本発明は、白熱電球及び白熱電球用フィラメントに関し、特に帯形状の白熱電球用フィラメントとそれを用いた白熱電球に関する。
一般に、白熱電球は、導電性材質からなるフィラメントと、フィラメントを取り囲むように設けられたバルブと、バルブの内部に封入された希ガスと、を備えており、演色性に優れる。そして、放電ランプと異なり安定器などの点灯回路を必要とせず、簡単な使用器具を用いて点灯させることができ、また歴史的に長く使用されている関係で広く普及している。
通常、フィラメントは導電性のワイヤーからなるコイル状であるが、特許文献2には導電性のリボンからなる帯状のフィラメントが開示されている。図14は特許文献2に開示されているフィラメント50の断面、図15は特許文献2に開示されている発光体50’の正面、図16は発光体50’の断面を示す。図14に示すように、フィラメント50は、幅が250μmである導電性のリボンから形成された成形体52からなり、成形体52は、導電性のリボンの幅の整数倍の間隙53a〜53lを空けて交互に並列に位置する一連のエレメント52a〜52kにより形成される。なお、間隙53d及び間隙53iは、それ以外の間隙53a〜53c,53e〜53h,53j,53kよりも大きくなるよう形成されている。そして、図15、16に示すように、間隙53d,53iを横切る接続部分54a,54bにおいて、形成体52を折り返すことにより発光体50’が形成される。このようにして形成された発光体50’は、図15に示すように、正面から見ると前のフィラメントの隙間に後ろのフィラメントが重なるように配置され、あたかも隙間は設けられていないかに思われるが、図16に示すように断面に約1mmの隙間55,55が設けられている。そして、発光体50’の発光面は表面であり、その表面は平面である一連のエレメント52a〜52kにより形成されている、と記載されている。
特開平3−102701号公報 特開平6−349458号公報
しかしながら、一般に、白熱電球が放射する電磁波は、約90%が赤外線であり、わずか10%の可視光線を放射するにすぎない。そのため、このような白熱電球のランプ効率は13[lm/W]程度と悪く、ランプ効率の向上という課題がある。ここで、ランプ効率は、ランプの消費電力1Wあたりで発生する光の量(光束)[lm]を意味し、光束とは、単位時間あたりに伝播される可視光線の量を、標準観測者の視感度に対して生ずる明るさの感覚で評価したものである。従って、ランプ効率がよいと、消費電力1Wあたりで得られる光の量は増し、省エネにもつながる。
また、レフ電球、すなわち、バルブの内側の表面の一部に反射膜を設け、フィラメントからランプ後方に放射する可視光線をその反射膜によりランプ前方に反射し、ランプ正面の照度を高め、明るさを必要とする空間に対してランプ効率がよい電球であっても、蛍光ランプに比べればランプ効率が遙かに悪く、レフ電球についてもさらにランプ効率を上げることが必要である。
また、特許文献2に記載されている発光体50’において、間隙53a〜53lの大きさは、発光体50’を形成しているリボンの幅(250μm)の整数倍であるため、それぞれ500μmである。また、発光体50’に設けられている各間隙55の大きさは1mmである。すなわち、各エレメント間の間隔はそれぞれ大きい。各エレメント間の間隔が大きいと、各エレメント間において希ガスは対流を起こすため、発光体50’に生じた熱が一部損なわれてしまう。そのため、発光体50’表面全体の温度は一定に保たれない。
一般に、フィラメント(特許文献2では発光体)に生じた熱がフィラメント表面全体を取り囲むことにより、フィラメント表面の温度は一定となり、そのようなフィラメントを備える電球はランプ効率が良い。従って、表面全体の温度を一定に保つことができない発光体50’を備える電球は、ランプ効率が悪いといえる。よって、特許文献2に記載されている発光体50’を備える電球についても、ランプ効率を上げることが必要である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成によりランプ効率がよく面発光可能な白熱電球及びその白熱電球用フィラメントを提供することにある。
本発明の白熱電球用フィラメントは、同一平面に配置される一本の帯形状のフィラメントであって、間隔をおいて並んで配置される並設部と、前記並設部を電気的直列に接続する接続部とを備え、前記並設部は、並設部の幅を1としたとき並設部の厚さが1/2以上であることを特徴とする。
ここで、同一平面とは、数学的に厳密な意味での平面を意味するのではなく、フィラメント加工や電球組立などにより多少の歪曲やずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な平面ということである。換言すると、フィラメントに電流を流すことにより熱が放射され、その熱がそのフィラメント全体を取り囲むように熱のさやを形成し、それにより商用上使用可能な程度にフィラメントの温度を一定に保つことができる程度に歪曲、ずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。
本発明の白熱電球用フィラメントでは、少なくともいずれか一組の前記並設部の間隔は、並設部の幅を1としたとき少なくとも5より小さい間隔であることが好ましく、また、前記並設部の幅が100μm以上であることが好ましい。
また、本発明の白熱電球用フィラメントは、表面にマイクロキャビティを備えていてもよい。
これにより、放射を抑制する波長を任意に選択することが可能となり、抑制されたエネルギーは可視光に供することができるため、ランプ効率が高いフィラメントを提供することが可能となる。
また、本発明の白熱電球用フィラメントの並設部は、第2の並設部を第1の並設部が囲むように配置されていても良い。
これにより、フィラメント近傍に熱が有効に蓄えられる、いわゆるシースが効率よく形成され、ランプ効率の向上を図ることが可能となる。
また、前記白熱電球用フィラメントは、最も外周に配置される並設部とこれと隣り合う並設部との間隔は、最外周の並設部の幅を1としたとき少なくとも5より小さい間隔であることとして良い。
並設部が並設部を囲んだ状態で配置される場合、その最外周部分の間隔のみ一定の条件を満たしておれば、それより内周に配置される並設部の間隔は任意に設定することが可能となり、フィラメント設計上の自由度を向上させることができる。
上述の作用効果は前記白熱電球用フィラメントを備えた白熱電球でも奏することができる。
本発明のフィラメント及び当該フィラメントを備えた白熱電球は、高いランプ効率を得ることができる。
[図1]実施形態1における白熱電球の側面図である。
[図2]同実施形態のフィラメントの一部拡大平面図である。
[図3]同実施形態のフィラメントの一部拡大斜視図である。
[図4]同実施形態のフィラメントの断面図である。
[図5]フィラメント間隔とランプ効率との関係を示すグラフである。
[図6]実施形態2における白熱電球の側面図である。
[図7]同実施形態のフィラメントの平面図である。
[図8]フィラメントの変形例を示す平面図である。
[図9]実施形態3における白熱電球の側面図である。
[図10]マイクロキャビティを備えたフィラメントを模式的に示す平面図である。
[図11]同フィラメントの模式的斜視図である。
[図12]図10のVII−VII線断面の一部を拡大した断面図である。
[図13]熱解析結果を示すグラフである。
[図14]従来例におけるフィラメントの断面図である。
[図15]従来例における発光体の正面図である。
[図16]従来例における発光体の断面図である。
符号の説明
10、20 白熱電球
11、21 フィラメント
12、22 バルブ
13 口金
14 内部導入線
14a、14b サポート線
16、26、36フィラメント間隔
17、27、37並設部
18、28、38接続部
29 導出部
35 マイクロキャビティ
本発明の実施の形態を説明する前に、白熱電球が電磁波を放射するメカニズムを説明する。
白熱電球は、タングステンなどの導電性材質からなるフィラメントと、フィラメントを取り囲むように設けられたバルブと、バルブの内部に封入された希ガスと、を備えている。
そして、フィラメントに電流を流すと、フィラメントは導電性材質からなるため電流をよく通し、それによりジュール熱が発生してフィラメントの温度はあがる。すると、導電性材質を構成する分子、その分子を構成する原子(以下、「導電性分子など」という。)は激しく熱振動するようになる。そして、フィラメントがある温度に達すると、熱振動により導電性分子などに蓄えられた熱エネルギーが電磁波として放射されることとなる(熱放射)。すなわち、白熱電球が点灯する。従って、フィラメントの温度が高くなればなるほど、導電性分子などは、激しく熱振動し、その結果、多量の熱エネルギーを放射する。放射される熱エネルギー量が多くなるとランプは明るくなり、その結果ランプ効率は上がる。すなわち、フィラメントに流れる電流量を多くすればするほど、白熱電球のランプ効率は良くなる。しかし、フィラメントに多量の電流量を流すことによりフィラメントの温度が非常に高くなると、導電性分子などは気化するため、フィラメントの寿命を縮めることとなる。そのため、希ガスなど、導電性分子などと化学反応をおこさない不活性ガスをバルブ内に封入し、フィラメントの気化を抑制している。
さらに、白熱電球のランプ効率を上げるためには、フィラメントから放射された熱(以下、単に「放射された熱」という。)の拡散を防止する必要がある、従来具体的に用いられているのはタングステンワイヤーをコイル状としたフィラメントを用い、コイル状フィラメントの隣り合う巻線同士の間隔(以下、単に「フィラメント間隔」という。)を小さくすることにより放射された熱の拡散を防止している。すなわち、コイル状フィラメントから放射された熱はフィラメント表面全体を取り囲むように熱のさや(以下、「シース」という。)を形成し、シースが形成されることによりフィラメントの温度は一定に保たれる。その結果、熱損失を抑えることができるため、白熱電球のランプ効率をあげることができる。
ところが、フィラメント間隔を小さくしすぎると、対向する位置に配置されたフィラメント間で放電が生じる。放電が生じると、放電をひきおこしたフィラメント、すなわちフィラメント間隔が過小となるように設けられたフィラメントのインピーダンスは低下し、フィラメントには過剰な電流が流れる。その結果、フィラメントは、温度が過度に上昇し、断線してしまう。フィラメントが断線すると、フィラメント全体に電流が流れないため、そのようなフィラメントを備えている白熱電球は点灯しない。
逆に、特許文献2に記載されている発光体50’のようにフィラメント間隔(特許文献2では間隙と記載されている)を大きくしすぎると、各フィラメント間で希ガスなどの不活性ガスが対流を起こす。そのため、放射された熱は、希ガスなどの不活性ガスの対流により拡散してしまい、フィラメント全体の温度は下がり、または、一定とならず、白熱電球のランプ効率は悪くなる。
以下に本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
《実施形態1》
以下、実施形態1について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、白熱電球10の構造、各フィラメント間隔16及び各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係を説明する。なお、図1は本実施形態における白色電球10の模式図であり、バルブ12を形成しているガラスを透視した図である。また、図2は本実施形態のフィラメント11の一部を示す拡大図である。図3はフィラメント11の一部を示す斜視図である。
まず、白熱電球10の構造を説明する。
図1に示すように、白熱電球10は、薄膜からなるフィラメント11と、フィラメント11を取り囲むように設けられたバルブ12と、バルブ12の内部に封入されている希ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、フィラメント11の長尺方向に平行となるように設けられている内部導入線14と、を備えている。そして、内部導入線14は、フィラメント11の端部と口金13または口金13が設けられていない側のバルブ12の端部とをつなぐように設けられているサポート線14a,14aと、一端が口金13に設けられており他端がフィラメント11の端部と口金13が設けられていない側のバルブ12の端部とをつなぐように設けられているサポート線14bとにより構成されている。
フィラメント11は、図2、3に示すように、同一平面に並んで配置される帯状の並設部17と、前記平面に配置され前記並設部17を電気的直列に接続する接続部18とで構成されている。図4に示すように、並設部17の幅Wに対し並設部17の厚さHは1/2以上の関係となっている。また、接続部の幅と厚さの関係も同様である。具体的に本実施形態は、並設部17の幅Wは100μm、厚みHは50μmを採用しており、上記関係を満たしている。
また、フィラメント11はタングステンからなる。なお、フィラメントを構成する導電性材質は特に限定されるものではないが、タングステンなどの高融点の金属材料が好ましく、また、合金でもかまわない。
また、フィラメント11は、フィラメント11が含まれる同一平面内において複数回にわたって蛇行した形状であり、並設部17…が平行に並んで配置され、この並設部17を電気的に直列に接続するように接続部18が一体に形成されている。
また、並設部17…の外縁同士間の間隔、すなわち、フィラメント間隔16…は、互いに等しく、並設部17の幅を1としたとき5より小さい幅である。具体的に本実施形態では、フィラメント間隔16は100μmを採用しており、並設部17の幅との関係は1対1となっている。
そして、このように複数の平行に並んで配置される並設部17…により形成された平面がフィラメント11の発光面となる。すなわち、フィラメント11は同一平面上に形成されており、その平面上における各並設部17及び接続部18の表面が発光面となる。
なお、フィラメント11が含まれる同一平面内において複数回にわたって曲げられているとは、ジグザグまたは蛇行した道路のような形状を示すフィラメント11全体が実質的に一つの平面内に存在していることを意味する。すなわち、ジグザグまたは蛇行した道路のような形状を示すフィラメント11において、フィラメント11の表面における接線方向は、フィラメント11の表面の至るところにおいて異なるが、その全ての接線は同一平面上に存在し、その平面はフィラメント11が存在している面であることを意味する。また、同一平面とは、数学的に厳密な意味での同一平面を意味するのではなく、フィラメント11の加工や電球組立などにより多少の歪曲やずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。換言すると、フィラメント11に電流を流すことにより熱が放射され、その熱がフィラメント間隔16,16…も含むそのフィラメント11全体を取り囲むようにシースを形成し、それにより商用上使用可能な程度にフィラメントの温度を一定に保つことができる程度に歪曲、ずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。また、フィラメント間隔16については後述する。
本実施形態の場合、フィラメント11は、タングステンからなる導電性の短冊形シートに対して一般的に半導体デバイス製造工程で使用されるようなエッチングを行うことにより製造される。すなわち、1枚の短冊形の導電性のシートを用意し、そのシートに図2に示すジグザグ形状をパターンニングしてエッチングを行い、パターンニングされていない部分を溶失させ、図1に示すような形状のフィラメント11を製造する。
このように、エッチングを行うことによりフィラメント11を形成することにより、製造中に外部から力が加わってフィラメント11が破損したり、また、折り曲げられた部分の強度が低くなったりすることはない。さらに、機械加工や溶断などに比べてフィラメント11に歪みが入りにくく、応力による寿命の短縮化を抑止することができ、また、高い加工精度を確保することが可能となる。
なお、当該記載はフィラメント11を機械加工や溶断などで形成することを否定するものではなく、例えば、プレス加工などにより本発明にかかるフィラメントを製造しても同様の作用効果を示すことができる。
バルブ12はガラスにより形成されており、ガラスの種類としては、ソーダガラス、鋼質ガラス、石英ガラスが挙げられる。
バルブ12に封入されているガスは、主成分が希ガスであり、具体的には、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより形成されている。そして、希ガス及び窒素ガスは、白熱電球10が点灯している時に1気圧となるように、バルブ12に封入されている。このようにしておくと、バルブ12が誤って破損してしまった時、バルブ12を形成しているガラスの飛散を防ぐことができる。
口金13は、黄銅またはアルミニウム合金などにより形成され、ソケットと組み合わせられて白熱電球10を電源に接続する。
内部導入線14すなわちサポート線14a,14a及びサポート線14bは、銅線または鉄線にニッケルをメッキすることにより形成され、フィラメント11をバルブ12の内部空間内に固定している。そして、サポート線14a,14a及びサポート線14bは、フィラメント11への電流供給を行っている。具体的には、口金13を介して接続されている外部電源が供給する電流は、サポート線14a,14aを通ってフィラメント11に到達し、フィラメントに到達した電流は、サポート線14bを通って外部電源へ戻る。
続いて、各フィラメント間隔16について説明する。
上記の白熱電球の放射メカニズムによると、各フィラメント間隔16が小さすぎると、並んで配置される並設部17の間に放電が生じ、それによりフィラメント11は断線してしまう。従って、本実施形態にかかるフィラメント11の各フィラメント間隔16は、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きい間隔が設定されている。具体的には放電が生じないフィラメント間隔16は30μm以上と考えられており、本実施形態ではフィラメント間隔16は100μmを採用している。
ここで、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔とは、白熱電球10が点灯することにより並設部17間で放電が生じない程度に、並設部17…同士の間隔、すなわち各フィラメント間隔16が設けられていることを意味する。従って、この場合、並設部17…の外縁同士間で放電が生じる虞はなく、よってフィラメント11が断線することもない。そのため、白熱電球10は点灯する。
なお、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に上記圧力で封入した条件で、公差や点灯中の変形を考慮した場合、このフィラメント間隔16は40μm以上を確保することが好ましい。各フィラメント間隔16が40μm以上であれば、製造公差や熱歪みによる変形を吸収してなおかつ並設部17の外縁同士間で放電は生じないものとすることができる。よって、放電による損傷や熱の偏りを回避し得てフィラメント11は断線しない。
なお、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に封入した場合、各フィラメント間隔16が40μm未満、例えば30μmであっても、理想的には並設部17…の外縁同士間で放電は生じない。しかし、フィラメント間隔16を正確に設計値通りとなるようフィラメント11を製造することは困難である。よって製造されたフィラメント11において、フィラメント間隔16はある程度のばらつきを有する。すなわち、フィラメント間隔16の至るところにおいて、放電が生じない間隔である30μmの間隔を確保してフィラメント11を製造することは非常に難しい。そのため、製造時のばらつきによりフィラメント16を放電が生じない間隔、30μmよりも短い間隔ができてしまうと、その箇所では放電が生じ、上記の白熱電球の放射メカニズムよりフィラメント11は断線してしまう。その結果、ランプは点灯不可となる。そのようなことがおこらないようにするために、各フィラメント間隔16を40μm以上としているのであって、理論的には、各フィラメント間隔16が30μmであっても、並設部17…の外縁同士間で放電は生じない。
続いて、各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係を説明する。
上記の白熱電球の放射メカニズムより、フィラメント間隔16が小さすぎると、並設部17…の外縁同士間で放電が生じ、フィラメントのインピーダンスが下がり、過電流が流れ、その結果フィラメントの温度が上昇し、フィラメント11は断線してしまう。しかし、バルブ12に封入する窒素ガスの量を多くすることにより、具体的には窒素ガス圧を上げたり窒素ガスの組成比を大きくすることにより、フィラメント間隔16が小さくても、並設部17…の外縁同士間における放電を阻止することができる。窒素ガスの絶縁破壊電圧が高いため、並設部17…の外縁同士間における放電を防止することができるためである。一方、アルゴンガスはフィラメントの気化による短寿命化を防止するためにバルブ12に封入されるにすぎない。従って、バルブ12に封入するアルゴンガスの量を多くしてフィラメント間隔16を小さくすると、上記の白熱電球の放射メカニズムに示すように、並設部17…の外縁同士間で放電が生じ、それによりフィラメント11は断線してしまう。このこと、すなわち、フィラメント間隔16が小さくても窒素ガスの量を多くすることにより並設部17…の外縁同士間における放電を阻止することができることは、パッシェンの法則、すなわち、絶縁破壊電圧Vは電極間の距離dと気体の圧力pとの積pdの関数で表されるという法則を反映している。ここで、絶縁破壊電圧Vはこれ以上の電圧がかかると電極間の気体が絶縁破壊してしまう電圧を意味し、アルゴンガスの絶縁破壊電圧Vに比べ窒素ガスの絶縁破壊電圧Vは大きな値を示す。また、電極間の距離dはフィラメント間隔16を意味する。そして、パッシェンの法則より、絶縁破壊電圧Vの値が変わらない範囲内で窒素ガスの圧力pを大きくすると、電極間の間隔d、すなわちフィラメント間隔16を小さくすることができ、具体的には、30μm未満にすることが可能である。これにより、フィラメント間において放電が生じることなくフィラメントの間隔16を小さくすることができる。しかし、窒素ガス圧を上げすぎたり窒素ガスの組成比を大きくしすぎたりすることによりバルブ12内に多量の窒素ガスを封入すると、ランプ効率は悪くなる。よって、バルブ12に窒素ガスのみを封入することはできず、フィラメント間隔16を限りなく小さくすることは不可能であり、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔16は、30μm以上とすることが好ましい。
一方、各フィラメント間隔16が大きすぎると、フィラメント間隔16を含むフィラメント11表面全体を包み込むようにシースは形成されないか形成されてもランプ効率の向上に寄与しない。具体的には並設部17の幅の5倍以上であればシースは形成されないか形成されてもランプ効率の向上に寄与しない。また好ましいフィラメント間隔16は並設部17の幅の2倍以下であり、さらに好ましくは1倍すなわち並設部17の幅とフィラメント間隔16とが同等以下であることが好ましい。
図5は、並設部17の幅を100μmとしたときのフィラメント間隔16とランプ効率の関係をシミュレーションした結果を示したグラフである。なお、当該シミュレーションは、フィラメント間隔16を100μm、厚さを50μmとして作成されたフィラメントを用いて実際に実験された実測値に基づいてなされたものである。また、同図のグラフは、フィラメント間隔16が100μm、厚さ50μmのときのランプ効率を1として規格化したグラフであり、グラフ中に示した上の線上に付されている点(■)はフィラメント11の厚さが50μmの場合のシミュレーション結果を、下の線上に付されている点(◆)は厚さが25μmの場合のシミュレーション結果を示している。
同図から解るように、フィラメント間隔16が並設部17の幅の5倍(本グラフではフィラメント間隔16が500μm)より小さくなると、飛躍的にランプ効率が高くなるのが解る。また、フィラメント11の厚さがフィラメント11の幅の1/2であれば前記ランプ効率の飛躍的向上が望めるが、フィラメント11の厚さがそれ未満であるとランプ効率の飛躍的向上は望めない。一方、フィラメント11の特に並設部17の厚さは上記関係を満たせば特に上限は無いが、加工の容易さや歪みの発生確率を考慮すればフィラメント11の幅の5倍よりも小さければ(すなわち500μmよりも小さければ)効率が上がり始め、2倍以下(すなわち200μm以下)であれば効率の向上度合がほとんど飽和しているので、当該範囲が好ましい範囲となる。さらに、エッチングによりフィラメント11を形成するのであれば等倍以下(すなわち100μm以下)であれば、効率の向上効果が一定となり好適である。
以上から、フィラメント間隔16の最小は、放電の観点からは30μm以上、加工性の観点からは40μm以上が好ましい。一方、フィラメント間隔16の最大は、フィラメント11の幅の5倍未満、好ましくは2倍以下、さらに好適には1倍以下である。
本実施形態においては、各フィラメント間隔16が100μmに設定されており、上記好適な範囲内に収まっている。従って本実施形態のフィラメント間隔16では、希ガス及び窒素ガスの対流は、フィラメント11の近傍で起こしにくくなっている。従って、放射された熱が拡散することはなく、フィラメント11全体は、シースに包み込まれ一定の温度に保たれ、高いランプ効率を得ることができる。
なお、フィラメント11の幅は100μm以上であることが好ましい。これはランプ効率からの要請ではなく、フィラメントの機械的強度を確保するためである。すなわち、タングステン製のフィラメントを100μm未満にすると、通電時の発熱によるフィラメント11の変形が激しくなり、所定のフィラメント間隔16を維持することが困難になるからである。従って、加工方法やフィラメントの材質などにより、フィラメントの機械的強度(特に熱による変形)が向上すればフィラメントの幅をさらに小さくすることは可能である。
以上より、本実施形態のフィラメント11を備えた白熱電球10を点灯しても、各フィラメント間隔16が点灯時に平行に配置された並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きいため、並設部17…の外縁同士間で放電が生じることはなく、よって、フィラメント11は断線しない。一方、各フィラメント間隔16が並設部17の幅と同じ100μmであるため、放射された熱はフィラメント間隔に存在する希ガス及び窒素ガスにより拡散してしまうことはない。そのため、白熱電球10はランプ効率が良い。具体的には、本実施形態におけるフィラメント11を備えた白熱電球10のランプ効率の値は、15〜16[lm/W]であり、従来の白熱電球のランプ効率の値(13〜14[lm/W])よりも大きい。
なお、ランプ効率を上げるために、封入ガスをクリプトンにしても良い。なお、封入ガスをクリプトンにした電球等の開発や、その他様々な手法や工夫がなされているが、本実施形態のように、ランプ効率が約2割程度も上昇した電球、または上昇させる方法は未だ開示されていない。
以下に、本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態におけるフィラメント11の各フィラメント間隔16は、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きい100μmに設定されている。従って、このフィラメント11を備える白熱電球10を点灯しても、並設部17…の外縁同士間で放電が生じることはない。そのため、放電をひきおこした並設部17…において、インピーダンスの低下を招来することはなく、よって過剰に電流が流れることはなく、フィラメント11が断線することはない。すなわち、白熱電球10は点灯不可とはならない。
具体的には、バルブ12にアルゴンガス90%と窒素ガス10%とで構成される気体を封入した場合は、フィラメント間隔の下限は30μm、加工精度や熱歪みなどを考慮して各フィラメント間隔16は40μmであればよい。一方、各フィラメント間隔16の上限はフィラメント11の幅が100μmであることから500μmである。従って、フィラメント間隔16に100μmを採用する本実施形態において、希ガス及び窒素ガスが対流をおこすことはない。よって、放射された熱が希ガス及び窒素ガスの対流により拡散することはなく、シースはフィラメント11表面全体を取り囲むように形成されたままである。
以上より、本実施形態にかかるフィラメント11を備えた白熱電球10では、フィラメント11は断線することがなく、且つ放射された熱が拡散することもない。従って、本発明のフィラメント11を備えた白熱電球10は完全に面状に発光するにもかかわらずランプ効率がよい。
また、フィラメント11は、図1、2、3に示すように帯状に形成されており、フィラメント11が含まれる面内において複数回にわたって屈曲しているだけである。そのため、フィラメント11の構成は簡単である。そのうえ、フィラメント11を製造する際には、長尺部材を複数回にわたって折り曲げるような機械加工を施すわけではなく、短冊状のタングステンシートに対してエッチングを行えばよい。そのため、製造中にフィラメントが破損することはなく、容易かつ精度良くに製造することができる。
なお、本実施形態のフィラメントについて、並設部17…は平行に設けられているとしたが、これに限定されることはない。また、各フィラメント間隔16は、それぞれ等しいとしたが、これに限定されることはない。並設部17…がフィラメント間隔16を設けて配置されており、且つ、フィラメント間隔16が至る所において点灯時に対向するリボンの外縁同士間で放電が生じる間隔(例えば30μm)よりも大きくフィラメント11の幅の5倍より小さければよい。具体的には、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に封入し、フィラメント11の幅を100μmとした場合には、フィラメント間隔16が30μm以上500μm未満、好ましくは40μm以上300μm未満、さらに好ましくは50μm以上200μm未満となるように並設部17…を配置すればよい。
また、本実施形態では、希ガスとしてアルゴンガスを用いたが、これに限定されることはなく、クリプトンガスやキセノンガスを用いてもよい。クリプトンガスやキセノンガスを用いると、アルゴンガスを用いる場合に比べ、フィラメント11の寿命は延びる。
《実施形態2》
以下、実施形態2について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、主に、白熱電球20の構造を説明する。なお、図6は本実施形態における白色電球20の模式図であり、バルブ22を形成しているガラスを透視して見た図である。また、図7は本実施形態にフィラメント21の拡大図である。
本実施形態における白熱電球20は、上記実施形態1における白熱電球10と異なり、フィラメント21の外形は円形であり、それに伴って、バルブ22及び内部導入線24の形状が異なる。それ以外の点に関しては、上記実施形態1における白熱電球10及びフィラメント11と同一である。そのため、上記実施形態1と重複する部分については、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、白熱電球20は、薄膜からなるフィラメント21と、フィラメント21を取り囲むように設けられたバルブ22と、バルブ22の内部に封入されている希ガス及び窒素ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、口金13とフィラメント21とを連結するように設けられている内部導入線24と、を備えている。
フィラメント21は、図7に示すように、幅が100μm厚みが50μmの導電性の並設部27と、これを電気的に直列に接続する接続部28と、これら並設部27及び接続部28を電気的直列に外部に接続するための導出部29で構成されている。また、フィラメント21の材質は実施形態1と同様タングステンである。
並設部27は、並設部27が含まれる同一平面内において等間隔の同心円上に並べて配置されており、最外周の並設部27がその内側の並設部27を囲んでいる。また、複数回にわたって曲げられて蛇行するように、接続部28によって電気的に直列に接続され、導出部29によりこの端部を同一平面内において並設部27の円形の囲みから導出されている。そして、フィラメント21のうち最外形部分を形成している並設部は、その外周円の半径が1mmの円の中に収まるように形成されている。また、フィラメント間隔26…は互いに等しい。以上のように形成されたフィラメント21が存在する面が発光面となる。
そして、各フィラメント間隔26は、上記実施形態1における各フィラメント間隔16と同一の100μmに設定されている。また、接続部28と導出部29との間隔も100μmに設定されている。すなわち、各フィラメント間隔26は、点灯時に対向する並設部27…の外縁同士間や接続部28と導出部29との間で放電が生じる間隔よりも大きい。そのため、これらフィラメント同士間で放電が生じることはなく、よってフィラメント21が断線することはない。また、これら間隔は100μmとしているため、並設部27…の外縁同士間の間隙を含めたフィラメント21全体の周囲にはシースが形成される。以上より、本実施形態における白熱電球20はランプ効率がよい。
また、各フィラメント間隔26とバルブ22に封入されているガスの組成比との関係は、上記実施形態1における各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係と同一である。すなわち、バルブ22に封入する窒素ガスの量を増やすと、フィラメント間隔26が小さくても対向する並設部27…の外縁同士間における放電を抑制することができ、その結果、フィラメント間隔26を40μm未満とすることができる。しかし、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔26は、40μm以上とすることが好ましい。
以下に、本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態おける白熱電球20及びフィラメント21が奏する効果は、上記実施形態1における白熱電球10及びフィラメント11が奏する効果に付け加え、以下に示す効果を奏する。すなわち、フィラメント21は等間隔の同心円上に円形領域を取り囲むように配置されるものであるため、上記実施形態1のフィラメント11のような長尺なフィラメントに比べ、バルブ22に封入されたガスの対流による熱損失がより少なくなる。従って、白熱電球20は白熱電球10よりもランプ効率がよい。また、フィラメント21の外形が円形であるためこれを取り囲むバルブ22の形状も従来の白熱電球と同様の半球状とすることができ、局所的に明かりが必要なときには、白熱電球20を用いることができる。すなわち、白熱電球20は、スポットライト的に用いることができる、という効果を奏する。また、更に、フィラメント20の発光部が平面であり一点に集中しているためレンズ光学系等との組み合わせた集光照明にも有効である。
上記実施形態1におけるフィラメント11と同様、対向する並設部27…がフィラメント間隔26を設けて配置されており、且つ、フィラメント間隔26が至る所において点灯時に対向するリボンの外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きく500μm未満であればよい。そして、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ22に封入した場合には、フィラメント間隔26が30μm以上500μm未満となるように対向する並設部27…を配置すればよい。
なお、本実施形態のフィラメントについて、対向する並設部27…は平行に設けられているとしたが、これに限定されることはない。また、各フィラメント間隔26は、それぞれ等しいとしたが、これに限定されることはない。例えば、図8に示すように、最外周に位置するフィラメント間隔26のみ100μmに設定され、内周に行くほどその間隔を広げたものでもかまわない。このように並設部27を配置しても有効なシースが形成される。また、フィラメント11の全体的形状は円形である必要はなく、三角形や四角形などの多角形や、楕円や長円、星形やハート形など任意の形状を採用しうる。
《実施形態3》
本実施形態の白熱電球は、フィラメントにマイクロキャビティを形成した白熱電球である。なお、本実施形態の説明をする前に、マイクロキャビティについて説明する。
特許文献1には、白熱電球のランプ効率を上げる手段として、発光面であるフィラメントの表面にマイクロキャビティ(微小な穴)を形成し、そのマイクロキャビティによる空洞量子効果を利用することにより、フィラメントから放射される電磁波の波長選択性を高めることができる、すなわち赤外線の放射を阻止することができるという方法が開示されている。この方法では、マイクロキャビティを、一辺の長さが可視光線の波長程度である正方形を底面とし深さが可視光線の波長よりも長い角柱状の空洞としている(特許文献1)。例えば、フィラメントの表面に、底面が一辺350nmの正方形で深さが350nmの20倍である7000nm程度のマイクロキャビティを設けると、700nm以上の波長を有する電磁波がフィラメントの外部へ放射されることを抑制することができる、というものである。すなわち、フィラメントの表面にマイクロキャビティを形成すると、そのマイクロキャビティの底辺の長さの2倍の長さよりも長い波長を有する電磁波の放射は阻止され、そのマイクロキャビティの底辺の長さの2倍の長さよりも短い波長を有する電磁波のみがフィラメント外部へ放射される。従って、マイクロキャビティの底辺の長さを可視光線の波長の半分程度とすることにより、赤外線の放射を阻止することができ、その結果、ランプ効率はあがる、と記載されている。
発光面であるフィラメントの表面に、マイクロキャビティを形成する方法として、レーザ光を用いる方法と陽極酸化膜を用いる方法とがある。レーザ光を用いる方法では、まず、複数の孔を持つマスクを用意し、そのマスクをレーザ光で照明する。次に、光学系を用いてそのマスクを透過したレーザ光によるマスク像をフィラメント表面に結像する。すると、レーザ光が照射されたフィラメントは削られる。これにより、フィラメント表面に複数のマイクロキャビティ(マイクロキャビティアレイ)が形成される。また、陽極酸化膜を用いる方法では、まず、微細孔を有する陽極酸化膜を用意し、母材金属表面に設ける。次に、この微細孔の内部を埋めるように、レプリカとなる金属層をCVD法などにより母材金属表面に形成する。そして、母材金属および陽極酸化膜を除去する。これにより、陽極酸化膜の微細孔の構造に対応する凹凸形状がレプリカ金属層の表面に転写される。その後、フィラメントを形成する導電性薄膜(通常、ダングステン)をこのレプリカ金属層表面にCVD法などにより形成した後、レプリカ金属層を除去する。これにより、フィラメントを形成する導電性薄膜の表面に陽極酸化膜に形成されている微細孔が転写され、フィラメント表面にマイクロキャビティアレイを形成することができる。
しかしながら、レーザ光を用いる方法において、マスクに形成されている複数の孔により分割されたレーザ光を用いて複数の孔のパターンをフィラメント表面に精度よく結像させるためには、マイクロキャビティを形成するフィラメントの表面は平面でなければならない。また、陽極酸化膜を用いる方法において、レプリカ金属層表面にCVD法などにより導電性薄膜を形成するためには、マイクロキャビティを形成するフィラメントの表面は平面でなければならない。そのため、フィラメントの発光面が平面でないワイヤーからなるコイル状フィラメントの表面に、マイクロキャビティを形成することは困難であった。
これに対して、特許文献2に記載されている発光体50’の発光面である表面は一連のエレメント52a〜52kにより形成されており、一連のエレメント52a〜52kは平面である。よって、発光体50’の発光面は平面であり、発光体50’の発光面に対してマイクロキャビティを形成することは可能である。ここで、例えば、電圧が24Vであり、パワーが100Wである電球を製造するためには、一般的なコイル状フィラメントであれば、径が0.2mmであり長さが30cmの大きさを有する物を用い、特許文献2に開示されているフィラメント50であれば、幅が300μmであり厚さが100μmであり長さが30cmの大きさを有する物を用いればよい。従って、特許文献2に開示されているフィラメント50はそれほど大きくしなくても、コイル状のフィラメントと同程度のパワーを示す。よって、発光体50’の発光面にマイクロキャビティを形成すれば、コイル状フィラメントよりもランプ効率の良い電球を提供できる、と推測される。
しかしながら、特許文献2に開示されているフィラメント50の発光面にマイクロキャビティを形成するためには、例えば、レーザ光を用いる場合は一辺の長さが300μmであるマスクを用いるため、幅が300μmであり厚さが100μmであり長さが30cmであるフィラメント50では、上記の工程を2000回行う必要がある。従って、非常に手間がかかるとともに時間もかかる。また、陽極酸化膜を用いる場合、長さが30cm以上の導電性薄膜を加工できるCVDチャンバが必要となる。そのため、現状のCVDチャンバを用いて、発光体50’の発光面にマイクロキャビティを形成することは困難である。いずれにしろ、発光体50’の発光面は平面であるにも関わらず、その発光面にマイクロキャビティ加工を施すことは困難である。そのため、発光体50’を備えた電球のランプ効率を上げることはできない。
さらに、たとえ発光面の大きなフィラメントに対してマイクロキャビティを形成する技術が考案され、発光体50’の発光面に対して難なくマイクロキャビティを形成することができたとしても、発光体50’における各エレメント間の間隔、間隙53a〜53l及び間隙55,55は、背景技術の欄に記載したように500μmと非常に大きい。そのため、各エレメント間では希ガスが対流を起こし、それにより発光体50’上に生じた熱の一部は損なわれてしまう。従って、発光体50’に形成されるシースは、間隙53a〜53l及び間隙55,55において、分断されることとなり、発光体50’表面全体を覆うようには形成されない。以上より、発光体50’の表面にマイクロキャビティを形成しても、そのフィラメントを備える電球はランプ効率が良くない。
本実施形態では、表面にマイクロキャビティが形成されたフィラメント31、及び、マイクロキャビティの形成方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、図9は本実施形態における白色電球30の模式図であり、バルブ12を形成しているガラスを透視した図である。また、図10、11は本実施形態におけるフィラメント31の拡大図である。なお、理解を容易にするためマイクロキャビティ35をフィラメント31上に図示しているが、実際のマイクロキャビディはフィラメント31に対して非常に小さい。また、図12は図10のVII−VII線断面図の一部を拡大した図である。
なお、マイクロキャビティは、本発明にかかるいずれのフィラメントに対しても形成することができ、その効果を奏することが可能である。例えば、図7や図8に示す同心円上に並べられたフィラメントに対しても適用することができる。また、マイクロキャビティを形成したことにより得られる効果なども同一である。
図9に示す本実施形態における白熱電球30は、上記実施形態1における白熱電球10と異なり、フィラメント31の表面にマイクロキャビティ35が形成されているが、マイクロキャビティ35は図示出来ないほど小さいので図面上は図1との相違はない。そのため、上記実施形態1と重複する部分については、詳細な説明を省略する。
白熱電球30は、薄膜からなるフィラメント31と、フィラメント31を取り囲むように設けられたバルブ12と、バルブ12の内部に封入されている希ガス及び窒素ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、フィラメント11の長尺方向に平行となるように設けられている内部導入線14と、を備えている。
フィラメント31は、図9に示すように、幅が100μm厚みが50μmの帯状であり、タングステンにより形成されている。そして、フィラメント31は、図9に示すように、同一平面内において複数回にわたって蛇行した形状であり、並設部37…が平行に並んで配置され、この並設部37を電気的に直列に接続するように接続部38が一体に形成されている。そして、図12の断面図で示すように、フィラメント31の表面には、複数のマイクロキャビティ35,35,…が形成されている。ここで、マイクロキャビティとは微小な穴のことあり、本実施形態の場合は円柱形状穴である。各マイクロキャビティ35の深さはその開口直径の2倍以上であればよい。そして、フィラメント31の表面にマイクロキャビティ35を形成すると、マイクロキャビティ35の開口径の2倍よりも長い波長を有する電磁波の放射は阻止され、マイクロキャビティ35の開口径の2倍よりも短い波長を有する電磁波のみがフィラメント31外部へ放射される。従って、マイクロキャビティ35の開口径を可視光線の波長の半分程度とすることにより、特に開口径を350nm以上400nm以下とすることにより、赤外線の放射を阻止することができ、その結果、ランプ効率は良くなる。なお、マイクロキャビティは、円柱形状を示したが、角柱形状でも良い。この場合、1辺の長さが350nm以上400nm以下であることが好ましい。
マイクロキャビティ35の形成方法は、従来のレーザ光を用いる方法または陽極酸化膜を採用することができる。なお、レーザ光を用いる方法では、エッチングによりフィラメントを製造しながら、マイクロキャビティ35を形成することができるため、フィラメント31bの表面に対して、非常に容易にマイクロキャビティ35を形成することができる。なお、マイクロキャビティ35をエッチングに形成することも可能であり、フィラメントの形状をエッチングで形成している際にマイクロキャビティ35の形成を同時に行うことも可能となる。
そして、本実施形態においても、バルブ12に封入する窒素ガスの量を多くすると、フィラメント間隔36を40μm未満とすることができが、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔36は、40μm以上とすることが好ましい。このようにフィラメント31自体の形状は前記フィラメントと変わるところがない。
以下に本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態おけるフィラメント31が奏する効果は、上記実施形態1が奏する効果に付け加え、以下に示す効果を奏する。すなわち、フィラメント31の表面にはマイクロキャビティ35が形成されている。従って、本実施形態における白熱電球30は、上記実施形態1における白熱電球10よりも更にランプ効率がよい、という効果である。
上記実施形態1の白熱電球10と同一の構造を示す白熱電球(以下、「電球A」という。)と、タングステン線からなる二重コイルフィラメントを備えた60Wシリカ電球(品番L100V57W)(以下、「電球B」という。)と、単なる長方形のタングステンシートをフィラメントとして備えた電球(以下、「電球C」という。)と、を準備した。ここで、電球Aが備えているフィラメントは、厚さ50μm、幅100μm、長さ20mm、フィラメント間隔は100μmに設定されている。また、電球Cが備えているフィラメントは、厚さ50μm、幅100μm、長さ20mmの短冊状のタングステンシートである。また、電球Cが備えているフィラメントは曲げられておらず直線状である。また、電球A,B,Cには、各電球を点灯したときに1気圧となるよう少なくとも希ガスが封入されている。
本実施例では、3つの電球A,B,Cのランプ効率を比較した結果と、電球A,Cが備えている各フィラメントの長尺方向における温度分布を解析した結果と、を示す。
まず、3つの電球A,B,Cについて、フィラメントの分布温度が2800Kとなるように点灯し、ランプ効率を比較した。表1にその結果を示す。
表1より、電球Aのランプ効率が最もよいことがわかる。
以上より、電球Aは、ランプ効率の値が現行の電球(電球B)のランプ効率の値よりも1割から2割大きく、現行の電球(電球B)に比べ商用上の利用性が非常に高いといえる。また、フィラメント表面にマイクロキャビティを形成しなくてもランプ効率の値が1割から2割大きくなったため、ランプ効率のよい電球を非常に容易に形成することができるといえる。
次に、電球A,Cに対して熱解析シミュレーション(CD−adapco JAPAN製 Star CD Ver3.150)を行い、電球A,Cの各フィラメントの長手方向における温度分布を調べた。ここで、電球Aには、0.8A,1.0A,1.2Aの電流を流した。図13にその結果を示す。なお、図13の横軸は、フィラメント長尺方向におけるフィラメントの中点からフィラメントと内部導入線との接合点までの距離を示し、縦軸は、各点における温度を示す。また、実線は、それぞれ電球Aに0.8A,1.0A,1.2Aの電流を流した場合の熱解析の結果を示し、破線は、電球Cの熱解析の結果を示す。
図13より、電球Aに0.8A,1.0A,0.2Aの電流を流した場合(いずれも実線)は、フィラメントの中点からフィラメントと内部導入線との接合部分にかけて、温度はほとんど一定であることがわかる。なお、各グラフにおいて周期的に温度が低下しているのは、フィラメント間隔に存在する希ガスの温度が示されていると考えられる。これに対して、電球C(破線)については、フィラメント中点からフィラメントと内部導入線との接合部分にかけて、温度は単調に減少していることがわかる。
以上より、電球Cのフィラメントにより放射された熱は、バルブに封入された希ガス及び窒素ガスの対流により拡散してしまい、その結果、電球Cのフィラメント表面全体にはシースが形成されていないといえる。一方、電球Aのフィラメントにより放射された熱は、バルブに封入された希ガス及び窒素ガスの対流により拡散することはなく、よって、電球Aのフィラメント表面全体にはシースが形成されているといえる。そのため、ランプ効率は、電球Aの方が電球Cよりもよい。従って、電球Aが備えるフィラメントのように、フィラメント間隔が100μmとなるように複数回にわたって曲げられたような構造を示すフィラメントでは、表面全体にシースが形成されているため温度を一定に保つことができ、その結果、そのようなフィラメントを備える白熱電球すなわち電球Aはランプ効率が良い電球であるといえる。
以上のように、本発明にかかる白熱電球は、白熱電球が備えるフィラメントに電流を流すことにより白色光を発する電球、特に照明用電球などとして利用可能である。また、本発明にかかる白熱電球用フィラメントは、電流を流すことにより白色光を発する白熱電球用フィラメント、特に照明用電球などに用いるフィラメントとして利用可能である。また、本発明にかかる白熱電球用フィラメントはマイクロキャビティなどの表面加工用の基板フィラメントとしても利用可能である。
本発明は、白熱電球及び白熱電球用フィラメントに関し、特に帯形状の白熱電球用フィラメントとそれを用いた白熱電球に関する。
一般に、白熱電球は、導電性材質からなるフィラメントと、フィラメントを取り囲むように設けられたバルブと、バルブの内部に封入された希ガスと、を備えており、演色性に優れる。そして、放電ランプと異なり安定器などの点灯回路を必要とせず、簡単な使用器具を用いて点灯させることができ、また歴史的に長く使用されている関係で広く普及している。
通常、フィラメントは導電性のワイヤーからなるコイル状であるが、特許文献2には導電性のリボンからなる帯状のフィラメントが開示されている。図14は特許文献2に開示されているフィラメント50の断面、図15は特許文献2に開示されている発光体50’の正面、図16は発光体50’の断面を示す。図14に示すように、フィラメント50は、幅が250μmである導電性のリボンから形成された成形体52からなり、成形体52は、導電性のリボンの幅の整数倍の間隙53a〜53lを空けて交互に並列に位置する一連のエレメント52a〜52kにより形成される。なお、間隙53d及び間隙53iは、それ以外の間隙53a〜53c,53e〜53h,53j,53kよりも大きくなるよう形成されている。そして、図15、16に示すように、間隙53d,53iを横切る接続部分54a,54bにおいて、形成体52を折り返すことにより発光体50’が形成される。このようにして形成された発光体50’は、図15に示すように、正面から見ると前のフィラメントの隙間に後ろのフィラメントが重なるように配置され、あたかも隙間は設けられていないかに思われるが、図16に示すように断面に約1mmの隙間55,55が設けられている。そして、発光体50’の発光面は表面であり、その表面は平面である一連のエレメント52a〜52kにより形成されている、と記載されている。
特開平3−102701号公報
特開平6−349458号公報
しかしながら、一般に、白熱電球が放射する電磁波は、約90%が赤外線であり、わずか10%の可視光線を放射するにすぎない。そのため、このような白熱電球のランプ効率は13[lm/W]程度と悪く、ランプ効率の向上という課題がある。ここで、ランプ効率は、ランプの消費電力1Wあたりで発生する光の量(光束)[lm]を意味し、光束とは、単位時間あたりに伝播される可視光線の量を、標準観測者の視感度に対して生ずる明るさの感覚で評価したものである。従って、ランプ効率がよいと、消費電力1Wあたりで得られる光の量は増し、省エネにもつながる。
また、レフ電球、すなわち、バルブの内側の表面の一部に反射膜を設け、フィラメントからランプ後方に放射する可視光線をその反射膜によりランプ前方に反射し、ランプ正面の照度を高め、明るさを必要とする空間に対してランプ効率がよい電球であっても、蛍光ランプに比べればランプ効率が遙かに悪く、レフ電球についてもさらにランプ効率を上げることが必要である。
また、特許文献2に記載されている発光体50’において、間隙53a〜53lの大きさは、発光体50’を形成しているリボンの幅(250μm)の整数倍であるため、それぞれ500μmである。また、発光体50’に設けられている各間隙55の大きさは1mmである。すなわち、各エレメント間の間隔はそれぞれ大きい。各エレメント間の間隔が大きいと、各エレメント間において希ガスは対流を起こすため、発光体50’に生じた熱が一部損なわれてしまう。そのため、発光体50’表面全体の温度は一定に保たれない。
一般に、フィラメント(特許文献2では発光体)に生じた熱がフィラメント表面全体を取り囲むことにより、フィラメント表面の温度は一定となり、そのようなフィラメントを備える電球はランプ効率が良い。従って、表面全体の温度を一定に保つことができない発光体50’を備える電球は、ランプ効率が悪いといえる。よって、特許文献2に記載されている発光体50’を備える電球についても、ランプ効率を上げることが必要である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成によりランプ効率がよく面発光可能な白熱電球及びその白熱電球用フィラメントを提供することにある。
本発明の白熱電球用フィラメントは、同一平面に配置される一本の帯形状のフィラメントであって、間隔をおいて並んで配置される並設部と、前記並設部を電気的直列に接続する接続部とを備え、前記並設部は、並設部の幅を1としたとき並設部の厚さが1/2以上であることを特徴とする。
ここで、同一平面とは、数学的に厳密な意味での平面を意味するのではなく、フィラメント加工や電球組立などにより多少の歪曲やずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な平面ということである。換言すると、フィラメントに電流を流すことにより熱が放射され、その熱がそのフィラメント全体を取り囲むように熱のさやを形成し、それにより商用上使用可能な程度にフィラメントの温度を一定に保つことができる程度に歪曲、ずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。
本発明の白熱電球用フィラメントでは、少なくともいずれか一組の前記並設部の間隔は、並設部の幅を1としたとき少なくとも5より小さい間隔であることが好ましく、また、前記並設部の幅が100μm以上であることが好ましい。
また、本発明の白熱電球用フィラメントは、表面にマイクロキャビティを備えていてもよい。
これにより、放射を抑制する波長を任意に選択することが可能となり、抑制されたエネルギーは可視光に供することができるため、ランプ効率が高いフィラメントを提供することが可能となる。
また、本発明の白熱電球用フィラメントの並設部は、第2の並設部を第1の並設部が囲むように配置されていても良い。
これにより、フィラメント近傍に熱が有効に蓄えられる、いわゆるシースが効率よく形成され、ランプ効率の向上を図ることが可能となる。
また、前記白熱電球用フィラメントは、最も外周に配置される並設部とこれと隣り合う並設部との間隔は、最外周の並設部の幅を1としたとき少なくとも5より小さい間隔であることとして良い。
並設部が並設部を囲んだ状態で配置される場合、その最外周部分の間隔のみ一定の条件を満たしておれば、それより内周に配置される並設部の間隔は任意に設定することが可能となり、フィラメント設計上の自由度を向上させることができる。
上述の作用効果は前記白熱電球用フィラメントを備えた白熱電球でも奏することができる。
本発明のフィラメント及び当該フィラメントを備えた白熱電球は、高いランプ効率を得ることができる。
本発明の実施の形態を説明する前に、白熱電球が電磁波を放射するメカニズムを説明する。
白熱電球は、タングステンなどの導電性材質からなるフィラメントと、フィラメントを取り囲むように設けられたバルブと、バルブの内部に封入された希ガスと、を備えている。
そして、フィラメントに電流を流すと、フィラメントは導電性材質からなるため電流をよく通し、それによりジュール熱が発生してフィラメントの温度はあがる。すると、導電性材質を構成する分子、その分子を構成する原子(以下、「導電性分子など」という。)は激しく熱振動するようになる。そして、フィラメントがある温度に達すると、熱振動により導電性分子などに蓄えられた熱エネルギーが電磁波として放射されることとなる(熱放射)。すなわち、白熱電球が点灯する。従って、フィラメントの温度が高くなればなるほど、導電性分子などは、激しく熱振動し、その結果、多量の熱エネルギーを放射する。放射される熱エネルギー量が多くなるとランプは明るくなり、その結果ランプ効率は上がる。すなわち、フィラメントに流れる電流量を多くすればするほど、白熱電球のランプ効率は良くなる。しかし、フィラメントに多量の電流量を流すことによりフィラメントの温度が非常に高くなると、導電性分子などは気化するため、フィラメントの寿命を縮めることとなる。そのため、希ガスなど、導電性分子などと化学反応をおこさない不活性ガスをバルブ内に封入し、フィラメントの気化を抑制している。
さらに、白熱電球のランプ効率を上げるためには、フィラメントから放射された熱(以下、単に「放射された熱」という。)の拡散を防止する必要がある、従来具体的に用いられているのはタングステンワイヤーをコイル状としたフィラメントを用い、コイル状フィラメントの隣り合う巻線同士の間隔(以下、単に「フィラメント間隔」という。)を小さくすることにより放射された熱の拡散を防止している。すなわち、コイル状フィラメントから放射された熱はフィラメント表面全体を取り囲むように熱のさや(以下、「シース」という。)を形成し、シースが形成されることによりフィラメントの温度は一定に保たれる。その結果、熱損失を抑えることができるため、白熱電球のランプ効率をあげることができる。
ところが、フィラメント間隔を小さくしすぎると、対向する位置に配置されたフィラメント間で放電が生じる。放電が生じると、放電をひきおこしたフィラメント、すなわちフィラメント間隔が過小となるように設けられたフィラメントのインピーダンスは低下し、フィラメントには過剰な電流が流れる。その結果、フィラメントは、温度が過度に上昇し、断線してしまう。フィラメントが断線すると、フィラメント全体に電流が流れないため、そのようなフィラメントを備えている白熱電球は点灯しない。
逆に、特許文献2に記載されている発光体50’のようにフィラメント間隔(特許文献2では間隙と記載されている)を大きくしすぎると、各フィラメント間で希ガスなどの不活性ガスが対流を起こす。そのため、放射された熱は、希ガスなどの不活性ガスの対流により拡散してしまい、フィラメント全体の温度は下がり、または、一定とならず、白熱電球のランプ効率は悪くなる。
以下に本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明は以下の実施形態に限定されない。
《実施形態1》
以下、実施形態1について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、白熱電球10の構造、各フィラメント間隔16及び各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係を説明する。なお、図1は本実施形態における白色電球10の模式図であり、バルブ12を形成しているガラスを透視した図である。また、図2は本実施形態のフィラメント11の一部を示す拡大図である。図3はフィラメント11の一部を示す斜視図である。
まず、白熱電球10の構造を説明する。
図1に示すように、白熱電球10は、薄膜からなるフィラメント11と、フィラメント11を取り囲むように設けられたバルブ12と、バルブ12の内部に封入されている希ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、フィラメント11の長尺方向に平行となるように設けられている内部導入線14と、を備えている。そして、内部導入線14は、フィラメント11の端部と口金13または口金13が設けられていない側のバルブ12の端部とをつなぐように設けられているサポート線14a,14aと、一端が口金13に設けられており他端がフィラメント11の端部と口金13が設けられていない側のバルブ12の端部とをつなぐように設けられているサポート線14bとにより構成されている。
フィラメント11は、図2、3に示すように、同一平面に並んで配置される帯状の並設部17と、前記平面に配置され前記並設部17を電気的直列に接続する接続部18とで構成されている。図4に示すように、並設部17の幅Wに対し並設部17の厚さHは1/2以上の関係となっている。また、接続部の幅と厚さの関係も同様である。具体的に本実施形態は、並設部17の幅Wは100μm、厚みHは50μmを採用しており、上記関係を満たしている。
また、フィラメント11はタングステンからなる。なお、フィラメントを構成する導電性材質は特に限定されるものではないが、タングステンなどの高融点の金属材料が好ましく、また、合金でもかまわない。
また、フィラメント11は、フィラメント11が含まれる同一平面内において複数回にわたって蛇行した形状であり、並設部17…が平行に並んで配置され、この並設部17を電気的に直列に接続するように接続部18が一体に形成されている。
また、並設部17…の外縁同士間の間隔、すなわち、フィラメント間隔16…は、互いに等しく、並設部17の幅を1としたとき5より小さい幅である。具体的に本実施形態では、フィラメント間隔16は100μmを採用しており、並設部17の幅との関係は1対1となっている。
そして、このように複数の平行に並んで配置される並設部17…により形成された平面がフィラメント11の発光面となる。すなわち、フィラメント11は同一平面上に形成されており、その平面上における各並設部17及び接続部18の表面が発光面となる。
なお、フィラメント11が含まれる同一平面内において複数回にわたって曲げられているとは、ジグザグまたは蛇行した道路のような形状を示すフィラメント11全体が実質的に一つの平面内に存在していることを意味する。すなわち、ジグザグまたは蛇行した道路のような形状を示すフィラメント11において、フィラメント11の表面における接線方向は、フィラメント11の表面の至るところにおいて異なるが、その全ての接線は同一平面上に存在し、その平面はフィラメント11が存在している面であることを意味する。また、同一平面とは、数学的に厳密な意味での同一平面を意味するのではなく、フィラメント11の加工や電球組立などにより多少の歪曲やずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。換言すると、フィラメント11に電流を流すことにより熱が放射され、その熱がフィラメント間隔16,16…も含むそのフィラメント11全体を取り囲むようにシースを形成し、それにより商用上使用可能な程度にフィラメントの温度を一定に保つことができる程度に歪曲、ずれ、ねじれなどが生じている状態も含む実質的な同一平面ということである。また、フィラメント間隔16については後述する。
本実施形態の場合、フィラメント11は、タングステンからなる導電性の短冊形シートに対して一般的に半導体デバイス製造工程で使用されるようなエッチングを行うことにより製造される。すなわち、1枚の短冊形の導電性のシートを用意し、そのシートに図2に示すジグザグ形状をパターンニングしてエッチングを行い、パターンニングされていない部分を溶失させ、図1に示すような形状のフィラメント11を製造する。
このように、エッチングを行うことによりフィラメント11を形成することにより、製造中に外部から力が加わってフィラメント11が破損したり、また、折り曲げられた部分の強度が低くなったりすることはない。さらに、機械加工や溶断などに比べてフィラメント11に歪みが入りにくく、応力による寿命の短縮化を抑止することができ、また、高い加工精度を確保することが可能となる。
なお、当該記載はフィラメント11を機械加工や溶断などで形成することを否定するものではなく、例えば、プレス加工などにより本発明にかかるフィラメントを製造しても同様の作用効果を示すことができる。
バルブ12はガラスにより形成されており、ガラスの種類としては、ソーダガラス、鋼質ガラス、石英ガラスが挙げられる。
バルブ12に封入されているガスは、主成分が希ガスであり、具体的には、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより形成されている。そして、希ガス及び窒素ガスは、白熱電球10が点灯している時に1気圧となるように、バルブ12に封入されている。このようにしておくと、バルブ12が誤って破損してしまった時、バルブ12を形成しているガラスの飛散を防ぐことができる。
口金13は、黄銅またはアルミニウム合金などにより形成され、ソケットと組み合わせられて白熱電球10を電源に接続する。
内部導入線14すなわちサポート線14a,14a及びサポート線14bは、銅線または鉄線にニッケルをメッキすることにより形成され、フィラメント11をバルブ12の内部空間内に固定している。そして、サポート線14a,14a及びサポート線14bは、フィラメント11への電流供給を行っている。具体的には、口金13を介して接続されている外部電源が供給する電流は、サポート線14a,14aを通ってフィラメント11に到達し、フィラメントに到達した電流は、サポート線14bを通って外部電源へ戻る。
続いて、各フィラメント間隔16について説明する。
上記の白熱電球の放射メカニズムによると、各フィラメント間隔16が小さすぎると、並んで配置される並設部17の間に放電が生じ、それによりフィラメント11は断線してしまう。従って、本実施形態にかかるフィラメント11の各フィラメント間隔16は、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きい間隔が設定されている。具体的には放電が生じないフィラメント間隔16は30μm以上と考えられており、本実施形態ではフィラメント間隔16は100μmを採用している。
ここで、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔とは、白熱電球10が点灯することにより並設部17間で放電が生じない程度に、並設部17…同士の間隔、すなわち各フィラメント間隔16が設けられていることを意味する。従って、この場合、並設部17…の外縁同士間で放電が生じる虞はなく、よってフィラメント11が断線することもない。そのため、白熱電球10は点灯する。
なお、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に上記圧力で封入した条件で、公差や点灯中の変形を考慮した場合、このフィラメント間隔16は40μm以上を確保することが好ましい。各フィラメント間隔16が40μm以上であれば、製造公差や熱歪みによる変形を吸収してなおかつ並設部17の外縁同士間で放電は生じないものとすることができる。よって、放電による損傷や熱の偏りを回避し得てフィラメント11は断線しない。
なお、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に封入した場合、各フィラメント間隔16が40μm未満、例えば30μmであっても、理想的には並設部17…の外縁同士間で放電は生じない。しかし、フィラメント間隔16を正確に設計値通りとなるようフィラメント11を製造することは困難である。よって製造されたフィラメント11において、フィラメント間隔16はある程度のばらつきを有する。すなわち、フィラメント間隔16の至るところにおいて、放電が生じない間隔である30μmの間隔を確保してフィラメント11を製造することは非常に難しい。そのため、製造時のばらつきによりフィラメント16を放電が生じない間隔、30μmよりも短い間隔ができてしまうと、その箇所では放電が生じ、上記の白熱電球の放射メカニズムよりフィラメント11は断線してしまう。その結果、ランプは点灯不可となる。そのようなことがおこらないようにするために、各フィラメント間隔16を40μm以上としているのであって、理論的には、各フィラメント間隔16が30μmであっても、並設部17…の外縁同士間で放電は生じない。
続いて、各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係を説明する。
上記の白熱電球の放射メカニズムより、フィラメント間隔16が小さすぎると、並設部17…の外縁同士間で放電が生じ、フィラメントのインピーダンスが下がり、過電流が流れ、その結果フィラメントの温度が上昇し、フィラメント11は断線してしまう。しかし、バルブ12に封入する窒素ガスの量を多くすることにより、具体的には窒素ガス圧を上げたり窒素ガスの組成比を大きくすることにより、フィラメント間隔16が小さくても、並設部17…の外縁同士間における放電を阻止することができる。窒素ガスの絶縁破壊電圧が高いため、並設部17…の外縁同士間における放電を防止することができるためである。一方、アルゴンガスはフィラメントの気化による短寿命化を防止するためにバルブ12に封入されるにすぎない。従って、バルブ12に封入するアルゴンガスの量を多くしてフィラメント間隔16を小さくすると、上記の白熱電球の放射メカニズムに示すように、並設部17…の外縁同士間で放電が生じ、それによりフィラメント11は断線してしまう。このこと、すなわち、フィラメント間隔16が小さくても窒素ガスの量を多くすることにより並設部17…の外縁同士間における放電を阻止することができることは、パッシェンの法則、すなわち、絶縁破壊電圧Vは電極間の距離dと気体の圧力pとの積pdの関数で表されるという法則を反映している。ここで、絶縁破壊電圧Vはこれ以上の電圧がかかると電極間の気体が絶縁破壊してしまう電圧を意味し、アルゴンガスの絶縁破壊電圧Vに比べ窒素ガスの絶縁破壊電圧Vは大きな値を示す。また、電極間の距離dはフィラメント間隔16を意味する。そして、パッシェンの法則より、絶縁破壊電圧Vの値が変わらない範囲内で窒素ガスの圧力pを大きくすると、電極間の間隔d、すなわちフィラメント間隔16を小さくすることができ、具体的には、30μm未満にすることが可能である。これにより、フィラメント間において放電が生じることなくフィラメントの間隔16を小さくすることができる。しかし、窒素ガス圧を上げすぎたり窒素ガスの組成比を大きくしすぎたりすることによりバルブ12内に多量の窒素ガスを封入すると、ランプ効率は悪くなる。よって、バルブ12に窒素ガスのみを封入することはできず、フィラメント間隔16を限りなく小さくすることは不可能であり、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔16は、30μm以上とすることが好ましい。
一方、各フィラメント間隔16が大きすぎると、フィラメント間隔16を含むフィラメント11表面全体を包み込むようにシースは形成されないか形成されてもランプ効率の向上に寄与しない。具体的には並設部17の幅の5倍以上であればシースは形成されないか形成されてもランプ効率の向上に寄与しない。また好ましいフィラメント間隔16は並設部17の幅の2倍以下であり、さらに好ましくは1倍すなわち並設部17の幅とフィラメント間隔16とが同等以下であることが好ましい。
図5は、並設部17の幅を100μmとしたときのフィラメント間隔16とランプ効率の関係をシミュレーションした結果を示したグラフである。なお、当該シミュレーションは、フィラメント間隔16を100μm、厚さを50μmとして作成されたフィラメントを用いて実際に実験された実測値に基づいてなされたものである。また、同図のグラフは、フィラメント間隔16が100μm、厚さ50μmのときのランプ効率を1として規格化したグラフであり、グラフ中に示した上の線上に付されている点(■)はフィラメント11の厚さが50μmの場合のシミュレーション結果を、下の線上に付されている点(◆)は厚さが25μmの場合のシミュレーション結果を示している。
同図から解るように、フィラメント間隔16が並設部17の幅の5倍(本グラフではフィラメント間隔16が500μm)より小さくなると、飛躍的にランプ効率が高くなるのが解る。また、フィラメント11の厚さがフィラメント11の幅の1/2であれば前記ランプ効率の飛躍的向上が望めるが、フィラメント11の厚さがそれ未満であるとランプ効率の飛躍的向上は望めない。一方、フィラメント11の特に並設部17の厚さは上記関係を満たせば特に上限は無いが、加工の容易さや歪みの発生確率を考慮すればフィラメント11の幅の5倍よりも小さければ(すなわち500μmよりも小さければ)効率が上がり始め、2倍以下(すなわち200μm以下)であれば効率の向上度合がほとんど飽和しているので、当該範囲が好ましい範囲となる。さらに、エッチングによりフィラメント11を形成するのであれば等倍以下(すなわち100μm以下)であれば、効率の向上効果が一定となり好適である。
以上から、フィラメント間隔16の最小は、放電の観点からは30μm以上、加工性の観点からは40μm以上が好ましい。一方、フィラメント間隔16の最大は、フィラメント11の幅の5倍未満、好ましくは2倍以下、さらに好適には1倍以下である。
本実施形態においては、各フィラメント間隔16が100μmに設定されており、上記好適な範囲内に収まっている。従って本実施形態のフィラメント間隔16では、希ガス及び窒素ガスの対流は、フィラメント11の近傍で起こしにくくなっている。従って、放射された熱が拡散することはなく、フィラメント11全体は、シースに包み込まれ一定の温度に保たれ、高いランプ効率を得ることができる。
なお、フィラメント11の幅は100μm以上であることが好ましい。これはランプ効率からの要請ではなく、フィラメントの機械的強度を確保するためである。すなわち、タングステン製のフィラメントを100μm未満にすると、通電時の発熱によるフィラメント11の変形が激しくなり、所定のフィラメント間隔16を維持することが困難になるからである。従って、加工方法やフィラメントの材質などにより、フィラメントの機械的強度(特に熱による変形)が向上すればフィラメントの幅をさらに小さくすることは可能である。
以上より、本実施形態のフィラメント11を備えた白熱電球10を点灯しても、各フィラメント間隔16が点灯時に平行に配置された並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きいため、並設部17…の外縁同士間で放電が生じることはなく、よって、フィラメント11は断線しない。一方、各フィラメント間隔16が並設部17の幅と同じ100μmであるため、放射された熱はフィラメント間隔に存在する希ガス及び窒素ガスにより拡散してしまうことはない。そのため、白熱電球10はランプ効率が良い。具体的には、本実施形態におけるフィラメント11を備えた白熱電球10のランプ効率の値は、15〜16[lm/W]であり、従来の白熱電球のランプ効率の値(13〜14[lm/W])よりも大きい。
なお、ランプ効率を上げるために、封入ガスをクリプトンにしても良い。なお、封入ガスをクリプトンにした電球等の開発や、その他様々な手法や工夫がなされているが、本実施形態のように、ランプ効率が約2割程度も上昇した電球、または上昇させる方法は未だ開示されていない。
以下に、本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態におけるフィラメント11の各フィラメント間隔16は、点灯時に並設部17…の外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きい100μmに設定されている。従って、このフィラメント11を備える白熱電球10を点灯しても、並設部17…の外縁同士間で放電が生じることはない。そのため、放電をひきおこした並設部17…において、インピーダンスの低下を招来することはなく、よって過剰に電流が流れることはなく、フィラメント11が断線することはない。すなわち、白熱電球10は点灯不可とはならない。
具体的には、バルブ12にアルゴンガス90%と窒素ガス10%とで構成される気体を封入した場合は、フィラメント間隔の下限は30μm、加工精度や熱歪みなどを考慮して各フィラメント間隔16は40μmであればよい。一方、各フィラメント間隔16の上限はフィラメント11の幅が100μmであることから500μmである。従って、フィラメント間隔16に100μmを採用する本実施形態において、希ガス及び窒素ガスが対流をおこすことはない。よって、放射された熱が希ガス及び窒素ガスの対流により拡散することはなく、シースはフィラメント11表面全体を取り囲むように形成されたままである。
以上より、本実施形態にかかるフィラメント11を備えた白熱電球10では、フィラメント11は断線することがなく、且つ放射された熱が拡散することもない。従って、本発明のフィラメント11を備えた白熱電球10は完全に面状に発光するにもかかわらずランプ効率がよい。
また、フィラメント11は、図1、2、3に示すように帯状に形成されており、フィラメント11が含まれる面内において複数回にわたって屈曲しているだけである。そのため、フィラメント11の構成は簡単である。そのうえ、フィラメント11を製造する際には、長尺部材を複数回にわたって折り曲げるような機械加工を施すわけではなく、短冊状のタングステンシートに対してエッチングを行えばよい。そのため、製造中にフィラメントが破損することはなく、容易かつ精度良くに製造することができる。
なお、本実施形態のフィラメントについて、並設部17…は平行に設けられているとしたが、これに限定されることはない。また、各フィラメント間隔16は、それぞれ等しいとしたが、これに限定されることはない。並設部17…がフィラメント間隔16を設けて配置されており、且つ、フィラメント間隔16が至る所において点灯時に対向するリボンの外縁同士間で放電が生じる間隔(例えば30μm)よりも大きくフィラメント11の幅の5倍より小さければよい。具体的には、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ12に封入し、フィラメント11の幅を100μmとした場合には、フィラメント間隔16が30μm以上500μm未満、好ましくは40μm以上300μm未満、さらに好ましくは50μm以上200μm未満となるように並設部17…を配置すればよい。
また、本実施形態では、希ガスとしてアルゴンガスを用いたが、これに限定されることはなく、クリプトンガスやキセノンガスを用いてもよい。クリプトンガスやキセノンガスを用いると、アルゴンガスを用いる場合に比べ、フィラメント11の寿命は延びる。
《実施形態2》
以下、実施形態2について図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、主に、白熱電球20の構造を説明する。なお、図6は本実施形態における白色電球20の模式図であり、バルブ22を形成しているガラスを透視して見た図である。また、図7は本実施形態にフィラメント21の拡大図である。
本実施形態における白熱電球20は、上記実施形態1における白熱電球10と異なり、フィラメント21の外形は円形であり、それに伴って、バルブ22及び内部導入線24の形状が異なる。それ以外の点に関しては、上記実施形態1における白熱電球10及びフィラメント11と同一である。そのため、上記実施形態1と重複する部分については、詳細な説明を省略する。
図6に示すように、白熱電球20は、薄膜からなるフィラメント21と、フィラメント21を取り囲むように設けられたバルブ22と、バルブ22の内部に封入されている希ガス及び窒素ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、口金13とフィラメント21とを連結するように設けられている内部導入線24と、を備えている。
フィラメント21は、図7に示すように、幅が100μm厚みが50μmの導電性の並設部27と、これを電気的に直列に接続する接続部28と、これら並設部27及び接続部28を電気的直列に外部に接続するための導出部29で構成されている。また、フィラメント21の材質は実施形態1と同様タングステンである。
並設部27は、並設部27が含まれる同一平面内において等間隔の同心円上に並べて配置されており、最外周の並設部27がその内側の並設部27を囲んでいる。また、複数回にわたって曲げられて蛇行するように、接続部28によって電気的に直列に接続され、導出部29によりこの端部を同一平面内において並設部27の円形の囲みから導出されている。そして、フィラメント21のうち最外形部分を形成している並設部は、その外周円の半径が1mmの円の中に収まるように形成されている。また、フィラメント間隔26…は互いに等しい。以上のように形成されたフィラメント21が存在する面が発光面となる。
そして、各フィラメント間隔26は、上記実施形態1における各フィラメント間隔16と同一の100μmに設定されている。また、接続部28と導出部29との間隔も100μmに設定されている。すなわち、各フィラメント間隔26は、点灯時に対向する並設部27…の外縁同士間や接続部28と導出部29との間で放電が生じる間隔よりも大きい。そのため、これらフィラメント同士間で放電が生じることはなく、よってフィラメント21が断線することはない。また、これら間隔は100μmとしているため、並設部27…の外縁同士間の間隙を含めたフィラメント21全体の周囲にはシースが形成される。以上より、本実施形態における白熱電球20はランプ効率がよい。
また、各フィラメント間隔26とバルブ22に封入されているガスの組成比との関係は、上記実施形態1における各フィラメント間隔16とバルブ12に封入されているガスの組成比との関係と同一である。すなわち、バルブ22に封入する窒素ガスの量を増やすと、フィラメント間隔26が小さくても対向する並設部27…の外縁同士間における放電を抑制することができ、その結果、フィラメント間隔26を40μm未満とすることができる。しかし、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔26は、40μm以上とすることが好ましい。
以下に、本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態おける白熱電球20及びフィラメント21が奏する効果は、上記実施形態1における白熱電球10及びフィラメント11が奏する効果に付け加え、以下に示す効果を奏する。すなわち、フィラメント21は等間隔の同心円上に円形領域を取り囲むように配置されるものであるため、上記実施形態1のフィラメント11のような長尺なフィラメントに比べ、バルブ22に封入されたガスの対流による熱損失がより少なくなる。従って、白熱電球20は白熱電球10よりもランプ効率がよい。また、フィラメント21の外形が円形であるためこれを取り囲むバルブ22の形状も従来の白熱電球と同様の半球状とすることができ、局所的に明かりが必要なときには、白熱電球20を用いることができる。すなわち、白熱電球20は、スポットライト的に用いることができる、という効果を奏する。また、更に、フィラメント20の発光部が平面であり一点に集中しているためレンズ光学系等との組み合わせた集光照明にも有効である。
上記実施形態1におけるフィラメント11と同様、対向する並設部27…がフィラメント間隔26を設けて配置されており、且つ、フィラメント間隔26が至る所において点灯時に対向するリボンの外縁同士間で放電が生じる間隔よりも大きく500μm未満であればよい。そして、アルゴンガス90%と窒素ガス10%とにより構成されるガスをバルブ22に封入した場合には、フィラメント間隔26が30μm以上500μm未満となるように対向する並設部27…を配置すればよい。
なお、本実施形態のフィラメントについて、対向する並設部27…は平行に設けられているとしたが、これに限定されることはない。また、各フィラメント間隔26は、それぞれ等しいとしたが、これに限定されることはない。例えば、図8に示すように、最外周に位置するフィラメント間隔26のみ100μmに設定され、内周に行くほどその間隔を広げたものでもかまわない。このように並設部27を配置しても有効なシースが形成される。また、フィラメント11の全体的形状は円形である必要はなく、三角形や四角形などの多角形や、楕円や長円、星形やハート形など任意の形状を採用しうる。
《実施形態3》
本実施形態の白熱電球は、フィラメントにマイクロキャビティを形成した白熱電球である。なお、本実施形態の説明をする前に、マイクロキャビティについて説明する。
特許文献1には、白熱電球のランプ効率を上げる手段として、発光面であるフィラメントの表面にマイクロキャビティ(微小な穴)を形成し、そのマイクロキャビティによる空洞量子効果を利用することにより、フィラメントから放射される電磁波の波長選択性を高めることができる、すなわち赤外線の放射を阻止することができるという方法が開示されている。この方法では、マイクロキャビティを、一辺の長さが可視光線の波長程度である正方形を底面とし深さが可視光線の波長よりも長い角柱状の空洞としている(特許文献1)。例えば、フィラメントの表面に、底面が一辺350nmの正方形で深さが350nmの20倍である7000nm程度のマイクロキャビティを設けると、700nm以上の波長を有する電磁波がフィラメントの外部へ放射されることを抑制することができる、というものである。すなわち、フィラメントの表面にマイクロキャビティを形成すると、そのマイクロキャビティの底辺の長さの2倍の長さよりも長い波長を有する電磁波の放射は阻止され、そのマイクロキャビティの底辺の長さの2倍の長さよりも短い波長を有する電磁波のみがフィラメント外部へ放射される。従って、マイクロキャビティの底辺の長さを可視光線の波長の半分程度とすることにより、赤外線の放射を阻止することができ、その結果、ランプ効率はあがる、と記載されている。
発光面であるフィラメントの表面に、マイクロキャビティを形成する方法として、レーザ光を用いる方法と陽極酸化膜を用いる方法とがある。レーザ光を用いる方法では、まず、複数の孔を持つマスクを用意し、そのマスクをレーザ光で照明する。次に、光学系を用いてそのマスクを透過したレーザ光によるマスク像をフィラメント表面に結像する。すると、レーザ光が照射されたフィラメントは削られる。これにより、フィラメント表面に複数のマイクロキャビティ(マイクロキャビティアレイ)が形成される。また、陽極酸化膜を用いる方法では、まず、微細孔を有する陽極酸化膜を用意し、母材金属表面に設ける。次に、この微細孔の内部を埋めるように、レプリカとなる金属層をCVD法などにより母材金属表面に形成する。そして、母材金属および陽極酸化膜を除去する。これにより、陽極酸化膜の微細孔の構造に対応する凹凸形状がレプリカ金属層の表面に転写される。その後、フィラメントを形成する導電性薄膜(通常、ダングステン)をこのレプリカ金属層表面にCVD法などにより形成した後、レプリカ金属層を除去する。これにより、フィラメントを形成する導電性薄膜の表面に陽極酸化膜に形成されている微細孔が転写され、フィラメント表面にマイクロキャビティアレイを形成することができる。
しかしながら、レーザ光を用いる方法において、マスクに形成されている複数の孔により分割されたレーザ光を用いて複数の孔のパターンをフィラメント表面に精度よく結像させるためには、マイクロキャビティを形成するフィラメントの表面は平面でなければならない。また、陽極酸化膜を用いる方法において、レプリカ金属層表面にCVD法などにより導電性薄膜を形成するためには、マイクロキャビティを形成するフィラメントの表面は平面でなければならない。そのため、フィラメントの発光面が平面でないワイヤーからなるコイル状フィラメントの表面に、マイクロキャビティを形成することは困難であった。
これに対して、特許文献2に記載されている発光体50’の発光面である表面は一連のエレメント52a〜52kにより形成されており、一連のエレメント52a〜52kは平面である。よって、発光体50’の発光面は平面であり、発光体50’の発光面に対してマイクロキャビティを形成することは可能である。ここで、例えば、電圧が24Vであり、パワーが100Wである電球を製造するためには、一般的なコイル状フィラメントであれば、径が0.2mmであり長さが30cmの大きさを有する物を用い、特許文献2に開示されているフィラメント50であれば、幅が300μmであり厚さが100μmであり長さが30cmの大きさを有する物を用いればよい。従って、特許文献2に開示されているフィラメント50はそれほど大きくしなくても、コイル状のフィラメントと同程度のパワーを示す。よって、発光体50’の発光面にマイクロキャビティを形成すれば、コイル状フィラメントよりもランプ効率の良い電球を提供できる、と推測される。
しかしながら、特許文献2に開示されているフィラメント50の発光面にマイクロキャビティを形成するためには、例えば、レーザ光を用いる場合は一辺の長さが300μmであるマスクを用いるため、幅が300μmであり厚さが100μmであり長さが30cmであるフィラメント50では、上記の工程を2000回行う必要がある。従って、非常に手間がかかるとともに時間もかかる。また、陽極酸化膜を用いる場合、長さが30cm以上の導電性薄膜を加工できるCVDチャンバが必要となる。そのため、現状のCVDチャンバを用いて、発光体50’の発光面にマイクロキャビティを形成することは困難である。いずれにしろ、発光体50’の発光面は平面であるにも関わらず、その発光面にマイクロキャビティ加工を施すことは困難である。そのため、発光体50’を備えた電球のランプ効率を上げることはできない。
さらに、たとえ発光面の大きなフィラメントに対してマイクロキャビティを形成する技術が考案され、発光体50’の発光面に対して難なくマイクロキャビティを形成することができたとしても、発光体50’における各エレメント間の間隔、間隙53a〜53l及び間隙55,55は、背景技術の欄に記載したように500μmと非常に大きい。そのため、各エレメント間では希ガスが対流を起こし、それにより発光体50’上に生じた熱の一部は損なわれてしまう。従って、発光体50’に形成されるシースは、間隙53a〜53l及び間隙55,55において、分断されることとなり、発光体50’表面全体を覆うようには形成されない。以上より、発光体50’の表面にマイクロキャビティを形成しても、そのフィラメントを備える電球はランプ効率が良くない。
本実施形態では、表面にマイクロキャビティが形成されたフィラメント31、及び、マイクロキャビティの形成方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、図9は本実施形態における白色電球30の模式図であり、バルブ12を形成しているガラスを透視した図である。また、図10、11は本実施形態におけるフィラメント31の拡大図である。なお、理解を容易にするためマイクロキャビティ35をフィラメント31上に図示しているが、実際のマイクロキャビディはフィラメント31に対して非常に小さい。また、図12は図10のVII−VII線断面図の一部を拡大した図である。
なお、マイクロキャビティは、本発明にかかるいずれのフィラメントに対しても形成することができ、その効果を奏することが可能である。例えば、図7や図8に示す同心円上に並べられたフィラメントに対しても適用することができる。また、マイクロキャビティを形成したことにより得られる効果なども同一である。
図9に示す本実施形態における白熱電球30は、上記実施形態1における白熱電球10と異なり、フィラメント31の表面にマイクロキャビティ35が形成されているが、マイクロキャビティ35は図示出来ないほど小さいので図面上は図1との相違はない。そのため、上記実施形態1と重複する部分については、詳細な説明を省略する。
白熱電球30は、薄膜からなるフィラメント31と、フィラメント31を取り囲むように設けられたバルブ12と、バルブ12の内部に封入されている希ガス及び窒素ガス(不図示)と、バルブ12に設けられている開口部を封じるように設けられている口金13と、フィラメント11の長尺方向に平行となるように設けられている内部導入線14と、を備えている。
フィラメント31は、図9に示すように、幅が100μm厚みが50μmの帯状であり、タングステンにより形成されている。そして、フィラメント31は、図9に示すように、同一平面内において複数回にわたって蛇行した形状であり、並設部37…が平行に並んで配置され、この並設部37を電気的に直列に接続するように接続部38が一体に形成されている。そして、図12の断面図で示すように、フィラメント31の表面には、複数のマイクロキャビティ35,35,…が形成されている。ここで、マイクロキャビティとは微小な穴のことあり、本実施形態の場合は円柱形状穴である。各マイクロキャビティ35の深さはその開口直径の2倍以上であればよい。そして、フィラメント31の表面にマイクロキャビティ35を形成すると、マイクロキャビティ35の開口径の2倍よりも長い波長を有する電磁波の放射は阻止され、マイクロキャビティ35の開口径の2倍よりも短い波長を有する電磁波のみがフィラメント31外部へ放射される。従って、マイクロキャビティ35の開口径を可視光線の波長の半分程度とすることにより、特に開口径を350nm以上400nm以下とすることにより、赤外線の放射を阻止することができ、その結果、ランプ効率は良くなる。なお、マイクロキャビティは、円柱形状を示したが、角柱形状でも良い。この場合、1辺の長さが350nm以上400nm以下であることが好ましい。
マイクロキャビティ35の形成方法は、従来のレーザ光を用いる方法または陽極酸化膜を採用することができる。なお、レーザ光を用いる方法では、エッチングによりフィラメントを製造しながら、マイクロキャビティ35を形成することができるため、フィラメント31bの表面に対して、非常に容易にマイクロキャビティ35を形成することができる。なお、マイクロキャビティ35をエッチングに形成することも可能であり、フィラメントの形状をエッチングで形成している際にマイクロキャビティ35の形成を同時に行うことも可能となる。
そして、本実施形態においても、バルブ12に封入する窒素ガスの量を多くすると、フィラメント間隔36を40μm未満とすることができが、各種のランプ特性のバランスを考えると、フィラメント間隔36は、40μm以上とすることが好ましい。このようにフィラメント31自体の形状は前記フィラメントと変わるところがない。
以下に本実施形態が奏する効果を示す。
本実施形態おけるフィラメント31が奏する効果は、上記実施形態1が奏する効果に付け加え、以下に示す効果を奏する。すなわち、フィラメント31の表面にはマイクロキャビティ35が形成されている。従って、本実施形態における白熱電球30は、上記実施形態1における白熱電球10よりも更にランプ効率がよい、という効果である。
上記実施形態1の白熱電球10と同一の構造を示す白熱電球(以下、「電球A」という。)と、タングステン線からなる二重コイルフィラメントを備えた60Wシリカ電球(品番L100V57W)(以下、「電球B」という。)と、単なる長方形のタングステンシートをフィラメントとして備えた電球(以下、「電球C」という。)と、を準備した。ここで、電球Aが備えているフィラメントは、厚さ50μm、幅100μm、長さ20mm、フィラメント間隔は100μmに設定されている。また、電球Cが備えているフィラメントは、厚さ50μm、幅100μm、長さ20mmの短冊状のタングステンシートである。また、電球Cが備えているフィラメントは曲げられておらず直線状である。また、電球A,B,Cには、各電球を点灯したときに1気圧となるよう少なくとも希ガスが封入されている。
本実施例では、3つの電球A,B,Cのランプ効率を比較した結果と、電球A,Cが備えている各フィラメントの長尺方向における温度分布を解析した結果と、を示す。
まず、3つの電球A,B,Cについて、フィラメントの分布温度が2800Kとなるように点灯し、ランプ効率を比較した。表1にその結果を示す。
表1より、電球Aのランプ効率が最もよいことがわかる。
以上より、電球Aは、ランプ効率の値が現行の電球(電球B)のランプ効率の値よりも1割から2割大きく、現行の電球(電球B)に比べ商用上の利用性が非常に高いといえる。また、フィラメント表面にマイクロキャビティを形成しなくてもランプ効率の値が1割から2割大きくなったため、ランプ効率のよい電球を非常に容易に形成することができるといえる。
次に、電球A,Cに対して熱解析シミュレーション(CD−adapco JAPAN製 StarCD ver3.150)を行い、電球A,Cの各フィラメントの長手方向における温度分布を調べた。ここで、電球Aには、0.8A,1.0A,1.2Aの電流を流した。図13にその結果を示す。なお、図13の横軸は、フィラメント長尺方向におけるフィラメントの中点からフィラメントと内部導入線との接合点までの距離を示し、縦軸は、各点における温度を示す。また、実線は、それぞれ電球Aに0.8A,1.0A,1.2Aの電流を流した場合の熱解析の結果を示し、破線は、電球Cの熱解析の結果を示す。
図13より、電球Aに0.8A,1.0A,1.2Aの電流を流した場合(いずれも実線)は、フィラメントの中点からフィラメントと内部導入線との接合部分にかけて、温度はほとんど一定であることがわかる。なお、各グラフにおいて周期的に温度が低下しているのは、フィラメント間隔に存在する希ガスの温度が示されていると考えられる。これに対して、電球C(破線)については、フィラメント中点からフィラメントと内部導入線との接合部分にかけて、温度は単調に減少していることがわかる。
以上より、電球Cのフィラメントにより放射された熱は、バルブに封入された希ガス及び窒素ガスの対流により拡散してしまい、その結果、電球Cのフィラメント表面全体にはシースが形成されていないといえる。一方、電球Aのフィラメントにより放射された熱は、バルブに封入された希ガス及び窒素ガスの対流により拡散することはなく、よって、電球Aのフィラメント表面全体にはシースが形成されているといえる。そのため、ランプ効率は、電球Aの方が電球Cよりもよい。従って、電球Aが備えるフィラメントのように、フィラメント間隔が100μmとなるように複数回にわたって曲げられたような構造を示すフィラメントでは、表面全体にシースが形成されているため温度を一定に保つことができ、その結果、そのようなフィラメントを備える白熱電球すなわち電球Aはランプ効率が良い電球であるといえる。
以上のように、本発明にかかる白熱電球は、白熱電球が備えるフィラメントに電流を流すことにより白色光を発する電球、特に照明用電球などとして利用可能である。また、本発明にかかる白熱電球用フィラメントは、電流を流すことにより白色光を発する白熱電球用フィラメント、特に照明用電球などに用いるフィラメントとして利用可能である。また、本発明にかかる白熱電球用フィラメントはマイクロキャビティなどの表面加工用の基板フィラメントとしても利用可能である。
実施形態1における白熱電球の側面図である。
同実施形態のフィラメントの一部拡大平面図である。
同実施形態のフィラメントの一部拡大斜視図である。
同実施形態のフィラメントの断面図である。
フィラメント間隔とランプ効率との関係を示すグラフである。
実施形態2における白熱電球の側面図である。
同実施形態のフィラメントの平面図である。
フィラメントの変形例を示す平面図である。
実施形態3における白熱電球の側面図である。
マイクロキャビティを備えたフィラメントを模式的に示す平面図である。
同フィラメントの模式的斜視図である。
図10のVII−VII線断面の一部を拡大した断面図である。
熱解析結果を示すグラフである。
従来例におけるフィラメントの断面図である。
従来例における発光体の正面図である。
従来例における発光体の断面図である。
符号の説明
10、20 白熱電球
11、21 フィラメント
12、22 バルブ
13 口金
14 内部導入線
14a、14b サポート線
16、26、36フィラメント間隔
17、27、37並設部
18、28、38接続部
29 導出部
35 マイクロキャビティ
本発明の白熱電球用フィラメントは、同一平面に配置される一本の帯形状のフィラメントであって、間隔をおいて並んで配置される並設部と、前記並設部を電気的直列に接続する接続部とを備え、前記並設部は、並設部の幅を1としたとき並設部の厚さが1/2以上5以下であり、少なくともいずれか一組の前記並設部の間隔は、30μm以上であって、かつ、並設部の幅を1としたとき5より小さい間隔であることを特徴とする。
本発明の白熱電球用フィラメントでは、少なくともいずれか一組の前記並設部の間隔は、並設部の幅を1としたとき2以下の間隔であることが好ましく、また、前記並設部の幅が100μm以上であることが好ましい。
また、前記白熱電球用フィラメントは、最も外周に配置される並設部とこれと隣り合う並設部との間隔は、最外周の並設部の幅を1としたとき5より小さい間隔であることとして良い。