JP4229677B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された光ディスク基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高剛性、スタンパー形状に対する精密転写性及び環境変化に対する低反り性を併せ持つ、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された光ディスク基板、殊に、記録容量の極めて大きな高密度光ディスク用の基板に関する。さらには、この光ディスク基板を用いた光学情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から情報記録媒体として、CD(コンパクトディスク)、MO(光磁気ディスク)、DVD(Digital Versatile Disk)等の各種光ディスクが使用されているが、光ディスクの記録密度は、CDの0.6GBからDVDの4.7GBへと向上の一途を辿っている。しかしながら、最近の情報技術の進展に伴い、光ディスク分野の市場発展は目覚しく、より膨大な情報を記録できる高密度光ディスクの登場が期待されている。例えば、デジタル放送等に対応できる100Gbit/inch2以上の記録密度を有する光ディスク等が要望されている。
【0003】
光ディスクの高密度化は、グルーブもしくはピットの間隔を狭めること、すなわちトラックピッチを狭めてトラック方向の記録密度を高めることで達成される。例えば、CDからDVDへの高密度化に当っては、トラックピッチを1.6μmから0.74μmへと狭めることにより記録密度を高める措置がとられている。
【0004】
このような光ディスクの基板(本発明では「光ディスク基板」という)は、芳香族ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を射出成形(射出圧縮成形)して製造される。その際、金型に取り付けた、スタンパー上に予め刻印された記録再生信号のもとになる微細な凹凸形状が、スタンパーから基板表面に転写される。したがって、基板の成形時にはスタンパーの凹凸形状をいかに精度良く転写できるか、すなわち精密転写性が重要となる。特に、高密度光ディスク基板の成形においては、かかる精密転写性の重要度がより顕著なものとなる。
【0005】
高密度光ディスクにおいては、基板が良好な精密転写性を有することに加え、基板の反りや環境変化に対する反り変化が従来の光ディスクに比べて格段に小さいことが、重要な要求特性となる。その理由は、高密度化に伴い、レーザーの短波長化及びピックアップレンズが高NA化されるため、基板に微小な反りがあってもコマ収差が大きくなり、フォーカスエラーやトラッキングエラーを引き起こすからである。また、高NA化によってピックアップレンズと基板との距離が接近するため、レンズと基板との接触を回避するためにも、基板の反り及び環境変化による反り変化は小さいことが必要とされるからである。
【0006】
従来、光ディスクの基板には、透明性、耐熱性、機械的特性及び寸法安定性等が優れていることから、芳香族ポリカーボネート(通常、ビスフェノールA型のポリカーボネート)が使用されてきたが、光ディスクの高密度化に伴い、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる従来の光ディスク基板は、精密転写性及び低反り性の両立が困難なため、特に反りの点から高密度光ディスク用の基板として十分満足できるものではなかった。
【0007】
かかる反りの改善要求に対しては、基板の成形技術及び材料改質の両側面から種々検討がなされてきた。前者については、成形条件を詳細に調整することによって、基板の反りを小さく抑え込むことができるが、同時にスタンパー形状を精密に転写させるという要求特性を満たすのは困難であった。後者については、曲げ又は引張り弾性率が高い剛性のある材料を使用することが有効であることが知られており、芳香族ポリカーボネートの剛性を改良することを目的として、ガラス繊維や充填材等のフィラーを配合する手法が試みられてきた。しかし、上記フィラーは、樹脂組成物の剛性を向上させるが、フィラーが成形品表面に露出するため、転写精度が低下するという問題があった。
【0008】
上記のフィラー含有樹脂組成物における問題点を解決し、高剛性で成形時の反りや吸湿時の反りを低減する方法として、樹脂製のコア層と該コア層と一体となった情報信号の凹凸を有する表層とから構成された光ディスクが既に提案されており、さらに制振性を付与するためコア層に特定の内部損失を有する樹脂を使用した光ディスクが提案されている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、これらの方法では、コア樹脂層中のフィラーの影響を十分に抑制することは困難であり、良好な転写性を再現性よく得ることは困難であった。また、かかる複層構造を形成するため生産性、コストの面でも不利があった。このため、より好ましいものとして、かかる煩雑な複層構造ではなく単純な単層構造によって高密度光ディスク用として必要な要求特性を十分に達成し得る新規な光ディスク基板の開発が強く望まれている。
【0009】
一方、芳香族ポリカーボネートと層状珪酸塩、特に層状珪酸塩の層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させた層状珪酸塩、とを組み合わせた樹脂組成物も既に広く知られている(特許文献3〜特許文献8参照)。さらに、他樹脂を介在させることによりその分散性を改良する提案も知られている(特許文献3及び特許文献7参照)。また、ポリスチレン樹脂においては、ポリスチレンに特定の極性基を導入することにより層状珪酸塩の分散性を改良する方法が知られている(非特許文献1参照)。
【0010】
しかしながら、上記の各要求特性を同時に満足し、高密度情報記録媒体として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂製の光ディスク基板は未だ知られていないのが現状である。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−011449号公報
【特許文献2】
特開2001−250267号公報
【特許文献3】
特開平03−215558号公報
【特許文献4】
特開平07−207134号公報
【特許文献5】
特開平07−228762号公報
【特許文献6】
特開平07−331092号公報
【特許文献7】
特開平09−143359号公報
【特許文献8】
特開平10−060160号公報
【非特許文献1】
長谷川ほか、「ポリスチレンクレイハイブリッドの合成と物性」、高分子学会予稿集、社団法人高分子学会、平成11年5月12日発行、第48巻、第4号、687頁
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
それ故、本発明の主たる目的は、スタンパー形状に対する精密転写性、高剛性及び環境変化に対する低反り性を併せ持つ、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された光ディスク基板、とりわけ高密度光ディスク用基板、を提供することにある。本発明の他の目的は、かかる基板を用いた光学情報記録媒体を提供することにある。
【0013】
なお、本発明における「精密転写性」とは、光学記録用成形材料を用いて射出成形(射出圧縮成形)により光ディスク基板を製造した場合に、スタンパーに刻印された微細な凹凸形状を忠実に転写することができる性質をいう。
【0014】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究の結果、芳香族ポリカーボネート、層状珪酸塩、及び上記ポリカーボネートとの親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物を含む新規な樹脂組成物から形成された光ディスク基板は、上記課題を一挙に解決し得ることを見出し、かかる知見に基づいて更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部、及び芳香族ポリカーボネート(A成分)との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)0.1〜50重量部を含む樹脂組成物から形成されてなる光ディスク基板に係るものである。
【0016】
かかる樹脂組成物においては、層状珪酸塩の微分散によってフィラーの影響が最小限に抑制され、よってフィラーを含有しない樹脂単体と同等の精密転写性を達成することが可能である。また、かかる微分散は同時に高剛性の樹脂組成物を与え、これによって高剛性と環境変化に対する低反り性を有する光ディスク基板が実現可能となる。さらに、上記C成分の存在が樹脂組成物の熱安定性の向上に寄与し、その結果、光ディスク基板の成形に必要とされる高温での成形に耐え得る樹脂組成物を与える。このような高温での成形は精密転写性の面においてもより有利である。したがって、かかる構成(1)によれば、精密転写性、高剛性、熱安定性及び環境変化に対する低反り性を兼ね備えた(以下、これらを“本発明の効果”と総称することがある)、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる光ディスク基板が提供される。
【0017】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記C成分が、上記A成分と親和性を有し、かつカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する重合体からなる上記(1)の光ディスク基板である。かかる樹脂組成物においては、さらに容易に層状珪酸塩の微分散が達成され、樹脂組成物の熱安定性がより良好となる。したがって、かかる構成(2)によれば、本発明の効果が大きい光ディスク基板が提供される。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記C成分が、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C-1成分)からなる上記(2)の光ディスク基板である。該スチレン含有重合体はA成分である芳香族ポリカーボネートとのより優れた相溶性を有し、その結果、より良好な層状珪酸塩の微分散が達成され、樹脂組成物の熱安定性は一段と良好となる。したがって、かかる構成(3)によれば、本発明の効果が顕著な光ディスク基板が提供される。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記C-1成分が、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体とスチレン系単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体からなる上記(3)の光ディスク基板である。かかる構成(4)によれば、本発明の効果においてさらに優れた光ディスク基板が提供される。
【0020】
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記C-1成分が、スチレン−無水マレイン酸共重合体からなる上記(4)に記載の光ディスク基板である。かかる樹脂組成物は、特に良好な層状珪酸塩の微分散と熱安定性を有し、その結果、精密転写性、高剛性並びに成形時及び環境変化に対する低反り性のいずれにおいても格段に優れた光ディスク基板が提供される。
【0021】
また、本発明の好適な態様の1つは、(6)上記B成分が、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されている層状珪酸塩からなる上記(1)〜(5)の光ディスク基板である。かかる特定の層状珪酸塩を含む樹脂組成物では、その層状珪酸塩の微分散が特に容易に達成され、その結果、かかる構成(6)によれば、さらに改善された精密転写性、高剛性及び環境変化に対する低反り性を有する、一段と優れた光ディスク基板が提供される。したがって、上記(1)〜(5)のいずれにおいても上記層状珪酸塩が有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩であることが好適である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記B成分における有機オニウムイオンは下記一般式(I)で示されることを特徴とする上記(6)に記載の光ディスク基板。
【0023】
【化2】
Figure 0004229677
【0024】
〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R1〜R4は互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
かかる構成(7)によれば、その樹脂組成物の熱安定性がより向上することにより、転写性において格段に優れた光ディスク基板が提供される。
【0025】
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、R1およびR2がそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、R3が炭素原子数1〜16のアルキル基、R4が炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする上記(7)に記載の光ディスク基板である。かかる構成(8)によれば、その樹脂組成物の熱安定性がさらに向上するため、高温成形が可能となり、精密転写性においてさらに優れた光ディスク基板が提供される。
【0026】
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、B成分とC成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分とを溶融混練して調製されたものである上記(1)〜(8)の光ディスク基板である。かかる構成(9)の如き特定の調製法によって、熱安定性及び分散性がさらに改良された芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が形成され、その結果、本発明の効果においてさらに優れた、特に精密転写性において良好な、光ディスク基板が提供される。
【0027】
本発明の好適な態様の1つは、(10)上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が、A成分100重量部に対して、さらに(D)高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステル及び/又はフルエステル(D成分)0.005〜1重量部を含有する上記(1)〜(9)の光ディスク基板である。かかる樹脂組成物は特に良好な離型性を有することから、精密転写された凹凸を変形させることなく離型が可能であり、また、離型力の低減により光ディスク基板の離型時の反りがより低減される。したがって、かかる構成(10)によれば、さらに優れた精密転写性と低減された成形時の反りを有する光ディスク基板が提供される。
【0028】
本発明の好適な態様の1つは、(11)上記光ディスク基板が、射出成形法により製造されたものであって、かつ上記A成分のTg(ガラス転移温度)に対し、Tg−25〜Tg(℃)の金型温度で成形されたものである上記(1)〜(10)の光ディスク基板である。かかる構成(11)によれば、上記の層状珪酸塩を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においても、ピットやグルーブが良好に転写された光ディスク基板が提供される。
【0029】
本発明の好適な態様の1つは、(12)上記光ディスク基板が、その面上にそのグルーブ列もしくはピット列が設けられおり、かつそのそのグルーブ列もしくはピット列の間隔が0.1μm〜0.8μmである上記(1)〜(11)の光ディスク基板である。かかる構成(12)によれば、かかるグループ列もしくはピット列の間隔が情報記録の高密度化を達成できる範囲にある光ディスク基板が提供される。
【0030】
本発明の好適な態様の1つは、(13)上記(1)〜(12)の光ディスク基板において、該基板上に少なくとも光透過層が積層されており、光透過層側から光が照射されて反射光の光強度変化に基づいて情報信号の記録の再生が行われる光ディスクにおける基板である。かかる構成からなる光ディスクにおいては高剛性及び環境変化に対する低反り性が特に強く求められ、その結果、本発明の光ディスク基板の利点がより効果的に発揮される。したがって、かかる構成(13)によれば、高密度の光ディスクに対応した上記の構成を十分に満足する光ディスク基板が提供される。
【0031】
本発明の好適な態様の1つは、(14)上記(13)の光ディスク基板において、該基板上に光透過層、記録層及び反射層が積層されており、かつ記録層は反射層と光透過層との間に存在する光ディスクにおける基板である。かかる構成(14)によれば上記の光ディスク基板の利点を生かしつつ情報信号の記録を行うことができる光ディスクに対応した光ディスク基板が提供される。
【0032】
本発明の好適な態様の1つは、(15)上記(13)〜(14)の光ディスク基板において、該基板上に記録層あるいは反射層が複数積層されてなる多層構造が形成されている光ディスクにおける基板である。かかる構成(15)によれば、上記の光ディスク基板の利点を生かしつつ効率的に情報信号の記録を行うことができ、かつ情報記録密度の高い光ディスクに対応した光ディスク基板が提供される。
【0033】
本発明の別の好適な態様の1つは、(16)上記(1)〜(15)のいずれかの光ディスク基板を用いた光学情報記録媒体である。かかる構成(16)によれば、殊に上記(13)の構成を有する高密度の光ディスクすなわち光学情報記録媒体が提供される。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の光ディスクは、特定の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成されたものである。この樹脂組成物は、本発明者らが先の特許出願(特願2002−142589号)にて提案した、芳香族ポリカーボネート(A成分)に特定の層状珪酸塩(B成分)及び上記A成分と親和性がありかつ親水性成分を有する化合物(C成分)を配合してなる新規な芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、少量の層状珪酸塩の含有で高い曲げ弾性率を有し、かつ熱安定性、表面特性等が顕著に改善された樹脂組成物である。
【0035】
以下、この芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の必須構成成分である上記のA成分(ポリカーボネート樹脂)、B成分(層状珪酸塩)及びC成分(ポリカーボネート樹脂と親和性がありかつ親水性成分を有する化合物)、並びに、好ましく添加されるD成分(部分エステル及び/又はフルエステル)や、所望により添加し得る諸成分について、それぞれ具体的に説明する。
【0036】
<A成分について>
まず、本発明におけるA成分の芳香族ポリカーボネートについて説明する。代表的な芳香族ポリカーボネートは、2価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られる熱可塑性重合体であり、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応方法としては、界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法及び環状カーボネート化合物の開環重合法等がある。
【0037】
上記2価フェノールの例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。
【0038】
本発明では、汎用ポリカーボネートであるビスフェノールA系のポリカーボネート以外にも、光ディスク基板の要求特性に応じて、他の2価フェノール類を使用した特殊な芳香族ポリカーボネ−トをA成分として使用することも可能である。
【0039】
例えば、2価フェノール成分の一部又は全部として、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下“Bis−TMC”と略称することがある)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することもある)を用いた芳香族ポリカーボネ−ト(単独重合体又は共重合体)は、耐加水分解性、形態安定性の要求が厳しい用途に適当である。これらの2価フェノールは芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分全体の5モル%以上、特に10モル%以上、使用するのが好ましい。
【0040】
殊に、高湿環境下における耐加水分解性と厳密な形態安定性(低反り性)が要求される光ディスク基板にあっては、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を構成するA成分が次の(1)又は(2)の共重合ポリカーボネートであるのが特に好適である。
(1)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPMが20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、BCFが20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。(2)該芳香族ポリカーボネートを構成する2価フェノール成分100モル%中、BPAが10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、BCFが5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0041】
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートは単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0042】
これらの特殊な芳香族ポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0043】
なお、上述した各種ポリカーボネートの中でも、共重合組成等を調整して、吸水率、Tg(ガラス転移温度)を下記の範囲内にしたものは、耐加水分解性が良好で、かつ低反り性においても格段に優れているため、特に好適である。
(i)吸水率が0.05〜0.15%、好ましくは0.06〜0.13%であり、かつTgが120〜180℃である芳香族ポリカーボネート、あるいは
(ii)Tgが160〜250℃、好ましくは170〜230℃であり、かつ吸水率が0.10〜0.30%、好ましくは0.13〜0.30%、より好ましくは0.14〜0.27%である芳香族ポリカーボネート。
【0044】
ここで、芳香族ポリカーボネートの吸水率は、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を用い、ISO62−1980に準拠して23℃の水中に24時間浸漬した後の水分率を測定した値である。また、Tg(ガラス転移温度)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる値である。
【0045】
上記2価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法によって芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、2価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また、3官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート、芳香族又は脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネート、2官能性カルボン酸及び2官能性アルコールを共に共重合したポリエステルカーボネートでもよい。
【0046】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用できる。このような多官能性化合物を含む場合、その割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また、溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。なお、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0047】
一方、脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましく、その具体例としては、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。2官能性アルコールとしては脂環族ジオールが好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。さらに、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0048】
A成分は、2価フェノール成分の異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等を2種以上混合したものであってもよい。さらに、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合したものを使用することもできる。
【0049】
界面重縮合法による反応は、通常、2価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤及び有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために、トリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。通常、反応温度は0〜40℃、反応時間は10分〜5時間が好ましく、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0050】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、単官能フェノール類を用いるのが好ましい。かかる単官能フェノール類としては、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等が好ましいが、この他にも、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、トリアコンチルフェノール等を挙げることができる。これらの末端停止剤は単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0051】
溶融エステル交換法による反応は、2価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、通常、不活性ガスの存在下に2価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコール又はフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノールの沸点等により異なるが、ほぼ120〜350℃の範囲である。反応後期には反応系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコール又はフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0052】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基等のエステルが挙げられ、中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0053】
反応には重合触媒を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、2価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物;等の触媒を用いることができる。さらに、アルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類等の通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。これらの触媒は単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。重合触媒は、通常、原料の2価フェノール1モルに対し1×10-8〜1×10-3当量、好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で使用される。
【0054】
溶融エステル交換法では、得られる重合体中のフェノール性末端基を減少する目的で、重縮反応の後期あるいは終了後に、2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート、2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることもできる。また、溶融エステル交換法では、触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の使用量は、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合が好ましい。重合後の芳香族ポリカーボネートに対しては0.01〜500ppm、好ましくは0.01〜300ppm、より好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用される。好適な失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェート等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0055】
A成分である芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は限定されない。しかし、粘度平均分子量が10,000未満であると光ディスク基板の強度等が低下し、25,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜25,000の範囲が適当であり、11,000〜21,000の範囲が好ましく、12,000〜18,000の範囲がさらに好ましい。この場合、粘度平均分子量が上記範囲内の芳香族ポリカーボネートに上記範囲外のものを混合することも可能である。例えば、成形加工特性が低下しない範囲で粘度平均分子量が50,000を超える高分子量の芳香族ポリカーボネートを含有することができる。
【0056】
本発明でいう粘度平均分子量を測定するには、まず、次式にて算出される比粘度を、20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度から次式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0057】
なお、樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去し十分に乾燥して塩化メチレン可溶分の固体を得、かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求め、上式により粘度平均分子量Mを求める。
【0058】
<B成分について>
本発明の光ディスク基板を構成する樹脂組成物におけるB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量をする層状珪酸塩である。好適には、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上、特に50〜100%、が有機オニウムイオンにてイオン交換された層状珪酸塩である(以下、この層状珪酸塩を“有機化層状珪酸塩”と略称することがある)。
【0059】
B成分の層状珪酸塩は、SiO2連鎖からなるSiO4四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組合せからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)である。これらの珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)は、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイトおよび膨潤性雲母等に代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が挙げられ、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母およびLi型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これらの層状珪酸塩は、天然品、合成品のいずれも使用可能である。合成品は、例えば、水熱合成、溶融合成、固体反応によって製造される。
【0060】
層状珪酸塩のなかでも、陽イオン交換容量等の点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度等の点からより好適である。さらに、良好な機械特性が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
【0061】
前記B成分である層状珪酸塩の陽イオン交換容量(陽イオン交換能ともいう)は、50〜200ミリ当量/100gであることが必要とされ、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、A成分である芳香族ポリカーボネートへの良好な分散性を得るために、50ミリ当量/100g以上必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると芳香族ポリカーボネートの熱劣化が大きくなってくる。この層状珪酸塩は、そのpHの値が7〜10であることが好ましい。pHの値が10より大きくなると、本発明の樹脂組成物の熱安定性が低下する傾向が現われる。
【0062】
B成分の層状珪酸塩としては、有機オニウムイオンが層状珪酸塩の層間にイオン交換されたもの(有機化層状珪酸塩)が好適である。該有機オニウムイオンは、通常、ハロゲンイオン等との塩として取り扱われる。ここで有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられる。オニウムイオンは1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましく、オニウムイオンとして4級アンモニウムイオンおよび4級ホスホニウムイオンが好適である。
【0063】
該イオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。かかる有機基としては、アルキル基が代表的であるが、芳香族基を有するものでもよく、また、エーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン基等の各種官能基を含有するものでもよい。
【0064】
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムの如き同一のアルキル基を有する4級アンモニウム;トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム,トリメチルイコサニルアンモニウムの如きトリメチルアルキルアンモニウム;トリメチルオクタデセニルアンモニウムの如きトリメチルアルケニルアンモニウム;トリメチルオクタデカジエニルアンモニウムの如きトリメチルアルカジエニルアンモニウム;トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウムの如きトリエチルアルキルアンモニウム;トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウムの如きトリブチルアルキルアンモニウム;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムの如きジメチルジアルキルアンモニウム;ジメチルジオクタデセニルアンモニウムの如きジメチルジアルケニルアンモニウム;ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウムの如きジメチルジアルカジエニルアンモニウム;ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウムの如きジエチルジアルキルアンモニウム;ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウムの如きジブチルジアルキルアンモニウム;トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウムの如きトリアルキルメチルアンモニウム;トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウムの如きトリアルキルエチルアンモニウム;トリオクチルブチルアンモニウム、トリデシルブチルアンモニウムの如きトリアルキルブチルアンモニウムが挙げられる。
【0065】
また、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きメチルベンジルジアルキルアンモニウム;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きジベンジルジアルキルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム等を例示することができる。さらに、トリメチルフェニルアンモニウムの如き芳香族アミン由来の4級アンモニウム;メチルジエチル[PEG]アンモニウムおよびメチルジエチル[PPG]の如きトリアルキル[PAG]アンモニウム;メチルジメチルビス[PEG]アンモニウムの如きジアルキルビス[PAG]アンモニウム;エチルトリス[PEG]アンモニウムの如きアルキルトリス[PAG]アンモニウムが挙げられる。また、前記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置換したホスホニウムイオンを用いることもできる。
【0066】
これらの有機オニウムイオンは、単独使用および2種以上の組合せ使用のいずれも選択できる。なお、前記“PEG”の表記はポリエチレングリコールを、“PPG”の表記はポリプロピレングリコールを“PAG”の表記はポリアルキレングリコールを示す。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜1,500のものが使用できる。
【0067】
これら有機オニウムイオン化合物の分子量は、100〜600であることが好ましい。より好ましくは150〜500である。分子量が600より多いときには、場合により芳香族ポリカーボネートの熱劣化を促進したり樹脂組成物の耐熱性を損なう傾向が現れる。なお、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。
【0068】
本発明において、B成分の好適な態様は、下記一般式(I)で示される有機オニウムイオンでイオン交換されたものである。
【0069】
【化3】
Figure 0004229677
【0070】
上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R1〜R4は互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。これらのR1〜R4は、前記の条件を満たす限り、その一部が互いに同一の基であってもよく、全部または一部が相異なる基であってもよい。
【0071】
本発明のB成分において使用される有機オニウムイオンのさらに好適な態様は、上記一般式(I)において次の条件を満足するものである。すなわち、Mは窒素原子またはリン原子であり、R1およびR2はそれぞれ炭素原子数6〜16のアルキル基である。R3は炭素原子数1〜16のアルキル基であり、かつR4は炭素原子数1〜4のアルキル基である。なお、R1とR2とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよく、また、R3とR4とは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよい。
【0072】
上記一般式(I)で示される有機オニウムイオンのより好適な態様は、(i)前記R3が炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。より好しくは(ii)R3およびR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であって、かつR1およびR2がそれぞれ炭素原子数7〜14のアルキル基の場合である。さらに好ましくは、(iii)R3およびR4がそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基で、かつR1およびR2は炭素原子数7〜12、特に好ましくは炭素原子数8〜11、のアルキル基の場合である。なお、これらのうちでも、R3およびR4が炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはメチル基の4級アンモニウムイオンが特に好適である。
【0073】
これら(i)〜(iii)のより好適な態様(さらに好ましい態様を含む)によれば、樹脂組成物の耐加水分解性が特に優れたものとなり、本発明の光ディスク基板に良好な長期実用特性を与える。
【0074】
なお、上記式(I)においてR1〜R4はいずれも直鎖状および分岐状のいずれも選択できる。
【0075】
かかる好適な4級アンモニウムイオンの例としては、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、ジブチルジデシルアンモニウム、ジブチルジドデシルアンモニウム等が例示される。
【0076】
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオン化合物を添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作成することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を、層状珪酸塩のイオン交換容量の1当量に対し1.0〜1.5当量の割合で加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的である。しかし、このイオン交換容量に対する交換割合を一定の範囲に制御することも、芳香族ポリカーボネートの熱劣化を抑制する上で有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量に対する割合は好ましくは40〜95%であり、特に好ましくは40〜80%である。ここで、有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
【0077】
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中におけるB成分すなわち層状珪酸塩(好適には有機化珪酸塩)の配合量は、上記A成分(芳香族ポリカーボネート)100重量部当り、B成分0.1〜50重量部であることが必要である。B成分の配合量が0.1重量部より小さいと芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特性改良効果が見られず、逆に50重量部より大きくなると樹脂組成物の熱安定性が低下し、実用性に問題が生じる。本発明において好ましい配合量は、A成分100重量部当り、B成分0.5〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0078】
本発明の光ディスク基板を形成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中におけるB成分は、(i)既に述べたように、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換量を有し、好ましくはその陽イオン交換容量の40%以上が有機オニウムイオン交換されているという特徴を有するものである。そして、B成分は、さらに(ii)樹脂組成物中においてその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有するという特徴を備えることが好ましい。
【0079】
上記(ii)の特徴は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(あるいは成形品)の透過型電子顕微鏡撮影より識別することができる。すなわち、ミクロトームを用いて樹脂組成物(成形品)を50〜100nmの厚みを有する観察試料とし、該観察試料を約10,000倍の倍率において観察する。かかる透過型電子顕微鏡写真から画像解析を行い樹脂組成物中の層状珪酸塩の厚みを計測することによりこの特徴(ii)を確認することができる。本発明の好ましい態様では、樹脂組成物中においてB成分の70%以上の数割合が100nm以下(ナノオーダー)の厚みを有しており、さらに好ましい態様では80%以上の数割合が100nm以下の厚みを有する。100nm以下の厚みのものの数割合が60%に満たない場合は、精密転写性が低下し、また成形品の良好な剛性が発現し難くなり、その結果、良好な光ディスク基板となり難いため好ましくない。
【0080】
<C成分について>
本発明の光ディスクを形成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を構成するC成分は、A成分との親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物である。このC成分は、A成分との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物であるため、マトリックス樹脂である芳香族ポリカーボネート及び層状珪酸塩の双方に対する良好な親和性を生み出す。これら双方に対する親和性は互いの相溶性を向上させ、層状珪酸塩がマトリックスの芳香族ポリカーボネート(A成分)中で微細かつ安定して分散するようになる。さらにC成分における親水性成分はその極性作用により層状珪酸塩の層間の電気的な反発力を中和すること又は該層間の電荷を吸引することにより、層間を縮小させるものと考えられる。
【0081】
層状珪酸塩の分散に関するC成分の機能は、異種ポリマー同士を相溶化させるために使用されるポリマーアロイ用相溶化剤(コンパティビライザー)と同様と推測される。したがって、C成分は、低分子化合物よりも重合体(有機高分子化合物)であることが好ましい。また、重合体の方が混練加工時の熱安定性にも優れる。該重合体の平均繰り返し単位数は2以上であることが必要であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。一方、該重合体の平均分子量の上限については数平均分子量で2,000,000以下であることが好ましい。かかる上限を超えない場合には良好な成形加工性が得られる。
【0082】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に配合されるC成分が重合体である場合、その基本的構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(ア)A成分に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、▲1▼αとβとからなるグラフト共重合体(主鎖がαでグラフト鎖がβ、あるいは主鎖がβでグラフト鎖がα、のいずれも選択できる)、▲2▼αとβとからなるブロック共重合体(ジ−、トリ−等ブロックセグメント数は2以上を選択でき、ラジアルブロックタイプ等を含む)、並びに▲3▼αとβとからなるランダム共重合体、が挙げられる。α、βはそれぞれ単一の重合体だけでなく共重合体であってもよい。ここでα及びβは重合体セグメント単位及び単量体単位のいずれも示す。αはA成分との親和性の観点から重合体セグメント単位であることが好ましい。
(イ)A成分に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αの機能は重合体全体によって発現され、βは該α内に含まれる構造を有する重合体が挙げられる。すなわち、α単独ではA成分との親和性が十分ではないものの、αとβとが組み合わされ一体化されることによりA成分との良好な親和性が発現する場合である。
【0083】
α単独でもA成分との親和性が良好であるがβとの組合せによってさらに親和性が向上する場合もある。かかる場合は上記(ア)に含まれる。したがって、上記(ア)及び(イ)は部分的に重複することがある。一方、上記(ア)では、α単独ではA成分との親和性が十分ではあるが、αとβとが組み合わされ一体化されることによってA成分との良好な親和性が逆に低下する場合もあり得るが、C成分が全体として上述した機能を有する限り、かかる場合も上記C成分に包含される。
【0084】
本発明におけるC成分としては、αのみでも上記A成分である芳香族ポリカーボネートに対する親和性が高く、さらにβが付加したC成分全体としてその親和性が一段と高くなるものが好適である。
【0085】
上記の如くC成分は、ポリマーアロイにおける相溶化剤と同様の働きをすると考えられることから、C成分における上記A成分と親和性を有する成分(ここではαと称することがある)には、相溶化剤と同様の重合体に対する親和性が求められる。したがって、αは非反応型と反応型とに大略分類できる。
【0086】
非反応型では、以下の要因を有する場合に親和性が良好となる。すなわち、A成分とαとの間に、▲1▼化学構造の類似性、▲2▼溶解度パラメータの近似性(溶解度パラメータの差が1(cal/cm31/2以内、すなわち約2.05(MPa)1/2以内が目安とされる)、▲3▼分子間相互作用(水素結合、イオン間相互作用等)及びランダム重合体特有の擬引力的相互作用等の要因を有することが望まれる。これらの要因は相溶化剤とポリマーアロイのベースになる重合体との親和性を判断する指標としても知られている。
【0087】
反応型では、相溶化剤において上記ポリカーボネートと反応性を有する官能基を有するものを挙げることができる。例えば、A成分の芳香族ポリカーボネートに対して反応性を有する、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、エステル結合、カーボネート基及びカーボネート結合等を例示することができる。
【0088】
一方で、A成分とαとが良好な親和性をもつ場合、その結果として両者の混合物において単一のTg(ガラス転移温度)を示すか又はA成分のTgがαのTgの側に移動する挙動が認められるので、上記A成分との親和性を有する成分(α)は、かかる挙動により判別することができる。
【0089】
上記の如く、C成分中における上記A成分と親和性を有する成分(α)は、非反応型であることが好ましく、殊に溶解度パラメータが近似することにより良好な親和性を発揮することが好ましい。これは反応型に比較して上記A成分との親和性においてより優れるためである。また、反応型は過度に反応性を高めた場合、副反応によって重合体の熱劣化が促進される欠点がある。
【0090】
上記A成分及びC成分中のαの溶解度パラメータは、次の関係を有することが好ましい。すなわち、上記特殊ポリカーボネート(A成分)の溶解度パラメータをδA((MPa)1/2)とし、C成分中のαの溶解度パラメータ又はC成分全体の溶解度パラメータをδα((MPa)1/2)としたとき、次式:
δα=δA±2 ((MPa)1/2
の関係を有することが好ましい。
【0091】
例えば、A成分である芳香族ポリカーボネートの溶解度パラメータは、通常、約10(cal/cm31/2(すなわち約20.5((MPa)1/2))とされていることから、δαは18.5〜22.5((MPa)1/2)の範囲が好ましく、19〜22((MPa)1/2)の範囲がより好ましい。
【0092】
かかる溶解度パラメータδαを満足する重合体成分の具体例としては、スチレンポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー及びアクリロニトリルポリマー(これらは、例えばポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等によって代表される)等のビニル系重合体を挙げることができる。本発明における樹脂組成物の耐熱性の保持のためには、一般にTgの高い重合体成分を用いることが好ましい。
【0093】
ここで溶解度パラメータを求めるには、「ポリマーハンドブック 第4版」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION,1999年)中に記載されたSmallの値を用いた置換基寄与法(Group contribution methods)による理論的な推算方法が利用できる。また、重合体成分のTgは、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
【0094】
一方、C成分における親水性成分(ここではβと称することがある)は、親水基(水との相互作用の強い有機性の原子団)を有する単量体及び親水性重合体成分(重合体セグメント)より選択される。親水基はそれ自体広く知られ、下記の基が例示される。
1)強親水性の基:−SO3H、−SO3M、−OSO3H、−OSO3H、−COOM、−NR3X(R:アルキル基、X:ハロゲン原子、M:アルカリ金属、−NH4) 等、
2)やや小さい親水性を有する基:−COOH、−NH2、−CN、−OH、−NHCONH2 等、
3)親水性が無いか又は小さい基:−CH2OCH3、−OCH3、−COOCH3、−CS 等
上記1)〜3)の群の中で、本発明におけるC成分では1)及び2)に分類される親水基を有するものが使用される。中でも、上記2)の親水基は芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融加工時の熱安定性により優れるため好ましい。親水性が高すぎる場合には、親水基が直接カーボネート結合と反応し、熱分解反応を生じるため、芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。
【0095】
親水基のより具体的な指標は、溶解度パラメータである。溶解度パラメータの値が大きいほど親水性が高くなることは広く知られている。基ごとの溶解度パラメータは、Fedorsによる基ごとの凝集エネルギー(Ecoh)及び基ごとのモル体積(V)より算出することができる(「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION),VII/685頁、1999年、Polym. Eng. Sci.,第14巻,147及び472頁,1974年、等参照)。さらに親水性の大小関係のみを比較する観点からは、凝集エネルギー(Ecoh)をモル体積(V)で除した数値(Ecoh/V;以下単位は“J/cm3”とする)を親水性の指標として使用できる。
【0096】
C成分中のβに含まれる親水基は、Ecoh/Vが600以上であることが必要であり、好ましくはEcoh/Vは800以上である。800以上の場合にはA成分の芳香族ポリカーボネートにおけるカーボネート結合のEcoh/Vを超え、カーボネート結合よりも高い親水性を有する。Ecoh/Vは900以上がより好ましく、950以上がさらに好ましい。上述のとおり、親水性が高すぎる場合には、芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。したがってEcoh/Vは2,500以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,500以下がさらに好ましい。
【0097】
C成分の親水性成分(β)として、親水性重合体成分(重合体セグメント)も選択される。C成分の重合体中に含まれる親水性重合体のセグメントがβとなる親水性重合体としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩(キレート型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びポリヒドロキシエチルメタクリレート等が例示される。これらの中でも、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等が好ましく例示される。これらは良好な親水性と芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に対する熱安定性(溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの分解の抑制)とを両立できるためである。なお、ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0098】
親水基を有する単量体及び親水性重合体成分のいずれにおいても、βは酸性の官能基(以下“酸性基”と略称することがある)を有するのが好ましい。かかる酸性基は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融加工時の熱劣化を抑制する。とりわけ、窒素原子を含まない酸性基がより好適である。好適な酸性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基及びホスフィン酸基等が例示される。これに比して、アミド基やイミド基等の窒素原子を含む官能基は溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの熱劣化を十分には抑制しない場合がある。これは窒素原子が局所的に塩基性を有しカーボネート結合の熱分解を生じさせるためと考えられる。
【0099】
かかるαとβとを有する有機化合物(C成分)の製造方法としては、βの単量体とαを構成する単量体とを共重合する方法、βの重合体成分をαとブロック又はグラフト共重合する方法、あるいはβをαに直接反応させて付加する方法等が例示される。
【0100】
C成分の具体例として、上記A成分との親和性を有しかつ酸性基を有する重合体、上記A成分の親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、上記A成分との親和性を有しかつオキサゾリン基を有する重合体、上記A成分との親和性を有しかつ水酸基を有する重合体等、が例示される。これらのC成分として好ましい重合体においては、その分子量は重量平均分子量にして1万〜100万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。かかる重量平均分子量は標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出される。
【0101】
上記C成分重合体の中でも、上記A成分との親和性を有しかつ酸性基を有する重合体が好ましく、さらに好ましくはA成分との親和性を有しかつカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基(以下“カルボキシル基類”と略称することがある)とを有する重合体である。また、上記A成分である芳香族ポリカーボネートの耐熱性保持効果の観点から、該重合体は芳香環成分を主鎖に有するもの及びスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。上記の点からカルボキシル基類を有するスチレン含有重合体(C-1成分)が本発明のC成分として特に好適である。ここでスチレン含有重合体とはスチレンなどの芳香族ビニル化合物を重合した繰返し単位を重合体成分として含有する重合体を指す。
【0102】
かかるカルボキシル基類の割合としては、0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC-1成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することをいい、その値は水酸化カリウム等の逆滴定により算出することが可能である。
【0103】
カルボキシル基の誘導体からなる官能基としては、カルボキシル基の水酸基を(i)金属イオンで置換した金属塩(キレート塩を含む)、(ii)塩素原子で置換した酸塩化物、(iii)−ORで置換したエステル(Rは一価の炭化水素基)、(iv)−O(CO)Rで置換した酸無水物(Rは一価の炭化水素基)、(v)−NR2で置換したアミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)、(vi)2つのカルボキシル基の水酸基を=NRで置換したイミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)等、を挙げることができる。
【0104】
カルボキシル基類を有するスチレン含有重合体の製造方法としては、例えば、(a)カルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合する方法、(b)スチレン含有重合体に対してカルボキシル基類を有する化合物又は単量体を結合又は共重合する方法、等を採用することができる。
【0105】
上記(a)の方法における共重合については、ランダム共重合体の他に、交互共重合体、ブロック共重合体、テーパード共重合体等の各種形態の共重合体とすることができる。上記(b)の方法としては、一般的にはスチレン含有重合体又は共重合体に必要に応じて、パーオキサイドや2,3−ジメチル−2,3ジフェニルブタン(通称ジクミル)等のラジカル発生剤を加えて、高温下で反応又は共重合する方法を挙げることができる。この方法はスチレン含有重合体又は共重合体に反応活性点を生成し、かかる活性点に反応する化合物又は単量体を反応させるものである。
【0106】
上記カルボキシル基類を有する化合物又は単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、グルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらの中でも金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基及びカルボン酸無水物基を有する単量体、特に無水マレイン酸がより好適である。
【0107】
また、スチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
【0108】
上述のように、本発明におけるC-1成分として好適なものは、カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体である。かかる共重合体においては比較的多くのカルボキシル基類を安定してスチレン含有重合体中に含むことが可能となるためである。より好適な例として、カルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合してなるスチレン含有共重合体を挙げることができ、とりわけ、スチレン−無水マレイン酸共重合体が最適である。スチレン−無水マレイン酸共重合体は、B成分である層状珪酸塩中のイオン成分及びA成分である芳香族ポリカーボネートのいずれに対しても高い相溶性を有することから、樹脂組成物中において層状珪酸塩(B成分)をきわめて良好に微分散させる。さらに、カルボン酸無水物基の作用により層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩の層間を有効に縮小させ、その結果、良好な熱安定性を樹脂組成物に与える。また、かかる共重合体それ自体の熱安定性が良好であるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融加工に必要な高温条件に対しても高い安定性を有する。
【0109】
カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体の組成については制限はないが、カルボキシル基類を有する単量体(無水マレイン酸等)からの成分を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物成分を99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)含み、共重合可能な他の化合物成分を0〜29重量%を含むものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)の共重合体が特に好ましい。
【0110】
上記C-1成分の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。なお、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0111】
他の好適なC成分としては、親水基としてオキサゾリン基を含有するスチレン含有共重合体(C−2成分)が挙げられる。かかる共重合体を形成するスチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができる。さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等、を共重合成分として使用しても差し支えない。特に好適なC−2成分の具体例としては、スチレン(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体が例示される。
【0112】
また、他の好適なC成分としては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリエーテルエステル共重合体(C-3成分)がある。このポリエーテルエステル共重合体は、ジカルボン酸、アルキレングリコール及びポリ(アルキレンオキシド)グリコール並びにこれらの誘導体3から重縮合を行うことで製造される重合体である。かかるC-3成分として特に好適なものは、重合度10〜120のポリ(アルキレンオキシド)グリコールあるいはその誘導体、テトラメチレングリコールを65モル%以上含有するアルキレングリコールあるいはその誘導体及びテレフタル酸を60モル%以上含有するジカルボン酸あるいはその誘導体から製造される共重合体である。
【0113】
本発明の光ディスク基板を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における上記C成分の配合量は、A成分100重量部当り、C成分0.1〜50重量部が適当であり、0.5〜20重量部が好ましく、1〜12重量部がさらに好ましい。C成分が0.1重量部より少ない場合には層状珪酸塩の分散効果が十分でなく、また、芳香族ポリカーボネートの熱劣化を抑制する効果も不十分となる場合がある。一方、50重量部を超えると耐衝撃性及び耐熱性等が低下する場合がある。
【0114】
<D成分について>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において含有することが好適なD成分は、高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステル及び/又はフルエステルである。D成分は、溶融流動時の樹脂組成物の流動を滑らかにする作用があると考えられ、光ディスク基板の表面状態をより平滑化する。更にD成分は本発明の光ディスク基板の耐加水分解性を向上させる機能を有する。
【0115】
ここで高級脂肪酸としては、炭素数10〜32の脂肪族カルボン酸を指し、その具体例としては、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、並びに、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、セトレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。これらの中でも脂肪族カルボン酸は炭素数10〜22であるものが好ましく、炭素数14〜20であるものがより好ましい。中でも、炭素数14〜20の飽和脂肪族カルボン酸、特にステアリン酸及びパルミチン酸が好ましい。ステアリン酸等の脂肪族カルボン酸は、通常、炭素数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。上記D成分においても、かかる天然油脂類から製造され他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなるステアリン酸やパルミチン酸から得られたエステル化合物が好ましく使用される。
【0116】
一方、多価アルコールとしては、炭素数が3〜32のものがより好ましい。かかる多価アルコールの具体例としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン(例えばデカグリセリン等)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0117】
これらの中で、特にD成分として好ましいのは、ステアリン酸を主成分とする高級脂肪酸とグリセリンとの部分エステルであり、このものは、例えば理研ビタミン(株)より「リケマールS−100A」という商品名で市販され、市場から容易に入手することができる。
【0118】
樹脂組成物中における上記D成分の配合量は、上記A成分100重量部に対して、D成分0.01〜1重量部が適当であり、好ましくは0.02〜0.8重量部、特に好ましくは0.03〜0.5重量部である。この配合量が0.01重量部より少ないと溶融流動時の樹脂組成物の流動を滑らかにする作用に起因すると考える光ディスク基板の表面状態の平滑化効果が小さく、また1重量部より多く使用すると転写性が逆に低下する。
【0119】
<所望により配合し得る他の成分>
本発明の光ディスク基板を構成する樹脂組成物は、A成分である芳香族ポリカーボネート、B成分である上記層状珪酸塩、上記C成分、そして、好適に添加される上記D成分にて構成されるが、さらに、所望により付加的成分として上記各成分以外の重合体やその他の添加剤を加えても差し支えない。
【0120】
本発明の光ディスク基板を構成するポリカーボネート樹脂組成物は、リン含有熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン含有熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト及びビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル並びにテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル等が例示される。かかるリン含有熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことがさらに好ましい。かかるリン含有熱安定剤の配合によりさらに熱安定性が向上し良好な成形加工特性を得て、その結果良好な光ディスク基板を得ることができる。
【0121】
さらに本発明の光ディスク基板を構成するポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、A成分又はC成分以外の他の熱可塑性樹脂(スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等)、B成分以外の他の無機充填材、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、核剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、着色剤、光拡散剤、帯電防止剤、流動改質剤、無機及び有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等)、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤、蛍光増白剤等を配合してもよい。上記帯電防止剤としては、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、無機アルカリ(土類)金属塩、有機スルホン酸アンモニウム塩、有機スルホン酸ホスホニウム塩、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラファイト、金属粉末、金属酸化物粉末等が例示される。
【0122】
<樹脂組成物の調製及び成形>
本発明の光ディスク基板を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を調製するには、上記A、B、Cの各成分及び必要により添加する他の成分を予備混合し、その後この予備混合物を溶融混練し、ペレット化する方法を採用することができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機等を用いることができる。予備混合においては、場合により押出造粒機やブリケッティングマシーン等により造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練し、そしてペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としてはこの他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器等を使用ができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機の使用が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより強力なせん断力で層状珪酸塩がマトリックスポリマー中に微分散させられる。その結果、樹脂組成物中において層状珪酸塩の良好な微分散が達成され、精密転写性と剛性に優れた成形品(基板)が得られるようになる。
【0123】
本発明の光ディスク基板を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を調製するに当り、溶融混練機による溶融混練においては、まず、上記B成分と上記C成分(好適にはC-1成分)とを予め溶融混練しておき、その後、該溶融混練物とA成分の芳香族ポリカーボネートとを多軸押出機により溶融混練するのが好ましい。かかる2段階の溶融混練方法はA成分の分子量低下が効果的に抑制されるため特に好ましい方法である。これはB成分とC成分とが予め溶融混練されることによりB成分に対してC成分が十分に相互作用し、所期の効果が効率的に発現しているためと考えられる。
【0124】
樹脂組成物の有利な製造法として、より具体的には、例えば、(i)B成分とC成分をベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法や、(ii)B成分とC成分をベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部又は全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法等が挙げられる。これらB成分とC成分を予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。
【0125】
また、本発明の目的から考えて、異物、不純物等の混入のない原料を用いると共に、樹脂組成物製造時及び成形時における、所定の原料以外の異物、不純物、溶媒等の混入を極力低く抑えることが必要である。この目的で、事前に各原料を精製することや、押出原料中に混入した異物等を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物等を樹脂組成物から取り除くことは有益である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルター等)等を用いることができる。さらに、ペレット化に際して外部の埃等の影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。
【0126】
<光ディスク基板の構成及び製造>
本発明の光ディスク基板を構成する樹脂組成物は、曲げ弾性率を向上するための充填材(層状珪酸塩)を含有しながら、かつ充填材を配合しない場合と同等の金型転写性を達成し得る。それ故、本発明では、かかる樹脂組成物の特性を生かし、樹脂組成物からなる良好な光ディスク基板が提供される。
【0127】
上記樹脂組成物基板は、高精密転写性に優れ、その剛性に起因した成形時の低反り性、さらには、環境変化に対する低反り性のいずれにも優れているので、成形時に基板の片面又は両面にグルーブ列もしくはピット列を付与する場合、それらの列間隔を狭くすることができ、0.1μm〜0.8μm、好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.1〜0.35μmの狭い列間隔を有する光ディスク基板を、スタンパーを利用した射出成形(射出圧縮成形)等によって容易に製造することが可能となる。かくして本発明によれば情報の記録密度が100Gbit/inch2以上である高密度光学ディスク記録媒体の基板を提供することも可能となる。
【0128】
かかる光ディスク基板は、射出成形法より製造され、その際の金型温度が、A成分のTgに対し、Tg−25〜Tg(℃)の範囲であることが好ましい。射出成形時の金型温度をかかる範囲に調製することによって、より精密な転写が可能となって極めて良好な基板表面が形成され、高密度光学ディスク記録媒体の基材としての使用に適した特性が得られる。上記金型温度のさらに好ましい範囲はTg−20〜Tg−5(℃)である。かかる射出成形には射出成形機(射出圧縮成形機を含む)が用いられる。この射出成形機としては、炭化物の発生を抑制しディスク基板の信頼性を高める観点からシリンダーやスクリューとして樹脂との付着性が低く、かつ耐食性、耐摩耗性を示す材料を使用してなるものを用いるのが好ましい。射出成形の条件としてはシリンダー温度280〜400℃が好ましく、これらによって光学的に優れた光ディスク基板を得ることができる。成形工程の環境は、本発明の目的から考えて、可能な限りクリーンであることが好ましい。また、成形に供する材料を十分乾燥して水分を除去することや、溶融樹脂の分解を招くような滞留を起こさないように配慮することも重要となる。光ディスク基板の射出成形においては、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、及び超高速射出成形等の射出成形法を用いて光ディスク基板成形品を得ることができる。
【0129】
光ディスク基板の形状は、通常、円板(円盤)状であるが、その形状や大きさは特に制限されず、用途に応じて適宜選定される。また、光ディスク基板の好適な厚みは0.3〜1.2mmの範囲である。上述のように光ディスク基板基板の成形時にスタンパーにより該基板の片面又は両面にビットやグルーブが設けられることが多いが、光ディスク基板の用途によっては成形時にかかる加工がなされない場合もある。
【0130】
本発明の光ディスク基板上には、その用途に応じて、反射層、記録層、光透過層(透明保護層)等が積層され、情報記録媒体としての光ディスクとなる。
【0131】
反射層は金属元素を単独あるいは2種以上複合させて形成することができる。かかる反射層を形成する金属としては、Al又はAuを単独で使用するか、もしくは0.5重量%以上10重量%以下、特に好ましくは3.0〜10重量%のTiを含有するAl合金、0.5〜10重量%のCrを含有するAl合金を使用するのが好ましい。上記金属からなる反射層はイオンビームスパッタ法、DC(直流)スパッタ法又はRFスパッタ法等の手段で形成させることができる。
【0132】
基板上には、かかる反射層に加え、基本的には記録層(DVD−RAM、DVD−R、DV−R等の場合には相変化記録層、染料記録層、MO(光磁気ディスク)の場合は光磁気記録層)及び光透過層が形成されて、情報記録媒体としての光ディスクとなる。かかる相変化記録層としては、例えば単体のカルコゲンやカルコゲン化合物が用いられる。具体的には、Te、Seの各単体、Ge−Sb−Te、Ge−Te、In−Sb−Te、In−Se−Te−Ag、In−Se、In−Se−Tl−Co、In−Sb−Se、Bi2Te3、BiSe、Sb2Se3、Sb2Te3等のカルコゲナイト系材料が使用される。また、光磁気記録層には、Tb−Fe−Co等の非晶質合金薄膜等のカー効果やファラデー効果等の磁気光学特性を有する垂直磁化層等が用いられる。
【0133】
記録層の上下の層には、誘電体層を設け、光学的特性や熱的特性を制御することが好ましい。誘電体層としては、例えば、Al、Si等の金属、半金属元素の窒化物、酸化物、硫化物等が適用される。その具体例としては、ZnSとSiO2との混合物や、AlN、Si34、SiO2、Al23、ZnS、MgF2等が例示される。
【0134】
光透過層は、記録層の上又は誘電体層がある場合には誘電体層の上に形成される。この光透過層は記録層や基板のピットやグルーブを保護するための透明保護層となる。この光透過層の材料は芳香族ポリカーボネートや非晶性ポリオレフィン系樹脂等の透明な熱可塑性樹脂や、各種熱硬化性(特に光硬化性)樹脂等が挙げられる。透明保護層を形成する手段は、例えば記録層上に芳香族ポリカーボネートや非晶性ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなるシート等の透明シートを貼り合わせる方法(この際の接着層としては光硬化性樹脂が好適である)や、紫外線硬化樹脂をスピンコート等の手法によって塗布し、紫外線照射することによって保護層形成する方法等が挙げられる。さらに特に透明シートを使用する方法では、その表面にさらに高硬度特性や帯電防止性等を有する保護透明層を設けることもできる。光透過層(保護透明層がある場合にはその厚みを含む)の厚みは、コマ収差をかなり小さく抑えるために、3〜200μmの範囲に制限される。特に100μm程度の厚みが好ましい。
【0135】
光ディスクは、多くの場合、光線を該ディスクの光透過層側から照射し、光透過層を通じて記録層等に到達・反射させて、情報信号の記録/再生が行われる。
【0136】
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された光ディスク基板上に転写されるグルーブもしくはビットの構成、基板上に形成される積層構成や、反射層(反射膜)あるいは記録層と光透過層の構成は、特に限定されるものではなく、グルーブ又はピットが基板の両面に設けられ、反射層あるいは記録層及び光透過層も共に両面に設けられていてもよい。なお、光ディスクの上記の如き多層構造は広く知られるところであり、例えばその詳細は特開平11−7658号公報等に記載されている。
【0137】
次に、かかる光ディスクの多層構造の具体例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、代表的な光ディスクの構造を単に例示するものであって、本発明の光ディスク基板の用途が、かかる構造の光ディスクのみに限定されないことは言うまでもない。
【0138】
図1〜図4は、それぞれ光記録媒体としての光ディスクの構造の一例を示すものであり、ディスク面における垂直の断面の部分的模式図である。図1に示す光ディスク1は、上記の芳香族ポリカーボネ−ト樹脂組成物からなる基板(2)上に、反射層(3)、記録層(4)及び光透過層(5)が順次積層形成されてなるものである。基板(2)には、その上部表面にデータ情報やトラッキングサーボ信号等の記録がなされる位相ピットや、プリグルーブ等の微細な凸凹等の所定の凸凹パターンからなるグルーブが形成されている。また、図2に示す光ディスク2は、上記の芳香族ポリカーボネ−ト樹脂組成物からなる基板(2)上に、第1の反射層(6)、第1の記録(7)、中間層(8)、第2の反射層(9)、第2の記録層(10)及び光透過層(5)が順次複数積層された多層構造を有するものである。さらに、図3に示す光ディスク3では、ピット又はグルーブが上記の芳香族ポリカーボネ−ト樹脂組成物からなる基板(2)の両面に設けられ、上面には第1の反射層(6)、第1の記録層(7)及び光透過層(5)が、下面には第2の反射層(6)、第2の記録層(7)及び光透過層(5)が、それぞれ順次積層形成されている。なお、これら図1〜図3に示す光ディスクを構成する基板、反射層、記録層、光透過層等の材料としては、それぞれ同一もしくは類似の特性を持つ材料が使用可能である。
【0139】
さらに、図4には、記録層の上下の層に誘電体層が設けられた構成を有する多層構造の光ディスク4を示す。このディスク4では、基板(2)の上に、反射膜(11)、第1の誘電体層(12)、相変化型記録層(13)、第2の誘電体層(14)が積層されており、さらにその表面を光透過層(15)で被覆している。かかる層構成における各層の厚みの一例としては、基板1.1mm、反射膜60nm、第1の誘電体層19nm、相変化型記録層24nm、第2の誘電体層100nm、そして光透過層100μmである態様が例示される。
【0140】
本発明では、既に詳述した芳香族ポリカーボネート樹脂からなる光ディスク基板を有する限り、その上に積層される層の構成や数等にかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【0141】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に詳述する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各種特性の評価は、下記(I)に詳述する方法により実施した。原料としては下記(II)に詳述するものを用いた。また、以下の説明において、単に「部」とあるは特に断りのない限り全て「重量部」を示す。
【0142】
[I]評価項目
[I−1]芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の評価
(1)層状珪酸塩(無機分)の含有量
試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度280℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形し、成形した試験片を切削してるつぼに入れて秤量し、600℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後に放冷し、るつぼに残った灰化残渣を秤量することで組成物中における層状珪酸塩の無機分の含有量(重量%)を測定した。(試験片形状:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)
(2)粘度平均分子量
上記(1)と同条件で成形した同形状の試験片の粘度平均分子量を、既に本文中に記載した方法にて測定した。
(3)曲げ弾性率
試験片を上記(1)と同条件で成形し、成形された試験片に対してASTM D790に準拠して曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した(試験片形状:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)。
(4)耐熱性
試験片を上記(1)と同条件で成形し、成形された試験片に対してASTM D648に準拠して荷重たわみ温度を測定した(試験片形状:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)。
(5)層状珪酸塩の分散厚み
ミクロトームにて、50〜100nmの切片を作成し、透過型電子顕微鏡(LEM−100:トプコン(株)製)を用いて、加速電圧100kVにて観察し、倍率10,000倍で写真撮影した。撮影した写真を画像解析し層状珪酸塩の厚みを計測することにより、その分散厚みを求め、厚み100nm以下の数割合(%)を求めた。
【0143】
[I−2]光ディスク基板の評価
(1)初期反り(初期R−Tilt)
名機製作所製の射出成形機 M35B−D−DM 及びCD用スタンパー(ピット深さ100nm、ピット列間隔1.6μm)を用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。この光ディスク基板の片面に、Ion Plating装置(住友重工業(株)製:EKC−1)を使用して、アルミニウムを膜厚50nmになるように蒸着し、評価用の基板試験片を作成した。続いて、該基板試験片が互いに接触しないようスペーサーを挟み、温度23℃、相対湿度50%の環境に72時間放置した後、中央から外周へ58mm離れたところでの反射光の角度ずれをジャパン・イー・エム(株)製3次元形状測定器 DLD−3000U により測定し、初期R−Tiltを算出した。なお、シリンダー温度は320℃、型締め力は30トン一定とし、金型温度を表3に記載の通り各樹脂ごとに設定した。
(2)反り変形量の最大値(ΔR−Tiltmax)
初期反りを評価した基板(試験片)を温度30℃、相対湿度90%の恒温恒湿機に72時間放置して吸湿処理をした。かかる処理後の基板に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下において吸水による反り変形量の経時変化を測定した。反り変形量の測定は三次元形状測定器(ジャパン・イー・エム(株)製:DLD−3000U)を用いて、かかる基板試験片の中央から外周へ58mm離れたところでの反射光の角度ずれを経時的に測定し、最大の角度ずれ及び定常に達した時の角度ずれを測定し、両者の値の差をΔR−Tiltmaxとして算出した。
(3)転写率
名機製作所製の射出成形機:M35B−D−DM及びCD用スタンパー(ピット深さ100nm、ピット列間隔1.6μm)を用いて、直径120mm、厚さ1.2mmの光ディスク基板を成形した。なお、シリンダー温度は320℃、型締め力は30トン一定とし、金型温度は表3に記載の通り、各樹脂ごとに設定した。
上記基板にスタンパーから転写した溝の深さを、原子間力顕微鏡(セイコー電子工業:SPI3700)を用いて、中央から外周へ40mmの位置にて5箇所を測定した。転写性は、次式:
転写率(%)=100×ディスクの溝深さ/スタンパーの溝深さ
で示される転写率として表示した。この値が100%に近いほど転写性に優れている。
(4)光ディスク基板の表面状態
上記(3)に用いた光ディスク基板の表面状態を、共焦点反射顕微鏡(オリンパス光学工業(株)製:MX50)を用い、光ディスク基板のスタンパー非転写面にてスタンパー中央から外周へ40mmの位置で観察し、異物の浮きや微細なヒケといった平滑異常が全く見られないものを○、平滑異常がわずかに見られるものを△、平滑異常が見られるものを×として判定した。
【0144】
[II]原料
原料(A成分、B成分、C成分等)としては、以下のものを用いた。
[II-1]芳香族ポリカーボネート(A成分)
芳香族ポリカーボネート(A−1成分、A−2成分、A−3成分)としては、それぞれ、下記の参考例1〜3の方法に従って製造した芳香族ポリカーボネートパウダーを使用した。
【0145】
[参考例1(A−1成分の製造)]
温度計、撹拌機、還流冷却器及びホスゲン吹き込み管を備えた反応器にイオン交換水27940部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液3560部を入れ、ビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)3335部及びハイドロサルファイト10部を溶解した後、塩化メチレン13770部を加え、撹拌下16〜18℃でホスゲン1670部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール131部と水酸化ナトリウム560部を加え、さらにトリエチルアミン4部を加えて30℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、無色のパウダー3450部を得た。この芳香族ポリカーボネートパウダーの粘度平均分子量は15,500であった。
【0146】
[参考例2(A−2成分の製造)]
温度計、撹拌機、還流冷却器及びホスゲン吹き込み管を備えた反応器にイオン交換水27940部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液3560部を入れ、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)2040部及び4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称することがある)2802部及びハイドロサルファイト10部を溶解した後、塩化メチレン13770部を加え、撹拌下16〜18℃でホスゲン1670部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール81部と水酸化ナトリウム560部を加え、さらにトリエチルアミン4部を加えて30℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPMの比がモル比で40:60である共重合体からなる無色のパウダー4930部を得た。この芳香族ポリカーボネートパウダーの粘度平均分子量は15,000、Tg(ガラス転移温度)は144℃であった。
【0147】
[参考例3(A−3成分の製造)]
温度計及び撹拌機付き反応器にイオン交換水19580部及び48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液3850部を仕込み、これにBCF1175部及びBPA2835部及びハイドロサルファイト9部を溶解した後、塩化メチレン13210部を加えて激しく撹拌しながら15℃でホスゲン2000部を約40分を要して吹込み反応させた。ホスゲン吹き込み終了後、28℃に上げてp−tert−ブチルフェノール94部と水酸化ナトリウム640部を加えて乳化させた後、トリエチルアミン6部を加えて1時間撹拌を続けて反応を終了した。反応終了後有機相を分離し、塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところでニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、BCFとBPAの比がモル比で20:80である共重合体からなる無色のパウダー4080部を得た。この芳香族ポリカーボネートパウダーの粘度平均分子量は20,300、Tg(ガラス転移温度)は171℃であった。
【0148】
[II−2]芳香族ポリカーボネートの特性評価
(1)試験片の作成
後掲の表1に、参考例1〜3として記載の各芳香族ポリカーボネート(A−1、A−2、A−3の各成分)を、それぞれ単独に、直径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットして、ペレットとした。得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃(参考例3のみシリンダー温度300℃、金型温度80℃)、成形サイクル40秒で成形し、各種試験片を成形し、樹脂組成物の評価に供した。
(2)吸水率の測定
上記条件で、直径45mm、厚み3.0mmの円板状試験片を成形し、かかる試験片を120℃で10時間乾燥してデシケータ中において放冷した後、その他の条件はISO62‐1980の“Method 1”の方法に準拠して、23℃、24時間の水浸漬後の吸水率(重量%)を測定した。
(3)Tg(ガラス転移温度)の測定
上記(1)の吸水率測定で使用したものと同じ試験片を用いて、JIS K7121に準拠してTg(ガラス転移温度)を測定した。測定は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910DSCを使用し、30℃から昇温20℃/分の条件で測定した。
(4)粘度平均分子量の測定
本文中に詳述したように、20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解し、その溶液からオストワルド粘度計を用いて比粘度を求め、その値から既に述べた計算式により分子量を求めた。
【0149】
【表1】
Figure 0004229677
【0150】
[II−3]層状珪酸塩(B成分)
(B−1)合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:「ソマシフ ME−100」、陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
(B−2)トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライドでイオン交換された有機化合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:「ソマシフ MTE」、陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
(B−3)トリ−n−ブチル−n−オクチルホスホニウムブロマイド(日本化学工業(株)製:「ヒシコーリン PX−48B」)で下記<製法1>によりイオン交換された有機化合成フッ素雲母(陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対する有機オニウムイオンのイオン交換割合98%以上)
(B−4)ジ−n−ステアリルジメチルアンモニウムクロライドイオンで交換された有機化合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:「ソマシフ MAE」、陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
(B−5)ジ−n−デシルジメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)で下記<製法1>によりイオン交換された有機化合成フッ素雲母(陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対する有機オニウムイオンのイオン交換割合98%以上)
【0151】
<製法1>
合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:「ソマシフ ME−100」)約100gを精秤しこれを室温の水10リットルに撹拌分散し、ここにオニウムイオンのクロライド又はブロマイドを合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して1.2倍当量を添加して6時間撹拌した。生成した沈降性の固体を濾別し、次いで30リットルの脱塩水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を3回行った。得られた固体は5日の風乾後乳鉢で粉砕し、さらに50℃の温風乾燥を10時間行い、再度乳鉢で最大粒径が100μm程度となるまで粉砕した。かかる温風乾燥により窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が3重量%とした。かかる操作を繰り返して必要量を得た。なお、各層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対する有機オニウムイオンのイオン交換割合については、イオン交換された層状珪酸塩の、窒素気流下500℃で3時間保持した場合の残渣の重量分率を測定することにより求めた。この評価結果を表2に示す。
【0152】
【表2】
Figure 0004229677
【0153】
[II−4]A成分と親和性を有し親水性基を有する有機化合物(C成分)
(C-1)スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:「DYLARK 332−80」、無水マレイン酸量約15重量%)
(C-2)(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体((株)日本触媒製:「EPOCROS RAS−1005」、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン量約5重量%)
[II−5]本発明で特定したC成分以外の類似成分
(C’)ナイロン6(宇部興産(株)製;「ウベナイロン 1015B」)
[II−6]高級脂肪酸と多価アルコールの部分又はフルエステル(D成分)
理研ビタミン(株)製:「リケマール S−100A」
[II−7]その他の成分
その他の添加剤成分として、一部の例を除き、TMP:リン酸トリメチル(大八化学工業(株)製)を使用。
【0154】
[実施例6、8及び比較例1〜12]
上記各成分を後掲の表3に示す配合量でドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た(表2中“方法1”と表示する)。また、一部の例では、予めB成分とC成分とを前述の方法と同様の方法で一旦ペレット化(シリンダー温度230℃)した後に、これとA成分及び他成分とを再度同様の方法でペレット化した(表2中“方法2”として表示する)。
【0155】
次いで、それぞれ得られたペレットを、100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、上に詳述した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び光ディスク基板の評価方法に従い、各種性能を評価した。
【0156】
これらについての樹脂組成物配合量等を表3に、各樹脂組成物及び各光ディスク基板の評価結果を表4に示す。
【0157】
【表3】
Figure 0004229677
【0158】
【表4】
Figure 0004229677
【0159】
表3及び表4に示す結果から明らかなように、本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(実施例1〜10)は、いずれも、曲げ弾性率に優れるという利点を有するため、該樹脂組成物から形成される光ディスク基板の恒温恒湿試験後の反り変形量が有意に抑制されており、基板の環境安定性に大幅な向上が図られている。
【0160】
また、B成分とC成分とを予め溶融混練した後、これにA成分及び他成分と溶融混練する方法(方法−2)を採用した場合(実施例4、8)、成形した試験片の粘度分子量が一段と高くなり樹脂組成物の成形時の高温安定性が改善されるため、より高記録密度の光ディスク基板への成形加工に対応可能となることがわかる。さらにA成分として特に曲げ弾性率が高いA−2成分(実施例5)や高いTg(ガラス転移温度)を有するA−3成分(実施例6)を用いた光ディスク基板は、芳香族ポリカーボネート自体が恒温恒湿試験後の変形応力を緩和、抑制する効果があり、特に優れた環境安定性を示す。
【0161】
これに対し、通常の芳香族ポリカーボネートのみからなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(比較例1)は、恒温恒湿試験後の変形応力を緩和、抑制する成分が含まれていないため、光ディスク基板の恒温恒湿試験後の反り変形量が大きくなり、基板の環境安定性に不十分な場合がある。C成分が含まれていない芳香族ポリカーボネート樹脂組成物(比較例2〜5)は、層状珪酸塩(B成分)の樹脂中への分散性が不十分であるため精密転写性に劣り、曲げ弾性率の向上が不十分であるため、光ディスク基板の恒温恒湿試験後の反り変形量の抑制効果が不十分である。しかも、樹脂の粘度平均分子量が大きく低下するため、光ディスク基板の成形加工への対応が不十分である。またC成分として本発明の要件を満足しない化合物を使用した樹脂組成物(比較例6)は、層状珪酸塩(B成分)の樹脂中への分散性が不十分であるばかりか、成形等の樹脂組成物の熱加工が非常に困難であり、C成分として使用する化合物の選択が重要であることがわかる。
【0162】
[実施例11]
上記実施例4及び10で作成された樹脂組成物ペレットを使用し、名機製作所(株)製M35−B−D−DM及びスタンパー(ピット深さ40nm、ピット列間隔(トラックピッチ)0.32μm)を用い、シリンダー温度330℃、型締め力30トン、金型温度130℃の条件にて、射出成形を行い、直径120mm、厚み1.1mmのディスク基板を作成した。このディスク基板の片面に、順次、Al合金からなる厚み60nmの反射膜、厚み19nmの第1の誘電体層、厚み24nmの相変化型記録層、厚み100nmの第2の誘電体層を順次積層し、更にその上に紫外線硬化型接着剤が塗布されたポリカーボネート製薄膜カバー層(厚み100μm)を貼り合わせることにより、光透過層側から光が照射されて反射光の光強度変化に基づいて情報信号の再生が行われる、図4の如き多層構造の高密度情報光ディスクを作成した。
【0163】
【発明の効果】
以上の如く、本発明によれば、スタンパー形状に対する精密転写性、高剛性、環境変化に対する低反りを併せ持つ芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された光ディスク基板が提供される。さらに詳しくは、CD(CD―ROM、CD−R、CD―RW等を含む)、MO、DVD等の光ディスク分野において好適な精密転写性でかつ環境変化によるディスクの反りが少ない光ディスク基板、特に、記録容量の極めて大きな高密度光ディスク用の基板が提供される。したがって、本発明の光ディスク基板は、例えばDVDやBlu−ray Disc(BD)等の高密度の情報記録媒体としての光ディスク用として特に有用であり、その産業的価値は極めて高いと言うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基板を用いた光ディスクの一例を示すディスク面の垂直断面の部分的模式図である。
【図2】本発明に係る基板を用いた光ディスクの他の一例を示すディスク面の垂直断面の部分的模式図である。
【図3】本発明に係る基板を用いた光ディスクの他の一例を示すディスク面の垂直断面の部分的模式図である。
【図4】本発明に係る基板を用いた光ディスクの他の一例を示すディスク面の垂直断面の部分的模式図である。
【符号の説明】
2:基板
3:反射層
4:記録層
5:光透過層
6:第1の反射層
7:第1の記録層
8:中間層
9:第2の反射層
10:第2の記録層
11:反射膜
12:第1の誘電体層
13:相変化型記録層
14:第2の誘電体層
15:光透過層

Claims (13)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート(A成分)100重量部当り、(B)50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部、及び(C−1カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン含有重合体(C−1成分)0.1〜50重量部を含み、かつB成分とC−1成分とを予め溶融混練した後に、該溶融混練物とA成分および残りの成分とを溶融混練して調製されたものである芳香族ポリカーボネート樹脂組成物により形成されてなることを特徴とする光ディスク基板。
  2. 上記C-1成分は、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体とスチレン系単量体を共重合してなるスチレン含有共重合体であることを特徴とする請求項に記載の光ディスク基板。
  3. 上記C-1成分は、スチレン−無水マレイン酸共重合体であることを特徴とする請求項に記載の光ディスク基板。
  4. 上記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光ディスク基板。
  5. 上記B成分における有機オニウムイオンは下記一般式(I)で示されることを特徴とする請求項に記載の光ディスク基板。
    Figure 0004229677
    〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R〜Rは互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
  6. 上記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、RおよびRがそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項に記載の光ディスク基板。
  7. 上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記A成分100重量部に対して、さらに(D)高級脂肪酸と多価アルコールの部分エステル及び/又はフルエステル(D成分)0.005〜1重量部を含有することを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光ディスク基板。
  8. 上記光ディスク基板は、上記A成分のTg(ガラス転移温度)に対し、Tg−25〜Tg(℃)の金型温度で射出成形されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光ディスク基板。
  9. 上記光ディスク基板は、その面上にそのグルーブ列もしくはピット列が設けられおり、かつその間隔が0.1μm〜0.8μmであることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光ディスク基板。
  10. 上記光ディスク基板は、該基板上に少なくとも光透過層が積層されており、光透過層側から光が照射されて情報信号の記録及び/又は再生が行われる光ディスクにおける基板であることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の光ディスク基板。
  11. 上記光ディスク基板は、該基板上に反射層、記録層及び光透過層が積層されており、かつ記録層は反射層と光透過層との間に存在する光ディスクにおける基板であることを特徴とする請求項10に記載の光ディスク基板。
  12. 上記光ディスク基板は、該基板上に記録層あるいは反射層が複数積層されてなる多層構造を形成してなる光ディスクにおける基板であることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の光ディスク基板。
  13. 請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の光ディスク基板を用いたことを特徴とする光学情報記録媒体。
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