JPWO2008111312A1 - 多層情報記録媒体の製造方法、並びに、信号転写基板及びその製造方法 - Google Patents

多層情報記録媒体の製造方法、並びに、信号転写基板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明の多層情報記録媒体の製造方法において、第1の情報記録層である第1薄膜層(102)と第2の情報記録層である第2薄膜層(108)との間に設けられた樹脂層としての第2信号基板(110)を形成する工程には、(I)第1の情報記録層上に液体の樹脂(104)を塗布する工程と、(II)樹脂104に、凹凸形状が形成された信号面を有する信号転写基板(105)を樹脂(104)に貼り合わせる工程と、(III)樹脂(104)に信号転写基板(105)を貼り合わせた状態で樹脂(104)を硬化させる工程と、(IV)信号転写基板(105)を樹脂(104)から剥離する工程と、が含まれている。信号転写基板(105)は、例えばシルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物のような、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。

Description

本発明は、再生又は記録再生を目的とした情報記録媒体、特に複数の情報記録層を備えた多層情報記録媒体の製造方法と、情報記録媒体の信号部を転写によって形成する際に用いられる信号転写基板及びその製造方法とに関するものである。
近年、情報機器・映像音響機器などに必要とされる情報量の拡大化に伴い、データアクセスの容易さ、大容量データの蓄積及び機器の小型化に優れている光ディスクなどの情報記録媒体が注目され、記録情報の高密度化がなされている。例えば、レーザ光の波長を約400nmとし、レーザ光を絞り込むための集光レンズの開口数(NA)を0.85とした光ヘッドを用いることによって、単層で25GB程度、2層で50GB程度の容量を実現した光記録媒体が提案されている(例えば、特開2002−260307号公報参照)。
以下に、特開2002−260307号公報に記載された従来の多層情報記録媒体の構造及び製造方法について、図6及び図7A〜図7Gを用いて説明する。
図6は、従来の多層情報記録媒体の断面図を示している。この多層情報記録媒体は、片面に凹凸形状からなるピットや案内溝の信号部が転写形成された第1信号基板601と、第1信号基板601の凹凸形状が設けられた面上に配置された第1薄膜層602と、第1薄膜層602との接合面と反対の面に凹凸形状からなるピットや案内溝の信号部が転写によって形成された第2信号基板603と、第2信号基板603の凹凸形状が設けられた面上に配置された第2薄膜層604と、第2薄膜層604を覆うように形成された透明層605と、により構成されている。第1信号基板601は、ポリカーボネイトやポリオレフィンなどの樹脂材料を用い、射出圧縮成形などにより、片面にピットや案内溝が凹凸形状として転写により形成されることによって作製されている。第1信号基板601の厚みは1.1mm程度である。第1薄膜層602及び第2薄膜層604は、それぞれ記録膜や反射膜を含んでおり、第1信号基板601や第2信号基板603において信号部が形成された面(信号面)側に、スパッタリングや蒸着などの方法によって作製されている。反射膜の材料の例としては、銀合金やアルミニウムなどの金属材料が主に挙げられ、波長約400nmのレーザ光に対して効率の良い反射率が得られる材料が採用される。また、記録膜の材料には、書き換え型及び追記型の2種類の記録材料がある。書き換え型には複数回のデータの記録及び消去が可能な材料が用いられ、GeSbTeやAgInSbTeなどの記録材料が用いられている。追記型には、1度の記録のみ可能な、不可逆的に変化する材料が用いられる。TeOPdがその代表的な材料である。第2信号基板603は、紫外線硬化型樹脂を用いてスピンコート法によって形成され、信号転写基板によってピットや案内溝の凹凸形状(信号部)が転写形成される。ここで用いられる信号転写基板は、第1信号基板601のように片面にピットや案内溝の凹凸形状が形成されている基板である。具体的に、信号転写基板は、第2信号基板603に形成される信号部に対応する凹凸形状が形成された信号面を転写面として備えた基板である。第2信号基板603は、このような信号転写基板をその信号面が第1信号基板601と対向するように紫外線硬化型樹脂を介して貼り合わせ、紫外線硬化型樹脂の硬化後に信号転写基板を紫外線硬化型樹脂との界面から剥離することによって形成されている。透明層605は、記録再生光に対して透明な(高い透過性を有する)材料からなり、厚みが0.1mm程度である。材料としては、光硬化型樹脂や感圧接着剤などの接着剤が使用でき、例えば紫外線硬化型樹脂をスピンコート法によって第2薄膜層604上に塗布することによって形成できる。このように作製された多層情報記録媒体の記録再生は、透明層605側から記録再生レーザ光を入射させることによって行われる。
図7A〜図7Gに、従来の多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図を示し、これらを用いて従来の多層情報記録媒体の製造方法について説明する。
まず、第1信号基板701のピットや案内溝が形成された信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により記録膜や反射膜を含んだ第1薄膜層702が形成される。第1信号基板701は、第1薄膜層702が形成された面とは反対側の面で、バキュームなどの手段によって回転テーブル703上に固定されている(図7A参照)。
回転テーブル703に固定された第1信号基板701上に形成された第1薄膜層702上には、樹脂層である第2信号基板を形成するために、ディスペンサーによって紫外線硬化型樹脂704が所望の半径上に同心円状に塗布される(図7B参照)。
次に、回転テーブル703をスピン回転させることにより、紫外線硬化型樹脂704の延伸を行う(図7C参照)。延伸の際に紫外線硬化型樹脂704に働く遠心力によって、紫外線硬化型樹脂704から余分な樹脂と気泡とを除去できる。このとき、延伸される紫外線硬化型樹脂704の厚みは、紫外線硬化型樹脂704の粘度やスピン回転の回転数、時間、スピン回転をさせている周りの雰囲気(温度や湿度など)を任意に設定することにより、所望の厚みに制御することができる。
延伸された紫外線硬化型樹脂704の上に、第1信号基板701のように片面(信号面)にピットや案内溝が凹凸形状として形成された、ポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料で作製された信号転写基板705が、第1信号基板701及び信号転写基板705の双方の信号面が対向するように重ね合わされる(図7D参照)。このとき、信号転写基板705と紫外線硬化型樹脂704との間に気泡が混入されることを防ぐために、この重ね合わせ工程は真空雰囲気中で行われることが好ましい。
第1信号基板701、第1薄膜層702、紫外線硬化型樹脂704及び信号転写基板705が一体化された多層構造体706に、信号転写基板705側から紫外線照射機707によって紫外線が照射され、2つの信号面に挟まれた紫外線硬化型樹脂704を硬化させる(図7E参照)。信号転写基板705側から紫外線を照射するのは、信号転写基板705に用いられているポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料が、ある程度の紫外線照射であれば紫外線を透過させて、紫外線硬化型樹脂704まで紫外線を到達させることができるからである。
紫外線硬化型樹脂704を硬化させた後、信号転写基板705が紫外線硬化型樹脂704との界面で剥離されることによって、信号面が転写形成された第2信号基板710が形成される(図7F参照)。
第2信号基板710の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法によって、記録膜や反射膜を含んだ第2薄膜層708が形成される。最後に、記録再生光に対してほぼ透明な(高い透過率を有する)透明層709が、例えば紫外線硬化型樹脂のスピン塗布、延伸、紫外線照射による硬化を経て形成される(図7G参照)。
以上のように、従来の多層情報記録媒体の製造方法では、信号部が転写形成された第2信号基板を作製する際、信号転写基板を介して紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して当該紫外線硬化型樹脂を硬化させるため、充分に高い紫外線透過性を有する材料(例えばポリカーボネイトやポリオレフィン)からなる信号転写基板を用いることが重要であった(例えば、特開平1−285040号公報及び特開2003−85839号公報参照)。
情報記録媒体の製造に用いられる上記のような信号転写基板は、製造コストや生産性を鑑みて、繰り返し使用することが望まれる。しかしながら、信号転写基板に用いられているポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料は紫外線を吸収して変質してしまうため、繰り返しの使用によって信号転写基板の紫外線透過率が低下し、信号転写基板を繰り返して何度も使用することが不可能であった。また、紫外線照射による信号転写基板の紫外線透過率の低下を防止すべく、代替材料として紫外線に対して耐光性を有する石英ガラスを用いた場合、紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに、石英ガラスの割れや欠けを生じるという問題を有していた。これにより、多層情報記録媒体の製造コストが高くなるという問題も生じていた。
本発明は、複数回の紫外線照射に対する充分な耐光性と、紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに物理的な破損を生じない程度の柔軟性とを併せ持つ信号転写基板及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような信号転写基板を用いた多層情報記録媒体の製造方法を提供することも目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の信号転写基板は、凹凸形状からなる信号部を樹脂に転写するための信号転写基板であって、前記信号部が形成された信号面を備えており、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。なお、本明細書において、分子サイズとは、多面体構造の一辺が0.1〜20nmの範囲内であるサイズのことであり、例えば0.5〜1.0nmの範囲内である。
本発明の信号転写基板によれば、樹脂への信号部の転写と樹脂からの剥離とを良好に実施でき、且つ、繰り返して複数回使用することが可能な信号転写基板を実現できる。これにより、1つの信号面を形成する際に必要なコストが低減できる。
また、本発明の信号転写基板の製造方法は、上記の本発明の信号転写基板を製造する方法であって、少なくとも、
(i)シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を、凹凸形状からなる信号部が形成された転写型の上に供給する工程と、
(ii)加熱によって前記ケイ素樹脂組成物を硬化させて、前記転写型の前記信号部が転写形成された信号面を有する信号転写基板を形成する工程と、
を含んでいる。
本発明の信号転写基板の製造方法によれば、上記のような効果を実現できる本発明の信号転写基板を容易に作製できる。
本発明の多層情報記録媒体の製造方法は、少なくとも、第1の情報記録層と、第2の情報記録層と、前記第1の情報記録層と前記第2の情報記録層との間に設けられた樹脂層とを含む多層情報記録媒体の製造方法であって、前記樹脂層を形成する工程には、
(I)前記第1の情報記録層上に液体の樹脂を塗布する工程と、
(II)前記第1の情報記録層上に塗布された前記樹脂に、凹凸形状からなる信号部が形成された信号面を有する信号転写基板を、前記信号面が前記樹脂に対向するように貼り合わせる工程と、
(III)前記樹脂に前記信号転写基板を貼り合わせた状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、
(IV)前記信号転写基板を前記樹脂から剥離する工程と、
が含まれており、且つ、前記信号転写基板が、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。また、本発明の製造方法において製造される多層情報記録媒体は、情報記録層として第1の情報記録層及び第2の情報記録層の2層を少なくとも備えている情報記録媒体であればよいため、3層以上の情報記録層を備えた情報記録媒体も含むものである。
本発明の多層情報記録媒体の製造方法によれば、信号転写基板による樹脂への凹凸形状(信号部)の転写と、樹脂からの信号転写基板の剥離とを良好に実施でき、且つ信号転写基板を繰り返して複数回使用することが可能となる。これにより、従来のように信号転写基板を使い捨てる必要がなくなるので、信号面を1つ作製する際に必要となる材料費を低減することができる。また、信号転写基板を信号面毎に複数作製することを必要としないため、多層情報記録媒体の製造装置を簡略化且つ低コストで実現することが可能である。さらに、信号転写基板毎に発生する信号面の作製ばらつきを抑制することが可能となる。
図1A〜図1Bは、本発明の実施の形態1における多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図である。 図2Aは、本発明の実施の形態1において用いられるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造を示す模式図であり、図2Bは、本発明の実施の形態1において用いられるケイ素樹脂硬化物を構成するかご型シルセスキオキサン化合物の構造の一例を示す模式図である。 図3A及び図3Bは、本発明の実施の形態1における紫外線照射による信号転写基板の光透過率変化のグラフである。 ポリカーボネイトの分子構造図である。 図5A〜図5Fは、本発明の実施の形態2における信号転写基板の製造方法において、信号転写基板の製造に用いられる転写型を製造する各工程を示す断面図である。 従来の多層情報記録媒体の断面図である。 図7A〜図7Gは、従来の多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図である。 有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と強度との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と曲げ弾性率との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0.01以下の場合の、有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と光透過率との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0.005以下の場合の、有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と光透過率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例であり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<多層情報記録媒体の製造方法>
本発明の多層情報記録媒体の製造方法は、少なくとも、第1の情報記録層と、第2の情報記録層と、前記第1の情報記録層と前記第2の情報記録層との間に設けられた樹脂層とを含む多層情報記録媒体の製造方法である。樹脂層を形成する工程には、
(I)前記第1の情報記録層上に液体の樹脂を塗布する工程と、
(II)前記第1の情報記録層上に塗布された前記樹脂に、凹凸形状からなる信号部が形成された信号面を有する信号転写基板を、前記信号面が前記樹脂に対向するように貼り合わせる工程と、
(III)前記樹脂に前記信号転写基板を貼り合わせた状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、
(IV)前記信号転写基板を前記樹脂から剥離する工程と、
が含まれている。この信号転写基板は、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。
信号転写基板に用いられる有機無機ハイブリッド材料には、無機フィラー間を架橋する(繋ぎ合わせる)セグメントとして、有機セグメントの他に、例えば−Si−O−Si−等の無機セグメントが含まれていてもよい。−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部としては、例えばオクタシルセスキオキサン化合物やドデカシルセスキオキサン化合物などが挙げられる。このような有機無機ハイブリッド材料によって形成された信号転写基板は、光照射(例えば紫外線照射)による透過率の劣化が生じにくいため、繰り返しの使用が可能である。このため、多層情報記録媒体の製造コストを削減できる。また、このような有機無機ハイブリッド材料は適度な柔軟性を有しているので、硬化後の樹脂から信号転写基板を剥離する際に、信号転写基板の物理的な破損も生じにくい。
有機無機ハイブリッド材料として、ヒドロシリル化反応によって得られる硬化物であって、多層情報記録媒体の樹脂層の作製に用いられる樹脂に含まれる官能基と相互作用する極性基を含まない材料を用いることもできる。例えば樹脂層に用いられる紫外線硬化型樹脂としてアクリル樹脂を考えた場合、ヒドロシリル化反応によって得られる硬化物は、アクリル樹脂に含まれるカルボニルなどの極性基と相互作用する−OH、カルボニル、エーテルなどの極性基を系内に含まない。このため、信号転写基板と樹脂層とのインターラクションによって両者が強固に密着することを抑制できるので、信号転写基板を物理的に破損させることなく樹脂層(硬化後の樹脂)から剥離できる。
有機無機ハイブリッド材料は、例えば、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物であってもよい。シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物は、重合によって容易に硬化させることができるので、有機無機ハイブリッド材料の信号転写基板を容易に作製できる。本発明の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板について、その作製に使用されるケイ素樹脂組成物、シルセスキオキサン化合物についての詳細(具体例)は、後述の本発明の信号転写基板とその製造方法で説明するものと同様である。
樹脂層を作製するために用いられる樹脂には、例えば光硬化型樹脂が使用できる。この場合、工程(III)における樹脂の硬化は、信号転写基板を介して樹脂に光を照射することによって行われる。このように、光硬化型樹脂を用いて樹脂層を作製する場合、短時間で樹脂の硬化及び凹凸形状の転写形成が可能であるので、プロセスのサイクルタイムを少なくでき、高効率化が図れる。また、光硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用い、工程(III)における樹脂の硬化を、信号転写基板を介して樹脂に紫外線を照射することによって行うことが好ましい。特定の波長域で硬化する樹脂を用いることにより、積極的に樹脂を硬化させることができるため、製造装置の設計が容易になるからである。樹脂層の作製に紫外線硬化型樹脂が用いられることを考慮して、波長250nm〜280nmの範囲の光に対する信号転写基板の透過率を10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがより好ましい。信号転写基板の上記波長範囲における光透過率をこのような範囲とすることによって、紫外線硬化型樹脂の硬化を短時間で促進させることができる。
信号転写基板は、無機フィラーをさらに含んでいることが好ましい。すなわち、本発明の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板は、前記有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーが添加された複合材料を用いて形成されていることが好ましい。詳細は後述するが、無機フィラーが添加されることによって信号転写基板の強度及び柔軟性が向上するので、信号転写基板の破損を防ぐことができる。
<信号転写基板とその製造方法>
本発明の信号転写基板は、凹凸形状からなる信号部を転写するための信号転写基板であって、前記信号部が形成された信号面を備えており、有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。有機無機ハイブリッド材料としては、上記の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板と同様の材料を用いることができる。例えば、有機無機ハイブリッド材料が、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物である場合の具体例について、以下に説明する。
シルセスキオキサン化合物としては、例えば下記式(1)〜(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものが使用できる。
(AR12SiOSiO1.5n(R34HSiOSiO1.5p(BR56SiOSiO1.5q(HOSiO1.5m-n-p-q …(1)
(AR12SiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(2)
(R34HSiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(3)
但し、式(1)〜(3)中、Aは炭素−炭素不飽和結合を有する基を表しており、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基又は水酸基を表しており、B1は置換又は非置換の飽和アルキル基、水酸基又は水素原子を表しており、R1〜R6は各々独立に低級アルキル基、フェニル基及び低級アリールアルキル基から選ばれる1種の官能基を表している。また、式(1)〜(3)中、m及びtは6、8、10、12から選ばれる数、nは1〜m−1の整数、pは1〜m−nの整数、qは0〜m−n−pの整数、rは2〜tの整数、sは0〜t−rの整数をそれぞれ表している。このような材料で作製された信号転写基板は、光照射による光透過率低下が生じにくく、また、硬化後の樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂)との剥離性が良好となる。さらに、このような材料を用いることによって、上記のような特性を備えた信号転写基板を容易に実現できる。
上記のシルセスキオキサン化合物において、式(2)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するシルセスキオキサン化合物が好適に用いられる。より良好な特性を備えた信号転写基板を得ることができるからである。
ケイ素樹脂組成物は、下記式(4)及び下記式(5)から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有していてもよい。
HR78Si−X−SiHR910 …(4)
2C=CH−Y−CH=CH2 …(5)
但し、式(4)中、Xは2価の官能基又は酸素原子を表し、R7〜R10は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。また、式(5)中、Yは2価の官能基を表す。このようなケイ素樹脂組成物においては、式(4)及び(5)で表された化合物が架橋剤として機能するため、ケイ素樹脂組成物において3次元架橋構造が効果的に形成されて硬化体中に未反応で残る残基量を低減でき、結果、紫外線照射耐性がさらに向上する。より良好な硬化反応を実現するために、式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(4)で表される化合物とを含有するケイ素樹脂組成物、あるいは、式(3)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(5)で表される化合物とを含有するケイ素樹脂組成物を用いることが好ましい。
式(1)及び/又は式(2)中のAで示される炭素−炭素不飽和結合を有する基が、末端に炭素−炭素不飽和結合を有する鎖状炭化水素基である場合、反応性に優れたケイ素樹脂組成物とできるので、より良好な硬化反応を実現できる。
有機無機ハイブリッド材料が、例えばシルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する場合、当該有機無機ハイブリッド材料はガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。さらに、このような有機無機ハイブリッド材料は、硬化した樹脂(紫外線硬化型樹脂)から剥離される際に生じる自身の反りに耐え得るだけの柔軟性を有し、石英などで形成された転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難いことが分かった。しかしながら、信号転写基板を硬化した紫外線硬化樹脂から剥離するときに、信号転写基板をある程度反らせることが必要になるが、その曲げ応力によって信号転写基板の破損を皆無にすることは難しい。そこで、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いることによって、連続で繰り返して使用することによって生じる破損(割れや欠け)がより発生し難い信号転写基板を作製できる。
最終形成した信号転写基板の表面粗さや混合拡散の容易性、最適な柔軟性を鑑みて、無機フィラーの粒径は0.005〜50μmが好ましく、0.01〜1.5μmがより好ましい。また、無機フィラーの屈折率は、有機無機ハイブリッド材料の屈折率との差が小さいことが望ましく、屈折率差は0〜0.01(好ましくは0〜0.005)の範囲内であることが望ましい。屈折率差をこのような範囲に設定することによって、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した際に、両者の屈折率差に起因する散乱によって、信号転写基板の紫外線透過率が低下することを防止できる。シルセスキオキサン化合物が有するかご型構造を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、その屈折率が1.42〜1.48の範囲内であるものが多い。そのため、無機フィラーの屈折率は、1.400〜1.500の範囲内であることが好ましく、1.460〜1.470の範囲内であることがより好ましく、1.465〜1.469の範囲内であることがさらに好ましい。
信号転写基板における無機フィラーの含有量は、5重量%以上が好ましい。無機フィラーを5重量%以上含むことによって、繰り返しの使用に耐えうる高い強度と高い柔軟性を備えた信号転写基板となる。また、無機フィラーを添加することによって信号転写基板の光透過率が低下するため、添加する無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との屈折率差等も考慮しながら、無機フィラーの含有量の上限値を決定することが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が小さい無機フィラーを用いる場合には、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの界面における散乱が低減されるため、無機フィラーの添加量を増加させることが可能である。例えば、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0〜0.01程度の場合、波長250〜280nmの範囲に対する光の透過率10%以上を確保するために、無機フィラーの含有量を50重量%以下とすることが好ましい。また、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0〜0.005程度の場合、無機フィラーの含有量の上限を70重量%とすることができる。
無機フィラーとしては、シリカ粒子を用いることが好ましい。無機フィラーにシリカ粒子以外の粒子が含まれていてもよいが、無機フィラーに少なくとも40重量%のシリカ粒子が含まれることが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差を考慮すると、無機フィラーがシリカ粒子である(シリカ粒子100重量%)が好適である。
以上のような信号転写基板を製造する方法の一例として、例えば、
(i)シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を、凹凸形状からなる信号部が形成された転写型の上に供給する工程と、
(ii)加熱によって前記ケイ素樹脂組成物を硬化させて、前記転写型の前記信号部が転写されることによって形成された信号面を有する信号転写基板を形成する工程と、
を少なくとも含む方法が挙げられる。この方法では、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を熱硬化させるので、信号転写基板を容易に作製することができる。
また、ここで用いられる転写型は金属で形成されていることが好ましい。信号転写基板を作製した後、この信号転写基板から転写型を容易に剥離できるからである。この金属は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、金、銀、錫、鉛、鉄、アルミニウム及びタングステンから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。スパッタ法や電鋳法を用いて転写型を容易に作製できるからである。
無機フィラーを含む信号転写基板を作製する場合は、前記工程(i)において、前記ケイ素樹脂組成物と無機フィラーとを含む複合材料を前記転写型の上に供給するとよい。この場合、複合材料における無機フィラーの含有量は、信号転写基板の強度や柔軟性を考慮して、5重量%以上が好ましい。また、無機フィラーの含有量は、例えば、ケイ素樹脂組成物の硬化物と無機フィラーとの屈折率差が小さい(例えば0.005以下)場合は70重量%を上限とでき、屈折率差がより大きい範囲(例えば0.01以下)の場合は、上限値を50重量%とすることが好ましい。また、上述したように、無機フィラーがシリカ粒子を少なくとも40重量%含むことが望ましく、無機フィラーとしてシリカ粒子を用いる(シリカ粒子100重量%)ことがより望ましい。
以下に、本発明についてのより具体的な実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、光ディスク形状の多層情報記録媒体を例に挙げて説明するが、光ディスクの形状に限定されるものではなく、例えば光メモリカードなどの一般的な多層情報記録媒体にも適用できる。
(実施の形態1)
図1A〜図1Gは、本発明の実施の形態1における多層情報記録媒体の製造方法の各工程を示す断面図である。これらの図面を参照しながら、本実施の形態における多層情報記録媒体の製造方法について説明する。
本実施の形態の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる、ベースとなる第1信号基板101は、ディスクの反りや剛性を良くするために、さらにはCD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクと厚み互換を有するように、厚さ略1.1mmの円盤からなる。第1信号基板101は、ピットや案内溝の凹凸形状からなる信号部が形成された面(信号面)を有している。第1信号基板101の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により記録膜や反射膜を含む第1薄膜層(第1の情報記録層)102が形成されている。第1信号基板101は、回転テーブル103上で回転テーブル103の回転軸に対する偏芯量が小さくなるように回転テーブル103のほぼ中央に設けられたディスクのセンタリング冶具(図示せず)と、回転テーブル103の上面に複数個設けられた小さなバキューム孔(図示せず)とによって、回転テーブル103に吸着固定されている(図1A参照)。
吸着固定された第1信号基板101上の第1薄膜層102上に、ディスペンサーによって紫外線硬化型樹脂104が所望の半径上に略同心円状に塗布される(図1B参照)。
次に、回転テーブル103をスピン回転させることにより、紫外線硬化型樹脂104の延伸を行う(図1C参照)。延伸時に紫外線硬化型樹脂104に働く遠心力によって、余分な樹脂と気泡とを紫外線硬化型樹脂104から除去することができる。このとき、延伸される紫外線硬化型樹脂104の厚みは、紫外線硬化型樹脂104の粘度やスピン回転の回転数、時間、スピン回転をさせている周りの雰囲気(温度や湿度など)を任意に設定することにより、所望の厚みに制御することができる。
延伸された紫外線硬化型樹脂104の上には、第1信号基板101のように片面にピットや案内溝が凹凸形状(信号部)として形成された信号面を有する信号転写基板105が、第1信号基板101と信号転写基板105の双方の信号面が対向するように重ね合わされる(図1D参照)。このとき、信号転写基板105と紫外線硬化型樹脂104との間に気泡を混入することを防ぐために、この重ね合わせを実施する雰囲気は真空雰囲気であることが好ましい。ここで用いられる信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。
第1信号基板101、第1薄膜層102、紫外線硬化型樹脂104及び信号転写基板10が一体化された多層構造体106に、信号転写基板105側から紫外線照射機107によって紫外線が照射され、2つの信号面に挟まれた紫外線硬化型樹脂104を硬化させる(図1E参照)。本実施の形態における信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料を用いているので、紫外線を透過させて、充分な紫外線を紫外線硬化型樹脂104まで到達させることができる。これにより、信号転写基板105の信号面に設けられたピットや案内溝の凹凸形状を効率よく紫外線硬化型樹脂104に転写形成できる。信号転写基板105の信号面に形成された凹凸形状を紫外線硬化型樹脂104に効率よく転写するために、本実施の形態では、例えば紫外線硬化型樹脂104の粘度を50〜4000mPa・sとし、信号転写基板105を例えば直径120mm、厚み0.6mm、中心に直径15mmの中心穴を有する円盤としている。
紫外線硬化型樹脂104を硬化させた後、信号転写基板105が紫外線硬化型樹脂104との界面で剥離されることによって、信号面を備えた第2信号基板(樹脂層)110が形成される(図1F参照)。信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料によって形成されているので、硬化した紫外線硬化型樹脂104との剥離性が良好であり、信号転写基板105と紫外線硬化型樹脂104との界面で容易に剥離することが可能である。
第2信号基板110の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により、例えば相変化型の記録膜や、反射膜を含んだ第2薄膜層108が形成される。第2薄膜層108は、例えば、Ag合金などの反射膜、AlNなどの誘電体膜及びTeOPdなどの記録膜のうち少なくとも1層以上を含む構成とできる。最後に、透明層109が形成される。透明層109は、第2薄膜層108の上に紫外線硬化型樹脂を塗布し、この紫外線硬化型樹脂をスピン回転させることによって延伸し、次いで紫外線を照射して硬化させることによって形成できる。透明層109は、記録再生光に対してほぼ透明で(記録再生光に対して高い透過率を有し)、厚みが約0.1mmである。
次に、本実施の形態において用いられる信号転写基板105について、詳細に説明する。本実施の形態において用いられる信号転写基板105は、有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。有機無機ハイブリッド材料として使用できる材料の例は、上記に説明したとおりである。ここでは、有機無機ハイブリッド材料として、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物を用いた例を説明する。
本実施の形態のシルセスキオキサン化合物は、例えば、上記した式(1)〜(3)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びこれらの化合物が部分付加反応して形成されるかご型シルセスキオキサン化合物の部分重合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、式(1)〜(3)のかご型シルセスキオキサン化合物など、と記載する。)を含有している。なお、本実施の形態のシルセスキオキサン化合物は、式(1)〜(3)のかご型シルセスキオキサン化合物などのみから構成されていてもよい。
Figure 2008111312
式(1)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、構造式(1)に示されるテトラキス(シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)−テトラキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサン(TCHS:Tetrakis(cyclohexenylethyldimethylsiloxy)-tetrakis(dimethyl-siloxy)silsesquioxane)が挙げられる。この化合物は、式(1)において、m=8、n=4、p=4、q=0、R1、R2、R3及びR4がメチル基、Aがシクロヘキセン基である化合物である。TCHSを用いた場合、高い強度を有する信号転写基板を作製できる。また、TCHSは末端が環状構造となっているので、紫外線耐性が高い。したがって、TCHSは、信号転写基板の作製に用いられる有機無機ハイブリッド材料として好適である。なお、構造式(1)には2つのシルセスキオキサン化合物が示されており、また、便宜上、AR12Si−及びR34HSiO−が単にR−と略記されている部分がある。
また、式(2)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、テトラアリルジメチルシロキシ−テトラトリメチルシロキシシルセスキオキサン、オクタビニルジメチルシロキシシルセスキオキサン、ヘキサアリルジメチルシロキシ−ジヒドロキシシルセスキオキサンなどが挙げられる。
また、式(3)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、オクタハイドリドシルセスキオキサン、テトラトリメチル−テトラキスジメチルシロキシシルセスキオキサンなどが挙げられる。
また、本実施の形態におけるケイ素樹脂組成物中には、架橋剤として、上記した式(4)及び/又は式(5)で表される化合物がさらに含まれていてもよい。
式(4)で示される化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。式(5)で示される化合物の具体例としては、例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジアリルテトラメチルジシロキサン、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサンなどが挙げられる。
図2A及び図2Bに、TCHSのようなかご型シルセスキオキサン化合物が互いに付加重合して形成されるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造の模式図が示されている。図2Aは、複数のかご型シルセスキオキサン化合物が架橋されて形成されるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造を示す模式図である。図2Bは、かご型シルセスキオキサン化合物の構造の一例を示す模式図である。図2A中、201はシリコン原子と酸素原子で形成された略6面体構造、すなわち−Si−O−結合で構成された多面体構造である分子サイズの無機部を示している。また、図2A中、202は略6面体構造201を架橋結合している有機セグメントを示している。本実施の形態のケイ素樹脂組成物は、例えば、図2Aに示したような架橋構造を形成することによって、ケイ素樹脂硬化物となっている。
図2Bに示すように、かご型のシルセスキオキサン化合物は、シリコン原子と酸素原子とで形成された多面体(略6面体)構造を有し、その一辺がナノレベル(例えば、0.5nm)である。このことから、上記のようなシルセスキオキサン化合物から構成されるケイ素樹脂はナノ樹脂とも呼ばれる。
このようなかご型シルセスキオキサン化合物が有する、シリコン原子にシロキサン結合を介して結合したヒドロシラン基や、シリコン原子にシロキサン結合を介して結合した炭素−炭素不飽和結合を有する基により、一方のかご型シルセスキオキサン化合物の前記ヒドロシラン基と他のかご型シルセスキオキサン化合物の前記炭素−炭素不飽和結合を有する基とがヒドロシリル化反応して付加重合することにより架橋して、ケイ素樹脂の硬化物が得られる。このとき、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造が形成される。このように形成されたケイ素樹脂硬化物は、ガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。このような材料によって作製された信号転写基板105は、青・近紫外域の光の照射による透過率の劣化が抑制され、且つ、このような波長域の光に対して透明である(高い透過率(例えば50%以上)を有する)。
ここで、かご型シルセスキオキサン化合物が−Si−O−結合を介して架橋されている場合(有機セグメントが−Si−O−結合を介してかご型シルセスキオキサン化合物に付加されている場合)と、かご型シルセスキオキサン化合物に有機基(有機セグメント)がダイレクトに付加されている場合との、ケイ素樹脂硬化物の特性を比較する。
かご型シルセスキオキサン化合物にダイレクトに有機基が付加されて架橋される場合と比較して、よりフレキシブルな−Si−O−結合を介して架橋されることにより、架橋の反応が進み、未反応残基が低減される。そのため、−Si−O−結合を介してかご型シルセスキオキサン化合物が架橋されたケイ素樹脂硬化物は、青・近紫域の光に対してより耐性が高い。さらに、このケイ素樹脂硬化物は強靱であり、バルク化しやすいという利点も有する。
このように、本実施の形態の信号転写基板は、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料によって形成されているので、硬化した紫外線硬化型樹脂から剥離される際に生じる基板自身の反りに対しても柔軟性を有し、石英などで形成された転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難い。
以上に説明した有機無機ハイブリッド材料であるケイ素樹脂硬化物によって作製された信号転写基板を用いることによって、容易に良好な案内溝や信号ピットなどの凹凸形状を樹脂層に転写形成することができる。
次に、材料の違いによる信号転写基板の光透過率の違いについて説明する。図3A及び図3Bに、異なる材料によって作製された各信号転写基板について、波長を変化させた際の光透過率が示されている。
本実施の形態で用いたシルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物(以下、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物と記載することがある。)からなる信号転写基板の光透過特性の優位性を明確にするため、一般的に用いられている材料であるポリカーボネイト及びポリオレフィンで作製した信号転写基板に光照射したときの光透過率変化を比較対照として図3Aに示した。本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板の光透過率変化は、図3Bのグラフに示している。なお、この光透過率測定に用いた信号転写基板の厚みは0.6mmであり、ポリカーボネイトには帝人化成製「AD5503」、ポリオレフィンには日本ゼオン製「ゼオノア1430R1」、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物には、上記の構造式(1)に示されるTCHSをヒドロシリル化反応によって付加重合させて得られる硬化物を用いた。
また、光透過率測定に用いた光照射装置としては、信号転写基板の熱的な変質や変形を極力抑制するため、所定のエネルギーを出力するフラッシュタイプを用いた。光強度としては、ポリカーボネイトの信号転写基板を介して厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂に紫外線フラッシュを5回照射することによって、この紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる強度に設定した。また、各々の信号転写基板材料について紫外線の積算照射量に対する透過率変化を確認するため、紫外線未照射の場合と、500回の紫外線フラッシュを照射した場合とのグラフの2種類を示している。グラフに示す各信号転写基板材料の光透過率特性の測定には、島津製作所製の自記分光光度計(MPC−3100)を用いている。
図3A及び図3Bから明らかなように、ポリカーボネイトやポリオレフィンからなる信号転写基板と比べ、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は、波長250〜280nmの波長範囲で透過率が大きい。この特性は、紫外線の透過効率が高いことを示している。したがって、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いると、少ない紫外線照射エネルギーで紫外線硬化型樹脂を硬化させることが可能となり、紫外線照射効率やプロセスのサイクル時間短縮に大きく貢献できることがわかる。また、500回の紫外線フラッシュ後において、ポリカーボネイトやポリオレフィンからなる信号転写基板と比較して、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は紫外線領域での透過率低下が抑制されており、良好な透過率が得られている。この特性から、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は、紫外線未照射時の初期の状態とほぼ変わらない紫外線透過率を維持できることがわかり、紫外線照射プロセスにおいて紫外線硬化型樹脂を硬化させるために照射する紫外線照射量を初期から変化させる必要がないことがわかる。また、信号転写基板として、ポリカーボネイトやポリオレフィンを用いた場合、紫外線硬化型樹脂の硬化には紫外線フラッシュを5回必要とするのに対し、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いた場合、波長250〜280nmの範囲の光透過率が10%以上であるため、紫外線フラッシュ3回以下で紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
なお、上記の光透過率測定は、信号転写基板のみに紫外線を照射して紫外線の透過率を測定したものであるが、実際に信号転写基板の材料にポリカーボネイトを用い、紫外線硬化型樹脂への信号面の転写を実施した場合、良好に信号面を転写形成できる回数はせいぜい20回である。表1に信号転写基板材料と転写繰り返し回数との関係に関する実験結果を示す。
Figure 2008111312
剥離が困難になる理由としては、紫外線照射による紫外線透過率の低下に加え、ポリカーボネイトでは、図4に示すように分子内に−C−O−(エーテル結合)や、C=O(カルボニル結合)など、極性が高い基を有しており、この基が紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル樹脂)のエーテルなどの極性が高い基と相互作用し、紫外線硬化型樹脂との密着力が高くなることが想定されるからである。また、信号転写基板の材料にガラス(SiO2)を用いた場合も、紫外線硬化型樹脂との密着性が高く、安定した信号面の転写形成限界は20回までであった。その理由は、ガラス材料にはシラノール(−SiOH)などの極性の高い基が含まれており、これらの極性基が紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル樹脂)のカルボニルなどの極性基と水素結合し、密着力が高くなることが想定されるからである。なお、信号転写基板の材料にガラス材料を用いた場合、ガラス材料の硬質且つ脆い特性と、紫外線硬化型樹脂との密着性が高い理由により、信号転写を繰り返すことで信号転写基板の割れや欠けなどが発生し易い。
これに対し、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物(ここでは、TCHSをヒドロシリル化反応によって付加重合させて得られる硬化物)からなる信号転写基板を用いた場合、紫外線硬化型樹脂との剥離性が良好であり、100回以上の繰り返し転写を実施しても、問題がないことが確認できた。本実施の形態の信号転写基板に用いられるケイ素樹脂硬化物は、シルセスキオキサン化合物をヒドロシリル化反応させることによって得られる硬化物である。したがって、このケイ素樹脂硬化物は、−OH、カルボニル、エーテルなどの極性の高い基(極性基)を系内に含んでおらず、紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル脂)とのインターラクションが生じない。これにより、紫外線硬化型樹脂との良好な剥離性を実現できる。
本実施の形態によれば、複数回の紫外線照射に対して充分な耐光性を有し、且つ紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに物理的な破損を生じない程度の柔軟性を併せ持つ信号転写基板が実現できるので、信号転写基板の再利用が可能な多層情報記録媒体の製造方法を実現できる。このため、信号面を転写形成する毎に必要とされていた信号転写基板の作製を回避することができ、信号面を転写形成する際のコストを低減することができる。また、多層情報記録媒体の製造装置の簡略化及び低コスト化を実現し、信号転写基板毎に発生する凹凸形状からなる信号部の作製ばらつきを抑制することができる。なお、本実施の形態では、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いた例について説明したが、他の有機無機ハイブリッド材料であっても、同様の特性を有する信号転写基板を実現できる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の信号転写基板及びその製造方法の一例について説明する。
最初に、本実施の形態の信号転写基板の製造に用いられる転写型の製造方法について説明する。図5A〜図5Fには、この転写型を製造する際の各工程の断面図が示されている。
まず、ガラス板501上にフォトレジストなどの感光材料を塗布して感光膜502を形成し(図5A参照)、その後レーザ光503より、ピットや案内溝などの所定の凹凸形状となるように露光を行う(図5B参照)。図5B中、502aが露光された部分を示している。なお、わかりやすくするために、図中、感光膜502については露光部502aにのみハッチングを施している。露光部502aの感光材料は現像工程を経ることにより除去され、ピットや案内溝などの凹凸形状504が形成された原盤505が作製される(図5C参照)。感光膜502に形成された凹凸形状504は、スパッタリング法によって膜付けされる導電膜506に転写される(図5D参照)。さらに、導電膜506の剛性及び厚みを増加させるために、電鋳膜507を形成する(図5E参照)。次に、導電膜506及び電鋳膜507を一体化した状態で、ガラス板501と感光膜502を除去することにより、転写型508が作製される(図5F参照)。なお、後の工程で、信号転写基板の製造に用いられるケイ素樹脂組成物を転写型508上で熱硬化させる必要があるため、転写型508は高融点材料によって作製される。代表的な材料として無機材料が挙げられるが、その中でもスパッタや電鋳処理が容易な金属材料を用いることが好ましい。本実施の形態では、ニッケルを用いている。
作製された転写型508は、その内径及び外径を円盤状に打ち抜き加工される。加工後の転写型508は、凹状の容器の底部に配置される。容器の材料は特に限定されないが、転写型508と同様のニッケル、アルミニウム及びステンレスなどの金属材料や、ポリプロピレン、シリコーン、ジュラコンなどの樹脂材料を用いることができる。
以下に、ケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を製造する方法の一例として、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物であるTCHSを用いた例について説明する。なお、以下に示す具体的な質量や温度はあくまで一例であり、本発明の信号転写基板の製造方法における各物質の質量や温度はそれらに限定されるものではない。
合成して精製して得たTCHS約8gを、転写型508が底部に配置された凹状の容器内に充填する。すなわち、TCHSが、凹凸形状が形成された転写型508上に配置される。その後、TCHSを充填した容器を、真空雰囲気中に設置された加熱オーブンやベークプレートなどで、樹脂温度が約200度となるように約3時間一定に保持、加熱する。TCHSは、このような加熱によって熱硬化する。硬化したTCHSは、凹状の容器及び転写型508から剥離され、凹凸形状が転写形成された信号面を有する円盤状の信号転写基板として得られる。なお、TCHSを加熱する際に、TCHSの上から保圧をかけることにより、信号転写基板の裏面(凹凸形状からなる信号面と反対の面)に相当する面の面精度を高めることができる。実施の形態1で説明したように、構造式(1)に示すTCHSは、TCHSが有するシロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基と、シロキサン結合を介してシリコン原子に結合した炭素−炭素不飽和結合を有する基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。このような付加重合によってTCHSは硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製したテトラアリルシルセスキオキサン8gに3.0×10-3wt%のPt(cts:catalyst)トルエン溶液を150μL加えて均一に攪拌したケイ素樹脂組成物を用いて得られるケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。なお、テトラアリルシルセスキオキサンは、式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物において、t=8、r=4、s=4、R1、R2、R5及びR6がメチル基、Aがアリル基、B1が水素原子の場合である。
Figure 2008111312
このテトラアリルシルセスキオキサンは、構造式(2)に示すように、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基とシロキサン結合を介してシリコン原子に結合したアリル基末端のビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。このような付加重合によってテトラアリルシルセスキオキサンが硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
さらに別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製したジアリルシルセスキオキサン8gにジビニルテトラメチルジシロキサン2.52gと3.0×10-3wt%のPt(cts)トルエン溶液121.6μLとを加えて均一に混合したケイ素樹脂組成物を用いて得られるケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。ここで、ジアリルシルセスキオキサンは式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物において、t=8、r=2、s=6、R1、R2、R5及びR6がメチル基、Aがアリル基、B1が水素原子の場合である。
Figure 2008111312
このジアリルシルセスキオキサンは、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基とシロキサン結合を介してシリコン原子に結合したアリル基末端のビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。この付加重合とともに、構造式(3)に示すように、ジアリルシルセスキオキサンにおいて、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基と、ジビニルテトラメチルジシロキサンのビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。これらの付加重合により、ジアリルシルセスキオキサンは硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
さらに別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製して得られたオクタビニルシルセスキオキサン8gにテトラメチルジシロキサン3.52gと3.0×10-3wt%のPt(cts)トルエン溶液を117.44μL加えて均一に混合したケイ素樹脂組成物を用いて得られたケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。オクタビニルシルセスキオキサンは式(2)において、t=8、r=8、s=0、R1及びR2がメチル基、Aがビニル基の場合である。
Figure 2008111312
このとき、オクタビニルシルセスキオキサンは、構造式(4)に示すように、オクタビニルシルセスキオキサンが有する、シロキサン結合を介して結合した末端のビニル基と、テトラメチルジシロキサンが有する、シロキサン結合によりシリコン原子に結合した水素原子とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。この付加重合により、オクタビニルシルセスキオキサンはケイ素樹脂硬化物となる。
以上のように、信号転写基板の有機無機ハイブリッド材料として、TCHSを硬化させたケイ素樹脂硬化物を用いる代わりに、構造式(2)〜(4)に示したようなケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物を用いた場合にも、紫外線波長域の光透過率が高く、複数回の紫外線照射後も光透過率変化が少ないことが確認され、且つ100回以上の繰り返し転写を実施しても、問題がないことが確認できた。
また、本実施の形態で説明したケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物に限定されず、他の有機無機ハイブリッド材料を用いた場合も同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態では、転写型の材料としてニッケルを用いた例を説明したが、これに限定されず、他の金属材料、例えば銅、クロム、亜鉛、金、銀、錫、鉛、鉄、アルミニウム及びタングステンの少なくとも1つの元素を含む金属材料が好適に使用できる。これらの金属材料によれば、導電膜のスパッタや電鋳により容易に転写型が作製可能だからである。
(実施の形態3)
実施の形態3では、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いて作製された信号転写基板について説明する。
上述したように、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、ガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。さらには、このような有機無機ハイブリッド材料を用いて作製された信号転写基板は、硬化した紫外線硬化型樹脂から剥離される際に生じる基板自身の反りに耐え得る柔軟性を有し、石英などで形成された信号転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難い。
しかしながら、このような有機無機ハイブリッド材料を用いて作製された信号転写基板は、石英などで形成された信号転写基板と比較して柔軟性を有するとは言え、繰り返しの使用による破損をより確実に抑制するためには、さらなる柔軟性が望まれる。
また、実施の形態2でも説明したように、本実施の形態の信号転写基板は、例えば、金属のニッケルスタンパ(転写型)が設置された容器の中にケイ素樹脂組成物を注入し、当該ケイ素樹脂組成物を熱硬化させて冷却した後に、ニッケルスタンパから剥離することによって形成されている。この形成過程において、ニッケルスタンパとケイ素樹脂組成物とでは熱膨張率が大きく異なるため、冷却時にニッケルスタンパとの収縮度差によって、信号転写基板に割れが生じることがある。したがって、信号転写基板に用いられる材料としては、転写型との熱膨張率差が小さい、もしくは、収縮度差によって生じるストレスに耐え得る強度及び柔軟性を有する材料を用いること望ましい。
そこで、本実施の形態では、上述の有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いることによって、強度及び柔軟性が向上し、且つ、転写型との熱膨張率差が低減した信号転写基板を提供する。
本実施の形態の信号転写基板において、信号転写基板の表面粗さ、無機フィラーの有機無機ハイブリッド材料への混合拡散の容易性、及び、最適な柔軟性を鑑みると、無機フィラーの粒径は0.005〜50μmが好ましく、0.01〜1.5μmがより好ましい。また、無機フィラーの屈折率は、有機無機ハイブリッド材料の屈折率との差が小さいことが望ましく、屈折率差は0〜0.01(好ましくは0〜0.005)の範囲内であることが望ましい。屈折率差をこのような範囲に設定することによって、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した際に、両者の屈折率差に起因して界面で生じる散乱によって、信号転写基板の紫外線透過率が低下することを防止できる。シルセスキオキサン化合物が有するかご型構造を、有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、その屈折率が1.42〜1.48の範囲内であるものが多い。そのため、無機フィラーの屈折率は、1.400〜1.500の範囲内であることが好ましく、1.460〜1.470の範囲内であることがより好ましく、1.465〜1.469の範囲内であることがさらに好ましい。
信号転写基板における無機フィラーの含有量は、上述したように、信号転写基板の強度及び柔軟性や用いる無機フィラーの屈折率等も考慮して、5〜70重量%の範囲や5〜50重量%の範囲で適宜決定することが望ましい。
無機フィラーとしては、シリカ粒子を用いることが好ましい。無機フィラーにシリカ粒子以外の粒子が含まれていてもよいが、無機フィラーに少なくとも40重量%のシリカ粒子が含まれることが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差を考慮すると、無機フィラーがシリカ粒子である(シリカ粒子100重量%)が好適である。
次に、本実施の形態の信号転写基板について、無機フィラーの含有量と、破断強度(曲げ強度)、曲げ弾性率(柔軟性)、光透過率及び熱膨張率との関係を説明する。ここでは、有機無機ハイブリッド材料としてTCHSを硬化させたケイ素樹脂硬化物を用いた。無機フィラーとしては、シリカ粒子(粒径:約0.3〜0.8μm)を用いた。
<破断強度及び曲げ弾性率>
破断強度及び曲げ弾性率は、3点曲げ試験によって測定した。測定に用いたサンプルは、以下の手法で調製した。TCHSのトルエン溶液に所定量の無機フィラー(ここではシリカ粒子)を分散させた後、トルエンを減圧留去し、その後得られたもの(TCHSにシリカ粒子が分散したもの)を加熱溶融し注型に流し込み、170℃で2時間、減圧下で硬化させることにより、サンプルを調製した。測定結果を図8及び図9に示す。図8及び図9に示すように、シリカ粒子が添加されることによって、破断強度及び曲げ弾性が共に向上することが確認された。ここで、無機フィラーの添加量による変化が大きい曲げ弾性率の観点から、無機フィラーの添加量を検討する。信号転写基板がある程度の曲げ弾性率を有している場合、信号転写基板がしなることによって樹脂との離型がよく、信号を樹脂層に良好に転写できる。このことから、信号転写基板として用いるためには、784MPa(80kgf/mm2)程度の弾性率を有することが望ましい。また、樹脂層との離型がよりよくなることから、980MPa(100kgf/mm2)程度の弾性率があればより望ましい。そこで、図9に示す結果から、無機フィラーの含有量を5重量%以上とすることが望ましく、さらに10重量%以上とすることがより好ましいことがわかった。
<熱膨張率>
熱膨張率は、TMA(圧縮モード)で測定した。空気中、1℃/minの昇温速度で、室温から250℃までの測定を行った。圧縮荷重は1gとした。また、長さ、幅、厚さが、それぞれ5mm、5mm、1mmの樹脂板(破断強度及び曲げ弾性率のサンプルと同様の方法で調製し、樹脂板としたもの)の端面研磨したものを、熱膨張率測定用のサンプルとして用いた。結果を、表2に示す。無機フィラーの含有量が高くなる程、熱膨張率は低下して、一般に転写型に用いられる金属(例えばニッケル(熱膨張率15ppm/℃))の熱膨張率に近づいた。無機フィラーを10重量%以上添加することによって、熱膨張率を125ppm/℃以下まで低下させることができた。上記のとおり、無機フィラーが10重量%以上含まれることによって、熱膨張率の低下に加えて破断強度及び曲げ弾性率が向上した。したがって、無機フィラーの含有量を10重量%以上とすることによって、信号転写基板作製時における転写型金属との収縮度差に起因する割れの発生を十分抑制できることが確認された。
Figure 2008111312
<光透過率>
光透過率はUV−vis(積分球)によって評価した。また、測定に用いたサンプルは、長さ、幅、厚さが、それぞれ30mm、50mm、1mmの樹脂板(破断強度及び曲げ弾性率のサンプルと同様の方法で調製し、樹脂板としたもの)であり、表面を鏡面に仕上げるために鏡面仕上げを行った。
まず、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が最大で0.01、すなわち屈折率差が0〜0.01の範囲内であるシリカ粒子を用いて、測定を行った。この測定結果を図10に示す。
無機フィラーの含有率が増加するに従い、波長250nm〜400nmの範囲の光透過率が低下した。
信号転写基板の材料として広く用いられているポリカーボネイトは、波長300nmで約50%の光透過率を有しており、紫外線照射時にポリカーボネイト同等、あるいはそれ以上の光透過率を有するためには、有機無機ハイブリッド材料に、無機フィラーを50重量%まで添加できることがわかった。なお、ポリカーボネイトは1回使い捨ての信号転写基板だが、紫外線照射時に、信号の転写に必要な光透過性を有することから、ここでは比較の対象として用いている。
また、より効率よく紫外線硬化を行うためには、前述のように、波長250〜280nmの範囲に対する信号転写基板の光透過率を10%以上とすることが好ましい。測定結果によれば、この観点からも、無機フィラーを50重量%まで添加できることがわかった。
以上のように、有機無機ハイブリッドに添加する無機フィラーの重量%が50重量%以下であれば、信号の転写に必要な光透過性を保持することができ、さらには紫外線フラッシュが3回以下で紫外線硬化型樹脂を硬化させることができるという、両方の効果を奏することがわかった。
次に、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.005以下、すなわち屈折率差が0〜0.005の範囲内であるシリカ粒子を用いて、測定を行った。この測定結果を図11に示す。
この場合、波長300nmで約50%の光透過率を有するためには、有機無機ハイブリッド材料に、無機フィラーを70重量%まで添加できることがわかった。有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が小さいことにより、無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との界面での散乱が低減されるため、無機フィラーを添加した場合の光透過率の低下量をより小さくとどめることが可能となった。
また、無機フィラーの添加量が70重量%以下であれば、同様に波長250〜280nmの範囲に対する信号転写基板の光透過率を10%以上に保つことが可能であり、より効率よく紫外線硬化型樹脂を硬化できることがわかった。
以上のように、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.005以下の無機フィラーを用いる場合においては、無機フィラーを70重量%添加できることがわかった。
本実施例では、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.01以下の無機フィラーと、0.005以下の無機フィラーとに分けて測定を行ったが、屈折率差がより小さい無機フィラーを用いることで、添加量をより増加できることが予想される。
次に、無機フィラーとしてシリカ粒子を用いた場合と、チタニア粒子及びジルコニア粒子を用いた場合との比較も行った。なお、チタニアの屈折率は2.3〜2.5、ジルコニアの屈折率は2.2程度と、シリカの屈折率に比べて大きく、有機無機ハイブリッド材料の屈折率1.42〜1.48との差が大きい。このことから、無機フィラーとしてチタニア、ジルコニアを有機無機ハイブリッド材料に添加した信号転写基板を作製したが、無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との界面で光の拡散を生じ、その結果、光透過率が低下した。これに対し、屈折率が、1.400〜1.500、好ましくは1.460〜1.470、より好ましくは1.465〜1.469のシリカ粒子を用いた場合は、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が小さいため、光透過率の低下が小さかった。
以上の結果から、無機フィラーとしてシリカ粒子が好適に用いられることが確認された。
本発明にかかる多層情報記録媒体の製造方法と、信号転写基板及びその製造方法とは、情報を蓄えるあらゆる情報システム装置、例えば、コンピュータ、光ディスクプレーヤ、光ディスクレコーダ、カーナビゲーションシステム、編集システム、データサーバー、AVコンポーネント、メモリカード、磁気記録媒体などの媒体の作製に利用することができる。
本発明は、再生又は記録再生を目的とした情報記録媒体、特に複数の情報記録層を備えた多層情報記録媒体の製造方法と、情報記録媒体の信号部を転写によって形成する際に用いられる信号転写基板及びその製造方法とに関するものである。
近年、情報機器・映像音響機器などに必要とされる情報量の拡大化に伴い、データアクセスの容易さ、大容量データの蓄積及び機器の小型化に優れている光ディスクなどの情報記録媒体が注目され、記録情報の高密度化がなされている。例えば、レーザ光の波長を約400nmとし、レーザ光を絞り込むための集光レンズの開口数(NA)を0.85とした光ヘッドを用いることによって、単層で25GB程度、2層で50GB程度の容量を実現した光記録媒体が提案されている(例えば、特開2002−260307号公報参照)。
以下に、特開2002−260307号公報に記載された従来の多層情報記録媒体の構造及び製造方法について、図6及び図7A〜図7Gを用いて説明する。
図6は、従来の多層情報記録媒体の断面図を示している。この多層情報記録媒体は、片面に凹凸形状からなるピットや案内溝の信号部が転写形成された第1信号基板601と、第1信号基板601の凹凸形状が設けられた面上に配置された第1薄膜層602と、第1薄膜層602との接合面と反対の面に凹凸形状からなるピットや案内溝の信号部が転写によって形成された第2信号基板603と、第2信号基板603の凹凸形状が設けられた面上に配置された第2薄膜層604と、第2薄膜層604を覆うように形成された透明層605と、により構成されている。第1信号基板601は、ポリカーボネイトやポリオレフィンなどの樹脂材料を用い、射出圧縮成形などにより、片面にピットや案内溝が凹凸形状として転写により形成されることによって作製されている。第1信号基板601の厚みは1.1mm程度である。第1薄膜層602及び第2薄膜層604は、それぞれ記録膜や反射膜を含んでおり、第1信号基板601や第2信号基板603において信号部が形成された面(信号面)側に、スパッタリングや蒸着などの方法によって作製されている。反射膜の材料の例としては、銀合金やアルミニウムなどの金属材料が主に挙げられ、波長約400nmのレーザ光に対して効率の良い反射率が得られる材料が採用される。また、記録膜の材料には、書き換え型及び追記型の2種類の記録材料がある。書き換え型には複数回のデータの記録及び消去が可能な材料が用いられ、GeSbTeやAgInSbTeなどの記録材料が用いられている。追記型には、1度の記録のみ可能な、不可逆的に変化する材料が用いられる。TeOPdがその代表的な材料である。第2信号基板603は、紫外線硬化型樹脂を用いてスピンコート法によって形成され、信号転写基板によってピットや案内溝の凹凸形状(信号部)が転写形成される。ここで用いられる信号転写基板は、第1信号基板601のように片面にピットや案内溝の凹凸形状が形成されている基板である。具体的に、信号転写基板は、第2信号基板603に形成される信号部に対応する凹凸形状が形成された信号面を転写面として備えた基板である。第2信号基板603は、このような信号転写基板をその信号面が第1信号基板601と対向するように紫外線硬化型樹脂を介して貼り合わせ、紫外線硬化型樹脂の硬化後に信号転写基板を紫外線硬化型樹脂との界面から剥離することによって形成されている。透明層605は、記録再生光に対して透明な(高い透過性を有する)材料からなり、厚みが0.1mm程度である。材料としては、光硬化型樹脂や感圧接着剤などの接着剤が使用でき、例えば紫外線硬化型樹脂をスピンコート法によって第2薄膜層604上に塗布することによって形成できる。このように作製された多層情報記録媒体の記録再生は、透明層605側から記録再生レーザ光を入射させることによって行われる。
図7A〜図7Gに、従来の多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図を示し、これらを用いて従来の多層情報記録媒体の製造方法について説明する。
まず、第1信号基板701のピットや案内溝が形成された信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により記録膜や反射膜を含んだ第1薄膜層702が形成される。第1信号基板701は、第1薄膜層702が形成された面とは反対側の面で、バキュームなどの手段によって回転テーブル703上に固定されている(図7A参照)。
回転テーブル703に固定された第1信号基板701上に形成された第1薄膜層702上には、樹脂層である第2信号基板を形成するために、ディスペンサーによって紫外線硬化型樹脂704が所望の半径上に同心円状に塗布される(図7B参照)。
次に、回転テーブル703をスピン回転させることにより、紫外線硬化型樹脂704の延伸を行う(図7C参照)。延伸の際に紫外線硬化型樹脂704に働く遠心力によって、紫外線硬化型樹脂704から余分な樹脂と気泡とを除去できる。このとき、延伸される紫外線硬化型樹脂704の厚みは、紫外線硬化型樹脂704の粘度やスピン回転の回転数、時間、スピン回転をさせている周りの雰囲気(温度や湿度など)を任意に設定することにより、所望の厚みに制御することができる。
延伸された紫外線硬化型樹脂704の上に、第1信号基板701のように片面(信号面)にピットや案内溝が凹凸形状として形成された、ポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料で作製された信号転写基板705が、第1信号基板701及び信号転写基板705の双方の信号面が対向するように重ね合わされる(図7D参照)。このとき、信号転写基板705と紫外線硬化型樹脂704との間に気泡が混入されることを防ぐために、この重ね合わせ工程は真空雰囲気中で行われることが好ましい。
第1信号基板701、第1薄膜層702、紫外線硬化型樹脂704及び信号転写基板705が一体化された多層構造体706に、信号転写基板705側から紫外線照射機707によって紫外線が照射され、2つの信号面に挟まれた紫外線硬化型樹脂704を硬化させる(図7E参照)。信号転写基板705側から紫外線を照射するのは、信号転写基板705に用いられているポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料が、ある程度の紫外線照射であれば紫外線を透過させて、紫外線硬化型樹脂704まで紫外線を到達させることができるからである。
紫外線硬化型樹脂704を硬化させた後、信号転写基板705が紫外線硬化型樹脂704との界面で剥離されることによって、信号面が転写形成された第2信号基板710が形成される(図7F参照)。
第2信号基板710の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法によって、記録膜や反射膜を含んだ第2薄膜層708が形成される。最後に、記録再生光に対してほぼ透明な(高い透過率を有する)透明層709が、例えば紫外線硬化型樹脂のスピン塗布、延伸、紫外線照射による硬化を経て形成される(図7G参照)。
以上のように、従来の多層情報記録媒体の製造方法では、信号部が転写形成された第2信号基板を作製する際、信号転写基板を介して紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して当該紫外線硬化型樹脂を硬化させるため、充分に高い紫外線透過性を有する材料(例えばポリカーボネイトやポリオレフィン)からなる信号転写基板を用いることが重要であった(例えば、特開平1−285040号公報及び特開2003−85839号公報参照)。
特開2002−260307号公報 特開平1−285040号公報 特開2003−85839号公報
情報記録媒体の製造に用いられる上記のような信号転写基板は、製造コストや生産性を鑑みて、繰り返し使用することが望まれる。しかしながら、信号転写基板に用いられているポリカーボネイトやポリオレフィンなどの材料は紫外線を吸収して変質してしまうため、繰り返しの使用によって信号転写基板の紫外線透過率が低下し、信号転写基板を繰り返して何度も使用することが不可能であった。また、紫外線照射による信号転写基板の紫外線透過率の低下を防止すべく、代替材料として紫外線に対して耐光性を有する石英ガラスを用いた場合、紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに、石英ガラスの割れや欠けを生じるという問題を有していた。これにより、多層情報記録媒体の製造コストが高くなるという問題も生じていた。
本発明は、複数回の紫外線照射に対する充分な耐光性と、紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに物理的な破損を生じない程度の柔軟性とを併せ持つ信号転写基板及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、そのような信号転写基板を用いた多層情報記録媒体の製造方法を提供することも目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の信号転写基板は、凹凸形状からなる信号部を樹脂に転写するための信号転写基板であって、前記信号部が形成された信号面を備えており、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。なお、本明細書において、分子サイズとは、多面体構造の一辺が0.1〜20nmの範囲内であるサイズのことであり、例えば0.5〜1.0nmの範囲内である。
また、本発明の信号転写基板の製造方法は、上記の本発明の信号転写基板を製造する方法であって、少なくとも、
(i)シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を、凹凸形状からなる信号部が形成された転写型の上に供給する工程と、
(ii)加熱によって前記ケイ素樹脂組成物を硬化させて、前記転写型の前記信号部が転写形成された信号面を有する信号転写基板を形成する工程と、
を含んでいる。
本発明の多層情報記録媒体の製造方法は、少なくとも、第1の情報記録層と、第2の情報記録層と、前記第1の情報記録層と前記第2の情報記録層との間に設けられた樹脂層とを含む多層情報記録媒体の製造方法であって、前記樹脂層を形成する工程には、
(I)前記第1の情報記録層上に液体の樹脂を塗布する工程と、
(II)前記第1の情報記録層上に塗布された前記樹脂に、凹凸形状からなる信号部が形成された信号面を有する信号転写基板を、前記信号面が前記樹脂に対向するように貼り合わせる工程と、
(III)前記樹脂に前記信号転写基板を貼り合わせた状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、
(IV)前記信号転写基板を前記樹脂から剥離する工程と、
が含まれており、且つ、前記信号転写基板が、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。また、本発明の製造方法において製造される多層情報記録媒体は、情報記録層として第1の情報記録層及び第2の情報記録層の2層を少なくとも備えている情報記録媒体であればよいため、3層以上の情報記録層を備えた情報記録媒体も含むものである。
本発明の信号転写基板によれば、樹脂への信号部の転写と樹脂からの剥離とを良好に実施でき、且つ、繰り返して複数回使用することが可能な信号転写基板を実現できる。これにより、1つの信号面を形成する際に必要なコストが低減できる。
本発明の信号転写基板の製造方法によれば、上記のような効果を実現できる本発明の信号転写基板を容易に作製できる。
本発明の多層情報記録媒体の製造方法によれば、信号転写基板による樹脂への凹凸形状(信号部)の転写と、樹脂からの信号転写基板の剥離とを良好に実施でき、且つ信号転写基板を繰り返して複数回使用することが可能となる。これにより、従来のように信号転写基板を使い捨てる必要がなくなるので、信号面を1つ作製する際に必要となる材料費を低減することができる。また、信号転写基板を信号面毎に複数作製することを必要としないため、多層情報記録媒体の製造装置を簡略化且つ低コストで実現することが可能である。さらに、信号転写基板毎に発生する信号面の作製ばらつきを抑制することが可能となる。
図1A〜図1Gは、本発明の実施の形態1における多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図である。 図2Aは、本発明の実施の形態1において用いられるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造を示す模式図であり、図2Bは、本発明の実施の形態1において用いられるケイ素樹脂硬化物を構成するかご型シルセスキオキサン化合物の構造の一例を示す模式図である。 図3A及び図3Bは、本発明の実施の形態1における紫外線照射による信号転写基板の光透過率変化のグラフである。 ポリカーボネイトの分子構造図である。 図5A〜図5Fは、本発明の実施の形態2における信号転写基板の製造方法において、信号転写基板の製造に用いられる転写型を製造する各工程を示す断面図である。 従来の多層情報記録媒体の断面図である。 図7A〜図7Gは、従来の多層情報記録媒体の製造方法における各工程を示す断面図である。 有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と強度との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と曲げ弾性率との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0.01以下の場合の、有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と光透過率との関係を示すグラフである。 有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0.005以下の場合の、有機無機ハイブリッド材料に添加された無機フィラーの量と光透過率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例であり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
<多層情報記録媒体の製造方法>
本発明の多層情報記録媒体の製造方法は、少なくとも、第1の情報記録層と、第2の情報記録層と、前記第1の情報記録層と前記第2の情報記録層との間に設けられた樹脂層とを含む多層情報記録媒体の製造方法である。樹脂層を形成する工程には、
(I)前記第1の情報記録層上に液体の樹脂を塗布する工程と、
(II)前記第1の情報記録層上に塗布された前記樹脂に、凹凸形状からなる信号部が形成された信号面を有する信号転写基板を、前記信号面が前記樹脂に対向するように貼り合わせる工程と、
(III)前記樹脂に前記信号転写基板を貼り合わせた状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、
(IV)前記信号転写基板を前記樹脂から剥離する工程と、
が含まれている。この信号転写基板は、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。
信号転写基板に用いられる有機無機ハイブリッド材料には、無機フィラー間を架橋する(繋ぎ合わせる)セグメントとして、有機セグメントの他に、例えば−Si−O−Si−等の無機セグメントが含まれていてもよい。−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部としては、例えばオクタシルセスキオキサン化合物やドデカシルセスキオキサン化合物などが挙げられる。このような有機無機ハイブリッド材料によって形成された信号転写基板は、光照射(例えば紫外線照射)による透過率の劣化が生じにくいため、繰り返しの使用が可能である。このため、多層情報記録媒体の製造コストを削減できる。また、このような有機無機ハイブリッド材料は適度な柔軟性を有しているので、硬化後の樹脂から信号転写基板を剥離する際に、信号転写基板の物理的な破損も生じにくい。
有機無機ハイブリッド材料として、ヒドロシリル化反応によって得られる硬化物であって、多層情報記録媒体の樹脂層の作製に用いられる樹脂に含まれる官能基と相互作用する極性基を含まない材料を用いることもできる。例えば樹脂層に用いられる紫外線硬化型樹脂としてアクリル樹脂を考えた場合、ヒドロシリル化反応によって得られる硬化物は、アクリル樹脂に含まれるカルボニルなどの極性基と相互作用する−OH、カルボニル、エーテルなどの極性基を系内に含まない。このため、信号転写基板と樹脂層とのインターラクションによって両者が強固に密着することを抑制できるので、信号転写基板を物理的に破損させることなく樹脂層(硬化後の樹脂)から剥離できる。
有機無機ハイブリッド材料は、例えば、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物であってもよい。シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物は、重合によって容易に硬化させることができるので、有機無機ハイブリッド材料の信号転写基板を容易に作製できる。本発明の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板について、その作製に使用されるケイ素樹脂組成物、シルセスキオキサン化合物についての詳細(具体例)は、後述の本発明の信号転写基板とその製造方法で説明するものと同様である。
樹脂層を作製するために用いられる樹脂には、例えば光硬化型樹脂が使用できる。この場合、工程(III)における樹脂の硬化は、信号転写基板を介して樹脂に光を照射することによって行われる。このように、光硬化型樹脂を用いて樹脂層を作製する場合、短時間で樹脂の硬化及び凹凸形状の転写形成が可能であるので、プロセスのサイクルタイムを少なくでき、高効率化が図れる。また、光硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用い、工程(III)における樹脂の硬化を、信号転写基板を介して樹脂に紫外線を照射することによって行うことが好ましい。特定の波長域で硬化する樹脂を用いることにより、積極的に樹脂を硬化させることができるため、製造装置の設計が容易になるからである。樹脂層の作製に紫外線硬化型樹脂が用いられることを考慮して、波長250nm〜280nmの範囲の光に対する信号転写基板の透過率を10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがより好ましい。信号転写基板の上記波長範囲における光透過率をこのような範囲とすることによって、紫外線硬化型樹脂の硬化を短時間で促進させることができる。
信号転写基板は、無機フィラーをさらに含んでいることが好ましい。すなわち、本発明の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板は、前記有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーが添加された複合材料を用いて形成されていることが好ましい。詳細は後述するが、無機フィラーが添加されることによって信号転写基板の強度及び柔軟性が向上するので、信号転写基板の破損を防ぐことができる。
<信号転写基板とその製造方法>
本発明の信号転写基板は、凹凸形状からなる信号部を転写するための信号転写基板であって、前記信号部が形成された信号面を備えており、有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。有機無機ハイブリッド材料としては、上記の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる信号転写基板と同様の材料を用いることができる。例えば、有機無機ハイブリッド材料が、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物である場合の具体例について、以下に説明する。
シルセスキオキサン化合物としては、例えば下記式(1)〜(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものが使用できる。
(AR12SiOSiO1.5n(R34HSiOSiO1.5p(BR56SiOSiO1.5q(HOSiO1.5m-n-p-q …(1)
(AR12SiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(2)
(R34HSiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(3)
但し、式(1)〜(3)中、Aは炭素−炭素不飽和結合を有する基を表しており、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基又は水酸基を表しており、B1は置換又は非置換の飽和アルキル基、水酸基又は水素原子を表しており、R1〜R6は各々独立に低級アルキル基、フェニル基及び低級アリールアルキル基から選ばれる1種の官能基を表している。また、式(1)〜(3)中、m及びtは6、8、10、12から選ばれる数、nは1〜m−1の整数、pは1〜m−nの整数、qは0〜m−n−pの整数、rは2〜tの整数、sは0〜t−rの整数をそれぞれ表している。このような材料で作製された信号転写基板は、光照射による光透過率低下が生じにくく、また、硬化後の樹脂(特に、紫外線硬化型樹脂)との剥離性が良好となる。さらに、このような材料を用いることによって、上記のような特性を備えた信号転写基板を容易に実現できる。
上記のシルセスキオキサン化合物において、式(2)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するシルセスキオキサン化合物が好適に用いられる。より良好な特性を備えた信号転写基板を得ることができるからである。
ケイ素樹脂組成物は、下記式(4)及び下記式(5)から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有していてもよい。
HR78Si−X−SiHR910 …(4)
2C=CH−Y−CH=CH2 …(5)
但し、式(4)中、Xは2価の官能基又は酸素原子を表し、R7〜R10は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。また、式(5)中、Yは2価の官能基を表す。このようなケイ素樹脂組成物においては、式(4)及び(5)で表された化合物が架橋剤として機能するため、ケイ素樹脂組成物において3次元架橋構造が効果的に形成されて硬化体中に未反応で残る残基量を低減でき、結果、紫外線照射耐性がさらに向上する。より良好な硬化反応を実現するために、式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(4)で表される化合物とを含有するケイ素樹脂組成物、あるいは、式(3)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、式(5)で表される化合物とを含有するケイ素樹脂組成物を用いることが好ましい。
式(1)及び/又は式(2)中のAで示される炭素−炭素不飽和結合を有する基が、末端に炭素−炭素不飽和結合を有する鎖状炭化水素基である場合、反応性に優れたケイ素樹脂組成物とできるので、より良好な硬化反応を実現できる。
有機無機ハイブリッド材料が、例えばシルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する場合、当該有機無機ハイブリッド材料はガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。さらに、このような有機無機ハイブリッド材料は、硬化した樹脂(紫外線硬化型樹脂)から剥離される際に生じる自身の反りに耐え得るだけの柔軟性を有し、石英などで形成された転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難いことが分かった。しかしながら、信号転写基板を硬化した紫外線硬化樹脂から剥離するときに、信号転写基板をある程度反らせることが必要になるが、その曲げ応力によって信号転写基板の破損を皆無にすることは難しい。そこで、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いることによって、連続で繰り返して使用することによって生じる破損(割れや欠け)がより発生し難い信号転写基板を作製できる。
最終形成した信号転写基板の表面粗さや混合拡散の容易性、最適な柔軟性を鑑みて、無機フィラーの粒径は0.005〜50μmが好ましく、0.01〜1.5μmがより好ましい。また、無機フィラーの屈折率は、有機無機ハイブリッド材料の屈折率との差が小さいことが望ましく、屈折率差は0〜0.01(好ましくは0〜0.005)の範囲内であることが望ましい。屈折率差をこのような範囲に設定することによって、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した際に、両者の屈折率差に起因する散乱によって、信号転写基板の紫外線透過率が低下することを防止できる。シルセスキオキサン化合物が有するかご型構造を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、その屈折率が1.42〜1.48の範囲内であるものが多い。そのため、無機フィラーの屈折率は、1.400〜1.500の範囲内であることが好ましく、1.460〜1.470の範囲内であることがより好ましく、1.465〜1.469の範囲内であることがさらに好ましい。
信号転写基板における無機フィラーの含有量は、5重量%以上が好ましい。無機フィラーを5重量%以上含むことによって、繰り返しの使用に耐えうる高い強度と高い柔軟性を備えた信号転写基板となる。また、無機フィラーを添加することによって信号転写基板の光透過率が低下するため、添加する無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との屈折率差等も考慮しながら、無機フィラーの含有量の上限値を決定することが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が小さい無機フィラーを用いる場合には、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの界面における散乱が低減されるため、無機フィラーの添加量を増加させることが可能である。例えば、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0〜0.01程度の場合、波長250〜280nmの範囲に対する光の透過率10%以上を確保するために、無機フィラーの含有量を50重量%以下とすることが好ましい。また、有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が0〜0.005程度の場合、無機フィラーの含有量の上限を70重量%とすることができる。
無機フィラーとしては、シリカ粒子を用いることが好ましい。無機フィラーにシリカ粒子以外の粒子が含まれていてもよいが、無機フィラーに少なくとも40重量%のシリカ粒子が含まれることが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差を考慮すると、無機フィラーがシリカ粒子である(シリカ粒子100重量%)が好適である。
以上のような信号転写基板を製造する方法の一例として、例えば、
(i)シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を、凹凸形状からなる信号部が形成された転写型の上に供給する工程と、
(ii)加熱によって前記ケイ素樹脂組成物を硬化させて、前記転写型の前記信号部が転写されることによって形成された信号面を有する信号転写基板を形成する工程と、
を少なくとも含む方法が挙げられる。この方法では、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を熱硬化させるので、信号転写基板を容易に作製することができる。
また、ここで用いられる転写型は金属で形成されていることが好ましい。信号転写基板を作製した後、この信号転写基板から転写型を容易に剥離できるからである。この金属は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、金、銀、錫、鉛、鉄、アルミニウム及びタングステンから選択される少なくとも1つの元素を含むことが好ましい。スパッタ法や電鋳法を用いて転写型を容易に作製できるからである。
無機フィラーを含む信号転写基板を作製する場合は、前記工程(i)において、前記ケイ素樹脂組成物と無機フィラーとを含む複合材料を前記転写型の上に供給するとよい。この場合、複合材料における無機フィラーの含有量は、信号転写基板の強度や柔軟性を考慮して、5重量%以上が好ましい。また、無機フィラーの含有量は、例えば、ケイ素樹脂組成物の硬化物と無機フィラーとの屈折率差が小さい(例えば0.005以下)場合は70重量%を上限とでき、屈折率差がより大きい範囲(例えば0.01以下)の場合は、上限値を50重量%とすることが好ましい。また、上述したように、無機フィラーがシリカ粒子を少なくとも40重量%含むことが望ましく、無機フィラーとしてシリカ粒子を用いる(シリカ粒子100重量%)ことがより望ましい。
以下に、本発明についてのより具体的な実施の形態を説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、光ディスク形状の多層情報記録媒体を例に挙げて説明するが、光ディスクの形状に限定されるものではなく、例えば光メモリカードなどの一般的な多層情報記録媒体にも適用できる。
(実施の形態1)
図1A〜図1Gは、本発明の実施の形態1における多層情報記録媒体の製造方法の各工程を示す断面図である。これらの図面を参照しながら、本実施の形態における多層情報記録媒体の製造方法について説明する。
本実施の形態の多層情報記録媒体の製造方法において用いられる、ベースとなる第1信号基板101は、ディスクの反りや剛性を良くするために、さらにはCD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの光ディスクと厚み互換を有するように、厚さ略1.1mmの円盤からなる。第1信号基板101は、ピットや案内溝の凹凸形状からなる信号部が形成された面(信号面)を有している。第1信号基板101の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により記録膜や反射膜を含む第1薄膜層(第1の情報記録層)102が形成されている。第1信号基板101は、回転テーブル103上で回転テーブル103の回転軸に対する偏芯量が小さくなるように回転テーブル103のほぼ中央に設けられたディスクのセンタリング冶具(図示せず)と、回転テーブル103の上面に複数個設けられた小さなバキューム孔(図示せず)とによって、回転テーブル103に吸着固定されている(図1A参照)。
吸着固定された第1信号基板101上の第1薄膜層102上に、ディスペンサーによって紫外線硬化型樹脂104が所望の半径上に略同心円状に塗布される(図1B参照)。
次に、回転テーブル103をスピン回転させることにより、紫外線硬化型樹脂104の延伸を行う(図1C参照)。延伸時に紫外線硬化型樹脂104に働く遠心力によって、余分な樹脂と気泡とを紫外線硬化型樹脂104から除去することができる。このとき、延伸される紫外線硬化型樹脂104の厚みは、紫外線硬化型樹脂104の粘度やスピン回転の回転数、時間、スピン回転をさせている周りの雰囲気(温度や湿度など)を任意に設定することにより、所望の厚みに制御することができる。
延伸された紫外線硬化型樹脂104の上には、第1信号基板101のように片面にピットや案内溝が凹凸形状(信号部)として形成された信号面を有する信号転写基板105が、第1信号基板101と信号転写基板105の双方の信号面が対向するように重ね合わされる(図1D参照)。このとき、信号転写基板105と紫外線硬化型樹脂104との間に気泡を混入することを防ぐために、この重ね合わせを実施する雰囲気は真空雰囲気であることが好ましい。ここで用いられる信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。
第1信号基板101、第1薄膜層102、紫外線硬化型樹脂104及び信号転写基板10が一体化された多層構造体106に、信号転写基板105側から紫外線照射機107によって紫外線が照射され、2つの信号面に挟まれた紫外線硬化型樹脂104を硬化させる(図1E参照)。本実施の形態における信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料を用いているので、紫外線を透過させて、充分な紫外線を紫外線硬化型樹脂104まで到達させることができる。これにより、信号転写基板105の信号面に設けられたピットや案内溝の凹凸形状を効率よく紫外線硬化型樹脂104に転写形成できる。信号転写基板105の信号面に形成された凹凸形状を紫外線硬化型樹脂104に効率よく転写するために、本実施の形態では、例えば紫外線硬化型樹脂104の粘度を50〜4000mPa・sとし、信号転写基板105を例えば直径120mm、厚み0.6mm、中心に直径15mmの中心穴を有する円盤としている。
紫外線硬化型樹脂104を硬化させた後、信号転写基板105が紫外線硬化型樹脂104との界面で剥離されることによって、信号面を備えた第2信号基板(樹脂層)110が形成される(図1F参照)。信号転写基板105は、後述する有機無機ハイブリッド材料によって形成されているので、硬化した紫外線硬化型樹脂104との剥離性が良好であり、信号転写基板105と紫外線硬化型樹脂104との界面で容易に剥離することが可能である。
第2信号基板110の信号面上に、スパッタリングや蒸着などの方法により、例えば相変化型の記録膜や、反射膜を含んだ第2薄膜層108が形成される。第2薄膜層108は、例えば、Ag合金などの反射膜、AlNなどの誘電体膜及びTeOPdなどの記録膜のうち少なくとも1層以上を含む構成とできる。最後に、透明層109が形成される。透明層109は、第2薄膜層108の上に紫外線硬化型樹脂を塗布し、この紫外線硬化型樹脂をスピン回転させることによって延伸し、次いで紫外線を照射して硬化させることによって形成できる。透明層109は、記録再生光に対してほぼ透明で(記録再生光に対して高い透過率を有し)、厚みが約0.1mmである。
次に、本実施の形態において用いられる信号転写基板105について、詳細に説明する。本実施の形態において用いられる信号転写基板105は、有機無機ハイブリッド材料によって形成されている。有機無機ハイブリッド材料として使用できる材料の例は、上記に説明したとおりである。ここでは、有機無機ハイブリッド材料として、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物を用いた例を説明する。
本実施の形態のシルセスキオキサン化合物は、例えば、上記した式(1)〜(3)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物及びこれらの化合物が部分付加反応して形成されるかご型シルセスキオキサン化合物の部分重合物からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、式(1)〜(3)のかご型シルセスキオキサン化合物など、と記載する。)を含有している。なお、本実施の形態のシルセスキオキサン化合物は、式(1)〜(3)のかご型シルセスキオキサン化合物などのみから構成されていてもよい。
Figure 2008111312
式(1)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、構造式(1)に示されるテトラキス(シクロヘキセニルエチルジメチルシロキシ)−テトラキス(ジメチルシロキシ)シルセスキオキサン(TCHS:Tetrakis(cyclohexenylethyldimethylsiloxy)-tetrakis(dimethyl-siloxy)silsesquioxane)が挙げられる。この化合物は、式(1)において、m=8、n=4、p=4、q=0、R1、R2、R3及びR4がメチル基、Aがシクロヘキセン基である化合物である。TCHSを用いた場合、高い強度を有する信号転写基板を作製できる。また、TCHSは末端が環状構造となっているので、紫外線耐性が高い。したがって、TCHSは、信号転写基板の作製に用いられる有機無機ハイブリッド材料として好適である。なお、構造式(1)には2つのシルセスキオキサン化合物が示されており、また、便宜上、AR12Si−及びR34HSiO−が単にR−と略記されている部分がある。
また、式(2)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、テトラアリルジメチルシロキシ−テトラトリメチルシロキシシルセスキオキサン、オクタビニルジメチルシロキシシルセスキオキサン、ヘキサアリルジメチルシロキシ−ジヒドロキシシルセスキオキサンなどが挙げられる。
また、式(3)で示されるシルセスキオキサン化合物の具体例としては、例えば、オクタハイドリドシルセスキオキサン、テトラトリメチル−テトラキスジメチルシロキシシルセスキオキサンなどが挙げられる。
また、本実施の形態におけるケイ素樹脂組成物中には、架橋剤として、上記した式(4)及び/又は式(5)で表される化合物がさらに含まれていてもよい。
式(4)で示される化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。式(5)で示される化合物の具体例としては、例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサン、ジアリルテトラメチルジシロキサン、ジビニルジフェニルジメチルジシロキサンなどが挙げられる。
図2A及び図2Bに、TCHSのようなかご型シルセスキオキサン化合物が互いに付加重合して形成されるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造の模式図が示されている。図2Aは、複数のかご型シルセスキオキサン化合物が架橋されて形成されるケイ素樹脂硬化物の3次元架橋構造を示す模式図である。図2Bは、かご型シルセスキオキサン化合物の構造の一例を示す模式図である。図2A中、201はシリコン原子と酸素原子で形成された略6面体構造、すなわち−Si−O−結合で構成された多面体構造である分子サイズの無機部を示している。また、図2A中、202は略6面体構造201を架橋結合している有機セグメントを示している。本実施の形態のケイ素樹脂組成物は、例えば、図2Aに示したような架橋構造を形成することによって、ケイ素樹脂硬化物となっている。
図2Bに示すように、かご型のシルセスキオキサン化合物は、シリコン原子と酸素原子とで形成された多面体(略6面体)構造を有し、その一辺がナノレベル(例えば、0.5nm)である。このことから、上記のようなシルセスキオキサン化合物から構成されるケイ素樹脂はナノ樹脂とも呼ばれる。
このようなかご型シルセスキオキサン化合物が有する、シリコン原子にシロキサン結合を介して結合したヒドロシラン基や、シリコン原子にシロキサン結合を介して結合した炭素−炭素不飽和結合を有する基により、一方のかご型シルセスキオキサン化合物の前記ヒドロシラン基と他のかご型シルセスキオキサン化合物の前記炭素−炭素不飽和結合を有する基とがヒドロシリル化反応して付加重合することにより架橋して、ケイ素樹脂の硬化物が得られる。このとき、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造が形成される。このように形成されたケイ素樹脂硬化物は、ガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。このような材料によって作製された信号転写基板105は、青・近紫外域の光の照射による透過率の劣化が抑制され、且つ、このような波長域の光に対して透明である(高い透過率(例えば50%以上)を有する)。
ここで、かご型シルセスキオキサン化合物が−Si−O−結合を介して架橋されている場合(有機セグメントが−Si−O−結合を介してかご型シルセスキオキサン化合物に付加されている場合)と、かご型シルセスキオキサン化合物に有機基(有機セグメント)がダイレクトに付加されている場合との、ケイ素樹脂硬化物の特性を比較する。
かご型シルセスキオキサン化合物にダイレクトに有機基が付加されて架橋される場合と比較して、よりフレキシブルな−Si−O−結合を介して架橋されることにより、架橋の反応が進み、未反応残基が低減される。そのため、−Si−O−結合を介してかご型シルセスキオキサン化合物が架橋されたケイ素樹脂硬化物は、青・近紫域の光に対してより耐性が高い。さらに、このケイ素樹脂硬化物は強靱であり、バルク化しやすいという利点も有する。
このように、本実施の形態の信号転写基板は、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料によって形成されているので、硬化した紫外線硬化型樹脂から剥離される際に生じる基板自身の反りに対しても柔軟性を有し、石英などで形成された転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難い。
以上に説明した有機無機ハイブリッド材料であるケイ素樹脂硬化物によって作製された信号転写基板を用いることによって、容易に良好な案内溝や信号ピットなどの凹凸形状を樹脂層に転写形成することができる。
次に、材料の違いによる信号転写基板の光透過率の違いについて説明する。図3A及び図3Bに、異なる材料によって作製された各信号転写基板について、波長を変化させた際の光透過率が示されている。
本実施の形態で用いたシルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物(以下、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物と記載することがある。)からなる信号転写基板の光透過特性の優位性を明確にするため、一般的に用いられている材料であるポリカーボネイト及びポリオレフィンで作製した信号転写基板に光照射したときの光透過率変化を比較対照として図3Aに示した。本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板の光透過率変化は、図3Bのグラフに示している。なお、この光透過率測定に用いた信号転写基板の厚みは0.6mmであり、ポリカーボネイトには帝人化成製「AD5503」、ポリオレフィンには日本ゼオン製「ゼオノア1430R1」、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物には、上記の構造式(1)に示されるTCHSをヒドロシリル化反応によって付加重合させて得られる硬化物を用いた。
また、光透過率測定に用いた光照射装置としては、信号転写基板の熱的な変質や変形を極力抑制するため、所定のエネルギーを出力するフラッシュタイプを用いた。光強度としては、ポリカーボネイトの信号転写基板を介して厚さ25μmの紫外線硬化型樹脂に紫外線フラッシュを5回照射することによって、この紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる強度に設定した。また、各々の信号転写基板材料について紫外線の積算照射量に対する透過率変化を確認するため、紫外線未照射の場合と、500回の紫外線フラッシュを照射した場合とのグラフの2種類を示している。グラフに示す各信号転写基板材料の光透過率特性の測定には、島津製作所製の自記分光光度計(MPC−3100)を用いている。
図3A及び図3Bから明らかなように、ポリカーボネイトやポリオレフィンからなる信号転写基板と比べ、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は、波長250〜280nmの波長範囲で透過率が大きい。この特性は、紫外線の透過効率が高いことを示している。したがって、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いると、少ない紫外線照射エネルギーで紫外線硬化型樹脂を硬化させることが可能となり、紫外線照射効率やプロセスのサイクル時間短縮に大きく貢献できることがわかる。また、500回の紫外線フラッシュ後において、ポリカーボネイトやポリオレフィンからなる信号転写基板と比較して、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は紫外線領域での透過率低下が抑制されており、良好な透過率が得られている。この特性から、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板は、紫外線未照射時の初期の状態とほぼ変わらない紫外線透過率を維持できることがわかり、紫外線照射プロセスにおいて紫外線硬化型樹脂を硬化させるために照射する紫外線照射量を初期から変化させる必要がないことがわかる。また、信号転写基板として、ポリカーボネイトやポリオレフィンを用いた場合、紫外線硬化型樹脂の硬化には紫外線フラッシュを5回必要とするのに対し、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いた場合、波長250〜280nmの範囲の光透過率が10%以上であるため、紫外線フラッシュ3回以下で紫外線硬化型樹脂を硬化させることができる。
なお、上記の光透過率測定は、信号転写基板のみに紫外線を照射して紫外線の透過率を測定したものであるが、実際に信号転写基板の材料にポリカーボネイトを用い、紫外線硬化型樹脂への信号面の転写を実施した場合、良好に信号面を転写形成できる回数はせいぜい20回である。表1に信号転写基板材料と転写繰り返し回数との関係に関する実験結果を示す。
Figure 2008111312
剥離が困難になる理由としては、紫外線照射による紫外線透過率の低下に加え、ポリカーボネイトでは、図4に示すように分子内に−C−O−(エーテル結合)や、C=O(カルボニル結合)など、極性が高い基を有しており、この基が紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル樹脂)のエーテルなどの極性が高い基と相互作用し、紫外線硬化型樹脂との密着力が高くなることが想定されるからである。また、信号転写基板の材料にガラス(SiO2)を用いた場合も、紫外線硬化型樹脂との密着性が高く、安定した信号面の転写形成限界は20回までであった。その理由は、ガラス材料にはシラノール(−SiOH)などの極性の高い基が含まれており、これらの極性基が紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル樹脂)のカルボニルなどの極性基と水素結合し、密着力が高くなることが想定されるからである。なお、信号転写基板の材料にガラス材料を用いた場合、ガラス材料の硬質且つ脆い特性と、紫外線硬化型樹脂との密着性が高い理由により、信号転写を繰り返すことで信号転写基板の割れや欠けなどが発生し易い。
これに対し、本実施の形態におけるケイ素樹脂硬化物(ここでは、TCHSをヒドロシリル化反応によって付加重合させて得られる硬化物)からなる信号転写基板を用いた場合、紫外線硬化型樹脂との剥離性が良好であり、100回以上の繰り返し転写を実施しても、問題がないことが確認できた。本実施の形態の信号転写基板に用いられるケイ素樹脂硬化物は、シルセスキオキサン化合物をヒドロシリル化反応させることによって得られる硬化物である。したがって、このケイ素樹脂硬化物は、−OH、カルボニル、エーテルなどの極性の高い基(極性基)を系内に含んでおらず、紫外線硬化型樹脂(例えばアクリル脂)とのインターラクションが生じない。これにより、紫外線硬化型樹脂との良好な剥離性を実現できる。
本実施の形態によれば、複数回の紫外線照射に対して充分な耐光性を有し、且つ紫外線硬化型樹脂から信号転写基板を剥離するときに物理的な破損を生じない程度の柔軟性を併せ持つ信号転写基板が実現できるので、信号転写基板の再利用が可能な多層情報記録媒体の製造方法を実現できる。このため、信号面を転写形成する毎に必要とされていた信号転写基板の作製を回避することができ、信号面を転写形成する際のコストを低減することができる。また、多層情報記録媒体の製造装置の簡略化及び低コスト化を実現し、信号転写基板毎に発生する凹凸形状からなる信号部の作製ばらつきを抑制することができる。なお、本実施の形態では、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を用いた例について説明したが、他の有機無機ハイブリッド材料であっても、同様の特性を有する信号転写基板を実現できる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の信号転写基板及びその製造方法の一例について説明する。
最初に、本実施の形態の信号転写基板の製造に用いられる転写型の製造方法について説明する。図5A〜図5Fには、この転写型を製造する際の各工程の断面図が示されている。
まず、ガラス板501上にフォトレジストなどの感光材料を塗布して感光膜502を形成し(図5A参照)、その後レーザ光503より、ピットや案内溝などの所定の凹凸形状となるように露光を行う(図5B参照)。図5B中、502aが露光された部分を示している。なお、わかりやすくするために、図中、感光膜502については露光部502aにのみハッチングを施している。露光部502aの感光材料は現像工程を経ることにより除去され、ピットや案内溝などの凹凸形状504が形成された原盤505が作製される(図5C参照)。感光膜502に形成された凹凸形状504は、スパッタリング法によって膜付けされる導電膜506に転写される(図5D参照)。さらに、導電膜506の剛性及び厚みを増加させるために、電鋳膜507を形成する(図5E参照)。次に、導電膜506及び電鋳膜507を一体化した状態で、ガラス板501と感光膜502を除去することにより、転写型508が作製される(図5F参照)。なお、後の工程で、信号転写基板の製造に用いられるケイ素樹脂組成物を転写型508上で熱硬化させる必要があるため、転写型508は高融点材料によって作製される。代表的な材料として無機材料が挙げられるが、その中でもスパッタや電鋳処理が容易な金属材料を用いることが好ましい。本実施の形態では、ニッケルを用いている。
作製された転写型508は、その内径及び外径を円盤状に打ち抜き加工される。加工後の転写型508は、凹状の容器の底部に配置される。容器の材料は特に限定されないが、転写型508と同様のニッケル、アルミニウム及びステンレスなどの金属材料や、ポリプロピレン、シリコーン、ジュラコンなどの樹脂材料を用いることができる。
以下に、ケイ素樹脂硬化物からなる信号転写基板を製造する方法の一例として、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物であるTCHSを用いた例について説明する。なお、以下に示す具体的な質量や温度はあくまで一例であり、本発明の信号転写基板の製造方法における各物質の質量や温度はそれらに限定されるものではない。
合成して精製して得たTCHS約8gを、転写型508が底部に配置された凹状の容器内に充填する。すなわち、TCHSが、凹凸形状が形成された転写型508上に配置される。その後、TCHSを充填した容器を、真空雰囲気中に設置された加熱オーブンやベークプレートなどで、樹脂温度が約200度となるように約3時間一定に保持、加熱する。TCHSは、このような加熱によって熱硬化する。硬化したTCHSは、凹状の容器及び転写型508から剥離され、凹凸形状が転写形成された信号面を有する円盤状の信号転写基板として得られる。なお、TCHSを加熱する際に、TCHSの上から保圧をかけることにより、信号転写基板の裏面(凹凸形状からなる信号面と反対の面)に相当する面の面精度を高めることができる。実施の形態1で説明したように、構造式(1)に示すTCHSは、TCHSが有するシロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基と、シロキサン結合を介してシリコン原子に結合した炭素−炭素不飽和結合を有する基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。このような付加重合によってTCHSは硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製したテトラアリルシルセスキオキサン8gに3.0×10-3wt%のPt(cts:catalyst)トルエン溶液を150μL加えて均一に攪拌したケイ素樹脂組成物を用いて得られるケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。なお、テトラアリルシルセスキオキサンは、式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物において、t=8、r=4、s=4、R1、R2、R5及びR6がメチル基、Aがアリル基、B1が水素原子の場合である。
Figure 2008111312
このテトラアリルシルセスキオキサンは、構造式(2)に示すように、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基とシロキサン結合を介してシリコン原子に結合したアリル基末端のビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。このような付加重合によってテトラアリルシルセスキオキサンが硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
さらに別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製したジアリルシルセスキオキサン8gにジビニルテトラメチルジシロキサン2.52gと3.0×10-3wt%のPt(cts)トルエン溶液121.6μLとを加えて均一に混合したケイ素樹脂組成物を用いて得られるケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。ここで、ジアリルシルセスキオキサンは式(2)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物において、t=8、r=2、s=6、R1、R2、R5及びR6がメチル基、Aがアリル基、B1が水素原子の場合である。
Figure 2008111312
このジアリルシルセスキオキサンは、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基とシロキサン結合を介してシリコン原子に結合したアリル基末端のビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。この付加重合とともに、構造式(3)に示すように、ジアリルシルセスキオキサンにおいて、シロキサン結合によりシリコン原子に結合したヒドロシラン基と、ジビニルテトラメチルジシロキサンのビニル基とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。これらの付加重合により、ジアリルシルセスキオキサンは硬化し、ケイ素樹脂硬化物となる。
さらに別の例として、TCHSを含有するケイ素樹脂組成物の代わりに、精製して得られたオクタビニルシルセスキオキサン8gにテトラメチルジシロキサン3.52gと3.0×10-3wt%のPt(cts)トルエン溶液を117.44μL加えて均一に混合したケイ素樹脂組成物を用いて得られたケイ素樹脂硬化物によって、信号転写基板を形成することもできる。このときの加熱条件は、大気圧で約3時間、約120℃である。オクタビニルシルセスキオキサンは式(2)において、t=8、r=8、s=0、R1及びR2がメチル基、Aがビニル基の場合である。
Figure 2008111312
このとき、オクタビニルシルセスキオキサンは、構造式(4)に示すように、オクタビニルシルセスキオキサンが有する、シロキサン結合を介して結合した末端のビニル基と、テトラメチルジシロキサンが有する、シロキサン結合によりシリコン原子に結合した水素原子とが、ヒドロシリル化反応によって付加重合する。この付加重合により、オクタビニルシルセスキオキサンはケイ素樹脂硬化物となる。
以上のように、信号転写基板の有機無機ハイブリッド材料として、TCHSを硬化させたケイ素樹脂硬化物を用いる代わりに、構造式(2)〜(4)に示したようなケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物を用いた場合にも、紫外線波長域の光透過率が高く、複数回の紫外線照射後も光透過率変化が少ないことが確認され、且つ100回以上の繰り返し転写を実施しても、問題がないことが確認できた。
また、本実施の形態で説明したケイ素樹脂組成物を硬化させて得られるケイ素樹脂硬化物に限定されず、他の有機無機ハイブリッド材料を用いた場合も同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態では、転写型の材料としてニッケルを用いた例を説明したが、これに限定されず、他の金属材料、例えば銅、クロム、亜鉛、金、銀、錫、鉛、鉄、アルミニウム及びタングステンの少なくとも1つの元素を含む金属材料が好適に使用できる。これらの金属材料によれば、導電膜のスパッタや電鋳により容易に転写型が作製可能だからである。
(実施の形態3)
実施の形態3では、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いて作製された信号転写基板について説明する。
上述したように、シルセスキオキサン化合物が有するナノサイズのかご型構造(無機部)を有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、ガラスライクな機能を発現し、青・近紫外域の光が照射された状態で使用されても劣化し難いという特性を有する。さらには、このような有機無機ハイブリッド材料を用いて作製された信号転写基板は、硬化した紫外線硬化型樹脂から剥離される際に生じる基板自身の反りに耐え得る柔軟性を有し、石英などで形成された信号転写基板と比較して物理的な破損(割れや欠け)を生じ難い。
しかしながら、このような有機無機ハイブリッド材料を用いて作製された信号転写基板は、石英などで形成された信号転写基板と比較して柔軟性を有するとは言え、繰り返しの使用による破損をより確実に抑制するためには、さらなる柔軟性が望まれる。
また、実施の形態2でも説明したように、本実施の形態の信号転写基板は、例えば、金属のニッケルスタンパ(転写型)が設置された容器の中にケイ素樹脂組成物を注入し、当該ケイ素樹脂組成物を熱硬化させて冷却した後に、ニッケルスタンパから剥離することによって形成されている。この形成過程において、ニッケルスタンパとケイ素樹脂組成物とでは熱膨張率が大きく異なるため、冷却時にニッケルスタンパとの収縮度差によって、信号転写基板に割れが生じることがある。したがって、信号転写基板に用いられる材料としては、転写型との熱膨張率差が小さい、もしくは、収縮度差によって生じるストレスに耐え得る強度及び柔軟性を有する材料を用いること望ましい。
そこで、本実施の形態では、上述の有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した複合材料を用いることによって、強度及び柔軟性が向上し、且つ、転写型との熱膨張率差が低減した信号転写基板を提供する。
本実施の形態の信号転写基板において、信号転写基板の表面粗さ、無機フィラーの有機無機ハイブリッド材料への混合拡散の容易性、及び、最適な柔軟性を鑑みると、無機フィラーの粒径は0.005〜50μmが好ましく、0.01〜1.5μmがより好ましい。また、無機フィラーの屈折率は、有機無機ハイブリッド材料の屈折率との差が小さいことが望ましく、屈折率差は0〜0.01(好ましくは0〜0.005)の範囲内であることが望ましい。屈折率差をこのような範囲に設定することによって、有機無機ハイブリッド材料に無機フィラーを添加した際に、両者の屈折率差に起因して界面で生じる散乱によって、信号転写基板の紫外線透過率が低下することを防止できる。シルセスキオキサン化合物が有するかご型構造を、有機セグメントでつなぎ合わせたような3次元架橋構造を有する有機無機ハイブリッド材料は、その屈折率が1.42〜1.48の範囲内であるものが多い。そのため、無機フィラーの屈折率は、1.400〜1.500の範囲内であることが好ましく、1.460〜1.470の範囲内であることがより好ましく、1.465〜1.469の範囲内であることがさらに好ましい。
信号転写基板における無機フィラーの含有量は、上述したように、信号転写基板の強度及び柔軟性や用いる無機フィラーの屈折率等も考慮して、5〜70重量%の範囲や5〜50重量%の範囲で適宜決定することが望ましい。
無機フィラーとしては、シリカ粒子を用いることが好ましい。無機フィラーにシリカ粒子以外の粒子が含まれていてもよいが、無機フィラーに少なくとも40重量%のシリカ粒子が含まれることが望ましい。有機無機ハイブリッド材料との屈折率差を考慮すると、無機フィラーがシリカ粒子である(シリカ粒子100重量%)が好適である。
次に、本実施の形態の信号転写基板について、無機フィラーの含有量と、破断強度(曲げ強度)、曲げ弾性率(柔軟性)、光透過率及び熱膨張率との関係を説明する。ここでは、有機無機ハイブリッド材料としてTCHSを硬化させたケイ素樹脂硬化物を用いた。無機フィラーとしては、シリカ粒子(粒径:約0.3〜0.8μm)を用いた。
<破断強度及び曲げ弾性率>
破断強度及び曲げ弾性率は、3点曲げ試験によって測定した。測定に用いたサンプルは、以下の手法で調製した。TCHSのトルエン溶液に所定量の無機フィラー(ここではシリカ粒子)を分散させた後、トルエンを減圧留去し、その後得られたもの(TCHSにシリカ粒子が分散したもの)を加熱溶融し注型に流し込み、170℃で2時間、減圧下で硬化させることにより、サンプルを調製した。測定結果を図8及び図9に示す。図8及び図9に示すように、シリカ粒子が添加されることによって、破断強度及び曲げ弾性が共に向上することが確認された。ここで、無機フィラーの添加量による変化が大きい曲げ弾性率の観点から、無機フィラーの添加量を検討する。信号転写基板がある程度の曲げ弾性率を有している場合、信号転写基板がしなることによって樹脂との離型がよく、信号を樹脂層に良好に転写できる。このことから、信号転写基板として用いるためには、784MPa(80kgf/mm2)程度の弾性率を有することが望ましい。また、樹脂層との離型がよりよくなることから、980MPa(100kgf/mm2)程度の弾性率があればより望ましい。そこで、図9に示す結果から、無機フィラーの含有量を5重量%以上とすることが望ましく、さらに10重量%以上とすることがより好ましいことがわかった。
<熱膨張率>
熱膨張率は、TMA(圧縮モード)で測定した。空気中、1℃/minの昇温速度で、室温から250℃までの測定を行った。圧縮荷重は1gとした。また、長さ、幅、厚さが、それぞれ5mm、5mm、1mmの樹脂板(破断強度及び曲げ弾性率のサンプルと同様の方法で調製し、樹脂板としたもの)の端面研磨したものを、熱膨張率測定用のサンプルとして用いた。結果を、表2に示す。無機フィラーの含有量が高くなる程、熱膨張率は低下して、一般に転写型に用いられる金属(例えばニッケル(熱膨張率15ppm/℃))の熱膨張率に近づいた。無機フィラーを10重量%以上添加することによって、熱膨張率を125ppm/℃以下まで低下させることができた。上記のとおり、無機フィラーが10重量%以上含まれることによって、熱膨張率の低下に加えて破断強度及び曲げ弾性率が向上した。したがって、無機フィラーの含有量を10重量%以上とすることによって、信号転写基板作製時における転写型金属との収縮度差に起因する割れの発生を十分抑制できることが確認された。
Figure 2008111312
<光透過率>
光透過率はUV−vis(積分球)によって評価した。また、測定に用いたサンプルは、長さ、幅、厚さが、それぞれ30mm、50mm、1mmの樹脂板(破断強度及び曲げ弾性率のサンプルと同様の方法で調製し、樹脂板としたもの)であり、表面を鏡面に仕上げるために鏡面仕上げを行った。
まず、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が最大で0.01、すなわち屈折率差が0〜0.01の範囲内であるシリカ粒子を用いて、測定を行った。この測定結果を図10に示す。
無機フィラーの含有率が増加するに従い、波長250nm〜400nmの範囲の光透過率が低下した。
信号転写基板の材料として広く用いられているポリカーボネイトは、波長300nmで約50%の光透過率を有しており、紫外線照射時にポリカーボネイト同等、あるいはそれ以上の光透過率を有するためには、有機無機ハイブリッド材料に、無機フィラーを50重量%まで添加できることがわかった。なお、ポリカーボネイトは1回使い捨ての信号転写基板だが、紫外線照射時に、信号の転写に必要な光透過性を有することから、ここでは比較の対象として用いている。
また、より効率よく紫外線硬化を行うためには、前述のように、波長250〜280nmの範囲に対する信号転写基板の光透過率を10%以上とすることが好ましい。測定結果によれば、この観点からも、無機フィラーを50重量%まで添加できることがわかった。
以上のように、有機無機ハイブリッドに添加する無機フィラーの重量%が50重量%以下であれば、信号の転写に必要な光透過性を保持することができ、さらには紫外線フラッシュが3回以下で紫外線硬化型樹脂を硬化させることができるという、両方の効果を奏することがわかった。
次に、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.005以下、すなわち屈折率差が0〜0.005の範囲内であるシリカ粒子を用いて、測定を行った。この測定結果を図11に示す。
この場合、波長300nmで約50%の光透過率を有するためには、有機無機ハイブリッド材料に、無機フィラーを70重量%まで添加できることがわかった。有機無機ハイブリッド材料と無機フィラーとの屈折率差が小さいことにより、無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との界面での散乱が低減されるため、無機フィラーを添加した場合の光透過率の低下量をより小さくとどめることが可能となった。
また、無機フィラーの添加量が70重量%以下であれば、同様に波長250〜280nmの範囲に対する信号転写基板の光透過率を10%以上に保つことが可能であり、より効率よく紫外線硬化型樹脂を硬化できることがわかった。
以上のように、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.005以下の無機フィラーを用いる場合においては、無機フィラーを70重量%添加できることがわかった。
本実施例では、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が0.01以下の無機フィラーと、0.005以下の無機フィラーとに分けて測定を行ったが、屈折率差がより小さい無機フィラーを用いることで、添加量をより増加できることが予想される。
次に、無機フィラーとしてシリカ粒子を用いた場合と、チタニア粒子及びジルコニア粒子を用いた場合との比較も行った。なお、チタニアの屈折率は2.3〜2.5、ジルコニアの屈折率は2.2程度と、シリカの屈折率に比べて大きく、有機無機ハイブリッド材料の屈折率1.42〜1.48との差が大きい。このことから、無機フィラーとしてチタニア、ジルコニアを有機無機ハイブリッド材料に添加した信号転写基板を作製したが、無機フィラーと有機無機ハイブリッド材料との界面で光の拡散を生じ、その結果、光透過率が低下した。これに対し、屈折率が、1.400〜1.500、好ましくは1.460〜1.470、より好ましくは1.465〜1.469のシリカ粒子を用いた場合は、有機無機ハイブリッド材料との屈折率差が小さいため、光透過率の低下が小さかった。
以上の結果から、無機フィラーとしてシリカ粒子が好適に用いられることが確認された。
本発明にかかる多層情報記録媒体の製造方法と、信号転写基板及びその製造方法とは、情報を蓄えるあらゆる情報システム装置、例えば、コンピュータ、光ディスクプレーヤ、光ディスクレコーダ、カーナビゲーションシステム、編集システム、データサーバー、AVコンポーネント、メモリカード、磁気記録媒体などの媒体の作製に利用することができる。

Claims (27)

  1. 凹凸形状からなる信号部を樹脂に転写するための信号転写基板であって、
    前記信号部が形成された信号面を備えており、−Si−O−結合で構成された多面体構造を有する分子サイズの無機部と、複数の前記無機部を互いに架橋している有機セグメントとを含む有機無機ハイブリッド材料によって形成されている、信号転写基板。
  2. 前記有機無機ハイブリッド材料は、シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を硬化させることによって得られるケイ素樹脂硬化物であり、
    前記シルセスキオキサン化合物は、下記式(1)〜(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の信号転写基板。
    (AR12SiOSiO1.5n(R34HSiOSiO1.5p(BR56SiOSiO1.5q(HOSiO1.5m-n-p-q …(1)
    (AR12SiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(2)
    (R34HSiOSiO1.5r(B156SiOSiO1.5s(HOSiO1.5t-r-s …(3)
    但し、式(1)〜(3)中、Aは炭素−炭素不飽和結合を有する基を表しており、Bは置換又は非置換の飽和アルキル基又は水酸基を表しており、B1は置換又は非置換の飽和アルキル基、水酸基又は水素原子を表しており、R1〜R6は各々独立に低級アルキル基、フェニル基及び低級アリールアルキル基から選ばれる官能基を表している。また、式(1)〜(3)中、m及びtは6、8、10、12から選ばれる数、nは1〜m−1の整数、pは1〜m−nの整数、qは0〜m−n−pの整数、rは2〜tの整数、sは0〜t−rの整数をそれぞれ表している。
  3. 前記シルセスキオキサン化合物が、前記式(2)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、前記式(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する、請求項2に記載の信号転写基板。
  4. 前記ケイ素樹脂組成物が、下記式(4)及び下記式(5)から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項2に記載の信号転写基板。
    HR78Si−X−SiHR910 …(4)
    2C=CH−Y−CH=CH2 …(5)
    但し、式(4)中、Xは2価の官能基又は酸素原子を表し、R7〜R10は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子を表す。また、式(5)中、Yは2価の官能基を表す。
  5. 前記ケイ素樹脂組成物が、前記式(2)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、前記式(4)で表される化合物とを含有する、請求項4に記載の信号転写基板。
  6. 前記ケイ素樹脂組成物が、前記式(3)で表される、かご型シルセスキオキサン化合物及びその部分重合物からなる群から選択される少なくとも1種と、前記式(5)で表される化合物とを含有する、請求項4に記載の信号転写基板。
  7. 前記式(1)及び前記式(2)の少なくとも一方において、式中のAで示される炭素−炭素不飽和結合を有する基が、末端に炭素−炭素不飽和結合を有する鎖状炭化水素基である、請求項2に記載の信号転写基板。
  8. 前記有機無機ハイブリッド材料は、ヒドロシリル化反応によって得られる硬化物であって、前記樹脂に含まれる官能基と相互作用する極性基を含まない、請求項1に記載の信号転写基板。
  9. 無機フィラーをさらに含む、請求項1に記載の信号転写基板。
  10. 前記有機無機ハイブリッド材料の屈折率と前記無機フィラーの屈折率との差が、0〜0.01の範囲内である、請求項9に記載の信号転写基板。
  11. 前記無機フィラーの含有量が5〜50重量%である、請求項10に記載の信号転写基板。
  12. 前記有機無機ハイブリッド材料の屈折率と前記無機フィラーの屈折率との差が、0〜0.005の範囲内である、請求項10に記載の信号転写基板。
  13. 前記無機フィラーの含有量が5〜70重量%である、請求項12に記載の信号転写基板。
  14. 前記無機フィラーの屈折率が1.400〜1.500の範囲内である、請求項10に記載の信号転写基板。
  15. 前記無機フィラーの粒径が0.005〜50μmの範囲内である、請求項9に記載の信号転写基板。
  16. 前記無機フィラーがシリカ粒子を少なくとも40重量%含む、請求項9に記載の信号転写基板。
  17. 請求項1に記載の信号転写基板を製造する方法であって、少なくとも、
    (i)シルセスキオキサン化合物を含有するケイ素樹脂組成物を、凹凸形状からなる信号部が形成された転写型の上に供給する工程と、
    (ii)加熱によって前記ケイ素樹脂組成物を硬化させて、前記転写型の前記信号部が転写されることによって形成された信号面を有する信号転写基板を形成する工程と、
    を含む、信号転写基板の製造方法。
  18. 前記転写型は、金属で形成されている、請求項17に記載の信号転写基板の製造方法。
  19. 前記金属は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、金、銀、錫、鉛、鉄、アルミニウム及びタングステンから選択される少なくとも1つの元素を含む、請求項18に記載の信号転写基板の製造方法。
  20. 前記工程(i)において、前記ケイ素樹脂組成物と無機フィラーとを含む複合材料を前記転写型の上に供給する、請求項17に記載の信号転写基板の製造方法。
  21. 前記複合材料における前記無機フィラーの含有量が5〜70重量%である、請求項20に記載の信号転写基板の製造方法。
  22. 前記複合材料において、前記無機フィラーの含有量が5〜50重量%である、請求項20に記載の信号転写基板の製造方法。
  23. 前記無機フィラーがシリカ粒子を少なくとも40重量%含む、請求項20に記載の信号転写基板の製造方法。
  24. 少なくとも、第1の情報記録層と、第2の情報記録層と、前記第1の情報記録層と前記第2の情報記録層との間に設けられた樹脂層とを含む多層情報記録媒体の製造方法であって、前記樹脂層を形成する工程には、
    (I)前記第1の情報記録層上に液体の樹脂を塗布する工程と、
    (II)前記第1の情報記録層上に塗布された前記樹脂に、凹凸形状からなる信号部が形成された信号面を有する信号転写基板を、前記信号面が前記樹脂に対向するように貼り合わせる工程と、
    (III)前記樹脂に前記信号転写基板を貼り合わせた状態で、前記樹脂を硬化させる工程と、
    (IV)前記信号転写基板を前記樹脂から剥離する工程と、
    が含まれており、且つ、
    前記信号転写基板が、請求項1に記載の有機無機ハイブリッド材料によって形成されている、多層情報記録媒体の製造方法。
  25. 前記樹脂が光硬化型樹脂であって、
    前記工程(III)において、前記信号転写基板を介して前記樹脂に光照射を行うことによって前記樹脂を硬化させる、請求項24に記載の多層情報記録媒体の製造方法。
  26. 前記光硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂であって、
    前記工程(III)において、前記信号転写基板を介して前記樹脂に紫外線照射を行うことによって前記樹脂を硬化させる、請求項25に記載の多層情報記録媒体の製造方法。
  27. 波長250nm〜280nmの範囲の光に対する前記信号転写基板の透過率が、10%以上である、請求項24に記載の多層情報記録媒体の製造方法。
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