本発明は、アークタンジェント検波方式のFM受信機に関する。
FM放送を受信するFM受信機として、クォドラチャ検波器によってFM検波するクォドラチャ検波方式のものと、アークタンジェント検波器によってFM検波するアークタンジェント検波方式のものが知られている。
これらクォドラチャ検波器とアークタンジェント検波器は共に、FM波の周波数変化を位相検波するという点で共通しているが、主に、クォドラチャ検波器はアナログ信号処理によりFM検波を行うFM受信機に採用され、アークタンジェント検波器はデジタル信号処理によりFM検波を行うFM受信機に採用されている。
すなわち、近年注目されている移動受信における受信品質向上を図り得る地上放送等のデジタル化に伴い、アナログ受信したFM波をデジタル信号処理によってFM検波しようとすると、クォドラチャ検波器では信号歪みが生じ易い等の問題から、デジタル信号処理によりFM検波を行うFM受信機ではアークタンジェント検波器が主に採用されている。
図1(a)は、移動受信を考慮した従来のアークタンジェント検波方式のFM受信機の一般的な構成を表したブロック図である。
同図において、このFM受信機1は、受信アンテナANTで受信した放送波をRF部(高周波増幅部)2で増幅し、増幅された高周波の受信信号と、同調周波数の局発信号LOとを混合することによる周波数変換によって中間周波信号を生成し、更に中間周波信号をIFアンプ部4で帯域制限等してアークタンジェント検波器5に供給するようになっている。
アークタンジェント検波器5は、例えば特開平11−251841号公報の図1に示されているようなアークタンジェント検波器(同公報では、デジタルFM検波回路と呼ばれている)等で構成されており、IFアンプ部4のアナログ出力信号(すなわち、帯域制限された中間周波信号)SIFをデジタル信号処理によってFM検波すべく、所定のサンプリング周波数でサンプリングして入力し、直交変換を施すことによって位相差を有する2つの信号S,Cを生成する。そして、2つの信号S,Cに基づいて次式(1)で表される演算処理を行うことで、上述の帯域制限された中間周波信号の周波数変化を位相変化ωtとして検出し、その検出した位相変化に応じてレベル値が変化するFM検波信号Ddet、すなわち復調信号を生成している。
更に、移動に伴って受信環境が随時変化する移動受信では、S/N等の向上を図ることでノイズ感の低減を実現することが極めて重要であることから、FM検波信号DdetをARC機能(自動受信機能)を有するARC部6で処理し、処理後のFM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)等に供給するようになっている。
すなわち、ARC部6は、IFアンプ部4で検出される電界強度を示す信号(以下「Sメータ信号」と称する)Smのレベル変化に応じて、FM検波信号Ddetの高域成分を自動的に抑制するハイカットコントロール機能と、モノラル再生とステレオ再生との自動切替え等を行うチャンネルセパレーションコントロール機能の他、FM検波信号Ddetのレベルを自動的に減衰調整するアッテネータ機能を有している。
そして、受信環境が良好でなくなるのに伴ってSメータ信号Smのレベルが低下すると、その低下量に応じて、ハイカットコントロール機能がFM検波信号Ddetの高域ノイズ成分を抑制すべく自動的に高域カットオフ周波数を調整すると共に、アッテネータ機能がFM検波信号Ddetのレベルを減衰させることで、S/Nの向上を図り、更に、チャンネルセパレーションコントロール機能がステレオ再生からモノラル再生への自動切替えを行うことにより、上述のFMステレオ復調器から出力される音声信号に基づいてスピーカ等を鳴動させても、ノイズ感を低減させ得る音声や音楽等を再生してユーザに提供するようにしている。
ところで、上記従来のFM受信機では、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が劣化し、電界強度が短時間で頻繁に変化すると、ARC部6に設けられているアッテネータ機能では、それに応じて同様に変化することとなるSメータ信号Smのレベル変化に追従できず、本来のアッテネータ機能を発揮することができなくなるという問題があった。このため、S/Nの向上を図ることができなくなり、ユーザに対してノイズ感の低減を図ることが困難となるという問題があった。
すなわち、図1(b)に示すように、Sメータ信号Smが受信環境の劣化によって比較的なだらかにレベル変化したような場合には、同図(c)に示すように、ARC部6から出力されるFM検波信号DoutのレベルもSメータ信号Smのレベル変化に沿って減衰され、S/Nの向上が図られることとなるが、同図(d)に示すように、受信環境の劣化により電界強度が短時間で頻繁に変化し、Sメータ信号Smが短時間で頻繁にレベル変化することとなると、ARC部6はこれに追従できず、同図(e)に示すように、制御不能で不安定なレベル変動を生じるFM検波信号Doutを出力してしまう。このため、このFM検波信号DoutをFMステレオ復調器が復調してスピーカ等を鳴動させた場合、却って刺激的なノイズ音が発生してしまう等の問題を招来していた。
本発明は、こうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、受信環境の変化に対して、よりS/N等の向上を図ることが可能なFM受信機を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、周波数変換によって受信信号から生成される中間周波信号に対してアークタンジェント検波を施すことによりFM検波信号を生成するアークタンジェント検波器と、該FM検波信号について所定の自動受信機能による処理を施すARC手段とを有するFM受信機であって、前記アークタンジェント検波器より出力される前記FM検波信号に対して、受信環境の劣化に応じて高速に減衰率を変化させ、該減衰率に基づいてレベルを自動調整したFM検波信号を生成して、前記ARC手段に供給する可変減衰手段、を備えることを特徴とする。
従来のFM受信機の構成及び機能を説明するための図である。
本発明の実施形態に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
図2に示したFM受信機の効果を説明するための波形図である。
実施例に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
更に、他の実施例に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
本発明の好適な実施形態について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施形態のFM受信機の構成を表したブロック図、図3は動作を説明するための波形図である。
図2において、このFM受信機10は、到来電波(放送波)を受信する受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰手段としての可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、RF部11と、周波数変換部12、IFアンプ部13、アークタンジェント検波器14及びARC部16は、一般的なFM受信機と同様の構成となっており、アークタンジェント検波器14とARC部16の間に可変減衰回路15が設けられることで、FM受信機10は、従来のFM受信機には無い特徴を有している。
すなわち、受信アンテナANTが放送波を受信すると、RF部11から増幅された高周波の受信信号が出力され、周波数変換部12がその受信信号と同調周波数の局発信号LOとを混合することによる周波数変換によって中間周波信号を生成する。
IFアンプ部13は、周波数変換部12で生成される中間周波信号に対して帯域制限等を施すことにより、ベースバンド周波数の帯域制限中間周波信号SIFを出力する他、帯域制限中間周波信号SIFのレベル変化を検出することで電界強度を示す信号(すなわち、Sメータ信号)Smを生成して出力する。
アークタンジェント検波器14は、帯域制限中間周波信号SIFに対しデジタル信号処理によるアークタンジェント検波を施すことにより、FM検波信号Ddet1を出力する。すなわち、アークタンジェント検波器14は、デジタル信号処理によってFM検波すべく、帯域制限中間周波信号SIFを所定のサンプリング周波数でサンプリングして入力し、直交変換を施すことによって位相差を有する2つの信号S,Cを生成すると共に、前記式(1)に示した演算処理を行うことで、帯域制限中間周波信号SIFの周波数変化を位相変化ωtとして検出し、その検出した位相変化に応じてレベル値が変化するFM検波信号Ddet1、すなわち復調信号を生成して出力する。
ARC部16は、後述の可変減衰回路15から出力されるFM検波信号Ddet2の高域成分をSメータ信号Smのレベル変化に応じて自動的に抑制することで、S/Nの向上を図るハイカットコントロール機能と、Sメータ信号Smのレベル変化に応じてモノラル再生とステレオ再生との自動切替え等を行うチャンネルセパレーションコントロール機能の他、Sメータ信号Smのレベル変化に応じてFM検波信号Ddet2のレベルを自動的に減衰調整することでS/Nの向上を図るアッテネータ機能を有している。そして、ハイカットコントロール機能とチャンネルセパレーションコントロール機能とアッテネータ機能とによる処理を施したFM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)等に供給するようになっている。
次に、可変減衰回路15は、減衰率を高速に可変調整する可変増幅器等で形成されており、IFアンプ部13から出力されるSメータ信号Smのレベルが所定の規定値よりも低下すると、その規定値より低下するSメータ信号Smの低下量に応じて高速に減衰率を変化させ、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させて、その減衰後のFM検波信号Ddet2を出力する。
すなわち、可変減衰回路15は、Sメータ信号Smのレベル変化に追従して、ARC部16に設けられているアッテネータ機能よりも高速に減衰率を変化させる可変増幅器等で形成されている。そして、次式(2-a)(2-b)で表されるように、Sメータ信号Smのレベル値LSmが上述の規定値THDaと等しい場合又は大きな値となった場合には、受信環境が良好であると判断して、減衰率Gvを0(db)に設定し、一方、Sメータ信号Smのレベル値LSmが規定値THDaより小さな値となった場合には、そのSメータ信号Smのレベル変化に追従して、そのレベル値LSmと規定値THDaとの差の絶対値│THDa−LSm│に比例した分だけ減衰率Gvを0(dB)より増加(別言すれば、増幅率を0(dB)より低下)させることでFM検波信号Ddet1のレベルを減衰させ、減衰後のFM検波信号Ddet2をARC部16に供給する。
以上に説明した構成を有する本実施形態のFM受信機10によれば、可変減衰回路15がSメータ信号Smのレベル変化に追従して減衰率Gvを変化させることにより、アークタンジェント検波器14でFM検波されたFM検波信号Ddet1のレベルを自動調整するので、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が頻繁に変化するような場合であっても、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給することができる。
そして更に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
ちなみに、図3(a)は、図1(d)に示したのと同様にSメータ信号Smが頻繁に変化した場合、図3(b)は、ARC部6から出力されるFM検波信号Doutのレベル変化をアナログ信号の変化として示すと共に、図1(e)に対応させて示した波形図である。
これら図3(a)(b)から明らかな通り、可変減衰回路15が、頻繁にレベル変化するSメータ信号Smに応じて自動的に減衰率Gvを調整させることで、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を予め生成してARC部16に供給するので、ARC部16から出力されるFM検波信号DoutもSメータ信号Smのレベル変化に応じて減衰率Gvが調整され、S/Nの向上が図られた信号となることが実験的にも確認された。そして、FM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)に供給し、復調させた音声信号に基づいてスピーカ等を鳴動させると、ノイズ感を低減させ得る音声や音楽等を再生してユーザに提供することが可能である。
なお、以上に説明した本実施形態のFM受信機10では、IFアンプ部13で生成されるSメータ信号Smの変化に応じて可変減衰回路15が減衰率Gvを可変調整するようになっているが、帯域制限中間周波信号SIFに含まれているノイズ成分を検出するノイズ検出回路を設けておき、該ノイズ検出回路で検出されるノイズ成分の時間に対するレベル変化に応じて、可変減衰回路15が減衰率Gvを自動的に調整する構成としてもよい。
すなわち、次式(3-a)(3-b)で表されるように、可変減衰回路15は、上述のノイズ検出回路で検出されるノイズ成分のレベル値LSnが所定の規定値THDbと等しい場合又は小さな値となった場合には、受信環境が良好であると判断して減衰率Gvを0(db)に設定し、一方、ノイズ成分のレベル値LSnが規定値THDbより大きな値となった場合には、そのノイズ成分のレベル変化に追従して、そのレベル値LSnと規定値THDbとの差の絶対値│THDb−LSn│に比例した分だけ減衰率Gvを0(dB)から増加(別言すれば、増幅率を0(dB)から低下)させることでFM検波信号Ddet1のレベルを減衰させ、処理後のFM検波信号Ddet2をARC部16に供給する構成としてもよい。
次に、より具体的な実施例に係るFM受信機について、図4を参照して説明する。なお、図4は、本実施例のFM受信機の構成を表したブロック図であり、図2と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図4において、本実施例のFM受信機10は、図2に示した実施形態のFM受信機と同様に、受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、可変減衰回路15は、遅延回路15aと、減算器15b、比較器15c、絶対値回路15d及び乗算器15eによって構成されている。
遅延回路15aは、IFアンプ部13から出力されるSメータ信号Smを所定の遅延時間τdで遅延させて出力する。すなわち、IFアンプ部13が帯域制限を行った帯域制限中間周波信号SIFを出力する時点から、アークタンジェント検波回路14がアークタンジェント検波によってFM検波信号Ddet1を生成して乗算器15eに供給するまでに要する処理時間T1と、IFアンプ部13がSメータ信号Smを生成して出力する時点から、遅延回路15aと減算器15b及び絶対値回路15dを介して、利得調整信号Sgvが乗算器15eに供給されるまでに要する処理時間T2との両者の遅延時間T1,T2が等しくなるように、遅延回路15aの遅延時間τdが設定されている。
減算器15bは、遅延回路15aで遅延されたSメータ信号Smdのレベル値LSmと所定の規定値THDaとの差(THDa−LSm)を演算して、絶対値回路15dに供給する。
比較器15cは、Sメータ信号Smdのレベル値LSmと規定値THDaとを比較し、レベル値LSmが規定値THDaと等しいとき、又はレベル値LSmが規定値THDaより大きいときには、切替制御信号Scmtによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDa−LSm)を値1に設定させて出力させ、一方、レベル値LSmが規定値THDaより小さいときには、切替制御信号Scmtによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDa−LSm)をそのまま出力させる。
これにより、比較器15cは、受信環境の劣化に伴ってSメータ信号Smdのレベル値LSmが規定値THDaよりも低下した場合に限り、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1のレベルを減衰調整できるようにしている。
絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDa−LSm)の絶対値│THDa−LSm│を演算すると共に、前記式(2-b)に示したように、Gv=−20×log10│THDa−LSm│で表される演算を行うことによって、デシベル表記の減衰率Gvを演算し、その演算結果である減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。すなわち、絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDa−LSm)が、比較器15cの制御の下で値1として供給されると、減衰率Gvを0(dB)とする減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給し、減算器15bから差(THDa−LSm)の値がそのまま供給されると、絶対値│THDa−LSm│からデシベルで表される減衰率Gvを演算して、その減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
乗算器15eは、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1と、減衰率制御信号Sgvで指定される減衰率Gvとを乗算(掛け算)することにより、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させたFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給する。
以上に説明した本実施例のFM受信機10によれば、可変減衰回路15がSメータ信号Smのレベル変化に追従して減衰率Gvを変化させることにより、アークタンジェント検波器14でFM検波されたFM検波信号Ddet1のレベルを自動調整するので、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が頻繁に変化するような場合であっても、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給することができる。
更に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
更に、遅延回路15aを設けたことにより、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1に対して、乗算器15eが受信環境の劣化するタイミングに合わせて減衰率Gvを自動調整することができるため、S/NのよいFM検波信号Ddet2をARC部16に供給することができる。
次に、他の実施例について、図5を参照して説明する。なお、図5は、本実施例のFM受信機の構成を表したブロック図であり、図4と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図5において、本実施例のFM受信機10は、図4に示した実施形態のFM受信機と同様に、受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、可変減衰回路15は、遅延回路15aと、減算器15b、比較器15c、絶対値回路15dと乗算器15eの他、ノイズ検出回路としてのローパスフィルタ15f及び減算器15gとを有して構成されている。
ローパスフィルタ15fは、IFアンプ部13から出力される帯域制限中間周波信号SIFの最高周波数(上側最大周波数遷移)よりも低い所定の周波数を高域カットオフ周波数とする低域通過型フィルタで形成されており、帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を通過させて減算器15hに供給する。
減算器15hは、帯域制限中間周波信号SIFから帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を減算することにより、受信環境の変化に応じて生じるノイズ成分Snを抽出して遅延回路15aに供給する。
遅延回路15aは、減算器15gより入力されるノイズ成分Snを所定の遅延時間τdで遅延させて、減算器15b及び比較器15cに供給する。すなわち、遅延回路15aの遅延時間τdは、IFアンプ部13が帯域制限を行った帯域制限中間周波信号SIFを出力する時点から、アークタンジェント検波回路14がアークタンジェント検波によってFM検波信号Ddet1を生成して乗算器15eに供給するまでに要する処理時間T1と、帯域制限中間周波信号SIFがローパスフィルタ15fに入力されて、ローパスフィルタ15fと減算器15gと遅延回路15aと減算器15b及び絶対値回路15dを介して、利得調整信号Sgvが乗算器15eに供給されるまでに要する処理時間T2との両者の遅延時間T1,T2が等しくなるように設定されている。
減算器15bは、遅延回路15aで遅延されたノイズ成分Sndのレベル値LSnと所定の規定値THDbとの差(THDb−LSn)を演算して、絶対値回路15dに供給する。
比較器15cは、ノイズ成分Sndのレベル値LSnと規定値THDbとを比較し、レベル値LSnが規定値THDbと等しいとき、又はレベル値LSnが規定値THDbより小さいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)を値1に設定させて出力させ、一方、レベル値LSnが規定値THDnより大きいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)をそのまま出力させる。
これにより、比較器15cは、受信環境の劣化に伴ってノイズ成分Sndのレベル値LSnが規定値THDbよりも大きくなった場合に限り、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1のレベルを減衰調整できるようにしている。
絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDb−LSn)の絶対値│THDb−LSn│を演算すると共に、前記式(3-a)に示したように、Gv=−20×log10│THDb−LSn│で表される演算を行うことによって、デシベル表記の減衰率Gvを演算し、その演算結果である減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
すなわち、絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDb−LSn)が、比較器15cの制御の下で値1として供給されると、減衰率Gvを0(dB)とする減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給し、減算器15bから差(THDb−LSn)の値がそのまま供給されると、絶対値│THDb−LSn│からデシベルで表される減衰率Gvを演算して、その減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
乗算器15eは、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1と、減衰率制御信号Sgvで指定される減衰率Gvとを乗算(掛け算)することにより、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させたFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給する。
かかる構成を有する本実施例のFM受信機10によれば、帯域制限中間周波信号SIFに含まれているノイズ成分Snを抽出することで、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の変化を検出し、その検出したノイズ成分Snに基づいて乗算器15eの減衰率を自動調整する利得制御信号sgvを生成するようにしたので、受信環境の劣化に応じてS/Nの向上を図ることができる。
更に、上述の実施例1の場合と同様に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
更に、遅延回路15aを設けたことにより、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1に対して、乗算器15eが受信環境の劣化するタイミングに合わせて減衰率Gvを自動調整することができるため、S/NのよいFM検波信号Ddet2をARC部16に供給することができる。
【0010】
路15dと乗算器15eの他、ノイズ検出回路としてのローパスフィルタ15f及び減算器15gとを有して構成されている。
[0049]
ローパスフィルタ15fは、IFアンプ部13から出力される帯域制限中間周波信号SIFの最高周波数(上側最大周波数遷移)よりも低い所定の周波数を高域カットオフ周波数とする低域通過型フィルタで形成されており、帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を通過させて減算器15gに供給する。
[0050]
減算器15gは、帯域制限中間周波信号SIFから帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を減算することにより、受信環境の変化に応じて生じるノイズ成分Snを抽出して遅延回路15aに供給する。
[0051]
遅延回路15aは、減算器15gより入力されるノイズ成分Snを所定の遅延時間τdで遅延させて、減算器15b及び比較器15cに供給する。すなわち、遅延回路15aの遅延時間τdは、IFアンプ部13が帯域制限を行った帯域制限中間周波信号SIFを出力する時点から、アークタンジェント検波回路14がアークタンジェント検波によってFM検波信号Ddet1を生成して乗算器15eに供給するまでに要する処理時間T1と、帯域制限中間周波信号SIFがローパスフィルタ15fに入力されて、ローパスフィルタ15fと減算器15gと遅延回路15aと減算器15b及び絶対値回路15dを介して、利得調整信号Sgvが乗算器15eに供給されるまでに要する処理時間T2との両者の遅延時間T1,T2が等しくなるように設定されている。
[0052]
減算器15bは、遅延回路15aで遅延されたノイズ成分Sndのレベル値LSnと所定の規定値THDbとの差(THDb−LSn)を演算して、絶対値回路15dに供給する。
[0053]
比較器15cは、ノイズ成分Sndのレベル値LSnと規定値THDbとを比較し、レベル値LSnが規定値THDbと等しいとき、又はレベル値LSnが規定値THDbより小さいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)を値1に設定させて出力させ、一方、レベル値LSnが規定値THDnより大きいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)をそのまま出力させる。
[0054]
これにより、比較器15cは、受信環境の劣化に伴ってノイズ成分Sndのレベル値LSnが規定値THDbよりも大きくなった場合に限り、アークタンジェント検波器14から出
【0003】
[0012]
ところで、上記従来のFM受信機では、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が劣化し、電界強度が短時間で頻繁に変化すると、ARC部6に設けられているアッテネータ機能では、それに応じて同様に変化することとなるSメータ信号Smのレベル変化に追従できず、本来のアッテネータ機能を発揮することができなくなるという問題があった。このため、S/Nの向上を図ることができなくなり、ユーザに対してノイズ感の低減を図ることが困難となるという問題があった。
[0013]
すなわち、図1(b)に示すように、Sメータ信号Smが受信環境の劣化によって比較的なだらかにレベル変化したような場合には、同図(c)に示すように、ARC部6から出力されるFM検波信号DoutのレベルもSメータ信号Smのレベル変化に沿って減衰され、S/Nの向上が図られることとなるが、同図(d)に示すように、受信環境の劣化により電界強度が短時間で頻繁に変化し、Sメータ信号Smが短時間で頻繁にレベル変化することとなると、ARC部6はこれに追従できず、同図(e)に示すように、制御不能で不安定なレベル変動を生じるFM検波信号Doutを出力してしまう。このため、このFM検波信号DoutをFMステレオ復調器が復調してスピーカ等を鳴動させた場合、却って刺激的なノイズ音が発生してしまう等の問題を招来していた。
[0014]
本発明は、こうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、受信環境の変化に対して、よりS/N等の向上を図ることが可能なFM受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
[0015]
請求項1に記載の発明は、周波数変換によって受信信号から生成される中間周波信号に対してアークタンジェント検波を施すことによりFM検波信号を生成するアークタンジェント検波器と、前記中間周波数のレベル変化を検出することで受信感度の変化を示すSメータ信号を生成する手段と、前記Sメータ信号のレベル変化に応じて、入力信号に対してレベル調整を施すアッテネータ機能を有するARC手段とを有するFM受信機であって、前記Sメータ信号と所定の閾値とを逐一比較すると共に、前記Sメータ信号のレベルが前記閾値より小さいときには、前記閾値と前記Sメータ信号のレベルとの差の絶対値に相当する減衰率で、前記アークタンジェント検波器で生成されるFM検波信号を減衰させて前記入力信号として前記ARC手段に供給し、前記Sメータ信号のレベルが前記閾値より大きいときには、前記アークタンジェント検波器で生成されるFM検波信号を減衰させずに前記入力信号として前記ARC手段に供給する可変減衰手段と、を有し、前記可変減衰手段は、前記Sメータ信号のレベル変化に応じて、前記ARC手段のアッテネータ機能のレベル調整よりも高速に前記減衰率を変化させることで、受信環境の頻繁な変化に追従して前記FM検波信号のS/Nの向上を図って、前記ARC手段に供給すること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
[0016]
[図1]従来のFM受信機の構成及び機能を説明するための図である。
本発明は、アークタンジェント検波方式のFM受信機に関する。
FM放送を受信するFM受信機として、クォドラチャ検波器によってFM検波するクォドラチャ検波方式のものと、アークタンジェント検波器によってFM検波するアークタンジェント検波方式のものが知られている。
これらクォドラチャ検波器とアークタンジェント検波器は共に、FM波の周波数変化を位相検波するという点で共通しているが、主に、クォドラチャ検波器はアナログ信号処理によりFM検波を行うFM受信機に採用され、アークタンジェント検波器はデジタル信号処理によりFM検波を行うFM受信機に採用されている。
すなわち、近年注目されている移動受信における受信品質向上を図り得る地上放送等のデジタル化に伴い、アナログ受信したFM波をデジタル信号処理によってFM検波しようとすると、クォドラチャ検波器では信号歪みが生じ易い等の問題から、デジタル信号処理によりFM検波を行うFM受信機ではアークタンジェント検波器が主に採用されている。
図1(a)は、移動受信を考慮した従来のアークタンジェント検波方式のFM受信機の一般的な構成を表したブロック図である。
同図において、このFM受信機1は、受信アンテナANTで受信した放送波をRF部(高周波増幅部)2で増幅し、増幅された高周波の受信信号と、同調周波数の局発信号LOとを混合することによる周波数変換によって中間周波信号を生成し、更に中間周波信号をIFアンプ部4で帯域制限等してアークタンジェント検波器5に供給するようになっている。
アークタンジェント検波器5は、例えば特開平11−251841号公報の図1に示されているようなアークタンジェント検波器(同公報では、デジタルFM検波回路と呼ばれている)等で構成されており、IFアンプ部4のアナログ出力信号(すなわち、帯域制限された中間周波信号)SIFをデジタル信号処理によってFM検波すべく、所定のサンプリング周波数でサンプリングして入力し、直交変換を施すことによって位相差を有する2つの信号S,Cを生成する。そして、2つの信号S,Cに基づいて次式(1)で表される演算処理を行うことで、上述の帯域制限された中間周波信号の周波数変化を位相変化ωtとして検出し、その検出した位相変化に応じてレベル値が変化するFM検波信号Ddet、すなわち復調信号を生成している。
更に、移動に伴って受信環境が随時変化する移動受信では、S/N等の向上を図ることでノイズ感の低減を実現することが極めて重要であることから、FM検波信号DdetをARC機能(自動受信機能)を有するARC部6で処理し、処理後のFM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)等に供給するようになっている。
すなわち、ARC部6は、IFアンプ部4で検出される電界強度を示す信号(以下「Sメータ信号」と称する)Smのレベル変化に応じて、FM検波信号Ddetの高域成分を自動的に抑制するハイカットコントロール機能と、モノラル再生とステレオ再生との自動切替え等を行うチャンネルセパレーションコントロール機能の他、FM検波信号Ddetのレベルを自動的に減衰調整するアッテネータ機能を有している。
そして、受信環境が良好でなくなるのに伴ってSメータ信号Smのレベルが低下すると、その低下量に応じて、ハイカットコントロール機能がFM検波信号Ddetの高域ノイズ成分を抑制すべく自動的に高域カットオフ周波数を調整すると共に、アッテネータ機能がFM検波信号Ddetのレベルを減衰させることで、S/Nの向上を図り、更に、チャンネルセパレーションコントロール機能がステレオ再生からモノラル再生への自動切替えを行うことにより、上述のFMステレオ復調器から出力される音声信号に基づいてスピーカ等を鳴動させても、ノイズ感を低減させ得る音声や音楽等を再生してユーザに提供するようにしている。
ところで、上記従来のFM受信機では、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が劣化し、電界強度が短時間で頻繁に変化すると、ARC部6に設けられているアッテネータ機能では、それに応じて同様に変化することとなるSメータ信号Smのレベル変化に追従できず、本来のアッテネータ機能を発揮することができなくなるという問題があった。このため、S/Nの向上を図ることができなくなり、ユーザに対してノイズ感の低減を図ることが困難となるという問題があった。
すなわち、図1(b)に示すように、Sメータ信号Smが受信環境の劣化によって比較的なだらかにレベル変化したような場合には、同図(c)に示すように、ARC部6から出力されるFM検波信号DoutのレベルもSメータ信号Smのレベル変化に沿って減衰され、S/Nの向上が図られることとなるが、同図(d)に示すように、受信環境の劣化により電界強度が短時間で頻繁に変化し、Sメータ信号Smが短時間で頻繁にレベル変化することとなると、ARC部6はこれに追従できず、同図(e)に示すように、制御不能で不安定なレベル変動を生じるFM検波信号Doutを出力してしまう。このため、このFM検波信号DoutをFMステレオ復調器が復調してスピーカ等を鳴動させた場合、却って刺激的なノイズ音が発生してしまう等の問題を招来していた。
本発明は、こうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、受信環境の変化に対して、よりS/N等の向上を図ることが可能なFM受信機を提供することを目的とする。
請求項1に記載のFM受信機の発明は、周波数変換によって受信信号から生成される中間周波信号に対してアークタンジェント検波を施すことによりFM検波信号を生成するアークタンジェント検波器と、前記中間周波数のレベル変化を検出することで受信感度の変化を示すSメータ信号を生成する手段と、前記Sメータ信号のレベル変化に応じて、入力信号に対してレベル調整を施すアッテネータ機能を有するARC手段とを有するFM受信機であって、前記Sメータ信号と所定の閾値とを逐一比較すると共に、前記Sメータ信号のレベルが前記閾値より小さいときには、前記閾値と前記Sメータ信号のレベルとの差の絶対値に相当する減衰率で、前記アークタンジェント検波器で生成されるFM検波信号を減衰させて前記入力信号として前記ARC手段に供給し、前記Sメータ信号のレベルが前記閾値より大きいときには、前記アークタンジェント検波器で生成されるFM検波信号を減衰させずに前記入力信号として前記ARC手段に供給する可変減衰手段と、を有し、前記可変減衰手段は、前記Sメータ信号のレベル変化に応じて、前記ARC手段のアッテネータ機能のレベル調整よりも高速に前記減衰率を変化させることで、受信環境の頻繁な変化に追従して前記FM検波信号のS/Nの向上を図って、前記ARC手段に供給すること、を特徴とする。
請求項3に記載のFM受信機の発明は、周波数変換によって受信信号から生成される中間周波信号に対してアークタンジェント検波を施すことによりFM検波信号を生成するアークタンジェント検波器と、前記アークタンジェント検波器で生成される前記FM検波信号に対して、受信環境の劣化に応じて減衰率を変化させ、該減衰率に基づいてレベルを自動調整したFM検波信号を生成する可変減衰手段と、前記可変減衰手段で生成される前記FM検波信号に対して、受信環境の劣化に応じて減衰率を変化させ、該減衰率に基づいてレベルを自動調整するアッテネータ機能を有するARC手段と、を有し、前記可変減衰手段は、前記ARC手段のアッテネータ機能よりも高速に減衰率を変化させること、を特徴とする。
本発明の好適な実施形態について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施形態のFM受信機の構成を表したブロック図、図3は動作を説明するための波形図である。
図2において、このFM受信機10は、到来電波(放送波)を受信する受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰手段としての可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、RF部11と、周波数変換部12、IFアンプ部13、アークタンジェント検波器14及びARC部16は、一般的なFM受信機と同様の構成となっており、アークタンジェント検波器14とARC部16の間に可変減衰回路15が設けられることで、FM受信機10は、従来のFM受信機には無い特徴を有している。
すなわち、受信アンテナANTが放送波を受信すると、RF部11から増幅された高周波の受信信号が出力され、周波数変換部12がその受信信号と同調周波数の局発信号LOとを混合することによる周波数変換によって中間周波信号を生成する。
IFアンプ部13は、周波数変換部12で生成される中間周波信号に対して帯域制限等を施すことにより、ベースバンド周波数の帯域制限中間周波信号SIFを出力する他、帯域制限中間周波信号SIFのレベル変化を検出することで電界強度を示す信号(すなわち、Sメータ信号)Smを生成して出力する。
アークタンジェント検波器14は、帯域制限中間周波信号SIFに対しデジタル信号処理によるアークタンジェント検波を施すことにより、FM検波信号Ddet1を出力する。すなわち、アークタンジェント検波器14は、デジタル信号処理によってFM検波すべく、帯域制限中間周波信号SIFを所定のサンプリング周波数でサンプリングして入力し、直交変換を施すことによって位相差を有する2つの信号S,Cを生成すると共に、前記式(1)に示した演算処理を行うことで、帯域制限中間周波信号SIFの周波数変化を位相変化ωtとして検出し、その検出した位相変化に応じてレベル値が変化するFM検波信号Ddet1、すなわち復調信号を生成して出力する。
ARC部16は、後述の可変減衰回路15から出力されるFM検波信号Ddet2の高域成分をSメータ信号Smのレベル変化に応じて自動的に抑制することで、S/Nの向上を図るハイカットコントロール機能と、Sメータ信号Smのレベル変化に応じてモノラル再生とステレオ再生との自動切替え等を行うチャンネルセパレーションコントロール機能の他、Sメータ信号Smのレベル変化に応じてFM検波信号Ddet2のレベルを自動的に減衰調整することでS/Nの向上を図るアッテネータ機能を有している。そして、ハイカットコントロール機能とチャンネルセパレーションコントロール機能とアッテネータ機能とによる処理を施したFM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)等に供給するようになっている。
次に、可変減衰回路15は、減衰率を高速に可変調整する可変増幅器等で形成されており、IFアンプ部13から出力されるSメータ信号Smのレベルが所定の規定値よりも低下すると、その規定値より低下するSメータ信号Smの低下量に応じて高速に減衰率を変化させ、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させて、その減衰後のFM検波信号Ddet2を出力する。
すなわち、可変減衰回路15は、Sメータ信号Smのレベル変化に追従して、ARC部16に設けられているアッテネータ機能よりも高速に減衰率を変化させる可変増幅器等で形成されている。そして、次式(2-a)(2-b)で表されるように、Sメータ信号Smのレベル値LSmが上述の規定値THDaと等しい場合又は大きな値となった場合には、受信環境が良好であると判断して、減衰率Gvを0(db)に設定し、一方、Sメータ信号Smのレベル値LSmが規定値THDaより小さな値となった場合には、そのSメータ信号Smのレベル変化に追従して、そのレベル値LSmと規定値THDaとの差の絶対値│THDa−LSm│に比例した分だけ減衰率Gvを0(dB)より増加(別言すれば、増幅率を0(dB)より低下)させることでFM検波信号Ddet1のレベルを減衰させ、減衰後のFM検波信号Ddet2をARC部16に供給する。
以上に説明した構成を有する本実施形態のFM受信機10によれば、可変減衰回路15がSメータ信号Smのレベル変化に追従して減衰率Gvを変化させることにより、アークタンジェント検波器14でFM検波されたFM検波信号Ddet1のレベルを自動調整するので、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が頻繁に変化するような場合であっても、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給することができる。
そして更に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
ちなみに、図3(a)は、図1(d)に示したのと同様にSメータ信号Smが頻繁に変化した場合、図3(b)は、ARC部6から出力されるFM検波信号Doutのレベル変化をアナログ信号の変化として示すと共に、図1(e)に対応させて示した波形図である。
これら図3(a)(b)から明らかな通り、可変減衰回路15が、頻繁にレベル変化するSメータ信号Smに応じて自動的に減衰率Gvを調整させることで、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を予め生成してARC部16に供給するので、ARC部16から出力されるFM検波信号DoutもSメータ信号Smのレベル変化に応じて減衰率Gvが調整され、S/Nの向上が図られた信号となることが実験的にも確認された。そして、FM検波信号DoutをFMステレオ復調器(MPX)に供給し、復調させた音声信号に基づいてスピーカ等を鳴動させると、ノイズ感を低減させ得る音声や音楽等を再生してユーザに提供することが可能である。
なお、以上に説明した本実施形態のFM受信機10では、IFアンプ部13で生成されるSメータ信号Smの変化に応じて可変減衰回路15が減衰率Gvを可変調整するようになっているが、帯域制限中間周波信号SIFに含まれているノイズ成分を検出するノイズ検出回路を設けておき、該ノイズ検出回路で検出されるノイズ成分の時間に対するレベル変化に応じて、可変減衰回路15が減衰率Gvを自動的に調整する構成としてもよい。
すなわち、次式(3-a)(3-b)で表されるように、可変減衰回路15は、上述のノイズ検出回路で検出されるノイズ成分のレベル値LSnが所定の規定値THDbと等しい場合又は小さな値となった場合には、受信環境が良好であると判断して減衰率Gvを0(db)に設定し、一方、ノイズ成分のレベル値LSnが規定値THDbより大きな値となった場合には、そのノイズ成分のレベル変化に追従して、そのレベル値LSnと規定値THDbとの差の絶対値│THDb−LSn│に比例した分だけ減衰率Gvを0(dB)から増加(別言すれば、増幅率を0(dB)から低下)させることでFM検波信号Ddet1のレベルを減衰させ、処理後のFM検波信号Ddet2をARC部16に供給する構成としてもよい。
次に、より具体的な実施例に係るFM受信機について、図4を参照して説明する。なお、図4は、本実施例のFM受信機の構成を表したブロック図であり、図2と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図4において、本実施例のFM受信機10は、図2に示した実施形態のFM受信機と同様に、受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、可変減衰回路15は、遅延回路15aと、減算器15b、比較器15c、絶対値回路15d及び乗算器15eによって構成されている。
遅延回路15aは、IFアンプ部13から出力されるSメータ信号Smを所定の遅延時間τdで遅延させて出力する。すなわち、IFアンプ部13が帯域制限を行った帯域制限中間周波信号SIFを出力する時点から、アークタンジェント検波回路14がアークタンジェント検波によってFM検波信号Ddet1を生成して乗算器15eに供給するまでに要する処理時間T1と、IFアンプ部13がSメータ信号Smを生成して出力する時点から、遅延回路15aと減算器15b及び絶対値回路15dを介して、利得調整信号Sgvが乗算器15eに供給されるまでに要する処理時間T2との両者の遅延時間T1,T2が等しくなるように、遅延回路15aの遅延時間τdが設定されている。
減算器15bは、遅延回路15aで遅延されたSメータ信号Smdのレベル値LSmと所定の規定値THDaとの差(THDa−LSm)を演算して、絶対値回路15dに供給する。
比較器15cは、Sメータ信号Smdのレベル値LSmと規定値THDaとを比較し、レベル値LSmが規定値THDaと等しいとき、又はレベル値LSmが規定値THDaより大きいときには、切替制御信号Scmtによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDa−LSm)を値1に設定させて出力させ、一方、レベル値LSmが規定値THDaより小さいときには、切替制御信号Scmtによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDa−LSm)をそのまま出力させる。
これにより、比較器15cは、受信環境の劣化に伴ってSメータ信号Smdのレベル値LSmが規定値THDaよりも低下した場合に限り、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1のレベルを減衰調整できるようにしている。
絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDa−LSm)の絶対値│THDa−LSm│を演算すると共に、前記式(2-b)に示したように、Gv=−20×log10│THDa−LSm│で表される演算を行うことによって、デシベル表記の減衰率Gvを演算し、その演算結果である減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。すなわち、絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDa−LSm)が、比較器15cの制御の下で値1として供給されると、減衰率Gvを0(dB)とする減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給し、減算器15bから差(THDa−LSm)の値がそのまま供給されると、絶対値│THDa−LSm│からデシベルで表される減衰率Gvを演算して、その減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
乗算器15eは、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1と、減衰率制御信号Sgvで指定される減衰率Gvとを乗算(掛け算)することにより、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させたFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給する。
以上に説明した本実施例のFM受信機10によれば、可変減衰回路15がSメータ信号Smのレベル変化に追従して減衰率Gvを変化させることにより、アークタンジェント検波器14でFM検波されたFM検波信号Ddet1のレベルを自動調整するので、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等により受信環境が頻繁に変化するような場合であっても、S/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給することができる。
更に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
更に、遅延回路15aを設けたことにより、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1に対して、乗算器15eが受信環境の劣化するタイミングに合わせて減衰率Gvを自動調整することができるため、S/NのよいFM検波信号Ddet2をARC部16に供給することができる。
次に、他の実施例について、図5を参照して説明する。なお、図5は、本実施例のFM受信機の構成を表したブロック図であり、図4と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図5において、本実施例のFM受信機10は、図4に示した実施形態のFM受信機と同様に、受信アンテナANTが接続されたRF部11と、周波数変換部12と、IFアンプ部13と、アークタンジェント検波器14と、可変減衰回路15と、ARC部16を有して構成されている。
ここで、可変減衰回路15は、遅延回路15aと、減算器15b、比較器15c、絶対値回路15dと乗算器15eの他、ノイズ検出回路としてのローパスフィルタ15f及び減算器15gとを有して構成されている。
ローパスフィルタ15fは、IFアンプ部13から出力される帯域制限中間周波信号SIFの最高周波数(上側最大周波数遷移)よりも低い所定の周波数を高域カットオフ周波数とする低域通過型フィルタで形成されており、帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を通過させて減算器15gに供給する。
減算器15gは、帯域制限中間周波信号SIFから帯域制限中間周波信号SIFのエンベロープ成分を減算することにより、受信環境の変化に応じて生じるノイズ成分Snを抽出して遅延回路15aに供給する。
遅延回路15aは、減算器15gより入力されるノイズ成分Snを所定の遅延時間τdで遅延させて、減算器15b及び比較器15cに供給する。すなわち、遅延回路15aの遅延時間τdは、IFアンプ部13が帯域制限を行った帯域制限中間周波信号SIFを出力する時点から、アークタンジェント検波回路14がアークタンジェント検波によってFM検波信号Ddet1を生成して乗算器15eに供給するまでに要する処理時間T1と、帯域制限中間周波信号SIFがローパスフィルタ15fに入力されて、ローパスフィルタ15fと減算器15gと遅延回路15aと減算器15b及び絶対値回路15dを介して、利得調整信号Sgvが乗算器15eに供給されるまでに要する処理時間T2との両者の遅延時間T1,T2が等しくなるように設定されている。
減算器15bは、遅延回路15aで遅延されたノイズ成分Sndのレベル値LSnと所定の規定値THDbとの差(THDb−LSn)を演算して、絶対値回路15dに供給する。
比較器15cは、ノイズ成分Sndのレベル値LSnと規定値THDbとを比較し、レベル値LSnが規定値THDbと等しいとき、又はレベル値LSnが規定値THDbより小さいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)を値1に設定させて出力させ、一方、レベル値LSnが規定値THDnより大きいときには、切替制御信号Scntによって減算器15bを制御することにより、上述の差(THDb−LSn)をそのまま出力させる。
これにより、比較器15cは、受信環境の劣化に伴ってノイズ成分Sndのレベル値LSnが規定値THDbよりも大きくなった場合に限り、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1のレベルを減衰調整できるようにしている。
絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDb−LSn)の絶対値│THDb−LSn│を演算すると共に、前記式(3-a)に示したように、Gv=−20×log10│THDb−LSn│で表される演算を行うことによって、デシベル表記の減衰率Gvを演算し、その演算結果である減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
すなわち、絶対値回路15dは、減算器15bから出力される上述の差(THDb−LSn)が、比較器15cの制御の下で値1として供給されると、減衰率Gvを0(dB)とする減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給し、減算器15bから差(THDb−LSn)の値がそのまま供給されると、絶対値│THDb−LSn│からデシベルで表される減衰率Gvを演算して、その減衰率Gvを示す減衰率制御信号Sgvを乗算器15eに供給する。
乗算器15eは、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1と、減衰率制御信号Sgvで指定される減衰率Gvとを乗算(掛け算)することにより、FM検波信号Ddet1のレベルを減衰させたFM検波信号Ddet2を生成して、ARC部16に供給する。
かかる構成を有する本実施例のFM受信機10によれば、帯域制限中間周波信号SIFに含まれているノイズ成分Snを抽出することで、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の変化を検出し、その検出したノイズ成分Snに基づいて乗算器15eの減衰率を自動調整する利得制御信号sgvを生成するようにしたので、受信環境の劣化に応じてS/Nの向上を図ることができる。
更に、上述の実施例1の場合と同様に、マルチパス妨害やドップラーシフトやフェージング等による受信環境の頻繁な変化に応じてSメータ信号Smのレベルが頻繁に変化し、ARC部16に設けられているアッテネータ機能がその変化に追従しない場合でも、ARC部16の入力段側に設けられている可変減衰回路15が予めS/Nの向上を図ったFM検波信号Ddet2を生成してARC部16に供給するので、ARC部16の機能を補って、S/Nに優れたFM検波信号DoutをARC部16から出力させることができる。
更に、遅延回路15aを設けたことにより、アークタンジェント検波器14から出力されるFM検波信号Ddet1に対して、乗算器15eが受信環境の劣化するタイミングに合わせて減衰率Gvを自動調整することができるため、S/NのよいFM検波信号Ddet2をARC部16に供給することができる。
従来のFM受信機の構成及び機能を説明するための図である。
本発明の実施形態に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
図2に示したFM受信機の効果を説明するための波形図である。
実施例に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
更に、他の実施例に係るFM受信機の構成を表したブロック図である。
符号の説明
12…周波数変換部
13…IFアンプ部
14…アークタンジェント検波器
14…可変減衰回路
16…ARC部