JPWO2006003858A1 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract

黒鉛粉末からなる正極11と、リチウム金属またはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極13とが、リチウム塩を含んだ電解質を介して対向した非水電解質二次電池において、上記正極11は、Xバンドを用いて測定された電子スピン共鳴法において、3200〜3400gaussの範囲に出現する炭素由来の吸収ピークを有し、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上とする。これにより、高温浮動充電後の充放電サイクルにおいても容量劣化が抑制された非水電解質二次電池を提供することができる。

Description

本発明は非水電解質二次電池に関し、とくに、正極として黒鉛材料、負極としてリチウム金属またはその合金もしくはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料、電解質としてリチウム塩を含んだ非水電解質を用いた非水電解質二次電池に関する。
従来技術
従来、各種の非水電解質二次電池は蓄電可能なエネルギー密度が高く様々な用途に利用されてきたが、所定の充放電サイクルに到達した時点で、継続した使用が困難な状態、または使用不可能な状態に陥るという欠点を有していた。
本発明者等は、この種の二次電池の充放電サイクル寿命を向上させようと考え、黒鉛化処理された炭素材料からなる正極、リチウム塩を含んだ電解質、リチウム金属またはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極とを備えた非水電解質二次電池に着目した。
このように、黒鉛化された炭素材料からなる正極と、リチウム塩を含んだ電解質と、リチウム金属からなる負極とを備えた非水電解質二次電池は、古くから知られている。また、当該電池の負極としてリチウムの吸蔵・放出が可能な炭素材料を適用し、充放電サイクル特寿命を向上させる試みも為されてきた(例えば特許文献1、特許文献2参照)。リチウム金属は充放電サイクルによって溶解・析出を繰り返し、デンドライト(樹枝状析出物)の生成および不動態化が生じる結果、サイクル寿命が短いからである。
このような構成の非水電解質二次電池は通常、放電状態で電池が組み立てられ、充電を行わなければ放電可能な状態にはならない。以下、負極として、リチウムの可逆的な吸蔵・放出が可能な黒鉛材料が使用された場合を例に取り、その充放電反応を説明する。
先ず、第1サイクル目の充電を行うと、電解質中のアニオンは正極(黒鉛材料)に、カチオン(リチウムイオン)は負極にそれぞれ吸蔵(インターカレーション)され、正極ではアクセプタ型黒鉛層間化合物が、負極ではドナー型黒鉛層間化合物がそれぞれ形成される。その後、放電を行うと両極に吸蔵されたカチオンおよびアニオンが放出(デインターカレーション)され、電池電圧は低下する。その充放電反応は下式のように表現することができる。
正極:(放電)Cx + A− = CxA + e−(充電)
負極:(放電)Cy + Li+ + e− = LiCy(充電)
つまり、この種の二次電池における正極は、充放電によりアニオンの黒鉛層問化合物が可逆的に形成される反応を利用したものである。
このような正極材料としては、黒鉛化炭素繊維(特許文献3参照。)、膨張化黒鉛シート(特許文献4)、黒鉛化炭素繊維の繊布(特許文献5)、プラスチック補強黒鉛(非特許文献1)、天然黒鉛粉末(非特許文献2)、熱分解黒鉛(非特許文献3)、黒鉛化された気相成長炭素繊維およびPAN系炭素繊維(非特許文献4)等が検討されてきた。
特開昭61-7567号公報 特開平2-82466号公報 特開昭61-10882号公報 特開昭63-194319号公報 特開平4-366554号公報 John S.Dunning, William H.Tiedemann, Limin Hsueh, and Douglas N.Bennion, J.Electrochem.Soc., 118, 1886(1971) 高田怡行,三宅義造,電気化学,43,329(1975) T.Ohzuku, Z.Takehara and S.Yoshizawa, DENKI KAGAKU, 46, 438 (1978) 遠藤守信,中村英俊,江守昭彦,石田哲,稲垣道夫,炭素,150, 319(1991)
この種の電池は一般的に、充放電サイクルを繰り返す毎に放電容量が劣化するという欠点があった。この原因は、主に正極材料の劣化に起因する。すなわち、充放電サイクルの繰り返しに伴って、分子サイズの比較的大きなアニオンが黒鉛材料に繰り返し吸蔵・放出されることにより、黒鉛結晶が崩壊し、粒子に亀裂が生じる結果、その一部が充放電不可能な形態に変化するからである。
このような問題に対し、本発明者等は、黒鉛結晶の六角網平面を構成する炭素原子の一部がホウ素原子に置換されたホウ素化黒鉛材料(国際特許出願No.PCT/JP0/04705)、および易黒鉛化性炭素材料またはその出発原料もしくは炭素前駆体から選択される一種以上の材料を平均粒子径として50μm以下に粉砕し、これらを不活性ガス雰囲気中で1700℃以上に熱処理して黒鉛化した黒鉛粉末(国際特許出願No.PCT/JP03/12906)などを提案した。これらの黒鉛材料を正極に使用することで、充放電サイクルを繰り返すことにより生じる容量劣化は、大幅に抑制することが可能となった。
一方、この種の二次電池が、無停電電源用、もしくは各種のメモリーバック用の電池として利用される場合は、電池が所定の電圧で充電され続け、必要に応じて放電されるようなサイクルで充放電が進行することとなる。このような充電方法は、浮動充電(フローティング充電)と呼ばれ、電池の充電方法としてはきわめて一般的である。
浮動充電が行われている際の電池の周囲温度は、用途によって様々であるが、充電回路から発せられた熱により室温以上の温度となる場合が多い。浮動充電の最中は、電池に所定の電圧が印加され続けるため、極めて微小ではあるが電流が流れ続け、充電回路も作動状態が維持されるからである。
したがって、この種の用途に使用される二次電池には、通常60℃程度で充電され続けても電池特性の劣化が少なく、且つ液漏れ、破裂等の外観変化が無いこと等の信頼性が要求される。しかし、本発明者等が提案した前記のリチウム二次電池(非水電解質二次電池)は、周囲温度が60℃以上の高温状態で浮動充電を行うと、充放電容量が減少する問題があった。
本発明は、以上のような高温浮動充電に対する電池の信頼性を改良するものであって、その目的は、高温浮動充電後の充放電サイクルにおいても容量劣化が抑制された非水電解質二次電池を提供することにある。
本発明の上記以外の目的および構成については、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
上記目的を達成するために、本発明は以下のような手段を開示する。
すなわち、本発明は、黒鉛粉末からなる正極と、リチウム金属またはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極とが、リチウム塩を含んだ電解質を介して対向した非水電解質二次電池において、上記正極は、Xバンドを用いて測定された電子スピン共鳴法において、3200〜3400gaussの範囲に出現する炭素由来の吸収ピークを有し、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上であることを特徴とする非水電解質二次電池である。
図1は、296Kにおける黒鉛粉末のESRの一次微分スペクトルを示す特性図である。 図2は、296Kにおける黒鉛粉末のESR吸収スペクトルを示す特性図である。 図3は、本発明の実施例として作製した非水電解質二次電池の断面図である。 図4は、各黒鉛粉末(A〜F)における吸収強度(前記ESR法により測定された吸収強度)の温度依存性を示す特性図である。 図5は、各黒鉛粉末(A〜F)の半価幅の温度依存性を示す特性図である。 図6は、正極黒鉛粉末の前記相対比率(ΔH40K/ΔH296K)と高温浮動充電後の容量維持率の関係を示す特性図である。
先ず、本発明の理論的背景について述べる。
本発明の適用対象となるリチウム二次電池は、前述の通り、黒鉛粉末からなる正極と、リチウム金属またはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極とが、リチウム塩を含んだ電解質を介して対向した非水電解質二次電池において、上記正極は、Xバンドを用いて測定された電子スピン共鳴法において、3200〜3400gaussの範囲に出現する炭素由来の吸収ピークを有し、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上であることを特徴とする非水電解質二次電池である。
ここで、電子スピン共鳴(以下ESRと略記)とは、不対電子を含んだ物質が静磁場下に置かれたとき、その不対電子のエネルギー準位が分裂し(ゼーマン分裂)、両エネルギー準位の差に相当するエネルギーを有した電磁波が照射された場合に電磁波が吸収される現象である。
この性質を利用して不対電子の存在状態を調査する測定方法は、電子スピン共鳴法(以下ESR法と略記)と呼ばれている。不対電子とは、通常電子が2個入っている原子または分子軌道に1個だけ入っている電子のことであり、黒鉛材料に含まれる不対電子には大別して伝導電子と局在電子がある。
伝導電子は黒鉛の電子伝導を担うキャリアで、六角網平面内を自由に移動することができる。一方、局在電子は、黒鉛粉末を製造する際の粉砕操作などにより導入される粒子表面のダングリング・ボンド(dangling bond)や格子欠陥、もしくは結晶子の非晶質領域(未組織炭素領域)や結晶子のエッヂ部分に存在し、伝導電子のようなキャリアとしての性質はない。
黒鉛粉末のESRスペクトルの吸収強度は、通常、室温から40K程度までは温度を低下させても若干の変化が認められるだけでほとんど一定と見なせる。しかし20K以下の極低温領域では、温度の低下と共に急激に増大する。一方、吸収スペクトルの半価幅は、温度の低下と共に広がるが、40K付近を境に逆転し、急激に狭くなる。
上述のように室温から40Kまでの温度領域では、ESRスペクトルの吸収強度に温度依存性は認められないこと、および吸収スペクトルの半価幅は温度の低下と共に増大していることから、当該温度領域においてESRを与えているスピンは黒鉛の伝導電子スピンであることが分かる。
黒鉛は異方性結晶であるため、伝導電子の共鳴磁場は、結晶子のc軸方向と磁場の成す角度により決定される。磁場とc軸が垂直である場合に最も吸収強度が高く、共鳴磁場は高磁場側となり、温度を低下させても共鳴磁場の変化はほとんどない。これに対して磁場とc軸が平行である場合は、最も吸収強度が低く、共鳴磁場は低磁場側となり、温度を低下させるとさらに低磁場側へシフトする。
一方、黒鉛粉末はESR測定装置の試料管の中で、磁場に対して様々な角度をなして存在するため、その吸収スペクトルは、磁場と結晶子のc軸との成す角度に依存して生じた各吸収スペクトルの合成スペクトルとなる。
伝導電子スピンに起因した吸収スペクトルの半価幅は、温度の低下と共に広がることとなるが、その吸収強度はほとんど変化はない。
これに対して、20K以下の極低温領域における黒鉛のESRスペクトルは、温度の低下と共に吸収強度が増大し、吸収スペクトルの半価幅が狭くなる。20K以下の極低温領域で吸収強度が増大するのは、粉砕時に導入されたダングリング・ボンドや格子欠陥に付随する局在電子スピンの信号の寄与が強くなるためである。
伝導電子によるパウリ常磁性は概ねキャリア密度に比例するため、低温ではその寄与が小さくなる。一方、キュリー(Curie)則に従う局在スピンは温度Tに逆比例して急増するため、20K以下の極低温領域ではほとんど局在スピンによる信号のみを観測することになる。
以上のように、20K以下の極低温領域では、黒鉛粉末の吸収強度に及ぼす局在電子の寄与は温度の低下と共に大きくなるが、その寄与が出現し始める温度は、局在電子の数に依存して変化する。すなわち局在電子が多く存在するほど、その「出現し始める温度」は高温側に移行する。その局在電子の寄与の出現を最も敏感に把握する手法は、温度40Kで測定された吸収スペクトルの半価幅ΔH40Kに着目すればよい。
上述のように、室温で得られる黒鉛粉末のESRスペクトルの吸収は、そのほとんどが伝導電子に起因し、40K程度まで温度を低下させても吸収強度に変化は無い。40Kでの吸収スペクトルの半価幅は、室温でのそれと比較して広がるはずであるが、40Kにおいても既に局在電子の寄与が出現している場合は、その寄与の大きさに依存して半価幅は狭くなる。
一方、室温付近の吸収スペクトルは局在電子の寄与をほとんど受けないため、その半価幅を基準とし、それに対する40Kでの半価幅の比率が大きいほど伝導電子の数に対する局在電子の数の比率が低いと評価できる。逆に当該比率が小さいほど、伝導電子の数に対する局在電子の数の比率が大きくなって、局在電子の影響を受け易く、40Kでの半価幅が狭くなったと評価できることとなる。
したがって、本出願に係る発明で特定した相対比率(ΔH40K/ΔH296K)は、局在電子の数に対する伝導電子の数の相対比率を定量的に把握できる指数であると見なせる。
ところで、前述のように、この種のリチウム二次電池は、60℃以上の高温で浮動充電を行うと、充放電容量が低下する問題があった。この原因を調査した結果、特に正極材料である黒鉛粉末の表面で電解液の酸化分解反応が促進され、正極表面には分解反応生成物が蓄積されることにより、当該蓄積物が充放電反応を阻害する、ということが分かった。
本発明者らは、この酸化分解反応の反応速度と、黒鉛粉末に存在する伝導電子と局在電子の数の比率に相関関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、黒鉛粉末に存在する伝導電子と局在電子の数の比率を評価する手法として、次のような方法を見出した。
すなわち、黒鉛粉末に存在する伝導電子と局在電子の数の比率は、Xバンドを用いて測定された電子スピン共鳴法において、温度296Kで測定された吸収スペクトルの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された吸収スペクトルの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)により評価可能であることを見出した。そして、その相対比率が2.1以上であると、浮動充電による容量劣化が抑制されることを見出した。
伝導電子の数に対する局在電子の数の比率が高い黒鉛粉末を正極材料として使用した電池は、60℃以上の高温で浮動充電を行うと、正極黒鉛の表面上で、電解液の酸化分解反応を触媒的に促進する。伝導電子の数に対する局在電子の数が抑制されている場合に限り、局在電子と電解液との反応性が低下し、60℃以上の高温状態で浮動充電を行っても電解液の酸化分解反応が抑制され、ガス発生量が大幅に低減される。
以上のような局在電子の数と伝導電子の数の相対比率を、本発明(請求項1)では、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)として規定し、当該比率の範囲を2.1以上として特定した。当該相対強度比が2.1よりも低い黒鉛粉末を正極に使用したリチウム二次電池は、高温で浮動充電を行うと充放電容量の劣化が大きく好ましくない。
黒鉛粉末に存在する伝導電子と局在電子の数の比率はESRスペクトルから算出可能であるが、実際のESR測定は、外部からマイクロ波(例えば、請求項1に記載した周波数Xバンド)を印加して、磁場を掃引しながら吸収曲線を求めるのが一般的である。
このときに得られるスペクトルは、磁場に対する吸収強度の一次微分型であるため、スペクトルデータをデジタイザー等で読み取り、磁場Hに対して1回積分し、吸収スペクトルを描写し直せば良い。
図1は296Kにおける黒鉛粉末のESRスペクトルを示す。また、図2はそのESRスペクトルを磁場Hに対して1回積分することにより得られた吸収スペクトルを示す。吸収スペクトルの半価幅は、図2の吸収スペクトルに示された通り、バックグラウンドから図形の高さ1/2位置で図形の巾を磁場単位(gauss)で読み取れば良い。
以上で詳細に説明した物性値を満たす黒鉛粉末の好適な製造方法としては、(1)粉砕・粒度調整を行った黒鉛粉末に熱処理を行う方法、(2)黒鉛粉末に表面処理を行う方法が挙げられる。何れの手法も黒鉛粉末が出発原料となるが、当該黒鉛粉末に存在する局在電子密度は、低いほど処理後の局在電子密度も低くすることができる。従って出発原料となる黒鉛粉末には、dangling bondや格子欠陥が少ないほど好ましい。
このような観点から出発原料としての黒鉛粉末は、結晶化度が高いほど、即ち結晶子の大きさが大きいほど好ましい。前述のように局在電子は、結晶子の格子欠陥、もしくは結晶子の非晶質炭素領域(未組織炭素領域)や結晶子のエッヂに存在する。このため、結晶が完全であるほど、即ち結晶子の大きさが大きいほど、格子欠陥や非晶質領域が少なく、且つ結晶子のエッヂ領域が小さいからである。
出発原料となる黒鉛粉末の結晶子の大きさとしては、粉末X線回折法により測定される(112)回折線から算出されたc軸方向の結晶子の大きさLc(112)として、少なくとも100Å以上、好ましくは200Å以上、更に好ましくは300Å以上が好適である。X線回折法から結晶子の大きさを算出する手法は(非特許文献5)などに記載された通りである。
先ず、第一の製造方法から説明する。通常の黒鉛粉末は、易黒鉛化性炭素材料を2800℃以上の温度で黒鉛化して粉砕するか、又は易黒鉛化性炭素材料を粉砕し、黒鉛化することで得られる。また天然に産出する天然黒鉛を、固定炭素成分として少なくとも99%以上に高純度化し、粉砕して得られた黒鉛粉末も適用可能である。粉砕する手段としては、ピンミル、ボールミル、コロイダルミル等の通常の粉砕機が何れも使用可能である。
このような黒鉛粉末に、必要に応じて粒度調整を行った後、水素雰囲気若しくは減圧雰囲気の下、1000℃以上の温度で熱処理することにより本発明により特定される黒鉛粉末を製造することが可能である。窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気又はアルゴン雰囲気中でも熱処理することは可能であるが、これら熱処理雰囲気では伝導電子の数も減少するため、相対的に局在電子の数の割合が高くなり、高温浮動充電後の容量劣化を抑制することはできない。
次に第二の製造方法について説明する。前述の表面処理とは、黒鉛粉末の粒子表面に、酸化処理法によって一端酸素を含む官能基を導入し、その後不活性ガス雰囲気下の熱処理で脱酸素処理を行う手法である。不活性ガスとは、黒鉛結晶を構成する炭素原子と直接反応しないガスのことで、例えば窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。
黒鉛粒子の表面に酸素を含んだ官能基を導入するための酸化処理法としては、黒鉛粉末を、(1)酸素ガス若しくは酸素を含んだ不活性ガスの雰囲気中、500〜800℃で熱処理する方法、(2)不活性ガス雰囲気中、最高到達温度500〜1200℃で熱処理し、最高到達温度に達してから水蒸気を吹き込む方法、(3)アルカリ金属の水酸化物と共に混合し、500〜2000℃で熱処理する方法が挙げられる。何れも黒鉛粉末の粒子表面に、酸素を含む官能基を導入することが目的であり、その表面を構成する炭素原子の一部は一酸化炭素若しくは二酸化炭素ガスとして系外に放出されても構わない。
以上の酸化処理法を行った後、不活性ガス雰囲気中で800℃以上の熱処理を行うことにより、脱酸素化が促進され、本出願の請求項1に記載された条件を満足する黒鉛粉末が得られる。熱処理温度は、結果として得られた生成物に含まれる酸素成分の割合が0.001重量%以下、好ましくは0.0001重量%以下となるように、任意に設定すれば良い。基底状態の酸素は不対電子を2個有するため、熱処理後に残留した酸素成分も、高温連続負荷状態で電解液の酸化分解反応を促進し、ガス発生量が増加するため好ましくない。このような残留酸素成分を可能な限り低下させる手段として、前記不活性ガスに代え水素ガス、若しくは水素を含んだ不活性ガスを使用しても良い。水素ガスの強い還元性のため、脱酸素化が促進されるからである。
このような2段階の反応過程を経由して得られた黒鉛粉末は、局在電子密度が低下し、ESR法により算出された相対比率(ΔH40K/ΔH296K)として2.1以上を達成することが出来る。またこのような黒鉛粉末を正極に適用したリチウム2次電池は、高温連続負荷状態における内圧上昇が抑制され、漏液・破裂には至らない。この理由は定かでないが、黒鉛表面に存在する局在電子に酸素が選択的に反応し、脱酸素化の過程でアルキル基が生成されるためと考えられる。局在電子が存在する箇所にアルキル基が生成されると、黒鉛粉末表面の局在電子密度が低下し、更に伝導電子がアルキル基を構成する炭素原子の分子軌道まで移動できないため、結果として伝導電子が黒鉛粉末の表面において電解液の酸化分解反応に関与する確率も低下するからと推察される。
第一及び第二の製造方法における黒鉛粉末の原料は、易黒鉛化性炭素材料を黒鉛化して粉砕するか、又は易黒鉛化性炭素材料を粉砕し、黒鉛化して作製することが出来る。また天然に産出する天然黒鉛を、固定炭素成分として少なくとも99%以上に高純度化し、粉砕して得られた黒鉛粉末も適用可能である。粉砕する手段としては、ピンミル、ボールミル、コロイダルミル等の通常の粉砕機が何れも使用可能である。
易黒鉛化性炭素材料の出発原料としては、コールタールピッチ又は石油ピッチ等の各種ピッチ類が代表的である。これらのピッチは、コールタール又は原油等の原料を蒸留、抽出、熱分解、乾留等の精製若しくは改質工程を経て得られる。また、ナフタレン、フェナンスレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、アセナフチレン等の芳香族化合物を原料とした縮合多環多核芳香族(COPNA樹脂)及びポリ塩化ビニル樹脂等の有機高分子化合物も使用可能である。これらの出発原料は、熱処理段階の途中約350℃付近で液相状態を経由するため、重縮合した多環炭化水素化合物の生成及びその三次元的な積層化が容易に進行し、異方性領域が形成され、炭素前駆体を生成する。当該前駆体は、その後の熱処理で容易に黒鉛材料を与え得る状態となる。また前記異方性領域は炭素質メソフェーズと呼称され、この異方性領域が大きいほど(即ちバルクメソフェーズ状態に近いほど)黒鉛化処理後に結晶構造の完全性が高い黒鉛材料が得られるため、本発明で特定した黒鉛粉末の原料として特に好ましい。
このような有機材料を出発原料として窒素またはアルゴンガスあるいはヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気中、200〜700℃で炭素化した後、最高到達温度900〜1500℃程度の条件で焼成し、易黒鉛化性炭素を生成させる。得られた炭素材料としての、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、熱分解炭素、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチコークス又は石油コークス、若しくはニードルコークス等も易黒鉛化性の炭素材料であり、本発明で特定した黒鉛粉末の原料として好適である。これら易黒鉛化製炭素材料を、不活性ガス雰囲気中、2500℃以上、好ましくは2800℃以上の温度で黒鉛化処理し、必要に応じて粉砕処理及び粒度調製を行うことで、酸化処理・熱処理を行う前段階の黒鉛粉末を得ることができる。また、これら易黒鉛化性炭素材料を粉砕し、必要に応じて粒度調整を行った後に黒鉛化することで得られた黒鉛粉末も好適に使用することができる。
一方、易黒鉛化性炭素材料を黒鉛化した後に粉砕した黒鉛粉末には、黒鉛結晶本来の六方晶系のほか、菱面体晶系黒鉛も導入される。黒鉛結晶の単位格子は六方晶であるが、このような六方晶系黒鉛を粉砕すると、黒鉛層面間の非常に弱い結合を反映して、層面に沿ってせん断変形が生じ、菱面体構造が出現する。層面内の炭素−炭素結合は非常に強く、粉砕によって与えられた力学的なエネルギーを蓄える一環として、平面性の高い六角網平面が一部ずれることで菱面体構造が導入されると考えられている。従って菱面体晶系黒鉛の粒子表面及び結晶子の固相内部には、多量のdangling bondや格子欠陥が生成している。
従って酸化処理・熱処理を行う前段階の黒鉛粉末、及び当該処理後の黒鉛粉末は、菱面体晶系黒鉛の存在比率が低いほど好ましい。菱面体晶系黒鉛は局在電子密度が高く、これら不対電子が高温浮動充電時に溶媒の酸化分解反応を促進するからである。なお、菱面体晶構造及び六方晶構造の存在割合は、X線広角回折法によって得られる回折ピークの強度比を理論強度比と比較することにより算出することが可能である。従って菱面体の存在比率は、好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。
このようにして得られた正極は、導電剤および結着剤と共に混練・成形し、正極合剤として電池内に組み込まれる。この場合、正極の黒鉛材料は元々導電性が高く、導電剤等は不要と考えられるが、電池の用途を考慮し、必要に応じて使用しても構わない。
導電剤としては、通常、各種黒鉛材料およびカーボンブラックが汎用されてきた。本発明に係る非水電解質二次電池の場合は、黒鉛材料が正極として機能するため、導電剤として別の黒鉛材料を混入するのは好ましくない。したがって、導電材を使用するのであれば、導電性カーボンブラック類を使用する方が好ましい。
この導電性カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の何れも使用可能である。
ただし、アセチレンブラック以外のカーボンブラックは石油ピッチまたはコールタールピッチの一部を原料として用いているため、硫黄化合物または窒素化合物等の不純物が多く混入する場合があるので、特にこれらの不純物を除去してから使用する方が好ましい。
アセチレンブラックはアセチレンのみが原料として用いられ、連続熱分解法によって生成されるので不純物が混入し難く、且つ粒子の鎖状構造が発達していて液体の保持力に優れるとともに、電気抵抗が低いため、この種の導電剤として特に好ましい。
これら導電剤と本発明に係る黒鉛材料の混合比率は、電池の用途に応じて適宜設定して構わない。完成電池への要求事項として、特に急速充電特性や重負荷放電特性の向上が挙げられた場合には、本発明に係る黒鉛材料と共に、導電性を付与する作用が十分に得られる範囲内で導電剤を混合して、正極合剤を構成する方が好ましい。ただし、導電剤を必要以上に多く含んだ場合には、その分だけ正極材料の充填量が減少し、容量(体積エネルギー密度)が低下するため好ましくない。
結着剤としては、電解液に対して溶解しないこと、耐溶剤性に優れることが要件となる。この要件に適うものとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素系樹脂、カルポキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸ソーダ等の有機高分子化合物が好適である。
以上のように、正極合剤は、本発明に係る黒鉛材料の他に、結着剤および必要に応じて導電剤等を用いて構成され、混合・成形した後に電池内に組み込まれる。
一方、負極については、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出が可能な材料であれば何れも使用可能である。例えば、リチウム金属、リチウムアルミニウム合金、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、五酸化ニオブ(Nb)、チタン酸リチウム(LiTi12)、一酸化珪素(SiO)、一酸化錫(SnO)、錫とリチウムの複合酸化物(LiSnO)、リチウム・リン・ホウ素の複合酸化物(例えば、LiP0.40.62.9)、等が使用可能である。
負極に、黒鉛材料、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料等の炭素材料を用いた場合は、リチウムの吸威・放出を行う電位が卑で、可逆性が高く、容量が大きいため、本発明へ適用した場合に特に大きな効果を発揮することができる。
炭素材料の例としては、適度な粉砕処理が施された各種の天然黒鉛、合成黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛材料、炭素化処理されたメソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、熱分解炭素、石油コークス、ピッチコークスおよびニードルコークス等の炭素材料、およびこれら炭素材料に黒鉛化処理を施した合成黒鉛材料、またはこれらの混合物等がある。
負極も、以上に例示列挙したような材料と、結着剤および必要に応じて前記導電剤等とを混合・成形して負極合剤を構成し、電池内に組み込まれる。この場合、結着剤および導電剤は、正極合剤を作製する際に使用される前記の例示材料をそのまま使用できる。
非水電解質としては、有機溶媒にリチウム塩を溶解した非水電解液、リチウムイオン導電性の固体物質にリチウム塩を溶解させた固体電解質等を挙げることができる。
非水電解液はリチウム塩を有機溶媒に溶解して調整されるが、これら有機溶媒とリチウム塩も、この種の電池に用いられるものであれば、何れも使用可能である。例示するならば、有機溶媒としてはプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ビニレンカーボネート(VC)、アセトニトリル(AN)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)およびこれらの誘導体、もしくはそれらの混合溶媒等がある。
なお、リチウム塩も、この種の電池に使用されるものであれば何れも適用可能であるが、例示すれば、LiPF,LiBF,LiClO,LiGaCl,LiBCl,LiAsF,LiSbF,LiInCl,LiSCN,LiBrF,LiTaF,LiB(CH,LiNbF,LiIO,LiAlCl,LiNO,LiI,LiBr等がある。
これらの塩の有機溶媒への溶解量は、従来の非水電解質二次電池の場合と同様に0.5〜4.0(mol/L)の範囲で適宜設定して構わないが、好ましくは0.8〜3.5(mol/L)、さらに好ましくは1.0〜3.0(mol/L)とする。
以上のように構成された正極部および負極部とを、リチウム塩が溶解された非水電解質を介した状態で密閉容器内に配置することにより、本発明が適用された非水電解質二次電池が完成する。
<実施形態>
以下、本発明による非水電解質電池の実施形態を具体的に示す。
[1]物性値の測定方法
[1−1]ESRの測定方法
ESR測定は、サンプル管をディフージョンポンプで1時間真空引きにした後、ヘリウムガスを封入した状態で行った。ESR装置はBRUKER社製ESP350Eを、マイクロ波周波数カウンターはHEWLETT PACKARD社製のHP5351Bを、ガウスメータはBRUKER社製のER035Mを、クライオスタットはOXFORD社製のESR910をそれぞれ使用した。
測定は、マイクロ波:9.47GHz,1mW、掃引時間83.886秒×2回、磁場変調100kHz,10Gで行った。測定温度は、296K,280K,240K,200K,160K,120K,80K,40K,20K,10K,4.8Kである。吸収スペクトルの半価幅は、得られたスペクトルをデジタイザーで読み取り、磁場Hに対して1回積分を行って吸収曲線を描写した後、バックグラウンドから図形の高さ1/2位置で図形の巾を磁場単位(gauss)で読み取った。
[1−2]c軸方向の結晶子の大きさLc(112)の算出方法
試料に対して約10重量%のX線標準用高純度シリコン粉末(フルウチ化学(株)社製99.999%)を内部標準物質として加え混合し、試料セルにつめ、グラファイトモノクロメータで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法によって広角X線回折プロファイルを得た。X線管球への印可電圧及び電流は40kV及び40mAとし、発散スリットが2°、散乱スリットが2°、受光スリットが0.3mmに設定し、2θが81°〜89°までを毎分0.25°の速度で走査した。得られた回折図形は、
に従って、2θが83.6°付近に出現する黒鉛材料の(112)回折線の回折角及び半価幅を、2θが88.1°付近に出現するシリコン粉末の(422)回折線によって補正し、c軸方向の結晶子の大きさLc(112)を算出した。
[1−3]平均粒子径(体積平均径:d50)の測定方法
実施例で得られた原料コークス(炭素前駆体含む)及び黒鉛粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装株式会社製MicroTrac MT2000)を使用して測定した。
[2]黒鉛粉末の作製
[2−1]第一の製造方法に関する黒鉛粉末の作成方法
正極の黒鉛粉末として、下記A〜Fの黒鉛を作製した。これらの黒鉛粉末(A〜F)について、ESR法により測定された吸収強度および半価幅、結晶子の大きさLc(112)、平均粒子径を表1に示す。
Figure 2006003858
また、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)を表2に示す。
Figure 2006003858
黒鉛A:
三菱瓦斯化学(株)社製のメソフェーズピッチ1029を昇温速度100℃/時間で800℃まで昇温して1時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷して塊状のピッチコースを得た。このピッチコークスをグラファイト坩堝に入れた。このとき、坩堝壁面および蓋部との隙間には黒鉛粉を敷き詰めた。
この坩堝を電気炉内に設置し、アルゴンガス気流中、昇温速度300℃/時間で3000℃まで昇温して10時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷した。得られた塊状黒鉛の周囲に付着した黒鉛粉をエアガンで取り除き、スタンプミルの粗粉砕およびジェットミルでの微粉砕を行った。得られた粉体を、篩操作で粒度調製し、平均粒子径25.4μmの黒鉛粉末を得た。この黒鉛粉末を黒鉛Aとする。
黒鉛B:
黒鉛Aをグラファイト坩堝に入れ、水素雰囲気中、昇温速度500℃/時間で1000℃まで昇温して2時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Bとする。
黒鉛C:
黒鉛Aをグラファイト坩堝に入れ、窒素雰囲気中、昇温速度500℃/時間で1000℃まで昇温して2時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Cとする。
黒鉛D:
黒鉛Aをグラファイト坩堝に入れ、電気炉内を50torr以下の減圧状態を保った。この状態で、昇温速度500℃/時間で1000℃まで昇温して2時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Dとする。
黒鉛E:
黒鉛Aをグラファイト坩堝に入れ、アルゴン雰囲気中、昇温速度500℃/時間で1000℃まで昇温して2時間保持する。この後、そのまま室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Eとする。
黒鉛F:
黒鉛Aをジェットミルで更に微粉再を行い、平均粒子径3.2μmの黒鉛粉末を得た。この黒鉛粉末を黒鉛Fとする。
[2−2]第二の製造方法に関する黒鉛粉末の作成方法
正極の黒鉛粉末として、下記G〜の黒鉛を作製した。これら黒鉛粉末について、ESR法により測定された、温度296Kでの吸収曲線の半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kでの吸収曲線の半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)、結晶子の大きさLc(112)及び平均粒子径を表3に示す。
Figure 2006003858
黒鉛G:
三菱瓦斯化学(株)社製のメソフェーズピッチ1029を昇温速度100℃/時間で800℃まで昇温し、1時間保持した後、そのまま室温まで放冷し、塊状のピッチコースを得た。この塊状コークスをスタンプミルで一旦粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕して粉末状のコークスを得た。この粉末をグラファイト坩堝に入れ、アルゴンガス雰囲気中、昇温速度300℃/時間で3000℃まで昇温し、1時間保持してからそのまま室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Gとする。
黒鉛H:
黒鉛Gを坩堝に入れ、電気炉内に設置し、空気気流中、昇温速度100℃/時間で600℃まで昇温し、3時間保持した後、室温まで放冷した。次に雰囲気を水素ガス気流に変え、昇温速度100℃/時間で1000℃まで昇温し、1時間保持した後、室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Hとする。
黒鉛I:
アントラセン(東京化成)と9,10−ジヒドロアントラセン(関東化学)をモル比で1:1となるように混合し、当該混合物とポリリン酸を重量比で7:100に混合し、140℃で24時間加熱した。放冷後に蒸留水を加えて更に攪拌し、残留したポリリン酸をリン酸に分解したあと、黒色塊状の樹脂に10重量%の炭酸水素アンモニウム水溶液を加え、リン酸を中和した。残留した黒色塊状の樹脂をメタノールで還流したあと、更にメタノールを使用し、ソックスレー抽出装置で未反応物の抽出を行った。得られた黒色塊状樹脂を昇温速度50℃/時間で800℃まで昇温し、1時間保持してから室温まで放冷して塊状炭素ブロックを作製した。このブロックをスタンプミルで一旦粗粉砕し、続いてジェットミルで微粉砕して炭素粉末とした。この炭素粉末をグラファイトるつぼに入れて電気炉に投入し、窒素気流中3000℃まで昇温・5時間保持したあと室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Iとする。
黒鉛J:
黒鉛Iを坩堝に入れ、電気炉内に設置し、空気気流中、昇温速度100℃/時間で650℃まで昇温し、3時間保持した後、室温まで放冷した。次に雰囲気を窒素ガス気流に変え、昇温速度100℃/時間で1500℃まで昇温し、1時間保持した後、室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Jとする。
黒鉛K:
関西熱化学(株)社製のコールタールピッチPelletを昇温速度100℃/時間で800℃まで昇温し、1時間保持した後、そのまま室温まで放冷し、塊状のピッチコースを得た。このピッチコークスをグラファイト坩堝に入れ、坩堝壁面及び蓋部との隙間に黒鉛粉を敷き詰めた。この坩堝を電気炉内に設置し、アルゴンガス気流中、昇温速度300℃/時間で3000℃まで昇温し、5時間保持してからそのまま室温まで放冷した。得られた塊状黒鉛の周囲に付着した黒鉛粉をエアガンで取り除き、スタンプミルの粗粉砕及びジェットミルでの微粉砕を行った。この黒鉛粉末を黒鉛Kとする。
黒鉛L:
黒鉛Kを坩堝に入れ、電気炉内に設置し、空気気流中、昇温速度100℃/時間で650℃まで昇温し、3時間保持した後、室温まで放冷した。次に電気炉内を10torr以下が保持されるような減圧状態とし、昇温速度100℃/時間で1000℃まで昇温したあと、1時間保持して室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Lとする。
黒鉛M:
三菱瓦斯化学(株)社製のメソフェーズピッチ1029を昇温速度100℃/時間で800℃まで昇温し、1時間保持した後、そのまま室温まで放冷し、塊状のピッチコースを得た。このピッチコークスをグラファイト坩堝に入れ、坩堝壁面及び蓋部との隙間に黒鉛粉を敷き詰めた。この坩堝を電気炉内に設置し、アルゴンガス気流中、昇温速度300℃/時間で2800℃まで昇温し、5時間保持してからそのまま室温まで放冷した。得られた塊状黒鉛の周囲に付着した黒鉛粉をエアガンで取り除き、スタンプミルの粗粉砕及びジェットミルでの微粉砕を行った。この黒鉛粉末を黒鉛Mとする。
黒鉛N:
水酸化カリウム粉末をスタンプミルで粉砕し、得られた微粉末と黒鉛Mを重量比で1:1に混合した。混合粉を坩堝に入れ、電気炉内に設置し、アルゴンガス気流中、昇温速度100℃/時間で800℃まで昇温し、5時間保持したあと、続けて1500℃まで100℃/時間の速度で昇温し、5時間保持してから室温まで放冷した。この黒鉛粉末を黒鉛Nとする。
[3]電池の作製
図3は作製した非水電解質二次電池の断面図を示す。同図に示す電池18650型リチウム二次電池として構成されている。正極部11と負極部13はそれぞれ次のように作製した。
[3−1]正極部11
正極材料である黒鉛粉末と結着剤のカルボキシメチルセルロース(第一工業薬品(株)セロゲン4H)を重量比で97:3に混合し、イオン交換水を加えてペースト状にした。これを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥および圧延操作を行い、幅56mmに切断して帯状のシート電極となるように作製した。アルミニウム箔は集電体を形成する。
このシート電極の一部は長手方向に対して垂直に合剤が掻き取られ、ここにアルミニウム製正極リード板44が超音波溶接で取り付けられている。使用した黒鉛粉末は、前述の黒鉛A〜Nであり、材料ごとに電池を作製した。電池の名称は、黒鉛の名称に揃え、黒鉛Aを正極に使用した電池は、電池Aと呼称する。
[3−2]負極部13
負極材料である難黒鉛化性炭素材料(呉羽化学(株)社製のPIC)とポリフッ化ビニリデン樹脂(呉羽化学(株)社製のKF#1100)を重量比で95:5に混合し、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリジノンを加えてペースト状に混練した。これを厚さ14μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥および圧延操作を行い、幅54mmに切断して帯状のシート電極を作製した。
このシート電極の一部はシートの長手方向に対して垂直に合剤が掻き取られ、ここにニッケル製負極リード板5が超音波溶接で取り付けられている。
上記正極部11と負極部13を、ポリオレフィン系セパレータ12を介して渦巻き状に巻回する。この巻回電極をステンレス製の電池ケース51内に挿入する。セパレータ12にはポリエチレン製マイクロポーラスフィルムを用いた。負極リード板45は電池ケース51の円形底面の中心位置に抵抗溶接した。電池ケース51は負極端子と負極ケースを兼ねる。53はポリプロピレン製絶縁底板で、巻回時に生じる空間と同面積になるように穴が開いている。
以上の工程の後、電解液を注入する。使用した電解液、プロピレンカーボネート(PC)とエチルメチルカーボネート(EMC)が 体積比で1:4に混合された溶媒に2mol/Lの濃度でLiPFが溶解されたものである。
この後、正極リード板44をアルミニウム製基部54にレーザー溶接する。さらに、電流遮断機構を備えた防爆型蓋要素をガスケット55と共に嵌合し、ケース51の封口を行う。防爆型蓋要素は、金属製の正極端子板56と、中間感圧板57と、上方に突出する突部58および基部54からなる導電部材(58,54)と、絶縁性のガスケット55とを有する。
中間感圧板57と基部54の間には固定版59が設置されている。正極端子板56および固定板59にはガス抜き穴(図示省略)が形成されている。導電部材(58,54)は、固定板59の上面部に突部58の上面部が露出するとともに、固定板59の下面側に基部54下面が露出する。
電池ケース51の開口部分の内周にはガスケット55が嵌入されている。ガスケット55の内周には固定板59がはめ込まれている。固定板59の上には中間感圧板57と正極端子板8とが積層されている。
導電部材(58,54)と中間感圧板57とは、導電部材(58,54)の突部58で両者が接続し、その接続部60を含む接触部分でのみ両者が導通している。正極リード板44は、その先端が導電部材(58,54)の基部54に接続されている。ガスケット55は、電池ケース(負極ケース)51の開口部分が内側にかしめられることで圧縮される。これにより、電池ケース51が上記蓋要素で密閉されている。
電池ケース51の内部が所定の内圧に達すると、外側に膨出した中間感圧板57が、導電部材(58,54)の突部58との接続部60の周囲で破断させられる。これにより、正極リード板44と正極端子板56との導電経路が遮断されるようになっている。
ポリプロピレン製絶縁底板53には、巻回時に生じる空間と同面積になるように穴が開いている。この絶縁版53は、巻回状電極群と正極リード板が短絡しないように挿入されている。
[4]放電容量確認試験
得られたセルを25℃に設定された恒温槽に入れ、充放電を開始した。第1サイクル目の充電は、セルに充填された全正極重量を基準とし、50(mA/g)の電流密度に相当する電流値で、15(mAh/g)に相当する電気容量を充電した。充電時間は18分である。
この後、同じ電流値でセル電圧が3.0Vになるまで放電した。以後、第10サイクル目までは、第1サイクル目と同じ充放電電流で、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vとした定電流の充放電サイクルを行った。
第11サイクル目からは、電流値1A、電圧4.2V、時間10分とした定電流/定電圧充電を行い、1Aの定電流で放電を行う充放電サイクルを10回繰り返した。ここで、第20サイクル目の放電容量を60℃浮動充電試験前の放電容量と見なし、浮動充電試験、およびその後の充放電試験より得られる放電容量と比較する基準とした。各仕様の最終のサイクル、すなわち第20サイクル目の放電容量は前掲の表2に示す。
[5]60℃での浮動充電試験の方法
第21サイクル目に浮動充電試験を行った。セルを60℃の恒温槽内に設置してから5時間放置し、5時間後に浮動充電を開始した。充電条件は、第11〜20サイクル目に行った充電方法と同じであるが、充電時間だけを100時間とした。その後セルを1分間だけ休止させ、60℃を保持したまま、第11〜20サイクル目に行った放電方法と同じ条件で放電させた。
[6]浮動充電試験後の放電容量確認試験
セルを25℃の恒温槽に移し、5時間放置した後、第11〜20サイクル目に行った充放電方法と同じ条件で、10サイクルの充放電を行った。前記[4]および[5]の充放電サイクルは、合計で31サイクルである。
第31サイクル目に得られた放電容量は、60℃浮動充電を行った後に得られた放電容量と見なし、60℃浮動充電が及ぼした影響を定量的に把握するための基準とした。すなわち、この容量は何れも第20サイクル目、すなわち60℃の浮動充電試験前に得られた放電容量よりも低く、浮動充電後の容量維持率(回復率)は以下の式で算出した。
(容量維持率)=(第31サイクル目の放電容量)/(第20サイクル目の放電容量)×100
電池A〜Fの浮動充電後の容量維持率は表2に示す。
[7]実施例の結果と概要
[7−1]第一の製造方法に関する実施例
図4に各黒鉛粉末(A〜F)における吸収強度(前記ESR法により測定された吸収強度)の温度依存性を示す。何れの黒鉛材料も296Kから40Kまでの温度領域では、吸収強度の温度依存性は認められず、温度が低下しても吸収強度に変化は無かった。
しかし、20K以下の極低温領域では、温度の低下と共に吸収強度が急激に増大していた。したがって、ESRの吸収スペクトルは、40K程度まで伝導電子の寄与が大きいと予測される。また、20K以下の極低温領域で温度の低下と共に吸収強度が急激に増大する理由は、伝導電子の寄与に変化は無いが、局在電子の寄与が加算されたためである。
温度40KでのESRの吸収強度は、ほとんどが伝導電子の寄与であるが、局在電子の寄与も少なからず存在すると考えられ、その寄与の大きさは半価幅の変化で把握することが可能である。
図5に各黒鉛粉末(A〜F)の半価幅の温度依存性を示す。例えば、黒鉛AとBを比較すると、120K以上の温度領域では、吸収強度・半価幅共に大きな差はない。しかし、80および40Kの温度では、黒鉛Bの半価幅の方が広くなっている。しかも図4の吸収強度に大きな差は認められない。この原因は、黒鉛Aの方が局在電子を多く含んでいるため、その寄与が80および40Kという、局在電子の寄与が吸収強度に出現しない温度でも、半価幅には局在電子の影響が強く反映したからである。しかし、その寄与が極めて僅かであるため、図4の吸収強度には反映されるまでには至らない。
以上のように、温度40KはESR吸収強度に局在電子の寄与が出現し始める温度であり、その寄与の影響が最も出現するのは吸収ピークの半価幅である。同温度での半価幅を、局在電子の影響がほとんど出現しない室温付近での吸収ピークの半価幅と比較することにより、局在電子の伝導電子に対する影響の大きさを把握することが可能となる。
すなわち、温度296Kで測定された吸収ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)は、伝導電子に対する局在電子の寄与の大きさを把握する手法として大変有用である。
前掲の表2に60℃での浮動充電試験の結果を示した。また、図6に、正極黒鉛粉末の前記相対比率(ΔH40K/ΔH296K)と高温浮動充電後の容量維持率の関係を示す。表2より、第20サイクル目の容量は何れのセルも同様で、差が認められなかった。
図6に相対比率(ΔH40K/ΔH296K)と容量維持率の関係を示す。
黒鉛Fの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)は全サンプルの中で最も低く、伝導電子の数に対する局在電子の数の割合が大きかったと予測される。このため正極黒鉛粉末の表面で電解液の酸化分解反応が促進され、ガス発生が生じたと考えられる。
基準となる黒鉛Aに対し、水素雰囲気または減圧状態で熱処理した黒鉛BおよびDは、黒鉛Aよりも相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が高く、浮動充電後の容量維持率が向上した。特に水素雰囲気で熱処理した黒鉛Bは、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が最も高く、且つ容量維持率も最高値であった。
逆に、黒鉛Aを窒素雰囲気またはアルゴンガス雰囲気で熱処理した黒鉛CおよびEは、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が黒鉛Aよりも低下し、容量維持率も低下した。
以上のように、浮動充電試験後の容量維持率は、正極黒鉛粉末の前記相対比率(ΔH40K/ΔH296K)に強く依存し、当該比率が2.1以上であれば60℃浮動充電後の容量維持率が87.5%以上となり、黒鉛Aよりも高い値が得られた。
[7−2]第二の製造方法に関する実施例
図6に相対比率(ΔH40K/ΔH296K)と容量維持率との関係を示す。
黒鉛Gを空気酸化して酸素を含む官能基を導入し、水素雰囲気で熱処理したのが黒鉛Hである。酸化処理及び水素熱処理を行うことで、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)は2.0から3.6に向上した。酸化処理及び熱処理で伝導電子の数に対する局在電子の数が減少したと考えられる。電池Gの容量維持率は78.5%であったのに対し、電池Hのそれは96.2%となり、容量維持率は大幅に向上した。
黒鉛Iは酸化処理及び熱処理を行っていなかったにも拘らず、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)は2.1となり、電池Iの容量維持率は87.5%を達成した。酸化処理及び熱処理を行っていない他の黒鉛粉末G,M,Kよりも相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が高く、且つ電池G,M,Kより容量維持率が高い値である。このように、本発明の黒鉛粉末を得るためには、酸化処理及び熱処理が必ずしも必要ではないが、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が本発明の範囲内であれば、電池の容量維持率が87%以上を達成することが出来る。この黒鉛Iを空気酸化して酸素を含む官能基を導入し、窒素雰囲気で熱処理したのが黒鉛Jである。黒鉛Jは黒鉛Iに対して相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が更に高くなり、また電池Jは電池Iよりも容量維持率が更に向上した。
黒鉛Kを空気酸化して酸素を含む官能基を導入し、10torr以下の減圧下で熱処理したのが黒鉛Lである。黒鉛Lは黒鉛Kに対して相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が高く、また電池Lは電池Kよりも容量維持率が向上した。また黒鉛MをKOHと共に熱処理することで酸素を含む官能基を導入し、窒素雰囲気で熱処理したのが黒鉛Nである。何れも酸化処理及び熱処理を行うことで相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が向上し、電池の正極材料として使用した場合、容量維持率の向上が認められた。
以上のように、第二の製造方法、即ち黒鉛粉末に酸化処理及び熱処理を行うことで、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が向上し、その黒鉛粉末を正極に使用することで電池の容量維持率を向上させることが可能となった。また酸化処理及び熱処理を行わない黒鉛粉末G,K,Mは相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.0以下となり、本発明の範囲を外れ、正極に使用した電池の容量維持率が80%以下となり好ましくない。
これに対して酸化処理及び熱処理を行い、本発明の範囲内、即ち相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上となった黒鉛H,J,L,N、を正極に使用した電池は、容量維持率が90%以上となり、浮動充電後の容量維持率が向上している。また第二の製造方法を適用しなくても相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1となった黒鉛Iを使用した電池も、浮動充電後の容量維持率が87.5%となり、他の黒鉛G,M,Kよりも容量維持率が向上した。
以上のように、相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上の黒鉛粉末を電池の正極材料に使用することで、その電池の浮動充電後の容量維持率を、少なくとも87.5%以上に向上させることが可能であることが分かった。本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。
以上、本発明をその代表的な実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した以外にも種々の態様が可能である。
日本学術振興会第117委員会,炭素,25,36(1963)
本発明によれば、高温浮動充電後の充放電サイクルにおいても容量劣化が抑制された非水電解質二次電池を提供することができる。

Claims (1)

  1. 黒鉛粉末からなる正極と、リチウム金属またはリチウムの吸蔵・放出が可能な材料からなる負極とが、リチウム塩を含んだ電解質を介して対向した非水電解質二次電池において、上記正極は、Xバンドを用いて測定された電子スピン共鳴法において、3200〜3400gaussの範囲に出現する炭素由来の吸収ピークを有し、温度296Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH296Kに対する、温度40Kで測定された当該ピークの半価幅ΔH40Kの相対比率(ΔH40K/ΔH296K)が2.1以上であることを特徴とする非水電解質二次電池。

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