JPWO2008102795A1 - フレキシブル多層配線板 - Google Patents

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要一郎 満生
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Abstract

本発明は、薄型化が容易であり、しかも繰り返しの屈曲や熱衝撃に対しても十分な耐久性を有するフレキシブル多層配線板を提供することを目的とする。好適なフレキシブル多層配線板(100)は、絶縁層(2)の両面に内層配線(4)が形成された可とう性を有する内層基板(10)と、内層基板の少なくとも片側に配置された外層配線(30)と、内層基板と外層配線との間に介在する絶縁接着シート(20)とを備える。そして、絶縁接着シートのうちの少なくとも一つは、イミド基含有ポリマーからなるものである。

Description

本発明は、フレキシブル多層配線板、特に、可とう性を有し、連続折り曲げが可能なフレキシブル部と、部品実装が可能なリジッド部とを有するフレキシブル多層配線板に関する。
各種電子機器は、小型化や軽量化が急速に進んでおり、これにともなって、電子機器に搭載される電子部品の搭載密度も高まっている。このような流れに対応するため、電子部品やこれを構成する材料等に要求される特性も多様化してきている。
例えば、電子機器の小型・薄型化に対応するために、電子部品の一例であるプリント配線板にはその薄型化が望まれている。薄型化の要求に応えるためには、例えば、多層リジッド回路基板の場合、その総厚を薄くする必要がある。これは、基板部分を形成するプリプレグの厚みを薄くすることで達成することが考えられる。
しかし、通常、プリプレグは、ガラスクロスにエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸したものであるため、厚みを薄くするのは製造技術面で限界がある。しかも、プリプレグの厚みを薄くしてしまうと、絶縁抵抗や耐マイグレーション性等の電気特性が低下し易い傾向にある。さらに、プリプレグを薄型化しようとすると、その厚みが不均一となり易いという不都合もある。
一方、プリント配線板としては、信号の高速化に対応でき、しかも電子機器内への設置の自由度も高いという特徴を有するフレキシブル多層配線板(FPC多層配線板)やリジッドフレックスプリント配線板の需要も高まっている。特に、前者のフレキシブル多層配線板は、基材等を構成している絶縁層がフィルムによって形成されているため、その総厚の薄型化が比較的容易である。
そこで、下記特許文献1には、リジッド基材からなる内層材にフレキシブル基材からなる外層材を積層した多層回路基板が開示されている。しかし、このような多層回路基板の場合、総厚の薄型化は可能となるものの、可とう性を有する部位を有しないため、設置の自由度は十分には得ることができない。
これに対し、下記特許文献2には、設置の自由度を高め得る多層回路基板として、可とう性を有する絶縁層に複数の導電層が形成された内層基板からなるケーブル部と、外層基板が内層基板の表面に積層された外層配線部とを有するフレキシブル多層配線板が記載されている。
特開平5−041580号公報 特開2006−196762号公報
近年、電子機器に搭載されるプリント配線板には、一層の薄型化が要求されている。しかしながら、上述した従来のフレキシブル多層配線板の場合、特にケーブル部分が外部にさらされることから、その影響を避けるために十分に保護する必要があり、そのため、更なる薄型化が困難な傾向にあった。また、ケーブル部分の薄型化を行った場合には、保護が不十分となるため、繰り返しの屈曲による劣化や、外部の熱にさらされることによる劣化によって断線が生じ易くなる傾向にあった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薄型化が容易であり、しかも繰り返しの屈曲や熱衝撃に対しても十分な耐久性を有するフレキシブル多層配線板を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のフレキシブル多層配線板は、絶縁層の両面に内層配線が形成された可とう性を有する内層基板と、内層基板の少なくとも片側に配置された外層配線と、内層基板と外層配線との間に介在する絶縁接着シートとを備え、絶縁接着シートのうちの少なくとも一つは、イミド基含有ポリマーからなることを特徴とする。
上記本発明のフレキシブル多層配線板は、内層基板からなり外層配線を有しないフレキシブル部分と、内層基板及び外層配線を有するリジッド部分とを有し、主にフレキシブル部分で屈曲する構造を有することができる。このような構造において、絶縁接着シートは、フレキシブル部分及びリジッド部分に位置する内層基板のほぼ全面を覆うように形成されており、リジッド部分においては外層配線との接着層として機能することができる。
ここで、本発明のフレキシブル多層配線板における絶縁接着シートは、イミド基含有ポリマーから構成されているため、従来のエポキシ樹脂等からなる接着層と比較して、屈曲による劣化の程度が大幅に小さいものである。また、この絶縁接着シートは、従来の接着層に比して熱による劣化も生じ難いものである。そのため、例えば、本発明のフレキシブル多層配線板を、フレキシブル部分において繰り返し屈曲させたり、またフレキシブル部分に熱衝撃が加わったりした場合であっても、この部分での絶縁接着シートの破断等による断線を生じ難い。
また、絶縁接着シートは上記のような特性を有しているため、フレキシブル部分において、保護層を別途設けなくてもこれ自体が十分に内層基板を保護することができる。したがって、フレキシブル部分の内層基板を保護するために保護層等を更に設ける必要が無く、フレキシブル多層配線板の総厚の薄型化も容易である。
すなわち、本発明のフレキシブル多層配線板は、上記のような絶縁接着シートを具備することによって、内層基板を有し外層配線を有していないフレキシブル部分と、内層基板及び外層配線を有するリジッド部分とを有しており、絶縁接着シートは、内層基板の少なくとも外層配線が形成されている側のフレキシブル部分及びリジッド部分の両方を覆うように形成されており、フレキシブル部においては、内層基板が絶縁接着シートのみに覆われていることを特徴とする構成を有することができる。
上記本発明のフレキシブル多層配線板は、内層基板の有する内層配線及び外層配線は、それぞれ銅箔から構成されるものであると好ましい。銅箔からなる内層配線又は外層配線は、良好な柔軟性を有していることから、フレキシブル多層配線板の屈曲による断線等を生じ難いものである。
本発明のフレキシブル多層配線板は、イミド基含有ポリマーからなる絶縁接着シートを有することにより、薄型化が容易であり、しかも繰り返しの屈曲や熱衝撃に対しても十分な耐久性を有するという特性を有することができる。
好適な実施形態のフレキシブル多層配線板の断面構造を模式的に示す図である。 フレキシブル多層配線板の製造方法の一例を示す工程図である。
符号の説明
2…絶縁層、4…内層配線、10…内層基板、20…絶縁接着層、30…外層配線、40…表面レジスト層、F…フレキシブル部分、R…リジッド部分。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(フレキシブル多層配線板)
図1は、好適な実施形態のフレキシブル多層配線板の断面構成を模式的に示す図である。図1に示すフレキシブル多層配線板100は、内層基板10、この内層基板10の両側に絶縁接着層20を介して接着された外層配線30、及び、外層配線30の外側をそれぞれ被覆している表面レジスト層40を有している。
フレキシブル多層配線板100において、外層配線30(及び表面レジスト層40)は内層基板10上に部分的に形成されており、外層配線30が形成されていない領域、及び、外層配線30が形成されている領域が、それぞれフレキシブル部分F及びリジッド部分Rとなっている。フレキシブル多層配線板100は、フレキシブル部分Fにおいて主に屈曲するが、リジッド部分Rにおいて屈曲してもよい。
なお、図示では、発明の理解を容易にするため、内層配線4及び外層配線30がそれぞれ層状の断面構造を有しているように表記されているが、実際にはこれらは平面的に所定のパターン形状を有していることから、図示のような断面形状となっていない場合もある。本実施形態においては、便宜的に、主に外層配線が形成されずに不連続となっている領域をフレキシブル部分Fとし、主に外層配線Rが連続して形成されている領域をリジッド部分Rとする。
フレキシブル多層配線板における内層基板10は、絶縁層2の両面に内層配線4が形成された構成を有しており、全体として容易に屈曲可能な可とう性を有している。この内層基板10において、絶縁層2は可とう性を有する絶縁性の樹脂材料から形成される。絶縁層2としては、ポリイミドからなるものが好適である。また、内層配線4は、通常導体パターンに適用される金属等の導電材料から構成される。内層基板10の可とう性を良好に得る観点からは、内層配線4は銅箔からなることが好ましい。
絶縁接着層20は、内層基板10の両面の全領域を覆うように形成されている。この絶縁接着層20は、フレキシブル部分Fにおいては内層基板10を保護する保護層として機能し、リジッド部分Rにおいては内層基板10と外層配線30とを接着するための接着層として機能する。この絶縁接着層20は、イミド基含有ポリマーからなる絶縁接着シートにより構成され、特に、繰り返し単位にイミド基及びアミド基を有しているポリアミドイミドからなると好ましい。絶縁接着層20を構成するイミド基含有ポリマーについては、詳しくは後述する。
外層配線30は、フレキシブル多層配線板100のリジッド部分Rに主に形成されており、絶縁接着層20を介して内層基板10と接着している。この外層配線30も、内層配線4と同様、通常導体パターンに適用される金属等の導電材料から構成され、銅箔からなることがより好ましい。
また、表面レジスト層40は、外層配線30を覆うように形成されており、これにより外層配線30を保護する機能を果たしている。表面レジスト層40は、特に限定されず、例えば、絶縁性を有する樹脂材料から構成され、感光性及び絶縁性を有するエポキシ系樹脂膜からなるものであると、優れた保護特性が得られるため、好ましい。
以下、上述した構成を有するフレキシブル多層配線板100において、絶縁接着層20は、イミド基含有ポリマーからなる絶縁接着シートによって構成される。以下、この絶縁接着シートを構成するイミド基含有ポリマーの好適な例について説明する。
イミド基含有ポリマーは、当該ポリマーを構成している繰り返し構造中に少なくとも一つのイミド基を有するポリマーであり、ポリイミド又はポリアミドイミドが挙げられる。このようなイミド基含有ポリマーとしては、ガラス転移温度が100〜260℃であるものが、内層基板10の保護特性、及び、内層基板10と外層配線30との接着性を高め得ることから好ましい。
イミド基含有ポリマーとしては、特に、ポリアミドイミドが好ましい。ポリアミドイミドとしては、例えば、下記一般式(1a)で表されるジイミドジカルボン酸、下記一般式(1b)で表されるジイミドジカルボン酸、及び、下記一般式(1c)で表されるジイミドジカルボン酸を含むジイミドジカルボン酸混合物と、下記化学式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)又は(2e)で表される芳香族ジイソシアネートとを反応させて得られるものが好適である。
Figure 2008102795
式(1a)中、Zは下記一般式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)又は(18)で表される2価の有機基を示し、式(1b)中、Zは下記一般式(21)、(22)、(23)、(24)、(25)、(26)又は(27)で表される2価の有機基を示し、式(1c)中、R及びRはそれぞれ独立に2価の有機基を示し、R、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を示し、nは1〜50の整数を示す。
Figure 2008102795
式(23)中、Xは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示し、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、メチル基又はハロゲン化メチル基を示し、式(24)中、Xは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、式(25)中、Xは炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、炭素数1〜3のハロゲン化脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示し、式(27)中、R10はアルキレン基を示し、nは1〜70の整数を示す。
上記ジイミドジカルボン酸混合物は、例えば、下記一般式(3a)で表されるジアミン、下記一般式(3b)で表されるジアミン、及び下記一般式(3c)で表されるジアミンを含むジアミン混合物と、トリメリット酸無水物とを反応させて得られる。なお、下記一般式(3a)、(3b)、(3c)中のZ、Z、R〜Rは、それぞれ上述したこれらの符号と同義である。
Figure 2008102795
上記一般式(3a)で表されるジアミンは、芳香環を3個以上有するジアミンである。その具体例としては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と略す。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて使用される。これらの中でも、ポリアミドイミドの特性バランスを維持する観点及び低コスト化の観点からBAPPが特に好ましい。
上記一般式(3b)で表されるジアミンの具体例としては、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン、並びに、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチルジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニル−ジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等の脂環式ジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
これらの中でも、一般式(3b)で表されるジアミンとしては、絶縁接着層20による接着性及び強靭性を向上させる観点から、下記一般式(27’)で表されるポリオキシプロピレンジアミンが特に好ましい。
Figure 2008102795
[式中、nは1〜70の整数を示す。]
さらに、絶縁接着層20の接着性及び強靭性を更に向上させる観点から、上記一般式(3b)で表されるジアミンのアミン当量は、50〜5000g/molであることが好ましく、100〜2000g/molであることがより好ましい。
上記一般式(3b)で表されるジアミンは、市販されているものを入手して使用することが可能である。市販されているものとしては、例えば、ジェファーミンD−230(商品名、サンテクノケミカル(株)社製、アミン当量115)、ジェファーミンD−400(商品名、サンテクノケミカル(株)社製、アミン当量200)、ジェファーミンD−2000(商品名、サンテクノケミカル(株)社製、アミン当量1000)、ジェファーミンD−4000(商品名、サンテクノケミカル(株)社製、アミン当量2000)が挙げられる。これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
また、上記一般式(3c)中のR及びRで表される2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等のアリーレン基が挙げられる。また、上記一般式(3c)中の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基又はこれらの構造異性体が挙げられる。上記一般式(3c)中の炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられ、更にハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アリル基及び炭素数1〜20のアルキル基等で置換されてもよい。
上記一般式(3c)で表されるジアミンとしては、市販されているものを入手して用いることが可能である。市販されているものとしては、アミノ変性シリコーンオイルであるX−22−161AS(商品名、信越化学工業(株)社製、アミン当量450)、X−22−161A(商品名、信越化学工業(株)社製、アミン当量840)、X−22−161B(商品名、信越化学工業(株)社製、アミン当量1500)、BY16−853(商品名、東レダウコーニングシリコーン(株)社製、アミン当量650)、BY16−853B(商品名、東レダウコーニングシリコーン(株)社製、アミン当量2200)が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上組み合わせて使用される。
絶縁接着層20の接着性を向上させる観点からは、上記一般式(3c)で表されるジアミンのアミン当量は、400〜1500g/molであることが好ましく、600〜1100g/molであることがより好ましく、700〜900g/molであることが更に好ましい。この観点から、例えば、X−22−161A(商品名、信越化学工業(株)社製、アミン当量840)、X−22−161B(商品名、信越化学工業(株)社製、アミン当量1500)が特に好適である。
一方、上記のジイミドジカルボン酸混合物と反応させる芳香族ジイソシアネ−トとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。すなわち、上記化学式(2a)で表される4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略す)、上記化学式(2b)で表される2,4−トリレンジイソシアネート、上記化学式(2c)で表される2,6−トリレンジイソシアネート(以下、上記化学式(2b)又は(2c)で表されるジイソシアネートを、「TDI」と略す)、上記化学式(2d)で表される2,4−トリレンダイマー、上記化学式(2e)で表されるナフタレン−1,5−ジイソシアネートが例示できる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
これらの中で、絶縁接着層20に適度な可とう性を付与する、又は、当該層20の結晶化を防止する観点からは、MDIが好ましい。なお、ポリアミドイミドの製造に際しては、芳香族ジイソシアネ−トに加えて、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートを含有させてもよい。絶縁接着層20の耐熱性を向上させる観点からは、芳香族ジイソシアネート100モルに対して、脂肪族ジイソシアネ−トを5〜10モル程度用いることが好ましい。
絶縁接着層20を構成するポリアミドイミドは、上述した原料から、例えば、以下に示す製造方法によって好適に製造される。すなわち、まず、上記一般式(3a)、(3b)及び(3c)でそれぞれ表されるジアミンを含むジアミン混合物と、トリメリット酸無水物(以下、「TMA」という。)とを混合し、これに、更に非プロトン性極性溶媒を加える。
この際、ジアミン混合物の合計量を100モルとした場合、各ジアミンの混合比は、それぞれ(3a)/(3b)/(3c)で表して、(0.0〜70.0)モル/(10.0〜70.0)モル/(10.0〜50.0)モルであることが好ましく、(0.0〜65.0)モル/(20.0〜60.0)モル/(10.0〜40.0)モルであることがより好ましい。ジアミンが上記混合比で混合されていない場合、絶縁接着層20に反りが発生し易くなるか、又は、得られるポリアミドイミドの分子量の低下が起こり、絶縁接着層20の接着性及び強靭性が低下するおそれがある。
TMAの配合量は、ジアミン混合物1モルに対して2.05〜2.20モルであることが好ましく、2.10〜2.15モルであることがより好ましい。TMAの配合量がこのような範囲にない場合、反応後にアミン混合物又はTMAが残存し、得られるポリアミドイミドの分子量が低下する傾向にある。
非プロトン性極性溶媒は、ジアミン混合物及びTMAと反応しない有機溶媒であることが好ましい。具体的には、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン又はシクロヘキサノンが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。反応は高温条件で行われる場合が多く、これらの中でも沸点の高いN−メチル−2−ピロリドンが好適に用いられる。ポリアミドイミドは、これらの有機溶剤に溶解することが好ましい。
非プロトン性極性溶媒の使用量は、ジアミン混合物及びTMAの総量100重量部に対して、10〜80重量部であることが好ましく、50〜80重量部であることがより好ましい。この使用量が10重量部未満ではTMAが十分に溶解せずジイミドジカルボン酸の生成が不利となる傾向がある。また、非プロトン性極性溶媒中に含まれる水分量は、0.1〜0.2重量部であることが好ましい。水分量が0.2重量部を越えるとTMAが水和して得られるトリメリット酸の存在によって、反応が十分に進行せず、ポリアミドイミドの分子量が低下する傾向がある。
次に、上記原料を混合した反応混合液を、50〜90℃に加熱しながら、0.2〜1.5時間かけて、ジアミン混合物とTMAとを反応させる。更に、反応後の溶液に、水と共沸可能な芳香族炭化水素を、非プロトン性極性溶媒に対して0.1〜0.5質量比で投入し、これを120〜180℃に加熱する。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン又はキシレン等が挙げられる。これらの中でも、沸点が比較的に低く有害性のないトルエンを用いることが好ましい。このようにして、上記一般式(1a)〜(1c)で表されるジイミドジカルボン酸を含有するジイミドジカルボン酸混合物が得られる。
その後、ジイミドジカルボン酸混合物を含む混合液に、芳香族ジイソシアネ−トを加え、この溶液を150〜250℃に加熱しながら、0.5〜3時間かけて反応させることにより、ポリアミドイミドを形成する。
芳香族ジイソシアネ−トの配合量はジイミドジカルボン酸混合物1モルに対して、1.05〜1.50モルであることが好ましく、1.1〜1.3モルであることがより好ましい。このモル比が1.05未満ではポリアミドイミドがゲル状になる傾向があり、0.50を超えると得られるポリアミドイミドの分子量が低下する傾向がある。
このようにして得られるポリアミドイミドの重量平均分子量は、30000〜300000であると好ましく、40000〜200000であるとより好ましく、50000〜100000であると更に好ましい。重量平均分子量が30000未満では絶縁接着層20の強度や可とう性が低下するおそれがある。一方、300000を超えると、絶縁接着層20の可とう性及び接着性が低下する傾向がある。なお、ここでいう重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算されたものである。
フレキシブル多層配線板100における絶縁接着層20が、上述したようなポリアミドイミドによって構成される場合、この絶縁接着層20は、優れた接着性を有し、屈曲による劣化も大幅に生じ難いものとなる。また、耐熱性にも優れ、熱による劣化も生じ難いものとなる。したがって、このような絶縁接着層20を備えるフレキシブル多層配線板100は、フレキシブル部分Fにおいて、内層基板10が絶縁接着層20によって十分に保護されているため、別途の保護層を設ける必要がなく、薄型化が容易である。また、フレキシブル部分Fが繰り返し屈曲した場合であっても、絶縁接着層20の劣化が少ないため、この部分での断線等が極めて生じ難く、優れた接続信頼性が得られる。さらに、リジッド部分Rにおいては、内層基板10と外層配線30とが絶縁接着層20によって良好に接着される。
さらに、上述のポリアミドイミドは、耐静電気特性にも優れるという特性をあわせて有していることから、このポリアミドイミドからなる絶縁接着層20を備えるフレキシブル多層配線板は、絶縁抵抗性、熱伝導性、電圧変化率等に優れるという特徴も有するプリント配線板となる。
(フレキシブル多層配線板の製造方法)
次に、上述した好適な実施形態のフレキシブル多層配線板の好適な製造方法について説明する。
図2は、フレキシブル多層配線板の製造工程の一例を模式的に示す工程図である。フレキシブル多層配線板の製造においては、まず、ポリイミド等からなる絶縁層2を準備する。この絶縁層2の両面に銅箔等を張り付けた後、フォトリソグラフィー法等の公知の方法により銅箔をパターニングして内層配線4を形成し、両面銅貼りフレキシブル回路基板である内層基板10を得る(図2(a))。
次に、図2(b)に示すように、内層基板10の両側の表面上に、絶縁接着層20を形成する。絶縁接着層20は、イミド基含有ポリマーからなる絶縁接着シートを形成し、これを内層基板10と貼り合わせることによって形成することができる。絶縁接着シートは、例えば、イミド基含有ポリマーを溶媒に溶解又は分散させた溶液とし、これを所定の支持体上に塗布し、乾燥した後、支持体を剥離することによって形成することができる。
さらに、絶縁接着層20の表面上に銅箔32を貼り付けた後(図2(c))、この銅箔32の表面上に、外層配線30のパターン形状に対応した形状を有する表面レジスト層40を形成する(図2(d))。そして、表面レジスト層40をマスクとして銅箔32のエッチング等を行うことにより、表面レジスト層40が形成されていない領域の銅箔32を除去する(図2(e))。これにより、銅箔32から所定の回路パターンを有する外層配線30が形成されるとともに、フレキシブル部分Fの銅箔が除去され、この部分の絶縁接着層20が表面に露出する。なお、図中、破線で示した領域が、エッチングにより除去される領域を示している。
そして、必要に応じて、外部配線30において電極部として露出している部分等に防錆処理やはんだめっき、金メッキ等の表面処理を施すことにより(図示せず)、図1に示すような構造を有するフレキシブル多層配線板100が得られる。
このような製造方法によれば、リジッド部分Rにおいて内層基板10の両側に外層配線30が絶縁接着層20を介して積層されるとともに、フレキシブル部分Fにおいては内層基板10が絶縁接着層20のみによって覆われているフレキシブル多層配線板100を容易に得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態に係るフレキシブル多層配線板やその製造方法について説明したが、本発明は上述した実施形態に必ずしも限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、絶縁接着層20が内層基板10の全面を覆うような構成を有していたが、絶縁接着層20は、フレキシブル多層配線板の少なくともフレキシブル部分F及びリジッド部分Rに形成されていればよく、例えば、内層基板が外部との接続用のリード部等を形成している場合等は、その部分には絶縁接着層20が形成されていなくてもよい。また、絶縁接着層20は、内層配線4と外層配線30とを接続するための空孔等を部分的に有していてもよい。
また、上述したフレキシブル多層配線板100は、内層基板10の両側に、外層配線30がそれぞれ一層ずつ設けられた構成を有していたが、外層配線30はそれぞれ複数層形成されていてもよい。さらに、外層配線30は、内層基板10の両側ではなく、片側にのみ形成されていてもよいが、この場合、外層配線30は少なくとも2層以上設けられていることが好ましい。
上記のように、内層基板10の片側に2層以上の外層配線30が配置される場合は、外層配線30同士は、絶縁性を有する接着層を介して接着されるが、このような接着層としても、上述した絶縁接着層20が好適である。また、内層基板10の絶縁層2も、絶縁接着層20によって構成されてもよい。
さらに、上述したフレキシブル多層配線板100の製造方法では、内層基板10の表面上に絶縁接着層20を形成した後、外層配線30を形成したが、これに限られず、例えば、外層配線30はあらかじめ形成しておき、これを絶縁接着層20を形成するための絶縁接着シートを介して内層基板10と貼り合わせるようにしてもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[フレキシブル多層配線板の製造]
(実施例1)
内層基板としてフレキシブル回路基板を用い、上述した実施形態の方法にしたがって、内層基板に、イミド基含有ポリマーからなる絶縁接着シートを介して電解銅箔からなる外層配線を貼り合わせる工程を行い、図1に示すのと同様の構造を有するフレキシブル多層配線板を得た。この製造方法において用いた材料は次の通りである。
内層基板:両面銅貼りフレキシブル基板
(絶縁層:ポリイミドフィルム(25μm厚、商品名:カプトン100EN、東レ・デュポン(株)製)、内層配線:電解銅箔(12μm厚、商品名:F0−WS、古河サーキットフォイル(株)製))
外層配線:電解銅箔(12μm厚、商品名:F0−WS、古河サーキットフォイル(株)製)
絶縁接着層:イミド基含有接着シート(25μm厚、商品名:KS7003、日立化成工業(株)製)
(比較例1)
次に示す各構成材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてフレキシブル多層配線板を製造した。
内層基板:両面銅貼りフレキシブル基板
(絶縁層:ポリイミドフィルム(25μm厚、商品名:カプトン100EN、東レ・デュポン(株)製)、内層配線:電解銅箔(12μm厚、商品名:F0−WS、古河サーキットフォイル(株)製))
外層配線:電解銅箔(12μm厚、商品名:F0−WS、古河サーキットフォイル(株)製)
絶縁接着層:エポキシ系接着シート(80μm厚、商品名:AS−3000、日立化成工業(株)製)
[特性評価]
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1のフレキシブル多層配線板について、以下に示す方法にしたがって、繰り返し屈曲性能、層間接続信頼性、配線自由度及び表面回路密度のそれぞれについて評価を行った。得られた結果を表1に示す。
(繰り返し屈曲性能試験)
各フレキシブル多層配線板について、MIT試験(JIS C6471 8.2に準拠)を行った。なお、この試験における折り曲げ過重は4.9N、折り曲げ角度は135°、折り曲げ半径はR=0.8mm、折り曲げ周期は175回/分とした。そして、折り曲げ部分において段線が生じるまでの折り曲げ回数を測定した。得られた結果を表1に示す。表1中、Aは、折り曲げ回数が1000回以上であったもの、Bは折り曲げ回数が1000回よりも少なかったものをそれぞれ示す。表1には、この評価とともに断線が生じるまでの折り曲げ回数を括弧内に示した。
(層間接続信頼性試験)
各フレキシブル多層配線板に対し、気相熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験は、60分で40℃〜125℃に温度変化させるのを1サイクルとし、これを1000サイクル繰り返す処理とした。得られた結果を表1に示す。表1中、Aは1000サイクルで断線がなかったもの、Bは1000サイクル未満で断線を生じたものをそれぞれ示している。表1には、この評価とともに断線が生じるまでのサイクル数を括弧内に示した。
Figure 2008102795
表1より、実施例1のフレキシブル多層配線板は、比較例1のフレキシブル多層配線板に比して、各特性、特に、繰り返し屈曲性能及び層間接続信頼性の両方に優れることが確認された。

Claims (4)

  1. 絶縁層の両面に内層配線が形成された可とう性を有する内層基板と、
    前記内層基板の少なくとも片側に配置された外層配線と、
    前記内層基板と前記外層配線との間に介在する絶縁接着シートと、を備え、
    前記絶縁接着シートのうちの少なくとも一つは、イミド基含有ポリマーからなる、
    ことを特徴とするフレキシブル多層配線板。
  2. 前記内層配線が、銅箔から構成される、ことを特徴とする請求項1記載のフレキシブル多層配線板。
  3. 前記外層配線が、銅箔から構成される、ことを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブル多層配線板。
  4. 前記内層基板を有し前記外層配線を有していないフレキシブル部分と、前記内層基板及び前記外層配線を有するリジッド部分と、を有しており、
    前記絶縁接着シートは、前記内層基板の、少なくとも前記外層配線が形成されている側の前記フレキシブル部分及び前記リジッド部分の両方を覆うように形成されており、
    前記フレキシブル部分においては、前記内層基板が前記絶縁接着シートのみに覆われている、
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブル多層配線板。
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