JPWO2008018420A1 - 導電性ポリアニリン組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、得られる成形体の耐熱性は必ずしも高いとは言えず、例えば、160℃程度の高温下に1日程度曝すと電導度が低下する傾向があった。
本発明によれば、以下の導電性ポリアニリン組成物及びその製造方法が提供される。
1.実質的に水と混和しない有機溶剤に溶解している、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体と、芳香環を2個以上有し、かつフェノール性水酸基を有する化合物と、を含む、又はから実質的になる導電性ポリアニリン組成物。
2.前記フェノール性水酸基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
Ar−X−Ar’ (1)
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、化合物中に1個又は2個存在する。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていてもよい。Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。]
3.フェノール性水酸基を有する化合物が、多環芳香環に水酸基が結合した化合物である1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
4.実質的に水と混和しない有機溶剤に溶解している、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体に、芳香環を2個以上有し、かつフェノール性水酸基を有する化合物を添加する導電性ポリアニリン組成物の製造方法。
5.フェノール性水酸基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物又は多環芳香環に水酸基が結合した化合物である4に記載の導電性ポリアニリン組成物の製造方法。
Ar−X−Ar’ (1)
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、化合物中に1個又は2個存在する。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていてもよい。Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。]
6.上記1〜3のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物を乾燥させて得られる導電性成形体。
M(YARn)m (I)
尚、ポリアニリンの分子量は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)により測定したものである。
置換ポリアニリンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、アリーロキシ基、CF3基等の含ハロゲン炭化水素基等が挙げられる。
Yは、酸性基であり、例えば、−SO3 −基、−PO3 2−基、−PO4(OH)−基、−OPO3 2−基、−OPO2(OH)−基、−COO−基等が挙げられる。これらの中では、酸性度が高く、ドープし易い点で−SO3 −基が好ましい。
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、例えば、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキルやアルケニル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、メンチル等の置換基を含んでいてもよいシクロアルキル基、ビシクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル等の縮合してもよいジシクロアルキル基若しくはポリシクロアルキル基、フェニル、トシル、チオフェニル、ピローリニル、ピリジニル、フラニル等の置換基を含んでいてもよい芳香環を含むアリール基、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、インダニル、キノリニル、インドニル等の縮合していてもよいジアリール基若しくはポリアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
Rは、それぞれ独立して、−R1、−OR1、−COR1、−COOR1、−CO(COR1)、―CO(COOR1)である。ここで、R1は炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、または−(R2O)x−R3基、−(OSiR3 2)x−OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でも異なってもいてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)である。R1が炭化水素基である場合の例としては、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。
nは2以上の整数であるであり、mは、Mの価数である。
式(I)で示される化合物としては、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、スルホフタール酸エステル、下式(II)で表される化合物が、ドープし易い点から好ましく利用できる。
M(YCR4(CR5 2COOR6)COOR7)p (II)
上記式(II)において、Mは、式(I)の場合と同様に水素原子又は有機若しくは無機遊離基である。有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられ、無機遊離基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、セリウム、アンモニウム等が挙げられる。
M(O3SCH(CH2COOR12)COOR13)m (III)
上記式(III)において、M及びmは、上記式(I)と同様である。
ポリアニリン複合体において、ポリアニリンと有機プロトン酸又はその塩との組成比については特に限定されないが、ポリアニリンのモノマーユニット/有機プロトン酸又はその塩のモル比は、高い導電性を得るという観点から、通常2〜4、好ましくは2〜2.5である。
このような化合物として、下記式(1)で表されるものが好ましく使用できる。
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。]
Xは、フェノール性化合物中に1個又は2個存在させることができる。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていても良い。このようなものとして、例えば、Xとして単結合と−CH2−を有するフルオレン構造が挙げられる。
Ar、Ar’上の置換基のうち、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
また、Ar、Ar’のその他の置換基としては、ハロゲン、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトリル基、カルボニル基等が挙げられる。
また、Ar又はAr’上の複数の置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。環構造としては、例えば、シクロヘキシル環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピロール環等が挙げられる。
本発明で用いるフェノール性化合物は、ドーパントとして機能し、高い導電性の発現に寄与する。また、分子量が大きいために沸点が高く、揮発しにくいため高温下での使用においても導電性の低下が抑制されるものと考えられる。
水不混和性有機溶剤中の(a)ポリアニリン複合体の割合は、水不混和性有機溶剤の種類によるが、通常、900g/L以下であり、好ましくは0.01〜300g/L以下の範囲である。ポリアニリン複合体の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、成形体を成形する際の取り扱いが困難になり、成形体の均一性が損なわれ、ひいては成形体の電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じる。一方、ポリアニリン複合体の含有量が少なすぎると、後述する方法により成膜したとき、非常に薄い膜しか製造できず、均一な導電性膜の製造が難しくなる恐れがある。
ポリアニリン組成物の全体に占めるフェノール性化合物のモル濃度は、0.01mol/L〜5mol/Lの範囲であることが好ましい。この範囲で特に優れた導電性が得られる。特に、0.2mol/L〜2mol/Lの範囲であることが好ましい。
他の樹脂材料は、例えば、バインダー基材や可塑剤、マトリックス基材等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。本発明の組成物は、他の樹脂材料を含む場合には、本発明の組成物は導電性複合材料となる。
例えば、所望の形状を有するガラスや樹脂フィルム、シート等の基材に塗布し、有機溶剤を除去することによって導電性膜を製造できる。
[実施例]
プロトネーションされたポリアニリン複合体の製造
和光純薬工業(株)製のエーロゾルOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム、純度75%以上)144gをトルエン4Lに撹拌溶解し、窒素気流下においた30Lのガラス反応器(機械式撹拌器、ジャケット、温度計、滴下ロート付)に、溶液を入れ、さらにこの溶液に、150gの原料アニリンを加え、撹拌溶解した。
冷媒によるフラスコの撹拌冷却を開始し、1N塩酸12Lを溶液に添加した。
次に溶液温度が−3℃に冷却された状態で、214gの過硫酸アンモニウムを1N塩酸4Lに溶解した溶液を滴下ロートで滴下し、3時間10分で完了した。滴下開始から18時間30分の間、溶液内温を0℃±1℃に保ったまま攪拌を行った。その後、トルエン8Lを加え、溶液温度を19℃に上昇させ、静置した。
静置により二相に分離した水相(下相)を反応器下部から抜き出し、粗ポリアニリン複合体トルエン溶液を得た。
さらに、この複合体溶液にイオン交換水4Lを加え撹拌した後、静置し、水相を分離した。この操作を再度行った後、1N塩酸水溶液4Lで同様に複合体溶液を洗浄し、静置後、酸性水溶液を分離して、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。
このポリアニリン複合体から揮発分を実質的に取り除いたものの元素分析の結果は、炭素:61.7重量%、水素:8.2重量%、窒素:3.9重量%、硫黄:5.5重量%であった。
(1)導電性ポリアニリン組成物の調製
製造例1で得た、導電性ポリアニリン複合体1gを20mlのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に、3−フェノキシフェノール6.22mmolを添加して、3−フェノキシフェノール濃度が約0.30mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を得た。
(2)導電性ポリアニリン薄膜の製造
上記(1)で得た導電性ポリアニリン組成物約1mlを、30mm×30mm角のガラス基板上に展開し、2,000rpmで1分間スピンコートした。これを空気気流下160℃で30分乾燥し、ガラス基板上に透明で均質な薄膜を形成した。ロレスターGP(三菱化学社製;四探針法による抵抗率計)を用いて表面の抵抗を測定し、その値を初期値(R0)とした。尚、初期値(R0)は410.6Ω/□であった。
(3)導電性ポリアニリン成形体の耐熱性試験
上記(2)で得た導電性ポリアニリン組成物の薄膜をガラス基板のまま、窒素気流下160℃で、所定時間加熱した後に表面抵抗を測定した。所定時間経過後の表面抵抗値(R)と初期値との比(R/R0)を算出し薄膜の耐熱性を評価した。表1に加熱時間と表面抵抗比(R/R0)を示す。
(1)導電性ポリアニリン組成物の調製
製造例1で得た、導電性ポリアニリン複合体1gを20mlのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に、β−ナフトール8.03mmolを添加して、β−ナフトール濃度が約0.39mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を得た。
(2)導電性ポリアニリン薄膜の製造
上記(1)で得た導電性ポリアニリン組成物約1mlを、30mm×30mm角のガラス基板上に展開し、2,000rpmで1分間スピンコートした。これを空気気流下160℃で30分乾燥し、ガラス基板上に透明で均質な薄膜を形成した。ロレスターGP(三菱化学社製;四探針法による抵抗率計)を用いて表面の抵抗を測定し、その値を初期値(R0)とした。尚、初期値(R0)は385.2Ω/□であった。
(3)導電性ポリアニリン成形体の耐熱性試験
上記(2)で得た導電性ポリアニリン組成物の薄膜をガラス基板のまま、窒素気流下160℃で、所定時間加熱した後に表面抵抗を測定した。所定時間経過後の表面抵抗値(R)と初期値との比(R/R0)を算出し薄膜の耐熱性を評価した。表1に加熱時間と表面抵抗比(R/R0)を示す。
(1)導電性ポリアニリン組成物の調製
上記製造例1で得た、導電性ポリアニリン複合体1gを20mlのトルエンに再度溶解し、均一な導電性ポリアニリン複合体溶液を調製した。この溶液に、m−クレゾール19mmolを添加して、m−クレゾール濃度が約0.86mol/Lの均一な導電性ポリアニリン組成物を得た。
(2)導電性ポリアニリン薄膜の製造
上記(1)で得た導電性ポリアニリン組成物約1mlを、30mm×30mm角のガラス基板上に展開し、2,000rpmで1分間スピンコートした。これを空気気流下80℃で1分間乾燥し、ガラス基板上に透明で均質な薄膜を形成した。ロレスターGP(三菱化学社製;四探針法による抵抗率計)を用いて表面の抵抗を測定し、その値を初期値(R0)とした。尚、初期値(R0)は162.7Ω/□であった。
(3)導電性ポリアニリン成形体の耐熱性試験
上記(2)で得た導電性ポリアニリン組成物の薄膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 実質的に水と混和しない有機溶剤に溶解している、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体と、
芳香環を2個以上有し、かつフェノール性水酸基を有する化合物と、を含む導電性ポリアニリン組成物。 - 前記フェノール性水酸基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
Ar−X−Ar’ (1)
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、化合物中に1個又は2個存在する。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていてもよい。Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。] - フェノール性水酸基を有する化合物が、多環芳香環に水酸基が結合した化合物である請求項1に記載の導電性ポリアニリン組成物。
- 実質的に水と混和しない有機溶剤に溶解している、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体に、芳香環を2個以上有し、かつフェノール性水酸基を有する化合物を添加する導電性ポリアニリン組成物の製造方法。
- フェノール性水酸基を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物又は多環芳香環に水酸基が結合した化合物である請求項4に記載の導電性ポリアニリン組成物の製造方法。
Ar−X−Ar’ (1)
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、化合物中に1個又は2個存在する。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていてもよい。Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。] - 請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ポリアニリン組成物を乾燥させて得られる導電性成形体。
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