JPWO2006095550A1 - Pcrプライマー、それを利用したpcr法及びpcr増幅産物、並びにpcr増幅産物を利用するデバイス及びdna−タンパク複合体 - Google Patents

Pcrプライマー、それを利用したpcr法及びpcr増幅産物、並びにpcr増幅産物を利用するデバイス及びdna−タンパク複合体 Download PDF

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Abstract

熱融解することなく二本鎖のPCR増幅産物をそのままアレイ上に固定することができるようにするPCRプライマーを提供し、それを用いた簡便なPCR法とそれにより得られるPCR増幅産物若しくはアレイ上に固定されたPCR増幅産物へのタンパクの固定化技術を提供することを目的として、本発明に係るPCRプライマーを、PCR法における鋳型となり得る天然型DNA鎖からなるプライマー本体部の5’末端側に、PCR反応に関与しないタグ部を有するものとした。

Description

本発明は、PCR法において用いられるプライマーと、当該プライマーを用いた遺伝子並びにタンパク関連技術に関するものである。
近年、遺伝子解析技術が急速に発展しており、DNAチップ(マイクロアレイ)を始めとする様々な解析ツールや解析手法が簡便に利用できるようになってきている。例えばDNAマイクロアレイは、微細空間に他種類のオリゴヌクレオチドを配置したデバイスであり、これに標識が施された標的DNA(RNA)(以下、「ターゲット」)をハイブリダイズさせ、ハイブリッド形成によるシグナル強度を検出装置で検出することによって、配列特異的に結合したターゲットを一度に解析するものとして重用されている。このようなDNA解析においては、固定化したプローブDNAとターゲットとをマイクロアレイ上でハイブリダイゼーション(二本鎖形成)させることが必要であるが、そのためには一般に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法でターゲットを増幅した後、熱解離により一本鎖とすることで、この一本鎖のターゲットをアレイ上のプローブDNA(一本鎖)とハイブリダイズさせるのが通例である。
斯かる方法では、PCR増幅産物であるターゲットDNAを一本鎖にした後でないとマイクロアレイ上でのハイブリダイゼーションを行うことができないが、そのためには加熱処理が必要であってターゲットのDNAに好ましくない影響を与えることがあり、また一本鎖DNAは球状化し易く検出感度に劣る等の観点から、ターゲットのDNAをその一部分において二重鎖構造をとり他の部分において単鎖構造をとる「部分二重鎖DNA」とその作製方法及び検出方法が考えられている(特許文献1参照)。同文献によると、この部分二重鎖DNAは、(1)作製しようとするDNAの一部と同一な塩基配列を有する1種類のオリゴヌクレオチドを合成する、(2)作製しようとするDNAの一部と相補的な塩基配列を有する2種類のオリゴヌクレオチドを合成する、(3)作製しようとするDNAを鋳型とし、工程(1)で合成したオリゴヌクレオチドと工程(2)で合成した2種類のオリゴヌクレオチドの一方をプライマーとして非対称PCRを行う、(4)作製しようとするDNAを鋳型とし、工程(1)で合成したオリゴヌクレオチドと工程(2)で合成した2種類のオリゴヌクレオチドの他方をプライマーとして非対称PCRを行う、(5)工程(3)の増幅産物と工程(4)の増幅産物を混合した後、加熱、冷却する、という工程を経ることで得ることができるものである。このようにして得られる部分二重鎖DNAは、ゲノムの増幅対象部分(二本鎖)に、当該対象部分に連続するDNA配列と同一配列を持つ一本鎖部分を連続させたものであるといえる。
特開平11−332566公報
ところが、非対称PCRとは、片方のDNA鎖を増幅する手法であり、2つのプライマーの一方を大過剰に使用するものであるため、各プライマーの量の調節を始めとする条件設定が難しい非対称PCRを前記文献記載の方法では2回行う必要がある。さらに、このような非対称PCRを含む工程を最低5つ行わなければならず、非常に煩雑でもある。また、上記工程(3)と工程(4)の増幅産物には、同一の塩基配列部分が多く含まれているため、工程(5)においてこれらを混合、加熱、冷却しても、目的の部分二重鎖DNA以外の産物も少なからず生成されるため、部分二重鎖DNAの生成効率はさほど高くなるとは言い難い。また、得られた部分二重鎖DNAの二重鎖部分はそのままにして熱解離などを施すことなく単鎖部分のみを測定用チップ上の相補鎖に結合させることができるとはいうものの、その前段階である工程(5)では非対称PCRの増幅産物を加熱することが必須であるため、この点においては上述した一般的な方法と同様の問題点がある。
また一般に、従来のDNAマイクロアレイを用いたDNA検出においては、蛍光標識等されたDNAがアレイ上に固定された相補鎖に結合したか否か、換言すれば目的のDNAの存在の有無を確認しようとするものであるので、その限りにおいては問題はないが、アレイ上に目的のDNAを確実に結合させることを目的としておらず、目的のDNAが結合したアレイ上でさらに何らかの反応を行わせるというような応用は利かないといえる。
そこで本発明は、上述した従来の問題点を解消することを課題とし、極めて簡便な方法で得られるPCRプライマーを創出・提供するとともに、当該プライマーを用いた応用性の広い技術をも提供することを目的としている。
すなわち本発明のPCRプライマーは、試料中の対象天然型DNA領域をPCRにより増幅させる際に用いられるものであって、対象DNA領域の二本鎖のうち一方の5’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるプライマー本体部と、このプライマー本体部の5’末端に修飾され且つPCRに関与しない物質からなるタグ部とを有してなることを特徴とする。
このようなPCRプライマーであれば、プライマー本体部において従来通りのPCRを行って所望の塩基配列を有する増幅産物を得ることが可能である。つまり、プライマー本体部には、従来のPCRで用いるプライマーと同様に、目的とするゲノム等の試料DNAにおける対象領域に応じて適宜設計すればよい。特にタグ部は、プライマー本体部によるPCRでは鋳型とならず増幅もされないため、斯かるPCRプライマーを用いたPCRによる増幅産物は、目的である対象DNA領域と同一配列の二本鎖DNAにタグ部を付加した形態をとる。したがって、本発明のPCRプライマーは、後段で詳述する様々な応用技術に利用することが可能である。また本発明のPCRプライマーを用いれば、1回のPCR工程を行うだけで目的の増幅産物を得られ、極めて迅速且つ簡便な処理が可能である。ここで、プライマー本体部とタグ部は、直接的に隣接していてもよいし、両者の間に他の物質を介在させていてもよい。また、タグ部として採用可能な物質には、別の物質との間での特異的結合性能を有するあらゆる物質が含まれる。例えば、タグ部と前記別の物質との関係には、ビオチンとアビジン、試料ゲノムに存在しない塩基配列からなるDNA鎖とその相補鎖を例示することができる。
特に、プライマー本体部とタグ部とを直接的に隣接させない本発明のPCRプライマーの一態様としては、プライマー本体部とタグ部との間に、PCRにより増幅されない物質からなるスペーサ部を介在させたものを挙げることができる。この場合、スペーサ部の存在によって、プライマー本体部とその相補鎖とによる二本鎖DNAとタグ部との間での立体的混雑性を緩和することができる。
特にタグ部として採用するのに望ましい物質としては、非天然型(L型)DNA鎖(以下、必要に応じて「L-DNA」と称する)挙げることができる。ゲノムを始めとする二本鎖の天然型DNAはD型(以下、必要に応じて「D-DNA」と称する)であるのに対して、非天然型DNAはL型であるため、天然型DNAを鋳型とする通常のPCRにおいてはL-DNAからなるタグ部はPCRにおけるプライマーとはなり得ない。したがって、このPCRプライマーを用いてPCRを行うと、天然型の二本鎖DNAの一方に一本鎖のL-DNA鎖がタグ付けされた態様を有していることになる。なお、タグ部のL-DNAにおける塩基配列や塩基数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜決定すればよい。以下、本明細書において「プライマー本体部の5’末端に修飾され且つPCRにより増幅されない物質」又は単に「タグ部」と記す場合は、L-DNAを含む概念を示す。
この場合、前記プライマー本体部と前記タグ部との間に介在させるスペーサ部として好ましいものには、非天然型DNA鎖を挙げることができる。このスペーサ部により、例えばPCR増幅産物のタグ部(L-DNA)をその相補鎖に結合させた場合、二本鎖D-DNAと二本鎖L-DNAが近い位置に存在することによる立体的な混雑を解消することができる。なお、スペーサ部として採用するL-DNA鎖における塩基配列や塩基数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜決定すればよい。L-DNAの他、スペーサ部に適用可能な物質としては、アルキル鎖、ペプチド、ペプチド核酸、糖鎖等を挙げることができる。
以上のようなPCRプライマーを含む本発明のPCRプライマーセットは、前述のPCRプライマーをフォワードプライマーとして有し、対象DNA領域の二本鎖のうち他方の3’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるリバースプライマーとして有するものである。
また、本発明に係るPCR法は、上述のPCRプライマーセットを用いて対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、この二本鎖DNA部のうち一方において前記PCRプライマーに由来するタグ部とを有する増幅産物を得ることを特徴とするものであり、先述の如く対象天然型DNA領域を含む領域を増幅することができる。このPCR法によれば、プライマー本体部の条件を近似させておくことで、複数種類の増幅産物を得るPCRを同一チューブ内で同時に行うことも可能となり、PCR処理に要する器具、手間、時間を大幅に削減することができる。
さらに、このPCR法で反応生成物たる増幅産物は、上述の通り、対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、当該二本鎖DNA部のうち一方において前述のPCRプライマーにおけるタグ部とを有していることを特徴とするものである。このようなPCR増幅産物は、プライマー本体部に基づいて増幅された天然型の二本鎖DNA部分を有しているため極めて安定性がよく、後述するように様々な技術に利用可能である。
また、本発明に係るDNA担持用デバイスは、前述のPCRプライマーにおけるタグ部と特異的に結合する物質と、当該物質を固定化して担持する担体とを具備してなることを特徴とするものである。ここで、PCRプライマーのタグ部にL-DNAを採用した場合には、当該タグ部と特異的に結合する物質としては、タグ部のL-DNAの相補鎖(もちろ非天然型である)からなるL型プローブを担体に固定化することが適切である。その他、例えばタグ部にビオチンを採用した場合には、当該タグ部と特異的に結合する物質としてはアビジンを担体に固定化することが適切である。また、担体には、一般的なDNAチップに用いられる基板やビーズ等を適用することができる。なお、担体に固定化される物質は、一種類でもよいし複数種類でもよい。そして、このようなDNA担持用デバイスを用いると、次のような二本鎖DNA修飾デバイスを容易に得ることができる。
すなわち本発明に係る二本鎖DNA修飾デバイスは、上述したPCR増幅産物及びDNA担持用デバイスを利用するものであって、DNA担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合する物質に、PCR増幅産物におけるタグ部を結合させてなることを特徴とするものである。このような二本鎖DNA修飾デバイスを用いれば、タグ部とそれに特異的な結合をする物質とを介し二本鎖DNAを、担体上の位置を指定して、特に担体がアレイであればそのアドレスを指定して、固定化することができる。したがってこのデバイスは、次に説明するようなDNA検出方法において検出処理の結果得られる生成物とみることもでき、また後述するようなデバイス上での酵素反応にも利用することができる。
前述した本発明に係るDNA検出方法は、上述のPCR増幅産物とDNA担持用デバイスを用いる方法であって、DNA担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合する物質に対して、PCR増幅産物におけるタグ部を当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部を二本の単鎖DNAに解離させることなく結合させる工程を含むことを特徴とする。このような検出方法によれば、PCR増幅産物の二本鎖DNA部を改めて熱解離させる必要がないので、検出対象であるPCR増幅産物を劣化させることがなく、またPCR増幅産物のタグ部のみが確実に担体上に固定化された物質と特異的な結合をするので、担体上における前記物質のほぼ全てに対して確実にPCR増幅産物を結合させることができる。なお、担体上には、PCR増幅産物のタグ部と結合する物質を一種類のみならず複数種類固定化しておくこともできる。それにより、対応するタグ部を有する複数種類のPCR増幅産物を同時に検出することが可能である。
また、上述したPCR増幅産物を利用することで、次のものを創出することができる。すなわち本発明に係るDNA-タンパク複合体(タンパクを結合させた二本鎖DNA)は、当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部に、その二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなるものである。ここでタンパクは、二本鎖DNA中における特定配列を認識して結合するものならば特に限定されるものではなく、一例として制限酵素を挙げることができる。斯かるDNA-タンパク複合体は、次に説明するようなタンパク担持用デバイスと共に用いることで、DNA-タンパク複合体修飾デバイスとしての利用が可能である。
すなわち本発明に係るタンパク担持用デバイスは、前述のPCR増幅産物又はDNA-タンパク複合体の何れか一方又は両方におけるタグ部と特異的に結合する物質と、この物質を固定化して担持する担体とを具備してなるものである。なお、PCR増幅産物を利用する場合には、その二本鎖DNA部に、当該二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させ得るように構成する。このようなデバイスは、前記のPCR増幅産物やDNA-タンパク複合体の何れかのタグ部と結合する物質を備えているため、PCR増幅産物やDNA-タンパク複合体の検出デバイスとして利用できるほかにも、次に説明するようなDNA-タンパク複合体修飾デバイスの基板部分として利用することもできる。その結果、デバイス上の定まった位置にタンパクを固定化することが可能となる。また、担体上には、PCR増幅産物やDNA-タンパク複合体のタグ部と結合する物質を一種類のみならず複数種類固定化しておくこともできる。それにより、対応するタグ部を有する複数種類のPCR増幅産物やDNA-タンパク複合体を同時に検出することが可能である。さらに担体には、一般的なDNAチップ等に用いられる基板やビーズ等を適用することができる。
そしてDNA-タンパク複合体修飾デバイスとは、本発明においては、前記のDNA-タンパク複合体とタンパク担持用デバイスを利用するものであって、タンパク担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合する物質に、DNA-タンパク複合体におけるタグ部を結合させてなることを特徴とするもの、或いは、前記のPCR増幅産物及びタンパク担持用デバイスを利用するものであって、タンパク担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合する物質に、PCR増幅産物におけるタグ部を結合させ、さらに当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部に、その二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなることを特徴とするものである。これら両DNA-タンパク複合体修飾デバイスは、最終形態は同様であるが、タンパクを予め二本鎖DNAに結合させてからタンパク担持用デバイスに固定してもよいし、PCR増幅産物をタンパク担持用デバイスに固定した後で当該PCR増幅産物に結合させてもよい。いずれにしても、担体上の決まった位置に二本鎖DNAを介してタンパクを固定化した態様のデバイス(プロテインチップと呼ぶこともできる)が得られる。特に前者の態様のDNA-タンパク複合体修飾デバイスにおいて担体がアレイであれば、タンパクと二本鎖DNAの複合体をアレイ上のアドレスを指定して固定することができ、後者の態様のDNA-タンパク複合体修飾デバイスにおいて担体がアレイであれば、アレイ上の指定位置に固定した二本鎖DNAにタンパクを固定化することができる。このようにタンパクを固定化することで、専用の器具を用いなくても直接MALDI-TOF法によるタンパクの同定を行うことも可能である。さらに、タンパクの転写因子を二本鎖DNAに固定化しておけば、それを阻害するタンパクの探索も可能であり、新薬開発にも有用なものとなる。その他、このようなDNA-タンパク複合体修飾デバイスを用いることで、このデバイス上で固定されたタンパクを利用した酵素反応や、当該酵素と反応する物質の探索を行うことが可能となる。
本発明のPCRプライマーを利用することで、PCRには関与しないタグ部を備えたPCR増幅産物を極めて簡易なPCR法で得ることができ、この増幅産物を用いれば、二本鎖DNAを担体に固定化したデバイスや、そのデバイス上の二本鎖DNAにタンパクを固定化したデバイス、さらにタンパクと二本鎖DNAの複合体を固定化したデバイスを高率で得ることが可能である。また、特にタグ部としてL-DNAを適用した場合には、PCRの鋳型とはなり得ないタグ部の塩基配列を自由に設計できるため、二本鎖DNAやDNA-タンパク複合体の担体への固定化の際に、正確に位置指定を行うことができ、複数種類の二本鎖DNAやDNA-タンパク複合体の固定化が容易に可能となる。さらに、斯かるデバイスを利用することで、極めて効率のよいDNA、タンパク、DNA-タンパク複合体の検出、デバイス上での酵素反応など、広範囲にわたる応用が可能である。
本発明の一実施形態におけるPCR工程とPCR増幅産物のDNAチップへの固定化工程を示す概念図である。 同実施形態におけるPCR増幅産物とタンパクの複合体生成工程と同複合体のアレイへの固定工程、アレイに固定したPCR増幅産物とタンパクの複合体生成工程を示す概念図である。 実施例1で用いるプライマーセットを示す図である。 実施例2のDenaturing PAGE結果を示す図である。 実施例3で作成したL-DNAマイクロアレイの部分拡大概念図である。 実施例4のSPR差イメージング画像を示す図である。 実施例5のPCR増幅産物固定化確認試験の工程を示す概念図、及びSPR差イメージング結果を示すグラフである。 実施例6のL-DNAマイクロアレイ上のL-DNAタグ付二本鎖DNA部へのタンパクの固定化試験を示す図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態として、PCRプライマー1を用いたPCRの工程と、当該PCRによる増幅産物3をDNA担持用デバイスの一種であるDNAマイクロアレイ4へ固定して二本鎖DNA修飾デバイス5を得る工程を示す概念図である。同図において左側のフロー(a)に、本実施形態に係るPCRプライマー1を利用した工程を示し、この工程と比較のために、右側のフロー(b)に、通常のPCRプライマー1’を利用した工程を示す。
フロー(a)の本実施形態では、PCRプライマー1として、PCRによる増幅目的である対象天然型DNA領域0(以下、「対象領域0」と称する)の二本鎖のうち一方の5’末端側と相補的塩基配列を有する天然型(D型)オリゴヌクレオチドからなるプライマー本体部11と、このプライマー本体部11の5’末端に繋げたタグ部12とを有するものである。本実施形態においてタグ部12には、PCRでは増幅されない物質の一例として、非天然型(L型)オリゴヌクレオチドを採用している。そして、このようなPCRプライマー1をフォワードプライマーとして用い、リバースプライマー2として、対象天然型DNA領域0の二本鎖のうち他方の3’末端側と相補的塩基配列を有するD型オリゴヌクレオチドを採用し、これらフォワードプライマー(PCRプライマー1)とリバースプライマー2をプライマーセット10としてPCR法を行うこととする。一方、本実施形態と比較されるフロー(b)におけるPCR法で用いるプライマーセット10’では、フォワードプライマー1’として、前記PCRプライマー1のプライマー本体部11と同一のプライマー本体部11’の5’末端にD型オリゴヌクレオチドからなるタグ部12’を繋いだものを採用し、リバースプライマー2’として前記リバースプライマー2と同一のオリゴヌクレオチドを用いることとする。なお、タグ部12,12’の塩基配列は、対象領域0の5’に隣接する上流側の配列と相補的にならない配列を選択する。以下では説明の便宜上、フロー(a)におけるPCRプライマー1を、「L-DNAタグ付プライマー1」と称し、フロー(b)におけるPCRプライマー1’を、「D-DNAタグ付プライマー1’」と称することとする。なお、フロー(a)(b)では、プライマーセット10,10’以外のPCR反応条件を同一にしておく。
DNAマイクロアレイ4,4’には、一般的に用いられるマイクロアレイ用基板を担体41、41’とすることができ、この担体41、41’に固定されてタグ部12,12’と特異的に結合する物質として当該タグ部12、12’の相補鎖からなるDNAプローブを適用する。すなわち、フロー(a)で用いるDNAプローブ42には、タグ部12の相補鎖であるL-DNAプローブを適用し、フロー(b)で用いるDNAプローブ42’には、タグ部12’の相補鎖であるD-DNAプローブを適用する。なお、説明の簡易化のため、各担体41、41’には、それぞれ一種類のDNAプローブ42,42’を固定した場合を示す。
まず、通常のPCRであるフロー(b)について説明する。対象領域0を含む試料ゲノムを鋳型とする1回目のPCRサイクルでは、フォワードプライマーであるD-DNAタグ付プライマー1’から伸長した生成物は、対象領域0のみ二本鎖部分をなしさらに当該プライマー1’に由来するタグ部12’が付加されたものであり、リバースプライマー2’から伸長した生成物は、対象領域0のみ二本鎖をなしたものである。これら生成物のうち対象領域0以外の部分を含む一本鎖を除く一本鎖を鋳型とする2回目以降のPCRサイクルでは(なお、試料ゲノム、及び対象領域0以外の部分を含む一本鎖を鋳型として進行する2回目以降のPCRサイクルについては省略する)、D-DNAタグ付プライマー1’から伸長した生成物は、対象領域0のみ二本鎖部分をなしその一方の5’末端にタグ部12’が付加されたものであり、リバースプライマー2’から伸長した生成物は、対象領域0及びタグ部12’共に二本鎖をなしたものである。そして、最終的に得られる主たるPCR増幅産物3’は、対象領域0よりもタグ部12’に相当する分だけ長い通常の二本鎖DNAである。このようなPCR増幅産物3’をDNAマイクロアレイ4’に固定化する場合、まず、PCR増幅産物3’を熱融解により2本の一本鎖DNAにした後、これをDNAマイクロアレイ4’に接触させることで、タグ部12’を有する側の一本鎖DNAが当該タグ部12’とD-DNAプローブ42’とのアニーリングにより固定化される。この結果、タグ部12’のみがDNAプローブ42’と二本鎖を形成しその他の部分では一本鎖のDNAがDNAマイクロアレイ4’に固定化された一本鎖DNA修飾デバイス5’が得られる。
次に本実施形態のPCRであるフロー(a)について説明する。対象領域0を含む試料ゲノムを鋳型とする1回目のPCRサイクルでは、フォワードプライマーであるL-DNAタグ付プライマー1から伸長した生成物は、対象領域0のみ二本鎖部分をなしさらに当該プライマー1に由来するタグ部12が付加されたものであり、リバースプライマー2’から伸長した生成物は、フロー(b)と同じく対象領域0のみ二本鎖をなしたものである。これら生成物のうち対象領域0以外の部分を含む一本鎖を除く一本鎖を鋳型とする2回目以降のPCRサイクルでは(なお、上の説明と同じく、試料ゲノム、及び対象領域0以外の部分を含む一本鎖を鋳型として進行するPCRサイクルについては省略する)、タグ部12は鋳型としてもプライマーとしても機能しないので、このL-DNAタグ付プライマー1から伸長した生成物とリバースプライマー2から伸長した生成物は共に、対象領域0のみ二本鎖をなしその一方の5’末端にタグ部12が付加されたものである。つまりこの生成物が、主たる最終生成物であるPCR増幅産物3となり、このPCR増幅産物3は、対象領域0と同一の二本鎖DNA部31と、この二本鎖DNA部31の二本鎖のうち一方の5’末端に接続された一本鎖のL-DNAからなるタグ部12とから構成されるものである。このPCR増幅産物3をDNAマイクロアレイ4に固定化する場合、このPCR増幅産物3を熱融解することなく、DNAマイクロアレイ4に接触させることで、タグ部12がL-DNAプローブ42とアニーリングすることにより、二本鎖部分はそのままで固定化される。この結果、タグ部12から二本鎖DNA部31を含めて全体が二本鎖のDNAがDNAマイクロアレイ4に固定化された二本鎖DNA修飾デバイス5が得られる。
すなわち、フロー(a)をフロー(b)と比較すれば明らかなように、D-DNAタグ付プライマー1’を用いたPCR法を行うと全体が二本鎖のPCR増幅産物3’が生成されるため、DNAマイクロアレイ4’への固定化に際してPCR増幅産物3’を一本鎖DNAに熱融解する工程が必須であり、固定化されたDNAもタグ部12’を除いて一本鎖であるのに対して、L-DNAタグ付プライマー1を用いたPCR法を行うと、当該プライマー1のうちL-DNAであるタグ部12が一本鎖のまま残り他はD-DNA二本鎖構造をとるPCR増幅産物3が生成されるため、DNAマイクロアレイ4への固定化に際してPCR増幅産物3を熱融解する工程が不要となり、固定化されたDNAもタグ部12を含んで全体が二本鎖である。したがって、このようなDNAマイクロアレイ4へのPCR増幅産物3の固定化手法は、例えばPCR増幅産物3に蛍光標識などを施しておくことで、斯かるPCR増幅産物3たるDNAの検出方法としても応用することが可能である。
また、フロー(a)のPCR法で得られたPCR増幅産物3の二本鎖DNA部31に、DNAの特定塩基配列を認識する特定タンパク6を結合させると、図2(a)に示すようなDNA-タンパク複合体7を生成することが可能である。ここで、DNAの特定塩基配列及び当該配列を認識するタンパクは、両者の関係が維持された組み合わせである限り特に限定されない。このDNA-タンパク複合体7は、PCR増幅産物3のうちL-DNAからなるタグ部12をそのまま有している。したがって、同図(a)に示すように、上述したDNAマイクロアレイ4と同様、基板81にタグ部12と特異的に結合する物質(ここではL-DNAプローブ82)を備えたデバイス(ここでは、タンパク担持用デバイス8と称する)上において、タグ部12とプローブ82とのハイブリダイゼーションによってDNA-タンパク複合体7を固定化することができる。この固定化手法は、DNA-タンパク複合体7の検出方法としても利用することができ、DNA-タンパク複合体7を固定化させたタンパク担持用デバイス8は、アレイ上の所定位置にタンパクを固定したDNA-タンパク複合体修飾デバイス9(いわゆる、プロテインチップ)として利用することが可能である。勿論、このようなDNA-タンパク複合体7やDNA-タンパク複合体修飾デバイス9は、フロー(b)においてDNAマイクロアレイ4’に固定された一本鎖DNA(PCR増幅産物3’を熱融解したもの)では得ることができない。
さらに、このようなDNA-タンパク複合体修飾デバイス9は、図2(b)に示すように、予め前述の二本鎖DNA修飾デバイス5を作製しておき、その二本鎖DNA部31の特定塩基配列に対して特定タンパク6を結合させることによっても作製することができる。このようなDNA-タンパク複合体修飾デバイス9の作製方法であれば、特定タンパク6のスクリーニングに利用することも可能である。また、前者後者いずれの方法で作製しても、DNA-タンパク複合体修飾デバイス9の用途例としては、アレイ上での特定タンパク6による酵素反応、MALDI-TOF法による当該特定タンパク6の同定、特定タンパク6と相互反応するタンパクの探索、等を挙げることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、PCRプライマー、PCR増幅産物、各種デバイスに関する具体的構成を適宜変更することができるし、PCR法やDNA検出法等については必要に応じて適宜条件設定を行えばよい。
<1.L-DNAタグ付プライマーの合成> 本発明の一実施例として、L-DNAタグ付プライマーを2種合成した。この合成は、アプライドバイオシステムズ社製392DNA/RNA自動合成機を用い、1.0mmolスケールにて標準合成プロトコルに従って行ったものである。図3にプライマーセットA,Bとして、フォワードプライマーたる両L-DNAタグ付プライマーと、それらに対応するリバースプライマーを示す。なお、これらのPCRセットを用いて行うPCR法は、本実施例ではプラスミドpUC18を鋳型とするものであるので、各L-DNAタグ付プライマーにおけるプライマー本体部11及びリバースプライマーは、pUC18が有する塩基配列に対応させてある。各L-DNAタグ付プライマーは、斯かる天然型(D型)DNA鎖からなるプライマー本体部11を3’末端側に有し、プライマー本体部11の5’末端側に非天然型(L型)DNA鎖からなるタグ部12を有しており、さらにプライマー本体部11とタグ部12との間に、L型DNA鎖からなるスペーサ部13を設けている。斯かるスペーサ部13は、タグ部12に基づくL型二本鎖DNAとプライマー本体部11に基づくD型二本鎖DNAの立体的な混雑解消のために加えたものであり、タグ部12と同じくL型であるためにプライマー本体部12に基づくPCRの鋳型とはならない。
すなわち各L-DNAタグ付プライマーは、5’末端側から、タグ部12、スペーサ部13、プライマー本体部11をこの順で繋げたものであるといえる。ここで、タグ部12は、L型DNAを任意の塩基配列を任意の塩基数で構成することができるが、塩基数としては15〜25とするのが好ましく、本実施例では20 merとしている。また、スペーサ部13も、タグ部12と同じくL型DNAを任意の塩基配列を任意の塩基数で構成することができるが、上述のようにL型二本鎖DNAとD型二本鎖DNAの立体的混雑性の解消という目的からは塩基数を数merとすれば十分であり、本実施例ではチミン(T)を3つ並べたものを採用している。なお、後述するPCR増幅産物のDNAチップへの固定確認試験のため、プライマーセットBにおけるリバースプライマーには、通常のプライマーの他に、5’末端をビオチン(biotin)標識したプライマーも作製した。
<2.L-DNAタグ付プライマーを含むプライマーセットを用いたPCR反応> 本発明の一実施例として、上記実施例1で作製したプライマーセットA,Bを用いたPCRを行った。PCR反応条件は、プライマー濃度:500 nM, Taq polymerase Master Mix(QIAGEN):100 pg/ml,PCRサイクル:35サイクル(94℃ X 30秒, 55℃ X
30秒, 72℃ X 1分)である。なお、プライマーセットA,Bを用いたPCR反応は1つのチューブ内で同時に行うことが可能であるが、本実施例では別々に行っている。このようなPCR反応により得られた増幅産物において、各両L-DNAタグ付プライマーのタグ部12及びスペーサ部13がPCR伸長反応の鋳型となっていないことを確認するため、両PCR増幅産物について、二本鎖DNAを一本鎖にして行う熱融解ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(Denaturing PAGE)を、8% Polyacrylamide,7M ureaの条件にて実施した。その結果を図4に示す。
同図(a)は、プライマーセットAを用いたPCRの増幅産物を対象としたDenaturing
PAGEの写真である。この結果から、このPCRでは、96 merの一本鎖と119 mer の一本鎖がハイブリダイズしたものが増幅産物として得られていることが分かる。96 merの一本鎖はリバースプライマーから伸長したものであり、119 mer の一本鎖はフォワードプライマー(L-DNAタグ付プライマー)から伸長したものである。両者の塩基数の差である20 merは、タグ部12の20 mer とスペーサ部13の3 merの合計に相当する。同図(b)は、プライマーセットBを用いたPCRの増幅産物を対象としたDenaturing PAGEの写真である。この結果から、このPCRでは、123 merの一本鎖と146 mer の一本鎖がハイブリダイズしたものが増幅産物として得られていることが分かる。123 merの一本鎖はリバースプライマーから伸長したものであり、146mer の一本鎖はフォワードプライマー(L-DNAタグ付プライマー)から伸長したものである。両者の塩基数の差である20 merは、タグ部12の20 mer とスペーサ部13の3 merの合計に相当する。以上の結果から、L-DNAタグ付プライマーを含むプライマーセットを用いると、L-DNA鎖からなるタグ部12とスペーサ部13はポリメラーゼ伸長反応の鋳型とはならないことが示された。
<3.L-DNAマイクロアレイの作成> 上記実施例2で得られたPCR増幅産物をハイブリダイズさせるためのDNA担持用デバイスとして、DNAマイクロアレイを作成した。作成に際しては、東洋紡社製アミノ修飾SPRイメージングチップを、N-ヒドロキシスクシンイミド-ポリエチレングリコール(10 mg/ml,MW 3400,NHS-PEG12-MAL,Quanta Biodesign)を反応させ、マレイイミドを固定化した。続いて、10 mM 3’-チオール標識L-DNAを東洋紡社製自動スポッターでスポットし、一晩反応させた。さらに、未反応マレイイミドをキャッピングするために、チップを300mLの10mg/mL
PEG−thiolに浸し、1時間反応させた後、チップをリン酸バッファー(10 mM phosphate : pH 7.2 and 150 mM NaCl)でよく洗浄し、実験に用いた。
そして、プライマーセットA,Bにおける各L-DNAタグ付プライマーのタグ部12に相補的なL-DNA鎖を、表面プラズモン共鳴差イメージング測定用のアレイ(東洋紡社製)に固定化した。この固定化には、3’末端をチオール化したL-DNA鎖を合成して用い、上述のマレイイミド固定化アレイと反応させた。アレイ上に固定化した各プローブ(L-DNAプローブ)のアドレスの部分拡大概念図を図5に示す。すなわち、プライマーセットAのタグ部12に相補的なプローブ、プライマーセットBのタグ部12に相補的なプローブ、対照としてalkyl-Sを、アレイ上に交互に固定している。以下、このマイクロアレイを、「L-DNAマイクロアレイ」と称する。
<4.L-DNAマイクロアレイ上へのPCR増幅産物のハイブリダイゼーション>
実施例2で得た2つのPCR増幅産物を、実施例3で作成したマイクロアレイ上に加え、表面プラズモン共鳴差イメージングの変化を観測した。具体的には、L-DNAマイクロアレイを東洋紡社製SPRイメージング装置(MultiSPRinter)にセットし、リン酸バッファー(10 mM phosphate : pH 7.2 and 150mM NaCl)を表面に流速100 ml/minで流し、30℃で安定化させた。そして、PCR増幅産物をリン酸バッファーに溶解してチップ上に流し、SPRイメージングを測定した。その後、PCR増幅産物からリン酸バッファーに代えて、固定化後の状態を安定化させた。PCR増幅産物を流す前後のSPRイメージングの差を取ることにより、SPR差イメージを得た。図6(a)に、プライマーセットAによりPCR増幅産物をハイブリダイズさせた際のSPRイメージング画像、同図(b)にプライマーセットBによりPCR増幅産物をハイブリダイズさせた際のSPRイメージング画像を示す。それぞれ、L-DNAタグ付プライマーのタグ部12がL-DNAプローブとハイブリダイズしたアレイ上で、SPRシグナルの変化(濃色部分)が観測されている。すなわち、PCRに用いたL-DNAタグ付プライマーに対応したL-DNAプローブにPCR増幅産物が選択的に固定化された。
<5.PCR増幅産物のL-DNAマイクロアレイ上への固定化の確認> 二本鎖DNA部がそのままの状態でPCR増幅産物がアレイ上に固定化されていることを確認するため、プライマーセットBのリバースプライマーをビオチンで標識し(実施例2、図3参照)、それを用いたPCRの増幅産物3を、実施例4の通り二本鎖DNA部31を熱融解することなく、タグ部12とL-DNAプローブ42との結合によりL-DNAマイクロアレイ上に固定化した後、ビオチンをアビジン(Streptavidine(SA))と結合させ、そのアビジンと抗アビジン抗体(Antibodt to SA)との結合を観測した。この試験の工程を概念図として図7(a)に示す。また同図(b)に、PCR増幅産物3の固定化前後のSPRイメージング測定結果をグラフで示す。同図から明らかなように、PCR増幅産物3の固定化後、アビジンを流すとSPRシグナル強度が上昇し、アビジンがPCR増幅産物3に標識されたビオチンに結合したことが示された。続いて、抗アビジン抗体を添加すると大きなシグナル上昇が観測された。ブランクでは、アビジン、抗アビジン抗体によるシグナル強度上昇は観測されなかったので、プライマーセットBのリバースプライマーがアレイ上に固定化されていること、すなわちPCR増幅産物である二本鎖DNAが固定化されていることが確認された。
<6.L-DNAマイクロアレイ上のL-DNAタグ付二本鎖DNA部へのタンパクの固定化> L-DNAマイクロアレイ上に固定化させたL-DNAタグ付二本鎖DNAに対し、DNA認識タンパク(制限酵素EcoRI)を結合させる試験を行った。但し、EcoRIによりDNAが切断されないように、メディアからマグネシウムイオン(MG2+)を除いている。この試験では、実施例3と同様に作成した3’末端をチオール化したL-DNAマイクロアレイに、EcoRI認識配列を有する二本鎖D-DNA鎖の一方に実施例1と同様のL-DNA鎖からなる一本鎖のタグ部及びスペーサ部を有するL-DNAタグ付二本鎖DNAを結合させることとした。図8(a)に、L-DNAマイクロアレイに固定化させたプローブと、L-DNAタグ付二本鎖DNAを示す。また、同図(b)に、L-DNAタグ付二本鎖DNAのL-DNAマイクロアレイ上への固定化前からL-DNAタグ付二本鎖DNAへのEcoRIの結合後までに亘るSPRイメージング測定結果をグラフで示す。同図から明らかなように、1)プローブにL-DNAタグ付二本鎖DNAのタグ部が固定化されたアドレスでは、当該固定化によりSPRシグナルの増大が観測されたが、ブランクではシグナルの増大は観測されない。続いて、2)EcoRIの固定化段階では、指定アドレス、ブランク共にシグナルが増大しているが、これはバッファーが交換されることに起因する。そして、3)表面の洗浄により、指定アドレスでのSPRシグナルがEcoRIの固定化前よりも増大していることが観測されたが、ブランクではシグナルの増大していない。以上により、L-DNAマイクロアレイ上のL-DNAタグ付二本鎖DNA部へタンパク(EcoRI)が固定化されたことが確認された。
PCRには直接は関与しないタグ部を備えたPCR増幅産物を通常のPCR法で得ることができ、この増幅産物を利用することで、二本鎖DNAを担体に固定化したデバイスや、そのデバイス上の二本鎖DNAにタンパクを固定化したデバイス、さらにタンパクと二本鎖DNAの複合体を固定化したデバイスが得られる。このような本発明は、極めて効率のよいDNA、タンパク、DNA-タンパク複合体の検出、デバイス上での酵素反応などといった分野での利用が可能である。
【0003】
いといえる。
[0006]
そこで本発明は、上述した従来の問題点を解消することを課題とし、極めて簡便な方法で得られるPCRプライマーを創出・提供するとともに、当該プライマーを用いた応用性の広い技術をも提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
[0007]
すなわち本発明のPCRプライマーは、試料中の対象天然型DNA領域をPCRにより増幅させる際に用いられるものであって、対象DNA領域の二本鎖のうち一方の5’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるプライマー本体部と、このプライマー本体部の5’末端に修飾され且つPCRに関与しないL型DNA鎖からなるタグ部とを有してなることを特徴とする。
[0008]
このようなPCRプライマーであれば、プライマー本体部において従来通りのPCRを行って所望の塩基配列を有する増幅産物を得ることが可能である。つまり、プライマー本体部には、従来のPCRで用いるプライマーと同様に、目的とするゲノム等の試料DNAにおける対象領域に応じて適宜設計すればよい。特にタグ部は、プライマー本体部によるPCRでは鋳型とならず増幅もされないため、斯かるPCRプライマーを用いたPCRによる増幅産物は、目的である対象DNA領域と同一配列の二本鎖DNAにタグ部を付加した形態をとる。したがって、本発明のPCRプライマーは、後段で詳述する様々な応用技術に利用することが可能である。また本発明のPCRプライマーを用いれば、1回のPCR工程を行うだけで目的の増幅産物を得られ、極めて迅速且つ簡便な処理が可能である。ここで、プライマー本体部とタグ部は、直接的に隣接していてもよいし、両者の間に他の物質を介在させていてもよい。
[0009]
特に、プライマー本体部とタグ部とを直接的に隣接させない本発明のPCRプライマーの一態様としては、プライマー本体部とタグ部との間に、PCRにより増幅されない物質からなるスペーサ部を介在させたものを挙げることができる。この場合、スペーサ部の存在によって、プライマー本体部とその相補鎖とによる二本鎖DNAとタグ部との
【0004】
間での立体的混雑性を緩和することができる。
[0010]
本発明では、タグ部として非天然型であるL型DNA鎖(以下、必要に応じて「L−DNA」と称する)を採用している。ゲノムを始めとする二本鎖の天然型DNAはD型(以下、必要に応じて「D−DNA」と称する)であるのに対して、L−DNAは非天然型であるため、D−DNAを鋳型とする通常のPCRにおいてはL−DNAからなるタグ部はPCRにおけるプライマーとはなり得ない。したがって、このPCRプライマーを用いてPCRを行うと、天然型の二本鎖DNAの一方に一本鎖のL−DNA鎖がタグ付けされた態様を有していることになる。なお、タグ部のL−DNAにおける塩基配列や塩基数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜決定すればよい。
[0011]
前記プライマー本体部と前記タグ部との間に介在させるスペーサ部として好ましいものには、非天然型であるL型DNA鎖を挙げることができる。このスペーサ部により、例えばPCR増幅産物のタグ部(L−DNA)をその相補鎖に結合させた場合、二本鎖D−DNAと二本鎖L−DNAが近い位置に存在することによる立体的な混雑を解消することができる。なお、スペーサ部として採用するL−DNA鎖における塩基配列や塩基数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜決定すればよい。L−DNAの他、スペーサ部に適用可能な物質としては、アルキル鎖、ペプチド、ペプチド核酸、糖鎖等を挙げることができる。
[0012]
以上のようなPCRプライマーを含む本発明のPCRプライマーセットは、前述のPCRプライマーをフォワードプライマーとして有し、対象DNA領域の二本鎖のうち他方の3’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるリバースプライマーとして有するものである。
[0013]
また、本発明に係るPCR法は、上述のPCRプライマーセットを用いて対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、この二本鎖DNA部のうち一方において前記PCRプライマーに由来するタグ部とを有する増幅産物を得ることを特徴とするものであり、先述の如く対象天然型DNA領域を含む領域を増幅することができる。このPC
【0005】
R法によれば、プライマー本体部の条件を近似させておくことで、複数種類の増幅産物を得るPCRを同一チューブ内で同時に行うことも可能となり、PCR処理に要する器具、手間、時間を大幅に削減することができる。
[0014]
さらに、このPCR法で反応生成物たる増幅産物は、上述の通り、対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、当該二本鎖DNA部のうち一方において前述のPCRプライマーにおけるタグ部とを有していることを特徴とするものである。このようなPCR増幅産物は、プライマー本体部に基づいて増幅された天然型の二本鎖DNA部分を有しているため極めて安定性がよく、後述するように様々な技術に利用可能である。
[0015]
また、本発明に係るDNA担持用デバイスは、前述のPCRプライマーにおけるタグ部を構成するL−DNA鎖の相補鎖からなるL型DNAプローブと、該L型DNAプローブを固定化して担持する担体とを具備してなることを特徴とするものである。ここで、前記担体に固定化されるL型DNAプローブは、PCRプライマーにおけるタグ部のL−DNAの相補鎖(もちろん非天然型である)であるので、タグ部と特異的に結合する。また、担体には、一般的なDNAチップに用いられる基板やビーズ等を適用することができる。なお、担体に固定化されるL型DNAプローブは、一種類でもよいし複数種類でもよい。そして、このようなDNA担持用デバイスを用いると、次のような二本鎖DNA修飾デバイスを容易に得ることができる。
[0016]
すなわち本発明に係る二本鎖DNA修飾デバイスは、上述したPCR増幅産物及びDNA担持用デバイスを利用するものであって、DNA担持用デバイスにおけるL型DNAプローブに、PCR増幅産物におけるタグ部を結合させてなることを持徴とするものである。このような二本鎖DNA修飾デバイスを用いれば、タグ部とそれに特異的な結合をするL型DNAプローブとを介し二本鎖DNAを、担体上の位置を指定して、特に担体がアレイであればそのアドレスを指定して、固定化することができる。したがってこのデバイスは、次に説明するようなDNA検出方法において検出処理の結果得られる生成物とみることもでき、また後述するようなデバイス上での酵素反応にも利用
【0006】
することができる。
[0017]
前述した本発明に係るDNA検出方法は、上述のPCR増幅産物とDNA担持用デバイスを用いる方法であって、DNA担持用デバイスにおけるL型DNAプローブに対して、PCR増幅産物におけるタグ部を当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部を二本の単鎖DNAに解離させることなく結合させる工程を含むことを特徴とする。このような検出方法によれば、PCR増幅産物の二本鎖DNA部を改めて熱解離させる必要がないので、検出対象であるPCR増幅産物を劣化させることがなく、またPCR増幅産物のタグ部のみが確実に担体上に固定化されたL型DNAプローブと特異的な結合をするので、担体上における前記L型DNAプローブのほぼ全てに対して確実にPCR増幅産物を結合させることができる。なお、担体上には、PCR増幅産物のタグ部と結合するL型DNAプローブを一種類のみならず複数種類固定化しておくこともできる。それにより、対応するタグ部を有する複数種類のPCR増幅産物を同時に検出することが可能である。
[0018]
また、上述したPCR増幅産物を利用することで、次のものを創出することができる。すなわち本発明に係るDNA−タンパク複合体(タンパクを結合させた二本鎖DNA)は、当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部に、その二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなるものである。ここでタンパクは、二本鎖DNA中における特定配列を認識して結合するものならば特に限定されるものではなく、一例として制限酵素を挙げることができる。斯かるDNA−タンパク複合体は、次に説明するようなタンパク担持用デバイスと共に用いることで、DNA−タンパク複合体修飾デバイスとしての利用が可能である。
[0019]
すなわち本発明に係るタンパク担持用デバイスは、前述のPCR増幅産物又はDNA−タンパク複合体の何れか一方又は両方におけるタグ部と特異的に結合するL型DNAプローブと、このL型DNAプローブを固定化して担持する担体とを具備してなるものである。なお、PCR増幅産物を利用する場合には、その二本鎖DNA部に、当該二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させ得るように構成する。このようなデバイスは、前記のPCR増幅産物やDNA−タンパク複合体の何れかのタグ部と結合するL型DNAプローブを備えているため、PCR増幅産物やDNA−タンパク複合体の検出デバイスとして利用できるほかにも、次に説明するようなDNA−タンパク複合体修飾デバイスの基板
【0007】
部分として利用することもできる。その結果、デバイス上の定まった位置にタンパクを固定化することが可能となる。また、担体上には、PCR増幅産物やDNA−タンパク複合体のタグ部と結合するL型DNAプローブを一種類のみならず複数種類固定化しておくこともできる。それにより、対応するタグ部を有する複数種類のPCR増幅産物やDNA−タンパク複合体を同時に検出することが可能である。さらに担体には、一般的なDNAチップ等に用いられる基板やビーズ等を適用することができる。
[0020]
DNA−タンパク複合体修飾デバイスは、前記DNA−タンパク複合体とタンパク担持用デバイスを利用するものであって、タンパク担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合するL型DNAプローブに、DNA−タンパク複合体におけるタグ部を結合させてなることを特徴とするもの、或いは、前記のPCR増幅産物及びタンパク担持用デバイスを利用するものであって、タンパク担持用デバイスにおけるタグ部と特異的に結合するL型DNAプローブに、PCR増幅産物におけるタグ部を結合させ、さらに当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部に、その二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなることを特徴とするものである。これら両DNA−タンパク複合体修飾デバイスは、最終形態は同様であるが、タンパクを予め二本鎖DNAに結合させてからタンパク担持用デバイスに固定してもよいし、PCR増幅産物をタンパク担持用デバイスに固定した後で当該PCR増幅産物に結合させてもよい。いずれにしても、担体上の決まった位置に二本鎖DNAを介してタンパクを固定化した態様のデバイス(プロテインチップと呼ぶこともできる)が得られる。特に前者の態様のDNA−タンパク複合体修飾デバイスにおいて担体がアレイであれば、タンパクと二本鎖DNAの複合体をアレイ上のアドレスを指定して固定することができ、後者の態様のDNA−タンパク複合体修飾デバイスにおいて担体がアレイであれば、アレイ上の指定位置に固定した二本鎖DNAにタンパクを固定化することができる。このようにタンパクを固定化することで、専用の器具を用いなくても直接MALDI−TOF法によるタンパクの同定を行うことも可能である。さらに、タンパクの転写因子を二本鎖DNAに固定化しておけば、それを阻害するタンパクの探索も可能であり、新薬開発にも有用なものとなる。その他、このようなDNA−タンパク複合体修飾デバイスを用いることで、このデバイス上で固定されたタンパクを利用した酵素反応や、当該酵素と反応
【0008】
する物質の探索を行うことが可能となる。
【発明の効果】
[0021]
本発明のPCRプライマーを利用することで、PCRには関与しないタグ部を備えたPCR増幅産物を極めて簡易なPCR法で得ることができ、この増幅産物を用いれば、二本鎖DNAを担体に固定化したデバイスや、そのデバイス上の二本鎖DNAにタンパクを固定化したデバイス、さらにタンパクと二本鎖DNAの複合体を固定化したデバイスを高率で得ることが可能である。また、特にタグ部としてPCRの鋳型とはなり得ないL−DNA鎖を適用したため、タグ部の塩基配列を自由に設計でき、二本鎖DNAやDNA−タンパク複合体の担体への固定化の際に、正確に位置指定を行うことができ、複数種類の二本鎖DNAやDNA−タンパク複合体の固定化が容易に可能となる。さらに、斯かるデバイスを利用することで、極めて効率のよいDNA、タンパク、DNA−タンパク複合体の検出、デバイス上での酵素反応など、広範囲にわたる応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
[0022]
[図1]本発明の一実施形態におけるPCR工程とPCR増幅産物のDNAチップへの固定化工程を示す概念図である。
[図2]同実施形態におけるPCR増幅産物とタンパクの複合体生成工程と同複合体のアレイへの固定工程、アレイに固定したPCR増幅産物とタンパクの複合体生成工程を示す概念図である。
[図3]実施例1で用いるプライマーセットを示す図である。
[図4]実施例2のDenaturing PAGE結果を示す図である。
[図5]実施例3で作成したL−DNAマイクロアレイの部分拡大概念図である。
[図6]実施例4のSPR差イメージング画像を示す図である。
[図7]実施例5のPCR増幅産物固定化確認試験の工程を示す概念図、及びSPR差イメージング結果を示すグラフである。
[図8]実施例6のL−DNAマイクロアレイ上のL−DNAタグ付二本鎖DNA部へのタンパクの固定化試験を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[0023]
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態として、PCRプライマー1を用いたPCRの工程と、当該PCRによる増幅産物3をDNA担持用デバイスの一種であるDNAマイクロアレイ4へ固定して二本鎖DNA修飾デバイス5を得る工程を示す概念図である。同図において左側のフロー(a)に、本実施形態に係るPCRプライマー1を利用した工程を示し、この工程と比較のために、右側のフロー(b)に、通常のPCRプライマー1’を利用した工程を示す。
[0024]
フロー(a)の本実施形態では、PCRプライマー1として、PCRによる増幅目的である対象天然型DNA領域0(以下、「対象領域0」と称する)の二本鎖のうち一方の5’末端惻と相補的塩基配列を有する天然型(D型)オリゴヌクレオチドからなるプライマー本体部11と、このプライマー本体部11の5’末端に繋げたタグ部12とを有するものである。本実施形態においてタグ部12には、PCRでは増幅されない非天然型であるL型オリゴヌクレオチドを採用している。そして、このようなPCRプライマー1をフォワードプライマーとして用い、リバースプライマー2として、対象天然型DNA領域0の二本鎖のうち他方の3’末端側と相補的塩基配列を有するD型オリゴヌクレオチドを採用し、これらフォワードプライマー(PCRプライマー1)とリバースプライマー2をプライマーセット10としてPCR法を行うこととする。一方、本実施形態と比較されるフロー(b)におけるPCR法で用いるプライマーセット10’では、フォワードプライマー1’として、前記PCRプライマー1のプライマー本体部11と同一のプライマー本体部11’の5’末端にD型オリゴヌクレオチドからなるタグ部12’を繋いだものを採用し、リバースプライマー2’として前記リバースプライマー2と同一のオリゴヌクレオチドを用いることとする。なお、タグ部12,12’の塩基配列は、対象領域0の5’に隣接する上流側の配列と相補的にならない配列を選択する。以下では説明の便宜上、フロー(a)におけるPCRプライマー1を、「L−DNAタグ付プライマー1」と称し、フロー(b)におけるPCRプライマー1’を、「D−DNAタグ付プライマー1’」と称することとする。なお、フロー(a)(b)では、プライマーセット10,10’以外のPCR反応条件を同一にしておく。
[0025]
DNAマイクロアレイ4,4’には、一般的に用いられるマイクロアレイ用基板を担体41、41’とすることができ、この担体41、41’に固定されてタグ部12,12’と特異的に
【0013】
[0032]
<1.L−DNAタグ付プライマーの合成> 本発明の一実施例として、L−DNAタグ付プライマーを2種合成した。この合成は、アプライドバイオシステムズ社製392DNA/RNA自動合成機を用い、1.0mmolスケールにて標準合成プロトコルに従って行ったものである。図3にプライマーセットA,Bとして、フォワードプライマーたる両L−DNAタグ付プライマーと、それらに対応するリバースプライマーを示す。なお、これらのPCRセットを用いて行うPCR法は、本実施例ではプラスミドpUC18を鋳型とするものであるので、各L−DNAタグ付プライマーにおけるプライマー本体部11及びリバースプライマーは、pUC18が有する塩基配列に対応させてある。各L−DNAタグ付プライマーは、斯かる天然型(D型)DNA鎖からなるプライマー本体部11を3’末端側に有し、プライマー本体部11の5’末端側に非天然型であるL型DNA鎖からなるタグ部12を有しており、さらにプライマー本体部11とタグ部12との間に、L型DNA鎖からなるスペーサ部13を設けている。斯かるスペーサ部13は、タグ部12に基づくL型二本鎖DNAとプライマー本体部11に基づくD型二本鎖DNAの立体的な混雑解消のために加えたものであり、タグ部12と同じくL型であるためにプライマー本体部12に基づくPCRの鋳型とはならない。
[0033]
すなわち各L−DNAタグ付プライマーは、5’末端側から、タグ部12、スペーサ部13、プライマー本体部11をこの順で繋げたものであるといえる。ここで、タグ部12は、L型DNAを任意の塩基配列を任意の塩基数で構成することができるが、塩基数としては15〜25とするのが好ましく、本実施例では20merとしている。また、スペーサ部13も、タグ部12と同じくL型DNAを任意の塩基配列を任意の塩基数で構成することができるが、上述のようにL型二本鎖DNAとD型二本鎖DNAの立体的混雑性の解消という目的からは塩基数を数merとすれば十分であり、本実施例ではチミン(T)を3つ並べたものを採用している。なお、後述するPCR増幅産物のDNAチップへの固定確認試験のため、プライマーセットBにおけるリバースプライマーには、通常のプライマーの他に、5’末端をビオチン(biotin)標識したプライマーも作製した。
[0034]
<2.L−DNAタグ付プライマーを含むプライマーセットを用いたPCR反応> 本発明の一実施例として、上記実施例1で作製したプライマーセットA,Bを用いたPCRを行った。PCR反応条件は、プライマー濃度:500nM,Taq polymerase Master Mix(Q
【0017】
ブランク共にシグナルが増大しているが、これはバッファーが交換されることに起因する。そして、3)表面の洗浄により、指定アドレスでのSPRシグナルがEcoRIの固定化前よりも増大していることが観測されたが、ブランクではシグナルの増大していない。以上により、L−DNAマイクロアレイ上のL−DNAタグ付二本鎖DNA部へタンパク(EcoRI)が固定化されたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
[0041]
PCRには直接は関与しないL型DNA鎖からなるタグ部を備えたPCR増幅産物を通常のPCR法で得ることができ、この増幅産物を利用することで、二本鎖DNAを担体に固定化したデバイスや、そのデバイス上の二本鎖DNAにタンパクを固定化したデバイス、さらにタンパクと二本鎖DNAの複合体を固定化したデバイスが得られる。このような本発明は、極めて効率のよいDNA、タンパク、DNA−タンパク複合体の検出、デバイス上での酵素反応などといった分野での利用が可能である。

Claims (14)

  1. 試料中の対象天然型DNA領域をPCRにより増幅させる際に用いられるPCRプライマーであって、前記対象DNA領域の二本鎖のうち一方の5’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるプライマー本体部と、当該プライマー本体部の5’末端に修飾され且つPCRに関与しない物質からなるタグ部とを有してなることを特徴とするPCRプライマー。
  2. 前記プライマー本体部と前記タグ部との間に、PCRにより増幅されない物質からなるスペーサ部を介在させている請求項1に記載のPCRプライマー。
  3. 試料中の対象天然型DNA領域をPCRにより増幅させる際に用いられるPCRプライマーであって、前記対象DNA領域の二本鎖のうち一方の5’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるプライマー本体部と、該プライマー本体部の5’末端に修飾された非天然型DNA鎖からなるタグ部とを有してなることを特徴とするPCRプライマー。
  4. 前記プライマー本体部と前記タグ部との間に、非天然型DNA鎖からなるスペーサ部を介在させている請求項3に記載のPCRプライマー。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載のPCRプライマーをフォワードプライマーとして有し、前記対象DNA領域の二本鎖のうち他方の3’末端側と相補的配列を有するDNA鎖からなるリバースプライマーとして有することを特徴とするPCRプライマーセット。
  6. 試料中の対象天然型DNA領域を含む領域を増幅する方法であって、請求項5に記載のPCRプライマーセットを用い、前記対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、該二本鎖DNA部のうち一方において前記PCRプライマーにおけるタグ部とを有する増幅産物を得ることを特徴とするPCR法。
  7. 請求項6に記載のPCR法により得られる反応生成物であって、前記対象天然型DNA領域に対応する二本鎖DNA部と、該二本鎖DNA部のうち一方において前記PCRプライマーにおけるタグ部とを有していることを特徴とするPCR増幅産物。
  8. 請求項1乃至4の何れかに記載のPCRプライマーにおけるタグ部と特異的に結合する物質と、該物質を固定化して担持する担体とを具備してなることを特徴とするDNA担持用デバイス。
  9. 請求項7に記載のPCR増幅産物、及び請求項8に記載のDNA担持用デバイスを利用するものであって、前記DNA担持用デバイスにおける前記タグ部と特異的に結合する物質に、前記PCR増幅産物におけるタグ部を結合させてなることを特徴とする二本鎖DNA修飾デバイス。
  10. 請求項7に記載のPCR増幅産物、及び請求項8に記載のDNA担持用デバイスを用いる方法であって、前記DNA担持用デバイスにおける前記タグ部と特異的に結合する物質に対して、前記PCR増幅産物におけるタグ部を当該PCR増幅産物における二本鎖DNA部を二本の単鎖DNAに解離させることなく結合させる工程を含むことを特徴とするDNA検出方法。
  11. 請求項7に記載のPCR増幅産物における二本鎖DNA部に、該二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなることを特徴とするDNA-タンパク複合体。
  12. 請求項7に記載のPCR増幅産物又は請求項11に記載のDNA-タンパク複合体の何れか一方又は両方におけるタグ部と特異的に結合する物質と、該物質を固定化して担持する担体とを具備してなり、前記PCR増幅産物にはその二本鎖DNA部に、該二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させ得るように構成していることを特徴とするタンパク担持用デバイス。
  13. 請求項11に記載のDNA-タンパク複合体、及び請求項12に記載のタンパク担持用デバイスを利用するものであって、前記タンパク担持用デバイスにおける前記タグ部と特異的に結合する物質に、前記DNA-タンパク複合体におけるタグ部を結合させてなることを特徴とするDNA-タンパク複合体修飾デバイス。
  14. 請求項7に記載のPCR増幅産物、及び請求項12に記載のタンパク担持用デバイスを利用するものであって、前記タンパク担持用デバイスにおける前記タグ部と特異的に結合する物質に、前記PCR増幅産物におけるタグ部を結合させ、さらに該PCR増幅産物における二本鎖DNA部に、該二本鎖DNA部中の所定配列を認識して結合するタンパクを結合させてなることを特徴とするDNA-タンパク複合体修飾デバイス。
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