JPWO2006134838A1 - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

微粒子分散樹脂組成物(19)は、加熱溶融した樹脂(16)に,機能性微粒子粉末が溶剤中に分散混入した微粒子分散溶剤(17)を樹脂(16)が含浸可能な量だけ混合してなるものである。

Description

本発明は樹脂組成物及びその製造方法に関する。
従来、各種樹脂中に種々の機能性微粒子粉末を分散混入させることにより樹脂の特性を改善した微粒子分散樹脂組成物が提案されている。例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等の熱可塑性樹脂に難燃性微粒子粉末を分散混入させた難燃性樹脂組成物等が提案されている。その他にも、ヨウ化カリウム微粒子粉末等が分散混入された耐熱耐老化性ポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1)、シリカ系の微粒子粉末が分散混入された低応力性透明樹脂組成物、金属の含酸素化合物の微粒子粉末が分散混入された高強度樹脂組成物、磁性微粒子粉末が分散混入された磁性樹脂組成物(例えば、磁性トナー)等、種々の微粒子分散樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、通常、微粒子粉末は(二次)凝集し、凝集塊を形成する。このため、例えば単に微粒子粉末を樹脂中に添加・混合したとしても、樹脂全体に粒径の比較的小さな微粒子粉末を均一に分散混入することは困難である。
尚、微粒子粉末の凝集性は微粒子粉末の粒径と相関する。具体的には、微粒子粉末の粒径が小さくなるほど凝集性が増大する傾向にある。例えば1μm以下の微粒子粉末は特に凝集性が高いため、1μm以下の微粒子粉末が均一に分散混入された樹脂組成物を得ることは特に困難である。
このような問題に鑑み、微粒子粉末を樹脂中に均一に分散混入する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、溶剤中に固体添加剤(微粒子粉末)が溶解又は分散された分散液を溶融状態の熱可塑性樹脂に添加し、混練後、溶剤を揮発せしめることにより微粒子分散樹脂組成物を得る方法が提案されている。この方法によれば、微粒子粉末の二次凝集が抑制されるため、粒径の小さな微粒子粉末が比較的均一に分散混入された樹脂組成物が得られると特許文献1には記載されている。
特許文献1:特開昭64−29433号公報 −解決課題− しかしながら、特許文献1に記載された方法では、溶融された樹脂に非常に多くの溶剤が添加される。具体的には、例えば、30kg/hrで供給されるナイロン12に対して1.0〜10.0Phrで分散液を添加することが記載されている。溶解された樹脂中に多量の分散液を添加した場合、混練しても樹脂と分散液とを十分均一に混合することが困難となる。極端な場合は樹脂と分散液とが分離した状態のまま混練機から吐出されてしまう。このため、十分な均質性を有する微粒子分散樹脂組成物を得ることが困難である。
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い均一性で微粒子粉末が分散混入された樹脂組成物、及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、熱融解された樹脂に混合する微粒子分散溶剤の量を熱融解された樹脂が含浸可能な最大量以下としたことを特徴とする。
すなわち、本発明にかかる樹脂組成物は、加熱溶融した樹脂に,機能性微粒子粉末が溶剤中に分散混入した微粒子分散溶剤を樹脂が含浸可能な量だけ混合してなるものであることを特徴とする。
また、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、樹脂中に機能性微粒子粉末が分散混入された樹脂組成物の製造方法であって、溶剤中に機能性微粒子粉末を分散混入してなる微粒子分散溶剤を加熱溶融された樹脂に樹脂が含浸可能な最大量以下の量だけ混合することを特徴とする。
難燃性樹脂組成物を製造する工程を表したフローチャートである。 製造装置1の断面模式図である。 樹脂に対する単位重量あたりの溶剤の混合量と樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量との相関を模式的に表すグラフである。 実施例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。 比較例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は微粒子分散樹脂組成物を製造する工程を表したフローチャートである。
まず、1又は複数種類の機能性微粒子粉末を溶剤に分散させて微粒子分散溶剤を調整する(ステップ1)。詳細には、例えば、機能性微粒子粉末を大過剰の溶剤に一旦分散させた後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶剤を揮発濃縮させることにより、所望の分散量の微粒子分散溶剤を調製することができる。特に、比較的高濃度の(例えば、溶剤に対する微粒子粉末の重量比が50%以上である)微粒子分散溶剤を調製する場合には、上記調製工程により均一に分散された微粒子分散溶剤を容易に調製することができる。
機能性微粒子粉末は樹脂の特性を向上・維持させるためのものである。機能性微粒子粉末は向上しようとする樹脂の特性等によって適宜選択決定することができる。機能性微粒子粉末は、例えば、難燃剤、難燃助剤、離型剤、滑剤、強化剤、可塑剤、流動改質剤、導電材、帯電防止剤、硬化剤、酸化防止剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤等の微粒子粉末であってもよい。より具体的には、樹脂に難燃性を付与する場合、SiO/MgO、Fe(acac)、Cu(acac)等の難燃性微粒子粉末、若しくはビスフェノールA型やフェニルエーテル系の難燃微粒子粉末を樹脂に分散混入させてもよい。
尚、機能性微粒子粉末は粒径が1μm以下であることが好ましい。この構成によれば、機能性微粒子粉末の表面積をより大きくできるため、樹脂により高い特性を付与することができる。尚、機能性微粒子粉末は、例えば5〜10μmといった比較的大きな粒径を有する材料をボールミル装置等を用いることによって粉砕することによって得ることができる。
機能性微粒子粉末を分散させる溶剤は、使用する樹脂や機能性微粒子粉末に応じて適宜選択することができる。例えば、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、アルコール溶剤、ケトン溶剤、これらの溶剤の混合溶剤等を用いることができる。さらに、必要に応じてこれらの溶剤に、各種添加剤(例えば、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、害虫忌避剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、流動促進剤等)を添加してもよい。
溶剤は樹脂の溶解性が低いものであることが好ましい。特に樹脂を実質的に溶解させないものであることが好ましい。樹脂の溶解性が低い溶剤としては、グリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤が挙げられる。グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤等の樹脂の溶解性が低い溶剤を用いることによって、後の工程(ステップ4、5)において、樹脂と微粒子分散溶剤とを高い均一性で混合することが可能となる。
グリコール溶剤の具体例としては、エチレングリコール溶剤、ジエチレングリコール溶剤、プロピレングリコール溶剤、ジプロピレングリコール溶剤等が挙げられる。また、グリコールエーテル溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエーテル溶剤、ジエチレングリコールエチルエーテル溶剤、ジエチレングリコールプロピルエーテル溶剤、ジエチレングリコールブチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールメチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールエチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールプロピルエーテル溶剤、トリエチレングリコールブチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールメチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールエチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールプロピルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールブチルエーテル溶剤等が挙げられる。
また、溶剤は樹脂を膨潤させる性質を有することが好ましい。換言すれば、樹脂により含浸されやすい性質を有することが好ましい。ここで膨潤とは、溶剤を吸収してふくらむことをいう。
例えば、上述のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤はハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂を膨潤させる性質を有する。また、ハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤に対する溶解度は低い。このため、ハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂を用いる場合には上述のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤を用いることが特に好ましい。
溶剤中に分散させる機能性微粒子粉末の濃度は、所望する微粒子分散樹脂組成物の特性によって適宜選択決定することができる。例えば、溶剤に対する機能性微粒子粉末の濃度は50重量%とすることができる。
ステップ1と並行して、又はステップ1後に樹脂を加熱融解させる(ステップ2)。樹脂としては、原料から初めて製造される所謂バージン樹脂だけでなく、製造工程で出た不要樹脂や端材、又は市場から回収された廃電気製品から再生された再生材も使用することができる。
樹脂も特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。樹脂は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、難燃性樹脂組成物を製造する場合は、スチレン系樹脂又は環境系樹脂が好ましい。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−ブダジエン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸等が挙げられる。尚、本明細書において環境樹脂とは、生分解性樹脂(石油由来及び植物由来のものを含む)と植物由来であり生分解性を有しない樹脂との総称である。具体的に、環境樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂(PLA)、ポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS系樹脂;1,4ブタンジオールとコハク酸の共重合樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂等が挙げられる。
尚、樹脂は単一種類であっても、複数種類のブレンドであってもよい。分子量は、例えば3,000〜1,000,000程度であることが望ましい。
樹脂の加熱溶融(ステップ2)は図2に示される製造装置1内で行われる。
製造装置1は、円筒状の装置本体10と、装置本体10の管内に設けられたスクリューセット11とを有する。スクリューセット11は装置本体10の長手方向を軸として回転可能な1又は複数のスクリューを有する。すなわち、製造装置1は単軸又は複数軸(例えば、2軸)の混練押出機である。尚、製造装置1のL/Dは7.5以上30以下であることが好ましい。L/Dを大きくすることにより樹脂と微粒子分散溶剤とを高い均一性で混練しやすくなる傾向にある。一方、L/Dが小さい方が製造装置1の価格が低くなる傾向にある。
装置本体10には、管内に樹脂16を注入するための樹脂注入口12が設けられている。詳細には、樹脂注入口12は混練される樹脂16の進行方向手前側(図2において左側)に、装置本体10内部に連通するように設けられている。この樹脂注入口12から樹脂16が注入される。樹脂16は、例えば、ギヤポンプ等(図示せず)を用いて装置本体10内部に加圧注入される。尚、注入される樹脂16の形状は特に限定されるものではない。注入される樹脂16は、例えば、粉末状、ペレット状、タブレット状であってもよい。
加圧注入された樹脂16はスクリューセット11の回転により軸方向前方(図2において右方向)に押し出されながら加熱融解される(ステップ2)。尚、樹脂16は製造装置1に設けられたヒーター(図示せず)により加熱融解される。樹脂16の加熱温度は樹脂16の種類によって異なるが、50℃以上300℃以下(好ましくは100℃以上200℃以下)程度とすることが好ましい。例えば、ハイインパクトポリスチレン樹脂を融解させる場合は180℃程度とすることが好ましい。
樹脂注入口12よりも進行方向向前方(図2において右側)にはステップ1で調製された微粒子分散溶剤17を注入するための溶剤注入口13が設けられている。尚、本実施形態では、溶剤注入口13は樹脂注入口12とは別個に設けられているが、微粒子分散溶剤17を樹脂16と共に樹脂注入口12から注入するように構成してもよい。すなわち樹脂注入口12に溶剤注入口としての機能を兼ね備えさせてもよい。
ステップ1で調製された微粒子分散溶剤17は溶剤注入口13から装置本体10内部に注入される。装置本体10内部への注入に先立って、注入される微粒子分散溶剤17を装置本体10内部で加熱融解された樹脂16と略同一の温度に加熱しておくことが好ましい(ステップ3)。そうすることによって、微粒子分散溶剤17を注入した際の樹脂16の温度低下を抑制することができる。その結果、微粒子分散溶剤17と樹脂16とをより均一に混合することが可能となる。
注入される微粒子分散溶剤17の量は樹脂16が含浸可能な最大量以下であることが好ましい。そうすることによって、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを高い均一性で混合することができる。このため、機能性微粒子粉末が高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。一方、注入される微粒子分散溶剤17の量が樹脂16が含浸可能な最大量よりも大きい場合は、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを十分に高い均一性で混練することが困難となる。極端な場合には、混練された後においても、樹脂16と微粒子分散溶剤17とが分離した状態となる。このため、機能性微粒子粉末が十分に高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることが困難となる。
また、注入される微粒子分散溶剤17の量を樹脂16が含浸可能な最大量以下とすることによって、過剰な溶剤の流出に伴う微粒子粉末の損失(樹脂組成物中に混入しようとした微粒子粉末が樹脂組成物中に分散混入されないこと)を抑制することができる。換言すれば、混合した微粒子分散溶剤17中の微粒子粉末のほぼすべてが得られる微粒子分散樹脂組成物19中に分散混入されることとなる。このため、所望の混合比率(樹脂16に対する微粒子粉末の混合比率)の微粒子分散樹脂組成物19を容易に製造可能となる。言い換えれば、微粒子分散樹脂組成物19の微粒子粉末の混合率の制御が容易となる。
尚、微粒子分散溶剤17は機能性微粒子粉末がグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、又はグリコール溶剤及びグリコールエーテル溶剤の混合溶剤に分散されたものであることが好ましい。一般的に、樹脂のグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤への溶解度は低い。このため、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤を用いることによって、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを高い均一性で混合することができる。また、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤は、例えばハイインパクトポリスチレン樹脂等に含浸されやすい。このため、樹脂16がハイインパクトポリスチレン樹脂等である場合は微粒子分散溶剤17がグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、又はこれらの混合溶剤を含むことが好ましい。このような樹脂・溶剤の組み合わせとすることにより、高い均一性で機能性微粒子粉末が分散混合された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。
注入された微粒子分散溶剤17と樹脂16とはスクリューセット11により混練されると共に、進行方向(図2において左から右)に押し出されていく(ステップ5)。
溶剤注入口13よりもさらに進行方向前方(図2において右側)には、装置本体10の内部に開口する吸引口14が設けられている。吸引口14は、ポンプ等の減圧手段(図示せず)に連結されている。この吸引口14を介して減圧手段(図示せず)を駆動して装置本体10内部の吸引減圧することにより、樹脂組成物に含まれる溶剤18の量を低減させる(ステップ6)。ステップ6を行うことによって、溶剤含有率の低い微粒子分散樹脂組成物19を得ることができる。
尚、ステップ6により、取り除かれた溶剤は冷却液状化されて回収される。回収された溶剤は再び使用可能である。このようにすることによって、溶剤の利用効率を高め、微粒子分散樹脂組成物19の製造コストを低減することができる。
その後、樹脂注入口12が設けられた端部と反対側の端部に設けられた吐出口15から混練された微粒子分散樹脂組成物19が吐出される(ステップ7)。具体的には、微粒子分散樹脂組成物19は、例えば水中に線状に吐出され、冷却される(ステップ8)。その後、切断手段(例えば、ペレタイザー等(図示せず))を用いて所望の長さに切断することによりペレット状の微粒子分散樹脂組成物19を得ることができる。
尚、樹脂16が含浸可能な最大量は図2に示される製造装置1を用いて以下のようにして求めることができる。
微粒子分散樹脂組成物を製造する場合と同様に、樹脂注入口12から樹脂を投入し、製造装置1を用いて加熱融解させる。加熱融解された樹脂中に、溶剤注入口13から溶剤を注入する。注入された樹脂と溶剤とは混練された後、吐出口15から吐出される。尚、本測定に際しては、吸引口14は閉じられており、溶剤量の吸引減圧による低減は行わない。吐出された樹脂中の単位重量あたりの溶剤含有量を測定する。
図3は樹脂に対する単位重量あたりの溶剤の混合量と樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量との相関を模式的に表すグラフである。
混合される溶剤の量が少ない場合、吐出された樹脂中の単位重量あたりの溶剤含有量は注入される溶剤量の増加と共に増加する。しかし、溶剤の混合量が所定の量を超えると、それ以上注入される溶剤量が増加しても吐出された樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量は変化しなくなる(一定となる)。すなわち、溶剤が飽和した状態となる。
本明細書においては、このように測定された樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量の最大量(Gmax)が樹脂16が含浸可能な最大量である。
尚、溶剤含有量は、得られた樹脂の重量と、得られた樹脂を粉砕・減圧乾燥したものの重量とを比較することにより算出することができる。
上述のような製造工程により製造することにより、機能性微粒子粉末の(二次)凝集を抑制することができる。このため、比較的大きな凝集塊を含まず、機能性微粒子粉末が比較的小さな粒径で、且つ高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。例えば、平均粒径が1μm以下である機能性微粒子粉末を用いて製造した場合、得られる微粒子分散樹脂組成物に含有される機能性微粒子粉末(及び機能性微粒子の凝集塊)の平均粒径が10μm以下となる。その結果、高機能な微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。
グリコール溶剤及び/又はグリコールエーテル溶剤を用いて製造された微粒子分散樹脂組成物は少なくとも若干量のグリコール及び/又はグリコールエーテルを含む。このようなグリコール及び/又はグリコールエーテルを含む微粒子分散樹脂組成物は上述の方法により、容易に製造することができる。このため、微粒子粉末の(二次)凝集が抑制され、機能性微粒子粉末が高い均一性で分散混入された態様を容易に実現することができる。
微粒子分散樹脂組成物に含まれる樹脂は膨潤性を有することが好ましい。この場合、高い均一性で機能性微粒子粉末が分散混入された態様を容易に実現することができるからである。尚、本明細書において、「膨潤性」とは、樹脂1kgあたり50g以上の溶剤を含浸させる性質のことをいう。
尚、本明細書において、「平均粒径」とは本発明に係る第1の樹脂組成物は、2種以上の機能性微粒子粉末が分散混入されたものであってもよい。この場合、少なくとも1種類の機能性微粒子粉末の平均粒径が10μm以下であればよい。例えば、平均粒径が10μm以下である機能性微粒子粉末と、その機能性微粒子粉末とは異なる種類で平均粒径が10μmよりも大きい機能性微粒子粉末とが分散混入された樹脂であってもよい。
また、例えば、10μm以下の粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群と、その機能性微粒子粉末と同一種類であって、10μmよりも大きい粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群とが存在する場合、ここに言う「平均粒径」とは10μm以下の粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群に属する機能性微粒子粉末の平均の粒径を言う。
尚、「平均粒径」は、粒度分布測定装置(日機装製マイクロトラックMT3300)を用いて、レーザー解析散乱法により測定することができる。
添加する微粒子粉末は非ハロゲン系の難燃剤であるファイヤレスSマイクロパウダー(株式会社トラストライフ製)から作製した。ファイヤレスSマイクロパウダーは多孔質アルミナ珪酸塩・ケイ酸ナトリウム重合体であった。ファイヤレスSマイクロパウダーの平均粒径は5μmであった。ファイヤレスSマイクロパウダー10重量部とジプロピレングリコール90重量部とを混合し、ボールミル装置に投入した。
粉砕ボールの嵩高を約80%に設定した。粉砕ボールとしてボール径が0.3mmφである酸化ジルコン(ZrO)製のボールを用いた。尚、ミルの表面もボールの材質と同様に酸化ジルコン(ZrO)とした。
ボールミル装置は周速12m/Sで約180分間回転させた。その結果、平均粒径が約0.1μmの微粒子粉末が得られた。
得られた微粒子粉末とジプロピレングリコールとの混合液をロータリーエバポレーターを用いて加熱吸引した。吸引時の温度は180℃とした。これによりジプロピレングリコールに対する微粒子粉末の重量比を50重量%とした。
樹脂としては、廃テレビの筐体樹脂を粉砕し、難燃剤を除去することにより作製されたペレットを使用した。使用した樹脂の種類はハイインパクトポリスチレン(HIPS)であった。平均分子量は約40000であった。
混練機としては、(株)栗本鉄工所製の50φ混練機(S2KRC)を使用した。混練機中にHIPS樹脂を注入し、180℃に加熱し、融解させた。樹脂の注入量は9.5kg/hとした。
ギヤポンプを用いて融解されたHIPS樹脂中に180℃に加熱した微粒子分散液を注入した。微粒子分散溶剤の注入量は1kg/hとした。すなわち、微粒子分散溶剤の投入量は樹脂の投入量の約10.5重量%とした。尚、HIPS樹脂はジプロピレングリコールを20%まで含浸可能である。このため、本実施例で注入された微粒子分散溶剤の量はHIPS樹脂が含浸可能な最大量以下であった。実際、吐出口から分離したジプロピレングリコールの流出は観察されなかった。
ULVAC製真空ポンプを用いて、微粒子分散溶剤とHIPS樹脂との混練体を吸引減圧することにより、ジプロピレングリコールの濃度を低減させた。その後、混練機から水中に吐出させて、線状の微粒子分散樹脂組成物を得た。線状の微粒子分散樹脂組成物を所定の長さに切断することによりペレット状の微粒子分散樹脂組成物を得た。
得られた微粒子分散樹脂組成物のジプロピレングリコール濃度は0.1%以下であった。尚、ジプロピレングリコール濃度はガスクロマトグラフィー(島津製作所製CG−2014)を用いて測定した。具体的には、樹脂を規定量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、それに貧溶剤としてメタノールを添加することにより樹脂を析出させた。得られた上澄み溶液を上記ガスクロマトグラフィーで分析した。リファレンスとして、THFに規定量のジプロピレングリコールを混合した溶液を同条件で分析した。そして、リファレンスのピーク強度と比較することにより、検出されたジプロピレングリコールの量を算出し、その結果からジプロピレングリコール濃度を算出した。
得られた微粒子分散樹脂組成物の組成をミクロ熱重量測定装置(島津製作所製TGA−50)により分析した。具体的には、所定重量の微粒子樹脂組成物を800℃に加熱し、樹脂を焼却除去した後に残った残渣(微粒子)の重量を測定することにより微粒子分散樹脂組成物の組成を測定した。その結果、HIPSが95重量%、微粒子が5重量%であった。
得られた微粒子分散樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM:島津製作所製SUPERSCAN SS−550)で観察、撮影した。
図4は実施例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。
図4に示すように、微粒子分散樹脂組成物中の微粒子粉末の粒径は0.5μm以下であった。また、高い均一性で分散されていることがわかった。
得られた微粒子分散樹脂組成物の各種物性(シャルピー衝撃強度、デュポン衝撃値、ビカット軟化点)を測定したところ、すべての物性が混練前の樹脂とほぼ同等であった。具体的には、シャルピー衝撃強度は18KJ/mであった。デュポン衝撃値は11.22J(110kgf・cm)であった。ビカット軟化点は90℃であった。尚、シャルピー衝撃強度、デュポン衝撃値、ビカット軟化点の測定にはそれぞれ、島津製作所製シャルピー衝撃試験機30kgf・m型、東洋精機製作所製NO.451デュポン・衝撃試験機、東洋精機製作所製NO.533HDT試験装置を用いた。
また、微粒子分散樹脂組成物に含まれる樹脂をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた後、これを、昭和電工製GPC「Shodex GPC−101」で分子量を測定したところ、得られた微粒子分散樹脂組成物の分子量は38500であった。
(比較例)
添加する微粒子粉末として未粉砕のファイヤレスSマイクロパウダー(株式会社トラストライフ製)を用いた以外は実施例と同様に微粒子分散樹脂組成物を作製した。作製後、得られた微粒子分散樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM:島津製作所製SUPERSCAN SS−550)で観察、撮影した。
図5は比較例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。
図5に示すように、樹脂中には100μm程度の大きな粒子が観察され、微粒子粉末が十分に均一に分散混入されていないことがわかった。
本発明は微粒子粉末が分散された樹脂組成物一般に適用されるものであり、例えば、難燃性樹脂組成物、耐熱耐老化性樹脂組成物、低応力性透明樹脂組成物、高強度樹脂組成物、磁性樹脂組成物等に適用することができる。
以上説明したように、本発明に係る樹脂組成物の製造方法によれば、微粒子粉末が高い均一性で分散された樹脂組成物を得ることができるため、難燃性樹脂組成物、耐熱耐老化性樹脂組成物、低応力性透明樹脂組成物、高強度樹脂組成物、磁性樹脂組成物等の製造に有用である。
本発明は樹脂組成物及びその製造方法に関する。
従来、各種樹脂中に種々の機能性微粒子粉末を分散混入させることにより樹脂の特性を改善した微粒子分散樹脂組成物が提案されている。例えば、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等の熱可塑性樹脂に難燃性微粒子粉末を分散混入させた難燃性樹脂組成物等が提案されている。その他にも、ヨウ化カリウム微粒子粉末等が分散混入された耐熱耐老化性ポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1)、シリカ系の微粒子粉末が分散混入された低応力性透明樹脂組成物、金属の含酸素化合物の微粒子粉末が分散混入された高強度樹脂組成物、磁性微粒子粉末が分散混入された磁性樹脂組成物(例えば、磁性トナー)等、種々の微粒子分散樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、通常、微粒子粉末は(二次)凝集し、凝集塊を形成する。このため、例えば単に微粒子粉末を樹脂中に添加・混合したとしても、樹脂全体に粒径の比較的小さな微粒子粉末を均一に分散混入することは困難である。
尚、微粒子粉末の凝集性は微粒子粉末の粒径と相関する。具体的には、微粒子粉末の粒径が小さくなるほど凝集性が増大する傾向にある。例えば1μm以下の微粒子粉末は特に凝集性が高いため、1μm以下の微粒子粉末が均一に分散混入された樹脂組成物を得ることは特に困難である。
このような問題に鑑み、微粒子粉末を樹脂中に均一に分散混入する方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、溶剤中に固体添加剤(微粒子粉末)が溶解又は分散された分散液を溶融状態の熱可塑性樹脂に添加し、混練後、溶剤を揮発せしめることにより微粒子分散樹脂組成物を得る方法が提案されている。この方法によれば、微粒子粉末の二次凝集が抑制されるため、粒径の小さな微粒子粉末が比較的均一に分散混入された樹脂組成物が得られると特許文献1には記載されている。
特開昭64−29433号公報 −解決課題− しかしながら、特許文献1に記載された方法では、溶融された樹脂に非常に多くの溶剤が添加される。具体的には、例えば、30kg/hrで供給されるナイロン12に対して1.0〜10.0Phrで分散液を添加することが記載されている。溶解された樹脂中に多量の分散液を添加した場合、混練しても樹脂と分散液とを十分均一に混合することが困難となる。極端な場合は樹脂と分散液とが分離した状態のまま混練機から吐出されてしまう。このため、十分な均質性を有する微粒子分散樹脂組成物を得ることが困難である。
本発明は、係る点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高い均一性で微粒子粉末が分散混入された樹脂組成物、及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、熱融解された樹脂に混合する微粒子分散溶剤の量を熱融解された樹脂が含浸可能な最大量以下としたことを特徴とする。
すなわち、本発明にかかる樹脂組成物は、加熱溶融した樹脂に,機能性微粒子粉末が溶剤中に分散混入した微粒子分散溶剤を樹脂が含浸可能な量だけ混合してなるものであることを特徴とする。
また、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、樹脂中に機能性微粒子粉末が分散混入された樹脂組成物の製造方法であって、溶剤中に機能性微粒子粉末を分散混入してなる微粒子分散溶剤を加熱溶融された樹脂に樹脂が含浸可能な最大量以下の量だけ混合することを特徴とする。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は微粒子分散樹脂組成物を製造する工程を表したフローチャートである。
まず、1又は複数種類の機能性微粒子粉末を溶剤に分散させて微粒子分散溶剤を調整する(ステップ1)。詳細には、例えば、機能性微粒子粉末を大過剰の溶剤に一旦分散させた後、ロータリーエバポレーター等を用いて溶剤を揮発濃縮させることにより、所望の分散量の微粒子分散溶剤を調製することができる。特に、比較的高濃度の(例えば、溶剤に対する微粒子粉末の重量比が50%以上である)微粒子分散溶剤を調製する場合には、上記調製工程により均一に分散された微粒子分散溶剤を容易に調製することができる。
機能性微粒子粉末は樹脂の特性を向上・維持させるためのものである。機能性微粒子粉末は向上しようとする樹脂の特性等によって適宜選択決定することができる。機能性微粒子粉末は、例えば、難燃剤、難燃助剤、離型剤、滑剤、強化剤、可塑剤、流動改質剤、導電材、帯電防止剤、硬化剤、酸化防止剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤等の微粒子粉末であってもよい。より具体的には、樹脂に難燃性を付与する場合、SiO/MgO、Fe(acac)、Cu(acac)等の難燃性微粒子粉末、若しくはビスフェノールA型やフェニルエーテル系の難燃微粒子粉末を樹脂に分散混入させてもよい。
尚、機能性微粒子粉末は粒径が1μm以下であることが好ましい。この構成によれば、機能性微粒子粉末の表面積をより大きくできるため、樹脂により高い特性を付与することができる。尚、機能性微粒子粉末は、例えば5〜10μmといった比較的大きな粒径を有する材料をボールミル装置等を用いることによって粉砕することによって得ることができる。
機能性微粒子粉末を分散させる溶剤は、使用する樹脂や機能性微粒子粉末に応じて適宜選択することができる。例えば、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、アルコール溶剤、ケトン溶剤、これらの溶剤の混合溶剤等を用いることができる。さらに、必要に応じてこれらの溶剤に、各種添加剤(例えば、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、害虫忌避剤、界面活性剤、着色剤、発泡剤、流動促進剤等)を添加してもよい。
溶剤は樹脂の溶解性が低いものであることが好ましい。特に樹脂を実質的に溶解させないものであることが好ましい。樹脂の溶解性が低い溶剤としては、グリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤が挙げられる。グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤等の樹脂の溶解性が低い溶剤を用いることによって、後の工程(ステップ4、5)において、樹脂と微粒子分散溶剤とを高い均一性で混合することが可能となる。
グリコール溶剤の具体例としては、エチレングリコール溶剤、ジエチレングリコール溶剤、プロピレングリコール溶剤、ジプロピレングリコール溶剤等が挙げられる。また、グリコールエーテル溶剤の具体例としては、ジエチレングリコールメチルエーテル溶剤、ジエチレングリコールエチルエーテル溶剤、ジエチレングリコールプロピルエーテル溶剤、ジエチレングリコールブチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールメチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールエチルエーテル溶剤、トリエチレングリコールプロピルエーテル溶剤、トリエチレングリコールブチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールメチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールエチルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールプロピルエーテル溶剤、トリプロピレングリコールブチルエーテル溶剤等が挙げられる。
また、溶剤は樹脂を膨潤させる性質を有することが好ましい。換言すれば、樹脂により含浸されやすい性質を有することが好ましい。ここで膨潤とは、溶剤を吸収してふくらむことをいう。
例えば、上述のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤はハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂を膨潤させる性質を有する。また、ハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤に対する溶解度は低い。このため、ハイインパクトポリスチレン樹脂やポリ乳酸樹脂を用いる場合には上述のグリコール溶剤やグリコールエーテル溶剤を用いることが特に好ましい。
溶剤中に分散させる機能性微粒子粉末の濃度は、所望する微粒子分散樹脂組成物の特性によって適宜選択決定することができる。例えば、溶剤に対する機能性微粒子粉末の濃度は50重量%とすることができる。
ステップ1と並行して、又はステップ1後に樹脂を加熱融解させる(ステップ2)。樹脂としては、原料から初めて製造される所謂バージン樹脂だけでなく、製造工程で出た不要樹脂や端材、又は市場から回収された廃電気製品から再生された再生材も使用することができる。
樹脂も特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。樹脂は熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、難燃性樹脂組成物を製造する場合は、スチレン系樹脂又は環境系樹脂が好ましい。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−ブダジエン−アクリロニトリル、スチレン−ブタジエン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル、スチレン−無水マレイン酸等が挙げられる。尚、本明細書において環境樹脂とは、生分解性樹脂(石油由来及び植物由来のものを含む)と植物由来であり生分解性を有しない樹脂との総称である。具体的に、環境樹脂としては、ポリ乳酸系樹脂(PLA)、ポリブチレンサクシネート系樹脂(PBS系樹脂;1,4ブタンジオールとコハク酸の共重合樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂等が挙げられる。
尚、樹脂は単一種類であっても、複数種類のブレンドであってもよい。分子量は、例えば3,000〜1,000,000程度であることが望ましい。
樹脂の加熱溶融(ステップ2)は図2に示される製造装置1内で行われる。
製造装置1は、円筒状の装置本体10と、装置本体10の管内に設けられたスクリューセット11とを有する。スクリューセット11は装置本体10の長手方向を軸として回転可能な1又は複数のスクリューを有する。すなわち、製造装置1は単軸又は複数軸(例えば、2軸)の混練押出機である。尚、製造装置1のL/Dは7.5以上30以下であることが好ましい。L/Dを大きくすることにより樹脂と微粒子分散溶剤とを高い均一性で混練しやすくなる傾向にある。一方、L/Dが小さい方が製造装置1の価格が低くなる傾向にある。
装置本体10には、管内に樹脂16を注入するための樹脂注入口12が設けられている。詳細には、樹脂注入口12は混練される樹脂16の進行方向手前側(図2において左側)に、装置本体10内部に連通するように設けられている。この樹脂注入口12から樹脂16が注入される。樹脂16は、例えば、ギヤポンプ等(図示せず)を用いて装置本体10内部に加圧注入される。尚、注入される樹脂16の形状は特に限定されるものではない。注入される樹脂16は、例えば、粉末状、ペレット状、タブレット状であってもよい。
加圧注入された樹脂16はスクリューセット11の回転により軸方向前方(図2において右方向)に押し出されながら加熱融解される(ステップ2)。尚、樹脂16は製造装置1に設けられたヒーター(図示せず)により加熱融解される。樹脂16の加熱温度は樹脂16の種類によって異なるが、50℃以上300℃以下(好ましくは100℃以上200℃以下)程度とすることが好ましい。例えば、ハイインパクトポリスチレン樹脂を融解させる場合は180℃程度とすることが好ましい。
樹脂注入口12よりも進行方向向前方(図2において右側)にはステップ1で調製された微粒子分散溶剤17を注入するための溶剤注入口13が設けられている。尚、本実施形態では、溶剤注入口13は樹脂注入口12とは別個に設けられているが、微粒子分散溶剤17を樹脂16と共に樹脂注入口12から注入するように構成してもよい。すなわち樹脂注入口12に溶剤注入口としての機能を兼ね備えさせてもよい。
ステップ1で調製された微粒子分散溶剤17は溶剤注入口13から装置本体10内部に注入される。装置本体10内部への注入に先立って、注入される微粒子分散溶剤17を装置本体10内部で加熱融解された樹脂16と略同一の温度に加熱しておくことが好ましい(ステップ3)。そうすることによって、微粒子分散溶剤17を注入した際の樹脂16の温度低下を抑制することができる。その結果、微粒子分散溶剤17と樹脂16とをより均一に混合することが可能となる。
注入される微粒子分散溶剤17の量は樹脂16が含浸可能な最大量以下であることが好ましい。そうすることによって、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを高い均一性で混合することができる。このため、機能性微粒子粉末が高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。一方、注入される微粒子分散溶剤17の量が樹脂16が含浸可能な最大量よりも大きい場合は、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを十分に高い均一性で混練することが困難となる。極端な場合には、混練された後においても、樹脂16と微粒子分散溶剤17とが分離した状態となる。このため、機能性微粒子粉末が十分に高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることが困難となる。
また、注入される微粒子分散溶剤17の量を樹脂16が含浸可能な最大量以下とすることによって、過剰な溶剤の流出に伴う微粒子粉末の損失(樹脂組成物中に混入しようとした微粒子粉末が樹脂組成物中に分散混入されないこと)を抑制することができる。換言すれば、混合した微粒子分散溶剤17中の微粒子粉末のほぼすべてが得られる微粒子分散樹脂組成物19中に分散混入されることとなる。このため、所望の混合比率(樹脂16に対する微粒子粉末の混合比率)の微粒子分散樹脂組成物19を容易に製造可能となる。言い換えれば、微粒子分散樹脂組成物19の微粒子粉末の混合率の制御が容易となる。
尚、微粒子分散溶剤17は機能性微粒子粉末がグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、又はグリコール溶剤及びグリコールエーテル溶剤の混合溶剤に分散されたものであることが好ましい。一般的に、樹脂のグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤への溶解度は低い。このため、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤を用いることによって、樹脂16と微粒子分散溶剤17とを高い均一性で混合することができる。また、グリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤は、例えばハイインパクトポリスチレン樹脂等に含浸されやすい。このため、樹脂16がハイインパクトポリスチレン樹脂等である場合は微粒子分散溶剤17がグリコール溶剤、グリコールエーテル溶剤、又はこれらの混合溶剤を含むことが好ましい。このような樹脂・溶剤の組み合わせとすることにより、高い均一性で機能性微粒子粉末が分散混合された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。
注入された微粒子分散溶剤17と樹脂16とはスクリューセット11により混練されると共に、進行方向(図2において左から右)に押し出されていく(ステップ5)。
溶剤注入口13よりもさらに進行方向前方(図2において右側)には、装置本体10の内部に開口する吸引口14が設けられている。吸引口14は、ポンプ等の減圧手段(図示せず)に連結されている。この吸引口14を介して減圧手段(図示せず)を駆動して装置本体10内部の吸引減圧することにより、樹脂組成物に含まれる溶剤18の量を低減させる(ステップ6)。ステップ6を行うことによって、溶剤含有率の低い微粒子分散樹脂組成物19を得ることができる。
尚、ステップ6により、取り除かれた溶剤は冷却液状化されて回収される。回収された溶剤は再び使用可能である。このようにすることによって、溶剤の利用効率を高め、微粒子分散樹脂組成物19の製造コストを低減することができる。
その後、樹脂注入口12が設けられた端部と反対側の端部に設けられた吐出口15から混練された微粒子分散樹脂組成物19が吐出される(ステップ7)。具体的には、微粒子分散樹脂組成物19は、例えば水中に線状に吐出され、冷却される(ステップ8)。その後、切断手段(例えば、ペレタイザー等(図示せず))を用いて所望の長さに切断することによりペレット状の微粒子分散樹脂組成物19を得ることができる。
尚、樹脂16が含浸可能な最大量は図2に示される製造装置1を用いて以下のようにして求めることができる。
微粒子分散樹脂組成物を製造する場合と同様に、樹脂注入口12から樹脂を投入し、製造装置1を用いて加熱融解させる。加熱融解された樹脂中に、溶剤注入口13から溶剤を注入する。注入された樹脂と溶剤とは混練された後、吐出口15から吐出される。尚、本測定に際しては、吸引口14は閉じられており、溶剤量の吸引減圧による低減は行わない。吐出された樹脂中の単位重量あたりの溶剤含有量を測定する。
図3は樹脂に対する単位重量あたりの溶剤の混合量と樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量との相関を模式的に表すグラフである。
混合される溶剤の量が少ない場合、吐出された樹脂中の単位重量あたりの溶剤含有量は注入される溶剤量の増加と共に増加する。しかし、溶剤の混合量が所定の量を超えると、それ以上注入される溶剤量が増加しても吐出された樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量は変化しなくなる(一定となる)。すなわち、溶剤が飽和した状態となる。
本明細書においては、このように測定された樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量の最大量(Gmax)が樹脂16が含浸可能な最大量である。
尚、溶剤含有量は、得られた樹脂の重量と、得られた樹脂を粉砕・減圧乾燥したものの重量とを比較することにより算出することができる。
上述のような製造工程により製造することにより、機能性微粒子粉末の(二次)凝集を抑制することができる。このため、比較的大きな凝集塊を含まず、機能性微粒子粉末が比較的小さな粒径で、且つ高い均一性で分散混入された微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。例えば、平均粒径が1μm以下である機能性微粒子粉末を用いて製造した場合、得られる微粒子分散樹脂組成物に含有される機能性微粒子粉末(及び機能性微粒子の凝集塊)の平均粒径が10μm以下となる。その結果、高機能な微粒子分散樹脂組成物を得ることができる。
グリコール溶剤及び/又はグリコールエーテル溶剤を用いて製造された微粒子分散樹脂組成物は少なくとも若干量のグリコール及び/又はグリコールエーテルを含む。このようなグリコール及び/又はグリコールエーテルを含む微粒子分散樹脂組成物は上述の方法により、容易に製造することができる。このため、微粒子粉末の(二次)凝集が抑制され、機能性微粒子粉末が高い均一性で分散混入された態様を容易に実現することができる。
微粒子分散樹脂組成物に含まれる樹脂は膨潤性を有することが好ましい。この場合、高い均一性で機能性微粒子粉末が分散混入された態様を容易に実現することができるからである。尚、本明細書において、「膨潤性」とは、樹脂1kgあたり50g以上の溶剤を含浸させる性質のことをいう。
尚、本明細書において、「平均粒径」とは本発明に係る第1の樹脂組成物は、2種以上の機能性微粒子粉末が分散混入されたものであってもよい。この場合、少なくとも1種類の機能性微粒子粉末の平均粒径が10μm以下であればよい。例えば、平均粒径が10μm以下である機能性微粒子粉末と、その機能性微粒子粉末とは異なる種類で平均粒径が10μmよりも大きい機能性微粒子粉末とが分散混入された樹脂であってもよい。
また、例えば、10μm以下の粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群と、その機能性微粒子粉末と同一種類であって、10μmよりも大きい粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群とが存在する場合、ここに言う「平均粒径」とは10μm以下の粒径を有する機能性微粒子粉末の分布群に属する機能性微粒子粉末の平均の粒径を言う。
尚、「平均粒径」は、粒度分布測定装置(日機装製マイクロトラックMT3300)を用いて、レーザー解析散乱法により測定することができる。
添加する微粒子粉末は非ハロゲン系の難燃剤であるファイヤレスSマイクロパウダー(株式会社トラストライフ製)から作製した。ファイヤレスSマイクロパウダーは多孔質アルミナ珪酸塩・ケイ酸ナトリウム重合体であった。ファイヤレスSマイクロパウダーの平均粒径は5μmであった。ファイヤレスSマイクロパウダー10重量部とジプロピレングリコール90重量部とを混合し、ボールミル装置に投入した。
粉砕ボールの嵩高を約80%に設定した。粉砕ボールとしてボール径が0.3mmφである酸化ジルコン(ZrO)製のボールを用いた。尚、ミルの表面もボールの材質と同様に酸化ジルコン(ZrO)とした。
ボールミル装置は周速12m/Sで約180分間回転させた。その結果、平均粒径が約0.1μmの微粒子粉末が得られた。
得られた微粒子粉末とジプロピレングリコールとの混合液をロータリーエバポレーターを用いて加熱吸引した。吸引時の温度は180℃とした。これによりジプロピレングリコールに対する微粒子粉末の重量比を50重量%とした。
樹脂としては、廃テレビの筐体樹脂を粉砕し、難燃剤を除去することにより作製されたペレットを使用した。使用した樹脂の種類はハイインパクトポリスチレン(HIPS)であった。平均分子量は約40000であった。
混練機としては、(株)栗本鉄工所製の50φ混練機(S2KRC)を使用した。混練機中にHIPS樹脂を注入し、180℃に加熱し、融解させた。樹脂の注入量は9.5kg/hとした。
ギヤポンプを用いて融解されたHIPS樹脂中に180℃に加熱した微粒子分散液を注入した。微粒子分散溶剤の注入量は1kg/hとした。すなわち、微粒子分散溶剤の投入量は樹脂の投入量の約10.5重量%とした。尚、HIPS樹脂はジプロピレングリコールを20%まで含浸可能である。このため、本実施例で注入された微粒子分散溶剤の量はHIPS樹脂が含浸可能な最大量以下であった。実際、吐出口から分離したジプロピレングリコールの流出は観察されなかった。
ULVAC製真空ポンプを用いて、微粒子分散溶剤とHIPS樹脂との混練体を吸引減圧することにより、ジプロピレングリコールの濃度を低減させた。その後、混練機から水中に吐出させて、線状の微粒子分散樹脂組成物を得た。線状の微粒子分散樹脂組成物を所定の長さに切断することによりペレット状の微粒子分散樹脂組成物を得た。
得られた微粒子分散樹脂組成物のジプロピレングリコール濃度は0.1%以下であった。尚、ジプロピレングリコール濃度はガスクロマトグラフィー(島津製作所製CG−2014)を用いて測定した。具体的には、樹脂を規定量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、それに貧溶剤としてメタノールを添加することにより樹脂を析出させた。得られた上澄み溶液を上記ガスクロマトグラフィーで分析した。リファレンスとして、THFに規定量のジプロピレングリコールを混合した溶液を同条件で分析した。そして、リファレンスのピーク強度と比較することにより、検出されたジプロピレングリコールの量を算出し、その結果からジプロピレングリコール濃度を算出した。
得られた微粒子分散樹脂組成物の組成をミクロ熱重量測定装置(島津製作所製TGA−50)により分析した。具体的には、所定重量の微粒子樹脂組成物を800℃に加熱し、樹脂を焼却除去した後に残った残渣(微粒子)の重量を測定することにより微粒子分散樹脂組成物の組成を測定した。その結果、HIPSが95重量%、微粒子が5重量%であった。
得られた微粒子分散樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM:島津製作所製SUPERSCAN SS−550)で観察、撮影した。
図4は実施例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。
図4に示すように、微粒子分散樹脂組成物中の微粒子粉末の粒径は0.5μm以下であった。また、高い均一性で分散されていることがわかった。
得られた微粒子分散樹脂組成物の各種物性(シャルピー衝撃強度、デュポン衝撃値、ビカット軟化点)を測定したところ、すべての物性が混練前の樹脂とほぼ同等であった。具体的には、シャルピー衝撃強度は18KJ/mであった。デュポン衝撃値は11.22J(110kgf・cm)であった。ビカット軟化点は90℃であった。尚、シャルピー衝撃強度、デュポン衝撃値、ビカット軟化点の測定にはそれぞれ、島津製作所製シャルピー衝撃試験機30kgf・m型、東洋精機製作所製NO.451デュポン・衝撃試験機、東洋精機製作所製NO.533HDT試験装置を用いた。
また、微粒子分散樹脂組成物に含まれる樹脂をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させた後、これを、昭和電工製GPC「Shodex GPC−101」で分子量を測定したところ、得られた微粒子分散樹脂組成物の分子量は38500であった。
(比較例)
添加する微粒子粉末として未粉砕のファイヤレスSマイクロパウダー(株式会社トラストライフ製)を用いた以外は実施例と同様に微粒子分散樹脂組成物を作製した。作製後、得られた微粒子分散樹脂組成物を走査電子顕微鏡(SEM:島津製作所製SUPERSCAN SS−550)で観察、撮影した。
図5は比較例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。
図5に示すように、樹脂中には100μm程度の大きな粒子が観察され、微粒子粉末が十分に均一に分散混入されていないことがわかった。
本発明は微粒子粉末が分散された樹脂組成物一般に適用されるものであり、例えば、難燃性樹脂組成物、耐熱耐老化性樹脂組成物、低応力性透明樹脂組成物、高強度樹脂組成物、磁性樹脂組成物等に適用することができる。
以上説明したように、本発明に係る樹脂組成物の製造方法によれば、微粒子粉末が高い均一性で分散された樹脂組成物を得ることができるため、難燃性樹脂組成物、耐熱耐老化性樹脂組成物、低応力性透明樹脂組成物、高強度樹脂組成物、磁性樹脂組成物等の製造に有用である。
難燃性樹脂組成物を製造する工程を表したフローチャートである。 製造装置1の断面模式図である。 樹脂に対する単位重量あたりの溶剤の混合量と樹脂の単位重量あたりの溶剤含有量との相関を模式的に表すグラフである。 実施例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。 比較例に係る微粒子分散樹脂組成物のSEM写真である。

Claims (10)

  1. 加熱溶融した樹脂に,機能性微粒子粉末が溶剤中に分散混入した微粒子分散溶剤を該樹脂が含浸可能な量だけ混合してなる樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載された樹脂組成物において、
    上記溶剤は上記樹脂を実質的に溶解させないものである樹脂組成物。
  3. 請求項1に記載された樹脂組成物において、
    上記樹脂はスチレン系樹脂又はポリ乳酸樹脂である樹脂組成物。
  4. 請求項1に記載された樹脂組成物において、
    上記溶剤はグリコール溶剤又はグリコールエーテル溶剤である樹脂組成物。
  5. 樹脂中に機能性微粒子粉末が分散混入された樹脂組成物の製造方法であって、
    溶剤中に上記機能性微粒子粉末を分散混入してなる微粒子分散溶剤を加熱溶融された樹脂に該樹脂が含浸可能な最大量以下の量だけ混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項5に記載された樹脂組成物の製造方法において、
    上記溶剤は上記樹脂を実質的に溶解させないものである樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項5に記載された樹脂組成物の製造方法において、
    上記溶剤はグリコール溶剤又はグリコールエーテル溶剤である樹脂組成物の製造方法。
  8. 請求項5に記載された樹脂組成物の製造方法において、
    上記樹脂はスチレン系樹脂又はポリ乳酸樹脂である樹脂組成物の製造方法。
  9. 請求項5に記載された樹脂組成物の製造方法において、
    上記微粒子分散溶剤と上記加熱溶融された樹脂とを混合した後に、吸引減圧することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
  10. 請求項5に記載された樹脂組成物の製造方法において、
    上記微粒子分散溶剤を上記加熱溶融された樹脂と略同一の温度にまで加熱した後に、該加熱された微粒子分散溶剤と上記加熱溶融された樹脂とを混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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