JPWO2006090873A1 - 燃料電池型酵素センサー - Google Patents

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Abstract

酸化還元酵素活性を有する酵素と、その酵素反応により生じた電子を電極に伝達する機能を有する蛋白質とが固定されているアノードと、酸化剤を還元するための化学触媒、金属触媒、生体触媒またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とするカソードと、から構成されることを特徴とする酵素燃料電池が開示される。また、本発明の酵素燃料電池の起電力を指標として酵素反応の基質の濃度を測定することを特徴とする、燃料電池型酵素センサー、特にワイヤレス型酵素センサーが開示される。

Description

本発明は、酵素センサーに関する。
酵素センサーとは、酸素電極、過酸化水素電極等の電極表面上に酵素が固定化されており、その酵素反応に基づいて、酵素の基質である化合物の濃度を電極の信号として検出するセンサーである。糖尿病患者は年々増加する傾向にあり、糖尿病の診断や、患者の在宅管理が非常に重要であるため、血糖値を簡便かつ迅速に測定しうるグルコースセンサーが開発されている。
グルコースセンサー素子としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)が最もよく用いられている。GODのグルコースの検出原理としては、GODのグルコースの酸化反応の際に消費される酸素を検出する酸素電極型、または生成される過酸化水素を検出する過酸化水素電極型がある。しかしこれらの方法では高い印加電位のため、測定値が血液中の他の酸化還元物質に影響を受ける。このため、1980年代からは様々な電子メディエーターを用いて印加電位をさげる、メディエーター型のセンサーが開発されてきている。
GODは、溶存酸素濃度が高くなると電子をメディエーターではなく酸素にも渡してしまうため、正確な測定ができない。そこで、溶存酸素濃度に影響されないメディエーター型の理想的なセンサー素子として、グルコース脱水素酵素(GDH)が注目されるようになった。GDHのなかでも、補酵素結合型のPQQグルコース脱水素酵素(PQQGDH)は、触媒活性が高く、ターンオーバー数が高いため、フェナジンメトサルフェートなどのメディエーターを用いた場合、応答電流値が高く、応答時間もはやい。つまり、正確で迅速な測定が可能である。また、補酵素結合型であるため反応溶液中に高価な補酵素を添加する必要がない。さらに、酵素が水溶性であれば緩衝溶液中に界面活性剤が不要であり、取り扱いが容易であるという利点があるため、Acinetobacter calcoaceticus由来の水溶性PQQGDH(PQQGDH−B)はグルコースセンサーの素子として非常に理想的である。
これらの酸化還元酵素を酵素電極に応用する場合、酵素反応の結果還元する電子受容体を再酸化するために一定の電位を印加する必要があり、そのための外部からの電力供給が不可欠である。さらに電位を加えるために、酵素反応の結果生じた還元物質の他、例えば生体中に存在する種々の化合物が電極上で酸化され、夾雑シグナルを呈するという問題もある。
通常の自己血糖診断装置では、使い捨て型のグルコースセンサーが用いられている。このセンサーでは、自己採血により得た血液試料をセンサーチップに添加し、そのセンサーチップを電位が印加できる電源を含むセンサー本体に差込むことにより、血糖値を計測するため、常時、血糖値をモニタリングするには適さない。また、最近開発されてきた連続グルコースモニタリングシステム、いわゆるContinuous Glucose Monitoring System(CGMS)においては、従来の酵素センサーチップを体表に装着し、電源を含むセンサー本体を身体に固定することで、常時、血糖を測定することを目的としている。しかし、今までに製品化されているCGMSでは、センサー本体に電源ならびにポテンショスタット回路を設けることが必要なことから、原理的に微細化することは困難である。
ポテンショスタット回路を必要としない燃料電池型グルコースセンサーが提案されている。燃料電池型グルコースセンサーは、グルコース酸化酵素もしくはグルコース脱水素酵素をアノードに用い、ビリルビン酸酸化酵素、ラッカーゼをカソードに用いた酵素燃料電池である。このタイプのセンサーは、アノードでの酵素反応によって生じる電子をカソードで還元反応を行う酵素に渡すことにより生じる起電力を測定するため、ポテンショスタット回路を必要としない。燃料電池の起電力は測定セル内のグルコース濃度に依存しており、起電力を測定することによりグルコース濃度を測定することができる。
しかし、現在までに報告されている燃料電池型グルコースセンサーにおいては、酵素から電極への電子移動は、測定溶液中に溶解している人工電子受容体、補酵素、金属錯体を介して行われている。もしくは酵素から電極への電子移動は、人工電子受容体、補酵素、金属錯体などの電子受容体を構成成分に含むポリマーを介して行われている。このため、電子受容体の安定性や溶解性により電極の特性が制限され、夾雑物と電子受容体との反応により測定のバックグラウンドが高くなるという欠点がある。さらに電子受容体はインビボでの使用に適していないため、酵素センサーチップを体表に装着して、常時、血糖を測定することを目的としている体内埋込型の燃料電池型酵素センサーへの適用が制限されていた。
Katz et al., J.Am.Chem.Soc.2001,123,10752-10753
したがって、本発明は、電子受容体を必要としない“直接電子伝達型”の燃料電池型酵素センサーを開発することを目的とする。
本発明は、電子伝達機能を有する蛋白質を利用することにより、電子伝達のために人工電子受容体、補酵素または金属錯体を利用することを必要としない直接電子移動型燃料電池を提供する。本発明の直接電子移動型燃料電池では、酵素反応により生じた電子を、電子伝達機能を有する蛋白質を介して電極に移動させて、電子をカソードで外部電子受容体に渡すことができる。本発明はまた、直接電子移動型燃料電池の起電力を指標として連続的に基質の濃度が計測できる酵素センサーの新しい原理を提供する。本発明はさらに、直接電子移動型燃料電池の起電力のシグナルを送信装置を用いて外部に無線で送信し、この起電力のシグナルを受信装置を用いて受信し、次に、受信した起電力のシグナルを基質濃度に変換し、ディスプレイに表示する、という原理に基づく新しいワイヤレス酵素センサーを提供する。
本発明は、酸化還元酵素活性を有する酵素と、その酵素反応により生じた電子を電極に伝達する機能を有する蛋白質とが固定されているアノードと、酸化剤を還元するための化学触媒、金属触媒、生体触媒またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とするカソードとから構成される酵素燃料電池を提供する。
本発明においては、アノード上に電子伝達機能を有する蛋白質を用いることにより、アノードでの酵素反応により生じた電子を他の電子受容体を介することなく電極に伝達することができる。すなわち、本発明の酵素燃料電池は直接電子移動型酵素燃料電池ということができる。本発明の酵素燃料電池では、アノード上の酵素反応により生じた電子を、電子伝達機能を有する蛋白質を介して電極に移動させ、電力を発生するため、測定対象物質濃度に依存して電位が変化する。
本発明のアノードにおいて用いられる酵素は、好ましくは酸化還元酵素であり、特にグルコースを計測対象とする場合は、グルコース酸化酵素あるいはグルコース脱水素酵素である。特に好ましい酵素は、補酵素としてピロロキノリニンキノン(PQQ)あるいはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含むグルコース脱水素酵素である。
本発明において用いられる、電子伝達機能を有する蛋白質は、好ましくはチトクロムである。特に好ましくはチトクロムB562、もしくはFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素のチトクロムCサブユニットである。
本発明の1つの好ましい態様においては、電子伝達機能を有する蛋白質はアノード上の酵素のサブユニットの形で存在する。例えば、下記の実施例において用いられる、FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体(FAD-GDH-CytC)は、グルコース脱水素酵素と、補酵素であるFADと、電子伝達体であるチトクロムCサブユニットとを含む複合体である。このような酵素複合体は、酸化還元酵素としての機能と電子伝達機能とを兼ね備えており、本発明においてアノード上で用いるのに特に好ましい。
また別の好ましい態様においては、アノード上の酵素はそれ自体さらに電子伝達機能をも有する。すなわち、アノード上には、酸化還元酵素活性とその酵素反応により生じた電子を電極に伝達する機能との両方を有する酵素が固定化されている。このような酵素の例としては、PQQGDHとチトクロームとの融合蛋白質(WO2005/030807)が挙げられる。
さらに別の観点においては、本発明は、上述の本発明の酵素燃料電池の起電力を指標として酵素反応の基質の濃度を測定することを特徴とする燃料電池型酵素センサーを提供する。本発明における直接電子移動型酵素センサーは、直接電子移動型酵素燃料電池の起電力が測定対象物質に依存して変化することを原理として対象物質を測定する。
好ましくは、本発明の燃料電池型酵素センサーは、起電力値が発信回路から無線で外部に発信され、受信回路により受信されるワイヤレス型の酵素センサーである。ワイヤレス型の酵素センサーの好ましい態様においては、起電力値はアンプにより増幅されて発信回路から無線で外部に発信され、受信回路により受信される。本発明にしたがって、酵素燃料電池と酵素燃料電池の起電力を送信する電波送信部から構成される使い捨てセンサーチップと、電波受信、信号変換および表示を行う外部コントローラ/電源部とから構成される酵素センサーシステムを構築することができる。
本発明によりワイヤレスで連続的に基質の濃度が計測できかつ、電源を含まない酵素センサーの新しい原理が提供される。
図1は、本発明の燃料電池型ワイヤレス酵素センサーのブロック図を表す。 図2は、本発明の燃料電池型ワイヤレス酵素センサー(信号増幅部(アンプ)を含む)のブロック図を表す。 図3は、本発明の酵素燃料電池の出力のグルコース濃度依存性を示す。 図4は、直接電子移動型酵素燃料電池の原理概略図を示す。 図5は、本発明の酵素燃料電池の出力のグルコース濃度依存性を示す。 図6は、直接電子移動型酵素燃料電池の原理概略図を示す。 図7は、直接電子移動型酵素燃料電池の出力のグルコース濃度依存性を示す。 図8は、酵素燃料電池型酵素センサーの起電力のグルコース濃度依存性を示す。 図9は、酵素燃料電池型酵素センサーの起電力のグルコース濃度依存性を示す。 図10は、酵素燃料電池型酵素センサーの起電力のグルコース濃度依存性を示す。 図11は、酵素燃料電池型酵素センサーの起電力のグルコース濃度依存性を示す。 図12は、グルコース添加に伴う電圧の変化を示す。 図13は、酵素センサーの出力電圧のグルコース濃度依存性を示す。 図14は、グルコース添加に伴う電圧の変化を示す。 図15は、グルコース添加に伴う電圧の変化を示す。 図16は、酵素センサーの出力電圧のグルコース濃度依存性を示す。 図17は、グルコース添加に伴う電圧の変化を示す。 図18は、酵素センサーの出力電圧のグルコース濃度依存性を示す。 図19は、針状のアノードとカソードとを一体型に成形した小型電極の構造を示す。 図20は、図19に記載の電極のアノード電極部の拡大図を示す。 図21は、薄型のアノードとカソードとを一体型に成形した小型電極の構造を示す。 図22は、酵素燃料電池を用いた細胞間出液中の基質濃度測定の例を示す。 図23は、燃料電池型ワイヤレス酵素センサーの血糖値モニタリングにおける使用例を示す。 図24は、燃料電池型ワイヤレス酵素センサーの動物実験における使用例を示す。
本発明は、酵素反応により生じた電子を電子伝達機能を有する蛋白質を介して電極に移動させる酵素燃料電池、ならびにこの酵素燃料電池の起電力を指標として酵素反応の基質の濃度を測定することを特徴とする燃料電池型酵素センサーを提供する。
本発明のアノードに固定化する酵素としては、種々の酸化還元酵素を用いることができる。例えばFADを補酵素とするアルコール、グルコース、コレステロール、フルクトシルアミン、グリセリン、尿酸の酸化酵素、FADを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素、PQQを補酵素とするアルコール、グルコース、グリセリンの脱水素酵素などがあげられる。特にグルコースを測定対象とする場合はグルコース酸化酵素やFADもしくはPQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素が望ましい。これらの酵素は、該酵素を産生する微生物、細胞から単離精製した酵素でもよく、大腸菌などで組換え生産された酵素でもよい。
本発明の燃料電池は、電子伝達機能を有する蛋白質が、酸化酵素あるいは脱水素酵素と共にアノードに固定されていることを特徴とする酵素燃料電池である。典型的には電子伝達機能を有する蛋白質としてチトクロムB562と、PQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素との組み合わせが挙げられる。また、シトクローム電子伝達サブユニットを有する酵素などの、電極と直接電子移動を行える脱水素酵素は、酸化還元機能と電子伝達機能を合わせて有する酵素であるということができる。このような酵素は、電子伝達蛋白質を別途添加しないでアノードを構成できる。
カソードには、酸素またはABTS等の酸化剤を還元するための触媒が装着されている。触媒は、酵素反応により得られた電子を人工電子受容体に渡し、これを電極上で酸化するよう作用し、化学触媒、金属触媒、生体触媒およびそれらの組み合わせから選択される。カソードに用いる生体触媒(酵素)の例としては、特に限定されないが、ビリルビン酸化酵素やラッカーゼが挙げられる。あるいは触媒は白金などの金属でもよい。
アノードおよびカソードの電極材料としては炭素電極、金電極、白金電極などを用いることができる。
本発明において酵素を電極に固定するためには、酵素をそのままカーボンペーストなどの電極材料と混合して電極に装着すればよい。あるいは一般の酵素固定化方法を用いて固定化酵素を調製し、これを電極上に装着してもよい。酵素の固定化方法としては、例えば、グルタルアルデヒドなどの二架橋性試薬による架橋処理、光架橋性ポリマーや導電性ポリマーや酸化還元ポリマーなどの合成ポリマーあるいは天然高分子マトリックス中への包括固定などがあげられる。このようにして調製した酵素をカーボンペーストと混合し、場合によりカーボンペーストと混合した後にさらに架橋処理した後に、この混合物をカーボンあるいは金、あるいは白金などで構成される電極上に固定する。
また、電極上に酵素を固定するときに、電子伝達機能を有する蛋白質を同時に電極上に固定することも可能である。例えば、PQQを補酵素とするグルコース脱水素酵素とチトクロムB562とを混合し、これをさらにカーボンペーストと混合した後に凍結乾燥する。これをカーボン電極上に装着し、その状態でグルタルアルデヒド水溶液に浸し、蛋白質を架橋し、酵素電極を作成する。
本発明の酵素燃料電池においては、計測すべき対象物質を基質とする酸化酵素あるいは脱水素酵素がアノード電極に固定されている。アノードとカソード間を可変抵抗器でつないで電池を構築し、測定対象基質を含む試料を添加したときに得られる電流値あるいは電圧値を計測することにより、その基質の濃度を測定することができる。
特に、試料添加によって、基質濃度依存的に起電力が変化し、この起電力を測定することで、該基質の濃度を計測できる。すなわち、あらかじめ既知の濃度の基質について、起電力と基質濃度との相関を記録し、それにもとづく校正曲線を作成する。次に、未知の濃度の被検試料を添加したときに観測される起電力を校正曲線と比較することにより、被検試料中の基質濃度を測定できる。
本発明はさらに、上述の本発明の直接電子移動型燃料電池の原理に基づく新しいワイヤレス酵素センサーを提供する。このワイヤレス酵素センサーでは、直接電子移動型燃料電池の起電力のシグナルを送信装置を用いて外部に無線で送信し、受信装置を用いて起電力のシグナルを受信し、受信した起電力のシグナルを基質濃度に変換し、ディスプレイに表示する。本発明のワイヤレス酵素センサーの構成の概略を図1および図2に示す。本発明において用いるワイヤレスモジュールは、電波を送信する送信機と受信する受信機から構成されるものであり、好ましくは小型のものを用いる。特に好ましくは、ARS社のNi3システムである。酵素燃料電池とワイヤレスモジュールを直接つなぎ、酵素燃料電池の起電力を送信機に入力する。また、酵素燃料電池とワイヤレスモジュールの間に、信号の増幅を目的としてアンプを増結することができる。
本発明においては、好ましくはワイヤレスモジュール間で送受信される信号は起電力である。ワイヤレスモジュールに入力される信号を変換せず、外部受信部において基質濃度に変換することにより、燃料電池型酵素センサーのセンサーチップを燃料電池と送信機で構成することができ、装置の小型化が可能である。
たとえば、グルコースを計測する場合には、FADGDHをカーボンペーストと混合して凍結乾燥後、カーボンペースト電極の表面に充填し、1%グルタルアルデヒドで架橋処理して、酵素が固定されたアノードを調製する。カソードには白金電極を用いる。両極間を可変抵抗器でつないで電池を構築し、グルコースを含む被検試料を添加すると、濃度依存的に起電力が変化する。起電力を送信装置にシグナルとして入力し、送信装置から外部受信装置に電波により起電力を転送し、次に外部受信装置で受け取った起電力の値から、校正曲線を用いて被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
本発明の酵素燃料電池および燃料電池型酵素センサーの応用の具体例を図19−24に示す。図19は、針状のアノードとカソードとを一体型に成形した酵素燃料電池用の小型電極の構造を示し、そのアノード電極部の拡大図を図20に示す。この電極は、酵素とカーボンペーストまたは白金担持カーボンを混合し、イオン交換膜であるナフィオン(Nafion)膜を用いてアノード電極の先端部に装着することにより作成することができる。また、図21は、薄型のアノードとカソードとを一体型に成形した酵素燃料電池用の小型電極の構造を示す。この電極は、白金担持カーボンとナフィオンと酵素とを含むインクを電極上に塗布することにより作成することができる。
図22は、酵素燃料電池を用いた細胞間出液中の基質濃度測定の例を示す。アノード/カソード一体型の酵素燃料電池用電極を細胞間出液相中に挿入し、電極とこれに取り付けられたデーター送信機をテープで皮膚表面に固定する。電極で検出される起電力のデーターを送信機を介して外部受信機に送信し、さらにデーターを変換、処理することにより、細胞間出液中の基質濃度を測定することができる。図23は、燃料電池型ワイヤレス酵素センサーの血糖値モニタリングにおける使用例を示す。本発明にしたがう酵素燃料電池と送信機を被験者の皮膚に固定し、電極で検出される起電力のデーターを外部受信機に送る。外部受信機では、受け取ったデーターを変換、処理して、モニターに表示する。血糖値の値が予め設定した値を超えたときに警告音を発生するように設定してもよい。図24は、燃料電池型ワイヤレス酵素センサーの動物実験における使用例を示す。本発明にしたがう小型の燃料電池型酵素センサーとデーター送信機とを実験動物の皮膚に固定し、電極で検出される起電力のデーターを外部受信機に送ることにより、実験動物の血糖値を連続的にモニタリングすることができる。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2005−50737号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが,これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
実施例1
FAD-GDH-CytCとビリルビン酸酸化酵素を用いた酵素燃料電池
FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体(FAD-GDH-CytC)をアノードに用い、ビリルビン酸酸化酵素をカソードに用いて酵素燃料電池を構築した。FADを補酵素とする耐熱性のグルコース脱水素酵素複合体を常法に従い調製し、アノード電極に固定した。酵素は大腸菌を用いて組換え生産したものを用いた。グルコース脱水素酵素複合体20U(290μg)をカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。これをよく混合した後、あらかじめカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面に充填し、濾紙上で研磨した。これらの電極を、1%のグルタルアルデヒドを含む100mM リン酸カリウムバッファ(p.p.b.)(pH7.0)中で30分室温で撹拌し、さらに10mM Trisバッファ(pH7.0)中で20分室温で攪拌した。これらの電極は100mM p.p.b. (pH7.0)中で1時間以上室温で撹拌した。この電極は測定時以外は100mM p.p.b. (pH7.0)中で、4℃で保存した。アノード反応液は100mM p.p.b. (pH7.0) 9700μl、200mM m-PMS 100μl(終濃度;2mM)、2M グルコース(終濃度;40mM)を混合し全量を10mlとした。カソード電極はMyrothecium sp.由来ビリルビン酸化酵素(Bilirubin Oxidase; BOD)(天野エンザイム社提供)をカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。用いる酵素量は50Uとした。これをよく混合した後、すでにカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面だけに充填し、濾紙上で研磨した。カソード反応溶液は100mM p.p.b. (pH7.0) 9800μl、25mM ABTS 200μl(終濃度;0.5mM)を混合し全量を10mMとして用いた。各電極と反応溶液を、アノードおよびカソードのそれぞれについて別の恒温セルにセットし、両セル間を塩橋(2.17M KCl溶液を30%アガロースで固めたもの)でつないで電池を構築した。各電極間には可変抵抗器、デジタルマルチメータを接続した。測定は25℃で行なった。また可変抵抗器にて負荷を1Ωから1MΩまで段階的に変化させ、そのとき得られる電流値と電圧値をデジタルマルチメータで測定した。アノードおよびカソードとデジタルマルチメータは電流値測定の際には直列に、電圧測定の際には並列につないで測定した。電力は電流値と電圧値の積によって求めた。図3に本電池の出力ならびに電力のグルコース依存性を示す。グルコースの添加により電力が得られた。このようにFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体をアノードに用い、ビリルビン酸酸化酵素をカソードに用いることで酵素燃料電池を作成できる。
実施例2
FAD-GDH-CytCとビリルビン酸酸化酵素を用いた直接電子移動型酵素燃料電池
FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体(FAD-GDH-CytC)をアノードに用い、ビリルビン酸酸化酵素をカソードに用いて、アノードに電子受容体を添加しない直接電子移動型酵素燃料電池を構築した。FADを補酵素とする耐熱性のグルコース脱水素酵素複合体を常法に従い調製し、アノード電極を固定した。酵素は大腸菌を用いて組換え生産したものを用いた。グルコース脱水素酵素複合体20U(290μg)をカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。これをよく混合した後、あらかじめカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面に充填し、濾紙上で研磨した。これらの電極を、1%のグルタルアルデヒドを含む100mM p.p.b.(pH7.0)中で30分室温で撹拌し、さらに10mM Trisバッファ(pH7.0)中で20分室温で攪拌した。これらの電極は100mM p.p.b.(pH7.0)中で1時間以上室温で撹拌した。この電極は測定時以外は100mM p.p.b.(pH7.0)中で、4℃で保存した。アノード反応液は100mM p.p.b.(pH7.0) 9700μl、200mM m-PMS 100μl(終濃度;2mM)、2Mグルコース(終濃度;40mM)を混合し全量を10mlとした。カソード電極はMyrotheciumsp.由来ビリルビン酸化酵素(Bilirubin Oxidase;BOD)(天野エンザイム社提供)をカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。用いる酵素量は50Uとした。これをよく混合した後、すでにカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面だけに充填し、濾紙上で研磨した。カソード反応溶液は100mM p.p.b. (pH7.0) 9800μl、25mM ABTS 200μl(終濃度;0.5mM)を混合し全量を10mMとして用いた。各電極および反応溶液を、アノードおよびカソードのそれぞれについて別の恒温セルにセットし、両セル間を塩橋(2.17M KCl溶液を30%アガロースで固めたもの)でつないで電池を構築した。各電極間には可変抵抗器、デジタルマルチメータを接続した。測定は25℃で行なった。また可変抵抗器にて負荷を1Ωから1MΩまで段階的に変化させ、そのとき得られる電流値と電圧値をデジタルマルチメータで測定した。アノードおよびカソードとデジタルマルチメータは電流値測定の際には直列に、電圧測定の際には並列につないで測定した。電力は電流値と電圧値の積によって求めた。“直接電子移動型”の酵素燃料電池の原理図を図4に示す。図5に本電池の出力ならびに電力のグルコース依存性を示す。グルコースの添加により電力が得られた。このようにFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体をアノードに用い、ビリルビン酸酸化酵素をカソードに用いることでアノードに電子受容体を添加しない“直接電子移動型”の酵素燃料電池を作成できる。
実施例3
FAD-GDH-CytCと白金ワイヤー電極を用いた直接電子移動型酵素燃料電池
FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体(FAD-GDH-CytC)をアノードに用い、カソードに白金ワイヤー電極を用い、測定セルに電子受容体を添加しない“直接電子移動型”酵素燃料電池を構築した。FADを補酵素とする耐熱性のグルコース脱水素酵素複合体を常法に従い調製し、アノード電極を固定した。酵素は大腸菌を用いて組換え生産したものを用いた。グルコース脱水素酵素複合体1000Uをカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。これをよく混合した後、あらかじめカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面に充填し、濾紙上で研磨した。これらの電極を、1%のグルタルアルデヒドを含む100mM p.p.b. (pH7.0)中で30分室温で撹拌し、さらに10mM Trisバッファ(pH7.0)中で20分室温で攪拌した。これらの電極は100mM p.p.b. (pH7.0)中で1時間以上室温で撹拌した。この電極は測定時以外は100mM p.p.b. (pH7.0)中で、4℃で保存した。カソード電極は直径3mmの白金電極を用いた。アノードならびにカソード電極は100mM p.p.b. (pH7.0) 10mlで満たした恒温セルにセットし、電池を構築した。装置の概略を図6に示す。測定は25℃で行なった。また可変抵抗器にて負荷を1Ωから1MΩまで段階的に変化させ、そのとき得られる電流値と電圧値をデジタルマルチメータで測定した。アノードおよびカソードとデジタルマルチメータは電流値測定の際には直列に、電圧測定の際には並列につないで測定した。電力は電流値と電圧値の積によって求めた。図7に本電池の出力ならびに本電池の出力を示す。グルコースの添加により電力が得られた。このようにFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体をアノードに用い、白金電極をカソードに用いることで測定セルに電子受容体を添加しない“直接電子移動型”の酵素燃料電池を作成できる。
実施例4
FAD-GDH-CytCと白金メッシュ電極を用いた直接電子移動型酵素燃料電池
FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体(FAD-GDH-CytC)をアノードに用い、カソードに白金メッシュ電極を用い、測定セルに電子受容体を添加しない直接電子移動型酵素燃料電池を構築した。FADを補酵素とする耐熱性のグルコース脱水素酵素複合体を常法に従い調製し、アノード電極を固定した。酵素は大腸菌を用いて組換え生産したものを用いた。グルコース脱水素酵素複合体1000Uをカーボンペースト20mgと混合し凍結乾燥した。これをよく混合した後、あらかじめカーボンペーストが約40mg充填されたカーボンペースト電極の表面に充填し、濾紙上で研磨した。これらの電極を、1%のグルタルアルデヒドを含む100mM p.p.b. (pH7.0)中で30分室温で撹拌し、さらに10mM Trisバッファ(pH7.0)中で20分室温で攪拌した。これらの電極は100mM p.p.b. (pH7.0)中で1時間以上室温で撹拌した。この電極は測定時以外は100mM p.p.b. (pH7.0)中で、4℃で保存した。カソード電極は白金メッシュ電極を用いた。アノードならびにカソード電極は100mM p.p.b. (pH7.0) 10mlで満たした恒温セルにセットし、電池を構築した。可変抵抗器にて抵抗値の負荷40kΩをかけ、アノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電流値、電圧値をデジタルマルチメータで測定して電力を算出した。グルコースの添加により電力が得られた。実施例3で用いた白金電極よりも表面積の大きい白金メッシュ電極をカソードに用いることにより、カソードでの反応速度を向上させ、実施例3と比較して高い電力が得られた。このようにFADを補酵素とするグルコース脱水素酵素複合体をアノードに用い、白金メッシュ電極をカソードに用いることで測定セルに電子受容体を添加しない“直接電子移動型”の酵素燃料電池を作成できる。
実施例5
FAD-GDH-CytCとビリルビン酸酸化酵素を用いた酵素燃料電池に基づく酵素センサーの構築およびグルコースの計測
実施例1で作成した酵素燃料電池を利用して、酵素センサーの構築およびグルコースの計測を行った。実施例1で作成した酵素燃料電池に抵抗値(40kΩ)の負荷をかけ、アノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定した。FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素触媒サブユニット20Uを固定した電池の電流、電圧ならびに電力のグルコース濃度依存性を図8に示す。グルコースの添加により起電力が得られ、グルコース濃度依存的に電位が増加した。このように本酵素燃料電池の起電力から被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例6
FAD-GDH-CytCとビリルビン酸酸化酵素を用いた直接電子移動型酵素燃料電池に基づく酵素センサーの構築およびグルコースの計測
実施例2で作成した酵素燃料電池を利用して、酵素センサーの構築およびグルコースの計測を行った。実施例2で作成した酵素燃料電池に抵抗値(40kΩ)の負荷をかけ、アノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定した。FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素触媒サブユニット500Uを固定した電池の電流、電圧ならびに電力のグルコース濃度依存性を図9に示す。グルコースの添加により起電力が得られ、グルコース濃度依存的に電位が増加した。このように本酵素燃料電池の起電力から被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例7
FAD-GDH-CytCと白金ワイヤー電極を用いた直接電子移動型酵素燃料電池に基づく酵素センサーの構築およびグルコースの計測
実施例3で作成した酵素燃料電池を利用して、酵素センサーの構築およびグルコースの計測を行った。実施例3で作成した酵素燃料電池に抵抗値(40kΩ)の負荷をかけ、アノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定した。FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素触媒サブユニット1000Uを固定した電池の電流、電圧ならびに電力のグルコース濃度依存性を図10に示す。グルコースの添加により起電力が得られ、グルコース濃度依存的に電位が増加した。このように本酵素燃料電池の起電力から被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例8
FAD-GDH-CytCと白金メッシュ電極を用いた直接電子移動型酵素燃料電池に基づく酵素センサーの構築およびグルコースの計測
実施例4で作成した酵素燃料電池を利用して、酵素センサーの構築およびグルコースの計測を行った。実施例4で作成した酵素燃料電池に抵抗値(40kΩ)の負荷をかけ、アノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定した。FADを補酵素とするグルコース脱水素酵素触媒サブユニット1000Uを固定した電池の電流、電圧ならびに電力のグルコース濃度依存性を図11に示す。グルコースの添加により起電力が得られ、グルコース濃度依存的に電位が増加した。このように本酵素燃料電池の起電力から被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例9
酵素燃料電池型ワイヤレス型グルコースセンサーの構築およびグルコースの計測
実施例5で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーとワイヤレスシステムを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーを構築し、グルコースの計測を行った。ワイヤレスシステムはNi3(ARS社)を用いた。実施例5で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーのアノードならびにカソードをワイヤレスシステムNi3(ARS社)のBase Boardに接続し、303.825MHzの周波数で発信した。受信したシグナルはNi3にDock Yardを接続し、パソコン上に数値データーを転送した。酵素電池のアノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定したときのグルコース添加に伴う電圧の変化の濃度依存性を図12(a)に示す。また、Ni3を用いて無線で送られてきたシグナルを図12(b)に示す。図12(b)に示すようにグルコースの添加による電圧の変化はワイヤレスシステムNi3を介して無線で外部に送信されることが示された。また、デジタルマルチメータならびに外部受信回路で受信したで電池の電圧のグルコース濃度依存性を図13に示す。図13に示すようにグルコースの添加により増加する電圧値は外部受信装置でも得られた。このように、本酵素燃料電池の電圧出力をワイヤレスシステムを介して直接接続していない外部受信装置に無線で送信し、被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例10
酵素燃料電池型ワイヤレス型グルコースセンサーの構築およびグルコースの計測
実施例7で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーとワイヤレスシステムを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーを構築し、グルコースの計測を行った。ワイヤレスシステムはNi3(ARS社)を用いた。実施例7で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーのアノードならびにカソードをワイヤレスシステムNi3(ARS社)のBase Boardに接続し、303.825MHzの周波数で発信した。受信したシグナルはNi3にDock Yardを接続し、パソコン上に数値データーを転送した。酵素電池のアノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定したときのグルコース添加に伴う電圧の変化の濃度依存性を図14(a)に示す。また、Ni3を用いて無線で送られてきたシグナルを図14(b)に示す。図14(b)に示すようにグルコースの添加による電圧の変化はワイヤレスシステムNi3を介して無線で外部に送信されることが示された。
実施例11
酵素燃料電池型酵素センサーとワイヤレスシステムおよびアンプを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーの構築およびグルコースの計測
実施例7で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーとワイヤレスシステムならびにアンプを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーを構築し、グルコースの計測を行った。ワイヤレスシステムはNi3(ARS社)を用いた。入力シグナルを増幅するためにオペアンプを搭載しているIO Board(ARS社)をNi3に連結し、入力シグナルを10倍増幅した。実施例7で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーのアノードならびにカソードをアンプに接続し、アンプの出力をワイヤレスシステムNi3(ARS社)のBase Boardに接続し、303.825MHzの周波数で発信した。受信したシグナルはNi3にDock Yardを接続し、パソコン上に数値データーを転送した。酵素電池のアノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定したときのグルコース添加に伴う電圧の変化の濃度依存性を図15(a)に示す。また、Ni3を用いて無線で送られてきたシグナルを図15(b)に示す。図15(b)に示すようにグルコースの添加による電圧の変化はワイヤレスシステムNi3を介して無線で外部に送信されることが示された。また、デジタルマルチメータならびに外部受信回路で受信したで電池の電圧のグルコース濃度依存性を図16に示す。図16に示すようにグルコースの添加により増加する電圧値は外部受信装置でも得られた。このように、本酵素燃料電池の電圧出力をアンプで増幅し、ワイヤレスシステムを介して直接接続していない外部受信装置に無線で送信することで、被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
実施例12
酵素燃料電池型酵素センサーとワイヤレスシステムおよびアンプを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーの構築およびグルコースの計測
実施例8で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーとワイヤレスシステムならびにアンプを組み合わせたワイヤレス型グルコースセンサーを構築し、グルコースの計測を行った。ワイヤレスシステムはNi3(ARS社)を用いた。入力シグナルを増幅するためにオペアンプを搭載しているIO Board(ARS社)をNi3に連結し、入力シグナルを10倍増幅した。実施例8で構築した直接電子移動型酵素燃料電池型の酵素センサーのアノードならびにカソードをアンプに接続し、アンプの出力をワイヤレスシステムNi3(ARS社)のBase Boardに接続し、303.825MHzの周波数で発信した。受信したシグナルはNi3にDock Yardを接続し、パソコン上に数値データーを転送した。酵素電池のアノードのグルコース濃度を0mMから段階的に増加させ、各グルコース濃度にて得られる電圧値をデジタルマルチメータで測定したときのグルコース添加に伴う電圧の変化の濃度依存性を図17(a)に示す。また、Ni3を用いて無線で送られてきたシグナルを図17(b)に示す。図17(b)に示すようにグルコースの添加による電圧の変化はワイヤレスシステムNi3を介して無線で外部に送信されることが示された。また、デジタルマルチメータならびに外部受信回路で受信したで電池の電圧のグルコース濃度依存性を図18に示す。図18に示すようにグルコースの添加により増加する電圧値は外部受信装置でも得られた。また得られたシグナル強度は実施例11と比較して3倍になったことからカソードの白金の表面積を広くすることにより、高い起電力が得られた。このように、本酵素燃料電池の電圧出力をアンプで増幅し、ワイヤレスシステムを介して直接接続していない外部受信装置に無線で送信することで、被検試料中のグルコース濃度を計測できる。
本発明の酵素燃料電池型酵素センサーは、血糖値の測定に有用であり、特にワイヤレスシステムによる血糖値のモニタリングに有用である。

Claims (13)

  1. 酸化還元酵素活性を有する酵素と、その酵素反応により生じた電子を電極に伝達する機能を有する蛋白質とが固定されているアノードと、
    酸化剤を還元するための化学触媒、金属触媒、生体触媒またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とするカソードと、
    から構成される酵素燃料電池。
  2. 請求項1に記載の酵素燃料電池において、電子伝達機能を有する蛋白質が前記酵素のサブユニットの形で存在する酵素燃料電池。
  3. 請求項1−2のいずれかに記載の酵素燃料電池において、前記サブユニットがチトクロムCサブユニットである酵素燃料電池。
  4. 請求項1−3のいずれかに記載の酵素燃料電池において、電子伝達機能を有する蛋白質がチトクロムB562である酵素燃料電池。
  5. 酸化還元酵素活性とその酵素反応により生じた電子を電極に伝達する機能とを有する蛋白質が固定されているアノードと、
    酸化剤を還元するための化学触媒、金属触媒、生体触媒またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とするカソードと、
    から構成される酵素燃料電池。
  6. 請求項1−5のいずれかに記載の酵素燃料電池において、酵素がグルコースを基質とする酵素である酵素燃料電池。
  7. 請求項6に記載の酵素燃料電池において、酵素がグルコース脱水素酵素であることを特徴とする酵素燃料電池。
  8. 請求項6に記載の酵素燃料電池において、酵素がグルコース酸化酵素であることを特徴とする酵素燃料電池。
  9. 請求項1−8のいずれかに記載の酵素燃料電池において、酵素が補酵素としてピロロキノリンキノンを保有することを特徴とする酵素燃料電池。
  10. 請求項1−9のいずれかに記載の酵素燃料電池において、酵素が補酵素としてフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を保有することを特徴とする酵素燃料電池。
  11. 酵素反応の基質の濃度を、請求項1−10のいずれかに記載の酵素燃料電池の起電力を指標として測定することを特徴とする燃料電池型酵素センサー。
  12. 請求項11記載の燃料電池型酵素センサーにおいて、起電力値が発信回路から無線で外部に発信され、受信回路により受信されることを特徴とするワイヤレス型酵素センサー。
  13. 請求項11記載の燃料電池型酵素センサーにおいて、アンプにより増幅された起電力値が発信回路から無線で外部に発信され、受信回路により受信されることを特徴とするワイヤレス型酵素センサー。
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