JPWO2004096860A1 - 目的蛋白質の製造方法、融合蛋白質及びその遺伝子、インテインの部分配列蛋白質及びその遺伝子、発現ベクター、並びに形質転換体 - Google Patents
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Abstract
通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として目的蛋白質を得ることができる技術を提供することを課題とする。分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質を調製し、該融合蛋白質から該ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって目的蛋白質を切り出す。ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の例として、インテイン及びその部分配列蛋白質が挙げられる。
Description
本発明は、目的蛋白質の製造方法、融合蛋白質及びその遺伝子、インテインの部分配列蛋白質及びその遺伝子、発現ベクター、並びに形質転換体に関する。さらに詳細には、本発明は、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質から該介在蛋白質の作用によって目的蛋白質を切り出す目的蛋白質の製造方法、該融合蛋白質及びその遺伝子、ペプチド結合切断活性を有するインテインの部分配列蛋白質及びその遺伝子、発現ベクター、並びに形質転換体に関する。本発明によれば、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として目的蛋白質を得ることができる。
これまでにバクテリア、酵母、昆虫、動植物細胞又はトランスジェニック動植物などの多くの宿主における蛋白質発現系、さらに無細胞翻訳系など、種々の蛋白質発現系が開発されている。特に近年、種々の生物でのゲノムが次々と解読され、遺伝子から組換え蛋白質を生産し解析するニーズは益々高まっている。しかしながら、目的とする全ての蛋白質がこれらの蛋白質発現系で容易に得られるわけではない。例えば、宿主に対する毒性を有する蛋白質、不溶化しやすい蛋白質などは、依然として組換え蛋白質として得ることが困難である。具体的には、目的蛋白質が宿主に対して毒性を有する場合、宿主内においてその蛋白質の合成が抑制され、発現量が低下することがある。また、発現した目的蛋白質が正しく折り畳まれず、目的蛋白質が間違った立体構造を有する異常型蛋白質としてしか得られない場合がある。特に、異常型蛋白質は封入体と呼ばれる不溶性の凝集体を形成することが多い。そして、いったん封入体となった異常型蛋白質を折り畳み直して正常型蛋白質とすることは非常に困難であり、成功しないことが多い。
目的蛋白質が封入体を形成しないようにする方法としては、目的蛋白質をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質等との融合蛋白質として発現させる方法が提案されている。しかし、この方法では、封入体の形成を高効率で解消することは難しい(例えば、スミス・ディ・ビ(Smith,D.B.)ら、ジーン(Gene)、1988年、第67巻、p.31−40)。一方、蛋白質の折り畳み反応を支援する蛋白質である分子シャペロンの作用によって、目的蛋白質を正しい立体構造を有する正常型蛋白質として発現させる試みもある。例えば、目的蛋白質を分子シャペロンと宿主内で共発現させ、その分子シャペロンの作用によって目的蛋白質を正常型蛋白質として発現させる方法もある。しかし、この方法においても正常型蛋白質として得られる目的蛋白質の量を飛躍的に増加させるには至っていない(ニシハラ(Nishihara)ら、アプライド・アンド・エンビロメンタル・ミクロバイオロジー.(Applied and environmental microbiology)、1998年、第64巻、p.1694−1699)。
分子シャペロンの作用を利用する別の方法として、分子シャペロンの一種であるシャペロニンのサブユニット同士を連結したシャペロニンサブユニット連結体を利用する試みもある。すなわち、目的蛋白質を1〜20個のシャペロニンサブユニットが直列に連結されたシャペロニンサブユニット連結体との融合蛋白質を作製して利用する。この際、目的蛋白質は天然のシャペロニンと複合体を形成するのと同様に、シャペロニンの立体構造内部に格納される。その結果、目的蛋白質は正しく折り畳まれた正常型蛋白質として得られやすくなり、封入体の形成を抑制することができる。さらに、目的蛋白質が宿主に対する毒性を有する場合でも、シャペロニンの内部に格納されているので毒性を抑えることができる。さらに、宿主由来のプロテアーゼによる攻撃から目的蛋白質を守ることもできる(WO02/052029 A1参照)。すなわち、この方法によると、宿主に対する毒性を有する種々のウイルス抗原、種々の抗体、7回膜貫通型受容体(G蛋白質共役型受容体)、あるいはサイトカイン類などを発現することが可能である。
この方法では、従来のGST、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質などの融合蛋白質で用いられている方法と同様に、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す必要がある。具体的には、融合蛋白質に限定分解型プロテアーゼを作用させて、目的蛋白質を切り出す。すなわち、目的蛋白質とシャペロニンサブユニット連結体の間に限定分解型プロテアーゼの認識配列をあらかじめ含めておき、当該プロテアーゼを作用させて目的蛋白質を切り出す。なお、限定分解型プロテアーゼとして、トロンビン、FXa(活性型血液第X因子)、エンテロカイネース、プレシジョンプロテアーゼなどが用いられている。
しかしながら、この方法では、目的蛋白質の性質によっては、目的蛋白質自体がプロテアーゼで分解されてしまうことがある。例えば、目的蛋白質がC型肝炎ウイルス抗原の場合は、その疎水性が高いため、限定分解型プロテアーゼの認識配列の厳密性が崩れ、認識配列以外の部分が切断されてC型肝炎ウイルス抗原自体が分解されてしまう。その他の疎水性が高い領域、膜貫通領域などをもつ蛋白質においても同様の問題がある。
また、プロテアーゼの切断効率は目的蛋白質の種類によって異なる。したがって、この方法では、目的蛋白質の種類によってはプロテアーゼが効かず、目的蛋白質を切り出すことができない場合がある。この切断効率の違いは、限定分解型プロテアーゼが切断部位に接近し認識配列を切断する際の、限定分解型プロテアーゼの入り込みやすさ、接近しやすさの違いに起因するものと考えられる。さらに、この方法では、切り出した目的蛋白質を精製する際に、添加した限定分解型プロテアーゼを除去する必要がある。したがって、目的蛋白質の精製が煩雑となるという問題点も有している。
目的蛋白質が封入体を形成しないようにする方法としては、目的蛋白質をグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質等との融合蛋白質として発現させる方法が提案されている。しかし、この方法では、封入体の形成を高効率で解消することは難しい(例えば、スミス・ディ・ビ(Smith,D.B.)ら、ジーン(Gene)、1988年、第67巻、p.31−40)。一方、蛋白質の折り畳み反応を支援する蛋白質である分子シャペロンの作用によって、目的蛋白質を正しい立体構造を有する正常型蛋白質として発現させる試みもある。例えば、目的蛋白質を分子シャペロンと宿主内で共発現させ、その分子シャペロンの作用によって目的蛋白質を正常型蛋白質として発現させる方法もある。しかし、この方法においても正常型蛋白質として得られる目的蛋白質の量を飛躍的に増加させるには至っていない(ニシハラ(Nishihara)ら、アプライド・アンド・エンビロメンタル・ミクロバイオロジー.(Applied and environmental microbiology)、1998年、第64巻、p.1694−1699)。
分子シャペロンの作用を利用する別の方法として、分子シャペロンの一種であるシャペロニンのサブユニット同士を連結したシャペロニンサブユニット連結体を利用する試みもある。すなわち、目的蛋白質を1〜20個のシャペロニンサブユニットが直列に連結されたシャペロニンサブユニット連結体との融合蛋白質を作製して利用する。この際、目的蛋白質は天然のシャペロニンと複合体を形成するのと同様に、シャペロニンの立体構造内部に格納される。その結果、目的蛋白質は正しく折り畳まれた正常型蛋白質として得られやすくなり、封入体の形成を抑制することができる。さらに、目的蛋白質が宿主に対する毒性を有する場合でも、シャペロニンの内部に格納されているので毒性を抑えることができる。さらに、宿主由来のプロテアーゼによる攻撃から目的蛋白質を守ることもできる(WO02/052029 A1参照)。すなわち、この方法によると、宿主に対する毒性を有する種々のウイルス抗原、種々の抗体、7回膜貫通型受容体(G蛋白質共役型受容体)、あるいはサイトカイン類などを発現することが可能である。
この方法では、従来のGST、チオレドキシン、マルトース結合蛋白質などの融合蛋白質で用いられている方法と同様に、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す必要がある。具体的には、融合蛋白質に限定分解型プロテアーゼを作用させて、目的蛋白質を切り出す。すなわち、目的蛋白質とシャペロニンサブユニット連結体の間に限定分解型プロテアーゼの認識配列をあらかじめ含めておき、当該プロテアーゼを作用させて目的蛋白質を切り出す。なお、限定分解型プロテアーゼとして、トロンビン、FXa(活性型血液第X因子)、エンテロカイネース、プレシジョンプロテアーゼなどが用いられている。
しかしながら、この方法では、目的蛋白質の性質によっては、目的蛋白質自体がプロテアーゼで分解されてしまうことがある。例えば、目的蛋白質がC型肝炎ウイルス抗原の場合は、その疎水性が高いため、限定分解型プロテアーゼの認識配列の厳密性が崩れ、認識配列以外の部分が切断されてC型肝炎ウイルス抗原自体が分解されてしまう。その他の疎水性が高い領域、膜貫通領域などをもつ蛋白質においても同様の問題がある。
また、プロテアーゼの切断効率は目的蛋白質の種類によって異なる。したがって、この方法では、目的蛋白質の種類によってはプロテアーゼが効かず、目的蛋白質を切り出すことができない場合がある。この切断効率の違いは、限定分解型プロテアーゼが切断部位に接近し認識配列を切断する際の、限定分解型プロテアーゼの入り込みやすさ、接近しやすさの違いに起因するものと考えられる。さらに、この方法では、切り出した目的蛋白質を精製する際に、添加した限定分解型プロテアーゼを除去する必要がある。したがって、目的蛋白質の精製が煩雑となるという問題点も有している。
本発明の目的は、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質及びその遺伝子、該融合蛋白質から該介在蛋白質の作用によって目的蛋白質を切り出す目的蛋白質の製造方法、ペプチド結合切断活性を有するインテインの部分配列蛋白質及びその遺伝子、発現ベクター、並びに形質転換体を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、インテインに代表されるペプチド結合切断活性を有する蛋白質と、分子シャペロンとを組み合わせることにより、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として製造することができることを見出した。さらに、本製造方法に有用な、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質を単離した。さらに、ペプチド結合切断活性を有するインテインの部分配列蛋白質を単離した。さらに、それらをコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクター及び該発現ベクターを含有する形質転換体を単離し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質をペプチド結合で連結させたことを特徴とする融合蛋白質。
(2) 分子シャペロンが、複数のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンであることを特徴とする(1)に記載の融合蛋白質。
(3) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット、又はシャペロニンサブユニット連結体に連結されており、前記シャペロニンサブユニット連結体は、2〜10個のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結したものであることを特徴とする(2)に記載の融合蛋白質。
(4) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のN末端、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のC末端、シャペロニンサブユニット連結体のシャペロニンサブユニット同士の連結部、から選択される1又は2以上の部位に連結されていることを特徴とする(3)に記載の融合蛋白質。
(5) シャペロニンサブユニットと目的蛋白質との数の比が1:1〜10:1であることを特徴とする(3)又は(4)に記載の融合蛋白質。
(6) 分子シャペロンがペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼであることを特徴とする(1)に記載の融合蛋白質。
(7) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼのN末端及び/又はC末端に連結されていることを特徴とする(6)に記載の融合蛋白質。
(8) 分子シャペロンが、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(9) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテイン又はインテインの部分配列蛋白質であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(10) インテインが、N末端を切断するがC末端を切断しないものであることを特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(11) インテインが、C末端を切断するがN末端を切断しないものであること特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(12) インテインの部分配列蛋白質が、インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(13) インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(14) インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(15) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(12)に記載の融合蛋白質。
(16) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(12)に記載の融合蛋白質。
(17) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がプロテアーゼであることを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(18) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質をコードする単離された遺伝子。
(19) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質から、目的蛋白質を、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって切り出すことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(20) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質を調製する工程と、前工程で調製した融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質のペプチド結合切断活性を惹起する工程と、前工程でペプチド結合切断活性を惹起したペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用により、融合蛋白質の一部を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(21) 前記融合蛋白質を20〜37℃の温度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(22) 前記融合蛋白質をpH6〜8の水素イオン濃度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)又は(21)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(23) チオールを添加することにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)〜(22)のいずれかに目的蛋白質の製造方法。
(24) 前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた発現ベクターを宿主に導入して該融合蛋白質を発現する工程と、前工程で得られた融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(25) 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んで2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質を発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(26) 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドの、一方に前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込み、他方に分子シャペロンのみをコードする遺伝子を組み込んで、2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質と該分子シャペロンを発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程を含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(27) 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(24)〜(26)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(28) 宿主内で融合蛋白質を発現させ、前記宿主はバクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(19)〜(26)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(29) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(30) 分子シャペロンがシャペロニンであり、5〜10個のシャペロニンサブユニットがリング状に集合してシャペロニンリングを形成しており、前記目的蛋白質は、該シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする(19)〜(29)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(31) インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とするインテインの部分配列蛋白質。
(32) インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(33) インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(34) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(35) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(36) 上記(31)〜(35)のいずれかに記載のインテインの部分配列蛋白質をコードする単離された遺伝子。
(37) 上記(18)又は(36)に記載の遺伝子を含有する発現ベクター。
(38) 上記(37)に記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
(39) インテインの部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第1前駆体をペプチド結合で連結させた第1の融合蛋白質を作製する工程1と、該インテインの残余の部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第2前駆体をペプチド結合で連結させた第2の融合蛋白質を作製する工程2と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、工程1で得られた第1の融合蛋白質から目的蛋白質第1前駆体を切り出し、さらに工程2で得られた第2の融合蛋白質から目的蛋白質第2前駆体を切り出す工程3と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、工程3で得られた目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルする工程4とを含むことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(40) 分子シャペロンの一方の末端にインテインの部分配列蛋白質、他方の末端に該インテインの残余の部分配列蛋白質がペプチド結合を介して連結され、さらに該インテインの部分配列蛋白質に目的蛋白質第1前駆体がペプチド結合を介して連結され、且つ該インテインの残余の部分配列蛋白質に目的蛋白質第2前駆体がペプチド結合を介して連結された融合蛋白質から、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、目的蛋白質第1前駆体及び目的蛋白質第2前駆体を切り出し、さらにインテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルすることを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(41) 前記融合蛋白質を宿主内で発現させることを特徴とする(39)又は(40)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(42) 前記宿主が、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(41)に記載の融合蛋白質の製造方法。
(43) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする(39)又は(40)に記載の目的蛋白質の製造方法。
本発明の目的蛋白質の製造方法によれば、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい目的蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として目的蛋白質を得ることができる。さらに、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す際においても、より簡便且つ安全に目的蛋白質を切り出すことができる。
本発明の融合蛋白質によれば、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい目的蛋白質であっても、融合蛋白質の一部として発現することができる。さらに、融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって、目的蛋白質が簡便且つ安全に切り出される。
本発明のインテインの部分配列蛋白質によれば、天然のインテインに比べて分子量が小さいので、分子シャペロンと目的蛋白質との融合蛋白質の分子量を小さくすることができる。したがって、遺伝子組み換え技術により該融合蛋白質をより容易に発現させることができる。
本発明のインテインの部分配列蛋白質の遺伝子によれば、遺伝子組み換え技術によりインテインの部分配列蛋白質を発現することができる。
本発明のベクターによれば、目的蛋白質の遺伝子を導入するだけで、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を作製することができ、容易に該融合蛋白質の遺伝子を宿主に導入することができる。また、本発明のベクターによれば、インテインの部分配列蛋白質の遺伝子を容易に宿主に導入することができる。
本発明の形質転換体によれば、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質を製造することができる。また、本発明の形質転換体によれば、インテインの部分配列蛋白質を製造することができる。
本発明者らは、鋭意研究の結果、インテインに代表されるペプチド結合切断活性を有する蛋白質と、分子シャペロンとを組み合わせることにより、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として製造することができることを見出した。さらに、本製造方法に有用な、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質を単離した。さらに、ペプチド結合切断活性を有するインテインの部分配列蛋白質を単離した。さらに、それらをコードする遺伝子を単離し、該遺伝子を含有する発現ベクター及び該発現ベクターを含有する形質転換体を単離し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質をペプチド結合で連結させたことを特徴とする融合蛋白質。
(2) 分子シャペロンが、複数のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンであることを特徴とする(1)に記載の融合蛋白質。
(3) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット、又はシャペロニンサブユニット連結体に連結されており、前記シャペロニンサブユニット連結体は、2〜10個のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結したものであることを特徴とする(2)に記載の融合蛋白質。
(4) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のN末端、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のC末端、シャペロニンサブユニット連結体のシャペロニンサブユニット同士の連結部、から選択される1又は2以上の部位に連結されていることを特徴とする(3)に記載の融合蛋白質。
(5) シャペロニンサブユニットと目的蛋白質との数の比が1:1〜10:1であることを特徴とする(3)又は(4)に記載の融合蛋白質。
(6) 分子シャペロンがペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼであることを特徴とする(1)に記載の融合蛋白質。
(7) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼのN末端及び/又はC末端に連結されていることを特徴とする(6)に記載の融合蛋白質。
(8) 分子シャペロンが、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(9) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテイン又はインテインの部分配列蛋白質であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(10) インテインが、N末端を切断するがC末端を切断しないものであることを特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(11) インテインが、C末端を切断するがN末端を切断しないものであること特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(12) インテインの部分配列蛋白質が、インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とする(9)に記載の融合蛋白質。
(13) インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(14) インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする(9)〜(12)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(15) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(12)に記載の融合蛋白質。
(16) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(12)に記載の融合蛋白質。
(17) ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がプロテアーゼであることを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の融合蛋白質。
(18) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質をコードする単離された遺伝子。
(19) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質から、目的蛋白質を、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって切り出すことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(20) 上記(1)〜(17)のいずれかに記載の融合蛋白質を調製する工程と、前工程で調製した融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質のペプチド結合切断活性を惹起する工程と、前工程でペプチド結合切断活性を惹起したペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用により、融合蛋白質の一部を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(21) 前記融合蛋白質を20〜37℃の温度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(22) 前記融合蛋白質をpH6〜8の水素イオン濃度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)又は(21)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(23) チオールを添加することにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする(20)〜(22)のいずれかに目的蛋白質の製造方法。
(24) 前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた発現ベクターを宿主に導入して該融合蛋白質を発現する工程と、前工程で得られた融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(25) 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んで2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質を発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(26) 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドの、一方に前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込み、他方に分子シャペロンのみをコードする遺伝子を組み込んで、2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質と該分子シャペロンを発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程を含むことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(27) 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(24)〜(26)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(28) 宿主内で融合蛋白質を発現させ、前記宿主はバクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(19)〜(26)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(29) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする(19)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(30) 分子シャペロンがシャペロニンであり、5〜10個のシャペロニンサブユニットがリング状に集合してシャペロニンリングを形成しており、前記目的蛋白質は、該シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする(19)〜(29)のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
(31) インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とするインテインの部分配列蛋白質。
(32) インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(33) インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(34) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(35) インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする(31)に記載のインテインの部分配列蛋白質。
(36) 上記(31)〜(35)のいずれかに記載のインテインの部分配列蛋白質をコードする単離された遺伝子。
(37) 上記(18)又は(36)に記載の遺伝子を含有する発現ベクター。
(38) 上記(37)に記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
(39) インテインの部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第1前駆体をペプチド結合で連結させた第1の融合蛋白質を作製する工程1と、該インテインの残余の部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第2前駆体をペプチド結合で連結させた第2の融合蛋白質を作製する工程2と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、工程1で得られた第1の融合蛋白質から目的蛋白質第1前駆体を切り出し、さらに工程2で得られた第2の融合蛋白質から目的蛋白質第2前駆体を切り出す工程3と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、工程3で得られた目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルする工程4とを含むことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(40) 分子シャペロンの一方の末端にインテインの部分配列蛋白質、他方の末端に該インテインの残余の部分配列蛋白質がペプチド結合を介して連結され、さらに該インテインの部分配列蛋白質に目的蛋白質第1前駆体がペプチド結合を介して連結され、且つ該インテインの残余の部分配列蛋白質に目的蛋白質第2前駆体がペプチド結合を介して連結された融合蛋白質から、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、目的蛋白質第1前駆体及び目的蛋白質第2前駆体を切り出し、さらにインテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルすることを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
(41) 前記融合蛋白質を宿主内で発現させることを特徴とする(39)又は(40)に記載の目的蛋白質の製造方法。
(42) 前記宿主が、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする(41)に記載の融合蛋白質の製造方法。
(43) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする(39)又は(40)に記載の目的蛋白質の製造方法。
本発明の目的蛋白質の製造方法によれば、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい目的蛋白質であっても、効率的に正常型蛋白質として目的蛋白質を得ることができる。さらに、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す際においても、より簡便且つ安全に目的蛋白質を切り出すことができる。
本発明の融合蛋白質によれば、通常の遺伝子組換え技術によっては発現が難しい目的蛋白質であっても、融合蛋白質の一部として発現することができる。さらに、融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって、目的蛋白質が簡便且つ安全に切り出される。
本発明のインテインの部分配列蛋白質によれば、天然のインテインに比べて分子量が小さいので、分子シャペロンと目的蛋白質との融合蛋白質の分子量を小さくすることができる。したがって、遺伝子組み換え技術により該融合蛋白質をより容易に発現させることができる。
本発明のインテインの部分配列蛋白質の遺伝子によれば、遺伝子組み換え技術によりインテインの部分配列蛋白質を発現することができる。
本発明のベクターによれば、目的蛋白質の遺伝子を導入するだけで、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子を作製することができ、容易に該融合蛋白質の遺伝子を宿主に導入することができる。また、本発明のベクターによれば、インテインの部分配列蛋白質の遺伝子を容易に宿主に導入することができる。
本発明の形質転換体によれば、分子シャペロンとペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と目的蛋白質との融合蛋白質を製造することができる。また、本発明の形質転換体によれば、インテインの部分配列蛋白質を製造することができる。
図1は、発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iの主要部を示す構成図である。図中、(TCPβ)4はシャペロニンβサブユニット4連結体をコードする遺伝子、SspIはインテインをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図2は、実施例1及び比較例1で得た菌体破砕上清についての、抗体軽鎖を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図3(a)は、実施例2で得た菌体破砕上清についての、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図3(b)は、比較例2で得た菌体破砕上清についての、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図4は、発現ベクターpT(GroEL)7Iの主要部を示す構成図である。図中、(GroEL)7はGroELサブユニット7連結体をコードする遺伝子、NSspIはN末端のみが切断できるよう改変してあるインテイン配列をコードする遺伝子、FLAGはFLAGペプチドをコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図5は、実施例3及び比較例3で得た菌体破砕上清についての、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果(1:比較例3の菌体破砕上清、2:実施例3の菌体破砕上清)を示す写真である。
図6は、発現ベクターpET TPPIase Iの主要部を示す構成図である。図中、TPPIaseはTPPIase配列コードする遺伝子を、SspIはインテインをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図7は、実施例4及び比較例4で得た菌体破砕上清についての、ヒスチジンを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果(1:実施例4の菌体破砕上清、2:比較例4の菌体破砕上清、3:GFP−6His標準品)を示す写真である。
図8は、実施例5及び比較例5におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロール、2:実施例5の菌体破砕上清、3:比較例5の菌体破砕上清)を示す写真である。
図9は、実施例5及び比較例5におけるSDS−PAGE/CBB解析結果(1:比較例5の菌体破砕上清、2:比較例5の菌体破砕上清のFLAGカラム精製画分、3:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロール、4:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロールのFLAGカラム精製画分)を示す写真である。
図10は、実施例6及び比較例6におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:比較例6の菌体破砕上清、2:実施例6の菌体破砕上清)を示す写真である。
図11、実施例7及び比較例7におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:GFP−6His標準品、2:実施例7の菌体破砕上清、3:比較例7の菌体破砕上清)を示す写真である。
図12は、発現ベクターpETDH(TCPβ)4I−2の主要部を示す構成図である。図中、(TCPβ)4はシャペロンβサブユニット4連結体をコードする遺伝子、SspIはインテインをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図13は、発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI−2の主要部を示す構成図である。図中、(TCPβ)4はシャペロンβサブユニット4連結体をコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図14は、実施例8及び比較例8で得られた菌体破砕液上清のウエスタンブロッティング解析結果(1:実施例8のpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2導入菌体破砕上清、2:実施例8のpETDH(TCPβ)4I・AbL−2導入菌体破砕上清、3:比較例8)を示す写真である。
図15(a)は、実施例9で得られた菌体破砕液上清をSDS−PAGE、CBB染色を行った解析結果(1:実施例9の菌体破砕上清)を示す写真である。
図15(b)は、比較例9で得られた菌体破砕液上清をSDS−PAGE、CBB染色を行った解析結果(2:比較例9の菌体破砕上清、3:宿主菌体破砕上清)を示す写真である。
図16は、実施例9のウェスタンブロッティング解析結果(1:実施例9の菌体破砕上清、2:宿主菌体破砕上清)を示す写真である。
図17は、発現ベクターpGEX MMIの主要部を示す構成図である。図中、GSTはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図18は、実施例10及び比較例10で得られた菌体破砕液上清ウェスタンブロッティング解析結果(1:実施例10−1の菌体破砕上清、2:実施例10−2の菌体破砕上清、3:比較例10の菌体破砕上清)を示す写真である。
図19は、発現ベクターpET TPPIaseMMIの主要部を示す構成図である。図中、TPPIaseはTPPIaseをコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図20は、実施例11及び比較例11におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:GFP−6His標準品、2:比較例11−1の菌体破砕上清、3:実施例11の菌体破砕上清、4:比較例11−2の菌体破砕上清)を示す写真である。
図2は、実施例1及び比較例1で得た菌体破砕上清についての、抗体軽鎖を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図3(a)は、実施例2で得た菌体破砕上清についての、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図3(b)は、比較例2で得た菌体破砕上清についての、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果を示す写真である。
図4は、発現ベクターpT(GroEL)7Iの主要部を示す構成図である。図中、(GroEL)7はGroELサブユニット7連結体をコードする遺伝子、NSspIはN末端のみが切断できるよう改変してあるインテイン配列をコードする遺伝子、FLAGはFLAGペプチドをコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図5は、実施例3及び比較例3で得た菌体破砕上清についての、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果(1:比較例3の菌体破砕上清、2:実施例3の菌体破砕上清)を示す写真である。
図6は、発現ベクターpET TPPIase Iの主要部を示す構成図である。図中、TPPIaseはTPPIase配列コードする遺伝子を、SspIはインテインをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図7は、実施例4及び比較例4で得た菌体破砕上清についての、ヒスチジンを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析結果(1:実施例4の菌体破砕上清、2:比較例4の菌体破砕上清、3:GFP−6His標準品)を示す写真である。
図8は、実施例5及び比較例5におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロール、2:実施例5の菌体破砕上清、3:比較例5の菌体破砕上清)を示す写真である。
図9は、実施例5及び比較例5におけるSDS−PAGE/CBB解析結果(1:比較例5の菌体破砕上清、2:比較例5の菌体破砕上清のFLAGカラム精製画分、3:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロール、4:SspI遺伝子を含まないベクターによるコントロールのFLAGカラム精製画分)を示す写真である。
図10は、実施例6及び比較例6におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:比較例6の菌体破砕上清、2:実施例6の菌体破砕上清)を示す写真である。
図11、実施例7及び比較例7におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:GFP−6His標準品、2:実施例7の菌体破砕上清、3:比較例7の菌体破砕上清)を示す写真である。
図12は、発現ベクターpETDH(TCPβ)4I−2の主要部を示す構成図である。図中、(TCPβ)4はシャペロンβサブユニット4連結体をコードする遺伝子、SspIはインテインをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図13は、発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI−2の主要部を示す構成図である。図中、(TCPβ)4はシャペロンβサブユニット4連結体をコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図14は、実施例8及び比較例8で得られた菌体破砕液上清のウエスタンブロッティング解析結果(1:実施例8のpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2導入菌体破砕上清、2:実施例8のpETDH(TCPβ)4I・AbL−2導入菌体破砕上清、3:比較例8)を示す写真である。
図15(a)は、実施例9で得られた菌体破砕液上清をSDS−PAGE、CBB染色を行った解析結果(1:実施例9の菌体破砕上清)を示す写真である。
図15(b)は、比較例9で得られた菌体破砕液上清をSDS−PAGE、CBB染色を行った解析結果(2:比較例9の菌体破砕上清、3:宿主菌体破砕上清)を示す写真である。
図16は、実施例9のウェスタンブロッティング解析結果(1:実施例9の菌体破砕上清、2:宿主菌体破砕上清)を示す写真である。
図17は、発現ベクターpGEX MMIの主要部を示す構成図である。図中、GSTはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図18は、実施例10及び比較例10で得られた菌体破砕液上清ウェスタンブロッティング解析結果(1:実施例10−1の菌体破砕上清、2:実施例10−2の菌体破砕上清、3:比較例10の菌体破砕上清)を示す写真である。
図19は、発現ベクターpET TPPIaseMMIの主要部を示す構成図である。図中、TPPIaseはTPPIaseをコードする遺伝子、MMIはMMIをコードする遺伝子、6Hisはヒスチジン6残基をコードする遺伝子、終は終止コドンを示す。
図20は、実施例11及び比較例11におけるウエスタンブロッティング解析結果(1:GFP−6His標準品、2:比較例11−1の菌体破砕上清、3:実施例11の菌体破砕上清、4:比較例11−2の菌体破砕上清)を示す写真である。
本発明の融合蛋白質は、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質と、分子シャペロンと、目的蛋白質とから構成される。本発明の融合蛋白質によれば、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって融合蛋白質から目的蛋白質を切り出し、目的蛋白質を得ることができる。
ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質には、プロテアーゼのように他の蛋白質に作用してその蛋白質のペプチド結合を切断するものと、インテインのように自分自身に作用して自己触媒的にペプチド結合を切断するものの両方が含まれる。本発明の融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の例としては、プロテアーゼ、インテイン、ヘッジホッグ蛋白質、セルフスプライシング蛋白質等が挙げられる。
インテインは真核動物、古細菌、真正細菌のすべてで見つかっているプロテインスプライシングを行なう蛋白質である。そして、本発明の融合蛋白質を構成するペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテインの場合は、インテインの自己触媒的作用によってその融合蛋白質が切断され、目的蛋白質が切り出される。天然のインテインは、自分自身のN末端及びC末端のペプチド結合を切断する活性を持ち、さらに切断した両端をペプチド結合でつなぐ活性を有する。本発明の融合蛋白質を構成するためのインテインは、ペプチド結合切断活性のみを有し、切断した両端をペプチド結合でつなぐ活性を欠失させた改変型インテインであることが好ましい。すなわち、このような改変型インテインを用いることにより、目的蛋白質と分子シャペロンが再結合することを防ぐことができ、より簡便に融合蛋白質から目的蛋白質を切り出すことができる。改変型インテインは、天然型インテインの一部のアミノ酸残基を置換することにより得ることができる。例えば、天然型インテインのN末端のシステインをアラニンに改変することにより、N末端の切断活性を有さずC末端の切断活性のみを有する改変型インテイン(以下、「Cインテイン」と称する)を得ることができる。また、天然型インテインのC末端のアスパラギンをアラニンに改変することにより、C末端の切断活性を有さずN末端の切断活性のみを有する改変型インテイン(以下、「Nインテイン」と称する)を得ることができる。(Mathys Sら、Gene、1999年、第231巻、p.1−13)。このような改変型インテインによれば、その両端ともが切断されることはないので、分子シャペロンと目的蛋白質が再結合する恐れはない。
本発明の融合蛋白質を構成するためのインテインの由来としては、例えば、Synechocystis sp.(例えば、シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテイン)、Mycobacterium xenopi(例えば、Mycobacterium xenopi Gyrase Aインテイン)、Saccharomyces cerevisiae(Saccharomyces cerevisiae Vacuolar Membrane ATPaseインテイン)等が挙げられる。特に、Synechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテインは、エンドヌクレアーゼ活性を有している中央ドメインを削除してN末端ドメインとC末端ドメインのみからなるように改変しても、切断活性を保持する。したがって、そのようにして改変したインテインを用いることにより、他の由来のインテインに比べて分子量を小さくすることができ、遺伝子組換え手法によって発現させる際には好都合である。なお、ここに挙げた以外のインテインであっても、ペプチド結合切断活性を有するものであれば、本発明の融合蛋白質を構成するペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質として採用可能である。
ここで、Synechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、N末端のアミノ酸をアラニンに置換したCインテイン(以下、「SspI」と称する。)をコードする遺伝子の塩基配列と対応するアミノ酸配列を配列番号3に、対応するアミノ酸配列のみを配列番号4に示す。
また、本発明の融合蛋白質においては、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質は、全長のインテインではなくインテインの部分配列蛋白質で全長のインテインと同様の活性を有するものでもよい。本発明の融合蛋白質におけるインテインの部分配列蛋白質は、インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなる蛋白質群から選択される。これらのインテインの部分配列蛋白質は、全長のインテインと同様の蛋白質スプライシング機能、自身のC末端のペプチド結合を切断する活性を有する。
例えば、配列番号4で示されるSspIの、アミノ酸配列のC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなる蛋白質は全長のSspIと同様の各機能を有しており、本発明の融合蛋白質に適用される。より好ましくは、配列番号4で示されるSspIの、アミノ酸配列のC末端から48個のアミノ酸残基からなる蛋白質(以下、「MMI」と称する)が、本発明の融合蛋白質の構成要素として好適である。MMIのアミノ酸配列を配列番号32に示す。さらに、配列番号32で示されるアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質、すなわち、MMIと実質同一の蛋白質も、本発明の融合蛋白質の構成要素として好適である。さらに、配列番号32で示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有する蛋白質、好ましくは80%以上の相同性を有する蛋白質、より好ましくは90%以上の相同性を有する蛋白質、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する蛋白質であって、且つペプチド切断活性を有する蛋白質も、本発明の融合蛋白質の構成要素となりうる。さらに、上記の例示以外のインテインの部分配列蛋白質でも、ペプチド結合切断活性を有するものであれば、本発明の融合蛋白の構成要素となりうる。
なお、上記したMMIをコードする遺伝子としては、配列番号31に示される塩基配列を有する単離されたDNAが挙げられる。さらに、配列番号31に示されるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能で、且つペプチド切断活性を有する蛋白質をコードするDNAは、MMIと実質同一の蛋白質をコードする。ここで、ハイブリダイズ可能なDNAとは、あるDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより検出されるDNAを意味する。また、ストリンジェントな条件とは、0.1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、1%SDS、65℃、24時間の条件をいう。この条件下でハイブリダイズするDNAは、配列番号31で示されるMMI遺伝子と実質同一のDNAである。なお、ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)などに記載されている方法に準じて行うことができる。
また、ストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能か否かを問わず、配列番号31に示される塩基配列と少なくとも約60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するDNAで、ペプチド結合切断活性を有する蛋白質をコードするものについては、その産物が本発明の融合蛋白質構成要素となりうる。
ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテイン以外の場合、例えば、プロテアーゼの場合は、そのプロテアーゼが認識するアミノ酸配列をプロテアーゼと目的蛋白質の間に挿入しておくことによって、該プロテアーゼの作用によって融合蛋白質を切断することができる。また、ヘッジホッグ蛋白質はショウジョウバエの細胞外分泌性のシグナル伝達因子であり、自身のプロセシングのためにペプチド結合を切断する活性を持つものであるが、このヘッジホッグ蛋白質も本発明の融合蛋白質を構成することができる。また、プロテアーゼやヘッジホッグ蛋白質においても、その全長を有する天然型のものだけではなく、その部分配列蛋白質で同様の活性をもつものも本発明の融合蛋白質を構成することができる。本発明においては、プロテアーゼやヘッジホッグ蛋白質という語には、その部分配列蛋白質であって全長を有する天然型のものと同様の活性を有する蛋白質も含むものとする。
本発明の融合蛋白質を構成する目的蛋白質としては特に限定されず、ヒト、マウスなどの高等動物由来の疾病関連遺伝子産物や、化学プロセスに有効な酵素群の全て、あるいは前記疾病関連遺伝子産物や酵素群などの有用な蛋白質が挙げられる。具体的には、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどの病原性ウイルスゲノムにコードされる、外被蛋白質、コア蛋白質、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼなどの蛋白質(ウイルス抗原)が挙げられる。さらに、これら病原性ウイルスに対する抗体となる蛋白質、哺乳動物由来抗体の重鎖、哺乳動物由来抗体の軽鎖、哺乳動物由来抗体の定常領域、哺乳動物由来抗体のFv領域単鎖抗体(scFV)の全長、又はそれらの6残基以上の部分蛋白質、Fab(抗原結合フラグメント)、(Fab’)2フラグメント、CH1−CH2−CH3フラグメント、CH1−CH2フラグメント、CH2−CH3フラグメント、CH1フラグメント、CH2フラグメント、CH3フラグメント、CLフラグメント、及び、完全抗体型である治療・診断用抗体が挙げられる。さらに、7回貫通型受容体(G蛋白質共役型受容体)、血小板増殖因子、血液幹細胞成長因子、肝細胞増殖因子、トランスフォーミング成長因子、神経成長・栄養因子、線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子などの成長因子(Growth factor);腫瘍壊死因子、インターフェロン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン3やインターロイキン5などのインターロイキン、アルブミン、ヒト成長ホルモンなどのサイトカイン類、などが挙げられる。また、例えば、生きた細胞内における現象を観察するために細胞内の機能蛋白質の蛍光標識として使用できる緑色蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein、以下「GFP」と称する)なども挙げられる。さらに、これらの蛋白質から選ばれる2以上の蛋白質を連結させた人工蛋白質も、本発明の融合蛋白質を構成する目的蛋白質として適用可能である。
本発明の融合蛋白質を構成する分子シャペロン又はそのサブユニットとしては特に限定はなく、蛋白質の折り畳みを助ける作用を有するものであれば、すべて適用可能である。例としては、複数のシャペロニンサブユニットによる複合体であるシャペロニン、又はペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ(以下、PPIaseという。)などが挙げられる。
なお、分子シャペロンには、単一分子で作用する分子シャペロンと、複数のサブユニットからなる複合体を形成する分子シャペロンとがある。そして、本発明の融合蛋白質において、前者の分子シャペロンを含む場合は、その単一分子の分子シャペロンと介在蛋白質が連結されている。一方、後者の分子シャペロンを含む場合は、そのサブユニットと介在蛋白質が連結されている。前者の例としては、PPIaseがあり、後者の例としてはシャペロニンが挙げられる。
シャペロニンは、約60kDaのサブユニット(シャペロニンサブユニット)が1〜約20個程度集まった複合体である。シャペロニンは、細胞に熱ショックなどのストレスを与えることにより誘導されるヒートショック蛋白質の一種としても知られている。シャペロニンは、バクテリア(例えば、大腸菌など)、古細菌(例えば、Thermococcus sp.、Pyrococcus horikoshii、Aeropyrum pernixなど)及び真核生物(例えば、酵母、マウス、ヒトなど)などの全ての生物に存在し、蛋白質の折り畳み支援や変性防御の機能を有している。
複数のシャペロニンサブユニット同士がペプチド結合を介して直列に連結された人工蛋白質(以下、「シャペロニンサブユニット連結体」と称する)も、天然のシャペロニンと同様に複合体を形成することが知られている。この際、2〜約10個のシャペロニンサブユニットは、天然のシャペロニンと同様に直線状あるいはリング状(以下、シャペロニンリングともいう。)の構造をとることが知られている。なお、「シャペロニンサブユニット連結体」という用語に対比して、他のシャペロニンサブユニットとはペプチド結合を介して連結されていないシャペロニンサブユニットを「単独のシャペロニンサブユニット」と呼ぶこととする。
本発明の融合蛋白質において、目的蛋白質は、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のN末端、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のC末端、シャペロニンサブユニット連結体のシャペロニンサブユニット同士の連結部、から選択される1又は2以上の部位に、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質を介して連結される。いずれの場合も、目的蛋白質が複数のシャペロニンサブユニット間によって構成される空洞(キャビティ)、すなわち1層又は2層以上のシャペロニンリングの内部に格納されるよう、目的蛋白質の結合部位を選択することが好ましい。
本発明の融合蛋白質を構成する分子シャペロンの例であるシャペロニンは、10〜20個のシャペロニンサブユニットからなる2層のリング構造、すなわち5〜10個のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造(以下、2層のリング構造をシャペロニン複合体ともいう。)を形成するものが好適である。例えば、内径4.5nm、高さ14.5nmの空洞(キャビティ)を有する大腸菌シャペロニンGroELが好適である。シャペロニンを分子シャペロンとして用いる場合は、目的蛋白質はシャペロニンリングの内部に収納されるよう融合蛋白質を構成することが好ましい。なお、バクテリア又は古細菌由来のシャペロニンは、宿主内で容易に発現させることができるので、本発明の融合蛋白質を製造する際には特に好適である。
また、上記シャペロニンとしては、リング構造への自己集合能が維持されていれば、野生型のみならずアミノ酸変異体も使用可能である。例えば、各シャペロニンサブユニットの会合力が弱められた変異体を用いた場合、格納された目的蛋白質の回収がより容易になる。また、宿主としてバクテリアを用いてシャペロニンを発現させる場合、宿主と同じバクテリア由来のシャペロニンサブユニットを発現させると、その発現量が多くなることが多い。その結果、目的蛋白質の生産効率が向上することが多い。
なお、シャペロニンを構成するシャペロニンサブユニットの数は、その由来生物によって異なる。例えば、バクテリア由来のシャペロニンではシャペロニンサブユニットの数は通常7個である。一方、古細菌由来のシャペロニンでは通常8〜9個、真核生物由来のシャペロニンでは通常8個である。したがって、本発明の融合蛋白質を構成するシャペロニンのシャペロニンサブユニットの数は、その由来によって最適の数を選択することができる。
また、分子シャペロンにシャペロニンを使用した本発明の融合蛋白質において、リング構造を形成するためのシャペロニンサブユニットと目的蛋白質の数比については、通常1:1〜10:1の範囲内であり、好ましくは1:1〜9:1である。なお、10:1よりもシャペロニンサブユニットの数の比が大きくなると、発現する目的蛋白質の実質的な生産量が少なくなるとともに、シャペロニンのリング構造の形成が困難となることがある。
具体的には、シャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニンサブユニット:目的蛋白質の数の比は、1:1又は7:1であることが好ましい。また、シャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:目的蛋白質の数の比は、1:1、2:1、4:1又は8:1であることが好ましい。
分子シャペロンの他の例として、PPIaseが挙げられる。PPIaseは、蛋白質のフォールディングに関与する蛋白質折り畳み因子の1つであり、細胞内でフォールディング途上のターゲット蛋白質中のアミノ酸のうち、プロリン残基のN末端側ペプチド結合のシストランス異性化反応を触媒する活性(PPIase活性)を有する。
PPIaseはその阻害剤に対する感受性から、FK506 Binding Protein型(FKBP型)、シクロフィリン型及びパーブリン型の3種類に分類される。FKBP型PPIaseは免疫阻害剤の1つであるFK506により活性が阻害されるPPIase及びそのホモログである。シクロフィリン型PPIaseは、別の免疫阻害剤であるシクロスポリンに対して感受性を持つPPIase又はそのホモログである。一方、パーブリン型PPIaseは、いずれの免疫阻害剤に対しても感受性を示さず、ジュグロン(juglone)によりその活性が阻害される。この3種類のPPIaseは、アミノ酸一次配列上の相同性はほとんどない。
本発明の融合蛋白質を構成するPPIaseとしては特に限定されず、上記の3種類のPPIaseのうち、いずれのタイプのPPIaseであってもよい。FKBP型PPIaseとしては、例えば、古細菌由来FKBP型PPIase、トリガーファクタータイプPPIase(Huang,Protein Sci.,第9巻、p.1254,2000年)、FkpAタイプPPIase(Arie,Mol.Microbiol.,第39巻,p.199,2001年)、FKBP52タイプPPIase(Bose,Science,第274巻,p.1715,1996年)が挙げられる。また、シクロフィリンタイプPPIaseとしては、CyP40タイプPPIaseなどが挙げられる(Pirkl,J.Mol.Biol.,第308巻,p.795,2001年)。さらに、パーブリンタイプPPIaseとしては、SurAタイプPPIase(Behrens,EMBO J.,p.第20巻,p.285,2001年)が挙げられる。なお、本発明において、これらのPPIaseには、アミノ酸配列が極めて似ており、且つ同様の作用を有する実質的に同等のポリペプチド、少なくともこれらのPPIaseの一部分を含み、且つ同様の作用を有するポリペプチド、及び、これらのPPIaseの一部のアミノ酸が他のアミノ酸に改変され、且つ同様の作用を有するポリペプチドも含まれる。
上記古細菌由来FKBP型PPIaseの機能については、興味深いことに、PPIase活性だけでなく、蛋白質の不可逆的凝集を抑制すると同時に、変性蛋白質のリフォールディングを促進させる分子シャペロン活性を有することが見出されている(Furutani,Biochemistry,第39巻,p.453,2000年;Ideno,Eur.J.Biochem.,第267巻,p.3139,2000年;Ideno,Biochem.J.,第357巻,p.465,2001年;Ideno,Appl.Env.Microbiol.,第68,p.464,2002年)。分子シャペロン活性は、本来、分子シャペロンの1つとして知られるシャペロニンやDnaK/DnaJ/GrpE系の蛋白質折り畳みシステムに見いだされた活性である。これらは、細胞内で合成されたポリペプチドが正しい形に折り畳まれるよう、サポートする機能を果たしている。その際、ATPなどの高エネルギー物質の加水分解を必要とする。一方、古細菌由来FKBP型PPIaseは、その分子シャペロン活性を発揮する際、上記高エネルギー物質の加水分解反応を必要としない点でその性質が異なる。古細菌由来FKBP型PPIaseは、分子シャペロン活性を有しないPPIaseに比べて、目的蛋白質をより正しく折り畳むことができるので、本発明の融合蛋白質を構成するPPIaseとして、特に好適である。
本発明における分子シャペロン活性を有するPPIaseとしては上記例示のもの以外であっても、同等の分子シャペロン活性を有するPPIaseであれば、好適に用いることができる。
本発明の目的蛋白質の製造方法は、インテイン等のペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって、融合蛋白質を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出すものである。さらに具体的には、融合蛋白質を単離する工程と、単離した融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質のペプチド結合切断活性を惹起する工程と、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用により、融合蛋白質の一部を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる工程とを含む。本発明の目的蛋白質の製造方法によれば、単独では不溶化等してしまう目的蛋白質を分子シャペロンの作用で正常型蛋白質として発現することができ、さらに、プロテアーゼ等を加えることなく目的蛋白質を切り出すことができる。この際、融合蛋白質の発現は、宿主内で行ってもよいし、無細胞翻訳系で行ってもよい。
宿主内で融合蛋白質の発現を行って目的蛋白質を製造する場合は、まず、融合蛋白質の遺伝子を宿主内に導入する。例えば、適宜のベクターに融合蛋白質をコードする遺伝子を導入して発現ベクターを構築し、適宜の宿主に導入して形質転換体を得る。そして、この形質転換体を培養して融合蛋白質を発現させ、該形質転換体から融合蛋白質を単離する。一方、無細胞翻訳系において融合蛋白質の発現を行う場合は、例えば大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等の無細胞抽出液に、ヌクレオチド3リン酸や各種アミノ酸を加えた反応液中で、融合蛋白質を発現させることができる。
次に、単離された融合蛋白質に対して、介在蛋白質のペプチド切断活性を惹起する処理を行い、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる。介在蛋白質のペプチド切断活性を惹起する処理としては、介在蛋白質がインテインであれば、pHの制御、温度の制御、トリガー物質の添加等が挙げられる。例えば、pHが6〜8の範囲、好ましくは7付近になるように水素イオン濃度を変化させることにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。また、20〜37℃の範囲になるように温度を変化させることにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。また、トリガー物質としてジチオスレイトールやβ−メルカプトエタノールのようなチオールを添加することにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。特に、チオールはNインテインの切断活性を惹起するのに有効である。
逆に、インテインのペプチド結合切断活性が融合蛋白質を単離する前、すなわち宿主内又は試験管内で惹起されないようにすることも、目的蛋白質の収量を増加させるためには有効である。そのための方法としては、例えば、宿主の培養温度を20℃未満にしたり、無細胞蛋白合成を20℃未満で行うことが挙げられる。
また介在蛋白質がプロテアーゼであれば、プロテアーゼの種類に応じて、至適緩衝液条件、温度、pHなどを制御することにより、ペプチド結合切断活性を惹起することができる。
宿主内で融合蛋白質をコードする遺伝子を発現させる際の宿主としては特に限定されず、例えば、大腸菌等のバクテリア、その他の原核細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及びトランスジェニック動・植物等が挙げられる。なかでも、高い細胞増殖特性を有し、培養操作が簡便で且つ培養に用いる栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等のバクテリアや酵母等が特に好適である。また、融合蛋白質は宿主の細胞質内、細胞外のいずれに発現させてもよいが、大量に発現させる場合には細胞内に発現させる方が望ましい。
なお、宿主が大腸菌の場合は、導入されたプラスミドの大きさが10kbp以上になるとプラスミドのコピー数が減少し、結果的に融合蛋白質の合成量が低下することがある。このときは、融合蛋白質を同一の宿主内で共発現させる手段により発現量の低下を防ぐことができる。例えば、同一の融合蛋白質を合成する同一遺伝子を、異なる複製領域及び薬剤耐性遺伝子を有する2種類のプラスミドなどのベクターに導入し、これら2種類のベクターで2種の薬剤の存在下で大腸菌を形質転換し、融合蛋白質の合成を行うことで、高発現をもたらすことが可能である。
また、本発明の目的蛋白質の製造方法では、融合蛋白質をコードする遺伝子と、分子シャペロンのみをコードする遺伝子とをそれぞれ、同一の宿主内で共存させ、複製することが可能な2種類の異なるプラスミドなどのベクターに導入し、同一の宿主内で共発現させてもよい。例えば、目的蛋白質に対するシャペロニンサブユニットの数比が小さい場合は、融合蛋白質をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニットのみをコードする遺伝子とをそれぞれ、同一宿主内で共存・複製可能な2種類のプラスミドに導入して、融合蛋白質とシャペロニンサブユニットを共発現させるとよい。
インテインの部分配列蛋白質と、全長のインテインから該部分配列蛋白質を除いた残余の蛋白質(以下、「インテインの残余の部分配列蛋白質」と称する)は、いわゆるtrans−splicing(ウィ・エイチ(Wu H)ら、バイオケミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et biophysica acta)、1998年、第1387巻、p.422−432)を行うことが知られている。インテインの部分配列蛋白質とインテインの残余の部分配列蛋白質が互いに近くに存在する場合は、隣接する蛋白質同士をアセンブルしやすいと考えられる。ここで、2種類の蛋白質をアセンブルするとは、これらの蛋白質同士を接近させ、共有結合又は非共有結合(水素結合、疎水性相互作用、分子間力等)によって結合又は会合させることをいう。そして、インテインの部分配列蛋白質とインテインの残余蛋白質は、2種類の蛋白質をアセンブルする機能(アセンブリー機能)を有している。このアセンブリー機能を利用して、2種類の目的蛋白質をアセンブルすることができる。例えば、2種類の蛋白質がある目的蛋白質の前駆体となるものであるとき、これらの前駆体をアセンブルして目的蛋白質を製造することができる。
目的蛋白質が免疫グロブリン、前駆体が抗体軽鎖及び抗体重鎖である場合を例に挙げると、第1の例は、分子シャペロンのC末端にインテインのC末端側部分配列蛋白質を介して抗体重鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。一方、別の分子シャペロンのN末端にインテインの残余蛋白質を介して抗体軽鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。そして、これら2つの融合蛋白質を接近させてアセンブリーを起こさせ、抗体重鎖と抗体軽鎖がジスルフィド結合によって結合した免疫グロブリンを作製することができる。また、第2の例は、分子シャペロンのC末端にインテインのC末端側部分配列蛋白質を介して抗体重鎖を連結させ、且つ分子シャペロンのN末端側にインテインの残余蛋白質を介して抗体軽鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。そして、インテインのアセンブリー機能を利用して抗体重鎖と抗体軽鎖をアセンブリーし、抗体重鎖と抗体軽鎖がジスルフィド結合によって結合した免疫グロブリンを作製することができる。なお、インテインの残余蛋白質には、エンドヌクレアーゼ活性部分を含んでいてもよい。
ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質には、プロテアーゼのように他の蛋白質に作用してその蛋白質のペプチド結合を切断するものと、インテインのように自分自身に作用して自己触媒的にペプチド結合を切断するものの両方が含まれる。本発明の融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の例としては、プロテアーゼ、インテイン、ヘッジホッグ蛋白質、セルフスプライシング蛋白質等が挙げられる。
インテインは真核動物、古細菌、真正細菌のすべてで見つかっているプロテインスプライシングを行なう蛋白質である。そして、本発明の融合蛋白質を構成するペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテインの場合は、インテインの自己触媒的作用によってその融合蛋白質が切断され、目的蛋白質が切り出される。天然のインテインは、自分自身のN末端及びC末端のペプチド結合を切断する活性を持ち、さらに切断した両端をペプチド結合でつなぐ活性を有する。本発明の融合蛋白質を構成するためのインテインは、ペプチド結合切断活性のみを有し、切断した両端をペプチド結合でつなぐ活性を欠失させた改変型インテインであることが好ましい。すなわち、このような改変型インテインを用いることにより、目的蛋白質と分子シャペロンが再結合することを防ぐことができ、より簡便に融合蛋白質から目的蛋白質を切り出すことができる。改変型インテインは、天然型インテインの一部のアミノ酸残基を置換することにより得ることができる。例えば、天然型インテインのN末端のシステインをアラニンに改変することにより、N末端の切断活性を有さずC末端の切断活性のみを有する改変型インテイン(以下、「Cインテイン」と称する)を得ることができる。また、天然型インテインのC末端のアスパラギンをアラニンに改変することにより、C末端の切断活性を有さずN末端の切断活性のみを有する改変型インテイン(以下、「Nインテイン」と称する)を得ることができる。(Mathys Sら、Gene、1999年、第231巻、p.1−13)。このような改変型インテインによれば、その両端ともが切断されることはないので、分子シャペロンと目的蛋白質が再結合する恐れはない。
本発明の融合蛋白質を構成するためのインテインの由来としては、例えば、Synechocystis sp.(例えば、シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテイン)、Mycobacterium xenopi(例えば、Mycobacterium xenopi Gyrase Aインテイン)、Saccharomyces cerevisiae(Saccharomyces cerevisiae Vacuolar Membrane ATPaseインテイン)等が挙げられる。特に、Synechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテインは、エンドヌクレアーゼ活性を有している中央ドメインを削除してN末端ドメインとC末端ドメインのみからなるように改変しても、切断活性を保持する。したがって、そのようにして改変したインテインを用いることにより、他の由来のインテインに比べて分子量を小さくすることができ、遺伝子組換え手法によって発現させる際には好都合である。なお、ここに挙げた以外のインテインであっても、ペプチド結合切断活性を有するものであれば、本発明の融合蛋白質を構成するペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質として採用可能である。
ここで、Synechocystis sp.PCC6803株 DnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、N末端のアミノ酸をアラニンに置換したCインテイン(以下、「SspI」と称する。)をコードする遺伝子の塩基配列と対応するアミノ酸配列を配列番号3に、対応するアミノ酸配列のみを配列番号4に示す。
また、本発明の融合蛋白質においては、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質は、全長のインテインではなくインテインの部分配列蛋白質で全長のインテインと同様の活性を有するものでもよい。本発明の融合蛋白質におけるインテインの部分配列蛋白質は、インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなる蛋白質群から選択される。これらのインテインの部分配列蛋白質は、全長のインテインと同様の蛋白質スプライシング機能、自身のC末端のペプチド結合を切断する活性を有する。
例えば、配列番号4で示されるSspIの、アミノ酸配列のC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなる蛋白質は全長のSspIと同様の各機能を有しており、本発明の融合蛋白質に適用される。より好ましくは、配列番号4で示されるSspIの、アミノ酸配列のC末端から48個のアミノ酸残基からなる蛋白質(以下、「MMI」と称する)が、本発明の融合蛋白質の構成要素として好適である。MMIのアミノ酸配列を配列番号32に示す。さらに、配列番号32で示されるアミノ酸配列の1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加もしくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質、すなわち、MMIと実質同一の蛋白質も、本発明の融合蛋白質の構成要素として好適である。さらに、配列番号32で示されるアミノ酸配列と少なくとも60%以上の相同性を有する蛋白質、好ましくは80%以上の相同性を有する蛋白質、より好ましくは90%以上の相同性を有する蛋白質、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する蛋白質であって、且つペプチド切断活性を有する蛋白質も、本発明の融合蛋白質の構成要素となりうる。さらに、上記の例示以外のインテインの部分配列蛋白質でも、ペプチド結合切断活性を有するものであれば、本発明の融合蛋白の構成要素となりうる。
なお、上記したMMIをコードする遺伝子としては、配列番号31に示される塩基配列を有する単離されたDNAが挙げられる。さらに、配列番号31に示されるDNAにストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能で、且つペプチド切断活性を有する蛋白質をコードするDNAは、MMIと実質同一の蛋白質をコードする。ここで、ハイブリダイズ可能なDNAとは、あるDNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより検出されるDNAを意味する。また、ストリンジェントな条件とは、0.1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、1%SDS、65℃、24時間の条件をいう。この条件下でハイブリダイズするDNAは、配列番号31で示されるMMI遺伝子と実質同一のDNAである。なお、ハイブリダイゼーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University(1995)などに記載されている方法に準じて行うことができる。
また、ストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能か否かを問わず、配列番号31に示される塩基配列と少なくとも約60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは約80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有するDNAで、ペプチド結合切断活性を有する蛋白質をコードするものについては、その産物が本発明の融合蛋白質構成要素となりうる。
ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテイン以外の場合、例えば、プロテアーゼの場合は、そのプロテアーゼが認識するアミノ酸配列をプロテアーゼと目的蛋白質の間に挿入しておくことによって、該プロテアーゼの作用によって融合蛋白質を切断することができる。また、ヘッジホッグ蛋白質はショウジョウバエの細胞外分泌性のシグナル伝達因子であり、自身のプロセシングのためにペプチド結合を切断する活性を持つものであるが、このヘッジホッグ蛋白質も本発明の融合蛋白質を構成することができる。また、プロテアーゼやヘッジホッグ蛋白質においても、その全長を有する天然型のものだけではなく、その部分配列蛋白質で同様の活性をもつものも本発明の融合蛋白質を構成することができる。本発明においては、プロテアーゼやヘッジホッグ蛋白質という語には、その部分配列蛋白質であって全長を有する天然型のものと同様の活性を有する蛋白質も含むものとする。
本発明の融合蛋白質を構成する目的蛋白質としては特に限定されず、ヒト、マウスなどの高等動物由来の疾病関連遺伝子産物や、化学プロセスに有効な酵素群の全て、あるいは前記疾病関連遺伝子産物や酵素群などの有用な蛋白質が挙げられる。具体的には、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどの病原性ウイルスゲノムにコードされる、外被蛋白質、コア蛋白質、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼなどの蛋白質(ウイルス抗原)が挙げられる。さらに、これら病原性ウイルスに対する抗体となる蛋白質、哺乳動物由来抗体の重鎖、哺乳動物由来抗体の軽鎖、哺乳動物由来抗体の定常領域、哺乳動物由来抗体のFv領域単鎖抗体(scFV)の全長、又はそれらの6残基以上の部分蛋白質、Fab(抗原結合フラグメント)、(Fab’)2フラグメント、CH1−CH2−CH3フラグメント、CH1−CH2フラグメント、CH2−CH3フラグメント、CH1フラグメント、CH2フラグメント、CH3フラグメント、CLフラグメント、及び、完全抗体型である治療・診断用抗体が挙げられる。さらに、7回貫通型受容体(G蛋白質共役型受容体)、血小板増殖因子、血液幹細胞成長因子、肝細胞増殖因子、トランスフォーミング成長因子、神経成長・栄養因子、線維芽細胞増殖因子、インスリン様増殖因子などの成長因子(Growth factor);腫瘍壊死因子、インターフェロン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターロイキン3やインターロイキン5などのインターロイキン、アルブミン、ヒト成長ホルモンなどのサイトカイン類、などが挙げられる。また、例えば、生きた細胞内における現象を観察するために細胞内の機能蛋白質の蛍光標識として使用できる緑色蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein、以下「GFP」と称する)なども挙げられる。さらに、これらの蛋白質から選ばれる2以上の蛋白質を連結させた人工蛋白質も、本発明の融合蛋白質を構成する目的蛋白質として適用可能である。
本発明の融合蛋白質を構成する分子シャペロン又はそのサブユニットとしては特に限定はなく、蛋白質の折り畳みを助ける作用を有するものであれば、すべて適用可能である。例としては、複数のシャペロニンサブユニットによる複合体であるシャペロニン、又はペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼ(以下、PPIaseという。)などが挙げられる。
なお、分子シャペロンには、単一分子で作用する分子シャペロンと、複数のサブユニットからなる複合体を形成する分子シャペロンとがある。そして、本発明の融合蛋白質において、前者の分子シャペロンを含む場合は、その単一分子の分子シャペロンと介在蛋白質が連結されている。一方、後者の分子シャペロンを含む場合は、そのサブユニットと介在蛋白質が連結されている。前者の例としては、PPIaseがあり、後者の例としてはシャペロニンが挙げられる。
シャペロニンは、約60kDaのサブユニット(シャペロニンサブユニット)が1〜約20個程度集まった複合体である。シャペロニンは、細胞に熱ショックなどのストレスを与えることにより誘導されるヒートショック蛋白質の一種としても知られている。シャペロニンは、バクテリア(例えば、大腸菌など)、古細菌(例えば、Thermococcus sp.、Pyrococcus horikoshii、Aeropyrum pernixなど)及び真核生物(例えば、酵母、マウス、ヒトなど)などの全ての生物に存在し、蛋白質の折り畳み支援や変性防御の機能を有している。
複数のシャペロニンサブユニット同士がペプチド結合を介して直列に連結された人工蛋白質(以下、「シャペロニンサブユニット連結体」と称する)も、天然のシャペロニンと同様に複合体を形成することが知られている。この際、2〜約10個のシャペロニンサブユニットは、天然のシャペロニンと同様に直線状あるいはリング状(以下、シャペロニンリングともいう。)の構造をとることが知られている。なお、「シャペロニンサブユニット連結体」という用語に対比して、他のシャペロニンサブユニットとはペプチド結合を介して連結されていないシャペロニンサブユニットを「単独のシャペロニンサブユニット」と呼ぶこととする。
本発明の融合蛋白質において、目的蛋白質は、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のN末端、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のC末端、シャペロニンサブユニット連結体のシャペロニンサブユニット同士の連結部、から選択される1又は2以上の部位に、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質を介して連結される。いずれの場合も、目的蛋白質が複数のシャペロニンサブユニット間によって構成される空洞(キャビティ)、すなわち1層又は2層以上のシャペロニンリングの内部に格納されるよう、目的蛋白質の結合部位を選択することが好ましい。
本発明の融合蛋白質を構成する分子シャペロンの例であるシャペロニンは、10〜20個のシャペロニンサブユニットからなる2層のリング構造、すなわち5〜10個のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造(以下、2層のリング構造をシャペロニン複合体ともいう。)を形成するものが好適である。例えば、内径4.5nm、高さ14.5nmの空洞(キャビティ)を有する大腸菌シャペロニンGroELが好適である。シャペロニンを分子シャペロンとして用いる場合は、目的蛋白質はシャペロニンリングの内部に収納されるよう融合蛋白質を構成することが好ましい。なお、バクテリア又は古細菌由来のシャペロニンは、宿主内で容易に発現させることができるので、本発明の融合蛋白質を製造する際には特に好適である。
また、上記シャペロニンとしては、リング構造への自己集合能が維持されていれば、野生型のみならずアミノ酸変異体も使用可能である。例えば、各シャペロニンサブユニットの会合力が弱められた変異体を用いた場合、格納された目的蛋白質の回収がより容易になる。また、宿主としてバクテリアを用いてシャペロニンを発現させる場合、宿主と同じバクテリア由来のシャペロニンサブユニットを発現させると、その発現量が多くなることが多い。その結果、目的蛋白質の生産効率が向上することが多い。
なお、シャペロニンを構成するシャペロニンサブユニットの数は、その由来生物によって異なる。例えば、バクテリア由来のシャペロニンではシャペロニンサブユニットの数は通常7個である。一方、古細菌由来のシャペロニンでは通常8〜9個、真核生物由来のシャペロニンでは通常8個である。したがって、本発明の融合蛋白質を構成するシャペロニンのシャペロニンサブユニットの数は、その由来によって最適の数を選択することができる。
また、分子シャペロンにシャペロニンを使用した本発明の融合蛋白質において、リング構造を形成するためのシャペロニンサブユニットと目的蛋白質の数比については、通常1:1〜10:1の範囲内であり、好ましくは1:1〜9:1である。なお、10:1よりもシャペロニンサブユニットの数の比が大きくなると、発現する目的蛋白質の実質的な生産量が少なくなるとともに、シャペロニンのリング構造の形成が困難となることがある。
具体的には、シャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニンサブユニット:目的蛋白質の数の比は、1:1又は7:1であることが好ましい。また、シャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:目的蛋白質の数の比は、1:1、2:1、4:1又は8:1であることが好ましい。
分子シャペロンの他の例として、PPIaseが挙げられる。PPIaseは、蛋白質のフォールディングに関与する蛋白質折り畳み因子の1つであり、細胞内でフォールディング途上のターゲット蛋白質中のアミノ酸のうち、プロリン残基のN末端側ペプチド結合のシストランス異性化反応を触媒する活性(PPIase活性)を有する。
PPIaseはその阻害剤に対する感受性から、FK506 Binding Protein型(FKBP型)、シクロフィリン型及びパーブリン型の3種類に分類される。FKBP型PPIaseは免疫阻害剤の1つであるFK506により活性が阻害されるPPIase及びそのホモログである。シクロフィリン型PPIaseは、別の免疫阻害剤であるシクロスポリンに対して感受性を持つPPIase又はそのホモログである。一方、パーブリン型PPIaseは、いずれの免疫阻害剤に対しても感受性を示さず、ジュグロン(juglone)によりその活性が阻害される。この3種類のPPIaseは、アミノ酸一次配列上の相同性はほとんどない。
本発明の融合蛋白質を構成するPPIaseとしては特に限定されず、上記の3種類のPPIaseのうち、いずれのタイプのPPIaseであってもよい。FKBP型PPIaseとしては、例えば、古細菌由来FKBP型PPIase、トリガーファクタータイプPPIase(Huang,Protein Sci.,第9巻、p.1254,2000年)、FkpAタイプPPIase(Arie,Mol.Microbiol.,第39巻,p.199,2001年)、FKBP52タイプPPIase(Bose,Science,第274巻,p.1715,1996年)が挙げられる。また、シクロフィリンタイプPPIaseとしては、CyP40タイプPPIaseなどが挙げられる(Pirkl,J.Mol.Biol.,第308巻,p.795,2001年)。さらに、パーブリンタイプPPIaseとしては、SurAタイプPPIase(Behrens,EMBO J.,p.第20巻,p.285,2001年)が挙げられる。なお、本発明において、これらのPPIaseには、アミノ酸配列が極めて似ており、且つ同様の作用を有する実質的に同等のポリペプチド、少なくともこれらのPPIaseの一部分を含み、且つ同様の作用を有するポリペプチド、及び、これらのPPIaseの一部のアミノ酸が他のアミノ酸に改変され、且つ同様の作用を有するポリペプチドも含まれる。
上記古細菌由来FKBP型PPIaseの機能については、興味深いことに、PPIase活性だけでなく、蛋白質の不可逆的凝集を抑制すると同時に、変性蛋白質のリフォールディングを促進させる分子シャペロン活性を有することが見出されている(Furutani,Biochemistry,第39巻,p.453,2000年;Ideno,Eur.J.Biochem.,第267巻,p.3139,2000年;Ideno,Biochem.J.,第357巻,p.465,2001年;Ideno,Appl.Env.Microbiol.,第68,p.464,2002年)。分子シャペロン活性は、本来、分子シャペロンの1つとして知られるシャペロニンやDnaK/DnaJ/GrpE系の蛋白質折り畳みシステムに見いだされた活性である。これらは、細胞内で合成されたポリペプチドが正しい形に折り畳まれるよう、サポートする機能を果たしている。その際、ATPなどの高エネルギー物質の加水分解を必要とする。一方、古細菌由来FKBP型PPIaseは、その分子シャペロン活性を発揮する際、上記高エネルギー物質の加水分解反応を必要としない点でその性質が異なる。古細菌由来FKBP型PPIaseは、分子シャペロン活性を有しないPPIaseに比べて、目的蛋白質をより正しく折り畳むことができるので、本発明の融合蛋白質を構成するPPIaseとして、特に好適である。
本発明における分子シャペロン活性を有するPPIaseとしては上記例示のもの以外であっても、同等の分子シャペロン活性を有するPPIaseであれば、好適に用いることができる。
本発明の目的蛋白質の製造方法は、インテイン等のペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって、融合蛋白質を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出すものである。さらに具体的には、融合蛋白質を単離する工程と、単離した融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質のペプチド結合切断活性を惹起する工程と、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用により、融合蛋白質の一部を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる工程とを含む。本発明の目的蛋白質の製造方法によれば、単独では不溶化等してしまう目的蛋白質を分子シャペロンの作用で正常型蛋白質として発現することができ、さらに、プロテアーゼ等を加えることなく目的蛋白質を切り出すことができる。この際、融合蛋白質の発現は、宿主内で行ってもよいし、無細胞翻訳系で行ってもよい。
宿主内で融合蛋白質の発現を行って目的蛋白質を製造する場合は、まず、融合蛋白質の遺伝子を宿主内に導入する。例えば、適宜のベクターに融合蛋白質をコードする遺伝子を導入して発現ベクターを構築し、適宜の宿主に導入して形質転換体を得る。そして、この形質転換体を培養して融合蛋白質を発現させ、該形質転換体から融合蛋白質を単離する。一方、無細胞翻訳系において融合蛋白質の発現を行う場合は、例えば大腸菌、小麦胚芽、ウサギ網状赤血球等の無細胞抽出液に、ヌクレオチド3リン酸や各種アミノ酸を加えた反応液中で、融合蛋白質を発現させることができる。
次に、単離された融合蛋白質に対して、介在蛋白質のペプチド切断活性を惹起する処理を行い、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる。介在蛋白質のペプチド切断活性を惹起する処理としては、介在蛋白質がインテインであれば、pHの制御、温度の制御、トリガー物質の添加等が挙げられる。例えば、pHが6〜8の範囲、好ましくは7付近になるように水素イオン濃度を変化させることにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。また、20〜37℃の範囲になるように温度を変化させることにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。また、トリガー物質としてジチオスレイトールやβ−メルカプトエタノールのようなチオールを添加することにより、インテインのペプチド結合切断活性を惹起することができる。特に、チオールはNインテインの切断活性を惹起するのに有効である。
逆に、インテインのペプチド結合切断活性が融合蛋白質を単離する前、すなわち宿主内又は試験管内で惹起されないようにすることも、目的蛋白質の収量を増加させるためには有効である。そのための方法としては、例えば、宿主の培養温度を20℃未満にしたり、無細胞蛋白合成を20℃未満で行うことが挙げられる。
また介在蛋白質がプロテアーゼであれば、プロテアーゼの種類に応じて、至適緩衝液条件、温度、pHなどを制御することにより、ペプチド結合切断活性を惹起することができる。
宿主内で融合蛋白質をコードする遺伝子を発現させる際の宿主としては特に限定されず、例えば、大腸菌等のバクテリア、その他の原核細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及びトランスジェニック動・植物等が挙げられる。なかでも、高い細胞増殖特性を有し、培養操作が簡便で且つ培養に用いる栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等のバクテリアや酵母等が特に好適である。また、融合蛋白質は宿主の細胞質内、細胞外のいずれに発現させてもよいが、大量に発現させる場合には細胞内に発現させる方が望ましい。
なお、宿主が大腸菌の場合は、導入されたプラスミドの大きさが10kbp以上になるとプラスミドのコピー数が減少し、結果的に融合蛋白質の合成量が低下することがある。このときは、融合蛋白質を同一の宿主内で共発現させる手段により発現量の低下を防ぐことができる。例えば、同一の融合蛋白質を合成する同一遺伝子を、異なる複製領域及び薬剤耐性遺伝子を有する2種類のプラスミドなどのベクターに導入し、これら2種類のベクターで2種の薬剤の存在下で大腸菌を形質転換し、融合蛋白質の合成を行うことで、高発現をもたらすことが可能である。
また、本発明の目的蛋白質の製造方法では、融合蛋白質をコードする遺伝子と、分子シャペロンのみをコードする遺伝子とをそれぞれ、同一の宿主内で共存させ、複製することが可能な2種類の異なるプラスミドなどのベクターに導入し、同一の宿主内で共発現させてもよい。例えば、目的蛋白質に対するシャペロニンサブユニットの数比が小さい場合は、融合蛋白質をコードする遺伝子とシャペロニンサブユニットのみをコードする遺伝子とをそれぞれ、同一宿主内で共存・複製可能な2種類のプラスミドに導入して、融合蛋白質とシャペロニンサブユニットを共発現させるとよい。
インテインの部分配列蛋白質と、全長のインテインから該部分配列蛋白質を除いた残余の蛋白質(以下、「インテインの残余の部分配列蛋白質」と称する)は、いわゆるtrans−splicing(ウィ・エイチ(Wu H)ら、バイオケミカ・エト・バイオフィジカ・アクタ(Biochimica et biophysica acta)、1998年、第1387巻、p.422−432)を行うことが知られている。インテインの部分配列蛋白質とインテインの残余の部分配列蛋白質が互いに近くに存在する場合は、隣接する蛋白質同士をアセンブルしやすいと考えられる。ここで、2種類の蛋白質をアセンブルするとは、これらの蛋白質同士を接近させ、共有結合又は非共有結合(水素結合、疎水性相互作用、分子間力等)によって結合又は会合させることをいう。そして、インテインの部分配列蛋白質とインテインの残余蛋白質は、2種類の蛋白質をアセンブルする機能(アセンブリー機能)を有している。このアセンブリー機能を利用して、2種類の目的蛋白質をアセンブルすることができる。例えば、2種類の蛋白質がある目的蛋白質の前駆体となるものであるとき、これらの前駆体をアセンブルして目的蛋白質を製造することができる。
目的蛋白質が免疫グロブリン、前駆体が抗体軽鎖及び抗体重鎖である場合を例に挙げると、第1の例は、分子シャペロンのC末端にインテインのC末端側部分配列蛋白質を介して抗体重鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。一方、別の分子シャペロンのN末端にインテインの残余蛋白質を介して抗体軽鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。そして、これら2つの融合蛋白質を接近させてアセンブリーを起こさせ、抗体重鎖と抗体軽鎖がジスルフィド結合によって結合した免疫グロブリンを作製することができる。また、第2の例は、分子シャペロンのC末端にインテインのC末端側部分配列蛋白質を介して抗体重鎖を連結させ、且つ分子シャペロンのN末端側にインテインの残余蛋白質を介して抗体軽鎖を連結させた融合蛋白質を作製する。そして、インテインのアセンブリー機能を利用して抗体重鎖と抗体軽鎖をアセンブリーし、抗体重鎖と抗体軽鎖がジスルフィド結合によって結合した免疫グロブリンを作製することができる。なお、インテインの残余蛋白質には、エンドヌクレアーゼ活性部分を含んでいてもよい。
以下に、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.SspI遺伝子の単離
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号1と2に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(Polymerase chain reaction)を行い、SspIをコードする遺伝子を含むDNA断片を単離した。配列番号3にその塩基配列と対応するアミノ酸配列、配列番号4にアミノ酸配列のみを示す。なお、SspIは、シアノバクテリアSynechocystis sp PCC6803株由来のDnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、N末端アミノ酸をアラニンに置換した改変型インテイン(Cインテイン)である。
2.古細菌由来シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
Thermococcus KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号5と6に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号7に示されたシャペロニンβサブユニット(以下、「TCPβ」と称する。)の遺伝子を含むDNA断片を単離した。さらに、増幅したTCPβ遺伝子を含むDNA断片をタンデムに4回連結して、TCPβ4回連結体(以下、「(TCPβ)4」と称する。)の遺伝子を作製した。
一方、配列番号36と37で示される互いに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせてマルチクローニングサイトを有する2本鎖DNAを得た。この2本鎖DNAは、NcoI、BamHI、SpeI、HpaIの各サイトが順に配置され、その下流にヒスチジン6残基からなるヒスチジンタグ(6His、配列番号8)をコードする遺伝子、終始コドン及びNotIサイトを有する。次に、この2本鎖DNAをpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoI−NotIサイトに導入した。
このプラスミドのBamHIサイトに、本実施例で単離した(TCPβ)4遺伝子を導入し、PETDH(TCPβ)4を構築した。さらに、pETDH(TCPβ)4の(TCPβ)4遺伝子の下流に、本実施例で単離したSspI遺伝子を挿入し、発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iを構築した。
図1にpETDH(TCPβ)4Iの構造を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4IはT7プロモーターを有し、その下流に、(TCPβ)4遺伝子、SspI遺伝子、及び6HIs遺伝子が順に配置されている。また、pETDH(TCPβ)4IのSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子と終始コドンを挿入することにより、C末端に6Hisを有する、(TCPβ)4とSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.抗体軽鎖の発現及び切り出し
長鎖DNA合成を行い、配列番号9に示されるヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層蛋白)抗体の軽鎖(AbL)遺伝子を含むDNA断片を調製した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトが設けられた。このDNA断片をSpeI及びHpaIで処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iに組込んだ。これにより、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbLを構築した。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbLを大腸菌BL21(DE3)株(Stratagene社)に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地(バクトトリプトン16g、酵母エキス10g、NaCl5g/L)で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク社)存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例1)
図1に示すpETDH(TCPβ)4IのBamHIサイトとSpeIサイトの間に、SspIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子(配列番号10)を導入し、pETDH(TCPβ)4Pを構築した。pETDH(TCPβ)4Iの代わりにpETDH(TCPβ)4Pを用いる以外は全て実施例1と同様にして、発現ベクターpETDH(TCPβ)4P・AbLを構築した。さらに、実施例1と同様にして、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例1と比較例1で調製したそれぞれの菌体破砕液上清を室温で2時間処理したものにつき、抗体軽鎖を認識する抗体(PIERCE社 ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2抗体−HRP conjugate)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbLがシャペロニンから切断されているか否かを試験した。結果を図2に示す。実施例1の菌体破砕液ではAbLが分子量25kDa付近に検出され、AbLが融合蛋白質から切断されていることが確認された(レーン1)。なお、250kDa付近のバンドは(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質である。一方、比較例1の菌体破砕液では分子量250kDa付近にのみ検出され、AbLは融合蛋白質から切り出されていなかった(レーン2)。
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号1と2に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCR(Polymerase chain reaction)を行い、SspIをコードする遺伝子を含むDNA断片を単離した。配列番号3にその塩基配列と対応するアミノ酸配列、配列番号4にアミノ酸配列のみを示す。なお、SspIは、シアノバクテリアSynechocystis sp PCC6803株由来のDnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、N末端アミノ酸をアラニンに置換した改変型インテイン(Cインテイン)である。
2.古細菌由来シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
Thermococcus KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号5と6に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号7に示されたシャペロニンβサブユニット(以下、「TCPβ」と称する。)の遺伝子を含むDNA断片を単離した。さらに、増幅したTCPβ遺伝子を含むDNA断片をタンデムに4回連結して、TCPβ4回連結体(以下、「(TCPβ)4」と称する。)の遺伝子を作製した。
一方、配列番号36と37で示される互いに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせてマルチクローニングサイトを有する2本鎖DNAを得た。この2本鎖DNAは、NcoI、BamHI、SpeI、HpaIの各サイトが順に配置され、その下流にヒスチジン6残基からなるヒスチジンタグ(6His、配列番号8)をコードする遺伝子、終始コドン及びNotIサイトを有する。次に、この2本鎖DNAをpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoI−NotIサイトに導入した。
このプラスミドのBamHIサイトに、本実施例で単離した(TCPβ)4遺伝子を導入し、PETDH(TCPβ)4を構築した。さらに、pETDH(TCPβ)4の(TCPβ)4遺伝子の下流に、本実施例で単離したSspI遺伝子を挿入し、発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iを構築した。
図1にpETDH(TCPβ)4Iの構造を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4IはT7プロモーターを有し、その下流に、(TCPβ)4遺伝子、SspI遺伝子、及び6HIs遺伝子が順に配置されている。また、pETDH(TCPβ)4IのSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子と終始コドンを挿入することにより、C末端に6Hisを有する、(TCPβ)4とSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.抗体軽鎖の発現及び切り出し
長鎖DNA合成を行い、配列番号9に示されるヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層蛋白)抗体の軽鎖(AbL)遺伝子を含むDNA断片を調製した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトが設けられた。このDNA断片をSpeI及びHpaIで処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iに組込んだ。これにより、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbLを構築した。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbLを大腸菌BL21(DE3)株(Stratagene社)に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地(バクトトリプトン16g、酵母エキス10g、NaCl5g/L)で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル(ナカライテスク社)存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例1)
図1に示すpETDH(TCPβ)4IのBamHIサイトとSpeIサイトの間に、SspIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子(配列番号10)を導入し、pETDH(TCPβ)4Pを構築した。pETDH(TCPβ)4Iの代わりにpETDH(TCPβ)4Pを用いる以外は全て実施例1と同様にして、発現ベクターpETDH(TCPβ)4P・AbLを構築した。さらに、実施例1と同様にして、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例1と比較例1で調製したそれぞれの菌体破砕液上清を室温で2時間処理したものにつき、抗体軽鎖を認識する抗体(PIERCE社 ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2抗体−HRP conjugate)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbLがシャペロニンから切断されているか否かを試験した。結果を図2に示す。実施例1の菌体破砕液ではAbLが分子量25kDa付近に検出され、AbLが融合蛋白質から切断されていることが確認された(レーン1)。なお、250kDa付近のバンドは(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質である。一方、比較例1の菌体破砕液では分子量250kDa付近にのみ検出され、AbLは融合蛋白質から切り出されていなかった(レーン2)。
1.C型肝炎ウイルス抗原の発現及び切出し
長鎖DNA合成を行い、配列番号11に示されるC型肝炎ウイルスコア抗原(HCc)遺伝子を含むDNA断片を調製した。実施例1と同様にして、このDNA断片を発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iに組み込み、(TCPβ)4とSspIとHCcとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・HCcを構築した。得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・HCcを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を実施例1と同様にして培養し、菌体破砕液上清を得た。
(比較例2)
pETDH(TCPβ)4Iの代わりにpETDH(TCPβ)4Pを用いる以外は全て実施例2と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例2の菌体破砕液上清を室温で2時間処理した。一方、比較例2の菌体破砕液上清をプレシジョンプロテアーゼ(Amersham Bioscience社)によって処理(4℃、20時間)した。処理後の反応液それぞれにつき、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体(ABR社 抗HCVマウスモノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティング解析を行った。結果を図3(a)(実施例2)及び図3(b)(比較例2)に示す。図3(a)のレーン1が実施例2のサンプルで、レーン2は宿主のみのコントロールである。図3(b)のレーン3が比較例2のサンプルである。
すなわち、図3(a)に示すように、実施例2の菌体破砕液ではHCcが分子量21kDa付近に検出され、融合蛋白質からHCcが分解されることなく切り出されていることが確認された。一方、図3(b)に示すように、比較例2の菌体破砕液では分子量21kDa付近のシグナル以外に18kDa、15kDa及び12kDa付近にシグナルが検出され、HCcが分解されていることがわかった。これは、HCcが特に疎水性が高く、限定分解型プロテアーゼによる認識配列の厳密性が崩れ、認識配列以外のHCcの内部で切断が起こったものと考えられる。
長鎖DNA合成を行い、配列番号11に示されるC型肝炎ウイルスコア抗原(HCc)遺伝子を含むDNA断片を調製した。実施例1と同様にして、このDNA断片を発現ベクターpETDH(TCPβ)4Iに組み込み、(TCPβ)4とSspIとHCcとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・HCcを構築した。得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・HCcを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を実施例1と同様にして培養し、菌体破砕液上清を得た。
(比較例2)
pETDH(TCPβ)4Iの代わりにpETDH(TCPβ)4Pを用いる以外は全て実施例2と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例2の菌体破砕液上清を室温で2時間処理した。一方、比較例2の菌体破砕液上清をプレシジョンプロテアーゼ(Amersham Bioscience社)によって処理(4℃、20時間)した。処理後の反応液それぞれにつき、C型肝炎ウイルスコア抗原を認識する抗体(ABR社 抗HCVマウスモノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティング解析を行った。結果を図3(a)(実施例2)及び図3(b)(比較例2)に示す。図3(a)のレーン1が実施例2のサンプルで、レーン2は宿主のみのコントロールである。図3(b)のレーン3が比較例2のサンプルである。
すなわち、図3(a)に示すように、実施例2の菌体破砕液ではHCcが分子量21kDa付近に検出され、融合蛋白質からHCcが分解されることなく切り出されていることが確認された。一方、図3(b)に示すように、比較例2の菌体破砕液では分子量21kDa付近のシグナル以外に18kDa、15kDa及び12kDa付近にシグナルが検出され、HCcが分解されていることがわかった。これは、HCcが特に疎水性が高く、限定分解型プロテアーゼによる認識配列の厳密性が崩れ、認識配列以外のHCcの内部で切断が起こったものと考えられる。
1.N末端のみを切断する改変型SspIをコードする遺伝子の単離
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号12と13に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号6に示されるN末端のみが切断できるよう改変されたSspI(以下、「NSspI」と称する。)をコードする遺伝子を含むDNA断片を単離した。すなわち、NSspIは、シアノバクテリアSynechocystis sp PCC6803株由来のDnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、C末端アミノ酸をアラニンに置換した改変型インテイン(Nインテイン)である。
2.大腸菌シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
大腸菌HMS174(DE3)株(Novagen社)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号15と16に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号17に示されたGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を単離した。一方、配列番号38と39に示される互いに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせてマルチクローニングサイトを有する2本鎖DNAを得た。この2本鎖DNAは、NcoI、XbaI、BglII,XhoI、の各サイトが順に配置され、その下流にFLAGペプチド(配列番号18)をコードする遺伝子と終始コドンを有する。次に、この2本鎖DNAをプラスミドpTrc99A(Amersham Bioscience社)のNcoI−HindIIIサイトに導入した。さらに、導入されたXbaIサイトに、上記で増幅したGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を導入した。同様の操作を繰り返すことにより、GroELサブユニット遺伝子がタンデムに7個連結されたGroELサブユニット7回連結体(以下、「(GroEL)7」と称する。)の遺伝子を挿入し、pT(GroEL)7を構築した。さらに、(GroEL)7遺伝子の下流のXbaI−BglIIサイトに、本実施例で得られたNSspI遺伝子を挿入し、発現ベクターpT(GroEL)7NIを構築した。図4にpT(GroEL)7NIの構造を示す。すなわち、pT(GroEL)7NIはtrcプロモーターを有し、その下流に、7個のGroELサブユニット遺伝子がタンデムに並んだGroELサブユニット7回連結体((GroEL)7)の遺伝子、NSspI遺伝子、及びFLAGペプチドをコードする遺伝子が順に配置されている。また、BglIIサイトとXhoIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、(GroEL)7とNSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.アセチルコリンムスカリンレセプターの発現及び切断
長鎖DNA合成により配列番号19に示されるアセチルコリンムスカリンレセプター(MR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。このDNA断片をpT(GroEL)7NIのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、(GroEL)7とNSspIとMRとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7NI・MRを構築した。pT(GroEL)7NI・MRを用い、培養温度が25℃である以外は実施例1と同様にして、形質転換、形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、最終濃度40mMのジチオスレイトール(DTT)を添加し、NSspIのN末端のペプチド結合を切断した。抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった。その結果を図5のレーン2に示す。
(比較例3)
実施例3で得られた菌体破砕液上清をFLAGペプチド抗体担持カラムにて精製後、DTTを添加せず、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった。その結果を図5のレーン1に示す。
実施例3では、NSspIとMRの融合蛋白質のシグナルが分子量52kDa付近に検出され、融合蛋白質からMRが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例3では、分子量52kDa付近のシグナルは検出されず、融合蛋白質からMRが切り出されていないことが確認された(レーン1)。このように、インテインの切断活性がDTTによって惹起された。
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号12と13に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号6に示されるN末端のみが切断できるよう改変されたSspI(以下、「NSspI」と称する。)をコードする遺伝子を含むDNA断片を単離した。すなわち、NSspIは、シアノバクテリアSynechocystis sp PCC6803株由来のDnaB helicaseインテインのエンドヌクレアーゼ領域を除き、C末端アミノ酸をアラニンに置換した改変型インテイン(Nインテイン)である。
2.大腸菌シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
大腸菌HMS174(DE3)株(Novagen社)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号15と16に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号17に示されたGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を単離した。一方、配列番号38と39に示される互いに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせてマルチクローニングサイトを有する2本鎖DNAを得た。この2本鎖DNAは、NcoI、XbaI、BglII,XhoI、の各サイトが順に配置され、その下流にFLAGペプチド(配列番号18)をコードする遺伝子と終始コドンを有する。次に、この2本鎖DNAをプラスミドpTrc99A(Amersham Bioscience社)のNcoI−HindIIIサイトに導入した。さらに、導入されたXbaIサイトに、上記で増幅したGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を導入した。同様の操作を繰り返すことにより、GroELサブユニット遺伝子がタンデムに7個連結されたGroELサブユニット7回連結体(以下、「(GroEL)7」と称する。)の遺伝子を挿入し、pT(GroEL)7を構築した。さらに、(GroEL)7遺伝子の下流のXbaI−BglIIサイトに、本実施例で得られたNSspI遺伝子を挿入し、発現ベクターpT(GroEL)7NIを構築した。図4にpT(GroEL)7NIの構造を示す。すなわち、pT(GroEL)7NIはtrcプロモーターを有し、その下流に、7個のGroELサブユニット遺伝子がタンデムに並んだGroELサブユニット7回連結体((GroEL)7)の遺伝子、NSspI遺伝子、及びFLAGペプチドをコードする遺伝子が順に配置されている。また、BglIIサイトとXhoIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、(GroEL)7とNSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.アセチルコリンムスカリンレセプターの発現及び切断
長鎖DNA合成により配列番号19に示されるアセチルコリンムスカリンレセプター(MR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。このDNA断片をpT(GroEL)7NIのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、(GroEL)7とNSspIとMRとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7NI・MRを構築した。pT(GroEL)7NI・MRを用い、培養温度が25℃である以外は実施例1と同様にして、形質転換、形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、最終濃度40mMのジチオスレイトール(DTT)を添加し、NSspIのN末端のペプチド結合を切断した。抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった。その結果を図5のレーン2に示す。
(比較例3)
実施例3で得られた菌体破砕液上清をFLAGペプチド抗体担持カラムにて精製後、DTTを添加せず、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった。その結果を図5のレーン1に示す。
実施例3では、NSspIとMRの融合蛋白質のシグナルが分子量52kDa付近に検出され、融合蛋白質からMRが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例3では、分子量52kDa付近のシグナルは検出されず、融合蛋白質からMRが切り出されていないことが確認された(レーン1)。このように、インテインの切断活性がDTTによって惹起された。
1.PPIaseとの融合蛋白質発現系構築
Thermococcus KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号20と21に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号22に示される超好熱性古細菌由来PPIase(TPPIase)遺伝子を含むDNA断片を単離した。
実施例1で調製したpETDH(TCPβ)4・IをBamHIとNotIで処理してSspI遺伝子とHisタグと終始コドンを含むDNA断片を単離した。一方、配列番号35に示されるオリゴヌクレオチドと、それに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA断片を得た。この2本鎖DNA断片をpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoIサイトに導入した。さらに、導入したDNA断片に含まれるNcoI−SpeIサイトに、本実施例で増幅したTPPIase遺伝子を含むDNA断片を挿入した。さらに、挿入したオリゴヌクレオチドに含まれるBamHIサイトとpET21dのマルチクローニングサイト内にあるNotIサイトの間のDNA断片を除去し、代わりに、上記で単離したSspI遺伝子とHisタグと終始コドンを含むDNA断片を挿入し、pET TPPIase Iを構築した。図6にpET TPPIase Iの構造を示す。すなわち、pET TPPIase IはT7プロモーターを有し、その下流に、TPPIase遺伝子、SspI遺伝子、及び6His遺伝子が順に配置されている。また、SpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、TPPIaseとSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
2.緑色蛍光蛋白質(GFP)の発現、切断
pIVEX2.3−GFP WT(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を鋳型とし、配列番号23と24に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号25に示される緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子を含むDNA断片を単離した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片をSpeI及びHpaI処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpET TPPIase Iに組み込んだ。これにより、超好熱性古細菌由来PPIase(TPPIase)とSspIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpET TPPIase I・GFPを構築した。
得られた発現ベクターpET TPPIase I・GFPを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体をカルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で25℃、24時間培養し、TPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例4)
図1に示すpET TPPIase Iについて、BamHIサイトとSpeIサイトの間にSspIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子を導入したpET TPPIase Pを構築した。
pET TPPIase Iの代わりにpET TPPIase Pを用いる以外は全て実施例4と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例4と比較例4で調製したそれぞれの菌体破砕液上清をNi−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、ヒスチジンタグを認識する抗体(Amersham Biosciences社 抗Hisマウスモノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図7に示す。実施例4の菌体破砕液(レーン1)では、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、レーン1の62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例4の菌体破砕液(レーン2)では、TPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナルが検出され、GFPの切り出しは確認されなかった。なおレーン3はGFPの標品である。
Thermococcus KS−1株(JCM No.11816)からゲノムDNAを抽出した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号20と21に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号22に示される超好熱性古細菌由来PPIase(TPPIase)遺伝子を含むDNA断片を単離した。
実施例1で調製したpETDH(TCPβ)4・IをBamHIとNotIで処理してSspI遺伝子とHisタグと終始コドンを含むDNA断片を単離した。一方、配列番号35に示されるオリゴヌクレオチドと、それに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせて2本鎖DNA断片を得た。この2本鎖DNA断片をpET21dプラスミド(Novagen社)のNcoIサイトに導入した。さらに、導入したDNA断片に含まれるNcoI−SpeIサイトに、本実施例で増幅したTPPIase遺伝子を含むDNA断片を挿入した。さらに、挿入したオリゴヌクレオチドに含まれるBamHIサイトとpET21dのマルチクローニングサイト内にあるNotIサイトの間のDNA断片を除去し、代わりに、上記で単離したSspI遺伝子とHisタグと終始コドンを含むDNA断片を挿入し、pET TPPIase Iを構築した。図6にpET TPPIase Iの構造を示す。すなわち、pET TPPIase IはT7プロモーターを有し、その下流に、TPPIase遺伝子、SspI遺伝子、及び6His遺伝子が順に配置されている。また、SpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、TPPIaseとSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
2.緑色蛍光蛋白質(GFP)の発現、切断
pIVEX2.3−GFP WT(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を鋳型とし、配列番号23と24に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号25に示される緑色蛍光蛋白質(GFP)遺伝子を含むDNA断片を単離した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片をSpeI及びHpaI処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpET TPPIase Iに組み込んだ。これにより、超好熱性古細菌由来PPIase(TPPIase)とSspIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpET TPPIase I・GFPを構築した。
得られた発現ベクターpET TPPIase I・GFPを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体をカルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で25℃、24時間培養し、TPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例4)
図1に示すpET TPPIase Iについて、BamHIサイトとSpeIサイトの間にSspIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子を導入したpET TPPIase Pを構築した。
pET TPPIase Iの代わりにpET TPPIase Pを用いる以外は全て実施例4と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例4と比較例4で調製したそれぞれの菌体破砕液上清をNi−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、ヒスチジンタグを認識する抗体(Amersham Biosciences社 抗Hisマウスモノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図7に示す。実施例4の菌体破砕液(レーン1)では、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、レーン1の62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例4の菌体破砕液(レーン2)では、TPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナルが検出され、GFPの切り出しは確認されなかった。なおレーン3はGFPの標品である。
1.エンドセリンレセプターの発現及び切断
実施例1で調製したSspI遺伝子を用い、実施例3と同様の手順で、pT(GroEL)7Iを構築した。pT(GroEL)7Iは、図4に示されるpT(GroEL)7NIのNSspI遺伝子の代わりにSspI遺伝子を導入したベクターである。一方、ヒトcDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号26と27に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号28に示されるエンドセリンAレセプター(ETAR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。このDNA断片をpT(GroEL)7IのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、(GroEL)7とSspIとETARとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7I・ETARを構築した。この発現ベクターを用い、実施例1と同様にして、形質転換体を作製した。形質転換体を、温度18℃、110rpmの条件で培養し、菌体を回収した。この菌体から実施例1と同様にして菌体破砕液上清を得た。この菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、SspIのC末端のペプチド結合の切断の有無を、抗FLAGペプチド抗体(SIGMA社 anti−FLAG M2モノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティングで確認した。結果を図8のレーン2に示す。
(比較例5)
実施例5の形質転換体の培養温度を18℃でなく、25℃で行なった以外は、実施例5と同様に培養を行い、菌体破砕液上清を得た。菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、SspIのC末端のペプチド結合の切断の有無を、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングで確認した。結果を図8のレーン3に示す。
実施例5の菌体破砕液ではETARのシグナルが分子量42kDa付近に検出され、融合蛋白質からETARが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例5の菌体破砕液では分子量42kDa付近にバンドは検出されず、融合蛋白質からETARは切り出されていなかった(レーン3)。なお、レーン1はSspI遺伝子を含まないベクターによるコントロールである。
また、比較例5で得た菌体破砕上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分についてSDS−PAGE及びCBB染色を行い、バンドの有無を確認した。対照として、SspIが入っていない(GroEL)7とETARとの融合蛋白質について、同様に培養、破砕、精製を行なった画分についてもSDS−PAGEを行なった。結果を図9に示す。図9で、レーン1は比較例5で得られた菌体破砕液上清、レーン2はその上清のFLAGカラム精製画分、レーン3は対照の菌体破砕液上清、レーン4はその上清のFLAGカラム精製画分である。その結果、SspIが入っていない(GroEL)7とETARとの融合蛋白質の場合、抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分にはバンドが検出された(レーン4)。一方、SspIが入っている(GroEL)7とSspIとETARとの融合蛋白質の場合、抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分には、どこにもバンドが検出されなかった(レーン2)。すなわち、レーン2のサンプルには、抗FLAGペプチド抗体担持カラムと結合する蛋白質は検出されなかった。このことは、レーン1で検出されたバンドは(GroEL)7のみの蛋白質で、FLAGペプチドがついていないということを示す。これは、25℃培養をすることにより、SspIの作用によりFLAGペプチドをつけたETAR部分が切断されて、さらに分解されてしまっていることを示唆する。
実施例1で調製したSspI遺伝子を用い、実施例3と同様の手順で、pT(GroEL)7Iを構築した。pT(GroEL)7Iは、図4に示されるpT(GroEL)7NIのNSspI遺伝子の代わりにSspI遺伝子を導入したベクターである。一方、ヒトcDNAライブラリー(タカラバイオ社)を鋳型とし、配列番号26と27に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号28に示されるエンドセリンAレセプター(ETAR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。このDNA断片をpT(GroEL)7IのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、(GroEL)7とSspIとETARとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7I・ETARを構築した。この発現ベクターを用い、実施例1と同様にして、形質転換体を作製した。形質転換体を、温度18℃、110rpmの条件で培養し、菌体を回収した。この菌体から実施例1と同様にして菌体破砕液上清を得た。この菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、SspIのC末端のペプチド結合の切断の有無を、抗FLAGペプチド抗体(SIGMA社 anti−FLAG M2モノクローナル抗体)を用いたウエスタンブロッティングで確認した。結果を図8のレーン2に示す。
(比較例5)
実施例5の形質転換体の培養温度を18℃でなく、25℃で行なった以外は、実施例5と同様に培養を行い、菌体破砕液上清を得た。菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、SspIのC末端のペプチド結合の切断の有無を、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングで確認した。結果を図8のレーン3に示す。
実施例5の菌体破砕液ではETARのシグナルが分子量42kDa付近に検出され、融合蛋白質からETARが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例5の菌体破砕液では分子量42kDa付近にバンドは検出されず、融合蛋白質からETARは切り出されていなかった(レーン3)。なお、レーン1はSspI遺伝子を含まないベクターによるコントロールである。
また、比較例5で得た菌体破砕上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分についてSDS−PAGE及びCBB染色を行い、バンドの有無を確認した。対照として、SspIが入っていない(GroEL)7とETARとの融合蛋白質について、同様に培養、破砕、精製を行なった画分についてもSDS−PAGEを行なった。結果を図9に示す。図9で、レーン1は比較例5で得られた菌体破砕液上清、レーン2はその上清のFLAGカラム精製画分、レーン3は対照の菌体破砕液上清、レーン4はその上清のFLAGカラム精製画分である。その結果、SspIが入っていない(GroEL)7とETARとの融合蛋白質の場合、抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分にはバンドが検出された(レーン4)。一方、SspIが入っている(GroEL)7とSspIとETARとの融合蛋白質の場合、抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製した画分には、どこにもバンドが検出されなかった(レーン2)。すなわち、レーン2のサンプルには、抗FLAGペプチド抗体担持カラムと結合する蛋白質は検出されなかった。このことは、レーン1で検出されたバンドは(GroEL)7のみの蛋白質で、FLAGペプチドがついていないということを示す。これは、25℃培養をすることにより、SspIの作用によりFLAGペプチドをつけたETAR部分が切断されて、さらに分解されてしまっていることを示唆する。
1.エンドセリンレセプターの発現及び切断(2)
実施例5と同様に、配列番号28に示されるエンドセリンAレセプター(ETAR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。
このDNA断片を、実施例3で調製したpT(GroEL)7NIのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、GroELサブユニット7回連結体とNSspIとETARとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7NI・ETARを構築した。pT(GroEL)7NI・ETARを用い、実施例1と同様にして、形質転換及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。この菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、最終濃度40mMのDTTを添加し、NSspIのN末端のペプチド結合を切断した。抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった結果を図10のレーン2に示す。
(比較例6)
実施例6の菌体破砕液上清をFLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、DTTを添加せず、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった結果を図10のレーン1に示す。
実施例6の菌体破砕液ではNSspIとETARの融合蛋白質のシグナルが分子量59kDa付近に検出され、融合蛋白質からETARが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例6の菌体破砕液では、分子量59kDa付近のシグナルは検出されず、融合蛋白質からETARが切り出されていないことが確認された(レーン1)。このように、インテインの切断活性がDTTによって惹起された。
実施例5と同様に、配列番号28に示されるエンドセリンAレセプター(ETAR)遺伝子を含むDNA断片を単離した。
このDNA断片を、実施例3で調製したpT(GroEL)7NIのBglII及びXhoIサイトの間に組み込んだ。これにより、GroELサブユニット7回連結体とNSspIとETARとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpT(GroEL)7NI・ETARを構築した。pT(GroEL)7NI・ETARを用い、実施例1と同様にして、形質転換及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。この菌体破砕液上清を抗FLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、最終濃度40mMのDTTを添加し、NSspIのN末端のペプチド結合を切断した。抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった結果を図10のレーン2に示す。
(比較例6)
実施例6の菌体破砕液上清をFLAGペプチド抗体担持カラムで精製後、DTTを添加せず、抗FLAGペプチド抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なった結果を図10のレーン1に示す。
実施例6の菌体破砕液ではNSspIとETARの融合蛋白質のシグナルが分子量59kDa付近に検出され、融合蛋白質からETARが切り出されていることが確認された(レーン2)。一方、比較例6の菌体破砕液では、分子量59kDa付近のシグナルは検出されず、融合蛋白質からETARが切り出されていないことが確認された(レーン1)。このように、インテインの切断活性がDTTによって惹起された。
1.GFPの発現及び切断2;無細胞蛋白合成
大腸菌の培養の代わりに、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった以外は実施例4と同様に蛋白合成を行なった。
(比較例7)
大腸菌の培養の代わりに、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった以外は比較例4と同様に蛋白合成を行なった。
実施例7と比較例7で調製したそれぞれの蛋白合成後の反応液を、Ni−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、抗GFPマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図11に示す。レーン1はGFP−6Hisによるコントロールである。実施例7(レーン2)のpET TPPIase I・GFPでは、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例7(レーン3)ではTPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナルが検出され、GFPの切断は確認されなかった。
大腸菌の培養の代わりに、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった以外は実施例4と同様に蛋白合成を行なった。
(比較例7)
大腸菌の培養の代わりに、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった以外は比較例4と同様に蛋白合成を行なった。
実施例7と比較例7で調製したそれぞれの蛋白合成後の反応液を、Ni−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、抗GFPマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図11に示す。レーン1はGFP−6Hisによるコントロールである。実施例7(レーン2)のpET TPPIase I・GFPでは、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例7(レーン3)ではTPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナルが検出され、GFPの切断は確認されなかった。
1.MMI遺伝子の単離
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号29と30に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、SspIのC末端部分配列であるMMIをコードする遺伝子(MMI遺伝子)を含むDNA断片を単離した。配列番号31にその塩基配列と対応するアミノ酸配列、配列番号32にアミノ酸配列のみを示す。すなわち、MMIは、SspIのC末端から48番目のアミノ酸までの部分に相当する。
2.古細菌由来シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
配列番号40と41にそれぞれ示される2種のオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせ、6Hisをコードする2本鎖DNAを調製した。この2本鎖DNAを、実施例1で調製した発現ベクターpETDH(TCPβ)4I上の(TCPβ)4遺伝子の上流にあるNcoIサイトに導入し、発現ベクターpETDH(TCPβ)4I−2を構築した。図12にpETDH(TCPβ)4I−2の構成を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4I−2はT7プロモーターを有し、その下流に、6His遺伝子、(TCPβ)4の遺伝子、及びSspI遺伝子が順に配置されている。また、pETDH(TCPβ)4I−2のSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、N末端にHisタグが付いた、(TCPβ)4とSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
同様にして、pETDH(TCPβ)4I−2のSspIの代わりに、MMI遺伝子を導入した発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI−2を構築した。図13にpETDH(TCPβ)4MMI−2の構成を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4MMI−2の構成はpETDH(TCPβ)4I−2とほぼ同じであり、SspI遺伝子がMMI遺伝子に置き換わっている点のみが異なる。pETDH(TCPβ)4MMI−2のSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、N末端にHisタグが付いた、(TCPβ)4とMMIIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.抗体軽鎖の発現、切断
実施例1で単離したAbL遺伝子を含むDNA断片をpETDH(TCPβ)4I−2及びpETDH(TCPβ)4MMI−2にそれぞれ導入し、pETDH(TCPβ)4I・AbL−2及びpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2を構築した。すなわち、pETDH(TCPβ)4I・AbL−2によれば(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を、pETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2によれば、(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質を発現することができる。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbL−2及びpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2を、それぞれ大腸菌BL21(DE3)株に導入して形質転換体を得た。これらの形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質、及び(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質を発現させた。これらの菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)にそれぞれ懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて各菌体を破砕後、遠心により各菌体破砕液上清を得た。
(比較例8)
実施例8で構築したpETDH(TCPβ)4I・AbL−2のSspI遺伝子の代わりにプレシジョンプロテアーゼの認識アミノ酸配列をコードする遺伝子を導入した発現ベクターpET(TCPβ)4P・AbL−2を構築した。
実施例8と比較例8で調製した各菌体破砕液上清を室温で2時間処理したものにつき、軽鎖抗体を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbLがシャペロニンから切断されているか否かを試験した。結果を図14に示す。すなわち、実施例8のpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2(レーン1)及びpETDH(TCPβ)4I・AbL−2(レーン2)ではAbLが分子量25kDa付近に検出され、AbLが各融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、250kDa付近のバンドは(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質(レーン1)、又は(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質(レーン2)である。一方、比較例8(レーン3)では分子量250kDa付近にのみ検出され、AbLは各融合蛋白質から切り出されていなかった。また、シグナルの強度をレーン1とレーン2とで比較すると、これらは同程度であった。すなわち、MMIとSspIとでは、目的蛋白質を切断する活性は同程度であった。
pTWIN1(New England Biolabs社)を鋳型とし、配列番号29と30に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、SspIのC末端部分配列であるMMIをコードする遺伝子(MMI遺伝子)を含むDNA断片を単離した。配列番号31にその塩基配列と対応するアミノ酸配列、配列番号32にアミノ酸配列のみを示す。すなわち、MMIは、SspIのC末端から48番目のアミノ酸までの部分に相当する。
2.古細菌由来シャペロニンサブユニット連結体の発現系構築
配列番号40と41にそれぞれ示される2種のオリゴヌクレオチドを合成し、これらをアニーリングさせ、6Hisをコードする2本鎖DNAを調製した。この2本鎖DNAを、実施例1で調製した発現ベクターpETDH(TCPβ)4I上の(TCPβ)4遺伝子の上流にあるNcoIサイトに導入し、発現ベクターpETDH(TCPβ)4I−2を構築した。図12にpETDH(TCPβ)4I−2の構成を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4I−2はT7プロモーターを有し、その下流に、6His遺伝子、(TCPβ)4の遺伝子、及びSspI遺伝子が順に配置されている。また、pETDH(TCPβ)4I−2のSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、N末端にHisタグが付いた、(TCPβ)4とSspIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
同様にして、pETDH(TCPβ)4I−2のSspIの代わりに、MMI遺伝子を導入した発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI−2を構築した。図13にpETDH(TCPβ)4MMI−2の構成を示す。すなわち、pETDH(TCPβ)4MMI−2の構成はpETDH(TCPβ)4I−2とほぼ同じであり、SspI遺伝子がMMI遺伝子に置き換わっている点のみが異なる。pETDH(TCPβ)4MMI−2のSpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質をコードする遺伝子を挿入することにより、N末端にHisタグが付いた、(TCPβ)4とMMIIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
3.抗体軽鎖の発現、切断
実施例1で単離したAbL遺伝子を含むDNA断片をpETDH(TCPβ)4I−2及びpETDH(TCPβ)4MMI−2にそれぞれ導入し、pETDH(TCPβ)4I・AbL−2及びpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2を構築した。すなわち、pETDH(TCPβ)4I・AbL−2によれば(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質を、pETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2によれば、(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質を発現することができる。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4I・AbL−2及びpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2を、それぞれ大腸菌BL21(DE3)株に導入して形質転換体を得た。これらの形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質、及び(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質を発現させた。これらの菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)にそれぞれ懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて各菌体を破砕後、遠心により各菌体破砕液上清を得た。
(比較例8)
実施例8で構築したpETDH(TCPβ)4I・AbL−2のSspI遺伝子の代わりにプレシジョンプロテアーゼの認識アミノ酸配列をコードする遺伝子を導入した発現ベクターpET(TCPβ)4P・AbL−2を構築した。
実施例8と比較例8で調製した各菌体破砕液上清を室温で2時間処理したものにつき、軽鎖抗体を認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbLがシャペロニンから切断されているか否かを試験した。結果を図14に示す。すなわち、実施例8のpETDH(TCPβ)4MMI・AbL−2(レーン1)及びpETDH(TCPβ)4I・AbL−2(レーン2)ではAbLが分子量25kDa付近に検出され、AbLが各融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、250kDa付近のバンドは(TCPβ)4とMMIとAbLとの融合蛋白質(レーン1)、又は(TCPβ)4とSspIとAbLとの融合蛋白質(レーン2)である。一方、比較例8(レーン3)では分子量250kDa付近にのみ検出され、AbLは各融合蛋白質から切り出されていなかった。また、シグナルの強度をレーン1とレーン2とで比較すると、これらは同程度であった。すなわち、MMIとSspIとでは、目的蛋白質を切断する活性は同程度であった。
1.抗体重鎖の発現
長鎖DNA合成を行い、配列番号33に示されるヒト由来抗HBs抗体の重鎖(AbH)遺伝子を含むDNA断片を調製した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片を、実施例8に示したpETDH(TCPβ)4MMI−2のSpeI及びHpaIサイトの間に組み込んだ。これにより、N末端に6Hisを有する、(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbH−2を構築した。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbH−2を大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質を発現させた。菌体を回収し、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例9)
pETDH(TCPβ)4MMI−2をの代わりにpETDH(TCPβ)4I−2を用いる以外は全て実施例9と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例9と比較例9で調製した各菌体破砕液上清をSDS−PAGEに供し、CBB染色を行った。結果を図15に示す。すなわち、レーン1(実施例9)では290kDa付近に(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質に由来するバンドが検出された。一方、レーン2(比較例9)では、300kDa付近に非常に薄いバンドしか検出されなかった。すなわち、比較例9の方は実施例9に比べて発現量がかなり低かった。
以上より、目的蛋白質が50kDa程度のAbHである場合、比較例9で調製した(TCPβ)4とSspIとAbHとの融合蛋白質では、SspIとAbHがシャペロニンのキャビティに入りきらないため、発現しなくなるか、発現量が激減したと考えられた。一方、実施例9のように、SspIの代わりにその部分配列であるMMIを導入した場合は、特に問題なく融合蛋白質を発現させることができた。これは、MMIとAbHがシャペロニンのキャビティに納まるためと考えられた。
実施例9で得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbHからの菌体破砕液上清を室温で2時間処理し、融合蛋白質からAbHを切り出した。抗体重鎖を認識する抗体(PIERCE社 ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2抗体−HRP conjugate)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbHが融合蛋白質から切り出されているか否かを確認した。結果を図16に示す。その結果、シグナルが分子量50kDa付近に検出され、融合蛋白質からAbHが切り出されていることが確認された。なお、290kDa付近のバンドはシャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とMMIとAbHとの融合蛋白質である。
長鎖DNA合成を行い、配列番号33に示されるヒト由来抗HBs抗体の重鎖(AbH)遺伝子を含むDNA断片を調製した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片を、実施例8に示したpETDH(TCPβ)4MMI−2のSpeI及びHpaIサイトの間に組み込んだ。これにより、N末端に6Hisを有する、(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbH−2を構築した。
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbH−2を大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で30℃、24時間培養し、(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質を発現させた。菌体を回収し、菌体を50mM Tris/HCl緩衝液 0.2mM EDTA(pH7・0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて菌体を破砕後、遠心により菌体破砕液上清を得た。
(比較例9)
pETDH(TCPβ)4MMI−2をの代わりにpETDH(TCPβ)4I−2を用いる以外は全て実施例9と同様にして、発現ベクターの構築、形質転換、及び形質転換体の培養を行い、菌体破砕液上清を得た。
実施例9と比較例9で調製した各菌体破砕液上清をSDS−PAGEに供し、CBB染色を行った。結果を図15に示す。すなわち、レーン1(実施例9)では290kDa付近に(TCPβ)4とMMIとAbHとの融合蛋白質に由来するバンドが検出された。一方、レーン2(比較例9)では、300kDa付近に非常に薄いバンドしか検出されなかった。すなわち、比較例9の方は実施例9に比べて発現量がかなり低かった。
以上より、目的蛋白質が50kDa程度のAbHである場合、比較例9で調製した(TCPβ)4とSspIとAbHとの融合蛋白質では、SspIとAbHがシャペロニンのキャビティに入りきらないため、発現しなくなるか、発現量が激減したと考えられた。一方、実施例9のように、SspIの代わりにその部分配列であるMMIを導入した場合は、特に問題なく融合蛋白質を発現させることができた。これは、MMIとAbHがシャペロニンのキャビティに納まるためと考えられた。
実施例9で得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4MMI・AbHからの菌体破砕液上清を室温で2時間処理し、融合蛋白質からAbHを切り出した。抗体重鎖を認識する抗体(PIERCE社 ヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2抗体−HRP conjugate)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、AbHが融合蛋白質から切り出されているか否かを確認した。結果を図16に示す。その結果、シグナルが分子量50kDa付近に検出され、融合蛋白質からAbHが切り出されていることが確認された。なお、290kDa付近のバンドはシャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とMMIとAbHとの融合蛋白質である。
1.グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質発現系構築
アマシャムファルマシアバイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)社から市販されているpGEX−4T−1ベクターのBamHI−NotIサイトに、配列番号34に示される2本鎖DNAを挿入し、SpeIサイト、HpaIサイト及び6His遺伝子を導入した。また、BamHIサイトと上記SpeIサイトの間に実施例8で得られたMMI遺伝子を導入した。この発現ベクターをpGEX MMIと命名した。図17にpGEX MMIの構成を示す。すなわち、pGEX MMIはtacプロモーターを有し、その下流に、GST遺伝子、MMI遺伝子、6His遺伝子が順に配置されている。そして、SpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質の遺伝子を挿入することにより、GSTとMMIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
2.GFPの発現、切断
pIVEX2.3−GFP WTベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を鋳型とし、配列番号23と24に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号25に示されるGFP遺伝子を含むDNA断片を単離した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片を、本実施例で構築したpGEX MMIのSpeI及びHpaIサイトの間に組み込んだ。これにより、GSTとMMIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpGEX MMI・GFPを構築した。同様にして、MMI遺伝子の代わりに実施例1で調製したSspI遺伝子を導入した発現ベクターpGEX I・GFPを構築した。
pGEX MMI・GFP(実施例10−1)及びpGEXI・GFP(実施例10−1)をそれぞれ大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。これらの形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で25℃、24時間培養し、GSTとSspIとGFPとの融合蛋白質、及びGSTとMMIとGFPとの融合蛋白質を発現させた。それぞれの菌体を回収し、各菌体を50mM Tris/HCl緩衝液(pH7.0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて各菌体を破砕後、遠心により各菌体破砕液上清を得た。
(比較例10)
図17に示すpGEX MMIについて、BamHIサイトとSpeIサイトの間にMMIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子を導入したpGEX Pを構築した。そして、pGEX MMIの代わりにpGEX Pを用いる以外は全て実施例10と同様に、発現ベクターの構築、形質転換、形質転換体の培養を行い、実施例10と同様に菌体破砕液上清を得た。
実施例10と比較例10で調製したそれぞれの菌体破砕液上清を、Ni−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、ヒスチジンタグを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPが各融合蛋白質から切り出されているか否かを確認した。結果を図18に示す。すなわち、実施例10のpGEX I・GFP(レーン1)ではGFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。また、pGEX MMI・GFP(レーン2)においても、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、58kDa付近のバンドはGSTとMMIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例10(レーン3)では分子量53kDa付近にのみバンドが検出され、GFPは融合蛋白質から切り出されていなかった。
アマシャムファルマシアバイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)社から市販されているpGEX−4T−1ベクターのBamHI−NotIサイトに、配列番号34に示される2本鎖DNAを挿入し、SpeIサイト、HpaIサイト及び6His遺伝子を導入した。また、BamHIサイトと上記SpeIサイトの間に実施例8で得られたMMI遺伝子を導入した。この発現ベクターをpGEX MMIと命名した。図17にpGEX MMIの構成を示す。すなわち、pGEX MMIはtacプロモーターを有し、その下流に、GST遺伝子、MMI遺伝子、6His遺伝子が順に配置されている。そして、SpeIサイトとHpaIサイトの間に目的蛋白質の遺伝子を挿入することにより、GSTとMMIと目的蛋白質との融合蛋白質を発現するベクターを構築することができる。
2.GFPの発現、切断
pIVEX2.3−GFP WTベクター(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を鋳型とし、配列番号23と24に示されるオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、配列番号25に示されるGFP遺伝子を含むDNA断片を単離した。なお、このDNA断片にはプライマーに由来して5’末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトがそれぞれ設けられた。このDNA断片を、本実施例で構築したpGEX MMIのSpeI及びHpaIサイトの間に組み込んだ。これにより、GSTとMMIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpGEX MMI・GFPを構築した。同様にして、MMI遺伝子の代わりに実施例1で調製したSspI遺伝子を導入した発現ベクターpGEX I・GFPを構築した。
pGEX MMI・GFP(実施例10−1)及びpGEXI・GFP(実施例10−1)をそれぞれ大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。これらの形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地で25℃、24時間培養し、GSTとSspIとGFPとの融合蛋白質、及びGSTとMMIとGFPとの融合蛋白質を発現させた。それぞれの菌体を回収し、各菌体を50mM Tris/HCl緩衝液(pH7.0)に懸濁し、プロテアーゼインヒビターカクテル存在下、超音波処理にて各菌体を破砕後、遠心により各菌体破砕液上清を得た。
(比較例10)
図17に示すpGEX MMIについて、BamHIサイトとSpeIサイトの間にMMIをコードする遺伝子の代わりに、プレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子を導入したpGEX Pを構築した。そして、pGEX MMIの代わりにpGEX Pを用いる以外は全て実施例10と同様に、発現ベクターの構築、形質転換、形質転換体の培養を行い、実施例10と同様に菌体破砕液上清を得た。
実施例10と比較例10で調製したそれぞれの菌体破砕液上清を、Ni−NTAアガロースゲル(キアゲン社)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、ヒスチジンタグを認識する抗体を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPが各融合蛋白質から切り出されているか否かを確認した。結果を図18に示す。すなわち、実施例10のpGEX I・GFP(レーン1)ではGFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。また、pGEX MMI・GFP(レーン2)においても、GFPが分子量27kDa付近に検出され、GFPが融合蛋白質から切り出されていることが確認された。なお、58kDa付近のバンドはGSTとMMIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例10(レーン3)では分子量53kDa付近にのみバンドが検出され、GFPは融合蛋白質から切り出されていなかった。
1.無細胞翻訳系における融合蛋白質の発現
実施例4で調製したpET TPPIase Iで、SspI遺伝子に代わってMMI遺伝子が挿入されたプラスミドpET TPPIase MMIを構築した(図19)。実施例10で調製した配列番号25に示されるGFP遺伝子を含むDNA断片を、SpeIおよびHpaI処理し、同制限酵素で処理した発現ベクターpET TPPIase MMIに組み込んだ。これにより、TPPIaseとMMIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpET TPPIase MMI・GFPを構築した。
得られた発現ベクターpET TPPIase MMI・GFPについて、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった。
(比較例11)
実施例4で構築したpET TPPIase Iを使用した(比較例11−1)。さらに、pET TPPIase MMIのBamHIサイトとSpeIサイトの間に、MMIでなくプレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子としたpET TPP Iase Pを構築した(比較例11−2)。pET TPPIase MMI・GFPをpET TPPIase I・GFP又はpET TPPIase P・GFPとする以外は全て実施例11と同様にして蛋白合成を行なった。
実施例11と比較例11で調製したそれぞれの反応液をNi−NTAアガロースゲル(キアゲン社製)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、抗GFPマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図20に示す。実施例11(レーン3)のpET TPPIase MMI・GFPではGFPが分子量27kDa付近に観測され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、50kDa付近のシグナルはTPPIaseとMMIとGFPとの融合蛋白質である。また、比較例11−1(レーン2)のpET TPPIase I・GFPでもGFPが分子量27kDa付近に観測され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例11−2のpET TPPIase P・GFP(レーン4)ではTPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナル観測され、GFPの切断は確認されなかった。これらの結果から、SspIと同様に、MMIは無細胞蛋白合成を行なった場合にも切断活性を有していることが確認された。
実施例4で調製したpET TPPIase Iで、SspI遺伝子に代わってMMI遺伝子が挿入されたプラスミドpET TPPIase MMIを構築した(図19)。実施例10で調製した配列番号25に示されるGFP遺伝子を含むDNA断片を、SpeIおよびHpaI処理し、同制限酵素で処理した発現ベクターpET TPPIase MMIに組み込んだ。これにより、TPPIaseとMMIとGFPとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpET TPPIase MMI・GFPを構築した。
得られた発現ベクターpET TPPIase MMI・GFPについて、無細胞蛋白質発現(ロシュ・ダイアグノスティック社 RTS500使用)を行なった。
(比較例11)
実施例4で構築したpET TPPIase Iを使用した(比較例11−1)。さらに、pET TPPIase MMIのBamHIサイトとSpeIサイトの間に、MMIでなくプレシジョンプロテアーゼの認識配列をコードする遺伝子としたpET TPP Iase Pを構築した(比較例11−2)。pET TPPIase MMI・GFPをpET TPPIase I・GFP又はpET TPPIase P・GFPとする以外は全て実施例11と同様にして蛋白合成を行なった。
実施例11と比較例11で調製したそれぞれの反応液をNi−NTAアガロースゲル(キアゲン社製)で精製した後、室温で2時間処理したものにつき、抗GFPマウスモノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology社)を用いたウエスタンブロッティング解析を行い、GFPがTPPIaseから切断されているか否かを試験した。結果を図20に示す。実施例11(レーン3)のpET TPPIase MMI・GFPではGFPが分子量27kDa付近に観測され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、50kDa付近のシグナルはTPPIaseとMMIとGFPとの融合蛋白質である。また、比較例11−1(レーン2)のpET TPPIase I・GFPでもGFPが分子量27kDa付近に観測され、GFPがTPPIaseから切断されていることが確認された。なお、62kDa付近のシグナルはTPPIaseとSspIとGFPとの融合蛋白質である。一方、比較例11−2のpET TPPIase P・GFP(レーン4)ではTPPIaseとGFPとの融合蛋白質の分子量45kDa付近にのみシグナル観測され、GFPの切断は確認されなかった。これらの結果から、SspIと同様に、MMIは無細胞蛋白合成を行なった場合にも切断活性を有していることが確認された。
Claims (43)
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質をペプチド結合で連結させたことを特徴とする融合蛋白質。
- 分子シャペロンが、複数のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の融合蛋白質。
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット、又はシャペロニンサブユニット連結体に連結されており、前記シャペロニンサブユニット連結体は、2〜10個のシャペロニンサブユニットがペプチド結合を介して直列に連結したものであることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の融合蛋白質。
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のN末端、単独のシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体のC末端、シャペロニンサブユニット連結体のシャペロニンサブユニット同士の連結部、から選択される1又は2以上の部位に連結されていることを特徴とする請求の範囲第3項に記載の融合蛋白質。
- シャペロニンサブユニットと目的蛋白質との数の比が1:1〜10:1であることを特徴とする請求の範囲第3項又は第4項に記載の融合蛋白質。
- 分子シャペロンがペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の融合蛋白質。
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質が、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼのN末端及び/又はC末端に連結されていることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の融合蛋白質。
- 分子シャペロンが、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の融合蛋白質。
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がインテイン又はインテインの部分配列蛋白質であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載の融合蛋白質。
- インテインが、N末端を切断するがC末端を切断しないものであることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の融合蛋白質。
- インテインが、C末端を切断するがN末端を切断しないものであること特徴とする請求の範囲第9項に記載の融合蛋白質。
- インテインの部分配列蛋白質が、インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の融合蛋白質。
- インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする請求の範囲第9項〜第12項のいずれかに記載の融合蛋白質。
- インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする請求の範囲第9項〜第12項のいずれかに記載の融合蛋白質。
- インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の融合蛋白質。
- インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求の範囲第12項に記載の融合蛋白質。
- ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質がプロテアーゼであることを特徴とする請求の範囲第1項〜第16項のいずれかに記載の融合蛋白質。
- 請求の範囲第1項〜第17項のいずれかに記載の融合蛋白質をコードする単離された遺伝子。
- 請求の範囲第1項〜第17項のいずれかに記載の融合蛋白質から、目的蛋白質を、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用によって切り出すことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
- 請求の範囲第1項〜第17項のいずれかに記載の融合蛋白質を調製する工程と、前工程で調製した融合蛋白質に含まれるペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質のペプチド結合切断活性を惹起する工程と、前工程でペプチド結合切断活性を惹起したペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用により、融合蛋白質の一部を切断し、融合蛋白質から目的蛋白質を切り出して遊離させる工程とを含むことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
- 前記融合蛋白質を20〜37℃の温度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする請求の範囲第20項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 前記融合蛋白質をpH6〜8の水素イオン濃度に曝すことにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする請求の範囲第20項又は第21項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- チオールを添加することにより前記ペプチド結合切断活性を惹起することを特徴とする請求の範囲第20項〜第22項のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
- 前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた発現ベクターを宿主に導入して該融合蛋白質を発現する工程と、前工程で得られた融合蛋白質から目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする請求の範囲第19項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込んで2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質を発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程とを含むことを特徴とする請求の範囲第19項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドの、一方に前記融合蛋白質をコードする遺伝子を組み込み、他方に分子シャペロンのみをコードする遺伝子を組み込んで、2種類の発現ベクターを作製する工程と、前工程で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入し、該融合蛋白質と該分子シャペロンを発現させる工程と、前工程で得られた融合蛋白質から、ペプチド結合切断活性を有する介在蛋白質の作用で目的蛋白質を切り出す工程を含むことを特徴とする請求の範囲第19項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする請求の範囲第24項〜第26項のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
- 宿主内で融合蛋白質を発現させ、前記宿主はバクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする請求の範囲第19項〜第26項のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
- 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする請求の範囲第19項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 分子シャペロンがシャペロニンであり、5〜10個のシャペロニンサブユニットがリング状に集合してシャペロニンリングを形成しており、前記目的蛋白質は、該シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする請求の範囲第19項〜第29項のいずれかに記載の目的蛋白質の製造方法。
- インテインのC末端から20〜120個のアミノ酸残基からなることを特徴とするインテインの部分配列蛋白質。
- インテインが、Synechocystis sp.由来のものであることを特徴とする請求の範囲第31項に記載のインテインの部分配列蛋白質。
- インテインが、Mycobacterium xenopi、Saccharomyces cerevisiae、Halobacterium sp.から選択される由来のものであることを特徴とする請求の範囲第31項に記載のインテインの部分配列蛋白質。
- インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質、又は配列番号1において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求の範囲第31項に記載のインテインの部分配列蛋白質。
- インテインの部分配列蛋白質が、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも50%以上の相同性を有し、且つペプチド切断活性を有する蛋白質であることを特徴とする請求の範囲第31項に記載のインテインの部分配列蛋白質。
- 請求の範囲第31項〜第35項のいずれかに記載のインテインの部分配列蛋白質をコードする単離された遺伝子。
- 請求の範囲第18項又は第36項に記載の遺伝子を含有する発現ベクター。
- 請求の範囲第37項に記載の発現ベクターを含有する形質転換体。
- インテインの部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第1前駆体をペプチド結合で連結させた第1の融合蛋白質を作製する工程1と、該インテインの残余の部分配列蛋白質の一方の末端には分子シャペロン又はそのサブユニットをペプチド結合で連結させ、且つ、他方の末端には目的蛋白質第2前駆体をペプチド結合で連結させた第2の融合蛋白質を作製する工程2と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、工程1で得られた第1の融合蛋白質から目的蛋白質第1前駆体を切り出し、さらに工程2で得られた第2の融合蛋白質から目的蛋白質第2前駆体を切り出す工程3と、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、工程3で得られた目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルする工程4とを含むことを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
- 分子シャペロンの一方の末端にインテインの部分配列蛋白質、他方の末端に該インテインの残余の部分配列蛋白質がペプチド結合を介して連結され、さらに該インテインの部分配列蛋白質に目的蛋白質第1前駆体がペプチド結合を介して連結され、且つ該インテインの残余の部分配列蛋白質に目的蛋白質第2前駆体がペプチド結合を介して連結された融合蛋白質から、インテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質の切断機能により、目的蛋白質第1前駆体及び目的蛋白質第2前駆体を切り出し、さらにインテインの部分配列蛋白質と該インテインの残余の部分配列蛋白質のアセンブリー機能により、目的蛋白質第1前駆体と目的蛋白質第2前駆体をアセンブルすることを特徴とする目的蛋白質の製造方法。
- 前記融合蛋白質を宿主内で発現させることを特徴とする請求の範囲第39項又は第40項に記載の目的蛋白質の製造方法。
- 前記宿主が、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする請求の範囲第41項に記載の融合蛋白質の製造方法。
- 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする請求の範囲第39項又は第40項に記載の目的蛋白質の製造方法。
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