JPWO2005115505A1 - 中空針及びその中空針を利用した留置針 - Google Patents
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Abstract
【課題】針穿刺部位の組織に損傷を与えない組織非破壊中空針及びこの中空針を利用する留置針を提供する。【解決手段】中空針は、セラミックからなる外径が1〜5mm、肉厚が、0.6〜1.8mm程度であって、針穿刺部位における組織に損傷を与えることの少ないものである。セラミックは、特に、ジルコニウム及びこの酸化物である。この組織非破壊中空針は、留置針に利用できる。留置針は、セラミック製の中空針に耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の直細管を挿着し、この耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の直細管に挿着した中空針を中空針外挿管に配し、その中空針外挿管の上に外部延長管と接続するための接続管を配したものである。接続リングを介して、外部延長管と接続する。耐薬品性、耐蝕性の樹脂としては、フッ素系樹脂が好適に使用できる。【選択図】図20
Description
本発明は、針穿刺部位の組織に損傷を与えることの少ない中空針及びその中空針を利用する留置針に関する。
生体の組織サンプルを採取するための生検針、採血や注入に使用される留置針、注射用に使用する注射針等々が医療分野で広く使用されている。これらの生検針、留置針、注射針は、ステンレス製のものがほとんどである。即ち、通常、生検針、留置針、注射針は、ステンレスを主材とした硬性不錆性の材質からなる。しかしながら、ステンレス製のものは帯磁性で導電性のものであるため、採取した組織が失活するという問題がある。更に、針を穿刺した部位の組織が損傷を受けるという問題がある。
後述の実施例にて詳述するように、ステンレス製の生検針、留置針、注射針等を使用する際、針穿刺部位の組織に損傷を与える。ステンレス製留置針をラット下大静脈の下部に穿刺後2分で引き抜き止血処置を行った場合の組織損傷についての例を以下に説明する。図1にラットの下大静脈を示した。図1の下側ほぼ三分の一の白の空白部分は同静脈の内腔である。次に、図1でa,b,c,d,e,f,gの符号を付した部位を拡大して、図2〜図8に示した。図3及び図4は、同静脈の上壁を示しており、泡状の部分は止血剤の存在を示す。図3及び図4は、いずれも白血球のうち好塩基性を示し、ヒスタミン等、アレルギー発症原因物質に敏感に反応し炎症を呈するに至る。図7は、好中球で組織の傷害によって細胞成分の浸潤液で反応し貪食作用が著しいことを示している。図6及び図8は、好酸球でヒスタミンの他炎症過程にあずかる物質を含んでいることを示している。好酸球は、免疫反応によって誘発、増殖される。図2は、血管の内壁腔の損壊で浸潤液と血流の血液が反応し血餅を作った所を示す。これらはすべて穿刺後3日の組織画像であるが、炎症が激しく、なお修復、回復の兆しは認められないということを示している。
非鉄製の中空針として、特開平3−193061号公報(特許文献1)において、金属製注射針は破砕などの後処理ができないことから、使用中に破損することなく、使用後は容易に処理が可能なセラミック製の穿刺針が記載されている。しかしながら、特開平3−193061号公報記載の穿刺針は、破損しやすく注射針、留置針として実用に供することはできない。また、特開平7−16297号公報(特許文献2)において、セラミックからなる医療用針が記載されている。この針は、燃焼により安全、無害にし得ると言う効果を奏するとしている。しかしながら、この針も、同様に破損しやすく、注射針、留置針として実用に供することはできない。
特開2003−334199号公報(特許文献3)において、血液透析時に従来使用されてきたプラスチック製留置栓に代わって、セラミック製留置栓を使用することが記載されている。セラミック製留置栓は、プラスチック製留置栓で発生するダウングロス(生体拒否反応)やアレルギー反応を発症しないという効果を奏するとしている。しかしながら、この留置栓は、注射針、留置針用の中空針ではないし、穿刺部位の組織損傷を軽減するものでもない。
また、特開2003−305121号公報(特許文献4)及び特開2003−210579号公報(特許文献5)には、金属製の中空針に絶縁性のセラミック膜を被成した中空針が記載されている。そして、使用中に針が折損しないとともに採取した組織片や病変部に穿刺した周りの細胞に悪影響を及ぼさないという効果を奏するとしている。しかしながら、金属製の中空針に絶縁性のセラミック膜を被成した中空針は、その先端は実質上セラミックには被覆されていないため、針を穿刺した部位の組織が損傷を受けるという問題が依然として存在する。
本出願人は以前に、採取した組織サンプルの失活を防ぐために、非鉄材料から形成された中空細管の周囲を超硬、非電導性、非磁性物質によって被覆した注射針又は生検針用の中空針を発明し特許出願した(特開2002−85413号公報(特許文献6))。この発明は、主として生体内深い位置の組織を採取する生検針を目的にしたものであり、また、非鉄材料から形成された中空細管の周囲を超硬、非電導性、非磁性物質によって被覆するため、中空針の製造が複雑になるという問題がある。
以上説明したように、医療用の中空針として、従来ステンレスなどの金属製のものが広く使用されてきたが、後処理が困難、採取した組織が失活する等の問題があり、セラミック製の中空針やセラミック被覆した中空針が提案されてきた。しかしながら、セラミック製の中空針は、破損しやすいという問題があり、セラミック被覆した中空針は、製造が複雑になるという問題がある。また、中空針を穿刺した際、穿刺部位の組織の損傷を防止する中空針は知られていないのである。特許文献4及び5において、病変部に穿刺した周りの細胞に中空針が悪影響を及ぼすことを示唆しているものの、上記したように穿刺部位の組織の損傷を軽減する中空針は未だ知られていないのである。
先に述べたように、医療分野で最も数多くかつ頻繁に使用されているのは注射針、生検針、留置針等の中空針であり、そのうちのほとんどがステンレススチール製である。しかしながら、ステンレススチール製針は、帯磁性、電導性であるため生体に損傷電位を生じ、針穿刺部位の数100μm近傍の細胞死を惹起させる。一方、本発明者等は、非磁性物質(セラミック)で被覆した中空針は採取した組織サンプルの失活を防ぐ効果があることを認めた。これは、セラミック製針は、基本的に、組織サンプルの失活を防ぐ作用があることを示唆すものである。本発明は、これらの事実に基づき、中空針が組織内に穿刺するに際して中空針穿刺部位の組織の損傷を最小限に止める中空針を提供するとともに、該組織の損傷を最小限に止める中空針を利用した留置針を提供しようとするものである。
本発明の要旨は、セラミック製の中空針及びその中空針を使用する留置針である。より具体的には、セラミックからなる外径が1〜5mmの中空針であって、針穿刺部位における組織に損傷を与えることの少ない中空針である。そして、肉厚は0.3mm〜1.8mmとするのが好ましい。また、セラミックはジルコニウム又はジルコニア微粉末が好ましい。更に、この組織非破壊の中空針を使用し、この針を耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の管に挿着した留置針である。留置針は、セラミック製の中空針を耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の直細管に挿着し、この耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の直細管に挿着した中空針を中空針外挿管に配し、その中空針外挿管の上に外部延長管と接続するための接続管を配したものである。耐薬品性、耐蝕性の樹脂としては、フッ素系樹脂が好適に使用できる。
本発明のセラミック製の中空針は、具体的には、ジルコニウムやジルコニア等のセラミック微粉末ペーストを、耐熱性ワイヤーを中心軸とし、その外側に薄く均等厚に被覆後焼成し、焼成後前記ワイヤーを除去することによって製造することができる。この中空針の非穿刺端を耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管に挿着する。即ち、中空針の非穿刺端を耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管の端部に挿入しこの直細管に固定する。そして、この直細管の他端に不織綿を備えた頭部を配置することができる。この不織綿は、留置針において、血液が中空針内から直細管に進入したことを確認するのに便利に使用することができる。次に、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管の端部に挿着した中空針を、耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる中空針外挿管に挿入する。この中空針外挿管は、中空針が挿入される部分は肉厚の耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の中央管よりなり、中空針の非穿刺端に挿着した耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管が挿入される部分は肉薄の耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の受管よりなるものである。更に、中空針外挿管に外部延長管との接続のために柔軟性のある接続管を外挿管の受管部位に配置する。そして、接続管の中空針側に針元リング、他端に接続リングを備えることができる。外部延長管というのは、例えば、血液透析器の延長管や薬液注入ための延長管等のことをいう。実際には、接続リングの部位で外部延長管と接続される。接続管に接続管内を流れる流体を一時的に停止するためにクリップを備えることができる。これは、血液や薬液の流れを一時的に停止し、必要な作業を行うためのものである。
また、中空針外挿管は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉薄の管に型を挿入し、全体を熱処理し、収縮させて得ることができる。型は、金属製、木製、プラスチック製等いずれでもよいが、熱処理に耐える耐熱性のものが好適に使用できる。型の形状は円柱であって、その全体のほぼ半分が細くなっているものである。
耐薬品性、耐蝕性の樹脂としては、ポリエステル系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が使用可能であるが、フッ素系樹脂が好適に使用できる。また、接続管を形成する材料としては、上記の耐薬品性、耐蝕性の樹脂と同様、ポリエステル系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が使用可能であるが、シリコーン系樹脂が好適に使用できる。
近年、慢性腎機能疾患患者や熟年者の増加により、長時間に亘る採血、血液や医薬品の注入等を受ける頻度が高まっている。これらの長時間に亘る採血、注入にはステンレス製の中空針が使用されるので、必然的に採血、注入を受けた人は、中空針穿刺時組織の損傷を受けることになる。このような背景から、針穿刺部位の組織に与える損傷の少ない、注射針、留置針用の中空針が、医学、医療分野で強く求められている。
本発明の中空針は、基本的には、セラミックからなるものである。一般に使用されるステンレス製の中空針は、針穿刺部位における組織を損傷するが、本発明のセラミック製中空針は、針穿刺部位における組織の損傷を極めて低く抑えるものである。針穿刺部位における組織の損傷程度は、実施例において具体的に示すように、ステンレス製の針とセラミック製の針とでは、格段の相違が認められる。
ステンレス製の中空針を使用する場合、針穿刺部位における組織が損傷をうけるが、セラミック製の中空針を使用する場合には、組織の損傷の程度が極めて低いことは、今回、本発明者等が初めて明らかにしたものである。
特開平7−16297号公報(特許文献2)に記載されているように、セラミックからなる医療用針は容易に破損するという問題がある。セラミック製の針が破損しやすいという観点からは、中空針の肉厚を一定厚み以上にするのがよい。即ち、中空針の外径は20G(ゲージ)より大きく1mmを超えるものが好ましく、更に、14G(外径2.11mm)を用いると折損することはほとんど無い。中空針は、血管等に穿刺されるので、外径の大きさは血管の太さ等の影響を受ける。使用部位、使用目的に応じて、適宜適当な外径の中空針を選択する。肉厚に関しては、厚くしたものが折損しにくいが、内径を小さくすることになり、単位時間当たりの血液流入量を減少させることになるので、肉厚は、0.3mm以上で1.8mm以下が好ましい。肉厚は、当然のことながら、外径の大きさと関連する。一般的には、外径が大きいと、肉厚もそれに対応して厚くなる。ジルコニア製の中空針においては、血液の流入及び流出後の蛋白質に与える影響は、導電性、帯磁性のステンレス製中空針に比較して、極めて小さいものとなっている。
セラミック製の中空針は、非鉄材料を焼成することにより得ることができる。非鉄材料としては、アルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン、ジルコニウム及びこれらの酸化物を使用することができる。アルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン、ジルコニウム等は非鉄金属であるが、焼成することにより酸化物となり、セラミック製の針となすことができる。本発明の中空針は、特に、ジルコニウム、ジルコニアから焼成成形したものが好適に使用できる。
セラミック製中空針は、例えば、以下のようにして製造することができる。直線状の炭素製ワイヤー又は1000℃以上の温度で容易に酸化による気化又は溶融する材質のワイヤーを軸芯として、非鉄材質の微粉末ペーストからなる、厚さ0.5mmから2mmの薄い板状のものをのり巻き状に被覆し、自然乾燥させる。非鉄材質の微粉末ペーストをワイヤーに被覆させる直前に、ワイヤーの裏面に浸油性のクリーム(例えば、ワセリンと流動パラフィンを95:5の割合で混合したもの)を塗布しておけば、乾燥後の非鉄材質からなる被覆膜からワイヤーを容易に引き抜くことができる。また、焼成時の非鉄材質の被覆膜が大きく収縮する場合には、ワイヤーをつけたまま焼成し、1000℃以上の温度でワイヤーを焼成気化させることもできる。焼成した中空管をダイヤモンド砥石を用いて、その先端を研磨し、傾斜角度10度から30度の中空針を得る。
また、セラミック、例えば、ジルコニウム微粉末又はジルコニア微粉末のペーストを中空針の金型に塗布し、乾燥後、焼成して、セラミック製の中空針を得ることもできる。この際、中心軸となる金型は、石膏製のものを使用することができる。焼成時の金型の収縮率が、セラミックの焼成時の収縮率より小さいと、セラミック製の中空針から金型を引き抜くことが困難になるので、金型は石膏又はアルミニウムのように崩落性又は低温溶解性の材質で作製するのがよい。非鉄材料の微粉末を焼成すると、焼成時に酸化物に転化し、セラミックとすることができる。金型として、炭素芯のものも使用することができる。また、中空針先端の角度は、用途に応じて適宜、10〜30度の鋭角とする。
本発明の注射針又は留置針用の中空針は、長時間採血、長時間注入用として利用することができるものである。注射針又は留置針用中空針はセラミックからなり、外径が1〜5mmの中空針であり、また、中空針の肉厚は0.3〜1.8mmであることが好ましい。勿論、外形の大きさにより、肉厚の大きさもそれに合わせて適当なものを選定する。
次に、針穿刺部位における組織に損傷を与えることの少ない中空針を利用する留置針について説明する。まず、セラミック製の中空針の非穿刺部端を耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の肉厚の直細管に挿着する。即ち、中空針の非穿刺部端を直細管に挿入し、この直細管に中空針を固定する。この直細管の他端に、不織綿などからなるミリポアフィルター部を備えた頭部が配置される。次に、耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の直細管の端部に挿着した中空針を、中空針外挿管に挿入する。中空針外挿管の中空針部分を挿入する部位は、中空針が挿入され得る内径をもつ細めの肉厚管(中央管)からなり、中空針外挿管の直細管が挿入される部位は、この直細管が挿入され得る内径をもつ耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の薄い管(受管)からなる。中空針外挿管の受管部に、例えば、血液透析装置延長管と接続するための外部延長管との接続管を配する。接続管は、例えば、シリコーン製の柔軟性のある管である。接続管には、クリップを備えることができる。留置針の構成は、セラミック製の中空針の非穿刺部端を挿着した耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の肉厚の直細管を、中空針外挿管に挿入する。この中空針外挿管の受管部の上に、接続管を配したものとなる。注入液や血液は、中空針外挿管内を流れる。この注入液や血液の流れを一時的に停止するためのクリップを備えることができる。即ち、受管の上に配置された接続管をクリップで挟むことにより、受管内を流れる注入液や血液を停止することができる。耐薬品性、耐蝕性の樹脂としては、ポリエステル系樹脂、塩化ビニール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂等が使用可能であるが、フッ素系樹脂が好適に使用できる。
本発明のセラミック製の中空針は、針穿刺部位の組織に損傷を大きく与えることなく、注射針、留置針用に使用することができる。特に、長時間採血、長時間注入用として利用することができる。本発明の注射針、留置針用の中空針は、針の穿刺部位における組織の損傷が少ないことから、臨床用採血、血液注入用注射針又は留置針として、多方面の臨床応用に供することができる。例えば、血液透析において、多数の患者の血管損傷を最小限に止めることができる。
本発明の中空針は、採血、注入用として、特に、長時間採血、長時間注入用として利用することができる。長時間採血、長時間注入用として端的な例は、血液透析である。我が国の血液透析において、隔日の血液透析が行われており、血液透析を要する患者一人当たり一年間に動脈及び静脈に合わせて360回の留置針の穿刺が必要になっている。要透析患者は約220,000人と言われている。これら患者は数時間に亘って、各自の動脈から血液中の老廃物(尿酸、尿素、ウロビリン、塩類)をカラムクロマトグラフ法で透析し除去するとともに、必須アミノ酸類、ホルモン類、ビタミン類、糖類、脂肪酸グリセリド類等を添加して静脈へ戻している。この際、大量の血液(約4〜5L)を短時間の間に透析できることが望まれている。
腎疾患者のうち定期的に血液の人工透析を必要とする人々は、一般に2種類の透析方法をとるが、多くは血行シャント法である。上腕部の動脈と静脈との吻合手術を行い血流を増加させ、静脈上方をゴムバンドで縛ることで血流プールを作り、そこに18Gのステンレス製留置針(現在実際に行われている方法)を穿刺する。穿刺後はステンレス針のみを速やかに除去し、留置針の頭部に延長管を接続し、透析器本体の接続管へ血液を送る。また、透析器本体の流出管から透析後の血液が流出してくればその血液を先の上腕部のゴムバンド上方の静脈(注入用)に18Gのステンレス製留置針を予め穿刺しておき、その留置針のステンレス針を除いた頭部に血流注入延長管を接続する。
血液透析は、実際には、動脈及び静脈に体外から人工的な管を接続する操作を必要とする。必然的に血管の損傷なしには血液の透析を行うことはできない。この際、太い留置針は多くの血流を得るので好ましい。また、血流中の細胞及び蛋白(アルブミン、グロブリン等)の人工管との接触により異常刺激も少なくない。多くの患者で、長期(多くは一生の期間)の透析によりアミロイド症となり余病を併発する。これらの副作用を回避するため、本発明の注射針又は留置針用非損傷針は、極めて実用性に富んだものである。
本発明の留置針は、血管内皮細胞層の障害を最小限に止め、修復が顕著であるという効果を奏する。それは、セラミックスの留置針は、熱、電気、磁気に影響されないものであり、一瞬の穿刺後は生体細胞には耐薬品性、耐蝕性の樹脂が接触するのみで、流出入血球及び血小板額粒球細胞膜の膜損傷が最小限に止めている。実際、実施例で示す[2−14C]チミジンの二次元画像解析から、セラミック製留置針の穿刺により生じた血管内皮細胞膜の損傷を、いち早く新生内皮細胞の発生に基づくステムセルにより迅速に膜が修復され、輪状筋の修復に資する筋性ステムセルの発生も損傷後72時間以内に活発化していることが確認されている。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
[実施例1]
中空針の製造1。
ジルコニア微粉末のペーストを金型に被覆し、乾燥後、1300℃で1時間焼成して、中空針を得た。この際、中心軸となる金型は、石膏製のものを使用した。このようにして、外径1.8mm、肉厚0.7mm、長さ40mmの中空針を得た。焼成時の金型の収縮率が、ジルコニアの焼成時の収縮率より小さいと、ジルコニア中空針から金型を引き抜くことが困難になるので、金型は石膏又はアルミニウムの崩落性又は低温溶解性の材質で作製するのがよい。尚、ジルコニウム微粉末を使用することもできる。ジルコニウム微粉末は、焼成することにより、ジルコニアに転化するからである。また、金型として、炭素芯のものも使用することができる。中空針先端の角度は、用途に応じて適宜、10〜30度の鋭角とする。同様にして、ジルコニウムやジルコニア以外のアルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン及びこれらの酸化物等の非鉄材料からセラミック製の中空針を得ることができる。
[実施例2]
ジルコニア微粉末のペーストを金型に被覆し、乾燥後、1300℃で1時間焼成して、中空針を得た。この際、中心軸となる金型は、石膏製のものを使用した。このようにして、外径1.8mm、肉厚0.7mm、長さ40mmの中空針を得た。焼成時の金型の収縮率が、ジルコニアの焼成時の収縮率より小さいと、ジルコニア中空針から金型を引き抜くことが困難になるので、金型は石膏又はアルミニウムの崩落性又は低温溶解性の材質で作製するのがよい。尚、ジルコニウム微粉末を使用することもできる。ジルコニウム微粉末は、焼成することにより、ジルコニアに転化するからである。また、金型として、炭素芯のものも使用することができる。中空針先端の角度は、用途に応じて適宜、10〜30度の鋭角とする。同様にして、ジルコニウムやジルコニア以外のアルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン及びこれらの酸化物等の非鉄材料からセラミック製の中空針を得ることができる。
[実施例2]
中空針の製造2。
ジルコニア(酸化ジルコニウム)の微粉末を水で練り、厚さ2.5mmの均一な厚みをもつ硬い板に成形した。尚、板の厚みは完成時の中空針の厚みのほぼ3倍程度が好ましい。この均一厚みの板を長方形に切断した。鉱油を塗布した直径3mmのワイヤーを中心軸として、その周りを包み込むように長方形の板を堅く巻き付け、ジルコニア製円柱体を成形した。尚、ワイヤーの直径は完成時中空針の外径の1.5倍程度とするのがよい。このジルコニア製円柱体を、乾燥室内で自然乾燥した。つぎに円柱体の直線性を失わないように中心軸に直線のカーボランダム(内径よりやや小さい直径)を用いて緩やかに回転させつつ電気炉で、1300℃で1時間30分焼成した。完成した円柱体を冷却し、冷却後取り出し、ワイヤーを引き抜き中空針を得た。この針を20度の鋭角にダイヤモンドカッターで研磨して仕上げた。得られた中空針は、外径2mm、肉厚0.8mm、長さ4.5mmであった。仕上げた針は長径方向に対する強度は鉄製より強いものであった。また、長軸に90度方向の力を加えても、容易に折損することはなかった。中空針先端の角度は、用途に応じて適宜、10〜30度の鋭角とする。焼成後のジルコニアは完全に超剛・非電導・非磁性の物性を示し、生体に穿刺した後の生体反応を最小限に止め、ステンレス製針とは全く異なり、穿刺による損傷は速やかに修復することが後述の実施例からも明らかとなった。尚、ジルコニウム微粉末を使用することもできる。ジルコニウム微粉末は、焼成することにより、ジルコニアに転化するからである。同様にして、ジルコニウムやジルコニア以外のアルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン及びこれらの酸化物等の非鉄材料からセラミック製の中空針を得ることができる。
[実施例3]
ジルコニア(酸化ジルコニウム)の微粉末を水で練り、厚さ2.5mmの均一な厚みをもつ硬い板に成形した。尚、板の厚みは完成時の中空針の厚みのほぼ3倍程度が好ましい。この均一厚みの板を長方形に切断した。鉱油を塗布した直径3mmのワイヤーを中心軸として、その周りを包み込むように長方形の板を堅く巻き付け、ジルコニア製円柱体を成形した。尚、ワイヤーの直径は完成時中空針の外径の1.5倍程度とするのがよい。このジルコニア製円柱体を、乾燥室内で自然乾燥した。つぎに円柱体の直線性を失わないように中心軸に直線のカーボランダム(内径よりやや小さい直径)を用いて緩やかに回転させつつ電気炉で、1300℃で1時間30分焼成した。完成した円柱体を冷却し、冷却後取り出し、ワイヤーを引き抜き中空針を得た。この針を20度の鋭角にダイヤモンドカッターで研磨して仕上げた。得られた中空針は、外径2mm、肉厚0.8mm、長さ4.5mmであった。仕上げた針は長径方向に対する強度は鉄製より強いものであった。また、長軸に90度方向の力を加えても、容易に折損することはなかった。中空針先端の角度は、用途に応じて適宜、10〜30度の鋭角とする。焼成後のジルコニアは完全に超剛・非電導・非磁性の物性を示し、生体に穿刺した後の生体反応を最小限に止め、ステンレス製針とは全く異なり、穿刺による損傷は速やかに修復することが後述の実施例からも明らかとなった。尚、ジルコニウム微粉末を使用することもできる。ジルコニウム微粉末は、焼成することにより、ジルコニアに転化するからである。同様にして、ジルコニウムやジルコニア以外のアルミニウム、チタン、シリコン、ニッケル、タングステン及びこれらの酸化物等の非鉄材料からセラミック製の中空針を得ることができる。
[実施例3]
ジルコニア製中空針が組織に与える影響
実施例2のジルコニア製中空針をラット下大静脈に穿刺し、穿刺3日後の組織を光学顕微鏡にて観察した。ジルコニア製中空針をラット下大静脈に穿刺し、穿刺後2分で引き抜き、止血した。このときの組織の顕微鏡観察図を図9に示した。図9に示したA,B,C,D,E,F,Gの符号を付した部位を拡大した図面を図10〜図16に示した。図10は、正常血管内壁層左から右へ横並びの細胞層(血管内皮層)が明瞭にみえる。これに対して穿刺後は図13に示したように、3日後すでに同内壁層の一層が修復されたことが示されている。また、図12、図14、図15、図16に示したように、紫色の組織部分は何れも筋層(中層図14、外層は図3、図15、図16)の修復のための旺盛な増殖活動が示されている。しかし、図13に示すように、中層は一部筋の修復が認められるものの、なお好中球の貪食作用が認められる。下大静脈外壁の外周りの部分は腹腔と接している部分で、出血後の清掃用の好塩基球の貪食作用が観察された。何れも穿刺後3日でほぼ血管壁の80%〜90%の回復が観察された。これは、ジルコニア中空針の優れた組織非損傷性を証明するものである。
[実施例4]
実施例2のジルコニア製中空針をラット下大静脈に穿刺し、穿刺3日後の組織を光学顕微鏡にて観察した。ジルコニア製中空針をラット下大静脈に穿刺し、穿刺後2分で引き抜き、止血した。このときの組織の顕微鏡観察図を図9に示した。図9に示したA,B,C,D,E,F,Gの符号を付した部位を拡大した図面を図10〜図16に示した。図10は、正常血管内壁層左から右へ横並びの細胞層(血管内皮層)が明瞭にみえる。これに対して穿刺後は図13に示したように、3日後すでに同内壁層の一層が修復されたことが示されている。また、図12、図14、図15、図16に示したように、紫色の組織部分は何れも筋層(中層図14、外層は図3、図15、図16)の修復のための旺盛な増殖活動が示されている。しかし、図13に示すように、中層は一部筋の修復が認められるものの、なお好中球の貪食作用が認められる。下大静脈外壁の外周りの部分は腹腔と接している部分で、出血後の清掃用の好塩基球の貪食作用が観察された。何れも穿刺後3日でほぼ血管壁の80%〜90%の回復が観察された。これは、ジルコニア中空針の優れた組織非損傷性を証明するものである。
[実施例4]
ステンレス製中空針が組織に与える影響
ステンレス製中空針をラット下大静脈の下部に穿刺後2分で引き抜き止血処置を行った。図1に下大静脈を示した。図1の下側ほぼ三分の一の白の空白部分は同静脈の内腔である。次に、図1でa,b,c,d,e,f,gの符号を付した部位を拡大して、図2〜図8に示した。図3及び図4は、同静脈の上壁を示しており、泡状の部分は止血剤の存在を示す。図3及び図4は、いずれも白血球のうち好塩基性を示し、ヒスタミン等、アレルギー発症原因物質に敏感に反応し炎症を呈するに至る。図7は、好中球で組織の傷害によって細胞成分の浸潤液で反応し貪食作用が著しいことを示している。図6及び図8は、好酸球でヒスタミンの他炎症過程にあずかる物質を含んでいることを示している。好酸球は、免疫反応によって誘発、増殖される。図2は、血管の内壁腔の損壊で浸潤液と血流の血液が反応し血餅を作った所を示す。これらはすべて穿刺後3日の組織画像であるが、炎症が激しく、なお修復、回復の兆しは認められないということを示している。
[実施例5]
ステンレス製中空針をラット下大静脈の下部に穿刺後2分で引き抜き止血処置を行った。図1に下大静脈を示した。図1の下側ほぼ三分の一の白の空白部分は同静脈の内腔である。次に、図1でa,b,c,d,e,f,gの符号を付した部位を拡大して、図2〜図8に示した。図3及び図4は、同静脈の上壁を示しており、泡状の部分は止血剤の存在を示す。図3及び図4は、いずれも白血球のうち好塩基性を示し、ヒスタミン等、アレルギー発症原因物質に敏感に反応し炎症を呈するに至る。図7は、好中球で組織の傷害によって細胞成分の浸潤液で反応し貪食作用が著しいことを示している。図6及び図8は、好酸球でヒスタミンの他炎症過程にあずかる物質を含んでいることを示している。好酸球は、免疫反応によって誘発、増殖される。図2は、血管の内壁腔の損壊で浸潤液と血流の血液が反応し血餅を作った所を示す。これらはすべて穿刺後3日の組織画像であるが、炎症が激しく、なお修復、回復の兆しは認められないということを示している。
[実施例5]
留置針の調製
本発明の留置針31の構成を図20に、また、留置針31を構成する部品、即ち、直細管付き中空針1を図17、中空針外挿管11を図18及び接続管21を図19に示した。留置針31の基本は、図17に示したように、中空針3の非穿刺部端を直細管2の端部に挿入し、中空針3を直細管2に固定した直細管付き中空針1である。この直細管2の他端には、不織布などからなるミリポアフィルター部を備えた頭部5が配された。直細管2は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂であるフッ素系樹脂からなる肉厚の細管であった。直細管2は、中空針3が挿着できる程度の内径をもつものであった。中空針3は、本発明のセラミック製の中空針で、先に述べたように、外径が1〜5mmで、肉厚が0.3mm〜1.8mmであるものを使用する。直細管2は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂からなるものであればよいが、フッ素系樹脂製(具体的には、PFA樹脂を使用した)からなるものを使用した。直細管2は、水平にしたときに曲がることなく水平を保持できる程度の強度を有する厚みにすればよい。
本発明の留置針31の構成を図20に、また、留置針31を構成する部品、即ち、直細管付き中空針1を図17、中空針外挿管11を図18及び接続管21を図19に示した。留置針31の基本は、図17に示したように、中空針3の非穿刺部端を直細管2の端部に挿入し、中空針3を直細管2に固定した直細管付き中空針1である。この直細管2の他端には、不織布などからなるミリポアフィルター部を備えた頭部5が配された。直細管2は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂であるフッ素系樹脂からなる肉厚の細管であった。直細管2は、中空針3が挿着できる程度の内径をもつものであった。中空針3は、本発明のセラミック製の中空針で、先に述べたように、外径が1〜5mmで、肉厚が0.3mm〜1.8mmであるものを使用する。直細管2は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂からなるものであればよいが、フッ素系樹脂製(具体的には、PFA樹脂を使用した)からなるものを使用した。直細管2は、水平にしたときに曲がることなく水平を保持できる程度の強度を有する厚みにすればよい。
中空針3を直細管2に挿着した直細管付き中空針1を、次に、中空針外挿管11(図18参照)に挿入した。中空針外挿管11は、外径の小さい中央管12と外径の大きい受管14とからなる。中央管12と受管14は、いずれも耐薬品性、耐蝕性の樹脂からなるものであればよいが、本実施例ではフッ素系樹脂(具体的には、商品名PFA樹脂)からなるものを使用した。この中空針外挿管11は、外径の大きいフッ素系樹脂からなる肉薄の管を使用し、この肉薄の管に木型を挿入し、全体を熱処理して管を収縮させることにより、肉厚で細管の中央管12と肉薄の受管14部とが一体となった中空針外挿管11を得た。肉厚で細管の中央管12の厚みは、肉薄の受管14の厚みの4倍程度であった。通常、肉厚で細管の中央管12の厚みは、肉薄の受管14の厚みの2〜7倍程度にするのがよい。中央管12の部分には、直細管付き中空針1の中空針3が、その全長に亘り中央管12の内側に密着状態で挿入され、受管14の部分には、直細管付き中空針1の直細管2が挿入された。中空針の長さを55mmとし、中空針3の先端部分のみが、中空針外挿管11の中央管12から突出する状態にした。木型は、円柱状でほぼ半分は細くしたものであった。熱処理して得た中空針外挿管11は、中空針の長さに合わせて、適当な長さに切断して使用した。また、中空針外挿管11は、中央管12と受管14を別々に製作し、接合したものでもよいが、中央管12と受管14とが一体となったものが好ましく、本実施例では、一体化された中空針外挿管を使用した。
中空外挿管11と外部延長管(具体的には、例えば、血液透析装置からの延長管を意味する)とを接続するために接続管21を用意した。接続管21は、接続本管22、接続本管22の端部に配した針元リング24及び接続本管22の他端部に配した接続リング23からなる。接続本管22は、柔軟性のある素材からなるものであればよいが、本実施例では、シリコーンゴム製のものを使用した。接続管21に中空針外挿管11を挿入し、受管14の上部位に接続本管22が位置するように配した。この際、針元リング24は、接続管21に中空針外挿管11を挿入した後、中央管12側から挿入し、中央管12と受管14とが接する位置にて、接続本管22に装着した。接続リング23は、外部延長管(図示していない)を接続本管22に接続し、その接続部位において、外部延長管との接続を確実なものにする。接続リング23は、リングを別途調製し接続本管22に挿入接続しても良いし、接続本管22に延長する形で一体成形したものでもよいが、本実施例では、別途調製したリングを接続本管に挿入装着した。
上記の手順で調製した留置針31の全体図を図20に示した。この留置針31の使用方法について説明する。図20のようにセットされた留置針を血管に斜め下方から上方へ穿刺して、血管内にセラミック製中空針先を挿入する。血管内の血液は、直細管付き中空針1の後方突端のミリポアフィルター部5に遡行して、ミリポアフィルター部5のフィルターが白色からが赤色に変化する。これにより、血液がセラミック製中空針外挿管11に満たされたことがわかる。次に、接続管21の接続本管22部にクリップ26を挟む。そして、留置針31の突端部を左手指で把み固定して、右手指で接続リング23をしっかりと把み固定しつつ、セラミック製中空針3をゆっくりと引き抜いた。完全に引き抜いた後、直細管付き中空針1を捨て、左手指で外部延長管を右手指の接続リング23と接触させて90度回転させて外部延長管と中空針外挿管11を連結させ、透析装置本体と留置針31とを接合した。この後血液は、透析器本体へ奔流し、静脈内還流用延長管へと移動した。透析装置本体と留置針31とを接合した後にクリップ26を取り除いた。
[実施例6]
[実施例6]
留置針の適用
ヒト腎疾患患者に代替して、8週令のSD系雄性ラットに本発明の留置針を適用した。留置針を形成する中空針の外径は17G(ゲージ)で内径はラット下大静脈右腎下方の内径に相当するものである。まず、予め検体ラットをネンブタール200μLを腹腔内注射し、全身を麻酔させ、腹部を切開し腹大動脈を露出させておいた。本発明の留置針の本体(図20)の針元リング24を栂指と人差指をもって押さえ、手首と肘をしっかりと固定した状態で前記腹大動脈血管にななめ下方から上方へ穿刺して、血管内に針先を挿入した。これにより、留置針の後方突端のミリポアフィルター部4にラット血液が遡行して、そのフィルターの白色が赤色に変化した。これにより、血液がジルコニアセラミックス製針に満たされたことがわかる。次に、針元リング24の手前の接続本管22中央にクリップ26を挟み、本留置針の突端部を左手指(栂指と人差指)で把み固定しておいて、右手指を留置針の接続本管22の血液透析装置延長管への接続リング23に移動させて、その部分をしっかりと把み固定しつつ、左手の直細管付き中空針をゆっくりと引き抜いた。完全に引き抜いた後、直細管付き中空針1を捨て、左手指を接続本管22に持ちかえて、右手指の接続リング23と密接させて90度回転させて外部延長管と中空針外挿管11を連結させて、透析装置本体と本留置針31の接合操作を終了した。この後、クリップをはずすと、血液は、透析本体へ奔流し、静脈内還流用延長管へと到達した。通常、静脈用延長管先端接続部近くで、その血流を停止させておくことが要される。これに対して、ラットの下大静脈内にも前記同様の留置針処理を施すことで、その留置針接続管と下大静脈用延長管とを接続させることで、ラットの血液は透析本体を通過して全身の血液が循環することとなった。
[実施例7]
ヒト腎疾患患者に代替して、8週令のSD系雄性ラットに本発明の留置針を適用した。留置針を形成する中空針の外径は17G(ゲージ)で内径はラット下大静脈右腎下方の内径に相当するものである。まず、予め検体ラットをネンブタール200μLを腹腔内注射し、全身を麻酔させ、腹部を切開し腹大動脈を露出させておいた。本発明の留置針の本体(図20)の針元リング24を栂指と人差指をもって押さえ、手首と肘をしっかりと固定した状態で前記腹大動脈血管にななめ下方から上方へ穿刺して、血管内に針先を挿入した。これにより、留置針の後方突端のミリポアフィルター部4にラット血液が遡行して、そのフィルターの白色が赤色に変化した。これにより、血液がジルコニアセラミックス製針に満たされたことがわかる。次に、針元リング24の手前の接続本管22中央にクリップ26を挟み、本留置針の突端部を左手指(栂指と人差指)で把み固定しておいて、右手指を留置針の接続本管22の血液透析装置延長管への接続リング23に移動させて、その部分をしっかりと把み固定しつつ、左手の直細管付き中空針をゆっくりと引き抜いた。完全に引き抜いた後、直細管付き中空針1を捨て、左手指を接続本管22に持ちかえて、右手指の接続リング23と密接させて90度回転させて外部延長管と中空針外挿管11を連結させて、透析装置本体と本留置針31の接合操作を終了した。この後、クリップをはずすと、血液は、透析本体へ奔流し、静脈内還流用延長管へと到達した。通常、静脈用延長管先端接続部近くで、その血流を停止させておくことが要される。これに対して、ラットの下大静脈内にも前記同様の留置針処理を施すことで、その留置針接続管と下大静脈用延長管とを接続させることで、ラットの血液は透析本体を通過して全身の血液が循環することとなった。
[実施例7]
留置針使用による血液生化学検査
実施例6の実施後、ラットの外科手術とその後の血液生化学検査を行った。ラットの血液透析時間を30分(ヒトの代謝速度の20倍)と仮定すれば、人間に対しては、600分(10時間)に相当する。そこで、30分間動、静脈に留置した後2本の留置鞘(中空針外挿管の中央管:中空針は除去されている)を抜き取り、腹部の切開部を縫合後、定められた経過時間に従って採血し、生化学的血液中濃度推移を求めた。結果は、表1に示した。表1から、本発明に係わる留置針による生体に与える生物学的損傷は軽微であることがわかる。
実施例6の実施後、ラットの外科手術とその後の血液生化学検査を行った。ラットの血液透析時間を30分(ヒトの代謝速度の20倍)と仮定すれば、人間に対しては、600分(10時間)に相当する。そこで、30分間動、静脈に留置した後2本の留置鞘(中空針外挿管の中央管:中空針は除去されている)を抜き取り、腹部の切開部を縫合後、定められた経過時間に従って採血し、生化学的血液中濃度推移を求めた。結果は、表1に示した。表1から、本発明に係わる留置針による生体に与える生物学的損傷は軽微であることがわかる。
[実施例8]
二次元画像解析
実施例7の実施後、手術による部位と各動静脈の留置針穿刺部の組織染色標本と[2−14C]チミジンのステム細胞DNAミクロオートラジオグラフ画像を作成した。これらの結果は、ステンレス製留置針の実験結果と比べて損傷に対する修復効果の著しいことを示している(図21−30)。図21は、汎用ステンレス製針14ゲージでラットの下大静脈右管下方に穿刺し、3日後の組織写真像を示している。図中左斜め上方に矢印があり、その方向からステンレス針が斜右下へ向かって穿刺された痕跡が幅広く残っている。その痕跡を下大静脈の外皮から内へ向かって、a、b、c、d、eの順に矩形の粋が記されている。これらの部分は図22〜26にそれぞれ拡大図として示した。
実施例7の実施後、手術による部位と各動静脈の留置針穿刺部の組織染色標本と[2−14C]チミジンのステム細胞DNAミクロオートラジオグラフ画像を作成した。これらの結果は、ステンレス製留置針の実験結果と比べて損傷に対する修復効果の著しいことを示している(図21−30)。図21は、汎用ステンレス製針14ゲージでラットの下大静脈右管下方に穿刺し、3日後の組織写真像を示している。図中左斜め上方に矢印があり、その方向からステンレス針が斜右下へ向かって穿刺された痕跡が幅広く残っている。その痕跡を下大静脈の外皮から内へ向かって、a、b、c、d、eの順に矩形の粋が記されている。これらの部分は図22〜26にそれぞれ拡大図として示した。
図22は、多くの好塩基球が散在し、盛んに蛋白分解酵素を分泌して、損傷が修復している様子が窺える。細胞再生を示す銀粒子の核への分布は認められなかった。図23は、好酸球の散在を示している。しかし、細胞の再生は認められていなかった。図24は、下大静脈の血流を支えている血管内皮の拡大図であるが、血管内皮の修復は未だ不十分で一層の細胞膜が観察されず、浮遊の好酸球が散在しているのみであった。図25は、好中球の集団が認められた。本図は盛んな貪食があることを示している。図26は、好酸球の浮遊のみで再生は未だ観察されていなかった。
図27〜32は、本願のセラミック製中空針14ゲージの穿刺後3日の組織写真像である。図27の左上に矢印があり、その方向へ本願の針が穿刺された。また穿刺の残痕の幅が極端に狭くなっていることが前記ステンレス針の場合と著しく異なっていた。即ち、既に修復された部分が広くなっていることを示している。矩形の粋が記されているA、B、C、D、Eの部分を拡大して、図28〜32に示した。
図28は、外皮近傍の穿刺痕右脇の拡大図である。組織像の中央部の細胞集団は、血管再生の初期に現れる筋幹細胞群の中心で胚芽中心と呼ばれている。その部分を中心にして、あたかも惑星のように小細胞核が散在していて、それらには再生のためのDNA合成を示す銀粒子が明らかに認められた。図29は、下大静脈の血流に面した血管内皮膚で再生が穿刺3日で既に完了したことを示している。内皮細胞は勿論のこと、その深部の細胞核にも多くの銀粒子群が観察された。図30は、セラミック製中空針による穿刺後3日での損傷部左脇であるが、多くの胚芽中心とその周辺の分裂の予兆としての核への「2−14C]チミジンの取り込みを示す銀粒子群が観察された。図31ならびに図32にも多くの胚芽中心とその周辺の核への銀粒子群が認められたが、白血球群は全く観察されず、すでに損傷の残痕も炎症性の発現を示す貧食細胞も見出すことはなかった。これらの組織像は、すべて本発明のセラミック製中空針のステンレス製中空針に対する優位性を証明するものである。
以上、ステンレス針と比べてジルコニアセラミック針は、中空針の穿刺部位における組織に与える損傷が極めて小さいことがわかる。
本発明のセラミック製の中空針は、針穿刺部位の組織に損傷を大きく与えることなく、注射針、留置針用、特に、長時間採血、長時間注入のための注射針、留置針用に使用することができるものである。長時間採血、長時間注入用の代表的なものは、血液透析である。針の穿刺部位における組織の損傷が少ないことから、本発明の中空針及びこの中空針を使用した留置針は、医学、医療の分野で大きく貢献するものである。
A、B、C、D、E、F、G 組織の拡大すべき部位を示す符号である
a、b、c、d、e、f、g 組織の拡大すべき部位を示す符号である
1 直細管付き中空針
2 直細管
3 中空針
4 ミリポアフィルター部
5 頭部
11 中空針外挿管
12 中央管
14 受管
21 接続管
22 接続本管
23 接続リング
24 針元リング
26 クリップ
31 留置針
a、b、c、d、e、f、g 組織の拡大すべき部位を示す符号である
1 直細管付き中空針
2 直細管
3 中空針
4 ミリポアフィルター部
5 頭部
11 中空針外挿管
12 中央管
14 受管
21 接続管
22 接続本管
23 接続リング
24 針元リング
26 クリップ
31 留置針
Claims (16)
- セラミックからなる外径が1〜5mmの中空針。
- 肉厚が0.3mm〜1.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の中空針。
- セラミック微粉末ペーストを、耐熱性ワイヤーを中心軸とし、その外側に薄く均等厚に被覆後焼成し、焼成後前記ワイヤーを除去することによって製造されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の中空針。
- セラミックがジルコニウム又はジルコニア微粉末であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の中空針。
- 中空針の非穿刺端を耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管に挿着したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の中空針。
- 前記直細管の他端に不織綿を備えた頭部を配したことを特徴とする請求項5に記載の中空針。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載の中空針を使用した留置針。
- 請求項5又は請求項6に記載の中空針の非穿刺端を耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管に挿着したセラミック製中空針を耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる中空針外挿管に挿入したことを特徴とする留置針。
- 前記中空針外挿管は、中空針が挿入される部分は肉厚の耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の中央管よりなり、中空針の非穿刺端に挿着した耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉厚の直細管が挿入される部分は肉薄の耐薬品性、耐蝕性の樹脂製の受管よりなることを特徴とする、請求項8に記載の留置針。
- 前記中空針外挿管は、耐薬品性、耐蝕性の樹脂よりなる肉薄の管に型を挿入し、全体を熱収縮させて、肉厚で細管の中央管と肉薄の受管とを一体化して調製したものであることを特徴とする請求項8又は9に記載の留置針。
- 前記中空針外挿管に外部延長管との接続のために柔軟性のある接続管を配したことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の留置針。
- 前記接続管を前記受管に配したことを特徴とする請求項11に記載の留置針。
- 前記接続管に接続管内を流れる流体を一時的に停止するためにクリップを備えたことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の留置針。
- 前記接続管の中空針側に針元リング、他端に接続リングを備えたことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の留置針。
- 前記耐薬品性、耐蝕性の樹脂がフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項5、8、9、10のいずれかに記載の留置針。
- 前記接続管がシリコーン製であることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれかに記載の留置針。
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