JP5754001B2 - 多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Description

本発明はカーボンナノチューブ分散配合水性ゲル及びその製造方法並びにその応用に関し、殊に未精製の多層カーボンナノチューブによる多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル及びその製造方法並びに該製造方法によって得られた素材の用途に関する。
カーボンナノチューブは、基本的にはナノスケールであってパイプ(管)状を呈し、かつ六員環がらせん状に配列された物体として知られている。このようなカーボンナノチューブは、当初多層構造を有する多層カーボンナノチューブ(MWCNT;Multi−Wall Carbon Nano−Tube)として認識されていた。その後、各種用途を模索しながら研究を進める過程で、利用し易い単層カーボンナノチューブ(SWCNT;Single−Wall Carbon Nano−Tube)が広く認められるようになった。
カーボンナノチューブは、表面原子構造が顕著であって凝集性ならびに柔軟構造を有し、熱的に安定である上、ダイヤモンド結合よりも強固といわれる自己支持構造(六員環)を形成することが知られている。そして、単層カーボンナノチューブによる応用に関し種々の分野で提案がなされている。しかしながら、カーボンナノチューブは、通常、微細な紛体として供給されるため飛散し易く、異物の混入を招き易い、などの理由から取扱いには困難が伴う。また、高度に精製されたSWCNTは極めて高価であるため、汎用化の過程で障害となっていた。その対策として、廉価なMWCNTを溶液化することにより使い勝手を改良する手法も試みられていたが、種々の溶媒に対して難溶性を示し、特に水には不溶性であることから使用上の制約があることが知られている。
そこで、(1)ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒を用いて分散現象により液状化させる方法、(2)MWCNTを化学改質することにより分散安定性を高める方法、(3)大量の分散剤を添加して分散液を調整する方法等が試みられている。しかしながら、有機溶媒による人体および樹脂への悪影響、高コスト、分散剤残留による導電性および伝熱性の低下などのような悪影響の可能性があるなど、決定的な解決策とはいえなかった。そのため、多層であるMWCNTはもとより単層であるSWCNTも含めて、カーボンナノチューブの工業的な利用は停滞しており、初期の期待よりも大幅に遅れているのが現状である。
特許文献1は、湿潤状態にある単層カーボンナノチューブを開示提供するものであり、この単層カーボンナノチューブと溶剤とを合わせてナノチューブ−溶剤混合物を形成し、カーボンナノチューブ分散物に対して高周波の超音波処理を行い、かかる超音波処理後のカーボンナノチューブ分散物が、処理前のカーボンナノチューブ−溶剤混合物よりも高粘度になるようなカーボンナノチューブ分散物を生成する方法を開示しているに過ぎない。さらに、金属−カーボンナノチューブペーストを形成する方法、さらにカーボンナノチューブ−界面活性剤混合物を超音波処理し、単層カーボンナノチューブの再懸濁を生起させる方法、等を開示している。
特許文献2は、カーボンナノチューブを配合分散させた熱可塑性樹脂発泡体により、マイクロ波帯であって無線LANやETCシステム等に多用される1〜10GHzの周波数帯域における電波吸収体が得られることを開示している。ここでは、従来のカーボンブラックを混合した同種の電波吸収体に比して、外観が向上する上に均質な特性が得られることを開示している。
特許文献3は、カーボンナノチューブを分散させた媒体に対して発振周波数50〜150kHzの超音波を照射してカーボンナノチューブを媒体中に分散させ、次いでこのようにして得られたカーボンナノチューブ入り媒体に対して発振周波数20〜40kHzの超音波を照射してカーボンナノチューブを発泡体に含浸させる、分散媒形成と成形体への含浸からなる2段工程処理方によりカーボンナノチューブ分散配合発泡体の製造方法を開示している。
特表2007−517760
特開2007−335680
特開2009−160754
本発明は、カーボンナノチューブ、特に未精製の多層カーボンナノチューブに対して、所定量の蒸留水を添加撹拌することにより0.3〜5wt%の濃度に調整された多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル状体として、各種用途に適用する際の便宜を考慮した中間性状体に変性された多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル並びにその製造方法を提供することを第1の課題とする。
なお、処理対象を「未精製の多層カーボンナノチューブ」に限定した理由は、基本的に経済性を考慮したものである。現在広く利用されている単層ナノチューブ「SWCNT」は、単層および多層の混在するカーボンナノチューブを厳格な精製処理を行うことにより得られるものである。SWCNTは優れた特徴を発揮する反面、グラム単価が数万円〜10数万円のように極めて高価である。それに対して本発明において対象とする未精製のMWCNTのグラム単価は数十円程度、例えば約35円程度のように極めて廉価であって広範な用途への適用に際して極めて大きな経済的効果を発揮するものであることを考慮したものである。
さらに、本発明は上記第1の課題を通じて得られる多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルを原料とする広範な分野にわたり展開可能な応用技術を提供することを第2の課題とする。
本発明においては、未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加撹拌することにより、0.3〜5wt%の濃度に調整された多層カーボンナノチューブによる水性ゲル状体として所望性状に変性された多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルとすることができる。なお、本発明において添加する水は蒸留水に限定されるものではなく水道水等とすることができる。
請求項に記載の発明は、未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加しつつ超音波を2〜3分間ずつ2回照射することにより蒸留水のみを用いて多層カーボンナノチューブを分散し、0.3〜5wt%の濃度に調整された多層カーボンナノチューブによる水性ゲル状体とした多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルであることを特徴とする。
本発明においては、未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加しつつ超音波を所定時間および所定回数照射することにより、濃度が0.3〜5wt%の水性ゲル状体を得ることにより多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルを製造することができる
請求項に記載の発明は、未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加しつつ超音波を2分間照射し、その後さらに2分間照射することにより、蒸留水のみを用いて多層カーボンナノチューブを分散し、濃度が0.3〜5wt%の水性ゲル状体を得る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの製造方法であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル100重量部を、予備発泡させたポリスチレンビーズ8重量部に対して添加し、加熱混合された発泡成形材料であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、フィルム状製品の製造に適したプラスチック材料に対して所要量添加され成形された導電性フィルムであることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル8〜10重量部が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたは類似の樹脂類を主成分とするのり(糊)10重量部に対して添加されたのり(接着剤)であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の3.0〜5.0wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル8〜10重量部が、ケイ酸塩および酸化アルミニウムの混合物であるセメントないし漆喰40重量部に対して添加された建築材であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、ケイ酸塩および酸化アルミニウムの混合物であるセメント80重量部に対して水10重量部が予備混練された後、該混練物に対して請求項1に記載の3.0wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル10重量部を添加して混練することにより所望形態に成形された建築材であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル0.5〜1.0重量部が、30〜35wt%の希硫酸100重量部に対して添加された蓄電池用電解液であることを特徴とする。
請求項に記載の発明は請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、珪酸ナトリウムに対して所要量添加され水ガラス製品であり、請求項10に記載の発明は前記水性ゲルの所要量が使用目的に適合する熱可塑性樹脂類に対して所要量添加された合成樹脂製品であり、請求項11に記載の発明は前記水性ゲルの所要量が使用目的に適合するセラミック類に対して所要量添加されたセラミック製品であることを特徴とする。
本発明により得られた未精製の多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルサンプルの特性並びに特徴は以下のとおりである。
1)高粘度であり低拡散性を示す。したがって沈降速度が極めて緩やかで長期間に亘り浮遊物の沈降が生じない。
2)電気伝導性および熱伝導性が共に向上する。
3)熱的特性として、沸点が100℃と約125℃に存在し、凝固点は約−15℃であり、また、粘度は温度に依存して変化し、40〜60℃で極大を示す。
4)塩類を添加しても沈降しない(電気的反発の解消による凝集沈降現象が生じない)。
5)沸騰させれば水中に沈降し、また凝固により水面に浮上する。
本発明の実施により得られる第1の成果物である多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルは、各種プラスチック製品の成形時に予め添加され、あるいは事後的に、例えば表層に付加する等の適宜手法により、所望の導電性を備えた製品を得ることが期待できる。また、ビーズ発泡成形を行う際に、成形原料の発泡ビーズの表面に対して本発明に係る導電性水性ゲルを付着乾燥せしめておき、その発泡ビーズを用いて成形することにより、成形品の表面はもとより、内部にも適切な導電パス(経路)の確実な形成が期待できる。成形後の導電塗料の塗布、炭素等導電素材の成型時充填、アルミその他金属箔による被覆などの事前処理ないし追加処理が不要となる。
さらに、多くの無機材料分野をはじめ金属材料分野等の異分野に対しても適切な導電率の達成、メッキ処理の下地調整、高級装飾品の前処理、電磁波遮蔽特性の付与等種々の応用も期待できる。混合可能な樹脂類としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等があり、良好な混合状態が得られることが確認されている。また、上記水性ゲルの粘度を高めておき、適宜形状の型に充填して固化させる泥漿成形法により所望形状の導電性物体を得ることもできる。
本発明に係る未精製多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの製造方法の主要工程を示すブロック図(A)並びに図(A)の操作に関する概念図(B)である。 本発明に係る未精製多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの温度と粘度および濃度の関係を示すグラフである。 本発明に係る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルと予備発泡させたポリスチレンビーズとを加熱混練して得られた発泡ビーズを用いたPS発泡成形体における導電経路A−A’及びB−B’の態様を示す概念図である。 本発明において得られた多層カーボンナノチューブ分散配合PS発泡体を用いた成形体における電磁波吸収特性曲線を示す図であり、横軸に周波数〔GHz〕、縦軸に減衰量〔dB〕を示す。 飽和食塩水のサイクリックボルタモグラム(A)及び飽和食塩水を添加した多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルにおけるサイクリックボルタモグラム(B)を示す図であり、横軸に電位(V)、縦軸に電流(A)を示す。 従来技術に係る蓄電池電解液のサイクリックボルタモグラム(A)及びバッテリー電解液に多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルを添加した場合のサイクリックボルタモグラム(B)を示す図であり、横軸に電位(V)、縦軸に電流(A)を示す。
本発明の目的である多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの特性及び効果を確認するためのテストを以下のように実施した。試料はNanocyl社製の多層カーボンナノチューブ(商品名:NC7000)と蒸留水である。また、実施過程において超音波を照射する装置としてHielscher社製の超音波ホモジナイザー(型名:UP400S、出力:400〔W〕)を使用した。
図1(A)はテストを実施する際のフロー図であり、図1(B)はフロー(A)の操作に関する概念図である。図1(B)に略記した容積500〔ml〕のポリエチレン製広口瓶B(撹拌混練容器)に対して未精製の多層カーボンナノチューブ(MWCNT)4〔g〕1を投入し(ステップS1)、次いで蒸留水500〔ml〕2を添加し(ステップS2)、濃度8〔g/l〕の溶液とした。次いで、図示していない超音波照射装置により1回あたり2〜3分間にわたり周波数24〔kHz〕の超音波を照射する操作を2回、合計時間4〜6分間の撹拌処理を撹拌混練容器Bにおいて実行した(ステップS3)。なお、ここでは添加する水を蒸留水としているが、蒸留水に代えて水道水等とすることができる。
その結果、多層カーボンナノチューブ分散配合液温は55〔℃〕に達していた。次いで、広口瓶Bに蓋をして10回程度振り混ぜ処理を行った(ステップS4)。さらに図示していない超音波照射装置を作動させて2〜3分程度にわたる超音波撹拌処理(ステップS5)を行うことにより、多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル3が得られることが確認された。なお、上記内容は小規模実験ではあるが、設備規模及び処理量の拡大により産業上利用のための規模拡張に格別の支障はないものと解される。
なお、多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの性状をより正確に把握するために、多層カーボンナノチューブの配合量を水1リットルあたり1g〜20gまで変化させる実験を行った。図2は、その結果を図示した折れ線グラフであって、横軸は温度〔℃〕、縦軸は粘度〔Pa・s〕である。水1リットルに対して配合量2〜10〔g〕の範囲では、略トマトケチャップに近似する粘度を示した。さらに配合量を15〔g〕および20〔g〕に増加させるとマヨネーズに近い粘度を示している。この多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルは、カーボンナノチューブの濃度依存性並びに極大値約50℃の温度依存性を示す非ニュートン液体で、チキソトロピー性を有することが確認された。なお、測定器は、東機産業(株)製の回転粘度計TVB−10を使用した。
熱可塑性樹脂、例えばポリスチレン(PS)発泡ビーズの表面に、本発明によって得られた多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルを付着させた状態でビーズ発泡成形を行った場合、図3に模式的に示したように、部分的に融着している各PS樹脂粒の界面間同士を導電的に結合する導電経路(A−A’、B−B’)が無数に形成される。したがって、導電性が大幅に改善され、その結果電磁波を吸収ないし遮蔽する効果が期待できる。かかる機能は、目的ないし用途にしたがい、PS発泡体特有の断熱効果に加えて、電磁波吸収による遮蔽効果、または選択的な局部発熱効果等が期待できる。
多層カーボンナノチューブ含有ポリスチレンの発泡ビーズを利用することにより、多層カーボンナノチューブ含有ポリスチレンフィラメントを形成することができる。多層カーボンナノチューブを表面に付加した予備発泡ビーズのメルトフローレートは、JIS K 6760に規定される押出し形プラストメーター(東洋精機社製T−001)を用いて測定した。流動性を計測する際は、JIS K 7210に規定されている樹脂の吐出量で行い、200℃/5.00kg重の条件で直径2.09mmのノズルからフィラメントを吐き出させ、その重量を計測することにより、10.2g/10minの値が得られた。
図4は、本発明に係る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルを付加された発泡ビーズにより導電性を付与されたCNT発泡成形体10の電磁波吸収特性の評価を行った際の試験結果を示すものである。ここでは、従来の発泡ポリスチレン(PS)成形体11および市販のポリエチレン(PE)成形体12との特性比較を、アンリツ製ネットワークアナライザ37269Bに接続した特性インピーダンス50〔Ω〕の同軸管を用いて、300〔kHz〕〜3〔GHz〕の範囲で測定を行ったものである。被試験体の形状は、外径39〔mm〕、内径17〔mm〕、厚さ10〔mm〕のドーナツ状体であった。実施した結果を示すグラフの縦軸は反射減衰率〔dB〕、横軸は周波数〔GHz〕である(試験機関:東京都立産業技術総合研究センター)。このグラフから明らかなように、比較対象であるPS成形体11は全域にわたり不変であるのに対して、1〔GHz〕より高い周波数、より顕著には1.5〔GHz〕以上の高周波域においてPE成形体12での減衰効果が大となるが、さらに本発明に係るCNT添加発泡体10ではさらに大きな電波吸収特性を発揮することが確認された。
本発明に係る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルは、既述のように室温において粘性が高いゲル状体を呈し、混練によって分散混在している多層カーボンナノチューブは長期間にわたり沈降しないで安定状態に保たれる。例えば、塩類や酸類を混入しても充填成分は殆ど沈降しない。多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルは、一般的に乾燥し難いが、敢えて乾燥させると激しく収縮する。なお、このような乾燥品に電磁波を照射すると誘電加熱の原理により発熱することが観察されている。
多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの特性を上述以外の電気化学分野で活用するために検討を加えた結果、電解液−電極相互間の電気的特性を改善する効果のあることが確認された。電解液中の電圧−電流挙動は固体電極と電解液との接触部分にそれぞれ形成される電気二重層の存在によって非直線性を示すことが知られている。これは固体電極および導線等における電導がいわゆる電子電導であって時間差は限りなく零に近いものと考えられるのに対し、電解液(質)中に生ずる正負イオンの移動を伴うイオン電導が行われているためであると解される。
図5(A)は、両電極間に電解液として飽和食塩水を満たした状態において、横軸のように正電位+0.6〔V〕から負電位−0.4〔V〕まで降下させ、その後反対に上昇させる操作を繰り返した場合のサイクリックボルタンメトリーに起因するサイクリックボルタモグラム(CV)である。一般的に、充電と放電とを交互に繰り返す二次電池にあっては、理想的には充電行程と放電行程それぞれのサイクリックボルタモグラムが重畳していることが望ましいと解されている。しかるに、図5(A)における濃黒色の曲線◆は、50〔mV/s〕(毎秒50mV)で変化させた場合、薄い灰色の曲線▲は2倍の100〔mV/s〕で変化させた場合の変化を示すもので、両者が離れた状態となっている。このように正から負および負から正への電位の変動に伴う電流が非直線性を示し、かつ増減に伴う電流値に差異が生ずることは電解液−固体電極間において損失が生じ、効率低下をもたらしているものと解される。
本発明者等は、本発明に係る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルに対して飽和食塩水を添加して得られた電解液におけるサイクリックボルタモグラムを確認したところ同図(B)のようになることを確認した。この図(B)のサイクリックボルタモグラムからは正・負間の電位変化の大小、変化方向の正逆等における顕著な差異は認められないばかりでなく、電気化学現象の特徴とされる電位−電流変化の非直線性も大幅に改善されていることが確認できた。
図6は、図5において確認された多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの特徴を蓄電池に応用する実施例を示すものである。図(A)は、現在多く使用されている電解液、典型的には希硫酸を主剤とするバッテリー電解液におけるサイクリックボルタモグラムを示すものである。この場合も、第5図と同様に正電位+0.6〔V〕から負電位−0.4〔V〕までの電位変化を行うと、上昇線と下降線との間に差異が生じていることが目視確認できる。このような下降線と上昇線との間における差異は明らかに不所望なものであり、充放電効率低下の要因になっているものと解される。
これに対し、図6(B)に示したカーボンナノチューブ添加バッテリー液にあっては正電位+0.6〔V〕から負電位−0.4〔V〕までの電位変化がほぼ重畳しておりかつ直線性も保たれていることが確認できる。このような事実から、二次電池類の電解質はもとより、電気化学現象を応用する多くの分野において不可避とされた電解質絡みの多くの現象が改善され、かつ大幅な効率向上が期待できる可能性がある。
なお、「多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル」を各種素材に適宜量添加して成形加工することにより、従来の電気化学分野ないし物理分野の常識を変えるような事象も確認されている。これら事象の特徴を活用する実施例を以下に列記する。
1)合成樹脂材料に添加し所望形状に成形することにより導電性のフィルム、シートまたはフィラメントが得られる。
2)接着剤または糊に添加することにより導電性接着剤またはのり(糊)が得られる、導電性を維持する導電体どうしの接着が可能となる。
3)ポリスチレン発泡ビーズの表面に添加したものを成形することにより、電磁遮蔽に適する発泡プラスチックボードまたは(シート)が得られる。
4)生コン、漆喰等に添加して所望形状に成形することにより、導電性を有する板状、棒状、筒状等適宜形状の建築材料が得られる。
5)セラミック素材に対し添加することにより導電性セラミック製品が得られる。
本発明に係る多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルは、長期間に亘って適度の流動性を維持しており、そして電気伝導性ならびに熱伝導性を高める機能を発揮する。したがって、電子移動は迅速であるが、物質やイオンの拡散速度は緩慢である。かかる特性から、有機材料、ガラス、セラミック、コンクリート等に対して導電性を付与することも可能であり、多くの用途への発展が期待できる。さらに、高い熱伝導性、良好な導電性ならびに流動性等を利用した用途、例えば高流動性を活用した熱媒体、シート化によるカーボンナノチューブ入り不織布、カーボンナノチューブ(CNT)ペーパー等に利用可能である。
広く利用されている熱可塑性樹脂類との組み合わせによって、シート状に成形することにより、電磁波吸収(遮蔽)材、導電性接着剤、電磁波吸収発泡成形材、導電性塗料、耐熱性樹脂の接合剤、電磁波遮蔽用建材等の用途に応用可能である。
セラミック類との各種組み合わせにより、電磁波遮蔽(吸収)機能を備えた各種建材、電磁波吸収コンクリート、耐熱性を備えた電磁波吸収発泡材、セメント混合用充填材等のような幅広い用途が考えられる。
その他、一次および二次電池類その他電気化学分野への、直接的ないし間接的な用途にも適用可能であり、充放電効率の向上、繰り返し寿命の改善等が期待できる。また、高粘度電解液の利用を可能にすることによる副反応の低減、金属表面のイオン濃化を可能にすることによる金属表面処理方法の改善などの効果が期待される。
1 多層カーボンナノチューブ(MWCNT)
2 蒸留水(水)
3 多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル(スラリー状体)
B 広口瓶(撹拌混練容器)
A−A’、B−B’ 導電経路

Claims (11)

  1. 未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加しつつ超音波を2〜3分間ずつ2回照射することにより蒸留水のみを用いて多層カーボンナノチューブを分散し、0.3〜5wt%の濃度に調整された多層カーボンナノチューブによる水性ゲル状体としたことを特徴とする、多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル。
  2. 未精製の多層カーボンナノチューブに対して所定量の蒸留水を添加しつつ超音波を2分間照射し、その後さらに2分間照射することにより、蒸留水のみを用いて多層カーボンナノチューブを分散し、濃度が0.3〜5wt%の水性ゲル状体を得ることを特徴とする、多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの製造方法。
  3. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル100重量部を、予備発泡させたポリスチレンビーズ8重量部に対して添加し、加熱混合されたことを特徴とする、発泡成形材料。
  4. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、フィルム状製品の製造に適したプラスチック材料に対して所要量添加され成形されたことを特徴とする、導電性フィルム。
  5. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル8〜10重量部が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールまたは類似の樹脂類を主成分とするのり(糊)10重量部に対して添加されたことを特徴とする、のり。
  6. 請求項1に記載の3.0〜5.0wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル8〜10重量部が、ケイ酸塩および酸化アルミニウムの混合物であるセメントないし漆喰40重量部に対して添加されたことを特徴とする、建築材。
  7. ケイ酸塩および酸化アルミニウムの混合物であるセメント80重量部に対して水10重量部が予備混練された後、該混練物に対して請求項1に記載の3.0wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル10重量部を添加して混練することにより所望形態に成形されたことを特徴とする、建築材。
  8. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲル0.5〜1.0重量部が、30〜35wt%の希硫酸100重量部に対して添加されたことを特徴とする、蓄電池用電解液。
  9. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、珪酸ナトリウムに対して所要量添加されたことを特徴とする、水ガラス製品。
  10. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、使用目的に適合する熱可塑性樹脂類に対して所要量添加されたことを特徴とする、合成樹脂製品。
  11. 請求項1に記載の0.8wt%多層カーボンナノチューブ分散配合水性ゲルの所要量が、使用目的に適合するセラミック類に対して所要量添加されたことを特徴とする、セラミック製品。
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