JPWO2006080172A1 - 2ポート型非可逆回路素子及び通信装置 - Google Patents

2ポート型非可逆回路素子及び通信装置 Download PDF

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Abstract

第1中心電極(L1)の一端が入力ポート(P1)に電気的に接続され、他端が出力ポート(P2)に電気的に接続されている。第2中心電極(L2)の一端は出力ポート(P2)に電気的に接続され、他端が接地ポート(P3)に電気的に接続されている。入力ポート(P1)と出力ポート(P2)の間には、共振用コンデンサ(C1)と終端抵抗(R)が電気的に並列に接続されている。出力ポート(P2)と接地ポート(P3)の間には、共振用コンデンサ(C2)が電気的に接続されている。入力ポート(P1)と入力端子(14)との間及び出力ポート(P2)と出力端子(15)との間には、それぞれインピーダンスを整合するための整合用コンデンサ(Cs1),(Cs2)が電気的に接続されている。入力端子(14)と出力端子(15)との間には結合用コンデンサ素子(Cs3)が電気的に接続されている。

Description

本発明は、2ポート型非可逆回路素子、特に、マイクロ波帯で使用されるアイソレータなどの2ポート型非可逆回路素子及び通信装置に関する。
従来より、この種の2ポート型非可逆回路素子として、特許文献1に記載の2ポート型アイソレータが開示されている。この2ポート型アイソレータの基本的な等価回路を図15に示す。2ポート型アイソレータ301は、第1中心電極L1の一端が入力ポートP1を介して入力端子314に電気的に接続されている。第1中心電極L1の他端は出力ポートP2を介して出力端子315に電気的に接続されている。
一方、第2中心電極L2の一端が出力ポートP2を介して出力端子315に電気的に接続されている。第2中心電極L2の他端は接地ポートP3を介して接地されている。整合用コンデンサC1と抵抗Rからなる並列RC回路は、入力ポートP1と出力ポートP2の間に電気的に接続されている。整合用コンデンサC2は出力ポートP2と接地ポートP3の間に電気的に接続されている。
そして、第1中心電極L1と整合用コンデンサC1にて第1のLC並列共振回路を構成し、第2中心電極L2と整合用コンデンサC2にて第2のLC並列共振回路を構成している。この構成では、入力ポートP1から出力ポートP2に信号が伝搬する際、入力ポートP1と出力ポートP2間の第1のLC並列共振回路は共振することがなく、第2のLC並列共振回路が共振しているだけなので、挿入損失を小さくできる。
ところで、非可逆回路素子に要求される電気特性項目の中で、一般的に重要なのは挿入損失とアイソレーションであり、それらに対する要求仕様は通信システムや通信回路構成や携帯端末に付加する機能により変化する。要求仕様と実際の特性を比較すると、挿入損失は要求仕様を十分満足しているけれども、アイソレーションは要求仕様を満足していない場合や、逆にアイソレーションは要求仕様を十分満足しているけれども、挿入損失は要求仕様を満足していない場合が生じる。
従来の2ポート型アイソレータ301において、第2中心電極L2のインダクタンスを大きくした場合、アイソレーションは狭帯域化するものの、広帯域かつ低挿入損失の順方向伝送特性が得られる。
しかし、以下の(1)〜(3)の方法で中心電極L2のインダクタンスを一定以上大きくした場合、それぞれ問題が発生し、挿入損失特性を自由に調整することができなかった。
(1)中心電極L2を長くした場合、それに伴いフェライトが大きくなり、製品サイズの小型化ができなかった。
(2)中心電極L2の線幅を細くした場合、中心電極L2の等価直列抵抗が増大して中心電極(インダクタ)L2のQ値が低下し、挿入損失が劣化した。
(3)フェライトに中心電極L2を巻き回している場合、巻き回数を多くすると中心電極の間隔が狭くなり、ショート不良が多発した。ショートが発生しないように十分な間隔を設けると、製品サイズの小型化ができなかった。
また、中心電極L2のインダクタンスを一定以上大きくした場合、PCSやW−CDMAなどの比較的高周波帯(それぞれの中心周波数は1880MHzと1950MHz)のシステムにおいて、中心電極L2と並列共振回路を構成するコンデンサC2の容量値が非常に小さくなる。このため、容量値の測定や調整が困難で量産が不可能であった。また、必要とする容量値よりも浮遊容量の方が大きくなる場合があり、所望の周波数でアイソレータ301を動作させることができなかった。さらには、中心電極L2の電気長がλ/4以上になり、中心電極L2がインダクタとして機能しない場合があり、並列共振回路を構成することができなかった。
特開2004−88744号公報
そこで、本発明の目的は、要求仕様に合わせて挿入損失特性を自由に調整することができる小型で低挿入損失の2ポート型非可逆回路素子及び通信装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明に係る2ポート型非可逆回路素子は、永久磁石と、該永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、該フェライトに配置され、一端が入力ポートに電気的に接続され、他端が出力ポートに電気的に接続された第1中心電極と、該第1中心電極と電気的絶縁状態で交差して前記フェライトに配置され、一端が出力ポートに電気的に接続され、他端が接地ポートに電気的に接続された第2中心電極と、前記入力ポートと前記出力ポートの間に電気的に接続された第1コンデンサと、前記入力ポートと前記出力ポートの間に電気的に接続された抵抗と、前記出力ポートと前記接地ポートの間に電気的に接続された第2コンデンサと、入力端子と、出力端子と、を備え、前記入力ポートと入力端子との間又は前記出力ポートと出力端子との間の少なくとも一方に第3コンデンサが接続され、入力端子と出力端子との間にコンデンサ素子が電気的に接続されていることを特徴とする。
また、前記第1、第2、第3コンデンサ、前記コンデンサ素子、前記抵抗、前記入力端子及び前記出力端子が多層基板の内部又は表面に電極膜で形成され、該多層基板上に前記永久磁石、前記フェライト、前記第1、第2中心電極及び磁気回路を形成するヨークが配置されていることを特徴とする。これにより、非可逆回路素子の小型化及び低コスト化を達成することができる。
さらに、前記コンデンサ素子として汎用のチップコンデンサを用いることにより、低コストで所望の特性を実現することができる。
また、本発明に係る通信装置は、前記特徴を有する2ポート型非可逆回路素子を備えたものであり、広帯域において挿入損失の向上が得られる。
本発明によれば、入力ポートと入力端子との間又は出力ポートと出力端子との間の少なくとも一方に第3コンデンサが接続され、入力端子と出力端子との間にコンデンサ素子が電気的に接続されているので、広帯域かつ低挿入損失の順方向伝送特性が得られる。この結果、要求仕様に合わせて挿入損失特性を自由に調整することができる2ポート型非可逆回路素子及び通信装置を得ることができる。
本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の一実施例を示す電気等価回路図。 本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の別の実施例を示す電気等価回路図。 本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施例を示す電気等価回路図。 本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施例を示す電気等価回路図。 本発明に係る2ポート型非可逆回路素子のさらに別の実施例を示す電気等価回路図。 結合用コンデンサ素子Cs3の容量値と挿入損失及びアイソレーションとの関係を示すグラフ。 挿入損失特性を示すグラフ。 アイソレーション特性を示すグラフ。 本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の一実施例を示す分解斜視図。 図9に示した2ポート型非可逆回路素子の要部を示す分解斜視図。 図10に示した多層基板の分解平面図。 図9に示した2ポート型非可逆回路素子の変形例を示す分解斜視図。 図12に示した多層基板の分解平面図。 本発明に係る通信装置の一実施例を示す電気回路ブロック図。 従来の非可逆回路素子を示す電気等価回路図。
以下に、本発明に係る2ポート型非可逆回路素子及び通信装置の実施例について添付図面を参照して説明する。
本発明に係る2ポート型非可逆回路素子の電気回路の代表例を図1〜図5に示す。これらの2ポート型非可逆回路素子は集中定数型アイソレータである。
図1に示された2ポート型アイソレータ1Aは、第1中心電極L1の一端が入力ポートP1に電気的に接続され、他端が出力ポートP2に電気的に接続されている。第2中心電極L2の一端は出力ポートP2に電気的に接続され、他端が接地ポートP3に電気的に接続されている。入力ポートP1と出力ポートP2の間には、共振用コンデンサC1と終端抵抗Rが電気的に並列に接続されている。出力ポートP2と接地ポートP3の間には、共振用コンデンサC2が電気的に接続されている。入力ポートP1と入力端子14との間及び出力ポートP2と出力端子15との間には、それぞれインピーダンスを整合するための整合用コンデンサCs1,Cs2が電気的に接続されている。さらに、入力端子14と出力端子15との間には結合用コンデンサ素子Cs3が電気的に接続されている。
そして、入力ポートP1と出力ポートP2間には、第1中心電極L1と共振用コンデンサC1が並列共振回路を構成している。出力ポートP2とアースの間には、第2中心電極L2と共振用コンデンサC2とが並列共振回路を構成している。
ここで、結合用コンデンサ素子Cs3を接続する前のアイソレータ1Aは、順方向伝送時は出力端子15での伝送信号の位相が入力端子14での伝送信号の位相より進み、逆方向伝送時は入力端子14での伝送信号の位相が出力端子15での伝送信号の位相より進む。一方、結合用コンデンサ素子Cs3も、順方向伝送時でも逆方向伝送時でも、伝送信号の位相を進める。従って、入力端子14と出力端子15との間を結合用コンデンサ素子Cs3で接続したアイソレータ1Aは、順方向伝送時において、中心電極L1,L2間の磁気結合の作用で伝送する信号と、結合用コンデンサ素子Cs3を介して伝送する信号とが強め合い、伝送信号全体として大きくなる。即ち、広帯域かつ低挿入損失の順方向伝送特性が得られる。この効果は、結合用コンデンサ素子Cs3の静電容量が大きくなるにしたがって顕著になる。
この結果、第2中心電極L2を長くして第2中心電極L2のインダクタンスを大きくする必要がないので、アイソレータ1Aを小型化できる。また、第2中心電極L2のインダクタンスを大きくしなくてもよいため、共振用コンデンサC2の容量値の測定や調整が不能になるほど小さくしなくてもよい。従って、PCSやW−CDMAなどの比較的高周波帯(それぞれの中心周波数は1880MHzと1950MHz)のシステムに容易に対応できる。
なお、順方向伝送特性が広帯域化かつ低挿入損失化する一方で、アイソレーション特性は狭帯域化する。なぜなら、逆方向伝送時において、中心電極L1,L2間の磁気結合の作用で伝送する逆方向信号と、結合用コンデンサ素子Cs3を介して伝送する逆方向信号とが順方向伝送時と同様に強め合い、逆方向伝送信号全体として大きくなるからである。しかし、アイソレータに対する最近の要求仕様は、アイソレーションより挿入損失が重視される傾向が強く、アイソレーション特性の狭帯域化は問題とならない場合が多い。
また、図2に示された2ポート型アイソレータ1Bは、入力端子14と出力ポートP2との間に結合用コンデンサ素子Cs3が電気的に接続されているものである。図3に示された2ポート型アイソレータ1Cは、入力ポートP1と出力端子15との間に結合用コンデンサ素子Cs3が電気的に接続されているものである。図4に示された2ポート型アイソレータ1Dは、入力端子14と出力ポートP2との間に結合用コンデンサ素子Cs3が電気的に接続され、かつ、出力ポートP2と出力端子15との間にインピーダンス整合用コンデンサCs2が接続されていないものである。図5に示された2ポート型アイソレータ1Eは、入力ポートP1と出力端子15との間に結合用コンデンサ素子Cs3が電気的に接続され、かつ、入力端子14と入力ポートP1との間にインピーダンス整合用コンデンサCs1が接続されていないものである。
これらアイソレータ1A〜1Eのそれぞれの特徴について、表1を参照しながら詳細に説明する。表1は挿入損失を一定にしたときのアイソレータ1A〜1Eのアイソレーションを比較したものである。表1の挿入損失やアイソレーションの値は、1710〜1910MHz帯域での最悪値(但し、要求規格値を満足できる値)である。
Figure 2006080172
挿入損失を一定(0.43dB)にしてアイソレーション特性を比較した場合、図1〜図3のアイソレータ1A〜1Cのアイソレーション値は8.1〜8.3dBとなり、大きな差は認められない。これは、挿入損失を一定にするということは結局、中心電極L1,L2の磁気結合により伝送する順方向信号と、結合用コンデンサ素子Cs3を介して伝送する順方向信号との合計量を一定にすることと等価であり、逆方向信号は順方向信号に比例して大きくなるからであると考えられる。
図2,3のアイソレータ1B,1Cは、図1のアイソレータ1Aと比較して、インピーダンス整合用コンデンサCs1,Cs2の容量が小さくなる傾向が認められる。一般的に小さい容量であれば、電極面積を小さくすることができるため、製品サイズの小型化に有利である。図2のアイソレータ1Bと図3のアイソレータ1Cでは電気特性の優劣は認められず、容量値にも差がない。
また、図1〜図3のアイソレータ1A〜1Cのいずれを選択するかは、電極配置との関係で決定されることもある。例えば、図1のアイソレータ1Aは入力端子電極と出力端子電極が近い場合に有効である。図2のアイソレータ1Bは入力端子電極と出力ポート電極が近く、かつ結合用コンデンサ素子Cs3を形成するためのコンデンサ電極を短くしたい場合に有効である。図3のアイソレータ1Cは入力ポート電極と出力端子電極が近い場合に有効である。
図4,5のアイソレータ1D,1Eのアイソレーション値は7.0〜7.1dBとなり、図1〜図3のアイソレータ1A〜1Cと比較して1dB程度悪い。これは、インピーダンス整合用コンデンサCs1あるいはCs2を接続しなくても、入力反射損失S11あるいは出力反射損失S22のインピーダンスが50+j0Ωになるように、中心電極L1あるいはL2の巻回数を減らしているので、中心電極L1とL2の結合係数が小さくなっているからであると考えられる。
図4のアイソレータ1Dは、他のアイソレータと比較して共振用コンデンサC2が大きくなる傾向が認められる。これは、インピーダンス整合用コンデンサCs2を接続しなくても、出力反射損失S22のインピーダンスが50+j0Ωになるように、中心電極L2のインダクタンスを小さくしたからである。また、中心電極L2のインダクタンスが小さくて挿入損失が劣化してしまうことを防止するため、結合用コンデンサ素子Cs3の容量が大きくなっている。さらに、インピーダンス整合用コンデンサCs1が、他のアイソレータと比較して大きくなる傾向が認められる。図4のアイソレータ1Dは、中心電極L2の巻回数を多くできないなどの物理的理由で中心電極L2のインダクタンスを大きくできない場合に有効である。
図5のアイソレータ1Eは、他のアイソレータと比較して共振用コンデンサC1が大きくなる傾向が認められる。これは、インピーダンス整合用コンデンサCs1を接続しなくても、入力反射損失S11のインピーダンスが50+j0Ωになるように、中心電極L1のインダクタンスを小さくしたからである。また、中心電極L1のインダクタンスが小さくて挿入損失が元々良いので、結合用コンデンサ素子Cs3の容量が小さい。さらに、インピーダンス整合用コンデンサCs2が、他のアイソレータと比較して大きくなる傾向が認められる。図5のアイソレータ1Eは、中心電極L1の巻回数を多くできないなどの物理的理由で中心電極L1のインダクタンスを大きくできない場合に有効である。
なお、表1中の中心電極L1,L2のインダクタンス値や共振用コンデンサC1,C2などの容量値は、中心電極L1,L2間の相互インダクタンスや結合係数、中心電極L1とL2の交差角度及びフェライトの材料定数や直流磁界強度などのパラメータで左右される値であるため、簡潔な計算式で表すことは困難である。従って、以下に説明する方法で、これらインダクタンスや容量の最適値を設定した。以下、図2に示すアイソレータ1Bを例にして説明する。
まず、図2に示すアイソレータ1Bにおいて、インピーダンス整合用コンデンサCs1,Cs2及び結合用コンデンサ素子Cs3を接続する前の構成で、中心電極L1,L2のインダクタンス値及び共振用コンデンサC1,C2の容量値の最適設計を行う。
所望の中心周波数f(0)で並列共振するように、以下の関係式から中心電極L1,L2のインダクタンス値及び共振用コンデンサC1,C2の容量値を選択する。
f(0)=1/(2π・√(L1・C1))
f(0)=1/(2π・√(L2・C2))
中心電極L1のインダクタンス値と共振用コンデンサC1の容量値の比率、並びに、中心電極L2のインダクタンス値と共振用コンデンサC2の容量値の比率は、実験により特性が最良になるように決定する。このとき、中心電極L1,L2の線路長の設定に際し、λ/4の電気長との関係は、以下の関係式が成立するように設定する。
中心電極L1(L2)の線路長<<c/(4・f(0)・√εr)
c:光速
εr:フェライトの比誘電率
即ち、中心電極L1,L2のインダクタンス値及び共振用コンデンサC1,C2の容量値は、入出力インピーダンスの実数部が所定の値(一般的に外部回路のインピーダンスが50Ωの場合、これに整合させるために50Ω)となるように設定する。このとき、中心電極L1,L2の線路長はλ/4未満となるように選定する。こうして、図2のアイソレータ1Bの中心電極L1のインダクタンス値は1.3nH、中心電極L2のインダクタンス値は7.8nH、共振用コンデンサC1の容量値は6pF及び共振用コンデンサC2の容量値は1pFに決定した。このときの入力インピーダンスは50+j22Ωであり、出力インピーダンスは50+j15Ωであった。
また、終端抵抗Rの抵抗値は、アイソレーションの帯域が最大になるように、実験で100Ωに決定した。
次に、整合用コンデンサCs1,Cs2の容量値は、整合用コンデンサCs1,Cs2を接続する前のアイソレータ1Bの入出力インピーダンスが50+jXΩであると仮定すると、以下の計算式により求められる。即ち、虚数部Xが0になるように整合用コンデンサCs1,Cs2の容量を設定する。
Cs1、Cs2=1/(2π・f(0)・X)
こうして、図2のアイソレータ1Bの整合用コンデンサCs1の容量値は4pF、整合用コンデンサCs2の容量値は6pFに決定した。なお、整合用コンデンサCs1,Cs2を接続することで、前記共振用コンデンサC1,C2の容量値は変更されない。
次に、結合用コンデンサ素子Cs3の容量値を求める。図6〜図8及び表2から明らかなように、結合用コンデンサ素子Cs3の容量値を大きくする程、挿入損失は良くなるが、アイソレーションは悪くなる。
Figure 2006080172
従って、要求仕様に対して挿入損失とアイソレーションが同程度の余裕になるように、容量値を設定する。図6は結合用コンデンサ素子Cs3の容量値と挿入損失及びアイソレーションとの関係を示すグラフであり、(a)は挿入損失を示し、(b)はアイソレーションを示す。図7及び図8はそれぞれ挿入損失特性及びアイソレーション特性を示すグラフである。表2の挿入損失やアイソレーションの値は、1710〜1910MHz帯域での最悪値(但し、要求規格値を満足できる値)である。こうして、図2のアイソレータ1Bの結合用コンデンサ素子Cs3の容量値は0.5pFに決定した。
また、図4に示すアイソレータ1Dのように、整合用コンデンサCs1のみ(整合用コンデンサCs2が無い)の場合には、中心電極L1のインダクタンスが大きい(中心電極L2のインダクタンスが小さい)ので、挿入損失とアイソレーションのトレードオフの関係において、相対的にアイソレーションが良い特性が得られる。出力インピーダンスは中心電極L2のインダクタンスを適当な値に設定(中心電極L2の巻回数を多くしてインダクタンス値が大きくなるような構成を採らない)することで50+j0Ωに合わせる。
一方、図5に示すアイソレータ1Eのように、整合用コンデンサCs2のみ(整合用コンデンサCs1が無い)の場合には、中心電極L2のインダクタンスが大きい(中心電極L1のインダクタンスが小さい)ので、挿入損失とアイソレーションのトレードオフの関係において、相対的に挿入損失が良い特性が得られる。入力インピーダンスは中心電極L1のインダクタンスを適当な値に設定(中心電極L1の巻回数を多くしてインダクタンス値が大きくなるような構成を採らない)することで50+j0Ωに合わせる。
図9は、図2に示す2ポート型アイソレータ1Bの一例を示す分解斜視図である。2ポート型アイソレータ1Bは、概略、金属製ヨーク10と、多層基板20と、フェライト31を含む中心電極組立体30と、フェライト31に直流磁界を印加するための永久磁石41,41と、電極9aが表面に設けられた樹脂基板9とで形成されている。
樹脂基板9は、上方からアイソレータ1B内部に異物が入り込むのを防止するためのものである。さらに、電極9aは高周波シールドとして機能し、外部からの電磁気の影響を抑えることができる。
ヨーク10は軟鉄などの強磁性体材料からなり、銀めっきが施され、多層基板20上で中心電極組立体30と永久磁石41,41を囲む枠体形状とされている。
中心電極組立体30は、図10に示すように、マイクロ波フェライト31の主面31a,31bに互いに電気的に絶縁された第1中心電極L1及び第2中心電極L2を形成したものである。ここで、フェライト31は互いに平行な第1主面31a及び第2主面31bを有する直方体形状をなし、多層基板20上に第1主面31a及び第2主面31bが略垂直方向に配置されている。
また、永久磁石41,41はフェライト31の主面31a,31bに対して磁界を略垂直方向に印加するように多層基板20上に配置されている。
図10に示すように、第1中心電極L1はフェライト31の第1主面31aから第2主面31bに回り込んで形成されている。第2中心電極L2はフェライト31に螺旋状に2ターン巻回されており、フェライト31の第1主面31a及び第2主面31bにおいて第1中心電極L1と交差した状態で形成されている。中心電極L1,L2の交差角は必要に応じて設定され、入力インピーダンスや挿入損失が調整されることになる。
多層基板20は、複数枚の誘電体シート上に所定の電極を形成して積層し、焼結したものであり、その内部には、図10に示すように、共振用コンデンサC1,C2、終端抵抗R、インピーダンス整合用コンデンサCs1,Cs2、結合用コンデンサ素子Cs3が内蔵されている。また、上面にはヨーク接続用電極25a,25f及び中心電極用接続電極25b〜25eが、下面には入出力端子電極14,15及びグランド端子電極28がそれぞれ形成されている。
多層基板20とヨーク10とはヨーク接続用電極25a,25fを介してはんだ付けされて一体化され、中心電極組立体30はフェライト31の側面の各種接続用電極35a〜35dが多層基板20上の中心電極用接続電極25b〜25eとはんだ付けされて一体化される。また、永久磁石41,41はヨーク10の内壁、あるいは多層基板20上面、あるいはフェライト主面に接着剤にて一体化される。
ところで、多層基板20は以下のようにして製作される。この多層基板20は、図11に示すように、ヨーク接続用電極25a,25fや中心電極用接続電極25b〜25eを設けた誘電体シート58と、コンデンサ電極60〜63や抵抗Rを設けた誘電体シート57と、コンデンサ電極64〜72をそれぞれ設けた誘電体シート56〜52と、グランド電極73を設けた誘電体シート51と、入出力端子電極14,15及びグランド端子電極28などにて構成されている。誘電体シート51〜58は、Alを主成分とし、SiO,SrO,CaO,PbO,NaO,KO,MgO,BaO,CeO,Bのうちの1種類あるいは複数種類を副成分として含む低温焼結誘電体材料にて作製する。
さらに、多層基板20の焼成条件(特に焼成温度1000℃以下)では焼成せず、多層基板20の基板平面方向(X−Y方向)の焼成収縮を抑制する収縮抑制シート50を作製する。この収縮抑制シート50の材料は、アルミナ粉末及び安定化ジルコニア粉末の混合材料である。
電極14,15,28,25a〜25f,60〜73は、パターン印刷などの方法によりシート51〜58に形成される。電極14〜73の材料としては、抵抗率が低く、誘電体シート51〜58と同時焼成可能なAg,Cu,Ag−Pdなどが用いられる。
抵抗Rは、パターン印刷等の方法により誘電体シート57に形成される。抵抗Rの材料としては、サーメット、ルテニウムなどが使用される。
ビアホール59は、誘電体シート51〜58にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔をあけた後、そのビアホール用孔に導電ペーストを充填することにより形成される。
コンデンサ電極60,64,66は、誘電体シート56,57を間に挟んで共振用コンデンサC1を構成する。コンデンサ電極61,64は、誘電体シート57を間に挟んで共振用コンデンサC2を構成する。コンデンサ電極60,65、66,68は、誘電体シート57,55をそれぞれ間に挟んで整合用コンデンサCs1を構成する。コンデンサ電極62,64,67,69,71は、誘電体シート54〜57を間に挟んで整合用コンデンサCs2を構成する。コンデンサ電極63,64,68,70,72は、誘電体シート53,54,57を間に挟んで結合用コンデンサ素子Cs3を構成する。これらコンデンサC1〜Cs3や抵抗Rは、ビアホール59とともに、多層基板20の内部に図10に示すような電気回路を構成する。
以上のシート51〜58は順に積層され、さらに、上下両側から収縮抑制シートで挟み込んだ後、焼成される。これにより、焼結体が得られ、その後、超音波洗浄法や湿式ホーニング法によって、未焼結の収縮抑制シート50を除去し、図10に示すような多層基板20とする。なお、得られた多層基板20は、印刷ずれや積層ずれなどによって容量値や抵抗値が所望の値にならない場合がある。その場合には、レーザまたは切削機を用いて、コンデンサ電極60,61,62,63や抵抗Rをトリミングすることにより、容量値や抵抗値を所望の値に調整することができる。
以上の構成からなる2ポート型アイソレータ1Bにおいて、複数のコンデンサC1〜Cs3及び終端抵抗Rを多層基板20に一体的に形成しているので、アイソレータ1Bの小型化及び低コスト化が可能である。
図12に示す2ポート型アイソレータ1Bは、多層基板20内に結合用コンデンサ素子Cs3を形成する代わりに、チップコンデンサ80を多層基板20A上に実装したものである。多層基板20Aの分解平面図を図13に示す。
以上の構成により、適当な容量値のチップコンデンサ80を選択すれば、結合用コンデンサ素子Cs3の容量値を容易に変更することができ、種々の順方向伝送特性を有するアイソレータが得られる。その際、多層基板20Aや中心電極L1,L2を再設計及び再製作する必要がないので、短期間かつ低コストでの量産が可能となる。
次に、本発明に係る通信装置について、携帯電話を例にして説明する。図14は携帯電話220のRF部分の電気回路ブロック図である。図14において、222はアンテナ素子、223はデュプレクサ、231は送信側アイソレータ、232は送信側増幅器、233は送信側段間用帯域通過フィルタ、234は送信側ミキサ、235は受信側増幅器、236は受信側段間用帯域通過フィルタ、237は受信側ミキサ、238は電圧制御発振器(VCO)、239はローカル用帯域通過フィルタである。
ここに、送信側アイソレータ231として、前述の特徴を有する2ポート型アイソレータ1A〜1Eを使用することができる。これらのアイソレータを実装することにより、広帯域かつ低挿入損失の順方向伝送特性を有する携帯電話を実現することができる。
なお、本発明は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
以上のように、本発明は、マイクロ波帯で使用されるアイソレータなどの2ポート型非可逆回路素子及び通信装置に有用であり、特に、仕様要求に合わせて挿入損失特性を自由に調整できる点で優れている。

Claims (4)

  1. 永久磁石と、該永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、該フェライトに配置され、一端が入力ポートに電気的に接続され、他端が出力ポートに電気的に接続された第1中心電極と、該第1中心電極と電気的絶縁状態で交差して前記フェライトに配置され、一端が出力ポートに電気的に接続され、他端が接地ポートに電気的に接続された第2中心電極と、前記入力ポートと前記出力ポートの間に電気的に接続された第1コンデンサと、前記入力ポートと前記出力ポートの間に電気的に接続された抵抗と、前記出力ポートと前記接地ポートの間に電気的に接続された第2コンデンサと、入力端子と、出力端子と、を備え、
    前記入力ポートと入力端子との間又は前記出力ポートと出力端子との間の少なくとも一方に第3コンデンサが接続され、入力端子と出力端子との間にコンデンサ素子が電気的に接続されていること、
    を特徴とする2ポート型非可逆回路素子。
  2. 前記第1、第2、第3コンデンサ、前記コンデンサ素子、前記抵抗、前記入力端子及び前記出力端子が多層基板の内部又は表面に電極膜で形成され、該多層基板上に前記永久磁石、前記フェライト、前記第1、第2中心電極及び磁気回路を形成するヨークが配置されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の2ポート型非可逆回路素子。
  3. 前記コンデンサ素子としてチップコンデンサを用いたことを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の2ポート型非可逆回路素子。
  4. 請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の2ポート型非可逆回路素子を備えたことを特徴とする通信装置。
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