JPWO2005051203A1 - ドプラ速度検出装置及びそれを用いた超音波診断装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、クラッタ信号をよく峻別しながらも、誤差を抑えた速度検出・分析を可能とするドプラ速度検出技術を実現し、また、それを用いた超音波診断装置を提供する。被検体に対してパルス波を複数回送受信する手段と、受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物に関する速度分析を行う速度分析手段とを備えたドプラ速度検出装置において、前記速度分析手段を、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の運動反射物に関して符合つき速度信号を得るよう構成する。

Description

本発明は、超音波を生体に対して送受信することにより、生体内部の血流など運動する反射物を検出し、速度の分布や速度の空間分布を表示する医療診断用の超音波ドプラ血流計や血流描画装置等の超音波診断技術に関する。
パルス・ドプラ装置では、対象物に対してパルス状の超音波や電磁波などの波を複数回送受信し、受信された図1のような複数のエコー信号について、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい着目時刻の信号を、送信時刻の順番にならべた時系列信号を解析することにより、運動する物体に関する速度などの情報を得る。最も一般的な信号処理方法としては、これらの受信信号を直交検波し、複素時系列信号として解析する。このようなパルス・ドプラ装置は、生体内部の血流などを検出・描画する超音波診断装置、雨雲などを検出・描画する気象レーダー、飛行物体を検出する航空レーダーなどとして広く用いられている。
もし、反射物が1つしか存在しない場合には、上記の時系列信号の位相回転速度λΔΦ/Δtすなわち符合つき角周波数から、反射物が送受信器に近づく、あるいは遠ざかる運動速度vを、次式のように容易に求めることができる。
Figure 2005051203
Figure 2005051203
ここで、λは波長、Δtはパルス送信の時間間隔、ΔΦは位相回転角である。近づく場合には、vの符合が正、遠ざかる場合が負となる。
ところが、上記のような実際のパルス・ドプラ装置の受信エコー中では、静止反射物によるエコー信号、いわゆるクラッタ信号の強度が、着目する運動反射物によるエコー信号の強度よりも、一般に、数桁以上大きい。このため、上記の時系列信号に単純に(1)式の処理を適用しただけでは、運動反射物を検出することはできない。そこで、実際のパルス・ドプラ装置は、静止反射物によるエコー信号を抑圧し、運動反射物によるエコー信号を相対的に強調するMTI(Moving Target Indicator)処理とよばれる信号処理を行った後に、速度の検出あるいは分析を行うよう構成されている。
また、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and Frequency Control,Vol.42,927−937頁(1995年)には、Polynomial Regression Filter(多項式フィット・フィルタ)が提案されている。これは、時系列信号に、0次式(定数)、1次式、2次式、・・・、M次式を順次最小2乗フィットし、フィットした成分を引き去ることにより、元の時系列信号のもつドリフト成分を除去する処理である。
MTI処理として最もよく知られているのは、時間領域において畳み込み積和で表現される通常の低域遮断フィルタを用いる処理である。この処理には次の欠点がある。
1)N個の時系列データ点を入力とする低域遮断フィルタを用いる場合、後段の速度検出・分析処理部に入力されるデータ点が(N−1)個目減りする。
2)急峻な遮断特性のフィルタを得にくい。
静止反射物によるエコー信号も、実際には、時間軸上で完全に静止しているわけではなく、途中の媒質のゆらぎや、医療用超音波診断装置の場合には、血流以外の静止臓器の遅い動きのために、ドリフトする。従って、静止反射物によるエコー信号の周波数成分は、位相回転速度ゼロの直流成分だけでなく、位相回転速度がゼロでない低周波成分を有しており、運動反射物によるエコー信号を保ちながら、これを除去する遮断特性が必要で、上記2)が問題となる。N回の送受信により得られるN点の時系列信号から速度検出・分析処理をするとき、上記1)は、この種類のフィルタを用いると、実際に速度検出・分析演算に用い得るデータ点が(N−N+1)点に減ってしまうことを意味する。これは、医療診断用超音波血流描画装置のように実時間性が重要な応用では、望ましいことではない。
この問題を解決する処理としては、上述したPolynomial Regression Filter(多項式フィット・フィルタ)が提案されている。この処理は、N点の入力時系列信号にN×Nの行列を掛けることで表現される。従って、出力信号として同じN点の時系列信号が得られ、
1)データ点の目減りがない。
また、その低域遮断特性は、フィットする最大次数Mの大きさによるが、
2)同等の遮断周波数をもつ上記の従来型フィルタと比較すると、はるかに急峻な遮断特性をもつ。
ところが、この多項式フィット・フィルタによる処理の後段において、上記(1)式に表現される種類の従来方式により、運動物体の速度の検出・分析を行うと、遮断周波数の近くで、速度演算誤差が、従来型フィルタと比較しても大きくなってしまうという問題点がある。このため、検出・分析結果としての速度の精度がある程度要求される場合、多項式フィット・フィルタの急峻な遮断特性により、低域まで伸ばした部分の周波数帯域にある運動物体の信号を、結局、使うことができなくなってしまう。すなわち、この場合には、上記特長の2)を充分に活かすことができない。
そこで、本発明は、現状のパルス・ドプラ装置が抱える上述のような問題に鑑み、クラッタ信号をよく峻別しながらも、誤差を抑えた速度検出・分析を可能とするドプラ速度検出技術を実現し、また、それを用いた超音波診断装置を提供することを目的とする。
本発明による上記課題の本質的解決を目指し、まず、クラッタ信号を遮断するMTIフィルタの機能とその必要性について、考察を深めてみる。具体例としては、N点の時系列複素信号から速度分析を行う場合を考える。このような、パルス・ドプラ速度分析用として典型的な時系列複素信号は、受信されたエコー信号に90°位相の異なる2つ搬送周波数信号を乗じて得られる1組の信号を、虚数単位を係数として線型結合して複素信号とし、この信号の、各々のパルス送信時刻を基準とする時相の等しい部分を、送信時刻の順番にならべることにより得られる。
このような離散的時系列信号のもつ周波数あるいは位相の分析における常套手段は、離散的フーリエ展開である。具体的には、n=1,・・・,Nとならんだ時系列信号を、周波数を表す指数k=−N/2,・・,0・,・・,N/2の複素正弦波系
Figure 2005051203
で展開する。jは虚数単位である。負のkは遠ざかる向きの速度、正のkは近づく向きの速度に対応する。k=±N/2はナイキスト限界であり、従って、正負が区別されないので、(2)により表される(N+1)個の複素正弦波関数のうち独立なものはN個であり、これらは、直交関数系を形成している。
反射物が1つしか存在せず、それがナイキスト限界範囲の一定速度で運動している場合を想定し、運動速度の関数として、上記展開により得られる離散的フーリエ展開係数を計算し、N=8の場合について、その絶対値を図2にプロットした。横軸は、運動速度に対応する位相回転速度を、パルス送信の時間間隔の逆数PRF(Pulse Repetition Frequency)の2π倍を単位として表示した。図2では、展開係数を表す8個の関数を重ねて図示したが、そのうち4個ずつをそれぞれ見分けやすい線により、図3および図4に示した。
送信時間間隔のN倍の時間で、位相が整数回回転するような運動速度では、ゼロでない展開係数はただ1つ、他の展開係数はすべてゼロとなり、きれいに速度分析されている。ところが、それ以外の位相回転が整数回とならない一般の運動速度では、それぞれの展開係数が、横軸上ピークからはるかに離れた運動速度においても、ピークの1/10程度の大きさの絶対値をもっている。これは、速度分析計として−20dB程度の遠隔的クロストークをもつことを意味する。検出・分析対象である運動反射物エコーに比べて桁違いに大きな振幅をもつクラッタ信号が、ドリフトするとき、これは重大な問題を生ずる。
この問題は、N個の時系列信号に、ハニング関数のような緩やかに立ち上がって下がる窓関数による重みをかけることにより、かなり抑圧できるが、本質的には解決しない。また、この方法は、時系列信号の数が大幅に目減りしたのと同様の、望ましくない効果を生じ、特に、時系列信号の数が元々少ない場合には適さない方法である。
具体例として、ナイキスト限界の2/3の一定速度で運動する検出・分析対象である運動反射物があり、その1000倍のエコー信号振幅をもつクラッタ信号が、ナイキスト限界速度の1/100でドリフトしている場合を考える。図5には、このときの上記速度分析計の出力である速度スペクトルを示す。検出・分析対象である運動反射物のスペクトルは、速度ゼロ付近にピークをもつクラッタ信号からのクロストーク成分に覆いかくされてしまい、この出力スペクトルの中では検出不可能である。
このことが、まさに、クラッタ信号を遮断するMTIフィルタが必要な最も本質的な理由である。MTI処理として最もよく知られている、時間領域において畳み込み積和で表現される通常の低域遮断フィルタについて、その通過振幅特性の典型例を、図6中に実線で示す。このようなフィルタにn=1,・・・,N+M−1とならんだ時系列信号S(n)を、入力すると、出力としてn=1,・・・,Nとならんだ時系列信号S(n)が得られる。
Figure 2005051203
ここで、Sは、m=1,・・・,Mの和を表す。図6では、低域遮断フィルタとして最も簡単なM=3、F(1)=−1、F(2)=2、F(3)=−1の場合について実線で示した。図5と同様の入力信号を、この低域遮断フィルタを通した後、図5と同様に速度分析すると、図7中の実線のようになる。低域遮断フィルタのはたらきによりクラッタ信号の振幅が1/2000倍程度に抑圧された結果、ナイキスト限界の0.3〜0.4倍の速度にピークをもつ運動反射物のスペクトルが見えるようになっている。
同じ目的のMTIフィルタとして、前記の多項式フィット・フィルタを設計したときの通過振幅特性の典型例を、図6中に破線で示す。この例では、0〜3次式までをフィットして引き去った。上記の畳み込み型フィルタによりも急峻な低域遮断特性が見てとれる。また、図5と同様の入力信号を、この低域遮断フィルタを通した後、図5と同様に速度分析した結果を、図7中に破線で示した。低域遮断特性の急峻さのために、クラッタ信号が完全に抑圧されている。多項式フィット・フィルタ特有の急峻な低域遮断特性は、以下のように理解することができる。
狭義ルジャンドル多項式については、例えば、「岩波数学公式III」(特殊関数、82−85頁)に記述されている。これを一般化すると、偶数(2n)次ルジャンドル多項式は2nより低い次数のルジャンドル多項式すべてと直交する最高次数2nの偶関数、奇数(2n+1)次ルジャンドル多項式は2n+1より低い次数のルジャンドル多項式すべてと直交する最高次数2n+1の奇関数と定義することができる。例として、一連の8点からなる時系列信号について、0から7次までの離散的ルジャンドル関数を計算し、偶数次を図8に、奇数次を図9に示した。0次・1次を実線、2次・3次を破線、4次・5次を1点鎖線、6次・7次を点線にて示した。振幅は、RMS(2乗平均の平方根)値が1となるよう規格化した。符合は、最低次項の符合が正となるよう、すなわち、偶数次多項式については定数項、奇数次多項式については1次項の符合が正となるよう定めた。
図10には、その周波数スペクトルをプロットした。周波数成分の振幅の絶対値を、個々のルジャンドル展開係数の最大値で規格化して示した。図10では8個の関数を重ねて図示したが、そのうち4個ずつを見分けやすい線により、図11および図12に示した。図において、0次、7次のルジャンドル展開係数A(0)、A(7)を実線、1次、6次のルジャンドル展開係数A(1)、A(6)を破線、2次、5次のルジャンドル展開係数A(2)、A(5)を1点鎖線、3次、4次のルジャンドル展開係数A(3)、A(4)を点線にて示した。
図10〜12を、図2〜4と同様、入力複素正弦波に対する周波数応答として眺めてみる。ピークを主応答、それ以外を副応答とみる。ルジャンドル関数は、図2〜4のフーリエ展開系に比べ、主応答より高周波側の副応答は大きいが、低周波側には副応答をもたず、次数が大きいほど周波数原点付近で急速にゼロに収束する。ここでは解析的証明は省略するが、周波数の関数としてのm次ルジャンドル関数は、周波数原点において0次からm−1次導関数まですべてが0となる。
前記の多項式フィット・フィルタは、入力信号を、この離散的ルジャンドル関数を基底として展開し、0からM次までを除き、M+1次以上の成分の和を出力信号とするフィルタであるということができる。従って、出力信号は、周波数原点付近で周波数のM+1乗に比例する挙動でゼロに収束していく。図6および図7中に破線で示された例のように、多項式フィット・フィルタの低域遮断特性が優れているのは、このようなルジャンドル関数の本質的な特性に由来するものである。このように考えると、クラッタという周波数原点付近に桁違いに大きな振幅をもつ妨害成分の影響を抑えて、着目する運動物体を検出したり、その速度を分析しなければならないドプラ速度検出には、多項式フィット・フィルタやルジャンドル関数展開を利用する方式は、本質的に適しているという結論に到達する。
フーリエ展開系では、複素正弦波を基底とすることにより、図2〜5や図7に示したように符合つきの速度分析が可能であることは広く知られており、そのような分析方法が広く用いられている。ところが、ルジャンドル展開系は、上記のように、ドプラ速度検出に極めて適した性質をもつものの、このまま用いたのでは、図10〜12から見てとれるように、絶対値が等しいが符合の異なる速度に対して等しい応答を示し、符合つきの速度分析は不可能である。
そこで、本発明では、次数が1つだけ異なる偶数次と奇数次のルジャンドル関数を虚数単位jを係数として線型結合して、複素ルジャンドル関数を形成し、これにより符合つきの速度分析を可能とする。これは、偶数次のルジャンドル関数が余弦波に、奇数次のルジャンドル関数が正弦波に似た変化を示すことに着目し、余弦関数と正弦関数を虚数単位jを係数として線型結合することにより、位相角のj倍の指数関数、すなわち複素正弦関数が得られ、この位相角の増減から符合つき速度が得られるのと同様に、複素ルジャンドル関数から符合つき速度を得ようとするものである。具体的には、一連のN点からなる時系列信号を、まず、0次からN−1次の離散的ルジャンドル関数を基底として展開して、A(0)からA(N−1)までの展開係数を得て、これをもとに、一連の複素ルジャンドル展開係数は、次式で示されるように、
Figure 2005051203
を算出し、この係数の相対的な大きさにより符合つき速度分析を行う。
図13には、図10〜12と同様N=8の場合について、複素正弦波入力に対する出力としての複素ルジャンドル展開係数の絶対値を、符号つき速度に対応する位相回転速度の関数として示した。複素ルジャンドル係数の絶対値は、それぞれの最大値で規格化してプロットした。図13では14個の関数を重ねて図示したが、見分けやすい線に選り分けて、図14〜17に示した。複素ルジャンドル展開係数C(1)・C(3)・C(5)・C(7)を実線、C(2)・C(4)・C(6)を破線、C(−2)・C(−4)・C(−6)を1点鎖線、C(−1)・C(−3)・C(−5)・C(−7)を点線にて示した。2N−2個の複素ルジャンドル展開係数が、速度に対し正負を区別して応答していることがわかる。このような応答をもつ複素ルジャンドル系はN≦35の範囲で構築できることを確認した。
図18には、2N−2個の複素ルジャンドル展開係数を構成する偶数次・奇数次ルジャンドル係数の絶対値比により決まる位相角を、符号つき速度に対応する位相回転速度の関数として示した。図中、内側から、C(±1)、C(±2)、C(±3)、C(±4)、C(±5)、C(±6)、C(±7)の偶奇位相角である。個々の複素ルジャンドル展開係数の偶奇位相角は、速度の関数として単調な変化をするので、これを利用すれば、比較的少数の複素ルジャンドル展開係数を用いたとしても、連続関数としての速度検出・分析が可能である。
検出・分析対象である運動反射物エコーに比べて桁違いに大きな振幅をもつクラッタ信号が存在し、それがドリフトするときには、そのドリフトの程度が大きくなるに応じて、C(±1)、C(±2)、......と、次数の小さな係数を順次除いた複素ルジャンドル展開係数系を用いて、速度検出・分析を行えばよい。このようにルジャンドル展開係数の遮断次数を制御することにより、クラッタ信号の影響を抑圧しながら、運動反射物の速度検出・分析を行うことができる。
以下、本発明の代表的な構成例について述べる。
(1)本発明は、速度計測対象物に対しパルス波を複数回送受信し、受信エコー信号をもとに前記速度計測対象物に関する速度分析を行うドプラ速度検出装置において、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、ルジャンドル多項式の各成分として展開し、各展開係数の大きさから、前記速度計測対象物に関する速度信号を得るよう構成したことを特徴とする。
(2)前記(1)に記載のドプラ速度検出装置において、前記受信エコー時系列信号を0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、符合つき速度信号を得るよう構成したことを特徴とする。
(3)本発明は、被検体に対してパルス波を複数回送受信する手段と、受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物に関する速度分析を行う手段とを備えたドプラ速度検出装置において、前記速度分析手段は、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の運動反射物に関して符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする。
(4)前記(3)に記載のドプラ速度検出装置において、前記運動反射物に関する速度信号を前記被検体内の静止反射物からのエコー信号と共に2次元もしくは3次元的に表示する表示手段を設けてなることを特徴とする。
(5)本発明は、超音波探触子と、前記超音波探触子から被検体に対し超音波パルス波を複数回送受信する手段と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物の速度分析を行う手段とを備えた超音波診断装置において、前記速度分析手段は、前記超音波パルス各々の送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、ルジャンドル多項式の各成分として展開し、各展開係数の大きさから、前記被検体内の運動反射物に関する速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする。
(6)前記(5)に記載の超音波診断装置において、前記速度分析手段は、前記受信エコー時系列信号を0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする。
(7)本発明は、超音波探触子と、前記超音波探触子から被検体に対し超音波パルス波を複数回送受信する手段と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動する臓器の中を流れる血流の速度分析を行う手段とを備えた超音波診断装置において、前記速度分析手段は、前記超音波パルス各々の送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の血流に関して符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする。
(8)前記(7)に記載の超音波診断装置において、前記臓器の運動速度またはその空間変化の分布像と同時に取得した血流分布像とを重畳もしくは並べて表示する表示手段を設けてなることを特徴とする。
(9)本発明の超音波診断装置は、複数の超音波探触子から被検体に対して超音波パルスを複数回送受信する超音波送受波手段と、前記被検体内での超音波パルスの送信焦点位置を制御する送波ビームフォーマと、前記被検体内の受信焦点位置を制御する受波ビームフォーマと、前記超音波送受波手段、前記送波ビームフォーマおよび前記受波ビー厶フォーマを制御する制御系と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物の速度分析を行う速度分析手段とを有し、かつ、前記速度分析手段を、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の運動反射物に関して符合つき速度信号を得るよう構成したことを特徴とする。
図1は、N回のパルス送信による受信信号を並べて示した図、図2は、離散的フーリエ展開係数の絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図3は、図2における4個の離散的フーリエ展開係数の絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図4は、図2における他の4個の離散的フーリエ展開係数の絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図5は、離散的フーリエ展開を用いた速度分析による速度スペクトル係数の例を示す図、図6は、従来の低域遮断型MTIフィルタ(実線)と多項式フィット・フィルタ(破線)のもつ通過振幅特性の典型例を示す図、図7は、従来の低域遮断型MTIフィルタ(実線)と多項式フィット・フィルタ(破線)をそれぞれ通した後、離散的フーリエ展開を用いた速度分析を行った場合に得られる速度スペクトル係数の例を示す図、図8は、一連の8点からなる信号に関する離散的ルジャンドル関数の偶数次を示す図、図9は、一連の8点からなる信号に関する離散的ルジャンドル関数の奇数次を示す図、図10は、ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図11は、図10における4個のルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図12は、図10における他の4個のルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図13は、複素ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図14は、図13における±6次、±7次の複素ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図15は、図13における±4次、±5次の複素ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図16は、図13における±2次、±3次の複素ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図17は、図13における±1次の複素ルジャンドル展開係数の規格化絶対値を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図18は、複素ルジャンドル展開係数の偶奇位相角を、速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図19は、本発明の実施例になる血流検出・描画機能つき超音波診断装置の構成を示すブロック図、図20は、複数の複素ルジャンドル係数絶対値間の比を用いて形成した速度校正曲線を速度に対応する符号つき周波数の関数として示す図、図21は、原点付近を修正した複素ルジャンドル展開係数の位相と速度との間の校正曲線を示す図、図22は、本発明のドプラ速度検出アルゴリズムの例を示す図、図23は、本発明の方式による速度検出結果の例(1)を示す図、図24は、従来方式による速度検出結果の例(1)を示す図、図25は、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果の例(1)を示す図、図26は、本発明の方式による速度検出結果の例(2)を示す図、図27は、従来方式による速度検出結果の例(2)を示す図、図28は、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果の例(2)を示す図、図29は、本発明の方式による速度検出結果の例(3)を示す図、図30は、従来方式による速度検出結果の例(3)を示す図、図31は、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果の例(3)を示す図である。
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
図19は、本発明を実施すべく構成された血流描画機能の付いた超音波診断装置ブロック図の典型例である。超音波探触子1を構成する各素子は、切り替えスイッチ群2を介して、送波ビームフォーマ3と受波ビームフォーマ10に接続されている。送波ビームフォーマ3では、送受信シークエンス制御部6による制御に従って、送信波形メモリ5から送信波形選択部4により選択されて読み出された波形を用い、各素子を通じて送信されたときに指向性を持つ超音波パルスとなるような信号が生成される。この信号が、超音波探触子1の各素子により超音波パルスに変換されて生体に送信される。生体中で反射あるいは散乱されて超音波探触子1に戻ってきた超音波エコー信号は、各素子に受信されて、電気信号に変換される。受波ビームフォーマ10では、送受信シークエンス制御部6による制御に従って、指向性を持つ受信感度を生成すべく、各受波信号に遅延時間を与えて互いに加算する。遅延加算により得られた時系列信号は、やはり送受信シークエンス制御部6による制御に従って、受波メモリ選択部11により選択された受波信号メモリ12中の1つのバンクへ一旦書き込まれ、ドプラ信号分析すべきN個の時系列信号がそろったのちに読み出されて、13−16において速度を検出・分析すべく信号処理される。
読み出されたN個の時系列受信信号は、各々を得るために行われたパルス送信の時刻を基準とする時相の等しい部分を、送信時刻の順番にならべたのちに処理される。まず、位相回転検出器13では、クラッタ信号を含んだままの時系列信号から位相回転を求める。位相回転量Pnを検出する最も典型的な方法は、n=1,・・・,Nとならんだ複素時系列信号S(n)をもとに、
Figure 2005051203
を計算し、P(n)の平均値Paの位相から平均位相回転速度を求める。ここで、S*はSの複素共役、||S||はSの絶対値である。一般に、クラッタ・エコー信号は血流エコー信号より桁違いに信号振幅が大きいので、Paは、概ねクラッタ・エコー信号の位相回転平均値と考えてよい。ダウン・ミキシング器14では、ここで求めたPaまたはPaの周辺領域における空間平均値を用い、エコー信号の位相回転平均値がゼロとなるよう、いいかえれば、クラッタ信号の中心周波数が、概ねゼロとなるようなミキシング処理を行う。すなわち、S(n)とPaより、次式を得る。
Figure 2005051203
ここで、Pa*は、Paの複素共役である。
このダウン・ミキシング処理を行うことにより、クラッタ信号を抑圧する後段の処理をより効果的に行うことができる。得られた複素時系列信号Sd(n)をもとに、位相回転検出器15では、13と同様に、ダウン・ミキシング処理後の位相回転量Pd(n)を、次式より計算し、その位相の絶対値の最大値を求める。
Figure 2005051203
この位相回転最大値の大きさに応じて、血流信号検出・分析部16の遮断特性を制御する。すなわち、位相回転最大値が大きいときには、小さいときに比べ、ルジャンドル係数の遮断次数Mを、より高く設定する制御を行うことにより、クラッタ成分を効果的に抑圧する。
ここで、本発明の核心に相当する血流信号検出・分析部16の動作について、もう少し詳しく述べる。入力された時系列信号Sd(1),・・・,Sd(N)は、まず、図8および図9の例のような0からN−1次のルジャンドル関数に展開され、その展開係数A(0),・・・,A(N−1)が求められる。この計算は、次のような行列演算により容易に行うことができる。n次ルジャンドル関数を行ベクトルL(n)で表し、これをn=0からN−1までならべてN×N行列LLを生成すると、Sd(1),・・・,Sd(N)を要素とする列ベクトルSdからA(0),・・・,A(N−1)を要素とする列ベクトルAを得るための行列は、
Figure 2005051203
と求めることができる。ここで、LLはLLの転置行列、LL−1はLLの逆行列を表す。この行列を予め準備しておけば、次式に示す行列演算によって迅速に、ルジャンドル展開係数を求めることができる。
Figure 2005051203
この展開係数A(0),・・・,A(N−1)から、式(4)に従って、複素ルジャンドル展開係C(±1),・・・,C(±(N−1))を得て、このうち、位相回転最大値に応じて遮断次数Mを決定し、C(±1)からC(±(M+1))までの低次数複素ルジャンドル係数を棄却する。次に、各々の複素ルジャンドル係数の絶対値を求め、これを校正したのち、最大係数の複素ルジャンドル展開係数を選択する。図13−17に例を示したように、予め、一定振幅の複素正弦波を入力したときの出力としての複素ルジャンドル係数絶対値について、符号つき速度に対応する周波数を掃引したときの最大値を求めておき、これを用いて係数の絶対値を校正する。選択された複素ルジャンドル係数の偶奇位相角から、血流速度に対応する周波数を求める。偶奇位相角についても、図18に例を示したように、予め、一定振幅の複素正弦波を入力したときの出力としての複素ルジャンドル係数の偶奇位相角について、符号つき速度に対応する位相回転速度を掃引して、速度校正曲線を求めておく。
速度校正のための曲線としては、図18のような個々の複素ルジャンドル展開係数の偶奇位相角を用いる他に、複数の複素ルジャンドル展開係数絶対値間の比を用いることもできる。その例を、図20に示した。これは、複素ルジャンドル展開係数の絶対値のなかで‖C(n)‖が最大であるとき、校正曲線として‖C(n+1)/C(n−1)‖または‖C(n−1)/C(n+1)‖の逆正接関数を用いるための例である。‖C(+7)‖が最大のときには、図18と同様、それぞれC(±7)の偶奇位相角を用いる。また、‖C(±1)‖が最大のときには、‖C(±2)/C(±1)‖(複号同順)の逆正接関数を用いる。
得られた血流信号は、エコー振幅検出器17およびエコー振幅圧縮器18により得られる静止臓器からのエコー信号と共に、スキャンコンバータ19に入力される。スキャンコンバータ19では、入力された複数の信号を適宜重畳して表示部20にて2ないし3次元表示すべく、信号の生成・制御を行う。上記のようにC(±1)からC(±(M+1))までの低次数複素ルジャンドル展開係数を棄却し、C(±(M+2))からC(±(N−1))までの複素ルジャンドル展開係数により速度分析を行うと、ルジャンドル係数A(M)を最大とする速度と絶対値を比較して小さな速度に対しては、正確な速度分析が困難になるので、何らかの対策が必要となる。
次に、本発明のドプラ速度検出・分析装置の動作例を従来方式と比較して示す。クラッタ・エコー信号の振幅は、血流エコー信号の振幅の300倍とし、クラッタ速度については、初期値がゼロで一定の加速度で立ち上がる場合を想定した。時系列信号数N=8の場合について、数値計算シミュレーションを行って比較した。従来方式としては、MTIフィルタとして図6の場合の低域遮断フィルタを用い、その後段において、式(5)を用いて位相回転量平均値Paを得たのと同様の方法で、速度を算出する処理を血流信号検出・分析部16において行う例を選んだ。さらに、MTIフィルタを、やはり図5に例を示したような多項式フィット・フィルタに置き換えた場合とも、比較した。この場合、遮断次数Mは、本発明の方法と同様、位相回転検出器15の出力信号に応じて制御した。
A(M)を最大とする速度より絶対値の小さな速度範囲における上記の問題に対しては、この範囲の速度出力がすべてゼロになるよう、図20に例を示した速度校正曲線の原点付近を修正し、この校正曲線を用いて速度検出・分析を行った。図21には、例として、M=3の場合の修正された校正曲線を示した。C(±3)は棄却してしまうので、‖C(±4)‖が最大のときに用いる校正曲線は、‖C(±5)/C(±3)‖ではなく‖C(±5)/C(±4)‖の逆正接関数に書き換えられている。ここでは、C(±(M+2))からC(±(N−1))の絶対値の最大値が、想定される血流エコー信号による絶対値の1/100に満たない場合、速度出力がゼロとなるよう制御した。従来方式と多項式フィット・フィルタの場合も、それぞれのMTIフィルタの出力としての信号振幅が、想定される血流エコー信号振幅の1/100に満たない場合、速度出力がゼロとなるよう制御した。
以上説明した速度検出アルゴリズムを図22にまとめた。この図では、絶対値最大の複素ルジャンドル係数の位相を用いて速度を検出するアルゴリズムを記したが、さらに安定した速度検出を行うため、絶対値最大係数の位相だけでなく、複数係数の位相から求められる速度に係数絶対値の重みをつけた平均値を用いる方法もある。例えば、n(>0)次の複素ルジャンドル係数の絶対値が最大のとき、n−1次からN−1次の係数の位相から求められる速度に係数絶対値の重みをつけた平均値を用い、−n(<0)次の複素ルジャンドル係数の絶対値が最大のとき、−n+1次から−N+1次の係数の位相から求められる速度に係数絶対値の重みをつけた平均値を用いる。
図23、24、25には、クラッタの最終到達速度がナイキスト限界速度の0.8%である場合について、それぞれ、本発明の方式、従来方式、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果を示した。横軸に入力としての血流速度、縦軸に出力として検出された速度をとり、有効速度検出範囲を実線、範囲外を点線によりプロットした。また、理想的な場合を1点鎖線により示した。このように、クラッタ速度が低い場合には、いずれの方式も、ほぼ正確な速度分析結果を与えているが、本発明の方式による誤差が最も小さい。
図26、27、28には、同様に、クラッタの最終到達速度がナイキスト限界速度の3%である場合について、それぞれ、本発明の方式、従来方式、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果を示した。このクラッタ速度域では、従来方式による速度検出は、ほぼ破綻に至っている。また、多項式フィット・フィルタ方式は、有効速度検出範囲における誤差は大きくないものの、血流速度がそれより小さい場合の誤差が大きく、何らかの対策を加えない限り、使いものにならない。これに対し、本発明の方式は、有効速度検出範囲において正確な速度検出結果を与えるだけでなく、血流速度がそれより小さい場合、素直に検出速度ゼロを出力している。
このように、有効速度検出範囲において正確な速度検出結果を出力し、かつ、血流速度がそれより小さい場合、素直に、検出速度ゼロを出力するか、あるいは速度検出不能であることを表示することは、本発明を実施したドプラ速度検出装置の特徴であるということができる。
図29、30、31には、さらに、クラッタの最終到達速度がナイキスト限界速度の20%である場合について、それぞれ、本発明の方式、従来方式、多項式フィット・フィルタ方式による速度検出結果を示した。ここまでクラッタ速度が大きくなると、従来方式による速度検出は、完全に破綻している。また、多項式フィット・フィルタ方式は、有効速度検出範囲における誤差が大きくなると同時に、血流速度がそれより小さい場合の誤差も著しく大きくなってしまっている。これに対し、本発明の方式は、有効速度検出範囲がやや狭くなるものの、血流速度がナイキスト限界速度の60%以上の範囲で、ほぼ正確な速度検出結果を与えるだけでなく、血流速度がそれより未満の場合の動作が、やはり素直である。
これを、呼吸などによって軟部組織が運動する肝臓や腎臓の中を流れる低速血流を描画する場合について具体的に述べると、本発明によれば、臓器の超音波探触子への方向の運動速度が、1mm/s変化するなか、超音波探触子への方向の速度成分3mm/s以上の血流をリアルタイムに描画できる。これは、従来方式では、到底達成できない血流速度検出性能である。
このように本発明によれば、血流を、臓器の運動と峻別して描画することができる。この特長をさらに生かして、図20の超音波診断装置では、位相回転検出器13により検出されたクラッタ信号すなわち臓器エコーの位相回転速度の信号をスキャンコンバータ19に入力し、臓器の運動速度あるいはその空間微分の分布を示す像を血流像と重畳あるいは並べて表示可能としている。この構成の有用性を、肝腫瘍の場合を例として述べる。肝腫瘍の辺縁部は新生血管が発達し、血流動態が周辺の正常肝とは異なる。また、周辺の正常肝とは固さが異なるため組織の運動も周辺とは異なる。従って、血流像に加えて臓器の運動速度の場所による変化を表示することは、肝腫瘍の診断にきわめて有用な画像を提供することになる。
以上述べたように、本発明によれば、生体内部の血流など運動する反射物の速度を、そのエコー信号に比べ桁違いに振幅が大きいクラッタ・エコー信号の影響を除いて、正確に検出することができる。具体的にいえば、臓器の超音波探触子への方向の運動速度が、1mm/s変化するなか、超音波探触子への方向の速度成分3mm/s以上の血流をリアルタイムに描画できる。
このように、本発明によれば、正負の速度を区別できる複素ルジャンドル展開系により、血流に比べ振幅が2〜3桁大きい体動によるクラッタを抑圧して血流速度を検出し得る新方式を提供するものであり、また、的確な医療診断を可能とする血流検出・描画機能付き超音波診断装置を提供することが可能となる。すなわち、本発明を実施した装置の医用診断上の有用性はきわめて大きく、従って、医用診断を支える工業における本発明の意義も、また、大きい。
さらに、本発明の方法は、電磁波を送受信することにより、雨雲など運動する反射物を検出して描画する気象レーダーや、飛行物体を検出する航空レーダー、あるいは、近づく物体を検出する衝突防止レーダーなどのパルス・ドプラ・レーダー装置など、他のパルス・ドプラ装置の運動反射体検出能力をも飛躍的に向上させることができ、本発明の工業的ならびに社会的意義は、その意味でもきわめて大である。
本発明によれば、生体内部の血流など運動する反射物の速度を、そのエコー信号に比べ桁違いに振幅が大きいクラッタ・エコー信号の影響を抑圧して、正確に検出することができる。

Claims (10)

  1. 速度計測対象物に対しパルス波を複数回送受信し、受信エコー信号をもとに前記速度計測対象物に関する速度分析を行うドプラ速度検出装置において、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、ルジャンドル多項式の各成分として展開し、各展開係数の大きさから、前記速度計測対象物に関する速度信号を得るよう構成したことを特徴とするドプラ速度検出装置。
  2. 前記受信エコー時系列信号を0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、符合つき速度信号を得るよう構成したことを特徴とする請求項1に記載のドプラ速度検出装置。
  3. 被検体に対してパルス波を複数回送受信する手段と、受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物に関する速度分析を行う速度分析手段とを備えたドプラ速度検出装置において、前記速度分析手段は、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の運動反射物に関して符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とするドプラ速度検出装置。
  4. 前記運動反射物に関する速度信号を前記被検体内の静止反射物からのエコー信号と共に2次元もしくは3次元的に表示する表示手段を設けてなることを特徴とする請求項3に記載のドプラ速度検出装置。
  5. 超音波探触子と、前記超音波探触子から被検体に対し超音波パルス波を複数回送受信する手段と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物の速度分析を行う速度分析手段とを備えた超音波診断装置において、前記速度分析手段は、前記超音波パルス各々の送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、ルジャンドル多項式の各成分として展開し、各展開係数の大きさから、前記被検体内の運動反射物に関する速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする超音波診断装置。
  6. 前記速度分析手段は、前記受信エコー時系列信号を0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
  7. 超音波探触子と、前記超音波探触子から被検体に対し超音波パルス波を複数回送受信する手段と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動する臓器の中を流れる血流の速度分析を行う速度分析手段とを備えた超音波診断装置において、前記速度分析手段は、前記超音波パルス各々の送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の血流に関して符合つき速度信号を得るよう構成されていることを特徴とする超音波診断装置。
  8. 前記臓器の運動速度またはその空間変化の分布像と同時に取得した血流分布像とを重畳もしくは並べて表示する表示手段を設けてなることを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
  9. 前記臓器の前記超音波探触子への方向の運動速度が、1mm/秒変化するなか、前記超音波探触子への方向の速度成分3mm/秒以上の血流を検出し表示するよう構成したことを特徴とする請求項7又は8に記載の超音波診断装置。
  10. 複数の超音波探触子から被検体に対して超音波パルスを複数回送受信する超音波送受波手段と、前記被検体内での超音波パルスの送信焦点位置を制御する送波ビームフォーマと、前記被検体内の受信焦点位置を制御する受波ビームフォーマと、前記超音波送受波手段、前記送波ビームフォーマおよび前記受波ビームフォーマを制御する制御系と、前記被検体からの受信エコー信号をもとに前記被検体内の運動反射物の速度分析を行う速度分析手段とを有し、かつ、前記速度分析手段を、各々のパルス送信時刻からの経過時間の等しい受信エコー信号を送信時刻の順番にならべた受信エコー時系列信号を、0次から始まるルジャンドル多項式の各成分として展開したときの偶数次項の展開係数と、それと次数が1つ異なる奇数次項の展開係数とを虚数単位を係数として線形結合して、複素展開係数を得て、各複素展開係数の大きさおよび各複素展開係数間の大きさの比から、前記被検体内の運動反射物に関して符合つき速度信号を得るよう構成したことを特徴とする超音波診断装置。
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