以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。また、本明細書において配列(核酸配列、アミノ酸配列など)の同一性とは、2以上の対比可能な配列の、互いに対する同一の配列(個々の核酸、アミノ酸など)の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。本明細書において、遺伝子(例えば、核酸配列、アミノ酸配列など)の「類似性」とは、上記相同性において、保存的置換をポジティブ(同一)とみなした場合の、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、保存的置換がある場合は、その保存的置換の存在に応じて相同性と類似性とは異なる。また、保存的置換がない場合は、相同性と類似性とは同じ数値を示す。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
本明細書において「単離された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子が天然に存在する生物体の細胞内の他の生物学的因子(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子および目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
本明細書中で使用される用語「精製された」および「単離された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
本明細書において「純化(された)」および「クローニング(された)」とは、互換可能に用いられる。「純化(された)」および「クローニング(された)」とは、ある物質または核酸の状態についていい、その核酸の存在頻度を高い状態にすることであって、好ましくは、その物質または核酸が、他の種類の物質または核酸が実質的に伴わない状態をいう。本明細書において「純化」および「クローニング」に関する文脈において使用される場合、他の種類の物質または核酸が「実質的に伴わない状態」とは、それら他の種類の物質または核酸が全く存在しない状態か、または存在するとしても、目的の物質または核酸に対して、何ら影響を与えない状態をいう。従って、より好ましい状態では、純化された核酸または核酸組成物は、ある特定の核酸のみを含む。
本明細書で使用される場合、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」は互換可能に使用される。「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」としては、「ウイルスエンベロープベクター」および「リポソームベクター」が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「ウイルスエンベロープベクター」とは、ウイルスエンベロープ中に外来遺伝子を封入したベクター、またはウイルスエンベロープ由来のタンパク質を含む成分中に外来遺伝子を封入したベクターをいう。遺伝子導入ベクターの調製のために使用されるウイルスとしては、野生型ウイルスであっても、組換え型ウイルスであってもよい。
本発明において、ウイルスエンベロープまたはウイルスエンベロープ由来タンパク質の調製のために使用されるウイルスとしては、レトロウイルス科、トガウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、パラミクソウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、ラブドウイルス科、ポックスウイルス科、ヘルペスウイルス科、バキュロウイルス科、およびヘパドナウイルス科からなる群から選択される科に属するウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、パラミクソウイルス科に属するウイルスが、より好ましくは、HVJ(センダイウイルス)が、用いられる。
ウイルスエンベロープ由来タンパク質としては、例えば、HVJのFタンパク質、HNタンパク質、NPタンパク質およびMタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「リポソームベクター」とは、リポソーム中に外来遺伝子を封入したベクターをいう。リポソームベクターの調製のために使用される脂質としては、例えば、DOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノラミン)およびホスファチジルコリンなどの中性リン脂質、コレステロール、ホスファチジルセリンおよびホスファチジン酸などの負電荷リン脂質、ならびにDC−コレステロール(ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール)およびDOTAP(ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン)などの正電荷脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「リポソーム」とは、脂質二重膜の一種である。例えば、レシチンのようなリン脂質を50%(重量比)以上の水に、そのリン脂質固有のゲル−液晶相転移温度以上で懸濁すると脂質二重層からなる、内部に水相を有する閉鎖小胞が形成される。この小胞をリポソームという。二分子膜が何枚もタマネギ状に重なった多重膜リポソーム(MLV)と、膜が1枚のリポソームに大別される。後者はまた、ホスファチジルコリンのようなリン脂質のサスペンション(懸濁液)を、ミキサーで激しく攪拌して分散した後、超音波処理を行なうことによっても調製することが可能である。
膜が1枚のリポソームはさらに、その粒子径によって小さな単膜リポソーム(SUV)と大きな単膜リポソーム(LUV)とに分類される。MLVは、脂質薄膜に水を加えて機械的振動を与えることにより調製される。SUVは、MLVを超音波するか、または脂質と界面活性剤の混合溶液から界面活性剤を透析などで除去するなどによって調製される。また、これ以外にも、(1)SUVの凍結融解を繰り返して、LUVを調製する方法、(2)酸性リン脂質でできたSUVをCa2+の存在下で融合させ、そしてこのCa2+をEDTA(エチレンジアミン四酢酸)で除去することにより調製する方法、(3)脂質のエーテル溶液と水のエマルジョンからエーテルを留去しながら、相の転換を行ってLUVなどを調製する方法(逆相蒸発法リポソーム;REV)が周知である。
本明細書で使用される場合、「不活性化」とは、ゲノムを不活性化したウイルスをいう。この不活性化ウイルスは、複製欠損である。好ましくは、この不活性化は、UV処理またはアルキル化剤による処理によって、なされる。
本明細書において、「HVJ」および「センダイウイルス」は、互換可能に用いられ得る。例えば、本明細書において「HVJのエンベロープ」と「センダイウイルスのエンベロープ」とは同一の意味を示す語句として用いられる。
本明細書において「センダイウイルス」とは、パラミクソウイルス科パラミクソウイルス属に属し、細胞融合作用をもつウイルスをいう。ウイルス粒子は、エンベロープをもち、直径150〜300nmの多形性を示す.ゲノムは、約15500塩基長のマイナス鎖RNAである。RNAポリメラーゼを持ち、熱に不安定で、ほとんどあらゆる種類の赤血球を凝集し、また溶血性を示す。
本明細書において、「HAU」とは、ニワトリ赤血球0.5%を凝集可能なウイルスの活性をいい、1 HAUは、ほぼ2400万ウイルス粒子に相当する(Okada,Y.ら、Biken Journal 4、209〜213、1961)。
本明細書において、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドのような変性剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、65〜68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および50%ホルムアミド、42℃である。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrooket al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(ColdSpring Harbor,N,Y.1989);およびAnderson et al.、Nucleic Acid Hybridization :a Practicalapproach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(NaDodSO4またはSDS)、Ficoll、Denhardt溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(または別の非相補的DNA)および硫酸デキストランであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で実施されるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。Anderson et al.、NucleicAcid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
本明細書において「中程度にストリンジェントな条件」とは、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得るよりも高い程度の塩基対不一致を有するDNA二重鎖が、形成し得る条件をいう。代表的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、50〜65℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015Mクエン酸ナトリウム、および20%ホルムアミド、37〜50℃である。例として、0.015Mナトリウムイオン中、50℃の「中程度にストリンジェントな」条件は、約21%の不一致を許容する。
本明細書において「高度」にストリンジェントな条件と「中程度」にストリンジェントな条件との間に完全な区別は存在しないことがあり得ることが、当業者によって理解される。例えば、0.015Mナトリウムイオン(ホルムアミドなし)において、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。65℃(同じイオン強度)での洗浄において、これは、約6%不一致を許容にする。より離れた関連する配列を捕獲するために、当業者は、単に温度を低下させ得るか、またはイオン強度を上昇し得る。
約20ヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチドプローブについて、1MNaClにおける融解温度の適切な概算は、
Tm=(1つのA−T塩基につき2℃)+(1つのG−C塩基対につき4℃)
によって提供される。なお、6×クエン酸ナトリウム塩(SSC)におけるナトリウムイオン濃度は、1Mである(Suggsら、Developmental Biology Using Purified Genes、683頁、BrownおよびFox(編)(1981)を参照のこと)。
配列番号2、4、6または8に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどのタンパク質をコードする天然の核酸は、例えば、配列番号1、3、5または7の核酸配列の一部またはその改変体を含むPCRプライマーおよびハイブリダイゼーションプローブを有するcDNAライブラリーから容易に分離される。配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸は、本質的に1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mMリン酸ナトリウム(NaPO4);1mM EDTA;42℃の温度で7% SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に2×SSC(600mM NaCl;60mMクエン酸ナトリウム);50℃の0.1%SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、さらに好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);500mMリン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に50℃の1×SSC(300mM NaCl;30mMクエン酸ナトリウム);1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下、最も好ましくは本質的に50℃の温度での1%ウシ血清アルブミン(BSA);200mMリン酸ナトリウム(NaPO4);15%ホルムアミド;1mM EDTA;7%SDSを含むハイブリダイゼーション緩衝液、および本質的に65℃の0.5×SSC(150mM NaCl;15mMクエン酸ナトリウム);0.1% SDSを含む洗浄緩衝液によって定義される低ストリンジェント条件下に配列番号1、3、5または7に示す配列の1つまたはその一部とハイブリダイズし得る。
本明細書において配列(アミノ酸または核酸など)の「同一性」、「相同性」および「類似性」のパーセンテージは、比較ウィンドウで最適な状態に整列された配列2つを比較することによって求められる。ここで、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の比較ウィンドウ内の部分には、2つの配列の最適なアライメントについての基準配列(他の配列に付加が含まれていればギャップが生じることもあるが、ここでの基準配列は付加も欠失もないものとする)と比較したときに、付加または欠失(すなわちギャップ)が含まれる場合がある。同一の核酸塩基またはアミノ酸残基がどちらの配列にも認められる位置の数を求めることによって、マッチ位置の数を求め、マッチ位置の数を比較ウィンドウ内の総位置数で割り、得られた結果に100を掛けて同一性のパーセンテージを算出する。検索において使用される場合、相同性については、従来技術において周知のさまざまな配列比較アルゴリズムおよびプログラムの中から、適当なものを用いて評価する。このようなアルゴリズムおよびプログラムとしては、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTAおよびCLUSTALW(Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(8):2444−2448、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Thompson et al.,1994,Nucleic Acids Res.22(2):4673−4680、Higgins et al.,1996,Methods Enzymol.266:383−402、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215(3):403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272)があげられるが、何らこれに限定されるものではない。特に好ましい実施形態では、従来技術において周知のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(たとえば、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410、Altschul et al.,1993,Nature Genetics 3:266−272、Altschul et al.,1997,Nuc.Acids Res.25:3389−3402を参照のこと)を用いてタンパク質および核酸配列の相同性を評価する。特に、5つの専用BLASTプログラムを用いて以下の作業を実施することによって比較または検索が達成され得る。
(1)BLASTPおよびBLAST3でアミノ酸のクエリー配列をタンパク質配列データベースと比較;
(2)BLASTNでヌクレオチドのクエリー配列をヌクレオチド配列データベースと比較;
(3)BLASTXでヌクレオチドのクエリー配列(両方の鎖)を6つの読み枠で変換した概念的翻訳産物をタンパク質配列データベースと比較;
(4)TBLASTNでタンパク質のクエリー配列を6つの読み枠(両方の鎖)すべてで変換したヌクレオチド配列データベースと比較;
(5)TBLASTXでヌクレオチドのクエリ配列を6つの読み枠で変換したものを、6つの読み枠で変換したヌクレオチド配列データベースと比較。
BLASTプログラムは、アミノ酸のクエリ配列または核酸のクエリ配列と、好ましくはタンパク質配列データベースまたは核酸配列データベースから得られた被検配列との間で、「ハイスコアセグメント対」と呼ばれる類似のセグメントを特定することによって相同配列を同定するものである。ハイスコアセグメント対は、多くのものが従来技術において周知のスコアリングマトリックスによって同定(すなわち整列化)されると好ましい。好ましくは、スコアリングマトリックスとしてBLOSUM62マトリックス(Gonnet et al.,1992,Science 256:1443−1445、Henikoff and Henikoff,1993,Proteins 17:49−61)を使用する。このマトリックスほど好ましいものではないが、PAMまたはPAM250マトリックスも使用できる(たとえば、Schwartz and Dayhoff,eds.,1978,Matrices for Detecting Distance Relationships:Atlas of Protein Sequence and Structure,Washington:National Biomedical Research Foundationを参照のこと)。BLASTプログラムは、同定されたすべてのハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価し、好ましくはユーザー固有の相同率などのユーザーが独自に定める有意性の閾値レベルを満たすセグメントを選択する。統計的な有意性を求めるKarlinの式を用いてハイスコアセグメント対の統計的な有意性を評価すると好ましい(Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2267−2268参照のこと)。
(遺伝子、タンパク質分子、核酸分子などの改変)
あるタンパク質分子において、配列に含まれるあるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
当該分野において、親水性指数もまた、改変設計において考慮され得る。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本明細書において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例としては、例えば、親水性指数または疎水性指数が、±2以内のもの同士、好ましくは±1以内のもの同士、より好ましくは±0.5以内のもの同士のものが挙げられるがそれらに限定されない。従って、保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。そのような改変体としては、基準となる核酸分子またはポリペプチドに対して、1または数個の置換、付加および/または欠失、あるいは1つ以上の置換、付加および/または欠失を含むものが挙げられるがそれらに限定されない。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。そのような対立遺伝子変異体は、通常その対応する対立遺伝子と同一または非常に類似性の高い配列を有し、通常はほぼ同一の生物学的活性を有するが、まれに異なる生物学的活性を有することもある。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトおよびマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子およびβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用である。オルソログは、通常別の種において、もとの種と同様の機能を果たしていることがあり得ることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、短縮化、脂質化(lipidation)、ホスホリル化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」または「ペプチド誘導体」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログまたはアミノ酸誘導体が付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
本発明のポリペプチドがポリマーに結合している、化学修飾されたポリペプチド組成物は、本発明の範囲に包含される。このポリマーは、水溶性であり得、水溶性環境(例えば、生理学的環境)でこのタンパク質の沈澱を防止し得る。適切な水性ポリマーは、例えば、以下からなる群より選択され得る:ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物に基づくポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコール。この選択されたポリマーは、通常は改変され、単一の反応性基(例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒド)を有し、その結果、重合度は制御され得る。ポリマーは、任意の分子量であり得、そして、このポリマーは分枝状でも分枝状でなくてもよく、そしてこのようなポリマーの混合物はまた、使用され得る。この化学修飾された本発明のポリマーは、治療用途に決定付けられる場合、薬学的に受容可能なポリマーが使用するために選択される。
このポリマーがアシル化反応によって改変される場合、このポリマーは、単一の反応性エステル基を有するべきである。あるいは、このポリマーが還元アルキル化によって改変される場合、このポリマーは単一の反応性アルデヒド基を有するべきである。好ましい反応性アルデヒドは、ポリエチレングリコール、プロピオンアルデヒド(このプロピオンアルデヒドは、水溶性である)または、そのモノC1〜C10の、アルコキシ誘導体もしくはアリールオキシ誘導体である(例えば、米国特許第5,252,714号(これは、本明細書中で全体が参考として援用される)を参照のこと)。
本発明のポリペプチドのペグ化(pegylation)は、例えば、以下の参考文献に記載されるような、当該分野で公知の、任意のペグ化反応によって実施され得る:Focus on Growth Factors 3,4−10(1992);EP 0 154 316;およびEP 0 401 384(これらの各々は、本明細書中で、全体が参考として援用される)。好ましくは、このペグ化は、反応性ポリエチレングリコール分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を介して実施される。本発明のポリペプチドのペグ化のための好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書中で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、PEGの任意の形態の包含することを意味し、ここで、このPEGは、他のタンパク質(例えば、モノ(C1〜C10)アルコキシポリエチレングリコールまたはモノ(C1〜C10)アリールオキシポリエチレングリコール)を誘導体するために使用される。
本発明のポリペプチドの化学誘導体化を、生物学的に活性な物質を活性化したポリマー分子と反応させるのに使用される適切な条件下で、実施され得る。ペグ化した本発明のポリペプチドを調製するための方法は、一般に以下の工程を包含する:(a)ポリペプチドが1以上のPEG基に結合するような条件下で、ポリエチレングリコール(例えば、PEGの、反応性エステルまたはアルデヒド誘導体)とこのポリペプチドを反応させる工程および(b)この反応生成物を得る工程。公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、最適な反応条件またはアシル化反応を選択することは当業者に容易である。
ペグ化された本発明のポリペプチドは、一般に、本明細書中に記載のポリペプチドを投与することによって、緩和または調節され得る状態を処置するために使用され得るが、しかし、本明細書中で開示された、化学誘導体化された本発明のポリペプチド分子は、それらの非誘導体分子と比較して、さらなる活性、増大された生物活性もしくは減少した生物活性、または他の特徴(例えば、増大された半減期または減少した半減期)を有し得る。本発明のポリペプチド、それらのフラグメント、改変体および誘導体は、単独で、併用して、または他の薬学的組成物を組み合わせて使用され得る。これらのサイトカイン、増殖因子、抗原、抗炎症剤および/または化学療法剤は、徴候を処置するのに適切である。
同様に、「ポリヌクレオチドアナログ」、「核酸アナログ」は、ポリヌクレオチドまたは核酸とは異なる化合物であるが、ポリヌクレオチドまたは核酸と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ポリヌクレオチドアナログまたは核酸アナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のヌクレオチドアナログまたはヌクレオチド誘導体が付加または置換されているものが含まれる。
本明細書において使用される核酸分子は、発現されるポリペプチドが天然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(遺伝子工学)
本発明において用いられる配列番号2、4、6または8のアミノ酸配列を有するポリペプチドならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
本発明において用いられ得る原核細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
本発明において用いられ得る動物細胞に対する「組み換えベクター」としては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
哺乳動物細胞での発現のための強力なプロモーターとしては、例えば、種々の天然のプロモーター(例えば、SV40の初期プロモーター、アデノウイルスのE1Aプロモーター、ヒト サイトメガロウイルス(CMV)のプロモーター、ヒト延長因子−1(EF−1)プロモーター、Drosophila最小熱ショックタンパク質70(HSP)のプロモーター、ヒト メタロチオネイン(MT)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒト ユビキチンC(UBC)プロモーター、ヒト アクチンプロモーター)、および人工のプロモーター(例えば、SRαプロモーター(SV40初期プロモーターとHTLVのLTRプロモーターの融合)、CAGプロモーター(CMV−IEエンハンサーとニワトリ アクチンプロモーターのハイブリッド)のような融合プロモーター)が周知であることから、これら周知のプロモーターまたはその改変体を用いることによって、組換え発現の発現量を容易に上昇させることができる。
大腸菌を宿主細胞として使用する場合、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌およびファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等を挙げることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)が挙げられる。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。
本明細書において使用される場合、動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法などが例示される。
本明細書において、レトロウイルスの感染方法は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology前出(特にUnits 9.9−9.14)などに記載されるように、当該分野において周知であり、例えば、トリプシナイズして胚性幹細胞を単一細胞懸濁物(single−cell suspension)にした後、ウイルス産生細胞(virus−producing cells)(パッケージング細胞株=packaging cell lines)の培養上清と一緒に1〜2時間共培養(co−culture)することにより、十分量の感染細胞を得ることができる。
本明細書において使用されるゲノムまたは遺伝子座などを除去する方法において用いられる、Cre酵素の一過的発現、染色体上でのDNAマッピングなどは、細胞工学別冊実験プロトコールシリーズ「FISH実験プロトコール ヒト・ゲノム解析から染色体・遺伝子診断まで」松原謙一、吉川 寛 監修 秀潤社(東京)などに記載されるように、当該分野において周知である。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取することにより、本発明に係るポリペプチドを製造することができる。
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシリンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。遺伝子を導入した細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培養することができる。
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されているRPMI1640培地(The Journal of the American Medical Association,199,519(1967))、EagleのMEM培地(Science,122,501(1952))、DMEM培地(Virology,8,396(1959))、199培地(Proceedings of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950))またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換された形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA−75(三菱化成)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製標品を得ることができる。
本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポリペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもできる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,469−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevelop.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Genes Develop.,4,1288(1990)]。このような融合タンパク質では、発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位は、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にするために、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入される。このような酵素およびこれらの同族の認識配列は、第Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。代表的な融合発現ベクターとしては、それぞれ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合する、pGEX(Pharmacia Biotech;SmithおよびJohnson(1988)Gene 67,31〜40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が挙げられる。
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomolecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
本発明のポリペプチドは、そのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、Advanced ChemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Biotech、Protein Technology Instrument、Synthecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し化学合成することもできる。
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、1993年)に記載の方法により実施可能である。本発明のポリペプチドの生理活性は、公知の測定法に準じて測定することができる。
本発明において有用な可溶性ポリペプチドの産生もまた、当該分野で公知の種々の方法によって達成され得る。例えば、ポリペプチドは、エキソペプチダーゼ、エドマン分解またはその両方と組み合わせて特定のエンドペプチダーゼを使用することによるタンパク質分解によって、インタクトなポリペプチド分子から誘導され得る。このインタクトなポリペプチド分子は、従来の方法を使用して、その天然の供給源から精製され得る。あるいは、インタクトなポリペプチドは、cDNA、発現ベクターおよび組換え遺伝子発現のための周知技術を利用する組換えDNA技術によって生成され得る。
好ましくは、本発明において有用な可溶性ポリペプチドは、直接的に産生され、従って、出発材料としてのポリペプチド全体の必要性を排除する。これは、従来の化学合成技術によって達成され得るか、または周知の組換えDNA技術(ここで、所望のペプチドをコードするDNA配列のみが形質転換された宿主で発現される)によって達成され得る。例えば、所望の可溶性ポリペプチドをコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的手段によって合成され得る。このようなオリゴヌクレオチドは、所望の可溶性ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計される。所望のペプチドをコードする特定のDNA配列はまた、特定の制限エンドヌクレアーゼフラグメントの単離によってか、またはcDNAからの特定の領域のPCR合成によって、全長DNA配列から誘導され得る。
(変異型ポリペプチドの作製方法)
本発明のポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加(融合を含む)は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,John Wiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
(合成化学)
本明細書におけるペプチド、化学物質、低分子などの因子は、合成化学技術を用いて合成することができる。そのような合成化学技術は、当該分野において周知の技術を用いることができる。そのような周知技術としては、例えば、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(Fieser’s Reagents for Organic Synthesis)Tse−Lok Ho,John Wiley & Sons Inc(2002)などを参照することができる。
本発明の因子が化合物として利用される場合、塩形態で用いることができる。「塩」としては、製薬上許容される塩が好ましく、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機塩基との塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩、ならびにアルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミンなどとの塩が挙げられる。無機酸との塩としては、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、過塩素酸、ヨウ化水素酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などとの塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩としては、アルギニン、リジン、オルニチンなどとの塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
本発明の因子が化合物として利用される場合、水和物形態で用いることができる。「水和物」としては、薬理学的に許容される水和物が好ましく、また、含水塩も含まれ。具体的には、一水和物、二水和物、六水和物等が挙げられる。
(免疫化学)
本発明のポリペプチドを認識する抗体の作製もまた当該分野において周知である。例えば、ポリクローナル抗体の作製は、取得したポリペプチドの全長または部分断片精製標品、あるいは本発明のタンパク質の一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用い、動物に投与することにより行うことができる。
抗体を生産する場合、投与する動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができる。その抗原の投与量は動物1匹当たり50〜100μgが好ましい。ペプチドを用いる場合は、ペプチドをスカシガイヘモシアニン(keyhole limpet haemocyanin)またはウシチログロブリン等のキャリアタンパク質に共有結合させたものを抗原とするのが望ましい。抗原とするペプチドは、ペプチド合成機で合成することができる。その抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法[酵素免疫測定法(ELISA法):医学書院刊 1976年、Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lavoratory(1988)]等で確認する。
免疫に用いた抗原に対し、その血清が充分な抗体価を示した非ヒト哺乳動物より血清を取得し、その血清より、周知技術を用いてポリクローナル抗体を分離、精製することができる。モノクローナル抗体の作製もまた当該分野において周知である。抗体産性細胞の調製のために、まず、免疫に用いた本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として使用し、骨髄腫細胞との融合により、ハイブリドーマの作製を行う。その後、酵素免疫測定法になどより、本発明のポリペプチドの部分断片ポリペプチドに特異的に反応するハイブリドーマを選択する。このようにして得たハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体は種々の目的に使用することができる。
このような抗体は、例えば、本発明のポリペプチドの免疫学的検出方法に使用することができ、本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの免疫学的検出法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法・蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法等を挙げることができる。
また、本発明ポリペプチドの免疫学的定量方法にも使用することができる。本発明ポリペプチドの定量方法としては、液相中で本発明のポリペプチドと反応する抗体のうちエピトープが異なる2種類のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA法、125I等の放射性同位体で標識した本発明のタンパク質と本発明のタンパク質を認識する抗体とを用いるラジオイムノアッセイ法等を挙げることができる。
本発明のポリペプチドのmRNAの定量方法もまた、当該分野において周知である。例えば、本発明のポリヌクレオチドあるいはDNAより調製した上記オリゴヌクレオチドを用い、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、本発明のポリペプチドをコードするDNAの発現量をmRNAレベルで定量することができる。このような技術は、当該分野において周知であり、本明細書において列挙した文献にも記載されている。
当該分野で公知の任意の方法によって、これらのポリヌクレオチドが得られ、そしてこれらポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、決定され得る。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、この抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学的に合成されたオリゴヌクレオチドからアセンブルされ得(例えば、Kutmeierら、BioTechniques 17:242(1994)に記載されるように)、これは、手短に言えば、抗体をコードする配列の部分を含むオーバーラップするヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに次いでPCRによるこの連結されたオリゴヌクレオチドの増幅を含む。
抗体をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源由来の核酸から作製することができる。ある抗体をコードする核酸を含むクローンは入手不可能だが、その抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成され得るか、あるいは適切な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリーまたは抗体を発現する任意の組織もしくは細胞(例えば、本発明の抗体の発現のために選択されたハイブリドーマ細胞)から生成されたcDNAライブラリー、またはそれから単離された核酸(好ましくはポリA+RNA))から、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからのcDNAクローンを同定するために、その配列の3’末端および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを使用するPCR増幅によって、またはその特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得ることができる。PCRによって作製された増幅された核酸は、当該分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングされ得る。
一旦、抗体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の操作について当該分野で周知の方法(例えば、組換えDNA技術、部位指向性変異誘発、PCRなど(例えば、Sambrookら、1990,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NYおよびAusubelら編、1998,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,NYに記載の技術を参照のこと。これらは両方がその全体において本明細書に参考として援用される。))を用いて操作され、例えば、アミノ酸の置換、欠失、および/または挿入を生成するように異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し得る。
特定の実施形態において、重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、相補性決定領域(CDR)の配列の同定のために、当該分野において周知の方法によって(例えば、配列超可変性の領域を決定するために、他の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の既知のアミノ酸配列と比較することによって)調べられ得る。慣用的な組換えDNA技術を用いて、1つ以上のCDRが、前述のようにフレームワーク領域内に(例えば、非ヒト抗体をヒト化するために、ヒトフレームワーク領域中に)挿入され得る。このフレームワーク領域は天然に存在し得るか、またはコンセンサスフレームワーク領域であり得、そして好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、列挙したヒトフレームワーク領域については、Chothiaら、J.Mol.Biol.278:457−479(1998)を参照のこと)。好ましくは、フレームワーク領域およびCDRの組み合わせによって生成されたポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドに特異的に結合する抗体をコードする。好ましくは、上記に議論されるように、1つ以上のアミノ酸置換は、フレームワーク領域内で作製され得、そして好ましくは、そのアミノ酸置換は、抗体のその抗原への結合を改善する。さらに、このような方法は、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合が欠如した抗体分子を生成するように、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域のシステイン残基のアミノ酸置換または欠失を作製するために使用され得る。ポリヌクレオチドへの他の変更は、本発明によって、および当該分野の技術において包含される。
さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライシングさせることによって、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81:851−855(1984);Neubergerら、Nature 312:604−608(1984);Takedaら、Nature 314:452−454(1985))が使用され得る。上記のように、キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子であり、このような分子は、マウスmAbおよびヒト免疫グロブリンの定常領域由来の可変領域を有する(例えば、ヒト化抗体)。
単鎖抗体を製造する場合、単鎖抗体の産生に関する記載された公知の技術(米国特許第4,946,778号;Bird、Science 242:423−42(1988);Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988);およびWardら、Nature 334:544−54(1989))が、利用され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントおよび軽鎖フラグメントがアミノ酸架橋を介して連結されれることによって形成され、単鎖ポリペプチドを生じる。E.coliにおける機能性Fvフラグメントのアセンブリのための技術もまた、使用され得る(Skerraら、Science 242:1038−1041(1988))。
(抗体を産生する方法)
本発明の抗体は、抗体の合成のために当該分野で公知の任意の方法によって、化学合成によって、または、好ましくは、組換え発現技術によって産生され得る。
本発明の抗体、またはそのフラグメント、誘導体もしくはアナログ(例えば、本発明の抗体の重鎖もしくは軽鎖または本発明の単鎖抗体)の組換え発現は、その抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。一旦、本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖、あるいはそれらの部分(好ましくは、重鎖または軽鎖の可変ドメインを含有する)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子の産生のためのベクターは、当該分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって生成され得る。従って、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの発現によってタンパク質を調製するための方法は、本明細書に記載される。当業者に周知の方法は、抗体をコードする配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターの構築のために使用され得る。これらの方法としては、例えば、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。従って、本発明は、プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体分子、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または重鎖もしくは軽鎖の可変ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターを提供する。このようなベクターは、抗体分子の定常領域(例えば、PCT公開 WO86/05807;PCT公開 WO89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照のこと)をコードするヌクレオチド配列を含み得、そしてこの抗体の可変ドメインは、重鎖または軽鎖の全体の発現のためにこのようなベクターにクローニングされ得る。
この発現ベクターは、従来技術によって宿主細胞へと移入され、次いで、このトランスフェクトされた細胞は、本発明の抗体を産生するために、従来技術によって培養される。従って、本発明は、異種プロモーターに作動可能に連結された、本発明の抗体、あるいはその重鎖もしくは軽鎖、または本発明の単鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二重鎖抗体の発現についての好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述されるように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中に同時発現され得る。
本発明の関連した局面において、薬学的組成物(例えば、ワクチン組成物)が、予防適用または治療適用のために提供される。このような組成物は、一般に、本発明の免疫原性ポリペプチドまたはポリヌクレオチドおよび免疫刺激剤(例えば、アジュバント)を含む。
本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、標準的な技術(例えば、親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈降)によって、本発明のポリペプチドなどを単離するために用いられ得る。ある因子に特異的な抗体は、細胞からの天然の因子、そして宿主細胞において発現される組換え的に産生された因子の精製を容易にし得る。さらに、そのような抗体が、(例えば、細胞の溶解液または細胞上清における)本発明のタンパク質を検出するために用いられ、本発明のタンパク質の発現の存在の量およびパターンを評価し得る。このような抗体は、例えば、所定の処置レジメンの有効性を決定するために、臨床試験の手順の一部として組織におけるタンパク質レベルを診断的にモニターするために用いられ得る。検出は、抗体を検出可能物質に連結する(すなわち、物理的に連結する)ことにより容易になり得る。検出可能物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン(dichlorotriazinylamine)フルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光物質の例としては、ルミノールが挙げられる;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ;そして、適切な放射性物質の例としては125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられるがそれらに限定されない。
本発明の別の局面は、哺乳動物において、免疫応答を誘導するに十分な量のポリペプチドをこの哺乳動物に投与することにより本発明のポリペプチドに対する免疫応答を誘導する方法に関する。この量は、動物種、動物の大きさなどに依存するが、当業者により決定され得る。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
1実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質または本発明のポリペプチド、あるいはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはこれらの活性を調節する、候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチの任意のものを使用して得られ、これには、以下が挙げられる:生物学的ライブラリー;空間的にアクセス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;逆重畳を要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーもしくは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該分野において、例えば以下に見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)J.Med.Chem 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem 37:1233。
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)BioTechniques 13:412〜421)、あるいはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌(Ladner 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、上記)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378〜6382;Felici(1991)J Mol Biol 222:301〜310;Ladner上記)において示され得る。
(薬学的組成物)
本発明のポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび遺伝子導入ベクター、アンチセンス核酸、ポリペプチド、ならびにポリペプチドに対する抗体は、血管内皮細胞増殖抑制のため、c−fosプロモーターからの転写抑制のため、E2Fプロモーターからの転写抑制のため、AP1プロモーターからの転写抑制のため、VEGF活性抑制のため、および血管新生抑制のため、ならびに、関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌の処置、予防、診断または予後のための薬学的組成物の成分としても使用することが可能である。
本明細書において薬剤の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効が発揮することができる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは薬学的アジュバント。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
本発明では、いったん類似の種類(例えば、ヒトに対するマウスなど)の生物、培養細胞、組織などに関し、ある特定の糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けられた場合、対応する糖鎖構造の分析結果と、疾患レベルとが相関付けることができることは、当業者は容易に理解する。そのような事項は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。
(遺伝子治療)
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
遺伝子治療に使用される核酸構築物は、周知の遺伝子導入ベクターを用いて局所的にまたは全身的にのいずれかで投与され得る。そのような核酸構築物がタンパク質のコード配列を包含する場合、そのタンパク質の発現は、内因性の哺乳類のプロモーターまたは異種のプロモーターの使用により誘導され得る。コード配列の発現は、構成的であり得るか、または調節され得る。
種々の周知の遺伝子導入ベクターを遺伝子治療のための組成物として使用する場合、ベクターの投与は、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)または生理食塩水などに懸濁したベクター懸濁液の局所(例えば、癌組織内、肝臓内、筋肉内および脳内など)への直接注入か、または血管内(例えば、動脈内、静脈内および門脈内)への投与によりなされる。
1つの実施態様において、遺伝子導入ベクターは、一般には、この遺伝子導入ベクターを単位用量注入可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、そして処方物の他の成分と適合性であるもの)とを混合することによって処方され得る。例えば、処方物は、好ましくは、酸化剤および遺伝子導入ベクターにとって有害であることが公知である他の化合物を含まない。
キャリアは、等張性および化学的安定性を増強する物質のような微量の添加物を適宜含む。このような物質は、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、そしてリン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー)、またはPEGを含み得る。
遺伝子導入ベクターを含む薬学的組成物は、代表的には、単位または多用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルにおいて、水溶液として貯蔵され得る。
遺伝子導入ベクターを含む薬学的組成物は医療実施基準(good medical practice)に一致した様式で、個々の患者の臨床状態(例えば、予防または処置されるべき状態)、遺伝子導入ベクターを含む組成物の送達部位、標的組織、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮しつつ処方され、そして投与される。
例えば、マウスにHVJ(センダイウイルス)エンベロープベクターを投与する場合、マウス一匹あたり、20〜20,000HAU相当の、好ましくは60〜6,000HAU相当の、より好ましくは200〜2,000HAU相当のエンベロープベクターが投与される。投与されるエンベロープベクター中に含有される外来遺伝子の量は、マウス一匹あたり、0.1〜100μg、好ましくは0.3〜30μg、より好ましくは1〜10μgである。
また、ヒトにHVJ(センダイウイルス)エンベロープベクターを投与する場合、被験体あたり、400〜400,000HAU相当の、好ましくは1,200〜120,000HAU相当の、より好ましくは4,000〜40,000HAU相当のエンベロープベクターが投与される。投与されるエンベロープベクター中に含有される外来遺伝子の量は、被験体あたり、2〜2,000μg、好ましくは6〜600μg、より好ましくは20〜200μgである。
本発明のポリペプチドを、上記の遺伝子治療において用いる方法と同様にして、遺伝子導入ベクター中に入れ、そしてそのポリペプチドを所望の部位に送達することも可能である。
(本明細書において用いられる一般的技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分野の技術範囲内にある、糖鎖科学、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、糖鎖科学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al.eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、疾患または障害(例えば、感染症)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
一般的提案として、用量当り、非経口的に投与されるペプチド治療剤の合計薬学的有効量は、患者体重の、約0.1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。さらに好ましくは、本発明の細胞生理活性物質について、この用量は、少なくとも1μg/kg/日、最も好ましくはヒトに対して約0.01mg/kg/日と約1mg/kg/日との間である。連続投与する場合、代表的には、治療剤を約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で1日に1〜4回の注射かまたは連続皮下注入(例えばミニポンプを用いる)のいずれかにより投与する。静脈内用バッグ溶液もまた使用し得る。変化を観察するために必要な処置期間および応答が生じる処置後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15:167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達される(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwal dら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
治療剤は、代表的には約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で、約3〜8のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、塩が形成されることが理解される。
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、有効成分としてのウイルス以外の生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
特定の実施態様において、本発明の薬学的組成物は、抗がん剤との組み合わせで投与される。
(pCMV9にコードされるタンパク質のポリペプチド形態)
1つの局面において、本発明は、pCMV9にコードされるタンパク質のポリペプチドを含む慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌を処置するため、予防するためまたは予後のための組成物を提供する。ここで、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
1つの実施形態において、本発明のpCMV9にコードされるタンパク質由来のポリペプチドは、(a)配列番号1または3に記載の核酸配列またはそのフラグメントによってコードされる、ポリペプチド;(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントを有する、ポリペプチド;(c)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する、改変体ポリペプチド(d)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス改変体もしくは対立遺伝子改変体によってコードされる、ポリペプチド;(e)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列の種相同体ポリペプチド;または(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列からなり、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、pCMV9にコードされるタンパク質と類似するかまたは実質的に同一の活性、(例えば、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性)を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(d)における対立遺伝子変異体は、配列番号2または4に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書中上述のように同定することができ、配列番号2または4に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のpCMV9にコードされるペプチドのアミノ酸配列をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のpCMV9にコードされる遺伝子の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号1または3に示す核酸配列または配列番号2または4に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性、血管新生抑制活性などが挙げられるがそれらに限定されない。これらは例えば、免疫学的アッセイ、リン酸化定量、細胞増殖アッセイ、プロモーターアッセイ、血管新生アッセイなどによって測定することができる。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは少なくとも5アミノ酸長、少なくとも6アミノ酸長、少なくとも7アミノ酸長、少なくとも8アミノ酸長、少なくとも9アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性の中の少なくとも1つの活性を有する限り、その上限の長さは、配列番号2または4に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
1つの実施形態において、処置されるべき疾患、障害または状態は、本明細書において他の場所において記載されており、例えば、関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする疾患、障害または状態は、癌であり得る。
別の実施形態において、本発明のpCMV9にコードされるタンパク質由来のペプチドは、可溶性であることが好ましい。
(pCMV9にコードされる遺伝子の核酸形態)
1つの局面において、本発明は、pCMV9にコードされるタンパク質をコードする核酸分子を含む慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌の、処置、予防、または予後のための組成物を提供する。ここで、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
1つの実施形態において、本発明において用いられるpCMV9にコードされるタンパク質をコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号1または3に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有する、ポリヌクレオチド;(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド、(c)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、からなる群より選択される、ポリヌクレオチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、pCMV9にコードされるタンパク質と類似するかまたは実質的に同一の活性、(例えば、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性)を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性、血管新生抑制活性などが挙げられるがそれらに限定されない。これらは例えば、免疫学的アッセイ、リン酸化定量、細胞増殖アッセイ、プロモーターアッセイ、血管新生アッセイなどによって測定することができる。
別の好ましい実施形態において、(d)に記載の対立遺伝子変異体は、配列番号1または3に示す核酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが有利である。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のpCMV9にコードされる遺伝子の核酸配列をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のpCMV9にコードされる遺伝子の核酸配列の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号1または3に示す核酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明のpCMV9にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子またはそのフラグメントおよび改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、アンチセンス、RNAi、マーカー、プライマー、プローブ、所定の因子と相互作用し得ること)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号1または3に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
1つの実施形態において、pCMV9にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号1または3の核酸配列の全範囲を含む。より好ましくは、pCMV9にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号1または3の核酸配列の全範囲からなる。
1つの実施形態において、処置されるべき疾患、障害または状態は、本明細書において他の場所において記載されており、例えば、関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする疾患、障害または状態は、癌であり得る。
(pCMV15にコードされるタンパク質のポリペプチド形態)
1つの局面において、本発明は、pCMV15にコードされるタンパク質のポリペプチを含む関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌を処置するため、予防するためまたは予後のための組成物を提供する。ここで、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
1つの実施形態において、本発明のpCMV15にコードされるタンパク質由来のポリペプチドは、(a)配列番号5または7に記載の核酸配列またはそのフラグメントによってコードされる、ポリペプチド;(b)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントを有する、ポリペプチド;(c)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する、改変体ポリペプチド(d)配列番号5または7に記載の塩基配列のスプライス改変体もしくは対立遺伝子改変体によってコードされる、ポリペプチド;(e)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体ポリペプチド;または(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリペプチドのアミノ酸配列に対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列からなり、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は限定されていてもよく、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、pCMV15にコードされるタンパク質と類似するかまたは実質的に同一の活性、(例えば、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性)を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記(d)における対立遺伝子変異体は、配列番号6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが好ましい。
別の好ましい実施形態において、上記種相同体は、本明細書中上述のように同定することができ、配列番号6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のpCMV15にコードされるペプチドのアミノ酸配列をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のpCMV15にコードされる遺伝子の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号5または7に示す核酸配列または配列番号6または8に示すアミノ酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性、血管新生抑制活性などが挙げられるがそれらに限定されない。これらは例えば、免疫学的アッセイ、リン酸化定量、細胞増殖アッセイ、プロモーターアッセイ、血管新生アッセイなどによって測定することができる。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する相同性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
本発明のポリペプチドは、通常、少なくとも3の連続するアミノ酸配列を有する。本発明のポリペプチドが有するアミノ酸長は、目的とする用途に適合する限り、どれだけ短くてもよいが、好ましくは、より長い配列が使用され得る。従って、好ましくは、少なくとも4アミノ酸長、より好ましくは少なくとも5アミノ酸長、少なくとも6アミノ酸長、少なくとも7アミノ酸長、少なくとも8アミノ酸長、少なくとも9アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長であってもよい。さらに好ましくは少なくとも15アミノ酸長であり得、なお好ましくは少なくとも20アミノ酸長であり得る。これらのアミノ酸長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明のポリペプチドは、配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性の中の少なくとも1つの活性を有する限り、その上限の長さは、配列番号6または8に示す配列の全長と同一であってもよく、それを超える長さであってもよい。
1つの実施形態において、処置されるべき疾患、障害または状態は、本明細書において他の場所において記載されており、例えば、関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする疾患、障害または状態は、癌であり得る。
別の実施形態において、本発明のpCMV15にコードされるタンパク質由来のペプチドは、可溶性であることが好ましい。
(pCMV15にコードされる遺伝子の核酸形態)
1つの局面において、本発明は、pCMV15にコードされるタンパク質をコードする核酸分子を含む関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌の、処置、予防、または予後のための組成物を提供する。ここで、予防、処置または予後上有効な量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができ、そのような量を決定するためには、例えば、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。
1つの実施形態において、本発明において用いられるpCMV15にコードされるタンパク質をコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、(a)配列番号5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有する、ポリヌクレオチド;(b)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド、(c)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される少なくとも1つの変異を有する改変体ポリペプチドであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;(d)配列番号5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体である、ポリヌクレオチド;(e)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体をコードする、ポリヌクレオチド;(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、からなる群より選択される、ポリヌクレオチド、を含む。
1つの好ましい実施形態において、上記(c)における置換、付加および欠失の数は、限定され、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ましい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好ましくは、pCMV15にコードされるタンパク質と類似するかまたは実質的に同一の活性、(例えば、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性または血管新生抑制活性)を有する)限り、多い数であってもよい。
別の好ましい実施形態において、上記改変体ポリペプチドが有する生物学的活性としては、例えば、配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントに対して特異的な抗体との相互作用、血管内皮細胞増殖抑制活性、c−fosプロモーターからの転写抑制活性、E2Fプロモーターからの転写抑制活性、AP1プロモーターからの転写抑制活性、VEGF活性抑制活性、NFκBプロモーターからの転写抑制活性、血管新生抑制活性などが挙げられるがそれらに限定されない。これらは例えば、免疫学的アッセイ、リン酸化定量、細胞増殖アッセイ、プロモーターアッセイ、血管新生アッセイなどによって測定することができる。
別の好ましい実施形態において、(d)に記載の対立遺伝子変異体は、配列番号5または7に示す核酸配列と少なくとも99%の相同性を有することが有利である。
上記種相同体は、その種の遺伝子配列データベースが存在する場合、そのデータベースに対して、本発明のpCMV15にコードされる遺伝子の核酸配列をクエリ配列として検索することによって同定することができる。あるいは、本発明のpCMV15にコードされる遺伝子の核酸配列の全部または一部をプローブまたはプライマーとして、その種の遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。そのような同定方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載される文献にも記載されている。種相同体は、例えば、配列番号5または7に示す核酸配列と少なくとも約30%の相同性を有することが好ましい。好ましくは、種相同体は、上記基準配列と、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、相同であり得る。
好ましい実施形態において、上記(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少なくとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ましくは少なくとも約99%であり得る。
好ましい実施形態において、本発明のpCMV15にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子またはそのフラグメントおよび改変体は、少なくとも8の連続するヌクレオチド長であり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌクレオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌクレオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、アンチセンス、RNAi、マーカー、プライマー、プローブ、所定の因子と相互作用し得ること)として使用することができる限り、その上限の長さは、配列番号5または7に示す配列の全長であってもよく、それを超える長さであってもよい。あるいは、プライマーとして使用する場合は、通常少なくとも約8のヌクレオチド長であり得、好ましくは約10ヌクレオチド長であり得る。プローブとして使用する場合は、通常少なくとも約15ヌクレオチド長であり得、好ましくは約17ヌクレオチド長であり得る。
1つの実施形態において、pCMV15にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号5または7の核酸配列の全範囲を含む。より好ましくは、pCMV15にコードされるポリペプチドをコードする核酸分子、またはそのフラグメントもしくは改変体は、配列番号5または7の核酸配列の全範囲からなる。
1つの実施形態において、処置されるべき疾患、障害または状態は、本明細書において他の場所において記載されており、例えば、関節リウマチ、慢性炎症、糖尿病網膜症、粥状性動脈硬化、および癌などを含む。好ましくは、本発明の組成物が対象とする疾患、障害または状態は、癌であり得る。
さらなる実施形態において、本発明の治療剤は、他の治療レジメまたは予防レジメ(例えば、放射線治療)と組合わせて投与される。
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:ウイルスエンベロープ由来のタンパク質を含む成分中に外来遺伝子を封入した遺伝子導入ベクターの調製および使用)
(ウイルスの調製)
HVJ、Z株を、先に記載のように(Kaneda、Cell Biology:A Laboratory Handbook,J.E.Celis(Ed.),Academic Press,Orlando,Florida,vol.3,pp.50−57(1994))差示的遠心分離により精製した。精製HVJを平衡化塩溶液(BSS:137mM NaCl、5.4mM KCl、10mM Tris−HCl、pH7.5)中に再懸濁し、そしてウイルス力価を、540nmにおける吸光度を測定することにより決定した。540nmにおける光学的密度は、15,000血球凝集単位(HAU)に対応し、融合活性と相関する。
(遺伝子導入ベクターの調製)
3.56mgホスファチジルコリンおよび0.44mgコレステロールの脂質混合物を、クロロホルム中に溶解し、そしてこの脂質溶液を、ロータリーエバポレーター中で蒸発させた(Uchidaら、J.Cell.Biol.80:10−20(1979))。乾燥脂質混合物を、0.85%NP−40を含む2.0mlの上記素通り画分からのタンパク質溶液(1.6mg)中にボルテックスにより完全に溶解した。次いで、この溶液を0.3Mスクロースおよび1mM KClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.2)に対して透析し、NP−40を除去した。透析は、毎日緩衝液を交換して6日間実施した。この透析された溶液を、0.3Mスクロースおよび1mM KClを含む10mMリン酸緩衝液(pH5.2)で平衡化したアガロースビーズ(Bio−Gel A−50m)(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA、USA)にアプライした。540nmにおける光学的密度が1.5を超える画分を再構成融合粒子として集め、そして以下に記載のように10mg脂質から調製された核酸充填リポソームと融合し、遺伝子導入ベクターを調製した。
(ヒトHEK293株由来のトランスフェクト細胞におけるルシフェラーゼ遺伝子発現)
上記の方法で調製した遺伝子導入ベクターの遺伝子導入活性を確認するために、ヒトHEK293株およびルシフェラーゼ遺伝子を、以下のように用いた。
pCMV−ルシフェラーゼ(7.4kb)を、pGEM−luc(Promega Corp.、Madison、WI、USA)からのルシフェラーゼ遺伝子を、pcDNA3(5.4kb)(Invitrogen、San Diego、CA、USA)中に、HindIIIおよびBamHI部位でクローニングすることにより構築した。約40μgのpCMV−ルシフェラーゼを含む遺伝子導入ベクターを、先に記載のように構築し、そしてこの遺伝子導入ベクター(約1.5×1011粒子/ml、DNA濃度は約40μg/ml)の1/10量(100μl)を、ヒト293細胞株(ヒト胎児腎臓:HEK)由来の2×105細胞とインキュベートした。HVJリポソームを用いて、また同量のルシフェラーゼDNAを2×105HEK293細胞に導入した。導入24時間後、細胞を回収し、そして他に記載のように(Saekiら、Hum.Gene Ther.,8:1965−1972(1997))、ルシフェラーゼ活性アッセイを確認した。
(実施例2:界面活性剤を用いる不活性化HVJエンベロープベクターの調製および使用)
(1:HVJの増殖)
HVJは鶏の受精卵への種ウイルスの接種により増殖されたものが一般に使用され得るが、サル、ヒトなどの培養細胞、培養組織へのウイルスの持続感染系(トリプシンなどの加水分解酵素を培養液中に添加)を利用して増殖させたもの、クローニングされたウイルスゲノムを培養細胞に感染させ持続感染をおこさせて増殖させたもの、全てが利用可能である。
本実施例において、HVJの増殖を以下のようにおこなった。
HVJの種ウイルスを、SPF(Specific pathogen free)の受精卵を使って増殖させ分離・精製したHVJ(Z種)を細胞保存用チューブに分注し、10%DMSOを加えて液体窒素中に保存し、調製した。
受精直後のニワトリ卵を入荷し、インキュベーター(SHOWA−FURANKI P−03型;約300鶏卵収容)にいれ、36.5℃、湿度40%以上の条件で10〜14日飼育した。暗室中で、検卵器(電球の光が口径約1.5cmの窓を通して出るようになっているもの)を用いて、胚の生存及び気室と漿尿膜を確認し、漿尿膜の約5mm上方に鉛筆でウイルス注入箇所の記しをつけた(太い血管を除いた場所を選定する)。ポリペプトン溶液(1%ポリペプトン、0.2%NaClを混合し、1M NaOHでpH7.2に調整してオートクレーブ滅菌し、4℃保存したもの)で種ウイルス(液体窒素からとりだしたもの)を500倍に希釈し、4℃においた。卵をイソジン及びアルコールで消毒し、ウイルス注入箇所に千枚通しで小孔をあけ、希釈した種ウイルス0.1mlを26ゲージの針付き1mlシリンジを用いて、漿尿腔内に入るように注入した。溶かしたパラフィン(融点50〜52℃)をパスツールピペットを用いて孔の上に置きこれをふさいだ。卵をインキュベーターにいれ、36.5℃、湿度40%以上の条件で3日飼育した。次に、接種卵を一晩4℃においた。翌日、卵の気室部分をピンセットで割り、18ゲージの針を付けた10mlシリンジを漿尿膜の中にいれて、漿尿液を吸引し、滅菌ボトルに集め、4℃に保存した。
(2:HVJの精製)
HVJは、遠心分離による精製方法、カラムによる精製方法、または当該分野において公知のその他の精製方法によって、精製され得る。
(2.1:遠心分離による精製方法)
手短には、増殖させたウイルス液を回収し低速遠心で培養液や漿尿液中の組織・細胞片を除去した。その上清を高速遠心(27,500×g、30分間)とショ糖密度勾配(30〜60%w/v)を利用した超遠心(62,800×g、90分間)により精製した。精製の間にウイルスをできるだけ穏和に扱い、4℃で保存することに注意すべきである。
本実施例において、具体的には、以下の方法によってHVJを精製した。
HVJ含有漿尿液(HVJ含有のニワトリ卵の漿尿液を集め4℃にて保存)の約100mlを広ロの駒込ピペットで50mlの遠心チューブ2本に入れ(Saeki,Y.,およびKaneda,Y:Protein modified liposomes(HVJ−liposomes)for the delivery of genes,oligonucleotides and proteins.Cell Biology;A laboratory handbook(第2版)J.E.Celis編(Acadcmic Press Inc.,SanDiego)第4巻、127〜135、1998を参照のこと)、低速遠心機で3000rpm、10分、4℃で遠心し(ブレーキはオフ)、卵の組織片を除去した。
遠心後、上清を35ml遠心チューブ4本(高速遠心用)に分注し、アングルローターで27,000g,30分遠心した(アクセル、ブレーキはオン)。上清を除き、沈殿にBSS(10mM Tris−HCl(pH7.5)、137mM NaCl、5.4mM KCl;オートクレーブし、4℃保存)(BSSのかわりにPBSでも可能)をチューブ当たり約5ml加え、そのまま4℃で一晩静置した。広ロの駒込ピペットでゆるやかにピペッテイングして沈殿をほぐし1本のチューブに集め、同様にアングルローターで27,000g、30分遠心した。上清をのぞき沈殿にBSS約10mlを加え、同様に4℃で一晩静置した。広ロの駒込ピペットでゆるやかにピペッテイングして沈殿をほぐし、低速遠心機で3000rpm,10分、4℃で遠心し(ブレーキはオフ)、除ききれなかった組織片やウイルスの凝集塊をのぞいた。上清を新しい滅菌済みチューブに入れ精製ウイルスとして4℃で保存する。
このウイルス液0.1mlにBSSを0.9ml加え、分光光度計で540nmの吸収を測定し、ウイルス力価を赤血球凝集活性(HAU)に換算した。540nmの吸収値1がほぼ15,000HAUに相当した。HAUは融合活性とほぼ比例すると考えられる。また実際にニワトリ赤血球液(0.5%)を用いて、赤血球凝集活性を測定してもよい(動物細胞利用実用化マニュアル、REALIZE INC.(内田、大石、古沢編集)P259〜268、1984を参照のこと)。
さらにショ糖密度勾配を用いたHVJの精製も必要に応じて行い得る。具体的には、ウイルス懸濁液を60%、30%のショ糖溶液(オートクレーブ滅菌)を重層した遠心チューブにのせ、62,800×gで120分間密度勾配遠心を行う。遠心後、60%ショ糖溶液層上にみられるバンドを回収する。回収したウイルス懸濁液をBSSもしくはPBSを外液として4℃で透析を一晩行い、ショ糖を除去する。すぐに使用しない場合は、ウイルス懸濁液にグリセロール(オートクレーブ滅菌)と0.5M EDTA液(オートクレーブ滅菌)をそれぞれ最終濃度が10%と2〜10mMになるように加えて−80℃で穏やかに凍結し、最終的に液体窒素中で保存する(凍結保存はグリセロールと0.5M EDTA液の代わりに10mM DMSOでも可能)。
(2.2:カラムおよび限外濾過による精製方法)
遠心分離による精製方法に代えて、カラムによるHVJの精製も本発明に適用可能である。
手短には、分子量カットオフが50,000のフィルターによる限外濾過による濃縮(約10倍)とイオン交換クロマトグラフィー(0.3M〜1M NaCl)による溶出を用いて精製した。
具体的には、本実施例において、以下の方法を使用して、HVJをカラムによって精製した。
漿尿液を採集した後、80μm〜10μmのメンブランフィルターにてろ過した。0.006〜0.008% BPL(最終濃度)を漿尿液に加え(4℃、1時間)、HVJを不活性化した。漿尿液を37℃、2時間インキュベートすることによって、BPLを不活性化した。
500KMWCO(A/G Technology、Needham、Massachusetts)を用いたタンジェンシャルフロー限外ろ過法により約10倍濃縮した。緩衝液として、50mM NaCl、1mM MgCl、2%マンニトール、20mM Tris(pH7.5)を用いた。HAUアッセイにより、ほぼ100%のHVJ回収率であり優れた結果がえられた。
QSepharoseFF(アマシャムファルマシアバイオテクKK、Tokyo)によるカラムクロマトグラフィー法(緩衝液:20mM TrisHCl(pH7.5)、0.2〜1M NaCl)でHVJを精製した。40〜50%の回収率であり、純度は99%以上であった。
500KMWCO(A/G Technology)を用いたタンジェンシャルフロー限外ろ過法によりHVJの画分を濃縮した。
(3:HVJの不活性化)
HVJの不活性化が必要な場合、以下に記載するように、紫外線照射またはアルキル化剤処理により行った。
(3.1:紫外線照射法)
HVJ懸濁液1mlを30mm径のシャーレにとり、99または198ミリジュール/cm2を照射した。ガンマー線照射も利用可能である(5〜20グレイ)が完全な不活性化がおこらない。
(3.2:アルキル化剤による処理)
使用直前に、10mM KH2PO中に0.01% β−プロピオラクトンの調製をした。作業中は低温下に保ち素早く作業を行った。
精製直後のHVJの懸濁液に最終0.01%になるようにβ−プロピオラクトンを添加し、氷上で60分間でインキュベートした。その後2時間、37℃でインキュベートした。エッペンドルフチューブにチューブあたり10,000HAU分ずつ分注し、15,000rpm、15分遠心し、沈殿を−20℃で保存する。上記の不活性化法によらず、沈殿を−20℃で保存せず、そのまま界面活性剤処理によりDNAを取り込ませ、ベクターを作成することも可能である。
(4:HVJエンベロープベクターの作成)
保存してあったHVJに外来DNA200〜800μgを含む溶液92μlを加えてピペッティングでよく懸濁した。この溶液は、−20℃で、少なくとも、3ヶ月保存可能である。HVJとの混合前にDNAに硫酸プロタミンを添加すると、発現効率が2倍以上増強した。
この混合液を氷上に1分間置き、オクチルグルコシド(10%)を8μl加えて15秒氷上でチューブを振盪し、45秒氷上に静置した。界面活性剤での処理時間は、1〜5分間が好ましい。オクチルグルコシド以外に、Triton−X100(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシエタノール)などの界面活性剤も使用し得る。Triton−X100、NP−40およびCHAPSの好ましい最終濃度は、それぞれ、0.24〜0.80%、0.04〜0.12%および1.2〜2.0%である。
冷BSSを1ml添加し、すぐに15,000rpmで15分遠心した。生じた沈殿にPBSまたは生理食塩水などを300μl加えて、ボルテックス、ピペッティングで懸濁した。懸濁液は直接遺伝子導入に使用することも、−20℃で保存後に遺伝子導入に使用することも可能である。このHVJエンベロープベクターは、少なくとも2ヶ月間の保存後、同程度の遺伝子導入効率を維持した。
(5:HVJエンベロープベクターによる細胞内への遺伝子導入)
(遺伝子導入方法)
1,000HAU分をエッペンドルフチューブにとり(30μl)、硫酸プロタミン(1mg/ml)5μlを加えた。BHK−21細胞(前日に、ウェルあたり200,000個で、6つのウェルにまいたもの)の培地を交換し、1ウェルあたり0.5mlの培地(10%FCS−DMEM)を添加した。各ウェルに、上記のベクター(1,000HAU相当)と硫酸プロタミンの混合液を加え、プレートを前後左右にふってベクターと細胞を良く混ぜ合わせ、37℃で、5%CO2インキュベーター中に10分間放置した。
培地交換し、37℃で、5%CO2インキュベーター中でオーバーナイト(16hr〜24hr)放置し、遺伝子発現を調べた。ルシフェラーゼ(pcLuci;CMVプロモーターを有するルシフェラーゼ遺伝子)の場合は、Cell Lysis Buffer(Promega)0.5mlで細胞を溶解し、その20μl溶液中の活性をルシフェラーゼアッセイキット(Promega)を用いて測定した。グリーン蛍光タンパク質(pCMV−GFPE;Promega)の場合は、そのまま蛍光顕微鏡で観察し、400倍率で5〜8視野を観察し、蛍光を発する細胞の割合を算出した。
(実施例3:ヒト心臓cDNAライブラリーからの血管内皮増殖抑制活性を有するタンパク質をコードする遺伝子の単離および解析)
本発明を用いることによって、血管内皮増殖抑制活性を有するタンパク質をコードする目的遺伝子を分離することが可能である。その分離方法の実施形態の1つを模式的に図1に示す。
実際に、本明細書の実施例2で調製した遺伝子導入ベクターを使用して、血管内皮増殖抑制因子をコードする遺伝子を単離した。なお、本実施例に例示される遺伝子の単離法には、本明細書の実施例2で調製した遺伝子導入ベクターのみならず、任意の「ウイルスエンベロープベクター」および「リポソームベクター」が使用可能である。
ヒト心臓cDNAライブラリー(GIBCO BRL社;ヒト心臓由来cDNAを、CMVプロモーターを有するプラスミドpSPORTに連結したプラスミド)をE.coli DH12Sに導入し、そのE.coliから、プラスミドを調製した。プラスミド200μgを、10000HAUのHVJ−E遺伝子導入ベクター(本発明の実施例2で調製した遺伝子導入ベクター、3×109particle)に封入した。宿主細胞として、ヒト大動脈内皮細胞HEAC(三光純薬)約5000細胞を、96ウェルマクロタイタープレートの各ウェルに培地とともに添加して、一晩培養した細胞を用いた。宿主細胞を含んだ各ウェルに対して、上記HVJ−Eの100分の1量を添加し、37℃30分間放置した後、培地交換をした。
使用した培地は、血清濃度を1%とした低栄養状態のもので、この状態下で、1週間培養を行う。この条件下では、HEACの増殖は確認されなかった。2週間後、細胞を増殖因子添加の増殖促進培地で培養することによって、細胞増殖アッセイを行った。試薬として、Cell Titer96(Promega社)を用い、ミトコンドリアの酸化還元状態を試薬の色調の変化として捉えて、細胞増殖の指標とした(MTTアッセイ)。
最も色の濃いウェルは、最も活発に細胞増殖が行われた細胞が存在するウェルである。その反対に、最も色の薄いウェルは、最も細胞増殖能が低い細胞が存在する。そこで、マイクロタイタープレート全体をプレートリーダーで読み取り、その細胞増殖を、コンピュータによりグラフ化した。このグラフから、低い増殖活性、すなわち、ヒト血管内皮細胞増殖抑制活性を指標に遺伝子分離を行った。
遺伝子分離は、ウェル内の細胞から、Qiagen社のDNeasy Tissue Kitを用いて、核酸を調製することによって行った。調製した核酸には、プラスミドDNAが含まれるので、これをコンピテントなE.coli(DH5α;宝酒造)に熱ショック法を用いて導入した。
このE.coliをアンピシリン含有プレート培地に播種し、コロニーを形成させた。各コロニーからプラスミドDNA(pDNA)を抽出し、制限酵素処理によって、プラスミド内の遺伝子フラグメントの存在を確認した。
次に、Qiagen社のEndo Free Plasmid Maxi Kitを用いて、プラスミドDNAを精製し、その精製したプラスミドをHVJ−Eに封入して、再度HAEC細胞に導入し、同様の細胞増殖実験を行った。この細胞増殖実験において、有意に低い細胞増殖を示したプラスミドが、血管内皮増殖抑制因子をコードする核酸を含むことが予想される候補プラスミドである。上記の結果、2次スクリーニングで2つの遺伝子pCMV9,pCMV15を分離した。
次にVEGFによって細胞増殖が促進される環境下において、これら遺伝子が細胞増殖に与える影響を調べるために、MTSアッセイ及びc−fosプロモーターアッセイをHAECを用いて行った。
(MTSアッセイ)
MTSアッセイを以下のとおりに行った。
(1.HVJエンベロープベクターへのプラスミドの封入)
1)HVJのロットより分注し、BSSで希釈して1×104HAU/mlとした。
2)3.5×104HAU/3.5ml/10cmディッシュとして、99mJ/cm2のUV処理をした。(電源ON、ENERGY、990、START/ディッシュのフタをあけて照射した)
3)1ml(1×104HAU)づつ1.5mlチューブに分注し、遠心分離(15000rpm 15分 4℃)後、上清除去した。
4)ペレットを1mg/ml硫酸プロタミン/TE溶液(10mg/ml硫酸プロタミン溶液をTEで10倍希釈したもの)15μlで溶解した。
5)200μg相当のプラスミドDNA溶液を加えた。
6)すぐに、4)+5)の総量の1/10量の3% TritonX−10/TE溶液を加えた。
7)軽く混合し、遠心分離(15000rpm 15分 4℃)した。
8)BSS 1mlを加え、軽く混合し、遠心分離(15000rpm 15分 4℃)した。
9)上清除去後、BSS 300μlに再懸濁した。
(2.HVJエンベロープベクターを用いる細胞への遺伝子導入)
1)前日にHAEC細胞を5000/ウェルまいた96ウェルプレートを使用した。
2)以下の濃度で調整し軽く混合しておいた。
(注意)培地は、EBM(Cloneteck)+5%FBS+抗生剤・抗真菌剤+増殖因子(EGFおよび/またはVEGF)である。
3)順次培地を交換した。(50μl/ウェル)
4)プレートを遠心(3500rpm 1時間35℃)した。
5)培地を吸引・除去し、新しい培地に交換した。(100μl/ウェル)
6)インキュベートした。
・1ウェルあたり、CellTiter96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を20μl添加し、100μlの内皮細胞用培地と混合し、古い培地を吸引して除き、CellTiter96混合溶液を1ウェルあたり120μl入れてCO
2インキュベーターで1〜5時間インキュベートした。
・プレートリーダーにて490nmの吸光度を測定した。
サンプル群(各8ウェルずつ)は、以下のとおりである。
・増殖促進のポジティブコントロール(PC)=HGF(肝細胞増殖因子)遺伝子;
・増殖抑制のポジティブコントロール(PC)=アンジオスタチン遺伝子;および
・ネガティブコントロール(NC)=CMVプロモーターを有するpVAX1。
MTSアッセイの結果を図2の左欄に示す。Y軸は、CMVプロモーターを有するpVAX1を「1」とした場合の相対値である。単離されたクローンpCMV9およびpCMV15は、内皮細胞増殖抑制活性を示した。またpCMV15は、アンジオスタチン遺伝子と同程度の内皮細胞増殖抑制能を示した。また、pCMV9は、アンジオスタチン遺伝子よりも強力に内皮細胞増殖を抑制した。
(c−fosプロモーターアッセイ)
次に、単離されたクローンpCMV9およびpCMV15の内皮細胞増殖抑制活性が、c−fosプロモーターからの増殖シグナル経路を抑制することを示すために、c−fosプロモーターアッセイを行った。具体的には、c−fosプロモーター下にルシフェラーゼを連結した遺伝子c−fos−Luciと候補遺伝子を1:1の重量比でウシ血管内皮細胞にリポフェクションによって導入し24〜48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。プラスミドc−fos−Luciは、c−fosの5’調節エンハンサー領域(−357〜−276)を2コピー、そして単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター(−200〜70)、およびルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドである(Arterioscler Thromb Vasc Biol.2002:22:238−242)。その結果を図2の右に示す。図2のY軸では、pVAX1を用いた場合のルシフェラーゼ活性を「1」として、その相対値をグラフに示した。クローンpCMV9およびpCMV15の両者は、c−fosプロモーターからの転写を抑制し、その抑制能は、アンジオスタチン遺伝子よりも強力であった(図2右)。
(pCMV9およびpCMV15に含まれるインサートの特徴付け)
次に各クローンのインサートを確認した。その結果、図3左に示されるように、pCMV9およびpCMV15の両クローンのインサートは、約2kbであった。配列決定をしたところ、それぞれ、19.96kDおよび51.39kDの推定分子量を有するタンパク質をコードする読み枠が見出された。その核酸配列、およびアミノ酸配列を図4および図5に示す。
次に、遺伝子産物の確認のために、pCMV・SPORT1発現ベクターのEcoRI/XhoI部位に、pCMV9およびpCMV15のインサートをそれぞれ連結し、インビトロ翻訳を行った。その結果、図3右に示されるように、pCMV9およびpCMV15はそれぞれ約20kD、および50kDのタンパク質が同定された。pCMV9がコードするタンパク質の構造を図6Aに、pCMV15がコードするタンパク質の構造を図6Bに示す。遺伝子のシーケンスを解析したところ、2つとも全く新規の遺伝子であるがゲノムプロジェクトではその存在が登録されているものであった(図6AおよびB)。pCMV9はEST−BD095420で登録されておりヒト第18染色体の短腕に位置する(図6A)。本発明者らはさらにその全長遺伝子を単離した。本発明者らの単離したpCMV9のヌクレオチド配列は、配列番号1に示したとおりである。これに対して、pCMV9に対応するEST−BD095420の配列は、配列番号1の544番目のヌクレオチド残基T(チミン)がC(シトシン)に変わっていた。EST−BD095420のヌクレオチド配列を配列番号3、アミノ酸配列を配列番号4として配列表に示す。pCMV15はEST−HSM805282で登録されておりヒト第15染色体上に位置する(図6B)。今回、本発明者らは、第3エキソン以下の遺伝子を単離した。第3エキソンからでも読み枠はメチオニンから開始しており、その近傍の配列はコザック配列を有していた。従って、第3エキソンから転写が開始している可能性もある。本発明者らの単離したpCMV15のヌクレオチド配列は、配列番号5に示したとおりである。これに対して、pCMV15に対応するEST−HSM805282の配列は、配列番号5の705番目のヌクレオチド残基A(アデニン)がC(シトシン)に、788番目のヌクレオチド残基A(アデニン)がG(グアニン)に、934番目のヌクレオチド残基A(アデニン)がG(グアニン)に、991番目のヌクレオチド残基G(グアニン)がA(アデニン)に変わっていた。EST−HSM805282のヌクレオチド配列を配列番号7、アミノ酸配列を配列番号8として配列表に示す。
図6は、本発明によって単離されたクローンのゲノム上での位置を示した模式図である。横線は、染色体を示し、線上の網掛け四角は、エキソンの位置を示す。pCMV9は18番染色体のp腕の位置し(図6A)、pCMV15は5番染色体に位置した(図6B)。配列相同性を検索したところ、pCMV9は酵母の分泌蛋白の細胞内輸送系に関与するSNF7と相同性を示した。そのため、pCMV9は、細胞内輸送に関与する遺伝子ファミリーに属するタンパク質である可能性が示された。pCMV15には、いくつかのドメインが同定された。例えば、残基1205〜1327は、SPRYドメイン(SPIaおよびリアノジンレセプター)との相同性を示した。また、残基967〜1058、および残基1067〜1151は、FN3ドメイン(フィブロネクチン3型ドメイン)との相同性を示した。残基325〜445は、SPRYドメイン(SPIaおよびリアノジンレセプター)との相同性を示した。また、残基102〜159、および残基187〜278は、FN3ドメイン(フィブロネクチン3型ドメイン)との相同性を示した(図6B)。なお、本発明者らが得たクローンpCMV15のゲノム上でのサイズは、55kDaであったが、対応する公知のEST配列では、64kDaのサイズであった。本発明のクローンのエキソンの位置を濃い網掛け四角で示し、対応する公知のEST配列由来のエキソンの位置を薄い網掛け四角で示した。
次に、増殖抑制の機構を調べる手がかりとして、増殖に関わる転写因子であるE2FおよびAP−1のプロモーターを用いたルシフェラーゼアッセイをVEGF存在下で行った。具体的には、E2Fプロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポーター遺伝子を含むベクター、またはAP−1プロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を連結したレポーター遺伝子を含むベクター(AP1プロモーター−ルシフェラーゼ、E2Fプロモーター−ルシフェラーゼ、またはNFκBプロモーター−ルシフェラーゼ)1μgを、図7にそれぞれ示した発現ベクター(CMV9、CMV15、HA−CMV9、HA−CMV15、VEGF、またはpcDNA3.1(コントロール))0.3μgとともに、リポフェクションによってウシ大動脈由来内皮細胞に導入して、ルシフェラーゼ活性(RLUで示される)を測定した。図7の「コントロール」は、発現ベクターを用いることなく、レポーター遺伝子を含むベクターのみをトランスフェクションした結果を示す。「VEGF」、「pCMV15」および「pCMV9」では、各クローンの読み枠を、pCMV・SPORT1発現ベクターに連結したプラスミドを用いた。「HA−CMV9」および「HA−CMV15」は、pCMV9およびpCMV15遺伝子の5’側(N端)にインフルエンザのHAタグの塩基配列をつけた遺伝子である。
図7に示されるように、pCMV9は両方のプロモーターに抑制的にはたらいた。pCMV15はE2Fプロモーターには抑制的に働くが、AP−1プロモーターを用いた場合は、VEGFの効果を抑制することができなかった。また、HA−CMV9およびHA−CMV15を用いた場合、抑制効果は減弱し、AP1プロモーターに対する抑制効果は消失した。しかし、E2Fプロモーターに対するVEGF活性抑制効果は、依然として検出可能であった。
(実施例4:pCMV9およびpCMV15の血管新生抑制活性)
クラボウの血管新生キット(Angiogenesis Kit,KZ−1000,倉敷紡績株式会社)を用いて、VEGFによる管腔形成活性が、組換えpCMV9および組換えpCMV15によって抑制されるか否かを調べる。VEGFとして、組換えVEGF(血管内皮細胞増殖因子をコードする遺伝子を含むプラスミド)を用い、コントロールとして、対照として、ブランクを用いる。
血管新生専用培地(倉敷紡績(株)KZ−1400)中にVEGF−E(NZ−7)10ng/mlを添加した培地へ、さらに抗ヒトVEGF−A中和抗体を0、250、500、1000ng/mlの各濃度となるように添加して培養する。
抗ヒトVEGF−A中和抗体としては、Anti−VEGF、Human,Mouse−Mono(26503.111)(R&D社製 カタログNo.MAB293)を用いることができる。培養は37℃、5%CO2インキュベーターにて行う。培地は、毎日同じ添加物を含有するものと交換する。培養開始4日目、7日目、あるいは11日目に培地を除き、管腔染色キット(CD31抗体染色用:倉敷紡績(株)KZ−1225)を用いて以下の手順に従い染色する。
CD31(PECAM−1)染色1次抗体(マウス抗ヒトCD31抗体)をブロッキング液(1%−BSAを含むダルベッコ リン酸緩衝液(PBS(−))で4,000倍希釈する。各ウェルにこの1次抗体溶液0.5mlを添加し、60分間37℃でインキュベートする。インキュベート終了後、1mlのブロッキング液で各ウエルを計3回洗浄する。
次いでブロッキング液で500倍希釈した2次抗体溶液(ヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ複合体)0.5mlを各ウエルに添加し、60分間37℃でインキュベートした後、1mlの蒸留水で3回洗浄する。その間に、BCIP/NBTの錠剤2錠を蒸留水20mlに溶解し、ポアサイズ0.2μmのフィルターで濾過して基質溶液を準備する。調製したBCIP/NBT基質溶液0.5mlを各ウエルに添加し、管腔が深紫色になるまで(通常5〜10分間)37℃でインキュベートする。インキュベート終了後、蒸留水1mlで、各ウエルを3回洗浄した後洗浄液を吸引除去し、自然乾燥するため静置する。乾燥後、顕微鏡下で各ウエルを観察する。
各ウエルを40倍の顕微鏡で観察し、各ウエルの写真を撮影する。HAECに組換えVEGF導入をして、管腔形成が起こること、および組換えVEGFともにpCMV9および/またはpCMV15を用いる場合には、組換えVEGFによる管腔形成が抑制されることを確認する。
さらに、結果を数値化するために、得られた各画像を、以下の方法に従い血管新生定量ソフトウェア(KSW−5000U,倉敷紡績株式会社)を用いることができる。
(実施例5:pCMV15の上流域の単離)
実施例4に示されるように、pCMV15は、血管新生抑制活性を有するペプチドをコードすることが実証された。また、pCMV15は終結コドンを含むため、pCMV15は血管新生抑制活性を有するタンパク質のカルボキシ末端に対応する核酸配列を含むが、そのタンパク質のアミノ末端に対応する核酸配列を含まない。そこで、pCMV15の上流域の単離および解析を行った。
定法に従って、pCMV15を標識核酸プローブとして用い、ヒト心臓cDNAライブラリーから、pCMV15の上流域を含むクローンを単離した。その結果、3492bpおよび4413bpを含むクローンが単離できた。このクローンの各々をpCMV15−2(配列番号9)およびpCMV15−3(配列番号11)と命名した。pCMV15−2に含まれる核酸は、1163アミノ酸残基長のポリペプチド(配列番号10)をコードし、pCMV15−3に含まれる核酸は、1470アミノ酸残基長のポリペプチド(配列番号12)をコードする。
(実施例6:pCMV15−2およびpCMV15−3の解析)
(1.内皮細胞増殖抑制活性の解析)
以下の方法によって、pCMV15、pCMV15−2、およびpCMV15−3の内皮細胞増殖抑制活性を解析した。
pCMV15、pCMV15−2、およびpCMV15−3の配列を、発現ベクターであるpcDNA3.1に連結して、pcDNA−CMV15、pcDNA−CMV15−2、およびpcDNA−CMV15−3を作製した。これら3つの発現プラスミドとpCMV15由来のインサートを含まないプラスミドであるpcDNA3.1について、ウシ大動脈由来内皮細胞(BAEC)を用いて、実施例3に記載されるMTSアッセイを行った。
MTSアッセイの結果を図8に示す。Y軸は、吸光度(OD490)の値を表している。pCMV15は、明確な内皮細胞増殖抑制活性を有した。しかし、pCMV15のさらに上流を含むpCMV15−2およびpCMV15−3では、内皮細胞増殖抑制活性が見られなかった。
(2.c−fosプロモーターアッセイ)
単離されたクローンの内皮細胞増殖抑制活性が、c−fosプロモーターからの増殖シグナル経路を抑制することを示すために、c−fosプロモーターアッセイを行った。具体的には、c−fosプロモーター下にルシフェラーゼ遺伝子を連結したc−fos−Luciと候補遺伝子の発現ベクターを1:1の重量比でウシ血管内皮細胞にリポフェクションによって導入し24〜48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。プラスミドc−fos−Luciは、c−fosの5’調節エンハンサー領域(−357〜−276)を2コピー、そして単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子のプロモーター(−200〜70)、およびルシフェラーゼ遺伝子を含むプラスミドである(Arterioscler Thromb Vasc Biol.2002:22:238−242)。その結果を図9に示す。図9のY軸は、ルシフェラーゼ活性を示す。クローンpCMV15は、c−fosプロモーターからの転写を強力に抑制した。これに対して、pCMV15の上流配列を含むpCMV15−2およびpCMV15−3においては、c−fosプロモーターの抑制活性が見られなかった。
(3.NFκBエレメントを介する転写活性化の抑制活性)
単離されたクローンのc−fosプロモーターからの増殖シグナル経路の抑制が、c−fosプロモーター中に含まれるκBエレメントを介するものであることを実証するために、κBエレメントを介する転写活性化の抑制活性をアッセイした。アッセイには、BD Biosciences(フランクリンレーク、NJ)社のpNFκB−Lucを用いた。pNFκB−Lucは、NFκBシグナル伝達経路の活性化をモニタリングするためのベクターであり、ホタル(Photinus pyralis)のルシフェラーゼ遺伝子を含む。このベクターはさらに、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター由来のTAT様プロモーター(PTAL)、およびPTALに連結した4つのタンデムに連続するNFκBコンセンサス配列を含む。pNFκB−Lucと候補遺伝子の発現ベクターを1:1の重量比でウシ血管内皮細胞(BAEC)にリポフェクションによって導入し24〜48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。その結果を、図10に示す。図10のY軸は、ルシフェラーゼ活性を示す。
クローンpCMV15は、κBエレメントからの転写を強力に抑制した。これに対して、pCMV15の上流配列を含むpCMV15−2およびpCMV15−3においては、抑制活性は、見られなかった。この結果から、pCMV15によるc−fosプロモーター活性の抑制は、κBエレメントを介する転写活性化を抑制することによって生じると考えられる。
(4.AP−1エンハンサーを介する転写活性化の抑制活性)
単離されたクローンのc−fosプロモーターからの増殖シグナル経路の抑制が、c−fosプロモーター中に含まれるAP−1エレメントを介するものであることを実証するために、AP−1エレメントを介する転写活性化の抑制活性をアッセイした。アッセイには、BD Biosciences社(フランクリンレーク、NJ)のpAP1−Lucを用いた。pAP1−Lucは、AP−1、およびストレス活性化プロテインキナーゼ/Jun N末端キナーゼ(SAPK/JNK)シグナル伝達経路の誘導をモニタリングするためのベクターであり、ホタル(Photinus pyralis)のルシフェラーゼ遺伝子を含む。このベクターはさらに、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)プロモーター由来のTAT様プロモーター(PTAL)、およびPTALに連結した4つのタンデムに連続するAP1エンハンサー配列を含む。pAP1−Lucと候補遺伝子の発現ベクターを1:1の重量比でウシ血管内皮細胞(BAEC)にリポフェクションによって導入し24〜48時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。その結果を、図11に示す。図11のY軸は、ルシフェラーゼ活性を示す。
クローンpCMV15は、AP1エンハンサーからの転写を強力に抑制した。これに対して、pCMV15の上流配列を含むpCMV15−2においては、抑制活性は、pCMV15よりも低かった。pCMV15−3には抑制活性が見られなかった。
この結果から、pCMV15およびpCMV15−2によるc−fosプロモーター活性の抑制は、κBエレメントのみならずAP1エンハンサーを介する転写活性化を抑制することによっても生じると考えられる。
(実施例7:単離したポリペプチド、ポリヌクレオチドを用いる疾患の処置)
血管新生抑制活性を有するタンパク質であるアンジオスタチンを全身投与することによって、Lewis肺癌腫の転移を抑制することが報告されている(Cell,1994年10月 21;79(2):315−28)。従って、アンジオスタチンの場合と同様に、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドを投与することによって、癌の転移を抑制することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。