JP5099816B2 - ポリアニリン複合体溶液及びその硬化物 - Google Patents
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Description
ポリアニリンを用いた紡糸については、例えば、特許文献1又は2に記載されている。特許文献2においては、残存水の存在下で紡糸した例も記載されている。これらの方法により紡糸はできるものの、溶剤としてジクロロ酢酸等の取り扱いが困難である特殊な溶剤を用いる必要があった。
特殊な溶剤を使用する理由は、汎用溶剤に可溶なポリアニリンの合成が工業的に困難であったためである。
1.有機溶剤と、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体と、フェノール性水酸基を有する化合物を含み、水分含量が3000ppm以下であるポリアニリン複合体溶液。
2.さらに、樹脂成分を含有する1に記載のポリアニリン複合体溶液。
3.繊維製造用である、1又は2に記載のポリアニリン複合体溶液。
4.上記1〜3のいずれかに記載の溶液を用いて製造される硬化物。
5.繊維である4に記載の硬化物。
6.プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体と、フェノール性水酸基を有する化合物を含む繊維。
7.上記6に記載の繊維を延伸して得られる繊維。
8.上記1〜3のいずれかに記載の溶液に、繊維、織布あるいは不織布を浸す、導電性繊維、織布あるいは不織布の製造方法。
M(YARn)m (I)
尚、ポリアニリンの分子量は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)により、Nメチルピロリドン(NMP)中、60℃の条件で測定したものである。
Yは、酸性基であり、例えば、−SO3 −基、−PO3 2−基、−PO4(OH)−基、−OPO3 2−基、−OPO2(OH)−基、−COO−基等が挙げられる。これらの中では、酸性度が高く、ドープし易い点で−SO3 −基が好ましい。
Aは、置換基を含んでもよい炭化水素基であり、例えば、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキルやアルケニル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、メンチル等の置換基を含んでいてもよいシクロアルキル基、ビシクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル等の縮合してもよいジシクロアルキル基若しくはポリシクロアルキル基、フェニル、トシル、チオフェニル、ピローリニル、ピリジニル、フラニル等の置換基を含んでいてもよい芳香環を含むアリール基、ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、インダニル、キノリニル、インドニル等の縮合していてもよいジアリール基若しくはポリアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
Rは、それぞれ独立して、−R1、−OR1、−COR1、−COOR1、−CO(COR1)、―CO(COOR1)である。ここで、R1は炭素数が4以上の置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、又は−(R2O)x−R3基、−(OSiR3 2)x−OR3(R2はアルキレン基、R3はそれぞれ同一でも異なってもいてもよい炭化水素基であり、xは1以上の整数である)である。R1が炭化水素基である場合の例としては、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。
nは2以上の整数であるであり、mは、Mの価数である。
式(I)で示される化合物としては、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、スルホフタール酸エステル、下式(II)で表される化合物が、ドープし易い点から好ましく利用できる。
M(YCR4(CR5 2COOR6)COOR7)p (II)
上記式(II)において、Mは、式(I)の場合と同様に水素原子又は有機若しくは無機遊離基である。有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられ、無機遊離基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、セリウム、アンモニウム等が挙げられる。
M(O3SCH(CH2COOR12)COOR13)m (III)
上記式(III)において、M及びmは、上記式(I)と同様である。
ポリアニリン複合体において、ポリアニリンと有機プロトン酸又はその塩との組成比については特に限定されないが、ポリアニリンのモノマーユニット/有機プロトン酸又はその塩のモル比は、高い導電性を得るという観点から、通常2〜4、好ましくは2〜2.5である。
このような化合物として、下記式(1)で表されるものが好ましく使用できる。
[式中、Xは単結合、酸素原子、窒素原子を含む基、又は炭素原子を含む基であり、Ar及びAr’は芳香環基であり、両者は同一でも異なってもよい。Ar及び/又はAr’は、少なくとも一つの水酸基を有する。ArとAr’は、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、シアノ基及びカルボニル基からなる群から選択される置換基を1つ以上有してもよい。]
Xは、フェノール性化合物中に1個又は2個存在させることができる。2個存在する場合、2つのXは同一でも異なっていても良い。このようなものとして、例えば、Xとして単結合と−CH2−を有するフルオレン構造が挙げられる。
Ar、Ar’上の置換基のうち、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
また、Ar、Ar’のその他の置換基としては、ハロゲン、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトリル基、カルボニル基等が挙げられる。
また、Ar又はAr’上の複数の置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。環構造としては、例えば、シクロヘキシル環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピロール環等が挙げられる。
本発明で用いるフェノール性化合物は、ドーパントとして機能し、高い導電性の発現に寄与する。
水不混和性有機溶剤中の(a)ポリアニリン複合体の割合は、水不混和性有機溶剤の種類によるが、通常、900g/L以下であり、好ましくは0.01〜300g/L、さらに好ましくは10〜100g/Lの範囲である。ポリアニリン複合体の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、成形体を成形する際の取り扱いが困難になり、成形体の均一性が損なわれ、ひいては成形体の電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じる。一方、ポリアニリン複合体の含有量が少なすぎると、溶液の粘度が低下し、加工しにくくなる恐れがある。
ポリアニリン複合体溶液の全体に占めるフェノール性化合物のモル濃度は、0.01mol/L〜5mol/Lの範囲であることが好ましい。この範囲で特に優れた導電性が得られる。特に、0.2mol/L〜2mol/Lの範囲であることが好ましい。
乾燥剤については、溶液中の水分を除去する能力があれば特に制限はなく、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブス等が好適に用いられる。
無機材料は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加され、その具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)等が挙げられる。
また、本発明のポリアニリン複合体溶液では、上述したようにトルエン等の汎用溶剤を使用できる。従来のようにジクロロ酢酸等の取り扱い性の悪い溶剤を使用する必要がないため、溶液の取り扱いが容易である。
本発明の繊維は延伸してもよい。延伸することにより電気伝導性がさらに向上し、また、得られる繊維の機械的特性を向上できる。
延伸は従来公知の方法により実施できる。例えば、繊維製造工程において引取装置とノズルからの溶液吐出量を調整する方法や、別途延伸工程を設け、紡糸後の繊維に引っ張り応力を加える方法がある。通常、2つ以上のロールの回転速度比を調整し、繊維に引張り応力を加えることで延伸する。延伸は常温でも加熱下でも実施できる。延伸倍率は繊維の用途に合わせて適宜調整すればよいが、3倍以下が好ましく、1.2〜2.5倍が特に好ましい。ここで、延伸倍率は延伸前後における繊維の長さの比を意味する。
尚、繊維に限らず、フィルム等においても延伸することにより電気伝導性が向上するため好ましい。
また、他の種類の繊維あるいは、織布、不織布を本発明のポリアニリン複合体溶液に浸し、その後乾燥させることにより、導電性を付与することができる。この場合に使用できる繊維等の種類(材質)は特に限定されず、ポリアニリン複合体溶液に不溶性あるいは難溶性のものであればよい。材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
また、繊維としては、ポリアニリン複合体の付着のし易さから、異型断面繊維が好ましい。
上記の態様においても、ポリアニリン複合体の付着し易さの点で、ポリアニリン複合体溶液の粘度変化がない方が好ましい。
この場合、溶液を基材に塗布する方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコード法、スピンコート法、スクリーン印刷、グラビア印刷法等、公知の一般的な方法を用いることができる。
[プロトネーションされたポリアニリン複合体の製造]
和光純薬工業(株)製のエーロゾルOT(ジ−2−エチルヘキシルスルホこはく酸ナトリウム、純度75%以上)144gをトルエン4Lに撹拌溶解し、窒素気流下においた30Lのガラス反応器(機械式撹拌器、ジャケット、温度計、滴下ロート付)に、溶液を入れ、さらにこの溶液に、150gの原料アニリンを加え、撹拌溶解した。
冷媒によるフラスコの撹拌冷却を開始し、1N塩酸12Lを溶液に添加した。
次に溶液温度が−3℃に冷却された状態で、214gの過硫酸アンモニウムを1N塩酸4Lに溶解した溶液を滴下ロートで滴下し、3時間10分で完了した。滴下開始から18時間30分の間、溶液内温を0℃±1℃に保ったまま撹拌を行った。その後、トルエン8Lを加え、溶液温度を19℃に上昇させ、静置した。
静置により二相に分離した水相(下相)を反応器下部から抜き出し、粗ポリアニリン複合体トルエン溶液を得た。
さらに、この複合体溶液にイオン交換水4Lを加え撹拌した後、静置し、水相を分離した。この操作を再度行った後、1N塩酸水溶液4Lで同様に複合体溶液を洗浄し、静置後、酸性水溶液を分離して、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。
このポリアニリン複合体から揮発分を実質的に取り除いたものの元素分析の結果は、炭素:61.3重量%、水素:8.5重量%、窒素:3.6重量%、硫黄:5.6重量%であった。
上記製造例1で得たポリアニリン複合体を再度、トルエンに溶解しポリアニリン複合体を50g/Lの割合で含むトルエン溶液を調整した。この溶液にトルエン1Lあたり10gの量の無水硫酸マグネシウムを添加し、撹拌した。その後、硫酸マグネシウムを濾過して、脱水されたポリアニリン複合体のトルエン溶液を得た。
この溶液に、mクレゾールを添加しポリアニリン複合体溶液を得た。この際、mクレゾールの添加量は、前記トルエン溶液1mlに対し、mクレゾール0.9mmolの割合とした。
無水硫酸マグネシウムによる脱水処理をしなかった他は、実施例1と同様にしてポリアニリン複合体溶液を得た。
(1)硬化膜の固有伝導率
実施例1及び比較例1で調製したポリアニリン複合体溶液を、それぞれガラス基板上、14mm×52mmの範囲に展開し、空気気流下80℃で30分間乾燥し、厚さ15μmの膜を作製した。これらの膜について、ロレスターGP(三菱化学社製;四探針法による抵抗率計)を用いて固有伝導率を測定した。測定結果を表1に示す。
(2)複合体溶液の含水量
実施例1及び比較例1で調製したポリアニリン複合体溶液の水分量をカールフィッシャー水分計(三菱化成社製 CA−06型+VA−06型)にて測定した。
具体的に、各溶液をガラスボートに投入し、これをガラス製加熱菅に入れ、窒素ガス流通下、150℃に加熱した。発生した気体をカールフィッシャー水分計に吹き込み、水分量(重量ppm)を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1で調製したポリアニリン複合体溶液を30℃の水浴で24時間放置して、溶液の粘度を目視にて観察した。その結果、比較例1の溶液では、経時的に粘度の上昇が見られ、最終的には完全に流動性を失ったのに対し、実施例1の溶液では24時間の間に粘度変化は見られなかった。
実施例1のポリアニリン複合体溶液を注射器に入れ、3cmの空気層を通してヘキサン中に押し出すことにより繊維状とし、この溶液から紡糸した。その後、繊維を取り出して80℃の乾燥機で1分間乾燥してポリアニリン繊維を得た。
実施例1のポリアニリン複合体溶液1Lに対し、ポリスチレン(PSジャパン株式会社製 GPPS HF77)を50g添加した。これを室温にて撹拌し、溶液を得た。この溶液を注射器に入れ、80℃の熱風空気が流通している縦型円筒乾燥炉の上部から、ゆっくりと注入した。その結果、ポリアニリンとポリスチレンからなる繊維が得られた。
200デニールの異型断面ポリプロピレン繊維を実施例1で作製したポリアニリン複合体溶液に浸した。その後、繊維を取り出して80℃の乾燥機で1分間乾燥してポリアニリンが付着したポリプロピレン繊維を得た。この繊維を水で洗浄し、上記と同様にして乾燥したところ、ポリアニリンに由来する緑色が残存したところから、導電性繊維が得られたことを確認した。
PPスパンボンド不織布(出光ユニテック(株)製、ストラテックPP)から10cm×10cmの試料を切り取り、実施例1のポリアニリン複合体溶液に浸した。その後、不織布を取り出して80℃の乾燥機で10分間乾燥してポリアニリンが付着した不織布を得た。この不織布を水で洗浄し、上記と同様にして乾燥したところ、ポリアニリンに由来する緑色が残存したところから、導電性不織布が得られたことを確認した。
本発明のポリアニリン複合体溶液から得られる硬化物は、例えば、パワーエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野において、静電・帯電防止材料、透明電極や導電性フィルム材料、エレクトロルミネッセンス素子の材料、回路材料、コンデンサの誘電体・電解質、太陽電池や二次電池の極材料、燃料電池セパレータ材料等に利用できる。
Claims (7)
- 有機溶剤と、プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体と、フェノール性水酸基を有する化合物を含み、
水含有量が3000ppm以下である繊維製造用ポリアニリン複合体溶液。 - 前記置換又は未置換ポリアニリン複合体が、下記式(III)で表される化合物によってプロトネーションされた請求項1に記載の繊維製造用ポリアニリン複合体溶液。
M(O3SCH(CH2COOR12)COOR13)m (III)
(式中、Mは、水素原子又は有機若しくは無機遊離基であり、
R12及びR13は、それぞれ独立して炭化水素基又は−(R14O)r−R15基[ここで、R14は炭化水素基又はシリレン基であり、R15は水素原子、炭化水素基又はR16 3Si−基(ここで、R16は炭化水素基であり、3つのR16は同一又は異なっていてもよい)であり、rは1以上の整数である]であり、
mは、Mの価数である。) - 前記置換又は未置換ポリアニリン複合体が、ジ−2−エチルヘキシルスルホこはく酸ナトリウムによってプロトネーションされた請求項1又は2に記載の繊維製造用ポリアニリン複合体溶液。
- 前記フェノール性水酸基を有する化合物が、置換フェノール類である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維製造用ポリアニリン複合体溶液。
- さらに、樹脂成分を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の繊維製造用ポリアニリン複合体溶液。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の溶液を用いて製造される繊維。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の溶液に、繊維、織布あるいは不織布を浸す、導電性繊維、織布あるいは不織布の製造方法。
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