JPWO2005068556A1 - カーボンナノチューブ分散ポリイミド組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、カーボンナノチューブは、近年発見された直径がカーボンファイバーよりも細い1ミクロン以下の6角網目状のシート状の構造がチューブの軸に平行になって管を形成したものであり、そのユニークな機械的、電気的、熱的特性が注目されている。
カーボンナノチューブは、6角網目のチューブの数によって、多層のもの(マルチウォール・カーボンナノチューブ、「MWNT」と呼ばれる)から単層のもの(シングルウォール・カーボンナノチューブ、「SWNT」と呼ばれる)まである。このようなカーボンナノチューブは、特に、SWNTはナノコンポジットとして利用した場合、強力な機械的強度の向上が期待され、しかも、導電性が向上するなど極めて有利な特性が期待されている。
したがって、ポリイミドにカーボンナノチューブを均一に分散することができれば、カーボンナノチューブの有する機械的、電気的、熱的特性とポリイミドの有する機械的、熱的、化学的特性の相乗作用により、極めて優れた特性が得られることが期待できる。
しかしながら、一般に、カーボンナノチューブを用いたナノコンポジットは上述した利点を有するにもかかわらず、カーボンナノチューブ相互の凝集力(ファンデルワールスの力)によって、カーボンナノチューブが束状及び縄状になってしまうため、カーボンナノチューブを樹脂に均一に分散させることは極めて困難であった。特に、カーボンナノチューブの原子レベルでの滑らかな表面が基材に対する親和性を低下する要因となっている(特開平7−102112号及び米国特許5,502,143号明細書参照)。
このようなカーボンナノチューブの高分子材料への分散性を改善するために様々な試みが報告されている。従来から行われているフィラーの分散方法としては、攪拌、超音波処理、混練等の機械的な処理と、微粒子表面への化学的処理とを組み合わせるのが主であった。機械的な処理のうちで混練としてはセラミックスの微粒子を用いたビーズミル装置やボールミル装置、三本ローラーなど様々な装置が用いられる。しかしながら、機械的な処理では、これらの装置を用いた混練が必要となり、また、カーボンナノチューブが損傷しやすいという欠点を有する。
そこで、カーボンナノチューブの凝集を防ぎ安定した分散液を確保した後、この分散液ごと高分子材料マトリックスに混合し分散することが行われている。このような分散液を調製する方法を大別すると、(1)酸処理によってカーボンナノチューブの表面に親水性の官能基を導入することによって各種溶媒への分散性を向上させ、分散液をポリマー溶液と混合することによってコンポジット化する方法と、(2)界面活性剤やカーボンナノチューブに吸着する特定のポリマーによってCNTをコーティングして各種溶媒に分散する方法がある。
前者の例としては、強酸と超音波を利用してSWCNTを短く分断する方法がある。例えば、カーボンナノチューブ表面を化学的に修飾し、エポキシ樹脂に対する親和力の向上を図る試みも報告されているが必ずしも十分な分散性を得ていない。また、化学修飾法においては、強力な酸化反応でナノチューブを最初に切断するためナノチューブが損傷してしまうという欠点を有する(NANO LETTERS Vol.3,No.8,2003,1107−1113参照)。
後者の例として、エポキシ樹脂において、非イオン性の界面活性剤であるポリオキシエチレン8ラウリル(C12EO8)がカーボンナノチューブの分散剤として機能することも報告されている。これは、C12EO8の有するオキシエチレンによる親水性部と炭化水素による疎水性部が炭素の分散性に寄与するというものである。つまり、疎水性部が炭素と相互作用し、同時に、親水性部が水素結合によってエポキシ樹脂と相互作用するというものである。しかしながら、このような界面活性剤の添加によって、カーボンナノチューブの分散性の一定の向上は図れたものの、まだ、十分な分散性は得られていないことが報告されている(Chem.Mater.2000,12,1049−1052参照)。
さらに、別の研究では、エポキシ樹脂基材に対して、カーボンナノチューブを分散させる手法として、非イオン系界面活性剤(Tergitol NP7)を用いて超音波処理することが提案されている。しかし、この場合においても、カーボンナノチューブの配合量を増加させると、カーボンナノチューブが凝集してしまい、均一な分散が得られない旨報告されている(Carbon 41,2003,797−809参照)。
以上のような方法によって、ある程度カーボンナノチューブの分散が高められた例もあるが、まだ十分な分散性が得られていないのが現状であった。特に、これらの方法をポリイミドヘ応用した場合、カーボンナノチューブの分散は十分でなかった。
一方、従来のポリイミドは、一般的に溶剤に溶解することが困難であり、ナノコンポジットとして利用する際、ナノ粒子を混合、分散させることが困難であるという問題を有する。最近では、このようなポリイミドの溶剤に対する難溶性を改善するために、3成分系、4成分系のポリイミドが開発されてきている。例えば、ラクトンを利用する2成分系触媒を用いる方法が開発された。溶媒はN−メチルピロリドンと少量のトルエンを用い、180℃で加熱重合される方法である。
また、ブロック共重合により製造されたポリイミドは溶媒に可溶であることが知られている。すなわち、ポリイミドは酸ジ無水物と芳香族ジアミンの縮合物であるが、酸ジ無水物と芳香族ジアミンの組み合わせ方法、分子量及び分子量分布等を調整することによって、溶剤に可溶なものとすることができる。例えば、低沸点を有する2成分系触媒の存在下で溶媒を加熱することにより、有機溶媒に溶解するポリイミドが製造できる。この方法では、ポリイミドと2成分系触媒の特別な除去処理をすることなく、継続的な添加技術に基づくイミド化反応によって4以上の構成要素を有する溶剤に可溶なポリイミドが製造できる(米国特許5,502,143号明細書参照)。
一方、ポリイミドは機械的性質、絶縁性、耐熱性に優れた有用な樹脂であり、そのナノコンポジットへの応用も期待されるにもかかわらず、一般に、有機溶媒に難溶であるため、ナノ微粒子を混合、分散することが困難であり、特に、カーボンナノチューブを均一に分散させることは困難であった。また、通常、ポリイミドは熱可塑性でないため他の高分子材料によるナノコンポジットの製造の際に行われる混練によるカーボンナノチューブの分散も採用することは困難である。
したがって、本発明の目的は、カーボンナノチューブを損傷することなく、カーボンナノチューブがポリイミドに均一に分散したカーボンナノチューブ分散高分子材料を提供することにある。
本発明は、非イオン性界面活性剤のカーボンナノチューブに対する分散剤としての機能及びポリビニルピロリドン(PVP)のカーボンナノチューブに対するラッピング効果に着目しつつ、該非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をアミド系極性有機溶媒、特に、NMP(Nメチルピロリドン)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解させると、アミド系極性溶媒を単独で用いた場合に比較して、はるかに優れた分散剤としての機能を発揮し、溶剤に可溶なポリイミドにカーボンナノチューブを均一に分散できることを見出したものである。
ポリイミドは、2成分系、3成分系、4成分系等のポリイミドがあるが、一般に、3成分系のポリイミドは溶剤に可溶なものが多く、さらに4成分系のものは溶解度が増加する。溶剤に可溶なポリイミドとしては、芳香族ポリイミドが好ましい。また、ブロック共重合ポリイミドは、一般的に溶剤に可溶である。したがって、本発明においては、好ましくは、芳香族系のブロック共重合ポリイミドの有機溶媒に溶解する性質を利用してカーボンナノチューブの分散を行う。
本発明は、具体的には、次の構成からなる。
(1)カーボンナノチューブ、アミド系極性有機溶媒、並びに非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)からなるカーボンナノチューブ分散溶液を溶剤に可溶なポリイミドの有機溶媒に混合することにより得られたカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
(2)アミド系極性有機溶媒がN−メチルピロリドン(NMP)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)であることを特徴とする上記(1)に記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
(3)非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン系界面活性剤であることを特徴とする上記(1)又は(2)のに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
(4)溶剤に可溶なポリイミドが、芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンから得られる3成分系以上のポリイミドであることを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
(5)カーボンナノチューブ分散液中の非イオン性界面活性剤の配合量が0.005〜5重量%であることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のカーボンナノチュ−ブ分散ポリイミド。
(6)カーボンナノチューブ分散液中のポリビニルピロリドン(PVP)の配合量が0.1〜10重量%であることを特徴とする上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のカーボンナノチュ−ブ分散ポリイミド。
(7)アミド系極性有機溶媒及び非イオン系界面活性剤混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とする、カーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
(8)アミド系極性有機溶媒及び非イオン系界面活性剤混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、さらにポリビニルピロリドリン(PVP)を混合し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とするカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
(9)アミド系極性有機溶媒及びポリビニルピロリドン(PVP)の混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とするカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
(10)カーボンナノチューブ分散液をフィルターによりろ過処理した後、ポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とする上記(8)ないし(10)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
(11)カーボンナノチューブ分散液をポリイミド混合有機溶媒に混合した後フィルターによるろ過処理を行うことを特徴とする上記(8)ないし(10)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
本発明で用いられるアミド系極性有機溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン(NMP)などのいずれも用いることができるが、特に好ましくは、N−メチルピロリドン(NMP)及び/又はジメチルアセトアミド(DMAC)を用いることができる。これらは、多くの有機物(低級炭化水素を除く)、無機物、極性ガス、天然および高分子樹脂を溶かすことができる。本発明で使用される溶剤可溶ポリイミドは、これらのアミド系極性有機溶媒に溶解することができる。したがって、カーボンナノチューブをこれらの溶媒に均一に分散することができれば、その分散液に溶剤可溶ポリイミドを溶かすことによってカーボンナノチューブが均一に分散した溶剤可溶ポリイミドを得ることができる。
本発明で用いられる非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系、多価アルコールと脂肪酸エステル系、この両者を併せ持つ系のいずれであってもよいが、特に好ましくは、ポリオキシエチレン系のものが用いられる。ポリオキシエチレン系界面活性剤の例としては、脂肪酸のポリオキシエチレン・エーテル、高級アルコールのポリオキシエチレン・エーテル、アルキル・フェノール・ポリオキシエチレン・エーテル、ソルビタン・エステルのポリオキシニチレン・エーテル、ヒマシ油のポリオキシエチレン・エーテル、ポリオキシ・プロピレンのポリオキシエチレン・エーテル、脂肪酸のアルキロールアマイドなどがある。多価アルコールと脂肪酸エステル系界面活性剤の例としては、モノグリセライト型界面活性剤、ソルビトール型界面活性剤、ソルタビン型界面活性剤、シュガーエステル型界面活性剤などがある。
これら非イオン性界面活性剤の添加量は、カーボンナノチューブの配合量、配合するアミド系極性有機溶媒の種類によって適宜定めることができるが、一般には、0.005〜10重量%であれば、カーボンナノチューブの十分な分散効果を得ることができる。0.005%以下であると、カーボンナノチューブに対する界面活性剤の量が不足するために、一部のナノチューブは凝集して沈殿物が生じてしまう。また、10重量%以上であると、界面活性剤分子の溶媒中での分子回転が困難になるために、疎水性のナノチューブ表面に十分な量の界面活性剤の疎水部が吸着することが出来なくなり、微細なナノチューブの分散には不都合である。また、カーボンナノチューブの配合量を0.005〜0.05%にした場合、非イオン性界面活性剤の配合量は、0.01〜5重量%がよい。
本発明で用いられるカーボンナノチューブには、多層のもの(マルチウォール・カーボンナノチューブ、「MWNT」と呼ばれる)から単層のもの(シングルウォール・カーボンナノチューブ、「SWNT」と呼ばれる)まで、それぞれ目的に応じて使うことができる。
本発明においては、好ましくは、シングルウォール・カーボンナノチューブが用いられる。用いるSWNTの製造方法としては、特に制限されるものではなく、触媒を用いる熱分解法(気相成長法と類似の方法)、アーク放電法、およびレーザー蒸発法、HiPco法(High−Presuure carbon monoxide process)等、従来公知のいずれの製造方法を採用しても構わない。
以下に、レーザー蒸着法により、本発明に好適なシングルウォール・カーボンナノチューブを作成する手法について例示する。原料として、グラファイトパウダーと、ニッケルおよびコバルト微粉末混合ロッドを用意した。この混合ロッドを665hPa(500Torr)のアルゴン雰囲気下、電気炉により1,250℃に加熱し、そこに350mJ/PulseのNd:YAGレーザーの第二高調波パルスを照射し、炭素と金属微粒子を蒸発させることにより、シングルウォール・カーボンナノチューブを作製した。
以上の作製方法は、あくまで典型例であり、金属の種類、ガスの種類、電気炉の温度、レーザーの波長等を変更しても差し支えない。また、レーザー蒸着法以外の作製法、例えば、CVD法やアーク放電法、一酸化炭素の熱分解法、微細な空孔中に有機分子を挿入して熱分解するテンプレート法、フラーレン・金属共蒸着法等、他の手法によって作製されたシングルウォールナノチューブを使用しても差し支えない。
また、カーボンナノチューブの配合量は、使用目的によっても異なるが、分散性が得られる限り特に限定されるものではない。SWNTを用いて、NMP及びポリオキシエチレン系の界面活性剤の混合溶液に分散した場合、最大0.05%まで分散することができる。
本発明でいう強力攪拌とは、超音波処理、超振動処理などによって行う攪拌をいう。好ましくは、超音波処理が用いられる。本発明で使用される超音波は、20kHz,150W及び28kHz,140Wを用い、約1時間処理することによって良好な分散効果を得ることができたが、本発明の超音波の条件はこれに限定されるものではない。配合されるカーボンナノチューブの量、アミド系極性有機の種類等によって、適宜、定めることが可能である。
本発明に用いられるポリイミドは、溶剤に可溶なものでなければならない。一般に、ポリイミドは溶剤に難溶であり、通常のポリイミドでは、カーボンナノチューブを均一に分散することは困難である。したがって、本発明では、酸ジ無水物と芳香族ジアミンの組み合わせ方法、分子量及び分子量分布によって溶剤に対する溶解性を調整することによって、あらかじめ溶剤に可溶なポリイミドを準備することが重要である。一般に、3成分系のポリイミドは溶剤に可溶なものが多く、更に4成分系にすると溶解度が増す。このような溶剤に可溶なポリイミドとしては、芳香族ポリイミド又は脂肪族ジアミンから得られる3成分以上のポリイミドが用いられる。芳香族ポリイミドとしては、好ましくは、ブロック共重合芳香族ポリイミドが用いられる。
ブロック共重合ポリイミドを製造する方法としては、例えば、米国特許明細書第5,502,143に開示されているように、低沸点を有する2成分系触媒の存在下で極性溶媒中の酸ジ無水物と芳香族ジアミンを加熱反応させ、さらにジアミンを添加して継続的にイミド化反応行うことによってブロック共重合ポリイミドが製造できる。その際、触媒と極性溶媒は加熱蒸発によって自然に除去することができる。
例えば、使用する酸ジ無水物と芳香族アミンがそれぞれ5種、10種である場合、下式で表記される4成分系ポリイミドは理論上2,500種生成することが可能である。
(A1−:B1)(A2−B2)(A:酸ジカルボン酸、B:ジアミン)
このようなブロック共重合ポリイミドは、有機溶媒に可溶であるというだけでなく、分子量、分子量分布の測定がGPCによって測定可能であり、ポリマーの再現性が良い。その溶液は室温で長時間保存できるという利点も有する。また、4成分系にして、溶媒を用い、逐次反応によって規則的に配列したブロック共重合体となり、改質が可能であり、感光性、低誘電性、接着性、電着性、寸法安定性など用途に応じて、多種多様のブロック共重合ポリイミドを提供することができる。
この際、2成分系触媒としては、γ−バレロラクトン−ピリジン、γ−バレロラクトン−N−メチルモルホリン、クロトン酸N−メチルモルホリン及びクロトン酸ピリジンが挙げられるが、好ましくは、γ−バレロラクトン−ピリジン又はクロトン酸N−メチルモルホリンが使用される。
本発明のポリイミドの好ましい製造方法は、例えば、ラクトンと塩基の複合触媒の存在下、テトラカルボン酸ジ無水物とジアミンとを反応させてイミドオリゴマーとし、ついでテトラカルボン酸ジ無水物及び/又はジアミンを添加して(全テトラカルボン酸ジ無水物とジアミンのモル比は、1.05−0.95である)反応する方法である。このようにして合成したブロック共重合ポリイミド溶液は、保存安定性が良い。密閉容器中では、室温で数ヶ月から数ヶ年安定的に保存が可能である。
この際、芳香族ジアミンとテトラカルボン酸ジ無水物との重縮合反応は、通常、有機溶媒中で実施される。この反応系の有機溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、N,N−ジメチルエトキシアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチル尿素、1−オキシド(スルホランともいう)等を挙げることができる。前記重縮合反応における反応原料の濃度は、通常、5−40重量%である。
また、ラクトンとしては、通常バレロラクトン、塩基としてはピリジン又はN−メチルモルホリンが使用される。ラクトンは、酸ジ無水物に対して0.05−0.3モル使用する(上記米国特許5502143号明細書)。
本発明に用いられる芳香族テトラカルボン酸ジ無水物としては、ピロメリット酸ジ無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジ無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンジ無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンジ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテルジ無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジ無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホンジ無水物、4,4’−{2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン}ビス(l,2−ベンゼンジカルボン酸無水物)、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレンジ無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジ無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジ無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸ジ無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸ジ無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ジ無水物を用いることができる。
本発明で用いられる芳香族ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,2−ビスアニリノエタン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2−ニトロ−1,4−ジアミノベンゼン、3,3’−ジニトロ−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4、4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、0−トリジンスルホン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、2,5−ジアミノトルエン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロ)−メチルベンジジン、2、2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2、2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルスルホン等を用いることができる。
本発明で用いられる脂肪族ジアミンとしては、N−メチル−2,2’ジアミノジエチルアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、シスタミン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンを用いることができる。
本発明で使用されるフィルターは、ガラス繊維フィルター、メンブランフィルターなどが用いられる。その際、保留粒子径は、目的に応じて適宜定めることができる。保留粒子径とは、JIS 3801で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏洩粒子径により求めたものであるが、実質的には、フィルターの平均孔径に相当する。例えば、光散乱の低減を利用した光学機器に応用する場合、フィルターの保留粒子径は小さいほどよいが、一般には保留粒子径0.1〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmのものを用いることができる。
本発明で用いられるカーボンナノチューブ分散溶媒には、ポリビニルピロリドン(PVP)を混合してもよい。ポリビニルピロリドンは、カーボンナノチューブの表面に吸着し、カーボンナノチューブを包むいわゆるラッピング効果を有することが知られている。したがって、本発明におけるカーボンナノチューブ分散液に混合することにより、カーボンナノチューブの凝集及び再凝集が防止される効果を有するものと考えられる。
カーボンナノチューブ分散溶媒中のポリビニルピロリドンの配合量は、カーボンナノチューブの配合量によって適宜定めることができるが、好ましくは0.1〜10重量%とするとよい。
以上のように製作されたカーボンナノチューブを、NMP(N−メチルピロリドン)溶媒並びに非イオン系界面活性剤混合溶媒及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)混合溶媒に入れて混合し、超音波で処理して、カーボンナノチューブ分散溶媒を作製する。次に、これらのカーボンナノチューブ分散溶液を超遠心分離機又はガラス繊維ろ紙でろ過して、微細なカーボンナノチューブのみが分散した溶媒とする。ろ過は、カーボンナノチューブ分散液の段階で行ってもよいし、分散液をポリイミド混合有機溶媒と混合した後に行うこともできる。
ここで、ポリビニルピロリドリンはカーボンナノチューブの表面に吸着し、カーボンナノチューブが凝集及び再凝集するのを防ぐ効果を有する。この分散溶媒をブロック共重合ポリイミドの有機溶媒、例えば、NMP溶液に混合する。得られた混合溶液は、例えば、基板上にスピンコートなどにより塗布した後、溶媒を蒸発させることによって薄膜化することができる。このようにして、本発明のカーボンナノチューブ分散ブロック共重合ポリイミドが得られる。
本発明のカーボンナノチューブ分散ポリイミドには、目的に応じて、さらに充填剤を配合することが可能である。充填材としては、炭素繊維、金属被覆炭素繊維、カーボン粉末、ガラス繊維、モンモリナイトなどがあげられる。
本発明のカーボンナノチューブ分散ポリイミドには、目的に応じて、さらに、その他の成分として、導電性付与材、難燃剤、顔料、染料、滑剤、離型剤、相溶化剤、分散剤、可塑剤、熱安定化剤、酸化防止剤などを添加することができる。
発明にしたがって、カーボンナノチューブが均一に分散されたポリイミドを得ることができる。このようなカーボンナンチューブ分散ポリイミドは、マトリックス中での凝集等によって均一な分散が損なわれることがないために、機械的特性、透明性、耐熱性に優れ、各種用途への応用が可能となる。
A.溶剤に可溶なポリイミドの製造
まず、本発明で用いられる溶剤可溶ポリイミドの製造方法は、芳香族テトラカルボン酸ジ無水物と芳香族アミンとをほぼ等量用い、有機極性溶媒中でラクトン系触媒の存在下に150−220℃、好ましくは160−180℃に加熱して重縮合する。この重縮合反応時に生成する水は、トルエン、キシレン等と共に共沸によって反応系外に除かれる。以下に、その具体的実施例を示す。
B.カーボンナノチューブ分散液の製造
次に、本発明で用いられるカーボンナノチューブ分散液の製造方法の実施例を示す。
以上のように、上記実施例4ないし8で得られたカーボンナノチューブ分散液AないしにEは溶剤に可溶なポリイミドに均一に分散することは可能であった。しかしながら、同様のカーボンナノチューブ分散液AないしEを用いても、溶剤に不溶なポリイミドではカーボンナノチューブ分散液を混合することはできない。このような溶剤に不溶なポリイミドの場合、前駆体であるポリアミック酸が溶剤に可溶な場合がある。そこで、次の比較例1では、ポリイミド状態では溶剤に不溶であるが、溶剤に可溶な前駆体であるポリアミック酸へのカーボンナノチューブの分散を試みたが、均一に分散することはできなかった。
比較例1
カーボンナノチューブ分散液A(30g)と、ポリアミック酸ワニスPyer−ML(RC5019)(無水ピロメリット酸PMDAとビス(4−アミノフェニル)エーテルODAの化合物)15%NMP溶液(30g)を混合攪拌したが、溶液中でカーボンナノチューブが凝集し、均一な溶液を得ることができなかった。この溶液のNMP溶媒を蒸発させ、さらにポリアミック酸が脱水反応によりポリイミドに変化するまで加熱したが、カーボンナノチューブをこのポリイミド中に均一に分散することは困難であった。
次に、本発明のカーボンナノチューブ分散液以外の組成の分散液を用いて、溶剤に可溶なポリイミドに対する混合を試みたが、比較例2〜4のように、分散液自体カーボンナノチューブが均一に分散されていないため、やはり均一に分散することは困難であった。
比較例2
SWNT(1mg)を、アセトン10gおよびアセトン10gと非イオン系界面活性剤Triton X−100(10mg)の混合溶媒それぞれに入れて混合し、超音波(20kHz)で1時間処理したところ、超音波処理終了後、両者とも溶液は黒濁せずカーボンナノチューブが凝集した沈殿物が生じてしまい、上記実施例1〜3で得られたいずれの溶剤に可溶なポリイミドに分散することは困難であった。
比較例3
SWNT(1mg)を、ジメチルスルフォキシド10gおよびジメチルスルフォキシド10gと非イオン系界面活性剤Triton X−100(10mg)の混合溶媒それぞれに入れて混合し、超音波(20kHz)で1時間処理したところ、超音波処理終了後、両者とも溶液は黒濁せずカーボンナノチューブが凝集した沈殿物が生じてしまい、上記実施例1〜3で得られたいずれの溶剤に可溶なポリイミドに分散することは困難であった。
比較例4
SWNT(1mg)を、2−プロパノール10gおよび2−プロパノール10gと非イオン系界面活性剤Triton X−100(10mg)の混合溶媒それぞれに入れて混合し、超音波(20kHz)で1時間処理したところ、超音波処理終了後、両者とも溶液は黒濁せずカーボンナノチューブが凝集した沈殿物が生じてしまい、上記実施例1〜3で得られたいずれの溶剤に可溶なポリイミドに分散することは困難であった。
以上のように、本発明で特定されるカーボンナノチューブ分散溶液を溶剤に可溶なポリイミド、特にブロック共重合芳香族ポリイミドに混合することによって、はじめてカーボンナノチューブが均一に分散したポリイミドが得ることができる。
Claims (11)
- カーボンナノチューブ、アミド系極性有機溶媒並びに非イオン性界面活性剤及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)からなるカーボンナノチューブ分散溶液を溶剤に可溶なポリイミドの有機溶媒混合液に混合することにより得られたカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- アミド系極性有機溶媒がN−メチルピロリドン(NMP)及び/又はジメチルアセトアミドであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- 非イオン性界面活性剤がポリオキシエチレン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- 溶剤に可溶なポリイミドが、芳香族ジアミン又は脂肪族ジアミンから得られる3成分以上のポリイミドであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- カーボンナノチューブ分散液中の非イオン性界面活性剤の配合量が0.005〜5重量%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- カーボンナノチューブ分散液中のポリビニルピロリドン(PVP)の配合量が0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミド。
- アミド系極性有機溶媒及び非イオン系界面活性剤混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とする、カーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
- アミド系極性有機溶媒及び非イオン系界面活性剤混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、さらにポリビニルピロリドリン(PVP)を混合し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とするカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
- アミド系極性有機溶媒及びポリビニルピロリドリン(PVP)の混合溶液に、強攪拌処理を行いながらカーボンナノチューブを混合分散し、得られた分散溶液をポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とするカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
- カーボンナノチューブ分散液をフィルターによりろ過処理した後、ポリイミド混合有機溶媒に混合することを特徴とする請求項8又は9に記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
- カーボンナノチューブ分散液をポリイミド混合有機溶媒に混合した後フィルターによるろ過処理を行うことを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のカーボンナノチューブ分散ポリイミドの製造方法。
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