JPWO2007105371A1 - 液晶装置及びこれを備えるプロジェクタ - Google Patents
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Abstract
本発明は、遮光時に液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる液晶装置を提供すること。光学補償板73において、屈折率楕円体RIE2の光学軸OA2は、液晶層71に対して垂直入射する光束の光路VPに対して一定の傾き角θ2を有している。この傾き角θ2は、液晶層71に付与されているプレチルト角θ1と等しくなっている。光学補償板73の厚みd2等を適宜調節することで、様々な照明装置に対してリタデーションの積分値を極小化することができるので、液晶ライトバルブ31によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。
Description
本発明は、画像形成用の液晶装置に関し、さらに、当該液晶装置を組み込んだプロジェクタに関する。
従来、垂直配向型の液晶パネルに適した光学補償シートとして、光学異方性層を備えるものが知られている(特許文献1参照)。この光学異方性層は、配向膜近傍のプレチルトに起因する位相の乱れを補償するため、配向膜に対して徐々に傾斜角が変化する円盤状化合物を含んでいる。また、この液晶パネルでは、上記光学異方性層とは別に、電圧無印加時に垂直配向状態の液晶セルを斜めから観察した際の光漏れを防止するため、負の一軸性の透明支持体或いは光学補償シートを光学軸が液晶セルの厚み方向となるように配置している。
特開平10−312166号公報
しかし、上記のような光学補償シートでは、電圧無印加時に液晶セルの正面方向に関する光漏れを十分に防止することができない。すなわち、実際の液晶セルは、電圧無印加時に一定方向にプレチルトが生じており、このプレチルトの分だけ視野角特性が歪んでシフトする。この結果、液晶セルに電圧を印加していない遮光時に、液晶セルの正面方向を中心とした対象角度範囲内で比較的大きな光漏れが生じ、黒表示で透過光が増して画像のコントラストを低下させている。
また、上記のような光学補償シートは、有機物質でできているため、照明光の光強度が強くなる液晶プロジェクタ等の用途では、長時間の使用によって変色が生じ、投射像の画質が劣化するという問題がある。
そこで、本発明は、遮光時に液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる液晶装置及びこれを備えるプロジェクタを提供することを目的とする。
また、本発明は、コントラストが低下する現象を抑えつつ、長時間の使用によって画質が劣化しにくい液晶装置及びこれを備えるプロジェクタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る液晶装置は、(a)垂直配向モードで動作する液晶を含むとともに、液晶セルに電圧を印加しないオフ状態における液晶の光学軸が入射面の法線に対して所定のプレチルト角だけ傾斜配向する液晶セルと、(b)オフ状態の液晶の配向方向であって、入射面に対して傾斜する方向に、一様な光学軸を有する光学補償素子とを備える。ここで、オフ状態の液晶の配向方向とは、液晶セルに電圧を印加しない場合において、液晶の屈折率楕円を液晶セルの入射面に投影した際の長軸方向を意味し、液晶セルの入射面に沿った特定方位となっている。
上記液晶装置では、垂直配向型の液晶セルのオフ状態(すなわち電圧無印可状態)における液晶の光学軸が入射面の法線に対して傾斜配向しており、液晶に所謂プレチルトが生じている。そして、光学補償素子は、オフ状態の液晶の配向方向であって入射面に対して傾斜する方向に一様な光学軸を有するので、垂直配向型の液晶のプレチルトによって生じた正面方向の像光のリタデーションを、これを相殺するような光学補償素子の屈折率特性によって低減することができる。これにより、液晶セルに電圧を印加しないオフ時に液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。なお、光学補償素子が一様な光学軸を有するのは、オフ状態の垂直配向型の液晶に残存するプレチルトを液晶層内で一様にできることに対応しており、このようなプレチルトに起因する位相の乱れの補償は一様な光学軸を有する光学補償素子で足るからである。
また、本発明の具体的な態様又は観点によれば、上記液晶装置において、光学補償素子の光学軸が、液晶セルの入射面に法線方向から入射する光線の光路に対して、オフ状態の液晶の所定のプレチルト角に対応する所定の傾斜角だけ傾斜している。この場合、液晶のプレチルトによって生じた正面方向を中心とする像光のリタデーションを光学補償素の屈折率特性によって相殺することができる。
本発明の別の態様では、光学補償素子が、液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面を有するとともに、当該入射平面及び射出平面の法線に対して光学軸を傾斜させた平板素子である。この場合、光学補償素子を液晶セル側に貼り付け易くなり、光学補償素子を液晶セル等に対して精密に安定して固定することができる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、液晶セルの入射面に対して傾斜した互いに平行な入射平面及び射出平面を有するするとともに、当該入射平面及び射出平面の法線方向に光学軸が存在する平板素子を含む。この場合、光学補償素子の光学軸を入射平面等に垂直な方向に設定することができ、光学補償素子の加工が比較的容易となる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、所定のクサビ角をそれぞれ有するとともに、上記平板素子を挟むことによって液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面をそれぞれ形成する一対の透明な等方性の板状部材をさらに有する。この場合、光学補償素子の加工を容易にしつつ、光学補償素子を液晶セル等に対して精密に安定して固定することができる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、オフ状態の液晶に起因するリタデーションを実質的にキャンセルするような厚さを有する。この場合、光学補償素子により、液晶のプレチルトに起因して液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、負の一軸性結晶である。この場合、通常正の一軸性結晶である液晶性化合物のプレチルトに起因する位相の乱れを補償することができ、このような液晶セルを組み込んだ液晶装置において、黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。なお、光学補償素子が、無機材料の結晶である場合、光学補償素子の光、熱等に対する耐久性を高めることができ、光学補償素子の寿命を長くすることができる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、オフ状態の液晶に起因するリタデーションを、液晶セルの入射面に対する照明光の傾斜角の範囲に対応させて略キャンセルするような厚さを有する。この場合、液晶セルの正面方向だけでなくその近傍を含めた範囲でリタデーションを低減することができ、液晶装置によって形成される像の画質を高めることができる。
本発明に係るプロジェクタは、(a)上述の液晶装置を含む光変調装置と、(b)光変調装置を照明する照明装置と、(c)光変調装置によって形成された画像を投射する投射レンズとを備える。
上記プロジェクタにおいては、上述の液晶装置を含む光変調装置を備えており、液晶セルに電圧を印加しないオフ時に液晶装置の正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。これにより、簡単な手法でコントラストの高い画像を投射できるプロジェクタを提供することができる。
以上において、液晶装置は、透過型と反射型のいずれであってもよく、透過型の場合、一対の偏光素子が液晶セル及び光学補償素子を挟むように配置され、反射型の場合、偏光ビームスプリッタが前記液晶セルとの間に前記光学補償素子を挟むように配置される。以上において、偏光素子や偏光ビームスプリッタは、透過型偏光素子或いは反射型偏光素子で構成されるものとできる。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)の構造を説明する拡大断面図である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)の構造を説明する拡大断面図である。
図示の液晶ライトバルブ31において、入射側の偏光素子である第1偏光フィルタ31bと、射出側の偏光素子である第2偏光フィルタ31cとは、クロスニコルを構成する。これら第1及び第2偏光フィルタ31b,31cの間に挟まれた液晶装置31aは、入射光の偏光方向を入力信号に応じて画素単位で変化させる透過型の液晶パネルである。なお、偏光フィルタ31b,31cは、樹脂等で形成される吸収型の偏光子とすることもできるが、ワイヤグリッド偏光子等の反射型の偏光子とすることもできる。
液晶装置31aは、垂直配向モードで動作する液晶(すなわち垂直配向型の液晶)で構成される液晶層71を挟んで、入射側に透明な第1基板72aと、射出側に透明な第2基板72bとを備える。さらに、液晶装置31aは、入射側透明基板である第1基板72aの外側に入射側カバー74aを備え、射出側透明基板である第2基板72bの外側に射出側カバー74bを備える。
第1基板72aの液晶層71側の面上には、透明な共通電極75が設けられており、その上には、例えば配向膜76が形成されている。一方、第2基板72bの液晶層71側の面上には、マトリクス状に配置された複数の透明画素電極77と、各透明画素電極77に電気的に接続されている薄膜トランジスタ(不図示)とが設けられており、その上には、例えば配向膜78が形成されている。ここで、第1及び第2基板72a,72bと、これらに挟まれた液晶層71と、電極75,77とは、入射光の偏光状態を変化させるための液晶セルとなっている。また、液晶セルを構成する各画素は、1つの画素電極77と、共通電極75と、これらの間に挟まれた液晶層71とを含む。なお、第1基板72aと共通電極75との間には、各画素を区分するように格子状のブラックマトリックス79が設けられている。
ここで、配向膜76,78は、液晶層71を構成する液晶性化合物を必要な方向に配列させるためのものであり、液晶層71に電圧が印加されないオフ状態において、液晶性化合物の光学軸を第1基板72aの法線に対して大きくないが一様な傾きとなるように配向させる役割を有し、液晶層71に電圧が印加されたオン状態において、液晶性化合物の光学軸を第1基板72aの法線に対して垂直な特定の方向(具体的にはX方向)に配向させる役割を有する。これにより、液晶層71に対して電圧を印加しないオフ状態において、最大遮光状態(最低輝度状態)を確保することができ、液晶層71に対して電圧を印可したオン状態において、最大透過状態(最高輝度状態)を確保することができる。
この液晶装置31aにおいて、入射側カバー74aの入射面すなわち第1偏光フィルタ31bに対向する一方の平坦面には、例えば1〜200μm程度以下の厚さを有する薄い光学補償板73が貼り付けられている。ここで、光学補償板73は、光学接着剤によって入射側カバー74aの平坦面上に貼り付けられて光学補償素子OCを構成しており、このような複合型の光学補償素子OCは、第1基板72aの入射面上に光学接着剤によって貼り付けられる。なお、光学補償素子OCについては、光学補償板73のみで構成することができる。その場合、入射側カバー74aは不要になり、光学補償板73を直接第1基板72aに貼り付けることができ、或いは光学補償板73を適当なホルダによって第1基板72aから離間して保持させることもできる。
光学補償板73は、透明な負の一軸性結晶で形成された光入射端面と光射出端面とが平行な平板素子である。光学補償板73は、その光学軸が液晶層71の配向方向(具体的にはX方向)を含むXZ面内となるように配置されており、さらに、その光学軸がZ軸に対して所定の傾斜角を成している。
図2は、液晶層71の屈折率と光学補償板73の屈折率とを説明する側方断面の概念図である。ここで、液晶層71の入射面71a及び射出面71bと、光学補償板73の入射平面73a及び射出平面73bとは、互いに全て平行になっている。
液晶層71において、液晶性化合物の屈折率楕円体RIE1の長軸すなわち光学軸OA1は、XZ面内でZ軸に対して小さいが一定の傾き角を有している。この際、屈折率楕円体RIE1の傾き方向はX方向であり、このX方向を液晶層71の配向方向と呼ぶものとする。また、屈折率楕円体RIE1の配向方向における傾き角は、プレチルト角θ1と呼ばれる。一方、光学補償板73において、これを構成する負の一軸性結晶の屈折率楕円体RIE2の短軸すなわち光学軸OA2は、XZ面内にあってZ軸に対して小さいが一定の傾き角を有している。より詳細に説明すると、屈折率楕円体RIE2の傾き方向すなわち方位角は、液晶層71の配向方向と同じX方向となっており、屈折率楕円体RIE2が傾く方位角における傾き角θ2すなわち極角は、本実施形態の場合、液晶層71に付与されているプレチルト角θ1と略等しくなっている。ここで、光学補償板73の屈折率楕円体RIE2の短軸の傾き角θ2と液晶層71のプレチルト角θ1とが略等しいとしたのは、光学補償板73の屈折率と液晶層71の屈折率とが等しい場合は、光学補償板73の屈折率楕円体RIE2の短軸の傾き角θ2と液晶層71のプレチルト角θ1とは等しくなるが、光学補償板73の屈折率と液晶層71の屈折率が異なる場合は、その屈折率の差を考慮して(ある入射角度で液晶装置31aに入射する光線において、光学補償板73内を透過する際と液晶層71内を透過する際とでその光線が平行となるように)、液晶層71のプレチルト角θ1に対して増減させた角度を光学補償板73の屈折率楕円体RIEの短軸の傾き角θ2として設定されるからである。
図3aは、液晶層71の屈折率を説明するための側面図であり、図3bは、液晶層71の屈折率を説明する平面図である。また、図4aは、光学補償板73の屈折率を説明する側面図であり、図4bは、光学補償板73の屈折率を説明する平面図である。
まず、液晶層71について考えると、液晶性化合物の屈折率楕円体は、正の一軸性材料に相当するものとなっており、屈折率を基準とする各軸方向の屈折率をnx,ny,nzとすると、一般にnx=ny<nzの関係が成り立ち、屈折率nzの長軸に対応する光学軸OA1が液晶層71の入射面71aに法線方向から入射する光線(垂直入射光)の光路VPに対して、プレチルト角θ1だけ傾いた状態となっている。ここで、図3aに示すように正常屈折率がnoで異常屈折率がne、つまりnx=ny=no、nz=neであり、図3bに示すように垂直入射光の遅相軸方向に振動する光の屈折率がn2で進相軸方向に振動する光の屈折率がn1であるとすると、
となっている。よって、垂直入射光に対する液晶層71のリタデーションRe1は、液晶層71の厚みをd1として、
となる。同様に、光学補償板73について考えると、この光学補償板73は、負の一軸性結晶からなり、屈折率を基準とする各軸方向の屈折率をnx,ny,nzとすると、一般にnx=ny>nzの関係が成り立ち、屈折率nzの短軸に対応する光学軸OA2が光学補償板73の入射平面73aに法線方向から入射する光線(垂直入射光)の光路VPに対して、傾き角θ2=θ1だけ傾いた状態となっている。ここで、図4aに示すように正常屈折率がNoで異常屈折率がNeであり、図4bに示すように垂直入射光の進相軸方向に振動する光の屈折率がn4で遅相軸方向に振動する光の屈折率がn3であるとすると、
となっている。よって、垂直入射光に対する光学補償板73のリタデーションRe2は、光学補償板73の厚みをd2として、
となる。ここで、液晶層71の屈折率nzの長軸と光学補償板73の屈折率nzの短軸とは平行に配置されており、それぞれの遅相軸及び進相軸は互いに入れ替わっている。したがって、垂直入射光に対するトータルのリタデーションREは、式(3)で与えられるRe1と、式(6)で与えられるRe2との差の絶対値で与えられる。つまり、Re1=Re2のとき、偏光フィルタ31bから射出された偏光と偏光フィルタ31cに入射する偏光は同一状態となり、垂直入射光に対する偏光フィルタ31cでの遮光が完全となり、液晶ライトバルブ31の透過及び遮光によって決定される画像のコントラストは最大となる。
以下では、液晶ライトバルブ31への入射光が角度分布を有する場合について考察する。まず、空気中から液晶ライトバルブ31に斜めに入射するある光束L1について考え、空気中での傾き角をη0とし、光学補償板73中での傾き角をη1とし、液晶層71中での傾き角をη2とする。この場合、光学補償板73において、NoとNeとの差が小さいことからNo≒Neとなるので、空気中から光学補償板73に傾き角η0で入射した光束については、以下の条件を満たすような光路をたどる。
sin(η0):sin(η1)=1:1/No
sin(η1)=sin(η0)/No … (7)
さらに、液晶層71において、no≒neとなるので、光学補償板73中から液晶層71に傾き角η1で入射した光束については、以下のようになる。
sin(η1):sin(η2)=1/No:1/no
sin(η2)=sin(η1)(No/no) … (8)
以上では、入射面71aに法線に対して傾き角η0で入射する光束について考えたが、入射光の傾斜の方向も問題となる。ここでは、X軸方向を基準として傾斜方向を考えるものとして、上述の傾き角η0を極角とし、入射光束の方位角をφであるとする。この場合、液晶ライトバルブ31を通過する光束が光学補償板73中において光学軸OA1となす角w1と、液晶層71中の光学軸OA2となす角w2とは、上記変数η0,φとこれらに基づいて得られるη1,η2とから幾何学的に求めることができる。このような斜め入射光が光学補償板73と液晶層71とを通過する際のリタデーションRe’は、次式
で与えられる。上式でd2/cosη2は、傾斜した入射光の光学補償板73における実効光路長であり、d1/cosη1は、傾斜した入射光の液晶層71における実効光路長である。
sin(η0):sin(η1)=1:1/No
sin(η1)=sin(η0)/No … (7)
さらに、液晶層71において、no≒neとなるので、光学補償板73中から液晶層71に傾き角η1で入射した光束については、以下のようになる。
sin(η1):sin(η2)=1/No:1/no
sin(η2)=sin(η1)(No/no) … (8)
以上では、入射面71aに法線に対して傾き角η0で入射する光束について考えたが、入射光の傾斜の方向も問題となる。ここでは、X軸方向を基準として傾斜方向を考えるものとして、上述の傾き角η0を極角とし、入射光束の方位角をφであるとする。この場合、液晶ライトバルブ31を通過する光束が光学補償板73中において光学軸OA1となす角w1と、液晶層71中の光学軸OA2となす角w2とは、上記変数η0,φとこれらに基づいて得られるη1,η2とから幾何学的に求めることができる。このような斜め入射光が光学補償板73と液晶層71とを通過する際のリタデーションRe’は、次式
結果的に、液晶ライトバルブ31と光学補償板73を通過する際のリタデーションRe’は、屈折率no,ne,No,Ne,d1,d2が定数であり、値η1,η2,w1,w2が上記値η0,φによって決定されるパラメータであるので、以下のような関数f
Re’=f(η0,φ) … (10)
と考えて処理することができる。よって、上記式(10)に基づいて、全ての入射光線に関してリタデーションRe’を求めてこれらの総和が最小値になるように、光学補償板73の厚みd2を最適化することもでき、この場合、液晶ライトバルブ31の透過及び遮光によって決定される画像のコントラストは最大となる。例えばある一定のNAで液晶ライトバルブ31に垂直入射する光束の場合、開口角に対応するη0が0〜ηmaxとなり、方位角φが0〜360°となるので、以下の積分値
がゼロに近づくように光学補償板73を設定する。ここで、W(η0,φ)は、入射光の角度分布によって与えられる重み関数である。図5aは、通過光のリタデーションRe’=f(η0,φ)と傾き角η0との関係をφが傾斜方向から90°ずれている場合に視覚的に説明したものであり、傾き角η0が0となる正面方向の光に対してリタデーションRe’が最も小さくなっているが、傾き角η0が増加するに従ってリタデーションRe’が徐々に増加する。また、図5bは、入射光の重み関数W(η0,φ)と傾き角η0との関係を視覚的に説明したものであり、傾き角η0が0となる正面方向の光の密度が最も高くなっており、これに伴って重み関数が最大値となっている。以上は例示であり、リタデーションRe’=f(η0,φ)の特性は、液晶層71と光学補償板73の光学特性によって定まり、W(η0,φ)は、光源の放射特性、均一化光学系の光学特性、液晶のマイクロレンズの特性等によって定まる。つまり、光学補償板73の屈折率楕円体RIE2や厚みd2を調節することで、様々なW(η0,φ)の照明装置に対してリタデーションRe’=f(η0,φ)の積分値を極小化することができ、液晶ライトバルブ31によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。
Re’=f(η0,φ) … (10)
と考えて処理することができる。よって、上記式(10)に基づいて、全ての入射光線に関してリタデーションRe’を求めてこれらの総和が最小値になるように、光学補償板73の厚みd2を最適化することもでき、この場合、液晶ライトバルブ31の透過及び遮光によって決定される画像のコントラストは最大となる。例えばある一定のNAで液晶ライトバルブ31に垂直入射する光束の場合、開口角に対応するη0が0〜ηmaxとなり、方位角φが0〜360°となるので、以下の積分値
以上の式(11)によって表される積分値(合計リタデーション)は、高速演算を行うシミュレーションによって迅速に求めることができ、液晶層71の特性や光学補償板73の屈折率特性を入力することで、光学補償板73の厚みd2や傾き角θ2を迅速に決定することができる。
具体的な実施例について説明すると、垂直配向型の各種液晶層71に対して、光学補償板73としてサファイア結晶を用いた場合、厚みd2は、1〜100μm程度の範囲となった。特に一般的な垂直配向型の液晶層71を備える液晶ライトバルブ31に関してシミュレーションを行った結果では、光学補償板73の厚みd2=48μmが最適値で、上記式(11)で与えられる積分値を最小値とできた。さらに、シミュレーションによれば、d2=48±6μmの範囲とすることで、この液晶ライトバルブ31で最大達成されるコントラストの80%程度を確保できることが分かった。結果を図6に示し、これに用いたデータを表1に示す。
図7は、具体的な液晶ライトバルブ31に対応するデータでシミュレーションを行った結果を示す。図7aは、実施例の液晶ライトバルブ31の視野角特性を示し、図7bは、比較例の液晶ライトバルブの視野角特性を示す。比較例の液晶ライトバルブは、実施例の液晶ライトバルブ31から光学補償板73を除いたものである。両視野角特性において、等高線は、入射面の法線方向に対する傾斜角を意味する。図からも明らかなように、実施例の液晶ライトバルブ31の場合、視野角特性が入射面の法線方向に関して対称的であり、液晶ライトバルブ31の正面方向のコントラストを著しく向上させていることが分かる。
以下、光学補償板73を備える光学補償素子OCの製造方法について説明する。まず、光学補償素子OCの構成要素となる、光学補償板73及び入射側カバー74aの材料を準備する。すなわち、光学補償板73の材料となるサファイアをなるべく薄く切り出して、屈折率楕円体RIE2の傾き方向(方位角)と傾き角(極角)θ2とが液晶層71の屈折率楕円体RIE1と同じになるようにする。次に、切り出したサファイア板の一対の対向する平面に対して研磨等の加工を施して表面を滑らかにする。次に、入射側カバー74aの材料となる、石英、白板ガラス等の透過率が高く複屈折性有しない平板状の支持基板を準備する。次に、洗浄後の支持基板上に紫外線硬化樹脂を介して洗浄後のサファイア板を貼り合わせた後、硬化によって固定する。その後、支持基板上のサファイア板を比較的粗い砥粒で研磨して、サファイア層が例えば60μm程度の光学補償板73になるようにする。この際、両面研磨等を用いるならば、リタデーションを計測することで、サファイア層である光学補償板73の厚みを判定することができ、片面研磨を用いるならば、マイクロゲージによってサファイア層である光学補償板73の厚みを判定することができる。研磨された面には細かい傷がつくので、光学補償板73と同程度の屈折率を有する接着材等で傷を埋め、或いは比較的細かい砥粒で再度研磨を行って、光学補償板73の表面を平滑化する。
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第2実施形態の液晶ライトバルブは、第1実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であり重複説明を省略する。
以下、本発明の第2実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第2実施形態の液晶ライトバルブは、第1実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様であり重複説明を省略する。
図8は、第2実施形態の液晶ライトバルブに組み込まれる光学補償板173を説明する側方断面図である。この場合、液晶層71の入射面71aに対して光学補償板173を傾斜させて配置する。すなわち、液晶層71の入射面71aに対して垂直入射する光束の光路VPは、平板素子である光学補償板173の入射平面173aに対して傾斜して入射し、射出平面173bから同様の傾斜角で射出する。ここで、光学補償板173は、第1実施形態の場合と同様に、透明な負の一軸性結晶で形成された平板素子であるが、単独で光学補償素子として機能し、その光学軸OA2の方向が入射平面173aに垂直になるように加工されている。そして、光学補償板173は、不図示のホルダによって、液晶層71等を含む液晶パネルの本体側に固定されている。
本実施形態では、光学補償板173において、屈折率楕円体RIE2の短軸すなわち光学軸OA2が液晶層71に対して垂直入射する光束の光路VPに対して一定の傾き角θ2を有している。この傾き角θ2は、液晶層71に付与されているプレチルト角θ1と略等しくなっている。ここで、光学補償板173の屈折率楕円体RIE2の短軸の傾き角θ2と液晶層71のプレチルト角θ1とが略等しいとしたのは、第1実施形態と同様に、光学補償板173と液晶層71との屈折率の差を考慮した場合、θ1とθ2とに若干の差が生じる場合があるからである。
本実施形態でも、光学補償板173の屈折率楕円体RIE2、厚みd2、傾き等を適宜調節することで、様々な照明装置に対して第1実施形態で説明したリタデーションRe’=f(η0,φ)の積分値を極小化することができるので、液晶ライトバルブ31によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第3実施形態の液晶ライトバルブは、第2実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第2実施形態と同様であり重複説明を省略する。
以下、本発明の第3実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第3実施形態の液晶ライトバルブは、第2実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第2実施形態と同様であり重複説明を省略する。
図9は、第3実施形態の液晶ライトバルブに組み込まれる光学補償素子273を説明する側方断面図である。この場合、光学補償素子273は、光学軸OA2の方向が入射平面173a及び射出平面173bに垂直になるように加工されている光学補償板173と、この光学補償板173を挟むように接合された一対の楔状プリズム273g,273hとを備える。ここで、楔状プリズム273g,273hは、等方性の板状部材であり、その屈折率は、光学補償板173の屈折率と略等しいものとなっている。また、両楔状プリズム273g,273hのクサビ角γは、光学補償素子273の屈折率楕円体RIE2の短軸の傾き角θ2と等しい。結果的に、液晶層71の入射面71aに対して垂直入射する光束の光路VPは、光学補償素子273の入射面273aに対して垂直入射するが、光学補償板173の入射平面173aに対しては、適当な傾斜角で傾斜して入射する。
本実施形態では、光学補償素子273中の光学補償板173において、屈折率楕円体RIE2の光学軸OA2が、液晶層71に対して垂直入射する光束の光路VPに対して一定の傾き角θ2を有している。この傾き角θ2は、液晶層71に付与されているプレチルト角θ1と略等しくなっている。ここで、光学補償板173の屈折率楕円体RIE2の短軸の傾き角θ2と液晶層71のプレチルト角θ1とが略等しいとしたのは、第1実施形態と同様に、光学補償板173と液晶層71との屈折率の差を考慮した場合、θ1とθ2とに若干の差が生じる場合があるからである。
本実施形態でも、光学補償素子273中における光学補償板173の屈折率楕円体RIE2、厚みd2、傾き等を適宜調節することで、様々な照明装置に対して第1実施形態で説明したリタデーションRe’=f(η0,φ)の積分値を極小化することができるので、液晶ライトバルブ31によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。
〔第4実施形態〕
図10は、図1に示す液晶ライトバルブ31等を組み込んだプロジェクタの光学系の構成を説明する図である。
図10は、図1に示す液晶ライトバルブ31等を組み込んだプロジェクタの光学系の構成を説明する図である。
本プロジェクタ10は、光源光を発生する光源装置21と、光源装置21からの光源光を赤緑青の3色に分割する色分離光学系23と、色分離光学系23から射出された各色の照明光によって照明される光変調部25と、光変調部25からの各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27を経た像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射レンズ29とを備える。このうち、光源装置21、色分離光学系23、光変調部25、及びクロスダイクロイックプリズム27は、スクリーンに投射すべき像光を形成する画像形成装置となっている。
以上のプロジェクタ10において、光源装置21は、光源ランプ21aと、凹レンズ21bと、一対のフライアイ光学系21d,21eと、偏光変換部材21gと、重畳レンズ21iとを備える。このうち、光源ランプ21aは、例えば高圧水銀ランプからなり、光源光を回収して前方に射出させる凹面鏡を備える。凹レンズ21bは、光源ランプ21aからの光源光を平行化する役割を有するが、省略することもできる。一対のフライアイ光学系21d,21eは、マトリックス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって凹レンズ21bを経た光源ランプ21aからの光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材21gは、フライアイ光学系21eから射出した光源光を例えば図10の紙面に垂直なS偏光成分のみに変換して次段光学系に供給する。重畳レンズ21iは、偏光変換部材21gを経た照明光を全体として適宜収束させることにより、光変調部25に設けた各色の光変調装置に対する重畳照明を可能にする。つまり、両フライアイ光学系21d,21eと重畳レンズ21iとを経た照明光は、以下に詳述する色分離光学系23を経て、光変調部25に設けられた各色の液晶パネル25a,25b,25cを均一に重畳照明する。
色分離光学系23は、第1及び第2ダイクロイックミラー23a,23bと、補正光学系である3つのフィールドレンズ23f,23g,23hと、反射ミラー23j,23m,23n,23oとを備え、光源装置21とともに照明装置を構成する。ここで、第1ダイクロイックミラー23aは、赤緑青の3色のうち例えば赤光及び緑光を反射し青光を透過させる。また、第2ダイクロイックミラー23bは、入射した赤及び緑の2色のうち例えば緑光を反射し赤光を透過させる。この色分離光学系23において、光源装置21からの略白色の光源光は、反射ミラー23jで光路を折り曲げられて第1ダイクロイックミラー23aに入射する。第1ダイクロイックミラー23aを通過した青光は、例えばS偏光のまま、反射ミラー23mを経てフィールドレンズ23fに入射する。また、第1ダイクロイックミラー23aで反射されて第2ダイクロイックミラー23bでさらに反射された緑光は、例えばS偏光のままフィールドレンズ23gに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー23bを通過した赤光は、例えばS偏光のまま、レンズLL1,LL2及び反射ミラー23n,23oを経て、入射角度を調節するためのフィールドレンズ23hに入射する。レンズLL1,LL2及びフィールドレンズ23hは、リレー光学系を構成している。このリレー光学系は、第1レンズLL1の像を、第2レンズLL2を介してほぼそのままフィールドレンズ23hに伝達する機能を備えている。
光変調部25は、3つの液晶パネル25a,25b,25cと、各液晶パネル25a〜25cを挟むように配置される3組の偏光フィルタ25e,25f,25gとを備える。ここで、青光用の液晶パネル25aと、これを挟む一対の偏光フィルタ25e,25eとは、輝度変調後の像光のうち青光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色用の液晶ライトバルブを構成する。青色用の液晶ライトバルブは、図1に示す液晶ライトバルブ31と同様の構造を有しており、コントラスト向上のための光学補償素子OCを組み込んでいる。同様に、緑光用の液晶パネル25bと、対応する偏光フィルタ25f,25fも、緑色用の液晶ライトバルブを構成し、赤光用の液晶パネル25cと、偏光フィルタ25g,25gも、赤色用の液晶ライトバルブを構成する。そして、これら緑光及び赤色用の液晶ライトバルブも、図1に示す液晶ライトバルブ31と同様の構造を有している。具体的には、各偏光フィルタ25e,25f,25gは、図1の偏光フィルタ31b,31cに対応しており、各液晶パネル25a,25b,25cは、図1の液晶装置31aに対応しており、コントラスト向上のための光学補償素子OCすなわち光学補償板73をそれぞれ組み込んでいる。
青光用の第1液晶パネル25aには、色分離光学系23の第1ダイクロイックミラー23aを透過することによって分岐された青光が、フィールドレンズ23fを介して入射する。緑光用の第2液晶パネル25bには、色分離光学系23の第2ダイクロイックミラー23bで反射されることによって分岐された緑光が、フィールドレンズ23gを介して入射する。赤光用の第3液晶パネル25cは、第2ダイクロイックミラー23bを透過することによって分岐された赤光が、フィールドレンズ23hを介して入射する。各液晶パネル25a〜25cは、入射した照明光の空間的強度分布を変調する非発光型の光変調装置であり、各液晶パネル25a〜25cにそれぞれ入射した3色の光は、各液晶パネル25a〜25cに電気的信号として入力された駆動信号或いは画像信号に応じて変調される。その際、偏光フィルタ25e,25f,25gによって、各液晶パネル25a〜25cに入射する照明光の偏光方向が調整されるとともに、各液晶パネル25a〜25cから射出される変調光から所定の偏光方向の成分光が像光として取り出される。
クロスダイクロイックプリズム27は、光合成部材であり、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視略正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、X字状に交差する一対の誘電体多層膜27a,27bが形成されている。一方の第1誘電体多層膜27aは青色光を反射し、他方の第2誘電体多層膜27bは赤色光を反射する。このクロスダイクロイックプリズム27は、液晶パネル25aからの青光を第1誘電体多層膜27aで反射して進行方向右側に射出させ、液晶パネル25bからの緑光を第1及び第2誘電体多層膜27a,27bを介して直進・射出させ、液晶パネル25cからの赤光を第2誘電体多層膜27bで反射して進行方向左側に射出させる。
投射レンズ29は、クロスダイクロイックプリズム27で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(不図示)上に投射する。つまり、各液晶パネル25a〜25cに入力された駆動信号或いは画像信号に対応する所望の倍率のカラー動画やカラー静止画がスクリーン上に投射される。
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第5実施形態の液晶ライトバルブは、第1実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
以下、本発明の第5実施形態に係る液晶装置である液晶ライトバルブ(光変調装置)について説明する。第5実施形態の液晶ライトバルブは、第1実施形態の液晶ライトバルブを変形したものであり、特に説明しない部分は、第1実施形態と同様である。
図11は、第5実施形態の液晶ライトバルブの構造を説明する拡大断面図である。図示の液晶ライトバルブ331は、液晶装置331aと、偏光ビームスプリッタ331bとを備える。液晶装置331aは、入射光の偏光方向を入力信号に応じて画素単位で変化させる反射型の液晶パネルである。
液晶装置331aは、垂直配向モードで動作する液晶(すなわち垂直配向型の液晶)で構成される液晶層71を挟んで、表側に第1基板72aと、裏側に第2基板372bとを備える。なお、表側の第1基板72aやその周辺部分については、ブラックマトリクスが存在しない点を除いて第1実施形態と同様である。
第2基板372bの液晶層71側には、回路層379を介して、マトリクス状に配置された複数の反射画素電極377が形成されている。各反射画素電極377には、回路層379に設けた薄膜トランジスタ(不図示)が電気的に接続されている。回路層379及び反射画素電極377の上には、配向膜78が形成されている。ここで、第1及び第2基板72a,372bと、これらに挟まれた液晶層71と、電極75,377とは、入射光の偏光状態を変化させるための液晶セルとなっている。また、液晶セルを構成する各画素は、1つの画素電極377と、共通電極75と、これらの間に挟まれた液晶層71とを含む。
液晶ライトバルブ331において、偏光ビームスプリッタ331bは、図1の偏光フィルタ31b,31cに代えて設けられたものであり、液晶装置331aに入射させる光の偏光方向と、液晶装置331aから射出された光の偏光方向とについての調整を行っている。この偏光ビームスプリッタ331b中には、偏光を分離するための偏光分離膜32が内蔵されている。
偏光ビームスプリッタ331bは、入射光のうちS偏光を偏光分離膜32によって反射して液晶装置331aへと入射させ、液晶装置331aから射出された変調光のうち偏光分離膜32を透過するP偏光を射出する。つまり、液晶層71に対して電圧を印加しないオフ状態において、液晶装置331aからはS偏光が射出され偏光ビームスプリッタ331bの偏光分離膜32でS偏光が反射されるので、画像光としては最大遮光状態(最低輝度状態)を確保することができ、液晶層71に対して電圧を印可したオン状態において、液晶装置331aからはP偏光が射出され偏光ビームスプリッタ331bの偏光分離膜32でP偏光が透過されるので、最大透過状態(最高輝度状態)を確保することができる。なお、偏光ビームスプリッタ331bは、システム光軸に対して傾斜配置されるワイヤグリッド偏光子等の他の反射型の偏光分離素子に置き換えることができる。
液晶装置331aにおいて、第1基板72aの入射面すなわち偏光ビームスプリッタ331bに対向する一方の平坦面には、例えば1〜200μm程度以下の厚さを有する薄い光学補償板73が貼り付けられている。ここで、光学補償板73は、それ自体で光学補償素子を構成するものであり、光学接着剤によって第1基板72aの平坦面上に貼り付けられている。なお、光学補償板73は、第1実施形態で説明したものと同様のものである。つまり、光学補償板73は、透明な負の一軸性結晶で形成された平板素子であり、その光学軸が液晶層71の配向方向(具体的にはX方向)を含むXZ面内となるように配置されており、さらに、その光学軸がZ軸に対して所定の傾斜角を成している。
光学補償板73の機能は、入射光束が光学補償板73と液晶層71を往復する点を除いて、第1実施形態の場合と同様である。すなわち、液晶装置331aにおいて、垂直入射光に対するトータルのリタデーションREは、上述の式(3)で与えられるRe1の2倍と、式(6)で与えられるRe2の2倍との差の絶対値で与えられ、Re1=Re2のとき、偏光ビームスプリッタ331bで反射されて液晶装置331aに入射する偏光と、液晶装置331aで反射されて偏光ビームスプリッタ331bに入射する偏光とが同一状態となり、垂直入射光に対する遮光が完全となり、液晶ライトバルブ331の透過及び遮光によって決定される画像のコントラストは最大となる。
同様に、光学補償板73の屈折率楕円体RIE2や厚みd2を調節することで、様々なW(η0,φ)の照明装置に対してリタデーションRe’=f(η0,φ)の積分値を極小化することができ、液晶ライトバルブ331によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。
なお、以上の第5実施形態において、光学補償板73が平板で第1基板72aに平行に貼り付けられるものとしたが、第2実施形態と同様に第1基板72aに対して傾けて配置したり、第3実施形態と同様に第1基板72aに対して傾けるとともに楔状プリズムで挟むこともできる。
〔第6実施形態〕
図12は、図11に示す液晶ライトバルブ331を組み込んだプロジェクタの光学系の構成を説明する図である。なお、第6実施形態のプロジェクタ310は、第4実施形態のプロジェクタ10を変形したものであり、特に説明しない部分は、第4実施形態と同様である。
図12は、図11に示す液晶ライトバルブ331を組み込んだプロジェクタの光学系の構成を説明する図である。なお、第6実施形態のプロジェクタ310は、第4実施形態のプロジェクタ10を変形したものであり、特に説明しない部分は、第4実施形態と同様である。
本プロジェクタ10は、光源光を発生する光源装置21と、光源装置21からの光源光を赤緑青の3色に分割する色分離光学系323と、色分離光学系323から射出された各色の照明光によって照明される光変調部325と、光変調部325からの各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム27と、クロスダイクロイックプリズム27を経た像光をスクリーン(不図示)に投射するための投射光学系である投射レンズ29とを備える。
色分離光学系323は、第1及び第2ダイクロイックミラー323a,23bと、反射ミラー323nとを備える。この色分離光学系23において、光源装置21からの略白色の光源光は、ダイクロイックミラー323aに入射する。第1ダイクロイックミラー323aで反射された青光は、例えばS偏光のまま、偏光ビームスプリッタ55aに入射する。また、第1ダイクロイックミラー323aを透過して第2ダイクロイックミラー23bで反射された緑光は、例えばS偏光のまま偏光ビームスプリッタ55bに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー23bを通過した赤光は、例えばS偏光のまま、偏光ビームスプリッタ55cに入射する。
光変調部325は、3つの偏光ビームスプリッタ55a,55b,55cと、3つの液晶パネル56a,56b,56cとを備える。ここで、青光用の偏光ビームスプリッタ55a及び液晶パネル56bは、輝度変調後の像光のうち青光を画像情報に基づいて2次元的に輝度変調するための青色用の液晶ライトバルブを構成する。青色用の液晶ライトバルブは、図11に示す液晶ライトバルブ331と同様の構造を有している。同様に、緑光用の偏光ビームスプリッタ55b及び液晶パネル56bも、緑色用の液晶ライトバルブを構成し、赤光用の偏光ビームスプリッタ55c及び液晶パネル56cも、赤色用の液晶ライトバルブを構成する。そして、これら緑光及び赤色用の液晶ライトバルブも、図11に示す液晶ライトバルブ331と同様の構造を有している。具体的には、偏光ビームスプリッタ55a,55b,55cは、図11の偏光ビームスプリッタ331bに対応しており、偏光分離膜32b,32g,32rを内蔵する。また、各液晶パネル56a,56b,56cは、図11の液晶装置331aに対応しており、コントラスト向上のための光学補償素子すなわち光学補償板73をそれぞれ組み込んでいる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
すなわち、上記実施形態では、光学補償板73としてサファイアを用いた例について説明したが、サファイア以外の負の一軸性結晶を用いることができる。さらに、光学補償板73を延伸フィルム(延伸膜)に置き換えることができる。延伸フィルムは、通常、光学軸の方向が入射面に垂直になるが、図7や図8に示すような光学補償板173として組み込むことにより、液晶ライトバルブ31の液晶セルに電圧を印加しないオフ時における各光束に対するリタデーションの積分値を極小化することができるので、液晶ライトバルブ31によって形成される画像のコントラストを最大限高めることができる。なお、延伸フィルムは、大量生産に向いている。なお、延伸フィルムの場合、その屈折率楕円体は、屈折率を基準とする各軸方向の屈折率をnx,ny,nzとし延伸フィルムの厚みをd2とすると、一般にnx>ny>nzの関係が成り立ち、一般的に延伸フィルムの特性とされるパラメータRe,Rthは以下のようになる。
Re=(nx−ny)・d2 … (12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}・d2 … (13)
ここで、Reは楕円体の長径側の屈折率差に対応するもので、0nmであることが望ましい。また、Rthは、最短径との差に対応するもので、例えば384nm程度となる。ただし、Reが0nmでなくても近似的には同様の機能が達成されるので、Reが0nmでない延伸フィルムを液晶ライトバルブ31に組み込むことができる。Reが0nmでない場合、光学補償板173を入射平面173aに対して垂直な軸のまわりに回転させることで、液晶層71の入射面71aに垂直な軸方向から見た屈折率の特性を変化させることができるので、コントラストの調整や向上が可能になる。
Re=(nx−ny)・d2 … (12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}・d2 … (13)
ここで、Reは楕円体の長径側の屈折率差に対応するもので、0nmであることが望ましい。また、Rthは、最短径との差に対応するもので、例えば384nm程度となる。ただし、Reが0nmでなくても近似的には同様の機能が達成されるので、Reが0nmでない延伸フィルムを液晶ライトバルブ31に組み込むことができる。Reが0nmでない場合、光学補償板173を入射平面173aに対して垂直な軸のまわりに回転させることで、液晶層71の入射面71aに垂直な軸方向から見た屈折率の特性を変化させることができるので、コントラストの調整や向上が可能になる。
また、上記実施形態では、光学補償板73を液晶層71の入射側に配置しているが、光学補償板73を液晶層71の射出側すなわち射出側カバー74bの前後に配置することができる。なお、第1基板72a等に集光用のマイクロレンズを形成している場合、光学補償板73と液晶層71と間で光束の角度を大きく変化させない観点から、光学補償板73を第1基板72aの反対側である射出側に配置することが望ましい。
また、上記第5実施形態及び第6実施形態では、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子で反射したS偏光が液晶装置に入射させ、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子を透過したP偏光を画像光として射出する例のみを挙げたが、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子を透過したP偏光を液晶装置に入射させ、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子で反射したS偏光を画像光として射出する構成とすることも可能である。
また、上記第5実施形態及び第6実施形態では、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子で反射したS偏光が液晶装置に入射させ、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子を透過したP偏光を画像光として射出する例のみを挙げたが、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子を透過したP偏光を液晶装置に入射させ、偏光ビームスプリッタの偏光分離素子で反射したS偏光を画像光として射出する構成とすることも可能である。
また、上記実施形態のプロジェクタ10では、光源装置21を、光源ランプ21a、一対のフライアイ光学系21d,21e、偏光変換部材21g、及び重畳レンズ21iで構成したが、フライアイ光学系21d,21e、偏光変換部材21g等については省略することができ、光源ランプ21aも、LED等の別光源に置き換えることができる。
また、上記実施形態では、色分離光学系23を用いて照明光の色分離を行って、光変調部25において各色の変調を行った後に、クロスダイクロイックプリズム27において各色の像の合成を行っているが、単一の液晶パネルすなわち液晶ライトバルブ31によって画像を形成することもできる。
上記実施形態では、3つの液晶パネル25a〜25cを用いたプロジェクタ10の例のみを挙げたが、本発明は、1つの液晶パネルのみを用いたプロジェクタ、2つの液晶パネルを用いたプロジェクタ、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
上記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投射を行なうフロントタイプのプロジェクタの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投射を行なうリアタイプのプロジェクタにも適用可能である。
上記課題を解決するため、本発明に係る液晶装置は、垂直配向モードで動作する液晶を含むとともに、液晶セルに電圧を印加しないオフ状態における液晶の光学軸が入射面の法線に対して所定のプレチルト角だけ傾斜配向する液晶セルと、サファイア板を有する光学補償素子と、を備え、前記サファイア板の光学軸は、オフ状態の液晶の配向方向を含む面内に配置され、入射面に対して傾斜している。ここで、オフ状態の液晶の配向方向とは、液晶セルに電圧を印加しない場合において、液晶の屈折率楕円を液晶セルの入射面に投影した際の長軸方向を意味し、液晶セルの入射面に沿った特定方位となっている。
上記液晶装置では、垂直配向型の液晶セルのオフ状態(すなわち電圧無印可状態)における液晶の光学軸が入射面の法線に対して傾斜配向しており、液晶に所謂プレチルトが生じている。そして、光学補償素子のサファイア板の光学軸は、オフ状態の液晶の配向方向を含む面内に配置され入射面に対して傾斜しているので、垂直配向型の液晶のプレチルトによって生じた正面方向の像光のリタデーションを、これを相殺するようなサファイア板の屈折率特性によって低減することができる。通常正の一軸性結晶である液晶性化合物のプレチルトに起因する位相の乱れを、負の一軸性結晶であるサファイ板で補償することができる。なお、オフ状態の垂直配向型の液晶に残存するプレチルトを液晶層内で一様にでき、このようなプレチルトに起因する位相の乱れの補償は一様な光学軸を有するサファイア板で足る。これにより、液晶セルに電圧を印加しないオフ時に液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。さらに、無機材料の結晶であるサファイア板は、光、熱等に対する耐久性が高く、光学補償素子の寿命を長くすることができる。
また、本発明の具体的な態様又は観点によれば、上記液晶装置において、サファイア板の光学軸が、液晶セルの入射面に法線方向から入射する光線の光路に対して、オフ状態の液晶の所定のプレチルト角に対応する所定の傾斜角だけ傾斜している。この場合、液晶のプレチルトによって生じた正面方向を中心とする像光のリタデーションをサファイア板の屈折率特性によって相殺することができる。
本発明の別の態様では、サファイア板が、液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面を有するとともに、当該入射平面及び射出平面の法線に対して光学軸を傾斜させた平板素子である。この場合、サファイア板を液晶セル側に貼り付け易くなり、サファイア板を液晶セル等に対して精密に安定して固定することができる。
本発明のさらに別の態様では、サファイア板が、液晶セルの入射面に対して傾斜した互いに平行な入射平面及び射出平面を有するするとともに、当該入射平面及び射出平面の法線方向に光学軸が存在する平板素子である。この場合、サファイアの光学軸を入射平面等に垂直な方向に設定することができ、サファイア板の加工が比較的容易となる。
本発明のさらに別の態様では、光学補償素子が、所定のクサビ角をそれぞれ有するとともに、上記サファイア板を挟むことによって液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面をそれぞれ形成する一対の透明な等方性の板状部材をさらに有する。この場合、サファイア板の加工を容易にしつつ、光学補償素子を液晶セル等に対して精密に安定して固定することができる。
本発明のさらに別の態様では、サファイア板が、オフ状態の液晶に起因するリタデーションを実質的にキャンセルするような厚さを有する。この場合、光学補償素子により、液晶のプレチルトに起因して液晶セルの正面方向において黒表示で透過光が増して画像のコントラストが低下する現象を抑えることができる。
本発明のさらに別の態様では、サファイア板が、オフ状態の液晶に起因するリタデーションを、液晶セルの入射面に対する照明光の傾斜角の範囲に対応させて略キャンセルするような厚さを有する。この場合、液晶セルの正面方向だけでなくその近傍を含めた範囲でリタデーションを低減することができ、液晶装置によって形成される像の画質を高めることができる。
Claims (11)
- 垂直配向モードで動作する液晶を含むとともに、液晶セルに電圧を印加しないオフ状態における液晶の光学軸が入射面の法線に対して所定のプレチルト角だけ傾斜配向する液晶セルと、
前記オフ状態の液晶の配向方向であって、入射面に対して傾斜する方向に、一様な光学軸を有する光学補償素子と、
を備える液晶装置。 - 前記光学補償素子の光学軸は、前記液晶セルの入射面に法線方向から入射する光線の光路に対して、前記オフ状態の液晶の前記所定のプレチルト角に対応する所定の傾斜角だけ傾斜している請求項1記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、前記液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面を有するとともに、当該入射平面及び射出平面の法線に対して光学軸を傾斜させた平板素子である請求項2記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、前記液晶セルの入射面に対して傾斜した互いに平行な入射平面及び射出平面を有するとともに、当該入射平面及び射出平面の法線方向に光学軸が存在する平板素子を含む請求項2記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、所定のクサビ角を有するとともに、前記平板素子を挟むことによって前記液晶セルの入射面に平行な入射平面及び射出平面を形成する一対の透明な等方性の板状部材をさらに有する請求項4記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、前記オフ状態の液晶に起因するリタデーションを実質的にキャンセルするような厚さを有する請求項1から請求項5のいずれか一項記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、負の一軸性結晶である請求項1から請求項6のいずれか一項記載の液晶装置。
- 前記光学補償素子は、前記オフ状態の液晶に起因するリタデーションを、前記液晶セルの入射面に対する照明光の傾斜角の範囲に対応させて略キャンセルするような厚さを有する請求項1から請求項7のいずれか一項記載の液晶装置。
- 請求項1から請求項8のいずれか一項記載の液晶装置を含む光変調装置と、
前記光変調装置を照明する照明装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投射する投射レンズと、
を備えるプロジェクタ。 - 前記液晶装置は、透過型であり、
前記光変調装置は、前記液晶セル及び前記光学補償素子を挟むように配置される一対の偏光素子を含む請求項9記載のプロジェクタ。 - 前記液晶装置は、反射型であり、
前記光変調装置は、偏光ビームスプリッタを含み、
前記光学補償素子は、前記液晶セルと前記偏光ビームスプリッタとの間に挟まれるように配置される請求項9記載のプロジェクタ。
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