JPWO2005080807A1 - 緩み止め能を有する締結体 - Google Patents

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Abstract

予張力導入が確実に適正位置にてなされると共に緩み止め能を向上させた緩み止め能を有するねじ締結体を提供する。緩み止め能を有するねじ締結体を、ボルト3とベース部12a中央部に形成のボルト3軸方向上方にしたがって縮径する偏心Sした円錐台にボルト3の呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔12bを縦貫設して成る円錐筒体12cにおいて、半円より小なる弧状に該円錐筒体12cの肉厚部12eのみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁12dを立設の座金12と、該座金12と対峙する側の半部分に該円錐台が嵌合する円錐台状孔部11aを凹設したナット11とから成るとして、例えば鉄道のレール固定等の過大振動、メンテ不可欠の用途に最適なものを提供した。

Description

本発明は、ナットと座金とボルトとから成る緩み止め能を有したねじ締結体に関する。
おねじ部品とめねじ部品が被締結部材を締め付けている構造を「ねじ締結体」というが、締め付けによって発生するおねじ部品の中の引っ張り力(軸力)と被締結部材の中の圧縮力(締め付け力)で一体化している。二つの力は、ねじ締結体に外力が作用していないときにつり合う。この状態における軸力と締め付け力を総称して「予張力」と呼ぶ。
ところが何等かの理由で、ねじ締結体の予張力は低下することがある。これが「ねじ緩み」である。
ねじ緩みの原因は、接触部の不具合と繰り返し外力の作用に求められる。図8で、接触部はねじ面(α)、被締結部材両側の座面(βとδ)、被締結部材の接合面(γ)の四つ。一方、繰り返し外力は軸方向外力(Wa)、軸直角方向外力(Wt)、軸回りモーメント(Ma)曲げモーメント(Mb)の四つになる。予張力と繰り返し外力がそれぞれ単独あるいは相乗的に接触部のどこかに過大な力を与えたり応力を生じさせたりすることにより、マクロ的な塑性変形や滑り、ミクロ的な局部塑性変形やフレッティング(微動摩耗)を招く。この結果、予張力が失われてねじが緩む。
又、ねじ緩みを大別すると、表1に示す如く、ねじが戻り回転せずに生じるタイプと戻り回転して発生するタイプがある。
Figure 2005080807
上記の「戻り回転“なし”」は正しい締め付け条件を満たして予張力が失われない配慮でもって回避出来るが、「戻り回転“あり”」は、正しい締め付けでも、過酷な振動性の外力が作用すると軸力が低下して“緩み”を生じるもので、この“緩み”を止める数多くの提案がなされている。
緩み止め効果についての実験結果の報告も、試験片に様々な緩み止めを施したねじ締結体(ねじの呼び径はM10−P1.5)を用い、振動性の力を軸直角方向に加えて軸力の低下具合を比較している。これ等のうち、フランジ付き六角ナット、ナイロンリング入りナットがテストの結果実用的なものと評価されている。
叙上の結果は、以下の如く解析される。すなわち、ボルト・ナットを締め付けるときに与えるトルクの40%はねじ接合面の摩擦で、40%は座面接合面の摩擦で失う。締め付けトルクの最大でも20%がねじのリード角で拡大されて締め付け力に変換されるに過ぎない。ねじ締結においては摩擦の制御が最も重要な課題で、これをクリアしなければ信頼性の高いねじ締結は得られない。半面、締め付けられたねじが緩み方向に回転しないのは、この摩擦の効果である。
ねじ締結体に大きな軸直角外力が作用すると、ボルトあるいはナットの座面で滑り始める。ねじ山半角で傾いたリード角の勾配を持つ斜面であるねじ面も滑る。このようにねじ接合面で滑り始めると、ねじ面の摩擦係数は小さくなる方向で変化する。ねじが軸直角方向の外力で戻り回転を連続的に生じる条件を満たすと、ボルト・ナットがたちまち脱落するほど急激に緩む。
上述のフランジ付き六角ナットの好成績は既述した図8中の「接触部β」において、反りを有するフランジが圧縮されることで蓄勢される反溌力が「接触部α」に作用して発生の摩擦に因があり、ナイロンリング入りナットの好成績は、「接触部α」いずれの回転方向にも存在の摩擦に因がある。
このナイロンリング入りナットと同機構をもって緩み止めに優れるのが図9に示すスレッドフォーミングタイプのタッピンねじで、これは、単にめねじ加工費用を節約できるだけでない。おねじとめねじのはめ合い隙間がないことから、普通のねじのはめ合いで懸念されるねじ面の滑りを防ぐ効果がある。確実に戻り回転を伴うねじ緩みを防ぐためには、ねじはめ合い部「接触部α」の摩擦抵抗の確保しか対策はない。
しかし、このように「接触部α」の大部分について摩擦を確保する既存の手段のものについては、実用上不都合が多い。すなわち、ナイロンリング入りナットの場合、ナイロンリングに対して、いわばタップによるねじ切りをして行くのと同じことになるからねじ込みによる抵抗が非常に大きく、従って人手による作業は殆んど不可能であって、専用のねじ込み機械を必要とする。それに加えてねじ込み行程の最初から最後までナイロンリングによる抵抗があるのでねじ込み作業に多くの時間を要する。更に以上のことはナットをゆるめて取りはずす場合にも言えることで、この種ナットに関する作業には多くの費用を要する。又、フランジ付き六角ナットの場合、「反り」が有効に作用することが不可欠のために座面を提供する被締結部材の負担が極めて大きく、前記の表1の「戻り回転“なし”」に相当することとならぬよう材質選定が不可欠となる。さらに、タッピンねじの場合、当然のことながら被締結部材の選定が極度に制約される。
ここに、緩み止めの帰結点となっている「接触部α(ねじ面)」を図10、図11にて以下詳細に説明する。
図中Aはボルトのおねじ、Bはナットのめねじを夫々示す。
図10はナット締め付け開始時(図8中の「接触部β(座面)」に力が付加される直前)で、めねじBのねじ山半角の上方斜面B−1は、ボルトのおねじのねじ山半角の下方斜面A−1に接圧し、反対側にはめ合い隙間に基づく間隙Cを形成している。ボルトのピッチPは規定通りである。
図11は、反対側の予張力を失った後のナット緩み時(無負荷)で、めねじBのねじ山半角の下方斜面B−2は、ボルトのおねじのねじれ山半角の上方A−2に接圧し、反対側にはめ合い隙間に基づく間隙Cを形成している。ボルトのピッチPは規定通りある。
図10、11はいずれも滑り易い条件下にあり、ボルトの規定上のピッチPは、確保され、ナットは何の支障なく容易に締め付け、緩み方向に進み得る。
前記の図10において、ナットの締め付けを進めてボルトを伸ばし、ボルトのピッチをP(P>P)に変じさせると図12に示される如く、当然ながら被締め付け物の反対側のめねじBのめねじ山半角の上方斜面B−1はボルトのおねじ山半角の下方斜面A−1に強く接圧し、他方、被締め付け物の反対側のめねじBのめねじ山半角の下方斜面B−2はボルトの伸びで相対的に上昇するボルトのおねじのねじ山半角の上方斜面A−2に接圧し、中間位のナットのめねじの山半角の上、下方斜面は宙に浮く形態となる。
この状態にあっては、ナットの緩み方向への動きは、図11とは大いに異なり、上下の外側のねじ山半角斜面にディスクブレーキが形成されるのでその静摩擦が十分に大である場合には、ロッキングされる。(ナットをボルトネジ山を走行路とする摺動体とみると、当該走行路の両側壁面に接圧して動けず、ロッキングされることとなる。)
このように、ねじにあっては、実際のピッチが規定上のピッチとの間に誤差(ピッチエラー)を生じると滑りが阻害されてロッキング作用が働くことがあるのであり、単純におねじとめねじのはめ合い隙間にねじ込む程くさび作用を高める目詰材を介装してねじ緩み方向の回転を阻止せずして、おねじとめねじのはめ合い隙間を保持している(ピッチが確保されている)にもかかわらず、締め付け完了状態で当該ピッチにピッチエラーを生じさせて戻り回転方向についてねじ接合面に高摩擦抵抗を形成してねじ緩み止めとしているのがダブルナットである。すなわち、ダブルナットによる締付け作業は、一般に次のような手順で行なわれる。
すなわち、図13(a)に示すように、まず下ナットをTなるトルクで締め、Fなる軸力を発生させる。次に同図(b)に示すように、上ナットをねじこみ、Tなるトルクで締めFなる軸力を発生させる。このあとロッキング作業に入るがその方法に二通りある。その一つは(c)に示すように、下ナットを一つのスパナで回り止めし、上ナットを他のスパナで同方向に回転してロッキングする方法、他は(d)に示すように、上ナットを一つのスパナで回り止めし、下ナットを他のスパナで逆方向に回転してロッキングする方法である。前者を「上ナット正転法」、後者を「下ナット逆転法」と名付ける。どちらの方法でも、ロッキングの際二つのスパナの柄部に逆方向の力を加えるので、このロッキング操作のことを「羽交い締め」という。
図13、各作業段階(a),(b),(c)および(d)に対応するねじ山および座面の負荷状態を図14の(a),(b)および(c),(d)に示す。
図14(a)は下ナットだけを締めた場合で、ねじ山、座面とも軸力Fを負荷している。
同図(b)は、上ナットを締めることでボルトねじ山の下面が下ナットのねじ山の上面から離れた状態であって、下ナットのねじ山には負荷はないが、その他の個所に軸力Fに等しい負荷がある。
「上ナット正転法」の場合は、図14(b)の状態に続いて上ナットを同じ方向に更に回転すると、ボルトねじ山の上面が下ナットねじ山の下面に接触する。その後も、ある程度上ナットを同じ方向に回転するとロッキング力F100が発生して(c)の状態となる。ロッキング力F100の値が緩み止めに必要な程度に達したときに、軸力Fが所望の軸力Fとなるように下ナットの締付け軸力Fを選ばなければならないが、これは試行錯誤法によるにしてもかなり厄介な仕事である。おまけに、図13(b)の手順における上ナットの締め付けトルクTは回転とともに増加するが、(c)の手順におけるロッキング力の発生による締付けトルクの上乗せを、トルクTの増加の具合によって感覚的に捉えることはむずかしい。
「下ナット逆転法」の場合、図14(b)の段階の後、下ナットの逆転によりナットねじ山が見かけ上、下降しはじめ、下ナットねじ山の下面がボルトねじ山の上面に接触するまではトルクも軸力も一定値に保たれる。下ナットねじ山の下面がボルトねじ山の上面に接触した後も、ある程度下ナットを逆転し続けると、ロッキング力F100が発生して(d)の状態となる。
この場合は、図13(b)の手順において軸力Fが所望の軸力FになるようにトルクTの値を選ぶ。その際、ボルトねじ山の上と下の面がナットのねじ山の下と上の面に接触しない範囲内の位置に止まるように、(a)の手順におけるトルクTを定める。この作業は、トルク法による締付けの要領で行うことができるのでさほど困難ではない。手順(b)に引き続き下ナットを逆転する際、上述のように逆転の初期ではナット回転角に対してトルクが一定値に保たれるので、(d)の段階に達したときロッキング力の発生によるトルクTの増加の具合を感覚的に捉えることは容易である。以上の理由で、ダブルナットのロッキング法としては「下ナット逆転法」が推奨される。
上記の図14(c),(d)と既述の図12の一致(ディスクブレーキ)が注目される。
本出願人の出願であるW03/09369での提案もピッチエラータイプに属する。すなわち、図15〜図17に示す如く、ナット1は、ボルトのネジ部と螺合するメネジ部1aの下部に,後述する座金2の円錐状筒片2aを嵌合する円錐状筒片2aの高さよりもやや高く設計の円錐状孔部1bを設けている。円錐状孔部1bの傾斜角度θは、円錐状筒片2aの傾斜角度θと同一角度に設定している。メネジ部1aと円錐状孔部1bとの間には、内鍔状の段部1cを設けている。
円錐状孔部1bは、座金2と対峙しない半部分の内周の直径を、円錐状筒片2aの先端部の外周の直径よりも小さくし、座金2と対峙する側の半部分の開口の直径を円錐状筒片2aの付け根部の外周の直径よりも小さくしている。
又、座金2は、円形平板状のベース部2bの中央部に、ボルト軸の先端方向に縮径する前述の偏心Sした円錐台(図中X、Yは円錐台外縁の偏心点からの半径)から形成される円錐状筒片2aを起立設している。当該円錐状筒片2aには、ボルトのネジ部が貫通する該ネジ部の呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔2cが縦貫設されて、薄肉部2dと肉厚部2fが対峙するものとなっている。
円錐状筒片2aの薄肉部2dには、ベース部2bと円錐状筒片2aに連続した欠円用スリット2eが形成されている。
しかして、ナット1と座金2は図16(肉厚部2f側から視た正断面)に示す如く、嵌合する。
この嵌合体での締結が、図17(図16の90°側方視)に示される。
すなわち、ナット1の円錐状孔部1bはボルト3の制約下で偏心S配位の円錐状筒片2aに対して嵌合着していくが、これは、図示の如く、ナット1を円錐状筒片2aを肉厚部2fに乗り上げさせていくこととなる。つまり、肉厚部2dが局部的なクサビとなり、そのテーパ面に沿ってのナット1の螺進に従ってそのクサビ作用を高める。このクサビ化で、座金2はその肉厚部2fをボルト3に対して喰い込みを生じる程に押圧し、押圧力F1が作用する。これによって、メネジ部1aの座金2の薄肉部2d部位では、ボルト3のネジ部3aとの間のはめ合い間隙を零にするまでに押圧力F2でもって喰い込み、一方、この影響を受けてボルト3から離反する反対側にあっては、ボルト3のネジ部3aとの間のはめ合い間隙を倍化する。この間、当然ボルト3の伸びは生じている。
このボルト上下で相対する方向に加わる押圧力F2、F1は、ボルト3に強力な剪断力を加えることとなる。ボルト3の自由端側の押圧力F2によってボルト3の自由端には矢示Kの曲げが働くが、これは、既述の図12における「上方斜面B−1」と「下方斜面A−1」との間の接圧を一層高めることを意味している。
一方、その下方にあっては、この形態に至るに際し、座金2は、欠円用スリット2eを有するため全長に渡って均一に縮径してボルト3に抱き付くためクサビ介装作用がスムーズで、その終端には円錐状孔部1bが円錐状筒片2aよりも高いために、ナット1下面がボルト3に抱き付き係止状態にある座金2をそのベース部2bを押し下げる。これは、既述の図12における「下方斜面B−2」と「上方斜面A−2」の接圧を一層高めることを意味している。
しかして、この提案にあっては、ボルト軸直角方向についてのくさび効果と共にボルト軸方向についてのピッチエラー効果(2種の一体化ルート)とが作用することが容易に理解される。
すなわち、ナット1の座金2のベース部の押圧は、座金2の円錐状筒片2aの肉厚部2f部位であって、ボルト3のねじ3aが喰い込んで、めねじ成型されてナット1のめねじの一部を構成している座金2の円錐状筒片2aが、ボルト3の伸びで前記の図12並びに図14(c),(d)の被締結材側と同じく「ナットねじ山の下面がボルトねじ山の上面に接触する」状態をもたらして「ピッチエラー」を形成する(ナット1は単独で自己内にピッチエラーを形成することになる)ところに、ナット1側の被締結材側のめねじ部を受け持つ座金2の円錐状筒片2aを更にボルトのねじ山の上面に押し付けることとなる。他方、ボルト3の反対側の自由端にあっては、該図17中の押圧力Fはボルト3の自由端に曲げを生じさせるので、ナット1とボルト3のねじ山間の接触は一層高められる。
このピッチエラーは、既述したダブルナットのピッチエラーとは似て異なものであり、上記の追加分のためにまた局部的のためにはるかに強力である。
また、本発明にあっては、ダブルナットには無い偏心肉厚部によるボルト軸直交方向のくさび効果も併有している。上記の如く、このくさびはボルト3の自由端側のピッチエラーのブレーキ強化に貢献している。
上記諸作用が相乗する特有の驚くべき効果はデータで裏付けられる。すなわち、図18,19,20はトルクテンション試験機とこれでの六角片面ナットを本発明締結具の試験結果を夫々示すが、通常の締結具である六角片面ナットにトルクを付加していき、頂点に達した後ゆるめると、図19に示される如く六角片面ナットにあっては回転角359.3[deg]にて零に戻る、所望垂鐘状を呈する(ほとんどの緩み止め締結具も同じ)が、図20に示される如く、本発明にあっては零に戻らず垂鐘状を呈しない。つまり、359.3[deg]回転させても「緩み止め作用」が継続している。
W03/09369号公報
解決しようとする問題点は、W03/09369号公報で紹介のものにおけるより一層の緩み止め能の向上と予張力付加時点の最適化である。すなわち、図21に示す鉄道レール6は、枕木7上に温度での伸縮変形を逃すべく、折りたたみ板バネ8の先端でもって押止されるが、当該バネ8は折り重ね部を貫通のボルト9にナット10を装着して、当初離反態様にある該折り重ね部を弾溌力に抗して密着させ、さらに本締めをして該対レール6押止部に弾溌付勢力をもたらすとしている。しかして、バネ8は、所定の予張力を導入されるべき位置から離れた位置にて座金2と接し、先ず所定量の弾溌力に抗した押圧を受けて押し下げられて予張力を受けるに適した位置に達し、ここで、本格的な締結を加えられねばならないという、2段締結(図中右側と左側の態様)を要するものである。
しかるにW03/09369号公報のものにあっては、かかるケースにあっては、第1段目で座金2のクサビ作用は働くのでこの時点でロッキングが作動してしまい、2段目での肝心の予張力付加を行うことが出来ないという不都合が生じ得る。本発明は、かかる不都合に鑑みなされたもので、予張力付加が、被締結物の移動が生じることのなくなる適正時まで働くことのないと共により一層緩み止め能を高めた緩み止め能を有するねじ締結体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の緩み止め能を有するねじ締結体は、ボルトと、ベース部中央部に形成のボルト軸方向上方にしたがって縮径する偏心した円錐台にボルトの呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔を縦貫設して成る円錐筒体において、半円より小なる弧状に該円錐筒体の肉厚部のみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁を立設の座金と、該座金と対峙する側の半部分に該円錐台が嵌合する円錐台状孔部を凹設したナットとから成るとしたものである。
座金の筒の半周以上を欠く形態の弧状立壁は、ナットの円錐台状孔部内にあって、過半の欠円故に対ボルト抱き付き能は無く、予張力導入適正位置前のナット螺進中は該円錐台状部内周壁に側端を掛止されて押され同動する。つまり共回りし、被締結部材が移動することのない予張力導入適正位置に達して、座金が停止したところでクサビ化する。つまり、予張力導入適正位置到達前にクサビ化するおそれがまったく無い。
停止した座金は、既述の図17における肉厚部2fと全く同一の機能を奏する。
すなわち、ナットの螺進にしたがい、その進行路上に偏心してかつ孤立して存在する弧状立壁は、ナットに対して局部的なクサビとなり、そのテーパ面に沿ってのナットの螺進は、クサビ作用を高めていき、座金は移動させられ、その弧状立壁はボルト3に押し付けられる。
ここに、弧状立壁は図17における肉厚部2fと全く同一の働きをする。しかし、図15〜17のものと異なり本発明のものにあっては、クサビ化進行が進む際には、ナットの円錐台状穴部内は弧状立壁以外は過半が空隙部となっている。この過半空隙部は、図17に示される押圧力F1,F2間で引張力を受けるナット円錐台状孔部壁の変形を許容する。つまり、ナットにつぶれ変形を許す。
この許容変形分だけナットは螺進し得るため、WO3/09369号公報に提案の緩み止め能を上回ることとなる。
a,bは本発明品のナットの正、底面図である。 a,bは本発明品の座金の平、正面図である。 本発明品のナット螺進初期の説明図である。 本発明品の座金共廻り時説明図である。 a,bは本発明品の予張力導入時の説明用正、底面図である。 a,bは他の本発明実施の座金の平、正面図である。 a,bは同じくナットの正、底面図である。 ねじ締結体の簡略図である。 タッピンネジの説明図である。 ねじ面の説明図である。 ねじ面の説明図である。 ねじ面の説明図である。 (a)〜(d)は、ダブルナットの作業手順とロッキングの方法の説明図である。 (a)〜(d)は、ダブルナットのロッキング説明図である。 a,b,cは、先行提案のナット正面図、座金平面図、座金正面図である。 先行提案のナットと座金との嵌合初期の説明図である。 先行提案の予張力導入完了時の説明図である。 トルクテンション試験機の説明図である。 トルクテンションの試験結果説明図である。 トルクテンションの試験結果説明図である。 鉄道レール敷設説明図である。
符号の説明
1 ;ナット
1a ;メネジ部
1b ;円錐状孔部
2 ;座金
2a ;円錐状筒片
3 ;ボルト
3a ;ネジ部
6 ;鉄道レール
7 ;枕木
8 ;板バネ
9 ;ボルト
10 ;ナット
11 ;ナット
11a;円錐台状孔部
11b;空隙部
12a;ベース部
12b;ボルト貫通部
12c;円錐筒体
12d;弧状立壁
12e;肉厚部
本発明の実施態様を図1〜7にて詳述する。
図1a,bは本発明におけるナット11を示し、後述する座金12と対峙する側の半部分に後述する円錐台が嵌合する円錐台状孔部11aを凹設している。図2a,bは本発明における座金12を示し、ベース部12a中央部に形成のボルト3軸方向上方にしたがって縮径する偏心Sした円錐台にボルト3の呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔12bを縦貫設して成る円錐筒体12cにおいて、半円より小なる弧状に該円錐筒体12cの肉厚部12eのみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁12dを立設している。図中αは座金12の中心点からのボルト貫通孔12bの半径、β、γは円錐台外縁の偏心点からの半径を示す。
図3〜5は、ナット11の螺進初期、座金12共廻り時、予張力導入時の態様を夫々示す。
ナット11の螺進初期(図3)にあっては、ナット11とボルト3との間のはめ合い間隙は、付加の部分拡大図で評示の如く全周同一となっているが、座金12の弧状立壁12dがナット11の円錐台状孔部11a円周壁に掛止して共廻りする時(図4)にあっては、ナット11の座金12の弧状壁12dへの乗り上げにより弧状立壁12d部位では、図示の如く上記のはめ合い間隙は拡大し、対向側部位でははめ合い間隙の零化が進行し始める。予張力導入時(図5)にあっては、ナット1の螺進に従がい、その進行路上に偏心Sしてかつ孤立して存在する弧状立壁12dは、ナット1に対して局部的なクサビとなり、そのテーパ面に沿ってのナット1の螺進は、クサビ作用を高めていき、座金12は移動させられ、その弧状立壁12dはボルト3に押し付けられるので、既述の図17と全く同じメカが働き、上下で相対する押圧力F2、F1が働き、ボルト3の自由端は矢示V方向への曲げ付勢を受ける。ナット11の螺進の限界は、座金12のクサビ部(弧状立壁12d)への乗り上げの可否によって決定されるが、ナット11の円錐台状孔部11aにあっては、弧状立壁12d以外の半周以上が空隙部11bとなっているので、a図中矢示Wで示すナット11に加わる限界値の乗り上げ応力は、b図中の矢示Z、Zで示す円錐台状孔部11a壁の空隙部11b内へのつぶれ変形で吸収される。
ここに、既に弧状立壁12d部位に形成の図17で説明の「ピッチエラーのブレーキ」を一層有効なものとする。「ブレーキ」助勢の点で図17と同じではあるが、板体の反撥と剛筒の反撥とではレベルが違い、はるかに強力である。かかる単純なボルト軸直交方向のクサビによるピッチエラーのみでなく、所定のナット螺進許容で蓄勢されるところの「ブレーキ」助勢力は、この双方が解消するまで緩み止めが持続するために、ねじ緩みに極めて高い抵抗力を有する。
図6、7は図1,2で示した偏心構成を逆転させた例を示す。すなわち、座金12′は、ベース部中央部に形成のボルト軸方向上方にしたがって縮径する円錐台中心にボルト呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔12b′を縦貫設した円錐筒体12c′において、半円より小なる弧状に該円錐筒体12c′の一部のみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁12d′を立設して成る。図中12a′はベース部を示す。
また、ナット11′は、該座金12′と対峙する側の半部分に該円錐台が嵌合する偏心Sさせた円錐台状孔部11a′を凹設して成る。図中α′、β′は円錐台状孔部11a′の偏心点からの外側、内側の半径を示す。
このものは、前記の図1〜5で紹介のものと偏心Sの関係が逆転したのみで、全く同一の機能をもつ。
本発明のナットと座金は、互いにクサビ作用とピッチエラー助勢の面で適格性を有することとなることから、材質の選定は、その緩み止め能を左右し得る。
つまり、ナット若しくは座金を合成樹脂にて成すると、その弾力性は、ナットのより多くの螺進を、また、座金のより深いクサビ化をもたらし好適である。
ナット若しくは座金については、耐食性を配慮する必要のある環境下での使用では、アルミニウム合金、銅合金等の耐食性の非鉄合金が好ましい。
また、座金については、炭素鋼か合金鋼の常識下でも、単に耐寒、耐熱性でチタン合金、ステンレス鋼が優れるというのみでなく、座金に用いると、摩擦熱の良伝導性から膨張してクサビ効果を増大させる利点がある。
鉄道のレール固定、レールわきの諸設置固定、あるいは自動車架構道路における固定諸設備等には、断え間なく激しい過大な振動が加わり、これ等を緩み止めと称して固定している治具が、経時的耐え得ることなく予張力を失い脱落事故を起こしていることは、ニュースにてよく知らされるところである。
本発明は、かかる過酷な部位に使用されて、その有効性を認識されるものである。特にかかる構造材での締結は、一度締結して放置される場合は少なく、定期点検がなされることが多く、締結解除、再締結がなされるが、この際の作業の容易性は極めて重要であるが、本発明は適格品として採用され得る。

Claims (5)

  1. ボルトと、ベース部中央部に形成のボルト軸方向上方にしたがって縮径する偏心した円錐台にボルトの呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔を縦貫設して成る円錐筒体において、半円より小なる弧状に該円錐筒体の肉厚部のみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁を立設の座金と、該座金と対峙する側の半部分に該円錐台が嵌合する円錐台状孔部を凹設したナットとから成る緩み止め能を有するねじ締結体。
  2. ボルトと、ベース部中央部に形成のボルト軸方向上方にしたがって縮径する円錐台中心にボルトの呼び径よりもやや大きいボルト貫通孔を縦貫設した円錐筒体において、半円より小なる弧状に該円錐筒体の一部のみを残余する態様にカットしたところの弧状立壁を立設して成る座金と、該座金と対峙する側の半部分に該円錐台が嵌合する偏心させた円錐台孔部を凹設して成るナットとから成る緩み止め能を有するねじ締結体。
  3. ナット若しくは座金を合成樹脂製とした請求項1、2記載の緩み止め能を有するねじ締結体。
  4. ナット若しくは座金を耐食性に優れる非鉄合金製とした請求項1,2記載の緩み止め能を有する締結体。
  5. 座金をチタン合金若しくはステンレス鋼とした請求項1,2記載の緩み止め能を有するねじ締結体。
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