JPWO2007043476A1 - マグネトロンスパッタ装置 - Google Patents

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Abstract

ターゲット上での瞬時瞬時のエロージョン密度を上昇して成膜速度を向上させると共に、エロージョン領域を時間的に移動させてターゲットの局所的磨耗を防いで均一な消耗を実現することによりターゲットを長寿命化することが可能なマグネトロンスパッタ装置を提供する。柱状回転軸2の周辺に板磁石3を複数設置し、柱状回転軸2を回転させることで、ターゲット1上に高密度のエロージョン領域を形成して成膜速度を上昇させると共に、柱状回転軸2の回転と共にエロージョン領域が動くことで均一にターゲット1を消耗させる。

Description

本発明は、液晶表示基板や半導体基板等の被処理体に所定の表面処理を施すための処理装置であるマグネトロンスパッタ装置に関する。
液晶表示素子やIC等の半導体素子などの製造において、その基板上に金属あるいは絶縁物などの薄膜を形成する薄膜形成工程は必要不可欠なものである。これらの工程では薄膜形成用の原材料をターゲットとして、直流高電圧あるいは高周波電力によりアルゴンガス等をプラズマ化し、そのプラズマ化ガスによりターゲットを活性化して融解し飛散させ、被処理基板に被着させるスパッタ装置による成膜方法が用いられている。
スパッタ成膜法においては、成膜速度を高速化するために、ターゲットの裏側に磁石を配置し、ターゲット表面に磁力線を平行に走らせることにより、ターゲット表面にプラズマを閉じ込め、高密度なプラズマを得るマグネトロンスパッタ装置による成膜法が主流となっている。
図10はこのような従来技術によるマグネトロンスパッタ装置の主要部構成を説明するための図であり、101はターゲット、102は薄膜を形成する基板、103は複数のマグネット、104は磁力線、105はターゲット101が融解剥離する領域すなわちエロージョン領域である。
図10に示すように、ターゲット101の裏側に複数の磁石103をそれぞれのN極とS極の向きを所定の方向に配置し、ターゲット101と基板102との間に高周波電力(RF電力)106あるいは直流高圧電力107を印加してターゲット101上にプラズマを励起する。
一方、ターゲット101の背面に設置した複数の磁石103において、隣接するN極からS極に向かって磁力線104が発生する。ターゲット表面において垂直磁場(ターゲット表面と垂直な磁力線成分)がゼロの位置において、局所的に水平磁場(ターゲット表面と平行な磁力線成分)が最大となる。水平磁場成分が多い領域では、電子がターゲット表面近傍に補足され密度の高いプラズマが形成されるため、この位置を中心としてエロージョン領域105が形成される。
エロージョン領域105は他の領域に比べて高密度のプラズマに晒されるため、ターゲット101の消耗が激しくなる。成膜を続けることでこの領域においてターゲット材料が無くなると、ターゲット全体を交換しなくてはならなくなる。結果として、ターゲット101の利用効率が悪くなってしまい、さらにターゲット101と対向して設置された被処理基板102の薄膜の膜厚についても、エロージョン領域105に対向する位置の膜厚が厚くなり、被処理基板全体の膜厚均一性が劣化するという性質を持つ。
そこで、磁場を発生させるマグネットを棒磁石とし、この棒磁石を移動もしくは回転させることでエロージョン領域を時間的に移動させ、時間平均で実質的にターゲットの局所的消耗を無くし、さらには被処理基板の膜厚の均一性を向上させる手法が従来提案されている(特許文献1〜3参照)。
これらの手法においては、棒磁石はN極とS極がその直径方向の対向表面にその長手方向と平行に同磁極の各配列を有するか、もしくはその直径方向の対向表面にその長手方向に関して螺旋状の同時極の各配列を有している。さらに、移動もしくは回転する棒磁石の周りには、エロージョン領域がターゲット内で閉じた回路を形成するために、固定した棒磁石を配置している。この固定した棒磁石は、N極とS極がその直径方向の対向表面にその長手方向と平行に同磁極の各配列を有している。
特開平5−148642号公報 特開2000−309867号公報 特許第3566327号公報
しかしながら、上記従来手法においては、被処理基板への成膜速度を上げるために、瞬時瞬時のエロージョン密度を上げる、すなわちエロージョン領域が全体のターゲット領域に対して大きな割合にしようとすると、棒磁石の強度を増強し、さらにコンパクトにした棒磁石同士を近づける必要がある。しかし、このような構成を採用すると、磁石同士の反発力もしくは吸引力により磁石や固定する棒が歪んでしまったり、あるいはその力に対抗して移動や回転を行うことが困難になるという問題点があった。
また、周辺に固定した棒磁石と隣接する回転磁石が回転するに従い、回転磁石と周辺に固定した棒磁石との磁極が同一になる位相がどうしても生じてしまい、その際に閉じたエロージョンが形成されないという問題点があった。
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的の一つは、ターゲット上での瞬時瞬時のエロージョン密度を上昇させて成膜速度を向上させるようにしたマグネトロンスパッタ装置を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、エロージョン領域を時間的に移動させてターゲットの局所的磨耗を防いで均一な消耗を実現することによりターゲットを長寿命化するようにしたマグネトロンスパッタ装置を提供することにある。
前記目的を達成するために、本発明では、被成膜基板と被成膜基板に対向して設置されたターゲットと、ターゲットの被処理基板とは反対側に設置された磁石とを有し、この磁石によってターゲット表面に磁場を形成することによりターゲット表面にプラズマを閉じ込めるマグネトロンスパッタ装置であって、前記磁石は、複数の板磁石が柱状回転軸に設けられた回転磁石群と、回転磁石群の周辺にターゲット面と平行に設置されかつターゲット面と垂直方向に磁化した固定外周板磁石とを含み、前記回転磁石群を前記柱状回転軸とともに回転させることにより、前記ターゲット表面の磁場パターンが時間と共に動くように構成したことを特徴とする。
ここで、前記回転磁石群は、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合う板磁石同士が互いに異なる磁極を有するように、かつ前記柱状回転軸の軸方向に垂直な面の外周において隣り合う板磁石が互いに異なる磁極となる部分を有するように、前記柱状回転軸の外周に複数の板磁石を設置して構成され、前記固定外周板磁石は、ターゲット側にN極又はS極のいずれか一方の磁極を形成していることによって特徴付けられる。
また、前記回転磁石群は、前記柱状回転軸に板磁石を螺旋状に設置することにより複数の螺旋を形成し、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合う螺旋同士が前記柱状回転軸の径方向外側に互いに異なる磁極であるN極とS極を形成している螺旋状板磁石群であり、前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造を成し、かつターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることによっても特徴付けられる。
更に、前記回転磁石群は、前記柱状回転軸の外周に板磁石をリング状に設置しかつ該リングを前記柱状回転軸の軸方向に複数設けることにより構成され、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合うリング同士が互いに異なる磁極を有するように、かつ前記柱状回転軸の径方向角度が変化するに従い各リングにおける板磁石の前記柱状回転軸の軸方向における位置が変化するように構成され、前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造を成し、かつターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることによって特徴付けられる。
前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることが好ましい。
前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に、前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていても良い。
前記固定外周板磁石から前記ターゲットの外側に向かう磁束が前記固定外周板磁石から前記ターゲットの内側に向かう磁束よりも弱まるような手段を設けられても良い。
上記した手段は、前記固定外周板磁石の表面のうち、前記ターゲット側からみて外側の側面と前記ターゲット側の面の一部とを連続して覆うように設けられた常磁性体部材を含んでいることが好ましい。
また、上記した手段は、前記固定外周板磁石の表面のうち前記ターゲット側の表面が前記ターゲットの内側に向かって突き出るように前記固定外周板磁石を構成することを含んでいても良い。
前記マグネトロンスパッタ装置はさらに、前記ターゲットの端部を覆うように前記ターゲットから離隔してかつ前記螺旋状板磁石群に対して反対側に設けられ電気的に接地される遮蔽部材を具備し、前記遮蔽部材は前記柱状回転軸の軸方向と同じ方向に延在して前記ターゲットを前記被処理基板に対して開口するスリットを構成し、該スリットの幅および長さを、前記板磁石群を一定周波数で回転させた時の、ターゲット表面に形成される磁場のうちターゲット面と平行な成分の磁場強度の時間平均分布において、最大値の75%以上である領域を、被処理基板からみて開口するような幅および長さに設定したことを特徴としている。
また、前記マグネトロンスパッタ装置はさらに、前記ターゲットの端部を覆うように前記ターゲットから離隔してかつ前記螺旋状板磁石群に対して反対側に設けられ電気的に接地される遮蔽部材を具備し、前記遮蔽部材は前記柱状回転軸の軸方向と同じ方向に延在してその間に前記ターゲットを前記被処理基板に対して開口するスリットを構成し、該スリットの幅および長さを、被処理基板を固定しかつ前記板磁石群を一定周波数で回転させた時に、前記ターゲットの端部が遮蔽されない場合に被処理基板に単位時間に成膜される最大膜厚の80%以下である領域を遮蔽するように設定したことを特徴とする。
前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていることを特徴としている。
前記回転磁石群は、前記柱状回転軸に板磁石をリング状に貼り付けて複数のリング状板磁石群が形成されており、柱状回転軸の軸方向に隣り合う前記リング状板磁石群同士が前記柱状回転軸の径方向外側に互いに異なる磁極であるN極とS極を形成しているリング状板磁石群であり、前記柱状回転軸の径方向角度が変化するに従い各リング状板磁石群の軸方向の位置が連続的に同じ変位量で変化することが好ましい。
前記リング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造をなし、かつ前記ターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることを特徴としている。
前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることが好ましい。
前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていることが好ましい。
更に、前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び回転板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていることを特徴としている。
上記したリング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、前記固定外周板磁石は前記ターゲット側からみて前記回転磁石群の片側に隣接して前記ターゲット表面側にN極又はS極の磁極を形成して設置された1つ目の板磁石と、ターゲット側から見て前記リング状回転磁石群と前記1つ目の板磁石とを囲んだ構造を成し、かつ前記ターゲット側に前記1つ目の板磁石とは反対の磁極をもつ板磁石が設置されていることが好ましい。
上記したリング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、前記固定外周板磁石は前記ターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造をなし、かつ前記ターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していても良い。
前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることが望ましい。
また、前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていることを特徴とする。
前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び回転板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていても良い。
前記柱状回転軸と、柱状回転軸に貼り付けてある前記回転磁石群と、前記固定外周板磁石とが、ターゲット表面と垂直方向に可動する構成を有していても良い。
前記柱状回転軸と、柱状回転軸に貼り付けてある前記回転磁石群と、前記固定外周板磁石とが、ターゲット材とターゲット材が貼り付けられているバッキングプレート及びバッキングプレート周辺から連続して設置された壁面により囲まれた空間内に設置され、前記空間が減圧可能である構成を有していても良い。
前記柱状回転軸の軸方向に交わる方向に前記被処理基板を相対的に移動させる手段を有していても良い。
上記したマグネトロンスパッタ装置を前記柱状回転軸の軸方向に平行に複数設け、前記柱状回転軸の軸方向に交わる方向に前記被処理基板を相対的に移動させる手段を設けるようにしても良い。
本発明によれば、上記したマグネトロンスパッタ装置を用いて、前記柱状回転軸を回転させつつ被処理基板に前記ターゲットの材料を成膜することを特徴とするスパッタ方法が得られる。
更に、本発明によれば、上記したスパッタ方法を用いて被処理基板にスパッタ成膜する工程を含むことを特徴とする電子装置(半導体装置またはフラットディスプレイ装置、その他の電子装置を言う)の製造方法が得られる。
本発明によれば、成膜速度を向上させると共に、ターゲットの局所的磨耗を防いで均一な消耗を実現することによりターゲットを長寿命化することが可能になる。
本発明のマグネトロンスパッタ装置断面図である。 柱状回転軸、複数の磁石群、板磁石及び常磁性体について、その鳥瞰図とターゲット側から矢視した図である。 エロージョン領域を示す図である。 本発明の第8の実施形態における往復移動型成膜装置を示す図である。 水平磁場強度の柱状回転軸材料の比透磁率依存性を示す図である。 (1)磁気回路形成無し、(2)固定外周板磁石の下に常磁性体設置(比透磁率100)、(3)固定外周板磁石の下の常磁性体と柱状回転軸との間に磁気回路形成の場合の規格化水平磁場強度を示す図である。 回転板磁石のうち、柱状回転軸の径方向外側の磁極がS極、すなわち固定外周板磁石のターゲット側の磁極と等しい磁石のみ、軸方向の長さを短くした場合のエロージョンパターンを示す図である。 本発明の第3の実施形態における磁石配置を示す図である。 本発明第4の実施形態における磁石配置を示す図である。 従来のマグネトロンスパッタ装置を示す図である。 本発明の第5の実施形態における装置断面図である。 水平磁場強度の磁石間隔依存性を示す図である。 水平磁場強度の固定外周磁石幅依存性を示す図である。 水平磁場強度の固定外周板磁石のターゲット側の面からの垂直方向距離依存性を示す図である。 本発明の第6の実施形態における磁石配置を示す図である。 螺旋状板磁石と固定外周磁石の図である。 ターゲット表面におけるプラズマ写真を模した図である。 長時間放電後のターゲットの消耗状態の写真を模した図である。 本発明の第7の実施形態における磁石配置を示す図である。 ターゲット表面に対向して30mm離れた位置にシリコン基板を設置した場合の、柱状回転軸の軸に垂直な方向の成膜レート分布を示す図である。 ターゲット表面における、水平磁場分布の等高線図である。 アンテナMOSキャパシターの歩留まりのアンテナ比依存性を示す図である。 櫛上アンテナMOSキャパシターの歩留まりを示す図である。 ラングミュアプローブで測定したプラズマの電子温度・電子密度・プラズマ電位の圧力依存性を示す図である。 本発明の第9の実施形態における磁石配置を示す図である。 本発明の第9のもう一つの実施形態における磁石配置を示す図である。
符号の説明
1 ターゲット
2 柱状回転軸
3 螺旋状板磁石群
4 固定外周板磁石
5 外周常磁性体
6 バッキングプレート
7 ハウジング
8 通路
9 絶縁材
10 被処理基板
11 処理室内空間
12 フィーダ線
13 カバー
14 外壁
15 常磁性体
16 グランドプレート
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明をする。
図1は本発明によるマグネット回転スパッタ装置の第1の実施の形態の構成を説明する断面図である。
図1において、1はターゲット、2は柱状回転軸、3は回転軸2の表面に螺旋状に配置した複数の螺旋状板磁石群、4は外周に配置した固定外周板磁石、5は固定外周板磁石4にターゲットとは反対側に対向して配置した外周常磁性体、6はターゲット1が接着されているバッキングプレート、15は柱状回転軸2及び螺旋状板磁石群3を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなす常磁性体、8は冷媒を通す通路、9は絶縁材、10は被処理基板、11は処理室内空間、12はフィーダ線、13は処理室と電気的に接続されたカバー、14は処理室を形成する外壁、16は外壁14に接続されたグランドプレート、17は耐プラズマ性に優れた絶縁材である。
フィーダ線12には、DC電源18、RF電源19、及び整合器20が接続されている。このDC電源18およびRF電源19により、整合器20を介し、さらに、フィーダ12線及びハウジングを介してバッキングプレート6及びターゲット1へプラズマ励起電力が供給され、ターゲット表面にプラズマが励起される。DC電力のみ若しくはRF電力のみでもプラズマの励起は可能であるが、膜質制御性や成膜速度制御性から、両方印加することが望ましい。また、RF電力の周波数は、通常数100kHzから数100MHzの間から選ばれるが、プラズマの高密度低電子温度化という点から高い周波数が望ましい。本実施の形態では100MHzとした。グランドプレート16はRF電力に対するグランド板であり、このグランド板があると、被処理基板が電気的浮遊状態にあっても効率良くプラズマが励起可能となる。常磁性体15は、磁石で発生した磁界の磁気シールドの効果及びターゲット近辺での外乱による磁場の変動を減少する効果を持つ。
より詳細に磁石部分を説明するために、柱状回転軸2、複数の磁石群3、板磁石4、常磁性体5について、その鳥瞰図とターゲット1及びバッキングプレート6の側から覗き見た状態の平面図とを図2に示す。
柱状回転軸2の材質としては通常のステンレス鋼等でも良いが、磁気抵抗の低い常磁性体、例えば、Ni-Fe系高透磁率合金等で一部または全てを構成することが望ましい。本実施の形態においては、Ni-Fe系高透磁率合金で柱状回転軸2が構成されている。柱状回転軸2は、図示しないギアユニットおよびモータにより回転させることが可能となっている。
柱状回転軸2はその断面が正八角形となっており、一辺の長さは30mmとした。それぞれの面に菱形の板磁石3が多数取り付けられている。この柱状回転軸2は外周に磁石を取り付ける構造であり、太くすることも容易であり磁石にかかる磁力による曲がりには強い構造となっている。板磁石3は強い磁界を安定して発生させるために、残留磁束密度、保磁力、エネルギー積の高い磁石が望ましく、例えば残留磁束密度が1.1T程度のSm-Co系焼結磁石、さらには残留磁束密度が1.3T程度あるNd-Fe-B系焼結磁石等が好適である。本実施の形態においては、Nd -Fe-B系焼結磁石を使用した。板磁石3はその板面の垂直方向に磁化されており、柱状回転軸2に螺旋状に貼り付けて複数の螺旋を形成し、柱状回転軸の軸方向に隣り合う螺旋同士が前記柱状回転軸の径方向外側に互いに異なる磁極、すなわちN極とS極を形成している。
固定外周板磁石4は、ターゲット2から見ると前記回転磁石群を囲んだ構造をなし、ターゲット2の側がS極となるように磁化されている。幅は12mm、厚さは10mmとした。固定外周板磁石4についても、板磁石3と同様の理由でNd -Fe-B系焼結磁石を用いている。
次に、図3を用いて本実施の形態におけるエロージョン形成についてその詳細を説明する。
上述のように、柱状回転軸2に多数の板磁石3を螺旋状に配置した場合、ターゲット側から板磁石3を見ると、近似的に板磁石のN極の周りを板磁石3のS極が囲んでいる配置となる。図3(a)はその概念図である。このような構成の下、板磁石3のN極から発生した磁力線は周辺のS極へ終端する。この結果として、板磁石面からある程度離れたターゲット面においては閉じたエロージョン領域301が多数形成される。さらに、柱状回転軸2を回転させることで、多数のエロージョン領域301は回転と共に動く。図3(a)においては、矢印の示す方向へエロージョン領域301が動くこととなる。なお、回転磁石群3の端部においては、端部の一方からエロージョン領域301が順次発生し、他方の端部で順次消滅する。
図3(b)は、本実施の形態の実構造による固定外周板磁石4の表面から21mm離れたターゲット表面のエロージョン領域301を示したものであり、多数のエロージョン領域301が形成されていることが分かった。同時に、エロージョン領域301の水平磁場すなわちターゲット面と平行な磁場強度は、310ガウスであり、プラズマを閉じ込めるには十分の強度が得られていることが分かった。
ここで、図12及び図13を用いて、エロージョン領域301の水平磁場強度分布について説明する。図12は、板磁石群3の磁石の柱状回転軸2の軸方向長さは固定して、となり合う螺旋同士の間隔(磁石間隔)を変えたときの、ターゲット面におけるエロージョン領域301の水平磁場強度を表している。回転軸方向と回転軸方向とは垂直の回転方向について示している。回転軸方向に着目すると、磁石間隔が20mm程度で最大強度で310ガウス程度となっている。磁石間隔が短いと磁石間で発生している磁力線が漏れてこないため強い磁場強度が得られず、また離れすぎると磁力線が空間的に拡散するため、ある値で最適値を持つことが分かる。
また、図13より、固定外周板磁石4の幅を変化させることで回転軸方向の水平磁場強度はほとんど影響されずに回転方向の水平磁場強度のみ調節できることが分かった。これにより、板磁石群3および固定外周板磁石4のサイズや間隔を調節することで、エロージョン領域301のどの位置でも等しい水平磁場が得られることが分かった。
次に、図14に固定外周板磁石4のターゲット側の面から、ターゲット面までの垂直方向距離と水平磁場強度の関係を示す。このグラフより、ターゲット面を固定外周磁石4に近づけることでさらに強い磁場が得られることが分かった。
なお、本実施の形態では、柱状回転軸2の断面を正八角形としてそれぞれの面に板磁石を貼り付けているが、より滑らかな螺旋形状を実現するために、その断面をさらに数の多い正多角形にして細かな板磁石を貼り付けたたり、螺旋を形成する隣り合う板磁石同士を近づけるために、板磁石の断面を長方形でなく回転軸径方向で外側の辺が大きい台形にしたりしても良い。
次に、図5を用いて、柱状回転軸2を常磁性体へ変えたことの効果を説明する。
図5はエロージョン領域301の水平磁場強度の、柱状回転軸2の比透磁率依存性である。比透磁率が1の場合で規格化している。図5より、柱状回転軸2の比透磁率が上昇するにつれて水平磁場強度も増加することが分かり、特に比透磁率が100以上であれば60%程度の磁場強度増強が得られた。これは螺旋を形成している板磁石の回転柱状軸側の磁気抵抗を下げ、効率よくターゲット側へ磁力線を発生させることができたためである。これにより、プラズマを励起したときの閉じ込め効果が向上し、プラズマの電子温度が下がり被処理基板へのダメージを低減するとともに、プラズマ密度が上昇することで成膜速度を向上させることが可能となった。
さらに、図6に示すように、固定外周常磁性体を設置した場合には設置しない場合に比べて水平磁場強度が約10%増強し、さらに固定外周常磁性体の一部を柱状回転軸2に隣接する部分まで延長し、磁性流体を介して柱状回転軸2の磁性体部分に隣接させ、回転磁石群と固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路を形成した場合については水平磁場強度が約30%増強し、成膜性能が向上することが分かった。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。
図7は、本実施の形態における回転磁石の配置であり、第1の実施の形態に比べ、回転磁石のうち、柱状回転軸2の径方向外側の磁極がS極、すなわち固定外周板磁石のターゲット側の磁極と等しい磁石のみ、軸方向の長さを短くしている。このことにより、柱状回転軸2のN極磁石から発生した磁力線は柱状回転軸上の板磁石のS極より、固定磁石S極の方へ終端する割合が多くなるため、エロージョン領域701同士が図に示すように繋がることが分かった。このようにエロージョン領域701が同時に繋がることで、電子がドリフトにより各エロージョン領域701を自由に行き来する。この結果、個々のエロージョン領域701同士でプラズマ密度が不均一になることがなく、均一性の良い成膜が可能となる。なお、このようにエロージョン領域701同士を繋げることは、S極磁石の残留磁束密度を下げることや、回転板磁石同士の距離を調節することでも実現可能である。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。
図8(a)は、柱状回転軸2および柱状回転軸2に取り付けた板磁石、および固定外周板磁石の配置を示した図である。柱状回転軸2に取り付けた板磁石群3は、板磁石をリング状に貼り付けて複数のリング状板磁石群が形成されており、柱状回転軸2の軸方向に隣り合うリング状板磁石群同士が柱状回転軸2の径方向外側に互いに異なる磁極、すなわちN極とS極を形成している。このような構成の下、柱状回転軸2の径方向角度が変化するに従い各リング状板磁石群の軸方向の位置が連続的に変化している。この変化の割合は、よりなめらかであることが望ましい。
図8(b)は柱状回転軸2の表面を、貼り付けた板磁石とともに展開した図である。図から分かるとおり、リング状板磁石群は、柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成されている。
また、図8(a)に示すとおり、固定外周板磁石は前記ターゲット表面からみて回転磁石群の片側に隣接して前記ターゲット表面側にN極の磁極を形成して設置された1つ目の板磁石と、リング状回転磁石群と1つ目の板磁石とを囲んだ構造を成し、かつターゲット表面側に前記1つ目の板磁石とは反対のS極の磁極をもつ板磁石が設置されている。
本構造によれば、エロージョン領域801が単一の一つのループになり、エロージョン領域を巡回するドリフト電子の効果でエロージョン領域内において均一なプラズマを形成することが可能となる。また、柱状回転軸2を回転させることで、図中二点鎖線802で示す柱状回転部のリング状板磁石群とその周辺の固定磁石が形成する波状のエロージョンエリアは回転と共に軸方向に往復運動を行う。これにより、ターゲットの局所的消耗を防ぐことが可能となり、さらにエロージョン領域801が波型となるためにエロージョン面積のターゲット面積に対する割合が増加し、速い成膜速度が実現される。
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。
図9(a)は、柱状回転軸2および柱状回転軸2に取り付けた板磁石、および固定外周板磁石の配置を示した図である。柱状回転軸2に取り付けた板磁石群3は、板磁石をリング状に貼り付けて複数のリング状板磁石群が形成されており、柱状回転軸の軸方向に隣り合うリング状板磁石群同士が柱状回転軸2の径方向外側に互いに異なる磁極、すなわち、N極とS極を形成しており、柱状回転軸2の径方向角度が変化するに従い各リング状板磁石群の軸方向の位置が連続的に変化している。
図9(b)は柱状回転軸の表面を、貼り付けた板磁石とともに展開した図である。図から分かるとおり、リング状板磁石群は、柱状回転軸2の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、固定外周板磁石はターゲット表面からみて回転磁石群を囲んだ構造をなし、かつターゲット表面側にS極の磁極を形成している。
本構造によれば、各エロージョン領域901は回転磁石の回転とともに軸方向に往復運動を行い、ターゲットを均一に消耗させる。また、螺旋状の配置と異なり、回転磁石端部でのエロージョン領域901の生成および消滅が無いため、プラズマインピーダンスの変動が少なくなり電力の安定供給も可能になる。また、リング状板磁石群の片方の磁極を、例えば、第2実施の形態と類似させて、S極磁石の軸方向幅をN極磁石に比べて小さくしたり、磁石間隔を調整することでエロージョン領域同士を接触させてプラズマの均一化を図ることが可能であることは言うまでもない。
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。
図11は本発明によるマグネット回転スパッタ装置の第5の実施の形態の構成を説明する断面図である。
図11において、3は柱状回転軸2の表面に螺旋状に配置した複数の螺旋状板磁石群、4は外周に配置した固定外周板磁石、5は固定外周板磁石4にターゲットとは反対側に対向して配置した外周常磁性体、15は柱状回転軸2及び螺旋状板磁石群3を前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなす常磁性体、18はDC電源、19はRF電源、20は整合器、21はバッキングプレート周辺から連続して設置された壁面、22は壁面20とバッキングプレートで囲まれた空間、23はシールリング、である。
シールリング23が設置してあるため、図示しない排気ポンプにより空間22は減圧にすることが可能である。柱状回転軸2を回転させるギアユニット及びモータは、減圧空間内に設置しても、軸シールを設けることで大気側から駆動しても良い。本構造により、処理室内と空間22との圧力差が少なくなり、バッキングプレート116を薄くすることが可能となる。すなわち、ターゲット111を厚くすることが可能となり、ターゲット交換頻度が少なくなり生産性が向上する。
ターゲット材が消耗すると、ターゲット表面は磁石と近づくことになる。図14からも分かるとおり、磁石に近づき磁場強度が上昇し、プラズマ密度が上がり成膜レートも上昇する。本実施の形態においては、柱状回転軸2と、固定外周板磁石4と、螺旋状板磁石群3と、外周常磁性体5、常磁性体15は、図示しないリニアガイドによって、ターゲット表面とは垂直方向に同時に可動となっている(図中太線の部分)。よって、ターゲットの消耗に合わせて消耗した分だけバッキングプレートから距離を離すことで、均一に消耗したターゲット表面には常に同じ磁場強度が形成される。このことから、ターゲットが消耗しても、初期と同じ成膜速度が実現し、常に安定した成膜結果を得ることができる。
(第6の実施の形態)
本発明の第6の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。本実施の形態は、図1に示す構造における問題点の改善を図るものである。すなわち、本発明者等は、図1に示す構造を採用した場合、固定外周磁石4からの磁束がターゲット1の内側部分だけでなくターゲットの外側にもほぼ等しい強度で流れ出して、ターゲットの外側にもプラズマを発生させること、このプラズマはスパッタに寄与しない余分なエネルギを消費するものであるばかりか、ターゲット外の部材を浸食するという問題があるとの知見を得た。これを防止するため、図15に示す実施の態様では固定外周磁石の形状とそれを覆う固定外周常磁性体の構成に工夫を加えている。
以下、図15を参照して本発明の第6の実施の形態を説明すると、外径74mm、内径58mm、すなわち肉厚8mmのNi-Fe系高透磁率合金で柱状中空回転軸1502を用い、その外周に2mm埋め込むように厚さ12mmの螺旋状板磁石1503を、図16に示すように形成した。なお、図16には固定外周磁石1504も図示されている。螺旋部分の軸方向長さは307mmである。柱状回転軸1502を中空構造にすることで、軽量化が図られている。また、図15に示すように、固定外周板磁石1504はターゲット1501側を11mm、ターゲットと反対側を8mm、高さ15mmの台形構造としている。さらに固定外周板磁石1504の、ターゲット1501とは反対側の面と、ターゲット側からみて外側の側面と、ターゲット側の面の外側から7.3mm内側の領域に、連続した固定外周常磁性体1505が前記固定外周磁石1504と隣接して設置されていることを特徴としている。このことにより、固定外周磁石1504からの磁束はターゲットの外側に行くのが抑制されて、ターゲット面1501にのみ効率よく水平磁場を形成することが可能となり、ターゲット面にのみ高効率でプラズマを励起できるようになった。このときのターゲット表面におけるプラズマの時間変化の写真を図17に示す。プラズマ励起条件は、アルゴンガスを毎分1000cc導入し、13.56MHzのRF電力を800W投入した。柱状回転軸は1Hzで回転させた。図17の左側の写真(上から下に時間的に変化する様子を示す)からわかるように、回転軸の左端から安定してプラズマループ1701(エロージョンループ)が生成され、回転とともに移動して、図17の右側の写真(上から下に時間的に変化する様子を示す)からわかるように、回転軸の右端から安定して消滅している。また図18に長時間放電後のターゲットの消耗状態を写真で示す。図から、ターゲット表面が局所的ではなく、均一に消耗していることが分かる。また、ラングミュアプローブで測定したプラズマの電子温度・電子密度・プラズマ電位の圧力依存性を図24に示す。アルゴンガスのプラズマであり、RFパワーは800W、ターゲット表面より40mm離れた位置において測定した。DCパワー非印加時、および400W印加時について示している。図より、特に圧力が20mTorr程度以上であれば、電子温度が2eV以下となり非常に電子温度の低いプラズマが生成されていることが分かった。電気的浮遊状態にある被処理基板に照射されるイオンの照射エネルギーは、kTe/2×ln(0.43×mi/me) で与えられる。ここで、kはボルツマン定数、Teは電子温度、miはプラズマイオンの質量、meは電子の質量である。アルゴンガスの場合、電子温度が1.9eV以下であれば、イオン照射エネルギーが10eV以下となり、成膜初期時における下地基板へのダメージを極力抑えることが可能である。よって成膜初期は高い圧力領域で成膜を始めることが好ましい。
(第7の実施の形態)
本発明の第7の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。本実施例においては、図19に示すように、ターゲット1501の、前記螺旋状板磁石群1503の反対側すなわち被処理基板が設置される側の面に、螺旋状板磁石群の軸方向と同じ方向に対向して伸びて開口している電気的に接地された部材1901がターゲット1501の端部を覆いかつターゲット1501から隔離するように処理室壁1902に接続して設けられ、ターゲット1501を開口するスリット1903を形成している。すなわち、グランドプレート1901によりスリットが形成されている。スリット1903の幅1904および長さが、被処理基板を固定して、かつ螺旋状板磁石群を一定周波数で回転させた時に、スリットが無い場合に被処理基板に単位時間に成膜される最大膜厚の80%以下である領域を遮蔽するように設定されている。本実施例において、ターゲット材質は純アルミニウムである。図20を用いてより詳細に説明する。図20は、ターゲット表面に対向して30mm離れた位置にシリコン基板を設置した場合の、柱状回転軸の軸に垂直な方向の成膜レート分布である。前記スリット幅1904が114mmと60mmの場合について示しており、中央の最大成膜レートで規格化している。スリット1903を形成するグランドプレート1901はターゲット表面から26mm離れた位置に厚さ2mmのステンレス板で形成している。ターゲット幅は102mmであるため、スリット幅114mmの場合は実質的に飛散したターゲット粒子はスリット板で遮断されることなくシリコン基板へ到達して成膜される。一方、スリット幅60mmの場合、最大成膜レートの80%以下部分を遮蔽することになる。また、図21に、ターゲット表面における、水平磁場分布の等高線図を示す。これは柱状回転軸がある位相の場合であるが、実質的に全ての位相について時間平均を取ると、最大平均水平磁場強度は392Gであり、スリット幅を60mmとすることで、被成膜基板からみて、最大平均水平磁場強度の75%である295G以下の領域を遮蔽することとなる。スリット幅を60mmとすることで、被処理基板に成膜される際、プラズマに照射されると同時に、速やかにアルミニウム原子が成膜されて金属膜となるため、被処理基板の帯電を防ぐことが可能である。このことより、チャージアップダメージを回避することが可能である。図22と図23を用いてより詳細に説明する。図22は、アンテナ比を10から100万まで変化させたアンテナMOSキャパシター(酸化膜厚4nm)が搭載された200mm径ウェーハ上にアルミニウムを成膜した際の歩留まりのアンテナ比依存性を示している。アンテナ比とは、MOSキャパシターのゲート電極(アンテナ電極)の面積とゲート面積の比であり、アンテナ電極が大きいほど、よりプラズマの電荷を集めるため、ゲート絶縁膜に過剰な電界がかかりリーク電流の増加や絶縁破壊を起こす。シリコン基板はターゲット表面より30mm離れた位置に設置され、スリットの長手方向と垂直方向に基板を毎秒1cmでウェーハの全ての領域にスリット開口部の下を通過するように1往復運動をさせた。1往復したことより、ウェーハの全領域で2回スリット開口部を通過することになる。成膜条件は、圧力80mTorr、RFパワー1000W、DCパワー1000Wである。図から分かるように、スリット幅が114mmの場合にはアンテナ比が10万からチャージアップダメージが入り歩留まりが劣化しているのに対し、スリット幅を60mmとすることで、アンテナ比100万までダメージが発生していないことが分かった。次に、図23にアンテナ比が1万であり、アンテナ形状が櫛状になっているアンテナMOSに同様の成膜を行い歩留まりを調べた結果を示す。櫛のライン幅が0.2um、0.4umにおいて、ライン:スペースの比率を1:1、1:2、1:3と変化させている。櫛状アンテナにおいても、スリット幅114mmの場合は全ての条件においてチャージアップダメージが発生して歩留まりが80%前後になっているのに対し、スリット幅60mmの場合は全くダメージが発生していないことが分かった。
(第8の実施の形態)
本発明の第8の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。本発明による回転マグネットスパッタ装置は、図4に示すように、往復移動型成膜装置として使用した場合に特に好適である。
図4において、401は処理室、402はゲートバルブ、403は被処理基板、404は第7の実施例に示した回転マグネットプラズマ励起部である。ただし、第7の実施例では螺旋部分の軸方向長さは307mmであったが、本実施例においては、2.7mとなっている。プラズマ励起電力の周波数は13.56MHzとした。プラズマの高密度化・低電子温度化という観点からは高い周波数、例えば100MHz程度にすることが望ましいが、プラズマ励起部が2.7m程度あり、一方100MHzの波長は3mである。このように励起部が波長と同程度になると、定在波が励起され、プラズマが不均一になる恐れがある。周波数が13.56MHzであれば波長が22.1mであるからプラズマ励起部の長さは波長に比べて十分短く、プラズマが定在波の影響で不均一になることは無い。本実施の形態では、回転マグネットプラズマ励起部404を4本使用している。このことにより、実質的な成膜レートを上げることが可能となる。励起部の本数は4本に限定されるものではない。被処理基板403は2.2m×2.5mのガラス基板であり、本実施例においては縦方向を2.5mとして設置し、基板が回転マグネットプラズマ励起部の柱状回転軸に対して垂直方向に往復運動して被処理基板上に実質的に均一に成膜することが可能となっている。均一に成膜するためには、被処理基板403を往復運動せずに一方向に通過するように設定しても良いし、回転マグネットプラズマ励起部404を移動させる方法を使用しても良い。本実施例においては、被処理基板を往復運動させることで、連続的に基板の一部を回転マグネットプラズマ励起部により励起されたプラズマ領域へ晒し、均一に薄膜を成膜することが可能となる。回転マグネットの回転速度は、一回転する時間を基板の通過時間に比べて早くすることで、瞬時瞬時のエロージョンパターンに影響されない均一な成膜が可能となる。典型的には、基板の通過速度は60秒/枚、回転マグネットの回転速度は10Hzである。なお、本実施例においては被処理基板を往復運動させたが、1本もしくは複数本の回転マグネットプラズマ励起部を一度のみ通過させて成膜する、通過成膜型装置として装置を構成することも可能である。
(第9の実施の形態)
本発明の第9の実施の形態を、以下の図面を参照して詳細に説明をする。なお、前述の実施の形態と重複する部分は、便宜上説明を省略する。本発明による回転マグネットスパッタ装置を図25に示す。柱状回転軸、回転磁石群および固定外周板磁石は実施例7と同じ寸法・構造をしている。被処理基板2502は、200mm径の半導体ウェーハであり、ターゲット表面に対向して設置される回転運動が可能なステージの上に設置される。柱状回転軸を回転させ、ターゲット表面に時間平均で均一なプラズマを生成すると同時に、前記ステージを回転させることで、ウェーハ2502上に成膜を行った。スリット開口部2501は、ウェーハ中心付近のスリット幅を狭めると、よりウェーハ上に均一な成膜が可能となる。また、図26に示すように、スリット開口部2601は長方形とし、被処理基板2602の中心を、前記スリット開口部の中心からずらすことにより、成膜分布の均一化を図ることも可能である。
以上、本発明を実施の形態によって説明したが、磁石寸法、基板寸法等は実施例に限定されるものではない。
本発明に係るマグネトロンスパッタ装置は、半導体ウェハ等に絶縁膜或いは導電性膜を形成するために使用できるだけでなく、フラットディスプレイ装置のガラス等の基板に対して種々の被膜を形成するのにも適用でき、記憶装置やその他の電子装置の製造においてスパッタ成膜のために使用することができる。

Claims (28)

  1. 被成膜基板と被成膜基板に対向して設置されたターゲットと、ターゲットの被処理基板とは反対側に設置された磁石とを有し、この磁石によってターゲット表面に磁場を形成することによりターゲット表面にプラズマを閉じ込めるマグネトロンスパッタ装置であって、
    前記磁石は、複数の板磁石が柱状回転軸に設けられた回転磁石群と、回転磁石群の周辺にターゲット面と平行に設置されかつターゲット面と垂直方向に磁化した固定外周板磁石とを含み、
    前記回転磁石群を前記柱状回転軸とともに回転させることにより、前記ターゲット表面の磁場パターンが時間と共に動くように構成したことを特徴とするマグネトロンスパッタ装置。
  2. 前記回転磁石群は、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合う板磁石同士が互いに異なる磁極を有するように、かつ前記柱状回転軸の軸方向に垂直な面の外周において隣り合う板磁石が互いに異なる磁極となる部分を有するように、前記柱状回転軸の外周に複数の板磁石を設置して構成され、
    前記固定外周板磁石は、ターゲット側にN極又はS極のいずれか一方の磁極を形成していることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  3. 前記回転磁石群は、前記柱状回転軸に板磁石を螺旋状に設置することにより複数の螺旋を形成し、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合う螺旋同士が前記柱状回転軸の径方向外側に互いに異なる磁極であるN極とS極を形成している螺旋状板磁石群であり、
    前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造を成し、かつターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  4. 前記回転磁石群は、前記柱状回転軸の外周に板磁石をリング状に設置しかつ該リングを前記柱状回転軸の軸方向に複数設けることにより構成され、前記柱状回転軸の軸方向に隣り合うリング同士が互いに異なる磁極を有するように、かつ前記柱状回転軸の径方向角度が変化するに従い各リングにおける板磁石の前記柱状回転軸の軸方向における位置が変化するように構成され、
    前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造を成し、かつターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  5. 前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  6. 前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に、前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  7. 前記固定外周板磁石から前記ターゲットの外側に向かう磁束が前記固定外周板磁石から前記ターゲットの内側に向かう磁束よりも弱まるような手段を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  8. 前記手段は、前記固定外周板磁石の表面のうち、前記ターゲット側からみて外側の側面と前記ターゲット側の面の一部とを連続して覆うように設けられた常磁性体部材を含むことを特徴とする請求項7に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  9. 前記手段は、前記固定外周板磁石の表面のうち前記ターゲット側の表面が前記ターゲットの内側に向かって突き出るように前記固定外周板磁石を構成することを含むことを特徴とする請求項7または8に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  10. 前記マグネトロンスパッタ装置はさらに、前記ターゲットの端部を覆うように前記ターゲットから離隔してかつ前記螺旋状板磁石群に対して反対側に設けられ電気的に接地される遮蔽部材を具備し、前記遮蔽部材は前記柱状回転軸の軸方向と同じ方向に延在して前記ターゲットを前記被処理基板に対して開口するスリットを構成し、該スリットの幅および長さを、前記板磁石群を一定周波数で回転させた時の、ターゲット表面に形成される磁場のうちターゲット面と平行な成分の磁場強度の時間平均分布において、最大値の75%以上である領域を、被処理基板からみて開口するような幅および長さに設定したことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  11. 前記マグネトロンスパッタ装置はさらに、前記ターゲットの端部を覆うように前記ターゲットから離隔してかつ前記螺旋状板磁石群に対して反対側に設けられ電気的に接地される遮蔽部材を具備し、前記遮蔽部材は前記柱状回転軸の軸方向と同じ方向に延在してその間に前記ターゲットを前記被処理基板に対して開口するスリットを構成し、該スリットの幅および長さを、被処理基板を固定しかつ前記板磁石群を一定周波数で回転させた時に、前記ターゲットの端部が遮蔽されない場合に被処理基板に単位時間に成膜される最大膜厚の80%以下である領域を遮蔽するように設定したことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  12. 前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  13. 前記回転磁石群は、前記柱状回転軸に板磁石をリング状に貼り付けて複数のリング状板磁石群が形成されており、柱状回転軸の軸方向に隣り合う前記リング状板磁石群同士が前記柱状回転軸の径方向外側に互いに異なる磁極であるN極とS極を形成しているリング状板磁石群であり、前記柱状回転軸の径方向角度が変化するに従い各リング状板磁石群の軸方向の位置が連続的に同じ変位量で変化することを特徴とする請求項1に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  14. 前記リング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、前記固定外周板磁石はターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造をなし、かつ前記ターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることを特徴とする請求項13に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  15. 前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることを特徴とする請求項13又は14に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  16. 前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  17. 前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び回転板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていることを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  18. 前記リング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、
    前記固定外周板磁石は前記ターゲット側からみて前記回転磁石群の片側に隣接して前記ターゲット表面側にN極又はS極の磁極を形成して設置された1つ目の板磁石と、ターゲット側から見て前記リング状回転磁石群と前記1つ目の板磁石とを囲んだ構造を成し、かつ前記ターゲット側に前記1つ目の板磁石とは反対の磁極をもつ板磁石が設置されていることを特徴とする請求項13に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  19. 前記リング状板磁石群は、前記柱状回転軸の径方向角度が180度変化したときに隣接するリング状板磁石の軸方向位置に変化し、さらに180度変化したときに元の軸方向位置に戻るように形成され、前記固定外周板磁石は前記ターゲット側からみて前記回転磁石群を囲んだ構造をなし、かつ前記ターゲット側にN極又はS極の磁極を形成していることを特徴とする請求項18に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  20. 前記柱状回転軸の少なくとも一部が常磁性体であることを特徴とする請求項18又は19に記載のマグネトロンスパッタ装置。
  21. 前記固定外周板磁石の前記ターゲットとは反対側の面に前記固定外周板磁石と隣接して固定外周常磁性体が設置されていることを特徴とする請求項18から20のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  22. 前記固定外周常磁性体の一部が連続して壁面を構成し、前記柱状回転軸及び回転板磁石群を、前記ターゲット側以外の部分について覆う構造をなし、さらに前記柱状回転軸に隣接する部分まで延長され、磁性流体を介して前記柱状回転軸の磁性体部分に隣接し、前記回転磁石群と前記固定外周板磁石との間に磁気抵抗の低い磁気回路が形成されていることを特徴とする請求項19から21のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  23. 前記回転磁石群と、前記固定外周板磁石とが、ターゲット表面と垂直方向に可動することを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  24. 前記回転磁石群と、前記固定外周板磁石とが、ターゲット材とターゲット材が貼り付けられているバッキングプレート及びバッキングプレート周辺から連続して設置された壁面により囲まれた空間内に設置され、前記空間が減圧可能であることを特徴とする請求項1から23のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  25. 前記柱状回転軸の軸方向に交わる方向に前記被処理基板を相対的に移動させる手段を有することを特徴とする請求項1から24のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置。
  26. 請求項1から25のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置を、前記柱状回転軸の軸方向に平行に複数備え、前記柱状回転軸の軸方向に交わる方向に前記被処理基板を相対的に移動させる手段を有することを特徴とするマグネトロンスパッタ装置。
  27. 請求項1から26のいずれかに記載のマグネトロンスパッタ装置を用いて、前記柱状回転軸を回転させつつ被処理基板に前記ターゲットの材料を成膜することを特徴とするスパッタ方法。
  28. 請求項27に記載のスパッタ方法を用いて被処理基板にスパッタ成膜する工程を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
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