JPWO2005035578A1 - ガングリオシドgm2に特異的に結合する抗体組成物 - Google Patents

ガングリオシドgm2に特異的に結合する抗体組成物 Download PDF

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Abstract

エフェクター機能が増強された医薬品として有用な抗ガングリオシドGM2抗体組成物が求められている。ガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物、該抗体組成物を生産する形質転換体、該抗体組成物の製造方法および該抗体組成物を含有する医薬を提供する。

Description

本発明は、ガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する遺伝子組換え抗体分子からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物、該抗体組成物を生産する形質転換体、該抗体組成物の製造方法および該抗体組成物を含有する医薬に関する。
シアル酸を有する糖脂質の一種であるガングリオシドは、動物の細胞膜を構成しており、親水性側鎖である糖鎖と、疎水性側鎖であるスフィンゴシンおよび脂肪酸とから構成される分子である。ガングリオシドの種類と発現量は、細胞種、臓器種、動物種等によって異なる。さらに細胞が癌化する過程において、ガングリオシドの発現が量的および質的に変化することも知られている[Cancer Res.,45,2405,(1985)]。
例えば、悪性度が高いといわれている神経外胚葉系腫瘍である神経芽細胞腫、肺小細胞癌およびメラノーマでは、正常細胞にはほとんど認められないガングリオシドGD2、GD3、GM2等が発現していることが報告されており[Cancer Res.,45,2405,(1985)、J.Exp.Med.,155,1133,(1982)、J.Biol.Chem.,257,12752,(1982)、Cancer Res.,47,225,(1987)、Cancer Res.,47,1098,(1987)、Cancer Res.,45,2642,(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,80,5392,(1983)]、このような腫瘍細胞に特異的なガングリオシドに対する抗体はヒトの様々な癌の治療に有用であると考えられている。
一般にヒト以外の動物の抗体をヒトに投与すると、異物として認識され、副作用を惹起することや[J.Clin.Oncol.,2,881,(1984)、Blood,65,1349,(1985)、J.Natl.Cancer Inst.,80,932,(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82,1242,(1985)]、抗体の体内からの消失を速めることにより[Blood,65,1349,(1985)、J.Nucl.Med.,26,1011,(1985)、J.Natl.Cancer Inst.,80,937,(1988)]、抗体の治療効果を減じてしまうことが知られている[J.Immunol.,135,1530,(1985)、Cancer Res.,46,6489,(1986)]。
これらの問題点を解決するために遺伝子組換え技術を利用して、ヒト以外の動物の抗体をヒト型キメラ抗体、あるいはヒト型CDR移植抗体などのヒト化抗体にすることが試みられている[Nature,321,522,(1986)]。ヒト化抗体は、ヒト以外の動物の抗体に比べ、免疫原性が低下し[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,4220,(1989)]、治療効果が延長することが報告されている[Cancer Res.,56,1118,(1996)、Immunol.,85,668,(1995)]。
ガングリオシドGM2に対するヒト化抗体は、ヒトメラノーマの治療に有用であることが示されている[Lancet,1,786,(1989)]。ガングリオシドGM2に特異的に反応し、抗体依存性細胞傷害活性(以下、ADCC活性と記す)や補体依存性細胞傷害活性(以下、CDC活性と記す)等の細胞傷害活性を有するヒト化抗体としては、ヒトIgGクラスのヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体が取得されている[WO00/61739、WO02/31140]。
また、ヒト化抗体は、遺伝子組換え技術を利用して作製するため、様々な形態の分子として作製することができる。例えば、エフェクター機能の高いヒト化抗体を作製することができる[Cancer Res.,56,1118,(1996)]。
近年、Rituxanによる非ホジキン白血病患者の治療、Herceptinによる乳癌患者の治療において、該抗体医薬が患者のエフェクター細胞に強いADCC活性を惹起した場合には、より高い治療効果が得られている(Blood,99,754,2002;J.Clin.Oncol.,21,3940,2003;Clin.Cancer Res.,10,5650,2004)。
ヒトIgG1サブクラスの抗体は、そのFc領域および抗体レセプター(以下、FcγRと表記する)あるいは各種補体成分を介して、ADCC活性およびCDC活性を発現する。抗体とFcγRとの結合においては、抗体のヒンジ領域及びC領域の第2番目のドメイン(以下、Cγ2ドメインと表記する)に結合している糖鎖の重要性が示唆されている[Chem.Immunol.,65,88,(1997)]。
抗体IgG分子のFc領域に結合しているN−グリコシド結合複合型糖鎖の非還元末端へのガラクトースの付加、および還元末端のN−アセチルグルコサミンへのフコースの付加に関しては多様性があることが知られており[Biochemistry,36,130,(1997)]、特に糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンへのフコースの付加により、抗体のADCC活性が大きく低下することが報告されている[WO00/61739、J.Biol.Chem.,278,3466,(2003)]。
一般に、医薬品として利用される抗体組成物の多くは、遺伝子組換え技術を用いて作製され、動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞などを宿主細胞として製造されているが、発現させた抗体組成物の糖鎖構造は宿主細胞によって異なる。従って、最適な薬理活性が発揮できるような糖鎖が付加されている抗体組成物を適切に調製し提供することが質の高い医療を患者へ提供する上で欠かせない。
抗体生産細胞内のα1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)、GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)、GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ(FX)の活性を低下または欠失することにより、Fc領域を有する抗体分子からなる組成物中で、該組成物中に含まれるFc領域に結合する全N−グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合を増加させることができる[WO02/31140]。
本発明の目的は、ガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する遺伝子組換え抗体分子からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物、該抗体組成物を生産する形質転換体、該抗体組成物の製造方法および該抗体組成物を含有する医薬等を提供することにある。本発明の抗ガングリオシドGM2抗体組成物は高い細胞傷害活性を有するため、ガングリオシドGM2を発現した細胞を患者の体内から減少させる治療に有用である。高い細胞傷害活性を有する抗体を治療に用いることにより、化学療法、放射性同位元素標識体などと併用が不要となることから患者への副作用を軽減させることが期待される。また、患者への治療薬の投与量を減少させることで患者への負担の軽減などが期待される。
課題を解決するための手段
本発明は、以下の(1)〜(48)に関する。
(1) ガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する遺伝子組換え抗体分子からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物。
(2) N−グリコシド結合複合型糖鎖が、該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合していない糖鎖である、(1)に記載の抗体組成物。
(3) ガングリオシドGM2発現細胞に特異的に結合する(1)または(2)に記載の抗体組成物。
(4) ガングリオシドGM2発現細胞に対し細胞傷害活性を示す(1)〜(3)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(5) ガングリオシドGM2発現細胞に対し、非ヒト動物由来ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体よりも高い細胞傷害活性を示す(1)〜(4)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(6) 細胞傷害活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性である(4)または(5)に記載の抗体組成物。
(7) 細胞傷害活性が補体依存性細胞傷害(CDC)活性である(4)または(5)に記載の抗体組成物。
(8) それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(9) それぞれ配列番号17、18および19で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(10) それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3、およびそれぞれ配列番号17、18および19で示されるアミノ酸配列からなる抗体軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(11) 遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移稙抗体である(1)〜(10)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(12) ヒト型キメラ抗体がガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、(11)に記載の抗体組成物。
(13) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む(12)に記載の抗体組成物。
(14) 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む(12)に記載の抗体組成物。
(15) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む(12)〜(14)のいずれか1項に記載のヒト型キメラ抗体組成物。
(16) ヒト型CDR移植抗体がガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、(11)に記載の抗体組成物。
(17) ガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のフレームワーク領域(FR)を含む、(16)に記載の抗体組成物。
(18) ガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のフレームワーク領域(FR)、ならびにヒト抗体のH鎖定常領域(C領域)およびL鎖C領域を含む、(16)または(17)に記載の抗体組成物。
(19) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(20) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(21) 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(22) 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(23) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(19)または(21)に記載の抗体組成物。
(24) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)、(20)または(21)に記載の抗体組成物。
(25) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、(16)〜(18)、(20)または(22)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(26) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、それぞれ配列番号22、23、26、27、28、29および30で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む、(16)〜(20)、(23)〜(25)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(27) 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、それぞれ配列番号24、25、31、32、33、34および35で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む(16)〜(18)、(21)〜(25)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(28) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22、23、26、27、28、29、30で示されるから選ばれるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含み、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号24、25、31、32、33、34および35で示されるアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む(16)〜(27)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(29) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号26で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号31または32で示されるアミノ酸配列を含む(16)〜(19)、(21)、(23)、(26)〜(28)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(30) 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号32または35で示されるアミノ酸配列を含む(16)〜(19)、(21)〜(23)、(26)〜(28)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(31) ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体分子をコードするDNAを宿主細胞に導入して得られる、(1)〜(30)のいずれか1項に記載の抗体組成物を生産する形質転換体。
(32) 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素を失活するようにゲノムが改変された細胞である、(31)に記載の形質転換体。
(33) 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノム上の対立遺伝子のすべてがノックアウトされた細胞である、(31)に記載の形質転換体。
(34) 細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素が、GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)またはGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ(Fx)から選ばれる酵素である、(32)または(33)に記載の形質転換体。
(35) GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、(34)に記載の形質転換体。
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(36) GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる蛋白質である、(34)に記載の形質転換体。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質。
(37) GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、(34)に記載の形質転換体。
(a)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(38) GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる蛋白質である、(34)に記載の形質転換体。
(a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
(c)配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質。
(39) N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα1,6−フコシルトランスフェラーゼである(32)または(33)に記載の形質転換体。
(40) α1,6−フコシルトランスフェラーゼが、以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、(39)に記載の形質転換体。
(a)配列番号5で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA;
(c)配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
(d)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(41) α1,6−フコシルトランスフェラーゼが、以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる蛋白質である、(39)に記載の形質転換体。
(a)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(c)配列番号7で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(d)配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(e)配列番号7で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
(f)配列番号8で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
(42) 形質転換体がFERM BP−8470である(41)に記載の形質転換体。
(43) 宿主細胞が、下記の(a)〜(i)からなる群から選ばれる細胞である(31)〜(42)のいずれか1項に記載の形質転換体。
(a)チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞;
(b)ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞;
(c)マウスミエローマ細胞株NSO細胞;
(d)マウスミエローマ細胞株SP2/0−Ag14細胞;
(e)シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞;
(f)抗体を産生するハイブリドーマ細胞;
(g)ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞;
(h)胚性幹細胞;
(i)受精卵細胞。
(44) (31)〜(43)のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体組成物を生成蓄積させ、該抗体組成物を採取し、精製する、(1)〜(30)のいずれか1項に記載の抗体組成物の製造方法。
(45) (44)に記載の製造方法により得られる、(1)〜(32)のいずれか1項に記載の抗体組成物。
(46) (1)〜(30)および(45)のいずれか1項に記載の抗体組成物を有効成分として含有する医薬。
(47) (1)〜(30)および(45)のいずれか1項に記載の抗体組成物を有効成分として含有するガングリオシドGM2関連疾患の治療薬。
(48) ガングリオシドGM2関連疾患が癌である(47)に記載の治療薬。
以下、本発明を詳細に説明する。本願は、2003年10月9日に出願された日本国特許出願2003−350168号および2004年4月26日に出願された日本国特許出願2004−129431号の優先権を主張するものであり、当該特許出願の明細書及び図面に記載される内容を包含する。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する遺伝子組換え抗体分子からなる抗体組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物としては、該N−グリコシド結合複合型糖鎖が、該糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合していない糖鎖である抗体組成物があげられる。
抗体分子にはFc領域があり、それらの領域にはN−グリコシド結合糖鎖が結合する。従って、抗体1分子あたり2本の糖鎖が結合している。
N−グリコシド結合糖鎖としては、コア構造の非還元末端側にガラクトース−N−アセチルグルコサミン(以下、Gal−GlcNAcと表記する)の側鎖を並行して1ないしは複数本有し、更にGal−GlcNAcの非還元末端側にシアル酸、バイセクティングのN−アセチルグルコサミンなどを有するコンプレックス型(複合型)糖鎖をあげることができる。
本発明において、N−グルコシド結合複合型糖鎖としては、下記化学式1で示される。
化学式1
Figure 2005035578
本発明において、フコースが結合していない糖鎖としては、上記で示された化学式中、還元末端側のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合されていないものであればよく、非還元末端の糖鎖の構造はいかなるものでもよい。
したがって、本発明の抗体組成物としては、上記の糖鎖構造を有していれば、単一の糖鎖構造を有する抗体分子から構成されていてもよいし、複数の異なる糖鎖構造を有する抗体分子から構成されていてもよい。
本発明において、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していないとは、実質的にフコースが結合していないことをいう。実質的にフコースが結合していない抗体組成物とは、具体的には、後述の4に記載の糖鎖分析において、フコースが実質的に検出できない程度の抗体組成物である場合をいう。実質的に検出できない程度とは、測定の検出限界以下であることを意味する。糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない本発明の抗体組成物は、高いADCC活性を有する。
N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する抗体分子からなる組成物中に含まれる、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗体分子の割合は、抗体分子からヒドラジン分解や酵素消化などの公知の方法[生物化学実験法23―糖蛋白質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989)]を用い、糖鎖を遊離させ、遊離させた糖鎖を蛍光標識又は同位元素標識し、標識した糖鎖をクロマトグラフィー法にて分離することによって決定することができる。また、遊離させた糖鎖をHPAED−PAD法[J.Liq.Chromatogr.,,1577(1983)]によって分析することで決定することができる。
本発明の抗体組成物としては、ガングリオシドGM2発現細胞に対し、細胞傷害活性を有する抗体組成物が好ましい。
ガングリオシドGM2発現細胞としては、ガングリオシドGM2が発現している細胞であればいかなるものでもよい。
細胞傷害活性としては、補体依存性細胞傷害活性(以下、CDC活性と記す)あるいは抗体依存性細胞傷害活性(以下、ADCC活性と記す)などがあげられる。
本発明のガングリオシドGM2発現細胞に対し細胞傷害活性を有する抗体組成物は、該抗体組成物の有する細胞傷害活性によりガングリオシドGM2発現細胞を傷害することにより、該細胞が関与する肺小細胞癌、メラノーマ、神経芽細胞腫などの疾患を治療できる。
本発明の抗体組成物は、ヒト型キメラ抗体組成物、ヒト型CDR移植抗体組成物およびヒト抗体組成物、ならびにそれらの抗体断片組成物を包含する。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLとヒト抗体のCHおよびCLとからなる抗体をいう。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
本発明のヒト型キメラ抗体組成物は、ガングリオシドGM2に特異的に反応するヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
本発明のヒト型キメラ抗体組成物の製造に用いるヒト以外の動物の抗体としては、具体的には、特開平4−311385に記載のマウスモノクローナル抗体KM690、マウスモノクローナル抗体KM750およびマウスモノクローナル抗体KM796、Cancer Res.,46,4116,(1986)に記載のモノクローナル抗体MoAb5−3、Cancer Res.,48,6154,(1988)に記載のモノクローナル抗体MK1−16、モノクローナル抗体MK2−34、J.Biol.Chem.,264,12122,(1989)に記載のモノクローナル抗体DMAb−1などがあげられる。また、ヒト抗体ではあるが、IgMクラスであるProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,79,7629,(1982)に記載のモノクローナル抗体なども本発明のヒト型キメラ抗体組成物の製造に用いられる。
本発明において、ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合するヒト型キメラ抗体組成物としては、それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列からなるVHのCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号17、18および19で示されるアミノ酸配列からなるVLのCDR1、CDR2、CDR3、を含む抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物、抗体のVHが配列番号20で示されるアミノ酸配列および/またはVLが配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物、抗体のVHが配列番号20で示されるアミノ酸配列およびヒト抗体のCHがhIgG1サブクラスのアミノ酸配列からなり、抗体のVHが配列番号21で示されるアミノ酸配列およびヒト抗体のCLがκクラスのアミノ酸配列からなる抗ガングリオシドGM2キメラ抗体組成物などがあげられる。
本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合するヒト型キメラ抗体組成物が有するアミノ酸配列としては、具体的には、WO00/61739に記載のKM966が有するアミノ酸配列などがあげられる。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRをヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体を意味する。
本発明のヒト型CDR移植抗体組成物は、ガングリオシドGM2に特異的に反応するヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを任意のヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のH鎖C領域(以下、CHと表記する)およびL鎖C領域(以下、CLと表記する)をコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
本発明のヒト型CDR移植抗体組成物の製造に用いるヒト以外の動物の抗体としては、具体的には、特開平4−311385に記載のマウスモノクローナル抗体KM690、マウスモノクローナル抗体KM750およびマウスモノクローナル抗体KM796、Cancer Res.,46,4116,(1986)に記載のモノクローナル抗体MoAb5−3、Cancer Res.,48,6154,(1988)に記載のモノクローナル抗体MK1−16、モノクローナル抗体MK2−34、J.Biol.Chem.,264,12122,(1989)に記載のモノクローナル抗体DMAb−1などがあげられる。また、ヒト抗体ではあるが、IgMクラスであるProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,79,7629,(1982)に記載のモノクローナル抗体なども本発明のヒト型CDR移植抗体組成物の製造に用いられる。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のアミノ酸配列であれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services, 1991)などがあげられる。
本発明において、ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
本発明のヒト型CDR移植抗体組成物としては、ガングリオシドGM2に特異的に反応するヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを含むヒト型CDR移植抗体組成物があげられるが、好ましくは、それぞれ配列番号14、15、16で示されるアミノ酸配列からなる抗体VHのCDR1、CDR2、CDR3および/またはそれぞれ配列番号17、18、19で示されるアミノ酸配列からなるVLのCDR1、CDR2、CDR3を含むヒト型CDR移植抗体組成物または該抗体断片組成物などがあげられる。
これらのヒト型CDR移植抗体組成物なかでも、抗体のVHが配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVHが配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVLが配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVLが配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物が好ましく、抗体のVHが配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVHが配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVHが配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体のVLが配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、がより好ましい。
具体的には、抗体のVHがそれぞれ配列番号22、23、26、27、28、29、30で示されるアミノ酸配列から選ばれる1つのアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体、VLがそれぞれ配列番号24、25、31、32、33、34、35で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、抗体のVHがそれぞれ配列番号22、23、26、27、28、29、30で示されるアミノ酸配列から選ばれる1つのアミノ酸配列を含み、かつ、VLがそれぞれ配列番号24、25、31、32、33、34、35で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、より具体的には、VHが配列番号26で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号31または32で示されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、VHが配列番号22で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号32または35で示されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物があげられる。
本発明のヒト型CDR移植抗体組成物としては、VHが配列番号26で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号31で示されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物、VHが配列番号22で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、VLが配列番号32で示されるアミノ酸配列を含むヒト型CDR移植抗体組成物が最も好ましい。
本発明のヒト型CDR移植抗体組成物が有するアミノ酸配列の具体例としては、それぞれ特開平10−257893に記載の形質転換株KM8966(FERM BP−5105)が生産するKM8966、形質転換株KM8967(FERM BP−5106)が生産するKM8967、形質転換株KM8969(FERM BP−5527)が生産するKM8969、形質転換株KM8970(FERM BP−5528)が生産するKM8970が有するアミノ酸配列などがあげられる。
これらのアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、付加、置換または挿入され、かつガングリオシドGM2と特異的に結合する抗体または抗体断片も本発明の抗体組成物に包含される。
本発明の抗体組成物のアミノ酸配列において欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法等の周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
本発明の抗体組成物のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入または付加があることを意味し、欠失、置換、挿入または付加が同時に生じてもよく、置換、挿入または付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸残基としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
本発明の遺伝子組換え抗体断片組成物は、ガングリオシドGM2に特異的に結合する遺伝子組換え抗体の抗体断片からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体Fc領域の一部または全部を含んでいる抗体断片組成物である。
本発明の抗体断片組成物としては、Fab,Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、dsFvおよびCDRを含むペプチドなどの抗体断片組成物があげられるが、該抗体断片組成物に抗体のFc領域の一部または全部を含まない場合は、該抗体断片と、N−グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖を有する抗体Fc領域の一部または全部との融合蛋白質とすればよいと融合させるが、または該Fc領域の一部または全部を含む、蛋白質との融合蛋白質組成物とすればよい。
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFabは、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
F(ab’)2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のF(ab’)2は、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab’をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
Fab’は、上記F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のFab’は、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合するF(ab’)2組成物を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することができる。
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
本発明のscFvは、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
本発明のdiabodyは、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをPのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
dsFVは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Protein Engineering,7,697−704,1994)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
本発明のdsFvは、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体組成物のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
本発明の形質転換体としては、ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体分子をコードするDNAを宿主細胞に導入して得られる形質転換体であって、本発明の抗体組成物を生産する形質転換体であればいかなる形質転換体でも包含される。具体的な例としては、ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体分子をコードするDNAを以下の(a)または(b)などの宿主細胞に導入して得られる形質転換体があげられる。
(a)細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素が失活するようにゲノムが改変された細胞;
(b)N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素が失活するようにゲノムが改変された細胞。
上述において、酵素が失活するようにゲノムが改変されたとは、該酵素の発現を欠失させるように該酵素をコードする遺伝子の発現調節領域に変異を導入したり、または該酵素を失活させるように該酵素をコードする遺伝子のアミノ酸配列に変異を導入することをいう。変異を導入するとは、ゲノム上の塩基配列を欠失、置換、挿入および/または付加させるといった塩基配列の改変を行うことをいう。このように改変されたゲノム遺伝子の発現または活性が完全に抑制されることをゲノム遺伝子がノックアウトされるという。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素としては、GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)、GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ(Fx)などがあげられる。
GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼとしては、
(a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
などがあげられる。
GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼとしては、
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
などがあげられる。
GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼとしては、
(a)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA;
(b)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
などがあげられる。
GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼとしては、 (a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
(b)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
(c)配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
などがあげられる。
N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、α1,6−フコシルトランスフェラーゼがあげられる。
本発明において、α1,6−フコシルトランスフェラーゼとしては、下記(a)、(b)、(c)または(d)のDNAがコードする蛋白質、
(a)配列番号5で表される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA
(c)配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
(d)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAまたは、
(e)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(f)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質
(g)配列番号7で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(h)配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(i)配列番号7で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
(j)配列番号8で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質
等があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素のアミノ酸配列をコードするDNAとしては、配列番号1または3で表される塩基配列を有するDNA、配列番号1または3で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素活性を有する蛋白質をコードするDNAなどがあげられる。
α1,6−フコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードするDNAとしては、配列番号5または6で表される塩基配列を有するDNA、配列番号5または6で表される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAなどがあげられる。
本発明において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば配列番号1、3、5または6で表される塩基配列からなるDNAなどのDNAまたはその一部の断片をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1Mの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,1987−1997、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition, Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、配列番号1、3、5または6で表される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
本発明において、配列番号2または4で表されるアミノ酸配列において1以上アミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素活性を有する蛋白質、または配列番号7または8で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,1987−1997、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば、配列番号1、3、5または6で表される塩基配列を有するDNAに部位特異的変異を導入することにより取得することができる。欠失、置換、挿入および/または付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異導入法等の周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数であり、例えば、1〜数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
また、本発明において配列番号2、4、7または8であらわされるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性、GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性、またはα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質としては、具体的には、それぞれ配列番号2、4、7または8で表されるアミノ酸配列とBLAST〔J.Mol.Biol.,215,403(1990)〕やFASTA〔Methods in Enzymology,183,63(1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上の相同性を有する蛋白質などをあげることができる。
また、本発明に用いられる宿主細胞、すなわち細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性が欠失した宿主細胞を取得する方法としては、目的とする酵素を失活させることができる手法であれば、いずれの手法でも用いることができる。上述の酵素を失活させる手法としては、
(a)酵素の遺伝子を標的した遺伝子破壊の手法;
(b)酵素の遺伝子のドミナントネガティブ体を導入する手法;
(c)酵素についての突然変異を導入する手法;
(d)酵素の遺伝子の転写又は翻訳を抑制する手法;
(e)N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法などがあげられる。
N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンとしては、該糖鎖構造を認識できるレクチンであれば、いずれのレクチンでも用いることができる。その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(Lens Culinaris由来のLentil Agglutinin)、エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Vicia faba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuria aurantia由来のLectin)等を挙げることができる。
レクチンに耐性な細胞とは、レクチンを有効濃度与えたときにも、生育が阻害されない細胞を言う。有効濃度とは、ゲノム遺伝子が改変される以前の細胞(以下、親株とも称す)が正常に生育できない濃度以上であり、好ましくは、ゲノム遺伝子が改変される以前の細胞が成育できない濃度と同濃度、より好ましくは2〜5倍、さらに好ましくは10倍、最も好ましくは20倍以上である。
生育が阻害されないレクチンの有効濃度は、細胞株に応じて適宜定めればよく、通常のレクチンの有効濃度は10μg/mL〜10mg/mL、好ましくは0.5mg/mL〜2mg/mLである。
本発明の抗体組成物を生産させる宿主細胞としては、本発明の抗体組成物を発現できる上記宿主細胞であればいかなる細胞も包含する。例えば、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞などがあげられる。これらの細胞としては、後述1に記載のものがあげられ、特に、動物細胞の中でも、チャイニーズハ厶スター卵巣組織由来のCHO細胞、ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞、マウスミエローマ細胞株NSO細胞、マウスミエローマ細胞株SP2/0−Ag14細胞、シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞、抗体を産生するハイブリドーマ細胞、ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞などが好ましい。
本発明の形質転換体としては、具体的には、本発明の抗ガングリオシドGM2抗体の遺伝子を組み込んだチャイニーズハムスター卵巣組織由来のCHO細胞株CHO/DG44細胞由来の形質転換株Ms705/GM2があげられる。なお、CHO細胞株CHO/DG44細胞由来の形質転換株Ms705/GM2は、平成15年9月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM BP−8470として寄託されている。
以下に、本発明の抗体組成物を生産する細胞の作製方法、本発明の抗体組成物の製造方法および本発明の抗体組成物の分析方法ならびに利用方法について説明する。
1.本発明の抗体組成物を生産する細胞の作製
本発明の抗体組成物を生産する細胞(以下、本発明の細胞と称する)は、以下に述べる手法により、本発明の抗体組成物を生産するために用いる宿主細胞を作製し、該宿主細胞に後述2に記載の方法により、抗ガングリオシドGM2抗体をコードする遺伝子を導入することにより、作製することができる。
(1)酵素の遺伝子を標的とした遺伝子破壊の手法
本発明の抗体組成物を生産する細胞(以下、本発明の細胞と称す)の作製のために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、遺伝子破壊の方法を用いることにより作製することができる。細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(以下、GMDと表記する)、GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ(以下、Fxと表記する)などがあげられる。N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ、α−L−フコシダーゼなどがあげられる。
ここでいう遺伝子とは、DNAまたはRNAを含む。
遺伝子破壊の方法としては、標的とする酵素の遺伝子を破壊することができる方法であればいかなる方法も包含される。その例としては、アンチセンス法、リボザイム法、相同組換え法、RNA−DNAオリゴヌクレオチド法(以下、RDO法と表記する)、RNAインターフェアレンス法(以下、RNAi法と表記する)、レトロウイルスを用いた方法、トランスポゾンを用いた方法等があげられる。以下これらを具体的に説明する。
(a)アンチセンス法又はリボザイム法による本発明の細胞を作製するための宿主細胞の作製
本発明の細胞の作製のために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素遺伝子を標的とし、細胞工学,12,239(1993)、BIO/TECHNOLOGY,17,1097(1999)、Hum.Mol.Genet.,,1083(1995)、細胞工学,13,255(1994)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,96,1886(1999)等に記載されたアンチセンス法またはリボザイム法を用いて、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAあるいはゲノムDNAを調製する。
調製したcDNAあるいはゲノムDNAの塩基配列を決定する。
決定したDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNA部分、非翻訳領域の部分あるいはイントロン部分を含む適当な長さのアンチセンス遺伝子またはリボザイムを設計する。
該アンチセンス遺伝子、またはリボザイムを細胞内で発現させるために、調製したDNAの断片、または全長を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択することにより、本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞を得ることができる。また、細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造または産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択することにより、本発明の抗体組成物を作製のために用いる宿主細胞を得ることもできる。
本発明の抗体組成物を作製するために用いられる宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製が可能であるか、ないしは染色体中への組み込みが可能で、設計したアンチセンス遺伝子、またはリボザイムを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、後述2に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入方法としては、後述2に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、以下の方法があげられる。
形質転換体を選択する方法
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素が失活した細胞を選択する方法としては、文献[新生化学実験講座3−糖質I,糖蛋白質(東京化学同人)日本生化学会編(1988)]、文献[細胞工学,別冊,実験プロトコールシリーズ,グライコバイオロジー実験プロトコール,糖蛋白質・糖脂質・プロテオグリカン(秀潤社製)谷口直之・鈴木明美・古川清・菅原一幸監修(1996)]、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載された生化学的な方法あるいは遺伝子工学的な方法などを用いて、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法があげられる。生化学的な方法としては、例えば、酵素特異的な基質を用いて酵素活性を評価する方法があげられる。遺伝子工学的な方法としては、例えば、酵素遺伝子のmRNA量を測定するノーザン解析やRT−PCR法等があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述1の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAを調製する方法としては、例えば、下記に記載の方法があげられる。
cDNAの調製方法
各種宿主細胞の組織又は細胞から全RNA又はmRNAを調製する。
調製した全RNA又はmRNAからcDNAライブラリーを作製する。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のアミノ酸配列に基づいて、デジェネレイティブプライマーを作製し、作製したcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法で細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得する。
取得した遺伝子断片をプローブとして用い、cDNAライブラリーをスクリーニングし、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAを取得することができる。
ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞のmRNAは市販のもの(例えばClontech社)を用いてもよいし、以下のようにしてヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞から調製してもよい。
ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞から全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymology,154,3(1987)]、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム(AGPC)法[Analytical Biochemistry,162,158(1987);実験医学、9,1937(1991)]などがあげられる。
また、全RNAからpoly(A)+RNAとしてmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]等があげられる。
さらに、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社)などの市販のキットを用いることによりmRNAを調製することができる。
調製したヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞mRNAからcDNAライブラリーを作製する。cDNAライブラリー作製法としては、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、A Laboratory Manual,2 nd Ed.(1989)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばSuper Script Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(Life Technologies社)、ZAP−cDNA Synthesis Kit(STRATAGENE社)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーを作製するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであれば、ファージベクター、プラスミドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、ZAP Express[STRATAGENE社、Strategies,,58(1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research,17,9494(1989)]、λZAP II(STRATAGENE社)、λgt10、λgt11[DNA cloning,A Practical Approach,1,49(1985)]、λTriplEx(Clontech社)、λExCell(Pharmacia社)、pT7T318U(Pharmacia社)、pcD2[Mol.Cell.Biol.,,280(1983)]およびpUC18[Gene,33,103(1985)]等をあげることができる。
cDNAライブラリーを作製するための宿主微生物としては、微生物であればいずれでも用いることができるが、好ましくは大腸菌が用いられる。具体的には、Escherichia coli XL1−Blue MRF’[STRATAGENE社、Strategies,,81(1992)]、Escherichia coli C600[Genetics,39,440(1954)]、Escherichia coli Y1088[Science,222,778(1983)]、Escherichia coli Y1090[Science,222,778(1983)]、Escherichia coli NM522[J.Mol.Biol.,166,1(1983)]、Escherichia coli K802[J.Mol.Biol.,16,118(1966)]およびEscherichia coli JM105[Gene,38,275(1985)]等が用いられる。
cDNAライブラリーは、そのまま以降の解析に用いてもよいが、不完全長cDNAの割合を下げて、完全長cDNAを効率よく取得するために、菅野らが開発したオリゴキャップ法[Gene,138,171(1994)、Gene,200,149(1997)、蛋白質核酸酵素,41,603(1996);実験医学,11,2491(1993);cDNAクローニング(羊土社)(1996);遺伝子ライブラリーの作製法(羊土社)(1994)]を用いて調製して以下の解析に用いてもよい。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のアミノ酸配列に基づいて、該アミノ酸配列をコードすることが予測される塩基配列の5’末端および3’末端の塩基配列に特異的なデジェネレイティブプライマーを作製し、作製したcDNAライブラリーを鋳型としてPCR法[PCR Protocols,Academic Press(1990)]を用いてDNAの増幅を行うことにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得することができる。
取得した遺伝子断片が細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAであることは、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74,5463(1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、確認することができる。
該遺伝子断片をプローブとして、ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーからコロニーハイブリダイゼーションやプラークハイブリダイゼーション[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]等を用いて、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のDNAを取得することができる。
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子断片を取得するために用いたプライマーを使用し、ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞に含まれるmRNAから合成したcDNAあるいはcDNAライブラリーを鋳型として、PCR法を用いて増幅することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを取得することもできる。
取得した細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74,5463(1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
決定したcDNAの塩基配列をもとに、BLAST等の相同性検索プログラムを用いて、Genbank、EMBLおよびDDBJなどの塩基配列データベースを検索することにより、取得したDNAがデータベース中の遺伝子の中で細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードしている遺伝子であることを確認することもできる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素をコードする遺伝子の塩基配列としては、例えば、配列番号1または3に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする遺伝子の塩基配列としては、例えば、配列番号5または6に記載の塩基配列があげられる。
決定されたDNAの塩基配列に基づいて、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機model 392(Perkin Elmer社製)等のDNA合成機で化学合成することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを取得することもできる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、例えば、以下に記載の方法があげられる。
ゲノムDNAの調製方法
ゲノムDNAを調製する方法としては、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載された公知の方法があげられる。また、ゲノムDNAライブラリースクリーニングシステム(Genome Systems社)やUniversal Genome Walker TM Kits(CLONTECH社)などを用いることにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを取得することもできる。
取得した細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするDNAの塩基配列は、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばサンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74,5463(1977)]あるいはABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
決定したゲノムDNAの塩基配列をもとに、BLAST等の相同性検索プログラムを用いて、Genbank EMBLおよびDDBJなどの塩基配列データベースを検索することにより、取得したDNAがデータベース中の遺伝子の中で細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードしている遺伝子であることを確認することもできる。
決定されたDNAの塩基配列に基づいて、フォスフォアミダイト法を利用したDNA合成機model 392(Perkin Elmer社製)等のDNA合成機で化学合成することにより、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを取得することもできる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列としては、例えば配列番号9、10、11および12に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列としては、例えば配列番号13に記載の塩基配列があげられる。
また、発現ベクターを用いず、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の塩基配列に基づいて設計したアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイムを、直接宿主細胞に導入することで、本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞を得ることもできる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはリボザイ厶は、公知の方法またはDNA合成機により調製することができる。具体的には、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードするcDNAおよびゲノムDNAの塩基配列のうち、連続した5〜150塩基、好ましくは5〜60塩基、より好ましくは10〜40塩基に相当する配列を有するオリゴヌクレオチドの配列情報に基づき、該オリゴヌクレオチドと相補的な配列に相当するオリゴヌクレオチド(アンチセンスオリゴヌクレオチド)または該オリゴヌクレオチドの配列を含むリボザイムを合成して調製することができる。
オリゴヌクレオチドとしては、オリゴRNAおよび該オリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)等があげられる。
オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等があげられる[細胞工学,16,1463(1997)]。
(b)相同組換え法による本発明の抗体組成物を作製するための宿主細胞の作製
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、染色体上の標的遺伝子を相同組換え法を用いて染色体を改変することによって作製することができる。
染色体上の標的遺伝子の改変は、Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994)、Gene Targeting,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1993)、バイオマニュアルシリーズ8ジーンターゲッティング,ES細胞を用いた変異マウスの作製,羊土社(1995)(以下、「ES細胞を用いた変異マウスの作製」と略す)等に記載の方法を用い、例えば以下のように行うことができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する。
ゲノムDNAの塩基配列にも基づき、改変する標的遺伝子(例えば、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の構造遺伝子、あるいはプロモーター遺伝子)を相同組換えするためのターゲットベクターを作製する。
作製したターゲットベクターを宿主細胞に導入し、染色体上の標的遺伝子とターゲットベクターの間で相同組換えを起こした細胞を選択することにより、本発明の細胞の作製のために用いる宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、上記1の(1)の(a)に記載のゲノムDNAの調製方法などがあげられる。
上記の方法で得られる細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列として、例えば配列番号9、10、11および12に記載の塩基配列があげられる。
上記の方法で得られるN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAの塩基配列として、例えば配列番号13に記載の塩基配列があげられる。
染色体上の標的遺伝子を相同組換えするためのターゲットベクターは、Gene Targeting,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1993)、バイオマニュアルシリーズ8ジーンターゲッティング,ES細胞を用いた変異マウスの作製(羊土社)(1995)等に記載の方法にしたがって作製することができる。ターゲットベクターは、置換型、挿入型いずれでも用いることができる。
各種宿主細胞へのターゲットベクターの導入には、後述3に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
相同組換え体を効率的に選別する方法として、例えば、Gene Targeting,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press(1993)、バイオマニュアルシリーズ8 ジーンターゲッティング,ES細胞を用いた変異マウスの作製(羊土社)(1995)等に記載のポジティブ選択、プロモーター選択、ネガティブ選択、ポリA選択などの方法を用いることができる。選別した細胞株の中から目的とする相同組換え体を選択する方法としては、ゲノムDNAに対するサザンハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]やPCR法[PCR Protocols,Academic Press(1990)]等があげられる。
(c)RDO方法による本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞の作製
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、RDO法を用い、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAあるいはゲノムDNAを上記1の(1)の(a)に記載の方法を用い、調製する。
調製したcDNAあるいはゲノムDNAの塩基配列を決定する。
決定したDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする部分、非翻訳領域の部分あるいはイントロン部分を含む適当な長さのRDOのコンストラクトを設計し合成する。
合成したRDOを宿主細胞に導入し、標的とした酵素、すなわち細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素に変異が生じた形質転換体を選択することにより、本発明の宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。
各種宿主細胞へのRDOの導入には、後述2に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを調製する方法としては、例えば、上記1の(1)の(a)に記載のcDNAの調製方法などがあげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノムDNAを調製する方法としては、例えば、上記1の(1)の(b)に記載のゲノムDNAの調製方法などがあげられる。
DNAの塩基配列は、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)等のプラスミドにサブクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,74,5463(1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、ABI PRISM377DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、確認することができる。
RDOは、常法またはDNA合成機を用いることにより調製することができる。
RDOを宿主細胞に導入し、標的とした酵素、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子に変異が生じた細胞を選択する方法としては、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載された染色体上の遺伝子の変異を直接検出する方法があげられる。
また、前記1の(1)の(a)に記載の、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法、後述1の(5)に記載の細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法、あるいは、後述4または後述5に記載の産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法も用いることができる。
RDOは、Science,273,1386(1996);Nature Medicine,4,285(1998);Hepatology,25,1462(1997);Gene Therapy,5,1960(1999);J.Mol.Med.,75,829(1997);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,8774(1999);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,8768(1999);Nuc.Acids.Res.),27,1323(1999);Invest.Dematol.,111,1172(1998);Nature Biotech.),16,1343(1998);Nature Biotech.,18,43(2000);Nature Biotech.,18,555(2000)等の記載に従って設計することができる。
(d)RNAi法による本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞の作製
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、RNAi法を用い、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを上記1の(1)の(a)に記載の方法を用い、cDNAを調製する。
調製したcDNAの塩基配列を決定する。
決定したcDNAの配列に基づき、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素をコードする部分あるいは非翻訳領域の部分を含む適当な長さのRNAi遺伝子を設計する。
該RNAi遺伝子を細胞内で発現させるために、調製したcDNAの断片、または全長を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞表面上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に形質転換体を選択することで、本発明の細胞を作製するために用いる宿主細胞を得ることができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体への組み込みが可能で、設計したRNAi遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、後述2に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入には、後述2に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、本項1の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
また、発現ベクターを用いず、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のcDNAを調製する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載されたcDNAの調製方法などがあげられる。
また、発現ベクターを用いず、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の塩基配列に基づいて設計したRNAi遺伝子を、直接宿主細胞に導入することで、本発明の細胞を作製するために用いる宿主細胞を得ることもできる。
RNAi遺伝子は、常法またはDNA合成機を用いることにより調製することができる。 RNAi遺伝子のコンストラクトは、[Nature,391,806(1998);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95,15502(1998);Nature,395,854(1998);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,5049(1999);Cell,95,1017(1998);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,1451(1999);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95,13959(1998);Nature Cell Biol.,2,70(2000)]等の記載に従って設計することができる。
(e)トランスポゾンを用いた方法による、本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞の作製
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、Nature Genet.,25,35(2000)等に記載のトランスポゾンのシステムを用い、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に突然変異体を選択することで、本発明の細胞を作製するために用いる宿主細胞を作製することができる。
トランスポゾンのシステ厶とは、外来遺伝子をランダムに染色体上に挿入させることで突然変異を誘発させるシステムであり、通常、トランスポゾンに挿まれた外来遺伝子に突然変異を誘発させるベクターとして用い、この遺伝子を染色体上にランダムに挿入させるためのトランスポゼースの発現ベクターを同時に細胞の中に導入する。
トランスポゼースは、用いるトランスポゾンの配列に適したものであればいかなるものも用いることができる。
外来遺伝子としては、宿主細胞のDNAに変異を誘起するものであればいかなる遺伝子も用いることができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。各種宿主細胞への遺伝子の導入には、後述2に記載の各種宿主細胞に適した組み換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、本項1の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として突然変異体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(2)酵素の遺伝子のドミナントネガティブ体を導入する手法
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、該酵素のドミナントネガティブ体を導入する手法を用いることにより作製することができる。細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ、α−L−フコシダーゼなどがあげられる。
これらの酵素は、基質特異性を有したある特定の反応を触媒する酵素であり、このような基質特異性を有した触媒作用を有する酵素の活性中心を破壊することで、これらの酵素のドミナントネガティブ体を作製することができる。標的とする酵素のうち、GMDを例として、そのドミナントネガティブ体に作製について具体的に以下に述べる。
大腸菌由来のGMDの立体構造を解析した結果、4つのアミノ酸(133番目のトレオニン、135番目のグルタミン酸、157番目のチロシン、161番目のリシン)が酵素活性に重要な機能を担っていることが明らかにされている(Structure,8,2,2000)。すなわち、立体構造の情報にもとづきこれら4つのアミノ酸を異なる他のアミノ酸に置換した変異体を作製した結果、いずれの変異体においても有意に酵素活性が低下していたことが示されている。一方、GMDの補酵素NADPや基質であるGDP−マンノースとの結合能に関しては、いずれの変異体においてもほとんど変化が観察されていない。従って、GMDの酵素活性を担うこれら4つのアミノ酸を置換することによりドミナントネガティブ体を作製することができる。大腸菌由来のGMDのドミナントネガティブ体の作製の結果に基づき、アミノ酸配列情報をもとにした相同性比較や立体構造予測を行うことにより、例えば、CHO細胞由来のGMD(配列番号2)では、155番目のトレオニン、157番目のグルタミン酸、179番目のチロシン、183番目のリシンを他のアミノ酸に置換することによりドミナントネガティブ体を作製することができる。このようなアミノ酸置換を導入した遺伝子の作製は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載された部位特異的変異導入法を用いて行うことができる。
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、上述のように作製した標的酵素のドミナントネガティブ体をコードする遺伝子(以下、ドミナントネガティブ体遺伝子と略記する)を用い、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994)等に記載された遺伝子導入の方法に従って、例えば、以下のように作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のドミナントネガティブ体遺伝子を調製する。
調製したドミナントネガティブ体遺伝子の全長DNAをもとにして、必要に応じて、該蛋白質をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。
該DNA断片、または全長DNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、形質転換体を得る。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性、あるいは産生抗体分子または細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標に形質転換体を選択することで、本発明の細胞を作製するために用いる宿主細胞を作製することができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、標的とする細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を有しているものであればいずれも用いることができる。具体的には、後述2に記載の宿主細胞があげられる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組み込みが可能で、目的とするドミナントネガティブ体をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。具体的には、後述2に記載の発現ベクターがあげられる。
各種宿主細胞への遺伝子の導入には、後述2に記載の各種宿主細胞に適した組換えベクターの導入方法を用いることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述1(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述1の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を指標として形質転換体を選択する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(3)酵素に突然変異を導入する手法
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子に突然変異を導入し、該酵素に突然変異を生じた所望の細胞株を選択する手法を用いることにより作製できる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ、α−L−フコシダーゼなどがあげられる。
酵素に突然変異を導入する方法としては、1)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を指標として所望の細胞株を選択する方法、2)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、生産抗体分子の糖鎖構造を指標として所望の細胞株を選択する方法、3)突然変異誘発処理で親株を処理した突然変異体あるいは自然発生的に生じた突然変異体から、該細胞の細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を指標として所望の細胞株を選択する方法などがあげられる。
突然変異誘発処理としては、親株の細胞のDNAに点突然変異、欠失あるいはフレームシフト突然変異を誘起するものであればいかなる処理も用いることができる。
具体的には、エチルニトロソウレア、ニトロソグアニジン、ベンゾピレン、アクリジン色素による処理、放射線の照射などがあげられる。また、種々のアルキル化剤や発癌物質も突然変異誘発物質として用いることができる。突然変異誘発物質を細胞に作用させる方法としては、例えば、組織培養の技術第三版(朝倉書店)日本組織培養学会編(1996)、Nature Genet.,24,314,(2000)等に記載の方法を挙げることができる。
自然発生的に生じた突然変異体としては、特別な突然変異誘発処理を施さないで、通常の細胞培養の条件で継代培養を続けることによって自然発生的に生じる突然変異体を挙げることができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、本項の1の(5)に記載の方法があげられる。
(4)酵素の遺伝子の転写又は翻訳を抑制する手法
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の遺伝子を標的とし、アンチセンスRNA/DNA技術[バイオサイエンスとインダストリー,50,322(1992)、化学,46,681(1991)、Biotechnology,9,358(1992)、Trends in Biotechnology,10,87(1992)、Trends in Biotechnology,10,152(1992)、細胞工学,16,1463(1997)]、トリプル・ヘリックス技術[Trends in Biotechnology,10,132(1992)]等を用い、標的とする遺伝子の転写または翻訳を抑制することで作製することができる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素としては、具体的には、GMD、Fxなどがあげられる。N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素としては、具体的には、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ、α−L−フコシダーゼなどがあげられる。
細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素の活性またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素の活性を測定する方法としては、例えば、本項1の(1)の(a)に記載の方法があげられる。
細胞膜上の糖蛋白質の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、本項1の(5)に記載の方法があげられる。産生抗体分子の糖鎖構造を識別する方法としては、例えば、後述4または後述5に記載の方法があげられる。
(5)N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法
本発明の抗体組成物を作製するために用いる宿主細胞は、N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法を用いることにより作製することができる。
N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択する手法としては、例えば、Somatic Cell Mol.Genet.,12,51(1986)等に記載のレクチンを用いた方法があげられる。
レクチンとしては、N−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンであればいずれのレクチンでも用いることができるが、その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(Lens Culinaris由来のLentil Agglutinin)エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Vicia faba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuriaaurantia由来のLectin)等を挙げることができる。
具体的には、1μg/mL〜1mg/mLの濃度の上述のレクチンを含む培地で1日〜2週間、好ましくは1日〜1週間培養し、生存している細胞を継代培養あるいはコロニーをピックアップし別の培養容器に移し、さらに引き続きレクチンを含む培地で培養を続けることによって、本発明のN−グリコシド結合糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位とフコースの1位がα結合した糖鎖構造を認識するレクチンに耐性である株を選択することができる。
2.抗体組成物の製造方法
本発明の抗体組成物は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)、Antibodies,A Laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988、Monoclonal Antibodies:principles and practice,Third Edition,Acad.Press,1993、Antibody Engineering,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,1996等に記載された方法を用い、例えば、以下のように宿主細胞中で発現させて取得することができる。
抗ヒトガングリオシドGM2抗体分子の全長cDNAを調製し、該抗体分子をコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を調製する。
該DNA断片、または全長を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。
該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、抗体組成物を生産する形質転換体を得ることができる。
宿主細胞としては、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、抗体を発現できるものであればいずれも用いることができる。
抗体分子のFc領域に結合するN−グリコシド結合糖鎖の修飾に係わる酵素、すなわち細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素が失活した細胞を選択するか、または前述1に示された種々の人為的手法により得られた細胞を宿主細胞として用いることもできる。
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込が可能で、目的とする抗体分子をコードするDNAを転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
cDNAは、前記1.の(1)の(a)に記載のcDNAの調製方法に従い、ヒト又は非ヒト動物の組織又は細胞より、目的とする抗体分子をコードするcDNAに特異的なプローブまたはプライマー等を用いて調製することができる。
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)等をあげることができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP 1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、サッカロミセス属、シゾサッカロミセス属、クリュイベロミセス属、トリコスポロン属、シュワニオミセス属等に属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombeKluyveromyces lacisTrichosporon pullulansSchwanniomyces alluvius等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriology,153,163(1983)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,75,1929(1978)]に記載の方法等をあげることができる。
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107[特開平3−22979;Cytotechnology,3,133,(1990)]、pAS3−3[特開平2−227075]、pCDM8[Nature,329,840,(1987)]、pcDNAI/Amp(Invitrogen社)、pREP4(Invitrogen社)、pAGE103[J.Biochemistry,101,1307(1987)]、pAGE210等をあげることができる。
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ラットミエローマ細胞、マウスミエローマ細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology,3,133(1990)]、リン酸カルシウム法[特開平2−227075]、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987)]、インジェクション法[Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994)]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[特許第2606856、特許第2517813]、DEAE−デキストラン法[バイオマニュアルシリーズ4−遺伝子導入と発現・解析法(羊土社)横田崇・新井賢一編(1994)]、ウイルスベクター法[Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994)]等をあげることができる。
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーBaculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)、Bio/Technology,,47(1988)等に記載された方法によって、蛋白質を発現することができる。
即ち、発現ベクターおよびバキュロウィルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、蛋白質を発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII(ともにInvitorogen社)等をあげることができる。
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるAutographa californica nuclear polyhedrosis virus等を用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodopterafrugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21[カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーBaculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Company,New York(1992)]、Trichoplusianiの卵巣細胞であるHigh5(Invitrogen社)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記発現導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2−227075)、リポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,84,7413(1987)]等をあげることができる。
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等をあげることができる。
プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等をあげることができる。
宿主細胞としては、タバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等をあげることができる。
組換えベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)[特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977]、エレクトロポレーション法[特開昭60−251887]、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法[日本特許第2606856、日本特許第2517813]等をあげることができる。
抗体組成物の発現方法としては、直接発現以外に、Molecular Cloning,A LaboratoryManual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている方法等に準じて、分泌生産、Fc領域と他の蛋白質との融合蛋白質発現等を行うことができる。
糖鎖の合成に関与する遺伝子を導入した酵母、動物細胞、昆虫細胞または植物細胞により発現させた場合には、導入した遺伝子によって糖あるいは糖鎖が付加された抗体分子を得ることができる。
以上のようにして得られる形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体分子を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、抗体組成物を製造することができる。形質転換体を培地に培養する方法は、宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マン癌、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3〜9に保持する。pHの調製は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73,1(1950)]、Whitten培地[発生工学実験マニュアル−トランスジェニック・マウスの作り方(講談社)勝木元也編(1987)]またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(Pharmingen社)、Sf−900 II SFM培地(Life Technologies社)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRH Biosciences社)、Grace’s Insect Medium[Nature,195,788(1962)]等を用いることができる。
培養は、通常pH6〜7、25〜30℃等の条件下で、1〜5日間行う。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常pH5〜9、20〜40℃の条件下で3〜60日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
上記のとおり、抗体分子をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを保有する動物細胞、あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、抗体組成物を生成蓄積させ、該培養物より抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を製造することができる。
抗体組成物の発現方法としては、直接発現以外に、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている方法に準じて、分泌生産、融合蛋白質発現等を行うことができる。
抗体組成物の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させる抗体分子の構造を変えることにより、該方法を選択することができる。
抗体組成物が宿主細胞内あるいは宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.,264,17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,8227(1989);Genes Develop.,4,1288(1990)]、または特開平05−336963、WO94/23021等に記載の方法を準用することにより、該抗体組成物を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
すなわち、遺伝子組換えの手法を用いて、発現ベクターに、抗体分子をコードするDNA、および抗体分子の発現に適切なシグナルペプチドをコードするDNAを挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入の後に抗体分子を発現させることにより、目的とする抗体分子を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
また、特開平2−227075に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
さらに、遺伝子導入した動物または植物の細胞を再分化させることにより、遺伝子が導入された動物個体(トランスジェニック非ヒト動物)または植物個体(トランスジェニック植物)を造成し、これらの個体を用いて抗体組成物を製造することもできる。
形質転換体が動物個体または植物個体の場合は、通常の方法に従って、飼育または栽培し、抗体組成物を生成蓄積させ、該動物個体または植物個体より該抗体組成物を採取することにより、該抗体組成物を製造することができる。
動物個体を用いて抗体組成物を製造する方法としては、例えば公知の方法[American Journal of Clinical Nutrition,63,639S(1996);American Journal of Clinical Nutrition),63,627S(1996);Bio/Technology,9,830(1991)]に準じて遺伝子を導入して造成した動物中に目的とする抗体組成物を生産させる方法があげられる。
動物個体の場合は、例えば、抗体分子をコードするDNAを導入したトランスジェニック非ヒト動物を飼育し、抗体組成物を該動物中に生成・蓄積させ、該動物中より抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を製造することができる。該動物中の生成・蓄積場所としては、例えば、該動物のミルク(特開昭63−309192)または卵等をあげることができる。この際に用いられるプロモーターとしては、動物で発現できるものであればいずれも用いることができるが、例えば、乳腺細胞特異的なプロモーターであるαカゼインプロモーター、βカゼインプロモーター、βラクトグロブリンプロモーター、ホエー酸性プロテインプロモーター等が好適に用いられる。
植物個体を用いて抗体組成物を製造する方法としては、例えば抗体分子をコードするDNAを導入したトランスジェニック植物を公知の方法[組織培養,20(1994);組織培養,21(1995);Trends in Biotechnology,15,45(1997)]に準じて栽培し、抗体組成物を該植物中に生成・蓄積させ、該植物中より該抗体組成物を採取することにより、抗体組成物を生産する方法があげられる。
抗体分子をコートするDNAを導入した形質転換体により製造された抗体組成物は、例えば抗体組成物が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学(株)製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、抗体組成物の精製標品を得ることができる。
また、抗体組成物が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として抗体組成物の不溶体を回収する。回収した抗体組成物の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該抗体組成物を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により該抗体組成物の精製標品を得ることができる。
抗体組成物が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該抗体組成物あるいはその誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、抗体組成物の精製標品を得ることができる。
以下に、本発明の抗体組成物の取得のより具体的な例として、ヒト化抗体の組成物の製造方法について記すが、他の抗体組成物も当該方法と同様にして取得することができる。
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
ヒト化抗体発現用ベクターとは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
ヒト抗体のC領域としては、任意のヒト抗体のCHおよびCLであることができ、例えば、ヒト抗体のH鎖のIgG1サブクラスのC領域(以下、hCγ1と表記する)およびヒト抗体のL鎖のκクラスのC領域(以下、hCκと表記する)等があげられる。
ヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンから成る染色体DNAを用いることができ、また、mRNAから逆転写して作製されたcDNAを用いることもできる。
動物細胞用発現ベクターとしては、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnology,3,133(1990)]、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pHSG274[Gene,27,223(1984)]、pKCR[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78,1527(1981)]、pSG1 β d2−4[Cytotechnology,4,173(1990)]等があげられる。動物細胞用発現ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[J.Biochem.,101,1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTR[Biochem.Biophys.Res.Commun.,149,960(1987)]、免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell,41,479(1985)]とエンハンサー[Cell,33,717(1983)]等があげられる。
ヒト化抗体発現用ベクターは、抗体H鎖及びL鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一のベクター上に存在するタイプ(以下、タンデム型と表記する)のどちらでも用いることができるが、ヒト化抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖及びL鎖の発現量のバランスが均衡する等の点からタンデム型のヒト化抗体発現用ベクターの方が好ましい[J.Immunol.Methods,167,271(1994)]。タンデム型のヒト化抗体発現ベクターとしては、pKANTEX93[Mol.Immunol.,37,1035(2000)]、pEE18[Hybridoma,17,559(1998)]などがあげられる。
構築したヒト化抗体発現用ベクターは、ヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体の動物細胞での発現に使用できる。
(2)ヒト以外の動物の抗体のV領域をコードするcDNAの取得
ヒト以外の動物の抗体、例えば、マウス抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは以下のようにして取得することができる。
ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として用い、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージ或いはプラスミド等のベクターに挿入してcDNAライブラリーを作製する。該ライブラリーより、既存のマウス抗体のC領域或いはV領域をコードするDNAをプローブとして用い、H鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミド及びL鎖V領域をコードするcDNAを有する組換えファージ或いは組換えプラスミドをそれぞれ単雕する。組換えファージ或いは組換えプラスミド上の目的のマウス抗体のVHおよびVLの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
ガングリオシドGM2に特異的に結合できるヒト以外の動物の抗体を生産するハイブリドーマ細胞は、ガングリオシドGM2をヒト以外の動物に免疫し、周知の方法[Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,(1998)]に従って、免疫された動物の抗体産生細胞とミエローマ細胞とでハイブリドーマを作製し、次いで単一細胞化したハイブリドーマを選択し、これを培養し、培養上清から精製し、取得することができる。
ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ等、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ハイブリドーマ細胞から全RNAを調製する方法としては、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Ezymol.,154,3(1987)]、また全RNAからmRNAを調製する方法としては、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]等があげられる。また、ハイブリドーマ細胞からmRNAを調製するキットとしては、Fast Track mRNA Isolation Kit(Invitrogen社製)、Quick Prep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)等があげられる。
cDNAの合成及びcDNAライブラリー作製法としては、常法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34]、或いは市販のキット、例えば、Super ScriptTM Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(GIBCO BRL社製)やZAP−cDNA Synthesis Kit(Stratagene社製)を用いる方法などがあげられる。
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターは、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[Strategies,5,58(1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research,17,9494(1989)]、λZAP II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach,I,49(1985)]、Lambda Blue Mid(Clontech社製)、λExCell、pT7T3 18U(Pharmacia社製)、pcD2[Mol.Cell.Biol.,3,280(1983)]及びpUC18[Gene,33,103(1985)]等が用いられる。
ファージ或いはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌としては該cDNAライブラリーを導入、発現及び維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1−Blue MRF’[Strategies,5,81(1992)]、C600[Genetics,39,440(1954)]、Y1088、Y1090[Science,222,778(1983)]、NM522[J.Mol.Biol.,166,1(1983)]、K802[J.Mol.Biol.,16,118(1966)]及びJM105[Gene,38,275(1985)]等が用いられる。
cDNAライブラリーからのヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAクローンを選択する方法としては、アイソトープ或いは蛍光などで標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法或いはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]により選択することができる。また、プライマーを調製し、cDNA或いはcDNAライブラリーを鋳型として、PCR[Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1−34]によりVHおよびVLをコードするcDNAを調製することもできる。
上記方法により選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,74,5463(1977)]等の反応を行い、塩基配列自動分析装置、例えば、ABI PRISM377 DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより該cDNAの塩基配列を決定することができる。
決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLを完全に含んでいるアミノ酸配列をコードしているかを確認することができる。
さらに、抗体可変領域のアミノ酸配列または該可変領域をコードするDNAの塩基配列がすでに公知である場合には、以下の方法を用いて製造することができる。
アミノ酸配列が公知である場合には、コドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services,1991]を考慮して該可変領域をコードするDNA配列を設計し、設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。塩基配列が公知である場合には、その情報を基に100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行うことによりDNAを得ることができる。
(3)ヒト以外の動物の抗体のV領域のアミノ酸配列の解析
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さ及びN末端アミノ酸配列を推定でき、更には抗体が属するサブグループを知ることができる。また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、同様の方法で見出すことができる。
(4)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
本項2の(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを、ヒト以外の動物の抗体VHおよびVLの3’末端側の塩基配列とヒト抗体のCHおよびCLの5’末端側の塩基配列とからなり、かつ適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAとそれぞれ連結し、それぞれを本項2の(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。まず、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRを移植するヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列を選択する。ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列としては、ヒト抗体由来のものであれば、いかなるものでも用いることができる。例えば、Protein Data Bank等のデータベースに登録されているヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991]等があげられるが、その中でも、十分な活性を有するヒト型CDR移植抗体を作製するためには、目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)を有するアミノ酸配列を選択することが望ましい。
次に、選択したヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列に目的のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列を移植し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,1991]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を設計する。設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR法を行う。この場合、PCRでの反応効率及び合成可能なDNAの長さから、H鎖、L鎖とも4〜6本の合成DNAを設計することが好ましい。
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、本項2の(1)で構築したヒト化抗体発現用ベクターに容易にクローニングすることができる。PCR後、増幅産物をpBluescript SK(−)(Stratagene社製)等のプラスミドにクローニングし、本項2の(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
(6)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元のヒト以外の動物の抗体に比べて低下してしまうことが知られている[BIO/TECHNOLOGY,,266(1991)]。この原因としては、元のヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLでは、CDRのみならず、FRのいくつかのアミノ酸残基が直接的或いは間接的に抗原結合活性に関与しており、それらアミノ酸残基がCDRの移植に伴い、ヒト抗体のVHおよびVLのFRの異なるアミノ酸残基へと変化してしまうことが考えられている。この問題を解決するため、ヒト型CDR移植抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基やCDRのアミノ酸残基と相互作用したり、抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらを元のヒト以外の動物の抗体に由来するアミノ酸残基に改変し、低下した抗原結合活性を上昇させることが行われている[BIO/TECHNOLOGY,,266(1991)]。
ヒト型CDR移植抗体の作製においては、それら抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を如何に効率よく同定するかが、最も重要な点であり、そのためにX線結晶解析[J.Mol.Biol.,112,535(1977)]或いはコンピューターモデリング[Protein Engineering,,1501(1994)]等による抗体の立体構造の構築及び解析が行われている。これら抗体の立体構造の情報は、ヒト型CDR移植抗体の作製に多くの有益な情報をもたらして来たが、その一方、あらゆる抗体に適応可能なヒト型CDR移植抗体の作製法は未だ確立されておらず、現状ではそれぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討する等の種々の試行錯誤が必要である。
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基の改変は、改変用合成DNAを用いて本項2の(5)に記載のPCR法を行うことにより、達成できる。PCR後の増幅産物について本項2の(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
(7)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
本項2の(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流に、本項2の(5)および(6)で構築したヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを挿入し、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。例えば、本項2の(5)および(6)でヒト型CDR移植抗体のVHおよびVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、本項2の(1)に記載のヒト化抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するように挿入し、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。
(8)ヒト化抗体の安定的生産
本項2の(4)及び(7)に記載のヒト化抗体発現ベクターを適当な動物細胞に導入することによりヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体(以下、併せてヒト化抗体と称す)を安定に生産する形質転換株を得ることができる。
動物細胞へのヒト化抗体発現ベクターの導入法としては、エレクトロポレーション法[特開平2−257891;Cytotechnology,,133(1990)]等があげられる。
ヒト化抗体発現ベクターを導入する動物細胞としては、ヒト化抗体を生産させることができる動物細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。
具体的には、マウスミエローマ細胞であるNSO細胞、SP2/0細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO/dhfr−細胞、CHO/DG44細胞、ラットミエローマ細胞YB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞などがあげられるが、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHO/DG44細胞、ラットミエローマYB2/0細胞等があげられる。
ヒト化抗体発現ベクターの導入後、ヒト化抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、G418硫酸塩(以下、G418と表記する;SIGMA社製)等の薬剤を含む動物細胞培養用培地により選択できる。動物細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(日水製薬社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL302培地(JRH社製)、IMDM培地(GIBCO BRL社製)、Hybridoma−SFM培地(GIBCO BRL社製)、またはこれら培地に牛胎児血清(以下、FCSと表記する)等の各種添加物を添加した培地等を用いることができる。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中にヒト化抗体を生産蓄積させることができる。培養上清中のヒト化抗体の生産量及び抗原結合活性は酵素免疫抗体法[以下、ELISA法と表記する;Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 14,1998、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996]等により測定できる。また、形質転換株は、特開平2−257891に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用してヒト化抗体の生産量を上昇させることができる。
ヒト化抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる[Antibodies:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 8,1988、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996]。また、その他に通常、蛋白質の精製で用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過等を組み合わせて行い、精製することができる。精製したヒト化抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動[以下、SDS−PAGEと表記する;Nature,227,680(1970)]やウエスタンブロッティング法[Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Chapter 12,1988、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996]等で測定することができる。
以上、動物細胞を宿主とした抗体組成物の製造方法を示したが、上述したように、酵母、昆虫細胞、植物細胞または動物個体あるいは植物個体においても動物細胞と同様の方法により抗体組成物を製造することができる。
すでに宿主細胞が抗体を発現する能力を有する場合には、上記1に記載した方法を用いて抗体組成物を発現させる細胞を調製した後に、該細胞を培養し、該培養物から目的とする抗体組成物を精製することにより、本発明の抗体組成物を製造することができる。
3.抗体組成物の活性評価
精製した抗体組成物の蛋白質量、抗原との結合活性あるいは細胞傷害活性を測定する方法としては、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press Limited,1996、あるいはAntibody Engineering,A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,1996等に記載の公知の方法を用いることができる。
その具体的な例としては、抗体組成物がヒト化抗体の場合、抗原との結合活性、抗原陽性培養細胞株に対する結合活性はELISA法及び蛍光抗体法[Cancer Immunol, Immunother.,36,373(1993)]等により測定できる。抗原陽性培養細胞株に対する細胞傷害活性は、CDC活性、ADCC活性等を測定することにより、評価することができる[Cancer Immunol,Immunother.,36,373(1993)]。
また、抗体組成物のヒトでの安全性、治療効果は、カニクイザル等のヒトに比較的近い動物種の適当なモデルを用いて評価することができる。
4.抗体組成物の糖鎖の分析
各種細胞で発現させた抗体組成物の糖鎖構造は、通常の糖蛋白質組成物の糖鎖構造の解析に準じて行うことができる。例えば、IgG分子に結合している糖鎖はガラクトース、マンノース、フコースなどの中性糖、N−アセチルグルコサミンなどのアミノ糖、シアル酸などの酸性糖から構成されており、糖組成分析および二次元糖鎖マップ法などを用いた糖鎖構造解析等の手法を用いて行うことができる。
(1)中性糖・アミノ糖組成分析
抗体組成物の糖鎖の組成分析は、トリフルオロ酢酸等で、糖鎖の酸加水分解を行うことにより、中性糖またはアミノ糖を遊離し、その組成比を分析することができる。
具体的な方法として、Dionex社製糖組成分析装置を用いる方法があげられる。BioLCはHPAEC−PAD(high performance anion−exchange chromatography−pulsed amperometric detection)法[J.Liq.Chromatogr.,,1577(1983)]によって糖組成を分析する装置である。
また、2−アミノピリジンによる蛍光標識化法でも組成比を分析することができる。具体的には、公知の方法[Agric.Biol.Chem.,55(1),283(1991)]に従って酸加水分解した試料を2−アミノピリジル化で蛍光ラベル化し、HPLC分析して組成比を算出することができる。
(2)糖鎖構造解析
抗体組成物の糖鎖の構造解析は、2次元糖鎖マップ法[Anal.Biochem.,171,73(1988)、生物化学実験法23−糖蛋白質糖鎖研究法(学会出版センター)高橋禮子編(1989年)]により行うことができる。2次元糖鎖マップ法は、例えば、X軸には逆相クロマトグラフィーによる糖鎖の保持時間または溶出位置を、Y軸には順相クロマトグラフィーによる糖鎖の保持時間または溶出位置を、それぞれプロットし、既知糖鎖のそれらの結果と比較することにより、糖鎖構造を推定する方法である。
具体的には、抗体組成物をヒドラジン分解して、抗体組成物から糖鎖を遊離し、2−アミノピリジン(以下、PAと略記する)による糖鎖の蛍光標識[J.Biochem,,95,197(1984)]を行った後、ゲルろ過により糖鎖を過剰のPA化試薬などと分離し、逆相クロマトグラフィーを行う。次いで、分取した糖鎖の各ピークについて順相クロマトグラフィーを行う。これらの結果をもとに、2次元糖鎖マップ上にプロットし、糖鎖スタンダード(TaKaRa社製)、文献[Anal.Biochem.,171,73(1988)]とのスポットの比較より糖鎖構造を推定することができる。
さらに各糖鎖のMALDI−TOF−MSなどの質量分析を行い、2次元糖鎖マップ法により推定される構造を確認することができる。
5.抗体分子の糖鎖構造を識別する免疫学的定量方法
抗体組成物は、抗体のFc領域に結合する糖鎖構造が異なった抗体分子から構成されている。本発明の抗体組成物は、Fc領域に結合する全N−グリコシド結合複合型糖鎖のうち、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合が100%であり、高いADCC活性を示す。このような抗体組成物は、上記4.に記載の抗体組成物の糖鎖構造の分析法を用いることにより識別できる。また、レクチンを用いた免疫学的定量方法を用いることによっても識別できる。
レクチンを用いた免疫学的定量方法を用いた抗体組成物の糖鎖構造の識別は、文献[Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Wiley−Liss,Inc.,(1995);酵素免疫測定法,第3版,医学書院(1987);改訂版,酵素抗体法,学際企画(1985)]等に記載のウエスタン染色、RIA(Radioimmunoassay)、VIA(Viroimmunoassay)、EIA(Enzymoimmunoassay)、FIA(Fluoroimmunoassay)、MIA(Metalloimmunoassay)などの免疫学的定量方法に準じて、例えば、以下のように行うことができる。
抗体組成物を構成する抗体分子の糖鎖構造を認識するレクチンを標識し、標識したレクチンと試料である抗体組成物を反応させる。次に、標識したレクチンと抗体分子の複合体の量を測定する。
抗体分子の糖鎖構造を識別に用いられるレクチンとしては、例えば、WGA(T.vulgaris由来のwheat−germ agglutinin)、ConA(C.ensiformis由来のconcanavalin A)、RIC(R.communis由来の毒素)、L−PHA(P.vulgaris由来のleukoagglutinin)、LCA(L.culinaris由来のlentil agglutinin)、PSA(P.sativum由来のPea lectin)、AAL(Aleuria aurantia Lectin)、ACL(Amaranthus caudatus Lectin)、BPL(Bauhinia purpurea Lectin)、DSL(Datura stramonium Lectin)、DBA(Dolichos biflorus Agglutinin)、EBL(Elderberry Balk Lectin)、ECL(Erythrina cristagalli Lectin)、EEL(Euonymus europaeus Lectin)、GNL(Galanthus nivalis Lectin)、GSL(Griffonia simplicifolia Lectin)、HPA(Helix pomatia Agglutinin)、HHL(Hippeastrum Hybrid Lectin)、Jacalin、LTL(Lotus tetragonolobus Lectin)、LEL(Lycopersicon esculentm Lectin)、MAL(Maackia amurensis Lectin)、MPL(Maclura pomifera Lectin)、NPL(Narcissus pseudonarcissus Lectin)、PNA(Peanut Agglutinin)、E−PHA(Phaseolus vulgaris Erythroagglutinin)、PTL(Psophocarpus tetragonolobus Lectin)、RCA(Ricinus communis Agglutinin)、STL(Solanum tuberosum Lectin)、SJA(Sophora japonica Agglutinin)、SBA(Soybean Agglutinin)、UEA(Ulex europaeus Agglutinin)、VVL(Vicia villosa Lectin)、WFA(Wisteria floribunda Agglutinin)があげられる。
N−グルコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合している糖鎖構造を特異的に認識するレクチンを用いることが好ましく、その具体的な例としては、レンズマメレクチンLCA(Lens Culinaris由来のLentil Agglutinin)エンドウマメレクチンPSA(Pisum sativum由来のPea Lectin)、ソラマメレクチンVFA(Vicia faba由来のAgglutinin)、ヒイロチャワンタケレクチンAAL(Aleuria aurantia由来のLectin)を挙げることができる。
6.本発明の抗体組成物の利用
本発明の抗体組成物はガングリオシドGM2に特異的に結合し、高いADCC活性およびCDC活性を有するため、癌をはじめとする各種ガングリオシドGM2発現細胞関連疾患の予防および治療において有用である。
本発明において、ガングリオシドGM2関連疾患としては、ガングリオシドGM2を発現する細胞が関与する疾患であればいかなるものも包含される。例えば、癌などがあげられる。
本発明の癌としては、神経外胚葉系腫瘍である神経芽細胞腫、胚小細胞癌およびメラノーマなどが包含される。
ガングリオシドGM2は、正常細胞にはごく微量にしか存在しないが、肺小細胞癌、メラノーマ、神経芽細胞腫などの癌細胞では多量に存在し、GM2に対するモノクローナル抗体は、これらの癌の治療に有用であると考えられている〔Lancet,48,6154(1988)〕。通常の抗癌剤は、これらの癌細胞の増殖を抑制することを特徴とする。しかし、ADCC活性またはCDC活性を有する抗体は、癌細胞に細胞死を誘導することができるため、通常の抗癌剤よりも治療薬として有効である。特に癌の治療薬において、現状では抗体医薬単独の抗腫瘍効果は不充分であり、化学療法との併用療法が行われているが[Science,280,1197(1998)]、本発明の抗体組成物は単独で高い抗癌効果を有するため、化学療法に対する依存度が低くなり、副作用の低減にもなる。
本発明の抗体組成物は、ガングリオシドGM2に特異的に結合し、ガングリオシドGM2発現細胞に対して強い細胞傷害活性を示すので、ガングリオシドGM2が発現した細胞を選択的に排除することができる。
また、本発明の抗体組成物は高い細胞傷害活性を有するため、従来の抗体組成物では治癒することができない、上述の癌などの患者を治療することができる。さらに、癌の場合、癌細胞の浸潤部位に薬物が届きにくいため、少量の薬物でも治療効果を有することが好ましい。本発明の抗体組成物は少量でも高いADCC活性を有するため、上述の疾患の治療に有用である。
本発明の抗体組成物を含有する医薬は、治療薬として単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される一つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内および静脈内等の非経口投与をあげることができ、抗体製剤の場合、望ましくは静脈内投与をあげることができる。
投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤等があげられる。
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等があげられる。
乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を添加剤として用いて製造できる。
カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤等があげられる。
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、あるいは両者の混合物からなる担体等を用いて調製される。または、抗体組成物を常法に従って凍結乾燥し、これに塩化ナトリウムを加えることによって粉末注射剤を調製することもできる。
座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸等の担体を用いて調製される。
また、噴霧剤は該抗体組成物そのもの、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ該抗体組成物を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体等を用いて調製される。
担体として具体的には乳糖、グリセリン等が例示される。該抗体組成物および用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダー等の製剤が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重等により異なるが、有効成分の量として、通常成人1日当たり10μg/kg〜20mg/kgである。
また、抗体組成物の各種腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果を検討する方法は、インビトロ実験としては、CDC活性測定法、ADCC活性測定法等があげられ、インビボ実験としては、マウス等の実験動物での腫瘍系を用いた抗腫瘍実験等があげられる。
CDC活性、ADCC活性、抗腫瘍実験は、文献[Cancer Immunology Immunotherapy,36,373(1993)、Cancer Research,54,1511(1994)]等記載の方法に従って行うことができる。
第1図は、プラスミドpKOFUT8Neoの構築を示した図である。
第2図は、CHO/DG44細胞のFUT8対立遺伝子を1コピー破壊したヘミノックアウトクローンのゲノムサザンの解析結果を示した図である。レーンは左からそれぞれ分子量マーカー、ヘミノックアウトクローン50−10−104および親株であるCHO/DG44細胞のゲノムサザンである。
第3図は、CHO/DG44細胞のFUT8両対立遺伝子を破壊したダブルノックアウトクローンWK704のゲノムサザン解析結果を示した図である。矢印は、相同組換えが起こった際に検出される陽性断片の検出位置を示す。
第4図は、CHO/DG44細胞のFUT8両対立遺伝子を破壊したダブルノックアウトクローンより薬剤耐性遺伝子を除去したクローンのゲノムサザン解析結果を示した図である。レーンは左からそれぞれ分子量マーカー、ダブルノックアウトクローンの薬剤耐性遺伝子除去クローン4−5−C3、ダブルノックアウトクローンWK704、ヘミノックアウトクローン50−10−104および親株であるCHO/DG44細胞のゲノムサザンである。
第5図は、精製したMs705/GM2抗体およびDG44/GM2抗体のガングリオシドGM2に対するELISA法における反応性を、抗体濃度を変化させて測定した図である。横軸に抗体濃度を、縦軸に各抗体濃度における吸光度を示す。□がDG44/GM2抗体、■がMs705/GM2抗体をそれぞれ示す。
第6図は、精製したMs705/GM2抗体およびDG44/GM2抗体のヒト小細胞性肺癌株SBC−3細胞に対するADCC活性を、抗体濃度を変化させて測定した図である。横軸に抗体濃度を、縦軸に各抗体濃度における細胞傷害活性を示す。●がDG44/GM2抗体、○がMs705/GM2抗体をそれぞれ示す。
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
ゲノム上のα1,6−フコシルトランスフェラーゼ(以下、FUT8と表記する)両対立遺伝子を破壊したCHO/DG44細胞の造成
FUT8両対立遺伝子の翻訳開始コドンを含むゲノム領域を欠失させたCHO/DG44細胞株を以下の手順で造成した。
1.チャイニーズハムスターFUT8遺伝子のエクソン2を含むターゲティングベクターpKOFUT8Neoの構築
WO02/31140の実施例13の1項に記載の方法で構築されたチャイニーズハムスターFUT8遺伝子のエクソン2を含むターゲティングベクターpKOFUT8PuroおよびpKOSelectNeo(Lexicon社製)を用いて、以下の様にしてpKOFUT8Neoを構築した。
pKOSelectNeo(Lexicon社製)を制限酵素AscI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロースゲル電気泳動に供し、GENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いてネオマイシン耐性遺伝子発現ユニットを含む約1.6KbのAscI断片を回収した。
次に、pKOFUT8Puroを制限酵素AscI(New England Biolabs社製)で消化後、大腸菌C15株由来Alkaline Phosphatase(宝酒造社製)により、DNA断片の末端を脱リン酸化させた。反応後、フェノール/クロロホルム抽出処理およびエタノール沈殿法を用いて、DNA断片を精製した。
上記で得たpKOSelectNeo由来のAscI断片(約1.6Kb)0.1μgとpKOFUT8Puro由来のAscI断片(約10.1Kb)0.1μgに滅菌水を加えて5μLとし、Ligation High(東洋紡社製)5μLを加えて16℃で30分間反応させることにより、連結反応を行った。該反応液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、得られたアンピシリン耐性クローンより各々プラスミドDNAを調製し、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit v2.0(Applied Biosystems社製)を用いて添付の説明書に従って反応後、同社のDNAシーケンサABI PRISM377により塩基配列を解析した。この様にして第1図に示したpKOFUT8Neoを得た。pKOFUT8NeoはCHO細胞のFUT8遺伝子ヘミノックアウト細胞株を作製するためのターゲティングベクターとして用いた。
2.ゲノム上のFUT8遺伝子の1コピーを破壊したヘミノックアウト細胞株の作製
(1)ターゲティングベクターpKOFUT8Neo導入株の取得
ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)を欠損したチャイニーズハムスター卵巣由来
CHO/DG44細胞[Somatic Cell and Moleculer Genetics,12,555,1986]に、実施例1の1項で構築したチャイニーズハムスターFUT8ゲノム領域ターゲティングベクターpKOFUT8Neoを以下の様にして導入した。
pKOFUT8Neoを制限酵素SalI(New England Biolabs社製)で消化して線状化し、線状化した4μgのpKOFUT8Neoを1.6×10個のCHO/DG44細胞へエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),,133(1990)]により導入した後、IMDM−dFBS(10)−HT(1)[透析FBS(インビトロジェン社製)を10%、HT supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含むIMDM培地(インビトロジェン社製)]に懸濁し、接着細胞培養用10cmデッシュ(Falcon社製)へ播種した。5%COインキュベーター内で37℃、24時間培養後、G418(ナカライテスク社製)を600μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)[透析FBSを10%で含むIMDM培地]10mLに培地交換した。この培地交換作業を3〜4日毎に繰り返しながら5%COインキュベーター内で37℃、15日間の培養を行い、G418耐性クローンを取得した。
(2)ゲノムPCRによる相同組換えの診断
本項(1)で取得したG418耐性クローンの相同組換えの診断を、ゲノ厶DNAを用いたPCRにより、以下の様に行った。
96穴プレート上のG418耐性クローンに対してトリプシン処理を行った後、2倍容量の凍結培地[20% DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM]を各ウェルに添加、懸濁した。各ウェル中の細胞懸濁液の半量を接着細胞用平底96穴プレート(旭テクノグラス社製)へ播種してレプリカプレートとする一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存した。
レプリカプレート上のネオマイシン耐性クローンは、G418を600μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)で5%COインキュベーター内で37℃、1週間培養した後、細胞を回収し、回収した細胞から公知の方法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),201,331(1992)]に従って各クローンのゲノ厶DNAを調製し、各々30μLのTE−RNase緩衝液(pH8.0)[10mmol/L Tris−HCl、1mmol/L EDTA、200μg/mL RNase A]に一晩溶解した。
ゲノムPCRに用いるプライマーは以下の様に設計した。まず、WO03/31140の実施例12に記載の方法により取得したFUT8ゲノム領域の配列(配列番号13)の中から、配列番号39または配列番号40でそれぞれ示されるプライマーをフォワードプライマーとした。また、ターゲティングベクターのloxP配列に特異的に結合するプライマー(配列番号41または配列番号42)をリバースプライマーとし、以下のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に用いた。上記で調製したゲノムDNA溶液を各々10μL含む25μLの反応液[DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)、ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/L dNTPs、0.5μmol/L上記プライマー(フォワードプライマーとリバースプライマーを組み合わせて使用する)]を調製し、94℃で3分間の加熱の後、94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で2分間からなる反応を1サイクルとした条件でPCRを行った。
PCR後、該反応液を0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、相同組換えによって生じる約1.7Kbの特異的増幅産物が認められた株を陽性クローンと判定した。
(3)ゲノムサザンブロットによる相同組換えの診断
本項(2)で取得された陽性クローンの相同組換えの診断を、ゲノムDNAを用いたサザンブロットにより、以下の様に行った。
本項(2)で凍結保存したマスタープレートのうち、本項(2)で見出された陽性クローンを含む96穴プレートを選択し、5%COインキュベーター内で37℃、10分間静置した後、陽性クローンに該当するウェル中の細胞を接着細胞用平底24穴プレート(グライナー社製)へ播種した。G418を600μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)を用いて5%COインキュベーター内で37℃、1週間培養した後、接着細胞用平底6穴プレート(グライナー社製)へ播種した。該プレートを5%COインキュベーター内で37℃にて培養し、細胞を回収した。回収した細胞より公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),,2303,(1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々150μLのTE−RNase緩衝液(pH8.0)に一晩溶解した。
上記で調製したゲノムDNA12μgを制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)で消化し、エタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、20μLのTE緩衝液(pH8.0)[10mmol/L Tris−HCl、1mmol/L EDTA]に溶解し、0.6%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683,(1979)]に従って、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行い、固定化した。
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。WO03/31140の実施例12に記載の方法により取得したFUT8ゲノム領域の配列(配列番号13)の中から、配列番号43および配列番号44でそれぞれ示されるプライマーを作製し、以下のPCRに用いた。
WO02/31140の実施例12に記載のpFUT8fgE2−2 4.0ngをテンプレートとして含む20μLの反応液[DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)、ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/L dNTPs、0.5μmol/L上記プライマー]を調製し、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件でPCRを行った。
PCR後、該反応液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、GENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて約230bpのプローブDNA断片を回収した。得られたプローブDNA溶液のうち5μLを、[α−32P]dCTP 1.75MBqおよびMegaprime DNA Labelling system,dCTP(Amersham Pharmaeia Biotech社製)を用いて放射線標識した。
ハイブリダイゼーションは以下の様に行った。まず、上記のゲノムDNA消化物が転写されたナイロン膜をローラーボトルへ封入し、15mLのハイブリダイゼーション液[5×SSPE、50×Denhaldt’s液、0.5%(w/v)SDS、100μg/mLサケ精子DNA]を加えて65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った後、32P標識したプローブDNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を50mLの一次洗浄液[2×SSC−0.1%(w/v)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、ナイロン膜を50mLの二次洗浄液[0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で暴露し現像した。
第2図には、親株であるCHO/DG44細胞、および本項(2)で取得した陽性クローンである50−10−104株のゲノムDNAを本法により解析した結果を示した。CHO/DG44細胞では、野生型FUT8−対立遺伝子由来の約25.5Kbの断片のみが検出された。一方、陽性クローン50−10−104株では、野生型FUT8対立遺伝子由来の約25.5Kbの断片に加え、相同組換えされた対立遺伝子に特異的な約20.0Kbの断片が検出された。両断片の量比は1:1であったことから、50−10−104株は、FUT8対立遺伝子のうち1コピーが破壊されたヘミノックアウトクローンであることが確認された。
3.ゲノム上のFUT8遺伝子をダブルノックアウトしたCHO/DG44細胞の作製
(1)ターゲティングベクターpKOFUT8Puro導入株の作製
本実施例の2項で得たFUT8遺伝子ヘミノックアウトクローンのもう一方のFUT8対立遺伝子を破壊するために、WO02/31140の実施例13の1項に記載のチャイニーズハムスターFUT8遺伝子エクソン2ターゲティングベクターであるpKOFUT8Puroを以下の様にして導入した。
pKOFUT8Puroを制限酵素SalI(New England Biolabs社製)で消化して線状化し、線状化した4μgのpKOFUT8Puroを1.6×10個のFUT8遺伝子ヘミノックアウトクローンへエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),,133(1990)]により導入後、IMDM−dFBS(10)−HT(1)に懸濁し、接着細胞培養用10cmデッシュ(Falcon社製)へ播種した。5%COインキュベーター内で37℃、24時間培養後、ピューロマイシン(SIGMA社製)を15μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)−HT(1)10mLに培地交換した。この培地交換作業を7日毎に繰り返しながら5%COインキュベーター内で37℃、15日間の培養を行い、ピューロマイシン耐性クローンを取得した。
(2)ゲノムサザンブロットによる相同組換えの診断
本項(1)で取得された薬剤耐性クローンの相同組換えの診断を、ゲノムDNAを用いたサザンブロットにより以下の様に行った。
ピューロマイシン耐性クローンを、公知の方法[Gene Targeting,Oxford University Press,(1993)]に従って接着細胞用平底プレート(旭テクノグラス社製)へ採取し、ピューロマイシン(SIGMA社製)を15μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)−HT(1)を用いて5%COインキュベーター内で37℃、1週間培養した。
培養後、上記プレートの各クローンに対しトリプシン処理を行い、接着細胞用平底24穴プレート(グライナー社製)へ播種した。ピューロマイシン(SIGMA社製)を15μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)−HT(1)を用いて5%COインキュベーター内で37℃、1週間培養した後、同様にトリプシン処理を行い、接着細胞用平底6穴プレート(グライナー社製)へ播種した。該プレートを5%COインキュベーター内で37℃にて培養し、回収した細胞より公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),,2303,(1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々150μLのTE−RNase緩衝液(pH8.0)に一晩溶解した。
上記で調製したゲノムDNA12μgを制限酵素BamHI(New England Biolabs社製)で消化し、エタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、20μLのTE緩衝液(pH8.0)に溶解し、0.6%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683,(1979)]に従って、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行い、固定化した。
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。まず、ターゲティングベクターに含まれるFUT8ゲノム領域よりもさらに5’側の配列に特異的に結合するプライマー(配列番号45および配列番号46)を作製し、以下のPCRに用いた。WO02/31140の実施例12に記載のプラスミドpFUT8fgE2−2 4.0ngをテンプレートとして含む20μLの反応液[DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)、ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/L dNTPs、0.5μmol/L上記プライマー]を調製し、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件でPCRを行った。
PCR後、該反応液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、GENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて約230bpのプローブDNA断片を精製した。得られたプローブDNA溶液のうち5μLを、[α−32P]dCTP 1.75MBqおよびMegaprime DNA Labelling system,dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて放射線標識した。
ハイブリダイゼーションは以下の様に行った。まず、上記のゲノムDNA消化物が転写されたナイロン膜をローラーボトルへ封入し、15mLのハイブリダイゼーション液[5×SSPE、50×Denhaldt’s液、0.5%(w/v)SDS、100μg/mLサケ精子DNA]を加えて65℃で3時間のプレハイブリダイゼーションを行った後、32P標識したプローブDNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を50mLの一次洗浄液[2×SSC−0.1%(w/v)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。上記の洗浄操作を2回操り返した後、ナイロン膜を50mLの二次洗浄液[0.2×SSC−0.1%(w/v)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で暴露し現像した。
第3図には、50−10−104株から本項(1)に記載の方法により取得したピューロマイシン耐性クローンの1つであるWK704株のゲノムDNAを本法により解析した結果を示した。WK704株では、野生型FUT8対立遺伝子由来の約25.5Kbの断片が消失し、相同組換えされた対立遺伝子に特異的な約20.0Kbの断片(図中に矢印で示す)のみが検出された。この結果からWK704株は、FUT8両対立遺伝子が破壊されたクローンであることが確認された。
4.FUT8遺伝子をダブルノックアウトした細胞からの薬剤耐性遺伝子の除去
(1)Creリコンビナーゼ発現ベクターの導入
本実施例の3項で取得したFUT8遺伝子ダブルノックアウトクローンの薬剤耐性遺伝子を除去することを目的として、Creリコンビナーゼ発現ベクターpBS185(Life Technologies社製)を以下の様にして導入した。
4μgのpBS185を1.6×10個のFUT8遺伝子ダブルノックアウトクローンへエレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology),,133(1990)]により導入後、IMDM−dFBS(10)−HT(1)10mLに懸濁し、さらに同培地を用いて2万倍に希釈した。該希釈液を接着細胞培養用10cmディッシュ(Falcon社製)7枚へ播種後、5%COインキュベーター内で37℃、10日間の培養を行い、コロニーを形成させた。
5.Creリコンビナーゼ発現ベクター導入株の取得
本項(1)で取得したコロニーのうち、任意のクローンを公知の方法[Gene Targeting,Oxford University Press,(1993)]に従って接着細胞用平底プレート(旭テクノグラス社製)へ採取し、IMDM−dFBS(10)−HT(1)を用いて5%COインキュベーター内で37℃、1週間培養した。
培養後、上記プレートの各クローンに対してトリプシン処理を行い、2倍容量の凍結培地[20% DMSO、40% ウシ胎児血清、40% IMDM]を各ウェルに添加、懸濁した。各ウェル中の細胞顕濁液の半量を接着細胞用平底96穴プレート(旭テクノガラス社製)へ播種してレプリカプレートとする一方、残りの半量をマスタープレートとして凍結保存した。
次にレプリカプレート上の細胞を、G418を600μg/mL、ピューロマイシンを15μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)−HT(1)を用いて5%COインキュベーター内で37℃、一週間培養した。Creリコンビナーゼの発現によりloxP配列に挟まれた薬剤耐性遺伝子が除去された陽性クローンは、G418およびピューロマイシン存在下で死滅する。本法により陽性クローンを選択した。
(3)ゲノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断
本項(2)で選択した陽性クローンに対し、以下の手順でゲノムサザンブロットによる薬剤耐性遺伝子除去の診断を行った。
本項(2)で凍結保存したマスタープレートのうち、上記陽性クローンを含む96穴プレートを選択し、5%COインキュベーター内で37℃、10分間静置した。静置後、上記クローンに該当するウェルから細胞を接着細胞用平底24穴プレート(グライナー社製)へ播種した。
IMDM−dFBS(10)−HT(1)を用いて1週間培養した後、トリプシン処理を行い、接着細胞用平底6穴プレート(グライナー社製)へ播種して5%COインキュベーター内で37℃で培養し、増殖した細胞を回収した。回収した細胞より公知の方法[ヌクレイック・アシッド・リサーチ(Nucleic Acids Research),,2303,(1976)]に従って各クローンのゲノムDNAを調製し、各々150μLのTE−RNase緩衝液(pH8.0)に一晩溶解した。
上記で調製したゲノムDNA12μgを制限酵素NheI(New England Biolabs社製)で消化し、エタノール沈殿法を用いてDNA断片を回収した後、20μLのTE緩衝液(pH8.0)に溶解し、0.6%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後、公知の方法[プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA),76,3683,(1979)]に従って、ナイロン膜へゲノムDNAを転写した。転写終了後、ナイロン膜に対し80℃で2時間の熱処理を行い、固定化した。
一方、サザンブロットに用いるプローブを以下のように調製した。ターゲティングベクターに含まれるFUT8ゲノム領域よりもさらに5’側の配列に特異的に結合するプライマー(配列番号45および配列番号46)を用いて、以下のPCRを行った。WO02/31140の実施例12に記載のpFUT8fgE2−2 4.0ngをテンプレートとして含む20μLの反応液[DNAポリメラーゼExTaq(宝酒造社製)、ExTaq buffer(宝酒造社製)、0.2mmol/L dNTPs、0.5μmol/L上記プライマー]を調製し、94℃で1分間の加熱の後、94℃で30秒間、55℃で30秒間、74℃で1分間からなる反応を1サイクルとした25サイクルの条件でPCRを行った。
PCR後、該反応液を1.75%(w/v)アガロースゲル電気泳動に供し、GENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて、約230bpのプローブDNA断片を精製した。得られたプローブDNA溶液のうち5μLを、[α−32P]dCTP 1.75MBqおよびMegaprime DNA Labelling system,dCTP(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて放射線標識した。
ハイブリダイゼーションは以下の様に行った。まず、上記のゲノ厶DNA消化物が転写されたナイロン膜をローラーボトルへ封入し、ハイブリダイゼーション液[5×SSPE、50×Denhaldt’s液、0.5%(w/v)SDS、100μg/mLサケ精子DNA]15mLを加えて65℃で3時間のプレハイブリダイゼーション後、32P標識したプローブDNAを熱変性してボトルへ投入し、65℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、ナイロン膜を50mLの一次洗浄液[2×SSC−0.1%(W/V)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。上記の洗浄操作を2回繰り返した後、ナイロン膜を50mLの二次洗浄液[0.2×SSC−0.1%(W/V)SDS]に浸漬し、65℃で15分間加温して洗浄した。洗浄後、ナイロン膜をX線フィルムへ−80℃で暴露し現像した。
第4図には、親株であるCHO/DG44細胞、本実施例の2項に記載の50−10−104株、本実施例の3項に記載のWK704株、およびWK704株から本項(2)に記載の方法により取得した薬剤感受性クローンの1つである4−5−C3株のゲノ厶DNAを、本法により解析した結果を示した。
CHO/DG44細胞では、野生型FUT8対立遺伝子に由来する約8.0KbのDNA断片のみが検出された。また、50−10−104株やWK704株では、相同組換えが起こった対立遺伝子に由来する約9.5KbのDNA断片が認められた。一方、4−5−C3株では、相同組換えが起こった対立遺伝子からさらにネオマイシン耐性遺伝子(約1.6Kb)およびピューロマイシン耐性遺伝子(約1.5Kb)が除去されて生じる約8.0KbのDNA断片のみが検出された。この結果から4−5−C3株は、Creリコンビナーゼにより薬剤耐性遺伝子が除去されたことが確認された。
薬剤耐性遺伝子の除去されたFUT8遺伝子ダブルノックアウトクローン(以下、FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞と表記する)は、4−5−C3株以外にも複数株取得された。
[実施例2]
FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞による抗ガングリオシドGM2ヒトCDR移植抗体組成物の発現
1.FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞での安定発現
実施例1の4項に記載のFUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞および親株であるCHO/DG44細胞に、特開平10−257893記載の抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体発現ベクターpKANTEX796HM2Lm−28No.1を導入し、抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物の安定生産細胞を以下のようにして作製した。
pKANTEX796HM2Lm−28No.1を制限酵素AatII(New England Biolabs社製)で消化して線状化した後、直線状化された10μgのpKANTEX1259HV3LV0を1.6×10個のFUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞および親株であるCHO/DG44細胞へエレクトロポレーション法[Cytotechnology,,133(1990)]により導入後、10mL のIMDM−dFBS(10)−HT(1)[透析FBS(インビトロジェン社製)を10%、HT supplement(インビトロジェン社製)を1倍濃度で含むIMDM培地(インビトロジェン社製)]に懸濁し、75cmフラスコ(グライナー社製)に播種した。5%COインキュベーター内で37℃、24時間培養後、G418(ナカライテスク社製)を500μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)[透析FBSを10%で含むIMDM培地]に培地交換し、1〜2週間培養した。最終的にG418を500μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)培地で増殖可能かつ、抗GM2ヒト型CDR移植抗体を生産する形質転換株を得た。親株のCHO/DG44細胞より得られた形質転換株をDG44/GM2株、FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞より得られた形質転換株をMs705/GM2株と名付けた。
2.培養上清中のヒトIgG抗体濃度の測定(ELISA法)
ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体(American Qualex社製)をPhosphate Buffered Saline(以下、PBSと表記する)(インビトロジェン社製)で希釈して1μg/mLとし、96穴のELISA用プレート(グライナー社製)に、50μL/ウェルで分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。PBSで洗浄後、BSAを1%の濃度で含むPBS(以下、1%BSA−PBSと表記する)(和光純薬社製)を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、形質転換株の培養上清、または培養上清から精製した抗体の各種希釈溶液を50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween20を0.05%の濃度で含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)(和光純薬社製)で各ウェルを洗浄後、1%BSA−PBSで2000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として、それぞれ50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)アンモニウム(和光純薬社製)の0.55gを1Lの0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素(和光純薬社製)を1μL/mLで添加した溶液]を50μL/ウェルで加えて発色させ、415nmの吸光度(以下、OD415と表記する)を測定した。
3.抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物の精製
実施例2の1項で得られた形質転換細胞株DG44/GM2株およびMs705/GM2株を用いて、それぞれが生産する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物を以下のようにして精製した。
各々の形質転換株を、G418を500μg/mLの濃度で含むIMDM−dFBS(10)に懸濁し、30mLを182cmフラスコ(グライナー社製)に播種して5%COインキュベーター内で37℃、数日間培養した。細胞密度がコンフルエントになった時点で培養上清を除去し、25mLのPBSで細胞を洗浄後、EXCELL301培地(JRH Biosciences社製)30mLを注入した。5%COインキュベーター内で37℃、7日間培養後、細胞懸濁液を回収し、3000rpm、4℃の条件で5分間の遠心分離を行って上清を回収した後、0.22μm孔径Millex GVフィルター(ミリポア社製)を用いて濾過滅菌した。上述の方法により取得した培養上清より、Mab Select(Amersham Biosciences社製)カラムを用いて、添付の説明書に従い、抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物を精製した。精製した抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物は、DG44/GM2株より得られた抗体組成物をDG44/GM2抗体、Ms705/GM2株より得られた抗体組成物をMs705/GM2抗体と名付けた。
[実施例3]
FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞が生産する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物の生物活性
1.抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物のガングリオシドGM2に対する結合活性(ELISA法)
実施例2の3項で精製したDG44/GM2抗体およびMs705/GM2抗体のガングリオシドGM2に対する結合活性を、以下のようにして測定した。
57.5ngのガングリオシドGM2(シグマ社製)を10ngのフォスファチジルコリン(シグマ社製)と5ngのコレステロール(シグマ社製)とを含む2mLのエタノール溶液に溶解した。この溶液20μLを96穴のELISA用プレート(グライナー社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、風乾後、1%BSA−PBS溶液を100μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させて残存する活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、実施例2の3項で調製したDG44/GM2抗体またはMs705/GM2抗体の各種希釈溶液を50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで各ウェルを洗浄後、1%BSA−PBS溶液で2000倍に希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(H&L)抗体溶液(American Qualex社製)を二次抗体溶液として50μL/ウェルで加え、室温で1時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液を50μL/ウェルで加えて発色させ、OD415を測定した。
第5図には、DG44/GM2抗体およびMs705/GM2抗体のガングリオシドGM2に対する結合活性を示した。両抗体はガングリオシドGM2に対して同等の結合活性を有していた。
2.抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物のin vitro細胞傷害活性(ADCC活性)
実施例2の3項で得られたDG44/GM2抗体およびMs705/GM2抗体のin vitro細胞傷害活性を以下のようにして測定した。
(1)標的細胞溶液の調製
RPMI1640−FCS(10)培地[10%FCSを含むRPMI1640培地(インビトロジェン社製)]で培養したヒト肺小細胞癌株SBC−3細胞(JCRB 0818)を、遠心分離操作及び懸濁によりRPMI1640−FCS(5)培地[5%FCSを含むRPMI1640培地(インビトロジェン社製)]で洗浄した後、RPMI1640−FCS(5)培地によって、2×10細胞/mLに調製し、標的細胞溶液とした。
(2)エフェクター細胞溶液の調製
健常人静脈血50mLを採取し、ヘパリンナトリウム(清水製薬社製)0.5mLを加え穏やかに混ぜた。これをLymphoprep(AXTS SHIELD社製)を用いて、添付の使用説明書に従い単核球層を分離した。RPMI1640−FCS(5)培地で3回遠心分離して洗浄後、同培地を用いて5×10細胞/mLの濃度で懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
(3)ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに上記(1)で調製した標的細胞溶液の50μL(1×10細胞/ウェル)を分注した。次いで(2)で調製したエフェクター細胞溶液を50μL(2.5×10細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細胞の比は25:1となる)添加した。更に、各種抗GM2ヒト型CDR移植抗体を各最終濃度0.1〜1000ng/mLとなるように加えて全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性を、CytoTox96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assay(Promega社製)を用いて、添付の説明書にしたがって吸光度データを取得することで測定した。標的細胞自然遊離の吸光度データは、エフェクター細胞溶液および抗体溶液の代わりに培地のみを用いて、また、エフェクター細胞自然遊離の吸光度データは、標的細胞溶液および抗体溶液の代わりに培地のみを用いて、上記と同様の操作を行うことで取得した。標的細胞全遊離の吸光度データは、抗体溶液、エフェクター細胞溶液の代わりに培地を用い、反応終了45分前に15μLの9% Triton X−100溶液を添加し、上記と同様の操作を行い、上清のLDH活性を測定することにより求めた。ADCC活性は次式により求めた。
細胞傷害活性={[検体の吸光度]−[エフェクター細胞自然遊離の吸光度]−[標的細胞自然遊離の吸光度]}/{[標的細胞全遊離の吸光度]−[標的細胞自然遊離の吸光度]}
第6図には、DG44/GM2抗体およびMs705/GM2抗体のヒト肺小細胞癌株SBC−3細胞に対する細胞傷害活性を示した。Ms705/GM2抗体はいずれの抗体濃度においてもDG44/GM2抗体よりも高いADCC活性を示し、最高細胞傷害活性値も高い値を示した。
[実施例4]
FUT8遺伝子ダブルノックアウト細胞が生産する抗GM2ヒト型CDR移植抗体組成物の単糖組成分析
実施例1の3項で精製したDG44/GM2抗体およびMs705/GM2抗体の中性糖・アミノ糖組成分析を、以下の様にして行った。
抗体を遠心濃縮機で減圧下乾固した後、2.0〜4.0mMのトリフルオロ酢酸溶液を加えて100℃、2〜4時間酸加水分解を行い、タンパク質から中性糖・アミノ糖を遊離した。トリフルオロ酢酸溶液を遠心濃縮機で除去し、脱イオン水に再溶解してDionex社製糖分析装置(DX−500)を用いて分析を行った。CarboPac PA−1カラム、CarboPac PA−1ガードカラム(Dionex社製)を用い、溶離液として10〜20mM水酸化ナトリウム−脱イオン水溶解液、洗浄液として500mM水酸化ナトリウム−脱イオン水溶解液を使用して、第1表に示した溶出プログラムで分析した。
Figure 2005035578
得られた溶出プロファイルの中性糖・アミノ糖成分のピーク面積から、N−アセチルグルコサミン比を4とした場合の各成分(フコース、ガラクトース、マンノース)の組成比を算出した。
第2表に各抗体の単糖組成比により計算される、全N−グリコシド結合複合型糖鎖に占める、糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖の割合を示した。DG44/GM2抗体ではフコースが結合していない糖鎖の割合が4%であった。一方、Ms705/GM2抗体ではフコースのピークは検出限界以下であったことから、フコースが結合していない糖鎖の割合はほぼ100%と見積もられた。
以上の結果より、Ms705/GM2抗体のN−グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンには、フコースが結合していないことが示された。
Figure 2005035578
[実施例5]
フコースが結合していない糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物の生物活性の解析
実施例3の2項において、Ms705/GM2抗体がDG44/GM2抗体よりも高いADCC活性を有することを示した(第6図)。本実施例では、本発明のフコースが結合していない糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物の優位性をさらに明らかにするため、フコースが結合した糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体が混合された抗体組成物との生物活性の比較を以下のようにして行った。
フコースが結合していない糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体からなるMs705/GM2抗体に、フコースが結合した糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体を混合させた場合の細胞傷害活性の変化を調べた。抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体のADCC活性は、以下のようにして測定した。
1.標的細胞溶液の調製
実施例3の2項の(1)に記載の方法に従って行った。
2.エフェクター細胞溶液の調製
実施例3の2項の(2)に記載の方法に従って単核球層を分雕し、RPMI1640−FCS(5)培地を用いて4×10細胞/mLの濃度で懸濁し、エフェクター細胞溶液とした。
3.ADCC活性の測定
96ウェルU字底プレート(Falcon社製)の各ウェルに、上記(1)で調製した標的細胞溶液を50μL(1×10細胞/ウェル)分注した。次いで(2)で調製したエフェクター細胞溶液を50μL(2×10細胞/ウェル、エフェクター細胞と標的細胞の比は20:1となる)添加した。更に、Ms705/GM2抗体およびDG44/GM2抗体をそれぞれ単独で、または両者を混合して加えて全量を150μLとし、37℃で4時間反応させた。反応後、プレートを遠心分離し、上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性をLDH−Cytotoxic Test Wako(和光純薬社製)を用いて添付の説明書に従い測定した。ADCC活性は実施例3の2項に記載の方法に従って算出した。
一定量のMs705/GM2抗体にDG44/GM2抗体を添加することで、一定量のフコース非結合型抗体を含み、かつフコース非結合型抗体の割合を変化させた抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物、即ち、一定量のMs705/GM2抗体に、Ms705/GM2抗体の0〜100倍量のDG44/GM2抗体を添加した抗ガングリオリドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物を調製し、該抗体組成物のADCC活性を測定した。
Ms705/GM2抗体にさらにMs705/GM2抗体を添加すると、総抗体量の増加にともなってADCC活性の上昇が観察された。一方、Ms705/GM2抗体にさらにDG44/GM2抗体を添加すると、総抗体濃度が増加するにも関わらず調製した抗体組成物のADCC活性は逆に低下した。このことは、フコースが結合した糖鎖を有する抗体分子が、フコースが結合していない糖鎖を有する抗体分子の活性を阻害することを示している。また、フコースが結合した糖鎖を有する抗体分子とフコースが結合していない糖鎖を有する抗体分子が混合された抗体組成物においても、フコースが結合していない糖鎖を有する抗体分子の割合が20%以上の抗体組成物では、該割合が20%未満の抗体組成物に比べ顕著に高いADCC活性を示した。さらに、Ms705/GM2抗体サンプルと、同じ量のMs705/GM2抗体に9倍量のDG44/GM2抗体を加えた抗体サンプルのADCC活性を測定した。Ms705/GM2抗体のADCC活性は、DG44/GM2抗体を加えることで大幅に低下した。Ms705/GM2抗体とDG44/GM2抗体の存在比が1対9のまま抗体組成物の抗体濃度を100倍に上昇させても、その1/100の抗体濃度のMs705/GM2抗体サンプルのADCC活性には及ばなかった。このことは、本発明のフコースが結合していない糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体分子のみからなる抗体組成物の医薬としての優位性を示している。
したがって、本発明のフコースが結合していない糖鎖を有する抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体組成物によって、これまでの抗ガングリオシドGM2ヒト型CDR移植抗体分子を含む抗体組成物では治癒できなかった患者を治療することができる。
配列番号22−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号23−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号24−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号25−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号26−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号27−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号28−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号29−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号30−人工配列の説明:抗体重鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号31−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号32−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号33−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号34−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号35−人工配列の説明:抗体軽鎖可変領域アミノ酸配列
配列番号36−人工配列の説明:合成DNA
配列番号37−人工配列の説明:合成DNA
配列番号38−人工配列の説明:合成DNA
配列番号39−人工配列の説明:合成DNA
配列番号40−人工配列の説明:合成DNA
配列番号41−人工配列の説明:合成DNA
配列番号42−人工配列の説明:合成DNA
配列番号43−人工配列の説明:合成DNA

Claims (48)

  1. ガングリオシドGM2に特異的に結合し、N−グリコシド結合複合型糖鎖をFc領域に有する遺伝子組換え抗体分子からなる組成物であって、N−グリコシド結合複合型糖鎖が該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンにフコースが結合していない糖鎖である抗体組成物。
  2. N−グリコシド結合複合型糖鎖が、該糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合していない糖鎖である、請求の範囲1に記載の抗体組成物。
  3. ガングリオシドGM2発現細胞に特異的に結合する請求の範囲1または2に記載の抗体組成物。
  4. ガングリオシドGM2発現細胞に対し細胞傷害活性を示す請求の範囲1〜3のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  5. ガングリオシドGM2発現細胞に対し、非ヒト動物由来ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体よりも高い細胞傷害活性を示す請求の範囲1〜4のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  6. 細胞傷害活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性である請求の範囲4または5に記載の抗体組成物。
  7. 細胞傷害活性が補体依存性細胞傷害(CDC)活性である請求の範囲4または5に記載の抗体組成物。
  8. それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、請求の範囲1〜7のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  9. それぞれ配列番号17、18および19で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、請求の範囲1〜7のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  10. それぞれ配列番号14、15および16で示されるアミノ酸配列からなる抗体分子重鎖(H鎖)可変領域(V領域)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3、およびそれぞれ配列番号17、18および19で示されるアミノ酸配列からなる抗体軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、CDR3を含む、請求の範囲1〜9のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  11. 遺伝子組換え抗体がヒト型キメラ抗体またはヒト型CDR移植抗体である請求の範囲1〜10のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  12. ヒト型キメラ抗体がガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、請求の範囲11に記載の抗体組成物。
  13. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲12に記載の抗体組成物。
  14. 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲12に記載の抗体組成物。
  15. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号20で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲12〜14のいずれか1項に記載のヒト型キメラ抗体組成物。
  16. ヒト型CDR移植抗体がガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)を含む、請求の範囲11に記載の抗体組成物。
  17. ガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のフレームワーク領域(FR)を含む、請求の範囲16に記載の抗体組成物。
  18. ガングリオシドGM2に特異的に結合するモノクローナル抗体の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)および軽鎖(L鎖)V領域の相補性決定領域(CDR)とヒト抗体のH鎖V領域およびL鎖V領域のフレームワーク領域(FR)、ならびにヒト抗体のH鎖定常領域(C領域)およびL鎖C領域を含む、請求の範囲16または17に記載の抗体組成物。
  19. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  20. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgのうち少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  21. 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  22. 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  23. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列、または配列番号22で示されるアミノ酸配列のうち、38番目のArg、40番目のAla、43番目のGlnおよび44番目のGlyから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のVal、35番目のTyr、48番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜19または21に記載の抗体組成物。
  24. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号24で示されるアミノ酸配列、または配列番号24で示されるアミノ酸配列のうち、15番目のval、35番目のTyr、46番目のLeu、59番目のSer、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、72番目のPheおよび76番目のSerから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18、20または21に記載の抗体組成物。
  25. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号23で示されるアミノ酸配列、または配列番号23で示されるアミノ酸配列のうち、67番目のArg、72番目のAla、84番目のSerおよび98番目のArgから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号25で示されるアミノ酸配列、または配列番号25で示されるアミノ酸配列のうち、4番目のMet、11番目のLeu、15番目のVal、35番目のTyr、42番目のAla、46番目のLeu、69番目のAsp、70番目のPhe、71番目のThr、77番目のLeuおよび103番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜18、20または22のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  26. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、それぞれ配列番号22、26、27、28、29および30で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求の範囲16〜20、23〜25のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  27. 抗体分子の軽鎖(L鎖)可変領域(V領域)が、それぞれ配列番号31、32、33、34および35で示されるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む請求の範囲16〜18、21〜25のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  28. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22、26、27、28、29、30で示されるから選ばれるアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含み、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が、配列番号31、32、33、34および35で示されるアミノ酸配列から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列から選ばれるアミノ酸配列を含む請求の範囲16〜27のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  29. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号26で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号31または32で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲16〜19、21、23、26〜28のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  30. 抗体分子の重鎖(H鎖)可変領域(V領域)が、配列番号22で示されるアミノ酸配列を含み、かつ、抗体分子の軽鎖(L鎖)V領域が配列番号32または35で示されるアミノ酸配列を含む請求の範囲16〜19、21〜23、26〜28のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  31. ガングリオシドGM2に特異的に結合する抗体分子をコードするDNAを宿主細胞に導入して得られる、請求の範囲1〜30のいずれか1項に記載の抗体組成物を生産する形質転換体。
  32. 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素を失活するようにゲノムが改変された細胞である、請求の範囲31に記載の形質転換体。
  33. 宿主細胞が、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素、またはN−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素のゲノム上の対立遺伝子のすべてがノックアウトされた細胞である、請求の範囲31に記載の形質転換体。
  34. 細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素が、GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)またはGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ(Fx)から選ばれる酵素である、請求の範囲32または33に記載の形質転換体。
  35. GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求の範囲34に記載の形質転換体。
    (a)配列番号1で表される塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号1で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  36. GDP−マンノース4,6−デヒドラターゼが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる蛋白質である、請求の範囲34に記載の形質転換体。
    (a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b)配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質;
    (c)配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ活性を有する蛋白質。
  37. GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼが、以下の(a)および(b)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求の範囲34に記載の形質転換体。
    (a)配列番号3で表される塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  38. GDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼが、以下の(a)〜(c)からなる群から選ばれる蛋白質である、請求の範囲34に記載の形質転換体。
    (a)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質;
    (c)配列番号4で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつGDP−4−ケト−6−デオキシ−D−マンノース−3,5−エピメラーゼ活性を有する蛋白質。
  39. N−グリコシド結合複合型糖鎖還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素がα1,6−フコシルトランスフェラーゼである請求の範囲32または33に記載の形質転換体。
  40. α1,6−フコシルトランスフェラーゼが、以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるDNAがコードする蛋白質である、請求の範囲39に記載の形質転換体。
    (a)配列番号5で表される塩基配列からなるDNA;
    (b)配列番号6で表される塩基配列からなるDNA;
    (c)配列番号5で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA;
    (d)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  41. α1,6−フコシルトランスフェラーゼが、以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる蛋白質である、請求の範囲39に記載の形質転換体。
    (a)配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (b)配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    (c)配列番号7で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (d)配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (e)配列番号7で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質;
    (f)配列番号8で表されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,6−フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質。
  42. 形質転換体がFERM BP−8470である請求の範囲41に記載の形質転換体。
  43. 宿主細胞が、下記の(a)〜(i)からなる群から選ばれる細胞である請求の範囲31〜42のいずれか1項に記載の形質転換体。
    (a)チャイニーズハムスター卵巣組織由来CHO細胞;
    (b)ラットミエローマ細胞株YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞;
    (c)マウスミエローマ細胞株NSO細胞;
    (d)マウスミエローマ細胞株SP2/0−Agl4細胞;
    (e)シリアンハムスター腎臓組織由来BHK細胞;
    (f)抗体を産生するハイブリドーマ細胞;
    (g)ヒト白血病細胞株ナマルバ細胞;
    (h)胚性幹細胞;
    (i)受精卵細胞。
  44. 請求の範囲31〜43のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に抗体組成物を生成蓄積させ、該抗体組成物を採取し、精製する、請求の範囲1〜30のいずれか1項に記載の抗体組成物の製造方法。
  45. 請求の範囲44に記載の製造方法により得られる、請求の範囲1〜32のいずれか1項に記載の抗体組成物。
  46. 請求の範囲1〜30および45のいずれか1項に記載の抗体組成物を有効成分として含有する医薬。
  47. 請求の範囲1〜30および45のいずれか1項に記載の抗体組成物を有効成分として含有するガングリオシドGM2関連疾患の治療薬。
  48. ガングリオシドGM2関連疾患が癌である請求の範囲47に記載の治療薬。
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