JP2004042595A - 金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品 - Google Patents

金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品 Download PDF

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Masaki Mitsunaga
光永 正樹
Katsuhiko Hironaka
弘中 克彦
Masami Okamoto
岡本 正巳
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Abstract

【課題】剛性および表面平滑性を両立した、その表面に金属層を積層してなる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品を提供すること、殊に十分な剛性と樹脂単体の場合に匹敵する優れた表面平滑性を有する樹脂成形品の表面に金属層を積層してなる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品を提供すること、更にかかる樹脂として芳香族ポリカーボネートであるかかる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品を提供すること。
【解決手段】非晶性熱可塑性樹脂(A成分)100重量部あたり、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層が積層されてなる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品に関する。詳しくは非晶性熱可塑性樹脂に特定の層状珪酸塩を含んでなる樹脂組成物から形成された樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層が積層されてなる樹脂成形品に関し、特に芳香族ポリカーボネート樹脂に特定の層状珪酸塩を含んでなる樹脂組成物から形成された樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層が積層されてなる樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂などの非晶性熱可塑性樹脂からなる樹脂成形品は、該成形品の表面に金属層または金属酸化物層を設けることにより各種の機能が付与されている。金属層または金属酸化物層を設けることにより付与される機能としては、例えば▲1▼光学関連の機能(部品)としては、反射膜、反射防止膜、透明導電膜、および半透明膜などが例示される。例えば▲2▼電子工学関連の機能(部品)としては、光導電薄膜、保護膜、信号変換素子、蛍光スクリーン、コンデンサー、精密抵抗素子、ダイオード、IC抵抗体、IC誘電体、ディスプレーセル、二次電子面音響部品、磁性体薄膜、および太陽電池などが例示される。更に▲3▼各種の包装、印刷および装飾における機能が挙げられる。
【0003】
上記▲1▼の機能を有する成形品の具体例としてはランプリフレクターなどの一般のランプリフレクター、並びにポリゴンミラー、回折格子、および反射鏡(特にレーザー光用)などの精密光反射部品が挙げられる。更に各種の光学記録媒体が挙げられる。上記▲2▼の機能を有する成形品の具体例としてはディスプレー装置のセルや太陽電池に使用される透明電極、磁気記録媒体、コンデンサー、スピーカー、およびEMIシールドされたハウジング成形品が挙げられる。上記▲3▼の機能を有する成形品の具体例としては各種メッキ装飾された成形品が挙げられる。
【0004】
一般に金属層または金属酸化物層の熱膨張率は樹脂単体の熱膨張率より小さい。したがって金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品は低い熱膨張率を有することが好まれる。金属または金属酸化物と樹脂成形品との熱膨張率差が少ないほど、金属層または金属酸化物層の樹脂成形品に対する密着性並びに該密着性の長期特性は高まるからである。また樹脂成形品を構成する樹脂材料には多くの場合、高い剛性(高い曲げ弾性率)を有することが好まれる。これはかかる樹脂材料は樹脂成形品の剛性は高め、かかる樹脂成形品の高い剛性は、製品を薄肉にすること、および製品の振動に対する耐性(振動の起こりにくさ)を向上させることを可能にするためである。
【0005】
一方で上記の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品では、その成形品表面の平滑性が必要とされる場合が多い。殊に精密光反射部品、並びに各種の光学記録媒体および磁気記録媒体においては極めて高度な表面平滑性が求められる。しかしながらかかる成形品表面の平滑性は、上記の低熱膨張率および剛性との両立が困難な特性であった。すなわち樹脂組成物の熱膨張率を低下させるために、各種強化充填材を配合することが一般的に行われるが、かかる樹脂組成物はその表面平滑性が樹脂単体に比較して著しく劣るのが現状であった。樹脂成形品の平滑化処理や金属層の厚みを大きくすることで製品を得ることも可能であるが、極めて多くの工数を要し効率的とはいえない。
【0006】
樹脂成形品表面に平滑性を付与するため、微小な強化充填材を樹脂中に配合する試みはこれまでにも多くなされている。更に近年は無機充填剤として粘土鉱物、特に層状珪酸塩を用い、その層間イオンを各種の有機オニウムイオンにイオン交換させ樹脂中への分散を容易にすることにより、成形品の表面外観や比重を良好に保ったまま、機械特性を改良する試みが、特にポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂において多くなされており、それらにおいては実用例も見ることができる。
【0007】
同様の改良の試みは芳香族ポリカーボネート樹脂組成物においても既に知られており(特許文献1〜6参照)、例えば炭素数12以上のアルキル基を有する有機オニウムイオンをゲストとした層状珪酸塩の配合(特許文献2参照)や、PEG鎖を有する有機オニウムイオンをゲストとした層状珪酸塩の配合(特許文献3参照)がなされた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は表面外観に優れることが知られている。しかしながら、いずれの試みも金属層を有する樹脂組成物を開示するものではなかった。更に上記の試みによる樹脂組成物はいずれも未だ十分な熱安定性を有しておらず、特に射出成形により形成される殊に精密光反射部品、並びに各種の光学記録媒体および磁気記録媒体に対する適用は困難であった。
【0008】
【特許文献1】
特開平03−215558号公報
【特許文献2】
特開平07−207134号公報
【特許文献3】
特開平07−228762号公報
【特許文献4】
特開平07−331092号公報
【特許文献5】
特開平09−143359号公報
【特許文献6】
特開平10−60160号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を鑑みた上で、剛性および表面平滑性を両立した、その表面に金属層または金属酸化物層を積層してなる樹脂成形品を提供することにある。更に十分な剛性と樹脂単体の場合に匹敵する優れた表面平滑性を有する樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層をを積層してなる樹脂成形品を提供することにある。特にかかる樹脂として芳香族ポリカーボネートである金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂および層状珪酸塩からなる樹脂組成物、より好適には該層状珪酸塩の特定の分散状態が達成された樹脂組成物から形成された成形品の表面に金属層または金属酸化物層を積層した樹脂成形品が、上記課題を解決することを見出し、更に鋭意検討を行い本発明を完成するに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)非晶性熱可塑性樹脂(A成分)100重量部あたり、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層が積層されてなる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品にかかるものである。
【0012】
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩である上記(1)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0013】
本発明の好適な態様の1つは、(3)上記B成分における有機オニウムイオンは下記一般式(I)で示されることを特徴とする上記(2)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0014】
【化2】
Figure 2004042595
【0015】
〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R〜Rは互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
【0016】
本発明の好適な態様の1つは、(4)上記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、RおよびRがそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする上記(3)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0017】
本発明の好適な態様の1つは、(5)上記樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物は、更にA成分100重量部あたり、(C)A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる上記(1)〜(4)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0018】
本発明の好適な態様の1つは、(6)上記A成分は芳香族ポリカーボネート樹脂である上記(1)〜(5)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0019】
本発明の好適な態様の1つは、(7)上記C成分は、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体である上記(6)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0020】
本発明の好適な態様の1つは、(8)上記金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品は、JIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、かつ樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物はASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率が2,500MPa以上であることを特徴とする上記(1)〜(7)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0021】
本発明の好適な態様の1つは、(9)上記樹脂成形品上の金属層または金属酸化物層は、蒸着により形成されたものである上記(1)〜(8)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0022】
本発明の好適な態様の1つは、(10)上記樹脂成形品上の金属層は、メッキにより形成されたものである上記(1)〜(8)に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品である。
【0023】
本発明の好適な態様の1つは、(11)上記(1)〜(10)に記載の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物からなるメタライジング加工用熱可塑性樹脂組成物である。
【0024】
以下本発明の詳細について説明する。
【0025】
本発明において非晶性熱可塑性樹脂(A成分)としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)、SMA樹脂(スチレン−無水マレイン酸共重合体から主としてなる樹脂)、MS樹脂(メチルメタクリレート−スチレン共重合体から主としてなる樹脂)およびABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体から主としてなる樹脂)、および芳香族ポリカーボネート樹脂などの非晶性エンジニアリングプラスチックなどが例示される。
【0026】
更に本発明において好ましい非晶性熱可塑性樹脂は、そのガラス転移温度(Tg)が120℃以上の非晶性熱可塑性樹脂である。かかるTgはより好ましくは130℃以上、更に好ましくは140℃以上である。一方かかるTgは280℃以下が適切であり、250℃以下が好ましい。かかる高いTgの非晶性熱可塑性樹脂は高温の成形加工温度を必要とし、その熱安定性の改良はより求められるところである。尚、本発明におけるガラス転移温度はJIS K7121に規定される方法にて測定されたものである。
【0027】
上記の非晶性熱可塑性樹脂の好ましい態様としては、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリアミノビスマレイミド樹脂、などが例示される。更に好ましくは、これらの中でも成形加工性に優れ、より広範な分野に適用が可能な芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、および環状ポリオレフィン樹脂が例示される。本発明の非晶性熱可塑性樹脂としては、上記の中でも機械的強度に特に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ABS樹脂、芳香族ポリエステル樹脂などの他の熱可塑性樹脂を1種以上組み合わせても用いることができる。
【0028】
本発明のA成分の非晶性熱可塑性樹脂として特に好適な芳香族ポリカーボネート樹脂について説明する。
【0029】
本発明に用いられるA成分の代表例としての芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0030】
前記2価フェノールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称“ビスフェノールA”)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エステル、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらのなかでも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールA(以下“BPA”と略称することがある)が汎用されている。かかるBPAの芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が優れる点で好ましい。
【0031】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0032】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させて芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネート樹脂は三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐芳香族ポリカーボネート樹脂であってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0033】
分岐芳香族ポリカーボネート樹脂を生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.9モル%、特に好ましくは0.01〜0.8モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合についてはH−NMR測定により算出することが可能である。
【0034】
さらに、芳香族または脂肪族(脂環族を含む)の2官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート、2官能性アルコール(脂環族を含む)を共重合した共重合ポリカーボネートに前記官能性カルボン酸および2官能性アルコールをともに共重合したポリエステルカーボネートでもよい。脂肪族の2官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の2官能性のカルボン酸としては、例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。2官能性アルコールとしては脂環族ジオールがより好適であり、例えば、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール等が例示される。本発明では、この他に、ポリオルガノシロキサン単位を共重合したポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0035】
本発明の樹脂組成物におけるA成分(芳香族ポリカーボネート)は、2価フェノール成分の異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体等、各種の芳香族ポリカーボネートを2種以上を混合したものであってもよい。また、製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネート等を2種以上混合して使用することもできる。
【0036】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0037】
また、かかる重合反応において、通常、末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えば、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール等の単官能フェノール類を用いるのが好ましい。さらに、単官能フェノール類としては、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール、トリアコンチルフェノール等を挙げることができる。かかる末端停止剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0038】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×10〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0039】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0040】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0041】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0042】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩なとが好ましく挙げられる。
【0043】
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は特定されない。しかしながら粘度平均分子量は、10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工特性が低下するようになるので、10,000〜50,000の範囲が好ましく、12,000〜30,000の範囲がより好ましく、15,000〜28,000の範囲が更に好ましい。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。すなわち、粘度平均分子量が50,000を超える高分子量の芳香族ポリカーボネート成分を含有することができる。
【0044】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0045】
尚、本発明の樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、かかる可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上式により算出される20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求め、上記の式により粘度平均分子量Mを算出する。
【0046】
本発明のB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩である。更に該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩が好適である。尚、以下“陽イオン交換容量を有し、かつ有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩”を、単に“有機化層状珪酸塩”と称する場合がある。
【0047】
B成分の層状珪酸塩は、SiO連鎖からなるSiO四面体シート構造とAl、Mg、Li等を含む八面体シート構造との組み合わせからなる層からなり、その層間に交換性陽イオンの配位した珪酸塩(シリケート)または粘土鉱物(クレー)である。これらは例えば、スメクタイト系鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、および膨潤性雲母などに代表される。具体的には、スメクタイト系鉱物としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、フッ素ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スチブンサイト等が挙げられ、膨潤性雲母としては、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性合成雲母等が挙げられる。これら層状珪酸塩は、天然品、合成品のいずれも使用可能である。合成品は、例えば水熱合成、溶融合成、固体反応によって製造される。
【0048】
層状珪酸塩の中でも、陽イオン交換容量などの点から、モンモリロナイト、ヘクトライト等のスメクタイト系粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母等の膨潤性を持ったフッ素雲母が好適に用いられ、ベントナイトを精製して得られるモンモリロナイトや合成フッ素雲母が、純度などの点からより好適である。更に、良好な機械特性が得られる合成フッ素雲母が特に好ましい。
【0049】
B成分である層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、50〜200ミリ当量/100gである必要があるが、好ましくは80〜150ミリ当量/100g、さらに好ましくは100〜150ミリ当量/100gである。陽イオン交換容量は、土壌標準分析法として国内の公定法となっているショーレンベルガー改良法によってCEC値として測定される。層状珪酸塩の陽イオン交換容量は、非晶性熱可塑性樹脂、殊に芳香族ポリカーボネート樹脂への良好な分散性を得るためには、50ミリ当量/100g以上の陽イオン交換容量が必要であるが、200ミリ当量/100gより大きくなると、非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化が大きくなり、殊に本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の熱劣化への影響が大きくなってくる。この層状珪酸塩は、そのpHの値が7〜10であることが好ましい。pHの値が10より大きくなると、本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の樹脂組成物に熱安定性を低下させる傾向が現れる。
【0050】
B成分の層状珪酸塩としては、有機オニウムイオンが層状珪酸塩の層間にイオン交換されたもの(有機化層状珪酸塩)が好ましい。該有機オニウムイオンは、通常ハロゲンイオン等との塩として取り扱われる。ここで有機オニウムイオンとしては、例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、複素芳香環由来のオニウムイオン等が挙げられ、オニウムイオンとしては1級、2級、3級、4級のいずれも使用できるが、4級オニウムイオンが好ましく、オニウムイオンとして4級アンモニウムイオンおよび4級ホスホニウムイオンが好適である。
【0051】
該イオン化合物には各種の有機基が結合したものが使用できる。有機基としてはアルキル基が代表的であるが、芳香族基をもったものでもよく、またエーテル基、エステル基、二重結合部分、三重結合部分、グリシジル基、カルボン酸基、酸無水物基、水酸基、アミノ基、アミド基、オキサゾリン環など各種官能基を含有するものでもよい。
【0052】
有機オニウムイオンの具体例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムの如き同一のアルキル基を有する4級アンモニウム;トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルデシルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム,トリメチルイコサニルアンモニウムの如きトリメチルアルキルアンモニウム;トリメチルオクタデセニルアンモニウムの如きトリメチルアルケニルアンモニウム;トリメチルオクタデカジエニルアンモニウムの如きトリメチルアルカジエニルアンモニウム;トリエチルドデシルアンモニウム、トリエチルテトラデシルアンモニウム、トリエチルヘキサデシルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウムの如きトリエチルアルキルアンモニウム;トリブチルドデシルアンモニウム、トリブチルテトラデシルアンモニウム、トリブチルヘキサデシルアンモニウム、トリブチルオクタデシルアンモニウムの如きトリブチルアルキルアンモニウム;ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムの如きジメチルジアルキルアンモニウム;ジメチルジオクタデセニルアンモニウムの如きジメチルジアルケニルアンモニウム;ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウムの如きジメチルジアルカジエニルアンモニウム;ジエチルジドデシルアンモニウム、ジエチルジテトラデシルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウムの如きジエチルジアルキルアンモニウム;ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム、ジブチルジオクタデシルアンモニウムの如きジブチルジアルキルアンモニウム;トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウムの如きトリアルキルメチルアンモニウム;トリオクチルエチルアンモニウム、トリドデシルエチルアンモニウムの如きトリアルキルエチルアンモニウム;トリオクチルブチルアンモニウム、トリデシルブチルアンモニウムの如きトリアルキルブチルアンモニウムが挙げられる。
【0053】
また、メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きメチルベンジルジアルキルアンモニウム;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウムの如きジベンジルジアルキルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等の芳香環を有する4級アンモニウム等を例示することができる。さらに、トリメチルフェニルアンモニウムの如き芳香族アミン由来の4級アンモニウム;メチルジエチル[PEG]アンモニウムおよびメチルジエチル[PPG]の如きトリアルキル[PAG]アンモニウム;メチルジメチルビス[PEG]アンモニウムの如きジアルキルビス[PAG]アンモニウム;エチルトリス[PEG]アンモニウムの如きアルキルトリス[PAG]アンモニウムが挙げられる。また、前記アンモニウムイオンの窒素原子がリン原子に置換したホスホニウムイオンを用いることもできる。
【0054】
これらの有機オニウムイオンは、単独使用および2種以上の組合せ使用のいずれも選択できる。なお、前記“PEG”の表記はポリエチレングリコールを、“PPG”の表記はポリプロピレングリコールを“PAG”の表記はポリアルキレングリコールを示す。ポリアルキレングリコールの分子量としては100〜1,500のものが使用できる。
【0055】
これら有機オニウムイオン化合物の分子量は、100〜600であることがより好ましい。より好ましくは150〜500である。分子量が600より多いときには、場合により芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化を促進したり、樹脂組成物の耐熱性を損なってしまう傾向が現れる。尚、かかる有機オニウムイオンの分子量は、ハロゲンイオン等のカウンターイオン分を含まない有機オニウムイオン単体の分子量を指す。
【0056】
本発明において、B成分の好適な態様は、下記一般式(I)で示される有機オニウムイオンでイオン交換されたものである。
【0057】
【化3】
Figure 2004042595
【0058】
上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R〜Rは互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。これらのR〜Rは、前記の条件を満たす限り、その一部が互いに同一の基であってもよく、全部または一部が相異なる基であってもよい。
【0059】
本発明のB成分において使用される有機オニウムイオンのさらに好適な態様は、上記一般式(I)において次の条件を満足するものである。すなわち、Mは窒素原子またはリン原子であり、RおよびRはそれぞれ炭素原子数6〜16のアルキル基である。Rは炭素原子数1〜16のアルキル基であり、かつRは炭素原子数1〜4のアルキル基である。なお、RとRとは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよく、また、RとRとは互いに同一の基であっても相異なる基であってもよい。
【0060】
上記一般式(I)で示される有機オニウムイオンのより好適な態様は、(i)前記Rが炭素原子数1〜4のアルキル基の場合である。より好しくは(ii)RおよびRがそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基であって、かつRおよびRがそれぞれ炭素原子数7〜14のアルキル基の場合である。さらに好ましくは、(iii)RおよびRがそれぞれ炭素原子数1〜4のアルキル基で、かつRおよびRは炭素原子数7〜12、特に好ましくは炭素原子数8〜11、のアルキル基の場合である。なお、これらのうちでも、RおよびRが炭素原子数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基またはエチル基、さらに好ましくはメチル基の4級アンモニウムイオンが特に好適である。
【0061】
これら(i)〜(iii)のより好適な態様(さらに好ましい態様を含む)によれば、樹脂組成物の耐加水分解性が特に優れたものとなり、本発明の金属層または金属酸化物層を有する成形品に良好な長期実用特性を与える。
【0062】
層状珪酸塩への有機オニウムイオンのイオン交換は、極性溶媒中に分散させた層状珪酸塩に、有機オニウムイオンを添加し、析出してくるイオン交換化合物を収集することによって作製することができる。通常、このイオン交換反応は、有機オニウムイオン化合物を層状珪酸塩のイオン交換容量に対して、1.0〜1.5当量を加えて、ほぼ全量の層間の金属イオンを有機オニウムイオンで交換させるのが一般的であるが、この交換割合を一定の範囲に制御することも、芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱劣化を抑制するうえで有効である。ここで有機オニウムイオンでイオン交換される割合は、層状珪酸塩のイオン交換容量に対して40%以上であることが好ましい。かかるイオン交換容量の割合は好ましくは40〜95%であり、より好ましくは40〜80%の範囲である。
【0063】
ここで、有機オニウムイオンの交換割合は、交換後の化合物について、熱重量測定装置等を用いて、有機オニウムイオンの熱分解による重量減少を求めることにより算出することができる。
【0064】
本発明で用いられるB成分の層状珪酸塩の、A成分との組成割合は、A成分100重量部あたり0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部である。この組成割合が0.1重量部より小さいときには芳香族ポリカーボネート樹脂など非晶性熱可塑性樹脂の熱膨張率の低下および曲げ弾性率の向上において十分でなく、50重量部より大きくなると組成物の熱安定性が低下し実用的な樹脂組成物は得られにくい。
【0065】
更に本発明の樹脂組成物は上記A成分およびB成分の所定量からなり、かつ(i)B成分はその60%以上の数割合が100nm以下の厚みを有し、かつ(ii)樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいことを特徴とする分散形態を有することが好ましい。かかる(ii)の特徴は、B成分のより好ましい態様である有機化層状珪酸塩においては、有機化層状珪酸塩を含有する樹脂組成物における層状珪酸塩の底面間隔が、有機化層状珪酸塩単独における層状珪酸塩の底面間隔に対して小さいことを意味する。
【0066】
上記(i)の特徴は、熱可塑性樹脂組成物の透過型電子顕微鏡撮影より求めることができる。すなわち、ミクロトームを用いて熱可塑性樹脂組成物を50〜100nmの厚みを有する観察試料とし、該観察試料を約10,000倍の倍率におい観察する。かかる観察写真から画像解析を行い層状珪酸塩の厚みを計測することにより上記(i)の特徴に関する知見を得ることができる。
【0067】
上記(i)の特徴において、B成分はその70%以上の数割合が100nm以下の厚みを有することが好ましく、80%以上の数割合が100nm以下の厚みを有することがより好ましい。
【0068】
上記(ii)の特徴は、X線回折測定における回折線の回折角度からBraggの条件により求められる。層状珪酸塩の底面間隔およびX線回折測定については、たとえば「粘土ハンドブック」(日本粘土学会編:技報堂出版)などに記載されている。有機化層状珪酸塩のX線回折測定を行うには、粉末状の試料を試料台に充填して測定することができ、また組成物中の層状珪酸塩のX線回折測定を行うには、組成物を例えば射出成形や押出成形などで平板に成形した後、平面部分を試料台開口部に、測定基準面と同一になるよう試料を設置し測定することができる。
【0069】
上記(ii)の特徴、すなわち樹脂組成物中のB成分における層状珪酸塩の底面間隔は、B成分単独における層状珪酸塩の底面間隔よりも小さいとは、その底面間隔がX線回折測定において、その底面間隔に由来する回折ピークの回折角度(2θ)が大きくなることを指す。より好ましくはその回折角度(2θ)の差が0.1°以上あることを指し、更に好ましくはその回折角度(2θ)の差が0.2°〜4°の範囲にあることを指す。またその底面間隔の縮小幅の絶対値としては0.1nm以上が好ましく、一方上限は1.5nm以下が好ましい。
【0070】
本発明における上記(ii)の特徴を達成する方法としては例えば次の方法が例示される。▲1▼層間が引き合う成分を層間に導入して層間距離を縮める(第3成分を配合する)。▲2▼層間に挿入された有機化剤同士を反応させ層間を引き合わせ層間距離を縮める。かかる反応方法としては電子線や放射線の照射などが挙げられる。特に低温下において照射することが好ましい。ここで特に▲1▼の方法が簡便であり好適である。またかかる▲1▼および▲2▼の方法は、予めA成分と混合する前に行うことができ、A成分と混合するときに行うこともできる。予めA成分と混合する前に行う方法がより好ましい。
【0071】
上記▲1▼の方法における第3成分としては、A成分の非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物が好適である。更にかかる化合物はB成分の層状珪酸塩を樹脂中において微分散しやすくすることにより、層状珪酸塩を含有した樹脂組成物を樹脂単体と同等の表面平滑性とする。更にかかる微分散は層状珪酸塩のアスペクト比を実質的に高め、高い効率で樹脂組成物の曲げ弾性率を向上させ、熱膨張率を低下させる。
【0072】
本発明のC成分は、非晶性熱可塑性樹脂(A成分)との親和性を有し、かつ親水性成分を有する化合物である。C成分のかかる構成は、非晶性熱可塑性樹脂および層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩の双方に対する良好な親和性を生み出す。非晶性熱可塑性樹脂および層状珪酸塩双方に対する親和性は2種の成分の相溶性を向上させ、層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩は非晶性熱可塑性樹脂中での微細かつ安定して分散するようになる。
【0073】
層状珪酸塩の分散に関するC成分の機能は、異種ポリマー同士を相溶化させるために使用されるポリマーアロイ用相溶化剤(コンパティビライザー)と同様と推測される。したがって、C成分は、低分子化合物よりも重合体であることが好ましい。また、重合体の方が混練加工時の熱安定性にも優れる。該重合体の平均繰り返し単位数は5以上が好ましく、10以上がより好ましい。一方、該重合体の平均分子量の上限においては数平均分子量で2,000,000以下であることが好ましい。かかる上限を超えない場合には良好な成形加工性が得られる。
【0074】
本発明の樹脂組成物に配合されるC成分が重合体である場合、その基本的構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
ア)前記非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αとβとからなるグラフト共重合体(主鎖がα、グラフト鎖がβ、並びに主鎖がβ、グラフト鎖がαのいずれも選択できる。)、αとβとからなるブロック共重合体(ジ−、トリ−、等ブロックセグメント数は2以上を選択でき、ラジアルブロックタイプ等を含む。)およびαとβとからなるランダム共重合体。ここで、αおよびβは重合体セグメント単位および単量体単位のいずれをも意味するが、α成分は非晶性熱可塑性樹脂との親和性の観点から重合体セグメント単位であることが好ましい。
イ)前記非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分をα、親水性成分をβとするとき、αの機能は重合体全体によって発現され、βが該α内に含まれる構造を有する重合体。すなわち、α単独では非晶性熱可塑性樹脂との親和性が十分ではないものの、αとβとが組み合わされ一体化されることにより、良好な親和性が発現する場合である。α単独の場合にも非晶性熱可塑性樹脂との親和性が良好であって、かつβとの組合せによってさらに親和性が向上する場合もある。したがってこれらの構造ア)およびイ)はその一部において重複することがある。
【0075】
本発明におけるC成分としては、α分のみでも非晶性熱可塑性樹脂に対する親和性が高く、さらにβが付加したC成分全体においてその親和性が一段と高くなるものが好適である。
【0076】
ここで、C成分における非晶性熱可塑性樹脂に親和性を有する成分(以下αと称する場合がある)について説明する。前記の如くC成分は、ポリマーアロイにおける相溶化剤との同様の働きをすると考えられることから、αには相溶化剤と同様の重合体に対する親和性が求められる。したがって、αは非反応型と反応型とに大略分類できる。
【0077】
非反応型では、以下の要因を有する場合に親和性が良好となる。すなわち、非晶性熱可塑性樹脂とαとの間に、▲1▼化学構造の類似性、▲2▼溶解度パラメータの近似性(溶解度パラメータの差が1(cal/cm1/2以内、すなわち約2.05(MPa)1/2以内が目安とされる)、▲3▼分子間相互作用(水素結合、イオン間相互作用等)およびランダム重合体特有の擬引力的相互作用等の要因を有することが望まれる。これらの要因は相溶化剤とポリマーアロイのベースになる重合体との親和性を判断する指標としても知られている。
【0078】
反応型では、相溶化剤において非晶性熱可塑性樹脂と反応性を有する官能基を有するものを挙げることができる。例えば、非晶性熱可塑性樹脂として好適な芳香族ポリカーボネートに対しては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、エステル結合、カーボネート基およびカーボネート結合等を例示することができる。
【0079】
一方で、非晶性熱可塑性樹脂とαとが良好な親和性をもつ場合、その結果として非晶性熱可塑性樹脂とαとの混合物において単一のガラス転移温度(Tg)を示すか、または非晶性熱可塑性樹脂のTgがαのTgの側に移動する挙動が認められるので、非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有する成分(α)は、かかる挙動により判別することができる。
【0080】
前記の如く、本発明の組成物の構成成分として有用なC成分における非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有する成分(α)は、非反応型であることが好ましく、殊に溶解度パラメータが近似することにより良好な親和性を発揮することが好ましい。これは反応型に比較して非晶性熱可塑性樹脂との親和性により優れるためである。また反応型は過度に反応性を高めた場合、副反応によって重合体の熱劣化が促進される欠点がある。
【0081】
非晶性熱可塑性樹脂(A成分)およびC成分のαの溶解度パラメータは次の関係を有することが好ましい。すなわち、非晶性熱可塑性樹脂(A成分)の溶解度パラメータをδ((MPa)1/2)とし、C成分におけるαの溶解度パラメータまたはC成分全体の溶解度パラメータをδα((MPa)1/2)としたとき、次式:
δα=δ±2 ((MPa)1/2
の関係を有することが好ましい。
【0082】
例えば、A成分として好適な芳香族ポリカーボネート樹脂の溶解度パラメータは通常約10(cal/cm1/2(すなわち約20.5((MPa)1/2))とされていることから、δαは18.5〜22.5((MPa)1/2)の範囲が好ましく、19〜22((MPa)1/2)の範囲がより好ましい。
【0083】
かかる溶解度パラメータδαを満足する重合体成分の具体例としては、スチレンポリマー、アルキル(メタ)アクリレートポリマー、アクリロニトリルポリマー等のビニル系重合体(例えば、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等に代表される)を挙げることができる。本発明の樹脂組成物の耐熱性の保持のためには、これらのうちでもTgの高い重合体成分を用いることが好ましい。
【0084】
ここで溶解度パラメータは、「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION,1999年)中に記載されたSmallの値を用いた置換基寄与法(Group contribution methods)による理論的な推算方法が利用できる。非晶性熱可塑性樹脂のTgは既に述べたようにJIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求めることが可能である。
【0085】
前記のA成分の非晶性熱可塑性樹脂と親和性を有する成分αは、C成分中5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。C成分全体をαとする態様も可能であることから上限は100重量%であってよい。
【0086】
一方、C成分における親水性成分(以下、βと称する場合がある)は、親水基(水との相互作用の強い有機性の原子団)を有する単量体および親水性重合体成分(重合体セグメント)より選択される。親水基はそれ自体広く知られ、下記の基が例示される。
1)強親水性の基:−SOH、−SOM、−OSOH、−OSOH、−COOM、−NRX(R:アルキル基、X:ハロゲン原子、M:アルカリ金属、−NH) 等、
2)やや小さい親水性を有する基:−COOH、−NH、−CN、−OH、−NHCONH 等、
3)親水性が無いかまたは小さい基:−CHOCH、−OCH、−COOCH、−CS 等
本発明の組成物に配合するC成分としては、親水基が前記1)または2)に分類されるものが使用され、なかでも、前記2)の親水基は非晶性熱可塑樹脂、殊に非晶性熱可塑性樹脂として好適な芳香族ポリカーボネートの溶融加工時の熱安定性により優れるため好ましい。親水性が高すぎる場合には芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。これはかかる親水基が直接カーボネート結合と反応し、熱分解反応を生じるためである。
【0087】
なお、かかる親水基は1価および2価以上の基のいずれであってもよい。C成分が重合体の場合、2価以上の官能基とは該基が主鎖を構成しないものをいい、主鎖を構成するものは結合として官能基とは区別する。具体的には、主鎖を構成する炭素等の原子に付加した基、側鎖の基および分子鎖末端の基は、2価以上であっても官能基である。
【0088】
親水基のより具体的な指標は、溶解度パラメータである。溶解度パラメータの値が大きいほど親水性が高くなることは広く知られている。基ごとの溶解度パラメータは、Fedorsによる基ごとの凝集エネルギー(Ecoh)および基ごとのモル体積(V)より算出することができる(「ポリマー・ハンドブック 第4版」(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION),VII/685頁、1999年、Polym.Eng.Sci.,第14巻,147および472頁,1974年、等参照)。さらに親水性の大小関係のみを比較する観点からは、凝集エネルギー(Ecoh)をモル体積(V)で除した数値(Ecoh/V;以下単位は“J/cm”とする)を親水性の指標として使用できる。
【0089】
C成分におけるβに含まれる親水基は、Ecoh/Vが600以上であることが必要であり、好ましくはEcoh/Vは800以上である。800以上の場合にはA成分として好適な芳香族ポリカーボネートにおけるカーボネート結合のEcoh/Vを超え、カーボネート結合よりも高い親水性を有する。Ecoh/Vは900以上がより好ましく、950以上がさらに好ましい。
【0090】
上述のとおり、親水性が高すぎる場合には、非晶性熱可塑性樹脂、特に好適な芳香族ポリカーボネートの熱劣化が生じやすくなる。したがってEcoh/Vは2,500以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,500以下がさらに好ましい。
【0091】
C成分の親水性成分(β)として、親水性重合体成分(重合体セグメント)も選択され得る。C成分の重合体中に含まれる親水性重合体のセグメントはβとなる親水性重合体としては、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸金属塩(キレート型を含む)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびポリヒドロキシエチルメタクリレート等が例示される。これらのなかでも、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレートが好ましく例示される。これらは良好な親水性と本発明において好適な芳香族ポリカーボネート樹脂に対する熱安定性(溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの分解の抑制)とを両立できるためである。なお、ポリアルキレンオキシドとしては、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0092】
親水基を有する単量体および親水性重合体成分のいずれにおいても、βは酸性の官能基(以下単に“酸性基”と称することがある)を有するのが好ましい。かかる酸性基は、本発明において好適な熱可塑性樹脂である芳香族ポリカーボネートの溶融加工時の熱劣化を抑制する。とりわけ、窒素原子を含まない酸性基がより好適である。好適な酸性基としては、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基等が例示される。
【0093】
これに比して、アミド基やイミド基等の窒素原子を含む官能基は溶融加工時の芳香族ポリカーボネートの熱劣化を十分には抑制しない場合がある。これは窒素原子が局所的に塩基性を有しカーボネート結合の熱分解を生じさせるためと考えられる。
【0094】
C成分におけるβの割合は、βが親水基を有する単量体の場合、官能基1つ当たりの分子量である官能基当量として、60〜10,000であり、70〜8,000が好ましく、80〜6,000がより好ましく、100〜3,000がさらに好ましい。また、βが親水性重合体セグメントの場合、C成分100重量%中βが5〜95重量%であることが適当であり、10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。
【0095】
前記非晶性熱可塑性樹脂に対して親和性を有する成分(α)と親水性成分(β)とを有する有機化合物(C成分)の製造方法としては、βの単量体とαを構成する単量体とを共重合する方法、βの重合体成分をαとブロックまたはグラフト共重合する方法、並びに、βをαに直接反応させて付加する方法等が例示される。
【0096】
C成分のより好適な具体例として、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつオキサゾリン基を有する重合体、あるいは、芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ水酸基を有する重合体、が例示される。これらのC成分として好ましい重合体においては、その分子量は重量平均分子量において1万〜100万の範囲が好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。かかる重量平均分子量は標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出される。
【0097】
上記の中でも芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつ酸性の官能基を有する重合体が好ましく、更に好ましくは芳香族ポリカーボネートとの親和性を有しかつカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基とを有する重合体である。また、芳香族ポリカーボネートの耐熱性保持効果の観点から、重合体は芳香環成分を主鎖に有するもの、およびスチレン成分を主鎖に有するものが好ましい。上記の点からカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)が本発明のC成分として特に好適である。。ここでスチレン系重合体とはスチレン等の芳香族ビニル化合物を重合した繰返し単位を重合体成分として含有する重合体を指す。
【0098】
本発明のC成分の組成割合は、A成分100重量部あたり0.5〜50重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。0.5重量部より少ない場合には層状珪酸塩の分散効果が十分でなく、また芳香族ポリカーボネートの熱劣化を抑制する効果も不十分となる場合がある。また50重量部を超えると耐衝撃性および耐熱性などが低下する場合がある。
【0099】
本発明のC成分として特に好適なカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分)について詳述する。かかるカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基の割合としては、0.1〜12ミリ当量/gが好ましく、0.5〜5ミリ当量/gがより好ましい。ここでC1成分における1当量とは、カルボキシル基が1モル存在することをいい、かかる値は水酸化カリウムなどの逆滴定により算出することが可能である。
【0100】
カルボキシル基の誘導体からなる官能基としては、カルボキシル基の水酸基を(i)金属イオンで置換した金属塩(キレート塩を含む)、(ii)塩素原子で置換した酸塩化物、(iii)−ORで置換したエステル(Rは一価の炭化水素基)、(iv)−O(CO)Rで置換した酸無水物(Rは一価の炭化水素基)、(v)−NRで置換したアミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)、並びに(vi)2つのカルボキシル基の水酸基を=NRで置換したイミド(Rは水素又は一価の炭化水素基)などを挙げることができる。
【0101】
カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基(以下、単に“カルボキシル基類”と称する)を有するスチレン系重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を取ることができる。例えば、▲1▼カルボキシル基を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合する方法、及び▲2▼スチレン系重合体に対してカルボキシル基類を有する化合物又は単量体を結合または共重合する方法などを挙げることができる。
【0102】
上記▲1▼の共重合においては、ランダム共重合体の他に交互共重合体、ブロック共重合体、テーパード共重合体などの各種形態の共重合体が使用できる。また共重合の方法においても溶液重合、懸濁重合、塊状重合などのラジカル重合法の他、アニオンリビング重合法やグループトランスファー重合法などの各種重合方法を取ることができる。更に一旦マクロモノマーを形成した後重合する方法も可能である。
【0103】
上記▲2▼の方法としては、例えばスチレン系重合体又は共重合体に必要に応じて、パーオキサイドや2,3−ジメチル−2,3ジフェニルブタン(ジクミル)などのラジカル発生剤を加えて、高温下で反応又は共重合する方法を挙げることができる。かかる方法はスチレン系重合体または共重合体に熱的に反応活性点を生成し、かかる活性点に反応する化合物または単量体を反応させるものである。反応に要する活性点を生成するその他の方法として、放射線や電子線の照射やメカノケミカル手法による外力の付与などの方法も挙げられる。更にスチレン系共重合体中に予め反応に要する活性点を生成する単量体を共重合しておく方法も挙げられる。反応のための活性点としては不飽和結合、パーオキサイド結合、および立体障害が高く熱的に安定なニトロオキシドラジカルなどを挙げることができる。
【0104】
上記カルボキシル基類を有する化合物又は単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸及びその誘導体、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等の無水マレイン酸の誘導体、並びにグルタルイミド構造やアクリル酸と多価の金属イオンで形成されたキレート構造等が挙げられる。これらの中でも金属イオンや窒素原子を含まない官能基を有する単量体が好適であり、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基を有する単量体がより好適である。これらの中でも特に好ましくは無水マレイン酸である。
【0105】
また、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができるが、特にスチレンが好ましい。
【0106】
さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等を共重合成分として使用しても差し支えない。
【0107】
上記カルボキシル基類を有するスチレン系重合体のうち、本発明において好適であるのは、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体を共重合してなるスチレン系共重合体である。かかる共重合体においては比較的多くのカルボキシル基類を安定してスチレン系重合体中に含むことが可能となるためである。より好適な態様としてカルボキシル基類を有する単量体とスチレン系単量体とを共重合してなるスチレン系共重合体を挙げることができ、殊に好適な態様はスチレン−無水マレイン酸共重合体である。スチレン−無水マレイン酸共重合体は、層状珪酸塩中のイオン成分及び芳香族ポリカーボネート樹脂のいずれに対しても高い相溶性を有することから、層状珪酸塩(B成分)を樹脂組成物中へ良好に微分散させることができる。さらに、カルボン酸無水物基の作用により層状珪酸塩、殊に有機化層状珪酸塩を含有する樹脂組成物において良好な熱安定性が得られる。またかかる共重合体それ自体の熱安定性が良好であるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の溶融加工に必要な高温条件に対しても高い安定性を有する。
【0108】
上記カルボキシル基類を有する単量体を共重合してなるスチレン系共重合体の組成については上述のβの割合における条件を満足する範囲内において何ら制限はないが、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系単量体化合物99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)を含み、共重合可能な他の化合物成分を0〜29重量%を含むものを用いるのが好ましく、カルボキシル基類を有する単量体を1〜30重量%(好ましくは5〜25重量%)、スチレン系化合物99〜70重量%(好ましくは95〜75重量%)の共重合体が特に好ましい。
【0109】
また、本発明のC成分の好ましい態様であるC1成分の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量は1万〜100万の範囲にあることが好ましく、5万〜50万の範囲がより好ましい。尚、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0110】
本発明のC成分として好適なポリアルキレンオキシドセグメントを有する重合体、殊に好ましいポリエーテルエステル共重合体(C2成分)について説明する。
【0111】
ポリエーテルエステル共重合体は、ジカルボン酸、アルキレングリコール、およびポリ(アルキレンオキシド)グリコール、並びにこれらの誘導体から重縮合を行うことで製造される重合体である。殊に好適な例としては、下記式(II)で示されるポリアルキレンオキシド単位を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールあるいはその誘導体(C2▲1▼成分)、テトラメチレングリコールを65モル%以上含有するアルキレングリコールあるいはその誘導体(C2▲2▼成分)、およびテレフタル酸を60モル%以上含有するジカルボン酸あるいはその誘導体(C2▲3▼成分)から製造される共重合体である。
【0112】
【化4】
Figure 2004042595
【0113】
(ここで、Xは一価の有機基を表し、nおよびmはいずれも0を含む整数であり、かつ10≦(n+m)≦120である。mが2以上の場合Xは互いに同一および異なる態様のいずれも選択できる。)
【0114】
上記式(II)においてXは−CH、−CHCl、−CHBr、−CHI、および−CHOCHから選択される少なくとも1種の置換基が好ましい。Xがこれら以外の場合には置換基による立体障害が大きくなり共重合体の重合度を上げることが困難となる。またn+mが10未満の場合には層状珪酸塩が十分に分散しない場合があり、n+mが120を超える場合には、重合度の高いポリエーテルエステル共重合体が得られ難くなり、C2成分の相溶化機能が低下する場合がある。
【0115】
上記式(II)におけるポリアルキレンオキシド成分は、ポリエチレンオキシド成分と置換基Xを有する成分とのランダム共重合体、テーパード共重合体およびブロック共重合体のいずれも選択できる。上記式(II)におけるポリアルキレンオキシドは、特にm=0、すなわちポリエチレンオキシド成分のみからなる重合体成分が好ましい。
【0116】
C2▲1▼成分の共重合割合は、全グリコール成分の30〜80重量%であり、より好適には40〜70重量%である。C2▲1▼成分が30重量%より少ない場合には層状珪酸塩は十分に分散されず、機械特性の低下や外観の悪化を生ずる場合がある。C2▲1▼成分が80重量%より多い場合にも層状珪酸塩は十分に分散されず、またポリエーテルエステル共重合体自身の強度低下も加わることで、機械特性の低下や外観の悪化を生ずる場合がある。
【0117】
C2成分のポリエーテルエステル共重合体のC2▲2▼成分においては、テトラメチレングリコール以外のジオールを共重合することができる。かかるジオールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが例示される。C2▲2▼成分中テトラメチレングリコールは65モル%以上であり、75モル%以上が好ましく、85モル%以上がより好ましい。テトラメチレングリコールが65モル%未満のポリエーテルエステル共重合体は、樹脂組成物の成形性の低下を招く。
【0118】
ポリエーテルエステル共重合体のジカルボン酸あるいはその誘導体(C2▲3▼成分においては、テレフタル酸以外のジカルボン酸(カルボキシル基が2を超えるものを含む)を共重合することができるかかるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸が例示される。イソフタル酸を共重合したポリエーテルエステル共重合体はC成分として特に好適である。C2▲3▼成分中テレフタル酸は60モル%以上であり、70モル%以上が好ましく、75〜95モル%がより好ましい。テレフタル酸が60モル%未満のポリエーテルエステル共重合体は、共重合体の重合度が低下しやすく、十分な重合度のポリエーテルエステル共重合体の製造が困難となるため好ましくない。
【0119】
他の好適なC成分としては、親水基としてオキサゾリン基を含有するスチレン系共重合体(C3成分)が挙げられる。スチレン系単量体化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、ジメチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ジブロムスチレン、ビニルナフタレン等を用いることができる。さらに、これらの化合物と共重合可能な他の化合物、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等、を共重合成分として使用しても差し支えない。特に好適なC3成分の具体例としては、スチレン(2−イソプロペニル−2−オキサゾリン)−スチレン−アクリロニトリル共重合体が例示される。
【0120】
本発明の樹脂成形品は、上記の熱可塑性樹脂組成物から形成されることにより低熱膨張率、高剛性および極めて良好な表面平滑性を有し、その特性は金属層または金属酸化物層を積層する上において極めて適した特性である。殊に上記の熱可塑性樹脂組成物においてC成分を含む態様は、その層状珪酸塩が極めて良好に微分散することから低熱膨張率、高剛性および表面平滑性においてより優れ、更にその熱安定性も極めて良好であることから汎用性が高く幅広い分野において樹脂成形品を製造することができる。
【0121】
成形品の表面に金属層又は金属酸化物層を積層する手段や方法は限定されないが、例えば蒸着法、溶射法、及びメッキ法が採用される。
【0122】
蒸着法としては物理蒸着法及び化学蒸着法のいずれも可能である。例えば、物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング及びイオンプレーティング等が採用される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等が、溶射法としては大気圧プラズマ溶射法及び減圧プラズマ溶射法等が例示される。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキ及び電気メッキ法等が挙げられ、電気メッキ法においてはレーザーメッキ法を使用することができる。本発明の樹脂成形品においては、これらのうちでも蒸着法及びメッキ法が金属層を形成する上で好ましく、蒸着法が金属酸化物層を形成する上で好ましい。蒸着法及びメッキ法は組合せて使用してもよく、例えば蒸着法で形成された金属層を利用し電気メッキを行う方法等が例示される。また、スパッタ法により酸化ケイ素の薄層と酸化チタンの薄層を交互に多数積層した薄膜層を形成してもよい。
【0123】
本発明の樹脂成形品は、金属層と金属酸化物層を組合せて積層したものを含む。また金属層または金属酸化物層の樹脂成形品表面への形成は、本発明の効果を発揮する範囲内において金属層と同様に導電性を有するカーボン層や導電性ポリマー層などを含むことができる。
【0124】
上記の金属層または金属酸化物層の厚みは特に制限されない。しかしながら本発明においては比較的薄い厚みの層が好適であり、かかる場合に本発明の特徴がより活かされる。すなわち金属層または金属酸化物層による表面改質は、樹脂成形品の表面平滑性が悪いと層の厚みを大きくとる必要があるが、本発明の樹脂成形品では、薄い厚みにて効率よく改質することができる。
【0125】
本発明において金属層または金属酸化物層の厚みは、複数の層を有する場合にはその合計において、50μm以下であることが本発明の効果が発揮され好ましい。更にかかる厚みは20μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましく、2μm以下が更に好ましい。下限値としては0.001μm以上が適切である。更に、金属層または金属酸化物層を有しない樹脂成形品単体におけるJIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaの値に対して、かかるRaの500倍以内の厚みで表面改質を行うと、本発明の樹脂成形品の特長が活かされ、かかるRaの200倍以内の値の厚みであればより好ましく、100倍以内は更に好ましく、50倍以内は特に好ましい。
【0126】
本発明の樹脂成形品は、より好適にはJIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下であり、かつ樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物はASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率が2,500MPa以上であることを特徴とするものである。更に本発明の樹脂成形品は、金属層または金属酸化物層を積層する前の成形品自体の算術表面粗さRaの値が、より好ましくは0.08μm以下であり、さらに好ましくは0.05μm以下である。かかる積層前の成形品自体のRaの下限は成形を行う金型によるところが大きいが約0.001μm程度が適切である。また、曲げ弾性率の値は、樹脂組成物を構成しているA成分のみより形成された成形品(金属層または金属酸化物層を積層のない)の曲げ弾性率の値に比べて、好ましくは1.3〜3倍、より好ましくは1.4〜2.8倍になる。かくして本発明の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物の曲げ弾性率の値は2,500MPa以上、より好ましくは2,800MPa以上であり、さらに好ましくは3,000MPa以上である。一方、その上限は8,000MPaが適切であり、7,000MPaが好ましく、6,000MPaがより好ましい。
【0127】
本発明の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲で、B成分以外の強化充填材を更に配合することができる。強化充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、ワラストナイト、カオリンクレー、マイカ、タルクおよび各種ウイスカー類(チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカーなど)といった一般に知られている各種フィラーを併用することができる。形状は繊維状、フレーク状、球状、中空状を自由に選択できる。ガラス繊維、炭素繊維およびガラスフレークなどは樹脂組成物の強度や耐衝撃性の向上のためには好適である。一方本発明の樹脂組成物が有する極めて良好な表面外観(表面平滑性)をより有効に活用する場合には、強化充填材の大きさは微小であることが好ましい。具体的には繊維状充填材の場合にはその繊維径が、また板状充填材や粒状充填材の場合にはその大きさが、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。下限は0.05μm程度が適切である。かかる微小な強化充填材としてはタルク、ワラストナイト、カオリンクレー、および各種ウイスカー類が例示される。強化充填材の配合量は、全樹脂組成物100重量%あたり10重量%以下が適切であり、5重量%以下がより適切である。本発明においてより好適であるのはB成分以外の強化充填材を実質的に含まない熱可塑性樹脂組成物である。
【0128】
さらに樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物には、本発明の効果を発揮する範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂等の結晶性熱可塑性樹脂)、難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、ホスホン酸アミド化合物、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、シリコーン系難燃剤等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物、イオウ系酸化防止剤等)、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、着色剤(染料、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック等)等)、および蛍光増白剤等を配合してもよい。これら各種の添加剤は、芳香族ポリカーボネート樹脂に配合する際の周知の配合量で利用することができる。
【0129】
本発明の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物は、リン系熱安定剤を含むことが好ましい。かかるリン系熱安定剤としてはトリメチルホスフェート等のリン酸エステル、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリト−ルジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリト−ルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル、並びにテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステルなど、芳香族ポリカーボネート樹脂のリン系熱安定剤として広く知られた化合物が好適に例示される。かかるリン系熱安定剤は全組成物100重量%中0.001〜1重量%を含むことが好ましく、0.01〜0.5重量%を含むことがより好ましく、0.01〜0.2重量%を含むことが更に好ましい。かかるリン系熱安定剤の配合によりさらに熱安定性が向上し良好な成形加工特性を得ることができる。
【0130】
本発明の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる多軸押出機を用いることにより強力なせん断力で有機化層状珪酸塩は基体樹脂中に微分散させられる。一方その分散は層間を縮小させる作用が存在する下で行われることにより、層間のイオンの外部への露出は抑制される。結果して良好な分散と熱安定性とのより高度な両立が達成される。
【0131】
更に、熱可塑性樹脂組成物の溶融混練機による溶融混練において次の態様がより好適である。すなわち、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換能を有する層状珪酸塩(B成分)(特に有機化層状珪酸塩)と、A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)(特にカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体(C1成分))とを予め溶融混練しておく。その後該溶融混練物とA成分の非晶性熱可塑性樹脂、殊に好適には芳香族ポリカーボネートとを多軸押出機により溶融混練する。かかる溶融混練方法は非晶性熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させるため好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂においてはその分子量低下が特に抑制されるため好ましい溶融混練方法である。
【0132】
より具体的には、例えば、(i)B成分とC成分をベント式二軸押出機にて溶融混練しペレット化したものを、再度A成分と溶融混練する方法や、(ii)B成分とC成分をベント式二軸押出機の主供給口より投入し、A成分の一部または全部を二軸押出機の途中段階に設けられた供給口から、B成分とC成分が既に溶融混練された状態の中へ投入する方法などが挙げられる。これらB成分とC成分を予め溶融混練する方法においては、その溶融混練時に、A成分の一部を含んでいても構わない。
【0133】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して本発明の樹脂成形品におけるその金属層または金属酸化物層を積層する前の成形品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
【0134】
本発明の樹脂成形品において、その金属層または金属酸化物層を積層する前の成形品は、射出成形法より製造され、その金型温度が前記A成分のTgに対し、Tg−25〜Tg(℃)の範囲であることが好ましい。射出成形時の金型温度を前記範囲とすることによって、より精密な転写による極めて平滑な表面が形成され、例えば精密部品におけるミラーなどに好適な特性が得られる。上記金型温度のさらに好ましい範囲は、Tg−20〜Tg−5(℃)である。
【0135】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で樹脂成形品とすることもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。更に特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品として樹脂成形品とすることも可能である。
【0136】
得られた樹脂成形品は、上述した金属層または金属酸化物層を成形品表面に形成する各種の方法によって、これらの層を有する樹脂成形品とすることができる。一方本発明によれば、かかる層を形成するのに好適なメタライジング加工用熱可塑性樹脂組成物が提供される。かかるメタライジング加工用熱可塑性樹脂組成物は、上記A成分100重量部あたり、B成分0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物であり、より好適にはB成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩であるかかる熱可塑性樹脂組成物であり、更に好適にはA成分100重量部あたり、上記C成分0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物である。更にかかるA成分は芳香族ポリカーボネート樹脂が好適であり、かかるC成分はカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体が好適であり、特にカルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有する単量体を共重合してなるスチレン系共重合体が好適である。
【0137】
本発明の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品は、各種分野において好適に用いられる。例えばランプリフレクター、ポリゴンミラー、回折格子、および反射鏡(特にレーザー光用)などの精密光反射部品、各種の光学記録媒体、ディスプレー装置のセルや太陽電池に使用される透明電極、磁気記録媒体、コンデンサー、スピーカー、並びにEMIシールドされたハウジング成形品が挙げられる。また各種メッキ装飾された成形品がその用途として例示される。
【0138】
特に、良好な剛性および軽量との特徴を活かし、高速回転または高速に可動する部材において好適である。例えばポリゴンミラーや各種の可動型反射鏡、光学記録媒体、磁気記録媒体、およびスピーカーなどを挙げることができる。
【0139】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
なお、実施例中の各種特性の測定は、以下の方法によった。原料は以下の原料を用いた。
(1)層状珪酸塩の含有量
試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形し、成形した試験片を切削してるつぼに入れて秤量し、600℃まで昇温し、そのまま6時間保持した後で放冷し、るつぼに残った灰化残渣を秤量することで作成した各樹脂組成物中における層状珪酸塩(無機分)量(重量%)を測定した。
(2)分子量
試験片を上記(1)と同条件で成形し、試験片の粘度平均分子量を本文中記載の方法にて測定した。
(3)機械特性
試験片を上記(1)と同条件で成形し、成形された試験片に対してASTM D790に準拠して曲げ試験を行った(試験片形状:長さ127mm×幅12.7mm×厚み6.4mm)。
(4)算術平均粗さ(Ra)
JIS B0601−1994に準拠して、表面粗さ形状測定機(サーフコム1400A:(株)東京精密製)を用い、樹脂成形品の算術平均粗さRa(μm)を測定した。
(5)層状珪酸塩の分散厚み
ミクロトームにて、50〜100nmの切片を作成し、透過型電子顕微鏡(LEM−100:トプコン(株)製)を用いて、加速電圧100kVにて観察し、倍率10,000倍で写真撮影した。撮影した写真を画像解析し層状珪酸塩の厚みを計測することにより、その分散厚みを求めた。
(6)層状珪酸塩の底面間隔測定
粉末X銭回折装置(RIGAKU ROTAFLEX RU300:(株)リガク製)を用いて測定を行った。有機化層状珪酸塩の底面間隔は、粉末サンプルをガラス試料台の窪みに充填して測定に供した。また、樹脂組成物中の層状珪酸塩の底面間隔は、厚み6.4mmの棒状試験片を(1)と同条件にて成形し、長さ20mmに切断した測定成形品を、試料台の開口部に測定基準面と同一面になるように固定して測定に供した。測定によって得られた回折ピークは層状珪酸塩の底面ピークであるが、そのうち、最も小角側の回折ピークが(001)面の底面間隔に対応するピークであるとして、下記Braggの式により底面間隔を算出した。
【0141】
d=λ/(2sinθ)
(但し、式中 d:底面間隔(層間距離)(nm)、2θ:回折ピークの回折角度(°)、λ:X線測定波長(nm))
測定の条件について以下に記す。
X−ray source:Cu−Kα(X線測定波長1.5418×10−10m)、50kV−200mA
Slit:DS/SS 1/2°
Rs 0.15mm−graphite monochrometer−0.45mm
Method:2θ−θ
Scan:0.05step/1〜4sec
Scan範囲:1〜20°
【0142】
[原料]
原料としては、以下のものを用いた。
【0143】
(A成分:ポリカーボネート樹脂)
ホスゲン法で作成されたビスフェノールA及び末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールからなる、粘度平均分子量23,700のポリカーボネート樹脂。
【0144】
(B成分:層状珪酸塩)
合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:ソマシフ ME−100、陽イオン交換容量:110ミリ当量/100g)
また層状珪酸塩の層間陽イオンをイオン交換するのに用いた有機オニウムイオンは次のとおりであった。
【0145】
▲1▼ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)
▲2▼トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)
▲3▼ジ−n−デシルジメチルアンモニウムクロライド(東京化成工業(株)製:1級試薬)
【0146】
(C成分)
(C−1)スチレン−無水マレイン酸共重合体(ノヴァケミカルジャパン(株)製:DYLARK 332−80、無水マレイン酸量約15重量%)
(C−2)後述の方法により作製したポリエーテルエステル共重合体
その他成分としてリン酸トリメチル(TMP:大八化学工業(株)製)を用い、比較用のフィラーとしてタルク(HST−0.8:林化成(株)製)、ガラス繊維(GF:T−511、13μm径、3mmのチョップドストランド:日本電気硝子(株)製)を用いた。
【0147】
[層間化合物の作製方法]
合成フッ素雲母への、上記有機オニウムのイオン交換を次の方法により行った。
【0148】
合成フッ素雲母(コープケミカル(株)製:ソマシフ ME−100)約100gを精秤しこれを室温の水10リットルに撹拌分散し、ここにオニウムイオンのクロライドを合成フッ素雲母の陽イオン交換当量に対して種々当量(全て1.2倍当量)を添加して6時間撹拌した。生成した沈降性の固体を濾別し、次いで30リットルの脱塩水中で撹拌洗浄後再び濾別した。この洗浄と濾別の操作を3回行った。得られた固体は3〜7日の風乾後乳鉢で粉砕し、更に50℃の温風乾燥を3〜10時間行い(ゲストのオニウムイオンの種類により異なる)、再度乳鉢で最大粒径が100μm程度となるまで粉砕した。かかる温風乾燥により窒素気流下120℃で1時間保持した場合の熱重量減少で評価した残留水分量が2〜3重量%とした。同操作を繰り返して必要量を得た。オニウムイオンのイオン交換割合については、イオン交換された層状珪酸塩の、窒素気流下500℃で3時間保持した場合の残渣の重量分率を測定することにより求めた。作製した有機オニウムイオン交換合成フッ素雲母を表1に示す。
【0149】
【表1】
Figure 2004042595
【0150】
[ポリエーテルエステル共重合体の作製方法]
ジメチルテレフタレート(DMT)、ジメチルイソフタレート(DMI)、テトラメチレングリコール(TMG)、エチレングリコール(EG)、及びポリエチレングリコール(PEG)、触媒としてテトラブチルチタネート(酸成分に対して0.090mol%)を反応器に仕込み、内温190℃でエステル化反応を行った。理論量の約80%のメタノールが留出した後、昇温を開始し、徐々に減圧しながら重縮合反応を行った。1mmHg以下の真空度に到達後、240℃で200分間反応を継続した。次いで酸化防止剤イルガノックス1010をポリエチレングリコールに対して5重量%添加し、反応を終了した。精製したポリマーの組成を表2に示す。
【0151】
【表2】
Figure 2004042595
【0152】
[実施例1〜9、比較例1〜3]
各成分を表3記載の配合割合でドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付き二軸押出機((株)神戸製鋼所製:KTX30)を用い、シリンダー温度280℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得た。
【0153】
得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、試験片を射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で成形し、所定の評価を行った。得られた成形品における層状珪酸塩の分散厚み、層状珪酸塩の底面間隔(B成分単独の場合のデータを含む)、分子量、曲げ弾性率の測定結果を表3に示す。各成形品について真空蒸着装置(A6425:(株)中央理研製)を用いて、アルミニウムを0.5μmの厚みで真空蒸着した。蒸着前後の算術平均粗さRaの値を表3に示す。
【0154】
【表3】
Figure 2004042595
【0155】
[金属層または金属酸化物層を有する成形品の作成]
上記で得られたペレットを使用して下記の金属層または金属酸化物層を有する成形品を製造した。
【0156】
(実施例10)ポリゴンミラー−1の作成
上記実施例5のペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後射出成形機を用いて50mm×50mmの正方形に内接する正六角形型(中心孔の直径20mm、および厚み6mm)のポリゴンミラーを型締め力35tの射出圧縮成形機を用いて成形した。かかるポリゴンミラー成形品の側面(ミラー面)の算術平均粗さRaは0.006μmであった。かかる成形品を直流マグネトロンスパッタリング装置にかけAl被膜80nmを成形品表面に製膜した。かかる成形品の側面(ミラー面)の算術平均粗さRaは0.006μmであった。
【0157】
(実施例11)ポリゴンミラー−2の作成
上記実施例5のペレットを成形して得られたポリゴンミラー成形品を直流マグネトロンスパッタリング装置にかけAl被膜50nmを成形品表面に製膜した。更にかかる成形品に電気メッキを行い、厚み10μmのNi−Pメッキ層を積層した。かかるメッキ層を有する成形品の側面(ミラー面)の算術平均粗さRaは0.004μmであった。
【0158】
(比較例4)ポリゴンミラー−3の作成
上記比較例2のペレットを用いる以外、実施例11のポリゴンミラー−2と同様の方法でメッキ層を有するミラー成形品を作成した。かかる成形品の側面(ミラー面)の算術平均粗さRaは0.065μmであった。
【0159】
(実施例12)ポリゴンミラー−4の作成
上記実施例9のペレットを用いた以外は、実施例10と同様にしてポリゴンミラー成形品の成形および該成形品表面にAl被覆80nmの製膜を行いポリゴンミラーを作成した。成形品およびミラーの側面(ミラー面)のRaはいずれも実施例10と同じ0.006μmであった。
【0160】
(実施例13)透明導電性シートの作成
上記実施例5のペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後先端にシート用Tダイを取付けた径40mmφの単軸押出機を用い、スクリュウ回転数40rpmにて押出し、型面タッチのロールを用いて100μmのシートを押出成形した。かかるシートの算術平均粗さRaは0.008μmであった。かかるシートを50mm×50mmの大きさに切り出し、かかるシート成形品を直流マグネトロンスパッタリング装置にかけインジウムとスズとの酸化物からなる金属酸化物層を40nm、銀と金の合金層を9nm、該金属酸化物層を40nmの順に積層し、透明導電性シートを作成した。かかる金属酸化物層を有するシートの算術平均粗さRaは0.008μmであった。
【0161】
これらの結果からわかるとおり、芳香族ポリカーボネート樹脂単独(比較例1)のみならず、タルク(比較例2)やガラス繊維(比較例3)などの通常の無機強化剤を用いたときには得られない剛性と表面平滑性を兼ね備えた金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品が、実施例1〜11においては得られている。また、C成分を含まないときには、層状珪酸塩の配合量が大きくなるにつれ、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量が低下する傾向が現れるが、C成分を用いることにより、それを抑制する効果が現れ、C1成分を使用したときに特に顕著である。
【0162】
【発明の効果】
本発明の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品は、高い剛性と表面平滑性を兼ね備えており、表面に機能が付与された光学関連部品や、電子工学関連部品などといった幅広い用途に有用であり、その奏する工業的効果は格別である。

Claims (11)

  1. 非晶性熱可塑性樹脂(A成分)100重量部あたり、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有する層状珪酸塩(B成分)0.1〜50重量部を含んでなる熱可塑性樹脂組成物より形成された樹脂成形品の表面に金属層または金属酸化物層が積層されてなる金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  2. 上記B成分は、50〜200ミリ当量/100gの陽イオン交換容量を有し、かつ該陽イオン交換容量の40%以上の割合で有機オニウムイオンが層間にイオン交換されてなる層状珪酸塩である請求項1に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  3. 上記B成分における有機オニウムイオンは下記一般式(I)で示されることを特徴とする請求項2に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
    Figure 2004042595
    〔上記一般式(I)中、Mは窒素原子またはリン原子を表わす。また、R〜Rは互いに同一もしくは相異なる有機基を表わし、その少なくとも1つは炭素原子数6〜20のアルキル基または炭素原子数6〜12のアリール基であり、残りの基は炭素原子数1〜5のアルキル基である。〕
  4. 上記B成分における有機オニウムイオンは、上記一般式(I)において、RおよびRがそれぞれ同一もしくは相異なる炭素原子数6〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜16のアルキル基、Rが炭素原子数1〜4のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  5. 上記樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物は、更にA成分100重量部あたり、(C)A成分の非晶性熱可塑性樹脂との親和性を有しかつ親水性成分を有する化合物(C成分)0.1〜50重量部を含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  6. 上記A成分は芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  7. 上記C成分は、カルボキシル基及び/又はその誘導体からなる官能基を有するスチレン系重合体である請求項6に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  8. 上記金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品は、JIS B0601に準拠して測定される算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、かつ樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物はASTM D790に準拠して測定された曲げ弾性率が2,500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  9. 上記樹脂成形品上の金属層または金属酸化物層は、蒸着により形成されたものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  10. 上記樹脂成形品上の金属層は、メッキにより形成されたものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属層または金属酸化物層を有する樹脂成形品。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂成形品を構成する熱可塑性樹脂組成物からなるメタライジング加工用熱可塑性樹脂組成物。
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