JPWO2008090960A1 - ガングリオシドgm2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物 - Google Patents

ガングリオシドgm2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックスにおいてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物、該遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子または該抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA、該DNAを宿主細胞に導入して得られる形質転換体、該形質転換体を用いた遺伝子組換え抗体組成物の生産方法、ならびに該抗体組成物を有効成分として含有する医薬に関する。

Description

本発明は、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックス(以下、EUインデックス)においてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物、該遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子または該抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA、該DNAを宿主細胞に導入して得られる形質転換体、該形質転換体を用いた遺伝子組換え抗体組成物の生産方法、ならびに該遺伝子組換え抗体組成物を有効成分として含有する医薬に関する。
抗体は、高い結合活性、結合特異性および血中での高い安定性を有することから、ヒトの各種疾患の診断、予防および治療薬としての応用が試みられてきた(非特許文献1)。また、遺伝子組換え技術を利用して、非ヒト動物抗体からヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体が作製された(非特許文献2〜5)。ヒト型キメラ抗体は、抗体可変領域がヒト以外の動物の抗体、定常領域がヒト抗体から構成される。ヒト化抗体とは、ヒト抗体の相補性決定領域(complementarity determining region、以下、CDRと表記する)が、ヒト以外の動物の抗体のCDRに置換された抗体である。
ヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体は、非ヒト動物抗体であるマウス抗体などが有する高い免疫原性、低いエフェクター機能、短い血中半減期などの問題を解決し、モノクローナル抗体を医薬品として応用することを可能にした(非特許文献6〜9)。既に米国においては、例えば、癌治療用抗体として複数のヒト化抗体が認可され、販売されている(非特許文献10)。
これらのヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体は、実際に臨床においてある程度の効果を示しているが、より効果の高い抗体医薬が求められている。例えば、CD20に対するヒト型キメラ抗体であるRituxan(非特許文献11)(IDEC社/Roche社/Genentech社)の単独投与では、再発性低悪性度の非ホジキンリンパ腫患者に対する第III相臨床試験における奏効率は48%(完全寛解6%、部分寛解42%)に過ぎず、また、平均の効果持続期間は12ヶ月と報告されている(非特許文献12)。Rituxanと化学療法(CHOP:Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine)との併用では、再発性低悪性度および濾胞性の非ホジキンリンパ腫患者に対する第II相臨床試験において、奏効率は95%(完全寛解55%、部分寛解45%)と報告されているが、CHOPに起因する副作用が認められている(非特許文献13)。Her2に対するヒト化抗体であるHerceptin(Genentech社)は、単独投与では、転移性乳癌患者に対する第III相臨床試験における奏効率は僅か15%であり、平均の効果持続期間は9.1ヶ月と報告されている(非特許文献14)。
ヒト抗体分子はイムノグロブリン(以下Ig)とも称し、その分子構造からIgA、IgD、IgE、IgG、IgMの各クラスに分類される。抗体医薬として主に用いられるヒトIgG(以下IgGと称する)の抗体分子は2本ずつの重鎖(heavy chain、以下H鎖と称する)と軽鎖(light chain、以下L鎖と称する)と呼ばれるポリペプチドによって形成される。H鎖はN末端側からH鎖可変領域(以下VHと表記する)、CH1、ヒンジ、CH2、CH3と呼ばれる各ドメイン構造によって形成される。CH1、ヒンジ、CH2、CH3の各ドメインをあわせて重鎖定常領域(以下、CHと表記する)とも呼ばれ、CH2、CH3の各ドメインをあわせてFc領域とも呼ばれる。L鎖はN末端側からL鎖可変領域(以下VLと表記する)、L鎖定常領域(以下CLと表記する)と呼ばれる各ドメイン構造によって形成される。
IgG抗体のH鎖にはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つのサブクラスが存在する。各IgGサブクラスのH鎖はお互いに、可変性に富むヒンジを除く定常領域について95%程度のアミノ酸配列の相同性を有する(図1)。
各IgGサブクラスはアミノ酸配列の相同性が高いにも関わらず、それらが有する生物活性の強弱は異なる(非特許文献15)。生物活性としては、補体依存性細胞傷害活性(以下、CDC活性と略記する)、抗体依存性細胞傷害活性(以下、ADCC活性と略記する)、貪食活性などのエフェクター機能があげられ、これらは生体内で異物や病原体排除等に重要な役割を果たす。
ナチュラルキラー細胞(以下NK細胞と表記する)、単球、マクロファージ、顆粒球などの種々の白血球の表面には、Fcγ受容体(以下FcγRと表記する)のファミリーが発現する。FcγRはFcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、FcγRIIIbの活性型FcγRと、FcγRIIbの抑制型FcγRに分類される。IgG抗体、特にヒトにおいてはIgG1とIgG3はこれらの受容体に強く結合し、その結果白血球によるADCC活性や貪食活性を誘導する。
ADCC活性とは、抗原に結合した抗体が、Fc部分を介して主にNK細胞表面のFcγRIIIaに結合し、その結果、NK細胞から放出されるパーフォリンやグランザイムなどの細胞傷害性分子によって生じる細胞融解反応である(非特許文献16、17)。ADCC活性の強さは、一般的にはIgG1>IgG3>>IgG4≧IgG2の序列となる(非特許文献18、19)。
CDC活性とは、抗原に結合した抗体が、血清中の補体系と呼ばれる一群の血清蛋白質の反応カスケードを活性化し、最終的に標的細胞を融解する反応である。CDC活性は、ヒトIgG1およびIgG3において高く、その強さは一般的にIgG3≧IgG1>>IgG2≒IgG4の序列となる。補体系はC1〜C9の各成分に分類され、その多くが部分分解を受け酵素活性を発現する酵素前駆体である。補体系の反応カスケードは、C1の一成分であるC1qが、標的細胞に結合した抗体のFc領域への結合することにより始まり、各成分が前段階の成分によって部分分解を受けることにより活性化のカスケードが進行し、最終的にはC5〜C9が膜侵襲複合体と呼ばれる孔形成重合体が標的細胞の細胞膜上で形成され、細胞の溶解反応を引き起こす(非特許文献16、17)。
臨床に用いられる抗体医薬の薬効メカニズムにおいても、上述のエフェクター機能の重要性が認識されている。上記のRituxanは、IgG1サブクラスのヒト型キメラ抗体であり、in vitroでADCC活性およびCDC活性を示す(非特許文献21)ばかりでなく、臨床効果においても、ADCC活性の強い遺伝子型を示す患者において治療効果が高いこと(非特許文献22)、投与後に速やかに血中より補体成分が消費されること(非特許文献23)、投与後に再発した患者の癌細胞ではCDC活性を抑制する因子であるCD59の発現が上昇していること(非特許文献24)などから、Rituxanが実際に患者体内でエフェクター機能を発揮していることが示唆されている。HerceptinもIgG1サブクラスのヒト化抗体であり、in vitroでADCC活性を有することが報告されている(非特許文献25)。
以上のことから、ヒトIgG1抗体は他のサブクラスと比較して、強いADCC活性およびCDC活性を有し、さらにヒト血中での半減期が長いことなどから、抗体医薬として最適である。
IgG抗体の機能解析を行うために、異なるIgGサブクラス間でドメイン単位を交換した抗体を作製する研究が行われてきた。1980年代後半、MorrisonらはIgG1とIgG4との間、あるいはIgG2とIgG3との間で重鎖定常領域の各ドメイン(CH1、CH2、CH3、ヒンジ)を入れ替えた抗体分子が組換え蛋白質として発現可能なこと、またIgG3とIgG4のヒンジをお互いに入れ替えた抗体は、それぞれ元の抗体の補体固定化能およびFc受容体結合能に変化がないことを示した(特許文献1)。その後、彼らはこれらのIgG1とIgG4、およびIgG2とIgG3とのドメイン交換抗体を調べた結果、IgG1のCDC活性にはCH2のC末端側が、IgG3のCDC活性にはCH2が重要であること(非特許文献26)、Fc受容体の一種であるFcγRIに対するIgG1およびIgG3の結合にはCH2ドメインやヒンジが重要であること(非特許文献27)などを示した。
C1qは抗体分子のFc領域に結合することが知られる。ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の単量体に対するC1qの結合定数(Ka)は、それぞれ1.2×104、0.64×104、2.9×104、0.44×104M-1である(非特許文献20)。上述のように、C1qの抗体分子への結合には、Fc領域の中でも特にCH2ドメインが重要であり(非特許文献26)、更に詳細にはヒトIgG1ではKabatらによるEUインデックスの定義(非特許文献28)において、CH2中のLeu235(非特許文献29)、Asp270、Lys322、Pro329、Pro331(非特許文献30)、ヒトIgG3ではGly233、Leu234、Leu235、Gly236(非特許文献31)、Lys322(非特許文献32)が重要であることが知られている。
CDC活性が最も高いサブクラスであるヒトIgG3の重鎖定常領域のアミノ酸配列の一部を、他のサブクラス由来のアミノ酸配列に置換することにより、CDC活性をより増強させる試みがなされてきた。各IgGサブクラスのヒンジの長さは、IgG1が15アミノ酸、IgG2が12アミノ酸、IgG3が62アミノ酸、IgG4が12アミノ酸であり、ヒトIgG3は他のIgGサブクラスに比較し、ヒンジ領域が長いという構造上の特徴を有する(非特許文献1)。Michaelsenらは、ヒトIgG3の遺伝子におけるN末側の3個のエキソンを削除することにより、ヒトIgG3のヒンジを野生型の62アミノ酸残基から15アミノ酸残基に短縮させたIgのCDC活性が、IgG3およびIgG1よりも上回ることを示した(非特許文献33)。さらにNorderhaugらは、短縮した前述のヒンジのアミノ酸配列を、IgG4のヒンジのアミノ酸配列に近づけていくと、さらにCDC活性が上昇することを示した(非特許文献34)。またBrekkeらは、ヒンジ部分をIgG1に置換させたIgG3、ならびにヒンジ部分、およびCH1のN末端部分をIgG1に置換させたIgG3は、CDC活性がIgG3よりも高く、IgG1と同等以上になることを示した(非特許文献35)。
またヒトIgG重鎖定常領域中のあらゆるアミノ酸配列に変異を導入したIgGの改変体を作製し、それらの改変体のC1qとの結合活性を上昇させたCDC活性の増強も検討されている。Idusogieらは、ヒトIgG1の定常領域およびマウス由来の可変領域を有する抗CD20キメラ抗体Rituxanの重鎖定常領域中のCH2ドメイン中の、EUインデックス326番目のLys、または333番目のGluを他のアミノ酸に置換すると、最大で2倍程度CDC活性が増強することを報告した(非特許文献36、特許文献2)。Idusogieらは、さらに、IgG1の数百分の一程度のCDC活性であったIgG2のCDC活性が、ヒトIgG2のEUインデックス326番目のLys、または333番目のGluを他のアミノ酸に置換することにより、IgG1のCDC活性の1/25程度まで上昇することを示した(特許文献3〜5)。
抗体医薬の治療効果には、ADCC活性や貪食活性などのFcγR依存的な活性とCDC活性の双方が重要である。しかしながら、CDC活性を惹起する初期段階であるC1q結合、およびADCC活性を惹起する初期段階であるFcγRへの結合は共に抗体のFcを介しているため、CDC活性を増強させた場合にADCC活性を損ねてしまう可能性もある。Idusogieらは、CDC活性を増強させたIgG1のFcアミノ酸の点変異導入体は、ADCC活性が大きく低下してしまうことを報告している(非特許文献36)。
またヒトIgG定常領域を有する抗体のADCC活性は、CH2ドメインの297番目のアスパラギンに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の構造(図2に模式図を示す)によって変化することが知られている(特許文献6)。抗体に結合する糖鎖のガラクトースおよびN-アセチルグルコサミンの含量に依存して、抗体のADCC活性が変化する報告があるが(非特許文献37〜40)、最もADCC活性に影響を及ぼすのは、還元末端のN-アセチルグルコサミンにα1,6結合するフコースである。フコースが還元末端のN-アセチルグルコサミンに結合しないN-グリコシド結合複合型糖鎖を有するIgG抗体は、フコースが還元末端のN-アセチルグルコサミンに結合したN-グリコシド結合複合型糖鎖を有するIgG抗体よりも顕著に高いADCC活性を示す(非特許文献41、42、特許文献7)。フコースが還元末端のN-アセチルグルコサミンに結合しないN-グリコシド結合複合型糖鎖を有する抗体組成物を生産する細胞としては、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子がノックアウトされた細胞が知られている(特許文献7、8)。
ヒトIgG3は他のサブクラスと異なり、プロテインA結合活性を有しないため(非特許文献1)、医薬品として製造する場合に精製が困難である。IgG分子は、プロテインAとCH2ドメインとCH3ドメインの境界面(interface)で会合することが知られており、具体的にはCH2のイムノグロブリン構造(immunoglobulin fold)のEUインデックス252番目から254番目、308番目から312番目、CH3のイムノグロブリン構造の433番目から436番目のアミノ酸からなるループ部分が重要であることがX線結晶解析より示唆されている(非特許文献43)。さらに核磁気共鳴法(NMR法)による解析により、IgG1のCH2中のIle253、Ser254、His310、Gln311、およびCH3中のHis433、His435、His436が特に重要であることが示された(非特許文献44)。さらにKimらは、ヒトIgG1の重鎖定常領域のHis435を、IgG3由来のArgに置換することによりプロテインA結合活性が減弱することを見出した(非特許文献45)。
ところで、シアル酸を有する糖脂質の一種であるガングリオシドは、動物の細胞膜を構成しており、親水性側鎖である糖鎖と、疎水性側鎖であるスフィンゴシンおよび脂肪酸とから構成される分子である。ガングリオシドの種類と発現量は、細胞種、臓器種、動物種等によって異なる。さらに細胞が癌化する過程において、ガングリオシドの発現が量的および質的に変化することも知られている(非特許文献46)。
例えば、悪性度が高いといわれている神経外胚葉系腫瘍である神経芽細胞腫、肺小細胞癌およびメラノーマでは、正常細胞にはほとんど認められないガングリオシドGD2、GD3、GM2 等が発現していることが報告されており(非特許文献46〜52)、このような腫瘍細胞に特異的なガングリオシドに対する抗体はヒトの様々な癌の治療に有用であると考えられている。
一般にヒト以外の動物の抗体をヒトに投与すると、異物として認識され、副作用を惹起することや(非特許文献53〜56)、抗体の体内からの消失を速めることにより(非特許文献54、非特許文献57、非特許文献58)、抗体の治療効果を減じてしまうことが知られている(非特許文献59、非特許文献60)。
これらの問題点を解決するために遺伝子組換え技術を利用して、ヒト以外の動物の抗体をヒト型キメラ抗体、あるいはヒト化抗体などのヒト抗体に近づけた抗体を作製することが試みられている(非特許文献61)。ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体に比べ、免疫原性が低下し(非特許文献62)、治療効果が延長することが報告されている(非特許文献63、非特許文献64)。
ガングリオシドGM2に対するヒト化抗体は、ヒトメラノーマの治療に有用であることが示されている(非特許文献65)。ガングリオシドGM2に特異的に反応し、上記のADCC活性やCDC活性等の細胞傷害活性を有するヒト化抗体としては、ヒトIgGクラスのヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体が取得されている(特許文献9、10)。
また、ヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を利用して作製するため、様々な形態の分子として作製することができる。例えば、エフェクター機能の高いヒト化抗体を作製することができる(非特許文献63)。特にGM2発現細胞数を減少させる治療においては、抗体のFc領域(抗体重鎖のヒンジ領域以降の領域)を介したCDC活性やADCC活性と表記する)等の細胞傷害活性の高さがその治療効果に重要である。

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抗原性を有さず、かつCDC活性、ADCC活性などのエフェクター機能が増強された、治療効果の高められたガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体が求められている。さらに、医薬品として製造することが可能な抗体が求められている。
本発明は、以下の(1)〜(38)に関する。
(1) ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックス(以下、EUインデックス)においてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物。
(2)さらにプロテインAにヒトIgG1抗体と同等の結合活性を有する上記(1)記載の遺伝子組換え抗体組成物。
(3)置換されるヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(j)のいずれかのポリペプチドより選ばれるポリペプチドである上記(1)に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
(a)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(f)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(g)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(h)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から434番目と436番目から447番目のアミノ酸配列とからなるポリペプチド
(i)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から435番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(j)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から447番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(4)置換されるヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(h)のいずれかのポリペプチドより選ばれる上記(2)に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
(a)EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(f)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(g)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(h)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から434番目と436番目から447番目のアミノ酸配列とからなるポリペプチド
(5)N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
(6)N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該抗体のFc領域に結合するN-グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
(7)それぞれ配列番号76、77および78で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖 (H鎖)可変領域 (V領域) の相補性決定領域 (CDR) 1、CDR2、CDR3、およびそれぞれ配列番号79、80および81で示されるアミノ酸配列からなる抗体軽鎖 (L鎖) V領域の相補性決定領域 (CDR) 1、CDR2、CDR3を含む、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(8)遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(9)抗体分子の重鎖 (H鎖) 可変領域 (V領域) が、配列番号82で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号83で示されるアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト型キメラ抗体からなる抗体組成物。
(10)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(11)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(12)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(13)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84、85、88、89、90、91、92、または配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含み、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号86、87、93、94、95、96、97、または配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(14)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号88で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号93または94で示されるアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(15)抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号94または97で示されるアミノ酸配列を含む上記(8)記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
(16)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子をコードするDNA。
(17)上記(1)〜(15)のいずれかに記載の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA。
(18)上記(16)記載のDNAを宿主細胞に導入して得られる、形質転換体。
(19)宿主細胞が、N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である細胞である、上記(18)記載の形質転換体。
(20)宿主細胞が、抗体分子をコードする遺伝子を導入したとき、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物を生産する能力を有する細胞である、上記(18)記載の形質転換体。
(21)フコースが結合していない糖鎖が、該フコースの1位がN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にα結合していない糖鎖である、上記(20)記載の形質転換体。
(22)宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素、またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性が低下または失活するようにゲノムが改変された細胞である、上記(18)記載の形質転換体。
(23)宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素、またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノム上の対立遺伝子のすべてがノックアウトされた細胞である、上記(18)記載の形質転換体。
(24)細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素が、GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ(GMD)またはGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ(Fx)から選ばれる酵素である、上記(22)または(23)に記載の形質転換体。
(25)GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、上記(24)に記載の形質転換体。
(a) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(26)GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼが、以下の (a)〜(c) からなる群から選ばれる蛋白質である、上記(24)記載の形質転換体。
(a) 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号19で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号19で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質。
(27)GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼが、以下の (a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、上記(24)記載の形質転換体。
(a) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(28)GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼが、以下の (a)〜(c) からなる群から選ばれる蛋白質である、上記(25)記載の形質転換体。
(a) 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号21で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号21で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質。
(29)N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα1,6-フコシルトランスフェラーゼである上記(22)または(23)に記載の形質転換体。
(30)α1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)〜(d)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、上記(29)に記載の形質転換体。
(a) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNA;
(c) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
(d) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(31)α1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)〜(f)からなる群から選ばれる蛋白質である、上記(29)に記載の形質転換体。
(a) 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(c) 配列番号24で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(d) 配列番号25で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(e) 配列番号24で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(f) 配列番号25で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
(32)宿主細胞が、下記の(a)〜(i)からなる群から選ばれる細胞である上記(18)〜(31)のいずれか1項に記載の形質転換体。
(a) チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞;
(b) ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞;
(c) マウスミエローマ細胞株NS0細胞;
(d) マウスミエローマ細胞株SP2/0-Ag14細胞;
(e) シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞;
(f) 抗体を産生するハイブリドーマ細胞;
(g) ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞;
(h) 胚性幹細胞;
(i) 受精卵細胞。
(33)上記(18)〜(31)のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体組成物を生成蓄積させ、該抗体組成物を採取し、精製することを特徴とする、遺伝子組換え抗体組成物の製造方法。
(34)上記(1)〜(15)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を有効成分として含有する医薬。
(35)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を有効成分とする癌に対する治療薬。
(36)(1)〜(15)のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を用いた癌の治療方法
(37)癌が、胸腺リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨肉腫、急性T細胞白血病、小細胞性肺癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、およびグリオブラストーマからなる群から選ばれる、いずれか一つの癌である(35)記載の治療薬。
(38)癌が、胸腺リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨肉腫、急性T細胞白血病、小細胞性肺癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、およびグリオブラストーマからなる群から選ばれる、いずれか一つの癌である(36)記載の治療方法。
本発明により、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックスにおいてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物、該遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子または該抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA、該DNAを宿主細胞に導入して得られる形質転換体、該形質転換体を用いた遺伝子組換え抗体組成物の生産方法、ならびに該抗体組成物を有効成分として含有する医薬を提供することができる。
は、各IgGサブクラスの重鎖定常領域のアミノ酸配列を比較した図である。 は、IgG抗体のH鎖297番目のアスパラギンに結合するN-結合複合型糖鎖の構造の模式図である。 は、プラスミドpKANTEX2B8γ3の造成工程を示した図である。 は、抗CD20ドメイン交換抗体の模式図である。 は、プラスミドpKTX93/1133を示した図である。 は、プラスミドpKTX93/3311を示した図である。 は、各種抗CD20ドメイン交換抗体、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体のDaudi細胞に対する、抗CD20抗体CD20-IgG1(+F)との競合阻害の系における結合活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における結合阻害率をそれぞれ示す。図中の△および▲は、グラフA〜Hにおいて共通しており、陰性対照である抗Her2抗体Herceptin(△)および抗CCR4抗体KM3060(▲)を示す。図中の○および●は、各グラフにおいて対応するサンプルが異なっており、グラフAにおいてはCD20-IgG1(+F)(○)およびCD20-IgG1(-F)(●)を、グラフBにおいてはCD20-IgG3(+F)(○)およびCD20-IgG3(-F)(●)を、グラフCにおいては1133(+F)(○)および1133(-F)(●)を、グラフDにおいては3311(+F)(○)および3311(-F)(●)をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体、抗CD20ドメイン交換抗体1133および3311の、Daudi細胞に対するCDC活性を示した図である。横軸はサンプルの名称、縦軸はCDC活性をそれぞれ示す。グラフは、各サンプルの濃度0.3 μg/mLにおけるCDC活性をCDC活性をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体および1133型抗CD20ドメイン交換抗体の、ST486細胞(A)またはRaji細胞(B)に対するCDC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、□はCD20-IgG1(+F)を、■はCD20-IgG1(-F)を、△はCD20-IgG3(+F)を、▲はCD20-IgG3(-F)を、○は1133(+F)を、●は1133(-F)をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体、抗CD20ドメイン交換抗体1133および3311の、Daudi細胞に対するADCC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度におけるADCC活性をそれぞれ示す。図中の○および●は、各グラフにおいて対応するサンプルが異なっており、グラフAにおいてはCD20-IgG1(+F)(○)およびCD20-IgG1(-F)(●)を、グラフBにおいてはCD20-IgG3(+F)(○)およびCD20-IgG3(-F)(●)を、グラフCにおいては1133(+F)(○)および1133(-F)(●)を、グラフDにおいては3311(+F)(○)および3311(-F)(●)をそれぞれ示す。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体の、抗原CD20非存在下における可溶性ヒトFcγRIIIa(バリン型)(A〜C)または可溶性ヒトFcγRIIIa(フェニルアラニン型)(D〜F)に対する、ELISA系での結合活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における吸光度をそれぞれ示す。グラフAおよびDはCD20-IgG1(-F)(●)およびCD20-IgG1(+F)(○)の、グラフBおよびEはCD20-IgG3(-F)(●)およびCD20-IgG3(+F)(○)の、グラフCおよびFは1133(-F)(●)および1133(+F)(○)の結合活性をそれぞれ示す。 は、抗CD20ドメイン交換抗体の模式図である。 は、プラスミドpKANTEX2B8Pを示した図である。 は、プラスミドpKANTEX93/1133の制限酵素認識サイトApaIおよびSmaIの位置を示した図である。 は、プラスミドpKANTEX93/1113を示した図である。 は、プラスミドpKANTEX93/1131を示した図である。 は、精製した抗CD20ドメイン交換抗体1133、1113、1131、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3のSDS-PAGE電気泳動パターンを示した図である。蛋白質の染色は、クマシーブリリアントブルー(CBB)で行った。レーン1は分子量マーカー、レーン2はCD20-IgG1に、レーン3はCD20-IgG3に、レーン4は1133に、レーン5は1113に、レーン6は1131にそれぞれ対応する。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133、1113、1131、ヒトIgG1抗CD20抗体CD20-IgG1およびヒトIgG3抗CD20抗体CD20-IgG3の、ST486細胞(A)またはRaji細胞(B)に対するCDC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における細胞障害率をそれぞれ示す。図中、■はCD20-IgG1を、▲はCD20-IgG3を、●は1133を、×は1113を、◆は1131それぞれ示す。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133、1113、1131、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3の、Daudi細胞に対するADCC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における細胞障害率をそれぞれ示す。図中、■はCD20-IgG1を、▲はCD20-IgG3を、●は1133を、×は1113を、◆は1131それぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1(-F)、CD20-IgG1(+F)、1133型抗CD20ドメイン交換抗体1133(-F)および1133(+F)の、Fc受容体ファミリーFcγRI(A)またはFcγRIIa(B)に対する結合活性をELISA系で測定した結果を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における吸光度をそれぞれ示す。グラフAはFcγRI に対する、グラフBはFcγRIIa に対する、CD20-IgG1(-F)(▲)、CD20-IgG1(+F)(△)、1133(-F)(●)および1133(+F)(○)の結合活性をそれぞれ示す。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133のCH3ドメインを部分的にヒトIgG1配列に置換した抗体113A、113B、113C、113D、113E、113F、113Gおよび113Hのドメイン構造を模式的に示した図である。図中、□で表される領域はIgG1のアミノ酸配列、■で表される領域はIgG3のアミノ酸配列であることを示しており、IgG3領域の両端上部に示した数字は、両端に位置するIgG3アミノ酸残基の位置に対応するEUインデックスである。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133のCH3ドメインを部分的にヒトIgG1配列に置換した各種抗体の発現ベクターの造成工程を示した図である。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133のCH3ドメインを部分的にヒトIgG1配列に置換した各種抗体の精製サンプルのSDS-PAGE電気泳動パターンを示した図である。蛋白質の染色は、クマシーブリリアントブルー(CBB)で行った。左のレーンより、分子量マーカー、CD20-IgG1(-F)、1133(-F)、113A(-F)、113B(-F)、113C(-F)、113D(-F)、113E(-F)、113F(-F)、113G(-F)、113H(-F)に対応する。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133のCH3ドメインを部分的にヒトIgG1配列に置換した各種抗体、抗CD20ドメイン交換抗体1133および1131のCD20陽性細胞に対するCDC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、●(太線)は1133(-F)を、○(太線)は1131(-F)を、●(細線)は113A(-F)を、○(細線)は113B(-F)を、▲は113C(-F)を、△は113D(-F)を、◆は113E(-F)を、◇は113F(-F)を、■は113G(-F)を、□は113H(-F)をそれぞれ示す。 は、抗CD20ドメイン交換抗体1133のCH3ドメインを部分的にヒトIgG1配列に置換した各種抗体、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3、抗CD20ドメイン交換抗体1133、1131および1113のプロテインAに対する結合活性をELISA系で測定した結果を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度における吸光度をそれぞれ示す。図25Aは、CD20-IgG1(-F)(●)、CD20-IgG3(-F)(○)、1133(-F)(■)、1131(-F)(□)および1113(-F)(△)のProtein-Aに対する結合活性を示した図である。図25Bは、CD20-IgG1(-F)(●)、1133(-F)(■)、113A(-F)(○)、113B(-F)(□)、113C(-F)(+)、113D(-F)(*)、113E(-F)(◇)、113F(-F)(◆)、113G(-F)(▲)および113H(-F)(△)のProtein-Aに対する結合活性を示した図である。 は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1、抗CD20ドメイン交換抗体1133、1131および113FのCD20陽性CLL細胞株MEC-1(A)、MEC-2(B)またはEHEB(C)に対するCDC活性を示した図である。横軸はサンプル濃度を、縦軸は各サンプル濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、○はCD20-IgG1(-F)を、●は1133(-F)を、△は1131(-F)を、▲は113F(-F)をそれぞれ示す。 は、1133型抗Campathドメイン交換抗体の発現ベクターの造成工程を示した図である。 は、ヒトIgG1抗Campath抗体の発現ベクターの造成工程を示した図である。 は、1131型抗Campathドメイン交換抗体の発現ベクターの造成工程を示した図である。 は、プラスミドpKTX93/GM2-113Fの造成工程を示した図である。 は、ヒトIgG1抗GM2抗体および113F型抗GM2ドメイン交換抗体の、IMR-32細胞(A)またはNCI-N417細胞(B)に対するCDC活性を示した図である。横軸は抗体濃度を、縦軸は各抗体濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、○はGM2-IgG1を、●はGM2-113F(-F)をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗GM2抗体および113F型抗GM2ドメイン交換抗体の、抗体濃度0.01μg/mLおよび1μg/mLにおける、IMR-32細胞に対するADCC活性を示した図である。縦軸は各抗体濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、白いバーはGM2-IgG1(-F)を、斜線入りのバーはGM2-113F(-F)をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗GM2抗体および113F型抗GM2ドメイン交換抗体の、各種細胞株、SBC-3(A)、SH-SY5Y(B)、A-172(C)、GI-1(D)、LP-1(E)、およびU266B(F)に対するCDC活性を示した図である。横軸は抗体濃度を、縦軸は各抗体濃度におけるCDC活性をそれぞれ示す。図中、○はGM2-IgG1(-F)を、●はGM2-113F(-F)をそれぞれ示す。 は、ヒトIgG1抗GM2抗体および113F型抗GM2ドメイン交換抗体の、細胞株IMR-32に対するADCC活性を示した図である。横軸は抗体濃度を、縦軸は各抗体濃度におけるADCC活性をそれぞれ示す。図中、○はGM2-IgG1(-F)を、●はGM2-113F(-F)をそれぞれ示す。
抗体分子は重鎖(以下、H鎖と記す)および軽鎖(以下、L鎖と記す)と呼ばれるポリペプチドより構成される。また、H鎖は、N末端側より重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域(以下、CHと記す)、L鎖はN末端側より軽鎖可変領域(以下、VLと記す)、軽鎖定常領域(以下、CLと記す)の各領域により、それぞれ構成される。CHはさらに、N末端側よりCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインの各ドメインにより構成される。ドメインとは、抗体分子の各ポリペプチドを構成する機能的な構造単位をいう。また、CH2ドメインとCH3ドメインを併せてFc領域という。
本発明におけるCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、Fc領域は、KabatらによるEUインデックス[シーケンス・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト第5版(1991)]により、N末端からのアミノ酸残基の番号で特定することができる。具体的には、CH1はEUインデックス118〜215番のアミノ酸配列、ヒンジはEUインデックス216〜230番のアミノ酸配列、CH2はEUインデックス231〜340番のアミノ酸配列、CH3はEUインデックス341〜447番のアミノ酸配列とそれぞれ特定される。
本発明の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物は、ヒトIgG1抗体において、重鎖定常領域であるCH1、ヒンジ、CH2及びCH3の各ドメインをIgG3の対応するドメインに交換した遺伝子組換え抗体(以下、ドメイン交換抗体ともいう)組成物のうち、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックスにおいてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された遺伝子組換え抗体組成物であって、ヒトIgG1抗体およびIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物であればいかなる抗体組成物でもよい。
本発明の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物としては、重鎖定常領域を有し、かつ標的分子への結合活性を有する抗体、または重鎖定常領域を有し、かつ標的分子への結合活性を有する融合蛋白質であればいかなるものも包含される。
標的分子への結合活性を有する抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体があげられる。
重鎖定常領域を有し、かつ標的分子への結合活性を有する融合蛋白質としては、標的分子がリガンドである場合には、該リガンドに対する受容体と重鎖定常領域との融合蛋白質、標的分子が受容体である場合には、該受容体に対するリガンドと重鎖定常領域との融合蛋白質、標的分子への結合活性を有する抗体または抗体断片と重鎖定常領域との融合蛋白質などがあげられる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体のCHおよびCLとからなる抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体は、ガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
本発明のヒト型キメラ抗体組成物の製造に用いるヒト以外の動物の抗体としては、具体的には、特開平4-311385に記載のマウスモノクローナル抗体KM750、マウスモノクローナル抗体KM796、Cancer Res., 46, 4116, (1986)に記載のモノクローナル抗体MoAb5-3、Cancer Res., 48, 6154, (1988)に記載のモノクローナル抗体MK1-16、モノクローナル抗体MK2-34、J. Biol. Chem., 264, 12122, (1989)に記載のモノクローナル抗体DMAb-1などがあげられる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(hIg)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3、γ4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合するヒト型キメラ抗体組成物としては、それぞれ配列番号76、77および78で示されるアミノ酸配列からなるVHのCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号79、80および81で示されるアミノ酸配列からなるVLのCDR1、CDR2、CDR3、を含む抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物、抗体のVHが配列番号82で示されるアミノ酸配列および/またはVLが配列番号83で示されるアミノ酸配列を含む抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物、抗体のVHが配列番号82で示されるアミノ酸配列およびヒト抗体のCHがhIgG1サブクラスのアミノ酸配列からなり、抗体のVLが配列番号83で示されるアミノ酸配列およびヒト抗体のCLがκクラスのアミノ酸配列からなる抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物などがあげられる。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合するヒト型キメラ抗体組成物が有するアミノ酸配列としては、具体的には、EP598998に記載のKM966が有するアミノ酸配列などがあげられる。
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体をいう。
本発明のヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのフレームワーク(以下、FRと記す)に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
本発明のヒト化抗体組成物の製造に用いるヒト以外の動物の抗体としては、具体的には、特開平4-311385に記載のマウスモノクローナル抗体KM750、マウスモノクローナル抗体KM796、Cancer Res., 46, 4116, (1986)に記載のモノクローナル抗体MoAb5-3、Cancer Res., 48, 6154, (1988)に記載のモノクローナル抗体MK1-16、モノクローナル抗体MK2-34、J. Biol. Chem., 264, 12122, (1989)に記載のモノクローナル抗体DMAb-1などがあげられる。
ヒト化抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列 (Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services, 1991) などがあげられる。
ヒト化抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するγ1、γ2、γ3、γ4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト化抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト化抗体組成物としては、ガングリオシドGM2に特異的に反応するヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを含むヒト化抗体組成物があげられるが、好ましくは、それぞれ配列番号76、77および78で示されるアミノ酸配列からなる抗体VHのCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号79、80および81で示されるアミノ酸配列からなるVLのCDR1、CDR2、CDR3を含むヒト化抗体組成物または該抗体断片組成物などがあげられる。
これらのヒト化抗体組成物なかでも、抗体のVHが配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、抗体のVHが配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、抗体のVLが配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、抗体のVLが配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物が好ましく、抗体のVHが配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、抗体のVHが配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、抗体のVHが配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、がより好ましい。
具体的には、抗体のVHが配列番号84、85、88、89、90、91、92、または配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列、および/またはVLが配列番号86、87、93、94、95、96、97、または配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、より具体的には、VHが配列番号88で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号93または94で示されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、VHが配列番号84で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号94または97で示されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物があげられる。
本発明のヒト化抗体組成物としては、VHが配列番号88で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号93で示されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物、VHが配列番号84で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号94で示されるアミノ酸配列を含むヒト化抗体組成物が最も好ましく用いられる。
本発明のヒト化抗体組成物が有する抗体可変領域のアミノ酸配列の具体例としては、それぞれ特開平10-257893に記載の形質転換株 KM8966(FERM BP-5105)が生産する KM8966の抗体可変領域のアミノ酸配列、形質転換株 KM8967(FERM BP-5106)が生産する KM8967の抗体可変領域のアミノ酸配列、形質転換株 KM8969(FERM BP-5527)が生産する KM8969の抗体可変領域のアミノ酸配列、および形質転換株 KM8970(FERM BP-5528)が生産する KM8970の可変領域のアミノ酸配列などがあげられる。
これらのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつガングリオシドGM2鎖と特異的に結合する抗体または抗体断片も本発明の抗体組成物に包含される。
本発明の抗体組成物のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409(1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci USA,82, 488 (1985)等に記載の部位特異的変異導入法等の周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
本発明の抗体組成物のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味し、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じてもよく、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、L-システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。
ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルス等を感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物中より該抗体を精製することができる。
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv等の抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞を他のマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニック動物を作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製方法は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法によりヒト抗体産生ハイブリドーマを得、培養することで培養物中にヒト抗体を産生蓄積させることができる。
標的分子との結合活性を有する抗体断片としては、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Diabody、dsFv、CDRを含むペプチドなどがあげられる。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(S-S結合)で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
F(ab')2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のS-S結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のS-S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを12残基以上の適当なペプチドリンカー(P)を用いて連結した、VH-P-VLないしはVL-P-VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
Diabodyは、抗原結合特異性の同じまたは異なるscFvが2量体を形成した抗体断片で、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性または異なる抗原に対する2特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のS-S結合を介して結合させたものをいう。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることにより製造することができる。
本発明の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物は、具体的には、ヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(j)のいずれかのポリペプチドより選ばれるポリペプチドである、遺伝子組換え抗体組成物があげられる。
(a) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(b) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(c) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(d) EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(e) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(f) EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(g) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(h) EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から434番目と436番目から447番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(i) EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から435番目のアミノ酸からなるポリペプチド
(j) EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から447番目のアミノ酸からなるポリペプチド
本発明の遺伝子組換え抗体組成物のCL領域のアミノ酸配列としては、ヒト抗体のアミノ酸配列または非ヒト動物由来アミノ酸配列のいずれでも良いが、ヒト抗体のアミノ酸配列のCκあるいはCλが好ましい。
本発明の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物における可変領域としては、VHおよびVLが、ヒト抗体のアミノ酸配列、非ヒト動物抗体のアミノ酸配列、あるいは非ヒト動物抗体のCDRを、ヒト抗体のフレームワークに移植したヒト化抗体のアミノ酸配列のいずれでもよい。具体的には、ハイブリドーマが産生する抗体を構成する可変領域、ヒト化抗体を構成する可変領域、ヒト抗体を構成する可変領域などがあげられる。
ハイブリドーマとは、ヒト以外の動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウスなどに由来するミエローマ細胞とを細胞融合して得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞をいう。したがって、ハイブリドーマが産生する抗体を構成する可変領域は、非ヒト動物抗体のアミノ酸配列からなる。
本発明の、標的分子への結合活性を有する融合蛋白質組成物は、標的分子への結合活性を有していればいかなる特異性を有する抗体をも包含するが、腫瘍関連抗原を認識する抗体、アレルギーあるいは炎症に関連する抗原を認識する抗体、循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体、自己免疫疾患に関連する抗原を認識する抗体、またはウイルスあるいは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体であることが好ましい。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物は、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体の同じEUインデックスに相当するポリペプチドに置換されることにより、ヒトIgG1抗体およびIgG3抗体よりも高いCDC活性を示す。
さらに、本発明の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物は、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックスにおいてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換され、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示し、かつヒトIgG1抗体と同等のプロテインA結合活性を有する遺伝子組換え抗体組成物が包含される。
具体的には、ヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(h)のいずれかのポリペプチドより選ばれるポリペプチドである、遺伝子組換え抗体組成物があげられる。
(a) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(f) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(g) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(h) EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から434番目および436番目から447番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
プロテインA結合活性は、ELISA法、表面プラズモン共鳴法などを用いて測定することができる。具体的には、プレートに固相化されたプロテインAに、抗体組成物を反応させた後、抗体組成物を認識する各種標識を行った抗体を反応させて、プロテインAに結合された抗体組成物を定量することにより測定することができる。
またはセファロース等の担体に結合させたプロテインAに、pH5〜8前後の高pH条件で抗体組成物を反応させ、洗浄後、さらにpH2〜5前後の低pH条件で溶出する抗体組成物を定量することにより測定することができる。
抗体分子に含まれるFc領域には、N-グリコシド結合糖鎖が結合する。従って、抗体1分子あたり2本の糖鎖が結合している。
N-グリコシド結合糖鎖としては、コア構造の非還元末端側にガラクトース-N-アセチルグルコサミン(以下、Gal-GlcNAcと表記する)の側鎖を並行して1ないしは複数本有し、更にGal-GlcNAcの非還元末端側にシアル酸、バイセクティングのN-アセチルグルコサミンなどを有するコンプレックス型(複合型)糖鎖を挙げることができる。
本発明において、N-グリコシド結合複合型糖鎖は、下記化学式で示される。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子抗体組成物のうち、Fc領域にN-グリコシド結合型糖鎖を有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物は、上記の糖鎖構造を有していれば、単一の糖鎖構造を有する抗体分子から構成されていてもよいし、複数の異なる糖鎖構造を有する抗体分子から構成されていてもよい。すなわち、本発明の遺伝子組換え抗体組成物とは、単一または複数の異なる糖鎖構造を有する遺伝子組換え抗体分子からなる組成物を意味する。
さらに、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体のうち、Fc領域にN-グリコシド結合複合型糖鎖を有する抗体分子からなる組成物であって、かつ該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗体組成物は、高いCDC活性の他に高いADCC活性を有する。
抗体の糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合としては、CDC活性の他にADCC活性が増加すれば、いずれの割合の抗体も含まれるが、好ましくは20%以上、より好ましくは51%-100%、更に好ましくは80%-100%、特に好ましくは90%-99%、もっとも好ましくは100%の割合があげられる。
本発明において、フコースが結合していない糖鎖としては、上記で示された化学式中、還元末端側のN-アセチルグルコサミンにはフコースが結合していなければ、非還元末端の糖鎖の構造はいかなるものであってもよい。
本発明において、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していないとは、実質的にフコースが結合していないことをいう。実質的にフコースが結合していない抗体組成物とは、具体的には、後述の4に記載の糖鎖分析において、フコースが実質的に検出できない程度の抗体組成物である場合をいう。実質的に検出できない程度とは、測定の検出限界以下であることをいう。全ての糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない遺伝子組換え抗体組成物は、最も高いADCC活性を有する。
N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物中に含まれる、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗体分子の割合は、以下の分析方法で決定することができる。
分析方法としては、抗体分子からヒドラジン分解や酵素消化などの公知の方法[生物化学実験法23―糖蛋白質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989)]を用い、糖鎖を遊離させ、遊離させた糖鎖を蛍光標識又は同位元素標識し、標識した糖鎖をクロマトグラフィー法にて分離する方法、また、遊離させた糖鎖をHPAED-PAD法[ジャーナル・オブ・リキッド・クロマトグラフィー(J. Liq. Chromatogr.), 6, 1577 (1983)]などがあげられる。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物を生産する形質転換株は、抗体分子の可変領域および定常領域をコードするDNAを挿入した遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターを動物細胞へ導入することにより、取得することができる。
遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターは、以下のように構築する。
前述のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれ動物細胞での発現ベクターに挿入することにより、動物細胞用発現ベクターを作製する。
動物細胞用発現ベクターとしては、pAGE107 (特開平3-22979;Miyaji H. et al., Cytotechnology, 3, 133-140 (1990))、pAGE103 (Mizukami T. and Itoh S., J. Biochem., 101, 1307-1310 (1987))、pHSG274 (Brady G. et al., Gene, 27, 223-232 (1984))、pKCR (O'Hare K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 78, 1527-1531 (1981))、pSG1βd2-4 (Miyaji H. et al., Cytotechnology, 4, 173-180 (1990)) 等があげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー (Mizukami T. and Itoh S., J. Biochem., 101, 1307-1310 (1987))、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー (Kuwana Y. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 960-968 (1987))、および免疫グロブリンH鎖のプロモーター (Mason J. O. et al., Cell, 41, 479-487 (1985)) とエンハンサー (Gillies S. D. et al., Cell, 33, 717-728 (1983)) 等があげられる。
遺伝子組換え抗体組成物発現用ベクターは、H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ (タンデム型) のどちらでも用いることができるが、遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターの構築のしやすさ、動物細胞への導入のし易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスがとれる等の点でタンデム型の遺伝子組換え抗体組成物発現用ベクターの方が好ましい (Shitara K. et al., J. Immunol. Methods, 167, 271-278 (1994))。タンデム型の遺伝子組換え抗体組成物発現用ベクターとしては、pKANTEX93 (WO97/10354)、pEE18 (Bentley K. J. et al., Hybridoma, 17, 559-567 (1998)) 等があげられる。
構築された遺伝子組換え抗体組成物発現用ベクターのCHおよびCLをコードするDNAの上流に、各種抗原に対する抗体のVHおよびVLをコードするcDNAをクローニングすることにより、遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターを構築することができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法 (特開平2-257891;Miyaji H. et al., Cytotechnology, 3, 133-140 (1990)) 等があげられる。
本発明の遺伝子組換え抗体組成物を生産する宿主細胞としては、動物細胞、植物細胞、微生物など、組換え蛋白質生産に一般に用いられる宿主細胞であればいかなるものも包含される。
本発明の遺伝子組換え抗体組成物を生産する宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞、ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞、マウスミエローマ細胞株NS0細胞、マウスミエローマ細胞株SP2/0-Ag14細胞、シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞、ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞、ミエローマ細胞と任意のB細胞とを用いて製造されたハイブリドーマ細胞、胚性幹細胞または受精卵細胞を用いることにより製造されたヒト以外のトランスジェニック動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と任意のミエローマ細胞とを用いて製造されたハイブリドーマ細胞、上記ミエローマ細胞と胚性幹細胞または受精卵細胞を用いることにより製造されたヒト以外のトランスジェニック動物に抗原を免疫して取得されたB細胞とを用いて製造されたハイブリドーマ細胞などがあげられる。
CDC活性だけでなく、ADCC活性の高い遺伝子組換え抗体組成物を発現させる宿主細胞としては、N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性を有する宿主細胞、例えば、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物を生産する能力を有する宿主細胞、例えば、以下に挙げる少なくとも1つの蛋白質の活性が低下または失活した細胞などがあげられる。
(a) 細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素;
(b) N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素;
(c) 細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質。
上記宿主細胞としては、好ましくは宿主細胞内のα1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子がノックアウトされた宿主細胞があげられる(WO02/31140、WO03/85107)。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素としては、細胞内で糖鎖へのフコースの供給源である糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素であればいかなる酵素も包含される。細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に係わる酵素としては、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に影響を与える酵素などがあげられる。
細胞内の糖ヌクレオチドGDP-フコースは、de novoの合成経路あるいはSalvage合成経路により供給されている。したがって、これら合成経路に関与する酵素はすべて細胞内GDP-フコースの合成に係わる酵素に包含される。
細胞内の糖ヌクレオチドGDP-フコースのde novoの合成経路に関与する酵素としては、GDP-mannose 4,6-dehydratase(GDP-マンノース4,6-デヒドラターゼ;以下、GMDと表記する)、GDP-keto-6-deoxymannose 3,5-epimerase, 4,6-reductase(GDP-ケト-デオキシマンノース 3,5-エピメラーゼ, 4,6-リダクターゼ;以下、Fxと表記する)などがあげられる。
細胞内の糖ヌクレオチドGDP-フコースのsalvage合成経路に関与する酵素としては、GDP-beta-L-fucose pyrophosphorylase(GDP-ベータ-L-フコース-ピロホスフォリラーゼ;以下、GFPPと表記する)、Fucokinase(フコキナーゼ)などがあげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に影響を与える酵素としては、上述の細胞内の糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成経路に関与する酵素の活性に影響を与える酵素、該酵素の基質となる物質の構造に影響を与える酵素も包含される。
GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼとしては、
(a) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
などがあげられる。
GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼとしては、
(a) 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号19で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号19で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
などがあげられる。
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼとしては、
(a) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNA;
(b) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
などがあげられる。
GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼとしては、
(a) 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b) 配列番号21で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
(c) 配列番号21で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
などがあげられる。
N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合する反応に関与する酵素であればいかなる酵素も包含される。N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合する反応に関与する酵素としては、N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合する反応に影響を与える酵素であればいかなる酵素も包含される。具体的には、α−1,6−フコシルトランスフェラーゼやα−L−フコシダーゼなどがあげられる。
また、N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合する反応に影響を与える酵素としては、上述のN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する反応に関与する酵素の活性に影響を与える酵素、該酵素の基質となる物質の構造に影響を与える酵素も包含される。
本発明において、α1,6-フコシルトランスフェラーゼとしては、下記(a)、(b)、(c)または(d)のDNAがコードする蛋白質、
(a) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNA
(b) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNA
(c) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
(d) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
または、
(e) 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(f) 配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(g) 配列番号24で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(h) 配列番号25で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(i) 配列番号24で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(j) 配列番号25で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
等があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質としては、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質、または細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースをゴルジ体内へ輸送する反応に影響を与える蛋白質であればいかなる蛋白質も包含される。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質としては、具体的には、GDP-フコーストランスポーターなどがあげられる。
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースをゴルジ体内へ輸送する反応に影響を与える蛋白質としては、上述の細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質の活性や発現に影響を与える蛋白質も包含される。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素のアミノ酸配列をコードするDNAとしては、配列番号18または20で表される塩基配列を有するDNA、配列番号18または20で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAなどがあげられる。
α1,6−フコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードするDNAとしては、配列番号22または23で表される塩基配列を有するDNA、配列番号22または23で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAなどがあげられる。
本発明において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば、上記配列番号のいずれかで表される塩基配列を有するDNAなどのDNAまたはその一部の断片をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0Mの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液 (1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる) を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 (以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 1987-1997 (以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University (1995) 等に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、上記配列番号のいずれかで表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
本発明において、上記配列番号のいずれかで表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ上記活性を有する蛋白質は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci USA, 82, 488 (1985) 等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば、上記配列番号のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異導入法等の周知の技術により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
また、本発明において、用いられる蛋白質が、上記活性を有するためには、上記配列番号のいずれかで表されるアミノ酸配列とBLAST〔J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology, 183, 63 (1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する。
上述の酵素活性が低下または欠失した細胞を取得する方法としては、目的とする酵素活性を低下または欠失させることができる手法であれば、いずれの手法でも用いることができる。具体的には、
(a)酵素の遺伝子を標的した遺伝子破壊の手法;
(b)酵素の遺伝子のドミナントネガティブ体を導入する手法;
(c)酵素についての突然変異を導入する手法;
(d)酵素の遺伝子の転写又は翻訳を抑制する手法;
(e)N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法などがあげられる。
N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンとしては、該糖鎖構造を認識できるレクチンであれば、いずれのレクチンでも用いることができる。その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(Lens Culinaris由来のLentil Agglutinin)、エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Vicia faba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuria aurantia由来のLectin)等を挙げることができる。
レクチンに耐性な細胞とは、レクチンを有効濃度与えたときにも、生育が阻害されない細胞を言う。有効濃度とは、ゲノム遺伝子が改変される以前の細胞(以下、親株とも称す)が正常に生育できない濃度以上であり、好ましくは、ゲノム遺伝子が改変される以前の細胞が成育できない濃度と同濃度、より好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは10倍、最も好ましくは20倍以上である。
生育が阻害されないレクチンの有効濃度は、細胞株に応じて適宜定めればよく、通常のレクチンの有効濃度は10μg/mL〜10mg/mL、好ましくは0.5mg/mL〜2.0mg/mLである。
以下に、本発明の遺伝子組換え抗体組成物の製造方法を具体的に説明する。
1.遺伝子組換え抗体組成物の製造方法
本発明の遺伝子組換え抗体組成物は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988(以下、アンチボディズと略す)、Monoclonal Antibodies:principles and practice, Third Edition, Acad. Press, 1993(以下、モノクローナルアンチボディズと略す)、Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, 1996(以下、アンチボディエンジニアリングと略す)等に記載された方法を用い、例えば、以下のように宿主細胞中で発現させて取得することができる。
(1)本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターの構築
本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターとは、本発明の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子のH鎖及びL鎖定常領域をコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターである。遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターは、動物細胞用発現ベクターに遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子のH鎖及びL鎖定常領域をコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
本発明の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子のCH領域をコードする遺伝子は、IgG1およびIgG3抗体の定常領域をコードする遺伝子をクローニングした後、各ドメインをコードする遺伝子断片を連結させることにより、作製することができる。また、合成DNAを用いて全DNAを合成することもでき、PCR法による合成も可能である(モレキュラー・クローニング第2版)。さらに、これらの手法を複数組み合わせることにより、作製することもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、上述の抗体分子の定常領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pKANTEX93[モレキュラー・イムノロジー(Mol. Immunol.), 37, 1035 (2000)]、pAGE107[サイトテクノロジー(Cytotechnology), 3, 133 (1990)]、pAGE103[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. Biochem.), 101, 1307 (1987)]、pHSG274[ジーン(Gene), 27, 223 (1984)]、pKCR[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 78, 1527 (1981)]、pSG1βd2-4[サイトテクノロジー(Cytotechnology), 4, 173 (1990)]等があげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. Biochem.),101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTR[バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem. Biophys. Res. Commun.), 149, 960 (1987)]、免疫グロブリンH鎖のプロモーター[セル(Cell), 41, 479 (1985)]とエンハンサー[セル(Cell), 33, 717 (1983)]等があげられる。
本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターは、抗体H鎖及びL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と表記する)のどちらでも用いることができるが、本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖及びL鎖の発現量のバランスが均衡する等の点からタンデム型の抗体発現用ベクターの方が好ましい[ジャーナル・オブ・イムノロジカル・メソッズ(J. Immunol. Methods), 167, 271 (1994)]。
構築した本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターは、ヒト型キメラ抗体及びヒト化抗体の動物細胞での発現に使用することができる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得することができる。
任意の抗体を産生するハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として用い、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージ或いはプラスミド等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、既存のマウス抗体のC領域或いはV領域をコードするDNAをプローブとして用い、H鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミド及びL鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージ或いは組換えプラスミド上の目的のマウス抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
任意のヒト以外の動物の抗体を生産するハイブリドーマ細胞は、抗体が結合する抗原をヒト以外の動物に免疫し、周知の方法[モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988(以下、アンチボディズと略す)、Monoclonal Antibodies:principles and practice, Third Edition, Acad. Press, 1993(以下、モノクローナルアンチボディズと略す)、Antibody Engineering, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, 1996(以下、アンチボディエンジニアリングと略す)]に従って、免疫された動物の抗体産生細胞とミエローマ細胞とでハイブリドーマを作製し、次いで単一細胞化したハイブリドーマを選択し、これを培養し、培養上清から精製し、取得することができる。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマ細胞から全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymol.), 154, 3 (1987)]、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Lab. Press New York, 1989]等があげられる。また、ハイブリドーマ細胞からmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)等があげられる。
cDNAの合成及びcDNAライブラリー作製法としては、常法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Lab. Press New York, 1989;カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in MolecularBiology), Supplement 1-34]、或いは市販のキット、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)やZAP-cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[ストラテジーズ(Strategies), 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[ヌクレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research), 17, 9494 (1989)]、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[ディーエヌエー・クローニング:ア・プラクティカル・アプローチ(DNA Cloning: A Practical Approach), I, 49 (1985)]、Lambda BlueMid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2[モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー(Mol. Cell. Biol.),3, 280 (1983)]及びpUC18[ジーン(Gene), 33, 103 (1985)]等を用いることができる。
ファージ或いはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現及び維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1-Blue MRF'[ストラテジーズ(Strategies), 5, 81 (1992)]、C600[ジェネティックス(Genetics), 39, 440 (1954)]、Y1088、Y1090[サイエンス(Science), 222, 778 (1983)]、NM522[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 166, 1 (1983)]、K802[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 16, 118 (1966)]及びJM105[ジーン(Gene),38, 275 (1985)]等が用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAクローンを選択する方法としては、アイソトープ或いは蛍光などで標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法或いはプラーク・ハイブリダイゼーション法[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A LaboratoryManual), Cold Spring Harbor Lab. Press NewYork, 1989]により選択することができる。また、プライマーを調製し、cDNA或いはcDNAライブラリーを鋳型として、PCR[モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Lab. Press New York, 1989;カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology), Supplement 1-34]によりVHおよびVLをコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(-)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A.), 74, 5463 (1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、ABI PRISM377 DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of ImmunologicalInterest), US Dept. Health and Human Services, 1991]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLを完全に含んでいるアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。
さらに、抗体可変領域のアミノ酸配列または該可変領域をコードするDNAの塩基配列がすでに公知である場合には、以下の方法を用いて製造することができる。
アミノ酸配列が公知である場合には、コドンの使用頻度[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest), US Dept. Health and Human Services, 1991]を考慮して該可変領域をコードするDNA配列を設計し、設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。塩基配列が公知である場合には、その情報を基に100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。
(3)ヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列の解析
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins ofImmunological Interest), US Dept. Health and Human Services, 1991]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さ及びN末端アミノ酸配列を推定でき、更には抗体が属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、同様の方法で見出すことができる。
(4)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
本項1の(1)に記載の本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体VHおよびVLの3'末端側の塩基配列とヒト抗体のCHおよびCLの5'末端側の塩基配列とからなり、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを本項1の(1)に記載の本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(5)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを移植するヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bank等のデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteinsof Immunological Interest), US Dept. Health and Human Services, 1991]等があげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト化抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。
次に、選択したヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[シーケンシズ・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト(Sequences of Proteins of Immunological Interest), US Dept. Health and Human Services, 1991]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を設計する。設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率及び合成可能なDNAの長さから、H鎖、L鎖とも4〜6本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5'末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、本項1の(1)で構築した本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR後、増幅産物をpBluescript SK(-)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、本項1の(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
(6)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている[バイオ/テクノロジー(BIO/TECHNOLOGY), 9, 266 (1991)]。この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLでは、CDRのみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的或いは間接的に抗原結合活性に関与しており、それらアミノ酸残基がCDRの移植に伴い、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの異なるアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。この問題を解決するため、ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基やCDRのアミノ酸残基と相互作用したり、抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらを元のヒト以外の動物の抗体に由来するアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている[バイオ/テクノロジー(BIO/TECHNOLOGY), 9, 266 (1991)]。
ヒト化抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 112, 535 (1977)]或いはコンピューターモデリング[プロテイン・エンジニアリング(Protein Engineering), 7, 1501 (1994)]等による抗体の立体構造の構築及び解析が行われている。これら抗体の立体構造の情報は、ヒト化抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来た。しかしながら、あらゆる抗体に適応可能なヒト化抗体の作製法は未だ確立されていない。現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討する等の種々の試行錯誤が必要である。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて本項1の(5)に記載のPCR法を行うことにより、達成できる。PCR後の増幅産物について本項1の(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(7)ヒト化抗体発現ベクターの構築
本項1の(1)に記載の本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、本項1の(5)および(6)で構築したヒト化抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、本項1の(5)および(6)でヒト化抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5'末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、本項1の(1)に記載の本発明の遺伝子組換え抗体組成物発現ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
(8)ヒト化抗体の安定的生産
本項1の(4)及び(7)に記載のヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体発現ベクターを適当な動物細胞に導入することによりヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体を安定に生産する形質転換株を得ることができる。
動物細胞へのヒト化抗体発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法[特開平2-257891; サイトテクノロジー(Cytotechnology), 3 ,133 (1990)]等があげられる。
ヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体発現ベクターを導入する動物細胞としては、ヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体を生産させることができる動物細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。
具体的には、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO/dhfr-細胞、CHO/DG44細胞、ラットミエローマ細胞YB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞などがあげられるが、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHO/DG44細胞、ラットミエローマYB2/0細胞等があげられる。
ヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体発現ベクターの導入後、ヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平2-257891に開示されている方法に従い、G418硫酸塩(以下、G418と表記する;SIGMA社製)等の薬剤を含む動物細胞培養用培地により選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX-CELL302培地(JRH社製)、IMDM培地(GIBCO BRL社製)、Hybridoma-SFM培地(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地に牛胎児血清(以下、FCSと表記する)等の各種添加物を添加した培地等を用いることができる。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中にヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体を生産蓄積させることができる。培養上清中のヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体の生産量及び抗原結合活性は酵素免疫抗体法[以下、ELISA法と表記する;アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 14, 1998、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice), Academic Press Limited, 1996]等により測定できる。また、形質転換株は、特開平2-257891に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用してヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体の生産量を上昇させることができる。
ヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 8, 1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice), Academic Press Limited, 1996]。また、その他に通常、蛋白質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動[以下、SDS-PAGEと表記する;ネイチャー(Nature), 227, 680 (1970)]やウエスタンブロッティング法[アンティボディズ:ア・ラボラトリー・マニュアル(Antibodies: A Laboratory Manual), Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter 12, 1988、モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice), Academic Press Limited, 1996]等で測定することができる。
以上、動物細胞を宿主とした抗体組成物の製造方法を示したが、酵母、昆虫細胞、植物細胞または動物個体あるいは植物個体においても動物細胞と同様の方法により抗体組成物を製造することができる。
したがって、宿主細胞が抗体分子を発現する能力を有する場合には、以下に示す抗体分子を発現させる宿主細胞に抗体遺伝子を導入した後に、該細胞を培養し、該培養物から目的とする抗体組成物を精製することにより、本発明の抗体組成物を製造することができる。
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等をあげることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1 プロモーター、CUP 1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属等に属する微生物、例えば、SaccharomycescerevisiaeSchizosaccharomycespombeKluyveromyceslactisTrichosporonpullulansSchwanniomycesalluvius等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods. Enzymol.), 194, 182 (1990)]、スフェロプラスト法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A), 84, 1929 (1978)]、酢酸リチウム法[ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bacteriology),153, 163 (1983)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A), 75, 1929 (1978)]に記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107[特開平3-22979;サイトテクノロジー(Cytotechnology), 3, 133, (1990)]、pAS3-3[特開平2-227075]、pCDM8[ネイチャー(Nature), 329, 840, (1987)]、pcDNAI/Amp(Invitrogen社)、pREP4(Invitrogen社)、pAGE103[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. Biochemistry),101, 1307 (1987)]、pAGE210等をあげることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63-299)、ラットミエローマ細胞、マウスミエローマ細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーBaculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York (1992)、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology), 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、蛋白質を発現することができる。
即ち、発現ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodopterafrugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21[カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーBaculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York (1992)]、Trichoplusianiの卵巣細胞であるHigh 5(Invitrogen社)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記発現導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 84, 7413 (1987)]等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)[特開昭59-140885、特開昭60-70080、WO94/00977]、エレクトロポレーション法[特開昭60-251887]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[日本特許第2606856、日本特許第2517813]等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology), 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法[特開平2-227075]、リポフェクション法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 84, 7413 (1987)]、インジェクション法[マニピュレイティング・ザ・マウス・エンブリオ・ア・ラボラトリー・マニュアル]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[特許第2606856号、特許第2517813号]、DEAE-デキストラン法[バイオマニュアルシリーズ4―遺伝子導入と発現・解析法(羊土社)横田崇・新井賢一編(1994)]、ウイルスベクター法[マニピュレーティング・マウス・エンブリオ第2版]等をあげることができる。
抗体遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、Fc融合蛋白質の発現等を行うことができる。
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体分子を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、抗体組成物を製造することができる。形質転換体を培養する方法は、宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該生物が同化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マン癌、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持する。pHの調製は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[ザ・ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエイション(The Journal of the American Medical Association),199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[サイエンス(Science),122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[ヴュウロロジー(Virology), 8, 396 (1959)]、199培地[プロシーディング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォア・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine), 73, 1 (1950)]、Whitten培地[発生工学実験マニュアル-トランスジェニック・マウスの作り方(講談社)勝木元也編(1987)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6.0〜8.0、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM-FH培地(Pharmingen社)、Sf-900 II SFM培地(Life Technologies社)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社)、Grace's Insect Medium[ネイチャー(Nature), 195, 788 (1962)]等を用いることができる。
培養は、通常pH6.0〜7.0、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5.0〜9.0、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のとおり、抗体分子をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを保有する動物細胞、あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、抗体組成物を生成蓄積させ、該培養物より抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を製造することができる。
抗体遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法に準じて、分泌生産、融合蛋白質発現等を行うことができる。
抗体組成物の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させる抗体分子の構造を変えることにより、該方法を選択することができる。
抗体組成物が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),264, 17619 (1989)]、ロウらの方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 86, 8227 (1989); ジーン・デベロップメント(Genes Develop.), 4, 1288(1990)]、または特開平05-336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該抗体組成物を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、発現ベクターに、抗体分子をコードするDNA、および抗体分子の発現に適切なシグナルペプチドをコードするDNAを挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入の後に抗体分子を発現させることにより、目的とする抗体分子を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、特開平2-227075に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック非ヒト動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて抗体組成物を製造することもできる。
形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、抗体組成物を生成蓄積させ、該動物個体または植物個体より該抗体組成物を採取することにより、該抗体組成物を製造することができる。
動物個体を用いて抗体組成物を製造する方法としては、例えば公知の方法[アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition), 63, 639S (1996); アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション(American Journal of Clinical Nutrition), 63, 627S (1996); バイオ/テクノロジー(Bio/Technology), 9, 830 (1991)]に準じて遺伝子を導入して造成した動物中に目的とする抗体組成物を生産させる方法があげられる。
動物個体の場合は、例えば、抗体分子をコードするDNAを導入したトランスジェニック非ヒト動物を飼育し、抗体組成物を該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を製造することができる。該動物中の生成・蓄積場所としては、例えば、該動物のミルク(特開昭63-309192)または卵等をあげることができる。この際に用いられるプロモーターとしては、動物で発現できるものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
植物個体を用いて抗体組成物を製造する方法としては、例えば抗体分子をコードするDNAを導入したトランスジェニック植物を公知の方法[組織培養, 20(1994); 組織培養, 21(1995); トレンド・イン・バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology), 15, 45 (1997)]に準じて栽培し、抗体組成物を該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を生産する方法があげられる。
抗体分子をコードする遺伝子を導入した形質転換体により製造された抗体組成物は、例えば抗体組成物が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学(株)製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、抗体組成物の精製標品を得ることができる。
また、抗体組成物が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として抗体組成物の不溶体を回収する。回収した抗体組成物の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該抗体組成物を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により該抗体組成物の精製標品を得ることができる。
抗体組成物が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該抗体組成物あるいはその誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、抗体組成物の精製標品を得ることができる。
2.本発明の遺伝子組換え抗体組成物を生産する細胞の作製
本発明の遺伝子組換え抗体組成物のうち、高いCDC活性に加えて高いADCC活性を有する抗体組成物を生産する細胞は、以下に述べる手法により、本発明の遺伝子抗体組成物を生産するために用いる宿主細胞を作製し、該宿主細胞に前述1(4)および(7)に記載のヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体発現ベクターを導入することにより、生産することができる。
具体的には、抗体分子のFc領域に結合するN-グリコシド結合糖鎖の修飾に係わる酵素、すなわち細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素が失活した細胞を選択するか、または後述に示された種々の人為的手法により得られた細胞を宿主細胞として用いることもできる。以下、詳細に説明する。
(1)酵素の遺伝子を標的とした遺伝子破壊の手法
高いADCC活性を有する抗体(以下、高ADCC活性抗体という)産生細胞の作製のために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、遺伝子破壊の方法を用いることにより作製することができる。細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ(以下、GMDと表記する)、GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ(以下、Fxと表記する)などがあげられる。
N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ、α-L-フコシダーゼなどがあげられる。ここでいう遺伝子とは、DNAまたはRNAを含む。
遺伝子破壊の方法としては、標的とする酵素の遺伝子を破壊することができる方法であればいかなる方法も包含される。その例としては、アンチセンス法、リボザイム法、相同組換え法、RNA-DNA オリゴヌクレオチド法(以下、RDO法と表記する)、RNAインターフェアレンス法(以下、RNAi法と表記する)、レトロウイルスを用いた方法、トランスポゾンを用いた方法等があげられる。以下これらを具体的に説明する。
(a)アンチセンス法又はリボザイム法による高ADCC活性抗体生産細胞を作製するための宿主細胞の作製
高ADCC活性抗体生産細胞の作製のために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素遺伝子を標的とし、細胞工学, 12, 239 (1993)、バイオ/テクノロジー(BIO/TECHNOLOGY), 17, 1097 (1999)、ヒューマン・モレキュラー・ジェネティクス(Hum. Mol. Genet.), 5, 1083 (1995)、細胞工学, 13, 255 (1994)、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 96, 1886 (1999)等に記載されたアンチセンス法またはリボザイム法を用いて、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAあるいはゲノムDNAを調製する。
調製したcDNAあるいはゲノムDNAの塩基配列を決定する。
決定したDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNA部分、非翻訳領域の部分あるいはイントロン部分を含む適当な長さのアンチセンス遺伝子またはリボザイムを設計する。
該アンチセンス遺伝子、またはリボザイムを細胞内で発現させるために、調製したDNAの断片、または全長を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択することにより、本発明のN-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞を得ることができる。また、細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造または産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択することにより、高ADCC活性抗体生産細胞を作製のために用いる宿主細胞を得ることもできる。
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いられる宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製が可能であるか、ないしは染色体中への組み込みが可能で、設計したアンチセンス遺伝子、またはリボザイムを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、前述1に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入方法としては、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、以下の方法があげられる。
形質転換体を選択する方法
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素が失活した細胞を選択する方法としては、文献[新生化学実験講座3―糖質I,糖蛋白質(東京化学同人)日本生化学会編(1988)]、文献[細胞工学, 別冊, 実験プロトコールシリーズ,グライコバイオロジー実験プロトコール,糖蛋白質・糖脂質・プロテオグリカン(秀潤社製)谷口直之・鈴木明美・古川清・菅原一幸監修(1996)]、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された生化学的な方法あるいは遺伝子工学的な方法などを用いて、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法があげられる。生化学的な方法としては、例えば、酵素特異的な基質を用いて酵素活性を評価する方法があげられる。遺伝子工学的な方法としては、例えば、酵素遺伝子のmRNA量を測定するノーザン解析やRT-PCR法等があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述2の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAを調製する方法としては、例えば、下記に記載の方法があげられる。
cDNAの調製方法
各種宿主細胞の組織又は細胞から全RNA又はmRNAを調製する。
調製した全RNA又はmRNAからcDNAライブラリーを作製する。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のアミノ酸配列に基づいて、デジェネレイティブプライマーを作製し、作製したcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法で細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得する。
取得した遺伝子断片をプローブとして用い、cDNAライブラリーをスクリーニングし、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAを取得することができる。
ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞のmRNAは市販のもの(例えばClontech社)を用いてもよいし、以下のようにしてヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞から調製してもよい。
ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞から全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology), 154, 3 (1987)]、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム(AGPC)法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry), 162, 156 (1987); 実験医学、9, 1937 (1991)]などがあげられる。
また、全RNAからpoly(A)+ RNAとしてmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法(モレキュラー・クローニング第2版)等があげられる。
さらに、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社)などの市販のキットを用いることによりmRNAを調製することができる。
調製したヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞mRNAからcDNAライブラリーを作製する。cDNAライブラリー作製法としては、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、A Laboratory Manual, 2 nd Ed.(1989)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(Life Technologies社)、ZAP-cDNA Synthesis Kit(STRATAGENE社)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーを作製するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、ZAP Express[STRATAGENE社、ストラテジーズ(Strategies), 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research), 17, 9494 (1989)]、λZAP II(STRATAGENE社)、λgt10、λgt11[ディーエヌエー・クローニング・ア・プラクティカル・アプローチ(DNA cloning, A Practical Approach),1, 49 (1985)]、λTriplEx(Clontech社)、λExCell(Pharmacia社)、pT7T318U(Pharmacia社)、pcD2[モレキュラー・セルラー・バイオロジー(Mol. Cell. Biol.), 3, 280 (1983)]およびpUC18[ジーン(Gene), 33, 103 (1985)]等をあげることができる。
cDNAライブラリーを作製するための宿主微生物としては、微生物であればいずれでも用いることができるが、好ましくは大腸菌が用いられる。具体的には、EscherichiacoliXL1-Blue MRF'[STRATAGENE社、ストラテジーズ(Strategies), 5, 81 (1992)]、EscherichiacoliC600[ジェネティクス(Genetics), 39, 440 (1954)]、Escherichia coliY1088[サイエンス(Science), 222, 778 (1983)]、Escherichia coliY1090[サイエンス(Science), 222, 778 (1983)]、Escherichia coliNM522[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 166, 1 (1983)]、Escherichiacoli K802[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J. Mol. Biol.), 16, 118 (1966)]およびEscherichiacoli JM105[ジーン(Gene), 38, 275 (1985)]等が用いられる。
cDNAライブラリーは、そのまま以降の解析に用いてもよいが、不完全長cDNAの割合を下げて、完全長cDNAを効率よく取得するために、菅野らが開発したオリゴキャップ法[ジーン(Gene), 138, 171 (1994); ジーン(Gene), 200, 149 (1997); 蛋白質核酸酵素, 41, 603 (1996); 実験医学, 11, 2491 (1993); cDNAクローニング(羊土社)(1996); 遺伝子ライブラリーの作製法(羊土社) (1994)]を用いて調製して以下の解析に用いてもよい。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のアミノ酸配列に基づいて、該アミノ酸配列をコードすることが予測される塩基配列の5'末端および3'末端の塩基配列に特異的なデジェネレイティブプライマーを作製し、作製したcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法[ピーシーアール・プロトコールズ(PCR Protocols), Academic Press (1990)]を用いてDNAの増幅を行うことにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得することができる。
取得した遺伝子断片が細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAであることは、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 74, 5463 (1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、確認することができる。
該遺伝子断片をプローブとして、ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーション(モレキュラー・クローニング第2版)等を用いて、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のDNAを取得することができる。
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得するために用いたプライマーを使用し、ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、PCR法を用いて増幅することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを取得することもできる。
取得した細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 74, 5463 (1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
決定したcDNAの塩基配列をもとに、BLAST等の相同性検索プログラムを用いて、Genbank、EMBLおよびDDBJなどの塩基配列データベースを検索することにより、取得したDNAがデータベース中の遺伝子の中で細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードしている遺伝子であることを確認することもできる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子の塩基配列としては、例えば、配列番号18または20に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子の塩基配列としては、例えば、配列番号22または23に記載の塩基配列があげられる。
決定されたDNAの塩基配列に基づいて、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機model 392(Perkin Elmer社製)等のDNA合成機で化学合成することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを取得することもできる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、例えば、以下に記載の方法があげられる。
ゲノムDNAの調製方法
ゲノムDNAを調製する方法としては、モレキュラー・クローニング第2版やカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された公知の方法があげられる。また、ゲノムDNAライブラリースクリーニングシステム(Genome Systems社)やUniversal GenomeWalkerTM Kits(CLONTECH社)などを用いることにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを取得することもできる。
取得した細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.), 74, 5463 (1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
決定したゲノムDNAの塩基配列をもとに、BLAST等の相同性検索プログラムを用いて、Genbank、EMBLおよびDDBJなどの塩基配列データベースを検索することにより、取得したDNAがデータベース中の遺伝子の中で細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードしている遺伝子であることを確認することもできる。
決定されたDNAの塩基配列に基づいて、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機model 392(Perkin Elmer社製)等のDNA合成機で化学合成することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを取得することもできる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列としては、例えば配列番号26、27、28および29に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列としては、例えば配列番号30に記載の塩基配列があげられる。
また、発現ベクターを用いず、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の塩基配列に基づいて設計したアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを、直接宿主細胞に導入することで、本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞を得ることもできる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムは、公知の方法またはDNA合成機により調製することができる。具体的には、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAおよびゲノムDNAの塩基配列のうち、連続した5〜150塩基、好ましくは5〜60塩基、より好ましくは10〜40塩基に相当する配列を有するオリゴヌクレオチドの配列情報に基づき、該オリゴヌクレオチドと相補的な配列に相当するオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)または該オリゴヌクレオチドの配列を含むリボザイムを合成して調製することができる。
オリゴヌクレオチドとしては、オリゴRNAおよび該オリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)等があげられる。
オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3'-P5'ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2'-O-プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2'-メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等があげられる[細胞工学, 16, 1463 (1997)]。
(b)相同組換え法による高ADCC活性抗体生産細胞を作製するための宿主細胞の作製
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、染色体上の標的遺伝子を相同組換え法を用いて染色体を改変することによって作製することができる。
染色体上の標的遺伝子の改変は、Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1994)(以下、「マニピュレイティング・ザ・マウス・エンブリオ・ア・ラボラトリー・マニュアル」と略す)、Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at OxfordUniversity Press (1993)、バイオマニュアルシリーズ8 ジーンターゲッティング, ES細胞を用いた変異マウスの作製,羊土社 (1995)(以下、「ES細胞を用いた変異マウスの作製」と略す)等に記載の方法を用い、例えば以下のように行うことができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する。
ゲノムDNAの塩基配列に基づき、改変する標的遺伝子(例えば、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の構造遺伝子、あるいはプロモーター遺伝子)を相同組換えするためのターゲットベクターを作製する。
作製したターゲットベクターを宿主細胞に導入し、染色体上の標的遺伝子とターゲットベクターの間で相同組換えを起こした細胞を選択することにより、高ADCC抗体生産細胞の作製のために用いる宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、上記1の(1)の(a)に記載のゲノムDNAの調製方法などがあげられる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列として、例えば配列番号26、27、28および29に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列として、例えば配列番号30に記載の塩基配列があげられる。
染色体上の標的遺伝子を相同組換えするためのターゲットベクターは、 Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1993)、バイオマニュアルシリーズ8 ジーンターゲッティング, ES細胞を用いた変異マウスの作製(羊土社)(1995)等に記載の方法にしたがって作製することができる。ターゲットベクターは、置換型、挿入型いずれでも用いることができる。
各種宿主細胞へのターゲットベクターの導入には、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
相同組換え体を効率的に選別する方法として、例えば、Gene Targeting, A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press (1993)、バイオマニュアルシリーズ8 ジーンターゲッティング, ES細胞を用いた変異マウスの作製(羊土社)(1995)等に記載のポジティブ選択、プロモーター選択、ネガティブ選択、ポリA選択などの方法を用いることができる。選別した細胞株の中から目的とする相同組換え体を選択する方法としては、ゲノムDNAに対するサザンハイブリダイゼーション法(モレキュラー・クローニング第2版)やPCR法[ピーシーアール・プロトコールズ(PCR Protocols), Academic Press (1990)]等があげられる。
(c) RDO方法による高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞の作製
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、RDO法を用い、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAあるいはゲノムDNAを上記1の(1)の(a)に記載の方法を用い、調製する。
調製したcDNAあるいはゲノムDNAの塩基配列を決定する。
決定したDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする部分、非翻訳領域の部分あるいはイントロン部分を含む適当な長さのRDOのコンストラクトを設計し合成する。
合成したRDOを宿主細胞に導入し、標的とした酵素、すなわち細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素に変異が生じた形質転換体を選択することにより、高CDC活性および高ADCC活性抗体生産細胞を作製するための宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。
各種宿主細胞へのRDOの導入には、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを調製する方法としては、例えば、上記2の(1)の(a)に記載のcDNAの調製方法などがあげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、例えば、上記2の(1)の(b)に記載のゲノムDNAの調製方法などがあげられる。
DNAの塩基配列は、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(-)(Stratagene社製)等のプラスミドにサブクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci.,U.S.A.), 74, 5463 (1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、ABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、確認することができる。
RDOは、常法またはDNA合成機を用いることにより調製することができる。
RDOを宿主細胞に導入し、標的とした酵素、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子に変異が生じた細胞を選択する方法としては、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された染色体上の遺伝子の変異を直接検出する方法があげられる。
また、前記2の(1)の(a)に記載の、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法、後述2の(5)に記載の細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法、あるいは、後述4または後述5に記載の産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法も用いることができる。
RDOは、サイエンス(Science), 273, 1386 (1996); ネイチャー・メディシン(Nature Medicine), 4, 285 (1998); へパトロジー(Hepatology), 25, 1462 (1997); ジーン・セラピー(Gene Therapy), 5, 1960 (1999); ジーン・セラピー(Gene Therapy), 5, 1960 (1999); ジャーナル・オブ・モレキュラー・メディシン(J. Mol. Med.), 75, 829 (1997); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl.Acad. Sci. USA), 96, 8774 (1999); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 96, 8768 (1999); ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nuc. Acids. Res.), 27, 1323 (1999); インベスティゲーション・オブ・ダーマトロジー(Invest. Dematol.), 111, 1172 (1998); ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.), 16, 1343 (1998); ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.), 18, 43 (2000); ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotech.), 18, 555 (2000)等の記載に従って設計することができる。
(d)RNAi法による高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞の作製
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、RNAi法を用い、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを上記2の(1)の(a)に記載の方法を用い、cDNAを調製する。
調製したcDNAの塩基配列を決定する。
決定したcDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする部分あるいは非翻訳領域の部分を含む適当な長さのRNAi遺伝子を設計する。
該RNAi遺伝子を細胞内で発現させるために、調製したcDNAの断片、または全長を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞表面上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に形質転換体を選択することで、高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞を得ることができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体への組み込みが可能で、設計したRNAi遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、前述1に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入には、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、本項2の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、本項2の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを調製する方法としては、例えば、本項2の(1)の(a)に記載されたcDNAの調製方法などがあげられる。
また、発現ベクターを用いず、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の塩基配列に基づいて設計したRNAi遺伝子を、直接宿主細胞に導入することで、高CDC活性および高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞を得ることもできる。
RNAi遺伝子は、常法またはDNA合成機を用いることにより調製することができる。
RNAi遺伝子のコンストラクトは、[ネイチャー(Nature), 391, 806 (1998); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 95, 15502 (1998); ネイチャー(Nature), 395, 854 (1998); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 96, 5049 (1999); セル(Cell), 95, 1017 (1998); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 96, 1451 (1999); プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc. Natl. Acad. Sci. USA), 95, 13959 (1998); ネイチャー・セル・バイオロジー(Nature Cell Biol.), 2, 70 (2000)]等の記載に従って設計することができる。
(e)トランスポゾンを用いた方法による、高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞の作製
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、ネイチャー・ジェネティク(Nature Genet.),25, 35 (2000)等に記載のトランスポゾンのシステムを用い、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に突然変異体を選択することで、高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞を作製することができる。
トランスポゾンのシステムとは、外来遺伝子をランダムに染色体上に挿入させることで突然変異を誘発させるシステムであり、通常、トランスポゾンに挿まれた外来遺伝子に突然変異を誘発させるベクターとして用い、この遺伝子を染色体上にランダムに挿入させるためのトランスポゼースの発現ベクターを同時に細胞の中に導入する。
トランスポゼースは、用いるトランスポゾンの配列に適したものであればいかなるものも用いることができる。
外来遺伝子としては、宿主細胞のDNAに変異を誘起するものであればいかなる遺伝子も用いることができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。各種宿主細胞への遺伝子の導入には、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組み換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、本項2の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、本項2の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(2)酵素の遺伝子のドミナントネガティブ体を導入する手法
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、該酵素のドミナントネガティブ体を導入する手法を用いることにより作製することができる。細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ、α-L-フコシダーゼなどがあげられる。
これらの酵素は、基質特異性を有したある特定の反応を触媒する酵素であり、このような基質特異性を有した触媒作用を有する酵素の活性中心を破壊することで、これらの酵素のドミナントネガティブ体を作製することができる。標的とする酵素のうち、GMDを例として、そのドミナントネガティブ体に作製について具体的に以下に述べる。
大腸菌由来のGMDの立体構造を解析した結果、4つのアミノ酸(133番目のトレオニン、135番目のグルタミン酸、157番目のチロシン、161番目のリシン)が酵素活性に重要な機能を担っていることが明らかにされている(Structure, 8, 2, 2000)。すなわち、立体構造の情報にもとづきこれら4つのアミノ酸を異なる他のアミノ酸に置換した変異体を作製した結果、いずれの変異体においても有意に酵素活性が低下していたことが示されている。一方、GMDの補酵素NADPや基質であるGDP-マンノースとの結合能に関しては、いずれの変異体においてもほとんど変化が観察されていない。従って、GMDの酵素活性を担うこれら4つのアミノ酸を置換することによりドミナントネガティブ体を作製することができる。大腸菌由来のGMDのドミナントネガティブ体の作製の結果に基づき、アミノ酸配列情報をもとにした相同性比較や立体構造予測を行うことにより、例えば、CHO細胞由来のGMD(配列番号19)では、155番目のトレオニン、157番目のグルタミン酸、179番目のチロシン、183番目のリシンを他のアミノ酸に置換することによりドミナントネガティブ体を作製することができる。このようなアミノ酸置換を導入した遺伝子の作製は、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、上述のように作製した標的酵素のドミナントネガティブ体をコードする遺伝子(以下、ドミナントネガティブ体遺伝子と略記する)を用い、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、マニピュレーティング・マウス・エンブリオ第2版等に記載された遺伝子導入の方法に従って、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のドミナントネガティブ体遺伝子を調製する。
調製したドミナントネガティブ体遺伝子の全長DNAをもとにして、必要に応じて、該蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。
該DNA断片、または全長DNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に形質転換体を選択することで、高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、前述1に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組み込みが可能で、目的とするドミナントネガティブ体をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、前述1に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入には、前述1に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述2(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述2の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(3)酵素に突然変異を導入する手法
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子に突然変異を導入し、該酵素に突然変異を生じた所望の細胞株を選択する手法を用いることにより作製できる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ、α-L-フコシダーゼなどがあげられる。
酵素に突然変異を導入する方法としては、1)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として所望の細胞株を選択する方法、2)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、生産抗体分子の糖鎖構造を指標として所望の細胞株を選択する方法、3)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、該細胞の細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として所望の細胞株を選択する方法などがあげられる。
突然変異誘発処理としては、親株の細胞のDNAに点突然変異、欠失あるいはフレームシフト突然変異を誘起するものであればいかなる処理も用いることができる。
具体的には、エチルニトロソウレア、ニトロソグアニジン、ベンゾピレン、アクリジン色素による処理、放射線の照射などがあげられる。また、種々のアルキル化剤や発癌物質も突然変異誘発物質として用いることができる。突然変異誘発物質を細胞に作用させる方法としては、例えば、組織培養の技術 第三版(朝倉書店)日本組織培養学会編(1996)、ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genet.), 24, 314, (2000)等に記載の方法を挙げることができる。
自然発生的に生じた突然変異体としては、特別な突然変異誘発処理を施さないで、通常の細胞培養の条件で継代培養を続けることによって自然発生的に生じる突然変異体を挙げることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、本項の2の(5)に記載の方法があげられる。
(4)酵素の遺伝子の転写又は翻訳を抑制する手法
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、アンチセンスRNA/DNA技術[バイオサイエンスとインダストリー, 50, 322 (1992)、化学, 46, 681 (1991)、Biotechnology,9, 358 (1992)、Trends in Biotechnology,10, 87 (1992)、Trends in Biotechnology,10, 152 (1992)、細胞工学, 16, 1463 (1997)]、トリプル・ヘリックス技術[Trends in Biotechnology,10, 132 (1992)]等を用い、標的とする遺伝子の転写または翻訳を抑制することで作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ、α-L-フコシダーゼなどがあげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素の活性またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法としては、例えば、本項2の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、本項2の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(5)N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法
高ADCC活性抗体生産細胞を作製するために用いる宿主細胞は、N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法を用いることにより作製することができる。
N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法としては、例えば、ソマティク・セル・アンド・モレキュラー・ジェネティクス(Somatic Cell Mol. Genet.), 12, 51 (1986)等に記載のレクチンを用いた方法があげられる。
レクチンとしては、N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンであればいずれのレクチンでも用いることができるが、その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(LensCulinaris由来のLentil Agglutinin)エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Viciafaba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuriaaurantia由来のLectin)等を挙げることができる。
具体的には、1μg/mL〜1mg/mLの濃度の上述のレクチンを含む培地で1日〜2週間、好ましくは1日〜1週間培養し、生存している細胞を継代培養あるいはコロニーをピックアップし別の培養容器に移し、さらに引き続きレクチンを含む培地で培養を続けることによって、N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択することができる。
3.抗体組成物の活性評価
精製した抗体組成物の蛋白量、抗原との結合活性あるいは細胞傷害活性を測定する方法としては、モノクローナルアンチボディズ、あるいはアンチボディエンジニアリング等に記載の公知の方法を用いることができる。
具体的な例としては、抗体組成物がヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体の場合、抗原との結合活性、抗原陽性培養細胞株に対する結合活性はELISA法及び蛍光抗体法[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol. Immunother.), 36, 373 (1993)]等により測定できる。抗原陽性培養細胞株に対する細胞傷害活性は、CDC活性、ADCC活性等を測定することにより、評価することができる[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol. Immunother.), 36, 373 (1993)]。
ADCC活性を測定する方法としては、放射性同位体、蛍光物質または色素等で標識された標的細胞、抗体およびエフェクター細胞を接触させた後、傷害された標的細胞から遊離される標識物質の活性を測定する方法、標的細胞、抗体、およびエフェクター細胞を接触させた後、傷害された標的細胞から遊離する酵素の生理活性を測定する方法などあげられる。
CDC活性を測定する方法としては、放射性同位体、蛍光物質または色素等で標識された標的細胞、抗体、および補体成分を含む血清等の生体試料を接触させた後、傷害された標的細胞から遊離される標識物質の活性を測定する方法、標的細胞、抗体、および補体成分を含む血清等の生体試料を接触させた後、傷害された標的細胞から遊離する酵素の生理活性を測定する方法などあげられる。
また、抗体組成物のヒトでの安全性、治療効果は、カニクイザル等のヒトに比較的近い動物種の適当なモデルを用いて評価することができる。
4.抗体組成物の糖鎖の分析
各種細胞で発現させた抗体分子の糖鎖構造は、通常の糖蛋白質の糖鎖構造の解析に準じて行うことができる。例えば、IgG分子に結合している糖鎖はガラクトース、マンノース、フコースなどの中性糖、N-アセチルグルコサミンなどのアミノ糖、シアル酸などの酸性糖から構成されており、糖組成分析および二次元糖鎖マップ法などを用いた糖鎖構造解析等の手法を用いて行うことができる。
(1)中性糖・アミノ糖組成分析
抗体組成物の糖鎖の組成分析は、トリフルオロ酢酸等で、糖鎖の酸加水分解を行うことにより、中性糖またはアミノ糖を遊離し、その組成比を分析することができる。
具体的な方法として、Dionex社製糖組成分析装置を用いる方法があげられる。BioLCはHPAEC-PAD(high performance anion-exchange chromatography-pulsed amperometric detection)法[ジャーナル・オブ・リキッド・クロマトグラフィー(J.Liq.Chromatogr.),6, 1577 (1983)]によって糖組成を分析する装置である。
また、2-アミノピリジンによる蛍光標識化法でも組成比を分析することができる。具体的には、公知の方法[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric.Biol.Chem.), 55(1), 283-284 (1991)]に従って酸加水分解した試料を2-アミノピリジル化で蛍光ラベル化し、HPLC分析して組成比を算出することができる。
(2)糖鎖構造解析
抗体組成物の糖鎖の構造解析は、2次元糖鎖マップ法[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.), 171, 73 (1988)、生物化学実験法23-糖蛋白質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989年)]により行うことができる。2次元糖鎖マップ法は、例えば、X軸には逆相クロマトグラフィーによる糖鎖の保持時間または溶出位置を、Y軸には順相クロマトグラフィーによる糖鎖の保持時間または溶出位置を、それぞれプロットし、既知糖鎖のそれらの結果と比較することにより、糖鎖構造を推定する方法である。
具体的には、抗体をヒドラジン分解して、抗体から糖鎖を遊離し、2-アミノピリジン(以下、PAと略記する)による糖鎖の蛍光標識[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J. Biochem.), 95, 197 (1984)]を行った後、ゲルろ過により糖鎖を過剰のPA化試薬などと分離し、逆相クロマトグラフィーを行う。次いで、分取した糖鎖の各ピークについて順相クロマトグラフィーを行う。これらの結果をもとに、2次元糖鎖マップ上にプロットし、糖鎖スタンダード(TaKaRa社製)、文献[アナリティカル・バイオケミストリー(Anal. Biochem.), 171, 73 (1988)]とのスポットの比較より糖鎖構造を推定することができる。
さらに各糖鎖のMALDI-TOF-MSなどの質量分析を行い、2次元糖鎖マップ法により推定される構造を確認することができる。
5.抗体分子の糖鎖構造の識別方法
抗体組成物は、抗体のFc領域に結合する糖鎖構造が異なった抗体分子から構成されている。本発明の抗体組成物のうち、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物は、高いADCC活性を示す。このような抗体組成物は、上記4.に記載の抗体分子の糖鎖構造の分析法を用いることにより識別できる。また、レクチンを用いた免疫学的定量方法を用いることによっても識別できる。
レクチンを用いた免疫学的定量方法を用いた抗体分子の糖鎖構造の識別は、文献[モノクローナル・アンティボディズ:プリンシプルズ・アンド・アプリケーションズ(Monoclonal Antibodies: Principles and Applications), Wiley-Liss, Inc., (1995); 酵素免疫測定法,第3版,医学書院(1987); 改訂版,酵素抗体法,学際企画(1985)]等に記載のウエスタン染色、RIA(Radioimmunoassay)、VIA(Viroimmunoassay)、EIA(Enzymoimmunoassay)、FIA(Fluoroimmunoassay)、MIA(Metalloimmunoassay)などの免疫学的定量方法に準じて、例えば、以下のように行うことができる。
抗体組成物を構成する抗体分子の糖鎖構造を認識するレクチンを標識し、標識したレクチンと試料である抗体組成物を反応させる。次に、標識したレクチンと抗体分子の複合体の量を測定する。
抗体分子の糖鎖構造を識別に用いられるレクチンとしては、例えば、WGA (T. vulgaris由来のwheat-germ agglutinin)、ConA (C. ensiformis由来のconcanavalin A)、RIC (R. communis由来の毒素)、L-PHA (P.vulgaris由来のleukoagglutinin)、LCA (L. culinaris由来のlentil agglutinin)、PSA (P. sativum由来のPea lectin)、AAL (Aleuria aurantia Lectin)、ACL (Amaranthus caudatus Lectin)、BPL (Bauhinia purpurea Lectin)、DSL (Datura stramonium Lectin)、DBA (Dolichos biflorus Agglutinin)、EBL (Elderberry Balk Lectin)、ECL (Erythrina cristagalli Lectin)、EEL (Euonymus europaeus Lectin)、GNL (Galanthus nivalis Lectin)、GSL (Griffonia simplicifolia Lectin)、HPA (Helix pomatia Agglutinin)、HHL (Hippeastrum Hybrid Lectin)、Jacalin、LTL (Lotus tetragonolobus Lectin)、LEL (Lycopersicon esculentum Lectin)、MAL (Maackia amurensis Lectin)、MPL (Maclura pomifera Lectin)、NPL (Narcissus pseudonarcissus Lectin)、PNA (Peanut Agglutinin)、E-PHA (Phaseolus vulgaris Erythroagglutinin)、PTL (Psophocarpus tetragonolobus Lectin)、RCA (Ricinus communis Agglutinin)、STL (Solanum tuberosum Lectin)、SJA (Sophora japonica Agglutinin)、SBA (Soybean Agglutinin)、UEA (Ulex europaeus Agglutinin)、VVL (Vicia villosa Lectin)、WFA (Wisteria floribunda Agglutinin)があげられる。
N-グルコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合している糖鎖構造を特異的に認識するレクチンを用いることが好ましく、その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(Lens Culinaris由来のLentil Agglutinin)エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Vicia faba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuria aurantia由来のLectin)を挙げることができる。
6.本発明の遺伝子組換え抗体組成物の使用
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物は、IgG1抗体およびIgG3抗体よりも高いCDC活性を有しているため、従来の、ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物よりも治療効果に優れた性質を有する。また、本発明の抗体組成物のうち、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物は、IgG1抗体およびIgG3抗体よりも高いCDC活性および高いADCC活性を有しているため、従来の抗体組成物よりも治療効果に優れた性質を有している。さらに本発明の遺伝子組換え抗体組成物のうち、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が100%である抗体組成物がより好ましい。
本発明の遺伝子組換え抗体組成物を含有する医薬は、治療薬として単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができ、抗体製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。または、抗体組成物を常法に従って凍結乾燥し、これに塩化ナトリウムを加えることによって粉末注射剤を調製することもできる。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。
また、噴霧剤は該抗体組成物そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該抗体組成物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該抗体組成物および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、有効成分の量として、通常成人1日当たり10μg/kg〜20mg/kgである。
本発明の遺伝子組換え抗体を有効成分として含有する医薬は、GM2が関与する各種疾患を治療することができる。
GM2が関与する疾患としては、癌などがあげられる。
癌の具体例としては、胸腺リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨肉腫、急性T細胞白血病、小細胞性肺癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫(ニューロブラスト-マともいう)、およびグリオブラストーマ(グリア芽細胞腫、膠芽腫、または多形膠芽腫ともいう)などがあげられる。
また、抗体組成物の各種腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果を検討する方法は、インビトロ実験としては、CDC活性測定法、ADCC活性測定法等があげられ、インビボ実験としては、マウス等の実験動物での腫瘍系を用いた抗腫瘍実験等があげられる。
CDC活性、ADCC活性、抗腫瘍実験は、文献[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunology Immunotherapy), 36, 373 (1993);キャンサー・リサーチ(CancerResearch), 54, 1511 (1994)]等記載の方法に従って行うことができる。
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
動物細胞を用いた、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体、抗CD20ドメイン交換抗体の作製
1. ヒトIgG3抗CD20ヒト型キメラ抗体発現ベクターの作製
ヒトリンパ節由来のpoly A+ RNA(BD Biosciences Clontech社)より、cDNA Synthesis Kit(Amersham Pharmacia Biotech社)を用いて、添付の使用説明書に従いcDNAを合成した。cDNA100 ngを鋳型に用い、KOD plus(東洋紡績社)および配列番号1、2に示すアミノ酸配列からなる、ヒトIgG定常領域特異的合成DNAプライマー(ファスマック社製)を用い、KOD plusの添付説明書 に従いPCR反応を行った。PCR反応はGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems)を用い、94℃、1分間にて熱変性後、94℃にて15秒間、62℃にて30秒間、68℃にて90秒間の反応を30サイクル行った。さらに68℃にて7分間反応させた後、3’末端にアデニン付加をする目的でTaq DNA polymerase(宝酒造社)を2.5U加え、68℃にて7分間反応させた。反応液を1%アガロースゲルを用いた電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen社)を用いて、IgG3重鎖定常領域遺伝子と考えられる約1.1kbpの増幅断片を回収した。Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加してプラスミドpCRII-TOPO vector(Invitrogen社)と連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌DH5α株(東洋紡績社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerによりプラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、公知のヒトIgG3 (Genbankアクセッション番号AAH33178)の重鎖定常領域と同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列であることを確認した。
上述のヒトIgG3重鎖定常領域遺伝子挿入プラスミドより、制限酵素ApaIおよびNruI(いずれも宝酒造社)処理し、1.13kbpのIgG3重鎖定常領域遺伝子断片を精製した。ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体Rituxanのマウス由来可変領域と同一の可変領域、ヒトκ型の軽鎖定常領域およびヒトIgG1の重鎖定常領域を有する、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の動物細胞安定発現ベクターpKANTEX2B8P(WO03/055993 A1に記載)をApaIおよびNruIで消化処理した。IgG1定常領域遺伝子を切り出した残りの約12.6kbpの断片を精製し、上述のIgG3定常領域遺伝子断片とLigation High溶液を用いて連結し、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2B8γ3(図3)を構築した。pKANTEX2B8γ3にコードされたヒトIgG3抗CD20キメラ抗体の可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、pKANTEX2B8PにコードされるヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列が同一であった。
2.抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターの作製
可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列が、pKANTEX2B8PにコードされるヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列と同一で、重鎖定常領域がヒトIgG1抗体またはヒトIgG3抗体のドメインから構成された、CD20に結合するドメイン交換抗体を以下の手順に従い作製した。CH1とヒンジがヒトIgG1抗体由来、Fc領域(CH2及びCH3)がヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列から構成される重鎖定常領域を有する抗CD20キメラ抗体を1133型抗CD20ドメイン交換抗体、CH1とヒンジがIgG3抗体由来、Fc領域がヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列から構成される重鎖定常領域を有する抗CD20キメラ抗体を3311型抗CD20ドメイン交換抗体とそれぞれ称する。これらのドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は、アミノ酸配列データベースによる検索を行った結果、新規のアミノ酸配列であった。
設計された各種抗CD20ドメイン交換抗体の各ドメインが由来するサブクラス、および重鎖定常領域のアミノ酸配列の対応を表1に示した。なお、1133型のアミノ酸配列は配列番号16に示した。図4に各種抗CD20ドメイン交換抗体の模式図を示した。
(1)1133型抗CD20ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターの構築
図5に示した1133型抗CD20ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターを以下のようにして構築した。
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2B8Pより、制限酵素ApaI(宝酒造社製 )およびBmgBI(New England Biolabs社製)を用いて、ヒトIgG1抗体のCH1ドメイン、ヒンジドメイン、およびFc領域の5'末端側の一部(ヒトIgG1抗体とヒトIgG3抗体で同一のアミノ酸配列である部分)をコードする約430bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、本実施例1項に記載のヒトIgG3抗CD20キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8γ3に対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNAを混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)により連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、図5に示したプラスミドpKTX93/1133が得られたことを確認した。
(2)3311型抗CD20ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターの構築
図6に示した3311型抗CD20ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターを以下のようにして構築した。
本実施例1項に記載のヒトIgG3抗CD20キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8γ3より、制限酵素ApaI(宝酒造社製)およびBmgBI(New England Biolabs社製)を用いて、ヒトIgG3抗体のCH1ドメイン、ヒンジドメイン、およびFc領域の5'末端側の一部(ヒトIgG1抗体とヒトIgG3抗体で同一のアミノ酸配列である部分)をコードする約570bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、IgG1抗CD20抗体の発現ベクターpKANTEX2B8Pに対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNAを混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)により連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、図6に示したプラスミドpKTX93/3311が得られたことを確認した。
3.各種抗CD20キメラ抗体および各種抗CD20ドメイン交換抗体の動物細胞での安定発現
本実施例の第1項および第2項でそれぞれ作製したヒトIgG3抗CD20キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2B8γ3、抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターpKTX93/1133およびpKTX93/3311を、CHO/DG44細胞[ソマティク・セル・アンド・モレキュラー・ジェネティクス(Somatic Cell Mol. Genet.), 12, 555 (1986)]およびα1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子をノックアウトしたCHO/DG44細胞(以下CHO/FUT8-/-と表記する)[バイオテクノロジー・アンド・バイオエンジニアリング(Biotechnol. Bioeng.), 87, 614 (2004)]を宿主細胞として導入し、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体または抗CD20ドメイン交換抗体を安定して生産する細胞を以下のようにして作製した。CHO/DG44細胞は組換え蛋白質生産に広く用いられる宿主細胞である。CHO/FUT8-/-細胞はCHO/DG44細胞のFUT8をゲノム上でノックアウトした宿主細胞である。また、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体発現ベクターpKANTEX2B8Pは、CHO/FUT8-/-細胞にのみ導入し、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体を安定して生産する細胞を同様にして作製した。
8μgの発現ベクターを、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]により1.6×106個のCHO/DG44細胞またはCHO/FUT8-/-細胞へ導入した後、40mLのIMDM-(10) [透析牛血清(dFBS)を10%で含むIMDM培地(GIBCO-BRL社製)]培地に懸濁し、96ウェルマイクロプレート(住友ベークライト社製)に100μL/ウェルずつ分注した。37℃の5%CO2インキュベーター内で24時間培養した後、500μg/mLの濃度でG418を含むIMDM-(10) 培地において1〜2週間培養した。培養後、各ウェルから培養上清を回収し、後述する本実施例の第4項に示すELISA法により、培養上清中の抗CD20ドメイン交換抗体量を測定した。培養上清中に抗CD20ドメイン交換抗体の発現が認められたウェルの形質転換株については、dhfr遺伝子増幅系を利用して抗体発現量を増加させる目的で、G418を500μg/mLの濃度で含み、dhfr遺伝子産物であるジヒドロ葉酸還元酵素の阻害剤であるメソトレキセート(以下、MTXと表記する:SIGMA社製)を50nMの濃度で含むIMDM-(10)培地に懸濁し、37℃の5%CO2インキュベーター内で約1週間培養し、50nMのMTXに耐性を示す形質転換株を取得した。次に、MTX濃度を100nM、200nMと順次上昇させ、最終的に500μg/mLの濃度のG418および200nMのMTXを含むIMDM-(10)培地で増殖可能かつ、それぞれの発現ベクターにコードされる抗体を高発現する形質転換株を取得した。
4.培養上清中の抗体濃度の測定(ELISA法)
ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体(American Qualex社製)をPhosphate Buffed Saline(以下、PBSと表記する)で希釈して1μg/mLとし、96穴のELISA用プレート(グライナー社製)に、50μL/ウェルで分注し、室温で一時間静置して吸着させた。反応後、PBSで洗浄し、1%牛血清アルブミン(以下、BSAと表記する;Proliant Inc.社製)を含むPBS(以下、1%BSA-PBSと表記する)を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA-PBSを除去し、測定対象の培養上清を50μL/ウェルで加え、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルを0.05%Tween20を含むPBS(以下、Tween-PBSと表記する)で洗浄後、PBSで500倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(Fc)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、それぞれ50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。Tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)アンモニウムの0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と表記する)を測定した。
5.各種抗CD20キメラ抗体および各種抗CD20ドメイン交換抗体の精製
本実施例の第3項で得られた各種抗CD20抗体を発現する形質転換株のそれぞれを、200nMMTXを含むIMDM-FCS(10)に1×105細胞/mLとなるように懸濁した後、トリプルフラスコ(ナルジェヌンク社製)に100mLずつ分注し、37℃設定の5%CO2インキュベーター内で2日間培養した。フラスコより培養上清を除去し、フラスコ内部を50mLのPBSで洗浄した後、フラスコにEXCELL301培地(JRH Biosciences社製)100mLを加え、37℃設定の5%CO2インキュベーター内で5日間培養した。この培養上清を回収し、3000rpm、4℃の条件で5分間の遠心分離を行った後、上清を回収し、0.22μm孔径PES Membrane(イワキ社製)を用いて濾過滅菌した。滅菌した培養上清より、Prosep-A(Protein-A:ミリポア社製)またはProsep-G(Protein-G:ミリポア社製)を用いたカラムで、添付の説明書に従い、各種抗CD20抗体を精製した。IgG1抗CD20抗体はプロテインAで精製可能であったが、IgG3抗CD20抗体はプロテインAで精製できないためプロテインGを用いて精製した。ドメイン交換抗体に関しては、3311型はプロテインAで精製することができた。一方、1133型はプロテインAで精製できなかったが、プロテインGで精製することができた。
各抗体の、発現ベクター、宿主細胞、精製した抗体サンプルの名称、および重鎖定常領域のアミノ酸配列の対応を表2に示した。なお、表中、サンプルの名称末尾に(+F)を有するサンプルはCHO/DG44を宿主細胞として生産された抗体サンプルを示し、それ以外のサンプルはCHO/FUT8-/-から生産された抗体サンプルを示す。
表中:+FはFc領域に結合する糖鎖にフコースが結合していることを示す。-FはFc領域に結合する糖鎖にフコースが結合していないことを示す。
6.各種抗CD20キメラ抗体および各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルのSDS-PAGEによる精製度の評価
本実施例の第5項で得られた各種抗CD20抗体精製サンプルの精製度を評価するため、各種抗CD20抗体精製サンプル約1μgを用いて、公知の方法[Nature, 227, 680 (1970)]に従ってSDS変性ポリアクリルアミド電気泳動(以下、SDS-PAGEと表記する)を行った。泳動度の比較対照として、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体Rituxanに対しても同様の操作を行った。以下、RituxanをCD20-IgG1(+F)と表記する。
その結果、1133(+F)および1133(-F)は、ヒトIgG1抗体であるCD20-IgG1(+F)と類似の泳動パターンを示し、3311(+F)および3311(-F)は、ヒトIgG3抗体であるCD20-IgG3(+F)と類似の泳動パターンを示した。CD20-IgG1(+F)、CD20-IgG1(-F)、1133(+F)および1133(-F)においてはH鎖が約50キロダルトン(以下、kDaと表記する)、L鎖が約24kDa付近にバンドが認められ、CD20-IgG3(+F)、CD20-IgG3(-F)、3311(+F)および3311(-F)はH鎖が約54kDa、L鎖が約24kDa付近にバンドが認められることから、作製した抗CD20抗体は目的のH鎖およびL鎖から構成されていることが確認された。
以上の結果より、本実施例の第5項で得られた各種抗CD20抗体精製サンプル中には、それぞれH鎖およびL鎖から構成される目的のIgG分子が十分な割合で含まれることが確認された。
各種抗CD20キメラ抗体および各種抗CD20ドメイン交換抗体の活性評価
実施例1の第5項で得られた各種抗CD20抗体精製サンプルについて、各種活性比較を以下のようにして行った。
1.各種抗CD20抗体のCD20陽性細胞に対する結合活性
実施例1で得られた各種抗CD20抗体のCD20陽性細胞に対する結合活性を、ビオチン化Rituxanとの競合阻害の系において、フローサイトメーターを用いた蛍光抗体法によって測定した。陰性対照として抗Her2ヒトIgG1抗体Herceptin[Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 89, 4285, (1992)]および抗CCR4ヒトIgG1抗体KM3060[Cancer Res. 64, 2127 (2004)]を用いた。
CD20陽性であるバーキットリンパ腫由来細胞株Daudi細胞[ATCC:CCL-213]を1ウェル当たり5×105個になるように96ウェルU字プレート(Falcon社製)に分注した後、実施例1の第5項で得られた各種抗CD20抗体、または陰性対照である抗Her2抗体Herceptin[Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 89, 4285, (1992)]および抗CCR4抗体KM3060(WO02/31140)を10μg/mLまたは1μg/mLの濃度で含み、ビオチン標識化抗CD20キメラ抗体Rituxan[EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Pierce社製)を用いてRituxanをビオチン化したもの]を0.5μg/mLで含むFACS用緩衝液[0.2mg/mL human-IgG(シグマ社製)、0.02% EDTA、0.05% NaN3、1% BSA]を50μL/ウェルで添加した。遮光下4℃で60分間反応させ、細胞をFACS用緩衝液で2回洗浄した後、FACS用緩衝液で200倍に希釈したPE標識化ストレプトアビジンを50μL/ウェルで添加した。遮光下4℃で60分間反応させ、細胞をFACS用緩衝液で2回洗浄した後、1mLのFACS用緩衝液に懸濁し、フローサイトメーターEPICS-XL(Coulter社製)で蛍光強度を測定した。
結果を図7に示した。陰性対照である抗Her2抗体Herceptinおよび抗CCR4抗体KM3060はビオチン標識化抗CD20キメラ抗体RituxanのCD20陽性細胞Daudiへの結合を阻害しなかったが、全ての抗CD20ドメイン交換抗体、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体は濃度依存的に結合を阻害し、その度合いは同程度であった。これらの結果より、抗CD20ドメイン交換抗体の抗原結合がCD20特異的であること、および抗CD20ドメイン交換抗体の結合活性がヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同程度であることが示された。
2.各種抗CD20抗体のDaudi細胞に対するCDC活性の測定
実施例1の第5項で得られた各種抗CD20抗体精製サンプルについて、CD20陽性であるDaudi細胞を用いたin vitro CDC活性を測定した。
反応は96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)内で行い、各反応ウェルには、5×104個のDaudi細胞を含み、0.3μg/mLの抗CD20ドメイン交換抗体、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体またはヒトIgG3抗CD20キメラ抗体を含むヒト補体希釈培地[FBS(JRH社製)を10%含むRPMI1640培地(GIBCO BRL社製)を用いてヒト補体(SIGMA社製)を6倍に希釈したもの]を150μLずつ分注した。また、CDCが惹起されない場合の対照として抗CD20ドメイン交換抗体を含まない反応ウェル(0%反応ウェル)を、CDCが惹起された場合の対照としてDaudi細胞を含まない反応ウェル(100%反応ウェル)をそれぞれ用意した。37℃、5%CO2雰囲気下で2時間培養した後、各反応ウェルにWST-1試薬(ROCHE社製)を15μLずつ加え、37℃、5%CO2雰囲気下で4時間反応させた。反応終了後、各ウェルにおけるOD450を測定し、各ウェルの吸光度より以下の式を用いてCDC活性(%)を算出した。

CDC活性(%)=100×{1-(反応ウェル吸光度-100%反応ウェル吸光度)/(0%反応ウェル吸光度-100%反応ウェル吸光度)}

結果を図8に示した。図8に示されるように、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3(+F)およびCD20-IgG3(-F)のCDC活性は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1(+F)およびCD20-IgG1(-F)のCDC活性よりも高く、CDC活性はIgG3>IgG1であることが確認された。しかしながら、抗CD20ドメイン交換抗体1133(+F)および1133(-F)はヒトIgG3抗CD20キメラ抗体のCDC活性よりも顕著に高いCDC活性を示した。一方で抗CD20ドメイン交換抗体3311(+F)および3311(-F)のCDC活性は低かった。また、いずれの抗CD20抗体においても、CHO/DG44を宿主細胞として生産された抗体サンプルとCHO/FUT8-/-を宿主細胞として生産された抗体サンプルは、同程度のCDC活性を示しており、抗体に結合する糖鎖のフコース含量にかかわらず、1133の活性が上昇していた。さらに、抗体濃度を1μg/mlに上げても、上記の各種抗体のCDC活性の強弱の序列は変わらなかった。
3.1133型抗CD20ドメイン交換抗体のCDC活性測定
本実施例の第2項で特に高いCDC活性を有していた抗CD20ドメイン交換抗体1133(+F)および1133(-F)の CDC活性をさらに詳細に評価するため、いずれもCD20陽性である、バーキットリンパ腫由来細胞株ST486細胞[ATCC:CRL-1647]またはバーキットリンパ腫由来細胞株Raji細胞[ATCC: CCL-86]を用いて、本実施例の第2項と同様の手順でCDC活性の測定を行った。
結果を図9に示した。図9に示されるように、ST486細胞株(図9A)とRaji細胞株(図9B)のいずれにおいても、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3(+F)およびCD20-IgG3(-F)のCDC活性はヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1(+F)およびCD20-IgG1(-F)のCDC活性よりも若干高く、抗CD20ドメイン交換抗体1133(+F)および1133(-F)はこれらを上回る顕著なCDC活性を示した。また、いずれの抗CD20抗体においても、CHO/DG44を宿主細胞として生産された抗体サンプルとCHO/FUT8-/-を宿主細胞として生産された抗体サンプルは、同程度のCDC活性を示した。
4.各種抗CD20抗体のCD20陽性細胞株に対するADCC活性の評価
実施例1の第5項で得られた各種抗CD20抗体精製サンプルについて、標的細胞としてCD20陽性であるDaudi細胞を用いてin vitro ADCC活性を以下のように測定した。測定には、Cytotox96キット(Promega社製)を用いた。
(1)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム (武田薬品社製) 0.2mLを加え穏やかに混合した。これをLymphoprep (第一化学薬品社製) を用いて使用説明書に従って単核球画分を分離した後、RPMI1640培地で1回、10%FBS-RPMI1640培地で1回遠心分離して洗浄し、これをエフェクター細胞とした。
(2)ADCC活性の測定
反応は96ウェル平底プレート(Falcon社製)内で行い、各反応ウェルには、2×105個のエフェクター細胞および1×104個のDaudi細胞またはST486細胞を含み、各種濃度で抗CD20抗体を含む10%FBS-RPMI1640培地を200μLずつ分注した。また、ADCC活性の算出に必要な対象ウェルとして、エフェクター細胞、標的細胞および抗体のすべてを含まない培地ウェル、エフェクター細胞のみを含むエフェクターウェル、標的細胞のみを含む標的ウェル、エフェクター細胞および標的細胞を含み抗体を含まないNKウェル、標的細胞のみを含み、反応開始後3時間15分後にキット添付のLysis-bufferを20μL添加した100%反応ウェル、エフェクター細胞、標的細胞および抗体のすべてを含まず、反応開始後3時間15分後にキット添付のLysis-bufferを20μL添加した100%反応対照ウェルをそれぞれ用意した。各反応ウェルを37℃、5%CO2雰囲気下で4時間反応させた後、反応プレートを遠心分離し、各ウェルより上清50μLを回収した。各ウェルの上清を96ウェルU字底プレート(住友ベークライト社製)のウェルにそれぞれ移し、各ウェルに発色基質溶液(キット添付の基質1本分をキット添付のassay-buffer 12mLに溶解させたもの)を50μLずつ添加した。37℃で30分間発色反応を行い、キット添付の反応停止液を各ウェル50μLずつ添加した後、OD450を測定し、各ウェルの吸光度より以下の式を用いてADCC活性(%)を算出した。

ADCC活性(%)= 100 ×( S - E - T )/( Max - T )
S = サンプル反応ウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
E = エフェクターウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
T = 標的ウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
Max = 100%反応ウェル - 100%反応対照ウェル

結果を図10に示した。図10に示されるように、いずれの抗CD20抗体においても、CHO/FUT8-/-から生産された抗体サンプルはCHO/DG44から生産された抗体サンプルに比べて高いADCC活性を示した。この結果より、本実施例で作製された全ての抗CD20ドメイン交換抗体においても、抗体のFcに結合するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない抗体組成物は、抗体のFcに結合するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンにフコースが結合している抗体組成物よりもADCC活性が向上することが見出された。また、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体はヒトIgG3抗CD20キメラ抗体よりも高いADCC活性を示し、IgG1>IgG3であることが確認された。また、1133型抗CD20ドメイン交換抗体はヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同程度の高いADCC活性を維持していた。さらに、3311型抗CD20ドメイン交換抗体のADCC活性はヒトIgG3抗CD20キメラ抗体と同程度に低いことが見出された。
5. 各種抗CD20抗体の遺伝子組換えFcγ受容体IIIa(以下、FcγRIIIaと略記する)に対する結合活性の測定
本実施例第4項で確認された抗CD20ドメイン交換抗体におけるADCC活性の増強のメカニズムを解析するため、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1(-F)、CD20-IgG1(+F)、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3(-F)、CD20-IgG3(+F)、1133型抗CD20ドメイン交換抗体1133(-F)および1133(+F)の、NK細胞表面に発現するFc受容体ファミリーFcγRIIIaに対する結合活性を公知の方法[Clin. Cancer Res., 10, 6248 (2004)]に従い測定した。
結果を図11に示した。図11に示されるように、CHO/FUT8-/-から生産された抗体サンプルはCHO/DG44から生産された抗体サンプルに比べて、FcγRIIIaに対する高い結合活性を示した。このことから、1133型抗CD20ドメイン交換抗体のFcに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンに結合するフコースを除去することによる抗体のADCC活性の上昇は、Fc領域とFc受容体との結合活性の向上に起因することが確認された。
以上のことから、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体Rituxanと同一の可変領域を有し、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジドメインがヒトIgG1抗体、Fc領域がヒトIgG3抗体のアミノ酸配列である1133型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体およびヒトIgG3抗CD20キメラ抗体を上回るCDC活性を有し、且つ、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同等のADCC活性を有していた。さらに、Fcに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンに結合するフコース含量を低減することにより、FcのFc受容体に対する結合活性が向上し、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同様にADCC活性が向上することが示された。
以上より得られた結果をもとに、作製した各抗体およびドメイン交換抗体の構造と活性の関係について、表3にまとめた。表中、ADCC活性およびCDC活性は、活性の程度を強い順に++++、+++、++、+で表記した。
以上より、ヒトIgG1抗体のFc領域をヒトIgG3抗体のFc領域に置換した重鎖定常領域を有する抗体分子は、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高いCDC活性を有し、且つ、ヒトIgG1と同等の抗体の高いADCC活性を維持していることが示された。
動物細胞を用いた、1131型抗CD20ドメイン交換抗体および1113型抗CD20ドメイン交換抗体の作製

1.1131型抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターおよび1113型抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターの作製

実施例2において、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体のFc領域(CH2及びCH3)をヒトIgG3抗体のFc領域と置換した1133型抗CD20ドメイン交換抗体がヒトIgG1抗CD20キメラ抗体よりも高いCDC活性を示した。次にFc領域を構成するCH2ドメインおよびCH3ドメインのCDC活性への関与を個別に調べるため、以下に述べる2種類の抗CD20ドメイン交換抗体を作製した。
以下の実施例において、CH1、ヒンジおよびCH3がヒトIgG1抗体由来、CH2がヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列から構成される重鎖定常領域を有する抗CD20キメラ抗体を1131型抗CD20ドメイン交換抗体、CH1、ヒンジおよびCH2がヒトIgG1抗体由来、CH3ドメインがヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列から構成される重鎖定常領域を有する抗CD20キメラ抗体を1113型抗CD20ドメイン交換抗体とそれぞれ称する。いずれにおいても、可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、pKANTEX2B8PにコードされるヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列と同一である。
1131型抗CD20ドメイン交換抗体および1113型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のドメイン構造を表4に示した。なお、1131型のアミノ酸配列は配列番号31に示した。これらのドメイン交換抗体の重鎖定常領域の作成例は知られておらず、いずれも新規の構造である。また、図12に各ドメイン交換抗体の模式図を示した。
(1)1113型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、pKANTEX2B8PにコードされるヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の可変領域および軽鎖定常領域のアミノ酸配列と同一で、CH1、ヒンジおよびCH2がヒトIgG3抗体由来、CH3ドメインがヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列から構成される重鎖定常領域を有する1113型抗CD20キメラ抗体をコードする発現ベクターを以下のようにして構築した。
図13に示したヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8Pより、制限酵素ApaI(宝酒造社製)およびSmaI(宝酒造社製)を用いて、ヒトIgG1のCH1ドメイン、ヒンジドメインおよびCH2ドメインをコードする約700bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、実施例1の2項(2)に記載の図14に示した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKANTEX93/1133に対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNAを混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)により連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、図15に示したプラスミドpKTX93/1113が得られたことを確認した。
(2)抗CD20ドメイン交換抗体1131の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトCD20に特異的に反応し、CHのCH2ドメインがヒトIgG3のアミノ酸配列であり、CH1ドメイン、ヒンジドメインおよびCH3ドメインがヒトIgG1のアミノ酸配列である、図16に示した1113型ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターを以下のようにして構築した。
実施例1の2項(2)に記載の図14に示した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKANTEX93/1133より、制限酵素ApaI(宝酒造社製)およびSmaI(宝酒造社製)を用いて、ヒトIgG1のCH1ドメイン、ヒンジドメインおよびヒトIgG3のCH2ドメインをコードする約700bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、図13に示したヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8Pに対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNAを混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)により連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンより各プラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、図16に示したプラスミドpKTX93/1131が得られたことを確認した。
2.抗CD20ドメイン交換抗体1113型および1131型の動物細胞での安定発現
本実施例の第1項で作製した抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターを、実施例1の第3項に記載の宿主細胞であるCHO/FUT8-/-に導入し、ドメイン交換された抗CD20抗体を安定して生産する細胞を実施例1の第3項と同様の手順で作製した。
3.抗CD20ドメイン交換抗体の精製
本実施例の第2項で得られた1113型抗CD20ドメイン交換抗体または1131型抗CD20ドメイン交換抗体を発現する形質転換株のそれぞれを、実施例1の第5項と同様の手順で、培養し、精製した。1113型抗CD20ドメイン交換抗体および1131型抗CD20ドメイン交換抗体はProsep-Gカラムを用いて精製を行った。また、1133型抗CD20ドメイン交換抗体、1113型抗CD20ドメイン交換抗体および1131型抗CD20ドメイン交換抗体をProsep-Aカラムを用いて精製を行ったところ、1131型抗CD20ドメイン交換抗体のみ精製が可能であった。
各ドメイン交換抗体の、発現ベクター、宿主細胞及び精製した抗体の名前の対応を表5に示した。
4.精製抗CD20ドメイン交換抗体のSDS-PAGEによる精製度の評価
本実施例の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルの精製度を測定するため、実施例1の第6項と同様の手順でSDS-PAGEを行った。泳動度の比較対照として、実施例1の第5項で作製した各種精製サンプルCD20-IgG1型、CD20-IgG3型および1133型に対しても同様の操作を行った。
結果を図17に示した。1113型および1131型は、それぞれCD20-IgG1型および1133型と類似の泳動パターンを示した。1113型および1131型を構成するH鎖およびL鎖のアミノ酸配列から予想される分子量はそれぞれ類似しており、H鎖が約50kDa、L鎖が約24kDaである。これらの分子量は、CD20-IgG1型および1133型のH鎖およびL鎖の分子量と類似しており、泳動パターンも類似していることから、1113型および1131型は目的のH鎖およびL鎖から構成されていることが確認された。また、CD20-IgG3型を構成するL鎖のアミノ酸配列から予想される分子量は約24kDaでCD20-IgG1型と類似しているが、H鎖が約54kDaとCD20-IgG1型のH鎖よりも大きいため、CD20-IgG3型のL鎖はCD20-IgG1型のL鎖と類似した位置に現れているが、H鎖はCD20-IgG1型のH鎖よりも高分子量側に位置した。
以上の結果より、本実施例の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプル中には、それぞれH鎖およびL鎖から構成される目的のIgG分子が十分な割合で含まれることが確認された。
抗CD20ドメイン交換抗体1131型および1113型の活性評価
実施例3の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルについて、各種活性比較を以下のようにして行った。
1.抗CD20ドメイン交換抗体1113型および1131型のCDC活性
実施例1の第5項で得られたヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1型、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3型、1133型抗CD20ドメイン交換抗体、実施例3の第3項で得られた1113型抗CD20ドメイン交換抗体および1131型抗CD20ドメイン交換抗体について、CD20陽性細胞株におけるin vitro CDC活性を評価するため、いずれもCD20陽性であるST486細胞またはRaji細胞を用いて、実施例2の第2項と同様の手順で試験を行った。
結果を図18に示した。図18に示されるように、ST486細胞株(図18A)とRaji細胞株(図18B)のどちらにおいても、CD20-IgG3(-F)のCDC活性はCD20-IgG1(-F)のCDC活性よりも高く、1133(-F)のCDC活性はCD20-IgG3(-F)のCDC活性よりも高かった。これに加えて、1113(-F)および1131(-F)のCDC活性はCD20-IgG3(-F)のCDC活性より高かった。さらに、1131(-F)のCDC活性が1113(-F)のCDC活性よりも高かった。これらの結果より、IgG1のFcをIgG3のFcに置換することによるCDC活性の上昇において、IgG3由来のCH2ドメインおよびCH3ドメインの両者が寄与していることが見出された。また上記の結果より、CH2ドメインとCH3ドメインのうち、CH2ドメインの寄与がより大きいことも見出された。
2.CD20陽性細胞株に対するADCC活性の評価
実施例1の第5項で得られたヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体CD20-IgG3、1133型抗CD20ドメイン交換抗体、実施例3の第3項で得られた1113型抗CD20ドメイン交換抗体および1131型抗CD20ドメイン交換抗体について、標的細胞としてCD20陽性であるDaudi細胞を用いてin vitro ADCC活性を、実施例2の第5項と同様の手順で測定した。測定には、Cytotox96キット(Promega社製)を用いた。
結果を図19に示した。図19に示されるように、1113(-F)および1131(-F)もCD20-IgG1(-F)および1133(-F)と同等のADCC活性を示しており、これらのことは、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体のCH2ドメインおよび/またはCH3ドメインをヒトIgG3にドメイン交換しても、ADCC活性はIgG1と同等であることを示している。
以上のことから、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同一の可変領域を有し、重鎖定常領域のCH2ドメインまたはCH3ドメインのみがヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列からなり、それ以外のドメインはヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列からなる1113型抗CD20ドメイン交換抗体および1131型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG3抗CD20キメラ抗体を上回るCDC活性、およびヒトIgG1抗CD20キメラ抗体と同等のADCC活性を有することが確認された。
以上より得られた結果をもとに、作製された各抗体およびドメイン交換抗体の構造と活性との関係について、表6にまとめた。表中、ADCC活性およびCDC活性は、活性の程度を強い順に++++、+++、++、+で表記した。また、プロテインA結合については、プロテインAへの結合活性を有するものは+、有しないものは−で示した。
以上より、ヒトIgG1抗体の重鎖定常領域のうち、CH2ドメインおよびCH3ドメインをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した重鎖定常領域を有する抗体分子(1133型ドメイン交換抗体)の高いCDC活性は、ヒトIgG1抗体の重鎖定常領域の内、CH2ドメインのみをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した重鎖定常領域を有する抗体分子(1131型ドメイン交換抗体)においても大部分が維持されることが明らかとなった。また、ヒトIgG1抗体の重鎖定常領域のうち、CH2ドメインのみをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した重鎖定常領域を有する抗体分子(1131型ドメイン交換抗体)は、ヒトIgG1抗体と同等の高いADCC活性を維持していること、またFcに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンに結合するフコースを除去することにより、さらにADCC活性が増強することが示された。
抗CD20ドメイン交換抗体の各種遺伝子組換えFcγ受容体に対する結合活性の測定
実施例1の第5項で得られた、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体CD20-IgG1およびCD20-IgG1(+F)、1133型抗CD20ドメイン交換抗体1133(-F)および1133(+F)のFc受容体ファミリーFcγRI、およびFcγRIIaに対する結合活性を公知の方法[Clin. Cancer Res., 10, 6248 (2004)]に従い測定した。
結果を図20に示した。図20に示されるように、1133型抗CD20ドメイン交換抗体は、FcγRIに対しても、FcγRIIaに対しても、IgG1抗CD20抗体と同様の結合活性を示した。このことは、IgG1抗体のCH2およびCH3をIgG3抗体のアミノ酸配列に置換することが、Fc受容体ファミリーFcγRI、およびFcγRIIaへの結合活性に影響を及ぼさないことを示している。
また、図20に示されるように、1133型抗CD20ドメイン交換抗体においても、IgG1抗CD20抗体においても、Fcに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンに結合するフコースの有無に関わらず、各抗体は同様の結合活性を示した。以上の結果は、Fcに付加するN-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミンに結合するフコースの有無は、Fc受容体ファミリーFcγRIおよびFcγRIIa への結合活性に影響を及ぼさず、IgG1と同等であることを示している。
動物細胞を用いた、ヒトIgG1抗体のCH2ドメインを含むポリペプチドをヒトIgG3抗体の同じEUインデックスに相当するポリペプチドに置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の作製
1.CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター構築
実施例4の1項で見出されたように、CH2ドメインおよびCH3ドメインの双方をヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換することが、ヒトIgG1抗体のCDC活性増強に大きく寄与することが明らかとなった。
一方で、実施例1の5項で見出されたとおり、1133型抗CD20ドメイン交換抗体および1113型抗CD20ドメイン交換抗体はヒトIgG3抗体同様にプロテインAに結合しないが、1131型抗CD20ドメイン交換抗体はヒトIgG1抗体同様にプロテインAに結合することは、ヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列からなるCH3ドメインがプロテインAへの結合に寄与していることを示唆している。
抗体を医薬品として製造する場合には、抗体精製の容易さから抗体がプロテインAへの結合活性を有することが重要である。そこで、IgG1のCH2ドメインを完全にヒトIgG3抗体由来のCH2ドメインに置換し、IgG1のCH3ドメインを部分的にヒトIgG3抗体由来のCH3ドメインに置換することにより、CDC活性が1133型と同等であり、プロテインA結合活性をも有するドメイン交換抗体の作製を行った。
本実施例で設計した種々の抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域の模式図を図21に示す。これらのドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は知られておらず、いずれも新規の構造である。IgG抗体のCH2ドメインはEUインデックスで231番目から340番目に位置するアミノ酸残基からなり、CH3ドメインはEUインデックスで341番目から447番目に位置するアミノ酸残基からなる。
113A型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から356番目までに相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113B型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から358番目までに相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113C型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から384番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113D型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から392番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113E型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から397番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113F型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から422番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113G型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から434番目と436番目から447番目とに相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
113H型抗CD20ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から435番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体である。
これらの各種抗CD20ドメイン交換抗体を以下に示す手順で作製した。
各種抗CD20ドメイン交換抗体は、各種ドメイン交換抗体のCH3ドメインのアミノ酸配列をコードするDNA断片を調製し、これを実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/1133のCH3ドメインのアミノ酸配列をコードする遺伝子配列と置換することにより製造することができる。CH3ドメインの遺伝子配列の置換は、CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iと、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iを用いて行うことができる。
(1)113A型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から356番目までに相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113A型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113A型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号33に示すとおりである。
まず、配列番号34に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで356番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで357番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号35および36に示される塩基配列をそれぞれ設計した。配列番号35および36に示される塩基配列は、それぞれ、配列番号34に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するためのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーの塩基配列である。配列番号35および36に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターを鋳型としてPCRを行った。2本の合成オリゴDNAがそれぞれ終濃度0.5μMとなるように、PCR反応液[0.05 units/uL KOD DNA Polymerase(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM塩酸マグネシウム、1/10体積の10倍濃縮PCR Buffer #2(東洋紡績社製、KOD DNA Polymeraseに添付)]を調製し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)を用いて、94℃にて4分間加熱した後、1サイクルが94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、74℃にて60秒間の3行程からなる反応を計25サイクル行なった。PCR反応終了後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約300bpのPCR産物を回収した。回収したPCR産物を制限酵素Bsp1407 I(宝酒造社製)および制限酵素Nru I(宝酒造社製)で消化処理した後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約300bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターに対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、113A型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Aが得られたことを確認した。
(2)113B型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から358番目までに相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113B型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。抗CD20ドメイン交換抗体113B型の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号37に示すとおりである。
まず、配列番号38に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで358番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで359番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号39に示される塩基配列を設計した。配列番号39に示される塩基配列は配列番号38に示される示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するためのセンスプライマーの塩基配列で、配列番号36で示される塩基配列からなるアンチセンスプライマーと対にして用いた。配列番号39および36に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターを鋳型としてPCRを行った。以後、本項の(1)と同様の手順で113B型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Bを作製した。
(3)113C型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から384番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113C型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113C型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号40に示すとおりである。
まず、配列番号41に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで384番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで385番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号42および43に示される塩基配列をそれぞれ設計した。配列番号42および43に示される塩基配列は、配列番号41に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するための合成オリゴDNAの塩基配列である。配列番号42に示される塩基配列の3’末端側と配列番号43に示される塩基配列の5’末端側は20bp程度が互いに相補配列的に重複しており、PCRの際にアニーリングが起こるよう設計した。配列番号42および43に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、PCRを行った。2本の合成オリゴDNAがそれぞれ終濃度0.2μMとなるように、PCR反応液[0.02 units/uL KOD+ DNA Polymerase(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM硫酸マグネシウム、1/10体積の10倍濃縮PCR Buffer (東洋紡績社製、KOD+ DNA Polymeraseに添付)]を調製し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)を用いて、94℃にて4分間加熱した後、1サイクルが94℃にて30秒間、50℃にて30秒間、68℃にて60秒間の3行程からなる反応を計25サイクル行なった。以後、本項の(1)と同様の手順で113C型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Cを作製した。
(4)113D型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から392番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113D型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113D型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号44に示すとおりである。
まず、配列番号45に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで392番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで393番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号46に示される塩基配列を設計した。配列番号46に示される塩基配列は配列番号45に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するための合成オリゴDNAの塩基配列で、配列番号43に示される塩基配列からなる合成オリゴDNAと対にして用いる。配列番号46に示される塩基配列の3’末端側と配列番号43に示される塩基配列の5’末端側は20bp程度が互いに重複しており、PCRの際にアニーリングが起こるよう設計した。配列番号46および43に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、PCRを行った。以後、本項の(3)と同様の手順で113D型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Dを作製した。
(5)113E型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から397番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113E型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113E型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号47に示すとおりである。
まず、配列番号48に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで397番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで398番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号49に示される塩基配列を設計した。配列番号49に示される塩基配列は、配列番号48に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するための合成オリゴDNAの塩基配列で、配列番号43に示される塩基配列からなる合成オリゴDNAと対にして用いる。配列番号49に示される塩基配列の3’末端側と配列番号43に示される塩基配列の5’末端側は20bp程度が互いに重複しており、PCRの際にアニーリングが起こるよう設計した。配列番号49および43に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、PCRを行った。以後、本項の(3)と同様の手順で113E型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Eを作製した。
(6)113F型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から422番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113F型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113F型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号50に示すとおりである。
まず、配列番号51に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで422番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで423番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。配列番号39および36に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、実施例1の第1項で作製したヒトIgG3抗CD20ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8γ3を鋳型としてPCRを行った。以後、本項の(1)と同様の手順で113F型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Fを作製した。
(7)113H型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から435番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113H型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113H型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号52に示すとおりである。
まず、配列番号53に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで435番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで436番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号54に示される塩基配列をそれぞれ設計した。配列番号54に示される塩基配列は、配列番号53に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するためのアンチセンスプライマーの塩基配列で、配列番号39で示される塩基配列からなるセンスプライマーと対にして用いる。配列番号39および54に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、実施例1の第1項で作製したヒトIgG3抗CD20ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8γ3を鋳型としてPCRを行った。以後、本項の(1)と同様の手順で113H型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Hを作製した。
(8)113G型抗CD20ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の重鎖定常領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、ヒトIgG3抗体のEUインデックスで231番目から434番目および436番目から447番目に相当するポリペプチドに置換されたドメイン交換抗体113G型をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図22)。113G型抗CD20ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号55に示すとおりである。
まず、配列番号56に示される塩基配列を設計した。該配列は、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクター上の、重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列中の5’末端側に位置する制限酵素認識配列Bsp1407 Iから重鎖CH3ドメインをコードする塩基配列の3’末端側に位置する制限酵素認識配列Nru Iまでの配列を元とし、該塩基配列にコードされるアミノ酸配列のうち、N末端側からEUインデックスで434番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで435番目のアミノ酸配列はヒトIgG1抗体由来のアミノ酸配列、EUインデックスで436番目から447番目までのアミノ酸配列はヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列とした。次に、配列番号57に示される塩基配列をそれぞれ設計した。配列番号57に示される塩基配列は配列番号56に示される塩基配列からなるDNA断片をPCRによって増幅するためのアンチセンスプライマーの塩基配列で、配列番号39で示される塩基配列からなるセンスプライマーと対にして用いる。配列番号39および56に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、実施例1の第1項で作製したヒトIgG3抗CD20ヒト型キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8γ3を鋳型としてPCRを行った。以後、本項の(1)と同様の手順で113G型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/113Gを作製した。
2.CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の動物細胞での安定発現
本実施例の第1項で作製したCH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターを、実施例1の第3項に記載のCHO/FUT8-/-を宿主細胞としてそれぞれ導入し、CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体を安定して生産する細胞を実施例1の第3項と同様の手順で作製した。
3.CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の精製
本実施例の第2項で得られたCH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体を発現する形質転換株のそれぞれを、実施例1の第5項と同様の手順で、培養、精製した。精製にはProsep-Gカラムを使用した。各改変抗体の、発現ベクター、宿主細胞、精製した抗体の名前、重鎖定常領域のアミノ酸配列の対応を表7に示した。
4.精製された各種抗CD20ドメイン交換抗体のSDS-PAGEによる精製度の評価
本実施例の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルの精製度を評価するため、実施例1の第6項と同様の手順でSDS-PAGEを行った。泳動度の比較対照として、実施例1の第5項で作製した精製サンプルCD20-IgG1(-F)および1133(-F)に対しても同様の操作を行った。
結果を図23に示した。本実施例の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルは、それぞれCD20-IgG1(-F)および1133(-F)と類似の泳動パターンを示した。各種抗CD20ドメイン交換抗体を構成するH鎖およびL鎖のアミノ酸配列から予想される分子量はそれぞれ類似しており、H鎖が約50キロダルトン(以下、kDaと表記する)、L鎖が約24kDaである。これらの分子量は、CD20-IgG1(-F)および1133(-F)のH鎖およびL鎖の分子量と類似しており、泳動パターンも類似していることから、各種抗CD20ドメイン交換抗体は目的のH鎖およびL鎖から構成されていることが確認された。
以上の結果より、本実施例の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプル中には、それぞれH鎖およびL鎖から構成される目的のIgG分子が十分な割合で含まれることが確認された。
CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体の活性評価
実施例6の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプルについて、各種活性比較を以下のようにして行った。
1.CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体のCDC活性の測定
実施例6の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプル、実施例1の第5項で得られた1133型抗CD20ドメイン交換抗体、および実施例3の第3項で得られた1131型抗CD20ドメイン交換抗体について、ヒトCD20遺伝子導入細胞株CD20/EL4-A[クリニカル・キャンサー・リサーチ(Clin. Cancer Res.), 11, 2327 (2005)]におけるin vitro CDC活性を測定した。反応は96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)内で行い、各反応ウェルには、5×104個の標的細胞を含み、各種濃度(0.1μg/mL〜30μg/mL)で抗CD20ドメイン交換抗体を含むヒト補体希釈培地を150μLずつ分注した。以下、実施例2の第2項と同様の手順で試験を行った。
結果を図24に示した。各種抗CD20ドメイン交換抗体はいずれも1131(-F)と同等、またはそれ以上のCDC活性を示し、特に113E(-F)、113F(-F)、113G(-F)、113H(-F)は1131(-F)よりも顕著に高いCDC活性を示した。
2.CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とをヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体のプロテインA結合活性の測定(ELISA法)
実施例6の第3項で得られた各種抗CD20ドメイン交換抗体精製サンプル、実施例1の第5項で得られたCD20-IgG1(-F)、CD20-IgG3(-F)、1133(-F)、実施例3の第3項で得られた1131(-F)および1113(-F)について、プロテインAとの結合活性を以下に述べる手順で測定した。
ヤギ抗ヒトカッパ鎖抗体(Sigma-Aldrich社製)をPBSで希釈して5μg/mLとし、96穴のELISA用プレート(グライナー社製)に、50μL/ウェルで分注し、室温で一時間静置して吸着させた。反応後、PBSで洗浄した後、1%BSA-PBSを100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA-PBSを除去した後、測定対象の抗体を各種濃度(0.01μg/mL〜10μg/mL)を50μL/ウェルで加え、室温で2時間反応させた。反応後、各ウェルをTween-PBSで洗浄した後、PBSで5000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識プロテインA溶液(Amersham Bioscience社製)を50μL/ウェルで加え、37℃で2時間反応させた。Tween-PBSで洗浄後、ABTS基質液を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415を測定した。
結果を図25に示した。まず、CD20-IgG1(-F)、CD20-IgG3(-F)、1133(-F)、1131(-F)および1113(-F)についてプロテインAへの結合活性を比較した(図25A)。図25Aに示されるとおり、CD20-IgG1(-F)および1131(-F)はともに濃度依存的なプロテインA結合活性を示し、その活性は同等であった。一方で、CD20-IgG3(-F)、1133(-F)および1113(-F)については、測定した濃度域(10μg/mL以下)ではプロテインA結合活性は見られなかった。
次に、各種抗CD20ドメイン交換抗体のプロテインA結合活性をCD20-IgG1(-F)および1133(-F)と比較した。図25Bに示されるとおり、1133(-F)および113H(-F)はプロテインA結合活性を示さなかったが、113A(-F)、113B(-F)、113C(-F)、113D(-F)、113E(-F)、113F(-F)および113G(-F)はIgG1と同等のプロテインA 結合活性を示した。
各種抗CD20ドメイン交換抗体におけるCDC活性とプロテインA結合活性の強度を表8に示した。
IgG1抗体のCH2およびCH3をIgG3のアミノ酸配列に置換した1133型ドメイン交換抗体では、CDC活性は上昇したが、プロテインA結合活性は喪失した。一方、IgG1抗体のCH2のみをIgG3のアミノ酸配列に置換した1131型抗体では、プロテインA結合活性は保持していたがが、CDC活性の増強の割合が低下した。本実施例で作製した、CH2ドメインの全部とCH3ドメインの一部とを、対応するヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列に置換した各種抗CD20ドメイン交換抗体は、113H(-F)を除いた全てがIgG1よりも高いCDC活性、およびプロテインA結合活性を有していた。さらに、CH3ドメイン全体に占めるヒトIgG3抗体由来のアミノ酸配列の割合が比較的多い113E(-F)、113F(-F)および113G(-F)は1131(-F)よりも高いCDC活性を示し、且つ、ヒトIgG1抗体と同等のプロテインA結合活性を有していた。ヒトIgG1抗体同様のプロテインA結合活性を有する抗CD20ドメイン交換抗体の中では、特に113F(-F)のCDC活性が高かった。
以上のことから、IgG1抗体のCH2ドメインの全部をヒトIgG3抗体由来のCH2ドメインに置換し、さらに、CH3ドメインの一部をヒトIgG3抗体由来のCH3ドメインに置換した抗体は、IgG1抗体のCH2ドメインのみをヒトIgG3抗体由来のCH2ドメインに置換した抗体よりも大幅にCDC活性が増強され、かつ、ヒトIgG1抗体同様のプロテインA結合活性を維持することが明らかとなった。
各種抗CD20ドメイン交換抗体の慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞に対するCDC活性評価
実施例1の第5項で得られたCD20-IgG1(-F)、実施例1の第5項で得られた1133(-F)、実施例3の第3項で得られた1131(-F)、実施例6の第3項で得られた113F(-F)について、いずれもCD20陽性CLL細胞株であるMEC-1(DSMZ:ACC497)、MEC-2(DSMZ:ACC500)およびEHEB(DSMZ:ACC67)に対するin vitro CDC活性を測定した。反応は96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)内で行い、各反応ウェルには、5×104個の標的細胞を含み、各種濃度(0.04μg/mL〜100μg/mL)の抗CD20抗体を含むヒト補体希釈培地を150μLずつ分注した。以下、実施例2の第2項と同様の手順で試験を行った。
結果を図26に示した。MEC-1(図26A)、MEC-2(図26B)およびEHEB(図26C)のいずれのCD20陽性CLL細胞株においても、1133(-F)、1131(-F)および113F(-F)はCD20-IgG1と比較してCDC活性が顕著に増強された。以上の結果は、これらの抗体を有効成分として含む医薬は、CLLの治療に有効であることを示唆している。
動物細胞を用いた、ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体の作製
1.ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体の発現ベクター構築
実施例4の1項で行った抗CD20ドメイン交換抗体1131(-F)と1113(-F)のCDC活性比較において、1131(-F)と1113(-F)はともにIgG1を上回るCDC活性を示したが、とくに1131(-F)は1113(-F)を上回るCDC活性を示し、CH2ドメインがIgG3であることがCDC活性増強に大きく寄与していることが明らかとなった。他の抗原に対する抗体においても、同様のCDC活性増強が見られることを確認するため、ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hについても、ヒトIgG1、1133型および1131型を作製し、CDC活性を比較した。
(1)1133型抗Campathドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトCampath抗原(CD52)を特異的に認識し、重鎖定常領域アミノ酸配列のうち、CH1およびヒンジがヒトIgG1のアミノ酸配列、CH2およびCH3がヒトIgG3のアミノ酸配列である1133型抗Campathドメイン交換抗体をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図27)。
まず、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のデータベースより、ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域(Accession:S79311)および軽鎖可変領域(Accession:S79307)のアミノ酸配列および遺伝子配列を入手した。ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号58に、遺伝子配列を配列番号59に、ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの軽鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号60に、遺伝子配列を配列番号61にそれぞれ示した。これらの配列情報を元に、配列番号62で示される、ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域と1133型重鎖定常領域配列からなる1133型抗Campathドメイン交換抗体重鎖のアミノ酸配列、および、配列番号63で示される、ヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの軽鎖可変領域とヒト抗体軽鎖定常領域配列からなる抗Campath抗体軽鎖のアミノ酸配列をそれぞれ設計した。
次に、配列番号64に示される塩基配列を設計した。該配列は、配列番号59に示されるヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域遺伝子配列の、5’末端側に制限酵素Not I認識配列を、3’末端側に制限酵素Apa I認識配列を付加した塩基配列である。また、配列番号64に示される塩基配列をもとに、配列番号65、66、67および68に示される塩基配列をそれぞれ設計した。これらの配列は、配列番号64に示される塩基配列を4分割した塩基配列で、且つ、隣り合う配列同士がおよそ20bpの重複を有すし、センス鎖とアンチセンス鎖が交互になるよう設計した。
実際には、配列番号65、66、67および68に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、これらを用いてPCRを行った。両端に位置する2本の合成オリゴDNAはそれぞれ終濃度0.5μMとなるように、内側に位置する2本の合成オリゴDNAはそれぞれ終濃度0.1μMとなるように、PCR反応液[0.02 units/uL KOD+ DNA Polymerase(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM硫酸マグネシウム、1/10体積の10倍濃縮PCR Buffer(東洋紡績社製、KOD DNA Polymeraseに添付)]を調製し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)を用いて、94℃にて4分間加熱した後、1サイクルが94℃にて30秒間、50℃にて30秒間、68℃にて60秒間の3行程からなる反応を計25サイクル行なった。PCR反応終了後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約480bpのPCR産物を回収した。回収したPCR産物を制限酵素Not I(宝酒造社製)および制限酵素Apa I(宝酒造社製)で消化処理した後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約450bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、実施例2の第2項で作製した1133型抗CD20ドメイン交換抗体の発現ベクターに対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、重鎖可変領域をヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域をコードする塩基配列に置換した1133型発現ベクターが得られたことを確認した。
次に、配列番号69に示される塩基配列を設計した。該配列は、配列番号61に示されるヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの軽鎖可変領域遺伝子配列の、5’末端側に制限酵素EcoR I認識配列を、3’末端側に制限酵素BsiW I認識配列を付加した塩基配列である。また、配列番号69に示される塩基配列をもとに、配列番号70、71、72および73に示される塩基配列をそれぞれ設計した。これらの配列は、配列番号69に示される塩基配列を4分割した塩基配列で、且つ、隣り合う配列同士がおよそ20bpの重複を有すし、センス鎖とアンチセンス鎖が交互になるよう設計した。これらの塩基配列で示される4本の合成オリゴDNAを用いてPCRを行うことによって、それぞれが隣り合う配列との重複配列を介して連結し、配列番号69に示される塩基配列を有するDNA断片を増幅させた。
実際には、配列番号70、71、72および73に示される塩基配列の合成オリゴDNAをそれぞれ作製し(ファスマック社製)、これらを用いてPCRを行った。両端に位置する2本の合成オリゴDNAはそれぞれ終濃度0.5μMとなるように、内側に位置する2本の合成オリゴDNAはそれぞれ終濃度0.1μMとなるように、PCR反応液[0.02 units/uL KOD+ DNA Polymerase(東洋紡績社製)、0.2mM dNTPs、1mM硫酸マグネシウム、1/10体積の10倍濃縮PCR Buffer(東洋紡績社製、KOD DNA Polymeraseに添付)]を調製し、DNAサーマルサイクラーGeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)を用いて、94℃にて4分間加熱した後、1サイクルが94℃にて30秒間、50℃にて30秒間、68℃にて60秒間の3行程からなる反応を計25サイクル行なった。PCR反応終了後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約420bpのPCR産物を回収した。回収したPCR産物を制限酵素EcoR I(宝酒造社製)および制限酵素BsiW I(東洋紡績社製)で消化処理した後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約400bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、本項で作製した、重鎖可変領域をヒト化抗Campath抗体Campath-1Hの重鎖可変領域をコードする塩基配列に置換した1133型発現ベクターに対して同様の制限酵素処理を行い、約13kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、1133型抗Campath抗体の発現ベクターpKTX93/Campath1H-1133が得られたことを確認した。
(2)ヒトIgG1抗Campath抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトCampath抗原(CD52)を特異的に認識し、重鎖定常領域がヒトIgG1のアミノ酸配列であるヒトIgG1抗Campath抗体をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図28)。
本項で作製した1133型抗Campath抗体の発現ベクターpKTX93/Campath1H-1133を、制限酵素EcoR I(宝酒造社製)および制限酵素Apa I(宝酒造社製)で消化処理した後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約3300bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、ヒトIgG1抗CD20キメラ抗体の発現ベクターpKANTEX2B8Pに対して同様の制限酵素処理を行い、約10kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、ヒトIgG1抗Campath抗体の発現ベクターpKTX93/Campath1H-IgG1が得られたことを確認した。
(3)1131型抗Campath抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
ヒトCampath抗原(CD52)を特異的に認識し、重鎖定常領域アミノ酸配列のうち、CH1およびヒンジがヒトIgG1のアミノ酸配列、CH2がヒトIgG3のアミノ酸配列、CH3がヒトIgG1のアミノ酸配列であるヒト1131型抗Campath抗体をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図29)。
本項で作製した1133型抗Campath抗体の発現ベクターpKTX93/Campath1H-1133を、制限酵素EcoR I(宝酒造社製)および制限酵素Apa I(宝酒造社製)で消化処理した後、該反応液をアガロースゲル電気泳動に供し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)を用いて、約3300bpのDNA断片を切り出し精製した。一方で、実施例3の第1項で作製した1131型抗CD20抗体の発現ベクターpKTX93/1131に対して同様の制限酵素処理を行い、約10kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、1131型抗Campathドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/Campath1H-1131が得られたことを確認した。
2.ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体の動物細胞での安定発現
本実施例の第1項で作製したヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体の発現ベクターを、実施例1の第3項に記載のCHO/FUT8-/-を宿主細胞としてそれぞれ導入し、ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体または1131型抗Campathドメイン交換抗体を安定して生産する細胞を実施例1の第3項と同様の手順でそれぞれ作製した。
3.ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体の精製
本実施例の第2項で得られたヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体または1131型抗Campathドメイン交換抗体を発現する形質転換株のそれぞれを、実施例1の第5項と同様の手順で、培養、精製した。各改変抗体の、発現ベクター、宿主細胞、精製した抗体の名前の対応を表9に示した。
4.精製された各種抗Campath抗体のSDS-PAGEによる精製度の評価
本実施例の第3項で得られた各種改変抗体精製サンプルの精製度を評価するため、実施例1の第6項と同様の手順でSDS-PAGEを行い、本実施例の第3項で得られた各種改変抗体精製サンプル中には、それぞれH鎖およびL鎖から構成される目的のIgG分子が十分な割合で含まれることを確認した。
ヒトIgG1抗Campath抗体、1133型抗Campathドメイン交換抗体および1131型抗Campathドメイン交換抗体のCDC活性測定
実施例9の第3項で得られた各種抗Campath抗体精製サンプルCampath1H-IgG1、Campath1H-1133およびCampath1H-1131について、Campath抗原陽性であるCLL細胞株MEC-1、MEC-2およびEHEBに対するin vitro CDC活性を測定した。実施例8と同様の手順で試験を行い、MEC-1、MEC-2およびEHEBのいずれの細胞株においても、Campath1H-1133およびCampath1H-1131はCampath1H-IgGよりも高いCDC活性を示した。
以上の結果により、ヒトIgG1とヒトIgG3のドメイン交換によるCDC活性の増強が抗Campath抗体においても有効であることが示された。
動物細胞を用いた、113F型抗GM2ドメイン交換抗体の作製
本実施例においては、ヒトIgG1抗GM2ヒト化抗体KM8969[キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol. Immunother.), 50, 275 (2001)]の重鎖定常領域を、実施例6、7および8記載の113F型の重鎖定常領域に置換した、113F型抗GM2ドメイン交換抗体を作製した。
1. 113F型抗GM2ドメイン交換抗体の遺伝子配列をコードする発現ベクターの構築
以下、抗体重鎖定常領域のアミノ酸配列中における各アミノ酸の位置を、KabatらによるEUインデックスに基づく番号で示す。
ヒトIgG1抗GM2抗体KM8969の重鎖定常領域において、231番目から422番目までのポリペプチドが、ヒトIgG3抗体重鎖定常領域の231番目から422番目までのポリペプチドに置換された113F型抗GM2ドメイン交換抗体をコードする発現ベクターを以下に示す手順で構築した(図30)。113F型抗GM2ドメイン交換抗体の重鎖定常領域のアミノ酸配列は配列番号50に示す通りである。
まず、実施例6第1項の(6)で作製した113F型抗CD20ドメイン交換抗体発現ベクターpKTX93/113Fより、制限酵素Apa I(宝酒造社製)および制限酵素Nru I(宝酒造社製)を用いて、113F型の重鎖定常領域をコードする約1kbpのDNA断片を切り出し精製した。同様に、特開平10-257893 記載の抗ガングリオシドGM2ヒト化抗体発現ベクターpKANTEX796HM2Lm-28No.1を、制限酵素処理を行い、約12kbpのDNA断片を切り出し精製した。これらの精製DNA断片を混合した後、Ligation High溶液(東洋紡績社製)を添加して連結反応を行い、該反応液を用いて大腸菌XL1-BLUE MRF’株(Stratagene社製)を形質転換した。得られた形質転換株のクローンよりそれぞれプラスミドDNAを調製し、Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit v3.1(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサーABI PRISM 3700 DNA Analyzerにより各プラスミドに挿入されたDNAの塩基配列を解析し、113F型抗GM2ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/GM2-113Fが得られたことを確認した。
2.113F型抗GM2ドメイン交換抗体の動物細胞での安定発現
本実施例の第1項で作製した113F型抗GM2ドメイン交換抗体の発現ベクターpKTX93/GM2-113Fまたは上記ヒトIgG1抗GM2抗体KM8969の発現ベクターを、実施例1の第3項に記載のCHO/FUT8-/-を宿主細胞として導入し、抗GM2抗体を安定して生産する細胞を実施例1の第3項と同様の手順で作製した。
3.各種抗GM2ドメイン交換抗体の精製
本実施例の第2項で得られた抗GM2抗体を発現する各種形質転換株のそれぞれを、実施例1の第5項と同様の手順で、培養し、精製した。ヒトIgG1抗GM2抗体および113F型抗GM2ドメイン交換抗体は、いずれもProsep-A(プロテインA結合樹脂:ミリポア社製)を充填したカラムを用いて精製可能であった。以下、精製されたヒトIgG1抗GM2抗体をGM2-IgG1(-F)、113F型抗GM2ドメイン交換抗体をGM2-113F(-F)と表記する。
4.113F型抗GM2ドメイン交換抗体精製サンプルのSDS-PAGEによる精製度の評価
本実施例の第3項で得られたヒトIgG1抗GM2抗体の精製サンプルGM2-IgG1(-F)および113F型抗GM2ドメイン交換抗体の精製サンプルGM2-113F(-F)の精製度を評価するため、実施例1の第6項と同様の手順でSDS-PAGEを行った。
その結果、GM2-IgG1(-F)とGM2-113F(-F)は類似の泳動パターンを示し、H鎖が約50キロダルトン(以下、kDaと表記する)、L鎖が約24kDa付近にバンドが認められることから、作製した113F型抗GM2ドメイン交換抗体は目的のH鎖およびL鎖から構成されていることが確認された。
以上の結果より、本実施例の第3項で得られた各種抗GM2抗体精製サンプル中には、それぞれH鎖およびL鎖から構成される目的のIgG分子が十分な割合で含まれることが確認された。
113F型抗GM2ドメイン交換抗体の活性評価
実施例1の第3項で得られた各種抗GM2ドメイン交換抗体精製サンプルについて、各種活性比較を以下のようにして行った。
1.113F型抗GM2ドメイン交換抗体のGM2陽性細胞に対するCDC活性の測定
実施例1の第3項で得られた各種抗GM2抗体精製サンプルについて、GM2陽性であるヒト神経芽細胞腫細胞株IMR-32細胞(ATCC:CCL-127)およびヒト肺癌細胞株NCI-N417細胞(ATCC:CRL-5809)に対するin vitro CDC活性を測定した。
反応は96ウェル平底プレート(住友ベークライト社製)内で行い、各反応ウェルには、5×104個の標的細胞および各種濃度の精製抗体サンプルを含む、ヒト補体希釈培地[RPMI1640培地(GIBCO BRL社製)を用いてヒト補体(SIGMA社製)を6倍に希釈したもの]を150μLずつ分注した。また、CDCが惹起されない場合の対照として抗GM2抗体を含まない反応ウェル(0%反応ウェル)を、CDCが惹起された場合の対照として標的細胞を含まない反応ウェル(100%反応ウェル)をそれぞれ用意した。37℃、5%CO2雰囲気下で2時間培養した後、各反応ウェルにWST-1試薬(ROCHE社製)を15μLずつ加え、37℃、5%CO2雰囲気下で4時間反応させた。反応終了後、各ウェルにおける吸光度OD450を測定し、各ウェルの吸光度より以下の式を用いてCDC活性(%)を算出した。
CDC活性(%)=100×{1-(反応ウェル吸光度-100%反応ウェル吸光度)/(0%反応ウェル吸光度-100%反応ウェル吸光度)}
結果を図31に示した。図31に示されるように、113F型抗GM2ドメイン交換抗体GM2-113F(-F)はヒトIgG1抗GM2抗体GM2-IgG1(-F)よりも高いCDC活性を示した。
2.113F型抗GM2ドメイン交換抗体のGM2陽性細胞に対するADCC活性の測定
実施例1の第3項で得られた113F型抗GM2ドメイン交換抗体精製サンプルについて、標的細胞としてGM2陽性であるIMR-32細胞に対するin vitro ADCC活性を以下のようにして測定した。測定には、Cytotox96キット(Promega社製)を用いた。
(1)ヒトエフェクター細胞溶液の調製
健常人末梢血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム (武田薬品社製) 0.2mLを加え穏やかに混合した。これをLymphoprep (第一化学薬品社製) を用いて使用説明書に従って単核球画分を分離した後、RPMI1640培地で1回、10%FBS-RPMI1640培地で1回遠心分離して洗浄し、これをエフェクター細胞とした。
(2)ADCC活性の測定
反応は96ウェル平底プレート(Falcon社製)内で行い、各反応ウェルには、2×105個のエフェクター細胞および1×104個のIMR-32細胞を含み、各種濃度で抗GM2抗体を含むRPMI1640培地を200μLずつ分注した。また、ADCC活性の算出に必要な対象ウェルとして、エフェクター細胞、標的細胞および抗体のすべてを含まない培地ウェル、エフェクター細胞のみを含むエフェクターウェル、標的細胞のみを含む標的ウェル、エフェクター細胞および標的細胞を含み抗体を含まないNKウェル、標的細胞のみを含み、反応開始後3時間15分後にキット添付のLysis-bufferを20μL添加した100%反応ウェル、エフェクター細胞、標的細胞および抗体のすべてを含まず、反応開始後3時間15分後にキット添付のLysis-bufferを20μL添加した100%反応対照ウェルをそれぞれ用意した。各反応ウェルを37℃、5%CO2雰囲気下で4時間反応させた後、反応プレートを遠心分離し、各ウェルより上清50μLを回収した。各ウェルの上清を96ウェルU字底プレート(住友ベークライト社製)のウェルにそれぞれ移し、各ウェルに発色基質溶液(キット添付の基質1本分をキット添付のassay-buffer 12mLに溶解させたもの)を50μLずつ添加した。37℃で30分間発色反応を行い、キット添付の反応停止液を各ウェル50μLずつ添加した後、OD450を測定し、各ウェルの吸光度より以下の式を用いてADCC活性(%)を算出した。

ADCC活性(%)= 100 ×( S - E - T )/( Max - T )
S = サンプル反応ウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
E = エフェクターウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
T = 標的ウェル吸光度 - 培地ウェル吸光度
Max = 100%反応ウェル - 100%反応対照ウェル

結果を図32に示した。図32に示されるように、いずれのGM2陽性細胞に対しても、113F型抗GM2ドメイン交換抗体GM2-113F(-F)およびIgG1抗GM2抗体GM2-IgG1(-F)は同等のADCC活性を示した。
113F型抗GM2ドメイン交換抗体GM2-113F(-F)およびIgG1抗GM2抗体GM2-IgG1(-F)のドメイン構造および各種活性を表10に示した。表中、活性の度合いを強い方から順に++、+で示した。
以上の結果より、本発明の抗GM2抗体組成物はCDC活性が増強されること、Fcに付加している糖鎖にフコースが結合していない本発明の抗体組成物は、Fcに付加している糖鎖にフコースが結合していないヒトIgG1抗GM2抗体組成物と同等の高いADCC活性を示すこと、および、113F型抗GM2ドメイン交換抗体組成物はプロテインA結合活性を有することが示された。
113F型抗GM2ドメイン交換抗体の各種癌細胞株に対する活性評価
1.113F型抗GM2ドメイン交換抗体の癌種別CDC活性評価
新たに、肺癌1株、神経芽細胞腫1株、グリオーマ2株および多発性骨髄腫2株のGM2陽性細胞株に対して、GM2-113F(-F)とGM2-IgG1(-F)のCDC活性を測定した。各種GM2陽性細胞株の名称、癌腫、入手先および品番を表11に示した。
CDC活性の測定は、実施例2の第1項に示した手順で行い、結果を図33に示した。図33に示したように、いずれの細胞株においてもGM2-113F(-F)はGM2-IgG1(-F)よりも高いCDC活性を示した。
以上の結果より、ヒトIgG1とヒトIgG3のドメイン交換を行った抗GM2ドメイン交換抗体は、肺癌、神経芽細胞腫、グリオーマおよび多発性骨髄腫などの、広範なGM2陽性腫瘍細胞株に対して、ヒトIgG1型の抗GM2抗体よりも高いCDC活性を示すことが明らかになった。
2.113F型抗GM2ドメイン交換抗体のADCC活性評価
ADCC活性の測定は、実施例2の第2項に示した手順で行い、結果を図34に示した。図34に示したように、いずれの抗体濃度においてもGM2-113F(-F)およびGM2-IgG1(-F)は、同等のADCC活性を示した。
この結果より、いずれの抗体濃度においても、Fcに付加する糖鎖中のフコースを除去した113F型抗GM2ドメイン交換抗体は、ヒトIgG1型の抗GM2抗体と同等のADCC活性を示すことが明らかになった。
本発明によれば、ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックスにおいてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、GM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物、該遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子または該抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA、該DNAを宿主細胞に導入して得られる形質転換体、該形質転換体を用いた遺伝子組換え抗体組成物の生産方法、ならびに該遺伝子組換え抗体組成物を有効成分として含有する医薬を提供することができる。
配列番号1−人工配列の説明:合成DNA
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
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配列番号16−人工配列の説明:合成ペプチド
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配列番号95−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号96−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号97−人工配列の説明:合成ペプチド

Claims (38)

  1. ヒトIgG1抗体において、Fc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、KabatらによるEUインデックス(以下、EUインデックス)においてヒトIgG3抗体の同じ位置に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチドに置換された、ヒトIgG1抗体およびヒトIgG3抗体よりも高い補体依存性細胞傷害活性を示す、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体組成物。
  2. さらにプロテインAにヒトIgG1抗体と同等の結合活性を有する請求項1記載の遺伝子組換え抗体組成物。
  3. 置換されるヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(j)のいずれかのポリペプチドより選ばれるポリペプチドである請求項1に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
    (a)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (d)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (e)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (f)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (g)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (h)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から434番目と436番目から447番目のアミノ酸配列とからなるポリペプチド
    (i)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から435番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (j)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から447番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
  4. 置換されるヒトIgG1抗体のFc領域中のCH2ドメインを含むポリペプチドが、以下の(a)〜(h)のいずれかのポリペプチドより選ばれる請求項2に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
    (a)EUインデックスにおいて、 IgG1抗体の231番目から340番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から356番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から358番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (d)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から384番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (e)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から392番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (f)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から397番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (g)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から422番目のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (h)EUインデックスにおいて、IgG1抗体の231番目から434番目と436番目から447番目のアミノ酸配列とからなるポリペプチド
  5. N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
  6. N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる遺伝子組換え抗体組成物であって、該抗体のFc領域に結合するN-グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物。
  7. それぞれ配列番号76、77および78で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖 (H鎖)可変領域 (V領域) の相補性決定領域 (CDR) 1、CDR2、CDR3、およびそれぞれ配列番号79、80および81で示されるアミノ酸配列からなる抗体軽鎖 (L鎖) V領域の相補性決定領域 (CDR) 1、CDR2、CDR3を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  8. 遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト化抗体である請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  9. 抗体分子の重鎖 (H鎖) 可変領域 (V領域) が、配列番号82で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号83で示されるアミノ酸配列を含む請求項8記載のヒト型キメラ抗体からなる抗体組成物。
  10. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  11. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  12. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖 (L鎖) V領域が、配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  13. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84、85、88、89、90、91、92、または配列番号84で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号85で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含み、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号86、87、93、94、95、96、97、または配列番号86で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列および配列番号87で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  14. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号88で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号93または94で示されるアミノ酸配列を含む請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  15. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号84で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号94または97で示されるアミノ酸配列を含む請求項8記載のヒト化抗体からなる抗体組成物。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子をコードするDNA。
  17. 請求項1〜15のいずれかに記載の遺伝子組換え抗体組成物に含まれる抗体分子の重鎖定常領域をコードするDNA。
  18. 請求項16記載のDNAを宿主細胞に導入して得られる、形質転換体。
  19. 宿主細胞が、N-グリコシド結合糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である細胞である、請求項18記載の形質転換体。
  20. 宿主細胞が、抗体分子をコードする遺伝子を導入したとき、N-グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物であって、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N-グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が20%以上である抗体組成物を生産する能力を有する細胞である、請求項18記載の形質転換体。
  21. フコースが結合していない糖鎖が、該フコースの1位がN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にα結合していない糖鎖である、請求項20記載の形質転換体。
  22. 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素、またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性が低下または失活するようにゲノムが改変された細胞である、請求項18記載の形質転換体。
  23. 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素、またはN-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノム上の対立遺伝子のすべてがノックアウトされた細胞である、請求項18記載の形質転換体。
  24. 細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素が、GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ(GMD)またはGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ(Fx)から選ばれる酵素である、請求項22または23に記載の形質転換体。
  25. GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求項24に記載の形質転換体。
    (a) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNA;
    (b) 配列番号18で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  26. GDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼが、以下の (a)〜(c) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項24記載の形質転換体。
    (a) 配列番号19で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b) 配列番号19で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
    (c) 配列番号19で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-マンノース 4,6-デヒドラターゼ活性を有する蛋白質。
  27. GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼが、以下の (a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求項24記載の形質転換体。
    (a) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNA;
    (b) 配列番号20で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  28. GDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼが、以下の (a)〜(c) からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項24記載の形質転換体。
    (a) 配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b) 配列番号21で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
    (c) 配列番号21で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP-4-ケト-6-デオキシ-D-マンノース-3,5-エピメラーゼ活性を有する蛋白質。
  29. N-グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα1,6-フコシルトランスフェラーゼである請求項22または23に記載の形質転換体。
  30. α1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)〜(d)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求項29に記載の形質転換体。
    (a) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNA;
    (b) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNA;
    (c) 配列番号22で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
    (d) 配列番号23で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  31. α1,6-フコシルトランスフェラーゼが、以下の (a)〜(f)からなる群から選ばれる蛋白質である、請求項29に記載の形質転換体。
    (a) 配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b) 配列番号25で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (c) 配列番号24で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (d) 配列番号25で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (e) 配列番号24で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (f) 配列番号25で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
  32. 宿主細胞が、下記の(a)〜(i)からなる群から選ばれる細胞である請求項18〜31のいずれか1項に記載の形質転換体。
    (a) チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞;
    (b) ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞;
    (c) マウスミエローマ細胞株NS0細胞;
    (d) マウスミエローマ細胞株SP2/0-Ag14細胞;
    (e) シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞;
    (f) 抗体を産生するハイブリドーマ細胞;
    (g) ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞;
    (h) 胚性幹細胞;
    (i) 受精卵細胞。
  33. 請求項18〜31のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体組成物を生成蓄積させ、該抗体組成物を採取し、精製することを特徴とする、遺伝子組換え抗体組成物の製造方法。
  34. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を有効成分として含有する医薬。
  35. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を有効成分とする癌に対する治療薬。
  36. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の遺伝子組換え抗体組成物を用いた癌の治療方法。
  37. 癌が、胸腺リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨肉腫、急性T細胞白血病、小細胞性肺癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、およびグリオブラストーマからまる群から選ばれるいずれか一つの癌である請求項35記載の治療薬。
  38. 癌が、胸腺リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、メラノーマ、骨肉腫、急性T細胞白血病、小細胞性肺癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、およびグリオブラストーマからなる群から選ばれる、いずれか一つの癌である請求項36記載の治療方法。
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