JPWO2007023711A1 - 微生物の培養装置及び培養器並びに培養方法 - Google Patents
微生物の培養装置及び培養器並びに培養方法Info
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Abstract
培養液Fが入れられる培養液槽11と、この培養液槽11の上端側に配置された仕切り板12と、当該仕切り板12を挟んだ上下両側に多数起立配置される培養器14と、培養液槽11の内部に配置された気体供給手段17とを備えて単離培養装置10が構成されている。各培養器14は、仕切り板12の下側に位置して培養液槽11内の培養液Fに浸漬される培養部19と、仕切り板12の上側に位置する注入部20とにより構成されている。培養部19は、対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、培養液11槽中の培養液Fを前記膜体内に取り込むことで、対象微生物の培養環境を当該膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする。
Description
本発明は、微生物の培養装置及び培養器並びに培養方法に係り、更に詳しくは、より多くの種類の微生物を単離培養することに適した微生物の培養装置及び培養器並びに培養方法に関する。
自然環境中には、多種多様な微生物が存在しているが、これら微生物は、複合微生物系を形成しており、この複合微生物系からより多くの微生物を単離し、単離後の微生物を培養することで、有用な微生物の発掘や未利用遺伝子資源としての活用等が可能となる。
ところで、従来における微生物の単離培養方法としては、特許文献1で紹介されている平板培養法がある。この平板培養法は、対象微生物が含まれたサンプルを希釈することにより、対象微生物の所定単位当たりの細胞数を少なくした上で、当該希釈後のサンプルを容器内の寒天培地に載せ、所定期間に亘って対象微生物を培養し、増殖させる方法である。
更に、微生物を培養する手法として、液体限界希釈培養方法が知られており(例えば、特許文献2参照)、この方法も微生物を単離培養する際の一般的な手法として用いられている。この液体限界希釈方法で行う微生物の単離培養は、多数の試験管等の容器を用い、当該各容器に所定の液体培地を加えた上で、所定溶液で対象微生物が0若しくは1細胞含まれる程度に希釈したものを各容器内に分注して培養する。その結果、単一種類の微生物の分離培養が可能となる。
また、他の単離培養方法としては、特許文献3に開示されているように、微生物を通過させず水溶物のみを通過させる膜を有する密閉性容器を使った方法が知られている。この方法は、分離対象となる微生物を含む菌源を接種した寒天培地を前記密閉性容器内に封入した上で、当該密閉性容器を菌源に応じた外部環境内に配置する。この際、当該外部環境から低濃度の有機物が前記膜を通して寒天培地に供給され、寒天培地中の各種微生物を生育させて当該各種微生物のコロニーを形成する。そして、その中から、分離対象となる微生物のコロニーが抽出される。
更に、特許文献4に開示されているように、電気培養装置を使った微生物の単離培養方法もある。ここでの電気培養装置は、培地に電圧を印加しながら微生物を培養する装置である。この電気培養装置は、第1の電極と、当該第1の電極を貫通する複数の培養槽と、培養槽に連なる対極槽と、当該対極槽内に配置された第2の電極と、前記培養槽と前記対極槽の間を仕切るイオン交換膜及びフィルターと、微生物の培養に必要な元素を含むガスを前記対極槽に供給するガス供給手段とを備えている。前記培養槽には、酸化鉄を含む培地に懸濁させた微生物が充填され、前記対極槽には、鉄を含まない培地成分を含んだ溶液が充填されている。また、前記フィルターは、前記培養槽と前記対極槽との間での微生物の移動を阻止するようになっている。以上の構成により、第1、第2の電極に電圧が印加されると、ガス供給手段で対極槽内に供給された水素及び炭素は、対極槽中の培地からフィルターを通って培養槽内の培地に移動し、当該培地中の鉄成分とイオン反応をすることで、その中の微生物が電気的に単離培養される。この際、鉄イオンはイオン交換膜によって対極槽に流出するのを阻止され、培養槽内で繰り返し利用される。
特開平6−277095号公報
特開平11−253153号公報
特開平1−265882号公報
特開2004−16023号公報
しかしながら、前述した従来の各培養方法では、地球上の殆どの微生物の単離培養を行うことができない。これは、従来の各培養方法が、微生物の生息する実環境とは程遠い環境で行われているのが理由であると考えられる。以下に詳述する。
前記平板培養法及び液体限界希釈培養方法では、基質の濃度や代謝産物の存在等に影響を受けない微生物が単離培養可能であるが、このような微生物は少ない。つまり、当該従来技術では、過剰になった基質や微生物の生成物質を排出できない閉鎖的な環境で培養が行われるため、基質が経時的に高濃度になったり、培養対象の微生物が出す代謝産物やシグナル因子が蓄積した場合、それらにより阻害を受ける微生物は増殖できない。
加えて、前記平板培養法及び液体限界希釈培養方法では、実際の環境下と異なり、培養対象の微生物を単独で培養することになるため、周囲の共生微生物との相互作用を受けて増殖する微生物の培養には不向きである。ここで、対象微生物に共生微生物を加えて培養することも考えられるが、単離培養操作において、対象微生物の生理生態は未知であり、共生微生物の有無や種類も未知である以上、前記相互作用に適した共生微生物が偶然的に混入する以外は不可能である。
また、前記平板培養法及び液体限界希釈培養方法では、培養中に培養環境のpHや残存酸素濃度を調整することができず、これらpHや残存酸素濃度に敏感な微生物は増殖できない。
特許文献3に開示された方法にあっては、膜内が菌源を接種した寒天培地等からなる固体培地に封入された状態である一方、膜外が菌源に応じた外部環境となっているため、当該膜内外間で培養環境が異なる。その結果、当該膜内外間における有機物等の物質の拡散速度が、微生物細胞が実際に培養される環境よりも確実に遅くなり、外部環境の変化に対して膜内の環境を鋭敏に短時間で応答させることができない。このことが培養に影響を与える微生物もあることから、この方法でも、より多くの種類の微生物の単離培養を行うには限界がある。
また、特許文献3の方法では、寒天培地にコロニーを形成して、公知の寒天重層法等によってコロニーを抽出する作業を行わなければならず、これには熟練した技術が必要となり、単離培養作業に手間や時間がかかるという問題もある。また、性質的にコロニーを形成しない微生物や、肉眼で観察できないほど小さいマイクロコロニーしか形成しない微生物は環境中に多く存在することが知られており、特許文献3の方法では、これらの微生物の単離培養を行うことが困難である。
微生物を電気培養する特許文献4に開示された方法では、電気培養で培養可能な微生物は鉄還元細菌など環境中のごく一部の種類に限られ、多くの環境微生物全般に適用させることはできない。つまり、特許文献4の装置では、電気培養に適するように、前記培養槽及び前記対極槽に入れられる培地の成分を人工的に相違させ、微生物の生育する自然状態とかけ離れた状態で人工的に培養するため、限られた微生物しか単離培養することができない。
本発明は、以上の問題に着目して案出されたものであり、その目的は、微生物の生息する実環境に近い環境で微生物の単離培養を行うことができ、より多くの種類の微生物の単離培養を可能にする微生物の培養装置及び培養器並びに培養方法を提供することにある。
(1)前記目的を達成するため、本発明の単離培養装置は、培養液が入れられる培養液槽と、当該培養液槽内の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採っている。
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採っている。
(2)また、本発明の単離培養装置は、培養液が入れられる培養液槽と、当該培養液槽内の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、内径1μm以下の孔が形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採ることもできる。
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、内径1μm以下の孔が形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採ることもできる。
(3)以上において、前記膜体を内径が5mm以下の多孔性中空糸膜により構成することが好ましい。
(4)また、前記培養液槽内には、所定の気体を前記培養液中に供給する気体供給手段が設けられる、という構成も併せて採用することができる。
(5)更に、前記対象微生物を前記培養部に注入する注入手段を備えるとよい。
(6)また、本発明の培養器は、所定の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部と、この培養部内に前記対象微生物を注入する注入手段とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採っている。
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にする、という構成を採っている。
(7)更に、本発明の単離培養方法は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容する膜体により、対象微生物を囲んだ上で、前記膜体を所定の培養液に浸漬させ、当該培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一の培養環境で前記対象微生物を培養する、という手法を採っている。
(8)また、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容する膜体を使った微生物の培養方法であって、
対象微生物が含まれたサンプルを希釈した上で、前記対象微生物が少なくとも一個含まれるサンプルを前記膜体で囲み、当該膜体を所定の培養液に浸漬させ、当該培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一の培養環境で前記対象微生物を培養する、という手法を採ることができる。
対象微生物が含まれたサンプルを希釈した上で、前記対象微生物が少なくとも一個含まれるサンプルを前記膜体で囲み、当該膜体を所定の培養液に浸漬させ、当該培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一の培養環境で前記対象微生物を培養する、という手法を採ることができる。
本発明によれば、微生物を通さずに化学物質を通す膜体で囲まれた対象微生物の外側に、海水や廃水処理装置内の廃水等、対象微生物の実際の生育環境に存在する微生物群が雑多に含まれた培養液があり、当該培養液が膜体内に取り込まれるため、対象微生物が生息する実環境に近い状態で、前記膜体内にて微生物の単離培養を行うことができ、より多くの種類の微生物の単離培養が可能となる。
すなわち、培養液中では、対象微生物が前述の膜体に囲まれた状態で培養されるため、自身が出した代謝産物やシグナル因子を膜外の培養液中に自然に排出させることができ、対象微生物の増殖に際し、前記代謝産物やシグナル因子が与える影響を少なくできる。
更に、膜外の培養液中に存在する他の微生物のシグナル因子を膜体内に取り込むことができる一方で、当該他の微生物は膜体内に侵入しないため、対象微生物の増殖に有用な他の微生物のシグナル因子の取り込みを行いつつも、他の微生物との複合化を回避することができ、増殖可能な対象微生物の種類を増大させることができる。
また、培養液を膜体の外側で開放系として調整できるため、培養液中の基質の濃度、液中のpHや溶存酸素濃度を実環境の状態に合わせて容易に調整することができ、それらに敏感な微生物の単離培養が可能となる。
更に、膜内に培養液が取り込まれることで、対象微生物の培養環境が膜体の外側の培養環境とほぼ同一となる液体状態となるため、従来の寒天培地等の固定培地を使った方法に対し、膜体内外間の物質の拡散速度を大幅に向上させ、外部環境の変化に対して膜体内を鋭敏に短時間で応答させることができ、自然状態に近い状態での培養が可能となる。
また、本発明では、寒天培地等の固定培地を使わずに、対象微生物が含まれたサンプルを希釈して対象微生物が1個含まれたサンプルを膜体内に入れて単離培養可能なため、種々の微生物の中から対象微生物のコロニーを抽出する必要がなくなり、簡単な作業で微生物の単離培養を行うことができ、また、コロニーを形成しない微生物やマイクロコロニーを形成する微生物に対しても単離培養可能になる。
特に、前記(3)の構成によれば、膜体内外間の物質の拡散速度を更に向上させることができる。加えて、対象微生物が含まれたサンプルを希釈して対象微生物が1個含まれたサンプルを膜体内に入れて単離培養する際に、膨大な数の培養部が必要になるが、この場合であっても、培養部を集積化して全体をコンパクト化することができる。
また、前記(4)のように構成することで、培養液中の気体供給状態を、より実環境中に近似させて制御することが容易となる。
更に、前記(5)の構成によれば、膜体中への微生物の注入を容易に行うことができ、培養部を多数用意する場合に有用である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1には、本実施形態に係る微生物の培養装置の概略断面正面図が示されている。この図において、培養装置10は、培養液Fが入れられる培養液槽11と、この培養液槽11の上端側に着脱自在に取り付けられ、培養液槽11を上方から閉塞する仕切り板12と、この仕切り板12に支持され、当該仕切り板12を挟んだ上下両側に起立配置される多数の培養器14と、仕切り板12の上方に着脱自在に配置された密閉ケース15と、培養液槽11の内部に配置された気体供給手段17とを備えて構成されている。
前記培養液槽11に入れる培養液Fは、微生物が存在している環境中の各種溶液であり、例えば、海水、湖水、河川水等の自然環境における水や、廃水処理等の環境浄化工程における廃水、処理水等の工学的な環境における溶液が挙げられる。
前記培養器14は、特に限定されるものではないが、50〜100セット程度設けられている。これら各培養器14は、図1及び図2に示されるように、仕切り板12の下側に位置して培養液槽11内の培養液Fに浸漬される培養部19と、仕切り板12の上側に位置する注入手段としての注入部20とにより構成されている。
前記培養部19は、延出方向両端側が開放するチューブ状をなしており、具体的には、親水性を有する多孔性中空糸膜(膜体)により構成され、当該培養部19の内部空間に、培養対象となる微生物(以下、「対象微生物」と称する。)が入れられる。培養部19は、特に限定されるものではないが、ポリスルフォン膜又はPVDF(ポリフッ化ビニリデン)膜により形成され、内径0.7mm、長さ20cm〜30cm、孔径0.1μmとなっている。なお、培養部19の内径としては、装置の省スペース化や膜体の内外間の物質の拡散速度を考慮すると、5mm以下が好ましく、更に好ましくは1mm以下が良い。
なお、培養部19は、対象微生物を囲んで閉じ込め可能な他の膜体によって構成してもよく、この膜体としては、図3に模式的に示されるように、対象微生物T及び他の各種微生物Bの通過を阻止する一方、種々の基質、代謝産物、イオン及びシグナル因子を含む化学物質の通過を許容する孔Hが形成されたものである限り、種々のものを採用することができ、具体的に、その孔径としては、1μm以下が好ましく、更に好ましくは、0.1μm程度が良い。
前記注入部20は、図2に示されるように、各培養部19の一端側に繋がる同図中右側の注入容器22と、各培養部19の他端側に繋がる同図中左側のシリンジ23とにより構成されている。
前記注入容器22は、上下両端側が開放しており、上端側の開放部分は、対象微生物を含むサンプル溶液の注入口22Aとなる一方、下端側の開放部分は、培養部19の一端側が隙間無く連結される連結口22Bとなる。
前記シリンジ23は、筒状の本体25と、この本体25内を上下方向に摺動するピストン26とを備えている。前記本体25の下端側には、開口部25Aが設けられ、この開口部25Aには、培養部19の他端側が隙間無く連結されている。このため、注入容器22とシリンジ23とは、それぞれの内部空間が培養部19の内部空間を介して通じることになる。
前記密閉ケース15は、図1に示されるように、仕切り板12に起立配置された全ての注入部20の周囲を覆って、密閉するように配置され、密閉ケース15の外側から注入部20への菌体の侵入を規制可能に設けられている。
前記気体供給手段17は、培養液槽11内の培養液Fに、所定のタイミングで、空気や窒素ガス等の気体を供給可能とする公知構造の装置が用いられており、その構造等は、発明の本質ではないため、ここでは説明を省略する。
次に、以上の単離培養装置10を用いた微生物の単離培養方法について説明する。
先ず、海水、若しくは、廃水処理装置としてのリン除去リアクターの廃水等から採取されたサンプル溶液に対し、分散及び希釈を行う。具体的には、超音波分散装置により、サンプル溶液内で凝集している細胞(凝集体)を一個一個に分散させた後、目の粗さが異なる数種類のフィルタ(例えば、孔径25μmと3μmの二種類)を用いて、サンプル中に存在するゴミや分散し切れていない凝集体を除去する。
このように処理されたサンプル溶液に対し、その中の全菌体数をDAPI染色Direct counting法により計測することで、そのサンプル溶液中の細胞数(cell/ml)が求められる。
そして、このサンプル溶液を所定の希釈溶液で希釈する。すなわち、ここでは、サンプル溶液を培養部19に注入したときに、1個以上の細胞が入らないよう、0.1〜1cell/容器の濃度に希釈する。希釈溶液としては、採取したサンプル溶液に近い環境中のものが用いられる。例えば、サンプル溶液が海水である場合、浸透圧変化等に対する菌体へのダメージを減らすために、海水をそのまま用いずに、海水を濾過滅菌した後、オートクレーブ滅菌処理をした溶液を用いるとよい。一方、サンプル溶液がリン除去リアクターの廃水である場合には、当該リン除去リアクターに流入する廃水(基質)と同一の組成の溶液を用いるとよい。
そして、クリーンベンチ内で以下のセットを行う。先ず、希釈後のサンプル溶液を各培養器14に注入する。この際、各培養器14それぞれに対し、注入容器22の注入口22Aから希釈後のサンプル溶液を注入し、対応するシリンジ23のピストン26を上方に引くことで、注入容器22内のサンプル溶液が培養部19方向に吸引されて、各培養器14における各培養部19内に導入される。全ての培養器14にサンプル溶液を注入し終えたら、仕切り板12の表面及び密閉ケース15の内面全体に対し、エタノールで滅菌して密閉ケース15で注入部20の全体を覆う。
更に、サンプル溶液が海水である場合は、次のようにして微生物の培養が行われる。すなわち、培養液槽11内に、培養液Fを構成する海水及び海泥を投入し、当該培養液F中に、培養器14の培養部19を浸漬させた状態で、気体供給手段17により、空気を培養液F内に供給する。この培養期間としては、特に限定されるものではなく、任意に設定可能であり、例えば、1ヶ月程度の培養期間が例示できる。また、培養液槽11内の海水は、週1回程度のサイクルで交換するとよい。
一方、サンプル溶液がリン除去リアクターの廃水である場合には、次のようにして微生物の培養が行われる。すなわち、先ず、培養液槽11内に、培養液Fとしての廃水を流入し、当該培養液F中に培養部19を浸漬させ、その状態で、所定時間毎に、培養液槽11内の培養液Fのうち約半分程度を新たな廃水(基質)に交換しながら、微生物の培養を行う。具体的に、先ず、培養部19が培養液槽11内の廃水に浸漬した状態で、気体供給手段17から廃水中に窒素ガスを供給し、曝気による嫌気条件下での培養を数時間行う。その後、気体供給手段17から廃水中に空気を供給し、好気条件下での培養を数時間行う。次に、気体供給手段17からの気体の供給を停止して、培養液槽11内に汚泥を沈降させ、培養液槽11内の溶液の上澄み部分を約半分抜き取り、その分、新たな廃水を培養液11内に供給し、前述した工程を繰り返し行う。例えば、これら工程を1日当たり3サイクル行いながら1ヶ月程度培養する。
以上の培養中は、培養部19を構成する膜体の性質により、当該培養部19の外側の培養液Fが各培養部19内に取り込まれることになり、当該培養液F中に存在する他の微生物のシグナル因子が各培養部19内に取り込まれる。一方、対象微生物T自身が出した代謝産物やシグナル因子は、各培養部19の外側の培養液F中に自然に排出されることになる。この際、培養部19の外側に存在する他の微生物は、各培養部19内に侵入しないことになる。
以上の培養期間が終了した後、各培養部19内で微生物が培養されたサンプル溶液を抜き取る。この際、各培養器14のシリンジ23のピストン26を上方に引くことで、培養部19内の培養後のサンプル溶液が、シリンジ23の本体25内に向かって吸い出され、ピストン26を本体25から抜き取ることで、本体25内に移動した微生物培養後のサンプル溶液を取り出すことが可能になる。
本発明者らは、以上の手順により、海水及びリン除去リアクターの廃水を培養液Fとして微生物の単離培養の実験を行った。すなわち、前述の手順によって得られた各培養器14のサンプル溶液にそれぞれ対し、DAPI染色を行い、蛍光顕微鏡下で、菌体が増殖しているか否か、更に、増殖したものが形態学的に純菌状態か否かについて、目視により判断した。そして、純菌状態であると判断された菌体に対し、全DNAを抽出し、DNAシーケンス反応を行い、16SrDNAの塩基配列を決定し、この際、塩基配列が読めたものを最終的な純菌状態とした。
その結果、従来法に比べて高い単離培養効果が得られた他、従来、単離培養することができないとされた微生物の単離培養も可能となった。これは、本発明に基づく以下の理由によると考えられる。
第1に、培養液槽11内の培養液Fの状態を容易に変えることができるため、基質の高濃度化を抑制することができ、基質の高濃度が増殖の阻害要因となる微生物に対する培養が可能となる。
第2に、培養部19を前述した膜体で構成したため、対象微生物Tが出す代謝産物を培養部19の外側に排出することが可能であり、自身が出す代謝産物によって増殖が阻害される微生物の培養が可能となる。
第3に、培養部19の内部及び外部に培養液Fが存在するため、対象微生物Tが生息する実環境に近い状態にでき、対象微生物Tの増殖に必要な共生細菌からの物質が膜体を通して対象微生物Tに容易に供給され、共生細菌の影響を受けて増殖する微生物の培養も可能となる。また、膜体の内部への他の微生物の侵入が阻止され、当該他の微生物との複合化を回避でき、微生物の単離培養が可能となる。更に、寒天培地等の固体培地を使わずに、培養部19の外側と同じ培養液F中で対象微生物Tが培養されるため、培養部19の内外間の物質の拡散速度を従来よりも上げることができ、自然環境の変化等の外部環境の変化に対して迅速な対応が可能となる。
第4に、培養液FのpHや残存酸素濃度を途中で容易に変えることができ、周囲の環境のpHや残存酸素濃度の変化に過敏な微生物の増殖も可能となる。
その他、コロニーの抽出を必要としないため、コロニーを形成しない微生物やマイクロコロニーを形成する微生物に対しても単離培養が可能となる。
なお、前記実施形態では、微生物の単離培養を行うために培養装置10を用いたが、これに限らず、当該培養装置10を微生物の他の培養に用いることも可能である。すなわち、例えば、培養装置10を使って、各培養部19内に複数の種類の微生物を入れることで、各種微生物を同時に培養することも勿論可能である。
なお、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
Claims (8)
- 培養液が入れられる培養液槽と、当該培養液槽内の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にすることを特徴とする微生物の培養装置。 - 培養液が入れられる培養液槽と、当該培養液槽内の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、内径1μm以下の孔が形成され、前記培養液槽中の培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にすることを特徴とする微生物の培養装置。 - 前記膜体は、内径が5mm以下の多孔性中空糸膜により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の微生物の培養装置。
- 前記培養液槽内には、所定の気体を前記培養液中に供給する気体供給手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の微生物の培養装置。
- 前記対象微生物を前記培養部に注入する注入手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の微生物の培養装置。
- 所定の培養液中に浸漬されて対象微生物が培養される培養部と、この培養部内に前記対象微生物を注入する注入手段とを備え、
前記培養部は、前記対象微生物を囲む膜体により構成され、この膜体は、各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容可能に形成され、前記培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記対象微生物の培養環境を前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一にすることを特徴とする培養器。 - 各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容する膜体により、対象微生物を囲んだ上で、前記膜体を所定の培養液に浸漬させ、当該培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一の培養環境で前記対象微生物を培養することを特徴とする微生物の培養方法。
- 各種微生物の通過を阻止する一方、種々の化学物質の通過を許容する膜体を使った微生物の培養方法であって、
対象微生物が含まれたサンプルを希釈した上で、前記対象微生物が少なくとも一個含まれるサンプルを前記膜体で囲み、当該膜体を所定の培養液に浸漬させ、当該培養液を前記膜体内に取り込むことで、前記膜体の外側の培養環境とほぼ同一の培養環境で前記対象微生物を培養することを特徴とする微生物の培養方法。
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