JPWO2008108034A1 - 熱発電素子を用いた発電方法、熱発電素子とその製造方法、ならびに熱発電デバイス - Google Patents

熱発電素子を用いた発電方法、熱発電素子とその製造方法、ならびに熱発電デバイス Download PDF

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Abstract

高い熱発電性能を有し、より多くの用途への応用が可能となる、熱発電素子を用いた発電方法、熱発電素子および熱発電デバイスを提供する。互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、第1および第2の電極に狭持され、かつ第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、積層体はSrB6層と、Cu、Ag、AuまたはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、金属層とSrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、SrB6層および金属層の積層面は、第1の電極と第2の電極とが対向する方向に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、素子における上記方向に垂直な方向の温度差により、第1および第2の電極間に電位差が発生する熱発電素子、ならびに当該素子を用いた発電方法および熱発電デバイスとする。

Description

本発明は、熱エネルギーから直接的に電気エネルギーを得る方法である、熱発電素子を用いた発電方法に関する。また、本発明は、熱エネルギーを直接電気エネルギーへ変換する熱発電素子とその製造方法、ならびに熱発電デバイスに関する。
熱発電は、物質の両端に印加された温度差に比例して起電力が生じるゼーベック効果を利用し、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術である。この技術は、僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源などで実用化されている。
従来の熱発電素子では、キャリアの符号が異なる「p形半導体」と「n形半導体」とを、熱的に並列に、かつ電気的に直列に組み合わせた、いわゆる「π型構造」と呼ばれる構成をとることが一般的である。
熱発電素子に用いられる熱電材料の性能は、一般に、性能指数Z、またはZに絶対温度を乗じて無次元化した性能指数ZTにより評価される。ZTは、熱電材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、および熱伝導率κを用いて、式ZT=S2/ρκと記述できる。また、ゼーベック係数Sと電気抵抗率ρのみを考慮した指数であるS2/ρは、パワーファクター(出力因子)とも呼ばれ、温度差を一定とした場合における熱電材料の発電性能を評価する基準となる。
現在、熱電材料として実用化されているBi2Te3は、ZTが1程度、パワーファクターが40μW/(cm・K2)程度であり、高い熱発電性能を有するが、それでも上記π型構造を有する素子とした場合には高い熱発電性能の確保が難しく、より多くの用途での実用に足るほどには至っていない。また、Bi2Te3は耐熱性に課題があり、100℃以上の温度においてその熱発電性能が低下する他、Biを構成元素として含むため、環境に対する負荷が大きい。
特開2004−186241号公報(文献1)では、熱発電材料として、SrB6などのホウ素化合物が検討されている。これらのホウ素化合物は、常温常圧下において化学的に非常に安定である他、大気中において、およそ1000K程度、窒素などの不活性ガス雰囲気下では、およそ2500K程度の温度まで安定であり、耐熱性に優れる。また、上記化合物は、環境に対する負荷の大きい構成元素を含まない。しかし、上記ホウ素化合物のパワーファクターは18μW/(cm・K2)程度であり、上記π型構造を有する素子とした場合に、当該素子から実際に得られる熱発電性能がさらに低下するため、実用化には至っていない。
一方、π型構造とは異なる構造を有する素子として、自然に存在する、または人工的に作製された積層構造における熱電気特性の異方性を利用した素子が古くから提案されている(Thermoelectrics Handbook,Chapter 45 "Anisotropic Thermoelements",CRC Press (2006):文献2)。しかし文献2によれば、このような素子ではZTの改善が困難であることから、熱発電の用途ではなく、主に赤外線センサなど、測定分野の用途を想定した開発がなされている。
また、これと類似の構造を有する熱電材料として、Fe−Si系材料に代表される熱電特性を有する材料と、SiO2に代表される厚さ100nm以下の絶縁材料とを、基板上に縞状に交互に配列させた材料が、特開平6−310766号公報(文献3)に開示されている。文献3によれば、このような微細構造を有する材料では、熱電特性を有するFe−Si系材料を単独で用いた場合に比べて、ゼーベック係数Sを向上できる一方、絶縁材料の含有により電気抵抗率ρが増大する。このため、素子としたときの内部抵抗が増大して、得られる電力が却って低下する。
積層構造を有するその他の熱電材料として、例えば、国際公開第00/076006号パンフレット(文献4)には、半金属、金属、または合成樹脂からなる層状体を備えた材料が開示されている。当該材料は、従来のπ型構造と同様に、層状体を構成する各層の積層方向に温度差を印加し、当該方向と同じ方向に対向するように配置された一対の電極を介して電力を取り出す構成が前提となっており、文献4に開示の素子は、本質的には文献1に開示の素子とは異なる。
上述したように、従来の熱電材料では、より多くの用途で実用に足るだけの十分な熱発電性能を実現できない。また、環境に対する負荷が少ない熱電材料を有する熱発電素子の実用化が望まれる。
本発明者らは、積層体を用いた熱発電素子について鋭意研究を重ねた結果、SrB6層(ホウ化ストロンチウム)層と、特定の金属を含む金属層とからなり、上記SrB6層と上記金属層との厚さの比が特定の範囲にある積層体を用い、当該積層体を狭持する電極同士が対向する方向に対して、積層体の積層面を所定の傾斜角θで傾斜させることにより、SrB6を熱電材料として単独で用いた場合に比べて、素子のパワーファクターを増大でき、熱発電特性を大きく向上できるという意外な知見を見出し、この知見に基づいて本発明に到達するに至った。
即ち、本発明の熱発電素子を用いた発電方法は、熱発電素子に温度差を発生させて前記素子から電力を得る方法であって、前記素子は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記第1および第2の電極を介して電力を得る方法である。
本発明の熱発電素子は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する素子である。
本発明の熱発電素子の製造方法は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する熱発電素子の製造方法であって、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層され、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある原板を、前記SrB6層および前記金属層の積層面を斜めに横断するように切り出し、得られた積層体に、互いに対向し、かつその対向する方向が前記積層面を20°以上50°以下の傾斜角θで横断するように前記第1および第2の電極を配置する方法である。
本発明の熱発電デバイスは、支持板と、前記支持板上に配置された熱発電素子とを備え、前記素子は、互いに対向して配置された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記一対の電極が互いに対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子は、前記方向に垂直な方向が、前記支持板における前記素子が配置された面に垂直な方向と一致するように、前記支持板上に配置され、前記支持板の前記面に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記一対の電極を介して電力が得られるデバイスである。
本発明によれば、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合、例えばπ型構造を有する素子を構成した場合、に比べて、高い熱発電特性を実現できる。また、本発明によれば、環境に対する負荷が少ない熱発電方法、熱発電素子および熱発電デバイスを実現できる。本発明は、熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギー変換の効率を向上させ、様々な分野への熱発電の応用を促進させる効果を有しており、工業的に高い価値を有する。
図1は、本発明の熱発電素子の一例と、第1および第2の電極が対向する方向、温度差を発生させる方向、ならびに傾斜角θと、を示す模式図である。 図2は、本発明の熱発電素子を駆動する構成の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の熱発電素子の製造方法における、原板から積層体を切り出す方法の一例を示す模式図である。 図4は、本発明の熱発電デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。 図5は、本発明の熱発電デバイスの別の一例を模式的に示す斜視図である。
(熱発電素子)
図1に、本発明の熱発電素子の一例を示す。図1に示す熱発電素子1は、互いに対向して配置された第1の電極11および第2の電極12と、第1の電極11および第2の電極12に狭持され、かつ双方の電極に電気的に接続された積層体13とを備える。積層体13は、第1の電極11および第2の電極12の主面に接続されており、双方の電極の主面は互いに平行である。なお、図1に示す積層体13の形状は直方体であり、第1の電極11および第2の電極12は、その対向する一対の面上に配置されている。第1および第2の電極の表面と、第1および第2の電極が対向する方向(対向方向17)とは、直交している。
積層体13は、SrB6層14、ならびに、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)またはAl(アルミニウム)を含む金属層15とが交互に積層された構造を有し、各層の積層面(各層の主面に平行な方向16)は、対向方向17に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜している。積層体13における金属層15と、SrB6層14との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある。
素子1では、対向方向17に対して垂直な方向18の温度差により、第1の電極11と第2の電極12との間に電位差が発生する。即ち、素子1における、対向方向17に対して垂直な方向18に温度差を発生させることにより、一対の上記電極(第1の電極11および第2の電極12)を介して電力を取り出すことができる。
具体的には、例えば、図2に示すように、素子1の積層体13における電極11、12を配置していない一方の面に高温部22を、他方の面に低温部23を密着させて、電極11、12の対向方向17に対して垂直な方向18に温度差を印加することにより、電極11、12間に電位差を発生させ、両電極を介して電力を取り出すことができる。これに対して、π型構造を有する従来の熱発電素子では、温度差を印加する方向に対して平行な方向にのみ起電力が生じ、垂直な方向には起電力は生じない。このため、従来の熱発電素子では、電力を取り出す一対の電極間に温度差を印加する必要がある。なお、素子1における第1の電極11と第2の電極12の対向方向17、および、温度差を発生させる方向18は、いずれも、積層体13における各層の積層面を横断している。また、温度差を発生させる方向18は、電極11、12の対向方向17に対して、ほぼ垂直であればよい(同様に、本明細書における「垂直」とは、「ほぼ垂直」であればよい)。
従来、文献3に開示されているように、熱電材料のゼーベック係数Sおよび電気抵抗率ρをともに改善し、素子のパワーファクターを増大させることは困難であった。これに対して素子1では、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合に比べて、素子のパワーファクターを増大でき、高い熱発電特性を得ることができる。
また、素子1は、SrB6の熱的特性を反映し、耐熱性に優れる。
金属層15は、Cu、Ag、Au、またはAlを含む。金属層15は、Cu、AgまたはAuを含むことが好ましく、CuまたはAgを含むことが特に好ましい。この場合、より高い熱発電特性を得ることができる。なお、金属層15は、これらの金属を単独で、あるいは合金として含んでいてもよい。金属層15がこれらの金属を単独で含む場合、金属層15は、Cu、Ag、Au、またはAlからなり、Cu、AgまたはAuからなることが好ましく、CuまたはAgからなることが特に好ましい。
第1の電極11および第2の電極12には、導電性に優れる材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物を用いてもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いることもできる。
詳細は実施例に後述するが、本発明者らは様々な条件を検討することにより、積層体13を構成する各層の積層面と電極11、12の対向方向17とがなす傾斜角θ、ならびにSrB6層14と金属層15との厚さの比の制御によって、素子1のパワーファクターをさらに向上させ、より高い熱発電特性が得られることを見出した。
傾斜角θは、20°以上40°以下が好ましく、25°以上35°以下がより好ましい。
金属層15とSrB6層との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にあることが好ましく、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
傾斜角θ、金属層15の種類、および上記厚さの比の組み合わせの観点からは、傾斜角θが20°以上40°以下であり、金属層15がCu、Ag、またはAuを含み、金属層15とSrB6層14との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
また、同じ観点から、傾斜角θが25°以上35°以下であり、金属層15がCuまたはAgを含み、金属層15とSrB6層14との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
これらの条件によっては、素子1のパワーファクター(出力因子)を、30(μW/(cm・K2))以上とすることができ、さらには34(μW/(cm・K2))以上、40(μW/(cm・K2))以上とすることもできる。
(熱発電素子の製造方法)
熱発電素子1は、例えば、図3に示すように、SrB6層31と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層32とが交互に積層され、金属層32とSrB6層31との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある原板(積層原板)34を、SrB6層31および金属層32の積層面35を斜めに横断するように切り出し(例えば、切り出し面と積層面35とが交わる角度が、20°以上50°以下となるように切り出し)、得られた積層体13(13a、13b、13cまたは13d)に対して、互いに対向し、かつその対向する方向が積層面35を20°以上50°以下の傾斜角θで横断するように第1および第2の電極を配置して形成できる。なお、図3において符号33により示される部材は、積層面35を垂直に横断するように、原板34を切り出して得た積層体33であり、このような積層体からは本発明の熱発電素子を形成できない。また、「その対向する方向が積層面35を横断するように第1および第2の電極を配置する」とは、例えば、図3に示す積層体13dに関しては、その側面AおよびA’に、または、側面BおよびB’に、電極を配置することを意味する。
金属層32は、金属層15を構成する金属と同一の金属からなればよい。
原板34は、例えば、SrB6箔と金属箔とを交互に重ね合わせ、圧着成形して形成できる。このとき、SrB6箔はSrB6層31に、金属箔は金属層32となる。圧着成形時には、圧力の他に熱を印加してもよい。SrB6箔の厚さが薄い場合、当該箔の機械的な強度が弱く破損しやすいので、表面にSrB6膜を予め形成した金属箔を用い、当該金属箔を圧着成形することが好ましい。この場合、欠陥の少ない原板34を得やすくなる。このとき、片側の面にのみSrB6膜が形成された金属箔を用いてもよいが、両側の面にSrB6膜が形成された金属箔を用いることで、原板34を構成する各層の密着度を向上できる。
また例えば、原板34は、SrB6膜と金属膜とを交互に堆積させることによっても形成できる。
金属箔の表面へのSrB6膜の形成、ならびに、SrB6膜および金属膜の堆積は、各種の薄膜形成方法、例えば、スパッタリング法、蒸着法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法をはじめとする気相成長法、液相成長法、めっき法など、により行うことができる。なお、上記薄膜形成手法により形成するSrB6膜および金属膜の厚さの比は、一般的な手法により調整すればよい。
原板34における金属層32とSrB6層31との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲が好ましく、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲がより好ましい。
原板34の切り出しには、切削加工などの公知の手法を用いればよい。必要であれば、切り出しにより得られた積層体13の表面に研磨処理を施してもよい。
第1および第2の電極を配置する際には、必ずしも積層体13における電極を配置する面の全体に当該電極を配置しなくてもよく、積層体13における電極を配置する面の一部に当該電極を配置してもよい。
第1および第2の電極の配置方法は特に限定されず、例えば、スパッタリング法、蒸着法、気相成長法などの各種の薄膜形成手法、あるいは導電性ペーストの塗布、メッキ、溶射などの手法を用いることができる。また例えば、別途形成した電極をハンダ、銀ロウなどにより積層体13に接合させてもよい。
積層体13への第1および第2の電極の配置にあたっては、第1および第2の電極を、その対向する方向が積層体13の積層面35を20°以上40°以下の傾斜角θで横断するように配置することが好ましく、25°以上35°以下の傾斜角θで横断するように配置することがより好ましい。
(熱発電デバイス)
図4に本発明の熱発電デバイスの一例を示す。図4に示すデバイス41は、支持板45と、支持板45上に配置された6つの本発明の熱発電素子1を備える。それぞれの素子1は、各素子における第1および第2の電極が対向する方向17に垂直な方向が、支持板45における素子1が配置された面46に垂直な方向と一致するように、支持板45上に配置されている。また、隣接する素子1同士は、それぞれの素子1の第1または第2の電極を兼ねる接続電極43を介して電気的に直列に接続されており、6つの素子1の配列の末端に位置する素子1a、1bには、第1または第2の電極を兼ねる取り出し電極44が配置されている。
デバイス41では、支持板45の面46に垂直な方向に温度差を発生させる、例えば、支持板45における素子1が配置されていない面に低温部を、素子1における支持板45に接している面とは反対側の面に高温部を、接触させることにより、取り出し電極44を介して電力を得ることができる。なお、図4に示す例における隣接する素子1間では、そのSrB6層および金属層の積層面の傾斜の方向が互いに逆となっているが、これは、温度差の発生によって素子1に生じる起電力を、隣接する素子1間で打ち消しあわないようにするためである。
図5に本発明の熱発電デバイスの別の一例を示す。図5に示すデバイス42は、支持板45と、支持板45上に配置された8つの本発明の熱発電素子1を備える。それぞれの素子1は、各素子における第1および第2の電極が対向する方向17に垂直な方向が、支持板45における素子1が配置された面46に垂直な方向と一致するように、支持板45上に配置されている。8つの素子1は、2つの素子1を1ブロックとして、支持板45上に4ブロック配置されており、1つのブロック内の素子(例えば、素子1aと1b)は、それぞれの素子の第1または第2の電極を兼ねる接続電極43を介して電気的に並列に接続されている。隣接するブロック同士は、接続電極43を介して電気的に直列に接続されている。
デバイス42では、支持板45の面46に垂直な方向に温度差を発生させる、例えば、支持板45における素子1が配置されていない面に低温部を、素子1における支持板45に接している面とは反対側の面に高温部を、接触させることにより、取り出し電極44を介して電力を得ることができる。なお、図5に示す例における1つのブロック内の素子1間では、そのSrB6層および金属層の傾斜の方向は互いに同一であり、隣接するブロック間では、素子1のSrB6層および金属層の傾斜の方向が互いに逆となっているが、これは、温度差の発生によって素子1に生じる(温度差の発生によってブロックに生じる)起電力を、隣接する素子間およびブロック間で打ち消しあわないようにするためである。
本発明の熱発電デバイスの構成は図4、5に示す例に限定されず、例えば、支持板上に配置される熱発電素子の個数は1つであってもよいが、図4、5に示す例のように、2以上の熱発電素子を配置した熱発電デバイスとすることにより、より多くの発電量を得ることができる。また、図4に示す例のように、素子同士を電気的に直列に接続することにより、得られる電圧を増大でき、図5に示す例のように、素子同士を電気的に並列に接続することにより、素子1の電気的な接続が部分的に失われた場合においても、熱発電デバイス全体としての機能を確保できる可能性を増大でき、熱発電デバイスの信頼性を向上できる。即ち、これら素子の直列および並列接続を適切に組み合わせることにより、高い熱発電特性を有する熱発電デバイスを構成できる。
接続電極43および取り出し電極44の構成は、導電性に優れる限り特に限定されない。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物からなる接続電極43および取り出し電極44であってもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いることもできる。
(熱発電素子を用いた発電方法)
本発明の発電方法は、上記説明した本発明の熱発電素子1における電極の対向方向17に垂直な方向に温度差を発生させることにより、第1の電極11および第2の電極12(あるいは接続電極43または取り出し電極44)を介して電力を得る方法である。
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、SrB6ならびに数種類の金属(Au、Ag、CuおよびAl)を用いて、図1に示すような熱発電素子1を作製し、その熱発電特性を評価した。
最初に、サイズが100mm×100mm、厚さが20μmの金属箔(Au箔、Ag箔、Cu箔またはAl箔)を準備し、当該金属箔の両面に、スパッタリング法により、厚さ2.0μmのSrB6膜を形成した。
次に、上記のようにして形成したSrB6膜/金属箔/SrB6膜のシートを、50mm×50mmのサイズに切断して短冊状の小片を形成し、形成した小片を200枚重ね合わせた状態で、その積層方向に100kg/cm2の荷重を印加しながら10-4Paの減圧下において250℃で1時間の加熱圧着を行った後、切削研磨を行い、サイズが3mm×48mm、厚さが20mmの積層原板を得た。得られた原板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、厚さ約18μmの金属層(金属箔に由来)と、厚さ約2μmのSrB6層(SrB6膜に由来)とが交互に積層していた。即ち、作製した素子1における金属層とSrB6層との厚さの比は、金属層:SrB6層=9:1であった。
このようにして得られた原板から、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工により、厚さ1mm、幅3mm、長さ20mmの積層体13を、傾斜角θにして0°から90°まで10°刻みで変化させながら図3に示すように切り出した。その後、切り出した各々の積層体13における長辺方向の両端面(図3に示す側面B、B’に相当する)に、スパッタリング法によりAuからなる第1の電極11および第2の電極12を形成して、図1に示すような熱発電素子1を得た。
次に、図2に示すように、素子1における電極が配置されていない1つの面をヒーターで150℃に加熱するとともに、当該面に対向する面を水冷により30℃に保持して、対向方向17に垂直な方向に温度勾配を発生させ、その際に電極間に生じた電圧(起電圧)と、電極間の電気抵抗値とを測定し、素子1のパワーファクターを求めた。なお、温度勾配を発生させる方向は、積層体13におけるSrB6層および金属層の積層面を横断する方向とした。
各金属箔を用いて形成した素子1(素子1は、用いた金属箔の種類に応じて、Au層、Ag層、Cu層またはAl層の各金属層を有する)において、傾斜角θの変化に対する素子1のパワーファクターの評価結果を以下の表1に示す。一例として、金属層がAg層であり、傾斜角θが30°である素子1では、その起電圧は47mV、電気抵抗値は0.07mΩであり、これらの値から求めたパワーファクターは43(μW/(cm・K2))であった。
Figure 2008108034
表1に示すように、傾斜角θが0°および90°の素子、即ち、SrB6層および金属層の積層面が、第1および第2の電極が対向する方向に対して平行な素子、または直交している素子では、パワーファクターの値が得られなかった。一方、傾斜角θが0°と90°以外の素子、即ち、SrB6層および金属層の積層面が、第1および第2の電極が対向する方向に対して傾斜している素子、では、パワーファクターを得ることができ、傾斜角θが20°以上50°以下の素子では、金属層を構成する金属がAlのときに16(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAuのときに20(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がCuのときに25(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAgのときに27(μW/(cm・K2))以上の高いパワーファクターを得ることができた。
また、傾斜角θが20°以上40°以下のときに、より高いパワーファクターを得ることができ、金属層を構成する金属がAu、AgまたはCuのときに27(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAgまたはCuのときに34(μW/(cm・K2))以上、場合によっては40(μW/(cm・K2))以上の高いパワーファクターを得ることができた。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様にして、金属層を構成する金属としてAgまたはCuを用い、金属層とSrB6層との厚さの比が異なる素子を作製した。傾斜角θは30°に固定し、素子の形成に用いた金属箔の厚さを40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、95μm、98μmおよび99μmに変化させ、金属層およびSrB6層の積層周期が100μmとなるように素子を形成した。形成した素子の積層体の厚さに占めるSrB6層の厚さの割合は、それぞれ60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%および1%となる。
作製した素子に対して、実施例1と同様にしてそのパワーファクターを評価した結果を、以下の表2に示す。
Figure 2008108034
表2に示すように、積層体の厚さに占めるSrB6層の厚さの割合が5〜30%の範囲、なかでも5〜20%の範囲、特に10〜20%の範囲の場合に、高いパワーファクターを得ることができ、当該割合が10%の場合に最も高いパワーファクターを得ることができた。この傾向は、金属層を構成する金属がAgであってもCuであっても同様であった。
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様にして、金属層を構成する金属としてCuを用い、金属層とSrB6層との厚さの比、および傾斜角θが異なる素子を作製した。傾斜角θは、10°から50°まで5°刻みとし、素子形成時に用いたCu箔の厚さを20μmに固定し、Cu箔の表面に形成したSrB6膜の厚さを0.25μm、0.5μm、1μm、2μm、4μmおよび8μmに変化させて、素子を形成した。
作製した素子に対して、実施例1と同様にしてそのパワーファクターを評価した結果を、以下の表3に示す。
Figure 2008108034
表3に示すように、傾斜角θが20°以上50°以下の場合、SrB6膜の厚さにして1〜8μmの範囲、特にSrB6膜の厚さにして1〜4μmの範囲のときに、高いパワーファクターを得ることができた。特に、SrB6膜の厚さが2μm(素子の積層周期におけるCu層とSrB6層との厚さの比が10:1)のときに最も高いパワーファクターを得ることができた。
また、実施例2の結果と併せて考えると、素子の熱発電特性は、金属層およびSrB6層の厚さの絶対値よりも、その比に大きく依存していると考えられる。また、傾斜角θに関しては、20°以上40°以下の範囲で34μW/(cm・K2)以上、25°以上35°以下の範囲で38μW/(cm・K2)以上の高いパワーファクターが得られ(双方とも、上記比にして10:1のとき)、SrB6を単独で熱電材料として用いた場合のおよそ2倍以上高い熱発電特性が実現できた。
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
以上のように、本発明によれば、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合、例えばπ型構造を有する素子を構成した場合、に比べて、高い熱発電特性を実現できる。また、本発明によれば、環境に対する負荷が少ない熱発電方法、熱発電素子および熱発電デバイスを実現できる。本発明は、熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギー変換の効率を向上させ、熱発電の様々な分野への応用を促進させる効果を有しており、工業的に高い価値を有する。
有望な用途としては、例えば、自動車や工場などから排出される排ガスなどの熱を用いた発電機、あるいは、小型の携帯発電機などがある。
本発明は、熱エネルギーから直接的に電気エネルギーを得る方法である、熱発電素子を用いた発電方法に関する。また、本発明は、熱エネルギーを直接電気エネルギーへ変換する熱発電素子とその製造方法、ならびに熱発電デバイスに関する。
熱発電は、物質の両端に印加された温度差に比例して起電力が生じるゼーベック効果を利用し、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術である。この技術は、僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源などで実用化されている。
従来の熱発電素子では、キャリアの符号が異なる「p形半導体」と「n形半導体」とを、熱的に並列に、かつ電気的に直列に組み合わせた、いわゆる「π型構造」と呼ばれる構成をとることが一般的である。
熱発電素子に用いられる熱電材料の性能は、一般に、性能指数Z、またはZに絶対温度を乗じて無次元化した性能指数ZTにより評価される。ZTは、熱電材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、および熱伝導率κを用いて、式ZT=S2/ρκと記述できる。また、ゼーベック係数Sと電気抵抗率ρのみを考慮した指数であるS2/ρは、パワーファクター(出力因子)とも呼ばれ、温度差を一定とした場合における熱電材料の発電性能を評価する基準となる。
現在、熱電材料として実用化されているBi2Te3は、ZTが1程度、パワーファクターが40μW/(cm・K2)程度であり、高い熱発電性能を有するが、それでも上記π型構造を有する素子とした場合には高い熱発電性能の確保が難しく、より多くの用途での実用に足るほどには至っていない。また、Bi2Te3は耐熱性に課題があり、100℃以上の温度においてその熱発電性能が低下する他、Biを構成元素として含むため、環境に対する負荷が大きい。
特開2004−186241号公報(文献1)では、熱発電材料として、SrB6などのホウ素化合物が検討されている。これらのホウ素化合物は、常温常圧下において化学的に非常に安定である他、大気中において、およそ1000K程度、窒素などの不活性ガス雰囲気下では、およそ2500K程度の温度まで安定であり、耐熱性に優れる。また、上記化合物は、環境に対する負荷の大きい構成元素を含まない。しかし、上記ホウ素化合物のパワーファクターは18μW/(cm・K2)程度であり、上記π型構造を有する素子とした場合に、当該素子から実際に得られる熱発電性能がさらに低下するため、実用化には至っていない。
一方、π型構造とは異なる構造を有する素子として、自然に存在する、または人工的に作製された積層構造における熱電気特性の異方性を利用した素子が古くから提案されている(Thermoelectrics Handbook,Chapter 45 "Anisotropic Thermoelements",CRC Press (2006):文献2)。しかし文献2によれば、このような素子ではZTの改善が困難であることから、熱発電の用途ではなく、主に赤外線センサなど、測定分野の用途を想定した開発がなされている。
また、これと類似の構造を有する熱電材料として、Fe−Si系材料に代表される熱電特性を有する材料と、SiO2に代表される厚さ100nm以下の絶縁材料とを、基板上に縞状に交互に配列させた材料が、特開平6−310766号公報(文献3)に開示されている。文献3によれば、このような微細構造を有する材料では、熱電特性を有するFe−Si系材料を単独で用いた場合に比べて、ゼーベック係数Sを向上できる一方、絶縁材料の含有により電気抵抗率ρが増大する。このため、素子としたときの内部抵抗が増大して、得られる電力が却って低下する。
積層構造を有するその他の熱電材料として、例えば、国際公開第00/076006号パンフレット(文献4)には、半金属、金属、または合成樹脂からなる層状体を備えた材料が開示されている。当該材料は、従来のπ型構造と同様に、層状体を構成する各層の積層方向に温度差を印加し、当該方向と同じ方向に対向するように配置された一対の電極を介して電力を取り出す構成が前提となっており、文献4に開示の素子は、本質的には文献1に開示の素子とは異なる。
上述したように、従来の熱電材料では、より多くの用途で実用に足るだけの十分な熱発電性能を実現できない。また、環境に対する負荷が少ない熱電材料を有する熱発電素子の実用化が望まれる。
本発明者らは、積層体を用いた熱発電素子について鋭意研究を重ねた結果、SrB6層(ホウ化ストロンチウム)層と、特定の金属を含む金属層とからなり、上記SrB6層と上記金属層との厚さの比が特定の範囲にある積層体を用い、当該積層体を狭持する電極同士が対向する方向に対して、積層体の積層面を所定の傾斜角θで傾斜させることにより、SrB6を熱電材料として単独で用いた場合に比べて、素子のパワーファクターを増大でき、熱発電特性を大きく向上できるという意外な知見を見出し、この知見に基づいて本発明に到達するに至った。
即ち、本発明の熱発電素子を用いた発電方法は、熱発電素子に温度差を発生させて前記素子から電力を得る方法であって、前記素子は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記第1および第2の電極を介して電力を得る方法である。
本発明の熱発電素子は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する素子である。
本発明の熱発電素子の製造方法は、互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する熱発電素子の製造方法であって、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層され、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある原板を、前記SrB6層および前記金属層の積層面を斜めに横断するように切り出し、得られた積層体に、互いに対向し、かつその対向する方向が前記積層面を20°以上50°以下の傾斜角θで横断するように前記第1および第2の電極を配置する方法である。
本発明の熱発電デバイスは、支持板と、前記支持板上に配置された熱発電素子とを備え、前記素子は、互いに対向して配置された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体とを備え、前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層とが交互に積層された構造を有し、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記一対の電極が互いに対向する方向に対して20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、前記素子は、前記方向に垂直な方向が、前記支持板における前記素子が配置された面に垂直な方向と一致するように、前記支持板上に配置され、前記支持板の前記面に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記一対の電極を介して電力が得られるデバイスである。
本発明によれば、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合、例えばπ型構造を有する素子を構成した場合、に比べて、高い熱発電特性を実現できる。また、本発明によれば、環境に対する負荷が少ない熱発電方法、熱発電素子および熱発電デバイスを実現できる。本発明は、熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギー変換の効率を向上させ、様々な分野への熱発電の応用を促進させる効果を有しており、工業的に高い価値を有する。
(熱発電素子)
図1に、本発明の熱発電素子の一例を示す。図1に示す熱発電素子1は、互いに対向して配置された第1の電極11および第2の電極12と、第1の電極11および第2の電極12に狭持され、かつ双方の電極に電気的に接続された積層体13とを備える。積層体13は、第1の電極11および第2の電極12の主面に接続されており、双方の電極の主面は互いに平行である。なお、図1に示す積層体13の形状は直方体であり、第1の電極11および第2の電極12は、その対向する一対の面上に配置されている。第1および第2の電極の表面と、第1および第2の電極が対向する方向(対向方向17)とは、直交している。
積層体13は、SrB6層14、ならびに、Cu(銅)、Ag(銀)、Au(金)またはAl(アルミニウム)を含む金属層15とが交互に積層された構造を有し、各層の積層面(各層の主面に平行な方向16)は、対向方向17に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜している。積層体13における金属層15と、SrB6層14との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある。
素子1では、対向方向17に対して垂直な方向18の温度差により、第1の電極11と第2の電極12との間に電位差が発生する。即ち、素子1における、対向方向17に対して垂直な方向18に温度差を発生させることにより、一対の上記電極(第1の電極11および第2の電極12)を介して電力を取り出すことができる。
具体的には、例えば、図2に示すように、素子1の積層体13における電極11、12を配置していない一方の面に高温部22を、他方の面に低温部23を密着させて、電極11、12の対向方向17に対して垂直な方向18に温度差を印加することにより、電極11、12間に電位差を発生させ、両電極を介して電力を取り出すことができる。これに対して、π型構造を有する従来の熱発電素子では、温度差を印加する方向に対して平行な方向にのみ起電力が生じ、垂直な方向には起電力は生じない。このため、従来の熱発電素子では、電力を取り出す一対の電極間に温度差を印加する必要がある。なお、素子1における第1の電極11と第2の電極12の対向方向17、および、温度差を発生させる方向18は、いずれも、積層体13における各層の積層面を横断している。また、温度差を発生させる方向18は、電極11、12の対向方向17に対して、ほぼ垂直であればよい(同様に、本明細書における「垂直」とは、「ほぼ垂直」であればよい)。
従来、文献3に開示されているように、熱電材料のゼーベック係数Sおよび電気抵抗率ρをともに改善し、素子のパワーファクターを増大させることは困難であった。これに対して素子1では、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合に比べて、素子のパワーファクターを増大でき、高い熱発電特性を得ることができる。
また、素子1は、SrB6の熱的特性を反映し、耐熱性に優れる。
金属層15は、Cu、Ag、Au、またはAlを含む。金属層15は、Cu、AgまたはAuを含むことが好ましく、CuまたはAgを含むことが特に好ましい。この場合、より高い熱発電特性を得ることができる。なお、金属層15は、これらの金属を単独で、あるいは合金として含んでいてもよい。金属層15がこれらの金属を単独で含む場合、金属層15は、Cu、Ag、Au、またはAlからなり、Cu、AgまたはAuからなることが好ましく、CuまたはAgからなることが特に好ましい。
第1の電極11および第2の電極12には、導電性に優れる材料を用いることが好ましい。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物を用いてもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いることもできる。
詳細は実施例に後述するが、本発明者らは様々な条件を検討することにより、積層体13を構成する各層の積層面と電極11、12の対向方向17とがなす傾斜角θ、ならびにSrB6層14と金属層15との厚さの比の制御によって、素子1のパワーファクターをさらに向上させ、より高い熱発電特性が得られることを見出した。
傾斜角θは、20°以上40°以下が好ましく、25°以上35°以下がより好ましい。
金属層15とSrB6層との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にあることが好ましく、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
傾斜角θ、金属層15の種類、および上記厚さの比の組み合わせの観点からは、傾斜角θが20°以上40°以下であり、金属層15がCu、Ag、またはAuを含み、金属層15とSrB6層14との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
また、同じ観点から、傾斜角θが25°以上35°以下であり、金属層15がCuまたはAgを含み、金属層15とSrB6層14との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にあることがより好ましい。
これらの条件によっては、素子1のパワーファクター(出力因子)を、30(μW/(cm・K2))以上とすることができ、さらには34(μW/(cm・K2))以上、40(μW/(cm・K2))以上とすることもできる。
(熱発電素子の製造方法)
熱発電素子1は、例えば、図3に示すように、SrB6層31と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層32とが交互に積層され、金属層32とSrB6層31との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある原板(積層原板)34を、SrB6層31および金属層32の積層面35を斜めに横断するように切り出し(例えば、切り出し面と積層面35とが交わる角度が、20°以上50°以下となるように切り出し)、得られた積層体13(13a、13b、13cまたは13d)に対して、互いに対向し、かつその対向する方向が積層面35を20°以上50°以下の傾斜角θで横断するように第1および第2の電極を配置して形成できる。なお、図3において符号33により示される部材は、積層面35を垂直に横断するように、原板34を切り出して得た積層体33であり、このような積層体からは本発明の熱発電素子を形成できない。また、「その対向する方向が積層面35を横断するように第1および第2の電極を配置する」とは、例えば、図3に示す積層体13dに関しては、その側面AおよびA’に、または、側面BおよびB’に、電極を配置することを意味する。
金属層32は、金属層15を構成する金属と同一の金属からなればよい。
原板34は、例えば、SrB6箔と金属箔とを交互に重ね合わせ、圧着成形して形成できる。このとき、SrB6箔はSrB6層31に、金属箔は金属層32となる。圧着成形時には、圧力の他に熱を印加してもよい。SrB6箔の厚さが薄い場合、当該箔の機械的な強度が弱く破損しやすいので、表面にSrB6膜を予め形成した金属箔を用い、当該金属箔を圧着成形することが好ましい。この場合、欠陥の少ない原板34を得やすくなる。このとき、片側の面にのみSrB6膜が形成された金属箔を用いてもよいが、両側の面にSrB6膜が形成された金属箔を用いることで、原板34を構成する各層の密着度を向上できる。
また例えば、原板34は、SrB6膜と金属膜とを交互に堆積させることによっても形成できる。
金属箔の表面へのSrB6膜の形成、ならびに、SrB6膜および金属膜の堆積は、各種の薄膜形成方法、例えば、スパッタリング法、蒸着法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法をはじめとする気相成長法、液相成長法、めっき法など、により行うことができる。なお、上記薄膜形成手法により形成するSrB6膜および金属膜の厚さの比は、一般的な手法により調整すればよい。
原板34における金属層32とSrB6層31との厚さの比は、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲が好ましく、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲がより好ましい。
原板34の切り出しには、切削加工などの公知の手法を用いればよい。必要であれば、切り出しにより得られた積層体13の表面に研磨処理を施してもよい。
第1および第2の電極を配置する際には、必ずしも積層体13における電極を配置する面の全体に当該電極を配置しなくてもよく、積層体13における電極を配置する面の一部に当該電極を配置してもよい。
第1および第2の電極の配置方法は特に限定されず、例えば、スパッタリング法、蒸着法、気相成長法などの各種の薄膜形成手法、あるいは導電性ペーストの塗布、メッキ、溶射などの手法を用いることができる。また例えば、別途形成した電極をハンダ、銀ロウなどにより積層体13に接合させてもよい。
積層体13への第1および第2の電極の配置にあたっては、第1および第2の電極を、その対向する方向が積層体13の積層面35を20°以上40°以下の傾斜角θで横断するように配置することが好ましく、25°以上35°以下の傾斜角θで横断するように配置することがより好ましい。
(熱発電デバイス)
図4に本発明の熱発電デバイスの一例を示す。図4に示すデバイス41は、支持板45と、支持板45上に配置された6つの本発明の熱発電素子1を備える。それぞれの素子1は、各素子における第1および第2の電極が対向する方向17に垂直な方向が、支持板45における素子1が配置された面46に垂直な方向と一致するように、支持板45上に配置されている。また、隣接する素子1同士は、それぞれの素子1の第1または第2の電極を兼ねる接続電極43を介して電気的に直列に接続されており、6つの素子1の配列の末端に位置する素子1a、1bには、第1または第2の電極を兼ねる取り出し電極44が配置されている。
デバイス41では、支持板45の面46に垂直な方向に温度差を発生させる、例えば、支持板45における素子1が配置されていない面に低温部を、素子1における支持板45に接している面とは反対側の面に高温部を、接触させることにより、取り出し電極44を介して電力を得ることができる。なお、図4に示す例における隣接する素子1間では、そのSrB6層および金属層の積層面の傾斜の方向が互いに逆となっているが、これは、温度差の発生によって素子1に生じる起電力を、隣接する素子1間で打ち消しあわないようにするためである。
図5に本発明の熱発電デバイスの別の一例を示す。図5に示すデバイス42は、支持板45と、支持板45上に配置された8つの本発明の熱発電素子1を備える。それぞれの素子1は、各素子における第1および第2の電極が対向する方向17に垂直な方向が、支持板45における素子1が配置された面46に垂直な方向と一致するように、支持板45上に配置されている。8つの素子1は、2つの素子1を1ブロックとして、支持板45上に4ブロック配置されており、1つのブロック内の素子(例えば、素子1aと1b)は、それぞれの素子の第1または第2の電極を兼ねる接続電極43を介して電気的に並列に接続されている。隣接するブロック同士は、接続電極43を介して電気的に直列に接続されている。
デバイス42では、支持板45の面46に垂直な方向に温度差を発生させる、例えば、支持板45における素子1が配置されていない面に低温部を、素子1における支持板45に接している面とは反対側の面に高温部を、接触させることにより、取り出し電極44を介して電力を得ることができる。なお、図5に示す例における1つのブロック内の素子1間では、そのSrB6層および金属層の傾斜の方向は互いに同一であり、隣接するブロック間では、素子1のSrB6層および金属層の傾斜の方向が互いに逆となっているが、これは、温度差の発生によって素子1に生じる(温度差の発生によってブロックに生じる)起電力を、隣接する素子間およびブロック間で打ち消しあわないようにするためである。
本発明の熱発電デバイスの構成は図4、5に示す例に限定されず、例えば、支持板上に配置される熱発電素子の個数は1つであってもよいが、図4、5に示す例のように、2以上の熱発電素子を配置した熱発電デバイスとすることにより、より多くの発電量を得ることができる。また、図4に示す例のように、素子同士を電気的に直列に接続することにより、得られる電圧を増大でき、図5に示す例のように、素子同士を電気的に並列に接続することにより、素子1の電気的な接続が部分的に失われた場合においても、熱発電デバイス全体としての機能を確保できる可能性を増大でき、熱発電デバイスの信頼性を向上できる。即ち、これら素子の直列および並列接続を適切に組み合わせることにより、高い熱発電特性を有する熱発電デバイスを構成できる。
接続電極43および取り出し電極44の構成は、導電性に優れる限り特に限定されない。例えば、Cu、Ag、Mo、W、Al、Ti、Cr、Au、Pt、Inなどの金属、あるいは、TiN、スズ添加酸化インジウム(ITO)、SnO2などの窒化物または酸化物からなる接続電極43および取り出し電極44であってもよい。その他、ハンダ、銀ロウ、導電性ペーストなどを電極として用いることもできる。
(熱発電素子を用いた発電方法)
本発明の発電方法は、上記説明した本発明の熱発電素子1における電極の対向方向17に垂直な方向に温度差を発生させることにより、第1の電極11および第2の電極12(あるいは接続電極43または取り出し電極44)を介して電力を得る方法である。
以下、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
実施例1では、SrB6ならびに数種類の金属(Au、Ag、CuおよびAl)を用いて、図1に示すような熱発電素子1を作製し、その熱発電特性を評価した。
最初に、サイズが100mm×100mm、厚さが20μmの金属箔(Au箔、Ag箔、Cu箔またはAl箔)を準備し、当該金属箔の両面に、スパッタリング法により、厚さ2.0μmのSrB6膜を形成した。
次に、上記のようにして形成したSrB6膜/金属箔/SrB6膜のシートを、50mm×50mmのサイズに切断して短冊状の小片を形成し、形成した小片を200枚重ね合わせた状態で、その積層方向に100kg/cm2の荷重を印加しながら10-4Paの減圧下において250℃で1時間の加熱圧着を行った後、切削研磨を行い、サイズが3mm×48mm、厚さが20mmの積層原板を得た。得られた原板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、厚さ約18μmの金属層(金属箔に由来)と、厚さ約2μmのSrB6層(SrB6膜に由来)とが交互に積層していた。即ち、作製した素子1における金属層とSrB6層との厚さの比は、金属層:SrB6層=9:1であった。
このようにして得られた原板から、ダイヤモンドカッターを用いた切削加工により、厚さ1mm、幅3mm、長さ20mmの積層体13を、傾斜角θにして0°から90°まで10°刻みで変化させながら図3に示すように切り出した。その後、切り出した各々の積層体13における長辺方向の両端面(図3に示す側面B、B’に相当する)に、スパッタリング法によりAuからなる第1の電極11および第2の電極12を形成して、図1に示すような熱発電素子1を得た。
次に、図2に示すように、素子1における電極が配置されていない1つの面をヒーターで150℃に加熱するとともに、当該面に対向する面を水冷により30℃に保持して、対向方向17に垂直な方向に温度勾配を発生させ、その際に電極間に生じた電圧(起電圧)と、電極間の電気抵抗値とを測定し、素子1のパワーファクターを求めた。なお、温度勾配を発生させる方向は、積層体13におけるSrB6層および金属層の積層面を横断する方向とした。
各金属箔を用いて形成した素子1(素子1は、用いた金属箔の種類に応じて、Au層、Ag層、Cu層またはAl層の各金属層を有する)において、傾斜角θの変化に対する素子1のパワーファクターの評価結果を以下の表1に示す。一例として、金属層がAg層であり、傾斜角θが30°である素子1では、その起電圧は47mV、電気抵抗値は0.07mΩであり、これらの値から求めたパワーファクターは43(μW/(cm・K2))であった。
Figure 2008108034
表1に示すように、傾斜角θが0°および90°の素子、即ち、SrB6層および金属層の積層面が、第1および第2の電極が対向する方向に対して平行な素子、または直交している素子では、パワーファクターの値が得られなかった。一方、傾斜角θが0°と90°以外の素子、即ち、SrB6層および金属層の積層面が、第1および第2の電極が対向する方向に対して傾斜している素子、では、パワーファクターを得ることができ、傾斜角θが20°以上50°以下の素子では、金属層を構成する金属がAlのときに16(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAuのときに20(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がCuのときに25(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAgのときに27(μW/(cm・K2))以上の高いパワーファクターを得ることができた。
また、傾斜角θが20°以上40°以下のときに、より高いパワーファクターを得ることができ、金属層を構成する金属がAu、AgまたはCuのときに27(μW/(cm・K2))以上、金属層を構成する金属がAgまたはCuのときに34(μW/(cm・K2))以上、場合によっては40(μW/(cm・K2))以上の高いパワーファクターを得ることができた。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様にして、金属層を構成する金属としてAgまたはCuを用い、金属層とSrB6層との厚さの比が異なる素子を作製した。傾斜角θは30°に固定し、素子の形成に用いた金属箔の厚さを40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、95μm、98μmおよび99μmに変化させ、金属層およびSrB6層の積層周期が100μmとなるように素子を形成した。形成した素子の積層体の厚さに占めるSrB6層の厚さの割合は、それぞれ60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%および1%となる。
作製した素子に対して、実施例1と同様にしてそのパワーファクターを評価した結果を、以下の表2に示す。
Figure 2008108034
表2に示すように、積層体の厚さに占めるSrB6層の厚さの割合が5〜30%の範囲、なかでも5〜20%の範囲、特に10〜20%の範囲の場合に、高いパワーファクターを得ることができ、当該割合が10%の場合に最も高いパワーファクターを得ることができた。この傾向は、金属層を構成する金属がAgであってもCuであっても同様であった。
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様にして、金属層を構成する金属としてCuを用い、金属層とSrB6層との厚さの比、および傾斜角θが異なる素子を作製した。傾斜角θは、10°から50°まで5°刻みとし、素子形成時に用いたCu箔の厚さを20μmに固定し、Cu箔の表面に形成したSrB6膜の厚さを0.25μm、0.5μm、1μm、2μm、4μmおよび8μmに変化させて、素子を形成した。
作製した素子に対して、実施例1と同様にしてそのパワーファクターを評価した結果を、以下の表3に示す。
Figure 2008108034
表3に示すように、傾斜角θが20°以上50°以下の場合、SrB6膜の厚さにして1〜8μmの範囲、特にSrB6膜の厚さにして1〜4μmの範囲のときに、高いパワーファクターを得ることができた。特に、SrB6膜の厚さが2μm(素子の積層周期におけるCu層とSrB6層との厚さの比が10:1)のときに最も高いパワーファクターを得ることができた。
また、実施例2の結果と併せて考えると、素子の熱発電特性は、金属層およびSrB6層の厚さの絶対値よりも、その比に大きく依存していると考えられる。また、傾斜角θに関しては、20°以上40°以下の範囲で34μW/(cm・K2)以上、25°以上35°以下の範囲で38μW/(cm・K2)以上の高いパワーファクターが得られ(双方とも、上記比にして10:1のとき)、SrB6を単独で熱電材料として用いた場合のおよそ2倍以上高い熱発電特性が実現できた。
本発明は、その意図および本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味および範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
以上のように、本発明によれば、熱電材料としてSrB6を単独で用いた場合、例えばπ型構造を有する素子を構成した場合、に比べて、高い熱発電特性を実現できる。また、本発明によれば、環境に対する負荷が少ない熱発電方法、熱発電素子および熱発電デバイスを実現できる。本発明は、熱エネルギーと電気エネルギーとの間のエネルギー変換の効率を向上させ、熱発電の様々な分野への応用を促進させる効果を有しており、工業的に高い価値を有する。
有望な用途としては、例えば、自動車や工場などから排出される排ガスなどの熱を用いた発電機、あるいは、小型の携帯発電機などがある。
図1は、本発明の熱発電素子の一例と、第1および第2の電極が対向する方向、温度差を発生させる方向、ならびに傾斜角θと、を示す模式図である。 図2は、本発明の熱発電素子を駆動する構成の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の熱発電素子の製造方法における、原板から積層体を切り出す方法の一例を示す模式図である。 図4は、本発明の熱発電デバイスの一例を模式的に示す斜視図である。 図5は、本発明の熱発電デバイスの別の一例を模式的に示す斜視図である。

Claims (24)

  1. 熱発電素子に温度差を発生させて前記素子から電力を得る、熱発電素子を用いた発電方法であって、
    前記素子は、
    互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、
    前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体と、を備え、
    前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、
    前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、
    前記素子における前記方向に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記第1および第2の電極を介して電力を得る、熱発電素子を用いた発電方法。
  2. 前記積層面の前記方向に対する傾斜角θが、20°以上40°以下である請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  3. 前記積層面の前記方向に対する傾斜角θが、25°以上35°以下である請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  4. 前記金属層が、Cu、Ag、またはAuを含む請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  5. 前記金属層が、CuまたはAgを含む請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  6. 前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にある請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  7. 前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にある請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  8. 前記素子のパワーファクターが30(μW/(cm・K2))以上である請求項1に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  9. 前記金属層が、Cu、Ag、またはAuを含み、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にある請求項2に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  10. 前記金属層が、CuまたはAgを含み、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にある請求項3に記載の熱発電素子を用いた発電方法。
  11. 互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、
    前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体と、を備え、
    前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、
    前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、
    前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する、熱発電素子。
  12. 前記積層面の前記方向に対する傾斜角θが、20°以上40°以下である請求項11に記載の熱発電素子。
  13. 前記積層面の前記方向に対する傾斜角θが、25°以上35°以下である請求項11に記載の熱発電素子。
  14. 前記金属層が、Cu、Ag、またはAuを含む請求項11に記載の熱発電素子。
  15. 前記金属層が、CuまたはAgを含む請求項11に記載の熱発電素子。
  16. 前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にある請求項11に記載の熱発電素子。
  17. 前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にある請求項11に記載の熱発電素子。
  18. 前記素子のパワーファクターが30(μW/(cm・K2))以上である請求項11に記載の熱発電素子。
  19. 前記金属層が、Cu、Ag、またはAuを含み、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜4:1の範囲にある請求項12に記載の熱発電素子。
  20. 前記金属層が、CuまたはAgを含み、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=10:1〜4:1の範囲にある請求項13に記載の熱発電素子。
  21. 互いに対向して配置された第1の電極および第2の電極と、
    前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体と、を備え、
    前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、
    前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、
    前記素子における前記方向に垂直な方向の温度差により、前記第1および第2の電極間に電位差が発生する熱発電素子の製造方法であって、
    SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層され、前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にある原板を、前記SrB6層および前記金属層の積層面を斜めに横断するように切り出し、得られた積層体に、互いに対向し、かつその対向する方向が前記積層面を20°以上50°以下の傾斜角θで横断するように前記第1および第2の電極を配置する、熱発電素子の製造方法。
  22. 支持板と、前記支持板上に配置された熱発電素子と、を備え、
    前記素子は、互いに対向して配置された第1および第2の電極と、前記第1および第2の電極に狭持され、かつ前記第1および第2の電極の双方に電気的に接続された積層体と、を備え、
    前記積層体は、SrB6層と、Cu、Ag、Au、またはAlを含む金属層と、が交互に積層された構造を有し、
    前記金属層と前記SrB6層との厚さの比が、金属層:SrB6層=20:1〜2.5:1の範囲にあり、
    前記SrB6層および前記金属層の積層面は、前記一対の電極が互いに対向する方向に対して、20°以上50°以下の傾斜角θで傾斜しており、
    前記素子は、前記方向に垂直な方向が、前記支持板における前記素子が配置された面に垂直な方向と一致するように、前記支持板上に配置され、
    前記支持板の前記面に垂直な方向に温度差を発生させることにより、前記一対の電極を介して電力が得られる熱発電デバイス。
  23. 2以上の前記素子を備え、
    前記素子同士が、前記電極を介して電気的に直列に接続されている請求項22に記載の熱発電デバイス。
  24. 2以上の前記素子を備え、
    前記素子同士が、前記電極を介して電気的に並列に接続されている請求項22に記載の熱発電デバイス。
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