JP2001512325A - 改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質 - Google Patents

改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質

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Abstract

(57)【要約】 対応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性に少なくとも等しい、ほとんどの場合はより高い、生物学的活性を有する改変型広域レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を開示する。典型的な改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質は改変されたN末端領域、特に1以上の欠失および/または突然変異を含むN末端領域を有する。改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を、特に細胞増殖の抑制が望まれる状況において、生産しかつ使用する方法も開示する。したがって、本開示は、異常な細胞増殖を特徴とする癌により例示されるがこれに限らない疾患の治療方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質 発明の背景 本発明は、1997年2月20日に出願した、同時係属中の米国仮特許出願第60/038 ,118号(この出願は、参照により放棄されることなく本明細書に含まれるもので ある)の優先権を主張するものである。政府は、国立衛生研究所からの助成金番 号RO1-CA 67274およびRO1-EY 06195、ならびにテキサス高等教育調整委員会から の助成金番号ATP004949018に従って本発明において権利を有する。 1.発明の分野 本発明は、一般的に、分子および細胞生物学の分野に関する。より詳しくは、 レチノブラストーマ腫瘍サプレッサーの改変に関する。本発明は、さらに、腫瘍 サプレッサーまたは正常細胞増殖サプレッサーの供給が指摘されている状況にお ける本発明の改変型レチノブラストーマ腫瘍サプレッサーの使用に関する。 2.関連技術の説明 癌および腫瘍は、合衆国の2番目に一般的な死亡原因であり、年間約450,000 人がこれにより死亡している。アメリカ人の3人に1人が癌にかかり、5人に1 人が癌のために死亡している(1987年のScientific American Medicine,パート 12,I,1節)。癌の恐らく環境的且つ遺伝的要因のいくつかを同定することにお いては実質的な進歩がなされているが、癌死亡率についての統計は、癌および関 連の疾患および障害に対する治療法の実質的な改善が必要であることを指摘する ものである。 いくつかの遺伝子が癌の病因に関係している。これらの遺伝子は、癌の遺伝的 形態に関連して同定されており、十分に研究された多数の腫瘍細胞において同定 されている。癌遺伝子の研究は、腫瘍発生のプロセスについての何らかの理解を 得るのに役立った。癌遺伝子について学習しなければならないことがかなり残っ ているが、現在公知の癌遺伝子は腫瘍発生を理解するのに有用なモデルとして役 立つ。癌遺伝子は、活性化された場合、腫瘍発生を促進する「癌遺伝子」に、損 傷した場合、腫瘍発生を抑制することができない「腫瘍抑制遺伝子」に広く分類 される。これらの分類は、腫瘍発生を概念化するのに有用な方法を提供するが、 特定の遺伝子がその遺伝子の特定の対立遺伝子型、その調節エレメント、遺伝的 背景およびそれが作用する組織環境に依存して異なる役割を果たし得ることも可 能である。 癌遺伝子は、それらの野生型対立遺伝子から一定の条件下で腫瘍発生を誘導す ることができる状態に突然変異される体細胞遺伝子である。現在、公知の癌遺伝 子、推定癌遺伝子およびこれらの癌遺伝子の種々の対立遺伝子についてかなりの 文献がある。例えば、癌遺伝子rasおよびmycは、一般に腫瘍形成プロセスを理解 するためのモデルとみなされている。ras癌遺伝子は、細胞質タンパク質をコー ドすると考えられ、myc癌遺伝子は、核タンパク質をコードすると考えられる。r as癌遺伝子もmyc癌遺伝子も単独では正常細胞の腫瘍細胞への完全形質転換を誘 導することはできないが、完全腫瘍発生は、通常、rasおよびmyc癌遺伝子の両方 が同一細胞内に存在し、共に発現する場合に起きる(Weinberg,1989)。そのよ うな協同作用は、いくつかのその他の研究された癌遺伝子間で観察されている。 癌遺伝子腫瘍発生についての協同モデルは、正常細胞によって取り囲まれてい るras遺伝子を発現している細胞は完全形質転換されないという所見によって制 限されなければならない。しかしながら、周囲の細胞の大部分もrasを発現して いる場合、ras癌遺伝子単独で十分ras発現細胞に腫瘍発生を誘導することができ る。この所見は、癌遺伝子の宿主をつとめる細胞の組織環境における変化が第2 のヒット(hit)とみなされ得るので、腫瘍発生についての多数のヒット論を確認 するものである。代替の同様に妥当な仮説は、rasまたはmycのような癌遺伝子の 活性化と協同する事象は一つのまたは複数の負の調節因子、すなわち、腫瘍抑制 タンパク質の不活性化を含み得るということである(Weinberg,1989;Goodrich ら,1992a)。 腫瘍抑制遺伝子は、それらの野生型対立遺伝子においては、異常細胞増殖を抑 制するタンパク質を発現する遺伝子である。腫瘍抑制タンパク質をコードする遺 伝子が突然変異または欠失される場合、得られる突然変異タンパク質または腫瘍 抑制タンパク質の完全欠如は、細胞増殖を正しく調節できない可能性がある。こ れによって、特に、細胞調節機構がすでに損なわれている場合、異常細胞増殖が 生じ得る。細胞増殖の制御の欠如は、広範な種類のヒト癌の発生につながってい る(Weinberg,1991)。いくつかの十分に研究されたヒト腫瘍および腫瘍細胞系 は、失われた(missing)または非機能性腫瘍抑制遺伝子を有することが示されて いる。 腫瘍抑制遺伝子および候補腫瘍抑制遺伝子としては、例えば、レチノブラスト ーマ(RB)遺伝子(Friendら,1986;Fungら,1987;Leeら,1987a)、野生型p53 遺伝子(Finlayら,1989;Bakerら,1990)、欠失結脳癌(deleted in colon carc inoma)(DCC)遺伝子(Fearonら,1990a;1990b)、神経繊維腫症1型(NF −1)遺伝子(Wallaceら,1990;Viskochilら,1990;Cawthonら,1990)、ウィ ルムス腫瘍(WT−1)遺伝子(Callら,1990;Gesslerら,1990;Pritchard-Jon esら,1990)、フォンヒッペル・リンドウ(VHL)病腫瘍抑制遺伝子(Duanら ,1995)、乳癌についてのマスピン(Maspin)遺伝子(Zouら,1994)、ブラッシ ュ−1(Brush-1)遺伝子(Schottら,1994)およびBRCA1遺伝子遺伝子(Mikiら, 1994;Futrealら,1994)、ならびに同義腫瘍サプレッサー(multiple tumor supp ressor)(MTS)またはp16遺伝子(Serranoら,1993;Kambら,1994)が挙げら れるが、これに限定されるものではない。推定腫瘍抑制遺伝子のリストは大きく 、拡大しており、腫瘍抑制遺伝子の総数は50を優に超していると予想される(Kn udson,1993)。 同定された最初の腫瘍抑制遺伝子は、レチノブラストーマ(RB)遺伝子であリ 、これは遺伝性レチノブラストーマを引き起こす(Knudson,1971;Murphreeおよ びBenedict,1984;Knudson,1985)。レチノブラストーマ(RB)遺伝子は、1980 年代中ごろにクローニングされており、最もよく研究された腫瘍抑制遺伝子の一 つである。約4.7kbというRB遺伝子相補的DNA(cDNA)の大きさにより、 遺伝子の迅速な操作が可能になり、いくつかの細胞系へのRB遺伝子の挿入に至っ た。RB遺伝子は、レチノブラストーマ、軟組織および骨の肉腫の大部分、ならび に乳癌、肺癌、前立腺癌および膀胱癌の約20〜40%において欠けているか、不完 全であることがわかった(Leeら,WO 90/05180;Booksteinら,1991;Benedictら ,1990)。 クローニングされたRB遺伝子が実際に腫瘍抑制遺伝子であるという最も直接的 な証拠は、RB遺伝子のクローニングされた無傷のコピーの導入によるRBマイナス 腫瘍細胞における腫瘍抑制機能の回復の確認である。いくつかの報告により、異 なる型のヒト癌由来のRB欠損腫瘍細胞において正常RB遺伝子を置換すると、ヌー ドマウスにおけるそれらの腫瘍発生活性を抑制することができるということが示 されている(Huangら,1988;GoodrichおよびLee,1993;Zhouら,1994b)。研究 された腫瘍細胞系は、レチノブラストーマ、骨肉腫、膀胱、前立腺、乳房および 肺の癌腫などの広範な異種の型のヒト癌から誘導された。 機能的な野生型全長レチノブラストーマ遺伝子(RB110)のRBマイナス腫瘍細胞 への導入は細胞を「正常化」することが観察されたが、すでに正常RB110遺伝子 発現(「RB+」)を有する腫瘍細胞がRB110遺伝子治療に応答することは予測され なかった。というのは、さらなるRB発現を加えることにより非RB遺伝子欠損を修 正することはできないと思われたからである。このことは、実際、RB+骨肉腫細 胞系U-2 OSの場合に関して示されており、余分なp110RBコード遺伝子の導入によ り新生物性表現型は変化しなかった(Huangら,1988)。したがって、任意の型 の遺伝子欠損を有する異常増殖性細胞を治療するための広域腫瘍抑制遺伝子が必 要性とされている。 RB110 cDNAオープンリーディングフレーム配列(McGeeら,1989)は、エ キソン3のヌクレオチド355〜357に第2のフレーム内AUGコドンを含む。この第 2のAUGコドンから開始されたタンパク質は、全長RBタンパク質のN末端の112個 のアミノ酸残基が欠けており、pRB94と呼ばれる(Xuら,1994b)。米国特許第5, 496,731号(参照により本明細書に含まれる)において、本発明者らは、外来pRB94 を発現するRB欠損腫瘍細胞は、[3H]−チミジンのDNAへの組み込みがで きないということにより証明したように、細胞周期を進行しないということを示 した。それとは対照的に、DNA複製を行っている腫瘍細胞の割合は、RB-の細 胞よりも外来pRB110(野生型pRBタンパク質)を産生する細胞のほうがほんのわ ずかに低かった。pRB94発現は、試験された二つのRB+(正常RB対立遺伝子を有す る)腫瘍細胞系、すなわち繊維肉腫細胞系HT1080および子宮頚癌細胞系HeLaのコ ロニー形成も有意に低下させるということがよりいっそう顕著であったが(Xuら ,1994b)、追加のpRB110コード遺伝子を、プラスミドベクターを用いるトラン スフェクション(Fungら,1993)または微小核体融合(Andersonら,1994)に よって導入した場合、そのような効果は観察されなかった。 しかしながら、当技術分野においては、病気、特に癌の治療におけるその使用 を促進するのに必要な特性の全てを有する腫瘍抑制タンパク質が不足している。 発明の概要 本発明の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質は、当技術分野で記載 されたものの欠点を克服するものであり、驚くべき有益な効果を有する広域腫瘍 抑制タンパク質を提供するものである。 本発明は、細胞増殖の抑制において、対応する野生形レチノブラストーマ腫瘍 抑制タンパク質と少なくとも同じくらい有効であり、ほとんどの場合それよりも 有効である広域改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を提供する。特定 の実施態様においては、本発明は、改変されたN末端領域を含むレチノブラスト ーマ腫瘍抑制タンパク質を提供する。本発明は、さらに、改変型レチノブラスト ーマ腫瘍抑制タンパク質を、特に細胞増殖抑制が望まれる状況において、生産し 、かつ使用する方法を提供する。したがって、本発明は、異常な細胞増殖を特徴 とする癌により例示されるが、これに限らない疾患の治療方法を提供する。 広域腫瘍抑制遺伝子は、異常に増殖している宿主細胞、例えば腫瘍細胞に挿入 し、発現させた場合に、その細胞の異常増殖を異常増殖の原因に関係なく抑制す るタンパク質をコードする遺伝子配列である。 したがって、本発明は、pRB94またはpRB56以外の改変型レチノブラストーマ腫 瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含む単離されたDNAセグメ ントであって、前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質がN末端の改 変を含むものである、上記DNAセグメントを提供する。「pRB94」および「pRB56 」という用語は、それぞれ、分子量94kDaおよび56kDaのレチノブラストーマタ ンパク質を意味するものである。当技術分野で理解されているように、pRB94お よびpRB56レチノブラストーマタンパク質は、それぞれ、N末端から112個および 379個の連続アミノ酸が欠失されている全長野生型レチノブラストーマタンパク 質の断片である。 「N末端」または「N末端領域」という用語は、本明細書で用いられる場合、 アミノ酸配列の最初の約40%と同程度の配列に対応するタンパク質の領域を意味 するものと解釈される。したがって、これらの用語は、タンパク質のアミノ酸配 列の、最初の約5%、最初の約10%、最初の約15%、最初の約20%、最初の約25 %、最初の約30%または最初の約35%までを含むものと解釈される。しかしなが ら、これらの値は近似値であり、よって2%、3%、6%、7%、11%、13%、 17%、18%、22%、26%、33%、37%、38%、41%、42%などの中間値を含むも のと解釈される。 「改変型」という用語は、本明細書で用いられる場合、野生型タンパク質配列 の欠失および/または突然変異を意味する。一定の実施態様においては、1個の または複数の異種アミノ酸の野生型タンパク質配列への挿入も意味するものであ り得る。さらに別の局面においては、この用語は、野生型アミノ酸配列の翻訳後 変化を意味するものであり得る。 本発明のさらなる実施態様においては、遺伝子は、少なくとも1個のアミノ酸 が欠失されている第1配列の領域を含むN末端領域を含む改変型レチノブラスト ーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする。この欠失により、対応する野生型レチノ ブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性と等しいか、または一定の実施 態様においてはそれもよりも大きい生物学的活性を有する改変型レチノブラスト ーマ腫瘍抑制タンパク質が産生され得る。 本発明の特定の実施態様においては、遺伝子は、前記第1配列の領域から少な くとも2個のアミノ酸が欠失されている改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タン パク質をコードする。本発明のその他の実施態様においては、前記第1配列の領 域から、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくと も約25個のアミノ酸、少なくとも約50個のアミノ酸、少なくとも約75個のアミノ 酸、または少なくとも約100個のアミノ酸が欠失されている。中間の欠失サイズ には、限定するものではないが、3、4、6、7,8、9、11、12、13、14、15 、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34 、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、51、52、53 、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71 、72、73、74、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90 、91、92、93、94、95、96、97、98または99個のアミノ酸などが含まれるものと 解釈される。 本発明のその他の局面においては、遺伝子は、前記第1配列の領域から少な くとも約150個のアミノ酸、少なくとも約200個のアミノ酸、少なくとも約250個 のアミノ酸、少なくとも約300個のアミノ酸または少なくとも約370個のアミノ酸 が欠失されている改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする。 しかしながら、101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,11 5,116,117,118,119,120,121,122,123,124,125,126,127,128,129,130,131,132,13 3,134,135,136,137,138,139,140,141,142,143,144,145,146,147,148,149,151,15 2,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,164,165,166,167,168,169,17 0,171,172,173,174,175,176,177,178,179,180,181,182,183,184,185,186,187,18 8,189,190,191,191,193,194,195,196,197,198,199,200,201,202,203,204,205,20 6,207,208,209,210,211,212,213,214,215,216,217,218,219,220,221,222,223,22 4,225,226,227,228,229,230,231,232,233,234,235,236,237,238,239,240,241,24 2,243,244,245,246,247,248,249,251,252、253,254,255,256,257,258,259,260,2 61,262,263,264,265,266,267,268,269,270,271,272,273,274,275,276,277,278,2 79,280,281,282,283,284,285,286,287,288,289,290,291,292,293,294,295,296,2 97,298,299,301,302,303,304,305,306,307,308,309,310,311,312,313,314,315,3 16,317,318,319,320,321,322,323,324,325,326,327,328,329,330,331,332,333,3 34,335,336,337,338,339,340,341,342,343,344,345,346,347,348,349,350,351,3 52,353,354,355,356,357,358,359,360,361,362,363,364,365,366,367,368,369,3 71,372,373,374,375,376,377または378個のアミノ酸欠失により例示されるが、 これに限定されない中間サイズの欠失も提供される。その他の中間値は、本明細 書の至る所に開示されている。 本発明の一つの実施態様においては、遺伝子は、少なくとも1個のアミノ酸 が欠失されている、少なくとも約アミノ酸1と約アミノ酸50の間にある第1配列 の領域を含むN末端領域を含む改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を コードする。「約アミノ酸1と約アミノ酸50の間」とは、アミノ酸1とアミノ酸 50を含むものであり、よって本明細書に記載されたその他の欠失を含むものであ る と解釈される。アミノ酸1は、N末端アミノ酸であり、番号はC末端に向か って増える。 本発明のさらなる実施態様においては、第1配列の領域は、約アミノ酸51と約 アミノ酸100の間、約アミノ酸101と約アミノ酸150の間、約アミノ酸151と約アミ ノ酸200の間、約アミノ酸201と約アミノ酸250の間または約アミノ酸251と約アミ ノ酸300の間にある。 本発明のその他の実施態様においては、遺伝子は、第1配列の領域が、約アミ ノ酸1と約アミノ酸100の間、約アミノ酸51と約アミノ酸150の間、約アミノ酸10 1と約アミノ酸200の間、約アミノ酸151と約アミノ酸250の間または約アミノ酸20 1と約アミノ酸300の間にある改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコ ードする。 本発明の特定の局面においては、遺伝子は、第1配列の領域が約アミノ酸1と 約アミノ酸150の間にある改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコー ドする。本発明のさらなる局面においては、第1配列の領域は、約アミノ酸51と 約アミノ酸200の間、約アミノ酸101と約アミノ酸250の間または約アミノ酸151と 約アミノ酸300の間にある。 本発明のさらなる実施態様においては、遺伝子は、第1配列の領域が約アミノ 酸1と約アミノ酸200の間、約アミノ酸51と約アミノ酸250の間、約アミノ酸101 と約アミノ酸300の間、約アミノ酸1と約アミノ酸250の間、約アミノ酸51と約ア ミノ酸300の間、約アミノ酸1と約アミノ酸300の間または約アミノ酸1と約アミ ノ酸370の間にある改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする 。 本発明のさらに別の局面においては、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タン パク質は、約アミノ酸2〜約アミノ酸34が第1配列の領域から欠失されている、 改変型レチノブラストーマタンパク質である。これらの特定のアミノ酸の位置は 、ヒト野生型レチノブラストーマタンパク質に関するものであるが、同種レチノ ブラストーマタンパク質の類似領域に一致するものと解釈される。本発明のさら に別の局面いおいては、約アミノ酸2〜約アミノ酸55が第1配列の領域から欠失 されている。本発明のさらに別の局面いおいては、約アミノ酸2〜約アミノ酸78 が第1配列の領域から欠失されている。本発明の特定の局面においては、約アミ ノ酸2〜約アミノ酸97が第1配列の領域から欠失されている。本発明のさらなる 局面においては、約アミノ酸2〜約アミノ酸148が第1配列の領域から欠失され ている。 本発明の別の実施態様においては、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパ ク質は、約アミノ酸31〜約アミノ酸107が第1配列の領域から欠失されている改 変型レチノブラストーマタンパク質である。本発明の別の実施態様においては、 約アミノ酸77〜約アミノ酸107が第1配列の領域から欠失されている。本発明の さらなる実施態様においては、約アミノ酸111〜約アミノ酸181が第1配列の領域 から欠失されている。本発明のさらに別の実施態様においては、約アミノ酸111 〜約アミノ酸241が第1配列の領域から欠失されている。本発明のさらに別の実 施態様においては、約アミノ酸181〜約アミノ酸241が第1配列の領域から欠失さ れている。本発明の特定の実施態様いおいては、約アミノ酸242〜約アミノ酸300 が第1配列の領域から欠失されている。 本発明の一つの局面においては、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク 質のN末端領域は、少なくとも、少なくとも1個のアミノ酸が欠失されている第 2配列の領域をさらに含む。本発明の特定の局面においては、約アミノ酸2〜約 アミノ酸34、および約アミノ酸76〜約アミノ酸112が欠失されている。本発明の さらなる局面においては、約アミノ酸2〜約アミノ酸55、および約アミノ酸76〜 約アミノ酸112が欠失されている。 本発明の別の実施態様は、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブ ラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含むDNAセグ メントであって、前記遺伝子は、少なくとも第1のN末端突然変異を含む改変型 レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードするものであり、前記改変型レ チノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質は、対応する野生型レチノブラストーマ腫 瘍抑制タンパク質の生物学的活性と比較して増大した生物学的活性を有する、上 記DNAセグメントを提供する。本発明の一つの実施態様においては、遺伝子は 、111位に突然変異を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。 本発明の別の実施態様においては、改変型レチノブラストーマタンパク質は、11 1位にアスパラギン酸の代わりにグリシンを含む。 本発明のさらなる実施態様においては、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タ ンパク質は、少なくとも第2のN末端突然変異を含む。本発明のさらに別の実施 態様においては、遺伝子は、111位および112位に突然変異を含む改変型レチノブ ラストーマタンパク質をコードする。本発明のさらに別の実施態様においては、 改変型レチノブラストーマタンパク質は、111位にアスパラギン酸の代わりにグ リシンを含み、112位にグルタミン酸の代わりにアスパラギン酸を含む。本発明 の特定の実施態様においては、遺伝子は、少なくとも1個のアミノ酸が欠失され ており、少なくとも1個のアミノ酸突然変異を含むN末端領域を含む改変型レチ ノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする。 本発明の一つの局面においては、遺伝子は、少なくとも配列番号2の約370位 〜約928位からの連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タ ンパク質をコードする。本発明の別の局面においては、遺伝子は、少なくとも配 列番号2の約3位〜約928位からの連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラス トーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする。この文脈で用いられる場合、「連続ア ミノ酸配列」は、少なくとも約8、約10、約12、約15、約20、約25、約50、約10 0個のアミノ酸などの全長アミノ酸配列までの連続アミノ酸配列であると解釈さ れる。 本発明のさらなる局面においては、遺伝子は、配列番号29の連続アミノ酸配 列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。本発明のさらに別 の局面においては、遺伝子は、配列番号28の7位〜2691位からの連続核酸配列 を含む。本明細書においてこの文脈で用いられる場合、「連続核酸配列」は、少 なくとも約8、約10、約12、約15、約17、約20、約25、約50、約100個のヌクレ オチドなどの全長ヌクレオチド配列までの連続核酸配列であると解釈される。 本発明のさらに別の局面においては、遺伝子は、配列番号31のアミノ酸配列 を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。本発明の特定の局面 においては、遺伝子は、配列番号30の7位〜2628位からの連続核酸配列を含む 。本発明のさらなる局面においては、遺伝子は、配列番号33の連続アミノ酸配 列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。 本発明の別の実施態様においては、遺伝子は、配列番号32の7位〜2559位か らの連続核酸配列を含む。本発明のさらなる実施態様においては、遺伝子は、配 列番号35の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコ ードする。本発明のさらに別の実施態様においては、遺伝子は、配列番号34の 7位〜2502位からの連続核酸配列を含む。本発明のさらに別の実施態様において は、遺伝子は、配列番号37の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストー マタンパク質をコードする。本発明の特定の実施態様においては、遺伝子は、配 列番号36の7位〜2349位からの連続核酸配列を含む。本発明のさらなる実施態 様においては、遺伝子は、配列番号39の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノ ブラストーマタンパク質をコードする。 本発明の一つの局面においては、遺伝子は、配列番号38の7位〜2559位から の連続核酸配列を含む。本発明の別の局面においては、遺伝子は、配列番号41 の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。 本発明のさらなる局面においては、遺伝子は、配列番号40の7位〜2697位から の連続核酸配列を含む。本発明のさらに別の局面においては、遺伝子は、配列番 号43の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコード する。本発明のさらに別の局面においては、遺伝子は、配列番号42の7位〜25 83位からの連続核酸配列を含む。本発明の特定の局面においては、遺伝子は、配 列番号45の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコ ードする。本発明のさらなる局面においては、遺伝子は、配列番号44の7位〜 2397位からの連続核酸配列を含む。 本発明の一つの実施態様においては、遺伝子は、配列番号47の連続アミノ酸 配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。本発明の別の実 施態様においては、遺伝子は、配列番号46の7位〜2613位からの連続核酸配列 を含む。本発明のさらなる実施態様においては、遺伝子は、配列番号49の連続 アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする。本発明 のさらに別の実施態様においては、遺伝子は、配列番号48の7位〜2619位から の連続核酸配列を含む。本発明のさらに別の実施態様においては、遺伝子は、配 列番号51の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマタンパク質をコ ードする。本発明の特定の実施態様においては、遺伝子は、配列番号50の7位 〜2790位からの連続核酸配列を含む。 したがって、本発明は、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番 号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号 45、配列番号47、配列番号49または配列番号51の連続アミノ酸配列を含 む改変型レチノブラストーマタンパク質をコードする遺伝子を提供する。本発明 の一つの局面いおいては、遺伝子は、配列番号28の7位〜2691位、配列番号3 0の7位〜2628位、配列番号32の7位〜2559位、配列番号34の7位〜2502位 、配列番号36の7位〜2349位、配列番号38の7位〜2559位、配列番号40の 7位〜2697位、配列番号42の7位〜2583位、配列番号44の7位〜2397位、配 列番号46の7位〜2613位、配列番号48の7位〜2619位または配列番号50の 7位〜2790位からの連続核酸配列を含む。 本発明の別の実施態様は、N末端の改変を含む、pRB94またはpRB56以外の改変 型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含む DNAセグメントであって、プロモーターの制御下で機能的に位置付けられてい る、上記DNAセグメントを提供する。本発明の一つの実施態様においては、こ のDNAセグメントは、組換えプロモーターの制御下で機能的に位置付けられて いる。本発明の別の実施態様においては、DNAセグメントは、組換えベクター としてさらに特定される。本発明の特定の局面においては、組換えベクターは、 アデノウイルスベクターである。別の局面においては、組換えベクターは、レト ロウイルスベクターである。 本発明のさらなる実施態様においては、DNAセグメントは、テトラサイクリ ン応答発現系の構成成分としてさらに特定される。本発明のさらに別の実施態様 においては、DNAセグメントは、テトラサイクリンオペレーター核酸配列を含 むプロモーターの下流に機能的に位置付けられており、テトラサイクリン応答発 現系は、テトラサイクリンリプレッサータンパク質に機能的に結合された転写ト ランス活性化ドメインを含む融合タンパク質をコードする単離された遺伝子を含 む第2配列の領域をさらに含み、第2配列の領域は、最小プロモーターの下流に 機能的に位置付けられている。 本発明のさらに別の実施態様においては、テトラサイクリン応答発現系は、ア デノウイルスベクター内に含まれる。本発明のさらに別の実施態様においては、 アデノウイルスベクターは、組換えアデノウイルス内に含まれる。 また、本発明は、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブラストー マ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含むDNAセグメントで あって、宿主細胞内に含まれるものである上記DNAセグメントも提供する。本 発明の一つの実施態様においては、宿主細胞は原核細胞である、本発明の別の実 施態様においては、宿主細胞は真核細胞である。本発明のさらなる実施態様にお いては、宿主細胞はヒト細胞である。本発明のさらに別の実施態様においては、 宿主細胞は腫瘍細胞である。本発明のさらに別の実施態様においては、宿主細胞 は動物内に含まれる。本発明の特定の実施態様においては、動物はヒト被験者で ある。 本発明の別の実施態様は、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブ ラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含むDNAセグ メントであって、製薬上許容される賦形剤中に分散されている上記DNAセグメ ントを提供する。 本発明のさらに別の実施態様は、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レ チノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含む単離 されたDNAセグメントであって、前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タン パク質が、少なくとも1個のアミノ酸が欠失されている少なくとも第1配列の領 域を含むN末端領域を含み、該改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が 対応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性に少なく ともほぼ等しい生物学的活性を有することを特徴とするか;または前記改変型レ チノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が少なくとも一つの突然変異を含む第l配 列の領域を含むN末端を含み、該改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質 が対応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性と比較 して増大した生物学的活性を有することを特徴とする、上記DNAセグメントを 提供する。 本発明の一定の局面においては、上記のDNAセグメントは、例えば宿主細胞 における、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の発現に使用すること が考えられている。その他の局面においては、DNAセグメントは、例えばヒト 患者における、細胞増殖の抑制、または細胞増殖の抑制もしくは癌の治療のため の薬剤の調製に使用することが考えられている。したがって、改変型レチノブラ ストーマ腫瘍抑制タンパク質の調製、細胞増殖の抑制、および細胞増殖の抑制ま たは癌の治療のための薬剤の調製における本発明のDNAセグメントの使用が提 供される。一定の用途においては、薬剤は、ヒト患者に投与されるものであり、 または非経口投与用に処方される。 本発明は、さらに、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブラスト ーマ腫瘍抑制タンパク質を提供する。 また、本発明は、N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブラストー マ腫瘍抑制タンパク質をコードする単離された遺伝子を含むDNAセグメントを 含有する組換え宿主細胞も提供する。本発明の一つの局面においては、宿主細胞 は原核細胞である。本発明の別の局面においては、宿主細胞はE.coliである。本 発明のさらなる局面においては、宿主細胞は真核宿主細胞である。本発明のさら に別の局面においては、宿主細胞は腫瘍細胞である。本発明のさらに別の局面に おいては、DNAセグメントは組換えベクターによって細胞に導入される。 本発明は、さらに、N末端の改変を含む、pRB94以外の第1の改変型レチノブ ラストーマ腫瘍抑制タンパク質の有効抑制量に細胞を接触させることを含んでな る、細胞増殖の抑制方法を提供する。 本発明の一つの実施態様においては、第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑 制タンパク質は、アミノ酸111〜241が欠失されている改変型レチノブラストーマ タンパク質を含む。本発明の別の実施態様においては、第1の改変型レチノブラ ストーマ腫瘍抑制タンパク質は、111位および112位に突然変異を含む改変型レチ ノブラストーマタンパク質を含む。本発明のさらなる実施態様においては、第1 の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質は、組換え宿主細胞において改 変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードするDNAセグメントを発 現させ、該細胞によって発現された改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク 質を回収することによって調製される。本発明のさらに別の実施態様においては 、細胞内で第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を発現するDN Aセグメントを細胞に供給することにより、第1の改変型レチノブラストーマ腫 瘍抑制タンパク質に細胞を接触させる。本発明のさらに別の実施態様においては 、細胞内で第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を発現するテト ラサイクリン応答発現ベクター系を有する細胞が提供される。本発明の特定の実 施態様においては、ベクター系はアデノウイルスベクター系である。 本発明の別の局面は、N末端の改変を含む、pRB94以外の第1の改変型レチノ ブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の有効抑制量に腫瘍細胞を接触させることを含 んでなる、細胞増殖の抑制方法を提供する。本発明の一つの局面においては、細 胞は動物内にあり、第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質、また は改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子は製薬上許 容されるビヒクルで前記動物に投与される。本明細書で用いられる場合、「遺伝 子」という用語は、タンパク質のコード領域を含む単離されたDNAセグメント 、またはその一部と定義される。したがって、「遺伝子」という用語は、ゲノム DNA、cDNAまたはタンパク質をコードするRNAを含む。 本発明の別の局面においては、動物はヒト被験者である。本発明のさらなる局 面においては、細胞を第2の腫瘍抑制タンパク質にさらに接触させる。本発明の さらに別の局面においては、細胞を改変型レチノブラストーマタンパク質および 野生型レチノブラストーマp53またはその他の腫瘍抑制タンパク質に接触させる 本発明は、さらに、細胞内で細胞増殖を抑制するのに有効な組合せ量のレチノ ブラストーマタンパク質およびp53タンパク質に細胞を接触させることを含んで なる、細胞増殖の抑制方法を提供する。 また、本発明は、N末端の改変を含む、pRB94以外の第1の改変型レチノブラ ストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的に有効な抑制量を含有する医薬として許 容される組成物を、癌にかかった動物に投与することを含んでなる、癌の治療方 法も提供する。 「癌」または「腫瘍」という用語は、抑制のない(unchecked)異常な細胞増殖 を示す細胞が特徴的な無数の疾患を含む、臨床上説明的な用語である。「腫瘍」 という用語は、組織に対して用いられる場合、一般的に何らかの異常な組織増殖 、すなわち過剰且つ異常な細胞増殖を意味するものである。腫瘍は「陽性」であ ってその最初の病巣から広がることが不可能であり得るものであり、または「悪 性」であってその解剖学的部位を超えて宿主体全体のその他の領域に広がること が可能であり得るものである。「癌」という用語は、悪性腫瘍またはそれから生 じる病気の状態を記載するのに一般的に用いられている古い用語である。一方、 新生物としての異常増殖、および悪性新生物としての悪性異常増殖を意味する。 増殖が悪性に分類されるか陽性に分類されるかに関係無く、腫瘍または癌細胞 の過剰または異常な細胞増殖の原因は完全に明らかであるわけではない。それに もかかわらず、異常な細胞増殖は、細胞の増殖および分裂を制御する機構の1以 上の故障の結果であるという説得力のある証拠がある。また、細胞の増殖および 分裂を制御する機構が、細胞の増殖、有糸分裂および分化の遺伝子および組織介 在調節を含むということも現在考えられている。これらの機構は、細胞核、細胞 質、細胞膜および各細胞の組織特異的環境で作用すると考えられる。正常な状態 から過剰または異常な細胞増殖の状態への細胞の形質転換過程は、腫瘍発生と呼 ばれる。 腫瘍発生は、通常、正常な細胞の状態から、いくつかの場合には完全な悪性へ の多段進行であることが観察されている。したがって、細胞調節機構における多 数の「ヒット」が完全悪性を発生させるのに必要であると考えられる。よって、 大部分の場合、過剰増殖についての単独の原因はないが、これらの障害は一連の 累積的な事象の最終結果であると考えられる。 全身に抑制されずに急速に広がる能力を有する悪性腫瘍または癌は最も恐ろし く、通常最も致命的な型の腫瘍であるが、いわゆる陽性の腫瘍または増殖でさえ その不適当な増殖によって重大な病的状態および死亡率を生じさせ得る。陽性腫 瘍は、表面上の過敏な領域における不適当な増殖により、または中枢もしくは末 梢神経組織、血管およびその他の重大な解剖学的構造に圧力をかけることによリ 、重大な損傷を引き起こし、美観を損なわせ得る。 図面の簡単な説明 下記の図面は、本明細書の一部を構成するものであり、本発明のある一定の局 面をさらに説明するために含まれるものである。本明細書に記載した特定の実施 態様についての詳細な説明とともにこれらの図面の1以上を参照することにより 、本発明はよりいっそう理解され得るものである。 図1:改変型hCMVプロモーターの相対活性。5637膀胱癌細胞(レーン1〜5) およびSaos2骨癌細胞(レーン6〜10)は、CAT遺伝子発現が種々の改変型(mh CMVp3、レーン2および7;mhCMVp2、レーン3および8;mhCMVpl、レーン4お よび9)または全長hCMVプロモーター(レーン5および10)によって誘導され るレポータープラスミドでトランスフェクトされた。%CAT活性を縦軸に示す。 全長hCMVプロモーターを有するプラスミドでトランスフェクトした細胞のCAT活 性(レーン5および10)は、100パーセントと規定される。 図2:改変型mCMVp-tTAカセットからのtTAの発現は、5637細胞増殖に鎮圧効果 を示さない。細胞をクリスタルバイオレットで染色し、OD550を測定する方法を 、相対細胞数の定量に用いた(OD550は縦軸に示した;Gilliesら,1986)。テト ラサイクリンを含む増殖親細胞(▲)およびテトラサイクリンを含まない増殖親 細胞(□)、ならびにテトラサイクリンを含むmCMVp-tTAトランスフェクト細胞 (◆)およびテトラサイクリンを含まないmCMVp-tTAトランスフェクト細胞(○ )を示す。トランスフェクション後の日数を横軸に示す。 図3A、図3Bおよび図3C:腫瘍細胞増殖におけるテトラサイクリンで調節 可能なpRB発現の効果(OD550:縦軸)。図3A:RB再形成骨肉腫細胞系由来の代 表的な長期クローン(Saos-2、クローン11)。図3B:RB再形成乳癌細胞系由来 の代表的な長期クローン(MDA-MB-468、クローン19-4)。図3C:RB再形成膀胱 癌細胞系由来の代表的な長期クローン(5637、クローン34-6)。細胞を0.5μg/m lのTc存在下(□)、およびTcの不存在下(○)で増殖させた。pRB発現の1 〜2日後に停止した腫瘍細胞の細胞増殖を、Tcを含まない培地中で刺激した( 日数は横軸に示す)。15%血清(Saos-2)、10%血清+2μg/mlフィトヘマグル チニン(PHA;MDA-468)または10%血清+4μg/mlコンカナバリンA(ConA;56 37)を含む新鮮培地による刺激の4日後(矢印)では増殖停止は不可逆的であっ た。 図4A、図4Bおよび図4C:軟寒天コロニー形成におけるテトラサイクリン で調節可能なpRB発現の効果。図4A:3つの別個のSaos2骨肉腫細胞系クローン (RB110 C14、レーン2;RB110 C111、レーン3;RB110 C113、レーン4)およ びSaos2親株(レーン1)についてのコロニー形成の割合(縦軸)。図4B:2 つの別個のMDA-MB-468乳癌細胞系クローン(Rb110 C119-4、レーン2;Rb110 C1 20-1、レーン3)およびMDA-MB-468親株(レーン1)についてのコロニー形成の 割合(縦軸)。図4C:2つの別個の5637膀胱癌細胞系クローン(Rb110 C134-6 、レーン2;Rb110 C136-9、レーン3)および5637親株(レーン1)についての コロニー形成の割合(縦軸)。テトラサイクリンで調節可能なpRB発現を有する 腫瘍細胞の軟寒天コロニー形成は、テトラサイクリンを含まない培地におけるpR Bの誘導によって完全に排除された。テトラサイクリンの存在下(白いバー)お よび不存在下(ハッチングしたバー)のコロニー形成を示す。 図5:3H−チミジン組み込みアッセイを用いた、Tcを含まない培地中での 代表的なTcで調節可能なSaos-2細胞クローンにおけるpRB94およびpRB110発現 およびDNA合成におけるその効果の経時分析。腫瘍細胞のチミジン組み込みの 失敗によって測定されるようなDNA合成の欠如は、増殖停止を示すものである 。非同調親Saos-2細胞集団(●)は一様なDNA合成を維持し、代表的なpRB110 再形成(■)およびpRB94再形成(▲)Saos-2クローンが示される。3H−標識細 胞の割合を縦軸に示し、テトラサイクリンの除去後の時間を横軸に示す。 具体的な態様の説明 A.腫瘍抑制タンパク質 1.レチノブラストーマ 単離されたRB cDNAクローンの研究によると、RB遺伝子の推定産物は928アミノ 酸で、推定分子量は106kDaである(Leeら、1987a;1987b)。RB遺伝子の推定された 発現産物に相当する天然の因子は、見かけ上の相対的分子量(Mr)が105から114kD aの核リンタンパク質であると同定されている(Leeら、1987b;Xuら、1989b、Yoko taら、1988、Whyteら、1988)。文献では、一般的に、RB遺伝子によってコードさ れているタンパク質をp110RBと呼んでいる。SDS-PAGEでは、正常なヒト細胞は、 110kDのMrをもつ低位のシャープなバンドと、このバンドの上の、Mrが110kDから 116kDの範囲にある、より幅の広い、多様な領域からな るRBタンパク質のパターンを示す。110kDのバンドは十分にリン酸化されていな いRBタンパク質であり、より幅広い領域はリン酸化されたRBタンパク質を示し ている。分子量の不均一さは、リン酸化の程度がさまざまなことに起因する(Xu ら、1989b)。 何年にもわたり広範に精査したところ、RB遺伝子の生物学的機能が分かり始め ている(CooperとWhyte、1989、Hamelら、1993、Horowitz、1993、Rileyら、1994 、Wangら、1994、Weinberg、1995で概説されている)。RBタンパク質は、細胞周 期中、リン酸化において周期的な変化を示す。G1期の間は、ほとんどのRBタンパ ク質はリン酸化されていないが、S期とG2期には、ほとんど(多分、すべて) のRB分子がリン酸化される(Xuら、1989b、DeCaprioら、1989、Buchkovichら、19 89、Chenら、1989、Miharaら、1989)。確認されているpRB経路の要素には、E2F 転写因子が含まれるが、これらの因子は、細胞周期を通じて細胞の増殖に関与す る多数の細胞遺伝子の転写調節に関与している(Nevins、1992、La Thangue、199 4)。pRBは、G1期の一定のサイクリンとも相互作用する(Koffら、1992、Resnitzk yとReed、1995、Gengら、1996)。したがって、RB遺伝子は、細胞の増殖、休止お よび分化を支配する、細胞周期のG1期の間の主要な決定に関係する細胞増殖制御 において、明らかに決定的な役割を演じている(Weinberg、1995)。さらに、十分 にリン酸化されていないRBタンパク質だけが、SV40のラージT抗原に結合する。 ラージT抗原が結合するRBタンパク質が、ラージT抗原の増殖促進効果にとって 重要である可能性が高いとしたら、このことは、十分にリン酸化されていないRB タンパク質がRBタンパク質の活性型であり、S期とG2期のリン酸化されたRBタン パク質は不活性であることを示唆している(Ludlowら、1989)。 対数増殖している正常な線維芽細胞と、G1期で分裂停止している線維芽細胞と では、不完全リン酸化型とリン酸化型のpRBの比率に大きな違いがあることが報 告された。G1分裂停止細胞において、より多くの不完全リン酸化pRBが観察され 、リン酸化型と不完全リン酸化型RBタンパク質の比率の変化が、細胞周期の変動 に関係していることを示していた(Xuら、1989b)。その後に発表された4つの論 文では、細胞周期依存的なRBタンパク質のリン酸化について詳細に説明 されている(DeCaprioら、1989、Buchkovichら、1989、Chenら、1989、Miharaら 、1989)。今では、細胞周期制御においてRB遺伝子の産物が重要な役割をもつこ とが広く認められている。 細胞増殖は、DNA合成の開始、および、細胞周期のG1期における、その他の重 要な過程に関与する遺伝子の転写活性化に依存する。パーディー(Pardee)によっ て示されたように、血清マイトジェン依存状態から血清マイトジェン非依存状態 への細胞の遷移は、S期が開始する数時間前の明確な時点、すなわちR(臨界)点に よって区分される(Pardee、1989)。R点を通過することによって、細胞はM期まで の細胞周期の残りを完了させようとすることになる。このように、細胞周期のG1 中期とG1後期の間のR点は、細胞の生活において、G1/S境界と同様に重要な変化 を示している。 pRBのリン酸化状態は、細胞周期のR点における変化に近接した時点、また、 おそらく同時に、簡単に区別できるような変化を遂げる(Weinberg、1995)。G1中 期の間、検出されるpRB分子種は不完全リン酸化型のだけである。細胞の細胞周 期が進行して行くうちに、pRB含量は次第に増加する。しかし、G1中期以後に合 成されるpRBの大部分は過リン酸化されている。換言すれば、pRBの過リン酸化は 、G1/S境界に先立つG1後期に起きる(Xuら、1991a、Mittnachtら、1994)。pRBは 、細胞周期の残期を通じてこの過リン酸化状態を維持し、M期から初期G1に変化 するときにだけ脱リン酸化されることになる(Ludlowら、1990、Xuら、1991a、Mi ttnachtら、1994)。 不完全リン酸化型のpRBは、転写因子E2Fと複合体を形成するか、またはE2F部 位と直接相互作用することができ、転写調節においてE2F部位を正の因子から負 の因子に変換する。E2F部位は、c-myc、B-myb、cdc2、ジヒドロ葉酸レダクター ゼ、チミジンキナーゼ、ならびにRB遺伝子およびE2F-1遺伝子そのものなど、細 胞が細胞周期を通じて増殖するのに関与するさまざまな細胞遺伝子のプロモータ ー中に存在する(Chellappanら、1991、Nevinsら、1992、Weintraubら、1992、La Thangue、1994、Shanら、1994、Sardetら、1995、Shanら、1996)。過リン酸化 されたpRBは、E2Fと相互作用することができなくなるようなので、細胞増殖に対 するpRBの阻害機能は、過リン酸化によって失われうる。 pRBのタイミングを調節することで、魅力的な機能モデルがもたらされた(Wein berg、1995)。このモデルは、pRBがR点を保護していることを示唆している。pRB は、その増殖阻害効果を、G1期の最初の3分の2で発揮する。G1初期と中期を通 って進んできた細胞は、R点関門に突き当たる。残りの細胞周期に進んでゆく条 件が整っていれば、pRBはリン酸化され、機能的に不活性化されて、それが関門 を開くようにさせ、細胞がG1後期に進んで行くことを可能にする。さまざまな理 由から正常なpRB機能を欠く細胞は、自由にG1後期に入って行くはずである。pRB なしでは、サイクリンD、サイクリンE、およびこれらに対応するサイクリン依 存型キナーゼ(CDKs)(katoら、1993、Ewenら、1993)などの、pRBのリン酸化を調 節する細胞周期時計の上流要素は、R点関門を通過させるかどうかの決定におけ る影響力の大部分を失う。まとめると、pRBは、細胞周期時計にR点通過と同時 になされる主要な決定に関与している、細胞増殖周期の重要な時期を通って細胞 を増殖させる数多くの遺伝子の発現を調節させている。pRBの機能喪失は、細胞 からこの時計を奪い、したがって、細胞増殖にブレーキをかける重要なしくみを 奪うことになる。 RB遺伝子のさまざまな突然変異が知られているが、それらは一般的に不活性で ある。RBの変異はレチノブラストーマの実質的にすべての場合に見られ、さらに 、RB遺伝子産物は過リン酸化、およびウイルス性癌遺伝子様細胞タンパク質の 結合によって不活性化される可能性がある。RB遺伝子は、その遺伝子内の欠失ま たは変異が子供の眼の稀な腫瘍であるレチノブラストーマの原因となるため、当 初このように名前をつけられたが、pRBの機能の喪失はレチノブラストーマの原 因に関連するだけでなく、多くの一般的な人間の癌の進行にも関連している。さ らに、RBタンパク質の状態が、尿路上皮癌、非小細胞肺癌、および、おそらく別 の型のヒト新生物においても診断用マーカーとなる可能性があるということを示 唆する証拠が増えている(Xu、1995)。 さらに、革命的な抗原捕捉技術、および利用可能な特異的抗pRB抗体によって 、最近では免疫組織学が、通常の処理を施した病理検体におけるpRBの不活性化 を検出するための、非常に感度が高く、信頼できる方法になっている(Xu、1995) 。免疫組織学的解析で測定すると、pRB発現の変化は、ヒトの悪性疾患の仲間に お ける予後の悪さを表していると思われる。機能的なpRBの喪失が、高進性成人柔 組織肉腫(high-grade adult soft tissue sarcoma)における統計的に重要な負の 予後因子であることが最初に報告された(Canceら、1990)。その後、2つの別々 の研究が同時に行われ、pRB発現の変化が、膀胱の遷移性細胞癌をもつ患者にお ける予後因子であるとの結論が出された(Cordon-Cardoら、1992、Logothetisら 、1992)。 肺癌患者については初期の試験的研究も有望なものであり、RBおよびp53タン パク質の状態の変化が、非小細胞性肺癌の初期段階における協働的な予後因子で あるかもしれないことを示していた(Xuら、1994a)。なお、末梢血白血球細胞中 のpRBタンパク質レベルが低いか、ゼロの急性骨髄性白血病患者については、生 存パターンが非常に悪いことも報告されている(Kornblauら、1994)。ヒトの癌に おけるpRB状態と患者の臨床結果との関連性を調べるためにこれまでに行われた 研究はすべて遡及的なもので、各コホートにおける症例が非常に少なかったため 、統計計算を行うのに適当なサンプルサイズをもつ明確な遡及的および予測的な 研究は、いまだに、pRB機能の喪失が臨床現場における予後因子と考えてよいか 否かを決定する途上にある。 クローニングされたRB遺伝子が、実際に腫瘍抑制遺伝子であることの最も直接 的な証拠は、癌細胞の中に、クローニングされた完全な遺伝子コピーを導入する ことによって、腫瘍抑制機能が観察されることから得られる。数多くの報告は、 非同一型のヒト癌のRB欠損腫瘍細胞中で、正常なRB遺伝子に置き換えることによ って、ヌードマウスにおける腫瘍形成活性が抑制できたことを示している(Huang ら、1988、GoodrichとLee、1993、Zhouら、1994b)。研究された腫瘍細胞系は、 レチノブラストーマ、骨肉腫、膀胱癌、前立腺癌、乳癌および肺癌など、広く異 なるヒトの癌型に由来していた(表2)。 注意すべきは、文献では、RB欠損腫瘍細胞におけるRB置換による細胞増殖の阻 害と腫瘍抑制とを区別する傾向があるという点である(Takahashiら、1991、Chen ら、1992、Goodrichら、1992b、Zhouら、1994b)。いくつかの初期の研究で述べ られているところによると、野生型pRBを発現するレトロウイルスまたはプラス ミドによる一過的な形質導入の後、RB欠損のレチノブラストーマと骨肉 腫の培養細胞は、細胞の拡張、老化表現型および増殖率の低下など、顕著な変化 を示した(Huangら、1988、Templetonら、1991)。その後、RB再構築腫瘍細胞の長 期的に安定なクローンで、親クローンまたはRB-復帰変異体クローンとちょうど 同じ速さで増殖するクローンを分離できることが分かった。しかし、得られたRB+ クローンの大部分は、ヌードマウスにおいては非腫瘍形成性であるか、または 腫瘍形成性が有意に低下していた。RB置換による培養腫瘍細胞の増殖阻害から、 ヌードマウスにおける腫瘍形成性の抑制が解離するメカニズムは明らかではない 。ヌードマウスで腫瘍形成アッセイを行うと、RB置換によって細胞に提示され供 給されるさまざまな生理学的増殖阻害シグナルに対する感受性が回復する可能性 があることは確かである。通常の培養条件下では、このような外生的な増殖阻害 因子がないため、迅速な細胞増殖がもたらされるのであろう(Chenら、1992)。 RB媒介腫瘍抑制の分子的メカニズムは不明なままであるが、野生型pRBの再発 現によって、インビボでRB-細胞の腫瘍形成が抑制されたことは、RB遺伝子がヒ トの癌に対する治療目標となる可能性があることを示唆している。さらに、最近 の報告では、RBは、腫瘍細胞の免疫原性(Luら、1994、Luら、1996)、抗脈管形成 (Dawsonら、1995)、および腫瘍侵襲性(Liら、1996)の誘発に関与することが示唆 され、新しいRB遺伝子治療をより一層魅力的なものにしている。これについては 、最近、前臨床実験において、野生型レチノブラストーマタンパク質、またはN 末端側が欠失したレチノブラストーマタンパク質を発現する組換えアデノウイル スベクターによって、ヌードマウスで作出された異種移植性腫瘍を治療すると、 治療した腫瘍の退縮がもたらされることが示された(Xuら、1996)。さらに、構成 的に活性型のpRBタンパク質が、ラットの再狭窄動脈モデルで、バルーン血管形 成後の血管増殖障害を阻害するかが調べられている(Changら、1995)。 インフレームの一番目のAUGコドンから開始するRBタンパク質を発現するRB遺 伝子も、本明細書では、完全なRB遺伝子であるRB110遺伝子またはp110RBコーデ ィング遺伝子と呼ばれている。さまざまな抗RB抗体と免疫反応する、起源未知の 低分子量(<100kD、98kDまたは98-104kD)のバンドを、免疫沈殿とウエスタン ブロットにおいて検出することができる(Xuら、1991、Furukawaら、1990、 Steinら、1990)。 RB110 cDNAのオープンリーディングフレームの配列(McGeeら、1989)は、355位 から357位のヌクレオチドにある、第3エクソン内の2番目のインフレームAUGコ ドンを含んでいる。2番目のAUGコドンから始まる推定RBタンパク質は98kDであ るか、またはp110RBタンパク質よりも12kD小さい。低分子量の方のバンドは、RB mRNAの2番目のAUGコドンから翻訳された不完全リン酸化型(98kD)およびリン酸 化型(98-104kD)のRBタンパク質であり(Xuら、1989b)、これは後に確証された(Xu ら、米国特許第5,496,731号)。このタンパク質は、p94RBタンパク質と呼ばれて いる。 機能的なRB110遺伝子をRBマイナス腫瘍細胞の中に導入すると、細胞を「 正常化させる」可能性が高いことが主張されている。もちろん、正常なRB110遺 伝子発現(「RB+」)をすでにもつ腫瘍細胞がRB110遺伝子治療に応答するとは思 われない。なぜなら、さらにRB発現を加えても、非RB性の遺伝子欠損を補完する ことはできないと考えられるからである。実際、骨肉腫細胞系のU-2 OSなど、正 常なp110RBを発現するRB+腫瘍細胞系の場合には、余計なp110RBをコードする遺 伝子を導入しても、そのような腫瘍系の新生物を形成する表現型を変えることは なかった(Huangら、1988)。 報告されている唯一の例外として、p110RBをコードするベクターを、RBまたは その他の遺伝子欠損が知られていない正常なヒト線維芽細胞WS1に導入したとこ ろ、細胞増殖が停止する結果となった(Fungら、WO91/15580,1991)。しかし、こ れらの発見は、宿主に対して増殖促進効果をもつことがよく知られているSV40ラ ージT抗原を産生するプラスミドppVUO-Neoが不適切に用いられて、トランスフ ェクトされたWS1線維芽細胞の細胞増殖に対するRB110発現の効果が比較されたた めに誤って解釈されたものと考えられる(Fungら、WO91/15580,1991)。この見解 は、野生型のRB110遺伝子による治療ではRB+腫瘍細胞を「改善することができな い」と明確に特徴づけている広範な文献によって確認されている。さらに、WS1 細胞系そのものは、一般的に培養液中で制限的な分裂能をもつ非腫瘍形成性のヒ ト二倍体線維芽細胞系と認められていることは注目に値する。したがって、WO91 /15580,1991は、単にRB110遺伝子によるRB+型腫瘍を効果的に治療する 方法を提供していないだけである。このように、あらゆる遺伝子欠損をもつ異常 増殖細胞を治療するための、広いスペクトルをもつ腫瘍抑制遺伝子に対する需要 が残っている。 2.p53 ヒトの癌においては、p53遺伝子の体細胞突然変異が最も頻繁に変異する遺伝 子であるといわれている(Weinberg、1991)。正常または野生型のp53遺伝子は、 損傷を受けると細胞の形質転換が有利になるという、細胞増殖の負の調節因子で ある(Weinberg、1991)。RBタンパク質について注記したように、p53の発現産物 は核の中に見られ、そこで、p110RBと平行に、または協同して作用する可能性が ある。このことは、例えばp53タンパク質もp110RBタンパク質も、SV40、アデノ ウイルスおよびヒトパピローマウイルスの癌タンパク質による結合または破壊の 標的であるなど、多くの観察によって示唆されている。p53が欠失した腫瘍細胞 系を野生型p53ベクターで治療して、腫瘍形成性を低減させることに成功してい る(Bakerら、1990)。しかし、p53とRB110のいずれかをこれらの遺伝子座に損傷 のない細胞に導入しても、細胞増殖に影響を与えない(Marshall、1991、Bakerら 、1990、Huangら、1988)。このような実験は、腫瘍抑制遺伝子による細胞増殖抑 制に対する細胞の感受性が細胞の中で起きている遺伝子の変化に依存しているこ とを示している。p53の腫瘍抑制または遺伝子座における変化が、ras癌遺伝子の 突然変異による活性化の後に見られるような一定の癌で観察されていることから 、このような依存性はさらに複雑なものになっている(Marshall、1991;Fearonら 、1990a)。したがって、異常な細胞増殖の原因となる各突然変異遺伝子を特異的 に同定することに依存しない、広いスペクトルをもつ腫瘍抑制遺伝子に対する需 要が残っている。 3.1型神経線維腫 1型神経線維腫ないしフォンレックリングハウゼン神経線維腫は、突然変異対 立遺伝子の素因を受け継ぐか、または新たな生殖系列の突然変異によって創出さ れた対立遺伝子によって起こる(Marshall、1991)。1型神経線維腫の遺伝子は NF1遺伝子と呼ばれるが、約10-4の突然変異率を示す比較的大きな遺伝子座であ る。NF1遺伝子の欠損は、皮膚のカフェオレ様の斑点から神経線維腫に至る範囲 の、ならびに末梢神経から神経鞘腫および神経線維肉腫に至る範囲の臨床的な症 状を引き起こす。NF1遺伝子は、ras癌原遺伝子産物と相互作用する3つのタンパ ク質と構造的に類似した約2485アミノ酸からなるタンパク質をコードしている(W einberg、1991)。例えば、NF1のアミノ酸配列は、p21 rasに関するGTPase活性化 タンパク質であるras GAPの触媒ドメインと配列相同性を示す(Marshall、1991) 。 細胞周期制御におけるNF1の役割はまだ完全には解明されていない複雑なもの のようである。例えば、NF1は、酵母において癌遺伝子によって活性化された p21 rasの抑制因子であるとの仮説がある(Ballesterら、1990を引用しているMar shall、1990)。他方で、利用可能なデータによって、NF1が相互作用するために 別の経路がある可能性が示唆されている(Marshall、1990、Weinberg、1991)。現 在のところ、NF1遺伝子座の大きさと複雑さのせいで、野生型のNF1遺伝子を用い てNF1細胞を処理しようという計画は立てられていない。したがって、NF1、およ びその他の型の癌または腫瘍を治療することのできる、スペクトルの広い腫瘍抑 制遺伝子があることは非常に望ましい。 4.DCC 結腸鏡検査によって詳しく調べることによって、結腸癌の腫瘍形成における複 数の段階が容易にモニターされる。結腸鏡検査を、包み込まれた組織の生検と組 み合わせることによって、悪性腫瘍という結果をもたらす多数の遺伝的な変性経 路を明らかにしてきた。よく研究されている経路の一つは、細胞の60%が突然変 異を起こして活性化されたK-ras対立遺伝子をもつ大きなポリープから始まる。 これらの腫瘍の大部分は、次に、結腸癌における欠失遺伝子(DCC)と呼ばれる遺 伝子の不活性化変異に進行し、その後p53腫瘍抑制遺伝子の不活性化が起きる。 DCC遺伝子は、レセプターと考えられる190kDの膜通過リンタンパク質(Weinber g、1991)をコードする、約100万塩基対よりも長い遺伝子であり、レセプターが 欠失すると、その影響を受けた細胞の増殖を有利にする。DCCが、神経 細胞接着分子に部分的な配列相同性をもつことも注目されているが(Marshall、1 991)、これは、細胞対細胞の相互作用の調節におけるDCC原遺伝子の役割を示唆 しているのかもしれない。これで分かるように、DCC遺伝子のサイズが大きく複 雑であることは、K-ras、p53、および結腸癌における腫瘍形成に関与する可能性 のあるその他の遺伝子の複雑さとともに、スペクトルの広い腫瘍抑制遺伝子と、 DCC遺伝子操作にも結腸癌細胞中のその他の特定の損傷遺伝子の同定にも依存し ない、結腸癌細胞を治療するための方法とが必要であることを示している。 5.その他の腫瘍抑制タンパク質 本発明の腫瘍抑制遺伝子と組み合わせて用いることが考えられている、さらに 別の腫瘍抑制遺伝子と腫瘍抑制遺伝子候補の例には、ウィルムス腫瘍(WT-1)遺伝 子(Callら、1990、Gesslerら、1990、Pritchard-Jonesら、1990)、フォンヒッペ ル−リンダウ(VHL)病腫瘍抑制遺伝子(Duanら、1995)、乳癌のMaspin遺伝子(Zou ら、1994)、Brush-1(Schottら、1994)、およびBRCA1遺伝子(Mikiら、1994、Futr ealら、1994)、ならびに複合抑制因子(MTS)またはp16遺伝子(Serranoら、1993、 Kambら、1994)などがあるが、これらに限定はされない。 B.ウイルスベクター感染によるDNAの輸送 本発明の一定の態様において、腫瘍抑制遺伝子は、細胞のゲノムの中に安定的 に組み込むことができる。さらに別の態様において、この遺伝子を、分離した染 色体外のDNAセグメントとして安定的に維持することができる。このような核酸 のセグメントまたは「エピソーム」は、宿主の細胞周期とは独立して、またはそ れに同調して、維持または複製するのに十分な配列をコードしている。どのよう にして腫瘍抑制遺伝子が細胞に輸送され、細胞内のどこで、用いられる発現ベク ターの種類に応じて核酸が維持されるのであろうか。 1.アデノウイルスベクター 本発明で使用するのに好ましいのは、アデノウイルスベクターであり、特に、 テトラサイクリンで制御されるアデノウイルスベクターである。これらのベクタ ーを用いて、レチノブラストーマ遺伝子およびp53遺伝子などの腫瘍抑制遺伝子 、腫瘍壊死因子α、インターフェロン遺伝子ファミリー、およびインターロイキ ン遺伝子ファミリーなどのサイトカイン遺伝子の他、さまざまなな遺伝子を輸送 および発現させることができる。 発現構築物を輸送するための好ましい方法には、アデノウイルス発現ベクター を使用することが含まれる。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAに組み込ま れる可能性が低いことが知られているが、この特徴は、このベクターのもたらす 遺伝子移入効率が高いことによって相殺される。「アデノウイルス発現ベクター 」とは、(a)相補的なパッケージング機能をもつ宿主細胞の中で構築物がパッケ ージされるのを補助するのに十分で、また、(b)その中にクローニングされてい る目的の異種遺伝子を最終的に発現させるのにも十分なアデノウイルス配列を含 む構築物をも含む意味である。 発現ベクターは、遺伝子工学的に工夫された形のアデノウイルスを含む。36kb の直鎖状の二本鎖DNAウイルスであるという、アデノウイルスの遺伝子構造に関 する知識によって、アデノウイルスDNAの大きな断片を外来配列で置き換えるこ とを可能した(GrunhausとHorwitz、1992)。レトロウイルスとは対照的に野生型 のアデノウイルスDNAは、遺伝子毒性を及ぼす可能性なしに、染色体外方式で複 製することができるため、アデノウイルスが宿主に感染しても、染色体への組み 込みは起こらない。また、アデノウイルスは構造的に安定なため、何度増幅を繰 り返した後でも、ゲノムが組換えを起こしたことは検出されていない。 アデノウイルスは、中くらいの大きさのゲノムをもち、操作が容易で、高濃度 、標的細胞の範囲が広く、感染性が高いため、遺伝子導入ベクターとして用いる のに特に適している。ウイルスゲノムの両末端は、100から200塩基対の逆方向反 復配列(ITRs)を含んでおり、これらは、DNA複製とパッケージングに必要なシス エレメントである。ゲノムの初期(E)領域と後期(L)領域は、ウイルス複製の開始 によって分けられる、別々の転写単位をもっている。E1領域(E1AとE1B)は、ウイ ルスゲノムと少数の細胞遺伝子の転写調節に関与するタンパク質をコードしてい る。E2領域(E2AとE2B)の発現は、ウイルスDNA複製のためのタンパク質の合成を もたらす。これらのタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現、および宿主 細胞のシャットオフに関係する(Renan、1990)。ウイルスの大部分のキャプシド タンパク質などの後期遺伝子産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生み 出された単一の一次転写産物がかなり加工されてはじめて発現される。MLP(16.8 m.u.の位置に存在する)は、感染後期の間に特に効果的であるため、このプロモ ーターから生じるすべてのmRNAは、それらのmRNAを選択的に翻訳するようにさせ る、5’末端の3つの部分からなるリーダー配列(TPL)をもっている。 現在のシステムでは、組換えアデノウイルスは、シャトルベクターと、アデノ ウイルスゲノムの骨組みをもつマスタープラスミドとの間の相同的組換えによっ て作製される。アデノウイルスゲノムの骨組みと、ウイルスゲノムで失われてい る部分を含むヘルパー細胞の細胞DNAとの間で組換えが起こる可能性があると 、野生型アデノウイルスが、この処理によって作出される可能性がある。したが って、各プラークから単一のウイルスクローンを単離して、そのゲノム構造を調 べることが重要である。 複製欠損株である、ほとんどのアデノウイルスベクターの作製と増殖は、ヒト 腎臓胚細胞由来で、Ad5のDNA断片によって形質転換された細胞系で、E1 タンパク質(E1AとE1B;Grahamら、1977)を構成的に発現する、29 3と名付けられた唯一のヘルパー細胞系に依存する。E3領域は、アデノウイル スゲノムから取り除くことができるため(JonesとShenk、1978)、最近のアデノ ウイルスベクターは、293細胞の助けを借りて、外来DNAをE1とE3のど ちらか、または両方の領域に持ち込む(GrahamとPrevec、1991)。自然では、ア デノウイルスは、野生型ゲノムの約105%をパッケージすることができるため (Ghosh−Choudhuryら、1987)、約2kbのDNAを余計に収容する能力がある 。E1およびE3領域において置換可能な約5kbのDNAを一緒にすると、ほ とんどのアデノウイルスベクターの最大収容量は、少なくとも7.5kb、即ち ベクターの全長の約15%になる。80%以上のアデノウイルスのウイルスゲノ ムがベクターの骨組みに残ることになる。 組換えE1欠損アデノウイルスを用いた、in vivoでの遺伝子導入は、宿主の 免疫反応を誘発しうる初期および後期の遺伝子発現をもたらすが、これによって 、導入遺伝子の発現期間が制限され、遺伝子治療へのアデノウイルスの使用が制 限 される。これらの問題が起こる可能性を避けるために、免疫原性、および/また は細胞傷害性のウイルスタンパク質が発現するのを最小限に抑える目的で、より 長い欠失をもつ組換えアデノウイルスを作出するために、原核生物のCre−l oxP組換えシステムが採用されてきた(Lieberら、1996)。 ヘルパー細胞系は、ヒト胚の腎臓細胞、筋細胞、造血細胞、または、その他の ヒト胚の間充織細胞もしくは上皮細胞などのヒト細胞に由来するものであっても よい。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスを受容する別の哺乳動物 種の細胞に由来するものであってもよい。このような細胞には、例えば、ベロ細 胞、またはその他のサル胚の間充織細胞もしくは上皮細胞などがある。前記した ように、好ましいヘルパー細胞系は293である。 最近、レイカー(Racher)ら(1995)は、293細胞を培養し、アデノウイル スを増殖させるための改良法を開示した。一つの方式において、天然の細胞集塊 を、100〜200mlの培地を入れた、1リットルのシリコン化スピナーフラ スコ(イギリス国ケンブリッジにあるテクネ社(Techne)製)の中に各細胞を接 種して増殖させる。40rpmで撹拌した後、トリパンブルーで細胞の生存率を 調べる。別の方式においては、Fibra−Celマイクロキャリヤー(イギリ ス国ストーン(Stone)、ビビースターリン社(Bibby Sterlin)製)(5g/ l)を以下のようにして用いる。細胞接種源を5mlの培地に再懸濁し、250 mlの三角フラスコの中の担体(50ml)に加え、ときどき振とうしながら、 1時間〜4時間、静置する。次に、培地を、50mlの新しい培地に置き換え、 振とうを開始する。ウイルスを産生させるため、約80%集密状態になるまで細 胞を増殖させ、その後、培地を置き換えて(最終容量の25%になるまで)、0 .05MOIでアデノウイルスを加える。培養液を一晩静置しておき、その後、 容量を100%に増やして、さらに72時間の振とうを開始する。 場合によっては、上皮由来の細胞に比べて、アデノウイルスによる多種の細胞 型への遺伝子送達は、ずっと非効率的であることが分かっている。新しいアデノ ウイルスであるAdPKが、この非効率を克服するために構築されている(Wick hamら、1996)。AdPKは、ウイルスを、多くの細胞型で広範に発現されてい るヘパラン含有細胞受容体に向かわせるヘパリン結合ドメインを含んでい る。したがって、AdPKは、改変されていないアデノウイルスに比べて、高い 効率で多くの細胞型に遺伝子を運搬するため、こうして、遺伝子導入効率が向上 し、アデノウイルスによる効率的な遺伝子治療を受け入れる組織の範囲が広がる 。 アデノウイルスベクターが複製欠損株、または、少なくとも、条件的欠損株で なければならないという要件以外には、アデノウイルスベクターの性質が、本発 明の実施に決定的な要件になるとは考えられない。アデノウイルスは、42種の 既知の血清型、またはA〜Fの亜属のいずれのものでもよい。C亜群の5型アデ ノウイルスが、本発明で使用するための条件的複製欠損アデノウイルスベクター を得るための好ましい出発材料である。これは、5型アデノウイルスが、生化学 的および遺伝子情報の多くが知られているヒトアデノウイルスであり、歴史的に 、アデノウイルスをベクターとして用いる構築のほとんどに用いられてきたから である。 前記したように、本発明に係る典型的なベクターは、複製欠損株であり、アデ ノウイルスのE1領域をもっていない。したがって、E1コーディング配列が取 り除かれている位置に、外来遺伝子の発現カセットを導入するのが最も好都合で ある。しかし、アデノウイルス配列中の構築物挿入位置は、本発明にとって重要 ではない。また、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、カールソン( Karlsson)ら(1986)が説明しているようにして、E3置換ベクターの欠失した E3領域のかわりに挿入することもでき、または、ヘルパー細胞系、またはヘル パーウイルスがE4欠損を補完しているときには、E4領域に挿入することがで きる(Broughら、1996)。 アデノウイルスの増殖および操作は、当業者に既知であり、in vitroおよびin vivoで、広範な宿主範囲を示す。このウイルスグループは、例えば、1ml当 り109〜1011プラーク形成単位という高い濃度で得ることができ、また、そ れらは非常に高い感染力をもつ。アデノウイルスの生活環では、宿主細胞ゲノム への組み込みは必要とされない。アデノウイルスベクターにより運搬される外来 遺伝子は、染色体外(episomal)にあり、そのため、宿主細胞に対する遺伝子傷 害性が低い。野生型アデノウイルスによる予防接種実験において、重篤な副作用 は報告されたことがない(Couchら、1963;Topら、1971)が、このことは、 in vivoでの遺伝子導入ベクターとしての安全性と治療薬としての可能性を示し ている。 アデノウイルスベクターは、真核生物の遺伝子発現(Levreroら、1991;Gomez −Foixら、1992)、およびワクチン開発(GrunhausとHorwitz、1992;GrahamとP revec、1992)に用いられてきた。最近、動物実験によって、組換えアデノウイ ルスを遺伝子治療に使用しうることが示唆された(Stratford−PerricaudetとPe rricaudet、1991、Stratford−Perricaudetら、1991:Richら、1993)。組換え アデノウイルスを異なった組織に投与する研究には、気管滴注(Rosenfeldら、19 91、1992)、筋肉注射(Ragotら、1993)、末梢静脈内注射(HerzとGerard、1993 )、および脳の中への定位接種(Le Gal La Salleら、1993)などがある。組換 えアデノウイルスとアデノ随伴ウイルス(下記参照)は、分裂しないヒトの初代 細胞に感染して、かつ形質導入することができる。 2.AAVベクター アデノ随伴ウイルス(AAV)も、高頻度で組み込まれ、また、分裂しない細 胞に感染することができ、そのために、例えば、組織培養中の(Muzyczka、1992 )、またはin vivoで、哺乳動物の細胞に遺伝子を搬送するのに有用であるため 、腫瘍抑制遺伝子の搬送と発現を行うためのベクターを構築するのに魅力的な系 である。AAVは、広範な感染宿主範囲をもつ(Tratschinら、1984;Laughlin ら、1986;Lebkowskiら、1988;McLaughlinら、1988)。rAAVベクターの作 製と使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号と米国特許第4,797,368号に記 載されており、これらは参照として本明細書に組み入れられる。 遺伝子の搬送にAAVを使用することを示した研究には、LaFaceら(1988); Zhouら、(1993);Flotteら、(1993);およびWalshら(1994)がある。組換 えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplittら、1994;Lebkowskiら、1988; Samulskiら、1989;Yoderら、1994;Zhouら、1994a;HermonatとMuzyczka、198 4;Tratschinら、1985;McLaughlinら、1988)、およびヒトの病気に関連した遺 伝子(Flotteら、1992;Luoら、1994;Ohiら、1990;Walshら、1994;Weiら、19 94)のin vitro、およびin vivoでの形質導 入に用いるのに成功してきた。最近、AAVベクターは、嚢胞性線維症を治療す るためのヒトの第一相試験に用いることが認可された。 AAVは、培養細胞において増殖的な感染を行うには、別のウイルス(アデノ ウイルス、または、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーのいずれか)と共に 感染する必要があるという点で、依存的なバルボウイルスである(Muzycz ka、1992)。ヘルパーウイルスとの共感染がないと、野生型AAVゲノム は、プロウイルスとして潜伏状態で住みつく場所であるヒトの第19番染色体の 中に末端から入り込んでゆく(Kotinら、1990;Samulskiら、1991)。しかし、 rAAVは、AAVのRepタンパク質も発現されていないかぎり、組み込まれ るのは第19番染色体に限定されない(ShellingとSmith、1994)。AAVプロ ウイルスを保持する細胞が、ヘルパーウイルスに重複感染すると、染色体または 組換えプラスミドからAAVゲノムが「救済」されて、正常な増殖性感染が確立 される(Samulskiら、1989;McLaughlinら、1988;Kotinら、1990;Muzyczka、1 992)。 典型的には、組換えAAV(rAAV)ウイルスは、AAVの2つの末端反復 配列にはさまれた目的の遺伝子を含むプラスミド(McLaughlinら、1988;Samuls kiら、1989、これらは参照として本明細書に組み入れられる)と、末端反復配列 をもたない野生型AAVコーディング配列を含む発現プラスミド、例えば、pI M45(McCartyら、1991;これは参照として本明細書に組み入れられる)と、 を共感染させて作製する。この細胞は、アデノウイルス、または、AAVヘルパ ー機能に必要なアデノウイルス遺伝子をもつプラスミドによっても感染または形 質転換する。このようにして作られたrAAVウイルスのストックにはアデノウ イルスが混入しており、このアデノウイルスを熱ショックによって不活性化させ るか、または、rAAVウイルス粒子から物理的に(例えば、塩化セシウム密度 勾配遠心によって)分離する必要がある。あるいは、AAVのコーディング領域 を含むアデノウイルスベクター、または、AAVのコーディング領域とアデノウ イルスのヘルパー遺伝子の一部または全部を含む細胞系を用いることもできるか もしれない(Yangら、1994;Clarkら、1995)。プロウイルスとして組み込まれ たrAAV DNAをもつ細胞系を用いることもできる(Flotteら、 1995)。 3.レトロウイルスベクター 本発明の特定の態様において、レトロウイルス感染を利用して、選択された遺 伝子を標的細胞に搬送することが望ましい。レトロウイルスは、逆転写という方 法によって、感染した細胞の中で、自らのRNAを二本鎖DNAに変換すること ができるという特徴をもつ一本鎖RNAウイルスのグループである(Coffin、19 90)。そして、その結果できたDNAは、プロウイルスとして、安定して細胞の 染色体の中に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を行わせる。この組み込み によって、受容細胞とその子孫の中でウイルス遺伝子の配列が保持される結果と なる。レトロウイルスゲノムは、それぞれ、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ 酵素、エンベロープ成分をコードするgag、pol、envという3つの遺伝 子をもつ。gag遺伝子の上流に見られる配列は、ゲノムをウイルス粒子にパッ ケージングするためのシグナルを含んでいる。2つの長い末端反復配列(LTR )が、ウイルスゲノムの5'末端と3'末端に存在する。これらは、強力なプロモ ーターとエンハンサーの配列をもち、また、宿主細胞のゲノムに組み込まれると きにも必要である(Coffin、1990)。 レトロウイルスベクターを構築するために、目的の遺伝子をコードする核酸を 、複製欠損ウイルスを産生するために、ウイルスゲノムの中の一定のウイルス配 列の位置に挿入する。ウイルス粒子を産生するために、gag、pol、env 遺伝子を含むが、LTRとパッケージング成分を含まないパッケージング細胞系 を構築する(Mannら、1983)。レトロウイルスのLTRおよびパッケージング配 列とともにcDNAを含む組換えプラスミドがこの細胞系の中に(例えば、リン 酸カルシウム沈殿法によって)導入されると、パッケージング配列によって、組 換えプラスミドのRNA転写産物がウイルス粒子にパッケージされて、培養培地 の中に分泌される(NicolasとRubenstein、1988;Temin、1986;Mannら、1983) 。次に、組換えレトロウイルスを含む培地を回収して、場合によっては、濃縮し て、遺伝子導入に用いる。レトロウイルスベクターは、非常に多様な細胞型に感 染することができる。しかし、組み込みと安定した発現には、宿主細胞の 分裂が必要である(Paskindら、1975)。 欠陥レトロウイルスベクターの使用に関する懸念は、パッケージング細胞の中 に、複製能のある野生型ウイルスが出現する可能性である。これは、組換えウイ ルスの完全な配列が、宿主細胞ゲノムの中に組み込まれたgag、pol、en vの配列の上流に挿入されるという組換え現象によって生じうる。しかし、今で は、組換えの確率を大幅に低下させる新しいパッケージング細胞系を利用するこ とができる(Markowitzら、1988;Hersdorfferら、1990)。 場合によっては、宿主細胞の範囲が限られることと、レトロウイルスベクター の濃度が低いことが、真核生物細胞での安定した遺伝子導入にそれらを用いるこ とを制限するかもしれない。これらの潜在的な問題を克服するために、レトロウ イルスのエンベロープ糖タンパク質が、水疱性口内炎ウイルスのG糖タンパク質 によって完全に置き換えられている、マウス白血病ウイルスに由来するベクター が開発されている(Burnsら、1993)。これらのベクターを極端に高い濃度(1 09コロニー形成単位/ml)に濃縮して、レトロウイルスのエンベロープタン パク質を含むベクターによる感染に対して通常は抵抗力のある細胞に感染させる ことができる。これらのベクターは、遺伝子治療モデルの研究、およびin vivo でベクターを直接に搬送することを必要とする他の遺伝子導入研究を促進するこ とができる。 4.バキュロウイルスベクター バキュロウイルス発現ベクターは、さまざまな用途のためのタンパク質を生産 するために有用な手段である(SummersとSmith、1987;O'Reillyら、1992;また 、米国特許第4,745,051号(SmithとSummers)、第4,879,236号(SmithとSummers )、第5,077,214号(GuarinoとJarvis)、第5,155,037号(Summers)、第5,162, 222号(GuarinoとJarvis)、第5,169,784号(SummersとOker−Blom)、および第 5,278,050号(Summers);これらは参照として本明細書に組み入れられる)。本 発明者らは、テトラサイクリンによって遺伝子発現が調節されるバキュロウイル ス発現ベクターの構築を想定している。これらのベクターは、例えば、所望のタ ンパク質が昆虫細胞にとって毒性な場合に、特に有用かもしれ ない。これらの例においては、細胞が非常に高密度になるまでタンパク質の産生 を停止させることができ、それによって、所望のタンパク質を大量に生産するこ とが可能になる。 バキュロウイルス発現ベクターは、必須でないバキュロウイルス遺伝子の代わ りに、プロモーターの後ろに目的とする特定の遺伝子のコーディング領域を置い た、組換え昆虫ベクターである。組換えバキュロウイルス発現ベクターを単離す るために用いられる古典的な方法は、目的とする外来遺伝子が、ポリヘドリンプ ロモーターの下流に置かれているプラスミドを構築することである。そして、相 同的組換えによって、そのプラスミドを用い、野生型ポリヘドリン遺伝子の代わ りに、新しい遺伝子をウイルスゲノムの中に導入することができる(SummersとS mith、1987;O'Reillyら、1992)。 この結果できた組換えウイルスは、鱗翅目昆虫の培養細胞または幼虫に感染さ せることができ、強く、感染最後期における非常に高い転写レベルを提供するポ リヘドリンプロモーターの制御下で、外来遺伝子を発現させることができる。ポ リヘドリンプロモーターが強いことは、通常、感染している間に外来遺伝子産物 の大量合成がもたらされるため、組換えバキュロウイルスを発現ベクターとして 用いることの長所である。 5.その他のウイルスベクター 本発明において、発現ベクターを構築するために、この他のウイルスベクター を用いることができる。ワクシニアウイルス(Ridgeway、1988;BaichwalとSugd en、1986;Couparら、1988)、シンドビスウイルス、およびヘルペスウイルスな どのウイルスに由来するベクターを使用してもよい。これらは、さまざまな哺乳 動物細胞にとって、いくつかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann、1989;Rid geway、1988;BaichwalとSugden、1986;Couparら、1988;Horwichら、1990)。 最近、欠陥B型肝炎ウイルスが存在することが分かったことによって、さまざ まななウイルスの配列の構造と機能の関係に対する新しい洞察が得られた。in v itroの実験によって、このウイルスは、そのゲノムの80%までが欠失してい るにも拘らず、ヘルパー依存的なパッケージングと逆転写に関する能力を保持で きることが示された(Horwichら、1990)。このことは、ゲノムの大部分が、外 来遺伝子材料によって置き換えられることを示唆した。チャン(Chang)ら(199 1)は、最近、アヒルのB型肝炎ウイルスゲノムの中に、ポリメラーゼ、表面、 およびプレ表面のコーディング配列に代わって、クロラムフェニコールアセチル トランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を導入した。これを、野生型ウイルスとと もにトリ肝癌細胞系の中に感染させた。高濃度の組換えウイルスを含む培養培地 を用いて、アヒルのひなの初代肝細胞に感染させた。安定したCAT遺伝子発現 が、トランスフェクション後、少なくとも24日間は検出された(Changら、199 1)。 6.改変ウイルス 本発明のさらなる態様において、特に、選択された遺伝子を特定の細胞型に運 搬することが望ましいときには、運搬される発現構築物を、特異的な結合リガン ドを発現するように遺伝子操作された感染性のあるウイルスの中に入れる。こう して、このウイルス粒子は、標的細胞のコグネイト受容体に特異的に結合して、 その内容物を細胞に輸送する。最近、ウイルスのエンベロープにラクトース残基 を化学的に付加して、レトロウイルスを化学的に改変することに基づいた、レト ロウイルスベクターの特異的なターゲッティングを可能とするように設計された 新規の方法が開発された。この改変によって、シアロ糖タンパク質受容体による 肝細胞の特異的感染が可能になる。 レトロウイルスのエンベロープタンパク質、および特異的な細胞受容体に対す るビオチニル化抗体を用いる、組換えレトロウイルスを標的とする別の方法が設 計された。この抗体は、ストレプトアビジンを用いると、ビオチン成分によって 結合した(Rouxら、1989)。主要組織適合複合体のクラスIおよびクラスII抗 原に対する抗体を用いたところ、in vitroで、エコトロピックウイルスによって 、これらの表面抗原をもつさまざまなヒト細胞に感染することが示された(Roux ら、1989)。 C.DNAを搬送する別の方法 上記のように、細胞への感染によってDNAを搬送するウイルス媒介法と同じ ように、本発明の腫瘍抑制遺伝子を原核生物細胞と真核生物細胞の両方に導入す る別法について考える。 1.トランスフェクションとトランスフォーメーション 遺伝子構築物の発現をもたらすためには、発現構築物を細胞の中に搬送しなけ ればならない。本明細書で説明されているように、搬送のための好ましいメカニ ズムは、ウイルス感染によるもので、そこでは発現構築物が感染性ウイルス粒子 に被包されている。しかし、ウイルスによらないで、真核生物または原核生物の 細胞の中に発現構築物を導入するための幾つかの方法も、本発明で考察されてい る。本発明の一つの実施形態において、発現構築物は、剥き出しの組換えDNA またはプラスミドのみからできていてもよい。構築物の導入は、物理的または化 学的に細胞膜を透過できるようにする説明されている方法のいずれかによって行 うことができる。 a.リポソームによるトランスフェクションとトランスフォーメーション 本発明のさらなる態様において、発現構築物をリポソームの中に閉じ込めるこ とができる。リポソームは、リン脂質の二層膜と、内部の水性培地によって特徴 づけられる小胞性の構造物である。多層状のリポソームは、水性培地によって分 けられる多重脂質層をもつ。それらは、リン脂質を過剰の水性溶液に懸濁すると 自然に形成される。脂質成分は、閉鎖構造をとる前に自己再構成を起こして、脂 質二重層の間に水と溶質を閉じ込める(GhoshとBachhawat、1991)。また、リポ フェクタミン(Lipofectamine)(ギブコBRL社(Gibco BRL)製)と複合体 を形成した発現構築物も考えられている。 リポソームによる核酸の搬送と、外来DNAのin vitro発現には成功している (NicolauとSene、1982;Fraleyら、1979;Nicolauら、1987)。ウォン(Wong) ら(1980)は、ニワトリ胚、HeLa、および肺癌の細胞培養において、外来D NAのリポソームによる搬送と発現の実施可能性を明らかにした。 本発明の一定の実施形態において、リポソームは、血球凝集ウイルス(HVJ )と複合体を形成していてもよい。こうすると、細胞膜との融合が促進され、リ ポソームに被包されたDNAが細胞の中に入りやすくなることが示されている( Kanedaら、1989)。別の実施形態において、リポソームは、ヒストン以外の核の 染色体タンパク質(HMG−1)とともに、複合体を形成させたり、用いること ができる(Katoら、1991)。さらに別の態様において、リポソームは、HVJお よびHMG−1とともに、複合体を形成させたり、用いることができる。 b.エレクトロポレーション 本発明の一定の実施形態において、エレクトロポレーションによって、発現構 築物を細胞の中に導入する。エレクトロポレーションは、細胞およびDNAの懸 濁液を、高電圧の放電に曝すことを含む。 エレクトロポレーションを用いた、真核生物細胞のトランスフェクションは、 十分な成功を収めている。ヒトのカッパ免疫グロブリン遺伝子によって、マウス の前Bリンパ球をトランスフェクトし(Potterら、1984)、また、この方法で、 クロラムフェニコールアセチルトランフェラーゼ遺伝子によって、ラットの肝細 胞をトランスフェクトしている(Tur−Kaspaら、1986)。 c.リン酸カルシウム沈殿法とDEAE−デキストラン処理法 本発明の別の実施形態において、リン酸カルシウム沈殿法を用いて、発現構築 物を細胞に導入する。この技術を用いて、アデノウイルス5 DNA(Grahamと Van Der Eb、1973)によって、ヒトのKB細胞をトランスフェクトしている。ま た、この方法で、ネオマイシンマーカー遺伝子によって、マウスL(A9)細胞 、マウスC127細胞、CHO細胞、CV−1細胞、BHK細胞、NIH3T3 細胞、およびHeLa細胞をトランスフェクトし(ChenとOkayama、1987)、ま た、さまざまななマーカー遺伝子によってラット肝細胞をトランスフェクトした (Rippeら、1990)。 別の実施形態において、DEAE−デキストランを用いてから、ポリエチレン グリコールを用いて、発現構築物を細胞の中に輸送する。この方法では、レポー タープラスミドをマウスの骨髄腫細胞と赤白血病細胞の中に導入した(Gopal、1 985)。 d.パーティクルガン法 剥き出しのDNA発現構築物を細胞の中に導入するための、本発明の別の実施 形態は、パーティクルガン法を含むことができる。この方法は、DNAで被覆し た微小発射物を加速して、細胞を殺すことなく、それらが細胞膜を貫通して細胞 の中に入り込むことができるような高速度にすることができる能力に依存する( Kleinら、1987)。小さな粒子を加速するための装置がいくつか開発されている 。このような装置の一つは、電流を発生させるために高圧放電に頼り、そして、 それが順次原動力となる(Yangら、1990)。用いられる微小発射物は、タングス テンや金でできたビーズのように、生物学的に不活性な物質からできている。 e.直接マイクロインジェクション、または音波処理 本発明のさらなる実施形態は、発現構築物の直接的なマイクロインジェクショ ンまたは音波処理による導入が含まれる。直接的なマイクロインジェクションを 用いて、核酸構築物をアフリカツメガエルの卵母細胞の中に導入し(HarlandとW eintraub、1985)、また、音波処理によりチミジンキナーゼ遺伝子でLTK-線 維芽細胞をトランスフェクトした(Fechheimerら、1987)。 f.アデノウイルス補助によるトランスフェクション 本発明の一定の実施形態において、アデノウイルス補助によるトランスフェク ションを用いて、細胞の中に発現構築物を導入する。アデノウイルス結合系を用 いた細胞系において、形質転換効率が上昇することが報告されている(Kelleher とVos、1994;Cottonら、1992;Curiel、1994)。 g.受容体によるトランスフェクション 構築物を標的細胞に送達するために用いられる、さらなる発現構築物は、受容 体による送達ビヒクルである。これらは、標的細胞の中で起こる受容体依存型エ ンドサイトーシスによる、高分子の選択的取り込みを利用する。さまざまな受容 体の細胞型特異的な分布を考慮すると、この送達法は、本発明に、ある程度の特 異性を加える。別の哺乳動物の細胞型に関連する特異的な送達法については、Wu とWuによって説明されている(1993;参照として本明細書に組み入れられる)。 一定の受容体依存型の遺伝子ターゲティングビヒクルは、受容体特異的なリガ ンド、およびDNA結合剤を含む。別の送達ビヒクルは、送達すべきDNA構築 物が機能可能なように結合している、細胞受容体に特異的なリガンドを含む。い くつかのリガンドが、受容体依存型遺伝子導入に使用されており(WuとWu、1987 、Wagnerら、1990、Peralesら、1994、Myers、欧州特許第0273085号)、この技術 の実施可能性が確認されている。本発明に関連して、リガンドは、神経内分泌標 的細胞集団で特異的に発現される受容体に対応するように選ばれる。 別の態様において、細胞特異的な遺伝子ターゲティングビヒクルのDNA送達 ビヒクル成分は、リポソームに結合した特異的結合リガンドを含むことができる 。送達される核酸は、リポソームの中に閉じ込められていて、特異的結合リガン ドは、機能的に、リポソーム膜の中に取り込まれている。このように、リポソー ムは、標的細胞の受容体に特異的に結合して、その中身を細胞に運搬する。例え ば、上皮増殖因子(EGF)受容体のアップレギュレーションを示す細胞への核 酸の受容体依存型送達に、EGFを用いるシステムを用いると、このようなシス テムが機能することがわかっている。 さらに別の態様において、ターゲティング送達ビヒクルのDNA送達ビヒクル 成分は、リポソームそのものでもよく、好ましくは、細胞特異的結合を指令する 一つ以上の脂質または糖タンパク質を含んでいる。例えば、Nicolauら(1987)は 、ガラクトース末端側アシアロガングリオシドであるラクトシルセラミドを用い て、リポソームの中に取り込ませて、肝細胞によるインシュリン遺伝子の取り込 みが上昇することを観察した。本発明の組織特異的形質転換構築物を、同じよう にして、標的細胞の中に特異的に送達することができると考えられる。 D.マーカー遺伝子 本発明のある態様では、タグ付けされた細胞の運命について情報を提供するた めに、特異的な遺伝子マーカーで特異的な細胞をタグ付けする。このようにして 、本発明は、全細胞アッセイに基づき、レポーター遺伝子の上流に置かれた一般 的なDNAプロモーターが機能する条件下でだけ現れ、容易に検出できる表現形 質をその組換え宿主に付与するレポーター遺伝子を好ましくは用いる、組換え候 補のスクリーニングおよび選択の方法も提供する。一般的に、レポーター遺伝子 は、例えば、細胞培養物の蛍光測定、放射性同位元素、または分光光度測定で解 析するなど、細胞培養物を解析して検出することができ、宿主細胞では産生され ないポリペプチド(マーカータンパク質)をコードしている。 本発明の別の態様では、DNAもしくはRNAのPCRTMによる増幅、または、 蛍光測定的、放射性同位元素の、または分光光度測定的なプローブを用いたハイ ブリダイゼーションなどの標準的な遺伝子解析技術によって検出できる遺伝子マ ーカーが提供されている。 1.スクリーニング 当業者には公知のように、酵素の具体例としては、エステラーゼ、ホスファタ ーゼ、プロテアーゼ(組織プラスミノーゲン活性化因子またはウロキナーゼ)、 および、それらの活性によって検出することができるその他の酵素が含まれる。 本発明において用いることを考えると、導入遺伝子の発現マーカーとしては、緑 色蛍光タンパク質(GFP)である(Chalfieら、1994)。GFPを使用すれば、 外から基質を加える必要はなく、近紫外光、または青色光によって照射するだけ である。このため、生細胞での遺伝子発現をモニターするときに使用できる可能 性がかなり高い。 別の具体的な例は、放射性標識した基質とともに用いることのできるクロラム フェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)酵素、ホタルおよび細菌の ルシフェラーゼ、および細菌の酵素であるβ−ガラクトシダーゼとβ−グルクロ ニダーゼである。同じ仲間に含まれる、この他のマーカー遺伝子は、当業者にと って周知であり、本発明で使用するのに適している。 2.選択 宿主細胞に検出可能な特徴を付与する、別の仲間のレポーター遺伝子とは、そ れらの形質転換体に毒素に対する耐性をもたらす、一般的には酵素であるポリペ プチドをコードするレポーター遺伝子のことである。これに分類されるレポータ ー遺伝子の例には、抗生物質G418の毒性レベルに対して宿主細胞を守るne o遺伝子(Colberre-Garapinら、1981)、ストレプトマイシン耐性を付与する遺伝 子(米国特許第4,430,434号)、ハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子(Sant erreら、1984、米国特許第4,727,028号、第4,960,704号および第4,559,302号)、 ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードし、メトトレキセートに対する耐性を付与す る遺伝子(Altら、1978)、HPRT酵素、および当技術分野において周知のその 他多くのものがある(Kaufman、1990)。 E.生物学的に同等の活性があるもの 本発明は、レチノブラストーマタンパク質で例示されている腫瘍抑制タンパク 質で、そのN末端領域に、その結果できたタンパク質に同等、またはより大きな 腫瘍抑制活性を付与する改変を含む腫瘍抑制タンパク質の使用を意図しているが 、タンパク質の改変されていないC末端部位を、生物学的活性が維持されるよう に変更することも、本発明の範囲に含まれる。 上記のように、例えば、レチノブラストーマタンパク質の構造に改変および変 更を加えることができ、それでもなお、同等の、または望ましい特徴をもつ分子 が得られる。例えば、腫瘍抑制活性を明らかに失うことなく、タンパク質構造に おいてあるアミノ酸を別のアミノ酸で置き換えることができる。タンパク質の生 物学的機能活性を決めるのは、そのタンパク質の相互作用能力と性質であるから 、タンパク質配列(または、もちろん、そのもととなるDNAのコード配列でも よい)の中で一定のアミノ酸置換を作出し、それにもかかわらず、同様の(アゴ ニスト)特性を得ることができる。同様に、同じ考察を用いて、相殺する(例え ばアンタゴニスト)特性をもつタンパク質またはポリペプチドを作出することが できる。このように、本発明者らは、生物学的有用性または活性に明らかな損失 を与えることなしに、腫瘍抑制タンパク質またはペプチド(そのもととなるDN A)の配列中にさまざまな変化を作出することを考えている。 機能的に同等なものということに関して、当業者は、生物学的に機能が同等な タンパク質またはペプチドという定義に内在するのは、分子の一定の部位の中で 作出することができ、それでも許容できる程度に同等の生物学的活性をもつ分子 ができるような変更の数には限りがあるという概念であることを十分に理解して いるはずである。したがって、生物学的な機能が同等なペプチドは、ここでは、 大部分でも全部でもない、一定のアミノ酸を置換されているアミノ酸と定義され る。もちろん、異なった置換をもつ複数の別のタンパク質/ペプチドを容易に作 出し、本発明にしたがって使用することができる。 例えば、活性部位にある残基のように、タンパク質またはペプチドの生物学的 または構造的な特性にとって、一定の残基が特に重要であると分かっている場合 には、一般的に、その残基を交換してはならないことも十分に理解されている。 当技術分野において周知の保存的置換には、例えば、以下の変化が含まれる。 すなわち、アラニンからセリン;アルギニンからリシン;アスパラギンからグル タミンまたはヒスチジン;アスパラギン酸からグルタミン酸;システインからセ リン;グルタミンからアスパラギン;グルタミン酸からアスパラギン酸;グリシ ンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミン;イソロイシン からロイシンまたはバリン;ロイシンからバリンまたはイソロイシン;リシンか らアルギニン、グルタミンまたはグルタミン酸;メチオニンからロイシンまたは イソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシンまたはメチオニン;セ リンからスレオニン;スレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チ ロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニン;および、バリンからイソロ イシンまたはロイシン。 このような変更を加えるときに、アミノ酸の疎水親水指数(hydropathic index )を考慮することができる。各アミノ酸は、疎水性と荷電特性に基づいて、疎水 親水指数を付与されている。すなわち、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロ イシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオ ニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0. 8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3. 2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギ ン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。 相互作用的な生物学的機能をタンパク質に付与するときに、疎水親水アミノ酸 指数が重要なことは、当技術分野においては一般的に理解されている(Kyte & Do olittle、1982、参照として本明細書に組み入れられる)。一定のアミノ酸を、同 じような疎水親水アミノ酸指数またはスコアをもつ別のアミノ酸と置換すること ができ、同様の生物学的活性を保持することが知られている。疎水親水アミノ酸 指数に基づいて変化を生じさせようとするときには、疎水親水指数が±2の範囲 にあるアミノ酸と置換することが好ましいが、±1の範囲にあるものが、特に好 ましく、±0.5の範囲にあるものが、さらに一層好ましい。 疎水性に基づいて、効果的に、類似のアミノ酸置換を行うことができることも 、当技術分野において理解されている。米国特許第4,554,101号が、参照として 本明細書に組み入れられるが、これは、隣接するアミノ酸の疎水性によって支配 される、タンパク質の局所的な疎水性の平均の最大値は、免疫原性と抗原性、す なわち、そのタンパク質の生物学的特性と相関しているので、この短い部分を非 免疫学的な材料として使用することを記述している。アミノ酸は、同じような疎 水性値をもつ別のアミノ酸に置換することができ、なお、生物学的に同等で、特 に、免疫学的に同等のタンパク質を得ることができると理解されている。 米国特許第4,554,101号で詳述されているように、以下の親水性値は、アミノ 酸残基に与えらたものである。アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン 酸(+3.0±1);グルタミン酸酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2); グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラ ニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン (-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラ ニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。 類似の親水性値に基づいて変更を行うとき、親水性値が±2の範囲内にあるア ミノ酸置換が好ましく、±1の範囲内にあるものが特に好ましく、±0.5の範囲 内にあるものがさらに一層好ましい。 アミノ酸置換によって生じる機能的に同等なポリペプチドを中心に考察したが 、遺伝子暗号が縮重していること、および、2つ以上のコドンが同じアミノ酸を コ ードしていることもあることを考慮すれば、これらの変化は、コードDNAを変 化させることによって生じさせることもできると認めれらよう。アミノ酸と、そ れらのコドンとの2つの表を、このような実施形態において使用するため、また 、プローブやプライマーなどを設計するなど、他の用途に使用するために下記に 示す。コドンの使用度は左(最高の使用度)から右(最低の使用度)に向けて減少する ものとして示してある。 下線を引いたコドンは1000のコドンあたり5回より少ない使用度のものである。コドンの使用度は左(最高の使用度)から右(最低の使用度)に向けて減少する ものとして示してある。 下線を引いたコドンは1000のコドンあたり5回より少ない使用度のものである。 F.突然変異誘発 特定の腫瘍抑制タンパク質またはサイトカインタンパク質の配列の中に一つ以 上の変異を有するオリゴヌクレオチドを合成することを含むが、これに限定され ない、当技術分野において既知の技術のいずれかにしたがって、突然変異誘発を 行うことができる。特に、部位特異的突然変異誘発は、もととなるDNAの特異 的な突然変異誘発によって、個々のペプチド、または生物学的な機能が同等のタ ンパク質またはペプチドを調製するときに有用な技術である。この技術によって 、例えば、前述の考慮を一つ以上取り入れて、DNAに一つ以上の塩基配列の変 化を導入することによって、さらに、変異配列を迅速に調製し、調べることがで きるようになる。 部位特異的突然変異誘発によって、所望の変異をもつDNA配列をコードする 特異的なオリゴヌクレオチドと、それに隣接する十分な数のヌクレオチドを使用 することによって変異体を作製し、十分な長さのプライマー配列と、向かい合う 欠失接合部の両側で安定した二本鎖を形成する配列の複雑性を提供することがで きる。典型的には、約17〜約75ヌクレオチド、またはそれ以上の長さのプライマ ーで、改変された配列の接合部の両側に約10〜約25ヌクレオチドをもつものが好 ましい。 一般的に、部位特異的突然変異誘発の技術は、さまざまな刊行物で例示されて いるように、当技術分野において周知である。正しく評価するならば、この技術 は、典型的には、一本鎖と二本鎖の両方の形状で存在するファージベクターを用 いる。部位特異的突然変異誘発において有用な、具体的なベクターには、M13 ファージなどのベクターが含まれる。これらのファージは、簡単に購入すること ができ、それらの使用法は、一般的に、当業者に周知である。二本鎖プラスミド も、部位特異的突然変異誘発において、日常的に用いられ、目的の遺伝子をプラ スミドからファージに移す工程を省いてくれる。 一般的に、本明細書による部位特異的突然変異誘発は、まず一本鎖ベクターを 手に入れるか、所望のペプチドをコードするDNA配列をその配列の中に含む二 本鎖ベクターの2つの鎖を融解分離する。所望の変異配列をもつオリゴヌクレオ チドプライマーは、一般的には合成によって調製する。そして、このプライマー を一本鎖ベクターとアニーリングさせて、変異を含む鎖の合成を完了させるため に、大腸菌ポリメラーゼIクレノウ断片などのDNA合成酵素と反応させる。こ のようにして、一方の鎖は変異を起こしていないもとの配列をコードし、もう一 方の鎖は所望の変異をもっている、ヘテロ二本鎖が形成される。次に、このヘテ ロ二本鎖ベクターを用いて、大腸菌細胞などの適当な宿主を形質転換し、変異配 列の構成をもつ組換えベクターを含むクローンを選択する。遺伝子選択の手順が 、突然変異誘発オリゴヌクレオチドを取り込んだクローンを増幅するために、Ku nkelら(1987)によって考案された。 または、Taqポリメラーゼなど、市販されている耐熱性酵素とともにPCRTMを使 用して、突然変異誘発オリゴヌクレオチドプライマーを、増幅したDNA断片の 中に組み込んでもよい。そして、このDNA断片を、適当なクローニングベクタ ーまたは発現ベクターの中にクローニングすることができる。Tomicら(1990)、 およびUpenderら(1995)のPCRTMによる変異誘発の手順は、このようなプロトコー ルの実例を2つ提供している。耐熱性ポリメラーゼ以外に、耐熱性リガーゼを用 いるPCRTMも、リン酸化された突然変異誘発オリゴヌクレオチドを増幅DNA断 片に組み込むために利用することができる。そして、このDNA断片を、適当な クローニングベクターまたは発現ベクターにクローニングする。Michaelら(1994 )が説明する、突然変異誘発の手順には、このようなプロトコールの例が提供さ れている。 部位特異的突然変異誘発を用いて、選択されたペプチドをコードするDNAセ グメントの配列変異体の調製は、有用な種を作出する手段として提供されている が、ペプチドの配列変異体、および、それをコードするDNA配列を得る方法が 他にないと限定する意味ではない。例えば、所望のペプチド配列をコードする組 換えベクターを、例えば、ヒドロキシルアミンなどの突然変異誘発剤で処理して 、配列変異体を得てもよい。 本明細書中、「オリゴヌクレオチドに対する突然変異誘発の手順」という語は 、特定の核酸分子の濃度を、最初の濃度に比べて増加させるか、または増幅など の検出可能なシグナル濃度の増加をもたらす、鋳型依存的な処理と、ベクターに よる増殖を意味する。本明細書中、オリゴヌクレオチドに対する突然変異誘発の 手 順」という語は、プライマー分子を鋳型依存的に伸長させることを含む処理を意 図している。「鋳型依存的な処理」という語は、新しく合成された核酸の鎖が、 周知の相補的塩基対の原則によって支配される、RNAまたはDNA分子の核酸 合成を意味する(例えば、Watson、1987を参照)。典型的には、ベクターが介在 する方法には、DNAまたはRNAベクターに核酸断片を導入すること、ベクタ ーをクローニングによって増幅すること、および、増幅された核酸断片を回収す ることが含まれる。このような方法の例が、米国特許第4,237,224号によって提 供されており、その全体を引用により本明細書に組み入れる。 G.製薬上許容される組成物および投与経路 臨床適用を想定する場合、意図する適用に適した形態の、テトラサイクリン調 節ベクター、組換えウイルスおよび細胞などのベクターを含めて、タンパク質、 核酸の医薬組成物を調製する必要がある。一般にこれは、本質的に発熱物質なら びにヒトまたは動物に対して有害となりうる他の夾雑物を含まない組成物を製造 することを必要とする。 一般に、患者に導入するのに適した組成物とするために、適切な塩と緩衝剤を 用いることが所望される。本発明の水性組成物は、製薬上許容される担体または 水性媒質中に溶解または分散しており、好ましくはカプセル化されている治療薬 を有効量含む。「製薬上または薬理学上許容される」の語は、動物またはヒトに 投与したとき、有害反応、アレルギー反応または他の好ましくない反応を生じさ せない分子単位および組成物を意味する。本明細書中、「製薬上許容される担体 」は、任意かつすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、 等張剤および吸収遅延剤等を含む。医薬として活性な物質のためのそのような媒 質および薬剤の使用は当該技術において周知である。従来のいかなる媒質または 物質も、本発明のベクターまたは細胞と不適合である場合を除いて、治療組成物 におけるその使用が想定される。他の抗癌剤のような補助有効成分も組成物に組 み込むことができる。 遊離塩基または製薬上許容される塩としての有効成分の溶液は、水中で、ヒド ロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と適切に混合して調製することができ る。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合 物中で、ならびに油中で調製することができる。通常の保存および使用条件下で は、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。静脈内ビヒクル は液体および栄養補給物を含む。防腐剤は、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤お よび不活性ガスを含む。医薬組成物中の種々の成分のpHと厳密な濃度は、周知の パラメータに従って調整される。 ウイルスまたは細胞の有効量は意図する目標に基づいて決定される。「単位用 量」の語は、被験者における使用に適した物理的に分離された単位を意味し、各 々の単位は、その投与、すなわち適切な経路と治療レジメに関連して、所望の応 答を生じるように計算された既定量の治療組成物を含有する。投与する量は、治 療回数と単位用量の両方に従って、治療する被験者、被験者の状態、および所望 する保護に依存する。治療組成物の厳密な量は開業医の判断にも依存し、各個体 に固有である。 1.非経口投与 本発明の活性組成物はしばしば非経口投与用に、例えば静脈内、筋肉内、皮下 、腫瘍内、腫瘍周囲、さらには腹腔内経路を通しての注射用に製剤化される。有 効成分として第2の薬剤を含む水性組成物の調製は、本発明の開示に照らして当 業者には既知であろう。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁 液のいずれかの注射剤として調製することができ、注射前に液体を加えて溶液ま たは懸濁液を調製するのに適した固体形態としても調製でき、また調製物を乳化 することもできる。 遊離塩基または製薬上許容される塩としての活性化合物の溶液は、水中でヒド ロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合して調製することが できる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの 混合物中で、ならびに油中で調製することができる。通常の保存および使用条件 下では、これらの調製物は微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。 注射用に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散液;ゴマ油、落花生油また は水性プロピレングリコールを含む剤形;ならびに滅菌注射溶液または分散液を 即時調製するための滅菌粉末を含む。いずれの場合も、該形態は滅菌されていな ければならず、また容易に注射できる程度に流動的でなければならない。製造お よび保存条件下で安定でなければならず、また細菌や真菌のような微生物の汚染 作用に抗して保存されなければならない。 活性化合物は、中性または塩形態の組成物に製剤化することもできる。製薬上 許容される塩は酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)を含み 、これらは例えば塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒 石酸、マンデル酸のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基で形成 される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または 水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン 、ヒスチジン、プロカインのような有機塩基から誘導することもできる。 担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロ ピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合 物、ならびに植物性油を含む溶媒または分散媒でもよい。適切な流動性は、例え ばレシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子 サイズの保持によって、ならびに界面活性剤の使用によって保持することができ る。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、ク ロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって達成するこ とができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むこと が好ましいであろう。吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウ ムおよびゼラチンを組成物中で使用することにより、注射用組成物の持続吸収を 実現することができる。 滅菌注射溶液は、必要量の活性化合物を必要に応じて上に列挙した様々な他の 成分と共に適当な溶媒中に組み込み、その後濾過滅菌することによって調製され る。一般に分散液は、基本的な分散媒と上に列挙したものの中で必要な他の成分 を含む滅菌ビヒクル中に様々な滅菌有効成分を組み込むことによって調製される 。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、特殊な調製方法として、有効成 分とあらかじめ濾過滅菌したその溶液からの追加の所望成分との粉末を生成する 、真空乾燥および凍結乾燥手法がある。 水溶液での非経口投与のためには、例えば、溶液は必要に応じて適切に緩衝化 されていなければならず、また希釈液は最初に十分な生理食塩水またはグルコー スで等張になっていなければならない。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉 内、皮下、腫瘍内、腫瘍周囲および腹腔内投与に特に適する。これに関して、使 用しうる滅菌水性媒体は、本発明の開示に照らして当業者には既知であろう。例 えば、1回投与量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下注入液1000mlに加えるか、 もしくは指定注入部位に注射することができる(例えば、”Remlngton's Pharma ceutical Sciences”第15版、p.1035‐1038および1570‐1580参照)。投与量の 多少の変動は、治療すべき被験者の症状に依存して必然的に起こるであろう。投 与の責任を担う者が、いかなる場合も、個々の被験者に適した用量を決定する。 2.他の投与経路 静脈内又は筋肉内注射のような非経口投与用に製剤された化合物に加えて、他 の薬学上許容される形態には、たとえば経口投与用の錠剤又はその他の固体;経 時放出カプセル;及びクリーム、ローション、含そう薬、吸入剤等を含めて、現 在使用されている他のあらゆる形態が包含される。 本発明の発現ベクターおよび供給送達ビヒクルは、古典的な医薬製剤を含む。 本発明によればこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を通して使用可能 であるかぎり、いかなる一般的経路を通しても行われる。これは経口、経鼻、舌 下、直腸、膣又は局所を含む。その代わりとして、投与は正所性、皮内、皮下、 筋肉内、腹腔内又は静脈注射によって実施することもできる。注射は、全身、局 部的、局所又は直接注射、たとえば腫瘍への注射でありうる。また切除した腫瘍 床への注射やカテーテルによる持続注入も想定される。そのような組成物は通常 、上述した薬学上許容される組成物として投与されるであろう。 本発明のベクターは、流動性溶液又は懸濁液のいずれかとして注射用組成物の 形態で好都合に投与される;注射の前に液体中に溶解又は懸濁するのに適した固 体形態も調製できる。これらの製剤を乳化することもできる。そのような目的の ための典型的な組成物は、リン酸緩衝生理食塩水1ミリリットル当りヒト血清ア ルブミン50mg又は約100mgまでを含有する。他の薬学上許容される担体 は、塩、防腐薬、緩衝剤等を含めて、水溶液、無毒性賦形剤を含む。非水性溶媒 の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油、ならびに theyloleateのような注射用有機エステルである。水性担体は、水、 アルコール/水溶液、食塩水、塩化ナトリウム、リンガーデキストロース等のよ うな非経口ビヒクルを含む。静脈内ビヒクルは液体栄養補給物を含む。防腐薬は 、抗菌薬、抗酸化薬、キレート化剤および不活性ガスを含む。医薬組成物中の種 々の成分のpHと厳密な濃度は周知のパラメ ータに従って調整される。 追加製剤は経口投与に適する。経口製剤は、たとえば医薬グレードのマンニト ール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウ ム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような典型的賦形剤を含む。当該組成は 、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、持続放出性製剤又は粉末の形態をとる 。経路が局所性であるときには、剤型はクリーム、外用薬、軟膏又はスプレーで ありうる。 治療物質の有効量は意図する目標に基づいて決定される。「単位用量」の語は 、被験者における使用に適した物理的に分離された単位を意味し、各々の単位は 、その投与、すなわち適切な経路と治療処方に関連して所望する応答を生じるよ うに計算された、あらかじめ定められた量の治療組成物を含有する。投与する量 は、治療回数と単位用量の両方に従って、治療する被験者、被験者の状態、およ び所望する保護に依存する。治療組成物の厳密な量は開業医の判断にも依存し、 各個体に固有である。 一部の場合、本発明の治療製剤は、クリームやローションのような局所投与に 適した形態に調製することもできる。これらの形態は、様々な肉腫のような皮膚 に関連する疾患を治療するために使用しうる。 製剤されると、溶液は投与剤型に適合する方法により、治療上有効な量で投与 される。製剤は、上述した注射溶液タイプのような様々な投与形態で、さらには 薬剤放出カプセルやその他の使用可能な同様のものと共に、容易に投与される。 H.化学療法剤 本発明の方法は、患者が呈する個々の疾患又は障害の治療において一般に用い られる他の方法と組合わせることができる。たとえば固形腫瘍の治療に関して、 本発明の方法は、手術、放射線治療等のような古典的アプローチと組合わせて使 用することができる。個々の治療アプローチが本質的に有害である、又は腫瘍抑 制遺伝子治療の効果を打ち消すこと が知られていないかぎり、本発明との組合せが想定される。1つまたはそれ以上 の作用物質をサイトカイン遺伝子療法および/または腫瘍抑制遺伝子療法と組合 わせて使用するとき、明らかに望ましいことではあるが、組合わせた結果が各々 の治療を個別に実施したときに認められる効果に付加的なものである必要はなく 、また確かに可能であり、有利ではあるが、組合わせた治療が相乗効果を示すこ とは特に必要ない。 手術の見地からは、いかなる外科的処置も本発明と組合わせて実施することが できる。放射線治療に関しては、γ線照射、X線、紫外線照射、マイクロ波、さ らには電子放出等のような、腫瘍細胞内で局所的にDNA損傷を誘発する機構が 想定される。腫瘍細胞へのラジオアイソトープの指向送達も想定され、これはタ ーゲティング抗体又は他のターゲティング手段と結合して使用しうる。サイトカ イン療法はまた、併用治療処方にとっての有効なパートナーであることが証明さ れている。種々のサイトカインがそのような併用アプローチにおいて使用できる 。サイトカインの例は、IL‐1α、IL‐1β、IL‐2、IL‐3、IL‐ 4、IL‐5、IL‐6、IL‐7、IL‐8、IL‐9、IL‐10、IL‐ 11、IL‐12、IL‐13、TGF‐β、GM‐CSF、M‐CSF、G‐ CSF、TNFα、TNFβ、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、 BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN‐α、IFN‐β、 IFN‐γを含む。サイトカインは、患者の状態やサイトカインの相対的毒性の ような臨床上の指標と一致した、標準的な処方に従って投与される。以下は、本 発明の特定の具体例における使用に関して想定されるサイトカイン遺伝子を例示 する表であるが、いかなる意味においてもこれに限定されるものではない。 (本頁以下余白) 本発明の組成物は、以下に例示するような化学療法剤である化合物(第2物質) の有効量と組合わせて、治療的投与のために設計されたウイルス又は細胞の有効 量を有することができる。そのような組成物は一般に、薬学上許容される担体中 又は水性媒質中に溶解又は分散される。広い範囲の化学療法剤を本発明の治療遺 伝子と組合わせて使用できる。これらは、たとえば、直接DNAに架橋結合する 物質、DNAに挿入する物質、ならびに核酸合成に影響を及ぼすことによって染 色体異常および有糸分裂異常を導く物質である。 腫瘍破壊力が増強される機構に関わらず、本発明の組合せ治療の局面は疾患の 有効な治療において明らかな有用性を持つ。化学療法剤の投与と組合わせて本発 明の組成物を使用するには、動物内で組み合わされて抗腫瘍作用をもたらすのに 有効な方法で、化学療法剤と組合わせて本明 細書中で開示するような少なくとも第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制遺 伝子を、単に、動物に投与する。それ故これらの薬剤は、腫瘍環境においてそれ らが組み合わさって存在し、組み合わさって作用を生じるのに有効な量で、有効 な期間提供される。この目標を達成するために、改変型レチノブラストーマ腫瘍 抑制遺伝子と化学療法剤を単一組成物として、又は異なる投与経路を用いる2つ の別個の組成物として、動物に同時に投与することができる。 その代わりに、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制遺伝子治療を、数分間から 数週間の範囲の間隔を置いて化学療法剤治療に先行させるか、又は化学療法剤治 療のあとに実施することもできる。化学療法剤と改変型レチノブラストーマ腫瘍 抑制遺伝子を別途に動物に適用する具体例では、一般に、各々の供給送達の時間 に重要な時間的開きはないので、化学療法剤と改変型レチノブラストーマ腫瘍抑 制遺伝子の組成物は、なおも腫瘍に対して好都合に組み合わさった作用を及ぼし うることが保証されるであろう。そのような場合、2つの薬剤を互いに約5分間 から約1週間以内に、より好ましくは互いに約12‐72時間以内に腫瘍に接触 させることが想定されており、約12‐48時間だけの遅延時間が最も好ましい 。ある種の状況では、治療時間を有意に延長させることが望ましいと考えられ、 そのような場合には各々の投与の間に数日間(2、3、4、5、6又は7日間) 、さらには数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8週間)の間隔を置く。ま た、改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制遺伝子又は化学療法剤のいずれかの1回 以上の投与が望ましいことも考えられる。腫瘍の後退を実現するためには、投与 の回数に関わりなく、その増殖を抑制するのに有効な組合せ量で両方の薬剤を供 給送達する。 様々な化学療法剤が、本明細書中で開示する組合せ治療法において有用である と考えられる。例として想定される化学療法剤は、たとえば、エトポシド(VP ‐16)、アドリアマイシン、5‐フルオロウラシル(5FU)、カンプトテシ ン、アクチノマイシン‐D、ミトマイシンC、 シスプラチン(CDDP)、さらには過酸化水素を含む。 当業者には理解されるように、化学療法剤の適切な量は、一般に化学療法剤を 単独で又は他の化学療法剤と組合わせて投与する臨床治療において既に用いられ ているのに近い量である。単なる例示として、シスプラチンのような薬剤および 他のDNAアルキル化剤が使用できる。シスプラチンは癌の治療に広く使用され ており、臨床適用において使用される有効用量、20mg/m2を3週間ごとに 5日間合計3回のコースで投与する。シスプラチンは経口では吸収されず、従っ て静脈内、皮下、腫瘍内又は腹腔内注射によって供給送達しなければならない。 相乗的抗腫瘍作用の組合せに導くDNA損傷を生じさせるための、核酸、特に DNAと直接架橋結合する物質を検討し、本明細書中に示す。シスプラチンのよ うな物質および他のDNAアルキル化剤が使用できる。 さらなる有用な物質は、DNAの複製、有糸分裂および染色体の分離に干渉す る化合物を含む。そのような化学療法化合物は、ドキソルビシンとしても知られ るアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシン等を含む。 新生物の治療のために臨床の場で広く使用されているこれらの化合物は、アドリ アマイシンについては21日間隔で25‐75mg/m2の用量を静脈内ボーラ ス注射によって、エトポシドについては35‐50mg/m2を静脈内注射によ って又は静脈内用量の2倍を経口経路で投与する。 ポリヌクレオチド前駆物質の合成と適合性を破壊する薬剤も使用できる。特に 有用なのは、広汎な検査を受けており、直ちに使用できる物質である。5‐フル オロウラシル(5‐FU)のような薬剤は腫瘍性組織によって選択的に使用され 、その結果この薬剤は腫瘍性細胞を標的する上で特に有用である。極めて毒性が 高いにもかかわらず、5‐FUは局所性のものを含めた広い範囲の担体において 適用されるが、3‐15mg/kg/日の範囲の用量での静脈内投与が一般的に 用いられる。 タキソールのような植物アルカロイドも本発明の一部の局面における 使用が想定される。タキソールは、イチイの木Taxus brevifoli aの樹皮から単離した実験的抗有糸分裂薬である。チューブリンと結合し(ビン カアルカロイド類によって使用されるものとは異なる部位で)、微小管の構築を 促進する。タキソールは現在臨床的に評価されている;悪性メラノーマおよび卵 巣癌に対して活性を有する。最大用量は、30mg/m2/日を5日間又は21 0‐250mg/m2を3週間ごとに1回である。もちろん、これらの用量はす べて例示であり、これらの範囲内のいかなる用量も本発明における使用が予想さ れる。 組合せ療法に関して有用な、例示としての化学療法剤を表4に列挙する。ここ に列挙した各々の物質は例示であり、いかなる意味でもこれに限定されるもので はない。当業者は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”第15版、第33章、特に624‐652ページを参照さ れたい。投与量の多少の変動は、治療される被験者の条件に依存して必然的に起 こるであろう。投与の責任を担う者が、いかなる場合も、個々の被験者に適した 用量を決定する。さらに、ヒトでの投与のためには、製剤はFDA Offic e of Biologicsの基準によって要求される滅菌性、発熱原性、全 般的安全性および純度の基準に適合していなければならない。 I.タンパク質精製 本発明の特定の態様は、コードしたタンパタ質またはペプチドの精製、特定の 実施形態では実質的な精製に関与する。本明細書で使用する「精製タンパク質ま たはペプチド」という用語は、タンパク質またはペプチドが、それが自然に得ら れる状態と比較して任意の程度に精製される、他の成分から単離可能な組成物を 指すことが意図されている。したがって、精製タンパク質またはペプチドは、さ らにそれが、自然に生じる可能性のある環境にないタンパク質またはペプチドを 指している。 一般に、「精製」は、分画にかけられて、様々な他の成分を取除いたタンパク 質またはペプチド組成物であって、さらに実質的にそれらの発現された生物学的 活性を残している組成物を指している。用語「実質的に精製された」の用語が使 用される場合、これは、そのタンパク質またはペプチドが、例えば組成物中の約 50%またはそれ以上のタンパク質を構成するような、その組成物の主要な成分 を形成する組成物を指している。 タンパク質またはペプチドの精製の程度を定量するための種々の方法は、本発 明の開示を考慮して当業者にとって既知である。例えば、これらには、活性画分 の特定の活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析により画分内のポリ ペプチドの数を評価することが含まれる。画分の純度を評価するための好ましい 方法は、その画分の比活性を計算し、当初の抽出物の比活性と比較して、本明細 書の「一倍の精製度」で評価される純度の程度を計算することである。もちろん 、活性の量を表すのに使用される実際の単位は、精製後の選択される特定のアッ セイ技術、そして発現タンパク質またはペプチドが、検出可能な活性を示すかど うかに依存する。 タンパク質精製に使用するのに適切な種々の技術は、当業者にとって既知であ る。例えば、これらには、酢酸アンモニウム、PEG、抗体等を用いた、または 熱変性、およびその後の遠心分離による沈澱;イオン 交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイトおよびアフィニティークロマトグ ラフィーのようなクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;な らびに上記およびその他の技術の組合せが挙げられる。当分野で一般的に知られ ているとおり、種々の精製工程を行う順序は、変えても、またはある種の工程を 省略しても実質的に精製されたタンパク質またはペプチドを製造する適切な方法 であると信じられている。 タンパク質またはペプチドが、必ずそれらの最も精製された状態で提供されな ければならないという一般要件はない。実際、実質的にほとんど精製されていな い産物でも、特定の実施形態で有用性を示すことが予期される。より少ない精製 工程を組合せて使用することによって、または同じ一般的な精製スキームを様々 な形態で活用することによって、部分的精製が達成される。例えば、HPLC装 置を活用して行われるカチオン交換カラムクロマトグラフィーは、一般に、低圧 クロマトグラフィー系を利用した同じ技術の何倍もの精製を生じる。より低い程 度の相対精製を示す方法は、タンパク質産物の総回収量に、または発現タンパク 質の活性を維持する上で有利であり得る。 ポリペプチドの移動は、様々なSDS/PAGEの条件で、時に大きく変化し うる(Capaldiら、1977年)ことが知られている。したがって、様々な電気泳動 条件下で、精製されたまたは部分的に精製された発現産物の見掛けの分子量は、 変化しうることが理解される。 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、ピークの並外れた鮮明度を示す 非常に迅速な分離によって特徴付けられる。これは、非常に微細な粒子および高 圧を使用して、適切な流速を維持することによって達成される。およそ数分、ま たはほとんど1時間で、分離を完了することができる。さらに、粒子が、非常に 小さく、そしてぎっしり充填されているので、床容量の空隙容量の画分が非常に 少量であるため、非常に少量のサンプルのみが、必要とされる。さらに、バンド が非常に狭くサンプルがほとんど希釈されていないため、サンプルの濃度は、非 常に大き い必要はない。 ゲルクロマトグラフィーまたは分子ふるいクロマトグラフィーは、分子サイズ に基づいている特別な種類の分配クロマトグラフィーである。ゲルクロマトグラ フィーの背後にある理論は、小さな細孔を含む不活性物質の微細な粒子で製造さ れたカラムにより、分子のサイズによって、細孔を通過またはその周辺にあると きに大きな分子が小さな分子から分離されるということである。粒子が製造され る材料が、分子を吸着しない限り、流速を決定する唯一の因子は、サイズである 。したがって、形状が比較的一定である限り、カラムから溶出される分子のサイ ズは小さくなっている。分離が、pH、イオン強度、温度等のような全ての他の 因子から独立しているので、ゲルクロマトグラフィーは、様々のサイズの分子を 分離するのに卓越している。実質的に吸着もなく、領域の拡散もほどんどなく、 そして溶出量は単純に分子量に関連する。 アフィニティークロマトグラフィーは、単離されるべき物質と、それが特異的 に結合できる分子との間の特異的なアフィニティーに依るクロマトグラフィーの 手段である。これは、受容体-リガンド型作用である。カラム材料は、不溶性マ トリックスに結合相手の内の1つを共有結合的に結合させることによって合成さ れる。その後、カラム材料は、その溶液から物質を特異的に吸着できる。溶出は 、結合が生じないものに対する条件を変えること(pH、イオン強度、温度等を 変える)によって生じる。 炭化水素含有化合物の精製に有用な特定の型のアフィニティークロマトグラフ ィーは、レクチンアフィニティークロマトグラフィーである。レクチンは、多様 な多糖類および糖タンパク質に結合する物質のクラスである。レクチンは、通常 、臭化シアンによってアガロースに結合される。セファロースに結合されたコン コナバリンAは、この種で最初に使用された材料であり、そしてヒラマメのレク チンを含めた多糖類および糖タンパク質の他のレクチン、N−アセチルグルコサ ミニル残基の精製 に有用であった麦芽凝集素、およびヘリックスポマチア(Helix pomatia)のレ クチンの単離に広く使用されてきた。レクチン自体は、炭化水素リガンドを有す るアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製される。ラクトースは、ヒマ の実および落花生からレクチンを精製するのに使用された。マルトースは、ヒラ マメおよびタチナタマメからレクチンを抽出するのに有用であった。N−アセチ ル−Dガラクトサミンは、大豆からレクチンを精製するために有用である。N− アセチルグルコサミニルは、麦芽から得たレクチンと結合する。D−ガラクトサ ミンは、二枚貝から得られるレクチンを得る際に使用され、L−フコースが、ハ スから得たレクチンと結合する。 マトリックスは、それ自体では、任意のかなりの範囲まで分子を吸着せず、そ して広範な化学的、物理的そして熱安定性を示す物質である。リガンドは、その 結合特性に影響を及ぼさないような方法で結合される。リガンドは、さらに比較 的密着した結合を提供する。そして、サンプルまたはリガンドを破壊することな く、物質を溶出することが可能である。アフィニティークロマトグラフィーの最 も一般的な形態の内の1つは、免疫アフィニティークロマトグラフィーである。 L.バイオリアクターでの細胞の使用 生物学的に活性なポリペプチドを産生する能力は、製薬産業においてますます 重要になっている。本発明は、例えば細胞中における腫瘍サプレッサー遺伝子の 効率的な調節発現のための組成物および方法であって、それにより、それまで不 応性であった細胞型からin vitroでこれらのタンパク質を産生させる組成物およ び方法を開示する。 過去十年にわたって、バイオテクノロジーの進歩によって、細菌、酵母、昆虫 細胞から、そして哺乳類細胞の培養物から重要なタンパク質および因子が産生さ れた。哺乳類の培養物は、より高等でない生命形態から由来する培養物よりも、 ジスルフィド依存性折りたたみおよびグリコシル化のような、翻訳後に複合体タ ンパク質構造を処理する能力におい て有利である。実際、哺乳類細胞培養物は、現在、ヒトおよび動物の薬品、特に 比較的大きく、複雑で、グリコシル化されているものに使用するための多数の重 要なタンパク質の好ましい源である。 医薬品の生産のための哺乳類細胞培養物の開発は、哺乳類細胞培養物で非常に 効率的なベクター系の設計および構築、一連の有用な選択マーカー、遺伝子増幅 スキーム、および最終的なの生物学的に活性な分子を導入ベクターから産生させ るのに関与した生化学および細胞の機構のさらに広範囲にわたる理解のための分 子生物学の技術での開発によって大いに助けられた。 しかし、異種タンパク質を発現するための細胞型の伝統的な選択は、一般に、 CHO細胞、BHK細胞、C127細胞および黒色腫細胞のようなより「一般的 な」細胞型に限定された。これらの細胞型について多くの以前から存在する文献 が存在した、またはペプチド産物を発現するために努力が払われたときにこれら の細胞が簡便に実験室で行われるものであったので、多くの場合においてこれら の細胞型が選択された。細胞系を発現系用の宿主として選択する以前は、下流( 例えば、T−75フラスコを越えて)側の製造の規模拡大に影響を及ぼす因子は よく考慮されなかった。 本発明の態様は、最近利用可能なバイオリアクター技術と共に、哺乳類細胞の 生化学的および細胞の許容量を利用する。バイオリアクターにおいて本発明によ る細胞を成長させることで、育成用培地への、完全な生物学的に活性なポリペプ チドである複合体の大規模産生および分泌が得られる。特定の実施形態では、低 い複合体タンパク質含有率の特定の培地を設計することにより、そして力価が増 大されるための培地への分泌の時間刺激のスキームを使用することにより、精製 法は、大いに簡便化され、それにより生成コストを低減させることができる。 1.足場依存性および非足場依存性培養 動物およびヒトの細胞は、2つの様式(つまり培養の全容量にわたり懸 濁液中で自由に成長する非足場依存性細胞として、またはそれらの増殖のために は固形基質への付着(すなわち、単層型の細胞成長)を必要とする足場依存性細 胞として)in vitroで増殖させることができる。 連続した樹立細胞系から得られる非足場依存性培養物または懸濁培養物は、細 胞および細胞産物の大規模産生の最も広範に使用される手段である。微生物(細 菌および酵母)の発酵技術に基づいた大規模な懸濁培養は、哺乳類細胞産物の製 造にとって明らかに有利である。そのプロセスは、操作および規模拡大すること が比較的容易である。相同な条件を、温度、溶解酸素およびpHの正確な監視お よび制御を付与するリアクターで得ることができ、そしてその培養の代表的サン プルが採取できることを保証する。 しかし、懸濁培養細胞は、生物の産生に常に使用されるわけではない。懸濁培 養は、依然として腫瘍形成の潜在力を示すと考えられ、そしてその結果、産生用 の基質としてそれらを使用を限定する、ヒトおよび獣医学用途で生じる産物の使 用を限定する(Petricciani、1985年、LarssonおよびLitwin、1987年)。足場依 存性培養と対照的に、懸濁培養で増殖されるウイルスは、時に、ウイルスマーカ ーで迅速な変化を引き起こし、それにより免疫原性を減少させる(Bahnemann、1 980年)。最終的に、しばしば、組換え細胞系でさえ足場依存性培養として増殖 された場合には、懸濁液中の同じ細胞系と比較して相当に多量の産物を分泌する ことができる(NilssonおよびMosbach、1987年)。これらの理由により、様々な 型の足場依存性細胞が、様々な生物学的産物の産生に広範に使用される。 本発明は、足場依存性の性質を持つ細胞を包含する。懸濁液で成長した足場依 存性細胞は、互いに付着し、そして凝集物として成長し、結局は、培養条件にコ ア細胞が支持されなくなってしまうサイズに達すると各凝集の内部コアにある細 胞を窒息死させる。したがって、異種タンパク質を分泌する細胞の許容性を効率 的に利用するために、足場依存性細胞の大規模培養の効率的な手段も提供される 。 2.懸濁のためのリアクターおよびプロセス 攪拌槽で哺乳類培養物の大規模懸濁培養を意図する。バイオリアクターの機器 使用および制御は、関連微生物用途から発酵槽の設計によって適合させた。しか し、成長の遅い哺乳類培養における汚染制御の要求が高まっているという認識の もと、これらのリアクターの依存性を改善して、改善された無菌設計が実行され た。機器使用および制御には、攪拌、温度、溶解酸素、およびpH制御が含まれ る。さらに進歩したプローブ、および濁度(存在する粒子の関数)、静電容量( 存在する生存細胞の関数)、グルコース/乳酸、炭酸塩/重炭酸塩および二酸化 炭素のオンラインおよびオフライン測定のための自動分析器も、利用可能である 。懸濁培養中で得ることができる最大細胞密度は、約2〜4×106細胞/ml (ml当たり1mg重量の乾燥細胞未満である)の培地で比較的低く、これは微 生物発酵で達成される数より十分に低い。 2つの懸濁培養リアクター設計は、それらの操作の簡便性および強靭さのため 、産業で最も広範に使用される:攪拌リアクターおよび通気リアクター。攪拌リ アクター設計は、インターフェロンの生成用に8000リットル容量の規模で首 尾よく使用された(Phillipsら、1985年、Mizrahi、1983年)。細胞は、1:1 から3:1の高さ対直径の比を示すステンレス鋼槽で育成される。培養物は、通 常、ブレードディスクまたは海洋プロペラパターンに基づいた1つまたはそれ以 上の攪拌器で混合される。ブレードより剪断力が低い攪拌器系が記載されている 。攪拌は、磁気的に連結した駆動装置によって直接的または間接的に駆動するこ とができる。間接駆動装置は、攪拌シャフトの封を介した微生物汚染の危険を減 少する。 微生物発酵のために当初に記述され、そして後に哺乳類培養に適合された通気 リアクターは、培養物の混合および酸素処理のために依存する。気流は、リアク ターの切断区分に入り、そして循環駆動する。気体は、 培養表面で解放し、それにより気泡を含まないより濃密な液体をリアクターの降 水管部まで下向きに輸送させる。この設計の主要な利点は、単純性、および機械 的混合の不必要性である。典型的に、高さ対直径比は、10:1である。通気リ アクターの規模拡大は、比較的容易に、気体の大量移動が良好であり、そして比 較的低い剪断力を生じる。 ほとんどの大規模懸濁培養は、操作および規模拡大が最も容易であるので、バ ッチまたは供給バッチプロセスとして処理される。しかし、ケモスタットまたは 灌流原理に基づいた連続プロセスが利用可能である。 バッチプロセスは、典型的な成長プロフィールが見られる閉鎖系である。誘導 期は、指数、定常および衰退期に続く。このような系では、栄養が枯渇させられ 、そして代謝物が蓄積するために、環境は連続的に変化する。これは、細胞成長 および生産性に影響する因子の分析を行い、そしてしたがって、複雑な作業であ るプロセスの最適化を行う。主要な栄養供給を制御して成長サイクルを延長する ことによって、バッチプロセスの生産性は増大されうる。このような補給バッチ プロセスは、細胞、産物および廃棄物が除去されないので、依然として閉鎖系で ある。 依然として閉鎖系であるものとして、培養への新鮮な培地の灌流が、微細メッ シュ回転フィルターに細胞を維持し、そして回転させて、凝固を防止することに よって達成できる。回転フィルター培養は、およそ5×107細胞/mlの細胞 密度を生じうる。真の開放系および最も基本的な灌流プロセスは、培地の流入と 細胞および産物の流出とがあるケモスタットである。培養用培地は、細胞の最大 限の特定の成長速度より低い値に培養の希釈速度を維持するような所定の且つ一 定の速度リアクターに供給する(リアクターから細胞塊が洗い流されるのを避け るために)。細胞、細胞産物および副産物を含有する培養液体を、同じ速度で除 去する。これらの灌流系は、哺乳類細胞培養からの産生用の市販用途にはない。 3.非灌流付着系 伝統的に、足場依存性細胞培養は、小さなガラス製またはプラスチック製容器 の底で増殖させる。古典的でかつ従来の技術によって得られた、実験室規模に適 切な、制限的表面対容積比は、大規模な細胞および細胞産物の産生で行き詰まっ た。少量培養容積で、細胞成長についての大型の評価しうる表面を供する系を提 供するために、多くの技術が提案された。すなわち、ローラボトル系、重層プレ ート増殖器、螺旋フィルムボトル、中空ファイバー系、充填床、プレート交換系 、および膜管状リール。これらの系は、その特性において相同でなく、かつしば しば複数プロセスに基づいているので、それらは、しばしば、規模拡大能力の限 界、細胞サンプルを採取する際の困難さ、計を測定および制御能力の限界、なら びに培養を通して相同な環境条件を維持する上での困難さを示す。 これらの系の一般に使用されるプロセスは、ローラーボトルである。大型で、 形が異なるT型フラスコのようなもので、この系は簡単なため非常に依存性があ り、したがって魅力がある。1日当たり数千のローラーボトルを扱える完全に自 動化されたロボットが利用可能であり、そうでなかった場合に要求される極度の ヒトの操作に伴う汚染および不一致の危険を排除できる。頻繁な培地の交換で、 ローラーボトル培養は、0.5×106細胞/cm2(109細胞/ボトルまたは1 07細胞/mlの培養用培地に対応)に近い細胞密度に達することができる。 4.微細担体での培養 Van Wezel(1967年)は、微細担体培養系の概念を発展させた。この系では、 ゆっくりとした通気によって、育成用培地に懸濁された小さい固形粒子の表面に 、細胞を増殖させた。細胞は、微細担体に付着し、そして微細担体の表面が密集 するまで徐々に成長する。実際に、この大規模培養系は、単層および懸濁培養の 両方が一緒に行われた単一ディスクプロセスからユニットプロセスまでの付着依 存性培養を高める。したがって、成長する細胞に必要な表面を、均質な懸濁培養 の利点と組合せると、産生が増大する。 微細担体培養の利点は、他の足場依存性の大規模培養法のほとんどを数倍上回 ることである。第一に、微細担体培養は、高い表面対容積比(担体濃度の変化に よって変化する)を有し、高い細胞密度収量および高度に濃縮された細胞産物を 得る能力を導く。培養が、灌流リアクター様式で増殖された場合に、細胞収量は 、1〜2×107細胞/mlまで達した。第二に、細胞は、多くの小さな低生産 性容器(すなわち、フラスコまたは皿)を使用する代わりに、単一ユニットのプ ロセス容器で増殖することができる。これは、培養用培地のはるかによい活用お よび相当の節約になる。さらに、単一リアクターでの増殖は、装置空間の必要性 に、そして細胞当たりに必要とされる操作段階の数に減少に至り、それにより労 働力および汚染の危険を減少させる。 第三に、十分に混合し、そして均質な微細担体懸濁培養は、環境条件(例えば 、pH、pO2、および培地成分の濃度)を監視し、そして制御することを可能 にし、それにより、さらに再生可能な細胞増殖および産物回収に至る。第四に、 顕微鏡観察、化学的試験または列挙用の代表的サンプルを採取することができる 。第五に、微細担体は、容易に懸濁液から沈澱するので、補給バッチプロセスの 使用または細胞の収穫は、比較的容易に行える。第六に、微細担体での足場依存 性培養増殖の様式により、タンパク質分解酵素を使用しない細胞転移、細胞の共 培養、動物への移植、および微細担体保持のための分留装置、カラム、流動床、 または中空ファイバーを用いた培養物の灌流のような他の細胞増幅においてもこ の系を使用することができる。第七に、微細担体培養は、懸濁液中で微生物およ び動物細胞の培養に使用される従来の装置を用いて比較的容易に規模拡大される 。 5.哺乳類細胞の微細封入 哺乳類細胞を培養するのに特に有用であることが示された1つの方法は、微細 封入である。哺乳類細胞は、半透過性ヒドロゲル膜の内側に残される。多孔性膜 が、カプセルを取囲むバルク培地との栄養、気体およ び代謝産物の交換を許す細胞の周囲に形成される。穏やかで迅速そして無毒であ り、そして生じた膜が、培養期間を通して成長細胞塊を維持するのに十分に多孔 性であり、強力である場合の数種の方法が開発された。これらの方法は、すべて 、カルシウム含有溶液と飛沫接触によってゲル化された可溶性アルギネートに基 づいた。Lim(米国特許第4,321,883号)は、小さなオリフィスを強制的に通され、 それによって飛沫を形成し、そしておおそ1%の塩化カルシウム溶液に自由に侵 入できるアルギン酸ナトリウムのおよそ1%の溶液で濃縮された細胞を記述した 。その後、飛沫は、表面アルギネートにイオン結合するポリアミノ酸の層に捕捉 される。最後に、飛沫をキレート化剤で処理して、カルシウムイオンを除去する ことによって、アルギネートを再液体化する。他の方法は、アルギネート溶液に 滴下されるべきカルシウム溶液中の細胞を使用し、それにより中空アルギネート 球を作り出す。同様のアプローチ法は、アルギネートに滴下されたキトサン溶液 中の細胞に関与し、それにより中空球を作り出す。 微細封入細胞は、攪拌槽リアクターで容易に増殖され、そして直径150−1 500mmの範囲内にあるビーズサイズで、微細メッシュスクリーンを用いた灌 流リアクターに容易に保持される。総培地容積に対するカプセル容積の比は、1 :2〜1:10の密度で維持できる。108に達する封入体内細胞密度で、培養 物内の有効な細胞密度は、1〜5×107である。 他のプロセスを越えた微細封入の利点としては、散布および攪拌により生じる 剪断圧の害ある影響からの保護、灌流系を使用する目的のビーズを容易に維持す る能力が含まれ、規模拡大は、比較的容易であり、そして注入用のビーズを使用 する能力が含まれる。 6.灌流付着系 灌流は、(生理学的栄養溶液の)細胞の集団の内部または上方における安定な 速度での連続流を指している。それは、回収した培地で細胞を洗い出す連続フロ ー培養(例えば、ケモスタット)と対照的に細胞単位内に細胞を保持することを 含む。灌流の概念は、今世紀の初頭以来知られており、そして組織の小片を広範 な顕微鏡観察に目に見えたままにしておくために使用された。その技術は細胞が 、血液、リンパ球、または他の体液で連続的に供給される生体内で細胞環境を模 倣するために始められた。灌流なしでは、培養物中の細胞は、供給相と飢餓相の 変化を通過し、それによりそれらの成長の十分な発現および代謝能力が制限され る。灌流培養の最近の用途は、細胞を高い密度(すなわち、0.1−5×108 細胞/ml)に育成することである。2−4×106細胞/ml(または2×1 05細胞/cm2)を越えて密度を増大させるために、培地は、栄養的欠損を埋め 合わせ、そして毒性産物を除去するために一定して新たな供給に交換されなけれ ばならない。灌流は、培養環境(pH、pO2、栄養レベルなど)のより良好な 制御を可能とし、そして細胞付着のために培養内の表面領域の利用を顕著に増大 させる手段である。 微細担体および微細封入培養は、灌流リアクターに容易に適合されるが、上に 特記されるとおり、これらの培養方法は、108細胞/mlより上の細胞密度の 需要を満たす能力を欠く。このような密度は、培地中で高い生産物力価(下流プ ロセシングを促進する)、より小さい培養系(施設の必要性を低下させる)、お よびより良い培地の利用(血清および他の高価な添加剤で節約を生む)の利点を 与える。高い密度での細胞を支持するには、非均一性の発生を避けるのに有効な 灌流技術を必要とする。 本発明の細胞は、選択された培養方法とかかわりなく、タンパク質生産に、そ してインビトロ細胞アッセイ用の細胞として、そして医薬開発プロトコールの一 部としてスクリーニングに利用できる。 J.キット 本発明の様々の実施形態のために必要とされる基本的材料および試薬全ては、 キットをまとめて組み立てられる。キットの成分が、1つまたはそれ以上の液体 溶液に与えられる場合、液体溶液は、好ましくは水性溶液であり、それに無菌の 水溶液が特に好ましい。 インビボ用途に対しては、本発明の組成物は、単一のまたは別々の製薬上許容 される注入可能な組成物に調製される。この場合に、容器手段は、それ自体、吸 入剤、シリンジ、ピペット、点眼器、または他のそのような装置であり、それら からその組成物は、肺のような体の感染領域に適用され、動物に注射され、ある いは、キットに適用されるか又は他の成分と混合されうる。 キットの成分は、さらに乾燥または凍結乾燥形態で提供することもできる。試 薬または成分が、乾燥形態として提供される場合、再組成は、一般に、適切な溶 媒を添加することによる。溶媒は、別の容器手段で提供されることもあると想像 される。本発明のキットは、遺伝子療法および/または化学療法剤の投与を規定 する指示シートを包含することもできる。 本発明のキットは、典型的には、注射または、その中に望みのバイアルが保持 される吹込み成形プラスチック製容器のような市販されている密閉なバイアルを 含むための手段をも包含できる。容器の数または型にかかわりなく、本発明のキ ットは、注射/投与、または動物の体内に最終の複合体組成物を配することを助 けるための装置を含むか、またはそれと一体化されうる。このような装置は、吸 入剤、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器または他の任意のその ような医療上認可された送達ベヒクルでありうる。さらに、キット成分の用途に ついての指示が一般に含まれる。 以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を例示するために含まれる。続く 実施例で開示される技術は、本発明の実施に十分に機能を果たす、発明者に開示 される技術を表し、それにより、それを実施するため の好ましい状況を構成すると考えられることは当業者に予測される。しかし、本 発明の開示に鑑みて、当業者は、多くの変更が、開示される特定の実施形態で行 うことができ、そして依然として、本発明の概念および範囲から逸脱することな く、類似または同様の結果を得ることを認識する。 実施例1 RBタンパク質の改変 A.N末端切断pRBタンパク質を発現するRB cDNAの構築 種々のN末端欠失を有する改変型RBcDNAの構築について、一連のPCRTM プライマーを設計し、RBcDNAの配列にしたがって合成した。センスプラ イマーを、欠失N末端配列の下流のRBcDNA配列によって決定した。全ての プライマーは、5’−末端にHindIII制限部位(下線付き)およびATG (イタリック体)が後に続くコンセンサスKozakカセット(GCCGCC) を含有する。センスプライマーの完全なヌクレオチド配列は、以下のとおりであ る。 5’−CCCAAGCTTGCCGCCATGGAGCAGGACAGCGG CCCGGAC−3’(OMRbSd2−34、配列番号14)、 5’−CCCAAGCTTGCCGCCATGGATTTTACTGCATT ATGTCAG−3’(OMRbSd2−55、配列番号15)、 5’−CCCAAGCTTGCCGCCATGGAGAAAGTTTCATC TTGTGAT−3’(OMRbSd2−78、配列番号16)、 5’−CCCAAGCTTGCCGCCATGCTGTGGGGAATCTG TATCTTT−3’(OMRbSd2−97、配列番号17)、 5’−CCCAAGCTTGCCGCCATGTCAAGACTGTTGAA GAAG−3’(OMRbSd1−147、配列番号18)。 アンチセンスプライマー5’−GTCCAAGAGAATTCATAAAAG G−3’ (OMRbAS300、配列番号13)は、RBcDNAのヌクレオチ ド+900で(第一のフレーム内ATGのAが、位置+1と表される)EcoR I部位(下線付き)と重なり合っている。アンチセンスプライマーは、テンプレ ートとしてプラスミドF7(全長RBcDNAを含む)を用いて、様々な改変型 5’−RBcDNAフラグメントを増幅する上記の各センスプライマーと対をな した。 各対のプライマーを用いたPCRTMによる増幅の後、DNAフラグメントを、 HindIIIおよびEcoRIで消化し、そして同じ酵素で切断されたプラス ミドpCMVRB110にサブクローニングした。アミノ酸2−34(配列番号2 8(核酸配列)および配列番号29(アミノ酸配列))、2−55(配列番号3 0(核酸配列)および配列番号31(アミノ酸配列))、2−78(配列番号3 2(核酸配列)および配列番号33(アミノ酸配列))、2−97(配列番号3 4(核酸配列)および配列番号35(アミノ酸配列))、および1−147(配 列番号36(核酸配列)および配列番号37(アミノ酸配列))に対応するN末 端欠失を有する改変型RBcDNAを担持する生成した発現プラスミドは、それ ぞれ、pCMVRBd2-34(野生型RBタンパク質のアミノ酸2から34までの 欠失)、pCMVRBd2-55(野生型RBタンパク質のアミノ酸2から55まで の欠失)、pCMVRBd2-78(野生型RBタンパク質のアミノ酸2から78ま での欠失)、pCMVRBd2-97(野生型RBタンパク質のアミノ酸2から97 までの欠失)、およびpCMVRBd1-147(野生型RBタンパク質のアミノ酸 1から147までの欠失、アミノ酸148は、メチオニンである)と名づけられ た。 B.内部欠失または突然変異を有するRBcDNAの構築 異なる内部欠失または突然変異を有するRBcDNAを担持する全部で7つの pRB発現プラスミド、すなわちpCMVRBd31-107(野生型RBタンパク質 のアミノ酸31から107までの欠失)、pCMVRBd77-107(野生型RBタ ンパク質のアミノ酸77から107までの欠失)、pCMVRBd111/112(ア スパラギン酸からグリシンへの、 野生型RBタンパク質のアミノ酸111の突然変異、およびグルタミン酸からア スパラギン酸へのアミノ酸112の突然変異)、pCMVRBd111-181(野生 型RBタンパク質のアミノ酸111から181までの欠失)、pCMVRBd11 1-241 (野生型RBタンパク質のアミノ酸111から241までの欠失)、pC MVRBd181-241(野生型RBタンパク質のアミノ酸181から241までの 欠失)およびpCMVRBd242-300(野生型RBタンパク質のアミノ酸242 から300までの欠失)を構築した。 pCMVRBd31-107の構築に対しては、ヌクレオチド位置+325から+9 10から得たRBcDNAフラグメントを、プライマー5’−GCGCCTGA GGACCTAGATGAGATGTCGTTC−3’(配列番号19)およびO MRbAS300(配列番号13)を用いてPCRTMによってプラスミドF7か ら増幅した。このRBcDNAフラグメントを、Bsu36I(下線付き)およ びEcoRI(OMRbAS300)で消化し、そして同じ酵素で消化したプラ スミドpCMVRB110に挿入して、ヌクレオチド+91から+900までの元 のRBcDNAフラグメントを置換した。pRBΔ31−107の核酸配列は、 配列番号38であり、そして対応のアミノ酸配列は、配列番号39である。 pCMVRBd77-107の構築に対しては、RBcDNAフラグメント(ヌクレ オチド+328から+910まで)を、オリゴヌクレオチド5'−GCGGTT AACCCTAGATGAGATGTCGTTCACT−3'(配列番号20) およびOMRbAS300(配列番号13)を用いてPCRTMによってプラスミ ドF7から増幅し、続いてHpaI(下線付き)およびEcoRIで消化した。 増幅した消化フラグメントを、同じ酵素で消化したプラスミドpCMVRB110 に挿入して、ヌクレオチド+230から+900までからRBcDNAフラグメ ントを置換した。pRBΔ77−107の核酸配列は、配列番号40であり、そ して対応のアミノ酸配列は、配列番号41である。 pCMVRBm111/112の構築に対しては、2対のプライマーを用いて、アス パラギン酸(GAT)のコドンをグリシン(GGT)に変えるために、ヌクレオ チドA(野生型RBタンパク質の位置+332)をGに変え、それにより新たな 制限酵素部位AvrIIを作り出し、そしてグルタミン酸(GAG)のコドンを アスパラギン酸(GAT)に変えるためにヌクレオチドG(野生型RBDNAの 位置+336)をTに変えた。第一の対のプライマーは、5'−CCCAAGC TTGCCGTCATGCCGCCCAAAACCCCCCGA−3'(OMR BSL配列番号21)および5'CTCACCTAGGTCAACTGCTGC AAT−3'(OMRbAS332、配列番号22、突然変異塩基は太字である )である。第二の対のプライマーは、5'GTTGACCTAGGTGATAT GTCGTTC−3'(OMRbS332、配列番号23、突然変異塩基は太字 である)およびOMRbAS300(配列番号13)である。OMRBSIとO MRbAS332で増幅したPCRTM産物を、HindIIIとAvrII(下 線付き)で消化し、そしてOMRbS332とOMRbAS300で増幅された ものを、AvrIIとEcoRIで消化した。これらのフラグメントを一緒に、 HindIIIとEcoRIで消化したプラスミドpCMVRB110にライゲー トして、対応の野生型RBcDNA配列に置換した。pRBm111/112の 核酸配列は、配列番号50であり、そして対応のアミノ酸配列は、配列番号51 である。 pCMVRBd111-181の構築に対しては、RBcDNAフラグメント(ヌク レオチド+543から+910まで)を、オリゴヌクレオチド5'GCGCCT AGGATCTACTGAAATAAATTCTGCA−3'(配列番号24) およびOMRbAS300(配列番号13)を用いてPCRTMによってプラスミ ドF7から増幅し、続いてAvrII(下線付き)およびEcoRIで消化した 。その後、このフラグメント を、同じ酵素で消化したpCMVRBm111/112にライゲートして、ヌクレオチ ド+331から+900までから得たRBcDNAフラグメントに置換した。p RBΔ111−181の核酸配列は、配列番号42であり、そして対応のアミノ 酸配列は、配列番号43である。 pCMVRBd111-241の構築に対しては、ヌクレオチド+1から+331ま でを含む5’RBcDNAフラグメントを、HindIIIとAvrIIによる pCMVRBm111の消化によって得た。ヌクレオチド+722から始まる3’ RBcDNAフラグメントを、PvuIIとBamHIで消化した同じプラスミ ドから単離した。その後、2つのDNAフラグメント(フレーム内)を、Hin dIIIとBamHIで消化したpCMV−Gにライゲートした。pRBΔ11 1−241の核酸配列は、配列番号44であり、そして対応のアミノ酸配列は、 配列番号45である。 pCMVRBd181-241の構築に対しては、ヌクレオチド位置+1から+53 8を含む5’−RBcDNAフラグメントを、プラスミドF7をテンプレートと して使用して、プライマーOMRSB1(配列番号21)および5'−CCCG ATATCAACTGCTGGGTTGTGTCAAATA−3'(配列番号2 5)を用いてPCRTMによってプラスミドF7から増幅した。得られたRBcD NAフラグメントを、HindIIIおよびEcoRV(下線付き)で切断し、 そしてpCMVRB110に挿入して、HindIIIおよびPvuII部位の間 の元の5’RBcDNAフラグメントに置換した。pRBΔ181−241の核 酸配列は、配列番号46であり、そして対応のアミノ酸配列は、配列番号47で ある。 pCMVRBd242-300の構築に対しては、プライマーOMRBS1(配列番 号21)および5'−CCCGAATTCGTTTTATATGGTTCTTT GAGCAA−3'(配列番号26)を使用して、プラスミドF7をテンプレー トとして用いてヌクレオチド+1から+722を 含む5’RBcDNAフラグメントを増幅した。増幅産物を、HindIIIお よびEcoRI(下線付き)で消化し、そして同じ酵素で消化したpCMVRB110 に挿入して、ヌクレオチド+1から+900までから得た元の5’RBcD NAフラグメントに置換した。pRBΔ242−300の核酸配列は、配列番号 48であり、そして対応のアミノ酸配列は、配列番号49である。 C.N末端改変型RBタンパク質の特徴づけ RB欠損膀胱癌腫セルライン5637を、CMVプロモーターによって起動さ れる改変型RBcDNAを担持する発現プラスミドでトランスフェクトした。変 異体pRBの生物学的機能を、トランスフェクション後腫瘍細胞の免疫細胞化学 的染色および[3H]−チミジンin situ標識に関する組合せた技術によっ て評価した(Xuら、1994年a、1994年b)。 腫瘍細胞を、テトラサイクリンを含む培地にあるカバーガラスの上に種付けし 、そしてpRB94、pRB110または他の変異体RBタンパク質を発現するプラ スミドでトランスフェクトした。培養用培地からテトラサイクリンを除去した後 の特定の時点で、その細胞を、2時間、37℃で、10μCi[3H]メチレン チミジン(イリノイ州アーリントンハイツ(Arlington Height s、IL)のアマシャム(Amersham))を含む1mlの新鮮な培地でイ ンキュベートし、その後、固定し、そして先に記述されたとおり(Xuら、19 91年a、1991年b)RBタンパク質の発現のために、免疫化学的に染色し た。続いて、染色したスライドを、ゼラチンの薄層で被覆し、そして37℃で一 夜乾燥させた。その後、スライドを、オートラジオグラフィーエマルジョン(タ イプNTB2、ニューヨーク州ローチェスター(Rochester,NY)の イーストマンコダック(Eastman Kodak))で上塗りし、そして2 日間照射した。現像後、スライドを光学 顕微鏡で試験した。トランスフェクションの24時間後、細胞を、上に記述され るとおりRBタンパク質の免疫細胞化学的染色および[3H]チミジン取込みア ッセイについて進行させた。 結果は、表5に示される。55アミノ酸残基までが、pRBのN末端から欠失 されたとき、DNA合成は、全長RBタンパク質を発現する細胞に比較して変異 体pRB発現プラスミドでトランスフェクトされた細胞では明らかには減少しな かった。しかし、もう23アミノ酸が、N末端から除去された場合、細胞のDN A合成は、切断pRBの発現によって劇的に抑制された。 表5で示されるとおり、アミノ酸55と181の間に任意の欠失を有するpR B変異体は、腫瘍細胞に導入された後DNA合成を顕著に阻害する。特徴の中で も、全長pRB発現プラスミドでトランスフェクトされた細胞よりいっそう効果 的であったが、アミノ酸181と241との間のみに欠失を含むpRBでトラン スフェクトされた細胞は、アミノ酸55と181との間に欠失を担持するpRB を発現するプラスミドでトランスフェクトしたものより弱いDNA合成の阻害を 示した。したがって、このデータに鑑みれば、特定の上述の欠失、例えばアミノ 酸1とアミノ酸241との間の欠失を組合せる改変は、類似の顕著なDNA合成 阻害活性を示すと予測される。 さらに、各々、アミノ酸2および34の間と、アミノ酸76および112の間 のいずれかに2つの欠失を有する2つのpRB変異体は、野生型RBと比較して DNA合成を顕著に阻害した。結果は、推定N末端ドメインの境界が、おそらく はアミノ酸182および300、よりおそらくはアミノ酸182および241の 間にあることを示した。さらに、アスパラギン酸をグリシンに置換する、アミノ 酸位置111に点突然変異を担持するpRBは、DNA合成を顕著に抑制し、さ らにこの領域が、pRB機能を調節するのに不可欠であることが示唆された。 実施例2 テトラサイクリン応答性遺伝子発現系でのVP16トランス作用活性ドメインの 発現を制御するCMVプロモーター/エンハンサーの改変 上記の改変型レチノブラストーマ遺伝子およびタンパク質は、それに限定され るものではないが遺伝子療法を含めた、多くの実施利用性を有する。これらの実 施形態について、発現系が必要とされる。上記のもののような系が、特定の実施 形態に適切である一方で、それらは、細胞毒性構築物を用いた遺伝子療法に関し てある種の欠点を示す。GossenおよびBujard(1992年)の元の テトラサイクリン応答性遺 伝子発現系は、魅力的な系であるが、細胞成長における抑圧効果(Gillおよ びPtashne、1988年)のようなある種の障害を示す。これらおよび他 の障害を克服するために、発明者らは、テトラサイクリン応答性遺伝子発現系を 改善した。 元のテトラサイクリンのレプレッサー/オペレーターに基づく調節系は、2つ のプラスミドpUHD15−1およびpUHC13−3(米国特許第5,464 ,758号、ここに参照して組込まれる、GossenおよびBujard、1 992年)から構成される。pUHC13−3は、tetオペレーター配列が、 TATAボックスの上流に挿入されているハイブリッド最小ヒトCMVプロモー ターを含むテトラサイクリン(Tc、tet)感受性発現ベクターである。pU HD15−1は、野生型CMVプロモーターによって駆動される発現を伴った、 テトラサイクリン応答性トランスアクチベーター(tTA)をコードする配列を 含有する。この系を用いた一過性の実験では、発明者らは、効果的に可逆移入遺 伝子発現が、研究された多くの腫瘍セルラインで観察されることが分かった。し かし、テトラサイクリン応答性手段でレポーター遺伝子を発現する長期のクロー ンを単離する試みは、成功しなかった。これは、ほとんど、その発現が、プラス ミドpUHD15−1中の強力なCMVプロモーター/エンハンサー配列によっ て駆動されるtTAトランスアクチベーターの細胞内レベルが高いことによって 引起こされるようであった。tTAトランスアクチベーターは、細胞成長におい て抑圧効果を示すことが知られているVP−16活性化ドメインを含む(Gil lおよびPtashne、1988年)。 したがって、この問題を解決し、そしてさらに系を改善するために、tTA発 現カセットは、元のpUHD15−1プラスミドにある強力なCMVpエンハン サー(Boshartら、1985年)を、1対の19bpの不完全直接反復配 列(CMVpエンハンサーの一部、配列番号5)に置換することによって最初に 改変された。hCMVプロモーター /エンハンサーの改変を、hCMVプロモーターから得た5’エンハンサー配列 の一部を除去することによって行った。 3対のオリゴヌクレオチドプライマーを、hCMVプロモーターの公表されて いる配列(Boshartら、1985年)に基づいて設計した。XhoIおよ びEcoRI制限酵素部位(下線付き)を、それぞれ、各々のセンスおよびアン チセンスオリゴの5’末端に加えた。センスオリゴは、それぞれ、5'−CCG CTCGAGCAATGGGCGTGATAGCGG−3'(OMCMVsl、 配列番号6)、5'−CCGCTCGAGCACCAAAATCAACGGGA −3'(OMCMVs2、配列番号7)、および5'−CCGCTCGAGCAA CTCCGCCCCATTGAC−3'(OMCMVs3、配列番号8)であり 、そしてそれらは、同じアンチセンスプライマー5'−TAGACATATGA ATTCGCGGCC−3'(OMCMVas、配列番号9)を共有した。 PCRTM増幅で使用されるテンプレートは、プラスミドpUHD15−1であ った。OMCMVs1+OMCMVas、OMCMVs2+OMCMVasおよ びOMCMVs3+OMCMVasのプライマー対を用いたPCRTM増幅は、そ れぞれ、282bp(すなわちmhCMVp1)、203bp(mhCMVp2 )および168bp(mhCMVp3)の長さを示す3つの短いバージョンのCM Vプロモーターを生じた。精製された短くなったCMVプロモーター/エンハン サーフラグメントを、XhoIおよびEcoRIで二重消化し、そしてpUHD 15−1に挿入して、元のhCMVプロモーターを置換した。これは、3つの新 規なtTA発現プラスミド、すなわちpmCMV1−tTA、pmCMV2−t TAおよびpmCMV3−tTAを生じた。 このプロモーターの相対的強度を決定するために、プラスミドpUHD15− 1と同様に、これらの新たに構築されたプラスミドにあるtTAを、プラスミド pRc/CMV−CAT(Invitrogen,San Diego,CA)から得たクロラムフェニ コールアセチルトランスフェラーゼ(CAT) に置換し、それによって4つのCAT発現プラスミド、pmCMV1−CAT、 pmCMV2−CAT、pmCMV3−CATおよびpCMV−CATを生じた 。これらのプラスミドで、CAT発現は、それぞれ、mhCMVp1、mhCM Vp2、mhCMVp3および全長のmhCMVpによって駆動される。改変C MVプロモーターの相対的活性を評価するために、CAT発現プラスミドを、リ ポフェクチン法(メリーランド州ガイザースバーグ(Gaithersberg 、MD)のライフテクノロジーズ(Life Technologies))を介 して3つのセルライン、腫瘍セルライン5637およびSaos2、および胚の 腎臓セルライン293に導入された。トランスフェクションの48時間後、細胞 溶解物を製造し、そしてCAT活性を、ストラタジーン(Stratagene)(カリフ ォルニア州ラホーラ(La Jolla、CA)のストラジーン(Stratagene))から得た CATのフラッシュアッセイキットによって測定した。 図1に示されるとおり、エンハンサー配列が、部分的に除去された後に、プロ モーターの活性は、3つのトランスフェクションセルライン全てで劇的に減少さ れた。図1は、5637およびSaos−2セルラインでCAT活性のグラフ表現で ある。欠失されたエンハンサー配列が多ければ、残るプロモーターは弱くなる。 最強から最も弱いほうへのプロモーターの活性の順番は、hCMV、mhCMV p1、mhCMVp2およびmhCMVp3である。mhCMVp1の活性は、 全長のhCMVプロモーターの17.7%である一方で、mhCMVp3活性は 、5637細胞にあるhCMVプロモーターのわずか3.3%である(図1)。改 変プロモーターの相対的プロモーター活性を比較した後、mhCMVp1(配列 番号5)が、改変テトラサイクリン調節可能な遺伝子発現系について選択された 。mhCMVp1は、宿主細胞成長に抑圧効果を示さない、ヒト遺伝子療法で潜 在的な用途として重要な特性である、最適なテトラサイクリン制御トランスアク チベーター(tTA)発現を示した。 実施例3単独プラスミド、テトラサイクリン調節ベクターの構築 EC1214Aと名づけられた単独のプラスミドベクターを構築した。このプ ラスミドは、1)宿主細胞成長においてテトラサイクリン応答性トランスアクチ ベーター(tTA)の抑圧効果を排除する修飾tTA発現カセット、2)プラス ミドpUHC13−3から得たtTA依存性プロモーター、3)一般的イントロ ン配列、4)プロモーターおよびイントロンの下流にある複数のクローニング部 位、および5)G418選択を可能にするneoR発現カセットを含む。この系 での発現は、テトラサイクリンまたはテトラサイクリン類似体によって調節され る。「テトラサイクリン類似体」とは、テトラサイクリンに密接に関連し、そし て少なくとも106/Mの、好ましくは109/Mの、さらに好ましくは1011/ Mの、少なくとも1つのアフィニティー(Ka)を有する、tetリプレッサー に結合する多くの化合物のいずれかであると解釈される。限定するものではない が、そのようなテトラサイクリン類似体の例は、HlavkaおよびBooth e(1985年)、Mitschef(1978年)、ザ・ノイー・デベロップ メント・コーポレーション(the Noyee Development Corporation)(1969 年)、Evans(1968年)およびDowling(1955年)に開示されたものであり 、その各内容は、全て本明細書に組込まれる。 プラスミドpMLSIS.CAT(Choiら、1991年)は、IgG成長 可能領域から誘導された合成スプライスドナー/アクセプター配列だけでなく、 三部分の最初のエキソンおよび第一の介在配列の一部を含む、アデノウイルス主 要後期領域から得た5’未翻訳リーダーの一部から構成される一般的イントロン 配列を含む。プラスミドpMLSIS.CAT中のイントロン配列を挟み、そし てそれぞれ(下線部分)EcoRIおよびXbaI部位を含む、1対のオリゴヌ クレオチド5'−CTAGAATTCGCTGTCTGCG−3'(配列番号10 )および5' −GCTCTAGATGCAGTTGGACCTGGGAG−3'(配列番号1 1)を合成した。PCRTMによる増幅の後、このイントロンフラグメントを、E coRIおよびXbaIで消化し、そしてプラスミドpUHD15−1中の対応 の酵素部位に挿入した。 続いて、ClaI、HindIII、EcoRV、EcoRI、PstI、Sm aIおよびBamHIクローニング部位(プラスミドpBluescriptS Kから得られた)を含む小さなDNA断片を、新規プラスミドのイントロン下流 に挿入して、hCMVプロモーター、一般的イントロン、複数クローニング部位 およびSV40ウイルスから得られるポリアデニル化シグナルを含む発現ベクタ ーを得た。この中間体ベクターは、pCMV−Gの名称が付与された。次いで、 pCMV−GのSV40ポリアデニル化シグナルを、HSVチミジンキナーゼ( TK)遺伝子ポリアデニル化シグナル配列に置換して、pCMV*−G−TKp Aと称されるプラスミドを得た。 プラスミドpRc/CMV(カリフォルニア州サンディエゴのインビトロゲン (Invitrogen)社)を、制限酵素NruIおよびXbaIで二重消化 させた。XbaI消化から得た5’オーバーハングを、DNAポリメラーゼのク レノーフラグメント(メリーランド州ガイザースバーグのライフテクノロジーズ (Life Technologies)社)によって充填し、その平滑末端挿入 物を、プラスミドpmCMV1−tTA(実施例2)から得たmhCMV1−t TAを含むDNAフラグメントにライゲートさせた。新規プラスミドを、pmC MV1−tTA.neoと名づけた。 最後に、tTA依存性プロモーター、一般的イントロンおよびTKポリアデニ ル化シグナルを含有するDNAフラグメントを、プラスミドpCMV*−G−T KpAから単離し、そしてプラスミドpmCMV1−tTA.neoのBglII 部位に挿入して、EC1214Aと称される、選択マーカー、ネオマイシン耐性 遺伝子だけでなく、tTA発現カセッ トおよびtTA依存性プロモーターの両方を担持するベクターを得た。 実施例4単独のプラスミドテトラサイクリン陽性に誘導した(Tet−on)ベクターの 構築 元のテトラサイクリンリプレッサー/オペレーター由来のtet−on系も、 2つのプラスミド、pUHD17−1neo(またはpUHD172−1neo )およびpUHC13−3−3(Gossenら、1995年)から構成される 。pUHC13−3は、tetオペレーター配列が、TATAボックスの上流に 挿入されているハイブリッド最少ヒトCMVプロモーターを含むテトラサイクリ ン感受性発現ベクターである。pUHD17−1neoまたはpUHD172− 1neoは、野生型CMVプロモーターによって駆動される発現を伴った、逆相 テトラサイクリン応答性トランスアクチベーター(rtTA)をコードする配列 を含む。この系を用いた予備実験で、効果的な可逆移入遺伝子発現が、研究され た多くの腫瘍細胞系で観察されることが分かった。元のテトラサイクリン系とは 対照的に、発現は、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンのようなテトラサ イクリン類似体の存在下で始まる一方で、テトラサイクリンの不在下では停止さ れる。しかし、rtTAトランスアクチベーターは、細胞成長において抑圧効果 を示すことが知られているVP−16活性化ドメインを含む(GillおよびP tashne、1988年)。 したがって、この問題を解決するため、そしてさらに系を改善するために、t rTA発現カセットをまず、pUHD17−1neoまたはpUHD172−1 neoプラスミド中の強力なCMVpエンハンサー(Boshartら、198 5年)を、1対の19bpの不完全直接反復配列(配列番号5)に変換すること によって修飾した。hCMVプロモーター/エンハンサーの修飾は、hCMVプ ロモーター(実施例2) からの5’エンハンサー配列の一部を除去することによって行った。新たなrt TA発現プラスミドは、pmCMV1−rtTAと名づけられた。 EC1214Bと名づけられた単独プラスミドベクターを、pmCMV1−r tTAを用いて構築した。このプラスミドは、1)宿主細胞成長においてテトラ サイクリン応答性トランスアクチベーター(rtTA)の抑圧効果を排除する修飾 rtTA発現カセット、2)プラスミドpUHC13−3から得たrtTA依存 性プロモーター、3)一般的イントロン配列、4)プロモーターおよびイントロ ンの下流にある複数のクローニング部位、および5)G418選択を可能にする neoR発現カセットを含む。構築は、実施例3に概説されたように行った。 実施例5レチノブラストーマ(RB)およびp53テトラサイクリン制御ベクターの構築 A.誘導性pRB110発現ベクターの構築 誘導性pRB110発現プラスミドを構築するために、プラスミドF7(Tak ahashiら、1991年)またはpRB110遺伝子cDNAの全長を含むp 4.95BT(Friendら、1987年)を、ヌクレオチド−322におい て制限酵素AcyI、+3230においてScaIで消化した(第二のフレーム 内ATG開始コドンのAを、ヌクレオチド+19とする)。AcyI消化によっ て生じた5’オーバーハングを、4つのdNTP全ての存在下でE.coli DNAポリメラーゼIで処理して、平滑末端とした。BamHIリンカーを、こ の断片にライゲートさせ、その後、同断片をBamHIで消化して、過剰なリン カーを除去し、そしてBamHI末端を生じさせた(Maniatisら、19 89年、Ausubelら、1992年)。生じた3552bpのRBcDNA 断片を、EC1214Aの特異的なBamHIに挿入 して、pCMV*−tTA−RB110を得た。 B.誘導性pRB94発現ベクターの構築 AUGコドンを囲む一次配列GCC(A G)CCAUGG(配列番号27)が、 高等な真核細胞での翻訳開始に最適であることが知られている(Kozak、1 991年)。ほとんど全ての脊椎動物のmRNAが、確実な開始忠実度特性を示 すが、重大な調節タンパク質をコードするmRNAには、有効な翻訳ができるよ うになっていないものが少なくないようである(Kozak、1991年)。R BcDNA配列を検討する上で、全長pRB110とN末端切断pRB94との両方 のAUG開始コドンは、高等な真核細胞での翻訳開始にとって次善の状況にある ことが分かった。例えば、ヌクレオチド−5位置にフレーム外AUGコドンがあ り(pRB94cDNAのためのATG出発コドンのAを、ヌクレオチド+1とす る)、pRB94のためのATGコドンのリーダー配列は、上記した共通イニシエ ーター状況と比較して劣る。pRB94cDNAの翻訳効率を改善するために、部 位特異的突然変異誘発を使用して、最適な翻訳開始のためのpRB94の第二内部 フレーム内ATGコドンの上流のDNA配列を最適化した。 全長RB110cDNAを担持するプラスミドF7をテンプレートとして使用し 、修飾5’−pRB94cDNAフラグメントを、PCRTMによって得た。PCRTM 反応のために使用したセンスプライマー(5'−CCCAAGCTTGCCG CCATGTCGTTCACTTTTAC−3'、配列番号12)は、HindI II制限部位(下線部分)およびKozakカセット(イタリック体、Kozak 、1987年)を含んでいる。アンチセンスプライマー5'−GTCCAAGAGAATTC ATAAAAGG−3'(OMRbAS300、配列番号13)は 、RBcDNAのヌクレオチド+900でEcoRI部位(下線部分)と重なり 合った(第一のフレーム内ATGのAを、位置+1とする)。PCRTM産物を、 HindIIIおよびEcoRIで消化し、その後、プラスミドF7から単離され たEcoRI(位置+900)およびBamHI(+3548)の間の3’−R BcDNA断片を含むDNA断片でライゲートした。全pRB94cDNA断片を 、EC1214AのHindIIIおよびBamHI部位に挿入して、誘導性pR B94発現プラスミド、pCMV*−tTA−pRB94を得た。 C.誘導性p53発現ベクターの構築 全長p53遺伝子cDNAを含む、プラスミドpC53−SN3(Baker ら、1990年)を、BamHIで消化させ、そして全長p53遺伝子を含む断 片を、EC1214Aの特異的BamHI部位に挿入してpCMV*−tTA− p53を得た。 実施例6テトラサイクリン調節pRB110、pRB94またはp53発現を有する長期 腫瘍細胞クローンの製造 修飾された単独プラスミドテトラサイクリン応答性哺乳類遺伝子発現系を使用 して、野生型またはN末端切断レチノブラストーマ(RB)腫瘍抑制遺伝子、ま たはp53腫瘍抑制遺伝子の発現が検出しうる確実に可逆的にスイッチを点滅で きる種々の安定な腫瘍細胞系を得た。 A.細胞培養 胸部癌細胞系MDA−468(HTB132)をATCCから得て、10%F BS(メリーランド州ガイザースバーグのライフテクノロジーズ(Life T echnologies)社)を含むLeibovitzのL−15(メリーラ ンド州ガイザースバーグのライフテクノロジーズ社)で培養した。骨肉腫細胞系 Saos2を、15%FBSを含む培地McCoyの5A(メリーランド州ガイ ザースバーグのライフテクノロジーズ社)で培養した(Zhouら、1994年 b)。ATCCか ら得られた膀胱癌細胞系5637(HTB9)は、10%FBSを含有するRP MI1640培地(メリーランド州ガイザースバーグのライフテクノロジーズ社 )で培養した。全ての細胞培養用培地に、0.5%ペニシリン/ストレプトマイ シンを補足した。Saos2および5367細胞を、37℃、5%CO2インキ ュベーターでインキュベートした一方で、MDA−468細胞は、CO2なしで 37℃で培養した。 B.安定なトランスフェクション 腫瘍細胞を、製造業者(メリーランド州ガイザースバーグのライフテクノロジ ーズ社)の指示マニュアルに従ったリポフェクチン法により、pRB110および pRB94発現プラスミドでトランスフェクションした。特記事項を除き、トラン スフェクションおよび後続手段の間、0.5μg/mlのテトラサイクリン(ミ ズーリー州セントルイスのシグマ(Sigma)社)をトランスフェクションお よび培養の培地に添加した。トランスフェクションの48時間後、G418(メ リーランド州ガイザースバーグのライフテクノロジーズ社)を培養培地に300 μg/lの濃度で添加した。2,3週間後、単独のコロニーをクローニングリン グによって単離した。各単離コロニーについて2個の培養を行った。元のクロー ンを0.5μg/mlテトラサイクリンを含む培地で維持しておき、転写したク ローンをテトラサイクリンの不在下で培養した。後者を、特異的抗RB抗体、R B−WL−1で免疫化学的に染色した(Xuら、1989年a)。続いて、適合 したRB陽性のクローンを、テトラサイクリンおよびG418を含む培地に維持 させ、以後の分析のために延長させた。 C.一過性トランスフェクション 腫瘍細胞を、60mm培養皿または無菌のカバーガラスの上に、翌日約40% 集密度に達するような濃度で種蒔きした。24時間後、適切な 量のプラスミドDNAを、製造業者(メリーランド州ガイザースバーグのライフ テクノロジーズ社)の指示マニュアルに従いOpti−MEM培地中でリポフェ クチン試薬と混合した。細胞に、DNA−リポフェクチン複合体を重畳し、37 ℃、5%CO2インキュベーターで一夜インキュベートした。翌日、新鮮な培地 を添加して、DNA−リポフェクチンを置換えた。24時間または48時間後、 細胞を、免疫化学的染色用に固定させるか、または細胞溶解物の製造のために溶 解させた。 D.RBタンパク質の免疫化学的染色 上述(Xuら、1989年a)のとおり、免疫化学的染色を行った。 RB発現を検出するために、カバーガラス上で生育した細胞を、45%(容積/ 容積)アセトン/10%(重量/容積)ホルムアルデヒド/0.1Mリン酸緩衝 液で5分間固定した。6回、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、細胞を、リン 酸緩衝液中の1%脱脂牛乳/1.5%ヤギ血清またはウマ血清で、4時間、室温 で保護した。RB−WL−1抗RB抗体またはCanjiのモノクローナル抗R B抗体(カリフォルニア州サンディエゴのQED社)を、0.02%トライトン X−100を補足した同じ溶液中でそれぞれ2μg/mlまたは0.5μg/m lに希釈し、細胞と共に一夜インキュベートした。洗浄後、カバーガラスを、技 術マニュアル(カリフォルニア州バーリンガムのベクターラボラトリーズ社)に 従ってアビジンビオチン化ペルオキシダーゼ複合体(ABC)法で免疫染色を進 行させた。 E.pRBについての免疫ブロッティング 上述(Xuら、1991年a;1991年b)のとおり、細胞溶解物を製造し た。簡便に述べると、60mm皿にある培養細胞を、100mM NaCl、0 .2%NP−40、0.2%ナトリウムデオキシコレート、0.1%SDSおよ び50μg/mlアプロチニンと1mM P MSFを有する50mMトリス−HCl(pH8.0)を含む0.6mlの氷冷 溶解緩衝液で溶解させた。細胞溶解物を、21ゲージの針を通して数回通過させ 、そして遠心分離によって清澄化した。 上述(Xuら、1991年a;1991年b)のとおり、直接的ウエスタン免 疫ブロッティングを行った。ブラッドフォードのタンパク質アッセイ(カリフォ ルニア州リッチモンドのバイオラッド(BioRad)社)によって測定した6 0μgの総細胞タンパク質を、8%SDS/ポリアクリルアミドゲルで電気泳動 にかけ、イムノビロンポリビニリデン膜(PVDF)(マサチューセッツ州ベッ ドフォードのミリポワ(Millipore)社)に電気ブロッティングした。 トリス緩衝生理食塩水中の4%ウシ血清アルブミン/1%正常ヤギ血清で保護し た後、膜を、RB−WL−1抗体で、RB検出用に0.4μg/mlの最終濃度 で一夜インキュベートした。その後、ブロットを、プロトブロットのウエスタン ブロットアルカリフォスファターゼ系(ウイスコンシン州マディソンのプロメガ (Promega)社)によって捕捉した。 F.成長曲線測定 結晶バイオレット染色法を使用して、テトラサイクリンの存在または不在下で 細胞成長の変化を測定した(Gilliesら、1986年)。簡便に述べると 、細胞を、2個の24穴プレートに蒔いた。一組のプレートで、細胞を0.5μ g/mlテトラサイクリンを含む培地で育成し、他方では、同じ細胞を非テトラ サイクリン培地で培養した。各時点で、細胞をPBS中の1%グルタアルデヒド で固定し、0.5%の結晶バイオレットを用いて染色した。所望の時点で細胞を 収集した後に、結晶バイオレット染料を、0.9%クエン酸三ナトリウム、0. 02N塩素酸および45%エタノール(容積/容積)を含むソレンソンの溶液を 用いて細胞をインキュベートすることにより、染色細胞から抽出した。抽出染料 をソレンソンの溶液で適宜希釈し、λ550での光学吸光度を測定した。時間に対 するOD550をプロットして成長曲線を得た。 G.軟質寒天アッセイ 軟質寒天アッセイにため、適当数の細胞を15%FBSを含む完全培地中の0. 3%アガロースと混合させ、35mm組織培養皿上の0.7%塩基性寒天上に重 畳した。各個別細胞クローンについて、2枚目の皿を製造した。一方の皿の細胞 を、0.5μg/mlテトラサイクリンを含む培地で培養し、他方は、非テトラ サイクリン培地で培養した。培地を、3日毎に補給し、そしてコロニー(>50 細胞)を、3週間後計数した。結果は、細胞クローン当たり3枚の皿の平均とし て計算した。 H.ヌードマウスでの腫瘍原性試験 腫瘍原性試験は、先に記述されている(Takahashiら、1991年) 。2つの群の胸腺欠損ヌードマウスを、試験されるべき各細胞クローンについて 準備した。1群のマウスには通常の水を与え、他方の群には、5mg/mlテト ラサイクリンを含む水を与えた。各RB110およびRB94再構築クローンから得 た総計5×106細胞を、0.2mlのリン酸緩衝生理食塩水中で、ヌードマウ スの右腹側部に皮下注射した。Saos2,5637およびMDA−468細胞 を含むRB陰性親の対照は、同じ濃度で同じマウスの左腹側部に注射した。腫瘍 は、注射の4週後に判定した。 I.[3H]−チミジン取込みの時間経過研究 誘導性RB再構築クローンから得た細胞を、テトラサイクリンを含む培地のあ る無菌のカバーガラスで育成した。培養培地からテトラサイクリンを除去した後 の特定の時点で、細胞を、10μCi[3H]−メチルチミジン(イリノイ州ア ーリントンハイツのアマシャム社)を含む1mlの新鮮培地で、2時間37℃で インキュベートし、固定し、上述のとおりRBタンパク質の発現について免疫化 学的に染色した(Xuら、1 991年a;1991年b)。染色スライドを、続いて薄層のゼラチンで被覆し 、37℃で一夜乾燥させた。スライドを、オートラジオグラフィーエマルジョン (型NTB2、ニューヨーク州ローチェスターのイーストマンコダック社)で上 塗りし、2日間照射した。現像後、スライドを光学顕微鏡下で検定した。 J.一過的にトランスフェクトされた細胞培養の[3H]−チミジン取込み 腫瘍細胞を、カバーガラスの上に蒔き、そしてプラスミド発現pRB94、pR B110または他の突然変異RBタンパク質でトランスフェクトした。トランスフ ェクションの24時間後、細胞を、RBタンパク質の免疫細胞化学的染色、そし てXuらに記述されるとおり(1991年b;1991年c)[3H]−チミジ ン取込みアッセイを行った。 K.長期誘導性RB発現クローンの特徴付け 文献に報告されているところでは、RB置換後における細胞増殖抑制と形態学 的変化は一致していない。本発明者らおよび他の者によってなされた研究では、 RB−欠損腫瘍細胞への正常RB遺伝子の置換がヌードマウスで生じ、その腫瘍 形成性活性を抑制し得ることを示した(GoodrichおよびLee 199 3、Booksteinら、1990a;1990b、Chenら、1992、 Goodrichら、1992b、Huangら、1988、Kratzkeら 、1993、Madreperlaら、1991、Muncasterら、19 92、Ookawaら、1993、Sumegiら、1990、Takahas hiら、1991、Wangら、1993、Xuら、1996、Xuら、199 1c、Zhouら、1994b、Xu、1996、Xu、1995、Liら、1 996、Xuら、1994b)。研究された腫瘍細胞系は、膀胱、前立腺、乳房 および肺のレチノブラストーマ、オステオサル コーマ、カルシノーマのごときヒト癌の広く異なるタイプから誘導された(総説 についてはGoodrichおよびLee、1993、Xu、1996、Xu、 1995)。複数の遺伝的改変を担う腫瘍細胞におけるRB遺伝子欠損だけの修 正でもその悪性表現型を復帰させるのに十分であるとよく記載されているが、一 見したところよりも謎が多いものであった(Klein、1990)。 いくつかの初期の研究で示されたように、pRB−発現プラスミドでの一過性 トランスフェクション後に、培養中のRB−欠損腫瘍細胞には、細胞拡大、老化 様表現型および増殖停止を含めた顕著な変化を呈するものがいくつかあった(T empletonら、1991、Qinら、1992)。しかしながら、親系と 丁度同程度の速さで増殖するRB−再構成腫瘍細胞の長期安定クローンを単離で きることが後に判明した。従って文献では、その腫瘍抑制機能とRB−欠損腫瘍 細胞でのRB置換による細胞増殖阻害とを分けて考える傾向があった(Chen ら、1992、Goodrichら、1992b、Takahashiら、19 91、Xuら、1991b、Zhouら、1994b、Liら、1996)。 3つのRB−欠損腫瘍細胞系を用いて、長期誘導性RB発現クローンを確立し た。それらは、オステオサルコーマ細胞系、Saos2、膀胱癌細胞系、563 7および乳癌細胞系、MDA−468であった。受容体としてSaos2、56 37およびMDA−468を選択した基準は、それらがRB−置換研究で最も使 用されるRB−欠損腫瘍細胞であるということであった。該腫瘍細胞は、誘導性 RB110発現プラスミド、pCMV*−tTA−RB110およびpRB94発現プラ スミド、テトラサイクリン存在下でのpCMV*−tTA−RB94でトランスフ ェクトした。ほぼ2ないし4週間の400μg/mlのG418での選択後、は っきり分離された単一コロニーを単離し、テトラサイクリン含有培地で維持した 。単離されたクローンのうち小部分を、テトラサイクリン(Tc)不存在下で2 4ないし48時間別々に培養し、抗−RB抗体、RB −WL−1で染色した。Tc−応答性RB−再構成5637膀胱カルシノーマお よびMDA−MB−468乳癌細胞の安定なクローンで、pRBタンパク質発現 の密接な制御が見られた。 培地中、0.5μg/mlのTcの存在下で増殖させたRB再構成5637細 胞は免疫細胞化学染色によるとRB-であり、他方、Tcの除去後、Rb+免疫細 胞化学染色によって示されるように、RB-再構成5637細胞においてpRB の発現にスイッチが入った。MDA−MB−468乳癌腫瘍細胞は、培地中、0 .5μg/mlのTcの存在下での免疫細胞化学染色によるとRB-であり、他 方、Tcの除去後では、RB+免疫細胞化学染色によって示されるようにRB− 再構成MDA−MB−468乳癌細胞においてpRB発現にスイッチが入った。 テトラサイクリンは、このテトラサイクリン応答性発現系ではインデューサーで あるというよりも阻害剤であることに注意されたい。 RB発現を停止させるのに必要なテトラサイクリンの最小濃度もテストした。 免疫染色によって、0.1μg/mlという少量のテトラサイクリンがRB発現 を検出できないほどまで阻害できることが判明し、これは、テトラサイクリン調 節発現系がテトラサイクリンに対して非常に感受性であることを示す。 加えて、驚くべきことに、以前に報告された調節不可能な長期RB−再構成腫 瘍細胞系とは異なり、調べた全ての長期腫瘍細胞クローンは、無Tc培地でpR B発現にスイッチが入った後には、不可逆的に増殖を停止することが判明した( 図3A、図3Bおよび図3C)。文献では、正常および腫瘍細胞におけるpRB の半減期が4〜6時間に過ぎないことが知られており(Miharaら、198 9;Xuら、1994b;Xuら、1989a)、図2で示されるように、改変 型テトラサイクリン−調節性系を用い、低濃度のTcの存在下または不存在下で のtTAトランスアクチベーター自体の発現は細胞増殖に対して効果を有しなか った。 Saos2および5637クローンはDNAを合成もできず、これに続いて認 識可能な形態学的変化が起こり、最後に細胞が死滅した。無Tc培地でpRB発 現が誘導された後、細胞拡大、偏平化および細胞周期がG1/Sの細胞(cycling G1/S cells)より低い核細胞質比を含めた細胞形態学が顕著に変化した。膀胱癌 細胞系5637の場合、調節不可能系での一過性のまたは安定なRB−置換の後 における形態学および増殖速度の変化は文献では充分には記載されていなかった (Goodrichら、1992b;Takahashiら、1991;Zho uら、1994b)。 一般に、無Tc培地中の確立されたTc−調節性RB+腫瘍系の表現型は、R Bプラスミドでトランスフェクトされた(またはRBレトロウイルスベクターで 感染させた)腫瘍細胞大量培養につき以前に記載されたものとかなり似ていた( Huangら、1988;Templeto nら、1991;Qinら、1992)。pRB発現に対する許容条件下の全て の腫瘍細胞クローンは、軟寒天中でコロニーを形成することができず(図4A、 図4Bおよび図4C)、ヌードマウスで腫瘍形成性ではなかった。 RBをもう1つの通常の腫瘍抑制遺伝子p53と比較するために、Tc−調節 性野生型p53発現を持ついくつかの長期安定腫瘍細胞クローンをオステオサル コーマ細胞系Saos2から確立した。前記したのと同様のアプローチを用いて 、p53−再構成Saos−2腫瘍細胞クローンを確立した。略言すれば、親S aos−2腫瘍細胞を野生型p53−発現プラスミドpCMV*−tTA−p5 3でトランスフェクトし(実施例5)、ゲネチシン含有培地中で選択した。初期 G418−耐性大量培養を少なくとも2ラウンドのサブクローニングに付して、 安定な野生型p53−再構成クローンを得た。p53遺伝子の完全な欠失のため 、親Saos−2細胞は内因性p53を有しない。 このモデル系にて、p53−再構成Saos−2クローンにおける野生型p5 3発現の誘導の結果、RB-/p53null腫瘍細胞の増殖阻止がもたらされたこ とが判明した。Tcの不存在下でTc−調節p53−再構成Saos−2クロー ンを増殖させると、多くの腫瘍細胞は収縮し、脱着した。さらに、DNA断片化 アッセイにより測定されるごとく、豊富な低分子量DNAが、p53発現に対す る許容条件下で、p53−再構成Saos−2腫瘍細胞から抽出された試料での み検出された。 これらの観察は、RB-/p53nullSaos−2腫瘍細胞の野生型p53−誘 導増殖阻止が複製老化よりもむしろアポトーシス細胞死の結果であることを示す 。 Dimriらは、最近、インビボにおいて、培養中のおよび老化している皮膚 中の老化ヒト細胞を同定するバイオマーカーを報告した。いくつかのヒト老化細 胞がpH6で組織化学的に検出できるβ−ガラクトシダーゼを発現したことが示 された(Dimriら,1995)。老化関 連β−ガラクトシダーゼ(SA−β−gal)と称されるこのマーカーは、老化 しているが前老化(prenesescent)していない繊維芽細胞によって発現される。ま た、SA−β−galは不死細胞(immortal cells)で存在しなかったが、不死を 逆行させる遺伝子操作によって誘導された(Dimriら、1995)。注目すべ きは、成体メラノサイトのごときいくつかの細胞が老化または年齢とは独立して SA−β−gal(pH6活性)を発現した。従って、SA−β−galは複製 老化の普遍的マーカーではなく、これは驚くべきことではない。 それにも拘わらず、テトラサイクリンー調節性pRBまたはp53発現と共に 本発明の長期腫瘍細胞クローンを利用することによって、SA−β−gal(p H6活性)は、RB−媒介腫瘍細胞増殖停止をさらに特徴付けることができる簡 便なアッセイを提供する。大部分の(>99.9%)若い(初期継代)ヒトWI −38繊維芽細胞はSA−β−gal陰性である。対照的に、(52より大の集 団倍化レベルの)老化したWI−38細胞は強力にSA−β−gal陽性であっ た。これまでに調べた全てのテトラサイクリン−応答性腫瘍細胞クローンは、テ トラサイクリンの存在下でSA−β−gal陰性であり(RB-)、無テトラサ イクリン培地中でSA−β−gal陽性であった(RB+)。しかしながら、R B+状態における腫瘍細胞のSA−β−gal染色の強度は腫瘍細胞のタイプに 依存して変化する。 注目すべきことに、非誘導性(Chenら、1990;Liら、1996)ま たは誘導性系でのSaos−2(RB-、p53null)腫瘍細胞におけるp53 再構成はその腫瘍性表現型を抑制するが、テトラサイクリン調節性プロモーター を持つp53再構成したSaos−2クローンは、テトラサイクリンの存在下ま たは不存在下いずれでもSA−β−gal陰性であった。非常に興味あることに 、p53−再構成Saos−2細胞を、無Tc培地中で野生型pRB110を発現 する組換えアデノウイルスベクターで感染させると、野生型p53およびpRB1 10 発現双方を持つ腫瘍細胞は、pRB110を発現するに過ぎない腫瘍細胞と比較 して、より強いSA−β−gal陽性染色を呈した。該結果は、pRBおよびp 53による腫瘍抑制のメカニズムは相互に異なるが、pRBおよびp53の共発 現はRB−媒介腫瘍細胞老化に対して相乗効果を有することを示す。 その潜在的治療的使用を考慮すると、もう1つの重要な知見は、pRB−媒介 複製老化(不可逆的増殖停止)が腫瘍特異的であるという事実であった。100 の感染多重度(MOI)における、組換えアデノウイルスベクターAdCMVp RB110で感染された初期継代の若いWI−38はSA−β−gal陰性のま まであり、それらは感染から約1週間後に正常な増殖パターンを回復した。従っ て、pRBは抗癌遺伝子治療用の比較的安全な試薬である。進行した悪性疾患の 治療に加えて、出現するRB遺伝子治療は手術後残存腫瘍、表面存在癌、または プレ悪性疾患、ならびにある状況における非悪性、過剰増殖性疾患を治療するの にも有用であり得る(Changら、1995;Xuら、1996)。 L. RB−媒介腫瘍抑制の広い生物学的基礎 腫瘍細胞−特異的老化およびよく知られた抗増殖効果に加えて、pRBは血管 形成の阻害においておよび腫瘍細胞の免疫原性の誘導においても役割を演じる。 本発明者らは、テトラサイクリン−応答性のRB−再構成オステオサルコーマお よび非小細胞肺癌細胞系から収集した無血清条件培地(CM)が細胞培養物から のTcの除去後に血管形成性から抗血管形成性にスイッチされたことを示した。 このスイッチはウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学によって測定され るようにpRB発現の開始に対応した(Dawsonら、1996)。また、本 発明者らは、RB−欠損非小細胞肺癌細胞系H2009におけるIFN−γによ るHLAクラスII誘導が野生型RB遺伝子発現の再構成を要することも示した (Luら、1996)。クラスIIタンパク質は免疫応答の一 部としてCD4+Tリンパ球に対するタンパク質分解により加工された抗原由来 のペプチドを表す。従って、pRBは同様に腫瘍免疫原性を媒介することにおい て役割を有するようである。 レチノブラストーマ(RB)腫瘍抑制遺伝子の置換がRB−欠損腫瘍細胞の侵 入を阻害し得るかを判断するために、ボイデン(Boyden)チャンバーアッ セイ(Liら、1996)を用いて実験した。該実験は、膀胱、乳房および肺の オステオサルコーマおよびカルシノーマに由来するものを含めた、広い群の安定 なRB−再構成ヒト腫瘍細胞系で行った。これらの腫瘍細胞系における外因性野 生型RBタンパク質の発現は、構成的に活性なプロモーターまたは誘導性プロモ ーターいずれかによって駆動した。RB−再構成RB+細胞系からよりも親RB −欠損細胞系およびRB-復帰体からのかなり多くの腫瘍細胞がボイデンチャン バーアッセイにおいてマトリゲル(Matrigel)に浸透した(p<0.0 01、両側t−検定)。注意すべきは、RB置換による種々のRB−欠損腫瘍細 胞の侵入性の阻害は、明らかに、インビボにおけるそれらの腫瘍形成性の抑制と よく相関した。対照的に、機能的RBまたはp53再発現はRB-/p53null オステオサルコーマ細胞系Saos−2のヌードマウスにおいて腫瘍形成を抑制 したが、野生型p53遺伝子の置換はRB遺伝子と比較してそれらの侵入性に対 してかなり小さいインパクトを有した。 正常なヒト二倍体細胞は、限定された数の細胞分裂の後にインビトロおよびイ ンビボで老化する。細胞老化として知られているこのプロセスは、老化の根底的 原因およびヒト癌の発症に対する重大な障害である。また、改変型テトラサイク リンに調節された遺伝子発現系を介する機能的pRBのみを再発現するRB/p 53−欠損腫瘍細胞は細胞周期のG0/G1相で不可逆的に増殖阻止されたこと も示された。これらの細胞は、細胞老化と合致する複数の形態学的変化を呈し、 また、老化−関連β−ガラクトシダーゼバイオマーカーを発現した。 さらなる実験は、恐らくは、腫瘍性細胞の拡大された増殖性ライフスパンに必 須であるテロメラーゼ活性が、(p53ではなく)pRB発現の誘導後に、腫瘍 細胞系で抑制されることを示した。これらの観察は、pRBが本来の細胞老化プ ログラムにおいて非常に重要な役割を演じることを示唆する。現実的見地からは 、知見は、RB(またはRBおよびp53を一緒に)を用いる細胞増殖予期性遺 伝子治療の結果、細胞老化および危機を介する腫瘍細胞の異なる排除がもたらさ れ得ることを意味する。同時に、インビボにおける正常細胞の複製ライフスパン は影響されないであろう。これは、腫瘍特異的腫瘍抑制遺伝子治療および抗−テ ロメラーゼ治療を設計するための潜在的基礎を供し得る。 これらの知見は、一緒にすると、RB−媒介腫瘍抑制は広い生物学的基礎を有 し、これは確かにヒト癌用の出現するRB腫瘍抑制遺伝子治療をより魅力的にさ えすることを示唆する。 M. N−末端切断型pRBによる増強された腫瘍抑制 RB−再構成腫瘍細胞の長期安定クローンは、非誘導性遺伝子発現系で単離す ることができ、これらのクローンのほとんどは親系と丁度同程度に迅速に増殖す る。また、本発明者らは、RB−媒介腫瘍抑制が実質的であって、広い生物学的 基礎を有するが、それはしばしば不完全であって、RB−再構成腫瘍細胞の一部 は長期の潜伏期間後にヌードマウスにおいて生存することができ、RB+異種移 植腫瘍を形成することも見いだした(Takahashiら、1991;Xuら 、1991b;Zhouら、1994b;Liら、1996)。同様の観察が他 の研究者によって報告されている(Booksteinら、1990b;Goo drichら、1992b;Kratzkeら、1993;Ookawaら、1 993;Wangら、1993)。この現象は腫瘍サプレッサー耐性(TSR; Zhouら、1994b)として発明者によって言及されており、これは化学療 法における複数薬物耐性(MDR)と同等で ある。後者の場合、低用量の化学療法は細胞障害性薬剤に対するそれらのしばし ば固有に高い耐性のため、転移性腫瘍細胞を選択する危険を負う。 本発明者らは、引き続いて、〜94kDaのN−末端切断型RBタンパク質( pRB94)が、驚くべきことに、正常内因性RB遺伝子を有するものを含めた、 調べた多様な腫瘍細胞系における全長pRBタンパク質と比較して、より優れた 細胞増殖抑制を発揮することを報告した。pRB94発現プラスミドでトランスフ ェクトした腫瘍細胞は、細胞老化に頻繁に関連する複数の形態学的変化を呈した 。それらはS期に入れず、迅速に死滅した(Xuら、1994b;Resnit zkyおよびReed、1995)。 異所性動物モデルにおける本発明者らの最近の研究は、AdCMVpRB94 、N−末端切断型RBタンパク質を発現する複製欠損アデノウイルスベクターに よるヌードマウスにおける確立されたヒトRB-およびRB+膀胱異種移植癌の治 療の結果、処理された腫瘍が後退したことを示した(Xuら、1996)。注目 すべきは、RBタンパク質の全長および末端切断型形態は共に、アデノウイルス ベクターを介して腫瘍細胞で過剰発現されると、腫瘍増殖を抑制できたが、pR B94は全長RBタンパク質よりもかなり優れていた。N−末端切断型RBタンパ ク質による増強された腫瘍抑制のメカニズムは未だ明らかでない。 N−末端切断型pRB94および全長pRB110間の機能的差異を良好に理解す るために、本発明者らは、Tc−応答性pRB94発現を持つ安定な腫瘍細胞系を 確立した。経時的分析により、細胞培地からのテトラサイクリンの除去から6時 間程度で、pRB94−再構成腫瘍細胞は非リン酸化およびリン酸化pRB94双方 の最大量を蓄積し、続いて、腫瘍細胞のかなり大部分が増殖停止のインジケータ ーである3H−チミジンを取り込むことができないことが判明した。pRB94タ ンパク質は、〜18〜24時間内に完全に脱リン酸化された。しかしながら、 pRB110−再構成腫瘍細胞の大部分は、6または8時間の時点で免疫組織化学 的にRB-のままであり、正常なDNA合成を有した(図5)。pRB110はウェス タンブロッティングによって判断して24時間の時点で最高のレベルに到達し、 テトラサイクリンの除去の24〜48時間後にほとんど脱リン酸化され、その期 間にpRB110−再構成腫瘍細胞は最後にDNA合成を停止した(図5)。ヒト 老化細胞用のSA−β−galバイオマーカーアッセイを用い、pRB94発現を 有するSaos−2細胞は、Tcの除去の48時間後のpRB110−発現細胞と 比較して、より強いSA−β−gal陽性染色を示したことが示された。pRB94 はpRB110よりも長い半減期を有し、活性な非リン酸化形態のままである傾 向があるので(米国特許第5,496,731号;Xuら、1994b)、腫瘍 細胞中のRBタンパク質の活性形態(非リン酸化形態)のほとんどの迅速な蓄積 はpRB94による増強された腫瘍細胞増殖抑制を説明し得る。この点、アミノ酸 379で始まるpRB56と命名されたpRBのもう1つの切断型バージョンもま た全長pRBと比較して細胞周期進行のより優れた阻害剤として報告されている (Willsら、1995)。 改変型系の利点は3つある:1)それは、tTAペプチドのより低い構成的発 現のため、誘導性遺伝子発現を持つ長期安定細胞系を確立するのに適している、 2)該系は1ラウンドのみのトランスフェクションおよび選択が必要なように単 一プラスミドに今や含有されている、および3)重要なことには、単一−プラス ミドテトラサイクリン−応答性哺乳動物遺伝子発現系はテトラサイクリン−制御 ウイルスベクターに容易に変換できる(後記実施例7−12)。 実施例7テトラサイクリン−制御アデノウイルスベクターの構築 目的とする遺伝子の所望のcDNA断片をまず単一−プラスミドテト ラサイクリン−調節性プラスミドベクターEC1214A(実施例3)またはE C1214B(実施例4)に挿入する。次いで、対応するEC1214Aまたは EC1214Bプラスミドベクターからのテトラサイクリン−応答性外来性遺伝 子発現カセットおよび改変型tTA(またはrtTA)発現カセットを、DNA 操作についての当該分野における標準的方法を用いて回収し(Maniatis ら、1989;Ausubelら、1992)、シャトルプラスミドpΔE1s p1A(Microbix Biosystems、Inc.)に挿入する。次 いで、LIPOFECTIN試薬(GIBCO/BRL Life Techn ologies)を用い、得られた組換えシャトルプラスミドを、アデノウイル スAd5d1309ゲノムおよびE1/E3欠失突然変異体(Microbix Biosystems、Inc.)の骨格を含有するマスターアデノウイルス タイプ5(Ad5)プラスミドpBHG11で293細胞に共トランスフェクト する。293細胞の共トランスフェクションは0.5μg/mlのテトラサイク リンの存在下(tet−off系)または不存在下(tet−on系)で行う。 別法として、注目する遺伝子を含有する断片をまず単一−プラスミドテトラサ イクリン−調節性プラスミドベクターEC1214AまたはEC1214Bに挿 入する。次いで、対応するEC1214AまたはEC1214Bプラスミドベク ターからのテトラサイクリン−応答性外来性遺伝子発現カセットおよび改変型t TA(またはrtTA)発現カセットを回収し、各々、シャトルプラスミドpΔ E1sp1AおよびマスターアデノウイルスプラスミドpBHG11に挿入する 。得られた組換えシャトルプラスミドおよび組換えマスターアデノウイルスプラ スミドを293細胞に共トランスフェクトする。 組換えシャトルプラスミドおよび組換えマスターアデノウイルスプラスミドで の293細胞の共トランスフェクションはインビボ組換えによって感染性ビリオ ンを生成し、ここに、注目する遺伝子を発現するミニ 遺伝子カセットおよび改変型tTA(またはrtTA)発現カセットを、各々、 Ad5d1309ゲノムのΔE1領域またはΔE1およびΔE3と置換する。ト ランスフェクトした293細胞における組換えアデノウイルスの存在をまず細胞 障害効果(CPE)によって同定する。CPEが起こったトランスフェクトされ た293細胞から細胞培養上清を収集する。次いで、ウイルス上清での感染後に 293細胞単層からアデノウイルスプラークをスクリーニングすることによって 、組換えウイルスを単離し、制限酵素消化マッピング、PCRTMによって、また はテトラサイクリン−調節様式にて、ウイルス感染宿主細胞における注目する遺 伝子の発現によってさらに特徴付けする。所望の外来性遺伝子ならびに改変型t TA(またはrtTA)発現カセットを含有する組換えアデノウイルスを少なく とも3ラウンドのプラーク精製に付す。 テトラサイクリン−制御組換えアデノウイルスの高力価ストックを、Grah amおよびPrevecからの修飾方法(1991)によって調製する。CsC l超遠心−精製アデノウイルスは、260nmにおけるOD(1 OD260= 1×1012ウイルス粒子/ml)によって測定して1ml当たり〜1013ウイル ス粒子を含有する。濃縮されたウイルス上清を、SephadexG50を通す ゲル濾過によって脱塩して、PBS中のml当たり約1011プラーク形成単位( pfu)の最終精製ウイルスを得る。 実施例8テトラサイクリン−応答性RBアデノウイルスベクターの調製 N−末端切断型pRB94タンパク質を発現する複製−欠損アデノウイルスベク ター(米国特許第5,496,731号)が、ヒト癌遺伝子治療のインビボ動物 モデルで使用された(Xuら、1996)。生憎と、AdCMVpRB94ウイ ルス上清のプラーク形成単位に対するウイルス粒子の比率は、継代と共に劇的に 増加し、ヒト癌遺伝子治療臨床トラ イアル用のAdCMVpRB94の高力価ストックの大規模調製は困難である。 これは、恐らくは、293ウイルス産生細胞系に対するpRB94タンパク質の 優れた細胞増殖抑制効果によって引き起こされる。 改変型テトラサイクリン−応答性哺乳動物遺伝子発現系を前記と同様にして使 用して、テトラサイクリン−制御pRB94含有アデノウイルスベクターAdVt Ta.RB94が作製されており、これは高用量のpRB94遺伝子治療の送達の ために設計されている。全テトラサイクリン調節カセットをアデノウイルスゲノ ムのE1領域に挿入できるか、あるいはpRB94発現カセットをアデノウイルス ゲノムのE1領域に挿入でき、他方、転写トランス活性化融合タンパク質発現カ セットがアデノウイルスゲノムのE3領域に挿入される。腫瘍細胞におけるpR B94の過剰発現は腫瘍細胞特異的老化および細胞死滅を引き起こす。pRB94c DNAは改変型最適イニシエーターの意味での配列を有する。AdVtTa.R B94による導入ヒト腫瘍細胞におけるpRB94タンパク質の発現は可逆的にオ ンおよびオフできる。新規AdVtTA.RB94組換えアデノウイルスベクタ ーは、増大した収率および量にて293細胞で効果的に増殖できる。 実施例9テトラサイクリン−応答性RB/p53共発現ベクターの調製 実施例6に記載されているごとく、非誘導系(Chenら、1990、Liら 、1996)または誘導系を持つSaos−2(RB-、p53null)腫瘍細胞 中のp53再構成は、それらの腫瘍性表現型を抑制するが、テトラサイクリン− 調節性プロモーターを持つp53再構成Saos−2クローンは、テトラサイク リンの存在下または不存在下でSA−β−gal陰性であった。しかしながら、 p53−再構成Saos−2細胞に無Tc培地中で野生型pRB110を発現する 組換えアデノウイルスベクターを感染させると、野生型p53およびpRB110 を 両方発現する腫瘍細胞は、pRB110のみを発現する腫瘍細胞と比較してより強 いSA−β−gal陽性染色を呈した。該結果は、pRBおよびp53による腫 瘍抑制についてのメカニズムは相互に異なるが、pRBおよびp53の共発現は RB−媒介腫瘍細胞老化に対して相乗効果を有することを意味する。 pRBおよびp53の共発現はpRB−媒介腫瘍特異的老化に対して相乗効果 を有し(実施例6)、改変型RBおよびp53タンパク質状態は、非小細胞肺癌 ならびに膀胱の一過性細胞癌を含めた他のヒト悪性疾患のサブセットにおける相 乗的予後因子であることが提唱されているので(Xu、1995、Xuら,19 94a、Xuら、1996)、組合せpRBおよびp53遺伝子治療は可能な腫 瘍サプレッサー耐性を克服する代替戦略とも考えられる。 改変型テトラサイクリン−応答性トランスアクチベーター(tTA)発現カセ ットおよびtTA−依存性pRB110発現カセット双方の、Ad5ゲノムのE1 領域への挿入は、AdVtTA.RB110/p53と命名された、2つの腫瘍抑 制遺伝子を同時に発現するアデノウイルスベクターの構築を容易とする。このベ クターにおいて、より小さいp53発現カセットが、連結反応を介して、34k bマスタープラスミドpBHG11のE3領域に挿入される。同一細胞中のRB およびp53遺伝子を共に置換する試みは今まで成功していないので(Wang ら、1993)、本発明者らは、2つの腫瘍抑制遺伝子を同時に発現するアデノ ウイルスベクターは調節可能な遺伝子発現系で構成されるべきであると理由付け た。 実施例10テトラサイクリン−制御レトロウイルスベクターの構築 katレトロウイルス産生系は、通常のレトロウイルス形質導入を受けつけな い造血細胞型を効率よく形質導入できる高力価レトロウイルス 上清をもたらす(Finerら、1994)。ハイブリッドLTRを持つkat レトロウイルスプラスミドベクターをEC1214A(実施例3)と組み合わせ ると、Tc−調節性発現を持つレトロウイルスが得られるであろう。標準的なレ トロウイルスベクターを用いるいくつかの成功が文献で報告されているので、T c−制御レトロウイルスベクターは、造血幹細胞のごときある種の細胞型の形質 導入のためのTc−制御アデノウイルスベクターよりも良好に作動する可能性が ある。 実施例11改変型RB構築物の治療的投与 A.ヒト膀胱癌のインビボでの治療 ヒト膀胱癌は、本発明の改変型RBタンパク質発現レトロウイルスベクターを 膀胱に入れることによって、固形腫瘍の腫瘍抑制遺伝子治療を行うための理想的 モデルを表す。ヒト膀胱癌の元の実験モデルはJonesおよび同僚によって確 立された(Ahleringら、1987)。通常は転移しない表在性乳頭腫瘍 から確立されたRT4細胞系のヒト膀胱腫瘍細胞は、雌ヌードマウスの膀胱に2 2−ゲージのカテーテルによって注入すると局所的にのみ腫瘍を形成した。対照 的に、元々より攻撃的なヒト膀胱癌から単離されたEJ膀胱癌細胞は、ヌードマ ウス膀胱において侵入的腫瘍を生じ、これは肺に自然発生的に転移した。従って 、このモデルは、レトロウイルスベクターを用いたインビボ遺伝子導入による実 験的膀胱癌の治療のために使用することができる。 RB-ヒト膀胱癌細胞系5637(ATCC HTB9)およびRB+ヒト膀胱 癌細胞系SCaBER(ATCC HTB3)からの腫瘍細胞は、Jonesお よび同僚によって最初に報告されたように、カテーテルによって、雌無胸腺(n u/nu)ヌードマウス(6〜8週齢)の膀胱に直接的に注入されるであろう( Ahleringら、1987)。ヌードマウス膀胱腫瘍の発生および進行は、 TVモニターを取り付けた ファイバー光学系を用いてモニターされるであろう。実験的腫瘍は、引き続いて 、本発明の改変型RBタンパク質を発現するレトロウイルスベクターで処理され るであろう。 高ウイルス力価を持つ上清が高レベルのヒト改変型RBタンパク質を発現する 選択されたクローンの組織培養基から得られ、使用に先立って複製能力のあるウ イルスがいないことが確認されるであろう。次いで4×104〜1×107を超え るコロニー形成単位(cfu)/mlの範囲の高力価の、より好ましくは、1× 106cfu/mlを超える力価のレトロウイルスベクター懸濁液を、カテーテ ルを介してマウス膀胱に直接的に入れて、腫瘍を治療する。当業者であれば、か かる処理は、膀胱に挿入されたカテーテルを介して、必要に応じて何回も反復す ることができるのを理解するであろう。改変型RB遺伝子の導入後の腫瘍後退は 前記したファイバー光学系を介して頻繁にモニターされるであろう。 レトロウイルスベクター懸濁液を癌にかかったヒト膀胱に注入する以外は、前 記したのと同一の手法を、ヒト膀胱癌を治療するのに使用することができる。 B.正常位の(Orthotopic)肺癌モデルを用いるインビボ実験 正常なpRB110発現を有するヒトの大細胞肺癌NCI−H460(ATCC HTB177)細胞を、無胸腺(nu/nu)ヌードマウスの右主気管支に注 入する(マウス当たり105細胞)。3日後、該マウスに改変型RBあるいは野 生型RBレトロウイルス産生細胞からの上清で気管支内に毎日3日間連続して接 種する。野生型RBレトロウイルス上清で処理された群とは対照的に、改変型R Bレトロウイルス上清で処理したマウスの群における腫瘍形成抑制によって、改 変型RB発現レトロウイルスがRB+非小細胞肺癌(NSCLC)細胞の増殖を 阻害し、他方、野生型RB発現レトロウイルスはそうではないことが示される。 C.ヒト非小細胞肺癌のインビボでの治療 気管支鏡検査が可能な気管支内腫瘍を有し、気管支閉塞も有する非小細胞肺癌 患者を、改変型RB遺伝子治療のために最初に選択する。治療は局所麻酔または 一般麻酔下で気管支鏡を使用して投与する。該手法を開始する前に、出来る限り 大きな腫瘍を内視鏡により切除する。経気管支吸引針(21G)を気管支鏡のバ イオプシーチャンネルを通す。次いで、適当な改変型RBレトロウイルスベクタ ー上清、改変型RBアデノウイルス懸濁液または改変型RB発現プラスミドベク ター−リポソーム複合体を5mlないし10mlの容量にて残存する腫瘍部位に 注入する。プロタミンを5μg/mlの濃度まで添加してもよい。1以上のベク ターを含む治療用ウイルスまたはプラスミド上清の注入は、1以上の腫瘍の周囲 またはその中に、および腫瘍に隣接する粘膜下組織内に投与する。該注入は5日 間連続して繰り返し、しかる後は毎月反復する。腫瘍の進行がない限り、該治療 は継続し得る。1年後、患者は継続的治療が適当か否かが評価される。 さらに、予防のために、患者はウイルス上清の注入後24時間は外科用マスク を着用する。全ての医療従事者は気管支鏡検査およびウイルス 上清の注入の間は定常的にマスクを着用する。必要に応じ、鎮咳薬を処方する。 D.リポソーム−カプセル化精製改変型RBタンパク質でのヒト肺癌の治療およ び予防 さらにもう1つの別法において、いずれかの公知の方法によって、本発明の改 変型RBタンパク質を治療を必要とする細胞に導入することによって、標的腫瘍 または癌細胞が治療される。例えば、リポソームは、薬物、タンパク質およびプ ラスミドベクターのインビトロまたはインビボ双方にての送達ビヒクルとしての その有用性が広範に研究された人工膜小胞である(Manninoら、1988 )。赤血球アニオン輸送体(Newtonら、1988)、スーパーオキシドジ スムターゼおよびカタラーゼ(Tanswellら、1990)およびUV−D NA修復酵素(Ceccoliら、1989)のごときタンパク質が、リポソー ム小胞に高率でカプセル化され、インビトロまたはインビボにて哺乳動物細胞に 送達されている。さらに、小粒子エアロゾルは、呼吸器疾患の治療用に薬物を送 達する方法を提供する。例えば、薬物はリポソームをビヒクルとして用いること によって小粒子エアロゾル中にて投与できることが報告されている。エアロゾル を介して投与された薬物は、鼻咽頭、気管気管支樹の表面に、および肺領域にか なり均一に到達する(Knightら、1988)。 肺癌を治療または予防するには、治療用改変型RBタンパク質を、例えば免疫 アフィニティークロマトグラフィーまたはいずれかの他の便利な方法によって、 組換えバキュロウイルスAcMNPV−改変型RB感染昆虫細胞から精製する。 次いで、改変型RBタンパク質をリポソームと混合し、高率にてリポソーム小胞 中に取り込む。カプセル化改変型RBは依然として活性である。エアロゾル送達 方法は温和であって、正常なボランティアおよび患者によって十分に許容される ので、改変型RB 含有リポソームを投与して、いずれかの段階の肺癌に罹った患者を治療し、およ び/または高リスク集団において肺癌を予防することができる。改変型RBタン パク質含有リポソームは、異常な細胞増殖を抑制するのに十分な量で、鼻吸入に よって、または小粒子エアロゾルを介する気管内チューブによって投与すること ができる。エアロゾル治療は2週間毎日3回、30分間患者に投与され、必要に 応じて反復する。改変型RBタンパク質は、それにより、呼吸管および肺領域全 体に送達される。治療は必要なだけの期間継続することができる。1年後、患者 の全状態を評価して、継続的治療が適当か否かを判断する。 実施例12 RBの再発現による老化およびテロメラーゼ阻害の誘導 正常なヒトの二倍体細胞は、限定された数の細胞分裂の後にインビトロおよび インビボで老化する。細胞老化として知られているこのプロセスは老化の根底的 原因であり、ヒト癌の発生についての非常に重要な障害である。本実施例は、改 変型テトラサイクリン−調節遺伝子発現系を介するRB/p53−欠損腫瘍細胞 における機能的pRB単独の再発現の結果、細胞周期のG0/G1期において安 定な増殖阻止がもたらされ、種々の分裂誘発刺激に応答して、腫瘍細胞がS期に 入るのを妨げることを示す実験を提示する。これらの細胞は、細胞老化に合致す る複数の形態学的変化を呈し、老化関連β−ガラクトシダーゼバイオマーカーを 発現した。 加えて、腫瘍性細胞の拡大された増殖ライフスパンに必須であると考えられる テロメラーゼ活性が、(p53ではなく)pRBの発現の誘導後に腫瘍細胞系で 無くなり、または抑制された。驚くべきことに、pRB発現用の非許容培地に戻 すと、pRB−誘導老化腫瘍細胞はDNA合成を回復し、分裂しようとした。し かしながら、ほとんどの細胞は該プロセスで死滅し、これは継代後期におけるS V40 T−抗原−形質転 換ヒト二倍体線維芽細胞の老化後の危機と同様の現象である。これらの観察は、 RB/p53−欠損腫瘍細胞におけるpRB単独の過剰発現が、複製老化と区別 できない全ての一般的に許容される危機によって、これらの不滅性を逆行させ、 表現型を引き起こすのに十分であるという直接的証拠を提供する。該結果は、p RBが本来の細胞老化プログラムにおいて原因となる役割を演じることができる ことを示す。 A.材料および方法 Tc−調節性pRB発現を有する腫瘍細胞系の確立 元の多重プラスミドテトラサイクリンリプレッサー/オペレーターをベースと する調節系を前記で詳説したごとくに改良した。本実施例で使用した全てのRB −再構成腫瘍細胞系を最初のプラスミドトランスフェクション後に少なくとも2 ラウンドのサブクローニングに付し、これを純粋なクローンと考える。これらの クローンの均一性はpRB核染色によって証明した。加えて、パネルアッセイ( Zhouら、1994)を用いて、許容される条件下での機能的pRBの安定な 発現を確認した。RB−再構成腫瘍細胞は、培地中、0.5μg/mlのTcの 存在下で全てRB-であり、他方、かなり大部分(>99%)の細胞が、免疫細 胞化学染色によって示されるように、Tcの除去の24時間後にRB+となった 。 フローサイトメトリー分析 各時点で収集した単細胞懸濁液を、ヨウ化プロピジウム(PI)(Sigma )染色前にパラホルムアルデヒドおよびエタノールで固定した。FACScan フローサイトメーター(Becton−Dickinson)を用い、全てのプ ロファイルを生成させた。最初のピーク(M1)はG0/G1の二倍体DNAを 有する細胞を含有し、2倍のPI−蛍光強度を持つ第2のピーク(M3)は四倍 体のG2/M細胞を含有し、2 つのピークの間の領域(M2)は、S期の細胞の総数を表す(Nicolett iら、1991)。 SA−β−galアッセイ 該アッセイは実質的に従前に記載されているように行った(Dimriら、1 995)。略言すれば、細胞を2%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデ ヒド中で5分間固定し、pH6.0で5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル β−D−ガラクトシド(X−Gal)で6時間染色した。染色溶液は1mg/ ml X−Gal、40mMクエン酸/リン酸ナトリウム、pH6.0、5mM フェロシアン化カリウム、5mMフェリシアン化カリウム、150mM NaC lおよび2mM MgCl2を含有するものであった、 テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)アッセイ 技術的マニュアルに従い、方法はKimら(Kimら、1994)によって記 載されている元のTRAPアッセイから修飾した。略言すれば、100mmペト リ皿中で増殖させた〜106個の細胞を回収し、氷上で、200μlの氷冷溶解 緩衝液に30分間再懸濁させ、続いて4℃にて100,000×gで30分間遠 心分離した。上清を0.5μgタンパク質/μlに希釈し、そのうち2μlを各 TRAPアッセイで用いた。テロメラーゼ反応を30℃で30分間行い、これに 続いて[γ−32P]標識TSプライマーでの2工程PCR(登録商標)増幅(9 4℃、30秒および60℃、30秒の33サイクル)を行った。PCR(登録商 標)増幅テロメラーゼ伸長産物を12.5%のポリアクリルアミドゲル上で電気 泳動に付した。 B. 結果 腫瘍細胞のpRB−媒介不可逆的増殖停止 前記にて詳説した改変型テトラサイクリン(Tc)−調節性遺伝子発現系を用 い、数ダースの長期安定型腫瘍細胞クローンを確立し、ここで、野性型pRBの 発現は有意な漏出なくしてスイッチがオン及びオフされ得る。RB−再構成腫瘍 細胞クローンは、各々、乳癌細胞系、MDA−MB−468、骨肉腫細胞系Sa os−2、および膀胱癌細胞系5637から得た。これらの腫瘍細胞系はRBお よびp53遺伝子突然変異を共に含有することが知られているので、宿主細胞と して選択した(Wangら、1993、Chenら、1990、Berryら、 1996、Masudaら,1987)。 ウェスタンブロッティングによって測定されるように、腫瘍細胞で誘導された pRBタンパク質は、細胞培地からテトラサイクリンを除去した約24時間後に 最高レベルに到達し、次いで24ないし40時間内に完全に脱リン酸化された。 腫瘍細胞増殖に対するpRB発現の誘導の効果を、引き続いて、増殖曲線および (3H)チミジンの取り込み(Xuら、1994b)を測定することによって、 あるいはフローサイトメトリー分析(Nicolettiら、1991)によっ て、代表的クローンで調べた。調べた全ての長期腫瘍細胞クローンの細胞増殖お よびDNA合成は、pRB発現が誘導された24ないし48時間後に停止した( 図3A、図3Bおよび図3C)。かなり大部分の腫瘍細胞は細胞周期のG0/G 1期で阻止された。 無Tc培地におけるpRB発現の4日間の誘導の後、腫瘍細胞の増殖停止は、 血清成長因子、フィトヘマグルチニン(PHA)およびコンカナバリンA(Co nA)のごとき種々のマイトジェンでの刺激によっても不可逆的であった。これ は、図3A、図3Bおよび図3Cに示した連続的に平坦な増殖曲線および細胞分 裂刺激に応答して(3H)チミジンを腫瘍細胞が取り込むことができないことに よって判断した。一方、腫瘍細胞は、細胞拡大、偏平化および細胞周期よりも低 い核細胞質比率のごとき、細胞老化と合致する驚くべき形態学的変化を呈した。 さらに、DNA断片化によって測定すると、少量の低分子量DNAが、非許容 的であるがpRB発現にとっては許容的でない条件で増殖させたRB−再構成S aos−2腫瘍細胞から調製したDNA試料でしばしば観察された。この知見は 、pRB発現の誘導によって阻害された、RB−欠損腫瘍細胞培養の低レベルの 自然発生的アポトーシスを示唆した。加えて、RB−再構成5637およびMD A−MB−468腫瘍細胞系におけるpRB発現のスイッチングもまたIFN− γ−誘導アポトーシス細胞死滅を阻害した。 老化−関連β−ガラクトシダーゼの発現 培養中およびインビボで老化した皮膚中の老化ヒト細胞を同定するバイオマー カーが最近報告されている。老化−関連β−ガラクトシダーゼ(SA−β−ga l)と命名されたこのマーカーは、老化した線維芽細胞で発現し、老化していな い線維芽細胞で発現しない。また、SA−β−galは不滅化細胞には存在しな いが、不滅性を逆行させる遺伝子操作によって誘導された(Dimriら、19 95)。若い(初期継代)ヒトWI−38線維芽細胞はSA−β−gal陰性で あり、他方、老化した(52より大の倍化レベルの集団で)WI−38細胞は強 力なSA−β−gal陽性であり、これはSA−β−galアッセイのための有 用な対照である。Tc−応答性RB−再構成腫瘍細胞クローンはTcの存在下( すなわち、RB−状態)で全くSA−β−gal陰性であり、この腫瘍細胞の大 部分は、無Tc培地中の4ないし5日間のpRB発現の誘導後にSA−β−ga l陽性となった。腫瘍細胞中のこの老化−関連バイオマーカーの検出は腫瘍細胞 集団の不可逆的増殖停止と一致した(図3A、図3Bおよび図3C)。しかしな がら、誘導したRB+腫瘍細胞のSA−β−gal染色の強度は腫瘍細胞の型に 応じて変化する。腫瘍細胞における(p53ではなく)pRBの再発現はテロメ ラーゼ活 性を阻害した。 テロメラーゼは細胞老化におけるレギュレーターの魅力的な候補として最近出 現し(Linskensら、1995、Klingelhutzら、1996) 、pRBおよびp53置換の、宿主腫瘍細胞のテロメラーゼ活性に対する効果を 調べた。これに関連して、骨肉腫細胞系Saos−2からのTc−調節性野性型 p53発現を有するいくつかの長期安定型腫瘍細胞クローンを確立した。最近記 載された(Kimら、1994)テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)アッ セイを用いて、pRB(またはp53)発現の誘導前後における腫瘍細胞でのテ ロメラーゼ活性を測定した。 pRB発現の誘導に先立ち、調べた全ての3つのRB/p53−欠損腫瘍型か らのRB−再構成腫瘍細胞クローンはテロメラーゼ活性につき陽性であり、他方 、pRB発現にスイッチが入った後に腫瘍細胞において、相対的テロメラーゼ活 性は、デジタル化イメージのデンシトメトリーによって見積もって、〜15ない し>100倍低かった。事実、テロメラーゼ活性は、pRB−発現MDA−MB −468およびSaos−2腫瘍細胞においてほとんど検出できなかった。対照 的に、Saos−2における野性型p53発現の誘導の結果、RB-/p53nul l 腫瘍細胞の増殖阻止がもたらされたが、p53−再構成Saos−2腫瘍クロ ーンは、それらのp53状態では影響されなかった陽性テロメラーゼ活性を執拗 に呈した。かくして、テロメラーゼ活性の差異は細胞増殖の差異として単純には 説明できない。 pRB除去後のpRB−誘導老化腫瘍細胞の老化後の危機 pRB−誘導腫瘍細胞の老化は、機能的pRBの継続した発現に厳密に依存し た。前記で示したごとく、4日以上の間の無Tc培地におけるpRB発現の誘導 の後、RB−再構成MDA−MB−468、Saos−2、および5637腫瘍 細胞は老化した。しかしながら、これらの腫 瘍細胞がpRB発現用の非許容培地に戻されると、細胞−細胞接着を失い、ペト リ皿から脱着し、死滅した非常に多数の腫瘍細胞が観察された。この現象をさら に特徴付けするために、腫瘍細胞のpRB免疫細胞化学染色および(3H)チミ ジンイン・ジツ標識を含めた組合せ方法を使用した。 無Tc培地に4ないし5日間維持されたRB−再構成Saos−2腫瘍細胞培 養に0.5μg/mlのTcを添加した後、ほとんどの全ての腫瘍細胞が外因性 pRBを枯渇させ、6日目においてRB-になることが分かった。引き続いて、 9ないし10日目において、腫瘍細胞はDNA合成を回復したが、その大部分は 驚くほど異常な核を有した。これらは、分裂しようとしたが、ほとんどは該プロ セス中に死滅した。これらの腫瘍細胞は、後期継代におけるT−抗原−形質転換 ヒト細胞の老化後の危機との顕著な類似性を示す表現型を呈した(Stein、 1985)。 要約すれば、RB−欠損腫瘍細胞における機能的pRBの再発現はテロメラー ゼ活性の阻害と同時に増殖停止を誘導した。腫瘍細胞はマイトジェン応答性を不 可逆的に喪失し、生きたG1−停止状態に入る。また、それらは、pRB−依存 性SA−β−gal陽性性(老化関連バイオマーカー)およびアポトーシス細胞 死に対する耐性を呈した。注目すべきは、RB-/p53nullSaos−2にお ける野性型pRBまたはp53いずれかの置換は、集団レベルで腫瘍細胞増殖を ブロックすることができたが、pRBのみがテロメラーゼの阻害を誘導した。さ らに、pRB−誘導老化腫瘍細胞におけるpRBの除去は、危機様の表現型につ ながった。これらの観察は、一緒にすると、pRBは細胞老化プログラムに原因 的に関与することを示唆する。これらの結果は、種々のRB−欠損腫瘍細胞にお けるpRB単独の過剰発現がその不滅性を逆行させ、真実の(bona fide)複製 老化を引き起こすのに十分であるという第一の直接的証拠である。また、調べた 全ての3つのRB−欠損腫瘍細胞系はp53突然変異を有するので、pRB−媒 介腫瘍細胞老化は、明らかに、 野性型p53の機能を要しない。 かくして、pRBおよびテロメラーゼの新しい関係が示される。テロメア反復 増幅プロトコル(TRAP)アッセイによって、RB−欠損腫瘍細胞におけるp RBの再発現はテロメラーゼ活性を阻害することが示された。非常に少数のテロ メラーゼ陽性細胞において酵素活性を検出するポリメラーゼ連鎖反応(PCR( 登録商標))をベースとしたTRAPアッセイの高感度、および絶対的に純粋な RB−再構成細胞クローンを得る困難性のため、RB−欠損腫瘍細胞におけるテ ロメラーゼ活性の阻害に対するpRB再発現の効果は、インビトロアッセイによ って検出されたものよりもずっと大きいと思われる。 また、pRB(またはp53)発現用の非許容的条件で維持すると、pRB− 再構成Saos−2クローンは、明らかに、p53−再構成Saos−2クロー ンよりもかなり低いテロメラーゼ活性を有することも注目に値する。該差異は、 無Tc培地におけるpRB発現のスイッチオンの前であっても、Saos−2細 胞におけるTc−応答性プロモーターからのpRB発現のベースラインは低くな ければならないことを意味する(GossenおよびBujard、1995) 。非許容的条件下でのpRB−再構成腫瘍細胞におけるpRBの漏出性は、pR Bタンパク質用の免疫検出閾値(Xuら、1991b)未満であるが、ほとんど のテロメラーゼ活性を阻害するのに十分であるかもしれない。テロメラーゼ活性 を欠く腫瘍細胞はテロメア減衰を回復するようなので、これは結局は、腫瘍細胞 で無傷のままであれば、固有の細胞老化プログラムを引き起こすであろう。 *−−−−−−*−−−−−−* 本明細書に開示された全ての組成物および方法は本開示に徴して過度の実験な くして製造し実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい具体 例により記載してきたが、本発明の概念、精神および範囲を逸脱することなく、 本明細書に記載された組成物および方法なら びに方法の工程または工程列に変形を適用することができるのは当業者に明らか であろう。より具体的には、化学的および物理的双方にて関連するある薬剤は、 同一または同様の結果が達成されつつ、本明細書に記載された薬剤に変えて置換 することができる。全てのそのような同様の置換および修飾は当業者に明らかで あり、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲および概念の範 囲内にあるとみなされる。参考文献 以下の参考文献は、それらが本明細書に記載したものを補足する例示的手順ま たは他の細部を提供する程度に、参照により本明細書中に特に組み入れられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/15 C12N 1/21 1/19 15/00 ZNAA 1/21 5/00 A 5/10 A61K 37/02 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZW (72)発明者 フ,シ−シュエ アメリカ合衆国 テキサス州,ウッドラン ズ (72)発明者 ベネディクト,ウィリアム,エフ. アメリカ合衆国 テキサス州,ウッドラン ズ (72)発明者 ゾウ,ユンリ アメリカ合衆国 テキサス州,ウッドラン ズ

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. pRB94以外の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする単 離された遺伝子を含むDNAセグメントであって、前記改変型レチノブラストー マ腫瘍抑制タンパク質がN末端の改変を含むものである、上記DNAセグメント。 2. 前記遺伝子は、少なくとも1個のアミノ酸が欠失されている第1配列の領域を 含むN末端領域を含む改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコード する、請求項1に記載のDNAセグメント。 3. 前記第1配列の領域から少なくとも2個のアミノ酸が欠失されている、請求項 2に記載のDNAセグメント。 4. 前記第1配列の領域から少なくとも約25個のアミノ酸が欠失されている、請 求項3に記載のDNAセグメント。 5. 前記第1配列の領域から少なくとも約100個のアミノ酸が欠失されている、請 求項4に記載のDNAセグメント。 6. 前記第1配列の領域から少なくとも約150個のアミノ酸が欠失されている、請 求項5に記載のDNAセグメント。 7. 前記第1配列の領域から少なくとも約300個のアミノ酸が欠失されている、請 求項6に記載のDNAセグメント。 8. 前記第1配列の領域が次の位置: a)約アミノ酸1と約アミノ酸50の間、 b)約アミノ酸51と約アミノ酸100の間、 c)約アミノ酸101と約アミノ酸150の間、 d)約アミノ酸151と約アミノ酸200の間、 e)約アミノ酸201と約アミノ酸250の間、 f)約アミノ酸251と約アミノ酸300の間、 g)約アミノ酸1と約アミノ酸100の間、 h)約アミノ酸51と約アミノ酸150の間、 i)約アミノ酸101と約アミノ酸200の間、 j)約アミノ酸151と約アミノ酸250の間、 k)約アミノ酸201と約アミノ酸300の間、 l)約アミノ酸1と約アミノ酸150の間、 m)約アミノ酸51と約アミノ酸200の間、 n)約アミノ酸101と約アミノ酸250の間、 o)約アミノ酸151と約アミノ酸300の間、 p)約アミノ酸1と約アミノ酸200の間、 q)約アミノ酸51と約アミノ酸250の間、 r)約アミノ酸101と約アミノ酸300の間、 s)約アミノ酸1と約アミノ酸250の間、 t)約アミノ酸51と約アミノ酸300の間、または u)約アミノ酸1と約アミノ酸300の間、 にある、請求項2に記載のDNAセグメント。 9. a)約アミノ酸2〜約アミノ酸34が前記第1配列の領域から欠失されている、 b)約アミノ酸2〜約アミノ酸55が前記第1配列の領域から欠失されている、 c)約アミノ酸2〜約アミノ酸78が前記第1配列の領域から欠失されている、 d)約アミノ酸2〜約アミノ酸97が前記第1配列の領域から欠失されている、 e)約アミノ酸2〜約アミノ酸148が前記第1配列の領域から欠失されている、 f)約アミノ酸31〜約アミノ酸107が前記第1配列の領域から欠失されている、 g)約アミノ酸77〜約アミノ酸107が前記第1配列の領域から欠失されている、 h)約アミノ酸111〜約アミノ酸181が前記第1配列の領域から欠失されている、 i)約アミノ酸111〜約アミノ酸241が前記第1配列の領域から欠失されている、 j)約アミノ酸181〜約アミノ酸241が前記第1配列の領域から欠失されている、 または k)約アミノ酸242〜約アミノ酸300が前記第1配列の領域から欠失されている、 請求項2に記載のDNAセグメント。 10.前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質は少なくとも1個のアミ ノ酸が欠失されている第2配列の領域をさらに含む、請求項2に記載のDNAセグ メント。 11.約アミノ酸2〜約アミノ酸34および約アミノ酸76〜約アミノ酸112が欠失され ている、請求項10に記載のDNAセグメント。 12.約アミノ酸2〜約アミノ酸55および約アミノ酸76〜約アミノ酸112が欠失され ている、請求項10に記載のDNAセグメント。 13.前記遺伝子が少なくとも第1のN末端突然変異を含む改変型レチノブラストー マ腫瘍抑制タンパク質をコードし、前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タ ンパク質が対応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的 活性と比較して増大した生物学的活性を有する、請求項1に記載のDNAセグメン ト。 14.前記遺伝子が111位に突然変異を含む改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タ ンパク質をコードする、請求項13に記載のDNAセグメント。 15.前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が111位にアスパラギン 酸の代わりにグリシンを含む、請求項14に記載のDNAセグメント。 16.前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が少なくとも第2のN末端 突然変異を含む、請求項13に記載のDNAセグメント。 17.前記遺伝子が111位の突然変異および112位の突然変異を含む改変型レチノブ ラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする、請求項16に記載のDNAセグメン 載ト。 18.前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が111位にアス パラギン酸の代わりにグリシンを、そして112位にグルタミン酸の代わりにア スパラギン酸を含む、請求項17に記載のDNAセグメント。 19.前記遺伝子は、少なくとも1個のアミノ酸が欠失されておりかつ少なくとも 1個のアミノ酸の突然変異をもつN末端領域を含む改変型レチノブラストーマ腫 瘍抑制タンパク質をコードする、請求項1に記載のDNAセグメント。 20.前記遺伝子が少なくとも配列番号2の約370位〜約928位のC末端アミノ酸配列 を含む改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコードする、請求項2 に記載のDNAセグメント。 21.前記遺伝子が配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号 37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番 号49、または配列番号51の連続アミノ酸配列を含む改変型レチノブラストーマ 腫瘍抑制タンパク質をコードする、請求項2に記載のDNAセグメント。 22.前記遺伝子が配列番号28の7位〜2691位、配列番号30の7位〜2628位、配列番 号32の7位〜2559位、配列番号34の7位〜2502位、配列番号36の7位〜2349位、 配列番号38の7位〜2559位、配列番号40の7位〜2697位、配列番号42の7位〜258 3位、配列番号44の7位〜2397位、配列番号46の7位〜2613位、配列番号48の7位 〜2619位、または配列番号50の7位〜2790位、からの連続核酸配列を含む、請 求項2に記載のDNAセグメント。 23.プロモーターの制御下で機能的に位置づけられた、請求項1に記載のDNAセグ メント。 24.組換えベクターとしてさらに特定された、請求項23に記載のDNAセグメント 。 25.前記組換えベクターがアデノウイルスベクター内に含まれる、請求項24に記 載のDNAセグメント。 26.前記アデノウイルスベクターが組換え体アデノウイルス内に含まれる、請求 項25に記載のDNAセグメント。 27.宿主細胞内に含まれている、請求項1に記載のDNAセグメント。 28.前記宿主細胞が真核細胞である、請求項27に記載のDNAセグメント。 29.前記宿主細胞がヒト細胞である、請求項28に記載のDNAセグメント。 30.前記宿主細胞が腫瘍細胞である、請求項28に記載のDNAセグメント。 31.前記宿主細胞が動物内に含まれている、請求項28に記載のDNAセグメント。 32.前記動物がヒト被験者である、請求項31に記載のDNAセグメント。 33.製薬上許容される賦形剤中に分散されている、請求項1に記載のDNAセグメン ト。 34.前記改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が、 a)少なくとも1個のアミノ酸が欠失されている少なくとも第1配列の領域を含 むN末端領域を含み、該改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が対 応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性に少な くともほぼ等しい生物学的活性を有する、または b)少なくとも1つの突然変異をもつ第1配列の領域を含むN末端領域を含み、該 改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質が対応する野生型レチノブラ ストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性と比較して増大した生物学的活 性を有する、 点に特徴がある、請求項1に記載のDNAセグメント。 35.改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の発現に使用するための請求 項1〜34のいずれか1項に記載のDNAセグメント。 36.改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の発現における請求項1〜34 のいずれか1項に記載のDNAセグメントの使用。 37.細胞増殖の抑制に使用するための請求項1〜34のいずれか1項に記載のDNAセ グメント。 38.細胞増殖の抑制における請求項1〜34のいずれか1項に記載のDNAセグメント の使用。 39.細胞増殖抑制用の医薬の製造に使用するための請求項1〜34のいずれか1項に 記載のDNAセグメント。 40.細胞増殖抑制用の医薬の製造における請求項1〜34のいずれか1項に記載のDN Aセグメントの使用。 41.癌治療用の医薬の製造に使用するための請求項1〜34のいずれか1項に記載の DNAセグメント。 42.癌治療用の医薬の製造における請求項1〜34のいずれか1項に記載のDNAセグ メントの使用。 43.N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパ ク質であって、対応する野生型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質の生物 学的活性に少なくともほぼ等しい生物学的活性を有する、上記改変型レチノブ ブラストーマ腫瘍抑制タンパク質。 44.N末端の改変を含む、pRB94以外の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパ ク質をコードする単離された遺伝子を含むDNAセグメントを含有する組換え宿 主細胞。 45.前記宿主細胞が腫瘍細胞である、請求項44に記載の組換え宿主細胞。 46.N末端の改変を含む、pRB94以外の第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制 タンパク質の有効抑制量に細胞を接触させることを含んでなる、細胞増殖の抑 制方法。 47.前記細胞内で第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質を発現す るDNAセグメントを前記細胞に供給することにより、前記第1の改変型レチノブ ラストーマ腫瘍抑制タンパク質に前記細胞を接触させる、請求項46に記載の方 法。 48.前記細胞が動物内にあり、前記第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タ ンパク質または前記第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制タンパク質をコ ードする遺伝子を製薬上許容されるビヒクルで前記動物に投与する、請求項46 に記載の方法。 49.前記細胞内で細胞増殖を抑制するのに有効な組合せ量の改変型レチノブラス トーマ腫瘍抑制タンパク質およびp53腫瘍抑制タンパク質に前記細胞を接触さ せる、請求項46に記載の方法。 50.細胞における細胞増殖を抑制するのに有効な組合せ量のレチノブラ ストーマタンパク質およびp53タンパク質に前記細胞を接触させることを含ん でなる、細胞増殖の抑制方法。 51.N末端の改変を含む、pRB94以外の第1の改変型レチノブラストーマ腫瘍抑制 タンパク質の生物学的に有効な抑制量を含有する医薬として許容される組成物 を、癌にかかった動物に投与することを含んでなる、癌の治療方法。
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