JPWO2005070825A1 - カーボンナノチューブ含有2次マトリックスコンポジット - Google Patents
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Abstract
本発明の課題は高硬度であるが直径が著しく小さく、アスペクト比が著しく大きいため取り扱い難いカーボンナノチューブを実用的に斑なく分散しやすく、取り扱いやすくすると同時に、金属などのマトリックスとの親和性を向上することであり、また耐久性に優れた研磨材、摩擦材およびコーティング材成形品および高弾性添加物の脱落が少なく、制動性に優れたタイヤなどのゴム組成物を廉価に提供することにある。本発明の無機コンポジットエレメントはカーボンナノチューブを核とする無機1次コンポジットエレメントである。また本発明の1次コンポジットエレメントはマトリックスポリマー中に斑なく分散したカーボンナノチューブまたは無機1次コンポジッットエレメントの少なくとも1種を総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントである。本発明の2次マトリックスコンポジットは誘電性1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状であり、具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
Description
本発明は高弾性、高硬度特性が発揮される研磨材、ブレーキ材またはクラッチ材などの摩擦材およびコーティングなどの耐磨耗材成形品、タイヤなどのゴム成型品に関する。
アルミナやシリカなどによる無機酸化物繊維補強金属(Metal Matrix Composite)の製造は文献1および文献2により提案され既に実用化もされている。文献3で示されているように、一般的にはカーボンと溶融アルミニウムは反応し炭化アルミニウムを形成するため親和性が良い。しかし、カーボンナノチューブはグラファイト構造が規則正しく構成されているため、不活性でマトリックスのアルミニウムと反応しがたく、親和性に劣る欠点がある。
カーボンナノチューブはアスペクト比が大きいため、配向させることができれば、その特性である剛性や硬度の性能を十分に発揮させることができる。繊維を面に垂直に配向させる方法として誘電体繊維に静電気を帯電させ、電場に置くことで繊維を配向させる方法がフロッキー加工として一般的に使用され公知である。また、この方法では面の形状に余り左右されずに均一厚みに付着させることができる。また、同様の原理で粉体塗料電着塗装としても工業的に実用化されている。しかし、カーボンナノチューブは導電性であるため静電気を帯電させることはできず、この方法で配向させることはできない。
また、研磨材は被研磨物と硬度同じか、より高硬度である必要があり、一般的にはより高硬度である。研磨は研磨材と被研磨物との摩擦、衝突などの作用により被研磨物が減耗することにより、その目的が達成される。
現在最高硬度の素材はダイアモンドである。しかし、天然産出ダイアモンドは元より、人工ダイアモンドも著しく高価である。高硬度素材としてカーボンナノチューブがあるが、その直径が2〜50nmと著しく小さく、アスペクト比が100以上と著しく大きいためそのままでの取り扱いが困難である。
現在最高硬度の素材はダイアモンドである。しかし、天然産出ダイアモンドは元より、人工ダイアモンドも著しく高価である。高硬度素材としてカーボンナノチューブがあるが、その直径が2〜50nmと著しく小さく、アスペクト比が100以上と著しく大きいためそのままでの取り扱いが困難である。
2次凝集を起こしやすい粉体を混合するために粘度の低い媒体に分散させ、次にサンドグラインダー等で凝集を解除し、配合する方法が一般的に多く採用される。しかし、この方法では直接溶融ポリマーのような高粘度のマトリックスに分散することは困難である。既に提案された唯一実用的な方法は前記文献4に記載されているようなローラーミルを使用する方法である。ローラーミルによりポリマーをパイ生地のように折りたたみながら分散する。この方法の利点はカーボンナノチューブが層状に平面上に分散・面配向し、多層に積層されるため、カーボンナノチューブ相互の接触が多くなることである。接触点が多いことは導電性を付与する場合には利点であるが、交絡が多いため、ポリマーの流れが悪くなり、成形性が劣る欠点になる。また、配向させるために静電気を利用することもできない。
また、特許文献5に「カーボンナノチューブを含有する溶融繊維の製造方法」が記載されている。この方法は(a)カーボンナノチューブをポリマーと混合し、(b)溶融紡糸後、(c)ガラス転位点以上の温度で延伸する3工程から構成され、高強度を得るために後延伸工程が必須とされている。しかし、この文献には2次凝集を防止しつつ、カーボンナノチューブを溶融ポリマーに混合する新規な混合法の提案はなされていなかった。また、得られた繊維の導電性または誘電性に関する記載はない。また、高強度繊維は結晶化度が著しく大きく、応力集中を生じ難い。高強度繊維は均一に同時に応力が負荷されることによりその性能を十分に発揮することができる。一般的な強度の繊維の場合は延伸により繊維軸方向に構成高分子が配向すると同時に微結晶ネットワークが構成され、強度に寄与する。しかし、少量の繊維状補強材による高強度繊維の場合、上記微結晶ネットワークは応力が繊維状補強材に負荷されず、応力が微結晶ネットワークに負荷される結果となり、繊維状補強材の補強効果が得られない。しかし、このような考察はこの文献ではなされていない。
ブレーキ材またはクラッチ材には高硬度とフィブリル化し易い粉体としてアスベストが従来使用されていたが、3ミクロン以下のアスベスト粉末に発がん性が指摘され、回収時の発塵による被害の恐れから欧米、日本での使用が禁止された。特許文献6に記載の摩擦材にもアスベストの代替品としてアラミドパルプが使用されているが、アラミドパルプは高価であり、経済的に好ましくない。また、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが圧縮弾性率は余り大きくない欠点があり、アラミド繊維に平行に圧縮荷重が掛かる場合、アラミド繊維を高弾性材料として使用することは不適である。
氷結した道路や水に濡れた道路ではタイヤの摩擦抵抗が小さくなり、制動距離が長くなり、自動車事故の原因となる。この問題はチエーンをタイヤに装着したり、金属スタッドを埋め込み装着したタイヤを使用することにより、摩擦抵抗を増大し、制動距離を短縮し、解決できた。しかし、これらの方法では舗装道路の損傷が著しく、道路修理に多大な費用を要した。また、道路の損傷時に発生する粉塵が道路周辺環境に好ましくなかった。
上記欠点を克服するため、スタッドを使用しないスタッドレスタイヤが開発され、文献7に重量平均分子量が25万以上、油展ムーニーが27〜43、Tgが−70℃以下である溶液重合により得られる磨耗耐久性に優れたスチレン−ブタジエンゴム100重量部、カーボンブラック40〜80重量部並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体よりなる群から選ばれた少なくとも1種3〜30重量部が配合されたタイヤトレッドゴム組成物が提案されている。しかし、鉄製のスタッドに比較して配合されたカーボンブラック、並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体の弾性は小さく、滑り易い路面を捕捉する性能として不十分であった。さらにこれら配合物は粉体であるためマトリックスのゴム組成物から容易に脱落する欠点があった。また、大量に配合する添加物のためゴム組成物全体の硬度が大きくなり過ぎ、通常路面での高速運転時には路面の捕捉が不十分であり、また発熱量も大きくゴム組成物の耐久性を低下した。
配合物の脱落を防止するため、カーボンブラックの表面凹凸を増し、ポーラスに加工し、使用する方法が文献8に記載されている。しかし、配合物の形状はやはり粉体であり、基本的な解決には至らず配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
カーボンブラックより弾性の大きい、即ち硬度が大きい無機化合物、例えばカーボンブラックで表面処理した無機化合物を20〜70質量部の天然ゴムと30〜80質量部のポリブタジエンゴムとを含むゴム成分に配合したスタッドレス タイヤ用トレッドゴム組成物が文献9に記載されている。硬度の大きい配合剤による制動機能効果向上は認められるが、その形状はやはり粉体であり、配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
米国特許5,234,045号公報
米国特許号5,435,374号公報
特開平10−88256号公報
特開平2−235945号公報
米国特許6,331,265号公報
米国特許6,670,408号公報
特開平5−269884号公報
特開2004−27090号公報
特開2004−155807号公報
本発明の課題は高硬度であるが直径が著しく小さく、アスペクト比が著しく大きいため取り扱い難いカーボンナノチューブを実用的に斑なく分散しやすく、取り扱いやすくすると同時に、金属などのマトリックスとの親和性を向上することであり、また耐久性に優れた研磨材、摩擦材およびコーティング材成形品および高弾性添加物の脱落が少なく、制動性に優れたタイヤなどのゴム組成物を廉価に提供することにある。
本発明の無機コンポジットエレメントはカーボンナノチューブを核とする無機1次コンポジットエレメントである。また本発明の1次コンポジットエレメントはマトリックスポリマー中に斑なく分散したカーボンナノチューブまたは無機1次コンポジッットエレメントの少なくとも1種を総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントである。本発明の2次マトリックスコンポジットは誘電性1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状であり、具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
本発明の無機1次コンポジットエレメントは金属、セラミックスまたはガラスの硬度、弾性率を向上し、またその誘電性を利用し、例えば静電塗装法により、塗装面に垂直に配向させられるため、本発明の塗装面硬度が向上し、耐久性、耐摩耗性が向上する。また、カーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ無機1次コンポジットエレメントを含有する本発明の1次コンポジットエレメントを使用することにより、2次マトリックスコンポジットである成形品中のカーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ無機1次コンポジットエレメントの均一分散性を容易に向上させることが可能となり、例えばコーティング材、研磨材、摩擦材、タイヤなどの2次マトリックスコンポジットとして好適廉価な成形品を供給できる。
本発明の無機1次コンポジットエレメントは、カーボンナノチューブを核とする無機コンポジットエレメントであり、本発明の2次マトリックスコンポジット成形品マトリックスポリマー中に斑なく分散したカーボンナノチューブまたは無機1次コンポジッットエレメントの少なくとも1種を総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントまたは、およびカーボンナノチューブを核とする無機1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状である2次マトリックスコンポジット成形品であり、より具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
本発明に使用するカーボンナノチューブはアーク放電法(トーチアーク放電法、アークジェットプラズマ法、真空陰極アーク放電法)、レーザー蒸着法等により製造されるが、本発明はこれらのみに限定するものではない。カーボンナノチューブはコイル状であっても直線状であっても良く、単層であっても多層であっても良い。本発明のカーボンナノチューブ無機1次コンポジッットエレメントはカーボンナノチューブを結晶核とし、例えばシリカ、ゼオライト、アルミナなどの無機酸化物をゾルーゲル法などにより析出させ、誘電性無機物をカーボンナノチューブの周囲に被覆することにより、製造することができる。
シリカを析出させるゾルーゲル法としては例えば米国特許4,410,405号公報にシリカの小さな種結晶を使用し、種結晶濃度を一定に保ちつつ、結晶成長させることにより、約10nmの大きさの均一なシリカゾルが得られる製法が記載されている。同様にしてシリカ種結晶の代わりに結晶核となるカーボンナノチューブを水に分散し、シリカ種結晶が生成しない温度に昇温後、この分散水に例えばナトリウムシリケートを適当量加えつつ、ナトリウムを酸で中和、またはイオン交換で取り除くことにより、カーボンナノチューブの周囲にシリカを析出させ本発明の誘電性無機コンポジットエレメントを製造する。次に焼成することによりシリカ結晶の緻密度を向上することは好ましい。無機コンポジットエレメントのカーボンナノチューブとシリカの組成比およびシリカ析出による被覆厚さは、シリカの析出量とカーボンナノチューブ仕込み量により調節することができる。
本発明の無機1次コンポジットエレメントの被覆無機物は上記酸化物のみに限定しない。例えば塩化、硫酸化、炭酸化、ホウ酸化、燐酸化金属などの塩であっても良い。硬度および金属マトリックスとの親和性および安定性の点から酸化物が好ましい。
本発明の無機1次コンポジットエレメントの被覆無機物は上記酸化物のみに限定しない。例えば塩化、硫酸化、炭酸化、ホウ酸化、燐酸化金属などの塩であっても良い。硬度および金属マトリックスとの親和性および安定性の点から酸化物が好ましい。
本発明の無機1次コンポジットエレメント含有金属マトリックスコンポジットは、例えば文献1から3にも記載されているような公知の金属マトリックスコンポジット製造方法により製造することができる。例えば無機1次コンポジットエレメントとマトリックス金属粉末を所定の割合で予備混合し、焼結した後、粉砕し、再度不活性ガスまたは真空中で溶融し、ダイキャストするような方法で製造すると両者の混合が均一となり好ましい。マトリックスがガラスの場合も同様にして粉末ガラスと無機1次コンポジットエレメントを予備混合することが好ましい。
金属、ガラスマトリックスの融点または軟化点よりより無機1次コンポジットエレメントのマトリックスである被覆無機物の融点が高い方が好ましい。
金属、ガラスマトリックスの融点または軟化点よりより無機1次コンポジットエレメントのマトリックスである被覆無機物の融点が高い方が好ましい。
セラミックスマトリックスの場合はセラミックス原料水分散液に無機1次コンポジットエレメントを加え、攪拌し、混合することができる。セラミックスマトリックスの場合は無機1次コンポジットエレメントのマトリックス融点が逆に低い方がセラミックスとの親和性が向上し好ましいこともある。本発明のセラミックスコンポジットは基本的には陶磁器等のセラミックス製造方法の定法により製造することができる。
本発明のポリマーまたはゴム組成物2次マトリックスコンポジットに使用される1次コンポジットエレメントはカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの1種を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上含有し、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上含有する。本発明の1次コンポジットエレメントは粒状または繊維状である。粒状1次コンポジットエレメントは例えば乳化重合、またはサスペンジョン重合などのラジカル重合時に、モノマーまたは溶剤にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを予め均一に分散することにより製造することができる。乳化重合、サスペンジョン重合、縮重合などのモノマー中にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを予め均一に分散する方法としてはパルパーなどの製紙用分散装置を使用する方法、サンドミル、ローラーミルなどの粉砕機を使用する方法などがある。
本発明の1次コンポジット繊維は粒状1次コンポジットエレメントを溶媒に溶解し、湿式紡糸または乾式紡糸により、また縮重合物溶融紡糸などの方法およびポリマーに混練する方法により製造することができる
本発明の1次コンポジット繊維は粒状1次コンポジットエレメントを溶媒に溶解し、湿式紡糸または乾式紡糸により、また縮重合物溶融紡糸などの方法およびポリマーに混練する方法により製造することができる
1次コンポジット繊維の太さは細いものでも数万nmあるため、直径数十nm,例えば具体的には中空内径が4〜10nm、外形が8〜50nmの多層カーボンナノチューブ、外形が1〜4nmの単層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブのどちらも使用することができる。本発明のように特に圧縮高弾性率を必要とする場合には層間滑りを考慮する必要がないため多層カーボンナノチューブの単位繊維面積当たり繊維方向C−C共有結合密度が単層カーボンナノチューブより大きく好ましい。また、多層カーボンナノチューブは製造が容易で単層カーボンナノチューブより経済的に廉価である。
分散性およびマトリックスポリマーとの親和性を向上するため、予め前処理としてカーボンナノチューブ等の表面処理または化学修飾を行っても良い。表面処理の方法としては、例えば界面活性剤を被覆する方法等が挙げられる。また、化学修飾の方法としては、例えばグラフト重合法等が挙げられる。本発明ではカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントをポリマーと混練する際に好ましくは炭酸ガス超臨界または亜臨界状態で行うが、この新規な混合方法はマトリックスポリマーの低粘度化と同時に上記親和性の向上にも効果的であった。
1次コンポジットエレメントに使用するマトリックスポリマーは例えばポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソプレンおよびこれらの共重合物等)、ポリスチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペートコテレフタレートおよびこれらの共重合物等)、ポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジペート等)、ポリカーボネート、ポリエチレンベンツイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリパラジアミノベンツテレフタル酸アミド等、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル(ポリメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、セルロース(酢酸セルロース、硝酸セルロース等)、ポリアクリロニトリルおよび共重合物、ポリビニルアルコールおよび共重合物などの2次元ポリマーおよびフェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、トリアリルシアヌレート系樹脂、アクロレイン系樹脂、トリス(2-ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのホルムアルデヒド樹脂、トリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの3次元熱硬化性ポリマーがある。最終製品の用途特性および2次マトリックスコンポジットの製造特性により適宜選択されるべきである。ブレーキ材などの摩擦材またはコーティングなどの耐磨耗材として使用する場合には3次元熱硬化性樹脂または共重合により3次元架橋した上記熱可塑性ポリマーが摩擦時耐熱性に優れ好ましい。
1次コンポジットエレメント中、カーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントおよび2次マトリックスコンポジット中、1次コンポジットエレメントの分散および配向状態は走査型電子顕微鏡写真の画像解析およびX線回折により測定することができる。
1次コンポジットエレメント中、カーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントおよび2次マトリックスコンポジット中、1次コンポジットエレメントの分散および配向状態は走査型電子顕微鏡写真の画像解析およびX線回折により測定することができる。
1次コンポジットエレメントを2次マトリックスコンポジット成形品に成型する方法は例えば抄紙法、加圧成型法、射出成型法、押出し成型法または静電塗装法などにより、研磨材、クラッチペーパー、ブレーキ材などの摩擦材または耐磨耗材、タイヤ、コーティング材などが製造されるが、本発明はこれらの方法のみに限定するものではない
研磨材、摩擦材、タイヤおよび耐磨耗材には充填材として高硬度のフィラーが配合されても良い。フィラーには硬度の大きいダイアモンド、アルミナ、シリカ、炭化珪素などや、酸化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、カシューダスト、グラファイト、炭酸カルシウム、ベントナイト、有機変性ベントナイト、微粒子シリカ、カルボキシメチルセルロース、重炭酸ナトリウム、雲母、酸化ケイ素などがある。本発明の1次コンポジットエレメント以外にこれらのフィラーを本発明の2次マトリックスコンポジット成形品に配合することを妨げるものではない。同様に、フィラーを保持する素材としてアラミドパルプ、パルプ、コットンなどの繊維を配合することを妨げるものではない。
本発明の1次コンポジットエレメントはその大きさをサブミクロンから数cmまで、必要に応じ変化することができる。例えば1次コンポジットエレメントが繊維である場合、その径はサブミクロンから数mm、繊維長は数mmから数cmまで従来の紡糸技術を応用し、製造することができ、取り扱いが容易となり、また発癌性の懸念もなくなる。
上記カーボンナノチューブ高弾性1次コンポジット繊維の製造方法は一般的な湿式、乾式および溶融紡糸などで製造することができる。最も簡便な製造方法はカーボンナノチューブを溶剤に予め分散使用可能な、溶剤を使用する湿式、乾式紡糸である。湿式、乾式紡糸に適したマトリックスとしてはポリビニルアルコール、アクリロニトリル、酢酸セルロースなどがある。縮重合溶融紡糸においても溶融モノマーに予めカーボンナノチューブを分散し、重合することにより、均一に分散したポリマーが得られ、溶融紡糸することができる。溶融紡糸に適したマトリックスとしてはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネートなどがある。繊維マトリックスはこれら例示したものに限定するものではない。タイヤ用繊維としては一般的に耐熱性が優れたナイロン、ポリエステル、ビスコース、アラミドなどが使用されるが、マトリックスとのなじみを重視する場合には敢えて低融点のポリエチレンなどを使用することもある。
高弾性繊維はカーボンナノチューブの高弾性を最も効率良く利用できる形態である。また、カーボンナノチューブは微細過ぎるため、それだけで取り扱うことが困難であり、作業環境にも配慮が必要であるが、複合された高弾性繊維1次コンポジットエレメントとすることにより、取り扱い作業性が改善され、一般的な取り扱いが可能となる。一般的に使用されるように、ゴム製品の性能を阻害しない範囲で繊維製造時に静電気防止剤、収束剤などのオイリングを行っても良い。
本発明の1次コンポジット繊維の製造は湿式紡糸または乾式紡糸の方が溶融紡糸に比べて容易である。湿式紡糸または乾式紡糸では重合前のモノマーの段階で行うこともできるが、少量のポリマーを溶剤に溶解し、少し粘度を持たせたポリマー溶液にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルで2次凝集を粉砕し、ろ過した添加液を、ポリマー溶液に適宜定量的に添加し、湿式または乾式紡糸することにより1次コンポジット繊維が得られる。口金に分割型複合口金を使用し、組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、またスタティックミキサーを使用し、繊維方向に他分割された組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、多層構造のフィブリル化し易い1次コンポジット繊維を製造することができる。繊維の複合化は海島型であっても良く、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
上記カーボンナノチューブ高弾性1次コンポジット繊維の製造方法は一般的な湿式、乾式および溶融紡糸などで製造することができる。最も簡便な製造方法はカーボンナノチューブを溶剤に予め分散使用可能な、溶剤を使用する湿式、乾式紡糸である。湿式、乾式紡糸に適したマトリックスとしてはポリビニルアルコール、アクリロニトリル、酢酸セルロースなどがある。縮重合溶融紡糸においても溶融モノマーに予めカーボンナノチューブを分散し、重合することにより、均一に分散したポリマーが得られ、溶融紡糸することができる。溶融紡糸に適したマトリックスとしてはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネートなどがある。繊維マトリックスはこれら例示したものに限定するものではない。タイヤ用繊維としては一般的に耐熱性が優れたナイロン、ポリエステル、ビスコース、アラミドなどが使用されるが、マトリックスとのなじみを重視する場合には敢えて低融点のポリエチレンなどを使用することもある。
高弾性繊維はカーボンナノチューブの高弾性を最も効率良く利用できる形態である。また、カーボンナノチューブは微細過ぎるため、それだけで取り扱うことが困難であり、作業環境にも配慮が必要であるが、複合された高弾性繊維1次コンポジットエレメントとすることにより、取り扱い作業性が改善され、一般的な取り扱いが可能となる。一般的に使用されるように、ゴム製品の性能を阻害しない範囲で繊維製造時に静電気防止剤、収束剤などのオイリングを行っても良い。
本発明の1次コンポジット繊維の製造は湿式紡糸または乾式紡糸の方が溶融紡糸に比べて容易である。湿式紡糸または乾式紡糸では重合前のモノマーの段階で行うこともできるが、少量のポリマーを溶剤に溶解し、少し粘度を持たせたポリマー溶液にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルで2次凝集を粉砕し、ろ過した添加液を、ポリマー溶液に適宜定量的に添加し、湿式または乾式紡糸することにより1次コンポジット繊維が得られる。口金に分割型複合口金を使用し、組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、またスタティックミキサーを使用し、繊維方向に他分割された組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、多層構造のフィブリル化し易い1次コンポジット繊維を製造することができる。繊維の複合化は海島型であっても良く、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
溶融紡糸では湿式紡糸と同様に重合前のモノマーの段階でカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルなどで2次凝集を粉砕し、ろ過後、重合し、一般的な溶融紡糸で1次コンポジット繊維を製造することができる。溶融紡糸では一般的なスピンドローなどの紡糸方法以外にメルトブロウン法も使用することができる。
本発明のより好ましい溶融紡糸方法の形態は延伸による微結晶ネット構造はできていないが、マトリックスポリマーが配向している半延伸状態であるPOY(Preoriented Yarn)である。一般的に1,000m/分未満の第1ローラー引き取り速度で溶融紡糸された繊維は未延伸糸である。引き取り速度が3,000m/分程度までの速度で半延伸糸が製造される。マトリックスポリマーとしての延伸は微結晶完全には生成しない程度であるが、マトリックスポリマーが溶融状態で延伸される過程で、均一分散したカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向する。マトリックスポリマーの溶融状態で延伸される程度が大きい程、言い換ええると紡糸第1ローラー引き取り速度が大きい程カーボンナノチューブの配向が大きくなり好ましい。後延伸によるマトリックスポリマーの微結晶ネット構造の発現は微結晶部分に応力集中が発生し、補強材であるカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントに応力が分散されず、十分な補強効果が実現できない。ただし、本発明の目的である研磨、摩擦および耐磨耗効果の発現に関しては変形の極小さい圧縮弾性領域の挙動であるため、経済的には工程が増える分不利であるが上記延伸により、本発明の目的とする効果に大きな差異は生じない。
また、溶融ポリマーに上記1次コンポジットエレメントなどを混合する場合には、国際出願特許公報WO 03/014217 A1号公報に記載されているように押し出し機の中で炭酸ガスの超臨界または亜臨界状態の場を、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの混合に使用することが好ましい。このような場ではマトリックスポリマーの粘度を下げ、流動性を著しく向上することができ、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの均一分散混合に適しているからである。
炭酸ガスの超臨界は、臨界条件が約30℃、7MPaが一般的には絶対条件的目安とされているが、実際にはこの温度と圧はPV=RTの式で表されるように、温度が高くなるとより低圧でマトリックスポリマーが類似した挙動を示すことが認められるため、かかる絶対条件に限定されるものではない。また、超臨界状態を示す化合物は炭酸ガスの他に低分子量化合物、例えば窒素ガス、酸素ガス、メタノール、エタノール、アセトンなど多くの存在が知られ、本発明においても使用することができる。これらの中では炭酸ガスと窒素ガスはマトリックスを酸化することもなく、爆発、引火性のない点で扱いやすい。
上記混合分散に使用する分散混合機としては、例えば一般的な1軸または2軸押し出し機を使用することができる。またこれらを併用しても良い。押し出し機のメルト部に炭酸ガス注入部を付属していることが好ましい。押し出し機のフィルターとダイスの間に環境科学工業(株)製の適当な段数のラモンドスーパーミキサーまたはスタティックミキサーを20段以上取り付けることにより、分散性を向上することができる。
マトリックスポリマーまたはオリゴマーをカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントと混合する際の圧力は超臨界流体が炭酸ガスの場合、1MPa以上が好ましい。より好ましくは2MPa、さらに好ましくは3MPa以上である。特に縮重合ポリマーマトリックスの場合、分子量が小さいオリゴマーまたはモノマーをマトリックスポリマーに少量添加し、再度縮重合を進めると、混合効率がより向上し好ましい。マトリックスポリマーがポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンのような縮重合物の場合、分散混合時低下した分子量は真空加熱重合、固相重合等により分子量を回復することができる。
混合する際の温度はマトリックスポリマーにより異なるが、高温が好ましく、特に融点より10℃以上高温であることが好ましい。付加重合物の場合も熱可塑性を向上する意味で低分子量物を適量加えることが混合効率向上のため好ましい。
混合する際の温度はマトリックスポリマーにより異なるが、高温が好ましく、特に融点より10℃以上高温であることが好ましい。付加重合物の場合も熱可塑性を向上する意味で低分子量物を適量加えることが混合効率向上のため好ましい。
炭酸ガスの注入量は、マトリックスポリマーの種類により適宜選択する必要がある。マトリックスポリマーが縮重合ポリマーの場合は、炭酸ガス、水、モノマー、オキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン等の2官能基を持つ化合物を配合することにより、上記超臨界、または亜臨界場での分散混合時分子量が著しく低下、粘度が低下するため、炭酸ガス量は微量で良い。好ましくは0.01重量%以上である。モノマーなどの2官能基を持つ化合物の添加量の目安はカーボンナノチューブ重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
一方、マトリックスポリマーがポリオレフィン等共役結合を有するポリマーの場合は、、縮重合物のように後重合により分子量の回復ができないため分子量低下は多くを望めない。従って、超臨界または亜臨界流動性を良くするためキャリアーである炭酸ガス量は多くすることが好ましい。炭酸ガス量が多いほど流動性は向上するが炭酸ガス量があまり多すぎない方が、ダイスを出た時発泡しないため好ましく、例えばベントから脱気するなどにより、ダイスを出る時が1重量%以下であることが好ましい。低分子量物の添加量の目安はカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメント重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
マトリックスポリマーが熱硬化性エポキシ樹脂のように例えばグリシジルモノマーと硬化剤の2液性の場合は取り扱いやすいモノマー中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させた後、2液を混合し重合させ、型に入れ成型することにより本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。また、硬化途中で粘度が増加した時点で押出し成型により、繊維状に成型することもできる。
熱硬化性フェノール樹脂の場合はフェノール、クレゾール、キシレノールなど、またはホルマリン水などのモノマーまたはモノマー水溶液中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させておくことにより、直接酸化法、硫酸化法、クロルベンゼン法、ラッシヒ法、クメン法などの定法により重合し、繊維状に押出し成型後、キュアすることにより、本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。熱硬化性樹脂は文字通り、加熱により3次元架橋構造を発現し、耐熱性、寸法安定性などに優れている。また、本発明の成形品の主要マトリックスポリマーであり、1次コンポジットエレメントと成形品のポリマーが似通っているほど成形品との親和性が良く、成形品の機械的および耐熱物性を向上し、好ましい。
熱硬化性フェノール樹脂の場合はフェノール、クレゾール、キシレノールなど、またはホルマリン水などのモノマーまたはモノマー水溶液中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させておくことにより、直接酸化法、硫酸化法、クロルベンゼン法、ラッシヒ法、クメン法などの定法により重合し、繊維状に押出し成型後、キュアすることにより、本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。熱硬化性樹脂は文字通り、加熱により3次元架橋構造を発現し、耐熱性、寸法安定性などに優れている。また、本発明の成形品の主要マトリックスポリマーであり、1次コンポジットエレメントと成形品のポリマーが似通っているほど成形品との親和性が良く、成形品の機械的および耐熱物性を向上し、好ましい。
熱硬化性不飽和ポリエステルは縮重合時にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを分散し、架橋モノマーにより溶解し、フィラーと混合後、型に入れ、加熱ラジカル架橋によるキュアを行い本発明の1次コンポジットエレメントを上記フェノール樹脂と同様にして製造することができる。ラジカル架橋に使用される重合触媒、重合促進剤、安定剤の配合量と組み合わせは多岐に及ぶが適宜選択されるべきである。上記のような熱硬化性樹脂の場合、最終成形品の製造の前に1次コンポジットエレメントを含有するプリミックスまたはプリプレグを製造し、それを成型、キュアし、本発明最終成形品を製造することもできる。
本発明の無機コンポジットエレメントは表面が誘電体無機物でカーボンナノチューブの少なくとも両端が被覆されている場合、誘電特性を示し、静電気を帯電する。帯電粒子は被塗装面に電場を掛けることにより、被塗装面に垂直に配向する。帯電粒子が塗装面に垂直に配向した状態を保ち、バインダーで塗膜を形成することによりカーボンナノチューブを塗膜に垂直に配向させた本発明のコーティングを行える。1枚の塗膜は1μ弱であっても塗装を積層することにより塗膜厚さを大きくすることができる。塗膜耐久性向上のため特に下地塗装として好適である。
本発明のゴム組成物コンポジットに使用する補強材エレメントは高弾性であれば繊維破断強度が大きいことは必要としないので、単層より多層カーボンナノチューブの方が廉価であり、経済的に好ましい。カーボンナノチューブは高価であるため、上記高弾性1次コンポジットエレメントに含有される配合量は少ないほど経済的には好ましい。高弾性繊維1次コンポジットエレメントに含有されるカーボンナノチューブの配合量は用途により異なるが0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上である。0.1重量%未満の配合量では十分な配合効果が得られない。一般的には10重量%以上になると高弾性繊維1次コンポジットエレメントのゴム組成物中に対する配合量を減少させる経済的必要が生じ、ゴム組成物中の高弾性繊維1次コンポジットエレメント密度が低下し、制動性能を低下させる一因となる。したがって、コストと効果の最適条件を適宜選択することが好ましい。
高弾性繊維にはアラミド繊維が有名である。しかし、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが、圧縮弾性率は大きくなく、屈曲などには弱い。一方、カーボンナノチューブは圧縮に対しても大きい弾性率を示すため、本発明に使用する高弾性1次コンポジットエレメントも圧縮に対し高弾性を示し、本発明の目的に叶いアラミド繊維より好ましい。
前記したように高弾性繊維1次コンポジットエレメントの太さは単繊維太さが0.1dTex以上が生産性、経済性で好ましく、単独または束ね、太さ数mmのロッド状にすることもできる。繊維太さが細くなると表面積が大きくなり、マトリックスとの親和性が良く、脱落しがたくなる。また、単位面積あたりの繊維本数が増加し、路面などの捕捉性が向上する。一方、繊維太さが小さくなると見掛け弾性率が小さくなり、路面などの捕捉性が低下する。補足すべき路面などの性質と必要な制動機能などを勘案し、繊維太さは適宜選択すべきである。
タイヤなどのゴム組成物に使用する上記高弾性繊維1次コンポジットエレメント含有量は繊維太さにも関連するが、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、より厳しい制動機能を求められる用途においては10重量%以上である。本発明のゴム組成物スタッドのように部分的に集中して高弾性繊維1次コンポジットエレメントが配合される場合には15重量%以上で使用されることもある。細い繊維が多くなるとゴム組成物の混練りが困難になる。繊維含有量が多くなると繊維太さを大きくするなど、混練り効率を配慮し繊維太さと配合量は適宜勘案すべきである。
高弾性繊維1次コンポジットエレメントの繊維長はゴム組成物マトリックスに混合しやすい1mmから数cm長さで使用することが多い。マトリックスゴムとの混合方法は一般的なニーダー、バンバリーミキサー、ロール型混練り機を使用し、混練することができる。
ゴム組成物マトリックスのゴムは一般的に使用される、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、多硫化ゴムなどがあり、1種あるいは2種以上を使用しても良い。
ゴム組成物は加硫して使用されるが例えば一般的に使用される、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物などの加硫剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫促進剤、加硫助剤などを使用することができる。
ゴム組成物は加硫して使用されるが例えば一般的に使用される、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物などの加硫剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫促進剤、加硫助剤などを使用することができる。
ゴム組成物に発泡剤を添加することもでき、例えば発泡剤としてジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、P,P’−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジドなどがあり、発泡助剤として尿素などがある。
ゴム組成物には上記以外に一般的に添加配合される例えば軟化剤、老化防止剤、顔料などが配合されても良く、更に必要に応じて加硫遅延剤、粘着付与剤などが配合されても良い。高弾性繊維1次コンポジットエレメント以外の充填剤を含有していても良く、例えば充填材として、カーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどがある。
ゴム組成物には上記以外に一般的に添加配合される例えば軟化剤、老化防止剤、顔料などが配合されても良く、更に必要に応じて加硫遅延剤、粘着付与剤などが配合されても良い。高弾性繊維1次コンポジットエレメント以外の充填剤を含有していても良く、例えば充填材として、カーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどがある。
本発明のゴム製品は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを高含有したスタッド成形品として予めゴムまたはポリマー成形品を作成し、スタッドタイヤとして使用することもできる。鉄製のスタッドと異なり、ゴムまたはポリマー製であるため、路面を著しく損傷することがなく、粉塵による環境への影響を著しく軽減することができる。本発明のゴムまたはポリマー製スタッドは射出成型または押出し成型後、切削加工で成型することができるが、射出または押出し成型時、高弾性繊維1次コンポジットエレメントを配向させることができ、制動性能を効率良く向上することができる。
また本発明のゴム組成物の一部または全部を加硫して得られる加硫ゴム組成物用途として、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナーなどの自動車用ゴム部品、ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどの制動または耐久性能が必要なゴム製品が挙げられるが、特にタイヤへの応用が好ましい。
制動性能の測定は英国製ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスターを使用し、0℃氷面で測定した。測定値は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを含有しないサンプルをブランクとし、その測定値を100として、試験片の換算値を計算し、表示した。この数値の大きいほど制動性能が優れている。
実施例1
多層カーボンナノチューブを水に0.5重量%分散し、サンドミルで2次凝集を破壊、粉砕するとともに、カーボンナノチューブの最大長さが1μを越えないように調整した。イオン交換法による珪酸濃度2重量%珪酸水ゾルを攪拌しながら徐々に加え、70℃に加温し、ゾルーゲル反応により、多層カーボンナノチューブの表面上にシリカゲルを厚さ約20nm析出させ、ろ過し、100℃熱風乾燥機で乾燥後、電炉により不活性ガス雰囲気中500℃で焼成し本発明の誘電性無機コンポジットエレメントを製造した。
多層カーボンナノチューブの表面にシリカが積層され、被覆されていることを透過型電子顕微鏡観察および電子線回折にて確認した。顕微鏡観察から求めたシリカの厚さとカーボンナノチューブ表面積から求めた計算値とカーボンナノチューブ上へのシリカ析出量はほぼ定量的に行われたことを示した。
鉛ハンダを白金坩堝中で加熱溶融し、上記無機コンポジットエレメント10重量部を加え、ガラス棒で良く攪拌分散し、1mm厚さの板状に圧延し、本発明の鉛ハンダマトリックスコンポジットを製造した。JIS曲げ試験に準じ試験片を切り出し、無添加物と比較した結果、曲げ弾性率は2.3倍に向上した。同様にして水ガラスに分散後、型に入れ、焼結したガラス試験片の曲げ弾性率は3.8倍に向上した。
多層カーボンナノチューブを水に0.5重量%分散し、サンドミルで2次凝集を破壊、粉砕するとともに、カーボンナノチューブの最大長さが1μを越えないように調整した。イオン交換法による珪酸濃度2重量%珪酸水ゾルを攪拌しながら徐々に加え、70℃に加温し、ゾルーゲル反応により、多層カーボンナノチューブの表面上にシリカゲルを厚さ約20nm析出させ、ろ過し、100℃熱風乾燥機で乾燥後、電炉により不活性ガス雰囲気中500℃で焼成し本発明の誘電性無機コンポジットエレメントを製造した。
多層カーボンナノチューブの表面にシリカが積層され、被覆されていることを透過型電子顕微鏡観察および電子線回折にて確認した。顕微鏡観察から求めたシリカの厚さとカーボンナノチューブ表面積から求めた計算値とカーボンナノチューブ上へのシリカ析出量はほぼ定量的に行われたことを示した。
鉛ハンダを白金坩堝中で加熱溶融し、上記無機コンポジットエレメント10重量部を加え、ガラス棒で良く攪拌分散し、1mm厚さの板状に圧延し、本発明の鉛ハンダマトリックスコンポジットを製造した。JIS曲げ試験に準じ試験片を切り出し、無添加物と比較した結果、曲げ弾性率は2.3倍に向上した。同様にして水ガラスに分散後、型に入れ、焼結したガラス試験片の曲げ弾性率は3.8倍に向上した。
実施例2
電着塗装装置により鉄板上に塗装した実施例1で製造した無機コンポジットエレメントを1重量%含有するキュア後の本発明のフェノール樹脂塗膜硬度は鉄より大きく、また一般的な粉塵である石英や長石の硬度より大きく、優れた耐摩耗性を示した。走査型電子顕微鏡による塗膜断面の観察により塗膜中の無機コンポジットエレメントが塗膜面に垂直に配向していることを確認した。
電着塗装装置により鉄板上に塗装した実施例1で製造した無機コンポジットエレメントを1重量%含有するキュア後の本発明のフェノール樹脂塗膜硬度は鉄より大きく、また一般的な粉塵である石英や長石の硬度より大きく、優れた耐摩耗性を示した。走査型電子顕微鏡による塗膜断面の観察により塗膜中の無機コンポジットエレメントが塗膜面に垂直に配向していることを確認した。
実施例3
電着塗装装置によりスポンジに積層した薄いアクリルゴム膜上に形成した無機コンポジットエレメントを5重量%含有するフェノール樹脂2μ厚さ塗膜積層ディスク状の本発明成形品をガラス表面研磨材として使用し、同量の酸化セレン微粉末を含有した従来品スポンジ研磨材と比較した結果、同じ面粗度に仕上げるまでの研磨時間が50%以上短縮された。
電着塗装装置によりスポンジに積層した薄いアクリルゴム膜上に形成した無機コンポジットエレメントを5重量%含有するフェノール樹脂2μ厚さ塗膜積層ディスク状の本発明成形品をガラス表面研磨材として使用し、同量の酸化セレン微粉末を含有した従来品スポンジ研磨材と比較した結果、同じ面粗度に仕上げるまでの研磨時間が50%以上短縮された。
実施例4
無機1次コンポジットエレメントを1重量%含有するフェノール樹脂を溶融し、メルトブロウン紡糸し単繊維太さ約0.5μの繊維を製造し、キュア後、1mm長さにカットした後、水に5重量%分散し、サンドミルで粉砕した平均直径約0.5μ、平均長さ約1μの本発明研磨材粉末分散液を製造した。本発明の1次コンポジットエレメント研磨材として使用し、高圧でノズルから被研磨物であるアルミ板に吹きつけ、同じ深さの穴を研磨する時間をほぼ同じ粒径の人工ダイアモンド研磨材と比較したところ、研磨時間が50%以上短縮された。
無機1次コンポジットエレメントを1重量%含有するフェノール樹脂を溶融し、メルトブロウン紡糸し単繊維太さ約0.5μの繊維を製造し、キュア後、1mm長さにカットした後、水に5重量%分散し、サンドミルで粉砕した平均直径約0.5μ、平均長さ約1μの本発明研磨材粉末分散液を製造した。本発明の1次コンポジットエレメント研磨材として使用し、高圧でノズルから被研磨物であるアルミ板に吹きつけ、同じ深さの穴を研磨する時間をほぼ同じ粒径の人工ダイアモンド研磨材と比較したところ、研磨時間が50%以上短縮された。
実施例5
サスペンジョン重合したポリアクリロニトリル10重量%ロダン塩水溶液と、カーボンナノチューブ1重量%、ポリアクリロニトリル0.5重量%をホモミキサー、サンドミキサーで分散混合したロダン塩水溶液を5:1で混合し、湿式紡糸し、8倍延伸後、水洗、乾燥、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるカーボンナノチューブ1重量%含有、単繊維太さ1dTexのポリアクリロニトリルステープルを製造した。
サスペンジョン重合したポリアクリロニトリル10重量%ロダン塩水溶液と、カーボンナノチューブ1重量%、ポリアクリロニトリル0.5重量%をホモミキサー、サンドミキサーで分散混合したロダン塩水溶液を5:1で混合し、湿式紡糸し、8倍延伸後、水洗、乾燥、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるカーボンナノチューブ1重量%含有、単繊維太さ1dTexのポリアクリロニトリルステープルを製造した。
次にアラミドパルプ5重量%、上記ポリアクリロニトリルステープル15重量%、フェノール樹脂35重量%、シリカ、タルク、グラファイト充填材45重量%と混合し、シート状に押し出し、乾燥後、加圧熱成形し本発明の2次マトリックスコンポジットであるブレーキシューを製造した。比較のためアラミドパルプが20重量%で1次コンポジットエレメントである上記ポリアクリロニトリルステープルを含有しない以外は同様の比較例1を製造した。本発明品実施例5と比較例1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較成型品より60%耐久性が向上した。本発明品に使用した1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルはアラミドパルプに比較し、廉価であるため本発明成形品は比較成形品に比べて経済的に有利であった。
実施例6
カーボンナノチューブ1重量%となるように、多層カーボンナノチューブとビスフェノールAタイプポリカーボネート(250℃、荷重2.12kg、10分間の流下重量、単位g:25)をドライブレンドした。
次に供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、溶融混練後、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は0.1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は260℃、圧力は3MPa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。
カーボンナノチューブ1重量%となるように、多層カーボンナノチューブとビスフェノールAタイプポリカーボネート(250℃、荷重2.12kg、10分間の流下重量、単位g:25)をドライブレンドした。
次に供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、溶融混練後、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は0.1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は260℃、圧力は3MPa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。
上記ペレットを使用し、乾燥後、20mm押し出し機を使用し、紡糸温度250℃、第1ローラー引き取り速度800m/分で32dTex、32フィラメントの1次コンポジットのマルチフィラメントを製造し、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるポリカーボネートステープルを製造した。X線回折結果マトリックスポリマーの配向が完全ではない未延伸状態であったがカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向していることを確認した。このマルチフィラメントは、単糸切れもなく、表面も滑らかであり引張弾性率が8.9Gpaを示し、カーボンナノチューブをを含有しない比較品2.5Gpaと比べ優れた高弾性率を示した。
実施例7
実施例5と同様にして1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルをポリカーボネートステープルにのみ変更し、本発明の成形品であるブレーキシューを製造した。本発明実施例7と比較1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較例1より70%耐久性が向上した。
実施例5と同様にして1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルをポリカーボネートステープルにのみ変更し、本発明の成形品であるブレーキシューを製造した。本発明実施例7と比較1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較例1より70%耐久性が向上した。
比較例2
天然ゴムRSS3号を100重量部、カーボンブラック昭和キャボット(株)製ショウワブラックS118をブランクに60重量部、正同化学工業(株)製酸化亜鉛を2.5重量部、日本油脂(株)製ステアリン酸を2重量部、フレキシス(株)製老化防止剤サントフレックス6PPDを1重量部、軽井沢精錬所(株)製硫黄を1.5重量部、大内新興化学(株)製加硫促進剤ノクセラーNS−Pを1重量部使用し、ニーダーで混合、混練後、型に入れ、加熱加硫を行い比較例2のタイヤトラッド部を想定したブランクゴム組成物制動試験用試験片を製造した。
天然ゴムRSS3号を100重量部、カーボンブラック昭和キャボット(株)製ショウワブラックS118をブランクに60重量部、正同化学工業(株)製酸化亜鉛を2.5重量部、日本油脂(株)製ステアリン酸を2重量部、フレキシス(株)製老化防止剤サントフレックス6PPDを1重量部、軽井沢精錬所(株)製硫黄を1.5重量部、大内新興化学(株)製加硫促進剤ノクセラーNS−Pを1重量部使用し、ニーダーで混合、混練後、型に入れ、加熱加硫を行い比較例2のタイヤトラッド部を想定したブランクゴム組成物制動試験用試験片を製造した。
実施例8
予め混合しておいたアスペクト比100以上5,000未満の多層カーボンナノチューブと流動パラフィンを、カーボンナノチューブ1重量%,流動パラフィン2重量%となるように、マトリックスポリマーである付加重合ポリマー(MI値22のHDPE)にドライブレンドした。
供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は180℃、圧力は3Mpa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。上記ペレットを使用し、20mm押し出し機を使用し、紡糸温度250℃、第1ローラー引き取り速度3,000m/分で165dTex、48フィラメントのマルチポリエチレンフィラメントを製造し、3mm長さにカットして高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
予め混合しておいたアスペクト比100以上5,000未満の多層カーボンナノチューブと流動パラフィンを、カーボンナノチューブ1重量%,流動パラフィン2重量%となるように、マトリックスポリマーである付加重合ポリマー(MI値22のHDPE)にドライブレンドした。
供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は180℃、圧力は3Mpa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。上記ペレットを使用し、20mm押し出し機を使用し、紡糸温度250℃、第1ローラー引き取り速度3,000m/分で165dTex、48フィラメントのマルチポリエチレンフィラメントを製造し、3mm長さにカットして高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
実施例9
市販アクリル繊維ブライト20重量部をジメチルスルフォアミド80重量部に浸漬し、24時間室温放置膨潤させた後、攪拌しながら攪拌熱で溶解しアクリルドープを製造した。アスペクト比100以上5,000未満の多層カーボンナノチューブ1重量部と前記アクリルドープ5重量部にジメチルスルフォアミド94重量部を加え、ホモミキサーで分散しカーボンナノチューブ分散液を製造した。アクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが5重量%含有されるように上記ドープと分散液を混合し、50%水・ジメチルフォルムアミド凝固浴に紡出し、5倍延伸、乾燥緻密化後、5mm長さにカットし、10dTexのアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
市販アクリル繊維ブライト20重量部をジメチルスルフォアミド80重量部に浸漬し、24時間室温放置膨潤させた後、攪拌しながら攪拌熱で溶解しアクリルドープを製造した。アスペクト比100以上5,000未満の多層カーボンナノチューブ1重量部と前記アクリルドープ5重量部にジメチルスルフォアミド94重量部を加え、ホモミキサーで分散しカーボンナノチューブ分散液を製造した。アクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが5重量%含有されるように上記ドープと分散液を混合し、50%水・ジメチルフォルムアミド凝固浴に紡出し、5倍延伸、乾燥緻密化後、5mm長さにカットし、10dTexのアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
実施例10
実施例9と同様にしてアクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが0.5重量%含有されるようにのみ変更し、10dTexのアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
実施例9と同様にしてアクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが0.5重量%含有されるようにのみ変更し、10dTexのアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメントを製造した。
比較例3
実施例9と同様にしてアクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが0.01重量%含有されるようにのみ変更し、10dTexのアクリル繊維を製造した。このアクリル繊維の弾性率は一般的なアクリル繊維の弾性率と大差がなかった。
実施例9と同様にしてアクリル固形分に対し、カーボンナノチューブが0.01重量%含有されるようにのみ変更し、10dTexのアクリル繊維を製造した。このアクリル繊維の弾性率は一般的なアクリル繊維の弾性率と大差がなかった。
実施例11
比較例2のカーボンブラックを30重量部に変更し、実施例8のポリエチレン高弾性繊維1次コンポジットエレメント5重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
比較例2のカーボンブラックを30重量部に変更し、実施例8のポリエチレン高弾性繊維1次コンポジットエレメント5重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
実施例12
実施例11で製造したゴム組成物を押出し成型し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように切削加工し制動試験用試験片を製造した。
実施例11で製造したゴム組成物を押出し成型し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように切削加工し制動試験用試験片を製造した。
実施例13
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント10重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント10重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
実施例14
実施例13で製造したゴム組成物を押出し成型し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように切削加工し制動試験用試験片を製造した。
実施例13で製造したゴム組成物を押出し成型し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように切削加工し制動試験用試験片を製造した。
実施例15
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント15重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、押出し成型し、試験片摩擦面積の30%を占めるように切削加工し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように型に設置し、他の部分を比較例2のゴム組成物で埋め、スタッドタイプの制動試験用試験片を製造した。
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント15重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、押出し成型し、試験片摩擦面積の30%を占めるように切削加工し、成型時に押出し方向に配向した高弾性繊維1次コンポジットエレメントが試験片の摩擦面に直角になるように型に設置し、他の部分を比較例2のゴム組成物で埋め、スタッドタイプの制動試験用試験片を製造した。
実施例16
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント15重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
比較例2のカーボンブラックの代わりに、実施例9のアクリル高弾性繊維1次コンポジットエレメント15重量部加えた以外は比較例2と同様にして本発明の2次マトリックスコンポジットであるゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合高弾性繊維1次コンポジットエレメントは試験片にランダムに分散していた。
比較例4
比較例2のカーボンブラックの内、10重量部の代わりに、比較例3のアクリル繊維10重量部加えた以外は比較例2と同様にしてゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合繊維は試験片にランダムに分散していた。
比較例2のカーボンブラックの内、10重量部の代わりに、比較例3のアクリル繊維10重量部加えた以外は比較例2と同様にしてゴム組成物を製造し、制動試験用試験片を製造した。この場合繊維は試験片にランダムに分散していた。
比較例2および4、および実施例11から16の制動試験結果を表1に示した。
実施例11から16の制動性能は比較例2および4に比べて優れた制動性能を示した。
また、実施例11から16は比較例2および4と比べ、カーボンブラック含有量が少ないためいずれもタイヤトラッド部として硬度が小さく、高速走行性に適していることが示唆された。また、比較例2では摩擦試験後の走査型電子顕微鏡観察においてカーボンブラックの脱落が顕著に認められたが、実施例の高弾性繊維1次コンポジットエレメントの脱落は著しく少なく、アスペクト比の大きい繊維形状と粉体の差が明らかになった。
また、実施例11から16は比較例2および4と比べ、カーボンブラック含有量が少ないためいずれもタイヤトラッド部として硬度が小さく、高速走行性に適していることが示唆された。また、比較例2では摩擦試験後の走査型電子顕微鏡観察においてカーボンブラックの脱落が顕著に認められたが、実施例の高弾性繊維1次コンポジットエレメントの脱落は著しく少なく、アスペクト比の大きい繊維形状と粉体の差が明らかになった。
【書類名】 明細書
【発明の名称】カーボンナノチューブ含有2次マトリックスコンポジット
【技術分野】
【0001】
本発明は高弾性、高硬度特性が発揮される研磨材、ブレーキ材またはクラッチ材などの摩擦材およびコーティングなどの耐磨耗材成形品、タイヤなどのゴム成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナやシリカなどによる無機酸化物繊維補強金属(Metal Matrix Composite)の製造は文献1および文献2により提案され既に実用化もされている。文献3で示されているように、一般的にはカーボンと溶融アルミニウムは反応し炭化アルミニウムを形成するため親和性が良い。しかし、カーボンナノチューブはグラファイト構造が規則正しく構成されているため、不活性でマトリックスのアルミニウムと反応しがたく、親和性に劣る欠点がある。
【0003】
カーボンナノチューブはアスペクト比が大きいため、配向させることができれば、その特性である剛性や硬度の性能を十分に発揮させることができる。繊維を面に垂直に配向させる方法として誘電体繊維に静電気を帯電させ、電場に置くことで繊維を配向させる方法がフロッキー加工として一般的に使用され公知である。また、この方法では面の形状に余り左右されずに均一厚みに付着させることができる。また、同様の原理で粉体塗料電着塗装としても工業的に実用化されている。しかし、カーボンナノチューブは導電性であるため静電気を帯電させることはできず、この方法で配向させることはできない。
【0004】
また、研磨材は被研磨物と硬度同じか、より高硬度である必要があり、一般的にはより高硬度である。研磨は研磨材と被研磨物との摩擦、衝突などの作用により被研磨物が減耗することにより、その目的が達成される。
現在最高硬度の素材はダイアモンドである。しかし、天然産出ダイアモンドは元より、人工ダイアモンドも著しく高価である。高硬度素材としてカーボンナノチューブがあるが、その直径が2〜50nmと著しく小さく、アスペクト比が100以上と著しく大きいためそのままでの取り扱いが困難である。
【0005】
2次凝集を起こしやすい粉体を混合するために粘度の低い媒体に分散させ、次にサンドグラインダー等で凝集を解除し、配合する方法が一般的に多く採用される。しかし、この方法では直接溶融ポリマーのような高粘度のマトリックスに分散することは困難である。既に提案された唯一実用的な方法は前記文献4に記載されているようなローラーミルを使用する方法である。ローラーミルによりポリマーをパイ生地のように折りたたみながら分散する。この方法の利点はカーボンナノチューブが層状に平面上に分散・面配向し、多層に積層されるため、カーボンナノチューブ相互の接触が多くなることである。接触点が多いことは導電性を付与する場合には利点であるが、交絡が多いため、ポリマーの流れが悪くなり、成形性が劣る欠点になる。また、配向させるために静電気を利用することもできない。
【0006】
また、特許文献5に「カーボンナノチューブを含有する溶融繊維の製造方法」が記載されている。この方法は(a)カーボンナノチューブをポリマーと混合し、(b)溶融紡糸後、(c)ガラス転位点以上の温度で延伸する3工程から構成され、高強度を得るために後延伸工程が必須とされている。しかし、この文献には2次凝集を防止しつつ、カーボンナノチューブを溶融ポリマーに混合する新規な混合法の提案はなされていなかった。また、得られた繊維の導電性または誘電性に関する記載はない。また、高強度繊維は結晶化度が著しく大きく、応力集中を生じ難い。高強度繊維は均一に同時に応力が負荷されることによりその性能を十分に発揮することができる。一般的な強度の繊維の場合は延伸により繊維軸方向に構成高分子が配向すると同時に微結晶ネットワークが構成され、強度に寄与する。しかし、少量の繊維状補強材による高強度繊維の場合、上記微結晶ネットワークは応力が繊維状補強材に負荷されず、応力が微結晶ネットワークに負荷される結果となり、繊維状補強材の補強効果が得られない。しかし、このような考察はこの文献ではなされていない。
【0007】
ブレーキ材またはクラッチ材には高硬度とフィブリル化し易い粉体としてアスベストが従来使用されていたが、3ミクロン以下のアスベスト粉末に発がん性が指摘され、回収時の発塵による被害の恐れから欧米、日本での使用が禁止された。特許文献6に記載の摩擦材にもアスベストの代替品としてアラミドパルプが使用されているが、アラミドパルプは高価であり、経済的に好ましくない。また、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが圧縮弾性率は余り大きくない欠点があり、アラミド繊維に平行に圧縮荷重が掛かる場合、アラミド繊維を高弾性材料として使用することは不適である。
【0008】
氷結した道路や水に濡れた道路ではタイヤの摩擦抵抗が小さくなり、制動距離が長くなり、自動車事故の原因となる。この問題はチエーンをタイヤに装着したり、金属スタッドを埋め込み装着したタイヤを使用することにより、摩擦抵抗を増大し、制動距離を短縮し、解決できた。しかし、これらの方法では舗装道路の損傷が著しく、道路修理に多大な費用を要した。また、道路の損傷時に発生する粉塵が道路周辺環境に好ましくなかった。
【0009】
上記欠点を克服するため、スタッドを使用しないスタッドレスタイヤが開発され、文献7に重量平均分子量が25万以上、油展ムーニーが27〜43、Tgが−70℃以下である溶液重合により得られる磨耗耐久性に優れたスチレン−ブタジエンゴム100重量部、カーボンブラック40〜80重量部並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体よりなる群から選ばれた少なくとも1種3〜30重量部が配合されたタイヤトレッドゴム組成物が提案されている。しかし、鉄製のスタッドに比較して配合されたカーボンブラック、並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体の弾性は小さく、滑り易い路面を捕捉する性能として不十分であった。さらにこれら配合物は粉体であるためマトリックスのゴム組成物から容易に脱落する欠点があった。また、大量に配合する添加物のためゴム組成物全体の硬度が大きくなり過ぎ、通常路面での高速運転時には路面の捕捉が不十分であり、また発熱量も大きくゴム組成物の耐久性を低下した。
【0010】
配合物の脱落を防止するため、カーボンブラックの表面凹凸を増し、ポーラスに加工し、使用する方法が文献8に記載されている。しかし、配合物の形状はやはり粉体であり、基本的な解決には至らず配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
【0011】
カーボンブラックより弾性の大きい、即ち硬度が大きい無機化合物、例えばカーボンブラックで表面処理した無機化合物を20〜70質量部の天然ゴムと30〜80質量部のポリブタジエンゴムとを含むゴム成分に配合したスタッドレス タイヤ用トレッドゴム組成物が文献9に記載されている。硬度の大きい配合剤による制動機能効果向上は認められるが、その形状はやはり粉体であり、配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
【0012】
鏡面反応を利用した銀、鉄、コバルトなどの金属イオン還元法により、表面を前処理したカーボンナノチューブ表面上に金属を析出させる方法が特許文献10に記載されている。しかし、シリカやゼオライトなどの無機酸化物を前処理をしないカーボンナノチューブ表面上に形成被覆する方法は記載されていない。また金属を被覆したカーボンナノチューブは導電性で誘電性でない。
【0013】
特許文献11および13は現時点で存在しない。
【0014】
マトリックス樹脂中に共役系重合体で覆われたカーボンナノチューブが分散されているペーストおよびコンポジットが特許文献12に記載されている。共役系重合体は有機物であり、無機酸化物ではない。
【特許文献1】米国特許5,234,045号公報
【特許文献2】米国特許号5,435,374号公報
【特許文献3】特開平10−88256号公報
【特許文献4】特開平2−235945号公報
【特許文献5】米国特許6,331,265号公報
【特許文献6】米国特許6,670,408号公報
【特許文献7】特開平5−269884号公報
【特許文献8】特開2004−27090号公報
【特許文献9】特開2004−155807号公報
【特許文献10】特開平08−325195号公報
【特許文献11】特開2003−523623号公報
【特許文献12】特開2004−2621号公報
【特許文献13】特開2002−544356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は高硬度であるが直径が著しく小さく、アスペクト比が著しく大きいため取り扱い難いカーボンナノチューブを実用的に斑なく分散しやすく、取り扱いやすくすると同時に、金属などのマトリックスとの親和性を向上することであり、また耐久性に優れた研磨材、摩擦材およびコーティング材成形品および高弾性添加物の脱落が少なく、制動性に優れたタイヤなどのゴム組成物を廉価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無機酸化物コンポジットエレメントはカーボンナノチューブを核とする無機酸化物1次コンポジットエレメントである。また本発明の1次コンポジットエレメントはマトリックスポリマー中に斑なく分散したカーボンナノチューブまたは無機酸化物1次コンポジッットエレメントの少なくとも1種を総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントである。本発明の2次マトリックスコンポジットは誘電性1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状であり、具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメントは金属、セラミックスまたはガラスの硬度、弾性率を向上し、またその誘電性を利用し、例えば静電塗装法により、塗装面に垂直に配向させられるため、本発明の塗装面硬度が向上し、耐久性、耐摩耗性が向上する。カーボンナノチューブ無機酸化物1次コンポジットエレメントを含有する本発明の1次コンポジットエレメントを使用することにより、2次マトリックスコンポジットである成形品中のカーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ無機1次コンポジットエレメントの均一分散性を容易に向上させることが可能となり、例えばコーティング材、研磨材、摩擦材、タイヤなどの2次マトリックスコンポジットとして好適廉価な成形品を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメントは、カーボンナノチューブを核とする無機コンポジットエレメントであり、本発明の2次マトリックスコンポジット成形品マトリックスポリマー中に斑なく分散した無機酸化物1次コンポジッットエレメントを総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントまたは、およびカーボンナノチューブを核とする無機酸化物1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状である2次マトリックスコンポジット成形品であり、より具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
【0016】
本発明に使用するカーボンナノチューブはアーク放電法(トーチアーク放電法、アークジェットプラズマ法、真空陰極アーク放電法)、レーザー蒸着法等により製造されるが、本発明はこれらのみに限定するものではない。カーボンナノチューブはコイル状であっても直線状であっても良く、単層であっても多層であっても良い。本発明のカーボンナノチューブ無機1次コンポジッットエレメントはカーボンナノチューブを結晶核とし、例えばシリカ、ゼオライト、アルミナなどの無機酸化物をゾルーゲル法などにより析出させ、誘電性無機酸化物をカーボンナノチューブの周囲に被覆することにより、製造することができる。
【0017】
シリカを析出させるゾルーゲル法としては例えば米国特許4,410,405号公報にシリカの小さな種結晶を使用し、種結晶濃度を一定に保ちつつ、結晶成長させることにより、約10nmの大きさの均一なシリカゾルが得られる製法が記載されている。同様にしてシリカ種結晶の代わりに結晶核となるカーボンナノチューブを水に分散し、シリカ種結晶が生成しない温度に昇温後、この分散水に例えばナトリウムシリケートを適当量加えつつ、ナトリウムを酸で中和、またはイオン交換で取り除くことにより、カーボンナノチューブの周囲にシリカを析出させ本発明の誘電性無機コンポジットエレメントを製造する。次に焼成することによりシリカ結晶の緻密度を向上することは好ましい。無機コンポジットエレメントのカーボンナノチューブとシリカの組成比およびシリカ析出による被覆厚さは、シリカの析出量とカーボンナノチューブ仕込み量により調節することができる。
【0018】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメント含有金属マトリックスコンポジットは、例えば文献1から3にも記載されているような公知の金属マトリックスコンポジット製造方法により製造することができる。例えば無機酸化物1次コンポジットエレメントとマトリックス金属粉末を所定の割合で予備混合し、焼結した後、粉砕し、再度不活性ガスまたは真空中で溶融し、ダイキャストするような方法で製造すると両者の混合が均一となり好ましい。マトリックスがガラスの場合も同様にして粉末ガラスと無機酸化物1次コンポジットエレメントを予備混合することが好ましい。
金属、ガラスマトリックスの融点または軟化点よりより無機酸化物1次コンポジットエレメントのマトリックスである被覆無機酸化物の融点が高い方が好ましい。
【0019】
セラミックスマトリックスの場合はセラミックス原料水分散液に無機酸化物1次コンポジットエレメントを加え、攪拌し、混合することができる。セラミックスマトリックスの場合は無機酸化物1次コンポジットエレメントのマトリックス融点が逆に低い方がセラミックスとの親和性が向上し好ましいこともある。本発明のセラミックスコンポジットは基本的には陶磁器等のセラミックス製造方法の定法により製造することができる。
【0020】
本発明のポリマーまたはゴム組成物2次マトリックスコンポジットに使用される1次コンポジットエレメントは無機酸化物コンポジットエレメントの1種を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上含有し、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上含有する。本発明の1次コンポジットエレメントは粒状または繊維状である。粒状1次コンポジットエレメントは例えば乳化重合、またはサスペンジョン重合などのラジカル重合時に、モノマーまたは溶剤にカーボンナノチューブまたは誘電性無機酸化物コンポジットエレメントを予め均一に分散することにより製造することができる。乳化重合、サスペンジョン重合、縮重合などのモノマー中にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを予め均一に分散する方法としてはパルパーなどの製紙用分散装置を使用する方法、サンドミル、ローラーミルなどの粉砕機を使用する方法などがある。
本発明の1次コンポジット繊維は粒状1次コンポジットエレメントを溶媒に溶解し、湿式紡糸または乾式紡糸により、また縮重合物溶融紡糸などの方法およびポリマーに混練する方法により製造することができる
【0021】
1次コンポジット繊維の太さは細いものでも数万nmあるため、直径数十nm,例えば具体的には中空内径が4〜10nm、外形が8〜50nmの多層カーボンナノチューブ、外形が1〜4nmの単層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブのどちらも使用することができる。本発明のように特に圧縮高弾性率を必要とする場合には層間滑りを考慮する必要がないため多層カーボンナノチューブの単位繊維面積当たり繊維方向C−C共有結合密度が単層カーボンナノチューブより大きく好ましい。また、多層カーボンナノチューブは製造が容易で単層カーボンナノチューブより経済的に廉価である。
【0022】
本発明ではカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントをポリマーと混練する際に好ましくは炭酸ガス超臨界または亜臨界状態で行うが、この新規な混合方法はマトリックスポリマーの低粘度化と同時に上記親和性の向上にも効果的であった。
【0023】
1次コンポジットエレメントに使用するマトリックスポリマーは例えばポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソプレンおよびこれらの共重合物等)、ポリスチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペートコテレフタレートおよびこれらの共重合物等)、ポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジペート等)、ポリカーボネート、ポリエチレンベンツイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリパラジアミノベンツテレフタル酸アミド等、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル(ポリメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、セルロース(酢酸セルロース、硝酸セルロース等)、ポリアクリロニトリルおよび共重合物、ポリビニルアルコールおよび共重合物などの2次元ポリマーおよびフェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、トリアリルシアヌレート系樹脂、アクロレイン系樹脂、トリス(2-ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのホルムアルデヒド樹脂、トリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの3次元熱硬化性ポリマーがある。最終製品の用途特性および2次マトリックスコンポジットの製造特性により適宜選択されるべきである。ブレーキ材などの摩擦材またはコーティングなどの耐磨耗材として使用する場合には3次元熱硬化性樹脂または共重合により3次元架橋した上記熱可塑性ポリマーが摩擦時耐熱性に優れ好ましい。
1次コンポジットエレメント中、カーボンナノチューブまたは誘電性無機酸化物コンポジットエレメントおよび2次マトリックスコンポジット中、1次コンポジットエレメントの分散および配向状態は走査型電子顕微鏡写真の画像解析およびX線回折により測定することができる。
【0024】
1次コンポジットエレメントを2次マトリックスコンポジット成形品に成型する方法は例えば抄紙法、加圧成型法、射出成型法、押出し成型法または静電塗装法などにより、研磨材、クラッチペーパー、ブレーキ材などの摩擦材または耐磨耗材、タイヤ、コーティング材などが製造されるが、本発明はこれらの方法のみに限定するものではない
【0025】
研磨材、摩擦材、タイヤおよび耐磨耗材には充填材として高硬度のフィラーが配合されても良い。フィラーには硬度の大きいダイアモンド、アルミナ、シリカ、炭化珪素などや、酸化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、カシューダスト、グラファイト、炭酸カルシウム、ベントナイト、有機変性ベントナイト、微粒子シリカ、カルボキシメチルセルロース、重炭酸ナトリウム、雲母、酸化ケイ素などがある。本発明の1次コンポジットエレメント以外にこれらのフィラーを本発明の2次マトリックスコンポジット成形品に配合することを妨げるものではない。同様に、フィラーを保持する素材としてアラミドパルプ、パルプ、コットンなどの繊維を配合することを妨げるものではない。
【0026】
本発明の1次コンポジットエレメントはその大きさをサブミクロンから数cmまで、必要に応じ変化することができる。例えば1次コンポジットエレメントが繊維である場合、その径はサブミクロンから数mm、繊維長は数mmから数cmまで従来の紡糸技術を応用し、製造することができ、取り扱いが容易となり、また発癌性の懸念もなくなる。
上記カーボンナノチューブ高弾性1次コンポジット繊維の製造方法は一般的な湿式、乾式および溶融紡糸などで製造することができる。最も簡便な製造方法はカーボンナノチューブを溶剤に予め分散使用可能な、溶剤を使用する湿式、乾式紡糸である。湿式、乾式紡糸に適したマトリックスとしてはポリビニルアルコール、アクリロニトリル、酢酸セルロースなどがある。縮重合溶融紡糸においても溶融モノマーに予めカーボンナノチューブを分散し、重合することにより、均一に分散したポリマーが得られ、溶融紡糸することができる。溶融紡糸に適したマトリックスとしてはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネートなどがある。繊維マトリックスはこれら例示したものに限定するものではない。タイヤ用繊維としては一般的に耐熱性が優れたナイロン、ポリエステル、ビスコース、アラミドなどが使用されるが、マトリックスとのなじみを重視する場合には敢えて低融点のポリエチレンなどを使用することもある。
高弾性繊維はカーボンナノチューブの高弾性を最も効率良く利用できる形態である。また、カーボンナノチューブは微細過ぎるため、それだけで取り扱うことが困難であり、作業環境にも配慮が必要であるが、複合された高弾性繊維1次コンポジットエレメントとすることにより、取り扱い作業性が改善され、一般的な取り扱いが可能となる。一般的に使用されるように、ゴム製品の性能を阻害しない範囲で繊維製造時に静電気防止剤、収束剤などのオイリングを行っても良い。
本発明の1次コンポジット繊維の製造は湿式紡糸または乾式紡糸の方が溶融紡糸に比べて容易である。湿式紡糸または乾式紡糸では重合前のモノマーの段階で行うこともできるが、少量のポリマーを溶剤に溶解し、少し粘度を持たせたポリマー溶液にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルで2次凝集を粉砕し、ろ過した添加液を、ポリマー溶液に適宜定量的に添加し、湿式または乾式紡糸することにより1次コンポジット繊維が得られる。口金に分割型複合口金を使用し、組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、またスタティックミキサーを使用し、繊維方向に他分割された組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、多層構造のフィブリル化し易い1次コンポジット繊維を製造することができる。繊維の複合化は海島型であっても良く、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
【0027】
溶融紡糸では湿式紡糸と同様に重合前のモノマーの段階でカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルなどで2次凝集を粉砕し、ろ過後、重合し、一般的な溶融紡糸で1次コンポジット繊維を製造することができる。溶融紡糸では一般的なスピンドローなどの紡糸方法以外にメルトブロウン法も使用することができる。
【0028】
本発明のより好ましい溶融紡糸方法の形態は延伸による微結晶ネット構造はできていないが、マトリックスポリマーが配向している半延伸状態であるPOY(Preoriented Yarn)である。一般的に1,000m/分未満の第1ローラー引き取り速度で溶融紡糸された繊維は未延伸糸である。引き取り速度が3,000m/分程度までの速度で半延伸糸が製造される。マトリックスポリマーとしての延伸は微結晶完全には生成しない程度であるが、マトリックスポリマーが溶融状態で延伸される過程で、均一分散したカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向する。マトリックスポリマーの溶融状態で延伸される程度が大きい程、言い換ええると紡糸第1ローラー引き取り速度が大きい程カーボンナノチューブの配向が大きくなり好ましい。後延伸によるマトリックスポリマーの微結晶ネット構造の発現は微結晶部分に応力集中が発生し、補強材であるカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントに応力が分散されず、十分な補強効果が実現できない。ただし、本発明の目的である研磨、摩擦および耐磨耗効果の発現に関しては変形の極小さい圧縮弾性領域の挙動であるため、経済的には工程が増える分不利であるが上記延伸により、本発明の目的とする効果に大きな差異は生じない。
【0029】
また、溶融ポリマーに上記1次コンポジットエレメントなどを混合する場合には、国際出願特許公報WO 03/014217 A1号公報に記載されているように押し出し機の中で炭酸ガスの超臨界または亜臨界状態の場を、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの混合に使用することが好ましい。このような場ではマトリックスポリマーの粘度を下げ、流動性を著しく向上することができ、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの均一分散混合に適しているからである。
【0030】
炭酸ガスの超臨界は、臨界条件が約30℃、7MPaが一般的には絶対条件的目安とされているが、実際にはこの温度と圧はPV=RTの式で表されるように、温度が高くなるとより低圧でマトリックスポリマーが類似した挙動を示すことが認められるため、かかる絶対条件に限定されるものではない。また、超臨界状態を示す化合物は炭酸ガスの他に低分子量化合物、例えば窒素ガス、酸素ガス、メタノール、エタノール、アセトンなど多くの存在が知られ、本発明においても使用することができる。これらの中では炭酸ガスと窒素ガスはマトリックスを酸化することもなく、爆発、引火性のない点で扱いやすい。
【0031】
上記混合分散に使用する分散混合機としては、例えば一般的な1軸または2軸押し出し機を使用することができる。またこれらを併用しても良い。押し出し機のメルト部に炭酸ガス注入部を付属していることが好ましい。押し出し機のフィルターとダイスの間に環境科学工業(株)製の適当な段数のラモンドスーパーミキサーまたはスタティックミキサーを20段以上取り付けることにより、分散性を向上することができる。
【0032】
マトリックスポリマーまたはオリゴマーをカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントと混合する際の圧力は超臨界流体が炭酸ガスの場合、1MPa以上が好ましい。より好ましくは2MPa、さらに好ましくは3MPa以上である。特に縮重合ポリマーマトリックスの場合、分子量が小さいオリゴマーまたはモノマーをマトリックスポリマーに少量添加し、再度縮重合を進めると、混合効率がより向上し好ましい。マトリックスポリマーがポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンのような縮重合物の場合、分散混合時低下した分子量は真空加熱重合、固相重合等により分子量を回復することができる。
混合する際の温度はマトリックスポリマーにより異なるが、高温が好ましく、特に融点より10℃以上高温であることが好ましい。付加重合物の場合も熱可塑性を向上する意味で低分子量物を適量加えることが混合効率向上のため好ましい。
【0033】
炭酸ガスの注入量は、マトリックスポリマーの種類により適宜選択する必要がある。マトリックスポリマーが縮重合ポリマーの場合は、炭酸ガス、水、モノマー、オキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン等の2官能基を持つ化合物を配合することにより、上記超臨界、または亜臨界場での分散混合時分子量が著しく低下、粘度が低下するため、炭酸ガス量は微量で良い。好ましくは0.01重量%以上である。モノマーなどの2官能基を持つ化合物の添加量の目安はカーボンナノチューブ重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
【0034】
一方、マトリックスポリマーがポリオレフィン等共役結合を有するポリマーの場合は、、縮重合物のように後重合により分子量の回復ができないため分子量低下は多くを望めない。従って、超臨界または亜臨界流動性を良くするためキャリアーである炭酸ガス量は多くすることが好ましい。炭酸ガス量が多いほど流動性は向上するが炭酸ガス量があまり多すぎない方が、ダイスを出た時発泡しないため好ましく、例えばベントから脱気するなどにより、ダイスを出る時が1重量%以下であることが好ましい。低分子量物の添加量の目安はカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメント重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
【0035】
マトリックスポリマーが熱硬化性エポキシ樹脂のように例えばグリシジルモノマーと硬化剤の2液性の場合は取り扱いやすいモノマー中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させた後、2液を混合し重合させ、型に入れ成型することにより本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。また、硬化途中で粘度が増加した時点で押出し成型により、繊維状に成型することもできる。
熱硬化性フェノール樹脂の場合はフェノール、クレゾール、キシレノールなど、またはホルマリン水などのモノマーまたはモノマー水溶液中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させておくことにより、直接酸化法、硫酸化法、クロルベンゼン法、ラッシヒ法、クメン法などの定法により重合し、繊維状に押出し成型後、キュアすることにより、本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。熱硬化性樹脂は文字通り、加熱により3次元架橋構造を発現し、耐熱性、寸法安定性などに優れている。また、本発明の成形品の主要マトリックスポリマーであり、1次コンポジットエレメントと成形品のポリマーが似通っているほど成形品との親和性が良く、成形品の機械的および耐熱物性を向上し、好ましい。
【0036】
熱硬化性不飽和ポリエステルは縮重合時にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを分散し、架橋モノマーにより溶解し、フィラーと混合後、型に入れ、加熱ラジカル架橋によるキュアを行い本発明の1次コンポジットエレメントを上記フェノール樹脂と同様にして製造することができる。ラジカル架橋に使用される重合触媒、重合促進剤、安定剤の配合量と組み合わせは多岐に及ぶが適宜選択されるべきである。上記のような熱硬化性樹脂の場合、最終成形品の製造の前に1次コンポジットエレメントを含有するプリミックスまたはプリプレグを製造し、それを成型、キュアし、本発明最終成形品を製造することもできる。
【0037】
本発明の無機酸化物コンポジットエレメントは表面が誘電体無機物でカーボンナノチューブの少なくとも両端が被覆されている場合、誘電特性を示し、静電気を帯電する。帯電粒子は被塗装面に電場を掛けることにより、被塗装面に垂直に配向する。帯電粒子が塗装面に垂直に配向した状態を保ち、バインダーで塗膜を形成することによりカーボンナノチューブを塗膜に垂直に配向させた本発明のコーティングを行える。1枚の塗膜は1μ弱であっても塗装を積層することにより塗膜厚さを大きくすることができる。塗膜耐久性向上のため特に下地塗装として好適である。
【0038】
本発明のゴム組成物コンポジットに使用する補強材エレメントは高弾性であれば繊維破断強度が大きいことは必要としないので、単層より多層カーボンナノチューブの方が廉価であり、経済的に好ましい。カーボンナノチューブは高価であるため、上記高弾性1次コンポジットエレメントに含有される配合量は少ないほど経済的には好ましい。高弾性繊維1次コンポジットエレメントに含有されるカーボンナノチューブの配合量は用途により異なるが0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上である。0.1重量%未満の配合量では十分な配合効果が得られない。一般的には10重量%以上になると高弾性繊維1次コンポジットエレメントのゴム組成物中に対する配合量を減少させる経済的必要が生じ、ゴム組成物中の高弾性繊維1次コンポジットエレメント密度が低下し、制動性能を低下させる一因となる。したがって、コストと効果の最適条件を適宜選択することが好ましい。
【0039】
高弾性繊維にはアラミド繊維が有名である。しかし、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが、圧縮弾性率は大きくなく、屈曲などには弱い。一方、カーボンナノチューブは圧縮に対しても大きい弾性率を示すため、本発明に使用する高弾性1次コンポジットエレメントも圧縮に対し高弾性を示し、本発明の目的に叶いアラミド繊維より好ましい。
【0040】
前記したように高弾性繊維1次コンポジットエレメントの太さは単繊維太さが0.1dTex以上が生産性、経済性で好ましく、単独または束ね、太さ数mmのロッド状にすることもできる。繊維太さが細くなると表面積が大きくなり、マトリックスとの親和性が良く、脱落しがたくなる。また、単位面積あたりの繊維本数が増加し、路面などの捕捉性が向上する。一方、繊維太さが小さくなると見掛け弾性率が小さくなり、路面などの捕捉性が低下する。補足すべき路面などの性質と必要な制動機能などを勘案し、繊維太さは適宜選択すべきである。
【0041】
タイヤなどのゴム組成物に使用する上記高弾性繊維1次コンポジットエレメント含有量は繊維太さにも関連するが、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、より厳しい制動機能を求められる用途においては10重量%以上である。本発明のゴム組成物スタッドのように部分的に集中して高弾性繊維1次コンポジットエレメントが配合される場合には15重量%以上で使用されることもある。細い繊維が多くなるとゴム組成物の混練りが困難になる。繊維含有量が多くなると繊維太さを大きくするなど、混練り効率を配慮し繊維太さと配合量は適宜勘案すべきである。
【0042】
高弾性繊維1次コンポジットエレメントの繊維長はゴム組成物マトリックスに混合しやすい1mmから数cm長さで使用することが多い。マトリックスゴムとの混合方法は一般的なニーダー、バンバリーミキサー、ロール型混練り機を使用し、混練することができる。
【0043】
ゴム組成物マトリックスのゴムは一般的に使用される、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、多硫化ゴムなどがあり、1種あるいは2種以上を使用しても良い。
ゴム組成物は加硫して使用されるが例えば一般的に使用される、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物などの加硫剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫促進剤、加硫助剤などを使用することができる。
【0044】ゴム組成物に発泡剤を添加することもでき、例えば発泡剤としてジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、P,P’−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジドなどがあり、発泡助剤として尿素などがある。
ゴム組成物には上記以外に一般的に添加配合される例えば軟化剤、老化防止剤、顔料などが配合されても良く、更に必要に応じて加硫遅延剤、粘着付与剤などが配合されても良い。高弾性繊維1次コンポジットエレメント以外の充填剤を含有していても良く、例えば充填材として、カーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどがある。
【0045】
本発明のゴム製品は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを高含有したスタッド成形品として予めゴムまたはポリマー成形品を作成し、スタッドタイヤとして使用することもできる。鉄製のスタッドと異なり、ゴムまたはポリマー製であるため、路面を著しく損傷することがなく、粉塵による環境への影響を著しく軽減することができる。本発明のゴムまたはポリマー製スタッドは射出成型または押出し成型後、切削加工で成型することができるが、射出または押出し成型時、高弾性繊維1次コンポジットエレメントを配向させることができ、制動性能を効率良く向上することができる。
【0046】
また本発明のゴム組成物の一部または全部を加硫して得られる加硫ゴム組成物用途として、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナーなどの自動車用ゴム部品、ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどの制動または耐久性能が必要なゴム製品が挙げられるが、特にタイヤへの応用が好ましい。
【0047】
制動性能の測定は英国製ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスターを使用し、0℃氷面で測定した。測定値は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを含有しないサンプルをブランクとし、その測定値を100として、試験片の換算値を計算し、表示した。この数値の大きいほど制動性能が優れている。
【実施例】
【0048】
実施例1
多層カーボンナノチューブを水に0.5重量%分散し、サンドミルで2次凝集を破壊、粉砕するとともに、カーボンナノチューブの最大長さが1μを越えないように調整した。イオン交換法による珪酸濃度2重量%珪酸水ゾルを攪拌しながら徐々に加え、70℃に加温し、ゾルーゲル反応により、多層カーボンナノチューブの表面上にシリカゲルを厚さ約20nm析出させ、ろ過し、100℃熱風乾燥機で乾燥後、電炉により不活性ガス雰囲気中500℃で焼成し本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメントを製造した。
多層カーボンナノチューブの表面にシリカが積層され、被覆されていることを透過型電子顕微鏡観察および電子線回折にて確認した。顕微鏡観察から求めたシリカの厚さとカーボンナノチューブ表面積から求めた計算値とカーボンナノチューブ上へのシリカ析出量はほぼ定量的に行われたことを示した。
鉛ハンダを白金坩堝中で加熱溶融し、上記無機コンポジットエレメント10重量部を加え、ガラス棒で良く攪拌分散し、1mm厚さの板状に圧延し、本発明の鉛ハンダマトリックスコンポジットを製造した。JIS曲げ試験に準じ試験片を切り出し、無添加物と比較した結果、曲げ弾性率は2.3倍に向上した。同様にして水ガラスに分散後、型に入れ、焼結したガラス試験片の曲げ弾性率は3.8倍に向上した。
【0049】
実施例2
電着塗装装置により鉄板上に塗装した実施例1で製造した無機コンポジットエレメントを1重量%含有するキュア後の本発明のフェノール樹脂塗膜硬度は鉄より大きく、また一般的な粉塵である石英や長石の硬度より大きく、優れた耐摩耗性を示した。走査型電子顕微鏡による塗膜断面の観察により塗膜中の無機酸化物コンポジットエレメントが塗膜面に垂直に配向していることを確認した。
【0050】
実施例3
電着塗装装置によりスポンジに積層した薄いアクリルゴム膜上に形成した無機コンポジットエレメントを5重量%含有するフェノール樹脂2μ厚さ塗膜積層ディスク状の本発明成形品をガラス表面研磨材として使用し、同量の酸化セレン微粉末を含有した従来品スポンジ研磨材と比較した結果、同じ面粗度に仕上げるまでの研磨時間が50%以上短縮された。
【0051】
実施例4
無機酸化物1次コンポジットエレメントを1重量%含有するフェノール樹脂を溶融し、メルトブロウン紡糸し単繊維太さ約0.5μの繊維を製造し、キュア後、1mm長さにカットした後、水に5重量%分散し、サンドミルで粉砕した平均直径約0.5μ、平均長さ約1μの本発明研磨材粉末分散液を製造した。本発明の1次コンポジットエレメント研磨材として使用し、高圧でノズルから被研磨物であるアルミ板に吹きつけ、同じ深さの穴を研磨する時間をほぼ同じ粒径の人工ダイアモンド研磨材と比較したところ、研磨時間が50%以上短縮された。
【0052】
実施例5
サスペンジョン重合したポリアクリロニトリル10重量%ロダン塩水溶液と、実施例1の本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメント(カーボンナノチューブ)1重量%、ポリアクリロニトリル0.5重量%をホモミキサー、サンドミキサーで分散混合したロダン塩水溶液を5:1で混合し、湿式紡糸し、8倍延伸後、水洗、乾燥、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるカーボンナノチューブ1重量%含有、単繊維太さ1dTexのポリアクリロニトリルステープルを製造した。
【0053】
次にアラミドパルプ5重量%、上記ポリアクリロニトリルステープル15重量%、フェノール樹脂35重量%、シリカ、タルク、グラファイト充填材45重量%と混合し、シート状に押し出し、乾燥後、加圧熱成形し本発明の2次マトリックスコンポジットであるブレーキシューを製造した。比較のためアラミドパルプが20重量%で1次コンポジットエレメントである上記ポリアクリロニトリルステープルを含有しない以外は同様の比較例1を製造した。本発明品実施例5と比較例1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較成型品より60%耐久性が向上した。本発明品に使用した1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルはアラミドパルプに比較し、廉価であるため本発明成形品は比較成形品に比べて経済的に有利であった。
【0054】
実施例6
実施例1の本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメント(カーボンナノチューブ)1重量%となるように、多層カーボンナノチューブとビスフェノールAタイプポリカーボネート(250℃、荷重2.12kg、10分間の流下重量、単位g:25)をドライブレンドした。
次に供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、溶融混練後、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は0.1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は260℃、圧力は3MPa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。
【0055】
上記ペレットを使用し、乾燥後、20mm押し出し機を使用し、紡糸温度250℃、第1ローラー引き取り速度800m/分で32dTex、32フィラメントの1次コンポジットのマルチフィラメントを製造し、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるポリカーボネートステープルを製造した。X線回折結果マトリックスポリマーの配向が完全ではない未延伸状態であったがカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向していることを確認した。このマルチフィラメントは、単糸切れもなく、表面も滑らかであり引張弾性率が8.9Gpaを示し、カーボンナノチューブをを含有しない比較品2.5Gpaと比べ優れた高弾性率を示した。
【0056】
実施例7
実施例5と同様にして1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルをポリカーボネートステープルにのみ変更し、本発明の成形品であるブレーキシューを製造した。本発明実施例7と比較1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較例1より70%耐久性が向上した。
【0057】
比較例2
天然ゴムRSS3号を100重量部、カーボンブラック昭和キャボット(株)製ショウワブラックS118をブランクに60重量部、正同化学工業(株)製酸化亜鉛を2.5重量部、日本油脂(株)製ステアリン酸を2重量部、フレキシス(株)製老化防止剤サントフレックス6PPDを1重量部、軽井沢精錬所(株)製硫黄を1.5重量部、大内新興化学(株)製加硫促進剤ノクセラーNS−Pを1重量部使用し、ニーダーで混合、混練後、型に入れ、加熱加硫を行い比較例2のタイヤトラッド部を想定したブランクゴム組成物制動試験用試験片を製造した。
【発明の名称】カーボンナノチューブ含有2次マトリックスコンポジット
【技術分野】
【0001】
本発明は高弾性、高硬度特性が発揮される研磨材、ブレーキ材またはクラッチ材などの摩擦材およびコーティングなどの耐磨耗材成形品、タイヤなどのゴム成型品に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナやシリカなどによる無機酸化物繊維補強金属(Metal Matrix Composite)の製造は文献1および文献2により提案され既に実用化もされている。文献3で示されているように、一般的にはカーボンと溶融アルミニウムは反応し炭化アルミニウムを形成するため親和性が良い。しかし、カーボンナノチューブはグラファイト構造が規則正しく構成されているため、不活性でマトリックスのアルミニウムと反応しがたく、親和性に劣る欠点がある。
【0003】
カーボンナノチューブはアスペクト比が大きいため、配向させることができれば、その特性である剛性や硬度の性能を十分に発揮させることができる。繊維を面に垂直に配向させる方法として誘電体繊維に静電気を帯電させ、電場に置くことで繊維を配向させる方法がフロッキー加工として一般的に使用され公知である。また、この方法では面の形状に余り左右されずに均一厚みに付着させることができる。また、同様の原理で粉体塗料電着塗装としても工業的に実用化されている。しかし、カーボンナノチューブは導電性であるため静電気を帯電させることはできず、この方法で配向させることはできない。
【0004】
また、研磨材は被研磨物と硬度同じか、より高硬度である必要があり、一般的にはより高硬度である。研磨は研磨材と被研磨物との摩擦、衝突などの作用により被研磨物が減耗することにより、その目的が達成される。
現在最高硬度の素材はダイアモンドである。しかし、天然産出ダイアモンドは元より、人工ダイアモンドも著しく高価である。高硬度素材としてカーボンナノチューブがあるが、その直径が2〜50nmと著しく小さく、アスペクト比が100以上と著しく大きいためそのままでの取り扱いが困難である。
【0005】
2次凝集を起こしやすい粉体を混合するために粘度の低い媒体に分散させ、次にサンドグラインダー等で凝集を解除し、配合する方法が一般的に多く採用される。しかし、この方法では直接溶融ポリマーのような高粘度のマトリックスに分散することは困難である。既に提案された唯一実用的な方法は前記文献4に記載されているようなローラーミルを使用する方法である。ローラーミルによりポリマーをパイ生地のように折りたたみながら分散する。この方法の利点はカーボンナノチューブが層状に平面上に分散・面配向し、多層に積層されるため、カーボンナノチューブ相互の接触が多くなることである。接触点が多いことは導電性を付与する場合には利点であるが、交絡が多いため、ポリマーの流れが悪くなり、成形性が劣る欠点になる。また、配向させるために静電気を利用することもできない。
【0006】
また、特許文献5に「カーボンナノチューブを含有する溶融繊維の製造方法」が記載されている。この方法は(a)カーボンナノチューブをポリマーと混合し、(b)溶融紡糸後、(c)ガラス転位点以上の温度で延伸する3工程から構成され、高強度を得るために後延伸工程が必須とされている。しかし、この文献には2次凝集を防止しつつ、カーボンナノチューブを溶融ポリマーに混合する新規な混合法の提案はなされていなかった。また、得られた繊維の導電性または誘電性に関する記載はない。また、高強度繊維は結晶化度が著しく大きく、応力集中を生じ難い。高強度繊維は均一に同時に応力が負荷されることによりその性能を十分に発揮することができる。一般的な強度の繊維の場合は延伸により繊維軸方向に構成高分子が配向すると同時に微結晶ネットワークが構成され、強度に寄与する。しかし、少量の繊維状補強材による高強度繊維の場合、上記微結晶ネットワークは応力が繊維状補強材に負荷されず、応力が微結晶ネットワークに負荷される結果となり、繊維状補強材の補強効果が得られない。しかし、このような考察はこの文献ではなされていない。
【0007】
ブレーキ材またはクラッチ材には高硬度とフィブリル化し易い粉体としてアスベストが従来使用されていたが、3ミクロン以下のアスベスト粉末に発がん性が指摘され、回収時の発塵による被害の恐れから欧米、日本での使用が禁止された。特許文献6に記載の摩擦材にもアスベストの代替品としてアラミドパルプが使用されているが、アラミドパルプは高価であり、経済的に好ましくない。また、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが圧縮弾性率は余り大きくない欠点があり、アラミド繊維に平行に圧縮荷重が掛かる場合、アラミド繊維を高弾性材料として使用することは不適である。
【0008】
氷結した道路や水に濡れた道路ではタイヤの摩擦抵抗が小さくなり、制動距離が長くなり、自動車事故の原因となる。この問題はチエーンをタイヤに装着したり、金属スタッドを埋め込み装着したタイヤを使用することにより、摩擦抵抗を増大し、制動距離を短縮し、解決できた。しかし、これらの方法では舗装道路の損傷が著しく、道路修理に多大な費用を要した。また、道路の損傷時に発生する粉塵が道路周辺環境に好ましくなかった。
【0009】
上記欠点を克服するため、スタッドを使用しないスタッドレスタイヤが開発され、文献7に重量平均分子量が25万以上、油展ムーニーが27〜43、Tgが−70℃以下である溶液重合により得られる磨耗耐久性に優れたスチレン−ブタジエンゴム100重量部、カーボンブラック40〜80重量部並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体よりなる群から選ばれた少なくとも1種3〜30重量部が配合されたタイヤトレッドゴム組成物が提案されている。しかし、鉄製のスタッドに比較して配合されたカーボンブラック、並びに皮革質粒状体及び植物性粒状体の弾性は小さく、滑り易い路面を捕捉する性能として不十分であった。さらにこれら配合物は粉体であるためマトリックスのゴム組成物から容易に脱落する欠点があった。また、大量に配合する添加物のためゴム組成物全体の硬度が大きくなり過ぎ、通常路面での高速運転時には路面の捕捉が不十分であり、また発熱量も大きくゴム組成物の耐久性を低下した。
【0010】
配合物の脱落を防止するため、カーボンブラックの表面凹凸を増し、ポーラスに加工し、使用する方法が文献8に記載されている。しかし、配合物の形状はやはり粉体であり、基本的な解決には至らず配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
【0011】
カーボンブラックより弾性の大きい、即ち硬度が大きい無機化合物、例えばカーボンブラックで表面処理した無機化合物を20〜70質量部の天然ゴムと30〜80質量部のポリブタジエンゴムとを含むゴム成分に配合したスタッドレス タイヤ用トレッドゴム組成物が文献9に記載されている。硬度の大きい配合剤による制動機能効果向上は認められるが、その形状はやはり粉体であり、配合物の脱落を効果的に防止するには不十分であった。
【0012】
鏡面反応を利用した銀、鉄、コバルトなどの金属イオン還元法により、表面を前処理したカーボンナノチューブ表面上に金属を析出させる方法が特許文献10に記載されている。しかし、シリカやゼオライトなどの無機酸化物を前処理をしないカーボンナノチューブ表面上に形成被覆する方法は記載されていない。また金属を被覆したカーボンナノチューブは導電性で誘電性でない。
【0013】
特許文献11および13は現時点で存在しない。
【0014】
マトリックス樹脂中に共役系重合体で覆われたカーボンナノチューブが分散されているペーストおよびコンポジットが特許文献12に記載されている。共役系重合体は有機物であり、無機酸化物ではない。
【特許文献1】米国特許5,234,045号公報
【特許文献2】米国特許号5,435,374号公報
【特許文献3】特開平10−88256号公報
【特許文献4】特開平2−235945号公報
【特許文献5】米国特許6,331,265号公報
【特許文献6】米国特許6,670,408号公報
【特許文献7】特開平5−269884号公報
【特許文献8】特開2004−27090号公報
【特許文献9】特開2004−155807号公報
【特許文献10】特開平08−325195号公報
【特許文献11】特開2003−523623号公報
【特許文献12】特開2004−2621号公報
【特許文献13】特開2002−544356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は高硬度であるが直径が著しく小さく、アスペクト比が著しく大きいため取り扱い難いカーボンナノチューブを実用的に斑なく分散しやすく、取り扱いやすくすると同時に、金属などのマトリックスとの親和性を向上することであり、また耐久性に優れた研磨材、摩擦材およびコーティング材成形品および高弾性添加物の脱落が少なく、制動性に優れたタイヤなどのゴム組成物を廉価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の無機酸化物コンポジットエレメントはカーボンナノチューブを核とする無機酸化物1次コンポジットエレメントである。また本発明の1次コンポジットエレメントはマトリックスポリマー中に斑なく分散したカーボンナノチューブまたは無機酸化物1次コンポジッットエレメントの少なくとも1種を総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントである。本発明の2次マトリックスコンポジットは誘電性1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状であり、具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメントは金属、セラミックスまたはガラスの硬度、弾性率を向上し、またその誘電性を利用し、例えば静電塗装法により、塗装面に垂直に配向させられるため、本発明の塗装面硬度が向上し、耐久性、耐摩耗性が向上する。カーボンナノチューブ無機酸化物1次コンポジットエレメントを含有する本発明の1次コンポジットエレメントを使用することにより、2次マトリックスコンポジットである成形品中のカーボンナノチューブまたはカーボンナノチューブ無機1次コンポジットエレメントの均一分散性を容易に向上させることが可能となり、例えばコーティング材、研磨材、摩擦材、タイヤなどの2次マトリックスコンポジットとして好適廉価な成形品を供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメントは、カーボンナノチューブを核とする無機コンポジットエレメントであり、本発明の2次マトリックスコンポジット成形品マトリックスポリマー中に斑なく分散した無機酸化物1次コンポジッットエレメントを総重量に対し0.1重量%以上含有した誘電性1次コンポジットエレメントまたは、およびカーボンナノチューブを核とする無機酸化物1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有する。好ましくは1次コンポジットエレメントが粒状または繊維状である2次マトリックスコンポジット成形品であり、より具体的には例えば2次マトリックスコンポジット成形品が金属、セラミックまたはガラスマトリックスコンポジットであり、研磨材、摩擦材またはコーティング材成形品またはタイヤなどのゴム組成物成形品である。
【0016】
本発明に使用するカーボンナノチューブはアーク放電法(トーチアーク放電法、アークジェットプラズマ法、真空陰極アーク放電法)、レーザー蒸着法等により製造されるが、本発明はこれらのみに限定するものではない。カーボンナノチューブはコイル状であっても直線状であっても良く、単層であっても多層であっても良い。本発明のカーボンナノチューブ無機1次コンポジッットエレメントはカーボンナノチューブを結晶核とし、例えばシリカ、ゼオライト、アルミナなどの無機酸化物をゾルーゲル法などにより析出させ、誘電性無機酸化物をカーボンナノチューブの周囲に被覆することにより、製造することができる。
【0017】
シリカを析出させるゾルーゲル法としては例えば米国特許4,410,405号公報にシリカの小さな種結晶を使用し、種結晶濃度を一定に保ちつつ、結晶成長させることにより、約10nmの大きさの均一なシリカゾルが得られる製法が記載されている。同様にしてシリカ種結晶の代わりに結晶核となるカーボンナノチューブを水に分散し、シリカ種結晶が生成しない温度に昇温後、この分散水に例えばナトリウムシリケートを適当量加えつつ、ナトリウムを酸で中和、またはイオン交換で取り除くことにより、カーボンナノチューブの周囲にシリカを析出させ本発明の誘電性無機コンポジットエレメントを製造する。次に焼成することによりシリカ結晶の緻密度を向上することは好ましい。無機コンポジットエレメントのカーボンナノチューブとシリカの組成比およびシリカ析出による被覆厚さは、シリカの析出量とカーボンナノチューブ仕込み量により調節することができる。
【0018】
本発明の無機酸化物1次コンポジットエレメント含有金属マトリックスコンポジットは、例えば文献1から3にも記載されているような公知の金属マトリックスコンポジット製造方法により製造することができる。例えば無機酸化物1次コンポジットエレメントとマトリックス金属粉末を所定の割合で予備混合し、焼結した後、粉砕し、再度不活性ガスまたは真空中で溶融し、ダイキャストするような方法で製造すると両者の混合が均一となり好ましい。マトリックスがガラスの場合も同様にして粉末ガラスと無機酸化物1次コンポジットエレメントを予備混合することが好ましい。
金属、ガラスマトリックスの融点または軟化点よりより無機酸化物1次コンポジットエレメントのマトリックスである被覆無機酸化物の融点が高い方が好ましい。
【0019】
セラミックスマトリックスの場合はセラミックス原料水分散液に無機酸化物1次コンポジットエレメントを加え、攪拌し、混合することができる。セラミックスマトリックスの場合は無機酸化物1次コンポジットエレメントのマトリックス融点が逆に低い方がセラミックスとの親和性が向上し好ましいこともある。本発明のセラミックスコンポジットは基本的には陶磁器等のセラミックス製造方法の定法により製造することができる。
【0020】
本発明のポリマーまたはゴム組成物2次マトリックスコンポジットに使用される1次コンポジットエレメントは無機酸化物コンポジットエレメントの1種を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上含有し、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上含有する。本発明の1次コンポジットエレメントは粒状または繊維状である。粒状1次コンポジットエレメントは例えば乳化重合、またはサスペンジョン重合などのラジカル重合時に、モノマーまたは溶剤にカーボンナノチューブまたは誘電性無機酸化物コンポジットエレメントを予め均一に分散することにより製造することができる。乳化重合、サスペンジョン重合、縮重合などのモノマー中にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを予め均一に分散する方法としてはパルパーなどの製紙用分散装置を使用する方法、サンドミル、ローラーミルなどの粉砕機を使用する方法などがある。
本発明の1次コンポジット繊維は粒状1次コンポジットエレメントを溶媒に溶解し、湿式紡糸または乾式紡糸により、また縮重合物溶融紡糸などの方法およびポリマーに混練する方法により製造することができる
【0021】
1次コンポジット繊維の太さは細いものでも数万nmあるため、直径数十nm,例えば具体的には中空内径が4〜10nm、外形が8〜50nmの多層カーボンナノチューブ、外形が1〜4nmの単層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブのどちらも使用することができる。本発明のように特に圧縮高弾性率を必要とする場合には層間滑りを考慮する必要がないため多層カーボンナノチューブの単位繊維面積当たり繊維方向C−C共有結合密度が単層カーボンナノチューブより大きく好ましい。また、多層カーボンナノチューブは製造が容易で単層カーボンナノチューブより経済的に廉価である。
【0022】
本発明ではカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントをポリマーと混練する際に好ましくは炭酸ガス超臨界または亜臨界状態で行うが、この新規な混合方法はマトリックスポリマーの低粘度化と同時に上記親和性の向上にも効果的であった。
【0023】
1次コンポジットエレメントに使用するマトリックスポリマーは例えばポリオレフィン(低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソプレンおよびこれらの共重合物等)、ポリスチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリエチレンアジペートコテレフタレートおよびこれらの共重合物等)、ポリアミド(ポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジペート等)、ポリカーボネート、ポリエチレンベンツイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリパラジアミノベンツテレフタル酸アミド等、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル(ポリメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、セルロース(酢酸セルロース、硝酸セルロース等)、ポリアクリロニトリルおよび共重合物、ポリビニルアルコールおよび共重合物などの2次元ポリマーおよびフェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、トリアリルシアヌレート系樹脂、アクロレイン系樹脂、トリス(2-ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートのホルムアルデヒド樹脂、トリアジン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの3次元熱硬化性ポリマーがある。最終製品の用途特性および2次マトリックスコンポジットの製造特性により適宜選択されるべきである。ブレーキ材などの摩擦材またはコーティングなどの耐磨耗材として使用する場合には3次元熱硬化性樹脂または共重合により3次元架橋した上記熱可塑性ポリマーが摩擦時耐熱性に優れ好ましい。
1次コンポジットエレメント中、カーボンナノチューブまたは誘電性無機酸化物コンポジットエレメントおよび2次マトリックスコンポジット中、1次コンポジットエレメントの分散および配向状態は走査型電子顕微鏡写真の画像解析およびX線回折により測定することができる。
【0024】
1次コンポジットエレメントを2次マトリックスコンポジット成形品に成型する方法は例えば抄紙法、加圧成型法、射出成型法、押出し成型法または静電塗装法などにより、研磨材、クラッチペーパー、ブレーキ材などの摩擦材または耐磨耗材、タイヤ、コーティング材などが製造されるが、本発明はこれらの方法のみに限定するものではない
【0025】
研磨材、摩擦材、タイヤおよび耐磨耗材には充填材として高硬度のフィラーが配合されても良い。フィラーには硬度の大きいダイアモンド、アルミナ、シリカ、炭化珪素などや、酸化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、カシューダスト、グラファイト、炭酸カルシウム、ベントナイト、有機変性ベントナイト、微粒子シリカ、カルボキシメチルセルロース、重炭酸ナトリウム、雲母、酸化ケイ素などがある。本発明の1次コンポジットエレメント以外にこれらのフィラーを本発明の2次マトリックスコンポジット成形品に配合することを妨げるものではない。同様に、フィラーを保持する素材としてアラミドパルプ、パルプ、コットンなどの繊維を配合することを妨げるものではない。
【0026】
本発明の1次コンポジットエレメントはその大きさをサブミクロンから数cmまで、必要に応じ変化することができる。例えば1次コンポジットエレメントが繊維である場合、その径はサブミクロンから数mm、繊維長は数mmから数cmまで従来の紡糸技術を応用し、製造することができ、取り扱いが容易となり、また発癌性の懸念もなくなる。
上記カーボンナノチューブ高弾性1次コンポジット繊維の製造方法は一般的な湿式、乾式および溶融紡糸などで製造することができる。最も簡便な製造方法はカーボンナノチューブを溶剤に予め分散使用可能な、溶剤を使用する湿式、乾式紡糸である。湿式、乾式紡糸に適したマトリックスとしてはポリビニルアルコール、アクリロニトリル、酢酸セルロースなどがある。縮重合溶融紡糸においても溶融モノマーに予めカーボンナノチューブを分散し、重合することにより、均一に分散したポリマーが得られ、溶融紡糸することができる。溶融紡糸に適したマトリックスとしてはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネートなどがある。繊維マトリックスはこれら例示したものに限定するものではない。タイヤ用繊維としては一般的に耐熱性が優れたナイロン、ポリエステル、ビスコース、アラミドなどが使用されるが、マトリックスとのなじみを重視する場合には敢えて低融点のポリエチレンなどを使用することもある。
高弾性繊維はカーボンナノチューブの高弾性を最も効率良く利用できる形態である。また、カーボンナノチューブは微細過ぎるため、それだけで取り扱うことが困難であり、作業環境にも配慮が必要であるが、複合された高弾性繊維1次コンポジットエレメントとすることにより、取り扱い作業性が改善され、一般的な取り扱いが可能となる。一般的に使用されるように、ゴム製品の性能を阻害しない範囲で繊維製造時に静電気防止剤、収束剤などのオイリングを行っても良い。
本発明の1次コンポジット繊維の製造は湿式紡糸または乾式紡糸の方が溶融紡糸に比べて容易である。湿式紡糸または乾式紡糸では重合前のモノマーの段階で行うこともできるが、少量のポリマーを溶剤に溶解し、少し粘度を持たせたポリマー溶液にカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルで2次凝集を粉砕し、ろ過した添加液を、ポリマー溶液に適宜定量的に添加し、湿式または乾式紡糸することにより1次コンポジット繊維が得られる。口金に分割型複合口金を使用し、組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、またスタティックミキサーを使用し、繊維方向に他分割された組成の異なるポリマーを複合紡糸することにより、多層構造のフィブリル化し易い1次コンポジット繊維を製造することができる。繊維の複合化は海島型であっても良く、本発明はこれらの例示のみに限定されるものではない。
【0027】
溶融紡糸では湿式紡糸と同様に重合前のモノマーの段階でカーボンナノチューブまたは誘電性無機コンポジットエレメントを加え、ホモミキサーで予備分散した後、サンドミルなどで2次凝集を粉砕し、ろ過後、重合し、一般的な溶融紡糸で1次コンポジット繊維を製造することができる。溶融紡糸では一般的なスピンドローなどの紡糸方法以外にメルトブロウン法も使用することができる。
【0028】
本発明のより好ましい溶融紡糸方法の形態は延伸による微結晶ネット構造はできていないが、マトリックスポリマーが配向している半延伸状態であるPOY(Preoriented Yarn)である。一般的に1,000m/分未満の第1ローラー引き取り速度で溶融紡糸された繊維は未延伸糸である。引き取り速度が3,000m/分程度までの速度で半延伸糸が製造される。マトリックスポリマーとしての延伸は微結晶完全には生成しない程度であるが、マトリックスポリマーが溶融状態で延伸される過程で、均一分散したカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向する。マトリックスポリマーの溶融状態で延伸される程度が大きい程、言い換ええると紡糸第1ローラー引き取り速度が大きい程カーボンナノチューブの配向が大きくなり好ましい。後延伸によるマトリックスポリマーの微結晶ネット構造の発現は微結晶部分に応力集中が発生し、補強材であるカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントに応力が分散されず、十分な補強効果が実現できない。ただし、本発明の目的である研磨、摩擦および耐磨耗効果の発現に関しては変形の極小さい圧縮弾性領域の挙動であるため、経済的には工程が増える分不利であるが上記延伸により、本発明の目的とする効果に大きな差異は生じない。
【0029】
また、溶融ポリマーに上記1次コンポジットエレメントなどを混合する場合には、国際出願特許公報WO 03/014217 A1号公報に記載されているように押し出し機の中で炭酸ガスの超臨界または亜臨界状態の場を、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの混合に使用することが好ましい。このような場ではマトリックスポリマーの粘度を下げ、流動性を著しく向上することができ、カーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントの均一分散混合に適しているからである。
【0030】
炭酸ガスの超臨界は、臨界条件が約30℃、7MPaが一般的には絶対条件的目安とされているが、実際にはこの温度と圧はPV=RTの式で表されるように、温度が高くなるとより低圧でマトリックスポリマーが類似した挙動を示すことが認められるため、かかる絶対条件に限定されるものではない。また、超臨界状態を示す化合物は炭酸ガスの他に低分子量化合物、例えば窒素ガス、酸素ガス、メタノール、エタノール、アセトンなど多くの存在が知られ、本発明においても使用することができる。これらの中では炭酸ガスと窒素ガスはマトリックスを酸化することもなく、爆発、引火性のない点で扱いやすい。
【0031】
上記混合分散に使用する分散混合機としては、例えば一般的な1軸または2軸押し出し機を使用することができる。またこれらを併用しても良い。押し出し機のメルト部に炭酸ガス注入部を付属していることが好ましい。押し出し機のフィルターとダイスの間に環境科学工業(株)製の適当な段数のラモンドスーパーミキサーまたはスタティックミキサーを20段以上取り付けることにより、分散性を向上することができる。
【0032】
マトリックスポリマーまたはオリゴマーをカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントと混合する際の圧力は超臨界流体が炭酸ガスの場合、1MPa以上が好ましい。より好ましくは2MPa、さらに好ましくは3MPa以上である。特に縮重合ポリマーマトリックスの場合、分子量が小さいオリゴマーまたはモノマーをマトリックスポリマーに少量添加し、再度縮重合を進めると、混合効率がより向上し好ましい。マトリックスポリマーがポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンのような縮重合物の場合、分散混合時低下した分子量は真空加熱重合、固相重合等により分子量を回復することができる。
混合する際の温度はマトリックスポリマーにより異なるが、高温が好ましく、特に融点より10℃以上高温であることが好ましい。付加重合物の場合も熱可塑性を向上する意味で低分子量物を適量加えることが混合効率向上のため好ましい。
【0033】
炭酸ガスの注入量は、マトリックスポリマーの種類により適宜選択する必要がある。マトリックスポリマーが縮重合ポリマーの場合は、炭酸ガス、水、モノマー、オキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸、アミノ酸、ジアミン等の2官能基を持つ化合物を配合することにより、上記超臨界、または亜臨界場での分散混合時分子量が著しく低下、粘度が低下するため、炭酸ガス量は微量で良い。好ましくは0.01重量%以上である。モノマーなどの2官能基を持つ化合物の添加量の目安はカーボンナノチューブ重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
【0034】
一方、マトリックスポリマーがポリオレフィン等共役結合を有するポリマーの場合は、、縮重合物のように後重合により分子量の回復ができないため分子量低下は多くを望めない。従って、超臨界または亜臨界流動性を良くするためキャリアーである炭酸ガス量は多くすることが好ましい。炭酸ガス量が多いほど流動性は向上するが炭酸ガス量があまり多すぎない方が、ダイスを出た時発泡しないため好ましく、例えばベントから脱気するなどにより、ダイスを出る時が1重量%以下であることが好ましい。低分子量物の添加量の目安はカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメント重量の10重量%から3倍重量%程度が好ましい。
【0035】
マトリックスポリマーが熱硬化性エポキシ樹脂のように例えばグリシジルモノマーと硬化剤の2液性の場合は取り扱いやすいモノマー中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させた後、2液を混合し重合させ、型に入れ成型することにより本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。また、硬化途中で粘度が増加した時点で押出し成型により、繊維状に成型することもできる。
熱硬化性フェノール樹脂の場合はフェノール、クレゾール、キシレノールなど、またはホルマリン水などのモノマーまたはモノマー水溶液中にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを予め分散させておくことにより、直接酸化法、硫酸化法、クロルベンゼン法、ラッシヒ法、クメン法などの定法により重合し、繊維状に押出し成型後、キュアすることにより、本発明の1次コンポジットエレメントを製造することができる。熱硬化性樹脂は文字通り、加熱により3次元架橋構造を発現し、耐熱性、寸法安定性などに優れている。また、本発明の成形品の主要マトリックスポリマーであり、1次コンポジットエレメントと成形品のポリマーが似通っているほど成形品との親和性が良く、成形品の機械的および耐熱物性を向上し、好ましい。
【0036】
熱硬化性不飽和ポリエステルは縮重合時にカーボンナノチューブまたは無機コンポジットエレメントを分散し、架橋モノマーにより溶解し、フィラーと混合後、型に入れ、加熱ラジカル架橋によるキュアを行い本発明の1次コンポジットエレメントを上記フェノール樹脂と同様にして製造することができる。ラジカル架橋に使用される重合触媒、重合促進剤、安定剤の配合量と組み合わせは多岐に及ぶが適宜選択されるべきである。上記のような熱硬化性樹脂の場合、最終成形品の製造の前に1次コンポジットエレメントを含有するプリミックスまたはプリプレグを製造し、それを成型、キュアし、本発明最終成形品を製造することもできる。
【0037】
本発明の無機酸化物コンポジットエレメントは表面が誘電体無機物でカーボンナノチューブの少なくとも両端が被覆されている場合、誘電特性を示し、静電気を帯電する。帯電粒子は被塗装面に電場を掛けることにより、被塗装面に垂直に配向する。帯電粒子が塗装面に垂直に配向した状態を保ち、バインダーで塗膜を形成することによりカーボンナノチューブを塗膜に垂直に配向させた本発明のコーティングを行える。1枚の塗膜は1μ弱であっても塗装を積層することにより塗膜厚さを大きくすることができる。塗膜耐久性向上のため特に下地塗装として好適である。
【0038】
本発明のゴム組成物コンポジットに使用する補強材エレメントは高弾性であれば繊維破断強度が大きいことは必要としないので、単層より多層カーボンナノチューブの方が廉価であり、経済的に好ましい。カーボンナノチューブは高価であるため、上記高弾性1次コンポジットエレメントに含有される配合量は少ないほど経済的には好ましい。高弾性繊維1次コンポジットエレメントに含有されるカーボンナノチューブの配合量は用途により異なるが0.1重量%以上であり、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1.0重量%以上である。0.1重量%未満の配合量では十分な配合効果が得られない。一般的には10重量%以上になると高弾性繊維1次コンポジットエレメントのゴム組成物中に対する配合量を減少させる経済的必要が生じ、ゴム組成物中の高弾性繊維1次コンポジットエレメント密度が低下し、制動性能を低下させる一因となる。したがって、コストと効果の最適条件を適宜選択することが好ましい。
【0039】
高弾性繊維にはアラミド繊維が有名である。しかし、アラミド繊維は引っ張り弾性率は大きいが、圧縮弾性率は大きくなく、屈曲などには弱い。一方、カーボンナノチューブは圧縮に対しても大きい弾性率を示すため、本発明に使用する高弾性1次コンポジットエレメントも圧縮に対し高弾性を示し、本発明の目的に叶いアラミド繊維より好ましい。
【0040】
前記したように高弾性繊維1次コンポジットエレメントの太さは単繊維太さが0.1dTex以上が生産性、経済性で好ましく、単独または束ね、太さ数mmのロッド状にすることもできる。繊維太さが細くなると表面積が大きくなり、マトリックスとの親和性が良く、脱落しがたくなる。また、単位面積あたりの繊維本数が増加し、路面などの捕捉性が向上する。一方、繊維太さが小さくなると見掛け弾性率が小さくなり、路面などの捕捉性が低下する。補足すべき路面などの性質と必要な制動機能などを勘案し、繊維太さは適宜選択すべきである。
【0041】
タイヤなどのゴム組成物に使用する上記高弾性繊維1次コンポジットエレメント含有量は繊維太さにも関連するが、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上、より厳しい制動機能を求められる用途においては10重量%以上である。本発明のゴム組成物スタッドのように部分的に集中して高弾性繊維1次コンポジットエレメントが配合される場合には15重量%以上で使用されることもある。細い繊維が多くなるとゴム組成物の混練りが困難になる。繊維含有量が多くなると繊維太さを大きくするなど、混練り効率を配慮し繊維太さと配合量は適宜勘案すべきである。
【0042】
高弾性繊維1次コンポジットエレメントの繊維長はゴム組成物マトリックスに混合しやすい1mmから数cm長さで使用することが多い。マトリックスゴムとの混合方法は一般的なニーダー、バンバリーミキサー、ロール型混練り機を使用し、混練することができる。
【0043】
ゴム組成物マトリックスのゴムは一般的に使用される、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、ブチルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、多硫化ゴムなどがあり、1種あるいは2種以上を使用しても良い。
ゴム組成物は加硫して使用されるが例えば一般的に使用される、イオウ、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどの非元素イオウ加硫剤、ビスモルホリンジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、有機過酸化物、キノンジオキシム、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ニトロソ化合物とジイソシアナート混合物などの加硫剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、トリエチレンテトラミン、メチレンジアニリン、ジフェニルグアニジン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、エチレンジアミンカルバメート、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタンカルバメート、ステアリン酸、オレイン酸などの加硫促進剤、加硫助剤などを使用することができる。
【0044】ゴム組成物に発泡剤を添加することもでき、例えば発泡剤としてジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、P,P’−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジドなどがあり、発泡助剤として尿素などがある。
ゴム組成物には上記以外に一般的に添加配合される例えば軟化剤、老化防止剤、顔料などが配合されても良く、更に必要に応じて加硫遅延剤、粘着付与剤などが配合されても良い。高弾性繊維1次コンポジットエレメント以外の充填剤を含有していても良く、例えば充填材として、カーボンブラック、シリカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウムなどがある。
【0045】
本発明のゴム製品は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを高含有したスタッド成形品として予めゴムまたはポリマー成形品を作成し、スタッドタイヤとして使用することもできる。鉄製のスタッドと異なり、ゴムまたはポリマー製であるため、路面を著しく損傷することがなく、粉塵による環境への影響を著しく軽減することができる。本発明のゴムまたはポリマー製スタッドは射出成型または押出し成型後、切削加工で成型することができるが、射出または押出し成型時、高弾性繊維1次コンポジットエレメントを配向させることができ、制動性能を効率良く向上することができる。
【0046】
また本発明のゴム組成物の一部または全部を加硫して得られる加硫ゴム組成物用途として、例えば、天然ゴムタイヤ、合成ゴムタイヤ、ブラダー、ライナーなどの自動車用ゴム部品、ケーブル、ベルト、ホース、シート、パッキンなどの制動または耐久性能が必要なゴム製品が挙げられるが、特にタイヤへの応用が好ましい。
【0047】
制動性能の測定は英国製ポータブル・スキッド・レジスタンス・テスターを使用し、0℃氷面で測定した。測定値は高弾性繊維1次コンポジットエレメントを含有しないサンプルをブランクとし、その測定値を100として、試験片の換算値を計算し、表示した。この数値の大きいほど制動性能が優れている。
【実施例】
【0048】
実施例1
多層カーボンナノチューブを水に0.5重量%分散し、サンドミルで2次凝集を破壊、粉砕するとともに、カーボンナノチューブの最大長さが1μを越えないように調整した。イオン交換法による珪酸濃度2重量%珪酸水ゾルを攪拌しながら徐々に加え、70℃に加温し、ゾルーゲル反応により、多層カーボンナノチューブの表面上にシリカゲルを厚さ約20nm析出させ、ろ過し、100℃熱風乾燥機で乾燥後、電炉により不活性ガス雰囲気中500℃で焼成し本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメントを製造した。
多層カーボンナノチューブの表面にシリカが積層され、被覆されていることを透過型電子顕微鏡観察および電子線回折にて確認した。顕微鏡観察から求めたシリカの厚さとカーボンナノチューブ表面積から求めた計算値とカーボンナノチューブ上へのシリカ析出量はほぼ定量的に行われたことを示した。
鉛ハンダを白金坩堝中で加熱溶融し、上記無機コンポジットエレメント10重量部を加え、ガラス棒で良く攪拌分散し、1mm厚さの板状に圧延し、本発明の鉛ハンダマトリックスコンポジットを製造した。JIS曲げ試験に準じ試験片を切り出し、無添加物と比較した結果、曲げ弾性率は2.3倍に向上した。同様にして水ガラスに分散後、型に入れ、焼結したガラス試験片の曲げ弾性率は3.8倍に向上した。
【0049】
実施例2
電着塗装装置により鉄板上に塗装した実施例1で製造した無機コンポジットエレメントを1重量%含有するキュア後の本発明のフェノール樹脂塗膜硬度は鉄より大きく、また一般的な粉塵である石英や長石の硬度より大きく、優れた耐摩耗性を示した。走査型電子顕微鏡による塗膜断面の観察により塗膜中の無機酸化物コンポジットエレメントが塗膜面に垂直に配向していることを確認した。
【0050】
実施例3
電着塗装装置によりスポンジに積層した薄いアクリルゴム膜上に形成した無機コンポジットエレメントを5重量%含有するフェノール樹脂2μ厚さ塗膜積層ディスク状の本発明成形品をガラス表面研磨材として使用し、同量の酸化セレン微粉末を含有した従来品スポンジ研磨材と比較した結果、同じ面粗度に仕上げるまでの研磨時間が50%以上短縮された。
【0051】
実施例4
無機酸化物1次コンポジットエレメントを1重量%含有するフェノール樹脂を溶融し、メルトブロウン紡糸し単繊維太さ約0.5μの繊維を製造し、キュア後、1mm長さにカットした後、水に5重量%分散し、サンドミルで粉砕した平均直径約0.5μ、平均長さ約1μの本発明研磨材粉末分散液を製造した。本発明の1次コンポジットエレメント研磨材として使用し、高圧でノズルから被研磨物であるアルミ板に吹きつけ、同じ深さの穴を研磨する時間をほぼ同じ粒径の人工ダイアモンド研磨材と比較したところ、研磨時間が50%以上短縮された。
【0052】
実施例5
サスペンジョン重合したポリアクリロニトリル10重量%ロダン塩水溶液と、実施例1の本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメント(カーボンナノチューブ)1重量%、ポリアクリロニトリル0.5重量%をホモミキサー、サンドミキサーで分散混合したロダン塩水溶液を5:1で混合し、湿式紡糸し、8倍延伸後、水洗、乾燥、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるカーボンナノチューブ1重量%含有、単繊維太さ1dTexのポリアクリロニトリルステープルを製造した。
【0053】
次にアラミドパルプ5重量%、上記ポリアクリロニトリルステープル15重量%、フェノール樹脂35重量%、シリカ、タルク、グラファイト充填材45重量%と混合し、シート状に押し出し、乾燥後、加圧熱成形し本発明の2次マトリックスコンポジットであるブレーキシューを製造した。比較のためアラミドパルプが20重量%で1次コンポジットエレメントである上記ポリアクリロニトリルステープルを含有しない以外は同様の比較例1を製造した。本発明品実施例5と比較例1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較成型品より60%耐久性が向上した。本発明品に使用した1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルはアラミドパルプに比較し、廉価であるため本発明成形品は比較成形品に比べて経済的に有利であった。
【0054】
実施例6
実施例1の本発明の誘電性無機酸化物コンポジットエレメント(カーボンナノチューブ)1重量%となるように、多層カーボンナノチューブとビスフェノールAタイプポリカーボネート(250℃、荷重2.12kg、10分間の流下重量、単位g:25)をドライブレンドした。
次に供給部、炭酸ガス供給部、せん断混練り圧縮反応部、減圧部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、フィルター部、20段スタティックミキサーから構成される40mm径ベント付き押出し機を使用し、溶融混練後、索状に取り出し、水冷、カットし、ポリマー組成物ペレットを製造した。炭酸ガス供給量は0.1重量%、上記せん断混練り圧縮反応部の分散混合温度は260℃、圧力は3MPa、炭酸ガスの亜臨界状態下、滞留時間1分という条件で行った。
【0055】
上記ペレットを使用し、乾燥後、20mm押し出し機を使用し、紡糸温度250℃、第1ローラー引き取り速度800m/分で32dTex、32フィラメントの1次コンポジットのマルチフィラメントを製造し、10mmにカットし、1次コンポジットエレメントであるポリカーボネートステープルを製造した。X線回折結果マトリックスポリマーの配向が完全ではない未延伸状態であったがカーボンナノチューブは繊維軸方向に配向していることを確認した。このマルチフィラメントは、単糸切れもなく、表面も滑らかであり引張弾性率が8.9Gpaを示し、カーボンナノチューブをを含有しない比較品2.5Gpaと比べ優れた高弾性率を示した。
【0056】
実施例7
実施例5と同様にして1次コンポジットエレメントであるポリアクリロニトリルステープルをポリカーボネートステープルにのみ変更し、本発明の成形品であるブレーキシューを製造した。本発明実施例7と比較1の磨耗耐久性を磨耗試験機により比較した結果、本発明成型品が比較例1より70%耐久性が向上した。
【0057】
比較例2
天然ゴムRSS3号を100重量部、カーボンブラック昭和キャボット(株)製ショウワブラックS118をブランクに60重量部、正同化学工業(株)製酸化亜鉛を2.5重量部、日本油脂(株)製ステアリン酸を2重量部、フレキシス(株)製老化防止剤サントフレックス6PPDを1重量部、軽井沢精錬所(株)製硫黄を1.5重量部、大内新興化学(株)製加硫促進剤ノクセラーNS−Pを1重量部使用し、ニーダーで混合、混練後、型に入れ、加熱加硫を行い比較例2のタイヤトラッド部を想定したブランクゴム組成物制動試験用試験片を製造した。
Claims (7)
- カーボンナノチューブを核とする無機コンポジットエレメント。
- 請求項1の無機コンポジットエレメントを含有する金属またはセラミックまたはガラス2次マトリックスコンポジット。
- カーボンナノチューブまたは、および請求項1のカーボンナノチューブを核とする無機コンポジットエレメントを総重量に対し0.1重量%以上含有し、高弾性で誘電性のポリマー1次コンポジットエレメント。
- 1次コンポジットの形状が繊維状であり、1軸方向に配向し、単独または分割型または海島型であるフィラメントまたはステープルまたはショートカットまたはパルプである請求項3の1次コンポジットエレメント。
- 1次コンポジットエレメントが押出し成型または射出成型により製造された請求項3または4の1次コンポジットエレメント。
- 請求項3から5の1次コンポジットエレメントを総重量に対し0.5重量%以上含有するポリマー2次マトリックスコンポジット。
- 2次マトリックスコンポジットを構成するマトリックスがゴム組成物またはポリマーであるタイヤまたは摩擦材または研磨材である請求項6の2次マトリックスコンポジット。
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