JPWO2008056516A1 - 2−シアノアクリレート系生体用接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】所定の硬さを有し、適度に柔軟であり、且つ安全性が高く、十分な分解性を有する2−シアノアクリレート系生体用接着剤を提供する。【解決手段】本発明の2−シアノアクリレート系生体用接着剤は、硬化物のショアA硬度が15〜90であり、且つ加水分解試験におけるホルムアルデヒドの放出量が500ppm以下である。この2−シアノアクリレート系生体用接着剤は、1分子中にエーテル結合を少なくとも1個有するものを含有する。

Description

本発明は、2−シアノアクリレート系生体用接着剤に関する。更に詳しくは、本発明は、硬化物が所定の硬度を有し、適度に柔軟であり、且つ加水分解によるホルムアルデヒド放出量が適量であり、安全性が高く、併せて十分な分解性を有する、1分子中にエーテル結合を少なくとも1個有する2−シアノアクリレート系生体用接着剤に関する。また、更に所定の剛性パラメータを有し、特に生体血管同士又は生体血管と人工血管との接合、及び血管瘤充填剤、血管塞栓剤、骨補填剤等の用途において有用な2−シアノアクリレート系生体用接着剤に関する。
2−シアノアクリレート化合物としては各種のものが知られており、この2−シアノアクリレート化合物が医療用途などにおける接着剤として有用であることも知られている。例えば、エチル−2−シアノアクリレート、ブチル−2-シアノアクリレート、2−オクチル−2−シアノアクリレート等のアルキルシアノアクリレートが体外使用の皮膚用の接着剤として利用されている。しかし、体内用としては、硬化物が硬い、分解が遅い等の問題がある。例えば、エチル−2−シアノアクリレート及びブチル−2-シアノアクリレートを用いた場合は、硬化物が硬く、一方、2−オクチル−2−シアノアクリレートを用いたときは、硬化物が比較的柔らかいものの、分解は遅い。
上記のように硬化物が硬いという問題を有するシアノアクリレート系接着剤の硬化物に柔軟性を付与するため、可塑剤を配合する(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)、特定の柔軟な重合体を配合する(例えば、特許文献3参照。)、多官能性化合物を配合する(例えば、特許文献4、特許文献5参照。)、及びアルコキシアルキルシアノアクリレートを配合する(例えば、特許文献6、特許文献7参照。)等の各種の方法が知られている。また、硬化物に柔軟性を付与し、且つ分解を促進するため、生分解性ポリマーを配合する(例えば、特許文献8参照)ことも知られている。
更に、エトキシエチルシアノアクリレート化合物を含有する接着剤を外科用途に用いることも知られている(例えば、非特許文献1参照。)、また、外科用途に用いられる接着剤に含有される多種類のアルコキシシアノアクリレート(例えば、特許文献2参照)、イソプロポキシエチルシアノアクリレート及びメトキシブチルシアノアクリレート(例えば、特許文献9参照)、アルキルエステルシアノアクリレート(例えば、特許文献10参照)も知られており、特許文献10には、2−シアノアクリレート化合物の併用による分解の促進についても記載されている。
特開平2−34678号公報 国際公開WO2002/053666号公報 ヨーロッパ特許公開第0530626号公報 国際公開WO1994/011454号公報 特開平6−145606号公報 米国特許第4321180号明細書 米国特許第4364876号明細書 米国特許第6103778号明細書 人工臓器、1989、18、409−413 国際公開WO2002/009785号公報 米国特許第3995641号明細書
しかし、上記のように可塑剤等を添加する方法では、硬化物に接着初期の柔軟性を付与することはできるものの、体内埋植後に可塑剤が徐々にブリードして硬くなってしまうことがあるという問題がある。また、起炎性を低下させるため、ホルムアルデヒド放出量が更に抑えられ、且つより十分な分解性を有する硬化物が得られる接着剤であることが必要とされている。
本発明は、上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、硬化物が所定の硬度を有し、適度に柔軟であり、且つ加水分解によるホルムアルデヒド放出量が適量であり、安全性が高く、併せて十分な分解性を有する2−シアノアクリレート系生体用接着剤を提供することを目的とする。また、更に所定の剛性パラメータを有し、特に生体血管同士又は生体血管と人工血管との接合、及び血管瘤充填剤、血管塞栓剤、骨補填剤等の体内使用において有用な2−シアノアクリレート系生体用接着剤を提供することを目的とする。
本発明は以下のとおりである。
1.1分子中にエーテル結合を少なくとも1個有する2−シアノアクリレート化合物を含有し、硬化物のショアA硬度が15〜90であり、且つ加水分解試験におけるホルムアルデヒド放出量が500ppm以下であることを特徴とする2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
2.塗膜厚さが100〜150μmのとき、硬化物の剛性パラメータが10〜65である上記1.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
3.下記式(1)により表される化合物及び下記式(2)により表される化合物のうちの少なくとも一方を含有する上記1.又は2.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
Figure 2008056516
[上記式(1)におけるRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、該Rの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数5〜8のアルキル基であり、該Rの炭素数が3又は4の場合、該Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基である。]
Figure 2008056516
[上記式(2)におけるR及びRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、該R及び該Rの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基であり、該R及び該Rの炭素数が3又は4の場合、該Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
4.上記R、上記R及び上記Rの炭素数が2又は3である上記3.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
5.上記式(1)により表される化合物を含有し、上記Rの炭素数が2であり、上記Rの炭素数が6〜8である上記3.又は4.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
6.上記式(1)により表される化合物を含有し、上記Rの炭素数が3であり、上記Rの炭素数が4〜8である上記3.又は4.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
7.上記式(2)により表される化合物を含有し、上記R及び上記Rの炭素数が3であり、上記Rの炭素数が3〜5である上記3.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
8.下記式(1)により表される化合物及び下記式(2)により表される化合物を含有する上記1.又は2.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
Figure 2008056516
[上記式(1)におけるRはエチレン基又はプロピレン基であり、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
Figure 2008056516
[上記式(2)におけるR及びRはプロピレン基であり、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
9.上記Rがプロピレン基であり、上記R及び上記Rの炭素数が3〜5である上記8.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
10.電子線滅菌法、γ線滅菌法、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法のうちの少なくとも1種の滅菌処理を施された上記1.乃至9.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
11.生体組織同士又は生体組織と人工補綴物との接合、若しくは接合補助に用いられる上記1.乃至10.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
12.上記生体組織が、皮膚、心筋、管腔臓器及び実質臓器のうちの少なくとも1種である上記11.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
13.上記人工補綴物が、人工血管、止血材、骨ピン及び縫合糸のうちの少なくとも1種である上記11.又は12.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
14.血管瘤に充填されて用いられる上記1.乃至13.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
15.上記血管瘤が発生した血管が脳血管である上記14.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
16.血管の塞栓に用いられる上記1.乃至13.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
17.上記血管が肝血管である上記16.に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
18.骨補填剤として用いられる上記1.乃至13.のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
本発明の2−シアノアクリレート系生体用接着剤は、硬化物が特定のショアA硬度を有し、且つホルムアルデヒド放出量が少ないため、適度に柔軟であり、安全性が高く、併せて硬化物の分解による生体への吸収も十分になされ、生体用接着剤として有用である。
また、塗膜厚さが100〜150μmのとき、硬化物の剛性パラメータが10〜65である場合は、生体血管同士又は生体血管と人工血管との接合等において特に有用な生体用接着剤とすることができる。
更に、式(1)により表される化合物及び式(2)により表される化合物のうちの少なくとも一方を含有する場合は、容易に、適度に柔軟であり、安全性が高く、十分に分解して生体に吸収され、且つ所定の剛性パラメータを有する硬化物が形成される生体用接着剤とすることができる。
また、R、R及びRの炭素数が2又は3である場合は、より容易に、硬化物が柔軟であり、安全性が高く、且つ十分に分解して吸収される生体用接着剤とすることができる。
更に、式(1)により表される化合物を含有し、Rの炭素数が2であり、Rの炭素数が6〜8である場合、及び式(1)により表される化合物を含有し、Rの炭素数が3であり、Rの炭素数が4〜8である場合は、ホルムアルデヒド放出量がより少なく、より安全性が高く、且つ十分に分解して生体に吸収される硬化物が形成される生体用接着剤とすることができる。
また、式(2)により表される化合物を含有し、R及びRの炭素数が3であり、Rの炭素数が3〜5である場合は、ショアA硬度がより低く、より柔軟な硬化物が形成される生体用接着剤とすることができる。
本発明の他の態様の2−シアノアクリレート系生体用接着剤は、硬化物のショアA硬度、ホルムアルデヒド放出量及び剛性パラメータを容易に調整することができ、所定の柔軟性と安全性とを併せて有し、且つ十分に分解して生体に吸収される硬化物が形成される生体用接着剤とすることができる。
また、電子線滅菌法、γ線滅菌法、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法のうちの少なくとも1種の滅菌処理を施された場合は、より安全性の高い生体用接着剤とすることができる。
更に、生体組織同士又は生体組織と人工補綴物との接合、若しくは接合補助に用いられる場合は、これらを十分な柔軟性を有する硬化物により接合することができ、且つ安全性も高い。
また、生体組織が、皮膚、心筋、管腔臓器及び実質臓器のうちの少なくとも1種である場合、及び人工補綴物が、人工血管、止血材、骨ピン及び縫合糸のうちの少なくとも1種である場合は、これらの生体組織及び人工補綴物を十分な柔軟性を有する硬化物により接合することができ、且つ安全性も高い。
また、2−シアノアクリレート系生体用接着剤が、血管瘤、特に脳血管に発生した血管瘤に充填されて用いられる場合は、血管瘤充填剤として十分に機能し、且つ安全性も高い。
更に、2−シアノアクリレート系生体用接着剤が、血管、特に肝血管の塞栓に用いられる場合は、血管塞栓剤として十分に機能し、且つ安全性も高い。
また、2−シアノアクリレート系生体用接着剤が、骨補填剤として用いられる場合は、この用途において十分に機能し、且つ安全性も高い。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の2−シアノアクリレート系生体用接着剤は、硬化物のショアA硬度が15〜90であり、且つ加水分解試験におけるホルムアルデヒドの放出量が500ppm以下であることを特徴とする。
この生体用接着剤は、硬化物の硬度が低いため優れた柔軟性を有し、且つ硬化物を加水分解させたときのホルムアルデヒド放出量が適量であるため、優れた安全性を有するとともに十分に分解して生体に吸収される。
硬化物のショアA硬度は、15〜90、特に50〜90、更に50〜70とすることができる。また、ショアA硬度が15〜90であり、且つショアD硬度が40以下、特に30以下であることが好ましい。更に、ホルムアルデヒド放出量は、500ppm以下、特に300ppm以下、更に200ppm以下とすることができ、150ppm以下、特に100ppm以下、更に50ppm以下(通常、40ppm以上)とすることもできる。即ち、ホルムアルデヒド放出量は、40〜500ppmとすることができ、40ppmから上記の各々の上限値までとすることもできる。
ホルムアルデヒドは硬化物が分解して放出され、この放出量が多量であると、起炎性が陽性になる等、安全面で問題となるが、硬化物は分解して生体に吸収されるため、体内使用の接着剤としては有利である。従って、ホルムアルデヒド放出量は少ないほどよいというものではなく、硬化物が分解し生体に吸収されるという面では、生体に無毒、又は少なくとも毒性が極めて低い範囲でホルムアルデヒドが放出される、即ち、硬化物が分解することが好ましい。この意味での下限値が上記の40ppmである。
尚、ショアA硬度、ショアD硬度及びホルムアルデヒド放出量は、それぞれ後記の実施例において詳述した方法により測定することができる。
また、本発明の生体用接着剤は、所定のショアA硬度及びホルムアルデヒド放出量を有し、且つ塗膜厚さが100〜150μmのときの硬化物の剛性パラメータが10〜65であることが好ましい。この剛性パラメータは10〜60、特に10〜40、更に10〜30であることがより好ましく、10〜20、特に10〜15とすることもできる。この剛性パラメータが10〜65であれば、優れた柔軟性と安全性とを併せて有し、特に血管等の心臓の拍動により寸法が変化する組織に用いられた場合に、硬化物が寸法変化に十分に追従することができ、接着箇所の端部等における硬化物の破壊(亀裂の発生等)などを防止、又は少なくとも抑えることができる。
尚、剛性パラメータは、後記の実施例において詳述した方法により測定することができる。
上記のように特定のショアA硬度とホルムアルデヒド放出量とを有する硬化物、及び更に特定の剛性パラメータを有する硬化物が得られる2−シアノアクリレート系生体用接着剤は特に限定されないが、前記式(1)により表される化合物[以下、「前記式(1)の化合物」という。]及び前記式(2)により表される化合物[以下、「前記式(2)の化合物」という。]のうちの少なくとも一方を含有する2−シアノアクリレート系生体用接着剤が挙げられる。この生体用接着剤には、前記式(1)の化合物及び前記式(2)の化合物が、各々1種のみ含有されていてもよく、それぞれ2種以上含有されていてもよい。
前記式(1)におけるRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数5〜8のアルキル基であり、Rの炭素数が3又は4の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基であることが好ましい。R、Rが上記の範囲内にあれば、硬度(ショアA硬度及びショアD硬度の意味であり、以下、同様である。)が低く、ホルムアルデヒド放出量が少なく、且つ所定の剛性パラメータを有する硬化物が形成され、柔軟性と安全性及び十分な分解性とを併せて有する生体用接着剤とすることができる。また、前記式(2)におけるR及びRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R及びRの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基であり、R及びRの炭素数が3又は4の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基であることが好ましい。R、R、Rが上記の範囲内にあれば、硬度が低く、ホルムアルデヒド放出量が適量であり、且つ所定の剛性パラメータを有する硬化物が形成され、柔軟性と安全性及び十分な分解性とを併せて有する生体用接着剤とすることができる。
更に、前記式(1)におけるR及び前記式(2)におけるR、Rが、いずれも2又は3であることがより好ましい。アルキレン基の炭素数がいずれも2又は3であれば、より優れた柔軟性と安全性及び十分な分解性とを併せて有する生体用接着剤とすることができる。
本発明の生体用接着剤は、前記式(1)の化合物を含有し、Rの炭素数が2であり、Rの炭素数が6〜8、特に7〜8であることがより好ましい。このようにR、Rが特定の炭素数であるときは、ホルムアルデヒド放出量が適量であり、優れた安全性及び十分な分解性を有する生体用接着剤とすることができる。この場合のホルムアルデヒド放出量は、500ppm以下、特に300ppm以下、更に150ppm以下(通常、40ppm以上)とすることができる。
また、本発明の生体用接着剤は、前記式(1)の化合物を含有し、Rの炭素数が3であり、Rの炭素数が4〜8であることがより好ましい。このようにR、Rが特定の炭素数であるときは、ホルムアルデヒド放出量が適量であり、優れた安全性及び十分な分解性を有する生体用接着剤とすることができる。この場合のホルムアルデヒド放出量は、500ppm以下、特に300ppm以下、更に250ppm以下(通常、40ppm以上)とすることができる。
更に、本発明の生体用接着剤は、前記式(2)の化合物を含有し、R、Rの炭素数が3であり、Rの炭素数が3〜5であることがより好ましい。このようにR、R、Rが特定の炭素数であるときは、硬度がより低く、且つ剛性パラメータがより小さく、特に優れた柔軟性を有する生体用接着剤とすることができる。この場合のショアA硬度は、20〜70、特に30〜70、更に40〜70とすることができる。更に、剛性パラメータは15以下とすることができる。
この生体用接着剤では、前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物とを併せて含有させることができる。このように、前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物とを含有させれば、各々の質量割合を変化させることにより、硬化物の硬度とホルムアルデヒド放出量とを所定範囲に調整することができる。更に、剛性パラメータを容易に小さくすることもできる。この前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物とを併せて含有する生体用接着剤では、前記式(1)の化合物と前記式(2)の化合物のそれぞれの種類は特に限定されず、どのような組み合わせであってもよい。
また、前記式(1)の化合物と前記式(2)の化合物とを含有する場合、R、R及びRの各々の炭素数が同数であることが好ましい。更に、R及びRのそれぞれの炭素数も同数であることがより好ましい。このように、前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物の各々のアルキレン基の炭素数、更にはアルキレン基及びアルキル基のそれぞれの炭素数が同数であれば、混合し易く、より均質な生体用接着剤とすることができ、且つ硬化物の硬度及びホルムアルデヒド放出量の調整も容易であり、剛性パラメータを調整することもできる。
更に、前記式(1)の化合物と前記式(2)の化合物とを含有する場合、Rがエチレン基又はプロピレン基、R及びRがプロピレン基であり、且つR及びRのそれぞれの炭素数が3〜8であることがより好ましい。また、この場合、Rがプロピレン基であり、且つR及びRの炭素数が3〜5であることが特に好ましい。このように、前記式(1)の化合物と前記式(2)の化合物とが特定の炭素数を有するときは、硬化物の硬度及びホルムアルデヒド放出量を容易に所定範囲とすることができ、剛性パラメータを所定範囲とすることもできる。そのため、優れた柔軟性と安全性及び十分な分解性を併せて有する生体用接着剤とすることができる。この場合のショアA硬度は、30〜70、特に40〜70、ホルムアルデヒド放出量は40〜350ppm、特に100〜250ppm、剛性パラメータは12〜16とすることができる。
生体用接着剤が、前記式(1)の化合物と前記式(2)の化合物とを含有する場合、各々の化合物の含有量は特に限定されず、任意の質量割合とすることができる。両化合物が含有されることによる作用、効果を十分に得るためには、合計含有量を100質量%とした場合に、それぞれの化合物の含有量が各々5〜95質量%であることが好ましい。この質量割合は、それぞれ10〜90質量%、特に15〜85質量%、更に20〜80質量%であることがより好ましい。前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物との質量割合は、各々の化合物のみが含有されるときの、硬化物の硬度、ホルムアルデヒド放出量及び剛性パラメータを勘案して設定することが好ましい。
この生体用接着剤には、所定性能が損なわれない範囲で、前記式(1)の化合物及び前記式(2)の化合物を除く他の成分が含有されていてもよい。生体用接着剤に、前記式(1)の化合物及び前記式(2)の化合物を除く他の成分が含有される場合、この他の成分としては、貯蔵安定性を向上させるための安定剤、医療的有用性を向上させるための増粘剤、硬化を促進するための硬化促進剤等が挙げられる。また、必要に応じて可塑剤、チクソトロピィ性付与剤、染料等を配合することもできる。この他の成分が含有されるとき、他の成分の合計含有量は、生体用接着剤を100質量%とした場合に、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下、更に5質量%以下とすることもできる。
安定剤としては、二酸化硫黄、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、プロパンサルトン、三フッ化ホウ素錯体等のアニオン重合禁止剤、及びハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,2−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のラジカル重合禁止剤を用いることができる。安定剤は、前記式(1)の化合物及び前記式(2)の化合物の各々の含有量、又は両化合物が含有されるときは合計含有量を100質量部とした場合に、アニオン重合禁止剤の場合は、1〜200質量ppm、特に10〜100質量ppm配合して用いることができる。また、ラジカル重合禁止剤の場合は、100〜10000質量ppm、特に500〜5000質量ppm配合して用いることができる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、ポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系重合体又は共重合体、アセチルセルロース等のセルロース誘導体、及びアクリルゴムなどが挙げられる。増粘剤は、前記式(1)の化合物及び前記式(2)の化合物の各々の含有量、又は両化合物が含有されるときは合計含有量を100質量部とした場合に、1〜20質量部、特に2〜10質量部配合して用いることができる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤としては、ポリエチレングリコール誘導体、クラウンエーテル誘導体、及びカリックスアレン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は貯蔵安定性に影響を与えない範囲の質量割合で配合して用いることができる。これらの硬化促進剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の生体用接着剤は、各種の方法により滅菌処理し、その後、各種の用途に供される。この滅菌処理の方法は特に限定されず、例えば、電子線滅菌法、γ線滅菌法、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法等が挙げられる。滅菌処理は、これらの各種の方法のうちの1種により施されてもよく、必要に応じて2種以上の方法により滅菌処理してもよい。例えば、この生体用接着剤の容器がガラスアンプルである場合は、ガラスアンプルに封入した接着剤を乾熱滅菌する、又はろ過滅菌して無菌充填する。この生体用接着剤の容器がポリオレフィン製である場合は、ろ過無菌して無菌充填する。これらの容器の外側はエチレンオキサイドガス滅菌を施して滅菌することができる。また、このエチレンオキサイドガス滅菌のところを、電子線滅菌、或いはγ線滅菌に代えても滅菌を施すことができる。
この生体用接着剤は、生体組織同士又は生体組織と人工補綴物との接合、若しくは接合補助に用いられる。この接合補助とは、針糸を用いた縫合部のシール性を高める、又は吻合補強するという意味である。
生体組織は特に限定されず、例えば、皮膚、心筋、管腔臓器及び実質臓器等が挙げられる。管腔臓器としては、血管、呼吸器[上気道(鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭)から下気道(気管、気管支)までの空気の通り道]、消化管(口腔から肛門に至る一連の器官等)、尿路系(腎盂、尿管、膀胱、尿道)等が挙げられる。実質臓器としては、骨、腎臓、消化器(肝臓、脾臓)、免疫器官(胸腺、リンパ節)等が挙げられる。
また、人工補綴物も特に限定されず、例えば、人工血管、止血材、骨ピン及び縫合糸等が挙げられる。
尚、本発明の所定の剛性パラメータを有する生体用接着剤は、生体血管同士、又は生体血管と人工血管との吻合補助、更に心臓切開部の吻合補助等、繰り返し運動している部位の接合、若しくは接合補助において特に有用である。
この生体用接着剤は、安全性が高く、血管瘤充填用2−シアノアクリレート系生体用接着剤として有用であり、2−シアノアクリレート系生体用接着剤を、血管瘤が発生した血管に充填する使用方法により血管瘤充填剤として用いることができる。この血管は特に限定されないが、血管瘤の発生が多くみられる脳血管が代表的なものである。また、この生体用接着剤は、血管塞栓用2−シアノアクリレート系生体用接着剤としても有用であり、2−シアノアクリレート系生体用接着剤を、血管内の疾患部に留置し、塞栓する使用方法により血管塞栓剤として用いることができる。この血管は特に限定されないが、肝血管等が代表的なものである。更に、この生体用接着剤は、骨補填用2−シアノアクリレート系生体用接着剤としても有用であり、2−シアノアクリレート系生体用接着剤を、疾患部に埋入し、新生骨を形成させる使用方法により骨補填剤として用いることができる。
本発明の2−シアノアクリレート系生体用接着剤の製造方法は特に限定されない。例えば、前記の特定の2−シアノアクリレート化合物を含有する生体用接着剤の場合、先ず、シアノ酢酸とアルコールとのエステル化反応等により生成したシアノ酢酸エステルを、溶媒中、触媒の存在下に反応させて縮合させる。触媒としてはアミン又は塩基を用いることができ、アミンとしては、ピペリジン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、モルホリン等が挙げられ、塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムアルコキシド、二級アミンの塩等が挙げられる。触媒は、シアノ酢酸エステルに対して0.001〜10モル、好ましくは0.01〜1モルの範囲で用いられる。溶媒としては、トルエン、酢酸エチル等が用いられる。反応温度は溶媒を還流させることができる温度とすることができる。
その後、縮合液から溶媒を留去し、次いで、五酸化リン、リン酸、縮合リン酸等を、溶媒を留去した縮合物に対して0.01〜10質量%、特に0.5〜3質量%添加し、140〜250℃に加温して解重合させる。この解重合で生成した粗2−シアノアクリレート化合物を蒸留し、純度を高め、生体用接着剤に用いる2−シアノアクリレート化合物を得ることができる。
このようにして得られる2−シアノアクリレート化合物に前記の安定剤等を配合し、2−シアノアクリレート系生体用接着剤とすることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]シアノアクリレートに安定剤を配合した生体用接着剤の製造
(1)実施例1〜8
実施例1
シアノ酢酸(立山化成社製)3モルに、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤社製 ヘキシルグリコール、HeG)3.15モル、トルエン2.4モル、及び硫酸0.12モルを添加し、還流させ、共沸脱水させながら12時間反応させてエステル化した。その後、未反応のシアノ酢酸及び硫酸を苛性ソーダにより中和し、有機層を硫酸マグネシウムにより脱水し、次いで、脱溶媒し、蒸留して、沸点114℃/0.18mmHgの2−ヘキトキシエチル−2−シアノアセテートを得た。収率は80%であった。
その後、上記のようにして得られた2−ヘキトキシエチル−2−シアノアセテート0.8モルに、パラホルムアルデヒド0.84モル、トルエン200mL、及びピペリジン0.3mLを添加し、還流させ、共沸脱水させながら12時間反応させて縮合させた。次いで、縮合液を1質量%濃度のパラトルエンスルホン酸水溶液及び飽和食塩水により洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにより脱水し、その後、溶媒を留去した。次いで、五酸化二リン及びハイドロキノンを各々1質量%添加し、圧力0.1〜3.0mmHg、温度150〜190℃で解重合させ、蒸留して、沸点115℃/0.53mmHgの2−ヘキトキシエチル−2−シアノアクリレート(表1では「EGH」と略記する。)を得た。収率は17%であった。その後、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例2
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製 2エチルヘキシルグリコール、EHG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点111℃/0.11mmHgの2−(2−エチルヘキトキシ)エチル−2−シアノアセテートを得た。収率は80%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点114℃/0.19mmHgの2−(2−エチルヘキトキシ)エチル−2−シアノアクリレート(表1、表5では「EGEH」と略記する。)を得た。収率は28%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例3
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製 ブチルジグリコール、BDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点136℃/1.88mmHgの2−(2−ブトキシエトキシ)エチル−2−シアノアセテートを得た。収率は80%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点133℃/0.38mmHgの2−(2−ブトキシエトキシ)エチル−2−シアノアクリレート(表1では「DEGB」と略記する。)を得た。収率は20%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例4
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製 ブチルプロピレングリコール、BFG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点103℃/0.38mmHgの2−ブトキシイソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は76%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点95℃/0.053mmHgの2−ブトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(表1、表5では「PGB」と略記する。)を得た。収率は38%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例5
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤社製 ヘキシルプロピレングリコール、HeFG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点125℃/0.90mmHgの2−ヘキトキシイソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は78%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点114℃/0.22mmHgの2−ヘキトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(表1では「PGH」と略記する。)を得た。収率は19%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例6
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製 2エチルヘキシルプロピレングリコール、EHFG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点124℃/0.53mmHgの2−(2−エチルヘキトキシ)イソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は76%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点120℃/0.22mmHgの2−(2−エチルヘキトキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(表1では「PGEH」と略記する。)を得た。収率は13%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例7
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(日本乳化剤社製 プロピルプロピレンジグリコール、PFDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点143℃/3.00mmHgの2−(2−プロポキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は72%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点125℃/0.22mmHgの2−(2−プロポキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(表1、表5では「DPGP」と略記する。)を得た。収率は24%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例8
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジプロピレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製 ブチルプロピレンジグリコール、BFDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点132℃/2.25mmHgの2−(2−ブトキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は75%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点124℃/0.22mmHgの2−(2−ブトキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(表1では「DPGB」と略記する。)を得た。収率は20%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
実施例9〜13
後記の比較例9で得られた2−プロポキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(PGP)と、実施例7で得られた2−(2−プロポキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(DPGP)とを、表1に記載の質量割合で混合した混合物からなる生体用接着剤を性能評価試験に供した(実施例9)。また、実施例4で得られた2−ブトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(PGB)と、実施例7で得られたDPGPとを、表1に記載の質量割合で混合した混合物からなる生体用接着剤を性能評価試験に供した(実施例10)。更に、実施例4で得られたPGBと、実施例8で得られた2−(2−ブトキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(DPGB)とを、表1に記載の質量割合で混合した混合物からなる生体用接着剤を性能評価試験に供した(実施例11〜13)。
以上、実施例1〜8における各々の2−シアノアクリレート化合物のアルキレン基及びアルキル基の炭素数、及び実施例9〜13の前記式(1)の化合物と、前記式(2)の化合物とを併せて含有するときの、それぞれの2−シアノアクリレート化合物の種類と質量割合を表1に記載する。
Figure 2008056516
(2)比較例1〜13
比較例1
2−エトキシエチル−2−シアノアセテートを用いた他は、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点102℃/3.0mmHgの2−エトキシエチル−2−シアノアクリレート(表2では「EGE」と略記する。)を得た。収率は70%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例2
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(日本乳化剤社製 イソプロピルグリコール、iPG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点109℃/2.25mmHgの2−イソプロポキシエチル−2−シアノアセテートを得た。収率は92%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点92℃/0.075mmHgの2−イソプロポキシエチル−2−シアノアクリレート(表2では「EGiP」と略記する。)を得た。収率は36%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例3
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤社製 ブチルグリコール、BG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点106℃/2.25mmHgの2−ブトキシエチル−2−シアノアセテートを得た。収率は89%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点95℃/0.075mmHgの2−ブトキシエチル−2−シアノアクリレート(表2では「EGB」と略記する。)を得た。収率は32%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例4
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジエチレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製 メチルジグリコール、MDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点146℃/2.78mmHgの2−(2−メトキシ)エトキシエチル−2−シアノアセテートを得た。収率は83%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点93℃/0.075mmHgの2−(2−メトキシ)エトキシエチル−2−シアノアクリレート(表2では「DEGM」と略記する。)を得た。収率は46%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例5
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジエチレングリコールモノエチルエーテル(東京化成社製)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点128℃/2.78mmHgの2−(2−エトキシエトキシ)エチル−2−シアノアセテートを得た。収率は80%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点93℃/0.068mmHgの2−(2−エトキシエトキシ)エチル−2−シアノアクリレート(表2では「DEGE」と略記する。)を得た。収率は54%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例6
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(日本乳化剤社製 イソプロピルジグリコール、iPDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点140℃/2.03mmHgの2−(2−イソプロポキシエトキシ)エチル−2−シアノアセテートを得た。収率は72%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点113℃/0.45mmHgの2−(2−イソプロポキシエトキシ)エチル−2−シアノアクリレート(表2では「DEGiP」と略記する。)を得た。収率は23%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例7
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製 メチルプロピレングリコール、MFG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点90℃/2.33mmHgの2−メトキシイソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は85%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点73℃/0.68mmHgの2−メトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(表2では「PGM」と略記する。)を得た。収率は31%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例8
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノエチルエーテル(和光純薬工業社製)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点94℃/2.10mmHgの2−エトキシイソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は89%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点74℃/0.064mmHgの2−エトキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(表2では「PGE」と略記する。)を得た。収率は27%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例9
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてプロピレングリコールモノプロピルエーテル(日本乳化剤社製 プロピルプロピレングリコール、PFG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点107℃/2.33mmHgの2−プロポキシイソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は85%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点87℃/0.038mmHgの2−プロポキシイソプロピル−2−シアノアクリレート(表1、表2では「PGP」と略記する。)を得た。収率は11%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例10
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えてジプロピレングリコールモノメチルエーテル(日本乳化剤社製 メチルプロピレンジグリコール、MFDG)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点116℃/2.18mmHgの2−(2−メトキシイソプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は76%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点84℃/0.038mmHgの2−(2−メトキシプロポキシ)イソプロピル−2−シアノアクリレート(表2では「DPGM」と略記する。)を得た。収率は44%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例11
エチレングリコールモノヘキシルエーテルに代えて3−メトキシ−1−ブタノール(和光純薬工業社製)を用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点90℃/0.6mmHgの3−メトキシ−3−メチルプロピル−2−シアノアセテートを得た。収率は83%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点70℃/0.15mmHgの3−メトキシ−3−メチルプロピル−2−シアノアクリレート(表2では「BGM」と略記する。)を得た。収率は36%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
比較例12
市販の工業用瞬間接着剤(エチル−2−シアノアクリレート、東亞合成株式会社製、商品名「アロンアルファ201」)(表2では「E−2−CA」と略記する。)
比較例13
エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテルに代えて2−オクタノールを用いた他は、実施例1と同様にしてエステル化反応等をさせ、沸点88℃/0.15mmHgの2−オクチル−2−シアノアセテートを得た。収率は80%であった。その後、実施例1と同様にして縮合及び解重合等をさせ、沸点75℃/0.075mmHgの2−オクチル−2−シアノアクリレート(表2、5では「2−O−2−CA」と略記する。)を得た。収率は39%であった。次いで、安定剤として二酸化硫黄20質量ppm及びハイドロキノン1000質量ppmを添加し、この生体用接着剤を性能評価試験に供した。
以上、比較例1〜13における各々の2−シアノアクリレート化合物のアルキレン基及びアルキル基の炭素数を表2に記載する。
Figure 2008056516
[2]性能評価
上記[1]で製造した生体用接着剤を用いて性能を評価した。
(1)硬度
(a)試料作製
内径30mmのテトラフルオロエチレン製のシャーレに、上記[1]で製造した生体用接着剤を約3g流し込み、N,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に1時間静置して硬化させた。このシアノアクリレートの流し込みと硬化とを、硬化物の厚さが7mmになるまで繰り返し、硬化物の厚さが7mmになったときから更にN,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に24時間静置し、その後、シャーレから円盤状の硬化物を取り出し、これを硬度の測定に用いた。
(b)測定方法
JIS K 6251に従い、A型硬度計及びD型硬度計(高分子計器社製)を用いて、ショアA硬度及びショアD硬度を測定した。
(2)ホルムアルデヒド放出量
(a)試料作製
内径30mmのテトラフルオロエチレン製のシャーレに、上記[1]で製造した生体用接着剤を約1g流し込み、N,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に24時間静置して硬化させ、直径約30mm、厚さ約1mmの円盤状の硬化物を得た。
(b)加水分解
シャーレから硬化物を取り出し、この硬化物を密閉可能なガラス容器に入れ、40mLの生理食塩水を投入し、密閉した。その後、50℃に調温された恒温槽に入れ、7日間静置し、加水分解させた。
(c)検体等の調製
7日間経過後、恒温槽から取り出し、室温(20〜30℃)で約1時間静置して室温付近にまで冷却し、開栓して生理食塩水を2mL取り出し、ホルムアルデヒドテストワコー(和光純薬工業株式会社製)の取扱説明書に従って検体(呈色液)を調製した。また、ホルムアルデヒド標準液及び盲検(ブランク液)も同様にして調製した。尚、ホルムアルデヒド標準液の調製に用いたホルムアルデヒド希釈原液のホルムアルデヒド含量は、上記の取扱説明書に従って定量しておいた。また、盲検の調製に際しては、蒸留水に代えて生理食塩水を用いた。
(d)測定方法
ホルムアルデヒドは、分光光度計(島津製作所製、型式「UV−2400PC」)を用いて定量した。具体的には、盲検を対照として検体及びホルムアルデヒド標準液の波長550nmにおける吸光度を測定し、一方、ホルムアルデヒド標準液の吸光度を用いて検量線を作成し、この検量線を用いて検体の測定値に基づいて硬化物から放出されたホルムアルデヒドを算出した。
表1、2のホルムアルデヒド生成量は測定値を硬化物の重量で除した値、即ち、硬化物1g当たりのホルムアルデヒド生成量である。
(3)起炎性
(a)試料作製
内径10mmのテトラフルオロエチレン製のシャーレに、上記[1]で製造した生体用接着剤を約0.4g流し込み、N,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に24時間静置して硬化させ、直径約10mm、厚さ約1mmの円盤状の硬化物を得た。
(b)測定方法
シャーレから硬化物を取り出し、この硬化物及び陰性対象である高密度ポリエチレン[(財)食品医薬品安全センター製]をウサギの皮下に埋植し、14日経過後、埋植部位を摘出し、直ちに10質量%濃度の緩衝ホルマリン水溶液により固定した。次いで、常法に従って厚さ3μmのパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色を施し、光学顕微鏡を用いて鏡検した。この鏡検による病理組織観察の結果、陰性対象と比べて優位に強い炎症反応をおこしているものを起炎性が陽性であるとし、明らかな組織の壊死又は変性がみられないものを起炎性が陰性であるとした。
(4)貯蔵弾性率
(a)貯蔵弾性率の意味
前記の「硬度」とは別に、硬化物の硬さの指標として貯蔵弾性率(G’)が挙げられる。硬化物のずり粘弾性測定を行い、G’の温度分散カーブを得ることができ、G’の温度依存性が確認できる。所定温度におけるG’を比較したとき、この所定温度でG’が高いほど硬化物は硬く、G’が低いほど柔らかい。室温(25℃)で測定している前記の「硬度」の大(硬い)/小(柔らかい)の値と、25℃のG’の大(硬い)/小(柔らかい)にはよい相関がある。また、硬化物の体内での状態を想定する場合、37℃のG’の値の大/小を比較検討すればよい。25℃のときの柔軟性では、25℃のG’が0.01〜50MPaであることが好ましく、0.05〜45MPaであることがより好ましい。37℃のときの柔軟性では、37℃のG’が0.01〜20MPaであることが好ましく、0.05〜15MPaであることがより好ましい。
(b)試料作製
レオメータ(Reologica社製、型式「VAR−50」)のジオメトリ、ステージにアミン(ジメチルアニリン)を塗布し、その後、ジオメトリを所定のギャップ(0.3mm)に調整し、そのギャップに上記[1]で製造した生体用接着剤を注入し、G’、G"及びtanδが一定になるまで硬化させた。
(c)測定方法
上記のレオメータ及び6mmφのパラレルプレートを用いて周波数1Hz、歪み0.1%で2℃/分の速度で昇温させながらずり粘弾性を測定し、25℃及び37℃における貯蔵弾性率G’を求めた。
(5)剛性パラメータ
(a)剛性パラメータの意味
生体用接着剤を生体組織、特に血管に用いる場合、組織の外寸変化、特に心臓の拍動による血管の外径変化に硬化物が追従することができれば、この生体用接着剤の接着性の信頼性は高い。この信頼性を評価するための指標が剛性パラメータである(Matsuda T, et al: A novel elastomeric surgical adhesive : design, properties and in vivo performances. Trans Am Soc Artif Intern Organs 33: 151-156, 1986.参照)。
(b)試料作製
剛性パラメータが約10である疑似血管(ラテックススリーブ、イマムラ社製、外径6mm、壁厚20μm)の全周に生体用接着剤を塗布し、幅5mm、厚さ約100μmの塗膜を形成し、N,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に24時間静置して硬化させた。
(c)測定方法
上記(b)で作製した試料血管を37℃の温水に浸漬し、一端を封止し、他端から37℃の温水を注入し、更に試料の内圧が60mmHgになるように加圧した。この加圧時の試料血管の外経をレーザー外径測定装置(キーエンス社製、型式「LS−5040T」)により測定した。その後、試料内圧を段階的に160mmHgにまで加圧していき、各内圧における試料血管の外径を測定した。そして、基準内圧を100mmHgとし、下記式(1)によって導かれる値をグラフの縦軸に、下記式(2)によって導かれる値をグラフの横軸にとり、60mmHgから160mmHgの範囲で測定した各測定ポイントの結果をグラフにプロットし、直線で近似したときの傾きを剛性パラメーター(β値)とした。
式(1) LnP/Ps[P:各測定ポイントでの内圧、Ps:基準内圧(100mmHg)]
式(2) R/Rs−1(R:各測定ポイントでの外径、Rs:内圧100mmHg時の外径)
(6)拍動試験
(a)試料作製
上記(5)、(b)と同様にして試料を作製した。
(b)測定方法
上記(a)で作製した試料血管を37℃の温水に浸漬し、一端を封止し、他端を、エアーによる加圧と常圧への復帰とを0.2秒間隔で繰り返すことができる拍動試験装置に繋ぎ、加圧時の内圧が160mmHgとなるように試料血管の内部に拍動圧力をかけた。このようにして拍動試験を1週間継続した後、試料血管を取り外し、拡大鏡下で接着の状態を観察した。
(7)変化重量
(a)試料作製
内径10mmのテトラフルオロエチレン製のシャーレに生体用接着剤を約0.2g流し込み、N,N’−ジメチルアニリン雰囲気下に24時間静置して硬化させ、直径約10mm、厚さ約0.5mmの円盤状の硬化物を得た。
(b)加水分解
上記のようにして作製した試料を抽出シンブル中に置き、その後、滅菌ガラスバイアル中に静置し、抗生物質及び抗黴剤を配合したダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水を21ミリリットル注ぎ入れ、次いで、滅菌ガラスバイアルを39℃に調温された水浴中に投入した。リン酸緩衝生理食塩水は7日経過後に交換した。
(c)測定方法
滅菌ガラスバイアルを水浴中に投入した時点から7日間経過後、及び14日間経過後に、滅菌ガラスバイアルから試料を取り出し、滅菌水により3回洗浄し、その後、24時間真空乾燥させ、試料の重量を秤量し、下記の式に従って変化重量(重量減少)を算出し、分解性の評価の指標とした。
変化重量(%)=[(加水分解前の試料重量−加水分解後の試料の重)/加水分解前の試料重量]×100
上記の評価結果(変化重量は除く。)のうちの実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4にそれぞれ記載する。また、変化重量の評価結果を表5に記載する。
尚、表3及び表4で、「貯蔵弾性率」は「G’」、剛性パラメータは「β値」、「ホルムアルデヒド放出量」は「FA放出量」と略記する。
Figure 2008056516
Figure 2008056516
Figure 2008056516
表3の結果によれば、R、Rが特定の炭素数を有する式(1)の2−シアノアクリレート化合物を含有する実施例1、2及び4〜6の生体用接着剤、並びに式(2)の2−シアノアクリレート化合物を含有する実施例3、7、8の生体用接着剤は、いずれも所定の物性等を有し、十分な柔軟性と高い安全性及び十分な分解性とを併せて有していることが分かる。特に実施例2、5、6の生体用接着剤は、ホルムアルデヒド放出量が極めて少なく、より優れた安全性を有し、且つ分解性も十分である。更に、R、R及びRが特定の炭素数を有する式(2)の2−シアノアクリレート化合物を含有する実施例7、8の生体用接着剤は、硬度が極めて低く、より優れた柔軟性を有している。
また、比較例9と実施例7の各々の生体用接着剤を等量混合してなる実施例9の生体用接着剤、実施例4と実施例7の各々の生体用接着剤を等量混合してなる実施例10の生体用接着剤、及び実施例4と実施例8の各々の生体用接着剤を等量混合してなる実施例12の生体用接着剤では、ホルムアルデヒド放出量が適量であり、硬度が低く、優れた安全性及び十分な分解性と柔軟性とを併せて有していることが分かる。また、実施例4と実施例8の各々の生体用接着剤の質量割合を変化させた実施例11〜13によれば、硬度とホルムアルデヒド放出量とを容易に調整し得ることが分かる。
更に、各々の実施例の生体用接着剤では、硬度及び貯蔵弾性率が低く、且つ剛性パラメータが小さく、柔軟であるため、拍動試験における拍動圧による変形に十分に追従し、試験後の硬化物に何ら異常は観察されなかった。
一方、表4の結果によれば、比較例1〜3、7〜9及び11の、式(1)の化学構造を有する2−シアノアクリレート化合物を含有しない生体用接着剤では、安全性及び分解性は高いものの、柔軟性は劣っている。特に比較例1〜3、7〜9及び11では、拍動試験後、接着箇所の端部を中心に硬化物に亀裂等の破壊もみられた。また、比較例4〜6及び10の、式(2)の化学構造を有する2−シアノアクリレート化合物を含有しない生体用接着剤では、十分な柔軟性を有するものの、ホルムアルデヒド放出量が極めて多く、安全性は劣っている。また、従来から用いられている比較例12、13の2−シアノアクリレート化合物を含有する生体用接着剤では、安全性は高いものの、柔軟性に劣ることが分かる。特に、硬度、貯蔵弾性率が高く、且つ剛性パラメータがより大きい比較例12では、拍動試験後、接着箇所の端部を中心に硬化物に亀裂等の破壊がみられた。
更に、表5の結果によれば、実施例2、4、7の生体用接着剤、特にジプロピレングリコール系のエーテルを用いた2−シアノアクリレート化合物を含有する実施例7の生体用接着剤では、十分な分解性を有していることが分かる。一方、比較例13の生体用接着剤では、14日経過後でも変化重量は1%未満であり、分解性に劣っている。

Claims (18)

  1. 1分子中にエーテル結合を少なくとも1個有する2−シアノアクリレート化合物を含有し、硬化物のショアA硬度が15〜90であり、且つ加水分解試験におけるホルムアルデヒド放出量が500ppm以下であることを特徴とする2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  2. 塗膜厚さが100〜150μmのとき、硬化物の剛性パラメータが10〜65である請求項1に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  3. 下記式(1)により表される化合物及び下記式(2)により表される化合物のうちの少なくとも一方を含有する請求項1又は2に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
    Figure 2008056516
    [上記式(1)におけるRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、該Rの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数5〜8のアルキル基であり、該Rの炭素数が3又は4の場合、該Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基である。]
    Figure 2008056516
    [上記式(2)におけるR及びRは炭素数2〜4のアルキレン基であり、該R及び該Rの炭素数が2の場合、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数4〜8のアルキル基であり、該R及び該Rの炭素数が3又は4の場合、該Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
  4. 上記R、上記R及び上記Rの炭素数が2又は3である請求項3に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  5. 上記式(1)により表される化合物を含有し、上記Rの炭素数が2であり、上記Rの炭素数が6〜8である請求項3又は4に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  6. 上記式(1)により表される化合物を含有し、上記Rの炭素数が3であり、上記Rの炭素数が4〜8である請求項3又は4に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  7. 上記式(2)により表される化合物を含有し、上記R及び上記Rの炭素数が3であり、上記Rの炭素数が3〜5である請求項3乃至6のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  8. 下記式(1)により表される化合物及び下記式(2)により表される化合物を含有する請求項1又は2に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
    Figure 2008056516
    [上記式(1)におけるRはエチレン基又はプロピレン基であり、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
    Figure 2008056516
    [上記式(2)におけるR及びRはプロピレン基であり、Rは直鎖又は側鎖を有する炭素数3〜8のアルキル基である。]
  9. 上記Rがプロピレン基であり、上記R及び上記Rの炭素数が3〜5である請求項8に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  10. 電子線滅菌法、γ線滅菌法、ろ過滅菌法、乾熱滅菌法のうちの少なくとも1種の滅菌処理を施された請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  11. 生体組織同士又は生体組織と人工補綴物との接合、若しくは接合補助に用いられる請求項1乃至10のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  12. 上記生体組織が、皮膚、心筋、管腔臓器及び実質臓器のうちの少なくとも1種である請求項11に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  13. 上記人工補綴物が、人工血管、止血材、骨ピン及び縫合糸のうちの少なくとも1種である請求項11又は12に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  14. 血管瘤に充填されて用いられる請求項1乃至13のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  15. 上記血管瘤が発生した血管が脳血管である請求項14に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  16. 血管の塞栓に用いられる請求項1乃至13のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  17. 上記血管が肝血管である請求項16に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
  18. 骨補填剤として用いられる請求項1乃至13のうちのいずれか1項に記載の2−シアノアクリレート系生体用接着剤。
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