本発明は複数の無線通信方式に対応可能な無線通信装置に関するものである。
従来の無線通信装置において、一つの装置で複数の通信方式に対応可能とする構成としては、複数の通信方式の各々において通信可能な無線部を各々用意しておき、必要に応じて使用する無線部を切り換える構成を用いるものがあった(例えば、特許文献1参照)。図1は、特許文献1に記載された従来の無線通信装置と同様の構成を示すものである。
図1において、方式1対応無線部902は、第1の通信方式に対応するアンテナ901と接続され、第1の通信方式に対応した所定の無線信号処理を行うものである。方式2対応無線部904は、第2の通信方式に対応するアンテナ903と接続され、第2の通信方式に対応した所定の無線信号処理を行うものである。上位レイヤ処理部905は、例えばCPU(中央演算ユニット)により構成され、第1の通信方式1と第2の通信方式のうちどちらの方式により通信を行うかの判断や、各々の通信における上位レイヤでの処理等を行うものである。すなわち、図1に示す無線通信装置は、あらかじめ複数の通信方式に対応するモジュールをそれぞれ用意しておき、必要に応じて、どちらかの方式を選択して通信を行うようになっている。
また、複数の通信方式に一つの無線装置で対応が可能な、いわゆるソフトウェア無線機の構成をとるものもある(例えば特許文献2参照)。図2は、特許文献2に記載された従来のソフトウェア無線機により構成された無線通信装置のディジタル信号処理部と同様の構成を示すものである。
図2の装置構成において、ディジタル信号処理部910は、受信時には、アナログ・ディジタル変換部911が、RF信号、IF信号、ベースバンド信号等のアナログ受信信号を無線部から受け取り、量子化してディジタル信号に変換し出力する、いわゆるA/D変換処理を行う。得られたディジタル信号は必要に応じてI/Oバッファ912において一時的に蓄積され、必要に応じて読み出されバス913へ供給される。供給されたディジタル信号は、FPGA(Field Programmable Gate Array)部914とDSP(Digital Signal Processor)部915において、所定のプログラムに基づいて受信用のディジタル信号処理が施され、得られた受信データ列がアプリケーション処理を行うブロック(例えばCPU部)等へ供給される。
また送信時には、アプリケーション処理部からバス913を介して供給された送信データが、FPGA部914とDSP部915において、所定のプログラムに基づいて送信用のディジタル信号処理が施される。得られた送信信号は、必要に応じてI/Oバッファ912に一時的に蓄積され、必要に応じて読み出され、アナログ・ディジタル変換部911において送信用のベースバンド信号、IF信号、RF信号等のアナログ信号に変換され、無線部へ供給される。なお、特許文献2では、このようなディジタル信号処理部910と、無線部とが接続されてソフトウェア無線機が構成されている。
ここで、FPGA部914とDSP部915において実行される所定のプログラムとは、例えばDSP用のソフトウェアプログラムであったり、FPGAにおける回路構成を記述したプログラムであったりする。これらのプログラムは、内容の書き換えが可能なメモリに蓄積されており、装置の起動時や必要に応じて読み出しが可能なものである。ディジタル信号処理部910は、FPGA部914やDSP部915に対し、必要に応じて異なるプログラムを読み込んで実行させることにより、異なる通信方式に対応させることが可能となる。
特開2000−216698号公報(第6頁、図1) 特開2001−189675号公報(第7頁、図1)
しかしながら、前記従来の図1に示すような構成では、複数の通信方式に対応して通信を行うために、あらかじめ複数種類の通信方式のそれぞれに対応した無線部を用意しておく必要があり、装置サイズや製造コストの面でデメリットを有するという課題を有していた。特に、対応すべき通信方式の種類が多い場合にこの課題は顕著となる。
この課題を解決するための一手法として、図2に示すようなソフトウェア無線機の構成が開示されているが、図2で示した構成では、同時に通信を行えるのはあくまでも一つの通信方式における一無線処理系統のみである。特に、複数の無線処理系統を用いたダイバーシチ通信やMIMO(Multi−Input Multi−Output)チャネル伝送、アンテナアレイ構成によるビームフォーミングを用いた通信や、複数の通信方式と同時に通信をすることについては配慮がされていなかった。さらには、上記の様々な通信形態を、状況に応じて切り換え制御することについても配慮がされていなかった。
本発明の目的は、複数の通信方式に対して同時に通信可能、あるいは一つの通信方式において、複数の無線処理系統を介して通信可能な無線通信装置を提供することである。さらには、通信リンクの状況やユーザの要求条件に応じて、適切な通信方式及び形態を選択して切り換え制御し通信を行うことにより、より高効率かつ信頼性の高い通信環境を実現可能な無線通信装置を提供することである。
かかる課題を解決するため、本発明の無線通信装置は、複数のアンテナと、各アンテナに対応して設けられた複数のリコンフィギュラブル無線処理部と、複数のリコンフィギュラブル無線処理部をそれぞれ独立に制御して、各リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を独立に変更する制御部とを具備する構成を採る。
この構成によれば、例えば通信リンクの品質やユーザの要求に応じて、単独の通信方式のみでのダイバーシチ送受信を行うモード、MIMOチャネルにおける空間多重伝送を行うモード、複数の通信方式の間でのダイバーシチ伝送を行うモード、又は、単独の通信方式のみで伝送を行うモード等の複数の伝送モードの中から、所望の伝送モードを適宜選択して通信を行うことができるようになる。この結果、各々の通信方式との間で時々刻々変化する通信リンクの品質やユーザの要求に応じて、適切な通信方式及び伝送モードにより通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
本発明の無線通信装置によれば、各々の通信方式との間で時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、適切な通信方式及び伝送モードを都度選択して通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上することができる。
[図1]従来のマルチモード無線機の構成例を示すブロック図
[図2]従来のソフトウェア無線機の構成例を示すブロック図
[図3]本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図
[図4]リコンフィギュラブルRF部の構成例を示すブロック図
[図5]リコンフィギュラブルディジタル信号処理部の構成例を示すブロック図
[図6]実施の形態1における伝送モード選択用テーブルの一例を示した図
[図7]実施の形態1の無線通信装置の起動時および通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャート
[図8]実施の形態1の無線通信装置の通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャート
[図9]実施の形態1の無線通信装置の通信動作状態における通信制御手順の一例を示すフローチャート
[図10]実施の形態1における通信品質情報の変換テーブルの一例を示した図
[図11]実施の形態2の無線通信装置の構成を示すブロック図
[図12]実施の形態2における伝送モード選択用テーブルの一例を示した図
[図13]実施の形態3の無線通信装置の構成を示すブロック図
[図14]実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の構成例を示すブロック図
[図15]実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
[図16]実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
[図17]実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
[図18]実施の形態3における無線通信装置の別の構成例を示すブロック図
[図19]他の実施の形態の無線通信装置の構成を示すブロック図
[図20]他の実施の形態の無線通信装置の構成を示すブロック図
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1における無線通信装置の構成例を示した図である。無線通信装置100は、複数の通信方式に対応可能とされており、本実施の形態では一例として、セルラ系の通信方式Aと無線LAN系の通信方式Bとに対応可能な無線通信装置である。また、各々の通信方式における伝送速度として、無線LAN系の通信方式Bの方が、セルラ系の通信方式Aよりも、伝送速度が高速である場合を仮定する。
図3において、アンテナ101(101a、101b)は無線伝搬路を介して伝送された無線信号を受信し、得られた高周波信号を出力するとともに、送信用に供給された高周波信号を無線伝搬路へ放射するものであり、特に複数の通信方式が用いるRF周波数帯に対応することを特徴とする。このようなアンテナの構成としては、例えば対象とする複数の通信方式が用いる周波数帯の全てを包含する広帯域特性を有するアンテナや、対象とする複数の通信方式が用いる周波数帯の各々に対して、電圧定在波比を低くして、放射効率を高めるように構成した複共振型のアンテナを用いるとよい。また、電気的制御が可能なスイッチや可変容量素子などを用いて、アンテナ素子の電気長や共振モードを変化させて共振周波数を制御する、あるいは周波数の異なる複数のアンテナ素子を備えておきスイッチで切替えるなどして構成した、複数の周波数帯に適応可能な周波数制御型のアンテナ等を用いるとよい。なお、アンテナとして前記周波数制御型のアンテナを用いる場合には、後述する対応する通信方式を変更するための制御信号113を、前記アンテナにも供給する構成とする。
リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)は、アンテナ101から供給された高周波信号を入力とし、所望の周波数帯の信号を選択増幅した上で、所望の復調処理や復号処理を行い、得られた受信データを上位レイヤ処理部103へ出力するとともに、送信用のデータに対し所望の符号化処理や変調処理を行った上で、所望の周波数帯への周波数変換、および増幅を行い得られた送信高周波信号をアンテナ101へ供給する。加えて、リコンフィギュラブル無線処理部102は、機能変更用の制御信号113(113a、113b)に応じて、その機能及び特性が変更可能なものである。
本発明の無線通信装置は、前記アンテナ101及びリコンフィギュラブル無線処理部102による無線処理系統を複数もつ構成とされている。すなわち、無線通信装置100は、複数のアンテナと複数のリコンフィギュラブル無線処理部を有する。本実施の形態では、一例として2つの無線処理系統を設けた場合について説明する。図3では、第1の系統を構成する要素に付した番号の末尾にaを付し、第2の系統を構成する要素に付した番号の末尾にbを付している。リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)は、リコンフィギュラブルRF部1021とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022により構成される。
リコンフィギュラブルRF部1021は、受信処理として、アンテナ101から供給された高周波信号を入力とし、所望の周波数帯の信号を選択増幅及び周波数変換処理し、得られた信号を出力する。またリコンフィギュラブルRF部1021は、送信処理として、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022から供給される変調信号に対して、所望の周波数帯への周波数変換、増幅やフィルタリング等の処理を行い、得られた送信信号をアンテナ101へ供給する。さらに、リコンフィギュラブルRF部1021は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、搬送波周波数や変換利得が、制御信号に応じて制御可能であるとする。
図4に、リコンフィギュラブルRF部1021の構成例を示す。リコンフィギュラブルRF部1021は、リコンフィギュラブル送信部10211、リコンフィギュラブル受信部10212及びリコンフィギュラブル局部発振部10213により構成されている。
リコンフィギュラブル送信部10211は、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022より供給される変調信号を、アンテナ101から放射する高周波信号に変換する役割があり、ベースバンドの変調信号から高周波信号への周波数変換及び送信信号レベルへの増幅といった機能を有する。さらにリコンフィギュラブル送信部10211は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。一般にセルラや無線LANといった無線システムでは、電波法令や標準規格によって使用する通信方式、周波数帯域、送信電力などの項目が制限されている。リコンフィギュラブル送信部10211は、高周波信号の周波数帯域や送信電力が制御信号113によって制御可能であり、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成となっている。これにより、種々の電波法令や標準規格に準じた送信信号を形成することができる。また、通信方式によって変調精度、スプリアス輻射量、隣接チャネル漏洩電力量などの特性の許容値も異なるが、これらの特性値についても、制御信号113によって構成要素である回路の動作を最適に調整することで、適応可能となっているものとする。リコンフィギュラブル送信部10211における構成要素には電力増幅器、アップコンバータ、フィルタ、変調器などの回路があるが、リコンフィギュラブル送信部10211は、制御信号113に応じて、これらの回路中の素子のインピーダンスや能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは各々の通信方式について最適化した回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブル受信部10212は、アンテナ101から供給された高周波信号を、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022が処理可能なより低い周波数のアナログ信号に変換する役割があり、高周波信号からベースバンドのアナログ信号への周波数変換及び搬送波周波数の同調選択、微弱な受信信号の増幅といった機能を有する。さらにリコンフィギュラブル受信部10212は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。一般に受信する信号のレベルは常に一定ではなく、受信場所と通信対象の遠近や移動の有無などの要因によって大きく変化することが想定され、この変化は利用する無線システムによっても異なる。リコンフィギュラブル受信部10212は、受信した高周波信号を、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022が処理可能な周波数及び信号レベルに変換する際の変換周波数や変換利得などが、制御信号113によって制御可能であり、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成とされている。これにより、複数の無線システムに適応した処理を行うことができるようになっている。また、一般にセルラや無線LANといった無線システムでは、主に標準規格によって受信信号のダイナミックレンジや対処可能な妨害波レベルといった規定がなされているが、これらの特性値についても、制御信号113によって構成要素である回路の動作を最適に調整することで適応可能となっているものとする。リコンフィギュラブル受信部10212における構成要素には、低雑音増幅器、ダウンコンバータ、フィルタ、復調器などの回路があるが、リコンフィギュラブル受信部10212は、制御信号113に応じて、これらの回路中の素子のインピーダンスやフィルタの同調周波数、能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは各々の通信方式について最適化した回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブル局部発振部10213は、リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212における周波数変換に必要な周波数及び信号レベルの局部発振信号を発生する機能を有する。さらにリコンフィギュラブル局部発振部10213は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。リコンフィギュラブル局部発振部10213の構成要素は、高安定な水晶発振器などの基準発振器や周波数が可変な発振器、位相同期回路、増幅器などの回路である。リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212において、周波数変換を行うアップコンバータやダウンコンバータは、一般にミキサ回路によって構成され、変換前後の信号の和又は差の周波数成分を主とする局部発振信号を必要とする。セルラ系や無線LAN系の無線システムでは、利用可能な搬送波周波数が異なり、UHF帯からマイクロ波帯にかけて広範に亘る。リコンフィギュラブル局部発振部10213は、制御信号113によって局部発振信号の周波数が広範に設定可能で、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系に適応可能な構成とされている。これにより、複数の通信方式に対応した局部発振信号を形成することができる。リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212において、アンテナ101から放射する高周波信号とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022で処理するアナログ信号との間の周波数変換方法には、代表的なものに直接変換するダイレクトコンバージョン方式と中間周波数を介して数回に分けて変換するスーパヘテロダイン方式があり、前者では搬送波周波数と同じ周波数成分を有する局部発振信号が、後者の場合には異なる複数の局部発振信号が必要となる。また、直交ミキサを利用する構成では、90度の位相差を有する信号を得るために、直交ミキサの周波数変換に必要な周波数の2倍乃至4倍の周波数成分を有する局部発振信号が必要となる場合もある。以上のように、広帯域な局部発振信号を生成する必要があるが、リコンフィギュラブル局部発振部10213は、制御信号113に応じて、発振器を構成する共振素子の素子値や能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは逓倍回路や分周回路を利用する、もしくは所望の発振周波数帯域を複数に分割して、各周波数帯域について最適化した発振回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって、これらの局部発振信号を形成することが可能となっている。また、リコンフィギュラブル局部発振部10213においては、通信方式によって異なる位相雑音などの特性の要求に対しても、発振器の調整に加えて位相同期回路のループフィルタ定数を制御するなどして、特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022(1022a、1022b)は、受信処理として、入力された変調信号を量子化してディジタル信号に変換した上で、所定の方式に対応した復調処理及び復号処理等のディジタル信号処理を行い、得られた受信データを上位レイヤ処理部103へ出力すると共に、受信品質の収集に必要となる受信信号110を制御部104へ出力する。またリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、送信処理として、入力された送信データに対して所定の方式に対応した符号化処理や変調処理を施した上で、得られたディジタル変調信号をアナログ信号に変換し、リコンフィギュラブルRF部1021へ出力する。さらにリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、送受信処理の際の変調方式や符号化方式と、それに付随するインタリーブやスクランブル処理、さらにはアナログ・ディジタル変換におけるサンプリングレートが、制御信号に応じて変更可能な構成であることとする。
図5に、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022の構成例を示す。リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、アナログ・ディジタル変換部10221、リコンフィギュラブル送信処理部10222及びリコンフィギュラブル受信処理部10223により構成されている。
アナログ・ディジタル変換部10221は、受信時には、リコンフィギュラブルRF部1021から供給される受信アナログ信号を、所定の量子化ビット数及びサンプリングレートで量子化し、これにより得たディジタル信号をリコンフィギュラブル受信処理部10223に出力する。一方、アナログ・ディジタル変換部10221は、送信時にはリコンフィギュラブル送信処理部10222から供給されるディジタル変調信号を、所定のビット数及びサンプリングレートでアナログ信号に変換し、送信アナログ信号をリコンフィギュラブルRF部1021へ出力する。
リコンフィギュラブル送信処理部10222は、入力された送信データに対して所定の方式に対応した符号化処理や変調処理を施し、これにより得たディジタル信号をアナログ・ディジタル変換部10221に供給する。さらにリコンフィギュラブル送信処理部10222は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、送信処理の際の変調方式や符号化方式と付随するインタリーブやスクランブル処理の方式を、制御信号113の内容に応じて通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成であることとする。
リコンフィギュラブル受信処理部10223は、入力されたディジタル信号に対し、所定の方式に対応した復調処理及び復号処理等のディジタル信号処理を行い、これにより得た受信データを上位レイヤ処理部103へ出力すると共に、受信品質の収集に必要となる受信信号110を制御部104へ出力する。さらにリコンフィギュラブル受信処理部10223は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、受信処理の際に対応する変調方式や符号化方式と付随するインタリーブやスクランブル処理の方式を、制御信号113の内容に応じて、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成であることとする。
この実施の形態の場合、リコンフィギュラブル送信処理部10222とリコンフィギュラブル受信処理部10223の各々は、例えばFPGAデバイスにより構成されており、内部回路の構成を記述した設定データを書き換えることにより、その構成及び動作内容が変更可能とされている。
上位レイヤ処理部103は、送信時には、通信する相手局へ送信するデータを生成し、これを複数のリコンフィギュラブル無線処理部102に供給する。また上位レイヤ処理部103は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102から出力される受信データを入力し、対応するアプリケーションでの処理等の上位層における処理を行う。上位レイヤ処理部103は、例えばCPU等の汎用プロセッサにより構成されている。
制御部104は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)のそれぞれから得られる通信リンク品質に関する情報110(110a、110b)に基づいて、各リコンフィギュラブル無線処理部102による系統で対応すべき通信方式及び伝送モードを決定し、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102に対して、機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する。本実施の形態における制御部104は、通信品質情報収集部1041と、通信動作制御部1042と、機能変更制御部1043とを有する。
通信品質情報収集部1041は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102の各々で受信復調処理の際に得られた信号110(110a、110b)を用いて、各系統における通信リンク品質に関する情報を収集し、収集した通信品質情報111を通信動作制御部1042に出力する。本実施の形態の場合、通信品質情報収集部1041は、各リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)において得られた直交復調信号を受信信号110として用い、対象となる通信方式が存在するか否かの検出を行うとともに、システムが存在する場合には、通信品質情報として受信CNR(搬送波電力対雑音電力比)値を推定する。受信CNR値の推定方法については、本発明で特に限定されるものではないが、例えば受信結果として得られた信号点ベクトルの平均信号点ベクトルの電力値と、平均信号点ベクトルを基準とした各ベクトルの分散値との比により算出する方法や、最尤系列推定や最尤復号が行われる方式では、その際のメトリック値から等価的な受信CNR値を推定する方法等が適用可能である。
通信動作制御部1042は、通信品質情報111に基づき、各リコンフィギュラブル無線処理部102が対応すべき通信方式及びその方式における伝送モードを選択し、選択結果112を出力する。その具体的な選択条件と手順の例については後述する。
機能変更制御部1043は、通信動作制御部1042から出力される通信方式及び伝送モードの選択結果112に基づいて、リコンフィギュラブル無線処理部102における各構成要素の機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する。本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部102がセルラ系の通信方式Aと無線LAN系の通信方式Bとに対応可能な構成としているので、機能変更制御部1043からは、リコンフィギュラブル無線処理部102を、これらの通信方式のうち、いずれかの通信方式へ切り換えることを示す制御信号113が出力される。
この結果、無線通信装置100は、各リコンフィギュラブル無線処理部102が、どの通信方式に対応する機能に変更されるかに応じて、図6に示すような複数の伝送モードのうちのいずれかの伝送モードが選択的に設定されるようになされている。これにより、無線通信装置100においては、複数の伝送モードの中から、電波伝搬環境等に応じて、最適な伝送モードを選択できるようになる。なお図6に示す各伝送モードの詳細については後述する。
以上のような構成による無線通信装置100により、通信方式Aと通信方式Bとを用いて、所望のアプリケーションデータの通信を行う動作の一例として、装置の起動時、通信待機時、通信時の3通りに分け、以下で説明する。
図7は、無線通信装置100の電源投入による、起動時および通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャートである。装置の電源が投入されると、リコンフィギュラブル無線処理部102aは、制御部104からの制御信号113aに基づいて、通信方式Aに対応するように機能が設定され、またリコンフィギュラブル無線処理部102bは、制御部104からの制御信号113bに基づいて、通信方式Bに対応するように機能が設定される(ステップ101)。各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bの無線処理系統では、それぞれの通信方式のサービス環境下にあるか否かの検出が行われる(ステップ102)。前記検出結果に基づき、通信待機時の動作内容が以下のように判定される。双方の通信方式のサービスが検出された場合(ステップ103)、それぞれの通信方式ともに通信待機の状態へ移行する(ステップ104)。どちらか一方の通信方式のサービスのみ検出された場合(ステップ105、107)には、検出された通信方式については通信待機状態へ移行し、そうでない通信方式については、引き続き通信方式の検出を定期的に実施する(ステップ106、108)。双方ともに通信方式の存在が検出できなかった場合には、引き続き定期的に双方の通信方式の検出を実施する(ステップ107)。なお、この場合には、装置の消費電力を低減するため、一方のリコンフィギュラブル無線処理部のみを動作させ、定期的に通信方式Aと通信方式Bとに機能を切り換えた上で、通信方式の検出動作を行ってもよい。
図8は、通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャートであり、以下で各々の動作について順を追って説明する。
通信待機時には、待機対象となっている通信方式において、他局からの通信要求があるか否か、もしくは自局における上位レイヤ処理部において、他局への通信要求が発生しているか否かを検出することにより、通信要求の有無を検出し、通信要求が検出された場合には通信動作状態(ステップ115)へ移行し、そうでない場合にはステップ112へ移行する(ステップ111)。ステップ112では、待機対象となっている通信方式における所定の方法により、定期的にシステム制御情報の送受信や通信品質情報111の収集を行う。なお、ステップ111とステップ112は縦列に表現されているが、必ずしも双方が、縦列的に実施される必要はなく、それぞれ並列的に、もしくは異なる周期で実施するようにしてもよい。ここで、例えばリコンフィギュラブル無線処理部102aにおいて、通信方式Aとの間のシステム制御情報の送受信が、間欠動作により、一部の時間しか行われていないような状況下では、リコンフィギュラブル無線処理部102aの機能を、定期的に通信方式Bに対応するように変更し、通信方式Bに対する通信リンク品質を監視しておいてもよい。そして、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bの各々において、対応している通信方式との間の通信リンク品質が逆転するような状況であるかの判定を行い(ステップ113)、逆転している状況であれば、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、bにおいて、対応すべき通信方式を逆に変更する。すなわち一方のリコンフィギュラブル無線処理部102aにおいて、通信方式Bに対する通信待機動作を行い、もう一方のリコンフィギュラブル無線処理部102bにおいて、通信方式Aに対する通信待機動作を行うように変更することにより、通信待機時の通信リンク品質を維持するように動作させる(ステップ114)。
また、定期的に収集された待機対象としている通信方式における通信品質情報111に基づき、前記通信品質が、システム制御情報の送受信のための通信リンク維持に十分な状態であるかを判断し(ステップ116)、品質が劣化してリンクの維持が不可能な状態である場合には、その通信方式における通信待機状態を解除し(ステップ117)、サービス検出状態(ステップ118)へ移行する。ここで、サービス検出状態(ステップ118)の動作は、図7における(ステップ102)以降の処理に相当する。
また、例えば無線通信装置100が通信方式Aのみのサービスエリア内にあって、通信待機動作をしている場合、前記通信待機対象となっている通信方式Aに機能設定されている方のリコンフィギュラブル無線処理部102aの系統は、定期的に通信方式Aに対する(ステップ111)〜(ステップ117)の一連の通信待機動作を行い、必要に応じて定期的なシステム制御情報の送受信を行う。また、通信待機対象となっていない通信方式Bに機能設定されているリコンフィギュラブル無線処理部102bの系統では、定期的に通信方式Bのサービスが存在するか否かの検出動作を行う。リコンフィギュラブル無線処理部102aにおける通信方式Aとの通信リンクの品質が劣化した場合には、リコンフィギュラブル無線処理部102bは、通信方式Aと通信待機動作をするタイミングにのみ無線処理部の機能を通信方式Aに対応すべく機能変更し、リコンフィギュラブル無線処理部102bにおいても、通信方式Aの通信待機動作用の信号を受信し、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bとの間で受信ダイバーシチ動作を行い、通信品質を改善させる。もしくは、リコンフィギュラブル無線処理部102bにおける通信方式Aとの通信リンク品質の方が、リコンフィギュラブル無線処理部102aにおけるものより、良い状況になった場合、通信方式Aとの間の通信待機動作は、リコンフィギュラブル無線処理部102bが担うこととし、リコンフィギュラブル無線処理部102aでは、逆に通信方式Bが存在するか否かの検出動作を定期的に行うように動作させてもよい。
通信方式Bのみのサービスエリア内にあって通信待機の動作をしている場合には、上述した動作説明における通信方式AとB、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bとを入れ替えた説明が成り立つ。
次に、前記通信待機状態において通信要求が検出され、通信動作制御状態に移った場合の動作手順の一例について説明する。本実施の形態では、他局と自局との間でデータ通信を行うにあたっての動作形態として、複数の通信方式による複数の通信リンクを、並列に用いることも含めて通信制御する場合について説明する。図9は、通信動作状態における通信制御手順の一例を示すフローチャートであり、この図を用いながら、リコンフィギュラブル無線処理部102aが通信方式Aとの間で通信リンクを確立し、かつリコンフィギュラブル無線処理部102bが通信方式Bとの間で通信リンクを確立している状況下において、双方の通信リンクの品質に基づいて、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bで対応すべき、通信方式と伝送モードを制御する動作について説明する。具体例として、各々の通信リンクの品質に応じて通信方式間でダイバーシチ伝送動作をする伝送モードと、一方の通信方式においてダイバーシチ伝送動作する伝送モード、さらには、MIMOチャネル伝送動作をするような伝送モードを通信リンクの状況に応じて適応的に制御する動作について説明する。ここで述べているMIMOチャネル伝送とは、送信側と受信側とで共に、複数の無線処理系統を用いて複数の通信データ系列を多重して伝送する、いわゆる空間多重あるいは時空間多重による伝送を行い、受信側で多重された伝搬路状況を推定し、得られた伝搬路特性に基づいて、前記多重された複数のデータ系列を分離して受信データを得る伝送方式のことである。
リコンフィギュラブル無線処理部102aでは、通信方式Aの所定の方式で自局宛に送信された信号に対して、所定の信号処理を施し、受信復調結果を得る。また、リコンフィギュラブル無線処理部102bでは、通信方式Bの所定の方式で自局宛に送信された信号に対して、所定の信号処理を施し、受信復調結果を得る。
通信品質情報収集部1041では、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bによって得られた、双方が対応している通信方式の受信信号110a、110bを用いて、各々の系統における受信CNR値を推定し、推定結果に基づいて通信品質が判定される(ステップ121)。本実施の形態では、図10に示すような判定テーブルを用いて通信品質を判定する。すなわち、受信信号の品質を良い順に「良」>「可」>「不良」>「不可」という4種類に分類し、通信品質情報のパラメータとして、これらのうちいずれかを出力する。例えば、方式Aについての受信CNR値が、方式Aにおける感度点レベル(SL_A)よりも10dB高い場合、通信品質を「可」とする。このようにして得られた各々の通信方式についての通信品質情報111が、通信動作制御部1042に供給される。
通信動作制御部1042では、入力された通信品質情報111に基づき、所定の時間間隔毎に、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが対応すべき通信方式と伝送モードを選択し、選択結果112を機能変更制御部1043に通知する(ステップ122)。ここで、通信動作制御部1042において選択される通信方式と伝送モードの一例を図6に示す。
以下、図6の選択テーブルを用いて、各伝送モードにおける動作を説明する。
通信方式Aよりも伝送速度の高い、通信方式Bにおける通信品質が「良」の場合には、リコンフィギュラブル無線部102a、102bともに通信方式Bに対応させることにより、通信方式Bにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行う伝送モードを選択する。これにより、送信側及び受信側双方において、無線処理系統を2系統有している本実施の形態のような無線通信装置の構成の場合には、1系統単独で伝送をした場合に比べて、最大で約2倍の伝送速度を得ることが可能となる。すなわち、各々の系統で同一の通信方式を用いながら、別々の送信データを伝送路上に多重して並列伝送し、受信側において各送信系統から各受信系統への伝送路特性を各々推定し、得られた伝送路推定結果に基づいて、送信信号の分離を行うことが可能となり、もともと一系統のみでデータ伝送していた場合に比べて、最大で2倍程度の伝送速度を得ることが可能となる。MIMOチャネルによる伝送方法の詳細については、本発明において特に限定されるものではないが、例えばArogyaswami Paulraj他著による”Introduction to Space−Time Wireless Communications”において開示されているような、MIMOチャネルにおける空間多重や時空間多重による伝送方法を用いることが可能である。なお、上記のようにMIMOチャネル伝送を行っている間においても、例えば定期的にリコンフィギュラブル無線処理部102aの構成を通信方式Aに対応するように制御し、通信方式Aの通信品質を監視するよう制御してもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」もしくは「不良」の状態の場合、通信方式Aと通信方式Bの双方で通信リンクを構成し、これらを用いて方式間ダイバーシチにより通信を行うモードが選択され、リコンフィギュラブル無線処理部102aは通信方式Aに対応させ、リコンフィギュラブル無線処理部102bは通信方式Bに対応させる。方式間ダイバーシチによる伝送方式の具体例としては、伝送するデータをIPレイヤや上位レイヤにおけるパケット単位で構成し、各々の通信リンクでの伝送速度に応じて送信するパケットの数を配分して伝送する例があり、このようにすると伝送速度を最大で双方の通信リンクの伝送速度の合計まで増やすことが可能となる。また、伝送するデータが伝送の上位レイヤ(例えばアプリケーションレイヤ)において重要度等の面で差がある場合には、この重要度に応じて伝送する通信リンクを選択して伝送してもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「良」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」の場合、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bをともに、通信方式Aに対応させ、通信方式AにおいてMIMOチャネルによる多重伝送を行うモードを選択する。
通信方式Aにおける通信品質が「可」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」以下の場合、リコンフィギュラブル無線処理部102aのみを使用し、通信方式Aのみにて通信を行うモードを選択する。逆に、通信方式Aにおける通信品質が「不良」以下で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」である場合、リコンフィギュラブル無線処理部102bのみを使用し、通信方式Bのみにて通信を行うモードを選択する。なお、一方の通信方式のみでの伝送モードが選択されている場合(例えば、リコンフィギュラブル無線処理部102aにより通信方式Aのみにて通信を行っているような場合)、通信動作をしていない方(リコンフィギュラブル無線処理部102b)の系統を用い、定期的に通信していない方の方式(通信方式B)の方の通信品質を測定しておき、この情報に基づいて所定時間後に改めて伝送モードの判定が行われる。ここで、通信していない方の通信方式における通信品質測定は、必ずしもリコンフィギュラブル無線処理部102bで行う必要は無く、リコンフィギュラブル無線処理部102aにより通信方式Aにおいて間欠的に通信が行われている場合には、この通信がアクティブでない状態の間に、リコンフィギュラブル無線処理部102aの構成を通信方式B用に再構成した上で、通信方式Bの通信品質を測定する構成としてもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「不良」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」である場合、双方のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bを通信方式Aに対応させるよう制御し、いわゆるダイバーシチにより送受信する伝送モードを選択する。すなわち、受信時には、通信方式Aで自局宛に送信された信号を双方の系統で受信した上で、受信品質の良い方の系統の受信結果を選択する、もしくは、双方の系統での受信結果を合成し、受信結果を得る。また、送信時には、同じ送信データを双方の系統を用いて送信処理を行う。
逆に、通信方式Aにおける通信品質が「不良」以下で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」である場合、双方の無線処理部102a、102bを通信方式Bに対応させるよう制御し、通信方式Bで自局宛に送信された信号をダイバーシチにより送受信する伝送モードを選択する。
最後に、通信方式Aと通信方式Bともに通信品質が「不可」な状態にある場合には、いずれかの通信方式の品質が改善するまで、データ伝送動作を待機するモードを選択する。
このような選択条件に基づいた、通信方式と伝送モードの選択が、所定の時間間隔毎に行われ、選択結果112が機能変更制御部1043に通知される。
機能変更制御部1043では、伝送モードの選択結果112に基づき、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにおける、通信処理の機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する(ステップ123)。具体的には、通信方式Aか通信方式Bのいずれかの方式への対応をするような制御信号が出力され、これにより例えば、リコンフィギュラブルRF部1021a、1021bにおいては、送受信する搬送波周波数や送信電力などの設定が変更され、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bにおいては、変調方式や符号化方式と、それに付随するインタリーブやスクランブル処理、さらにはアナログ・ディジタル変換におけるサンプリングレート等の設定が変更される。
このようにして、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bは、選択された通信方式及び伝送モードで通信するための機能変更が施される。また、選択された通信方式及び伝送モードに関する情報は、機能変更されたリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにより、各通信方式の送信局側へ通知され(ステップ124)、通信相手局側においても選択された伝送モードに対応し、通信相手局と無線通信装置100との間で送受信処理が行われる(ステップ125)。例えば、伝送モードとして複数の通信方式間でのダイバーシチ送受信を行うモードの場合、双方の通信方式がネットワーク上で連携しデータ送信を行う。ここで、通信相手局における双方の通信方式による送受信は、必ずしも同一の無線通信装置によりなされる必要はなく、ネットワーク等を介して別々の無線通信装置により通信されてもよい。
また、通信相手局との間で所定の伝送モードによる送受信が行われていない区間が存在する場合が検出される(ステップ126)と、リコンフィギュラブル無線処理部102aもしくは102bを、現在の伝送モードでは使用していない通信方式へ機能変更し、通信品質に関する情報を取得してもよい。
以上のように本実施の形態によれば、複数のアンテナと、複数のリコンフィギュラブル無線処理部と、複数のリコンフィギュラブル無線処理部をそれぞれ独立に制御して、各リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を独立に切り換える制御部とを設けた構成とすることにより、各リコンフィギュラブル無線処理部において得られた通信品質情報に基づいて、リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を適宜変更することで、一台の無線通信装置において、単独の通信方式のみでのダイバーシチ送受信を行うモード、MIMOチャネルにおける空間多重伝送を行うモード、複数の通信方式の間でのダイバーシチ伝送を行うモード、又は、単独の通信方式のみで伝送を行うモード等の複数の伝送モードの中から、所望の伝送モードを適宜選択して通信を行うことができるようになる。この結果、各々の通信方式との間で、時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、従来に比べて、より広範囲な伝送モードの選択オプションの中から適切な伝送モードにより通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
これにより例えば、複数の伝送モードのうち、ダイバーシチダイバーシチ伝送により複数の系統で得られた受信信号を、最大比合成法のように物理レイヤにおける信号データの段階で合成処理するような処理が容易に実行可能となるといった効果も得られる。
なお、本実施の形態では、通信品質情報収集部1041において収集する各無線処理系統における通信リンク品質に関する情報として、各系統における受信CNR値を推定し得られた受信CNR値に基づいて、図10に示すような判定テーブルに基づいて4段階に分けたものを用いる構成としたが、本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、図10に示したような判定テーブルにおける受信CNR値に対するしきい値の具体的な値は、対象とする通信方式に応じて適切な値が異なるので、適用する通信方式に応じて異なる値を用いてもよい。また、品質の分類は必ずしも4段階である必要はなく、場合によっては3段階以下や5段階以上に分類してもよく、この場合これに対応して伝送モード選択用のテーブルを改めて用意すればよい。また、受信CNR値を推定する代わりに別のパラメータを用いてもよく、この場合、使用されるパラメータについての図10に相当する判定テーブルが用意されればよい。例えば、別のパラメータとして、受信データのビット誤り率(Bit Error Rate)やフレーム消失率(Frame Erasure Rate)を、測定もしくは推定して用いる構成としてもよいし、干渉も含めたパラメータとしてCIR(搬送波電力対干渉波成分電力比)等のパラメータを用いる構成としてもよい。
また、通信動作制御部1042において選択される伝送モードの候補として、図6のテーブルに示したようなモードを示したが、必ずしもここに挙げた全ての伝送モードに対応する必要はなく、対象とする通信方式及び要求される条件に応じて、適用される伝送モードの内容を変更してもよい。例えば一部の伝送モードを選択肢から省略した動作としても、本発明による効果は期待できる。また、一部選択される伝送モードを、別の伝送モードに替えたテーブルを用いた制御としてもよい。例えば、図6のテーブルにおいて、通信方式Aにおける品質が「良」で、通信方式Bにおける品質が「不可」である状況において、選択される通信方式AによるMIMO伝送のモードを省略し、代わりに通信方式A単独で通信する伝送モードが選択されるよう制御してもよい。さらには、図6で例示していない伝送モードを新たに適用することも可能である。例えば、新たな伝送モードとして、複数の無線処理系統を用いてアンテナの指向性制御を行う伝送モードを設け、通信方式A、Bともに通信品質が不良もしくは不可な状況下においては、指向性制御による利得向上効果や干渉成分の抑圧効果により、通信の信頼度向上を図るよう通信制御することとしてもよい。また、対象とする通信方式において、変調方式を適応的に制御する、いわゆる適応変調方式が採用されているようなシステムの場合、図6において一方の通信方式単独で伝送するモードで通信している際に、使用していないほうの無線処理系統も用いて指向性制御を行うことにより前記効果を得、より高効率な変調方式を選択して伝送速度を向上されるよう制御してもよい。
また、図6に示した伝送モードのうち、ダイバーシチでの伝送モードの際の具体的な動作例として、無線通信装置において複数の無線処理系統を用いて送受信する、いわゆる空間ダイバーシチによる伝送を一例として説明したが、本発明は必ずしも空間ダイバーシチに限定されるものではない。例えば、時間ダイバーシチやサイトダイバーシチとの組み合わせによる伝送方法を適用してもよい。
また、MIMOによる伝送モードやダイバーシチによる伝送モードが選択された場合、各々の無線処理系統において受信された受信信号を用いて、MIMOにより多重された信号の分離処理や、ダイバーシチにより送信されたブランチ毎の受信信号の合成処理といった後処理が必要となる。また、MIMO伝送モードによる送信時には、送信データを複数の無線処理系統に対して分割するといった前処理が必要となる。これらの処理をどこで行うかについては本発明の本質的な部分ではないが、例えば上位レイヤ処理部103において行うこととしてもよい。また例えば、一方のリコンフィギュラブル無線処理部102aで前処理を行い、リコンフィギュラブル無線処理部102bが、前記前処理の結果と自らの前処理の結果を用いて後処理を行う構成としてもよい。
また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bにおいて、制御信号に応じて変更可能な機能の一例として、サンプリングレート、送受信時の変調方式及び符号化方式をあげたが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、アナログ・ディジタル変換部における量子化ビット数を変更する構成としてもよいし、ディジタルフィルタ処理を行う場合にはそのタップ係数等のフィルタ特性に関わるパラメータを変更可能としてもよい。また、等化処理や再送等による誤り制御方式を変更可能としてもよい。
また、リコンフィギュラブル送信処理部10222とリコンフィギュラブル受信処理部10223とは、それぞれFPGAデバイスにより構成されるものとしたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えばFPGAデバイスの代わりにソフトウェア命令による演算処理が可能なDSPデバイスやCPUデバイスを使用し、ソフトウェアプログラムの再読み込み、もしくはサブルーチンの読み出し先の変更により複数の通信方式に対応可能とする構成としてもよい。もしくは、これらのデバイスの代わりに、FPGAデバイスよりも高速に、その内部構成及び演算内容を動的に変更可能な、いわゆるリコンフィギュラブルプロセッサ等のデバイスを用いる構成としてもよい。ここで、リコンフィギュラブルプロセッサの構成としては、例えば機能を個別に変更可能な算術演算ユニット(ALU)が複数配置され、さらに各々の算術演算ユニットの間の接続関係を変更可能な構成とし、前記各々の算術演算ユニットにおける演算機能と、それらの間の接続関係を動的に変更することにより、複数の通信方式に対応可能とした構成のものを適用してもよい。もしくは、フィルタ、FFT、復号処理といった機能ブロック毎にパラメータ変更により処理仕様の変更が可能な専用回路を設け、各々の機能ブロックにおける処理仕様(例えば、フィルタにおけるタップ数やタップ係数、FFT処理における要素ポイント数、復号処理における処理ビット数、符号化率や生成多項式等)を変更可能な、いわゆる特定信号処理エンジン(コプロセッサ)を併設したCPUデバイス等を適用してもよい。また、送信処理部と受信処理部とで別々のデバイスを用いることとしたが、これに限定されるものではなく、一つのデバイスで送信処理部と受信処理部を構成してもよい。
また、制御部104を、独立した機能部として構成した場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば上位レイヤ処理部103がCPU等のプロセッサにより構成される場合、この処理部内における制御ソフトウェアモジュールの一つとして、制御部104の機能を含めてもよい。この場合、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bへの機能変更用の制御信号113は、上位レイヤ処理部103から供給される形態となり、また各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bから出力される受信信号110は、受信データと共に上位レイヤ処理部103へ供給される形態となる。
また、本実施の形態では、通信動作として通信方式Aと通信方式Bを、複合的に用いてデータ伝送を行う形態についてのみ例示したため、その他の形態については説明していない。その他の形態として、例えば従来のように一方の通信方式のみを用いて、独立に通信を行う使用形態が考えられるが、本発明の本質を変えない範囲において、このような使用形態も含めた動作制御を行ってもよいことは言うまでもない。
また、本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部102aによる系統(以下、無線処理系統aと呼ぶ)とリコンフィギュラブル無線処理部102bによる系統(以下、無線処理系統bと呼ぶ)とは同様の構成及び機能をもち、同時並行的に処理が行われる構成及び動作を仮定しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、無線処理系統bは無線処理系統aに比べてその性能や機能が限定され、無線処理系統aで通信を行っている方式とは異なる側の通信方式の通信リンク品質を定期的に監視する動作のみ行う構成としてもよい。この場合、通信制御において選択可能な伝送モードは図6で示したものに比べて限られたものとなる。例えばMIMOによる伝送モードやダイバーシチによる伝送モードは選択できないが、通信リンクの品質に応じて複数の無線処理系統や通信方式から最適な系統および方式を選択して、通信を行うような構成も可能であり、従来よりも通信リンクの品質状況に応じて、柔軟に対応可能な無線通信装置を実現することが可能となる。
また、通信動作制御部1042における伝送モードの選択動作は、所定の時間毎に行うものとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば選択動作を行う間隔は不定期に行うこととしてもよいし、入力される各通信方式の通信リンク品質に関する情報が変化した場合に前記選択動作を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では、通信方式Aの一例としてセルラシステムを、通信方式Bの一例として無線LANシステムを想定した形態を示したが、これはあくまでも一例であり、その他の通信方式による構成としてもよい。例えば、放送系のディジタルTV放送やディジタルオーディオ放送に対応する構成としてもよいし、ピコセル系の通信方式(IEEE802.15系の標準規格に準じた通信方式)に対応可能な構成としてもよい。さらには、微弱電力送信により独自な通信方式を用いる構成としてもよい。
また、本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部を2系統設け、同時に2つの無線処理系統を動作させることを一例として示したが、無線処理系統数が2に限定される必要が無いことは言うまでもなく、3系統以上の無線処理系統を用いた構成でも、各々の無線処理系統における通信品質に関する情報を収集し、これらの情報に基づいて対応する動作モードを決定するための判断テーブルを改めて定義しなおすことにより適用可能であることは明らかである。特に、無線処理系統数が3以上である場合には、一部の複数の無線処理系統によりダイバーシチやMIMO伝送による伝送を行い、さらに別の無線処理系統との間で通信方式間ダイバーシチによる伝送を行うような伝送モードの設定も可能となる。
また、本実施の形態における無線通信装置100の構成において、制御部104から各リコンフィギュラブル無線処理部102へ接続される制御信号113の構成、接続形態と伝送方法については、本発明において特に限定されるものではないので明示していない。しかしながら、その構成例を挙げるとすれば、対応する方式を通信方式Aにするのか通信方式Bにするのかを示すビットデータと設定の変更を許可するイネーブル信号とのセットを制御信号113として供給することとし、各々のリコンフィギュラブルRF部やリコンフィギュラブルディジタル信号処理部では、供給されたビットデータとイネーブル信号とに基づいて、各機能変更部分の設定を変更するよう構成することができる。もしくは、各設定変更部への直接制御線を各々設けることとし、機能変更制御部1043から出力される制御信号113は、各々制御線を用いて各々の設定変更部へ直接供給されるよう構成してもよいし、さらには共通バス経由で供給されるよう構成してもよい。
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2における無線通信装置の構成例を示した図である。図11において、実施の形態1の図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては、図3と同じ番号を付している。本実施の形態の無線通信装置200が、実施の形態1の無線通信装置100(図3)の構成と異なるのは、上位レイヤ処理部103の代わりに上位レイヤ処理部201を設け、制御部104の代わりに制御部202を設けた点である。
上位レイヤ処理部201は、基本的には上位レイヤ処理部103と同様の動作をするものであるが、さらに、上位レイヤでの処理の一つとして、通信に関する要求条件をユーザから得、得られた情報を出力する処理を行うものである。本実施の形態では、要求条件の一例として、通信の際に発生し得る料金に関するユーザからの要求条件を、アプリケーションソフト上でユーザが選択するものとし、上位レイヤ処理部201が必要に応じて、前記ユーザが選択した要求条件に関する情報を出力するものとする。
制御部202は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bの各系統で受信した信号の通信リンク品質に関する情報110a、110bと、通信の際の上位レイヤにおいて処理されるアプリケーション等において、ユーザにより設定された要求条件210とを入力とし、これら二つの情報に基づいて、各無線処理系統の対応すべき通信方式及び伝送モードを決定し、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bに対して、機能を変更するための制御信号113a、113bを出力する。本実施の形態における制御部202は、要求条件収集部2021と、通信動作制御部2022と、通信品質情報収集部1041と、機能変更制御部1043とにより構成されている。このうち通信品質情報収集部1041と機能変更制御部1043とは、図3における同一番号の構成要素と同様の構成及び動作をするものであり、ここでは説明を省略する。
要求条件収集部2021は、上位レイヤ処理部201から供給されるユーザの要求条件に関する情報210を収集し、収集結果211を通信動作制御部2022へ供給する。その動作の詳細については後述する。
通信動作制御部2022は、通信品質情報収集部1041から供給される通信品質情報111と要求条件収集部2021から供給される収集結果211とを入力とし、これらの情報に基づいて、各無線処理系統が、対応すべき通信方式システム及びそのシステムでの伝送モードを選択し、選択結果212を出力する。その具体的な決定手順の一例については後述する。
ここで、本実施の形態における通信サービス形態の一例として、セルラに相当する通信方式Aによるサービスにおいては、通信するデータの容量に応じて重量的に料金が発生するものとし、さらに通信方式AにおいてMIMOによる多重伝送を行う場合には、さらに追加料金が発生するものとする。一方、無線LANに相当する通信方式Bによるサービスにおいては、通信料金はデータ容量には依存しないものとし、さらにMIMOによる多重伝送を行っても追加料金は発生しないものとする。また、通信方式Aと通信方式Bとによるシステム間ダイバーシチによる伝送を行う場合には、双方の通信方式に対して追加料金が発生するものとする。
以上のような構成による無線通信装置200の動作について、実施の形態1の無線通信装置100とは異なる動作をする部分について、以下で説明する。
上位レイヤ処理部201は、通信の上位レイヤにおける処理の一つとして、通信の際に発生する料金に関する要求条件をユーザに設定してもらう。具体的には、上位レイヤ処理部201において実行されているアプリケーションソフトウェアにおいて、通信料金を節約するモード(以下、料金優先モード)と、料金がよりかかっても、通信リンクの維持もしくは伝送速度の確保を図るモード(以下、通信優先モード)との、いずれのモードがよいかについての選択をユーザに求め、選択されたモードに関する情報を記憶しておく。
要求条件収集部2021は、上位レイヤ処理部201から前記ユーザが選択したモードに関する情報210を読み出し、要求条件の収集結果211として出力する。一方、通信品質情報収集部1041は、実施の形態1での説明と同様の動作をし、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bから得られた各々の通信方式についての通信品質情報111を出力する。
通信動作制御部2022は、前記要求条件の収集結果211と通信品質情報111とに基づき、所定の時間毎に、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが対応すべき通信方式及び伝送モードを選択し、選択結果212を機能変更制御部1043へ供給する。ここで、通信動作制御部2022において選択される通信方式及び伝送モードの一例を図12に示す。
以下、図12の選択テーブルを用いて、各伝送モードにおける動作を説明するが、実施の形態1における選択テーブル(図6)と同名の伝送モードについては、実施の形態1で説明したものと同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」である場合、ユーザが設定した要求条件に応じて、以下の二通りの伝送モード選択が行われる。まず、ユーザが通信リンクの伝送速度確保を図る、通信優先モードを設定していた場合、通信速度を確保するために、通信方式Aと通信方式Bとの間で各々の通信リンク品質に応じた方式間ダイバーシチ通信を行う伝送モードが選択される。一方でユーザが通信料金を節約する、いわゆる料金優先モードを設定した場合、追加料金の発生する方式間ダイバーシチの伝送モードは選択せず、通信料金が発生しない通信方式B単独による伝送モードが選択される。それぞれ、選択された伝送モードにおいて、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが、どちらの通信方式に対応するよう設定されるかについては、実施の形態1において同名の伝送モードが選択された場合と同様である。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」である場合、ユーザが設定した要求条件に応じて、以下の二通りの伝送モード選択が行われる。通信優先モードが設定されている場合、通信方式Bにおける通信品質が不良な状態であっても、通信方式A単独の場合よりも高い伝送速度が得られる可能性があるため、通信方式Aと通信方式Bとの間で、各々の通信リンク品質に応じた方式間ダイバーシチ通信を行う伝送モードが選択される。一方で、料金優先モードが設定されている場合、通信方式A単独による伝送モードが選択される。
通信方式Aにおける通信品質が「良」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」な状態である場合で、通信優先モードが設定されている場合、通信方式Aにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行うことにより、高い通信速度を確保する。一方で、料金優先モードが設定されている場合、MIMOチャネルによる多重伝送での追加料金を避けるため、リコンフィギュラブル無線処理部102aのみを用いて、通信方式A単独で、通常のデータ伝送を行う伝送モードが選択される。
その他の通信リンク品質の組み合わせの場合には、実施の形態1の場合と同様の伝送モードが選択される。
以上のような構成によれば、複数のリコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を、各リコンフィギュラブル無線処理部によって得られる品質情報に加えて、ユーザからの要求条件に基づいて選択するようにしたことにより、ユーザからの要求条件を満たしつつ、各々の通信方式との間で、時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、適切な通信方式及び伝送モードにより通信を行うことが可能となる。この結果、ユーザからの要求条件を満たしつつ、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、伝送モード選択用のテーブルの一例として、図12に示すようなテーブルを示したが、本発明は必ずしもこのテーブルの内容に限定されるものではなく、通信品質に関する情報及びユーザの要求条件に応じて選択されるモードの選択肢を、さらに細分化してもよいし、逆に複数の選択肢を統合してもよい。例えば、通信優先モードの場合には、選択テーブルをさらに細分化し、通信方式Aにおける通信品質が「良」で通信方式Bにおける通信品質が「不良」で、方式間ダイバーシチによる伝送を行っても、十分な伝送速度ができないような状況の場合には、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bともに通信方式Aに対応するよう設定し、通信方式Aにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行うような選択テーブルを設けてもよい。
また、図12に示したような選択テーブルに基づいて伝送モードを決定する形態について述べたが、本発明は必ずしも選択テーブルに基づいたモード選択に限定されるものではない。例えば、判定材料とするパラメータを、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ定めておき、このパラメータに関する定量評価値を算出し、算出結果に基づいて伝送モードを決定する構成としてもよい。具体的には例えば、ユーザが通信速度を優先するモードを要求している場合、現状の各通信方式における通信品質に基づき、各伝送モードで伝送した場合に得られる伝送速度の推定値を算出し、この値が最大となる伝送モードを選択するよう構成すればよい。また、ユーザが通信料金の節約を優先するモードを要求している場合、現状の各通信方式における通信品質に基づき、各伝送モードで所定のサイズのデータを伝送した場合に発生する通信料金の推定値を算出し、この値が最小となる伝送モードを選択するよう構成すればよい。
また、本実施の形態では、通信品質に関する情報以外の要求条件として、ユーザからの通信信頼性もしくは料金に関する要求を収集する場合の形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形態によっても実施することが可能である。なぜなら本発明の本質は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部と制御部とを設け、各々の無線処理系統における通信品質情報とその他の要求条件に基づいて、適切な通信方式および伝送モードを選択して、前記複数のリコンフィギュラブル無線処理部の機能を変更するよう制御し通信することであるので、その本質を変えない範囲において、様々な形態での実施が可能である。例えば、無線通信装置200により伝送される上位レイヤにおけるアプリケーションにおいて、伝送遅延量に関する要求条件がある場合には、この条件も加味した伝送モード選択用テーブルを用意し、これに基づき通信方式と伝送モードの制御を行う構成としてもよい。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における無線通信装置の構成例を示した図である。図13において、実施の形態1の図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては、図3と同じ番号を付している。本実施の形態の無線通信装置300が、実施の形態1の無線通信装置100(図3)の構成と異なるのは、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにおけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bの代わりにリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301を設け、上位レイヤ処理部103の代わりに上位レイヤ処理部302を設け、制御部104の代わりに制御部303を設けた点である。
リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301は、図14に示すように、複数のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021bとの間でアナログ信号を入出力する入出力接続インタフェースを有すると共に、上位レイヤとの間で送受信データを入出力する入出力接続を行うインタフェースを有し、図3における複数のリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bと同様の処理を行うものである。
この実施の形態では、実施の形態1と同様に2系統の無線処理系統に対応する例を示す。リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301は、アナログ・ディジタル変換部3011a、3011bと、I/Oバッフ73012a、3012bと、バス3013と、マルチスレッドディジタル信号処理部3014と、メモリ3015とを有する。
アナログ・ディジタル変換部3011は、図3におけるアナログ・ディジタル変換部10221と同様の構成及び動作をするものである。
I/Oバッファ3012は、受信時にはアナログ・ディジタル変換部3011から出力されるサンプリングされたディジタル信号列を一時記憶した後、所定の規則に応じて読み出してバス3013へ供給し、送信時にはバスを介して供給されたディジタル信号列を一時記憶した後、所定の規則で読み出しアナログ・ディジタル変換部3011へ供給する。バッファの構成については特に限定されるものではなく、例えばFIFOバッファやリングバッファ等の既知である種々のバッファを適用することが可能である。
バス3013は、複数の処理ブロック間でディジタルデータの伝送を行うための共通のデータ伝送バスであり、ここでは複数のI/Oバッファ3012a、3012b、マルチスレッドディジタル信号処理部3014、メモリ3015、外部の上位レイヤ処理部302とのインタフェース部との間をバス接続する。本発明では、バスの詳細な構成とデータ伝送形態の詳細については特に限定されるものではない。
マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、複数の系統から入力された受信信号のディジタル信号処理及び複数の系統へ出力する送信信号のディジタル信号処理を、一つの処理系統において、時分割もしくは並列的に処理するものであり、さらに、機能変更用の制御信号315に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。また、マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、各無線処理系統において得られた受信信号313を制御部303に送出する。本実施の形態では、マルチスレッドディジタル信号処理部3014の構成例として、マルチスレッドディジタル信号処理部3014をリコンフィギュラブルデバイス30141(CPU)と、タイマ30142とにより構成する。
リコンフィギュラブルデバイス30141は、入力されたディジタル信号に対して所望のディジタル信号処理を行うものであり、機能変更用の制御信号315に応じて前記所望のディジタル信号処理の内容を変更可能なものである。本実施の形態では、リコンフィギュラブルデバイス30141を、ソフトウェアプログラムの変更により所望のディジタル信号処理の内容に変更可能なCPU(中央演算処理ユニット)により構成する。そして、ソフトウェアプログラムを、例えばメモリ3015から必要に応じて読み込む構成となっている。ここで、ソフトウェアプログラムは、例えば実施の形態1で図6や図12で例示した伝送モード毎に構成されてメモリ3015に蓄積されており、伝送モードの変更が決定されると該当するソフトウェアプログラムが前記メモリ3015から読み出される。
タイマ30142は、所定のタイミングクロックに基づいてCPU30141へ割り込みタイミングを与える。
メモリ3015は、バス3013を介して伝送されるデータを一時記憶し、必要に応じて読み出し処理するものであり、ディジタル信号処理を行う対象となるディジタルデータを記憶する。また、CPU30141の処理内容を記述したソフトウェアプログラムも記憶する構成としてもよい。
上位レイヤ処理部302は、基本的には図3における上位レイヤ処理部103と同様の処理をするものであるが、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部との入出力のインタフェースが2系統ではなく1系統に統合されており、2系統の無線処理系統向けの送受信データを、前記統合された1系統のデータバス312を介して、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301との間で伝送するよう変更した点が異なる。
制御部303は、基本的には図3における制御部104と同様の構成及び動作をするものであるが、異なるのは、図3における複数のリコンフィギュラブル無線処理部102への機能変更用の制御信号113の代わりに、複数のリコンフィギュラブルRF部1021への機能変更用の制御信号314(314a、314b)とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301への機能変更用の制御信号315とを個別に出力するよう構成した点である。
以上のような構成による無線通信装置300の動作について、実施の形態1の無線通信装置100とは異なる動作をする部分について、以下で説明する。
受信時には、複数のリコンフィギュラブルRF部1021aと1021bの各々で受信し、信号処理された信号311a、311bが、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301へ供給され、各々がアナログ・ディジタル変換部3011a、3011bによりディジタル信号へと量子化され、I/Oバッファ3012a、3012bを介して、メモリ3015に蓄積される。マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、タイマ30142から供給される定期的な割り込み信号に基づき、CPU30141において処理するディジタル信号を一時蓄積されているメモリ3015から逐次読み込み、所望の信号処理を行い、これにより得た処理結果を、バス3013を介して、上位レイヤ処理部302へ供給する。
送信時には、上位レイヤ処理部302から供給された送信データが、バス3013を介して入力され、受信時の処理と同様にCPU30141において時分割により複数の無線処理系統向けの信号処理が行われ、生成された送信信号が各々のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021bへI/Oバッファ3012及びアナログ・ディジタル変換部3011とを介して供給される。
このように無線通信装置300においては、各々の無線処理系統において受信した複数の通信方式における通信リンクの品質情報と必要に応じてユーザ等から与えられた要求条件とに基づいて、通信すべきシステム及び伝送モードを選択した上で、複数のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021b及び一系統のリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301の構成を変更し、所望の伝送モードで通信する。
以上のような構成によれば、機能及び性能の変更が可能なリコンフィギュラブル無線処理部を複数系統設ける際に、リコンフィギュラブルなRF部1021a、1021bは所望の複数系統設け、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301については一つの系統で構成し、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301において時分割もしくは並列的に複数の無線処理系統用の信号処理を行うようにしたことにより、実施の形態1の効果に加えて、ディジタル信号処理部の構成を複数系統設ける必要が無くなるため、通信装置を小型化・低コスト化することが可能となる。
なお、本実施の形態では、CPU30141で処理されるソフトウェアプログラムは伝送モード毎に構成され、伝送モードの変更の都度、メモリ3015から読み込まれる構成及び動作としたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばCPU30141が内部メモリを有するような場合には、内部メモリに複数の通信方式用の信号処理プログラムを全て常駐しておき、必要な処理モジュールのみを選択的に実行する構成としてもよい。
また、マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、図14に示したようなCPU30141とタイマ30142による構成に限定されるものではなく、例えば図15に示すように、マルチスレッドディジタル信号処理部3016を、リコンフィギュラブルデバイス30161とリコンフィギュレーション制御部30162とにより構成してもよい。この場合、リコンフィギュラブルデバイス30161としては、例えば、処理内容の変更が可能な複数の演算用ユニットをアレイ状に構成し、その各々の間の配線を任意に変更可能な構成としたものを適用すればよい。また、パラメータを変更することによって、複数の処理仕様に変更可能な特定処理ブロックを組み合わせたものも適用可能である。この場合、具体的には、パラメータにより減衰特性の変更が可能なフィルタ処理部や、パラメータにより対応する変復調処理の方式が変更可能な変復調処理部や、パラメータ変更により誤り訂正コーデック処理の生成多項式や誤り訂正能力の変更が可能な誤り訂正コーデック処理部等の複数の特定処理ブロックの組み合わせにより構成されることになる。リコンフィギュレーション制御部30162は、機能変更用の制御信号315に基づいて、リコンフィギュラブルデバイス30161において機能の変更が可能な機能ブロックの各々に対してリコンフィギュレーションの制御を行う。このような構成を用いて、通信に関する一連のディジタル信号処理を細かい処理ブロック毎に分け、細かい処理ブロック毎に処理の内容を個別に異なる通信方式および伝送モードに対応させ、パイプライン的に時分割処理するようにしてもよい。また、前記CPUやリコンフィギュラブルデバイスは必ずしも一つで構成される必要はなく、複数もしくは複数種のコアもしくはデバイスにより構成してもよく、この場合、複数の無線処理系統のための各処理は、時分割処理だけではなく、コア毎もしくはデバイス毎に並列的に処理することも可能となる。
また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301での信号処理を、必ずしも図14や図15に示したように、マルチスレッドディジタル信号処理部のみで実行するように構成した場合に限定されるものではなく、本発明の本質を逸脱しない範囲において、他の構成をとることも可能である。例えば、図16に示すように、無線通信処理におけるディジタル信号処理のうち、処理サンプル数が多くかつ高速な演算処理が要求されるディジタルフロントエンド処理部について専用のリコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3017を設けた構成としてもよいし、さらには図17に示すように、前記リコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3018a、3018bを無線処理系統毎に専用に設ける構成としてもよい。さらにバス3013経由でディジタル信号処理する対象データの入出力が行われる構成に限定されるものでもなく、リコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3017、3018a、3018bの入出力を直接マルチスレッドディジタル信号処理部3016へ接続する構成としてもよい。
また、メモリ3015は必ずしも独立したデバイスとして構成する必要はなく、マルチスレッドディジタル信号処理部3014のデバイス内に構成するようにしてもよい。
また、制御部303についても、独立した構成要素とする必要はなく、例えば図18に示すように、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301におけるCPU30141もしくはリコンフィギュラブルデバイス30161における処理内容の一部として動作させる構成としてもよいことは言うまでもない。
(他の実施の形態)
本発明は、図3、図11や図13で示した構成の代わりに、図19に示すような構成によっても実施することが可能である。すなわち、各伝送モードの処理をするにあたり、無線処理系統毎の信号処理を複合的に行う処理部分が存在する場合には、この部分を独立な処理部として切り出して、各リコンフィギュラブル無線処理部と接続する構成とすることも可能である。MIMOやダイバーシチによる伝送モードでは、ブランチ(無線処理系統)毎に個別に行うべき処理部分と、各々のブランチから供給された(もしくは供給する)ディジタル信号を複合的に処理する部分と、に分けることが可能である。例えば、受信チャネル選択用(もしくは送信帯域制限用のフィルタ処理)や変復調処理等は、各ブランチで個別に処理を行う必要があり、ここではこの処理群をディジタルフロントエンド処理と呼ぶ。また、ダイバーシチのための分割(もしくは合成)やMIMO多重(もしくは多重された信号の分離処理)、さらに場合によってコーデック処理等は、各ブランチから(もしくはブランチへ)の処理を複合的に処理する部分が必要であり、ここではこの処理群をディジタルバックエンド処理部と呼ぶ。このような場合、ディジタルフロントエンド処理部は、選択される通信方式に応じて、機能の変更が可能なリコンフィギュラブルな構成1051a、1051bとし、ディジタルバックエンド処理については、対応する通信方式毎に専用の回路106a、106bを設け、必要に応じてリコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部の機能を切り替えてディジタルフロントエンド処理を行うとともに、対応するディジタルバックエンド処理部を用いてディジタルバックエンド処理を行う構成が実施可能である。さらには、図19において対応する通信方式毎に専用に設けたディジタルバックエンド処理部106a、106bを、機能変更により双方の処理に対応可能なマルチスレッド信号処理部に統合し、図17に示すような構成により実現することも可能である。なお、図17の構成については、実施の形態3において説明している。
また、本発明は図20に示すような構成によっても実施することが可能である。図20において、図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては同じ番号を付している。図20で示した無線通信装置400において無線通信装置100と異なるのは、アンテナ101a、101b、リコンフィギュラブルRF部1021a、1021b、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bの代わりに、それぞれアンテナ401a、401b、リコンフィギュラブルRF部4021a、4021b、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022a、4022bを設けた点である。これらの構成要素において特徴とする点は、付番の末尾にaを付した無線処理系統aにおける各構成要素と、末尾にbを付した無線処理系統bにおける各構成要素が同一でなくてもよい点である。具体的には、無線処理系統aを構成するアンテナ401a、リコンフィギュラブルRF部4021aとリコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022aを、通信方式Aに対して機能および性能面での最適化が計られた構成としながら、各々の構成要素において機能及び性能を小規模に変更可能とすることにより、通信方式Bを採用する無線通信規格に対しても最低限の要求仕様を満たす構成とする。また、無線処理系統bを構成するアンテナ401b、リコンフィギュラブルRF部4021bとリコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022bを、通信方式Bに対して機能および性能面での最適化が計られた構成としながら、各々の構成要素において機能および性能を小規模に変更可能とすることにより、通信方式Aを採用する無線通信規格に対しても最低限の要求仕様を満たす構成とする。このような構成とすることにより、例えば通信方式Aに対する受信感度特性として、無線処理系統bの性能が無線処理系統aの性能に比べて相対的に劣化するような場合が生じ得る。また同様に、通信方式Bに対する受信感度特性として、無線処理系統aの性能が無線処理系統bの性能に比べて相対的に劣化するような場合が生じ得る。このような構成をとった場合においても、本発明は実施可能であり、適切な通信方式および伝送モードを選択し、機能変更しながら効率よく通信が行えるように通信制御する点に特徴がある。
前記のような特徴をもつ各無線処理系統aとbの構成例を以下で説明する。アンテナ401a、401bは、広帯域通過特性あるいはマルチバンド通過特性をもつように設計することにより、通信方式AおよびBで使用するRF周波数帯をともにカバーする性能を実現することが可能であるが、このとき、一方の方式で使用する周波数帯の方に対して性能を最適化すると、自ずと性能差が生じる可能性がある。リコンフィギュラブルRF部4021a、4021bは、回路中の素子のインピーダンスや能動デバイスのバイアスを変化させるなどして、動作点を調整することにより、それぞれの通信方式に対応するよう切り替える切り替え要素を含む場合、一方の方式で使用する場合の性能を最適化すると、自ずと性能さが生じる可能性がある。また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022a、4022bは、ディジタルフィルタ処理や相関演算処理の際に、一方の通信方式に適したタップ長で固定に設計して、他方の通信方式に対応する際には、タップ長は変更しないまでも、タップ係数を他方の通信方式に適した係数に変更することにより、他方の通信方式に対応する際には最適な性能までは得られないまでも、要求仕様に耐え得る性能を実現することは可能となる場合がある。また、演算処理を行う際のビット演算精度についても、一方の通信方式に適した演算精度で固定に設計した場合、他方の通信方式に対応する際には、演算精度が足りなくなることもある。
このようにして、各無線処理系統において、主に対応する通信方式に対して性能を最適化した状態で構成すると、MIMOやダイバーシチのように、これらの無線処理系統に対して同一の通信方式に機能設定する必要のある伝送モードで通信する場合、無線処理系統間で得られる性能が異なることになることになり、通信性能面での性能劣化が予想される。しかしながら、性能劣化量が許容範囲内であるようなサービス形態の場合には、前記のような構成にすることにより、各無線処理系統においてリコンフィギュラブルにすべき構成要素を減らすことができ、回路の冗長度を削減することができるようになる。この結果、回路規模や消費電力を低減することが可能となる。
なお、このような構成で通信を行うにあたっては、各無線処理系統において対応している通信方式の通信品質に関する情報を収集する際に、図10で例示したような品質推定の推定基準を若干補正して用いるようにしてもよい。
本明細書は、2004年6月14日出願の特願2004−176223に基づくものである。その内容はすべてここに含めておく。
本発明にかかる無線通信装置は、ダイバーシチ伝送やMIMO伝送、さらにはシステム間でのハンドオーバやダイバーシチ等の様々な動作に一つの通信装置で対応可能となる、という効果を有し、高効率無線通信を実現するための通信装置の構成として有用である。
本発明は複数の無線通信方式に対応可能な無線通信装置に関するものである。
従来の無線通信装置において、一つの装置で複数の通信方式に対応可能とする構成としては、複数の通信方式の各々において通信可能な無線部を各々用意しておき、必要に応じて使用する無線部を切り換える構成を用いるものがあった(例えば、特許文献1参照)。図1は、特許文献1に記載された従来の無線通信装置と同様の構成を示すものである。
図1において、方式1対応無線部902は、第1の通信方式に対応するアンテナ901と接続され、第1の通信方式に対応した所定の無線信号処理を行うものである。方式2対応無線部904は、第2の通信方式に対応するアンテナ903と接続され、第2の通信方式に対応した所定の無線信号処理を行うものである。上位レイヤ処理部905は、例えばCPU(中央演算ユニット)により構成され、第1の通信方式1と第2の通信方式のうちどちらの方式により通信を行うかの判断や、各々の通信における上位レイヤでの処理等を行うものである。すなわち、図1に示す無線通信装置は、あらかじめ複数の通信方式に対応するモジュールをそれぞれ用意しておき、必要に応じて、どちらかの方式を選択して通信を行うようになっている。
また、複数の通信方式に一つの無線装置で対応が可能な、いわゆるソフトウェア無線機の構成をとるものもある(例えば特許文献2参照)。図2は、特許文献2に記載された従来のソフトウェア無線機により構成された無線通信装置のディジタル信号処理部と同様の構成を示すものである。
図2の装置構成において、ディジタル信号処理部910は、受信時には、アナログ・ディジタル変換部911が、RF信号、IF信号、ベースバンド信号等のアナログ受信信号を無線部から受け取り、量子化してディジタル信号に変換し出力する、いわゆるA/D変換処理を行う。得られたディジタル信号は必要に応じてI/Oバッファ912において一時的に蓄積され、必要に応じて読み出されバス913へ供給される。供給されたディジタル信号は、FPGA(Field Programmable Gate Array)部914とDSP(Digital Signal Processor)部915において、所定のプログラムに基づいて受信用のディジタル信号処理が施され、得られた受信データ列がアプリケーション処理を行うブロック(例えばCPU部)等へ供給される。
また送信時には、アプリケーション処理部からバス913を介して供給された送信データが、FPGA部914とDSP部915において、所定のプログラムに基づいて送信用のディジタル信号処理が施される。得られた送信信号は、必要に応じてI/Oバッファ912に一時的に蓄積され、必要に応じて読み出され、アナログ・ディジタル変換部911において送信用のベースバンド信号、IF信号、RF信号等のアナログ信号に変換され、無線部へ供給される。なお、特許文献2では、このようなディジタル信号処理部910と、無線部とが接続されてソフトウェア無線機が構成されている。
ここで、FPGA部914とDSP部915において実行される所定のプログラムとは、例えばDSP用のソフトウェアプログラムであったり、FPGAにおける回路構成を記述したプログラムであったりする。これらのプログラムは、内容の書き換えが可能なメモリに蓄積されており、装置の起動時や必要に応じて読み出しが可能なものである。ディジタル信号処理部910は、FPGA部914やDSP部915に対し、必要に応じて異なるプログラムを読み込んで実行させることにより、異なる通信方式に対応させることが可能となる。
特開2000−216698号公報(第6頁、図1)
特開2001−189675号公報(第7頁、図1)
しかしながら、前記従来の図1に示すような構成では、複数の通信方式に対応して通信を行うために、あらかじめ複数種類の通信方式のそれぞれに対応した無線部を用意しておく必要があり、装置サイズや製造コストの面でデメリットを有するという課題を有していた。特に、対応すべき通信方式の種類が多い場合にこの課題は顕著となる。
この課題を解決するための一手法として、図2に示すようなソフトウェア無線機の構成が開示されているが、図2で示した構成では、同時に通信を行えるのはあくまでも一つの通信方式における一無線処理系統のみである。特に、複数の無線処理系統を用いたダイバーシチ通信やMIMO(Multi-Input Multi-Output)チャネル伝送、アンテナアレイ構成によるビームフォーミングを用いた通信や、複数の通信方式と同時に通信をすることについては配慮がされていなかった。さらには、上記の様々な通信形態を、状況に応じて切り換え制御することについても配慮がされていなかった。
本発明の目的は、複数の通信方式に対して同時に通信可能、あるいは一つの通信方式において、複数の無線処理系統を介して通信可能な無線通信装置を提供することである。さらには、通信リンクの状況やユーザの要求条件に応じて、適切な通信方式及び形態を選択して切り換え制御し通信を行うことにより、より高効率かつ信頼性の高い通信環境を実現可能な無線通信装置を提供することである。
かかる課題を解決するため、本発明の無線通信装置は、複数のアンテナと、各アンテナに対応して設けられた複数のリコンフィギュラブル無線処理部と、複数のリコンフィギュラブル無線処理部をそれぞれ独立に制御して、各リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を独立に変更する制御部とを具備する構成を採る。
この構成によれば、例えば通信リンクの品質やユーザの要求に応じて、単独の通信方式のみでのダイバーシチ送受信を行うモード、MIMOチャネルにおける空間多重伝送を行うモード、複数の通信方式の間でのダイバーシチ伝送を行うモード、又は、単独の通信方式のみで伝送を行うモード等の複数の伝送モードの中から、所望の伝送モードを適宜選択して通信を行うことができるようになる。この結果、各々の通信方式との間で時々刻々変化する通信リンクの品質やユーザの要求に応じて、適切な通信方式及び伝送モードにより通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
本発明の無線通信装置によれば、各々の通信方式との間で時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、適切な通信方式及び伝送モードを都度選択して通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図3は、本発明の実施の形態1における無線通信装置の構成例を示した図である。無線通信装置100は、複数の通信方式に対応可能とされており、本実施の形態では一例として、セルラ系の通信方式Aと無線LAN系の通信方式Bとに対応可能な無線通信装置である。また、各々の通信方式における伝送速度として、無線LAN系の通信方式Bの方が、セルラ系の通信方式Aよりも、伝送速度が高速である場合を仮定する。
図3において、アンテナ101(101a、101b)は無線伝搬路を介して伝送された無線信号を受信し、得られた高周波信号を出力するとともに、送信用に供給された高周波信号を無線伝搬路へ放射するものであり、特に複数の通信方式が用いるRF周波数帯に対応することを特徴とする。このようなアンテナの構成としては、例えば対象とする複数の通信方式が用いる周波数帯の全てを包含する広帯域特性を有するアンテナや、対象とする複数の通信方式が用いる周波数帯の各々に対して、電圧定在波比を低くして、放射効率を高めるように構成した複共振型のアンテナを用いるとよい。また、電気的制御が可能なスイッチや可変容量素子などを用いて、アンテナ素子の電気長や共振モードを変化させて共振周波数を制御する、あるいは周波数の異なる複数のアンテナ素子を備えておきスイッチで切替えるなどして構成した、複数の周波数帯に適応可能な周波数制御型のアンテナ等を用いるとよい。なお、アンテナとして前記周波数制御型のアンテナを用いる場合には、後述する対応する通信方式を変更するための制御信号113を、前記アンテナにも供給する構成とする。
リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)は、アンテナ101から供給された高周波信号を入力とし、所望の周波数帯の信号を選択増幅した上で、所望の復調処理や復号処理を行い、得られた受信データを上位レイヤ処理部103へ出力するとともに、送信用のデータに対し所望の符号化処理や変調処理を行った上で、所望の周波数帯への周波数変換、および増幅を行い得られた送信高周波信号をアンテナ101へ供給する。加えて、リコンフィギュラブル無線処理部102は、機能変更用の制御信号113(113a、113b)に応じて、その機能及び特性が変更可能なものである。
本発明の無線通信装置は、前記アンテナ101及びリコンフィギュラブル無線処理部102による無線処理系統を複数もつ構成とされている。すなわち、無線通信装置100は、複数のアンテナと複数のリコンフィギュラブル無線処理部を有する。本実施の形態では、一例として2つの無線処理系統を設けた場合について説明する。図3では、第1の系統を構成する要素に付した番号の末尾にaを付し、第2の系統を構成する要素に付した番号の末尾にbを付している。リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)は、リコンフィギュラブルRF部1021とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022により構成される。
リコンフィギュラブルRF部1021は、受信処理として、アンテナ101から供給された高周波信号を入力とし、所望の周波数帯の信号を選択増幅及び周波数変換処理し、得られた信号を出力する。またリコンフィギュラブルRF部1021は、送信処理として、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022から供給される変調信号に対して、所望の周波数帯への周波数変換、増幅やフィルタリング等の処理を行い、得られた送信信号をアンテナ101へ供給する。さらに、リコンフィギュラブルRF部1021は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、搬送波周波数や変換利得が、制御信号に応じて制御可能であるとする。
図4に、リコンフィギュラブルRF部1021の構成例を示す。リコンフィギュラブルRF部1021は、リコンフィギュラブル送信部10211、リコンフィギュラブル受信部10212及びリコンフィギュラブル局部発振部10213により構成されている。
リコンフィギュラブル送信部10211は、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022より供給される変調信号を、アンテナ101から放射する高周波信号に変換する役割があり、ベースバンドの変調信号から高周波信号への周波数変換及び送信信号レベルへの増幅といった機能を有する。さらにリコンフィギュラブル送信部10211は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。一般にセルラや無線LANといった無線システムでは、電波法令や標準規格によって使用する通信方式、周波数帯域、送信電力などの項目が制限されている。リコンフィギュラブル送信部10211は、高周波信号の周波数帯域や送信電力が制御信号113によって制御可能であり、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成となっている。これにより、種々の電波法令や標準規格に準じた送信信号を形成することができる。また、通信方式によって変調精度、スプリアス輻射量、隣接チャネル漏洩電力量などの特性の許容値も異なるが、これらの特性値についても、制御信号113によって構成要素である回路の動作を最適に調整することで、適応可能となっているものとする。リコンフィギュラブル送信部10211における構成要素には電力増幅器、アップコンバータ、フィルタ、変調器などの回路があるが、リコンフィギュラブル送信部10211は、制御信号113に応じて、これらの回路中の素子のインピーダンスや能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは各々の通信方式について最適化した回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブル受信部10212は、アンテナ101から供給された高周波信号を、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022が処理可能なより低い周波数のアナログ信号に変換する役割があり、高周波信号からベースバンドのアナログ信号への周波数変換及び搬送波周波数の同調選択、微弱な受信信号の増幅といった機能を有する。さらにリコンフィギュラブル受信部10212は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。一般に受信する信号のレベルは常に一定ではなく、受信場所と通信対象の遠近や移動の有無などの要因によって大きく変化することが想定され、この変化は利用する無線システムによっても異なる。リコンフィギュラブル受信部10212は、受信した高周波信号を、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022が処理可能な周波数及び信号レベルに変換する際の変換周波数や変換利得などが、制御信号113によって制御可能であり、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成とされている。これにより、複数の無線システムに適応した処理を行うことができるようになっている。また、一般にセルラや無線LANといった無線システムでは、主に標準規格によって受信信号のダイナミックレンジや対処可能な妨害波レベルといった規定がなされているが、これらの特性値についても、制御信号113によって構成要素である回路の動作を最適に調整することで適応可能となっているものとする。リコンフィギュラブル受信部10212における構成要素には、低雑音増幅器、ダウンコンバータ、フィルタ、復調器などの回路があるが、リコンフィギュラブル受信部10212は、制御信号113に応じて、これらの回路中の素子のインピーダンスやフィルタの同調周波数、能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは各々の通信方式について最適化した回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブル局部発振部10213は、リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212における周波数変換に必要な周波数及び信号レベルの局部発振信号を発生する機能を有する。さらにリコンフィギュラブル局部発振部10213は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。リコンフィギュラブル局部発振部10213の構成要素は、高安定な水晶発振器などの基準発振器や周波数が可変な発振器、位相同期回路、増幅器などの回路である。リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212において、周波数変換を行うアップコンバータやダウンコンバータは、一般にミキサ回路によって構成され、変換前後の信号の和又は差の周波数成分を主とする局部発振信号を必要とする。セルラ系や無線LAN系の無線システムでは、利用可能な搬送波周波数が異なり、UHF帯からマイクロ波帯にかけて広範に亘る。リコンフィギュラブル局部発振部10213は、制御信号113によって局部発振信号の周波数が広範に設定可能で、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系に適応可能な構成とされている。これにより、複数の通信方式に対応した局部発振信号を形成することができる。リコンフィギュラブル送信部10211及びリコンフィギュラブル受信部10212において、アンテナ101から放射する高周波信号とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022で処理するアナログ信号との間の周波数変換方法には、代表的なものに直接変換するダイレクトコンバージョン方式と中間周波数を介して数回に分けて変換するスーパヘテロダイン方式があり、前者では搬送波周波数と同じ周波数成分を有する局部発振信号が、後者の場合には異なる複数の局部発振信号が必要となる。また、直交ミキサを利用する構成では、90度の位相差を有する信号を得るために、直交ミキサの周波数変換に必要な周波数の2倍乃至4倍の周波数成分を有する局部発振信号が必要となる場合もある。以上のように、広帯域な局部発振信号を生成する必要があるが、リコンフィギュラブル局部発振部10213は、制御信号113に応じて、発振器を構成する共振素子の素子値や能動デバイスのバイアスなどを変化させるなどして動作点を調整する、もしくは逓倍回路や分周回路を利用する、もしくは所望の発振周波数帯域を複数に分割して、各周波数帯域について最適化した発振回路を複数並列に配置して切り替える、もしくはこれらを組み合わせた構成を採ることによって、これらの局部発振信号を形成することが可能となっている。また、リコンフィギュラブル局部発振部10213においては、通信方式によって異なる位相雑音などの特性の要求に対しても、発振器の調整に加えて位相同期回路のループフィルタ定数を制御するなどして、特性の最適化が可能となっている。
リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022(1022a、1022b)は、受信処理として、入力された変調信号を量子化してディジタル信号に変換した上で、所定の方式に対応した復調処理及び復号処理等のディジタル信号処理を行い、得られた受信データを上位レイヤ処理部103へ出力すると共に、受信品質の収集に必要となる受信信号110を制御部104へ出力する。またリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、送信処理として、入力された送信データに対して所定の方式に対応した符号化処理や変調処理を施した上で、得られたディジタル変調信号をアナログ信号に変換し、リコンフィギュラブルRF部1021へ出力する。さらにリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、送受信処理の際の変調方式や符号化方式と、それに付随するインタリーブやスクランブル処理、さらにはアナログ・ディジタル変換におけるサンプリングレートが、制御信号に応じて変更可能な構成であることとする。
図5に、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022の構成例を示す。リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022は、アナログ・ディジタル変換部10221、リコンフィギュラブル送信処理部10222及びリコンフィギュラブル受信処理部10223により構成されている。
アナログ・ディジタル変換部10221は、受信時には、リコンフィギュラブルRF部1021から供給される受信アナログ信号を、所定の量子化ビット数及びサンプリングレートで量子化し、これにより得たディジタル信号をリコンフィギュラブル受信処理部10223に出力する。一方、アナログ・ディジタル変換部10221は、送信時にはリコンフィギュラブル送信処理部10222から供給されるディジタル変調信号を、所定のビット数及びサンプリングレートでアナログ信号に変換し、送信アナログ信号をリコンフィギュラブルRF部1021へ出力する。
リコンフィギュラブル送信処理部10222は、入力された送信データに対して所定の方式に対応した符号化処理や変調処理を施し、これにより得たディジタル信号をアナログ・ディジタル変換部10221に供給する。さらにリコンフィギュラブル送信処理部10222は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、送信処理の際の変調方式や符号化方式と付随するインタリーブやスクランブル処理の方式を、制御信号113の内容に応じて通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成であることとする。
リコンフィギュラブル受信処理部10223は、入力されたディジタル信号に対し、所定の方式に対応した復調処理及び復号処理等のディジタル信号処理を行い、これにより得た受信データを上位レイヤ処理部103へ出力すると共に、受信品質の収集に必要となる受信信号110を制御部104へ出力する。さらにリコンフィギュラブル受信処理部10223は、機能変更用の制御信号113に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。本実施の形態では、変更可能な機能の一例として、受信処理の際に対応する変調方式や符号化方式と付随するインタリーブやスクランブル処理の方式を、制御信号113の内容に応じて、通信方式Aもしくは通信方式Bに対応する処理系へ変更可能な構成であることとする。
この実施の形態の場合、リコンフィギュラブル送信処理部10222とリコンフィギュラブル受信処理部10223の各々は、例えばFPGAデバイスにより構成されており、内部回路の構成を記述した設定データを書き換えることにより、その構成及び動作内容が変更可能とされている。
上位レイヤ処理部103は、送信時には、通信する相手局へ送信するデータを生成し、これを複数のリコンフィギュラブル無線処理部102に供給する。また上位レイヤ処理部103は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102から出力される受信データを入力し、対応するアプリケーションでの処理等の上位層における処理を行う。上位レイヤ処理部103は、例えばCPU等の汎用プロセッサにより構成されている。
制御部104は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)のそれぞれから得られる通信リンク品質に関する情報110(110a、110b)に基づいて、各リコンフィギュラブル無線処理部102による系統で対応すべき通信方式及び伝送モードを決定し、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102に対して、機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する。本実施の形態における制御部104は、通信品質情報収集部1041と、通信動作制御部1042と、機能変更制御部1043とを有する。
通信品質情報収集部1041は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102の各々で受信復調処理の際に得られた信号110(110a、110b)を用いて、各系統における通信リンク品質に関する情報を収集し、収集した通信品質情報111を通信動作制御部1042に出力する。本実施の形態の場合、通信品質情報収集部1041は、各リコンフィギュラブル無線処理部102(102a、102b)において得られた直交復調信号を受信信号110として用い、対象となる通信方式が存在するか否かの検出を行うとともに、システムが存在する場合には、通信品質情報として受信CNR(搬送波電力対雑音電力比)値を推定する。受信CNR値の推定方法については、本発明で特に限定されるものではないが、例えば受信結果として得られた信号点ベクトルの平均信号点ベクトルの電力値と、平均信号点ベクトルを基準とした各ベクトルの分散値との比により算出する方法や、最尤系列推定や最尤復号が行われる方式では、その際のメトリック値から等価的な受信CNR値を推定する方法等が適用可能である。
通信動作制御部1042は、通信品質情報111に基づき、各リコンフィギュラブル無線処理部102が対応すべき通信方式及びその方式における伝送モードを選択し、選択結果112を出力する。その具体的な選択条件と手順の例については後述する。
機能変更制御部1043は、通信動作制御部1042から出力される通信方式及び伝送モードの選択結果112に基づいて、リコンフィギュラブル無線処理部102における各構成要素の機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する。本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部102がセルラ系の通信方式Aと無線LAN系の通信方式Bとに対応可能な構成としているので、機能変更制御部1043からは、リコンフィギュラブル無線処理部102を、これらの通信方式のうち、いずれかの通信方式へ切り換えることを示す制御信号113が出力される。
この結果、無線通信装置100は、各リコンフィギュラブル無線処理部102が、どの通信方式に対応する機能に変更されるかに応じて、図6に示すような複数の伝送モードのうちのいずれかの伝送モードが選択的に設定されるようになされている。これにより、無線通信装置100においては、複数の伝送モードの中から、電波伝搬環境等に応じて、最適な伝送モードを選択できるようになる。なお図6に示す各伝送モードの詳細については後述する。
以上のような構成による無線通信装置100により、通信方式Aと通信方式Bとを用いて、所望のアプリケーションデータの通信を行う動作の一例として、装置の起動時、通信待機時、通信時の3通りに分け、以下で説明する。
図7は、無線通信装置100の電源投入による、起動時および通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャートである。装置の電源が投入されると、リコンフィギュラブル無線処理部102aは、制御部104からの制御信号113aに基づいて、通信方式Aに対応するように機能が設定され、またリコンフィギュラブル無線処理部102bは、制御部104からの制御信号113bに基づいて、通信方式Bに対応するように機能が設定される(ステップ101)。各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bの無線処理系統では、それぞれの通信方式のサービス環境下にあるか否かの検出が行われる(ステップ102)。前記検出結果に基づき、通信待機時の動作内容が以下のように判定される。双方の通信方式のサービスが検出された場合(ステップ103)、それぞれの通信方式ともに通信待機の状態へ移行する(ステップ104)。どちらか一方の通信方式のサービスのみ検出された場合(ステップ105、107)には、検出された通信方式については通信待機状態へ移行し、そうでない通信方式については、引き続き通信方式の検出を定期的に実施する(ステップ106、108)。双方ともに通信方式の存在が検出できなかった場合には、引き続き定期的に双方の通信方式の検出を実施する(ステップ107)。なお、この場合には、装置の消費電力を低減するため、一方のリコンフィギュラブル無線処理部のみを動作させ、定期的に通信方式Aと通信方式Bとに機能を切り換えた上で、通信方式の検出動作を行ってもよい。
図8は、通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャートであり、以下で各々の動作について順を追って説明する。
通信待機時には、待機対象となっている通信方式において、他局からの通信要求があるか否か、もしくは自局における上位レイヤ処理部において、他局への通信要求が発生しているか否かを検出することにより、通信要求の有無を検出し、通信要求が検出された場合には通信動作状態(ステップ115)へ移行し、そうでない場合にはステップ112へ移行する(ステップ111)。ステップ112では、待機対象となっている通信方式における所定の方法により、定期的にシステム制御情報の送受信や通信品質情報111の収集を行う。なお、ステップ111とステップ112は縦列に表現されているが、必ずしも双方が、縦列的に実施される必要はなく、それぞれ並列的に、もしくは異なる周期で実施するようにしてもよい。ここで、例えばリコンフィギュラブル無線処理部102aにおいて、通信方式Aとの間のシステム制御情報の送受信が、間欠動作により、一部の時間しか行われていないような状況下では、リコンフィギュラブル無線処理部102aの機能を、定期的に通信方式Bに対応するように変更し、通信方式Bに対する通信リンク品質を監視しておいてもよい。そして、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bの各々において、対応している通信方式との間の通信リンク品質が逆転するような状況であるかの判定を行い(ステップ113)、逆転している状況であれば、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、bにおいて、対応すべき通信方式を逆に変更する。すなわち一方のリコンフィギュラブル無線処理部102aにおいて、通信方式Bに対する通信待機動作を行い、もう一方のリコンフィギュラブル無線処理部102bにおいて、通信方式Aに対する通信待機動作を行うように変更することにより、通信待機時の通信リンク品質を維持するように動作させる(ステップ114)。
また、定期的に収集された待機対象としている通信方式における通信品質情報111に基づき、前記通信品質が、システム制御情報の送受信のための通信リンク維持に十分な状態であるかを判断し(ステップ116)、品質が劣化してリンクの維持が不可能な状態である場合には、その通信方式における通信待機状態を解除し(ステップ117)、サービス検出状態(ステップ118)へ移行する。ここで、サービス検出状態(ステップ118)の動作は、図7における(ステップ102)以降の処理に相当する。
また、例えば無線通信装置100が通信方式Aのみのサービスエリア内にあって、通信待機動作をしている場合、前記通信待機対象となっている通信方式Aに機能設定されている方のリコンフィギュラブル無線処理部102aの系統は、定期的に通信方式Aに対する(ステップ111)〜(ステップ117)の一連の通信待機動作を行い、必要に応じて定期的なシステム制御情報の送受信を行う。また、通信待機対象となっていない通信方式Bに機能設定されているリコンフィギュラブル無線処理部102bの系統では、定期的に通信方式Bのサービスが存在するか否かの検出動作を行う。リコンフィギュラブル無線処理部102aにおける通信方式Aとの通信リンクの品質が劣化した場合には、リコンフィギュラブル無線処理部102bは、通信方式Aと通信待機動作をするタイミングにのみ無線処理部の機能を通信方式Aに対応すべく機能変更し、リコンフィギュラブル無線処理部102bにおいても、通信方式Aの通信待機動作用の信号を受信し、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bとの間で受信ダイバーシチ動作を行い、通信品質を改善させる。もしくは、リコンフィギュラブル無線処理部102bにおける通信方式Aとの通信リンク品質の方が、リコンフィギュラブル無線処理部102aにおけるものより、良い状況になった場合、通信方式Aとの間の通信待機動作は、リコンフィギュラブル無線処理部102bが担うこととし、リコンフィギュラブル無線処理部102aでは、逆に通信方式Bが存在するか否かの検出動作を定期的に行うように動作させてもよい。
通信方式Bのみのサービスエリア内にあって通信待機の動作をしている場合には、上述した動作説明における通信方式AとB、リコンフィギュラブル無線処理部102aと102bとを入れ替えた説明が成り立つ。
次に、前記通信待機状態において通信要求が検出され、通信動作制御状態に移った場合の動作手順の一例について説明する。本実施の形態では、他局と自局との間でデータ通信を行うにあたっての動作形態として、複数の通信方式による複数の通信リンクを、並列に用いることも含めて通信制御する場合について説明する。図9は、通信動作状態における通信制御手順の一例を示すフローチャートであり、この図を用いながら、リコンフィギュラブル無線処理部102aが通信方式Aとの間で通信リンクを確立し、かつリコンフィギュラブル無線処理部102bが通信方式Bとの間で通信リンクを確立している状況下において、双方の通信リンクの品質に基づいて、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bで対応すべき、通信方式と伝送モードを制御する動作について説明する。具体例として、各々の通信リンクの品質に応じて通信方式間でダイバーシチ伝送動作をする伝送モードと、一方の通信方式においてダイバーシチ伝送動作する伝送モード、さらには、MIMOチャネル伝送動作をするような伝送モードを通信リンクの状況に応じて適応的に制御する動作について説明する。ここで述べているMIMOチャネル伝送とは、送信側と受信側とで共に、複数の無線処理系統を用いて複数の通信データ系列を多重して伝送する、いわゆる空間多重あるいは時空間多重による伝送を行い、受信側で多重された伝搬路状況を推定し、得られた伝搬路特性に基づいて、前記多重された複数のデータ系列を分離して受信データを得る伝送方式のことである。
リコンフィギュラブル無線処理部102aでは、通信方式Aの所定の方式で自局宛に送信された信号に対して、所定の信号処理を施し、受信復調結果を得る。また、リコンフィギュラブル無線処理部102bでは、通信方式Bの所定の方式で自局宛に送信された信号に対して、所定の信号処理を施し、受信復調結果を得る。
通信品質情報収集部1041では、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bによって得られた、双方が対応している通信方式の受信信号110a、110bを用いて、各々の系統における受信CNR値を推定し、推定結果に基づいて通信品質が判定される(ステップ121)。本実施の形態では、図10に示すような判定テーブルを用いて通信品質を判定する。すなわち、受信信号の品質を良い順に「良」>「可」>「不良」>「不可」という4種類に分類し、通信品質情報のパラメータとして、これらのうちいずれかを出力する。例えば、方式Aについての受信CNR値が、方式Aにおける感度点レベル(SL_A)よりも10dB高い場合、通信品質を「可」とする。このようにして得られた各々の通信方式についての通信品質情報111が、通信動作制御部1042に供給される。
通信動作制御部1042では、入力された通信品質情報111に基づき、所定の時間間隔毎に、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが対応すべき通信方式と伝送モードを選択し、選択結果112を機能変更制御部1043に通知する(ステップ122)。ここで、通信動作制御部1042において選択される通信方式と伝送モードの一例を図6に示す。
以下、図6の選択テーブルを用いて、各伝送モードにおける動作を説明する。
通信方式Aよりも伝送速度の高い、通信方式Bにおける通信品質が「良」の場合には、リコンフィギュラブル無線部102a、102bともに通信方式Bに対応させることにより、通信方式Bにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行う伝送モードを選択する。これにより、送信側及び受信側双方において、無線処理系統を2系統有している本実施の形態のような無線通信装置の構成の場合には、1系統単独で伝送をした場合に比べて、最大で約2倍の伝送速度を得ることが可能となる。すなわち、各々の系統で同一の通信方式を用いながら、別々の送信データを伝送路上に多重して並列伝送し、受信側において各送信系統から各受信系統への伝送路特性を各々推定し、得られた伝送路推定結果に基づいて、送信信号の分離を行うことが可能となり、もともと一系統のみでデータ伝送していた場合に比べて、最大で2倍程度の伝送速度を得ることが可能となる。MIMOチャネルによる伝送方法の詳細については、本発明において特に限定されるものではないが、例えばArogyaswami Paulraj他著による”Introduction to Space-Time Wireless Communications”において開示されているような、MIMOチャネルにおける空間多重や時空間多重による伝送方法を用いることが可能である。なお、上記のようにMIMOチャネル伝送を行っている間においても、例えば定期的にリコンフィギュラブル無線処理部102aの構成を通信方式Aに対応するように制御し、通信方式Aの通信品質を監視するよう制御してもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」もしくは「不良」の状態の場合、通信方式Aと通信方式Bの双方で通信リンクを構成し、これらを用いて方式間ダイバーシチにより通信を行うモードが選択され、リコンフィギュラブル無線処理部102aは通信方式Aに対応させ、リコンフィギュラブル無線処理部102bは通信方式Bに対応させる。方式間ダイバーシチによる伝送方式の具体例としては、伝送するデータをIPレイヤや上位レイヤにおけるパケット単位で構成し、各々の通信リンクでの伝送速度に応じて送信するパケットの数を配分して伝送する例があり、このようにすると伝送速度を最大で双方の通信リンクの伝送速度の合計まで増やすことが可能となる。また、伝送するデータが伝送の上位レイヤ(例えばアプリケーションレイヤ)において重要度等の面で差がある場合には、この重要度に応じて伝送する通信リンクを選択して伝送してもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「良」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」の場合、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bをともに、通信方式Aに対応させ、通信方式AにおいてMIMOチャネルによる多重伝送を行うモードを選択する。
通信方式Aにおける通信品質が「可」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」以下の場合、リコンフィギュラブル無線処理部102aのみを使用し、通信方式Aのみにて通信を行うモードを選択する。逆に、通信方式Aにおける通信品質が「不良」以下で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」である場合、リコンフィギュラブル無線処理部102bのみを使用し、通信方式Bのみにて通信を行うモードを選択する。なお、一方の通信方式のみでの伝送モードが選択されている場合(例えば、リコンフィギュラブル無線処理部102aにより通信方式Aのみにて通信を行っているような場合)、通信動作をしていない方(リコンフィギュラブル無線処理部102b)の系統を用い、定期的に通信していない方の方式(通信方式B)の方の通信品質を測定しておき、この情報に基づいて所定時間後に改めて伝送モードの判定が行われる。ここで、通信していない方の通信方式における通信品質測定は、必ずしもリコンフィギュラブル無線処理部102bで行う必要は無く、リコンフィギュラブル無線処理部102aにより通信方式Aにおいて間欠的に通信が行われている場合には、この通信がアクティブでない状態の間に、リコンフィギュラブル無線処理部102aの構成を通信方式B用に再構成した上で、通信方式Bの通信品質を測定する構成としてもよい。
通信方式Aにおける通信品質が「不良」で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」である場合、双方のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bを通信方式Aに対応させるよう制御し、いわゆるダイバーシチにより送受信する伝送モードを選択する。すなわち、受信時には、通信方式Aで自局宛に送信された信号を双方の系統で受信した上で、受信品質の良い方の系統の受信結果を選択する、もしくは、双方の系統での受信結果を合成し、受信結果を得る。また、送信時には、同じ送信データを双方の系統を用いて送信処理を行う。
逆に、通信方式Aにおける通信品質が「不良」以下で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」である場合、双方の無線処理部102a、102bを通信方式Bに対応させるよう制御し、通信方式Bで自局宛に送信された信号をダイバーシチにより送受信する伝送モードを選択する。
最後に、通信方式Aと通信方式Bともに通信品質が「不可」な状態にある場合には、いずれかの通信方式の品質が改善するまで、データ伝送動作を待機するモードを選択する。
このような選択条件に基づいた、通信方式と伝送モードの選択が、所定の時間間隔毎に行われ、選択結果112が機能変更制御部1043に通知される。
機能変更制御部1043では、伝送モードの選択結果112に基づき、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにおける、通信処理の機能を変更するための制御信号113(113a、113b)を出力する(ステップ123)。具体的には、通信方式Aか通信方式Bのいずれかの方式への対応をするような制御信号が出力され、これにより例えば、リコンフィギュラブルRF部1021a、1021bにおいては、送受信する搬送波周波数や送信電力などの設定が変更され、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bにおいては、変調方式や符号化方式と、それに付随するインタリーブやスクランブル処理、さらにはアナログ・ディジタル変換におけるサンプリングレート等の設定が変更される。
このようにして、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bは、選択された通信方式及び伝送モードで通信するための機能変更が施される。また、選択された通信方式及び伝送モードに関する情報は、機能変更されたリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにより、各通信方式の送信局側へ通知され(ステップ124)、通信相手局側においても選択された伝送モードに対応し、通信相手局と無線通信装置100との間で送受信処理が行われる(ステップ125)。例えば、伝送モードとして複数の通信方式間でのダイバーシチ送受信を行うモードの場合、双方の通信方式がネットワーク上で連携しデータ送信を行う。ここで、通信相手局における双方の通信方式による送受信は、必ずしも同一の無線通信装置によりなされる必要はなく、ネットワーク等を介して別々の無線通信装置により通信されてもよい。
また、通信相手局との間で所定の伝送モードによる送受信が行われていない区間が存在する場合が検出される(ステップ126)と、リコンフィギュラブル無線処理部102aもしくは102bを、現在の伝送モードでは使用していない通信方式へ機能変更し、通信品質に関する情報を取得してもよい。
以上のように本実施の形態によれば、複数のアンテナと、複数のリコンフィギュラブル無線処理部と、複数のリコンフィギュラブル無線処理部をそれぞれ独立に制御して、各リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を独立に切り換える制御部とを設けた構成とすることにより、各リコンフィギュラブル無線処理部において得られた通信品質情報に基づいて、リコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を適宜変更することで、一台の無線通信装置において、単独の通信方式のみでのダイバーシチ送受信を行うモード、MIMOチャネルにおける空間多重伝送を行うモード、複数の通信方式の間でのダイバーシチ伝送を行うモード、又は、単独の通信方式のみで伝送を行うモード等の複数の伝送モードの中から、所望の伝送モードを適宜選択して通信を行うことができるようになる。この結果、各々の通信方式との間で、時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、従来に比べて、より広範囲な伝送モードの選択オプションの中から適切な伝送モードにより通信を行うことが可能となり、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
これにより例えば、複数の伝送モードのうち、ダイバーシチダイバーシチ伝送により複数の系統で得られた受信信号を、最大比合成法のように物理レイヤにおける信号データの段階で合成処理するような処理が容易に実行可能となるといった効果も得られる。
なお、本実施の形態では、通信品質情報収集部1041において収集する各無線処理系統における通信リンク品質に関する情報として、各系統における受信CNR値を推定し得られた受信CNR値に基づいて、図10に示すような判定テーブルに基づいて4段階に分けたものを用いる構成としたが、本発明は必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えば、図10に示したような判定テーブルにおける受信CNR値に対するしきい値の具体的な値は、対象とする通信方式に応じて適切な値が異なるので、適用する通信方式に応じて異なる値を用いてもよい。また、品質の分類は必ずしも4段階である必要はなく、場合によっては3段階以下や5段階以上に分類してもよく、この場合これに対応して伝送モード選択用のテーブルを改めて用意すればよい。また、受信CNR値を推定する代わりに別のパラメータを用いてもよく、この場合、使用されるパラメータについての図10に相当する判定テーブルが用意されればよい。例えば、別のパラメータとして、受信データのビット誤り率(Bit Error Rate)やフレーム消失率(Frame Erasure Rate)を、測定もしくは推定して用いる構成としてもよいし、干渉も含めたパラメータとしてCIR(搬送波電力対干渉波成分電力比)等のパラメータを用いる構成としてもよい。
また、通信動作制御部1042において選択される伝送モードの候補として、図6のテーブルに示したようなモードを示したが、必ずしもここに挙げた全ての伝送モードに対応する必要はなく、対象とする通信方式及び要求される条件に応じて、適用される伝送モードの内容を変更してもよい。例えば一部の伝送モードを選択肢から省略した動作としても、本発明による効果は期待できる。また、一部選択される伝送モードを、別の伝送モードに替えたテーブルを用いた制御としてもよい。例えば、図6のテーブルにおいて、通信方式Aにおける品質が「良」で、通信方式Bにおける品質が「不可」である状況において、選択される通信方式AによるMIMO伝送のモードを省略し、代わりに通信方式A単独で通信する伝送モードが選択されるよう制御してもよい。さらには、図6で例示していない伝送モードを新たに適用することも可能である。例えば、新たな伝送モードとして、複数の無線処理系統を用いてアンテナの指向性制御を行う伝送モードを設け、通信方式A、Bともに通信品質が不良もしくは不可な状況下においては、指向性制御による利得向上効果や干渉成分の抑圧効果により、通信の信頼度向上を図るよう通信制御することとしてもよい。また、対象とする通信方式において、変調方式を適応的に制御する、いわゆる適応変調方式が採用されているようなシステムの場合、図6において一方の通信方式単独で伝送するモードで通信している際に、使用していないほうの無線処理系統も用いて指向性制御を行うことにより前記効果を得、より高効率な変調方式を選択して伝送速度を向上されるよう制御してもよい。
また、図6に示した伝送モードのうち、ダイバーシチでの伝送モードの際の具体的な動作例として、無線通信装置において複数の無線処理系統を用いて送受信する、いわゆる空間ダイバーシチによる伝送を一例として説明したが、本発明は必ずしも空間ダイバーシチに限定されるものではない。例えば、時間ダイバーシチやサイトダイバーシチとの組み合わせによる伝送方法を適用してもよい。
また、MIMOによる伝送モードやダイバーシチによる伝送モードが選択された場合、各々の無線処理系統において受信された受信信号を用いて、MIMOにより多重された信号の分離処理や、ダイバーシチにより送信されたブランチ毎の受信信号の合成処理といった後処理が必要となる。また、MIMO伝送モードによる送信時には、送信データを複数の無線処理系統に対して分割するといった前処理が必要となる。これらの処理をどこで行うかについては本発明の本質的な部分ではないが、例えば上位レイヤ処理部103において行うこととしてもよい。また例えば、一方のリコンフィギュラブル無線処理部102aで前処理を行い、リコンフィギュラブル無線処理部102bが、前記前処理の結果と自らの前処理の結果を用いて後処理を行う構成としてもよい。
また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bにおいて、制御信号に応じて変更可能な機能の一例として、サンプリングレート、送受信時の変調方式及び符号化方式をあげたが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、アナログ・ディジタル変換部における量子化ビット数を変更する構成としてもよいし、ディジタルフィルタ処理を行う場合にはそのタップ係数等のフィルタ特性に関わるパラメータを変更可能としてもよい。また、等化処理や再送等による誤り制御方式を変更可能としてもよい。
また、リコンフィギュラブル送信処理部10222とリコンフィギュラブル受信処理部10223とは、それぞれFPGAデバイスにより構成されるものとしたが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えばFPGAデバイスの代わりにソフトウェア命令による演算処理が可能なDSPデバイスやCPUデバイスを使用し、ソフトウェアプログラムの再読み込み、もしくはサブルーチンの読み出し先の変更により複数の通信方式に対応可能とする構成としてもよい。もしくは、これらのデバイスの代わりに、FPGAデバイスよりも高速に、その内部構成及び演算内容を動的に変更可能な、いわゆるリコンフィギュラブルプロセッサ等のデバイスを用いる構成としてもよい。ここで、リコンフィギュラブルプロセッサの構成としては、例えば機能を個別に変更可能な算術演算ユニット(ALU)が複数配置され、さらに各々の算術演算ユニットの間の接続関係を変更可能な構成とし、前記各々の算術演算ユニットにおける演算機能と、それらの間の接続関係を動的に変更することにより、複数の通信方式に対応可能とした構成のものを適用してもよい。もしくは、フィルタ、FFT、復号処理といった機能ブロック毎にパラメータ変更により処理仕様の変更が可能な専用回路を設け、各々の機能ブロックにおける処理仕様(例えば、フィルタにおけるタップ数やタップ係数、FFT処理における要素ポイント数、復号処理における処理ビット数、符号化率や生成多項式等)を変更可能な、いわゆる特定信号処理エンジン(コプロセッサ)を併設したCPUデバイス等を適用してもよい。また、送信処理部と受信処理部とで別々のデバイスを用いることとしたが、これに限定されるものではなく、一つのデバイスで送信処理部と受信処理部を構成してもよい。
また、制御部104を、独立した機能部として構成した場合について述べたが、これに限定されるものではなく、例えば上位レイヤ処理部103がCPU等のプロセッサにより構成される場合、この処理部内における制御ソフトウェアモジュールの一つとして、制御部104の機能を含めてもよい。この場合、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bへの機能変更用の制御信号113は、上位レイヤ処理部103から供給される形態となり、また各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bから出力される受信信号110は、受信データと共に上位レイヤ処理部103へ供給される形態となる。
また、本実施の形態では、通信動作として通信方式Aと通信方式Bを、複合的に用いてデータ伝送を行う形態についてのみ例示したため、その他の形態については説明していない。その他の形態として、例えば従来のように一方の通信方式のみを用いて、独立に通信を行う使用形態が考えられるが、本発明の本質を変えない範囲において、このような使用形態も含めた動作制御を行ってもよいことは言うまでもない。
また、本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部102aによる系統(以下、無線処理系統aと呼ぶ)とリコンフィギュラブル無線処理部102bによる系統(以下、無線処理系統bと呼ぶ)とは同様の構成及び機能をもち、同時並行的に処理が行われる構成及び動作を仮定しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、無線処理系統bは無線処理系統aに比べてその性能や機能が限定され、無線処理系統aで通信を行っている方式とは異なる側の通信方式の通信リンク品質を定期的に監視する動作のみ行う構成としてもよい。この場合、通信制御において選択可能な伝送モードは図6で示したものに比べて限られたものとなる。例えばMIMOによる伝送モードやダイバーシチによる伝送モードは選択できないが、通信リンクの品質に応じて複数の無線処理系統や通信方式から最適な系統および方式を選択して、通信を行うような構成も可能であり、従来よりも通信リンクの品質状況に応じて、柔軟に対応可能な無線通信装置を実現することが可能となる。
また、通信動作制御部1042における伝送モードの選択動作は、所定の時間毎に行うものとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば選択動作を行う間隔は不定期に行うこととしてもよいし、入力される各通信方式の通信リンク品質に関する情報が変化した場合に前記選択動作を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では、通信方式Aの一例としてセルラシステムを、通信方式Bの一例として無線LANシステムを想定した形態を示したが、これはあくまでも一例であり、その他の通信方式による構成としてもよい。例えば、放送系のディジタルTV放送やディジタルオーディオ放送に対応する構成としてもよいし、ピコセル系の通信方式(IEEE802.15系の標準規格に準じた通信方式)に対応可能な構成としてもよい。さらには、微弱電力送信により独自な通信方式を用いる構成としてもよい。
また、本実施の形態では、リコンフィギュラブル無線処理部を2系統設け、同時に2つの無線処理系統を動作させることを一例として示したが、無線処理系統数が2に限定される必要が無いことは言うまでもなく、3系統以上の無線処理系統を用いた構成でも、各々の無線処理系統における通信品質に関する情報を収集し、これらの情報に基づいて対応する動作モードを決定するための判断テーブルを改めて定義しなおすことにより適用可能であることは明らかである。特に、無線処理系統数が3以上である場合には、一部の複数の無線処理系統によりダイバーシチやMIMO伝送による伝送を行い、さらに別の無線処理系統との間で通信方式間ダイバーシチによる伝送を行うような伝送モードの設定も可能となる。
また、本実施の形態における無線通信装置100の構成において、制御部104から各リコンフィギュラブル無線処理部102へ接続される制御信号113の構成、接続形態と伝送方法については、本発明において特に限定されるものではないので明示していない。しかしながら、その構成例を挙げるとすれば、対応する方式を通信方式Aにするのか通信方式Bにするのかを示すビットデータと設定の変更を許可するイネーブル信号とのセットを制御信号113として供給することとし、各々のリコンフィギュラブルRF部やリコンフィギュラブルディジタル信号処理部では、供給されたビットデータとイネーブル信号とに基づいて、各機能変更部分の設定を変更するよう構成することができる。もしくは、各設定変更部への直接制御線を各々設けることとし、機能変更制御部1043から出力される制御信号113は、各々制御線を用いて各々の設定変更部へ直接供給されるよう構成してもよいし、さらには共通バス経由で供給されるよう構成してもよい。
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2における無線通信装置の構成例を示した図である。図11において、実施の形態1の図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては、図3と同じ番号を付している。本実施の形態の無線通信装置200が、実施の形態1の無線通信装置100(図3)の構成と異なるのは、上位レイヤ処理部103の代わりに上位レイヤ処理部201を設け、制御部104の代わりに制御部202を設けた点である。
上位レイヤ処理部201は、基本的には上位レイヤ処理部103と同様の動作をするものであるが、さらに、上位レイヤでの処理の一つとして、通信に関する要求条件をユーザから得、得られた情報を出力する処理を行うものである。本実施の形態では、要求条件の一例として、通信の際に発生し得る料金に関するユーザからの要求条件を、アプリケーションソフト上でユーザが選択するものとし、上位レイヤ処理部201が必要に応じて、前記ユーザが選択した要求条件に関する情報を出力するものとする。
制御部202は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bの各系統で受信した信号の通信リンク品質に関する情報110a、110bと、通信の際の上位レイヤにおいて処理されるアプリケーション等において、ユーザにより設定された要求条件210とを入力とし、これら二つの情報に基づいて、各無線処理系統の対応すべき通信方式及び伝送モードを決定し、各々のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bに対して、機能を変更するための制御信号113a、113bを出力する。本実施の形態における制御部202は、要求条件収集部2021と、通信動作制御部2022と、通信品質情報収集部1041と、機能変更制御部1043とにより構成されている。このうち通信品質情報収集部1041と機能変更制御部1043とは、図3における同一番号の構成要素と同様の構成及び動作をするものであり、ここでは説明を省略する。
要求条件収集部2021は、上位レイヤ処理部201から供給されるユーザの要求条件に関する情報210を収集し、収集結果211を通信動作制御部2022へ供給する。その動作の詳細については後述する。
通信動作制御部2022は、通信品質情報収集部1041から供給される通信品質情報111と要求条件収集部2021から供給される収集結果211とを入力とし、これらの情報に基づいて、各無線処理系統が、対応すべき通信方式システム及びそのシステムでの伝送モードを選択し、選択結果212を出力する。その具体的な決定手順の一例については後述する。
ここで、本実施の形態における通信サービス形態の一例として、セルラに相当する通信方式Aによるサービスにおいては、通信するデータの容量に応じて重量的に料金が発生するものとし、さらに通信方式AにおいてMIMOによる多重伝送を行う場合には、さらに追加料金が発生するものとする。一方、無線LANに相当する通信方式Bによるサービスにおいては、通信料金はデータ容量には依存しないものとし、さらにMIMOによる多重伝送を行っても追加料金は発生しないものとする。また、通信方式Aと通信方式Bとによるシステム間ダイバーシチによる伝送を行う場合には、双方の通信方式に対して追加料金が発生するものとする。
以上のような構成による無線通信装置200の動作について、実施の形態1の無線通信装置100とは異なる動作をする部分について、以下で説明する。
上位レイヤ処理部201は、通信の上位レイヤにおける処理の一つとして、通信の際に発生する料金に関する要求条件をユーザに設定してもらう。具体的には、上位レイヤ処理部201において実行されているアプリケーションソフトウェアにおいて、通信料金を節約するモード(以下、料金優先モード)と、料金がよりかかっても、通信リンクの維持もしくは伝送速度の確保を図るモード(以下、通信優先モード)との、いずれのモードがよいかについての選択をユーザに求め、選択されたモードに関する情報を記憶しておく。
要求条件収集部2021は、上位レイヤ処理部201から前記ユーザが選択したモードに関する情報210を読み出し、要求条件の収集結果211として出力する。一方、通信品質情報収集部1041は、実施の形態1での説明と同様の動作をし、複数のリコンフィギュラブル無線処理部102a、102bから得られた各々の通信方式についての通信品質情報111を出力する。
通信動作制御部2022は、前記要求条件の収集結果211と通信品質情報111とに基づき、所定の時間毎に、各リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが対応すべき通信方式及び伝送モードを選択し、選択結果212を機能変更制御部1043へ供給する。ここで、通信動作制御部2022において選択される通信方式及び伝送モードの一例を図12に示す。
以下、図12の選択テーブルを用いて、各伝送モードにおける動作を説明するが、実施の形態1における選択テーブル(図6)と同名の伝送モードについては、実施の形態1で説明したものと同様の動作であるため、ここでは説明を省略する。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「可」である場合、ユーザが設定した要求条件に応じて、以下の二通りの伝送モード選択が行われる。まず、ユーザが通信リンクの伝送速度確保を図る、通信優先モードを設定していた場合、通信速度を確保するために、通信方式Aと通信方式Bとの間で各々の通信リンク品質に応じた方式間ダイバーシチ通信を行う伝送モードが選択される。一方でユーザが通信料金を節約する、いわゆる料金優先モードを設定した場合、追加料金の発生する方式間ダイバーシチの伝送モードは選択せず、通信料金が発生しない通信方式B単独による伝送モードが選択される。それぞれ、選択された伝送モードにおいて、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bが、どちらの通信方式に対応するよう設定されるかについては、実施の形態1において同名の伝送モードが選択された場合と同様である。
通信方式Aにおける通信品質が「良」もしくは「可」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不良」である場合、ユーザが設定した要求条件に応じて、以下の二通りの伝送モード選択が行われる。通信優先モードが設定されている場合、通信方式Bにおける通信品質が不良な状態であっても、通信方式A単独の場合よりも高い伝送速度が得られる可能性があるため、通信方式Aと通信方式Bとの間で、各々の通信リンク品質に応じた方式間ダイバーシチ通信を行う伝送モードが選択される。一方で、料金優先モードが設定されている場合、通信方式A単独による伝送モードが選択される。
通信方式Aにおける通信品質が「良」の状態で、かつ通信方式Bにおける通信品質が「不可」な状態である場合で、通信優先モードが設定されている場合、通信方式Aにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行うことにより、高い通信速度を確保する。一方で、料金優先モードが設定されている場合、MIMOチャネルによる多重伝送での追加料金を避けるため、リコンフィギュラブル無線処理部102aのみを用いて、通信方式A単独で、通常のデータ伝送を行う伝送モードが選択される。
その他の通信リンク品質の組み合わせの場合には、実施の形態1の場合と同様の伝送モードが選択される。
以上のような構成によれば、複数のリコンフィギュラブル無線処理部の処理内容を、各リコンフィギュラブル無線処理部によって得られる品質情報に加えて、ユーザからの要求条件に基づいて選択するようにしたことにより、ユーザからの要求条件を満たしつつ、各々の通信方式との間で、時々刻々変化する通信リンクの品質に応じて、適切な通信方式及び伝送モードにより通信を行うことが可能となる。この結果、ユーザからの要求条件を満たしつつ、通信の信頼性及び全体での伝送容量を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、伝送モード選択用のテーブルの一例として、図12に示すようなテーブルを示したが、本発明は必ずしもこのテーブルの内容に限定されるものではなく、通信品質に関する情報及びユーザの要求条件に応じて選択されるモードの選択肢を、さらに細分化してもよいし、逆に複数の選択肢を統合してもよい。例えば、通信優先モードの場合には、選択テーブルをさらに細分化し、通信方式Aにおける通信品質が「良」で通信方式Bにおける通信品質が「不良」で、方式間ダイバーシチによる伝送を行っても、十分な伝送速度ができないような状況の場合には、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bともに通信方式Aに対応するよう設定し、通信方式Aにおいて、MIMOチャネルによる多重伝送を行うような選択テーブルを設けてもよい。
また、図12に示したような選択テーブルに基づいて伝送モードを決定する形態について述べたが、本発明は必ずしも選択テーブルに基づいたモード選択に限定されるものではない。例えば、判定材料とするパラメータを、ユーザの要求条件に応じてあらかじめ定めておき、このパラメータに関する定量評価値を算出し、算出結果に基づいて伝送モードを決定する構成としてもよい。具体的には例えば、ユーザが通信速度を優先するモードを要求している場合、現状の各通信方式における通信品質に基づき、各伝送モードで伝送した場合に得られる伝送速度の推定値を算出し、この値が最大となる伝送モードを選択するよう構成すればよい。また、ユーザが通信料金の節約を優先するモードを要求している場合、現状の各通信方式における通信品質に基づき、各伝送モードで所定のサイズのデータを伝送した場合に発生する通信料金の推定値を算出し、この値が最小となる伝送モードを選択するよう構成すればよい。
また、本実施の形態では、通信品質に関する情報以外の要求条件として、ユーザからの通信信頼性もしくは料金に関する要求を収集する場合の形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の形態によっても実施することが可能である。なぜなら本発明の本質は、複数のリコンフィギュラブル無線処理部と制御部とを設け、各々の無線処理系統における通信品質情報とその他の要求条件に基づいて、適切な通信方式および伝送モードを選択して、前記複数のリコンフィギュラブル無線処理部の機能を変更するよう制御し通信することであるので、その本質を変えない範囲において、様々な形態での実施が可能である。例えば、無線通信装置200により伝送される上位レイヤにおけるアプリケーションにおいて、伝送遅延量に関する要求条件がある場合には、この条件も加味した伝送モード選択用テーブルを用意し、これに基づき通信方式と伝送モードの制御を行う構成としてもよい。
(実施の形態3)
図13は、本発明の実施の形態3における無線通信装置の構成例を示した図である。図13において、実施の形態1の図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては、図3と同じ番号を付している。本実施の形態の無線通信装置300が、実施の形態1の無線通信装置100(図3)の構成と異なるのは、リコンフィギュラブル無線処理部102a、102bにおけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bの代わりにリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301を設け、上位レイヤ処理部103の代わりに上位レイヤ処理部302を設け、制御部104の代わりに制御部303を設けた点である。
リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301は、図14に示すように、複数のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021bとの間でアナログ信号を入出力する入出力接続インタフェースを有すると共に、上位レイヤとの間で送受信データを入出力する入出力接続を行うインタフェースを有し、図3における複数のリコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bと同様の処理を行うものである。
この実施の形態では、実施の形態1と同様に2系統の無線処理系統に対応する例を示す。リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301は、アナログ・ディジタル変換部3011a、3011bと、I/Oバッファ3012a、3012bと、バス3013と、マルチスレッドディジタル信号処理部3014と、メモリ3015とを有する。
アナログ・ディジタル変換部3011は、図3におけるアナログ・ディジタル変換部10221と同様の構成及び動作をするものである。
I/Oバッファ3012は、受信時にはアナログ・ディジタル変換部3011から出力されるサンプリングされたディジタル信号列を一時記憶した後、所定の規則に応じて読み出してバス3013へ供給し、送信時にはバスを介して供給されたディジタル信号列を一時記憶した後、所定の規則で読み出しアナログ・ディジタル変換部3011へ供給する。バッファの構成については特に限定されるものではなく、例えばFIFOバッファやリングバッファ等の既知である種々のバッファを適用することが可能である。
バス3013は、複数の処理ブロック間でディジタルデータの伝送を行うための共通のデータ伝送バスであり、ここでは複数のI/Oバッファ3012a、3012b、マルチスレッドディジタル信号処理部3014、メモリ3015、外部の上位レイヤ処理部302とのインタフェース部との間をバス接続する。本発明では、バスの詳細な構成とデータ伝送形態の詳細については特に限定されるものではない。
マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、複数の系統から入力された受信信号のディジタル信号処理及び複数の系統へ出力する送信信号のディジタル信号処理を、一つの処理系統において、時分割もしくは並列的に処理するものであり、さらに、機能変更用の制御信号315に応じて、その機能及び特性が変更可能な構成となっている。また、マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、各無線処理系統において得られた受信信号313を制御部303に送出する。本実施の形態では、マルチスレッドディジタル信号処理部3014の構成例として、マルチスレッドディジタル信号処理部3014をリコンフィギュラブルデバイス30141(CPU)と、タイマ30142とにより構成する。
リコンフィギュラブルデバイス30141は、入力されたディジタル信号に対して所望のディジタル信号処理を行うものであり、機能変更用の制御信号315に応じて前記所望のディジタル信号処理の内容を変更可能なものである。本実施の形態では、リコンフィギュラブルデバイス30141を、ソフトウェアプログラムの変更により所望のディジタル信号処理の内容に変更可能なCPU(中央演算処理ユニット)により構成する。そして、ソフトウェアプログラムを、例えばメモリ3015から必要に応じて読み込む構成となっている。ここで、ソフトウェアプログラムは、例えば実施の形態1で図6や図12で例示した伝送モード毎に構成されてメモリ3015に蓄積されており、伝送モードの変更が決定されると該当するソフトウェアプログラムが前記メモリ3015から読み出される。
タイマ30142は、所定のタイミングクロックに基づいてCPU30141へ割り込みタイミングを与える。
メモリ3015は、バス3013を介して伝送されるデータを一時記憶し、必要に応じて読み出し処理するものであり、ディジタル信号処理を行う対象となるディジタルデータを記憶する。また、CPU30141の処理内容を記述したソフトウェアプログラムも記憶する構成としてもよい。
上位レイヤ処理部302は、基本的には図3における上位レイヤ処理部103と同様の処理をするものであるが、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部との入出力のインタフェースが2系統ではなく1系統に統合されており、2系統の無線処理系統向けの送受信データを、前記統合された1系統のデータバス312を介して、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301との間で伝送するよう変更した点が異なる。
制御部303は、基本的には図3における制御部104と同様の構成及び動作をするものであるが、異なるのは、図3における複数のリコンフィギュラブル無線処理部102への機能変更用の制御信号113の代わりに、複数のリコンフィギュラブルRF部1021への機能変更用の制御信号314(314a、314b)とリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301への機能変更用の制御信号315とを個別に出力するよう構成した点である。
以上のような構成による無線通信装置300の動作について、実施の形態1の無線通信装置100とは異なる動作をする部分について、以下で説明する。
受信時には、複数のリコンフィギュラブルRF部1021aと1021bの各々で受信し、信号処理された信号311a、311bが、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301へ供給され、各々がアナログ・ディジタル変換部3011a、3011bによりディジタル信号へと量子化され、I/Oバッファ3012a、3012bを介して、メモリ3015に蓄積される。マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、タイマ30142から供給される定期的な割り込み信号に基づき、CPU30141において処理するディジタル信号を一時蓄積されているメモリ3015から逐次読み込み、所望の信号処理を行い、これにより得た処理結果を、バス3013を介して、上位レイヤ処理部302へ供給する。
送信時には、上位レイヤ処理部302から供給された送信データが、バス3013を介して入力され、受信時の処理と同様にCPU30141において時分割により複数の無線処理系統向けの信号処理が行われ、生成された送信信号が各々のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021bへI/Oバッファ3012及びアナログ・ディジタル変換部3011とを介して供給される。
このように無線通信装置300においては、各々の無線処理系統において受信した複数の通信方式における通信リンクの品質情報と必要に応じてユーザ等から与えられた要求条件とに基づいて、通信すべきシステム及び伝送モードを選択した上で、複数のリコンフィギュラブルRF部1021a、1021b及び一系統のリコンフィギュラブルディジタル信号処理部301の構成を変更し、所望の伝送モードで通信する。
以上のような構成によれば、機能及び性能の変更が可能なリコンフィギュラブル無線処理部を複数系統設ける際に、リコンフィギュラブルなRF部1021a、1021bは所望の複数系統設け、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301については一つの系統で構成し、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301において時分割もしくは並列的に複数の無線処理系統用の信号処理を行うようにしたことにより、実施の形態1の効果に加えて、ディジタル信号処理部の構成を複数系統設ける必要が無くなるため、通信装置を小型化・低コスト化することが可能となる。
なお、本実施の形態では、CPU30141で処理されるソフトウェアプログラムは伝送モード毎に構成され、伝送モードの変更の都度、メモリ3015から読み込まれる構成及び動作としたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばCPU30141が内部メモリを有するような場合には、内部メモリに複数の通信方式用の信号処理プログラムを全て常駐しておき、必要な処理モジュールのみを選択的に実行する構成としてもよい。
また、マルチスレッドディジタル信号処理部3014は、図14に示したようなCPU30141とタイマ30142による構成に限定されるものではなく、例えば図15に示すように、マルチスレッドディジタル信号処理部3016を、リコンフィギュラブルデバイス30161とリコンフィギュレーション制御部30162とにより構成してもよい。この場合、リコンフィギュラブルデバイス30161としては、例えば、処理内容の変更が可能な複数の演算用ユニットをアレイ状に構成し、その各々の間の配線を任意に変更可能な構成としたものを適用すればよい。また、パラメータを変更することによって、複数の処理仕様に変更可能な特定処理ブロックを組み合わせたものも適用可能である。この場合、具体的には、パラメータにより減衰特性の変更が可能なフィルタ処理部や、パラメータにより対応する変復調処理の方式が変更可能な変復調処理部や、パラメータ変更により誤り訂正コーデック処理の生成多項式や誤り訂正能力の変更が可能な誤り訂正コーデック処理部等の複数の特定処理ブロックの組み合わせにより構成されることになる。リコンフィギュレーション制御部30162は、機能変更用の制御信号315に基づいて、リコンフィギュラブルデバイス30161において機能の変更が可能な機能ブロックの各々に対してリコンフィギュレーションの制御を行う。このような構成を用いて、通信に関する一連のディジタル信号処理を細かい処理ブロック毎に分け、細かい処理ブロック毎に処理の内容を個別に異なる通信方式および伝送モードに対応させ、パイプライン的に時分割処理するようにしてもよい。また、前記CPUやリコンフィギュラブルデバイスは必ずしも一つで構成される必要はなく、複数もしくは複数種のコアもしくはデバイスにより構成してもよく、この場合、複数の無線処理系統のための各処理は、時分割処理だけではなく、コア毎もしくはデバイス毎に並列的に処理することも可能となる。
また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301での信号処理を、必ずしも図14や図15に示したように、マルチスレッドディジタル信号処理部のみで実行するように構成した場合に限定されるものではなく、本発明の本質を逸脱しない範囲において、他の構成をとることも可能である。例えば、図16に示すように、無線通信処理におけるディジタル信号処理のうち、処理サンプル数が多くかつ高速な演算処理が要求されるディジタルフロントエンド処理部について専用のリコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3017を設けた構成としてもよいし、さらには図17に示すように、前記リコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3018a、3018bを無線処理系統毎に専用に設ける構成としてもよい。さらにバス3013経由でディジタル信号処理する対象データの入出力が行われる構成に限定されるものでもなく、リコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部3017、3018a、3018bの入出力を直接マルチスレッドディジタル信号処理部3016へ接続する構成としてもよい。
また、メモリ3015は必ずしも独立したデバイスとして構成する必要はなく、マルチスレッドディジタル信号処理部3014のデバイス内に構成するようにしてもよい。
また、制御部303についても、独立した構成要素とする必要はなく、例えば図18に示すように、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部301におけるCPU30141もしくはリコンフィギュラブルデバイス30161における処理内容の一部として動作させる構成としてもよいことは言うまでもない。
(他の実施の形態)
本発明は、図3、図11や図13で示した構成の代わりに、図19に示すような構成によっても実施することが可能である。すなわち、各伝送モードの処理をするにあたり、無線処理系統毎の信号処理を複合的に行う処理部分が存在する場合には、この部分を独立な処理部として切り出して、各リコンフィギュラブル無線処理部と接続する構成とすることも可能である。MIMOやダイバーシチによる伝送モードでは、ブランチ(無線処理系統)毎に個別に行うべき処理部分と、各々のブランチから供給された(もしくは供給する)ディジタル信号を複合的に処理する部分と、に分けることが可能である。例えば、受信チャネル選択用(もしくは送信帯域制限用のフィルタ処理)や変復調処理等は、各ブランチで個別に処理を行う必要があり、ここではこの処理群をディジタルフロントエンド処理と呼ぶ。また、ダイバーシチのための分割(もしくは合成)やMIMO多重(もしくは多重された信号の分離処理)、さらに場合によってコーデック処理等は、各ブランチから(もしくはブランチへ)の処理を複合的に処理する部分が必要であり、ここではこの処理群をディジタルバックエンド処理部と呼ぶ。このような場合、ディジタルフロントエンド処理部は、選択される通信方式に応じて、機能の変更が可能なリコンフィギュラブルな構成1051a、1051bとし、ディジタルバックエンド処理については、対応する通信方式毎に専用の回路106a、106bを設け、必要に応じてリコンフィギュラブルディジタルフロントエンド処理部の機能を切り替えてディジタルフロントエンド処理を行うとともに、対応するディジタルバックエンド処理部を用いてディジタルバックエンド処理を行う構成が実施可能である。さらには、図19において対応する通信方式毎に専用に設けたディジタルバックエンド処理部106a、106bを、機能変更により双方の処理に対応可能なマルチスレッド信号処理部に統合し、図17に示すような構成により実現することも可能である。なお、図17の構成については、実施の形態3において説明している。
また、本発明は図20に示すような構成によっても実施することが可能である。図20において、図3で示した無線通信装置100における構成要素と同様の構成及び動作をするものについては同じ番号を付している。図20で示した無線通信装置400において無線通信装置100と異なるのは、アンテナ101a、101b、リコンフィギュラブルRF部1021a、1021b、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部1022a、1022bの代わりに、それぞれアンテナ401a、401b、リコンフィギュラブルRF部4021a、4021b、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022a、4022bを設けた点である。これらの構成要素において特徴とする点は、付番の末尾にaを付した無線処理系統aにおける各構成要素と、末尾にbを付した無線処理系統bにおける各構成要素が同一でなくてもよい点である。具体的には、無線処理系統aを構成するアンテナ401a、リコンフィギュラブルRF部4021aとリコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022aを、通信方式Aに対して機能および性能面での最適化が計られた構成としながら、各々の構成要素において機能及び性能を小規模に変更可能とすることにより、通信方式Bを採用する無線通信規格に対しても最低限の要求仕様を満たす構成とする。また、無線処理系統bを構成するアンテナ401b、リコンフィギュラブルRF部4021bとリコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022bを、通信方式Bに対して機能および性能面での最適化が計られた構成としながら、各々の構成要素において機能および性能を小規模に変更可能とすることにより、通信方式Aを採用する無線通信規格に対しても最低限の要求仕様を満たす構成とする。このような構成とすることにより、例えば通信方式Aに対する受信感度特性として、無線処理系統bの性能が無線処理系統aの性能に比べて相対的に劣化するような場合が生じ得る。また同様に、通信方式Bに対する受信感度特性として、無線処理系統aの性能が無線処理系統bの性能に比べて相対的に劣化するような場合が生じ得る。このような構成をとった場合においても、本発明は実施可能であり、適切な通信方式および伝送モードを選択し、機能変更しながら効率よく通信が行えるように通信制御する点に特徴がある。
前記のような特徴をもつ各無線処理系統aとbの構成例を以下で説明する。アンテナ401a、401bは、広帯域通過特性あるいはマルチバンド通過特性をもつように設計することにより、通信方式AおよびBで使用するRF周波数帯をともにカバーする性能を実現することが可能であるが、このとき、一方の方式で使用する周波数帯の方に対して性能を最適化すると、自ずと性能差が生じる可能性がある。リコンフィギュラブルRF部4021a、4021bは、回路中の素子のインピーダンスや能動デバイスのバイアスを変化させるなどして、動作点を調整することにより、それぞれの通信方式に対応するよう切り替える切り替え要素を含む場合、一方の方式で使用する場合の性能を最適化すると、自ずと性能さが生じる可能性がある。また、リコンフィギュラブルディジタル信号処理部4022a、4022bは、ディジタルフィルタ処理や相関演算処理の際に、一方の通信方式に適したタップ長で固定に設計して、他方の通信方式に対応する際には、タップ長は変更しないまでも、タップ係数を他方の通信方式に適した係数に変更することにより、他方の通信方式に対応する際には最適な性能までは得られないまでも、要求仕様に耐え得る性能を実現することは可能となる場合がある。また、演算処理を行う際のビット演算精度についても、一方の通信方式に適した演算精度で固定に設計した場合、他方の通信方式に対応する際には、演算精度が足りなくなることもある。
このようにして、各無線処理系統において、主に対応する通信方式に対して性能を最適化した状態で構成すると、MIMOやダイバーシチのように、これらの無線処理系統に対して同一の通信方式に機能設定する必要のある伝送モードで通信する場合、無線処理系統間で得られる性能が異なることになることになり、通信性能面での性能劣化が予想される。しかしながら、性能劣化量が許容範囲内であるようなサービス形態の場合には、前記のような構成にすることにより、各無線処理系統においてリコンフィギュラブルにすべき構成要素を減らすことができ、回路の冗長度を削減することができるようになる。この結果、回路規模や消費電力を低減することが可能となる。
なお、このような構成で通信を行うにあたっては、各無線処理系統において対応している通信方式の通信品質に関する情報を収集する際に、図10で例示したような品質推定の推定基準を若干補正して用いるようにしてもよい。
本明細書は、2004年6月14日出願の特願2004−176223に基づくものである。その内容はすべてここに含めておく。
本発明にかかる無線通信装置は、ダイバーシチ伝送やMIMO伝送、さらにはシステム間でのハンドオーバやダイバーシチ等の様々な動作に一つの通信装置で対応可能となる、という効果を有し、高効率無線通信を実現するための通信装置の構成として有用である。
従来のマルチモード無線機の構成例を示すブロック図
従来のソフトウェア無線機の構成例を示すブロック図
本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示すブロック図
リコンフィギュラブルRF部の構成例を示すブロック図
リコンフィギュラブルディジタル信号処理部の構成例を示すブロック図
実施の形態1における伝送モード選択用テーブルの一例を示した図
実施の形態1の無線通信装置の起動時および通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャート
実施の形態1の無線通信装置の通信待機時の動作手順の一例を示すフローチャート
実施の形態1の無線通信装置の通信動作状態における通信制御手順の一例を示すフローチャート
実施の形態1における通信品質情報の変換テーブルの一例を示した図
実施の形態2の無線通信装置の構成を示すブロック図
実施の形態2における伝送モード選択用テーブルの一例を示した図
実施の形態3の無線通信装置の構成を示すブロック図
実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の構成例を示すブロック図
実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
実施の形態3におけるリコンフィギュラブルディジタル信号処理部の別の構成例を示すブロック図
実施の形態3における無線通信装置の別の構成例を示すブロック図
他の実施の形態の無線通信装置の構成を示すブロック図
他の実施の形態の無線通信装置の構成を示すブロック図