JPWO2006008942A1 - 有機el素子 - Google Patents
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Abstract
有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させ、さらに、固体層がこの上に形成する電極の積層により受けるダメージを低減する効果を向上させる有機EL素子を提供する。少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、前記陰極が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有することを特徴とする。
Description
本願は、有機EL(Electro Luminescence)素子に関する。
有機EL素子は、自己発光性であるために視認性が高く、また完全固体素子であるために耐衝撃性に優れるとともに取扱いが容易である。このため、グラフィックディスプレイの画素やテレビ画像表示装置の画素、あるいは面光源等としての研究開発および実用化が進められている。このような有機EL素子は、基板上に陽極、有機固体層、陰極を順次積層することにより形成されることが多く、有機固体層上に積層される陰極としては、マグネシウム合金、さらにはマグネシウム銀合金が使用されており、合金中に存在する全金属原子を基として、50パーセント以上のマグネシウムを含む合金が使用されている(特許文献1)。
特開平2−15595号公報
しかしながら、従来の陰極を用いると、有機固体層に陰極を積層する場合に、有機固体層がダメージを受けることが問題となっていた。
また、有機EL素子は、有機固体層、特に発光層の厚さを薄くすることにより例えば4.5Vという低電圧での駆動が可能で応答も速いといった利点等を有しているが、今日ではさらに低電圧で駆動可能な有機EL素子の開発が望まれている。
本願は、このような事情においてなされたものであり、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させることができ、さらに、有機固体層がこの上に形成する電極の積層により受けるダメージを低減する効果を向上させる陰極を備える有機EL素子を提供することを課題の一例とする。
上記課題を解決するための、請求項1に記載の発明は、少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、前記陰極が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有することを特徴とする。
上記課題を解決するための、請求項2に記載の発明は、少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、前記陰極が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されていることを特徴とする。
上記課題を解決するための、請求項3に記載の発明は、少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、前記陰極が複数層により構成されており、そのうちの少なくとも一層は、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されていることを特徴とする。
なお、図中の主な符号の意味は以下の通りである。
1・・・陰極、a・・・マグネシウム含有合金、b、c、d・・・導電層、2・・・固体層、3・・・陽極、4・・・基板、11・・・陰極、12・・・電子注入層、13・・・発光層、14・・・正孔輸送層、15・・・正孔注入層、16・・・透明陽極、17・・・透明基板、21・・・陰極、26・・・陽極、27・・・基板、31・・・陰極、B・・・光取り出し方向、Or・・・固体層。
1・・・陰極、a・・・マグネシウム含有合金、b、c、d・・・導電層、2・・・固体層、3・・・陽極、4・・・基板、11・・・陰極、12・・・電子注入層、13・・・発光層、14・・・正孔輸送層、15・・・正孔注入層、16・・・透明陽極、17・・・透明基板、21・・・陰極、26・・・陽極、27・・・基板、31・・・陰極、B・・・光取り出し方向、Or・・・固体層。
以下に、本願の有機EL素子について図1を用いて説明する。
図1は、本願の有機EL素子の第1実施形態を示す概略断面図である。
有機EL素子は、少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造を有しており、具体的には、図1に示すように、基板4の上に、陽極3、固体層2、陰極1をこの順で積層した構造(固体層2を、陰極1と陽極3とで挟み込んだ構造)となっている。そして、このような有機EL素子にあって、本願の有機EL素子は、これを構成する陰極1が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有することに特徴を有している。
ここで、「陰極1が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有する」とは、例えば、陰極1が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されているものをいう。以下、これについて具体的に説明する。
本願の有機EL素子は、これを構成する陰極1が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金aにより形成されていることに特徴を有している。
ここで、「マグネシウム(Mg)を50パーセント未満の割合で包含する」とは、マグネシウム原子の数がマグネシウム含有合金層中に存在する全金属原子の数の50パーセント未満とするということである。
このように、陰極1が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金aにより形成されていることにより、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させることができる(これについては後述する)。
陰極1を構成するマグネシウム含有合金aは、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金からなるが、この合金を形成するためのマグネシウム以外の金属は、特に限定されるものではなく、例えば、銀(Ag)のような単体であってもよく、さらにはITO(Indium Tin Oxide)のような合金であってもよい。また、合金を形成するためのマグネシウム以外の金属は一種類である必要はなく、AgとITOの双方を用いてもよい。
また、マグネシウムの含有率は50パーセント未満であれば、特に限定されることはない。マグネシウム含有合金中のマグネシウムの含有率を低くすることによって、より有機EL素子の素子駆動時の電圧を低減させることができるが、マグネシウムが少なすぎても有用な効果が得られないため、マグネシウムの最低含有率は、0.73%以上とすることが好ましい。具体的には、マグネシウムの含有合金中のマグネシウムの割合は、1.45%以上40パーセント以下が望ましく、1.45%以上20パーセント以下が特に望ましい。
図2は、本願の有機EL素子の第2実施形態を示す概略断面図である。
図1は、陰極1が単層構造である場合を示したものであるが、本願はこれに限定されることはなく、図2に示すように、陰極1が複数層構造であってもよい。なお、図2における陰極1以外の構成(基板4、陽極3、固体層2の構成)は、図1と同様である。
図2に示すように、陰極1を複数層構造とした場合にあっては、当該陰極1を構成する層のうち少なくとも一層が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金aにより形成されていればよい。つまり、図2に示すように、陰極1は、複数層により形成されており、そのうちの少なくとも1層は、マグネシウム含有合金aにより形成されており、他の層は、導電層b、c、dにより構成されていればよい。
このように、陰極1が、複数層により構成されており、そのうちの少なくとも一層が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金aにより形成されていることによって、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させることができるとともに、マグネシウム含有合金aにより形成されている層の上に導電層b又はdを積層する場合には、固体層2が受けるダメージを低減することができる(これについては後述する)。
なお、陰極1を構成する導電層b、c、dとしては、従来電極として用いられている材料を適宜選択して用いればよく、特に限定するものではない。例えば、ITOや、IZOや、SnO2(酸化スズ)系透明導電膜(フッ素やアンチモンをドーピングしたもの等)、ZnO(酸化亜鉛)系透明導電膜(アルミニウムやガリウムをドーピングしたもの等)等を好適に用いることができる。
また、陰極1の厚みは、用途に応じて適宜選択可能であり、例えば、5nm〜500nm程度とすればよい。
図1、2に示したように、マグネシウムの含有率50パーセント未満のマグネシウム含有合金aからなる陰極1を用いると、先ず第1に、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させることができるという格別な効果を得ることができる。また、第2に、電極を複数層により構成する場合、つまり固体層2の上にマグネシウム含有合金aにより形成されている層を積層し、さらにその上にスパッタリング等によりITO層b、c、dを積層する場合に、固体層2がプラズマにより損傷することを防ぎ、固体層2が陰極の積層により受けるダメージを低減する効果が得られる。当該効果を鑑みると、陰極1が積層構造により構成されている場合には、マグネシウム含有合金aにより形成されている層は、陰極として機能すると共に、陰極形成の際のダメージから固体層2を保護するためのいわゆるバッファ層としても機能していると考えられる。
ここで、図2に示すように、陰極1のマグネシウム含有合金aにより形成されている層は、導電層b、c、dに挟まれた構造に限定されることはなく、図3、図4に示すように、マグネシウム含有合金aにより形成される層は、陰極1のどの位置に設置されていてもよい。具体的には、図3に示すように、マグネシウム含有合金aにより形成されている層が陰極1の最外層に積層されていてもよく、図4に示すように、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金aにより形成されている層が、少なくとも前記固体層に接する位置(図3における符号a参照)、つまり、陰極1の最内層に形成されていてもよい。
しかしながら、前記第2の効果(固体層2が陰極の積層により受けるダメージを低減する効果)を鑑みると、図2や、図4のように、マグネシウム含有合金の上に導電層を積層した場合には、有機EL素子の素子駆動時の電圧を下げることができるとともに、固体層が受けるダメージを低減させる効果も有することができるので、マグネシウム含有合金により形成されている層が最外層より内側に設置されていることが望ましい。
ここで、図2〜図4において、マグネシウム含有合金aにより形成されている層が1層、導電層が3層によって積層される構造を示しているが、この構造に限定されることはない。具体的には、陰極が複数層構造である場合、少なくとも1層は、マグシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されていればよいため、マグネシウム含有合金により形成されている層が複数層存在してもよく、さらに、導電層が2層であっても、また、3層以上であってもよい。
本願の有機EL素子を構成する固体層2(図1〜図4参照)についても、特に限定されることはなく、発光層のみからなる1層構造のものでもよく、後述するように、電子注入層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を積層してなる複数層構造で構成されていてもよい。固体層2の具体的構成については、後述する。
また、本願の有機EL素子を構成する陽極3(図1〜図4参照)は、機能としては正孔を固体層内に注入する役割をもっている。したがって、正孔を注入しやすいエネルギーレベルを持つ層を用いればよく、従来から用いられているものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ITOなどを好適に用いることができる。
また、基板4(図1〜図4参照)についても特に限定されることはなく、後に後述するように、トップエミッション構造やボトムエミッション構造のように、当該有機EL素子が用いられる状況や、求められる性能によって、任意に選択すればよい。透明性が必要な場合には、例えば、プラスチック基板やガラス基板を用いることができる。
以下に、本願の有機EL素子の実施形態を図面を用いて説明する。
第5実施形態〜第10実施形態は、固体層上に陰極が設けられた構造を有している。
まず、第5実施形態、第6実施形態は、固体層上にマグネシウム含有合金のみから形成された陰極が設けられた構造を有している。マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金から形成されている陰極を有することによって、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低減させるという効果を奏することができる。
図5に示す第5実施形態にかかる有機EL素子は、透明基板17上に透明陽極16、固体層Or(正孔注入層15と、正孔輸送層14と、発光層13と、電子注入層12)、陰極11の順で積層することにより形成されている。ここで、電子注入層12は、有機物によって作製されることに限定されず、無機物によって作製されていてもよい。
ここで、固体層Orを構成する正孔注入層15とは、陽極16と発光層13との間に設けられ、陽極からの正孔の注入を促進させるための層であり、有機EL素子の駆動電圧を低電化する、正孔注入を安定化し素子を長寿命化する、陽極の突起などを被覆し素子欠陥を減少させる、などの効果を発揮する。正孔注入層15の材質については、そのイオン化エネルギーが陽極の仕事関数と発光層のイオン化エネルギーの間になるように適宜選択すればよい。
また、正孔輸送層14とは、前記正孔注入層15と発光層13の間に設けられ、正孔の輸送を促進させるための層であり、正孔輸送層14は、正孔を発光層13まで輸送する働きを持つ。正孔輸送層14の材質については、そのイオン化エネルギーが正孔注入層15と発光層13の間になるように適宜選択すればよい。
また、発光層13とは、電子や正孔を輸送し、更に電子と正孔の再結合する場を与える層のことである。発光層13はその機能上、電子も正孔も注入されるので同時注入に対する耐性が素子の長寿命化のために用いられる。よって、発光層13の材質については、上記の性質を満たすものになるように適宜選択すればよい。
さらに、電子注入層12とは、陰極11と発光層13との間に設けられ、陰極11からの電子の注入を促進する機能を有する。有機EL素子の駆動電圧を低電圧化する、電子注入を安定化し素子を長寿命化する、陰極11の密着を強化し発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させるなどの効果を発揮する。電子注入層12の電子親和力については、陰極の仕事関数と発光層の電子親和力の間になるように適宜選択すればよい。
第5実施形態にかかる有機EL素子においては、陽極は正孔を正孔注入層15に注入し、一方陰極は電子を電子注入層12に注入する。注入された正孔と電子は、各々反対荷電電極に向かって移動する。この結果、両電極間に電圧を印加することにより、陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子が、発光層中で再結合することにより発光が起こる。
また、第5実施形態は、基板側からのみ光を取り出す、いわゆる「ボトムエミッション構造」の有機EL素子であり、したがって、基板17と、基板17上に作製する陽極16ともに透明(もしくは半透明)のものが使用される。
本願の有機EL素子にあっては、図6に示すように、電子注入層を積層しなくてもよい(第6実施形態)。
このような「ボトムエミッション構造」の他に、第7実施形態等に示す「透明構造」、第9実施形態等に示す「トップエミッション構造」とすることも可能である。
具体的に説明すると、図7に示す第7実施形態は、基板側、基板と逆側の両面から光を取り出すいわゆる「透明構造」の有機EL素子である。
図7に示す第7実施形態にかかる有機EL素子の陰極21は、マグネシウム含有合金のみ又は、マグネシウム含有合金、透明導電層の積層型のうち、いずれによって形成される構造とすることができる。ここで、マグネシウム含有合金に透明導電層を積層したものを陰極とした場合には、マグネシウム含有合金が電子注入層12と接するものとする。
また、基板側、基板と逆側の両面から光を取り出すため、基板17と、基板17上に作製する陽極16ともに透明のものが使用される。基板と逆側には、本願の特徴である陰極21が設けられているが、当該陰極を薄く形成することによって、いずれの構造によっても、光を取り出すことができる。
さらに、本願の有機EL素子にあっては、図8に示すように、電子注入層を積層しなくてもよい(第8実施形態)。
図9に示す第9実施形態にかかる有機EL素子は、基板と逆側からのみ光を取り出すいわゆる「トップエミッション構造」の有機EL素子である。
この場合であっても、前記第7実施形態と同様に、陰極を薄く形成すればよい。一方、当該「トップエミッション構造」の有機EL素子では、基板から光を取り出す必要はないので、陽極26と基板27の組み合わせは、不透明陽極/基板、透明陽極/不透明材質基板、透明陽極/不透明層付き基板のいずれで構成されていてもよい。
なお、「トップエミッション構造」であっても図10に示すように、電子注入層を積層しなくてもよい(第10実施形態)。
以下に説明する、第11実施形態〜第16実施形態は、上述してきた有機EL素子と異なり、基板上に陰極が設けられた構造を有している。このように本願の有機EL素子は、基板上に陰極が設けられた構造(逆積み構造)とすることもでき、この場合であっても、有機EL素子の素子駆動時の電圧を低下させるという効果を奏することができる。
図11〜図16は、本願の有機EL素子の第11実施形態〜第16実施形態を示している。
これらの有機EL素子は、基板27上に陰極31又は、陰極21、固体層Or(電子注入層12、発光層13と、正孔輸送層14と、正孔注入層15)、透明陽極16又は、不透明陽極26の順で積層することにより形成されている。
第11実施形態および第12実施形態は、「トップエミッション構造」の有機EL素子であり、第12実施形態は第11実施形態から電子注入層を除いたものとなっている。
また、第13実施形態および第14実施形態は、「透明構造」の有機EL素子であり、第14実施形態は第13実施形態から電子注入層を除いたものとなっている。
さらに、第15実施形態および第16実施形態は、「ボトムエミッション構造」の有機EL素子であり、第16実施形態は第15実施形態から電子注入層を除いたものとなっている。
次に、本願の特徴である「マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されている陰極」の素子駆動時の電圧の低下について、以下の実施例にて説明する。
(実施例1)
マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とからなるマグネシウム含有合金を作製した。
マグネシウム(Mg)と銀(Ag)とからなるマグネシウム含有合金を作製した。
具体的には、マグネシウム含有合金中のMgとAgの比率を変化させ、MgとAgの比率がそれぞれ、試料1;Mg:Ag=73.6:10、試料2;Mg:Ag=7.4:10、試料3;Mg:Ag=0.7:10となるように試料1〜3を作製した。ここで、試料1は、本願の特徴を有するマグネシウム含有合金により形成された陰極ではないが、本願の特徴を有するマグネシウム含有合金を用いた試料2、試料3との実験結果を比較するために用いたものである。
これらのマグネシウム含有合金を用いて、電圧電流特性を調べた結果を図17に示す。
図17からも明らかなように、各試料の電圧電流特性を比較すると、マグネシウム含有率が少なくなるにつれて、素子駆動時の電圧も低下しており、この結果から、マグネシウム含有合金中のマグネシウムの含有率を低くすることによって、より素子駆動時の電圧を低下させることができることがわかる。
(実施例2)
MgとAgからなるマグネシウム含有合金を作製し、その上にITO層を積層した。
MgとAgからなるマグネシウム含有合金を作製し、その上にITO層を積層した。
具体的には、マグネシウム含有合金中のMgとAgの比率を変化させ、MgとAgの比率がそれぞれ、試料4;Mg:Ag=73.6:10、試料5;Mg:Ag=7.4:10、試料6;Mg:Ag=0.7:10となるようにし、その上にそれぞれITO層を積層した試料4〜6を作製した。ここで、試料4は、本願の特徴を有するマグネシウム含有合金により形成された陰極ではないが、本願の特徴を有するマグネシウム含有合金を用いた試料5、試料6との実験結果を比較するために用いたものである。
これらのマグネシウム含有合金を用いて、電圧電流特性を調べた結果を図18に示す。
図18からも明らかなように、各試料の電圧電流特性を比較すると、前記実施例1と同様に、マグネシウム含有率が少なくなるにつれて、素子駆動時の電圧も低下しており、この結果からも、マグネシウム含有合金中のマグネシウムの含有率を低くすることによって、より素子駆動時の電圧を低減させることができることがわかる。
さらに、実施例1と実施例2を比較してみると、両者ともに、マグネシウム含有合金中のマグネシウムの含有率を低くすることによって、より素子駆動時の電圧を低減させることができた。
また、例えば、図17に示す試料3、試料2、試料1を示すグラフの電流密度50mA/cm2の際の駆動電圧の値はそれぞれ、7.3、7.5、7.7Vであるが、図18に示す試料6、試料5、試料4を示すグラフの電流密度50mA/cm2の際の駆動電圧の値はそれぞれ、7.8、8.2、8.5Vである。
これより、図17に示す試料3、試料2、試料1の駆動電圧の差よりも、図18に示す試料6、試料5、試料4の駆動電圧の差の方がより大きいことがわかる。
よって、マグネシウム含有合金上にITO層を積層する形態の陰極を用いる場合、Mgの比率が少なくなるにつれて、ITO積層時に固体層2が受けるダメージを防ぐ割合が高くなっていることがわかる。
よってこれらの結果から、MgとAgからなるマグネシウム含有合金を作製し、その上にITO層を積層した陰極を固体層2に積層する際のダメージを防ぐ効果が高く、さらに素子駆動電圧を低減することができることがわかった。
なお、素子駆動電圧をどの範囲で用いるかは用途によっても異なり、十分な輝度を得られるところであればよいので、設計事項によって任意に用いることができる。
以上説明したように、本願で示した比率のマグネシウム含有合金を陰極とした有機EL素子では、素子駆動時の電圧を低下させることができ、さらに、固体層がこの上に形成する電極の積層により受けるダメージを低減する効果を向上させることができる。
また、実施形態に示すように、基板側からのみ光を取り出す「ボトムエミッション型有機ELディスプレイ」、基板と逆側からのみ光を取り出す「トップエミッション型有機ELディスプレイ」、基板側と、基板と逆側の両方から光を取り出す「透明有機ELディスプレイ」に応用可能である。
なお、本願の有機EL素子は、上記実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本願の有機EL素子の技術的範囲に包含される。
Claims (5)
- 少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、
前記陰極が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有することを特徴とする有機EL素子。 - 少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、
前記陰極が、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されていることを特徴とする有機EL素子。 - 少なくとも有機発光層を含む固体層を陰極と陽極で挟み込んだ構造をもつ有機EL素子において、
前記陰極が複数層により構成されており、そのうちの少なくとも一層は、マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されていることを特徴とする有機EL素子。 - 前記マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金により形成されている層が、前記固体層に接する位置に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
- 前記マグネシウムを50パーセント未満の割合で含有するマグネシウム含有合金が、マグネシウムと銀との混合物からなる合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の有機EL素子。
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