JPWO2005043215A1 - 試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び光学密着液 - Google Patents

試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び光学密着液 Download PDF

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Abstract

検査対象の試料となる半導体デバイス上に両親媒性分子を含有する光学密着液を滴下し(S104)、その上に固浸レンズを設置する(S105)。続いて、固浸レンズの挿入位置を調整し(S106)、それから、光学密着液を乾燥させて(S108)、固浸レンズと半導体デバイスとを光学的に密着させる。これにより、試料の所望の位置への位置合わせが容易であり、試料に固浸レンズを光学的に確実に密着させることができる試料観察方法及び顕微鏡等が実現される。

Description

本発明は、電子デバイスなどの試料を観察するために用いられる試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び固浸レンズ用の光学密着液に関するものである。
半導体デバイスなどの電子デバイスの検査においては、電子デバイスを試料として顕微鏡等で観察し、それによって電子デバイスの故障解析や信頼性評価を行う方法が用いられる。半導体検査装置としては、従来、エミッション顕微鏡やIR−OBIRCH装置などが知られている(文献1:特開平7−190946号公報、文献2:特開平6−300824号公報参照)。しかしながら、近年、検査対象となる電子デバイスの微細化が進んでおり、可視光や赤外光を使用した従来の検査装置では、光学系での回折限界に起因する制限により、微細構造の解析が困難になってきている。
このため、このような電子デバイスの微細構造について解析を行って、電子デバイス中に形成されたトランジスタや配線などの回路パターンに発生した異常箇所を検出する場合、まず、可視光、赤外光、あるいは熱線を使用した検査装置によって異常箇所が存在する範囲をある程度まで絞り込む。そして、その絞り込まれた範囲について、より高分解能な電子顕微鏡などの観察装置を用いて観察を行うことで、電子デバイスでの異常箇所を検査する方法が用いられている。
上記したように、光を使用した検査を行った後に電子顕微鏡で高分解能の観察を行う方法では、検査対象となる電子デバイスの準備、設置が複雑であるなどの理由により、電子デバイスの検査に大変な手間と時間とを要するという問題がある。
一方、観察対象の画像を拡大するレンズとして、固浸レンズ(SIL:Solid Immersion Lens)が知られている。固浸レンズは、半球形状、またはワイエルストラス球と呼ばれる超半球形状のレンズである。この固浸レンズを観察対象の表面に光学的に密着させて設置すれば、開口数NAおよび倍率をともに拡大することができ、高い空間分解能での観察が可能となる。このような固浸レンズを用いた電子デバイス検査装置としては、たとえば文献3:特公平7−18806号公報および文献4:米国特許第6594086号公報に記載されたものがある。
特開平7−190946号公報 特開平6−300824号公報 特公平7−18806号公報 米国特許第6594086号公報
上記文献3に開示された固浸レンズは、平凸レンズ(plano−convexレンズ)であって、観察対象物に対する取付面が平面である。観察時において、この平凸レンズと観察対象物との間には、必要に応じて高屈折率流体(インデックスマッチング液)が配置される。
例えば、半導体基板を観察対象物とした固浸レンズによる観察においては、固浸レンズと観察対象物となる半導体基板との間に隙間が発生すると、臨界角以上の入射光が全反射されて、臨界角以下の入射角しか伝播できなくなり、実効的な開口数が臨界角で制限されることになる。ところが、固浸レンズと半導体基板面との間の隙間が、半導体中の光の波長と同程度になると、光はエバネッセント結合により伝播することが可能になる。
しかし、平凸レンズと半導体基板面との隙間には、広い接触領域に起因して、隙間の大きな部分が存在する場合がある。このような隙間が大きな部分では、透過光強度が急激に低下して、臨界角以下の入射光しか伝播できなくなり、実効的な開口数が制限されてしまう。
そこで、上記文献3においては、エバネッセント結合を利用しないで、固浸レンズ本来の分解能を得る手法として、平凸レンズと観察対象物との間に高屈折率流体を介在させるものが記載されている。高屈折率流体の代表的なものとして、砒素トリプロマイド/ジサルマイド/セレン化合物系が挙げられる。ところが、砒素トリプロマイドは毒性と腐食性を有するので、取り扱いの上で問題がある。
また、上記文献4に開示された固浸レンズでは、bi−convexレンズである。このレンズでは、取付面が観察対象物と点で接触する(point of contact)凸状であるため、密着性の確保に有利と考えられる。しかし、観察対象物との接触面積が非常に小さいので、観察対象となる半導体デバイスの基板が厚くなると、NAの高い光束を通すことができなくなる。この場合、固浸レンズ本来の高解像度、高集光性を得ることができないという問題がある。
この固浸レンズと観察対象物とを広い面積で密着させるためには、固浸レンズの底面と観察対象物との間に圧力を加える必要がある。半導体デバイスの裏面解析においては、半導体基板表面に形成された集積回路を損なわないように、取り扱い時の強度も十分に考慮して、半導体基板へ加える圧力を調整しなければならないという問題がある。半導体デバイスの薄肉化という傾向を踏まえると、bi−convexレンズでは、固浸レンズ本来の分解能を得られない。
また、圧力により半導体デバイスに歪みが生じるが、この状態は、半導体デバイスの実装状態と異なるため、実装状態と同様の動作条件で検査したいという要求を満たすことができない。歪みの生じた状態では、検査本来の目的と相反する結果を招来する可能性さえある。
そこで、本発明の課題は、観察対象となる電子デバイスなどの試料における所望の位置に固浸レンズを位置合わせするのが容易であり、また、過度の圧力を加えることなく試料に対して固浸レンズを光学的に確実に密着させることができる試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び固浸レンズ用の光学密着液を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明による試料観察方法は、両親媒性分子を含有する光学密着液を介在させた状態で、試料上に固浸レンズを設置するレンズ設置ステップと、光学密着液を蒸発させて、固浸レンズと試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、固浸レンズによって拡大された試料の観察画像を、固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、を含むことを特徴とする。
上記した試料観察方法では、電子デバイスなどの試料上に固浸レンズを光学的に密接させるにあたり、試料と固浸レンズとの間に光学密着液を介在させて、試料上に固浸レンズを設置している。ここで、光学密着液は、両親媒性分子を含有している。光学密着液が両親媒性分子を含有することにより、光学密着液の表面張力を低下させることができるので、試料表面の濡れ性が向上する。このため、光学密着液が試料表面に広がり、固浸レンズを所望の位置に容易に位置合わせすることができる。
また、光学密着液が両親媒性分子を含有することから、試料表面と固浸レンズの取付面との間の濡れ性を保とうとする力が支配的となる。このため、光学密着液が乾燥していく過程で、試料と固浸レンズとを過度の圧力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。また、光学密着液により光学的に密着した状態では、付加的な効果として、試料と固浸レンズとの間に物理的な固着も得られることも本願発明者は見出した。
なお、本発明に関していう「光学密着」とは、試料と固浸レンズとがエバネッセント結合により光学的な結合が達成された状態をいう。
上記した試料観察方法は、電子デバイス検査方法として好適に用いることができる。この場合、電子デバイス検査方法は、電子デバイスの画像を取得して、その内部情報を検出する電子デバイス検査方法であって、両親媒性分子を含有する光学密着液を介在させた状態で、電子デバイス上に固浸レンズを設置するレンズ設置ステップと、光学密着液を蒸発させて、固浸レンズと電子デバイスとを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、固浸レンズによって拡大された電子デバイスの観察画像を、固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、を含むことが好ましい。
上記した電子デバイス検査方法では、電子デバイス上に固浸レンズを光学的に密接させるにあたり、電子デバイスと固浸レンズとの間に光学密着液を介在させて、電子デバイス上に固浸レンズを設置している。ここで、光学密着液は、両親媒性分子を含有している。光学密着液が両親媒性分子を含有することにより、光学密着液の表面張力を低下させることができるので、電子デバイスの基板表面の濡れ性が向上する。このため、光学密着液が電子デバイスの基板表面に広がり、固浸レンズを所望の位置に容易に位置合わせすることができる。
また、光学密着液が両親媒性分子を含有することから、電子デバイスの基板表面と固浸レンズの取付面との間の濡れ性を保とうとする力が支配的となる。このため、光学密着液が乾燥していく過程で、電子デバイスと固浸レンズとを過度の圧力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。また、光学密着液により光学的に密着した状態では、付加的な効果として、電子デバイスの基板と固浸レンズとの間に物理的な固着も得られることも本願発明者は見出した。なお、本発明にいう「内部情報」としては、例えば電子デバイスを試料とした場合、電子デバイスの回路パターンや電子デバイスからの微弱発光が含まれる。この微弱発光としては、電子デバイスの欠陥に基づく異常箇所に起因するものや、電子デバイス中のトランジスタのスイッチング動作に伴うトランジェント発光などが挙げられる。さらには、電子デバイスの欠陥に基づく発熱も含まれる。
あるいは、本発明による試料観察方法は、取付面が親水処理された固浸レンズを試料上に設置するレンズ設置ステップと、固浸レンズと試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、固浸レンズによって拡大された試料の観察画像を、固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、を含むことを特徴としても良い。
このような試料観察方法においても、固浸レンズを所望の位置に容易に位置合わせすることができる。また、試料と固浸レンズとを過度の圧力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。なお、この場合、レンズ設置ステップにおいて、光学密着液を介在させた状態で、取付面が親水処理された固浸レンズを試料上に設置し、レンズ密着ステップにおいて、光学密着液を蒸発させて、固浸レンズと試料とを光学的に密着させることが好ましい。
あるいは、本発明による試料観察方法は、取付面が親水処理された試料上に固浸レンズを設置するレンズ設置ステップと、固浸レンズと試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、固浸レンズによって拡大された試料の観察画像を、固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、を含むことを特徴としても良い。また、この場合、試料観察方法は、試料の取付面を親水処理する親水処理ステップ、をさらに含むことが好ましい。
ここで、試料観察方法は、画像取得ステップの後、光学密着液または光学密着液の溶媒によって試料における固浸レンズが密着させられた位置を濡らして、試料と固浸レンズとを分離する分離ステップ、をさらに含むのが好適である。このように、画像取得ステップの後、光学密着液またはその溶媒で密着部位を濡らすことにより、固浸レンズと試料との境界面に光学密着液またはその溶媒が再浸入し、エバネッセント結合を解くことができる。しかも、固浸レンズと試料との間の物理的な固着も解くことができるので、固浸レンズおよび試料を傷つけることなく分離することができ、固浸レンズを再利用することができる。
また、光学密着液の両親媒性分子としては、界面活性剤分子を用いるのが好適である。
両親媒性分子として界面活性剤分子を用いることにより、固浸レンズの位置合わせを容易に行うことができ、さらに、試料と固浸レンズとを過度の圧力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。また、界面活性剤分子として、イオン性界面活性剤分子または非イオン性界面活性剤分子を用いるのが好適である。
また、本発明による固浸レンズは、試料の観察(例えば電子デバイスの裏面解析)を行うための固浸レンズであって、その取付面が親水処理されていることを特徴とする。
このように、固浸レンズの取付面を親水処理することにより、光学密着液の溶媒(たとえば水)であっても、両親媒性分子を含有する光学密着液と同様に、固浸レンズの取付面の濡れ性を向上させることができる。その結果、固浸レンズの位置合わせを容易に行うことができ、さらに、試料と固浸レンズとを過度の力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。また、試料と固浸レンズとの間に物理的な固着も得ることができる。
ここで、試料(例えば電子デバイスの基板)が疎水性である場合には、その試料上の少なくとも観察位置を含む領域についても親水処理するのが好適となる。また、このような親水処理は、親水基の物理吸着、化学吸着、またはコーティングにより行うことが好ましい。
また、本発明による光学密着液は、試料の観察を行う際に用いられる光学密着液(例えば電子デバイスの画像を取得してその内部情報を検出する半導体検査方法に用いられる光学密着液)であって、両親媒性分子を含有し、試料と固浸レンズとを光学的に密着させることを特徴とする。
このような光学密着液を用いることにより、試料表面および固浸レンズの取付面の濡れ性を向上させることができる。その結果、固浸レンズの位置合わせを容易に行うことができ、さらに、試料と固浸レンズとを過度の圧力を加えることなく確実に光学的に密着させることができる。また、試料と固浸レンズとの間に物理的な固着も得ることができる。
ここで、両親媒性分子が、界面活性剤分子である態様とすることができる。界面活性剤分子としては、イオン性界面活性剤分子または非イオン性界面活性剤分子を用いるのが好適である。
また、光学密着液は、界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する倍率が、0倍より大きく400倍以下となる濃度範囲で界面活性剤分子を含有するのが好適である。
後に示す実験の結果、上記の範囲を外れた範囲では、固浸レンズと試料との間の光学的な結合性が、上記の範囲よりも劣る結果となった。したがって、界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する倍率が0倍より大きく400倍以下となる濃度範囲で界面活性剤分子を含有する光学密着液とするのが好適である。より好ましくは、界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する倍率が1倍以上100倍以下である濃度範囲で界面活性剤分子を含有する光学密着液が用いられる。
また、本発明による顕微鏡は、試料からの光が入射する対物レンズを含み、試料の画像を導く光学系と、試料の観察を行うための固浸レンズと、両親媒性分子を含有する光学密着液を滴下するための光学密着液滴下装置と、を備えるものである。
このような構成によれば、試料に対して、固浸レンズを介した高分解能の観察を行うことができる。また、両親媒性分子を含有する光学密着液を利用して試料表面と固浸レンズの取付面とを光学的に結合することにより、試料観察への適用において、固浸レンズを効率よく取り扱うことが可能となる。以上により、試料の微細構造の観察等を容易に行うことが可能な顕微鏡が実現される。
ここで、顕微鏡は、観察対象となる試料の画像を取得する画像取得手段を備える構成としても良い。この場合、光学系は、試料の画像を画像取得手段へと導くように構成される。
上記した顕微鏡は、電子デバイス検査装置として好適に用いることができる。この場合、電子デバイス検査装置は、電子デバイスの画像を取得して、その内部情報を検査する電子デバイス検査装置であって、検査対象となる電子デバイスの画像を取得する画像取得手段と、電子デバイスからの光が入射する対物レンズを含み、電子デバイスの画像を画像取得手段へと導く光学系と、電子デバイスの裏面解析を行うための固浸レンズと、両親媒性分子を含有する光学密着液を滴下するための光学密着液滴下装置と、を備えることが好ましい。
上記した電子デバイス検査装置では、電子デバイスに対して、固浸レンズを介した高分解能の観察を行うことができる。また、両親媒性分子を含有する光学密着液を利用して電子デバイスの基板表面と固浸レンズの取付面とを光学的に結合することにより、電子デバイス検査への適用において、固浸レンズを効率よく取り扱うことが可能となる。以上により、微細構造解析などの電子デバイスの検査を容易に行うことが可能な電子デバイス検査装置が実現される。
また、上記構成の顕微鏡において、光学密着液を乾燥させるためのエア吹き付け装置をさらに備える構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、光学密着液の乾燥を早めることができる。このとき、試料表面と固浸レンズとを光学的に密着させるまでに要する時間を大幅に短縮することができる。
あるいは、本発明による顕微鏡は、試料からの光が入射する対物レンズを含み、試料の画像を導く光学系と、取付面が親水処理された、試料の観察を行うための固浸レンズと、を備えることを特徴としても良い。
このような顕微鏡においても、試料に対して、固浸レンズを介した高分解能の観察を行うことができる。また、試料観察への適用において、固浸レンズを効率よく取り扱うことが可能となる。以上により、試料の微細構造の観察等を容易に行うことが可能な顕微鏡が実現される。なお、この場合、顕微鏡は、光学密着液を滴下するための光学密着液滴下装置を備えることが好ましい。
本発明によれば、観察対象となる電子デバイスなどの試料における所望の位置に固浸レンズを位置合わせするのが容易であり、また、試料に対して固浸レンズを光学的に過度の圧力を加えることなく確実に密着させることができる試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び光学密着液を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体検査方法に用いる半導体検査装置を模式的に示すブロック図である。 図2は、固浸レンズの構成および検査方法の例を示す図である。 図3は、本実施形態に係る半導体検査方法の手順を示すフローチャートである。 図4は、(a)両親媒性分子を含有しない水を基板の表面に滴下した状態を模式的に示す図、及び(b)両親媒性分子を含有する水を基板の表面に滴下した状態を模式的に示す図である。 図5は、両親媒性分子を含有しない水を基板の表面に滴下した後の経時変化を模式的に示す図である。 図6は、両親媒性分子を含有する水を基板の表面に滴下した後の経時変化を模式的に示す図である。 図7は、基板と固浸レンズとの密着状態を模式的に示す図である。 図8は、基板と固浸レンズとが密着する過程を模式的に示す図である。 図9は、基板と固浸レンズとが密着する過程を模式的に示す図である。 図10は、非イオン性界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する光学密着液中の界面活性剤分子の濃度比と、裏面観察した電子デバイスの輝度値との関係を示すグラフである。 図11は、イオン性界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する光学密着液中の界面活性剤分子の濃度比と、裏面観察した電子デバイスの輝度値との関係を示すグラフである。 図12は、電子デバイスにグルタミン酸水溶液を塗布した場合と塗布しない場合とにおける電子デバイスのそれぞれの輝度値を示すグラフである。
符号の説明
1…画像取得部、2…光学系、3…固浸レンズ、15…XYZステージ、16…検査部、18…ステージ、20…対物レンズ、30…固浸レンズ駆動部、51…観察制御部、52…ステージ制御部、53…固浸レンズ制御部、61…画像解析部、62…指示部、A…観察部、B…制御部、C…解析部、L1…液滴、L2…液滴、S…半導体デバイス、SB…基板。
以下、図面を参照して、本発明による試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び光学密着液の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
図1は、本発明の実施形態に係る半導体検査方法(電子デバイス検査方法)に用いる半導体検査装置(電子デバイス検査装置)を模式的に示すブロック図である。本実施形態で用いられる半導体検査装置は、たとえばトランジスタや配線などからなる回路パターンが半導体基板上に形成された電子デバイスである半導体デバイスSを検査対象(観察対象)の試料とし、半導体デバイスSの画像を取得して、その内部情報を検出する検査装置である。ここで、本発明による顕微鏡、試料観察方法、及び固浸レンズ、光学密着液は、一般に試料の観察を行って、その内部情報を得る場合に適用可能である。ただし、以下においては、主にその半導体検査への適用例について説明する。
本実施形態に係る半導体検査装置は、半導体デバイスSの観察を行う観察部Aと、観察部Aの各部の動作を制御する制御部Bと、半導体デバイスSの検査に必要な処理や指示などを行う解析部Cとを備えている。また、本実施形態に係る半導体検査装置による検査対象、すなわち顕微鏡による観察対象の試料となる半導体デバイスSは、観察部Aに設けられたステージ18上に載置されている。
観察部Aは、暗箱(図示していない)内に設置された画像取得部1と、光学系2と、固浸レンズ(SIL:Solid Immersion Lens)3とを有している。画像取得部1は、たとえば光検出器や撮像装置などからなり、半導体デバイスSの画像を取得する手段である。また、画像取得部1と、ステージ18上に載置された半導体デバイスSとの間には、半導体デバイスSからの光による画像を画像取得部1へと導く光学系2が設けられている。
光学系2には、その半導体デバイスSに対向する所定位置に、半導体デバイスSからの光が入射する対物レンズ20が設けられている。半導体デバイスSから出射、あるいは反射等された光は対物レンズ20へと入射し、この対物レンズ20を含む光学系2を介して画像取得部1に到達する。そして、画像取得部1において、検査に用いられる半導体デバイスSの画像が取得される。
画像取得部1と光学系2とは、互いに光軸が一致された状態で一体に構成されている。また、これらの画像取得部1および光学系2に対し、XYZステージ15が設置されている。これにより、画像取得部1および光学系2は、X,Y方向(水平方向)およびZ方向(垂直方向)それぞれで必要に応じて移動させて、半導体デバイスSに対する位置合わせおよび焦点合わせが可能な構成となっている。
また、検査対象となる半導体デバイスSに対して、検査部16が設けられている。検査部16は、半導体デバイスSの検査を行う際に、必要に応じて、半導体デバイスSの状態制御等を行う。検査部16による半導体デバイスSの状態の制御方法は、半導体デバイスSに対して適用する具体的な検査方法によって異なるが、たとえば、半導体デバイスSに形成された回路パターンの所定部分に電圧を供給する方法、あるいは、半導体デバイスSに対してプローブ光となるレーザ光を照射する方法などが用いられる。
本実施形態においては、観察部Aには、さらに固浸レンズ3が設置されている。図2(a)及び図2(b)は、固浸レンズの構成、およびそれを用いた試料観察方法の例を示す図である。固浸レンズ3は、一般的には半球形状またはワイエルストラス球と呼ばれる超半球形状を有するレンズであり、図2(a)および図2(b)に示すように、観察対象である半導体デバイスSの基板の表面に密着して設置される。
半導体基板と屈折率が類似する材質で作成されたこのような微小な光学素子を半導体デバイスの基板表面に光学密着させた場合、半導体基板自身を固浸レンズの一部として利用することができる。固浸レンズを利用した半導体デバイスの裏面解析によれば、対物レンズの焦点を半導体基板の表面に形成された集積回路に合わせた際、固浸レンズの効果により、集束光の集光角の増加と媒質の屈折率の増加が期待できる。これにより、基板中にNAの高い光束を通すことが可能となり、高分解能化が期待できる。ここで、固浸レンズ3の半径をR、屈折率をnとする。
このような固浸レンズ3のレンズ形状は、収差がなくなる条件によって決まるものである。半球形状を有する固浸レンズでは、図2(a)に示すように、その球心が焦点となる。このとき、開口数NAおよび倍率はともにn倍となる。一方、超半球形状を有する固浸レンズでは、図2(b)に示すように、球心からR/nだけ下方にずれた位置が焦点となる。このとき、開口数NAおよび倍率はともにn倍となる。あるいは、球心と、球心からR/nだけ下方にずれた位置との間の位置を焦点とするなど、半導体デバイスSに対する具体的な観察条件等に応じて、図2(a)および図2(b)に示した以外の条件で固浸レンズ3を用いてもよい。
また、本実施形態に係る固浸レンズ3において、半導体デバイスSに対する取付面となる底面部は、例えば、トロイダル形状とされることが好ましい。トロイダル形状とは、XYZ平面を定義したとき、Y−Z平面に定義された曲線を、Z軸上で原点よりRの距離の点を通りY軸と平行な直線を回転軸として得られる曲面(トロイダル面)をいう。ただし、ここでは、Y−Z平面に定義された直線を、Y軸と平行な直線を回転軸として得られる曲面、すなわちシリンドリカル形状(シリンドリカル面)をもトロイダル形状(トロイダル面)に含むものである。具体的に、本実施形態ではシリンドリカル形状に形成されている。
また、トロイダル形状に形成する際、そのトロイダル形状のX方向の曲率半径と、X方向の曲率半径よりも大きいY方向の曲率半径との割合が、1:1.5〜1:∞、好ましくは1:3〜1:∞)とするのが好適である。Y方向の曲率半径がX方向の曲率半径の1.5倍未満、あるいは3倍未満では、観察対象物に光学的に密着させる際の密着度が低くなってしまうからである。なお、トロイダル形状のX方向の曲率半径とY方向の曲率半径とが1:∞となるとき、トロイダル形状はシリンドリカル形状となる。
なお、本発明に適用可能な固浸レンズは上記トロイダル面を有するものに限定されるものでなく、たとえば特公平7−18806号公報に開示された平凸形状の固浸レンズにも適用することができる。
また、固浸レンズの材料としては、観察対象が半導体デバイスの場合、その基板材料と実質的に同一またはその屈折率に近い、高屈折率の材料が好適に用いられる。その例としては、Si、GaP、GaAsなどが挙げられる。さらに、観察対象物が、たとえばガラス基板やプラスチック基板を用いた電子デバイスである場合、固浸レンズの材料としては、ガラスやプラスチックを用いるのが好適である。
図1に示した半導体デバイス検査装置においては、この固浸レンズ3は、画像取得部1および光学系2と、ステージ18上に載置された半導体デバイスSとに対して移動可能に設置されている。具体的には、固浸レンズ3は、半導体デバイスSから対物レンズ20への光軸を含み、上記したように半導体デバイスSの表面に密着して設置される挿入位置と、光軸を外れた位置(待機位置)との間を移動可能に構成されている。
また、固浸レンズ3に対し、固浸レンズ駆動部30が設けられている。固浸レンズ駆動部30は、固浸レンズ3を駆動して上記した挿入位置および待機位置の間を移動させる駆動手段である。また、固浸レンズ駆動部30は、固浸レンズ3の位置を微小に移動させることにより、光学系2の対物レンズ20に対する固浸レンズ3の挿入位置を調整する。なお、図1においては、対物レンズ20と半導体デバイスSとの間の挿入位置に設置された状態で固浸レンズ3を示している。
半導体デバイスSを検査するための観察等を行う観察部Aに対し、制御部Bおよび解析部Cが設けられている。
制御部Bは、観察制御部51と、ステージ制御部52と、固浸レンズ制御部53とを有している。観察制御部51は、画像取得部1および検査部16の動作を制御することによって、観察部Aにおいて行われる半導体デバイスSの観察の実行や観察条件の設定などを制御する。
ステージ制御部52は、XYZステージ15の動作を制御することによって、本検査装置における検査箇所(顕微鏡における観察箇所)となる、画像取得部1および光学系2による半導体デバイスSの観察箇所の設定、あるいはその位置合わせ、焦点合わせ等を制御する。また、固浸レンズ制御部53は、固浸レンズ駆動部30の動作を制御することによって、挿入位置および待機位置の間での固浸レンズ3の移動、あるいは固浸レンズ3の挿入位置の調整等を制御する。
解析部Cは、画像解析部61と、指示部62とを有している。画像解析部61は、画像取得部1によって取得された画像に対して必要な解析処理等を行う。また、指示部62は、操作者からの入力内容や、画像解析部61による解析内容等を参照し、制御部Bを介して、観察部Aにおける半導体デバイスSの検査の実行に関する必要な指示を行う。
特に、本実施形態においては、解析部Cは、観察部Aに固浸レンズ3および固浸レンズ駆動部30が設置されていることに対応して、固浸レンズを用いた半導体デバイスSの検査に関して必要な処理および指示を行う。
すなわち、対物レンズ20と半導体デバイスSとの間に固浸レンズ3を挿入する場合、観察部Aにおいて、画像取得部1は、固浸レンズ3が挿入位置にある状態で固浸レンズ3から反射光を含む画像を取得する。また、解析部Cにおいて、画像解析部61は、画像取得部1で取得された固浸レンズ3からの反射光を含む画像について、その反射光像の重心位置を求めるなどの所定の解析を行う。そして、指示部62は、画像解析部61で解析された固浸レンズ3からの反射光を含む画像を参照し、固浸レンズ制御部53に対して、反射光像の重心位置が半導体デバイスSでの検査箇所に対して一致するように、固浸レンズ3の挿入位置の調整を指示する。
次に、以上の構成を有する半導体検査装置(顕微鏡)を用いた本発明に係る半導体検査方法(試料観察方法)について説明する。図3は、本実施形態に係る半導体検査方法の手順を示すフローチャートである。
まず、検査対象である半導体デバイスSに対し、光軸を外れた待機位置に固浸レンズ3を設置した状態で観察を行う。ここでは、画像取得部1により、対物レンズ20を含む光学系2を介して、半導体デバイスSの観察画像である回路パターンのパターン画像を取得する(S101)。また、検査部16によって半導体デバイスSの状態を所定の状態に制御するとともに、半導体デバイスSの異常箇所を検出するための異常観察画像を取得する(S102)。
次に、画像取得部1で取得されたパターン画像および異常観察画像を用いて、半導体デバイスSに異常箇所があるかどうかを調べる。異常箇所がある場合にはその位置を検出するとともに、検出された異常箇所を半導体検査装置による検査箇所として設定する(S103、検査設定ステップ)。そして、設定された検査箇所が画像取得部1によって取得される画像の中央に位置するように、XYZステージ15によって画像取得部1および光学系2を移動させる。
続いて、半導体デバイスSにおける異常箇所と判断された検査箇所に対応する基板上の観察位置に固浸レンズ3を設置し、半導体デバイスSと対物レンズ20との間に固浸レンズを挿入する。このとき、固浸レンズ3を設置する前に、操作者が観察位置に光学密着液を滴下し(S104)、観察位置を濡らす。この光学密着液は、水に両親媒性分子(たとえば界面活性剤分子)を含有させたものからなる。光学密着液は、両親媒性分子を含有することから、疎水性表面である半導体基板上における表面張力を低下させる。この結果、疎水性表面での濡れ性が向上し、光学密着液が半導体デバイスSの上で広がる。
ここで、半導体デバイスSと光学密着液との関係について説明する。例えば、光学密着液の溶媒として使用される水などを光学的な密着に用いた場合には、水の表面張力が非常に大きいことから、図4(a)に示すように、液滴L1は基板SB上で半球に近い状態となる。このため、基板SBの面精度が高い場合には、基板をわずかに傾けただけで液滴L1は基板SB上を滑ってしまう。
しかも、水の液滴の体積が小さくなるにつれ、液滴は表面張力によって表面積が最も小さな球状になろうとする。これに対して、固浸レンズ3は、直径が1〜5mmと非常に微小な光学素子であり、要求される光学密着液の容量は非常に少ないので、液滴は非常に微小なものとなる。このような微小な液滴を滑りやすい疎水性表面の所望の位置にとどめるのは非常に困難である。
これに対して、本実施形態に係る光学密着液は両親媒性分子を含有している。このような両親媒性分子を含有する光学密着液を疎水性表面である半導体基板上に滴下すると、光学密着液からなる液滴中の両親媒性分子が液滴の表面張力を低下させる。このため、疎水性表面からなる半導体基板上での濡れ性が向上し、図4(b)に示すように、液滴L2が基板SB上で広がる。このように、両親媒性分子による疎水性表面への濡れ性の付与によって、表面が疎水性である基板上の所望の観察位置に光学密着液を的確にとどめることができる。このような光学密着液は、一般には、試料の観察を行う際に、試料と固浸レンズとを光学的に密着させるものとして好適に用いることができる。
ここで用いられる両親媒性分子としては、界面活性剤分子を用いることができる。また、界面活性剤分子としては、イオン性界面活性剤分子および非イオン性界面活性剤分子を用いることもできる。イオン性界面活性剤分子としては、陽イオン性界面活性剤分子、陰イオン性界面活性剤分子、両性界面活性剤分子のいずれをも用いることができる。
界面活性剤は、通常、湿潤剤、浸透剤、起泡剤、消泡剤、乳化剤、帯電防止剤等として様々な用途に用いられるが、本発明では濡れ性に関わる湿潤性を有するもののほか、泡を抑える消泡性、帯電を抑える帯電防止性を有するのが好適である。帯電防止能を有する界面活性剤を使用することにより、帯電による空気の抱きこみを防止することができる。また、消泡性を有する界面活性剤を使用することにより、光学密着液を供給する時の機械的な搬送あるいは攪拌による泡の発生を防止することができる。
また、界面活性剤の至適濃度範囲は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度に対して、0倍より大きく400倍以下とするのが好適である。400倍より大きいと、光学密着液の粘性が上がりすぎる傾向にあり、かえって光学的な密着の妨げとなることがあるからである。
また、より好ましい範囲は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度に対して、0.5〜100倍である。0.5倍より小さいと、光学密着液の表面張力を十分に下げられない傾向にあり、100倍を超えると、光学密着液の粘性が上がりすぎる傾向にあるからである。同様の理由により、さらに好ましい範囲は、その界面活性剤の臨界ミセル濃度に対して、1倍〜10倍の濃度の範囲である。
また、本実施形態で用いられる光学密着液は、界面活性剤分子を含有するものに限定されるものではなく、親水基(カルボキシル基、スルホ基、第4アンモニウム基、水酸基など)と疎水基(親油基ともいう。長鎖の炭化水素基など)の両方をもつ分子であってもよい。たとえば、グリセリン、プロピルグリコーゲン、ソルビトールなどの潤滑剤や、リン脂質、糖脂質、アミノ脂質などが挙げられる。
なお、半導体基板と固浸レンズとを光学的に結合させるための光結合材料としては、たとえば特公平7−18806号公報に記載される、屈折率整合流体(インデックスマッチング液など)が知られている。この手法は、屈折率整合を利用するものであり、本発明に係る光学密着液とは本質的に異なるものである。前者は流体の屈折率を介して高NAを実現するものであり、後者はエバネッセント結合を補助する役割を果たすものである。
半導体デバイスS上で光学密着液が広がったら、光学密着液が乾燥する前に、光軸から外れた位置に待機する固浸レンズ3を固浸レンズ駆動部30によって移動させ、光学密着液上に固浸レンズ3を設置する(S105、レンズ設置ステップ)。固浸レンズ3を設置する際には、固浸レンズ3の自重を利用する。こうして、検査箇所における光学密着液上に固浸レンズ3を設置して、半導体デバイスSと対物レンズ20との間に固浸レンズ3を挿入する。ここで、光学密着液は両親媒性分子を含有することから、固浸レンズ3の取付面に対しても濡れ性を付与することができる。したがって、微小な固浸レンズ3を半導体基板上の所望の位置に過度の圧力を加えることなく容易に設置することができる。
半導体デバイスSと対物レンズ20との間に固浸レンズ3を挿入したら、固浸レンズ3の挿入位置の調整を行う(S106、位置調整ステップ)。まず、画像取得部1により、固浸レンズ3からの反射光を含む画像を取得する。固浸レンズ3の挿入位置の調整は、この画像に含まれる反射光像における固浸レンズ3の各部反射面からの反射光をガイドとして行われる。
固浸レンズ3の挿入位置の調整を行うにあたり、画像解析部61では、固浸レンズ3からの反射光を含む画像に対して、自動で、または操作者からの指示に基づいて解析を行い、反射光像の重心位置を求める。また、指示部62では、固浸レンズ制御部53を介して固浸レンズ3および固浸レンズ駆動部30に対して、画像解析部61で得られた反射光像の重心位置が半導体デバイスSでの検査箇所に対して一致するように、固浸レンズ3の挿入位置の調整を指示する。これにより、固浸レンズ3の半導体デバイスSおよび対物レンズ20に対する位置合わせが行われる。
さらに、指示部62は、上記した固浸レンズ3の挿入位置の調整と合わせて、ステージ制御部52を介してXYZステージ15に対して、固浸レンズ3が密着して設置されている半導体デバイスSと、光学系2の対物レンズ20との間の距離の調整を指示する(S107、距離調整ステップ)。これにより、固浸レンズ3が挿入された状態における焦点合わせが行われる。
このようにして焦点合わせが済んだら、固浸レンズ3を位置合わせした状態のまま、エアを吹き付けて光学密着液を蒸発させ、乾燥させて固浸レンズ3と半導体デバイスSとを光学的に密着させる(S108、レンズ密着ステップ)。本実施形態では、光学密着液が両親媒性分子を含有することから、固浸レンズ3と半導体デバイスSとを確実に密着させることができる。また、光学密着液の乾燥を促す手段としては、エアを吹き付けるほか、紙などの吸水シートで光学密着液を吸い取るなどの手段をとることができる。また、光学密着液を薄く塗った場合には、乾燥が速いので、乾燥を促す作業を省くこともできる。
なお、光学密着液を乾燥させる段階では、位置の微調整ができるように、固浸レンズ3の周りだけ、わずかに光学密着液を残しておき、微調整が済んだ後に、自然乾燥させるようにすることもできる。
ここで、たとえば光学密着液の溶媒として使用される水のみを用いた場合、図5(a)に示すように、Si基板SB上に半球状の液滴L1ができる。この液滴L1は、上述のように、検査箇所にとどめるのは難しいものであるが、仮に検査箇所にとどまったとする。
この液滴L1上に図5(b)に示すように固浸レンズ3を設置したとすると、液滴L1の表面積を下げようとする力が支配的となり、Si基板SBおよび固浸レンズ3の濡れを維持することができない。このため、図5(c)に示すように、面間隔が十分に狭められないまま空気の進入が進行して液滴L1の大きさが徐々に小さくなり、最終的には、図5(d)に示すように光学的な密着が得られないものである。
これに対して、両親媒性分子を含有し、表面張力が低い光学密着液を用いた場合、図6(a)に示すように、Si基板SB上に液滴L2が広がる。この液滴L2を乾燥させる際に、Si基板SBの表面および固浸レンズ3の底面(取付面)の濡れ性を保とうとする力が支配的となる。このため、図6(b)に示すように、固浸レンズ3の底面とSi基板SB表面との面の間隔が狭められながら、液滴L2の主に水の揮発が空気の進入を妨げつつ進行する。その後、図6(c)に示すように、さらに液滴L2の揮発が空気の進入を妨げつつ進み、最終的には、図6(d)に示すように、固浸レンズ3とSi基板SBとが光学的に密着する。
この状態では、図7に示すように、Si基板SB上に物理吸着した両親媒性分子の親水基と水分子との間にファンデルワールス力が働き、水分子が拘束されることで揮発が止まると考えられる。このとき、固浸レンズ3とSi基板SBとの距離は1/20λ(λ:照射波長)以下とすることができ、その結果、固浸レンズ3とSi基板SBとの光学密着、さらには物理的固着が達成される。
こうして、半導体デバイスSに対して固浸レンズ3を密着させたら、画像取得部1は、半導体デバイスS上に設置された固浸レンズ3および対物レンズ20を含む光学系2を介して、拡大された半導体デバイスSの観察画像を取得する(S109、画像取得ステップ)。
拡大観察画像を取得した後、半導体デバイスSにおける固浸レンズ3を取り付けた位置の周辺に、光学密着液の溶媒(以下「溶媒」という)を滴下して(S110)、固浸レンズ3の取り付け位置を濡らす。溶媒を滴下することにより、半導体デバイスSと固浸レンズ3との間にこの溶媒が浸入し、半導体デバイスSと固浸レンズ3との間の光学的密着および物理的固着が解かれる。
このように、溶媒を用いて半導体デバイスSと固浸レンズ3との間の物理的固着を解くことにより、ごく弱い力で固浸レンズ3を剥がすことができるので、半導体デバイスSを傷つけないようにすることができる。また、固浸レンズ3をも傷つけないようにすることができるので、固浸レンズ3を再利用することもできる。なお、ここでは溶媒を滴下しているが、光学密着液を滴下させても、半導体デバイスSと固浸レンズ3とを傷つけることなく、半導体デバイスSと固浸レンズ3との光学的密着および物理的固着を解くことができる。
こうして検査箇所の検査が済んだら、固浸レンズ3を他の検査箇所または待機位置に移動させ、検査箇所の検査が終了する。
固浸レンズ3からの反射光を含む画像を用いて固浸レンズ3の位置合わせを行う場合、具体的には上記したように、固浸レンズ3からの反射光像の重心位置を求め、その中心位置が半導体デバイスSの検査箇所に対して一致するように固浸レンズ3の挿入位置を調整することが好ましい。これにより、固浸レンズ3の位置合わせを確実に行うことができる。あるいは、これ以外の位置合わせ方法を用いてもよい。たとえば、固浸レンズ3からの反射光像の重心位置が、半導体デバイスSでの検査箇所の重心位置に対して一致するように固浸レンズ3の挿入位置を調整することとしてもよい。
また、固浸レンズ3を用いて半導体デバイスSの検査を行う場合、半導体デバイスSの検査箇所を画像取得部1によって取得される画像の中央とすることが好ましい。これにより、半導体デバイスSの観察において対物レンズ20の瞳を有効に用いることができる。
すなわち、固浸レンズ3を使用した場合、対物レンズ20の瞳は一部分のみが使用され、画角に応じてその使用位置が変わることとなる。したがって、対物レンズ20の光軸上に固浸レンズ3を設置することにより、光の利用効率が最も高くなる。また、このような固浸レンズ3の設置では、固浸レンズ3で発生する画像の輝度の一様性の劣化を小さくすることができる。
なお、図1で示した半導体検査装置では、半導体デバイスSに対する画像取得部1および光学系2の位置合わせおよび焦点合わせを行うため、画像取得部1および光学系2に対してXYZステージ15を設置している。このようなXYZステージについては、半導体デバイスSが載置されているステージ18としてXYZステージを用いてもよい。また、角度方向に可動に構成されたθステージをさらに設置してもよい。
以上の実施形態では、半導体デバイスSと固浸レンズ3との間における光学密着液に両親媒性分子を含有させるものとしたが、これに代えて、固浸レンズ3における半導体デバイスSとの取付面に親水処理を施すようにすることもできる。
光学密着液が両親媒性分子を含有することにより、濡れ性が向上するのは、疎水性である表面に親水基が付着することに起因する。このため、光学密着液が両親媒性分子を含有していない場合でも、固浸レンズ3の半導体デバイスSとの取付面および半導体デバイスSの固浸レンズ3との取付面が、疎水性であったとしても、これらの面の一方または両方に親水基を付着させる親水処理を施すことにより、濡れ性を向上させることができる。なお、半導体デバイスSの表面がもともと親水性である場合には、その表面は親水処理しなくとも、濡れ性を確保することができる。
こうして、固浸レンズ3および半導体デバイスSの取付面の一方または両方に濡れ性を付与することにより、両親媒性分子を含有する光学密着液を用いた場合と同様、半導体デバイスSの基板上における所望の検査箇所に光学密着液を的確にとどめることができる。また、半導体デバイスSと固浸レンズ3との光学的な密着性を、過度の圧力を加えることなく確実なものとすることができる。さらには、半導体基板と固浸レンズとの間に物理的な固着も得ることができる。
固浸レンズ3や半導体デバイスSに親水処理を施す方法としては、親水基を物理吸着させて一時的に付着させる方法がある。親水基を物理吸着させる具体的な方法としては、親水処理を施す面に、界面活性剤や、アミノ酸、タンパク質などの両親媒性分子の水溶液を塗布し、乾燥させる方法などがある。
また、親水処理を施す方法としては、親水基を化学吸着させて表面改質を行う方法もある。親水基を化学吸着させる方法としては、UV(紫外)光を照射する方法、ウェットプロセスによる方法(たとえば、硫酸と過酸化水素と水とを加えた溶液を塗布する)、さらにドライプロセスによる方法(たとえばイオンビームを照射する)などの方法がある。例として、ウェットプロセスでの化学吸着による親水処理では、セミコクリーン23(フルウチ化学株式会社製)を用いることができる。
また、親水処理を施す他の方法としては、コーティングによる方法を用いることもできる。この場合、親水性のナノ粒子等を面上にコーティングすることが好ましい。例えば、シリカのナノ粒子を固浸レンズ及び半導体基板の一方または両方にコーティングすることにより、その濡れ性を向上することができる。このようなナノ粒子の例としては、GLANZOX3900(株式会社フジミインコーポレーテッド製)、結露水滴防止剤(TOTO製)などがある。
また、シリカのナノ粒子以外にも、酸化チタンのナノ粒子等をコーティングしても良い。なお、このようにコーティングによって親水処理を行う場合には、コーティング膜が厚すぎると、光のエバネッセント結合が得られなくなることが考えられるので、注意が必要である。このため、コーティング膜は、例えば200nm以下とすることが好ましい。
固浸レンズや基板表面を親水処理すると、図8に示すように、それらの親水基には常に大気中の水分子が吸着し、いわば水の膜ができた状態となる。この状態において、固浸レンズ3と基板SBとを充分に近づけると、水分子間に水素結合による引力が働き、固浸レンズ3及び基板SBの密着が達成される。
固浸レンズや基板表面の親水処理が充分に行われており、かつ面精度が充分に良い場合には、それらの面同士を重ね合わせるだけで密着が実現する。ここで、水素結合による引力が働く距離は数nm程度と非常に短い。このため、固浸レンズや基板表面の親水処理が不充分な場合、あるいはその面精度が不充分な場合には、面同士で充分な密着が得られないことが考えられる。
このような場合には、図9に示すように、光学密着液を密着のアシストに用いることが好ましい(図6(b)参照)。ここでは、光学密着液の主成分が水である場合を考える。この場合、固浸レンズと基板との界面を光学密着液で満たすと、それらは水酸基、水分子の水素結合を介して連結した状態となる。ただし、この状態では、図9に示すように、固浸レンズ3と基板SBとの間隔が広いため、まだ密着の状態ではない。その後、余分な水分が揮発していく過程で、水素結合によって固浸レンズと基板との間に引力が働く。これにより、液の揮発とともに界面の間隔が次第に狭まり、密着状態となったところで光学密着液の揮発が止まる。
なお、固浸レンズ及び基板が親水処理されておらず、かつ光学密着液に界面活性剤が添加されていない場合には、固浸レンズ及び基板と、水分子との間には水素結合が働かない。このため、水が揮発する過程で、固浸レンズ及び基板と、水分子とが分離して空気が流入してしまい、密着が実現されない(図5(a)〜図5(d)参照)。
これに対して、固浸レンズ及び基板をあらかじめ親水処理していない場合でも、光学密着液に界面活性剤が添加されていれば、光学密着液を固浸レンズと基板との間に挿入したときに、界面活性剤、すなわち親水基が固浸レンズ及び基板に物理吸着する。これにより、あらかじめそれらを親水処理してあったときと同様の状態となり、その密着が実現される。
以上、本発明の好適な例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、光学密着液を操作者が滴下するようにしているが、図1に模式的に示すように、光学密着液滴下装置81を設けた構成とすることが好ましい。また、光学密着液を乾燥させるためのエア吹き付け装置82をさらに設けても良い。あるいは、吸水シート押し付け装置などを設けても良い。なお、光学密着液滴下装置81は、一般に光学密着液を滴下するためのものであるが、固浸レンズの取付面が親水処理されていない場合など、必要な場合には、上記したように両親媒性分子を含有する光学密着液を滴下するために用いられる。
さらに、半導体デバイスを濡らす手段としては、光学密着液を滴下する態様のほか、光学密着液を薄く伸ばして塗る態様、噴霧する態様、蒸気で湿らす態様など、種々の態様とすることもできる。この場合、光学密着液の乾燥が早いので、乾燥を促す作業を省くことができる。
また、上記実施形態に示す半導体検査装置のほか、高感度カメラを用いたエミッション顕微鏡、OBIRCH解析装置、時間分解エミッション顕微鏡、熱線画像解析装置などによる観察を行う場合にも、本発明の試料観察方法及び顕微鏡、固浸レンズ、光学密着液を用いることが可能である。
また、上記した実施形態では、半導体デバイスを観察対象とした半導体検査装置、及び半導体検査方法について説明したが、本発明は、半導体デバイス以外を試料とする場合にも、試料の観察を行うための試料観察方法、顕微鏡、並びに固浸レンズ、光学密着液として適用が可能である。これにより、試料の観察において、試料の微細構造などの観察を容易に行うことが可能となる。
例えば、上記実施形態では、観察対象の試料を半導体デバイスとしているが、一般に半導体デバイスなどの各種の電子デバイスを試料とする場合には、対象となるデバイスとしては、半導体基板を用いたものに限らず、ポリシリコン薄膜トランジスタなどのように、ガラスやプラスチックなどを基板とする集積回路を観察対象としても良い。例えば液晶デバイスではガラス基板上に、また、有機ELではプラスチック基板上にデバイスが作製される。また、さらに一般的な試料としては、上記した半導体デバイスや液晶デバイスなどの各種のデバイスの他にも、プレパラートを用いたバイオ関連サンプルなどが挙げられる。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1では、検査対象となる半導体デバイスとして、Si基板を有するものを用いて実験を行った。この実験では、光学密着液として、純水に界面活性剤を添加したものを用いた。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤である、日信化学工業社製「オルフィンEXP.4001」を用いた。
実験は次の手順で行った。半導体デバイスの基板と固浸レンズとの間に光学密着液を挟み、余分な水分を乾燥させた後、上記の実施形態で示した半導体検査装置で半導体デバイスの裏面観察を行い、半導体デバイスの輝度値を測定した。この輝度値の測定を、界面活性剤の臨界ミセル濃度に対する濃度比を変えて10回繰り返し、測定した各界面活性剤の臨界ミセル濃度に対する濃度比に対応する測定値の平均値を求めた。ここでの輝度値は、コンフォーカルレーザスキャン像のものであり、フォーカスを合わせた際の最大の輝度値である。また、臨界ミセル濃度に対する濃度比とは、臨界ミセル濃度の何倍に相当するかを示す数値である。
かくして求めた各臨界ミセル濃度に対する濃度比に対応する輝度値の平均値を図10に示す。
図10からわかるように、臨界ミセル濃度に対する濃度比が0、すなわち界面活性剤を含有しない光学密着液を用いた場合、測定された輝度値の平均は300程度であった。臨界ミセル濃度に対する濃度比が0.5である場合の輝度値の平均値は620程度であり、界面活性剤を含有しない光学密着液を用いた場合よりも輝度値が向上した。このことから、界面活性剤を含有する光学密着液を用いることにより、固浸レンズと半導体デバイスの光学的な密着度を向上させることができることがわかった。
ところで、臨界ミセル濃度に対する濃度比が1程度となると、余剰な界面活性剤が汚れとして残る。しかし、図10からわかるように、臨界ミセル濃度に対する濃度比が1程度となっても、輝度値の平均値は790程度と低下は見られず、むしろ向上していることから、固浸レンズと半導体デバイスとを密着させる際の妨げとはならないレベルであることがわかる。また、臨界ミセル濃度に対する濃度比が100を超えると、余剰な界面活性剤が多量となる。このため、輝度値の平均値は410程度と低下しており、固浸レンズと半導体デバイスとの密着の妨げとなっていると考えられる。
また、グラフでは示していないが、界面活性剤を含有する光学密着液で固浸レンズと半導体デバイスとを光学的に密着させた後、固浸レンズと半導体デバイスとの光学的な密着を解除させると、半導体デバイスにおける固浸レンズが密着させられていた位置は、親水性が帯びた状態で残っている。このため、半導体デバイスにおける固浸レンズと密着させられていた位置は、いわば親水処理され親水性を帯びた状態となっている。したがって、界面活性剤を用いて一旦光学的な密着を形成した位置は、親水性がなくなるまでは、界面活性剤を含有しない、たとえば純水などでも固浸レンズと半導体デバイスとを確実に光学的に密着させられるようになることがわかった。
同様のことは、固浸レンズにもいえるものであり、一旦半導体デバイスと光学的に密着させられた固浸レンズにおける取付面は、親水処理が施され親水性を帯びた状態となっている。このため、親水性がなくなるまでは界面活性剤を含有しない、たとえば純水などでも固浸レンズと半導体デバイスとを確実に光学的に密着させられるようになることがわかった。
実施例2では、検査対象となる半導体デバイスとして、Si基板を有するものを用いて実験を行った。この実験では、光学密着液として、純水に界面活性剤を添加したものを用いた。界面活性剤としては、イオン性界面活性剤である、日信化学工業社製「オルフィンPD−301」を用いた。
実験は、次の手順で行った。半導体デバイスの基板と固浸レンズとの間に光学密着液を挟み、余分な水分を乾燥させた後、上記の実施形態で示した半導体検査装置で半導体デバイスの裏面観察を行い、半導体デバイスの輝度値を測定した。この輝度値の測定を、界面活性剤の臨界ミセル濃度に対する濃度比を変えて5回繰り返し、測定した各界面活性剤の臨界ミセル濃度に対する濃度比に対応する測定値の平均値を求めた。ここでの輝度値は、コンフォーカルレーザスキャン像のものであり、フォーカスを合わせた際の最大の輝度値である。
かくして求めた各臨界ミセル濃度に対する濃度比に対応する輝度値の平均値を図11に示す。
図11からわかるように、臨界ミセル濃度に対する濃度比が0%、すなわち界面活性剤を含有しない光学密着液を用いた場合、測定された輝度値の平均は190程度であった。これに対して、臨界ミセル濃度に対する濃度比が0.5のときは、輝度値が950程度であり、界面活性剤を含有しない光学密着液を用いた場合よりも輝度値が向上した。このことから、イオン性界面活性剤からなる界面活性剤を含有する光学密着液を用いた場合でも、固浸レンズと半導体デバイスの光学的な密着度を向上させることができることがわかった。
また、臨界ミセル濃度に対する濃度比が100を超え、400程度となると、輝度値の平均値も400程度となっている。これは、上記の実験1と同様に、余剰な界面活性剤が汚れとして残り、半導体デバイスと固浸レンズとの光学的な密着性を妨げたことに起因していると考えられる。したがって、イオン性界面活性剤を用いた場合でも、臨界ミセル濃度に対するに濃度比を100以下とするのが好適である。
実施例3では、検査対象となる半導体デバイスとして、Si基板を有するものを用いて実験を行った。この実験では、光学密着液として、純水に界面活性剤を添加したものを用いた。界面活性剤としては、実施例1と同様、非イオン性界面活性剤である、日信化学工業社製「オルフィンEXP.4001」を用いた。また、この実験では、アミノ酸の1つであるグルタミン酸の水溶液を用いているが、たんぱく質から抽出したものを用いることもできる。このグルタミン酸水溶液の濃度は10%とした。
実験は、次の手順で行った。まず、半導体デバイスの基板にグルタミン酸水溶液を塗布し乾燥させる。続いて、界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.05%の光学密着液を固浸レンズと半導体デバイスの基板との間に挟み、余分な液を乾燥させ、上記実施形態で説明した半導体検査装置で半導体デバイスの裏面観察を行い、半導体デバイスの輝度値を測定した。この輝度値の測定を20回行い、その平均値を求めた。
これとともに、半導体デバイスにグルタミン酸を塗布することなく、界面活性剤の臨界ミセル濃度が0.05%の光学密着液を固浸レンズと半導体デバイスの基板との間に挟み、余分な液を乾燥させ、上記実施形態で説明した半導体検査装置で半導体デバイスの裏面観察を行い、半導体デバイスの輝度値を測定した。この輝度値の測定を20回行い、その平均値を求めた。その結果を図12に示す。
図12に示すように、グルタミン酸水溶液を塗布しない例では、輝度値の平均Aが30程度であったのに対して、グルタミン酸を塗布した例では、輝度値の平均Bが90程度となった。このように、グルタミン酸を塗布することにより、輝度値の平均を向上させることができたことから、見かけ上、半導体デバイスの基板の濡れ性が向上し、半導体デバイスと固浸レンズとの光学密着性を向上させることができた。これは、グルタミン酸を塗布することにより、疎水性表面に親水基を付与することで、疎水性表面における濡れ性を向上させることを意味するものである。
なお、上記実施例では溶媒として水を使用しているが、水に限定されるものではなく、有機溶媒、たとえばエタノール、メタノールを使用してもよい。この場合、光学密着液の乾燥が早いので、乾燥を促す作業時間を短縮することができる。
本発明は、観察対象となる試料における所望の位置に固浸レンズを位置合わせするのが容易であり、また、試料に対して固浸レンズを光学的に過度の圧力を加えることなく確実に密着させることができる試料観察方法及び顕微鏡、並びにこれに用いる固浸レンズ及び光学密着液として利用可能である。

Claims (16)

  1. 試料の観察を行う試料観察方法であって、
    両親媒性分子を含有する光学密着液を介在させた状態で、試料上に固浸レンズを設置するレンズ設置ステップと、
    前記光学密着液を蒸発させて、前記固浸レンズと前記試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、
    前記固浸レンズによって拡大された前記試料の観察画像を、前記固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、
    を含むことを特徴とする試料観察方法。
  2. 前記画像取得ステップの後、前記光学密着液または前記光学密着液の溶媒によって前記試料における前記固浸レンズが密着させられた位置を濡らして、前記試料と前記固浸レンズとを分離する分離ステップ、
    をさらに含む請求項1記載の試料観察方法。
  3. 前記両親媒性分子が、界面活性剤分子である請求項1記載の試料観察方法。
  4. 試料の観察を行う試料観察方法であって、
    取付面が親水処理された固浸レンズを試料上に設置するレンズ設置ステップと、
    前記固浸レンズと前記試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、
    前記固浸レンズによって拡大された前記試料の観察画像を、前記固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、
    を含むことを特徴とする試料観察方法。
  5. 前記画像取得ステップの後、光学密着液または光学密着液の溶媒によって前記試料における前記固浸レンズが密着させられた位置を濡らして、前記試料と前記固浸レンズとを分離する分離ステップ、
    をさらに含む請求項4記載の試料観察方法。
  6. 試料の観察を行う試料観察方法であって、
    取付面が親水処理された試料上に固浸レンズを設置するレンズ設置ステップと、
    前記固浸レンズと前記試料とを光学的に密着させるレンズ密着ステップと、
    前記固浸レンズによって拡大された前記試料の観察画像を、前記固浸レンズを介して取得する画像取得ステップと、
    を含むことを特徴とする試料観察方法。
  7. 前記画像取得ステップの後、光学密着液または光学密着液の溶媒によって前記試料における前記固浸レンズが密着させられた位置を濡らして、前記試料と前記固浸レンズとを分離する分離ステップ、
    をさらに含む請求項6記載の試料観察方法。
  8. 前記試料の前記取付面を親水処理する親水処理ステップ、
    をさらに含む請求項6記載の試料観察方法。
  9. 試料の観察を行うための顕微鏡であって、
    試料からの光が入射する対物レンズを含み、前記試料の画像を導く光学系と、
    前記試料の観察を行うための固浸レンズと、
    両親媒性分子を含有する光学密着液を滴下するための光学密着液滴下装置と、
    を備えることを特徴とする顕微鏡。
  10. 前記光学密着液を乾燥させるためのエア吹き付け装置をさらに備える請求項9記載の顕微鏡。
  11. 試料の観察を行うための顕微鏡であって、
    試料からの光が入射する対物レンズを含み、前記試料の画像を導く光学系と、
    取付面が親水処理された、前記試料の観察を行うための固浸レンズと、
    を備えることを特徴とする顕微鏡。
  12. 試料の観察を行うための固浸レンズであって、取付面が親水処理されていることを特徴とする固浸レンズ。
  13. 前記親水処理が、親水基の物理吸着、化学吸着、またはコーティングにより行われる請求項12記載の固浸レンズ。
  14. 試料の観察を行う際に用いられる光学密着液であって、
    両親媒性分子を含有し、試料と固浸レンズとを光学的に密着させることを特徴とする光学密着液。
  15. 前記両親媒性分子が、界面活性剤分子である請求項14記載の光学密着液。
  16. 界面活性剤分子の臨界ミセル濃度に対する倍率が、0倍より大きく400倍以下となる濃度範囲で前記界面活性剤分子を含有する請求項15記載の光学密着液。
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