JPWO2007010727A1 - 適応ディジタルフィルタ、信号処理方法、fm受信機およびプログラム - Google Patents

適応ディジタルフィルタ、信号処理方法、fm受信機およびプログラム Download PDF

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  • Filters That Use Time-Delay Elements (AREA)
  • Cable Transmission Systems, Equalization Of Radio And Reduction Of Echo (AREA)

Abstract

入力端子(301)には、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号が入力される。フィルタ部は、この入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力端子(302)に出力する。共通部(318)と個別部(3190〜319N-1)から構成される係数制御部は、入力信号に基づいて包絡線目標値を制御し、出力信号から導出した包絡線の値が前記包絡線目標値に近づくように前記フィルタ係数を更新する。

Description

本発明は、適応ディジタルフィルタに関し、特に、FM(Frequency Modulation)受信機のマルチパス等化器などに好適な適応ディジタルフィルタに関する。
FMラジオ放送やテレビ放送に広く用いられているFM変調波は、正弦波のキャリア信号を楽音信号により位相変調した信号であり、雑音耐性が高く、15kHzという広帯域な楽音信号を低い歪率で伝送することができる。しかし、電波が直接到達する経路以外にビルなどで反射し遅延して到達する経路があるマルチパス伝搬路では、直接波とともに受信される強い反射波の影響により復調に必要な位相情報が乱され、復調信号に歪が生じる。マルチパス伝搬路のために生じたこの歪をマルチパス歪と呼ぶ。またマルチパス伝搬路の特性を補償することによりマルチパス歪を低減する等化器は、マルチパス等化器あるいはマルチパス歪キャンセラと呼ばれる。
マルチパス等化器は、マルチパス伝搬路の逆特性を持つフィルタ、すなわち逆フィルタに受信信号を通すことで、受信信号におけるマルチパスの影響を補償する。マルチパス伝搬路の特性は環境によって変化するため、逆フィルタの特性もその時々の状態に応じて最適化する必要がある。このため、逆フィルタとしては一般に適応ディジタルフィルタが使用される。
適応ディジタルフィルタとは、フィルタ係数を環境の変化に応じて自動的に更新する機能を持つフィルタである。フィルタ係数を各時点毎に計算するアルゴリズムは適応アルゴリズム(adaptive algorithm)と言い、代表的なものにLMS(Least Mean Square)アルゴリズムがある。LMSアルゴリズムは、広い意味で、2乗平均誤差を最急降下法に基づいて最小にする方式であり、安定性があり、演算量が少ないという利点がある。また、複素LMSアルゴリズムという適応アルゴリズムも知られている。これは、入力信号、出力信号、目標信号およびフィルタ係数がそれぞれ複素量である場合にLMSアルゴリズムを拡張したものであり、例えば、入力が狭帯域高周波信号であるときに、その同相成分と直角成分を分離して適応する場合に用いられる。
他方、適応ディジタルフィルタを用いて実現される従来の等化器は、その適応のために参照信号(トレーニング信号)を必要とし、通信の中断や冗長な参照信号による通信効率の低下を招いていた。これに対して近年開発されたブラインド等化器と呼ばれる等化器は、適応化のための参照信号を必要とせず受信信号のみから信号の復元等化を行う。このようなブラインド等化に適するアルゴリズムをブラインドアルゴリズムと呼び、その代表的なものとして、CMA(Constant Modulus Algorithm:コンスタントモジュラスアルゴリズム)がある。
CMAは、文献 C.Richard Johson, Jr.、P.Schniter、T.J.Endres、J.D.Behm,D.R. Brown、Raul A.Casas、"Blind Equalization Using the Constant Modulus Criterio n:A Review、"Proceedings of IEEE、Vol.86、No.10、Oct.1998. に示されるように、フィルタ出力の包絡線、高次統計量など、出力信号に関する統計量を指標として、この指標が目標値に近づくようにフィルタ係数を更新するアルゴリズム一般を指す。FM変調のように変調波の振幅が一定である定振幅変調波を用いる場合には、文献 J.R.Treichler, and B.G.Agee, "A New Approach to Multipath Co rrection of constant Modulus Signals" IEEE Transactions on Acoustics, Speech , and Signal Processing, Vol.31 No.2,pp.459-472,Apr.1983. に示されるように、指標として、フィルタ出力の包絡線、すなわち振幅を使用し、フィルタを通した後の信号の包絡線の値と目標値との誤差が最小となるようにフィルタ係数を更新する。これにより、包絡線の歪の補正に伴い、位相の歪も補正され、マルチパス伝搬路の反射波による影響が除去される。ここで、CMAは適応アルゴリズムとは別の概念である。CMAにおいてフィルタ係数を各時点で計算するための適応アルゴリズムとしては、前述したLMSアルゴリズムなどの適応アルゴリズムが使用される。
上述のようにフィルタの出力信号の包絡線の値を一定に制御するためには、包絡線の値を瞬時に抽出する必要がある。その代表的な手法に複素信号化処理がある。複素信号化処理では、或る実信号f1に対して位相が90度(π/2)遅れた実信号f2をヒルベルト変換器などによって生成し、f1を実部に、f2を虚部にもった複素信号(一般に解析信号と呼ばれる)を生成する。こうすると、この実信号の包絡線の値は、複素信号の実部と虚部の2乗和を計算することによって瞬時に求めることができる。ただし、フィルタの出力信号に対して複素信号化処理を施すと、係数更新ループ中に複素信号化処理による遅延が入ってループの不安定要因になるため、入力信号に対して複素信号化処理を施す。この場合、入力信号が複素信号となるので、適応アルゴリズムとして複素LMSアルゴリズムなど複素量が扱えるアルゴリズムを使用する。この方法を第1の従来技術と呼ぶ。
第1の従来技術を用いた適応ディジタルフィルタの構成を図1に示す。入力信号X(k)は図示しないヒルベルト変換器により複素信号となっている。この複素信号を入力として複素フィルタ係数W(k)を畳み込み、複素信号の出力信号y(k)を得る。複素フィルタ係数W(k)は、出力信号y(k)の包絡線の値が予め規定した目標値に近づくように、複素信号を扱えるように拡張した適応アルゴリズムにより更新される。この適応ディジタルフィルタのアルゴリズムは以下のように表現される。
W(k+1)=W(k)−μ(|y(k)|p−yref0)qy(k)XH(k) …(1)
y(k)=WT(k)X(k) …(2)
W(k)=[w0(k),w1(k),…,wN-1(k)]T …(3)
X(k)=[x(k),x(k-1),…,x(k-N+1)]T …(4)
ここで、W(k)はフィルタ係数ベクトル、X(k)は複素信号ベクトル、kはサンプルインデックス、Nはフィルタのタップ数、y(k)は出力信号、yref0は包絡線目標値、μはフィルタ係数の更新量を決定するパラメータである。また、Hは複素共役転置、Tは転置をそれぞれ表す。p,qは、包絡線目標値に対する誤差の評価関数を定める定数であり、例えばp=1,q=1とされる。
第1の従来技術では、複素信号化処理を適用することにより位相が90度(π/2)ずれた2つの信号を生成したが、特許公開2005−64618号公報および文献「伊丹 誠, 羽鳥 光俊, 塚本 憲男, "FMマルチパスひずみキャンセラの試作,"1986年テレビジョン学会全国大会 355ページから356ページ」に見られるように、入力信号を標本化する際に搬送周波数の(4/奇数)倍の周波数で標本化すれば、隣り合った標本点の位相が90度ずれるようになる。こうすれば、実数を扱う適応アルゴリズムをそのまま使用することができ、出力の包絡線の値を求める際には隣り合った標本点の2乗和を計算すれば良くなる。この方法を第2の従来技術と呼ぶ。
第2の従来技術を用いた適応ディジタルフィルタの構成を図2に示す。入力信号Xr(k)は実信号であり、この実信号を入力として実信号のフィルタ係数Wr(k)を畳み込み、実信号の出力信号yr(k)を得る。フィルタ係数Wr(k)は、出力信号yr(k)の包絡線が予め規定した目標値に近づくように、実係数を扱う適応アルゴリズムにより更新される。この適応ディジタルフィルタのアルゴリズムは以下のように表現される。
Wr(k+1)=Wr(k)−μ(Env[yr(k)]−yref0)yr(k)Xr(k) …(5)
yr(k)=WrT(k)Xr(k) …(6)
Env[yr(k)]=(yr2(k-1)+yr2(k))1/2 …(7)
Wr(k)=Re[W(k)] …(8)
Xr(k)=Re[X(k)] …(9)
ここで、Wr(k)は実係数ベクトル、Xr(k)は実信号ベクトル、Env[ ]は包絡線の近似値を得る操作、Re[ ]は複素数の実部を取り出す操作、yr(k)は実数出力信号をそれぞれ表す。
他方、包絡線目標値yref0は基本的には定数であるが、特許公開2005−64618号公報では、受信波に含まれるドップラフェージングの影響を除去し適応処理を安定化させるために、包絡線目標値を適応ディジタルフィルタの入力信号の振幅に応じて可変に設定している。具体的には、入力信号中の隣り合った標本点の2乗和を計算して求めた入力振幅信号をLPF(ローパスフィルタ)に通過させた信号を包絡線目標値としている。
従来の適応ディジタルフィルタの問題点は、演算量が多く大規模なハードウェアが必要になることである。その理由は次の通りである。
第1の理由は、フィルタ係数の変動幅が非常に大きいことに起因する。例えば、包絡線目標値を1とし、入力信号振幅が1である場合には、フィルタ係数は1程度の値になるが、入力信号振幅が0.01である場合には、フィルタ係数は100程度の値になる。このように変動幅の大きなフィルタ係数をオーバーフローせずに正確に表現するためには、フィルタ係数を浮動小数点で表記したり、固定少数点であってもビット数を多くしたりするなど、フィルタ係数の演算に高精度な演算が必要になる。しかし、高精度な演算には多くの演算量が必要であり、またハードウェア規模が大きくなってしまう。
第2の理由は、複素信号処理に起因する。すなわち、図1に示した適応ディジタルフィルタでは、入力信号X(k)、フィルタ係数W(k)、出力信号y(k)など、ほとんど全ての信号処理が複素数で行われる。複素数の乗算1回の処理は、実数乗算4回と加算2回分の処理に相当する。FM受信機用のマルチパス等化器では、多くのタップを有するフィルタの畳み込み演算および係数更新演算を短いサンプリング周期毎に実行しなければならないため、演算量が膨大になる。なお、図2に示した適応ディジタルフィルタでは、サンプリング周波数が中間周波信号の中心周波数からみて正確に(4/奇数)倍であれば、包絡線の計算精度も高く、図1に示した適応ディジタルフィルタと同等の性能が得られ、しかも演算量が約25%に削減できる。しかし、サンプリング周波数の制限が厳しく、任意のサンプリング周波数で設計できないという別の課題がある。若し、サンプリング周波数が中間周波信号の中心周波数の(4/奇数)倍からずれると、包絡線の計算精度が低下するため、マルチパス等化能力自体が劣化してしまう。
本発明は、このような事情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、演算量を削減することができる適応ディジタルフィルタを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、サンプリング周波数に対する制限がない適応ディジタルフィルタを提供することにある。
本発明の第1の適応ディジタルフィルタは、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部と、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部とを備えることを特徴とする。
本発明の第2の適応ディジタルフィルタは、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部と、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部とを備えることを特徴とする。
本発明の第3の適応ディジタルフィルタは、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部と、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部とを備えることを特徴とする。
本発明の第4の適応ディジタルフィルタは、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部と、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部とを備えることを特徴とする。
本発明の第5の適応ディジタルフィルタは、第1乃至第4の何れかの適応ディジタルフィルタにおいて、前記係数制御部は、前記目標信号を前記入力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記入力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記入力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする。
本発明の第6の適応ディジタルフィルタは、第1乃至第4の何れかの適応ディジタルフィルタにおいて、前記係数制御部は、前記目標信号を前記出力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記出力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記出力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする。
本発明の第7の適応ディジタルフィルタは、第1乃至第6の何れかの適応ディジタルフィルタにおいて、前記係数制御部は、前記出力信号の包絡線の値を前記指標値とすることを特徴とする。
本発明の第8の適応ディジタルフィルタは、第7の適応ディジタルフィルタにおいて、前記係数制御部は、前記目標信号を制御し、前記出力信号の包絡線の値と前記目標信号との誤差に応じた信号を生成して出力する共通部と、前記フィルタ部における前記畳み込み演算用の各乗算器毎に設けられ、対応する乗算器に入力される信号と前記共通部から入力される前記信号と現在のフィルタ係数とに基づいて次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を算出する複数の個別部とを含むことを特徴とする。
本発明の第9の適応ディジタルフィルタは、第1乃至第8の何れかの適応ディジタルフィルタにおいて、前記係数制御部は、前記目標信号を制御する代わりに、前記出力信号から導出した指標値を制御することを特徴とする。
本発明のFM受信機は、第1乃至第9の何れかの適応ディジタルフィルタを用いたFM受信機であって、中間周波数に変換されディジタル化されたFM変調信号をヒルベルト変換して生成した複素信号を前記適応ディジタルフィルタに入力するヒルベルト変換器を備えたことを特徴とする。
本発明の第1の信号処理方法は、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力する第1のステップと、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する第2のステップとを含むことを特徴とする。
本発明の第2の信号処理方法は、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力する第1のステップと、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する第2のステップとを含むことを特徴とする。
本発明の第3の信号処理方法は、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力する第1のステップと、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う第2のステップとを含むことを特徴とする。
本発明の第4の信号処理方法は、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力する第1のステップと、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う第2のステップとを含むことを特徴とする。
本発明の第5の信号処理方法は、第1乃至第4の何れかの信号処理方法において、前記第2のステップにおいては、前記目標信号を前記入力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記入力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記入力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする。
本発明の第6の信号処理方法は、第1乃至第4の何れかの信号処理方法において、前記第2のステップにおいては、前記目標信号を前記出力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記出力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記出力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする。
本発明の第7の信号処理方法は、第1乃至第6の何れかの信号処理方法において、前記第2のステップにおいては、前記出力信号の包絡線の値を前記指標値とすることを特徴とする。
本発明の第8の信号処理方法は、第7の信号処理方法において、前記第2のステップは、前記目標信号を制御し、前記出力信号の包絡線の値と前記目標信号との誤差に応じた信号を生成して出力する共通処理と、前記畳み込み演算用の各乗算器毎に設けられ、対応する乗算器に入力される信号と前記共通処理から出力された前記信号と現在のフィルタ係数とに基づいて次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を算出する複数の個別処理とを含むことを特徴とする。
本発明の第9の信号処理方法は、前記目標信号を制御する代わりに、それと等価な制御を前記出力信号から導出した指標値に対して実施することを特徴とする。
本発明にあっては、適応ディジタルフィルタの入力信号および出力信号の少なくとも一方に基づいて目標信号を制御してフィルタ係数の変動幅を抑えるため、入力信号レベルが小さい場合でも、フィルタ係数が大きな値にならない。このため、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
適応ディジタルフィルタを実現するための信号処理の演算量を削減することができる。その理由は、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が目標値制御によって不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になるためである。
第2の従来技術のようなサンプリング周波数に対する制限がない。その理由は、複素信号である個々の出力信号から包絡線の値などの指標値を計算できるため、サンプリング周波数を任意に設定できるためである。
第1の従来技術にかかる適応ディジタルフィルタのブロック図である。 第2の従来技術にかかる適応ディジタルフィルタのブロック図である。 本発明の第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタのブロック図である。 本発明の第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタで使用する包絡線目標値発生回路の実施例のブロック図である。 本発明の第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの要部ブロック図である。 本発明の第2の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタで使用する包絡線目標値発生回路の実施例のブロック図である。 本発明の第3の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの要部ブロック図である。 本発明の第3の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタで使用する包絡線目標値発生回路の実施例のブロック図である。 本発明の第4の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタのブロック図である。 本発明の第5の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの要部ブロック図である。 本発明の第6の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの要部ブロック図である。 包絡線目標値発生回路で使用する平均化回路の実施例のブロック図である。 本発明の第7の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタの要部ブロック図である。 本発明の第7の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタで使用する係数発生器の実施例のブロック図である。 本発明の実施の形態にかかるFM受信機のブロック図である。
『第1の実施の形態』
図3を参照すると、本発明の第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、入力端子301に加わる複素信号(複素入力信号)と実信号のフィルタ係数(実フィルタ係数)との畳み込み演算によって複素信号の出力信号(複素出力信号)を生成して出力端子302に出力するフィルタ部と、複素出力信号から導出した指標値(本実施の形態の場合は包絡線の値)と目標信号との誤差に基づいてフィルタ係数を制御する係数制御部とを備えている。図中のブロック318とN個のブロック3190〜319N-1の部分が係数制御部、それ以外の部分がフィルタ部を構成する。ここで、複素入力信号は、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号である。
フィルタ部は、タップ数がN、すなわちフィルタ係数がN個のFIR(Finite Impulse Response)型フィルタであり、それぞれ1サンプリング周期の遅延を与えるN−1個の遅延器3301〜330N-1からなるタップつき遅延線と、複素入力信号および各遅延器3301〜330N-1の出力信号に対してフィルタ係数を乗ずるためのN個の乗算器3360〜336N-1と、これらN個の乗算器3360〜336N-1の乗算結果を順次加算するN−1個の加算器3371〜337N-1とから構成されている。
また、係数制御部は、適応アルゴリズムとしてLMSを使用し、全てのフィルタ係数の制御に共通な共通部318と、個々のフィルタ係数の制御毎の個別部3190〜319N-1とから構成されている。
共通部318は、複素入力信号の包絡線の値(すなわち振幅値)を実部と虚部の2乗和により計算して出力する絶対値回路304と、この絶対値回路304から伝達される入力信号の振幅値に基づいて包絡線目標値を発生する包絡線目標値発生回路305と、フィルタ部の出力である複素出力信号が入力され、複素出力信号の包絡線の値を実部と虚部の2乗和により計算して出力する絶対値回路308と、絶対値回路308で求められた包絡線の値から包絡線目標値を減じた値を出力する減算器307と、複素出力信号が入力され、その実部のみを抽出して出力する実部抽出回路309と、減算器307の出力と実部抽出回路309の出力とを乗じた結果を出力する乗算器310と、フィルタ係数の更新量を決定するパラメータであるステップサイズを発生するステップサイズ発生回路303と、乗算器310の出力とステップサイズとを乗じた結果を各個別部3190〜319N-1に出力する乗算器311とから構成されている。
ここで、本実施の形態の場合、フィルタ係数は複素数でなく実数になっているため、ステップサイズ発生回路303で発生するステップサイズを、複素フィルタ係数を使用する場合のステップサイズの約4倍に設定している。これにより、複素フィルタ係数を使用する場合に対して収束速度を同等にすることができる。
また、各個別部3190〜319N-1は、複素入力信号あるいはタップつき遅延線上の対応する遅延器3301〜330N-1の出力信号が入力され、その複素信号の実部のみを抽出して出力する実部抽出回路3350〜335N-1と、共通部318から入力された信号と実部抽出回路3350〜335N-1で抽出された実部とを乗じた結果を出力する乗算器3310〜331N-1と、乗算器3360〜336N-1に与えられているフィルタ係数と乗算器3310〜331N-1の出力とを加算して次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を出力する加算器3330〜333N-1と、この加算器3330〜333N-1の出力を1サンプリング周期だけ遅延させて乗算器3360〜336N-1に出力する遅延器3340〜334N-1とから構成されている。
包絡線目標値発生回路305は、入力信号の振幅が小さな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、入力信号の振幅が大きな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。包絡線目標値発生回路305の実施例を図4に示す。
図4を参照すると、包絡線目標値発生回路305は、入力端子401を通じて絶対値回路304から供給された過去一定期間の信号の重み付き平均を求める平均化回路404と、この平均化回路で求められた値が予め定められた上限と下限の間に収まるように制限して出力端子403を通じて時変の包絡線目標値として出力するリミッタ408とから構成されている。
本実施の形態の適応ディジタルフィルタのアルゴリズムは以下のように表現される。
Wr(k+1)=Wr(k)−μ(|y(k)|p−yref(k))qRe[y(k)]Re[X(k)] …(10)
y(k)=WrT(k)X(k) …(11)
yref(k)=Av[|x(k)|] …(12−1)
Av[|x(k)|]=(1−β)Av[|x(k−1)|]+β|x(k)| …(12−2)
ここで、Wr(k)は実係数ベクトル、X(k)は複素信号ベクトル、Re[ ]は複素数の実部を取り出す操作、y(k)は複素出力信号、kはサンプルインデックス、Nはフィルタのタップ数、yrefは時変の包絡線目標値、μはフィルタ係数の更新量を決定するパラメータ、Av[ ]は平均化を行う操作、βは重み係数で、0<β<1を満たす正定数である。また、p,qは、包絡線目標値に対する誤差の評価関数を定める定数であり、例えば、p=1,q=1とされる。
次に、本実施の形態の適応ディジタルフィルタの動作を説明する。
図5は本実施の形態の適応ディジタルフィルタの動作を示すフローチャートである。入力端子301からの新たな複素入力信号の入力処理S1、適応等化処理S2、出力端子302への複素出力信号の出力処理S3、およびパラメータ更新処理S4が繰り返される。適応等化処理S2は、前記式(11)に基づく処理であり、パラメータ更新処理S4は前記式(10)に基づく処理である。以下に、各々の動作を詳しく説明する。
まず、適応等化処理S2について説明する。入力端子301に入力された複素入力信号は、乗算器3360および実部抽出回路3350に供給されると同時に、1サンプリング周期の遅延を生じる遅延器3301〜330N-1からなるタップつき遅延線に供給される。遅延器3301〜330N-1に供給された複素信号は、1クロック毎に隣接する遅延器に転送され、各遅延器3301〜330N-1の出力信号は、対応する乗算器3361〜336N-1および対応する実部抽出回路3351〜335N-1に供給される。
乗算器3360では、入力端子301から入力された複素信号に、遅延器3340から供給された実数フィルタ係数を乗じ、結果を加算器3371に供給する。乗算器3361〜336N-1では、対応する遅延器3301〜330N-1から供給された複素信号に、対応する遅延器3341〜334N-1から供給された実数フィルタ係数を乗じ、結果を加算器3371〜337N-1に供給する。加算器3371〜337N-1は、乗算器3360〜336N-1から受けた複素信号を全て加算し、結果を出力端子302に供給すると同時に、絶対値回路308および実部抽出回路309に供給する。こうして、複素入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号が生成され、出力される。
次にパラメータ更新処理S4について説明する。絶対値回路304は、複素入力信号の振幅値を計算して包絡線目標値発生回路305に出力する。包絡線目標値発生回路305の平均化回路404は、絶対値回路304から伝達された振幅値に正定数βを乗じて平均化した結果をリミッタ408へ供給し、リミッタ408は過度の値を超えないように制限した上で時変の包絡線目標値として減算器307に供給する。他方、絶対値回路308は、複素出力信号を受けて、その絶対値を計算し、結果を包絡線の値として減算器307へと伝達する。減算器307は、包絡線目標値発生回路305から受けた包絡線目標値を、絶対値回路308から受けた信号から減算し、結果を乗算器310へと伝達する。実部抽出回路309は、複素出力信号を受けて、その実部のみを抽出し、結果を乗算器310へと伝達する。乗算器310は、減算器307から受けた信号に、実部抽出回路309から受けた信号を乗じて、結果を乗算器311へと伝達する。ステップサイズ発生回路303は、フィルタ部内のフィルタ係数更新の量を決定するパラメータであるステップサイズを発生し、乗算器311へと供給する。乗算器311は、乗算器310から受けた信号に、ステップサイズ発生回路303から供給されたステップサイズを乗じて、結果を各個別部3190〜319N-1へと伝達する。
各個別部3190〜319N-1においては、乗算器311から供給された信号は、乗算器3310〜331N-1に伝達される。実部抽出回路3350〜335N-1はそれぞれ、対応する遅延器3301〜330N-1または入力端子301から供給された複素信号の実部を抽出し、対応する乗算器3310〜331N-1へと伝達する。乗算器3310〜331N-1はそれぞれ、対応する実部抽出回路3350〜335N-1から供給された実数信号と共通部318から供給された実数信号とを乗じて、結果を対応する加算器3330〜333N-1へと伝達する。加算器3330〜333N-1はそれぞれ、対応する乗算器3310〜331N-1から受けた実数信号に、対応する遅延器3340〜334N-1から供給された実数フィルタ係数を加算し、結果を次サンプルのフィルタ係数として、対応する遅延器3340〜334N-1へと伝達する。遅延器3340〜334N-1はそれぞれ、対応する加算器3330〜333N-1から受けた実数フィルタ係数を1サンプル遅延させて対応する乗算器3360〜336N-1へと供給するとともに、対応する加算器3330〜333N-1へと伝達する。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生回路305が発生する時変の包絡線目標値は、入力端子301の入力信号の振幅にほぼ比例する。例えば、入力信号振幅が0.01である場合には、包絡線目標値は0.01程度の値となり、この結果、フィルタ係数は1程度の値になる。つまり、入力信号レベルが小さな場合でも、フィルタ係数が大きな値にならないため、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
また、図3を参照すると明らかなように、本実施の形態の適応ディジタルフィルタでは、多くの信号が複素数ではなく、実数になっている。信号が複素数でなく、実数になることにより、図1に示した第1の従来技術と比較して、演算量は大きく削減される。何故なら、第1の従来技術による適応ディジタルフィルタではすべての信号が複素数であるために、すべての乗算器において、複素数同士の乗算を行うのに対し、本実施の形態では乗算器3360〜336N-1では複素数と実数との乗算になり、乗算器3310〜331N-1では、実数同士の乗算になるからである。複素数どうしの乗算の処理は、実数どうしの乗算4回と実数どうしの加算2回分の処理に相当するのに対し、複素数と実数との乗算の処理は、実数どうしの乗算2回分の処理にしか相当せず、さらに実数どうしの乗算になった場合には、実数どうしの乗算1回分の処理にしか相当しない。
従って、第1の従来技術で複素数どうしの乗算が行われていた箇所が複素数と実数の乗算を行う乗算器3360〜336N-1に置き換わったことにより、実数同士の乗算にしてN回分相当が削減される。また、第1の従来技術で複素数どうしの乗算が行われていた箇所が実数どうしの乗算を行う乗算器3310〜331N-1に置き換わったことにより、実数同士の乗算にして3N回分相当、および、実数同士の加算にして2N回分相当が削減される。さらに、実部抽出回路3350〜335N-1の部分は第1の従来技術では複素共役器が必要であったため、虚数部の符号を伝達しない分だけ演算量は削減される。
以上のことから本実施の形態では、第1の従来技術の約40%の演算量まで削減することができる。
また、本実施の形態では、フィルタ部の出力信号は複素数で得られるため、出力信号の包絡線の値、すなわち振幅は、図3に示した絶対値回路308の出力信号として瞬時かつ正確に得られる。したがって、本実施の形態によれば、第2の従来技術におけるようなサンプリング周波数の制約はない。つまり、本実施の形態にあっては、フィルタ係数は実信号であるが、入力信号が互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号であるため、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって生成される出力信号も互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号になり、第1の従来技術と同様に出力信号の包絡線の値を瞬時かつ正確に求めることができ、且つ第2の従来技術のようなサンプリング周波数の制約はない。また、フィルタ係数を実数にしたことにより、演算量の大幅な削減が可能となる。さらに、入力信号である複素信号の実部と虚部は、互いに位相が90度ずれているだけで、もともとは同じ一つの実信号から生成されたものであり、複素信号化している理由は出力信号の包絡線の値を瞬時に計算できるようにするために他ならない。このため、適応ディジタルフィルタとしてのフィルタ性能は、入力信号の実部および虚部を扱う第1の従来技術ならびに入力信号の実部(あるいは虚部)のみ扱う第2の従来技術に比べて劣化することはない。
『第2の実施の形態』
図6を参照すると、本発明の第2の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、適応ディジタルフィルタの出力信号に基づいて包絡線目標値を発生するようにした点で、第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタと相違する。
包絡線目標値発生回路352は、絶対値回路308で求められた適応ディジタルフィルタの出力信号の包絡線の値(つまり振幅値)に基づいて、包絡線目標値を発生し、減算器307へと供給する。包絡線目標値発生回路352は、出力信号の振幅が大きな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、出力信号の振幅が小さな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。包絡線目標値発生回路352の実施例を図7に示す。
図7を参照すると、包絡線目標値発生回路352は、入力端子402を通じて絶対値回路308から供給された過去一定期間の信号の重み付き平均を求める平均化回路405と、この平均化回路405で求められた値の逆数を計算する逆数回路406と、この逆数回路406で計算された逆数が予め定められた上限と下限の間に収まるように制限して出力端子403を通じて時変の包絡線目標値として出力するリミッタ408とから構成されている。
その他の構成は第1の実施の形態と同じである。また、本実施の形態の動作は、包絡線目標値発生回路352の動作以外、第1の実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生器352が発生する包絡線目標値は、適応ディジタルフィルタの出力端子から出力される出力信号の振幅が大きなときに小さくなる。出力信号が大きくなっている場合は、フィルタ部の内部におけるフィルタ係数や内部信号などの値が大きくなっている可能性が高い。包絡線目標値を小さくすることにより、フィルタ係数や内部信号の値は、小さくなる方向に変化する。すなわち、フィルタ係数や内部信号の値が一定範囲内に収まる。一定範囲を逸脱しないということは、フィルタ係数や内部信号において、オーバーフローが起きる確率が低くなるということである。したがって、第1の実施の形態と同様に、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
また、第1の実施の形態と同様に、フィルタ係数は複素量でなく実信号であるため、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算に要する演算量が削減される。
『第3の実施の形態』
図8を参照すると、本発明の第3の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、適応ディジタルフィルタの入力信号と出力信号との双方に基づいて包絡線目標値を発生するようにした点で、第1の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタと相違する。
包絡線目標値発生回路354は、絶対値回路304で求められた適応ディジタルフィルタの入力信号の包絡線の値(振幅値)と絶対値回路308で求められた適応ディジタルフィルタの出力信号の包絡線の値(振幅値)とに基づいて、包絡線目標値を発生し、減算器307へと供給する。包絡線目標値発生回路354は、入力信号の振幅が小さな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、入力信号の振幅が大きな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。また、出力信号の振幅が大きな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、出力信号の振幅が小さな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。包絡線目標値発生回路354の実施例を図9に示す。
図9を参照すると、包絡線目標値発生回路354は、入力端子402を通じて絶対値回路308から供給された過去一定期間の信号の重み付き平均を求める平均化回路405と、この平均化回路405で求められた値の逆数を計算する逆数回路406と、入力端子401を通じて絶対値回路304から供給された過去一定期間の信号の重み付き平均を求める平均化回路404と、逆数回路406から供給された値と平均化回路404から供給された値の内の小さな方の値を選択する最小値回路407と、最小値回路407で選択された値が予め定められた上限と下限の間に納まるように制限して出力端子403を通じて時変の包絡線目標値として出力するリミッタ408とから構成されている。ここで、最小値回路407において、より小さな方を選択する理由は、包絡線目標値が小さな方が、フィルタ係数のオーバーフローが起きる確率がより低くなるからである。
その他の構成は第1の実施の形態と同じである。また、本実施の形態の動作は、包絡線目標値発生回路354の動作以外、第1の実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生回路354が発生する包絡線目標値の性質は、第1の実施の形態における包絡線目標値発生回路305が発生する包絡線目標値の性質と、第2の実施の形態における包絡線目標値発生回路352が発生する包絡線目標値の性質とを兼ね備えているため、フィルタ係数がオーバーフローを起こす確率が低くなる。したがって、第1の実施の形態と同様に、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
また、第1の実施の形態と同様に、フィルタ係数は複素量でなく実信号であるため、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算に要する演算量が削減される。
『第4の実施の形態』
図10を参照すると、本発明の第4の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、入力端子301に加わる複素信号(複素入力信号)と複素信号のフィルタ係数(複素フィルタ係数)との畳み込み演算によって複素信号の出力信号(複素出力信号)を生成して出力端子302に出力するフィルタ部と、複素出力信号から導出した指標値(本実施の形態の場合は包絡線の値)と目標信号との誤差に基づいてフィルタ係数を制御する係数制御部とを備えている。図中のブロック318とN個のブロック3190〜319N-1の部分が係数制御部、それ以外の部分がフィルタ部を構成する。ここで、複素入力信号は、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号である。
フィルタ部は、タップ数がN、すなわちフィルタ係数がN個のFIR(Finite Impulse Response)型フィルタであり、それぞれ1サンプリング周期の遅延を与えるN−1個の遅延器3301〜330N-1からなるタップつき遅延線と、複素入力信号および各遅延器3301〜330N-1の出力信号に対してフィルタ係数を乗ずるためのN個の乗算器3460〜346N-1と、これらN個の乗算器3460〜346N-1の乗算結果を順次加算するN−1個の加算器3371〜337N-1とから構成されている。
また、係数制御部は、適応アルゴリズムとして複素数を扱えるように拡張した複素LMSを使用し、全てのフィルタ係数の制御に共通な共通部318と、個々のフィルタ係数の制御毎の個別部3190〜319N-1とから構成されている。
共通部318は、複素入力信号の包絡線の値(すなわち振幅値)を実部と虚部の2乗和により計算して出力する絶対値回路304と、この絶対値回路304から伝達される入力信号の振幅値に基づいて包絡線目標値を発生する包絡線目標値発生回路305と、フィルタ部の出力である複素出力信号が入力され、複素出力信号の包絡線の値を実部と虚部の2乗和により計算して出力する絶対値回路308と、絶対値回路308で求められた包絡線の値から包絡線目標値を減じた値を出力する減算器307と、減算器307の出力と複素出力信号とを乗じた結果を出力する乗算器181と、フィルタ係数の更新量を決定するパラメータであるステップサイズを発生するステップサイズ発生回路303と、乗算器181の出力とステップサイズとを乗じた結果を各個別部3190〜319N-1に出力する乗算器182とから構成されている。
また、各個別部3190〜319N-1は、複素入力信号あるいはタップつき遅延線上の対応する遅延器3301〜330N-1の出力信号が入力され、その複素信号を複素共役変換して出力する複素共役器3400〜340N-1と、共通部318から入力された信号と複素共役器3400〜340N-1から供給された複素信号とを乗じた結果を出力する乗算器3410〜341N-1と、乗算器3460〜346N-1に与えられているフィルタ係数と乗算器3410〜341N-1の出力とを加算して次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を出力する加算器3430〜343N-1と、この加算器3430〜343N-1の出力を1サンプリング周期だけ遅延させて乗算器3460〜346N-1に出力する遅延器3440〜344N-1とから構成されている。
包絡線目標値発生回路305は、第1の実施の形態と同様に図4に示されるような構成を備えており、入力信号の振幅が小さな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、入力信号の振幅が大きな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。
本実施の形態の適応ディジタルフィルタのアルゴリズムは以下のように表現される。
W(k+1)=W(k)−μ(|y(k)|p−yref(k))qy(k)XH(k) …(13)
y(k)=WT(k)X(k) …(14)
W(k)=[w0(k),w1(k),…,wN-1(k)]T …(15)
X(k)=[x(k),x(k-1),…,x(k-N+1)]T …(16)
yref(k)=Av[|x(k)|] …(17)
Av[|x(k)|]=(1−β)Av[|x(k−1)|]+β|x(k)| …(18)
ここで、W(k)はフィルタ係数ベクトル、X(k)は複素信号ベクトル、kはサンプルインデックス、Nはフィルタのタップ数、y(k)は出力信号、yrefは時変の包絡線目標値、μはフィルタ係数の更新量を決定するパラメータ、Av[ ]は平均化を行う操作、βは重み係数で、0<β<1を満たす正定数である。また、Hは複素共役転置、Tは転置をそれぞれ表す。p,qは、包絡線目標値に対する誤差の評価関数を定める定数であり、例えば、p=1,q=1とされる。
次に、本実施の形態の適応ディジタルフィルタの動作を説明する。
本実施の形態の適応ディジタルフィルタは、入力端子301に新たな複素入力信号が入力される毎に、第1の実施の形態と同様に、図5に示した適応等化処理S2とパラメータ更新処理S4とが繰り返される。ただし、適応等化処理S2は、前記式(14)に基づく処理であり、パラメータ更新処理S4は前記式(13)に基づく処理である。以下に、各々の動作を詳しく説明する。
まず、適応等化処理S2について説明する。入力端子301に入力された複素入力信号は、乗算器3460および複素共役器3400に供給されると同時に、1サンプリング周期の遅延を生じる遅延器3301〜330N-1からなるタップつき遅延線に供給される。遅延器3301〜330N-1に供給された複素信号は、1クロック毎に隣接する遅延器に転送され、各遅延器3301〜330N-1の出力信号は、対応する乗算器3461〜346N-1および対応する複素共役器3401〜340N-1に供給される。
乗算器3460では、入力端子301から入力された複素信号に、遅延器3440から供給された複素フィルタ係数を乗じ、結果を加算器3371に供給する。乗算器3461〜346N-1では、対応する遅延器3301〜330N-1から供給された複素信号に、対応する遅延器3441〜344N-1から供給された複素フィルタ係数を乗じ、結果を加算器3371〜337N-1に供給する。加算器3371〜337N-1は、乗算器3460〜346N-1から受けた複素信号を全て加算し、結果を出力端子302に供給すると同時に、絶対値回路308および乗算器181に供給する。こうして、複素入力信号と複素信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号が生成され、出力される。
次に、パラメータ更新処理S4について説明する。絶対値回路304は、複素入力信号の振幅値を計算して包絡線目標値発生回路305に出力する。包絡線目標値発生回路305は、入力信号にほぼ比例する包絡線目標値を発生して減算器307に供給する。他方、絶対値回路308は、複素出力信号を受けて、その絶対値を計算し、結果を包絡線の値として減算器307へと伝達する。減算器307は、包絡線目標値発生器305から受けた包絡線目標値を、絶対値回路308から受けた信号から減算し、結果を乗算器181へと伝達する。乗算器181は、減算器307から受けた信号に、複素出力信号を乗じて、結果を乗算器182へと伝達する。ステップサイズ発生回路303は、フィルタ部内のフィルタ係数更新の量を決定するパラメータであるステップサイズを発生し、乗算器182へと供給する。乗算器182は、乗算器181から受けた信号に、ステップサイズ発生回路303から供給されたステップサイズを乗じて、結果を各個別部3190〜319N-1へと伝達する。
各個別部3190〜319N-1においては、乗算器182から供給された信号は、乗算器3410〜341N-1に伝達される。複素共役器3400〜340N-1はそれぞれ、対応する遅延器3301〜330N-1または入力端子301から供給された複素信号を複素共役変換して、対応する乗算器3410〜341N-1へと伝達する。乗算器3410〜341N-1はそれぞれ、対応する複素共役器3400〜340N-1から供給された実数信号と共通部318から供給された複素信号とを乗じて、結果を対応する加算器3430〜343N-1へと伝達する。加算器3430〜343N-1はそれぞれ、対応する乗算器3410〜341N-1から受けた複素信号に、対応する遅延器3440〜344N-1から供給された複素フィルタ係数を加算し、結果を次サンプルのフィルタ係数として、対応する遅延器3440〜344N-1へと伝達する。遅延器3440〜344N-1はそれぞれ、対応する加算器3430〜343N-1から受けた複素フィルタ係数を1サンプル遅延させて対応する乗算器3460〜346N-1へと供給するとともに、対応する加算器3430〜343N-1へと伝達する。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生回路305が発生する時変の包絡線目標値は、入力端子301の入力信号の振幅にほぼ比例するため、第1の実施の形態と同様に、入力信号レベルが小さな場合でも、フィルタ係数が大きな値にならない。このため、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
『第5の実施の形態』
図11を参照すると、本発明の第5の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、適応ディジタルフィルタの出力信号に基づいて包絡線目標値を発生するようにした点で、第4の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタと相違する。
包絡線目標値発生回路352は、第2の実施の形態と同様に図7に示されるような構成を備えており、出力信号の振幅が大きな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、出力信号の振幅が小さな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。
その他の構成は第4の実施の形態と同じである。また、本実施の形態の動作は、包絡線目標値発生回路352の動作以外、第4の実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生回路352が発生する包絡線目標値は、適応ディジタルフィルタの出力端子から出力される出力信号の振幅が大きなときに小さくなる。出力信号が大きくなっている場合は、フィルタ部の内部におけるフィルタ係数や内部信号などの値が大きくなっている可能性が高い。包絡線目標値を小さくすることにより、フィルタ係数や内部信号の値は、小さくなる方向に変化する。すなわち、フィルタ係数や内部信号の値が一定範囲内に収まる。一定範囲を逸脱しないということは、フィルタ係数や内部信号において、オーバーフローが起きる確率が低くなるということである。したがって、第4の実施の形態と同様に、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
『第6の実施の形態』
図12を参照すると、本発明の第6の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、適応ディジタルフィルタの入力信号と出力信号との双方に基づいて包絡線目標値を発生するようにした点で、第4の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタと相違する。
包絡線目標値発生回路354は、絶対値回路304で求められた適応ディジタルフィルタの入力信号の包絡線の値(振幅値)と絶対値回路308で求められた適応ディジタルフィルタの出力信号の包絡線の値(振幅値)とに基づいて、包絡線目標値を発生し、減算器307へと供給する。包絡線目標値発生回路354は、第3の実施の形態と同様に図9に示されるような構成を備えており、入力信号の振幅が小さな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、入力信号の振幅が大きな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。また、出力信号の振幅が大きな場合には、小さな包絡線目標値を発生し、出力信号の振幅が小さな場合には、大きな包絡線目標値を発生する。
その他の構成は第4の実施の形態と同じである。また、本実施の形態の動作は、包絡線目標値発生回路354の動作以外、第4の実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態の効果を説明する。
包絡線目標値発生回路354が発生する包絡線目標値の性質は、第4の実施の形態における包絡線目標値発生回路305が発生する包絡線目標値の性質と、第5の実施の形態における包絡線目標値発生回路352が発生する包絡線目標値の性質とを兼ね備えているため、フィルタ係数がオーバーフローを起こす確率が低くなる。したがって、第4の実施の形態と同様に、オーバーフロー防止のためにフィルタ係数が広い範囲の値をとるようにする演算の高精度化が不要になり、演算量の削減とハードウェア規模の縮小が可能になる。
次に、前述した各実施の形態の包絡線目標値発生回路305,352,354の構成要素である平均化回路404,405の好適な実施例について説明する。
図13を参照すると、平均化回路の好適な実施例において、入力端子601を介して入力された信号は、減算器602および比較器607へと伝達される。比較器607は、入力端子601から伝達された信号と遅延器605から伝達された信号とを比較し、入力端子601から伝達された信号が遅延器605から伝達された信号よりも大きな場合は、比較結果0を出力し、入力端子601から伝達された信号が遅延器605から伝達された信号よりも小さな場合は、比較結果1を出力し、出力を切替器608へと伝達する。なお、入力端子601から伝達された信号と遅延器605から伝達された信号とが同じ大きさの場合の出力値は任意で良い。
切替器608は、比較器607から伝達された比較結果が1である場合には、立下り係数発生器610から受けた立下り係数を乗算器603へと伝達し、また、比較結果が0である場合には、立上り係数発生器609から伝達された立上り係数を乗算器603へと伝達する。減算器602は、入力端子601から伝達された入力信号から、遅延器605から伝達された信号を減算し、結果を乗算器603へと伝達する。乗算器603は、減算器602から伝達された信号に、切替器608から伝達された立上り係数または立下り係数を乗じて、結果を加算器604へと伝達する。加算器604は、乗算器603から伝達された信号に遅延器605から伝達された信号を加算し、結果を遅延器605および出力端子606へと伝達する。遅延器605は加算器604から伝達された信号を1サンプル遅延し、結果を比較器607、加算器604および減算器602へと伝達する。出力端子606は、加算器604から伝達された信号を、入力端子601から入力された信号の平均化信号として出力する。
本実施例の平均化回路の特徴は、乗算器603に切替器608から供給される係数が、比較器607の比較結果によって切り替えられていることである。立上り係数と立下り係数は0から1の間の値をとる。立上り係数は、入力端子601に加わる入力信号が大きくなっていくときに、出力端子606に出力される平均化された出力信号が大きくなっていく速度を決定する。また、立下り係数は、入力端子601に加わる入力信号が小さくなっていくときに、出力端子606に出力される平均化された出力信号が小さくなっていく速度を決定する。換言すれば、立上り係数および立下り係数は、平均化の時定数を決定する。このため、立下り係数が立上り係数よりも大きな場合には、入力端子601に加わる入力信号の値が上下した場合に、出力端子606から出力される信号が大きくなり易く、小さくなり難くなる。逆に、立下り係数が立上り係数よりも小さな場合には、出力端子606から出力される信号が小さくなり易く、大きくなり難くなる。
入力信号の振幅値の平均化を行う平均化回路404の場合、立下り係数を大きく、立上り係数を小さく設定する。こうすると、入力信号が出力信号よりも小さな場合には平均化の時定数が短くなり、また、入力信号が出力信号よりも大きな場合には平均化の時定数が長くなる。これにより、平均化回路404の出力信号は小さくなり易く、大きくなり難くなる。その結果、包絡線目標値は小さくなり易く、大きくなり難くなる。包絡線目標値が小さな方が、フィルタ係数のオーバーフローが起きる確率がさらに低くなるので、望ましい結果が得られる。
他方、出力信号の振幅値の平均化を行う平均化回路405の場合、立下り係数を小さく、立上り係数を大きく設定する。こうすると、入力信号が出力信号よりも小さな場合には平均化の時定数が長くなり、また、入力信号が出力信号よりも大きな場合には平均化の時定数が短くなる。これにより、平均化回路405の出力信号は大きくなり易く、小さくなり難くなる。平均化回路405の出力は逆数回路406によって逆数に変換されるので、結果として、包絡線目標値は小さくなり易く、大きくなり難くなり、望ましい結果が得られる。
なお、図13に示した構成以外に、同じ機能を有する平均化回路を用いた場合にも、同様の効果が得られることは明らかである。
『第7の実施の形態』
以上の各実施の形態は、フィルタ係数の変動幅を抑えるために適応ディジタルフィルタの入力信号および出力信号の少なくとも一方に基づいて包絡線目標値を制御した。包絡線目標値は減算器307に入力され、減算器307は適応ディジタルフィルタの出力信号の絶対値から包絡線目標値を減じて誤差を生成する。従って、包絡線目標値が小さいと誤差が大きく、包絡線目標値が大きいと誤差が小さくなるが、それと等価な処理は出力信号の絶対値の制御により実現できる。つまり、包絡線目標値を小さくすることと、その分だけ出力信号の絶対値を大きくすることとは等価であり、包絡線目標値を大きくすることと、その分だけ出力信号の絶対値を小さくすることとは等価である。本実施の形態はこの点に着目して、フィルタ係数の変動幅を抑えるために適応ディジタルフィルタの入力信号および出力信号の少なくとも一方に基づいて、減算器307に入力される絶対値回路308の出力を制御する。
図14を参照すると、本発明の第7の実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタは、絶対値回路304から出力される複素入力信号の振幅値を平均化した値の逆数にほぼ比例する係数を出力する係数発生器350と、絶対値回路308と減算器307との間に設けられ、絶対値回路308の出力と係数発生器350の出力とを乗じた結果を減算器307に出力する乗算器351とを備え、包絡線目標値発生回路305は予め定められた固定の包絡線目標値を出力するように構成される点で、第1の実施の形態と相違する。
図15を参照すると、係数発生器350の実施例は、入力端子401を通じて伝達される絶対値回路304の出力の平均化を行う平均化回路404と、この平均化回路404の出力値の逆数を計算して出力する逆数回路406と、逆数回路406の出力値が予め定められた上限と下限の間に収まるように制限して出力端子450を通じて乗算器351に出力するリミッタ408とから構成されている。
第1の実施の形態では、適応ディジタルフィルタの入力信号の振幅値が小さな場合には小さい包絡線目標値を発生して減算器307の減算結果である誤差を大きくしたが、本実施の形態では、包絡線目標値は固定であり、その代わりに、小さな入力信号の振幅値の逆数にほぼ比例する大きな係数を絶対値回路308の出力に乗じることにより、減算器307の減算結果である誤差を大きくする。反対に、第1の実施の形態では、適応ディジタルフィルタの入力信号の振幅値が大きな場合には大きな包絡線目標値を発生して減算器307の減算結果である誤差を小さくしたが、本実施の形態では、包絡線目標値は固定であり、その代わりに、大きな入力信号の振幅値の逆数にほぼ比例する小さな係数を絶対値回路308の出力に乗じることにより、減算器307の減算結果である誤差を大きくする。これにより、本実施の形態は第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
第7の実施の形態と同様に、第2乃至第6の実施の形態においても、包絡線目標値を制御する代わりに、絶対値回路308の出力を制御することで等価な処理を実現することが可能である。
次に、本発明の適応ディジタルフィルタをFM受信機のマルチパスキャンセラに適用した実施の形態について説明する。
図16を参照すると、本実施の形態にかかるFM受信機は、アンテナ101、無線周波数中間周波数変換器102、アナログディジタル変換器103、自動利得制御器104、ヒルベルト変換器105、マルチパスキャンセラ106および復調器107から構成され、マルチパスキャンセラ106として前述の何れかの実施の形態にかかる適応ディジタルフィルタが使用されている。
アンテナ101で受信されたFM変調波は、無線周波数中間周波数変換器102において、中間周波数帯域の信号に変換され、アナログディジタル変換器103に伝達される。アナログディジタル変換器103は、無線周波数中間周波数変換器102から伝達されたアナログ信号を適切なサンプリング周波数でサンプリングしてディジタル信号へと変換し、自動利得制御器104へと伝達する。自動利得制御器104は、包絡線の値を指標とするCMAアルゴリズムに悪影響を与えない範囲で出力信号の振幅が一定範囲内に収まるような利得を乗じた結果を、ヒルベルト変換器105へと伝達する。
ここで、自動利得制御器104のゲインを高めて追従速度を速くすると、CMAアルゴリズムに必要な包絡線の変化が抑圧されてしまうため、自動利得制御器104のゲインを低くして追従速度を遅くする。こうすると従来は、入力信号の振幅が極端に小さくなってフィルタ係数がオーバーフローする原因となったが、本発明の場合は包絡線目標値を制御するため問題はない。
ヒルベルト変換器105では、自動利得制御器104から伝達された信号を解析信号、すなわち互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号へと変換してマルチパスキャンセラ106へと伝達する。マルチパスキャンセラ106は、ヒルベルト変換器105から伝達された複素入力信号が入力され、多重反射の影響を低減した信号に変換して復調器107へと伝達する。復調器107は、マルチパスキャンセラ106から伝達された信号のFM復調を行い、音声周波数帯域の信号を出力する。なお、前述した各実施の形態の適応ディジタルフィルタの出力端子302からは複素出力信号が出力されるが、その実部のみを抽出して復調器107に出力するか、あるいはその虚部のみを抽出し符号を反転して復調器107に出力する。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は以上の実施の形態にのみ限定されず、以下に述べるような各種の付加変更が可能である。
第1〜第3の実施の形態では、実部抽出回路3350〜335N-1および実部抽出回路309を使用したが、これらの全部または一部を虚部抽出反転回路で置換しても良い。虚部抽出反転回路とは、入力された複素信号の虚部のみを抽出し、その符号を反転させた値を出力する回路である。適応ディジタルフィルタの入力端子301に加わる複素入力信号は、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号としたものであるので、虚部抽出反転回路を使用しても前記の第1〜第3の実施の形態と同様の効果がある。
第1〜第3の実施の形態では、フィルタ係数はすべて実数、すなわちスカラー値としたが、演算量の削減効果は低下するものの、一部のフィルタ係数を複素数にすることも可能である。また、実部抽出回路309を乗算器310の出力側に移動したり、乗算器311の出力側に移動して、乗算器310,311で複素数による演算を行うようにしても良い。
前記の各実施の形態では、フィルタ部としてFIR型のフィルタを用いたが、IIR型のフィルタを使用することもできる。
前記の実施の形態では、適応アルゴリズムとして、LMSアルゴリズムを用いたが、この他、逐次最小二乗法(Recursive Least Squares Algorithm)、最小二乗法(Least Squares Algorithm)、アフィン射影法(Affine Projection Algorithm)、勾配法(Gradient Algorithm)などの各種の適応アルゴリズムを用いることもできる。これらの適応アルゴリズムによるフィルタ係数更新の際の乗算回数が、LMS型アルゴリズムより多い場合には、フィルタ係数を実数化したことによる演算量削減の効果はさらに大きくなる。
前記の実施の形態では、FM変調を対象したが、PSK(Phase Shift Keying)など他の定振幅変調にも、本発明の構成が適用できることは明らかである。また、マルチレベルCMAを用いれば、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のような変調方式にも適用可能であることは明らかである。また、文献 C.Richard Johson, Jr.、P.Schniter、T.J.Endres、J.D.Behm,D.R. Brown、Raul A.Casas、"Blind Equalization Using the Constant Modulus Criterio n:A Review、"Proceedings of IEEE、Vol.86、No.10、Oct.1998.で示されているコンスタントモジュラスアルゴリズムのうち、出力信号が複素数であるものなどにも適用できることは明らかである。
前記の各実施の形態では、包絡線を指標とするCMAを対象に説明してきたが、文献“C.Richard Johson, Jr.、P.Schniter、T.J.Endres、J.D.Behm,D.R. Brown、Raul A.Casas、"Blind Equalization Using the Constant Modulus Criterio n:A Review、"Proceedings of IEEE、Vol.86、No.10、Oct.1998.”に示されるように、他の統計量を指標とした場合にも、本発明が適用できることは明らかである。
本発明の適応ディジタルフィルタは、その有する機能を個別部品、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などを使用してハードウェア的に実現することは勿論、DPS(Digital Signal Processor)などのコンピュータとプログラムとで実現することができる。プログラムは、磁気ディスクや半導体メモリ等のコンピュータ可読記録媒体に記録されて提供され、コンピュータの立ち上げ時などにコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータを前述した各実施の形態における適応ディジタルフィルタとして機能させる。
以上のように、本発明にかかる適応ディジタルフィルタは、CMAアルゴリズムを用いた適応ディジタルフィルタとして有用であり、特に、FM受信機のマルチパス等化器に用いるのに適している。

Claims (28)

  1. 入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部と、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部とを備える適応ディジタルフィルタ。
  2. 一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部と、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部とを備える適応ディジタルフィルタ。
  3. 入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部と、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部とを備える適応ディジタルフィルタ。
  4. 一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部と、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部とを備える適応ディジタルフィルタ。
  5. 前記係数制御部は、前記目標信号を前記入力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記入力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記入力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の適応ディジタルフィルタ。
  6. 前記係数制御部は、前記目標信号を前記出力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記出力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記出力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の適応ディジタルフィルタ。
  7. 前記係数制御部は、前記出力信号の包絡線の値を前記指標値とすることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の適応ディジタルフィルタ。
  8. 前記係数制御部は、
    前記目標信号を制御し、前記出力信号の包絡線の値と前記目標信号との誤差に応じた信号を生成して出力する共通部と、
    前記フィルタ部における前記畳み込み演算用の各乗算器毎に設けられ、対応する乗算器に入力される信号と前記共通部から入力される前記信号と現在のフィルタ係数とに基づいて次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を算出する複数の個別部とを含むことを特徴とする請求項7記載の適応ディジタルフィルタ。
  9. 前記係数制御部は、前記目標信号を制御する代わりに、それと等価な制御を前記出力信号から導出した指標値に対して実施することを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の適応ディジタルフィルタ。
  10. 請求項1乃至9の何れか1項に記載された適応ディジタルフィルタを用いたFM受信機であって、
    中間周波数に変換されディジタル化されたFM変調信号をヒルベルト変換して生成した複素信号を前記適応ディジタルフィルタに入力するヒルベルト変換器を備えるFM受信機。
  11. 入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力する第1のステップと、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する第2のステップとを含む信号処理方法。
  12. 一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力する第1のステップと、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する第2のステップとを含む信号処理方法。
  13. 入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力する第1のステップと、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う第2のステップとを含む信号処理方法。
  14. 一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力する第1のステップと、
    前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う第2のステップとを含む信号処理方法。
  15. 前記第2のステップにおいては、前記目標信号を前記入力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記入力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記入力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項11乃至14の何れか1項に記載の信号処理方法。
  16. 前記第2のステップにおいては、前記目標信号を前記出力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記出力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記出力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項11乃至14の何れか1項に記載の信号処理方法。
  17. 前記第2のステップにおいては、前記出力信号の包絡線の値を前記指標値とすることを特徴とする請求項11乃至16の何れか1項に記載の信号処理方法。
  18. 前記第2のステップは、
    前記目標信号を制御し、前記出力信号の包絡線の値と前記目標信号との誤差に応じた信号を生成して出力する共通処理と、
    前記畳み込み演算用の各乗算器毎に設けられ、対応する乗算器に入力される信号と前記共通処理から出力された前記信号と現在のフィルタ係数とに基づいて次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を算出する複数の個別処理とを含むことを特徴とする請求項17記載の信号処理方法。
  19. 前記目標信号を制御する代わりに、それと等価な制御を前記出力信号から導出した指標値に対して実施することを特徴とする請求項11乃至18の何れか1項に記載の信号処理方法。
  20. コンピュータを、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部、として機能させるためのプログラム。
  21. コンピュータを、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記入力信号および前記出力信号の少なくとも一方に基づいて前記目標信号を制御する係数制御部、として機能させるためのプログラム。
  22. コンピュータを、入力信号とフィルタ係数との畳み込み演算によって出力信号を生成して出力するフィルタ部、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記フィルタ係数の変動幅を抑えるために前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部、として機能させるためのプログラム。
  23. コンピュータを、一つの実信号から生成した互いに位相が90度ずれた2つの信号の一方を実部に他方を虚部に持つ複素信号を入力信号とし、該入力信号と実信号のフィルタ係数との畳み込み演算によって複素信号の出力信号を生成して出力するフィルタ部、前記出力信号から導出した指標値と目標信号との誤差に基づいて前記フィルタ係数を制御し、且つ前記目標信号を前記入力信号の振幅にほぼ比例させる制御を行う係数制御部、として機能させるためのプログラム。
  24. 前記係数制御部は、前記目標信号を前記入力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記入力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記入力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項20乃至23の何れか1項に記載のプログラム。
  25. 前記係数制御部は、前記目標信号を前記出力信号の振幅に基づいて制御する場合に、前記出力信号の振幅が大きくなっていくときに前記目標信号を小さくしていき、前記出力信号の振幅が小さくなっていくときに前記目標信号を大きくしていき、且つ、前記目標信号を小さくする速度を前記目標信号を大きくする速度よりも速くすることを特徴とする請求項20乃至23の何れか1項に記載のプログラム。
  26. 前記係数制御部は、前記出力信号の包絡線の値を前記指標値とすることを特徴とする請求項20乃至25の何れか1項に記載のプログラム。
  27. 前記係数制御部は、前記目標信号を制御し、前記出力信号の包絡線の値と前記目標信号との誤差に応じた信号を生成して出力する共通部と、前記フィルタ部における前記畳み込み演算用の各乗算器毎に設けられ、対応する乗算器に入力される信号と前記共通部から入力される前記信号と現在のフィルタ係数とに基づいて次サンプリング周期で使用するフィルタ係数を算出する複数の個別部とを含むことを特徴とする請求項26記載のプログラム。
  28. 前記係数制御部は、前記目標信号を制御する代わりに、それと等価な制御を前記出力信号から導出した指標値に対して実施することを特徴とする請求項20乃至27の何れか1項に記載のプログラム。
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