JP2005030825A - マイクロアレイの製造装置、製造方法、マイクロアレイ及び生体由来物質の解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを正確に固相することができるマイクロアレイの製造装置、かかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法、担体に固相したプローブに関する情報を搭載したマイクロアレイ、及びより正確な生体由来物質の解析方法を提供する。
【解決手段】プローブの情報を保持する情報保持手段と、該情報を認識する情報読取手段32と、プローブをマイクロアレイの担体に固相する固相手段37と、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相する手段を制御する制御手段31と、を備えたマイクロアレイ製造装置及びかかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法。かかる製造方法によって製造され、プローブの位置、量の情報をバーコード等で搭載したマイクロアレイ。マイクロアレイ毎各区画におけるプローブの固相量のばらつきを考慮してハイブリダイズ量を補正する生体由来物質の解析方法。
【選択図】 図9
【解決手段】プローブの情報を保持する情報保持手段と、該情報を認識する情報読取手段32と、プローブをマイクロアレイの担体に固相する固相手段37と、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相する手段を制御する制御手段31と、を備えたマイクロアレイ製造装置及びかかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法。かかる製造方法によって製造され、プローブの位置、量の情報をバーコード等で搭載したマイクロアレイ。マイクロアレイ毎各区画におけるプローブの固相量のばらつきを考慮してハイブリダイズ量を補正する生体由来物質の解析方法。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い精度でプローブの配置位置を制御するマイクロアレイの製造装置、該装置を用いたマイクロアレイの製造方法、該製造方法を用いて製造されるマイクロアレイ及び生体由来物質の解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトゲノムの解析は、システマティックな塩基配列解析から、システマティックな機能解析へと焦点が移ってきている。遺伝情報の具体的内容は、いかなるタンパク質がいかなる条件で合成されるかという点につきるものである。前者の、すなわちいかなるタンパク質が合成されているかという点に関しては、従来、ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法などの解析方法が広く用いられている。
【0003】
ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法は、DNAやRNAなどの塩基配列による相補性や、抗原と抗体、ビオチンとアビジン、などの間に起こる極めて特異性の高い結合を利用したものである。それぞれ特定のタンパク質、特定のmRNA,特定のDNAの有無を解析でき、いかなるタンパク質が合成されているかわかるようになっている。しかし、これらの方法は、多量のタンパク質、DNA、RNAなどを一度に解析するには必ずしも適していない。
【0004】
一方、タンパク質がいかなる条件で合成されているかということは、DNAからmRNAへ転写するレベルにおいて制御されている。しかし、DNAにおける制御配列とこれに対応する制御内容の情報が不足していたため、ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法などの従来の方法では、タンパク質がいかなる条件で合成されているかという点に関して、充分な解析ができなかった。
【0005】
ここにきて、マイクロアレイ(DNAチップ)という技術に期待が高まっている。マイクロアレイは、通常、1〜数十センチ四方程度のスライドガラスやシリコンなどからなるプレート(担体)上に、数千〜数十万種の既知のDNAなどの断片(プローブ)を配列、固相したものである。
これらプローブに、相補性を利用して未知のDNAなどの生体由来物質(ターゲット)を結合させる。あらかじめこのターゲットに標識をつけ、ターゲットがどのプローブと結合したかを調べることによって、ターゲットが何であるかが分かるようになっている。
【0006】
このようなマイクロアレイは、遺伝子などの塩基配列、発現、変異、ならびに多様性などの解析に非常に有効であり、例えば数千〜数万の遺伝子についてその発現を同時に調べることも可能である。マイクロアレイは、ハイブリダイゼーションの場を小型化、高密度化したものであり、試料の微量化やハイブリダイゼーションの時間の短縮を実現した。
【0007】
マイクロアレイの担体にプローブを固相する手段としては、オリゴヌクレオチドを担体上でin situに合成していく手法と、あらかじめ調製されたオリゴヌクレオチドやcDNAなどを高密度に貼り付ける手法がある。
【0008】
マイクロアレイの担体にプローブを固相する場合、1〜数十センチ四方程度の面積を数千〜数十万区画に区切り、各区画に正確にプローブを一定量固相しなければならない。また、固相される各プローブの大きさは、約200μm程度あるいはそれ以下である。したがって、マイクロアレイの製造においては、大変な緻密性が要求される。
【0009】
ところで、マイクロアレイを製造する際、マイクロタイタープレート(MTPプレート)を使用することがある(例えば特許文献1参照。)。通常、プローブがオリゴDNAの場合、一度のスポットに必要な量である20μl程度のオリゴDNA溶液を専用容器で凍結保管し、マイクロアレイを製造する際、この凍結保管されたオリゴDNA溶液を溶解させて使用する。MTPプレートの所定の溶液貯留孔に、プローブとして必要なオリゴDNAを含むオリゴDNA溶液をピペットにて手動で分注し、次いでマイクロアレイ製造装置により該溶液をMTPプレートから抽出し、マイクロアレイ担体の所定の位置に該溶液をスポットする。
【0010】
MTPプレートを用いてマイクロアレイを製造する場合、MTPプレートの溶液貯留孔に分注されたオリゴDNA溶液は、個々の判別は不可能であり、所定の位置に分注されたかどうかの確認は不可能である。また、手動で分注している場合、オリゴDNA溶液の種類が多くなるほど、MTPプレートに分注する際、個々のオリゴDNA溶液の分注位置を間違える可能性が高くなる。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−365302号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロアレイの性能は、これを利用した解析の結果に大きな影響を及ぼす。例えば、Aというプローブを担体のA1という区画に固相するところを、誤ってB1の区画に固相してしまい、そのまま解析を行うと、ターゲットがA1に特異的に結合した場合、ターゲットはプローブAと特異的に結合する物質であるという誤った判断をすることになり、その結果遺伝子DNAの変異解析、多型解析、塩基配列解析、発現解析などが正確に行えなくなる。
【0013】
また、各プローブの量が均一でないままターゲットの解析を行うと、ターゲットがどのプローブとどれぐらい特異的に結合しているかという量的な解析が不可能になる。さらに、複数のマイクロアレイを使用して遺伝子の発現を比較する場合などは、各マイクロアレイに同量のプローブが固相されていることが前提となる。
【0014】
このように、マイクロアレイの製造に関しては、プローブの配置の正確性及び各プローブの正確な計量が重要である。
しかしながら、上記のようなマイクロアレイを用いた解析は、マイクロアレイの製造やマイクロアレイ検出装置について議論され始めたばかりであり、まだかなりの問題点を抱えている。従来の技術では、マイクロアレイのプローブの配置や各プローブの固相量の確認に言及しているものはない。
【0015】
したがって、本発明は、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを正確に固相することができるマイクロアレイの製造装置、かかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法を提供することを目的とする。
また、他の目的は、担体に固相したプローブに関する情報を搭載したマイクロアレイを提供することである。
さらには、より正確な生体由来物質の解析方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は、プローブに関する情報を保持する情報保持手段と、該情報を認識する情報読取手段と、プローブをマイクロアレイの担体に固相する固相手段と、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相する手段を制御する制御手段と、を備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
また、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、情報保持手段としてバーコードを用いるマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、情報保持手段であるバーコードを、プローブを保存する容器に備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、マイクロアレイの担体に固相したプローブの情報を、出力する機能を備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、プローブの情報を、バーコード又は電子的記録素子で出力するマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、上記のマイクロアレイの製造装置を用いたマイクロアレイの製造方法であって、プローブの配置情報に基づいて、情報読取装置が、情報保持手段が保持するプローブに関する情報を読み取ることで、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを固相するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、担体にプローブを固相した情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、プローブを担体に固相した位置の情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、プローブを担体に固相した量の情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記のマイクロアレイの製造方法を用いて製造され、プローブを担体に固相した情報を記録するバーコード又は電子的記録素子を有するマイクロアレイを提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法を用いて製造されたマイクロアレイを、生体由来物質の解析に用いる生体由来物質の解析方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるプローブとは、生体由来物質と特異的に結合可能な物質であり、かつ、例えば核酸であればその塩基配列や塩基の長さなどが、タンパク質であればそのアミノ酸の組成などがわかっているものである。また、プローブは自然物、人工物のどちらでもよい。プローブの例としては、既知のホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アプザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNA、PNAなどが挙げられる。
【0018】
本発明に使用される生体由来物質とは、プローブと特異的に結合可能な物質であり、生体から抽出、単離等されたものである。また、生体から直接抽出されたものだけではなく、これを化学処理、化学修飾したものでもよい。生体由来物質の例としては、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アプザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなどが挙げられる。
【0019】
プローブと生体由来物質とが特異的に結合するとは、例えばDNAやRNAなどの塩基配列が相補的にハイブリダイズして二重鎖を形成する場合や、抗原と抗体、ビオチンとアビジンなどのように、特定の物質と選択的に反応する場合を意味する。
【0020】
本発明に使用される担体は、プローブを安定に結合、点着できるものであればよく、例えば種々の多孔質体、メンブレンフィルター、スライドグラス板、シリコン板などが挙げられる。また、これらの担体は、プローブを安定に結合するために前処理されていてもよい。前処理の例としては、例えばポリリシン、ポリエチレンイミン等のポリ陽イオンなどによる担体の表面処理などが挙げられる。
【0021】
担体は、区画に分けられ、各区画に一種類のプローブを固相させることができる。1の担体に、複数種、又は同一種のプローブを固相させることができる。
図1は、マイクロアレイ担体の一部の一例を示す模式図である。各桝目がそれぞれ一区画に相当する。後記する実施例1によると、図1において、例えば1列目のA段の区画には、配列番号1で表されるオリゴDNAがスポットされることがわかる。
【0022】
本発明に使用される情報保持手段は、プローブに関する情報を保持するものであり、具体的な例として、バーコードや電子的記録素子などが挙げられる。情報保持手段に保持されるプローブに関する情報としては、例えばプローブの種類や濃度などが挙げられる。これらの情報を保持する情報保持手段は、プローブを保存する容器に備えられていることが好ましい。また、情報保持手段は、下記に述べる情報読取手段によって、認識されるようになっている。
【0023】
情報読取手段は、プローブに関する情報を認識するものであり、具体的には、バーコードなどに搭載されたプローブに関する情報を読み取るものである。情報読取手段は、以下の3通りの機能を有する場合がある。
(1) プローブを保存する容器などに備えられた情報保持手段を認識し、特定の容器を選別する。
(2) (1)の他に、特定の容器を移動する。そのために昇降/移動モータを具備するロボット部を有し、これの動作はコントローラ等の制御手段によって制御される。
(3) (1)の他に、プローブをMTPプレートに分注する。すなわち、プローブを保存する容器から一定量のプローブを抽出し、MTPプレート等の所定の溶液貯留孔にこれを分注する。このためには、その先端にエッペンドルフチューブなどが備えられていることが好ましい。
【0024】
本発明に使用される固相手段は、プローブをマイクロアレイの担体の所定の位置に固相する機能を有するものである。固相に至るまでには、プローブを吸引する、プローブを担体の所定の位置まで移動する、及びプローブをスポットするという各過程がある。そのために、昇降及び移動モータを備え、プローブを吸引及びスポットするヘッドを具備していることが好ましい。このような固相手段の動きは制御手段によって制御されている。
【0025】
制御手段は、前述した情報読取手段と上記固相手段を制御する機能を備えているものである。この制御手段は例えば、以下の3通りの方法によって、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相することができる。
(1) 所望するプローブを選別するために、情報読取手段に情報保持手段に保持されたプローブに関する情報を読み取らせ、所望のプローブを保存する容器を選別させる。次いで、選別した容器中の所望のプローブを、固相手段に付設されたヘッドに吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。
(2)(1)と同様にして、プローブを含む容器を選別させる。次に、所望のプローブを保存する容器を情報読取手段のロボット部に移動させる。また、必要に応じて容器の蓋を取り除かせる。最後に、固相手段に付設されたヘッドに選別、移動されたプローブを吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。
(3)(1)と同様にして、プローブを含む容器を選別させる。次に、所望のプローブを情報読取手段の分注機能を用いてMTPプレートの所定の溶液貯留孔に分注させる。最後に、固相手段に付設されたヘッドにMTPプレートの所定の溶液貯留孔から所望のプローブを吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。なお、これらの作業は必ずしも連続的に行う必要はなく、例えば、まず選別及び分注を、担体に固相する全てのプローブについて行ってから、MTPプレートから担体にこれらのプローブを固相してもよい。
このように、制御手段が所望のプローブを保存する容器を情報保持手段及び情報読取手段を介して確認するため、人によって誤ったプローブをそれと知らずに固相することがない。また、かかる機能を備えていれば、固相すべき位置や量を誤った場合、制御手段が警告を発し、プローブの配置情報を修正したり、そのマイクロアレイの製造を中止したりすることができる。
【0026】
本発明のマイクロアレイの製造装置は、固相手段に付設されたヘッドがプローブをスポット、固相した後、固相したプローブの情報を出力する機能を備えていることが好ましい。固相したプローブの情報としては、例えば、如何なるプローブを担体の何処に固相したかという位置の情報や、担体の各区画にどの程度の量のプローブを固相したかという量の情報等が挙げられる。また、これらの情報は、バーコードや電子的記録素子を用いて出力することができる。
【0027】
上記の担体の各区画にどの程度の量のプローブを固相したかという量の情報を得るための方法のひとつに、後述する実施例にあるような、プローブの自家蛍光を利用した方法がある。したがって、本発明のマイクロアレイの製造装置は、プローブの自家蛍光を測定するために、蛍光顕微鏡などが備えられていることが好ましい。また、本発明のマイクロアレイの製造装置に、後に述べる補正ハイブリダイゼーション量を算出する機能を備えていても良い。
【0028】
本発明のマイクロアレイは、以上説明したマイクロアレイの製造装置を用いて製造され、プローブを担体に固相した情報を記録するバーコード又は電子的記録素子が備えられている。
バーコード又は電子的記録素子に記録された情報は、マイクロアレイを使用して生体由来物質の解析を行う際、利用できる。
【0029】
本発明の生体由来物質の解析方法は、プローブの配置情報に基づいて、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを固相し、固相したプローブの量に関する情報を、生体由来物質の解析に用いるものである。例えば、後述する実施例に詳しく述べるが、プローブの自家蛍光を測定し、このばらつきに基づいて、ハイブリダイゼーション量を補正する方法が挙げられる。
マイクロアレイにおいては、プローブ含有溶液の濃度やスポット量を常に一定にすることが難しいため、固相するプローブの量を常に一定にすることは困難である。このため、ある特定のプローブと特異的に結合し得る未知の生体由来物質の量が同じであっても、使用するマイクロアレイによって特異的な結合量が異なる場合がある。本発明の生体由来物質の解析方法は、固相量のばらつきに起因する特異的な結合量のばらつきが補正でき、より正確な解析結果を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0031】
実施例1
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
マイクロアレイの担体は、2.6x7.6cmのスライドグラス板を使用し、あらかじめ0.01%(W/V)ポリ−L−リジン溶液に10分間さらし、表面前処理を行った。担体上はA1〜A4の4区画に分けられている。各区画に固相されるプローブは、区画A1が配列番号1、区画A2が配列番号2、区画A3が配列番号3、区画A4が配列番号4で表される塩基配列を有する。各区画に固相されるプローブの一覧を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
プローブは、塩基配列がわかっている4種類のアミノ標識オリゴDNAを使用し、これらのプローブを水に溶かしたもの(プローブ含有溶液)をそれぞれ20μlチューブに入れ、透明な容器収納部13にセットした。なお、各チューブの下部には、情報保持手段であるバーコードが備えられており、バーコードには容器内のプローブの種類についての情報が記載されている。また、情報読取手段(バーコードリーダー)12は、容器収納部13の下方からバーコードを読み取るようになっている。
各プローブ含有溶液のスポット量は300plである。
図2、図3及び図4を参照し、順を追って詳しく説明する。
【0034】
(1) 図2において、制御手段(コントローラ)11にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段11によって固相手段16を前記容器収納部13の上方に移動する。
(3) 図3において、情報読取手段12がプローブを保存する容器14に備えられているバーコードを認識し、その情報を制御手段11に入力する。
(4) 制御手段11は、情報読取手段12からの情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含む容器14を選別し、固相手段16のヘッド17が該容器内のプローブ含有溶液を2μl吸引するようにする。
(5) 図4において、固相手段16をマイクロアレイの担体18の上方に移動し、担体18の所定の区画にヘッド17内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(6) 使用したヘッド17を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(7) (1)〜(6)の作業を繰り返し、担体18の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0035】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0036】
実施例2
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
使用したマイクロアレイの担体、及びこれの表面前処理、各区画に固相するプローブの種類及び量、容器収納部は実施例1と同様である。図5、図6、図7、及び図8を参照し、順を追って詳しく説明する。
(1) 図5において、制御手段(コントローラ)21にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段21によって情報読取手段22を容器収納部23の上方に移動する。
(3) 情報読取手段22が容器24の上方に備えてあるバーコードを読み取り、この情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含んでいる溶液が収容されている容器24を選別する。
(4) 図6において、情報読取手段22のロボット部によって、該容器24を容器ステージ25に移動する。
(5) 容器ステージ25上に移動された容器24を、固相手段26の下方にさらに移動する。
(6) 図7において、固相手段26のヘッド27を下降させ、ヘッド27の先端を容器24内の溶液に挿入し、2μlのプローブ含有溶液を吸引する。
(7) 図8において、プローブ含有溶液を含んだヘッド27が、担体28の所定の区画にスポットできるように、固相手段26を移動する。
(8) 担体28の所定の区画にヘッド27内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(9) 使用したヘッド27を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(10) (1)〜(9)の作業を繰り返し、担体の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0037】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0038】
実施例3
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
使用したマイクロアレイの担体、及びこれの表面前処理、各区画に固相するプローブの種類及び量は実施例1と同様である。容器収納部33には、プローブ含有溶液20μlをそれぞれ保存したチューブを収容し、各チューブには情報保持手段であるバーコードが備えられており、各バーコードには容器内のプローブの種類についての情報が記載されている。図9、図10、図11、図12、及び図13を参照し、順を追って詳しく説明する。
【0039】
(1) 図9において、制御手段31にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段31によって情報読取手段32を容器収納部33の上方に移動する。
(3) 情報読取手段32によってプローブ含有溶液を収容する容器34の外部に表示されたバーコードを読み取り、この情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含んでいる溶液が収容されている容器34を選別する。
(4) 図10において、情報読取手段32の先端部に備えられたエッペンドルフチューブ35を下降し、溶液中にエッペンドルフチューブ35の先端部を挿入してこれを20μl吸引する。
(5) 情報読取手段32のエッペンドルフチューブ35をMTPプレート36上に移動する。
(6) 図11において、情報読取手段32のエッペンドルフチューブ35を再度下降させ、MTPプレート36の所定の溶液貯留孔内にエッペンドルフチューブ35内の全溶液を分注する。
(7) 使用したエッペンドルフチューブ35を未使用のものに交換する。
(8) (1)〜(7)の作業を繰り返し、MTPプレート36の所定の溶液貯留孔に、担体39にスポットするべきプローブ全てを分注する。
(9) MTPプレート36を固相手段37の下方に移動する。
(10) 図12において、固相手段37に付設されたヘッド38を下降させ、ヘッド38の先端をMTPプレート36の所望のプローブが分注された溶液貯留孔内に挿入し、これを2μl吸引する。
(11) 図13において、プローブ含有溶液を含んだヘッド38が、担体39の所定の区画にスポットできるように、固相手段37を移動する。
(12) 担体39の所定の区画にヘッド38内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(12) 使用したヘッド38を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(14)(10)〜(12)の作業を繰り返し、担体の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0040】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0041】
実施例1〜3においては、情報読取手段が情報保持手段に記載されたプローブの情報を認識するため、誤ったプローブが選別されると制御手段11、21、31が警告を発するようになっている。このとき、マイクロアレイの製造を中止したり、各プローブ含有溶液がどの区画に実際にスポットされたかという情報を有効に利用し、プローブの配置情報を修正したりすることも可能である。
【0042】
実施例4
実施例1と同様の方法を使用し、配列番号1で表されるオリゴDNAをアミノ標識したアミノ標識オリゴDNAをプローブとして、マイクロアレイの担体の10区画に同一のプローブを固相した。5枚のマイクロアレイを同様にして製造した。
5枚のマイクロアレイを製造した後、図示しない蛍光顕微鏡を用いて各プローブの自家蛍光を測定した。単位面積当りの自家蛍光の強度を用い、所定のプローブの固相量を100としたとき、各区画におけるプローブの固相量の相対値とした。結果を図14に示す。
【0043】
図14より、スポット位置及びマイクロアレイによって、プローブの固相量にばらつきがあることがわかる。これは、オリゴDNA溶液を調整した際の容器毎のオリゴDNA濃度、及びスポット毎のヘッドからのスポット量にばらつきがあることが原因と考えられる。
【0044】
ついで、これら5枚のマイクロアレイに、プローブと相補的に結合する蛍光標識されたカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせ、蛍光強度を測定した。各区画の単位面積当りの蛍光強度を用い、所定の固相量のプローブとハイブリダイズした場合を100とし、各区画におけるハイブリダイズ量の相対値とした。結果を図15に示す。
【0045】
図15より、スポット位置及びマイクロアレイによって、ハイブリダイズ量にばらつきがあることがわかる。理想的なマイクロアレイにおいては、同一種類のオリゴDNAを同量固相し、同一同量のカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせた場合、各区画各マイクロアレイは同一のハイブリダイズの結果であるべきである。
【0046】
図14及び図15において、ハイブリダイズ量と固相量とは同じばらつきの傾向がある。したがって、ハイブリダイズ量のばらつきの主たる原因は、固相量のばらつきによるものと考えられる。
そこで、固相量のばらつきを考慮した補正ハイブリダイズ量を、以下の式から算出した。
【0047】
補正係数=100/固相量
補正ハイブリダイズ量=ハイブリダイズ量×補正係数
【0048】
上記の補正係数を用いて実施例4のハイブリダイズ量を補正した結果を図16に示す。
図16より、各区画、各マイクロアレイのハイブリダイズ量のばらつきは著しく減少し、理想的なマイクロアレイに近いハイブリダイズの結果を得た。
【0049】
以上、インクジェット方式のマイクロアレイ製造装置を用いたマイクロアレイの製造方法について説明したが、本発明はこの他に、例えば、ピンの先端部にプローブ含有溶液を付着、吸引させた後に、該先端部を担体に接触させてプローブ含有溶液をスポットするピン方式のマイクロアレイ製造装置及びかかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法においても適用することが可能である。
【0050】
本発明のマイクロアレイは、マイクロアレイにおけるプローブの位置や量の情報の他に、例えば、前述した担体の各区画の補正係数を記録したバーコード又は電子的記録素子を有することもできる。これらの情報を生体由来物質の解析装置に入力すれば、より正確な解析結果を得ることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いることにより、人の作業による固相するプローブの取り間違いを防止することができ、プローブの配置が正確なマイクロアレイを製造することができる。
【0052】
本発明のマイクロアレイの製造方法により、プローブの配置が正確であり、かつ正確な解析結果を得られるマイクロアレイを提供することができる。担体に固相したプローブの情報、特に位置や量に関する情報を出力することで、さらに好ましいものとなる。
【0053】
本発明のマイクロアレイは、プローブの配置が正確であり、かつプローブの量に関する情報を有しているので、これを用いればより精度の高い生体由来物質の解析を行うことができる。
本発明の生体由来物質の解析方法は、例えばマイクロアレイ毎各区画のプローブの固相量のばらつきを考慮することによって、より正確な解析結果を得ることができるものとなる。
【0054】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロアレイ担体の一部の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図10】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図11】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図12】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図13】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図14】同様に製造された5枚のマイクロアレイにおける区画毎のスポット量のばらつきを示すグラフである。
【図15】図14に示したマイクロアレイに同量のカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせた時のハイブリダイズ量のばらつきを示すグラフである。
【図16】本発明の生体由来物質の解析方法を用いて図15に示したハイブリダイズ量を補正したグラフである。
【符号の説明】
11,21,31 制御手段、12,22,32 情報読取手段、13,23,33 容器収納部、14,24,34 プローブ含有容器、16,26,37 固相手段、17,27,38 ヘッド、18,28,39 マイクロアレイ担体。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い精度でプローブの配置位置を制御するマイクロアレイの製造装置、該装置を用いたマイクロアレイの製造方法、該製造方法を用いて製造されるマイクロアレイ及び生体由来物質の解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトゲノムの解析は、システマティックな塩基配列解析から、システマティックな機能解析へと焦点が移ってきている。遺伝情報の具体的内容は、いかなるタンパク質がいかなる条件で合成されるかという点につきるものである。前者の、すなわちいかなるタンパク質が合成されているかという点に関しては、従来、ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法などの解析方法が広く用いられている。
【0003】
ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法は、DNAやRNAなどの塩基配列による相補性や、抗原と抗体、ビオチンとアビジン、などの間に起こる極めて特異性の高い結合を利用したものである。それぞれ特定のタンパク質、特定のmRNA,特定のDNAの有無を解析でき、いかなるタンパク質が合成されているかわかるようになっている。しかし、これらの方法は、多量のタンパク質、DNA、RNAなどを一度に解析するには必ずしも適していない。
【0004】
一方、タンパク質がいかなる条件で合成されているかということは、DNAからmRNAへ転写するレベルにおいて制御されている。しかし、DNAにおける制御配列とこれに対応する制御内容の情報が不足していたため、ウエスタン・ブロット法、ノーザン・ブロット法、サザン・ブロット法などの従来の方法では、タンパク質がいかなる条件で合成されているかという点に関して、充分な解析ができなかった。
【0005】
ここにきて、マイクロアレイ(DNAチップ)という技術に期待が高まっている。マイクロアレイは、通常、1〜数十センチ四方程度のスライドガラスやシリコンなどからなるプレート(担体)上に、数千〜数十万種の既知のDNAなどの断片(プローブ)を配列、固相したものである。
これらプローブに、相補性を利用して未知のDNAなどの生体由来物質(ターゲット)を結合させる。あらかじめこのターゲットに標識をつけ、ターゲットがどのプローブと結合したかを調べることによって、ターゲットが何であるかが分かるようになっている。
【0006】
このようなマイクロアレイは、遺伝子などの塩基配列、発現、変異、ならびに多様性などの解析に非常に有効であり、例えば数千〜数万の遺伝子についてその発現を同時に調べることも可能である。マイクロアレイは、ハイブリダイゼーションの場を小型化、高密度化したものであり、試料の微量化やハイブリダイゼーションの時間の短縮を実現した。
【0007】
マイクロアレイの担体にプローブを固相する手段としては、オリゴヌクレオチドを担体上でin situに合成していく手法と、あらかじめ調製されたオリゴヌクレオチドやcDNAなどを高密度に貼り付ける手法がある。
【0008】
マイクロアレイの担体にプローブを固相する場合、1〜数十センチ四方程度の面積を数千〜数十万区画に区切り、各区画に正確にプローブを一定量固相しなければならない。また、固相される各プローブの大きさは、約200μm程度あるいはそれ以下である。したがって、マイクロアレイの製造においては、大変な緻密性が要求される。
【0009】
ところで、マイクロアレイを製造する際、マイクロタイタープレート(MTPプレート)を使用することがある(例えば特許文献1参照。)。通常、プローブがオリゴDNAの場合、一度のスポットに必要な量である20μl程度のオリゴDNA溶液を専用容器で凍結保管し、マイクロアレイを製造する際、この凍結保管されたオリゴDNA溶液を溶解させて使用する。MTPプレートの所定の溶液貯留孔に、プローブとして必要なオリゴDNAを含むオリゴDNA溶液をピペットにて手動で分注し、次いでマイクロアレイ製造装置により該溶液をMTPプレートから抽出し、マイクロアレイ担体の所定の位置に該溶液をスポットする。
【0010】
MTPプレートを用いてマイクロアレイを製造する場合、MTPプレートの溶液貯留孔に分注されたオリゴDNA溶液は、個々の判別は不可能であり、所定の位置に分注されたかどうかの確認は不可能である。また、手動で分注している場合、オリゴDNA溶液の種類が多くなるほど、MTPプレートに分注する際、個々のオリゴDNA溶液の分注位置を間違える可能性が高くなる。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−365302号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロアレイの性能は、これを利用した解析の結果に大きな影響を及ぼす。例えば、Aというプローブを担体のA1という区画に固相するところを、誤ってB1の区画に固相してしまい、そのまま解析を行うと、ターゲットがA1に特異的に結合した場合、ターゲットはプローブAと特異的に結合する物質であるという誤った判断をすることになり、その結果遺伝子DNAの変異解析、多型解析、塩基配列解析、発現解析などが正確に行えなくなる。
【0013】
また、各プローブの量が均一でないままターゲットの解析を行うと、ターゲットがどのプローブとどれぐらい特異的に結合しているかという量的な解析が不可能になる。さらに、複数のマイクロアレイを使用して遺伝子の発現を比較する場合などは、各マイクロアレイに同量のプローブが固相されていることが前提となる。
【0014】
このように、マイクロアレイの製造に関しては、プローブの配置の正確性及び各プローブの正確な計量が重要である。
しかしながら、上記のようなマイクロアレイを用いた解析は、マイクロアレイの製造やマイクロアレイ検出装置について議論され始めたばかりであり、まだかなりの問題点を抱えている。従来の技術では、マイクロアレイのプローブの配置や各プローブの固相量の確認に言及しているものはない。
【0015】
したがって、本発明は、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを正確に固相することができるマイクロアレイの製造装置、かかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法を提供することを目的とする。
また、他の目的は、担体に固相したプローブに関する情報を搭載したマイクロアレイを提供することである。
さらには、より正確な生体由来物質の解析方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は、プローブに関する情報を保持する情報保持手段と、該情報を認識する情報読取手段と、プローブをマイクロアレイの担体に固相する固相手段と、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相する手段を制御する制御手段と、を備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
また、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、情報保持手段としてバーコードを用いるマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、情報保持手段であるバーコードを、プローブを保存する容器に備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、マイクロアレイの担体に固相したプローブの情報を、出力する機能を備えたマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造装置において、プローブの情報を、バーコード又は電子的記録素子で出力するマイクロアレイの製造装置を提供する。
さらに、本発明は、上記のマイクロアレイの製造装置を用いたマイクロアレイの製造方法であって、プローブの配置情報に基づいて、情報読取装置が、情報保持手段が保持するプローブに関する情報を読み取ることで、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを固相するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、担体にプローブを固相した情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、プローブを担体に固相した位置の情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法において、プローブを担体に固相した量の情報を出力するマイクロアレイの製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記のマイクロアレイの製造方法を用いて製造され、プローブを担体に固相した情報を記録するバーコード又は電子的記録素子を有するマイクロアレイを提供する。
さらに、本発明は、かかるマイクロアレイの製造方法を用いて製造されたマイクロアレイを、生体由来物質の解析に用いる生体由来物質の解析方法を提供する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるプローブとは、生体由来物質と特異的に結合可能な物質であり、かつ、例えば核酸であればその塩基配列や塩基の長さなどが、タンパク質であればそのアミノ酸の組成などがわかっているものである。また、プローブは自然物、人工物のどちらでもよい。プローブの例としては、既知のホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アプザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNA、PNAなどが挙げられる。
【0018】
本発明に使用される生体由来物質とは、プローブと特異的に結合可能な物質であり、生体から抽出、単離等されたものである。また、生体から直接抽出されたものだけではなく、これを化学処理、化学修飾したものでもよい。生体由来物質の例としては、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アプザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなどが挙げられる。
【0019】
プローブと生体由来物質とが特異的に結合するとは、例えばDNAやRNAなどの塩基配列が相補的にハイブリダイズして二重鎖を形成する場合や、抗原と抗体、ビオチンとアビジンなどのように、特定の物質と選択的に反応する場合を意味する。
【0020】
本発明に使用される担体は、プローブを安定に結合、点着できるものであればよく、例えば種々の多孔質体、メンブレンフィルター、スライドグラス板、シリコン板などが挙げられる。また、これらの担体は、プローブを安定に結合するために前処理されていてもよい。前処理の例としては、例えばポリリシン、ポリエチレンイミン等のポリ陽イオンなどによる担体の表面処理などが挙げられる。
【0021】
担体は、区画に分けられ、各区画に一種類のプローブを固相させることができる。1の担体に、複数種、又は同一種のプローブを固相させることができる。
図1は、マイクロアレイ担体の一部の一例を示す模式図である。各桝目がそれぞれ一区画に相当する。後記する実施例1によると、図1において、例えば1列目のA段の区画には、配列番号1で表されるオリゴDNAがスポットされることがわかる。
【0022】
本発明に使用される情報保持手段は、プローブに関する情報を保持するものであり、具体的な例として、バーコードや電子的記録素子などが挙げられる。情報保持手段に保持されるプローブに関する情報としては、例えばプローブの種類や濃度などが挙げられる。これらの情報を保持する情報保持手段は、プローブを保存する容器に備えられていることが好ましい。また、情報保持手段は、下記に述べる情報読取手段によって、認識されるようになっている。
【0023】
情報読取手段は、プローブに関する情報を認識するものであり、具体的には、バーコードなどに搭載されたプローブに関する情報を読み取るものである。情報読取手段は、以下の3通りの機能を有する場合がある。
(1) プローブを保存する容器などに備えられた情報保持手段を認識し、特定の容器を選別する。
(2) (1)の他に、特定の容器を移動する。そのために昇降/移動モータを具備するロボット部を有し、これの動作はコントローラ等の制御手段によって制御される。
(3) (1)の他に、プローブをMTPプレートに分注する。すなわち、プローブを保存する容器から一定量のプローブを抽出し、MTPプレート等の所定の溶液貯留孔にこれを分注する。このためには、その先端にエッペンドルフチューブなどが備えられていることが好ましい。
【0024】
本発明に使用される固相手段は、プローブをマイクロアレイの担体の所定の位置に固相する機能を有するものである。固相に至るまでには、プローブを吸引する、プローブを担体の所定の位置まで移動する、及びプローブをスポットするという各過程がある。そのために、昇降及び移動モータを備え、プローブを吸引及びスポットするヘッドを具備していることが好ましい。このような固相手段の動きは制御手段によって制御されている。
【0025】
制御手段は、前述した情報読取手段と上記固相手段を制御する機能を備えているものである。この制御手段は例えば、以下の3通りの方法によって、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相することができる。
(1) 所望するプローブを選別するために、情報読取手段に情報保持手段に保持されたプローブに関する情報を読み取らせ、所望のプローブを保存する容器を選別させる。次いで、選別した容器中の所望のプローブを、固相手段に付設されたヘッドに吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。
(2)(1)と同様にして、プローブを含む容器を選別させる。次に、所望のプローブを保存する容器を情報読取手段のロボット部に移動させる。また、必要に応じて容器の蓋を取り除かせる。最後に、固相手段に付設されたヘッドに選別、移動されたプローブを吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。
(3)(1)と同様にして、プローブを含む容器を選別させる。次に、所望のプローブを情報読取手段の分注機能を用いてMTPプレートの所定の溶液貯留孔に分注させる。最後に、固相手段に付設されたヘッドにMTPプレートの所定の溶液貯留孔から所望のプローブを吸引させ、担体の所定の位置に固相させる。なお、これらの作業は必ずしも連続的に行う必要はなく、例えば、まず選別及び分注を、担体に固相する全てのプローブについて行ってから、MTPプレートから担体にこれらのプローブを固相してもよい。
このように、制御手段が所望のプローブを保存する容器を情報保持手段及び情報読取手段を介して確認するため、人によって誤ったプローブをそれと知らずに固相することがない。また、かかる機能を備えていれば、固相すべき位置や量を誤った場合、制御手段が警告を発し、プローブの配置情報を修正したり、そのマイクロアレイの製造を中止したりすることができる。
【0026】
本発明のマイクロアレイの製造装置は、固相手段に付設されたヘッドがプローブをスポット、固相した後、固相したプローブの情報を出力する機能を備えていることが好ましい。固相したプローブの情報としては、例えば、如何なるプローブを担体の何処に固相したかという位置の情報や、担体の各区画にどの程度の量のプローブを固相したかという量の情報等が挙げられる。また、これらの情報は、バーコードや電子的記録素子を用いて出力することができる。
【0027】
上記の担体の各区画にどの程度の量のプローブを固相したかという量の情報を得るための方法のひとつに、後述する実施例にあるような、プローブの自家蛍光を利用した方法がある。したがって、本発明のマイクロアレイの製造装置は、プローブの自家蛍光を測定するために、蛍光顕微鏡などが備えられていることが好ましい。また、本発明のマイクロアレイの製造装置に、後に述べる補正ハイブリダイゼーション量を算出する機能を備えていても良い。
【0028】
本発明のマイクロアレイは、以上説明したマイクロアレイの製造装置を用いて製造され、プローブを担体に固相した情報を記録するバーコード又は電子的記録素子が備えられている。
バーコード又は電子的記録素子に記録された情報は、マイクロアレイを使用して生体由来物質の解析を行う際、利用できる。
【0029】
本発明の生体由来物質の解析方法は、プローブの配置情報に基づいて、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを固相し、固相したプローブの量に関する情報を、生体由来物質の解析に用いるものである。例えば、後述する実施例に詳しく述べるが、プローブの自家蛍光を測定し、このばらつきに基づいて、ハイブリダイゼーション量を補正する方法が挙げられる。
マイクロアレイにおいては、プローブ含有溶液の濃度やスポット量を常に一定にすることが難しいため、固相するプローブの量を常に一定にすることは困難である。このため、ある特定のプローブと特異的に結合し得る未知の生体由来物質の量が同じであっても、使用するマイクロアレイによって特異的な結合量が異なる場合がある。本発明の生体由来物質の解析方法は、固相量のばらつきに起因する特異的な結合量のばらつきが補正でき、より正確な解析結果を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0031】
実施例1
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
マイクロアレイの担体は、2.6x7.6cmのスライドグラス板を使用し、あらかじめ0.01%(W/V)ポリ−L−リジン溶液に10分間さらし、表面前処理を行った。担体上はA1〜A4の4区画に分けられている。各区画に固相されるプローブは、区画A1が配列番号1、区画A2が配列番号2、区画A3が配列番号3、区画A4が配列番号4で表される塩基配列を有する。各区画に固相されるプローブの一覧を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
プローブは、塩基配列がわかっている4種類のアミノ標識オリゴDNAを使用し、これらのプローブを水に溶かしたもの(プローブ含有溶液)をそれぞれ20μlチューブに入れ、透明な容器収納部13にセットした。なお、各チューブの下部には、情報保持手段であるバーコードが備えられており、バーコードには容器内のプローブの種類についての情報が記載されている。また、情報読取手段(バーコードリーダー)12は、容器収納部13の下方からバーコードを読み取るようになっている。
各プローブ含有溶液のスポット量は300plである。
図2、図3及び図4を参照し、順を追って詳しく説明する。
【0034】
(1) 図2において、制御手段(コントローラ)11にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段11によって固相手段16を前記容器収納部13の上方に移動する。
(3) 図3において、情報読取手段12がプローブを保存する容器14に備えられているバーコードを認識し、その情報を制御手段11に入力する。
(4) 制御手段11は、情報読取手段12からの情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含む容器14を選別し、固相手段16のヘッド17が該容器内のプローブ含有溶液を2μl吸引するようにする。
(5) 図4において、固相手段16をマイクロアレイの担体18の上方に移動し、担体18の所定の区画にヘッド17内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(6) 使用したヘッド17を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(7) (1)〜(6)の作業を繰り返し、担体18の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0035】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0036】
実施例2
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
使用したマイクロアレイの担体、及びこれの表面前処理、各区画に固相するプローブの種類及び量、容器収納部は実施例1と同様である。図5、図6、図7、及び図8を参照し、順を追って詳しく説明する。
(1) 図5において、制御手段(コントローラ)21にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段21によって情報読取手段22を容器収納部23の上方に移動する。
(3) 情報読取手段22が容器24の上方に備えてあるバーコードを読み取り、この情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含んでいる溶液が収容されている容器24を選別する。
(4) 図6において、情報読取手段22のロボット部によって、該容器24を容器ステージ25に移動する。
(5) 容器ステージ25上に移動された容器24を、固相手段26の下方にさらに移動する。
(6) 図7において、固相手段26のヘッド27を下降させ、ヘッド27の先端を容器24内の溶液に挿入し、2μlのプローブ含有溶液を吸引する。
(7) 図8において、プローブ含有溶液を含んだヘッド27が、担体28の所定の区画にスポットできるように、固相手段26を移動する。
(8) 担体28の所定の区画にヘッド27内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(9) 使用したヘッド27を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(10) (1)〜(9)の作業を繰り返し、担体の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0037】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0038】
実施例3
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いて、以下の方法でマイクロアレイを作製した。
使用したマイクロアレイの担体、及びこれの表面前処理、各区画に固相するプローブの種類及び量は実施例1と同様である。容器収納部33には、プローブ含有溶液20μlをそれぞれ保存したチューブを収容し、各チューブには情報保持手段であるバーコードが備えられており、各バーコードには容器内のプローブの種類についての情報が記載されている。図9、図10、図11、図12、及び図13を参照し、順を追って詳しく説明する。
【0039】
(1) 図9において、制御手段31にプローブの配置情報を入力する。
(2) 制御手段31によって情報読取手段32を容器収納部33の上方に移動する。
(3) 情報読取手段32によってプローブ含有溶液を収容する容器34の外部に表示されたバーコードを読み取り、この情報を基に、最初の区画にスポットするべきプローブを含んでいる溶液が収容されている容器34を選別する。
(4) 図10において、情報読取手段32の先端部に備えられたエッペンドルフチューブ35を下降し、溶液中にエッペンドルフチューブ35の先端部を挿入してこれを20μl吸引する。
(5) 情報読取手段32のエッペンドルフチューブ35をMTPプレート36上に移動する。
(6) 図11において、情報読取手段32のエッペンドルフチューブ35を再度下降させ、MTPプレート36の所定の溶液貯留孔内にエッペンドルフチューブ35内の全溶液を分注する。
(7) 使用したエッペンドルフチューブ35を未使用のものに交換する。
(8) (1)〜(7)の作業を繰り返し、MTPプレート36の所定の溶液貯留孔に、担体39にスポットするべきプローブ全てを分注する。
(9) MTPプレート36を固相手段37の下方に移動する。
(10) 図12において、固相手段37に付設されたヘッド38を下降させ、ヘッド38の先端をMTPプレート36の所望のプローブが分注された溶液貯留孔内に挿入し、これを2μl吸引する。
(11) 図13において、プローブ含有溶液を含んだヘッド38が、担体39の所定の区画にスポットできるように、固相手段37を移動する。
(12) 担体39の所定の区画にヘッド38内のプローブ含有溶液を300plスポットする。
(12) 使用したヘッド38を図示しない洗浄装置によって洗浄する。
(14)(10)〜(12)の作業を繰り返し、担体の4区画にそれぞれプローブ含有溶液をスポットする。
【0040】
このようにして、マイクロアレイを作製し、ついでマイクロアレイの担体に固相したオリゴDNAと特異的に結合するカウンターオリゴDNAをマイクロアレイに加え、ハイブリダイズさせた。これらのカウンターオリゴDNAにはあらかじめ標識がつけられ、ハイブリダイゼーションによって蛍光発色するようになっている。蛍光顕微鏡を用いてマイクロアレイを解析したところ、あらかじめ定めたプローブの配置情報どおりに、オリゴDNAプローブが固相されていることが確認された。
【0041】
実施例1〜3においては、情報読取手段が情報保持手段に記載されたプローブの情報を認識するため、誤ったプローブが選別されると制御手段11、21、31が警告を発するようになっている。このとき、マイクロアレイの製造を中止したり、各プローブ含有溶液がどの区画に実際にスポットされたかという情報を有効に利用し、プローブの配置情報を修正したりすることも可能である。
【0042】
実施例4
実施例1と同様の方法を使用し、配列番号1で表されるオリゴDNAをアミノ標識したアミノ標識オリゴDNAをプローブとして、マイクロアレイの担体の10区画に同一のプローブを固相した。5枚のマイクロアレイを同様にして製造した。
5枚のマイクロアレイを製造した後、図示しない蛍光顕微鏡を用いて各プローブの自家蛍光を測定した。単位面積当りの自家蛍光の強度を用い、所定のプローブの固相量を100としたとき、各区画におけるプローブの固相量の相対値とした。結果を図14に示す。
【0043】
図14より、スポット位置及びマイクロアレイによって、プローブの固相量にばらつきがあることがわかる。これは、オリゴDNA溶液を調整した際の容器毎のオリゴDNA濃度、及びスポット毎のヘッドからのスポット量にばらつきがあることが原因と考えられる。
【0044】
ついで、これら5枚のマイクロアレイに、プローブと相補的に結合する蛍光標識されたカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせ、蛍光強度を測定した。各区画の単位面積当りの蛍光強度を用い、所定の固相量のプローブとハイブリダイズした場合を100とし、各区画におけるハイブリダイズ量の相対値とした。結果を図15に示す。
【0045】
図15より、スポット位置及びマイクロアレイによって、ハイブリダイズ量にばらつきがあることがわかる。理想的なマイクロアレイにおいては、同一種類のオリゴDNAを同量固相し、同一同量のカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせた場合、各区画各マイクロアレイは同一のハイブリダイズの結果であるべきである。
【0046】
図14及び図15において、ハイブリダイズ量と固相量とは同じばらつきの傾向がある。したがって、ハイブリダイズ量のばらつきの主たる原因は、固相量のばらつきによるものと考えられる。
そこで、固相量のばらつきを考慮した補正ハイブリダイズ量を、以下の式から算出した。
【0047】
補正係数=100/固相量
補正ハイブリダイズ量=ハイブリダイズ量×補正係数
【0048】
上記の補正係数を用いて実施例4のハイブリダイズ量を補正した結果を図16に示す。
図16より、各区画、各マイクロアレイのハイブリダイズ量のばらつきは著しく減少し、理想的なマイクロアレイに近いハイブリダイズの結果を得た。
【0049】
以上、インクジェット方式のマイクロアレイ製造装置を用いたマイクロアレイの製造方法について説明したが、本発明はこの他に、例えば、ピンの先端部にプローブ含有溶液を付着、吸引させた後に、該先端部を担体に接触させてプローブ含有溶液をスポットするピン方式のマイクロアレイ製造装置及びかかる装置を用いたマイクロアレイの製造方法においても適用することが可能である。
【0050】
本発明のマイクロアレイは、マイクロアレイにおけるプローブの位置や量の情報の他に、例えば、前述した担体の各区画の補正係数を記録したバーコード又は電子的記録素子を有することもできる。これらの情報を生体由来物質の解析装置に入力すれば、より正確な解析結果を得ることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明のマイクロアレイ製造装置を用いることにより、人の作業による固相するプローブの取り間違いを防止することができ、プローブの配置が正確なマイクロアレイを製造することができる。
【0052】
本発明のマイクロアレイの製造方法により、プローブの配置が正確であり、かつ正確な解析結果を得られるマイクロアレイを提供することができる。担体に固相したプローブの情報、特に位置や量に関する情報を出力することで、さらに好ましいものとなる。
【0053】
本発明のマイクロアレイは、プローブの配置が正確であり、かつプローブの量に関する情報を有しているので、これを用いればより精度の高い生体由来物質の解析を行うことができる。
本発明の生体由来物質の解析方法は、例えばマイクロアレイ毎各区画のプローブの固相量のばらつきを考慮することによって、より正確な解析結果を得ることができるものとなる。
【0054】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロアレイ担体の一部の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図9】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図10】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図11】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図12】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図13】本発明のマイクロアレイ製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図14】同様に製造された5枚のマイクロアレイにおける区画毎のスポット量のばらつきを示すグラフである。
【図15】図14に示したマイクロアレイに同量のカウンターオリゴDNAをハイブリダイズさせた時のハイブリダイズ量のばらつきを示すグラフである。
【図16】本発明の生体由来物質の解析方法を用いて図15に示したハイブリダイズ量を補正したグラフである。
【符号の説明】
11,21,31 制御手段、12,22,32 情報読取手段、13,23,33 容器収納部、14,24,34 プローブ含有容器、16,26,37 固相手段、17,27,38 ヘッド、18,28,39 マイクロアレイ担体。
Claims (11)
- プローブに関する情報を保持する情報保持手段と、該情報を認識する情報読取手段と、プローブをマイクロアレイの担体に固相する固相手段と、プローブの配置情報に基づいて、担体の所定の位置にプローブを固相する手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするマイクロアレイの製造装置。
- 情報保持手段としてバーコードを用いることを特徴とする請求項1記載のマイクロアレイの製造装置。
- 情報保持手段であるバーコードを、プローブを保存する容器に備えたことを特徴とする請求項2記載のマイクロアレイの製造装置。
- マイクロアレイの担体に固相したプローブの情報を、出力する機能を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマイクロアレイの製造装置。
- プローブの情報を、バーコード又は電子的記録素子で出力することを特徴とする請求項4記載のマイクロアレイの製造装置。
- 請求項1ないし5のいずれか一項に記載のマイクロアレイの製造装置を用いたマイクロアレイの製造方法であって、プローブの配置情報に基づいて、情報読取装置が、情報保持手段が保持するプローブに関する情報を読み取ることで、マイクロアレイの担体の所定の位置に特定のプローブを固相することを特徴とするマイクロアレイの製造方法。
- 担体にプローブを固相した情報を出力することを特徴とする請求項6記載のマイクロアレイの製造方法。
- プローブを担体に固相した位置の情報を出力することを特徴とする請求項7記載のマイクロアレイの製造方法。
- プローブを担体に固相した量の情報を出力することを特徴とする請求項7記載のマイクロアレイの製造方法。
- 請求項7ないし9のいずれか一項に記載のマイクロアレイの製造方法を用いて製造され、プローブを担体に固相した情報を記録するバーコード又は電子的記録素子を有することを特徴とするマイクロアレイ。
- 請求項6ないし9のいずれか一項に記載のマイクロアレイの製造方法によって製造されたマイクロアレイを、生体由来物質の解析に用いることを特徴とする生体由来物質の解析方法。
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