに分注後、抗FITC抗体の固定化された磁気ビーズを分注し、FITC標識のされたPCR産物のみを磁気ビーズに吸着させたのち、マグネットを当てて溶液を吸引し、余分なDNA断片を洗浄した。その後、streptavidin−AP(アルカリフォスファターゼ)溶液を分注したのち、さらにマグネットを当てて溶液を吸引し、洗浄して余分な酵素を除き、最後にAP基質である発光試薬を分注し、ルミノメーターで発光量を測定した。
得られた結果のうち、各primer−setにつき、希釈した濃度系列の比とルミノメーターでの測定データの比が一致している、PCRが飽和に至っていない領域のデータを使用して解析に用いた。
Primer−setのうち、内部標準遺伝子としたマイクロサテライト配列の量と癌で変化を起こすマーカーとしたマイクロサテライトの比を算出し、LOHの値を算出した。
(結果) すべてのprimer−setが解析可能であった。蛍光シーケンサーと比較して、半分の時間で測定可能であった。解析コストは1/10であった。
ダイレクトシーケンスによる血漿中の遺伝子変異の検出
[方法]
患者S,T,U,Vより血液1mlを採取し、そのうち血漿0.4mlから実施例1と同様に血漿DNAを抽出した。それぞれ40μlの水に溶解し、遺伝子変化の検出装置10(図1)の検査対象用チューブラック26にセットした。試薬用チューブラック24にはPCR反応液a−i:(存在プライマーセットa:K−ras codon12,b:p53 exon2−3,c:p53 exon 4, d:exon5,e:exon6, f:exon7, g:exon8−9, h:exon10, i:exon11)を設置し、それ以外は実施例1と同様とした。シーケンサー溶液はダイレクトシーケンス用溶液とした。
実施例1と同様に、スライドグラス上にそれぞれのDNA溶液を1μlづつスポットしたのち乾燥させる工程を5回繰り返したのち、PCR用反応液を分注しPCR反応を行なった後、全量をシーケンサーによりダイレクトシーケンスを行なった。
(結果)
すべてのサンプルにおいて塩基配列決定が可能であり、全ての患者においていずれかの遺伝子マーカーで変異が見られた。
[比較例]
前記工程と同様のサンプルをPCRチューブにより全量20μlの反応容量でPCR反応を行なった。そののち、1μlをシーケンサー用溶液と混合し、ダイレクトシーケンスを行なった。
(結果)
半数の患者で、全てのマーカーで塩基配列決定ができなかった。また、マーカーのうちいくつかは、その他の患者でも解析できなかった。
(考察)
遺伝子変化の検出装置10(図1)を使うことにより、微量な血漿DNAサンプルを無駄なくすべて検出解析工程に使うことが可能であるため、採取量の少ない血液の場合でも検査を成立させることが可能である。マーカー数が多い複雑な検査の場合でも自動化によりスループットよく解析が可能となる。
母体血漿中の胎児由来DNAによる性別鑑定
妊娠7週から16週までの妊婦O,P,Q,Rより血液1mlを採取し、前記工程と同様に血漿DNAを抽出した。40μlの水に溶解したのち、遺伝子変化の検出装置10(図1)の検査対象用チューブラック26に設置した。PCR反応溶液には、Y染色体特異的なDYS14遺伝子特異的primerを用いた。前記工程と同様に1μlのDNA溶液の分注と乾燥を5回繰り返したのち、PCR反応を行い、シーケンサーによりフラグメント解析を行なった後、DYS14遺伝子の量を測定した。
(結果)
本方法により、DYS14遺伝子の存在有りとされた胎児は出産後男児であることが確認された。
(考察)
従来法の羊水による遺伝子診断と比較し、血漿DNAの診断は妊婦および胎児に対しはるかに侵襲度が低く、しかも早期に正しく胎児の情報が得られた。本実施例の方法による胎児DNAの診断は、早期の低侵襲な染色体異常や遺伝病の出生前診断を可能とし、スループットのよいスクリーニング検査にすることも可能である。
大腸癌患者および健常者それぞれ5名から糞便を採取し、ISOGENにてtotalRNAを抽出した後、40μlの水に溶解した後、検出装置10(図1)の検査対象用チューブラック26に設置した。前記工程と同様に、1μlのDNA溶液の分注と乾燥を5回繰り返した後、1step PCRの反応溶液を分注し、逆転写反応とPCR反応を行った。PCRprimerには、CEAと内部標準遺伝子としてGAPDH遺伝子の配列を用い、5’FAM-3’TAMRAで標識されたTaqMan-probeも反応溶液に入れた。PCR反応中は、4サイクル毎に蛍光イメージャで撮影を行い、40サイクルまでのPCR反応を行った。
(結果)
蛍光強度のプロットが作成でき、CEAとGAPDHの比をすべての検体で求めたところ、大腸癌検体での比は、健常者検体での比よりも高かった。
(考察)
糞便中に含まれる微量な癌細胞からのmRNAを簡便に測定し定量できることは、スループットのよい大腸癌のスクリーニング検査となる可能性が期待できる。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
本発明によれば、微量な生体試料に対して効率良く遺伝子変化を自動的に検出する技術が提供される。

Claims (19)

  1. 生体試料における遺伝子変化を検出する方法であって、
    1)生体試料から核酸を抽出する工程と、
    2)前記1)工程で得られた核酸溶液を、0.5〜5μlの容量で、温度調整可能な容器設置台上に設置された、同一反応容器上の異なる位置に分注する工程と、
    3)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、反応容器上の核酸溶液を乾燥させる工程と、
    4)反応容器上の乾燥させた核酸上に、0.5〜5μlの容量で核酸増幅用の試薬を分注する工程と、
    5)前記4)工程で分注した核酸増幅用の試薬上に、3〜10μlの容量で核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液を分注する工程と、
    6)温度調整可能な装置の温度を調整することにより、核酸増幅反応を行なう工程とを有し、
    前記1)〜6)工程の後、核酸増幅反応後の産物を検出し、遺伝子変化解析を行なう遺伝子変化の検出方法。
  2. 7)前記6)工程で増幅反応が終了した、核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐための溶液に覆われた溶液中にシーケンサー解析用の反応溶液を3〜10μlの容量で分注する工程と、
    8)前記7)工程で分注したシーケンサー解析用溶液と核酸増幅反応終了溶液の混合溶液を、増幅用溶液の蒸発を防ぐため溶液に覆われた溶液中から吸引し、別の容器に分注する工程と、
    9)前記8)工程で反応溶液が分注された容器をキャピラリーシーケンサーにセットして遺伝子増幅産物の特徴の解析を行なう工程と、
    10)遺伝子増幅産物の特徴を解析可能な解析用ソフトにより、得られたデータを解析し、遺伝子変化判定を行なう工程とを有する請求項1に記載の検出方法。
  3. 6a)前記6)工程の直後に、核酸の2本鎖を検出可能な試薬を0.5〜5μlの容量で反応容器へ分注し、当該試薬の特徴を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程を更に含む、請求項1に記載の検出方法。
  4. 6b)前記6)工程の直後に、核酸増幅産物の標識を検出することにより、増幅された核酸量を定量する工程を含む、請求項1に記載の検出方法。
  5. 前記2)工程〜前記3)工程を複数回繰り返す請求項1に記載の検出方法。
  6. 前記6a)工程または前記6b)工程で得られたデータをもとに、核酸増幅産物の検出及び遺伝子変化解析を当該6a)工程又は当該6b)工程に続けて行うか否かを判断し、続けて行わない場合は前記2)工程〜前記3)工程の繰り返し数を調整して当該工程をその回数だけ行ってから、前記4)工程〜前記6)工程を行なう請求項3又は4に記載の検出方法。
  7. 検出対象の遺伝子変化がヘテロ接合体の欠失である請求項1に記載の検出方法。
  8. 前記生体試料が血漿であり、前記核酸がDNAである請求項1に記載の検出方法。
  9. 前記反応容器への溶液類の分注を分注装置により行い、
    前記2)工程の前に、測定装置を使って前記反応容器の溶液捕捉面と、当該分注装置の溶液吐出口との間の距離を測定し、当該距離を調整する工程を含む請求項1に記載の検出方法。
  10. 前記分注装置の溶液吐出口が、使い捨てチップを備えている、請求項9に記載の検出方法。
  11. 反応容器への溶液類の分注後、前記分注装置の吐出口部分の液残りを確認する工程を含む請求項9に記載の検出方法。
  12. 前記4)工程の前に核酸溶液が乾燥したことを確認する工程を含む請求項1に記載の検出方法。
  13. 核酸溶液が乾燥したことを確認する前記工程を、反応容器上に残存している可能性のある溶液の面積測定により行う、請求項12に記載の検出方法。
  14. 前記3)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させる請求項1に記載の検出方法。
  15. 前記6)工程中に排気装置および/またはトラップ装置を稼動させる請求項1に記載の検出方法。
  16. 前記反応容器が、複数の試料保持区画を有し、各試料保持区画が親水加工され、その周囲が疎水加工された基板である請求項1に記載の検出方法。
  17. 前記基板への溶液類の分注後、当該基板上の液滴の形状を確認する工程を含む請求項16に記載の検出方法。
  18. 溶液類の分注装置;及び
    温度調整可能な容器設置台;を備え、
    反応容器の溶液捕捉面と、当該分注装置の溶液吐出口との距離を測定する装置、
    当該溶液吐出口を検出する装置、
    当該吐出口部分の液残りを確認する装置、
    反応容器上の溶液が乾燥したことを確認する装置、
    排気装置および/またはトラップ装置、及び
    反応容器上の液滴形状を確認する装置、
    の少なくともひとつ
    を更に備えたことを特徴とする遺伝子変化の検出装置。
  19. 試薬及び/又は標識を検出する装置を更に備えた請求項18の遺伝子変化の検出装置。
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