JPWO2004096046A1 - 検体採取用容器を用いた検体濾過方法、治具及び検体採取用容器 - Google Patents
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Abstract
Description
従来の無遠心型の検体採取用容器では、真空採血針を用いて栓体を刺通し、減圧を利用して血液が採取される。そして、採取された血液が、検体採取用容器内に配置された、あるいは検体採取用容器に組み合わされたフィルタ部材により濾過される。この場合、血液の採取が終了した後には、真空採血針が抜去される。採取された血液は、フィルタ部材の下方、すなわち濾過された血液が収納される部分に残存している減圧を利用することによりフィルタ部材を通過する。すなわち、フィルタ部材の上方と下方の圧力差により、血液が濾過される。
しかしながら、フィルタ部材の上下の圧力が平衡に達すると、濾過の駆動力がなくなり、濾過が停止することになる。そのため、従来、フィルタ部材の上方で上記栓体を取り外し、フィルタ部材の上方を大気圧として、フィルタ部材の下方と上方とに圧力差を発生させ、濾過を進める必要があった。ところが、血液試料が採取されている検体採取容器の栓体を取り外す必要があるため、作業者が血液の付着により感染するおそれがあった。また、栓体を検体採取用容器から除去した場合、フィルタ部材上方の空間が外部に大きく解放されることになり、異物が混入するおそれもあった。
他方、特開平11−290297号公報に記載の検体採取用容器では、フィルタ部材が下方に配置された内管が外管に気密的に挿入されており、内管を外管から引き出す方向に移動させることにより、フィルタ部材の下方の外管内の圧力を低くすることにより、濾過を促進し得る構造が開示されている。しかしながら、この構造では、濾過の駆動力が上記操作による圧力差だけでは不十分であり、濾過の途中で濾過が停止するおそれがあった。
また、特開平4−20856号公報に記載の検体採取用容器では、予め栓により封止され、かつ内部が減圧されている濾過済みの検体採取用容器と、血液が採取された検体採取用容器とフィルタ部材により連結され、濾過済み検体採取用容器内の減圧を利用して、検体採取用容器内の血液やフィルタ部材を通過するように構成されている。ここでは、検体採取用容器内の減圧度が比較的高くされているが、やはり、途中で濾過が停止するおそれがあった。
本願の第1の発明は、採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、前記開口を気密封止するように設けられた栓体と、前記検体採取部に採取された検体を濾過するために検体採取部に設けられたフィルタ部材と、前記フィルタ部材により濾過された検体を収納し、かつ予め内部が減圧されている検体収納部とを備える検体採取用容器を用いた検体の濾過方法であって、真空採血針を用いて前記検体採取部に検体を採取した後に、前記検体採取部と前記検体収納部との圧力差により検体を濾過すると共に、前記栓体に連通用流路を有する連通針を針通させて検体採取部と外部とを連通させて、検体採取部内の圧力を高めることを特徴とする、検体採取用容器を用いた検体濾過方法である。
第1の発明のある特定の局面では、前記連通針が中空針である。
第1の発明の他の特定の局面では、前記連通針が、外表面に形成された連通用溝を有し、該連通用溝が針先から針先と反対側の端部に向かって延ばされている。
本願の第2の発明は、採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、前記開口を気密封止するように該開口に圧入された栓体とを備える検体採取用容器の内外を連通させるのに用いられる検体採取用治具であって、前記治具は、針先側から針先とは反対側の他方端部に延びる連通用流路を有する連通針と、該連通針の前記他方端側に取り付けられた把持部と、該把持部から連通針の軸方向に延びるスカート部と、前記連通針の針先側に設けられた少なくとも1つの羽根とを有することを特徴とする治具である。
第2の発明のある特定の局面では、前記連通針が中空針である。
第2の発明の他の特定の局面では、前記連通針が、外表面に形成された連通用溝を有し、該連通用溝が針先から針先と反対側の端部に向かって延ばされている。
本願の第3の発明は、液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、前記開口を気密封止するように設けられた栓体と、前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、前記栓体に検体採取部と外部とを連通する貫通孔が形成されており、該貫通孔が栓体の外表面において取り外し可能なシール部材により気密封止されていることを特徴とする、検体採取用容器である。
なお、上記栓体は、上記開口に圧入されていてもよく、その場合には、栓体は、ゴムやエラストマー等からなる通常の栓により構成され得る。もっとも、第1〜第3の発明における栓体とは、上記開口を気密封止する限り、開口に圧入される形状を有するものに限定されるものではない。例えば、柔軟性を有する材料からなるシートや成形材により閉成材としての栓体が構成されてもよい。このようなシート状等の部材からなる栓体の場合においても、該栓体に検体採取部と外部とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔を栓体の外表面において取り外し可能なシール部材により気密封止すればよい。
第3の発明のある特定の局面では、前記シール部材が、前記栓体の貫通孔が開口している外表面を覆うように栓体の外表面に貼付されたシートである。
第3の発明の他の特定の局面では、前記シール部材が、前記貫通孔に圧入された栓である。
第4の発明は、液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、前記開口を気密封止するように開口に圧入された栓体と、前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、前記栓体と接触する前記検体採取部の内面の一部に開いた貫通孔が設けられており、かつ前記貫通孔と周方向位置が一致された際に、前記貫通孔と前記検体採取部内とを連通する流路が前記栓体の前記検体採取部の内面に接触される外表面部分の一部に形成されていることを特徴とする、検体採取用容器である。
第5の発明は、液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、前記開口を気密封止するように開口に圧入された栓体と、前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、前記栓体と接触する前記検体採取部の内面の一部に開いた貫通孔が設けられており、前記検体採取部から栓体と検体採取部の内面との気密封止を保ったまま前記栓体を引き出した際に、前記貫通孔に一端が臨み、他端が検体採取部内に開いている流路が栓体に形成されていることを特徴とする、検体採取用容器である。
図2は、第1の実施形態の検体の濾過方法に用いられる治具を示す斜視図である。
図3は、図2に示した治具を用いて濾過を再開する工程を説明するための模式的斜視図である。
図4は、図3の操作に引き続いて濾過が終了した後に、治具を栓体及び検体採取部と共に検体収納部から取り外した状態を示す模式的斜視図である。
図5は、第1の実施形態の変形例で用いられる治具を示す斜視図である。
図6は、第1の実施形態の濾過方法のさらに他の変形例に用いられる中空針を示す斜視図である。
図7は、第2の実施形態に係る検体採取用容器を示す部分切欠正面断面図である。
図8は、図7に示した検体採取用容器の変形例を説明するための部分切欠正面断面図である。
図9は、第3の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための部分切欠正面断面図である。
図10は、第4の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための部分切欠正面断面図である。
図11は、第5の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための部分切欠正面断面図である。
図12(a)及び(b)は、本発明で用いられる連通針の変形例を示す各斜視図である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検体濾過方法に用いられる検体採取用容器を示す斜視図である。
検体採取用容器1は、有底の円筒状の外環からなる検体収納部2を有する。検体収納部2の上端には開口2aが形成されている。
本実施形態において、検体収納部2とは、濾過された検体を収納する部分をいうものとする。検体収納部2内には、検体採取部3が収納されている。なお、検体採取部3は、濾過前の検体が採取される部分をいうものとする。
本実施形態では、検体採取部3は、略円筒状の内管からなる。検体採取部3の上方には、開口3aが形成されている。また、検体採取部3の下端には、濾過された検体を濾過するための検体流下部3bが形成されている。検体流下部3bは、検体採取部3と一体に形成されており、検体採取部3の底面から下方に突出するように形成されている。
検体流下部3bは、濾過された検体を流下するための中空流路を有する。
また、検体採取部3内には、フィルタ部材4が収納されている。フィルタ部材4は、検体中の固形物を除去する適宜のフィルタ材料により構成される。このようなフィルタ材料としては、例えば、繊維集合体、微粒子などを挙げることができる。
また、上記検体収納部2及び検体採取部3は、例えば、合成樹脂やガラスなどにより構成され得る。
検体収納部2及び検体採取部3の開口2a,3aは、栓体5により気密封止されている。すなわち、栓体5は、把持部5aと、把持部5aの下面から下方に突出するように形成された大径部5b、大径部5bの下面から下方に突出された相対的に径の小さな小径部5cとを有する。小径部5cが検体採取部3の開口3aに圧入されており、それによって検体採取部3の開口3aが気密封止されているとともに、検体採取部3が栓体5に固定されている。また、大径部5bは、検体収納部2の開口2aに圧入されており、それによって検体収納部2の開口2aが気密封止されており、かつ検体収納部2が栓体5に固定されている。
上記検体収納部2内は、1〜90kPaの圧力に予め減圧されている。
従って、検体として血液を採取する場合、公知の真空採血針を栓体5に刺通することにより、血液を検体採取用容器1内の減圧を利用して検体採取部3内に採取することができる。血液を採取した後には、真空採血針は栓体5から抜去される。
栓体5は、例えばスチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、天然ゴムなどのエラストマーやゴムにより構成されている。従って、真空採血針を抜去した後に、真空採血針が刺通されたことによる孔はふさがれ、検体採取用容器1内の減圧はある程度の時間維持される。すなわち、時間の経過とともに、検体採取用容器1内の減圧度が低下するが、フィルタ部材4の上方の検体採取部3の内部の空間が、検体収納部2内のフィルタ部材4の下方の空間よりも圧力が高い状態が持続する。
従って、検体収納部2内の残圧により、血液がフィルタ部材4により濾過される。もっとも、前述した従来技術の項で示したように、検体採取用容器1内において、フィルタ部材4の上方と下方の空間の圧力が平衡状態に達してしまうと、濾過が停止することになる。
そこで、従来は、栓体5を取り外し、フィルタ部材4の上方の空間を大気解放とし、検体収納部2内の圧力と、フィルタ部材4の上方の空間との間に圧力差を再度与えることにより、濾過を完了していた。しかしながら、このような操作方法では、作業者が血液に触れ、血液感染を引き起こすおそれがあった。
これに対して、本実施形態の濾過方法では、図2に示す治具11が用いられて、検体採取部3内の空間が大気に連通され、それによって検体採取部3内の空間と、検体収納部2内の空間とに圧力差が与えられる。
治具11は、連通針として、先端が尖った中空針12を有する。中空針12の上端近傍に、円盤状の把持部13が取り付けられている。中空針12の上端開口は、把持部13の上面に開口している。また、把持部13の側方には、下方に延びるスカート14,15が固定されている。スカート14,15は、治具11を手で操作することを容易とするために設けられている。
中空針12の先端近傍には、複数の羽根12a,12bが設けられている。羽根12a,12bは、先端に行く程中空針12側に近づく形状を有し、上端に係止面12a1,12b1を有する。上記のような形状とされているため、栓体5に中空針12を刺通させる際の刺通抵抗はさほど大きくなく、かつ上記羽根12a,12bにより、より大きな貫通孔が栓体5に形成されることになる。また、係止面12a1,12b1が設けられているので、濾過が終了した後に、治具11と共に、栓体5及び検体採取部3を検体収納部2からの取出しを容易に行うことができる。すなわち、係止面12a1,12b1が栓体5の下面に当接されることにより、治具11を上方に引き抜くだけで、栓体5及び検体採取部3を確実に治具11と共に引き抜くことができる。
図3を参照して、治具11を用いた濾過方法を説明する。
図3は、上記真空採血針により血液を検体採取部3内に収納した後に、濾過が進行する過程において、治具11を検体採取用容器1に取り付けた状態を示す模式的斜視図である。上記のように、検体採取用容器1内の残圧のみでは濾過が途中で停止するおそれがあった。そこで、濾過が停止した場合、把持部13及びスカート14,15を手で掴み、連通針としての中空針12を栓体5に刺通させる。この場合、中空針12の先端が検体採取部3内における血液6の上方に位置するように中空針12の位置が定められる。その結果、検体採取部3内の空間が大気と連通されることになる。従って、フィルタ部材4の上方と下方の圧力差が高くなり、濾過が再度進行する。このようにして、フィルタ部材4による濾過が確実に完了される。
濾過が完了した後には、上記治具11を手で掴み、検体採取用容器1から治具11と共に、栓体5及び検体採取部3を引き抜く(図4参照)。このようにして、濾過された検体を収納した検体収納部2を得ることができる。従って、直ちに検体収納部2を自動分析装置に供したり、あるいは検体収納部2内の濾過済みの検体をスポイトやピペットなどにより採取することができる。
上記のように、本実施形態の濾過方法では、検体採取用容器内の残圧を利用しただけでは濾過が途中で停止した場合、治具11の中空針12を用いることにより、濾過を再度継続することができ、かつ血液を完全にフィルタ部材4により濾過することができる。しかも、濾過の継続に際しては、治具11を検体採取用容器1に上記のように取り付けるだけでよく、栓体5を取り外す必要がない。従って、作業者が血液に付着し、感染するおそれがない。また、検体採取部3の上方が解放状態とならないため、異物の混入のおそれもない。
図5は、上記治具11の変形例を示す模式的斜視図である。図5に示す治具16では、図2に示したスカート14,15が設けられていない。このように、スカート14,15は必ずしも必須ではなく、把持部13と中空針12のみからなる治具16を用いてもよい。
また、連通針としては、図6に示す中空針12Aのように、中空針12Aのみを用いてもよい。この場合には、長めの中空針12Aを用意し、中空針自体を手で掴み、栓体5に刺通させればよい。
なお、上述した第1の実施形態では、濾過後に検体採取容器の内外を連通させるための連通針として、上記中空針が用いられていたが、本発明においては、連通針としては、中空の流路を有する中空針以外の連通針を用いてもよい。
図12(a)及び(b)は、このような連通針の変形例を示す各斜視図である
連通針12Bは、針先から針先とは反対側の端部に向かって延びる連通用溝12B1を有する。連通用流路としての連通用溝12B1は、連通針12Bの外周面に形成されており、かつ横断面が略扇型の形状を有する。連通用溝12B1の一方端は針先に至っており、従って、連通針12Bを例えば第1の実施形態で用いられていた検体採取容器1において、中空針12に代えて用いることにより、検体採取部内の空間を大気と連通させることができる。従って、連通用溝12B1は、栓体5の外部と検体採取容器内部とを連通させ得る長さを有する限り、必ずしも連通用溝12B1は針先とは反対の端部に至っている必要はない。
なお、図12(b)に示す連通針Cは、連通針12Bと同様の構造を有する。但し、連通針12Cでは、連通用溝12C1の横断面形状が略台形形状とされている。このように、連通用溝の横断面形状は適宜変形することができる。
また、複数本の連通用溝を有する連通針を用いてもよい。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための部分切欠正面断面図である。
検体採取用容器51では、有底の円筒状の管52が用いられている。管52の上方部分が図示されており、この部分が検体採取部53を構成している。図7では、図示を省略しているが、検体採取部53の下方にフィルタ部材が配置されており、フィルタ部材の下方の管内の空間が検体収納部を構成している。
フィルタ部材については、第1の実施形態と同様の材料で構成され得る。また、管52についても、第1の実施形態の検体収納部2及び検体採取部3を構成する材料と同様の材料で構成され得る。
本実施形態の検体採取用容器では、栓体55が把持部55aと、圧入部55bとを有する。圧入部55bは、管52の開口52aを気密封止するように構成されている。
栓体52は、ゴムまたはエラストマーなどの適宜の弾性材料により構成されている。
栓体55には、上面55cから下面55dに延びる貫通孔55eが形成されている。また、栓体55の上面55cには、シール部材としてのシート56が貼り付けられている。シート56は、貫通孔55eを気密封止するように栓体55の上面55cに接着または溶着されている。シート56は、上記気密封止を満たし得る限り、アルミニウム箔と合成樹脂との積層材などの適宜の材料で構成され得る。
シート56の上面には、補強層57が貼り付けられている。補強層57は、検体採取用容器51内の圧力と大気との圧力差によりシート56が破れることを防止するために設けられている。従って、シート56が十分な強度を有する場合には、補強層57は設けられずともよい。
また、シート56の一端には、ノッチ56aが形成されている。ノッチ56aは、栓体55の上面55cよりも外側に突出している。ノッチ56aを手で掴むことにより、シート56の栓体55からの剥離が容易とされている。
なお、栓体55は、通常管52の上端開口に圧入されていたが、本発明における栓体は、開口を閉成する限り、圧入される形状を有するものでなくともよい。例えば、管52の開口52aを封止するように取り付けられた柔軟性を有するシートにより栓体55が形成されていてもよい。この場合には、シート状の栓体の一部に上記と同様に内外を連通する貫通孔を形成し、該貫通孔を栓体の外側表面に取り付けられたシール部材により封止すればよい。
検体採取用容器51では、管52内が予め減圧されている。
従って、第1の実施形態の場合と同様に、真空採取針を用いて血液などの検体を検体採取部53内に採取することができる。この場合、真空採血針は補強層57を刺通し、検体採取部53内に延ばされる。
そして、検体を採取した後に、真空採血針が除去される。そして、検体採取部53と、図示しない下方のフィルタ部材の下方の空間との圧力差により、検体が濾過される。また、本実施形態においても、管52内の圧力が平衡状態となると、濾過が途中で停止するおそれがある。この場合、本実施形態では、上記ノッチ56aを手指で掴み、シート56を栓体55から引き剥がし、貫通孔55eを大気と連通させればよい。その結果、フィルタ部材の上方の空間が大気と連通されるため、フィルタ部材の下方の空間と上方の空間との圧力差により、濾過が再度進行する。
よって、検体採取用容器51を用いた場合にも、栓体55を管52から取り外すことなく、濾過を確実に完了させることができる。
図8は、検体採取用容器51の変形例を示す模式的正面断面図である。検体採取用容器51では、濾過を再開するためのシール部材としてシート56が用いられていたが、図8に示すように、貫通孔55eを閉栓する栓59を用いてもよい。栓59は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料により構成されており、当初は、貫通孔55eに圧入されて、貫通孔55eの上端を気密封止している。真空採血針による検体の採取に際しては、栓59の中央を刺通してもよく、あるいは栓59が設けられている部分以外において、栓体55に真空採血針を刺通させてもよい。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための模式的部分切欠正面断面図である。検体採取用容器61では、有底であり、上端に開口62aを有する管62が用いられている。管62内には、図示しないが、フィルタ部材が中間高さ位置に配置されており、該フィルタ部材の上方の空間が検体採取部63を構成しており、下方の空間が検体収納部を構成している。
そして、管62の上端の開口62aを気密封止するように、栓体64が管62に圧入されている。栓体64は、把持部64aと、把持部64aよりも径の小さな圧入部64bを有する。圧入部64bが管62に圧入される部分である。
圧入部64bの外周面の一部には、凹部64cが形成されている。また、管62の管壁には、内面と外面とを貫通している貫通孔62bが形成されている。凹部64cの周方向位置が貫通孔62bと一致した場合に、検体採取部63と大気とを連通する流路が凹部64cにより構成されるように設けられている。
すなわち、図9に示す状態では、凹部64cと、貫通孔62bの位置が上記流路を形成するように周方向において一致されているが、当初は、他の位置とされている。すなわち、当初は、管62内の減圧を保つために、凹部64cが貫通孔62bと一致しない位置に設定されている。従って、第1,第2の実施形態の検体採取用容器1,11を用いた場合と同様に、真空採血針を用いて検体採取部63に血液などの液状の検体を貫通孔62内の減圧を利用して採取することができる。
そして、第1,第2の実施形態の場合と同様に、フィルタ部材を用いて血液などの検体の濾過が行われるが、フィルタ部材の上方の空間と下方の空間の圧入が平衡となると濾過が途中で停止する。この場合、栓体64を周方向に移動させ、図9に示されているように、貫通孔62bが凹部64cに臨むように栓体64を回転させればよい。このような操作を行うだけで、上記流路が形成され、検体採取部63が大気と連通され、検体採取部63と、フィルタ部材の下方の検体収納部との間に再度圧力差が生じ、濾過が進行する。そして、第1,第2の実施形態の場合と同様に、検体の濾過が確実に完了される。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る検体採取用容器を示す部分切欠正面断面図である。検体採取用容器71では、第3の実施形態の検体採取用容器61と濾過を再開させるための構造が異なることを除いては、同様に構成されている。従って、異なる部分のみを説明することとする。
検体採取用容器71では、管62に貫通孔62bが設けられている。他方、栓体64の圧入部64bには、凹部64dが形成されている。もっとも、図10に示すように、凹部64dの位置は、貫通孔62bよりも下方とされている。すなわち、当初は、図10に示すように、凹部64dと貫通孔62bが、管62の長さ方向においてずらされているため、検体採取部63と大気とが遮断されている。
そして、前述した操作により濾過が途中で停止した場合には、図10に示す状態から栓体64を上方に僅かに引き出す。このような操作により、貫通孔62bが凹部64dに臨むことになり、検体採取部63と大気とが連通される。すなわち、検体採取用容器71では、栓体64を上方に僅かに引き出す操作を行うことにより、濾過の再開を果たすことができる。
従って、検体採取用容器71を用いた場合においても、栓体64を管62から取り外す必要はないため、作業者の血液感染のおそれを抑制することができると共に、異物の検体採取部63への混入も生じ難い。
図11は、本発明の第5の実施形態に係る検体採取用容器を説明するための模式的正面断面図である。
検体採取用容器81では、有底の管からなる検体収納部82内に、筒状の検体採取部83が挿入されている。検体収納部82及び検体採取部83は、第1の実施形態の検体収納部2及び検体採取部3と同様に構成されている。すなわち、図11には図示されていないが、下方においては、検体採取部83内にフィルタ部材が収納されている。また、検体収納部82の下方の空間が濾過済みの検体を収納することとなる。
また、栓体84は、把持部84a、大径部84b及び小径部84cを有する。検体収納部82は、大径部84bにより気密封止され、検体採取部83の上端開口は小径部84cにより気密封止されている。
本実施形態では、検体採取用容器81において濾過が途中で停止した場合に、濾過を再開する構造が、栓体84及び検体収納部82に設けられている。すなわち、検体収納部82の上端開口82aよりも若干下方の位置に貫通孔82bが形成されている。貫通孔82bは、大径部84bと接触する内面部分に形成されている。
他方、栓体84には、大径部84bの外周側面に開いており、かつ栓体84の下面84dに他端が開いている流路84eが形成されている。この流路84eの大径部84bに開いている開口部分の高さ位置は、検体収納部82の貫通孔82bと略一致されている。
従って、濾過が途中で停止した場合には、栓体84を回転し、図示のように、流路84eを貫通孔82bと連通させることにより、検体採取部を大気と連通させることができる。よって、第1〜第4の実施形態の場合と同様に、再度濾過を進行させることができ、血液などの検体の濾過を確実に完了させることができる。
本実施形態においても、濾過の再開に際しての操作において、作業者の手指が血液に付着するおそれが少なく、かつ検体採取部内への異物の混入防止も生じ難い。
なお、第1の実施形態の検体採取用容器を用いた検体濾過方法では、上記のように二重管構造の検体採取用容器1を用いたが、該検体濾過方法は、このような検体採取用容器を用いた場合に限らず、特開2002−277357号公報、特許第3015854号掲載公報、特開平11−290297号公報、特開平4−20856号公報及び特開2001−321365号公報に記載の各検体採取用容器を用いた場合にも適用することができる。さらに、第2〜第5の実施形態の検体採取用容器を用いた場合にも、第1の実施形態の濾過方法を適用することができる。
さらに、第2〜第5の検体採取用容器は、上記のように、濾過を再開する構造に特徴を有するものであり、その他の構造については、適宜変更することができ、例えば特開2002−277357号公報、特許第3015854号掲載公報、特開平11−290297号公報、特開平4−20856号公報及び特開2001−321365号公報に記載の各検体採取用容器も、第2〜第5の実施形態の濾過再開構造を用いることができる。
第2の発明に係る治具は、検体採取用容器の栓体の内外を連通させるのに用いられる治具であって、様々な局面で用いられ得るが、例えば上記第1の発明に係る検体濾過方法において検体採取用容器の内外を連通させるのに好適に用いられる。すなわち、把持部及びスカートにより治具を手で掴み、中空針を検体採取用容器の栓体に刺通させるだけで、栓体の内外を連通させることができる。また、上記羽根が設けられているため、治具を取り外す際に、栓体を治具と共に検体採取用容器から取り外すことができる。
第3の発明に係る検体採取用容器においても、同様に、上記シール部材を取り外すことにより濾過が再開されるため、作業者が血液の付着により感染し難く、かつ検体への異物の混入が生じ難い。
第4の発明に係る検体採取用容器では、検体採取部に設けられた貫通孔と、栓体に設けられた流路とが連通されて、濾過の再開が行われる。従って、第1〜第3の発明と同様に、栓体を取り外すことなく、濾過を再開することができる。
第5の発明に係る検体採取用容器においても、栓体を検体採取部の内面と気密封止を保ったまま引き出した際に、検体採取部に設けられた貫通孔と栓体の流路とが連通され、それによって栓体を取り外すことなく濾過を再開することができる。
よって、第4,第5の発明においても、栓体を取り外すことなく濾過を再開し得るため、作業者の血液付着による感染が生じ難く、かつ検体への異物の混入が生じ難い。
よって、第1〜第5の発明によれば、安全性に優れ、かつ液状の検体の濾過を確実に行うことができる。
Claims (11)
- 採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、
前記開口を気密封止するように設けられた栓体と、
前記検体採取部に採取された検体を濾過するために検体採取部に設けられたフィルタ部材と、
前記フィルタ部材により濾過された検体を収納し、かつ予め内部が減圧されている検体収納部とを備える検体採取用容器を用いた検体の濾過方法であって、
真空採血針を用いて前記検体採取部に検体を採取した後に、前記検体採取部と前記検体収納部との圧力差により検体を濾過すると共に、前記栓体に連通用流路を有する連通針を針通させて検体採取部と外部とを連通させて、検体採取部内の圧力を高めることを特徴とする、検体採取用容器を用いた検体濾過方法。 - 前記連通針が中空針である請求項1に記載の検体濾過方法。
- 前記連通針が、外表面に形成された連通用溝を有し、該連通用溝が針先から針先と反対側の端部側に向かって延ばされている、請求項1に記載の検体濾過方法。
- 採取された液状の検体を収納し、かつ開口を有する検体採取部と、
前記開口を気密封止するように設けられた栓体とを備える検体採取用容器の内外を連通させるのに用いられる検体採取用治具であって、
前記治具は、針先側から針先とは反対側の他方端部に延びる連通用流路を有する連通針と、該連通針の前記他方端側に取り付けられた把持部と、該把持部から連通針の軸方向に延びるスカート部と、前記連通針の針先側に設けられた少なくとも1つの羽根とを有することを特徴とする治具。 - 前記連通針が中空針である請求項4に記載の検体濾過方法。
- 前記連通針が、外表面に形成された連通用溝を有し、該連通用溝が針先から針先と反対側の端部側に向かって延ばされている、請求項4に記載の検体濾過方法。
- 液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、
開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、
前記開口を気密封止するように設けられた栓体と、
前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、
前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、
前記栓体に検体採取部と外部とを連通する貫通孔が形成されており、該貫通孔が栓体の外表面において取り外し可能なシール部材により気密封止されていることを特徴とする、検体採取用容器。 - 前記シール部材が、前記栓体の貫通孔が開口している外表面を覆うように栓体の外表面に貼付されたシートである、請求項7に記載の検体採取用容器。
- 前記シール部材が、前記貫通孔に圧入された栓である、請求項7に記載の検体採取用容器。
- 液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、
開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、
前記開口を気密封止するように開口に圧入された栓体と、
前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、
前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、
前記栓体と接触する前記検体採取部の内面の一部に開いた貫通孔が設けられており、かつ前記貫通孔と周方向位置が一致された際に、前記貫通孔と前記検体採取部内とを連通する流路が前記栓体の前記検体採取部の内面に接触される外表面部分の一部に形成されていることを特徴とする、検体採取用容器。 - 液状の検体を濾過することを可能とする検体採取用容器であって、
開口を有し、かつ採取された検体を収納する検体採取部と、
前記開口を気密封止するように設けられた栓体と、
前記検体採取部に収納された検体を濾過するためのフィルタ部材と、
前記フィルタ部材で濾過された検体を収納する検体収納部とを備え、前記検体採取部、フィルタ部材及び検体収納部が気密的に結合されており、かつ前記検体収納部内が予め減圧されており、
前記栓体と接触する前記検体採取部の内面の一部に開いた貫通孔が設けられており、前記検体採取部から栓体と検体採取部の内面との気密封止を保ったまま前記栓体を引き出した際に、前記貫通孔に一端が臨み、他端が検体採取部内に開いている流路が栓体に形成されていることを特徴とする、検体採取用容器。
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